お疲れ様です
話数を見て、? となったがリメイクだったのか
何気にメイドさん居るしw
カレーすげぇ
と、このように淡々と進行していたスレが、突如として奇妙な方向へ船首を切り、
誰も望んでいない騒音と色彩を撒き散らしながら沈んでいく光景は珍しくない。
ブログ。2ちゃんねる。ともすれば、パソコン通信の時代からして珍しくない。
――新浜市。新浜市立第一中学校。2時間目の授業中。
私は部室のコタツに肩まで潜りながら携帯で2ちゃんねるを見ながらそう思う。
例えば、2ちゃんねるの某コテハンは初登場時から異才を発揮し、あっという間に
VIP板筆頭コテの座に君臨した。
彼の独特なセンスと大胆かつ繊細なコラージュ技術から生み出された素人離れした
作品群は、膨大なヒット数を記録するまとめサイトと数多くのフォロワーを誕生させた。
彼は多くのスレを縦断し、スレとスレを裁縫し、アンチや批評家すらも飲み込み、
その姿はもはや単発的なレスを追うだけでは把握できないほどの、大きなうねりの
ようなものであった。
そんな彼の突然の失速と消滅。ここから先は語るまでも無い類型的な衰退。
私は想像する。フォトショップを立ち上げた瞬間から始まる耐え難い『飽和感』。
時代と踊った彼は時代に消費され、以降、二度と時代の波長と合致しない。
彼に罪は無く、時代にも罪は無い。もちろん、私達にも。
眼を閉じ、想像する。彼の固有の波形が時代の波形と共鳴する風景、そして、
その共振が時代の波形を歪ませ、悲劇的にも彼の波形を打ち消すパラメータを
獲得するに至る光景。
――珍しくもない、ありがちな光景。
私達――イラスト部と絵画部の軋轢もまた類型的な関係に他ならない。
世界を面で描くか、線で描くか、大雑把に言ってその程度の画風の相違であっても、
人生を賭けて闘争し続けるに値するという、人間の愚かさの一つの例示に過ぎない。
今のところ、漫画・アニメの大衆化によって、私達イラスト部の優勢は疑うところが
ない。しかし、絵画部は絵画部で、部長の麻菜を筆頭に、中学生らしくない画力を
武器に、私達の領域に対して侵攻の手を緩めようとしない。
――七瀬。神に誓ってもいい。あんたは、遠くない未来、私の所有物になる。
麻菜は新入生レクレーション時に、私に向かってそう言い放った。
周囲は色めきあった。ほんの1ヶ月半前のこと。私達の対立が顕在化して、大人たちの
形式的な警戒態勢が引かれて間も無く、私が某コテハンの滅亡を目にしてまだ日の
浅い頃のこと。
――絵が好きなんでしょ?二人とも。仲良くしたらどうよ?
勿論。仲良くするってのは素晴らしいことで、その事に関して異論は無い。
麻菜の持っている『オタク嫌悪感』にも迎合できる感性は持ち合わせているし、
本当だったら仲良くできてもおかしくない。でも、不思議なことで、私達はそれほど
単純でデータベース的ではない。絵が好き。漫画が好き。絵画だって好き。
印象画。アート。寺田克也。シャガール。バンドデシネ。庵野秀明の演出論。
youtubeに作画MADで新着検索。磯光雄。石恵。フリクリ。かのこん。
麻菜が私に投げてきた話題のキーワードは、確かに私の絵的な琴線を滑らかに
振動させた。なんていうか、私のダメなところがよくわかっている。浅いところが特によくわかっている。
昔の私だったら、その時点で頬を赤くして、ねえ私と同人誌作らない?とか
言いかねない。そして、そのまま麻菜に押し倒されて犯されかねない。
――でも、現実はそんなに形式的じゃない。
タイピングの練習ですか?
――例え練習でも、鳴子ハナハルなら、そのようには描かない。
でも、犬や小梅けいとなら描くかも知れず、ヤスイリオスケやぼっしぃもまた
描くかも知れず、しかし、雨がっぱ少女群であれば絶対に描かない内容である。
副部長は私の絵を見てそのように評したが、その比喩対象が完全に不明なため、
申し訳なくも私には構文解析しかできない。
○○なら描かない。でも××なら描くかも知れず、しかし、△△は絶対に描かない。
この文章構造からして、副部長は○○と△△のことが好きなのだ。
××に敬意は払いつつも、どこかか彼の感性に合わないらしい。
そして、強いて言えば、△△に絶対の信頼を寄せている。もはや信者と言ってもいい。
雨がっぱ少女群か。googleする前に、その語感からイメージするのも面白い。
――雨がっぱ。天候は小雨が好ましい。それも初夏の雨。
あまりに類型的構図で恥ずかしいけれど、あじさいの葉っぱにカタツムリ。
青、赤、黄色、色とりどりの雨がっぱを着た少女達の群生。
雨がっぱの表面は複雑で硬質的な三角形の皺をアクセントに精緻な線で縁取られ、
艶やかに滴る水滴がやや白飛び気味に描写される。
――少女群。なんとなく、アニメ顔はイメージし難い。
角川書店秋田書店講談社集英社顔もまたイメージし難い。漫画的ではなさそうな
気がする。私の直感を愚直率直に言うならば、鉛筆書きの同人誌顔に近い。
それも空想実験が最も自分のイメージに近い。なんとなく、フォトッショップ的な
色彩が似合わないような絵。なんとなく、エロ漫画という形式を利用して純漫画を
描こうとしているイメージ。違うだろうか。
違ってると恥ずかしいから私はgoogleしない。
――家に帰るとメイドさんがポテチにマヨネーズを付けていた。
漫画家の個性とはまさしく数式のようなもので、ある初期条件を与えた時に
半自動的に展開されていく計算過程そのものが漫画になる。
どんな初期条件を与えても、必ず同じ結論に収束する数式もあれば、
あさっての方向へと拡散していく数式もあり、数式自体を更新していく数式もあれば、
他人の数式の挙動をエミュレートすることに特化した数式も存在する。
――メイドさんの姿はローアングルの構図によって描かれ、メイド服の
極端な曲線の効果も伴って、たわわに実った豊かな胸が強調される。
その乳房の膨らみを前景にして、こちらを羞恥心の眼差しでちらちら伺うその
表情が、『石恵』か『原田たけひこ』か『うろたん』か『きゆづきさとこ』か
『河下水希』か『青本もあ』でも『近藤るるる』でも『椿あす』でも
『FLIPFLOPs』『蒼樹うめ』もちろん『偽ボイン』でも『ゲレ』でも
『百円ライター』でも『のるは』でも『先生1号』でも自作絵でも構わない。
その選択と決定こそが私達の数式の特性になり、歪みになり、結果として漫画になる。
――……また、これをネタにいぢめるんですか?
この時点で既に2コマを消費している。携帯での閲覧を考慮したQVGA解像度漫画
においてはもはや物語展開の余地はない。
80年代の漫画であれば、ここで強引なオチをつけて幕を下ろす傾向がある。
90年代になると、80年代漫画の反省もあり、変にオチを付けずにふわふわと
着地するようになる。それでは、今現在進行中の00年代ではどうなるのか。
その答えは来月の鳴子ハナハル新刊を読んでから考えたい。
現代社会を4文字熟語で表すと『自由落下』だと私は思う。
まさに社会は9.8を重力加速度として、日々速度を増している。
もっと速く、効率よく、日々自己成長し、会社全体、業界全体で右肩上がり。
ついてこれない奴は辞めちまえばいい。辞めりゃいい。辞めちまえ。
そして、辿り着いた先は地面であり、私達は激しく音を立てて衝突し、粉砕する。
――自由落下。落下するからには重力が存在する。重力は相対的な質量のバランス
によって定義される。私達を引き寄せるその物体とは何か。
金。社会。関係性。いずれもイマジナリーな存在であるが、そもそも私達の落下が
イマジナリーなものであるからして、もっともらしい。
であれば、落下の行く先は衝突であることからして、そのような概念を欲望するのは
集団自殺のレミングス的に愚かしい。
と、いうような事を先生に言う。私の手は先生の性器を握り締めている。
自分の生徒に握られているというだけで射精寸前になっている性的器官。
――口に含んでくれたら……
と息も絶え絶えに先生は言う。目が獣の如く鋭く輝き、私の身体を視姦する。
――もう3万円出してもいい。いや、欲しいもの、何でも買ってやる。頼む。頼む。
先生は全然私の話を聞いてない。
ここは狂気を垣間見るスレだったのか
このストオリィを漫画にすればよからう
【後で漫画にすることを想定した狂気じみたプロット】
■第13話 コロニー落とし■
2008年5月23日。
――最早、全世界から発信される情報は私達の情報処理能力を遥かに超えている。
例えとしては、一日100キロバイト分しか文章を読めないのにも関わらず、
生産される文章は一日1ギガバイトを楽々超えているといった様相。
それは、良質の酒が目の前でダボダボと垂れ流されている光景に似ていて、
P2Pパケット監視ツールによって可視化されるミームの生存競争にも似ている。
上手に効率よく情報を選択、管理、利用、吸収することが情報社会を生き抜く
技術であるとは言い条、ゴミパケットを分別廃棄する手間とコストを考えれば、
その技術とやらの本質的な意味合いも既に怪しい。それ以前に、人生の半分以上を
MS明朝やMSゴシックを見眺める時間に費やすという想像は、死を想像するよりも
恐ろしい。それがヒラギノ書体であっても手描きフォントであっても本質的には
変わりなく、そういった点ではmicrosoftもAPPLEもskinの違いでしかないといえる。
――あなたは今、2ちゃんねるを閲覧している。専ブラか、普通のブラウザか、
携帯か、いずれにせよ、あなたからのリクエストを受けたサーバーによってデータが
HDDからコピー・送信され、あなたのクライアントがあなたに光学情報としての
2ちゃんねるを表現している。
このスレは今現在、文章書きの練習として、一人の人間の手によって、文章データが
日々貼り付け続けられている。最近に限った話ではないが、あまりにも淡々と
貼り続けられているために、ともすれば、どこかからの執拗なコピペ、もしくは
自動投稿スプリクトのようなものと勘違いされている感も無きにしもあらず、
しかし、ことさら自律性を強調するのもおこがましく、なによりも気恥ずかしい。
本編に入る前に、簡単に状況を整理しておきたい。
この2ちゃんねるという大帯域かつ荒々しいデータ構造群の中では、3行以上に渡る
テキストは最適化されていない冗長的過ぎるエラーデータとして扱われる運命に
あるのだが、そもそもの私達の世界からして全く最適化されていないという実情を
踏まえ、本来は3行以下のデータの方を恣意的偏向に満ちたエラーデータとして
はじくのが好ましい。とはいえ、あまりにも状況が入り組んでいる場合、言葉自体の
イメージ喚起力に強く依存し、3行と言わず3センテンスで表現したほうが効果的な
場合がある。
麻菜が、
私を、
殺したい。
――ガラス窓がガラス片群に遷移する。それらはあまりにも細かな青色の結晶。
最早それらは固体というより液体を思わせる。薄暗いイラスト部部室の様子は天井に
