いよいよ、お父さんとお母さんが出かけてしまう日が来た。
朝ごはんを食べてるとき、弟は特にいつもと変わった様子はなかった。
この間部屋の中で変なコトをされて以来、特に何もされていない。
一時的な、嫌がらせだったのかな?
でも、怖いな・・。もう二度と、あんな怖いことされたくない。
オレは覚悟を決めて、部活が終わった後、栄口くんに話しかけた。
栄口くんは笑いながらどうしたの?って言ってくれた。
ちゃんと話さなきゃって思ったんだけど、なかなか上手く説明できなくて、
栄口くんも困った顔をしている。
「?えーと、つまり、弟が・・ちょっと変わってるっていうことでいいの、かな?」
「う・・うん、そう、なんだ。」
「へえー、いい子そうなのに、意外だね」
「いい、子だよ!でも・・最近、ちょっと変で、い、一緒に寝ようって・・言ったり・・・。」
「うーん、確かに中3にもなってそれは変だけど、慣れない家で寂しいんじゃないのかな?」
「う、うん・・そう、なんだけど・・」
もっと、ちゃんと説明しなきゃ。
無くなった衣類が弟の部屋から出てきたこと、顔を舐められたこと、
あと・・あの白い液体のことはあんまり言いたくないな。
やっと頭の中で順番が組み立てられて、いざ話そうと思ったら、花井君が栄口君を呼んだ。
「あっ、ごめん、三橋。また明日話聞くから!」
行ってしまった。
どうしよう・・・。今日、泊めて貰えるか、って先に聞けばよかった。
多分主将と副将の話し合いだから長そうだ。待ってようかな。
でも、明日聞いてくれるって言ってるのに、待ってたらヘン、かな・・。
「みーはーしっ!帰ろうぜー!」
そのとき、いきなり、ガバッと田島くんが肩を組んできた。
いつもの変わらない元気さに、ちょっとだけ心が安まる。
オレはやっぱり、栄口くんに話すことはあきらめて、田島くんと一緒に帰ることにした。
でも今夜・・・やっぱり怖いな。
あ、そうだ!田島くんの家には前泊まらせてもらったことがある。なんとかお願いできないかな。
「た、た、田島くんっ!」
「何ー?あっ、コンビニ寄ってく?」
「う、ううん・・あの、きょ、今日ね、今日、家泊めてもらえない、かな?」
「うおっ!別に良いぜ!でも珍しくね?急にどうしたの?」
「う、きょ、今日お父さんとお母さんいなくて、それで・・・・」
「寂しいの?あの親戚のヤツは?一人になっちゃうじゃん。」
「そ、それが・・・・。」
そのとき、突然後ろから肩を掴まれた。
「おにいちゃん。」