ロボ・サイボーグキャラロワイヤルpart6

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1Classical名無しさん
注意・このスレはあくまで2次創作であり、本編作品等との関連性はありません。
   また、貴方のお気に入りキャラが敗北したり、死亡したり、酷い目にあったりする可能性があります。
   加えて、スレの性質上ネタバレを多く含んでいます。
   以上の点に留意の上、閲覧してください。

【外部リンク】
ロボ・サイボーグキャラ バトルロワイアル掲示板(したらば)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/10691/
まとめサイト
http://www39.atwiki.jp/roborowa/pages/1.html

【基本ルール】
49体(見せしめを含むと50体)のロボット・サイボーグが最後の1体となるまで互いに戦闘を行い、破壊しあう。
最後の1体となった「優勝者」のみ、元の世界へ帰還できる。
また、参加者には「優勝者は自分の望みを叶えてもらうことができる」と伝えられている。
参加者間でのやりとりに反則はない。
参加者全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

2Classical名無しさん:08/06/11 00:41 ID:uiPSdyP6
ついでだからスレの4に投下して埋めようぜ
3Classical名無しさん:08/06/11 00:44 ID:tQcnVBJc
5/5【仮面ライダーSPIRITS】○本郷猛/○風見志郎/○神敬介/○城茂/●村雨良
4/5【魔法少女リリカルなのはStrikerS】○スバル・ナカジマ/○ギンガ・ナカジマ/○チンク/●セイン/○ノーヴェ
4/4【からくりサーカス】○フランシーヌ人形/○コロンビーヌ/●パンタローネ/○アルレッキーノ
2/2【ロックマンXシリーズ】○エックス/○ゼロ
2/2【ターミネーター2】○T-800/○T-1000
2/2【攻殻機動隊】○草薙素子/○タチコマ
2/2【サイボーグクロちゃん】○クロ/○ミー
2/2【ToHeart】○マルチ/●セリオ
2/2【ザ・ドラえもんズ】●ドラ・ザ・キッド/●王ドラ
2/2【マルドゥックシリーズ】○ルーン・バロット/○ディムズデイル・ボイルド
2/2【パワポケシリーズ】○灰原/○広川武美
1/1【ロックマンシリーズ】○ロックマン
1/1【ジョジョの奇妙な冒険】●ルドル・フォン・シュトロハイム 
1/1【魁!!クロマティ高校】○メカ沢新一 
1/1【勇者王ガオガイガー】○獅子王凱 
1/1【魔法先生ネギま!】○絡繰茶々丸
1/1【封神演義】○ナタク
1/1【Dr.スランプ】●則巻アラレ
1/1【VOCALOID2】○初音ミク 
1/1【クロノトリガー】○ロボ 
1/1【サイボーグ009】●009(島村ジョー)
1/1【THEビッグオー】●R・ドロシー・ウェインライト 
1/1【スーパーロボット大戦シリーズ】○ラミア・ラヴレス
1/1【ゼノサーガシリーズ】○KOS-MOS
1/1【人造人間キカイダー】○ハカイダー 
1/1【仮面ライダーZO】○ドラス 
1/1【ビーストウォーズ超生命体トランスフォーマー】○メガトロン 
1/1【SoltyRei】○ソルティ・レヴァント 
1/1【メタルギアソリッド】○グレイ・フォックス 
1/1【PLUTO】○ゲジヒト
1/1【究極超人あ〜る】○R・田中一郎
42/50
4Classical名無しさん:08/06/11 00:44 ID:5uavUZUs
5/5【仮面ライダーSPIRITS】○本郷猛/○風見志郎/○神敬介/○城茂/●村雨良
4/5【魔法少女リリカルなのはStrikerS】○スバル・ナカジマ/○ギンガ・ナカジマ/○チンク/●セイン/○ノーヴェ
4/4【からくりサーカス】○フランシーヌ人形/○コロンビーヌ/●パンタローネ/○アルレッキーノ
2/2【ロックマンXシリーズ】○エックス/○ゼロ
2/2【ターミネーター2】○T-800/○T-1000
2/2【攻殻機動隊】○草薙素子/○タチコマ
2/2【サイボーグクロちゃん】○クロ/○ミー
2/2【ToHeart】●マルチ/●セリオ
2/2【ザ・ドラえもんズ】●ドラ・ザ・キッド/●王ドラ
2/2【マルドゥックシリーズ】○ルーン・バロット/○ディムズデイル・ボイルド
2/2【パワポケシリーズ】○灰原/○広川武美
1/1【ロックマンシリーズ】○ロックマン
1/1【ジョジョの奇妙な冒険】●ルドル・フォン・シュトロハイム 
1/1【魁!!クロマティ高校】○メカ沢新一 
1/1【勇者王ガオガイガー】○獅子王凱 
1/1【魔法先生ネギま!】○絡繰茶々丸
1/1【封神演義】○ナタク
1/1【Dr.スランプ】●則巻アラレ
1/1【VOCALOID2】○初音ミク 
1/1【クロノトリガー】○ロボ 
1/1【サイボーグ009】●009(島村ジョー)
1/1【THEビッグオー】●R・ドロシー・ウェインライト 
1/1【スーパーロボット大戦シリーズ】○ラミア・ラヴレス
1/1【ゼノサーガシリーズ】○KOS-MOS
1/1【人造人間キカイダー】○ハカイダー 
1/1【仮面ライダーZO】○ドラス 
1/1【ビーストウォーズ超生命体トランスフォーマー】○メガトロン 
1/1【SoltyRei】○ソルティ・レヴァント 
1/1【メタルギアソリッド】○グレイ・フォックス 
1/1【PLUTO】○ゲジヒト
1/1【究極超人あ〜る】○R・田中一郎
39/50 
5Classical名無しさん:08/06/11 00:44 ID:5uavUZUs
【参加者の持ち物】
・スタート時、参加者がそれ以前に所有していた武器類、その他の所有品は没収されている。
・代わって、参加者にはそれぞれ1台ずつPDA(携帯情報端末)が支給される。

 ●PDA(携帯情報端末)の機能について
  ・機能は「マップ表示」「参加者名簿」「テキスト作成」「時計」「支給品転送」「支給品データファイル」の6種類。
   「マップ表示」:ゲームの舞台となる会場のマップを表示。コンパスもあわせて表示される。
   「参加者名簿」:ゲームの参加者となる49体の名称が記された名簿を表示する。
   「テキスト作成」:テキストファイルを作成する。
   「時計」:現在時刻を表示する。開催者側の指定する時刻はこれによって確認する。
   「支給品転送」:開催者側から支給されたアイテムを手元に転送する。手元にあるアイテムを再転送することも可能(詳細は後述)。
   「支給品データファイル」:開催者側から支給されたアイテムの使用説明書を閲覧する。
  ・入力はタッチパネル方式で、専用のペンが付属している。
  ・赤外線通信で、他のPDAとデータのやり取りが可能(ただし近距離に限る)。
  ・非常に頑強で、滅多なことで壊れることはない。

 ●支給品について
  各参加者にはPDAと共に、「食料および水(エネルギー)」「懐中電灯」「ランダム支給品」が支給される。
  これらはPDAの転送機能によって、参加者の手元に転送することができる。
  「食料および水(エネルギー)」:各PDAにはその所有者となる参加者が登録されており、登録された参加者が必要とするタイプの食料またはエネルギーが転送される。
  「懐中電灯」:暗視機能を持たない参加者が暗闇を照らすためのもの。
  「ランダム支給品」:参加者ごとに何らかのアイテムが1〜3個、ランダムで支給される。

 ●支給品の再転送について
  ・転送によって一度手元に取り寄せた支給品は、再転送によって送り返すこともできる。
  ・再転送には、各支給品のIDをPDAで読み取って登録することが必要。
   一度登録した支給品は、自由に転送・逆転送が可能である。
   なお、本人のランダム支給品のIDは初めから登録されている。
  ・支給品以外の物体の転送は不可能。
6Classical名無しさん:08/06/11 00:45 ID:5uavUZUs
【内蔵武器制限】
・参加者のうち、身体に武器を内蔵・収納している者に関しては、取り外し可能なもののみ没収。
 (例:仮面ライダーXのライドル、ゼロのゼットセイバー等)
・取り外し不可の内蔵武器は没収対象とならないが、威力等の制限を受ける場合もある。
 (例:シュトロハイムの機関砲、ロックマンのロックバスター等)

【能力制限について】
・参加者のパワー・スピードといった基本スペック、および内蔵武器等の威力には適宜制限が加えられている。
 「序列は変わらないが、上下の差はある程度まで縮まっている」ものと考えること。
・各参加者固有の能力/機能についても、効果時間・効果範囲等の制限が加えられる(もしくは使用を禁じられる)場合がある。
 ※制限の詳細は書き手諸氏の裁量に委ねられていますが、制限の度合等が不当(有利すぎる、または不利すぎる)と考えられる場合、
  修正・NG議論の対象となる可能性もありますので、ご了承下さい。

【マップについて】 
・4基の独立したコロニーが通路によって接続されている構造。
・コロニー内は立体映像により人工の空が投影され、朝・昼・夜といった時間の変化が反映されている。
・コロニーおよび連絡通路の外壁は非常に強固であり、破壊は基本的に不可能。
・会場全域に常時ジャミングが張られており、各種遠隔通信は使用不可(ただしランダム支給品を用いた通信に関してはこの限りではない)。
・各コロニーには飛行場があり、そこでシャトルに搭乗することで他のコロニーに直接移動できる。
 シャトルは自動操縦で、航路は他3コロニー飛行場行きで固定。
・マップは縦横の境界線によって1km四方のエリアに区分される。エリアは8×8、計64存在する。
 
全体図
ttp://www.youlost.mine.nu/upload/data/up001000.jpg
7Classical名無しさん:08/06/11 00:45 ID:5uavUZUs
【放送および禁止エリアについて】
・6時間毎(0:00、6:00.12:00、18:00)に開催者によって放送が行われ、禁止エリアと死亡者、現時点での生存者数が発表される。
・禁止エリアは放送毎に3エリアずつ指定される。
・発表された禁止エリアは、放送から1時間後、3時間後、5時間に1エリアずつ発効する。
・禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。

【作中での時間表記】(0時スタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 日中:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24
8Classical名無しさん:08/06/11 00:45 ID:5uavUZUs
【予約に関してのルール】
・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行う。
・予約期間は基本的に三日。

【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(既に死んだはずのキャラが普通に登場している等)。
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)。
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×

・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
 修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・修正要求ではない批判意見などを元にSSを修正するかどうかは書き手の自由です。
9Classical名無しさん:08/06/11 00:47 ID:5uavUZUs
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの一時投下スレにうpしてください。
・自信がなかったら先に一時投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない一時投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
   ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
   その際は必ずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。

10Classical名無しさん:08/06/11 00:47 ID:5uavUZUs
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
11Classical名無しさん:08/06/11 00:47 ID:5uavUZUs
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、スレには色々な情報があります。
・『展開のための展開』はNG
 キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
 紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効
 携帯からPCに変えるだけでも違います
12Classical名無しさん:08/06/11 00:47 ID:5uavUZUs
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
 同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
 修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、ドラえもん(クレヨンしんちゃんも可)を見てマターリしてください。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
 やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
 冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
 丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。

【議論の時の心得】
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
 意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
  強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
13Classical名無しさん:08/06/11 00:48 ID:5uavUZUs
【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
 程度によっては議論スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
 例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
 この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
 こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
 後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
 特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。

前スレ

ロボ・サイボーグキャラロワイヤルpart5
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1208203478/
14 ◆hqLsjDR84w :08/06/11 00:52 ID:DqJLYO7k
スレ立て、乙です!
しかし、前前スレの容量が余っているので、そちらに落としますね。
↓ここです

ttp://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1202482150/
15Classical名無しさん:08/06/11 00:58 ID:tQcnVBJc
【ルール追記】
PDAに次のような機能が備わっていることが判明しています
「ルール表」プログラムの基本的ルールが明記されている。
「放送・及び記録の閲覧」6時間ごとに音声で死亡者と禁止エリアが放送され、以降更新されたデータが閲覧が可能になる。
16 ◆hqLsjDR84w :08/06/11 01:05 ID:DqJLYO7k
ルールの追記をしてくださった方、ありがとうございます。

投下の方、完了しました。
容量を見ないで投下してしまい、申し訳ありませんでした。
17 ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 01:53 ID:cwfhAeBo
スレ立て人とID:hqLsjDR84w氏乙です。

一時投下スレに仮投下いたしました。
矛盾点や誤字脱字読みにくさその他、遠慮ないご指摘よろしくお願いします。
18Classical名無しさん:08/06/11 02:02 ID:5uavUZUs
>>17
仮投下乙です。
特に問題はないかと。

感想は本投下時に
19Classical名無しさん:08/06/11 17:28 ID:tQcnVBJc
投下乙
特に問題は見受けられませんでしたよ
20 ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 19:19 ID:cwfhAeBo
誤字があったのは…… >>17だったァ――IDじゃなくトリップのはずだったのにィ〜〜

遅くなりました。問題はないようですので本投下します。
21Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 19:23 ID:cwfhAeBo
D-5、シャトル発射場前施設の一室にエックスを運び、アルレッキーノと別れた後。
ソルティが最初にしたのは布巾を探すことだった。

エックスの損傷は、ほぼ全身にわたっている。
壁に打ちつけられた後頭部と背部、何よりもXキックを受け止めた胸部。バスターを含め四肢の欠損がないことが唯一の救いといえた。
青いアーマーは乾いた砂や土でくすみ、赤みがかったオイルが口元を濡らしている。
その痛々しい姿が、銃を握り孤独に怯えていたソルティを駆り立てたのだ。

――傷ついた彼の修復ができなくとも、せめて顔を拭くぐらいはしたい。
思いに動かされて部屋を出た彼女が戻るまで、数分とかからなかった。

白い壁に囲まれた何の変哲もない部屋。
中央に大き目の机が一脚。椅子は現在ソルティが腰掛けているもの以外にも数脚。
そして、エックスの横たわる一台のベッド。
部屋の明かりはつけず、窓もカーテンを閉めているため、辺りは薄暗い。
ベッド近くの小机に付属していた卓上照明が、唯一の確かな光源だった。

ソルティが抱えているのは白い布巾数枚と、お湯の入った緑の風呂桶。
「ここには、人がいたんでしょうか」
この部屋の近くには洗面所やシャワー室も見つかった。ここはシャトル発着を待つための休憩所のようなものだろうか。
ソルティはそう推考する。しかし、口にした疑問には答えが出なかった。
広めに取られた各部屋の間取り。特に扉の大きさなどは顕著である。
対して、奥にあったトイレは申し訳程度に造られたとしか思えないほど狭い。
22Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 19:25 ID:cwfhAeBo
短い記憶の全てを人間と共にしてきた彼女の目には、この建物の造りはいびつに映った。
違和感を抱えつつも、布巾を湯に浸し、エックスの顔を拭っていく。
おっかなびっくりという手つき、だが丁寧にオイルをふき取る。
スリープモードでも感覚は残っているのか、時折ぴくりと彼のまぶたが揺れるたびに、大きくびくんと身体を震わせながら。
ほどなく汚れは落とされて、ソルティはほっと息をつく。

放送が流れたのは、その時だった。

『――インフォメーションメッセージ』
三重に唱和する、無機質な女性の声。
ソルティは身体を竦ませてから、慌てて声の発信源である三つのPDAのうち、自らのものを掴み取る。
エックスとの最初の情報交換で、PDAにメモを残す機能があることは確認済みだった。
一瞬、ソルティはエックスを窺い見る。そして声をかけるでもなく記録作業に戻り、操作に没頭し始めた。
死亡者の名前がひとつ読み上げられるごとに強張る表情。
淡々と流れる放送に耳を澄ませながら、不器用な手つきで端末を操作していく。
――今、ここで動けるのは自分だけ。
そう必死で自身に言い聞かせることで、手の震えを抑えつけながら。

音声が途切れた瞬間、ソルティに重い疲労感がのしかかった。
緊張していた身体は脱力したが、顔の強張りはまだとけそうにない。
10人。
死亡者として名を読み上げられた者たちだ。
その中の誰ともソルティは面識がない。エックスの探し人の名も呼ばれなかった。
しかし彼女は、深い悲しみが胸に溢れるのを止められない。

死んでしまった中には、大切な人のいた者もいただろう。
23Classical名無しさん:08/06/11 19:49 ID:tQcnVBJc
24Classical名無しさん:08/06/11 19:51 ID:tQcnVBJc
25Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 20:03 ID:cwfhAeBo
エックスの寝顔は、意外なほど幼く見える。
普段の物腰や別れた時の厳しい表情には、頼もしい青年の雰囲気があったというのに。
こうして無防備に眠っていると、あどけなさの残る少年のようだった。
一見するとソルティより年下にさえ見られるかもしれない。
ソルティは、泣きそうに顔を歪める。
彼女と同じように、エックスの身体も作り物だ。稼動年数や性格設定、精神年齢を捉える上で、容姿はほとんど意味を持たない。
だが、ソルティには感じ取れた気がした。彼が戦いに際し、どれだけの心構えを要しているかを。
きっと彼は本来、戦いと最も縁遠い心を持っているのだろう。
ソルティは膝の上に置いていた両の掌を握り締めた。

――彼が戦うのは、誰かを守るため。この壊し合いに抗おうとする人を、守るため。殺すためじゃない。争いを止めたいから、戦う。

それは、この場に呼び寄せられたばかりのソルティが抱いていた想いと同じもの。
彼女には迷いがある。
先ほどの放送で名を呼ばれた内の一人に、アルレッキーノが殺した参加者がいる。その事実はソルティの心を苛んだ。
アルレッキーノに罪はない。彼は壊し合いに乗らず、ソルティとエックスを助けたのだ。
彼女を悩ませ続けるのは、アルレッキーノの投げかけた問い。
“エックスや壊し合いに乗らない参加者を守るために、敵を殺すことができるのか”。
思い出すのは、自らの右腕が男の胸を貫通する感触。血と内臓部品を撒き散らす灰色の髪の男と、怯えに引きつる少女の顔。
26Classical名無しさん:08/06/11 20:04 ID:tQcnVBJc
 
27Classical名無しさん:08/06/11 20:05 ID:5uavUZUs
    
28Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 20:06 ID:cwfhAeBo

依然として覚悟はできていない。
ただソルティの胸の内に、湧き上がる感情の奔流があった。

守りたい。

その想いは、この地へ呼ばれた直後とは比べ物にならないほど強く激しい。
ソルティは、小机に置かれた布巾と桶――布巾に付いた赤黒い染みと、桶の水と完全には混ざらず浮かぶオイルを、凛とした瞳で見つめる。
当然ながら、ソルティも死ぬのは怖ろしい。
大切な人々と離れ離れになった心細さが、絶えず胸を締めつける。
しかし彼女の中の決意はそれらの不安をかき消すほどに確かなものだった。

――エックスさんが眠る間、もしここに襲撃者がやって来たなら、全力で彼を守る。そして絶対に、壊し合いに乗らない人達の絆を守ってみせる。そのためなら、戦える。

ソルティは膝上に載せている、大切な人の銃を撫でた。
「ロイさん……どうか、力を貸してください」
うっすらとカーテンが白みを帯びていく。
夜明けの光が、薄いカーテンを透かして二人を照らし出す。
その時、エックスが僅かに身じろぎをした。ソルティは瞠目してエックスに目を向ける。
吐息のような呟きが、一言彼の口からこぼれた。
その微かな声は、ソルティには届かない。
しかし代わりに、刹那エックスが浮かべた表情が、親とはぐれた幼子を彼女に連想させた。

――彼と自分は、どこか似ている。

想いの根拠は掴めぬまま、ソルティは彼が寂しい夢を見ているのだろうと感じていた。
29Classical名無しさん:08/06/11 20:08 ID:5uavUZUs
      
30Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 20:08 ID:cwfhAeBo

■ ■ ■

意識が闇を漂う。
不定期にフラッシュバックするイメージだけが、エックスの注意を引きつける。
浮かんだのは、身を引き裂かれるような咆哮を上げる銀の仮面の男。
自らと同じ名を持った、イレギュラー。
違う、とエックスは否定する。Xはイレギュラーじゃない。彼は確かに苦しんでいた。自らの存在が正しいのかどうか、迷うように。

「なら、イレギュラーとは何だ?」
静寂を裂き、重い声が響く。自問すれば、回答は即座に流れ出た。
――電脳に異常をきたし、欲望のままに他者を傷つける存在。倒さなくてはならない相手。

「Xは他者を傷つけていた。それでもイレギュラーではないのか?倒さなくても良いのか?」
――確かに、彼は破壊に手を染めていた。だが、彼はまだ戻ってこられる。悩み、迷う限り。可能性はある。一度は戦う事になった友のように。彼は変わらず今もハンター達の柱となっている。

問いを重ねる声に、低い笑いがこもる。
「お前は悩み苦しむイレギュラーをも倒してきた。今更何を言う?」
浮かんだ像は、翼を広げた鷲のシルエット。
「お前の存在によってイレギュラーとなった者もいるというのに」
次に浮かんだのは、兄の復讐に燃える甲虫型のレプリロイド。
31Classical名無しさん:08/06/11 20:09 ID:5uavUZUs
       
32Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 20:10 ID:cwfhAeBo

「イレギュラーとは何だ?狂った者のことか。
思い出せ、エックス。お前が対峙し、処理してきたイレギュラーは、皆狂っていたというのか?」
記憶に新しい、軍人を模したレプリロイド達の姿。
イレギュラー認定され、司令官はじめ多くの人員を喪ったレプリフォース。

愉悦さえ感じさせる声で問う男の声に、エックスは答える言葉を持たない。
相手の声音には覚えがあった。怒りを掻き立てられる、仇敵の声。

「狂わずともイレギュラーとなるのなら、イレギュラーでない者とは一体何処にいる?
エックス、お前は何者だ?数多くのレプリロイドを壊し尽くしてきたお前は、イレギュラーではないのか」

広がる闇が質量を増す。エックスの意識を押し潰そうとするように。
叫びも上げられぬ苦痛に襲われながら、しかし彼は気づいていた。
これはただの夢だ、と。
声は仇敵のものを借りていても、その問いも、この苦痛も自らが生み出したもの。
レプリフォース大戦と、部下の裏切りによる心の爪痕。癒えかけていたそれらの傷を、復活したシグマへの不安が抉りかえしているだけなのだ。

“もし俺がイレギュラー化したら、どうする?”
そう、彼は友に尋ねたことがある。友は憤りを含んだ声で、戯れ事と切り捨てた。
自らが狂ってしまうこと。それは内心、エックスが最も恐れていることに他ならなかった。
精神の支柱そのものを打ち壊せずとも、積もる恐怖は安らぎを奪おうと迫り――

急に、暖かく柔らかな感覚が意識を包んだ。
ふわりと浮かんだ映像は、緑の髪と耳を持った、穏やかな笑顔の少女。
少女について何かを思うよりも早く、意識を縛っていた苦痛がほどけて消える。
不思議と、重く冷たかった闇へ辛さを感じなくなった。
しばらくして闇の中に一筋の光が差し込むと同時に、映像が切り替わる。
33Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 20:12 ID:cwfhAeBo

綿のような白い髭をたくわえた老人の顔が、自分を見下ろしている。
微笑む老人の口が動き、何かを告げる。
名を呼ばれたという感覚はあるが、それ以外は何も聞こえない。
これは、不確かな記憶の再生。すぐにも霧散しそうな過去のかけらだ。
それでも懐かしさがこみ上げてきて、老人に向けて呼びかけようとした。
しかし急速に老人の姿が遠ざかる。いや、遠ざかっているのは自分の方だ。
「――博士」
せめて一言でもと、叫んだ。途端、再度視界が闇に包まれる。
エックスは夢の終わりを感じていた。

――何故自分の電脳は、あの老人の姿を浮かばせたのか。何か思い出さなければならないことでもあるのだろうか。
浮かんだ疑問ごと、後は散り散りになるだけに思えた意識の断片。
そこへ最後のイメージ――自らの青いバスターがちらつき、ひとつの単語が脳裏に焼き付けられる。

“Rock”と。



【D-5 シャトル発着所内/1日目・朝】
【ソルティ・レヴァント@SoltyRei】
[状態]:健康 意気消沈 強い決意
[装備]:ミラクルショット@クロノトリガー マッハキャリバー(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式、ToHeartの制服@ToHeart スラッシュクローの武器チップ@ロックマン  紫の仮面@現実  K&S Model 501(7/10)@SoltyRei、予備弾各50発 PDA×2(ソルティ、神 敬介) LUCKの剣@ジョジョの奇妙な冒険
34Classical名無しさん:08/06/11 20:13 ID:5uavUZUs
        
35Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 20:14 ID:cwfhAeBo
[思考・状況]
基本思考:壊し合いに乗っていない参加者を守り、シグマを倒す
1:部屋の中でエックスが起きるのを待つ。襲撃者が来た場合、彼を守って戦う。(ただし、二人で逃げることを優先)
2:エックスが起きたら、これからの行動について話し合う
3:ロイさんやローズさんの元に帰りたい
4:ミラクルショットはエックスがOKというまで出来る限り撃たない。
[備考]
※スラッシュクローの武器チップの事をエックスに言い忘れています。
※マッハキャリバーをただの首飾りと思っています。仮に詳細を知った場合、操れるかどうかは不明です。
※参戦時期はアニメ10話〜11話です。
※戦い自体への迷いは消えましたが、相手を躊躇なく殺せるまでには至っていません。

【エックス@ロックマンXシリーズ】
[状態]:気絶中、疲労大、全身に大きなダメージ
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、クロマティ高校の制服@魁!!クロマティ高校  赤い仮面@現実
[思考・状況]
基本思考:壊し合いに乗っていない参加者を守り、シグマを倒す
1:……ロック?
2:……X……無事なのか……?
3:テレビ局でソルティと合流。
4:ゼロと合流(ゼロは簡単には死なないと思ってるので優先順位は低い)
[備考]
※神敬介の名前を、Xだと思っています。
※第一放送の内容を知りません。
36Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 20:16 ID:cwfhAeBo

■ ■ ■

C-5、橋の前。

「フランシーヌ様は、存命であられたか」
放送が終わると、アルレッキーノは嘆息する。しかし、安心とはほど遠い心地だった。
目を伏せ、思いを巡らせる。

放送で呼ばれたひとつの名前――パンタローネ。
「最古の四人」の一員として、彼とは二百年以上を共に過ごした。
自分がリュートを奏でれば、それに合わせてコロンビーヌが舞い、ドットーレが即興の口上を述べ上げる。そして最後には、歌を口ずさむパンタローネが得意の玉乗りで躍り出る。
それらの芸は主を笑わせるただの手段。しかも一度も効果を見せない役立たずの方法に過ぎず、競演する彼らに喜びが訪れたことはなかった。
そして「最古の四人」に、親愛や友情などは存在しないはずだった。

しかし現在、アルレッキーノは明らかな喪失感を覚えている。
見知らぬ遠い場所でまたもや欠け、半分になった「最古の四人」。ドットーレが壊れた時にはなかった感情に戸惑いつつも、頭を切り替えた。
パンタローネを上回る参加者が存在するという事実。それがアルレッキーノの焦燥を煽る。
――なんとしても、フランシーヌ様と合流しなければ。

アルレッキーノはPDAを操作し、表示させた地図を眺めて考え込む。
主の居場所を示す手がかりはまだ見つからない。とはいえ、闇雲に探すのではあまりに非効率すぎる。
何より制約があった。
37Classical名無しさん:08/06/11 20:17 ID:5uavUZUs
         
38Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 20:18 ID:cwfhAeBo
まずは、放送後にD-5の飛行場で落ち合うという茶々丸達との約束。反故にする気はないため、あまり遠くには行けないのだ。
ならばすぐに引き返せばいいかと言えば、そうにもいかない。
頭の上の重みが増した気がして、アルレッキーノの端正な造りの顔が渋面に変わる。
不思議な道具で小さくすることで、帽子の中に隠した『人間』の男。
飛行場にいる二人のうち、エックスと戦った相手であり、アルレッキーノが殺した“ことになっている”男だ。

この点については、ひどい失策だった――冷静さを欠いていたといわざるを得ない。
いずれソルティは、この男が死んだとエックスに話すだろう。そうなれば、この男を手放すまでD-5には戻りにくい。
自分は、男を捨てることも殺すこともできないというのに。
それぐらいならまだいい。
戦闘の最中、エックスが男の名前を知った可能性もある。その場合、死んだはずの男の名が放送で読み上げられないのだから、不審を呼ぶことは避けられない。
下手をすれば、傷ついた男を逃がすために現れた、男の仲間だと誤解されるかもしれないのだ。

ソルティによれば、二人はテレビ局を目指していたらしい。
エックスが目を覚ました後、彼が自分と茶々丸を待つことを承諾するかは未知数。
もし彼らがD-5を離れるなら仕方がないが、シグマを確実に知る人物として、エックスとは可能ならば情報交換をしておきたかった。
――もしかすると、あの少女が自分のフォローに回ってくれるかもしれない。
ソルティは他者を信じやすく、心優しい少女だった。その性格は壊し合いにおいては危なげだが、彼女の甘さに賭けてみるのも悪くない。

この時、アルレッキーノがあることに気づいたとしたら、彼は驚きを隠せなかったに違いない。
この壊し合いの場でただ一度会話をしただけの少女を、既に信用しかけていること。
39Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 20:20 ID:cwfhAeBo
そしてその“信用”が、確固たる証拠や相手の性能などではなく、ただ彼女の優しさだけに起因している、ということに。

しかし彼の思考を占めているのは、頭上の重荷のことだった。
帽子を脱ぎ、眠る小人を裏返した帽子につまみ入れる。
そう。エックス達と合流するにせよ何にせよ、この男の存在こそが最大の難点。
男にまだ目覚める気配はない。
全身が血や埃に汚れており、まるで死体のようだったが、しっかりと息をしている。

男が元の大きさに戻るまで、残り一時間足らず。
アルレッキーノは男を運ぶためだけに、スモールライトの使用回数を無くす気はなかった。
使うとしても、後一回。男がある程度動けるようになれば、いっそ逃がしたいとすら彼は考えていた。
だが、この男は壊し合いに乗っている。
男が暴れた時に止められる参加者を探し出し、預けなければならない。
すぐにでもD-5に戻らなくてはならないのだからむしろ、使う機会がないことを祈るばかりだった。

――もし預けられる相手に出会うより先、元の大きさに戻る前に男が目覚めたとして。
いくら小さくしたとはいえ、何の準備もしないまま男を頭に乗せておくのは、非常に危険な行為だろう。

アルレッキーノは男を拘束できるものを探したが、あいにくロープや布などは所持していない。
橋の入り口、陰になる位置でしゃがみこみ、男を入れた帽子を地面に置く。
とりあえず男のシャツと上着を剥ぎ取り、縄代わりに使うことにした。
脳裏にエックスと男との戦闘による閃光や爆音、瓦礫の山と化した民家の様子が思い起こされる。
そしてひびの入ったエックスの装甲から推測すると、この男の膂力は並みのヒトを超えているはずだった。
40Classical名無しさん:08/06/11 20:20 ID:5uavUZUs
                
41Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 20:22 ID:cwfhAeBo

この二枚だけでは足りないかもしれない。
アルレッキーノは、自らの衣服に視線を移す。パンタローネほどでないにせよ、彼も自らの衣装に愛着を持っていた。旅芸人ですら、舞台の上では一張羅を纏うもの。
できることなら破りたくないが、そうも言っていられない。
断腸の思いで決断した後、彼の衣装は七分袖になった。

ふと、拘束に取り掛かろうとしたアルレッキーノの両目が細められる。
男の既に出血が止まった胸の傷口に、小さな粒が挟まっている。
痛みに呻く男に頓着せずにつまみ取れば、それは何かの欠片のようだった。
アルレッキーノはすぐさま欠片を捨てる。
胡麻よりも小さな欠片を、彼は何故か不気味なものと感じていた。
男を縛り上げるアルレッキーノの表情は暗い。
自身に対する苛立ちが、指の動きを乱暴なものにしていく。
一挙一動が制限され、まるで懸糸傀儡にでもなってしまったかのような心地だった。
――殺しを恐れるソルティを笑えない。より重症なのは自分の方かもしれないのだ。


朝焼けの名残は消え、空は薄紫から白みがかった明るい青に変わり始めている。
白光の中、アルレッキーノはC-4へ向かう橋の上を駆け抜けていた。

彼の主が最初にどこへ送られ、どのように移動したか。アルレッキーノには分からない。
ただし第一放送、つまり禁止エリアの発表により、判断材料が一つ加わった。
二つの禁止エリアは、どちらも地図の端寄りで、大きな施設や道を塞がない位置にある。
これを知った参加者はどう動くか――中央寄りのエリアへ移動するのではないだろうか。
42Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 20:24 ID:cwfhAeBo
特に禁止エリアやその周りにいた参加者は、安全圏を探して躍起になっているはず。
つまり禁止エリアの周辺にある、中央や施設に近いエリアにいれば、他の参加者との遭遇率が上がる。

H-7は遠すぎるが、C-2ならばまだ近い。
そして茶々丸と交わした約束との兼ね合いを考えると、妥当な行き先はC-3周辺。
その考えが、アルレッキーノに橋を渡る道を選ばせたのだ。
想像で塗り固められた案と知りながらも、彼にとっては一縷の希望だった。

――もし、エレオノールが怪我をして、禁止エリアから動けない状況にあったとしたら?
一瞬。アルレッキーノの身体に、恐怖にも似た激しい不安が駆け上っていく。
彼は頭を振りかけて、止めた。
最悪を空想しても、無駄に焦りを生むのみ。
今取るべき道は、効率的に探索を進めることのはずだ。
「茶々丸、ソルティ、エックス。少し待っていてほしい」
願うように口を開くと、帽子の中の男が重たい身体を一瞬揺らした。

アルレッキーノが北を目指したことには、禁止エリアの存在が大きい。
ただ実はそれに加えて、もう一つ理由があった。
万が一ソルティ達がD-5を離れてテレビ局に向かった場合に、すぐに鉢合わせしないようにするためだ。

この選択は、奇しくも彼を探し人の居場所から引き離すこととなる。
そして仮に、最初にアルレッキーノが男の生存をソルティに打ち明けていたなら、もしかすると結果は逆だったのかもしれなかった。
43Classical名無しさん:08/06/11 20:25 ID:tQcnVBJc
 
44Classical名無しさん:08/06/11 20:26 ID:5uavUZUs
              
45Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 20:26 ID:cwfhAeBo
だがそれらを彼自身が知る時が来るのかは、まだ誰にもわからない。



【C-5 橋の上/1日目・朝】
【アルレッキーノ@からくりサーカス】
[状態]:健康、やや腹部にダメージ、七分袖
[装備]:マグネット×2、阿紫花の長ドス@からくりサーカス
[道具]:支給品一式×2(アルレッキーノ、神 敬介)  スモールライト@ドラえもん(残り四回)
[思考・状況]
基本思考:エレオノール(フランシーヌ人形)を生還させる。出来れば自分や茶々丸も共に脱出したい
1:橋を渡ってC-3とその周辺(B-3、D-3など)へ向かい、エレオノールを探す
2:帽子の中の男を信頼できる人物に預ける
3:D-5のシャトル発射場に戻り、茶々丸(及びソルティ、エックス)と合流する。C-3周辺の探索を終えるまでに帽子の中の男を手放せられない場合も観念して戻る
4:フェイスレス側の自動人形は積極的に破壊する
5:協力者を探し、チンクへの警告を呼び掛ける

※名簿の『フランシーヌ人形』はエレオノールの事だと思っています
※この殺し合いに参加している自動人形には、白銀とフェイスレス以外の何者かが作った者もいるのではと考えています
※シュトロハイムとゲジヒトを、ナチスがあった時代に作成されたナチス製の自動人形であると思っています
※チンクは殺し合いに乗り、シュトロハイムを殺害したと思っています

※ロボットの事を「自分の知っている自動人形とは違う作られ方をした自動人形」と認識しました
46Classical名無しさん:08/06/11 20:28 ID:tQcnVBJc
  
47Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 20:29 ID:cwfhAeBo
※茶々丸と情報交換しましたが、完全には理解できていないようです

【神敬介@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:気絶中、胸部破損、疲労大、右腕破壊、全身にダメージ大 サイズ1/10 首から下が蓑虫状態
[装備]: なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:エックス……
[備考]
※ライドルは没収されています。
※地図と支給品説明以外は未読です。
※暗闇大使の種子は砕けましたが、半分が体内に残っています。洗脳が解けたかどうかは、次の書き手様にお任せします。
※阿紫花の血によって傷の回復が僅かに促進され、出血が止まりました。他にどんな影響を与えるか、もしくは全く影響が無いのかは、次の書き手様にお任せします。
※自身のシャツと上着、アルレッキーノの服の袖でぐるぐる巻きにされています。拘束は変身すれば楽に抜け出せる強さですが、変身前の姿では元の大きさに戻るまで困難です。
※第一放送の内容を知りません。

【スモールライト@ドラえもん】
懐中電灯型。本編でも多用される。動力は普通の乾電池。
スイッチを入れると発光し、その光を物体に当てると一時間その物体を小さくできる。
小さくしたものにもう一度光線を当てると元の大きさに戻すことができる。
このロワでは通常の1/10までしか小さく出来ない。射程距離は30cmで、サイズが1/10になるまでに一分の時間がかかる。しかも、小さくしている途中で光が外れると、たちまち効果を失う。電池は五回分しかもたない。
48Classical名無しさん:08/06/11 20:29 ID:5uavUZUs
    
49Strays in the dawn ◆ss6T.bLZ42 :08/06/11 20:32 ID:cwfhAeBo
途中で止まってしまってすいません、投下完了しました。今回は繋ぎです。
支援いただきありがとうございました。

好きなキャラなのにずっと空回り…… (・3・)アルレェー?
50Classical名無しさん:08/06/11 20:37 ID:tQcnVBJc
投下乙!
ソルティよく耐えるなぁ…原作の某展開前なのに
X、これはロックマンフラグ……? 急展開の予感を感じます

ってどこへいくアルレッキーノーッ!?
51Classical名無しさん:08/06/11 20:41 ID:5uavUZUs
投下乙
アルレッキーノ迷走しとるw
ソルティの決意、エックスのロックマンフラグ、ともに期待が持てる描写でした。
敬介はいつ目覚めるんだろw
GJ!
52Classical名無しさん:08/06/11 20:47 ID:xmCd26MM
ちょっとみんな、テンプレの禁止エリアの所を見てくれないか。

【放送および禁止エリアについて】
・6時間毎(0:00、6:00.12:00、18:00)に開催者によって放送が行われ、禁止エリアと死亡者、現時点での生存者数が発表される。
・禁止エリアは放送毎に3エリアずつ指定される。
・発表された禁止エリアは、放送から1時間後、3時間後、5時間に1エリアずつ発効する。
・禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。


>禁止エリアは放送毎に3エリアずつ指定される。

どうする?
1.次回から3エリア
2.次スレのテンプレ時に修正
3.今から1エリア増やす

個人的には1か2だが
53Classical名無しさん:08/06/11 21:43 ID:uiPSdyP6
次スレテンプレ時に修正でいいんじゃね?
54Classical名無しさん:08/06/11 22:44 ID:EOmgCJVU
2でいいかと
55Classical名無しさん:08/06/11 23:32 ID:BPCL9R5.
2で良いと思います。
56Classical名無しさん:08/06/11 23:39 ID:mNbdDdmw
てこいれで2を
57Classical名無しさん:08/06/12 00:46 ID:EvUXxAQ2
前スレ(part5)の>>669なんですけど、後者の凱はサブローの間違いじゃないでしょうか?

>常人ならば軽く怯みそうな凱の気迫を受けても、凱はそれに気圧されない。
58 ◆hqLsjDR84w :08/06/12 00:53 ID:k7gW.MWk
>>57
ああ、本当だ……
wiki収録後に修正しますね。指摘どうもです。
59 ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:43 ID:dnLIyIQA
お待たせして申し訳ありません。修正作業が完了したので投下します
60Classical名無しさん:08/06/12 01:43 ID:WjthFe2k
61Classical名無しさん:08/06/12 01:43 ID:0zBEd2Tk
62もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:44 ID:dnLIyIQA
「パンタローネ……」

放送によって告げられた名前に、フランシーヌは何ともいえぬ表情で立ち尽くす。
自分に仕えてくれた、最古の四人の中でも最強の実力を誇っていたパンタローネの破壊は彼女にとって予期せぬものであったことは確かだ。
だが、少し前の彼女ならば多少の喪失感を感じる程度だったに違いない。
しかし今の彼女は知っている、命という物の大きさを、それが自分達自動人形にも通じるものがあることを。
そう、フランシーヌ人形は――悲しんでいたのだ。
ラミアはその様子を見て、一旦そっとしておくことを選ぶがミクはしきりに首を捻り続けていた。

「……ミク?」
「フランシーヌさンは、何であンナに悲シソウなんデショウか?」
「なに?」

最古の事はすでに聞いている、知り合いを失ったことを悲しむのは考えるまでも――

(いや、私も同じか)

以前の、W17として生きていた自分を思い出す。
人間が親しい者が死ぬことに悲しみを覚えることは知っていたものの、それを理解してはいなかった。
ミクも昔の自分と同じような思考とは考えにくいが、それでもそういった「死」の意味を理解していないのだろう。

「覚えておくとよかったりしちゃいますわ……死は、破壊は悲しみを生む」
「死は、悲シイ……」

確かめるように呟くミクを連れ、ラミアはスタジオから出て行く。
フランシーヌはしばらく一人にした方がいいだろう、その間にここを探索しておく必要がある。
たったの数時間でここまでの数が破壊、殺害されるのは想像してなかったわけではないが、かなり危険だ。
今までミクやミー、本郷やフランシーヌといったこの殺し合いに反抗する者達とばかり会えていたが、思いのほか危険人物は多いのかもしれない。
ここにもいつそういった者が来るかわからない、探索は迅速にしておくに越したことはない。
63Classical名無しさん:08/06/12 01:44 ID:k7gW.MWk
 
64Classical名無しさん:08/06/12 01:45 ID:Kn8hujgc
 
65もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:45 ID:dnLIyIQA
「……ラミアサん」
「何でございますでしょうか?」
「名前を呼バレた分、みンナ悲しクなっチャウんでスカ?」
「……恐らくは、な」

自分やミクのように、知り合いがいない者ならば誰かが悲しむはいないかもしれない。
だが、理屈じゃない……死、そのものに悲しみを抱く者がいることを自分は知っている。
だからこそ、ミクのような純粋な心を失いたくないと思う、
もし自分達にこの殺し合いに乗った者が襲い掛かり、ミクやフランシーヌの命が危険に晒されたら――

(私は……どう動く)

命を守るために命を奪う。
命を奪わないために命を見捨てる。
この矛盾した二択を突きつけられた時、果たして自分が選ぶべきはどちらなのか……

(……ふ、いかんな。答えなど決まっている……『分の悪い方に賭ける』そうだろう、隊長)

自分の隊長であるキョウスケ=ナンブならば、ハガネとヒリュウ改のクルー達ならば迷わずこの選択肢を選ぶはずだ。
すなわち、最も分の悪い選択……仲間も相手も殺さずに制するという選択を。
決意新たにラミアが顔を上げると、いつの間にかミクは先を進んでいたようで無警戒に曲がり角を飛び出していく。
あの警戒心の無さは注意しておかなくては、そう思った瞬間、一発の銃声と共にミクの右手が跳ね上がり、赤い人間と変わらない血がその腕から流れ出た。

「ミク!?」
「――ラミア、さン?」

何が起こったのか自分でも理解できていないのか、腕を押さえながら呆然とするミクを引き戻す。
直後再び銃声が響き、先ほどまでいた床が爆ぜる。

(狙いをつけるまでが遅い、戦闘慣れはしていないか……だが、銃の威力は相当な物だな)
66Classical名無しさん:08/06/12 01:46 ID:k7gW.MWk
  
67もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:46 ID:dnLIyIQA
相手の戦力を分析しながらミクの怪我を見る。
かなりの貫通力を持っているようだ、弾丸は抜けていて出血もそれほどではない……と、そこで重要なことに気づく。

「ミク、自分が破損した時の修復方法は知っているか?」

ここに集められた者は全員がロボットやアンドロイドだ、
それ故に簡単な破損や傷だろうと、自分の知っている治療手段が適切ではない可能性が高い。

「えっト……普通ノ人間と、同ジハずでス」
「よし……ならとりあえずはこれでいいだろう」

支給品の一つである、麻帆良学園の制服を転送に袖の部分を引き千切り包帯代わりにする。

「ミク、フランシーヌをつれてここから逃げろ」
「ラミア、さんハ?」
「私はあいつを引き付ける」

慎重な相手のようだ、一人負傷させたというのに迂闊に攻めてはこない。
だからといってこのまま素直に逃げることはできないだろう。

「……ラミアサん」
「何だ?」
「悲しイのは、嫌でスヨ……」

そこの言葉に驚いたようにミクの顔を見る。
それは「死なないで」というメッセージ、数分前まで死が何なのかさえわからなかった者とは思えないほど、ミクの目は真剣だった。
ゆっくりと頷き、大丈夫だとミクを走らせる。
狙撃に注意しながら通路を覗き込み……眉を顰める。
ミクを銃撃した者の姿は見えず、いくつもある部屋のどこかに隠れたのだろうと推測する。
自分の武装は直接戦闘には向かないクレイモアが四つ、相手は残弾が何発残っているかわからないが高威力の銃、更に他にもあるかもしれない。
こちらから攻め込むのは難しい、持久戦はこちらとしても望むところだが、だからといって完全に受けに回るのも危険だろう。
68もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:47 ID:dnLIyIQA
(とはいえこちらの武装では……)

クレイモアは屋内で使うにはリスクが大きすぎる、撒き散らされるベアリングによって壁や柱が壊れたら大惨事となりかねない。
なんとか懐に飛び込みたいところだが、姿を隠されてはいかんともしがたい。
どう動くか思案するが、突如横の壁が破壊されてドリルのような手がラミアへと襲い掛かる。

「――っ、そっちから来てくれるとはな!」

身体を捻りそれを回避、わずかに左腕をかすめただけでダメージはほとんどない。
襲撃をかけたギンガは即座に右手に持った銃を向けようとするが、その前にラミアに銃身を押さえられる。
そのまま奪い取ろうと力を加え――ギンガがあっさりと銃を手放したことで上体が流されてしまい、そのまま腹部に蹴りを喰らい壁に叩きつけられる。
呻きながらも奪い取ったばかりの銃を向け、引き金を引くが軽い音がするだけで何も起こらない。

(しまった、わざと弾切れの銃を――!?)

思った時にはすでに遅い、隙だらけになったラミア目掛け左腕を突き出し――

「ラミアさん、伏セテー!」
「「っ!?」」

聞こえてきた声の方向に同時に顔を向け、音速で飛んでくる「フ」と「セ」と「テ」の文字を模った何かにギンガが吹き飛ばされる。
突然の事に呆然とするラミアの元に、フランシーヌとミクの二人が駆け寄りミクが笑顔を見せた。

「間に合イましタ!」
「二人とも、これは……」
「私の支給品で、コエカタマリンというものらしいです。声を使うのだったら私が、とミクが……」
「うウ、だケドこれだト歌が歌エナいです」

まさか戦闘力がほとんどないこの二人に助けられるとは思いも寄らなかった、
無謀な行為を諌めるべきか、それとも素直に感謝すべきか迷いつつも苦笑し……持っていた銃の感触がなくなったことでギンガが吹き飛ばされた方へ振り返る。
ギンガは文字の下から這いずり出ながらPDAを操作していた、動くのもままならないといった様子だが、わざわざ銃を戻したということは予備の弾丸があるに違いない。
69Classical名無しさん:08/06/12 01:47 ID:Kn8hujgc
  
70Classical名無しさん:08/06/12 01:47 ID:k7gW.MWk
   
71もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:48 ID:dnLIyIQA
「二人とも、早くここから離れるぞ!」
「逃げルンですか? ならお任セです!」

ミクが元気よく答え、エスケープボールを取り出し発動させる。
次の瞬間、三人の姿はその場から消えていた。



「すでにこれほどの犠牲者が出ているとは……」

TV局へ着く直前、
ゲジヒトとバロットは放送で告げられた人数の多さに顔を歪めていた。
ただ一人、KOS-MOSだけが眉一つ動かさずに状況を分析する。

「第一放送までに私が出会ったのは三名、それを平均と考えたとしても、
私のようにこのプログラムに乗った人間から逃れた者がいる可能性も視野に入れれば、積極的に破壊行動に回ってる者は多いと思われます」
「そうだな……ここから脱出しようと考えていた者が何人犠牲になってしまったのか」
<<二人とも、急ごう>>

バロットの言葉に二人は頷き、TV局へと進んでいく。
自分達に出来ることは嘆くことではなく、一人でも多くの者を守ること、立ち止まっている暇はないのだ。

72Classical名無しさん:08/06/12 01:48 ID:WjthFe2k
73Classical名無しさん:08/06/12 01:48 ID:k7gW.MWk
 
74Classical名無しさん:08/06/12 01:48 ID:0zBEd2Tk
75もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:48 ID:dnLIyIQA
三人がTV局の前に来たとき、遠くからこちらへ向けて駆け寄ってくる人影を見つける。
何者かから逃げているのかと一瞬思うが、その男が手にした機関銃をこちらに向けた瞬間その考えを捨てて三人とも思い思いの方向へと散らばる。
地面が爆ぜ、KOS-MOSが即座に銃を構える。

「敵性と判断、攻撃を開始します」
「コスモス、殺してはいけない!」
「――っ!」

発砲直前にゲジヒトに声をかけられ、咄嗟に狙いがずらされた銃撃は男、Rから遠く反れてしまう。
Rは着弾点を見て、はずれたらしきことを確認するとKOS-MOSへと狙いをつけ、銃弾が放たれる前に物陰へと退避する。
KOS-MOSならば手足を狙うこと程度可能だが、Rの滅茶苦茶な動きのせいで照準がずれてしまう。

「く、何とか近づいて制圧を……」
<<ゲジヒト、私がやってみる>>
「バロット?」
<<この武器、殺傷能力は低いらしい>>

右手に籠手のような物を装着しながらバロットが言い、その籠手、ガンナックルでRへと狙いをつける。
それに気づいたRがそちらへ振り向くが、構えるより先に放たれたエネルギー弾がRの左腕へと命中し――そのままRが倒れて動かなくなる。

「……気絶、したのか?」
<<錯乱していたみたいだし、そうかもしれない>>
「罠の可能性も否定できません、警戒状態を続行します」

三人はそれぞれ距離をとりながら動かないRを警戒する。
バイクだけは転送しておき、そのまま少しずつ近づき……突然後ろから聞こえた声に振り返りそれぞれの武器を構える。

「待て! こちらは敵対する意思はない!」
「人間、か?」
「え、エッと、初音ミクと言いマス! 好きナ事は歌デ――」
「……武装及び敵対意思は認められません」
76Classical名無しさん:08/06/12 01:49 ID:Kn8hujgc
   
77もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:50 ID:dnLIyIQA
互いに警戒は解かないままだが、簡単な自己紹介だけを済ませ、
Rの説明をしようとしたところで、上方から銃撃が加えられる。

「何だ!?」
「くっ、もう動けるようになったのか!」


魔力の道、ウイングロードによって空を走りながらギンガは誰を狙うかを考える。
コエカタマリンのダメージを受けた後、流石に動くこともままならなくなりエリクサーを使用した。
三人が撤退してくれたことは助かったが、逆に言えばあの状態で追撃してこなかったというのは有効な攻撃能力がないということだ、逃す手はない。
そう考え回復した後すぐに近くの窓から外へと飛び出したのだが、まさか仲間と合流しているとは予想外だった。
とにかく先手をと銃撃するが相変わらず精度はよくない、TV局で命中させられたのはまぐれだったようだ、それでも段々とコツは掴めてきた。
新たな三人がそれぞれ銃と腕をこちらへ向けてくるが、積極的に撃って来る様子はない。
ならば、積極的になられる前に初撃で戦力をできる限り削っておく。
拳銃を持っている女か、ショットガンを転送し構える男か……もう一人を見て、一瞬眉を顰める。
三人目の女がこちらへ向けているのはノーヴェの武器であるガンナックル、
あれを手に入れることができれば使いにくい銃より遥かにマシだろうし、何よりノーヴェと合流できた時彼女の戦力が格段に上がる。
狙いを決め、ウイングロードを男の方へと伸ばしてフットパーツで魔力の道を駆け抜ける。

「来るか、だが軌道がバレバレだぞ!」

ゲジヒトがギンガの足元を狙ってショットガンを撃ち込む。
散弾がギンガの足へと突き進むが、展開された魔力障壁を砕くのみで終わってしまった。

「く、何だあれは?」
「――?」

双方の顔に驚きの色が現れる。
ゲジヒトは未知の力に。ギンガは一発で自分の障壁が砕かれた事実に。
78Classical名無しさん:08/06/12 01:50 ID:k7gW.MWk
  
79Classical名無しさん:08/06/12 01:50 ID:Kn8hujgc
    
80もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:50 ID:dnLIyIQA
それは両者とも一瞬で消え、ギンガは再び障壁を作りだしKOS-MOSとバロットの銃撃を防ぐ。
ゲジヒトは銃による攻撃の効果が薄いと考え、後ろに下がりながらPDAを操作し新たな武器を取り出そうとする。
ギンガはそのまま駆け抜け、二人が再度銃撃してきたタイミングで別のウイングロードを作りそちらへと飛び移る、
新たに生み出されたウイングロードの先にいるのは――バロット。

「……!」
「くっ、吹き飛べ!」

咄嗟にラミアがコエカタマリンを飲んで叫ぶが、左手のドリルで飛来する文字を打ち砕きながら突き進む。
流石に多少姿勢が崩れ、KOS-MOSはその間に闇夜の鎌へと持ち替えて背後から狙いをつけ――思案する。

このまま殺害するべきなのではないか?
仮にここで抑えたとしても、今までの様子を見る限り説得に成功する可能性はかなり低いと推測できる、
ならば危険を冒して無力化するより、ここで殺害するべきだろう。
一瞬の間に思考し、ギンガの胴体を狙い鎌を振るおうとするが、

「よせ、コスモス!」

再度ゲジヒトの言葉によって狙いがずれる。
自身に出来た隙に即座に距離を取り、
その間に体勢を立て直したギンガはバロットへと左手のドリルを構え……ドリルの回転が止まる。

「――っ!?」

バロットのスナークの事など知らない彼女は突然の事に動きを止めてしまい、至近距離でエネルギー弾の直撃を受けてしまう。
その勢いをも利用して後ろに下がり、ある程度離れたところで左手の回転が再び開始される。
ガントレットの故障ではない、何者かが左手に干渉したと推測しながら、持っていた銃を転送する。どうせ警戒された状態では自分の腕で当てることは難しい。
再度攻め込もうとするが、ゲジヒトが刀を突き出して来たため更に後ろへと下がる。
銃を手放し、距離を離したところでバロット目掛けて右手の乾坤圏が放たれた。
遠距離武器は無いと判断してたバロットは一瞬驚き、すぐさま身を捻ってそれを回避、ガンナックルで反撃する。
81Classical名無しさん:08/06/12 01:51 ID:k7gW.MWk
    
82もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:52 ID:dnLIyIQA
一つ覚えだが三度障壁、ここで自分魔力の減りが早いことに気づく。
エリクサーはすでに使ってしまった、わずかに焦りながらギンガは左手を回転させてバロットへ踏み出し――スナークによって回転を止められ顔を歪める。
足を刈り取るように振るわれた鎌をウイングロードを駆け上がりかわし、銃を再度転送し牽制として撃とうとしたところでその銃をバロットに撃ち弾かれてしまう。
更にその銃を拾ったラミアの銃撃でバランスを崩し、ウイングロードから落下、倒れたところをKOS-MOSが足を狙って鎌を振るう。

「――!?」

その刃を受けたのは巨大な毒蛇。
咄嗟に転送したその毒蛇の人形、マンバの影に隠れながらゲジヒトの横手に回り乾坤圏を放つ。
唯一気づいていたバロットがゲジヒトを引き倒しそれを回避するが、ギンガはマンバをラミアとKOS-MOSの方へ蹴り飛ばしながらもう一方の乾坤圏でバロットを狙う。
すぐさま離れようとするが、背後にゲジヒトがいることで動きを止めてしまい――押し退けられる。

<<ゲジヒト!>>
「く……っ!」

バロットの前に出て刀で乾坤圏を受け止めるが、宝貝の威力に押されてしまう。
そこへギンガは間合いを詰め、バロットは咄嗟にスナークでガントレットを止める――否、初めから動かしていない。

<<ゲジヒト、避けて!>>
「ナックルバンカー」

硬質の魔力フィールドを生み出し、ゲジヒトの腹部へと打ち込み――貫く。
本来カウンター用の魔法だが、そのフィールドをそのまま拳の強化へと回すことによってゼロニウム合金のボディをも打ち貫く。

「ぐあっ……!」
<<ゲジヒト――!>>
「ちぃっ!」

そのままゲジヒトの身体を盾にしながらそこから離れる。フットパーツによってその速度はゲジヒトを抱えながらでも速い。
バロットとラミアは顔を歪め、KOS-MOSも追いつけないと判断しギンガを見送るしかなかった。
83Classical名無しさん:08/06/12 01:52 ID:Kn8hujgc
      
84もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:53 ID:dnLIyIQA
三人の姿が見えなくなったところでギンガはゲジヒトの身体を放棄しようとし――右腕を貫かれる。

「我々は殺されない、殺させない……殺さない……!」
「っ!?」
「すまないバロット……誓いを破ってしまったが……後は、託したぞ……っ!」

自分のPDAを全力でバロット達の方へと投げ、ボロボロの身体で剣を構え突撃する。

「おぉぉぉぉっ!!」
「――はぁ!」

刀を紙一重で避け、放たれた右のアッパーがアゴへと決まる。
そのまま吹き飛ばされながら、ゲジヒトは一言、呟いた。

「KOS-MOS、人間を……たの、む……」


ギンガは貫かれた右腕を押さえながら走り続ける。
戦闘中に弾かれた銃はすでにIDを上書きされていて、かろうじてゲジヒトが使っていた刀だけは転送される前にIDを登録できた。
一人葬ることはできたとはいえ、エリクサーを使ってしまい、TV局の調査もできずに銃まで失ってしまったのはかなりのマイナスだ。
だからといって止まることはできない。
彼女には、破壊することしかできないのだから。

【D-7 道路/一日目・朝】
【ギンガ・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】右腕に刺し傷 疲労(中) 魔力消費(中)
【装備】フットパーツ@ロックマンエックス、乾坤圏@封神演義
    生体センサー@メタルギアソリッド
天王剣@クロノトリガー、
マンバ(小破)@からくりサーカス
85もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:53 ID:dnLIyIQA
【道具】支給品一式×2(ギンガ、王ドラ)
【思考・状況】
基本思考:敵(ナンバーズ以外)の破壊
1、ナンバーズと合流
2、敵を探し、破壊する

※外壁が異常に堅いことに気づきました。

天王剣@クロノトリガー
クロノ専用武器、特殊な効果などはないが、店で買える最高の攻撃力を誇る。

マンバ@からくりサーカス
しろがね、ティンババティの操る毒蛇型の操り人形。巨大な蛇の上に人形が乗っている。
その人形のによる素早い手刀を繰り出すエリュニスの手の他、
牙に強力なポンプが付けられていて、牙を突き刺した相手から血を吸い上げ、別の者に撃ち込むことができる。


<<ゲジヒト……>>
「……すまん」

ゲジヒトのPDAを抱きしめながら俯くバロットへ、ラミアは謝罪の言葉を口にする。
まともな武装がなかったとはいえ、ほとんど戦闘に参加することさえできなかった。
危険は高かったが、もう少しマシな動き方があったのではと自分を責めてしまう。

「……ところで、もう二人はどうされたのですか?」
「む……ミク達ならば下がらせた、危険人物を見つけたら逃げろと伝えておいたし、フランシーヌもいるから無事だとは……ああ、あれだ」

KOS-MOSに問いかけられ、ラミアは二人を向かわせた方向を見て特徴的な水色のツインテールを確認する。
戦列から外したとはいえ、無事だったことに胸を撫で下ろした瞬間。

ミクの身体が赤く染まった。
86Classical名無しさん:08/06/12 01:54 ID:k7gW.MWk
     
87Classical名無しさん:08/06/12 01:54 ID:AiFNdpeQ
うわああああああああ
88もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:54 ID:dnLIyIQA
【C-7 テレビ局外/一日目・朝】
【ラミア・ラヴレス@スーパーロボット大戦OG外伝】
[状態]:健康。
[装備]:Glock 19(CCR仕様、弾数10/15)@パワプロクンポケット8、
[道具]:支給品一式、M18クレイモア×4、麻帆良学園の制服(両袖がない)@魔法先生ネギま!、コエカタマリン(三回)@ドラえもん、予備マガジン3、不明支給品1個(本人確認済み、少なくともラミアから見て戦闘には役に立たない模様)
[思考・状況]
基本思考。打倒シグマ。必要なら誰かと共闘する。晴海の人間拉致の黒幕について疑問
1:……ミク?
2:本郷、ミーとテレビ局で合流。
3:シグマや壊し合いについての情報を得るため、エックスと接触する
4:壊し合いに乗っていない個体と接触し、情報を得る。
5:壊し合いに乗った個体を排除する。
6:敬語?を使うのを止めようか迷っている。
※参戦時期はOG外伝第11話での拉致後です。
※シグマはパーソナルトルーパー等の人型機動兵器を有している可能性が高いと考えています。
※気持ち程度に言語機能が悪化しているようです。敬語を用いらない喋り方には影響ありません。

麻帆良学園の制服@魔法先生ネギま!
茶々丸が通う学校、麻帆良学園の制服。

コエカタマリン@ドラえもん
22世紀の秘密道具、これを飲んで叫ぶとその声と同じ文字が音速で飛んでいく。
全部で五回分支給。
89Classical名無しさん:08/06/12 01:55 ID:Kn8hujgc
       
90Classical名無しさん:08/06/12 01:55 ID:k7gW.MWk
 
91もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:55 ID:dnLIyIQA
【ルーン・バロット@マルドゥックシリーズ】
[状態]:健康、
[装備]:ガンナックル@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式×2(バロット、ゲジヒト)、ローズバイク@SoltyRei、ウィンチェスター1887ショットガン 4/5@ターミネーター2、予備弾丸5、不明支給品0〜2
[思考・状況]
1:ゲジヒト……
2:あっちは、さっきの男が……
3:ボイルドが……どうして。
4:ドクターやウフコックみたいな信頼できる参加者を探し、ウフコックの元へ帰る。
5:弱体化したスナーク能力に慣れる。
6:我々は殺さない。殺されない。殺させない。
7:ゲジヒトの調査を引き継ぐ……?
※スクランブル終了後から参戦。
※電子機器に対する干渉能力の大きさは、距離に反比例します。参加者に対しても同様。限界距離は6〜8メートル。
 至近距離でも、人工心肺などの対象の生命活動にかかわるものを停止させることは不可能です。(阻害は可能)
※ゲジヒトの考察を出来のいい仮説の一つとして受け入れました。

【KOS-MOS@ゼノサーガシリーズ】
[状態]:ダメージ(微)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、闇夜の鎌@クロノトリガー、仙桃x3@封神演義、
    FN ブローニング・ハイパワー(9/13)@攻殻機動隊、マガジン(13/13 9mmパラベラム弾)x2
[思考・状況]
基本思考:自身の「生還」を前提とし、状況に応じたその時点で「最も」適切な行動を取る。
1:敵襲でしょうか?
2:他参加者と接触を試みる。
3:施設、支給品など情報を収集する。
4:我々は“可能な限り”殺さない。殺されない。殺させない。
  ただし自身の「生還」の障害となるものは、積極的に排除する。
92Classical名無しさん:08/06/12 01:56 ID:k7gW.MWk
          
93もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:56 ID:dnLIyIQA
[備考]
※KOS-MOSの躯体はver.4です(Ep3後半の姿)
※参戦時期は改修後からT-elosとの融合前までの間。
※各種武装(R-BLADE、G-SHOT、DRAGON-TOOTHなど)はU.M.N.ネットワークの問題で転送不可。
 少なくとも内蔵兵器であるX・BUSTERは使用可能。エンセフェロンダイブ、ヒルベルトエフェクトなども一応使用可能。
※ゲジヒトの考察を有力な仮説と認識しています。
※ゲジヒトとバロットの方針に「基本的には」賛同。

――少しばかり時を遡る。
ギンガの襲撃を受け、早々にラミアから下がれと言われたミクとフランシーヌはコエカタマリンだけは渡して戦いの場から離れて見守っていた。
ふとミクが辺りを見回すと、一人の男が倒れているのを見つけ駆け寄ってみる。
危険そうな相手からは逃げろ、とラミアから言われていたが、ぴくりとも動かない者を危険人物とは二人には思えなかった。

「死んで、いるのですか?」
「んー? ヨク分かラないデス、大丈夫デすかー?」

見たところ左腕が少々焼け焦げている以外は外傷は見受けられない。
これが人間ならば問題はないはずだ。

―――――――――――――――――――――――

Rは放送を聞き、みんなゲームをしっかりやっていることに満足しながら走り続けていた。
それ故に最初のお爺さんは実になっていない、と憤慨していたが、ゲジヒト達に襲撃をかけた際に、銃を撃った後地面が爆ぜている事に気づいたのだ。
――もしや、これが当たり判定なのではないかと。
そう考えれば最初に逃げられたのも納得がいく、そんなことを考えながら戦いを続け、残念ながら一人も倒せず攻撃を受けてしまったため、潔く死んだふりをした。
しばらくして、周りが騒がしい上に揺り起こされようとしている。
もしや係の人が来たのだろうか? と思い起き上がってみたが、いたのは二人の女性。とても係の人には見えない。

「よかった、生きてたのですね」
「よかッタでスー」
94Classical名無しさん:08/06/12 01:57 ID:k7gW.MWk
                         
95Classical名無しさん:08/06/12 01:57 ID:Kn8hujgc
        
96もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:57 ID:dnLIyIQA
二人の会話がさっぱり理解できない。
生きていたもなにも、自分はわざわざ死んだふりをしていのだ、この二人もゲームが理解できていないのだろうか?
しかしあの放送を聞いていたのならそんなこともないだろう、と少し頭を捻り、ポンと手を打つ。

「そうか、HP制だったか」
「はエ?」
「ひっとぽいんと……?」

勘違いしていたのは自分のようだ、油断していてすぐに退場してしまうことを防いでくれているのだろう。
考えれば考えるほどよく出来たルールである。実に素晴らしい。
しかし、それでも目の前の二人が何故自分を起こしたのかが分からない。
自分は隙だらけだったのだからその間に止めを刺せばよかったというのに……そうか、正々堂々と起きている状態で戦いたいのですね、素晴らしい。

「気づかず申し訳ない、それでは早速やりましょう」
「エと、あ、ハイ……?」
「やるとは、何を?」

どうやら横の女性は理解できていないらしい、ここは見本を見せてあげるのがわかりやすいだろう。
先手必勝、わざわざ正々堂々を挑んでくれた方に申し訳ないが、こちらはHPが一つ削られてしまっている。手加減はしていられない。
この距離ならば狙いをつける必要も無い、機関銃を構えて適当に乱射する。
ミクの身体が軽く痛み、それで死亡を示すサインのようなものが出る……そうRは考えていた。

「アっ……!」
「ミク!?」

Rの考えとは違い、機関銃から飛び出した弾丸はミクの身体を貫き血飛沫を上げる。
倒れるミクを咄嗟にフランシーヌが支えるが、彼女でもこの傷が致命傷であることは気づいていた。

97Classical名無しさん:08/06/12 01:58 ID:k7gW.MWk

98もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:58 ID:dnLIyIQA
身体が、動かない……

「ミク、しっかりしてください!」
「フら、しーヌ、サン? わた、シ……何が……凄ク、ネムい……デス」

フランシーヌさん、悲しそうな顔……

「ダメですミク、寝たらいけない!」
「歌……歌いタイ、ミーさン、フランシーヌさん……げホっ、ラミ、アサんに、本郷、さんモ……みんナ、で……」

そっか……これが、死、なんだ……
ラミアさんの言ったとおり、だ……

「ミク……!」
「みんなのうた……聞きたカッタ、な……」

死は、かな、しい……


ミクの身体から力が抜ける。
フランシーヌは呆然と、ただミクを優しく抱きとめていた……

99もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 01:59 ID:dnLIyIQA
そして、ミクを撃った本人は。

「……あれ?」

何も理解していなかった。

【C-8 テレビ局外/一日目・朝】
【フランシーヌ人形@からくりサーカス】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、未確認支給品0〜2(本人確認済)
[思考・状況]
基本思考:罪滅ぼしのために、主催者を倒す。
1:ミク……!
2:目の前の男への警戒
3:ラミアの指示に従う。
4:私は生命の水に溶けて無くなった筈では……
5:いつか、本郷やミクのような笑顔をしてみたい。
6:いずれラミアにあの歌を聞かせたい……ミクにも。
※原作死亡後(25巻第32幕微笑(後編))から参戦。
※コロンビーヌの姿を旧式のものだと勘違いしています。
100Classical名無しさん:08/06/12 02:00 ID:Kn8hujgc
         
101Classical名無しさん:08/06/12 02:00 ID:k7gW.MWk
  
102もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 02:00 ID:dnLIyIQA
【R・田中一郎@究極超人あ〜る】
[状態]:左腕に軽度の火傷
[装備]:グロスフスMG42(予備弾数小:本人も未確認だが、まだ十分あると認識)
    NIKU・Q・マックス@サイボーグクロちゃん
[道具]:支給品一式、不明支給品(確認済み)
[思考・状況]
基本思考:他のプレーヤーを探して攻撃、最後の一人を目指す。
1:……これが脱落のサインかな?
2:今日のゲームが終ったら、ごはんを食べに湖の小島へ帰る。皆も誘う。
[備考]
※原作3巻終了時からの登場です。
※この事件を3巻冒頭のサバイバルゲームのようなものだと勘違いしています。故に、誰も死なないと思っている。
※サバイバルゲームがHP制だと思っています。HPがゼロになるまでは攻撃を受けても平気だと思っています。

※初音ミクのPDAはミクの死体が持っています。

【ゲジヒト@PLUTO 破壊確認】
【初音ミク@VOCALOID 2 破壊確認】
【残り 37人】
103Classical名無しさん:08/06/12 02:01 ID:k7gW.MWk
                
104もう一度歌声を  ◆c92qFeyVpE :08/06/12 02:01 ID:dnLIyIQA
以上です。
ご指摘いただいた点は何とか修正できていると思います。
長い間キャラを拘束してしまい申し訳ない。
支援ありがとうございました。
105Classical名無しさん:08/06/12 02:05 ID:AiFNdpeQ
投下乙
惜しい人を…亡くした2人も…
ゲジヒトさんがいなくなりコスモスも危うくなり
ミクが死んで清涼剤が!
R、こいつにひどい殺意をいだいたのは今までで初めてだ
106Classical名無しさん:08/06/12 02:08 ID:Kn8hujgc
投下乙!
ゲジヒトー! ミクー!
TV局の激戦、お疲れ様です。お見事!
ギンガの突入、Rの彼らしさによる悲劇。
演出もすばらしかったです。
GJ!
107Classical名無しさん:08/06/12 02:09 ID:k7gW.MWk
投下乙です!
ああ、ゲジヒト、ミク……
KOS-MOSはどう動くだろう。ギンガは着実に殺害数を伸ばしていくなw
R君、お前ってヤツは…… 悪いのはシグマなんだ。だから、R君を許してやってくださいorz
108Classical名無しさん:08/06/12 22:19 ID:/dRSY7VA
前スレまでのssの保管を実行。
急いだので、投下順と前スレのssのみを収録。
各作者で修正が必要な者は、修正作業を求む。

報告終了。
109Classical名無しさん:08/06/12 22:21 ID:/dRSY7VA
追伸。

wikiにおいての作業であり、ミスがあった場合はごめんなさい。
110 ◆ga/ayzh9y. :08/06/13 01:38 ID:hsxLvGRA
本郷&ミー、完成いたしました。
一度仮投下いたしますので、問題点等指摘お願いします
111Classical名無しさん:08/06/13 01:54 ID:.ME/8COY
>>110
仮投下乙です。
特に問題点はないかと。

感想は本投下時に。
112Classical名無しさん:08/06/13 02:55 ID:WYxHq0Ik
仮投下乙
一点だけ、ミーくんのミクの呼称は呼び捨てです。(前話より
113Classical名無しさん:08/06/13 07:45 ID:VnNAsKI6
touka乙です。

茂ばかでぃw
114 ◆ga/ayzh9y. :08/06/13 20:50 ID:hsxLvGRA
ご指摘ありがとうございます。
ミクの呼称以外は特に問題が無さそうですので、これより本投下に入ります。
良ければ支援お願いします
「それじゃあ、本郷さん達は改造人間……仮面ライダーで、バダンって組織と戦っていて。
 ここには、本郷さん以外に四人の仮面ライダーがいるんだよね?
 その……ストロンガーってのもいれて」
「ああ、何でこの四人なのかは、どうにも分からないがな」

朝日が徐々に昇り始めたその頃。
本郷とミーは、墓のあった場所へと向かう道すがら、簡単な情報交換を行っていた。
自分達がどの様な存在なのか、この会場に知り合いはいるか、どの様な状況で呼び寄せられたのか。
本郷は事細かに、隠し事は一切せずにミーへと全てを話した。
だが、その一方……ミーは本郷に、一つだけ隠し事をしていた。

(世界征服を企む組織と戦っている、か……ゴーくんの事を知ったら、やっぱり戦うのかな?)