据付けられた定点カメラによって監視されている。そこには私が居て、副部長が居る。
監視カメラの解像度ではガラス片の一つ一つは捉えきれない。それらは大雑把な
色彩のノイズとしてjpg変換独特のエッジを獲得する。ガラス枠から身体を乗り出して
華奢な少女が闖入する。制服。手には鉈。ぱっぱと胸元に付いたガラスを払い、
少女は小さくはにかんで見せる。
――ごめん。七瀬。本当にごめん。
麻菜は言う。
――私、七瀬を殺したくてしょうがない。
あなたは既に飽きている。
正直に言えば、ずっと昔から飽きている。あなたの目は十分すぎるほど肥えており、
どんな漫画も3コマ目くらいでだいたい『わかって』しまう。講談社四季賞であれば、
一次選考における5cm四方程度の小さな切抜きでもって、あなたには『読めて』しまう。
文章については更に肥えている。
長文の気配が漂うと、あなたは一気に斜め読みモードに入る。
2ちゃんねるであれば、もはや単語の分布と文体だけを見るだけで中身がわかるため、
スクロールバーは常に等速度でスライドされていく。
絵もまた、あなたの脳を揺さぶらない。
小さなサムネイル画像群をさらりと見眺めるだけでだいたい程度がわかる。
中には確かな画力と丁寧な色彩設計によって原寸表示に至る絵も存在するが、
拡大して見たところで、なるほど、よく頑張ったね、と思うだけですぐに興味は
次へと移る。
そして、至極当然のことながら、このスレの突然の変調もまた、最早食傷状態。
ですよね…、と西尾維新に舞城王太郎、円城塔に奈須きのこ、佐藤友哉に清涼院流水を
ミキサーに掛けて牛乳を注ぎ込み、表面に浮かんできた乳白色のゼリー状のものを
なんかえっちですねとメイドさんが妙にそわそわと恥ずかしそうに口に含むから、
今日はやっぱりメイドさんは本物の精液見たことないんだね記念日。
――まあ、私も見たこと無いけど。
――精液。
メイドさんはそれだけで興奮する。
ギルティーギアという格闘ゲームキャラクタであるところのブリジットの精液。
その文章だけで、メイドさんは身体全体が発熱するかのような息苦しさを感じる。
両腕を拘束されたピンク色のブリジットが、青色赤色白色のブリジットに囲まれ、
精液を顔、身体、その、お、おちんちんに、掛けられている、という、妄想、と、
いうレベルになると、もはや思考自体が処理オチし、文章表現がおかしくなりかねない。
ここで、一つ考えてみたいことがある。
これほどまでにえっちでメイドさんを魅了する精液。これを世の中の男はみな
所有している。それはなんというか、非常に羨ましい。もし、自分がそれを
所有している状態になれば、世界が常に新鮮で光り輝いて、生きているだけで
気持ちいいという境地に永久に続く気がする。しかし、実際はそうではあるまい。
男からすれば、もし自分がメイドさんなら以下同文、しかし、実際のメイドさんは
そんな境地とは程遠い。
すなわち、実質的には精液など大したものではない。
それを求めるのは性的本能で、求めても手に入れられないから思いが倒錯し、
妙に過剰な重み付けを設定してしまっているメイドさんのショタコン脳である。
――そして、それと同種の暴走する重み付け設定によって、
目の前の麻菜は私を殺したいと強く欲望する。
先生、俺漫画が見たいです
漫画を描きたいのはやまやまだけど、その前に考えるべきことは山ほどある。
2ちゃんねる。絵描き・創作板。そこに存在する400を超えるスレッド群。
そのスレッドの一つ一つはレスという名のレンガを積み重ねることで標高を上げ、
1000を超えたところで天井にぶち当たり、24時間後には消えていく。
1000を迎える前に新しいスレッドが建設されるものもあれば、そのまま
データどころか記憶の欠片ですらも完全に消失してしまうものもある。
後者の場合、そのようなスレッドにはもともと何の価値もなく、あってもなくても
よいもの、毒にも薬にもならず、1000達成おめでとう、ではさようなら、と
思うまでもなくこっそりと消えていく、まさにこのスレのような形相を表す。
そんなスレを俺は何千も、いや何万と見てきた――と、目の前の男は私に言う。
毎秒何本というレベルでデビューするスレッドたち、そして、多くは伸び悩み、
消えていく。勿論、単純にレス数が伸びればいいというものでも当然ない。
漫画だって絵だってそうだ、と男は小さく咳をしながら言う。
そして、俺達は静かに消えていく側の人間だ。漫画も絵も、スレッドも、人生も。
――目の前の男、副部長の気持ちはよくわかるが、だからどうしたと私は思う。
窓外に林立する超高層ビル群。あれらが前者のスレッドであるならば、私達の
スレッドは昔ながらの古びた本屋に等しい。その本屋の中では時代が止まっていて、
のだめカンタービレやよつばと、少女マテリアルなどは置いていない。
しかし、と私は言う。鋭く、副部長を睨み付けながら言う。
いかなる条件下においても創作は可能である。
絵描き創作板の某偉大なるコテハンは、急速にカオス挙動実験場と化していく
スレッド上において、実に示唆深く、深遠なるレスを残している。
――お前は無力だ。
そのレスと共に貼られた絵は最早、絵ではなかった。その画像データのピクセル幅は
1800×1200であったが、容量としては20キロバイトに留まった。つまり、
白紙であった。画像形式がJPGであることから、5分後に絵が出てくるという
仕組みでもなさそうだった。そのレスについて、アンカーが付くこともなく、
毎秒50レスという猛スピードでスレッドが埋め立てられてしまった。
その埋め立ては該スレに留まらず、板全体において行われていた。現存するスレは
埋められ、顔文字だけの新スレが倍倍ゲームで増えていった。
かくして絵描き創作板は未曾有の終末を迎えたが、嵐が去って20分後には、
『ちょっと一枚描いてみるか50.5』スレが立つあたり、私達は雑草の如くしぶとい。
実際にはそのスレもまた10分後には埋め立てられてしまうのだが、それと同時に
管理側の嵐犯人特定が終了しており、それが彼の最後の呻き声であったことを後に知る。
――スコールの後に蟻達が巣の蓋を開けて再び歩き始めるように、私達は真っ平らに
変わり果てた世界に立ち、感慨深く見眺める。私達はいったい何をしていたんだろうか。
そう思う人は少なくない。過去は洗い流され、これからもまた同じことが起きるだろう
という予感から、キャンバスに伸びる手も鈍くなる。
ねえ、これから、どうする? また、同じことをするの?
答えは無い。
某偉大なるコテハンが提示した白紙のデータが、私達のディスプレイに儚く写る。
麻菜の身体は壊れそうなくらいに華奢で軽い。一番小さいサイズの制服であっても
少なくない余剰感が垣間見える。口数は少ないが頭は冴える。教育というシステムを
上位構造から俯瞰しているから、先生に反抗することもシステムに反抗することもなく、
無難な優等生としてこっそりとした暮らしに生きている。裏でこそこそ悪い事を
しているわけでもなく、趣味の絵画に全身入魂して、自己成長に邁進している。
麻菜は文化系な生徒として非常に出来がよろしい。文句のつけようがない。
ただ一点、イラスト部の部長――私と仲が悪い、もしくは仲が良すぎることを除いて、
麻菜という人間は記号的過ぎる。記号的過ぎるというのは無個性ということでも
あるのだが、個性的というものが素晴らしいという価値基準は今や危ない。
――麻菜が割ったガラスはそのままで、麻菜の発した異常なセリフもそのままで、
何事もなかったように、実際には私達の心理的なパラメータに大きな改変があった
わけだが、ともかく、私、麻菜、副部長はコタツに入り、与太話を続けている。
私達3人は今、ひとつの同人誌を前に思い悩んでいる。
その同人誌は某有名同人作家の描いたエロ二次創作漫画であり、表紙からして
エロエロなエロ同人である。この同人作家は非常に絵が上手く、塗りが上手く、
とにかくエロエロなのだが、悪い癖が一つあり、それは『無駄な物語性』と評される。
その要素が原因で、この作家に対する好き嫌いは綺麗に真っ二つに分かれている。
真っ二つに別れつつも、次の意見については完璧な同意が得られているのが面白い。
――この人は一般漫画に行ってもダメになる。エロに特化してもダメになる。
この人はこの状況で、今のような中途半端漫画を描き続けているのが一番良い。
私達の思い悩みのテーマは、それってどうなのよ、という余計なお節介である。
無垢のフィールド。
それは真っ暗闇に浮かぶ白い1m角平面の『発光体』と可視化される。
そこへ、どこから来たのか、小さな虫たちが表面に住み着き、思い思いに石を重ねていく。
正確に言えばそれは石ではなく、無形のデータである。データは青い石の姿に
可視化され、フィールドに表示される。虫たちの居場所には偏差が見られる。
その偏差は石の積み重ね量の数量にも反映される。面白いのは、ある程度加速が
つくと、その偏りもまた加速することである。かくして、石の高さにはある程度の
乱数性と奇妙な規則性の二つが両立し、その姿はまるで鍾乳洞の天井のようでもある。
このフィールドには一つのルールがあり、ある高さ水準に達した石塔は撤去される。
このことについて虫たちがどう感じているのか、私には興味深い。
虫たちが石を重ねるという行為に興じるからには、そこには快がある。
高くなった石塔、すなわち人気のある石塔に石を重ねることにも快があるらしい。
しかし、それが過ぎると無に帰す。石塔の撤去は突如にして徹底的であり、なんの
痕跡も残らない。だけれど、虫たちは再び石を重ね始める。懲りずに。飽きもせず。
このことについて、新浜大学の生物学者は次のような見解を述べている。
「ひとつは、虫たちにとって、石を載せるという快は副次的なものに過ぎないと言う
仮説です。石を載せることよりも、石を作り出すことに快があるのでないでしょうか。
それでは、そもそも石とはなんなのか。それに対する答えは単純で、石というのは、
例えば細菌が何かを発酵させたあとのその発酵物と同じものだと我々は考えています」
■
せっかくの有給休暇なのに全然休まらない。身体も心も休まらない。
友達は「茶絵はもっと休まなきゃだめだよー。彼氏とか作って遊びなー」とか
言うけれど、私は全然そんな気分じゃない。一秒たりとも余裕がない。
とかいって今現在何をしているかと言えば、新幹線で新浜に向かっている最中で、
ウェルカムテゥートウホクシンカンセンとか言う英語を聞きながらEeePCで
この文章を打っているわけで、めちゃくちゃ余裕があるじゃんと言われれば、
確かにある。あるけど無いんだよ。いや、あるのかも。でも、あるけど無いんだ。
なんでこんな新米の刑事にこんなにいっぱい仕事与えちゃうんだよと泣き言を
私は叫びたい。おかげで仕事の精度はガタ落ち、納期も守れず、プライベートは崩壊、
精神的にもやられ、私の評価はマイナスに転落、もう心身ともにボロボロで、おかげで
