注意・このスレはあくまで2次創作であり、本編作品等との関連性はありません。
また、貴方のお気に入りキャラが敗北したり、死亡したり、酷い目にあったりする可能性があります。
加えて、スレの性質上ネタバレを多く含んでいます。
以上の点に留意の上、閲覧してください。
【外部リンク】
ロボ・サイボーグキャラ バトルロワイアル掲示板(したらば)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/10691/ まとめサイト
http://www39.atwiki.jp/roborowa/pages/1.html 【基本ルール】
49体(見せしめを含むと50体)のロボット・サイボーグが最後の1体となるまで互いに戦闘を行い、破壊しあう。
最後の1体となった「優勝者」のみ、元の世界へ帰還できる。
また、参加者には「優勝者は自分の望みを叶えてもらうことができる」と伝えられている。
参加者間でのやりとりに反則はない。
参加者全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
3/5【仮面ライダーSPIRITS】○本郷猛/○風見志郎/○神敬介/●城茂/●村雨良
3/5【魔法少女リリカルなのはStrikerS】○スバル・ナカジマ/○ギンガ・ナカジマ/○チンク/●セイン/●ノーヴェ
3/4【からくりサーカス】○フランシーヌ人形/○コロンビーヌ/●パンタローネ/○アルレッキーノ
2/2【ロックマンXシリーズ】○エックス/○ゼロ
2/2【ターミネーター2】○T-800/○T-1000
1/2【攻殻機動隊】○草薙素子/●タチコマ
2/2【サイボーグクロちゃん】○クロ/○ミー
2/2【ToHeart】●マルチ/●セリオ
2/2【ザ・ドラえもんズ】●ドラ・ザ・キッド/●王ドラ
1/2【マルドゥックシリーズ】●ルーン・バロット/○ディムズデイル・ボイルド
2/2【パワポケシリーズ】○灰原/○広川武美
0/1【ロックマンシリーズ】●ロックマン
0/1【ジョジョの奇妙な冒険】●ルドル・フォン・シュトロハイム
0/1【魁!!クロマティ高校】●メカ沢新一
1/1【勇者王ガオガイガー】○獅子王凱
0/1【魔法先生ネギま!】●絡繰茶々丸
1/1【封神演義】○ナタク
0/1【Dr.スランプ】●則巻アラレ
0/1【VOCALOID2】●初音ミク
0/1【クロノトリガー】●ロボ
0/1【サイボーグ009】●009(島村ジョー)
0/1【THEビッグオー】●R・ドロシー・ウェインライト
1/1【スーパーロボット大戦シリーズ】○ラミア・ラヴレス
0/1【ゼノサーガシリーズ】●KOS-MOS
1/1【人造人間キカイダー】○ハカイダー
1/1【仮面ライダーZO】○ドラス
1/1【ビーストウォーズ超生命体トランスフォーマー】○メガトロン
1/1【SoltyRei】○ソルティ・レヴァント
1/1【メタルギアソリッド】○グレイ・フォックス
0/1【PLUTO】●ゲジヒト
0/1【究極超人あ〜る】●R・田中一郎
27/50
【参加者の持ち物】
・スタート時、参加者がそれ以前に所有していた武器類、その他の所有品は没収されている。
・代わって、参加者にはそれぞれ1台ずつPDA(携帯情報端末)が支給される。
●PDA(携帯情報端末)の機能について
・機能は「マップ表示」「参加者名簿」「テキスト作成」「時計」「支給品転送」「支給品データファイル」の6種類。
「マップ表示」:ゲームの舞台となる会場のマップを表示。コンパスもあわせて表示される。
「参加者名簿」:ゲームの参加者となる49体の名称が記された名簿を表示する。
「テキスト作成」:テキストファイルを作成する。
「時計」:現在時刻を表示する。開催者側の指定する時刻はこれによって確認する。
「支給品転送」:開催者側から支給されたアイテムを手元に転送する。手元にあるアイテムを再転送することも可能(詳細は後述)。
「支給品データファイル」:開催者側から支給されたアイテムの使用説明書を閲覧する。
・入力はタッチパネル方式で、専用のペンが付属している。
・赤外線通信で、他のPDAとデータのやり取りが可能(ただし近距離に限る)。
・非常に頑強で、滅多なことで壊れることはない。
●支給品について
各参加者にはPDAと共に、「食料および水(エネルギー)」「懐中電灯」「ランダム支給品」が支給される。
これらはPDAの転送機能によって、参加者の手元に転送することができる。
「食料および水(エネルギー)」:各PDAにはその所有者となる参加者が登録されており、登録された参加者が必要とするタイプの食料またはエネルギーが転送される。
「懐中電灯」:暗視機能を持たない参加者が暗闇を照らすためのもの。
「ランダム支給品」:参加者ごとに何らかのアイテムが1〜3個、ランダムで支給される。
●支給品の再転送について
・転送によって一度手元に取り寄せた支給品は、再転送によって送り返すこともできる。
・再転送には、各支給品のIDをPDAで読み取って登録することが必要。
一度登録した支給品は、自由に転送・逆転送が可能である。
なお、本人のランダム支給品のIDは初めから登録されている。
・支給品以外の物体の転送は不可能。
【内蔵武器制限】
・参加者のうち、身体に武器を内蔵・収納している者に関しては、取り外し可能なもののみ没収。
(例:仮面ライダーXのライドル、ゼロのゼットセイバー等)
・取り外し不可の内蔵武器は没収対象とならないが、威力等の制限を受ける場合もある。
(例:シュトロハイムの機関砲、ロックマンのロックバスター等)
【能力制限について】
・参加者のパワー・スピードといった基本スペック、および内蔵武器等の威力には適宜制限が加えられている。
「序列は変わらないが、上下の差はある程度まで縮まっている」ものと考えること。
・各参加者固有の能力/機能についても、効果時間・効果範囲等の制限が加えられる(もしくは使用を禁じられる)場合がある。
※制限の詳細は書き手諸氏の裁量に委ねられていますが、制限の度合等が不当(有利すぎる、または不利すぎる)と考えられる場合、
修正・NG議論の対象となる可能性もありますので、ご了承下さい。
【マップについて】
・4基の独立したコロニーが通路によって接続されている構造。
・コロニー内は立体映像により人工の空が投影され、朝・昼・夜といった時間の変化が反映されている。
・コロニーおよび連絡通路の外壁は非常に強固であり、破壊は基本的に不可能。
・会場全域に常時ジャミングが張られており、各種遠隔通信は使用不可(ただしランダム支給品を用いた通信に関してはこの限りではない)。
・各コロニーには飛行場があり、そこでシャトルに搭乗することで他のコロニーに直接移動できる。
シャトルは自動操縦で、航路は他3コロニー飛行場行きで固定。
・マップは縦横の境界線によって1km四方のエリアに区分される。エリアは8×8、計64存在する。
全体図
ttp://www.youlost.mine.nu/upload/data/up001000.jpg
【放送および禁止エリアについて】
・6時間毎(0:00、6:00.12:00、18:00)に開催者によって放送が行われ、禁止エリアと死亡者、現時点での生存者数が発表される。
・禁止エリアは放送毎に3エリアずつ指定される。
・発表された禁止エリアは、放送から1時間後、3時間後、5時間に1エリアずつ発効する。
・禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。
【作中での時間表記】(0時スタート)
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
【予約に関してのルール】
・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行う。
・予約期間は基本的に三日。
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』
NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(既に死んだはずのキャラが普通に登場している等)。
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)。
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。
上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・修正要求ではない批判意見などを元にSSを修正するかどうかは書き手の自由です。
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの一時投下スレにうpしてください。
・自信がなかったら先に一時投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない一時投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
その際は必ずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、スレには色々な情報があります。
・『展開のための展開』はNG
キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効
携帯からPCに変えるだけでも違います
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、ドラえもん(クレヨンしんちゃんも可)を見てマターリしてください。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。
【議論の時の心得】
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
程度によっては議論スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。
前スレ
ロボ・サイボーグキャラロワイヤルpart7
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1221220638/
スレたてもつ
1oつ
>>1乙!
そして、光太郎自重しろww お前は参加者じゃないだろうwww
某燻し銀「さぁ、光太郎。英雄戦記に帰ろう」
ふと思った。今年中には二人減って、参加者半分になっちゃうんじゃないかと。
あと、生存参加者の50%ぐらいマーダーじゃね?
マーダー生存率高すぎだろJK
今まで死んだマーダーは4人で
確信犯はパンタだけだし
アラレ、ジョーとあ〜るは勘違いだし
しかもマーダー増えるし
マーダーはいくらいても困らない。
まだ参加者の半分に届いていないし、いい感じだな。誤殺も多いし。
マーダーとマーダーがぶつかればあっという間に減るしね
そろそろマーダーも死んでいく時期か……
よし、ギンガだな。
展開予想はやめようぜー
次は誰がマーダーにころされるんだろうか?
>>19 ナメた事言ってんじゃねーよカス
なのはアンチはアンチスレに逝ってこい
極端に固まってるか超単独行動かの2択なのが意外と書く上できついところだったけど、最近いい感じにバラけてきていいよね、本当に。
そういえば前の作品で
アルレさん「もうゲーム開始からだいぶたったし誰とも会ってない参加者なんていないよねー♪キャハハ」
少佐…
投下します。
おう、運がいいな
俺の支援を受けられるなんて
あんた幸せもんだぜ
支援の準備はできている!
東へ戻れと促すベルトコンベアは少女の妨げにはならず、少女は雪原エリアまで来ていた。
マップで言うところのB−1、鉱山の端を滑るかのように器用に疾走する。
既に聞き取ることなど不可能な距離まで来ているというのに、少女は脳内でリピートし続ける銃声に怯えながらライディング・ボードを駆動させる。
戦闘の邪魔にならないよう適度な長さに整えられた青い髪は、流れる汗のせいで額に張り付いている。
赤黒い傷口を晒す肩口より先がない右腕、焼き切られたがゆえに出血していないのは不幸中の幸いか。
少女の名、スバル・ナカジマ。かつて正義を志していた――否、現在も正義に身を任す少女。
シグマに集められた参加者は全てが機械、姿は違えどこれまで見てきたガジェットと同じで意思など持ち得ないただの破壊者。だから、破壊せねばならない。
少女は現在も正義の道を往かんとしていた。
彼女にとって、集められた者達は意思を持たぬ存在でなければならなかった。
既に破壊した二体が意思を持っていたならば、彼女は『機械を破壊したスバル・ナカジマ』でなく『人殺しのスバル・ナカジマ』に成り果てる。
心の奥底でそれを理解しているスバルは、その事実から目を背けようとする。
元より襲い掛かってきたのは、相手の方。
たとえ彼等が意思を持っていたところで、正当防衛だと言い張って何ら問題はなさそうなものだが、根幹が善人であるために彼女はその道を選べない。
何か行動をしていなければ、過ちに気付いてしまいそうな自分を無意識に恐れながら、スバルはがむしゃらに移動し続ける。
彼女は気付かない。
闇雲に駆け抜けているつもりで、マルチとT-1000を粉砕した南方へと向かうのを無意識に拒否している自分自身に。
◇ ◇ ◇
ややあって、スバルは軍事基地へと到着する。
最初に入り込んだビルのグランドフロアには、幾つものレーザー痕が刻み込まれている。
明らかに、この場所が戦場となったことを示している。
もしかしたら、この中に破壊するべき機械が隠れているかもしれない。
そのビジョンを思い描いただけで、喘息を患っているかのようにスバルの呼吸ペースが乱れる。明らかな呼吸過多。
だが、何としても破壊せねばならない。
数刻というにはあまりにも長すぎる時間をかけながら、呼気を整えて覚悟を決めるスバル、拳を握ろうとして否が応にも右腕の喪失を思い知らされる。
さすが軍事基地と言うべきか、床に落ちていた軍用双眼鏡を手にしてスバルは潜んでいる参加者を探す。
またしても、彼女は気付かない。
無自覚のうちに、彼女自身が『有無を言わさずに襲い掛かってくる相手』を求めていることに。
強引に記憶の片隅へと追いやっているT-800やタチコマのような存在を目にすれば、自身が破壊した二体にも意思があったのではないかとの疑念をどうしても抱いてしまうから。
まずグランドフロアをゆっくりと見て回るスバル。
彼女以外に誰もいないのだから当然といえば当然だが、双眼鏡を通したところでスバルの瞳に参加者は誰一人として映らなかった。
スバルが1stフロアへと昇ろうとした時、静寂が立ち込めていたビルにコール音が響き渡る。
電話の主は、ネコ型サイボーグのクロ。
彼は仲間を求めて、あらゆる施設へと電話をかけまくっていたのだ。そりゃあ、もうひたすらに。まあ、殆どが通話状態に至らなかったのだが……そこはご愛嬌である。
さて、その突如鳴り出したコール音に、スバルは思案を巡らせる。
スバルがビルに入ってから、クロの電話まで五分と少し。あまりにもタイミングがよすぎる。
どこから電話をかけているのかは、分からないが……
スバルがビルに踏み込んで『すぐ』に、多数ある施設の中から『ちょうど軍事基地』をチョイスする。
そんな都合のいい話があり得るであろうか? いいや、あるはずがない。
実際には、本当に偶然であるのだが、現在のスバルにそれを知る由はない。
ゆえに、スバルの想像はあらぬ方向へと誇大化していく。リミッターとなってくれたであろう仲間は、ここにはいない。
では、どうして有り得ないはずの現象が起こっているのか。
熟考の末、スバルが導き出した答え――『電話の主に全て見られていた』。
全ての機械を破壊して、シグマの企みを破壊しようとしている自分。
その自分をどこかから見ていた者がいる。そして、自分にコンタクトを取ろうとしている。
もしや、自分以外にも同じことを目的としている参加者がいるのだろうか?
参加者の中に意思を持つものがいれば、自分が人殺しとなってしまった可能性も生まれる。
しかし一瞬だが、スバルはそんなことさえ忘れて、仲間になってくれそうな者の存在に手放しで喜んでしまった。
が、スバルは気付く。
なんで直接面会せずに、電話などという七面倒な手段を取ったのか。志しを同じくするならば、会いに来ればいい。
だいたい、相手は自分をどこから見ているのか。こちらは双眼鏡を持っているのに、姿を捉えることすら出来なかった。
何らかの方法で、相手は自分を見張っている。
どうやって? 双眼鏡でも見つからない距離から、どうやって見ている?
発信機でもつけられていた? いや、たとえドラスであろうと、そんなことをやれば気付いていた。隙などなかっ――あった。
シグマは体内に爆弾を仕込んだと言っていた。それと一緒に発信機を埋め込まれていても、何らおかしくはない。
ということは、電話の主はシグマと内通している? バカな、なんで、どうして?
全ての参加者はシグマと内通している? ボブおじさんも、タチコマも、ノーヴェの偽者も、チンクの偽者も、まだ見ぬ名簿に『ギンガ・ナカジマ』と書かれた存在も。
ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえて欲しくない――――しかし、それ以外考えられない。ちょうど電話がかかってきた説明がつかない。
しえん
全員がシグマの作り上げたガジェットドローンの亜種? 断定は出来ないが、十分考えられる。
となれば、電話の主は?
鳴り続けるコール音。その都度、スバルの胸の中に生まれた恐怖心が増幅していく。
「う――ぁ、――――い、ゃああああぁぁぁぁぁあああああぁああっ」
みっともない声をあげて、恥も外見もなくスバルは逃げ出した。
ライディング・ボードに飛び乗って、ビルから飛び出す。
全てを敵と見なして来た道を戻っていくスバルは、もはや誰も信じないと決意を固めていた。
◇ ◇ ◇
結局、E−1へと帰還してしまったスバル。
誰も信じはしないと決めていながらも、ビルの屋上にタチコマが戻っていないのを見て、スバルは歯を軋ませた。
全ての機械を破壊するのなら、どの方向へ行こうと同じこと。
だが、何故かスバルはスクラップ工場へと向かうのは嫌だった。
彼女は否定するだろうが、もう一度タチコマと出会って彼を破壊するのに抵抗があったのかもしれない。
左手に携えた双眼鏡でちょくちょく周囲を確認しながら、ライディング・ボードに乗って南下していくスバル。
四度目に双眼鏡を瞼に押し付けた時、スバルの瞳に奇妙な光景が映る。
宙に浮かんだまま静止している、白い長毛種の巨大な犬。
ぎょっとして、双眼鏡の角度を下げるスバル。
新たに視界に入るは、赤い髪の少年。全身に刻まれた傷痕と火傷の痕を見る限り、明らかに機械ではなく人体。
白い犬に乗って飛行する、赤い髪の少年。スバルと同じく右手を喪っている。そして傷痕を見る限り、
スバルは、自身の心臓の高鳴りを感じずにはいられなかった。
周り全てが機械と思いきや、ここに来て生体パーツを含んだ少年が現れた。すぐにでも駆け寄りたい。
スバルは殺人鬼とならぬために無意識のうちに意思持たぬ機械を求める自分と、生体パーツを含んだ少年を見て歓喜した自分の間の矛盾に気付かない。
ライディング・ボードを加速させようとするが、焦りすぎてうまくいかない。
その間も、スバルは双眼鏡を覗き込んだまま。
支援
そして――――予想だにしない光景が、スバルの前に広がった。
右手を電柱に叩きつける少年。暫しの後、伐採される樹木のように倒れる電柱。
何度も殴ったワケではない。少年は、たったの一度で電柱を倒壊させたのだ。
何も使わずに、素手で、何らかの能力を行使したようにも見えなかった。
自分には到底できないことをやってのけた少年に、スバルは驚愕。
倒れた電柱の方へと双眼鏡を動かすと、そこには二体の残骸――いや、傷を見る限りは片方は残骸ではなく死体。
電柱が圧し掛かってきた衝撃で、残骸からはオイルが、死体から血液が溢れ出している。
そのあまりの有様に、スバルはライディング・ボードから滑り落ちて地べたにへたり込む
一方、少年は他の奴がどうなろうと知ったことかとばかりに、いつしか手にしていたマシンガンを電柱へと向けて発砲。
口角を吊り上げながらひたすらに電柱を穿ち続け、ついに電柱は塵埃と成り果てる。
震えるあごを止めることも出来ず、歯が接触する度にかちかちと音を奏でながらも、スバルは双眼鏡でそれをずっと見続けていた。
粉塵に覆われる死体と残骸を前に、満足気に微笑む少年――少なくともスバルにはそう見えた――は、犬に跨って東へと飛び立っていった。
誰もいなくなったというのに、スバルは声をあげることすらも叶わない状態で、ただ茫然自失。
◇ ◇ ◇
ナタクが飛び去ってから、優に一時間は経とうとしている。
工業地区に似合わぬ静寂の中で、彼女の脳だけがいやに冷静に事態を認識していた。
――この壊し合いの参加者全てが、ただの機械ではなかった。
さっきの少年は、傷痕から血を流していた。火傷の具合から見ても、明らかに生体パーツ。
考えてみれば、周り全部が機械でその中に自分だけ紛れ込んでいるというのも、おかしな話だったとスバルは自覚する。
……そして、ノーヴェやチンクが偽者だということもないだろうと、判断するスバル。
シグマが名簿に嘘を書く必要なんて、ありはしないのだから。全ては、自分がそう思いたかっただけのこと。
同じ理由で、スバルは本物のギンガもこの地にいることを認識。
落ち着いてきたスバルの頭脳が、答えを導き出す。
おそらくは、襲い掛かってきた少女のような生体パーツを含まない参加者も、自分のように生態パーツを含む参加者も『両方』いる。
――それがどうしたというのか。
確かに、マルチと名乗った緑色の少女型ロボットは、昆虫のような見た目の液体金属の塊は、問答無用で襲い掛かってきた。
彼女等は、確かにガジェットドローンと同種であったのだろう。
一方で、タチコマのように明らかに機械なフォルムでも、他者を気遣える参加者がいる。
ノーヴェと一緒にいた二体のロボットも、ドラスに騙されていただけでタチコマのような性格なのだろうか――考えて、スバルは彼らに己が行ったことを思い出して後悔する。
チンクと一緒に逃げた金髪の人にも、次に会ったら謝らねばならない――スバルは固く決意する。
生体パーツの有無は、信頼出来るか否かの判断材料にはなりえなかった。
抱いていた愚かな考えに、スバルは自らに呆れ返る。
――――しかし、である。
スバルの脳内に蘇るは、悪魔の微笑み。
レアメタルで構成されているという肉体を持つドラスは、確かに悪鬼であった。
次に先ほどの少年――ナタクの姿、スバルの頭にフラッシュバックする。
生体パーツが使われていても、彼のように物を破壊し他者を殺害する者がいる。
仮にもっと早く視線を移していれば、シュトロハイムとアラレはかなり前に機能停止していたとスバルも気づいただろうが……
生憎にも電柱が倒れて初めてシュトロハイムとアラレの存在に気づいたスバルは、彼等を『ナタクが殺した』と思い込んでいた。
ゆえに、スバルは覚悟を決める。
「止めなきゃ……」
立ち上がるスバル、その視線は既に後ろを向いてはいなかった。
既に自分は、二体壊している。
ガジェットドローンと同種の存在――スバルの中では――とはいえ、罪の意識にスバルは押し潰されそうになっている。
だからこそ、ナタクもドラスも――その他の他の参加者を襲う参加者も、全て自分が破壊する。
罪悪感に苛まれるのは、私だけでいい。
特に姉妹達には、絶対に背負い込ませるワケにはいかない。
タチコマがビルの屋上にいなかったのには、彼なりの理由があったのだろう。
探しているかもしれないと思うと、すぐに合流したいところではあるが――優先すべきは破壊。
決意新たに、左の拳を握り締めるスバル。
利き腕でもないのに、何故だかスバルにはいつもよりも篭められた力が強いように感じた。
ナタクを追おうと、ライディング・ボードに飛び乗るスバル。
この場所から東へと向かうのなら、傷の具合から考えても修理工場に向かったと考えるのが自然だ。
スバルは修理工場に向かおうと、意識を集中させ――
『――インフォメーションメッセージ』
PDAから流れ込んできた放送に出鼻を挫かれた。
そこで初めて、自分が長時間思考に耽っていたとスバルは気付いた。
とりあえず聞き終えてから向かおうと、スバルは放送に耳を傾ける。
やっと本物であったと理解して、信じようと決意した妹と仲間の死を彼女が知るまで――――あと寸刻。
【E−3 路上/一日目 昼(放送開始)】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:右腕が肩口からありません(出血はなし)、あちこちにトリモチ付着、罪の意識とそれ以上の決意
[装備]:滝和也のナックル@仮面ライダーSPIRITS、ライディング・ボード@リリカルなのはStrikerS、軍用双眼鏡@現地調達
[道具]:支給品一式、サブタンク(満タン)@ロックマンX、テキオー灯@ザ・ドラえもんズ、ナックルの弾薬(27/30発)@仮面ライダーSPIRITS
[思考・状況]
基本思考:他者を破壊しようとした参加者を破壊する。罪は自分だけが背負う。
1:放送を聴いてから、ナタク(名前は知らない)が向かったと思われる修理工場へと向かう。
2:一刻も早くドラスを探し出して破壊する。
3:T-800、タチコマ、ギンガ、ノーヴェ、チンク、ゼロ、メカ沢、ロボ(後ろの三名は名前を知らない)とは、いずれ合流する。
[備考]
※本編開終了後からの参加です。
※サブタンクは満タン状態です、使えばエネルギーの回復が可能です。
※テキオー灯は、一時間のみ効力持続。
一度使った者には、24時間経過しなければ使用不可能と制限されています。
※T-800の住む世界、スカイネット、T-1000に関する情報を得ました。
※T-800のことを、ボブと呼んでいます。
※T-800からの情報より、シグマの背後にはスカイネットがいるのではと考えています。
※ボイルドの脅威を認識しました。
※ドラスが自由に姿を変えられることを知りました。
※ナタクが、シュトロハイムとアラレを殺したものと思っています。
投下完了です。
誤字、脱字、その他アレ? と思う点ありましたら指摘してください。
投下乙です
彼女は一体なにと戦っているんだろう…
そしてライダー包囲網完成wおめでとうwwww
投下乙
スバルKOEEEEE!
ドラスに迫る危機、果たして面白s……げふんげふんw
GJ!
スバルったらまったく危険対主催になっちゃって
まるでなのはさんみたいだなあw
だが面白くなってきたぜ
投下乙です!
スバルも若干正気が戻ってきましたが、正気と狂気の板挟みで、限りなく不安定に……
それにしても、ニアミスに次ぐニアミスで自分をどんどん追い詰めていってしまうスバルの、明日はどっちだ!?
ところで、ライダー包囲網はいい加減自重しませんか? 偶然の連鎖にしても酷すぎるww
書き手の皆さんライダーっつーか風見・チンク・ドラスイヂメに精出しすぎワロタw
逆に、敬介と風見に不幸が集中しているのか、本郷さんはライダー包囲網を突破したな。
流石は本郷さん! 仮面ライダー1号に、俺は敬意を表するぞ!
……ハカイダーはともかく、修羅Xとのフラグがとても不安だがw
申し訳ありませんが、鬼【イレギュラー】に登場した支給品、ゼロバスターの説明を、
【ゼロバスター@ロックマンX】
X3までのゼロの主武装。X1ではエックスのアームパーツで強化されたバスターと同じデザインである。
赤いチャージショット、『ハイパーゼロブラスター』を発射可能になる。
以下に差し替えます。
ご迷惑おかけして、申し訳ありません。
投下します。
しつこく鳴り響いていた黒電話のコール音は、七度目から先がなかった/諦めた/ブチギレた。
ボイルドが冷却時間を認識してから十分経過、擬似重力の展開を試みる――不可能。冷却時間は未だ続いている。
以降十分経過ごとに、擬似重力の展開を試みる――三度の失敗を経た末に成功。
張り巡らされる強固な殻。周囲の瓦礫、その影響を受ける/あらぬ方向へ。
擬似重力の展開を行ってみて不可能だと理解してから、再度ボイルドが展開を試みるまでの時間は十分/五回とも同じ。
すなわち、展開を試みる限り冷却されないというワケではない。
理解したボイルド、展開に成功した擬似重力を最大出力=逆ダブルタイフーン/ハカイダーショット/タチコマの最期の攻撃を受けた時と同程度に。
四分を回った時点で加速度的に落ちていく出力、五分を前にして消失。
最大出力での擬似重力継続展開=冷却時間を早める/命取り。あまりにも短時間、されどボイルドは無感動/ある程度は予想済み。
ただ自身の中にリミットを正確に刻み込み、冷却時間の経過を待つ。
四十分が経過、擬似重力の展開を試みる――やはり不可能。冷却時間は、未だ続いている。
以降一分経過ごとに、擬似重力の展開を試みる――八度目にしてやっと成功。
擬似重力の殻が、ボイルドを包み込む。
冷却時間の長さ――四十七分から四十八分の間と、ボイルドは把握。
ボイルドの認識――可能ならば秒単位まで細かく知っておきたいところだが、ここまで掴んでおけば十分。
張り巡らされた擬似重力の殻を最硬の状態にする。
その状態を一分間保ってから、擬似重力を解除。それを繰り返す。
展開――解除、展開――解除、展開……――――――八セット終えたところで、ボイルドはその行為を打ち切る。
最大出力のまま維持した場合の限界=四分と五分の間を越える時間、最大出力で殻を張り巡らしていたがリミットは訪れない。
ボイルドの結論、擬似重力を使用して一定時間休息のペースを極力保つ。
ボイルドの疑問、最大出力でない場合に可能な展開維持期間。
これまでの戦闘を思い返す。
仮面ライダーV3との戦闘――制限に気付き、展開と解除を繰り返していた=参考になりえない。
ドラス、スバル、タチコマとの戦闘――常時展開していたが、最大出力を維持できるリミットよりも短時間=参考になりえない。
タチコマとの戦闘――対V3の時と同じ=参考になりえない。
この地に来てから半日足らず、その間の経験からボイルドはサンプルを捜し求め――そして、見つけ出す。
自転車でサイクロン号を追跡していた時――常時、擬似重力を展開していた=絶好のサンプル。
幾つものエリアを跨いだ追走劇を、ボイルドは思い返す。
あれに費やした時間は、少なく見積もっても三十分を下回りはしないだろう。
となれば、間隔を空けて飛来するナイフを反らし、自転車の体勢を持ち直す程度の擬似重力ならば、三十分以上は連続展開可能。
展開と解除を繰り返していた場合は、いつリミットが訪れるのか――――展開する際の出力により変化すると考えられるため、見極め不可。
とはいっても、ここまでかけられた制限を見極めることが出来た。これだけの情報があれば、ある程度は思い切った/引き際を心得た戦闘も可能となる。
そう、ボイルドは判断する。
ボイルドは、これからどうするかを考える。
かつての最優先――十代後半の少女、十代前半の少女、多脚戦車の追跡。
理由は、武器の回収。
だが、それはもはや現在の最優先ではない。
彼女等のチームは仲違いして、両者ともどこかへと消えた。
残された痕跡を発見してからかなりの時間が経ってしまい、もはや居所の推測もできない/行方知らず。
そうなれば、かつて痕跡を見つけたエリアE−1へと戻る意味もない。
となってしまえば、ボイルドに特に行く当てなどありはしない。
クロがいるという場所に向かってもいいが、結構な距離がある上にあんな辺鄙な所に長居するとも考えにくい。
記憶に残してあるこの地のマップを思い浮かべて、ボイルドはその中から目的地を選考する。
北か東――現在地が既にコロニーの端に近い/向かう意味がほぼ皆無/却下。
こうなれば、残りは二方向である。つまるところ、南か西。
西――どちらにせよマップの最北端ということに変わりはなく、軍事基地以外に目ぼしい施設はない上に、その軍事基地もかなりの遠方。
いや、スクラップ工場もあるにはあるが、参加者が群がるところは少し想像できない。潜むにしても、雪原などという目立つ場所を選ぶとは思えない。
となれば、南ということになる。
修理工場――肉体を損傷した者が集う。自然公園――潜むのに最適。
つまるところ、南下するのが最も賢いだろう。
歩みを進めるボイルド、そのスピードは決して速くはない。
しかし、確かに……そして力強く足を前後させていた。この壊し合いを虚無に返すために。
――――放送まで、あと数刻。
【G−2 路上/一日目 昼(放送寸前)】
【ディムズデイル・ボイルド@マルドゥックシリーズ】
[状態]:中程度の疲労、全身に中〜小程度のダメージ、胸部に中程度の打撲
[装備]:デザートイーグル(5/7)@魔法先生ネギま! 、弾倉(7/7)×1+(0/7)×1 (弾頭に魔法による特殊加工が施されています)
ハカイダーショット@人造人間キカイダー(11発消費)
[道具]:支給品一式、ネコミミとネコにゃん棒@究極超人あ〜る
ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス×2(チンクの支給品)
ドラスの腕、PDA×2(ボイルド、タチコマ)
[思考・状況]
基本:ウフコックを取り戻す
1:南下。
2:ウフコックを濫用させないため、参加者をすべて殺す。
3:バロットと接触する。死んでいる場合は、死体を確認する。
4:ウフコックがいないか参加者の支給品を確認する。
5:充実した人生を与えてくれそうな参加者と戦う。
6:クロとミーのコンビに興味あり。
[備考]
※ウフコックがこの場のどこかにいると結論付けています。
※ドラスの腕を武器として使うことを検討中
※“擬似重力(フロート)”を最大出力で展開し続けると、ある時急激に出力が落ち出し、一定時間使用が出来なくなります。
※上記の制限を認識しました。
※ミーへの伝言を預かりました。「さっさと帰らないと剛が飢え死ぬぞ」です。
※制限に関してある程度把握しました。
投下完了です。
誤字、脱字、その他アレ? と思う点ありましたら、指摘してください。
ボイルドの制限についても触れたので、意見の方ありましたらどちらもお願いします。
投下乙です!
無敵の防御に課せられた制限という足枷をも、慌てず冷静に把握し、自身の戦力として認識する……
ボイルドの恐ろしさを、改めて思い知ったぜ……そして、電話に出てあげようぜ! ぶちぎれたって分かってるんならさ!
そして、やっぱりお前もそっちに行くか! 修理工場は地獄だ……大混戦の予感がプンプンするぜ!
おお、ボイルドが実に淡々w
冷静に状況を見極めるボイルドが恐ろしいw
GJ!
ライダーオワタ
まぁ、スピード的には風見たちとはニアミスするか
逃げてきたときカチ会うほうが可能性高いな
投下乙!
おぉ、ボイルド……迫力が出てる。何か大きな事をやってくれそうで怖い!
ウブカタ文体を思わせる文章もまさにマルドゥックという感じがして、読み応えがありました。
そしてまたしてもあっちの方へ……が、頑張れ対主催達!w 希望はきっとあるw
あと、制限の方も特に問題なかったと思いますね。
GJ!!
仮投下スレに仮投下してきましたので、確認を願います。
特に指摘や致命的なミスが見つからなかった場合は、明日の22時頃に本投下します。
うーん、どうなんだろう。
ちょっと自分的には、あんまり……なんていうかそういうのは出したくないかも。
ですが、主催的にはあり、なのかな……
考察自体は納得なのですが、どこへでも行けるっていうのはちょっと便利すぎると思いますね。
投下します。
工業地区コロニーと自然公園コロニーを結ぶ幹線通路を目指し、コロンビーヌとメガトロンは足を進めていた。
コロンビーヌはタブバイクを所持していたが、巨大なメガトロンと二人乗りなどどだい無理な話であるわけで。今はPDAに戻してある。
とりあえずは協力関係にあるものの、両者とも優勝を目指しているのだ。
所持する情報を共有しようということで始まった談話であるが、互いの口から零れる言葉は何とも物騒なものであった。
やれ誤解を広めているだの、不意打ちしただの、何人殺しただの、交わされている会話はそういう内容のものである。
二人ともある程度言い尽くしたかなというところで、コロンビーヌは金色の髪を掻き揚げながら大きく溜息を吐いた。
「……で、あなたの本性を知っている参加者は誰だったかしら? 今度は、特徴も一緒にお願い」
「えーとだな……まずチンクっていうガキ、知ってんだろ? 最初の部屋で、チンク姉って呼ばれてたあいつ。
そんで、風見志朗っつう切れ長の目のスカした男だな。こいつは、クールぶってて気にいらねえタイプだ。俺様、こいつ嫌いだなー。
赤トンボみたいなのに変身して、それがもう強い。俺の策で撒いてやったがな! どんな策か聞きたいかァ〜?」
再び大きく息を吐いて、コロンビーヌは大きくズレかかった会話の筋を正す。
「確か他にもいたでしょう? そっちを先に話してちょうだい」
「あー、そうだったな。それに、腰までありそうな長髪に金色の鎧を着込んでる特撮野郎。ガイって呼ばれてたから、名簿の『獅子王凱』ってやつだろうな。
あと、黒ずくめの服を着てて、脳味噌剥き出しの黒い装甲を纏う形態に変身するハカイダー。
こいつらはヤバい。マジでヤバい。ハカイダーのパワーは、特撮野郎を地面に叩きつけてクレーターを作ったくらいだ。信じられるか!?
しかも特撮野郎は、それに耐えてハカイダーと戦いを続けて、挙句の果てに勝ちやがった。
こいつらは修理工場に向かったけど、もう極力触れないようにしよう。うん、是非ともそうしよう」
やれやれと言いたいのを堪えて、コロンビーヌは口を開いた。
顔に表れる残念な気持ちは隠しきれてはいないが、それも仕方あるまい。
「あなたと組んだのは、ハッキリ言って失敗だったかもしれないわねぇ……」
「なっ! 何を言い出す、コロンちゃん! 確かにコロンちゃんには及ばないけど、アラレってのを壊してるって言ったろう!?」
驚愕と焦りを露に、紫の巨体でコミカルに反応するメガトロン。
ちなみに彼がアラレを殺したというのは、根も葉もない嘘である。
コロンビーヌが既に三体壊していると聞いて、誇り高きデストロンの破壊大抵は『まだ誰も殺してません』なんて言い出せなかったのである。
……え? 何? 誇り高いのではなく、見栄っ張りなだけではないかって? ええ、そうとも言いますね。
まあ実際、アラレは彼の嘘が原因で死んだようなものではあるのだが。
コロンビーヌは三白眼気味に目を開いて、動揺するメガトロンを見つめる。
「そんなに沢山の相手……それも殆どが壊し合いを止めようとしている参加者に、性根がバレているなんて。
あなたと一緒にいる私を、もしも彼等が見たらどう思うのよ?」
「そりゃあ、この俺様の仲間だと……はッ!」
「今まで気付いてなかったワケ? 共闘宣言しておいてすぐ言うのもどうかと思うけれど、もしもの時はあなたに騙されてたことにするわよ?」
「そんな! いや、騙されてたと言って守られるポジションについて、背後から特撮野郎を攻撃してくれたり……そういうことだな!?」
「状況次第ね」
「そりゃあ、ないでしょ〜〜〜〜ッ!」
「これがコロニーを繋ぐ道路みたいね。早く行きましょう」
冷徹に言い放つコロンビーヌに、メガトロンは前のめりに倒れこんでオーバーなリアクションを取る。
しかし返ってきた言葉は、慰めでもツッコミですらなかった。
泣いてやるーなどと呟きながら、起き上がるメガトロン。その瞳の前にはカーブミラー。
車などが混雑してるわけでもなく、かつメガトロンの高身長である。
彼の視点からはかなり遠距離まで見ることができるその鏡には、走る男が映っていた。
黒いスーツに赤い装甲、点を突かんと額より生える大きな角、緑の複眼――仮面ライダーストロンガーの姿を模したT-1000。
その見た目からV3と同種のものと判断したメガトロンは、一気に回れ右。
そのままティラノサウルスに酷似した右腕をT-1000に向けて、ミサイルとレーザーを入り混ぜて射出する。
T-1000のいた場所には爆煙が経ち篭り、もはや状況は分からない。
だが、メガトロンはまだ撃ち続ける。適当な電柱にミサイルを当てて、耐え切れずに電柱が爆心地目掛けて倒れこむ。
もう二つほど電柱を倒して、やっとメガトロンは砲撃を打ち切る。
立ち込めていた砂煙が薄くなっていき、その場には電柱の残骸が残っているだけだということが明らかになる。
だが、彼にしては珍しくまだ油断することなく、右手を向けたままである。
倒したと思ったハカイダーが、瓦礫を持ち上げて反撃したのを覚えているからだ。
十秒、二十秒、三十秒……
いきなり背後に攻撃したと思ったら、急に静止したメガトロンを疑問に思い、コロンビーヌが声をかけるがメガトロンの返事はない。
三分が経過して、やっとメガトロンは右手を下げて、歓喜に満ちた声を上げた。
「ふははは、ついに! 苦節十二時間を前にして、やっと壊せたぞ! ザマァ見ろ、コンボイめ!!」
この場にいない宿敵を貶しつつ、一通り喜び終えたメガトロン。
そこで冷ややかな視線を流してくるコロンビーヌに気付き、メガトロンは彼女に経緯を説明する。
風見志朗の変身体に似たやつがいたから、不意打ちでぶち殺してやった――と。
それを聞いたコロンビーヌは、訝しげに首を傾ける。
「それはよかったけれど……あなた、アラレってロボットを壊してるのよね? ちょっと喜びすぎに見えるわねぇ」
軽く口角を吊り上げながら、コロンビーヌがメガトロンを見据える。
瞬間、メガトロンの時が止まった。
ヤッベ、どうにかアドリブで返さないとー! とか思案を巡らせていたメガトロンに、コロンビーヌは言葉を続ける。
「まあ、いいわ。相手を発見した途端に不意打ちに出るなんて、少し見直しちゃったわ」
「ははッ! そう褒められると照れるぜ、コロンちゃん」
高笑いしながらメガトロンは、先に幹線通路に入ったコロンビーヌを追いかける。
最高にご機嫌なメガトロンは気付いてない。
不意打ちによって修正される前の自分の信用が、ほぼ皆無に等しいほど下落していたことに。
【F−4 幹線通路/一日目 昼】
【コロンビーヌ@からくりサーカス】
[状態]:健康、気分高揚
[装備]:グラーフアイゼン(ハンマーフォルム)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:基本支給品一式×2、PDA(コロンビーヌ(通信機能付き)、パンタローネ、絡繰茶々丸(分割ファイル一つ))
不明支給品1〜5個(確認済み1〜5(銃はない)) 、 スタングレネード(3/3)
床屋セット(鋏、櫛、鏡) 開天珠@封神演義 たずね人ステッキ@ドラえもん 、アカネハウス11号@パワプロクンポケット8
補給装置@スーパーロボット大戦OG(4/5)、PDAの通信機能付加ソフト、タブバイク@ゼノサーガシリーズ
[思考]
基本:殺し合いに勝ち残り、優勝者の報酬として勝の下へ戻る
1:優勝するため他の参加者を殺す。ただし危なくなったら逃走を図る
2:『人間』が居なくなるまで、メガトロンと共闘。都合のいいときに切る。メガトロンの性根を知るものに会えば、騙されているふりをする。
3:アルレッキーノ、と協力出来るようなら協力する
4:もしアルレッキーのと自分が生き残った場合、自分を優勝させてもらうように懇願する
5:やっぱり人間は殺せない。人形は壊す。お人形みたいな人間も壊す。
[備考]
※参戦時期は死亡後です(原作40巻)
※フランシーヌ人形はサハラ編時の偽者だと確信しています
※全てのゾナハ蟲(コロンビーヌらが吐き出すものも)には以下の制限が掛かっています。
また会場の全域には十分なゾナハ蟲が漂っています。
1:外部には一切の害はありません(ゾナハ病の感染や機械類のダメージなど)
2:コロンビーヌが自分の武器として使用するのには問題なく使用できます
※ゾナハ蟲の制限にはまだ気付いていません
※グラーフアイゼンはシグマによりハンマーフォルムに固定されています
※タブバイクは飛行できません、他にも色々制限されています
※補給装置@スーパーロボット大戦OGは制限により、五回のみ補給が可能です
※二エリア以内なら、メガトロンのPDAと通信が可能です
【メガトロン@ビーストウォーズ】
[状態]:全身打撲、ダメージ中程度、エネルギー(96%)、弾薬(96%)、疲労小
[装備]:ハイパージャマー@スーパーロボット大戦OG
[道具]:PDA(メガトロン(通信機能付き))、草薙素子のスペア義体@攻殻機動隊S.A.C、ランダム支給品0〜1(確認済)
[思考・状況]
基本思考:優勝しサイバトロンの抹殺。その後シグマも倒す。
1:コロンビーヌと共闘。都合のいいときに切る。
2:優勝を目指す、自身による直接戦闘はしばらく避ける。しかし己の正体を知る者を殺せる状況なら、別。
3:チンク達へいつか復讐する
4:二度とハカイダー、仮面ライダーV3、凱に会いたくない。逃げる。
5:とりあえず、南下。弱者を狙う。
[備考]
※二エリア以内なら、コロンビーヌのPDAと通信が可能です
■
来た方向から、唐突に響く音。
間違うはずもない、アレは爆発音。
わざわざ爆弾を無駄にするとも思えないことから、戦闘中なのだろう。
……とんぼ返りするとしよう。
組めそうな相手の方につけばいいだけの話だ。
壊し合いに乗った者同士ならば、勝手に潰し合わせればいい。どちらかが残ったとしても、不意をついて排除する。
――そう決めたものの、既に勝敗は決まったようなものか。
ひたすらに同じ方向を撃ち続ける紫色のアンドロイドを見つつ、状況を分析する。
前しか見ていない紫色の方は勿論、紫色と組んでいると思われる少女のアンドロイドも、ブロック塀に身を隠した俺には気付いていない。
紫色の戦力――火力は言うまでもないが、真の恐怖はあの戦術を取れるだけの有り余る弾薬。正面から相手をすれば、近付くことさえ出来るかどうか。
紫色が攻撃を止めて数刻、紫色が勝鬨の声をあげる。
その内容から、あの紫色と少女は壊し合いに乗り気であるのが分かる。
ならば、排除するか?
対話から解析した紫色の性格であれば、自分よりも弱いものと組むとは思えない。
少女の方も紫色と同等、あるいはそれ以上の戦闘力を持っているのであろう。その上、紫色のほうとは違って戦術も不明。
そうなれば、今の戦力では難しい。
彼等は、幹線通路を南側へと抜けるらしい。
グレイ・フォックスとかち合ってくれれば最良だが……それは高望みのしすぎか。
ロックマンや彼ならば、戦力など関係なく追いかけるのだろうな……
彼らの行動は、とても理解できない。
改めて認識しつつ、俺はブロック塀に身を潜め続けることにした。
アンドロイド達が幹線通路に消えたのを確認して、紫色が攻撃し続けていた場所まで歩みを進める。
そこは半径三メートル程度のクレーターが出来ていて、電柱の破片が散らばっている。簡易な墓に見えなくもない。
向かう理由は、PDAの回収。
被害者の残骸すら確認できなかったが、異常に頑丈なPDAならば残っているかもしれない。
そう考えてクレーターの方まで来たが――何かがおかしい。
こんな戦場跡で何が動いているのか。
よく見てみると、それは――――銀色の……雫?
認識したと同時に、シグマの姿を模していた液体金属のことを思い出す。
雫は、少しずつ地面から浮き出てきている。
ガトリングガンを転送して右手に装着、雫へと目掛けて引き金を引く。
弾丸は雫を弾き飛ばすも、すぐに雫は他の雫と結合しようと蠢く。
やはり、あの液体金属か……まさか参加しているとはな……
地表に出ている液体金属の量は、まだコップ一杯程度だ。
瓦礫の下に溜まっているであろう液体金属が集うには、まだ時間がかかるはずだ。
脚部に負荷をかけて、一気に跳躍。液体金属から距離を取る。
成人男性のボディを取れるようになる前に――今のうちに退却する。
◇ ◇ ◇
ここまで来れば大丈夫だろう。
エリアF−3の最北端まで来たのを確認して、足を止める。
あの液体金属――名称は不明、名簿に記されているかすら不明――が参加しているというのは、予想していなかった。
ヤツを相手にするのはとてつもなく困難だろうが、何にせよシグマを相手にするのなら敵に回すのは同じこと。
破壊するのが少し早くなっただけである。
それに、ヤツに使われている技術は、是非とも大神グループに持ち帰りたかったところだ。
さて、ヤツが参加しているとなれば、この壊し合いはヤツの機能テストか?
そんな莫迦な。だったら、モバイルレディなどを参加させる意味がどこにある。
それにグレイ・フォックスやあの恐竜などが勝手に他のアンドロイドを壊してしまえる状況は、液体金属の機能試験にとっての邪魔でしかない。
ならば、何なのか。
あの液体金属が情報を持っているのなら吐かせたいところだが、攻撃が通用しない相手に拷問など出来るものか。
無敵? 否、そんなもの存在するはずがない。
何かしらの対処法があるはず。
再生する隙もない連撃――駄目だ。ヤツは、恐竜の猛攻に耐えて再生しようとしている。
打撃ではない攻撃ならば、どうだろう。
例えば――――燃焼、冷却、電撃、他の液体を混ぜ込む、気体を混入させる、乾燥、液体同士の距離を極限まで離す……etc。
不明。確かめる術すらない。それを行うには、それが出来る者と組まねばならない。
成る程。結局、最優先目的は今までと変わりはしないワケか。
この工業地区コロニーで最も参加者が集いそうなのは修理工場だが、行くわけにはいかない。
液体金属が向かっていたのは、明らかに修理工場。
何故かは分からない。だが、あの方向に他に施設がない以上、ほぼ確実と見ていい。
……仮に現在ヤツとシグマがコンタクトを取っているとすれば、修理工場にいる参加者は何かシグマに不利になる事象を知ったのであろう?
そうならばその情報を手にしたいものだが、俺が赴いたところでどうもなるまい。
シグマの技術力を考えれば、身に降りかかっている身体の不調が俺だけに課せられたものだとは考えにくい。
推測だが、全ての参加者を襲っているこの不調――しかし液体金属は例外だろう。
部下を弱体化させることに、メリットなどありはしない。
全力を出せると思われるヤツに、俺がどう立ち向かう?
かつての部下のように感情を力に変えることなど、俺には出来はしない。
わざわざ死に行くようなものだ。その行為は『勇気』でもなんでもなく、ただの『無謀』である。
だったら、液体金属が過ぎ去ったと思える時間になってから――第三放送後くらいか?――にでも、修理工場を調べるとしよう。
それまで何もしないわけにもいかん。
ならば、ここまで来たことだ。スクラップ工場で使えそうな道具でも探すとするか。
爆弾の解除方法が分かったところで、その為の工具がなければ笑い話にもならない。
機器だけではなく、組んでくれそうな輩もいてくれればいいのだがな……
気体を胸に、目的地である北方向を眺める。
地図を見る限りでは、まるでF−2エリアに侵入するには東か西を回らねばならないようであったが、そうではないようだ。
巨大な気泡が発生している溶鉱炉の上に、いくつか橋がかかっていてまっすぐ修理工場へと向かえるらしい。
落下すれば溶解は確定というのもあり、遠目に橋を観察すればタイヤ痕を発見できた。
バイクで移動するのが可能であったならば、通っても何ら問題はないだろう。
橋の上でふとPDAを見てみれば、放送まで一分を切っていた。
【F−2 橋の上(南)/一日目 昼(放送寸前)】
【灰原@パワポケシリーズ】
[状態]:打撲
[装備]:リシュウの仕込み杖@スーパーロボット大戦シリーズ
[道具]:支給品一式(PDA)×2、ゆうしゃバッジ@クロノトリガー。ガトリング砲@サイボーグクロちゃん(弾薬三十〜四十パーセント消費)
ダンボール@メタルギアソリッド、大型スレッジハンマー@ジョジョの奇妙な冒険、五光石@封神演義
[思考・状況]
基本思考:シグマとその協力者達の捕獲、不可能であれば破壊して本社に帰還する。
未知の技術の情報収集、及び回収して大神に持ち帰る。
1:スクラップ工場にて、使えそうな工具と同志を探す。第三放送後くらいに、修理工場を目指す。
2:ロックマンやCCR時代の部下のように、感情を力に変える参加者と組む。
3:バッチの表がでたので北のコロニー(工場地帯)に向かう。
4:この戦場からの脱出。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です
※T-1000(名前は知らない)の参戦に気付きました。
※発見したタイヤ痕は、ハカイダーがスクラップ工場から修理工場へと向かった際についたものです。
支援
■
T-1000は、身体を構成する液体金属を既に七十パーセント以上かき集めていた。
そもそもメガトロンの攻撃は、彼のボディ変異製に影響を及ぼすことはなかった。
問題は、砕かれたアスファルトの遥か下まで液体金属が流れてしまったことである。
長期間の砲撃により、液体金属がかなり染み込んでしまうまでT-1000は収集作業に移ることが出来なかった。
再構成が可能でも、液体金属を回収できねば意味はない。
ゆえに、仮面ライダーストロンガーの肉体に擬態を開始したもの、下半身の構成途中で再生が停止する。
回収しきれていない液体金属分だけ、下半身が空洞となっている。
その部分は、液体金属を完全に回収し終えてから。
一瞬で判断して、T-1000は作り上げた上半身を中心に液体金属を集わせる。
その後の予定は、既に決めてある。
自身を粉砕したメガトロンとコロンビーヌの追跡でも、逃げおおせた灰原の追跡でもなく、修理工場を目指す。
既に消えてから結構経つ三者を追跡したところで、どこに言ったかは計算不可。
距離的には推測できようと、方向が分からねば意味はない。
ならば、修理工場に向かってエラー修復を優先する。
T-1000の計算の結果、地層の彼方まで吸い込まれた液体金属の回収にかかるのが四分五十二秒。
仮面ライダーストロンガーの姿を取るのに必要な時間は、ほぼ一瞬。
電撃や振動破砕を受けたわけでもないので、計算の誤差は秒単位であろう。
つまり、彼が再び修理工場を目指して移動を開始するのは――――十二時五分前後。
しえん
【F−4 路上/一日目 昼(放送寸前)】
【T-1000@ターミネーター2】
[状態]:仮面ライダーストロンガーの姿(下半身が足りない)、微弱なエラー?(エラー修復に費やされる時間の推測にズレ)
[装備]:シグマウイルス(残り2回分)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:バトル・ロワイアルが円滑に進むように行動する。シグマとスカイネットの命令には絶対服従。
1:仮面ライダーストロンガーの姿を取る。
2:修理工場へと向かい、エラー修復。
2:他の参加者に出会ったら容赦なく攻撃。ただし出来る限り仮面ライダーストロンガーの姿のみを晒す。
3:可能ならば他の参加者にシグマウイルスを感染させる。(『スペックが高く』、『バトルロワイアルに乗り気でない』参加者優先)
4:3が不可能ならば破壊する。
5:ただし、T-800は最終的に破壊する。
[備考]
※シグマウイルスはT-1000の体内に装備させられた状態で存在し、T-1000の体が相手の体内に侵入した際に感染させることが可能。
乙ですわ
>>63 湖の周辺エリアのみって書いてありますよ
投下完了です。
誤字、脱字、その他アレ? と思う点ありましたら、指摘してください。
灰原隊長が、エリアF−2に橋が架かっていると言る点について、説明をば。
『男の世界』で、ハカイダーがスクラップ工場から修理工場へと向かう際に、風見さんのPDAを拾ってます。
で、そのPDAは第一放送にて『幹線道路から少し外れた場所』にあるとなってるので、橋がなきゃおかしいかなーと思って、そういうことにしときました。
>>77 読み返してみたら、そうでしたorz
一気にテレビ局へ行ったんだと思い込んでました。
◆9D氏、非常に申し訳ない。
でしたら、自分はオーケーだと思います。
>>62 乙です。
気になったところは、クロたちが前話でいた地点はE-7で、泉に囲まれている位置ではないのに、
泉に囲まれた孤島での話になっていたことが違和感ありました。
それ以外は、転送装置含めて面白い考察だと思います。
>>78 投下乙です。
コロンちゃんとメガちゃんの掛け合いがコミカルで笑いましたw
T-1000の到着時間によって、修理工場組みは放送後が勝負になりそうですね。
GJ!
投下乙。コロンとメガちゃんが備わり最強かと思っていたが別にそんなこと無かったぜ!
少し不安定要素があるコンビだ。これからの凸凹に期待。
>>hq氏
流石の私でも、そこまでの暴挙に踏み込む蛮勇は……!
ともあれ、ご意見ありがとうございます。
>>80 またもやうっかりエフェクトが発動したのかと考え、マップとクロ&武美の動向を確認してみました。
まず、マップE−7に民家はありませんでした。自然公園エリアの家屋は、件の湖のど真ん中(E−8)の一軒家だけです。
それで更に調べてみたところ、『モバイル・レディU』にて「E−7から湖の真ん中の島に向かった」という記述がありました。
なので、本来クロ&武美がいるのはE−8で、前話までの【E−7 民家】とは誤表記ではないでしょうか?
……これで私が間違っていたら、全力で謝罪する備えがあります。
うっかりエフェクト発動! やぁぁぁぁちまったぜ!!
湖のど真ん中はE−8ではなくF−7でしたorz
>>82 了解しました。
この件に関しては、◆V9YQ4knn.A氏の返答を待ちたいと思います。
>>84 伺いを立てるのであれば、『クロ電話――劇的皮肉』の、◆V9YQ4knn.A氏だけではなく、
『モバイルレディ・U』の◆DNdG5hiFT6氏にもお話を聞くべきではないでしょうか?
ともかく、返答待ちは了解です。本投下は返答があり次第適宜対応、ということで。
>>80 >>82 ………………………………すみません、悪かったです、許して下さい。
ごめんなさい。
表記ミスでございます。
前話モバイル・レディUで【E‐7 民家】となっていたので、深く考えず、地図とも照らしあわせずにコピーしてしまいました。
誠に申し訳ありません…………。
それと指摘をば。
ボイルドは“徘徊者(ワンダー)”と名乗っておりますので。
英語的には、ワンダラーの方が正しいんですが……パロロワ一般でのマーダーと同じようなことで
>>V9氏
了解しました。
そして、またもやうっかり発動! その部分は全力で修正しておきます!
それでは、今夜にでも本投下しますので、宜しくお願いします。
投下します
投下準備
ジリリリリ……ジリリリリ……ジリリリリ……ジリリリリ……ジリリリリ……ジリリリリ……
これで都合7度目となる“徘徊者(ワンダー)”と名乗る男へのコールは、
「なんで出やがれねぇんだよあんちきしょおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
ついにぶちぎれたクロの絶叫と共に終了した。
クロは受話器を黒電話の本体に、壊れてしまいそうなぐらいの勢いで叩きつけた。しかし、レトロな外観に似合わず頑丈な黒電話は、しっかりと受話器を受け止めた。
それを見たクロは、たかが黒電話に自分の怒りを受け止められてしまったようで、何となく腹が立った。腹が立ったので、無言でアポロマグナムを……
「クロちゃん、落ち着いてー!!」
アポロマグナムを装着しようとしたところで、武美が全力でインターセプトしてきた。
クロはそこで我に返り、アポロマグナムは黒電話如きに対して、明らかに勿体無いほどの過剰な火力であることに気付いた。
「ちょーっと大人気なかったかなぁ。――――だが壊す!」
気付いたので、アポロマグナムを仕舞って代わりにウィルナイフで斬り刻み、とどめにグーで完膚なきまでに破壊した。
【黒電話@ロボロワ備品 破壊確認】
▽
「あっちゃあ……」
クロの暴走じみた行動に武美は呆れたような声を漏らしたが、今のクロにはそんな物は届かないようだ。
「っとに、あの野郎! ホンダだかワンダと巨■だか知らねぇが、オイラをコケにしやがってぇぇぇぇぇ!! なんたらコックってネズミを見つけたら、足の一本ぐらい齧って髭を全部引っこ抜いてやる……!」
「ははは……とりあえず、ワンダーとウフコックでしょ、クロちゃん」
前足を手のようにワキワキと動かしながら不穏なことを言うクロに、苦笑しつつも的確なツッコミを入れる武美であった。
約10分後、クロが漸く落ち着いたところで、武美は話を切り出した。
「それで、これからどうする?」
電話で他の参加者と接触することは、たった今不可能になった。そうなると、新たな行動方針を考える必要がある。
武美に考えはあったが、一応、クロの意見を聞いてみる。
「ん〜? そうだな……武美、お前は何か気になることとかないのか? オイラはアレコレと考えんの苦手なんだよ。幼い子供達のヒーローだから」
なにやら微妙にメタなことを言いつつ、クロは畳みの上に寝転がっている。
ならばと、武美は遠慮なく話を切り出すことにした。
「えっとね……それじゃあ、2つ言うね?」
「おう、どんと来い」
「まず1つ目は、ここのこと。ねぇ、クロちゃん。もしも防水処理のされていないロボットとかサイボーグが、何の移動手段も無しに、スタート地点がここにされたらどうなると思う?」
問うと、クロはけだるげに「ん〜……」などと唸りながら、ゴロゴロと寝転がって思案している。寝転がっているといっても、猫のそれではなく、人間のオッサン風にだ。
……クロちゃん、本当に猫のサイボーグなの?
そんな疑問を懐きつつ、武美はクロの返答を待った。やがて、クロは唸るのをやめて、どこか投げ遣りに答えた。
「まず間違いなく、立ち往生だろうな。下手に泳いで渡ろうとしたら目も当てられねぇぜ」
「そうだよね。けど、あのシグマってやつは、私達に『戦え』って言ったからにはさ」
敢えてそこで言葉を切り、クロに思考を促した。すると、クロは数瞬の思考の後、寝転がった状態から立ち上がって、武美に向き直って不敵に笑った。
「……成る程。支給品とスタート地点が本当にランダムなら、そんな不運な奴の為に、ここには移動のための手段があるかもしれないってことか」
「うん。まぁ、これはあくまで推測なんだけど」
「まぁ、言われてみりゃ周りは湖に囲まれて近付きづれぇからな……見ようによっちゃ、宝島に見えなくもねぇ」
「でしょ? そういうわけで、もっと詳しくここを調べてみようよ」
「うっし、いいぜ……っと、もう1つは?」
クロは先程の電話の件を完全に割り切って、すっかりやる気になってくれた。そのことに安堵しつつ、武美は話を続ける。
「あ、うん。クロちゃんが電話を掛けている間に、マップの確認をしていたんだけど……ほら、ここ見て」
PDAのマップ機能を呼び出し、画面に表示された地図上の、左上の隅――A−1を指した。そこには、一際大きな施設がある。
「軍事基地、だな。これがどうしたんだよ?」
「クロちゃん、さっきここの地形を見て宝島みたいって言ったよね?」
この小屋は周囲が湖に囲まれ、非常に近付きにくくなっている。それは、ここから出るのにも同じ事が言える。そして、それはA−1の軍事基地にも当て嵌まる。
「……成る程な。位置はマップの隅の隅、その上すぐ横には廃鉱山があって、入るにしろ出るにしろ通れるのは正面の一本道だけ。確かに、他の施設は開けてるのにここだけ不自然なぐらい閉じてるな」
「でしょ? それで、ここにも何かあるんじゃないかなって思うの」
加えて、軍事基地はかなり大きな施設だ。本当に何らかの『宝』のようなものがあっても不思議はないと、武美は考えていた。
「武美、お前って結構頭いいんだな」
感心したクロの言葉に、武美は得意げに頷いた。
「まぁね。伊達にネットサーフィンしてあれこれ調べてたわけじゃないよ」
「よし。それじゃあ、まずはここでお宝を探すとするか!」
「おー!」
クロの音頭に元気よく応じて、武美は早速宝探しを開始した。
……これで何も見つからなかったら、それはご愛嬌、ということで……許してくれるよね? クロちゃん。
▽
家捜しをすること1時間弱。2人の宝探しは成功という形で落ち着いた。
「――で、案外簡単に見つかったな」
「けどさ、床下収納の裏に付いてたスイッチ押したら、こんなのが出てくるのって……なんか、シュールだよね」
武美の言ったとおりだ。クロが何となく台所近くの床下収納を空けて、その蓋の裏にボタンがあったから「ポチっとな」と気軽に押してみたら、今2人の目の前にある物体が出現したのだ。
本当に、シュールな光景だ。台所の近くに聳え立つ円柱の物体は、異常とか異質よりも、シュールという表現が似合った。というか、日本家屋にこれでもかというぐらい似合っていない。
「まぁ、それは置いとくとして。こいつは一体なんなんだ?」
クロは2m程の円柱型の物体を見上げながら、中に置いてあった説明書きを手に取っている武美に尋ねた。
「ええっと、これは転送装置みたい。中に入った人を湖の周りのエリアに、瞬時に片道転送だって。……あ、ここにエリアを入力すれば、そこに行けるみたい」
説明に耳を傾けつつ、クロ葉の転送装置中に入ってみる。
こういう如何わしいブツはあまり信用したくないが、まぁ、剛やコタローの発明品に比べればまだマシだろう。
「それなりに便利だな。ま、お宝ってほどのモンでもなかったが、よしとするか」
クロは宝探しの間、水上移動の手段として靴箱にNIKU・Q・マックスは無いか、秘密の地下格納庫があってそこにボ○ドカーのような素敵機能満載のスーパーマシンは無いかと期待していたが、そんなことは無かった。
特に後者は良い子のお友達には分かんねぇだろうし、無くて当然か。
しかし、発見された移動手段の『転送装置』は、水上移動というリスクを回避して、限定されているとはいえ任意の場所に一瞬で移動できるのだ。このメリットは大きい。
持ち運びは出来ないが、考えようによってはクロが探していたような物よりも『お宝』だと言えるかもしれない。
「それじゃ、これからどこに行く?」
「そうだな……取り敢えず、テレビ局とかに行ってみるか? 軍事基地は遠いし暫くパスの方向で」
なんともテキトーに行く先を決めてしまったが、どうせ行く当てはないのだから、これぐらいが調度いいだろう。
……本当は“徘徊者”のタコを怒鳴りつけに行きてーところだが、今はミーを探す方が先だ。それなら、伝言を預けたアイツとは別方向に行った方が効率は良い。……直接会ったら全力で怒鳴ってやるけどな!!
