>>832 「西広!」
荒々しい音がして教室のドアが開く。
同時に名前を呼ばれ、西広は反射的にそちらを振り返った。
「ちょっと来い」
こちらを睨みつける阿部の表情は硬い。
それを見て、西広は思ったよりも早かったな、と内心呟く。
「なに、大きな声だして」
阿部がイラ立っているのを承知で、わざとゆっくりとした動作で席を立ち、ドアへと歩いていく。
それを見て、阿部は廊下を顎で指した。
「こっち来い」
比較的人気のない廊下の端まで来た途端、阿部は西広の胸倉を掴んだ。
「てめぇ、三橋に何した」
「何って?」
「とぼけんじゃねぇよ、なんだよアレ」
「アレって?キスマーク?やだな、分からない?」
西広は阿部に向かって笑ってみせた。