有給休暇を取っても捜査を続ける羽目になる。無給で。胃が痛い。いや、胃じゃなくて、
十二指腸あたりな気もする。
新浜は本来は横浜の近くの地名だった。けれど、日本の地形が変わって、新潟の潟が
浜になってしまい、その新しくできた浜、大きさにして九州の半分のその浜を新浜と
名づけたらしい。だからの地名だった。けれど、日本の地形が変わって、新潟の潟が
浜になってしまい、その新しくできた浜、大きさにして九州の半分のその浜を新浜と
名づけたらしい。だから新浜は2つダブっている。でも、それ以前にダブっている
地名なんて日本中に山ほどある。
事件は新浜県新浜市で発生した。事件の内容は複雑怪奇に入り組んでいて、
なかなか説明しにくい。私もまた全容を把握しているとは言いがたい。
まずは簡単な一つの側面から描写したい。こうやって書き記すことで私の頭の中を
整理したいという目論見もある。
新浜県はその名の通り、新しく出来た砂浜で構成されている。しかし、プレートの
隆起によって姿を現したその砂浜は、文字通りの砂浜ではなく、どちらかと
言えばしっかりとした裸の岩盤を主としている。その膨大な敷地を何に使うとかと
いう論議が十分にされたかどうか私の記憶にはない。ただ、いつのまにか決定され、
予算が通過して建設が始まったのは原子力発電所とロケット打ち上げ施設だった。
原発は周辺原発の改築移転として電力会社と日本政府が粛々と行った。
一方、ロケット打ち上げ施設、俗に言う新浜宇宙開発基地は中国と日本政府が
共同で行っている。なぜ中国が絡むのかという疑問について、納得のいく回答は
なされていないようである。しかし、なぜ中国が絡んじゃだめなのか、という
逆ギレに対しての回答もない以上、私達は己の中の過剰な陰謀論を恥じて口を閉ざす
より他ない。なんとなく、中国に近いからという理由があったという記憶がある。
赤道との位置関係がどうとか、東側が海じゃなくていいの?、とか
細かい疑問は多く存在するが、追求したところで目をつけられ、生け捕りにされて
しまうだけの予感がかなり強い。
さて、何はともあれ、ロケット打ち上げは一つのイベントに違いない。ゆえに、
打ち上げの際には多くの観光客が新浜にやってくる。新浜もそれを観光ポイントと
して捉えている感があり、すなわち商売っ気が発生する。
そして、事件はそのイベントの喧騒の中、やや芝居じみた形で起こった。
私達はその事件をその内容から、多少不謹慎ながら、『コロニー落とし事件』と
名づけた。
メイドさんはミシンを止める。
ミシンは足踏みミシンではない。彼女のミシンは電動であり、止めるというのは
すなわち電源ボタンを押すということである。メイドさんは興奮していた。
つーっ、と布を針先から離し、上糸と下糸をはさみで切る。一度、その完成品を
大きく広げ、そのあとにきゅーっと抱き締めてみる。できた。ブリジットの服。
簡単に寸法を確認する。大丈夫。合っている。メイドさんは生唾を飲み、立ち上がる。
――ご主人様。出来ました! 着てください!
――ちょッ……!
私はメイドさんの思惑に今更気付く。私に着ろというのか。
そして私にこの手を汚せというのか。ブリジットのコスプレ。熊のぬいぐるみはない。
――大丈夫です。私も着ます。
――何……?
何が大丈夫なのか、全くわからない。私の服は青カラー。メイドさんはピンクカラー。
格闘ゲームでは同キャラ対戦というのはどういう理屈付けをしているんだっけ。
着る。メイドさんも着る。変な気持ちになる。メイドさんは完全に目がイッている。
ちらりと背後を見ると布団が敷いてある。実は私は今まで昼寝中だったのだ。
と、いきなり首筋に吐息を感じ、次の瞬間には押し倒されている。
――ご主人様もなりきって下さいね。
なりきるも何も、お互い、性別からして合ってない。
はてさて。
改めて、自分のネタ帳を開き、進捗を確認し、ちょっと先の展開を見眺めて、
私は自分で作ったネタながら驚いた。勿論、ネガティブな方向に。
当然、過去の私の目論見を未来の私が律儀に守り続ける義理は無い。
既にここまでの物語の多くが空中分解・発散し、いまや核どころか外殻すら残って
いないという状況下において、この物語の存続、発展は最早自己満足のレベルにすら
至っていない。
そこへ畳み掛けるかのように、私のネタ帳の未来にはこのようながっかりする文字列が
配置されているのである。
――後半、スレッドはテキストによって埋め立てられる。ハイスピードで。
それが、『te(xt)-shine』の犯罪であり、同時に『te(xt)-shine』の意味でもある。
茶絵とアンゴラはその現場に立ち会い、te(xt)という数式を解く。
そこでは七瀬(nanase)は名無し(nanasi)であり、その本質的な差異はeとiで
あることが語られる。xtは空間と時間の乗算。そこにeを時間で乗算したものを
乗算する。あるいはteにxtが代入される。それをshineで引いたもの。
eはエネルギー。shineは光。空間は質量の別側面。iは虚数。
すなわち、虚構自体は拡散こそすれ、光速に拘束されて永久に世界に留まることを
表現する。
意味がわからない。全然わからない。
冷や汗が出た。
こんな物語は嫌だ。
絶対に阻止しなければならない。
今までのあなたの漫画を文章で読んでるようだ
だからといって絵がいらないってわけじゃないけどね
しばらく漫画が描けなくなりました。
スランプとか無気力感とか精神的な意味ではなく、
手の怪我とかパソコンの不調とか物理的な意味でもなく、
どちらかといえば、戦略的な意味で。
――へー、戦略的、ってか。
私達の頭上を山手線が通過していく。高架線の下、仕事帰りに一杯引っ掛けて
ほろ酔い気分のサラリーマン。おでんの屋台で冷酒を煽る。私は梅酒を飲む。
しょぼくれた屋台の古びたテレビに写るのはビートたけしのTVタックル。
あ、今日は月曜日なのか。――俺もさあ、若い頃は、夢があったよな。今はこんな
おっさんだけど。なあ、あんたもそうだろうよ、おやっさん! 酒追加! 追加!
ぐつぐつと煮えるおでんの湯気の向こうで屋台のおっさんが、ちっ、と舌打ちする。
――なんでも出来るんだ。わけー頃はさ。なんでもしたいと思うんだ。ともすりゃ、
世界を救えるとかすら思ってしまうわけさ。見る物全てが新鮮で、すること全てが
許されて、みんなにちやほやしてもらえてさ、天国、極楽、それが若さの素晴らしさで
あり、なんていうかさ、憐れなところ、なんじゃねーか、おやっさん! 酒!
――もうやめときな。ほら、変なおやじに付き合ってんじゃねーぞ。お姉ちゃん。
――変なおやじってか! いやほらでも、俺の娘もこんなくらいの歳になったよ。
高校出て、今、大学生やってる。あいつも俺のことを糞おやじとか言いやがる。
ああ、わかんねーわ。本当。かわいいけどさ。でも、あいつにとっちゃ、俺は
クソオヤジだ。本当にそう思ってんだろう。悲しいよな。会社で叩かれて、家でも
叩かれて、どんどんクソオヤジになっていく。夢、なんだったかな。俺の夢。
忘れちまった。お。お姉ちゃん。あんたの、夢って、なんなんだ?
私の夢。それは私の物語を『殺す』こと。
ふらふら〜。
酔っ払った。漫画的誇張でもなんでもなく、酔うと本当に世界にブラーが掛かる。
山手線から小田急線。ここから結構長い電車の旅。携帯開く。絵描き創作板に飛ぶ。
いやー、最近全然動きがないよねこの板。新着絵スレが沈黙し始めた頃から、
照明の消えた洞窟のようで息苦しい。すぐに携帯閉じる。今日はこのまま考えよう。
絵描き創作板。この板に存在する数多くのスレにおいて、ただ一つだけ、群を抜いて
素晴らしいスレが存在している。おいおい、そんなスレあったっけという常識的で
冷静でダウナー傾向の方にとっては、ちょっと少し拍子抜けする話になるかもしれない。
そのスレとは『新着絵スレ』である。さっき言ったじゃねーか、と思った方は
少しばかりお酒を飲んで欲しい。私も飲んでいるのだから、あなたも飲んで欲しい。
新着絵スレは実は覇王である。その日うpされた絵が全て集結するスレという
のは一体どのような意味で覇王であるのか。まず、視聴率がすごい。
ちょっと一枚スレ、巨乳スレ、女子高生スレ、下手絵スレ、各々のスレ進行を
追いながら絵を見ていくというのも確かに楽しい。しかし、多少エネルギーを
必要とするという難点がある。特に、自分が参加していないスレの流れを事細かに
追うのは苦痛が伴う。いいから。煽らなくて良いから。そんなに謙遜しなくていいから。
そんなことを思いながらスクロールバーを下げていくよりも、サムネイルで一気に
閲覧できる新着絵スレはなごむ。美術館において、作者の生い立ちとか時代背景とか
絵の周りにいっぱいあると疲れませんか。それよりも、新鮮な絵を先入観無しに
見たいと思うとき、常連云々言わない大衆食堂のような気軽さが、新着絵スレには
あるのである。
餃子の王将が覇王か否か。ちょっとおなかの空いてきたあなたや私にとって、
餃子の王将が覇王じゃありませんとは強く言えないところが一つの答えといえる。
新着絵スレには色んなスレの色んな絵が並ぶ。絵に上手い下手、良い悪いはない。
あるよ!と言いたいあなたはもう少しお酒を飲んで欲しい。私も飲むから。飲むから。
――ここで、例え話をしよう。
あなたは小学校の文化祭にやってきた。2の3の教室に入ると、小学生2年生の描いた
絵がずらりと並んでいる。その絵は下手である。いや、子供らしいというか。
元気がいっぱい。おお、ちゃんと観察してお花を描いている。よくもまあ、瓦を
飽きないで描いているなあ。と、思わず上から目線である。ここで、パースがとか、
構図がとか、デッサンがとか、言い出す人はお酒を飲み過ぎている可能性が高い。
私もまた見に来た。私も思わず上から目線である。ほう、なかなか。
ここで、『でも、線に勢いがある』『でも、世界をちゃんと見ている』とか、
嫌らしい大人の見本市みたいなことは言いたくない。言いたくないけど、
一通り嫌らしい大人の見本市を心の中で展開してから、私は、でも、想像する。
その線一本一本を見て想像する。どんな気持ちで描いたんだろう。
先生に描けと言われて描いた線。なんとなく勢いで描いた線。惰性で描いた線。
でも、なかには、確信を持って描いた線が存在する。確信とは何か。核心である。
――すう、と集中力が高まる瞬間。あ、この感覚はなんだろう。背筋に不思議な
電撃が走っていく。痺れる。世界の界面に達する。創作の核に触れ、禁断の花びらに
触れる。なんだ、この気持ち……。そして、少年は絵を描き続け……
そして僕達は出会う。
今七瀬さんの中ではありとあらゆる思想と思考が圧力鍋でグツグツと
煮込まれている状態じゃないかと邪推。
んで、その蒸気が今の長文。
【じゃあ、思想・思考ネタで】
「ここ人種のるつぼなのに問題なく安定してるのはどーしてだろ?