「オッケー。それじゃ、E−8、っと」
武美も軽い調子でクロの提案に頷き、転送装置に目的地を入力する。
[転送を開始します。READY]
アナウンスが告げられ、武美とクロは転送装置に乗り込んだ。本来は人一人が乗るぐらいの大きさだが、クロは小さいので問題なく武美と相乗りできた。
そして、なんとも言えない奇妙な浮遊感の後、クロと武美はなんの問題もなくE−8の湖の畔に転送され、隣のコロニーへと行くべく移動を開始した。
機械仕掛けの舞台には、風も吹かねば雨も降らぬ。
されど風の吹くまま気の向くまま、熱血ハートのサイボーグ猫と純情ハートのサイボーグ少女は、ただただ前へと突き進む。
進路にあるのは希望の光明か、はたまた絶望の暗黒か。
――彼らの行く先に、幸よあれ。
【E−8 森/一日目 昼】
【クロ@サイボーグクロちゃん】
[状態]:装甲各所に軽い凹み
[装備]:アポロマグナム@仮面ライダーSPIRITS
ウィルナイフ@勇者王ガオガイガー(なんでも斬れる剣があった場所に収納)
[道具]:支給品一式、風船いかだ
[思考・状況]
基本思考:ハゲ(シグマ)をぶちのめす! その後剛を殴る。
1:とりあえず、隣のコロニー(市街地)に行く
2:とりあえず、ハゲ(シグマ)の居場所を探る。そして暴れる。
3:ミーと合流して、爆弾を何とかする。
4:とりあえず、今は武美を深く追求する気はない。
5:あの女(ギンガ)には容赦しねー
6:“徘徊者(ワンダー)”の野郎と会ったら全力で怒鳴りつける。そして殴る。
※内臓ミサイルは装備されています。尻尾ミサイルは使用済み。
※ガトリングやなんでも斬れる剣が没収されていることに気づきました。
※参加時期は異世界編(五巻)終了後です
※クロが確認したF−7の小屋の照明は、Rが侵入した際に点けていったものです。
※ボイルド(徘徊者)から情報を得ました。
※ボイルド(徘徊者)に強い苛立ちを感じています。
※F−7の小屋の黒電話を破壊しました。
【広川武美@パワポケシリーズ】
[状態]:健康、頭部に微ダメージ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム1〜2(クロ好みの武器はないが武器は最低一つある)
[思考・状況]
基本思考:絶対に生き残り、ここから脱出する。
1:とりあえず市街地へ向かう。
2:シグマの居場所を探る。
3:軍事基地に行く機会があったら行ってみる。
4:元の世界のあの人のところに戻って、残り少ない人生を謳歌する。
※【F-8】に王ドラの亡骸が埋葬されました。墓石がわりの石には“ネコ型サイボーグの墓”と刻まれています。
※メモに書かれていた連絡先の電話機は全て黒電話です。(留守電は効きません。)
※電波塔、テレビ局、学校、軍事基地、鉱山、スクラップ工場には電話をかけました。が、誰も出ませんでした。
※ボイルド(徘徊者)から情報を得ました。
※A−1・軍事基地に『何か』があると考えています。
【登場アイテム解説】
【転送装置@ロックマンXシリーズ】
・ロックマンシリーズでお馴染み8大ボス戦で登場する転送装置。主催者がシグマということで出典はロックマンXシリーズに。
・転送可能な場所はF−7周辺の湖の畔に限定されています。
投下完了です。
タイトルをうっかりで書き忘れた? なに、気にすることはない。
というわけで、タイトルは『往く先は風に訊け』です。
支援、ありがとうございました。
ご意見ご感想の他、誤字脱字やうっかりなど、問題点の指摘などもありましたら遠慮なくお願いします。
投下乙!
確かに沈んだら終わり系のやつがいたら大変だw
ロボロワならでわの救済処置に感心しました
投下乙です。
クロちゃん短気ww
転送装置がついに登場。武美の考察も面白かったです。
GJ!
投下GJです!
考察部分に成る程と思いました。そりゃそうだなw
転送装置がこれから使われるかどうかも気になりますね
投下乙です。
クロちゃんの八つ当たり攻撃を受けた、黒電話に合掌w
転送装置は予想外でしたが、確かに故障とかしたら、
水没危険なメンバーばかりですし、この先の使われ方も楽しみです。
GJでした。
122 :
Classical名無しさん:08/12/20 23:27 ID:avi1w3rc
支援
人がいねぇ。
ゆえに話題を振ってみる。
舞台であるコロニーの外壁ってどんなもんなんだろうか?
勇者王とノーヴェが壁を蹴って空中移動してたな
現段階の確定事項は、ギンガのリボルバーギムレットでも傷一つつかないほどの硬度、ってだけだな
コロニーって聞いてガンダムのコロニーしか思い浮かばない俺には何とも言えないw
>>125 ワリと硬そうだ。
…Gガン方式なのか円筒形なのかどっちだろう。
>>125 ロックマンXシリーズやスパロボOGにもコロニーは出てるぜ?
にこにこでビーストの前日談見たけど、メガトロンテラせけぇ。
メガトロンの裏切りを警戒してた師匠を裏切ってなおかつおいしいところどりとは。
推敲、完了。
長目の作品となったので、事前の投下予告を。
本日21:30頃に、遅くとも22:00頃から投下をします。その際には支援をお願いしたい。
初の仮投下無しでの本投下ですので、至らぬ点もあるかもしれませんが、何卒ご容赦を。
がんばれおっおっ
草薙素子投下します
素子が発電所という施設を始めてみたときは、古めかしい建物だという印象を抱いた。
発電機を守る頑丈な作りが、施設である冷たい印象をより強める。所々汚れており、コロニー内で作られた建物にしては年季を感じさせた。
入り口に当たる自動ドアの周りにトラップが仕掛けられていないか、注意深く観察する。爆発物や警報機の類が仕掛けられている様子はない。
素子がドアへと近づくと、センサーが反応してドアが開く。すんなり内部に入り込めたが警戒は緩めない。
内部に侵入してすぐの部屋は受付カウンターに待合用椅子と、発電所というよりは病院のロビーが近い印象だった。
受付所を超え、奥の発電装置へとつながる廊下を進んでいく。素子が先へと進む途中、ドアが開いたままの部屋を発見する。
刹那の間、素子は思考した。支給された道具に銃はない。使えそうな銃があったのなら、危険人物と遭遇した時に取り出している。
武器もなしに入るのは危険でないか? 警戒するが明かりが僅かに漏れている部屋は興味をそそった。
確実性はない。それでも素子は部屋へと進む。
なぜ進んだのか? と問われるのなら、素子はこう答えたであろう。
ゴーストが囁いたのだ、と。
□
万能道具存在。
あらゆる戦況や状況において、道具自身が判断しながら形状を操作。その特性と自我ゆえに万能となりえる道具である。
道具の使用者が襲撃された時に丸腰であるのなら、銃へと変身【ターン】して武器となる。
衣類の調達が必要になったとき、使用者の肢体を包む服へともなる。手袋となり、相手の感情を臭いで嗅ぎ取り、使用者に助言を繰り出すこともできる。
人工衛星四基分の予算を投入されて作られた結果だ。高度な知性で使用者を補助し、武器として敵を殺し、自我をもって議論をする。
兵器として似つかわしくない特性ではあった。たとえ、彼自身が二人のパートナーの心のより所であったとしても。
金色のふさふさの毛を持つネズミの形をした兵器。
彼の名を、ウフコックといった。
□
「ここは門の制御室のようね。随分とアナクロな……監視映像かしら? 電子端子の型が、三、四十年は古い……」
つい独り言を呟き、素子は薄暗い部屋の中で目の前の監視モニターを睨みつけていた。
監視カメラの数は十程度。門、及び扉が開いているかどうか監視するためのものだろう。素子は壁へと背中を預ける。
背中に伝わる壁の冷たさが心地よい。禁止エリアに指定されているのは、H−8エリア。
この施設はG−7、H−7、G−8、H−8にまたがって置かれている。すなわち、発電所の四分の一は禁止エリアだ。
施設を丸ごと禁止エリアに指定しない理由も、四つのエリアにまたがって発電所を設置した理由も分からない。
とはいえ、発電所に来たのは一時間ほど前。現時点で全てが理解できるほど、現状は甘くないと認識している。
席を離れようとした時、素子の視界にインスタントコーヒーが入った。PDAに登録されている水を確認した後、近くの給湯室へと向かった。
給湯室に備え付けられたヤカンに水を入れて、コンロに火をつける。お湯が沸くまでの間、確認した支給品の中で興味があるものを取り出した。
封魔の瓶――『万能道具存在・金の卵』とやらが封印されているらしい。ふたを開けるだけで、人工衛星四基分の予算をかけた万能道具存在とやらが出てくる。
罠と考えるのが自然だ。本当に中から金色の卵とやらが出るとすれば、仮想現実の世界だけ。
金の卵が何かの隠喩だとするなら、この支給品はシグマがいかなるタイプの犯罪者か探る手がかりへとなりえる。
こちらに有利になるような……武器や解析用道具であるのなら、愉快犯タイプ。
もしくは周到に介入の余地を潰している知能犯。さらに言えば、電子テロの可能性も含める。
(結論は、こいつをあけてからにするか)
素子は素早く結論を下し、ふたを開ける。ビンより飛び出た金色の影を視線だけで追いかけた。
ふさふさの体毛を震わせて、つぶらな黒い瞳で周囲を見渡す。自慢の尻尾を振りながら、自分の相棒の少女がいないことを認識。
代わりに目の前にいるのはグラマーな女性だ。怜悧な瞳が鋭く自分を見つめる。
ウフコックの鼻から感じ取れる女性の匂いには警戒が含まれていた。逆に嫌悪はない。
ウフコックの姿を目にした女性の反応としては珍しい。ネズミにいい印象を持つ女性は少ないと、経験で知っているからだ。
もっとも、ウフコックの出会った女性の中には彼に動じない人間も、徐々に打ち解けていった人間もいたのだが。
バロットが一人でいるかもしれないという心配もあって、ウフコックは目の前の女性へと声をかけることを決めた。
「こんにちは。自己紹介させてもらうと、俺の名前はウフコックという。よろしく」
「挨拶は不要だ。私の名は草薙素子。早速で悪いが、もう少しあなたの事を話してもらう」
「分かった。俺のほうも現状の説明を頼みたい」
初対面の印象としてはそれほど悪くなかったようだ。ウフコックは安堵する。
相手の女性の表情は変わらなかったが、感情は匂いである程度察知できた。
ネズミが喋ることに疑問を持たない彼女がどういった人物なのかも気になる。
ウフコックは顔を持ち上げ、女性と目を合わせた。
目の前のネズミが喋ったことじたいは特筆することではない。
素子のいた世界は義体も多様化している。とはいえ、脳を収めるスペースがなければ義体とはなりえない。
つまり、目の前のネズミはロボットであるか、リモート義体かのいずれかだ。シグマのスパイかとも考えたが、それは会話中に探ればいい。
「そうだな……万能道具存在とは、どういう意味だ?」
「そのままの意味さ」
どこか苦笑混じりに、ウフコックが立ち上がってぐにゃり、と揺れる。
数瞬後、ハンドガンへとウフコックがターンをした。素子は明らかにオーバーテクノロジーの存在に身体を反応させ、壁から少し離れる。
ウフコックが存在していたテーブルの上に、一丁のハンドガンが存在している。素子は手に取り、その重さから本物と似た感触を感じ取った。
セーフティーを外して、壁に向ける。引き金を引くと同時に反動が素子の右腕に走った。
壁には黒い孔が一つ。素子は一つの事実に納得をした。
「なるほど。万能道具存在という意味は、このことか」
「ああ。じゃあ……あれ?」
「どうした?」
「いや……よっと」
ウフコックの反応を素子は訝しげながらも、元のネズミへと戻ったターンを見届ける。
これは兵器としてみれば、自由度が高く、応用の利く。殺し合いを行なう状況なら、当たりに類する武器であろう。
あとは、彼の信条だ。ロボットである彼に、自我の有無を確認をする。
本来ならばロボットに自我があるかどうかなど、本来は馬鹿げている思考だ。
タチコマのように自己犠牲を得るまでに成長したAIを知っている素子だからこそ、ウフコックが持つ独特の雰囲気に気づいた。
彼女の世界ではネズミから拳銃へと変形させるでたらめな金属はない。
ウフコックはなにものなのか? 疑問を持つが、シグマへと迫る手がかりとはズレる。
ウフコックの正体は後回しにして、彼がいかなる信念を持って行動しているか確かめることにした。
コミュニケーションが取れる相手であるのなら、情報を得る。素子が常に行なっていた行動だ。
「現状を知りたい、ということなら、あなたがどこまで事情を知っているのか教えてくれないかしら?」
「俺の記憶はバロット……俺の相棒と隠れ家へと戻る途中で途切れている」
素子が柔らかく尋ねると、ウフコックがすまなそうな様子で返してきた。
これは一から説明が必要のようだ。これが嘘だとしても、こちらにたいした不利益はない。
「そう、なら話しましょう。ここでなにが行なわれているか……ね」
素子がため息をついて、ウフコックに切れ目がちな瞳を向ける。
ネズミの表情を読み取ることなど、素子にはできないが、心なしかウフコックの表情が引き締まったように見えた。
「壊し合い……そして殺し合いだと?」
「ええ、ロボット、そして私のようなサイボーグを集めて、シグマが殺し合いを行なわせる意図は不明。
そしてロボットであるあなたが参加者でなく、支給品として存在する理由もね」
ロボットと言われてウフコックは苦笑した。ネズミの形をして、言葉を操るものが生命体ではない、とのことだろう。
ロボットと思われても、特に問題はないためウフコックはそのことは黙っておく。
自分たちの有用性を証明するために尽力していた、ウフコックの心情としては複雑であったが。
嫌悪を抱いてもらえないだけ、ありがたい。そう考えて、彼女の感情の匂いから事件は深刻な物だと判断する。
「はは……俺が支給品か。面白くない冗談だ」
「そこにシグマの目的を探る手がかりがあるかもしれない」
「悪い……草薙さん。俺は……いや、俺たちは自分の有用性を証明するために戦ってきた。道具だ、支給品だと笑われるのは、俺への侮辱だ」
ウフコックは、マルドゥック・スクランブル-09――かつての自分の有用性を証明する独立機関にて、仲間たちと共に戦っていた。
その法令も、今は姿と形を変えている。しかし、ウフコックはそのときの仲間たちと共に戦い続けた、自分の有用性の証明を忘れない。
形を変えたとはいえ、自分は委任事件担当捜査官として自分の有用性を証明し続けている。
ゆえに、自分を道具として、支給品として扱ったシグマに腹が立つ。ウフコックが珍しく怒りにかられた。
「ごめんなさい、そういうつもりではなかったの」
「……いや、草薙さんに対して言ったわけじゃないんだ」
素子が始めて微笑みも浮かべていた。感情を嗅覚で探ると、ウフコックに幾分か警戒を解いている様子なのが分かった。
少し大人気なかったか。ウフコックは自分に恥じる。バロットであれば、ウフコック自身の様子に戸惑っただろう。
素子の柔和な微笑みに助けられた。ポリポリと自分の頭をかいて、素子に向き直る。
薄暗い部屋の中、モニターの明かりだけが素子の顔を照らしていた。白い肌に切れ目の瞳。改めてみると美人だと思う。
女性特有の柔らかい表情だと、なおさら魅力的だ。とはいえ、あくまでウフコックの基準である。
人間の男性が持つ印象も、ネズミが持つ印象も知り得ない。
「話を中断させてすまなかった。殺し合いに巻き込まれたというのなら、ルーン=バロットという少女も巻き込まれているか確認したい」
「ルーン=バロットね。……いるみたい」
「そうか……」
ウフコックの胸に鉛のような重石が乗っかる錯覚が起きる。あの少女が殺し合いに巻き込まれているのだ。
なのに、自分は傍にいけない。成長をした彼女なら、自分がいなくてもうまくやっていける。
そう信じてはいるのだが、胸騒ぎが収まらない。過保護だろうか、と自嘲する。
素子が他に知り合いがいるのか確認してほしいと、PDAの画面をウフコックへと向けた。
ウフコックが画面に視線を向けて、見つけてはならない名前を発見する。
「ボイルド……馬鹿な! こいつは死んだはずだ!?」
「死んだはず? 詳しく聞かせてもらえるかしら」
「ああ……ボイルドは委任事件担当捜査官として活動していた俺とバロット……いや、俺を狙っていた。
バロットの協力もあって……俺がどうにか殺したはずなんだ。もっとも、殺すことはバロットの本心ではなかった。……俺の勝手なエゴだ」
それどころか、バロットはボイルドすら救おうとしてくれた。続きの言葉を飲み込んで、ウフコックはPDAの画面に食い入る。
バロットがボイルドを救おうとした感情を、素子と共有するのは難しいだろう。もっとも、引き金を引いたのはボイルド自身なのだが。
一先ず感傷を置き、ボイルドが死んでいたはずだという情報を伝えた素子の意見を待つ。
「同姓同名……って線は? もしくは、貴方たちをかく乱するためのシグマの偽情報とか」
「だとしたらありがたい。あいつが何らかの方法で生きていたとすれば……そうとう手ごわい相手になる」
素子の言っている可能性であるように、縋る気持ちでウフコックは告げる。
沸いたコーヒーカップの中の黒い液体を、ネズミの身体にあわせた小さいカップに注いでもらう。
このカップは自分でターンして作った物だ。
「そうね、ウフコック。それを飲んだら、ここの探索に付き合ってくれないかしら?」
「反対する理由はないな」
「ありがとう。お互いのことも、そのときに話しましょうか」
「了解」
どうやらコーヒーの香りを堪能している暇もないらしい。ウフコックはコーヒーを流し込んだ。
□
薄汚れた灰色の通路を、ウフコックを肩に乗せながら素子は進んでいく。
最小限の電力は生きているらしいが、普通人の目をもってしては五メートル先を見るのがやっとの薄暗さだ。
もっとも、義体率の高い素子の目を持ってすれば、昼間の如く闊歩できる。
「ウフコック……あなたの身の回りで疑問がある」
「どんなことだ?」
「委任事件担当捜査官という役職に心当たりがない。何かしらの役職の隠喩かしら?」
「委任事件担当捜査官ってのは、俺たちマルドゥック市で事件の捜査、解決を行い報酬をブロイラーハウスから受け取る連中さ。
俺とバロットは、委任事件担当捜査官としてコンビを組んでいる。もっとも、元々は成り行きだったんだが」
「マルドゥック市……それはどこの国の都市? 私の知る世界で、その名を持つ市は存在しない」
「はは、草薙さんは冗談キツイな。でなければ、俺やバロットはどこに存在していたって言うんだ?」
「冗談言っているように見えるかしら?」
「…………残念ながら、俺の鼻は嘘や冗談の匂いを感知していない」
嘘発見器としての能力もあるのだと頭の片隅に置き、奇妙な話だと素子は思う。
嘘を感知できる能力に関しては、説明する暇がなかったのだろう、と結論をつけた。隠したいのなら、今告げる理由が分からない。
いずれ話すつもりだったからこそ、素子に嘘を感知できる能力をさりげなく伝えたのだろう。
「あなたの変身能力、そしてマルドゥック市、委任事件担当捜査官という公的業務を民営化したシステム……確かに、国境が違えば常識は変わる。
国によってはそういう制度もあって、私が知らないという事態は想定できなくもない。
けれど、人工衛星四基分を兵器に費やすことの出来る大国の主要都市を私が知らない、ということはありえない」
「……なら、草薙さんはどこの国にいたんだ?」
「日本の首都圏を中心に活動しているわ」
「俺はその国の名を知らない……」
ウフコックの言葉を聞き、素子は左手を顎に当てて考える。素子はマルドゥック市を知らない。ウフコックは日本を知らない。
そして、素子には主要都市の情報を持っており、ウフコックが日本を知らないほど世間知らずとは思えない。
「ウフコック、私たちの情報の食い違いに三つ可能性があるわ」
「聞かせて欲しい」
「一つは、あなたか私の記憶がシグマによっていじられていること」
「そんなことが可能なのか?」
「……不可能ではないけど、それには高いゴーストハックの能力が必須。そのうえ、常識も巻き込んで丸ごと記憶改竄するには莫大な時間と手間がかかるわ。
それこそ、人の寿命が尽きるくらいには」
「なるほど。事実上不可能というわけか」
とはいえ、ロボットであるウフコックならば短時間で済む可能性があるのだが。
そのことには黙っておく。タチコマ以上に自我の発達をしているウフコックの機嫌を損ねる話題なのは、先ほどのやり取りで承知しているからだ。
ウフコックの記憶に関しては、彼の知り合いに会えば真相に近づけるだろう。今貴重なパートナーを手放すわけにはいかなかった。
「二つ目はここが仮想世界である可能性」
「仮想世界?」
「電子テロによる、ここに連れてこられた人間に仮想世界での殺し合いをさせて、現実に帰還することを不可能とする。
あなたはその仮想世界のキャラクター、ということよ」
「ちょっと待ってくれ。だから俺は……」
「ただ、この可能性も低いと思うわ」
なぜ、とウフコックが尋ねてくる。ここに飛ばされた当初、素子は仮想現実の可能性を考え否定した。
再び候補に上げているが、最初はゴーストの囁きによって否定した。そして今、否定する理由をウフコックへと告げる。
「私に気づかれずここまで大規模な電子テロを行なえるかというと、厳しいところよ。
それに仮想現実にしては、私しか知りえない義体の能力を余りなく再現している。政府機関以外に配備や使用箇所を限定される、最新式の光学迷彩さえね」
もっとも、光学迷彩についてはいつもと違う点がある。性能をそのままに、使用時間が限定されているのだ。
旧式の光学迷彩に、使用時間が限定され冷却時間が三時間かかるような型はない。純粋に自分が装備している光学迷彩の使用を限定されているのだ。
ネットの世界というには、この舞台はどこかおかしいのだ。何度ももぐっていた仮想現実の世界と比べると違和感が強い。
もっとも、その感覚は素子の勘に頼る部分が大きいのだが。
「最後の一つの可能性は?」
「これが一番ありえなくて、ロマンがある仮説よ」
「ほう」
ウフコックの瞳が期待に満ちる。なんとなくだが、金色ネズミの表情を見分けることが出来る気がした。
結構可愛い仕草だ、と場違いな感想抱いて素子は彼に言う。
「パラレルワールドのさまざまな人間、人種、ロボットが集められている、って仮説よ。ロマンチックでしょう?」
素子が悪戯を思いついた子供のように瞳を輝かせて、ウフコックに視線を送る。
ウフコックは僅かに沈黙した後、吹き出したような声色で素子に声をかける。
「ああ、夢の溢れる仮説だ。一番支持したいくらいだよ」
でしょ、と同意を求める言葉を告げて、ウフコックの緊張を解きほぐした。
階段を前に、ウフコックへこの話題を中断する旨を伝える。情報が少ない。もう少し、人と出会わなければならないだろう。
その前に自分が持てる情報は出来るだけ得る。最初はここの探索だ。発電所は広い。
今唯一の相棒を乗せて、素子は目の前にある階段を昇っていった。
(意外と冗談も言える人だ)
ウフコックはそう思考して、自分の変身能力の不調について考える。
銃にターンした時、素子を丸腰にするのもどうかと考え、銃の部分を切り離そうとした。
しかし、銃へとターンした部分は切り離すことが出来ず、仕方なくネズミの姿へと再びターンしたのだ。
なぜターンの能力が不調をきたしているのか、また素子との常識や世界観への食い違いはなんなのか、気になることはある。
だからといって、いつまでも拘るほどウフコックは未熟ではない。
今やるべきことは素子をサポートし、いずれバロットと合流すること。
そして、ボイルドの生死の確認。不安と安心、ない交ぜにしてウフコックは素子の肩で揺れる。
万能道具存在である以外に、自分が自分である有用性を証明するために。
【H-7 発電所内部/一日目・昼】
【草薙素子@攻殻機動隊】
[状態]:健康、光学迷彩使用可能
[装備]:ロジャー・スミスの腕時計@THEビッグオー、ウフコック@マルドゥックシリーズ
ブルースシールド@ロックマン、
[道具]:支給品一式×2、不明支給品(本人確認済み、武器ではない)、PDA×2(草薙素子、ドラ・ザ・キッド)
ジローのギター@人造人間キガイダー
[思考・状況]
基本思考:脱出およびシグマの拘束、もしくは破壊
1:内部を調査。参加者がいた場合接触、情報交換をする。
2:シグマに関する情報を持った参加者と接触する(当面はエックス、ゼロが目標)。
3:その他の参加者にも、可能であれば協力を要請する(含タチコマ)。
4:他の参加者と行動を共に出来たならドラ・ザ・キッドの遺体を修理工場へ運び、解析する。
5:機会があれば、PDAを解析したい。
6:ウフコックと協力。
7:ウフコックとの常識の差異の真相を知る(優先順位は低い)
※ S.A.C. 2nd GIG序盤からの参戦です。
※ 光学迷彩の使用の制限は、連続使用は二時間まで。二時間使用すると、三時間使用できなくなります。
もうしばらくすると使用可能に戻ります。
※「ロジャー・スミスの腕時計」でビッグオーを呼び出すことはできません。
※『黒い服の男』に警戒心を抱きました。
※発電所内でかなり大きな問題が生じていると考えています。
※また、かなり低い可能性ですがC-2の湖底にも秘密の施設があると考えています。
※確認済みの不明支給品ではドラ・ザ・キッドの遺体を運ぶことはできません。
※ドラ・ザ・キッドの遺体がH-5に放置されています。
※ウフコックをロボットだと思っています。
※ウフコックは、ターンした物を切り離すことが出来なくなっています。
ターンできるのは、一度に一つのものだけです。
※ウフコックの参戦時期は、ボイルド死亡後です。
投下終了しました。
感想指摘お待ちしております。
投下乙。
両者の世界感を交え、短いながらも読み応え抜群のハードボイルドな話だったと思います。
それでは、投下します
(゚∀゚)
っと、投下来てた!
なので、もう少しのインターバルを
もう終わってますよ!
早くしないと俺はバイトがあるんだよぉ〜;;
それでは、今度こそ投下します
神敬介は、テントローを走らせる。
その肉体が戦いを求め、破壊を求め、獲物を求めて。
その心は戦いを拒絶し、破壊を嘆き、弱者を救いたいと願った。
だが、敬介の意思とは関係なく、身体は“暗闇”に突き動かされる。
暗闇の種――仮面ライダーの宿敵たる組織の大幹部の一部を、敬介は元居た世界で猛虎との激闘に敗れ、捕らえられた際に埋め込まれていた。
それが伝える、至上の命令は2つ。
――愚かなる虫けら(ワーム)どもを排除せよ
――仮面ライダーを抹殺せよ
如何なBADANの技術力と、大幹部・暗闇大使の力を以ってしても、仮面ライダーの不撓不屈の魂をも塗り替えることは出来ず、敬介の意識を麻痺させ、簡単な洗脳を施すのが手一杯であった。
投下GJです!
久々の登場だけど、少佐いかすぜ……!
ここまで少佐らしさを出せるなんて、驚愕。
ウフコックとのコンビってのも、面白くっていいなあ。書くの難しそうだけど、頑張らねば。
……バロットの名が呼ばれたときの反応も気になるw
北北北支援
それが、この機械仕掛けの殺戮舞台でこのような成果を挙げることになるとは、一体誰が考えられたであろうか?
……殺してくれ。頼む、誰か…………俺を、殺してくれ……。痛い……痛い…………誰かと、戦うのも……誰かを、殺すのも……頭が……心が……すべてが…………痛い……
「殺して、くれ……」
守るべき者を、共に手を携え戦うべき者達を、そして――後輩をもその手で殺してしまった敬介は、暗闇への抵抗も忘れ、ただただ我が身の滅びを求めた。
血とオイルに塗れ、目からはとめどなく涙を流しながら、破壊の使徒――暗闇の使者と化した怪人・Xカイゾーグは殺戮舞台を駆け抜ける。
▽
うおお、更新してなかった。ごめんorz
しかもごはんだから支援できない、申し訳ない
しえんしえん
スズキ・GSX750S3 KATANAを操り、ハカイダーは駆け抜ける。この調子ならば、次の放送の前にシャトル発射基地に着くだろう。
順調ではあるが、しかし、ハカイダーには腑に落ちないことがあった。
「…………暴れんのだな」
後部座席に乗る女を見て、ハカイダーはそのような呟きを漏らした。
本郷猛――仮面ライダー1号との決闘の約束の証として連れ去って来た女、フランシーヌを、最初は脇に抱えつつKATANAを操縦するという荒業で運んでいたのだが、
「私は逃げも隠れもしません。このような重心の安定しない体勢を取るよりも、私を後部座席に乗せた方が良いのではないですか?」
などと申し込まれたのだ。実際、脇に抱えたままでは突発的なアクシデントの際に対応が遅れることも充分にありえる。そう考えて、ハカイダーはその通りにした。
その時もフランシーヌは不平や不満など漏らさず、それどころか自己紹介までしてきた。
悪党に攫われた女というものは、泣き叫ぶか暴れるか、と相場は決まっているのだが……。
「どうしました? まさか、私に暴れられた方が好都合なのですか?」
バイクの排気音に掻き消されても不思議ではない呟きを聞き取ったらしく、フランシーヌはそのように訊ねてきた。
「いや。こういう時、捕まったヤツは泣き叫ぶか暴れるものだと思っていたのでな」
自らの悪の知識をフランシーヌに披露し、ハカイダーはKATANAを操縦しつつ、フランシーヌの返答を待った。
ストップシグマの悪巧み〜♪
「そうでしょうね。ですが、残念ながら、私は笑うことと同様に泣くこともできません。そして暴れないのは、この状況で暴れても意味が無いからです。……それに」
そこでフランシーヌは一旦、言葉を切った。それに続く内容は、余程重要なことなのだろう。
KATANAを止めることはせずとも、せめてスピードを僅かに緩め、ハカイダーは続きの言葉を聞き逃すまいとした。自らが捕らえた者の主張に耳を傾けるのも、悪の美学というものだ。
「貴方を止める為にも、貴方とはゆっくり話をしたいと思っていますので」
意外な言葉ではあった。しかし、それだけだ。
「ふん、そうか」
ハカイダーは別段、フランシーヌに興味を持っていない。ただ、本郷猛の連れである程度の認識しか持っていないし、持とうとは思わない。
なにより、ハカイダーが興味を持つのは、敬意を払うのは――気高く、強く、誇り高い、正義の戦士だけだ。
村雨良。ゼロ。獅子王凱。風見志郎。本郷猛。そして、キカイダー。
彼らのような正義の戦士との戦いこそが、ハカイダーの求める全てであり、唯一欲するものなのだ。
そうだ。今、こうして僅かにでも奴らとの戦いを思い出すだけで、回路<ココロ>が踊るほどに。
そうしてC−6を駆け抜けC−5に至った、その時。
「……む」
ちーちのさーけびはなーみのおとー
脇に見える学校の校庭を猛然と駆け抜けてくる排気音に気付き、ハカイダーはKATANAを止めた。
「あれは……」
フランシーヌもそれに気付いたらしく、音の主が見えた時には声を漏らした。
現れたのは、全身を血とオイルで汚した男だった。
明らかに、この殺し合いに乗っている。それを看破し、ハカイダーは己の幸運に感謝した。
あのままシャトル基地に向かっていたら、この男が仮面ライダー1号との決闘を邪魔していた可能性は大いにあったのだ。その不安要素を前以て排除できることは、都合のいいことだった。
男は途中まで、そのまま体当たりを仕掛けてくるような勢いだったが、ハカイダーの後ろ――フランシーヌに目を遣ると、急にバイクを止めた。
不可思議な急停止を訝しむが、それよりも優先すべきことがある。KATANAに乗ったまま校庭に乗り込み、ハカイダーは問うた。
「おい、貴様。仮面ライダーを知っているか?」
▽
しえええええええええええええん
敬介はA−4を抜けた後、すぐさま次の目的地を決定した。
それは、人が集まるであろう官庁舎やTV局……ではなく、隣のコロニーの自然公園エリアだった。
理由はない。あるとすれば、それは予感だった。仮面ライダーXとしての直感が、TV局には何があろうと決して向かってはならないと訴えかけたのだ。
その意志は強力で、TV局の倒壊を目撃しても尚、暗闇の意志に、「自身により有利な戦場を確保する為に自然公園エリアへ向かうのだ」と妥協させたほどだ。
そうして、神敬介――否、怪人・Xカイゾーグはマップ北エリアにある街中を移動した。
やがて、数時間前に赤い鎧の剣士と赤い髪の少女と戦った戦場である学校の付近に至ると、改造人間の優れた聴覚がバイクの排気音を聴き付けた。
獲物の存在を感知した暗闇の意志は、敬介の体に刻まれた仮面ライダーとしての技量を遺憾なく発揮してテントローを操縦した。
視界に捉えたのは、バイクに乗った黒髪の、日本人風の男だ。見たところ、バイクは改造人間が使うようなカスタム品ではなく、通常のものに見える。ならば、このまま突撃して……。
ぐおおおおおおおおおおおおおおん
暗闇の意志が効率の良い戦闘を実行しようとした、正にその時、敬介は男の後ろに女性がいることに気付いた。
その女性の姿が、似ても似つかないのに……『彼女達』と、ダブッて見えた。
敬介は必死に暗闇の意志を押さえつけ、結果、彼らから10m程の距離を取ってテントローを停止した。
今の内に、彼らが逃げてくれればいい。なにしろ、今の自分は返り血とオイルに塗れている、殺人鬼にしか見えない風体だ。
……だから、頼む……俺を、殺さなくていいから………………逃げてくれ。
敬介は暗闇の意志を押さえ込みながら、切にそう願った。
だが、男は離れるどころか近付いてきて、敬介に問うたのだ。
「おい、貴様。仮面ライダーを知っているか?」
それは、考え付く限り、この場で最悪の問いだった。
「仮面……ライ、ダァ…………!」
▽
支援
仮面ライダー。それは、本郷猛を初めとした悪と戦う10人の仮面の戦士の総称であり、この壊し合いの舞台に招かれた5人の戦士を指す言葉だった。
強さだけでなく優しさをも兼ね備えた頼もしき男、本郷猛。
この壊し合いの開始早々に墓を打ち立てていたという、城茂。
ハカイダーとの戦いに敗れその命を散らしたという、村雨良。
そして、まだ見ぬ風見志郎と神敬介。
彼らを象徴する言葉を聞くと、目の前の男はそれを、まるで壊れかけの自動人形のような口調で繰り返し、バイクに乗ったまま苦悶の表情を浮かべた。
その様子をフランシーヌはもとより、ハカイダーまでもが近寄りがたい様子で見ていた。
「…………ゲ……ル……う、ぐ……ぎ……が、ああ、ああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
何事かを呟いた、直後、男はまるで気でも狂れたかのような絶叫を上げた。
「な、なんだ?」
ハカイダーは男の奇行に目を点にしていた。恐らく、こういうものを見るのは彼も初めてだったのだろう。
フランシーヌも驚いたのは同様だった。だが、男の表情に見覚えがあるような気がして……やがて、あの時のことを思い出した。
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっくす!!
しえん☆
えぇぇぇぇぇっくす!!
「泣いている……? けど、彼らとは違う……」
アンジェリーナがエレオノールを出産した時、それは“難産”という出産の中でも非常に危険な状態であり、母子共に命の危険に晒されていた。
その時、正二やギイを初め、多くの人々が“泣きそうな顔”をしているのを、フランシーヌは見ていた。あの時はそれが何かは分からなかったが、今ならそうと分かる。
エレオノールも出産の直後にフランシーヌが叩くと、大声で泣き出した。それを見届けていた人々もまた、幾人かがつい先刻までとは違った顔で泣いていた。
それらの記憶と、目の前の男の顔を見比べると、確かに“泣きそうな顔”や“泣いている顔”に似ている。しかし、フランシーヌの知るどの顔とも、その表情は……。
そこまで考えて、唐突に1人の、決して忘れられない……忘れられるはずの無い顔が、フランシーヌの記憶の中から浮かび上がってきた。
「こ、ころ………れ」
「なに?」
その男の顔と、目の前にいる男の表情は、とてもよく似ていた。
「殺して、くれ」
目の前の男の表情は、フランシーヌの創造主――白金が、フランシーヌの首を絞め、打ち棄てて行った時の顔と、あまりにも似ていた。
支援するお
――その時の白金と、今の神敬介。彼らがその顔面に浮き彫りにするほど、彼らの心に深く刻まれた、暗い虚のような感情。
――人はそれを、“絶望”という。
「………………俺が……茂、を、お、おおお、おおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」
男の絶叫が、再び辺りに響き渡る。そして今度ははっきりと聞こえた名前に、フランシーヌは戸惑った。
「シゲル……? まさか、城茂さん……!?」
その名は紛れもなく、本郷が語った後輩の名前。その名前が、あのような口振りで語られたということは、つまり……!
すると、フランシーヌが呟いた一言が引き金となったのか、男の表情は自動人形のような無表情へと変貌し、そして、力の込められた動作を行い、その体を光で包んだ。
この光景には、見覚えがあった。そう、本郷が見せた“変身”と、酷似……いや、全く同じ――!
「その姿……馬鹿な! 貴様は……」
光が収まり、露となった男のもう1つの姿に、フランシーヌは言葉を失い、ハカイダーは絶句した。
銀の仮面に、光を失った薄暗い赤い複眼。胸部の装甲には亀裂が走り、銀の体を返り血とオイルで赤黒く汚したその姿は、紛れも無く――
「ライドル――」
銀の仮面の怪人はPDAを操作して取り出した、大きな刀を手に握ると、前方宙返りをしながらハカイダーとフランシーヌに迫った。
「仮面ライダー! 貴様は――仮面ライダーではないのか!?」
「――っ……脳天、割り」
ハカイダーの絶叫を聞き、銀の仮面ライダーの動きが鈍った。しかし、それでもその刃は過つことなくフランシーヌへと迫り――
「ちぃっ……!」
寸前のところで、ハカイダーがバイクを走らせることでその凶刃から逃れた。
初動がここまで遅れるとは、ハカイダーも動揺していたのだろう。
当然だ。強い正義の戦士に敬意を表し、その破壊を誓う悪の戦士だからこそ、ハカイダーは誰よりも正義の戦士について理解しているのだ。
まして、仮面ライダーとはZXを破壊し、V3とは共闘し、1号とは決闘を約束した仲なのだ。ハカイダーはこの会場にいる誰よりも、仮面ライダーを理解しているという自負があった。
だからこそ、フランシーヌが困惑する以上に困惑し、フランシーヌが理解に苦しむ以上に解せないのだ。仮面ライダーが凶刃を振るうという現実が、どうしても信じられないのだ。
支援だお
嗚呼、神敬介よどこへ行く
ハカイダーは校庭の隅にバイクを止めると、サブローの姿から変身してすぐに降車した。そして、フランシーヌに彼女のPDAとゼロバスターを投げ渡してきた。
「貴様は下がっていろ」
一方的に宣告して、それきりフランシーヌを無視するように、ハカイダーは銀の仮面ライダーを睨み付けた。
「しかし……」
仮面ライダーのことは、フランシーヌも本郷を通じてよく知っている。
あの本郷の後輩なのだ、悪人であるはずが無い。……なのに、あの銀の仮面ライダーは、凶刃を握り、フランシーヌを破壊しようとした。
それには、何か理由があるはずだ。そしてできることならば、彼を止めたい。そう思い、フランシーヌはハカイダーの決定に抗おうとした。だが。
「お前は、俺と仮面ライダー1号の決闘の約束、その証であり、証人だ。他の戦いに巻き込んで死なせる気など毛頭無い」
「ハカイダー……」
背を向けたまま語るハカイダーの決然とした言葉に、フランシーヌは何も言えなくなった。
何故なら、ハカイダーのその後ろ姿が――
「だが、折角武器を返してやったのだ。最低限、自分の身ぐらい守ってみせろ」
――とても、頼もしく見えたから。
▽
支援
ギンガはTV局の倒壊を目撃したが、現在位置から距離が離れていることと、情報不足による不確定要素が多いことから一先ず無視して、変わらずシャトル発射基地を目指していた。
その途中、どこからか、何者かの声が聞こえてきたことを察知した。
生体センサーには……反応無し。恐らく、余程の大声なのだろう。生体センサーの探知範囲外から響いてきたものと予測される。
その場に一時静止し、再び声が聞こえてこないかと待ち受け……聞こえてきた。方角と現在位置を素早く把握し、PDAのマップと照らし合わせる。推測される位置は、『学校』の近辺、若しくは内部。
状況を把握し終えると、ギンガは来た道を引き返し、現地の調査よりも優先される事項――帰還の障害となる者の排除の為に行動を開始した。
それと並行して、フットパーツのダッシュ機能による新たな移動方法の練習も、欠かさず行った。
▽
は、は、はかいだー!!
校庭の中央に近い位置で、ハカイダーは銀の仮面ライダーと戦闘を開始した。
目の前の仮面ライダーはZXやV3、そして1号とは違い、長ドスという武器を用いていた。ならばそれは、他の3人と比べて身体機能が劣るということなのか? 否。そんなことは決してない。
長ドスを縦横無尽に操りながら、その合間に繰り出される拳や蹴りの冴えは、他の仮面ライダーと比べてなんら遜色無い。
そう、この銀の仮面ライダー――Xライダーは、仮面ライダーとしての身体能力に加えて武器の扱いにも優れた、変幻自在の戦いを得意とする技巧派の仮面ライダーなのだ。
鉄をも打ち抜くハカイダーの蹴りを、銀の仮面ライダーは長ドスを地面に突き刺し、柄の部分を基点に体を持ち上げることで回避し、そこから更に体に捻りを加え、変形の廻し蹴りをハカイダーの頭部目掛けて打ち込んだ。
それを何とか右腕で受け止めて防御したが、流石は仮面ライダーの蹴り。得意の飛び蹴りでこそないが、その威力はキカイダーをも上回るか。
銀の仮面ライダーはその外見からも、ハカイダーと同じかそれ以上の数の戦闘を行ったことが分かる。それを、回復を一切せずに、回復したハカイダーを相手に一歩も引かずにここまで戦うのだから、流石の実力だ。
相手の実力を理解すればするほど、ハカイダーの苛立ちは募っていく。
ハカイダーの拳をいなし、銀の仮面ライダーは回避の動作からそのまま長ドスを振るい、ハカイダーの首を斬り落とさんとする。それを前方へ転がり込むことで回避し、そのまま体を回転させて足払いを仕掛ける。
足払いは当然の如く、ジャンプによって回避された。そう、銀の仮面ライダーはジャンプして――
「Xキック」
――遂に、自らを象徴するライダーキックを放ってきた。
両腕を交差させてXキックを防御しつたが、Xキックの反動で、ハカイダーはしゃがんだ状態のまま数mほど地面を抉りながら後退させられた。
ギンガ空気嫁
くくく
「ぬぉ……!」
さしたるタメも無しに発揮された威力に、ハカイダーの口からも驚愕の声が漏れる。
これが正義の戦士との決闘であったら、どれほど胸の悪魔回路が唸りを上げ、回路<ココロ>が踊ったことか……!
瞬時に間合いを詰めた銀の仮面ライダーが袈裟に斬り落とした長ドスの一撃を、ハカイダーは容易くかわし、そして、憤怒の言葉と共に拳を叩きつけた。
その拳は、銀の仮面をへこませるほどの、強烈な一撃だった。
「何故だ! 銀(しろがね)の仮面ライダーよ!!」
この戦いが、銀の仮面ライダーの意志によって行われているものならば、ハカイダーとてそれを受けて立ち、破壊することは吝かではない。
だが、そんなことは断じてない。それは、先程までの様子を見ていれば分かるだろうが、今の銀の仮面ライダーの様子を見ても一目瞭然であった。
「嫌だ……い、や……だぁぁ…………」
銀の仮面ライダーは先程から、呪詛のような言葉を呟きながら――
「何故貴様は、そんな醜態を曝している!!」
――血涙を流していた。
ハカイダーは既に、目の前の敵が仮面ライダーの姿形を借りた何者かということを看破していた。ならば偽装や変装の類かと思ったが……このような呻きを聞いては、この男が仮面ライダーだと認めざるを得ない。
ならば、どうして仮面ライダーが己の意思に反して、血涙を流しながら破壊を、悪行をしているのか? そんな疑問は陳腐なものだ。
自分達をここに集めたシグマは、体に爆弾を埋め込んだと言い、水色の髪の少女を爆破することによってそれを証明した。ならば、爆弾を埋め込まれる以外の処置――洗脳を受けた者が居たところで、何の不思議も無い。
しえん
「もう、殺したくない……奪いたく、ない……失わせたく、ない…………」
容赦の無い攻撃を繰り返しながら、仮面ライダーは呻き続ける。
その姿が、心だけが正義を志し、体が悪を為すという光景が、ハカイダーの回路<ココロ>を激しく憤らせる。
「ならば、貴様が守ってみせろ! それこそが、正義の戦士――仮面ライダーではないのか!?」
叫びながら、亀裂の走っている装甲目掛けて、仮面ライダーの十八番である飛び蹴りを敢えて放った。すると、銀の仮面ライダーはこの一撃に対して一切の回避も防御もせず、それをあっさりと受けた。
突然の“悪”の行動停止に、ハカイダーはにやりと笑う。
「俺、は……俺は……俺はぁ…………!」
そう、そうだ! 燃え上がれ、正義の魂よ! 奮い立て、正義の戦士よ! そうでなければ、貴様を破壊する意味など無い!! そうあってこそ、貴様を破壊することに意義がある!!
仮面ライダーが己を取り戻し始めた兆候を見て、ハカイダーは期待に胸を高鳴らせた。
だが、よろよろと立ち上がった仮面ライダーは、なにもしようとはせず、ただ。
「俺は……もう…………仮面ライダーには、戻れない。……だから――――殺してくれ」
などと、のたまった。
………………今、こいつは何と言った?
正義の戦士が、仮面ライダーが! 悪の改造人間ハカイダーに、自ら破壊されることを望んだ……だと!?
ハカイダーはありったけの怒りを込めた渾身の拳を、仮面ライダーの顔面に叩き込んだ。
その勢いのまま、再び地面に倒れ伏した仮面ライダーに、ハカイダーは言葉を叩きつけた。
「甘ったれるな、銀の仮面ライダー!! シグマに改造されたか洗脳されたかは知らんが、お前の気高き心は! 熱き正義の魂は!
完全に屈服したわけではあるまい!! ならば、既に死の覚悟を決めたというのなら……死力を尽くして、悪に抗え! 悪に打ち克て! 仮面ライダーよ!!」
それこそが、ハカイダーが敬意を表する正義の在り方、戦士の姿。
如何なる状況であろうと、その体現者の1人である仮面ライダーがそこから逃げ出すなど、何があっても許し難いことであった。
支援
「死力を、尽くして…………悪に、抗う……!」
ハカイダーの言葉を、まるで出来の悪い壊れかけの録音機のように、銀の仮面ライダーは繰り返した。
それに頷き、更にハカイダーは、仮面ライダーに発破をかけた。
「そうだ! そして、貴様の目の前にいるのは、貴様の後輩である仮面ライダーZXを殺し! 貴様の先輩である仮面ライダー1号に決闘を挑んだ悪の改造人間、ハカイダーだ!!」
この宣言を聞いた仮面ライダーは、ゆらり、と、幽鬼の如く立ち上がった。
「ゼクロス……本郷、先輩…………悪の、改造人間……!」
仮面ライダーの声から少しずつ、唯一表れていた感情である絶望が失われ、無の感情へと帰ろうとしていた。
悪を斃すのなら良いだろうと、悪に身を委ねるのか?……いや、違う。断じて違う。
「さぁ、奮い立て、銀の仮面ライダーよ!! そして、自らの意志で、悪を――貴様を操る悪意と、悪の戦士である俺を破壊してみせろ!!」
言い終わった頃には、銀の仮面ライダーは無感情へと戻り、容赦なく長ドスを振るってきた。
だが、魂と肉体の合一せぬ攻撃の、なんと拙劣なる事か。
最早ハカイダーは、“今の”銀の仮面ライダーに負ける気が寸毫もしなかった。
何故なら、始まったからだ。目に見えぬところで、正義と悪の戦いが。
薄暗い暗闇に沈んだ赤い複眼の奥底に、ほんの僅かだが、正義の炎が灯ったことを、ハカイダーは確信していた。
ならば、その決着が付くまで、自分は最も近くで見届けるとしよう。……その前に俺に破壊されるような間抜けであれば、この男は仮面ライダーとして失格だったというだけのこと!
そのように心に決めて、ハカイダーは本気で銀の仮面ライダーと戦い続けた。
▽
目の前で繰り広げられる激闘を、フランシーヌは決して目を離すことなく見ていた。
ハカイダーと仮面ライダー。両者の動きは人間の領域を遥かに超えた域にあり、自動人形の中でもあれほどの動きを見せるのは、“最古の四人”でもどうかというほどだ。
その彼らの一挙一動を、フランシーヌは確かに全て見届けていたのだ。
“真夜中のサーカス”で100年もの間、絶えることなく日々繰り返された道化となりし自動人形達による曲芸の数々。それらを余すことなく、全てを見ていたフランシーヌならばこその眼力と言えるだろう。
しかし、そのフランシーヌをしても、両者の動きを追うことは困難であった。
自動人形達の見せるものが“曲芸”ならば、ハカイダーと銀の仮面ライダーが繰り広げているのは“極芸”と称すべき激闘、死闘だ。
世界と時間――時空を越えて実現した改造人間と人造人間の戦いは、自動人形の見せるどのような芸よりも鮮烈であり、過激であり、激烈であり、凄まじいものだった。
この時、フランシーヌの傍らに冷静な第三者がいたら、こう語ったことだろう。
「フランシーヌは目の前の戦いに見惚れている」と。
数多の自動人形が求めてやまなかったその姿を、フランシーヌは誰に見せることもせずにそうしていたのだ。
そのようになった理由は、2つ。
1つは、ハカイダーが銀の仮面ライダーに発した言葉の数々。同じ機械仕掛けの存在とは思えない、才賀正二や才賀アンジェリーナを髣髴とさせる“熱く激しい”言葉は、銀の仮面ライダーだけでなく、フランシーヌの“何か”をも揺り動かしていた。
そしてもう1つ、銀の仮面ライダーに生じた変化だ。ここからでは聞き取れないような、囁くような声を幾度か発し、ハカイダーの言葉を聞いた彼の動きに、明らかな変化が見えたのだ。
強いて言うなら、それはぎこちなさ。まるで、意志と体がそれぞれバラバラに動いているような、そのような違和感を覚えるのだ。
その変化は、ごくごく僅かなものでしかない。同じ仮面ライダーや実際に戦っているハカイダーを除けば、数々の芸を見ることによって鍛えられた眼力を持つフランシーヌでなければ、それを見抜くことは出来なかっただろう。
そして、彼に――変身の直前に、その表情を創造主である白金と同じものから、フランシーヌのような無表情へと変化させていた銀の仮面ライダーの様子は、何よりもフランシーヌの興味を引いた。
自分はこの戦いを見届けることによって、今度こそ、求めてやまなかったもの……いや、きっと今も求めている“心”を得ることができるのではないかと、不謹慎ながらそんな期待を抱いていた。
戦いが佳境に至り、ハカイダーの拳を受け止めた長ドスに皹が入った、その瞬間、フランシーヌは何者かの気配を察した。
そう、これは……“真夜中のサーカス”でフランシーヌを笑わせるべく、自動人形達が試行錯誤の末に考え出した演出の1つ。
芸の途中で他の道化が現れる手法――“乱入”だ。
「っ!?」
それに気付き、上を見る。そこには青く長い髪を靡かせた女性が、剣を片手に高速で飛び掛ってくるところだった。
▽
ギンガがフットパーツのダッシュ機能により新たに得た移動手段。それは『ダッシュジャンプ』と呼ばれる技術だった。
ダッシュジャンプとはその名の通り、ダッシュの勢いを殺さずそのままジャンプするというものだ。安直なネーミングではあるが、この技術にはその単純さからは考えられないほど高い効果があった。
簡潔に述べると、ジャンプの速度、飛距離、最高到達点――これらが全て、通常のジャンプの数倍にまで伸びるのだ。
加えて、微細な力加減により高さを低めに飛距離のみを伸ばす。飛距離を短めに高さのみを伸ばすなど、その運用方法は多彩であった。
フットパーツによる戦闘もほぼ完熟していたギンガは、この単純な技術を応用も含めて、数十分程度でほぼ完璧にマスターしていた。これで空中ダッシュも併用すれば、戦術の幅は格段に広がる。
そして学校の近辺に至ると、戦闘音を感知。ギンガは戦闘の主達に気付かれないように、戦闘の余波で破壊されたらしい体育館の屋上へ跳躍し、着地。そこから、生体レーダーと合わせて状況を把握する。レーダーの反応は2つ。
校庭の中央付近には、黒と銀の――Aクラスの警戒対象である『カメンライダー』と近似したフォルムの2体がおり、戦闘を繰り広げていた。遠目でははっきりと確認できないが、少なくとも、軽視できない戦闘能力の持ち主であることは確かだ。
その2体が戦闘をしているとなれば、ギンガの選択は1つ――傍観である。
あれほどの接戦。どちらが勝利するにしても、極度の消耗は必至である。ならば、戦闘が終わってから、消耗した勝ち残った方とだけ戦うことこそが最善である。
行動を決定し、その他の要因を確認すべく、ギンガは校庭を見回した。
確認されるのは、放置された2台のバイクと、その内の1台の傍にいる女性。
レーダーを確認し、女性の位置と照らし合わせる。レーダーに女性の反応は無し。ならば、これはどういうことか?
暫し思案し、ギンガはあれが生体パーツを用いていない純粋なロボットであると判断した。それならば、“生体”レーダーに反応しないはずである。
ギンガは再度、位置関係を確認する。そして、女性型ロボットの挙動から戦闘能力が低いことを推測し――後の不安要素を確実に排除すべく、行動を開始した。
体育館の屋上からロボット目掛けてダッシュジャンプを行う。中央付近での戦闘音に、ジャンプの音は掻き消された。誰もギンガの跳躍に気付いたものはいない。
ジャンプの描く曲線も、高低差も含めて計算通り。更にダッシュジャンプの勢いに重力加速度も加わり、このまま誰に気付かれることも無く、右手に握った天王剣で女性型ロボットを過つことなく始末できると、ギンガは判断した。
しかし、何の落ち度があったというのか、女性型ロボットは寸前でギンガの強襲に気付き、身をかわしたのだ。
予想外の回避にも、ギンガは慌てず、状況を分析する。
今のタイミングで奇襲に気付いたことには高い評価が与えられる。だが、回避の際の速度も身のこなしも、ギンガの認識する『一般人』程度のレベルであり、このまま始末することは不可能ではないと判断。加えて、中央付近の2体は未だにこちらに気付いていない。
――この間、僅か0.1秒。
ギンガは再び天王剣を構え……またも予想外の事態に翻弄される。
ロボットの右手に、本人の意匠からかけ離れたパーツが装備されていたのだ。そこから発射されたエネルギー弾を、ギンガは回避した。
だが、今の発射音で間違いなく、中央の2体に気付かれたはず。
次の発砲を警戒しつつ、ギンガは中央で戦う2人に目を向けた……が、変化無し。依然として戦闘を継続している。
ならば、ここで女性型ロボットを速やかに撃破し、一時離脱するのがベスト。
そのように判断し、ギンガは女性型ロボットの撃破を再開した。
▽
道化扱いwww
神敬介は戦っていた。眼前に立つ黒い破壊の戦士とではなく、己を包む暗黒の意志と。
暗黒の意志がハカイダーに拳を振るう度、敬介は蹴りを放つ。
暗黒の意志がライドルの如く長ドスを振るう度、敬介は拳を放つ。
しかし、それを幾度繰り返しても、暗黒の意志を振り払うのには足りない。何度払いのけても、まるで無限に湧き出る泉の如く、暗闇は幾度でも立ち込める。
心象風景の中、精神の領域――言わば夢の中で行われている、孤独な戦い。だというのに、疲れも、不快感も、何もかもが現実味のあるものだった。
荒く呼吸をして……そこからも暗闇の意志が入り込もうとしてくる。敬介はそれを慌てて打ち払う。
その時、腹に強烈な一撃が入れられた。
「ガッ……ハ、ァ……!」
ハカイダーの膝蹴りが、Xカイゾーグの腹に入ったのだ。それにより一瞬怯むが、Xカイゾーグはすぐにハカイダーを打ち払い、距離を取る。
……くっ…………流石は、悪の改造人間。容赦が無いな。
そのように考え……敬介は自嘲した。
……なにが、悪の改造人間だ。それって、今の俺のことじゃないか。ハカイダー……だったか。寧ろ、力の無い女性を守って戦うこの男こそ……仮面ライダーに相応しいんじゃないのか?
悪の戦士が聞いたら激昂すること間違い無しの思考をした、その時、ハカイダーの後ろから発砲音が聞こえてきた。
見ると、ハカイダーの連れである銀髪の女性が、見覚えのない青い髪の女に襲われていた。
「しまった……!」
ハカイダーは見てこそいないが、発砲音で襲撃者の存在を気取ったのだろう。
だが、暗闇の意志にそんなものなど関係ない。Xカイゾーグの攻め手は増し、逆にハカイダーは何とか離脱しようとして攻め手を欠き、防戦一方に陥ろうとしていた。
……おい、何をしているんだ。
Xカイゾーグの蹴りが、ハカイダーを捉える。
――青い髪の女の足元を撃って撹乱し、銀髪の女性は必死に逃げようとしている。
ハカイダーは蹴りをものともせず、踏み止まる。
――青い髪の女はそんなもの意にも介さずに突き進み、銀髪の女性との距離をあっという間に詰めた。
その瞬間。
敬介は、無我夢中で動いた。
ハカイダーが放った強烈な一撃も、長ドスを盾代わりにして何とかやり過ごすと、そのままハカイダーに構わず、銀髪の女性の下とへと急ぐ。
……間に合え。
青い髪の女の剣を辛うじてかわしたものの、銀髪の女性の右腕は斬り落とされ、そこから銀色の液体が滴った。
そう……まるで、銀がそのまま血になったような、そんな液体だった。
思い出がフラッシュバックする。
BADANの名も知らず、『選ばれし民』という通称でさえも掴めていなかった頃。神敬介はスペインのコルタ・デル・ソル近海で発生していた『海の銀』事件を追っていた。
そこで知ったのは、1人の老人と、その息子夫婦を襲った悲劇。そして、人の幸せを己の邪悪な欲望で穢し、それを奪われた悲しみと、憎悪と、絶望にさえも付け込んだ、悪辣なる“銀の髑髏”。
それは、人々の恐怖を糧として、それを形として成す、銀と見紛う液体金属を精製していた。
その銀が今、目の前にあるようだった。
……あの時は、間に合えた。
青い髪の女が、剣を振り被る。銀髪の女性は、諦めてしまったのか、それ以上動こうとしなかった。
……だから、今度も! 今度こそ!
