【ガクブル】地震の小説スレ【したい奴集まれ】

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240黒猫:2005/11/10(木) 17:49:44 ID:olpe1olp
また3日ほどあいてしまうので、すみませんが
続きいっておきます。お付き合いいただければ幸いです。
で、書き込んだら、本当に空手の稽古に行ってきますww。

「あっ!」とかおりが小さく叫んだ。「電波!入ってる!」一斉にみんなが携帯を取り出し覗き込む。「私は駄目」すーさん。
もちろん、今時刻を見たばかりの私も駄目。「入るよっ!」とちーちゃん。○ダホンだけが入るのか?○コモのすーさんと私だけ電波が立たない。
本当に使えねーな。氏ね!「かけてみなよ!」というより早く、かおりとちーちゃんは携帯を耳に当てている。「かからないわ」ぼそりとかおり。
「回線が混みあってるあってさ」とちーちゃん。「災害伝言ダイアルは?」「だね」また二人が、携帯を耳に当てている。「私は無事です。
○杉小学校に避難していますけーちゃんも一緒」とかおりがふきこんでいる。
ちーちゃんもむこうを向いて何かふきこんだようだ。うらやましい。「誰に?」「親」「俺も親」すーさんが、「じゃ、誰かから伝言入ってるのも聞けるんでしょ?」
かおりが「だよね、きっと入っているだろうけれど、私いいや。聞かない。だって充電がもたなくなってしまうもん、かけたいところ一杯だけど、とりあえず親だけには安否知らせたからこれでいいんだ」
ちーちゃんも「まあ、一番の身内になんとか連絡とれただけいいんだろうと思おうよ。朝になれば、普通に会話できるように回復する可能性だってあるわけだからさ、ここは、無駄使いやめとこう」
あ〜〜みんな、先のこと考えて偉いなぁ。私だったら、かけまくって、電池なくなって、後で激しく後悔して泣くタイプ、馬鹿だ。 
まあ、かけたくっても「圏外」を表示した、私の馬鹿携帯は使えないわけだけどね。すーさんが携帯を見つめている。旦那さんが心配なんだろうなぁ。すーさん自身も怪我がひどいわけだし、私なんかよりずっとつらいだろうなぁ。
一度着信があった私は、幸せなんだろう。ああ、疲れた。寝たい。だけど全く眠れる状態じゃない。「ねえ、みんなさ、眠くない?疲れてない?」
ためしに聞いてみる。「疲れたよ、でも無理だな、これじゃあ眠れないよ」とけーちゃん。「俺さ、腹減ってるんだよね」と続ける。「言ってよ〜〜!ごめん!けーちゃんだけ食べてないんだよね?
網かけられないからお湯沸かせないけどさ、パンあるじゃん!食べなよ」あくまでも、あの缶詰のパンが気になる私は勧めた。「いいの?」みんなで声を合わせて「もちろん!」
ペットボトルの水も一緒に手渡す。けーちゃんの手元に釘付けの私。はぁ〜私って。出てきたのは、なんだかおいしそうなフカフカした感じのパン。「これ、うまいわ、チョコの味だよ」とけーちゃんが言う。
かおりが「ちょっとちょうだい!」と横取りして口の中にパンを放り込んだ。「あれ〜〜美味しいのね、本当に」ちーちゃんが、「まあ、明るくなったら、みんなで食べよう
もう一回さ、網が乗っかるようにすれば、燃料もけーちゃんが持ってきてくれたわけだしお湯わかせるじゃん、カップ麺だって食べられるしさ、でも、こんな真夜中に瓦礫探しにでるのももう危ないから、
とにかく明るくなるまで、俺たちは我慢しよう」せっかく木炭を囲んだのに余震のせいで崩れてしまった簡易BBQ台は朝修復かぁ、、ちりちりと赤い火を見つめた。朝、すべてが見えたら
どんな光景が待っているんだろう?阪神淡路のような惨状がこの東京に起こっているんだろうけれど、願わくは見たくないし、夢でいいから、いつもと変わらない風景が広がっている事を、無駄と知りながら思う。
せめて雨が降らないでほしい、今夜は星がひとつも見えない。天気予報知りたいな。どうやら私は
こうやってすぐに一人で考え込んでしまう、いけないいけない。
241 ◆Quaker/r0. :2005/11/10(木) 18:01:13 ID:IPqGsGXe
空手(・∀・)ガンガレ!
242M7.74:2005/11/11(金) 09:21:09 ID:sNXJNcyS
もうどれがどれだか解んなくなってきた
243地震小説(SF):2005/11/11(金) 15:29:34 ID:yuKnzfmR
よく考えれば当然だグッズ買いに行ったとき2℃だったのだから
夜の今はさらに冷え込む
俺は絶望しつつとりあえず自分の家の食い物を捜した・・・
食いかけのケーキとその他モロモロ・・・・
地震などが起きると自動的に火が消えるタイプのストーブは
最後にその機能を発揮しもう動かなかった・・・
もし耐震だから大丈夫などと思って普通の物にしていたら・・・・・
寒い・・・・・・
とりあえずその辺の毛布にくるまった・・・外は一瞬で建物が倒壊し
火は起こってもこの寒さと瓦礫にジャマされほとんど燃え広がなかった
だろう・・・   ガヤガヤ・・
外が騒がしい・・・・  まさか生存者!?
自分は飛び起き外を見た・・・

自分と俺の2種類は分かりにくいのでこんどから俺に統一します
244地震厨房 ◆ikExn4d2/Y :2005/11/11(金) 21:25:42 ID:O1OlVUkq
警察官が、嗚咽をあげる僕を外へと連れ出した。
冷たいグラウンドの土の上で、僕は暫く声を殺して泣いていた。
「・・・彼の、生徒証が見つかったんだが・・・」
警察官はそう言って、少し焼け焦げた生徒カードを差し出した。
彼は気の毒そうに目を伏せている。

ふと、もしかしたら、これは後輩のではないかもしれないと思った。
そう思いたかった。自分のせいで、彼があんな姿になってしまったのではないと。
後輩のではありませんように。
後輩のではありませんように。
そうして、すがる思いで、僕はその生徒カードを受け取った。


「・・・アイツのじゃない。」

僕は思わずそうつぶやいた。

警察官が「えっ」と驚きの声を上げた。
「君の、後輩君のじゃないの?本当に?」
それは、彼と同じ学年の、だが僕には何の面識もない生徒の一人のものだった。
頭のよさそうなコが写真に写っている。だが、その面影はあの白い布の下にあるモノ
からは感じられなかった。

僕は、その焼死体が後輩のではないと分かっても、歓喜の声をあげたり、笑顔になったりはできなかった。
たとえそれが僕の知り合いでなくても、同じ学校に通う一人生徒の未来が奪われたという、
つらい現実に変わりは無かったから。

僕も警察官のオジサンも、ただ呆然と、グラウンドの焚き火の炎を眺めていた。

第二体育館で眠るそのコの両親は、まだ、彼の帰りを待っているのだろうか。

245地震厨房 ◆ikExn4d2/Y :2005/11/11(金) 22:14:17 ID:O1OlVUkq
警察のおじさんは、僕を第一体育館へ送り届けると、もう一度、後輩の名前と特徴を僕に尋ねた。
住所についても聞かれたが、僕は彼の家の最寄り駅と、携帯の番号しか知らなかった。

警察のおじさんが去った後、その場にしゃがみこんだ僕は、不意に声を掛けられた。
「あなた、学生さん?」
そう話しかけてきたのは、母とさほど年の変わらなさそうなおばさんだった。
彼女の横では、小学生ぐらいの男の子が毛布をかぶり、すやすやと寝息を立てている。
大勢居る避難民の一人のようだ。
「この近くに住んでるの?」
「いえ、家は葛飾区なんです。」
「えっ、じゃあ、学校から帰ってくる途中で地震に?」
「はい、電車が事故にあって、それで、後輩と一緒に避難してたんですけど、
途中でばらばらになってしまって・・・・・・。」