剛万太郎。
自分やニャンニャンアーミー達にサイボーグ手術を施し、死の淵から救い出してくれた誰よりも大切な恩人。
彼がどの様な人物かに関しては、勿論本郷には話した。
気弱な性格ではあるものの、優しく、そして根は強い天才科学者だと、思う事を正直に。
ただし、ただ一つ……彼が一時期は世界征服を目論んでいて、自分もそれに加担していたという事は除いて。
それを言えなかった理由は勿論、本郷達の事情を聞いてしまったからである。
仮面ライダーは、世界征服を目論む者達を相手に、正義の為に戦っているという。
ならば彼等からすれば、自分達は悪党以外の何者でもないのだ。
この状況下において、本郷に敵対されるわけにはいかない。

(別に僕だけならいいけど、ミク達の事があるからな……)

自分一人が敵対されるのならば、別にそれはいい。
一人で戦い抜けるだけの術は持ち合わせているのだから、問題などない。
だが、ミクやラミア達は違う……彼女達には、自分達の様な戦う力はないのだ。
もしも本郷に、自分の仲間であるという理由で同等に敵対しされようものなら、それは最悪としか言い様がない展開である。
絶対にそれだけは避けなければならない……だから、間違っても口には出来ないのだ。
「剛さんか……一度会ってみたいな」
「え?」
「俺達の仲間にも、君と同じ様な経歴で仮面ライダーになった奴がいるんだ。
 それで、是非ともと思ってな」
「そ、そう……」

本郷の何気ない言葉に、ミーは心を痛ませる。
正直、いつまでも隠し通せるとは思えない。
真実を知ってしまったら、はたして何と言われるだろうか。
ミーの中には、本郷に対する罪悪感が生まれていた。

(ごめん……本郷さん)



 ◇  ◆  ◇




(……どうやら、考え方を変える必要があるみたいだな)

その一方。
本郷は、真剣な面持ちで考え事をしていた。
それは、フランシーヌと話をした時点や、このシリウスを見た時にも薄々感じてはいた。
そして今、ミーの話を聞いて確信できた事が彼にはあった。

(信じられない話にはなるが……異世界か)
117Classical名無しさん:08/06/13 20:56 ID:.ME/8COY
 
118Classical名無しさん:08/06/13 20:57 ID:.ME/8COY
  
(信じられない話にはなるが……異世界か)

それは、この場に集められている参加者全員について。
本郷は、自分達はそれぞれ異なる世界から呼び寄せられたのではないかと考えていたのだ。
一文字や滝がこの場にいれば、そんな馬鹿なと言われるかもしれない。
だが、その可能性は極めて高いのだ。
何故なら……ミーが、バダンの事を一切知らないのだから。

(幾ら猫だからとはいっても、バダンの存在を知らないというのはありえない。
嘘をついている様子だって全くないしな)

本郷達にとって、バダンの存在を一切知らないというのは不可思議な事でしかなかった。
電波ジャックによる全世界への声明、そして大首領のJUDOが全人類へと見せた破滅のイメージ。
あれにより、バダンの名は世界中に知られるようになったのだ。
ましてや、ミーは日本―――バダンの活動拠点に住んでいるという。
何も知らないなんて事は、絶対にありえない。
しかし、彼が嘘を言っている様子はどこにもない……ならば、これはどういう事か。
フランシーヌの話やシリウスに使われている技術も含めて考えた結果、やはり出てくるのは異世界の概念だった。
ちなみに本郷がこの概念をすぐ思い浮かべられたのは、JUDOが閉じ込められている異世界の存在を知っていたからである。
もしもこの考えが正しいとしたら、いつの間にかこの会場へと呼び寄せられていた事についても、一応説明がつく。

「……ミー。
 少し信じられない話になるかもしれないが、聞いてくれるか?」
「話?」
「ああ、君のお陰で分かった事がある」
120Classical名無しさん:08/06/13 20:59 ID:.ME/8COY
    
信じてもらえるかどうかは別にして、これは話しておかねばならぬ事である。
そう即座に判断し、本郷はミーへと己の仮説を説明し始める。
勿論、最初はミーも信じられないという様子ではあったが、話を聞いていくにつれて徐々に納得していくようであった。

「でもそれって、あのシグマとかいう奴は……?」
「ああ、異世界に干渉できる何かがあるという事になる。
 離れた場所に瞬時で移動する力ならバダンも持ってはいたが、これはそれ以上だな」

シグマは異世界へと干渉する事が可能。
それがシグマ自身の力か、何かしらの道具を用いているかまでは分からないが、まず間違いは無いだろう。
だとすると、一体彼は何を目的としてこの殺し合いを開いたのだろうか。

「異なる世界から集められた、複数の改造人間やロボット……生身の者は皆無だ。
 シグマは参加者のデータを採取して、新しい何かを作ろうとでもしているのか?」
「でもそれだったら、どうしてミクの様な人達も?
 僕達みたいに戦う力があったり、それか何か特別な機能とかがあるのなら分かるけどさ」
「俺もそれが引っかかっているんだ。
 フランシーヌ達の様に、明らかに戦闘向けじゃない参加者までどうして集めたんだ……?」

本郷とミーには、参加者の選考基準がどうしても分からなかった。
自分達の様な者達ならば兎も角、ミクやフランシーヌには戦闘能力は無い。
どう考えても、殺し合いには向く筈が無いのだ。
しかし、もしかすると何か特別な機能が彼女達にはあるのかもしれない。
だからこそ、戦闘力の無いにも関わらず選ばれたのかもしれないが……ここまで考えて、本郷はある事実に気付く。

(いや……待てよ。
シグマが目をつけたのは、参加者の機能じゃなく……その存在そのものか?)

殺し合いに向くか否か以前に、シグマは参加者の存在そのものに目をつけたのではなかろうか。
参加者の作製に使われた技術と、参加者の構造そのものに。
だとすると、フランシーヌ達の様な者が選ばれたのも分からなくは無い。
122Classical名無しさん:08/06/13 21:00 ID:.ME/8COY
     
(単なる観戦が目的とは、絶対に思えない。
何かがきっとある筈だが……情報が少なすぎる。
シグマについて、もう少し何かが分かればいいんだがな……)



 ◇  ◆  ◇




「これは……」

それからしばしした後。
二人は目的地であるA−5へと辿り着いた。
この時、本郷は周囲の様子を見て、正直驚きを隠せなかった。
粉砕された路面に、飛び散らされたブロック塀、真っ二つに叩き折られている電信柱。
周辺の建築物が、これでもかと言う程に破壊されている。
そしてそれに加え、何かが焼け焦げた様な強い臭い。
ストロンガーの電流を伴った攻撃によるものであるのは、まず間違いない。

「あいつ……随分と派手に暴れたみたいだな」
「本郷さん、これだよ」

ミーに言われ、本郷は問題の墓へと視線を向けた。
地面に電信柱を突き刺しただけの、極めて簡素な代物。
その根元にはユリの花が供えられており、確かに茂の字で『名も無き少女の墓』と記されていた。
しかし、奇妙な事に地面を掘り返した様な跡が一切見当たらない。
肝心の眠るべき者が、この墓にはいないのだ。
「ミーが見た時にも、遺体は無かったのか?」
「うん、一応僕も軽くは探してみたんだけど……」
「もう一度よく調べてみよう。
 もしかすると、見落としている所があるかもしれない」

本郷はミーに対し、再度捜索するべきだと提案した。
ミーも当然ながら、その意見には賛成であった。
今になって考えてみれば、あの時の自分は少し焦りすぎていた。
何かを見落としていた可能性は、大いにあるのだ。
早速二人は、周囲の散策に入る……しかし。



「どうだった?」
「いや……隈なく探してみたが、何も見当たらなかった」

数十分程探し回ったが、成果は全く得られなかった。
遺体はどこにも見当たらなかったのだ。
そうなると、茂が遺体を担いでいった様では無い以上、考えられる可能性は一つ。
遺体の完全な消滅以外にない。

「やっぱり、跡形も無く消し飛ばしたのかな……?」
「……確かにあいつなら、不可能じゃないな」
125Classical名無しさん:08/06/13 21:01 ID:.ME/8COY
      
チャージアップしたストロンガーの力なら、遺体を完全に消滅させる事も可能である。
しかし、もし仮にそうだとすればこの名も無き少女というのは、彼に本気を出させる程の猛者だったに違いない。
茂が殺し合いに乗ったとは思えない以上、相手の方から仕掛けてきたという事になるだろうが……
正直、これは本郷にとって完全に予想外の事態であった。

「どうも、予想が外れたみたいだな」
「外れたって、どういう事?」
「俺は最初にこの話を聞いた時、茂はこの墓を、あのセインという少女の為に作ったんじゃないかと思ったんだ。
 それで暴れ回ったのも、シグマに対してだと考えていたんだが……」

本郷は最初、茂は主催者であるシグマに激怒し、彼はセインの為に墓を作ったのではと考えていた。
彼の性格からして、それが最もありえる事態だろうと推測していたのだ。
だが……この墓を見て、その考えが間違いであった事に気付かされる。
何故なら、もしそうだとすれば『名も無き少女』とは墓に記さない筈なのだから。

「あの状況で、彼女の名前を聞き逃したという事は考えられない。
 この墓は本当に、名前を知らない他の誰かの為に作ったんだろう」
「でも……本郷さんの言うとおりに、ストロンガーが殺し合いに乗ってないとしたら、どうして墓を作ったりしたわけ?
 だって、自分に襲い掛かってきた少女を撃退したって事だよね?」

ミーの意見は最もであった。
自分を殺そうとしてきた相手の墓を、どうして作ろうと思えるのか。
ましてや本郷の話を聞く限り、茂はかなり荒々しい性格の様である。
墓を立てるような慈悲があるなど、とても考えられないのだが……
ここで本郷は、ミーの疑問に答えるべくを口を開いた。

「いや……殺し合いに乗ったのが皆、悪党とは限らないさ」
「え?」
「大切な誰かを守りたい、優勝させたいと思って乗った者がいるかもしれないという事だ。
 恐らく茂は、そんな相手とやむをえなく戦って……殺してしまったのかもしれない」
「じゃあ、墓を作ったのは……」
茂は、本心では殺したくは無かった相手を殺してしまった。
その事を悔やみ、こうして墓を立てたのではないだろうか。
本郷は事態をこう判断し、ミーもそれに納得した。
その途端、彼の中にシグマへと対する怒りが湧き上がる。

「こんなの……絶対に許せない……!!」
 
殺された少女は勿論、殺した茂だって辛かったに違いない。
この殺し合いの所為で、早くも二人の人間が不幸な目に合ってしまった。
これ以上、この様な悲劇を広げるわけにはいかない……何としてでも、この手で絶対にシグマを止めてみせる。
ミーはそう、目の前の墓標へと強く心に誓った。

「今の俺には、これぐらいの事しか出来ないが……待っていてくれ。
 シグマは必ず、俺達の手で倒してみせる」

本郷はPDAからトマトを転送し、三個ほど墓へと供える。
死んでいった少女に対する、せめてもの手向けである。
その後、二人は合掌してしばしの間黙祷を捧げた。


尤も……その推測は、全く的外れなものではあるのだが。
しかしこの状況で、真実に気づけと言うのもまた無理な話なのかもしれない。
果たしてこの判断は、吉と出るか凶とでるか……それはまだ、誰にも分からない。



 ◇  ◆  ◇



「……しかし、肝心の茂は結局見つけられなかったな」
「やっぱり、どこかへ移動したのかな?」
数分後、二人はシリウスの元へと戻る。
彼等にとって唯一心残りであったのは、肝心の茂とは出会えなかった事であった。
やはり、自分達がここへ来る前にどこかへ移動したと考えるのが妥当だろう。
出来るならば、彼と合流を果したいのだが……

「仕方が無い、一度戻るとしよう。
 さっきの散策で、結構時間を使ってしまったしな」

既に、約束の時が迫ろうとしていた。
思ったより時間を使ってしまった様であり、これ以上は流石にフランシーヌ達を待たせる事は出来ない。
茂にはすまないが、ここは彼女達との合流を優先すべきである。
すぐに二人はシリウスへと乗り込み、テレビ局へと引き返していった。

「流石に、六時には厳しいか……」

その道すがら。
PDAで今の時刻を確認し、本郷は小さく溜息をついた。
時刻は六時まで、後一分に迫っていた。
しかしテレビ局までは、距離的に後十分以上はかかるだろう。

「着いたら、まずは謝らないといけないな」
「そうだね……何事もなければいいんだけど」

三人には申し訳ないが、どうやら遅刻確定である。
彼女達の身に、何事もなければいいのだが。
そう、ミーは少しばかり不安になってしまったが……その直後。
そんな彼へと更なる揺さぶりをかけるかの様に、その声は聞こえてきた。

『――インフォメーションメッセージ』
「ッ!?」
『06:00時点における本プログラムからの脱落者をお知らせします』
「脱落者……!?」
129Classical名無しさん:08/06/13 21:04 ID:.ME/8COY
       
突然、PDAから音声が聞こえてきた。
たった今六時になり、定期放送が始まったのだ。
とっさに本郷はシリウスを止める。
これで更に到着は遅れる事になるが、この放送は聞き逃すわけにはいかないと判断して、敢えて停止させたのだ。
そして二人は息を呑み、PDAからのメッセージに耳を傾けた。

『No50 王ドラ、No42 村雨良……』
「何だと!?」

その名が呼ばれた瞬間、本郷は己が耳を疑った。
呼ばれる筈が無いと思っていた名前が……たった今、呼ばれたのだ。
彼にとって、それはとてつもない衝撃であった。

「村雨が……死んだ……!?」

村雨良こと仮面ライダーZX。
己が為すべき事を見つけ、仮面ライダーとして生きる事を決めたばかりの、十人目の後輩。
彼は本郷にとって、紛れも無い大切な戦友であった。
そしてその実力は、まだまだ荒削りな面こそあれど極めて高い。
そんな彼が……こんなにも早く、死んでしまった。
本郷には、とてもじゃないが信じられなかった。
しかし、衝撃の事実はこれだけに留まらない。

『No28 ドラ・ザ・キッド、No36 パンタローネ……』
「!!」

もう一人、本郷の知る者の名が呼ばれてしまった。
フランシーヌと共に殺し合いに参加させられた、彼女の大切な従者の一人……パンタローネ。
村雨と同様に、彼までも散ってしまったというのだ。

『なお、進入禁止エリアは【C-2】、【H-8】の2ブロックとなります』
「そんな……もう十人も……」
131Classical名無しさん:08/06/13 21:07 ID:.ME/8COY
        
ミーは放送を聴き、愕然とした。
クロの名が呼ばれなかったのは、不幸中の幸いというべきかもしれないが……
僅かな間に、既に十もの命が消えてしまったのだ。
二人はしばしの間、呆然とその場に立ち尽くしていた。
事態は、自分達が考えていた以上に恐ろしい事になっているらしい。

「……ミー、急ごう。
 嫌な予感がする」
「本郷さん……」

それから数秒後。
本郷はミーへと背を向けたまま、彼へと口を開く。
そんな彼の心情を察してか、ミーもこれ以上何かを言おうとはしなかった。
二人はライドチェイサーへと乗り込み、再びテレビ局を目指す。

(フランシーヌ……すまない)

本郷は、フランシーヌの事を思う。
きっと彼女は今、パンタローネを失った悲しみに暮れているだろう。
こんな肝心な時に側にいてやれない自分を、本郷は情けなく感じていた。
パンタローネ自身だって、きっと無念だったに違いない。
フランシーヌとの再会を果せぬまま、散っていってしまったのだから……本郷は強く唇をかみ締める。
大切な者を守れなかった辛さがどれ程のものか、彼には痛いほどに分かっていた。
彼には、二人の苦しみがまるで自分の様に感じられたのだ。
(村雨……!!)

そして次に思うは、大切な戦友。
果たして村雨が、どの様な最期を遂げたのかは分からない。
だが……きっと彼は、仮面ライダーとしてこの殺し合いを止めようとしたに違いない。
そして、その果てに敗れ去ってしまったのだろう。
茂を追い詰めた程の、村雨を倒す程の実力を持つ者がこの会場にはいる。
本郷はその事実を強く認識し……そして誓った。
散っていった戦友へと、そして全ての者達へと。

(お前の想いは……仮面ライダーとしての正義は、俺が必ず果してみせる。
だから……村雨、パンタローネ、名も知らない少女。
皆……安心して、眠っていてくれ……!!)

必ずシグマは倒す。
その無念を、きっと晴らしてみせると。


【C-5 路上/一日目・朝】
【本郷猛@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康、ライドチェイサー搭乗中
[装備]:ライドチェイサー『シリウス』@ロックマンXシリーズ
[道具]:支給品一式、トマト×97@THEビッグオー
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催
1:テレビ局へ急ぎ、ラミア、フランシーヌ、ミクと合流する。
2:殺し合いに乗っていないもの保護、及び合流。
3:風見、敬介、茂と合流。
4:アルレッキーノ、コロンビーヌにフランシーヌ人形のことを伝える。
5:村雨とパンタローネの二人を倒した者を見つけ出し、この手で倒す。
6:シグマに関する情報を集めたい。
※原作8巻(第32話 称号)から参戦。
※アルレッキーノ、パンタローネ、コロンビーヌの特徴を知りましたが、コロンビーヌの格好を旧式のものと勘違いしています。
※茂は殺し合いに乗ってしまった相手を、止む無く殺してしまったと判断しています。
※A−5に、トマトを三個お供えしています
※ミーと情報交換をしました。
 ただし、彼をサイボーグにした剛が世界制服を一時期目論んでいた事。
 クロが己と同様の理由でサイボーグとなった事は知りません。
※この会場には、異世界の者達も呼ばれたのではないかと推測しています。
※シグマは参加者達に使われてる技術・参加者達の構造そのものに興味があるのではと思っています。


【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:健康、ライドチェイサー搭乗中
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、不明支給品(1〜3個)
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催
1:テレビ局へ急ぎ、ラミア、フランシーヌ、ミクと合流する。
2:シグマ打倒の為、仲間を集める。
3:風見、敬介、茂と合流。
4:クロとは合流したいと思う反面、彼に剛の事を暴露されるのではと恐れている。
5:本郷に対し、少々の罪悪感。
※なんでも切れる剣、ガトリング等の武装は没収されています。
※悪魔のチップの制限については後続の書き手にお任せします。
※茂は殺し合いに乗ってしまった相手を、止む無く殺してしまったと判断しています。
 彼に対する警戒心は完全に消えています。
※本郷と情報交換をしました。
 ただし、自分をサイボーグにした剛が世界制服を一時期目論んでいた事。
 クロが本郷と同様の理由でサイボーグになった事は話していません。
135 ◆ga/ayzh9y. :08/06/13 21:10 ID:hsxLvGRA
以上、投下終了です。
支援してくださった方々、ありがとうございました。
136Classical名無しさん:08/06/13 21:10 ID:.ME/8COY
         
137Classical名無しさん:08/06/13 21:12 ID:.ME/8COY
投下乙です。
ああ、本郷さん。微妙にあたっているんだかあたっていないんだかw
ミー君の怒りが彼らしくて素敵。
しかし、テレビ局に戻ると悲劇が待っている……。
放送を耳にした二人の反応がよかったです。
GJ!
138Classical名無しさん:08/06/13 21:43 ID:WYxHq0Ik
投下乙!
茂の行動の何もかもが誤解フラグへw
誤殺王がジョーなら誤報王は茂だな
そして2人とも、傷心のフランシーヌ人形の元へ早く帰ってくれ……
139Classical名無しさん:08/06/14 01:21 ID:QnknA16c
投下乙。
さあ本郷さん、Rにライダーキックをぶち込んでください。
140Classical名無しさん:08/06/14 22:31 ID:QnknA16c
本スレに投下も感想もないから話題を振ってみる。

さて、ロボットサイボーグといえば機械でできています。
質問。
泣く機能が付いている参加者はどれだけいるんですか?
141Classical名無しさん:08/06/14 23:09 ID:esJpSY6U
岩男と岩男Xはあったはず。
142Classical名無しさん:08/06/14 23:47 ID:m2/K.jVY
・なのは勢
・ロックマン系
・ドラス(多分)
・ラミア(多分)
・バロット

このぐらい?
143Classical名無しさん:08/06/14 23:57 ID:Rj9jFLsE
ロボもオイルっぽいものは流すらしい
144Classical名無しさん:08/06/15 00:23 ID:rzvnL1YE
オイルぽい物を流すといったらタチコマだろう。
彼は本来涙を流す機能などない。でも、彼が涙をながした瞬間は泣ける。
まさに殺伐としたこうかく世界のいやしであり、人間味であった。
でも涙は天然オイルによる影響でしかなく、後からわらわら復活するのは
悲しいかな、道具としての証明でしかない。
145Classical名無しさん:08/06/15 04:25 ID:Jem.kFAk
>>143
真(?)エンディングでの「おっと、オイルでアイセンサーが…」は泣ける
146Classical名無しさん:08/06/15 10:12 ID:s6QY8mSU
>>142
バロット入ってるのにボイルドはスルーかよw
いやまあ、今のアレが涙を流す状況なんて想像もつかないけど。
147Classical名無しさん:08/06/15 21:24 ID:RkD8uQSQ
漫画版のゼロは、愛する女性レプリロイドの死に際して、『泣けない』ことに対して慟哭していた。
あの場面は、涙以上の何かを感じたぜ。
148Classical名無しさん:08/06/15 21:33 ID:rzvnL1YE
……自動人形はなけるんだろうか?
149Classical名無しさん:08/06/15 21:44 ID:qR9G3bco
笑えるからいいじゃない
150Classical名無しさん:08/06/15 22:30 ID:.Yq/Ua9M
武美は涙を流す機能自体はあるけど、単にゴミが目に入った時とかのためであって感情では泣けないんだよな。
死亡直前では>>147と同じような事に
151Classical名無しさん:08/06/16 00:04 ID:LBdxejoo
>>148
人間と変わらず息をしているらしいフランシーヌ様ならあるいは・・・?

他の自動人形は泣けないんじゃなかろうか
芸としての笑顔が出来るのとは逆に芸人が客に涙を見せてはいけないとかで
152 ◆ss6T.bLZ42 :08/06/16 18:54 ID:GJrjI8qI
一次投下スレに仮投下しました。
問題点やその他おかしな部分がありましたら、どうかご指摘宜しくお願いします。
153Classical名無しさん:08/06/16 19:34 ID:DIe1k/MY
投下乙です
特に問題らしい問題はなかったと思います
154 ◆d.NbLKVxEc :08/06/16 22:14 ID:TOSjtQyg
仮投下しました。
問題点や疑問点、その他いろいろ言いたい事がありましたら、遠慮なくご指摘ください。
155Classical名無しさん:08/06/16 22:22 ID:ek.IURHA
仮投下乙です。
両名とも、特に問題点は見当たりませんでした。
感想は本投下時に
156Classical名無しさん:08/06/16 23:26 ID:62KMaoEs
>>152
仮投下乙です。
展開に問題は無い……のですが、メガトロンはチンクに己の名を名乗っていなかったはずなので、そこだけ修正が必要だと思います。

>>154
こちらも、仮投下乙です。
自分には、問題はみつかりませんでした。

両氏、本投下待ってます! 感想はそのときに。
157Classical名無しさん:08/06/16 23:49 ID:DIe1k/MY
投下乙です。
今のうちに誤字の指摘をば

誤:一人は、相手が疑心暗鬼に陥り、自分の事を酷く警戒されいる、そう思っているT-800。
正:一人は、相手が疑心暗鬼に陥り、自分の事を酷く警戒されている、そう思っているT-800。

誤:(どうする?このまま黙ってやられる位なら、奥の手の『アレ』を使かっちまうか?)
正:(どうする?このまま黙ってやられる位なら、奥の手の『アレ』を使っちまうか?)

誤:既に10人も犠牲者が出たってのに、全然同じてねぇ所が気にくわねぇが、言ってる事は間違ってねぇ。
正:既に10人も犠牲者が出たってのに、全然動じてねぇ所が気にくわねぇが、言ってる事は間違ってねぇ。
158 ◆ss6T.bLZ42 :08/06/17 00:03 ID:RefFECXE
>>156
ご指摘ありがとうございます。距離を勘違いしていました。修正します。


自分の書いた最初のSSに矛盾点を見つけました。
PDAに関する誤認と、作品設定的な問題点です。
つきましては、仮投下スレにそれらを踏まえた修正案を投下いたしました。
支援していただいた方々や書き手の方々始め、皆様には誠に申し訳もありません。
もしSSの通過が認められるならば、修正案の方でお願いできないでしょうか。
筋はほぼそのままです。勝手なことをして本当にすいません。
159 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 05:13 ID:2jBtZfJQ
>>157
ご指摘ありがとうございます。本投下する際に修正をしておきます。
160 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 21:30 ID:2jBtZfJQ
投下します。
161 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 21:32 ID:2jBtZfJQ
茂は今、体験した事のない史上最大の危機に陥り、明らかに恐怖していた。
それは生命の危機では無い、そんなもの茂は今までに何度も乗り越えている。
ならば、歴戦の戦士である茂をそこまで恐怖させるものとは?
そう、それはガチムチのホモ野郎による、自分の貞操の危機であった。

(やべえ、やべえよおやっさん。掘られる未来しかうかばねぇ)

T-1000との戦いで使ったチャージアップ。
その時の疲労が残っており、茂は満足に動くことが出来なかった。
それさえなければ、今すぐ逃げだすなり戦うなり出来るのだが、生憎そうもいかなかった。
戦う事はおろか、逃げる事も出来ない。
もはや茂は、まな板の上の鯉であった。
目の前の筋骨隆々とした西洋人男性、そう思われる人物が茂を見つめ、いや舐めまわすように眺めながら問いかける。

「これから俺が問いかける事に、『はい』か『YES』で答えてもらおう。……やらないか?」

男はそう言い放つと、茂の返答を聞く事も無く茂に向って歩を進める。
もとより問いの中に、反論する余地を奪っているのだから、聞く気があるのかも怪しい。
男は歩きながら、ライダースーツの股間部分のファスナーを下ろし、『ソレ』を取り出す。
『ソレ』は太さと言い、長さと言い明らかに人間のものでは無かった。
それを見て、さらに顔を青くする茂に向って、男が宣言する。

「怯える事は無い安心しろ、俺はノンケでも喰ってしまう男だ。さらに言えば、俺のモノには震動や回転等様々な機能が搭載されている」

最悪の死刑宣言に、茂の心が折れかける。
このままでは不味い、何か手は無いかと心だけが焦り空回りする。
しかし今の茂に、状況を打開するすべは無かった。

「だが俺は機能だけでは無いテクニシャンだ、何故なら相手を満足させる為、ある自動車修理工のテクニックをインストールされている、死角は無いぞ」

茂は焦る。
このままでは、あの世でユリ子に会わせる顔が無い、というか会わせたくない。
162Classical名無しさん:08/06/17 21:33 ID:4uHNxeBE
 
163 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 21:38 ID:2jBtZfJQ
こうなれば一か八かと、茂は変身を試みる。
しかし、疲労で動きが緩慢だったのと、男がそれを察知していた事が重なり、あっさりと止められてしまう。
コイルアームを掴んでも平気な事から、男のライダースーツには高い絶縁性があるのかもしれない。
「何をするつもりかは知らんが、大人しくしろ。さあ、天国に逝かせてやる」
「くっそぉぉぉぉ!! こんな、こんな野郎にぃぃぃ!」
目の前の絶望に茂は必至で抗う。
しかしその絶望を乗り越えるには、茂はあまりにも無力だった。
男はもがく茂を押し倒しズボンと下着を引き裂くと、『ソレ』を茂の尻にあてがう。
そして腰を前へ突き出した。
「……アッーーーーーーー!?」

茂の悲鳴がこだまする。

それから一時間後

「む、やり過ぎたか…」

そこには無残な姿をさらした、茂の屍が転がっていた。
T-800は少し自己嫌悪をする。
いくら茂の肉体に魅せられたからと言って、貴重な戦力を潰してしまうとは。

「…自重せねばならんな」

そう呟くと、T-800は衣服を整えその部屋を後にした。
【B-3 民家/一日目・朝】
【T-800@ターミネーター2】
[状態]:健康 気分爽快
[装備]:滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、コルトS.A.A(6/6)
[道具]:支給品一式、コルトS.A.Aの弾丸(30/30発)、テントロー@仮面ライダーSPIRITS
[思考・状況]
基本思考:シグマを打ち倒して殺し合いを破壊し、本来の任務に戻る。
     その為に仲間を集める、殺し合いに乗る者には容赦しない。
164Classical名無しさん:08/06/17 21:42 ID:7LnDPV/E
 
165Classical名無しさん:08/06/17 21:42 ID:4uHNxeBE
  
166Classical名無しさん:08/06/17 21:49 ID:PjJpO/Uc
なんぞこれwwww
167 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 21:49 ID:2jBtZfJQ
1:街を目指して南下する。
2:スバルと合流する。
3:男とやるのを自重する。
4:スバルの仲間(ギンガ、チンク、ノーヴェ)を見つけ、合流する
5:T-1000の破壊
6:ドラスをT-1000でないか、疑っている。
※本編開始直後からの参加です。
※スバルに、ボブと呼ばれています。
※ライダースーツのナックルとその弾丸は、スバルに手渡されました。
※スバルの住む世界、魔法、ギンガ、チンク、ノーヴェに関する情報を得ました。
※シグマの背後にはスカイネットがいて、スカイネットの妨害行為によって
自分はこの場に連れてこられたのではと考えられています。
【城 茂@仮面ライダーSPIRITS  破壊確認】
【残り 37人】

等というふざけた展開が実際に起こる筈も無く、以前茂とT-800の間には緊張した雰囲気が漂っていた。
■    ■    ■
その部屋の空気は、ピンと張り詰めていた。この部屋にいるのは二人。
一人は、相手が疑心暗鬼に陥り、自分の事を酷く警戒されている、そう思っているT-800。
もう一人は、目の前の男を自分の貞操を狙う、ガチムチのホモ野郎と誤解する茂。
二人のかなりズレた互いの認識が、この場に奇妙な緊張感を形成していた。
(どうする?このまま黙ってやられる位なら、奥の手の『アレ』を使っちまうか?)
疲労の為、満足に戦闘できない事を自覚している茂は、焦りと混乱の為か少々思考が暴走しかけていた。
だが、それを遮ったのはT-800の一言だった。

「何を警戒しているのかは分らんが、俺はこの殺し合いに乗っていない。お前が殺し合いに乗っていないのなら、危害を加えるつもりは無い。」

てっきりまた、“やらないか?”とでも言われると思っていた茂は、ハトが豆鉄砲を食らった様な顔になる。
茂はT-800をじっと見つめ、大きく一つ深呼吸をする。
(うし、少し落ち着け。とりあえずあの野郎は、今すぐ俺とやろうとかそういうつもりじゃねぇらしい。大体、俺の聞き間違いって事もあるよ…な?)
件のセリフを聞いた時の自分は、意識がはっきりとしていなかった。半分起きて半分眠っている、そんな状態だったのだ。
相手の言葉を聞き間違えている可能性も、無くは無いのだ。なら、話を聞いてからでも良いだろう。
168 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 21:50 ID:2jBtZfJQ
それに、会話で時間をとる事で、少しでも体力を回復させる狙いもある。

「…じゃあ、二、三程質問させてもらうぜ。なんで俺の服を脱がした」

T-800は少し首をかしげる。
まずは名前や能力やら、色々と他に聞く事はあるだろう。
それが何故、最初に衣服の事なのか。
自分には分らないが、には何か思う事があるのだろう。
そう結論づけて、T-800は答えた。

「お前が殺し合い乗っているかどうか分らなかった、故に身体的特徴から少しでもお前の能力を推し量ろうとしただけだ」

その言葉に茂は納得する。
確かに、殺し合いに乗っているかもしれない相手に、何もしないというのもおかしな話だ。
調べれば自分なんかは、変身能力はともかく、コイルアームから電気を操る事位、簡単に推測できるだろう。
しかしそれだけでは、相手のガチホモの疑いがはれたとは言え無い。

「お前がこの部屋に入って来た時、お前は俺に何て声をかけた?」

「……どうやら気がついた様だな。…おい、こちらの声が聞こえるか? だった筈だがそれがどうかしたか?」

頭の中でこの台詞の中の文字を、順番に抜き出していく。
すると、一応件の台詞に一致する事は一致する。
茂は、何でこんな嫌な聞き間違いをしたのかと、自己嫌悪に陥った。

「わりぃな、ちょっとボーっとしてからよ、さっきの台詞を変な風に聞き間違えていたみてぇだ。……ああ、ちなみに俺も殺し合いには乗っていねぇ」

茂の謝罪にT-800もいくらか納得する。確かにあの時の茂は、意識がはっきりしているようには見えなかった。
聞き間違いを起こしても、おかしくはない。
だが…
169Classical名無しさん:08/06/17 21:50 ID:7LnDPV/E
不覚にも上がってしまったorz
170Classical名無しさん:08/06/17 21:52 ID:4uHNxeBE
   
171Classical名無しさん:08/06/17 21:54 ID:0RGRSCK2
TDN支援
172 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 21:58 ID:2jBtZfJQ
「後学の為、どのように聞き間違えたか、教えて貰っていいか?」

T-800には自分の台詞が、どのように警戒される様に聞き間違えられたのか、どうしても分からなかった。
しかし、それを聞かれた茂は、恥しそうに少し赤くなりながら、

「聞くなっ! いや、本当に何でも無いから…な?」

明らかに何でもなさそうには無かったが、ここで話を蒸し返して場が荒れても何なので、T-800は深く追求する事をやめた。

■    ■    ■

その後、お互いに自分の出会った人物や世界について、情報交換を行った。

茂にしてみれば、T-800から得た情報は自分の予想外のものが多かった。
シグマの協力者の名前―T-1000―とその後ろに控える組織『スカイネット』。
相手にする組織が増えたがそれはいい、それよりもその『スカイネット』が、未来の世界で人類と機械の最終戦争で、人類の抹殺目論む軍事用コンピュータ。
T-1000は人類側の指導者を殺す為に、未来から送られてきた殺人アンドロイド。
目の前のT-800は、抵抗軍に捕獲され人類の味方側になる様再プログラミングされた、元殺人アンドロイド。
正直未来だのタイムマシンだのは、茂にとって信じがたい話ではあるが、嘘言っている様にも思えない。
作り話にしては出来過ぎている。

さらにT-800が出会ったスバルという少女。
どうやら、チンクの知り合いであるようだが、彼女の語った内容もこれまた非常識だ。
彼女の知り合いである、ギンガ、チンク、ノーヴェの事はいい。戦闘機人はいい、自分も似たようなものだから。
だが、時空管理局に魔法、そして異世界。ある意味T-800の話より内容がぶっ飛んでいる。
だが、これらの事が全て真実であったなら?

自分の常識が全く通用しない、そんな世界からやって来た者がいるかもしれない。
そして、そんな人物達をも手玉に取って見せたシグマの組織力は、自分が想像していたものより遙かに高いのかもしれない。

茂の顔が獰猛に歪む。仮面ライダーの一人として、この殺し合いに反逆を誓った茂の心は、この程度の困難でくじける事は無い。
むしろますます闘志を燃やしている、そういった表情だ。
173 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 22:03 ID:2jBtZfJQ
(せいぜいふんぞり返ってこっちを見下してやがれ、必ずその面を後悔で歪ませてやるからよぉ)

決意を新たにする茂。
それはそれとして、T-800のであった残り二人の人物に思考を移す。
タチコマとドラスの二人。
タチコマ―彼? は水色の蜘蛛の様なシルエットしており、とりあえず殺し合いには乗っていないようだ。
そしてドラス―最初に殺されたセインをいくらか幼くした容姿の少女。
彼女も殺し合いには乗っていないようだ。
二人に関しては、情報が少ない。
もっとも、その原因はT-800にあるのだが。
174Classical名無しさん:08/06/17 22:04 ID:7LnDPV/E
 
175 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 22:04 ID:2jBtZfJQ

「それはそうと、いくらT-1000の野郎である可能性があるからって、いきなり鉛玉打ち込もうとするのはいたただけねなぁ」

「……あの時点では他に判断材料が無かった。俺としては最低限T-1000だけは、破壊しておかなくてはならない。妥協は出来ん」

茂からの非難に、冷静に反論するT-1000。
この殺し合いの中で、決して手を取り合う事は無いと分かっている相手だからこそ、疑いがある人物には自然と厳しい対応になってしまう。

「もっとも、お前の証言でドラスに対する疑いは晴れた訳だ。……機会があれば謝罪しよう」

「まっ、それが筋だろうな」

茂から得た情報を元に、T-800は思考する。
まず、『仮面ライダー』のコードネームを持つ、四人の改造人間。
茂の先輩にあたり、この殺し合いに乗る人物では無いようだ。
また、高い戦闘力―あくまで茂の主観、この殺し合いにおける平均的な戦闘力がどれ位かは不明―を保持しており、合流すれば戦力の増大を期待できる。

次に、名前の分らない緑色の髪の少女。
エネルギー刃の剣と、砲塔の付いた盾と当りに入る部類の支給品を持ち、殺し合いにのっている人物。
服装が半裸だったのは、すでに何者かと戦闘したためだろうか?
ともあれ、早急に排除しなくてはならない危険人物だ。

そして、一番関心がある人物、T-1000についてだ。
自分の近くのエリアに居たのも意外だが、なによりも目の前の男―茂―が奴と戦い、勝利を収めている事が一番驚いた。

奴を破壊する事が、いかに困難であるかは、自分が一番よく知っている。
もっとも

「それで、完全に機能が停止したのを、確認した訳ではないのだな」
176Classical名無しさん:08/06/17 22:05 ID:7LnDPV/E
  
177Classical名無しさん:08/06/17 22:05 ID:4uHNxeBE
    
178 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 22:11 ID:2jBtZfJQ

「まあ、そうなるな。……あれで倒せたと思うが」

茂の返事は、どこか歯切れが悪い。
それもその筈、制限によるチャージアップの強制解除。
これによって最後の一撃は、威力が削がれてしまった、その事が茂にいま一つ確信を持たせないのだ。

「まあ、時間の問題か…」

「ああ? そいつはどういう事だ?」

「午前六時まで残り一時間を切った、六時になれば放送が始まり、死者の名前が発表される。奴の生死はそこで確認できる」

放送の事を聞いて、茂は苛立ち始めた。そんなクソッ垂れな放送もあるのかと。
そんな茂様子を尻目に、T-800は淡々と告げる。

「今の内にルールを確認しておけ、足元を掬われかねんぞ? 後は体力の回復に努めろ、放送後奴の生存が確認されたら…」

「ああ、さっさと見つけ出して今度こそ確実にブっ潰す。」

チャージアップの制限は確認した、次があるなら同じ様なへまはやらねぇ。
そんな茂の意気込みを確認しつつ、T-800は同意するように頷いた。

■    ■    ■

約一時間後、PDAから流れる悪夢の放送が終わりを告げた頃。
結果だけを言えば、茂もT-800も自分の知っている名前が呼ばれる事は無かった。
だが…

「10人もだと? 俺達がここでのんびりしている間に、10人も死んじまったっていうのか? くっそぉぉぉぉぉおおぉぉ」
179 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 22:12 ID:2jBtZfJQ

「全体の約五分の一、思ったより殺し合いに乗っている参加者が多いのかも知れん。しかも…」 

「…ああ、あの野郎の名前が呼ばれてねぇ。奴はまだ生きてやがる」

重度の疲労の為戦う事が出来ず、休息を入れなければならなかった茂。
あの状態で無理に戦い続けようものなら、死体が一つ増えていた。
そんな事は茂も頭の中で理解している、だがそれで心が納得できるかと言えば話は別。
なにか出来る事はあったのではないか? 行動を起こしていれば犠牲者は減らせたのではないか?
無力感と後悔が湧き上がる、しかしそれで足を止める茂では無い。
むしろそれらを起爆剤として、反逆の意思をさらに燃え上がらせる。

一方T-800も思案する。
自分が今まで出会った人物は、全て殺し合いに乗っていなかった様だから、多少楽観視していた部分もある。
だがその考えは、かなり厳し目に修正しなくてはならないようだ。
早急に危険人物の排除、及び協力者の確保が必要である。
戦力としては、支給品が無くてもある程度戦闘能力が期待できる、仮面ライダーと合流するのが望ましい。
その一方で、戦闘力は無くとも爆弾を解除できる人物の確保、これも重要である。
危険人物を全員排除出来ても、体内の爆弾を解除できなければ詰みである。

ならばこれからするべき行動は…

「茂、これからの行動方針について提案がある、お前の意見を聞かせてくれ」

T-800が淡々と説明を開始する。
まずT-1000についてだが、生きていたと言うのであれば流石に修復も完了し、どこかに移動している可能性が高い。
即座に撃破しておきたい所であるが、想像以上に殺し合いに乗ったものが多い様だ。
あてもなくT-1000を探して、時間を浪費するのは避けたい。
故に遺憾ではあるが、T-1000の追撃は一時断念する。
180 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 22:12 ID:2jBtZfJQ

そしてこれからの事だが、修理工場か南下して街に向かおうと思う。
人が集まり易い街に向かえば、協力者との合流や弱者の保護が見込める。しかし、人が集まり易い分、危険人物との遭遇する可能性も大きい。

一方修理工場は、街よりは他の参加者に会える可能性は低いだろう。
だが、危険人物から逃れた者や手傷を負った危険人物が来る可能性がある。
どちらにせよ、他の参加者との接触は必要だ。

「確かにな…」

T-800の言葉を受け、茂は考える。
既に10人も犠牲者が出たってのに、全然動じてねぇ所が気にくわねぇが、言ってる事は間違ってねぇ。
確かにT-1000の野郎を今すぐにでも見つけ出して、今度こそ倒しておきたいが、奴の行方を見失った今下手に探し回るのは、時間の浪費だ。
犠牲者の数からいって、殺し合いに乗っているのはあいつだけじゃねぇ、緑色の髪の少女の事もある。
たった一人の敵に拘って、救える筈の人を死なせちまう、そんな訳にはいかねぇな。
ならば一刻も早く、他の参加者と合流し、弱者は保護し殺し合いに乗った奴はぶっ飛ばす。
これしかねぇな。
ならば行く所は…

「茂後ろだ! 避けろ!」

何かに気がついたT-800が、警告の叫びをあげる。
茂が慌てて振り返ると、窓の外から巨大な犬がこちらに向かって突っ込んできた。

「ちぃっ!」

幾ら休憩を挟んだとはいえ、茂の体力は完全に回復しきった訳では無い。
故にとっさの回避行動が鈍かった。
その鈍さは、攻撃の回避を失敗させるには十分だった。
窓と壁を突き破り、哮天犬が茂に襲いかかる。
茂に避ける術は無かった。
181Classical名無しさん:08/06/17 22:13 ID:7LnDPV/E
   
182 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 22:14 ID:2jBtZfJQ
■    ■    ■

探知機に映し出された人物、茂とT-800.ナタクは早速この二人の元に向かおうと思ったが、やめる事にした。
放送までの時間が、あまりある方では無かったからだ。
戦闘に没頭するあまり、放送を聞き逃す可能性がある、それは避けたい所だ。
ナタク本人としては、別に誰が死のうと関係ないのだが、間違って禁止エリアに入って爆死はごめんである。
それに自分のであった強者―KOS-MOSとシグマの影武者―、生きているならまた戦う事もあるだろうし、探す価値はある。
しかし、死んでいるなら探すだけ時間の無駄である。その為、休憩も兼ね行動は放送が終わった後にする事にした。
幸い、二人との距離はそんなに離れていない。哮天犬なら直ぐに辿り着ける距離だ。
万が一移動を開始したとしても、こちらには探知機があるのだ逃がしはしない。
獲物を狙う猛獣の様な笑みを浮かべながら、ナタクは体を休めた。
 
いくらか待つと、PDAから女性も声が流れ始め、放送が開始される。

KOS−MOSとか言う、青い髪の女の名前は呼ばれなかった。
影武者は……チッ、アイツの名前は分からん。
まあいい、禁止エリアも聞いた、あの二人も移動していない、ならここに居る理由はない。

ナタクは哮天犬に跨ると、二人の居る場所に向かって一直線に飛び立った。

■    ■    ■

ナタクは、茂とT-800の居る民家の近くの上空までやってきた。
ある程度まで近づくと、もう探知機無しでも気配を感じとれた。
強そうなにおいと、それより明らか劣る強さのにおい。
(成程、弱い奴が強い奴に守られている訳か、……邪魔だな)
茂とT-800、どちらかが弱者でそれを強い方が守っている、ナタクはそう捉えた。
正確に言えば茂は本調子じゃない上に、変身もしていない為、戦闘力が低く見られてしまっているのだが。
ナタクはそんな事は知る由もない。
ただ強い奴と戦う時に、傍で余計なちょっかいを出されたうっとおしい、その程度の事でしかない。
感じた限りでは弱い方は窓際に居る様だ、ならばする事は一つ。
183 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 22:14 ID:2jBtZfJQ
ナタクが茂達の居る民家の近くに降り立つと、窓際に居る男に向って哮天犬を繰り出した。
ナタクの狙いは単純。
この一撃で死ぬなり気絶するなりして、戦いの邪魔にならない様に出来れば良い、ただそれだけだ。
目論見通り、窓際にいる男は哮天犬を避けるのに失敗したようだった。
これで攻撃され、怒った強い方が自分に戦いを仕掛けてくるだろう。
強者との戦いに、自然と頬がつり上がるナタク。

ここでナタクの予想外の事が起こった。
目の前の家には、弱い方のにおいが残り、強い方が遠ざかって行ったのだ。
強い方が弱い方を庇った、即座にそう判断してナタクは舌打ちした。
これでは意味が無いと。
そう思った次の瞬間、弱い方のにおいの強さが、まるで膨張するかのように膨れ上がった。
その強さは、もう一人の強い方と同じかそれ以上だ。

(どういうことだ?)

どういうことかは良く分からない。
ただ分るのは、弱いと思っていた奴でも戦いが楽しめそうだと言う事だ。

哮天犬の一撃で舞い上がる雪煙りと瓦礫の粉塵。
その中から一つの影が、咆哮と共に飛び出してきた。
その人物はナタクがさっきまで戦っていた、シグマの影武者そのものだったからだ。
184 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 22:16 ID:2jBtZfJQ
■    ■    ■

(―っ、しくじった。)

自分の失態を呪いながら、茂はせめて少しでもダメージを減らそうと、ガードして身を固める。
すると、哮天犬の攻撃が当たる直前、思いもよらぬ方向から衝撃を受け、攻撃の射線上から外れる。
茂が哮天犬の攻撃を避けそこなったその時、間一髪でT-800が茂を突き飛ばし、哮天犬の攻撃を代わりに受けた。
T-800は哮天犬を受け止めようとした、だがT-800の思った以上に哮天犬の威力は高く、直ぐに足が地から離れる。
成す術のないT-800は、茂に向かい何事かを呟いた。
哮天犬とT-800は、部屋の反対側の壁を突き抜け外へ出ると、そのまま他の民家も貫いて行く。
そのまま数軒の民家を貫いた処で、哮天犬は止まった。

「T-800!!」

茂は即座にT-800の元に向かおうとして止めた。
自分を庇った時、T-800が呟いたのを確かに聞いたのだ、「問題ない」と言うその声を。
ならば今茂がする事はT-800の言葉を信じ、外に居るであろう襲撃者を倒す事だ。

「無事でいろよ、T-800」

茂は襲撃者が居るであろう方向を睨みつけると、革の手袋を脱ぎ棄て両手をこすり合わせる。

「変・身――ストロンガー」

雷の戦士は咆哮と供に駆け出す。

■    ■    ■

ストロンガーは空中前方宙返りと供に、体を雷光に包みナタクに向かって一直線に進む。
185Classical名無しさん:08/06/17 22:16 ID:7LnDPV/E
  
186 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 22:16 ID:2jBtZfJQ
自分とT-800しか知らない事実を言い当てられ、動揺する茂。一方ナタクは自分の予想が当たり、内心胸を躍らせる。
しかも丁度良い事に、もう一人の強そうな奴は哮天犬で少し離れた所まで飛ばされている。
目の前の男を庇ったのだから、全くの無傷ではあるまい。ならば目の前の男との戦いに集中できる。

「城茂もしくはT-800か? どちらでも構わんがオレと戦ってもらうぞ」

ナタクは凶暴な笑みを浮かべ宣言した。

【B-3 町/一日目・朝】

【城茂@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:腹部に刺し傷、左肩に火傷、全身に小ダメージ、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:殺し合いを潰す
1:何でこいつ俺やT-800の名前を? とにかく殺し合いに乗っているなら容赦しねぇ。
2: T-800が無事か気になる。
3:街を目指して南下するか、修理工場を目指して東に向かう。
4:本郷猛、風見志郎、神敬介と合流する
5:チンクと呼ばれた少女に会い、保護する
6:全部終わったらセインのちゃんとした墓を作る
※参加時期は仮面ライダーSPIRITS本編開始前より
※制限は攻撃の威力制限、回復速度制限です
※チャージアップに課せられた制限は効果時間短縮、および使用後の疲労増大です
※自身にかけられた制限(威力制限・チャージアップ制限)には気がつきました
※スバルの住む世界、魔法、ギンガ、チンク、ノーヴェに関する情報を得ました。
※T-800の世界についての情報を得ました。

【ナタク@封神演義】
[状態]:頬にレーザ痕(行動に支障無し)、全身にボムによる火傷(行動に支障無し)
[装備]:哮天犬@封神演義、M.W.S.(ボム残り七発 ビームランチャー エネルギー87%)@ゼノサーガシリーズ、高性能探知機
187Classical名無しさん:08/06/17 22:16 ID:7LnDPV/E
 
188 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 22:19 ID:2jBtZfJQ
すまん、一か所抜けた。
>>184>>186の間にこれが入ります。

「電キィィィク!!」

雄叫びをあげてストロンガー突撃する。
その攻撃を避け様とし、ストロンガーの姿を見たナタクは一瞬驚いた。
初めて会う相手の筈が、その姿には見覚えがあった。
シグマの影武者と同じ姿なのだ。

驚きによって、回避が一瞬遅れる。
避けきれないと判断し、ナタクはガードに切り替える。
両腕に強い衝撃と雷を受け、数m程後ずさる。
腕は幾らかしびれて動きは鈍るが、全く戦闘に使えない訳では無い。
哮天犬がナタクの元に戻り、傍に待機する。

「いきなり奇襲とはやってくれるじゃねぇか、こんな真似をするからには、ブチのめされる覚悟は出来ているんだろうな?」
「……」
「おい、なんとか言ったらどうだてめぇ!」

自分の話を完全に無視するナタクに、激昂する茂。
当のナタクは目の前の男、ストロンガーについて思考する。
目の前の人物が、シグマの影武者と違うのはたしかだ。 ならば何故、こいつはシグマの影武者と同じ姿なのか。
そこでナタクは気付く。
目の前の男がシグマの影武者と同じ姿なのでは無く、シグマの影武者が目の前の男の姿を真似ていたのだと。
シグマの影武者は自分と戦う前に、誰かと戦った形跡があった、それは誰だ? 恐らくは目の前の男。
おそらく目の前の男に化ける事で、こいつが不利になるように仕向けるつもりだったのだろう。

「…お前、シグマの影武者と一度戦っただろう?」

「なっ、…てめえ、何でその事を知ってやがる」
189Classical名無しさん:08/06/17 22:23 ID:2jBtZfJQ
支援
190 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 22:26 ID:2jBtZfJQ
[道具]:支給品一式、ランダム不明支給品1
[思考・状況]
基本思考:強い敵と戦う。弱者に興味はない。馴れ合うつもりはない。
1:城茂…どれだけ強いか楽しみだ。
2:武器を探す(宝貝優先)
3:回復を終えたT-1000とは、また戦いたい。
[備考]
※仙界大戦終了後からの参戦。
■    ■    ■
瓦礫の中からT-800は身を起こす。辺りを見回すが、自分達を襲った巨大な犬はいない様だ。
おそらくは襲撃者の元に戻ったのだろう。
「損傷チェック……損傷率十数パーセント。戦闘行動に支障なし、……茂の援護に移る」
PDAを操作しテントローを転送すると、すぐにそれに跨りアクセルを全開にして走り出す。
茂の戦闘能力が高くても、体力の回復が完全では無い。
相手の能力はどれ程のものか分からないが、実力が互角と仮定した場合長期戦に陥れば、茂の敗北の可能性もある。
ならば自分が援護に入れば、勝率は高くなる。
高い戦闘能力を持つ貴重な協力者だ、ここで死なせるわけにはいかない。
T-800は、友情でも連帯感でもなく、ただただ使命の達成の為に茂の援護に向かう。

【T-800@ターミネーター2】
[状態]:健康 小程度損傷
[装備]:滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS、コルトS.A.A(6/6)
[道具]:支給品一式、コルトS.A.Aの弾丸(30/30発)、テントロー@仮面ライダーSPIRITS
[思考・状況]
基本思考:シグマを打ち倒して殺し合いを破壊し、本来の任務に戻る。
     その為に仲間を集める、殺し合いに乗る者には容赦しない。
1:茂を援護し襲撃者を倒す。
2:街を目指して南下するか、修理工場を目指して東に向かう。
3:スバルと合流する。
4:スバルの仲間(ギンガ、チンク、ノーヴェ)を見つけ、合流する
5:T-1000の破壊
191 ◆d.NbLKVxEc :08/06/17 22:29 ID:2jBtZfJQ
※本編開始直後からの参加です。
※スバルに、ボブと呼ばれています。
※ライダースーツのナックルとその弾丸は、スバルに手渡されました。
※スバルの住む世界、魔法、ギンガ、チンク、ノーヴェに関する情報を得ました。
※シグマの背後にはスカイネットがいて、スカイネットの妨害行為によって
自分はこの場に連れてこられたのではと考えられています。
※仮面ライダー(本郷、風見、敬介)についての情報を得ました。


投下終了、支援感謝します。
感想や御意見があったら、よろしくお願いします。
ただし、初めの悪乗りした所について、言いたいことがある人は毒吐きでお願いします。
当然の事として受け入れます、好きなだけ罵ってください。
では
192 ◆ss6T.bLZ42 :08/06/17 23:20 ID:RefFECXE
さきほどは失礼しました。wiki編集の方、対応していただきありがとうございます。
遅くなりましたが、投下します。
193荒野を渡る風 ◆ss6T.bLZ42 :08/06/17 23:21 ID:RefFECXE

眩い日光を切り裂いて、白のバイクが疾風を巻き爆走する。
運転するのは銀髪の少女、チンク。すぐ後ろに腰掛ける紅い装甲の男はゼロ。
名乗りあった後は、二人の間にほとんど会話もない。
目的地であるゴミ処理場に着くまで、辺りに響くのはサイクロン号の排気音だけかと思われた。
しかし女の合成音声が、チンクのPDAと、ゼロの持つ二つのPDAより流れ出る。
ブレーキがかけられた時には、もう周囲は圧倒的な量のゴミに囲まれていた。
二人はバイクから降りるとそれぞれ放送に耳を澄ませる。

やがて放送が終わり、ゼロが廃棄物の峰に背を預けた。
「どうやら、ノーヴェ達――それに、エックスも無事なようだな」
腕を組みひとまず息をついた彼に、少女の硬い声が投げかけられた。
「そろそろノーヴェの居場所を答えてもらうぞ。ノーヴェ“達”と言ったな。誰かが共にいるのか?」
「……ここに送られて、最初に会ったのがノーヴェだ。
向こうも俺と会うまで誰も見ていないと言っていたが、今は二人同行しているはずだ。
別れた時はタンクローリーに乗っていた」
チンクはつり上がった右目で鋭くゼロを睨みつける。
「同行者の構成、今までの行動。ノーヴェがどちらへ向かったか。知る限りのことを話せ」
「今度はこちらの番だ」
尋問そのものの問いにも眉一つ動かさず、ゼロは冷厳とした眼で相手を見据えた。

「俺は、お前がシグマの甘言に唆され壊し合いに乗った、と思っていた」

「……何、だと?」
予想外の言葉に、チンクが声を震わせる。
「望みという餌に釣られた犬に成り下がり、欲望のまま奴の思い通りに動いている。
――違うか?」
問いが終わる前に、ゼロの頬を衝撃が襲った。
殴打の痛みに顔をしかめて前を向けば、憤怒の表情が目に映る。
194荒野を渡る風 ◆ss6T.bLZ42 :08/06/17 23:23 ID:RefFECXE
地の底から響くような声音で少女は吼えた。
「取り消せっ……シグマは、奴はセインの仇だ!誰が、奴の犬になっただと?
私の望みは、ノーヴェを守り、シグマを殺すッ!それだけだ!」
「では、壊し合いには乗っていないんだな?」
チンクの激情を受け流し、感情の窺えない声で問う。
「当たり前だ!奴の言葉を信じるなど、反吐が出る」

鼻を鳴らして、ゼロは口を開いた。
「忠告しておいてやる。こんなことで一々熱くなっているようでは、貴様に奴は倒せん」
瞬間。逆流する血がチンクの頭を真っ白にした。
あまりの怒りに歯の根が震え、噛み合わない。
今は眠っているはずの男の言葉が、脳裏にちらついていた。
「貴様やカザミが何を言おうと、関係ない」
彼女は固く握った右拳を再度振り上げる。
「私は、絶対に奴を粉々にしてやる!!何があろうともだ!」
殴りかかられた側は避けようともせず、ただ悠然と言い放つ。
「――同感だ」
顔面に吸い込まれるはずだった拳は、直前で相手の掌に掴み取られていた。
放せ、と声を荒げかけた唇をチンクは引き結ぶ。
「俺も奴を地獄に落としたくて仕方がなかったところでな。今度こそ舞い戻れんよう、
念入りに斬り刻んでやるつもりでいたが――粉々にしてくれるなら、ありがたい」
相手の無感動だった瞳の奥に、鋭く研がれた刃を感じ取り。
チンクは腕の力を抜き、乱れていた息を整えた。

「どうやらお前は嵌められたようだな」
腕を組み直し、ゼロがこともなげに告げる。
「いや、お前だけじゃない。俺やノーヴェ達、下手をすれば他の奴らもだ」
195荒野を渡る風 ◆ss6T.bLZ42 :08/06/17 23:28 ID:RefFECXE
「どういうことだ?」
急に変わった相手の態度を奇妙に感じながらも、チンクはおぼろげに見当をつけていた。
「お前、紫色をした恐竜に会ったか?2m以上の機械の巨人に変形する、狡猾な奴だ」
「知らんな。俺は、今ノーヴェに同行している二人から、お前が壊し合いに乗っていると伝えられた。
だがその二人も、誰かからその話を聞いただけのようだった。
“チンクはセインを生き返らせるために壊し合いに乗った”と」

チンクは衝撃に目を見開く。悪評が流されるかもしれない、と予想したことはあった。
だが実際その存在を伝え聞けば、なんと悪意に満ちた噂であることか。
愕然として俯く少女の様子を目にして、ゼロの表情に苦々しさが混じる。
しかし。
「……その二人の話を聞かせろ。信用できるのか」
顔を上げたチンクの瞳には、意志の光が戻っていた。
ゼロは内心感嘆の息をつき、答える。
「恐らく二人とも、お前とは面識がないだろう。片方はお前とノーヴェを取り違えていたほどだからな。
どちらも壊し合いには乗っていない様子だった。名は確か、黄色い方がロボ。
小さいドラム缶のような男がメカ沢と――」
「メカ沢!?」

――メカ沢という随分と好戦的な男だった。黄色いロボットを従えて襲い掛かってきたぞ
――壊し合いには乗っていないと言っただろう、何とか撒いてやった

自然とチンクは紫色の恐竜の言葉を思い起こしていた。
これらの言葉には、ひとつの真実がある。
「あの紫色の恐竜がメカ沢という男と黄色いロボットに会った」という点だ。
そして、ゼロいわく“壊し合いに乗っていない”メカ沢達は自分に関する悪評を“誰か”から受け取っており。
対して自分は“メカ沢達が壊し合いに乗っている”という伝聞を“敵”から受け取っている。
196荒野を渡る風 ◆ss6T.bLZ42 :08/06/17 23:30 ID:RefFECXE
チンクの中で、情報の糸が一本に繋がった。
心当たりのある様子に、ゼロの訝しむ気配が伝わってくる。
「私や風見達を殺そうとした紫の恐竜は、そのメカ沢とロボに会っている。
そして“壊し合いに乗ったその二人から逃げてきた”と、私達に言った。裏切る前にな」
「なるほどな」
ようやく得心がいったように、ゼロが頷く。


そこからは、チンクが必要とする手ごろな金属を探しながらの会話となった。
――ノーヴェ達はE-3から、北へ向かった。
そう教えられた瞬間から、チンクは駆け出したくなる思いを堪えている。
スバルを止めるにも、ボイルドや他の襲撃者に相対するにも、残りのナイフだけでは心もとない。
ゴミの中から見つけた穴のないデイバッグの中に、金属片を押し込んでいく。

壊し合いに乗った者についての情報交換は、ごく簡単なものだ。
説明は相手の容姿や危険度、遭遇位置、大まかな能力程度で済ませている。
「本当にその……ハカイダーが、ノーヴェ達を追う心配はないのか」
「奴は強い相手と戦うことにしか興味がない。
慣れない武器を持ったノーヴェや、非戦闘用の二人をわざわざ追わないはずだ」
チンクの表情は険しい。
ゼロは“仮面ライダー”が、変身して戦うサイボーグだとは知らない。
チンクが風見達の話をしていないこと、銀の仮面の男が名乗りを上げなかったことがその理由。

ゼロとノーヴェを襲ったという銀の仮面の男の特徴は、風見の仲間の一人とあまりに酷似している。
しかしあの風見が仲間と認める男が、無差別に人を襲うだろうか。
それとも、ゼロが嘘をついているのだろうか?
目の前の男はいけすかないが、もはや壊し合いに乗っているようには見えなかった。
197荒野を渡る風 ◆ss6T.bLZ42 :08/06/17 23:32 ID:RefFECXE


「……もう十分集まったか」
デイバッグを背負って立ち上がったチンクに、ゼロは背を向ける。
「待て。お前、この後どうするつもりだ」
「修理工場へ向かい、膝の故障を直す。歩くだけなら問題ないが、タンクローリーに追いつくには少々荷が重い。……お前は、ノーヴェ達の元へ行くのだったな」
「ああ。いずれ修理工場へ戻るつもりだがな」
できることなら、ノーヴェ達を連れて戻りたいものだ。
そう考えたチンクの方へ、ゼロは自分のPDAを差し向けてデータを送信した。
「ノーヴェ達に会ったら、まず俺に会ったと叫べ。近づけたら、今送ったテキストを見せてやるといい。送信者欄があるはずだ。証拠の足しにはなる」
「わかった」

チンクの答えを聞くと、ゼロは振り向いて南に歩み去っていく。
数瞬、チンクは迷う。時間が惜しいのは確かだ。――しかし。
ゼロの隣に、押し転がされるサイクロン号が並んだ。
「餞別だ、持っていけ」
言葉と共に、ゼロの手にふわりと柔らかい物が載せられる。
緑がかった、淡い青のリボンだった。
「……何だこれは」
可愛らしい品物をつまみ、半目になって問う。
「身に付けると、スピードと魔法耐性が上がるそうだ。ノーヴェが世話になったようだからな。
貴様に借りを作ったままというのは癪に障る」
「役に立つのは分かったが。これを俺にどうしろと……」
「そんな所まで面倒は見切れん。その鬱陶しい髪を三つ編みにでもすればいい」
ぎょっとする相手の反応を受けて、少女は初めて愉快そうに笑った。
198荒野を渡る風 ◆ss6T.bLZ42 :08/06/17 23:39 ID:RefFECXE

「大体貴様、戦闘用だろう。製作者はどういうつもりでそんな無駄な長さにした?
私の造り主ですら、そこまで酔狂ではないな」
「知るか!……大方、髪にコンプレックスでもあったんだろうよ」
憮然とするゼロを捨て置き、チンクはサイクロン号に跨った。
「修理工場にいるのは二人。ポッドで寝ている方が風見、橙色の髪の男は凱だ」
肩越しに振り返り、そう告げる。そのままマシンのエンジンをかけた。
少女を乗せて、驚異的な速さで走り去るサイクロン号。

その場に一人残されたゼロは嘆息し、掌の上のリボンを渋い顔で見つめた。
「三つ編み……か」



【H-2 路上/一日目・朝】
【ゼロ@ロックマンX】
[状態]:左膝を破損、エネルギー消費(大)、全身のアーマーに大きな傷、疲労(大)
[装備]:チャージキックの武器チップ@ロックマンシリーズ カーネルのセイバー@ロックマンX4、
    トリモチ銃@サイボーグクロちゃん 、アトロポスのリボン@クロノトリガー
[道具]:支給品一式 PDA×2(ゼロ、村雨) 不明支給品0〜2(未確認) 
     空っぽの平凡なデイバッグ@ゴミ処理場
[思考・状況]
基本:シグマを倒す
1:修理工場を目指し、膝の修理が終わり次第チンクの仲間と情報交換
2:日付の変わる頃(二日目00:00)にハカイダーと決着をつけるため、スクラップ工場に再度向かう
3:ノーヴェの様子が気になる
4:エックス、ギンガを探す
5:シグマ、何を企んでる?
6:ハカイダーに……
199荒野を渡る風 ◆ss6T.bLZ42 :08/06/17 23:42 ID:RefFECXE
[備考]
※ノーヴェたちを生体パーツを使用したレプリロイド(のようなもの)と解釈しました。
※ノーヴェから時空管理局と平行世界に関する知識を得ました。
※チンクから彼女を襲った参加者の情報を得ました。
※参戦時期はX4のED〜X5開始前のようです



建物の間をすり抜けて、一陣の風が西へと駆ける。
「カザミは、ゼロと凱を信用するだろうか」
凝った肩を回し、チンクは目を細めた。

ゼロの語ったシグマの本体――レプリロイドの理性を狂わせるプログラム、シグマウイルス。
機械による洗脳とは比べ物にならない、爆発的規模で広まる狂気。
唯一の有効打である抗体プログラムでさえ消滅は不完全という、ロストロギア顔負けの恐怖。
ゼロは、シグマウイルスが生体部品に効果を持つなどとは聞いたことがないという。
それが本当なら、生身の脳を持つ戦闘機人は影響下にない。

――空ろな瞳をしたスバル、そして様子のおかしい風見の仲間。
一体彼らを狂気に溺れさせたものとは、何なのだろうか。



【G-2 南西/一日目・朝】

【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:小程度の疲労、全身に小ダメージ、固い決意、運転中
[装備]:ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス(3/30)
[道具]: 支給品一式、不明支給品0〜1、サイクロン号(1号)@仮面ライダーSPIRITS 、
金属の詰まった平凡なデイバッグ@ゴミ処理場
200Classical名無しさん:08/06/17 23:43 ID:kgOwkdZo
 
201荒野を渡る風 ◆ss6T.bLZ42 :08/06/17 23:45 ID:RefFECXE
[思考・状況]
基本:ノーヴェを守り、シグマを破壊する
1:E-3の北方へ行きノーヴェを探し、誤解を解く。
2:志郎と共に本郷・茂・ギンガ・ノーヴェを探し、合流する。
  スバル、敬介は警戒。またノーヴェを最優先にする。
3:ノーヴェと合流後、もしくは数時間たったら修理工場へ戻る
4:殺し合いに乗った危険人物には容赦しない
5:スティンガー、シェルコートを手に入れる
[備考]
※参戦時期は本編終了後です
※優勝者の褒美とやらには興味がなく、信用していません
※志郎を信用していることに気付きました。
※ゼロと情報交換を済ませました。


【アトロポスのリボン@クロノトリガー】
ロボの恋人、アトロポスの身に付けていたリボン。
ロボが身に付けた場合、スピードは+3、魔法防御力は+10 、ステータスに加算される。
効果は身体か服に触れていれば発動。
ロワでは、ロボ以外が身に付けた場合にもある程度効果を持つように調整されている。
202 ◆ss6T.bLZ42 :08/06/17 23:50 ID:RefFECXE
以上です。遅くなってすいません。支援ありがとうございました。
203Classical名無しさん:08/06/17 23:55 ID:4uHNxeBE
>>191
投下乙アッー
t-800と茂の誤解が解けてよかった?
ナタクとの激闘でダブルライダーキックが見れるのか!?
ネタと激戦を予感させる良作でした。GJ!