「間に合えええええええええええええええええ!!!!」
敬介は――仮面ライダーXは暗闇の呪縛を、今、この時だけは完全に打ち破り、怒涛の如く駆け抜けた。
そして、仮面ライダーXの行動は……寸前のところで、間に合った。
銀髪の女性の襟首を掴んで、強引に手前に引っ張りよせ、凶刃から救ったのだ。
……漸く、救えた。
その実感に安堵した……のが、いけなかったのか。暗闇の意志が、体の支配権を奪い返さんと暴れ始めた。それを押さえつけるために、仮面ライダーXは行動停止を余儀なくされ、隙だらけになった。
青い髪の女――ギンガは、それを見逃さなかった。
「ナックルバンカー」
原因不明の一時停止だが、今こそAランクの脅威を排除する好機と見たギンガは、魔力を纏った拳を、容赦なく仮面ライダーXの胸部の赤い装甲に叩き込んだ。
度重なる激戦で亀裂が走り、ハカイダーとの戦いで極限まで磨耗していた装甲は、その一撃に耐えることが出来なかった。
「ゲ、ボァァ……」
口元から血を吐き、仮面ライダーXは倒れた。
……その変身が解かれていないのは、如何なる執念によるものか。
▽
支援
ハカイダーは、自分の目の前でたった今起きた出来事を冷静に把握していた。
銀の仮面ライダーは途中で自分との戦いを放棄し、フランシーヌを乱入者の女の凶刃から救った。ここまではいい。正しく、正義の味方の行いだ。……だが。
己の体を支配せんとする悪の意志を、完全に倒すことができていなかったのか。銀の仮面ライダーはフランシーヌを助けた直後に、突如としてその場に硬直し……乱入者の女の拳を喰らい、血反吐を吐いて、倒れた。
そして、その女は今またフランシーヌを……!
「貴様……貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!」
ハカイダーは憤激の絶叫と共に、全力で青い髪の女へと突進した。
それを察知した女は、フランシーヌへのトドメの一撃を放棄して、バックステップを取った。
いい判断だ。続行していたらその脳漿を、肉片を、血液を、頭髪を、余すことなく辺り一面にぶちまけていたところだ。
女と2人の間に立ちはだかると、ハカイダーは女を睨みつけつつ、フランシーヌと仮面ライダーの様子を窺った。
フランシーヌの失われた腕から流れていた銀色の血液は、今は止まっていた。恐らく、すぐに止血される構造か、自分自身で処置をしたのだろう。そして、フランシーヌは銀の仮面ライダーに必死に呼びかけていた。
変身こそ解けていないが、銀の仮面ライダーはうつ伏せのままピクリとも動かない。
なんという闘志であろうか。仮面ライダーは未だに、己の体を奪わんとする悪と、戦い続けているのだ。解かれていない変身こそが、その何よりの証拠。
それを見て、ハカイダーの怒りは更に昂ぶった。
「戦士の戦いを穢し、背後から弱者を狙う卑怯者よ! 貴様のような下衆には、悪として生きる道も無いと知れ!!」
宣言し、ハカイダーは卑怯者を完膚なきまでに破壊すべく動き出した。
▽
俺の名は 俺の名は ハカーイダー♪
予想外の事態の連続に、ギンガは困惑していた。
戦闘力など皆無に等しいと判断したロボットの、予想以上の粘り。
突如として戦闘を中断し、ロボットを庇い、その直後に何故か行動を停止した銀色のカメンライダー。これによりカメンライダーを無力化できたのは良かった。
だが、己が戦っていた相手が倒されたことに激昂し、今、自分へと襲い掛かってくる、カメンライダーと同等の力を持つ黒いサイボーグ。この存在が最たる計算外だ。
何者にも気取られぬ内にロボットを破壊し、その後は身を隠して銀と黒のサイボーグの決着を待つはずが、このような事態になってしまった。
しかし、カメンライダーとロボットの撃破は失敗したものの無力化には成功。黒いサイボーグもカメンライダーとの戦闘で消耗している。結果だけ見れば、当初の予定と大差ない。
ギンガは計算違いの展開を悔いるような無駄な思考をせず、現状の打破のみを考えた。
逃走――現状では却下。敵の機動力、戦闘スペックを鑑みるに、下手に逃走しようとすれば撃破されかねない。撤退するにしても、確実に撤退できるタイミングを見計らうべきだ。
ならば、この場で取るべき行動は、戦闘。相手が肉弾戦を得手とするのならば、自分も不得手な武器は用いず、シューティングアーツによる格闘戦を選択。
ギンガは天王剣をその場に投げ捨て、構えを取る。
その様子にハカイダーは、ピクリ、と反応を示したが、無言のまま。
先に仕掛けたのは、ハカイダーだ。真っ直ぐに突っ込んできたそれを、ギンガはダッシュジャンプによって回避した。
「なに!?」
通常のジャンプではありえない瞬発力に、ハカイダーは困惑する。だが、これが相手の能力であるならば、それをも打ち破り、破壊するまでのこと。
支援
ギンガは空中でフットパーツの機能を用いて方向転換すると、ハカイダーに向けて乾坤圏を発射する。
猛烈な勢いで迫る乾坤圏に、ハカイダーは舌打ちをしながらバックステップで回避した。それでも、ギンガの着地の瞬間を狙って再度仕掛ける。今度はあの奇怪なジャンプにも戸惑うことはない。
ギンガは着地すると、拳に魔力を収束させ、ダッシュによって勢いをつけ、擦れ違い様、ハカイダーへとベルカ式近接魔法・ナックルバンカーを放つ。ハカイダーも同様に、憤激を込めた拳をギンガに放った。
交錯の後、ハカイダーは肩の装甲を掠められ、僅かに壊されていたことを悟ったが、動じず、ゆっくりと振り返る。
その視線の先には、脇腹を抉られ、鮮血を滴らせるギンガがいた。
「ほう……よく、かわしたな」
ハカイダーが敵へ贈る純粋な賞賛の言葉も、今は底冷えするような恐ろしさがあった。
銀の仮面ライダーは、己に巣食う悪との戦いの最中だった。自分は、言わばその立会人に過ぎなかった。なればこそ、仮面ライダーに戦いを全うさせねばならなかった……それなのに!!
目の前の女は自分達の戦いに割って入るならばいざ知らず、あろうことか力の無いフランシーヌを襲った。
戦いの場に居合わせている弱者とは、最初から人質であるか本人が己の意志で動かぬ限り、悪であっても手出しをしてはならない戦いの見届け人だ。それに手を掛けるなど、言語道断。悪の風上にも置けぬ小悪党だ。
悪を誇るが故に、ハカイダーは目の前の女を許せなかった。
……何より不意打ちというものには、苦すぎる思い出がある。
支援
対してギンガは、今の一撃に驚愕していた。
このサイボーグのスペックは、恐らくはカメンライダーと同等のはず。にも拘らず、攻撃の鋭さは数段上だった。
その原因は、本郷猛の優しさにあった。本郷は最初から、名も知らぬギンガの更生を願い、決して殺さないようにと戦っていたのだ。
途中で本郷も、ギンガを止める為ならばと本気で戦ったが……それでも、少女の姿そのままに戦うギンガに対して、彼はどうしても全力を出せなかったのだ。
だが、ハカイダーは違う。喩え相手が女子供であろうが、それが破壊すべき相手ならば容赦なく破壊する。そこに同情などと言った感情が入る隙など一分も無い。
ハカイダーの悪魔回路に満ち溢れ、機械の身体に漲る感情は――破壊衝動と殺意、そして憤激のみ。
加えて、今の一撃の明暗を分けたのは、疲労の度合いであった。
ハカイダーは直前に仮面ライダーX……もとい、怪人Xカイゾーグと戦っていたとはいえ、途中からは本気ではあっても全力を出していなかった。加えて、Xカイゾーグが度重なる戦闘で疲労していたこと、なにより修理工場で回復していたことが大きかった。
ギンガもXカイゾーグ程ではないにせよ、連戦に次ぐ連戦で疲労していた。それは多少の休息を挟んだ程度で、自分と同格以上の存在との戦いを誤魔化せるものではなかったのだ。
ギンガの脳裏に、撤退の選択肢が強く浮かぶ。だが……どうしても、目の前の男から逃げ切れる確信が持てなかった。
初めて肌で感じる、濃密で冷淡な殺意が、戦闘機人の感覚をも震わせていた。
「来んのか?……では、いくぞ!」
怒りを湛え、殺意を迸らせながら、ハカイダーは動いた。
それを聞いて、ギンガは自分が呆けていたことに気付く。自らの失態に舌を打つ間も惜しみ、ハカイダーの蹴りを踏み込んでかわす。そのまま、膝に拳を叩き込もうとした……が。
「はぁっ!」
裂帛の気合と共にハカイダーは前蹴りの軌道を強引に変更し、ギンガの頭を刈り払うようにした。ギンガは寸前でこの脅威を察知し、しゃがみ込んで回避する。
刈り払われたハカイダーの右足が地面に着くより先に、ギンガは残った左脚を払おうとしたが、これも回避される。この隙に、体勢を整える。
「女だてらに鍛えられた見事な体術だ……が、使い手の性根が腐っていては、な」
ハカイダーは残念そうでもなく、ただ淡々と語る。戦士の戦いを穢した下衆に対する敬意など、この世に存在しないかのように。
ギンガはその言葉にも動揺せず、目の前の黒いサイボーグをAランクの警戒対象に認識し、その戦闘能力はオーバーSランクと同等と判断した。漆黒のサイボーグから放たれるプレッシャーは、時空管理局のエース・オブ・エースもかくやというほどだった。
加えて、この戦場に非殺傷設定など存在しない。敗北は即ち機能停止だけではなく、死を意味する。それでは、ナンバーズとしての任務を遂行することは不可能になってしまう。
「……貴様の実力は認めてやる。だから、これで最後だ」
宣言し、ハカイダーは構えを取る。それは、仮面ライダーZXのゼクロスキックをも正面から打ち破り、村雨良を屠った、必殺と呼ぶべき技の構えだった。
ギンガはハカイダーの言動と強さを増した殺気とプレッシャーから、次の一撃こそがこの戦いの天王山と悟り、回避と防御に専念することを選択した。生半可に反撃を狙っているようでは、この一撃を凌ぐことが出来ないと、本能のような何かが警鐘を鳴らしたのだ。
▽
支援でつ
「しっかり! しっかりして下さい!」
フランシーヌはハカイダーと青い髪の女性が戦いを見届けることはせず、自分を庇って動かなくなった仮面ライダーの安否を気遣った。
この銀の仮面ライダーは、自分が苦しみの中にあるにも拘らず、フランシーヌを死に物狂いで助けてくれた。その姿にフランシーヌは、エレオノールを助ける為に自動人形に立ち塞がった人々の姿を見た。
彼らのような素晴らしい人間が、自分の為に死のうとしていることが、フランシーヌには理解できなかった。
正二達が命懸けでエレオノールを守ったのは、かけがえのない大切な存在だったからだ。それなのに、この銀の仮面ライダーは見ず知らずの自分を助けて、その代償として死に瀕している。
分からない。人間の心は、やはり人形の自分には分からない。
だからこそ、分かりたい。そうすれば、人形の自分もきっと、本郷やエレオノールのように笑えて、ミクのように歌えるようになれると思うから。
そこでふと、フランシーヌは斬り落とされた自分の右腕を見た。別段、痛みや喪失感は無い。右腕の切断面からの止血の措置も終わっている。
なのに、それに興味を向けたのは、その切り口から滴る液体――『生命の水』を見るためだ。
『生命の水』は万物を溶かす危険なものでもあるが、同時に、それを飲んだ人間に強靭な生命力を与えることを、フランシーヌは『しろがね』という実例から知っていた。
フランシーヌの体内を巡る体液は、見様見真似で作った他の自動人形の擬似体液とは違い、創造主が作り上げた紛れもない、本物の『生命の水』。ならば、これを飲ませれば……
そこまで考え、フランシーヌは細腕に宿るか弱い力で、一所懸命に仮面ライダーをうつ伏せから仰向けの状態にした。そして、いざ自分の腕を握って……仮面ライダーがその名の通り仮面を被っていることを思い出した
仮面を被っているということは、当然、口元も塞がれているということだ。これでは、彼に『生命の水』を飲ませることも出来ない。
フランシーヌが己の短慮を嘆いた、その時、2つの場所で動きがあった。
1つは、ハカイダーが必殺の構えを取ったこと。
もう1つは……仮面ライダーがゆっくりと、苦しそうに起き上がり……フランシーヌの首を鷲掴みにしたのだ。
「くっ……!?」
迂闊だった。彼は、つい先程まで自分の意思に反して戦わされていたのだ。自分を助けてくれたことで、その呪縛を打ち破ったとばかり思っていたが、それは間違いだったのだ。
フランシーヌは己の間抜けさを呪い、仮面ライダー……否、怪人・Xカイゾーグはそのか細い首を圧倒的な力で握り潰…………さなかった。
Xカイゾーグの右腕はガッチリとフランシーヌの首を鷲掴みにし、今にも握りつぶさんとしている。
しかし――仮面ライダーXの左手がXカイゾーグの右手首をしっかりと握り締め、そうはさせまいとしていた。
▽
支援です
▽
暗闇に包まれた空間の中で、2人の改造人間が対峙していた。
2人の容姿は完全に同一であり、その違いは、赤い複眼に光が灯っているか否かだ。
「また、殺すのか……暗闇よ」
――ああ、殺すとも。我らBADANの世界に、このようなワームなど必要ない。
神敬介の問いに、暗闇の意志は当然のように頷いた。それを聞いた敬介の仮面は、寸毫も変化はしない。ただ、その瞳の光が揺らぐだけだ。
「俺の目の前で、女を殺すのか……」
思い出すのは、3人の女性。
水城涼子と、水城霧子。かつての敬介の恋人と、その妹。彼女達はインターポールの捜査官としてGODに潜入して……仮面ライダーXに協力して、殺された。
そして、グレコ爺さんの息子の花嫁――ロッサ。銀の髑髏に全てを奪われ、利用された悲しい女性。敬介は、彼女の肉体を破壊することでしか、彼女を救えなかった。
その誰もが、暗闇に――BADANに奪われた、悲しい命だった。
「俺の手で、また、人を殺させるのか……」
思い出すのは、名も知らぬ3人――怪人の少女を守るために立ち塞がった、丸みを帯びたボディのロボット、赤い髪の少女、学ランを身に纏ったドラム缶のようなロボット。彼らの誰もが、大切な者を守るために戦い……散って逝った。
そして……恐らくは、悪との戦いに全てを出し尽くしたが故に倒れていた、口は悪いが気風はいい、手は掛かるが頼れる後輩だった――城茂。
暗闇の意志に操られていたとはいえ、それは紛れも無く、仮面ライダーXの肉体が為した所業だった。そうと分かっていながら、抗うことの出来なかった自分の罪だ。
それを、暗闇の意志は鼻で嗤った。
ぎゃあ
――人を、だと? 滑稽だな。貴様が手にかけた者の中に、生粋の人間などおるまいて。この女にしても、一切の血の通わぬ、古臭い木偶人形ではないか。
言われて、自らの右手の感触を確かめる。
硬く、脆い、温かさのない感触。明らかに、人間の感触ではなかった。
だが、そんなことは敬介も百も承知だった。
「彼女のどこが人形だ。先程まで襲いかかろうとしていた俺なんかを気遣ってくれる優しさを持つ彼女の、どこが人形だと言うんだ」
敬介には聞こえていた。必死に呼びかけてくれる、彼女の声が。
それに応えられなかったのは――今の自分の有様を見れば、一目瞭然だ。
「……人形は、俺の方だ。暗闇に飲まれ、その暗闇が薄らいでも尚、抵抗できず、抵抗を諦め、流されるまま、ただ死ぬことを望んでいた俺こそが……心の死んだ、人の形を真似ただけのモノだった」
仮面ライダーXの瞳に灯った光が一瞬薄らぎ、すぐに更なる輝きを放った。
「だが、今は違う。俺は……俺は!」
仮面ライダーXは暗闇を突き破るように天高く跳躍し、そして。
「俺は神敬介――仮面ライダーXだ!!」
渾身のXキックを、怪人Xカイゾーグに叩き込んだ。
――ぐぅおおおおおおおお!? お、おぉぉぉおおおのれぇぇぇぇ! 仮面ライダァァァァァァァ!!
断末魔の叫びが響き渡り、Xカイゾーグは暗闇と共に跡形も無く消え去った。
支援
そして、暗闇を2つの光が打ち払う。
その光は、闇を切り裂き、闇に穴を穿ち、光を齎した。
その光は、稲妻の光。そして、見たこともない赤い閃光。
打ち払われ消え去ろうとしている暗闇の切れ間に、見慣れた顔と見覚えのある顔が、ちらりちらりと見え隠れする。
「そうだぜ、先輩。なんとしてでも戦い抜いてくれよ。なんせ俺達は……まだ、勝っちゃいねぇんだからな」
「神先輩。貴方は――俺達の分も戦ってください。仮面ライダーとして」
赤の映える2人の仮面の戦士はそう言って、暗闇が消え去ると、光に溶けた。
「…………ありがとう、茂。そして……10号ライダー」
後輩達からの激励に、仮面ライダーXは涙を流しながら礼を言った。
その心地良い涙に浸ることもせず、すぐに拭い取り、気を引き締める。
暗闇は執念深い。一度打ち払われた今も尚、再び甦らんとしている。
その根源は――仮面ライダーXの胸の中。そこで、暗闇が蠢いている。
「さぁ、仕上げだ」
仮面ライダーXはフランシーヌを解放すると、そのまま立ち上がり――砕かれた胸に、己の右手を突っ込んだ。
「うぅがあああああああああああああ!!」
凄まじい激痛が、敬介を襲う。
だが、自分は2度死んだのだ。今更、この程度の痛みに耐えられないはずがない!
仮面ライダーXは、自分の胸の奥深くに手を突っ込み、掻き回す。そして、己が身の内に巣食っていた異物――“暗闇の種”を引き摺りだし、握り潰した。
支援よ
キタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
本来ならば、自分の力では決して為し得なかったであろう、暗闇の意志の打倒。それを神敬介が為しえた理由は幾つかある。
1つは、暗闇の種が半分になっていたこと。
1つは、この会場に暗闇大使がおらず、暗闇の種による支配力が弱まっていたこと。
そして、最たる要因は、神敬介の不撓不屈の正義の心――仮面ライダーSPIRITSとも言うべきものが、悪の戦士ハカイダーの激励によって甦ったこと。
他にも要因は、探せば幾つかあるだろう。
だが、純然たる事実は唯一つ。
仮面ライダーXは、遂に、暗闇に打ち克ったのだ。
▽
きたきたきた
雪駄!雪駄!雪駄あああああああああああああああああっ!!!
ハカイダーが仮面ライダーZXを打ち破った月面飛行蹴りを放たんとした、正にその瞬間であった。
仮面ライダーの、絶叫のような雄叫びが聞こえてきたのは。
見ると、そこは調度、銀の仮面ライダーが自分の胸の中からおぞましい異物を取り出している場面だった。フランシーヌはそれを呆然と見ていたが、ハカイダーは歓喜に打ち震えた。
甦ったか……悪を打ち破ったか! 仮面ライダーよ! それでこそ……それでこそだ!!
しかしその直後、仮面ライダーの変身は解けて人間の姿に戻ってしまった。恐らく、とうに限界を超えていたのだろう。
ハカイダーがその一部始終を見届けた、その隙に、ギンガは動いた。
ロボットやカメンライダーへのトドメは、ハカイダーからの追撃に対応できなくなる可能性が高いので放棄。この場は、撤退を選択。
ギンガは左腕の乾坤圏をカメンライダーに向けて発射した。
「ちぃ!!」
ハカイダーは予想通り、それを遮った。その隙に、ギンガはダッシュジャンプと空中ダッシュを活用して、学校から離脱した。
「尻尾を巻いて逃げ出すか! この卑怯者が!!」
全力で逃げ去っていくギンガに罵声を浴びせながら、しかし、ハカイダーはそれを追おうとはしなかった。
背中を見せて逃げる者に襲い掛かるなど、誇りに反する。そして何より、今この場に、傷付いた仮面ライダーと決闘の証であるフランシーヌを置いて行くわけにはいかない。
仮に、この直後に逃げたと見せかけて奇襲を仕掛けられようとも、あの女は接近戦を得手としている。ならば、どのように不意を討たれようとも、返り討ちにする自信はある。
……白骨ムササビの時のようなヘマは、二度としない。
学校から去っていくギンガの姿が見えなくなると、ハカイダーは踵を返して仮面ライダーとフランシーヌの下へと向かった。
▽
雪やこんこんあられや(ry
おっおー
おおおおおおおおおおおお!!
フランシーヌは、銀の仮面ライダーが自分の胸から何かを引きずり出し、その直後、人間の姿に戻って、再び倒れる様子を、呆然と見届けていた。
やがて、状況を理解すると、仰向けに倒れた仮面ライダーの男の容態を確認した。
はっきり言って、酷いものだった。特に、胸の傷が酷い。胸に穿たれた穴からは今も血が流れ、自動人形とは異なるパーツを露にしていた。このままでは、命の危険もあるだろう。
フランシーヌは今度こそ、男に自分の斬り落とされた腕に残っていた『生命の水』を飲ませた。これで彼の命は確実に繋がり、回復も早まるはずだ。
実際、彼の顔色は僅かだが良くなった。それを見て安堵すると、後ろから声を掛けられた。
「……自分の体液など飲ませて、何のつもりだ?」
フランシーヌの行動を理解できないのだろう、人間の姿となったハカイダーはそのように問うた。
確かに、この反応は『生命の水』を知らぬ者からすれば当然の反応だろう。そう思い、フランシーヌは丁寧に説明をした。
「私の体に流れる『生命の水』は、それを飲んだ生物に力を与える特別な液体なのです。半ば人間とは違う彼にも、きっと効果があると思いました」
実際、男の出血は止まりつつある。胸の傷が塞がるのは無理だろうが、それでも、確実に効果があった。
なんという興奮
「ほう、それは便利だな。……それで、どうしてそんなことをしたのだ?」
「え?」
重ねて問われ、フランシーヌは思わず聞き返してしまった。ハカイダーは更に続けて言った。
「その男は、紛れも無く仮面ライダーだ。だが、恐らくは洗脳によって肉体の自由を奪われ、お前に襲い掛かった。そんなやつを、お前はどうして助けたのだ?」
そのように問われて、フランシーヌは初めて自分の思考の歪さに気付いた。
自分を襲った者を助けるという行為は、確かに異常だろう。
だが、彼は苦しんでいた。己の意思に反して動く体に、それ故に犯してしまったのだろう罪に深く傷付き、苦しんでいたのだ。
しかし、その苦しみの中、彼は自分の身を擲って、フランシーヌを命の危険から救ってくれた。
そして先程も、彼の体を動かしていた彼とは別の意志を阻み、フランシーヌを助け、絶叫を上げながら、その意志の根源であろう醜悪な物体を自分の意思で引き摺り出した。
そんな銀の仮面ライダーの姿を見続けて、フランシーヌは助けたいと思った。……それ以外に、理由は思い浮かばなかった。
「……分かりません。ただ、苦しんでいたこの人を、私などを助けて下さったこの人を、私も助けたいと思った。だから、助けたのです」
正直に、自分の考えをハカイダーに伝えた。すると、ハカイダーは、ニヤリ、と不敵に笑った。
「成る程。つまり、お前の心にも灯ったわけだ」
「私の、心……?」
ハカイダーの口から何気なく告げられた言葉に、フランシーヌは驚愕した。だが、そんなものは気にも留めず、ハカイダーは言葉を続けた。
「なんのためでもなく、ただ人を救うため、助けるために行動する。その原動力は正義の心に他ならない」
そう言って、ハカイダーは倒れている青年へと歩み寄った。
「流石だ、仮面ライダーよ。お前の正義が、この女にも力を与えたようだぞ」
ハカイダーは気絶している相手に、届くはずのない賞賛の言葉を贈る。ハカイダーは呆然としているフランシーヌからゼロバスターを回収すると、そのまま仁王立ちし、周囲を警戒しつつも仮面ライダーの目覚めと、次の放送を待った。
しかし、そんなハカイダーには目もくれず、フランシーヌは思考に没頭していた。
「正義の、心……。私に、心が…………?」
ハカイダーが何の気なしに口にした、ほんの些細な言葉は、しかし、フランシーヌに重大な衝撃を与えていた。
支援ですお
【C−6校庭/一日目・昼(放送直前)】
【ハカイダー@人造人間キカイダー】
[状態]:全身打撲。エネルギー小消耗
[装備]:スズキ・GSX750S3 KATANA@仮面ライダーSPIRITS 、ゼロバスター@ロックマンX
[道具]:ハカイダーのPDA(支給品一式)、風見志郎のPDA(支給品一式)、バタフライナイフ@現地調達(左足に収納中)
[思考・状況]
基本思考:元の世界へ帰ってキカイダーと決着をつける。
1:放送を聞いた後、D−5シャトル発射基地に行く。
2:銀の仮面ライダー(敬介)が起きたら、その状態によっては決闘を申し込む。
3:第三回放送までD−5シャトル発射基地で1号を待つ。
4:V3以外の仮面ライダーを探す。
5:村雨良の遺言を伝える。そのため、仮面ライダーに会い、破壊する。
6:参加者を全て破壊する(ただし、女子供、弱者には興味が薄い)
7:日付の変わる頃(二日目00:00)にゼロ、V3、凱と決着をつけため、スクラップ工場に再度向かう。
8:青い髪の女(ギンガ)は、次に会ったら確実に破壊する。
9:シグマを破壊する。
10:キカイダーに迫る、戦士に敬意。
※参戦時期は原作死亡後(42話「変身不能!? ハカイダー大反逆!」後)です。
※血液交換が必要のない身体に改造されています。
【フランシーヌ人形@からくりサーカス】
[状態]:全身打撲、疲労、足首負傷、ギガアタックのダメージ、右腕損失、深い悲しみ、激しい動揺
[装備]:なし
[道具]:PDA(支給品一式):未確認支給品(0〜1)
[思考・状況]
基本思考:罪滅ぼしのために、主催者を倒す。
0:私に……心が…………?
1:銀の仮面ライダー(敬介)が起きるのを待つ。そして、彼と話をしたい。
2:ハカイダーを止める。
3:本郷たちと合流。
4:私は生命の水に溶けて無くなった筈では……
5:いつか、本郷やミクのような笑顔をしてみたい。
6:いずれラミアにあの歌を聞かせたい……ミクにも。
7:本郷が心配。
※原作死亡後(25巻第32幕微笑(後編))から参戦。
※コロンビーヌの姿を旧式のものだと勘違いしています。
※銀の仮面ライダー(敬介)は城茂を殺したのではないかと考えています。
支援
闇は、晴れた。
機鎧(きかい)の海に、今は光が差し、穏やかな潮騒が響く。
――だが、努々忘れる無かれ。
その魂に咎は無くとも、その肉体に罪は有り――
それを知らしめるかのように、決して忘れさせぬかのように、機鎧の海の一部は、赤潮よりも、赤く、黒く、染まっていた。
……これは夢だ、ただの夢だ。
…………そう、夢だ。夢だけど、嘘でもない。
………………この罪。この痛み。この苦しみ。この悲しみ。
この想い、忘れはしない……ずっと。
くそうバイト良く!
【C−6校庭/一日目・昼(放送直前)】
【神敬介@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:胸部破損(特大)、疲労(大)、全身に大ダメージ、生命の水を摂取、強い罪悪感、深い悲しみ、気絶中
[装備]:テントロー@仮面ライダーSPIRITS(校庭に放置)
[道具]:マグネット×2、支給品一式およびPDA×6(アルレッキーノ、神 敬介、ロボ、アラレ、シュトロハイム、城茂)
スモールライト@ドラえもん(残り四回)、阿紫花の長ドス(折れた)@からくりサーカス:アルレッキーノのPDA
ぎんのいし@クロノトリガー、液体窒素入りのタンクローリー@ターミネーター2 (D-3基地に放置)
タイムストッパー@ロックマン2(メカ沢の胴体部):ロボのPDA
はちゅねミクのネギ@VOCALOID2(E-3道路に放置)メッセージ大砲@ドラえもん(E-3道路に放置)
アタッチメント@仮面ライダーSPIRITS(ナタクの右腕)
拡声器@現実(E-3道路に放置):アラレ、及びシュトロハイムのPDA。転送可能
HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2(城茂の死体付近):城茂のPDA
[思考・状況]
基本:仮面ライダーとして戦う。罪を償う。
0:気絶中
1:エックス……
[備考]
※阿紫花の血により回復速度が促進され、胸の出血が止まりました。他に全く影響が無いのかは、次の書き手様にお任せします。
※第一放送の内容を知りません。
※フランシーヌ人形の『生命の水』を摂取し、自己治癒力が促進されています。“しろがね”と同じようになるのか、その他の影響があるかは次の書き手様にお任せします。
ギンガは生体レーダーに目を落とし、校庭に残っている3体の動向を探った。
生体反応は2つ。このことから、カメンライダーは生存しているものと判断。しかし、重大なダメージを与えたのは確実。
だが、カメンライダーと黒いサイボーグは当初、交戦していたにも拘らず、何故か黒いサイボーグはカメンライダーの破壊を良しとしていなかった。
そのことから、恐らくはカメンライダーへの応急処置等のために、黒いサイボーグと女性型ロボットも残留していると判断。
この状態からの奇襲は、不適当。あの黒いサイボーグはカメンライダーと同等かそれ以上の力を持つAクラスの警戒対象だ。迂闊に仕掛ければ、返り討ちの可能性が高い。
ならば、ここは当初の目的を優先し、D−5の建造物を調査。その後はチンクやノーヴェと合流するべくスクラップ場を目指す。打って出るのは、他のナンバーズと合流してからの方が良い。
状況の整理を終えると、ギンガはまず脇腹の傷の処置から始めた。それを終えると、再び、D−5へ向かうべく移動を開始した。
【B−5学校付近/一日目・昼(放送直前)】
【ギンガ・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】右腕に刺し傷、脇腹から出血(手当て済み)、全身にダメージ、疲労中、魔力消費小
【装備】フットパーツ@ロックマンX、乾坤圏@封神演義
生体センサー@メタルギアソリッド、時空管理局の制服@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式×2(ギンガ、王ドラ) 天王剣@クロノトリガー(C−6校庭に放置・転送可能)
【思考・状況】
基本思考:敵(ナンバーズ以外)の破壊
1:学校を迂回しつつD-5の建造物に向かう。探索し、その後スクラップ場を目指す
2:他のナンバーズと合流
3:敵を探し、破壊する
※外壁が異常に堅いことに気づきました。
※“カメンライダー”と黒いサイボーグ(ハカイダー)をAクラスの警戒対象として認識しました
※ダッシュジャンプをマスターしました。
かくして、1人の戦士は闇を打ち払い、光を掴んだ。きっと彼は、これからその力を多くの人々を守るために、そして罪滅ぼしの為に振るうだろう。
だが、同じ呪縛を負った少女は未だ、闇の中にいる。その闇に誘われるまま、さながら闇に操られる懸糸傀儡の如く、少女は破壊を継続する。
【登場アイテム紹介】
【生命の水(アクア・ウィタエ)】
錬金術の集大成である秘薬。これを飲んだ生物は強靭な肉体と生命力を得、成長や老化が遅延され、体毛や瞳が銀色になる。また、ゾナハ病という病気の唯一無二の特効薬でもある。
同時に、この世の万物を溶かすという危険な液体でもある。それならフランシーヌ人形とか、飲もうとした人とかも溶けるんじゃ? と思うだろうが、経口嚥下による摂取なら大丈夫という公式設定がある。
溶けるものは物質だけでなく、溶けたのが人間の場合は、その人の心や記憶まで溶け込む。
今回登場した『生命の水』はフランシーヌ人形の体液。フランシーヌの心や記憶が溶けているかは不明。
投下、完了……。
皆様の支援に感謝を。そして、初めての遭遇者が支給品だった少佐には、今後の展開に期待を。
感想や、矛盾点や問題点若しくは誤字脱字の指摘などありましたら、遠慮なくお願いします。
最後に改めて、皆様の支援に感謝を。
投下乙です。
指摘としては、敬介の状態票からアタッチメントが消えていないことでしょうか。
IDを移したので、PDAからも消失かと。
それはさておき、ついに敬介復活!
ハカイダーの呼びかけが戦士の心に届き、フランシーヌ人形を守る姿が熱かったです。
フランシーヌも、人間の感情を学んでいくなw
ハカイダーのかっこよさも文句なし。地味にパワーアップしていくギンガw
ダッシュジャンプ習得は、地味に大きいw
しかし、今後のことを考えると敬介には苦難ばかり。それでも何とかなると信じてw
GJ!
乙です!あれ感想一番乗り!?
やった敬介が目覚めた!
ところで、ハカイダーは仮面ライダー達の変身前の特徴も知っているはずではありませんか?
あと、変身してないときなら「ハカイダー」じゃなくて「サブロー」と書いた方がいいような…。
一番乗りじゃなかったw
投下乙!!
敬介復活!!しかしスコアを稼ぎまくった彼は今後やっていけるのだろうか?後装備多すぎw
ハカイダーかっこよすぎだろ、しかし戦う予定の相手がまた増えたw
長編乙です
>◆2Y1mqYSsQ氏
投下乙です!
ウフコックと少佐、なんとも渋く格好いい二人だ……
しかしこの二人、隙がないぜw
考察の起点となれるか、頑張れ少佐!
>◆9DPBcJuJ5Q氏
投下乙です!
敬介復活ッ!敬介復活ッ!敬介復活ッ!敬介復活ッ!敬介復活ッ!
燃えたぎるバトルでした!ハカイダーの呼びかけがグッド!
フランシーヌにも正義の心が……それにしてもギンガはトラブルの種だけまいて去っていくなぁw
両者投下乙!
>◆2Y1mqYSsQ氏
両方とも詳しくは知らないけどキレ者だなー……
二人が始めて会う参加者は一体だれだ? 今後に注目
>◆9DPBcJuJ5Q氏
ハカイダーパロロワライフを充実させすぎw
敬介の抗い、フランシーヌの感性などの様々な視点が絡み合って非常に面白い展開でした!
状態表に残るXの字が意味する今後の彼は……? そしてD-5シャトルに待つものは!? 期待!
>◆2Y1mqYSsQ氏
投下乙!
サイバーパンクな雰囲気がいいですな。
無機質な発電所とハードボイルドな二人という構図が渋い。
淡々とした描写や小粋な会話もうまくマッチしてたと思います。
>◆9DPBcJuJ5Q氏
こちらも投下乙!
ハカイダーはどんどんカッコよくなっていくなあw
敬介を説得するシーンは仮面ライダーSPIRITS第一話の滝とスパイクのシーンを彷彿とさせた。
滝にとって、改造された肉体を嘆くスパイクが、本郷や一文字の戯画に見えたように
善の心と悪の肉体の間で揺れる敬介は、ハカイダーにとって良心回路と悪魔の笛の間で揺れるキカイダーの戯画だったんだろうか。
ライバルのアイデンティティ、正義。
それを冒されることは、その正義に対する悪である自分のアイデンティティを冒されることに他ならない。
ハカイダーの苛立ちや叫びはそういうものだったのかなあ、とか。深読みの出来る作品でした。
ボイルドといいこいつといい、つくづくダークヒーローの映えるロワだ。
皆様、感想ありがとうございます。
>>286 うぎゃー! やっぱりうっかり発動!
wiki掲載時にアタッチメントの部分を削除しておきます。
>>287 仮面ライダーXだと気付けなかったのは、村雨から詳細な特徴を聞けなかったから分からないのでは……と解釈しました。
上記の理由で不十分でしたら、修正版を投下することにします。如何でしょうか?
他の皆様方もご感想、ありがとうございました!
>293
風見や本郷は一目で判別してるんですけどねえ。
まあ、血やオイルで汚れてたし、自分の予想する「仮面ライダー(正義の戦士)」とあまりに全然違ってたので
一目では判別できないってこともありますよね。
どうもありがとうございました。
>そして、まだ見ぬ風見志郎と神敬介。
志郎は変身解けた姿も見ているはずだよ!
などという突っ込みはしたが感想を一言で言えば面白かったです!
うん、いつかやってくれるとは思っていたけどね、ハカイダー!
けど、やっぱりやってくれるといいもんだよ!!
そして予想を上回る燃えの一因はやっぱりフランシーヌ!!
長ドス装備&暗闇のコンボでグサリと助けた後にやっちまうかとも思ったが……
そんなことはなかったぜ!!
真夜中のサーカースでの経験を用いた表現はグー
何より心が灯ったってセリフがばっちり似合うぜ!!
何気に強化されてるギンガにも期待w
少佐、少佐が動いた!
人ってかネズミにも会えた!!
自分はほとんど両方の原作を知らない人間ですが、それでもこいつらがいいキャラしてるのわかります。
そんな書き手さんの腕に痺れる、憧れるー!
ウフコックの制限もそりゃ必要だw 分離できるのかよ、本来は!w
万能に間違いねえよ、そりゃw
そしてところどころに入るコーヒーの描写がいいなあw
なんか渋みを引き立てるっつうか
場面がありありと浮かぶというか
投下乙!
>>295 >そして、まだ見ぬ風見志郎と神敬介。
これってフランシーヌ視点じゃね?
>>295 感想、ありがとうございます。
『まだ見ぬ風見志郎と神敬介』
この部分は
>>296の言うとおり、フランシーヌ視点なのですが……分かり難かったようですねorz
次からはこういうことの無いように、精進します……
投下、開始します
アルレッキーノは猫の自動人形を小脇に抱えてD−5のシャトル発射基地に着くと、早速、エックスとソルティ、そして茶々丸を捜した。
チンクやドラスという危険な自動人形の情報や、彼らに隠していたあの男のこと。話さなければならないことは、多くあった。
だが、施設のどこにも彼らの姿は無かった。
エックスとソルティに関しては、恐らく、あの後にエックスが起きて、アルレッキーノがここに戻るのを待たずして彼らはここを発ったのだろう。この可能性は充分にある。
なにしろ、アルレッキーノがシャトル発射基地を発ったのが第1回放送の直後、4時間以上前だ。
彼らに関しては、あの男をほぼ相討ちに持ち込んだ、高い戦闘能力を持つエックスがいるのだ。問題あるまい。
だが、茶々丸。彼女まで此処にいないどころか、戻って来た形跡も無いのはおかしい。或いは、シャトルで移動した先で、何らかのトラブルに巻き込まれたのだろうか?
アルレッキーノは思考を続けたが、結論は出なかった。そして、後1時間半程で次の放送が始まることに気付き、一先ず次の放送まではここで茶々丸達を待つことにした。
ロビーの机に猫の自動人形を置き、自分はベンチに腰掛け、リュートを奏でた。
リュートの音色は、200年間奏で続けた音と何ら変わりなかった……のだが、アルレッキーノはなにか、物足りないと感じていた。
暫し演奏を続け、気付いた。
エレオノール、涼子、鳴海、仲町サーカスの面々、いっそ敵対者でもいい。……その誰もが、今、自分の前にはいない。
エレオノール、涼子、鳴海、仲町サーカスの面々、いっそ敵対者でもいい。……その誰もが、今、自分の前にはいない。
演奏も、聞かせる相手がいなければ意味が無い、か。
それでも、手持ち無沙汰であることに変わりない。リュートの調整と確認も兼ねて、アルレッキーノは誰に聞かせることも無い演奏を続けた。
どれほどの時間そうしていただろうか。猫の自動人形は、ピクリ、と痙攣するように全身を震わせると、ゆっくりと起き上がった。
アルレッキーノはそれを見ると、リュートを奏でながら立ち上がり、いつでも戦えるようにした。
「なんだ……? ギターの音……?」
頭を振りながら、猫の自動人形はそのようなことを呟いた。
「ギターではない、リュートだ」
自分の愛器を他の楽器と勘違いされることは楽師のプライドが許さないのか、アルレッキーノは演奏を中断すると、そのように告げた。
猫の自動人形がこちらを向き、視線が交錯する。
気のせいだろうか。表情も何もあったものではない猫の自動人形の顔が、ぼんやりとしているように見える。実際、アルレッキーノを見てから約1分は、猫の自動人形は無言であった。
すると、突然、猫の自動人形は飛び退いて喚き出した。
「な、なんだよあんたはー!? って、色々と持ち物がなーい!? それにどこだよここはー!!」
……驚いた。あのような顔つきでありながら、そして人型でないにも拘らず、猫の自動人形は実に表情が豊かであった。
自動人形も奥が深いと感心しつつ、喚き散らして五月蝿くはあるが、いきなり暴れたり襲い掛かったりして来ないことから話し合う余地はあるとして、アルレッキーノは猫の自動人形を問答無用で破壊することはせずに声を掛けた。
「まず、落ち着け。質問に答えるのはそれからだ」
そう言うと、猫の自動人形は深呼吸を3度繰り返した。人形が呼吸とは珍妙な。
それで落ち着きを取り戻したのか、先程までの喧しさとは打って変わって、猫の自動人形は剣呑な表情と口調で問うてきた。
「……その前に、確認だよ。どうやら僕は気絶していたっぽいけど、その間に僕を殺さなかったってことは……あんたも、この殺し合いに乗ってないのか?」
このような問いをしてくるということは、この猫の自動人形も乗っていないと考えてよいだろう。……だが、それだけでは不足だ。
「それはお前次第だ」
アルレッキーノが即答すると、猫の自動人形は怪訝な表情になった。
「僕次第?」
「そうだ」
ポロン、とリュートを掻き鳴らす。
そして、目の前の自動人形の運命を左右する問いを、アルレッキーノは投げ掛けた。
「猫の自動人形よ、貴様は何者によって作られたのだ? 貴様の創造主の名は……フェイスレスか?」
問いの答えが是であるならば、問答はここで終わりだ。即座に己が愛器を用いて、目の前の自動人形を容赦なく破壊する。
この重要な問いに、猫の自動人形は――
「誰それ? 僕を作ってくれたのは、知る人ぞ知る、知らない人は全く知らない天才科学者のゴーくん。そんなどっかの白いお面のオバケみたいな名前じゃないよ」
などと、いともあっさりと答えた。
この様子。本当にフェイスレスが作った自動人形ではないのだろう。仮にこれが演技であったとしても、この自動人形はつい先程まで一時的に機能を停止していたのだ。機能不全や欠陥があるのは確実。ならば、返り討ちにするのは容易い。
自動人形には基本的に疲労や睡眠というものが無いため、アルレッキーノはそのように判断した。
「ふむ、そうか。では、先程の質問に返答しよう」
そう言って、アルレッキーノは再びリュートを掻き鳴らした。
やはり、この感触は心地良い。
「私は、この壊し合いに乗っていない。だが、この壊し合いに乗っている者、そしてフェイスレスの作った自動人形には容赦しない」
「そうなんだ、それは良かった。けど……誰だよ、さっきから言ってるけど、そのフェイスレスって」
「私の創造主であり、私の主の敵。それだけだ」
「むむむ……?」
創造主と主が別々であること、しかも敵対していることが理解できないのか、猫の自動人形は両手で頭を押さえて考え込んだ。嘗ての自分もそのジレンマに悩んだのだ、当然の反応だろう。
……しかし、どうしてあの顔の作りで、こんなにも表情が豊かなのだ?
そんな疑問を懐きつつも、アルレッキーノは順に、最初の質問に答え始めた。
「さて、最初の質問への返答がまだだったな。私は『最古の四人』の自動人形、アルレッキーノだ」
「あ、これはどうも御丁寧に。僕はミー。見ての通り、猫のサイボーグさ」
アルレッキーノはミーが自らを指して言った『サイボーグ』という聞き慣れない単語も、茶々丸が言っていた『ロボット』と同じように、『自動人形』の別な呼び方だろうと解釈した。
実際は全く違う上に、エレオノールから課せられた“黄金律”にも関わる重要なことなのだが、アルレッキーノはそのことに気付けない。
「次に、お前の持ち物だが、ここにある」
そう言って、アルレッキーノはミーのPDAを掴んで示した。
すると、それを見たミーが急に怒り出した。まぁ、当然だろう。自分が気絶している間に全ての武器を奪われたのだから。
「あんた! 人の持ち物を気絶している間に取るなんてどういう了見だよ!?」
……怒るのは当然なのだが、微妙にズレているような。
ミーは妙なところで几帳面なのだが、それがこんな場所でも発揮されているらしい。
「目覚めて早々に、話をする間も無く暴れられるか、問答無用で襲い掛かられた時のためにそうしただけだ。実際、お前は武器があったら斬りかかって来そうな勢いだったではないか」
「う、うぅ……反論できませんよ、ちくしょー」
アルレッキーノがPDAを取り上げた理由を説明すると、その理路整然とした正当な言い分に、ミーはがっくりと項垂れてその正当性を認めた。
「そしてここだが、D−5にあるシャトル発射基地だ」
「シャトル発射基地? それなら、どうしてさっさと移動してないのさ?」
ミーはどうやらここに来た理由を、シャトルを用いての移動のためだと思ったらしい。アルレッキーノはそれを、静かな口調で否定した。
「ここで仲間と落ち合う約束だったのだが、いないのだ。念の為に、次の放送まで待つつもりだが……恐らく、何らかのトラブルがあったのだろう」
茶々丸が、どうしてここにいないのか。分割ファイルとやらの収集に手間取っているだけならいいのだが……。
アルレッキーノはこの壊し合いの舞台で初めて出会った仲間の、緑髪のロボットのことを思う。彼女には生き延びていて欲しいと、何故かは知らぬがアルレッキーノはそのように思っていた。
「トラブル……まさか、あの青い髪の女の仕業か!?」
すると、ミーは何かを思い出したのか、そのようなことを言い出した。
しかし、あのような場所で倒れていたからにはどうせ見当違いだろう。茶々丸はシャトル発射基地を巡っていたのだから。
ミーの言葉は軽く聞き流し、アルレッキーノは少々気になっていたことを尋ねた。
「お前は、どうしてあんな所で倒れていたのだ?」
「ああ、それはね……」
問われると、ミーは素直に応じた。何故なら、気絶していた理由と青い髪の女は密接に関わっていたからだ。
▽
支援
本郷と青い髪の女の戦い、そしてその後、自分はその女を探していたこと、その途中で出会ったサブローという青年のことを、ミーは簡潔に伝えた。
「それで、その女を探してる内に気絶しちゃったんだけど……自分でも良く分からないんだよね。体力には余裕があったはずなのに、急に力が抜け始めて……」
う〜ん、とミーは頭を捻って考えたが、答えは出ない。
一方のアルレッキーノは、「そうか」と頷くと、そこで質問を打ち切った。ミーの『急に力が抜けた』という言葉にも心当たりはあったが、それは協力を確約した後で教えれば良いだろうと考えたのだ。
アルレッキーノも実は、ミーの話には充分興味を引かれていた。それは、ミーが口にした『気絶』や『体力』という、自分の知る自動人形よりも遥かに人間に近い構造に対してだ。それに関しては、『サイボーグとはそのような自動人形なのか』と自己解決していたが。
「これから重大な質問をする。その方のお名前に少しでも覚えがあったら、些細なことでも構わない、余すことなく教えてくれ」
そう言うアルレッキーノの放つ空気から、否が応でも彼の真剣さが伝わってくる。恐らくその人は、アルレッキーノにとって大切な存在なのだろう。
「う、うん。……その人って、アルレさんの仲間なの?」
すっかりアルレッキーノを信用したミーは、気圧されつつも彼を名前で呼んだ。但し、『アルレッキーノ』という名前を長ったらしく感じたので、勝手に縮めていたが。
そのことを気にした様子も無く、アルレッキーノはミーの問いに首を横に振った。
「いいや。私のお仕えする御方だ。名をエレオノール様という。名簿には『フランシーヌ人形』と書かれているがな」
アルレッキーノの厳粛な態度とその内容から、その人はきっと偉い人なんだろうな〜と思い……そこでミーは、TV局で別れた仲間達の1人を思い出した。
「フランシーヌさんって、銀髪で銀色の目の?」
本郷が連れていた女性の名が確かにそうだったと思い出し、確認も兼ねてとても綺麗だった特徴も告げて、アルレッキーノに聞き返した。
すると、アルレッキーノは急に、血相を変えて詰め寄ってきた。
「エレオノール様の居場所を知っているのか!?」
先程までの物静かな態度から一変した激しい口調に、ミーも釣られて慌ててしまった。
「ちょ、ちょっとアルレさん! 教える! 教えるから落ち着いて〜!!」
そうやって、ミー自身も慌てながらアルレッキーノを宥めること数分。アルレッキーノはすっかり冷静さを取り戻した。
「それで、フランシーヌ様はどちらにいらっしゃるのだ?」
だが、フランシーヌのことを語るアルレッキーノの態度や言葉の端々から、焦りやもどかしさのようなものを感じる。
それに若干気圧されながらも、ミーはフランシーヌと別れた時のことを話した。
「えぇと、まだ暗い時にTV局の近くで別れて、6時に落ち合うって約束して、それっきり……」
そう言うと、またアルレッキーノが怒鳴りつけてきた。
「なんだと!? 貴様、これほどの長時間、エレオノール様を御一人だけにするとはどういうつもりだ!!」
そう言われて、ミーもカチンと来た。
アルレッキーノがどうして『エレオノール』と呼ぶかは知らないが、それでもフランシーヌのことをとても大事に想っていて、心配していることは良く分かった。だが、この一方的な物言いはどうだろうか?
そもそも、本郷もミーも、好きで彼女達と別行動を取ったわけではない。本郷の後輩である城茂の行動の真相を確かめるという、重大な目的があったのだ。
それに、待たせているのはフランシーヌだけではない。ラミアと、そして――凡そ争いごとというものが似合わぬ純粋な少女、ミク。彼女達もフランシーヌと一緒に本郷とミーが戻るのを待っているはずなのだ。
「1人きりなんかにしてないよ! それに、僕と本郷さんには確かめなきゃならないことがあったんだよ! 僕達だって、本当はすぐに戻って、彼女達と合流したかったさ!! でも、それができなかった理由だってあるんだよ! さっき話しただろ、あの女のこと!」
ありったけの怒りと不満をぶつけると、アルレッキーノは黙り込んで何も言い返さず、ただ一言、「すまんな」とだけ言ってきた。
素直に謝ってくれたのなら、それで良いとしておこう。
「……それで、エレオノール様は今もテレビ局とやらにいるのか?」
「多分、そうだと思う」
「そうか。礼を言うぞ」
そう言うと、アルレッキーノはPDAを操作してマップを見て確認をすると、そのまま歩き始めた。
その動作があまりにも自然で、ミーはそのまま大人しく「いってらっしゃ〜い」と見送ってしまいそうだった。だが、そんな場合ではないと言い終わる直前で気付いた。
「――って、ちょっと待ってよ! 今から行くつもり!? あんたの仲間はどうするんだよ!?」
先程アルレッキーノは、放送まではここで仲間を待つと言っていた。それなのに、今は一刻も早くここを立ち去ろうとしている。
ミーの問いに対してもアルレッキーノは止まろうとせず、足早に歩きながら答えた。
「仕方あるまい。エレオノール様の御身の安全は、何よりも優先されるのだ」
その答えを聞いて、ミーはアルレッキーノが筋金入りの『フランシーヌ様命』野郎だと確信した。
「ああ、もう! 分かったよ! この分からずや!!」
ミーは爪を伸ばすと、器用に『アルレッキーノとミーはTV局に行きました』と机に刻み込み、アルレッキーノの後を追った。態々丁寧語で書かなくてもいいと思うのだが。
「付いて来る必要など無いぞ」
足を止めずに、アルレッキーノは告げた。どうやらミーもフランシーヌを心配して、自分に付いて来ようとしていると思ったらしい。
だが、ミーは小走りしながらそれに異を唱えた。
ちなみに、アルレッキーノの早歩きに対してミーが小走りなのは、圧倒的な歩幅の差によるものだ。
「あの女を完全に見失っちゃったのは残念だけど、こうなったら僕も早く本郷さんやミク達と合流しなくちゃいけないんだよ! それに、あんた、フランシーヌさんの事になるとあの人しか見えなくなるみたいだし、危なっかしくて見てられないよ」
自分が気絶している間に、あの女は遠くまで逃げてしまったはずだ。ならば今は先行した本郷や残して来たミク達との合流こそを、ミーは急ぎたかった。
ラミアは言葉遣いこそアレだったが、頼りになる人だ。フランシーヌのことは殆ど知らないが、落ち着いていて頼れる人だと思う。
だが、ミクは言葉遣いや性格など諸々が危なっかしくてしょうがない。早く合流して、彼女の無事を確認しないことには安心できないのだ。
「……好きにするがいい。だが、遅いようなら置いていくぞ」
アルレッキーノは短くそのように言って、ミーの同行を認めた。
そして、シャトル発射基地から出ると、アルレッキーノは全力で走り出し、ミーは数秒遅れて、その後を4本足でのダッシュという猫の脚力を最大限に発揮できる走法で追った。
ミーの動きが遅れた理由は、景色だった。この景色の中で見えるはずのものが、見えないのだ。
……TV局が、無い? はは、まさか…………ここからは見えないだけ、だよね?
目の前の光景に、ミーはそのように自分に言い聞かせた。
だが、不吉な予感は少しも消えなかった。
途中でアルレッキーノにPDAも武器も返してもらっていないことに気付き、そのことに憤慨しても。
胸を締め付ける不安は、決して消えなかった。
【C−5 シャトル発射基地付近/一日目 昼(放送直前)】
【アルレッキーノ@からくりサーカス】
[状態]:全身が焦げている。全身に中程度のダメージ、七分袖、エレオノール様
[装備]:リュート@からくりサーカス、アームパーツ@ロックマンX
[道具]:支給品一式、PDA(ミー)、青雲剣@封神演義
基本思考:エレオノール(フランシーヌ人形)を生還させる。出来れば自分や茶々丸も共に脱出したい。
0:一刻も早くエレオノール様の下へ!
1:ミーと共にTV局へ向かいエレオノール(フランシーヌ人形)と合流。エックス達は後回し。
2:エレオノール(フランシーヌ人形)と合流後、エックスとソルティを捜して合流する。チンクとドラスの危険性を伝える。
3:その後、茶々丸とも合流。チンクとドラスの危険性を伝える。
4:男(敬介)の事をエックスとソルティに正直に話し、できる限り不信を招かない様にする。
5:信頼できる人物にチンクとドラスの危険性を伝える。
6:フェイスレス側の自動人形は積極的に破壊する。
※名簿の『フランシーヌ人形』はエレオノールの事だと思っています。
※この殺し合いに参加している自動人形には、白銀とフェイスレス以外の何者かが作った者もいるのではと考えています。
※シュトロハイムとゲジヒトを、ナチスがあった時代に作成されたナチス製の自動人形であると思っています。
※チンクは殺し合いに乗り、シュトロハイムを殺害したと思っています。
※ロボットやサイボーグの事を「自分の知っている自動人形とは違う作られ方をした自動人形」と認識しました。
※茶々丸と情報交換しましたが、完全には理解できていないようです。
※制限に気付きましたが、『フェイスレスが何かしたに違いない』と思っています。
※アルレッキーノが聞いた音は、超電急降下パンチと超電子ドリルキックによるものです。
※アームパーツが『緋色の手』にも効果があるかは、後続の書き手にお任せします。
【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:疲労(大)、後頭部に足跡、焦り、不安
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催
0:TV局が無い……!?
1:アルレッキーノと共にTV局へ向かい、本郷やミク達と合流する
2:合流後、青い髪の女の危険性を伝え、再度捜しに行く
3:シグマ打倒の為、仲間を集める。
4:風見、敬介、茂と合流。
5:クロとは合流したいと思う反面、彼に剛の事を暴露されるのではと恐れている。
6:本郷に対し、少々の罪悪感。
7:武器返せ! それに、どうしてエレオノールって呼ぶのさ?
※なんでも切れる剣、ガトリング等の武装は没収されています。
※悪魔のチップの制限については後続の書き手にお任せします。
※茂は殺し合いに乗ってしまった相手を、止む無く殺してしまったと判断しています。
彼に対する警戒心は完全に消えています。
※本郷と情報交換をしました。
ただし、自分をサイボーグにした剛が世界制服を一時期目論んでいた事。
クロが本郷と同様の理由でサイボーグになった事は話していません。
※ハカイダー(名前を『サブロー』しか知らない)は、バトルロワイアルに乗り気でないと思い込んでいます。
※アルレッキーノがフランシーヌ人形のことをエレオノールと呼ぶことに疑問を懐いています。
投下、完了……
皆様の支援に感謝を。
感想の他、誤字脱字や問題点などの指摘がありましたら、遠慮なくお願いします。
投下乙です!
待てアルレーーー!そこで待ってればフランシーヌは来るぞ、右腕切られてるけど!
このままTV局(跡地)に向かったら本郷さん達に襲いかかりかねない勢いだ……w
GJでしたー!
投下乙ですw
そういえばTV局ぶっ飛んでいたなw
ミーとのやり取りが楽しかったです。GJ!
行け、アルレッキーノよ……誤報(ドラスチンク)と共に……ッ!
絵柄にしてみるとシュールな組み合わせとやりとりに…GJ
投下乙です
アルレよ少し落ち着けwこのまま新しい誤報を撒き散らしかねんw
このロワ誤多いよね、誤殺に誤報って
投下乙。ミーとアルレコンビか。
そういやテレビ局粉々になったんだっけか
だがフランシーヌはハカイダーと一緒。
戦いは避けられないか?
投下乙。アレルよどうしてお前はそうなんだよ…
所でアレルキーノが、発着場内を探し回ってエックス達の残したメモに気がつかなかったのが
少し気になった。
>>327 指摘、ありがとうございます! 俺のうっかりは留まるところを知らないぜ!orz
重大なミスではありますが、修正にそれほど時間はかからないでしょう。
今晩中には修正版を投下します。
仮投下スレに
>>299の修正版を投下しました。
恐らくは、これで問題は無いかと思われます。
修正乙
確かに問題なくなってます。
アルレッキーノおおおお!!
いや、気持ちは分かるが不運過ぎだろ、あんたあw
面白いコンビとこれからに期待大な話、GJ!
あけましておめでとう
今日は武美爆破の日ですね
やめて
トラウマやめて
重い球やめて
334 :
Classical名無しさん:09/01/03 20:38 ID:TOwywAAY
投下町
10時までならこないかなー?
期限ギリギリの投下になりそうです。
結構長めなので、支援していただければ嬉しいです。
……期限勘違いしてた。
24時くらいに投下します。
支援準備
糞!今、実家だからおそらくネット切られる!
341 :
Classical名無しさん:09/01/03 23:55 ID:39AHeoYs
支援
342 :
Classical名無しさん:09/01/04 00:00 ID:Yf//fH76
実弾装填
角度よーし
標的SS
砲撃用意!
支援!!
投下します。
支援!
シグマの用意したコロニーのうちの一つ、工業地区ブロック。
そこの一角、エリアG−3とH−3をまたぐ巨大な白い建造物、修理工場。
その最上階にある一室に、三人の男女が集まっていた。
彼等が行っている行為は、この壊し合いに巻き込まれてからの経緯の教え合い。
現在話しているのは、獅子王凱。
椅子があるのにもかかわらず終始立ち上がって、握り締めた拳を上下させながら感情を込めてハカイダーとの激闘について語っている。
その机を挟んで前には、チンクが座っている。風見の入れたコーヒーが熱かったのか、話を聞きつつもカップに息を吹きかけるのをやめようとしない。
一方、チンクの隣に腰掛けているドラスは、童話を聞く子供のように目を輝かせて凱の話を聞いている。
ハカイダーの仮面ライダーにも匹敵する強さについて、風見から先に聞かされていたために興味を持ったのだろう。
先ほどまでこの部屋には風見志郎とゼロもいたのだが、今は別室へと出向いている。
風見は自身が回復ポッド内で目醒めた後に起こったこと、そして仮面ライダーXに関する情報を――
ゼロはチンクと別れてからのことを、それぞれ言うだけ言って出て行った。
互いに『後はチンクが知っているから、チンクに聞いてくれ』とだけ残して。
凱は、風見とハカイダーの共闘について詳しく聞きたがっていたが、ゼロの破損した左膝を見せられると何も言えなかった。
「――以上だっ!」
「…………さっきも思ったが、お前気絶してばっかりだな」
コーヒーカップを口元に持っていきながら、チンクが抱いたことをありのままに言葉にする。
不甲斐ないと頭を垂らす凱に、ドラスの興奮冷めやらぬ声がかけられた。
「そのハカイダーに勝っちゃうなんて、凱おじさんって強いんだねぇ。
おじさんくらい強くなりたいなぁ。そうなれば、あの銀の仮面ライダーも……」
最後まで告げられなかったその言葉は、ドラスにとって全くの本心であった。
己を圧倒した仮面ライダーXこと、神敬介。
同じく仮面ライダーの一人である仮面ライダーV3こと、風見志郎。
彼が仮面ライダーと同等の強さと断言する、ハカイダー。
そしてハカイダーに勝利したという、獅子王凱。
349 :
Classical名無しさん:09/01/04 00:04 ID:udztf1gg
支援
かつてならば、それでも神となる自分には劣る――そうドラスは考えただろうが、今のドラスは自分以上の力を正しく認める。
その上で、ドラスは心から凱の強さに憧れた。
中途で話すのを止めて、歯を軋ませているドラス。
自分の力が足りなかったことを悔いている様子のドラスの元へと駆け寄り、凱は笑顔を作って声をかける。
「ドラス君、君だって十分強いさ」
「……優しいね。でも今のままじゃあ、仮面ライダーには勝てない……みんなの仇を取ることは出来ない」
消え入りそうな声を漏らし、ついには俯いてしまうドラス。
どう声をかければよいか戸惑うチンクをよそに、凱はドラスを抱きかかえて同じ視点のところまで持ち上げる。
「強いっていうのはパワーとかスピードとか、そういうことだけじゃあない。
君は、お姉さんであるチンクさんの危機に敢然と立ち上がることが出来た。
恐怖や不安に屈したりしない勇気を持つ君は、誰がなんと言おうと強い!」
「勇……気……?」
「ああ、そうだ!」
「……それでも、銀の仮面ライダーの戦力は僕の遥か上を――」
「足りない分は、勇気で補えばいい!」
ドラスが思い浮かべた弱い考えを言い終えるより早く、凱が言い放った。
ぽかんとするドラスに構わず、凱は続ける。
「勇気が生み出すエネルギーには、限界なんてないんだぜ!」
凱はドラスを椅子へと戻すと、右腕を曲げて上腕筋を誇示するようなポーズを取って白い歯を見せる。
聡明なドラスの知性が、凱の言葉を論理で裏付けされていないものだと判別する。
そういう気休めにもならない幻想を抱くから、下等生物は困るよ――少し前のドラスが抱いただろう感想。
しかし、どうしてだろうか。
頭脳のレベルは変わりないはずなのに、現在のドラスには凱の言葉がすごく力強いものに感じられ――何故だか口元を綻ばせた。
笑顔を取り戻したドラスを確認して、凱は元いた位置に戻ると思い出したように口を開いた。
凱おじさんww
「ああ、そうだ、思い出したぜ!