僕はそこまで話して、思わず黙ってしまった。
後輩のことや、あの火災や、電車の事故を思い出すたび、心に重い不安が湧き上がる。

「・・・私にも、実はあなたと同じくらいのもう一人の息子がいるの。文京にある都立高に通ってる。
新宿に勤めてる夫も、息子とも、連絡が取れないのよ。」
「・・・」
「さっきは、あなたと私の息子の学生服姿がそっくりだったから、思わず声をかけちゃったの。
でね、あなたの話を聞いていて、私、希望がでてきたの。
ああ、あなたみたいに私の息子も、ダンナも今、一生懸命ウチに帰って来てくれてるんだなって。
たしかに、私も、家族がもう死んでしまっていたらと思うと、凄く怖い。
でも、今は待つしかないの。もう二度と家族に会えないかもしれないけど、私たちは待つしかないのよ。」
「・・・待つ・・・しかない」
「そうよ、待つしかないの。だから、家に向かってるあなたたちと同じくらい不安だけど、
同じくらい一生懸命に待ってるの。」

「だから、あなたも、一生懸命帰りなさい。そして後輩君のことを一生懸命待っててあげて。」

胸が熱くなった。そして、こんな目にあっているのは自分だけじゃないと改めて感じた。
今、この首都圏で何百万という人が家路を急ぎ、何百万という人が家族を待っている。
そして、何千万という人が家族のことを考えてる。
後輩の家族も、あの秀才そうなコの家族も、警察のおじさんの家族も、目の前のおばさんの家族も・・・。
例え家族が死んでしまっていたって、会えるかどうか分からなくたって、
僕らは待つしかないし、帰るしかないんだ。
怖いけど、待つんだ。怖いけど、家路を歩くんだ。

僕は、顔を上げて、もう一度、家に帰ろうと思った。




246M7.74:2005/11/11(金) 22:14:41 ID:Ed8Ucwh0
不謹慎だがよかった。後輩君。ううう・・・
247地震厨房 ◆ikExn4d2/Y :2005/11/11(金) 22:38:10 ID:O1OlVUkq
すでに日付が変わろうとしていた。
さっきまで一緒に話していたおばさんに教えられ、僕は災害時伝言ダイヤルを使ってみることにした。
ろくに使ってないはずの携帯は、バッテリーがまばらだった。
「・・・今、板橋のスポーツセンターにいます。俺は無事です。怪我も無いです。大丈夫。
明日の夜には家に着きます。心配しないで。」そう録音した。
依然として他のところにはつながらない。試しているうちに、電池がなくなってしまった。

後輩には手紙を書き、探し人の張り紙でいっぱいの掲示板にはることにした。

「大丈夫? 怪我とかないか? ちゃんとモノ食べているか?
お前とはぐれてから、ここに避難していました。無事です。
あの時、手を離してしまって本当にすまなかった。怖い思いをさせて、本当にごめん。
頼りない先輩で、本当にごめんな。
でももう、お前には心配かけないよ。大丈夫。

俺は葛飾区の家に帰ります。
お前の家は、戸田だっけ。
お前も、頑張って自分の家に帰ってくれ。俺のことは心配要らないから、
その分、お前のことだけを一生懸命考えて、帰ってくれよ。

俺は、先輩として、お前をずっと待ってます。
一生懸命待ってます。頼りないかもしれないけど、それでも一生懸命待ってます。

街も、なにもかもが元通りになったら、学校で会おう。
それまで待ってるから。
がんばって。」

そんな内容の文章を、あのテスト用紙の裏に書いて貼り付けた。

その後で、煌煌と電気のついた体育館に戻ると、強い睡魔に襲われた。

248M7.74:2005/11/12(土) 02:21:16 ID:lfdRFRAq
韓国は、阪神淡路大震災の時に『天罰!』と載せた新聞を良いニュースです!と言って新聞社が号外を出す国。こんな新聞を出した国は勿論、世界でも韓国だけです。日本に災害があるたびに心底喜ぶ韓国人。人の死をも罵倒し喜ぶ。
249M7.74:2005/11/12(土) 04:33:23 ID:MAEmoV6n
黒猫さん全部読みました。
続き待ってます!
250地震厨房 ◆ikExn4d2/Y :2005/11/12(土) 18:17:12 ID:AFZacRLt
僕は毛布の下で丸まって眠っていた。
寒気がして、うっすらと目を開ける。今は何時なんだろう。ここは――。

起き上がって、体育館を見渡すと、殆どの人が起きているのがわかった。
「おはよう。」
ぼおっとしてる僕に、昨日知り合ったおばさんが声を掛けてきた。
「おはようございます。」
「昨日は疲れてたのね。夜中、あなた毛布も掛けずに寝てたわよ。」
「・・・」
「グラウンドで、配給やってる。家帰るのに、いろいろ持ってった方がいいわよ。水とか。」
彼女のアドバイスに従って、グラウンドに出る。
体育館に横付けされたトラックの荷台には、発電機が轟音を立てている。
薄い水色の空には、スモッグのように、どこからとも無く煙が流れてくる。

配給の列は整然としていた。
僕もその列に加わると、どこからともなく聞こえる「被害に関しての情報」に耳を傾けた。
「・・・死者が一万人超えたってね。」
「・・・新宿から西の住宅街は、初台や中野から多摩・八王子までみんな火が這ったように焼け野原だ。」
「いや、被害が一番酷いのは下町らしい。浅草の雷門も倒壊・・・」
「・・・レインボーブリッジはすごい揺れたってな。緊急停止したゆりかもめに、一斉に車が――」
「大手町で・・・」「アクアラインで・・・」「ディズニーランドで・・・」「渋谷で・・・」

「足立も葛飾も荒川区も江戸川区も、沼みたいになったらしい。地震の瞬間に、地面が底なし沼になるんだ。
で、大きなビルとかも沈むように倒れたって。」

葛飾、底なし沼。僕のすぐ後ろで聞こえたその声に凍りついた。
そんなことあるわけ無いと思った。でも、もし・・・

僕は水とカンパンを受け取ると、すぐにウチへ帰る準備を始めた。
251黒猫:2005/11/13(日) 13:29:34 ID:pCHzM3U2
>>249 ありがとう(涙)
少し続きいきます。