>>202
こちらも投下乙。
チンクと順調に情報交換。
髪の毛を縛っていろとゼロがちょっと不憫w
GJ!
204Classical名無しさん:08/06/18 00:06 ID:yMmmc.6U
>d.NbLKVxEc氏
投下乙です。
アッー!?は流石になかったかw
ナタクVSストロンガー、どっちもT-1000を倒した者同士の対決ですか、T-800は間に合うか!?
とても気になる引きでした、GJ!

>ss6T.bLZ42氏
投下乙です。
チンク姉とゼロは分かれましたか……互いの鋭い洞察力によってメガちゃん逆に包囲網がしかれつつある気がww
しかし膝が完治すればゼロのスピードが更にアップ……おお、これはかなり力強い対主催の戦力に!?
GJでした!
205Classical名無しさん:08/06/18 00:09 ID:gFJmcKgA
>>191
投下GJです。
仮投下のときも笑ったけど、やっぱり最初に吹いたww
ストロンガーとT-800の誤解も解けたようで何よりだ。
ナタクとの戦闘が気になる引きでした!

>>202
こちらも、投下GJです!
二人は分かれたか……
暴走敬介とシグマウイルスを知ったチンク、迷走するスバルをどう判断するか……
修理工場には今は誰もいないが、どうなるだろう。……みつあみにするのか?w
206Classical名無しさん:08/06/18 00:12 ID:i0G56fNs
>>191
投下乙!
茂、ついに……ニコロワのキョンと同じ運命を辿ったか…って違うかw
村雨の名前が呼ばれたのに反応できないもどかしさ…いずれそのことが役立つ日が来るのでしょうか
そして対ナタク戦、ボブさんと共闘! 次回も目が離せない! そしてもう誤解フラグを広げるなよ!w

>>202
投下乙take2!
リボンチンクが装備すりゃいいのにw
そしてメガチャン包囲網がまだまだ広がっていく……期待を込めてGJ!
207Classical名無しさん:08/06/19 19:47 ID:bZfn9f3I
予約0か……
軽くかそっているな。
208Classical名無しさん:08/06/19 20:16 ID:YWPmemhk
これで過疎って……ねーよ
209Classical名無しさん:08/06/19 23:26 ID:38wpUAsU
>>207
そんなに過疎だと思うなら、一人全話感想でもしたらどうだ
210Classical名無しさん:08/06/20 04:25 ID:gJ9wb9xs
自己リレーな所はあるが、現在一つプロット完成。
ただし執筆はTRPGのシナリオを、一本作った後になるが。
211Classical名無しさん:08/06/20 23:50 ID:YkoIyz/o
>>210
全力で応援するぜ!
212Classical名無しさん:08/06/21 15:40 ID:.ixXTm8w
そういえば以前毒吐きの方に出たが、◆DNdG5hiFT6氏の作品で雪原が無いのにもかかわらず
マルチ、T-1000、スバルが戦闘した所が雪原になっていた事について、◆DNdG5hiFT6氏に答えて欲しい。
マルチのPDAを回収する時が来たら、位置が曖昧だと少々困るのでお願いします。

213Classical名無しさん:08/06/22 17:45 ID:Dn3wl6eE
【仮面ライダーSPIRITS】○本郷猛/○風見志郎/○神敬介/○城茂/
【からくりサーカス】○アルレッキーノ 【ロックマンXシリーズ】○エックス/○ゼロ
【ターミネーター2】○T-800/○T-1000 【攻殻機動隊】○タチコマ 【サイボーグクロちゃん】○クロ/○ミー
【マルドゥックシリーズ】○ディムズデイル・ボイルド 【パワポケシリーズ】○灰原【ロックマンシリーズ】○ロックマン
【魁!!クロマティ高校】○メカ沢新一 【勇者王ガオガイガー】○獅子王凱 【封神演義】○ナタク
【クロノトリガー】○ロボ 【人造人間キカイダー】○ハカイダー 
【仮面ライダーZO】○ドラス  【ビーストウォーズ超生命体トランスフォーマー】○メガトロン 
【メタルギアソリッド】○グレイ・フォックス 【究極超人あ〜る】○R・田中一郎

男 24名

【魔法少女リリカルなのはStrikerS】○スバル・ナカジマ/○ギンガ・ナカジマ/○チンク/○ノーヴェ
【からくりサーカス】○フランシーヌ人形/○コロンビーヌ【SoltyRei】○ソルティ・レヴァント 【魔法先生ネギま!】○絡繰茶々丸
【マルドゥックシリーズ】○ルーン・バロット【パワポケシリーズ】○広川武美
【攻殻機動隊】○草薙素子【スーパーロボット大戦シリーズ】○ラミア・ラヴレス 【ゼノサーガシリーズ】○KOS-MOS

女 13人

ちょっと男女別で生存者数えてみた。2:1の割合で男の方が多い。
214 ◆14m5Do64HQ :08/06/22 23:32 ID:Fwe2wlXM
こんばんは、恥ずかしいお話ですが鳥バレしてしまいました……orz
なので今から認証用に新鳥で書き込みますね。
どうもすみません……。
215 ◆Qi1eK.TiFc :08/06/22 23:33 ID:Fwe2wlXM
これが新鳥です。
それでは失礼しました……。
216Classical名無しさん:08/06/23 22:21 ID:ZNYK7f8s
ドンマイですw
落ち込まずに頑張ってくださいー
217Classical名無しさん:08/06/23 23:07 ID:tl4Cduhw
ファイトー
218Classical名無しさん:08/06/25 17:38 ID:wpS7jfB6
いつのまにか仮投下に新作が!
双方のキャラの対比と心理描写が非常に上手かったです。
ほのぼのしながらも考察が進み、電話はどこに繋がるか……GJ!
219Classical名無しさん:08/06/25 22:17 ID:WcJ9ewBo
仮投下乙。
とりあえず一つ意見おば。
クロちゃんは食物を食べれる。
エネルギー切れで動けなくなってガソリンを補充したりするから食物は意味があるかは分からないけど、
5巻でナナの拙いシチュー食べてはら下していたぐらいだから、多分ご飯食べれる。
220Classical名無しさん:08/06/25 23:55 ID:vJA2Hhok
せんべいが好物だしな
221Classical名無しさん:08/06/26 19:36 ID:zwZCaZVA
touka乙。

本当にありがとうございましたに白ごはん吹いたw。
222Classical名無しさん:08/06/26 23:27 ID:7ehO/16I
◆DNdG5hiFT6氏の作品の代理投下します
223モバイルレディ・U:08/06/26 23:30 ID:7ehO/16I
――コードネーム・モバイルレディ。

大神グループの作り出したガイノイド。
敵地のコンピュータネットに侵入する破壊活動用サイボーグ。
だがそのコンセプトゆえに、“失敗作”のカテゴリに分類された人造人間。

数年前、多くのサイボーグたちと共に大神グループを脱走。
その後、催眠洗脳能力を持つ仲間の協力もあって、遠前町の商店街に溶け込み、
漢方薬屋を経営する女性・広川武美としてつかの間の平穏を手に入れることに成功する。

……そう、つかの間の平和。
大神での処置を受けない限り、体内に仕掛けられた“寿命タイマー”によって丁度10年目に爆発する。
そのタイムリミットまで残り……約半年。


これが彼女の、“モバイルレディ”のすべて。


    *    *     *


クロたち2人が目指す施設は湖の中央にある家。
更には都合のいいことに水を渡れるいかだを手に入れた。
あの民家にいる人物と接触するつもりなら、一刻も早く民家へと行きたいところだがそうはいかない。
なぜならば家をぐるりと囲む湖はいわば天然の堀のようなものだからだ。
その“堀”を渉りきる瞬間は、どうしても無防備になってしまう。
つい先程襲撃を受けたのだ。少なくとも数ブロックは警戒し、安全を確保しなければならないだろう。
2人は周囲を警戒しながら、無言のままで湖を反時計回りに周り始める。
224Classical名無しさん:08/06/26 23:30 ID:HPzUpAlw
 
225モバイルレディ・U:08/06/26 23:31 ID:7ehO/16I
そして【F-8】ブロックに足を踏み入れた時、クロに変化が起こったのだ。
クロは立ち止まり、注意深く鼻をぴくぴくと動かし始めたのである。

「どうしたのクロちゃん?」

武美はその様子を訝しみ、小声で尋ねる。
だがクロは無言を通し、険しい顔つきのまま深い森を掻き分けて進む。
慌てるように前を行くクロの様子に武美は嫌なものを感じ取り、身を緊張させ必死に後をつけていく。
そして程なくして彼らの前に一つの光景が現れる。

薙ぎ倒された木々と巨大なクレーター。
そしてそのクレーターの前に倒れこむ体部分だけしかない、ロボットの姿だった。

ドラム缶のような寸胴なボディにずんぐりとした手足。
中国風の上着を着ている。もしかしたら中国製だったのかもしれない。
そして頭があったであろう場所はごっそりと削り取られ、首部分からは焦げ付いた機械回路を晒している。
あたりに漂うのは機械が焼け焦げたような嗅覚センサーを刺激する臭い。
優れた嗅覚を持つクロはこの匂いを嗅ぎ付け、駆けつけたのだ。

周囲に散らばった残骸を見渡していた武美だったが、散らばったパーツの中に金属製のネコの耳を発見する。
武美は交わした会話を思い出し、恐る恐る話しかける。

「もしかして……ミーって人?」
「いんや、形がまるっきり違う。どうやらご同類みてーだがな」

大きさも色も彼の知るミーとは似ても似つかない。
だがクロは厳しい表情を崩さない。

――下手人はあの女、凶器はあのロケットパンチモドキだな。

危く喰らうところだった一撃だ。見間違えるはずもない。
位置的に考えて、恐らくは自分達が襲撃を受ける直前、このネコ型サイボーグは倒されたのだろう。
226Classical名無しさん:08/06/26 23:31 ID:HPzUpAlw
   
227モバイルレディ・U:08/06/26 23:32 ID:7ehO/16I
(……だとしたら、逃しゃしなかったけどな)

破壊されたネコ型サイボーグの残骸を見て思い出すのは、元の世界でもたまに見かけた人間たちによって殺された猫の姿。
そう、あの女に対して感じるのは、そういった種類の怒りだ。
自分の同類を殺されたことに対する怒り……マグマのように粘り気のあるドス黒い怒りだ。
本来ならば即効で追いかけて、しかるべき報いを受けさせるところだが、
すでに遭遇からかなりの時間が経過していること、戦闘能力を持たない武美と行動を共にしていること、
そして何より当面の目的である湖中央の民家への意志から追跡を断念する。
……再び会った時には容赦はしないと心に刻みつけながら。

「……ま、警戒はこのくらいにして」

話題を変え、次の行動を促そうとするクロ。
だが不意に上げた視線の先に映ったものに、クロは言葉を失う。
その視線の先にあるのは武美の顔。
しかし万華鏡のようにコロコロと変わっていたその表情は、一切の感情が抜け落ちたかのような状態で停止している。
その茫洋とした視線はただスクラップと化した亡骸に注がれている。

そのあまりの変貌にクロは声をかけられないでいた。
死体――といってもスクラップにしか見えないが――を見たショックで死が怖くなったか?
だが今の彼女の表情は“何もない”のである。
そう、怒りや悲しみと言った負の感情すら何処かへ置き忘れてきたかのように、ただ王ドラの亡骸をじっと見詰めている。

事実、武美は死に怯えているわけではない。
ただ、突きつけられた事実に感情が渦を巻き、オーバーフローを起こしているのだ。
彼女が目の前に散らかる残骸に思い知らされるのはただ一つの事実。

――ああ、あれは半年後の自分の姿なのだ。
228Classical名無しさん:08/06/26 23:33 ID:HPzUpAlw
    
229モバイルレディ・U:08/06/26 23:34 ID:7ehO/16I
例え元の世界に帰れたとしても遠くない未来、寿命タイマーによって自分の体は爆発する。
覚悟はしていた。だからそれまでの余生を思いっきり楽しむつもりでいた。
でも、目の前に改めて“現実”を突きつけられるとどうしても自身の死を連想せざるを得ない。
粉々になる自分。塵一つ残さずに消えていく自分。そして、自分を探す居候の男の姿。

(……もしも死んだら、風来坊さんは悲しんでくれるかな?)

答えの出ない問いは武美の思考を無限の闇へと誘う。
無限ループの中で永遠に彷徨うかと思われた武美の意識は、ガリガリと何かを削る音で現実に引き返させられた。
慌てて視線を流せばその先に、クレーターのすぐ横で自前の爪を使って穴を掘りはじめたクロの姿があった。

「……クロちゃん、何してんの?」
「埋めてやるに決まってんだろ」
「死体に意味なんてないよ。きっと死者は何も考えないからさ……」

死んだら……いや、壊れたらただの瓦礫になるのだ。
いや、自分の場合は瓦礫にすらならない。
証拠隠滅のため、残骸はバクテリアに分解されて塵一つ残らないのだから。

「そりゃそうだ。でもな、墓を作ることにはきっと意味がある。
 一度死んだオイラが言うんだ。間違いないぜ」
「え……」

言葉を失う武美を尻目にクロは穴を掘り続ける。

クロ、いやサイボーグになる前のキッドという猫はすでに死んでいる。
愛する野良犬を庇いながら矢の雨を受け、ただの猫としての生を一度終えた。
不死身の体に生まれ変わった今でも死の記憶は彼の中に確かにある。
230モバイルレディ・U:08/06/26 23:35 ID:7ehO/16I
だから知っている。死者は何も考えないということを。
殺されたものが持つ悔しさや怒り、悲しみなんかは死ぬ瞬間にすべて置き去りにされるものなのだと。
だから墓を作ったところで、このネコ型サイボーグが喜ぶなどとは少しも思っていない。
だが、少なくともこうすることが必要だと感じられたのだ。
――涙を流さずに泣いている、目の前の女のために。

武美が今、何を考えているかなんてクロにはわからない。
しかし目の前の残骸に何らかのショックを受けたのは確かだ。
だったら、立ち直るためにはきっかけを与えればいい。
そう考えてクロが思いついたのが、墓を作ることだった、というわけだ。

「……アタシも手伝うよ」
「ん、じゃあ適当な石を探してきてくれ。それと、あんまり遠くに行くなよ」

言葉少なに指示を出すクロ。
そのまま2人で黙々と作業を進め、数分後には埋葬が完了した。
仕上げとばかりに武美が探してきた石を乗せ、簡素な墓が完成する。

「さて、名前ぐらい刻んでやっか」

クロはそう言って、緑色に輝く勇者のナイフを握り締める。
このナイフ、“何でも切れる剣”程じゃないが中々の切れ味だ。
リーチが短いのが難点だが、石に墓碑銘を刻むぐらいなら楽勝で出来そうだ。

「でもこの人の名前知らないんでしょ?」
「んー、じゃ“何処かの誰かの墓”とでも書いとくか」
「それだとワケわかんないし」
「ま、じゃこれでいいだろ」
231Classical名無しさん:08/06/26 23:35 ID:HPzUpAlw
     
232モバイルレディ・U:08/06/26 23:37 ID:7ehO/16I
無難に『ネコ型サイボーグの墓』とだけ記す。
その後、飼い主の老人達に倣い、両手を合わせる。
武美も思い出したように両手を合わせ暫しの間、黙祷を捧げる。

「よし、じゃ、そろそろ行くか……って何だよその顔は」

見上げた武美の顔は微笑んでいる。
ニヤニヤと、でも少し優しげに。
まるでこちらの意図をすべて見透かすかの様な笑みに耐え切れなくなり視線をそらすクロ。
その様子が武美の笑みを一層深くする、と分かっていたとしても視線を合わせていられなかった。

「ありがとね、クロちゃん」
「……なんのことだか、わからねえな」


   *   *   *

そして数十分後、彼らは目的地……湖の島に到達していた。
警戒のかいもあってかいかだで渡る間襲撃はなく、安全に島へと進むことが出来た。

そんな彼らがメッセージを聞いたのは丁度いかだで湖を渡っている最中。
ミーの名が呼ばれなかったのは僥倖だったが、6時間で10人もの犠牲者が出ているのだ。
……先程のネコ型ロボットのような犠牲者が。

「まったく、気にくわねえにも程があるぜ……」

PDAから流れ出した音声を聞いて、心底そう思う。
何の感情もこもっていない電子音声がクロの神経を逆なでする。
この画面の向こうでタコハゲ親父が笑ってるかと思うとはらわたが煮えくり返りそうだ。
例え1000発、いや1万発殴ってもこの怒りは収まりそうにない。
怒りを頭に煮えたぎらせるクロとは正反対に武美は落ち着いた様子で話しかける。
233モバイルレディ・U:08/06/26 23:39 ID:7ehO/16I
「落ち着いてクロちゃん、そうやって苛立たせるのがあいつらの目的かもしれないよ?」
「……かもな。だとしたらイラつくのはヤツらの思うツボって訳か……
 ……そろそろ中に入るぜ。武美、オイラの後ろから離れるなよ?」

アポロマグナムを構えつつ、裏口から民家へと侵入する。
だが暫く歩を進めるうち、杞憂ではないかという思いが強くなってくる。
それも仕方のないことかもしれない。
彼女達が足を踏み入れたのは、どう見ても築数年立ったと思われるどこにでもある民家。
廊下を歩けば僅かながら板張りの床が音を立て、ドアを開けば蝶番が僅かに軋んだ音を出す。
クロの聴覚が制限されているとはいえ、自分達以外の音が聞こえないのは自分達以外誰もいないことの証明ではないか


ピィーーー!!


だが、その思考を覆すかのように甲高い音が家中に鳴り響く。
目の前の扉の向こう、リビングらしき場所から鳴り響く電子音にクロは緊張を漲らせる。

(トラップか? だとしたら相手がどうあれ、速攻でけりをつけてやる!)

判断は瞬時。
勢いよく扉を蹴り開け、アポロマグナムの狙いを定める!

「動くなよ、テメェ! 死にたくなかったら手を上げろ!」

クロの怒声が家中に響き渡る。
妙にドスの聞いたその声は、一般人であれば素直に従って両手を挙げたかもしれない。
だが銃口を突きつけられた目標はただ静かに沈黙していた。
感情を表すことなく、両手を挙げることも、それどころか振り返ることもない。
動揺も何もないその挙動は一切の意志を感じさせない。
234モバイルレディ・U:08/06/26 23:42 ID:7ehO/16I
……まぁ、それも当然であろう。
アポロマグナムの銃口の先に鎮座するのは角のない少し丸めのボディ。
排気部分からは白米の炊けた香ばしい匂いが広まり、中央部分についたボタンは“白米”から“保温”へと切り替わったところだ。
どう見ても炊飯器です。ありがとうございました。


――戦車すら破壊する銃口を炊飯器に突きつける黒猫。


シュールの極みともいえる光景にクロも、武美も言葉を失う。
そしてほどなくして沈黙があたり一面を支配する。
そのまま数秒間だったか、クロにしてみれば拷問に等しい沈黙の末、武美が口を開く。

「そのさ……動けって言う方が無理だと思うよ?」

その言葉がトドメとなり、クロは力なく両膝を床につけた。


*   *    *


「クロちゃん、機嫌直してよ。ホラ、さっきのかっこよかったってば!」
「あー、慰めんな。余計惨めになる」

そっぽを向いていじけを続行するクロ。
武美としては銃を構えるクロは掛け値なしにカッコイイと思ったのだが。
まぁ、今の状況では何を言っても空しく聞こえることだろう。
しかしそれにしてもコレだけ大騒ぎしても何もなかったということは、やっぱり……

「……ただ電気を消し忘れた、だけ、とか?」
235モバイルレディ・U:08/06/26 23:44 ID:7ehO/16I
はっきり言って、そうとしか考えられない。
だがだとしたら机の中央で存在感を主張するあの炊飯器をどう説明しよう。
もしかして後から帰ってきてもう一度食べるつもりだったのだろうか?
(……ちなみにあ〜るは光画部の皆のために予約炊きをしていただけだったりするのだが。)

「……ったく、驚かせやがって……つーか、誰もいねえんだったらココにはもう用はねーな」

そもそもココに来たのは間抜けな参加者を保護するためだ。
無人であればこれ以上ここにいる必要はない。
そう考え、踵を返し出て行こうとするクロ。
だが武美は机の上に置かれた炊飯器をじっと見つめていた。

「ん、どうした。腹でも減ったのか?」
「うん、ちょっと……じゃなくて!」

武美はしゃがみ、クロに視線を合わせる。

「ねぇ、クロちゃんはご飯食べれる?」
「あん? それがどうかしたか?」
「いいから答えてってば! もう一度聞くけど、クロちゃんはモノを食べれる?」

首を縦に振る。
クロは動力源としてオイルを補給するが、普通の食物も摂取が可能である。
236モバイルレディ・U:08/06/26 23:46 ID:7ehO/16I
「ふーん、そうなんだ。アタシも食べることが出来るし
 ここでご飯を炊いた跡があるってことは、ここにいたのはやつもアタシたちと同じタイプってことだよね?
 でも、最初に出てきたあの“銀色の化物”は普通の食事を取るとは思えないし……
 ……っていうか、そもそも言ってたもんね。“エネルギーパック”か“有機的な食料”が入ってる、って。
 それにこの場所にはクロちゃんみたいなネコ型のもいればアタシみたいな人間型もいる。
 ……男もいたし、さっき襲ってきたのは女の人だった。
 それに能力だってアタシみたいな非戦闘型からキミみたいなバリバリの戦闘型まで千差万別だし。
 これだけ多種多彩なのを連れて来たってことは、何か意味があるのかな?」
「知らねーよ。てきとーに連れてきたのかも知れねーぜ?」
「それはそれで一つの情報だよ。
 “体に機械類があれば参加者自体は誰でも良かったのか?”
 “逆に考えてランダムにつれてこざるを得なかったのか?”
 ……っていうね」

自慢げに眉を上げる武美。

「うん、参加者から考えるってのは悪くないかも。
 そういえばさっきの通信では“プログラム”って言ってたし、これは何かの実験なのかも……」

大神が多くの実験を行ってきたかのように、これもまたそういう実験なのかもしれない。
だがだとしたらその目的がまったく見えない。
壊し合いをさせるだけならば、いかだなど支給する必要はないのだから。
ならば何故……

そのまま考え込んでしまう武美。だがその様子を見て、クロは安心する。

(へっ、もう大丈夫そうだな)

先程の触れただけで壊れてしまいそうな女はそこにはない。
そこにいるのは知恵を絞り足掻く、強い女の姿だ。
それに少ない情報でそこまで考えるとは……自分が考えるよりもよっぽど頭の巡りはいいのかもしれない。
237Classical名無しさん:08/06/26 23:47 ID:zwZCaZVA
238Classical名無しさん:08/06/26 23:47 ID:zwZCaZVA
239モバイルレディ・U:08/06/26 23:47 ID:7ehO/16I
そしてそれは紛れもない事実である。
武川広美というサイボーグは大企業・大神グループを相手に逃げ回ることに成功していたのだから。
大神グループは灰原の所属するCCRという脱走したサイボーグを破壊するがあるにもかかわらず、だ。
催眠能力を持った仲間がいたとはいえ、それだけで監視の目から逃れられる理由にはなりはしない。
今まで常に演じ、欺き、それでもボロを出すことはなかった。
それは彼女の知能が高く、それでいて強(したた)かである証拠に他ならない。

「……まぁ、今の状態じゃ分からないことばっかりだよね。
 でもこうやって考えるのは無駄にはならないはずだよ」

武美はそう話を締めくくり、思考の海から脱出すると台所の戸棚を空けてみる。
米びつ以外に塩や醤油といった調味料はそろっているが、冷蔵庫には何もないようだ。

「ま、とにかく情報が欲しいな。そのためには早く他の人と接触しないと……」
「……だったら面白いモンがあるぜ?」

別の部屋の扉を開けたクロがニヤリと笑う。
その視線の先、棚の上に鎮座するのは両手で抱えられるほどの黒い機械。
……いわゆる一つの黒電話、というヤツである。

「あ、お前、確か有線があればハッキング出来るとか言ってなかったか?」
「ん〜……難しい、かも。多分規格違うし……」

その視線の先は黒電話と壁を繋ぐコード。
壁との接続部分はLANケーブルどころか黒電話にあわせたかのようなレトロな接続端子であった。
一応電話線は繋がっているようだが、一目見ただけでネット環境など望めそうもないことが理解できた。

「そっか……ま、だとしても“力”になるのは確かだろ?」
「え?」
「コレを見ろよ、コ・レ」
240モバイルレディ・U:08/06/26 23:48 ID:7ehO/16I
ニヤリと笑ったクロが手に取ったのは黒電話の横に置かれたメモ。
そこに残されていたのは、幾つかの施設の名と電話番号。

コレが通じれば身の安全を確保したまま連絡を取ることが出来る。
真偽はともかくとして、情報を手に入れることが出来るのだ。
そう、情報という名の“力”を。


*     *      *


コードネーム・モバイルレディ。
通信能力に特化した大神製の実験用サイボーグ。
だがその通信能力は妨害され、今の彼女は非力なガイノイドに過ぎない。
この会場にいるうちでは間違いなく弱者のカテゴリ――破壊される側に分類されるであろう。

だが“武川広美”は歯向かう決意をする。
何故ならば、“武川広美”は人の醜さも知ると同時に優しさも知っているから。
何故ならば、“武川広美”はもう一度会いたい人がいるから。
何故ならば、“武川広美”はその人に胸を張って再会すると決めたから。
だから彼女は抗う。目の前に広がる破壊の運命に。
“モバイルレディ”だけが彼女の全てではない、それを証明するかのように。
241モバイルレディ・U:08/06/26 23:50 ID:7ehO/16I
【E−7 民家/一日目/朝】

【クロ@サイボーグクロちゃん】
[状態]:装甲各所に軽い凹み
[装備]:アポロマグナム@仮面ライダーSPIRITS、
    ウィルナイフ@勇者王ガオガイガー(なんでも斬れる剣があった場所に収納)
[道具]:支給品一式、風船いかだ
[思考・状況]
基本思考:ハゲ(シグマ)をぶちのめす! その後剛を殴る。
1:とりあえず電話を使って他参加者と接触を図る。
2:とりあえず、ハゲ(シグマ)の居場所を探る。そして暴れる。
3:ミーと合流して、爆弾を何とかする。
4:とりあえず、今は武美を深く追求する気はない。
5:あの女(ギンガ)には容赦しねー
※内臓ミサイルは装備されています。尻尾ミサイルは使用済み。
※ガトリングやなんでも斬れる剣が没収されていることに気づきました。
※参加時期は異世界編(五巻)終了後です
※クロが確認したF−7の小屋の照明は、Rが侵入した際に点けていったものです。

【広川武美@パワポケシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム1〜2(クロ好みの武器はないが武器は最低一つある)
[思考・状況]
基本思考:絶対に生き残り、ここから脱出する。
1:とりあえず電話を使って他参加者と接触を図る
2:F−7の湖内の孤島にある小屋へ向かって、内部を確認。その後、市街地へ向かう。
3:シグマの居場所を探る。
4:元の世界のあの人のところに戻って、残り少ない人生を謳歌する。

※【F-8】に王ドラの亡骸が埋葬されました。墓石がわりの石には“ネコ型サイボーグの墓”と刻まれています。
242Classical名無しさん:08/06/26 23:50 ID:HPzUpAlw
     
243Classical名無しさん:08/06/26 23:50 ID:7ehO/16I
代理投下終了です
244Classical名無しさん:08/06/27 00:02 ID:M72QoX7c
代理投下、投下両名とも乙です。
武美の決意、どこまで行くか楽しみです。
クロちゃんかっこ悪いところ見せちゃったなw
炊飯器w
GJ!
245Classical名無しさん:08/06/27 00:04 ID:rqr.3I4A
toukaotu.
この2体が対主催の要になるか、たのしみたのしみです。
246Classical名無しさん:08/06/27 00:29 ID:vqS.687M
投下乙!
クロと武美、いいコンビだなあ
戦闘と考察の分担だけじゃなく、シリアスもギャグもやってのける!そこにシビれる(ry
電話の登場と「ネコ型サイボーグの墓」の不安を煽る感じが個人的にGJでした
247 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/27 12:21 ID:M72QoX7c
ハカイダー、風見志郎、メガトロン、獅子王凱、延長を申請します。
248 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:17 ID:Dh6WDV2A
お待たせいたしました。
ただいまより、投下します。
249Classical名無しさん:08/06/28 01:18 ID:hiqROejs
支援でございますですわ
250破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:18 ID:Dh6WDV2A

 明るい陽光が砕けたガラスに反射して、きらきらと照り映えていた。熱風に埃が舞って、車が走るために作られた道路に降り積もる。
 ひび割れたコンクリートが、戦闘の激しさを物語っていた。
 突如、雷鳴に似た轟音が響く。衝撃によって瓦礫や石が砕かれ、舞う埃の量を僅かに増やした。
 黒い風のごとく破壊の戦士が舞い、紫のロボットへと回し蹴りを放つ。

「ぬぅぅおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!!」
「おわーっと、とと……」

 黒い装甲に全身を包み、稲妻の走る仮面。透明のフードに包まれた唯一の生体部品の脳の下についている二つの赤い複眼が鋭く光る。
 全身に刻まれた傷が存在しないかのごとく、鋭い動きのままハカイダーはメガトロンへと怒りの拳を振り下ろしていた。
(こいつは……俺に勝った凱を卑怯な手で殺した!)
 ハカイダーが最も尊敬する者。それは『正義』もしくは『信念』を持つ、強者だ。
 キカイダーは自分が彼を破壊するために生まれてきたことを感謝するほど、『正義』と『力』をもった存在だった。
 正々堂々と戦い、前に進む姿に憧れ、そして打ち倒したいと純粋に思った。
 キカイダーとの戦いを想えば、いまだに心が躍る。
 そして、ここにてハカイダーは『正義』と『力』を持った者が、キカイダーだけでなかったことを知る。
 仮面ライダーZX、ゼロは一歩間違えていれば自分が負けてもおかしくないほど、強い。
 それぞれ、『正義』を持って『悪』のハカイダーと全力で戦ってくれた。傷を、強さをハカイダーに刻んでくれた。
 ハカイダーが『悪』として生まれたことを感謝するほど、キカイダーとの戦い並みの充足感をくれた。
 そして、凱。彼は『正義』を持って、全力の『悪』である自分を打ち倒した。
 白骨ムササビによってもたらされた、くすぶる胸の不快感を完全に抹消して見せたのだ。
 己の命を、初めてキカイダー以外にくれてやってもいいと考えた。キカイダー以外に、譲る気のなかった己の命をだ。
 それほど、凱の『正義』は素晴らしい。決して、キカイダーに劣るものではない。
(なのに、こいつが……こいつがぁっ!!)
251破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:19 ID:Dh6WDV2A
 ハカイダーが怒りに任せて、足を振り下ろした。間一髪で避けたメガトロンの眼前で、地面が円形にひび割れる。
 あまりの威力にあんぐりと口をあけている間抜け面が、ハカイダーの怒りに火を注ぐ。
「逃げ回るだけかッ! まともに戦え!! 卑怯者め!!!」
「誰が好き好んで痛い思いするか。この、この!」
 飛び通うレーザーがハカイダーの地面を抉る。もっとも、その程度の熱戦で怯むハカイダーではない。
 まっすぐハカイダーは突き進み、レーザーは紙一重で躱す。あっさりとメガトロンとの距離はゼロとなった。
「ちょっと、非常識ー!!」
「むぅん!!」
 ハカイダーの拳が、大気を切り裂いて甲高い声で叫ぶメガトロンへと迫っる。
 空気を震わす衝撃が、周囲に轟いた。


 メガトロンは背中に存在していた壁が粉砕される様子を、呆然としながら目撃した。
 辛うじてハカイダーの拳を避け、勢いによって止まることのないハカイダーの背中をレーザーで撃とうとしたのだが、粉砕される壁を目撃して、声をなくしていたのだ。
(あの手に爆薬かなんか仕込んでいるのか! 殴って壁が粉塵になるまで粉々って、どんな化け物ぉ!?
ええい、うろたえない。破壊大帝はうろたえない。頭を使え、あいつを嵌めるんだ)
「おっと、二人とも。俺を忘れてもらっちゃ、困るな」
「あいたぁー?!」
 メガトロンの脇腹に、V3の鋭い蹴りが抉りこまれる。
 メガトロンは忌々しげに赤い仮面に緑の複眼と強化スーツを持つ、白いマフラーをなびかせた改造人間を睨みつけた。
「仮面ライダー……」
「凱の無念を感じ取っているのはお前だけだと思うなよ」
「フン!」
 ハカイダーは鼻を鳴らして気に食わなさそうにしているが、V3との共闘を拒む意思は見られない。
 さっきまで凱と殺しあっていたのにだ。
252Classical名無しさん:08/06/28 01:19 ID:ChpFVA5I
253破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:19 ID:Dh6WDV2A
(ちょっと待てー! あの特撮野郎と赤い仮面のお前は仲間だろうがぁ!?
なのに、何でハカイダーとかいうのと仲良く手を組んでいるの!
あれか、巨大な敵を前に、敵味方の垣根を越えてってかぁ? って、巨大な敵は…………俺だ!)
 メガトロンの心の声は形にならず、迫りくる二人の殺気に気圧される。
 自分はまるで主人公とそのライバルを敵にした奴みたいだと吐き捨てながら、じりじりとすり足で下がった。
 まずいのだ。これは非常にまずい。
 メガトロンは楽して勝つために戦っている最中のハカイダーと凱の戦いに割って入った。
 漁夫の利、まさに悪の華である。
 しかし、メガトロンの計算は狂ってしまった。
 第一に、V3が現れたこと。凱を殺し、生き残っているのは虫の息のハカイダーのみのはずであった。
 ハカイダーは怪我をしていない状況では当たりたくない男だが、死に掛けなら話は別だ。
 強い奴は弱っているところを狙うに限る。しかし、もくろみは支給品の薬品で崩れた。
 万全とまではいかないが、戦えるほどに回復したのだ。インチキである。
 だいたい、なんで凱との戦闘で使わなかったのか、メガトロンは不思議でしょうがない。
 負けたい奴なんていない。ましてや、死にたがりなんていやしないだろう。
 なのに、ハカイダーは凱との戦いに使わず、今使っている。
 メガトロンには理解不能だ。
(まあ、だからといってこの状況が改善されるわけじゃないがな)
 そう、メガトロンはピンチなのだ。化け物じみたハカイダー、そしてさっきからパンチだのキックだのが痛いV3。
 二対一。もといたところではなるべく避けていた状況だ。
「えーい! この俺様もデストロンの破壊大帝、メガトロン様だ! 相手にしてやる!!」
「デストロンだと……!」
 デストロンと聞いた瞬間、殺気を膨れ上がらせたV3が睨んでくる。あまりの怒りに、思わずメガトロンは声のトーンが下がった。
「……お手柔らかに…………」
 二人は視線に殺気を満たしながら、メガトロンへと迫ってくる。
254破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:20 ID:Dh6WDV2A
 メガトロンの絶体絶命。その余命や、いかに。


 一陣の赤い風となってメガトロンへとV3は駆けた。
 メガトロンの左腕が恐竜の尾を模した盾を振るってV3を破壊するために迫る。
 改造された動体視力でV3は上体を逸らして避けた。電柱が中から砕けて、二つに折れる。
 パワーはあるようだ。レーザーを発する右腕といい、ハカイダーとの戦いで見せた身のこなしを見るに、強敵ではある。
 凱の疲労したところを狙った、という狡猾さにも気をつけなければならない。ハカイダーは見るところ、茂のように直情型の性格をしている。
 やれやれ、とため息を吐きながら、V3はメガトロンの懐へと到達した。
「ちょ、やば……」
「遅い!」
 V3の鋭い拳がメガトロンの胸板を打つ。五メートルほど吹飛んだメガトロンに、上空からハカイダーが踵落としを決めた。
 鉄槌のごとく肩に振り下ろされた蹴りの衝撃に、メガトロンが全身を地面へと叩きつけられる。
 衝撃の反動で後方に跳ぶハカイダーがV3の隣へと並んだ。
 それにしても、まるでV3の、いや仮面ライダーの戦い方を知るようなハカイダーが気になる。自分を一目で仮面ライダーだと知ったことも。
 どこかであったことがあったか思考するが、ハカイダーのような男には見覚えがない。
(まあ、構わない)
 すべてを確認するのは目の前の、デストロンの所属を仄めかした男、メガトロンを倒してからだ。
 なぜ恐竜型のメガトロンがデストロンに所属していたことを言ったのかは謎だ。
 それでも、仲間である凱とその知り合いであるハカイダーを襲った。それも卑怯な手で。
 許せるものではない。V3の拳に力が入り、震える。
「ええい! このまま寝ていると思うなよ」
 メガトロンが跳ね起き、右腕を向けてレーザーとミサイルが放たれる。
 やけくその様な一撃をV3はハカイダーと共に跳躍して避けた。
 V3はまるで傍に後輩がいるような安心感を持って、メガトロンへとV3を決めるタイミングを伺う。
 必殺の一撃、凱の無念は必ず晴らすと決心しながら。


 迫りくるV3キックを受けて、コミカルに壁に叩きつけられたメガトロン。
255Classical名無しさん:08/06/28 01:20 ID:ofJ1RuBg
支援
256Classical名無しさん:08/06/28 01:21 ID:hiqROejs
 
257Classical名無しさん:08/06/28 01:22 ID:ChpFVA5I

258破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:22 ID:Dh6WDV2A
 メガトロンはぶつけた鼻頭が赤くなり、左手でさすりながら右手で二人を牽制する。
 あっさり避けられるが、計算内。
(俺様がただコミカルにやられて、ギャグ系悪党をやっていると思うなよ!)
 そう、全身ボコボコに殴られ、蹴られ、生傷を増やしながらも、メガトロンは一定の場所へと向かっている。
 痛む鼻頭も計画の一つだ。格好悪くやられて、メガトロンが頭が悪いタイプだと相手が勘違いしているのも計算内である。
 おまけに、ハカイダーは頭に血が昇って扱いやすい。
 戦闘でのミスは期待できないが、こちらから仕掛ければ嵌めやすい精神状態だ。
 と、なれば警戒するのはV3だろう。特撮男、凱をやられて確かに怒ってはいる。
 同時に、身の運びからこちらの動きを警戒しているのが見て取れた。
 怒りに任せたまま拳を振るって、周囲を破壊しながら迫るハカイダーを補佐するように、間隙を突いてくる。
 おかげで、こちらから仕掛けにくくてたまらない。
 メガトロンとて、一部隊を率いた司令官だ。戦闘経験は豊富。
 相手のとる行動の意図を読み取るなど、初歩の初歩。つまり、冷静なV3すらも騙せないといけない。
 骨が折れる。
 しかし、メガトロンは策謀、策略の天才だ。
 この程度の危機を乗り越えず、デストロンのリーダーと言えない。
 メガトロンの目が妖しく光る。突っつきどころは、ハカイダーだ。


「ぬぅおぉぉぉぉぉぉぉおっぉ!!」
 ハカイダーの身体がコマのように回転して、遠心力を得た蹴りを打ち放つ。
 メガトロンが必死な様子で逃げて、また空振りをし、地面にハカイダーの足を中心にクレーターがまたも生まれる。
 その様子に、ハカイダーの苛立ちが加速する。
「キサマ、逃げ回るしか能がないのか!?」
「逃げるが勝ちだ。死ね、死ね!」
259Classical名無しさん:08/06/28 01:23 ID:N6hSrYT2
 
260破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:23 ID:Dh6WDV2A
 後ろを向けて走り出そうとするメガトロンへ向けて、ハカイダーは地面を蹴る。
 背中を向ける男は、ハカイダーがもっとも嫌う物の一つだ。許せん、と思考しながら加速するハカイダーに、ミサイルが迫る。
 メガトロンが背中越しにハカイダーがミサイルを放ったのだ。
 勢いづいたハカイダーの身体は止まらない。ハカイダーにミサイルを避ける術はない。
「V3電熱チョップ!」
 割り込んだ赤い風が、ミサイルの弾頭を切り裂いた。
 命を助けられたことに感謝を覚えるよりも先に、ハカイダーはV3がメガトロンを狙わなかったことに怒りを覚える。
「大丈夫か? 気をつけろ」
「ふざけるな! 俺を助ける暇があるなら、凱の仇を討つほうを優先しろ!!」
 凱を殺した男は許せない。仲間であるV3なら、キカイダーと同じく仲間を大切にするV3なら、仇を討つことを優先するべきだ。
 仇を討とうとしないV3が、ハカイダーはとても気に食わなかった。
「……おい」
「なんだ!?」
 ハカイダーの頬に、V3の拳が叩き込まれた。ZXのパンチに迫る威力が、不意打ちで打ち込まれてハカイダーは尻餅をつく。
 ますます怒りの炎が燃え上がるハカイダーが怒鳴りつけようとすぐに立ち上がるが、V3の拳を見つめて声を失う。
 V3の拳から、血が流れ出ていた。
 ハカイダーは仮面ライダーの頑強さを知っている。その強化された自らの身体を傷つけるほど、V3は拳を握り締めている。
 凱を失った無念を抱えながらも、V3は怒りを抑えて戦っていたのだ。
 ハカイダーは天を仰いで、大きな溜め息を一つ吐いた。続けて、V3の背中を見つめる。
「すまない。俺の頭に血が昇りすぎた。次は気をつける」
「…………頼む」
 V3の搾り出されるような声を受けて、ハカイダーは頷く。
「お、どうしたのかな〜? もしかして、怖気ついちゃった?」
「フッ」
 メガトロンの挑発をハカイダーは鼻で笑って流す。
261Classical名無しさん:08/06/28 01:23 ID:N6hSrYT2
   
262破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:23 ID:Dh6WDV2A
 挑発に乗らないハカイダーにメガトロンが目を白黒させる。分かりやすいほど、戸惑っている。
「いくぞ、ハカイダー」
「ああ。しくじるなよ、仮面ライダーV3!」
 再び、二人は轡を並べてメガトロンへと向かう。
 今度は、怒りに翻弄されるような弱さは持っていなかった。


 メガトロンから放たれるミサイルやレーザーをハカイダーは姿勢を低くして潜り抜ける。
 メガトロンとの距離が零になった瞬間、ハカイダーは敵の脇腹へと手刀を打ち込む。
 ハカイダーは逃がさないと後退するメガトロンを追撃して、左腕を振り下ろすメガトロンの叩きを蹴りで威力を相殺した。
 ハカイダーの体勢が崩れるが、問題ない。すぐ後ろに、V3が控えているのだから。
「V3キィィィィィィック!!」
 音速を超えたV3の飛び蹴りが、メガトロンの胸板を強打する。鉄でできた壁にメガトロンが衝突した。
 歪む鉄板を背に、メガトロンが震える身体で右腕を向ける。
「はらほらひれ……って、ゆっている場合じゃない。食らえ、食らえ!」
 狙いを決めずに撃っているのだろう。ハカイダーが避けるのは容易だった。
 V3とハカイダーは、同時にメガトロンとの距離を詰める。前蹴りが繰り出されるが、もはや二人は見切っていた。
 V3とハカイダーの狙いはメガトロンの顎。互いに意図を理解して、二人は拳を構える。

「V3パァァァァァンチ!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 ハカイダーの背に、V3が背中を合わせる。ハカイダーの左拳と、V3の右拳が同時にメガトロンの顎に到達した。
「ぐげぇ!」
 潰されたカエルのような悲鳴をあげて、メガトロンが宙に舞う。
 ライダーダブルパンチに匹敵する威力のパンチを打ち込まれて、メガトロンは火花を散らしながら地面へ墜落をした。
263Classical名無しさん:08/06/28 01:24 ID:hiqROejs
  
264Classical名無しさん:08/06/28 01:24 ID:N6hSrYT2
  
265破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:24 ID:Dh6WDV2A
 まだ意識を失っていないのはさすがだろう。冷静に、ハカイダーとV3はメガトロンへと無言の圧力をかける。
 凱を殺した下手人に、生き残る道はあるのか? そんなもの、すべて破壊する。
 ハカイダーの冷徹な破壊の意思が、赤い瞳の中から覗かせていた。


 メガトロンの全身から火花が散って、分解寸前のダメージを受けて地に伏せていた。
 できればこのまま寝ていたいが、それは死を意味する。
 戻ってサイバトロン連中を片づけねばならない。そして、乗り切るヒントは得ている。
 メガトロンは立ち上がって、プレッシャーをかけてくる二人にニヤリと笑みを浮かべた。
「さーて、お二人さん。注目」
 二人が一応、警戒の視線を向けた。メガトロンはオーバーアクション気味に右腕をある方向へと突き出す。
 その方向を知り、ハカイダーの殺気が増した。
「ふふ、このままじゃ、あいつは死ぬ。おっと、お前らは死んだと思い込んでいるんだったな。
なら親切な俺様が教えてやる。よく見ろ、胸が上下しているだろ? 呼吸しているってことは……」
 メガトロンの真意を知り、ハカイダーとV3が駆けた。しかし、間に合うはかどうかはギリギリだ。
 そうなるように、メガトロンは誘導したのだ。凱を庇ったものを殺すために。ミサイルとレーザーの乱れ撃ち。
 凱へと悪の攻撃が迫った。メガトロンはこの一撃にまぎれて逃げる計画だ。
 まさに冷徹な悪の脳髄が生み出した、完璧な作戦。
 メガトロンは高笑いを続けた。


(凱が……まだ生きている!)
 ハカイダーの回路(こころ)が喜びに震える。
 あれほど自分と激闘を交わした正義の勇者、凱が生きていたのだ。
 メガトロンに嵌められた悔しさすら忘れるほど、ハカイダーは高揚している。
 高まるテンションに合わせるようにハカイダーの加速も増していった。
266破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:25 ID:Dh6WDV2A
(今度は、死なさん!!)
 かつて、キカイダーが死んだと聞いたときと同じ激情をハカイダーは持った。
 凱がそれほどまでに、正義と力を持っているからということだ。
 たとえ、キカイダー以外がハカイダーの命を奪っても満足だといえるほどに。
 ゆえに、精一杯ハカイダーは間に合わせると駆けつけた。
 失敗は許されない。
 V3の速さすら超えて、ハカイダーはミサイルが迫る凱の十メートル手前に立った。
「よ…………せ……。ハカイ……ダー……。お前は…………生き……ろ」
 凱の声が聞こえる。メガトロンが言ったことは真実だった。
 ハカイダーの回路(こころ)が告げる。この場は、一歩も動かないと。
 ミサイルとレーザーの嵐がハカイダーの黒いボディに撃ち込まれる。
 盛大な爆発が道路のコンクリートとハカイダーの装甲を砕いて、火柱を上げた。


「ハカイダー…………」
「残念がっている暇あるのかな? まだ凱とか言うサイボーグは生きているぜ」
 メガトロンの言いたいことを理解して、V3はさらに怒りが増していくの覚える。
 ハカイダーと同じことをしなければ、凱を殺すというのだろう。
 この距離なら、メガトロンを殺すよりも早くミサイルやレーザーが半死の凱に届いてしまう。
 どの道、V3が死ねば残った凱をも殺すのだろう。しかし、判断の余地はない。
 なんとかミサイルとレーザーに耐え抜き、メガトロンを破壊せねば。

「させ……るかぁぁぁぁぁぁ!!!」

 突如、雷鳴のようにハカイダーの慟哭が響く。V3が視線を動かすと、砕けた瓦礫の中央で、ハカイダーが傷だらけの身体を晒していた。
267Classical名無しさん:08/06/28 01:26 ID:N6hSrYT2
      
268Classical名無しさん:08/06/28 01:27 ID:enVSF/Ts
 
269Classical名無しさん:08/06/28 01:27 ID:ChpFVA5I
270破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:27 ID:Dh6WDV2A
 両腕に抱えるのは、家一軒分くらいの巨大な瓦礫の塊。もちろん、狙いは。
「うそーん。ちょっと、マジで? やめて〜!!」
 メガトロンがみっともなく静止を訴えるが、無駄だ。
 ハカイダーの瞳に、怒りがこもっている。そして、火事場の馬鹿力であろう怪力を終えてしまえば、ハカイダーは力尽きるだろう。
 最後のチャンスを逃すような男ではない。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 ハカイダーの叫び声と共に、瓦礫の塊が投げ飛ばされる。
 巨大な影の中に、メガトロンが入った。末期の言葉さえも、巨大な瓦礫が飲み込んで、十階建てはあろうビルごと粉砕する。
 同時に、ハカイダーの身体も力尽きて倒れた。
 サブローの姿に変わったハカイダーの様子を確認して、生きていることに安堵しながらV3は凱と共に抱えて、修理工場へと駆けていった。


【メガトロン@ビーストウォーズ 破壊確認】
【残り 36人】



「他の部屋はまだあったな。俺のいた部屋と違って、カプセルも残っているか。よし」
 風見は呟いて、まだ息のあるサブローと凱を、それぞれカプセルへと入れて、起動させた。
 壁と床が鉄……もしくはそれに類する素材でできた周囲を見回し、彼ら二人の回復を待つ。
 凱の戦闘力を風見は知らないが、ハカイダーの戦闘力は知ることができた。
 傷を負った身体で、あそこまで戦える男。仮面ライダーに匹敵する戦闘力といい、精神力といい、つくづく頼りになる仲間だと思った。
 凱はいい仲間を持ったと思う。身体を張って庇うほど、強い信念を持つ者はそうそういない。
271Classical名無しさん:08/06/28 01:28 ID:ChpFVA5I


272破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:28 ID:Dh6WDV2A
 同時に、風見もこの場に参加している仲間に想いを馳せる。

 本郷猛。一文字先輩と共に、風見を改造した尊敬できる仮面ライダー1号。
 心強いことに、この殺し合いにもいてくれる。知り合いの参加など、本来は悲観するのだろうが、彼なら意味は違う。
 自分を含め、仮面ライダーはここと変わらない修羅場に放り込まれていた。特に、本郷は伝説とも言われるほど悪と戦い抜いていたのだ。
 きっと本郷なら自分たちに仕込まれた爆弾を除去する手段を見つけてくれると、風見は信じている。

 神敬介。風見の後輩であり、マーキュリー回路を取り付けた海を自在に駆ける戦士。
 十人ライダーの中でも、海のように雄大な心の持ち主で、折れぬ強さも持っている。
 父を、恋人を失いながらもGODと戦い続けた敬介は、両親と妹を失った風見にとってもっとも親近感を持てる後輩だった。

 城茂。短気な後輩だ。村雨と並んで、風見の心配の種でもある。
 戦士としては申し分ない力と信念を持つ男だが、突っ走る癖がある。その分衝突も勘違いも多い男なのだ。
 他の参加者とトラブルを起こしていなければいいのだが、と思う。

 そして、村雨良。城と並んで、風見が心配する後輩だ。
 憎しみも恐怖も乗り越えた彼の姿を見届け、火柱キックを打ち込んだ。
 それでも心配してしまうのは、かつての自分を重ねているからだろうか。本郷たちに、迷惑をかけていたころのように。


 時刻を見ると、PDAに記載されていたルールの放送時刻は過ぎているらしい。
 禁止エリアや死者はどうなったのか、今の風見には知る術はない。凱かハカイダー、先に目覚めたものから尋ねればいいかと考える。
 他の仮面ライダーたちはどうしたのだろうか?
 やはり、他の無力な人たちを助けているのだろうか?
 そして、チンクは出かけているようだが、いつ戻るのか?
 風見の疑問は絶えない。もっとも今気にしてもしょうがないのだが。
273Classical名無しさん:08/06/28 01:29 ID:ChpFVA5I
274破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:29 ID:Dh6WDV2A
 色々な操作パネルや、ディスプレイの並ぶ室内の壁に背を預けて、風見は仲間たちの回復を待つ。
 今襲われて、自分を守ってくれた二人を危険に晒すのは申し訳がない。
 腕を組んだところで、ハカイダーのカプセルが異常を起こす。目を見開く風見の前で、カプセルの再生液が沸騰していた。
 何がおきたのか、見当もつかない。風見が近寄ると同時に、カプセルが割れて液体が流れ出る。
 出てきたサブローが、肩を大きく上下させて、風見を睨んだ。
 数十分しか経っていないが、存分に回復を果たしたらしい。傷は見受けられない。
 風見はハカイダーの次の行動を待つ。その瞳が、風見に告げることがあると示していたからだ。


 再生カプセルの中で、うっすらとサブローは目を覚ます。
 よく分からない光る液体に包まれた自分の身体の傷が癒えていく。
 心地よい感覚の中、視線を動かして凱を探す。こんな便利なものは凱が真っ先に使うべきだ。そうサブローは考えたからだ。
 周囲を見渡すと、金色のアーマーにタテガミのような長髪を流す凱が隣でサブローと同じように回復液に浸っていた。
 サブローはホッとして、そのまま心地よい感覚に委ねようと瞳を閉じる。
 いや、閉じかけた。
 サブローの視界に、捜し求めていた仮面ライダーの一人、風見士郎が入るまでは。
 その瞬間、仮面ライダーZXとの激闘がサブローの回路(こころ)を焦がし、悠長に回復を待つ気を失う。
 自分と風見を遮る透明な壁を睨みつけ、サブローは手を当てた。
(いる! 俺が求めた、俺と戦える仮面ライダーの一人が!?)
 もはや、サブローの心に宿る闘争心の炎は止まらない。回復液が泡立ち、サブローの闘争心に応えるかのように回復速度を、サブローの力を増していく。
 ピシッ、と透明なカプセルにひびが入った。
 サブローは力の限りを尽くして、ひびを拡大させていく。その瞳に、仮面ライダーが、ゼロが、サイボーグ凱が、キカイダーが映っていた。
 パリンとカプセルが割れて、液体が流れ出ていく。身体の傷はほぼ全快のようだ。エアークラフトもつながっている。
 見れば、風見もほぼ無傷。つまり、対等の勝負ができる。
 仮面ライダーと!
 ハカイダーを追い詰めた仮面ライダーZXの先輩と!
275Classical名無しさん:08/06/28 01:30 ID:N6hSrYT2
                
276Classical名無しさん:08/06/28 01:30 ID:enVSF/Ts
  
277破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:30 ID:Dh6WDV2A
 キカイダーに迫る、正義の味方、仮面ライダーV3と!!
 サブローの溢れる闘争心を持って、鋭い視線で風見を射抜く。
 風見も、まっすぐサブローの視線を受け止めている。サブローは一歩踏み出して、

「仮面ライダー。村雨良からの遺言だ」

 と、だけ告げた。瞬間、風見の表情が変わる。
 サブローは、村雨良の最期の言葉を、一言一句違えず告げた。


「…………そうか」
 サブローは風見があっさり呟くが、溢れる激情を隠していることを見抜いた。
 風見志郎はクールな外見からは想像もつかないほど、熱い男であることは先ほど確認している。
 村雨を殺したと聞いて、黙っているような男ではない。風見は自分と戦わざるを得ない。
 だからこそ、サブローは風見に告げる。

「風見志郎。俺と戦え。仮面ライダーZX・村雨良を殺した悪の改造人間・ハカイダーとな!」

 決闘の宣言。
 これを受けない男ではないはずだ。悪を倒す、正義の味方仮面ライダーなら。
 高まるサブローの期待を受ける風見は、長々とため息を吐いて、再生カプセルの凱へと視線を向けた。
「村雨はバダンを潰してくれ、そういっただけか?」
「俺にキサマら仮面ライダーの特徴を教えてくれた以外は、そうだ」
「なるほど。村雨良の遺志、確かに理解した。だからこそ、決闘の申し出は……」
 サブローの感情に合わせて、顔の人工皮膚に笑顔が宿る。風見は村雨良の無念を晴らす気になったのだ。
278Classical名無しさん:08/06/28 01:30 ID:ChpFVA5I
279Classical名無しさん:08/06/28 01:30 ID:hiqROejs
 
280破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:30 ID:Dh6WDV2A
 村雨と、仮面ライダーとの戦いをもう一度迎えれる。ZXの正義を、強さを知るサブローの回路(こころ)が踊る。
 風見は視線を再びサブローへと向けた。サブローは、風見の答えを待つ。戦うという、答えを。

「断る」

 しかし、返ってきた言葉は意外なものだった。



 鉄の壁に囲まれた風見の視線に、日差しが差し込む窓が入る。差し込んだ光は普通なら闇を切り裂く希望に例えることもできただろう。
 もっとも、今の風見には無念の表情が浮かんでいた。
 村雨良、彼は死んでしまったのだ。殺し合いに乗った、ハカイダーを『止める』ために。『殺す』ためではなく。
 先ほどのサブローとのやり取りを思い出しながらも、風見の表情は晴れることがなかった。


 時を十五分ほど遡る。
 風見の答えを聞いて、サブローの顔に明らかな戸惑いの色が浮かんでいた。
 それもそうだろう。彼の計算では、村雨の無念を晴らすために自分が決闘を受けるはずだったのだから。
 実際、風見も村雨の遺言を聞く前なら……いや、凱を庇うハカイダーを見ることがなければ、決闘を受けてサブローを全力で倒しただろう。
 風見は村雨が、サブローに自分の遺言を残した理由を考える。
 村雨は確信があったのだ。サブローが自分の遺言を伝えるのだと。それほど、殺した相手を信頼できる。
 つまり、村雨は願ったのだ。かつて復讐者であった自分を変えたように、殺し合いに乗ったサブローを変えて欲しいと。
「キサマ! 俺が、仲間を殺した相手が憎くないのか!?」
「…………憎いに決まっている」
 そうなのだ。風見とて、村雨の成長を見届けて、彼にすべてを託したことがある。
281Classical名無しさん:08/06/28 01:32 ID:ChpFVA5I
282破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:32 ID:Dh6WDV2A
 認めた後輩を殺したのだ。たとえ村雨が許したのであっても、風見の感情が怒りをもってしまうのは止められない。
 しかし、『憎しみ』を持っての戦いは村雨の遺志を否定する。

「あいつを相手にしたのなら、分かるだろう。俺たちは『憎しみ』のためには戦わない。『正義』のために戦う。それだけだ」

 始まりは復讐だった、村雨と風見の結論だ。
 村雨は復讐より、正義を優先して欲しくて、サブローと自分たちが巡り合うようにしたのだろうと、風見は理解をした。
 凱を守ったハカイダーの姿を風見が目撃したように、彼の魂の輝きを、村雨は目撃した。
 きっと、そういうことだ。
 凱も村雨と同じものを受け取ったから、彼に『生きろ』といったのだ。自分の命を省みず。
 自分がボイルドを救いたいと思ったと同時に、村雨や凱がハカイダーを救いたいと思った。
 つくづく、村雨は自分と似ている奴だと思い、風見は僅かに微笑む。
「キサマッ!!」
 サブローが一瞬でハカイダーに変身して拳を繰り出す。
 風見はただただ醒めた目つきでその拳を見ていた。
 ピタリ、と風見の眼前でハカイダーの拳が止まる。数秒そのままの姿勢で固まり、ハカイダーはゆっくりと拳を引く。
 同時に、サブローへと姿を戻す。
「いいだろう。キサマがその気なら、俺にも考えがある」
「どこに行く気だ?」
「教えてやらん。だが、俺は日付が変わるころ、スクラップ工場へと戻る。気が向いたらお前もくるんだな。そして……」
 サブローは間を空けて、PDAを操作する。バイクが転送されて、風見との別れを惜しむようにゆっくりとまたがる。
 振り返ったサブローの瞳には、風見に……いや、仮面ライダーに対する執着が見えた。
「そして、俺と再会するころには、お前は俺と戦わねばならない。俺はそう予言する!」
 サブローは苛立ちのまま吐き捨てて、バイクのエンジンをかける。
 静止しようとする風見を振り切り、そのまま入り口を走り抜けていった。
283Classical名無しさん:08/06/28 01:32 ID:N6hSrYT2
          
284Classical名無しさん:08/06/28 01:32 ID:enVSF/Ts
 
285破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:33 ID:Dh6WDV2A
 追いかけようにも、凱を一人にするわけにはいかない。サブローが向かう方角を覚えながら、凱の回復を待つことにした。


 再生カプセルの中に佇む、凱を見つめて風見は思う。
 大首領の門へと火柱キックを打ち込んだとき、すべてを託した村雨は死んだ。
 どうしようもない悲しみが胸を支配するが、同時に彼の願いを叶えてやりたいと思う。
 ボイルドのこともあるゆえ、その役目は……
「凱。目が覚めたら、君にハカイダーを任せていいか?」
 答えは返らない。だが、再生液に浸っていた凱の装甲が、一瞬だけ緑色に輝いた気がした。



【G−3 修理工場/一日目 午前】
【風見志郎@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:両拳に負傷(小)、頭部と胸部と左肩に弾痕(塞がっている)、右肘に負傷(中)、固い決意、村雨の死に悲しみ
[装備]:無し
[道具]: PDA紛失
[思考・状況]
基本:殺し合いを破壊し、シグマを倒す。
1:凱の回復を待つ。そして、ハカイダーを任せる。
2:チンクと共に本郷・敬介・茂・村雨・スバル・ギンガ・ノーヴェを探し、合流する。
3:殺し合いに乗った危険人物には容赦しない。
4:可能ならば、ボイルドを仮面ライダーにしたい。そのためには、危険は辞さない覚悟。
5:シグマの真の目的を探る。そのためにエックスと呼ばれた男、赤い男(ゼロ)と接触する。
6:弱者の保護。
7:放送の内容を知りたい。
8:北東へ向い金属を集める(優先順位は低い)。
[備考]
※参戦時期は大首領の門に火柱キックを仕掛ける直前です(原作13巻)。また身体とダブルタイフーンは元通り修復されています
※チンクと情報交換をしました
※なんとなくチンクを村雨、そして昔の自分に重ねている節があります
286破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:33 ID:Dh6WDV2A


【獅子王凱@勇者王ガオガイガー】
[状態]:疲労(中)、全身に中度の打撲、アーマーにひび、背中に数多の火傷と裂傷、気絶、回復中
[装備]:グランドリオン@クロノトリガー、電磁ナイフ@仮面ライダーSPIRITS(右腕に収納)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本思考:シグマを打ち倒し、この殺し合いを止める。戦う力を持たぬ者、傷ついている達を保護し、守り抜く。
0:気絶。回復中
1:ハカイダーを更正したいが、それが不可能ならば――――?
2:戦闘が終われば、チンクと合流するべく風見と修理工場に戻る。
3:同じ目的を持った仲間を探す。
[備考]
※Zマスター撃破直後からの参戦です。
※チンクから情報を得ました。
※制限の影響により、グランとリオンは出現する事が出来ません
※凱が見た村雨の写真は原作五巻に出てきたものです
※打撲、火傷、裂傷等により、身体の内部に異変が生じているのかは、後続の書き手さんにおまかせします。




 修理工場を後にして、サブローは苛立ちの視線を前方に向ける。
 決闘を断られたのは意外だった。しかし、風見が、仮面ライダーが臆病でないことは充分に承知している。
 そして、風見の言葉。村雨はどういうわけか、自分を救うように風見に伝えたようだ。
287Classical名無しさん:08/06/28 01:33 ID:enVSF/Ts
   
288破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:34 ID:Dh6WDV2A
 あの遺言がなぜそう受け取るのかは分からない。村雨とつながりの深い風見がそういうなら、真実なのだろう。
(なぜだ! なぜ俺を救おうとしたのだ! 村雨良……仮面ライダーZX!)
 ギリッ、と歯噛みするサブローの瞳に怒りが満ちる。決して、村雨を恨んでの怒りではない。
 村雨に、救われるべき存在と見られた、自分自身の弱さに怒りを示しているのだ。
 救いたい、というなら、自分は村雨にとってどこか危うい存在だと見られたことだ。つまり、弱い部分があると。
 村雨に、全力で立ち向かう正義の戦士にそう思わせた自分の弱さが憎い。
 なら、弱さを断ち切り、風見と戦うには――
「仮面ライダー……他の仮面ライダーを倒せば、風見志郎、キサマは俺と戦わざるを得ない!」
 サブローの意思が鋼鉄のごとく固まる。
 他の仮面ライダーを倒し、風見が自分を悪として許せないように仕向ける。
 もちろん、他の仮面ライダーとも正々堂々戦いを挑む。
 サブローは静かに思考する。もし、仮面ライダーが集まる可能性が高いとすればどこか。
 このエリアに、風見以外の仮面ライダーがいるとは考えにくい。
 いるのなら、今までであった参加者の中に仮面ライダーを知るものがいただろう。
 なら、彼等はどこにいるのか? 簡単だ。
 弱者の、力のないものが集まる場所。
「左下のコロニー……キカイダー。お前がいれば、仮面ライダーと同じく、力のない者を助けたのだろうな……。
凱、また会おう。お前とも、俺は決着を着けたい。今度は横槍などなくな!」
 サブローの目的は決まった。バイクを走らせ、飛行場へと向かう。
 仮面ライダーと出会うため!
 今まで出会った正義の味方たちと戦うため!
 キカイダーと再会し、誇れる戦いを胸に再戦するため!
 破壊せよ、ハカイダー!!