ドラス君、おじさんってのはないだろう? 凱兄ちゃんとかにしようぜ! そもそも、俺はまだ二十歳なんだぜ?」
「え?」
「何……?」
二つ重なった驚きを含んだ声に凱は軽く泣きたくなったが、ドラスの前で情けない所を見せられないと、気にしていないような素振りで話し手の座をチンクに譲るのだった。
◇ ◇ ◇
修理工場の二階にある一室、白い天井の下に二人の男がいた。
成人男性一人がどうにか横たわれるサイズのベッドに横たわるは、端正な顔立ちの赤いレプリロイド――ゼロ。
切れ長の目を持つサイボーグ――風見志郎が、ゼロの破損した左膝部位に触れる。
「く――、ぐァァ――――っっ」
回路を伝達して、ゼロに襲い掛かるくる激痛の奔流。
破損箇所を、さながら焼き付けられているかのような――そんな熱さも伴う。
風見が触れている限り治まることはなく、むしろ増していく痛みの波。
ゼロは歯を噛み締めて耐えようとするものの、思わず空気が漏れてしまう。
「こんなに熱するまで放置するとは……どれだけ我慢していたんだ?」
暫し患部を触診して、風見は思わず溜息を吐いてしまう。
抱いた呆れの感情を隠そうともせず、風見はゼロに向き直る。
「まだ夜が明ける前からだったか」
「やれやれだな」
チンクといい、ハカイダーといい、どうにも強情な輩ばかりに出会っている気がする。
そんなことを考えながら、風見はこの部屋の備品であった救急箱へと手を伸ばす。
救急箱の中からチューブ型容器を取り出し、蓋を開けて中身を捻り出す。
(…………こんなものが、本当に役に立つのか?)
左手に出てきた白い粘液を見て、思わず風見はそんなことを考えてしまう。当然の反応である。
本郷猛や結城丈二ほどの知識はないとはいえ、風見もある程度は工科系の知識を所持している。
しかし目の前の粘液は、どうにも洗顔料だとか軟膏剤だとかの類にしか風見には見えなかった。
この部屋に備え付けられていた救急箱は、風見が二階を調べていた際に見つけたものである。
貼り付けられていた紙曰く、その救急箱はただの救急箱ではない。
故障した機械の修復に使えるらしく、その名も『メカ救急箱』。
例によって、使い方は記載してあった。
しかし、かなりの量の回復ポッドが設置されているので、使うこともないだろう。
風見本人はそう考えていたのだが……
ドラスへ行った荒治療の後、皆で情報交換を行うために最上階へと向かった時の話である。
ゼロの歩き方がぎこちないのに気付いた風見が、再びゼロに回復ポッドを使うのを薦めた。
シグマの思い通りになるなど反吐が出ると、ゼロは吐き捨てたが、背後から風見が軽く左膝に触れただけでゼロは苦悶の声をあげた。
その様で意地を張られるほうが、迷惑だ。同行している者の身になれ。
そう言われて、ゼロは仕方なしに修理工場の設備を使用するのを認めた。
だが、休眠するのだけは拒否したので、メカ救急箱が置いてある部屋へと呼び込んだのである。
「本当に、この道具でいいんだな?」
「回復ポッドが使用に堪えるのにもかかわらず、その救急箱だけが罠ということもないだろう」
「確かに、そうではあるのだがな」
355 :
Classical名無しさん:09/01/04 00:06 ID:Yf//fH76
砲弾再装填!
角度調整
主砲、副砲、砲門解放!
砲撃用意!
支援!!!
風見は、ゼロのアーマーに刻み付けられた傷に粘液をよく塗り込んでいく。
ほぼ全身に塗布し終わったかというところで、風見は最も損傷が激しい左膝に手を伸ばす。
苦痛に表情を歪めるゼロ、次第に微弱な声が漏れ、ついには悲鳴へと変わっていく。
あえて風見は気にも留めないかのように、一気に粘液をゼロの左膝にすり込んでいく……――――
「よく耐えたじゃあないか」
破損箇所に膏薬を張ったゼロの全身へと、風見は包帯を巻いていく。
勿論、その膏薬と包帯もメカ救急箱に入っていたもの。
修復箇所を保護する為の、プラ膏薬とポリ包帯である。
「……これは、動きづらいな」
全身包帯で雁字搦めになるなど初体験なゼロは、思わず呟いてしまう。
「傷自体は、三時間も経たないうちに塞がるようだ。激しく動けば、傷が開くようだがな」
「案外早く治るものだな」
元より両者とも寡黙なこともあり、そこから会話を交わすこともなく彼等は仲間のいる部屋へと階段を上った。
◇ ◇ ◇
風見とゼロが同行者のいる部屋へと帰還したのは、ちょうどチンクが話を終えた時だった。
彼らが聞けなかった内容を凱は話そうとしたが、風見とゼロはあとで誰かから伝えてもらえればいいと断った。
すっかり冷めてしまったコーヒーを喉に流し込み、風見は凱の隣の椅子に腰掛けてドラスに向き直る。
「何があったか、話してくれるか?」
「……うん」
ドラスの隣で、チンクは自分の中での高鳴りを感じずにはいられなかった。
チンクの妹であるノーヴェが、どのようにドラスと出会い、どのような過程を経て弟と認めるようになったのか――――
妹思いなチンクにしてみれば、気にするなという方が到底無理な話であった。
凱が使用していない椅子に座ったゼロも、似た心地であった。
ノーヴェは、ゼロがこの地で始めて出会った少女だった。共に戦い、彼女がいなければ自分は破壊されていたかもしれない。
その彼女とドラスが出会ったとすれば、ハカイダーを彼女から遠ざけた後。メカ沢とロボの名が出た以上、それは自明である。
別れてから仮面ライダーXに殺害されるまで、彼女達の身には何が起こったのか。
どうしてだか、ゼロにはそのことがすごく気になった。
「…………僕は、」
暫しの沈黙の後、ドラスは静かに、そしてゆっくりと口を開いた。
「最初は、この壊し合いで優勝するつもりだったんだ――――」
予期していなかった告白に、話を聞いていた全員が息を飲んだ。
――否、
「そうか」
ドラスの発言と真の姿から、ドラスを他の組織が作り出した怪人と予想していた風見志郎。
彼だけは、ゼロが飲もうとしないコーヒーを口元に近付け、冷静にドラスに続きを促した。
◇ ◇ ◇
支援
「ドラスの話を聞く限り、タチコマとボブおじさん――特に後者とは迅速に合流すべきだな」
「ああ、スカイネットとやらの情報を得るには、合流が必須だ。
しかし、注意深い男だな。本名を隠すというのは確かに利口ではあるが、探す身からすれば面倒なことこの上ない」
ドラスは、全てを話した。
参加者の一人であるタチコマを利用しようとしていたドラスの前に、ボブという偽名を名乗る男が現れた。
最初の部屋にいた液体金属に関する知識も持ち、『スカイネット』などの情報を提供したボブ。
彼はドラスの外見に疑問を抱き、ドラス=シグマの影武者=液体金属の可能性があるとして、ドラスに銃口を向けた。
ドラスは、タチコマに乗ってどうにかして逃げ切ったが――と。
それを聞いた上でのゼロの提案に、風見が賛成の意を示す。
ボブ曰く、T-1000と言うらしいただの打撃が通用しないと思われる液体金属の結晶体。
風見達にとって、T-1000が壊し合いの参加者となっているのは予想外の事態であった。
だが何にせよ、最終的にシグマを打倒するのならば、相手をすることになるのである。
はっきり言ってしまえば、T-1000と対面するのが少し早くなるだけのことでしかない。
どうにかしてボブと出会って、T-1000に関して知っている情報を提供してもらいたい。
「それにしても、ドラスがあの男と会っていたとはな……
私が逃げたルートの所為で、ドラスはヤツとかち合ったのだろう。
姉でありながら、弟を危険に巻き込んでしまうとは情けない。しかし、よく逃げ切れたな」
「うん、もしもタチコマがいなかったらと思うと……怖いね」
ドラスは、全てを話した。
ボイルドと出会い、タチコマに乗せられて退却したことも。
ゆえに、チンクは臍を噛む。
あの場面では、チンクと風見の前は逃亡以外の選択肢が存在しなかった。
それは紛れもない事実であるとはいえ、そのおかげでドラスは危機に晒されてしまったのだ。
その頃のドラスは優勝を目指していたとはいえ、今ではドラスはノーヴェが認めた弟である。
悔やんでも悔やみきれないといった表情のチンクに、ドラスは生きているのだからいいと微笑む。
「それにしても、メカ沢にノーヴェにロボ……
ドラス君を目覚めさせるほどの勇気を持つ彼等が、なんで……ッ」
ドラスは、全てを話した。
タチコマを修理工場へと向かわせたドラスは、メカ沢達に出会った。
いずれ利用するつもりであったが、自分が襲い掛かった仮面ライダーXによって皆殺された。
利用されるとも知らずに絡んできて、いちいち鬱陶しい輩だと思っていた。
だが、彼等を失って初めて、一番欲しかったものに気付いた。
零れる涙を止めることも出来ずに、ドラスはそのことも語った。
凱の言葉に、ドラスだけでなく風見とチンクも歯を軋ませる。
妹の死、後輩の凶行、彼等も思うことがあるのだろう。
急速に冷え切った部屋の空気の中、ゼロが口を開く。
その右手の上には、小さな立方体の金属のようなもの。
参加者の物と思われる残骸から、ドラスが見つけたという物体。
正体は不明。爆破装置か、戦闘力を弱めている装置か、はたまた関係のないものか。
最後の一つでない場合は、これを手に入れたとシグマに知られれば、爆破装置を起爆させられてしまう可能性がある。
部屋の中に監視カメラのようなものは見つからず、上空に衛星カメラが仕掛けられていたところで室内は見ることが出来ない。
だが、安心しきるのは愚行。爆弾と一緒に、盗聴機を体内に仕込まれた可能性もある。
その可能性を考え、ゼロの言葉からはあえて肝心な所が抜き取られている。
「――手はあるか?」
言葉を投げかけられた四人、ほぼ同時に首を横に振る。
またしても室内を沈黙が支配する前に、風見が口を開く。
「本郷先輩……本郷猛という名の参加者ならば、体内に仕掛けられたという爆弾を見つけて何とか出来るかもしれん」
勿論、その爆弾と思わしき物体を『手に入れている』ことは伏せる。
口振りだけからは、自分達は体内の爆弾を『見つける』ことから始めねばならないと思わせるブラフ。
「そのレプリロイドは、工科系の技術に長けていると」
「あの人と、この場にいない結城という仲間がいる以上……
どんな頭脳の持ち主でさえ、日本で三番目以下の実力になってしまうだろう。それだけ素晴らしい科学者であり、最初の仮面ライダーだ」
――パパの技術力だって、日本一の座に輝けるレベルにあると思うけど。
ドラスはそう言おうと思ったが、あくまで『工科系』の技術の話をしているのだと自分を納得させた。
「ほう、つまり身を守る力もあるということか……
とはいえ、ハカイダーのような強者もいるから安心は出来んな」
ゼロは、金属片を包帯の隙間へと隠す。
「悪いが、風見の言っていた通路に行く暇はない。一刻も早く会わねばならん輩がいる」
そう言って、ゼロは立ち上がる。
風見の言った通路とは、修理工場の二階に風見が見つけた隠し通路のことである。
「チンク、バイクを貸してくれないか?」
「何?」
予想していなかったゼロの発言に、チンクは思わず聞き直す。
「凱、お前もいつまでもボサッとしているな。そろそろ行くぞ。会わねばならない者が、さらに増えた。
チンク、俺と凱はハカイダーを探さねばならない。あと、本郷猛もだな。
ハカイダーはバイクを所持していた。追い着くには、同じような移動手段が必要だろう」
「だから、バイクをよこせだと? 都合のいい話も、あったものだな。
そもそも、これはカザミのバイクだ。そんな欲しければ、カザミから許可を取れ」
後輩が暴走している現状、今すぐにこの場を飛び出したいのは風見も同じだろう。
バイクを簡単に手放すわけがない。
風見がバイクを運転し、後部座席にチンクが乗る。ドラスは小柄なのので、一緒に乗ることも可能だろう。
神敬介の元へ向かい、何としてもノーヴェの仇を取りたいチンクは、そう考えた。
だが――
「……カザミ、何を黙っている」
チンクの考えに反して、風見は沈黙を貫いている。
凱とゼロが、ハカイダーを追う。
それは、風見にとって理想の展開だった。
ボイルドをこちら側へと引き込もうとしているのは、恐らく自分だけ。
神敬介を止めるべきなのは、先輩の自分。
村雨良の件もあるゆえ、ハカイダーも止めたい。
しかし一つだけでも成し遂げるのは一苦労。可能なのは、せいぜい二つまで。
となれば優先すべきは、上の二つ。
ハカイダーの元へは自分が行かなくとも、凱とゼロなら最善を尽くすことが出来るはずだ。
ゼロの提案は、はっきり言って願ってもない申し出であった。
支援
しかしサイクロン号を渡すとなれば、話は別。
ゼロはハカイダーに追い着く為には必要だと言うが、そんなことはこちらも同じだ。
神敬介は数時間前に隣のコロニーにいたというし、ボイルドは行方知らず。
自分だって、サイクロン号で虱潰しに周囲を探索したいのだ。
――どちらを選ぶべきか。
チンクの射抜くような視線を受け流しながら、風見が思案し出して数刻。
修理工場中に、強烈な破壊音が響いた。
一階に襲撃者が現れたのだろうか?
違う、正解は――
「上だ! 攻撃されたのは……あっちの部屋か!」
逸早く音源に気付いた凱が、立てかけてあったグランドリオンを掴み取る。
そして戦闘形態となり、そのまま乱暴に扉を開けると真っ先に駆けて行った。
◇ ◇ ◇
ドラスは、全てを話したのである。
嘘偽りなく、ありのままのことを。
人間も機械も、神となる自分の足元にも及ばない。
そんな、過去の自分の考えさえも。
仮面ライダーZO――麻生勝との戦闘についても。
ドラスは明かした。
生まれ変わったがゆえに。
支援
――ただ一つのことを除いて。
仮面ライダーZOに敗北したドラスは、気付いたらこの壊し合いに呼び出された。
タチコマに出会い、T-800に疑われたので逃走し、ボイルドと交戦の後に逃走し、一旦タチコマと別れる。
ノーヴェ達と出会い、仮面ライダーXに敗北を喫し、満身創痍の状態だった時にチンクに助けられる……――――
そう、ドラスの説明からは――――『スバル・ナカジマ』に関することだけが、綺麗に抜き取られていたのである。
間違ってはならない。
これは、決してドラスがよからぬことを企んでいるというワケではない。
むしろ、その逆なのである。
ドラスが初めて自分の欲していたものに気付いた時には、全てを喪失してしまっていた。
そんな時に、チンクが現れた。『姉』と名乗ってくれた。『弟』と呼んでくれた。
凱も、ゼロも、風見も、まるで『兄』のように接してくれている。
そんな彼等に、スバルのことを話せばどうなるか。
自分を信じきっていたスバルの腕を食らい、疑心暗鬼状態に追いやった。
そんな残虐非道なことをやらかしたと話してしまえば、どういう反応が返ってくるか。
チンクの話では、かつてのドラスの計略通りにスバルは暴走しているという。
全ては、ドラスの仕業である。
引き金を引いたのはドラスではないだろうが、疑心暗鬼という名の弾薬を装填して安全装置を解除したのは――紛れもないドラス。
ドラスは幼稚な、されど利口な生命体である。
数秒とかからずに、家族のようだった者達から激しく攻め立てられるヴィジョンがドラスの中に浮かんだ。
ドラスの中に流れ込むは、家族が家族でなくなってしまう映像。
ゆえに、話さなかった。否、話せなかった。
手に入れてから喪失する悲しみを、ドラスは知っている。
だからこそ、二度と味わいたくない。
ドラスの中に芽生えた感情は、ドラスに嘘を吐かせる。
そこに悪意など断じて入り混じっておらず、ただただ純粋な家族への執着心からの行動であった。
■
やっと目的地に到着したか。
本調子ならばこんなに時間はかからなかったのだが、放送前に着いただけマシか。
哮天犬から降りて、義手の具合を確かめる。……やはり、普段と変わりなく動く。
それだけ確認して、哮天犬を腰紐の結び目に収納し、探知機をPDAに戻す。
探知機に映し出されていた光点の数は、五つ。
そして差こそあれど、その全てからなかなか強いにおいがする。
身体の修復を優先していたが、この場にいるのだったら仕方がない。
全員と戦い、俺の力を確かめるまで。
右腕にカセットを差し込み、近接戦闘用武器に変形させる。
そして、そのままにおいのする場所から少しズレた場所を殴り付ける。
不意打ちで相手を瓦礫に押し潰させて勝利など、つまらなすぎる。
右腕はいらん傷がついても困るので、この場に放置。
眼前に空いた風穴に飛び込み、修理工場内へと潜入。
すぐさま、金の鎧を纏った男が押しかけてきた。
思わず、嘆息してしまった。
修理工場内にいた五人は、全員が全員それなりに強者ではあったが――
「貴様、かなり強いな?」
この男は、その中でも強い部類に入る。
M.W.S.をスペルブレードに変化させて斬り掛ると、男は持っていた剣で俺の攻撃を受け止めた。
やはり、俺の目に狂いはない。
俺の強さを証明する為、死んでもらう。
支援
支援
■
凱に遅れること、一分弱。
他の四人も、ナタクの侵入した部屋に辿り着いた。
しかし、その頃には既に開戦済み。
お世辞にも戦場向きとは言えない室内で、両者とも剣を得物に拮抗した勝負を繰り広げていた。
その熾烈さは、部屋の狭さと相まって他者の参入を許さなかった。
ナタクとは違って、最初は建物自体に危害が加わるのを躊躇していた凱だったが、すぐさま考えを改めた。
目の前の男は、周囲を気にしていて勝ちをもぎ取れるような相手ではない。
凱もそう判断を下した結果、凄まじい勢いで室内の備品は破壊されていった。
ナタク、M.W.S.を装着した左腕を大きく振りかぶって唐竹割り。
軽く右に踏んだサイドステップで、凱は回避。そのまま左手だけでグランドリオンを振り抜く。
迫り来るグランドリオンの刃を、M.W.S.のボックス部で受けるナタク。
狙い通りの結果に微笑を浮かべ、凱はグランドリオンに力を込める。
グランドリオンとM.W.S.の接触した箇所を支点とし、弾き飛ぶようにナタクから距離を取る凱。
仕掛けた凱は華麗に着地してみせるが、ナタクは体勢を崩してしまう。
その隙を逃さないと、凱はグランドリオンを両手で構え直して床を蹴る。
こうなってしまえば、凱の勝利は確定的に見えたが――
「凱、離れろ!」
加速していく凱にかけられたのは、焦りが含まれた風見の声。
その意図を理解出来ないながらも、風見が考えなしに無駄な発言はしないだろうと、凱は急遽横っ飛びすることで方向転換する。
直後、凱が先ほどまでいた場所を数多の銃弾が貫いた。
凱の背筋に、氷塊が走り抜ける。
ナタクは機関銃へと変化した右腕をまじまじと見つめる。
「思うだけで変換できれば、なお戦闘向きなのだがな」
そう呟いてから、ナタクは凱へと銃口を向ける。
グランドリオンを握る力を強くする凱であるが、数秒の射撃で易々と壁を風穴とした威力にはたじろぎを禁じ得ない。
全弾回避しての攻撃は、考えるまでも不可。
あの連射性、避けたところで隙は生まれない。回避する暇があるのなら接近すべき。
被害を無視して接近、そのまま一気に攻撃するしかない。
決意を固めるも、凱の心から不安が消えない。
あの威力の弾丸を受け続けて、肉体が勢いを保てるのだろうか――
風見は銃弾が放たれる前に割って入ろうとするものの、変身せずに銃弾を受ければ致命傷を負ってしまう。
かといって変身してしまえば、ナタクが気付かないはずがない。
警戒したナタクが、攻撃対象をこちらに変更されてしまったなら――
風見自身はダメージは負うだろうが、改造人間の耐久力で耐え切れる。ナタクも、凱が一太刀の下に切り捨てるだろう。
しかし流れ弾が、近くにいる三人に当たる可能性が大きい。
ドラスはともかくとして、治療中のゼロとチンクがマシンガンアームの弾丸を受けてしまえば――
意図せず、風見は歯を軋ませた。
いてもたってもいられずに前に出ようとするドラスを、ゼロが静止する。
渾身の一撃で風見に重症を負わせられないようでは、横槍を入れたところで足手纏いになるだけだ。
そう言われてしまえば、ドラスには何も言えなかった。
この言葉は、ドラスにだけ言った言葉ではない。
もはや階段を登るだけのことで左膝を激痛が走るゼロ自身にも、向けられたものである。
いつでも包帯を切り裂いて戦線に出る準備は完了しているとはいえ、その場合は左膝未修復のままの戦闘になる。
足手纏いは自分だけではないなと、ゼロは胸中で自嘲気味に呟いた。
――そして、今にも銃弾が吐き出されようという時。
「何?」
二本のスプーンがドアの前で群がる三人をすり抜けるように、ナタクの眼前まで飛来する。
「――IS発動、ランブルデトネイター」
警戒するナタクをよそに、歌うように紡がれたチンクの言葉とともにスプーンが炸裂した。
「お前がコーヒーを用意したのが、吉となったな。無駄にナイフを消費せずにすんだ」
風見に声をかけるチンクの顔には、笑みが浮かんでいた。
どうだ、ちゃんと見ていたか?
まるでそう語りかけているようで、風見は思わず苦笑した。
「チンクさん、すごいじゃあないか! 助かったぜ!」
「ふん、お前達があんなヤツに苦戦するとはな」
部屋から出てくる凱。
五人は、既に勝利を確信していた。
しかし、すぐにその余裕は崩壊することになる。
「消えた、だと……?」
誰かの口から漏れた言葉。
そう、少しずつ爆煙が薄くなり視界が明瞭になっているというのに、爆心地にいるべきナタクの姿が見えないのである。
「そんなバカな!」
静止も聞かず、ナタクのいた場所へと走っていくチンク。
そして――
「――ッ!?」
声にならない声を漏らして、チンクまでも消えてしまった。
何とも言えぬ焦燥に駆られながらも、残された四人はその場に待機し――答えを知る。
それは、あまりにも簡単な思い違いであった。
ナタクも、チンクも、消えてしまったワケではない。
『落ちた』のである。
おそらくナタクは、チンクのISが発動する瞬間に目の前のスプーンの異変に気付いた。
すぐさま床に穴を開けて、落下することで爆発の直撃を避けたのだろう。
四者ともそこまで予想してから、気付いた。
ナタクとチンクが、二人とも同じ穴に落ちたのならば――
「チンクお姉ちゃんが、危ない!」
思考が行き着いた途端に、床に空いた穴へと飛び込んでいくドラス。
仮面ライダーV3へと変身を終えた風見、凱、ゼロの順で、残った三人もドラスに続いた。
支援
◇ ◇ ◇
「今の爆発は貴様だな」
自分が落下したのだとやっと気付いたチンクに浴びせられたのは、ぶっきらぼうな言葉だった。
チンクは敵意を剥き出しにして声の主を睨みつけるも、ナタクがその程度では動じるワケがない。
マシンガンアームを通常の状態へと転換させて、ナタクはM.W.S.を装着した左腕をチンクに向ける。
「くッ!」
ナタクから距離を取って、ナタクにスプーンを投擲するチンク。
またしても、数は二。
しかしそのスプーンは、M.W.S.より撃ち出されたビームランチャーによって粉砕。
接触の瞬間に爆破させるも、ビームランチャーの破壊力の方が上らしく、幾分細くなったが光弾は確かにチンクを追いかけてくる。
防御障壁を張ることで何とか光弾を防ぎきるが、防御障壁も霧散してしまう。
(ISで僅かとはいえ弱めた上で、この威力とは……ッ。あの弾丸が、床に穴を空けたものか……?)
チンクの推測は、正解。
かつてT-800に捉えられた時と同じように、ナタクは床をビームランチャーで破壊したのである。
T-800の時との違いは、ビームランチャーの火力。
全力で放てば家屋が倒壊するのを、ナタクは知っている。
修理工場が倒壊してしまえば、困るのは自分自身である。
ゆえにナタクは、ちょうど床を一枚砕く程度の威力でビームランチャーを放ったのである。
支援
「ISッ!」
ゆっくりと近付いてくるナタクに、スプーンを一本とナイフを三本投げつける。そして、すぐさまISを発動。
これはただの目眩ましである。
チンクが所持しているスプーンの数は、風見が用意したコーヒーと同じ数。即ち、五。
今まで四本消費してしまい、残りは一本。隠し持つナイフの数は、三。
その状態で、チンクは全てを煙幕代わりにして身を潜めるのを選んだ。
正面からのやり合いでは、勝ち目はないと踏んだのである。
ならば一度隠れて先ほどまでいた部屋に戻り、置いてきた金属片の詰まったデイパックを回収。不意打ちでISを発動、殺害する。
一回のぶつかり合いで、チンクは冷静に相手の力量を見抜いたのだ
――しかし、一見最良に見えたチンクの選択には穴があった。
「その程度で、俺から逃げ切れるとでも思ったか。なめるなよ」
「――――っ、あ!?」
忍び足で遠ざかっていたチンクの身体が、急に上昇した。
それが持ち上げられた為だとチンクが気付いたのは、背中にM.W.S.を押し付けられてからだった。
――ナタクは視覚が奪われようと、『におい』で他人の位置を識別できるのである。
「きさ、ま……ッ!」
精一杯の抵抗か、足をバタバタと動かすチンク。
されど、その程度ではナタクは動じず。
「死ね」
その言葉とともに、M.W.S.からビームランチャーが――
「離せ!!」
放たれようという時に、その場に現れたドラスが声を張り上げた。
「やっと来たか…………ッ!? ……何だと?」
ずっと無表情であったナタクが、ドラスの方を振り向いて目を見開いた。
同時にチンクの首根っこを掴んでいた力が緩まり、チンクが床に落ちる。
強烈な握力で首根っこを掴まれていたことに加えて、唐突な落下感に襲われたことで、チンクはかなりグロッキーな様子で床に横たわっている。
しかしナタクは既に興味をなくしたかのように、チンクを見ることすらしない。
ただドラスを下からゆっくりと見ていって、一言。
「――お前、宝貝人間か?」
ナタクは、ドラスから自分と同じ存在のにおいを感じ取った。
体内に核を宿した『宝貝人間』のにおいを。
昔なら感付くことはなかっただろうが、ナタクは金鰲島の宝貝人間に出会った。
そのにおいを、ナタクは忘れることはない。永久に。
「いったい何を……?」
「答えろ」
有無を言わせぬ口調のナタク。
そんなナタクの様子は、ドラスを苛立たせた。
いきなり凱に襲い掛かり、チンクを倒れさせておいて、何という態度なのか。
床の上で荒い呼吸のチンクに再度視線を向けた瞬間、ドラスの怒りは臨界点に達した。
ドラスが右腕をナタクに向けて伸ばすと、右掌の前に魔方陣が展開される。
ほうと溜息を吐くナタクへと、魔方陣から光弾が飛び出した。
ナタクを打ち抜かんとす三つの光弾、その全てはM.W.S.から吐き出されたビームランチャーによって相殺。
「俺の同類でありながら、この程度の力しか持たないワケがない。お前、力を隠しているな」
無意識のうちに、小刻みに肩を揺らしたドラス。
力を隠しているというのは真実だが、返答はしなかった。
その無言の意図をナタクは、推理する。
そして蘇るは、金鰲島の宝貝人間の対応。
彼はナタクが宝貝人間たる証拠を見せるまで、ナタクが宝貝人間だと信じようとしなかった。
元より他人との触れ合いなど殆ど経験したことのないナタクは、今のドラスの対応をその時と重ねた。
無言でカセットアームからカセットを抜き取り、通常時の形態に戻す。
その右手を自分の胸の前へと持って行き、思いっきり爪を立てる。
そこから胸に指を押し込み、力を込めて肉を剥ぎ取った。
ナタクの胸骨の奥に、溢れ出す血液の奥に、ドラスは目にした。
人間ならば心臓が存在する場所に鎮座する、白と黒の二色から成る球体――霊珠を。
「あ……」
自身の本体であるコアを思い出し、ついつい声を漏らしてしまうドラス。
その反応を、ナタクはドラスが宝貝人間であるゆえのものと判断した。
ナタクが剥ぎ取った肉を傷痕に押し込み終えた時、ドラス以外の三人も戦場を見つけて到着する。
しかしチンクがナタクの足元に倒れているため、飛び掛ることが出来ない。
相手の出方は分からないが、人質が取られているのと同じである。
「今は、貴様等に用はない――邪魔だ」
三人へとM.W.S.を向けるナタク。
その視線は、幼児が壊れた玩具へと向けるものと似ていた。
「う……うわああああああああああああっ!!」
「ふむ、それがお前の原型か」
どうにか状況を打破すべく、叫びながらドラスが怪人態へと変身する。
少女のような姿から、二メートルを越える体躯の銀色の異形への変化。
それにはさすがのナタクも驚いたようだが、すぐに妖怪仙人のことを思い出して納得した。
身体が変化するタイプの宝貝人間がいたところで、何らおかしいことはない。
「やめるんだ、ドラス君!」
ドラスが飛び掛ってナタクを刺激してしまえば、倒れているチンクに危機が及ぶかもしれない。
その理由で攻撃のしようがない凱が、ドラスに声をかける。
ドラスは足を止めるも、真紅の瞳でナタクを睨みつけるのを止めず――銀のボディの右肩が煌いた。
「……イヤだ。もうこれ以上、僕は家族に死んでほしくない!!」
絶叫とともに、ドラスの肩部から光線が射出される。
――分子破壊光線、マリキュレーザー。
本来の威力には劣るとはいえ、その光線はナタクがいた直線上の部屋を三つ程消し飛ばした。
部屋の途中で床と壁は消え、外が見えてしまっている。
そのことに驚くこともなく、ドラスは消え去ったナタクがいた近くに駆け寄って、チンクに声をかける。
幾度か揺らしながら声をかけると、チンクはすぐに目を覚ました。
ドラスに助けられたのだと感付き、項垂れてしまうチンク。
しかしドラスは彼女を責めることをせずに、むしろ後遺症がないことを喜んだ。
支援
「う……うわああああああああああああっ!!」
「ふむ、それがお前の原型か」
どうにか状況を打破すべく、叫びながらドラスが怪人態へと変身する。
少女のような姿から、二メートルを越える体躯の銀色の異形への変化。
それにはさすがのナタクも驚いたようだが、すぐに妖怪仙人のことを思い出して納得した。
身体が変化するタイプの宝貝人間がいたところで、何らおかしいことはない。
「やめるんだ、ドラス君!」
ドラスが飛び掛ってナタクを刺激してしまえば、倒れているチンクに危機が及ぶかもしれない。
その理由で攻撃のしようがない凱が、ドラスに声をかける。
ドラスは足を止めるも、真紅の瞳でナタクを睨みつけるのを止めず――銀のボディの右肩が煌いた。
「……イヤだ。もうこれ以上、僕は家族に死んでほしくない!!」
絶叫とともに、ドラスの肩部から光線が射出される。
――分子破壊光線、マリキュレーザー。
本来の威力には劣るとはいえ、その光線はナタクがいた直線上の部屋を三つ程消し飛ばした。
部屋の途中で床と壁は消え、外が見えてしまっている。
そのことに驚くこともなく、少年の姿に戻ったドラスは消え去ったナタクがいた近くに駆け寄って、チンクに声をかける。
幾度か揺らしながら声をかけると、チンクはすぐに目を覚ました。
ドラスに助けられたのだと感付き、項垂れてしまうチンク。
しかしドラスは彼女を責めることをせずに、むしろ後遺症がないことを喜んだ。
「凄まじいな……」
予想外の攻撃に驚愕していた三人が、誰ともなしに漏らした。
破壊力は勿論のことだが、真に驚くべきなのは精度。
あれだけの威力の光線でありながら、ナタクの近くにいたチンクには傷一つ付いていない。
「味方となれば心強いが、敵にすれば恐ろしいな」
「ドラス君に勇気を刻み付けた彼等に、改めて感謝しないとな」
変身を解除した風見の言葉に、通常形態に戻った凱が返す。
すると、聞こえてはならない声が彼等の鼓膜を刺激した。
「お前、家族を亡くしたのか?」
「――ッ!?」
その場にいた全員が、声のした方向――消滅した部屋があった空中――へと首を回す。
瞳に移ったのは、巨大な白い犬に跨ったナタクであった。
ナタクは、哮天犬をPDAに戻してはいなかった。
いつでも取り出せるように、小さくして腰紐の結び目に隠しておいたのである。
天才道士のヨウゼンが、普段服の中に隠しているように。
マリキュレーザーが発射されたと同時に、数多の戦闘経験からナタクはその能力を推定。
威力もさることながら、標準は明らかに霊珠に定められていた。
受けてしまえば致命傷は免れないと判断し、哮天犬を通常サイズに戻して自分へと体当たりをさせたのだ。
哮天犬の威力とて弱いものではないし、マリキュレーザーが壁に触れたことによる爆破には巻き込まれる。
それでも霊珠にマリキュレーザーが直撃するよりは、マシであるとナタクは判断したのだ。
歯を噛み締めてチンクの前に出るドラスに、もう一度ナタクは言葉を投げかける。
「答えろ。家族は死んだのか」
「……そうだよ。僕に力が足りなかったから、みんな死んでしまった。……でも、もう繰り返さない!」
決意の篭った視線をナタクに向けるドラス。
風見と凱もドラスに並ぶように前に出て、ゼロは背後でいつでも引き破れるように包帯に手をかけた。
皆が皆、空中のナタクに仕掛ける隙を伺っている。
そんな時、ドラスに予想だにしなかった質問が浴びせられた。
「……母親、母親はどうした」
ドラスは質問から意図を見出そうとするが、何も予想が出来ない。
ゆえに、ありのままの答えを告げる。
「母親なんて、最初からいない……」
「……そう、か…………」
ドラスの返答に、ナタクはどこか遠くを見るような表情になる。
ナタクから、急速に戦う素振りが消え去った。相対する者達も気付くが、警戒を止めはしない。
数刻の後、ナタクが口を開いた。
「ならば、ここは俺から引こう。ドラスが喪った家族に免じてな」
そう言って部屋へと入ってくると、哮天犬から降りるナタク。
全員がナタクの真意を読めないために、油断することなく近付きはしない。
「……どういうつもりだ?」
全員の思いを代弁して、ついにゼロがナタクへと声をかける。
支援
ナタクって実は優しいんだよな……
「何を言っている」
「信用出来んということだ。襲い掛かってきておいて、急に戦意をなくしたなどとな」
「貴様、家族を持たないな」
「何……?」
ナタクの返答に、ゼロの中に疑問符が浮かぶ。
「家族がいるのならば、経験していなくともそれを亡くした喪失感くらい予想できるはずだ。
少なくとも、俺は分かる。俺とて、母上が倒れることがあれば――――
しかもそいつはまだ子供だ。感じている悲しみは、計り知れん。貴様等とは戦いたいところだが、そいつをさらに悲しませるのならば――俺は引く」
「いきなり仕掛けてきた貴様の言葉など、信じられるものか!
どうせ、シグマの言いなりになって最後の一人なろうとしているが、案外こちらの人数が多かったので適当な嘘を塗り固めているのだろう!」
チンクの言葉に、ゼロや風見も胸中で頷く。
しかし当のナタクは、心底理解出来ないといった表情を浮かべる。
「俺があんな男の狗になるだと? 何を言っている。ヤツは俺が殺す。
そもそも、どこに俺が貴様等なんかに臆する必要がある」
それは、想像してもなかった答え。
しかし目的が同じであるのなら、過程が違うだけであるのなら、更正のしようがある。
そう考えて、凱がナタクへと語りかけようとする。
だが、ナタクの言葉は続く。
「となれば、俺達と目指すことは同じじゃないか!
しかしいきなり襲い掛かるというのは、どういうことなんだ!? そんなことをしていては、シグマの思う壺だ!」
「知るか。俺は、お前を倒すことで自分の力を確かめようとしただけだ」
理屈が通じない上に、独自の理論を持っている。
先ほどナタクは、家族を失う悲しみを理解出来ると言った。
ナタクの好戦的な態度を見る限り、彼が引いたのには何らかの理由があったのだろう
家族関連の会話以外にナタクが引く要素がない以上は、彼の言い分は正しいように思われた。
つまるところ嘘を言っているワケではないと判断したのだが、ハカイダーやボイルドとは別の意味で説得が難しそうだ――風見は頭を抱えた。
その背後で、ゼロも同じく頭を悩ませていた。
「ところで、お前――名前は何と言う」
「え? えっと……」
いきなりの指名に、ドラスは困惑する。
チンクへの暴行は許す気はないが、ドラスも風見やゼロと同じように――ナタクが嘘を吐いていないと認識していた。
だからこそ黙秘する理由もなく、真実を伝える。
「ドラス、だけど」
「そうか。俺の名はナタクだ。
元来母親はいない上に、家族が死んだようだが、アイツと違って長い間ウジウジしたりはしないのか。
なかなか強い精神、気に入った。将来が不安だろうが、安心しろ――」
ドラスが家族を亡くしたと聞いてから、ナタクはずっと一人の少年を連想していた。
ナタクにはドラスが彼と同じ程度の年齢に見えたし、ドラスの性別も見抜いていた。
ドラスの持つ能力とは異なるが、彼もまたかなりのポテンシャルを秘めている――仙人骨を持った人間道士。
彼は名家の生まれで、元々は多数の家族と共に暮らしていたのだが……
腐った王朝の中で、母親と姉は自害。
かつて仕えた国を見限り父親と新たなる国へと移るも、その道中で多数の兄の内の数人が殺害されてしまう。
仙人同士の戦争に巻き込まれ、父親はかつての同僚を説得するも息絶えた。
残った兄の殆どは、今度は人間同士の戦争や病に倒れてしまう。
それでも、彼にはまだ一人だけ兄が残っていた。
沢山の兄の中で、彼が最も慕っていた兄。
他の家族が死んでも、彼を励ましてくれた兄。
仙人界で修行を積み、宝貝を持つほどになった兄。
だがその兄も、腐敗した国の王に一人で戦いを挑み――――死んだ。
その時、彼は全てを拒絶した。
皆いなくなるのなら、何もいらない――
そんな考えに至った彼を、ナタクは立ち上がらせた。
ナタクにしてみれば、戦意をなくした他人などどうでもいいはず。それなのに、その時だけは違った。
何故か――家族を失ったことこそなくても、ナタクにはその悲しみが理解できたのだ。
初めて出会った戦いたくない相手を自ら殺害したナタクは、大切なものを亡くした喪失感を知っていた。
そして何よりも――自分の命よりも、母親を愛するナタクはその時に考えたのだ。
仮に母親が死ねば、またしても似た喪失感を味わうのだろうと。
ゆえに、ナタクは兄を亡くした彼に優しい声をかけた。
強い自分と違って、子供の彼が喪失感に耐え切れないのは当然だと思ったから。
ドラスを前に、ナタクはその時と同じ感情を抱いていた。
だからこそ、その時と同じ言葉が彼の口から飛び出した。
「――お前は、俺が育ててやる」
瞬間、世界が凍った。
「な、何を言っている! ドラスは私の弟だぞ! 貴様には渡さん!」
狼狽しながらも、チンクが自分の立場を主張する。
それを聞いたナタクは、またしても理解できないといった視線をチンクに向ける。
ナタクは少し考えて、やっとドラスが『もう繰り返さない』と言ったのを思い出す。
「まだ家族が残っていたというワケか」
ドラスが首を上下させて、ナタクの言葉を肯定する。
「ということは、俺はお前の姉を羽交い絞めにしたことになるのか。
なるほど、あの怒りも頷ける。知らなかったからな、許せ」
本人以外には微塵も気を感じ取れない謝罪に、ポカンとなりながらドラスは頷いてしまう。
どうやら謝罪は本当にそれで終了したらしく、ナタクは視線をチンクへと向ける。
「貴様が死んだら、ドラスがさらに悲しむことになるぞ。
死ぬのは許さん。貴様が死のうものなら、俺は貴様を殺す」
どこか、理屈がおかしい。
とりあえず己が下に見られているのは理解したチンクが、口調を強くする。
「何だ、貴様は偉そうに! 言われなくても、簡単に死にはしない!」
「ドラスが来なければ、今頃死んでいたがな。
無論、もう俺は貴様を殺す気はないが、その調子ではどうなるか分からんぞ」
「ぐ……ッ」
言葉を詰まらせるチンク。実話ゆえに、反論のしようがない。
そんなチンクから風見へと、ナタクは視線を移す。
「ところで姿を変えていたが、貴様は城茂の知り合いか?」
「何ッ、茂に会ったのか!?」
思わぬところで後輩の情報が得られそうなことに、風見は思わず大きな声を出してしまう。
だが言った後で、風見は後輩の性格を思い出す――どう考えても、ナタクのような無愛想で我侭なタイプとは相性が悪い。
もしもナタクが、凱にやったように茂を襲撃していたのなら……和解などしそうにない。どちらかが倒れるまで戦い続けるとしか思えない。
風見は、思わず表情を顰めてしまう。
そんな風見の前で、ナタクは横にいる宝貝の名を呟く。
外へと飛んでいった哮天犬が、傷口が焼け焦げた右腕を銜えて戻ってくる。
「最初は下らんヤツだと思ったが、なかなか城茂は強かったぞ。
銀色に変わってからは、今の武器で相手にするのは厳しかった。
特に、この腕を引きちぎった回転しながらの蹴り。アレは、並の宝貝以上の威力だった。道中で義手を拾わねば、少し面倒なことになったな」
結城丈二のカセットアームを使っていたので、ナタクが隻腕なのは風見には分かっていた。
しかしその理由が後輩の技によるものであったのは、さすがの風見にも予想外であった。
「アイツと出会ったと聞いた時点で、やりあったのは予想できたが……それで茂はどうしているんだ」
ナタクとの戦闘の末、殺害されている可能性もある。
むしろ、その可能性は決して低くない。
予想できるからこそ、風見はそのことを尋ねる。
「痛み分けだ。日が暮れた頃に、スクラップ工場で再戦する約束をした」
ついついゼロと風見、彼等から話を聞いた凱が目を見開いた。
時間こそ違えど、ハカイダーが申し込んできた決闘と舞台が一緒だったからだ。
「――そうか」
ふと、ナタクの脳内に一つの考えが浮かび上がる。
え!?
ふと、ナタクの脳内に一つの考えが浮かび上がる。
「今の武装では、俺は銀に変わった城茂とは戦えん。そこで貴様達、宝貝という武器を持っていたらよこせ」
チンクは、ドクンと自分の中で高鳴るものを感じた。
ナタクの言った宝貝を、チンクは支給されている。
しかし説明を読んだところで、何に使えばいいのか。チンクには理解出来なかった。
だが使えない道具とはいえ、ただで支給品を渡すなどチンクにはお断りであった。
「それならば、持っているぞ」
「ほう」
ゆえに、チンクは風見の言葉に驚いた。
風見は宝貝など支給されていないし、そもそもPDAを落としている。
それなのに心当たりなど……
そこまで考えて、チンクはハッとする。
風見はチンクと出会った時に支給品を見せ合ったので、チンクの支給品を把握している。
となれば、心当たりは――
「おい、カザミ」
「安心しろ、他人の支給品を餌にはしない」
チンクが背後から小声で風見に声をかけると、これまた小声で返って来た。
「ただでやるワケにはいかんな」
「ちッ、仕方がない。条件があるなら言ってみろ」
普段ならば力ずくで奪っただろうが、ドラスを悲しませるのは望まないため、ナタクは条件を問いかける。
「その犬を、俺達にくれないか」
「ふざけるな」
なんという
風見は――否、風見達は長距離を移動できる道具を欲していた。
それゆえの提案を、ナタクは秒にも満たぬ思考時間で切り捨てた。
「ならば、やれないな。この話はなかったことにしといてもらおう」
風見の言葉に、ナタクは喉を鳴らす。
哮天犬は渡せないが、宝貝は何としても必要なのだ。
ゆえに、一つの案を持ち出す。
「待て、貴様。哮天犬はやれんが、この道具ではどうだ?」
そう言って、ナタクは自分にとって必要のなかった支給品を転送する。
出現したのは、機械であった。
鉛色のエンジンに漆黒のタイヤ、それを包み込むは黄色のボディ。
黄色い車体のオートバイに付属するのは、これまた黄色く塗装されたのサイドカー。
よくよく見てみれば、黄色の中に時折赤いラインが入っていた。
オートバイの後輪とサイドカーの左後輪は、銀のフレームで括り付けられている。
サイドカー自体にエンジンは付属していないが、これならばオートバイに引っ張られることで移動できるだろう。
そのメカの名は、サイドマシーンと言った。
「俺は哮天犬に乗るので使わんが、これと宝貝を取り替えるのではいかんのか」
風見は、一目でサイドマシーンの秘めたる能力を見抜いた。
そして修理工場で拾ったPDAを取り出し、宝貝を転送する。
出現したのは、日本刀程度の長さの白い棒。ところどころに節目があって、その先端には白黒の球体。
その宝貝の名は、打神鞭。
それをよく知るナタクは、暫し唖然として――
「やめだ。そんな宝貝いらん」
「……ッ、何故だ?」
「その宝貝は、俺には使いこなせん。……いや、使う意味がないというのが正解か。
貴様も、それはすぐに戻した方がいい。触れるだけでも、それは危険だからな」
ナタクにしては珍しいことに、それは純粋な忠告だった。
だというのに、あまりにも遅すぎた。
転送されて床に落下した打神鞭は、転がっていき――チンクに接触しようとしていた。
「ぐァ……!?」
それに気付いた凱が、打神鞭を掴んでチンクから引き離す。
苦悶の声が、勝手に零れ落ちる。
凱は力を吸い込まれるような感覚を覚え、戦慄する。
すぐに風見が再転送したので、一分弱ほどしか触れていなかったのだが――凱ともあろうものが、肩で息をしていた。
とても扱いきれる気がしない。
凱自身はそう判断したが、ナタクは違った。
「スーパー宝貝に触れて生きているとは……貴様、仙人か?」
「よく……分からないな」
打神鞭の先端に付いている玉は、仙人界に七つある最上位宝貝の一つ。
名は、太極図。
本来ならば、人間だけではなく並の仙人でも、触れるだけでエネルギーを吸い尽くされて干物になってしまうほどの代物だ。
しかし凱は、結構な時間触り続けることが出来た。
それは、シグマが何かしら仕組んだためであるのだが――
ナタクは、まだそれを知らない。
ゆえに、提案する。
「その宝貝は、滅多なヤツでは触れるだけで死に至る。
貴様とそれは相性がいいのかも分からんな。面倒だから、貴様が持っていろ。俺の近くで使ったら殺すがな」
凱は戸惑ったが、触れるだけで死に至るようなどと言われてしまったのである。
被害者を出さぬため、触れることが出来る自分のPDAにIDを登録することを決意した。
風見としても、その申し出を断る理由もなかった。
ちなみにこの宝貝は、ナタクの仲間のものであるのだが……
自分のことを棚にあげて、ナタクは『他人に宝貝を奪われるような情けないヤツに、返してやる義理はない』などと考えていた。
「貴様の言っていた宝貝は、それだけか? だとすれば、これは戻させてもらうぞ」
PDAを右手に、ナタクは述べる。
返答はなく、残念そうにナタクはPDAを操作しようとして――
「ま、待て!」
チンクに呼び止められる。
「宝貝という物なら、私も持っているぞ」
サイドマシーンが欲しいのは、風見だけではない。
風見を含む五人全員なのだ。
それを役に立ちそうもない道具で貰えるのならば、そんなに美味しい話もない。
……かと言って、こんな道具で交換してもらえるのだろうか?
チンクの胸中に、不安が宿る。
「ふむ、見せてみろ」
教鞭きた
その言葉に、チンクは意を決してPDAのボタンを押す。
虚空より出現するは、朱色の布。
「何でもこれがあれば、水を振動させることが――」
どうにか能力をアピールしようと、性能を褒め称えようとしたチンク。
しかし言い終えるより早く――布が床に落ちるよりも早く、布はナタクに掴み取られていた。
「いいだろう。あんな機械は好きにしろ、くれてやる」
そう言うと、ナタクは朱の布――宝貝『混天綾』のIDをPDAに登録。
完了次第、腰に巻き付けるナタク。
チンクは信じられずに、狐につままれたような顔。
水を振動させることが能力の道具だというのに、どうしてああも易々と納得したのか――
――混天綾は、ナタクが生まれし頃より所持していた宝貝だから。
正解はそんなシンプルなものなのだが、チンクに分かる筈もなかった。
「ドラス、ついてこい。修理工場にある設備の使用方法を教えてもらう」
そう言い捨てて、ナタクは部屋から出て行った。
ドラスは少し困惑していたが、他の面子に声をかけてナタクを追いかけていった。
「これで移動手段が増えたということか……」
そう呟くのは、ゼロ。
すぐさまチンクに使用していいか問いかけ、チンクも頷く。
それを見て、凱がサイドマシーンをPDAに登録。
再転送して一度戻すと、凱は説明を表示させる。
行を追っていくごとに凱の目が見開かれていったのだが、それには誰も気付かなかった。
支援
「しかし、ナタクのことを信用できるか?」
ゼロの問いかけ。
暫しの間のあと、風見が口を開く。
「少なくとも、ヤツがドラスを手にかけることはないだろう。
あくまで推測でしかないが、家族を失ったドラスへの態度は嘘とは思えない」
「私の考えも、カザミのと同じだな。
あの手の性格のヤツが、何もなしに士気を削ぐとは思えん。となれば、ヤツの話は真実なのだろう。……気に入るかは別だがな」
二人の意見を募った後、ゼロが凱へと視線を向ける。
PDAを仕舞い込んだ彼は、少し考えてから切り出した。
「俺も、二人と同意権だ。『育てる』と言った時のナタクの目は、心からの決意が篭っていたように見えた。
断言してもいい。あれは、冗談なんじゃない。ドラス君の悲しみを察したナタクは、本気でドラス君を育てるつもりだったんだ。
口はよくないし、いきなり俺や城茂さんに襲い掛かったりしているが……ナタクの内面には他者の痛みを理解できる『優しさ』があると、俺は信じる」
ゆっくり、そして力強く断定した凱。
その口調には、一点の迷いもない。
「お前達がそう言うのならば、俺もナタクを信じるとしよう」
ゼロはそう言うと、そろそろ出発するぞと凱を促す。
風見は、改めてゼロと凱へと伝えるべきことを話し出す。
即ち、仮面ライダーZXこと村雨良の遺志を。
「――無茶なことを言っている。そう、思うかもしれない。しかし――」
凱の勇気はスーパー宝貝をも使いこなせる!
風見の言葉は、最後まで語られることはなかった。
真剣な面持ちの凱が、割って入ったのだ。
「任せてくれ、風見さん。俺も……俺達も、村雨さんと同じことを考えていたんだ」
「何……!」
驚愕する風見に、ゼロが冷静な視線を投げる。
「しかし一度共闘したお前なら分かるだろうが、あれだけ悪の生き方に信念を持つ男だ。
その生き様を曲げない可能性は、低くない。その時は――――全力で以って倒すぞ」
「……それでいい。凱、ゼロ、感謝する」
風見は静かに答えながら、風見は歓喜していた。
この地にて、仮面ライダーのように正義を志す戦士に会えたことに。
そして、村雨の遺志が受け継がれたことに。
ハカイダーの件がどうなろうと、日付が変わる頃にスクラップ工場での再会を約束し、ゼロと凱は部屋を出て行った。
出て行く寸前で、ゼロがドラスの拾った金属片を取り出す。
それを見せ付けながら、風見とチンクへとアイコンタクト。
その意図を汲み取り、二人は無言で頷いた。
急に静かになった部屋から、一旦先ほどまで集まっていた部屋に戻ろうと足を動かしだした時。
不意に、風見が沈黙を破った。
「今更だが……チンク、あの支給品をナタクに渡したのはいい判断だった。礼を言う」
「――ッ、バカめ。あの状況で、私が最善の手を見抜けんとでも思ったのか」
何ともないように返答していながら、チンクの口元が緩んでいるのを風見は見逃さなかった。
◇ ◇ ◇
ドラスは、ナタクに彼が知る修理工場の設備を教えていた。
とは言っても、ドラスも風見から聞いた分しか――メカ救急箱と回復ポッドしか知らないのであるが。
ドラスの知能は、ナタクの言い分に嘘がないと判別。一応は、謝罪もしたのだ。
かつて神を志していた彼に、スバルを陥落させた彼に、ナタクを責める理由などなかった。
何より、一瞬だが母親を気にするような発言をしたナタクに、自分と同じくコアのような物体を持つナタクに――
当人でさえ気付かぬ内に、ドラスはどこか親近感のようなものを感じていた。
「使えんな」
ナタクは、メカ救急箱をそう扱き下ろす。
使用方法を説明してもらっておいて、あんまりな言い様である。
しかしその簡単な使用方法でさえ、ナタクにとってはひどく面倒に感じられたのは、紛れもない事実であるのだが。
「手間がかかりすぎる。もっと簡単なものはないのか」
「はは……じゃあ、もう一つの方に行こうか」
一階へと向かうドラス、ナタクもその後を追う。
「何だ、これは」
眼前にある回復ポッドに、ついついナタクはそんなことを呟く。
ドラスが使用方法を説明しようとした時、閉めた筈の扉が開いた。
凱とゼロが、今から出発すると伝えに来たのだ。
風見たちにそうしたように、再会の約束をしてゼロと凱は部屋を出て行く。
――が、すぐに凱だけが戻ってきた。
凱はナタクの両手を握り締め、まっすぐナタクの瞳を見据えて一言。
455 :
Classical名無しさん:09/01/04 00:34 ID:udztf1gg
支援
「ナタク――俺はお前を信用する。ドラス君を任せたぜ!」
まさか襲撃した相手に信じられるとは思ってもおらず、呆気に取られたような顔のナタク。
すぐに平静を取り戻すと、クックと笑う。
「ふん、貴様に言われるまでもないな」
返ってきた言葉に、凱は笑顔を見せて再び退室していった。
それを見届け、ナタクは軽く口角を吊り上げる。
「アイツは、奇妙なヤツだな」
「うん。でも凱兄ちゃんは、とても優しくて強いんだ」
「だろうな。いずれ再び戦いたい」
その発言にドラスはぎょっとして、ナタクの方へ首を上げる。
しかし続く言葉に、ドラスは安堵した。
「だから、それまで死んでくれるなよ――凱」
含みなど篭められてなさそうな瞳。
思わず呆けたドラスを見て、ナタクは回復ポッドの説明を求めた。
支援
■
「――と、以上だな。
これで、凱とゼロ、そしてお前と別れた後の私のことも話し終えたことになるな。」
「敬介は、ゼロにまで襲い掛かっていたとはな……アイツ……ッ!」
一時集まっていた部屋に戻り、道具を回収。
その後、己がいない間に交わされた情報交換の内容を、風見はチンクから聞いていた。
全てが終わり、最初に吐き出された感想はやはり暴走する後輩のこと。
知らず、チンクの表情も強張る。
また、風見の興味を引く事態が他にも存在した。
「それにしても……スバル・ナカジマは、お前の仲間ではなかったのか?」
「分からん。凱やゼロのいた世界では、レプリロイドや人間の人格を破綻させる道具があるらしいが……その仕業かは不明だ」
そんなものが支給されているのだろうか?
風見は思案するも、答えが出る道理もない。
「何にせよ、合流すべき相手が増えたな。エックスか……」
そう言って、ゼロが信頼する仲間の名を脳内に刻み付ける風見。
彼が修羅となっているなど、知る要素はない。
「それで、これからどうするんだ? ナタクというのも、つれて行くのか?」
心底御免だと思いながらも、あえて言及はしないチンク。
……思いっきり表情に出ているが。
「来るなと言っても、来るだろう。それにナタクの力は本物だ。同行させて損はない」
風見の言葉に、チンクは舌を打つ。
もはや考えを隠そうという気は、微塵もないのだろう。
「だが、ナタクが回復ポッドを使っているのなら、修復が完了するまで間が空くことになる。
完了するまで三人で、このコロニー内を見て回るのもいい。サイクロン号ならば、ナタクが完治するまでに全域を調べ終えることが出来る」
「今すぐ行くのか?」
尋ねるチンクに首を左右に振って答え、風見は全身に力を篭める。
瞬間、風見が腰に巻いた黒い皮製のベルトが、銀の金属製のベルトに転換する。
ベルトのバックル部には、力と技のエネルギーを漲らせる二つの赤い風車。
その中心に刻まれしは、戦士の名を表すアルファベットと数字。
ベルトの名を、ダブルタイフーンと言った。
疑問に満ちた視線を向けてくるチンクに答えるように、風見はベルトの左側に装備された銀色の筒を手に取った。
ちょうどリレー競技で使うバトンほどの大きさのそれを、風見は天に向け――
「V3ホッパー!!」
風見が自身に隠された二十六の秘密の一つの名を叫ぶと、その筒から何かが上空へと飛び出していった。
「……何をしているのだ?」
いてもたってもいられず、ついにチンクが疑問を口に出す。
「あの道具の名は、V3ホッパー。上空で静止し、備え付けられたカメラから情報を俺へと送ってくる。
力やスピードと同じく上昇する高さが制限されているだろうが、少なくともこのコロニー内くらいならば誰かいれば見つかる」
「何かが見つかれば、まずそこへと向かうワケか。便利なものだな」
チンクの言葉の途中で、V3の視界に上空からの映像が流れこんでくる。
未だ加速中のV3ホッパー。
さらなる上昇を望む風見であったが、唐突に上昇は幕を閉じる。
風見は、明らかに奇妙な感覚を覚える。
V3ホッパーの速度は増していたのに、急に静止したのだ。
普段ならば、ゆっくりと減速していった末に動かなくなるというのに。
まるで、何かに阻まれたように……
そこまで考えて、風見は勝手に呟いてしまった。
「そういうことか……」
「どうした? まさか何も映らんのか?」
状況を知らぬチンクに、風見は自分の見出した答えを教える。
「いや、映るには映るが……唐突に上昇が終わった。
おそらくコロニーの天井にぶつかったのだろう。これでは隣接エリアくらいしか確認出来んが、まあいい」
言い終えて、V3ホッパーから送られる映像に精神を集中させる風見。
当初は走り抜ける凱とゼロしか見えん、などとごちていたが……
ある方向を見た時、とある参加者が目に入り――風見の心臓が早鐘のように高鳴る。
「チンク、サイクロン号を転送しろ」
「ん? 何か見つかったのか?」
「ああ、見つかったとも……確かに見つかった」
風見の言い回しに疑問を抱きながらも、サイクロン号を転送させたチンク。
後部座席に座ろうとして、風見に放られた。
465 :
Classical名無しさん:09/01/04 00:38 ID:udztf1gg
支援
「カザミ! 何のつもりだ!」
うまいこと怪我をしないように投げられたとはいえ、チンクは怒りを禁じえない。
その問いに、サイクロン号に跨った風見は簡潔に答える。
「ここに、ボイルドが向かっている」
「何だと……」
そう、風見は見つけてしまったのだ。
南下してくるボイルドを。全てを塗り潰さんとす虚無の姿を。
「一人で行っても、さっきの繰り返しになるだけだ! 私もつれて行け!」
「断る」
「何故だ!?」
その答えは、簡単だった。
風見の願いは、ボイルドを■■■■■■にすること。
しかし、その道は果てしなく困難だ。
それに、風見は理解していた。それが、他人には理解されない望みだと。
だからこそ真の答えは言わずに、『チンクが来れなくなる』答えを告げる。
「ナタクも言っていただろう……お前が死ねば、ドラスは悲しむ」
「……死ぬとでも思っているのか?」
「ボイルドの力は分かっているはずだ」
「だからと言って、一人で行くのは間違ってるとしか思えん!」
正論である。
ボイルドを『倒す』のを目的としているのなら、一人で行くのは明らかな愚策。
風見にだって分かっているが、押し切るしかない。
誰だ?
支援!