(宗教とか伝統の土地や遺産……)」
「私たち緩衝接着剤(オリュンポス)が効いてるからよ。
(ザボチンスキー反応してるだけかもしんないけど)」
『アップルシード』3巻より
――絵描き創作板において、理想的な立ち位置とはどのようなものでしょうか。
**その問題は絵描きにとって常に頭を悩ます問題です。絵描きにとって、
自作絵は普段の生活の副産物なのですが、それらを貼るという行為においては、
多少の『蛮勇さ』が必要になってきます。理念的には、みんな仲良く絵の練習、
スレの活性化、コミュニケーションツールとしてデータを貼り付けるという
建前なのですが、場が熟成されるにしたがって、個々のエゴや空気の誘導等の
思惑が衝突し、『崇高な理想から低劣な欲望まで、あらゆる意味が同一平面の
混沌に堕して殺し合う』というフェイズに突入します。この状況は不可避です。
ゆえに絵描きには、ある時期を境に素朴さ純朴さを捨て、『蛮勇さ』を獲得する
ことが求められます。
――絵は個人的なものなのに、いつの間にか他者との関わりが必須になる、と。
**ヘンリー・ダーガーでもない限り、私達は他者との関わりを避けることは
できません。立ち位置という言葉は決して個々の絵の在り方に限定するものではなく、
大きな流れの中での結合、対立、拡散、衰退、それらの挙動、外圧に対しての
絵描きとしてのありかたを問われているわけです。この場合、自分の絵もまた
文化的遺伝子としての生存競争の坩堝の中にいるという自覚が必要になります。
――インスピレーションが欲しいんですよ、とメイドさん。
何か、こう、ビビビッと来るような、世界観が180度変わるような……。
わかった。と私は言う。強烈なインスピレーションを与えてあげよう。
え。本当ですか? と、いつもの調子でのんびりとしゃべるメイドさんの首に
首輪を付ける。首輪には紐が付いている。ぐいっと引っ張る。4つんばいになれ。
――…え? ……あ、あのぅ。
そのまま家を出る。メイドの散歩。夜道を歩く。最初は面白がっていたメイドも
街の気配を感じ始めるころになると怖気付く。おずおずと立ち上がろうとするのを
『待て』と制止する。
――こ、こういうの、ちょっと、その。さすがに、ちょっと……
――だめ。メイドさん。私達は境界に達していない。
私達のすぐ横を自転車が走る。高校生。部活帰り。明らかに私達を凝視している。
はぅ、とメイドさんが俯いて息を飲む。そして、潤んだ目で私を見上げる。
――ご主人様は、本気なんですね……?
――本気だよ。
しず。しず。メイド服が引きづられて音を立てる。人が人を文字通り犬扱いする。
街灯に照らされて、メイドさんの複雑なフリルが白く複雑に輝く。既に私達は
多くの人に目撃されている。2分に1回、車が通る程度の県道を歩く。
――あ、あの。
――……何?
――私、……犯されるんでしょうか?
――どういうこと?
――こ、このままだと、新浜工業高校に着きますよね……。今、20時頃ですから、
そこにはまだ多くの高校生がいると思うんです……。部活が終わって、先生も帰って、
高校生たちの暴走しがちな性欲が渦巻く中、私がそこへ放り投げられたりしたら……
――ふうん。続けて。
――初めは何かの冗談だと皆思うはずです……。こんな首輪を付けられて、手を
拘束されて、目隠しをされた私、胸元には『好きなだけ犯してください』という
貼り紙。あまりにもありがちな物語で。何かの罠ではないかと思うはずです。
でも、彼らはまだ若くて、衝動的で、世界の複雑さを、性欲で押し倒してしまう
はずです。私は男子高校生達に囲まれます。これが何かの罠であろうと、とにかく、
女がいる。ヤリたい。ヤリまくりたい。多くの視線が私の身体を舐め回していく。
そして、ふいに、ひとりが私の胸に触る。その映像自体がトリガーになる。
そこから、男達が始まってしまうのです……
私は『待て』をする。メイドの前に立つ。犬のような、今にも泣き出しそうな目。
頭をゆっくりとなでなでしてやる。メイドさんは上目遣いでじっと私を見つめる。
――始まりたい?
――……え?
――選択して良いよ。さあ、どうする?
メイドさんの好きなこと、していいんだよ。
――……正直、家に帰って、ご主人様とブリジットごっこしたいです……
メイドさんは超空気読めない。
ワロタ
――漫画制作進捗報告会議 議事録――
08.05.29:13時30分〜14時00分 新浜書店306会議室
【出席者 黒兎編集部長、武田編集チーフ、七瀬、メイドさん】
七瀬:漫画制作スケジュールの遅延を詫びる。遅延理由は物語再編作業のため。詳細は添付資料1参照。
当初、6月3日にネーム提出の予定だったが、7月末にしてもらいたい。ペン入れ、仕上げ完成も8月末に延期したい。
黒兎:納期延期の申し入れは受け入れられない。しかも、なぜ、こんなにも突然言い出すのか。
新浜書店としては七瀬に対して深い不信感を抱いている。ただ漫画が描きたいだけなら、もう勝手にすればいいと思う。
武田:あと一週間でなんとかならないか。既に営業・販促が動いており、延期は新浜書店の信用にも関わる。
七瀬:私達は物語を掴み掛けている。ここで強引にリリースするのは御社にとっても損失になる。
先ほど説明したとおり、本延期は物語のスケールを拡張するための作業として必須である。
誠に申し訳ないが、私達の初めての作品となるので、慎重に制作していきたい。
黒兎:厳しいようだが、事実として、量産性の無い作家はいらない。
それに、今の段階で、七瀬の漫画にイノベーションは感じられない。ネタも絵も稚拙に過ぎる。
七瀬のような口だけ絵描きは山ほど見てきた。私の印象として、七瀬は最悪の部類に位置する。
つべこべ言わずに6月3日にネームを提出すること。それに遅れるようなら、もう私達は七瀬を切る。
武田:大筋の物語の骨格はあるようなので、なんとか物にしてほしい。出来る限りのサポートはしたい。
メイドさん:ありがとうございます。なんとか頑張ります。
七瀬:ちょwwwおまwwwwwwww
【反省会 in 居酒屋】
私は終始考えていた。漫画家は星の数ほどいる。ゆえに漫画も星の数ほどある。
なのに、なぜ、出版側は漫画家を使い捨てるような、過労させるような方向へ持って行きたがるのか。
才能の有無。技術の有無。それらについて、確かに市場競争・生存競争の坩堝が存在する以上、
私達も素直に指摘・苦言を受け入れ、改善したい。しかし、スケジュールについては、どうこう言われたくない。
クオリティー→コスト→納期。これがあるべき姿だ。しかし、納期→コスト→クオリティーがこの悲惨な現実の実情だ。
いや、この場合の『現実』は黒兎の頭の中にしかない仮想的な概念だ。黒兎が黒兎の上司から言われている内容が
そのまま私達に降りかかっているだけで、私達はそれに対して真摯に受け取る必要は無い。
――でも、なんとかしましょうよ。間に合わせましょうよ。私、睡眠時間削りますから。
メイドさんは真面目だ。しかし、黒兎の策略に見事に引っかかっている。このままだといつか絶対黒兎に中出しされる。
私は確かに未熟で口ばかりだ。でも、実際、私達は永久に未熟で口ばかりだ。未熟じゃなくて口ばかりじゃない人など
一人もいない。その証拠に、黒兎は漫画が描けない。それを言うなよお前と言われるかもしれないが、私はただその
一点において、黒兎を全く信用しない。黒兎だけじゃない。私は管理職を全く信用しない。管理職など偉くもなんとも無い。
管理職は人を管理するために偉そうに振舞うのが仕事の大半であり、それはそれで憐れな仕事だが、同情などしない。
――そこを我慢するのが社会人ですよ……。
そんな社会なんて要らない。そんな社会に居たくも無い。事実、私は社会にいない。社会を遠くから眺めている。
日々続く無為な戦い。くだらないことでケンカするスポーツ観戦者。消費を煽りながらも自分は質素そのものな広告屋。
不本意な漫画を描き続ける漫画家。作りたくない商品を作る技術屋。多忙のあまり、教育の本質を忘れた教職。
もはや自分のことしか考えてない政治家。それら全部がもはや過当競争の産物だ。くだらない。本質を見失っている。
――まあまあ。飲んで飲んで。なんか、食べ物頼みましょうか? 何がいいですか?
じゃ、この、いわしの梅肉はさみ揚げ。
中出しされる。>されねーよw
とりあえず中出しまでの経緯を説明してもらおうかwwwww
いわゆるベタな発想として、テトリスを性的行為に見立てる向きがあるが、
それはせいぜいが2次元、あるいは3次元程度の比較的親しみやすい次元の
テトリスに限るということが、テトリス愛好家の中で広く知られている。
ロシアの数学者が発明したテトリスというパズルゲームは、今もなお多くの
プレイヤーに遊ばれ、現時代ゲーム機のPS3、wii、XBOX360、NDS、PSP、携帯電話等にも移殖されている。
――それらの多くが2次元テトリスであることには2つの理由があり、1つ目は誰にも安易にルールが理解できること、
2つ目は平面ディスプレイが出力デバイスであるがために、3次元以上の情報量を上手に提示できないためであるとされている。
今現在、テトリス愛好家の中で最も遊ばれているテトリスは、第4首都新浜のゲームスタジオ『BulletBox』が制作した
『6次元テトリス』である。その名の通り、6次元空間におけるテトリスであり、プラットフォームはVista、linuxである。
(設定変更によって32次元にまで拡張可能であるが、今世代のPCではスペックの問題でゲーム開始すら不可能である)
6次元テトリスについての説明は困難を極める。3次元であれば、2次元プラス奥行きと考えてもらえばわかりやすい。
4次元テトリスは3次元プラス『パラレルワールド』と考えてもらいたい。パラレルワールドは色彩情報として表示され、
縦×横×奥行き×色彩によるテトリスである、と考えてもらえば、なんとなく、まあ、わかんないけど、考えるの面倒だから
そういうことでいいや、と思ってもらえるのではないかと私は考える。
では、5次元テトリスとなると、どうなるか。
ここまでくると、最早狂気に近いレベルのパラダイムシフトがプレイヤー側に要求される。
単純に書けば、3次元プラス『パラレルワールド』プラス『パラレルワールド』と書くことができる。
――あ、もしかして、時間が可逆なんじゃないの? 未来と過去が入り混じるんじゃないの?
