強震動総合

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50 ◆QuakerATNI
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地震と地震動の違い

地震 …下の2つの意味で使われている(例:地震キタ―(゚∀゚)―!!・震度2の地震・大規模な地震)
  │
  └┐地震  …断層が破壊する現象のこと(例:M 7.2の地震)
   └地震動 …揺れのこと (例:震度2の地震動)
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マグニチュードと震度

一般に言われるマグニチュードと震度は意味合いが大きく異なります。
震度はそれぞれの観測地点における地震動の強さの指標で、それに対して
マグニチュードは地震による断層運動の量(震源域の広さと変位量の大きさ)の指標です。

マグニチュードが表すのはエネルギー(ジュールに換算できる)ですが、
マグニチュードが大きいほど地震動が強くなるわけではありません。

【震度】
日本では、1996年以降、揺れの度合いを10階級( 0 1 2 3 4 5弱 5強 6弱 6強 7 )に分けた
気象庁震度階級(JSI)が使われています。この震度階級は日本独自のもので、欧米では12階級の
改正メルカリ震度階級(MMI)、CISでは12階級のMSK震度階級が使われています。
# ちなみに、MMI12、MSK12は気象庁震度7より遙に強い揺れを表す指標です。

日本では、1996年の階級数の改正までは震度は8階級で、気象台職員の体感や
建造物の被害状況など主観的な方法で震度を決めていました。
しかし改正以降は、震度計で計測された計測震度から決められるようになっています。
計測震度と震度階級の対応 http://www.kishou.go.jp/know/shindo/keisoku.html

 余談ですが、地震動の強さの指標は震度の他にもあるんです。
 これらは、例えば地動最大速度(PGV、単位Kine)や地動最大加速度(PGA、単位Gal)などで、
 震度が1大きくなるごとにPGVとPGAの積が10倍になっています。
 つまり、震度が1増加するとPGV、PGAともに約3.2倍前後の値になって、
 これは地震動の強さがそのまま3.2倍になることを表します。

さて、震度が大きくなると、地震動は急激に強くなるという事ですが、
震度には5強と6弱で大きな境界があります。
・震度5強までの揺れではふつう家屋倒壊が発生せず、また避難行動がとれる。
・震度6弱以上の揺れでは家屋倒壊が発生する場合があり、揺れでまともに動けなくなる。

・コンデンス震度階級関連解説表
震度5強(強震)…歩けるが、家具が転倒してくる。ふつう倒壊する家屋はない。
震度6弱(烈震)…立つ事が困難で、まともに移動できない。まわり中の家具が転倒してくる。
震度6強(烈震)…立てない。
震度7  (激震)…揺れで飛ばされて何もできない。
# 「激震」は、「劇震」と表記される事もある。
51 ◆QuakerATNI :2005/12/30(金) 20:22:18.16 ID:WoLbHgy3 BE:254701038-
【マグニチュード】
マグニチュードは、断層運動の量(エネルギー)を表す指標値で、断層運動の量は
主に震源域の広さと地震の時に断層がスリップする量(変位量)の大きさで決まります。

最初にマグニチュード(リヒター・スケールML)を考案した人
リヒター(1900-1985) http://wwweprc.eri.u-tokyo.ac.jp/CSS/FigX/richter.jpg
(以前、この画像のAA作成依頼出して放置された事ありorz)

# マグニチュードにはいろいろな種類があります。代表的なのは
 モーメントマグニチュード(Mw) 気象庁マグニチュード(Mj)
 表面波マグニチュード(Ms) 実体波マグニチュード(Mb)などです。

マグニチュードは、1大きくなると規模が10√10倍(約32倍)になります。
なので小さい地震が何度も続いても、大地震のエネルギーは消費されません。
例えば、M 7.0の地震のエネルギーを消費するには
M 5.0の地震が1000回起きなくてはいけないんですね。

それともう一つ、「マグニチュードが1大きくなると、地震の発生数は約1/10になる。
M 8.0以上の地震はさらに極端に少なくなる」ため、ふつう規模の小さい地震が
多数発生する事で大地震のエネルギーを消費するような現象自体が起きないんです。
従って「小さい地震がいっぱい発生すれば大地震はこない」というのは誤りです。

規模の大きい地震リスト
Mw9.5  1950年 チリ地震
Mw9.4  2004年 スマトラ島北西部沖地震(スマトラ沖地震)
Mw9.2  1964年 アラスカ地震
Mw9.1  1957年 アリューシャン地震
Mw9.0  1952年 カムチャッカ地震
Mw8.8  1906年 エクアドル地震
Mw8.7  2005年 スマトラ島西部沖地震(スマトラ沖地震)
Mw8.6  1950年 アッサム地方の地震