どうせ眠れないんだ!なんか気の利いた話でもみんなでして、励ましあうのがこんなときは大切なんだろうなぁ〜でも、、、何の話するの??わからない。
笑い話なんかできそうにもないし、素直に笑えないだろうな。第一不謹慎かな?校庭のざわめきは、どんな会話の集合体なんだろう?
食べ終わったけーちゃんとかおりは二人でぼそぼそと話をしているし、すーさんは、横を向いてしまっている。眠れてるわけは無いだろうけど。ちーちゃんは、ラジオの充電をしている。
私は?無力だなぁ、、軽く欝になってみる。なんて場合じゃないだろ!私!「あのさぁ〜朝になったらさぁ、救援くるよね?」みんなが私を見る。
「まあ、そう信じたいけど、さっきの話じゃないけれど、満足いくものかどうかは期待はしない方がいいかもね」と現実的なちーちゃん。「じゃいつまで待ったらいいのかな?」子供かよ?私!
「大丈夫だって!生きてるんだからなんとかなるって」とけーちゃん。「じゃあさあ、簡易トイレなくなったらどうするの?校舎のきったなーいトイレ、私行きたくないよ、それにさ、携帯の充電切れちゃったらどうするの?
今更、コンビニに強奪にいっても、充電器なんかこれっぽちも残ってないだろうしさ、どうにか非常用のバッテリーとかがあったって、モジュラージャックがなけりゃ、充電もできないし、
それにだよ、タバコが切れたらどうするの?救援物資にタバコなんかあると思う?嫌だね、私は、タバコが吸いたいよ。持ってる奴から奪ってでも吸いたいね。ビールだって飲みたくない?こんだけの酒飲みが集まって、火囲んでこんな深夜に酒もないんだよ?
耐えられる?こんなのが続いたら?」まくしたててしまった。本当に駄目だ私。困った顔をしたみんなの顔が私を見つめている。私だってこんな話がしたかったんじゃないのにっ!後悔したけど、言ってしまったものはしかたがない。
こういうときに本当に人間性が出るんだろうな。ひとつわかったこと、私は、ものすごく自分勝手で、最悪の人間だってこと。かおりが「黒猫らしくないねぇ、どした?」と言ってくる。声が出ない。
「黒猫の言ってる事わかるなぁ、昨日の晩に、今日こんなことが起こるってわかってたら、俺も、タバコと酒を真っ先に準備したかもしれないよ」と落ち着いた声で言うちーちゃん。けーちゃんが「そうだよな、だって俺らってさ、飲んでばっかだったしな、
こんなシラフで会うことってそんなにないもんなぁ〜ハハハ。」私の負けだ。「ごめん、変な事言って」小さくあやまる。「まあまあいいじゃんいいじゃんね、黒猫の言ってることが、本当の本心だと思うよ、
だってさ、まさかこんな事が本当に起こるなんて、昨日まで疑っていなかったんだからさ。そりゃ私も酒飲みたいし、タバコが無くなったら?って思うけど、しかたないじゃんね、大丈夫だって、日本沈没したわけじゃないんだし、東京やその近辺だけじゃん?
何10`か、西か東に行けば、普通の日常があるんだから、そこに酒もタバコもあるってば!ねぇ?」とかおり。
252地震小説(SF):2005/11/13(日) 14:46:08 ID:ydpTu1Ou
ベランダから外を覗くすると救助隊が駆けつけていた・・
周りが静かすぎるためか彼ら声が良く聞こえる
救助隊「しんじられない・・M10とは聞いていたが・・・。」
M10????おもわず耳を疑う
救助隊2「生きてる人はこのマンションぐらいのものだろうな・・。」
自分「おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいここにいますよー
ーーーーーーー生存者ーーーーーー。」
大声で叫ぶ・・・
救助隊「ドアは開きますかーーーーーーーーーーーー?。」
自分「開きまーーーーーーーーーーーーーーーーーーす。」
自分以外に生きている人がいると間近に分かり嬉しさがこみ上げていた
そして俺は役に立ちそうな物はすべて避難袋(買っといて良かった〜〜)に詰め
マンションをでヘリコプターで来たという救助隊2人と一緒に
避難所へ向かった・・救助隊の話によるとM10というあり得ない地震が
東京のど真ん中でおき震度1が北朝鮮あたりまで広がったというそして
関東はほぼ壊滅状態なのだそうだ・・・・
そしてだんだん建っている建物が増えていきようやくほとんどすべての建物
が建っているような状況になった時にはすでに愛知県に来ていた・・
ついたのは名古屋の避難所
東京に住んでいる俺が名古屋の学校に避難しているという異常な状況になった・・
253M7.74:2005/11/13(日) 15:03:19 ID:MaXKVDWZ
黒猫さん頑張ってください。
続き期待あげ
254M7.74:2005/11/14(月) 20:36:18 ID:7u6QGs89
一人で頑張るさん
黒猫さん
地震厨房さん

続きをとっても期待しています!
255M7.74:2005/11/14(月) 20:37:39 ID:Nr5y5HCQ
今まで地震を題材にした小説ってないから、これは穴場かもね。
256M7.74:2005/11/14(月) 21:00:49 ID:Er7PdiZ2
>>255
つ「震災列島 石黒耀」
この小説を知らないとは、あんたモグリだなw
257M7.74:2005/11/14(月) 21:21:51 ID:EpT0EL2Z
日本沈没もよろしくね!
258M7.74:2005/11/14(月) 22:43:42 ID:Jdj2HaJU
ここに書いてある小説をまとめてを1冊の本にして出版したら面白いかも
259M7.74:2005/11/15(火) 00:14:39 ID:lGQ2R6Mm
>>236
>166の小説は終わってるぞ。
260M7.74:2005/11/15(火) 04:21:40 ID:ZAq4JzAm
>>256
「震災列島」はでも、なんか微妙に違うだろ。
中盤以降敵討ち話になってるし、「日本沈没」は
地震通り越して日本沈没しちゃうし。
26180:2005/11/15(火) 05:10:57 ID:qShiWa38
>>112 の続きです。


非常事態宣言がされたところで、何も変わらない。

津波の被害状況が見えてこない。
第二波の予測はNHKに直接電話して伝えた。
第二波到達予想時刻、石廊崎9時11分、あと1分後だ。
ニュースで津波警報の情報を読み上げている。
天竜川に津波が逆流してきて、波高が7mにまで達したという。
沿岸および河岸から離れろと、何度も繰り返している。

海水浴シーズンでなかったのがまだ幸いだろうか。
今年の夏、海水浴に行ったビーチでは、津波の訓練が行われた。
地震が起きたのを想定してビーチから15mほど上の高台に避難した。
強制では無く、参加した海水浴客は1割にも満たなかった。
危機意識の低さに唖然とした。
スマトラ沖の例があるから、津波警報が出たら高台に逃げることは
頭にあるだろうが、実際は警報は待たずに、
揺れを感じたら即避難するぐらいの心構えでないと、とても間に合わない。
津波警報が迅速に出されるとは限らないからだ。
どれくらいの高さまで避難するべきか、どのくらいで避難できるか
あらかじめ知っておく、それが訓練ってもんだろ。
海岸沿いに住んでなくても、たまたま海岸にいたときに
地震が起こったらどうすべきか考えてる人がどれだけいるだろうか。


26280:2005/11/15(火) 05:12:21 ID:qShiWa38
>>261 続き

NHKのアナウンサーが静岡放送局に問い合わせているが、
静岡の方が相当混乱しているようで
すぐに東京のスタジオに切り替わってしまう。
静岡放送局のアナウンサーは涙声だ。
とぎれとぎれに入ってくる音声で津波で家屋が多数倒壊、
焼津付近の国道1号が寸断し、
周辺の集落の状況が確認できない、
国道150号を走行中の車が多数波にのみこまれた、
日本坂トンネルが崩落した、
音声だけの情報だが、目を覆いたい気分だ。

通信担当SEが到着した。
歪んだドアを蹴破って出てきたらしい。
通信回線が復帰した。
入ってくるデータの量が多すぎて、処理しきれなかったようだ。
民放各局にも津波第二波の到達予想時刻を送信した。
逃げてくれ、早く、高台に逃げてくれ。
263M7.74:2005/11/15(火) 07:34:07 ID:cYjgGuzO
保守あげ
264黒猫:2005/11/15(火) 15:23:13 ID:vkBDBZlR
>>253
>>254 本当にありがとうございますm(__)mすごく恥ずかしいのですが
もう少し頑張りますね。よろしくお付き合いくださいな。
あと、今日はサーヤ様の結婚式ですね!朝から、津波を伴う地震で笑いましたww。
このネタも入れたかったのですが、無理っぽいのでやめときます。
黒猫の馬鹿話行きまーーーす!

