【正規】スマトラ島沖巨大地震Part12

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■ 『オランダ・ハーグより』 春 具               第106回
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「カオラックのひとたち」

 インドネシア一帯を襲った津波からほぼ2週間あまりが過ぎました。わたくしども
も知っているハーグのアメリカンスクールの先生がクリスマス休暇に夫婦でタイのカ
オラックに旅行に行き、そこで津波にあった。かろうじて戻ってきた彼女が同僚・友
人に宛てたメールが我が家にも届きました。アルレット・ステイプという中学生のク
ラスの担任で、ほかにもESL(English for Second Language )を受け持っている
先生です。ご主人のトムはバンジョーを弾く。「日本にも行ったことがあるよ」と話
す気のいい夫婦であります。以下はその彼女からのメールです。許可をもらって訳し
てみました。


   わたしたちはプーケットの北にあるカオラック(一番被害の大きかったリゾー
  トである)にバンガローを借りていた。バンガローは丘の中腹にあり、ホテルは
  その上にあった。

   あの朝早くに音響とともに建物が揺れ、起こされたわたしたちはタイではこん
  な早くから工事の仕事を始めるのかと文句を言ったものの、時差のせいでまた眠
  りに引き込まれた。

   ようやく10時ごろ起きて上のホテルまで朝食に行くと、テラスから一望の海
  がずっと沖まで水が引いていた。ひとびとはそれぞれに沖のほうまででて貝殻を
  拾ったりジョギングをしたり、浅瀬を楽しんでいた。

   けれども夫は数年カリフォルニアのビーチに住んでいたことがあり、この景色
  はすこしおかしいよと言う。どんなに引き潮でもこんなに水が引くことはないと
  いうのだ。

   とみるまに沖合いから津波の第一弾が向かってくるのが水平線にみえた。

   夫はわたしの腕をつかみ、走り出した。ホテルの食堂は丘の上にあったが、わ
  たしたちはホテルを出てさらに上のほうまで走った。こんなに走ったことはない。
  わたしは息も絶え絶えになって後ろを振り向くことすらできなかったが、高い波
  はビーチを越え、ホテルをそのまま襲い尽くしてわたしたちの足元までやってき
  た。津波の音は、離陸する飛行機の真下にいるかのような凄まじい轟音だった。

   丘の上でわたしたちはイングリッド、マルレーン、ニーナという3人のドイツ
  人とリサという8歳のオーストリアの少女と一緒になった。

   高波が引いたあと、わたしたちはホテルまで戻ってみた。ロビーやフロント、
  ラウンジ、レストランはえぐられたようにゆがみ、波に巻き込まれた家具やソ
  ファーに叩きつけられたのだろう、ぐったりと倒れている人々は血まみれだった。