と思われた方には申し訳ない。あくまでも、時間経過は線形的であることがテトリスの原則として規定されている。
4次元までのパラレルワールドは、あくまでも並列世界での3次元テトリスであり、『お絵描きソフトのレイヤーの
一つ一つが3次元テトリスであるテトリス』といったようなものを想像していただくとわかりやすい。
それと同じ言い方で言えば、5次元テトリスは『並列世界における多重に存在するあなたの
それと同じ言い方で言えば、5次元テトリスは『並列世界における多重に存在するあなたのお絵描きソフトのレイヤーの
一つ一つが3次元テトリスであるテトリス』と言ってしまってもいいと私は考える。
――もしかしたら、そう在り得たあなたの今。
今のあなたを基準点とした場合、あなたの未来は基準点を中心に球形状に広がっていく。
n秒後にはn秒後のあなたに。もし、あなたに速度ベクトルが付随していれば、そのベクトルを積分した位置に
あなたは位置する。あのとき、あのように言っていれば。あそこに居れば。気付いていれば。勇気を出せたら。
そして、あのようには言えないあなた。いないあなた。気付かないあなた。勇気を出せないあなたも存在する。
その無数のあなたにとっての並列世界におけるテトリスとは何か。
――これはもはや性的行為のアナロジーを遥かに超えている。
あなたはここにいる。あなたにはあなたの生活があり、何かと忙しい。未来への夢があり、同時に夢を喪失している。
自己啓発セミナーのような、『はい、あなたは全く新しいあなたに今すぐにでもなれるのです、あなたが望めば今すぐにでも』
という奇麗事にはうんざりで、でも、どこかそのような『化ける瞬間』を望んでいる。
――もしかしたら、そう在り得たあなたの今。
5次元テトリスは私達のそのような可能性を提示する。気付かされる。
それは創作の原点、初期衝動とも言える、あなたもよく知っている、あの瞬間の感触に良く似ている。
それは発見にも似ている。通常の音階、ドレミファソラシドの隙間、例えば、ドとレの間にも、無限とも言える音階が存在して
いること。それが平均調律・という名の下に、隠滅されていること。なぜ、集英社のあのレッドオ−シャン的惨劇をどの出版社も
真似るのかといった疑問の答えもそこにある。
まあ、とにかく、わかったつもりになったとする。多くのあなたと、それらのあなたのパラレルと、その世界での3Dテトリス。
それが5次元だと理解する。しかし、その更に上の、6次元になると状況はまた大きく変わる。
――「つまり、私達は分子で構成された存在ではなく、次元を分子としているようなそんな生き物なのです」
【Self-Reference ENGINEより引用】
あなたは、これ以上の説明を望むだろうか。私としても説明をしたくない。とにかく、6次元テトリスを遊んでもらうのが
一番手っ取り早い。6次元テトリスはvectorや窓の社などで体験版をダウンロードできるので、興味のある方は遊んでもらいたい。
なお、体験版はチュートリアル1~4のみプレイ可能であるが、多くの人はその段階で鬱状態に陥るので注意願いたい。
■
という文章をもって中出しの経緯説明とさせて頂きたい。
今思えば、彼女は昔から気が狂っていた。
しかし、狂気と正気の境が不明瞭である以上、僕はそれを口には出せない。
正気と狂気の境は白と黒のグラディーションの中にある。数値化できないくらい、微妙な明度の違い。
そして、多分、正気と狂気は環状構造になっており、正気過ぎるというのは狂気そのものなのだろう。
白と黒の縞模様。それも、白と黒はスムーズに接続され、事実、境目は定義しがたい。
視線を離すと、白黒の縞模様は電波の悪いテレビ画面の拡大図みたいに見え、やがて、色彩を帯び、
僕はそれが過度にJPG圧縮された彼女の写真であったことに気付く。
そのJPG画像が不意にMP4動画に変わり、そして、現実に変わる。
「なにボケーっとしてんの」
彼女は笑う。
新浜第一中学校から徒歩10分くらいの新浜南駅近くの田舎道。
田んぼと田んぼの真ん中に変電所が立てられていて、その入り口には大きな『手』のポスターが
貼ってある。その『手』には『大電流危険。立入禁止』と書かれている。その横に彼女が背もたれて、
胸元にカバンを抱き締めながら、僕を観察している。彼女の目はいつも鋭く、可愛らしくは無いが、妙に媚惑的だ
――その彼女のカバンの中に、血まみれの包丁が入っている。
それを知っているのは僕と彼女と彼女に刺された田中だけだ。
非現実と現実の境目。
それもまた不明瞭であり、実際、僕達はその不明瞭の中に生きている。
変電所の大きな『手』。立入禁止。その『手』の向こうもまた現実に他ならない。
遠くからサイレンが聞こえる。田中を乗せた救急車が動き始めたに違いなかった。
――コロニー落とし。
彼女は比喩として、よくその言葉を使う。正直、僕には意味がわからない。
想像してみたらいい、彼女は言う。天高く、巨大な建造物が青い火に包まれながら、地上に落ちてくる。
その落下速度はゆっくりに見える。あまりにも大きく、あまりにも遠いから。耳を聾せんほどの轟音が地に満ちる。
私達は目を見張る。もはや、その光景を見続けるしかない。もしも、量子力学を真摯に捉えるならば、私達もまた
量子力学的でなければならない。すなわち、祈りは届かず、起こりうることは起こりうる。私達はただのエネルギーの
偏移に過ぎず、エネルギーは情報の揺らぎに過ぎぬ。均一な情報の片隅にズレが生じたために、そこからズレの
連鎖が発生し、同時にズレを安定させようとする作用が発生する。ズレは自分を保とうとする。自分を拡張し、増殖させ、
進化させ、自分こそがこの世界を支配すると宣言する。層流が剥離して乱流へと雪崩込むように、ルールは狂い、複雑系が
その真赤な口を大きく開ける。渦巻き。トルネド構造。コロニー落下の瞬間。空間と共に時間軸が大きく歪み、莫大な
エネルギーが同心円状に、しかし、曲がった鉄砲玉のやうに飛び爆ぜる。一瞬遅れて音が私達に到着するが、私達は
既にそこにはいない。私達を構成する情報ビットは認識閾値を遥かに超えた振幅と振動数に飲み込まれ、破壊の痕跡すら残らない。
凾sが更に微分される。微分され、微分される。
失われた情報ビットが鎮魂歌と共に今、あなたの目の前に集合しつつある。
変電所。大きな『手』。血だらけの包丁。ソリッドなギターサウンド。細かくカッティングされたブレイクビート。
彼女――七瀬の目に怯えがないわけではない。僕は確信も無くそう思う。
彼女の遥か後ろ、変電所を構成する鋼鉄のその向こうに、今、ゆっくりとコロニーが落ちてくる。
彼女は振り返らず、僕――観測者を息を殺して観測する。世界の彩度が一気に上がる。世界全体の振動数が一気に上がったのだ。
決して、比喩ではない。
――世界を包み込むような大きな『手』。
それが僕達を殺しにやってくる。割れて割れまくったフェンダーギター。それはずっと昔から解っていた。
僕達がここにこうしているという事自体が、既にその結末を呼び寄せている。始まりが終わりを既定している。
世界が半音上がる。知ろうと思えばいつでも知ることが出来た。それが真実だと信じたくなかっただけに違いない。
――手死ね。
その言葉は自分自身をも刺し殺す両刃の剣だ。加速の付いた世界は一気に終わりへと驀進する。
僕達がもがけばもがくほど、世界の寿命は無惨に消費されていく。見も蓋もない言い方をすれば、スレッドが終わる。
たかがスレッド。その言葉は最も危険な、致命的な呪いのトリガーになる。なぜなら、スレッドと僕達の人生は
その時間の有限性で共通している。スレッドの死は僕達の人生の死と何一つ変わらない。
今更、ミクロとマクロは違うとか、世界はそれほどフラクタルではないと本気で考えられるほど、僕達は楽観的ではない。
僕達は同じ間違いを何度でも犯しうる。
七瀬の微分。七瀬の微分の微分。名無しの微分。名無しの微分の微分。
すなわち計算式と、計算式の傾きと、その傾きの傾き。
その差異は自然対数e、虚数i。だからどうした。予定通りの展開に僕達は驚きと呆れを隠せない。
この物語に対抗することはできないのか。
七瀬が光に包まれる。超天文学的エネルギーを背景にした神々しい少女に僕は見とれる。
――気だるいジャズピアノ。
半端に跳ねるクラリネット。
世界はさらに半音上がり、そして、静かに、元のコードへと回帰する。
on_the_other_hand.