「本当にごめん、私、駄目な奴だね、ごめんっ!」私は、みんなの顔も見れないまま、ただただ、ブルーシートに額をこすりつけるようにあやまった。
「やめてよ、黒猫」すーさんが、ブランケットをシャリっと言わせながら言ってくれる。優しいな。
「やめやめ!ね?こんなときだからこそやめよ!」かおりも言ってくれる。
「喧嘩ならさ、そのうちゆっくりやればいいって、な?ハハハ、黒猫はどんな緊急時も喧嘩ッ早いのはかわらないなぁ〜〜あ〜〜いい性格してるよ」とけーちゃんが、
さもおかしくてしかたがないといった風に言ってくれる。
すみませんねぇ〜〜、私は、売られた喧嘩は買いなさいって、育てられてきたんだよ!って反撃したかったけど、優しいみんなの顔を立てようと、精一杯の申し訳なさを顔に浮かべて、顔を上げた。
ぼんやりと、みんなの顔が見える、疲れてるだろうに、みんな笑顔だ。見ていられず、またガバっと両手で顔を覆い泣いてしまった。ウック、、エック、、、ズズ、、私の声にならない嗚咽と鼻をすする音だけが響く。
そのとき、ヌルリ、、という形容詞がぴったりな感じに、地面が動いた!ヌルリ、、ヌル、、グラ、、ほんの2〜3秒だろう、しかもたいして大きくない。だけど、地面に座り込んでいる体には、こたえる揺れだ。
校庭からみっともない叫び声さえ上がる事も無い大きさの余震。だけど、ちーちゃんは、しっかりと、動けないすーさんのことをかばっている。偉い。無用な言い合いもこれをしおにやめられそうだ。
涙でひどいことになっているだろう顔で言う
「震度いくつかな?」
「2とかだよ、小さかったけど、気持ちが悪いゆれだったよね」とかおり。「ラジオ聞いてみよう」とちーちゃんが、提案したので、ヴォリュームを少しあげて、みんなで聞き耳をたてた。
「〜23区で揺れを感じました。落ち着いて行動してください。今後も、この程度の余震が起こる可能性がありますが〜」「震度言わないね」とすーさん。「だな」けーちゃん。「東京のさ地震計がみんな壊れちゃってわかんないんじゃないの?」と、
そんなことがありえるかどうかもわからないままに、最悪の事を口走る私。「ええ〜〜っ?そんなにぬるいかなぁ??最悪でも、どっかの官庁とかぐらい残っているでしょ??都庁とかだって残ってるんじゃないの?
消防署だって残ってたじゃん、あ、少なくとも、そこのね」と青梅街道の方を指差すかおり。ここに来るまでに前を通ったんだろう、崩壊していないのか、、なんだかほっとする。「まあ、今のなんて、小さいし、今まで、何回か、
余震があったけどだんだん収まってきてるんじゃない?
大丈夫だよ。今のがたとえ震度2だろうが3だろうが、昨日起こっちゃった地震はもう取り返しつかないんだしさ」現実的なすーさん。ラジオの音が聞こえた「政府は本日早朝より本格的な救助活動を
開始します。なお、海外からの救援、救助も多数、関西国際空港に到着しており、東京方面に向けて移動を開始しています。一般の方は、救援救助の妨げになりますので、車での移動は絶対にしないでください。」
うぁああ〜〜うれしい!!夜が明けないかしら?早く!!
「よかったね!やっぱり日本は先進国だね。
このぐらいじゃへこたれないよねぇ〜、成田が駄目だって、関空もあるし、名古屋にも大きな国際空港できてるし、やっぱ日本に生まれてよかったぁ〜〜さすがは小泉さん、選挙行かなくってごめんねぇ〜」
私の発言がよっぽど変だったのか?みんながクスクスと声を殺して笑っている。
265黒猫:2005/11/15(火) 15:29:25 ID:vkBDBZlR
「まったくさぁ黒猫よぉ〜泣いたりくだらねえこと言ったりさぁ〜ほんっと馬鹿だな!ワハハ!」ちーちゃんがこらえきれず爆笑している。
??確かにさっきまで泣いていたけどさ〜〜いいじゃんね?うれしいじゃんね?
「だってうれしくない?ここはさ、都心からもそんなに離れていないし、幹線道路も通っているし、多分、救助の車とかが来やすい場所だと思わない?
裏路地はやばいかもしれないけれど、私らは、ここに集まれてるわけだし、幸い、火の海が迫ってきても無い。お台場や下町みたいに地盤が弱いところでもない!
すっごく安全な部類の場所にいれてると思わない?だから真っ先に、救援くるって!
来やすいものねぇ〜明るくなったら、街道沿いで、救助の車を捕まえて、ここの校庭に誘導しようか??」明るくなったら救助・救援イコール真っ先に私達のところ、
と都合よく解釈する私はまくし立てた。
「まあまあ、ここが避難所になってることなんか把握されてるんだから、そう焦らなくってもさ、へたに歩き回って、怪我したりしても首をしめるだけじゃん」とけーちゃんががちらりとすーさんを見ながら言う。
「そうだよ、怪我しちゃったら困るって、
お医者さんが大挙して来てくれるとは思えないし、怪我だけでなく体調崩したりするのもまずいから、けーちゃんの言うとおりおとなしく待ってるほうがいいよ」と、すーさん。説得力がある。
「そだね」おとなしくひきさがる、私。「まあ、一服しといでよ!たばこならおれがまだあと一箱封切っていないの持ってるからさ!心配しないで吸っておいで」とちーちゃんが言ってくれた。
「じゃさ、眠れないし、ここの人たちがみんなどうしてるのかの偵察も兼ねて、
最初にタバコ吸ったところに行って吸ってこない?ここに座り続けるのも疲れちゃった〜〜」とかおりが提案してくる。「そうだね、たしかに、座りつかれた。もっと情報持ってる人もいるかもしれないもんね、
私は一人で行ってくるよ」と
立ち上がろうとしたら「あぶなくねぇか?」とちーちゃんが言ってくれた。私は、全然大丈夫だったんだけど「心配してくれるなんてうれしいなぁ〜♪やっぱ見るからにかよわいものねぇ〜私って、
だけど大丈夫よぉ、何かあったら、空手のいい実践になるってもんよ!」
なんていいながら、校舎の裏側に向かって歩き出した。「なんかあったら大声だせよおお」けーちゃんが背中に声をかけてくる。振り返らずに手だけ振る。校庭の人たちにまぎれた頃、軽く屈伸してみた。
「うう〜〜ん」と思わず声が出る。
すぐ横の、BBQセットを本格的に出して、火の番をしているだろう、お父さんっって感じの人が、「なんだこの女?」って顔して見ている。クックックッ。不審に見えるんだろうな私って。火のついていないタバコをくわえたまま歩く女。
片手は血が滲み、片手はTATOOが袖からのぞく。
普通の晩だったら、職質ものだな。クックックッ。なんだか、最初にタバコを吸いに来たところとは違う感じがするところにきてしまったけれど、ここも何かの裏なんだろう。
ご多分に漏れず、こんな時間でも、肩身の狭い喫煙者が集っている。ポツリポツリと赤く点滅する小さな炎と、ボソリボソリとしゃべる声。「いやあ、まいりましたよ。家は全壊ですよ。まさかとはおもっていたんだけど、
耐震診断でもしときゃっよかったななんて後悔してますよ」なんて話。
「寝たきりのじいさんがいるんだけど、日が落ちるまでに探し出せなかったんですよ、、、明るくなったら総出で探しますがね、、、年が年だし、、なんとかがんばってくれてればいいんですかがね、、、」
景気の悪い話が続く。「もう、どうしたらいんだよっ!俺わかんねぇよっ!」と何がわかんないのか?わからないけれど、泣きそうな声で、拳を地面に叩きつけてる若い男の子。どう見ても16歳くらい。足元にタバコの吸殻が散らばっている。
親とはぐれたか?彼女が死んだか?どっちにしろ、
まだガキってことでしょう。わかんないってことないよね?生きましょうよ?ねぇ?決して話しかけなかったけれど、色々な話が聞けた。景気はどん底に悪そうだ。はぁ〜〜。ゆっくりと一服しすぎた、気がついたら
フィルターの嫌なにおい。あわててもみ消す。ついでに携帯を見る。相変わらず圏外。時刻は午前3時45分。東京の日の出は何時なんだろうか?今朝の新聞は読めないんだな、と意味もなく空を見上げた。
266地震厨房 ◆ikExn4d2/Y :2005/11/15(火) 19:59:24 ID:F8sawzyr
今朝の地震は本当に驚きましたね。まさかとは思いましたがw
津波注意報のニュース見ながら
「これ、ネタに出来ないかな??」
と、>>264の黒猫さんとおんなじことを考えてましたw
不謹慎で申し訳ない・・・。