289Classical名無しさん:08/06/28 01:34 ID:ChpFVA5I
290Classical名無しさん:08/06/28 01:34 ID:ChpFVA5I
291Classical名無しさん:08/06/28 01:34 ID:N6hSrYT2
     
292破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:35 ID:Dh6WDV2A
【G−3 路上/一日目 午前】
【ハカイダー@人造人間キカイダー】
[状態]:損傷軽微。エネルギー八割回復。
[装備]:無し
[道具]:ハカイダーのPDA(支給品一式、スズキ・GSX750S3 KATANA@仮面ライダーSPIRITS)、風見志郎のPDA(支給品一式)
[思考・状況]
基本思考:元の世界へ帰ってキカイダーと決着をつける。
1:V3以外の仮面ライダーを探す。
2:村雨良の遺言を伝える。そのため、仮面ライダーに会い、破壊する。
3:空港に向かい、左下の市街コロニーへと向かう。
4:参加者を全て破壊する(ただし、女子供、弱者には興味が薄い)。
5:日付の変わる頃(二日目00:00)にゼロ、V3、凱と決着をつけため、スクラップ工場に再度向かう。
6:シグマを破壊する。
7:キカイダーに迫る、戦士に敬意。
※参戦時期は原作死亡後(42話「変身不能!? ハカイダー大反逆!」後)です。
※血液交換が必要のない身体に改造されています。




「ふふ……やつらは俺が完全に死んだと思っているな……」
 修理工場を、雑居ビルの陰から見つめる紫色のティラノサウルスがほくそ笑んでいた。
 ぼろぼろではあるが、確かにメガトロンのビーストモードである。
 冷たい風が無人地帯をさらに寂しくさせる風景の中、メガトロンはPDAを手にサブローの向かう方向を確かめ、笑いが漏れる。
293Classical名無しさん:08/06/28 01:35 ID:hiqROejs
 
294Classical名無しさん:08/06/28 01:35 ID:hiqROejs
  
295Classical名無しさん:08/06/28 01:35 ID:enVSF/Ts
     
296破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:36 ID:Dh6WDV2A
「おっと、テロップを直さないと。敵を欺くにはまず視聴者からってな。キュッ♪ キュッ♪ っと」

【メガトロン@ビーストウォーズ 生存確認】
【残り 37人】

「フフフ! この悪の帝王、メガトロンがそう簡単に死ぬと思うなよ!」
 そういって、カメラ目線のままメガトロンはPDAを取り出す。
 画面に映し出されている文字、つまり彼の窮地を救った支給品の名は……
「じゃんじゃじゃーん。ハイパージャマー〜」
 どこかの青いネコ型ロボットの真似をしながら、PDAに映し出されたアイテムを言う。
 瓦礫に押しつぶされたのは、ハイパージャマーによってできたメガトロンの分身。
「これがあった俺様は、あいつらを無理に倒すより、死んだと思わせるほうがいいと考えたわけだ。
奴らの向かう方向が分かれば、会わないようにすることもできるしな。このエリアだとあいつらに会う可能性がある……。
つまり、俺様は南下しようとするか。お前らが俺様の生存に気づいたときは……手遅れ!
サイバトロンの奴らといい、正義の味方は単純だな! フハハハハハハ!!
おっと、ビーストウォーズがスパロボ参戦の時はメガちゃんフル改造+ハイパージャマーでよろしく」
 高笑いを続けながら、意味の分からないことを言うメガトロン。
 上機嫌のまま、彼は移動を始めようとする。
 ふと、目にハイパージャマーの説明文が入った。

『分身は『50%』の確率で起きます』

 瞬間、メガトロンの背筋が凍る。
 運がいいことと、生きていることを噛み締めて、ぎこちない歩みでメガトロンは南下していった。
297破壊戦士物語 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:36 ID:Dh6WDV2A


【F−4 路上/一日目 午前】
【メガトロン@ビーストウォーズ】
[状態]:全身打撲。ダメージ中程度。エネルギー中消費。疲労小。
[装備]:ハイパージャマー@スーパーロボット大戦OG
[道具]:支給品一式、草薙素子のスペア義体@攻殻機動隊S.A.C、ランダム支給品0〜1(確認済)
[思考・状況]
基本思考:優勝しサイバトロンの抹殺。その後シグマも倒す。
0:あ、危なかった〜
1:己の正体を隠しつつ、場を混乱させる(CV:田中敦子)
2:優勝を目指す、自身による直接戦闘はしばらく避ける。しかし己の正体を知る者を殺せる状況なら、別。
3:チンク達へいつか復讐する
4:二度とハカイダー、仮面ライダーV3、凱に会いたくない。逃げる。
5:とりあえず、南下。弱者を狙う。



【支給品紹介】

【ハイパージャマー】
「分身」(50%の確率で攻撃を回避)が可能になる強化パーツ
298 ◆2Y1mqYSsQ. :08/06/28 01:37 ID:Dh6WDV2A
投下終了。
指摘、感想お待ちしております。
299Classical名無しさん:08/06/28 01:37 ID:N6hSrYT2
     
300Classical名無しさん:08/06/28 01:45 ID:N6hSrYT2
投下GJです!
メガちゃん死んじゃったorz と落ち込んでたら、生きてやがった! さすがメガトロン様!
デストロンと、『50%』が、ツボに入ってきて困るw
V3とハカイダーのタッグも実によかった。人質を取るとかやってくれるから、メガちゃんは素敵ww
凱を守るハカイダーに、説得されても己の道を行くハカイダー、そしてハカイダーを任された凱。
あああ、どうなるんだろう! もう一度、GJです!
301Classical名無しさん:08/06/28 01:47 ID:enVSF/Ts
投下GJ!
自分にはこれしか言えない……熱い、熱すぎるぜ!
バトルだけでなく、風見さんの葛藤やより強まったハカイダーと仮面ライダーの因縁等も上手い!
そしてメガちゃんの原作再現っぷりが異常すぎるw
302Classical名無しさん:08/06/28 01:56 ID:hiqROejs
投下乙!
メガちゃん自重wwwww外道のくせにww
それにしても強者に対するハカイダーのデレっぷりは異常すぎるw
V3とのコンビネーションも熱かったしまさに燃え展開とギャグ展開のイイとこ取り!
今後の各員の活躍に期待しつつGJだった!
303Classical名無しさん:08/06/28 09:22 ID:bPiXt28w
投下乙!
相変わらず熱い物語を有難う!
そしてやっぱりデストロンネタ来たwwwww
304Classical名無しさん:08/06/28 11:14 ID:qG.piX0Y
投下乙!
このメガちゃんにならHJどころかハロとファティマも託せるww
村雨と同じ想いを風見と凱も持ってるってのが、まさにヒーローの絆って感じで熱かった。
ハカイダーが次に会う強者が誰になるか今からwktkが止まらない。GJ!
305Classical名無しさん:08/06/28 11:29 ID:SAW1l3Os
toukaotu。
よかったー、よかったーメガちゃん生きてたよ。
さあBWのアドリブアクションを魅せるのだ。ってもう見せてる。
306Classical名無しさん:08/06/28 17:10 ID:EZqVZHfk
【テンカワ・アキト 搭乗機体:アルトアイゼン(スーパーロボット大戦IMPACT)
 パイロット状態:マーダー化、五感が不明瞭、疲労状態
 機体状態:胸部に軽度の損傷。3連マシンキャノン2発消費、スクエアクレイモア2発消費
 現在位置:G-8
 第一行動方針:キョウスケに情報を提供して同行する
 第二行動方針:ガウルンの首を取る
 最終行動方針:ユリカを生き返らせる
 備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。
 備考2:謎の薬を4錠所持】



【キョウスケ・ナンブ 搭乗機体:ビルトファルケン(L) (スーパーロボット大戦 OG2)
 パイロット状況:頭部に軽い裂傷、左肩に軽い打撲、ユーゼスに対する不信
 機体状況:胸部装甲に大きなヒビ、機体全体に無数の傷(戦闘に異常なし)
      背面ブースター軽微の損傷(戦闘に異常なし)、背面右上右下の翼に大きな歪み
 現在位置:G-8
 第一行動方針:アキトの保護
 第ニ行動方針:基地へ戻る
 第三行動方針:首輪の入手
 第四行動方針:ネゴシエイターと接触する
 第五行動方針:信頼できる仲間を集める
 最終行動方針:主催者打倒、エクセレンを迎えに行く(自殺?)
 備考1:アルトがリーゼじゃないことに少しの違和感を感じています
 備考2:謎の薬を1錠所持】


307Classical名無しさん:08/06/28 17:11 ID:EZqVZHfk
ぐあ、誤爆orz
308Classical名無しさん:08/06/28 17:13 ID:EZqVZHfk
投下GJです!
スパロボはやってるけどここでハイパージャマーとはw
暑いのにメガちゃんが清涼剤になって両方の意味ですごいです!
しかしやっぱりデストロンw
309Classical名無しさん:08/06/28 19:59 ID:nnlcxYeQ
ZqUTZ8BqI6氏仮投下乙

問題点を挙げるとしたら、マルチの殺害現場はD-4ではなく、D-3です。
これはDNdG5hiFT6氏に本スレで質問し、議論スレで返答を頂いたので間違いないはずです。

あと自爆装置っぽい物は、特に問題ないと思います。
310Classical名無しさん:08/06/28 22:37 ID:qe3tehx6
皆さん、今日はターミネーター2を見てらっしゃるのだろうか
311Classical名無しさん:08/06/28 23:49 ID:KuifQY2o
T-1000が凄いことを再確認したぜ!
312 ◆ZqUTZ8BqI6 :08/06/29 11:26 ID:Q6Lg08kY
仮投下で一応問題ないということでしたので、細部を修正したものを本投下します
313missing you true ◆ZqUTZ8BqI6 :08/06/29 11:27 ID:Q6Lg08kY
雪原の真っただ中をタンクローリーが走り続ける。
3つの正義と1つの巨悪を乗せたその乗り物は、白一色しかない中で酷く目立っていた。

「ねえ、結局向こうに行ってどうするの? 待つって言ったけど、結局何もしないでそこにいるだけ?」
紫に近い青のゴシックロリータの衣装に身を包んだ少年が、隣にいるロボットに話しかける。

「ソウですね……ですが、しばらく待つ価値はあるはずデス」
大きく、どことなく楕円形のフォルムをした古めかしいロボットは、少し考える様子で答えて見せた。

「じっとするのは、正直おちつかねぇな。まあ、俺にはいい考えも、うかばねぇ」
運転席で、茶筒を大型化したようなドラム缶に酷似した男の声がする。

「チンク姉、スバル……待ってろ、全部必ず解決してやる……!」
決意に満ち溢れた声で、体のラインを浮き出させるようなボディスーツを着た赤髪の少女の呟き。

4人を乗せて、タンクローリーは行く。そう、4人を乗せてだ。
その時、雪の下に段差があったのか、少しタンクローリーが浮き上がる。
転倒するようなものでもなく、気にするまでもない段差だった。

しかし、

「ああもう、どこ触ってるんだよ、ブサイク!?」
「うるせえ! それよりそのひらひらした服をどけろ! 前が見えねぇ!」
「いくらなんでもきつすぎだろ!?」
「シカタないですことですがコレは……」

段差のせいで、四人横並びに整列するように乗っていたのがぐちゃぐちゃになる。
きちんと横並びに体を縮めれば、乗れないこともないが何かあるとこうなってしまうのだ。
314missing you true ◆ZqUTZ8BqI6 :08/06/29 11:28 ID:Q6Lg08kY
よく考えてほしいが、タンクローリーは人間の運搬にはむいてない。
日本産と違いビックサイズのアメリカンタンクとはいえガテン系の兄ちゃん2名乗ればそれなりに一杯になる。
(注 ハンドルは本来左ハンドルだがシグマの気配りで右ハンドルなので、メカ沢でも運転可)

だと言うのに、このメンバーの体格表を見てほしい。
小柄の少女と、いわゆる一般的な女性のドラスとノーヴェは問題ない。
だが残り二人は言い訳不可能だろう。
かたや、背が低い代わり実に円柱形で明らかに成人男性よりはるかに幅をとる茶筒日本男児。
かたや、わかりやすく無骨でメカメカしい幅広のロボット。

正直、この男2人で、「気にならない、問題ないレベル」のギリギリなのだ。
それに、女子供を詰めこればどうなるかは現状を見れば一目瞭然。

「っと……あぶねぇぇっ!!」

ドラスのスカートのため視界不良で雪にタイヤを取られそうになり、慌てた様子でメカ沢が車を停止させる。
しかし、雪のため少し流されて車は止まった。

「あいたた……もう少し気を使ってよ」
「やっぱ雪の上は無理があったかもな……」

大惨事を回避したことに流石のメカ沢も安堵の息を吐く。
別にメカ沢の運転技術が低いわけではない。むしろ、ただの(?)高校生としては高いくらいだ。
だが、慣れない雪道でいきなりこんな大型車を転がすのは、やはり難しい。
少し腕を組み、その後体をペタペタと触るメカ沢。

「何してんの?」
「そうだったな。タバコも没収されてんだったな」
315missing you true ◆ZqUTZ8BqI6 :08/06/29 11:30 ID:Q6Lg08kY
若干肩を落とし、運転席からメカ沢が下りる。
ドアを閉める時に、車内ではスペースが広がったことで余裕が出たのをいいことに、ドラスとノーヴェは体を広げているのが見えた。
やはり、乗ってから2人とも文句は言わなかったが、狭いのは色々とつらいのだろう。

「ロボ、ちょっといいか?」
「ナンですカ?」

反対側からロボも車を降りると、車の前を通ってメカ沢のサイドに移動する。
そこには、タイヤを凝視する視線をロボに移すと、メカ沢は話を切り出した
「溝はまだ充分だがスノータイヤじゃねぇみたいなんだよな……チェーンがどこにあるのか知ってるか?」
そう言って、車の下を覗き込み始めるメカ沢に、ロボが答える。
「ワタシの過去の車はあまり詳しくないのですが、車体の下にあるのデスか?」
「いや俺の国じゃそうなんだよ。これはアメ産だからどうだろうな……」
やはりアメリカ産だけあって、横になればメカ沢も入ることができなくもない。

しかし……車の下から足のついた筒が伸びる姿は、ものすごくシュールな光景だったが幸いそれを言うものはここにはいなかった。

「下に入るのはちょっと無理だろ。車の周りを調べてくれ」
ガシャガシャとロボが車の周りを歩く音が聞こえてくる。どうやら、向こうも探してくれているようだ。

出会ってから今まで、本当にロボには世話になっている。
帰ったらクロ高の連中と一緒に飲み屋にでも連れていければな、少し本気でメカ沢は思う。

何しろ、ゴリラだってみんなに交じって打ち解けているのだ。
多少の体の仕組みなどまったく問題ない、気のいい馬鹿ばかり。

「そのためにも、さっさと帰らなきゃな」


316missing you true ◆ZqUTZ8BqI6 :08/06/29 11:31 ID:Q6Lg08kY
メカ沢には車の仕組みがわからないが、無骨な金属管がむき出しの車体の下で鎖を探す。
確かに暗いが、雪の白が光を照り返してくれるおかげで思った以上に明るくて、輪郭程度ははっきりわかる。
さっきまで動いて熱のある部分は、雪が溶けだしていることを見て気をつけながら、少しずつ潜り込んでいく。


正直、寒い。


背中に雪を擦りつけながら、じわじわと進むのだ。想像以上に冷える仕事だ。
「……俺しかできないなら仕方がねぇな」
くしゃみが出そうなのを抑え、寒さをごまかすためにも指先の感覚を集中させる。
女子供にこんな仕事させるなんてクロ高の風上にも……いや風下にも置けないようなことをやれば男がすたる。

「おおーい、ロボ! そっちはあったか!?」

声を張り上げて、もう一人雪の上で探してくれる仲間に呼びかける。
「もうちょっと待ってろー! 今探してる!」
向こうからも、大声で……女の声。ノーヴェの声だった。
「お姉ちゃん、あっちはなかったよ。次はどうするの?」
今度は……ドラスの声まで聞こえてくる。
それに交じって、ロボの動き回る音も。よく耳を澄ませば、3人がそろって探す声と音がする。

「お前ら……、ガキや女が体を冷やすもんじゃねぇだろ、車に戻ってろ!」
「急ぐんだから全員でやるのは当たり前じゃないの? ほら、ブサイクもさっさと見つけて出てきなよ」
生意気なドラスの声。

溶けた雪の水蒸気が目にしみる。

「まったく……わかったから、戻ってろ、すぐに……」

その時、目の前に、変わった形の金属の輪郭があった。触ると。ジャラリと鎖型の金属特有の擦れる音。
317missing you true ◆ZqUTZ8BqI6 :08/06/29 11:32 ID:Q6Lg08kY


「ほら、見つけたぜ!」

…………
……


「おつかれさまデス。コレ、ダストシュートの中にありましタヨ」
「お、悪いな」

結局、その後チェーンをつけるのは細かい方法のわかっていたメカ沢だけでできてしまった。
メカ沢は、ロボから差し出されたタオルでオイルと溶けた雪で汚れた服と体をふく。
姿とは裏腹にどこまでもその動きは人間臭く、驚くばかりだ。

「じゃあ、行こうよ。ゆっくりする暇はないでしょ?」

ドラスの提案に、3人がうなずく。

「そうだな、じゃあ行くか!」

メカ沢は運転席に。ロボは、その隣に。ノーヴェは2人の真ん中。ドラスはノーヴェの膝の上。
こうすれば、3人分の場所で4人が座れるため、いくらかましだ。

先ほどと違い、雪を噛みしめ、タイヤがうなる。力強く、またタンクローリーが動き出す。
流れていく風景。窓から見える凹凸や自然樹が、すごい速さで流れていく。
段違いのスピードで進むタンクローリーが、シャトル基地につくのは、わずか5分後のことだった。


それは、彼ら4人の心が曇るのが5分後だったということだ。

―   ―    ―
318Classical名無しさん:08/06/29 11:33 ID:MO1l6bYw
sienn
319missing you true ◆ZqUTZ8BqI6 :08/06/29 11:37 ID:Q6Lg08kY
「な……んだよ、これ」

呻くようなノーヴェの声。
残りの3人は無言で、目の前に広がるものを凝視する。
基地も、全面にコンクリートが敷き詰められているわけではない。ところどころ、切れ目のように雪原もある。
まず、基地に誰かいないかを確認するため、車を駐車場に置き、基地外部を調べていた時のことだ。


――目の前の光景を目の当たりにしたのは。


そこらに広がる金属のひしゃげ、粉砕された断片。そこだけ、ぽっかりと抉られた雪。
常日頃なら、工場のゴミがぶちまけられただけと思うこともできるかもしれない。
だが、この会場ではまるで違う意味をもつ。

「――これ、髪だよ」

よくよく見ると金属片に混じって緑色の何かがある。
ドラスはそれを無造作に拾い上げじっと眺めると、無感情な声で分かったことを他の3人に伝えた。
さらに、すぐ側にあったPDAを手の中で転がすようにいじる。

「……なんだろ、これ」

金属片の中に、まったく異質な断片を見つけ、それも拾ってみる。
金色に輝く3cm程度の立方体だ。ほかのものが歪んでいるにも関わらず、それだけは完璧な形を保っていた。

ロボット同士の壊し合いという特異な環境。
極度に清潔な状態であった会場に違和感を残す金属片。
そしてその場に残された一人一つずつ渡された道具。
320missing you true ◆ZqUTZ8BqI6 :08/06/29 11:38 ID:Q6Lg08kY

間違いなくここは、「死亡現場」――いや「殺害現場」なのだ。

「ここにいるのは、まずいかもね」

雪は、絶え間なく振り続けている。だというのに、ここはあまり雪が積もってない。
つまり……ここで誰かが殺されてからあまり時間が経ってないということだ。
むろん、ここに転がっているほうが襲いかかり、迎撃で破壊された可能性もあるが、こんな場所で楽観的な予測はただただ危険。
殺人者がまだ側に、それこそ基地内に潜んでいる可能性だってある。
いや今も虎視眈々と自分たちを狙っているかもしれない。

無論、ドラスは彼らを盾に使えば済むし、自分自身も正面からぶつかり合っても負けるとは思わない。
だが、まだ彼らを失うのはあまりよろしくない。
まだまだ利用価値があり、瞬間移動など調べておきたい力を持つ彼らは手放したくないのだ。


さあ、どうするか。
殺人者はいないと信じ、当初の目的通り二手に分かれここで待つか。
殺人者がいると信じ、ここから離れるか。だとしたらどこに行くか。

ドラスはどちらでもいい。故に、どこまでも傍観する。


残る3人の結論は――――
321missing you true ◆ZqUTZ8BqI6 :08/06/29 11:39 ID:Q6Lg08kY
【D-3 雪原/朝(前の話から2時間も経過していません)】
【ノーヴェ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:疲労(中)
[装備]:スタームルガー レッドホーク、装弾数4/6@ターミネーター2
[道具]:支給品一式、PDA(ノーヴェ):不明支給品0〜1(未確認)
[思考・状況]
基本:チンク姉と会って話をする
1:ドラスを守る! チンク姉を救う! ゼロを助ける! スバルを救う! 全部達成する!
2:メカ沢、ロボを信頼。
[備考]
※本編終了後の参戦です。
※ゼロからゼロの世界及びシグマに関する知識を得ました
※メカ沢の力を瞬間移動と誤解しています。
※大分落ち着きました。

【メカ沢新一@魁!クロマティ高校】
[状態]:全身打撲。疲労小 。
[装備]:液体窒素入りのタンクローリー@ターミネーター2 、タイムストッパー@ロックマン2in体内
[道具]: 無し
[思考・状況]
基本思考:シグマにヤキ入れる!
1:これっておい……
2:ゼロとか言うキザな金髪男を助けに行く
3:チンクに軽い失望。だが、正気に戻させる!
4: さすがダブリの平井さん、そこに痺れ(ry
[備考]
※携帯端末の使い方を全く理解していません。よって未だに参加者、支給品を把握していません
※メカ沢の携帯端末が修理工場内のどこかに落ちています。
※タイムストッパーは使用できるようです。ただし本人は使えることに気付いていません。 そもそも火事場の馬鹿力の類と誤解しています。
※タイムストッパーの副作用として目まいと頭痛が起こる模様です。使用回数が増えると悪化するかどうかは分かりません。
322missing you true ◆ZqUTZ8BqI6 :08/06/29 11:40 ID:Q6Lg08kY
【ロボ@クロノトリガー】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、PDA×3(ロボ、アラレ、シュトロハイム)、ぎんのいし@クロノトリガー
    HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2(E-3道路に放置):ロボのPDA
    はちゅねミクのネギ@VOCALOID2(E-3道路に放置)メッセージ大砲@ドラえもん(E-3道路に
    放置)、アタッチメント@仮面ライダーSPIRITS(シュトロハイムの右腕)拡声器@現実(E-3
    道路に放置):アラレ、及びシュトロハイムのPDA。転送可能
[思考・状況]
基本思考:打倒シグマ。
1:ドラスと、現状周囲を警戒
2:メカ沢、ノーヴェと共に行く
3:協力できればストライクスピンが撃てるかも……
[備考]
※少なくともクロノ復活以降からの参戦です。
※現在位置、参加者名簿を確認しましたがメカ沢も把握済みだと思い伝えていません。
※メカ沢が携帯端末を失くしたことを知りません。
※ロックマンの武器チップの使い方を誤認しています。
※メカ沢の力を瞬間移動と誤解しています。
※色々とメカ沢の言動に慣れました。
323missing you true ◆ZqUTZ8BqI6 :08/06/29 11:41 ID:Q6Lg08kY
【ドラス@仮面ライダーZO】
[状態]:健康 右腕がスバルのもの。
[装備]:荷電磁ナイフ@マルドゥックスクランブル、ラトゥーニのゴスロリ服@スーパーロボット大戦OG
    セインを四、五歳幼くした状態に擬態。ただし、生えている(両方ついているかは、お任せします)
[道具]:支給品一式、PDA(ドラス) (マルチ) 謎の金属片を所持
[思考・状況]
基本思考:自爆装置とリミッターを外す。その後参加者を全員殺す。優勝したあとシグマも殺す。
1:今は無力な存在のふりをして付いていく。ノーヴェ、メカ沢を利用し尽くす。 基本どっちでもいい
2: 怪しまれずにロボを排除する。
3:T-800の排除。悪評を広める。
4:仮面ライダーとおよぼしき参加者の排除、もしくは吸収。
5:自爆装置、リミッターの解除。
[備考]
※メカ沢の力を瞬間移動と誤解しています。
324missing you true ◆ZqUTZ8BqI6 :08/06/29 11:45 ID:Q6Lg08kY
一回連投規制に引っかかりましたorzすいません……
とりあえず、タンクローリーに関して、
1メカ沢運転してるけどハンドル逆じゃね?
2メカ沢ロボ含む4人乗りって無理ないか?
3チェーンなしであの大型車で雪道走るってやばくね?
と思いましたのでそこらへんを補完するSSです。 短くてすいません。
325Classical名無しさん:08/06/29 12:31 ID:gZHuIuSc
投下乙です!
言われるまでどれも気づかなかったぜ!w
しかしこの面子はなんかいいなぁ、頼むドラス、もうしばらく大人しく……って自爆装置回収したのお前かー!?
326Classical名無しさん:08/06/29 12:39 ID:MO1l6bYw
投下乙。
誰か実験台になりそうだ。
327Classical名無しさん:08/06/29 12:47 ID:wYknx5Sc
投下乙でつ
もうしばらくはおとなしくしてると思うが
まあ一番危険なのはロボだろう…
328 ◆ITsuqP1LNA :08/06/29 17:52 ID:lWic9zLc
投下乙です。お手数をおかけして申し訳ありませんでしたorz

……正直、タイトルが決まった瞬間車内風景が固定されてしまったので全く気が付きませんでした。
雪道に関しては積雪量が不明でしたのでそのままでも行けるかと思った次第です。
補完、どうもありがとうございました!
329 ◆1eZNmJGbgM :08/06/29 17:53 ID:lWic9zLc
あと、以後トリはこちらでお願いします。
330 ◆d.NbLKVxEc :08/06/29 21:26 ID:mt6j0LBQ
予約スレでトリバレしてしまったので、以後Nfn0xgOvQ2のトリでお願いします。
331Classical名無しさん:08/06/29 23:38 ID:MO1l6bYw
ちょっと質問、支給品ってID登録で転送されるって書いてあるんだけど、
これって支給品にIDがバーコードみたいに登録されているんじゃなくて
PDAにIDが登録されているって意味でいいんだよね。
ガイvsハカイダー戦見る限りは。
332Classical名無しさん:08/06/29 23:46 ID:gZHuIuSc
それでいいはず
333Classical名無しさん:08/06/29 23:49 ID:MO1l6bYw
>>332
せんきゅー
334Classical名無しさん:08/06/30 12:31 ID:F9k9Jm9I
ところでwikiの地図
マルチが生存のままになってるんだが
335Classical名無しさん:08/06/30 17:02 ID:cJslyR/g
>>334
そういう時は自分で編集してみるんだ
336 ◆OMvIrf4g9o :08/07/02 19:56 ID:5XhBsHFE
通りそうな自信がないので仮投下します。
337 ◆OMvIrf4g9o :08/07/02 20:09 ID:5XhBsHFE
仮投下終了。いろいろ突っ込まれそうで、本投下できるかどうかは五分五分な気がします。
338 ◆OMvIrf4g9o :08/07/02 22:42 ID:5XhBsHFE
毒吐きの雰囲気的に満場一致で受け入れられない流れなので破棄しますね。
339Classical名無しさん:08/07/02 22:44 ID:5XHREt0w
>>338
了解しました。
340Classical名無しさん:08/07/03 23:49 ID:aEPfxxPo
仮投下乙。
一つ聞きたい。なぜ本投下しないんだい?
レベルの高い燃え上がるような熱いバトルだというのに。
具体的な感想は本投下後で。
341Classical名無しさん:08/07/03 23:54 ID:AElz4mCA
>>340
規制
342Classical名無しさん:08/07/03 23:58 ID:cqwx9r5Q
ああ、無常
343 ◆vPecc.HKxU :08/07/05 23:31 ID:fMDPUnnE
すみません、書き終わったのですが30分ほど推敲の時間をいただけますでしょうか?
毎回時間にルーズで申し訳ありません…
344Classical名無しさん:08/07/05 23:36 ID:JjHy.FPU
>>343
了解です。お待ちしています。
345 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:00 ID:RjqNzzmo
投下します
346 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:00 ID:RjqNzzmo
「ハァッ……ハァッ…………っ」

どこまでも続く暗黒の天と地の狭間。
無明の世界をエックスはただひたすらに走る。

エックスの足に硬いものが当たる。
それらは散らばっているは破壊された、哀れなレプリロイド達の残骸。
機械片が、動力炉が、一つ一つのレプリロイドを形作っていたもの達が転がっている。

そんな世界を、終わることなき道を走りどこへ行こうというのか。
それはゼロにもシグマにも、駆けるエックスにすら分からない。

当てもなく、果てもなく。
ただ走るエックスの前に立ちはだかる巨大な影が現れる。


「エッ……クス………!!」
「……ッ! マグマード・ドラグーン !?」

暗黒色の水の中から姿を見せる、マグマように赤い、
竜の姿を基調としたレプリロイドがエックスの前に手をつく。
エックスの記憶に残るその姿は雄雄しく力強い拳の持ち主であった彼の姿。

だが、突き出たパーツ、断面から覗く細かいコードなど、
それは今は見る影もないまでに酷い有り様であった。

続いて同じように壊れた何かがエックスの周囲に現れる。
347 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:01 ID:RjqNzzmo
「ックス………」
                    「……エッ…くス……」
        「エックス……!」

「クリスター・マイマイン…、ストーム・イーグリード、スプリット・マシュラーム………」

エックスが口にする名前の数々。
それはどういった形であれ、エックスの目の前で散っていったレプリロイド達であった。
ドラグーンと同じく無残に破壊されたイレギュラー。

それらは5…10…20…と次第に増えてゆき、とうとうエックスの周囲全てを覆った。

「みんな………俺は…っ…俺はっ…!」

エックスはそれら全てを覚えている。
誰もが誰も、ただ破壊だけを目論む者達ではなかった。
話し合えれば、分かり合えれば、今も共に戦う友であれたかもしれないその者達。

彼らの存在をエックスは決して忘れない。
それ故にエックスは苦しみ、悩む。
348 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:01 ID:RjqNzzmo
彼らがエックスを取り囲む中、レプリロイド達の影からある1人の姿が浮かび上がる。

「…………」
「!? お前は……!?」

それは白と赤のスーツを身にまとい、額から2本のアンテナを伸ばしていた。
大仰なベルトを腰に巻き、手にはエックスが見たことのないはずの棒状の武器を構える。

その男の名を、エックスはこう呼んだ。

「…X………」

己と同じ名を持っていると思わせるその男の目から血がたらり、と垂れた。
それはXの足元に落ちて弾ける。
そしていくつもの血の雫が垂れては落ち、漆黒の空間を赤く色づけてゆく。

「……………エックス」

エックスもまたXの名を呼ぶ。
だが、2人の言葉は同じであれど、発音も語感もまるで違う。

「!?」

スチャ、とXが手に持つ棒状の武器を剣状に変える。
エックスはそれを見てXから距離を置こうとする。
だが、その足には無数のイレギュラー達の残骸がまとわりつき、身動きが取れない。
349 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:01 ID:RjqNzzmo
亡者達に引きずり込まれる感触―
死の予感を確かにエックスは感じた。

(ゼロ…ソルティ……X………俺は……)

Xがその剣を振りかざす。
エックスはかろうじて構えたバスターをXのその胸に………



 ◇  ◆  ◇



「……………スさん! エックスさん!」
「………………ぅ」

自分の名前を呼ぶ誰かの声でエックスはおもむろに目を開ける。
視界がボヤけていて誰なのかよくわからない。
ただ、目の前の人物は緑色の髪の…………

「……ソルティ、かい?」
「よかった…気がついたんですね。うなされているみたいだったので…」
350Classical名無しさん:08/07/06 00:01 ID:RAKHH1mw
 
351 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:02 ID:RjqNzzmo
エックスの視点が定まったときには、安堵するソルティの姿がそこにあった。
なぜソルティがここにいるのか。
エックスはそれに対し大方の推察をし、言うべき言葉を捜しつつ問う。

「ここは…?」
「あっ、えっと、ここです」

そう言い、ソルティは手持ちのPDAに地図を表示させ、指差す。
それを見てエックスは自分がXと闘った学校付近からシャトル発着場へ運ばれたことに気付いた。
随分と長い距離を移動している。

エックスは辺りを見回すが、室内にソルティ以外の姿はない。
あの後、どうなったのだろう?
当然ながらの疑問がメモリーに浮かぶが、
それよりも先にソルティに言うべきことがある、とエックスは思った。

「あの後いやな予感がして、すぐ引き返したんです。
 そうしたらアルレッキーノさんと会って、エックスさんが倒れてて…」


「…どうしてテレビ局に向かわなかった?」
「………っ」

思いがけない静かで厳しい口調。
ソルティが小動物のようにびくりと体を震わせ、胸に拳を当て縮こまる。
352Classical名無しさん:08/07/06 00:02 ID:RAKHH1mw
  
353Classical名無しさん:08/07/06 00:02 ID:RAKHH1mw
   
354 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:04 ID:RjqNzzmo
「確かにあの時は言わなかったから危険だと分からなかったかもしれない。
 けど、俺が信じられなかったのか?」

ソルティの行動結果など全く気にしていないと言わんばかりの言いよう。
当然それらは八つ当たりなどではない。
自ら進んで危険へと飛び込もうとしたことへの叱責。

「俺をここまで運んでくれたことは感謝してる。けど、ソルティがしたことは…」

無謀だ、とはっきりと言い放つ。
涙目になるソルティを見て、エックスはこれでいい、思った

結果としてアルレッキーノと共に負傷したエックスのもとへ駆けつけることができたとはいえ、
エックスを信じることができなかったのは事実。
もしこれで少しでも行動を自重してくれるのなら多少恨まれてもいい。

対するソルティは、怒られるのは好きな性分ではない。
エックスのその厳格な――ロイに似た目線を逸らせるものならば逸らしたい。

だが、敢えてそこから逃げるような真似はしなかった。
―したくなかった。

「私もエックスさんと同じです。助けられる人は助けたい。
 悪い人でも死なせたくない。そう、思いましたから」
355 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:05 ID:RjqNzzmo
たおやかに、それでいて力強くソルティは言い放つ。
失いたくないから。取り零したくないから。
その言葉の意味するところは単純にして明快。
裏打ちを持たない理由だけにそれは強い。
そしてそれはエックスが志すそれと相違なかった。

エックスが気絶する以前とは何かが違った。
その正体は分からないが、この娘はきっと意思を曲げないだろう。
それならば、とエックスはそれ以上に追求しなかった。

「そうか……厳しく当たって悪かった」

その後に続いて「すまない」とひと言。
そのままエックスは黙って再び閉じる。

ソルティが例え不安定ながらも自分の意思をしっかり持ってくれたことへの嬉しさ。
また戦いに向かわなくてもよい者が戦場へ招かれてしまうことへの無情さ。
それが自分の力不足が招いたということへの嫌悪。
そして全ての元凶であるシグマへの怒り。

見た目だけでは分からない、様々な感情が彼の中に渦巻いていた。

それらを整理すると、エックスはしっかりとその記憶をメモリーに焼き付ける。
過去に散ったもの達の記憶と共に。
356 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:05 ID:RjqNzzmo
再び目を開けたエックスは凛とした表情でソルティに向かう。

「現状が確認したい。俺が気絶していたときのことを話してくれないか?」



 ◇  ◆  ◇


「……―放送はそれで終わりです」

ソルティの話した死亡者の内容にメモすると、エックスはPDAの画面を閉じる。

10名。
その中にゼロはいなかった。
だが、それだけの想いがシグマの目論見のために消えていった。
そして、エックスはそれを止めることができなかった。

中でも気になったはXのその後の顛末。
エックスは、ソルティが自分と共に倒れているXを危険人物と判断し、
自分だけをここまで連れてきたのかと思っていた。

だが、真相はソルティと共に駆けつけたアルレッキーノという者によってトドメを刺された、という。

ソルティづてに聞いたアルレッキーノの言葉は確かに正しかった。
恐らく自分よりも優秀なイレギュラーハンターなら、ゼロならばそうしただろう。
357Classical名無しさん:08/07/06 00:08 ID:RAKHH1mw
      
358 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:08 ID:RjqNzzmo
再び目を開けたエックスは凛とした表情でソルティに向かう。

「現状が確認したい。俺が気絶していたときのことを話してくれないか?」



 ◇  ◆  ◇


「……―放送はそれで終わりです」

ソルティの話した死亡者の内容にメモすると、エックスはPDAの画面を閉じる。

10名。
その中にゼロはいなかった。
だが、それだけの想いがシグマの目論見のために消えていった。
そして、エックスはそれを止めることができなかった。

中でも気になったはXのその後の顛末。
エックスは、ソルティが自分と共に倒れているXを危険人物と判断し、
自分だけをここまで連れてきたのかと思っていた。

だが、真相はソルティと共に駆けつけたアルレッキーノという者によってトドメを刺された、という。
死んだ10名の中にXの名はなかったが、恐らく推測は外れていたのだ、とエックスは思う

ソルティづてに聞いたアルレッキーノの言葉は確かに正しかった。
恐らく自分よりも優秀なイレギュラーハンターなら、ゼロならばそうしただろう。
359Classical名無しさん:08/07/06 00:08 ID:mPUODOaw
 
360Classical名無しさん:08/07/06 00:10 ID:Cg/wpQtA
 
361 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:11 ID:RjqNzzmo
だが

(また、俺は無力だったのか……)

エックスの言う力。
それは敵を打ち倒す物理的なパワー――イレギュラーでも、イレギュラーハンターでも持っているものとは違う。

救える者を救う力。
それが自分にはなかった、とエックスは思っていた。

アルレッキーノの行動は、力無きもののための無力な行動。
夢の中でエックスが放とうとしたバスターと同じなのだ、と。
結果としてXは死に、止めることはできなかった。

打ちひしがれるエックスに、ソルティは戸惑う。
エックスは強い意志の持ち主だ。
恐らくソルティがその場に居ずともいずれは立ち直ることだろう。

だが、ソルティは自分にできることを探す。
言葉でも、行動でも、できる何かを。


そして
362Classical名無しさん:08/07/06 00:13 ID:RAKHH1mw
      
363Classical名無しさん:08/07/06 00:13 ID:Cg/wpQtA
   
364 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:13 ID:RjqNzzmo
「………………〜〜……〜…♪」
「……?」

鼻歌。と言うには無粋か。
ソルティの口元から、微かなメロディーが漏れる。

それを聞き、エックスが一瞬驚いたような顔をしたのを見て、ソルティは歌を止める。
だが、エックスの「そのまま続けてくれ」と言うような頷き見て続けた。

ひと言で表現するならば、それは「優しい」歌だった。
歌詞を知らないであろうソルティが一生懸命に奏でるメロディー。
それは、ソルティが完全な機械である、ということを忘れさせてくれるものであった。


そのうち、ソルティの歌が終わる。

「その歌は?」
「ローズさんって言う私のお友達が歌ってたんです。
 この歌を聞くとなんか落ち着くんだー、って。だからエックスさんにも…って」

「?」

おっかなびっくりにソルティが問う。
ソルティ自身少し空気が読めてなかったと思ったのかもしれない。
365Classical名無しさん:08/07/06 00:14 ID:FN6WaYJI
支援
366Classical名無しさん:08/07/06 00:14 ID:Cg/wpQtA
               
367 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:16 ID:RjqNzzmo
「ダメでしたか?」

おっかなびっくりにソルティが問う。
ソルティ自身少し空気が読めてなかったと思ったのかもしれない。


「いや、ありがとう。確かに、落ち着いたよ」

だが、そんな不安を拭うようにエックスは笑顔で答えてみせる。
そんな何気ない行動が自分のパワーだ、とでも言うように。
実際にそうなのかもしれないが、その真相は製作者でなくば分かるまい。
いや、或いは製作者ですら分からない未知の"何か"かもしれないが。

「ソルティ。俺と一緒に戦ってくれるかい?」
「……はい!」

エックスは確かに感じた。ソルティから「救う」力を。



【D-5 シャトル発着所内/1日目・午前】
【エックス@ロックマンXシリーズ】
[状態]:疲労大、全身に大きなダメージ
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、クロマティ高校の制服@魁!!クロマティ高校  赤い仮面@現実
[思考・状況]
基本思考:壊し合いに乗っていない参加者を守り、シグマを倒す
368 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:17 ID:RjqNzzmo
1:シャトル発着場を捜索。
2:ソルティと共に戦うがギリギリまで無茶はさせない。
3:X……本当に死んでしまったのか?
4:ゼロと合流(ゼロは簡単には死なないと思ってるので優先順位は低い)
[備考]
※神敬介の名前を、Xだと思っていましたが、勘違いだったと思っています。
 また、神敬介が死んでしまっていると考えています。

【ソルティ・レヴァント@SoltyRei】
[状態]:健康 強い決意
[装備]:ミラクルショット@クロノトリガー マッハキャリバー(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式、ToHeartの制服@ToHeart スラッシュクローの武器チップ@ロックマン  紫の仮面@現実  K&S Model 501(7/10)@SoltyRei、予備弾各50発 PDA×2(ソルティ、神 敬介) LUCKの剣@ジョジョの奇妙な冒険

[思考・状況]
基本思考:壊し合いに乗っていない参加者を守り、シグマを倒す
1:シャトル発着場を捜索。 茶々丸と言う人物が着たら合流したい。
2:ロイさんやローズさんの元に帰りたい
3:ミラクルショットはエックスがOKというまで出来る限り撃たない。
[備考]
※スラッシュクローの武器チップの事をエックスに言い忘れています。
※マッハキャリバーをただの首飾りと思っています。仮に詳細を知った場合、操れるかどうかは不明です。
※参戦時期はアニメ10話〜11話です。
※戦い自体への迷いは消えましたが、相手を躊躇なく殺せるまでには至っていません。
※神敬介が死んでしまっていると考えています。
369 ◆vPecc.HKxU :08/07/06 00:19 ID:RjqNzzmo
投下は以上です。
タイトルは「認めるということ」です。

投下に時間がかかったり、期限までの時間をオーバーしてしまったりで本当にすみませんでした。
370Classical名無しさん:08/07/06 00:25 ID:RAKHH1mw
投下乙。
決意を新たにした二人の交流、エックスの悪夢、ソルティの気遣い、実によかったです。
二人の新たな戦いがどうなるか、先が気になります。
GJ!
371Classical名無しさん:08/07/06 00:37 ID:FN6WaYJI
投下乙
Xとソルティ両者ともにかけがえのない存在になってるな
両者がまっとうにこの先生きのこれるか心配だぜ
372Classical名無しさん:08/07/06 06:43 ID:Cg/wpQtA
投下乙。
岩本漫画版のやさしいXを思い出した。
逆に黒化しそうでこわいぜ。
373Classical名無しさん:08/07/06 17:27 ID:0O1TwgsQ
そういえば、KOS-MOSは時期的に無限のフロンティアの前後なんだな。
ラミアに対して、アシェンの面影を見るんだろうか、無理か。
374Classical名無しさん:08/07/06 22:13 ID:Cg/wpQtA
>>373
ムゲフロ設定はゼノサガシリーズで把握している人にとってはきついものがある。
375 ◆Nfn0xgOvQ2 :08/07/07 20:36 ID:TbDma9Lo
期限内に書き上がりそうに無いので一度予約を破棄し、書き上がった後予約が
入ってなければ、再び予約して投下します。

お待ちしていた皆様、大変申し訳ありません。
376Classical名無しさん:08/07/07 22:10 ID:ZPyY0EMI
了解です。無理せず頑張ってください。
代理投下します。

――奇襲は失敗した。
あの2体は警戒を強めているだろう。
そのことから再度奇襲をかけるにはリスクが高すぎると判断。
情報は惜しいが、戦闘継続を最優先事項とし、TV局近辺からの撤退を開始する。



*   *   *



ライドチェイサーは風を切り、一路TV局へ向かう。
近未来の技術で開発されたホバーバイク・ライドチェイサー“シリウス”。
小回り重視の仕様とはいえ、ミーの知るどんなバイクよりも高速であることは間違いない。

だがそれだけのスピードを持ってしてもミーには遅くにしか感じられない。
その原因はすでに6時間で10人が壊されているというこの状況にある。
壊され……いや、殺された6体ものサイボーグ。
恐らくはその殆どが“力のないもの達”なんだろうな、とミーは思う。
弱肉強食……非情だがそれが真実の一端であることを元野良猫のミーは知っている。
そして彼がこの場所で出会った少女も間違いなく“力のないもの達”に属するものである。

初音ミク。
どこか浮世離れした歌の好きな少女型ロボット。
この世の悪意があることすら知らないその瞳は、生まれたての子猫のようでどうしても放っておけない。
恋とは違う、何処か母性にも似た感情(ミーは雄猫だが)に心が逸る。
だが、さっきの放送を聴いてからどうにも嫌な予感がミーを不安にさせ――

「……ってうおっとぉ!」
378Classical名無しさん:08/07/08 00:43 ID:lt3PzypY
 
379Classical名無しさん:08/07/08 00:43 ID:.w11kokI
 
急制動と共にライドチェイサーが急停止する。
物思いにふけっていたミーは、慣性の法則を殺しきれず本郷の背中に思いっきり顔をぶつけてしまう。

「あててて……ど、どうしたの本郷さん?」
「あれを見てくれ、ミー」

本郷の視線の先……ここから100mもないところだろうか。
民家と民家の間、細い路地に何かがある。
よくよく目を凝らしてみればそれが人間の、それも少女が倒れている姿だと判別できる。
倒れているのは青いボディスーツの少女。
蒼く長い髪が顔を覆っているためその表情は伺えず、その生死もはっきりしない。

普段のミーならば少し慎重に辺りを窺うはずだ。
だが先程までぼんやりとミクのことを考えていたからだろうか?
倒れた少女のの姿が不意に緑の髪の少女と重なったのは。
その瞬間、ミーはライドチェイサーから降りて一直線に駆け出していた。

「!! 待つんだミー!」

本郷の制止も聞かず、駆け出したミーは全速力で走り出す。

「おーい、大丈夫かー!」

倒れている少女はミーの大声にも反応しない。
気絶しているのか、それとも――
その焦りは更に歩幅を短くし、知らず知らずのうちにペースを上げる。
少女まで残り10メートル。
だがそこで、倒れていた少女が突如立ち上がった。

「え!?」
381Classical名無しさん:08/07/08 00:44 ID:h1ldKy6U

382Classical名無しさん:08/07/08 00:44 ID:.w11kokI
  
驚き、急停止するミー。
だが少女はそんな様子にはお構い無しに、体の陰に隠していたものを構える。
それは一般家庭で良く見る底の浅い片手なべ――いわゆるフライパンだった。

「な、何だ!?」

戸惑うミーを尻目に、女はそれを投擲する。
その目標はミー……ではなく、すぐ傍の民家。
高速で投げられたフライパンは窓を突き破り、瞬間、家が閃光に包まれる。

(家が、光っ――――?)

だがその瞬間、背中に衝撃を受け、前方へと弾き飛ばされる。
それが自分を助けるためだと気付いたのは、背後で耳を劈く爆音を聞いた瞬間だった。

「本郷……さん?」

振り向いたミーが見たのはかつて家だったもので、今はただの瓦礫の山であるもの。
そこには動くものが一つも存在しない。
ミーはただ、その光景を呆然と見つめる。

少女……ギンガが行ったのは単純なガス爆発であった。
建物内――台所だけだが――を密閉、そこにガスを充満させ、窓際に鍋辺りを置いておく。
そこに高速で別の金属をぶつければ火花が発生し――あとは見ての通り。
予想外に臭いがきついので目くらまし程度にしかならないかと思ったが、嗅覚センサーが働いていなかったのか、それとも他の要因があったのか。
どちらにせよ運良く一体を無効化することが出来た。
384Classical名無しさん:08/07/08 00:45 ID:lt3PzypY
その結果に満足しながらギンガは動き出す。
機械的に、もう一体のネコ型サイボーグを破壊するために。
PDAから天王剣を転送。
ギンガは格闘技の達人ではあるが、剣術に関しては素人に近い。
さらにミーは猫の小動物のサイズでしかない。
ゆえに逆手に持ち、頭から串刺しにするのが最も効率的と判断する。
そしてギンガの目の前、ネコ型サイボーグは呆然とした面持ちで瓦礫の山を眺めている。
恐らくは感情の処理に時間がかかっているものだと判断する。
だが油断も慢心も、そして躊躇もなく全力を持って振り下ろす。

だから――ネコ型サイボーグがその一撃を受け止めたのはギンガにとって予想外の出来事だった。

ギンガが天王剣を振り下ろした瞬間、ミーは瞬時にPDAから棒状の物体を取り出し、受け止めた。
背後から襲い掛かる刃を見もせずに。

「お前か……お前が、やったのか……!」

言葉に宿るのは怒気と呼ばれるもの。
だがそれは自分たちを騙した女に向けてだけのものではない。
ミーの中に浮かんだのは自分に対する怒り。
自分の中の焦りが、軽率な行動が、仲間を、本郷を――殺したのだ。
内へ外へと渦巻く怒りは、殺気へと変化しギンガへと襲い掛かる。

だがその怒りを受けてもギンガの心は揺るがない。
ただ冷静に距離をとり、剣をしまって拳を構える。
機械のように冷静沈着に、ベストな選択肢を選び続ける。
だが、その冷静な態度はどうしようもなくミーの心を逆撫でした。

「よくも、本郷さんをぉぉぉぉぉっ!!」

――スピードは速い。戦闘慣れもしている。
――だが動きは直線的。仲間を撃破され短絡的になっていると推測される。
386Classical名無しさん:08/07/08 00:45 ID:lt3PzypY
387Classical名無しさん:08/07/08 00:46 ID:dH7LJPrE
せえん
388Classical名無しさん:08/07/08 00:46 ID:lt3PzypY
ギンガはそう判断し、カウンターに移行するべく体を動かす。
事実、単純な剣の軌道は軸を僅かにずらすだけで空を切る、が。

「――!!」

突如発生した斬撃がギンガの肌を切り裂いた。
しかも複数。突如空間に爪が発生したかのように幾重もの切っ先が空中に出現したのだ。
研ぎ澄まされた反射神経が一瞬でアウトレンジまで退避させるものの、
青いボディスーツは切り裂かれ、露になった素肌には血が滲んでいる。
だが、それだけのダメージを受けても眉一つ動かさず、ギンガは冷静に分析を行う。

――複数の斬撃を発生させる剣と確認。魔力反応はなし。
――乾坤圏と類似したものと推測する。
――全身のダメージチェック開始。
――出血を確認。ただし戦闘に支障ないレベル。
――ネコ型サイボーグの戦力予想を上方修正後、戦闘行動を続行する。

その行動に一切の揺らぎはない。
だが逆にミーは見てわかるほどにうろたえていた。

ミーの手に握られている棒状の物体の名は“青雲剣”。
魔家四将の一人、魔礼青が使用する宝貝である。
“斬撃が増加する”など信じていなかったが事実少女を切り裂いた。
そう、切り裂いたのだ。

「血……」

表情の変わらぬはずのミーの顔に焦りが浮かぶ。
それもそのはず。彼はこの場にいるものは機械がほとんどだと思っていたのだから。
完全なる機械ならば割り切りもしやすい。
だが、宇宙人ならいざ知らず、目の前にいるのは少女。
その肉を切り裂く感触と血を流す姿は無意識のうちにその切っ先を鈍らしてしまったのだ。
390Classical名無しさん:08/07/08 00:47 ID:lt3PzypY
391Classical名無しさん:08/07/08 00:48 ID:h1ldKy6U


392Classical名無しさん:08/07/08 00:48 ID:lt3PzypY
393Classical名無しさん:08/07/08 00:48 ID:dH7LJPrE
 
――そ、そうだ! あいつは本郷さんの仇なんだ! でも……!

銀猫は心中で迷う。
だが突如身を翻し逃げ出したギンガを見て、ハッと顔を上げる。

「に、逃がすかぁ!!」

追撃のため足に力を入れる。
だがその瞬間、ギンガは空中を蹴り、急速反転する。

ミーの持つ青雲剣に対しギンガが編み出した対策は単純なものだった。
斬撃が増加したとしても腕そのものが増えるわけではない。
ならば斬撃が開始される前にそれを振るう腕自体を狙えばいい。
文字通りの猫の手払う――普通ならば針の穴を射抜くような技量が必要だ。
だが迷いのあるミーの動きは精彩を欠いており、その“穴”は広がっている。
鞭のようにしなる右足がミーの手から青雲剣を弾き飛ばした。

「ぐっ……こ、こんにゃろおおおおおっ!!」

だがそれでもミーは進撃を止めない。
爪を伸ばし襲い掛かる。
だが対するギンガは左手をドリルに変化させる。
改造手術によって得られた力――リボルバーギムレット。
爪とドリル。硬度が同じならば回転による力の分、砕かれるのは前者であるのは自明の理。
更に重ねられるは一撃必倒の格闘技・シューティングアーツ。
リーチ、スピード、技の切れ……どれをとってもミーに勝機はない。
故に純白の“錐”が唸りを上げ、ミーを粉砕せんと迫る。

だが、その瞬間、ギンガに向け、横合いから何かが飛来する。
視線を向けたギンガが見たのは赤いフライパン。
先ほど自分が仕掛けに使ったもので焦げ跡がついている。
395Classical名無しさん:08/07/08 00:50 ID:lt3PzypY
何故フライパンが自分に向かって飛んでくるのか?
その疑問を考えるまもなく反射的に身を捻り、かわす。
故にその隙は――その陰に隠れ、続いてきた影にとっさに対処できなかった。

「ハアアアアアッ!!」

蹴りを放つ影。
とっさに魔力障壁を張るが、あまりの威力に結界が軋みをあげる。
何とかバックステップで距離をとるが、完全に奇襲の機会は潰されてしまった。
だがそれでも表情一つ変えず、距離をとる。

そしてミーの傍、先ほどまでギンガがいた場所に颯爽と降り立つのは仮面の男。
赤い複眼に緑のボディ。似ても似付かぬトノサマバッタの異形。
出会う場所が場所なら恐ろしくもあるかもしれない。
だがその瞬間、その異形を掛け値なしにはかっこいいと思った。
助けを呼べば答える、正義の味方のようで。
そしてTV局の屋上で見たその姿は、間違いなく彼のものであった。

「……無事か、ミー」
「本郷さん、無事だったんだね!」
「ああ。だが今の俺は……」

真紅のマフラーをなびかせながら異形は答える。

「仮面……ライダーだ」
397Classical名無しさん:08/07/08 00:50 ID:dH7LJPrE
しええええええええええええええええええええええええん
398Classical名無しさん:08/07/08 00:51 ID:dH7LJPrE
いええええええええええええええええええええええええええええええええn
399Classical名無しさん:08/07/08 00:51 ID:lt3PzypY
 
   *   *   *


……本郷はギンガの狙い、即ち爆発を察知した瞬間、ミーを突き飛ばし、退避させた。
そしてその後、爆風の中に飛び込む瞬間仮面ライダーへと姿を変えたのだ。

その複眼が見つめるのはギンガの服装。
ブルーのボディスーツに顔のマーク。
その姿は首輪を爆破されたセイン、そしてその姉だというチンクという少女たちと瓜二つだ。
ゆえに彼女達の仲間であることは間違いないだろう。
そしてその目的は、恐らく――

「最初に聞いておく……キサマはあの少女を、シグマに殺された少女を生き返らせるためこの戦いに乗ったのか?」

その答えはNOである。
ギンガは死者が生き返らないことを理解している。
稀代の天才と呼ばれたプレシア・テスタロッサですら不可能だったのだ。
またいかなロストロギアでも“完全蘇生”は実現していない。
それにあらゆる情報を総合してもシグマという男が約束を守る確率は低いと考えている。
故に今のギンガが目的とするのはノーヴェ、チンクとの合流及び脱出である。
その中に“セインの復活”という項目は含まれていない。

だがギンガはそれを口にしない。
敵に情報を与えるメリットがないと判断したが故に。
従ってタイプ・ゼロは無言のまま、再び戦闘態勢に入る。

その行動をどう捉えたのか。
本郷も答えるように構え、刹那の膠着が生まれる。
その膠着を破り、先に動いたのはギンガ。
フットパーツの加速を使い、青い弾丸と化して仮面ライダーに接近する!
401Classical名無しさん:08/07/08 00:52 ID:lt3PzypY
    
「――ナックルバンカー」

唱えられるワードは近代ベルカ式。
ゼロニウム製の体をも貫いた拳が仮面ライダーの胸部へと炸裂する。
だが――

(――浅い)

柳のような手ごたえに攻撃が失敗したことを知る。
ライダーがインパクトの瞬間、後ろへ飛んだのだ。
だがギンガは追撃を選択。
フットパーツの力で空中で再加速。
ライダーに向かって再び一直線に襲いかかる。

だが対するライダーも体を反転させ、民家の壁を足場に水平方向にジャンプ。
真正面からギンガを迎え撃つ。
その速度は互いに高速。故に相対距離は一瞬でゼロに。
二体の戦闘用改造人間は鏡写しのように拳を振り上げ――

「ナックル――」
「ライダァァァァァァ……」

そして、激突する。

「バンカー」
「パァァァァンチ!!」

力ある言葉と共にぶつかり合う2つの拳。
片や魔力で、片やショッカーの超科学によって強化された拳がぶつかり合い、火花を散らす。
その威力は――互角。
発生する巨大な反動を逃がすように背後へと距離をとり、同時に大地に降り立つ。
その距離は先程よりも近いが、一歩で踏み込むには遠い距離。
403Classical名無しさん:08/07/08 00:53 ID:.w11kokI
   
これで戦いは仕切りなおしになる――かに思えた。
だが、ギンガは休む間もなく再度加速。
その行動はまるで壊れた機械のように愚直な突撃を繰り返すように見える。
だが、自分達を罠にはめようとしたギンガが、そんな単純な攻め手で来るとは本郷には思えず、警戒の度合いを強くする。

そしてそれは事実――その通りであった。
シューティングアーツは基本的に高速接近、一撃必殺、高速離脱の連携によって成り立っている。
彼女今もっているフットパーツでは最高速及び持久力において本来使用するブリッツキャリバーに届かない。
だが空中ダッシュを可能とするフットパーツは中距離だけならばブリッツキャリバー以上の3次元的な動きを可能にする。
そして王ドラ、クロ、武美、灰原、ゲジヒト、ラミア、バロット、ミー……
6時間でタイプも何もかも違うロボット達と戦闘を繰り返したギンガは今やフットパーツを完全に使いこなしていた。
それがシューティングアーツを極めたギンガと合わさるとどうなるか……その答えがここに現れる。

「何ッ!?」

ギンガは壁を、そして空中を蹴り、三次元的な攻勢をかける。
その動き、まさに変幻自在。
空中でゴー・ストップを繰り返しながら攻撃を加える。
それは百戦錬磨の仮面ライダー1号にとっても初めての相手をする戦法であった。

「くっ……!」

どんな達人といえども初めて遭遇する攻撃には戸惑いが生まれ、隙を生む。
故にギンガはその隙を突き、背後を取ることに成功する。

「ストームトゥース」

魔力を込めた左の二連打。
ライダーも急いで振り向くが間に合わない。
1撃目で防御を打ち破り、2撃目のチョッピングレフトがライダーを捉える。
「ぐっ……!」

ファーストヒット。この戦いにおいて有効打が初めて炸裂する。
だがギンガの猛追は止まらない。
続けざまに右、左と放たれるワンツーのコンビネーションブロウ。
しかし対するライダーは体勢を立て直すと、見切り、腕で払い、逆に更に深く懐へと潜行する。

「はああああああっ!!」

クロスレンジと言うのも生ぬるい、言わばゼロレンジでの一撃。
コンスタントに振るわれた拳は、密着状態でも十分な威力を持つ。
だが、ギンガはあくまで冷静に大地を踏みしめる。
フットパーツで強化されたギンガの脚力は、密着状態での体当たりを可能とする。
いや、むしろ体で押し切るそれは突進(チャージ)と呼ばれるもの。
衝突の瞬間の打撃力こそ無いものの、体勢を崩すには十分すぎる威力。
事実、その突撃を受け、ライダーは大きく体勢を崩す。。

「……」

そして3度目、フィールドを纏わせた拳を握る。
今度は威力を殺す暇も与えない。
完全なるチェックメイト。
その最後の一手を加えるために足、腰、腕と力が連動し、右腕が最高速で打ち出される。
発射された拳は速度、鋭さ、威力――まさに弾丸。
射撃/打撃武術(シューティングアーツ)を体現するかのような一撃が放たれる。

「――!!?」

だがここでミーの野生の反応にも驚かなかったギンガの表情が、初めて動揺を露にする。
それもそのはず。必定のはずの未来が覆されたのだから。
406Classical名無しさん:08/07/08 00:54 ID:G.0V6ZpE
しえん
407Classical名無しさん:08/07/08 00:55 ID:lt3PzypY
 
ナックルバンカー。
ギンガの習得したベルカ式近接魔法。
フィールドを張った拳で殴るという単純、だがそれ故に強力で多様性のある魔法である。
故に攻撃に対する盾として使ったことはあった。
拳と拳、力と力を持って拮抗したこともあった。
だがこうも完璧に――フィールドごと受け止められたことはなかった。

そう、本郷猛は、仮面ライダーは不可視のフィールドごとその拳を受け止めたのだった。

それは例えるならば生身の人間が目隠しをしたままで、高速で飛来する鉄球をキャッチするようなもの。
普通ならばまず手が砕け、続いて体を粉砕されてしまう自殺行為。
だがギンガがゲジヒトの一撃で浅くない傷を負っていたこと。
そして何より仮面ライダー1号の膨大な戦闘経験がそれを可能にした。
まるで野球のボールを受け止めるが如く衝撃を逃がし、見えざる一撃を受け止めきったのだ。

そして心の揺れは例外処理の開始までに僅かなタイムラグを作り出す。
それはほんの僅かな、刹那とも呼べる隙。
だが、その隙を見逃す仮面ライダーではない。
ギンガが行動を起こすよりも先に、零距離まで接近したライダーの両手が喉と太腿を押さえつける。
この状態で喉を潰す、いや、首を砕けばライダーの勝利。
だが、本郷は、仮面ライダーはそれでも最後の希望に懸ける。

「……もう一度聞くぞ。拳を引く気はないのか?」

だがその血を吐くような叫びも彼女には通じない。
腕を砕けばこの拘束から脱出できると考え、表情を変えないままで左手をリボルバーギムレットへと変化させる。

「そうか、やはりそれがお前の答えなのか……!」

茂もこうして望まぬ命を奪ったのだろうかか?
マスクの下で歯を噛み締めながら、本郷は決意する。
409Classical名無しさん:08/07/08 00:56 ID:h1ldKy6U


「……ならば、これ以上キサマに最悪の記憶を刻ませるわけにはいかない!
 だから俺は……お前を倒す!」

その瞬間、ドリルを突きたてようとしたギンガが感じたのは重力の消失、そして浮遊感。
そして強大な遠心力と共に上下前後左右、全ての感覚が消失する。
投げられている、と気付けたのはギンガが優秀である証拠。
ただの雑魚ならば自分がどういう常態にあるかも把握できまい。
喉と腿を掴んだままの状態で抱えられ、回転させながら上空へと放り投げられる!