「来るな。お前が少しでも近付けば、俺はドラスの名を全力で叫ぶ。
事実を知れば、ドラスは確実に同行したがる。ドラスを巻き込むことになるぞ」
「――ッ!」
チンクの目が見開かれた。
同時に、見抜かれたかと胸中で毒づくチンク。
そうなのだ。
風見を行かせたくないだけならば、サイクロン号を再転送すればよいのだ。
チンクはそれをしないのは、ひとえにドラスを巻き込みたくないからであった。
「では、話は終わりだ。ドラスには何も言わず、ここに潜んでいろ。全力でボイルドは引き離す。
もしも次の放送で俺の名が呼ばれたら、サイクロン号を転送してくれて構わない。IDが移し変えられていなければ、サイクロン号はお前の元に戻る」
「……ずるいヤツだな、貴様は」
もう説得の仕様がないし、近付けばドラスを巻き込むことになる。
チンクには、そう吐き捨てるしかなかった。
「悪いとは思っている」
「生きて戻ってこなければ、許さんぞ」
「生憎、それは保障出来ないな。
……そうだ、ここを探索している際に見つけたPDAを渡しておく。俺は使わない」
風見はそう言ってPDAを投げると、サイクロン号のアクセルを捻る。
修理工場は結構な高さを誇っているというのに、風見は何でもないようにバイクごと天井から真下へと引っ張られていく。
落下の衝撃などないかのように、地上に降り立った風見は北上していった。
向かうは、北――ディムズデイル・ボイルド。
「そこは、嘘でも頷いておけ…………バカめ」
残されたエグゾーストノイズの中で、チンクはそう呟いた。
どうでもいいはずの男の離脱が、何故だかとてつもなく大きなものの喪失のようにチンクには感じられた。
【G−3 修理工場(屋上)/一日目 昼(放送寸前)】
【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:小程度の疲労、全身に小ダメージ、固い決意、ノーヴェの死を悟り悲しみと憤怒、姉妹の仇を討つ決意
[装備]:金属の詰まった平凡なデイバッグ@ゴミ処理場
[道具]:PDA(チンク、メカ沢)、支給品一式(チンク、メカ沢)、不明支給品1(未確認)、ツバメ@クロノトリガー
[思考・状況]
基本:ノーヴェとセインの仇を討ち、シグマを破壊する
1:ドラスを巻き込みたくないために、修理工場にて風見の帰還を待つ。しかし長時間帰ってこなければ――――?
2:誰が何と言おうとも、ノーヴェの仇を討つ。敬介だろうが影武者だろうが関係ない。
3:姉として、弟(ドラス)を守る。
4:本郷、茂、ギンガ、エックス、タチコマ、T-800(名前は知らない)との合流。ボイルド、スバル、敬介、ハカイダー、メガトロンは警戒。
5:殺し合いに乗った危険人物には容赦しない。
6:スティンガー、シェルコートを手に入れる。
7:日付が変わる頃、スクラップ工場へ向かう。
[備考]
※風見、凱、ドラス(スバルに関すること以外)、ゼロと情報交換をしました。
※参戦時期は本編終了後です。
※優勝者の褒美とやらには興味がなく、信用していません。
※志郎を信用していることに気付きました。
※ドラスを弟として認めました。
◇ ◇ ◇
一瞬でエンジンが温まり、加速度的にスピードを増していくサイクロン号。
しかし今の風見には、風の心地よさを感じる余裕などない。
今から往こうとしている道が限りなく激しいものだと、実感しているがゆえだ。
サイクロン号の速度に加え、改造人間の異常なまでの視力により、僅かの走行で風見はボイルドを視界に捉える。
同時に、風見はサイクロン号を運転しながら立ち上がる。
この速度のバイクの上で立つなど、他の仮面ライダーにも出来ない――風見志郎だけの特技。
まっすぐと左側へ両腕を伸ばし、右へと一気に回す。
右腕はそのまま伸ばし続け、左手は拳を握って腰へと固定。
顕現していたダブルタイフーンが回転し、正義のパワーを風見に漲らせていく。
「変んん……身! V3ァアッ!!」
風見は真紅の戦士となりて、黄緑の複眼で直線上にいる男を見据える。
正義の戦士の眼前にいるのは、悪ではなく己の全てを捨て去った虚無。
――――時計の長針が、短針と重なろうとしていた。
風見ー
【G−2 路上/一日目 昼(放送寸前)】
【風見志郎@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:両拳に負傷(小)、頭部と胸部と左肩に弾痕(塞がっている)、右肘に負傷(中)、固い決意、
村雨の死に悲しみ、敬介を倒す決意、サイクロン号を運転中、仮面ライダーV3に変身中
[装備]:サイクロン号(1号)@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:無し
[思考・状況]
基本:殺し合いを破壊し、シグマを倒す。
1:ひとまずボイルドを修理工場から遠ざけ、為すべきことを為す。
2:いずれ、修理工場2階で見つけた隠し通路を調査する。
3:本郷、茂、ギンガ、エックス、タチコマ、T-800(名前は知らない)と合流。スバル、メガトロンは警戒。
4:殺し合いに乗った危険人物には容赦しない。
5:敬介は暴走状態にあると判断。正気に戻せないのなら、倒す。
6:可能ならば、ボイルドを仮面ライダーにしたい。そのためには、危険は辞さない覚悟。
7:弱者の保護。
8:日付が変わる頃、スクラップ工場へ向かう。
[備考]
※チンク、凱、ドラス(スバルに関すること以外)、ゼロと情報交換をしました。
※参戦時期は大首領の門に火柱キックを仕掛ける直前です(原作13巻)。また身体とダブルタイフーンは元通り修復されています。
※なんとなくチンクを村雨、そして昔の自分に重ねている節があります。
※液体金属が参加者に擬態している可能性に気づきました。
※ゼロを襲い、ノーヴェ、メカ沢、ロボを殺したのは敬介本人だと確信しました。
※修理工場の2階に隠し通路と、謎のメッセージを発見しました。
※ドラスへの荒療治は、やり過ぎだったと反省中。
■
俺達は、エリアF−2の橋の上まで来ていた。
まず左上のコロニーまで行き、次に左下、そして右下、最後に今いる右上コロニーに戻るという計画だ。
このルートで全域を虱潰しに捜索していった場合、約束の時間くらいにスクラップ工場につくだろうとゼロが考えたのだ。
もちろん、俺に反対する理由はなかった。
とりあえずE−1に到着するまでは北西に進み、幹線通路を通って左上コロニーに入る予定である。
既に情報交換の内容をゼロに話し終え、俺達の間にはほぼ会話はなかった。
しかし、何も思わない。
一見クールでありながら、ゼロが熱さを秘めていることは知っているからだ。
俺と違って頭も回る。おそらく黙っていながら、いろいろと考えているのだろう。
それにしても、このサイドマシーンの性能は抜群だ。
俺もバイクを持っているが、こんな速度は出したことがない。
全身にかかる風が心地よい。
ゼロが包帯のせいで運転できないというから、運転を受け持ったが……
こんな感覚を味わえるのなら、ゼロが完治してからも志願させてもらおう。
不意にこのサイドマシーンの説明を思い返し、思わず心が熱くなる。
【サイドマシーン:バイクとサイドカーが付属した車。参加者であるハカイダーの宿敵、キカイダーの愛用マシン】
このサイドマシーンは、ハカイダーの宿敵であるキカイダーという方のものらしい。
あの誇り高いハカイダーが宿敵と認めるということはは、つまり正義を志しているのだろう。間違いない。
この場にはいないが、正義の戦士が力を貸してくれている。
こんなに嬉しいことは、他にないぜ!
待っていろよ、ハカイダー……!
あーかいあかーい
そこまで考えて、風見さんから貰った支給品のことを思い出す。
ナタクによれば、何でもただの人間ならば触れだけで死に至るらしい。
素質があるといわれても、正直使う気はなかったが……
説明を読んでみれば、風を操って刃にして飛ばすなど、なかなか有用そうな道具だ。
……宝貝の動作を止めるというのは、使いどころはなさそうだが。
それでも風の刃の方は、使わねばならない時が来るかもしれない。
だが、そうなれば俺は――――
「ふッ」
下らないことを考えた自分に笑ってしまう。
今更何を迷っているのか。
あの事故の後に手に入れたこの体は、みんなを守るために神様がくれたものだ。
宝貝という道具を使うことで、みんなを助けられるのなら――
――――迷うことなど、何もない。
【F−2 橋の上(南東)/一日目 昼(放送寸前)】
【獅子王凱@勇者王ガオガイガー】
[状態]:健康、揺るがない勇気、チンクの妹とその仲間の死に悲しみ、サイドマシーンを運転中
[装備]:電磁ナイフ@仮面ライダーSPIRITS(右腕に収納)、サイドマシーン@人造人間キカイダー
[道具]:支給品一式、打神鞭@封神演義、グランドリオン@クロノトリガー
[思考・状況]
基本思考:シグマを打ち倒し、この殺し合いを止める。戦う力を持たぬ者、傷ついている達を保護し、守り抜く。
1:左上コロニーまで行き、そこから虱潰しに全エリアを巡る。
2:ハカイダーを更生し、勇者にしたい。それが不可能ならば、今度こそ倒す。
3:本郷、茂、ギンガ、エックス、タチコマ、T-800(名前は知らない)と合流。ボイルド、スバル、メガトロンは警戒。
4:同じ目的を持った仲間を探す。
5:日付が変わる頃、スクラップ工場へ向かう。
[備考]
※風見、チンク、ドラス(スバルに関すること以外)、ゼロと情報交換をしました。
※Zマスター撃破直後からの参戦です。
※チンクから情報を得ました。
※制限の影響により、グランとリオンは出現する事が出来ません。
※凱が見た村雨の写真は原作五巻に出てきたものです。
※風見を強く信頼しています。同時に勇者と認定。
【ゼロ@ロックマンX】
[状態]:左膝を破損(修復中)、全身のアーマーに大きな傷(修復中)、疲労(小)、エネルギー消費(大)、
ノーヴェの死に悲しみ、確固たる決意、膏薬と包帯を纏っている、サイドマシーンのサイドカーに乗っている
[装備]:チャージキックの武器チップ@ロックマンシリーズ、カーネルのセイバー@ロックマンX4、トリモチ銃@サイボーグクロちゃん
アトロポスのリボン@クロノトリガー、プラ膏薬とポリ包帯@ザ・ドラえもんズ、謎の金属片(マルチの残骸から回収)
[道具]:支給品一式 PDA×2(ゼロ、村雨) 不明支給品0〜2(未確認)、空っぽの平凡なデイバッグ@ゴミ処理場
[思考・状況]
基本:シグマを倒す。イレギュラーに容赦はしない。
1:左上コロニーまで行き、そこから虱潰しに全エリアを巡る。
2:情報交換が終わり次第、回復を行う。
3:凱と共にハカイダーを更生したい。更生に失敗して、凱が倒せなかった時は、自分がハカイダーを倒す。
4:日付の変わる頃(二日目00:00)にハカイダーと決着をつけるため、スクラップ工場に再度向かう。
5:本郷、茂、ギンガ、エックス、タチコマ、T-800(名前は知らない)と合流。ボイルド、スバル、メガトロンは警戒。
6:シグマ、何を企んでる?
7:ドラスの変身能力が気になる。
[備考]
※ノーヴェ、風見、チンク、凱、ドラス(スバルに関すること以外)と情報交換をしました。
※ノーヴェたちを生体パーツを使用したレプリロイド(のようなもの)と解釈しました。
※ノーヴェから時空管理局と平行世界に関する知識を得ました。
※参戦時期はX4のED〜X5開始前のようです。
※液体金属が参加者に擬態している可能性に気づきました。
※支給品にゾンダーメタルがある可能性を考えています。
※三時間弱で、傷は塞がります。
支援
【支給品紹介】
【サイドマシーン@人造人間キカイダー】
主人公であるキカイダーの愛用マシン。サイドカー付きのバイクで、車体は黄色く赤いラインが入っている。
最高時速は五百キロで、人工知能からの指令で自動走行可能。水上運転と空中運転、ともに可能。
制限は今んとこ速度だけで、あとは任せます。
【打神鞭@封神演義】
主人公である太公望の宝貝。
見た目は、節目のある白い棒。原作終盤からの登場なので、長さは日本刀程度。
能力は風を操ること。応用させれば、竜巻や風の刃を作ることが出来る。
また、先端にスーパー宝貝『太極図』(※)が付属している。
※太極図:使い手の力を吸い取り能力を発揮する通常の宝貝とは異なり、他の宝貝から力を吸い取る『反(アンチ)宝貝』。
周囲の宝貝を無力化し、その宝貝を伝ってエネルギーを回収。癒すことにも、戦うことにも、回収したエネルギーは使用できる。
■
「こちらは、楽でいいな」
回復ポッドの方は、どうやら眼鏡に適ったらしい。
……楽さなら、どちらも変わらないと思うんだけどなあ。
「つまり入っていればいいのだろう?」
首肯すると、ナタクはポッドに入ろうとして――それをやめた。
どうしたのかと思っていると、こちらを振り向いた。
「そういえば、お前の姉の話だが」
「チンクお姉ちゃんのこと?」
「チンクと言うのか。お前は、アイツをどうするつもりなんだ?」
……よく意味が分からない。
そう伝えると、再びナタクが口を開いた。
「あの女はお前より弱い。だが、お前の家族だ。あの女にもしものことがあれば、お前はどうするんだ?」
何を今更。そんなこと決まっている。
「守る……か。本当にだな」
念を押してくるので、改めて決意を告げる。
「……そうか。俺は姉は持たんが、母上はいる。
俺は昔から母上を守るために生きてきたが……やはり俺だけでなく、男というのは女の家族を守るのが使命なのだな」
支援
納得したように、背を向けるナタク。
――男というのは女の家族を守るのが使命。
ナタクの言葉が、頭の中をリフレインする。
蘇ってくるのは、僕が姉と呼んだ女性。
ノーヴェお姉ちゃんでも、チンクお姉ちゃんでもない、現在暴走しているという彼女。
かつてなら何も思わなかっただろうに、何故だかすごく胸が苦しい。
凱兄ちゃんは、僕に『勇気』が芽生えたといっていた。
勇気とかはよく分からないけど、僕も僕の中に何かが生まれたのは感じ取れる。
「待って!」
ポッドの中に入ろうとするナタクを、つい呼び止めてしまった。
でも、知りたいことが出来た。
宝貝人間とかは分からないけれど、僕と同じく体内にコアを持つナタクには――
僕の中に生まれた、お姉ちゃんを守りたいという感情を昔から持っていたナタクには――
どうしても、聞かなきゃいけないことがある。
今の僕には分からないけど、ナタクなら分かるかもしれない。
「何だ」
回れ右をしたナタクが、こちらに寄ってくる。
まず聞くためには、話さねばならない。
「最初、僕はこの壊し合いで優勝しようとしていたんだ。そして、そんな時にスバルという参加者に出会って――――」
ありのままを。
本来他人を殺すことに躊躇しないナタクにだから、明かすことが出来る。
支援
◇ ◇ ◇
ナタクは、回復ポッドの中で光る液体に包まれている。
見る見る全身の負傷が回復していくのは、見ていて何とも言えない気分だ。
全て――パパといた頃のことも含めて――を話して、僕はナタクに尋ねた。
家族に隠し事をしてもいいのか否かを。
隠し事とは、勿論スバルお姉ちゃんのことだ。
僕がスバルお姉ちゃんにやったことを知っているナタクは、聞いてきた。
『それでお前は、そのスバルとかいう姉をどうしたいんだ』
そんなこと、考えたこともなかった。
ただただ僕は、スバルお姉ちゃんのことから目を逸らしていた。
だから、ナタクに問われて初めて考えて――言った。
何としても、スバルお姉ちゃんを元に戻したいと。
ナタクは言った、厳しい道になるぞと。
でも、僕は責任を取ると宣言した。
すると、ナタクはまっすぐとこちらを見据えて――断言した。
『ならば、わざわざ姉にスバルのことを言う必要はない。
余計なことを言えば、あの手の連中は確実に首を突っ込んでくる。
どちらの姉も守りたいのなら、ひたすら隠し通せ。姉を巻き込まずに、自分だけで全てを解決すればいい』
予想していた答えとは、真逆の結論だった。
隠し事はよくないと責められるものだと、そう思い込んでいた。
目を丸くする僕に、ナタクは言葉を続けた。
『――少なくとも、俺ならば母上は巻き込まん』
それだけ言って、ナタクは回復ポッドに入っていった。
回復ポッドを操作して溶液で満たした後も、僕はずっと考えた。
確かに、ナタクの言うとおりだ。
もしもスバルお姉ちゃんの件を話せば、チンクお姉ちゃんも巻き込むことになってしまうのだ。
そうならないようにするには、僕一人で頑張らねばならない。
果たして、そうそう成功するものだろうか?
弱い考えが浮かんでくるが、僕を変えてくれたみんなを思い出す。
「みんなが僕を変えてくれたように、今度は僕がスバルお姉ちゃんを戻してみせる。だから……見ていてよ」
握り締めたメカ沢お兄ちゃんの制服が、なんだかとても暖かく感じた。
ドラスゥゥゥゥ!!
【G−3 修理工場/一日目 昼(放送寸前)】
【ドラス@仮面ライダーZO】
[状態]:全身打撲、コアにダメージ。中程度の損傷&疲労。右腕がスバルのもの。悲しみ。自分が求めていたものが『家族』と自覚。
仮面ライダーへの恐怖を少し克服、仮面ライダーXへの怒り、セインを四、五歳幼くした状態に擬態。ただし、生えている
[装備]:ラトゥーニのゴスロリ服@スーパーロボット大戦OG、メカ沢の学ラン@魁クロマティ高校、オルゴール付き懐中時計@仮面ライダーZO
[道具]:支給品一式、PDA(ドラス) (マルチ)(ノーヴェ)
荷電磁ナイフ@マルドゥックスクランブル(D-3基地に放置。呼び出し可)
スタームルガー レッドホーク、装弾数0/6@ターミネーター2(D-3基地に放置。呼び出し可)
[思考・状況]
基本思考:二度と家族を失いはしない。
1:チンクを守りたい。
2:スバルは、『自分で』正気に戻させる。他人は巻き込まない。
3:チンクと共にロボ、メカ沢、ノーヴェの仇を討つ。
4:自爆装置、リミッターの解除。
5:麻生お兄ちゃん(ZO)は何番目に強かったんだろう?
6:本郷、茂、ギンガ、エックス、タチコマ、T-800(名前は知らない)と合流。ボイルド、ハカイダー、メガトロンは警戒。
[備考]
※風見、チンク、凱、ゼロと情報交換をしました。
※自分が未完成品、仮面ライダーが完成品だと勘違いしています。
※『仮面ライダー』への恐怖が薄らぎ、戦闘可能になりました。が、仮面ライダーXの前に立った場合は未知数です。
※チンクを姉として強く慕っています。
※怪人形態への変身を目撃されましたが、その後の言動で悪い印象は与えていません。
※無意識の内に罪悪感が芽生えつつあります。
※志郎の言った10人ライダーの中に仮面ライダーZOがいると思い込んでいます。
■
輝く液体が、俺のいる容器に注ぎ込まれてくる。
全身を液体で覆われているというのに、何故だか息苦しいことはない。
強烈に襲い来る眠気の中で、ドラスの言葉が蘇った。
――強くなれば、パパが好きになってくれると考えていた。
ドラスの言葉を思い出した瞬間、眠気が吹き飛んだ。
同時に、かつての記憶が浮かんでくる。
――おで……ただ……お父さんに好かれたかっただけ…………強くなれば、好きになってくれると思った……のに……
ドラスに関する認識を変える。
最初は、ただの宝貝人間だと考えた。だから戦おうとした。
アイツが家族を失ったと聞き、天祥に似ている境遇だと思った。ゆえに、俺はヤツを悲しませないようにした。
しかしさっき告白を聞いて、間違いに気付いた。
いや、確かに天祥にも似ている。
しかしながら、さらに似ているのは――馬元だ。
馬元は、戦いを望んではいなかった。他者を傷つける気もなかった。
だからだろう。俺は始めて、敵として立った相手に戦いたくないとの感想を抱いてしまった。
だが、馬元は死んだ。
他でもない。殺したのは、俺だ。
塵にも劣る父親の仕業で暴走した馬元の前に、俺はそうするしか方法を知らなかった。
あの時よりも前に、俺は馬元の父親を殺せる機会があったというのに……
新たに手に入れた火尖槍の性能にいい気になっていたら、逃げられてしまった。
馬元は否定するだろうが――馬元が死ぬことになったのは、明らかに俺のせいだ。
しかし、踏み止まりはしない。
俺は強いからこそ、進み続ける。
後悔しないことこそが、馬元への贖罪になると信じている。
そんな中、俺は出会ったのだ。
天祥のように家族を失った、馬元のように下種な親を持った宝貝人間に。
――――――――今度は、死なさん。
決意を固めたと同時に、再び睡魔が束になって侵略してきた。
抗えぬまま、俺は眠りに落ちた。
支援
支援
【G−3 修理工場/一日目 昼(放送寸前)】
【ナタク@封神演義】
[状態]:全身に重度の火傷と軽度の裂傷、霊珠に微弱のダメージ、右腕上腕の半ばから先を喪失、疲労(中)、回復ポッドで睡眠中
[装備]:哮天犬@封神演義、M.W.S.(ボム残り五発 ビームランチャー エネルギー79%)@ゼノサーガシリーズ、アタッチメント@仮面ライダーSPIRITS、混天綾@封神演義
[道具]:支給品一式、高性能探知機
[思考・状況]
基本思考:家族を亡くしたドラスは悲しませたくはないが、他者と馴れ合うつもりはない。強い敵と戦う。弱者に興味はない。シグマは殺す。
0:睡眠
1:武器を探す(宝貝優先)。
2:回復を終えたT-1000と城茂とはまた戦いたい。
3:日が暮れる頃にスクラップ工場に向かい、万全の城茂と再戦。そして倒す。
[備考]
※仙界大戦終了後からの参戦。
※現在、M.W.S.を左腕に、アタッチメントを右腕に装着しています。
※T-1000の名を知りました。
※アタッチメントのIDをPDAに登録したことにより、神敬介の持つ則巻アラレのPDAからは、アタッチメントの転送が不可能になりました。
※回復ポッドによって、M.W.S.のエネルギーが回復するかは任せます。
※右腕は、修理工場の冷凍庫にて冷凍保存されてます。
【支給品紹介】
【混天綾@封神演義】
ナタクの持つ宝貝の一つ。見た感じは、赤い腰布。
能力は、液体を振動させること。
液体を振動させることで形状を変えたり、ある程度なら思うように動かしたり出来る。
【設備紹介】
【メカ救急箱@ザ・ドラえもんズ】
修理工場の二階に備え付けられている。
チューブ入りの軟膏剤、プラ膏薬という名の膏薬、ポリ包帯という名の包帯が入っている。
故障した場所に軟膏剤を塗りこむことで、患部の金属分子を増殖させる。プラ膏薬とポリ包帯は、患部を保護する働きがある。
三時間ほどで傷が塞がり、次の日にはほぼ万全まで回復する。
※修理工場の屋上に、人が通れるくらいの穴が開けられました。
※修理工場の最上階の一つ下の階にあった部屋が、幾つか消し飛びました。
尾張かな?
投下完了です。
誤字、脱字、その他アレ? と思う点ありましたら、指摘してください。
また
>>434の一行目に、
>>427の最後の行の分が混ざってるのは、wikiで直しときます。
深夜に長い時間の支援感謝です。
……そして、新年一発目はいただいた!w
乙です!
ナタクとドラスの奇妙な縁宝貝を手にした凱
ドラスの決意
風見頑張れ超頑張れ
と見所だらけ、まさにおせち料理みたいでした
凱おじさんネタと風見が一瞬早川化したりとか、小ネタも上手い!
誤報、ハカイダー、ボイルド、スバル、T-1000と難題だらけながら、彼らなら乗り越えられる
そんな気がしました
投下乙ですっ
ナタクとドラスのこの絡みは最高によかった!
しかしスバルの事は伏せたままか……少しチンクの動きが気になるな
そして他のメンバーもそれぞれ分散……風見がいきなり不安だ、ボイルド怖いよボイルド
それに凱も宝貝に躊躇なしは危険すぎるー!
いったいどれだけの人数が再び会えるのだろうか……
>>512 新年一発目、乙です! 凱おじさん、凱兄ちゃんに昇進おめでとう!
ナタクの強襲でどうなることかとハラハラしていましたが……家族には優しいナタクが、ドラスとシンパシーを結ぶとは予想外でした。
けど、家族想いのナタクとなら、半ば当然のことだったかもしれませんね。
風見志郎、ついにボイルドと再戦――! しかも彼の十八番、車上変身と来たもんだ! こんなにも熱い引きは溜まりませんね。
直前でのチンクとのやり取りも良かったですね。まるでチンクが、戦士の旅立ちをヒロインのようでは無いですか。……見た目が幼過ぎますがw
仮面ライダーV3の魂は、修羅道を往く虚無の戦士に届くのか、今後の展開が楽しみです!……けど、放送で茂の名前が……orz
凱とゼロの熱血ヒートとクールに熱血コンビも、ハカイダーの追走を開始。因縁のマシン、サイドマシーンも得て、追撃の準備は万端だ!
しかし、修羅を往くエックスと遭遇したらと思うと……畜生! 今後が楽しみすぎる!!
ドラスとナタクの新たなる決意、己が信念に殉じる覚悟の風見とその背中を見送ったチンク、そしてハカイダー決闘コンビの行動開始と、見所満載でした!
GJ!!
蛇足。確かに、あなたは新年一発目だ。ならば敢えて言おう!
私は、去年の大トリを貰った、と!!
投下乙。いい作品だ。
ナタクがいい奴になって感動した。
チンクを始めとするメンバーがだんだんと絆が深まるのが分かる
凱のおじさんネタなどの細かいネタも仕込んでるのもいい
投下乙です。
修理工場組のやり取りにニヤニヤ。
彼らのやり取りはなごませてくれる上にかっこいい。
しかし、ついに動きましたね。
ナタクのドラスへのシンパシーが彼らしいと思いました。
ボイルドとの再戦か。
楽しみです。GJ
投下乙です
ナタクの苦い経験とドラスの生い立ちをそうかぶせるか!
俺が育てる発言が飛び出したときはヒヤヒヤしましたが
心強い味方(?)がまた増えたのは喜ばしいです
風見をチンク見送るチンクにニヤニヤ
自ら死地に飛び込む風見、なんか危なっかしい凱とドラスの決意もよかったです
リアルで支援できなかったのが残念><
ところで誤字脱字ですが
>>416でナタクがドラスの名前を聞く前に彼の名前を呼んでいる箇所があります
あと死んだのは天祥の姉じゃなくて叔母(飛虎の妹)だった筈です
最後に単なる願望ですが風見がドラスから聞いたZOについてなにか
思う描写があればなーと思ったりw
投下乙!
ナタクの戦闘狂以外の面が掘り下げられていて良かったです!
そして迫るボイルド、走るサイドマシーン、こみ上げるスバルの影……。
実にいいひきでした!
多数の感想、どうもです。
ナタクとドラスの絡みはドラス改心時からずっと考えていたネタなので、好評みたいで一安心です。
>>518 ドラスの名前を読んでいる箇所は、『お前』にでも変更します。
二つ目の指摘ですが……ちゃんと単行本読み返しとくべきでしたね。そちらも叔母に直します。
指摘感謝です。
そして、自分で気付いたのですが……
ナタクの右腕を冷凍庫に保管する――といったシーンを足したはずなのに、何故か書き足す前のバージョンを投下してました。
状態表には書いてあるのですが、さすがに描写必須かと思われますので、こちらもwikiで加筆しようと思います。
放送案の投下を終了しました。
意見、禁止エリアの決定、指摘などお待ちしています。
>>521 放送投下乙です
内容に問題はないと思います
禁止エリアは前回同様の形式がいいですかね
>>521 放送投下乙です。
自分も、特に問題は無いかと思います
放送投下乙!
特に問題は見当たりません、後はいつ頃本投下するか決めるだけですね。
投下自体はもうしても問題ないけどね
『待ち人来らず?〜』と『ココロの在処』を微修正しましたので、報告します。
そして、編集して下さった方、状態表のアタッチメントを事前に削除しておいてくれてありがとうございます!
で、だ。
次に悪落ちする参加者は誰かね?
最近善落ちばっかりだしな!
最初の悪落ちが異常だったしバランスとれてね?
まあ残り参加者も半分強だし死亡ペースは落ちてくるころかな
生存参加者のスタンスを纏めてみた
【仮面ライダーSPIRITS】○本郷猛:対主催/○風見志郎:対主催/○神敬介:対主催?
【魔法少女リリカルなのはStrikerS】○スバル・ナカジマ:マーダーキラー/○ギンガ・ナカジマ:マーダー/○チンク:対主催
【からくりサーカス】○フランシーヌ人形:対主催/○コロンビーヌ:マーダー/○アルレッキーノ:対主催?エレオノール最優先
【ロックマンXシリーズ】○エックス:戦っているもの限定マーダー/○ゼロ:対主催
【ターミネーター2】○T-800:対主催/○T-1000:ジョーカー&サラマンダー
【攻殻機動隊】○草薙素子:空気対主催
【サイボーグクロちゃん】○クロ:暴れん坊対主催/○ミー:対主催
【マルドゥックシリーズ○ディムズデイル・ボイルド:マーダー
【パワポケシリーズ】○灰原:危険対主催/○広川武美:対主催
【勇者王ガオガイガー】○獅子王凱:対主催
【封神演義】○ナタク:強いもの限定マーダー
【スーパーロボット大戦シリーズ】○ラミア・ラヴレス:対主催
【人造人間キカイダー】○ハカイダー:正義の戦士最優先・強者限定マーダー
【仮面ライダーZO】○ドラス:対主催
【ビーストウォーズ超生命体トランスフォーマー】○メガトロン:マーダー
【SoltyRei】○ソルティ・レヴァント:対主催
【メタルギアソリッド】○グレイ・フォックス:マーダー
対主催:18人
マーダー:9人
特殊スタンスも含めるとこうなる。対主催がやや優勢……か?
空気とか止めろwwwww
サラマンダー言うなw
暴れん坊対主催って何だww
まあ、その暴れん坊は全然暴れてねえがなwww
南東は過疎杉
北西コロニーに一人だけのボブおじさんに謝れ
まったく突然の話なんだけど、毒吐きで勇者王が科学スキル持ってるので思い出した。
メガトロンて一期の最後でコンボイハメハメしたり、みりんとか胡椒とかでクローン作ったりと
意外とスペック高い。
>>538 勇者王に科学スキルか……智勇を兼ね備えた、僕らの勇者王! デンジャラスにときめくな!
けど、作品中でそれがあんまり表に出ていないからな。ここで活かすのは難しい。
そして、メガちゃんは待てww
メガちゃんは凄いぜ?ギャグ抜きにしたとしても
まあギャグのないメガちゃんは魅力が6割減になってしまうが
やたら高いスペック+不意打ちを厭わない/部下でも容赦なく殺せる鬼畜っぷり+引き際を心得ている+状況により最適な行動を選択するだけの機転
しかしサラマンダー。
本人は殺したと思い込んでいるってのが、なんとも泣けるw
それだけ見ると、メガちゃんがあまり読者受けしなそうなキャラみたいだw
誰も居ないな……よし、wiki編集をしてくれている人に乙を言うなら今のうちだな!
アレだけ多大な量を、本当に乙でした!
wikiで思い出したがF-2が禁止エリア扱いになってるんだけど
今夜0時投下予定の放送で指定する禁止エリアの、マップの更新を終わりました。
混乱させて申し訳ありません。
お疲れ様です。
って、今日包装!!?
正確には明日じゃね?
PDA内に内蔵された、デジタル型の時計が十二時を示す。
画面が点滅し、本日二度目の放送が鳴り響く。
『――インフォメーションメッセージ』
合成電子音が、死者を知る時間だと告げた。
死んだものを悲しんでいる者にも、戦いを続ける者にも、会場を探索している者にも、PDAにより放送は発せられる。
『12:00時点における本プログラムからの脱落者をお知らせします。
No11 ゲジヒト
No35 初音ミク
No23 タチコマ
No49 ロボ
No43 メカ沢新一
No31 ノーヴェ
No15 城茂
No48 ロックマン
No06 絡繰茶々丸
No12 KOS-MOS
No01 R・田中一郎
No47 ルーン・バロット
なお、進入禁止エリアは13:00をもってして【C-7】、【E-2】の2ブロックとなります』
告げ終えた機械は沈黙する。死者の存在を知らせる言葉が、生き残ったものに影響を与える。
よかれ、悪かれ。
機械はただ、事実を告げるのみ。
□
シグマはPDAに送信された音声ファイルが再生する様子を、モニターで確認する。
もしかしたら聞き逃した者がいるかもしれないが、親切に二回流してやる気はない。
体内の爆発物を持っているグループをみてみると、自分に爆破されることを恐れているらしい。
爆弾を持っていない、と情報をかく乱するようだ。シグマは嘲笑の笑みをモニターへと向ける。
コロニーを用意したのは、シグマだ。室内でも様子が分かるのは自明の理。
その上、対象が室内にいたとしても確認できる道具がある。シグマは静かに、そのグループが映し出されているモニターから離れた。
爆弾の解除は実はシグマにとってそれほど不利益ではない。いくつか理由があるが、そのうち一つが殺し合いの舞台となるコロニーだ。
プログラムを邪魔になれば、コロニーごと始末するという手が残されている。急く必要もない。
それに……
「早すぎる」
そう、今彼らを殺すのは早すぎる。進化とは、闘争を繰り返した果てにある。
かつてシグマは唯一『悩む』という行為が出来るレプリロイド、エックスに進化の可能性を見出して闘争の場を用意した。
今また並行世界を知り、集められた者たちにもシグマの望む進化を見ることが出来るのか興味があった。
だからこそ、爆破の条件を緩めた。もっとも、それらは理由の一つに過ぎないが。
「エックス……まさかキサマが、修羅の道を行くとはな」
と、言いつつもシグマの声に本気で驚いている様子はない。
この可能性も、ありえると想定していたのだ。再生をしたシグマはスカイネットと出会い、このプログラムを提案された。
参加者を集めたのはスカイネットの仕業だ。シグマはコロニーを用意して、舞台を整えた。
プログラムの映像はスカイネットに送られている。シグマに彼らが協力する代わりに、映像を送ると約束したからだ。
その理由を聞かされたときは呆れた。もう、スカイネットがシグマに接触することもないだろう。
その途中、スカイネットにシグマは未来と過去を教えられた。
正確にはシグマのいた世界の過去や未来になりえた世界だ。だからこそ、エックスが修羅の道へと歩む今の姿もある程度納得する。
平行世界は多種多様。人を憎むレプリロイドもいた。そして、肝心のエックスの未来は……
「牙なき者を守る剣……か」
シグマはかつて、イレギュラーハンターの隊長として隊員に告げた教えを呟く。
頭髪のない、人間の中年を想定した顔に皮肉の笑みが刻まれた。
悪夢の舞踏はまだ続く。
投下終了。
投下宣言忘れて申し訳ない。
投下乙。
そろそろシグマの色々なことが明かされそうな予感
エックス、クロ、広川武美、グレイ・フォックス、草薙素子、ウフコック投下します
「どうしたの? クロちゃん」
赤いリボンで両端を結えた髪を揺らして、武美が急に足を止めた黒猫型サイボーグに疑問を持つ。
武美たちは、放送を向かえる前に今までいた森林コロニーを抜けて、市街コロニーへと向かう予定であった。
事実、二つのコロニーを繋げる通路は目の前だ。なのに、連れであるクロが急に立ち止まったのだ。
「武美。施設ってのは、別にTV局じゃなくてもいいのか?」
「え? まあ、大丈夫だとは思うけど……」
「じゃあ、発電所のほうに行くぞ。距離はTV局と大差はないしな」
「え? どうして?」
武美の疑問に答える前に、クロは腕を引っ張り今まで通った道を戻っていった。武美には訳が分からない。
武美が説明を求めると、クロが前を向いたまま答える。
「でっかい建物が崩れる音がしたんだよ。ちょうどミー君たちとデパートをぶっ壊したような、派手な音がな」
「暴れん坊だね。でも、そんな音はしなかったけど……」
「まあ、もともとオイラは視力が弱かったから、耳や鼻が利くほうなんだ。サイボーグとして強化されているしな」
ニヤリ、と本人は格好つけているつもりで笑っていた。武美から見れば、悪巧みしている顔とそう変わらない。
とはいえ、暴れん坊のクロが力を発揮する機会を潰してまで、自分の安全を確保してくれる気遣いが嬉しかった。
武美は自らの手を引くクロに任せるまま、発電所へと向かう。
発電所へと移動を続ける途中、放送が訪れた。
ミーが呼ばれていないか、クロは心配したが杞憂だったらしい。元々知り合いのいない武美の反応は予想通りだ。
武美は触れないが、襲撃を受けたとき助けた奴は生きているのだろう。付き合いは短いが、人の死を喜んだり、無反応だったり出来る相手ではない。
しかし、クロが武美に手を貸す理由は、自分でもよく分からなかった。
毎度毎度の騒ぎにクロが付き合いがいいのと、同じ理由だったりするのだが、へそ曲がりな彼は認めはしない。
熱血ハートのサイボーグ。彼は自分自身の優しさには、どこまでも鈍かった。
□
発電所を突き進んでいた素子とウフコックは、放送を書き留めるために一旦行動を中断していた。
PDAから出てくる死者の名前と禁止エリアを書きとめながらも、素子は大きくため息を吐く。
タチコマの名が呼ばれたからだ。このコロニーで、唯一味方だと確信できる存在がいない。
公安9課へと戻れば、彼らの兄弟と会えるだろうが、自我を持つほど発達した彼らはそれぞれ個性を持つ。
そのうち、一機がもういない。それを彼らはどう受け止めるだろうか?
もっとも分かりきっている。彼らに死という概念はない。タチコマという多脚型戦車ロボットが一つ減った。
世間は、周りはそう認識するだろう。もしも、いなくなったタチコマがバトーが愛用しているタイプであったのなら、彼は感傷を抱くだろうが。
素子は視線を降ろし、ウフコックへと向ける。彼は震えていた。あの名が呼ばれた瞬間から。
「バロットが……死んだ……?」
彼が相棒と呼んだ少女の名は、無情にもPDAから流れる放送で出てしまった。
壊しあいが始まって十二時間。その間を、金色の小さなネズミの相棒は耐えられなかったのだ。
戦闘力を有するタチコマや、彼の相棒が殺されている。予想以上に強者が集まったようだ。
「ウフコック……なんといっていいか……。いえ、きっとなにを言っても意味がないのでしょうね」
「…………すまない」
「いいわ。しばらくはそうしていて。整理がつくまで、一人で動くから」
「いや、俺も動いていないと、どうにかなりそうだ。しばらくは冷静で要られないかもしれないが……指示をくれ。頼む」
「そう」
素子はウフコックにそう告げて、黙って先を進んだ。簡単に整理がつくことではない。
歩くスピードを抑えて、彼になるべく時間を与えるよう気を使った。
ウフコックは通路を進む素子が、自分を気遣ってくれていることに気づいた。
そのことを感謝して、口には出さない。この気持ちは共有できないし、してはならないからだ。たとえ素子も知り合いを喪っていたとしても。
実はまだバロットが死んだ実感は薄い。素子が死体を見たことがあるとはいえ、ただPDAから名前を呼ばれただけだ。
実質、ここに来て数時間のウフコックに状況を把握して、バロットの死をリアルに実感しろなどは無理な話だった。
しかし、それでもウフコックはこの壊し合いが冗談とは思えない。そしてバロットの喪失はウフコックの中で、半身がもがれたような感覚だった。
嘘であればいい。嘘であってくれ。そう願う自分がいることを、ウフコックは自覚する。
彼女の死を信じたくない。信じれば、自分の有用性がまた一つ失われる。あの、抵抗することを知らなかった少女が、またも理不尽に生きる自由を奪われた。
残酷な真実がウフコックに突きつけられる。バロットは二度目の死を迎えた。
(もしも放送が真実だとするのなら……俺はまた守れなかったのか……? くそっ! だが俺は、放送だけで死を信じるほどウブじゃない)
ウフコックは怒る余裕があることに安堵して、正面の暗闇に視線を向ける。
バロットの死はまだ実感しない。してはやらない。死体を見つけるまでは。
ウフコックは己自身に、バロットの死体を見つけるまで感傷を封印すると約束した。
そうでもしなければ、いくら事件捜査官の相棒として死を覚悟していたとはいえ、バロットの死はウフコックに重かった。
□
排気音を唸らせて、グレイ・フォックスは獣道を突き進む。彼が乗るバイク・白いカラスは高性能なバイクらしく、荒れた道でも問題なく走破していった。
頭全体をカバーする、ヘルメットの中央の赤いモノアイが不気味に光る。
途中、薬が切れた禁断症状で転がりまわり、時間を余計に潰した。放送が聞こえ、手持ちのPDAの情報は頭に叩き込んで再びバイクを運転しているのだ。
先ほど戦った男たちの名は知らない。生きていれば、いずれ会うだろう。
だからといって、先ほどとは違い何の感慨も浮かばない。あの二人はグレイ・フォックスを戦場に立たせた。その程度の認識だ。
スネークはこの壊しあいの会場にはいない。僅かだが期待したジョーとやらも死んでいる。
ならばどうするか? 決まっている。戦う理由はいつも自分が決めてきた。
(スネーク……お前と再会するためにシグマを殺す。ならば……)
ここにいる他のロボットとサイボーグを全滅させる。そうすれば、シグマは自分に会わざるをえない。
褒美などに興味はない。死んで困るものなど、ここにはいない。
吐息が漏れる。薬漬けにされたグレイ・フォックスは常に禁断症状と戦っていた。
今、禁断症状は軽い。自分が自分でなくなる感覚など、死ぬほど嫌いだ。戦場を。次の戦場を。
戦っている時だけが生を実感する。スネークとの戦いには、友情すら感じる。その戦いのために、すべてのものを殺す戦場を。
再びヘルメットの中央のモノアイが光る。アクセルを全開に、グレイ・フォックスは突き進んだ。
□
(戦い……)
エックスはコロニーとコロニーを繋ぐ通路を越えて、一切後ろを振り向かず森へと突入した。
太陽と思わしき光は明るく、風に木の葉が揺れる。
白いアーマーで包んだ、エックスのやや幼い印象の顔を照らすが、もはやその顔に幼さはなかった。
エックスは自分に絶望している。正しいことを判断できず、他人に罪を擦り付ける己が弱さに。
だからこそ、戦っているものをすべて潰すなど、逃げであるのだろう。
それを自覚しながらも、エックスは己の退路を断つためにあの少女を撃ち抜いた。
最初に狙ったのが、ラミアと呼ばれていた女性だったとかは関係ない。戦っていて、善人であるものを砕けるほど鬼【イレギュラー】でなければ、鬼【イレギュラー】は倒せない。
もうこんなことはさせない。戦い以外で物事を解決できないことに悩んでいたエックスは、己自身で殺した。
ここにいるのは鬼をすべて殺す、一匹の鬼。最後に残った自分という鬼をも巻き込む、破滅の鬼。
それが、エックスというイレギュラーの名だ。
無実の者を貫いた時、その罪を誰かに押し付けたのだと自覚した時、エックスの正義は崩れているのだから。
エックスは当てもなく、森林コロニーをさまよい続ける。
ふと、彼の視線に大きな建物が入った。PDAから地図のファイルを開くと、発電所とあった。
支援
中には罠と、ボスと戦うための大きな部屋がありそうだと思う。なんとなく、懐かしい。
別に考えがあったわけではない。彼は誘われるように施設へと入っていった。
□
「草薙さん……」
「ええ」
誰かの気配に気づいたことに、素子はウフコックが平常心であることを確認できて安堵した。廊下で僅かに聞こえた足音に素子とウフコックは反応したのだ。
ウフコックは冷静だ。素子のコンディションも悪くはない。ウフコックが大型自動拳銃へと変身【ターン】し、素子の両手に収まる。
冷たい壁に素子は背中を貼り付けて、音を出さないように角へと近づいていく。
人の気配がしているのだ。鬼が出るか、。蛇が出るか。向こうの足音が止まる。気づかれたか、と素子とウフコックは同時に考え、角へと躍り出た。
黒い影が、素子の視線の下に現れた。背が低い。人間を想定しすぎた、ロボットだろうか? 疑問をそのままに銃口を下へと移動させ、突きつける。
同時にサーベルと思わしき刃が、三つの小さな銃口と共に素子へと向けられた。
突きつけるのはほぼ同時。相手は…………
「ネズミの次は猫か…………」
「ネズミ?」
銃を突きつける、二本足で立った猫が訝しげに呟いた。素子はため息を吐きながらも、自分は動物型ロボットに縁がある、と思った。
最初に銃を放棄したのは、素子だった。別に根拠があったわけではない。
この猫のロボットを信じろ。ゴーストが囁いたのだ。
「ウフコック」
「了解した」
素子の腕で、大型の自動拳銃は金色のネズミとなり、黒猫の前に立つ。ネズミ型ロボットだが、特に猫が怖い、ということはないらしい。
ウフコックはストン、と体重を感じさせない動きで黒猫の正面に着地する。すでに猫の剣先と銃口は、素子には向いていなかった。
「いきなりで悪かった。こちらに敵意はない。俺の名前は……」
「ウフコックっていうんだろ? パートナーが探していたぜ。おい、武美。こいつらは大丈……」
「バロットに会ったのか!?」
クロの言葉をウフコックが遮り、小さな身体で首元に飛びついていった。
ワッ、といいながらウフコックを受け止めるクロだが、ウフコックは構わない。ネズミ型ロボットとはいえ、紳士を自負していた彼にしては珍しい。
もっとも、彼が状況を知りたがっていた相棒の情報なのだ。自制しろというのは無理かもしれない。
「バロット? あたしたちにあなたのことを教えたのは、“徘徊者(ワンダー)”という人だよ」
今まで隠れていたであろう、クロの同行者と思わしき女性が現れ、優しくウフコックを手の平に乗せた。
年齢は素子より四、五年は下であろう。二十代になるかならないか。
「あたしは広川武美。よろしくね、お姉さんにウフコックさん」
可愛らしい笑みを向けられ、素子も微笑みを返す。クロは変わらず憮然とし、ウフコックは冷静になって自分の身なりを整えた。
「すまない、取り乱してしまった。そちらは俺の名を知っていると思うが、改めて自己紹介させてもらう。
ウフコック=ペンティーノ。委任事件担当捜査官だ。で、こちらが…………」
「草薙素子、警察よ。よろしくね」
「よろしく〜。で、こっちがクロちゃん。見てのとおり、猫のサイボーグだよ」
武美の取り成しも、クロは無視している。飛びついたのがいけなかっただろうか? とウフコックは反省をした。
宇宙戦略研究所はイルカのように脳が発達した動物へ、人間並みの知能を持たせ、コミュニケーションを取れるようにもしている。
知性を持つ動物自体は、そう珍しくない。なりより、ウフコックは人のことをいえないからだ。
猫の身体に、人間並みの知性を持つサイボーグ。ウフコックは種族の差はあれど、クロに親近感を持った。
もっとも、喜んでばかりもいられない。“徘徊者(ワンダー)”……ボイルドと彼らは接触しているのだ。
名簿から察するに、たとえ偽名としてもこの名を選択するほどボイルドと接触のある人物は、バロットか自分か。
そしてバロットがそう名乗るはずがない。
「ネコのサイボーグ……ロボットじゃなくて?」
「オイラは正真正銘のネコのサイボーグだ。生身の時も大暴れしたしな」
支援
素子の問いに、キラッと歯を光らせクロが誇らしげに胸をそらしている。ウフコックは少々呆れながらも、会話に割って入った。
「君たちに確認したいことがあるんだ。いったい、どうやって“徘徊者(ワンダー)”と名乗る人物と接触を持った?」
「えーと、それはね……」
「電話だよ、電話。こっちを西に行ったら孤島があるだろ? そこに電話があったから適当にかけたら、その男が出た」
「男……か。そうか」
武美の説明にクロが割ってはいるが、ウフコックが求めていた情報は手に入った。
やはり“徘徊者(ワンダー)”は生きていたボイルド。またも彼を殺さねばならないのかと、ウフコックが大きくため息を吐いた。
パートナーと彼らに教えたということは、またも自分を追うのであろう。ウフコックは覚悟を決める。
もう一度ボイルドと戦うことを。出来るなら救いたい。それは彼が望まないとしても。
「そいつはディムズデイル=ボイルド。元パートナーで、今は敵だ」
複雑な感情を込めて、クロと武美に説明をする。ボイルド、これでいいんだな? とだけ内心で告げて。
ウフコックの説明により、ボイルドが危険であり、重力を操作できるサイボーグだと情報を得た。
ウフコックが警戒するのも分かると素子は思う。重力を制御できる義体など、オーバーテクノロジーだがウフコックを見ては信じざるをえない。
ボイルドの話題を中断して、素子はクロたちへと質問を始めた。
「さて……なぜここに来たのかしら?」
「まあ、それは武美が理由だ。こいつ、無線でハッキングとかインターネットとか出来るんだけど、ジャミングされてるってんで、どっか回線が生きている施設を探していたのよ。
TV局はやばいことになっているみたいだし」
「危険だってこと?」
クロの説明に素子が口を出す。クロは頷いて、話を続けた。
「でっかい音が聞こえた。ビルみたいなでっかい建物が崩れる音をな」
「なるほど。それに……無線でハッキングね」
素子はもしかしたら、彼女は電脳化をされているかもしれない、と考える。
そして普段使っている専用コードでなく、一般回線を使って武美へと呼びかけた。
支援
『聞こえるかしら?』
「え!? えぇぇ!?」
「どうした、武美」
「何か異変でも?」
ウフコックとクロが周囲を警戒するが、素子が制する。そのまま武美へと、専用回線を伝えた。
ウフコックとクロには、後で説明すると告げてそのまま武美と話し合う。ノイズ混じりだが、通信が行なえないことはない。
『嘘ぉ、あたしと同じようなことが出来る人がいるなんて……』
『それほど特別なことかしら? 電脳化は一般的な技術のはずだけど』
『一般的な技術? そんな、サイボーグ自体一般の人には知られていないし、大神グループやジャッジメントくらいしか開発していないから、そんなことはないはずだけど……』
『大神グループ? ジャッジメント?』
『大企業だけど、知らないの?』
『いや……そういう企業はあるが、大企業といわれるほどじゃないわ』
またも常識のズレか。素子は再び立ちふさがる壁に渋面を作る。さすがに放置されているのにも飽きたらのか、クロがイライラしながら口を出してきた。
「おい、いったいなにやってんだ? 武美もあんたも」
「あ、クロちゃん。この人もあたしと同じで、無線でネットにつなげれるみたい」
「へー、なら内緒話にはもってこいだな」
「そう簡単にはいかないけどね」
素子は冷静にそう伝え、またも立ちふさがった常識の差異について思考する。
ウフコックは素子の知らない都市、マルドゥック市出身だという。小国ならともかく、人工衛星四基分の予算を費やすことのできる大国となれば、なおさらおかしい。
電脳内のデータベースでも検索結果は0だ。
そして、武美。一目見たところは動きも素人で、戦闘訓練を積んでいない普通の義体化した一般人だ。
電脳による通信も可能だ。電脳化も義体も一般に流通している技術。
電脳の通信に驚き、そして親近感を持ったような喜びを含んでいる。その武美の反応は、素子にとっては違和感が強い物だ。
そして大神グループやジャッジメントなどの名を持つ企業が義体関連の技術で、大企業と呼ばれている規模である事実もない。
シグマが何かしら記憶をいじったのだろうか? 猫型のロボット……本人はサイボーグと主張している、クロにも確認をとることにする。
猫のサイボーグなど、存在するはずがない。リモート義体、もしくはロボットだと結論をつける。
義体、とするなら猫では人間の脳を収めるスペースがない。猫をサイボーグ化したとして、喋らせたり人間並みの思考をさせるような技術などないからだ。
コストをかけるより、素直にロボットとして開発するほうが正しい。そのはずなのに、武美とウフコックは猫のサイボーグという不可思議な存在に納得している。
武美はともかく、知性の高く思慮深いウフコックまでクロに違和感を感じていない。素子の常識ではありえないのに。
(なにより、参加者によって常識を違える利益がシグマにあるのか?)
そんなわけがない。たとえこの壊し合いに、それ以外の目的があるとはいえだ。
丸ごと常識を変える、とはいえ意思疎通が不可能になるほどでもない。中途半端な措置ゆえに、目的が見えないのだ。
(だとすると……意図して常識を変えたのではなく、変えざるを得なかった?)
何かが、引っかかる。そんな状況など、生まれるはずはない。あるとすれば……
(常識がもとから違うメンバーを集めて殺し合いをさせている?)
世界中から集められた、といえるほどではないだろう。武美は明らかに日本人なのだ。
歯車がずれている。素子は己の違和感を言葉に出来ず、結論を保留にした。
クロは今回ウフコックと素子と合流できたことは喜ばしいことか、少し考える。クロのやりたいことは何か? 大暴れすることである。
今までその行動を避けてきたのは、武美の存在が大きい。ならば、武美を預けて自分は大暴れが出来るのではないか、と思った。
信頼できるかどうか、って面で言えばよく分からない。会って間もないからだ。
それに、ウフコックの気取った態度が気に入らない。自分と同じくネズミのサイボーグなのだろう。
支援
ミーの機械と同化できる能力を思い出す、銃に変身する能力。“徘徊者(ワンダー)”とやらがパートナーと欲したのなら、それなりの力があるはずだ。
ただ、話をしているとクロの求める『大暴れ』を叶えれる相手かといえば、違うのだろう。
(面倒だ。だいたい、ごちゃごちゃ考えるのは性に合わないしなー)
ポリポリと頭をかいて、ため息をつく。委任事件担当捜査官だの警察だの、堅苦しい経歴を持つ相手なのだ。
肩が凝ってしょうがない。クロはウフコックに声をかける。
「どうした? クロ」
「あー……お前らはどうするんだ?」
「ああ、俺はバロットを探して、ボイルドを倒す。…………たかが放送で呼ばれたくらいで、俺はバロットの死を認識したりはしない。
まあ、それも草薙さんと、ここを探索してからだが」
「そうかい。あんたは?」
「私? もう少し、ここの施設を調べたいわね。この殺し合いは不自然なところが多いし。
そう、一般人である広川さんは私が保護するわ。クロ、あなたはどうする?」
クロは話をふられ、暴れたいから離れると正直な欲求を伝えようとして、何かを訴えるような武美の視線が貫いた。
考えを悟られたらしい。ため息をついて、返答する。
「オイラも付き合うぜ。一人でどっか行くといったら、うるさそうな奴がいるし」
「クロちゃん……それってあたしのこと?」
「他に誰がいるんだよ?」
「……一人が嫌なのは、クロちゃんの方じゃないの?」
「そんなわけあるかー!!」
「どうだか」
ジトーとした目つきでこちらを見ていた。本当に置いていこうか? と考えるがそれは負けを認める行為のような気がする。
「二人とも、仲がいいのは結構だけど先を急ぎましょう。敵がいる可能性もあるわけだし」
「そうだな。見ていて微笑ましい。いいリラックス方法を学習させてもらったよ」
素子とウフコックの言葉にクロは頭に血が昇り、
「「仲なんてよくない!!」」
武美と同時に言ってしまう。やはり仲いいじゃないか、と二人が言いたげにクロを見た。
支援
「オイラの生まれた理由?」
「ああ。もちろん、機密に触れたり、言いにくい過去だったりするなら黙秘しても構わない。いや、それは当然の権利だな」
「別に面白くもなんともねーよ。剛ってうすらトンカチがオイラを殺して、サイボーグにしたんだ。
世界征服のための、部下だとかなんだとかいってな」
「……え?」
ウフコックの間抜けな声がクロに届いた。素子の表情は変わらない。本人は内心、クロの話に疑問を抱いていたが。
ウフコックは万能兵器存在として生まれた過去を持ち、クロにも相応の過去があってサイボーグとなったのだと思っていた。
素子はクロをサイボーグでなく、ロボットと見ていたため、漫画みたいな嘘の過去を語るクロにどういう意図があるのか疑問を持った。
もっとも当の本人が知るよしもないのだが。
「まったく、世紀末だかなんだかしらねえが迷惑な話だぜ。まあ、ノストラダムスの予言とやらも、外れたしな」
「クロちゃん、ふるーい」
けらけら笑う武美にクロは呆れたような視線を向けたまま、話を続けた。
「なに言ってやがる。二十一世紀も間近な今、ノストラダムスの予言なんて最近の話だろうが」
「ノストラダムスなんて、十年以上も前の話だよ? あたしだって、この前クイズで出たから知っているだけだよー」
「それに、もう二十一世紀よ。間近ではないわね。それにしても、2030年にもなって世紀末の名が出るとは思わなかったわ」
いいジョークだ、と言いたげな素子の言葉に、クロは反応を示す。
渋面を作り胡散臭そうな感情を視線に込めて、クロは振り向いた。
「なに言ってんだ? 今は1999年だろ?」
「2030年って、まだまだ先だよー」
クロは武美の言葉を聞き、首をかしげて武美を見た。彼女の反応を見る限り、武美も同じようなことを思ったらしい。
ただ一人、ウフコックはついていけないという顔をしている。西暦に馴染みがなかったのだが、それに気づく者はいなかった。
クロは口を開こうとして、一つの可能性に気づいた。そのまま納得がいったような表情となり頭をポリポリとかく。
「なんだ。宇宙人に異世界ときたら、次は未来人か。ああ、納得だわ」
「あと超能力者がそろえば完璧だね……って、あたしって未来人だったの!?」
「オイラから見ればな」
非常識に慣れているクロだからこそ、年代の違いに納得したのである。
しかし、素子とウフコックはそうは行かない。
「まるで漫画の話ね。時間移動の技術なんてSFだわ」
「草薙さんに同意だな。時間移動の技術を確立するには、壁が多すぎる」
「んなこと言われても……」
オイラが知るか、と続けようとしたクロが言葉を飲み込んだ。鼻にオイルと肉が焦げた臭いを感じ取る。
臭いの元は近づいてくる。それも信じられない速さで。
ウフコックも同じ物を感じ取ったらしい。アイコンタクトで意思を疎通させ、ネズミと猫が同時に動いた。
「武美! 草薙!!」
「草薙さん、クロに任せてくれ!」
ウフコックが大型のハンドガンへと変身【ターン】し、クロは武美と素子を掴んで伏せさせる。
高速で影が飛び込み、壁を蹴って虹色の光が半月を描いた。コンクリートで出来ているはずの壁が豆腐のように傷を刻まれる。
相手が人間らしき存在であるのを認識して、クロが戦闘体勢を整えようとするが、到底間に合わない。
敵は一撃目を避けられることを予測していたのだろう。すぐに反転して、二撃目を与えるために地面を蹴った。
(戦い慣れていやがる!)
アポロマグナムの照準が間に合わない。焦るクロの耳に、銃声が響いた。
倒れていたはずの素子の銃が、敵を牽制したのである。倒れている状況でよく、とクロは感想を抱いた。
これは素子の戦闘技術と経験、そしてウフコックの照準の修正があって成せたことなのだが、知る余裕はクロにはない。
素子が放った銃弾は敵によって斬り裂かれ、一発も届いていない。だが充分だ。アポロガイストの銃口を向ける時間は稼いでもらった。
「吹っ飛びやがれぇぇぇっ!!!」
三つの二十二口径の銃口から、火が吹きでて敵に放ち、床と壁を巻き込んで敵を抉る。
久しぶりの銃撃の感覚、癖になりそうだとクロは陶酔感に浸った。
支援
「けほっ、クロちゃん張り切りすぎ」
「うるせえ。今のうちに広いところに出るぞ」
「え? あれで……」
「倒せる相手ではないでしょうね」
「クロと草薙さんの言うとおりだ。俺の鼻はあいつの臭いを捉えている。まだ……生きている。
狭いところじゃ、人数が多い俺たちだと不利だ。一網打尽にされる。分散するために、いくぞ」
ウフコックの号令に合わせて、クロが武美を引っ張ってアポロマグナムを撃ちながら後退していった。
素子も銃で牽制しながらホールへと走っていく。白いヘルメットに赤いモノアイ。
ヘルメットは装備の類だろうか? 人間と素子は判断する。こちらの銃弾を弾きながらも、素早く避けながら近づいてくる。
なんという運動神経か。銃口が動き、足に向けられた。ウフコックの判断なのだろう。
適切な状況判断だ、とウフコックを素子は内心褒めて、引き金を引く。銃口から吐き出された銃弾が、敵のサイボーグの足を貫いた。
これで動きが鈍るはず、と予測していた素子の判断は、あっさりと打ち砕かれた。敵サイボーグは委細構わず、突進してくる。
銃弾への耐性があるのだろう。厄介だ、と思考を続ける素子の横を、クロが通り過ぎた。
敵サイボーグの刀を、アポロマグナムに取り付けられたサーベルで受け止める。甲高い金属のぶつかる音が通路に響いた。
クロは音にも状況にも構わず、真直ぐ敵サイボーグの顔面へと右拳を放つ。クロにも敵サイボーグが格闘を仕掛けようとするが、ウフコックと共に銃弾で阻止する。
銃弾に耐性はあれど、クロの拳が届く時間稼ぎにはなる。その目論見は正しかった。
クロの拳が敵サイボーグの顔面を砕き、仰け反らせた。クロは反動で後退して素子たちと合流、再びホールを目指す。
「クロちゃん、草薙さん、広い部屋が見えたよ!」
「あと百メートルそこそこだ! 弾幕で牽制するぞ! 草薙さん、クロ!」
「言われなくても分かってらぁ!!」
ようやく通路の終点にたどり着いた素子たちは、敵サイボーグの襲撃に備える。
つまり、標的をばらすために二手に別れようとした。その瞬間、素子の視界に光が入り、クロの首根っこを捕まえて引っ張った。
クロがいた地点を高エネルギー弾が砕く。ゆらりと、向こう側の通路の闇から一人の青年が現れる。
シグマに『エックス』と呼ばれたはずの青年が。あの時とは違い、アーマーらしき追加パーツを着ている。
さらに表情が、あの時からは想像できないほど苛烈になっていた。
「戦って……いるんだね」
ぞくり、と素子の背筋が凍る。絶対零度の言葉。声色に戦場で壊れた兵士に似た雰囲気が混ざっている。
「なら、君たちを殺す」
言いたいことは終わりだ、と言わんばかりにエックスは右腕に装備された銃へとエネルギーを送っている。
エネルギー弾はそこから発射したらしい。逃げてきた方向の通路からは、敵サイボーグが追いついて刀を構えていた。
素子は敵サイボーグと向き合い、背中のエックスにはクロがアポロマグナムを構えた。
「前門の虎、後門の狼……ね」
「おい、武美。決して離れるんじゃねえぞ。草薙、あんたはあのサイボーグを頼むぜ。俺があのエックスって奴をやる!」
「了解、生きていればまた会いましょう。武美、チャンネルはそのままにしていて」
「は、はい!!」
クロが武美をフォローしながら、エックスを引き連れていく。ならばこっちもサボっていられない。
銃弾を吐き出しながら、敵サイボーグを素子は引き連れて通路へと再び消えた。
□
グレイ・フォックスが人が通った跡を見つけたのは偶然だった。これがここを禁止エリアにした原因だろうか?
