921 :
二日目:
「ねえ?私、昨日の夜、何かした?」
「ん?どうしたんだ?」
「昨日の夜の記憶がないのよ・・・」
「ハハ、そういうことか」
「ねえ、教えて?迷惑かけなかった?」
「ちょっと飲み過ぎたみたいで、寝ちまったぞ?」
「そうなの!?」
「うん。ただ、メシを食って、そのまま寝たから、寝室まで運んだくらいだな・・・」
「えっ!?運んだって・・・、どうやって!?」
「お姫様抱っこでな!」
「ええっ!?本当に!?」
「軽いな。お前」
「わ、私ったら!ごめんなさい!」
「いいって!気にするな!それより、まずはどこに行くんだ?」
「あっ、そうね、ココは?」
「ねえ、織屋君?」
「どうしたんだ?」
観光を終え、旅館のある温泉街に戻り、土産物を見ていると、不意に七瀬が声を上げた。
「“秘宝館”って何?」
「秘宝館?」
「そう。ほら、そこに案内板が・・・」
七瀬の指差した先は路地になっており、その角に看板が立てられていた。
「七瀬は、どんなトコだと思う?」
「そうね・・・、言葉の意味からすると、美術品や骨董品でも展示しているのかしら?」
考えるような仕草をしつつ、七瀬が答える。
「ふーん・・・」
浪馬が少しニヤついた表情を浮かべ答えるが、秘宝館の事が頭から離れない七瀬は、浪馬の表情に
気付いていない。
「あなたは知っているの?」
「ん?まあな」
「なら、教えてちょうだい?」
「ん〜、教えるよりも見た方が早いんじゃないか?」
「・・・それもそうね」
こうして二人は、秘宝館の中に入って行った。
〜数分後〜
「あれは何よ!」
顔を怒りで真っ赤にした七瀬が後から出てきた浪馬に怒りをぶつけた。
「美術品の数々」
怒っている七瀬とは対照的に、ニヤニヤと笑いながら、浪馬が答える。
「美術品って、春画じゃないの!その他のも、変なものばかり!」
「いやあ、すばらしい文化財の数々だなあ・・・」
「お土産コーナーにあった、子宝飴!?あれなんか、・・・・・そのものじゃない!!」
「ハハハ、まあ、落ち着けよ。ほら、お茶」
「いらないわよ!大体、あんな所に女の子を連れて入るなんて、信じられない!!」
浪馬が持っていたお茶を差し出すが、それを払い除けるように七瀬が歩き出した。
「お、おい、待ってくれって!」
「知らないっ!!」
七瀬は浪馬の呼びかけに振り向きもせず、旅館への道を足早に歩き出す。
「七瀬〜」
段々と小さくなる七瀬の後姿に、浪馬が呼びかけるが、七瀬は聞こえていないかのように歩いて行ってしまった。
誤爆した!
ゴメンorz