生ぬるい風が夜の公園の木々をざわめかせ、ここ数日間続いている熱帯夜がちらつく街灯の光をも揺らしていた。
日中では人が往来し、休日ともなれば家族連れや子供達で賑わう場所も夜も遅い時間ともなれば
まるでその異空間にすっぽりと覆われたかのような雰囲気にとらわれてしまうようにも感じられる。
その状況を思えば、これからのことがまるで必然であるかのように私は考えるながらベンチに軽く腰掛ける。
久遠の空を見上げれば青白い月が妖しく光にを浴び、気づかない内にそれをじっと見入ってしまい
現実に引き戻されたのは手に持っている小さなダイアリーブックが風にはためいている音だった。
可愛らしい色で縁取られた半透明の日記には日付の横に○印と×印がいくつか記されている。
少し眠ってしまったのかもしれない。
月は傾きうっすらと蒼い空の下、僅かに表情固く今日の日付の横に×印を書き加えると
幻想的に薄靄ががった周囲の中へと姿を消していった。
(翌日学校へと向かう通学路の途中、一人で登校する佳夜乃の姿を見つけ駆け足で後ろから声をかける)
おはようございます。天気予報だと今日も暑くなりそうですね。
佳夜乃さんも夏期講習だったなんて私知りませんでした。受講している教科が違うから知らなかったんですね。
(屈託のない笑顔で会釈程度の礼をしてから佳夜乃と一緒に学校へと歩く)
あぁ、そう言えば私が作った紅茶飲んで頂けているでしょうか……?
佳夜乃さんのために一生懸命作ったので毎日好きな時に飲んでいただけていると私も嬉しいのですがどうでしょう。
紅茶は心を落ちつかせたり、元気を出したりお薬みたいな効果があると聞きます。
今年は特に猛暑続きですので、佳夜乃さんもお身体には気をつけてくださいね。
(一瞬下を向き自分の手で鼻と口を覆い意味深に微笑みを見せる)
もし……よろしければ今度一緒にお散歩をしませんか?
そうですね……日中だと暑いので日の落ちた夜とかだったら、日中に比べて気温は下がっていますし
日に焼けることもないですから……ええと……夏休みも残り僅かですし、今日でも私はいいのですが……
(少々頬を赤くして俯く角度と反比例するように声は徐々に小さくなり両手をもじもじと交差する)