「ライダァァァァ、きりもみシュートオオオオオオオオッ!!」

余波で竜巻を巻き起こしながら、必殺の技が炸裂する。
その名に偽り無く、錐揉み回転をしながらギンガの体は遥か上空へと投げ上げられた。
――無防備な体制のままで。

「トオッ!!」

強化された脚力で地を蹴り、バッタ型改造人間は続くように天を舞う。
その目的は追撃。放たれる技ははライダーキック。
幾多の怪人を屠ってきた仮面ライダー、最強の必殺技。
ここに、形勢は完全に逆転した。
今度はギンガの前に破壊という必定の未来が立ち塞がったのである。

だがスカリエッティによる洗脳は、どんな状況でもギンガに冷静な思考を強制させる。
そして冷静な思考はいかなる時でも最善の一手を導き出す。
PDAを操り、自分とライダーの中間地点に巨大なヘビの人形――マンバの巨体を出現させる。
空中に突如出現した鋼鉄の大蛇は視界を塞ぐどころか、質量という武器を持って仮面ライダーに襲い掛かる。
だがその巨体を目の前にしてもライダーは冷静そのものだった。
突き上げられた足を引くことなく、とっさに身を捻る。
そのまま螺旋を描き、高速回転を始めるライダー1号の体。
ショッカー怪人・イモリゲスを倒した初代ライダー48の技の一つ。
その名も――

「ライダァアアアアアアアッ!! スクリューキィィィィィック!!」

大蛇をドリルと化した蹴撃が炸裂し、粉砕した。
だが一撃はそれだけに留まらない。
貫通力に優れた一撃は自動人形だけでなく、その背後のギンガすら破壊せんと牙を剥く。
だが、

「何ィ!?」

発せられた感情は驚き。
マンバの向こう側、いるべき場所にギンガの姿はなかった。
結果としてライダーの攻撃は文字通り空を切る。
そのまま地上に降り立ち、辺りを探るがギンガは完全に姿を消していた。
警戒を解き、変身を解除する本郷。
だがその姿を見てミーは言葉を失う。

「ほ、本郷さん……!?」

本郷の全身は火傷を負っていた
そう、いくら神業的なタイミングで変身したとはいえ、至近距離からの爆風をその身に受けたのだ。
無傷であるはずがない。
だがその苦痛をおくびにも出さず、ミーに問いかける。

「……ミー、ヤツは?」
「あ……ごめん……見失った」

マンバの巨大な体躯はミーの視界をも塞ぐような形になっていたのだ。
あれから逃げたのは分かるが、何処へ逃げたのかまでは把握できていない。
周囲にいまだ立ち込めるガス臭も追跡を困難にさせている一因だろう。

そして2人の思考はそこに留まらない。
自分達は北へ向かい、その後Uターンし南下している。
そこで出会っていないということは、あの少女は自分達はとは逆方向からやってきたのだろう。
――即ち、TV局のある方角から。

しかも彼女は怪我をしていた。
それは何らかの戦闘行為を行った証拠。
冷静に考えれば別の所で戦闘があったのかもしれないし、ミクたちが力を合わせて撃退したのかもしれない。
そう、冷静な頭脳が訴える。
だがいくら理性がそう訴えようと、感情は最悪の結末を押し付ける。
ミーの脳裏に過ぎるのはオイルの海に沈むラミアの、フランシーヌの、そしてミクの姿。

本郷も同じものを想像したのだろう。
その表情に苦いものが走る。
だが、それでも本郷は、“仮面ライダー”は『TV局へ向かおう』とは口にしない。
何故ならば命を奪うことにためらいのない危険人物を放っておくわけには行かないからだ。
そういうものなのだ。本郷猛……いや、仮面ライダーという生き方は。
だから、ミーはこう答える。
413Classical名無しさん:08/07/08 01:01 ID:lt3PzypY
 
414Classical名無しさん:08/07/08 01:01 ID:.w11kokI
     
「――だったらボクがココに残るよ!」

本来なら自分がTV局に駆けつけたい。
だが先ほどの戦闘を鑑みるに本郷は、仮面ライダーは自分よりも“強い”。
ボディスペックよりも、別の何かが。
常に冷静さを見失わない心と常に人を気遣う優しさ……それに彼には人を安心させる“何か”がある。
ならば自分が行くよりも、きっと確かな力になるはずだ。
だからミーは決断する。
妬みも、後悔もなく――ただ、少しの悔しさを滲ませて。

「……わかった。ミクたちは俺に任せろ。だからこちらは頼むぞ」

その言葉は短いが確かな信頼の証として、ミーの全身を駆け巡る。

「もしも発見出来なかった場合は下手に移動せずここにいてくれ。
 TV局で彼女達の無事を確認したらすぐにここに戻ってくる」

首を縦に振り、了解の意を示す。

「自分の為すべきことをするんだ、ミー。そうすればきっと光明は……見える」

本郷は膝を突き、視線を合わせながら微笑む。
相手に視線を合わせる……それは相手が猫の姿をしていようと決して馬鹿にしない、対等な相手として見てくれている証。
ミーにはそのことが嬉しく、また少しだけ心苦しい。
自分は彼に幾つも隠し事をしているのだから。
だがそれを押し隠し、鋼鉄の胸を叩く。

「まっかせといてよ! アイツ、絶対に見つけてとっちめてやるからさ!」

その姿を頼もしそうに見つめると、本郷は表情を引き締めTV局へと向かう。
ライドチェイサーが風を切り裂き、一直線にTV局を目指す。
一人の男の強靭な意志と共に――
416Classical名無しさん:08/07/08 01:02 ID:.w11kokI
      
417Classical名無しさん:08/07/08 01:03 ID:lt3PzypY
   
【C-6 路上/一日目・午前】
【本郷猛@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:全身に軽度の火傷、ライドチェイサー搭乗中
[装備]:ライドチェイサー『シリウス』@ロックマンXシリーズ
[道具]:支給品一式、トマト×97@THEビッグオー
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催
1:テレビ局へ急ぎ、ラミア、フランシーヌ、ミクと合流する。
2:その後【C-5】に戻り、ミーと合流する
3:殺し合いに乗っていないもの保護、及び合流。
4:風見、敬介、茂と合流。
5:アルレッキーノ、コロンビーヌにフランシーヌ人形のことを伝える。
6:村雨とパンタローネの二人を倒した者を見つけ出し、この手で倒す。
7:シグマに関する情報を集めたい。

※原作8巻(第32話 称号)から参戦。
※アルレッキーノ、パンタローネ、コロンビーヌの特徴を知りましたが、コロンビーヌの格好を旧式のものと勘違いしています。
※茂は殺し合いに乗ってしまった相手を、止む無く殺してしまったと判断しています。
※A−5に、トマトを三個お供えしています
※ミーと情報交換をしました。
 ただし、彼をサイボーグにした剛が世界制服を一時期目論んでいた事。
 クロが己と同様の理由でサイボーグとなった事は知りません。
※この会場には、異世界の者達も呼ばれたのではないかと推測しています。
※シグマは参加者達に使われてる技術・参加者達の構造そのものに興味があるのではと思っています。
419Classical名無しさん:08/07/08 01:04 ID:.w11kokI
  
420Classical名無しさん:08/07/08 01:04 ID:lt3PzypY
    
本郷の背が視界から消えると同時、銀色の猫は踵を返す。

「さて、と……行くか!」

あの少女は時間もない上にダメージを負っていた。
あまり遠くまでは逃げれないはずだ。
だが周りにはガスが残っており、嗅覚による追跡は望み薄だ。
だから民家を逐一調べ回るしかない。
だが目の前に広がる住宅街はあまりに広大で、一軒一軒調べまわっていたら恐らくは日が暮れてしまう。
それでもミーは進む。自分の成すべき事を成すために。
そのことがあの少女を守ることに繋がると信じて。

【C-5 住宅街/一日目・午前】
【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:健康
[装備]:青雲剣@封神演技
[道具]:支給品一式、不明支給品(0〜2個)
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない、打倒主催
1:襲ってきた女(ギンガ)を探し、撃破する。
2:シグマ打倒の為、仲間を集める。
3:風見、敬介、茂と合流。
4:クロとは合流したいと思う反面、彼に剛の事を暴露されるのではと恐れている。
5:本郷に対し、少々の罪悪感。
※なんでも切れる剣、ガトリング等の武装は没収されています。
※悪魔のチップの制限については後続の書き手にお任せします。
※茂は殺し合いに乗ってしまった相手を、止む無く殺してしまったと判断しています。
 彼に対する警戒心は完全に消えています。
※本郷と情報交換をしました。
 ただし、自分をサイボーグにした剛が世界制服を一時期目論んでいた事。
 クロが本郷と同様の理由でサイボーグになった事は話していません。
【支給品紹介】
青雲剣@封神演技
魔家四将の一人、魔礼青が使用する宝貝。
複数の斬撃を発生させる魔剣。

***


個体名“本郷猛”の離脱を確認。
警戒モードを一部解除する。


――あの時、私は自動人形を盾とした瞬間、決断を迫られた。
即ち攻撃か、防御か、回避か。
生存のための次なる動きを。

そのうち最も成功確立が高いのは“攻撃”であった。
特に乾坤圏を選択した場合の撃破確率については70%以上と推算された。
だが連戦の後の疲労した体では、乾坤圏を放てば良くて行動不能――最悪、意識を失ってしまっただろう。
それでは“ミー”と呼ばれるネコ型サイボーグの前に無防備な状態を晒すこととなる。
過去に遭遇した2体のネコ型サイボーグとの共通項、および先程の斬撃から見ても“ミー”はかなりの戦闘力を有すると推測される。

更に――“本郷”と呼ばれる男は何度もこちらの予測値を遥かに上回る性能を見せた。
そのことを計算に入れると成功確率は50%を割ってしまう。
故に私は退避を選択した。


……そして、それは正解だったらしい。
私があの大蛇の人形を盾として呼び出すことを予測していたとは思えない。
だが“本郷”はとっさの判断により、技を切り替え粉砕した。
あの威力から見るに、別の技でカウンターを狙っていればこちらが撃破されてしまっただろう。
身体能力、技量、そしてそれ以上に冷静な思考・判断力。
これらの要素を高次元で併せ持つ、“本郷”をこの戦場における有数の強者だと判断。
本郷猛――"カメンライダー"を任務達成のためのA級危険因子と認定する。


そして思考をこれからの行動方針に切り替える。

いかにカメンライダー相手でも多対1ならば勝機はある。
やはりノーヴェ、及びチンクとの合流を優先すべきである。
だが全身の裂傷、カメンライダーとの戦闘で発生したダメージ及び平衡感覚の一時的低下、想定以上に消費した魔力――
先程の戦闘で受けたダメージはそのどれもが決して無視できるものではない。

頼みの綱のエリクサーは先程の襲撃で完全に使い切ってしまった。
よってこの状況で推奨される行動は休息。
都合のいいことに戦闘を起こしたのは住宅街の中だ。
先程の辺りに立ち込めたガス臭といい、こちらから行動を起こさない限り、見つかる可能性は限りなく低い。
接近されたとしても生体センサーを携帯しておけば十分対応できると判断する。


そう判断し、壊し合いの最中だというのに、ミーが探しているというのに迷いなく目を閉じる。
こちらの方が効率的だと判断した、ただそれだけの理由で。

然もあらん。今の彼女はするかしないか、0と1で動く自動人形。
任務達成のために動く自動機械なのだから。

その目的は唯一つ――そう、すべては、破壊のために。
【B-6 民家/一日目・午前】
【ギンガ・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】右腕に刺し傷、全身に浅い切り傷、疲労(大) 魔力消費(中)、全身にダメージ、睡眠中
【装備】フットパーツ@ロックマンエックス、乾坤圏@封神演義
    生体センサー@メタルギアソリッド、天王剣@クロノトリガー、
【道具】支給品一式×2(ギンガ、王ドラ)
【思考・状況】
基本思考:敵(ナンバーズ以外)の破壊
1、休憩後、ナンバーズと合流
2、敵を探し、破壊する

※外壁が異常に堅いことに気づきました。
※カメンライダー”をAクラスの警戒対象として認識しました

※【C-6】に大破したマンバ@からくりサーカスが放置されています。
425Classical名無しさん:08/07/08 01:11 ID:OP3NwTtY
代理投下終了です。
支援ありがとうございました。
426Classical名無しさん:08/07/08 01:12 ID:.w11kokI
投下乙&代理投下乙

ギンガとミー君、本郷さんの戦いが充実していました。
仮面ライダーを警戒するギンガがどう動くか。
ミー君はテレビ局に向かわないけど、これが吉とでるか凶とでるか。
GJ!
427Classical名無しさん:08/07/08 01:15 ID:lt3PzypY
投下と代理投下おつかれさまでした。

当ロワ初の仮面ライダー1号の戦闘とくと拝見いたしました!
ミーを庇って一瞬ヒヤリとしましたがさすが再登場の時をわきまえてる男!
一方で迷走するギンガはどこへ行くのか……ミクの死を知らないミーの今後も気になるところです
428Classical名無しさん:08/07/08 01:44 ID:HvRQU38c
投下乙
本郷VSギンガとても燃えたぜ
ところどころ他のロワのパロディやってるとこに笑った
429 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/08 18:00 ID:.w11kokI
ボイルド、タチコマ投下します。
430良心の価値 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/08 18:00 ID:.w11kokI

 ボイルドはビルの屋上へと辿り着き、追跡対象とすれ違ったことを知る。
 林が広がる間にそびえるビルの入り口に、複数の足跡を発見、突入を開始して、今に至る。
 重力を制御し、一気に跳躍をしなかったのには理由があった。
 制限……重力の制御に、リミッターがかけられている。
 V3との戦いで感じた重力の壁の出力の弱さ。過去のボイルドのように、銃弾を逸らしきれない状況が生まれるだろう。
 もっとも、ボイルドはそれでも構わなかった。
 軍人としての経験が自分にはある。かつてのコーチより教わった、捜査技術がある。
 何より、すべてを塗りつぶす、虚無がある。新たな化け物銃、ハカイダーショットを手に、階段を昇り、人の気配がしないことを確かめ辿り着いた屋上。
 無駄足ではなかった。明らかに争った形跡がある。
 あの面子……十代後半の少女一人。十代になるかならないかの少女。多脚戦車一台。
 戦闘力は全員保有している。しかし、血痕があるということは、被害者は二人の少女の内、誰かと見ていいだろう。
 なら、実行犯……裏切り者は誰なのか。
 小型戦車が暴れた跡にしては、部屋はそれほど荒れていない。
 小型戦車の暴走の線は薄いだろう。
 短髪の十代半ばの少女なら?
 彼女の主な武器は炸薬だが、仲間を裏切り、刃物を使って襲えば、破壊はこの規模で収まる。
 悪い線ではない。しかし、問題はある。そのことを語るのは後だ。
 あのゴシックロリータ服少女ならば?
 三人と対峙して、一番危険を感じたのは彼女だ。見た目だけなら、戦闘力は少ないように見えるが、身のこなしは一流の軍人に劣るものではない。
 引き際を心得た動き、とっさに腕を犠牲に最小限の被害で抑えた判断力。
 その彼女が、あの未熟な動きが目立つ少女に遅れをとるとは、考えにくい。
 彼女が残した右腕も、気になる。掌に移植された金属端子での変形の指令を正確に受け取り、形を変える金属だ。
 と、なると犯人はゴシックロリータ服の少女である可能性が高いだろう。
 ボイルドが膝をかがめて、痕跡を探る。
 明らかに一時間かそこらにできた傷。なら、まだ遠くへ入っていないはず。
431良心の価値 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/08 18:01 ID:.w11kokI
 そう思考するボイルドの耳朶を、大型車のタイヤと地面が擦れあう、悲鳴のような音が打つ。
 音は僅かだったゆえ、距離はある程度は離れているだろう。今向かえば間に合う。
 いかなるものも虚無を訪れさせる。重力を展開、すぐに現場へ向かおうと跳躍の準備をする。
 視界の端に、青い影がよぎった。とっさに、全身に重力の壁を張り巡らせる。
 周囲に銃弾が降り注ぐ。一発、逸らしきれずボイルドの頬に血が流れた。
 瞳の色と同じく、冷徹な眼差しで、小型戦車を射抜く。
 空洞のような心に何も響かない。虚無に塗りつぶすべく、小型戦車へとボイルドは跳躍した。



「ひゃ〜、あの黒い人と赤い人、強いねー。近寄らないようにしよっと」
 得たレアメタルを抱えて、タチコマは四本足を駆使し移動をしている。
 ドラスの必要といったレアメタルの回収中にハカイダーとゼロの戦いを目撃していたのだ。
 激闘を繰り広げる二機を尻目に、すたこらさっさと逃げて現在に至る。
(非常識な戦いだった……あんな人ばかりなのかな?)
 タチコマの思考が、戦闘をしていた二人に向く。どちらが仕掛けたのかは会話を聞き取れなかったため、分からない。
 しかし、今構っていられないのは真実だ。早く二人の下に向かい、安全を確保するように進言しよう。
 そう考えていたタチコマは、建物の陰に隠れる。雑居ビルの窓に、重力を操る男がいたのだ。
 彼の男の戦闘力を知るタチコマはドラスたちの安全の確保のため、逆側に存在する雑居ビルの壁をワイヤーを駆使して登る。
 レンズを伸ばし、ドラスたちがいたはずの場所を見るが、彼等はいない。退避したのだろう。
 ホッとするタチコマが、大型車のタイヤが軋む音を捉える。同時に、ボイルドが動こうとしていた。
 ドラスたちはあそこにいるのだろうか?
 一つの疑問と共に、タチコマは跳躍、チェーンガンをボイルドに向ける。
 完全な奇襲だ。なのに、チェーンガンの弾は重力の壁に逸らされていった。
 対応能力の高さにタチコマは人間のように戦慄しない。
432良心の価値 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/08 18:03 ID:.w11kokI
 次の策をとるため、跳躍するボイルドを誘導するように退いていく。
「こっちだよー」
 突進してくるボイルドを、挑発するように屋上から飛び降り、路地へとめがけて駆けていく。
 それなりに横幅のあるタチコマでも、余裕で通れる道だ。
 タチコマの、恐怖の鬼ごっこが今始まる。



『――インフォメーションメッセージ』
 ボイルドが保有するPDAより、電子音が響いた。
 情報を聞き漏らさず、且つタチコマ――四脚の戦車――を逃がさないように、地面を蹴り続ける。
 速度差より、接近戦を仕掛けるのは難しいと判断した。
 左手にデザートイーグルを構える。マグナム弾が吐き出され、タチコマが存在していた地面を抉る。
『06:00時点における本プログラムからの脱落者をお知らせします』
 右手に鈍く光る、ハカイダーショットはまだ使わない。
 一撃必殺のモンスター。虚無への入り口。
 四脚戦車は、まだ間合いに入っていない。銃口はピタリと、脚の一つへと向けている。
 重力で腕を支えて反動に備える。引き金に指をかけた。
 死んだ人間に、バロットはいない。ならウフコックも無事であろう。
『なお、進入禁止エリアは【C-2】、【H-8】の2ブロックとなります』
 禁止エリアを頭に入れて、ボイルドは猟犬のごとくタチコマへと迫る。
 瞬間、タチコマがワイヤーを引き上げる。ボイルドの頭上に、瓦礫が降り落ちた。
 トラップ。重力の殻が瓦礫を逸らす。遮られる視界。一瞬の間でタチコマの姿が消える。
 逃げたか。否。
 ボイルドはコマのように回転しながら、地面を離れる。刹那、ボイルドがいた地点に無数の火花が散った。チェーンガンによる掃射だ。
 ボイルドはビルの壁に、重力を横方向に発生させて『着地』した。照準が再びつけられる前に、タチコマに向かって発砲。
 デザートイーグルのマグナム弾はタチコマの体表で跳ねる。左腕と共に、ボイルドはデザートイーグルを収め、ハカイダーショットの銃口を向けた。
 破裂。超高周波炸裂弾がハカイダーショットの銃身から爆発的に加速する。
 タチコマのボディに漆黒の穴が開く。
433良心の価値 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/08 18:03 ID:.w11kokI
 小型とはいえ、戦車の装甲を貫いたことに戸惑っているのだろう。
 とはいえ、機械的な動きは変わらない。痛みを感じないからだ。
 故障も恐れず、体当たりをしてくるタチコマを醒めた目で見つめる。大質量に任せた、のしかかり。
 制限下でもトンを越える衝撃を生み出す、V3キックに耐えた重力の壁に、加速を得たタチコマのボディの衝撃がのしかかる。
 逸らしきれない。刹那の間に、ボイルドは判断。
 衝撃を流すように重力の範囲を球状へと変形させる。丸みの重力壁に沿って、タチコマのボディが流れていく。
 自分の身体もタチコマの流れるボディにあわせて回転、すれ違いざまにハカイダーショットを一発放った。
 炸裂<エクスプロード>
 タチコマの四脚のうち一本が吹飛ぶ。
 残った三本足でタチコマは器用にバランスをとり、カメラアイをボイルドに向ける。
 機銃の掃射。跳弾すらも重力の壁で防ぐ。
 数発が逸らしきれず、ボイルドの身体に傷を刻む。痛み、傷の深さ、共に軽い。動きに支障はない。
 ゆっくりとタチコマに近づくが、油断はしない。タチコマの機動をまだ殺しきれていないからだ。
 ボイルドは目の前の多脚戦車を虚無で塗りつぶさんと、迫った。


 タチコマはレンズに近づいてくるボイルドを映しながら、この後の行動を予測をする。
 もし、ボイルドを逃がしたとするならば、彼はドラスやスバルを追いかけるだろう。
 彼らが自分をおいてどこかに行ったとしても、そう遠くに移動するとは考えにくい。
 人間という奴の理不尽さは何度も見てきた。ドラスなんて、他人を銃弾から庇うような正確の持ち主。
 彼らが離れた理由を推察するなら、怪我人を抱えたスバルが何らかの方法でボイルドの接近を察知、ドラスを連れて逃げたのだろう。
 もしも公安9課でのミッションだと仮定するなら、自分の役割は決まっている。
(囮だよね)
 なるべくボイルドを引きつけて、仲間の撤退路を確保する。命のない多脚戦車なら当然行うべき任務だ。
 ドラスやスバルに置いていかれたタチコマが判断した、任務の内容。迅速に、確実に行うためのボイルドとの対峙。
 まだ時間は充分に稼げていない。稼げる手段は、まだ尽きていない。
「ねえ、おじさん」
434良心の価値 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/08 18:04 ID:.w11kokI

 タチコマの声に、ボイルドは無反応。徹底して警戒を緩めず、臨戦態勢を解かない。
 手負いの多脚戦車にだ。ありがたくてレンズからオイルが漏れそうになる。もっともそんな機能はないが。
 タチコマは話を続ける。
「おじさんは何で人を殺すの?」
 構わず、ボイルドが銃弾を吐き出させる。タチコマは跳躍、大穴の開く鉄板を見届けて、油断なく銃口を移動させるボイルドを視界に入れる。
 タチコマはワイヤーを射出。己の身体を巻き上げて、銃弾から逃れる。
 機銃をボイルドに向け、ばら撒きながら三本足で器用に退避。
 ボイルドを振り切らない程度の速度で、ひたすらドラスたちが逃げたであろう方向とは逆に移動を続ける。
 身体を掠める銃弾にひやひやしながらも、冷静にボイルドを誘導していった。
 何せ、今機能停止すればドラスたちの身の安全は保障できないからだ。だから、これはきっと人間で言う「ひやひや」した状況なのだろう。
 タチコマはビルにワイヤーを撃ち込む。無機質なカメラアイが陽光を反射、眼下に存在するボイルドを見つめた。
 殺人者……いや、すべてを塗りつぶす捕食者は、局地重力の壁をまといながら迫る。
 彼の行動を制限させる。タチコマは己の任務を理解した。


 ボイルドはタチコマを逃がさないように重力の力場をコントロールして加速を続ける。
 タチコマが全力で逃げない理由を推察。そして、タチコマを逃がす確立がほぼ零になる結果をはじき出す。
 誰が最初に虚無に飲み込まれようと関係ない。すべて等しく虚無が飲み込む。
(いたぁ……い、の?)
 とっくに死んだはずの……いや、殺したはずの良心がかすかに蘇る。
 自分を殺しても守りたかった良心。自分を拒絶したウフコック。眠らない代償に現れるようになったビジョンがボイルドの耳に、言葉を蘇らせる。
『羊じゃねえんだ』
 ウフコックすらも飲み込もうとした街の欲望。守るには自分の良心を殺すしかなかった。すべてを虚無に飲み込むよりほかなかった。
 ふと、タチコマに視線を向ける。脚を砕かれ、傷を追っていく姿はかつての自分たち……街の欲望の生贄となった羊のようだ。
 彼は裏切り者がでたことを知らない。知ったらどうするのか、僅かに疑問が沸く。
435Classical名無しさん:08/07/08 18:05 ID:lt3PzypY
 
436Classical名無しさん:08/07/08 18:05 ID:lt3PzypY
    
437良心の価値 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/08 18:05 ID:.w11kokI
 自分のように、良心を殺すか。
 ウフコックのように、良心であり続けるか。
 その自らの気持ちも、刹那の間に虚無に飲み込ませ、軍人としての本能を前に出す。
 破壊。
 ただその一点をタチコマに殺気と変えて放つ。表面上のメタルボディからは感情の波は読み取れない。
 やがてタチコマは、小さな工場へと入っていった。
 自ら逃げ道を断つ。大柄ではあるが、機動力のあるタチコマの能力を考えれば、明らかな判断ミス。
 ボイルドもそのまま工場内へと突入する。タチコマが工場内の中央で、待ち構えていた。
 攻撃を防ぐ準備、ハカイダーショットを撃ち込むために銃口の移動、タチコマが回避行動をとる際に、着地する位置の予測。
 すべて次の行動のために一瞬で準備し、威嚇のためハカイダーショットの一撃をタチコマの残った三脚のうち一脚を撃つ。
 ボイルドは次のタチコマの闘争経路を予測して、そこにデザートイーグルの銃口を向けるために左腕を動かす。
 結果は、タチコマの脚が吹飛んだだけだった。逃げることも、抵抗することもない。
 何を考えているかと、ボイルドが思考をする。
 決して、敵が諦めたからだとは油断しない。何らかの反撃の手段がある。
 今までその慎重さと、相手を侮らない軍人としての生き様が、カトル・カールとの戦いを生き延びる結果を生んだ。
 油断なく構えるボイルドの前に、タチコマが身体を震わせる。
 恐怖でおびえているのか?
 否。
「僕の勝ちだよ。おじさん」
 勝利を確信した、振動。
 飛び上がる巨大な影。ミサイルを確認。工場の天井に到達した。
 炸裂<エクスプロード>
 瓦礫が落ちて、虚無の雨となり襲ってきた。


 タチコマはPDAに残る、最後の支給品の使いどころを見定める。
 PDAに記された道具……『スプリットミサイル』。
 十五メートルクラスのロボットに使われているミサイル。威力も凄まじいものがあるだろう。
438Classical名無しさん:08/07/08 18:06 ID:lt3PzypY
      
439良心の価値 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/08 18:06 ID:.w11kokI
 その分、サイズが大きく、PDAから取り出すタイミングを見極めなければならない。
 それに、このミサイルの威力をもってしても、ボイルドをしとめ切れるか予想がつかない。
 タチコマはこのミサイルの使いどころを見つける。地図によれば、小さな工場があった。
 だから、ここで待ち伏せて、ボイルドが近づくのをひたすら待った。
 ハカイダーショットの弾丸が脚を砕く。二脚ではさすがに身体を支えきれず、崩れる。
 PDAを操作する手が生きていることに感謝をしながら、タチコマはタイミングを計った。
 ボイルドが油断なく迫る。―― 射程距離。
 その思考を読み取ったがごとく、ボイルドが構えを取る。もう、遅い。
「僕の勝ちだよ。おじさん」
 PDAから召還されるミサイル。天井に飛んでいくそれを、止めることはもうできない。
 タチコマの狙いは、あくまで足止め。ボイルドというモンスターを、ドラスやスバルに近づけないこと。
 そのため、建物の内部にボイルドを誘導。天井を破壊と共に、瓦礫にボイルドを埋める。
 そして、あらかじめ外に向かって射出していたワイヤーを巻き取り、自分は工場から脱出する。
 早速、タチコマは脱出のための行動に移った。
440良心の価値 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/08 18:07 ID:.w11kokI


 しかし、タチコマはその行動を中断。
 重力の壁を展開するボイルドに、タチコマが突進をする。重力の壁ごと、ボイルドの身体を僅かによろめかせた。
 ボイルドは落ちてくる瓦礫にすら、興味なさそうに見つめていた。そして、デザートイーグルの銃口をワイヤーに正確に向けている。
 それは、確実に生き残れることの証拠。逃げれる証。―― タチコマを逃がさないサイン。
 脱出不可能。ただし、ボイルドは瓦礫を逃れることができる。
 そうタチコマが判断した瞬間、脱出を放棄、ボイルドを押さえ込むことにする。
 その行動が生きた。刹那の猶予が、ボイルドの逃げる隙を殺す。
 振り落ちる瓦礫が、タチコマの身体にのめり込む。傘のように重力の壁を展開するボイルドとは対照的だ。
「ドラスくん、スバルさん、逃げてね……」
 誰にも届かない声。心にすら届かないことを知らずに、タチコマは言う。
 ただ一人、虚無を抱えたボイルドにのみ、その声が届いた。



 ボイルドにはパートナーがいた。
 宇宙戦略研究所にて、万能兵器と開発された金色のねずみ。ボイルドが心を許した、小さな生命。
 殺しきれなかった良心。守りたかった良心。
 09法案にもとずく法執行機関のメンバーとなり、人に触れ合うウフコックには希望があった。
 パートナーである自分も、日々自分の存在意義を持っていき、人とのつながりを増やしていく彼に希望を持った。
 カトル・カールとの激闘、仲間の死、裏切り、街の欲望、法執行機関の乗っ取りの開始、守るべき価値のない証人。
 虚無がボイルドを塗りつぶす。
 ボイルドを動かしたのは、決して怒りではない。ただただ、守りたかったのだ。
 残されたたった一人のパートナー、ウフコックを。
441Classical名無しさん:08/07/08 18:08 ID:Z7.NjiS.

442良心の価値 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/08 18:08 ID:.w11kokI
 そのために……虚無を己の中に取り込む。すべてを虚無へと塗りつぶす。
 闇の中で、重力の壁を展開したまま、重力の出力を上げる。
 瓦礫がいくつか飛びのいた。差し込む光の向こう、青い多脚戦車が視覚に入る。
 機能停止しているのだろう。彼の持つPDAにウフコックは存在していなかった。
「お前の仲間は裏切った。それを知ったら、今のように守るために動くのか?」
 答えが欲しかったわけではない。ただの独り言。ただの呟き。
 だからこそ、答えがあったのには驚いた。
「ドラスくんたちが裏切ったって、どういうことさ?」
「まだ生きていたか」
「うん、さすがにもう持たないけど……数分くらいは起動できるよ」
「抵抗もできないようだな」
「悔しいけどね」
 ボイルドはタチコマに背を向けて、瓦礫を跳ね飛ばす作業に戻る。
 そのままの姿勢で、タチコマに先ほど得た推察を語った。
「現場には争った跡があった。人の血も。つまり、どちらかが裏切ったということだ」
「現場検証か。少佐ならやるね。おじさん、僕たちと同じく警察の人?」
「法執行機関に所属していた時がある」
「ふーん。それじゃ、ドラスくんとスバルさんが喧嘩したのかな……」
「悲しいか?」
「よく分からないや」
 タチコマの検索結果、『sad』に関する説明を得たことをボイルドは知らない。
 タチコマはその結果、人間の感情であることを知るが、どう判断していいか分からなかったのだ。
「僕には悲しいって概念を理解できない。
僕に『死』がないからなのかな。でもドラスくんもスバルさんも、僕は仲間だったから助けた。
僕を裏切られて悲しいって感情は分からないから、それでいいや」
 だからこそ、死をも覚悟する戦術を取ったのか。
443Classical名無しさん:08/07/08 18:09 ID:Z7.NjiS.


444良心の価値 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/08 18:09 ID:.w11kokI
 ボイルドはそう理解をした。死を恐れぬのなら、瓦礫に自分ごと、敵を埋めようだなんて考えもしないだろう。
 もっとも、それほど想っている仲間を守るためなら、己を殺すことができる人種もいることをボイルドは理解しているが。
 タチコマの生き様は、一つの概念を思い出す。
『羊! 羊! 羊じゃねえんだ!』
 ワイズの幻影が、またも蘇る。タチコマは羊なのだろうか? 本人はどう思っている。
 かつて、良心に殺されたであろう自分と、タチコマを重ねた。虚無に身を任せなかった自分を。
 何より、生きた良心、ウフコックに。
「『道具』であり続けたといいたいのか?」
「僕はAIだから死なないけど、『道具』ってのは異議あり! 機械にも愛を!」
「そうか」
「クスリともしないんだね。笑いは人生の……オアシス……だって……さ……」
 タチコマが起動停止する様をボイルドは見届け、空気を吸い込む。
 無知ゆえに、仲間を守り続けたタチコマに、死んだはずの良心が重なった。


 物言わぬタチコマに、この殺し合いでのウフコックの未来を見たような気がした。
 バロットに支給されていないのなら、この殺し合いの誰かにもたらされているかもしれない。
 その人物が、バロットのようにウフコックを気遣ってくれる保障など、ない。
 ウフコックが道具としての存在のみを要求され、強要されれば。
 かつてボイルドが行ったように眠らせ、その力だけを振るうようになれば、ウフコック自身虚無に飲み込まれる。
 ボイルドが一歩歩み寄り、薄暗い瓦礫の山の中、重力を展開。
 同時にハカイダーショットを撃ち放つ。
 崩れていく瓦礫。吹飛ぶ瓦礫。暗い視線がそれらを射抜く。
 V3は言った。世界にはマルドゥック・スクランブルと理想を共にする仲間が存在すると。
 この世界に、ウフコックがいる。
 殺し合いで消耗される前に、ウフコックを救い出す。ウフコックを消耗するものをすべて、虚無に塗りつぶす。
445良心の価値 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/08 18:10 ID:.w11kokI
 希望など見えない。明るい未来など既にあきらめている。
 いや、夢想すらしたことない。
 ハカイダーショットを向ける。
 デザートイーグルをPDAに送った。
 左腕の重力発生装置を瓦礫に向ける。
(おお、炸裂<エクスプロード>よ――!)
 醜い犠牲者たちのビジョンが蘇る。ハカイダーショットの銃口が火を吹いた。
 爆心地――瓦礫を虚無に返す。
 この殺し合いの参加者すべてを、零にするかのように。



【タチコマ@攻殻機動隊 破壊確認】
【残り 36人】


【G-1 小さな廃工場跡/一日目・朝】

446良心の価値 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/08 18:11 ID:.w11kokI
【ディムズデイル・ボイルド@マルドゥックシリーズ】
[状態]:中程度の疲労、全身に中〜小程度のダメージ、胸部に中程度の打撲
[装備]:デザートイーグル(5/7)@魔法先生ネギま! 、弾倉(7/7)×1+(0/7)×1
    ※弾頭に魔法による特殊加工が施されています
    ハカイダーショット@人造人間キカイダー(8発消費)
[道具]:支給品一式、ネコミミとネコにゃん棒@究極超人あ〜る
    ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス×2(チンクの支給品)
    ドラスの腕、PDA×2(ボイルド、タチコマ)
[思考・状況]
基本:ウフコックを取り戻す
1:瓦礫をどかす。
2:ウフコックを濫用させないため、参加者をすべて殺す。
3:バロットと接触する。死んでいる場合は、死体を確認する
4:ウフコックがいないか参加者の支給品を確認する
5:充実した人生を与えてくれそうな参加者と戦う
6:もっと強力な銃を探す。弾丸も。
[備考]
※ウフコックがこの場のどこかにいると結論付けています。
※ドラスの腕を武器として使うことを検討中

[共通備考]
G-1エリア内の小さな廃工場が瓦礫となり、ボイルドが埋まっています。
瓦礫をどかすのにどのくらい時間がかかるかは、次の書き手にお任せします。


【支給品紹介】

【スプリットミサイル@スーパーロボット大戦OG】
パーソナルトルーパーが装備できるミサイル。
447 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/08 18:12 ID:.w11kokI
投下終了。
指摘、感想お待ちしています。
448Classical名無しさん:08/07/08 18:34 ID:lt3PzypY
投下乙です

意外ッ! それはスプリットミサイルッ!!
タチコマはよく健闘したよ…原作どおりなんか感情移入できる戦車だ。
一方でまだまだ元気なボイルド。果たしてウフコックは誰かに支給されてるのか…それを見つけたボイルドがどう出るのか。
今後のハードボイルドの活躍に期待!

あと、一部ミスが
ドラスなんて、他人を銃弾から庇うような正確の持ち主。

ドラスなんて、他人を銃弾から庇うような性格の持ち主。
449 ◆1eZNmJGbgM :08/07/08 21:14 ID:lXmhWpWQ
草薙素子投下します。
450 ◆1eZNmJGbgM :08/07/08 21:16 ID:lXmhWpWQ
(……不自然だわ)

それが彼女―メスg…草薙素子―が放送を聞いた素直な感想だった。

死者の人数の多さに思う所はあるものの、彼らがどのような人物なのか推測すらできない以上大した
意味を持たない。いま自分の傍らにある遺体―あえてこう呼ぶ―がドラ・ザ・キッドであるという事が
放送とPDAの両方で確認できたぐらいである。あとはこの場に召喚された者の中で唯一顔見知りの
タチコマの名が呼ばれていないこと、その程度であった。

それより重要なのは禁止エリアの告知。もっと言い切ればH-8、なぜそこが選ばれたのか。
主宰者が言うところでのこの「壊し合い」を進めるなら、もっと行動に制限を設けられる地区にするべきだろう。
例えば自分の近辺ならH-4、ここを禁止エリアにすれば右下から右上のエリアに移動するにはF-4を
通るしか方法が無くなり、より他の参加者、しかも先程の放送で呼ばれた死者の数からすれば
危険人物との接触が多くなるというのに。最初の禁止エリアを様子見にするのならばH-8と共に
指定されるのがC-2というのもおかしい。地図で見る限り、C-2はただの湖にしか見えないからだ。
もしかしたら湖底に何か秘密の施設があるのかもしれないが、水中を行動できる参加者がそれほど
多いとも考えにくい。その上でさらに禁止エリアに指定する必要のある施設が存在する確率がどれほど
あるというのか。そもそもそれほど重要ならE-4の宇宙要塞の中に設置すればいいであろうに。
二か所とも無意味なエリアを指定することはありえない。



(つまり今回の禁止エリアではC-2は囮、デコイ。本命はH-8の発電所…)
451Classical名無しさん:08/07/08 21:17 ID:.w11kokI
 
452 ◆1eZNmJGbgM :08/07/08 21:18 ID:lXmhWpWQ
なにより発電所の立地場所からしておかしい。だいたいなぜG-7とH-7、G-8とH-8の四か所に跨って
いるのか。最初から禁止エリアに指定するなら1エリアに収まるように設置していれば完璧であっただろう。
この場合、発電所を
1・4エリアに跨るように設置せざるを得なかった。
2・わざと4エリアに跨るように設置した。
3・たまたま4エリアに跨ってしまった。
この三つが選択肢としてありえそうなところか。

(まず1番、これはない)

おそらくこの会場は既存の施設ではなく一から創り上げたものだろう。なぜなら肝心なものが
欠けている。それはこの会場から外部へ移動できる手段が存在しない。一応シャトル発着場らしき
建物は地図上にあるが、それが四か所もあるのならおそらく各発着場への移動、つまり内部向けで
あろう。もしくはあの宇宙要塞へ移動することもできるかもしれないが、これも内部向けといえる。
大体、ここが元々は居住空間だとしたら簡単に宇宙要塞などという物騒な場所に移動できるのに
わざわざ内部に軍事基地など作るものか。むしろ治安維持に係わるなら軍事基地よりも警察暑の方が
スピード、コストの両面から考えても効率的なのは当然。
話を戻すと、あのシグマという男はこの会場の地形や建物を好きな位置に配置できる。当たり前だ、
設計図の段階で無理が生じたら書き直せばいいだけの事。「せざる」などという事態など起こり得ない。

(次に2番、これも放送の内容からして有り得ない)

もしわざと4エリアに跨るように設置したならなぜ最初の禁止エリアに指定する必要があるのだろうか。
故意に分割したならおそらくはトラップやミスリーディングなど、参加者にマイナスの効果を与える存在を
仕掛けておいたであろうに、禁止エリアに指定した事で全てが水泡に帰してしまった。そんな無駄な事を
するなら最初からそんな仕掛けを作らないか、禁止エリアに指定しなければいい。よってこれも無し。

453Classical名無しさん:08/07/08 21:20 ID:.w11kokI
   
454 ◆1eZNmJGbgM :08/07/08 21:21 ID:lXmhWpWQ
(となると一番有り得そうなのは3番…)

このたまたまというのが最も適当な理由だろう。
そもそもコンピュータ、機械のやる事にたまたまということがあるのかは疑問だが、おそらくはそれほど
重要な施設としては考えていなかったのだろう。発電所と比べてD-7の電波塔、あるいは各地のシャトル
発着場に橋といった確実に1エリアに収まっている施設、場所の重要性は理解できる。
電波塔には自分たちには電脳通信、あるいは他の参加者が使える未知の通信手段の制限、そして
PDAの転送や体内の爆弾の遠隔操作に使用している通信手段。全てとは言わないまでも、どれかが
当てはまる可能性は十分あるだろう。
シャトル発着場と橋は会場内の移動手段の制限。特にこの会場のようにブロックごとに分割されていると
その効果は非常に高い。
それに比べて発電所は極論でいえば電力さえ生産できればそれでいい。場所だって何処でも構わない。
他の施設を利用するのなら電気が必要だから破壊する必要もない。最悪自家発電装置があれば
発電所自体の必要性すらない。このように必要性すら怪しい施設、適当に設置されても仕方ないかもしれない。

(じゃあなぜ最初に禁止エリアに指定……なんらかのバグがあったから?)
455Classical名無しさん:08/07/08 21:21 ID:.w11kokI
    
456 ◆1eZNmJGbgM :08/07/08 21:24 ID:lXmhWpWQ
おそらくは、すぐにでも禁止エリアに指定「しなければならない」程の何かが見つかったからではないだろうか。
仮に重大なバグが見つかったとしてもそれは発見されない限り何の問題もない。むしろこうやって禁止
エリアにすれば自分のように余計な詮索をする者も出てくる。そのぐらい分からない連中ではあるまい。
なぜそのリスクを冒してでも禁止エリアに指定して遠ざける必要性があったのか。
それは調査すればすぐにでも判明してしまうほどの致命的な問題が生じてしまったから。しかもこの
壊し合いの意義を根底から覆しかねないレベルで。それがどんなものかは想像できないが、皮肉な事に
発電所内を調査すると推測が出来るかもしれない。
単純に発電所の仕組みを言ってしまえば、火力ならボイラー、タービン、発電機、制御室。原子力なら
ボイラーの代わりが原子炉になるだけだ。水力、地熱は地図を見る限り除外しても構わないだろう。
仮にこの四つの設備が均等に配置されていれば、禁止エリア内の設備に問題があるということになる。
現状で禁止エリアに進入できなくともおおよその予測が立てられるし、体内の爆弾を無力化できた後なら
主催者陣営に対しての強力な切り札に成り得る。
それに危険な賭けではあるが禁止エリアに侵入した場合の状況を知る必要もある。短くて10秒、長くて
30秒程度の警告音が鳴らされるとは思う。参加者同士のぶつかり合いを望んでいるのなら、あくまで
禁止エリアはおまけにしか過ぎないだろう。確証がない以上いきなり爆発するかもしれないがリスクを
恐れた情報などにどれほどの価値があるというのか。



(もっとも、この仮説には重要な事が欠けているけど…)

この仮説が成立する大前提は「発電所の内部に誰もいない」ことである。もしかしたら単純に発電所
内部に留まっている参加者を外部に移動させるための措置かもしれない。開始から6時間ずっと
一ヶ所に留まり続ける者など、戦闘力に乏しい者か罠を仕掛けて待ち伏せる者のどちらかしかない。
後者だとしたらわざわざ企画に協力的な参加者の邪魔をするとは思えない。ならば前者、それに
そんな奴が禁止エリアの隣にいられるような神経を持ち合わせている筈もない。
つまり単に安寧の地から戦場へ引き摺り出す為の措置という可能性も十分にあり得るのだ。
457Classical名無しさん:08/07/08 21:24 ID:.w11kokI
     
458 ◆1eZNmJGbgM :08/07/08 21:28 ID:lXmhWpWQ
(それでも向かう価値はある)

少なくとも参加者、それも壊し合いに乗っていない者との情報交換と支給品の確認、発電所内部の
様子、これだけでも今の自分にとっては十分な成果。結果発電所内に異常が無くともそれで構わない。
「発電所の中には問題が無い」という情報が手に入る。そしてこれはかなり貴重な情報。
当たり前だ、禁止エリアに指定されている辺鄙な施設へなど誰が足を運ぶものか。異常があろうと
無かろうと、発電所の情報は希少価値が高くなる。他の参加者との交渉の際、こちらの札は多いに
越したことはない。

(まあ、鍵の掛かった金庫の中に財宝が入っているとは限らないわね…)

最悪、自分の独り相撲である可能性も考慮に入れて行動を開始する。ドラ・ザ・キッドの遺体は悪いが
放置せざるを得ない。それなりの大きさと重さがあることに加え、H-4の連絡路は何の遮蔽物も無い。
これほど危険な場所を通るのならできるだけ身軽である必要があるため、余計な荷物は持てない。
車などの移動手段があれば話は別だが。それに修理工場ならそれなりの人数が向かう事が
予測されるため、後々の事を考えれば希少価値の高い発電所内の情報を入手するべきだろう。
よって導き出される答えはまず発電所内の調査。そこに他の参加者がいれば接触、その後キッドの
遺体と共に修理工場へ向かう。参加者に接触できなかった場合は修理工場へ向かい、そこで他の
参加者と接触、後に一緒に現在地であるH-5で遺体を回収、修理工場で解析を行う。

(光学迷彩もまだ使用不可、慎重に進むべき。申し訳ないわね、もう少し放置させてもらうわ)

一度ドラ・ザ・キッドの遺体に目を向けてから素子は南、発電所へ移動し始める。


最初の彼女の推察通り、かの場所に参加者はおらず。
しかし何らかの異常があるのかは判明せず。
そして唯一の知り合い、タチコマが破壊されたことなど知る筈もなく……

 
459Classical名無しさん:08/07/08 21:31 ID:.w11kokI
   
460 ◆1eZNmJGbgM :08/07/08 21:32 ID:lXmhWpWQ
【H-5 森/一日目・朝】

【草薙素子@攻殻機動隊】
[状態]:健康、光学迷彩使用不可
[装備]:ロジャー・スミスの腕時計@THEビッグオー、封魔の瓶@魔法先生ネギま!
ブルースシールド@ロックマン、
[道具]:支給品一式×2、不明支給品(本人確認済み)、PDA×2(草薙素子、ドラ・ザ・キッド)
ジローのギター@人造人間キガイダー
[思考・状況]
基本思考:脱出およびシグマの拘束、もしくは破壊
1:発電所へ向かい、内部を調査。参加者がいた場合接触、情報交換をする。
2:シグマに関する情報を持った参加者と接触する(当面はエックス、ゼロが目標)。
3:その他の参加者にも、可能であれば協力を要請する(含タチコマ)。
4:他の参加者と行動を共に出来たならドラ・ザ・キッドの遺体を修理工場へ運び、解析する。
5:機会があれば、PDAを解析したい。

※ S.A.C. 2nd GIG序盤からの参戦です。
※ 光学迷彩の使用の制限は、連続使用は二時間まで。二時間使用すると、三時間使用できなくなります。
 もうしばらくすると使用可能に戻ります。
※「ロジャー・スミスの腕時計」でビッグオーを呼び出すことはできません。
※『黒い服の男』に警戒心を抱きました。
※発電所内でかなり大きな問題が生じていると考えています。
※また、かなり低い可能性ですがC-2の湖底にも秘密の施設があると考えています。
※確認済みの不明支給品ではドラ・ザ・キッドの遺体を運ぶことはできません。
※ドラ・ザ・キッドの遺体がH-5に放置されています。


以上です。支援、感謝致します。
タイトルは『密林考察にうってつけの時』でお願いします。
461Classical名無しさん:08/07/08 21:36 ID:.w11kokI
投下乙。
少佐、キッドの死体を置いたのはナイス判断。
彼女の冷静さを証明するような、良考察でした。
GJ!

あとタチコマの話を組み込むのが早いww
462Classical名無しさん:08/07/08 22:10 ID:dH7LJPrE
皆様方投下乙。
バトルは熱いわ、本郷さんはかっこいいわGJ。
ボイルドがタチコマ壊して、関係者である少佐はウフコックを持っているので
大きな因縁を感じるぜい。
463Classical名無しさん:08/07/08 22:59 ID:HgEfYUTk
投下乙です。
禁止エリアに関する考察が素晴らしい。
ボイルドと対面した時の反応は果たして?
GJ!
464Classical名無しさん:08/07/09 21:27 ID:P02aNgmA
GJ
それ持ってたらロックマンに襲われるだろうから捨ててよかったぜ少佐。
だが残念。行く先には人がいねぇ。
465 ◆Nfn0xgOvQ2 :08/07/09 22:17 ID:XX/JWlFo
仮投下終了しました。

大変遅くなって申し訳ない。
疑問点、問題点、意見、こんなネタはねぇだろうと言うのがありましたら
遠慮なく行ってください。
それでは感想お待ちします。
466Classical名無しさん:08/07/09 22:26 ID:PIq3dgrk
仮投下乙です。
感想は本投下時にとっておくとします。

冒頭のパンタローネの死のコロンビーヌの反応ですが、彼女はパンタローネを殺したジョーを殺しているので、
パンタローネの死を知っていると思います。
467Classical名無しさん:08/07/09 22:50 ID:P02aNgmA
karitouka乙です。感想などは本投下後で。

>>466
逆にいえばパンタローネの死を放送で始めて知った風に装えば、
ちゃちゃまるからは「コロンは放送でパンタの死を始めて知ることができた」
印象を持つはずで、「コロンはパンタを見殺しにした」事実からは遠ざかるので
演技としてならばベターだとは思います。

「なんであなたは仲間が死んだことを既に知っているの?」と茶々に疑問に思われずに済みますし。
パンタの心情は描写されていませんし。
468Classical名無しさん:08/07/09 22:56 ID:PIq3dgrk
>>467
それならそうと描写するべきかと。
現状、コロンがパンタにまるで出会っていないようにしか見えないので。
469Classical名無しさん:08/07/10 00:19 ID:sqstwS1I
仮投下乙です
なんというか前回もそうですがドラスの行動が行き当たりばったり過ぎるかと
基本はステルスなんだから…動くのが早計過ぎると思います
470Classical名無しさん:08/07/10 00:40 ID:czjkx9/A
仮投下乙です
乙ですが前回破棄された作品の悪いところ、納得いかないところがまるで改善されていないのが
厳しいようですが、別人のように軽率すぎるドラス、急な展開、結末ありきの話つくり
そんな印象しか受けませんでした
コロンビーヌ嬢と茶々丸の絡みはよかったですが
471Classical名無しさん:08/07/10 07:38 ID:sqstwS1I
>>470
>別人のように軽率すぎるドラス
前回も今回もこの一語に尽きますね
ノーヴェたちを利用しつくすのだから
ギリギリまで本性ばらす様な行動はとらないと思うんですがねぇ…
472Classical名無しさん:08/07/10 07:51 ID:Q/j9/D3.
投下乙です。
コロンのドラスの追い詰め方がよかったです。
ですがここで辛口の意見おば。
二人があっさり死にすぎなのが展開のための展開な気がします。
ドラス側からすればメカ沢の時止め能力は脅威なので、仕掛けづらいはずなのです。
ですが、ドラスからは二人をあっさり倒せて当然な印象を抱きます。

これでは『ドラスがステルスマーダーとばれるために二人があっさり死んだ』感覚がし、
その結果、コロン達に状況から犯行がばれる『ドラスからは常に気をつけていなければならない』
事態が起こってしまっています。

ドラスの視点からこの結果が果たして予測出来なかったのか、考えて見た方がよろしいのではないのでしょうか?
473 ◆Nfn0xgOvQ2 :08/07/10 19:53 ID:xkRGVRn.
残念ですが、今回の仮投下した作品を破棄する事にします。

修正案の方は皆様の意見をもとに、ほぼ出来上がって来たのですが、茶々丸・コロンビーヌのパートで
指摘された以外に大きな問題点を発見し、そこを修正しかつ残りの問題点を修正するには、リアルの都合と
自分執筆速度を鑑みるに、かなり長期にキャラを拘束してしまいそうなので、破棄する事にしました。

コロンビーヌはPDAを『二つ』もってるんだよなぁ、自分で書いといて失念してたよ。
それを最初に茶々丸に話してないのはさすがにまずいな、そのPDA内の支給品数は『八つ』だしなぁ。
474 ◆Nfn0xgOvQ2 :08/07/10 19:56 ID:xkRGVRn.
追伸……再度お騒がせして申し訳ありませんでした。
475Classical名無しさん:08/07/10 21:05 ID:Q/j9/D3.
>>474
ファイト。ドラス関連のこと以外は良かったから、また書いてください。
476 ◆hqLsjDR84w :08/07/12 00:53 ID:HbpFKcj6
『男の世界』のミスを修正しました。(内容は、会議スレ参照で)
また、前編のラストも数行加筆しました

確認していただければ、嬉しいです。
少しPCに触れることのできなかった期間があり、修正が遅れてしまったことをおわびします。
477Classical名無しさん:08/07/12 14:40 ID:oyMAHICI
>>476
修正お疲れ様でした。
478Classical名無しさん:08/07/13 00:53 ID:9NYsFF8c
>>476
修正お疲れ。
いい仕事しましたぜ旦那。
479Classical名無しさん:08/07/13 10:49 ID:9NYsFF8c
人がいないので話題を振ってみる。
からくり勢をよく知らんので木材ばっかで作られているイメージがある。
だからゾンダーが出現しても取り込まれない感じがする。
480Classical名無しさん:08/07/13 13:40 ID:mZ/syD8o
ゾンダーって金属以外も取り込めたから木材もアウトではなかろうか。
少なくとも石は取り込めることが確認されてる。万里の長城と融合してた原種がいたし。
481Classical名無しさん:08/07/13 13:56 ID:XSkXGSeU
ゾンダーは人の悪意とか憎悪を感じ取って寄生するんじゃなかったっけ
原種とゾンダーは格が違うんじゃなかったっけ

見たのが随分前だからな・・・もう一度見直してみるか
482Classical名無しさん:08/07/13 13:57 ID:XSkXGSeU
ごめん上げちゃった
483Classical名無しさん:08/07/13 14:53 ID:9NYsFF8c
「ゾンダー」

ゾンダーメタルに寄生された知的生命体の総称とされている。
マモル少年や戒道少年の浄解によって本来の心と姿を取り戻すことが出来る。
また素体が子どもであれば、自力でゾンダーからひとへと戻ることも可能。

素体は悪意や憎悪を爆発的に増幅されあばれまわる。ゾンダーメタルが体のどこかに寄生されると素体となる。
素体はゾンダーロボの核となり無機物を取り込み、巨大ロボからバイクサイズロボなど取り込んだ物質や素体の持つストレスの原因となる
ロボットへと変化する。なお、特殊な例では作戦の一環としてゾンダーから人へ、人からゾンダーへといったりきたりもする。
Gストーンを動力に持っていなければ機械類は、ガオガイガーの予備パーツでもゾンダーに取り込まれてしまう。

有機物の取り込みはゾンダーロボ形態だとGストーンの有無が関係なく不可能。
しかし、ゾンダーロボの最終形態のゾンダー胞子の苗床となると胞子を産出し、その胞子に有機物が触れるとゾンダー化する。
機界31原種は最終的にはゾンダーに胞子を飛ばさせ、惑星そのものを機械と生物の融合体である機界昇華させることが目的。

以上終了。それなりに詳しいサイトのコピペな気もするけど気にしない気にしない。
484Classical名無しさん:08/07/14 00:10 ID:hwHVL8Eo
ふと思った。やっぱメガトロンはパワーアップはメタル化で限界なのだろうかと。
485Classical名無しさん:08/07/14 07:55 ID:y3pinqII
どこかにG1メガトロン様が埋まってたっていいじゃない
486Classical名無しさん:08/07/14 20:06 ID:tD0PtlPk
コンボイの着ぐるみとか着れるんじゃね?
メガちゃんはパワーアップしなくても口先と不意打ちで綱渡りして欲しいが
487 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:11 ID:w6/sCWVI
アルレッキーノ、神敬介、ロボ、メカ沢、ドラス、ノーヴェ、チンク投下します
488Classical名無しさん:08/07/15 18:11 ID:o/4p1LBI
支援ッ!
489兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:12 ID:w6/sCWVI

 雪に晒されるタンクローリーが一台、鋼鉄のシャトル空港へと止まっている。
 中に人は確認されず、空港へと中の人物が降り立ったのであろう。
 車が通る道路に、本来なら軍用車がいくつか止まっているだろう駐車場。雪原コロニー帯であるため、容赦なく雪が施設に降り積もっている。
 生物も存在ができるか怪しい冷たい白い世界の中に、白いシャトルが鎮座していた。
 施設の一つに雪に刻まれた足跡が伸びている。
 大小、形共に不揃いの足跡であり、施設に人がいることを示していた。


「ヒーターは効いているみたいだな」
 燃えるように赤いショートカットに、気の強そうな金色の瞳を持つ少女が呟く。
 身体にぴったりとフィットする青いボディスーツが身体の線をはっきり示し、年の割にはグラマーな肢体を惜しげもなく晒していた。
 9のナンバーを持つ戦闘機人・ノーヴェである。彼女が室内を探索中に、外と違って中が暖かいことを伝えた。
「うん、無人なのに、気が利いているね」
 ノーヴェに同意するように告げるのは、水色のセミロングの髪と瞳を持つ少年。
 黒と紺のゴシックロリータ服に身を包む姿は美少女と見間違えるほど似合っている。
 その中身は悪魔。ネオ生命体ドラスである。
「まあ、これで風邪を引く心配もないな。ここに来て正解だった」
「ブサイクもたまにはいいこと言うよね」
「たまに言うな。あと、ブサイクも」
「ブサイクー」
 ドラスがからかった相手は、ドラム缶のような銀の身体を持つ自称男子高校生。
 学ランを風になびかせた彼の名前はメカ沢新一。ごく普通の青年……だと思っている。
「フム、危険はないようデスネ」
 時折片言が混じるブリキの玩具のようなロボットが安全を確認して、三人を誘導する。
 かすかにドラスに対する不審の瞳を向けながらも、決定的な証拠は見つけ切れていない。
490Classical名無しさん:08/07/15 18:13 ID:QfzzShw6
支援ー
491Classical名無しさん:08/07/15 18:13 ID:o/4p1LBI
 
492兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:13 ID:w6/sCWVI
 呉越同舟、四人は一緒に行動をしている。
 ドラスは究極の生命体になるべく、三人は脱出を目指すべく。
 思惑も策謀も疑惑も飛び通う中で、彼等は基地へと辿り着いたのだ。