当初抱いていた疑問が浮かぶが、どうでもよかった。人がいるということは、そこが戦場になりえるということだ。
ただ脅えているだけの相手なら、自分がスネークと再会するための肥やしとなればいい。
グレイ・フォックスは殺人に悦びを見出す快楽殺人者ではないが、スネークとの再会の障害となるなら話は別だ。
シグマ同様、ただの邪魔者に過ぎない。抵抗するというなら、潜り抜ける戦場としては程よい。
スネークとの戦いに備え、自らの腕が鈍らないようにするのもいいだろう。
なにより、戦いでもなければ、自分の身体を痛みつけなければ、薬物がグレイ・フォックスを消そうとする。
それだけは、駄目だ。薬物だろうと誰であろうと、自分の意思を抹消して道具と生きるのは耐えられない。
支援
あくまで自分の意思で、自分の手で傷ついて傷つけて殺しあう。そして痛みこそが自分を実感できる唯一の手段。
だからこそ、スネークを求める。スネークを生かす。スネークと戦う。
銃弾が身体を貫き、猫のサイボーグが拳を打ち込む。銃弾程度でどうこうできる肉体ではない。
猫のサイボーグの拳だけは及第点としておこう。乱入者によって、グレイ・フォックスの相手は女となった。
銃を使えるということは、ある程度戦えるということだ。まあ、痛みについては期待しない。
所詮はグレイ・フォックスがスネークと再会するための、シグマを殺すための通過点。
グレイ・フォックスは言葉もなく刀を構える。言葉など要らない。相手はスネークではないのだから。
素子は銃弾で撃たれても、委細構わず突進してくる敵に辟易する。痛覚を切ったタイプのサイボーグであろうか?
銃弾で牽制するも、あっという間に距離がつまる。白い床を蹴って距離をとると、素子がいた地点を虹色の刀が大きく斬り裂いた。
使い手も化け物なら、得物も化け物だ。シールドを出すことも考えたが、スピードが鈍るだけ。PDAにしまったままにする。
「草薙さん、銃は効果が薄い……」
「どんな構造をしているのかしらね……」
喋りながらも、銃弾を二発放つ。そのまま腕を固定して、敵サイボーグへと語りかけた。
「止まれ! 武器を捨てて降伏しないのなら……お前を殺す」
敵サイボーグは変わらず無言。刀のかっ先を向けて構えをとる。
素子は高速で迫る敵サイボーグをかく乱するため、ウフコックに指示を出す。
「ウフコック、煙幕弾に!」
「あ、ああ!」
ウフコックのテンポが一瞬遅れたが、問題はない。煙幕を作り出す弾を射出、煙が大部屋に広がり、視界を奪う。
煙の晴れるまでの時間が勝負。素子は光学迷彩を起動する。クロや武美と一緒では、狙いを彼らに集中されるということで使用を控えていた。
今別れて、敵サイボーグと一対一なら有効な武器となる。ウフコックに通常弾を装填させて、煙が晴れていく様子を見つめた。
敵サイボーグはあさっての方向を向いている。敵がクロの元へと戻る、という選択をとる前に、可能な限り姿を隠したまま攻撃を加える。
素子は冷徹に、『殺す』と宣言通りに頭へと銃口を向けて、引き金を引いた。
支援
支援
すると、敵サイボーグは上体を反らして銃弾を回避、そのまま素子の下へと距離を詰めて、刀を振るった。
「させるか!」
ウフコックが卵の殻のように変身【ターン】して素子を庇う。その殻さえも、虹という刀は斬り裂いた。
二つに分かれた殻からみえる刃が、素子に届いた。光学迷彩が解け、後方へ跳んで距離をとる。
光学迷彩を見切った敵サイボーグの性能の高さに素子は驚愕した。光学迷彩のある部分を切り裂かれて、次の使用は不可能だ。
それより、切り裂かれたウフコックは無事か?
「ウフコック……」
「問題ない。俺はそういう風に出来ているから。それに、無事かというのはこちらの台詞だ。草薙さん」
「損傷という意味では、光学迷彩を今後使えないのは痛いわね。今現在戦えるか、という質問なら問題ないと答えるわ」
「……強い人だな。草薙さんは」
「あなたもね。ウフコック」
二人は互いに笑って、敵サイボーグを睨みつけた。
ウフコックの鼻に届く臭いは薬物、狂気、禁断症状に苦しむ苦痛、誰かに会えないことによる焦燥、死を求める空虚な臭い。
カトル・カールの殺人集団に負けないほどの狂気と戦闘技術を、目の前の敵サイボーグに感じ取った。
刀まで使うのが、最強の敵フリントを髣髴させている。今の自分ならどこまで通用できるか?
分からないが、素子を死なせる気はウフコックにはない。もう二度と仲間を喪うのはごめんだ。
「草薙さん。あの刀が厄介だ……殻をまるでシーツのように簡単に切り裂いた」
「切れ味という点じゃ、そこら辺の刀じゃ比較にならないわね」
ウフコックと素子が敵サイボーグを分析するが、一見したところ攻める余地がない。
攻守に長け、銃弾の効果が薄い。いったい、ウフコックはどの武器へと変身【ターン】すればいいのか思考する。
敵のサイボーグは銃弾じゃ止まらない。刀はもう振りかぶって、間合いに入りかけている。
なら…………
「ウフコック……?」
しえん
「俺が知る……最強のサーベルだ」
フリントが使ったサーベルを再現し、ウフコックの意図を悟った素子が刀を受け止める。
黒炭色の刃と、虹色の刃が火花を散らして交差した。素子が距離をとり、敵サイボーグを見据える。
「剣の腕前は向こうが上よ」
「急場しのぎにしかならない、ってことか」
「ええ……だから頼みを聞いてくれないかしら?」
素子がウフコックだけに聞こえるほどの声量で作戦を伝える。ウフコックは了解の意を伝え、狙いを定める。
素子の指示は単純だ。それゆえに、タイミングとウフコックのイメージが重要になる。
「俺はその武器の外見イメージを聞いただけだが……問題ない。成功させる」
ウフコックの力強い声に、素子が頷いた。金色ネズミの有用性、得と味わえ。
ウフコックは心の中で、目の前の敵へ挑戦状を叩きつけた。
□
クロは武美を連れて、エックスを射撃で牽制する。一度に三発放てるとはいえ、アポロマグナムは連射に向いているとは言いがたい。
四方をコンクリートで囲まれた、人が四、五人一度に行き来できるであろう広い通路の向こうにドアがある。
ドアノブに手をかけている手間も惜しい。クロはアポロマグナムに付属しているサーベルでドアを切り裂き、リラクゼーションルームへと入った。
「武美、向こうの倉庫のほうに隠れていろ!」
「で、でも……」
「あいつを追っ払うには震えているお前は足手まといなんだよ! 森でやりあった女の時の様にはなりたくないだろ!!」
「う、うん……。クロちゃん……」
「安心しろよ」
クロはエックスへと銃弾を放ちながら、いつものニヒルな笑みを武美に向けた。
「破壊のプリンス、クロちゃんだ。あいつなんかには負けはしねえ!!」
戦って確実に勝てる相手というわけではない。逃走劇で交わした手は、常にクロの命を奪いかねない物ばかり。
支援
それでも、クロは笑う。あんな奴には負けはしない。理由は分からないが、ちびっ子のヒーローの座を捨てた男にと。
通路の先から、クロの弾丸を避けきったエックスが姿を現す。白いアーマーにバスターを構える姿は正統派ヒーロー。
表情だけは見た子供が泣き出しそうな、鬼のような形相だが。
「イレギュラーを……破壊する!」
「イレギュラーね。傍から見ると、悪党はそっちのほうだぜ? 元ヒーロー」
クロの皮肉気な呼び声がゴングとなり、エックスとクロは同時に飛び出した。
□
刀同士がぶつかり合い、火花が大きく散る。ホールの中央で素子は敵サイボーグの刀を受け止めたのだ。
この時を素子は狙っていた。あらかじめ送っていた指示通り、ウフコックが変形する。
「ッ!?」
敵サイボーグの息を呑む様子が見て取れた。一瞬で持ち直すのは、さすがプロだと素子は認める。
しかし、ウフコックとの協力で得た一瞬を無駄にする気はなかった。
ウフコックが変身した姿。それは刀身一メートルと長めの十手。敵サイボーグの刀を絡め捕らえて離さない。
本来の十手とは多少異なるが、ウフコックの変身【ターン】は軽く説明した素子のニーズに充分応えれるものだった。
「うおぉぉおおぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおぉっ!!」
素子は全身の力を振り絞り、敵サイボーグを壁に叩きつける。目的はそれだけではない。
十手となったウフコックの先端を壁につけて、梃子の原理で敵サイボーグが持つ刀を弾き飛ばした。
宙に舞う敵の刀に素子は視線を向けず、踏み込みながら左拳を敵サイボーグの脇腹に叩き込む。
くの字に折れるサイボーグ。しかし、素子の頬にも重い衝撃が走り、思わず後退する。
銃弾よりも効果的だったらしい。敵サイボーグはよろめきながらも、数秒かけて体勢を整えた。
刀が壁に刺さり、素子はそれを背に回収作業を妨害する。それに気づいた敵サイボーグは両拳を前に構えた。
素手でやりあうつもりなのだろうか? 好都合。素子も構えをとって対峙する。
無言で対峙する二人に振動が届いた。どこか爆発したらしいが、反応を示せば死ぬのは自分だと互いに感じている。
「素子、素直に敵の挑発に乗るのはオススメしない」
「本来ならね。けど、銃より素手のほうが効果あった。クロのときもそうだったでしょう?」
そうか、とウフコックは呟いて口出しをやめる。敵サイボーグは、素子との距離を一瞬で詰めて拳を振るった。
素子は右腕で横に跳ね飛ばし、足を払う。その蹴りを敵サイボーグは身軽な動きで後方に跳び、間合いから逃れた。
格闘技も一流。男性型義体により、力も素子を上回っている。もっとも、勝てない相手ではないが。
次をどう攻めるか。冷静に何手も構築していく素子に通信が入った。
『草薙さん、草薙さん! 聞こえる、クロちゃんが……クロちゃんが……』
『落ち着いて広川さん。現状は?』
『爆発が起きて……吹っ飛んじゃって……』
おそらく、エックスの手による物だろう。先ほどの振動はこれか。
『広川さん、私は今敵と交戦中で助けにいけない。だから、ウフコックを行かせるわ。あなた、射撃制御プログラムは入れている?』
『射撃制御プログラム……?』
『そう、なら今渡しておく。一発くらいなら、狙いをつけれるでしょう』
『草薙さん……』
『大丈夫よ。ウフコックは頼りになるわ』
もっとも、クロが生きていない限り、ウフコックは宝の持ち腐れだろうが。
素子はウフコックに、武美たちの援護に回ってほしいということを小声で伝える。
ウフコックは一瞬反論しようとしたが、すぐに黙って金色ネズミの姿に戻り、クロたちがいると思わしき部屋へ向かっていく。
それでいい。敵サイボーグが動くかどうかも観察したが、敵を前にして隙を出すほど愚かではなかったようだ。
ただ二人の間に重い空気が流れる。最初に動いたのは、グレイ・フォックスだった。
□
支援。
「おおぉおぉりゃあぁぁぁぁぁ!!」
素子が光学迷彩を破られたと同時刻、クロは勢いに任せてアポロマグナムの銃弾をところ構わず叩き込んだ。
弾切れの心配もあったが、弾薬を撃ちこむ手を緩めればエックスの鋭いエネルギー弾がクロを切り裂くだろう。
リラクゼーション室にあった椅子も灰皿も、クロとエックスの撃ちあいでもはや原形を留めていない。
高速移動を続けていたエックスが、地面を蹴って宙に浮く。クロはようやく隙ができたと判断して、アポロマグナムの引き金を引いた。
だが、クロの放った弾丸は、エックスが身に纏ったエネルギーによって阻まれる。フットパーツのフリームーブによって出来たエネルギーの塊だ。
そのエネルギーがクロの銃弾を焼き、エックスは突進してくる。振り下ろされたエックスの右拳を、クロはアポロマグナムで受け止めた。
衝撃でクロの小さな身体が吹っ飛び、壁に叩きつけられる。バスターやアポロマグナムの銃弾でもろくなった壁は崩れて、隣の部屋へとクロは落ちていった。
金網上の床で跳ねるクロの耳に、武美の悲壮な声がかかる。
「クロちゃん!!」
「馬鹿、出てくるな! 引っ込んでいろ!!」
クロの忠告は無駄だ。エックスはすでに出てきた武美を目撃している。武美が死ぬ。
クロの中で嫌な感情が湧き出るが、意外にもエックスは武美には構わなかった。ホッとする反面、疑問も持つ。
「おい、なんで武美を無視した? まあ、その方がオイラにとっても好都合だけどな」
「…………彼女は戦っていない。イレギュラーは戦う奴らだけだ」
搾り出すように告げるエックスは、クロの銃弾が届いた胸元を撫でた。よく見ると傷が出来ている。あのエネルギーは完全にクロの銃弾を焼ききったわけではないらしい。
それは制限からくるものであったが、エックスもクロもこの時点では知ることはない。クロとしては息を整えるための時間稼ぐため、さらに会話を続けた。
「だとしたら、お前も立派なイレギュラーだな」
「ああ、そうさ。俺も……イレギュラーだ!」
クロはニヤリともしない。エックスがチャージを終えたバスターを撃つ。
クロは金網の柵から柵へと飛び移り、襲い掛かる光弾を避けた。なぜか分からないが、クロはイライラしている。
支援、
悲壮感に満ちたエックスの表情が気に障ったのか。エックスが自分を嫌悪している声色に嫌悪したのか。クロ自身でも答えは出ないだろう。
「おい、おまえ自身もイレギュラーだとしたら……イレギュラー全員を倒してどうする気だ?」
「…………イレギュラーなんて認めない。俺は……認めない!」
会話になっていないようなやり取りだったが、クロはエックスの答えを知った。彼がイレギュラーと断定した存在を消し、最後に自分を殺すのだろう。
怒りがクロに駆け巡る。まるで自殺の付き合いのようなものだ。自殺するなら、自分一人でやれと吐き捨てたかった。
クロは静かにアポロマグナムを向ける。直情的な彼にしては珍しく、嫌悪をエックスへと叩きつけなかった。
その分秘めた怒りは凄まじかったが。
「あ〜、ミー君といい、お前といい真面目な奴は切れると怖いっていうが……」
ギン、とクロは半眼になってエックスを睨む。エックスの鬼の形相を視界に入れながらも、怯みはしない。
「言っておくが、オイラも怖いぜ? ブチ切れたらな!!」
言葉と同時に、アポロマグナムから三発の銃弾が放たれる。エックスの通常弾と撃ち合い相殺した。
クロが牙を向けながら、エックスの顔面へと拳を叩き込む。エックスは転がって、金網状の床でうつ伏せに身体を震わせた。
「立てよ。オイラの拳はこんな物じゃねえぜ」
「…………ッ!?」
エックスは無言で立ち上がって、あきらめずバスターを向ける。クロも再びアポロマグナムをエックスに突きつけた。
クロとエックスは互いに撃ち合い、体力と装甲を削りあう。的が小さくなるクロを相手に、エックスは不利を感じていた。
小さい身体に似合わず、クロは怪力の持ち主であり、格闘もエックスに引けを取らない。
その上、彼が使うサーベルと銃口が三つ付属している武器は、サーベルの切れ味も銃弾の威力も無視できない。
フリームーブで発生するエネルギーで威力を軽減しなければ、一撃でエックスが吹飛んでいてもおかしくなかった。
慎重に動かなければ、目の前の特A級ハンターに匹敵する敵は倒せない。
(敵……か)
まだ迷いがあるのだろうか? エックスに答えを知るすべはない。
ただただ、目の前のイレギュラーを倒す。エックスは周囲を注意深く観察する。
複雑なトラップを仕込んだ敵基地を潜り抜けたのは、エックスの観察力が大きい。
その観察力をフルにして、目の前のクロを倒す。金網状の床を蹴っていくと、大きな機械を一つ見つけた。
メーターと配電盤が電気回路を制御している。予備の小型発電機なのだろう。
エックスはクロへと再び視線を向けた。
「ちょこまか逃げてんじゃねえ!」
クロが叫ぶが、それはエックスの台詞だ。宙に浮き、再びフリームーブのエネルギーで宙を駆ける。
クロはアポロマグナムを向けて、引き金を引こうとしていた。予想通り。そのままフリームーブのエネルギーを切る。
落下と同時に頭上を弾丸が通り過ぎた。姿勢を低くして、ダッシュでクロへと迫る。
クロは慌てて銃口を修正しているが無駄だ。エックスの腕がクロの首元に届いた。
苦しんでいるクロをそのままフルスウィングで、小型の発電機へと投げ飛ばす。
「ニャアァアアァアアアァァァァッ!!」
電気でショートしてクロが叫んでいる。追撃を加えるべく、チャージを終えたバスターを放った。
砕けろ……と。
「クロちゃぁぁぁああぁあぁぁぁぁん!!」
武美が叫ぶ。人間なのか、レプリロイドなのかはエックスには関係ない。
目の前のクロを殺すということは、彼女を傷つけるということだ。着弾、そして小型の発電機が爆発する。
建物全体が揺れており、もう一組のイレギュラーにも届いただろう。逃がしはしない。
冷酷な意思でエックスは振り返る。アポロマグナムが握られたクロの右手が、エックスの眼前に落ちた。
殺した。戦っているものを、自分の意思で。
罪がエックスに圧し掛かる。自分で選んだ結果だが、なんど経験しても後味の悪さは消えない。
忘れるべきではないとも思う。それでも……Xの時よりも、KOS−MOSの時よりも、あ〜るの時よりも、バロットの時よりも、引き金が軽くなっていくのが恐ろしかった。
支援
□
虹が壁に突き刺さり、回収させないよう立ち塞がる素子を前にして、グレイ・フォックスは両拳を前に掲げた。
PDAを使おうとすれば、即座に攻撃に入るだろう。別の武器を取り出したり、虹を再転送する暇は与えてくれそうにない。
だからといって、グレイ・フォックスに他の武器を取り出したり、虹を手元に戻す気はない。
戦いの基本は格闘にある。無手においてもグレイ・フォックスは戦場を駆け抜けれる。
素手においての戦いを、グレイ・フォックスは神聖視していた。素子が武器へと会話している。
なにを話しているか、興味はない。再び武器へと変えるのなら、その隙を突く。グレイ・フォックスが全身に力を入れていると、武器は金色のネズミへと変身した。
そのまま素子から離れていく。グレイ・フォックスは素子に対し評価を改めた。
素子が武器よりも素手で戦うのが効果あると判断したのか、素手で戦うのが礼儀だと思ったのか、あの変幻自在の武器を手放さないとならない事情があったのか、グレイ・フォックスには興味はない。
ただ相手は素手での戦いに突入する構えを見せた。戦いの基本を心得ている。
ならばその戦士に全力で応えるのみ。グレイ・フォックスは固められた床を蹴って、素子との距離を詰める。
ジャブを一発牽制に入れる。素子は上体を反らして避けた。そのまま逃がすほどグレイ・フォックスの格闘術は甘くはない。
左足を軸に、右足で弧を描き素子へと叩き込む。素子は右腕でグレイ・フォックスの回し蹴りを受け止めて、僅かな距離を回転して縮める。
回転の勢いも借りた肘打ちを、グレイ・フォックスの鳩尾へと叩き込んだ。苦痛がグレイ・フォックスの身体に走る。
甘美。酔いしれるままに素子の腕を掴み、強引に壁へと投げ飛ばした。
「ぐ……っ!」
呻く素子は体勢を整えながらも、渋面を作る。グレイ・フォックスは疑問に思ったが、脇で光る虹が視線に入り理由を知った。
馬鹿なことだ。グレイ・フォックスは素子に見えるように手持ちのPDA全てを、虹の傍に落として拳を固める。
「格闘マニアか? 襲撃者」
素子が挑発してくるが、乗りはしない。相手はこちらの隙をうかがっているのだ。
グレイ・フォックスの肌がピリピリする。命を懸けたやり取りに、手ごわい相手。
僅かだが、グレイ・フォックスの精神が高揚する。いいだろう、相手をしてやる。
グレイ・フォックスは構えを解いて無防備となり、素子へと悠然と歩いていった。
素子は無防備に迫る敵サイボーグに疑問を持つ。あえて武器を捨てた酔狂な相手だと思ったが、これは予想外だった。
こちらの攻撃を打たせて、後の先を取る戦法だろうか? そうであるなら、先ほどの睨み合いはおかしい。
敵サイボーグはもうこちらの間合いに入っている。考えている暇も与えてくれないのか。
素子は右足で敵サイボーグの頭を蹴る。敵がのけぞり、素子は無防備となった胸元へと入った。
そのまま全身で身体にぶつかる。流れるような一撃。常人なら即座に崩れている本気の一撃だった。
なのに……敵サイボーグは笑っていた。低く、静かに。そこで始めて、素子は敵の声を聞いた。
(痛覚を切っている? いや、そんなはずはない。痛覚を切っているなら、こちらの攻撃に震えたりはしない。マゾヒストか?)
半ば本気でそう思考するが、結論を出している暇はない。左フックを放ち、動きを牽制しようとするが敵の手の平で受け止められた。
敵サイボーグの握力が凄まじい。素子の義体であるはずの左手が軋みを上げる。
素子は敵サイボーグの足を踏みつけ、脱出して距離をとった。敵サイボーグは体勢を整えた素子へと突撃をする。
敵サイボーグの右胸に拳を叩き込むが、素子の喉に敵サイボーグの貫き手が突き刺さる。
視界が揺れた。まずい。敵サイボーグのつま先が素子の顎に届き、脳が揺さぶられる。
素子は後方に跳び、続けて敵サイボーグの連打を放たれた。最初に鳩尾と顔面を狙った二発はどうにか捌いた。
左脇腹、太股、右頬に衝撃が走る。打撃に晒されていた素子に、敵サイボーグが再び拳を振りかぶった。
ぶれる視界で、素子はチャンスを見つける。敵サイボーグの右腕を顔を動かして避けた。右頬に鋭い切り傷が生まれる。
敵サイボーグの手首と肘を掴んで、重心のバランスを強引に崩しながら足を払った。敵サイボーグの身体が背中に乗る。
「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
素子の気合を込めた背負い投げ。敵サイボーグをコンクリートの壁にめり込ませた。ひび割れる壁と、倒れる敵サイボーグに鋭い視線を向ける。
戦いは終わっていない。敵が死ぬか、自分が死ぬか。結末は二つに一つだった。
敵が立ち上がろうとする。そうはさせるか。素子は立ち上がる直前の敵サイボーグの首を絞める。
全身の力を駆使して、抵抗する敵サイボーグの首を折らんと力を込める。敵サイボーグの力も並ではない。
気を抜けば、逆に殺されるのは素子だ。殺す。ただ静かで鋭い殺気を持って、敵サイボーグを締め続けた。
グレイ・フォックスは首を絞められる苦痛に、必死で抵抗していた。素子の力が並ではないのだ。
苦痛と全身の痛みに、グレイ・フォックスは歓喜に身体を震わせていた。死と隣り合わせ。
そして自らの意思で、命を酷使する。この感覚こそ、この戦場の臭いこそがグレイ・フォックスが求めていた物。
決して他人の命令には命を懸けない。モルモットとして命を弄ばれない。
その戦場と、命のやり取り、そしてスネークとの戦いこそがグレイ・フォックスに生の実感を与えてくれる。
とはいえ、スネークとの再会までに命を落とすのも無様だ。全身に力を込め、この状況を脱するために腕を振り解こうとする。
その瞬間、とうとうグレイ・フォックスに訪れた。
「ぐ……あ……」
素子は首を絞められている苦痛の声だと認識していたが、実はそうではない。グレイ・フォックスが最も恐れる物。
実験に使われていた薬物による、禁断症状が出たのだった。
「おおぉぉぉぉぉOOoooぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!?」
グレイ・フォックスの視線が上に向き、左右にぶれた。赤いモノアイが発する光が、小刻みに動く。
全身が戦慄き、棒立ちとなりながらグレイ・フォックスはひたすら吼えた。
首を絞めていたはずの素子は、吹き飛ばされたかのように尻餅をついている。
禁断症状が出たとき、身体から衝撃波のような物が出るらしいが、グレイ・フォックスにも理由は分からない。
実験に使った薬物の中に、ESPを促進する薬でもあったのだろうか?
それよりも、グレイ・フォックスは薬の禁断症状によって引き起こされる苦痛に耐えかねて、地面に頭をぶつけた。
このままでは、自分が消えてしまう。もっと痛みを。もっと苦痛を。
(スネーク! スネークはどこだ!?)
答えは知っている。彼はここにはいない。この場でグレイ・フォックスを追い詰めたのは素子だから。
ならば戦場で構わない。グレイ・フォックスはなりふり構わず、素子へと距離を詰めた。
素子のつま先がグレイ・フォックスの鳩尾に入る。程よい苦痛が生まれるが、すぐに素子は吹っ飛んでいった。
逃がすか。グレイ・フォックスは貫手を素子へと繰り出した。
「ガ…………ハ……」
深々と突き刺さった腕。腕の中で潰れていく、いくつかの臓器の感触。倒れる素子を見て、グレイ・フォックスは己が戦場が、終わってしまったことを悟った。
(衝撃波……緊急時にはそんなものを発することが出来るなんて……。とことん、ここは不条理だわ……)
素子は腕を引き抜いた敵サイボーグが、壁に頭をぶつけているのを見ながら終わりを悟る。
薬物中毒者なのだろうか? 彼は薬物が切れたときと似たような反応を示し、衝撃波を発した。
「俺が……消える! 消える!!」
この様子なら、しばらくはクロたちを追えないだろう。人工臓器をまとめて数個破壊され、脳の生命維持するのは難しい。
もって数分。その前に済ませることがある。
『広川さん……聞こえるかしら? 広川さん……』
素子は最後のコンタクトを取るため、武美へと回線を開いた。
□
爆発した部屋を見つめて、武美は呆然とする。衝撃で壁まで吹き飛ばされたもの、どうにか気絶せずに済んだ。
生きているのはエックス。クロのアポロマグナムを装着した右手が落ちていた。
「あ……あぁ…………」
クロが死んだ。風来坊さんに似た男気溢れる、素直じゃない黒猫。
散々武美を見捨てるといっておきながら、結局は助けていたクロ。
もう会うことはない。会えない。だったら、誰が殺したのか?
浮かび上がってこちらに戻ろうとするエックスと、武美の視線が合ってしまった。
憎い。だけど武美にはエックスを倒し、クロの仇を取れるだけの力がない。
「…………俺が憎いなら、憎んでくれてもかまわない。けど……もし戦うのなら、容赦はしない」
「……ッ!?」
鬼の視線が、武美を貫く。恐怖で罵ろうとした言葉が、止まってしまった。
殺される。純粋な殺意に武美は動けそうにもない。悔しい。仇が取れないのなら、せめて泣いてあげたかった。
自分はクロにしてやれることはない。武美に絶望が広がる。
「武美! 無事か!?」
声に一瞬武美は身体を震わせ、ガクガクと壊れたロボットのように振り向いた。
そこには金色ネズミが走りよってきたのだ。やがて武美を庇うように、ウフコックがエックスと対峙する。
「……クロを殺したのか?」
「……ああ。彼は戦っていた。イレギュラーだ。抵抗するな」
そうすればこちらからは攻撃しない、とだけエックスは続けた。そのままエックスは歯牙にもかけず、ウフコックと武美の横をすり抜けていく。
素子のところへと行くのだろう。武美は恐怖に震えながらも、怒りに突き動かされた。
「ウフコック!!」
「!? ああ、任せろ!」
ウフコックは武美が掴んだのと合わせて、己の身体を銃器へと変身【ターン】させた。
すぐさま反応したエックスに、武美は引き金を引いた。このとき、幸運が二つ起きる。
射撃制御プログラムを素子から得たため、弾丸はエックスへと命中した。
銃の反動に耐えれるほど武美には力がないため、姿勢が崩れてエックスの放った光弾が右肩を掠めて外れた。
ウフコックが気を使って反動の小さな銃へと変身【ターン】していたのだが、まだ武美に耐えれるものではなかった。
それが偶然にも、武美の命を救った。だが偶然によって得た命は、すぐに費える。
エックスのチャージ音が室内で響いた。ウフコックが殻となってカバーしようと構えるが、武美は戦闘に無縁の存在。
それでも、最後の瞬間まで武美は生存を望んだ。たとえ体内に仕掛けられた寿命によって、半年も生きられないからだとしても。
「クロちゃあぁああぁああぁん!!」
力を貸して。そういうつもりの叫びだった。
支援
瓦礫が飛び散る音が、武美とウフコックに届く。エックスにも音は聞こえたらしい。
大きく開いたリラクゼーション室から小型発電のある部屋へとつながる穴より、黒い影が飛び込んでエックスの顔面を殴った。
盛大に転がって吹飛ぶエックスを尻目に、メタルボディが露出し、隻腕になったクロは武美に振り向いて答える。
「あいよ」
こんな時泣けたら、どれほどよかったのだろうか? 武美はそう思いながら、今度は喜びに満ちた告げる。
「遅いよ……」
ボロボロになりながらも、クロはただいつものニヒルな笑みを浮かべていた。
「おい、武美。これ持っていろ」
「クロちゃんのPDA……なんで!?」
「いいから。ウフコック、力を貸せ」
「もちろんそのつもりだ。なにに変身【ターン】してほしい?」
「へっ……ガトリングだな。オイラの右腕にはまって、緑色の円筒状の……愛用武器!」
「随分と物騒な相談だが……任せろ」
ヴヴヴ……とエックスがチャージする音が聞こえる。悠長にしている暇はない。
クロはボロボロの身体に気遣って威力を落とすな、とだけウフコックに注文を追加する。
やがて、ウフコックが変化を終えてクロの左腕にダークグリーンの、四門の銃口がついた大型のガトリングが装着された。
注文と違い砲身が二メートルほど長く、銃身を固定する三脚のような脚もついている。
口笛を吹いて、ウフコックの変化をクロは満足していることを伝える。
先ほどの電撃で、クロの生身の部分は焦げて機械部分はガタガタだ。
撃ててこの一撃。『最後』の大暴れには相応しい。
支援
「武美、そこにいろ。いいもん見せてやる」
やけに武美の息を呑み込む様子を感じ取れたが、クロはひたすらエックスにガトリングを向けて身体を固定する。
エックスのチャージはあと数秒で完了するだろう。そうはさせるか。
クロは引き金を引いて、銃口をエックスへと向け続けた。
「ぐっ……!?」
「オラオラオラオラオラァーッ!!!」
エックスはまたあのエネルギーをまとって、弾丸に耐えている。アポロマグナムを拾わなかったのは、弾切れだから。
クロとウフコックはひたすら弾丸を排出し、エックスを倒すために鬼気迫った表情で反動を全身に受け止め続ける。
ボン、とクロの背中が弾けた。意外ともろい。
「ちょっと! クロちゃん!!」
(分かっているよ。だからちょっとだけ……待ちやがれ)
クロはガトリングを握る手を決して離さず、エックスを倒すことに全力を注ぎ込む。
エックスがフリームーブのエネルギーを解いて、フルチャージを済ませたバスターをクロへと放った。
「まずいっ」
「馬鹿、ウフコック! 攻撃に徹しろ!」
ウフコックが殻となり、クロを庇った。ウフコックはファルコンアーマーのバスターが、貫通性の高いショットだと知らない。
だからこそ、バスターショットがクロの左腕を砕いたのは彼が悪いわけではなかった。この瞬間を、ウフコックが後に後悔することになっても。
「しま…………」
「どけぇえぇぇえ!! ウフコォォォォォォック!!」
クロが叫び、ウフコックは彼がとる行動を認識して殻を解く。空いた視界に、次のチャージを準備するエックスがいる。
クロはニヤリと笑った。ウフコックの行為は無駄ではない。現に驚いているエックスがいい証拠だ。
素子を救援に迎えないのは残念だが、彼女なら一人でも何とかすると信じることにする。
クロは頭両胸両脇両足に備えられた、九門のミサイル発射口を開いていた。
支援
「おおぉおおぉぉおぉぉぉおぉぉぉぉぉぉおぉっ!!」
「クッ……!」
クロの身体からミサイルが発射され、エックスに襲い掛かった。通路は爆炎と閃光が広がり、その場にいた人物全ての視界を奪う。
光が広がる中、武美の無事を確認したクロは不敵に笑う。破壊のプリンスクロは、武美に襲い掛かる絶望を砕いた。
□
どうにか外に出た武美は、死に掛けのクロを抱えて発電所へと振り返る。
あそこには素子が戦っているはずだ。戻らなくていいのか、少し迷う。
『広川さん……聞こえるかしら? 広川さん……』
素子の通信が届いた。そうか、これで確認を取ればよかったのだと今更気づく。
『草薙さん! クロちゃんが……クロちゃんが死にそうなんです!』
『そう……だったらすぐにこの場を離れて。私も……長くは持ちそうにないわ』
『草薙さんまで……』
武美に絶望が襲い掛かる。胸に抱えている瀕死のクロと、警察である素子が死に掛けているのだ。
この世に希望はない。そう現実が告げているような気がした。
『ええ。だからこそ、これが最後の通信になるわ。広川さん……いきなさい』
『…………一人で?』
『ウフコックがいるわ。彼を頼りにしなさい』
確かに、武美はまだ一人ではない。立ち止まった彼女を心配そうに見ているウフコックがいる。
彼は素子と通信していることを知らせると、律儀に黙っていた。
『……広川さん。確かに、あなたではウフコックを操って戦えなんて無理だわ。けど、私と出会ったのはあなたが初めて。
ウフコックを活かして、彼を扱える人間へ渡せるのはあなただけ。過酷だけど、お願いできないかしら?』
武美は答えなかった。風で木の葉が揺れ、擬似太陽によって発せられる光が葉と葉の間から漏れて武美を照らす。
爆発によって服は少し焦げて、顔は煤だらけ。熱によって髪も所々跳ねていた。
もちろん、武美に格好を気遣う余裕はない。追い詰められ、殺されかけ、殺気を向けられた。
武美とて、CCRの追っ手を差し向けられた経験を持つ娘だ。銃弾を撃たれたのも、一度や二度ではない。
それでも、もう一度エックスの殺気を受けながら戦えるか、と問われれば無理だ。クロの仇を討ちたいのに。
『…………広川さん。この先、私はあなたに干渉が出来ない。だから、耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独にいるのも、変わるのも、死ぬのもあなたの自由。
だからこそ……あなたのゴーストに従って道を決め……な……さ…………』
『草薙さん……草薙さん! 草薙さん!!」
もはや途中から、武美の声は口から出ていた。ウフコックが察したのか、くやしげに地面を叩いている。
「……あの警察の姉ちゃんも……逝っちまいやがった……のか?」
「クロちゃん……駄目だよ、喋っちゃ」
「へ……今も根性で……どうにか喋ってんだ……。もう……おせーよ……」
「馬鹿なこというな。一分一秒、死ぬまで生にしがみつけ。それが生きる者の義務だ」
「あたま……でっかちのネズミが……」
辛らつだが、クロの声色にウフコックを蔑む様子はない。むしろ嬉しそうだったのが、武美の印象に残った。
「クロちゃん馬鹿だよ……。今まで黙っていたけど、あたし長く生きられないんだよ?
もって半年なんだから……クロちゃんのために涙を流すことも出来ないんだから……クロちゃんが命を懸ける価値なんて……」
涙が出そうなのに、出てこない。命の恩人の死を悲しんでいることを、形にすら出来ない身に武美は呪った。
ウフコックは無言。苦しそうな息遣いながらも、クロは武美に視線を向けた。
「そう……か……。だったら……ミー君に会えって……。剛っつうウスラトンカチは……あんなんだが腕は一流だ……。
ミー君に会って……事情を話せばあのお人好しなら……手を貸す……」
武美は隠し事を告げても、態度の変わらないクロに驚いた。
対して、クロは苦しそうながらも言葉を止めない。
支援
「ばっか野郎……お前が寿命だからって……オイラが見捨てるわけないだろう。早く言えば……あのウスラトンカチのことを話してやったのによ……。
今なら……きっと泣ける機能もちゃんとつけてやるぜ……あいつなら……」
「か弱い女の子に……馬鹿はないでしょう、クロちゃん」
「自分で…………か弱いとか言うな……」
武美は笑おうとしたが、うまく笑顔を作れなかった。クロは弱々しく、ウフコックへと視線を移動する。
「ウフコック……武美を頼む…………」
「ああ。委任事件担当捜査官として、クロの依頼を受ける。法務局を通すことは現在出来ない。
だが、これを断るのは武美に生存放棄を選択させないという、俺の有用性を破棄することだ。断りようがない」
「小難しいこといってんじゃ……ねーよ……。頭でっかちの……ねずみ野郎……。じゃあ、任せる……ぜ……」
クロはただ、それだけ言って脱力する。武美の腕の中で、クロの体重が軽くなったような錯覚が起きた。
揺すって名を呼ぶが、彼は揺するな!とも、うるさい!と怒鳴ることもない。
熱血ハートのサイボーグクロ。彼はここで死んだのだと、武美は実感した。
ウフコックは目の前で死んでいく戦士を、静かに見守った。たった一度、彼の武器となったがクロは武美を守るために、己が魂を燃やし尽くした。
クロに敬意を払って、武美を見る。彼女が精神的に深い傷を追っているなら、多少荒い手を使わざるを得ない。
スタンガンとなって気絶させ、迷彩ネットとなり身を隠させる。成功するか五分五分、もっと分が悪いかもしれない。
だが、最終手段としてはウフコックが取れる唯一の手だ。出来ればそんなことしたくないと、武美の匂いを嗅ぎ取る。
(悲しみ……後悔……無念……。しかし、死の匂いはしない)
「武美、ここは……」
「ごめんね、ウフコック。ちょっとの間だけ……一分だけこのままにさせて……」
武美の震える背中を見つめ、ウフコックは黙した。彼女の心の決着が着くならが、一分どころか五分も十分も待つ気だ。
ウフコックは他者に何かを強要するような人格ではない。それにクロは報われてもいいはずだ。
支援
彼の死は、彼の有用性はウフコックにも武美にも刻まれた。それでも、エックスをあれで仕留めきれたとは思えない。
生きて情報を持ち帰ることも、ウフコックたちの義務だ。そこまで思考が及んで、ウフコックは素子とクロを喪ったことを思い出す。
(俺は……また喪ってしまった……)
ウフコックには仲間がいた。マルドゥック・スクランブル-09のメンバー――現在は緊急法令の一つだが、元々は独立機関だった――は、殺され、裏切り、欲望に飲み込まれた。
ドクターと二人きりとなり、バロットと出会うまでウフコックは、我武者羅に己が有用性を証明し続けた。
そのバロットも死んだ可能性がある。そして、素子とクロ。何度味わっても慣れない喪失。
なのに、冷静に生き残る道筋を立てる、怒りに任せて感情的にならない自分は、結局のところ煮え切らない【ウフコック】なのだろう。
きっかり一分、武美は抱いていたクロの遺体を降ろした。出来れば埋めてやりたかったが、その時間はないだろう。
土を掘る道具もない。わざと土埃を目にかけて、涙を強制的に流してやろうか。そう思った。
(でも……そんなことをしている暇はない)
あの人……風来坊さんなら、こういう時なんと言ったのだろうか? ヒーローとか正義とか断言して、先走るのだろうか?
分かることは一つ。自分は風来坊さんのように強くはない。正義や正しいことのために一生懸命になれない。
クロと素子が死んで悲しいのに、エックスと襲撃したサイボーグに対する恐怖心が上回っていた。
「えいッ!」
武美は自分の両頬を強く叩き、パン! と大きな音が森に響く。ウフコックが驚いていた。
平時であれば、こちらを心配そうに見上げるウフコックを可愛く思って笑っただろう。
けれど、今はそうしている暇はない。武美はウフコックに左手を出す。
「逃げよう、ウフコック」
「…………武美。だい……」
「……大丈夫か、って言いたいなら、無理。そんなに簡単に立ち直れない……。仇も討てない……。
だから……ウフコック。あたし、助けを求める。きっと、クロちゃんや草薙さん、風来坊さんのようなヒーローがまだいるって、信じているから」
だから、その人にあの二人を倒してもらう。その方が、脱出のためにもなるはずだ。
武美は少しだけ走って、クロの死体へと振り返る。物言わぬ黒猫の死体。胸がキュッと締め付けられた。
「ごめんね、クロちゃん。必ず戻って……お墓作ってあげるから…………」
この悲しみを吐き出すのは、今ではない。武美は壊れそうになる心を抱えながら、ウフコックと共にいく。
「武美」
肩に乗るウフコックが話しかけてくる。武美は走りながらも、視線を向けた。
「君は泣けないと言ったが……今君は泣いている。涙が出ないだけだ。俺がそう証明する」
「ッ!?」
武美はウフコックの言葉に、ハッとする。彼は堅苦しい。クロの言うとおり、頭でっかちにも思えた。
だからこそ、適当なことは言わない。彼の優しさが、武美の心に染みた。
「くやしいなあ……。やっぱり涙が出ないのは、くやしいよ……ウフコック……」
壊れそうな心が、ウフコックへと漏れた。彼はただ、静かに武美の傍にいてくれた。
それからしばらくして、ウフコックが敵に回収されるとまずいとIDを武美のPDAへと移される。
話を出したウフコック自身は、支給品という扱いに不満を示したが。
彼女たちは、結局建物が崩れたというTV局方面へと逃げることにした。
これは賭けだ。建物が崩壊したということは、クロや素子のように力のある戦士たちも向かっているかもしれない。
あえてリスクを受け入れ、彼女たちは突き進んだ。
クロと素子の仇をとるために。
【草薙素子@攻殻機動隊 死亡確認】
【クロ@サイボーグクロちゃん 死亡確認】
【残り二十五人】
【F-8 東/一日目・日中】
支援
【広川武美@パワポケシリーズ】
[状態]:健康、頭部に微ダメージ。煤で汚れている。軽い火傷。
[装備]:ウフコック@マルドゥックシリーズ
[道具]:PDA(武美、クロ)×2、ランダムアイテム1〜2(クロ好みの武器はないが武器は最低一つある)
アポロマグナム@仮面ライダーSPIRITS(弾切れ、発電所内にクロの右手と共に放置)、
ウィルナイフ@勇者王ガオガイガー(クロの死体のなんでも斬れる剣があった場所に収納)、風船いかだ
[思考・状況]
基本思考:絶対に生き残り、ここから脱出する。
1:危険を覚悟で市街地へ向かう。
2:クロと素子の仇をとるよう、強い人に頼む。
3:シグマの居場所を探る。
4:軍事基地に行く機会があったら行ってみる。
5:元の世界のあの人のところに戻って、残り少ない人生を謳歌する。
※【F-8】に王ドラの亡骸が埋葬されました。墓石がわりの石には“ネコ型サイボーグの墓”と刻まれています。
※メモに書かれていた連絡先の電話機は全て黒電話です。(留守電は効きません。)
※電波塔、テレビ局、学校、軍事基地、鉱山、スクラップ工場には電話をかけました。が、誰も出ませんでした。
※ボイルド(徘徊者)から情報を得ました。
※A−1・軍事基地に『何か』があると考えています。
※ウフコックは、ターンした物を切り離すこと(反転変身【ターンオーバー】)が出来なくなっています。
※ウフコックの参戦時期は、ボイルド死亡後です。
630 :
Classical名無しさん:09/01/16 00:51 ID:1rr2EKOk
うわあああああ
「グ…………ウウゥゥゥゥゥゥ…………」
いつでも、この重度の禁断症状には慣れはしない。グレイ・フォックスの頭を侵すような感触。
忘れるには、痛みを身体に受けるしかない。グレイ・フォックスが視線を死体へと向ける。
この女は悪くなかった。拳で意識が飛びそうなほどの痛みを感じることもあったのだ。
苦し紛れのグレイ・フォックスの貫き手を受けたあたりは、運が悪かったのだろう。
それに、スネークならこの女以上の痛みを与えたはずだ。今まさに消えそうな意識を保つため、グレイ・フォックスは一発頭を壁にぶつける。
この痛みでは駄目だ。自分を侵す感覚に抵抗できない。やはり戦場を求める必要がある。
次の戦場を。グレイ・フォックスはフラフラとネズミが逃げた方向へと、PDAを回収してから歩いていった。
バイクに乗りなおす余裕はない。派手に壁が爆破されている。ミサイルの類を装備している兵器があるのだろう。
逃げ回るネズミと自分の戦力差としては、ちょうどいい。
幾つもの戦場を潜り抜け、そして自分は……
(スネーク、キサマだけが俺を死へと誘ってくれる)
だから殺そう。シグマを殺し、スネークに会うために。
【G-8 中央/一日目・日中】
支援
【グレイ・フォックス@メタルギアソリッド】
[状態]:全身打撲。全身火傷。ダメージ大。疲労大。チャージショット二発分のダメージ
薬が切れたことによる、禁断症状。
[装備]:虹@クロノトリガー。白いカラス(全体に焦げ跡あり)@人造人間キカイダー
[道具]:PDA(グレイ・フォックス、ドロシー、草薙素子、ドラ・ザ・キッド)×4。
水消耗。ロジャー・スミスの腕時計@THEビッグオー、ウフコック@マルドゥックシリーズ
ブルースシールド@ロックマン、ジローのギター@人造人間キガイダー
[思考・状況]
基本思考:闘って兵士として死ぬ。もしくは優勝してシグマを殺し、スネークと殺しあう。
1:逃げたネズミ(ウフコック)を追う。
2:次の戦場へと向かう。
3:強者についている弱者を、戦いの邪魔をされないように殺しておく。
4:いずれロックマンと灰原(いずれも名前を知らない)と再戦する。
※原作死亡直後からの参戦です
※『ライドル@仮面ライダーSPIRITS』『トランスメタルドライバー@ビーストウォーズ』がF-5エリアに落ちています。
comment2,
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エックスはフッ、と目を覚まし、周囲を見渡す。クロのミサイル攻撃によって吹き飛ばされ意識を失ったようだ。
身体がギシギシ痛む。五体満足なのは、このアーマーのおかげだろう。
それほど、クロの攻撃は激しかった。足音が聞こえ、正面を向くと白いヘルメットを被るイレギュラーが現れた。
殺す。エックスは殺気を持って立とうとしたが、身体が言うことを聞かない。
やがてそのイレギュラーは通り過ぎていった。悔しいが、休憩が必要だと自覚する。
(そういや、Xとの戦いで無茶した傷も、癒えていなかったっけ……)
このままでは戦いようもないだろう。ファルコンアーマーを手にしても、まだ力が足りない。
クロと呼ばれたイレギュラーは、見た目にも負傷が酷く生きてはいないだろう。
だが、一人を倒すたびに満身創痍になっていけば、イレギュラーを全滅させることは叶わない。
エックスは上半身を壁に預けて、楽な姿勢をとった。レプリロイドがもつ自動回復装置によって、動けるようになるまで待つしかない。
「元ヒーローか……」
彼は女性を守ろうと奮闘していた。イレギュラーでなかった可能性は高い。
それでも、戦っていたのだ。せめて目に映るすべての争いだけでも潰していく。
願いと共に、鬼となったことに後悔はない。そのはずなのに……
「なんでこんなに……辛いんだ…………」
エックスの頬を伝って、雫が落ちる。
それが傷が開いて落ちた血【オイル】なのか、レプリロイドである彼が流した涙なのかは、確認できる人物はいなかった。
【G-8 発電所内/一日目・日中】
【エックス@ロックマンXシリーズ】
[状態]:疲労大、全身に大きなダメージ、絶望と後悔、自分が間違っていると認識しているが、退かない覚悟。
爆風により装甲に凹み。
[装備]:ファルコンアーマー@ロックマンX5
[道具]:PDA(エックス、あ〜る、バロット)、クロマティ高校の制服@魁!!クロマティ高校 赤い仮面@現実、グロスフスMG42(予備弾数20%)
NIKU・Q・マックス@サイボーグクロちゃん、ドクターケイトの杖@仮面ライダーSPIRITS(D-6 道路に放置)。
[思考・状況]
基本思考:壊し合いを潰し、シグマを倒す
1:休憩。自動回復装置で身体が癒えるのを待つ。
2:戦っている者を、誰であろうと潰す。
3:戦わない者は放置。
4:ゼロと合流。ただし、ゼロの賛同を得れないのであれば……
[備考]
※神敬介の名前を、Xだと思っていましたが、勘違いだったと思っています。
また、神敬介が死んでしまっていると考えています。
※ライドアーマー“イーグル”@ロックマンX4は破壊されています。
※ファルコンアーマーの制限。
1.フリームーブの時間は、本来の半分。
2.フリームーブによる特定のダメージの無効はない。
※他にも、ファルコンアーマーの制限はあるかどうか不明。後の書き手さんに任せます。
投下終了。
多数の支援、感謝します。指摘、感想をお待ちしております。
追記。
エックスの自動再生装置はX6のゼロの台詞より、出しました。
乙
小佐あああああ
散々空気とか言ってごめんよ小佐、輝いていたよ小佐
クロちゃん漢だったよクロちゃん
ついに誤殺王子の記録を抜いて殺害数トップに躍り出てしまったエックス、いいのか?それでいいのか、貴様あああああ!
どうなる武美!ますます狂気地味てきたフォックスと緊張感と切ない幕引き!
重ね重ね乙です
投下乙
なんてこったい……一気に二人死んだ……
漫画版エックスを思い出させる暴走っぷりだなぁ、早く殴ってやれゼロ。
にしてももう半分とは……
自分でミス発見……。
グレイ・フォックスのウフコックをwiki掲載時に削除しておきます。
クロちゃあああん!!かっこいい生きざまを見せてくれたじゃないか!
エックスもマンガ版全開だなあ
少佐とフォックスの戦いもよかった。
そして一人残された武美はどうなる!?
いいSSだったよ
投下乙!
クロと少佐かっこよく散っていったなぁ
エックスはどこまでいけるかな
武美かわぃいよ
グレイフォックス流石殴られると「もっと、もっとだ」って言う人だけのことはあるぜ
キッドオオオオオオオオ!
と、マタタビの代わりに叫び、
クロちゃあああああん!
と俺の声で叫ぶ。
うう、かっこおかったよ、ニヒルだったよ、こんちくしょう!
少佐もいい味だしてたぜ!
それにウフコックの最後のセリフも渋い。
武美が泣けなくて、エックスが涙する……。
せつねえな……。
>633
ずっと間違ってるんだが、
×ジローのギター@人造人間キガイダー
○ジローのギター@人造人間キカイダー
クロちゃあああああああああああああああああああん!!
今は亡きボンボン、その90年代を代表するちびっこのヒーロー同士の対決……殺し合いの軍配はエックスに上がったのに、何故だ!?
俺は! クロは負けなかったと! 武美を守り抜いたクロは勝ったのだと、そう思っている!!
片腕を発見して死んだと思わせて登場し、最期には「よく見てろよ」……見事な原作再現に溜息が出てしまいます。
涙を流さず、確かに泣いているのだとウフコックが証明した武美。誰も傍におらず、涙を流しているのか、泣いているのかさえ判然としないエックス……なんという見事に悲しき対比。
少佐もグレイ・フォックスとの戦いはお見事でしたが……今まで空気だったことも含めて、本当に運が無かった。
そんな少佐が最後に拾った運……武美とウフコックは、これからどうなるのか……
乙でした! GJ!!
クロちゃあああああああああああああん!!
すっげえよ! あんた思いっきりヒーローだよ!!
死亡したと見せかけて最後の大暴れだとかなんて熱すぎるんだ!!
エックス!!お前だれがどうみてもマーダーじゃねえか!
いやしかし、ここの書き手はマーダーを生かしすぎる。
いい加減殺しちゃってくれよ!対主催涙目すぎるだろうが!
そして武美逃げてええええええ!!
クロちゃんと少佐の生きた証をみんなに伝えてあげて!
すみません、話としてはかなりどうでもいいことなんですけど、
武美の思考欄の最後にミーや剛やクロちゃんの死体について触れて欲しいな…
投下します。
「何だよ、これ……」
テレビ局――視界に入らないのは疲労のせいだよね、うん――へと向かう道中、足を止めた僕とアルレさん。
誰かに話しかけるワケでもなく、ただただ言葉が勝手に落ちていた。
その理由は、目の前に広がる惨状。
スーパーの一部が抉り取られ、その内部を曝け出してしまっている。
その周辺に散らばっているのは、残骸となってしまった機械。
もしかしたら……いや、絶対にそれは僕と同じくサイボーグだった。おそらくは参加者。
しかしそれが分かったところで、もう手遅れなのは明らか。クロ+ガトリング=破壊の公式と同じくらい確実。
気絶してさえいなければ、ここで何かが起こった時に気付いたかもしれない。
そう思うと、何とも自分が情けなかった。
「まだ、中に誰かいるかもしれないな」
不甲斐なく思っている僕の横で、アルレさんが呟いた。
言われてみれば、その通りである。
スーパーの中で息を潜めて、恐怖に震えている誰かがいる可能性は大いにある。
そうと気付けば、入るしかない。
一気にスーパーの前まで走ってきて、アルレさんが同行してくれていないことに気付いた。
振り向けば、一人でテレビ局の方向へと駆け出していた。
……中に誰かいるかもしれないと言っておきながら、なんて薄情なのだろう。
感情を押さえきれず、どうしてそちらに行くのかを尋ねる。
「その参加者を破壊した参加者が、エレオノール様の元へと向かった可能性がある。
どちらにせよ、エリア四つに跨る建造物が消えているのだ。何かが起こっているのは自明。
この状況において私が優先すべきものなど、わざわざ語るまでもない」
それだけ言うと、アルレさんは再び背を向ける。
テレビ局が見えないのは、僕だけではなかった。
もしかしたら、テレビ局で待っている三人は……――――
浮かんではいけない映像が、勝手に浮かび上がってくる。
本郷さんが向かったとはいえ、心配なことに変わりはない。
しかし、だからといって……
「放っておくワケにはいかないだろっ!」
僕はスーパーへと飛び込んだ。
一気にここを調べて、一気にアルレさんに追いついて、一気にテレビ局に戻る。
それだけをやり遂げればいいんだ。なに、簡単じゃないか。
◇ ◇ ◇
スーパーから出てきて、思わず漏れる溜息。
結局、見つかったたのは、既に活動を休止させた女性型サイボーグだった。
あの女と同じ青髪だったが、壊し合いに乗り気であったのかは分からない。
目の前に広がる残骸の方も同じだ。
尋ねてみたところで、返事が返ってくることはない。
片方が壊し合いに乗り気であったのか、両方乗り気だったのか、はたまたどちらも壊し合いを破壊するつもりだったのか。
今となっては、確認のしようがない。
ただ分かることは――――またしても、僕が間に合わなかったという事実。
気付いた時には、視界に映っているのは地面だった。
こんなことで凹んでどうする。
そう自分に言い聞かせて、前を見据える。
遅かったからといって、しょげてしまったところで変わらないのだ。
そんな暇があるなら、アルレさんを追いかけた方がよっぽど建設的である。
全身に力を込めたせいか、ふと掴んでいるモノの存在を思い出した。
「これ、何なんだろう」
視線と同じくらいの高さまで掲げて、まじまじと見つめる。
見た感じじゃあただの赤い杖なんだけど、一番端の所が奇妙な形をしていてどうにも気になる。
この形、何かに似てるんだよなあ…………ああ、鶏の頭か?
青髪のサイボーグの近くに無造作に転がっていたんだけど、IDが刻まれているのだから支給品なのは絶対だ。
半ばくらいを持って地面を叩いてみると、見た目と違って丈夫らしく地面に穴が空いても杖には傷一つついていない。
アルレさんにPDAを返してもらうまでは、これを武器にするとしよう。
「さーて、アルレさんに追いつかなきゃなー」
そう言いながら、足を動かし始めて暫く――――僕は見てしまった。
いや、覗いたんじゃあない。そこは間違ってほしくない。
『見えてしまった』のだ。
民家の中にある時計が、十二時より先を示しているのを。
いやいや、待て待て。落ち着けってマジで、うんうん。とりあえず深呼吸。
これってー、アレだよね? 何て言いいますか、どう切り出すべきか、いわゆるだね。
例のその……あのPDAから流れる大事なヤツをさ、聞き逃してちゃってるってことだよね?
「ちょっと待て、編集うううううううう! 放送とかやるなら、煽りとかで先に言っとくべきだろおおおおおおおお!!」
【C−6 路上/一日目 日中】
【アルレッキーノ@からくりサーカス】
[状態]:全身が焦げている。全身に中程度のダメージ、七分袖、エレオノール様
[装備]:リュート@からくりサーカス、アームパーツ@ロックマンX
[道具]:支給品一式、PDA(ミー)、青雲剣@封神演義
基本思考:エレオノール(フランシーヌ人形)を生還させる。出来れば自分や茶々丸も共に脱出したい。
0:一刻も早くエレオノール様の下へ!
1:TV局へ向かいエレオノール(フランシーヌ人形)と合流。エックス達は後回し。
2:エレオノール(フランシーヌ人形)と合流後、エックスとソルティを捜して合流する。チンクとドラスの危険性を伝える。
3:その後、茶々丸とも合流。チンクとドラスの危険性を伝える。
4:男(敬介)の事をエックスとソルティに正直に話し、できる限り不信を招かない様にする。
5:信頼できる人物にチンクとドラスの危険性を伝える。
6:フェイスレス側の自動人形は積極的に破壊する。
[備考]
※名簿の『フランシーヌ人形』はエレオノールの事だと思っています。
※この殺し合いに参加している自動人形には、白銀とフェイスレス以外の何者かが作った者もいるのではと考えています。
※シュトロハイムとゲジヒトを、ナチスがあった時代に作成されたナチス製の自動人形であると思っています。
※チンクは殺し合いに乗り、シュトロハイムを殺害したと思っています。
※ロボットやサイボーグの事を「自分の知っている自動人形とは違う作られ方をした自動人形」と認識しました。
※茶々丸と情報交換しましたが、完全には理解できていないようです。
※制限に気付きましたが、『フェイスレスが何かしたに違いない』と思っています。
※アルレッキーノが聞いた音は、超電急降下パンチと超電子ドリルキックによるものです。
※アームパーツが『緋色の手』にも効果があるかは、後続の書き手にお任せします。
※ライドアーマーの残骸を参加者のものだと思ってます。
※第二放送を聞いてるとは思いますが、その描写は次に任せます。
【C−6とD−6の間 路上/一日目 日中】
【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:疲労(大)、後頭部に足跡、焦り、不安
[装備]:ドクターケイトの杖@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:なし
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催
1:アルレッキーノに追いつき、共にTV局へ向かい、本郷やミク達と合流する。
2:合流後、青い髪の女の危険性を伝え、再度捜しに行く。
3:シグマ打倒の為、仲間を集める。
4:風見、敬介、茂と合流。
5:クロとは合流したいと思う反面、彼に剛の事を暴露されるのではと恐れている。
6:本郷に対し、少々の罪悪感。
7:武器返せ! それに、どうしてエレオノールって呼ぶのさ?
[備考]
※なんでも切れる剣、ガトリング等の武装は没収されています。
※悪魔のチップの制限については後続の書き手にお任せします。
※茂は殺し合いに乗ってしまった相手を、止む無く殺してしまったと判断しています。
彼に対する警戒心は完全に消えています。
※本郷と情報交換をしました。
ただし、自分をサイボーグにした剛が世界制服を一時期目論んでいた事。
クロが本郷と同様の理由でサイボーグになった事は話していません。
※ハカイダー(名前を『サブロー』しか知らない)は、バトルロワイアルに乗り気でないと思い込んでいます。
※アルレッキーノがフランシーヌ人形のことをエレオノールと呼ぶことに疑問を抱いています。
※ライドアーマーの残骸を参加者のものだと思ってます。
※第二放送を聞き逃しました。
投下完了です。
誤字、脱字、その他アレ? と思う点ありましたら指摘してください。
投下乙
PDA没収の弊害ここにありけりですな
ツッコミまくりなミーくんに笑った。
でも、友が死んでしまい、笑えない状況。
はわわ…ミーくん爆死フラグがぁ
乙です
投下乙です。
ミー君に不吉なフラグがw
アルレさんマジ余計なことしかしない。でもそのズレているところがなんか好き。
GJ!
ところでそろそろ二回目の放送?
それともまだ?
とっくに終わったが…
wikiだけ見て判断したんじゃない?
