>>277 続き
東日本大震災が起きる1年前、東京大教授古村孝志(ふるむらたかし・49)は岡村が調査している
高知県土佐市の蟹ケ池を訪れた。古村は地球物理学の研究者で、スーパーコンピューターを使った
地震波や津波の伝わり方の解析で知られる。岡村とは08年から始まった南海トラフの巨大地震を
探るプロジェクトで一緒だった。
蟹ケ池は絶滅危惧種のベッコウトンボが生息していて開発を免れ、昔のままの環境が残されている。
そのトンボが姿を消し、調査ができるようになった。
古村は池で採取した砂の層を見せられた。岡村によると、南海トラフで最大と考えられてきた
宝永地震の時よりも分厚く、2千年前にもっと大きな津波があったと考えられるという。
信じられなかった。本当に巨大津波が運んできた砂なのだろうか。隕石が落ちたのが原因かも
知れないし、古代人が砂を捨てた可能性だって考えられるかもしれない。
ピンと来たのは、東日本大震災が起きた後だった。地震の解析を始め、大津波の起きる仕組みが
見えてきた。ひょっとしたら、南海トラフでも同じような地震が起きていたのではないか。
それなら説明ができる。その瞬間、「青くなった」。
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日本地質学会は今年5月、文部科学省に意見書を提出した。地質学的な研究を軽視し、地球物理学
的な手法に偏重していたことが、東日本大震災での「想定外」につながったと指摘している。
学会長として意見をまとめた新潟大名誉教授宮下純夫(みやしたすみお・66)は
「過去にあったことをきちんと見るのが地質学だ。地震を予測する委員会でも地質学者は少なく
歯がゆい思いをしてきた」と話す。
岡村が調べた宝永地震の史料には、村々が「亡所」となったという記述がある。大津波は
すべてを流して何も残さない。東日本大震災で岡村は「亡所」の意味が実感としてわかった。
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>>275 お忙しい中大変乙です! dion軍さんも妹さんもお仕事早っ!
朝日新聞夕刊10/31の1面に掲載された記事ですね(
>>271の「10/30」は間違い。すみません)。
長文が続いてもたれ気味の方がいらしたら申し訳ないです。…が、あの大震災を専門家が
どう受け止めたか?というテーマのこの連載は、なかなか興味深いものがあるかと。
今後の地震研究の方向性はどうなっていくのでしょう…?