「なあ、ドラス。お前の両親はどうしているんだ?」
「……いきなり何さ、ブサイク」
「いや、親御さん心配しているだろうなってな」
 ごく普通に近所の子供を心配するように、メカ沢は答える。彼が平和な―― とはいってもいささかシュールだが ――世界から来たことを示していた。
 ノーヴェもドラスがどうやって生まれたか興味あるためか、口を挟まない。
 スバルに告げたことを同じ内容を伝えればいい。やや投げやりにそう考える。
「まあ、パパは僕を心配しているだろうね」
「父ちゃんがいるのか」
「うん、最高の科学者さ。それに、まだ培養液にいた僕を大切にしてくれたもの」
「培養液……?」
 ノーヴェが疑問を呟く。彼女ら「戦闘機人」はクローン培養と純粋培養の二種類の培養方法がある。
 クローン培養はオリジナル人物の細胞を採取、特殊なスキルを得ることができる。
 ノーヴェはこの方法で、IS「ブレイクライナー」を生まれながら持っていた。
 純粋培養は適性遺伝子をかけ合わせた人工授精児を元に、戦闘機人の量産を可能にする培養方法だ。
 狙った特殊スキルができることは少ないが、稀にセインのようにレアスキルを得ることもある。
 もしや、ドラスはセインのISの研究のために開発された戦闘機人ではないか?
 ノーヴェはそう疑っていた。
 ドラスを作り出したのは、スカリッティエ博士なのか、それとも別の科学者なのか。
 確かめる術は、本人しかない。もっとも、ドラスは本人も気づかずこの姿でいたと説明してる。
 製作段階の戦闘機人だろうか?
493兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:14 ID:w6/sCWVI
 その存在は聞いたことがないが、もともとノーヴェに重要な情報が明かされることは少なかった。
 ノーヴェの視線がジッとドラスに注がれる。その視線を受けて、ドラスは謳うように続けた。
「そうさ。パパは僕を作り上げた。だからきっと僕を愛してくれる。
パパはちょっと混乱して、僕を失敗作だとか言って壊そうとしたけど、愛してくれているって分かっている。
だから僕は帰る。パパがいるあの場所に、愛してもらうために」
 ドラスの言葉に、真実と狂気が混じる。醸し出す雰囲気が少し怪しくなったことに、ノーヴェは気づいた。
 同時に、目の前の少年の悲惨さにも気づく。ドラスはいわゆる『捨てられた子供』だ。
 実は本人も気づいていないが、そのことを必死に否定している。愛されていないことを自覚して、必死に愛されているのだと自己を騙しているのだ。
 だからこそ、目の前のドラスは容易に痛々しさを演出した。それを策に使おうとするドラスは、歪んでいた。
 スカリッティエは自らが作った戦闘機人を捨てたりはしない。彼なりの愛情を持っていた。
 たとえ間違っていたとしても、それだけは真実だ。ゆえにノーヴェは言葉をなくす。
 ドラスの痛みを理解できない。どうすれば和らげれるのか、知らない。
「ドラス」
「なに?」
「父ちゃん、お前を愛していねえよ」
 メカ沢の一言に、空気が凍った。


「……どういうことさ」
「そのままの意味だ。お前は父ちゃんに愛されちゃいねー」
「違う!!」
 ドラスは吼えるように告げて、一瞬でメカ沢との距離を詰める。荷電ナイフをメカ沢の頬に当たる部分に突きつけた。
 誰も反応する暇を与えなかった。ロボでさえも。
「僕は強い。誰よりも! パパがそう望んで僕を作り上げたんだ。
だからパパは強い僕を愛してくれるんだ! 何も知らないくせに適当なことを言うな!!」
494Classical名無しさん:08/07/15 18:14 ID:L5HeSXtk
支援
495Classical名無しさん:08/07/15 18:15 ID:QfzzShw6
 
496兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:16 ID:w6/sCWVI
「何度でも言ってやる。お前は愛されていない! 絶対にな!」
「ブサイク……ッ!!」
 ドラスの殺気が膨れ上がる。怪人の、ネオ生命体の尋常でない殺気をメカ沢は受け止める。
 まるで、そよ風を受けているかのごとく、静かに。
 外見はともかく、中身はただの一学生、一不良であるはずだが、メカ沢はドラスの視線を強靭な精神力を持って確かに返していた。
「取り消せよ……取り消せ!」
「嫌だね! お前分からないのか!」
 二人の意地を張り合った声があがると同時に、ドラスの怒気が膨れ上がる。
 目が鋭くなり、荷電ナイフを握る手に力を込めた瞬間、拳が横切った。
 見覚えのある腕。振り向くと、肘先から煙を出すロボがいた。
「二人とも、そこまでデス」
 二人とも、といいながらも視線はドラスに向けている。相変わらず勘のいいメカだと内心毒づき、ドラスはメカ沢から離れる。
 疑惑をもたれては不味い。今ならまだ、感情的になったとか言い訳できる。もっとも、実際に感情的になったのだから、言い訳も何もないのだが。
「分かったよ。ちょっと頭を冷やしてくる。向こうにシャワー室あったしね」
「待てよ、ドラス。一人じゃ危険……」
「大丈夫だよ! 僕は強いんだから! パパにそう作ってもらったんだから……しばらく一人にさせて!」
 ノーヴェにすらも当り散らし、ドラスは地面を蹴った。
 苛立ちと恐怖―― 望月博士が自分を一生愛してくれないという ――を知らず抱えて。


 ドラスが去った後、ノーヴェは怒りのままメカ沢に視線を向ける。
 歩みは感情に合わせて、乱暴になった。
「ちょっと無神経じゃないのか! メカ沢」
「ノーヴェさん、シカシ……」
「…………じゃあお前は、子供に『失敗作』とか言う奴が、ドラスを幸せにできると思っているのか?」
497兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:17 ID:w6/sCWVI
「メカ沢……?」
 メカ沢の声に、ロボが不思議そうに見つめる。ノーヴェは戸惑ったまま動きが止まった。
「俺は認めねえぞ。自分のガキを自分の都合で作っときながら、失敗作でポイッだあ? ふざけんじゃねえ」
 声はメカ沢にしてはそれほど荒げていなかった。彼にしては珍しく、静かで淡々とした怒りが沸いている。
 メカ沢は外見からは感情を読むことは不可能だ。とはいえ、外見に反して熱い男であることは充分理解できた。

「決めた! ここから帰ったら、あいつは俺の家に住ませる! 糞みたいな親ん所に帰してたまるか」

 メカ沢の宣言が無機質な鉄の壁に包まれた室内に響く。
 彼がドラスを嫌っていったわけでなく、ドラスを思って告げたのだと理解して、ノーヴェは微笑んだ。
「ばーか。あいつが承知するわけないだろ。あいつはあたしたちと一緒に帰るんだ」
「へっ、いってな。こっちにはベータっつうかわいい弟がいるんだ。
あいつとは真逆に素直だから、きっと気が合うぜ。性格が反対なもの同士ほど、仲が良くなると言うしな」
「それを言うなら、こっちにはいっぱい姉妹がいる。全員、あいつをかわいがってくれるよ」
 和気藹々とメカ沢とノーヴェはドラスを取り合う。本人が承知するかどうかは関係なかった。
 二人は『捨てられた』ドラスが心配でたまらなかった。
 その共通の想いが、互いに共感を生んだ。


 暖かな空気を持つ二人を前に、ロボは複雑な気分であった。
 ドラスがメカ沢に向けた荷電ナイフの柄を強く握る瞬間、電子頭脳が僅かに蠢いた。
 思わず、ロケットパンチで割り込むほどに。その判断が正しいかどうかはいまだ分からない。
 それにしても……
「お前、兄貴がいたのか。兄貴って柄じゃねえな」
「そういうお前も、妹って柄じゃない。妹ってのは、こう、甘えん坊な感じで……」
498兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:17 ID:w6/sCWVI
「どこの漫画の世界だよ」
 兄弟の話で盛り上がる二人を尻目に、ドラスの言葉を思い出す。
 ロボにとっても苦い、『失敗作』として処分されそうになった、との一声。
 ロボもかつては、多くの兄弟や恋人と共にマザーブレインの下に集った。
 人間を処分するというマザーブレインに反発をする決意をしたのは、支配から逃れた自分と、クロノたちとの絆のおかげだと思っている。
 ドラスを見ていると、マザーブレインの支配から逃れることのできなかった恋人……アトロポスを思い出す。
 もし、彼が父親に自分たちがマザーブレインと同じような暗示を受けたのなら、メカ沢やノーヴェを待ち受ける運命は過酷だ。
 彼らの手で、肝心のドラスを殺さざる得ないかもしれない。
(ソウはさせるわけには、イキマセン……)
 ロボは静かに決意する。ドラスがアトロポスと同じく、支配を脱っすることができず二人に刃を向けようというのなら、自分が汚名を被ろうと。
 仲間たちに、自分が味わった悲しみを迎えさせるわけにはいかないゆえ。
 鋼のボディが光を反射する。僅かに、悲しみが混ざっていたような気がした。



 シャワーより流れ出るお湯に水色の髪と陶磁のような白い身体をドラスは晒していた。
 全身泡だらけなのは備え付けられていたシャンプーを使ったからだ。
 別段、ネオ生命体であるドラスがシャワーを本当に浴びる必要はなかったのだが、これはこれでストレス発散になる。
 白く細い指で水色の髪を撫で回し、泡を広げていく。
 目にかかろうとした泡に、思わず左目を瞑る。少しシャワーに顔を向けて、泡を洗い流した。
 水に流れる泡はドラスの白い肢体を頬から首、幼さを残す胸から脚に流れ、やがて排水溝へと落ちた。
 少年というよりは、少女と形容した方が似合うほど、柔らかい線を有する顔に水がはねる。
 子供特有の、柔らかい肉付きに、キュッと引き締まった全身から泡が引いていくのをドラスが確認して、シャワーを止める。
 ポタポタと髪から落ちる水滴を見て、ドラスは鏡に全身を映した。
 どこからどう見ても人間だ。改めて自分の姿を確認してほくそ笑む。
499Classical名無しさん:08/07/15 18:17 ID:5xYacIOU
支援
500兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:18 ID:w6/sCWVI
 いや、笑おうとした顔が、微妙に引きつっていた。
『父ちゃん、お前を愛していねえよ』
 メカ沢の低く、意外と渋い声が耳に蘇った瞬間、ドラスの拳が鏡を割った。
 右手から、緑色の血が流れ落ちる。そこで、右手はスバルから奪った、人間の手だったことを思い出した。
 胸糞が悪い。今すぐメカ沢からワープの原理を解明して、己の力にするのをやめようかと、一瞬思う。
 首を軽く振る。
 それはあまりにも軽率だ。しかも、ロボは自分を警戒している。
 白いタイルの中、愚作だと却下。しかし、積もる苛立ちの処理を求める。
(今の状態なら、誰か来たら殺そうかな。お姉ちゃんたちが気づく前なら、すぐに済むだろうし。……冗談だけど)
 同時に、ノーヴェの語ったことを静かに分析する。
 彼女たちが敵とみなしている……仮面ライダーのことを。
 ノーヴェが襲われたことは耳にしている。彼女が相手にしたのはタチコマを襲った、銀の仮面の仮面ライダーだ。
 仮面ライダーが相手なら、言い訳がある程度効くし、何より彼らの脅威は身をもって知っている。
(仮面ライダーを吸収できて、赤くなれば楽なんだけどねぇ……)
 悪魔のごとく笑みが鏡に浮かぶ。
 やはり、自分は静かに策を練るほうが向いている。
 着慣れたゴシックロリータ服に袖を通し、ドラスはシャワー室を後にした。


 鉄の要塞を歩く白い帽子を被った、長髪の男。フリルがところどころついている道化衣装に身をまとい、周囲を見渡す。
 道化、アルレッキーノは独房がないか、基地内を探索していた。
 もうすぐスモールライトによる効果が切れ、彼は動き出すだろう。
 その前に、行動を制限しておきたい。エレオノールの命令に背くわけには行かないし、かといって自由にしておくのも危険だからだ。
 アルレッキーノが歩みを進めていくと、目の前に人影が現れる。警戒して手を構えると、ゴスロリ服の少女が現れた。
「ふーん、こんなところに人が来たんだ」
501Classical名無しさん:08/07/15 18:18 ID:QfzzShw6
  
502兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:19 ID:w6/sCWVI
「それはこちらの台詞だ。ここに一人だと、危ないぞ」
「……そう」
 ドラスがアルレッキーノを不審に満ちた視線で見つめる。それもそうだろう。
 ここは壊しあいの場。自分を警戒するのは正常な証だ。
「君以外の人はいるのか?」
「そうだよ。僕はみんなと一緒にここに来たんだ」
「そうか」
 アルレッキーノはドラスの答えを知り、ホッとする。
 エレオノールの命令とは別に、心を通わせたリョーコと年の変わらない少女に、守ってくれる存在がいることで安心をしたのだ。
 とはいえ、ここに一人にするのはどこか居心地が悪い。仲間のいる場所に送ろうと提案をしかけて、帽子の中の違和感を察知した。
 予想よりも早い。
「逃げるんだ……」
「ほえ?」
 ドラスが怪訝な表情をした瞬間、アルレッキーノの帽子が落ちる。
 中より飛び出した小人……いや、徐々にその姿を元の身長へと伸ばしていった。
 黒髪に意思の宿らない瞳で、アルレッキーノを見下ろす日本人らしき男は、銀の仮面を模したレッドアイザーをかざした。
「セタップ……」
 敬介の身体に銀の強化スーツと赤い胸部アーマーがまとわりつく。
 レッドアイザーが半分に欠けると同時に、敬介の顔半分に銀の仮面が顕在する。
 レッドアイザーが完全に消失して銀の仮面が形成されたと同時に、シャッター状のマスク、パーフェクターをセットする。
 ストン、とアルレッキーノを、悪意に満ちた黒い複眼が見下ろした。
 大怪我を負っていたはずの左腕が動いている。アルレッキーノは知らなかったが、阿紫花の血が関係している。
 生命の水を僅かに含んだ血は、暗闇の種子を排除するには至らなかった。
 しかし、敬介の、仮面ライダーXの怪我をある程度治癒する結果を生んだのだ。
 生命の水が薄いことが、最悪の状況を生み出した。
503Classical名無しさん:08/07/15 18:19 ID:L5HeSXtk
支援
504兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:19 ID:w6/sCWVI
 厄介なことになったと呟きながら、アルレッキーノはドラスに振り返らず仮面ライダーXと対峙する。
「仲間と一緒に離れていろ。ここは私が……」
 アルレッキーノの言葉は最後まで告げられることはなかった。
 突如アルレッキーノと仮面ライダーXの周囲が爆発する。
 身体に光弾がぶつかる状況で辛うじて首を回すと、魔方陣を右手に展開させ、光弾を放つドラスが視界に入った。
(しま――っ)
 アルレッキーノの周辺が一段激しく爆発が起きる。
 同時に、アルレッキーノの意識も闇へと落ちた。


「あっけないねー。ま、魔法のテストにはちょうどよかったけど」
 手に入れた力のテストをするのは悪くない。仮面ライダーを視界に入れた瞬間、ドラスはそう判断しながら撃ち放った。
 せっかく仮面ライダーを不意打ちにできるいい機会なのだ。無駄にする気はない。
 それに、彼の仮面ライダーはノーヴェを襲っている。
 死体を見せても、自衛だと主張して押し切ることはできるはずだ。ロボはともかく、メカ沢とノーヴェは超がつくほどお人好しだし。
 それにしても、今使った『ディバインバスター』なる魔法はなかなか好印象だ。連発ができ、応用が利く。
 マリキュレーザーだと威力が強すぎるし、自分本来の力は隠しておきたい。
 それに、目の前の人形や仮面ライダー程度など、手に入れたばかりの力で充分対処が可能だ。
 さらに望月博士の望む究極の生命体へと近づいていく実感を持ってドラスは踵を返した。いや、返そうとした。
 ドラスは背後に悪寒が走ると同時に前方に飛び、存在していた地点に長ドスが突き刺さるのを目撃する。
 反転しながら対峙したのは、銀の仮面の仮面ライダー。
「やっぱり、君たちはしぶといねえ……」
 ドラスはにやり、と笑みを浮かべて魔法陣を形成し、左手に荷電ナイフを持つ。
505兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:20 ID:w6/sCWVI
 仮面ライダーXに向かって、駆け出した。



 爆音が轟き、基地が揺れる。
 明らかに戦闘が行われている様子に、三人は顔を見合わせた。
「ドラス……あいつが危ない」
「分かってんな? ノーヴェ」
 首を縦に振るノーヴェを確認して、メカ沢は先頭を走った。
 その背後を見守りながら、ロボはこの戦闘がドラスが仕掛けたものでないか、疑う。
(考えすぎデスカネ……)
 そうであればいいのだが。ロボはそう思考して、二人の後をついて行った。


506Classical名無しさん:08/07/15 18:20 ID:QfzzShw6
 
507兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:20 ID:w6/sCWVI
「う……げぇ……」
 ドラスは壁に叩きつけられ、正面の仮面ライダーXを睨みつけた。
 悔しそうに口元を引き締め、再び地面を蹴る。身体を切り裂くために荷電ナイフを横凪に振るった。
 その左手はあっさりと捌かれ、ドラスの鳩尾に拳が叩き込まれる。
「X……パンチ……」
 凄まじい衝撃がドラスのコアまで届き、地面を十メートルほどすべる。
 痛みを抱えながら、ドラスは仮面ライダーXを信じられないという視線で見つめた。
「う……くそぉぉぉぉ!」
 ドラスの右腕に魔方陣が展開。光弾が次々と放たれる。
 しかし、仮面ライダーXは長ドスを回転させ、次々と光弾を弾いていった。
「ライドル……バリアー……」
 あっさりと攻撃を無効化して、仮面ライダーXが接近を仕掛けるのにドラスは驚愕する。
 ZOも確かに強かったが、ここまでではなかった。これには理由がある。
 ドラスとZO、共に持っていなかったものを、仮面ライダーXは持っているのだ。
 数多の怪人と戦い抜いた、『戦闘経験』を。
 多彩な技も、ドラスのように遠距離からの攻撃を仕掛ける敵に対抗するために生まれた技なのだ。
 だからこそ、ドラスよりスペックが低くても、いなし、捌き、攻撃を当てる。
 技量、その一点で仮面ライダーXはドラスを圧倒していた。
「X……キック……」
 矢のように飛び出してくる仮面ライダーXのキックがドラスの胸板を直撃する。
 たまらず吹飛ぶドラスは、鉄の壁をめり込ませるほどの勢いでぶつかった。
「くそっ、究極の生命体の僕が、お前ら仮面ライダーなんかに!!」
 ドラスは吼え、右手の魔法弾を連射した。これが、ドラスが仮面ライダーXに圧倒される二つ目の理由だ。
 ドラスは仮面ライダーXを侮っていた。最初にマリキュレーザーを使えば、倒せたのかもしれない。
 しかし、ドラスはオリジナルに劣る自身の魔法『程度』で、仮面ライダーを葬れると侮ったのだ。
508兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:22 ID:w6/sCWVI
 逆にドラスが戦えると判断した仮面ライダーXに油断はない。確実にドラスの力を削ぎ、堅実にダメージを与えていく。
 ドラスの意識では、あくまでも『仮面ライダー』は試作品の弱者。その認識が現状を生み出した。
「ぐはっ!」
 ドラスの鳩尾に、長ドスの峰がめり込む。仮面ライダーXは一切の容赦もなく回し蹴りを頭部に叩き込んだ。
 地面をバウンドするドラス。それをめがけて仮面ライダーXの両腕が長ドスを巧みに操り、ドラスの左腕を貫いて蝶の標本のごとく壁に縫い付けた。
 荷電ナイフが、からんと虚しい音を立てて落ちる。
 身動きの取れないドラスに、仮面ライダーXが静かに近づいた。
「嘘……やめっ!」
 ドラスの言葉が途中で途切れる。仮面ライダーXの拳が頬を打ち抜いたからだ。
 体液を撒き散らし、拳の方向に顔を強制的に向かされ、ドラスの視界が揺れる。
 同時にドラスのコアに衝撃が届いた。胸板が打ち砕かれた証拠だ。ボキボキと固定化されている胸部が砕ける。
 魔法を放とうとした右腕が、ボキンという鈍い音と共に間接と逆方向へと強制的に向かされる。
 危険を察した仮面ライダーXがすぐに折ったのだ。
 仮面ライダーXの回し蹴りが鞭のようにしなり、ドラスの左太ももを打ち抜いた。
 ドラスは顔を上げ、声にならない悲鳴をあげて、全身を脱力させる。彼は痛みを感じないわけじゃない。
 人間ならとっくにバラバラにされるような仮面ライダーの猛攻を受けて、痛みだけですんでいるのは彼が頑強な証拠である。
 そのドラスが全身から力を失うほど、仮面ライダーXの攻撃は激しかった。
 仮面ライダーXは顔を隠している水色の髪を引っつかむと、力を込める。
 ドラスを横に力任せに投げ、左腕が長ドスによって千切れるのも構わず、地面へと叩きつけた。
「ガハッ……」
 緑色の血を吐き出すドラス。左腕は縦に二つに裂けて、数分時間をかけてくっつける。
 ぴくぴくと痙攣する様からは、抵抗は無理のように見えた。


「調子に……乗るなぁぁぁぁぁ!!」
509兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:22 ID:w6/sCWVI
 ドラスが吼えた瞬間、体躯を少女から怪人へと変化させる。
 灰色の昆虫に似たフォルムから、体内にゴスロリ服を収納し、尻尾を仮面ライダーXへと繰り出した。
 こいつを殺す。
 その一念で必殺の一撃を繰り出した。
「え……?」
 ドラスの攻撃は、尻尾を切り落とされる結果で終わった。明らかにさっきとは異なる、神速の仮面ライダーXの動き。
 ドラスは知らないが、仮面ライダーXは暗闇の種子にとらわれながらも、僅かながらに意識がある。
 少女の姿のドラスが相手のため、本当に微かであるが抵抗をしていたのだ。
 しかし、怪人になったドラスを見て、人に扮する怪人を知る仮面ライダーXは抵抗を止めた。
 それは、『怪人』を倒し、平和をもたらすのが仮面ライダーの使命であるために。
 ドラスの変身は、彼を逆に境地へと追い込んだ。
 仮面ライダーXがドラスの腕を掴み、天井へと投げ飛ばす。天井に叩きつけられたドラスを、仮面ライダーXが右脚を向けて迫った。

「X……二段……キック……」

 一撃目がドラスの腹の装甲を砕く。緑の血がひびから飛び散った。
 反転、再度仮面ライダーXのキックがドラスの顔を打ち抜いた。天井が砕け、ドラスが雪の中舞い上がる。
 そのまま無抵抗のままに、地面へ戻った。
 ドラスはボロボロの状態の自分を見て思う。このままでは勝てない。
「くっ!」
 マリキュレーザーを拡散発射、目晦ましに使う。僅かにできた隙に喜びながら、離れた。
 ドラスはそのまま、部屋を飛び出て駆けていった。


 ドラスはヨタヨタとダメージに千鳥足となりながら、仮面ライダーXから遠ざかるように逃げていく。
510兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:23 ID:w6/sCWVI
 油断したどころではない。
 圧倒的化け物に喧嘩を売ったのだ。試作品の、未完成品に追い込まれるなんて、恥以外なんでもない。
(僕は……強くなくちゃパパが愛してくれないんだ。あいつを殺す。
あいつの存在をパパに知られてたまるか。そんなことになれば……僕は……)
 捨てられる。その単語を振り払うようにドラスは頭を振った。
 とはいえ、一人では到底勝ち目が見えない。ドラスは姿をメカ沢たちのよく知る少年へと変える。
 これで、メカ沢たちを盾にしつつ、仮面ライダーを倒す。その決意のまま顔を上げた。
「ドラス……?」
 聞こえた声に、ドラスは視線を向ける。明らかに戸惑っているノーヴェの表情があった。
 見られた。ドラスが狼狽する。
「ノーヴェ……お姉……ちゃん」
 言っていて、自分で自分が白々しく感じる。自分の怪人態を目撃されたのだ。取り繕いようがない。
 同時に、恐怖で背筋が凍った。ドラスは仮面ライダーに狙われている。
 仮面ライダーZOに打ち込まれた蹴りを思い出す。
 一人で、ノーヴェもメカ沢も盾がない状況で、相手にしなければならない。
 またも、仮面ライダーに殺される。導いた結論は、最悪のものだった。
 ドラスに始めて、恐怖が訪れる。死を意識した彼は、たまらず叫んだ。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 恥も外聞もない。ドラスはみっともなく逃げ出した。
 彼を殺した仮面ライダーが恐ろしい。追い詰めて、痛みを味あわせた仮面ライダーが恐ろしい。
 ドラスにとって仮面ライダーは、試作品の弱者から死神も同然の存在となった。



「はぁ、はぁ、はぁ……」
511Classical名無しさん:08/07/15 18:23 ID:L5HeSXtk
支援
512Classical名無しさん:08/07/15 18:23 ID:5xYacIOU

513兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:24 ID:w6/sCWVI
 あれからどれほど経ったのだろうか?
 ドラスには時間を確認する余裕すら残っていなかった。
 人間の子供のように膝を抱え、かすかな物音にすらおびえる姿。
 そこには究極の生命体としての姿はない。
(……もしかして、試作品……未完成品は僕の方じゃ……?)
 ドラスに一つの疑問が沸きあがった。自分より先にZOが完成された、という知識はある。
 だが、ZOが先にできたかどうかは、未完成か否か、真実なのか疑問が湧き出てきた。
 ZOはドラスを倒している。そして、同じく『仮面ライダー』である仮面ライダーXは自分を圧倒した。
 つまり、ネオ生命体『ドラス』を踏み台に、究極の生命体『仮面ライダー』を望月博士は作り出したのではないか?
 ドラスの脳裏に恐ろしい答えが上がる。
(だから……パパは完成品が……お兄ちゃん『仮面ライダー』ができたから、僕を失敗作だといって捨てようとしたの?
あんなに僕のことを愛していたのに、あっさり手の平を返したのも、『仮面ライダー』が完成したから?)
 欠けたパズルが完成したかのように、ドラスの中に真実が作られていく。
 それが現実と違う答えであっても、ドラスの中ではそれ以外望月博士が豹変した理由を得ることができなかった。
 ドラスはその事実を必死に否定しようとする。それも無駄な行為となる。
 仮面ライダーZOの蹴りを、仮面ライダーXの猛攻を思い出し、身体が震えた。
(嫌だ……僕は死にたくない……。何でもするからパパに愛してもらうんだ。
絶対捨てたりしないようお願いするんだ……)
 悪魔の面影も欠片も残らないドラスは這い出て、基地を離れることを選択した。
 策略も、これからの展望も何もない。ただ絶望を抱き続け、逃げ惑うだけ。
「X……」
 現実は無情をドラスに突きつけた。ドラスが振り返ると、ライトを背に逆光の仮面ライダーXが冷たく見下ろしていた。

「キック……」

 砲弾のように迫る仮面ライダーXのキックがドラスの腹を強打する。
514兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:25 ID:w6/sCWVI
 身体をくの字に曲げたドラスは鉄柱に叩きつけられた。ずるずると芋虫のようにドラスは這って、少しでも仮面ライダーXから逃れようとする。
 ドラスの表情は、恐怖に満ちていた。
 それでも、暗闇の種子に支配されている仮面ライダーXには関係ない。静かに終わりを告げる。
「ライドル……」
 仮面ライダーXが地面を蹴って跳躍する。
 黒い瞳は、ドラスに狙いを定めて長ドスを振り上げた。
「脳天……」
 急降下する勢いを得て、多くの怪人を死を与えた技を繰り出さんと迫る。
 そこに容赦など一切ない。ドラスはその姿を目撃して、必死に腕をかきだした。

「割「メカ沢ビィィィィィィィィム!!!」りッ……!?」

 仮面ライダーXの胸部に太い閃光の筋が飛び込んでいく。爆発音が聞こえたと思ったら、ドラスは浮遊感を感じていた。
 ドラスの腰を抱き抱える、見覚えのある単純な構造の腕。顔を上げると、見慣れたドラム缶に似た体型の男が仮面ライダーXを睨みつけていた。
「いよ、待たせたな。わりい、遅れた」
 息を切らせながらも、学ランをなびかせてメカ沢がドラスを助けた。
 ドラスは、驚愕に満ちた視線を送った。



 ドラスの異形の姿を目撃した三人に訪れたのは沈黙だった。
 三人が三人、戸惑いが感情を支配して、どう動いていいか分からなかったのだ。
 いや、一人だけ違った。ドラム缶に似た身体を持つメカ沢はいの一番に動いた。
「おい、ノーヴェ、ロボ。ドラスを助けるぞ」
「メカ沢……? デスガ……」
515兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:25 ID:w6/sCWVI
「どんな姿だろうと関係ねえ。……それに、気づかなかったか? あいつ、ボロボロだったぞ」
 メカ沢の指摘に、ノーヴェがハッとする。対照的にロボの態度は厳しかった。
「エエ、あの爆音から察スルに、戦っていたのはドラスデショウ」
「だろ! あいつは誰かに追われているんだよ! 助けなきゃやばいだろうが!!」
「……なら、ナゼワタシたちを呼ばなかったのデショウカ?
アレほどの危険な目に遭っていナガラ。ワタシたちに助けを求めないのは不自然デス。たとえ強くテモ」
 理路整然とメカ沢にロボは反論する。もともとドラスにいい印象を持っていなかったためか、口調も厳しくなった。
 メカ沢はうつむいて、静かになった。ロボの意見を理解してくれたのだろうか。
「…………ロボ」
 メカ沢は静かに仲間の名前を呼ぶ。ロボはメカ沢を見つめた。
 その無機質な目からは感情を読み取るのは困難だった。

「見損なったぜ」

 ゆえに、返ってきた言葉に、怒りを押さえ込んだような静かに漏れる声に、ロボは驚いた。
 怒りに任せたまま、メカ沢は乱暴にロボに背を向ける。
「ドウいうことデスカ!? メカ沢!!」
「……あいつが、俺たちを巻き込まないように一人で戦っていたかもしれないじゃないか……」
 ロボはメカ沢の言葉に驚いた。
 ドラスの性格からして、それは可能性が低い。そのことを告げようとして、遮られる。
「それに、子供がおびえて追われているんだぞ! 放っておくのは男が……不良がすることじゃねえ!!
ロボ、俺はお前を男として見込んでいた。けどな、子供を見捨てるように言うようじゃ、俺の見込み違いだったようだな。ポンコツ野郎!!
ここでてめえとはお別れだ。あばよ! 俺一人でドラスを助ける!!」
「メカ沢!!」
 ロボの制止の声を振り切り、メカ沢はドラスの消えた方向へと走り去っていく。
516兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:26 ID:w6/sCWVI
 虚空を掴むロボの手が、置き場所もなくさまよった。


 メカ沢を見つめるロボの隣に、ノーヴェが並んだ。そのノーヴェも瞳に決意が宿っている。
「ノーヴェさん……」
「……あたしさ、ドラスのあの姿に似た召喚虫……ガリューっていうんだけどな、見たことあるんだ。
あれみたいな姿になれるのは驚いたけど……それでも、ドラスを守りたいって気持ちは変わらなかった……」
 ロボに向かってノーヴェは微笑を向けた。
 どこか達観したような、それでいて強い意志をはらんだ笑みを。
「あいつ、メカ沢も言っていたけど、どんな姿になれてもドラスは子供なんだ。
怖くて、捨てられたことが悲しい子供。あたしだって、チンク姉に捨てられたと思ったときは辛かった。
だから、ドラスを絶対捨てたりしない! それじゃ、ドラスを捨てた奴と同類になっちまう!!」
 ノーヴェの言葉に、ロボはハッとする。マザーブレインは自分の意に沿わないとして、ロボを排除しようとした。
 今の自分の行動は、ドラスが危険分子だと勝手に判断して排除しようとしている。
 マザーブレインと自分の行動、同じではないか?
 自己嫌悪が電子頭脳に浮上した。
「だから、あたしも行かせてもらうぜ。心配してくれて、ありがとう。またな」
 二ッ、とノーヴェが笑って、メカ沢に待つよう告げながら走っていく。
 その背中を見送り、ロボの胸中にもやもやしたものが生まれでた。
 クロノたちなら、確かに子供を見捨てるような真似はしない。なぜなら、見捨てる自分を決して誇れないからだ。
 ロボは遠のいていくノーヴェの背中を見つめ続けた。



「な……んで…………?」
517Classical名無しさん:08/07/15 18:26 ID:QfzzShw6
 
518Classical名無しさん:08/07/15 18:27 ID:QfzzShw6
  
519Classical名無しさん:08/07/15 18:27 ID:L5HeSXtk
支援
520兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:27 ID:w6/sCWVI
「へっ、水くせえじゃねえか。変身できるなら、最初に言っとけって」
「そう……じゃないよ……。メカ沢……」
 ボロボロのドラスの額に、メカ沢はデコピンをする。軽くて、優しい、突っつくようなデコピン。
 ドラスはキョトンとした表情で、メカ沢の顔を見つめた。
「ブサイクでいいって。いつもの元気なお前はどうした? いきなり媚を売るだなんて、寒気がする」
「一言……多いんだよ……ブサイク……」
 鼻を鳴らすメカ沢の前で、仮面ライダーXが不気味に近寄ってきた。
 ドラスを抱えてどこまでできるか。いささか不安がメカ沢によぎる。
 火薬が破裂する音が響いて、弾丸が仮面ライダーXの体表を跳ねるのを目撃する。
 首を発射点に向けると、ノーヴェが銃を構えて走ってきた。
「ドラス! 大丈夫か……?」
「ギリギリだったぜ……何とか間に合わせた」
「そうか……」
 ホッとするノーヴェを前にして、ドラスは不思議に思った。
 怪人の、異形の姿を晒したのに、この二人はなぜ自分を庇おうとするのか。
 それどころか、守るために仮面ライダーXと対峙している。理解ができない。
 それでも、そんなに悪い気分じゃなかった。知らず、ドラスはメカ沢の袖を握っていた。
「こいつ……あたしとゼロを襲った奴だ!」
「ってことはやばい相手ってことか……」
 メカ沢が冷や汗を流しながら、じりじりと後退する。
 仮面ライダー相手では、二人は分が悪かった。


 仮面ライダーXは一瞬で距離を詰めて、メカ沢に拳を振るった。どうにかドラスを庇いながら、拳を受け止めるが力が半端ではなかった。
 メカ沢の身体が浮き、ノーヴェがフォローのために間に割って入る。
521兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:28 ID:w6/sCWVI
 すると、仮面ライダーXはあっさりと後退した。メカ沢とノーヴェが一直線に並ぶ。
 仮面ライダーXが長ドスを構えた。その狙いを察して、ノーヴェとメカ沢が互いに行動に移そうとする。
 しかし、間に合わない。
 すべてを貫かんと仮面ライダーXが突きを繰り出す。
 メカ沢がせめてドラスだけはと身を捻った。
 仮面ライダーXが急停止をする。メカ沢たちが疑問に思う暇もなく、彼らの間にレーザーが横凪に放たれた。
 白い巨躯が仮面ライダーXの眼前に立ち、その拳をいくつも胸部に吸い込ませる。
 ロボの『マシンガンパンチ』が仮面ライダーXに放たれて、五メートルほど宙を舞わせた。
 轟音を立てて吹飛ぶ仮面ライダーXを尻目に、ロボはメカ沢たちに近づく。
「……来たのかよ」
「エエ、来マシタ。ドラスさん、ちょっといいデスカ?」
 ロボは傷だらけのドラスを覗き込み、緑の血を流しているが、瞳に恐怖があるのを確認する。
 この恐怖は演義じゃない。ロボのレーザー発射口から、淡い光が放たれ、ドラスを包んだ。
「すげえ……ドラスの怪我が治っていく……」
 ノーヴェの呟きどおり、ドラスの身体の傷がふさがっていく。
 全快とまではいかないが、それでもケアルビームでドラスはだいぶ楽になったのだろう。
「スイマセンネ、ドラスさん。でも、助けに来ましたから、もう大丈夫デス」
「へっ、ロボ。お前、心まではポンコツじゃないようだな」
「当然デス。ワタシは、ワタシの仲間に誇れる自分になりたいのデスカラ」
 互いに笑顔を交わした二人は、表情は変わらなくても、確かな信頼を確かめ合った。
 ロボは振り返り、仮面ライダーXがいた地点を睨みつける。視線の先には、立ち上がる仮面ライダーXがいた。
「ドラスさん、これだけは言ってオキマス。ワタシはマザーに人を殺すように作られマシタ。
けれど、ワタシはクロノたちのように、人間の仲間を得てイマス。だから、ワタシはマザーに反発をシマシタ」
 ロボはドラスに、祈るような気持ちで告げる。かつての自分の、恋人の二の舞にならないように。
 自分の警戒がただの空振りなのを祈って。
522Classical名無しさん:08/07/15 18:28 ID:QfzzShw6
   
523兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:29 ID:w6/sCWVI
「デスカラ、あなたの存在意義が、父親に認められるだけだと思わないでクダサイ。
あなたの価値を認める仲間は、こんなにもいるのデスカラ」
 ロボは仮面ライダーXに向かって疾走する。
 祈りを、愛を抱えたロボに迷いはない。仮面ライダーXを道連れに、隣の部屋へと駆け込む。
 その間に逃げろということだろう。ノーヴェはロボの思惑を無視して、駆けていった。


「ドラス、ここに隠れていろ」
「だ、大丈夫……僕も……戦う……」
「震えているだろうが。無理はするな」
「た、戦わないと! 強くないと! ぼ、僕は最強の生命体として……」
 メカ沢はドラスの言葉を遮り、頭を乱暴に撫でた。
 くしゃくしゃな髪になったドラスが、不安げな瞳を向ける。
「気にすんな。強かろうが、弱かろうが俺もノーヴェもロボも嫌ったりはしない」
「で、でも、それじゃあ僕は何のためにいるのさ!」
「そんなの決まっているだろ」
 メカ沢が再度、ドラスの頭を撫でる。今度は優しく、赤子をあやすように。
「お前は、俺と口喧嘩して、ノーヴェにお姉ちゃんと甘えて、ロボと遊んでいりゃいいんだよ。
誰かがボケたのなら、『それはギャグでいっているのか?』とかいってツッコメばいい。
だってお前は、俺の弟だからな」
「弟…………?」
「ああ、俺は兄貴だから、弟を守る。ベータの時もそうした。お前の時もそうする。
強さなんて関係ねえ。だから、お前は大人しくここで俺らの帰りを待っていな」
 戸惑いを見せるドラスに、メカ沢は学ランを脱いで肩にかけてやった。
 ヒーターが効いているとはいえ、雪に包まれた雪原地帯コロニーである。
524兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:30 ID:w6/sCWVI
 寒さが身に染みるが、メカ沢はやせ我慢をする。
「身体を冷やすんじゃねえぞ。俺らが、すべてを片付けて戻ってきてやるからな」
 そういい残して、メカ沢は地面を蹴る。ロボやノーヴェ、いずれも失いたくない仲間だ。
 そして、ドラスが心を痛める状況など、作りたくない。
 強固な決意をするメカ沢の背中に、ドラスの声がかかった。

「死なないで! メカ沢……お兄ちゃん……!」

 メカ沢は内心驚きながらも、気恥ずかしさをごまかすように鼻頭をこすった。
 右手を上げて、応えてやる。振り返らず、先ほどよりも速い速度でロボたちのもとへと駆け出した。



 横凪に振るわれる長ドスに、ロボとノーヴェは後方に跳んで避ける。
 四方を鉄の壁に囲まれた巨大な部屋にて、仮面ライダーXと二人は対峙を続ける。
 仮面ライダーXの圧倒的な強さに、二人はじわじわと追い詰められていくのを実感した。
 そう考えると、巨大な部屋が監獄と錯覚してしまう。ごくり、とノーヴェがつばを飲み込んだ瞬間、仮面ライダーXが大降りに長ドスを振る。
 構えるノーヴェとロボの眼前で、銀色の影が飛んできた。
「ちょっと待てー!!」
 弾丸のごとく仮面ライダーXに迫るメカ沢を、あっさりと避けられる。
 しかし、仮面ライダーXが後方に飛びのく隙をロボは見逃さず、右腕を発射した。
 敵の脇腹を砕きながら、戻ってくる腕を装着するロボと共に、ノーヴェはメカ沢を助け起こす。
「メカ沢! ドラスはどうしたのデスカ!?」
「ちょっと待ってもらっている。寂しがっているだろうから、とっとと倒して迎えにいくぞ」
「たく、急がなくちゃいけない理由を増やしやがって……」
525Classical名無しさん:08/07/15 18:30 ID:/RcJpvMQ
 
526兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:30 ID:w6/sCWVI
「……ノーヴェ」
「ん?」
「俺、あいつにお兄ちゃんって、呼ばれたぜ。羨ましいだろ?」
 自慢するような口調のメカ沢を前に、ノーヴェは僅かな間キョトンとする。
 やがて微笑んだかと思うと、メカ沢の頭をポン、と叩いた。
「あたしはいつも、ノーヴェ『お姉ちゃん』って呼ばれているぜ。羨ましいか?」
「へっ、俺はこれからも呼び続けてもらうんだよ」
「言ってろって」
 メカ沢とじゃれながらも、対峙している仮面ライダーXから視線を逸らさない。
 どう攻め込むか。思考を続けるノーヴェに、ロボの声が聞こえてきた。
「ワタシも……『お兄ちゃん』って呼んでもらえるデショウカ?」
 ロボから告げたと信じられないような言葉に、二人は一瞬驚く。
 しかし、すぐに微笑を浮かべて、答えを返した。
「当たり前だろ」
「へ、ロボ。その前に、こいつを倒さなくちゃな」
「もちろんです。メカ沢」
 三人が並び、殺気を放つ仮面ライダーXを睨みつける。
 その決意、鉄よりも硬い。一歩も通してなるものか。三人は心を一つに、飛び掛った。


「うりゃぁぁぁぁぁ!!」
 ノーヴェは吼えて、仮面ライダーXの頭部に向かって回し蹴りを放つ。
 全力をかけた、懇親の一撃だった。ノーヴェの疾風のような蹴りを、仮面ライダーXはそよ風のごとく受け止める。
 悔しさに顔を歪ませたノーヴェに、仮面ライダーXの右腕がゆっくりと狙いを定めた。
 鋼鉄をも砕くXパンチ。ノーヴェの鳩尾をめがけて、打ち放たれる。
527兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:31 ID:w6/sCWVI
「させるかよぉぉぉぉぉ!!」
 メカ沢が間に入り、Xパンチを受け止める。メカ沢のボディが衝撃にへこむが、辛うじて耐えた。
 メカ沢の瞳が、爛々と輝いて仮面ライダーXを捉える。
「俺は……頑丈なんだよ!!」
 強がりながら、仮面ライダーXの胸部の、赤いプロテクターを殴りつける。
 あまりの頑強さに、逆にメカ沢の拳が痛んだ。
「メカ沢! 伏せてクダサイ!!」
 その言葉にメカ沢は素直に従い、上半身を即座に沈める。背中を高速で飛ぶロボの腕が掠めた。
 激突音が鋼鉄の部屋に響く。
 耳をつんざくような音を発し、十メートルほど後退しながらも、仮面ライダーXは長ドスでロケットパンチを受け止めきった。
 だが、ロボたちの攻勢はまだ衰えてはいない。
 仮面ライダーXの身体に次々と銃弾が撃ちこまれていく。
 ノーヴェがエネルギーを帯状に固めた地盤―― エアライナーを昇りながら、手持ちのスタームルガーの弾丸を撃ちつくす。
 昇りきった後に、エアライナーを蹴り降りて、両足を仮面ライダーXに向ける。ゼロと開発した、絆の証の技。

「ブレイクライナーキィィィィィィック!!」

 目下の仮面ライダーXに向かって、己の持てる力を解き放つ。
 それに対応しようと仮面ライダーXが動くのを目撃した。
(間に合え……間に合え!!)
 祈るように心が叫ぶ。仮面ライダーXが跳躍しようとした瞬間、
「行かせるかよ!」
 メカ沢が体当たりで、姿勢を崩した。切り離されたロボの腕が、メカ沢の背中を押している。
 ゆえに、仮面ライダーXでさえも避けれない状況を生み出した。
(サンキュ……)
528Classical名無しさん:08/07/15 18:34 ID:QfzzShw6
 
529Classical名無しさん:08/07/15 18:35 ID:5xYacIOU
支援
530兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:35 ID:w6/sCWVI
 ノーヴェの限界突破が、仮面ライダーXに届いた。


「嘘……だろ?」
 ノーヴェが絶望を込めて呟いた。限界突破の一撃は、仮面ライダーXの片腕によって止められていた。
 そのままノーヴェは横凪に振るわれ、メカ沢を巻き込んでロボのもとへと投げ飛ばされた。
「ぐ……強い……」
 ノーヴェの呟きに、ロボが同意する。無茶苦茶な強さだ。
 頑強にも程がある。耐久力が並ではない。どちらもメカ沢以上だ。
 速さも、この中で一番身軽なノーヴェと同じか、それ以上。
 力も、ロボと同等か、それ以上にある。
 何より、いなし、捌く巧みさ。技量がまるで違う。戦闘経験の差だ。
 すべてにおいて、三人よりも圧倒的に上の実力を持つ仮面ライダーXを前に、ノーヴェたちはなす術もない。
 もっとも、それで諦めるような三人ではなかったが。
「おい、次ぎ仕掛けるぞ!!」
「エエ、二人とも、ワタシの後についてきてください」
「次こそ、完全にあたしの蹴りをぶちかます!!」
 闘志の衰えない三人の声。ここで負けてしまえば、次はドラスだ。
 負けるわけにはいかない。三人の想いは一つとなる。
 その瞬間、ロボの持つ「ぎんのいし」が光り輝いた。
「なんだ、そりゃ!」
「コレハ……」
 ロボが輝くぎんのいしに、希望を見出す。溢れるエネルギーを手に持ちながら、メカ沢とノーヴェに声をかけた。
「メカ沢、ワタシに合わせてクダサイ!! ノーヴェさん、あのキックを、もう一度オネガイシマス」
「なんだかわからねえが、任せろ!」
 メカ沢の返事を得て、ロボは駆け出す。メカ沢が後に続いた。
 ぎんのいしのエネルギーがロボとメカ沢に宿る。
531兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:35 ID:w6/sCWVI
 もっとも、仮面ライダーXも見ているだけではなく、迫ってきた。
「ちきしょう! ちょっとは待ちやがれ!」
「クッ……!」
 ロボの悔しげな声は、現状が絶望的であることを教えた。


(もうちょっとなんだよ……もうちょっとだけ、時間を……)
 メカ沢が祈るように思う。それは本当に、僅かな時間の思考だった。
 神速の速度で迫る仮面ライダーXを前に、メカ沢は悔しげな視線を向けるだけだった。
(頼む! 神様、少しだけ俺らに時間をくれ!! あいつを……)

『死なないで! メカ沢……お兄ちゃん……!』

(あいつを、守るんだ! でなきゃ、不良の筋が……兄貴の筋が立たねえ!!)
 メカ沢の想いに応えるように、体内のタイムストッパーのチップが起動する。
 瞬間、メカ沢は周囲の動きが止まったように思えた。
(またあの時の感覚! 神様、愛しているぜ!!)
 固定された仮面ライダーXをめがけ、メカ沢は全身を弾丸に変えて、吹き飛ばす。
 周囲が色を取り戻し、正常に戻った時の流れの中、カウンター気味に決まったメカ沢の頭突きが仮面ライダーXを吹き飛ばした。
 よろめく仮面ライダーXを中心の沿え、舞台は整う。
 仮面ライダーXを挟んで、メカ沢とロボが並ぶ。ボディをゴリラのドラミングのごとく鳴らすロボの周囲に、エネルギーが生み出された。
 同時に、メカ沢の身体からも、ロボから放出されているのと同種のエネルギーが飛び出してきた。
532兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:36 ID:w6/sCWVI
 その二人に間に、ノーヴェが飛び込む。

「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

 重なる三人の声。エネルギーに乗ってノーヴェが上昇していく。
 中央の仮面ライダーXはぎんのいしの発するエネルギーに抑えられ、身動きが取れない。
 上昇しきったノーヴェは、エネルギーの渦の中央に吸い込まれれ、両足をそろえて仮面ライダーXを捉える。
 エネルギーによって上に昇るメカ沢とロボと入れ違いに、ノーヴェは先ほどとは比べ物にならないほどの速度で落下していった。
 本来なら、カエルがジャンプ斬りで決める締めに、ノーヴェのブレイクライナーキックが代わりを務めた、擬似ストライクスピン。
 しかし、その威力は本家ストライクスピンにも劣らない。
 落雷が起きたかのような轟音が響く。
 粉塵の中、目にも留まらない速さで仮面ライダーXが壁に激突して、瓦礫に埋まった。


「はぁ、はぁ、くそ。もう二度と立つんじゃねえぞ……」
「へっ、活躍だったじゃないか。ノーヴェ。女にするには勿体ねえ」
「……褒めているのか? それ」
「あ? 当たり前だろ」
「このやろう……あたしに色気がないってか! 悪かったな!!」
「んなの知るか!」
 危機が去ったと判断してじゃれ合う二人に呆れながらも、メカ沢はホッとしつつ手元のぎんのいしを見つめる。
 あの一度、ただ一度だけ、エネルギーを感知した。今は沈黙しているそれを、ロボは不思議そうに見つめる。
 カエルもエイラもいない。なのに応えてくれたのは、二人の想いに反応をしたからだろうか?
 答えは返ってこないが、それいいとも思う。ロボは静かにため息をついて……地面を蹴った。
 不思議がるメカ沢を突き飛ばした瞬間、瓦礫が飛び散り、仮面ライダーXが舞い降りた。
533Classical名無しさん:08/07/15 18:36 ID:YNCVn3G2

534兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:36 ID:w6/sCWVI
 ため息をついた瞬間、僅かに瓦礫が動くのを目撃していたのだ。
 仮面ライダーXがロボを掴んだ。


 仮面ライダーXが胸部にエックスのチャージショットを受けて以来、沈黙しているものがあった。
 マーキュリー回路。
 マーキュリーパワーを生み出す、先輩ライダーの風見志郎から受け取った力の源だ。
 チャージショットの衝撃で沈黙していた装置が、危機を前にして、ブレイクライナーキックを前にして、ついに目覚めたのだ。
 身体を正常な状態にする生命の水。
 時間をかけて、ようやくマーキュリー回路まで届いたのだ。
 暗闇の種子を撃退するには、生命の水が足りない。
 僅かな時間で回復するには、生命の水が足りない。
 されど、時間をかければ、万全の状態の殺人鬼へと戻れる。
 ゆえに、タイミングよくマーキュリー回路が作動した仮面ライダーXは、三倍の身体能力をもってしてぎんのいしのエネルギーの拘束を振りほどいたのだ。
 身をずらして、ストライクスピンの直撃を避け、全身にマーキュリーパワーを漲らせた仮面ライダーXはロボを掴んだ。


「真空…………」
 掴んだロボの身体を持って、仮面ライダーXは地面にロボの頭を叩きつけた。
 凄まじい衝撃がロボに走る。
「地獄…………」
 さらに上昇して一回転追加、落下後再び叩きつけられる。
 ロボの体内はもうぐしゃぐしゃであろう。それでも、ロボの瞳に諦めはない。
(使えマス…………)
535Classical名無しさん:08/07/15 18:37 ID:hdMKJ4bs
536兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:37 ID:w6/sCWVI
 何度も何度も叩きつけられながらも、ロボは最後の力の使いどころを計算し続ける。
 これは外すわけにはいかない。凄まじい力の本流の中、ロボは思考を続ける。
(ワタシは……アトロポスと同時期に開発されマシタ……)
「車ぁぁ…………!!」
 一際大きく、仮面ライダーXが叫び、ロボが投げ飛ばされる。天井に穴が開くほどの衝撃。
 それで猛攻は終わらず、仮面ライダーXが天へと跳躍する。好都合。
(だから、ワタシはアトロポスと同ジク……)
 ロボの姉妹機アトロポス145、彼女はロボが本来の任務を拒否したため、互いに争わねばならなかった。
 ロボはその戦いを拒み、ひたすら彼女の攻撃を受け続けるだけだった。
 だが、狂気に支配されているはずだった彼女に異変が起きる。
 ロボとの戦いの結末は、彼女の……

「X……キィィィィィック……」

 向けられた右足が激突する瞬間、ロボの体内の炉が燃え上がる。
「メカ沢、ノーヴェさん、ドラス……後はオネガイシマス!!」
 瞬間、空に爆発の華が盛大に開く。自爆、彼らが取れる、最後の道。
 吹雪に晒された爆発は、基地全体を揺らした。


「ロボォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
 メカ沢の咆哮が轟く。穴よりはいる雪が冷たさをメカ沢に伝えるが、悲しみに満ちた彼はそのことを気にかける余裕はなかった。
 空より落ちてくるロボのパーツが、メカ沢の心を抉る。
 そして、仮面ライダーXも全身くすぶりながら舞い降りてきた。
「あいつ……!」
537Classical名無しさん:08/07/15 18:37 ID:hdMKJ4bs
538Classical名無しさん:08/07/15 18:37 ID:hdMKJ4bs
539Classical名無しさん:08/07/15 18:38 ID:hdMKJ4bs
540Classical名無しさん:08/07/15 18:38 ID:YNCVn3G2


541兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:38 ID:w6/sCWVI
「ロボに蹴りが到達する瞬間、あの怪人はドスを振り回して耐えたんだよ……」
 怒りに燃えるノーヴェとは対照的に、メカ沢が静かだった。
 彼の言うとおり、仮面ライダーXは蹴りが到達する瞬間ロボの行動を予測して、キックを中断した。
 そのまま長ドスをまわし、ライドルバリアを仕掛けて、爆発に耐えたのだ。
 マーキュリー回路が蘇ったからこそ、取れる行動だった。
「くっ、けど!」
「ノーヴェ、ドラスを頼むわ」
「メカ沢、お前何を……!」
 ノーヴェが吼える瞬間、メカ沢が突き飛ばし、シャッターを閉じるボタンを押した。
 戻って来れないよう、タイムストッパーでできるだけ遠くに運び、内部に戻る。
 仮面ライダーXなら、このシャッターを破壊するのはたやすい。そう判断して、足止めを覚悟したのだ。
 降りていくシャッターを見つめ、ノーヴェが驚いた。急に大距離の移動、それはメカ沢が行ったことを察知する。
「聞け! ドラスは、あいつを助けた場所のコンテナの傍に隠している。そこに迎えにいってやれ。寂しがっている」
「お前、格好つける気かよ! ロボもお前も、自分勝手だ!!」
「そりゃそうだ。俺もロボも、男だからな」
「ふざけるな! あたしの方がお前より強いんだぞ!!」
「知っている。だが、ドラスにも言ったけど、強いも弱いも関係ねえ。お前は女、俺は男。
だから俺が守る。メカ沢新一、最後の喧嘩だ。華を持たせてくれや」
 ノーヴェは歯を食いしばり、閉じていくシャッターを見つめていた。
 涙をこぼしながら、メカ沢に告げる。
「……あいつの『お姉ちゃん』を独り占めするぞ……?」
「そいつは、ちょっと悔しいな……」
 その一言を残して、シャッターが完全に閉じた。部屋の向こうでは轟音が聞こえる。
 ノーヴェは踵を返して、駆けつづけた。ドラスの前で涙は見せてはいけない。
542兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:38 ID:w6/sCWVI
 それでも、彼のところに辿り着くまでは、仲間の死を悲しみ続けたかった。


「X……パンチ……」
 仮面ライダーXの拳を、身体で受け止めながらもメカ沢の瞳は死んでいなかった。
 一分、一秒でも時間を稼ぐ。こいつをドラスのもとには向かわせない。
 メカ沢の燃える闘志が、ひたすら仮面ライダーXとの『喧嘩』を成立させていた。
 メカ沢はそのまま仮面ライダーXの腕を掴み、力に任せたままブン投げる。
 軽やかに着地する仮面ライダーXを前に、メカ沢がローリングソバットを打ち放つ。
 受け止められるが、メカ沢の予想の範囲。そのまま強固な頭突きで脳天を強打する。
「……はあ、はあ。てめえもロボや俺たちの技が効いているみたいだな」
「…………れ……」
「聞こえねえよ!!」
 仮面ライダーXの拳が再び唸る。メカ沢は数発受けながらも、瞳はただまっすぐ前を向いていた。
 僅かに、仮面ライダーXに隙ができる。メカ沢は頬に拳を叩き込んだ。
 拳が割れるが、知ったことじゃない。
「おめえが殺そうとしたドラスはな、親に捨てられたかわいそうな子供なんだぞ!」
「……く…………れ……」
 メカ沢は怒りに任せるままに、身体が壊れるのも構わず、仮面ライダーXを殴り続ける。
 先ほどまで命中しなかった拳が次々と仮面ライダーXの身体に吸い込まれた。
「ロボは……いつも他人を気遣って、自分のことを後回しにする、気の優しい奴だったんだ!!」
 一際強く力を込めた拳を、仮面ライダーXの胸に放つ。
 さすがに仮面ライダーXもただ受けるだけでなく、カウンターを決めてきた。
 メカ沢は何とか踏ん張り、倒れるのを阻止する。
「……して……く…………れ……」
543Classical名無しさん:08/07/15 18:38 ID:L5HeSXtk
支援
544Classical名無しさん:08/07/15 18:38 ID:hdMKJ4bs
.
545Classical名無しさん:08/07/15 18:39 ID:GrPFlq.w
546兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:39 ID:w6/sCWVI
「ノーヴェだってな、女の身なのにこの殺し合いを止めようと頑張れる、芯の強い奴だ。
なのに、力のあるお前が何で殺し合いに乗るんだ! 恥ずかしくないのか! それでも男か!!」
 メカ沢の気合と共に、アッパーが仮面ライダーの顎を捉えた。
 振りぬきながら、メカ沢は仮面ライダーXを通さんと仁王立ちをする。
 仮面ライダーXの後方には、壊れたロボの右半身のパーツが放置されていた。再び、怒りがメカ沢に宿る。
 怒りのまま、メカ沢は地面を蹴った。握る拳が痛い。

「お前だけは、許しちゃおけねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 メカ沢の怒りのままの突撃に、仮面ライダーXは巧みに長ドスを操り、迎え撃とうとする。
 このままでは身体が貫かれるだろう。だが、死ぬ覚悟でなければ攻撃は当たらない。
 その瞬間、見覚えのある腕が仮面ライダーXの背中に激突して、長ドスの矛先が逸れた。
 黒焦げのロボの腕が、メカ沢を支援するように動いていた。
 これは、ロボの身体がショートして、ロケットパンチを発動させる回路が誤作動して起きた奇跡だった。
 メカ沢の抉りこむようなストレートが仮面ライダーの鳩尾へと迫る。
 その瞬間、ポタ、と水滴がメカ沢の身体に落ちた。血涙。流しているのは……

「殺……して……く…………れ……」

 メカ沢と戦っている相手、仮面ライダーXであった。
 それを見た瞬間、メカ沢は初めて相手が好きで戦っているわけでないと知る。
 メカ沢の優しさが、拳の力を緩めてしまった。それが、命取りになろうとも。
 仮面ライダーXは動きの鈍ったメカ沢の隙を突いて長ドスを横凪に振るった。
 メカ沢の首と胴体が分かれる。
(しくじった……。でもよ……殺してくれって頼む奴を……ぶん殴るのは……男じゃない……よな……?
神山……ベータを……林田じゃバカすぎるから…………任せ……た。ドラ……ス……)
547兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:39 ID:w6/sCWVI
 クロマティ高校の一不良メカ沢。
 彼の最期に想ったのは、弟たちのことだった。



「ドラス! どこだ!!」
 ノーヴェが鋼鉄に囲まれた通路の中、ドラスを探して声を張り上げる。
 まさか、ドラスまでも犠牲になったのでは?
 ノーヴェの心に不安がよぎるが、押さえ込む。ドラスは生きている。そう自らに言い聞かせて、ひたすらコンテナの隙間を覗きまわった。
「ノーヴェ……お姉ちゃん……?」
「ドラス!」
 ノーヴェはようやく見つけたドラスを抱きしめ、手を握る。
 震えているのは、寒さだけではない。瞳にはノーヴェでも分かるほど、恐怖に満ちていた。
「メカ沢お兄ちゃんは……?」
「あいつなら心配ない。すぐに駆けつける」
 本当にお兄ちゃんと呼んだんだ、と妙に感心しながら、ノーヴェは先を誘導するように腕を引っ張った。
 ドラスは抵抗するように、足取りが重い。後ろを振り返る姿から、ノーヴェはドラスが何を思っているか理解した。
「嘘だ……」
「……ドラス。行くぞ」
「嘘だ! 相手は仮面ライダーなんだ! 完成品なんだ! だから僕からメカ沢お兄ちゃんを奪ったんだ……僕の命を奪いに来るんだ!」
「ドラス!!」
 ノーヴェが強くドラスの肩を抱く。同時に、安心させるように優しくもあった。
「あたしが守る! お前は、あたしたちの弟だから!」
「ノーヴェ……お姉ちゃん……」
 ノーヴェは安心させるようにドラスの背中をポン、と叩いてやった。
548Classical名無しさん:08/07/15 18:39 ID:QfzzShw6
 
549Classical名無しさん:08/07/15 18:40 ID:hdMKJ4bs
550兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:40 ID:w6/sCWVI
 ドラスも、落ち着きを取り戻していく。
「それじゃ、ドラス。逃げる……」
 ノーヴェは言葉を最後まで告げるよりも早く、ドラスをしゃがませた。
 同時に、メカ沢の首が舞う。目の前の、仮面ライダーXをノーヴェは憎々しげに見つめる。
 ノーヴェの腹を、長ドスが貫いていた。


 ドラスの目の前で、メカ沢の首が金属音を奏でて落ちる。
 もう二度と光を宿さないメカ沢の目を見つめて、ドラスはいっそう震えた。
 逃げなければと思うのに、身体が動かない。
 このまま殺されるのか?
 もはやメカ沢もこの世にはいない。それもいいかとドラスが諦めかけた。
「ドラスに……近寄るなぁぁぁぁ!!」
 ノーヴェの蹴りが、仮面ライダーXの鳩尾を打ち抜いた。
 普段の彼女以上の威力で、仮面ライダーXが吹飛んでいく。
 ノーヴェは、口元から血を流しながら、ドラスを抱きしめて、頬に軽く口付けをする。
 温かい何かが、ドラスの頬にほのかに残る。
「ドラス、後はお姉ちゃんに任せて逃げな。
このPDA、ゼロかチンク姉に見せれば、あたしの弟だって理解してもらえるから、決して落とすんじゃないぞ」
「ノーヴェ……お姉ちゃん……」
 ドラスが突き飛ばされ、ノーヴェは微笑みながら仮面ライダーXと対峙した。
 まだ恐怖を感じているが、不思議と温かいものに包まれたような感覚のドラスは何とか逃げるために足が動いた。
 ドラスはもう一度だけ振り返る。ドラスより弱いはずだったノーヴェの背中が、どこまでも大きく見えた。


 ドラスの気配が遠のいていく中、ノーヴェは普段以上の力が振るえたことを微塵にも不思議には思わなかった。
551兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:41 ID:w6/sCWVI
 死に際の火事場のクソ力ということもあるが、それ以上にドラスを守るために、下のものを守るために全力以上の力がでることを、当然だと思う。
『おまえも姉なんだぞ』
 いつか聞いた、チンクの声が蘇る。足の人工筋肉が引きちぎりかねないスピードで仮面ライダーXとの距離を詰め、腕を決して逃がさないと脇に抱える。
 必死で振りほどこうとする仮面ライダーXの力は並ではない。それでも、ノーヴェは全力で仮面ライダーXの腕を逃がさなかった。
「ちょっと空の散歩と、洒落込もうか!!」
 テンプレート状のエネルギーが道を作り上げる。エアライナーを仮面ライダーXを抱えながら駆けつづけた。
 仮面ライダーXが異常な力でもがき、ノーヴェの人工筋肉、人工骨が軋み、煙を噴出す。
 限界を超えた活動に悲鳴をあげているが、ノーヴェの力は一向に衰えない。
(ああ、チンク姉も私たちを守ろうとする時は、きっとこういう気持ちだったんだろうな……)
 もはや、ノーヴェはチンクが殺し合いに乗ったとは微塵も思ってはいない。
 だから、自分たちの弟、ドラスを託したのだ。
 仲間を殺された悲しみ。大切な姉妹をこんなにも辛い気持ちを抱えながら殺せる姉じゃない。チンクを侮っていたことを、惑わされていたことを内心謝る。
 ノーヴェはエアライナーをシャッターが壊れた先ほどの戦場へと続けて、舞い戻る。
 そのまま部屋に突入、目的の壊れた天井へと伸びたエアライナーをひたすら走り続けた。
「ブレイク…………」
 そのまま呟くノーヴェの声。思い出すのは、目の前の仮面ライダーXと戦った時の記憶。
 ゼロと共に編み出した絆の技。そして、ドラスを守るためにまた、ノーヴェは最期の新しい技を生み出した。
 ノーヴェは眼下に見えるロボの残骸と、メカ沢の胴体に僅かに黙祷して天を駆け続ける。
(あたしもすぐに駆けつける……だけど、その前にこいつだけは!!)
 金のテンプレートの埋め込まれたエネルギーの道を走り続ける。
 雪が降り続ける外へとでた時、エアライナーは螺旋状に天に向き続けた。
 ノーヴェは必死に足を動かす。
「ライナァァァ……!」
 まだ昇り足りない。昇り足りないとノーヴェが必死に足掻く。
 もはや感覚は残っていなかった。それでも、がっちりと仮面ライダーXを拘束していることは分かる。
552兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:42 ID:w6/sCWVI
 コロニーの天井が見えたとき、ノーヴェは天を向きながら回転、コロニーの天井を蹴って、勢いをつけて落下する。

「落とぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉし!!」

 仮面ライダーXの真空地獄車を二度目撃したことが功を奏した。
 仮面ライダーXを下に向けたまま、ノーヴェは落下を続ける。地面が見えて、死が近づくのに、ノーヴェの顔は微笑みで満ちていた。
(ゼロ……チンク姉……あとは……よろしく)
 すべてをやり遂げた、姉のいい笑顔のまま、地面に落ちていった。



 ドラスは必死で逃げ続けていた。
 振り向けば、仮面ライダーが現れて、自分の命を引き裂きに来る錯覚にとらわれ続けたのだ。
 また、仮面ライダーに腕を潰される。胸を砕かれる。脚を引きちぎられる。腕を貫かれる。
 命を奪われる。
 もはやドラスは狩る側ではなく、狩られる側だった。
 一際盛り上がった雪にドラスは脚をとられ、無様に倒れた。
 雪が顔にまとわりつき、横に振るって雪を跳ね飛ばした時、ノーヴェのPDAの支給道具が目に映った。
 懐中時計。
 もしやと思い、転送してみると、宏が持っていた懐中時計だった。
 オルゴールの旋律が流れ続ける。ドラスはこの音楽が好きだった。
「……違う」
 ドラスは目の前の音楽を否定、頭を横に振るう。
「違う! 確かにこの音楽は好きだった。けど、本当は……それ以上に……宏くんが好きだったんだ!」
 自分でも驚愕する、心の奥底の吐露。ドラスはようやく、自分が何を求めていたのかを知った。
553Classical名無しさん:08/07/15 18:42 ID:hdMKJ4bs


554Classical名無しさん:08/07/15 18:42 ID:YNCVn3G2

555Classical名無しさん:08/07/15 18:42 ID:hdMKJ4bs
556Classical名無しさん:08/07/15 18:42 ID:QfzzShw6
  
557兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:42 ID:w6/sCWVI
 ドラスは、培養液にいた自分に音楽を聞かせてくれた宏が好きだった。宏の弟になれればいいのにと願った。
「僕は、パパが好きだった!」
 自分を創ってくれた、唯一の生み親。
 たとえ一時期、狂気にとらわれて、自分を壊そうとしたことがあっても、それでも振り向いて欲しかった。
 愛して欲しかった。
「僕は……僕は…………」
 神になることも、究極の生命体になることも、それを得るための『過程』に過ぎなかったのだ。
 究極の生命体になれば、それを得れると信じて。
「僕は……家族が欲しかったんだ……」
 それでようやく、自分が不完全な存在でることを認めた。
 ドラスは完全な生命体に感情は不要だと望月博士に教えらている。
 つまり、家族を欲しがるドラスは不完全な存在でしかない。そして、仮面ライダーが完全な存在であることを認めざる得なかった。
『あなたの価値を認める仲間は、こんなにもいるのデスカラ』
 ロボの言葉が不意に蘇る。
 メカ沢は不完全な自分でも、兄になってくれると言った。ノーヴェは自分を守ると、姉であり続けた。
 なのに、すべて奪われた。ドラス自身のせいで。
「う……あ……」
 思わず、声が漏れる。頬を暖かい体液が流れていた。
 自分が涙を流せるなんて、初めて知った。
『俺は兄貴だから、弟を守る』
 本当に望んでいたものは、手を伸ばせば届く距離にあった。
 素直になれば、掴むことができた。肩にかかるメカ沢の学ランを握り締めて、ドラスは呻く。
『あたしが守る! お前は、あたしたちの弟だから!』
 彼女はずっとそう言っていたはずだ。自分が求めるものは、ここにあると。
558兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:43 ID:w6/sCWVI
 それを蔑み、馬鹿にしたのは自分だ。それがどれほど、価値があるかはとっくの昔から知っていたのに。

「あ……ああ……ああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 あの時仮面ライダー相手に戦いを挑まなければ。
 相手を侮らなければ。自分は、メカ沢もノーヴェも失わずに済んだ。
 家族になってくれると誓った相手を、失わずに済んだ。
 もう、遅い。
 ドラスに始めて、喪失の痛みが訪れた。



 雪原地帯でも発揮する走行性能を持つサイクロンにチンクは感心をする。
 相当高い技術が積み込まれたバイクだ。風見の先輩とやらが愛用していた理由も分かる。
 吹雪く雪に、視界が利きにくい。
 面倒だと呟いて、ひたすらバイクを運転続けた。ふと、子供の声が聞こえた気がした。
 そんなバカなと首を振るが、もう一度聞こえた。悲しみを込めた、声を。
 今度こそは幻聴ではない。チンクはそう判断して、サイクロンを反転、現場に向かうことにした。


 チンクが目撃したのは、雪にうずくまる十歳になるかならないかの少女だ。
 いわゆるゴシックロリータ服に身を包み、ひたすら泣き続けていた。
 害はないと判断して近寄り、声をかける。
559Classical名無しさん:08/07/15 18:43 ID:hdMKJ4bs
560Classical名無しさん:08/07/15 18:44 ID:hdMKJ4bs
561兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:44 ID:w6/sCWVI
「どうした?」
 少女は一瞬、ビクッと震えて、ゆっくりと顔をこちらに向けた。
 チンクは驚愕の表情を浮かべた。
 よく知る顔、セインの顔がそこにあったのだ。警戒をするが、それも一瞬。
 瞳に浮かぶ悲しみと脅えに、その必要はないと判断した。
「何か辛いことでもあったのか?」
 自然、声が優しくなった。妹に似ている少女。
 警戒する必要がないなら、自然と声色が優しくなる。セインに似ているせいであろう。
 しかし、目の前の少女はただ首を横に振るだけだ。少女が落ち着くのを待つことに決めた時、PDAの一つのファイル名を目撃した。
『チンク姉、ゼロ、もしくはあたしの弟を守ってくれる人へ  ノーヴェより』
 チンクがサイクロンから降り、少女のPDAを掴むと、あっさりとチンクの手に移動した。
 PDAを操作して、テキストファイルを呼び出す。
 それは、ノーヴェが残した遺言だった。
『チンク姉、ゼロ、もしくはこれを読んでいる誰か、これを読んでいるってことは、あたしはもういないと思う。
けど、これを託したのは、ドラスって言って、あたしの弟なんだ。
もしもこれを読んだのがチンク姉やゼロじゃないなら、二人を探すのを手伝ってやって欲しい。
ドラスをよろしく頼む。
PS.チンク姉、あたしはいまから『姉』として戦う』
 チンクは知らないが、ノーヴェがドラスを探す間に、もしもの時を想定して残した遺言だった。
 それを読みきった瞬間、チンクはもうノーヴェがこの世にいないことを悟る。
 震える身体、こみ上げる激情、破壊衝動に身を任せたい欲求が駆け巡った。
(だが、そうするわけにはいかない……)
 まだチンクは『姉』なのだ。ノーヴェが弟と決めた少年―― 外見は少女にしか見えなかったが ――がいる。
 セインと似ていることは、警戒の対象のはずだ。しかし、おびえを含んだ瞳。
 そして、何よりノーヴェが『弟』と定めたのなら、チンクは彼女の姉として、彼を守らねばならない。
562Classical名無しさん:08/07/15 18:44 ID:L5HeSXtk
支援
563兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:45 ID:w6/sCWVI
 泣き続けるドラスが落ち着くのを待ちたかったが、そうはいかない。ノーヴェを殺した犯人がここにいる。
 今すぐそいつを見つけ出し、八つ裂きにしてやりたい衝動に駆られるが、どうにか抑えた。
 ドラスを風見たちのところに連れて行き、犯人を聞き出す。
 その後、敵討ちはドラスを風見に預けるなりして行えばいい。
 チンクは己を制御しながら、泣き続けるドラスをサイクロンの後部座席にまたがらせた。



【D-3 雪原/午前】

【ドラス@仮面ライダーZO】
[状態]:全身打撲、コアにダメージ。中程度の損傷&疲労。右腕がスバルのもの。悲しみ。
    自分が求めていたものが『家族』と自覚。仮面ライダーに恐怖。
[装備]:ラトゥーニのゴスロリ服@スーパーロボット大戦OG、メカ沢の学ラン
    セインを四、五歳幼くした状態に擬態。ただし、生えている
    オルゴール付き懐中時計@仮面ライダーZO
[道具]:支給品一式、PDA(ドラス) (マルチ)(ノーヴェ) 謎の金属片を所持
    荷電磁ナイフ@マルドゥックスクランブル(D-3基地に放置。呼び出し可)
    スタームルガー レッドホーク、装弾数0/6@ターミネーター2(D-3基地に放置。呼び出し可)
[思考・状況]
基本思考:???
1:仮面ライダーに恐怖。
2:自爆装置、リミッターの解除。
[備考]
自分が未完成品、仮面ライダーが完成品だと勘違いしています。
仮面ライダーを前にすると、恐怖で動けなくなるほどのトラウマを負いました。
また、恐怖心により戦闘能力は発揮できない状況です。
どの程度戦えないかは、次の書き手にお任せします。
564Classical名無しさん:08/07/15 18:45 ID:QfzzShw6
 
565Classical名無しさん:08/07/15 18:45 ID:GrPFlq.w
566兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:45 ID:w6/sCWVI


【チンク@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:小程度の疲労、全身に小ダメージ、固い決意、ノーヴェの死を悟り、悲しみと憤怒
[装備]:ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス(3/30)
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜1、サイクロン号(1号)@仮面ライダーSPIRITS 、
    金属の詰まった平凡なデイバッグ@ゴミ処理場
[思考・状況]
基本:ノーヴェの仇を討ち、シグマを破壊する
1:ドラスをつれて、志郎と合流。ドラスを預けノーヴェの仇を討つ。
2:志郎と共に本郷・茂・ギンガを探し、合流する。スバル、敬介は警戒。
3:殺し合いに乗った危険人物には容赦しない
4:スティンガー、シェルコートを手に入れる
[備考]
※参戦時期は本編終了後です
※優勝者の褒美とやらには興味がなく、信用していません
※志郎を信用していることに気付きました。
※ゼロと情報交換を済ませました。

567Classical名無しさん:08/07/15 18:45 ID:hdMKJ4bs

568兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:45 ID:w6/sCWVI


 アルレッキーノは基地からでると、駆けていくドラスを目撃した。
 彼には借りがある。走り去っていった方向へと動き、ドラスの姿を探した。
 不意に、エンジン音がアルレッキーノの耳に届く。
 身を隠しながら、遠めで見つめると、ドラスとチンクの姿があった。
 チンクは最初の見せしめの時に姿を晒しているゆえ、姿は知っていた。
 そして、ドラスと共にいる。
 アルレッキーノにある結論が導き出された。
(やはり、あのメッセージの通りチンクは壊し合いに乗っている!)
 その手駒として、あのドラスなのだろう。
 つまり、ドラスもチンクも放置しておくことは、アルレッキーノにとっては不味い。
(とはいえ、ダメージが残るこの身では二人を同時に相手はできない)
 悔しげにうつむきながら、アルレッキーノは一旦ソルティやエックス、そしてエレオノールと接触しそうな人々に彼らの脅威を伝えねばと考えた。
 二人を放置していれば、彼らの牙はやがてエレオノールにも届く。
 それだけは見逃せない。
(あの少女……人間の姿をしておきながら、他者を壊そうと迫ってきた。
エレオノール様のご意向には背くが……やはり人間であろうとも……殺すべきか……?)
 アルレッキーノに非情の決断が訪れる。
 踵を返して、エックスとソルティのもとへと戻ろうとする彼に訪れるのは、幸運か不運か。
 道化は駆け出す。
 最悪の情報を持ち出して。
569兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:46 ID:w6/sCWVI

【D-3 雪原/午前】

【アルレッキーノ@からくりサーカス】
[状態]:全身が焦げている。全身に中程度のダメージ、七分袖
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本思考:エレオノール(フランシーヌ人形)を生還させる。出来れば自分や茶々丸も共に脱出したい
1:一旦エックスとソルティのもとに戻り、チンクとドラスの危険性を伝える。
2:エックスとソルティ以外にも、信頼できる人物にチンクとドラスの危険性を伝える。
3:フェイスレス側の自動人形は積極的に破壊する
※名簿の『フランシーヌ人形』はエレオノールの事だと思っています
※この殺し合いに参加している自動人形には、白銀とフェイスレス以外の何者かが作った者もいるのではと考えています

※シュトロハイムとゲジヒトを、ナチスがあった時代に作成されたナチス製の自動人形であると思っています
※チンクは殺し合いに乗り、シュトロハイムを殺害したと思っています
※ロボットの事を「自分の知っている自動人形とは違う作られ方をした自動人形」と認識しました
※茶々丸と情報交換しましたが、完全には理解できていないようです

570兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:47 ID:w6/sCWVI




 仮面ライダーXはゆらりと幽鬼のごとく立ち上がった。
 ノーヴェのブレイクライナー落しが炸裂する瞬間、彼女は息絶えて腕の拘束が緩んだのだ。
 その隙に、ノーヴェの腹から長ドスを引き抜いて、壁に突き刺し勢いを幾分か落としたのだ。
 仮面ライダーXのダメージは大きいが、それでもまだ戦える。
 そう、人類の自由のために戦う『仮面ライダー』としてではなく、この壊しあいに乗る『怪人』として戦い続けれるのだ。
 変身が解け、人間の姿へと戻る。
 その両の瞳に血の涙が流れ続けていた。

「殺……して……く…………れ……」

 彼の良心が生きている証を呟く。だが、それに応えるものは誰もいない。
 敬介は笑みを浮かべ続けるノーヴェの瞳を閉じさせてやった。
 怪人としての彼にできる、精一杯の仮面ライダーとしての行動。それが限界である。
 ロボのPDAからバイクを呼び出す。長ドスのIDはこっちに移している。
 アルレッキーノがドラスに敗れた時、PDAを回収をしていたのだ。
 仮面ライダーの名にふさわしく、彼はバイクを操る。
 怪人に、最悪の凶器が渡った。

571兄弟/姉弟/家族 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:48 ID:w6/sCWVI
【D-3 基地内/午前】

【神敬介@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:胸部破損、疲労大、全身にダメージ中、生命の水の影響極小
[装備]:阿紫花の長ドス@からくりサーカス、HARLEY-DAVIDSON:FAT BOY@ターミネーター2
[道具]:マグネット×2、支給品一式およびPDA×5(アルレッキーノ、神 敬介、ロボ、アラレ、シュトロハイム)
    スモールライト@ドラえもん(残り四回):アルレッキーノのPDA
    ぎんのいし@クロノトリガー:ロボのPDA
    はちゅねミクのネギ@VOCALOID2(E-3道路に放置)メッセージ大砲@ドラえもん(E-3道路に放置)
    アタッチメント@仮面ライダーSPIRITS(シュトロハイムの右腕)
    拡声器@現実(E-3道路に放置):アラレ、及びシュトロハイムのPDA。転送可能
[思考・状況]
1:エックス……
2:殺してくれ
[備考]
※阿紫花の血により回復速度が促進され、胸の出血が止まりました。他に全く影響が無いのかは、次の書き手様にお任せします。
※第一放送の内容を知りません。


【ノーヴェ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 破壊確認】
【メカ沢新一@魁!クロマティ高校 破壊確認】
【ロボ@クロノトリガー 破壊確認】
【残り 34人】


【支給品紹介】

【オルゴール付き懐中時計@仮面ライダーZO】
望月宏の持ち物。劇中では中盤まで壊れて音楽がならなかった。
ドラスの精神を穏やかにする効果がある。
572Classical名無しさん:08/07/15 18:48 ID:QfzzShw6
  
573Classical名無しさん:08/07/15 18:48 ID:L5HeSXtk
支援
574 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 18:49 ID:w6/sCWVI
投下終了。
誤字や矛盾の指摘、感想をお待ちしています。
575Classical名無しさん:08/07/15 19:25 ID:3QTUxANs
投下GJ。
ちょっと! 濃!
めちゃくちゃ濃いぜこの話は。全体的に悲惨だけど、ドラスの行く末が気になるゼイ。
576Classical名無しさん:08/07/15 19:34 ID:2OJX/xEo
乙でした!!!いやあ、これは予想外の展開…
ドラスと敬介の行く末が気になっていかた無い
577Classical名無しさん:08/07/15 19:53 ID:uy5kT0YQ
投下GJです!
『家族』を喪ったドラスの内面描写が素敵。ドラス好きなんだろうなーってのが、伝わってきます。
そして、ロボメカ沢ノーヴェ達も熱かった。カッコいい死に様だったぜ……
何より、敬介……
嗚呼、お前はどこへいく。見えているのが逆に恐怖ってヤツです。……イイ。こういうのは、実にイイ。
改めてGJでした!
578Classical名無しさん:08/07/15 20:36 ID:o/4p1LBI
投下乙!
3人とも熱かった……これでドラスがまだ水面下で目論みしてようものなら道化だったけどそれすら打ち破ったのはすごかった!
それでもドラスは可愛そうだなー……擬似家族を失ってトラウマ持ちで誤報フラグまで立って。
Xもアルレッキーノもしっかりしてくれよぅ……
579Classical名無しさん:08/07/15 20:36 ID:lvHYpKqM
投下乙です!
ああ……ノーヴェ、ロボ、メカ沢が輝きすぎ……!良い散り方でした……!
合体技はやっぱりいいよ……!圧倒的な力が描写されたXライダーに立ち向かう姿には大いに燃えた!
ドラスの描写もいいですねー……ステルスマーダーなのにチンクと合流したドラスが今後歩む道が凄い気になる!
ロリっこが好きなアルレッキーノwお前さんはまた誤解フラグをwww
そして何より少し自我を取り戻してきたXライダーこと敬介が美味し過ぎる……彼が真のライダーに戻れる事はあるのだろうか。
GJ!!
580Classical名無しさん:08/07/15 20:46 ID:MpbScpd2
投下乙です。
ここで一気に、ロボ、メカ沢、ノーヴェが逝ってしまうとは、予想外でした。
残されて戸惑い、揺れ動くドラスの明日はどっちだ!
そして、自我が戻りつつ、血まみれの敬介はこの先どうなるのか。
GJでした。
581Classical名無しさん:08/07/15 21:05 ID:8o/Jw7/Y
ロボが……メカ沢が……ノーヴェが……
打ちのめされたドラスと3人の頑張りとXライダーの強さに感動した
ドラスと敬介の今後が気になる
582 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 21:46 ID:w6/sCWVI
ドラスのディバインバスターは、それに似た威力の劣る魔法弾としてwiki掲載時に修正します。
お気づき、ありがとうございました。
583Classical名無しさん:08/07/15 22:54 ID:2OJX/xEo
>>497

ノーヴェのせりふ

お前弟がいたのかが兄貴がいたのかになってる
584Classical名無しさん:08/07/15 23:07 ID:NvyHPnqs
読んでる最中にさあ、そういえば、ドラスって可哀想なやつなんだよなぁ……まだ、やり直せるかな、って思ったんだ
こいつらと一緒ならやり直せそうだな、とも
それなのに…
うおおおおおおおおおおおおおおおおおロボ! メカ沢! ノーヴェ!

GJ以外に言葉が言えません! 超GJです!
585Classical名無しさん:08/07/15 23:21 ID:2OJX/xEo
>>584
これからやり直せるさ!
ただこれまで自分がしてきたことの
しっぺ返しが襲ってくる
苦難の道だろうがな
586 ◆c92qFeyVpE :08/07/15 23:35 ID:CL0VCles
ゼロ、風見、凱 投下します
587Classical名無しさん:08/07/15 23:36 ID:w6/sCWVI
 
588Classical名無しさん:08/07/15 23:36 ID:o/4p1LBI
支援シまスヨー
589 ◆c92qFeyVpE :08/07/15 23:36 ID:CL0VCles
一人の男が修理工場の入り口へと歩いてくる。
男が纏った赤いアーマーは全身が傷ついており、破損した左膝と相まって激しい戦いを経験してきたのであろうことを示していた。
ゆっくりと、少しずつ傷だらけで歩いてくるその姿は、気の弱い者なら恐怖さえ感じるかもしれない。
だが、今のこの男にはそんな恐怖を多少和らげるパーツが存在した。
すなわち、彼の腰まで伸びた――三つ編み。

「腕に巻いてはダメなのか……? いや、持ち主がそう言った以上は……」

自分で結った髪を見ながら何やら真剣な表情で呟いている。
チンクから受け取ったリボン、効果を見る限り常に付けておいて損はない。
ただ「身に着ける」というのはどういう状態までを指すのか、リボンの用途から離れても問題はないのかどうかが量りかねない。
素早さにしろ対魔能力にしろ自分だけでは調べようがない。そのため確実に効果が出るであろう、本来の用途……髪を結うという使用法を選んだ。
とはいえ、はっきり言って似合わない。PDAの液晶に自分の顔を写し込んでみるが、端整なその顔を歪めることにしかならなかった。

「大体、こういうのは女がつけるものだろう……む」

言ってから、自分がここで出会った女性二人を思い出して唸る。
ノーヴェとチンクがリボンをつけている姿をどうしても想像できない、エラーが生じる程だ。
女性物といっても、やはりその付ける人間にもよるようだ……などと本人に聞かれたらただではすまないであろう事を考えながら歩き、修理工場の前へとたどり着く。

「……」

カーネルのセイバーを片手に、慎重に扉をくぐり……想像以上に荒れた内部に顔を顰める。
あちこちが焼け焦げ、へこみ、仕舞いには部屋の一つが跡形も無く破壊されている。
チンクから聞いていたとはいえ、ここまで激しい戦闘が行われていたとは……
590Classical名無しさん:08/07/15 23:36 ID:Ub/mM13c

591 ◆c92qFeyVpE :08/07/15 23:37 ID:CL0VCles
しかし、話にあった破壊されている部屋のポッドへ目を向けるが、そこには誰もいない。
治療がすんでチンクを追いかけたのだろうか? いや、追いかけるには情報が少ないはず、合流したいならこの場に留まるべきだ。
それよりも遥かに可能性が高いのは「ここから立ち去らなくてはならない状況に陥った」ということ、つまり、何者かの襲撃。
とはいえ血やオイルなどの跡がない事から、最悪の結果は免れたのだろう……とはいえ、今だに交戦中という可能性も捨てきれない。

「しかし、追いかけることもできないか……」

自分の左膝を恨めしそうに見る。
今の自分ではチンクもノーヴェ達も追う事はできない、戦闘さえもままならないだろう。
一刻も早く修理をすませなくては、と顔を上げ、視界の端で何かが光った。
警戒しながらそちらへ近づいていくと、その正体がPDAであることに気づく。
先ほどのは液晶部分に光が反射したのだろう。偶然に感謝しながら拾い上げ、中身を確認する。
……支給品は残されている、風見か凱の物なのだろうか? 思考を巡らせ――

「答えろ、この殺し合いに乗っているか?」

背後に現れた男へとセイバーの切っ先を突きつける。
少し力をこめるだけで男の顔を貫く、そんな状態にありながら男は一歩も動かず、ただゼロの返答を待っていた。

「……乗る気はない」
「その証明は出来るか」

そのやり取りにノーヴェと出会った時の事を思い出し、思わず笑みを浮かべてしまう。
わずかに警戒を高めた男に向かい、表情を消して口を開く。
592Classical名無しさん:08/07/15 23:37 ID:o/4p1LBI
 
593 ◆c92qFeyVpE :08/07/15 23:38 ID:CL0VCles
「シグマについての情報を提供できる」
「……信じよう、俺は風見志郎という、お前の名前は?」
「俺はゼロ……カザミと言ったな、チンクの仲間というのはお前であっているか?」

チンクの名前を聞き、風見から警戒心がようやく薄れる。
信じると言っておきながら……と思わないこともないが、自分でもあの程度の言葉では完全に信用はしないだろう。
現に、まだ互いに牽制し合っている部分がある。
とはいえ動かない事には始まらない、こちらもセイバーを降ろし、話し合う形をとった。

「チンクと会ったのか?」
「ああ、チンクの妹のノーヴェを追っている……俺も着いて行きたっかたんだがな、この足だ。修理できる場所はないか?」



風見に連れられ、凱が眠る部屋へと入る。
その間に放送について聞けなかったという風見へ、たった今拾ったPDAを渡しながら内容を伝えていく。
村雨が死亡したのを聞いた時、風見はただ静かに目を閉じて思いを馳せていた。

「……放送の内容はこれで全部だ」
「助かった、感謝する」

できるだけ感情を出さないようにして返す。
そんな風見の様子にゼロは気づいたが、あえて触れないようにして話を進める。
594 ◆c92qFeyVpE :08/07/15 23:38 ID:CL0VCles
「後は互いの探し人だが……チンクの探してるノーヴェは恐らく大丈夫だ。仲間もいるし……うまくすればすでに合流できているかもしれない」

そして次の瞬間、ゼロの目つきが鋭くなる。

「……仮面ライダーと言ったな、一人心当たりがある」
「本当か?」

その言葉に顔を上げるが、風見の表情に喜びは見られない。
ゼロの様子から見て、何からしらのトラブルがあったと見て間違いないだろう。

「……何があった」
「ジンという男、そいつに俺とノーヴェは襲われた。変身とやらもしていたから間違いない」
「敬介が……?」

神が理由無く誰かを襲う者ではないということは、改めて言うまでも無く理解している。
だが、ゼロがこの状況で嘘をつくというのも考えにくい、見間違い……もありえないだろう、少なくともゼロから聞かされた情報はXライダーそのものだ。
考え込む風見を見て、ゼロは「やはりか」と呟いて口を開く。

「無差別に殺しにかかる奴じゃ、ないんだな?」
「当たり前だ。確かにその外見、戦い方は敬介そのものだが……あいつは問答無用で誰かを傷つけはしない」
「……チンクの知り合いの一人、スバルという奴にも襲われたんだ」
「何?」

スバルの事はチンクから聞いている、やはり決して人を傷つける人間ではないということだったはずだ。
自分達の知っている人間の豹変……そこで、この殺し合いに参加させられてからずっと頭の隅に引っかかていた物に気づいた。
595Classical名無しさん:08/07/15 23:39 ID:o/4p1LBI
   
596Classical名無しさん:08/07/15 23:39 ID:w6/sCWVI
  
597 ◆c92qFeyVpE :08/07/15 23:39 ID:CL0VCles
「……液体金属と言っていたな」
「ああ」

同じ結論に至っていたらしい。風見の言葉にゼロは静かに頷く。
シグマの姿を完全にコピーしていた協力者、あの液体金属が参加者の知り合いを装って暴れている可能性はないだろうか?
……十分にありえる。
この殺し合いの目的がわからない以上断定することはできないが、数名に化けて暴れるだけでその効果はかなりでかい。
知らない者はその仲間へも疑いを持ち、知り合いも何があったのか分からずその情報を広めた者を疑う。
更にメガトロンのが行うような嘘ではない、実際に襲い掛かっているのだからその誤解はより深くなっていく。
そして一度その可能性に気づいてしまったら、よほど信頼している者が相手でなければ、いや、そうであっても化けているのではないかと疑心に陥ってしまう。
これ以上ないほど効果的な殺し合いの促進剤。現に風見とゼロも、目の前の者が本物かどうか確かめる術はないのだ。
だが、風見はそんな事は考えていないかのように振舞う。

「……引き止めてすまなかったな、ポッドに入るといい。俺が見張っている」

風見の言葉にゼロは首を横に振る。

「……信用できないか?」
「そうじゃない。シグマの思い通りになるなんてごめんだ」

ならば何故、と問う風見に対し、ゼロは自分がついさっき渡したPDAを指差す。

「それが落ちていたまま手付かずだったということは、まだこの工場を調べてはいないんだな?」
「ああ……そんな暇がなかったからな」
598 ◆c92qFeyVpE :08/07/15 23:40 ID:CL0VCles
最初はメガトロンに連れられ、来て早々ポッドへと入り眠りについた。
目覚めた時にはチンクも凱もおらず、すぐさま凱を追って飛び出した。
再度訪れてからは凱とハカイダーの二人をポッドに入れ(ハカイダーはすぐに出て行ったが)自分はその護衛に回っていた。
他の部屋に何があるかまでは調べる余裕がなかったのだ。

「なら、ガイの護衛は俺がする。その間にこの工場の内部を調査してほしい」
「何……? だが、今は早く膝を直してチンクやノーヴェ達を追うべきじゃないのか」
「確かに合流したいところではあるが、ただ集まるだけでも仕方ないだろう?」

自分の胸の辺りを指しながら言うゼロに、風見は何を言いたいのか気づく。
合流するだけならば今の状況はそう悪くない、神やスバルの豹変という気になる点はあれども、相当な人数が集まれる状態にある。
だが、集まるだけではこの殺し合いは止められない。
自分達の体内に仕掛けられた爆弾とやらを何とかしない限り、シグマの手の上のままだ。

「わかった、だがその足だ……無理はするなよ」
「言われるまでもないさ。おっと、その前に他に出会った参加者の情報について交換しておかないとな」
599Classical名無しさん:08/07/15 23:40 ID:w6/sCWVI
      
600 ◆c92qFeyVpE :08/07/15 23:41 ID:CL0VCles


風見は修理工場の二階を調べながら思考を巡らせる。
メガトロンの卑劣な策略への怒りも感じていたが、それ以上にハカイダーに関して思うところが大きい。
溶鉱炉へ落ちそうになったゼロを救ったことといい、凱に奇襲をかけたメガトロンへの怒りといい、決して救えない者じゃないはずだ。
それだけに、最後に告げられた予言が気にかかる。ハカイダーは何をしようと企んでいるのだろうか?
凱に託す……果たしてそんなことを言っていられる状況なのか。

「先輩、茂……奴に出会ったら、道を示してやってくれ……」

そして、敬介。

「液体金属が化けていたのなら打ち砕く。だが、もしも本物のお前に何かあったのなら……」

拳を強く握り、豹変したという後輩の姿を思い浮かべる。

「必ず、止めてみせる……!」

601Classical名無しさん:08/07/15 23:41 ID:o/4p1LBI
 
602 ◆c92qFeyVpE :08/07/15 23:41 ID:CL0VCles
「ハカイダー……お前は何を考えている」

風見と同じように、ゼロがまず考えたこともハカイダーについてだった。
戦わざるを得ない状況に持ち込むのに、最も単純な方法は「人質」だろう。
強者以外と戦う気はないと言っていたが、人質はその枠に適用されるのだろうか?
下手をすればチンクやノーヴェ達も危険な目に可能性が出てきてしまった、思わず顔を顰める。
ノーヴェならそう簡単にやられるとは思わない、メカ沢とロボの二人もそれなりに頼りになりそうだ。
チンクもそうだ、感情的になる部分はあったが、ノーヴェよりも身のこなしは鋭く、そう易々と利用などされるような奴ではないと思えた。
だが――

「無事でいろよ、ノーヴェ……」

何故か、胸の不安が取れることはなかった……
603Classical名無しさん:08/07/15 23:42 ID:w6/sCWVI
    
604 ◆c92qFeyVpE :08/07/15 23:42 ID:CL0VCles
【G−3 修理工場/一日目 午前】
【風見志郎@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:両拳に負傷(小)、頭部と胸部と左肩に弾痕(塞がっている)、右肘に負傷(中)、固い決意、村雨の死に悲しみ
[装備]:無し
[道具]:支給品一式(メカ沢) 不明支給品1〜3(確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いを破壊し、シグマを倒す。
1:修理工場を調べ、体内の爆弾を解除する手がかりを探す。
2:凱の回復を待つ。そして、ハカイダーを任せる。
3:チンクと共に本郷・敬介・茂・村雨・スバル・ギンガ・ノーヴェを探し、合流する。
4:殺し合いに乗った危険人物には容赦しない。
5:敬介に何があったのかを知りたい。いざという時は全力で止める。
6:可能ならば、ボイルドを仮面ライダーにしたい。そのためには、危険は辞さない覚悟。
7:治療が終わった後、ゼロとより深く情報を交換し、シグマの真の目的を探る。
8:弱者の保護。
[備考]
※参戦時期は大首領の門に火柱キックを仕掛ける直前です(原作13巻)。また身体とダブルタイフーンは元通り修復されています
※チンクと情報交換をしました
※なんとなくチンクを村雨、そして昔の自分に重ねている節があります
※液体金属が参加者に擬態している可能性に気づきました
※ゼロと簡単な情報交換をしました。
605 ◆c92qFeyVpE :08/07/15 23:43 ID:CL0VCles
【獅子王凱@勇者王ガオガイガー】
[状態]:疲労(小)、全身に中度の打撲、アーマーにひび、背中に数多の火傷と裂傷、気絶、回復中
[装備]:グランドリオン@クロノトリガー、電磁ナイフ@仮面ライダーSPIRITS(右腕に収納)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本思考:シグマを打ち倒し、この殺し合いを止める。戦う力を持たぬ者、傷ついている達を保護し、守り抜く。
0:気絶。回復中
1:ハカイダーを更正したいが、それが不可能ならば――――?
2:戦闘が終われば、チンクと合流するべく風見と修理工場に戻る。
3:同じ目的を持った仲間を探す。
[備考]
※Zマスター撃破直後からの参戦です。
※チンクから情報を得ました。
※制限の影響により、グランとリオンは出現する事が出来ません
※凱が見た村雨の写真は原作五巻に出てきたものです
※打撲、火傷、裂傷等により、身体の内部に異変が生じているのかは、後続の書き手さんにおまかせします。
606Classical名無しさん:08/07/15 23:43 ID:w6/sCWVI
        
607 ◆c92qFeyVpE :08/07/15 23:43 ID:CL0VCles
【ゼロ@ロックマンX】
[状態]:左膝を破損、エネルギー消費(大)、全身のアーマーに大きな傷、疲労(大)
[装備]:チャージキックの武器チップ@ロックマンシリーズ カーネルのセイバー@ロックマンX4、
    トリモチ銃@サイボーグクロちゃん 、アトロポスのリボン@クロノトリガー
[道具]:支給品一式 PDA×2(ゼロ、村雨) 不明支給品0〜2(未確認) 
     空っぽの平凡なデイバッグ@ゴミ処理場
[思考・状況]
基本:シグマを倒す
1:凱の治療が終わるまで護衛
2:治療が終わったら風見とより深く情報交換を行う
3:日付の変わる頃(二日目00:00)にハカイダーと決着をつけるため、スクラップ工場に再度向かう
4:ノーヴェの様子が気になる
5:エックス、ギンガを探す
6:シグマ、何を企んでる?
7:ハカイダーに……

[備考]
※ノーヴェたちを生体パーツを使用したレプリロイド(のようなもの)と解釈しました。
※ノーヴェから時空管理局と平行世界に関する知識を得ました。
※チンクから彼女を襲った参加者の情報を得ました。
※参戦時期はX4のED〜X5開始前のようです
※液体金属が参加者に擬態している可能性に気づきました
※風見と簡単に情報交換しました
608 ◆c92qFeyVpE :08/07/15 23:45 ID:CL0VCles
投下終了です。感想、矛盾点、ご指摘などありましたらお願いします

タイトルは「紅の戦士達」で
609Classical名無しさん:08/07/15 23:50 ID:o/4p1LBI
投下おつかれさまでした
少女達の身を案じるゼロ…変身する敵への疑惑……って前話前話ーっ!
2人が真実を知る時何を思うのか…集った戦士達が戦う相手は。次の話も楽しみです
610 ◆2Y1mqYSsQ. :08/07/15 23:51 ID:w6/sCWVI
投下乙です!
ああ、ゼロや風見の思いをあざ笑うかのような出来事が。
彼らの決意が報われるか、今後が気になりました。


指摘のほう、ありがとうございます。
wiki掲載時にまとめて修正をします。
611Classical名無しさん:08/07/15 23:52 ID:3QTUxANs
投下乙。
工場内の中や、大量に仲間を失った面子の先行きが気になるゼイ。
612Classical名無しさん:08/07/16 01:23 ID:Rxh4JCc6
投下GJです。
かなり強い男達が集ったが、重症+気絶一名、重症一名、軽症一名。
さらに全員、己の体を気にせず悪に立ち向かおうとする奴等だからなあ……危ういぜ。
Xライダーやノーヴェに関する思考が、なんとも切ない
613Classical名無しさん:08/07/16 02:44 ID:qntig3rE
お二人とも投下乙です
大切なものを自らのせいで失った事に気付き
神でも悪魔でもなくただの無力な子供と化したドラス
そして自我を取り戻しつつあるも益々怪物の様相を呈する敬介…
果たして二人はどうなることやら…
614Classical名無しさん:08/07/16 11:46 ID:dq3EfrN.
ドラスにはライダーロワの印象しか持っていなかったが…作者乙なんだぜ。
615Classical名無しさん:08/07/17 11:37 ID:H8jZHLF6
右上の話は熱い展開が多いな…w超俺好み。
まさかの3人死亡だったが、この上なく熱かったぜ!
ともかく二人とも乙です。

ドラスは風見が仮面ライダーと知ったらどんな反応するかな。
あとどれくらいドラスが周りに自分のことを話すか気になるところ。
そもそもスタンスをどう変えるかも気になるし。
って、ドラスばっかだ。
616Classical名無しさん:08/07/17 11:41 ID:H8jZHLF6
右上はステルスや姑息なやつがいるのに熱い展開が多いな…w超俺好み。
まさかの3人死亡には驚いたけど、燃えたぜ。
ともかく二人とも乙です。

風見が仮面ライダーと知ったらドラスはどんな反応をするのか。
ドラスがどれほど自分のことをチンクや先に訪れるであろう人たちに話すか。
そもそもこれからドラスはどんなスタンスを取るのか。
って、ドラスばっかだ。
617Classical名無しさん:08/07/17 11:42 ID:H8jZHLF6
すまん、連投しちまった…
618Classical名無しさん:08/07/17 20:51 ID:CQuCskaw
地図更新がなかったから自分でやってみた。
LSロワの地図が個人的に一番見やすかったのでそれを参照。
最新地点での現在地にしようかとも思ったけど、ひとまず第一放送時のものにした。

この後、南西にマーダーが2人移動したためそちらで惨事が発生。
最後の一般人キャラがスクラップになりました。

北東部も人が集まってたくさん死亡。
マーダーや混乱した人の数がとにかく多い。
生き残った対主催に情報が集まりつつあるけど、
T-1000にあった奴はスバルだけなのになんで皆T-1000を警戒してるんだ。
その原因であるドラスの今後のスタンスも気になるところ。

北西部は強い奴キラーのナタクが対主催二人と衝突。
北東で警戒されているT-1000は負け続け。もっと動け。

南東部は普通に衝突開始。
だれもいないし周りに人もいない発電所に向かう素子の空気化を心配するのは無粋ですか?

ていうかナカジマ姉妹!なんでお前らがマーダーやってんだ!
完全に予想外だったんだが。

禁止エリアはこのコメント書いてる途中に思い出した。ごめんなさい。
619Classical名無しさん:08/07/17 21:42 ID:Z0d8/ZHc
>>618お疲れ様。

神敬介、スバル・ナカジマ、ギンガ・ナカジマ、コロンビーヌ、ボイルド、T-1000、ナタク、ハカイダー、
ドラス?、メガトロン、グレイ・フォックス、R・田中一郎

気になったのでマーダーが何人いるのか調べてみた。ちょっと違うだろうという人がいるかもしれないけど気にしない。
数えてみたら12人と全体の約1/3ほどいる。
あ〜る以外は一筋縄では攻略できないやつらばかりで安心安心。
620Classical名無しさん:08/07/17 22:15 ID:WNbSImsA
>>618
乙です

T-1000を警戒=自分以外の参加者を警戒になるから疑心暗鬼の種になるはずなんだが……
621Classical名無しさん:08/07/17 22:32 ID:BdNZyJjU
>>619
マーダーで死んだのはアラレ、マルチ、パンタ、ジョー?か

T-1000へタレ杉ワロタw

ところで第一回放送終わったしネタバレ名簿みたいなのは作らないの?

622Classical名無しさん:08/07/17 23:10 ID:JeOP3bPM
>>621
よし君に任せた、期待してるぞ
623Classical名無しさん:08/07/17 23:51 ID:BdNZyJjU
おkwwww
作業取っ掛かりは土曜くらいになると思うが

項目名は

・参加者最終行動記録集
・墓碑銘
・スクラップ置き場

のどれがいい?
他にいい案あったら頼む
624Classical名無しさん:08/07/17 23:55 ID:WNbSImsA
一番上でw
625Classical名無しさん:08/07/18 00:30 ID:hycL77Ng
破損報告書で。
その三択なら一番下希望。
626Classical名無しさん:08/07/18 00:36 ID:GLje3.Xo
一番上と一番下で。
627Classical名無しさん:08/07/18 12:34 ID:xswu1Bb6
一番下希望
628Classical名無しさん:08/07/18 15:59 ID:vtzLMA4s
スクラップ置き場に一票
629Classical名無しさん:08/07/19 23:00 ID:AT8NZhLY
623だがすまん、いろいろ立て込んでて作業開始は明日になりそうだ
題名はスクラック置き場基にしてなんか考えとく
630Classical名無しさん:08/07/20 01:29 ID:/ieJXEdQ
>>629
何、慌てる必要はないぜ
暇なときにでもゆっくりやってくれればいいさ
631Classical名無しさん:08/07/20 16:09 ID:dHQg6216
ぶっちゃけドラスのとこだけ拾い読みしてる自分だったが
これは三人の原作を読まざるを得ない
632623:08/07/21 11:31 ID:.81ZP2pM
作業はじめようと思うが質問

漫画ロワのwikiのように死亡者のみの名簿にするか?
それともライダーロワのwikiのように生存者の最新情報含めたネタバレ名簿形式にするか?

後者の場合は項目名も変わるけど
633Classical名無しさん:08/07/21 11:47 ID:e2u4DklQ
苦労を考えると前者の『死亡者のみの名簿』がいいだろうな。
634Classical名無しさん:08/07/21 19:23 ID:snQNQBlc
前者の方がいいかもですね
最新情報をどの程度書くのかとかもあるし
635623:08/07/23 21:51 ID:6lLzQjzg
わかりました
前者で試験期間中なので金曜に作業します
636Classical名無しさん:08/07/23 21:54 ID:9BwoZ7eI
>>635
了解です。楽しみにしています。
637Classical名無しさん:08/07/24 01:53 ID:j80gr0p.
そういや、タチコマの死因ってどう書けばいいんだろうか。
ボイルドの攻撃によるダメージの蓄積か、瓦礫をまともに食らった事か……
638Classical名無しさん:08/07/24 17:31 ID:Z86tr21s
両方だと思うなら両方でおk。
直接死因と間接死因どっちを書くって規定もなさげだし。
639Classical名無しさん:08/07/24 20:22 ID:764iRbgA
>>623
お疲れ様です。試験頑張ってください。
640Classical名無しさん:08/07/27 20:21 ID:M5bcV81k
人がいない。
よし、しりとりしようぜ。

最初は『メガトロン』
641Classical名無しさん:08/07/27 20:26 ID:gnmQyd8A
じゃあ『ンドゥール』
642Classical名無しさん:08/07/27 21:29 ID:ZoEKP63o
(これは「既に負けているじゃねえかww」と突っ込むべきだったか、「普通につながれたwwでもンドゥールでてねえよw」
と突っ込むべきか。
教えてくれ、ジョー。お前は後何回誤殺すればいいんだ)
643Classical名無しさん:08/07/27 21:30 ID:PA7ASACI
ジョー「他の参加者がいなくなるまでさ」
644Classical名無しさん:08/07/27 22:52 ID:AuY1s08g
そして最後には自分自身を誤殺
645Classical名無しさん:08/07/27 23:49 ID:M5bcV81k
だが死者スレでも誤殺し続ける。
646Classical名無しさん:08/07/28 23:14 ID:FGXfwn7M
>>645
そんなことを言っていたら、本当にジョーが死者スレに出て来たわけだがw
647Classical名無しさん:08/07/30 23:26 ID:0EsFeFK.
  
648Classical名無しさん:08/07/31 07:56 ID:7DOb4ois
ふと気付いた。
どこぞのスレでやってた軸がぶれないマーダーって、内はメガちゃんのことだなって。
だって敵を見逃しても「だって台本にそうしろって、かかれていたんだモン」ですむよな。
649Classical名無しさん:08/07/31 11:34 ID:WwH8gOtw
半分メタ的と言うかギャグ要素があるからなw
いろんな理由をつけれるのが強みなのかなあと思ったり
650Classical名無しさん:08/07/31 22:52 ID:Q/FzqtOw
負けても格がそう落ちない貴重なキャラだよな
651Classical名無しさん:08/08/02 11:02 ID:ywqO2UuY
パワーアップさえできれば、空飛べて防御力も上がるしなぁ。
G1イボンコ瀕死にできる攻撃力も獲得できるから、無印でいくら負けても取り返せる。


なにより、アドリブにより一層磨きがかかる。
652破壊  ◆c92qFeyVpE :08/08/03 12:54 ID:fzWNGlr.
スバル=ナカジマ 投下します
653破壊  ◆c92qFeyVpE :08/08/03 12:55 ID:fzWNGlr.
「んっ、くぅ……この…………はぁっ……」

少女は自分の身体を束縛するそれから必死に逃れようと身を捩っていた。
無事な左手で何とか拭い取ろうとするが、白く粘度の高いそれはぐちゅり、と嫌な音を立てるだけで少女の肌へと吸い付いている。
グローブ越しにその冷たい感覚が伝わり、少女は不快感に顔を歪め左手にも吸い付いてきたそれを力づくで引き剥がす。

「っの……いい加減に……!」

声を震わせ、白い粘質な物体に包まれたその身を無理矢理捻る。

「ディバイン……バスター!」

強引にトリモチを吹き飛ばし、スバルはその場に立ち上がり側に落ちていたライティングボードを拾い上げる。
髪やら顔やらに吹き飛んだトリモチがついたままなのが少し気持ち悪いが、左手にもトリモチは付着してしまっている、拭うと余計悲惨な目にあいそうだ。
グローブをはずそうにも、自分の右手は存在しない……改めてその事を認識し、思わず瞳を伏せる。
右手……母の形見であるリボルバーナックルを装備するその腕は奪われてしまった。
管理局の技術でこの右腕は再び戻すことができるだろうか?
もしも戻らなければ――自分は二度と、母の形見を手に戦うことができなくなってしまう。

(……母さん、ギン姉、ごめん……!)

しばらく胸に湧き上がる悲しみと戦い、これからの事について考える。
――これからどうするべきか?
チンク達を追いかける? 相手はバイクだ、すでに補足可能な範囲からは離れているだろう。
それともタチコマを探すか? 恐らくはドラスの言葉に騙されたまま希少鉱石を探しているはずだ……ほんの少し、スバルの心に迷いが生まれた。

この場にいる参加者のほとんどはガジェットのような存在……それは正しいのだろうか?
少なくともボブは自分を騙そうとしてたようには見えない。むしろドラスを狙ったあの行動は、今となっては正しかったと思える。
タチコマだってそうだ、むしろ自分と同じようにドラスに騙されていただけででは……
休む間もなく訪れた狂気に自分を見失いかけていたが、少し時間を置いて頭から血が下がった状態で考えてみるとどうにも辻褄があわない。
ノーヴェにしたってそうだ、側にいた変なドラム缶もどきは攻撃をしかけてきたが、彼女自身はむしろ自分を止めようとしていた……
654破壊  ◆c92qFeyVpE :08/08/03 12:56 ID:fzWNGlr.
何の保証も、確証もない……だけど、ただ信じたかった、まだ何かの間違いだと信じていたかった。
スバル=ナカジマとしての人を信じる思いが、荒ぶった心を静めていく。
スバルの瞳から狂気の色が少しずつ抜け落ちていき……

そんなスバルを撃ち砕くかのように辺りに銃声が響き渡り、警戒すると同時にPDAから音声が流れ出す。



『――――の2ブロックとなります』

断続的に続く銃声に警戒を続けつつ、放送を聞き終わったスバルはショックで動きが取れなかった。
それは破壊された者の多さによって……ではない、今呼ばれた者の内二人、それは自分が破壊したことを思い出したためだ。
ここにいるのはただの機械、ガジェットのような物、そう何度思い込もうとしても体が動いてくれない。

本当にガジェットと同じなのか? ボブは、タチコマは、ドラスは、しっかりとした自我を持って『生きて』いたのではないか?
自分を襲い、破壊したあの二人も同じだったのでは? 自分は……『壊した』のではなく『殺して』しまったんじゃないのか?

「あ、ああ……ちが、嫌……」

――なーんだ、お姉ちゃんも僕たちを騙してたんだ、殺し合いを止めるなんて言っちゃってさ、お姉ちゃんも殺してるんじゃない。

「っ!? ち、違う! 私は、私は……!」

――殺人罪で逮捕だー! あれ? この場合適用されるのは器物損壊の方かな?

「やめて……違う、私は、だって……」

――スバル=ナカジマ、お前もシグマの手の内だったか。ここで処分する。

「違う違うチガウ! 私は、あんな奴の言う事なんて!」
655破壊  ◆c92qFeyVpE :08/08/03 12:56 ID:fzWNGlr.
――じゃあ、なんで二人も殺したんだよ? 私まで殺そうとしたくせに。

「あ、あああ……」

――管理局の教えというのも安いものだな、ノーヴェを殺すというのなら、その前に姉がお前を殺す!

「うわああああああああああああああああああああああ!!!」

自分が生み出した幻の言葉にスバルの治りかかっていた心は抉られていく。
信じたい、こんな事を言うわけがない、そう思う心そのものが崩れゆく、ドラスの裏切りは彼女から「信用」という言葉を削りとっていた。
正気の色を取り戻しかけていた瞳は、再び狂気、そして恐怖の色に染めあげられる。

「違う、ちがう、チガウ、チガウチガウチガウ!!」

やめて……そんな目で見ないで!
私だって、殺したくなんて!

――はぁ、何やってんのよ、バカスバル。

「ティア……!?」

――認めなさい、あんたは『殺した』のよ。

「ティ、ティア……!」

――スバル、どうしちゃったのかなぁ……私達は管理局員なんだよ? 助けなきゃいけない人を殺して、どうする気?

「な、なのはさん……! ち、違うんです、これは、これは……」

――判ってるよスバル、これは……
656破壊  ◆c92qFeyVpE :08/08/03 12:57 ID:fzWNGlr.
幻のなのはとティアナの二人が『何か』を持ち上げスバルに見せ付ける。

――これは……『あなたが殺した』二人だよね。

「いやあああああああああああああああああああ!?」

――酷いです、服が欲しかっただけなのに、痛いじゃないですか、イタイイタイイタイ……

「やめてよ! だって、あなたが、あなたが襲い掛かって!」

――大丈夫だよスバル、わかってるから。スバルは悪くないもんね。

「え……あ、なのは、さん……?」

――でもねスバル、他の人はスバルが殺人鬼だって思ってる、殺される前に殺してやるって向かってくる。

「そ、そんな……」

――だから……その前に、殺しちゃおう。

「――――え?」

――だって仕方ないよね、黙ってたらスバルが殺されちゃうんだよ? なら、殺すしかないじゃない。

「だ、だけど、それじゃあ……」
657破壊  ◆c92qFeyVpE :08/08/03 12:58 ID:fzWNGlr.
――気づいてるんでしょスバル? もう、あんたは戻れないって。

「あ……やめて……」

――でなくちゃ、スバル自身が作り出してる私達が、こんなこと言うはずないもんね。

「やめて、やめてよぉ……」



『スバル=ナカジマは、ただの人殺しなんだ』



「やめてえええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」



隻腕の少女はライティングボードを駆る。何かから怯えるように、ただがむしゃらに逃げ続ける。
その瞳は狂気と恐怖の二色のみで染まり、元の面影を残していない。
『恐怖』によって辺りに響き続ける、聞き覚えのある銃声から遠ざかり、『狂気』によって参加者を探して彷徨い続ける。

「壊すんだ……全部、みんな……!」

少女の心は、戻らない……
658破壊  ◆c92qFeyVpE :08/08/03 12:59 ID:fzWNGlr.
【E-1 路上/一日目・朝】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:右腕が肩口からありません(出血はなし)、あちこちにトリモチ付着、精神が非常に不安定
[装備]:滝和也のナックル@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式、サブタンク(満タン)@ロックマンX、テキオー灯@ザ・ドラえもんズ
    ナックルの弾薬(27/30発)@仮面ライダーSPIRITS、ライディングボード
[思考・状況]
基本思考:恐怖。
1:目撃した機械を破壊する。ドラスを最優先で破壊する。

※本編開終了後からの参加です。
※サブタンクは満タン状態です、使えばエネルギーの回復が可能です。
※テキオー灯は、一時間のみ効力持続。
 一度使った者には、24時間経過しなければ使用不可能と制限されています。
※T-800の住む世界、スカイネット、T-1000に関する情報を得ました。
※T-800のことを、ボブと呼んでいます。
※T-800からの情報より、シグマの背後にはスカイネットがいるのではと考えています。
※ボイルドの脅威を認識しました。
※ドラスが自由に姿を変えられることを知りました。
659破壊  ◆c92qFeyVpE :08/08/03 13:00 ID:fzWNGlr.
投下終了

矛盾・指摘・感想等ありましたらよろしくお願いします
660Classical名無しさん:08/08/03 13:53 ID:Tg5SAAIE
投下乙です。
回復するかと思いきや、さらなる奈落へ…。
かわいそうだが、ロワ的にはおいしい展開だw
あと、冒頭シーンがちょっとエロいぞこの野郎w
661Classical名無しさん:08/08/03 15:59 ID:OXBld0zI
投下乙。
さらに深みにはまるスバル。
心理描写がうまかったです。
ちょっとだけエロスw
662Classical名無しさん:08/08/03 22:40 ID:SCqT2kCI
感想二つかよ
663Classical名無しさん:08/08/03 22:41 ID:BHVKB2v6
通りすがりなんですけど、
http://www39.atwiki.jp/roborowa/pages/215.html
のページでハカイダーは次に075:男の世界(前編)に登場するってリンクが抜けてるんですが、
どうしたら直せますか?
664Classical名無しさん:08/08/03 23:01 ID:7ssJt78o
GJ
ここの書き手はサドみたいな臭いがぷんぷんするぜー
スバルぶっ壊れたぜー
665Classical名無しさん:08/08/03 23:18 ID:Gd5bZbU.
投下乙。
正義感が強いぶん勢いよく転がっていく様が楽し、もとい悲惨ですね。
冒頭と状態表……わかってらっしゃる
666Classical名無しさん:08/08/03 23:31 ID:aeKje1Fk
投下乙。
なんという……なんというリリカルカワイソス……
やはり宿命からは逃れられないのか……
667Classical名無しさん:08/08/05 09:54 ID:GYVJ5lxs
LSロワのドS聖人みたいだな…
このロワはマーダー足りてると思うが、容赦ねえw
668663:08/08/05 13:19 ID:tDWlvQ5Y
はっ、直してくださったんですね・・・。ありがとうございます。
これって管理人しか編集できないんですか?それとも誰でも編集できるんですか?
669Classical名無しさん:08/08/05 13:48 ID:FwL3f3oY
まぁいざとなったら魂のぶつけ合いで改心できるさw
670Classical名無しさん:08/08/05 18:40 ID:/5NwDA8s
>>668
誰でも治せるのがwikiというものです
671668:08/08/05 22:55 ID:YMrrIoZM
>670
えっ・・・ってよく見りゃページの上にメニューとか編集とか載ってる\(^o^)/
どうもすいませんでした。今度から自分でやります。
672Classical名無しさん:08/08/07 21:57 ID:OdBfA.DQ
キャラ把握の為にキカイダーのDVD4巻買ったら
あまりにもハカイダー→キカイダーの一方通行に俺涙目ww
正直キカイダーってハカイダーのこと「光明寺博士の脳を持ってる人」って程度の認識しかしてないんじゃww
ハ「どうせなら俺はお前に倒されたかったぜ、キカイダー」
↓ハカイダー死亡
キ「よし、脳を光明寺博士に戻そう!」

今はの際の告白丸無視www
673Classical名無しさん:08/08/07 23:13 ID:3NbREud6
ロボットは博士に忠を尽くすものなのさ
それに子供向け何だし、ハカイダーはライバルというよりヒールのつもりでかいたとか
674Classical名無しさん:08/08/07 23:27 ID:OdBfA.DQ
まあ確かに、ハカイダーはキカイダーが死んだ(死んでなかったけど)と知った時の
すさまじい荒れっぷり(つか、デレ)が無ければ確かに普通の悪役でした。
あと人間体の棒読みバロス。口調も普通のキザな若者っぽいし。
675KYでごめん:08/08/08 13:47 ID:67IA0V3Q
特撮好き集まれ!

「新ライダーバトルロワイヤル」
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1218024286/l50
他の特撮ヒーローを出すかどうか議論中
一度見に来てねwww
676Classical名無しさん:08/08/08 21:44 ID:7bLSCDi.
とある動画サイトでキカイダーが死んじゃう話だけ見てカッコイイと思った。
アニメ化してくれないだろうか? 鋼鉄神ジーグみたいに。
677Classical名無しさん:08/08/08 21:48 ID:3vIa4JqM
>>676
キカイダーは既にアニメ化されているぜw
678Classical名無しさん:08/08/08 23:01 ID:7bLSCDi.
むう、おもいっきり間違えて盛大に恥をかいたようだ。

千葉さんのアドリブ聞いて寝よう。
679Classical名無しさん:08/08/09 16:13 ID:V9SN/pPQ
>676
バカ!その次のハカイダーが発狂する回が一番カッコいいぜ!
つか、キカイダーはこのロワに出てきてないので、スレチ。
ハカイダーはセーフ。
680 ◆1eZNmJGbgM :08/08/10 21:57 ID:tNiGd.rw
仮投下スレに投下しておきました。理由もそちらで。
もし問題が無いようでしたら明日の夜辺りに本投下させていただきます。
681Classical名無しさん:08/08/10 22:22 ID:.H4ys4qY
仮投下乙です
私は問題ないと思います。
感想は本投下時に
682Classical名無しさん:08/08/10 22:30 ID:e1OO6hrg
仮投下乙です。
パンタローネの次に呼ばれたジョーを、パンタローネと一緒に倒れていた男と認識したのが少し気になりました。
死者が呼ばれる順番を『死んだ順』や『エリア毎』と判断したのならば、その描写があった方がいいように思います。
また、氏の気にしている点は、問題がないと思います。

感想は本投下の際にしますね。
683 ◆1eZNmJGbgM :08/08/11 21:59 ID:ZSEVqof.
投下します。

現在地、F-5とG-5の境界線。そこでは参加者の一人、ロックマンが東へと向かい懸命に走り続けている。
目指すはH-5、この場で出会ったかけがえのない友、ドラ・ザ・キッドの元へ。

「待っていてキッド、今君の元へ駆けつけるから……!」

そう呟き、走るスピードをさらに上げる。彼の中ではキッドはいまだ存命中であり、新たな敵に遭遇し
交戦中。そのためにブルースシールドを転送した。
これが彼の、ロックの中での真実。いや、そう信じたいがための都合のよい妄想であることに
ロックも心のどこかで気付いているのかもしれないが、感情がそれを許さない。

だがしかし、現実は非情である。夢ばかり見ていれば、現実に打ちのめされる時が必ず訪れる。
そこには人間だろうが機械だろうが一切の区別はない。ただ平等に、あらゆる可能性、妄想を打ち砕き、現実へと引き戻す。

『――インフォメーションメッセージ』

そしてユメから醒める時が訪れた。



『06:00時点における本プログラムからの脱落者をお知らせします』

(な……)
684 ◆1eZNmJGbgM :08/08/11 22:02 ID:ZSEVqof.
足元の小枝がパキリと割れる。
まずそこでロックの足が止まる。そして恐る恐る手の平にPDAを手繰り寄せる。
その手は恐れからなのか、怒りからなのか、分からないが小刻みに震えている。
そんな動揺する気持ちを落ち着ける暇も与えず、無慈悲に放送は続く。

『No50 王ドラ』

(確か、キッドが友達だと言っていた……)

真っ先に名前を告げられたのはキッドの刎頚の友である王ドラ。しかしロックはまずキッドの名前が
呼ばれなかったことに一瞬安堵したが、すぐにそのことを悔やむ。

(なんで安心しているんだ、僕は! キッドの友達が呼ばれたのに……!)

王ドラ。
キッドから聞いた話だとカンフーの達人との事だったが、もはや確認する術は無い。
そして自分の浅ましさを叱責し、王ドラに対して心の中で詫びる。改めてキッドの心境に思いを
馳せるが、その間にも幾人もの名前が読み上げられていき、それがさらにロックの表情を曇らせる。

そしてついにその名が宣告された。

『No28 ドラ・ザ・キッド』

(え……?)
685 ◆1eZNmJGbgM :08/08/11 22:03 ID:ZSEVqof.
最初、何を言っているのか分からなかった。

「いや、だって、キッドには自己修復装置が、それに、戦うために、ブルース、大丈夫って言って……」

現実を思い知らされて、気が動転するロック。
しかしその優秀すぎる頭脳は冷静に事実のみを取捨選択していく。
最後まで残されていた、この放送自体が虚偽であるという可能性も次の名前で消えた。

『No36 パンタローネ』
『No21 009(島村ジョー)』

(ああ……キッドの後にパンタローネの名前が呼ばれたってことは、破壊された順番って事なのかな…
という事は…009とは、パンタローネと一緒に倒れていた人、キッドに致命傷を与えた人……!でも、
あれがわざとだったのか、もう答えを聞くことも出来ない…………遅いなあ、僕は、何もかもが!)

動揺が収まってきたのか、今度は徐々に怒りの表情を浮かべ、放送を聞くロック。
その怒りの矛先はこの壊し合いの主催者シグマに向けた憤怒というよりも、自分自身に対する憤りか。
今度のパキリという音は足元からではなく手元から。
その間にもどこか遠くの世界で起きた事故のニュースの様に、他人事の様に放送は進んでいく。

『なお、進入禁止エリアは【C-2】、【H-8】の2ブロックとなります』
686 ◆1eZNmJGbgM :08/08/11 22:06 ID:ZSEVqof.
演奏会場はPDAの独白から枝葉の擦れ合う音へと音楽が変わり、聴衆はその余韻に浸る。



「あの時、キッドが言っていた自己修復装置の話、多分嘘だったんだろうな…僕に心配を
かけないように、無理をして、自分の体の事よりパンタローネを止めるために……!」

しばしの後、ロックの中に湧き上がってきた感情は怒り。それも自分に対する怒りだった。
その優秀な頭脳によって動揺は掻き消え、悲しみは一時的に隅に押しやられる。
キッドやパンタローネ、そして009といった、この会場で自分が出会った人物全ての死亡が今の放送で確認された。
なぜキッドの嘘を見破れなかったのか。
なぜ無理を押して修理工場へ向かわなかったのか。
今の彼には自責の念、それしかなかった。

ドラ・ザ・キッド。この最悪の会場の中で唯一の光明だった、かけがえのない友達。
パンタローネ。“最古の四人(レ・キャトル・ピオネール)”の一人と名乗った、危険人物。
009。キッドを破壊した青年。今となっては偶然なのか故意なのか確かめる術は無い。
その三体の最後、どれもに自分は間に合わなかった。
キッドや009が誰に殺されたのか、それの判断もつけようがない。
参加者の内、現状で理解している事はそう多くない。
確実なことはたった二つ。

「最古の四人……パンタローネはそう名乗った。四人ということは他にも、パンタローネの様な危険人物が最悪三人はいるって事だね」
687 ◆1eZNmJGbgM :08/08/11 22:08 ID:ZSEVqof.
最古の四人。それがパンタローネの製作者がつけたシリーズ名である可能性は高い。
そうでなければ自分の名を名乗る時にわざわざ喋りはしない。
そしてシリーズならば、ほぼ同等の性能を有している可能性も又高い。
つまりパンタローネと互角、またはそれ以上の戦闘力を誇る危険人物が最悪三人もいる。

しかし今のロックにとって一番重要なのは最古の四人についてではない。

「ブルースシールドを持っている人……その人に僕は会わなければならない。キッドの最後が
どんなものであったか知らなければならない。それに…ブルースシールドを持つことにふさわしい人
なのかどうかも、知らなければならない!」

その意志は己の光弾よりも輝き。
その決意はかの盾よりも硬く。

しかしそんな彼の思いは物騒な音で打ち切られる。

ガササッという音に続いて、ズズウゥンという音。そう遠くない場所で木が何本か倒れたようだ。
それはすなわち闘争の狼煙。決闘の号砲。
それを聞いたロックの行動は唯一つ。

「キッド……君ならまたこう言うだろうね。『大丈夫だ!緊急時に自動的に遺言を記録するシステムが
働くから!』 ……そうだよね、僕は君と約束した。この壊し合いを必ず止めるって。だから見守って
いてね。そこには君の友達、王ドラ君もいるんだろ?二人分の応援があれば僕は負けないから!!」

688 ◆1eZNmJGbgM :08/08/11 22:11 ID:ZSEVqof.
そしてロックは音のした方向へ走り出す。
そこでは凄腕の剣士と最強の傭兵が相見えている。
乱入するは最高の調停者。
この化学反応のもたらす結果がどうなるか……それはだれにも分からない。

【F‐5 森/一日目・朝】



【ロックマン@ロックマン】
[状態]:全身にダメージ、右脇腹に打撲(痛みは引いている)、強い決意
[装備]:ガトリング砲@サイボーグクロちゃん(弾薬三十〜四十パーセント消費)
[道具]:支給品一式、ダンボール@メタルギアソリッド、大型スレッジハンマー@ジョジョの奇妙な冒険 五光石@封神演義
[思考・状況]
基本思考:自分は壊しあいには絶対にのらない。
1:音のした方向へ向かう。
2:キッドの遺体と対面したい。
3:ブルースシールドの持ち主に会う。
4:エックスと赤いヘルメットのロボット(ゼロ)を捜して、シグマについて聞く
5:壊しあいを止めるための仲間を集める
6:ロボット同士の壊しあいを止める
[備考]
※キッドの死を確認しました。
※自分達がタイムマシンのようなもので連れてこられたと推測しています。
※最古の四人をかなりの実力をもった危険人物であると考えました。
※ロックの聞いた音は74話、真剣勝負で灰原が放ったかまいたちで木が切り倒された音です。
689 ◆1eZNmJGbgM :08/08/11 22:15 ID:ZSEVqof.
以上です。
仮投下時に寄せられた指摘は訂正したつもりですが、
他にも不備があれば報告をお願いします。
タイトルは、「Rock And Coll」でお願いします。
690Classical名無しさん:08/08/11 23:21 ID:qdawXbRc
投下GJです!
ロックはキッドの死を知ったか……強く生きてほしいぜ
それにしても、そっちに向かうとは。どうなるか、さらに分からなくなってきたぜ!
アルレさんカワイソスwww まあ、名前がばれてないのが救いか
691Classical名無しさん:08/08/11 23:32 ID:/FuyX4/U
投下乙!
キッドの死に強く決意するロックがよかったです。
そこは……空気脱出の予感!
GJ!
692Classical名無しさん:08/08/12 00:52 ID:LVhnNDnE
投下乙!
ロックがキッドの死に対する心理描写が良かったです!
王ドラの名が呼ばれて無意識に安心してしまうところもまた深いと思いました。
パンタローネが余計な事言ったばかりに……w こういう風に自然に参加者間に繋がりを持たせる手法にGJです!
そして空気脱出が行えそうな引き方……気になりますね。
GJ!!
693Classical名無しさん:08/08/12 14:24 ID:tok1ouZA
フーッ、ロックが誤解から素子さんを逆恨みするかと思ったけど、
どうやら真実に気づいてくれてホッとしました。
久しぶりのロック登場・・・乙です!
694 ◆2Y1mqYSsQ. :08/08/13 19:20 ID:jvcObNKM
http://www5.atpages.jp/~parorowa/robo/index.cgi?page=robogazou

前回の現在位置更新マップには及びませんが、現在位置を操作できるマップを作成しました。
それでは、失礼します。
695Classical名無しさん:08/08/13 19:25 ID:WeYDDVqY
>>694
地図お疲れ様です
696Classical名無しさん:08/08/13 23:25 ID:n1ry4bN.
>>694
おお、スゲェ。GJです
697Classical名無しさん:08/08/13 23:30 ID:WQRf/CYQ
698Classical名無しさん:08/08/13 23:59 ID:jvcObNKM
ロボロワのwikiでタイトルが見れないようになっていますので、管理人さん対応をお願いできないでしょうか?
699Classical名無しさん:08/08/14 01:38 ID:8LYwxWGM
>>698
タイトル対応しました。
ご報告ありがとうございます
700Classical名無しさん:08/08/14 01:46 ID:Ebu19Gis
>>699
>>698ではないですが素早い対応ありがとうございます。
いつも管理お疲れ様です
701Classical名無しさん:08/08/14 08:42 ID:ZjyZ7I9.
>>699
対応ありがとうございます。
702Classical名無しさん:08/08/14 20:52 ID:SZJ8/tek
>694
乙様です。
703Classical名無しさん:08/08/17 12:55 ID:jEaoBctA
人がいないよチョッキンナー。
誰かネタを振ってほしいチョッキンナー。
704Classical名無しさん:08/08/17 14:23 ID:ZQ0ja2BE
ネタを振ってほしい、ですか……ふむ、そちらの期待に応えられるネタ振りかは分かりませんが、1つ。
私はここ最近の死者スレのネタ(メカ沢、ロボ、ノーヴェ、村雨のネタ以降全部のネタ)を書いている者ですが、
死者スレラジオって需要がありますかね?
705Classical名無しさん:08/08/17 17:33 ID:jEaoBctA
需要があると思うぜゴッツンコ。是非是非やってほしいです。
706Classical名無しさん:08/08/17 20:37 ID:UCKAYJa.
>704
もちろんありますよ。
死者スレのあまりにもの寂れっぷりに、一時期テコ入れに死者スレラジヲを
司会・迫lでやろうかと考えていたのはここだけの秘密だ。
707Classical名無しさん:08/08/17 20:42 ID:UPmLwaZ6
ラジオやろうと考えていたが、王ドラの口調がわからなくて断念したのも私だ

なので是非とも期待させていただきたいです!
708Classical名無しさん:08/08/17 20:57 ID:/ES/cq8A
死者スレ、初期の頃は書けたけど、把握して無いキャラが増えて、
そのままリタイヤした身としては、ぜひとも、お願いしたいです
709704:08/08/17 22:52 ID:ZQ0ja2BE
皆さんの応援に全俺が泣いた。
取り敢えず、来週までには第1回を書いてみようかなと思います。


……ギャルゲに興味が無いから、マルチとセリオのキャラが一切把握できていませんが……
某ロワでも未把握のキャラでラジオを書いたこともある……分の悪い賭けは嫌いじゃない。
まぁ、流石にまったく知らない、という状態ではなく、ロワ本編の動向に基づいて書いていましたが。
710Classical名無しさん:08/08/17 23:03 ID:jEaoBctA
誰かー! toheratを把握してらっしゃる方はおりませんかー!?
私も良く知らないけどこのままだとえらいことになえいそうですー!



