798 :
エロい人:
新次郎×昴投下します。昴たん欲求不満。
分かっているんだろうか。
このもどかしい思いを。
こんな自分が恥ずかしくて、だけどどうすることもできない歯痒さを。
きっと分かってない。分かっていたら僕はこんな気持ちにならずに済んだ。
くそ、くそ、くそ!何もかもが腹立たしい!何もかもが憎たらしい!
「あ、おはようございます」
大河新次郎…お 前 の せ い だ !
「…おはよう」
「昴さん、今日の新聞見ましたか?今度セントラルパークの近くに…」
朝からヘラヘラした顔で爽やかに挨拶。
元気がいい、礼儀正しい、と周囲の評判も上々で…最初の頃の頼りない
オドオドしていたあの時とは比べ物にならないくらいに紐育に馴染んでいる。
仕事だってまぁキッチリやるし、お人好しだから人に頼まれごとをされると
断り切れずに結局引き受けるし、特に女からの頼まれごとには弱い。
昨夜だって杏里に言われてなぜか売店の帳簿整理を遅くまで手伝っていた。
……別にそれが悪いことだとは言わないけど。
「楽しみですよねー、僕、この前雑誌で見て一度食べてみたかったんですけど
遠いからどうしようかって迷ってたんですよ。でも家の近くにお店が出来るなら…」
「大河。悪いけど後にしてくれないか?」
「え…あ、はい」
「僕はもう舞台の稽古に行くから」
「それじゃあ、またお昼休みにでも
799 :
エロい人:2005/07/30(土) 23:25:36 ID:???
大河の話なんてあまり頭の中には入っていなかった。
わざと返事をせずにさっさと楽屋に入る。こんな朝早くから稽古を始めるはずもなく
誰もいない楽屋の片隅にある椅子に腰を下ろして息をつくと、机に置いてあった
次の舞台の台本をめくってみた。
本当は数日前から渡されていた為、内容はほとんど頭に入ってる。
けど今は余計なことを考えないように、分かっているはずのセリフを冒頭から声に出してみた。
「あらあら、随分と怖いかぐや姫だこと」
「ラチェット…」
気が付くと入り口の傍には見慣れた青いスーツに身を包んだラチェットの姿があった。
「そんなんじゃお客さんが勘違いしちゃうわよ。日本のお姫様は随分と荒っぽいって」
「…本番のつもりで演じてたわけじゃない」
「あらそう。そのわりに何だか熱が篭ってたんじゃない?特に五人の公達に無理難題を言いつけるところとか…」
「気のせいだ。特に用がないならもう僕は行くよ」
「まあ特に用はなかったんだけど。大河君が心配してたから」
「……大河が?」
その名に思わず足を止めてしまう自分が情けない。
振り返ってラチェットを見ると、なんだかニヤニヤした表情でこっちを見ている。
「朝会ったら何だかぼんやりしてたから、どこか具合でも悪いんじゃないかって。
まったくあの子ったら、あなたのことになると本当に大げさなんだから。
こんなに力んだ演技ができるくらいに元気が有り余ってるっていうのにね、昴は」
「…ッ…放っておいてくれ!」
なんだ、一体何なんだ!
顔が熱くなったのを悟られないように、早足で楽屋から出た。
まったく大河の奴。勘違いも甚だしい!大体何だ…心配しておきながら
自分で様子を見に来ないでラチェットを寄越すなんて…!バカかあいつは!!
800 :
エロい人:2005/07/30(土) 23:26:18 ID:???
結局昼休みになるまであいつは僕のところに来なかった。
来たら来たで、相変わらずしまりのない顔をして……本当に心配してるのか?
「昴さん、お昼まだですよね?」
「ああ…」
「あの、クリスマスの時に教えてもらったベーグル屋でお昼買ってきたんですけど…二人分」
クリスマス…そうだ、去年のクリスマスは大河と一緒だった。
正直、こんなことになるなんて思っていなかったけど…あの時は僕がベーグルを買ってきて
セントラルパークで一緒に食べたんだ。それから…僕の部屋に大河を招待して…
あの時は言わなかったけど、本当は活動写真なんてどうでもよかった。
ただ、大勢の人間のいる場所でなくて、本当にお互いしか目に入らない…二人きりの時間が欲しかった。
活動写真を見ていた時だって、僕は君のことしか見てなかったんだ。
…もちろんそんなこと彼は露ほども知らないだろうけど。
あの時…もしかしたら、なんて淡い期待をしてわざと大河の肩によりかかった。
寝たフリをして、大河の気持ちを確かめようとした。最初は僕を起こそうとしていた彼も
やがて諦めたのか僕に声をかけるのをやめた。…同時に僕の期待も見事に外れてしまったと、
そう思って落胆した矢先に…肩に回された腕。そしてその後は…まあ、見事に邪魔が入ってしまったけど。
「…さん、昴さん?」
「え…あ、ああ…」
「どうしたんですか?ぼんやりして…」
「ちょっと考え事を…って…!?」
額に触れる手が…あたたかい。
大河の手が、僕に…触れてる。
彼はそのままうーんと唸って首を傾げ、同じように自分の額にも手をやった。
「熱は…ないですね」
「ないよ、至って平熱だ」
「いや、具合悪いのかなって…」
「大丈夫。それより折角のベーグルが冷めてしまう。…セントラルパークにでも行こうか」
「あ、はい。いいですよ」
801 :
エロい人:2005/07/30(土) 23:26:50 ID:???
セントラルパーク…そこに行けば、二人きり。そうすれば大河は…また…
「あ、リスだ。リスがいますよ!見ました?」
「大河…座って食べろ。子供じゃないんだから」
「えへへ…だって僕、初めて見たんですよ。うわーっ、小さくて可愛いなぁ」
…ダメだ。ああなったらしばらく戻ってこない。
僕はわざと聞こえるように溜め息をついてやると、ぐるりと周囲を見渡した。
あまり人気はないが…カップルが目立って多い気がする。
各々手を繋いだり、腰に手を回しあって寄り添ったり…幸せそうに、微笑みながら。
平和になった紐育。街には活気が戻り、穏やかに過ぎてゆく時間。
季節はもう間もなく春になろうとしている。
気が付くと大河はまた僕の隣に座り、大人しくベーグルを食べ始めていた。
もう食べ終えてしまった僕は、包み紙を折りたたみ屑カゴへと捨てる為にベンチから立ち上がる。
そして戻って…また腰を下ろす時、わざと距離をつめて座った。
「ハァ…美味しかったぁ」
「………」
「ねぇ昴さん、この後…」
「…」
「あの…僕の顔に何かついてますか?」
交わる視線。やたらと密着している状態に気付いていないようだったので、また少し、距離を縮めた。
(…キスして欲しい)
じっと大河の顔を見つめると、困惑しているのか彼もまた無口になった。
802 :
エロい人:2005/07/30(土) 23:27:57 ID:???
…このスレは祝福されているのか呪われているのか。
とりあえずここまでです。ごめん、エロシーンなかなか進まないや。
篭ってきます。探さないで下さい。