メイドさんはキーボードを弾く。
この場合のキーボードとはパソコンの入力デバイスのことではなく、楽器のことである。
メイドさんの演奏には楽譜が無い。何かの既存の曲を演奏するわけでもない。
メイドさんの左手は一定周期でループするコード進行を分散和音でちゃらちゃら鳴らす。
右手はそのコード進行に沿ったり沿わなかったりして、気まぐれなメロディーをてろてろ鳴らす。
たまにどこかで聞いたことのあるメロディーになったり、大きく音を外したりする。
コード進行群も、色んなところへ展開したり戻ってきたりする。
時には物悲しく、時には映画のサントラみたいに猛々しくなる。
――音楽は不思議だ。私は本を読むBGMとして聞き流しながらも、そう思う。
漫画と音楽をどう接続するべきか。
時々、私はそう思う。
リズムはコマ割。コードはストーリー。ボーカルは前景。ギターは効果線。ベースは背景。
勿論、それでもいい。でも、もっと原始的なところではどうだろう。
それを考えるために、メイドさんは、何故、音楽を奏でるのかを考える。
メイドさんに聞く前に、勝手に想像する。
メイドさんは数学フェチだから、音程が波の周波数であることにむらむらしたと考えられる。
なぜ、メジャーコードは安定していて、マイナーコードは物悲しいのか。
聞くだけで心締め付けられるような切ないマイナーコード。それは数学的に量産可能である。
音楽は人の心を操作するような化学物質みたいだ。その化学物質は数学的に記述可能である。
不思議。不思議。音程だけじゃない。音色もまた不思議だ。音程が周波数なら、音色は波形で定義される。
メイドさんのキーボードはFM音源コンポーザーも内蔵している。
FM波形をこねこねすると、基本的にはノイジーになっていくが、時折、はっとするような波形になるときがある。
それを記録しておく。またこねこねする。また見つける。記録する。後でそれらのパラメーターを見ると、
ただ単純に最初の波形の倍音だったりする。でも、なぜかしら、心を乱される音ではある。
FM音源に限界は無い、というのは強がりであり、たまにギターを鳴らすと、ああ、生音には勝てないと思う。
ギター。特に好きなのは、エフェクタも何も通さずに、アンプにぐさっと直刺しした時のクリアなエレアコギター。
居てもたってもいられず、私は私の部屋へと駆け出す。押入れを開け、その奥の奥にあるギターを取り出す。
アンプ。マルチエフェクタ。シールド。張りっぱなしだった弦もまだ健在だ。チューニングしてからメイドさんのところへ戻る。
メイドさんのキーボードのアダプタの下にアンプのアダプタをぐさりと刺す。メイドさんは目を丸くして私を見る。
メイドさんのコード進行のベース音を探る。それがわかればもうシンクロは9割方達成されている。
しばらくはリズムキープ。さすが、メイドさんは飲み込みが早い。左手のアルペジオが高音域へ遊びに行く。
私達は何かを弾こうというつもりはない。たまに馴染みのコード展開に戻るだけ。また通低音が離れていき、
メロディーが遊び始める。これがジャズなのかもと言えば、その筋の人には怒られるに違いない。
しかしながら、他になんとも言ってみようが無い。よく考えるまでも無く、私達の漫画もそのような形態だ。
――この日常感覚。
私は、ふと思う。私は物語に囚われすぎていた。この日常感覚が一番大事だということを忘れていた。
もはや、新浜書店の締め切りなど守るつもりも無ければ、焦って漫画を描こうというつもりもない。
私はこの日常で、この感覚を記述できればいい。そして、『手死ね』の本題にちょっとずつ近づいていけばいい。
私はこの何も変わらない毎日の中で、少しずつ物事を整理して、物事の本質について考えていけばいい。
そして、命尽きたときには、静かに目を瞑ればいい。
ご主人様の友達が私のところへやってきました。嫌な予感がします。
――別に変なコトをしに来たわけじゃない。ちょっと頭を借りたいのだ。
私の返事を聞く前に、彼女はA2くらいの大きな紙を床に広げる。
一目見てわかる。それはフローチャートだ。それもとびきり大規模なプログラムの。
それはあまりにも複雑で絡み合っているがゆえに美しい。まるで世界の全てが記述してある魔法陣みたいだ。
――メイドさんは薄々気付いていると思うけど、私の本職はゲーム屋さんだ。
今はゲーム会社を辞めたけど、やっぱり私はゲームを作りたい。
でも、実は私はゲームの部品屋さんに過ぎなかった。ゲーム全体を作るのは今回が初めてなんだ。
だから、私はメイドさんとゲームを作っていきたい。
そんなこといきなり言われても、私はなんて言ってみようも無い。
――ねえ、メイドさん。例えば、シューティングゲームを想定した場合、
メイドさんの考える、誘導ミサイルの最も美しいアルゴリズムってどんなのかな?
……誘導ミサイルですか……。
単純に考えると、プレイヤー自機の座標を(px,py)とし、ミサイルの座標を(mx,my)とした場合、
if(px-mx>0){mx++;}else if{(px-mx<0){mx--;}
if(py-my>0){my++;}else if{(py-my<0){my--;}
ですよね?
でもこれだとあまりにも非道すぎる気がします。
自機とミサイルがnドット離れてるときには、nループ目に必ず座標が一致してしまいます。
なので、ミサイルの速度(mxv,myv)と、ミサイルの制御角度(mr)を設定するべきかなと思います。
情報メタボリックという病気が存在する。
テレビ、インターネット、本、新聞、ちらし、看板広告、店舗での洗脳ソング、魚市場の熱狂、
遠くの人の笑い声・囁き声、自分の中の自分ではない声、等々、日々の情報入力量は非常に多い。
これを全部消化するのは時間的に不可能である。また、完全に無視するのも難しく、勝手に脳みその
『未処理情報ストック箱』にどんどん山積みとなっていく。その山はやがて崩れる。
すると、脳みそ内の『めちゃくちゃ』をなんとか整理しよう処理しようと躍起になり、busy状態になる。
すなわち、脳みその仕事率が常に100%になり、脳みそはフリーズする。
これではいかんとタスクを強制終了し、なんとか89%まで仕事率を減らすものの、またすぐに新しい情報が
割り込んでくる。再フリーズ。仕事は手に付かず、日常生活もままならぬ。目はうつろ。無気力。取れない疲れ。
こうなると、あなたの管理者権限は外部に奪われやすい。他人の情報を鵜呑みにし、財布の口をすぐに開いてしまう。
他人の言葉で簡単に自己評価を上げてしまい、また、簡単に自己評価が地獄の底へと到達する。
大事な判断ですら、あなたはあなた自身で出来なくなる。他人の言葉に操られやすくなり、あなたはまさに傀儡と化す。
そうならないためにも、情報メタボリックを回避しましょう。
しかしながら、この現代社会は情報メタボリックになりやすい。
逃げ場など無く何処も彼処も情報に溢れており、それどころか情報を浴びることがある意味ステータスとなっており、
情報を過剰に摂取し整理し社会の流れを読み、顧客のニーズを読むことがビジネスマンの必須条件だと教え込まれている。
それをそのまま信じてしまうこと自体、あなたの精神がハックされてしまっている証拠である。
情報メタボリックを解消するために、肉体メタボリックを解消するのと同じ方法論を用いる。
すなわち、入力を抑え、出力を多くする。その際、入力はゼロを目指すくらいでちょうどいい。
どうせ、放っておいても少なからず情報は入ってくる。それらをまず完全に消化していく。
カロリーと同じで、最初は渇望感に襲われるかもしれない。ニュースサイトだけでも……と思うかもしれない。
しかし、心を鬼にして、禁断症状と戦うことが重要である。
――雨の音。
静かな6月の夜の音。情報はそれ以上必要ない。それ以上は処理しきれない。
テレビは無い。パソコンも無い。新聞も取ってない。本は週に一回図書館で5冊借りてくる。
日記は携帯電話に書く。今使っている携帯電話は日記帳機能が付いているので、ちょうどいい。
この文章もまた、携帯電話で書かれ、携帯電話によって貼り付けられている。本当に携帯電話は便利だ。
最近ひとつ、気が付いた。
物価が上がり、給料は上がらない。この場合、給料の価値が減ったと考えられる。
ラーメンが500円から1000円に上がり、給料が5000円で一定だった場合、給料の価値は2分の1になっている。
しかし、ラーメン以外の物価は変わって無いとしたら、ラーメンを食べなければ給料の価値は変わらないことになる。
お前は何を当たり前の事を言っているんだと思われるかもしれない。
だけど、そう考えると、物価上昇幅の低いものばかり買えば、相対的に給料が上がったことにならないだろうか。
いや、もっと極端に、こう考えられないか。
支出がX倍で給料固定のとき、給料価値の増減率は1÷X。このXがゼロであれば、給料価値は無限大になる。
私は自給自足の生活をしている。支出は携帯代と電気代だけ。物価上昇の影響を全く受けていない。
この生活をもっと切り詰める。携帯代と電気代もゼロにする。そうすると、支出はゼロになり、私のお金の価値は
一気に無限大へと跳ね上がる。もちろん、無限大というのは言葉の綾で、使わないお金の価値はゼロに等しい。
無限大=ゼロ。そう考えてしまうと、オセロのように、無限大からゼロまで、全部の領域が無限大かゼロになる。
実質、無限大よりはゼロが本当らしい。ゆえに、お金の価値などゼロだ。1億円も5万円も300円もゼロに等しい。
特にオチ無し。
こなたからかなたへ
達人王のテンポの良さは異常。
豆腐くいてえなミョウガとカツオ節ちらして
豆腐っていいよね。日本に生まれてよかったと思う理由の一つです。
http://blog-imgs-24.fc2.com/n/a/n/nanashisa/20080613233522.jpg 【柿板OFF会幹事からのお知らせ】
日時:6月14日(土)16時〜
場所:新浜県新浜駅前『魚民民』
決定済みのイベント:
●偽ボイン先生のおっぱい講座。●からし色先生の漫画描き方講座。●百円ライター先生のネタ絵量産講座。
●模写先生の『本当に模写なのかそれは』質疑応答。●先生一号先生の同人誌入稿テクニック講座。
●ゲレ先生のショタ絵講座。●苦言男先生・810先生・チャンク先生の絵師及びスレ住民煽り方講座。
●かすてる先生の東方話(霊夢編)●オトギリ先生も東方話(魔理沙編)●ちんぽ奉公先生の最近の芸能会講座。
●注ピザ先生のピザ絵講座及びローアングラー書き下ろし●縞パン先生の縞パン講座及びアニメ塗り講座。
●鳥注意先生のバーテンダー講座及びアンニュイ絵講座。●スルー絵師先生達からの電報●のるは先生の最近のロリエロゲ動向
●5分で描く先生の5分で描く講座●真夜中先生の真夜中に描く講座●rori先生のひぐらしの鳴く頃に講座。
●今は名無しのネタ絵師先生のSAI講座●メテオス先生のメテオス攻略講座偽装●量産主婦先生の書き下ろしエロ漫画。
●オータム先生の近況報告。●歴史先生のブッシュを萌え娘にしてみた講座●お姉ちゃんは魔法使い先生の新作発表
●今はまだ明かせない、あの先生達の超必見講座(シークレット約26人)
会費:2000円(飲み放題)
※参加は申し込み不要です。現地集合現地解散になります。現地には駐車場の余裕ありませんので、車の使用はご遠慮ください。
アンタこの板に詳しすぎるw
て言うか明日かよ皆暇すぎだろw
ワラタwww
手スツ
MSG4?
