ルームシェアと微妙にリンクしてる番外編
家電製品の訪問販売している俺は、今日最後の訪問先へ向かった。
今日は何度も何度も耳の遠いおばあちゃんに同じ説明を繰り返したから、喉はもうガラガラで、かなり気疲れしていた。
でも、今から訪問に行く家のことを考えると顔のにやけが止まらない。
急な階段を上る足も自然と早くなっていった。
そしてやっと部屋の前。
いつものように384号室のチャイムを鳴らすと、可愛いあの子が今日も居留守を使う。
きっと、同室してる目つきの悪い垂れ目のアイツに開けるな、って言われてるんだろう。
だが、こんなところで引く俺じゃない。多少しつこいくらいがこの業界ではちょうどいい。
俺は、チャイムを1秒間に16連打する勢いで鳴らし始めた。
5分経過・・まだあの子は出てこない。
だが10分位ガンガン鳴らし続けていると、玄関に向かっておそるおそる歩いてくる音がする。
さらに5分ぐらい鳴らしてやると、ようやく玄関の扉が開かれた。小さく開かれた隙間から青ざめた顔が見える。
ああ、やっぱり今日も可愛い三橋くん。ださい小豆ジャージを着てるけど、それがまたいいね!
「あ、お忙しいところ申し訳ありません。今日は、わが社の新作商品の紹介をさせていただこうと思いまして・・」
「う、あ、あの・・・っ、間に合ってますので、お引取りくださいっ」
タレ目に教え込まれたんだろう言葉を一生懸命言いながらドアを閉めようとする。
しかし俺はすかさずドアの隙間に足を挟み、そのまま渾身の力でドアを開き、中に押し入る。
なんかもう、強盗みたいだな。
俺のような人間が逮捕されないのが不思議だ。
後ろ手に鍵を閉めると、三橋くんはおろおろした様子で俺を見上げてくる。
これからどうなるかいつものパターンで分かってるんだから、叫ぶなり警察呼ぶなりすればいいのに、バカな子だなあ。
おれは営業スマイルでニコッと笑い、黒いカバンを開いた。
中から出てきたのはバイブ、浣腸、ローター、アナルビーズ・・なんでもありだ。
もちろん俺の勤めている会社は普通の家電製品だから、こんな商品は扱っていない。
これは俺がネットで買った商品。つまりウソ販売。
だが三橋はバカな子らしく、それに関しては一切ツッコミを入れてこない。
ただ、俺をどうやって追い返そうか悩んで、おどおどと怯えているだけだ