週末に試合があると、ディナーの席で三橋が言った。
その試合で三橋は先発投手を務めるという。
「是非、応援させてもらうよ」
顔の前で手を組み、そう告げる俺に、三橋が花のような笑顔を返す。
その眩さの前には、アッターミが誇る三ツ星レストランのフレンチも霞むというものだ。
試合当日。
俺はビリーと中村を伴い、球場を訪れた。
早く来過ぎたのだろうか、関係者を除けば、俺たち以外に観客らしき姿はない。
ぐるりと巡り歩き、観客席を探すが見当たらない。随分と簡素な施設だ。
やむを得ず球場の一隅に陣取り、観戦の準備をしていると、ものすごい勢いで三橋が駆け寄ってきた。
試合前の大事な時間を、俺との会話に費やすべきではないだろうに。
だが、俺は三橋の気持ちが嬉しかったので、諸手を挙げて三橋を迎えた。
「あの、今日は、練習試合なんですけど…」
俺たちはネットの裏に移動し、静かに観戦した。
中村とビリーがコンビニに走り、差し入れを両チームに届ける。
俺はパラソルの下でマホガニーの椅子に腰掛け、
ワイングラスを傾けながら、三橋の活躍を見守った。