阿部「ありがとうってなんだよ三橋、フェラ中に」

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90名無しさん@ピンキー
ユーレイ後日談続き

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阿部君にそっくりな彼は、なんとピッチャーだった。
話してみると、阿部君よりちょっと、おとなしい感じだけど。少しシュン君にも、似てるかな?
阿部君にそっくりな阿部君は、球ははやいのに、コントロールが全然だめなんだって。
ためしに投げてもらった。ウヒ。ほんとに、だめかも。
でも、もったいないなぁ。こんなに球、はやいのに。
オレは阿部君やみんなのおかげで、自分の遅い球も、長所だと思えるようになったけど。
でも今でも、ほんとはちょっと うらやましい。
それに、阿部君にそっくりな彼がつらそうな顔をしているのは、オレも つらい。
だから、阿部君がオレにしてくれたみたいに、こんどはオレが、この人に何かしてあげよう。
オレは阿部君に、たくさんのものをもらったけど、返す前に、こんなことになっちゃたから。
こんどは彼に、たくさんの、オレが伝えてあげられるもの全てを伝えるんだ。

おしえてみると、阿部君そっくりな阿部君は、思ってたよりずっと器用で、飲みこみが早かった。
それに努力家だし。オレもうれしくなって、どんどん教えていった。
はじめて阿部君の阿部君が自力でストライクをとったときは、ほんとーにうれしかった な。
そしてはじめての勝利。なぜか急に阿部君の中に入れなくなって、阿部君にオレの声が届かなくなったけど。
三星のみんなに勝ったときのこと、思い出しちゃった。修ちゃんとか、畠君とか、みんな元気にしてるかな。

阿部君の力がついてくるにつれ、オレのからだがはじき飛ばされるようになったけど。
まあ、いいや。やっぱり自分の力で勝ったほうが、うれしいもんね。
それに最近、なんだかすごく、ねむい。ゆーれいなのに、ねむいって へんなの。
ねむいのにねむれなくて、オレはだんだん、白昼夢みたいなのを見るように なった。
マウンドの向こうに、投げるオレと、構える阿部君が いる。
グラウンドに響く声援。オレが振り返ると、花井君や田島君や栄口君が…みんなが守ってくれていて、
オレはいつも安心して投げることができた。

ある日、阿部君の阿部君に呼び出されて、何かほしいものはないかと、聞かれた。
ほしいものって、いわれても。オレ、ゆーれいだし…
あ、そうだ。いいこと思いついた。ちょっとずうずうしいかな、と思ったけど、思いきって言ってみた。
阿部君に、キャッチャーやってもらうんだ。阿部君にそっくりな阿部君とキャッチボールができるなんて。
本当の阿部君に球を受けてもらってたときのことを思いだして、オレはなんだかわくわくしてきた。
阿部君はちょっとへんな顔をしたけど、でも引き受けてくれた。ありがとう、阿部君。こんなオレのわがままをきいてくれて。

レガースをつけた阿部君は…本当に、阿部君だった。
キャッチャーマスクをつけると、いつもの阿部君が目の前にいるとしか思えない。
「行くぞ!」阿部君の声に、はっと我にかえる。
キャッチャーマスクをかぶって構える阿部くん。あとはそこに、投げるだけ。
阿部君の要求したところに、オレはいつもどおり投げた。

球を投げると、一気に時が戻った。
オレの身体も、球を投げる感覚も、オレに指示を出す阿部くんの 声も。
オレの時間が、あの事故にあう前まで一気にさかのぼる。
なんで、オレは死んだんだろ。あのとき、あの道ではねられなかったなら、ずっとこうして投げられたのに。
このままずっと、投げ続けていたい。でも阿部君が、手を上げた。いやだ、もっと投げていたい。
すると阿部君が、とっととオレに駆け寄ってきて。
オレのこと、いい投手だよって。そう言ってくれた。
おぼえてる…?阿部君。それ、阿部君が、はじめてオレに言ってくれた言葉だよ。
阿部君だけが、そう言ってくれたんだ。阿部君のその言葉があったから、オレはまた野球を続けることができた。
その言葉は、それからもずっとオレの支えだったんだ。
ねえ、阿部君。阿部君はほんとうは、阿部君だよ ね。
オレはわんわん泣いて、なぐさめてくれる阿部君の優しさにまた泣いて、もう、泣くことしかできなかった。
オレが一番大切にしていた言葉。もういちど、阿部君が言ってくれた。
もう、それだけで いい。阿部君がオレを認めてくれたから、オレはもう、それだけでじゅうぶんだったんだ。

そこから先の記憶はなくて、気がついたら、オレは病院のベッドの上にいた。