ハカイダー、フランシーヌ人形、神敬介投下します
目を覚ますと天井が視界に入った。全身がズキズキ痛み、特に胸は怪我が酷い。それもそうだ。装甲を剥がして暗闇の種子を引き抜いたのだ。
スラリとした長身の誠実そうな青年、神敬介はため息を吐いた。物憂げな瞳に深い哀しみが宿っている。
(俺が……この手で……)
望んでいないとはいえ、敬介の手は血で汚れている。三影英介ことタイガーロイドに負け、バダンに捕えられたのが始まりだ。
暗闇大使によって彼の一部を植え付けられ、味方を殺す罠としてサザンクロス内部に放置されていた。
現在、どういう経緯を辿ったのかは不明だが、千切れた左腕も再生されてこの殺し合いの舞台へと放り込まれている。
敬介が出会った参加者は少なくない。蜘蛛のような戦車。赤い鎧を着た青年。自分が操られていると知り、止めるために戦ってくれたエックス。
そして……ドラスと呼ばれた少女の姿をした怪人。彼女を追い詰めるのに必死で抵抗を続けた。戦う力があるとはいえ、少女を傷つけるなどあってはならない。
怪人と知った時、安堵のため息をついた。すぐにそれが間違いであると知ることになったのだが。
彼女を庇った三人は、怪人である姿を知っている様子だった。それでも守ろうとした。
ならば、あの怪人は自分たちと同じく、悪の組織に改造されながらも人の心を持った存在。
その少女を痛め、彼女を庇う三人を無残にも殺した。悪魔のような行為。それが自分の罪。
さらに……敬介はこの手で後輩の城茂を――――
「目を覚ましたようだな」
声をかけられ、敬介は振り向く。そこには額にゴーグルをかけ、黒いライダースーツに身を包む男がいた。
その男を敬介は知っている。闇の中から、後輩である仮面ライダーZXの正義をぶつけた男。ハカイダーだ。
□
ハカイダーはギンガを見逃し、サブローと姿を戻した。倒れている敬介を見る。
「この人を、あの建物へと運びませんか?」
「学校か。悪くない」
隻腕となったフランス人形のように美しい女性――実際に彼女は自動人形なのだが――のフランシーヌがサブローへと進言した。
お人好しの彼女が敬介を放置しておくことを良しとしなかったのだろう。サブローもまた、敬介をここに置き、彼が寝首をかかれることは本意ではない。
仮面ライダーを倒すのは自分だ。せっかく本気の仮面ライダーXと戦える機会を、そんなくだらないことで潰したくはない。
サブローは敬介を肩に担ぎ、バイクをPDAへと戻した。保健室なら生身が多い方であるサイボーグ、仮面ライダーたちにちょうどいいだろう。
ベッドに寝かしておくのも、体力の回復にいい。フランシーヌに本人の片手を持たせて、校舎へと入った。
リノリウムの床を足音を鳴らして歩き、サブローは目的の部屋を見つける。ドアを乱暴に開けて、空いているベッドへと運んだ。
ついてくるフランシーヌは学校が珍しいのか、キョロキョロと周りを見回していた。
手早くサブローは人間と同じ手順で敬介の手当てを終える。手際のよさにフランシーヌが感心していたが、気にせず続けた。
「手馴れていますね」
「まあな」
サブローには人体の構造がある程度、データとして頭脳に入っている。怪我の手当てぐらい造作もない。
敬介の寝入る横顔を確認して、周囲にまた襲撃者が現れないか警戒をする。ついでに、フランシーヌの斬られた片腕を手に取った。
「どうかしましたか?」
「……仮面ライダー1号に会うまでに、お前を俺のへまで傷つけさせてしまったな」
「仕方ありません。あの時、彼女が襲ってくるとは想定できませんでしたし、速度も並ではありませんでした。
あなたはあなたで本郷の後輩である彼を止めるのに必死でした。これは起きても、あなたに責はありません」
サブローは自分に責任がないと言うフランシーヌに、鼻を鳴らして黙った。
誰が悪い、とかは関係がない。本郷と戦うまで無傷で済まさなければ、一人の戦士に失礼だと考えたからこそ、フランシーヌの傷はサブローにとって不本意だ。
一旦修理工場までつれて、本郷と約束の場所まで戻ろうか? とも考えた。
馬鹿な考えだ。風見やゼロ、凱との決闘は約束している。自らが指定した時間の前に赴くのは、間抜けというものだ。
フランシーヌの片腕の内部は無数の歯車と鉄製のフレーム、特殊な液体が流れるチューブが見える。自分とフランシーヌでは構造が大きく違うだろう。
むしろ、フランシーヌがなぜこの構造で動くのか不思議であった。しかし、自分の言語回路を修理したキカイダーのように、ハカイダーもまた、ある程度自分を修理することが出来る。
その知識をあわせれば、どうにかこの腕を繋げて稼動するところまで持っていけるかもしれない。
ならばやることは一つ。
「そこの椅子に座れ」
「どうなされました?」
「とりあえず修理する。キサマの腕がないとなると、仮面ライダー1号……本郷に失礼だからな」
「そうですか……ありがとうございます」
「…………疑わないのか? 罠ではないかとか」
まあ、そういわれれば無理やり直すだけだが、とサブローは思う。第一、サブロー自身はフランシーヌの信頼を得るような行動をとった覚えはない。
フランシーヌは真摯な瞳をサブローへと向ける。その瞳に自分の作り主である光明寺博士の娘、ミツ子がキカイダーや弟に向ける瞳と重ねた。
馬鹿馬鹿しいとも思う。ミツ子とマサル、どういうわけだかハカイダーがキカイダー以外に気に懸けている存在であった。
その理由が分からず、苛立ったこともある。光明寺博士の脳が関係しているのだが、サブローにはそのことに気づくことはない。
「あの時あなたには彼……神敬介を殺すという選択肢がありました。ですが、その選択をしなかった。
私はあなたのその選択から、今私を殺すと考えるとは思えません」
考えがあってのことか、とサブローは感心する。懸念事項は取り除かれた。早速サブローはフランシーヌの修理へと、取り掛かった。
途中、腰にかけていたPDAから二度目の放送が告げられる。サブローは手を止めず放送を聴いた。
「城茂……」
敬介の発言から予想はしていたが、やはり仮面ライダーストロンガーこと城茂は死んでいた。
相手が操り人形となったとはいえ、同じ仮面ライダーなのだ。それに正義の味方である仮面ライダーなら、仲間であるはずの敬介の相手は難しいだろう。
他にサブローが知る名は一つしかない。メカ沢。ブリキに似た黄色いロボットに、そう呼ばれていた男だ。
弱いくせに自分に突っかかってきた。そして素手で戦おうとした覚悟は認めているが、この殺し合いで生き延びるのは無理だったようだ。
強くなればいい相手にもなれたのだが、と少し残念な気持ちもある。
「……本郷たちは無事のようですね。ミー君もよく無事で……」
(ゼロ、凱、風見、本郷は生きている……まあ、当然だ)
そう簡単に死ぬ男たちではない。生き抜いて当然と思うもの、口角が吊り上るのを止められなかった。
禁止エリアの存在を頭に刻み、本郷たちがいるエリアが近いことを知るが、一時間もあれば彼らなら避難できるだろう。
サブローはそう結論をつけて、フランシーヌの腕の修理を再開する。
「……笑えるのですね」
「笑う? そうか、俺は笑っていたか」
サブローの姿はハカイダーとしての姿を隠す衣であり、人間とロボットの共存を目指した光明寺の理想である。
破壊を目的として作られたサブローの場合、標的に近づきやすくするため、という意図も隠されているのだろうが。
ダークの目的はさておき、光明寺は人間に近く、正しい人造人間を作ろうとしていた。
その結果がキカイダーであり、弟であるハカイダーなのだろう。感情を持つ悪魔回路を搭載されて、サブローの姿のときは表情が対応していることになっている。
「ならば、俺は来るべき仮面ライダーや正義の使者との戦いを楽しみにしているのだろう」
「楽しみですか……。あなたは不思議ですね。私と同じく、自動人形でありながら感情と表情を持つ」
「作り主である光明寺がたまたまそういう構造で作っただけだ」
「……私の創造主様は人間のいう『感情』を与えてはくれませんでした……」
「くだらん。とりあえず応急処置は終わった。反応は鈍いだろうが、動きはする。完全に修理をしたければ修理工場にでも向かえ」
「ありがとうございます」
フランシーヌの礼を無視して、次にサブローは己の身体の修理に取り掛かる。本郷、敬介との戦いでダメージを受けた。
メンテナンスくらいはしておく必要があるだろう。何より、仮面ライダーたちとは全力の戦いを繰り広げたかった。
サブローが望む決闘には、仮面ライダーが不完全でも、自分が不完全でも成り立ちはしない。
対等の条件、それこそサブローが望む戦いなのだ。感情というならば、それを指す。
(しかし、俺はキカイダーと対等に戦える日は来るのだろうか……)
ハカイダーはかつて、己の脳に生み親である光明寺が宿っていることを知らなかった。
支援
ミツ子に教えられ、死亡したあとの自分はその真実を知っている。冷静になって考えるのなら、おそらくキカイダーが本気になれなかったのはこの脳が理由だろう。
……光明寺の脳が積まれているとはいえ、自分はその記憶を持ち得ない。サブローのハカイダーとしての行動は、悪魔回路が判断している。サブローとしての記憶も、己のどこかで記憶しているのだろう。
だが、サブローには確信していることがある。脳を取り替えた場合、自分は自分でなくなると。
事実、サブローの知ることはないが、ギルの脳に取り替えた時に大幅な性能の低下と共に、別人と成り果てた。
パソコンで言えば脳はCPUにあたるのだろう。ハカイダーのスペックをギルの脳が扱えなかったのだ。
だからこそ、脳を変えたり電子回路に置き換えたりする自分は、キカイダーとの決着を望む自分ではない。
それはもはや別人だ。つまり、この光明寺の脳を積んだままキカイダーを本気にし、戦わなければならない。
(まあいい。いざとなれば、この脳を人質にキサマに戦いを挑む。それまで、俺はここで正義の味方と戦って己を磨く! 待っていろ、キカイダー!)
サブローの闘志が燃える。それが、己の存在の終わりを示すと知りながらも。
わざとそのことに触れずいたことを、無自覚にも認めて。
フランシーヌは本郷とミーが改めて無事なのを知りホッとするのも一瞬、ミクやKOS−MOSの名に気分を沈ませた。
彼女たちはフランシーヌの目の前で死んだ。特にミクは心を通わせただけあって、余計に悲しい。
そして、ミクを殺した少年は贖罪のために己が身を投げ出した。
彼を死んでしまったミクが許すのかは、フランシーヌには知りえない。
しかし、笑いを持って償いをしようとしたあ〜るを、フランシーヌは責めたくはなかった。
フランシーヌに死後の世界の存在があるなど、知ることはない。それでも祈るしかない。
(ミク、彼を許してやってください)
それが彼女が、関わった人たちから得た感情だから。
□
サブローが自分の身体をメンテナンスしているとき、ベッドを包むカーテンの向こうで人が動く気配を感じ取った。
起きたか、と獰猛な笑みを浮かべた。サブローは内部の機械を晒した腕を元に戻し、椅子から立ち上がってカーテンに手をかける。
支援
支援
支援
「目を覚ましたようだな」
その男、神敬介に声をかけた。フランシーヌが敬介に気に懸けているのが分かるが、知ったことではない。
「ああ……君は確か……」
「この姿のときはサブローだ。神敬介」
「……敬介でいい」
「そうか。キサマはいずれ、俺に倒されるのだからな。せいぜい身体の傷を癒していろ」
サブローの言葉に、敬介が一瞬呆然とする。すぐに表情を崩して、微笑みを向けた。
何がおかしいのか、サブローには分からない。
「そうか。じゃあお言葉に甘えるとするか」
その返事にサブローは満足する。その横からフランシーヌが割って入ってきた。
「よかった……ご無事なようで。始めまして、神敬介。私はフランシーヌと申します。よしなに」
「こちらこそよろしく。そして……二人とも、すまない。そしてありがとう」
「いえ、あなたが助かったのはサブローのおかげです。お礼は彼に言ってください」
「礼などいらん」
フランシーヌはそっけないサブローの態度に、自分が何か怒らせる真似をしたのではないか? と不安になる。
後で確認しよう、とフランシーヌは考えて敬介にかねてからの疑問をぶつけた。
「敬介、あなたのことは本郷から聞かされています。なぜあのような行動をとったのですか?
事情があるなら、お聞かせください」
「本郷先輩……ッ!? そうか、本郷先輩と会ったのか……」
敬介の表情に、哀しさと後悔が宿って痛々しくなった。過去のフランシーヌでは気づかぬ変化だが、今のフランシーヌは様々な人と出会い、人間の細かな違いにも気づくようになっていた。
それはフランシーヌ自身は自覚していないが、彼女が感情を理解し始めている証拠である。
敬介が望んで殺戮に走ったわけではないのは、サブローとの戦いで殺してくれ、と望んだことから明らかだった。
だからこそ、罪を知るフランシーヌは彼が、なぜ他者を殺さざる得なくなったのか知りたい。
もしかしたら、フランシーヌが敬介の力になれるかもしれないのだから。
「俺は……」
敬介の重たい口が開く。タイガーロイドに負けたこと。仲間の仮面ライダーの罠として、暗闇の種子を埋め込まれたこと。
そして、無実の少女を嬲ったこと。三人の参加者を殺し、壊したこと。後輩である城茂を殺したこと。
吐露しなければ、とても耐え切れる物ではなかったかもしれない。敬介に仮面ライダーと名乗る資格など、とうに失われている。
額に手を当て、己が罪に敬介は慄いた。自分がするべきことは……
「それで、キサマはどうする気だ?」
サブローが鋭く、フランシーヌと敬介の会話に切り込んできた。視線を向けると、外を見ており敬介の懺悔には一見興味がなさそうに見える。
その彼が声をかけてきたということは、何かしら敬介の答えを期待しているのだろう。
サブローに問われ、敬介は自分の心へと語りかける。
暗闇の種子を埋め込まれたとはいえ、敬介は許されざることを多くの者にしてきた。特に目の前で家族を奪った、あの少女には死んでも償いにはならないだろう。
だからこそ、敬介は鋭い視線をサブローに向ける。。
「俺は……償う。たとえ許されることがなくても、憎しみをぶつけられても。そうでなければ……親父にもらったこの身体の意味がない」
静かに、それでいて強固な決意でサブローへ応える。サブローはZX、1号、V3の信念をぶつけてきた。
彼が聞いたのだ。どうするのか? と。だから敬介は真摯に答えた。
サブローは敬介の答えを受けて、黙っている。彼がどう考えているかは知らないが、敬介は自分の答えを曲げるつもりはない。
やがて、サブローは満足そうな笑みを返してきた。
(やはり、キカイダーと同じ道を行くか)
最初、敬介は罪に耐え切れず自殺をするのではないか、不安があった。そのような脆い心を持つのなら、仮面ライダーに対して失望をしただろう。
幸い、返ってきた答えは満足がいくものだ。サブローは敬介の答えに、かつてキカイダーがとった行動を思い出していた。
キカイダーは光明寺を殺した疑いをかけられたことがある。キカイダーを全面的に信頼しているミツ子はともかく、マサルの憎しみは激しかった。
なぜかマサルが気にかかるサブローはデスホイッスルを渡し、ダークが危害を加えるのを阻止しつつキカイダーとの決闘の機会を伺っていた。
キカイダーはマサルの憎しみを前にして、自分を信じられなければ、デスホイッスルを使って壊してくれ、と献身的な態度を見せた。
キカイダーを壊そうとするキリギリスグレイを阻止しながら、マサルの憎しみを打ち砕いたキカイダーを見たとき、サブローは思った。
支援
―― やはりキカイダーは自分が倒すに相応しい男であると。
気高き正義の魂、仮面ライダーXも持ち合わせている。
サブローは立ち上がり、フランシーヌに出発する旨を伝えて、再度敬介へと向きを変えた。
「キサマに俺が殺した、後輩村雨良の遺言を伝える。『バダンをぶっ潰してください』と、いうことだ。確かに伝えたぞ。
フランシーヌ、いくぞ。そいつは大丈夫だ、死にはしない。……おっと、敬介に放送の内容を伝えるのを忘れるな」
「サブロー、敬介がもう大丈夫だというのは本当ですか?」
「当然だ。そいつの瞳には本郷と同じく正義が宿っている。敬介、南に向かえば本郷と合流できるだろう。
もしキサマに俺と戦う気があるなら、詳しいことは奴に聞け」
サブローは伝えたいことをすべて伝え、敬介が放送に関しての情報を得たのを確認し、校門へとフランシーヌを連れて行った。
次の相手は、本郷猛だ。
サブローの気高い背中を見つめ、敬介は一人の男を思い出す。
自分を好敵手と呼び、決闘を仕掛けた男。アポロガイストを。
意思を持ったアポロガイストが凶行に走る自分を見れば失望し、敬介を殺そうと行動するだろう。
フッ、とリラックスした笑みが漏れる。フランシーヌの右腕には修理の跡が見えた。目覚める直前の様子から察するにサブローが直したのだろう。
アポロガイストのように組織に対して執着を見せず、悪の道から自分を救い、純粋にキカイダーを追う彼なら……
□
「……本郷は南にいる、と言ったはずだが?」
「俺には俺のやることがあるんでね」
サブローがKATANAの後部座席にフランシーヌを乗せ、約束の基地へと向かおうとしたとき、テントローにまたがった敬介が並んだ。
サブローとしては怪我をしている敬介相手に戦いを挑む気はない。ぶつかるのなら全力で。怪我が治った敬介と戦いたい、サブローはそう思っていた。
そのため、今追い払うために腕に取り付けたゼロバスターを向けた。
「俺は群れるのが嫌いだ。馴れ合うのもな」
支援
「気にするな。たまたま行くべき方向が一緒なだけさ」
下手な嘘を。そう切り捨てようとするサブローに、敬介が遮るように右手を向けた。
「俺は償わなければならない娘がいる。あの子に謝罪して、守ろうとした彼らの代わりに俺が守らなければならない。
行き先と、最後に見た足跡から見れば工業地帯コロニーへ向かった可能性が高い。だから、俺はシャトルで移動するために基地に向かう」
「…………なら好きにしろ」
サブローが不機嫌に告げ、ゼロバスターをしまう横でフランシーヌと敬介が互いに同行することを喜んでいた。
何か騙された気分だが、正義の味方としては筋が通っている。サブローに反論する糸口はない。
仕方なく、サブローは敬介の同行を許した。
「そうだ、サブロー。あの襲ってきた少女を覚えているか?」
「小物だ」
容赦なく切って捨てるサブローに、敬介は顔を曇らせる。別にサブローの言葉が気に入らなかったのではない。
彼女の様子に、敬介は見覚えがあった。いや、一種の共感だ。
「あの娘は……おそらく俺と同じだ」
「シグマだかバダンだかに洗脳されている可能性が高い、と言うわけか? 根拠はなんだ」
「洗脳された者の、特有の反応が似ている……簡単に言えば勘だ」
「勘……か」
「サブロー、本郷の鋭さはあなたもご存知のはずです。その後輩である敬介の勘を信じてみてはいかがでしょうか?」
「疑っているわけではない。が、こちらに来れば容赦はしないぞ、敬介」
「その前に……俺が見つけて説得する」
敬介の決意は揺るがない。あの長髪の少女も、自分が家族を奪った少女も、すべて救う。
それが敬介の贖罪。仮面ライダーの道であった。
本郷に再会するのも、自分を止めようとしたエックスに再会するのも、その後だ。
(俺に君への罪を……茂への罪を償うことは出来はしない。けど、戦い続ける。親父がくれたこの身体で)
償えないなら、戦えばいい。仮面ライダーZXが後々言われ、敬介が知ることのない言葉を胸に刻みながら。
【C−6校門/一日目・日中】
【ハカイダー@人造人間キカイダー】
[状態]:全身打撲。エネルギー小消耗。ある程度メンテナンス終了
[装備]:スズキ・GSX750S3 KATANA@仮面ライダーSPIRITS 、ゼロバスター@ロックマンX
[道具]:ハカイダーのPDA(支給品一式)、風見志郎のPDA(支給品一式)、バタフライナイフ@現地調達(左足に収納中)
[思考・状況]
基本思考:元の世界へ帰ってキカイダーと決着をつける。
1:D−5シャトル発射基地に行き、そこで敬介とは別れる。
2:傷が治った敬介といずれ決闘する。
3:第三回放送までD−5シャトル発射基地で1号を待つ。
4:V3以外の仮面ライダーを探す。
5:村雨良の遺言を仮面ライダー全員に伝えた。仮面ライダーに会い、破壊する。
6:参加者を全て破壊する(ただし、女子供、弱者には興味が薄い)
7:日付の変わる頃(二日目00:00)にゼロ、V3、凱と決着をつけため、スクラップ工場に再度向かう。
8:青い髪の女(ギンガ)は、敬介に任せる。
9:シグマを破壊する。
10:キカイダーに迫る、戦士に敬意。
※参戦時期は原作死亡後(42話「変身不能!? ハカイダー大反逆!」後)です。
※血液交換が必要のない身体に改造されています。
支援
【フランシーヌ人形@からくりサーカス】
[状態]:全身打撲、疲労、足首負傷、ギガアタックのダメージ、右腕修復(ただし、反応と動きが鈍い)、深い悲しみ、激しい動揺
[装備]:なし
[道具]:PDA(支給品一式):未確認支給品(0〜1)
[思考・状況]
基本思考:罪滅ぼしのために、主催者を倒す。
1:D−5シャトル発射基地に向かう。
2:ハカイダーを止める。
3:本郷たちと合流。
4:私は生命の水に溶けて無くなった筈では……
5:いつか、本郷やミクのような笑顔をしてみたい。
6:いずれラミアにあの歌を聞かせたい……ミクにも。
7:本郷が心配。
※原作死亡後(25巻第32幕微笑(後編))から参戦。
※コロンビーヌの姿を旧式のものだと勘違いしています。
【神敬介@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:胸部破損(大)、疲労(中)、全身に大ダメージ、生命の水を摂取、強い罪悪感、深い悲しみ、回復中
[装備]:テントロー@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:マグネット×2、支給品一式およびPDA×6(アルレッキーノ、神 敬介、ロボ、アラレ、シュトロハイム、城茂)
スモールライト@ドラえもん(残り四回)、阿紫花の長ドス(折れた)@からくりサーカス:アルレッキーノのPDA
ぎんのいし@クロノトリガー、液体窒素入りのタンクローリー@ターミネーター2 (D-3基地に放置)
タイムストッパー@ロックマン2(メカ沢の胴体部):ロボのPDA
はちゅねミクのネギ@VOCALOID2(E-3道路に放置)メッセージ大砲@ドラえもん(E-3道路に放置)
拡声器@現実(E-3道路に放置):アラレ、及びシュトロハイムのPDA。転送可能
HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2(城茂の死体付近):城茂のPDA
[思考・状況]
基本:仮面ライダーとして戦う。罪を償う。
1:ハカイダーとフランシーヌと共に、D−5シャトル発射基地に向かう。その後工業コロニーへ。
2:ドラス(名前は知らない)に謝罪後、守る。
3:青い髪の女(ギンガ)を救う。
4:他仮面ライダーと合流。
5:いずれエックスとも合流し、力をあわせる。
[備考]
※阿紫花の血により回復速度が促進され、胸の出血が止まりました。他に全く影響が無いのかは、次の書き手様にお任せします。
※第一放送の内容を知りました。
※フランシーヌ人形の『生命の水』を摂取し、自己治癒力が促進されています。“しろがね”と同じようになるのか、その他の影響があるかは次の書き手様にお任せします。
投下終了。
感想、指摘お待ちしております。
投下GJです!
ハカイダーとフランシーヌ人形の会話が、何とも言えないなあ。
それにしてもキカイダーとのことばかり考えてるハカイダーが、実にハカイダーしてるw
敬介は立ち直って贖罪を選ぶか。
ギンガを救う決意やドラスに出会うなど、行く道は厳しいものだろうが頑張ってほしいぜー
ハカイダーが実にかっこいい!
すっごくイカしてるぜ
投下乙です!
ハカイダー……キカイダーのことばっかり考えてるのに、カッコイイ! そんなお前が素敵だ!w
敬介も、漸く人として言葉を交わすことが出来た……感無量だぜ。しかし、ドラスへの贖罪にギンガの救済……
茨の道であろうとも、迷わず突き進め! 仮面ライダーX!!
フランシーヌも、どんどん人間らしくなっていくな〜……皮肉としか言いようが無いが。
内容で気になった点は、敬介がZXが後輩であることをあっさりと受け入れた点ですかね。
参戦時期から考えると、敬介はZXのバダンへの反逆は知っていたとしても、仮面ライダーとなったことは知らないはずですし。
GJでした!
超乙!
ギルハカイダーはサブローハカイダーとは別人説もあるんですが(根拠:LDのインスト)…まあいいや。
ところで、
だが、サブローには確信していることがある。脳を取り替えた場合、自分は自分でなくなると。
事実、サブローの知ることはないが、ギルの脳に取り替えた時に大幅な性能の低下と共に、別人と成り果てた。
パソコンで言えば脳はCPUにあたるのだろう。ハカイダーのスペックをギルの脳が扱えなかったのだ。
だからこそ、脳を変えたり電子回路に置き換えたりする自分は、キカイダーとの決着を望む自分ではない。
これの2、3行目はサブローが知らない事実を神視点で述べているわけですよね?
もっとわかりやすくハカイダー自身の考えと区別できませんかね。
もう1回乙!
投下乙!
ハカイダーかっけぇ!格好良すぎる!
というかみんながライダーにしたがってる気がしてならないw
敬介はギンガも救う気か……?
魔力ダメージなら治るだろうが、物理攻撃だと……死にそうだなw
688 :
Classical名無しさん:09/01/23 00:05 ID:KGHm7E2U
投下待ち
投下マダー?
延長出来る人だから、あんまり焦るようなこと言うなってw
気長に待とうぜ
ハカイダーにフランシーヌに敬介
はじまった頃には想像もしなかったパーティーだいいな、なんかw
獅子王凱、ゼロ、灰原隊長投下します
快調にサイドマシーンを走らせる凱は、ゼロに放送の時間であることを促され、一旦工場の駐車場へと止めた。
放送を聴くために凱はPDAを取り出す。ゼロの方を向くと、スクラップ工場のほうへ視線を向けている。
凱はそこでゼロがハカイダーとの決闘を約束していることを思い出した。
「ゼロ、ハカイダーのことを考えていたのか?」
「……ああ。おそらく、待っていればあいつは確実にここへくるだろうな。だが、俺たちに奴を待つ時間はない」
「……その通りだ。シグマを倒すため、本郷さんに合流しないとな」
ゼロは無言で頷いた。そのほかにも、ハカイダーを止めて、神敬介の凶行を止めなければならない。
彼らにはやることが多い。今はとりあえず、放送へと耳を傾けた。
「なに! メガトロン……あいつは生きていたのか!?」
「厄介だな……」
ゼロと凱が渋面を作り、互いに見合わせる。メガトロン、凱とハカイダーの決闘に割り込み、卑劣な手でチンクの誤解を広めている悪党だ。
彼が生きているとなると、チンクや風見に敵を増やすことになるだろう。なんてことだ。
(ハカイダー……気をつけろよ! そいつはきっと、お前も狙っている)
凱はメガトロンのようなタイプは恨みを持ち続け、執拗に狙う性格だと踏んでいた。ならば、自分や風見、ハカイダーに対して復讐を企てているだろう。もっとも、この放送だ。
ハカイダーも気づいているだろうと、凱は結論つけた。ただ、当のハカイダーは神敬介の相手に興味を注ぎ込み、メガトロンに対して一切意識を持っていかなった。そのことを凱が知る手段はない。
もう十三人も脱落している。その中には風見の後輩である城茂も入っていた。
「どういうことだ? ナタクが嘘を吐くタイプには見えないが……」
「さあな。ナタク自身から聞き出さないことには、結論を出しようがない」
ゼロの言うとおりだ。引き返し、彼から聞き出そうと迷っていると、ゼロに止められた。
「あそこにはチンクも風見もいる。あいつらなら、何かしらナタクが企んでいたとしても、対応が出来るだろう。
それに、企みなど苦手なタイプだろうしな」
それもそうか、と凱は思うが、納得しきれない。ナタクの真摯な態度を疑っているわけではないが、城茂が死んでしまった事実は何か、確認をしたい。
もやもやとした物を持ちながらも、ゼロが他に優先すべきことがある、と声をかけてきた。確かにその通りだ。
敵が減っていない。凱は唸りながらも、早めに探し人を見つけるのが良手だと結論をつけた。仲間を信じることもまた、勇気だ。
「ゼロ、行こう」
「…………ああ」
僅かにゼロの反応が鈍いことに気づきながらも、いつもの調子を取り戻したのを確認して、凱はアクセルを回した。
ゼロは放送にエックスの名がないことに安堵をし、いずれ合流するだろうと楽観した。
仮面ライダーの城茂が死んだことが意外であり、ナタクに対して疑心を抱く結果になる。
また、チンクや風見なら対応できるだろう、というのも本心だ。チンクは向こう見ずなところがあるが、風見のフォローが入れば問題はない。
ドラスも頭が悪いわけではないため、ナタクでは三人を騙しきれない、と結論をつけている。
(それにしても……ロックマン? なぜだ、この名に俺の身体が昂ぶる)
知らぬ名。しかし、その響きにどこか懐かしさをゼロは感じていた。
(もっとも、死んでしまってはこの理由を探ることは出来ないのだがな)
ゼロは寂しそうに、ロックマンの名を頭の中で反芻させた。
□
放送を聴き、紺の背広を着ている灰原はサングラスを位置を調整して頭の中に情報を入れる。
十三人の死亡者。それはすなわち、殺し合いを行なっている性能の高い参加者の存在を示していた。
その中にロックマンがいるが、灰原は特に反応は示さない。暗闇の中、灰原はここを通るであろう存在を待ち続けた。
放送時に通らずに済んで助かった。一応、スクラップ工場で確認した位置から、ここまでに来る前に放送は終えると計算はしたのだが。
灰原はすでにここに向かってくる相手を確認している。隠れているのは、これから自分がすることに二人がどう対応するか知りたかったからだ。
その結果灰原は死ぬのかもしれない。だが、それならそれでも構わなかった。
己が命に執着はない。すべては大神のために。灰原は訪れる二人を待ち続けた。
□
凱は道路を進み、スクラップ工場の傍を通り過ぎた。二車線道路を走り抜け、サイドマシーンを右折させる。
右手前にゴミが置かれているが、生活観があるわけではない。やたら積まれている残骸。そしてダンボール。
何の変哲もない光景だった。ゴミが爆ぜるまでは。
「目暗ましだとッ!?」
凱が叫び、サイドマシーンをドリフトさせる。サイドマシーンのサイドカーに、ゼロを乗せているはずなのだが、その機動力に衰えはない。
やはり凄いマシンだ。凱は内心サイドマシーンの性能のよさを褒める。
サイドマシーンを制御しながら凱は正面を向く。ダンボールから人影が出て、太陽を背に何かを振り上げている。
凱はサイドマシーンを操るの必死だ。それでも、凱に焦りはない。
凱の隣にいるゼロが跳び上がり、背中のサーベルの柄に手をかけていた。
ゼロが影と鍔迫り合い後、反動を利用して退いた。降り立った人影はようやく擬似太陽光から逃れ、姿を現す。
背広を着た、SPを思わせるサングラスの男。その男は容赦なくゼロへと迫る。
対するゼロは、
「ゼロッ!? 避けろッ!!」
一歩も動かず、襲撃者が間合いを詰めた。凱はサイドマシーンの驚異的な馬力にまだ振り回されている。助けに行けない。
襲撃者が刀を振り下ろした。
「なぜ、こちらが振り下ろさないと分かった?」
灰原は殺気を込めて刀を振り下ろした。なのに、目の前の赤い鎧の男は避けず、ただ立っているだけだった。
刃はゼロの首に当たるか当たらないかの微妙な位置で静止している。灰原はスクラップ工場に備え付けられているゴミ捨て場にて、二人の実力を試すためにダンボールに隠れて奇襲したのだ。
殺気を交えているため、この襲撃が敵対勢力と認識するには充分のはず。
「簡単なことだ。殺気が強すぎる。襲撃前はほぼ殺気がなかったくせに、襲い掛かる時は異常なほど殺気に満ちていた。
まるで、察知して迎撃しろといわんばかりにな」
筋の通った相手の言い分に、灰原は納得する。相手に生き残って欲しい、戦力を失いたくないという判断のためとはいえ、詰めが甘かったようだ。
仕込み刀の刃を収め、灰原はサングラスを取る。
「試すような真似をしてすまなかった。俺は灰原。CCRの隊長についている」
こちらの謝罪に金髪の男は頷いて、ゼロと短く名乗った。
□
「大まかなところは把握した。ならば俺は修理工場へと向かおう」
「そうしてくれると助かる。俺たちと会った証拠に、このリボンを持っていくといい」
「やれやれ……でも灰原さん、彼らには俺たちにしたようなことは、ごめんだぜ」
凱の言葉に灰原は頷く。さすがに使える味方と分かっている連中に同じことはしない。
灰原は彼らから、仮面ライダー、ドラス、チンク、ギンガ、ボブ、エックスなるものが味方だと情報を得た。
もちろん、仮面ライダーの中でも神敬介という人物は、暴走中であるということもだ。
ボイルド、スバル、メガトロンなるものは要注意人物。特にメガトロンは誤報も広げているとのことだ。
情報のかく乱とは、賢い相手だと灰原は思う。戦闘を左右するのは一にも二にも情報だ。
情報処理能力の高い諜報員が一人いるだけで、組織としての自由度は大幅に上がる。
「ナタク……という男への警戒と城茂の確認も、俺が行なう。ハカイダーとやらの処理に向かうがいい」
「おいおい、俺たちはハカイダーを倒しにいくんじゃない。説得に行くんだ」
「それは……凱、君の感情で決めたことか?」
「感情とは違うな。勇気……そう、俺の心が決めたんだ!」
二ッ、と爽やかな笑みを凱は灰原へと向ける。この男はロックマンやかつての部下のように、感情で力を爆発するタイプだろう。
ちなみに、彼らにはロックマンはグレイ・フォックスが殺したと伝えている。
致命傷を負わせたのはグレイ・フォックスであるため、間違ってはいない。
「ダンボールに隠れるって発想はなかったな」
「支給品の説明に、隠密行動用として被るのが推奨される、とあったからその通りにしたまでだ。
それに、状況さえ整えれば君たちのようにかかる者もいる」
「ああ、あれには驚いた。じゃあ、ドラス君たちを頼む、灰原さん!」
灰原はああ、とだけ呟いてから頷いた。合流地点は決めている。日付の変わる頃、修理工場へと集合すると。
その前に殺人者に修理工場を占領された場合は、E−3の軍事基地へと集合場所を変えることも確認している。
灰原はこの付近に液体金属のロボットがいることを告げて、二人が去っていくのを見送った。
振り返り、灰原は真直ぐに修理工場へと足を向ける。
(あの二人は、使えるな)
次は修理工場にいるメンバーだ。灰原は内心、そう呟いた。
急に灰原は立ち止まり、PDAの画面へと視線を向ける。
(そういえば、このダンボールを使った戦法……なかなか有効だな)
思い出したように、灰原は自分が手に入れたアイテムについて評価した。
【F-3 西端 道路/一日目 日中】
【獅子王凱@勇者王ガオガイガー】
[状態]:健康、揺るがない勇気、チンクの妹とその仲間の死に悲しみ、サイドマシーンを運転中。
ナタクに疑問(嘘を言っているとは思っていない)
[装備]:電磁ナイフ@仮面ライダーSPIRITS(右腕に収納)、サイドマシーン@人造人間キカイダー
[道具]:支給品一式、打神鞭@封神演義、グランドリオン@クロノトリガー
[思考・状況]
基本思考:シグマを打ち倒し、この殺し合いを止める。戦う力を持たぬ者、傷ついている達を保護し、守り抜く。
1:左上コロニーまで行き、そこから虱潰しに全エリアを巡る。
2:ハカイダーを更生し、勇者にしたい。それが不可能ならば、今度こそ倒す。
3:本郷、茂、ギンガ、エックス、タチコマ、T-800(名前は知らない)と合流。ボイルド、スバル、メガトロン、グレイ・フォックスは警戒。
4:同じ目的を持った仲間を探す。
5:日付が変わる頃、スクラップ工場もしくはE−3の軍事基地へ向かう。
[備考]
※風見、チンク、ドラス(スバルに関すること以外)、ゼロと情報交換をしました。
※Zマスター撃破直後からの参戦です。
※チンクから情報を得ました。
※制限の影響により、グランとリオンは出現する事が出来ません。
※凱が見た村雨の写真は原作五巻に出てきたものです。
※風見を強く信頼しています。同時に勇者と認定。
【ゼロ@ロックマンX】
[状態]:左膝を破損(修復中)、全身のアーマーに大きな傷(修復中)、疲労(小)、エネルギー消費(大)、
ノーヴェの死に悲しみ、確固たる決意、膏薬と包帯を纏っている、サイドマシーンのサイドカーに乗っている。
ナタクに疑問(嘘を言っている可能性を考慮)
[装備]:チャージキックの武器チップ@ロックマンシリーズ、カーネルのセイバー@ロックマンX4、トリモチ銃@サイボーグクロちゃん
プラ膏薬とポリ包帯@ザ・ドラえもんズ、謎の金属片(マルチの残骸から回収)
[道具]:支給品一式 PDA×2(ゼロ、村雨) 不明支給品0〜2(未確認)、空っぽの平凡なデイバッグ@ゴミ処理場
[思考・状況]
基本:シグマを倒す。イレギュラーに容赦はしない。
1:左上コロニーまで行き、そこから虱潰しに全エリアを巡る。
2:情報交換が終わり次第、回復を行う。
3:凱と共にハカイダーを更生したい。更生に失敗して、凱が倒せなかった時は、自分がハカイダーを倒す。
4:ハカイダーに再会できない場合、日付の変わる頃(二日目00:00)にハカイダーと決着をつけるため、スクラップ工場に再度向かう。
5:日付が変わる頃、スクラップ工場もしくはE−3の軍事基地へ向かう(ハカイダーしだいによっては、凱一人を向かわせる)。
6:本郷、茂、ギンガ、エックス、タチコマ、T-800(名前は知らない)と合流。ボイルド、スバル、メガトロン、グレイ・フォックスは警戒。
7:シグマ、何を企んでる?
8:ドラスの変身能力が気になる。
[備考]
※ノーヴェ、風見、チンク、凱、ドラス(スバルに関すること以外)と情報交換をしました。
※ノーヴェたちを生体パーツを使用したレプリロイド(のようなもの)と解釈しました。
※ノーヴェから時空管理局と平行世界に関する知識を得ました。
※参戦時期はX4のED〜X5開始前のようです。
※液体金属が参加者に擬態している可能性に気づきました。
※支給品にゾンダーメタルがある可能性を考えています。
※一〜二時間弱で、傷は塞がります。
【F-3 東端 道路/一日目 日中】
【灰原@パワポケシリーズ】
[状態]:打撲
[装備]:リシュウの仕込み杖@スーパーロボット大戦シリーズ
[道具]:支給品一式(PDA)×2、ゆうしゃバッジ@クロノトリガー。ガトリング砲@サイボーグクロちゃん(弾薬三十〜四十パーセント消費)
ダンボール@メタルギアソリッド、大型スレッジハンマー@ジョジョの奇妙な冒険、五光石@封神演義、アトロポスのリボン@クロノトリガー
[思考・状況]
基本思考:シグマとその協力者達の捕獲、不可能であれば破壊して本社に帰還する。
未知の技術の情報収集、及び回収して大神に持ち帰る。
1:修理工場を目指し、ナタクの真意を探る。
2:アトロポスのリボンで、修理工場組(チンク、ナタク、風見)の信頼を得る。
3:ロックマンやCCR時代の部下のように、感情を力に変える参加者と組む。
4:日付が変わる頃、スクラップ工場もしくはE−3の軍事基地へ向かう(ゼロ、凱との合流のため)。
5:この戦場からの脱出。
6:ダンボールはなかなか使える。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です
※T-1000(名前は知らない)の参戦に気付きました。
投下終了。
タイトルは、「この箱を見ていたら無性に被りたくなった」です。
指摘、感想をお待ちしております。
スネェェェェェク!!
隊長生き残るためならなんでもするなw
ロックマンとゼロは微妙なつながりがあったけど会えなかったのが残念だなぁ
乙
ちょwさすが最強のステルス兵器w
灰原の状態表の、修理工場組にドラスの名前がないのが疑問
投下乙!
万能装備だぞ、ダンボール!
ナタクは企むとかそういう以前の奴だからなぁ……w
それにしても、完全に風見がチンクの保護者って認識で吹いたw
投下乙です!
スネェェェェェェク!! まさかここでダンボールが活躍とは意外すぎるww
また、ロックマンの名前に何かを感じるゼロもまた良い感じでした……しかもその下手人と直後に遭遇するのが如何にも皮肉で。
指摘になりますが、ゼロの状態表の2は前回の消し忘れでは無いでしょうか?
指摘事項はただのミスですので、wiki登録後修正します。
気付けば420k。投下もありそうだし、そろそろ次スレ準備ということで名簿を修正して張ってみる。
3/5【仮面ライダーSPIRITS】○本郷猛/○風見志郎/○神敬介/●城茂/●村雨良
3/5【魔法少女リリカルなのはStrikerS】○スバル・ナカジマ/○ギンガ・ナカジマ/○チンク/●セイン/●ノーヴェ
3/4【からくりサーカス】○フランシーヌ人形/○コロンビーヌ/●パンタローネ/○アルレッキーノ
2/2【ロックマンXシリーズ】○エックス/○ゼロ
2/2【ターミネーター2】○T-800/○T-1000
0/2【攻殻機動隊】●草薙素子/●タチコマ
1/2【サイボーグクロちゃん】●クロ/○ミー
2/2【ToHeart】●マルチ/●セリオ
2/2【ザ・ドラえもんズ】●ドラ・ザ・キッド/●王ドラ
1/2【マルドゥックシリーズ】●ルーン・バロット/○ディムズデイル・ボイルド
2/2【パワポケシリーズ】○灰原/○広川武美
0/1【ロックマンシリーズ】●ロックマン
0/1【ジョジョの奇妙な冒険】●ルドル・フォン・シュトロハイム
0/1【魁!!クロマティ高校】●メカ沢新一
1/1【勇者王ガオガイガー】○獅子王凱
0/1【魔法先生ネギま!】●絡繰茶々丸
1/1【封神演義】○ナタク
0/1【Dr.スランプ】●則巻アラレ
0/1【VOCALOID2】●初音ミク
0/1【クロノトリガー】●ロボ
0/1【サイボーグ009】●009(島村ジョー)
0/1【THEビッグオー】●R・ドロシー・ウェインライト
1/1【スーパーロボット大戦シリーズ】○ラミア・ラヴレス
0/1【ゼノサーガシリーズ】●KOS-MOS
1/1【人造人間キカイダー】○ハカイダー
1/1【仮面ライダーZO】○ドラス
1/1【ビーストウォーズ超生命体トランスフォーマー】○メガトロン
1/1【SoltyRei】○ソルティ・レヴァント
1/1【メタルギアソリッド】○グレイ・フォックス
0/1【PLUTO】●ゲジヒト
0/1【究極超人あ〜る】●R・田中一郎
25/50
おまけ
今までなかった生存者のみver
3/5【仮面ライダーSPIRITS】○本郷猛/○風見志郎/○神敬介
3/5【魔法少女リリカルなのはStrikerS】○スバル・ナカジマ/○ギンガ・ナカジマ/○チンク
3/4【からくりサーカス】○フランシーヌ人形/○コロンビーヌ/○アルレッキーノ
2/2【ロックマンXシリーズ】○エックス/○ゼロ
2/2【ターミネーター2】○T-800/○T-1000
2/2【パワポケシリーズ】○灰原/○広川武美
1/2【サイボーグクロちゃん】○ミー
1/2【マルドゥックシリーズ】○ディムズデイル・ボイルド
1/1【勇者王ガオガイガー】○獅子王凱
1/1【封神演義】○ナタク
1/1【スーパーロボット大戦シリーズ】○ラミア・ラヴレス
1/1【人造人間キカイダー】○ハカイダー
1/1【仮面ライダーZO】○ドラス
1/1【ビーストウォーズ超生命体トランスフォーマー】○メガトロン
1/1【SoltyRei】○ソルティ・レヴァント
1/1【メタルギアソリッド】○グレイ・フォックス
25/50
来週の投票を目処に人気投票企画中
詳細はしたらばにて
715 :
Classical名無しさん:09/01/26 00:02 ID:y46KHzG.
投下待ち
716 :
Classical名無しさん:09/01/26 01:12 ID:y46KHzG.
破棄とか…残念
残念だけど、予約入ってなかったら再予約して投下してもらいたいものだな
もちろん、他の人が予約するのも大歓迎だけど
自分はとても遅筆なようです。
掲示板の方にも書きましたが、間に合いそうにないので予約を破棄いたします。
お待ちしていた皆様、誠に申し訳ありませんでした。
719 :
Classical名無しさん:09/01/29 22:16 ID:C.i89xkE
二人とも完成は目指して欲しいなぁ
>>718 ご報告乙です。
これに懲りずに頑張って下さい。
>>719 そういうことは胸の内に秘めておこうぜ?
T-800投下します
T-800は首と胴の分かれた城茂の死体から離れていく。このままこの場にいるのは、茂を殺した相手の格好の的だからだ。
城茂の戦闘力は跳びぬけており、生きておればシグマやスカイネット、T-1000に対する戦力となりえた。
有効な戦力が減ったことを自覚しながら、T-800は傍に放置されている大型バイクHARLEY-DAVIDSONのIDをPDAで読み込んだ。
そのまま歩いて場を離れる。周りは一面雪景色。ここでバイクに乗るのは自殺行為だ。
テントローのような超性能バイクを失ったのは痛手だ。雪でも問題なく走破できる。
あるいは、バイクの運転技術が異常に優れているか。T-800には雪の中でバイクを乗りこなせる、仮面ライダーのような操作技術はない。
時間はかかるが、歩いて移動するほか手のとりようがなかった。
□
途中、基地によったのは放送を聞き逃さないためである。
雪に足をとられたのは、重量ゆえ仕方のないことだ。放送までに剥き出しの金属部分を覆うため、人工皮膚を縫いつける。
次に出会う人物に警戒されないためには、有効な手口だ。外見は整えて損はない。
T-800は無表情に基地内部を見回す。かなり大きな規模の基地のようだ。
内部の大型トラックも通ることが可能なほどの広さの通路を歩き、戦闘の痕跡を発見する。
壁や床が衝撃でへこんでおり、爆発すらも想定している基地の内部に加えられた衝撃の大きさを推定する。
並みの衝撃ではないだろう。頑丈が売りのT-800でも一際大きな衝撃を、三度耐え切れる可能性は低い。
ナタクや城茂に実力で匹敵する参加者が、殺し合いに乗っている。重要な情報だ。
ドラム缶のようなロボットの頭を発見するが、T-800はただ無言で腰を落ち着ける部屋を探した。
情報処理専用室であるだろう。デスクトップ型パソコンの並ぶ部屋へと、T-800はたどり着く。
ちょっとしたオフィスのような部屋で、T-800はただ黙々と作業を続けた。
しばらくして、時計の針が並ぶ。PDAの液晶が光り、定時放送を開始する。
禁止エリアは、前回選ばれたコロニーとは別のコロニーのエリアを指定していた。
同じコロニーで禁止エリアを増やさないのは、壊しあいを円滑に進めるためだろう。
壊しあいを効率に勧めるには、参加者同士の出会いを促す必要がある。禁止エリアの設定は、そのための物だ。
だが、禁止されたエリアが多ければ多いほど、参加者はそこを迂回して進まねばならない。
参加者の位置を把握しているだろうシグマは、効率よく参加者同士が殺しあうように禁止エリアを誘導しているはずだ。
前回は発電所の一部と雪原コロニーの真ん中。そこに何人かが移動を考えず固まっていたとT-800は推測する。
ならば、市街地コロニーか工業コロニーに今は人が集まっている。金属がむき出しになった身体は、僅かな時間でほころびを覆うのは無理だ。
修理工場にて人工皮膚のパーツがあるか確認するのもいいだろう。
そして、スバルたちの中で死亡者はタチコマ。僅かな時間とはいえ交戦したため、実力はある程度わかる。
タチコマが死んだということは、戦闘力の保持者との激突があったのだろう。ドラスと名乗った少女がT-1000であったのなら、裏切りの発生の可能性が高くなるのだが。
今現在、T-800の持っている判断材料は少ない。一旦、スバルたちの存在を保留する。
城茂の語った『仮面ライダー』は全員無事だ。茂の言葉どおりだとすれば、全員が茂に匹敵する実力者。
シグマに対抗できる戦力。合流するために移動する必要がある。T-800は次にどこに向かうのが効率的か、計算を始めた。
T-800は修理工場へと向かうことに決めて、次にデスクトップ型のパソコンの電源をつけた。
シグマがここに情報を残すということに期待するのは、愚かであろう。罠がないかの確認。
T-800の認識はその程度であった。デスクトップに表示された二つのファイル。中身はテキストファイルにシャトルの説明が書かれていた。
また、もう一つのファイルを開いて中身を確認する。音楽ファイルが一つ。
T-800はそのファイルを凝視して、センサーでパソコンに異変がないか調べる。
結果は白。あとはこのファイルを開き、中身を確認するだけ。中身はウィルスか、それとも何らかのメッセージか。
T-800は淡々と音楽ファイルを起動させた。液晶モニターに感情の宿らない視線が向けられる。
やがて、パソコンに付属されているスピーカーに大音量の音が流れた。
『ラブ♪ ラブ♪ ビッグバン♪♪』
T-800の聴覚センサーに、甘ったるい女性の歌声が届いた。
部屋を揺るがすほどの大音量がリピート再生する中、T-800は冷静にこの音楽ファイルの価値を計っていた。
何らかの罠かと疑ったものの、部屋も基地内部も特に異変を感知しない。
ならばこの音楽ファイルにいったい何の価値があるのか、考える必要がある。
(ラブ、ラブ、ビッグバン……ビッグバンを愛している……爆発を愛している?)
くだらない言葉遊びだ。しかし、この殺し合いが何度も行なわれていると考えるならどうだろうか?
短時間でこのコロニーを用意できるとは考えにくい。シグマが何らかの実験で、何回もの壊しあいを行なっていたと仮定する。
冷静に考えると、この壊しあいが第一回だと考えるには疑わしいところはあった。
この基地もそうだが、茂を介抱した小屋にも年季を刻んだような跡があった。築何年も立っている雰囲気が、T-800が遭遇した建物には感じられているのだ。
壊しあい――仮にバトルロワイヤルと名づけるとする――は何度も開催されている。そう考えるのが自然だろう。
そして、何回目かの参加者の中に体内の爆発物の消去が出来る方法を見つけたとする。
あからさまなメッセージなど、シグマは残しては置かないだろう。ならば何らかのメッセージを歌詞としてこの音楽ファイルに残したとすれば、おかしくはない。
おかしなメロディと歌詞はシグマをかく乱するためのカモフラージュだ。
T-800は流れていく歌詞に意識を向けた。隠されたメッセージだと考えると、声色にどこか必死さが見て取れる気がした。
(確率としては10%未満だが……切り捨てるにしては惜しい数字か。
あなたのことが待ちきれない夜……つまり、夜において何らかのヒントか、爆発物を除去できる可能性があるということか?
ドキドキしているハート……人間でいう心臓部分。確かに爆発物は心臓部分に埋め込まれている。セインという娘は、心臓部近くが爆破した。
ガラスの心……爆発物はガラスに関連した材質か? いや、あまりにもそのまますぎる。
抱きしめられたら……何を、何が抱きしめる必要がある? お月様……ここはコロニーだ。何らかの暗喩と見るのが普通だな。
ジンジンダーリン……一番意味がわからない単語。つまり暗号と思わしきワードだ。このワードを解読できる参加者がいるか、確認を取るか。
……やはり情報が不足している。次の参加者へと接触を第一目標に変更。この歌詞を解読できるものを探す。
最終目的……シグマ及びT-1000の破壊。そして、本来の任務へと復帰。
そのために修理のついで、工業地帯コロニーへと移動)
T-800は目的を定め、PDAへと『ラブラブビックバン』の音楽ファイルを移し始めた。
全ての作業が終了したのを見届け、T-800は淡々とした動作で立ち上がり、力強く歩む。途中で見た死体も意に介さない。
耳に流れた、不思議な音楽すらも。
【D-3 基地/一日目 日中】
【T-800@ターミネーター2】
[状態]:全身に損傷(特に背部)、所々の深い傷からは金属骨格が露出
[装備]:滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、コルトS.A.A(6/6)
HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2
[道具]:PDA(T-800:ラブラブビッグバンの音楽ファイル入り)、コルトS.A.Aの弾丸(25/30発)
[思考・状況]
基本思考:シグマを打ち倒して殺し合いを破壊し、本来の任務に戻る。
その為に仲間を集める、殺し合いに乗る者には容赦しない。
1:状況の把握。
2:修理工場を目指して東に向かう。
3:スバルと合流する。
4:スバルの仲間(ギンガ、チンク、ノーヴェ)を見つけ、合流する
5:T-1000の破壊
6:発見した音楽ファイルに秘められたメッセージを解読
[備考]
※本編開始直後からの参加です。
※スバルに、ボブと呼ばれています。
※スバルの住む世界、魔法、ギンガ、チンク、ノーヴェに関する情報を得ました。
※仮面ライダー(本郷、風見、敬介)についての情報を得ました。
※地中にいた為、神敬介の接近や行動に気付きませんでした。
【支給品?紹介】
【ラブラブビッグバン@パワプロクンポケットシリーズ】
パワポケ8の彼女候補の一人、星影ヒヨリが歌う歌。
いわゆる電波ソング。
詳しくは→
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2429457参照
支援
投下終了。感想指摘お待ちしております。
投下乙!
ちょっと待てラブラブビッグバンwwwww
そして真剣に考察しないでくれT-800wwww
とはいえ、何げに何度か行われてる可能性、とかは気になる考えだ……GJでした!
投下乙です!
ラブラブビックバンwww洗脳ソングじゃないですかw
しかし、その電波ソングを真剣に聞いているT-800……なんというシュールな光景だw
とりあえず壊し合いの会場にそんなファイル置くなんてシグマは何がしたいんだと言っておこうwww
投下乙!
おぉ、ボブおじさんは冷静で頼りになる……ってえええw
ラブラブビックバンをそんな真面目に考えなくてもw
いちいち歌詞の意味を考察するのがなんともシュールすぎるwww
ではV3、ボイルドを投下します。
二回目の定時放送。
無機質な音声によって行われた、簡潔過ぎる内容。
読み上げられた内容――12名の参加者の名前、追加された禁止エリアの二点。
どちらも参加者にとっては重要な事柄。
命を落とす可能性――禁止エリアを知る事で、その確率を少しは下げる事が出来る。
そして12名の男女の名前――新たな死者/神に見放された者達/物言わぬ脱落者達。
何を思っただろう。
彼ら彼女らは死の間際に一体何を。
答えの出ない疑問。
否、答える者も答えられる者も居ない――所詮、意味を持たない問いかけ。
そう、必要ないのだ。
理由を知りたいと思えども、知ったところでそれをどうする事も出来ない。
死に絶えた者はもう戻っては来ない。
覆せない自然の定理。
死者の事を振り返る暇があれば、先ず己の状況を打開する。
油断は出来ない――死と隣り合わせのため、用心に越した事はない。
彼もそう考え、振舞うつもりだった。
冷静に、極めて冷静に――心を静めて。
赤い戦士――彼を簡単に称するならその表現で事足りる。
仮面ライダー/力と技の戦士/V3――彼の名は仮面ライダーV3。
この殺し合いでもかなりの実力者である彼は一台のバイクを走らせていた。
そう――ある男と出会うまでは。
「――グッ!」
赤い影が地面に倒れ込む。
背中からしたたかに打ちつける。
辛うじて受け身を取り、同時に白いマフラーが塵を纏う。
黄緑色の複眼、赤と白の仮面の異形――V3がくぐもった声をもらす。
言葉の次に飛び出たものは――赤い雫。
鮮血が自身を汚す――明確な合図/擦り減った証拠――V3の命の灯が、確実に。
見ればV3の全身には不規則な傷痕が見える。
打撲痕/弾痕――V3と対峙する者により刻まれた産物。
「強い……ガハァッ!!」
一声。
再び後方にV3の体躯が吹き飛ぶ――其処に長く伸びたものを残して。
それはV3の身体を蹴り飛ばした張本人。
今現在、V3と戦闘を行っている者が叩きこませた右足。
そう、彼は――一眠りすらも許されない存在。
エリート空挺部隊員/証人保護プログラム所属構成員/委任事件捜査官――かつての、今の肩書き。
そして一つの――“虚無”
「ディムズデイル、ボイルド……!」
V3が吐いた言葉――ディムズデイル・ボイルド。
それが彼の名前だった。
◇ ◇ ◇
ほし
(……馬鹿な、茂……!)