267黒猫:2005/11/15(火) 22:38:22 ID:vkBDBZlR
アハハ。地震厨房さんもですか?
本当に不謹慎でいけないとわかりつつも、、ですね。
しかし、一度も、お話したことないですね?
本当はおいくつなんですか?聞いちゃいけないのかな?
私は、あのくだらない小説のまんまなんですww。
友達の名前を、多少いじってるだけで。
いつか、誰かが、わかってしまうのでは?なんて、いらん心配していますw。
オフとかできたら、たのしいなぁ〜〜なんてね!どうでしょ?みなさん?
生黒猫見たくないですか?と言ってみるテスト。
268M7.74:2005/11/15(火) 22:57:39 ID:uAoUsAqX
同じ主婦なんで、黒猫さんに親近感が沸きます。
でも私にはあんなに素晴らしい小説を書くことなんてできず、ただただ「すごいな」って
感心するばかりですw

生黒猫見たいです。
会ったらいっぱい話したいこと、聞いて欲しいことありますよ。
これからも頑張ってくださいね。
269黒猫:2005/11/15(火) 23:19:51 ID:vkBDBZlR
>>268
同じ主婦さんですか!うれしいですね♪素晴らしい小説は言いすぎですがww。
この、くだらない話の中に、実は今の私の悩み事とかが反面教師的に入っていたりします。
どこがどうだかは言えないのですが、、
私も、聞いて欲しい事、話したいこと一杯あります。
そんな機会があったら、すごく楽しそうですよね?
なんて、2ちゃんではこんなことは無理なんだろうなぁ〜なんて、
でも、きっといつか、そんな出会いもあるかもしれません。
無理だと思ったら無理。出来ると思えば出来るってことですよね!
ありがとう!お互いがんばりましょう!
270M7.74:2005/11/15(火) 23:29:40 ID:j5uT3UsJ
黒猫さんもいかがですか?http://live18.2ch.net/test/read.cgi/eq/1131976681/l50
271黒猫:2005/11/16(水) 01:41:27 ID:mooToVXs
>>270 やってみましたが、、どうでしょ?
ここ見てくれてる人は、ある程度わかるでしょうが、知らないとねww。
誰か書いていましたが、ご近所とは言いません、せめて同じ沿線なら
飲みあかしたいですね。黒猫姉さんがおごりますわ。
272M7.74:2005/11/16(水) 02:39:42 ID:3soEQPcv
黒猫さんオフ会いいですね。
いやぁ、愛煙家の主婦仲間が欲しいと
思っていたのですよ。
あ、268さんではありません。
273M7.74:2005/11/16(水) 02:46:09 ID:3soEQPcv
>>272
訂正 
× あ、268さんではありません。
○ 私は、268さんではありません。
274M7.74:2005/11/16(水) 04:25:53 ID:Z3fw7SqF
厨な主婦を総称してチュプと言う。
余計な話持ち込んでんじゃねーよ
275M7.74:2005/11/16(水) 08:09:10 ID:70DobbrV
本当だよ、これだからチュプって・・・
鬼女板に(・∀・)カエレ!!
276黒猫:2005/11/16(水) 14:20:24 ID:mooToVXs
>>274
>>275
もうしわけありませんでした。
板違いですね。
次はちゃんと小説もどきに戻りますので
今回は勘弁してやってください。
277一人で頑張る!29:2005/11/16(水) 15:02:22 ID:t6KCvp5I
酒巻と智子の声にいち早く反応したのは大田だった。亮子は「何〜?」と振り向いている。
そこからの場面はスローモーションのフィルムを見ているかのようだった。
大きな外壁のかけらは亮子目掛けて落ちていく。亮子はまだ気がついていない。
外壁の小さなかけらが自分に当たって初めて亮子は自分に迫る危機に気がついたのか「キャー!!」っと悲鳴を上げた。
しかし気がつくには遅すぎた。もう逃げる間はない。
「亮子さん!!」と智子が叫んだその時、亮子を突き飛ばしたのは大田だった。
大田が亮子を突き飛ばしてすぐ、大きな外壁は土煙を上げながらズシンと音を立てて地面に落下した。
一部始終を目の当たりにして二人は思わず立ちすくんでしまい足が動かなかったが、
土煙がおさまり状況が確認できるくらいになってから我に返り、酒巻と智子は叫びながら走り寄った。
土煙がおさまった後の現場は先ほどまで道路だった場所が瓦礫の山になっていた。
智子は足元から震えが起こるのを止められなかった。膝から下がガクガクして今にも崩れ落ちそうだった。
酒巻はそんな智子を支えながらも現場に近づく。智子の腰にまわされた酒巻の手からも振動が伝わる。酒巻も小さくだが震えている。
瓦礫のすぐ脇に亮子は倒れていた。智子は必死に亮子の名前を呼んだ。
あまりにも智子が亮子を揺さぶるので酒巻は「頭を打っているかもしれない。あまり揺らさないほうが良い」と言うと静かに亮子の左手を取ると脈を見ている。
先ほどまで緊張した面持ちだった酒巻の表情が穏やかになっていく。
「大丈夫だ。気を失っているだけみたいだ。」
智子も亮子の胸に耳を当てた。トクン・・・トクンと規則正しい音が聞こえる。
「本当だ・・・良かった・・・。」
智子はバッグから水を取り出すとハンカチに少しだけ含ませると亮子の頬や額に当てた。
程なくして亮子が目を覚ました。
「・・・智子さん・・・。」
起き上がろうとする亮子を酒巻が制する。
「頭を打ってるかもしれない。無理に起き上がらなくていい。」
亮子は頭に手を当てながら「大丈夫・・・。」と言うとゆっくりと起き上がった。
起き上がると痛みが走ったのか「痛ッ」っと後頭部を抑えた。
倒れた時に打ち付けたのか、後頭部から出血している。
とにかく止血しないといけないと思い智子は亮子の傷口にハンカチを当てて、自分のしていたスカーフを取ると頭に結びつけた。
亮子は智子にされるがままになっていた。
278一人で頑張る!30:2005/11/16(水) 15:29:57 ID:t6KCvp5I
とにかく亮子は怪我をしているものの命に別状はないようだ。智子はホッとした。
智子は手が震えてしまってスカーフが上手く結べない。何度も何度も試すが上手くいかない。
見かねた酒巻が智子にかわってスカーフを結んだ。
とりあえず手当ては終わった。智子は亮子に水を飲むようにすすめた。
智子からペットボトルを手渡されて一口飲んで、それまで口を開かなかった亮子がハッとなって言った。
「お・・・大田・・・太田さんは・・・?」
酒巻も智子もハッとなった。立ち上がろうとした亮子を酒巻は「ここに座ってなさい」というと、目の前に広がった瓦礫を見た。
智子も亮子が無事だったとわかって少しだけ落ち着いていたが大田が行方不明とわかってまた震えが止まらない。
ふらつく足元で瓦礫の周りを歩き回る。周囲をぐるりと見回しても大田の姿は見つからない。
「大田さん!太田さんどこ!?聞こえてたら返事をしてぇぇ!!」
亮子が叫ぶ、何度も何度も叫ぶ。そのうち涙声になって叫び声は声にならなくなり、小さな嗚咽に変わった。
酒巻も「大田さん!・・・太田さん!」と何回か叫んではサイレントタイムを設けて小さな音一つ逃すまいと耳をそばだてている。
智子は酒巻の邪魔にならない様に周りをうろつくのはやめて、手近にある動かせそうな瓦礫を車道側へ動かしてみた。
もしかしたら大田はこの瓦礫の下敷きに?!智子は嗚咽がこぼれそうになるのを抑えながらも懸命に瓦礫をどかした。
酒巻が何度か叫んだ後、智子側の瓦礫の下から携帯電話の着信音が鳴った。
「太田さん!!!!!」
智子は瓦礫をどかす手を早めた。早く!早く!もう大半の細かい瓦礫は撤去済みだ。
あとは男手が必要だ。「どいて」智子をやんわりと遠ざけると酒巻が渾身の力をこめて大きな瓦礫を勢い良くどかし始めた。
智子も酒巻の邪魔にならないように周りの自分が動かせる大きさの瓦礫をどかす。
あたりには放り投げ出される瓦礫のガツンガツンという音と大田の携帯の着信音だけが響いている。
一刻も早く大田を助け出さなければ。大田の携帯電話もいつ充電が切れるかわからない。
音がしなくなれば正確な位置はつかめなくなる。逸る気持ちを抑えながら瓦礫を一つ一つどかしていく。
泣き崩れていた亮子も走り寄ってきて「早く!!!早く!!!」と叫びながら瓦礫をどかしている。
瓦礫にはガラスや鉄骨も混じっており、3人は手を血まみれにしながら賢明に瓦礫を撤去し続けた。
15分も撤去し続けたであろうか、大田の携帯電話の着信音がクリアに聞こえ、携帯電話のライトが見えた。
279黒猫:2005/11/16(水) 15:48:12 ID:mooToVXs
きょろきょろしながら、陣地に戻る。「ありがとう!先に悪かったね〜次行っておいでよ!」かおりが「じあ、けーちゃんと行って来ていい??」と言いながら立ち上がる。
「いってらっさーい」二人連れ立って、行ってしまった。
