別れてから、その存在に、あの場所の大きさに気がついた。
少しでも傍で見守っていたかった。
貴方がまだ苦しんでいたなんて知らなかった。
新しい恋で癒されたのだと信じていた。
好きだから、ずっと苦しかった。
言葉では表せないほど、何度も何度も憎んだ。
あまりの感情の揺れに、大海に出た小舟は沈んだ。
何度も、何度も…。
弱さだけが私を打ちのめし、凍るように笑うことを覚えた。
本音なんて、言えなかった。
大嫌いだった。誰よりも大嫌いだった。
でも、救われていた…。貴方の言葉に。
寄せてくれる心に。存在に。
愛憎が自分の胸を渦巻き、どうしようもなかった。
身を守るため、離れるしかなかった。
離れて、初めて後悔した。
本音を言ってあげればよかった。
それがどんなに醜い言葉でも、「大嫌い」という言葉でも
言ってあげればよかった。
彼女は裸で、心から裸で向き合ってくれていたのに。
本音を必要としていたのに。
信じられないのは自分だった。自分の弱さだった。
何もかも、弱さゆえに逃げた。
取り戻せないなんて知りもせず。
もう、彼女は恋人とは呼んでくれない。
去った後に書かれた「あの人は恋人ではなかった」の
一言に凍りついた。
「一番、愛してる」の一言は他者のものだ。
彼女の一番は私ではない。
それでも…私は彼女が一番なのだろうか?
わからない、わからない、わからない…。
いや、わかっている。でも、認めたくない。
それは…辛すぎる。
それでも、近くで見守りたかった。
でも、それは不可能だと知った。
私は一切彼女を傷つけたくないから。
もう、どんな苦しみも与えたくないから。
私がいること自体が彼女を傷つける。
ならば…消えよう。あの場所から、離れよう。
恋とは違うかもしれない。でも、大切に思っていたよ。
どうか、新しい恋を大切にして欲しい。
私のような感情を味あわせないでほしい。
私が願うのは、それだけ…。
恋人として、憎んだ。
人間として、嫌った。
家族のように、愛した。
いまも、愛しているよ。
幸せになって欲しい。
たぶん、気持ちは変わらない。
もう私が泣かせるのだけは、苦しめるのだけは嫌だ。
幸せな夜を重ね、私のことは忘れて欲しい。
月は太陽の光で輝く。
私は光を失った月を見上げるだけ…。