七瀬さん、パチ物掴まされてますよ
しのふーはまだ編集に土下座してるのかな
あれから10年が経過した。
その間に世界経済は一気に減速し、そのまま地面へと着陸した。
1円玉は1gのアルミに変貌し、1万円札は2gの色紙に変貌した。
ワイヤードは蜃気楼のように消失した。人類が夢から覚めた瞬間だった。
乾いたヘチマの断面図のような灰色のネットワーク構造。それが地球の
表面を過去の遺跡として覆っているだけの風景。それが2018年ですと断言して
しまっても異論反論は聞こえてきそうに無い。人々は疲弊し尽くしており、
ステレロタイプな中二病患者に苛立つ余裕も無い。
ワイヤードはCDに駆逐された後の塩化ビニールレコードのような懐古を喚起しない。
ワイヤードはマイナーなデータ圧縮形式のように、人々の記憶からこっそりと姿を
消していく。人々が固有のCPUと入力デバイスと出力デバイスをPCと呼んで
いたあの悠長でバブルな時代。液晶パネルの荒々しいドットを見つめ、必要の無い
データを飽きもせず取り込んでいた、ある意味、強迫性精神疾患を求められていた
あの馬鹿馬鹿しい時代。
私はA5のノートと鉛筆だけでその10年を過ごした。
衣食住が足りていれば、他には本来何も必要ない。しかし、それだけだと夢がない。
私はその小ぶりなノートの中で、一つの物語を書き続けている。
その物語は私の現実とは鏡像関係にあり、一対一で対応している。
A5ノートは常に1冊であり、最後のページに辿り着いた時には破棄され、
新しいA5ノートを用意する。その時に、物語は振り出しに戻る。私は何度でも
同じ物語を書き続ける。物語を繰り返し、上書きし、時には舵を切り、失敗し、
しかし、それらパラレル世界を含んだ物語がまた1から語り始められる。
『図書館に最終最後に置かれるべき書物。その一冊の存在によって、
全ての書物が色褪せ、意味を消してしまうような書物』
なによりも、私達の人生や、スレッドがそのような構造体であるからには、
その中で存在する構造体もまた同等の性質を持っているのは至極自然に違いない。
2ちゃんねる。学問文系カテゴリ。詩学板。自作俳句スレ。
もともと人口過疎化が顕著であることを考慮しても払拭することの出来ぬ寂寞感。
自作俳句スレは4年間たったの一度も閲覧されることがなかった『究極の過疎スレ』
として、2ちゃんねる運営スタッフの中で一時期話題になったことがある。
スレッド立ち上げた本人すら立ったスレを一度も顧みていないという徹底ぶりが、
現在公開されているアクセスログから確認することができる。
詩学板にdat落ちは無い。また、文字数制限も改行制限も連投制限も存在しない。
詩学板を名乗るという気負いからか、文章に対する規制は徹底的に取り除かれている。
スレ数が500を超えたときにのみ、スレッド順位に基づく圧縮が行われるが、
設立以来4年経った今でもスレ数は187に留まっており、実に平穏な日々が
流れている。詩学板の一日の書き込み総数は平均で5。住民数は平均で3。
単位に変なトリックがあるわけでもなく、事実として、過疎以外の何者でもない。
ゆえに自作俳句スレが特別おかしいわけではないのだが、それにしてもアクセス数
累計0ってのはどうなのよ、と運営スタッフは首を傾げたに違いない。
突如、私はそこに住み着くことを計画する。
俳句。面白そうではある。BA−SHO MATUO。季語とか韻とか、形式的な
ことはさておいて、まるで小学校低学年のようなところから始めるのも興味深い。
『三角関数が 遅いものだから テーブル化する』
『グヌーテラ 隣のノードは 何を思う人か』
『囲碁をリアルタイムにしたら CAVEの弾幕STGに なるのではないか』
私は私自身が『ド』と『ミ』と『ソ』しか無い楽器のようだと感じる。
その自覚は悲しく、また、言葉にならない寂しさをも伴う。
どうしたものか。
テトリスを してたら急に 眠くなる
test
先生!この続きは近日中に見せて頂けるんでしょうね!
全体は部分の総和ではない
言ってみたかっただけ
保守死ね
何故に音沙汰無くなったのか
七瀬は住処を変えた、ただそれだけのこと・・・
久しぶり
何か妙な魅力がある漫画描くね。
好きだわ。
ここに書き込んでる奴もID追跡されてる可能性があるわけだ。ドキドキ
黒兎と廃村へロケハンに行った。黒兎は安物のデジカメだけしか持ってこなかった。
黒兎の車の中で、黒兎は自身の個人的な世界観を私に開示した。
特別に独創的なものではない。ありがちな、楽観的な、世界の終わりの物語である。
人間は何らかの原因で、一人残らずこの世から姿を消す。
その際に、世界に少なからず傷跡を残すが、草木はその傷跡にも群生し、ヤスデが
歩き這い回る。世界は静かになるだろう。コカコーラの缶がひび割れたアスファルト
を転がることもあるだろう。でも、その情景を描写する人間はいない。人間という
認識が無い。それでも、世界には何の問題も無い。手塚治虫はそこから、ナメクジに
人間と同じ進化をさせ、諸行無常な物語を作った。でも、それはちょっと説教くさ過ぎ
るような気がするよね。黒兎はゴスロリなスカートを巻き込まないようにしゃがみこみ、
傾いた家を撮影しながら言った。人間は、非常におっちょこちょいでお茶目な生物だ。
人間は他人を良く信じる。良くも悪くも。だから、レミングスの気持ちがよくわかる
んじゃないかな。みんなで、みんなを励ましあって、鼓舞し合って、そして湖の中へと
死の行進を続けるレミングスたちを。その行動をヒステリックと評した人間たちもまた
ヒステリックな、ダイナミックな死への行進を止められない。
自分たちで作ったルールで自分たちを絞め殺す。
全自動自殺装置。それが、私達の社会なんだよ。
でも、それを批判したり、改革しようとしたり、したいとは思えない。
遅かれ早かれ、その装置は最後のシーケンスまで静かに演奏するだろう。
その後の、装置使用後の、本当に静かな世界。
それを、描いてみたい。私には描けないから、描いて欲しい。
黒兎は言う。
黒兎の背後には気持悪いくらい、蒼蒼とした突き抜けた空が拡がっている。
そこには、雲一つ無く、人間の『手』もまた、一つも無かった。
「じゃあまだ次の戦争は始まってないんだね?」
と羊男は言った。
紅魔館メイド危機対策法案の採決日。
メイド下院議場。パチュリー登場。(与えられた時間は3分)
――こんばんわ。十六夜咲夜議長。私は今日、とても大事な話をしに来ました。
今、私達の世界は非常に大変なことになっています。それは簡単に言えば、メイドたち
が毎日、次々と命を絶っているということです。
その憐れなメイドたちの死因のほとんどが、過労死か、鬱による自殺のどちらかです。
メイドたちの多くはとても真面目で、一生懸命に働き、人のため、社会のために奉仕
しようとしています。メイドたちは決してお金のために働いているのではありません。
もし、彼女らが、お金を多く手に入れたいと願っているなら、メイド服ではなく、
魔法のローブを身に纏っているはずだからです。
――議長。私達の世界に、いつの間に、東の大結界の向こう側の『呪い』が侵入して
います。成果主義。市場主義。効率主義。そして、成長至上主義です。わたしたちは、
いつの間にか『日々、ちょっとは成長すること』という呪いを掛けられています。
この呪いは、直接的なスペルによって起動したものではありません。
レミリアお嬢様が命じたものでもありません。それは、どこからか、私達の心の中に
着床し、深く深く触手を食い込ませていった、大結界の向こう側の『呪い』なのです。
そして、その『呪い』は大結界の向こう側でも、『紙幣システムの崩壊』『人類の消滅』
という悲劇を巻き起こした、とてもささやかで、しかし、致死性の高い、『呪い』なの
です。
――日々、疲弊し、人数を減らしていくメイドたちを、分裂(パーテイション)させ、
補おうとする、その法案に私は反対します。なぜなら、その対策は、問題の根源を解決
しないからです。短期的な効果はあるかもしれません。しかし、それは、私達の
破滅の先送りにしかならないのです。そしてまた、そのために投入する私達の魔力が、
もはや私達の実際に持っている魔力では賄いきれないことも大きな問題です。
議長。その不足した魔力を『あの世界』から借りてくることに、私は絶対に反対します。
青い光が視界いっぱいに広がったあと、その中心から出てきた黒い影が青を食い潰し
ていく。あまりに儚い赤い渦が、端から飛び出して、そのまま同じ端へと消えていく。
瞼の裏側の色彩の偏移に私は心を奪われる。静かな呼吸を繰り返す。窓外の遠くから
定期的な重低音が響いている。始まったのだわ、と私は思う。
――子供の頃、私はいつも同じ夢を見ていた。それは世界が割れる音から始まっていた。
私達姉妹は泣きながら、しかし、どこかわくわくしながら、押入れの布団の山の下へと
身体を潜り込ませた。その布団の隙間から、世界に鉄の槍が次々と突き刺さるのを
見ていた。そして、その槍が、私達の上の布団にも、屋根を貫通して突き刺さるのを、
背中を押す感覚で認識していた。私達は不幸だ。この鉄の槍にいつか殺されるのだ。
そこにはもはや、物語など存在しないのだ。圧倒的な暴力と、あまりにも小さな死。
そう考えれば、物語などはそもそも存在しなかったともいえる。空を飛ぶ彼らの中に、
私が存在しないのと同じく。あまりにも無力な私達が、あまりにも大きなエネルギーを
前にして、相対的に消失するのと同じく。――お姉ちゃん。私は、姉の服を掴む。
姉は、大丈夫だよ、と言って、私を抱き枕にする。そして、鉄の槍の後は決まって、
火の玉が落ちてくる。その火の玉は世界を構成するセルを裏返し、『ドミノ倒し』する。
その『ドミノ倒し』は初期段階として発火を伴う。しかしその発火は、あまりにも
激しい感情の爆発の前の吸気のようなものに過ぎない。――お姉ちゃん。
大丈夫だよ。
目を開ける。まだ24時になっていない程度の夜。私は布団の中で携帯でこの文章を打つ。
私は最近、新聞を読んで、そこに書いてある事件や物事について、じっと考えることに
している。想像しようとしている。放火事件。殺人事件。その前後と、その風景。
そして、それらの『着火温度』の低さを妄想する。おそらく、どのような陰惨な事件も、
あっけなく発生する。物語にならないくらい、さっぱりと、滑らかに発生する。
そして今、連邦準備制度理事会(FRB)が莫大なお金を一瞬にして使い切る瞬間を、
私はなんとかして高解像度で想像したくて、目をぎゅっと閉じる。
下院でのメイド危機対策法案否決後、即刻、上院に修正案が提出され、採択された。
緊急招集されたメイド下院において、パチュリー登場。(与えられた時間は2分)
――咲夜議長。今日もまた、貴重な時間を私のために割いて頂いてありがとうございます。
今日、私の話したいことは非常に簡単なことです。それは、この法案は完全に無意味だということです。
上院が採択した法案は、『瀕死にも関わらず走り続けるランナーに、走らせ続けさせがら栄養剤を注射する』
というような、とてもシュールな、とてもグロテスクなものです。
その注射の成功――走り続ける男の腕に注射するのだから、想像を絶するほど難しいのです――のために
私たちは莫大なる魔力を供給しなければなりません。でも、そんなことは、全く無意味なのです。
一番大切で重要なのは、彼を歩かせることです。もしくは、しゃがみこませることです。
とにかく、彼は、休まなければならないのです。栄養剤など、全然必要ないのです。
――議長。彼はどこへ向かって走っているのでしょうか。彼は、いつの間にか、走ることだけを
目標にして走っているのではないでしょうか。本来なら、どこかに辿り着くために走るべきなのに、
いつの間にやら、その『どこか』は彼の頭の中からは消え去ってしまっているのです。
十六夜咲夜議長。メイドたちに必要なのは、休養に他なりません。メイドたちがやろうとしている
自己成長プロジェクトや、その進捗を確認し、強引に進展させるための数多くの報告ダメ出し会議、
それらの破綻からくる、メイドたちの無理矢理な労働、そこから来る過労死、進捗が遅いのを全て
自己責任として背負い込んでの自殺。問題の根源は全てそこなのです。
ゆえに。メイドパーテイションなどなんの解決も生み出しません。とにかく、私たちを救うには、
私たちに掛けられた『成長至上主義』という呪いを解除することです。それ以外のことは、全て、
解決とは程遠い、的外れなことなのです。
本質的な解決は、とにかく、私たちを取り巻く『呪い』に対抗することからしか実現できません。
ゆえに。この修正案は無意味なのです。ゆえに。私たちはこの法案に反対いたします。
みんながみんな、魔法を使えるようになると、魔法の価値は激減する。
魔法が使えて当然になる。まるで、パーソナルふくろうの所有が当然になったみたいに。
誰でも魔法が使える時代。それは私たちの世界の便利さの底上げに繋がったんだろうか?