「聞いてよ!今さぁ、あっちの裏の方で吸ってきたんだけどさ〜やっぱ、みんなひどい目にあってる感じ。じいさんが生き埋めになってるとかさ、家が全壊したとかさ、若い男の子が泣いてんのよ?
よっぽどなんかあったんだろうなぁ?って思わない?」ちーちゃんとすーさんに話しかける。
「でしょうね、私が歩いてきた範囲では、大きな火災も起こっていたし、寝たきりの人とかあれじゃあ逃げるに逃げられないんじゃないかな?と思ったよ。実際さ、道すがらでは、まだ家の中に赤ちゃんがぁ〜〜とか、
おばあさんがぁ〜〜とか、、、」と言って、すーさんがいったん言葉に詰まっている。
軽く咳払いをして続ける「消防なんか来ていないし、どの家の人も自分の家のことで必死で、、、手伝ってあげた人いるのかな?私も薄情だと思ったけれど、あの場をさっさと通り過ぎなけりゃ、私まで火災に巻き込まれてしまうって、、
怖くなるほどありえない地獄みたいな様相だったんだ」
続ける「できるだけそういう光景見たくないから、避けて通って、迂回迂回よ。帰るのに時間がかかった所以ね」と言って、ふぅ〜〜と深呼吸するすーさん。「しかたないでしょ、私も、避けて逃げると思う。もうさ、避難が完了していて、
誰かを助けようと現場に戻ったんじゃない限り、私にはできないよ。救助なんか」
と私。ちーちゃんが「まあ、俺も人の事はいえないよな〜俺は、学校に行こうと、駅に向かってる最中だったから、このへんのことしかわからないけど、かおりがいっていたように、駅からこっちに戻る道すがらは、ひどかった。
瓦礫を避けて、ただただ、家の方に戻ろうとしか考えられなかったし、途中で、知り合いに会っても
ただただ無事だったことを喜ぶ話しかできないまま、別れちゃったし、俺もいざとなるとなんにもできないしょうもない人間だなって思うよ」「そんなことないよ!」「私のこと、マンションから助け出してくれたのはちーちゃんとかおりじゃない?
かおりがちーちゃん連れてきてくれたとき、生き返った気がしたよ!ロープ投げてくれたじゃん?
食料だって、水だって受け止めてくれたじゃんね?じゃなけりゃ、私はいまだにあの崩壊寸前のマンションの中に一人ぼっちなんだよ」と、熱く言ってみた。「まあね、あれはさ、俺の住んでいるマンションでもあるし、黒猫が閉じ込められてて、
しかも、かおりが、ここで血眼になって知り合い探したり、情報収集したり、黒猫を救助するためにどうしたらいいか?
必死になってるところに居合わせたわけだから、そりゃあ、手伝うでしょ?だから褒めるならかおりだね。あいつの必死さが伝われば、誰もが手伝う気になるって」と、ちーちゃんは謙遜を言う。すーさんが「そうだね、かおりは、一番若いけれど、
友達とかすっごく大切にするもんね〜ちーちゃんが見た必死のかおりの姿は、簡単に目に浮かぶわ」
「だろ?すごい必死だったよ。なんか約束でもしたの?黒猫?」と今更、あの救出劇の舞台裏のお話ですか?って感じだったけど答える。「約束なんてしてないけど、暗くなる前には、戻ってくるからって言ってくれた、で、言葉通り、ちーちゃんまで連れて、
来てくれたんだよね、これが、かおりにとっての約束だったのかもしれないなぁ〜」
280黒猫:2005/11/16(水) 15:53:50 ID:mooToVXs
「かおりのことだから、そう言った以上は、女に二言はない!!って勢いだったんだと思うよ。実際すごいパワフルだったもん」
とその光景をを思い出したのか?ちーちゃんが少し笑った。「それにかおりの頼みなら誰もが聞いてあげたくなるよね、役得〜」とすーさん。
「そうなんだよ、人が次から次へと押しかけるこの学校のグランドでさ、入ってくる人入ってくる人、片っ端から捕まえて
ロープ持っていませんか?長くて丈夫なロープ!!って、ずっとやっていたんだって、で、そしたら、学校の関係者が、用具室に連れて行ってくれて、
あのロープをゲットしたんだってさ」「ふぇええ〜〜そんなに大変な思いして、、、かおりが戻ってきたら改めて御礼しなきゃ」と、居住まいを少し正して私は言った。
「私がマンションに閉じ込められたりしていなけりゃ、体育館のいいスペースを
確保したりする時間にあてられたのにね、ほんと、お礼言っても言い足りないなぁ〜」と、私達のこの寂しいスペースを見回しながら続けた。
「ここに比べたら、体育館のほうがいいのかもしれないけれど、、、私は、みんながいてくれるから、ここでも充分だよ、黒猫のおかげでブルーシートゲットできたことお忘れなく!」と、
すーさんがフォローしてくれる。「そうそう、体育館の中じゃ、火も炊けないし
黒猫は、食料だって、水だって持ち出してくれたじゃん?シートだってそう、すーさんの言うとおりだよ、こんな時は、誰が偉くって誰が偉くない、なんて問題じゃないと思うよ」と、
ちーちゃんまで言ってくれるなぁ〜。そこに、かおりとけーちゃんが戻ってきた。「たっだいま〜」「おかえり〜」やっぱりお礼言わなきゃ!「かおり〜〜ちょっと聞いたんだけど、私を助けるために、
相当色々がんばってくれたんだって?
ありがとう、他にしたい事あっただろうに、、、」と語尾を濁すと、明るい声でかおりが「普通だって!今思えば、もっと効率のいい方法があったんじゃないかなぁ?なんて思うくらい、
馬鹿みたいにロープさえあれば〜と思ってしただけのことだからねっ!気にしないでよ〜それに、ハシゴはちーちゃんが探し出してきたんだよ〜あれが無かったら、届かなかったじゃない?わたしだけじゃないよ、黒猫」
そうだ、いささか年季の入ったハシゴではあったけれど、あれがなけりゃ、4Fには届かなかった、、、「ちーちゃんもありがとう、、」また語尾が濁ってしまう。
どうしてはっきりとお礼が言えない?私の馬鹿!!「だからさ〜いいって、こんな話は、そのうち復興した時の、大武勇伝大会のネタにとっておこうよ」とちーちゃんが笑いながら言う。
「いいねぇ〜大武勇伝大会かぁ〜〜飲みまくろうぜっ!」と、明日にでもその飲み会が出来るんじゃないかと錯覚させるような声でけーちゃんが言った。ちらりと時間を見た。午前4時15分。
きっともうすぐ明るくなるに違いない。
281一人で頑張る!31:2005/11/16(水) 15:59:53 ID:t6KCvp5I
「大田さん!!!」
酒巻が大田の頭部分を覆っていた瓦礫を取り去ると、そこには血まみれの大田の顔があった。
目を閉じていたが、酒巻の呼びかけにゆっくりと目を開いた。
亮子が「大田さん、今助けるからね。まってて!!」と一生懸命声をかけている。
大田は「・・・亮子ちゃん・・・無事だったんだね・・・。」というと目だけで笑った。
亮子は大田に「太田さんもすぐにここから出して病院へ連れて行くからね。もう少しの辛抱だよ!頑張って!!」
と声をかけながら、大田の血まみれの顔をタオルで拭いている。
酒巻も智子も大田が生きているのを確認できて、安堵の声にならない声を発しながら、「今助けるよ」と大田に声をかけた。
大田は瞼を閉じて頷いた。名前を呼ぶとかすかに反応を示すが、顔を動かすことすら出来ない状態だった。
ある程度の一人で動かせる大きさの瓦礫は撤去した。酒巻は次の瓦礫を・・・と大田を中心にあたりを見渡すとあることに気がついた。
大田に覆いかぶさるようにのしかかっている外壁はかなり大きく鉄骨で繋がっていた。
さすがに人間の力では動かせる大きさではなさそうだ。試しに3人で持ち上げようとしたがびくともしない。
仕方ないので大田の体の両脇に転がっていた鉄骨を挟み、瓦礫がこれ以上大田をつぶさないように支えを入れ、
大田の下側の瓦礫を撤去して、大田を引っ張り出そうとした。瓦礫のいくつかには血がべっとりとついていた。
瓦礫が撤去されて大田の左半身が見えてきて酒巻は愕然とした。
大田の左手はありえない方向に曲がっており、骨折しているのは明らかだった。そして最悪なことに左下腹部には下の瓦礫から突き出した鉄骨が刺さっていて、その鉄骨は大田の上に覆いかぶさっている外壁の大きな瓦礫を中心から支えていた。
酒巻の手が止まったのを不審に思った智子も酒巻の手元を覗き込んで声を失った。
大田を救出するには鉄骨を切るものが必要だ。しかしこの場で鉄骨ごと抜けば出血多量で失血死してしまうことは目に見えていた。
それでも智子は瓦礫をどかすのをやめなかった。流れ落ちる汗を拭いもしなかった。
もしかしたら大田の下の瓦礫は動くかもしれない。そしたら瓦礫の中心にまた鉄骨を入れて支えにして大田に刺さった鉄骨のついた瓦礫ごと大田を助け出せるかもしれない、そう思ったからだ。
酒巻も懸命に瓦礫をどかしている。しかし運命は残酷で大田のはさまれている状況が見えてくれば来るほど救出が困難であると言う事実がつきつけられた。
大田に刺さっていた鉄骨の出ている瓦礫は横へも別の鉄骨が出ていて別の大田の足元の瓦礫と繋がっていた。しかもその瓦礫自体別の大きな瓦礫の下敷きになっている。
左側がダメなら右側だと言わんばかりにまた酒巻は必死に瓦礫をどかしている。
ようやっと大田の右上半身が見えてきた。右手は無事なのか携帯電話を握り締めていた。
