水谷「三橋ー、挿入してごめんなー」

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405「片恋」
※鬱注意
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オレは病室に着くまで不安に押しつぶされそうでパニック寸前だった。
どうしてオレは断りきれなかったんだろう。ホントに嫌になる。

おばさんからの返事はOKだった。大人数でなければいいって。
シニア時代のチームメイトだって榛名さんに言わされた。
なら大丈夫ねって、その時間は主治医の先生と話をするからいないけれどって。
正直、一人であの状態の阿部くんのところに行くのはしんどい。
誰か1人でも一緒にいてくれたらって思う。
けれど一緒にいるのは榛名さんと秋丸さんだ。(秋丸さんの名前はバスの中で聞いた)
阿部くんはあんまり榛名さんの事、良く言っていなかったし。オレ怒られるだろうな。

・・・怒られることは無い か。

榛名さんと秋丸さんの雑談を受け流してたら阿部くんの病室のあるフロアに着いた。
オレは必死に2人の服の背中を掴んで呼び止める。「あ、あの・・・」
オレは阿部くんの今の状態を説明した。
どこまで伝わっているか判らなかったけれど、一様に黙ってしまった2人の態度を
返事として受け止めた。

病室の阿部くんは当たり前だが、そう変わりなかった。
一つ違う事は顔がこちらを向いている事だ。オレの動きを目で追っている。
「阿部くん、榛名さん来てくれた よ あと、バッテリー組んでる秋丸さん」
秋丸さんが榛名さんの後ろで小さく会釈した。
突然、榛名さんが、ついと歩み寄って
「タカヤ、お前シクッたの、初めてだろ?」
ベッドに阿部くんと肩を並べて座る。肩をパンと叩いて引き寄せる。
「お前にゃ、いい休息だろう。充分休んで頭冷やせ」
「榛名、やめろ」秋丸さんが制した。小声だったけど。榛名さんは意に介せず続ける。
「時間はかかるが、問題なく使えるからよ。
俺も今んとこ何ら問題ない。キチンとリハビリ受けて、筋肉つけて。」
榛名さんの声が段々大きくなる。
秋丸さんがオレの肘を突付いた。オレは我に返った。
「なあ、タカヤ、こっちをむけよ、 何でこっちを見ないんだよっ
ホントは全部分かってて 薄ら笑いしてんだろ、タカヤっ
マヂ記憶ねぇなんてありえねぇだろ、お前から野球取ったら何が残るんだよ、なぁ」
オレと秋丸さんは全力を尽くして、榛名さんを病室から引きずり出した。