>>889 十二日目。
この日もえっちなこと、なにもなかった。
おかしい、よね。
だって、オレの日記読み返してみたらなんだかんだで、毎日えっちなことしてる。
してない日もあるけどその日は他になにかあったりとか。
今日は普通に学校があって部活も無しで帰ってくるだけだったのに、阿部くんは全然オレに近付いてこない。
触ったりとかそういうのも全然ない。
一緒に勉強してて変にドキドキしちゃうの、オレだけなのかな。
お風呂もやっぱり別々で、寝る時も離れてた。
阿部くんとくっつけるの、もしかしてこのタイミングだけしかないんじゃないかなって気付いて、オレは慌てて昨日みたいに背中に手を伸ばした。
怒らない、よね。
勢いがつきすぎておでこをがつんと当ててしまった。
そしたら阿部くん、まだ起きてたのかな?それとも今ので?
小さく動いて、それからゆっくりと体を反転させてきた。
暗い部屋の中で振り向いた阿部くんの頬をそっとなぞると擽ったそうに身を捩られた。
嫌がられて、ない、よね。
「なに、どした」
「あ、あべ、く、ん……」
なんて言ったらいいのかわかんなくて、とりあえずぎゅって胸に顔押し付けて強く目を閉じた。
阿部くんはしょうがねえ、って小さく呟いて、それからオレの背中を撫でてくれた。
まだ痛い痕とか残ってるからそっとしてくれる。
オレ、なんか言わなきゃ。
言いたいことあるはずなのに。
閉じた目から冷たいものがじわじわ出てきてしまった。
阿部くんは、今、なにを考えているんだろう。
十三日目。
寝る時、阿部くんはちゃんと抱きしめてくれた。
でも、おかしい。
言葉にできない不安がオレの中にどんどん積もって大きくなってく。
……重い。
体も心も重いまんま学校行って、また阿部くん家。
するのはやっぱり勉強だけ。
おかしいの、阿部くんだけじゃない。
オレも、なんかおかしい。
わかんないことだらけで、数学の公式も全然頭に入ってこない。
勉強が全然はかどらないのに、阿部くん怒らなかった。
いつもならもう怒鳴ってるよ。
どうして?