282一人で頑張る!32:2005/11/16(水) 16:27:44 ID:t6KCvp5I
酒巻は覗き込むように大田の顔を見ると大田と目が合った。
「大丈夫だ。もうすぐここから出られるからな。」
酒巻はゆっくりと教え諭すように語り掛けた。すると大田が酒巻に携帯電話を押し付けた。
その行動に酒巻が戸惑っていると、大田は傷口が痛むのだろう、顔を歪めながら
「・・・もう俺は・・だめだと思う・・・。みんながここまで掘り起こしてくれるまでこれに遺書を残したんだ・・・。」
そう言うとゴハッと咳き込み大量の血を吐いた。酒巻が大田を注意深く見るとスーツの背中が赤く染まっている。
肺に何かが刺さっているのかもしれない。吐血の量だけでも相当量だ。
「何言っての?!頑張って!奥さんと子供さん、待ってるよ!!」
亮子は大田に泣きながら叫ぶように言い、必死にタオルで大田が吐き出した血液を拭いている。
「・・・自分の安全が確保されてからで構わない・・・よめさんに・・・届けてほしい・・・。」
そこまで言うとまた激しく咳き込み血を吐いた。亮子は大田の口からあふれ出る血液を両手で受け止めている。
これ以上の吐血は危険だと亮子の本能がそうさせるのかもしれない。しかし亮子の手から零れ落ちる血液を止めることもできない。
酒巻は静かに頷くと大田から携帯電話を受け取った。大田は視線だけで酒巻が携帯電話を受け取ったのを確認するとゆっくりと息を吐いた。
「・・・最後に・・・一目・・・会いたかったな・・・。」
そう言うと大田はゆっくりと瞼を閉じた。閉じた瞼からは大粒の涙が零れ落ち、頬を伝って落ちた。
酒巻は大田から受け取った携帯電話を操作すると家族が写っている写真を画面に表示させると大田に見せた。
大田は画面の光を瞼の裏側で感じて、ゆっくりと目を開くと携帯電話を見つめた。
「・・・二人とも・・・無事だといいな・・・。」
大田は肩で息をしながら写真を瞳に焼き付けるかのように見つめている。
「大丈夫だよ・・・家族はきっと大丈夫だ。・・・太田さんだってすぐに元気になって会えるさ」
酒巻は無理に笑顔を作ると大田に微笑みかけた。
亮子は「大田さん・・・太田さん・・・」とすがるように声をかけ続けている。
大田は静かに瞼を開くとそんな亮子に「泣くなよ・・・俺は大丈夫だから・・・」と小さく笑った。
その後すぐに大田は苦しそうにガハッと咳き込むとまた大量の血を吐き、苦しかったのだろう目を見開いてそのまま動かなくなった。
遠くで鐘の鳴る音が響いていた。
283地震小説(SF):2005/11/16(水) 17:30:53 ID:SKao0oIN
長い間避難生活は続く・・・
だんだん人が少なくなるのを悲しく思う・・
家族への携帯はもちろん通じず生存や死亡の情報も入ってこない・・
専用の小屋も造られていく・・・・・
年末の除夜の鐘・・・
新年の初詣・・・・
あの赤い空がでるまで俺・・いや関東人は全員普通に暮らしていた・・しかし・・
そして・・・復興したのは・・・(俺のマンションが)1月30日・・
そして周りの建物も復興するまで貰った非常食を食いつないだ・・
2月・・・・・
建ち始めてくる建物・・・
3月・・・・・
もうだいぶたったスーパーも戻ったので物を買いに行ったら人でごったがえしていた・・
と・・思ったら人が少ない・・当然である東京の人口は1200万人からたまたま
出かけていたり俺みたいに超耐震住宅にすんでいた者20万人しか生きていなかった・・
これからは・・1人で・・・・・
4月になるとだいぶも・の・は元通りになっていった・・東京に引っ越してきた
人でだいぶ人口も増えていった・・・・
2chによればあの地震の死者は3000万人だという・・・
284一人で頑張る!33:2005/11/16(水) 21:56:25 ID:t6KCvp5I
亮子は動かなくなった大田の頭をその腕に抱きしめながら何度も何度も叫ぶように名前を呼んだ。
しかし大田はピクリとも動かなかった。
亮子は「いやぁぁ・・・」と叫ぶとその場に崩れ落ちた。
酒巻は時計を見た、2時14分。そして大田の見開かれた目にそっと手を当てると瞼を閉じた。
今は静かな大田の顔を見つめ、酒巻は顔を歪めた。
智子は呆然と瓦礫の山を見つめていた。無意識に血まみれの手で握りこぶしを作っていた。
何も出来なかった・・・無力感だけが心を支配していた。
誰一人その場を動こうとするものはいなかった。その場に座り込みただボーっと大田のほうを見ている。
車道で消えかけているがまだ燃えている車の炎のパチパチと爆ぜる音が聞こえる。
・・・30分もたったであろうか、酒巻は意を決して「歩き出そう」と智子と亮子に声をかけたが亮子は「大田一人残して移動できない」と泣き叫んだ。
智子は大田の側を離れようとしない亮子の肩にそっと手をかけ、語り始めた。
「きっと・・・大田さんの奥さんは大田さんの帰りを待っているよ・・・。」
亮子はハッと顔を上げた。智子を見ると智子も相当泣いたのだろう目が赤い。煤で汚れた頬を何本も涙が伝った跡がある。
「・・・大田さんがいかに頑張っていたかを奥さんに伝えないと・・・。」
智子の目から涙が零れ落ちる。亮子は「ワァァ」っと智子にすがりつくように泣いた。
二人して小さな肩を震わせ、声を押し殺すように泣いた。どちらかの嗚咽が聞こえるたびに、どちらかを強く抱いた。
酒巻も二人からやや離れた所にいるがそんな二人を見て涙を流すのを隠さずにいる。暫く3人はそうして泣き続けた。
3時の鐘が遠くで聞こえる。抱き合ったまま泣き続けた二人もやがてお互いの顔を見つめあい、「頑張らないとね・・・。」と言えるまでになった。
智子の言葉に亮子も頷く。そんな二人を見て酒巻は大田に歩み寄るとスーツのポケットを探れるだけ探った。
ズボンのポケットにはお財布が、ジャケットの内ポケットにはパスケースが入っていた。裏を返すと家族3人が微笑んでいる写真が入っていた。
酒巻はこみ上げる感情を抑えながら、大田の上半身を少し起こすと首から提げていたIDをケースごと取った。
それらの遺品となってしまった品々を亮子の傍らに転がっていた大田のカバンに入れた。
大田から預かった携帯電話だけは酒巻のスーツのジャケットの内ポケットにしまった。
酒巻の準備が整った・・・といった雰囲気を二人は感じ取り、立ち上がった。
285一人で頑張る!34:2005/11/16(水) 22:23:14 ID:t6KCvp5I
酒巻は大田のカバンを手に持とうとしたがそれはかなりの痛みを伴う行為だった。
思わず手を見ると血まみれで沢山の切り傷が出来ていた。それは智子も亮子も同じだった。
自分の通勤バックは襷がけのカバンなので両手が空いているが、大田のカバンは肩がけなどはついていないカバンだった。
手がふさがってしまうのは今の状況では怖い。しかも傷がまだ生生しく、痛みが強いのでもって歩くことは不可能だ。
仕方なく酒巻は大田のネクタイを取り、それを自分のカバンの紐に結び、もう片方を手繰り寄せブラブラしないようにしっかりとカバンのもち手に結びつけた。
智子もあたりを見回して何か落ちているものなどはないか確認したが特に何もないようだった。
亮子は大田の頬を優しく撫でると「必ず迎えに来るからね」と言い、大田の免許書から書き写した連絡先と自分の連絡先を書き記したメモを背広のポケットにしまった。
智子も酒巻も大田に「必ず奥さんに大田さんの伝言を伝えるね。」「携帯電話は必ず渡すから」と口々に言っては手を合わせた。
3人は名残惜しそうに誰も歩み出せなかったが、酒巻が「行こう」と言うとゆっくり躊躇いながらではあるが全員歩き始めた。
歩き始めてすぐに亮子は立ち止まり後ろを振り返った。大田の頭が見える。「ウウ」っと泣きながら智子に寄りかかった。
智子はそんな亮子を支えると、背中を優しくポンポンとさすった。
何も言わなくてもわかる。大田をこの場所に一人残していくのがたまらないのだ。
しかし今の状況では大田を連れて行くことは出来ない。
そして・・・どんなに辛くても待つ者がいる限り頑張って歩き続けなければならない。
それが残された生ある者の使命でもあるかのように。
亮子は智子の手の動きに合わせるように「ウン・・・ウン」と泣きながらも頷き、前を向いて再び歩き始めた。
結局大田の姿が見えなくなるまで3人は歩いては立ち止まり、また歩き、歩いては振り返る・・・を繰り返した。
振り返るたびに辛くなるだけだ、それは痛いほどにわかっていた。後ろ髪引かれる思いは皆一緒なのだ。
それでも振り返らずにはいられなかった。もうかなり歩いてきた。大田の姿は遠くにかすむようにしか見えない。
誰もが心の中で「必ず迎えに来るから」と何度も何度も自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
悲しみに暮れていても必ずいつかは笑顔になれる。明けない夜はないのだから・・・。
286M7.74:2005/11/17(木) 00:43:29 ID:Y3M/KZTw
大田さん・・・
泣きそうになった。