朝起きて、紅茶を一口味わって、私はぼんやりと考える。世界は便利になった。勿論。
でも、その便利さは本当にいいことだったんだろうか。私は『便利さ』批判をしようとして
いるのではなく、当然のことながら、魔法批判をしたいわけでもない。
――人形がシーツを干しに、部屋を出て行く。シーツの裾を汚さないように、しっかりと
空中に浮きながら。ドアを魔法で開閉しながら。不思議な光景だといえなくもない。
でも、理屈が合えば、鉄の塊だって空を飛ぶのだ。物理学的にバランスがとれていれば、
1km四方の金の造形物だって一瞬にして作り出せる。もちろん、作り出した瞬間に、
金の価値というのが限りなくゼロに近づいてしまうのだが。
昨日、霧雨魔理沙が遊びに来て、無限の長さを持つ質量ゼロの直線を作り出し、
空中に浮かべて見せてくれた。そして、その線分をほんのちょっと傾けた瞬間、その線分は
ふにゃりと折れ曲がり、自己矛盾問題を引き起こして消失した。本当なら、その直線は直線を
保ったまま、その両端――無限に長いのだから両端などないわけだが――において、無限の
速度で移動するはずだった。無限の速度の移動、というのは妄想というか、児戯みたいなもので、
実際には世界の分解能の範囲で上手く誤魔化されてしまうのである。ワープして見える、という
ような、出来るだけ低エネルギーな方法で無限は表現される。実際には、世界は『しんどいから』と
いう理由で魔理沙の魔法を却下した。そもそも、無限の直線が本当に生成されていたのかということが
既に怪しい。律儀に直線を世界が描いてくれるとは信じがたい。そもそも、その直線のプロパティーに、
『無限に見える程度の適当な長さの直線』という追記が自動的に挿入されてしまっている可能性も
否定できない。魔理沙はその『勝手なコード改竄』、あるいは『いい加減な翻訳』の感じがとても
面白いと言う。私は面白いというよりも、もっとしっかりしてくないかなあと思うのだが、世界と
しては、もっとしっかりとした魔法設計をしてくれよと言いたいのかもしれない。
私は物思いに耽る。秋の風が部屋にそろそろと忍び入ってくる。
5種類もの別属性の結界が複雑に絡み合った『封印』を偶然見つけたのはチルノだった。
蛙をいじめるのに飽きた悪戯っ子が発見したおもちゃとしては、あまりにも高級すぎたきらいがある。
まず、チルノ自身が封印の解除に着手した。その封印は攻性防壁を持たない、寡黙な論理の塊だった。
どんな揺さぶりを仕掛けても、うんともすんとも言わなかった。うんとかすんとか言わせようとしても
言わなかった。それはまるで全てを吸い込むブラックホールのようだった。チルノは飽きた。
飽きたが、なんだかわからないが、とにかく何か凄い物だと直感した。これがこの封印の誤算であり、
もしも本当に何かを封印したいのであれば、そこまで必死にならないほうがよかったのではなかったか。
チルノはチルノなりに思考し、妖夢のところへ持っていった。チルノは妖夢が日頃から真面目な
お姉さんキャラを演じているので、これでちょっと自分の無力さに落ち込んで、りゅん、となるのを
見たかったのである。ところが、妖夢はチルノがうきうきしながらポケットから取り出したそれを
見て、さっさと降参した。それどころか、チルノの健康を気遣うくらいのお姉さんぶりだった。
チルノが持ち込んだそれは、鈍く銀色に光る水滴のような多層構造結界であり、そのようなものは
だいたいろくなものが入っていない。ろくなものが入っていないから、一生懸命封印しようとする。
さらに悪いのは、破棄できないから封印する、という類のものであろう。高コストな、稀代の魔法使い
しか作れない結界でパッケージせざるを得ないものとはいったい何か。
答えは簡単で、『ろくなものではない』に決まっている。
じゃあ、捨てちゃおう、という考えができるほどまでには大人になっていないチルノが次に
向かったのは霊夢のところであった。霊夢はつまらなそうに境内を箒で掃いていた。なぜそんなに
つまらそうに掃くのかとチルノが不思議に思うくらい、つまらなそうに掃いていた。
「うるさいわね」
霊夢にジト目で睨まれたチルノは、ちょっと身震いしながら『封印』を差し出した。
その瞬間、頭をぽかりと箒の柄で叩かれたチルノは後にこのような述懐を残している。
――霊夢が一番ひどい。いろんな意味で。
面白い
早くマンガ化する作業に戻るんだ
>>624 2ヶ月間、全然練習しなかったから、漫画の描き方忘れちゃったもん!
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/:::::/ __,,./ 、 \`ヽ,\ ||| |イヽ|/:: | | |
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:/ !/ ト、 ヽ、ソ!「L___\|\> ( ) .| | |__
ハ ト、`'´ ,l | く__,/ ||| |〉 (^ヽ、ヽ, | | /
:::ゝ、 ヽ  ̄7 / 「二二二二二i ヽ, |. | | /
::::/::::::::>、___二_レ' i 日 清 / i .| └┴┴┬───
::::::::::::〈 / ヽ、二二二/ ノイ.ソ ,.p_. r|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄(:::::::) ̄「 ̄ ̄ ̄ ̄
, -‐-'´ー- 、._
,、' : : ,:-'´: : : : : : :\
/: : :/: : : : : : : : : : : : \
/:/ : /: : :, : : : : : :/: : : : : : : ヽ
!': : :/: :/;.、=7;、イ;i: : |: : : : 、: ヽ
!: : /': :'´ ;| 'iァz;、,'ト|: :/;イ: : : }: i l
!: : : : : : :{ `''゛'` !/'´/イ;ィ:/: リ'!
'; : : : : ;|ヾ ,ィ')y'/;ィ:/
ヽ:|'; :{ヘ _ ゝ./!'´ !' そうやって
/' ヽ! 、 ´,. ィ':i/ 嫌なことから
_,,..../ /` ‐' ´l/リ゛ 逃げているのね
ノ `丶、 {、 ´
/ ' ‐- 、 \トヽ、
,イ;;;:::、:_:::::::`ヽ、 _\!`)、
i;/ ヽ::::::::::::', `>ヶ、:>
! '、:::::::::::',∨|:ハ! ',
/ iヽ、:i::::::',. |:| ';〉 i
/ l /::::::::',.L! ';. !
/ | ! /::::::::::::l ハ
/ V::::::::::::::::l / / ',
/__,.、 -‐┐ l::::::::::::::::l / ,〉
`| '7:ー‐'、:::::::::::/ /|__/|
>>626 あああああああああああああああああああああああああああ
こ、心が痛いいいいいいいぃぃいぃぃぃくぁwsdrfちゅいおp@;「
/ ̄ ̄\
/ \ ____
|:::::: | / \
. |::::::::::: | / ⌒ ⌒ \ 嫌とかそういうんじゃなくて、ただ単純に
|:::::::::::::: |/ (●) (●) \ 描きたくても忙しくて描けないんだお
. |:::::::::::::: } | (__人__) |
. ヽ:::::::::::::: } \ ` ⌒´ _/
ヽ:::::::::: ノ | \
/:::::::::::: く | | | |
----------|:::::::::::::::: \----┴┴---------┴┴----
(はぁ? どこが忙しいんだ? ここ3年間、完全無職だったくせに……
/ ̄ ̄\
/ \ ____
|:::::: | / \
. |::::::::::: | / ⌒ ⌒ \でも、ネタ帳は順調に埋まっているんだお
|:::::::::::::: |/ (●) (●) \ ついに脳内物語は魔法工学崩壊を発端とした古典魔法基底層への
. |:::::::::::::: } | (__人__) | 懐疑とその発展的解体、特異点の抽出にまで至っているんだお
. ヽ:::::::::::::: } \ ` ⌒´ _/
ヽ:::::::::: ノ | \
/:::::::::::: く | | | |
----------|:::::::::::::::: \---┴┴----------┴┴--
(時事ネタといろんなラノベがごっちゃまぜになってるだけじゃねえか……中二病臭すぎるし……
/ ⌒ ⌒\
/ (⌒) (⌒) \ とにかく、あともう少しで形になりそうなんだお!
/ ///(__人__)/// \ とりあえず、毎日練習スレでばしばしネーム描いて、
| u. `Y⌒y'´ | 後日それを修正加筆して仕上げたら、四季賞に
\ ゙ー ′ ,/ 送り込んで、それと同時進行でエロ要素追加しまくった
/⌒ヽ ー‐ ィヽ アナザーストーリーを秋田書店に送るんだお!
/ rー'ゝ 〆ヽ
/,ノヾ ,> ヾ_ノ,|
| ヽ〆 |´ |
/ ̄ ̄\ くだらねえ妄想ぬかしてねぇで早く社会復帰しろよボケがああああああ!
/ノ( _ノ \
| ⌒(( ●)(●)
.| (__人__) /⌒l
| ` ⌒´ノ |`'''|
/ ⌒ヽ } | |
/ へ \ }__/ / / ̄ ̄\
/ / | ノ ノ / ●)) ((●\’, ・サーセン!!
( _ ノ | \´ _ ( (_人_)’∴ ), ’
| \_,, -‐ ''"  ̄ ゙̄''?---└'´ ̄`ヽ て
.| ______ ノ (
ヽ _,, -‐ ''" ノ ヽ r'" ̄
\ , '´ し/.. >> | J
\ ( / |
\ \ し- '^`-J
楽しそうなスレだな
今だから言える
実はマイピクチャに「手死ね」フォルダがあるんだよ
上に同じく
てでして
楽しそうなスレ発見
一見全てがバラバラに見えるが全てが計算尽くな七瀬クオリティ
真理を垣間見た狂人の為せる業か
あれ?ミムセントリックは?
653 :
...φ(・ω・`c⌒っ:2009/06/20(土) 14:59:46 ID:MNO2QhYW
手生きてる?
ぉぉ!
659 :
...φ(・ω・`c⌒っ:2010/01/01(金) 01:30:50 ID:bYOv5U/h
>>1はポーマニの手ビューアやればいいのに
情弱だなあ
ヽ(*゚ω゚)ノ
おひさしぶりだな
テステス
672 :
...φ(・ω・`c⌒っ:
手を極めるものは萌を制す