阿部「三橋、保守派?過激派? 」

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714まーめいど
>>448

その日はそのまま海の底へと帰った。
嵐の影響でちょっとした騒ぎがあったらしく、三橋がしばらく姿を消していたことには誰も気づかなかったらしい。
咎められるようなことはなかったが、妙な罪悪感だけが胸にしこりとなって残る。
あの男の人はいなくなってしまっていたけれど、無事だろうか。

次の日、嵐が収まったからと全開の笑顔で田島が陸へまた行こうと誘いに来た。
「オ、オレ……」
「行かねーの?」
「い、行く!」
田島に話してみようかどうかほんの少し三橋は迷った。
けれど、あの日の出来事は胸に秘めたままにしておいた方がいいかもしれない。
彼は陸の人間で、三橋は海の人間。
きっともう二度と出会うこともないだろうから。
「最近ずっと賑やかだなー」
「そ、そーだね」
いつもの慣れた位置。
浅瀬から遠く陸の人々の姿を眺める。
相変わらず忙しなく動く人々に目を奪われ、その情景に憧れを抱かずにはいられない。
いつの間にか田島の姿は隣から消えていた。
夢中になって見ているうちに声をかけられていたのかもしれない。
今日はなぜか隣から田島の姿が消えても不安になることはなかった。
目が右へ左へ、あちこちへ行き来する。
無意識のうちに誰かの姿を探していた。
あんな大きな船に乗っていたのだからお金持ちの人だろうか。
そういえば着ていた服も濡れてはいたがどことなく質の良いもののように感じられた。