【規模の限界】
過去1000年間のうち、日本周辺で発生した最も規模の大きい地震が宝永地震(M 8.6)で
あるように、日本周辺はM 9.0のような「超巨大地震」が発生しにくいところです。
マグニチュード(Mw)は震源域の広さ、最大変位量などで決まるため、M 9.0のような地震は
広い震源域を必要としますが、日本周辺はプレート境界が複雑なためこれが確保できないんです。

M 9.0を越える地震は主にプレート沈み込み境界で、境界がシンプルな
アリューシャン海溝(アラスカ地震M9.2)、アタカマ海溝(チリ地震M9.5)
スマトラ島西部周辺(スマトラ沖地震M9.4)などで発生し、このような地震は
断層破壊がゆっくり起こる津波地震となるケースが多いため激烈な揺れはありません。

日本周辺のプレート境界
http://www.hinet.bosai.go.jp/about_earthquake/PNG/fig4.9.png
52 ◆QuakerATNI :2005/12/30(金) 20:22:43.66 ID:WoLbHgy3 BE:127350926-
【地震波】
地震動を引き起こすのは主にP波、S波、L波、R波の4種類の地震波で、
P波とS波は実体波と呼ばれ震央付近を強く揺らし、
またL波とR波はあまり減衰せずに震央から遠く離れたところまで到達し
マターリとした揺れをもたらします。

P波のPはPrimary(最初に到達する)の略、S波のSはSecondary(2番目に到達する)の略で、
地震動はまずP波の到達によって始まり、次にS波の到達によって急激に大きくなります。
# P波が到達してからS波が到達するまでの揺れを初期微動、S波が到達した後の揺れを
 主要動と言ったりするけど、これはあまり重要じゃないかな、うん。

 余談になるけど、秒を英語でSecondというのは、1時間を60等分して1分(minutes:小さいもの)
 さらに2回目の60等分を行って1秒(second:2回60等分したもの)という意味があります。
 実際やったのは、古代メソポタミアの人なんだろうけど。(何で英語に反映されてるのかは知らない)

地震波┐実体波┐  .…震央から100kmくらいまでを強烈に揺らすのはこいつら
     │     │
     │     │P波…プライマリー波。縦波、粗密波の事。SP変換波なども同じ性質です
     │     └S波…セカンダリー波。横波、せん断波の事。PS変換波なども同じ性質です
     │           断層破壊はせん断破壊なので、地震波のエネルギーの大部分は横波
     │
     └表面波┐  .…両方ともS波より遅い。やたら遠くまで届く。
           │
           │L波…ラブ波。水平動をもたらす。
           └R波…レイリー波。水平動と上下動の両方をもたらす。

【実体波は必ず真下から来る】
表面波は地表を伝わるので、観測者のいる場所に水平にやって来ます。
では、実体波(P波とS波)はどうでしょうか。
実体波は常に、ほぼ完全に、真下からやって来ます。

P波の速度(Vp)とS波の速度(Vs)の関係はVp=√3Vsで、
P波の速度は花崗岩などの基盤岩類を伝わる時に6.1km/sくらい、
沖積平野の堆積層では300m/sとか、200m/sとか、そのくらいになる場合が多いです。
地震波を伝える層によってめちゃくちゃ速度が異なるんですね。
このことによって、地震波は地表に到達する前に物凄い屈折をします。

入射角をθ1、屈折角をθ2、入射波の速度をv1、屈折波の速度v2をとすると
sinθ1/sinθ2=v1/v2(スネルの法則)ですから、
例えば入射角60゚(水平面から測って30゚)で基盤岩類(Vp=6000m/s)から
堆積層(Vp=200m/s)に入ってくるP波の屈折角は1.5゚程度、
ほとんど垂直になって地表に向かってくるんですね。(sin60゚=0.866、sin2゚=0.035)
# 2つの層に単純化してますが、もちろん屈折は地表に近づくにつれ徐々に起こります。
# 入射角、屈折角は法線(垂線)から測ります。

P波は地震波の進行方向と同じ方向に振動する縦波なので、真下から来れば
その揺れは純粋な縦揺れになり、遅れて到達するS波は地震波の進行方向に
直交する面内で振動するため、これも真下から来れば純粋な水平動になります。

そして、屈折する際にP波の一部がS波になったり(PS変換波)、
S波の一部がP波になったり(SP変換波)するのが変換波。
SP変換波は主要動の縦揺れのメインになります。
53 ◆QuakerATNI :2005/12/30(金) 20:23:05.21 ID:WoLbHgy3 BE:106125825-
【フォッサマグナ】