一人で頑張るさんこれからも期待してます!
そして黒猫さん、続き楽しみにしてます!
287M7.74:2005/11/17(木) 20:02:26 ID:Quf8On8T
死守的保守!
288地震厨房 ◆ikExn4d2/Y :2005/11/18(金) 19:53:16 ID:DgtepzYQ
体育館の片隅で、スクールバッグにさっきもらったばかりの
ペットボトルとカンパンをせっせとつめる。
昨日に増して避難して来る人の数は増えているようだった。
人と人との間を縫うようにして移動する。

「あの」
僕は、昨日知り合ったおばさんに声を掛けた。
「・・・あの、もう、僕、帰ります。色々お世話になりました。」
まるで友人の家に遊びに行ったときの帰り際のようなセリフだった。
「やあね、私は何にもしてあげられなかったじゃない。お世話になりました、なんて。」
「いや、でも、昨日は心細かったんで、お話しできて嬉しかったです。」
「それは私も同じよ。ありがとうね。」
そういうと、彼女は微笑んだ。母さんとそっくりな笑顔で。
彼女の下の息子が、きょとんとした顔で僕の顔をまじまじと見ている。
「・・・じゃあ、気をつけて帰りなさいね。しっかりね。
お家は遠いみたいだから、無理しないで。」
「はい。」
「ほら、ショウ、お兄さんにさようならして。」

ショウと呼ばれたその少年は、僕に小さく「さようなら」と言った。
「さよなら。」僕もそれに答えた。

僕は体育館を出た。

289地震厨房 ◆ikExn4d2/Y
ホールには、昨日よりもっと沢山の人が詰め掛けていた。
昨日の警察官のおじさんがその人たちを整理していた。
僕は簡単に挨拶をした。
「君の後輩だけど、この避難所にも避難していないみたいだし、
遺体も見つかっていない。役所の人がこの辺りの避難所や臨時遺体安置所
に問い合わせたけど、見つからなかった。」
「有難うございます。わかりました。」
「もう、家に帰るのかい?もう大丈夫なのか?」
「はい、一晩寝たんで・・・だいぶ、楽になりました。」
「そうか・・・。気をつけて帰るんだよ。後輩君、見つかったら可能な限り
連絡するから。」

僕はおじさんにお礼を言った。おまわりさんは昨日、寝ていないようだった。

ここにいたひとたちは、おまわりさんも、おばさんも、役所の人も、ボランティアの人も
みな一様に、目の下にうっすらとくまを作っていた。

それは皆が今まで生き延びてきた証。
きっと、後輩も同じようにくまをつくって、僕のことを心配しているだろう。
母も、父も、皆疲れきったカオで待っていてくれているだろう。
皆生き延びてる。絶対。

僕はおまわりさんにさようならを言った。
後ろを振り返って、鞄をもういちど背負いなおし、すっかり汚れた靴のひもを結びなおした。

そして、僕は出発した。

避難所の外に出てすぐに、斜めになったカーブミラーを見たとき、僕は気付いた。
僕にも、生き延びてきた証が、目の下ににじみ出ていることに。