※検証求
「高速増殖実験炉「常陽」の事故とその重大性」
小林圭二(元京都大学原子炉実験所講師)
(
http://www.page.sannet.ne.jp/stopthemonju/home/0901joyojiko.pdf#search='高速増殖炉、常陽')
昨年(2008 年)の原子力学会年会、14 の分科会に分かれた広範かつ膨大なプログラムの中に、
「ナトリウム冷却型高速炉の原子炉容器内観察・補修技術の開発」という地味なタイトルが含まれていた。
特に注意はしていなかったが、直前に送られてきた予稿集を読んで、「おや、これは何だろう」と思う記述があった。
「計測線付実験装置と回転プラグとの干渉」という短い記述である。胸騒ぎを覚えて当日の口頭発表を聞きに行き、
そこで高速増殖実験炉「常陽」で事故があったことを初めて知ったのである。
常陽は茨城県大洗町にある熱出力14 万キロワットの実験炉で、発電設備は備えてない。
現在はもっぱら将来の高速増殖炉用燃料や材料の開発のための照射試験用原子炉として使われている。
「常陽」の炉心は、「もんじゅ」と同じような六角形の燃料集合体85 体で構成されている。照射試験は、
炉心のど真ん中を含む6 ヶ所で行えるようになっている。2007 年5 月の定期検査時に、
そのうちの1 つに入れていたMARICO − 2 と呼ばれる照射試験用実験装置を抜き、原子炉容器内壁近くのラックへ移した。
MARICO − 2 をそこで切り離し、移動装置だけ元の位置に戻した。ところが、照射実験装置がラックにキチンと収まっていなかったか、
あるいは移動装置の掴みがはずれなかったために、移動装置の移動によってMARICO − 2 の上部が引きちぎられてしまった。
MARICO − 2 はラックの上へ9 センチもはみ出し、その突起物が、移動装置の移動にともないラック上を通過した炉心上部機構にぶつかり、
炉心上部機構の下面を破損させた(図)。
ところが、事故の発生は約6 ヶ月後までわからなかった。11 月の燃料交換作業で操作不能が起こり、
その原因調査で初めて損傷に気がついたのである。破損の発生も、それに気がつかなかったことも、
ナトリウムが水とちがって不透明なことが基本的要因となっている。その不透明さが、
破損の調査自体も大変困難にした。