新生代第三紀に日本列島がユーラシア大陸から剥離して日本海が形成されていき、
このとき今の関東地方にあたる部分が太平洋側へ強く引っ張られて
日本列島は折れ曲がりながら移動していきました。

ぶっちゃけると、北海道と九州を両手でつかんで太平洋側にバキッと折った感じです。
このため今の新潟県南部から関東地方にかけては6000m以上沈降して海になりました。
ここに堆積物が溜まり、最近になって隆起して再び陸になります。

こうしてできた深さ6000m以上の堆積物の層がフォッサマグナで、
この西端が糸魚川静岡構造線、東端が柏崎千葉構造線と新発田小出構造線です。

この3つの構造線は地質的な境界に当たるため、ひび割れやすく、活断層が多く分布しています。

糸魚川静岡構造線断層帯の強震動評価
http://www.jishin.go.jp/main/kyoshindo/02oct_itoshizu/
糸魚川静岡構造線断層帯位置図
http://www.jishin.go.jp/main/kyoshindo/02oct_itoshizu/f01.htm

中央構造線(MTL)断層帯の位置概略図
http://www.jishin.go.jp/main/chousa/03feb_chuokozo/f01-1.htm

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【強震動】
強震動っていうのは、震央距離1度(震央から111km)くらいの範囲をターゲットにした、
P波とS波による「強い地震動」の話です。(L波やR波は放置)

この範囲に限ると、震度はもうあまり同心円状に分布しないし、
また必ずしも、震央の揺れが最も強いわけでもありません。

地震は断層運動で、3次元的な断層面が、震源を始点として破壊する現象です。
http://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS-RELEASE/2000/1007-2b.gif
この震源過程、震源特性で震源近傍の震度はみんな決まってしまうんです…。

#また、規模と断層の大きさ、変位量は一定の関係があります。
54 ◆QuakerATNI :2005/12/30(金) 20:23:21.62 ID:WoLbHgy3 BE:371438257-
【地震動】
[震度]のところで書いたように、地震動の強さの指標は震度の他にもいくつかああって、
例えば、PGAを地動最大加速度、PGVを地動最大速度、I instrを計測震度として

兵庫県南部地震によるJR鷹取駅の地震動は PGA 742.7Gal、PGV 161.9Kine、I instr 6.49
新潟県中越地震による川口町の地震動は  PGA1670.4Gal、PGV 147.1Kine、I instr 6.51

というように表す事ができます。それぞれの指標について、どちらが大きい、
どちらが小さいと言うことができるんですね。それぞれの特徴は以下のようになっています。

・PGA 単位Gal 1Gal=1cm/s^2
 人間が最も敏感に感じる0.1-0.3秒の周期帯の地震動を表すのに向いている

・I instr 単位なし (この値を各震度階級に割りふる)
 人間の体感、室内物品の動き、大型の家具の移動、転倒などを
 引き起こす0.1-1.0秒の周期帯の地震動を表すのに向いている

・PGV 単位Kine 1Kine=1cm/s
 建造物の大被害、倒壊を引き起こす1.0-2.0秒の周期帯の地震動を表すのに向いている

このことから分かるように、体感に焦点を当てるのならPGAを用いて地震動を評価るのがよく、
また建造物の被害、倒壊に焦点をあてて地震動を評価するのならPGVを用いるのがいいです。

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【地震の基礎知識】

地震の基礎知識はいろいろあるので、上からざっと見ていってとっつきやすいのをどうぞ。
徐々に下に進んでいくのを勧めます(・∀・)

Hi-net地震の基礎知識
http://www.hinet.bosai.go.jp/about_earthquake/part1.htm
なゐふる文庫
http://wwwsoc.nii.ac.jp/ssj/lib/nf-lib.html
気象、地震、火山、海洋等の知識
http://www.kishou.go.jp/know/
消防防災博物館 地震災害の基礎知識
http://www.bousaihaku.com/cgi-bin/hp/index2.cgi?ac1=B101&Page=hpd2_tmp

第2部−2−地球の科学を参照
http://www.s-yamaga.jp/nanimono/nanimono-hyoushi.htm
強震動の基礎
http://www.kyoshin.bosai.go.jp/k-net/gk/publication/
強震動地震学基礎講座
http://wwwsoc.nii.ac.jp/ssj/ssjinfo/kyosin/kisokoza/kisokoza.html

地震学をやりたい方は…
http://www.kyoritsu-pub.co.jp/shinkan/shin0106_06.html
# ふつーに難しいです。