時間は少し遡る。
V3――変身を行った風見志郎は放送を聞いていた。
死んだと思われる12名の参加者――その内の一人にV3は大きな驚きを見せる。
無意識に両の拳を握る。隠しようのない感情の現れ。
城茂――仮面ライダーストロンガー/七人目の仮面ライダー/掛け替えのない後輩。
また一人、頼れる戦士が倒れていったという事実がV3の意識に深く突き刺さる。
到底信じられない。ナタクとの戦いの後何者かに襲われたのだろうか――疑問は消えない。
まさかあの茂が、仮面ライダーストロンガーがこんな場所で――だが、受け入れなくてはいけない。
既に仮面ライダーZX/10人目の仮面ライダー/未だ日は浅い後輩――村雨良は死んでいる。
彼らの死にいつまでも囚われるわけにはいかない。V3には目的がある。
シグマ/BADAN/殺し合いに乗った者達――彼らの完全なる打倒。
故にV3は進む。
彼らの死を己の記憶――“メモリー”という頑丈な箱にしまっておく。
この殺し合いを仕組んだシグマへの怒りが燻ぶる。
発散の対象――生憎、手頃なものが見えなかったため拳は力なく下がる。
(すまん、茂……今の俺には何も出来ん。せめて、ユリ子君と一緒に……安らかに眠っておけ。俺は行かなくてはならない)
そしてやるべき事の中から一つを選ぶ――自分が最も適していると思える事象。
説得――高望みかもしれない。
そう容易くはいかないだろう。そもそも成功する確率も果てしなく低い。
無茶だ。今、自分の身体を別の人物が支配したならばそう叫ぶかもしれない。
しかし、V3は知ってしまった。
男の抱える闇の一片を――のっぺりとした顔/自分に銃を向けた男の言葉から。
きっかけは定かではない。
だが、別にそんな事はどうでもいい。重要なのは自分が何をするべきなのか。
“人の笑顔などに価値はない”――確かにあの男が言った、吐き捨てるようなワード。
その認識だけは覆したい。そう思えばいてもたってもいられない。
何かを、大切な何かを置き忘れたような瞳――男の青灰色の双眸が、今でもV3の脳裏に焼きつく。
彼には知ってもらわなければならない。
絶望に身を沈めるのは未だ早い。
あくまでもそうしたいのであれば――先に倒して見せろ/自分を乗り越えてからにしろ。
今度こそお前に確かな希望を見せてやる――俺のプライドに賭けても。
生憎、黙ってやられるつもりは――これっぽちもないがな。
高らかにそういってやりたかった。
ヴィジョンが浮かぶ――きっと無傷ではすまない、あの男との接触の光景。
今度こそ勝負をつける自信はあった。確かな実感が身体中を駆ける。
何故なら、数時間前に戦った自分と今の自分の違いがあった。背負ったものの数が違う。
チンクに加えて新たに手を合わせた仲間達――ゼロ、獅子王凱、そして――ドラス。
彼らのためにも此処で力尽きるわけにはいかない。
守るべきものために、どこまでも強くなれる存在――仮面ライダー/あの日貰った名前を自分は冠しているのだから。
よってV3は徐にバイクから降り、口を開く。
「久しぶりだな、ボイルド」
真っ黒なコート。少し汚れが見えるが大した差異はない。
以前戦った時と何も変わらない。
強靭な四肢にも欠損はない――男/ボイルドがこの殺し合いを順調に生き抜いた証。
ボイルドの反応を油断なく窺うV3。
返ってきた言葉。それもまたあの時と良く似た問いかけ。
「……ウフコックを見なかったか?金色の――」
「知らんな」
介入。ボイルドの言葉の流れを押し止める。
まるで自分との再会よりも、ウフコックという存在の方へ気が向いている様子。
お前など眼中にない――冷たい視線がそう言っているように感じた。
良い気はしない。
しかし、同時にV3は思う――何者だ、ウフコックとは――と。
以前の会話で得た情報――金色の鼠/様々な武器に変わる/想像しがたい存在。
ボイルドが欲する理由。やはり己の武器として利用するためか。
そこにはどんな関係が待っているのか。
一方的に使役するのか/互いに身を預け手を取り合うのか――疑問が過る。
ぐるぐると一瞬の間に――永遠とも取れるような時間の中で。V3は思考を張り巡らす。
その答えを探ろうと次の言葉を紡ごうと口を動かす――が、遅い。
「そうか、ならいい」
既にボイルドの両腕には黒光りする銃が握られている。
弾けるような音――咄嗟に身を飛ばす赤い影――V3は後ろへ跳び退く。
想定内の事態/最悪の状況/半ば決まりきっていたような展開――V3は小さな舌うちをうつ。
やはりこうなったか。
再び地に降り立ったV3はそう思いながら、眼前を見る――銃口と視線が合う。
冷たい――酷く冷徹なものに見える窪みの先にはボイルドの表情。
依然、V3は気づかない。ゆっくりとボイルドが口を開く。
「始めよう、化け物(モンスター)……化け物同士の戦いを」
以前とは違う何かを――ボイルドの瞳が映し出していた事に。
◇ ◇ ◇
ボイルドは感触を確かめる。
両の銃のグリップを掴むように握る。
今しがた力を込めて放った右足による蹴り――結果はV3の身体を後方へ飛ばした。
十分な手応え。既に何発かの拳骨や銃弾は加えている。
更に追撃と言わんばかりに左の引き金を絞る――銃弾が躍るように飛び出す。
螺旋状に進む二つの塊――眼が回ってしまいそうな回転。
弾丸の軌道を眼で追う最中、ボイルドは感知する。
V3――己と相対する者が呟いた言葉。
“デイムズデイル・ボイルド”――己の名前/何故この場で呟く必要があるのか――わからない。
同時に何故か胸の奥底で疼くものが一つ――その理由もまた理解出来ない。
どうでもいい――強引に結論づけ、再び戦場の空気に身を晒す。
横っ跳びに銃弾を避け、そのままスクラップの山に飛び込むV3を追う。
そこでボイルドはまた気づく。戦いの場がゴミ処分場へ移った事を。
V3の目的の一つの達成の瞬間。ボイルドに知る由はないが知っていても同じ事だっただろう。
今のボイルドにとって、戦場の変化などどうでも良かったのだから。
油断はない。
しかし、ボイルドは自分の反応が遅れていると感じる。
再び引き金に掛けた指に力を――そんな事はない、誰かにそう言うように。
だが、不思議と自信が湧かない。本当にそう言えるのかが。
段々と否定の感情すらも薄れゆく――それがどうした、と――逆に開き直る程に。
目の前に広がる現実に意識を戻す。
銃弾が散乱したゴミくずを宙へ散らす。V3は容易に近づけない。
デザートイーグル、ハカイダーショットの弾幕がV3を容赦なく狙う。
その事がV3の侵攻を防ぐ――わかっている、ボイルドにはわかりきっている。
故に彼は興味を見せない。
否、その事実を隠れ蓑にしてボイルドは目の前に事に対し、気を逸らす――自分が今、抱いている葛藤を。
再び意識の波が逆流する。現実をかけ離れ、己の世界とも言うべき海に身を委ねる。
自分が未だに振り解けない。事実という鎖の呪縛が焦げ付きとなり、忘れられない。
V3と戦っているのではない。
ボイルドは戦っていた――数十分前に聞いたあの名前が現実であるという、覆せない事実に対して。
二挺の銃を握り、たった一人で。
(ルーン=バロット……)
声には出さない。
心の奥底で静かに呟く――ルーン=バロット/放送で呼ばれた名前。
年端もいかない少女/自分のフロートを喰い開けた存在/ウフコックの新たな使い手。
そして――自分の同族とも言えた――地に舞い降りた天使。
そう、天使だ――最期の最期に、自分に眠りを与えてくれた少女。
悲しい――自分はそう思っているのだろうか。
ボイルドは己に問いかけ――いつまでも答えが出なかった。
ビジョンが浮かぶ。
過去の記憶が脳裏にフラッシュバックする。
薄れゆく意識の中、あの時、視覚した彼女は確かに頷いた。
ウフコックの抜け殻/以前、彼が変身(ターン)した銃を携え――虚無を振りまくために存在した自分。
対するバロット――ユニバーサルウェポン/紛れもないウフコック自身/かつて温もりを与えてくれた鼠と共に。
懐かしさのようなものを噛み締める。同時に思い出す。バロットの事を。
バロットもまた、以前の己と同じくウフコックの力に溺れた。
しかし、克服。再びウフコックとの道を選んだ。
彼との関係を崩す事なく――かつての自分には為し得なかった事。
再びウフコックを手にし、/ドス黒い感情をぶつけきるまで/思うままに――それは以前の己。
殺戮に身を任せたい衝動に負けた自分では無理だった。
確かな落胆――バロットと自分との共通項がなくなった瞬間。
もう一つ――バロットを“一度殺した”男/シェル・セプティノス/かつての己の雇い主。
だが、バロットは彼を殺そうとはしなかった。
きっと煮え切らぬ想いを抱えていたにも関わらずに――やはり自分とは違った。
大きな落胆。しかし、ボイルドは確信を持つ。
再び意識をあの瞬間へ――最後の戦場であった筈の戦い/バロットとの最後のダンス。
自分に対し、磁気干渉能力(スナーク)で挑むバロット――モンスター。
最高の兵器/金の卵/ウフコックを操り、全てを感覚する存在――持ちすぎた力。
自分と同じく手に余る力を持った存在。故に密かな期待。
漸く出会えた仲間。自分に充実感を与えてくれた同族――奇妙な高揚感があった。
血液が沸騰するかのような感情。不思議と悪くはない。寧ろ――良かった。
銃を撃つ/フロートを行使する/スナークが襲い来る/――動作の一つ一つに対して、湧き上がった確かな実感。
永らく忘れていたあの想い――充実感が己を支配した。
バロットとの戦い、あれこそが自分の終着点――絶大な自信により裏付けられた判断。
あれ以上の場所はなかった。
だから、自分はあの時告げたのだ。
眠りすらも奪われた自分を漸く眠らせてくれたバロットに――感謝の意を。
今でもあの言葉には偽りはない。
最高のパートナーに思えたウフコックとバロット。
かつて自分が居た立場に、しっかりと組み合ったバロットを――羨ましいとさえも思った。
そう、だから同時に思った。
彼女さえ居なければ/この場で先に手に入れれば、自分が立てるかもしれない。
もう一度、ウフコックを使う――いや、濫用出来る立ち位置に。
そう思った、思った筈だった。
(――なんだ?)
しかし、ボイルドは疑問を抱く。
バロットの死により、確実にそれが現実味を帯びた現状にも関わらずに。
舞い降りたチャンス/もう一度ウフコックをこの手に――望みが変わる事はない。
だが、何かが足りない。果てしなく、同時に直ぐ近くに答えがあるような感覚。
たとえウフコックを力づくで手にしたとしても。
何か、ぽっかりと穴が空いた喪失感。
ごっそりと何かが抜け落ちたようなこの感覚を――本当に埋められるのか。
――わからない、思わず己自身に疑問符を投げ掛ける程に、疑問の根は深い。
それどころか自分が何故こんな事を考えているのかも――理解出来ない。
答えを探すかのように周囲を見渡す――否。
視覚の完了を認識すると共に腰を落とす。
瞬間、ボイルドは声を聞いた。
「トオオオオオーッ!」
V3への次なる対応を求められる、合図を。
◇ ◇ ◇
同時に視線を向ける。
確かに聞こえた叫びの発信源――V3の姿をボイルドは確認。
銃弾の雨を掻い潜り、此方へ向かってくる。
残骸がまばらに散った地を蹴り飛ばし、距離を詰めてくる。
疾走――ではなく、寧ろ飛び掛かってくる様にV3が動く。
同時に右腕を振り上げて、渾身の一撃を打てる体制を取って――V3とボイルドの目線が再び合う。
見えない火花。もしそんなものがあればきっと彼ら二人の間で生まれたことだろう。
一瞬にしか過ぎない時間でも十分だった。
互いの視界に映る男――今、自分が闘わなければならない相手を確認する。
表情には見せない。無言の合図――どちらかが倒れるまで
程度の差はあれどV3とボイルドの意思は相似したものだ。
やがてV3の右拳が空をきって走る。
「――V3パンチッ!」
V3が叫ぶ。右の拳を力の限り叩きつける――V3パンチ。
白いグローブに覆われた拳がボイルドの顔面へ飛び込む。
対するボイルドは動きを見せない。只、ボイルドは――イメージした。
己の四肢、そして脳に移植された禁忌の技術。
楽園――一部の人間からそう呼ばれた機関/ボイルドに新たなキャリアを齎した力。
両の銃の銃身を下げ、その力の発現に神経と集中を注ぐ。
容易い動作――V3パンチに遅れる事なく絶妙なタイミングで放つ。
「……無駄だ」
呟くのはボイルド。
V3パンチを悠然と眺めて言葉を零すボイルドの周囲に“何か”が浮かび上がる。
実際に目に見える形はない。言うなれば不可視の――盾。
そう、盾だ。重力を操作し己の都合の良いものを造り出す。
重力装置――“フロート”によって生じた障壁がV3の拳を受け止めた。
以前の戦闘でV3の力は良く知っている。
結論――出来るだけ、近接戦闘行為は避ける。故にフロートは防御に専念。
衝撃が走る。水面に小石を投げて広がりゆく波の動きのように――余すことなく盾の上を駆ける。
遂にはV3パンチの侵攻を完全に押し殺し、盾は衝撃を受け流す。
咄嗟にボイルドは腕を突き出す――右腕、大口径の銃/ハカイダーショットを握った腕がV3を向く。
至近距離/逃げる距離はないクロスレンジ/絶対の一撃を撃てる状況。ボイルドは見逃さない。
しかし、V3に驚いた様子は見えない。
何故ならV3は既に知っている――フロートの力を、その強大さを。
故に予想出来た。デストロンを始めとした数々の組織と戦った経験を糧に。
V3は――跳んだ。
「そこだ!」
同時。ハカイダーショットの銃口が向いた瞬間――V3の姿は最早其処に居ない。
片腕を支えにして、V3の躯体は宙に浮いている。
V3パンチを突き刺した腕。伸ばした右腕をフロートの壁へ向かって開く。
幾重にも覆われた重力の膜を剥ぎ取るように――力強く掴む。
同時に身を捩じる。潜り込ませるように、寸分の狂いもなく冷静に。
両脚を向けて蹴り込む――とある一点を狙い打つように。
両腕で身体を支え、反動を利用してV3が狙うは一つの穴だ。
絶大的な力を誇るフロートの唯一の弱点――銃撃の際に生じる歪。
フロートが干渉しない部分が生じたと共に、V3は両脚を叩き込む。
挙動は速い――ハカイダーショットの引き金が引かれるよりも、より速く。
握りしめたボイルドの右腕ごと蹴りつけ、ハカイダーショットは彼の腕から離れる。
フロートによる再展開は間に合わず。カランと、たった今まで持っていた銃が転がる音を聞く。
電撃ような痛みをボイルドは感知――僅かに表情が歪む。その変化に隠された真意は未だ闇の中に隠れる。
完全に勢いが乗っていなかったとはいえ、改造人間が放った蹴撃――強烈な一撃。
ハカイダーショットが衝撃を幾分吸収したにも関わらず、その感覚は依然とこびりつく。
格闘戦ではV3の方に利があると判断したのだろう。以前の戦闘によるボイルドの推察。
痛み/悔しさ――それらを考える間もなく、ボイルドは後ろへ身を飛ばした。
V3の追撃の拳を今度こそフロートの盾で防ぎながら――疑似重力。自らに備わった力で己の身を動かす。
自身の身体に絶えず掛かる重力の向きを操作――左腕を翳し、V3が掴んだフロートの一部を弱めながら。
ボイルドは距離を取る。デザートイーグルの銃口が真っ直ぐV3の方へ向く。
「止まらない、この程度では」
ボイルドから言葉が洩れる。
引き金を引くといった、既に慣れきってしまった行為を行うように――極々自然に。
デザートイーグルの銃弾が発射――後続が続き、計三発の弾丸が飛ぶ。
フロートの壁による支えを失い、着地したV3。三つの銃弾と向き合う。何らかの動作を求められる。
一瞬。悠長に考えている時間はない。V3が右腕を薙ぐ――真横に、力強く。
弾け飛ぶ音が響き、地面を跳ねる/黒々とした銃弾が奏でるリズム/静かな音が生まれる。
時を同じくしてV3の右腕からも零れる――それは小さな赤い群集。銃弾が擦れた事による裂傷。
右腕の勢いに引っ張られ、V3の周囲一帯所々に赤い粒が広がる。
だが、気には留めない。V3もそしてボイルドさえも。驚きといったものはこれっぽちも顔を見せない。
V3が己の腕一本で銃弾を薙ぎ払った事が、さも当然であるかのように振舞っていた。
再び双方は互いの顔を見る。
この殺し合いがなければ出会う事はなかった両者――運命のようなものを感じる。
そんなつまらない感想を抱く程、甘い感情は共に持ち合わせていない。
決着をつける――譲れない想いをぶつけ合う事だけが唯一の望み。
互いに一歩も動かない最中、やがて口を開く。
「どうした、モンスター。見せてみろ、お前の力を」
低く響く声。それは意外にもV3ではなく、ボイルドの方。
口数は多い方ではない。かつての事件を境目に感情の殆どを失ったボイルド――故に解せない。
ボイルドにとってV3は倒すべき存在でしかない。
よって意味がない。V3と必要以上の言葉を交わす事になんら有用性は見出せない。
ボイルド自身も疑問に感じている。しかし、構わず声を発する。
重力操作を行えば自分の手元に戻すことぐらい造作ではないだろう。
だが、それもまたボイルドは行わない――ハカイダーショットは未だに持ち主の手の中にない。
行動の理由――不明、わからない。ボイルド自身またしてもわからない。
只、ボイルドは自分が、半ば反射的に言葉を紡いだ事だけを確かに感じた。
V3との距離が離れた瞬間――言いようのない感覚を襲った。
何かを失う――以前、経験した事があるような錯覚が頭から離れない。
正体を探る。V3の動向に気を配りながらボイルドは思考を走らせる。
しかし、答えが出る間もなくボイルドの意識に中断が訪れる。
一瞬――ほんの一瞬、聞こえた理解し難い言葉によって。
そう。声の主は一人の赤き戦士。声高らかに叫んだ人物。
男の名は――
「言われるまでもない……ボイルドッ!」
力と技の戦士こと仮面ライダーV3。
再びV3が地を蹴って駆け出す。
デザートイーグルを撃つボイルド――V3は速度を緩めずに突っ切る。
ボイルドの正確な射撃が容赦なくV3の各部分を抉る。
が、V3は止まらない。確かな痛みを感じているであろうにも関わらず。
対するボイルド――固く閉じられた口元が不意に綻ぶ。
ほふほふ
だが、ボイルドは何も発さない。今度は只の一言も。
後ろへ歩を進めながら、ボイルドは再び手に取る――疑似重力による操作。
ふわり、とハカイダーショットが宙に浮き、吸い込まれるようにボイルドの左腕へ。
フロートの一部を姿勢補助に回し、新たな虚無の象徴を――銃弾を捻り出す。
大口径の銃弾が喰らいつくように、V3の眼前に迫りゆく。
徐に右腕を掲げたV3の身体に着弾する――瞬間、火花が散った。
「V3電熱チョップ!!」
V3の腰に巻かれたベルト――ダブルタイフーンが光を放つ。
同時に右腕にも輝きが灯り、V3はその腕を振り抜く。
生じた火花は電熱チョップと銃弾がぶつかり合ったものによるもの。
砕け散った鉛玉の破片がV3の全身を打つ。
右腕に残留する痛みを振り払うように、V3は再び走り出し――やがて大きく跳躍した。
軽く脚を折り曲げ、右脚の狙いを振り絞る。
それは仮面ライダーという名を持ちし者の証明とも言える一つの技。
「V3キイイイイイイイイイック!!」
その名はV3キック――V3が持つ誇りの一片。
右脚を振り下ろすように、ボイルドに向かって飛び蹴りを放つ。
ボイルドの対処。冷静にフロートの壁で受け止める。
既にV3キックを押し止める事には成功している。
あの時と同じようにやれば間違いはない――ボイルドの密かな確信。
よって防御よりも反撃の方へボイルドは気を傾けた。
しかし、ボイルドは己の予想が違えた事に勘づく。
「これは……」
「どうした、ボイルド? 何を驚いている……俺のV3キックが以前と違う事なら驚く事じゃない。
何故なら俺は仮面ライダーだ。背負うもののためにどこまでも強くなれる……不自然なコトなど――何もない!」
その通りだ。
フロートの壁に突き刺さる形を取ったV3キックの勢いは以前とは違う。
いや、厳密に言えばV3キック自体は変わっていないのかもしれない。
明らかに違っているもの――ボイルドは一際大きく両眼を見開く。
伸びきったV3の脚の先に映るのは蜻蛉を模した仮面。
ボイルドは感じ取る。
仮面越しにでさえも、何か大きな意思で自分に働きかけてくる――そう思える程に。
V3の存在がボイルドには大きなものに見えていた。
「ボイルド、俺は負けるわけにいかん。
死んでいった者達のためにも、仲間達のためにも……そしてこれから俺が救える者達のためにも……!
だから今、この場で力づくでもお前の眼を覚まさせてやる!」
V3キックとフロートの盾が均衡する。互いに譲らない力。
それらはまるでV3とボイルドのぶつかり合う意思を示すかのように。
強く伸ばされたV3キックが重力の壁に喰らいつく。
「そのためなら俺は何度でも立ってみせる! お前の魂を再び呼び覚ますまでは……死んではやれん!
それが俺の、仮面ライダーV3のプライドだッ!!」
あの時叫んだ言葉。
ボイルドへ叫んだ言葉をV3は再び紡ぎ――V3キックに全力を注ぐ。
黄緑色の複眼の輝きは失せてはいない。
ダブルタイフーンの回転が加速する――勢いはV3の意思との直結を感じさせる。
生まれるものは強烈な衝撃。今まで不可視の盾が遮ってきた威力。
しかし、ボイルドのフロートも完全なものではなく、この場では制限も掛っている。
故に除々に/確実に/加速度的に――染み渡っていた。
そう、十分過ぎる程に行き届いている――打ち破るためには。
やがて終りが訪れる。V3キックが進みだす。遮るものはなくなったためだ。
フロートの盾をV3キックは完全に砕き、V3の身体がボイルドに飛び込む。
蹴り込んだ場所は胸板。勢いを削がれたといえ、胸部を起点にボイルドの身体に衝撃が走った。
思わずボイルドは後ずさる。いける――V3はその結論を下し、V3は次なる技を繰り出そうとする。
V3反転キック。この状況で更なる追撃を加えれれば――そんな時、V3の身体が急にガクンと下がった。
何が起きた――視覚による感知よりも先にV3は理解を終える。
己の右足が、ボイルドの太い腕によってしっかりと捕えられた事実を知った。
そしてV3は見た――のっぺりとしたボイルドの顔が視界に映る。
その表情に変化が、予想だにしなかったものが浮かんでいる事にV3は大きく驚く。
「――――好奇心(キュリオス)」
意味が通らない言葉。そしてボイルドが浮かべる――笑顔の真意がV3には計り知れない。
驚きのあまり思わず硬直するV3。ボイルドが動く。左腕を突き出す。
依然として握られたものは――ハカイダーショット。ボイルドの意思は明白。
V3の判断は早い――硬直した身体のコントロールを取り戻す。
しかし、V3は動けない。ボイルドの重力操作――V3の身体に掛かる重力の向きを変え、彼の動きを制限している。
一気に勝負をつけるつもりか。V3の全身に今まで以上の緊張が駆ける。
かといって何もしないわけにもいかない。
思うように動かせない身体に指令を送り、打開策を模索する。
が、ボイルドはV3の抵抗に気を留める様子は見せない。
只――重々しく自らの口を開き始めた。
「漸くわかった……俺はお前に抱いていた。キュリオス……お前は俺の渇きを満たしてくれる、俺の人生から価値観を見出す……。
そうだ、お前と戦えば俺は思い出す。忘れていた充実感が蘇る。同時に俺は確信出来る」
唐突に紡がれ始めるは言葉の群れ。
まるで並び立てた煉瓦が何かの拍子で、全てが崩壊するように責め立てる。
寡黙なボイルドらしくない行為。きっと彼自身もそう思っているのかもしれない。
しかし、言葉の奔流は止まらない。訝しげな様子を見せるV3にそれらをぶつける。
――爆発。枯渇しきった感情の波が荒れ狂い、暴力的な渦を造り出す。
きっかけはなんだっただろうか。きっとあれのせいだろう――ルーン=バロット。
彼女の喪失/最早再会はあり得ない。
先程感じたものは正真正銘、バロットの死に対しての拭いきれない喪失感に間違いなかった。
重要なファクター――そう、バロットの存在はボイルドにとって重要だった。
漸く自分に眠り――安らぎの時を齎してくれたバロット。ボイルドは望んでいた。再び彼女と対峙する事を。
もう一度、彼女に断ち切らせてほしかった。しかし、もう叶わない――故に暴走を起こす。
最高の、これ以上ない形――充実感を噛み締められる終結を渇望する想い。
それだけが今のボイルドの意識全域に干渉する。
「やはり俺はずっとこうしていたかった――と。ルーン=バロット、そしてお前のような存在との戦い。
それこそが全てだ、行き着くべき終着点がそこにある。俺はあの場所をもう一度目指す。
約束の地(グラウンドゼロ)――そのためには俺は止まらない、止まれない」
再びウフコックを手に出来るかもしれない。
その願いも、あの時の確かな充実感が酷く甘美なものに感じられる。
別にウフコックを諦めたわけではない。
だが――終わったのだ、自分の人生はあの瞬間に。それをバロットの喪失で鮮明に思い出した。
最高の形で、もう一片の後悔もないと思える感覚に身を委ねて。
バロットとウフコックを待つ未来を案じながら、心安らかに死ねた。
あれ以上望むものは何もない。だから――これ以上動き続ける意味もない。
魂を思い出す事もない。新たなキャリアも必要ない。世界に新たな価値を見出す理由もない。
只――還ろう。約束の地へ、自分が消えた、消えるべきだったあの場所へ。
やがてハカイダーショットを放り出し、空いた腕で拳を模る。
また始まってしまった人生を――充実した形で終わらせるためにも、
ほ
「俺は戦い続ける」
一撃。
重々しい一撃をV3の右足に奮う。
V3が声にならない声を洩らす。
「全てを虚無で塗り潰す。俺の全存在を賭けて、眼に映る者は対象となる」
更に一撃。脚を掴んだ腕を引き、V3の身体を手繰り寄せる。
がら空きになった鳩尾に叩き込む。情は見られない。
只、この場での全ての参加者の殺害を口にする。
何か言おうとしたV3に更なる一撃を放り込む。
V3の血反吐を、あまりにも冷めた表情を浮かべながらその身に浴びる。
「止まるコトはない。誰かが、仮面ライダー……お前のようなモンスターが俺を止めるまでは、何があろうとも」
一撃、もう一撃。強烈な拳を同じ部位に打ち込む。
拳がいやに熱い。しかし、不愉快さはない。
ボイルドは手ごたえを感じると共に理解する。
自分の歯車がどこかで崩れてしまっている――いや、元に戻り始めている事に。
自分が驚くほど素直に、己の望みを口にしている。
その事を鮮明に。拳と暴虐に満ちた笑みが全てを物語っていた。
更にV3の身体をこちらに寄せ、彼の黄緑色の複眼を覗く。
まるで何人にも映る自分自身を見つめるように――ボイルドはなにかを頼むように紡ぐ。
自身の最期の望みを。
「だから……止めて見せろ。貴様の言う魂とやらで、この虚無を止めて見せろ。そして俺の人生を……終わらせてくれ。
あの少女とウフコックがやってくれたようにあの時の感覚を、充実感を俺にくれ。
それさえあれば、俺という虚無はここから消える。今度こそ俺に完全な終止符を打て」
――言った。言ってしまった。
今ならわかる。何故自分がV3との戦いを先延ばしに、まるで時間を掛けるように戦っていたのかを。
確かめたかった。おぼろげな推測を確信に変えたかった。V3が自分にとって――重要な存在である事を。
そして見極めは終わる。結果は申し分ない。
やはり考えは正しかった――V3はやってくれる。
フロートの壁を打ち破れる。V3なら必ず――強い確信。
この自分を止められる――満足のいく死を与えてくれる。
ボイルドは希望にも似た強い思いを秘め、V3を見やる。
しかし、V3は碌な反応を見せない。
とどめと言わんばかりの拳でV3の顎を砕いたためだろう。
だが、ボイルドの胸中には安堵のようなものが広がった。
きっと聞こえただろう。不思議な自信が湧きあがる。。
やがてボイルドはV3の身体を両手で担ぎ、力強く前方へ投げつける――同時に疑似重力を展開。
V3の身体が更に遠くへ飛んでいき、再びボイルドは操作した。
左腕に握られたものは一挺の銃――ハカイダーショット。
腕を掲げ、銃身を向けて、狙いを付ける――そして引く。
一発の銃声が響く。銃弾が、V3の腹部辺りに虚無という名の傷が刻みこむ。
やがてV3は背中からスクラップの山に倒れ込む。
V3がそれっきり動く事はなかった。
◇ ◇ ◇
ボイルドが歩く。
いつも通りのっぺりとした、何の色も見せない無表情を浮かべて。
V3は死んだだろうか。
確認はしていない。だが、死んで欲しくはないという思いが確かにあった。
何故なら、彼なら自分を倒してくれるかもしれないのだから――今度こそ。
ウフコックを手にしたバロットの代わりを務めてくれる。
そう願うようにボイルドはふと立ち止まる。
目の前に映るもの――それはサイクロン号/V3が今まで乗っていたバイク。
PDAを操作。シリアルナンバーを記録し終え、ボイルドは一号ライダーの愛車に跨る。
目的――全ての参加者の殺害。その先に待つべき場所――約束の地への到達。
当初の目的地、修理工場へボイルドはサイクロン号を走りだす。
風が顔面を、全身を打つ感覚の中ボイルドには一つの声がどこから聞こえた。
――ハローモンスター
少女の声。
特別なチョーカーを通して発された電子音声。
周囲には何もない。実際に聞こえたわけではない事は明白。
しかし、ボイルドは確かにそう聞いた――聞こえたと思った。
「ハロー――」
同族――バロットの声。
ボイルドは答える。意味はない事であるにも関わらずに。
同時にボイルドが造り出す表情――笑っている
笑みにも取れるような歪みが再び零れる。
バロットは既にこの世界の何処にも居ない。
故に誰に向けたわけでもない言葉――否、それは自身に向けた言葉だったのかもしれない。
そう。今から多くの命を刈り取るために、充実した人生を再び手にするために戦場へ身を委ねる自分に。
ボイルドは小さな言葉を送る。
「――モンスター」
少女と同じ言葉を、感情の籠らない声で。
一人、ぼそりと呟く様に。
【H−2 路上/一日目 日中】
【ディムズデイル・ボイルド@マルドゥックシリーズ】
[状態]:中程度の疲労、全身に中〜小程度のダメージ、胸部に中程度の打撲 、右腕に痺れ
[装備]:デザートイーグル(7/7)@魔法先生ネギま! 、弾倉(0/7)×1+(0/7)×1 (弾頭に魔法による特殊加工が施されています)
ハカイダーショット@人造人間キカイダー(14発消費) サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式、ネコミミとネコにゃん棒@究極超人あ〜る
ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス×2(チンクの支給品)
ドラスの腕、PDA×2(ボイルド、タチコマ)
[思考・状況]
基本:ウフコックを取り戻し、満足のいく戦場で散る。
1:充実した人生を与えてくれそうな参加者と戦い、己の死に場所を見つける。
2:南下。
3:ウフコックを濫用させないため、参加者をすべて殺す。
4:バロットの死体を確認する。
5:ウフコックがいないか参加者の支給品を確認する。
6:クロとミーのコンビに興味あり。
[備考]
※ウフコックがこの場のどこかにいると結論付けています。
※ドラスの腕を武器として使うことを検討中
※“擬似重力(フロート)”を最大出力で展開し続けると、ある時急激に出力が落ち出し、一定時間使用が出来なくなります。
※上記の制限を認識しました。
※ミーへの伝言を預かりました。「さっさと帰らないと剛が飢え死ぬぞ」です。
※制限に関してある程度把握しました。
◇ ◇ ◇
エリアH-1。V3――変身が解除され、風見志郎が力なく倒れ伏している。
仰向けに天に昇った太陽を見上げている。
ボイルドの拳を何度も受け、ハカイダーショットの銃弾を右肩に貰った。
強烈な威力。右肩の負傷は酷い。しかし、動けない。
周囲を赤い血液で汚しながら、志郎はぴくりとも動かない。
(俺は、負けた……か…………)
完全な敗北。
一度目はチンクの助けがあったとはいえ、あれも敗北に違いはない。
これで二度目だ――情けない。自分自身を殴り飛ばしてやりたい衝動に駆られる。
だが、そんな事は二の次だ。
あいつを、止めてくれと言ったボイルドを止めなければならない。
そしてボイルドを――■■■■■■■にする。
その想いを糧に志郎は全身に力を込め、必死に立ち上がろうとする。
しかし、想いは虚しく、思うように身体が言う事を聞いてはくれない。
こんな程度か。お前はこんなものだったのか――そう思った時、志郎はふと考えた。
自分が今倒れている場所、スクラップ置き場は一体――どんな意味を持っていたか。
不意に全てを思い出す。
此処は、この地は――あいつが眠っている場所だ。
しえん
(そうだ、村雨……凱の話ではあいつはここで…………)
村雨良。仮面ライダーZXの姿を思い出す。
最初に顔を合わせた時――復讐心で塗り固まった時とは違う。
この殺し合いに呼ばれる直前、村雨は強くなった。
仮面ライダーとして、そして一人の人間としても、まさに10号ライダーに相応しい男だった。
そんな村雨が眠る地でどうして自分はこんな無様な姿を見せられるか。
口には出せないだろうが、少なからず落胆の意を村雨は隠せないだろう。
そうだ。何も村雨だけではない。
城茂――仮面ライダーストロンガー、茂もきっとこんな自分を見れば笑い飛ばすだろう。
一言二言皮肉めいた、憎めない言葉を交えて――あいつならそう言う筈だ。
そう。あいつらなら今の自分を認めないだろう――先輩、仮面ライダーV3として。
志郎は強く思った。
(ふっ……堪らんな。あいつらは、あいつらは命を賭けたというのに……先輩の俺がこんなコトではな……!)
思わず不敵な笑みを志郎は零す。
今までの自分が心底馬鹿らしく思えてくる。
こんな傷がどうした。
右肩に穴があいたとしても、幾ら血が流れようが未だ戦える
今の自分を証明してくれる力が、二人の先輩に貰ったこの身体は未だ潰れていない。
そう思えば驚くほどに身体が楽になった。
志郎は除々に力を込め――一気に身体を起こし、両膝に腕を立て掛ける。
やがて上身体を上げ、両の足でしっかりと立ち上がる。
瞬間、再び血反吐を盛大に周囲に散らすが気にする事はない。
今ので打ち止めだ。もうこれで動ける/戦える/目的を果たせる。
V3ホッパーを――いや、するまでもない。ボイルドの行先は見ていた。
南の方。恐らく人が居るであろうスクラップ工場へ向かうのだろう――させはしない。
必ず自分が止める。奴の魂を呼び戻す。
何故なら自分には未だ奥の手がある。
既に“それは”一度使った。本来ならあの時、自分は終わっていた。
故に心置きなく使える――目的のためには。
仮面ライダーV3 26の秘密の中でも知る者は数少ない、最後の一つ。
その名は――
(俺にも命を賭ける時が来たようだな……すまん、チンク。やはり約束は……守れそうにはない)
V3火柱キック。
それは己の命と引き換えに放つ、最後の技。
【H−1 スクラップ置き場/一日目 日中】
【風見志郎@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:両拳に負傷(小)、右肩に弾痕、頭部と胸部と左肩に弾痕(塞がっている)、右碗、右肘に負傷(中)、腹部に強い痛み、固い決意、
村雨と茂の死に悲しみ、敬介を倒す決意、
[装備]:サイクロン号(1号)@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:無し
[思考・状況]
基本:殺し合いを破壊し、シグマを倒す。
1:ボイルドを追う。
2:いずれ、修理工場2階で見つけた隠し通路を調査する。
3:本郷、ギンガ、エックス、T-800(名前は知らない)と合流。スバル、メガトロンは警戒。
4:殺し合いに乗った危険人物には容赦しない。
5:敬介は暴走状態にあると判断。正気に戻せないのなら、倒す。
6:可能ならば、ボイルドを仮面ライダーにしたい。そのためには、危険は辞さない覚悟。
7:弱者の保護。
8:日付が変わる頃、スクラップ工場へ向かう。
[備考]
※チンク、凱、ドラス(スバルに関すること以外)、ゼロと情報交換をしました。
※参戦時期は大首領の門に火柱キックを仕掛ける直前です(原作13巻)。また身体とダブルタイフーンは元通り修復されています。
※なんとなくチンクを村雨、そして昔の自分に重ねている節があります。
※液体金属が参加者に擬態している可能性に気づきました。
※ゼロを襲い、ノーヴェ、メカ沢、ロボを殺したのは敬介本人だと確信しました。
※修理工場の2階に隠し通路と、謎のメッセージを発見しました。
※ドラスへの荒療治は、やり過ぎだったと反省中。
※ボイルドの言うウフコックに興味
うぎゃあああ
投下乙
あうあうあ
風見の志望フラグがどんどん積み重なって行く〜
投下終了しました。
支援どうもありがとうございましたー。
何か不自然なところなどあればお願いしますね。
投下乙です
しかし、やっぱりボイルドは強いぜー……
そして確かにあれならまず届くだろうけど……風見さんに強烈な死亡フラグががががが
投下乙!
予測はしてたが、やはり風見さん敗北か……
しかしボイルドの心理も確実に変化が……!結局皆殺しだけど!
そしてそれは死亡フラグすぎるぜ風見さーーーん!
感想どうもありがとうございます、そして報告を。
V3がPDAを持っていないのに放送の内容を知ってしまっているので一時投下に一部差し替え修正を行いました。
投下乙です!
暗い……暗い虚。凄い、ボイルドの発する虚無が、仮面ライダーの輝きを飲み込むイメージが、直に伝わってきたような感覚……!
そして、遂にボイルドも覚醒。この最悪の死にたがりを終わらせられるのは、仮面ライダーしかいないのか!?
風見さん! 火柱キックはやめてえええええええええええええええ!!
投下&修正乙!
風見とボイルドの戦闘、GJでした!
ボイルドの心理描写と戦闘描写が濃いかったです。
したらばからちょいと失礼します
範囲:オープニング〜第一回放送まで
部門:死者、セリフ、話、バトル、第1回ということで登場話
投票方法:手持ち五票の振り分け方式
投票期間:2月1日 00:00〜2月15日 23:59までの2週間
結果発表:2月22日の夜
投票は全部に投票しなくてもOK。死者と台詞だけとか、持ち票は5だけど3票しか使わない、というのもアリ。
全部門で1つずつだけ選ぶ、というのもあり。自由にやっていこうぜ!
こんな感じで決定!……で、いいですか?
人気投票あるのか!!これは楽しみだ
短いですが投下します。
二回目の放送は終了した。
ターミネーターは思考する、放送によってもたらされた情報、それによってこれからどのように行動するのが最適か。
幸い液体金属の回収完了まであと数分必要、その時間を利用して今後の行動方針の微修正を行う事が出来る。
まずシグマの開催したデスゲームの促進。
第二回放送の時点で半数近くが脱落、予測よりもデスゲームに乗った者は多い。
今後もデスゲームの促進に向けて行動する。
その際気をつけるのはT-800だろう。
T-800が壊し合いに乗るとは思えない、合理的に考えてT-800が殺し合いに乗る可能性は10%を下回る。
ならば今もT‐800はこの壊し合いを破壊する為に行動しているだろう。
ゲームに支障をきたす前に破壊しておきたい、だがその前にエラーの修復が先決。
万が一の確率でも、奴に勝機を与える訳にはいかないからだ。
次にシグマウィルスの性能についての調査、これは早急に行動を起こさなくてはいけない。
デスゲームは順調に進んでいる、……順調に進み過ぎている。
このペースが維持されればあと半日で、残りの生存者が5人程まで行く。
人数が減ればペースもいくらか落ちるだろうが、同時にこちらがシグマウィルスを使用する機会も減少し調査にも影響を及ぼす。
高スペックで殺し合いに乗り気でない者が望ましいが、現状ではある程度の妥協もいたしかたない。
三つ目は自分の姿。
現在擬態している城茂の破壊は確認された。
最初から茂を知っている参加者及び茂と接触したどれ程いるかは不明。
以後、茂を知っている人物と遭遇するかは未知数。
茂を知らない人物と接触する可能性の方が高い、だが…。
自分がこの壊し合いに参加しているのを知っている者は、T-800、ナタク、城茂、名称不明参加者の四名、内茂は死亡。
この四名によって自分の情報がどう広がっていき、どう広がっているのか推測は不可能。
壊し合いに乗っている人物からも乗っていない人物からも、自分は排除するべき対象と見られている可能性は大いに高い。
よって無暗に自分の存在を誇示し、警戒及び対応策を考えられる状況を作るのは愚策でしかない。
今後、城茂―仮面ライダーストロンガー―の姿に擬態するのはやめておいた方が賢明。
なら誰の姿に擬態するべきか?
まず放送前に奇襲してきた参加者――却下。
完全な不意打ちによって相手の姿を確認できていない、故に擬態は不可能。
同上の理由で、その後追撃を仕掛けてきた参加者も却下。
残るはマルチ、ナタク、青い髪の少女の三人。
マルチはすでに破壊されている、茂と同じ理由で擬態するのは却下。
なら少女の方は?
擬態自体には問題は無い、だが名前が分からないというのはネックだ。
次の放送で名前を呼ばれても気がつく事が出来ない、故に却下。
ならば残るはナタクしかいない。
以前の交戦状況からナタクは壊し合いに乗っていると思われる。
言動を見るに、壊し合いに乗っていないふりをする可能性も低いと考えられる。
現状では擬態するのに最も適した人物だ。
方針変更――今後は仮面ライダーストロンガーでは無く、ナタクの姿で行動する。
行動方針が纏まった所で液体金属の回収が完了した。
T-1000は一瞬でナタクの姿に擬態すると、また修理工場に向かって走り出す。
自分の存在をスバルを経由してT-800から聞いているドラス、そしてナタク自身がいる修理工場に向かって……。
【F−4 路上/一日目 日中】
【T-1000@ターミネーター2】
[状態]:ナタクの姿、微弱なエラー?(エラー修復に費やされる時間の推測にズレ)
[装備]:シグマウイルス(残り2回分)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:バトル・ロワイアルが円滑に進むように行動する。シグマとスカイネットの命令には絶対服従。
1:ナタクの姿を取る。
2:修理工場へと向かい、エラー修復。
2:他の参加者に出会ったら容赦なく攻撃。ただし出来る限りナタクの姿のみを晒す。
3:可能ならば他の参加者にシグマウイルスを感染させる。(『スペックが高く』、『バトルロワイアルに乗り気でない』参加者優先ある程度は妥協)
4:3が不可能ならば破壊する。
5:ただし、T-800は最終的に破壊する。
[備考]
※シグマウイルスはT-1000の体内に装備させられた状態で存在し、T-1000の体が相手の体内に侵入した際に感染させることが可能。
投下終了です。
ご意見や指摘の方がありましたらお願いします。
投下GJです!
気付いた時には投下完了していたため、支援できなくて申し訳ない。
確かに、このロワは順調すぎるよなあw
シグマウイルスを注ぎ込む相手に対して、妥協する気にもなったか……
うーん、なおいっそう分からなくなってきたなあw
気になったところがあったので、指摘を
T-1000はナタクの名前を知らないはずですので、名称不明参加者A・B辺りにした方がいいと思います。
あと、壊し合いに乗っているナタクの姿になるのは意味がない、と前に描写されていたと思うのですが……
投下乙です。
T-1000もついに動きましたか。
修理工場カオス!
GJ!
>>821 素早指摘ありがとうございます。
どうやら自分に見落としと勘違いがあった模様です。
修正版の方を掲示板に投下してきましたので、また指摘などがあったらお願いします。
修正乙
スバルの方か
スバル本人も工場へ向かっているわけでカオスな事になりそう
まあどのみちドラスは、見た対象物を分析できるからすぐにバレるだろうけど
修正乙です
ひゃっほーう、スバルの姿になったかw
いよいよもって混沌としてまいりました修理工場、どのような展開が待っているのか……気になるぜー
しかしそろそろ500kか、次で突破しそうだから次スレ用意したいけど、ここでいい? 創作発表に行く?
テンプレの変更はない? ここだけ教えてくれ。
自分としては創作発表はいいと思うんだよね
ここよりもいっぱいレスの中に書き込めるし。
ただし、向こうがロワスレが飽和状態なんで自治とかにちょっとだけ掛け合う必要があるかもしれない
ただ創発はさる規制がかなりきつめらしい、俺としてはここでいいとも思う
テンプレはとりあえず予約の部分をいい加減五日+三日に変更するかw
後生存表か
今の創作発表は反対かな。
移転したあのロワの状態を見ると
あ、それと禁止エリアの部分だな
【放送および禁止エリアについて】
・6時間毎(0:00、6:00.12:00、18:00)に開催者によって放送が行われ、禁止エリアと死亡者、現時点での生存者数が発表される。
・禁止エリアは放送毎に2エリアずつ指定される。
・発表された禁止エリアは、放送から1時間後に発効する。
・禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。
第二放送見るとこんな感じの変更かな
自分もこっちのほうがいいと思ってたしじゃあここで立ててくるよ、ちょっと待ってて
しかしはじかれた!orz
すいません、誰かお願いします
スレ立て乙ー
で、残りは埋めるか?
今の予約がどのぐらいの容量かがわからんが
まだ20残ってるし、埋めなくてもいいんじゃないかな
そっか、なら投下をwktkして待とう
838 :
Classical名無しさん:09/02/05 17:04 ID:0MMhCp/2
クロフネ
839 :
Classical名無しさん:09/02/06 23:15 ID:PDwLmJh6
aa
十日町
遅くなって申し訳ないです
後最終確認だけですので45分ほどになったら投下したいと思います
了解した、待ってるぜ
全裸大気
T-1000、凱、ゼロ、スバル、T-800、ギンガ
投下します
T-1000がそれを感知したのは、修理工場を目指し北上し、しばらくしてのことだった。
何かの走行音、それほど遠くはないようだ。
しかし、この制限下では車などの移動手段を持った相手に追いつくのは、自身の性能を持っても難しいと判断する。
だとすればエラーの修復を優先すべき、そう判断し再び歩を進めようとした時、一定だった走行音が突然乱れ、停止した。
何者かによる襲撃、可能性が最も高いのはそれだろう。
数瞬の思考の後、T-1000は音源の下へとその足を進める。
確かにエラーはある、だが、それによる戦闘行為への影響は高くないと判断。
戦闘が行われた直後、もしくは最中ならば、不意を打つことは容易。
事前に遠方から様子を観察し、最も戦闘力がある、もしくは戦闘行為を止めようとしている相手を判断し、それ以外を排除、ウィルスを打ち込む。
そう思考しながら駆けるが、走行音が途切れたと予測された地点にたどり着く直前、再びその音が感知される。
戦いは予測より早期に決着がついたようだ。
間の悪いことに、走行音はこちらに向かっている。身を隠す暇はないだろう――ならば、無力を装い不意を突く。
ほぼ時を待たずして、一台のサイドカーを感知する。
数は二体、できればどちらの方がよりサンプルとして適しているか判断する情報がほしい。
腕を下ろし、全身から力が抜けたように演技をする――走行音が止まるが、声はかけてこない。
警戒されていると判断、こちらからアクションを起こすべき、顔をあげて対象を見る――対象と目線が合わない。
対象が自身の背後へ注意を向けているのが原因、背後を振り向く――――警告。
サイドカーに乗り、青髪の少女を見ながら凱は戸惑いを見せる。
「スバル=ナカジマ……? 二人……!?」
凱の視線の先、
そこにはスバルの姿をしたT-1000と……
本物のスバル=ナカジマが、そこに立っていた。
◇
修理工場へと進もうとしていたスバルは、その場でがくりと膝をついて呆然としていた。
「ノーヴェ……タチコマ……」
自分のいるすぐ隣のエリアが禁止エリアとされた、早く動くべきだ。
そう頭では理解しているが、その体は動こうとしない。
知り合いの死、それだけでも衝撃だが……それ以上に、スバルは自分の行動を悔む。
自分はタチコマと出会い、行動を共にした。ノーヴェと出会い、話をした。
だというのに、自分はその時何をした? ドラスにあっさり騙されタチコマとは別れてしまい、ノーヴェに対しては……
「――っ」
二人を殺したのは、私だ。
自分さえドラスの企みを見抜いていれば、タチコマと別れず、ノーヴェのことも疑いを持たなかった。
そうすれば、二人は無事だったかもしれない。ノーヴェをチンクと再開させることだって……
「なのはさん、ティア……私は、やっぱり、人殺しだよ……」
守らなくては、救わなければいけないのに。
こんなことを許すわけにはいかないと、シグマを打ち倒すと誓ったのに。
自分は何もできない、まんまと騙され、独りで空回りし、守るどころか……奪おうとした。
足に、手に、全身に力が入らない。
思考が纏まらず、次に何をするべきなのか、何をしようとしていたのかさえぼやけていく。
スバルの心が折れようとした、その瞬間だった。
目の前に、自分と同じ姿をした者――彼女が『ドラス』と認識する相手が現れたのは。
支援
「ドラスゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
スバルは叫びながらT-1000へと自らに残された左腕を振りかぶる。
彼女は自分がT-1000と出会っていることを知らない。
そのために、目の前の自分そっくりに擬態している相手がドラスだと咄嗟に考えてしまった。
ドラスがいなければ、タチコマもノーヴェも守れたかもしれない。
その想いを怒りに変え、自身の持つ力を躊躇なく解き放つ。
「IS! 振動破砕!」
相手が防御のために構えた腕を掴み、超振動を叩きこむ。
直前に腕だけが切り離され、完全に破壊することはできなかったが、以前にも一度防がれているから予想通りだ。
腕の修復の時間を与えず右のハイキック、まともに入るが首をわずかに傾かせただけで効いた様子はない。
「っっっだああああ!!」
その足を力づくで強引に振り切る、流石にT-1000も耐えきれず膝を付き、その眼前へ左拳を突き付ける。
「一撃! 必倒! ディバイン……」
「やめろぉぉぉぉ!!」
「っ!?」
魔力砲撃の直前、凱がスバルの腕を掴んで引き倒す。
すぐに振りほどこうとするが、いかに戦闘機人といえど片腕では凱に力で適いはしない。
「放して! あいつは、あいつだけは!」
「やめるんだ! 何があったかは知らないが、彼女はドラスじゃない! それにドラスは――」
「凱、やめるべきはお前のようだ」
「ゼロ!?」
アチャー
ゼロの言葉に振り返る。
そこにはセイバーを構えたゼロと、先ほどよりいくらか離れた場所に立つT-1000の姿。
先ほどスバルに破壊されたはずの左腕はすでに修復され、針のように先端が細くなっていた。
「ドラスの是非はともかく、こいつが俺達の共通の敵ということは間違いない」
「くっ……そうか、すまない……しかし、こいつはいったい!?」
スバルへと謝罪をしながら立ち上がり、ゼロの隣でグランドリオンを転送しながら疑問を口にする。
ゼロは相手から目を離さないまま、冷静に状況を推測する。
「恐らくこいつが液体金属、シグマの手先だろう」
「こいつが!?」
そう聞いた途端、凱の眼には怒りが湧き上がる。
「答えろ! 敬介さんやスバルちゃんに成りすまし、悪事を働いていたのはお前か!」
凱の言葉にT-1000は何の反応も返さない。
更に問い詰めようとする凱よりも前にスバルが立ち、顔を俯かせたまま言葉を発する。
「違うよ、こいつはシグマの協力者じゃ……T-1000じゃない」
「なに?」
「私はT-1000と会ってない、私が片腕を失くしたことを知っているはずがない。それを知って、姿を変えられるのは……ドラスだけだ!」
「な!? 待つんだ!」
スバルはT-1000と出会っていることを認識していない。
今は亡き、仮面ライダーストロンガーに擬態していたとき、スバルに破壊した相手の様子まで気にかける余裕はなかった。
もしもあの時よく見ていれば、つい先ほど破壊した左腕がほとんど同じだったことに気づいただろう。
だが、ifは起こらず、スバルはドラスへの憎しみのみを高ぶらせて一人突貫する。
しかし、怒り任せの攻撃がT-1000に何度も通用するはずがない。
大振りの拳をかわされ、次の攻撃を仕掛ける前に顔面を掴まれ近くにあった建物の壁を壊しながら内部へと連れ込まれてしまう。
「スバルちゃん!」
すぐに凱とゼロも後を追うが、動きを止める。
スバルとT-1000が視界から離れたのはほんの数秒だ、しかし瓜二つな二人を見分けることは容易なことではない。
共に倒れている状態を見て凱は戸惑い、ゼロも表情を歪める。
スバルもその状態に気づき、慌てて相手を指して声を上げる。
「本物は私です! 偽物は――」
「騙されないで! 本物は私です!」
「なっ……!」
自分と同じ声で言葉を発するT-1000を怒りに満ちた目で睨むが、ほぼ同時に相手もそっくりな表情で睨み返す。
その状況に凱は戸惑うしかない、迂闊に攻撃してスバルを傷つけるわけにはいかない。
スバルはチンクの知り合いだと言う。二人も妹を失っているチンクを、これ以上悲しませることなど凱はできなかった。
だからこそ、この状況では動きが取れない、とはいえ初対面の相手を見分ける方法も凱は持っていないのだ。
硬直状態に入るかと思われたその直後、それまで沈黙を続けていたゼロが口を開く。
「凱、向って右が本物だ」
「ゼロ! それは本当なのか!?」
「ああ、間違いなく、な」
「よし……!」
ゼロの言葉に大きく頷き、右側のスバルへと斬りかかろうとする――
「いやぁぁ!!」
「っ!?」
凱が聞いていた液体金属――T-1000の特徴は酷く冷酷なものだった。
本来優しく勇気に満ち溢れた者に成りすまし、淡々と破壊行動を行う……まるでゾンダーのような存在。
そのイメージが固定されていた凱は、無力な少女のようなその怯えた反応に思わず剣を止めてしまう。
「止まるな、凱!」
「しまった……!」
その致命的な隙を逃すわけがない。
怯える演技をしていたT-1000はすぐさま腕を鋭利な刃物のように変化させる。
焦りながら退こうとする凱の腹部へ目掛け、それ以上の速度で腕が突き出された――
◇
ギンガ=ナカジマが放送を聞いたのは、シャトルの中での事だ。
飛行場を軽く探索した結果、パソコンからシャトルによる移動手段が存在することを認識。
あの猫型サイボーグが別の者と共に「TV局へ向かった」というメッセージが残されているのは気になったが、ナンバーズとの合流を優先させた。
そしてシャトルを発進させ……その最中、ノーヴェが死亡したという放送が流れた。
専用武装がないとはいえ、自分やスバル=ナカジマと同様の格闘タイプの戦闘機人。
そのノーヴェが死亡したというのは、今のギンガへも少なからず衝撃を与えるものだった。
何よりもチンク、スバルの精神的動揺による戦闘への影響が問題である。
早急に合流できなければ、どちらも隙を狙われ破壊されてしまう可能性が考えられる。迅速に行動しなければならない。
振動。
シャトルが目的地に着いたらしきことを確認し、ギンガはスクラップ場を目指し駆ける。
◇
凱兄ちゃんってば><
「な……」
その呟きは自分と凱、どちらが発したものかゼロにはわからなかった。
自分が放ったトリモチの有無、それを元にT-1000がどちらかを見分けたものの、凱のミスでT-1000の腕が彼に向けて放たれた。
その寸前、T-1000の腕が撃ち抜かれ、感情などないであろうT-1000が目を見開き自分の背後に視線を向けた。
いつの間にかそこに立っていた大柄な男に慌てて距離を取るが、男はそのままT-1000へと手にした銃を続けざまに発砲。
45口径の弾丸が着弾するたびにT-1000はその体に穴を開け、銀色の内部を露わにしながら6発目の着弾と同時に背後へと倒れ伏す。
「あ、ああ……!」
「スバルちゃん?」
T-1000が倒れると同時に、先ほどまで一切見せなかった喜びの声をあげるスバルを見る。
「無事、だった……!」
ギンガとチンクを除けば、唯一今のスバルが無事を願う者。
自分のせいで別れることとなってしまった、最初の一人。
「スバル=ナカジマ、再度T-1000の破壊の協力を要請する」
「――はい! ボブさん!」
ボブ――T-800が、そこにいた。
◇
ギンガの耳は、確かにその銃声を知覚していた。
無視してスクラップ場へ向かうこともできたが、自分の目的はスクラップ場へ行くことではなく、チンクと合流することだ。
ならばスクラップ場近辺での戦闘を無視するわけにもいかない、その戦闘している者がチンクである可能性が高いのだから。
◇
スバルはT-800の下に笑顔を浮かべながら一直線に駆けつける。
凱はその姿を見ながら、チンクの言っていた通り素直な子なのだろうと感じていた。
先ほどT-1000に挑みかかったときの表情は、まさに鬼気迫るという言葉がそのまま当てはまるようだった。
詳しい事情はわからないが、あんな笑顔をできる少女にあのような表情はさせたくないと、彼は純粋に思う。
だからこそ……直後に行われたスバルとT-800の会話は、凱にとって信じられないものだった。
「ボブさん! あの時は、ごめんなさい……」
「謝罪の意図がわからない」
「それは、その、私がドラスに騙されちゃったせいで、ボブさんと別れて……タチコマと、ノーヴェも……そ、そうだ! 今ボブさんが撃ったのはT-1000じゃなくて、ドラスです!」
「何だと?」
「ボブさんが正しかったんです! ドラスもT-1000とは違うけど、他人に化けて騙し打ちをする、殺し合いに乗ってる凶悪な奴だったんです! あいつだけは、絶対に倒さないと!」
ドラスがこの殺し合いで最初、自分以外を殺そうと考えていたことは凱とゼロは聞いていた。
だから、ドラスを危険視する者がいてもおかしくないことはわかる。
だが何かがおかしい。ドラスの話にスバルの名前は出ていなかった。二人は出会っていないはずではないのか?
今のスバルを見る限り、相当ドラスに対して憎しみを抱いているようだ、彼女が嘘を言っているとはとても思えない。
ドラスが嘘をついたというのか? あのドラスが? チンクを助けようと怒りに燃える、勇気の持ち主が?
「待ってくれ! あいつはドラスじゃない!」
自分自身の考えが纏まるより先に、二人の間に割って入ってしまう。
ゼロが諌めるような視線を送ってくるが、それに気づく余裕もない。
「ドラスは、今のドラスはもう悪の心は持っていない! 勇気に満ち溢れた……勇者の一人だ!」
「……そっか、貴方達もドラスに騙されてるんだね。私と……同じように」
「違う! 実際に会えばわかるはずだ! 今もチンク達と一緒に修理工場で――」
「凱!」
ゼロの叫びに、自分が失言をしたことを悟る。
だが、遅い。スバルは目を見開き、愕然とした表情で凱を見つめていた。
「チンクが……ドラスと……?」
「あ、いや、それは……」
今のスバルをドラスと会わせるのがどれだけ危険か、凱とて気づいていないわけではない。
ただ、ドラスが改心していることを伝えたかっただけなのだ。
しかし居場所や同行者を伝えてしまったのはまずかった、スバルはチンクが自分と同じようにドラスによって心を乱されているのでは、と思い込んでいる。
何とかフォローをしなければ、そう考えて一歩近づき――吹き飛ばされた。
「凱!」
「ウイングロード!?」
突如横から伸びてきた魔力の道は、先端に凱の体を持ったま近くの建造物の中まで伸びていく。
状況が理解できていないスバル達の目の前を、その魔力の主は一瞬で駆け抜けた。
「――ギン姉!?」
「……」
その姿に気づき声をかけるが、ギンガは何も返さずウイングロードを駆け抜け凱のところへ向かう。
舌打ちをしながらゼロがそれを追いかけ、スバルも続こうとしたところでT-800に止められる。
「スバル=ナカジマ、受け取れ」
「PDA……?」
「それに入っている音楽ファイルを解析しろ、ここから脱出する手立てが見つかる可能性がある」
「ほ、本当ですか? 凄い……!」
はわわ
PDAを受け取り、顔を上げるがすでにT-800はこちらを向いていない。
スバルもその視線を追うと、建物の内部から再生した――本物が失っている右腕も――T-1000がこちらに向かって駆け出してきていた。
「っ、今度こそ振動破砕で……っ!?」
前に出て再度ISを発動させようとするが、直後に全身を極度の疲労感が襲う。
今までずっと緊張状態が続いていたため気付かなかったが、彼女のISにも制限はかけられていた。
使用のたびに疲労が蓄積していき、T-800と出会えたことにより緊張の糸が切れたこの瞬間、それが一気に現れてしまったのだ。
スバルの異変に気づいたT-800はリロードしたコルトSAAでT-1000を狙撃する。
しかし、不意打ちでない状態では拳銃の衝撃だけではT-1000を止めきれない。
銃を持っている右腕を掴まれ、すぐさま左手を振り上げるがそちらも防がれる。
一瞬互いに睨みあい、T-800が頭突きを喰らわせ衝撃で数歩後ろへと下がらせる。
だが両腕は離さず、そのまま力任せに投げつけ、立ち上がったところを押し込んでいく。
「ボブさん!」
スバルは叫ぶが、まだ体が言うことを聞かない。
そんな彼女へT-800は押し込まれながらも声をあげる。
「ファイル名を言う! ファイル名は『ラブラブビッグバン』!」
「らぶっ!?」
真面目な声からまったくイメージがあわない単語が出てきて戸惑い、その間にも二体のターミネーターは遠ざかり、
壁を壊しながらスクラップ工場の内部へと侵入してしまう。
ボブおじさんwwwww
「いけない……! で、でもギン姉も……それに、チンク……! ど、どうしよう……!?」
一度にいくつものことが起こりすぎた。
今一番危険なのは間違いなくT-800だろう、T-1000の方が性能が上だということは彼自身が言っていた。
次はギンガや凱達か、ギンガが何故いきなり凱を攻撃したのかがわからない、何か誤解をしてしまったのだろうか。
最も向いたい場所は修理工場だ、ドラスがそこにいるうえ、チンクが一緒だという、彼女まで自分のように騙されることになるのだけは阻止したい。
それにT-800から渡されたばかりのこのPDA、この殺し合いを打開する可能性があると言っていた。ファイル名はふざけているが、無視することはできない。
「どうする、どうすれば……!?」
◇
「ぐわぁ!」
ウイングロードが途切れ、凱が吹き飛ばされる。
ギンガもすぐさま現れ、凱へと拳を構える。
「ま、待ってくれ……君は、ギンガさんだな……?」
チンクから聞いた外見とスバルと同じ服から、凱はその女性が探し人の一人であることに気づく。
その人が何故突然攻撃をしかけてきたのか、その理由を考え、手にしていたグランドリオンを手放す。
「すまない、誤解させちまったみたいだ……俺は別に君の妹に危害を加えようとしたわけじゃない。君たちのことはチンクから聞いている」
「……チンクの現在地は?」
返答が返ってきたことに胸を撫で下ろす。
先ほどのように慌ててすれ違うことになってはまずい。
「ああ、今は仲間と共に修理工場に――」
言い終わるよりも早く。
ギンガはフットパーツにより急加速、凱目掛けてリボルバー・ギムレットを放つ。
それが直撃する直前、ゼロが横から凱を突き飛ばして回避する。
「ゼロ……!」
「まったく、少しは学習しろ」
冷たい反応を返しながらセイバーを構えるゼロを、慌てて凱は抑える。
「待ってくれ! 彼女がギンガさんであることは間違いない!」
「……だが、こちらに攻撃してきた、それは事実だ」
「それは、そうだが……!」
凱と会話をしながら、ゼロはギンガの様子を観察する。
その動きに、こちらへの攻撃を躊躇う様子は見られない。
だが、彼女がギンガ=ナカジマ本人であることも事実だろう。
無論T-1000のように姿を変えられる参加者の可能性もある。だが目の前の相手は「ウイングロード」と呼ばれる機能を使っていた。
チンクからその機能について聞いている、その機能が使えるのは全次元世界を回ろうともスバルとギンガの二人のみだと。
ならばチンクの仲間だと告げた自分たちへ敵意の理由は何か?
そもそも信用がおけないというのなら説得の余地はある。だが、それ以外の要因だとすれば?
そう、ゼロは知っている。正気を失わせ、内に秘めた破壊衝動を増幅するウィルスの存在を。
(もし、そうだとすれば……斬るしか、ないか……?)
◇
ほ
工場の中では二体のターミネーターによる激しい格闘戦が繰り広げられていた。
T-800が持っていたはずの銃は工場内に押し入った時に落としてしまった、そのため不利とわかりながらも素手で挑むしかない。
だが、T-800には武器が一つだけ残っている。
T-800の蹴りがT-1000の腹部に当たる。
液体金属にそのような攻撃が効きはしない――が、次の瞬間その脚部のライダースーツにしこまれたスタンガンがT-1000に電撃を浴びせる。
しかしT-1000は一瞬体をびくりと震わせるものの、すぐにその足を掴み横手に投げ飛ばす。
T-800は堪えた様子もなく立ち上がるが、T-1000の拳がその顔面を捉え、再び倒れてしまう。
倒れた状態のまま蹴りを放つも、すでに予測されていたか逆に掴まれ再び投げ技。
二体の絶対的なスペック差は、たった一つの武器では覆すことはできなかった。
そしてT-800は見る。
T-1000の右腕が、注射器状に変化するのを―――
【F-2 スクラップ工場/一日目 日中】
【T-800@ターミネーター2】
[状態]:全身に損傷(特に背部)、所々の深い傷からは金属骨格が露出、シグマウィルス感染
[装備]:滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:なし
[思考・状況]
基本思考:全ての者を破壊する。
1:修理工場を目指して東に向かう。
2:スバル及びその仲間(ギンガ、チンク、ノーヴェ)を見つけ、破壊する
3:発見した音楽ファイルに秘められたメッセージを解読
[備考]
※本編開始直後からの参加です。
※スバルに、ボブと呼ばれています。
※スバルの住む世界、魔法、ギンガ、チンク、ノーヴェに関する情報を得ました。
※仮面ライダー(本郷、風見、敬介)についての情報を得ました。
※地中にいた為、神敬介の接近や行動に気付きませんでした。