>>704氏、いいぞもっとやれい!!
711704:08/08/17 23:41 ID:ZQ0ja2BE
勢いに乗って書いてきました。
内容は……正直反省している。
712Classical名無しさん:08/08/18 00:06 ID:B8sXZLPc
>>711

 こ れ は 反 省 す る し か な い。

OPにすら出ていない子安イボンコに比べて???な人たちの出番が少ない。
ゲストなんだからもうちょっとゴージャスに使ってあげねば。
713Classical名無しさん:08/08/18 11:21 ID:9MXevzuE
>>711


ゲストに吹いたw
714711:08/08/18 19:48 ID:HTi3/Axs
感想ありがとうございます。
この調子で頑張ってみようかと思いますので、ドラえもんのような温かい目で見守ってやって下さい。

>>712
はい、猛省します。
???の方々は……別の処からの来訪と言うことで、意図的に行動は控えめにしました。
要するに出オチというものですね。出オチには些か豪華すぎる面子だった気もしますが(汗)
715 ◆1eZNmJGbgM :08/08/28 00:56 ID:B3oRywfg
すいません、wiki管理人さんにお願いがあるのですが、収録の時に誤って新しいページを作ってしまいました。
そのためページ名を変更してもらえないでしょうか?
「*Rock And Coll」の、最初の記号*を消して、CollをCallに変更をお願いします。
お手数をおかけして申し訳ありません。
716Classical名無しさん:08/08/28 01:47 ID:Iuiuxbg.
>>715
対応しました
717 ◆1eZNmJGbgM :08/08/28 02:44 ID:B3oRywfg
>>716
あの、申し訳ないのですが、CollをCallに変更もお願いします。
何度もすいません。
718Classical名無しさん:08/08/28 02:48 ID:Iuiuxbg.
>>717
再び完了
719 ◆1eZNmJGbgM :08/08/28 18:51 ID:IGjT0Vkw
ありがとうございました、お礼が遅くなりすいません。
720Classical名無しさん:08/08/30 13:28 ID:IwSKJmLU
創作発表板
http://namidame.2ch.net/mitemite/

「新しく出来た小説(SS)やイラストなどを書いて(描いて)感想を貰う板です。
一次、二次、競作等幅広く受け入れています。
※PINK系該当作品は該当板へお願いします。」


新しく出来た板らしいのですが
次スレはクラウンか創作発表版か、どちらにしましょう?
元々クラウンはSSを投下するといった板ではないですし、
創作発表板のほうが行数制限やサルなどの条件も投下に向いているようです。
皆さんのご意見を聞かせていただけたら、と思います。
721Classical名無しさん:08/08/30 15:58 ID:SBxb7Hd6
このスレはどうするかなぁ?
ジャンルはごった煮だし、はっきりしているそっちの板もいいかもしれん
クラウンの倍書き込めるらしいしね
722Classical名無しさん:08/08/30 22:16 ID:fAzMxjPc
もうしばらく様子見てもいいかな、と思ってる
723Classical名無しさん:08/08/31 12:50 ID:/FWI7Ztc
とりあえずこのスレが埋まったら移転、ってあたりが妥当かな
724Classical名無しさん:08/09/01 19:30 ID:gCkAyeCk
予約入ったー!
残り80KBで人数的に埋まるものではないけど、その次が厳しくなるかもしれない。
割りとそろそろ決断しなくては。



とりあえず展開予想。
「茶々丸。タイが曲がっていてよ」
とコロンビーヌが言う。
725Classical名無しさん:08/09/02 23:57 ID:sL2UxWYY
dokuhakiで言ってたけど、制限議論ってあったっけ?
ゾンダーメタルは出しちゃ駄目とか?
726Classical名無しさん:08/09/03 22:22 ID:m4EVuthg
ゾンダーメタルは駄目だろ…収集つか無くなる
727Classical名無しさん:08/09/06 10:01 ID:6z9B5AZE
予約した人、ゆっくり書いてね。あせらずゆっくりしてね。
728 ◆c92qFeyVpE :08/09/06 11:29 ID:Y78SVZxc
遅くなって申し訳ない……投下します
729愛しい人は今どこに? ◆c92qFeyVpE :08/09/06 11:30 ID:Y78SVZxc
「ここにも無いようですね……」
「なかなか見つからないものねぇ」

E-3の飛行場を探索し終わり、茶々丸は小さく呟いた。
E-5、E-3の飛行場を探索したものの目当ての物は見つからず、シャトルの説明を何度も読むこととなった。
それでも何かを見落としていないか丁寧に捜索し続ける茶々丸を見ながら、コロンビーヌは息を吐く。

(茶々丸ちゃんってば、よく頑張るわねぇ)

コロンビーヌは分割ファイルの捜索に、あまり積極的に協力していない。
茶々丸にその事を悟られないよう「フリ」だけはしてるが、それだけだ。

(爆破されて勝ちゃんのところに戻れなくなるなんて、絶対ごめんだしねぇ……あらん?)

そういえば、と改めて茶々丸を見つめる。先ほどからPCの検索を続けているが、やはり成果はあがっていないようだ。
「反抗したら爆破する」そうシグマは言っていたはずだ。ならば何故茶々丸は今だに無事なのだろうか?
自分はともかく、彼女ははっきりと「この殺し合いを止めたい」と口にしていた。
あの言葉ははったりで、実は監視をしていない、などということはないだろう。このような催しを行うのなら必ずチェックを入れるはず。
だとすると、茶々丸が行っていることはシグマの狙い通りということか?
例えば……そう、分割ファイルを集めたら出てくるのは情報ではなく――

『インフォメーションメッセージ』

「「っ!?」」

コロンビーヌの思考を遮るかのように機械音が「三つ」響き渡る。
感情のない声が淡々と放送を告げる中、茶々丸とコロンビーヌはその内容だけは聞き漏らさないように注意しながら互いの動きを警戒する。
迂闊だった、放送があるとは書いてあったが、それがPDAから流れるものとは思ってもみなかったのだ。
おかげで隠していた二つ目のPDAの存在に気づかれた、自分が殺した相手から奪ったのだと思われているだろう、間違ってはいないのだが。
730愛しい人は今どこに? ◆c92qFeyVpE :08/09/06 11:31 ID:Y78SVZxc
『――2ブロックとなります』

放送が終了した後も、二人は動かない。
互いがどう動くか、次の一手を見逃さないよう睨みあい……コロンビーヌが先に口を開く。

「はぁ、無駄な事はやめましょう」
「……」
「茶々丸ちゃんが警戒するのも無理ないわぁ、実際私はこの壊しあいの最後の一人になる気だったんだし」

自ら警戒されるであろうことを喋るコロンビーヌに、茶々丸は一歩距離を取って警戒を強める。
その様子を見て、何故かうっすらと笑みを浮かべながら更にコロンビーヌは語り続けた。

「安心して、今はもうそんな気はないわよ」
「……信用するに値する情報がありません」
「貴方の事が気に入っちゃった……じゃダメかしらん?」

それに対する返答は無言。
大きく溜息を吐き、PDAを二つとも手放してみせる。

「ほら、嘘じゃないわぁ、茶々丸ちゃんみたいな子達を壊して回って帰ったところで、勝ちゃんはきっと喜ばないって気がついたのよ」
「それでは、もう殺さないと?」
「こっちからは、ね。やられそうになったら反撃ぐらいは許してもらいたいけれど」
「……」

微笑を浮かべたままのコロンビーヌを前に、茶々丸は思考回路を巡らせる。
別にコロンビーヌが他の者を破壊したこと自体を責める気はない、この状況下でその判断は間違いとはいえない。
だが、少なくとも一人以上殺し……破壊している相手を信じられるほど自分とコロンビーヌの間に信頼関係は築かれていない。
とはいえ、アルレッキーノと同等の戦闘能力を持っているのならばここで敵対するのはリスクが高いだろう。
だからといって易々と同行を続けるのも危険すぎる。シャトルに乗った途端ズガン、などとなってはマスターに顔向けできない。
731愛しい人は今どこに? ◆c92qFeyVpE :08/09/06 11:32 ID:Y78SVZxc
「条件が、あります」
「何かしらん?」
「一つ、私の視界からはずれないこと。二つ、決してこちらから攻撃を仕掛けないこと……この二つの条件を汲んでいただければ、貴女を信用します」
「……わかったわ、茶々丸ちゃんと戦いたくなんてないしね」

この殺し合いの中において、かなり厳しい条件。
しかし、コロンビーヌは渋々といった様子ながらも二つ返事でそれを受け入れた。

「さあ、早くシャトルに乗らないとね。アルレッキーノが待ってるんでしょう?」
「……はい」

(茶々丸ちゃんてば、お人よしねぇ。手足を縛るぐらいしてもいいのに)

シャトルへの通路を歩きながら、コロンビーヌはほくそ笑む。
確かに勝は他の者を壊し、殺して戻ったなどと聞いても怒るだろう。
だが、それでも彼はコロンビーヌが戻ってきたこと自体には喜んでくれるはずだ。
ならば構いはしない、多少の怒りは甘んじて受けようじゃないか。

自分は、何としても勝の下へ帰るのだ。
732愛しい人は今どこに? ◆c92qFeyVpE :08/09/06 11:32 ID:Y78SVZxc
【E-3 シャトル発着所内/1日目・朝】
【絡繰茶々丸@魔法先生ネギま!】
[状態]:動作が鈍くなる程度の火傷(どの程度行動に支障をきたすかは次の書き手さんにお任せします。命に別状はありません)
[装備]:スタングレネード(3/3)
[道具]:アカネハウス11号@パワプロクンポケット8、支給品一式
[思考・状況]
基本思考:殺し合いを止め、生きて帰る
1:D-5のシャトル発着所に戻りアルレッキーノと合流
2:分割ファイル、及びそれを移せる記録媒体を探す
3:コロンビーヌの動きに注意
4:悪と呼ばれようが脱出のために全力を尽す
5:フランシーヌ人形と合流する
6:協力者を探し、チンクへの警戒を呼び掛ける
※夏休み期間中からの参戦なので、今後魔法世界編で出てきたインフレ技は使えない可能性があります
※茶々丸の乳首についてですが、はじめから乳首など付いてないのか、原作で描写が無いのは原作者のポリシーだからであって乳首はしっかり付いているのかは、次の書き手さんにお任せします
※チンクは殺し合いに乗り、シュトロハイムを殺害したと思っています
※アルレッキーノの世界と自動人形について理解しました。
※この殺し合いの参加者は異世界から集められたのではないかと考えています。
733愛しい人は今どこに? ◆c92qFeyVpE :08/09/06 11:34 ID:Y78SVZxc
【コロンビーヌ@からくりサーカス】
[状態]:健康、気分高揚
[装備]:グラーフアイゼン(ハンマーフォルム)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
     タブバイク@ゼノサーガシリーズ
[道具]:基本支給品一式×2、PDA(コロンビーヌ、パンタローネ、)
     不明支給品1〜7個(確認済み1〜7うち1〜2は武器には見えない) 、
     床屋セット(鋏、櫛、鏡) 開天珠@封神演義 たずね人ステッキ@ドラえもん
[思考]
基本:殺し合いに勝ち残り、優勝者の報酬として勝の下へ戻る
1:優勝するため他の参加者を殺す。ただし危なくなったら逃走を図る
2:『人間』が居なくなるまで、茶々丸と行動する。
3:アルレッキーノ、と協力出来るようなら協力する
4:もしアルレッキーのと自分が生き残った場合、自分を優勝させてもらうように懇願する
5:やっぱり人間は殺せない。人形は壊す。お人形みたいな人間も壊す。
6:勝の元に帰れるのなら、茶々丸に本気で協力しても良い(ただし、期待は全くしていません)
[備考]
※参戦時期は死亡後です(原作40巻)
※フランシーヌ人形はサハラ編時の偽者だと確信しています
※全てのゾナハ蟲(コロンビーヌらが吐き出すものも)には以下の制限が掛かっています。
また会場の全域には十分なゾナハ蟲が漂っています。
1:外部には一切の害はありません(ゾナハ病の感染や機械類のダメージなど)
2:コロンビーヌが自分の武器として使用するのには問題なく使用できます
※ゾナハ蟲の制限にはまだ気付いていません
※グラーフアイゼンはシグマによりハンマーフォルムに固定されています
※タブバイクは飛行できません、他にも色々制限されています
※茶々丸に親近感を抱きました。

投下終了
矛盾・指摘・感想等ありましたらお願いします
734Classical名無しさん:08/09/06 13:06 ID:6z9B5AZE
GJ
これはいいぎすぎすしたチーム。
先行きに不安感をもてたのがよかったです。
735Classical名無しさん:08/09/06 13:09 ID:snPe2WB.
投下乙
なんという牽制合戦w
茶々丸のお人好しっぷりが悲しい。
GJ!
736Classical名無しさん:08/09/06 15:34 ID:OZIruwRM
投下GJです!
なんかチームの緊張感がたまらない。
いつ爆発してもおかしくない、どうなるか……
737Classical名無しさん:08/09/06 19:30 ID:e4qdMe0s
ドラス無力化で空いたポジションにコロンが収まりそうだぜ!
738Classical名無しさん:08/09/08 18:51 ID:olqjiCAs
えー
人がいないのでネタ振ってみる。
次はいったいどこのパートが進むのか予想しようぜ。


おいらは本郷さんのところが進むと思う。
739Classical名無しさん:08/09/08 19:40 ID:PXHrKkSo
メガちゃんも気になるぜ
740Classical名無しさん:08/09/09 18:59 ID:b9zFtUCw
私はスバルが気になります、
741Classical名無しさん:08/09/09 19:43 ID:A8I5OGcg
でも、次の予約は茂・ナタク・T-800、そして敬介でした。
742Classical名無しさん:08/09/09 23:39 ID:b9zFtUCw
ヒャッハァ!
来るぞ繰るぞ!人死にがくるぞ!!
743Classical名無しさん:08/09/10 00:13 ID:ivOZNOHU
予約スレ見てきた。あの人か!
ライダーもナタクもターミネーターも書いたことある人だし、期待するしかねえ!
744Classical名無しさん:08/09/10 05:24 ID:5Z7NVljM
まさかのライダー対決くるうううううううう
745Classical名無しさん:08/09/11 19:56 ID:8ZhZvtR.
予約すごいはいってるぅぅぅぅ!?
これは現実か!?
746Classical名無しさん:08/09/11 20:00 ID:HJ/t87SM
>>745
よく見ろ! 現実だ!
747 ◆hqLsjDR84w :08/09/12 19:38 ID:h5SstfkM
現在、ほぼ執筆完了。
ちょっとワケあって修正しなければならない箇所が一つあるので、そこの書き直しと推敲が終われば、投下できる感じです。
と言っても、リアルの都合で今日中の投下は無理っぽいですが……

っと、質問なのですが……
今回の話が三部作になりそうで、もしかしたら投下中にスレ容量を超えてしまうかもしれません。
念の為に投下前に新スレを立てておきたいのですが、どこの板に立てるべきでしょうか?
この板のままか、それとも創作発表に移転するのでしょうか?
748 ◆hqLsjDR84w :08/09/12 19:39 ID:h5SstfkM
三部作というより、wikiに掲載する時に三つに分ける必要がありそう……、と言うべきかな。
749Classical名無しさん:08/09/12 19:45 ID:h8xSOblw
一旦様子を見る意味合いで、このスレに立てた方がいいかも?
まだ向こうの方は色々未知数なので
750Classical名無しさん:08/09/12 19:51 ID:EdIGJ6ME
ただ、こっちは行数とか連投規制とかいろいろ厳しい……し、興味ある人が来てくれる可能性はなくもない
751Classical名無しさん:08/09/12 20:08 ID:7U4TXF2s
>>749
そうですね。
一旦様子を見てみるのも、選択肢に入れるのもいいかと思います。

一スレは現状維持で、移るかどうかは、スレ違いの問題が深刻になってから、はどうでしょうか?
752Classical名無しさん:08/09/12 20:43 ID:EdIGJ6ME
んじゃ、クラウンに立てますか?
753Classical名無しさん:08/09/12 20:57 ID:tx0RplT2
4/5【仮面ライダーSPIRITS】○本郷猛/○風見志郎/○神敬介/○城茂/●村雨良
4/5【魔法少女リリカルなのはStrikerS】○スバル・ナカジマ/○ギンガ・ナカジマ/○チンク/●セイン/○ノーヴェ
3/4【からくりサーカス】○フランシーヌ人形/○コロンビーヌ/●パンタローネ/○アルレッキーノ
2/2【ロックマンXシリーズ】○エックス/○ゼロ
2/2【ターミネーター2】○T-800/○T-1000
1/2【攻殻機動隊】○草薙素子/●タチコマ
2/2【サイボーグクロちゃん】○クロ/○ミー
0/2【ToHeart】●マルチ/●セリオ
0/2【ザ・ドラえもんズ】●ドラ・ザ・キッド/●王ドラ
2/2【マルドゥックシリーズ】○ルーン・バロット/○ディムズデイル・ボイルド
2/2【パワポケシリーズ】○灰原/○広川武美
1/1【ロックマンシリーズ】○ロックマン
0/1【ジョジョの奇妙な冒険】●ルドル・フォン・シュトロハイム 
0/1【魁!!クロマティ高校】●メカ沢新一 
1/1【勇者王ガオガイガー】○獅子王凱 
1/1【魔法先生ネギま!】○絡繰茶々丸
1/1【封神演義】○ナタク
0/1【Dr.スランプ】●則巻アラレ
0/1【VOCALOID2】●初音ミク 
0/1【クロノトリガー】●ロボ 
0/1【サイボーグ009】●009(島村ジョー)
0/1【THEビッグオー】●R・ドロシー・ウェインライト 
1/1【スーパーロボット大戦シリーズ】○ラミア・ラヴレス
1/1【ゼノサーガシリーズ】○KOS-MOS
1/1【人造人間キカイダー】○ハカイダー 
1/1【仮面ライダーZO】○ドラス 
1/1【ビーストウォーズ超生命体トランスフォーマー】○メガトロン 
1/1【SoltyRei】○ソルティ・レヴァント 
1/1【メタルギアソリッド】○グレイ・フォックス 
0/1【PLUTO】●ゲジヒト
1/1【究極超人あ〜る】○R・田中一郎
33/50 
754Classical名無しさん:08/09/12 21:19 ID:EdIGJ6ME
ロボ・サイボーグキャラロワイヤルpart7
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1221220638/

とりあえず、自分も現状維持のほうがいいと思うようになったし、特別反対ないのでクラウンで建てました。
もしも先走りすぎ、とかだったら自分で削除依頼出してきます。
755Classical名無しさん:08/09/12 22:31 ID:blQgmrzY
>>754
生存者票間違えてる件
756Classical名無しさん:08/09/13 08:03 ID:do1PIKVo
ノーヴェはもう死んでる件
757Classical名無しさん:08/09/13 12:50 ID:bdEAx.F6
ノーヴェ「不死鳥は炎の中から蘇る!」
758 ◆hqLsjDR84w :08/09/13 22:36 ID:5/n4p9nw
新スレ、乙ですー。
じゃあ、投下を開始しますね。
759Classical名無しさん:08/09/13 22:37 ID:HS15WOo2
  
 シグマによって用意されし、四つのコロニーから成るバトルロワイアルの舞台。
 四つのうちの一つ、左上のコロニー=所々に鉱山のそびえ立つ雪原ゾーン。その一画、エリアB−3。
 そこの東側、今では瓦礫と化した民家前の通路をリングに二人の――いや正確には二体の男達の戦闘が、いま開幕のゴングを鳴らそうとしていた。
 互いに睨み合い、言葉はないがギスギスとした雰囲気。ピシィと、空気が張り詰めている。
 緊張感が、静かにだが確実に辺りを侵食していく。
 常人ならば、存在することすらいたたまれなくなり、この場からの逃走を企てることであろう。

 ――とは、言ったもののだ。

 生憎か、幸運か。偶然か、必然か。誰か第三者の意図はあってのことか、ないのか。
 このバトルロワイアルには常人は呼ばれておらず、このエリアに『常人のような感覚を持ったモノ』は存在しなかった。

「はッ! 不意打ちしかけといて何を言うかと思えば、戦えだあ?
 言われなくても、テメェはこの俺がじきじきにぶちのめす! そうしねえと、こちらの気が収まりそうもないんでな!」

 額からは真赤な巨角を生やし、緑色の複眼を持つ男が、右腕で空中を薙ぎ払いながら叫ぶ。
 その言葉の節々から、堪忍袋がプッツンきていることが推測できる。
 黒いボディスーツと赤いプロテクターに身を包んだ、その男の名は城茂――いや、この姿の時の名は、仮面ライダーストロンガー。
 悪の組織に対抗するべく、自らの意思で改造手術を受けた電気人間である。

「だが、その前にこっちの質問に答えてもらおうか! なんでテメェが、T-1000――っつっても、分かんねえか。
 なんでテメェが、シグマの影武者と俺が戦ったことを知ってやがる!?」


 ストロンガーが先ほどから言葉を投げつけている相手、つまるところ怒りの対象は目の前の少年。
 赤い髪を石製の髪飾りで掻き上げた、上半身裸で右腕に奇妙な箱を装着している少年の名は、ナタク。
 太乙真人の作り上げた宝貝『霊珠』を胸に埋め込み、核としている宝貝人間であり、蓮の花の化身である。
761Classical名無しさん:08/09/13 22:39 ID:rndR.bp6

762Classical名無しさん:08/09/13 22:39 ID:yqpfXOlI

「……知りたければ、俺を倒してみろ」

 ストロンガーとの戦闘を前にうずうずしていたナタクが、相手の都合など知ったことかとばかりに言い放つ。
 一瞬にして、大気が凍ったかのような緊迫感が、周囲に漂う。
 それまでゆっくりであった緊張感の侵食速度が、一気に加速する。
 期を伺っているのか、動かないストロンガーをよそに、ナタクは右腕を前に向ける。



 何やら目の前の男――城茂か、はたまたT-800か――が、ぐだぐだと何やら問いかけてくる。
 ……下らぬことに拘る奴だ、鬱陶しい。
 話してやるのは別にかまわないが、話し出せばいつまで会話が続くだろうか。
 時間が無駄でしかない。役に立ったのは、シグマの影武者が『T-1000』というらしいことくらいか。
 早く戦いたいというのに、まったく面倒な男だ。
 ゆえに、告げる。
 俺を倒せば教えてやる、と。
 男が黙る。
 了解したということだろう。
 そう認識し、M.W.S.を構える。

 ――シグマの影武者と戦い、放送を待つまでの間に知った新たな力を使ってみるか。

 シグマの影武者との戦闘後、探知機に示された光点の場所に来るには、放送までの時間が足らなかった。
 だから放送を聞くまで移動を行わなかったが、いざ待ってみればすぐに暇になった。
 そこで暇を潰すためというワケでもないが、俺は未だ詳細のよく分かっていないM.W.S.についての説明をPDAに表示させた。
 それを読んでみれば、何とも興味深いことが分かった。
764Classical名無しさん:08/09/13 22:39 ID:HS15WOo2
   


 ――M.W.S.は、射撃用以外の武器も搭載している。

 最初に読んだときは、『ビームランチャー』、『ボム』、『電磁ロッド』などの単語を流し読みしただけだった。
 その為に気付かなかったし、あの時気付いても使う気は起こらなかっただろうが、今は別だ。
 そう、燃料を気にせねばならない今は。
 射撃用以外の武器は、燃料を気にせずに使える。
 実に、都合がいい。
 撃って撃ってひたすら撃つ武器も好きだが、近距離タイプの武器が使えないワケではない。
 太乙真人に、俺用に改造させた『火尖槍』を手に入れてからは、近距離用の修行も積んでいる。
 かつて、宝貝を飛び道具としか認識していなかった頃の俺とは違う。
 火尖槍のように中距離戦闘までこなせはしないが、この武器ならば修行の成果が多分に発揮できそうだ。
 頬が緩むのを感じるが、知ったことか。止められるわけがない。



「――『スペルブレード』」

 ナタクがそう呟いたのと同時に、ナタクが右腕に装着している箱の先から、鋭利な刃が飛び出す。
 刃自体の長さは、通常よくある剣の刀身とさほど変わらない。
 されど、もとより箱自体が巨大なことにより、リーチは結構な長さになる。
 ……既にお分かりであろうが、ナタクが装着しているのはただの箱ではない。
 数多の武器を内蔵し、非力な人間でも使用可能な武装なのである。名称はMultiple Weapon System、略してM.W.S.。

「何だと!?」
766Classical名無しさん:08/09/13 22:40 ID:1chg/Vu6
 
767Classical名無しさん:08/09/13 22:40 ID:yqpfXOlI
768Classical名無しさん:08/09/13 22:40 ID:HS15WOo2
    

 M.W.S.から刃が現れるなどと考えてもおらず、ストロンガーは驚愕。一瞬、ナタクへの対処が遅れる。
 構わずに、ナタクは地面を蹴って距離をつめる。
 しかし、ここは幾つもの悪の組織を叩き壊してきた歴戦の猛者、仮面ライダーストロンガー。
 振り下ろされたスペルソードを、右の前腕で受ける。
 接触と同時に、キィンと甲高い音。
 だが派手に響いた音とは裏腹に、スペルソードの刀身にもストロンガーの右腕にも傷はない。

「面白い」

 誰にともなく言いながら、数メートルほど後ろに跳ぶナタク。
 当然ながら、スペルソードも引き戻される。
 力をかけていた対象の突然の喪失に、ほんの少しストロンガーの体勢が崩れる。
 その隙を狙い、ナタクが再び地面を蹴って距離を詰める。
 体勢を立て直したストロンガーの瞳に映ったのは、横凪に振るわれたスペルソード。
 背中を反らすことによって回避するも、返しの二撃目を防ぐことは不可能。

 だが、不可能など幾度となく可能として来たのが、仮面ライダーという名の平和と自由の為に戦う戦士達――!

 背を逆海老に反らした状態で、ストロンガーは両足に力を込める。
 そのまま両足を地面からを離すとと、勢いを両足に乗せて蹴り上げる。

「おおおおおッ!!」

 両足でのオーバーヘッドキック。
 がむしゃらに放たれたストロンガーの蹴りは、迫ってきていたスペルソードへと命中。
 スペルソードを生やしたM.W.S.ごと、右腕が上空に引っ張られるナタク。
 吹き飛んでたまるかと、踏ん張りをきかせるが――――それが仇となる。
 右腕は引っ張られ、両足は地面に全ての力を――ゆえに、ナタクのボディはがら空き。
 そんな隙を逃すストロンガーではない。
 こんどはこちらの番と言わんばかりに、体勢を立て直したストロンガーは回し蹴りをナタクの脇腹に叩き込む。
770Classical名無しさん:08/09/13 22:41 ID:HS15WOo2
     

「がァあ……」

 強烈な一撃にナタクの表情が歪み、苦悶の声を上げる。
 ストロンガーの蹴りの威力は凄まじく、ナタクは思いっきり吹っ飛んでいく。
 その先には、民家。
 ナタクの奇襲によって倒壊した物よりも、遥かに巨大な品の良さを感じさせる豪邸。
 このままではナタクはそこに突っ込み、その衝撃により崩れるであろう豪邸の瓦礫に潰される。
 そう思って、吹き飛んでいくナタクをただ見ていたストロンガーが、不意に怪訝な声を上げる。
 豪邸に激突する寸前で、白い何かがナタクを掻っ攫っていったのだ。
 疑問に思うストロンガーに、頭上から声が浴びせられた。

「やってくれたな」

 ストロンガーにとって、明らかに聞き覚えのある声――さっきまで戦っていた相手と限りなく似ている。
 唐突に起こった予想外な事態には、考えるよりも先に体が動く。
 それは、改造人間であろうと、電気人間であろうと、意思持つモノ全てが持つ普遍の本能。
 思いっきり上に首を捻ったストロンガーの視界に入ったのは、やはり先ほどまで戦っていたナタク。
 無表情な彼にしては珍しく、頭に血が上っているということが表情から読み取れる。
 そして、ストロンガーの複眼に映ったのはナタクだけではない。
 ナタクともう一つ、それは――――

「上……なァ!?」

 ナタクを乗せた巨大な白い犬――宝貝『哮天犬』であった。

(あの犬は……! そういや、最初に不意打ち吹っかけてきやがったのもあの犬じゃねえか!
 ちいッ、あの野郎自身が仕掛けてきやがったから、犬にまで気が回らなかったぜ……ッ)
「死ね」

 混乱しつつも、思考を落ち着かせようとしていたストロンガーに浴びせられたのは、ナタクの無慈悲な死刑宣告。
 たった二文字の言葉なのに、それを言い終えるより早くに、ナタクの持つM.W.S.からは無数の光線が射出されていた。



 あの野郎の装着した箱から、無数の光線が俺目掛けて発射される。
 さっきまでの剣は、内部に収納されたのか?
 剣が仕込まれただけの篭手かと思っていたが、それだけじゃねぇみたいだな。
 ……他にも、何か仕込まれてねえとは言い切れねえ。
 警戒して然るべき、だな。
 つっても、何が入ってるか分からねえ以上、具体的な案は思い浮かばねえが。

「――ッ!?」

 気付けば、背後には豪邸。
 もちろんぶん殴れば、余裕で壊せる。
 だが、そんなことしてる暇はない。
 そんなことをしていたら、一秒にも満たないだろうが隙が生まれる。
 そうすれば、さっきから滅茶苦茶に飛んできてる光線が、俺に当たっちまうだろう。
 やれやれ、本当にやれやれだ。
 がむしゃらに撃ってるだけかと思いきや、なかなかに考えていやがる。
 だが、これじゃあ甘いな!
773Classical名無しさん:08/09/13 22:42 ID:HS15WOo2
          

「トゥ!」

 一度、ジャンプ。
 さっきまで俺のいた場所を光線が命中、幾つもの穴が空く。
 さて、空中で野郎の方を見れば……けッ、笑いやがった。

「死、ね」

 銃口をこちらに向けての一言。
 テメェの乗ってる犬みたいなんを持ってない俺が、空中で身動きが取れるワケ無ぇってか? 馬鹿が。

「ぬうゥんッ!」

 豪邸の壁を蹴って、空中で方向転換。
 野郎の放った光線を回避する。少し掠ったが、軽すぎる痛み。何も問題ない。
 方向転換した今の進行方向は、野郎とは離れた方向。
 まさかこっちに行くとは思ってなかったか?
 ある程度移動したところで、両手を握りしめて掴む。民家の周囲にあった電線を。
 普通の人間やただの改造人間なら、電線なんか触ったらひとたまりもないだろうが、俺は別だ。
 野郎の方を見れば、こちらに銃口を向けている。
 何をするか分からねぇが、とりあえず殺すってか?
 はッ、いいぜ。仕掛けてやるから、目ェ見開いてじっくり見やがれ!
 逆上がりの要領で回転して手を離す。地面に向かって勢いよく落下していく俺、その頭上を野郎の光線が飛んでいく。
 回避成功だが、野郎の銃口は俺を追っている。
 だがよ、銃ってのは……撃たせる前に叩くのが定石だろうがァ!

「エレクトロサンダァアアアーーーッ!! とォッ!」

 着地した俺が、即座に両手から火花を散らして電撃を放つ。
 空中を奔って、野郎の真上に集う電気エネルギー。

 目に見える速度で、電気エネルギーが拳大の小さな塊へと集束していく。
 野郎がそれに目がいってる間に、こちらはまたジャンプさせてもらおうか。
 それまで、バチバチと音を立てていた電流の塊が静かになった途端、極大極太の雷となって野郎を襲う。
 咄嗟に野郎の乗った犬が空中を駆けて、ギリギリで回避。
 だろうな。あの犬の機敏さは、さっきので分かってたぜ。

 だから――――さっきのエレクトロサンダーには、大して力を込めてはいない。『避けさせるため』の技さ。

 既に俺は、跳躍している。今度はまっすぐ、野郎目掛けてだ。
 エレクトロサンダーを回避し、犬を静止させた野郎と目が合う。
 さっきまでムッツリしてたくせに、珍しく驚きが顔に出てるじゃねえか。
 この距離じゃ、犬を動かすのも無理だろうが……
 こんな下らねえ殺し合いに乗る奴になんか、容赦はしねえし、出来ねえな!

「ストロンガァァアアーー! 電キィィイイイイーーーック!!」



 少し前にストロンガーの放ったエレクトロサンダーをも上回る轟音が、周囲に響き渡る。
 大地を揺らすほどの衝撃も同時に生まれたが、それまで騒々しかったエリアが急に静かになった。
776Classical名無しさん:08/09/13 22:44 ID:EoahB.CE
777Classical名無しさん:08/09/13 22:44 ID:HS15WOo2
         
778Classical名無しさん:08/09/13 22:44 ID:1chg/Vu6
 

「……ちッ」

 動くものがなかったその場で、最初に動いたのはナタクであった。
 不機嫌そうに舌打ちを鳴らしながら、もたれかかっていた哮天犬から起き上がる。
 空中で静止していたはずの哮天犬は、地面に落下したナタクを支えるために地面へと降りてきている。

「テメェ、何をしやがった……ッ」

 ナタクが立ち上がって一秒と経たぬ間に、最初のナタクの奇襲でできた瓦礫の中からストロンガーが現れる。
 ストロンガーは驚愕と怒りの混ざった語気で、疑問を吐き捨てる。
 ナタクは答える素振りを見せず、M.W.S.を装着した右手をストロンガーに向ける。

「電……パァアアンチ!!」

 ストロンガーは喉を鳴らすと、拳を握り締めて駆け出す。
 電撃を纏ったストロンガーの右ストレート。その行く先には、ナタクの顔面。
 発光しながら迫る拳を確認したナタクは、M.W.S.の電磁ロッドを展開する。
 電磁ロッドから発せられた電気エネルギーを、M.W.S.に覆われた右拳に纏わせるナタク。

「『イナヅマブロー』……!」

 そう呟いて、ナタクが右ストレートを放つ。
 電気の覆われた拳同士がぶつかり合い――またしても、接触と同時に轟音。
 結果、ストロンガーもナタクも後ろへと吹っ飛ばされる。

「ガあッ!」
「……ちッ、またか」

 苛立ちながら呟いたナタクの言葉に、ストロンガーは理解する。
 渾身の力を込めた電キックも、いま放った電パンチと同じく、電磁ロッドより展開された電気エネルギーに相殺されたのだと。
 ストロンガーの推測は、当たっている。
 ナタクがストロンガー渾身の電キックに気付いた時点で、哮天犬を駆動させての回避は不可能とナタクは判断した。
 そこで、ナタクはPDAの説明で知った、『イナズマブロー』という電磁ロッドから発した電気エネルギーを纏わせたパンチを放ったのだ。
 イナズマブローと電キックに纏われていた電気エネルギーは、ほぼ互角。
 結果、互いに相手を吹き飛ばしながら、相手の攻撃に吹っ飛んだのだ。

 これは、ストロンガーのポテンシャルとM.W.S.の電磁ロッドの性能が互角というわけではない。
 確かに、M.W.S.は元来戦闘する力を持ち得ぬ者でも、人外と戦闘可能な実力者にするほど優秀な武器だ。
 それでも、である。ストロンガーとM.W.S.、そしてM.W.S.を操るナタク。
 全てが万全の状態であったならば、『電気』の技という観点ではストロンガーの圧勝であろう。
 超電子の力に頼らずとも、スペックに加えて数多の戦闘経験が武器となる。
 しかし、ストロンガーは休息を取ったとはいえ、T-1000とマルチから受けたダメージが残っていて万全ではない。
 対して、ナタクの持つM.W.S.はどこも故障しておらず。ナタク自身も大したダメージはない。
 むしろ、こんなコンディションで互角の技を放ったストロンガーは、大したものなのだ。

 ……とは言っても、そんなことはバトルロワイアルには関係がない。
 生憎バトルロワイアルは、万全の相手同士が正々堂々闘う格闘技トーナメントではないのだ。

「使ってみて分かったが、どうも電気は好かん――『スペルブレード』」

 ナタクが電磁ロッドを収納し、刃を展開。
 M.W.S.のモードをスペルブレードへと変化させる。

「くッ!」
781Classical名無しさん:08/09/13 22:45 ID:HS15WOo2
     

 振り下ろされたスペルブレードの横腹を、左の裏拳で叩いて軌道をずらすストロンガー。
 ストロンガーが空いている左拳で、ナタクの顔面にフックを打ち込もうとするが、M.W.S.のボックス部分に阻まれる。
 そのまま、押し合い。力比べの形になる。
 暫し経過し、両者が背後に飛ぶことで力比べは終局する。
 幾度目かの睨み合い。今度は、ストロンガーが仕掛ける。

「電チョップ!」

 ストロンガーは電気エネルギーを右掌に纏わせ、手刀の形状のままナタクに打ち込もうとする。
 が、それは腕をスペルブレードの横腹で叩かれることで、ナタクに届くことなく終わった。
 バチリと軽快にスパーク音を立てたが、腕にまでは電気が及んでいないので、スペルブレードを伝うことはない。
 痺れないことを確認したナタクがニィと笑みを浮かべ、ストロンガーの右腕に沿ってスペルブレードを移動させて、ストロンガーの首を狙う。
 ストロンガーは、勢いよく首を曲げる。スペルブレードの刃は、空気を切断するに終わる。
 返しの袈裟懸けを行う前に、ストロンガーは横っ飛びで一旦距離をとり、二撃目を放ち隙の出来たナタクへと飛び掛る。


  ◇  ◇  ◇


 互いに、勝負を決める一撃が、決まることがない。
 決め手はことごとくが回避、或いはいなされ続ける。
 もしや永遠に終わらないのではないか――そう思われていた戦闘に、異変が生じ始めた。

「おッ……らあ!」
783Classical名無しさん:08/09/13 22:46 ID:EoahB.CE
784Classical名無しさん:08/09/13 22:46 ID:1chg/Vu6
  

 歯を軋ませながら、大振りの右フックを打ち込むストロンガー。
 しかし、軽々とナタクに回避されてしまう。
 ストロンガーの動きは、少し前より格段に精彩を欠いてきている。
 ストロンガーにスペルブレードによる斬撃が少しずつ決まり出し、少しずつストロンガーの全身に切り傷が刻まれていく。
 対するナタクは、大して変化はない。
 戦闘開始から新たに生まれた傷も、始めのほうにストロンガーから受けた回し蹴りの分くらいだ。
 一気に勝負が傾き始めた理由は――

(ちィ、T-1000の野郎から受けた腹の傷が開いてきやがった……!)

 ナタクとの戦闘より前に受けた傷。
 ストロンガーは、思案する。勝利する方法を。
 『切り札』である超電子ダイナモを使い、超電子人間となる――その案は既にストロンガーが考えた後だ。
 しかし、ストロンガーは未だ電気人間のまま。
 何故か。
 制限時間が短くなっているから? 違う。
 たとえ制限時間が短かろうと、一度チャージアップすれば確実に相手を倒しきる自身をストロンガーは持っている。
 ならば、なんでなのか。それは――

(こんなボロボロの状態で、超電子ダイナモが起動するかどうかが分からねえ。
 最悪なのは、『チャージアップできない』ことじゃない。『チャージアップしようとして出来ない』って事態だ。
 超電子ダイナモを起動させる際の隙は、チャージアップ出来たなら余裕で回収できるが、出来なければ……)

 そう、ダメージの多さと連戦の疲労のため、チャージアップ出来るかどうかが疑問なのだ。
 だが、ストロンガーは諦めない。勝利の可能性を高める方法を考える。

「しま――!?」
786Classical名無しさん:08/09/13 22:46 ID:HS15WOo2
  

 ストロンガーが、素っ頓狂な声をあげる。
 考え事をしていたため、ストロンガーの足元が疎かになっていて、その隙をナタクは逃さずに足をかけたのだ。
 体勢を崩すストロンガー、すぐに体勢を立て直そうとするが――怪我と疲労ゆえに足を踏み外す。
 ナタクがスペルブレードを振りかざす。
 ストロンガーはそれに気付くも、バランスの取れない状態では反撃も回避も不可能。
 スペルブレードを斜め下に振るおうと、ナタクが右腕に力を込める。


 ――――このとき、両者は目の前の相手との勝負だけに、全神経を集中させていた。


 ――――――もはや瞳は目の前の男だけを捉え、鋭く研ぎ澄まされた神経は攻撃と防御だけに。


 ――――――――だから彼らは、本来ならばすぐに気付くことに、二人とも気付くことはなかったのである。


 ――――――――――凄まじい速度で接近してくるエンジン音にも。只者ではないことをアピールしてくる気配にも。


 ドッガァァアアアアアアンッッツ!!
 耳をつんざく鈍い音。
 ナタクとの戦い以外に思考が回っていなかったストロンガーが、その音で我に返る。
 それまでナタクしか映っていなかったストロンガーの視界に、入り込んだのはナタクではない別の男。
 黒いボディスーツに身を包んだ、筋骨隆々の白人男性……の姿をしたロボット――T-800。
 彼は、ストロンガーにスペルブレードを振りかざしていたナタクを発見。
 即座に排除すべき対象と判断し、彼の運転していた特殊バイク『テントロー』のハンドルを思いっきり持ち上げた。
 テントローはウィリー運転の形となり、そのままの勢いでナタクに体当たりをぶちかましたのだ。
 万に一つどころか、兆に一つも考えていなかったT-800の奇襲に、ナタクは哮天犬を呼び出すことすら出来ずに、豪邸へと突っ込んでいった。
 助けられたとはいえ、突然の事態に目を白黒させている――緑色の複眼だが――ストロンガーをまじまじと見つめ……
 何事もなかったかのように、T-800は口を開いた。
788Classical名無しさん:08/09/13 22:47 ID:jKJxPO9E
 

「ダメージが多いようだな、茂」
「……見れば分かんだろうが、T-800」

 パンとT-800の肩をストロンガーが叩く。
 その行動には、T-800への感謝の意が含まれていたのだが、T-800は気付いていないようである。
 ストロンガーはそのことを察したようだが、わざわざ説明するガラでもねえや――などと一人で呟いた。


  ◇  ◇  ◇


 T-800が前方、ストロンガーが後方の陣形で、二人がナタクの突っ込んだ豪邸へと入り込む。
 ナタクがT-1000を知っているようだと、ストロンガーから聞いたT-800が、ナタクから情報を聞き出そうと言い出したためだ。
 ストロンガーも、殺し合いに乗っていると思われるナタクを見逃すわけにはいかないと、T-800に同意した。
 ちなみに室内での戦闘になるということで、テントローは邪魔になると判断され、ストロンガーのPDAに戻してある。
 あえてナタクが突っ込んだ穴ではなく、別の窓を破って入り込んだ二人。
 彼らの間に会話などは一切ないが、ちゃんと事前に割り振ったとおり、一方が警戒を払い切れない場所をもう片方が警戒する。
 両者とも自分以外を気にかけたりするタイプではないのだが、二人とも修羅場を潜っているためか。
 即席タッグにしては、なかなかに息の合ったチームである。

790Classical名無しさん:08/09/13 22:47 ID:EoahB.CE

 四肢に力を込め、壁に埋まった体を少しずつ抜き出していく。
 やっと両腕が壁から開放された。
 あとは両腕に力を込めて一気に――よし、脱出できたな。

 あの男、やってくれたな……!
 城茂かT-800か、どちらがどちらか分からんが、どちらも面白い。
 においは消えていない。
 おそらく、俺が生きているのかを確かめに来るはずだ。
 その時に決める、殺す。

 パリィン、カツリ、カツリ、カツリ、カツリ……――――

 何かが割れる音、そして足音。
 忍んでいるつもりかもしれないが、聞こえているぞ。
 確実に、近づいてきている。
 俺が突っ込んだ穴を知っているのだから、当然か。
 フン、むしろ好都合だ。
 M.W.S.を構え、『スペルブレード』を展開。
 城茂とT-800、さあ来い……!



 最後に残った部屋の前で、ストロンガーとT-800が顔を見合わせる。
 数秒経ったところで、二人同時に頷いて――ストロンガーが部屋のドアを蹴破った。
 同時にT-800がストロンガーの前に割り込み、部屋の中へと発砲。
 一発目、正面。二発目、右上。三発目、左上。四発目、左下。五発目、右下。
 それだけ撃ち終えるとT-800がしゃがみこみ、かがんだT-800の上をストロンガーが飛び越える。
 そのままの勢いで、電撃を纏わせた拳を振り上げて部屋に飛び込んだストロンガー。
792Classical名無しさん:08/09/13 22:48 ID:MUt2PKp.
793Classical名無しさん:08/09/13 22:48 ID:1chg/Vu6
 

「電パァアア――――何ッ、いねえ!?」

 ストロンガーは、空中で拳を振りかざしたまま驚愕する。
 そのストロンガーに声がかけられる。方向は――背後。
 即ち、ドアのあった場所にいるT-800と部屋の中にいるストロンガーの間。

「残念だったな」

 ストロンガーが空中で腰を捻って移動しようとするも、スペルブレードをナタクが横凪に振るう方が早い。
 勝利を確信したナタクが口角を吊り上げ、ストロンガーは一発食らうのを覚悟する。
 ――しかし、ストロンガーの身に刃が入ることはなく。

「貴様……ッ」

 焦りの含まれた声は、ナタクの口から漏れたもの。
 次いで、ナタクが壁に激突する音。
 ドアの前にいたT-800が、ストロンガーに切りかかるナタクに飛び蹴りを放ったのである。
 すぐに立ち上がったナタクが、今度は乱入者であるT-800目掛けて駆ける。
 T-800の着込むライダースーツの脚部には、スタンガンが仕込まれている。だが、ナタクを痺れさせるには弱すぎた。
 体勢を立て直したストロンガーが、T-800とナタクの間に割り込もうとするが、間に合わない。
 スペルブレードの刃が、T-800の胸部から腹部を斜めに切り刻んだ。

「この程度の電撃では、ダメージを与えられんか」

 何事もないようにそう言いながら、倒れるT-800。
 大きな斬撃の痕からは、火花が飛び散っている。

「T-800!? おおおおおおおおッ!!」

 間に合わなかったストロンガーが、勢いのままナタクに右ストレートを放つ。
 ナタクはM.W.S.のボックス部で受けるが、今度はストロンガーの左フックがナタクの顔面を襲う。
 舌打ちしながらナタクが、後ろに跳ぶ。
 逃す気などさらさらないストロンガーも地面を蹴って、ナタクを追う。
 跳んだ先で、ナタクは背に違和感を感じ取った。一瞬、視線を投げればそこは壁。
 これ以上逃げ場はなく、前方からはストロンガー。
 ナタクが意図せずとも、ナタクの顎に力が込められ歯が軋む。
 チャンスとばかりに、ストロンガーが渾身の右ストレートを打ち込む。
 咄嗟に首を曲げるナタク。ストロンガーの右ストレートは、先ほどまでナタクの顔面の背後にあった壁に激突し――
 当然ながら、いかに豪邸とはいえ、ストロンガーのパワーに壁が耐え切れるはずもなく。
 哀れ、壁は粉々に砕け散ってしまった。


  ◇  ◇  ◇


「くそったれッ!」

 破砕して塵埃となった壁の所為でナタクを見失ってしまい、ストロンガーが悪態をつく。

 ――己の背後に探しているナタクがいるのだとも、気付かくことなく。

 ナタクは『におい』で相手の位置を大まかにだが、把握できる。
 これだけ近くならば、間違えることはない。
 相手の居場所を探知する『カブトキャッチャー』を使用しようとしているストロンガーに、ナタクが左腕を伸ばす。
 ストロンガーは第六感――いや、不自然な煙の動きに気付いたため、背後にナタクがいることを知る。
 横っ飛びで距離を取ろうとするが、それより早くナタクがストロンガーの首根っこを掴んだ。
 ナタクの身長はストロンガーと比べて低いとはいえ、腕を伸ばされてしまえばストロンガーの足は地面に着くことはない。
796Classical名無しさん:08/09/13 22:49 ID:EoahB.CE
 
797Classical名無しさん:08/09/13 22:49 ID:HS15WOo2
  
798Classical名無しさん:08/09/13 22:50 ID:EoahB.CE
   

「ガ――ッ、テメェ……!」
「かつて粉塵で相手を惑わして、相手の背後を取ったことがある。
 何故だか分からんが、あの時はどうにも自分で勝った気がしなかった。だが……、今回は違う」

 ナタクが右腕のスペルブレードを構え、ストロンガーに押し付けようとする。
 ストロンガーの背に冷たい感触。
 やられる……そんな考えがストロンガーの脳裏を過った瞬間、ストロンガーの首にかかっていた力がゼロになり、そのまま重力に任せて落下する。
 何が起こったのか理解できないストロンガーが、ナタクがいたはずの背後に視線を向ける。
 そこにいたのはナタク、そしてナタクを羽交い絞めにしているT-800。

「無事だったのか、T-800!」
「切れ味のいい刃物だったようだが、金属骨格部にまで攻撃は届いていなかった」

 ストロンガーの疑問に答えながら、さらに両腕でナタクに力を込めるT-800。
 そうなのだ。スペルブレードによる斬撃は、人体と同種の細胞組織で出来たT-800の表面を刻んだだけであった。
 その程度のダメージは、T-800にとって存在しないのと同義であった。
 倒れたのは、ナタクの攻撃を受けた際の衝撃ゆえのこと。
 T-800はすぐに立ち上がったのだが、ストロンガーもナタクも見てはいなかった。
 その後、ストロンガーのサポートに移ろうとしたが、粉塵が家中に漂い出した。
 だが、T-800には何の意味も成さない。
 T-800の瞳――否、それは義眼。
 義眼の奥の超小型レンズ付き高感度ビデオセンサーは、温度を感知して物体の位置を感知できる。
 それを行使して、T-800はストロンガーに襲い掛かるナタクを視認したのである。

「ちィ……!」

 ナタクが全身に力を込め、T-800の拘束から抜け出そうとするが、T-800は微動だにしない。
 人間で言えば少年と呼んでも違和感がないくらいの身長だが、ナタク
の力は決して弱くはない。
 並みの仙人ならば、持ち上げられれば抵抗できないほどだ。
 その力をもってしても揺らがぬほどに、T-800のパワーは凄まじいのだ。
800Classical名無しさん:08/09/13 22:50 ID:PT1MDaSM
 
801Classical名無しさん:08/09/13 22:50 ID:1chg/Vu6
 

「茂、この参加者からT-1000の情報を聞き出す。
 暴れられたり、逃げ出したりされては困る。動かなくなる程度に、ダメージを与えてくれ」
「ああ、分かってるさ」

 立ち上がったストロンガーが、拳を握り締めて右腕をグルグルと回す。
 T-800とストロンガーは、勝負が決まったと思っていた。

 そう――――思い込んでいた。

「T-800ッ! そいつから離れろ!」

 急にストロンガーが、大声をあげる。
 ストロンガーは気付いたのだ、それまで刃を出していたM.W.S.の形態が変化していることに。
 その形態をストロンガーは知っていた。
 ――ビームランチャーを放つ際の形態である。

「逃げるだと……!? フン、ナメるなよ!」

 ストロンガーがナタクに飛び掛ろうとし、T-800はストロンガーの尋常ではない様子にナタクから距離をとろうとする。
 だが、どちらも遅い。
 ナタクは既に、T-800が『逃げ出したりしては困る』と言った時点でキレている。
 ナタクの装着したM.W.S.から、ビームランチャーが射出される。数発で終える気などない。撃ち続ける。
 T-800に羽交い絞めにされていたので、右腕は下を向いていたが、すぐに床はビームランチャーにより喪失。
 足場をなくしたT-800が体勢を崩し、ナタクを解放してしまう。
 T-800と同じく足場をなくしたナタクだが、ナタクは足場のない状態での戦闘には慣れている――むしろナタクが最も得意とする状況。
 空中で体を捻って回転、上を見据えるナタク。
 落下したT-800を心配して、ビームランチャーによって生まれた穴を覗き込んでいたストロンガーが、ナタクの視界に入る。
 ナタクがストロンガーに右腕を向けて、撃つ、撃つ、撃つ。
803Classical名無しさん:08/09/13 22:51 ID:MUt2PKp.
804Classical名無しさん:08/09/13 22:51 ID:MUt2PKp.
    
805Classical名無しさん:08/09/13 22:51 ID:PT1MDaSM
  
 ストロンガーは、それを回避。回避されたビームランチャーは、豪邸の壁や屋根を破壊していく。
 ナタクは撃つのをやめようとせず――三つ数えるよりも早く、豪邸がミシミシと不吉な音を奏でだす。
 まもなく倒壊する――さすがに、それに気付いたナタクが呟く。己を救い出してくれるであろう宝貝の名を。
 同時に、外で待機していた哮天犬が、豪邸へと突っ込んでナタクの眼前まで直進する。
 哮天犬が突っ込んだ衝撃で、豪邸が傾く。
 もう一度何か衝撃が加えられれば、崩れてしまうかもしれない。
 子供でも推測できる有様であったが、ナタクは気にも留めず。
 哮天犬の尾を掴むと、哮天犬を操作して豪邸の屋根を突き破って脱出した。

 メキ、メキャ……ガッシャアァァアァァァアアアアン。

 豪邸の前の通路にナタクが降り立ったとき、既に豪邸は豪邸という名ではなく。
 『瓦礫の山』と名を変えていた。



 豪邸が嫌な音を出し始めた。野郎が、主柱でも幾つかぶっ壊していったか。
 またあの犬か……ありゃあ、主人の危機にやってくる忠犬ってやつかね?
 倒壊までどれだけあるか。早く脱出しなくちゃならねぇ。
 野郎を逃がすわけにはいけねえしな。
 だが、T-800はどうする。
 T-800は床の下に落とされちまった。T-800のことだから、やられちゃいないだろうが……
 考えたのと同時に、体は動いていた。
 野郎が床に空けてきやがった穴に飛び込む。

「T-800! 助けに来たぜ! 出てこい!」
807Classical名無しさん:08/09/13 22:52 ID:Ew32YyEs
 

 叫んでみたが、返事はない。
 何故だ? まさか――最悪の可能性が脳内に浮かんでくるが、T-800の死体はない。
 ならば……?
 必死で首を捻って、周囲を見渡す。T-800の名を叫ぶのも忘れない。
 すると、入ってきた穴とは別に、光が射し込んでくる場所があるのを発見する。
 走ってみれば、明らかに誰かがブン殴って空けたとしか思えない穴。
 こりゃあ……既に自分で脱出してたってワケかい。
 わざわざ倒壊寸前の建物の中で、無駄なことをしてたと思うと泣きたくなる。
 T-800の空けた穴をよじのぼって、床下から脱出する。
 ここは……居間か。俺の記憶が正しければ、家の真ん中じゃねえか。

 メキ、メキャ……

 何かが軋む音が聞こえた――『何か』と言っても、何が音を立てたのは分かるがな。
 見てみれば、壁全体にヒビが入ってきてきている。
 やれやれ、本格的にヤバくなってきたみてえじゃねえか。
 俺がそう毒づいたのと、同時だった。
 落下してきたシャンデリアに反応できず、後頭部にモロに受けてしまい、膝が地に付いたのは。
 一瞬、視界がホワイトアウトし、意識が飛んだ。持ち直したとはいえ、まだクラクラする。
 意識を落とした所為か、変身が解除されちまった。
 早く脱出しなきゃならねえ。普段ならばすぐに出て行けるが、シグマのクソッタレに何かしらをされた今の状態では……
 くじけそうになる心に喝をいれて、身体を無理矢理動かそうとして立ち上がったと同時に、轟音と共に天井や壁が砕けて俺に降り注いできた。
 ヤベえ、回避できねえ。変身も間に合わない、駄目だ――――死ぬ。

 ガッシャアァァアァァァアアアアン。
809Classical名無しさん:08/09/13 22:52 ID:HS15WOo2
        
810Classical名無しさん:08/09/13 22:52 ID:EoahB.CE
  
811Classical名無しさん:08/09/13 22:52 ID:1chg/Vu6
 
812Classical名無しさん:08/09/13 22:52 ID:jKJxPO9E
   

 ……………………………………

 ……………………

 …………

 ……

 生き、て……いる?
 これまで奏でられていた不吉な音が止んで静かになり、視界が暗くなった。
 だが、痛みは僅か。それも今まで経験したことのない激痛などではなく、大したことがない。
 何故だ……分からねえ。
 混乱している俺に、声がかけられた。
 そちらに顔を向けてみれば――

「T-800!? 脱出したんじゃなかったのか!?」
「しようとしたところで、お前の声をキャッチした。音源は床下。あの時点で床下にいては、脱出するのが困難と判断。
 お前は大きな戦力だ。瓦礫に潰されて喪失するのは惜しすぎる。ゆえに、救出するべく戻った」

 さっきまで探してたT-800がいた。
 普段と変わらない無機質な対応。だが、その身は……

「戻ってきてくれたことには礼を言うぜ。
 けどな……ッ、なんでお前が俺の上にいる! なんで……なんでッ、瓦礫から俺を守ったッ!」

 そう、その背には無数の瓦礫。
 瓦礫によって傷ついた身体。
 顔面の傷からは火花が散り、特に深い傷痕からは銀色の金属が露出している。
 最も損傷の大きいであろう背中は見えないが、顔面よりも傷は深いだろう。
 どう見ても、ダメージは大きい。それなのに、T-800ときたらこんなことを言いやがった。
814Classical名無しさん:08/09/13 22:53 ID:EoahB.CE
    
815Classical名無しさん:08/09/13 22:53 ID:PT1MDaSM
   

「俺とお前ならば、お前が無事な方が、この殺し合いを破壊するには戦力となる。
 後の目的のため、俺は破壊されるわけにはいかないが、気にするな。
 金属骨格部まで届いたダメージは、微々たるもの。この程度ならば、すぐに行動に支障はなくなる」

 あまりに合理的なT-800の考えに、何か反論しようとする。
 だが、何も思い浮かばない。今の俺には、T-800に言い返すことが出来ない。
 T-800は言葉を続ける。

「とはいえ、この瓦礫から脱出するには、手間がかかる。
 どかすだけならば数分で可能だが、下手に動かしてさらなる崩壊を起こすのは避けねばならん。
 脱出に必要な時間は計算出来ないが……、脱出した時点であの参加者が破壊されているのが望ましい。
 T-1000の情報を得られているのが最良だが、優先すべきはあの参加者の機能停止。
 気付いているか分からないが、決してお前はあの参加者にスペック負けしてはいない。
 情報交換の際に言っていた、『超電子ダイナモ』を何故使わないのかは、推測不可能だが」

 そこまで言うと、T-800が喋らなくなる。
 ギシギシと何かを引き摺るような音が聞こえるので、おそらくは身体を瓦礫から抜き出そうとしているのだろう。
 その度に、T-800の背に乗っかった瓦礫の隙間から青白い火花が散る。

「あと、言っておこう。あの参加者についてだが、胸部の温度分布が異常だ。
 八十七パーセントの確率で、機能の中枢を担う何かが埋め込まれている」

 不意に俺の方を向いてそれだけ言うと、再び物を引き摺る音が再開する。
 脱出だけに専念したのか、T-800はこちらを向くことはなく、会話もない。
 軋む音が響く中、俺の脳内では後悔だけが渦巻いていた。
817Classical名無しさん:08/09/13 22:54 ID:EoahB.CE
 
 ――まったくもって、T-800の言うとおりじゃねえか。

 俺はなんで超電子ダイナモを使わなかったんだッ!
 使っていれば、こんなことにはならなかった。
 今頃、あの野郎をボコってT-1000の情報を聞き出すことが出来たのに。
 もしかしたら、T-1000の居場所を聞き出して、T-1000の元へと向かうことが出来ただろうに。

 ――使わなかった理由は分かる。

 びびってたんだ。
 今までの戦いで疲労した身体で、チャージアップできるのか。
 制限がかかった状態でチャージアップをして、今までの戦闘の負傷に響きはしないか。
 そんな下らないことをかんがえて、慎重に動いたつもりでいて……その結果はどうなった?
 T-800は瓦礫に埋もれ、俺自身も結構なダメージ、だがあの野郎はほぼダメージ無し。
 俺は馬鹿だ、大馬鹿だ。
 T-800は何度も俺を守ったのに、あの野郎に二度も不意打ちをぶちかましたのに、俺は何をしていた!?
 びびってるだけのくせに、慎重派きどって! その結果がコレだ!
 T-800は俺の方が戦力になるって言っていたが、そんなことはねえ。
 冷静に物事を考えつつも、仲間である俺に注意を払うのを忘れない。
 俺がやられそうになったら、何度も助けに来た。
 そういや、倒れてた俺を看護してくれたりもした。
 口調は機械的だが、なんと人間味に溢れているのか。
 俺はときたら、T-800と違ってただの大馬鹿だ。
 だからよォ…………

 馬鹿なら、馬鹿らしく――――下らねえこと気にしてんじゃねえッ!!!

 疲労が何だ。負傷が何だ。制限が何だってんだッ!
 制限だか知らないが、力が弱まるのなら、そのマイナス分以上に強くなればいいじゃねえかッ!!

 悪ィな、T-800。喝入れてくれたことに礼を言うぜ。おかげで目が覚めた。
 そして――悪ィな、糞餓鬼。もう手加減はしてやらねえ。全力でぶちのめす!
819Classical名無しさん:08/09/13 22:54 ID:HS15WOo2
     
820Classical名無しさん:08/09/13 22:55 ID:jKJxPO9E
    



 T-800は、ただただ状況を合理的に判断した。
 合理的に考えて、戦力の喪失を防ぐために、城茂を何度も助けた。
 合理的に考えて、己の頑丈さならばダメージは少ないと判断し、瓦礫に潰される役を買って出た。
 合理的に考えて、城茂がなんで超電子ダイナモを使用しなかったのか分からずに、理由を尋ねた。

 結果――――城茂は、T-800を人間味溢れる男と判断した。

 そして、勘違いによってだが、燻っていた茂の心の火は燃え上がった。
 茂は沸騰するかのように、全身が熱くなるのを感じた。
 その感覚に快感を覚えているかのように、茂は獰猛な笑みを浮かべて拳を握り締める。
 グローブが千切れてどこかへ散らばってしまったため、少し動かすだけで剥き出しのコイルアームがスパークするが、茂は意に介さない。
 茂が上方に視線を投げると、小さいながらも一人くらいならば何とか抜け出せそうな隙間を発見する。
 握った拳を、周囲の瓦礫に軽く叩きつけて茂が叫ぶ。

「ぐだぐだ考えるのは、もうヤメだ。シンプルな話じゃねえか。
 まずは、あの糞餓鬼をぶちのめせばそれでいい。さあ……やってやろうじゃねェかァァーーー!!」

 叫び終えると、茂は両のコイルアームでもって、瓦礫の山をよじ登り始めた。
 ここに正義の味方は目を醒まし、怒りをイナヅマに変えて悪に解き放たんと敢然と立ち上がった――!


  ◇  ◇  ◇



 ナタクが、前を見据えながら立ちすくんでいる。眼前には、瓦礫の山。
 その瓦礫の山がかつては立派な家屋であったなど、とても想像はつくまい。
822Classical名無しさん:08/09/13 22:56 ID:HS15WOo2
      

(片方のにおいは極端に弱くなり、片方は変化なし……だが)

 ナタクの強者を嗅ぎ取る嗅覚が、今まで戦っていた者達のにおいが弱まっていったのを感じ取った。
 片方のにおいに変化はないが、この瓦礫の山から脱出するのには手間がかかるだろう。
 わざわざ瓦礫をどかしてやる気も、待ってやる気もないナタクは、瓦礫の下にいるであろう者達との戦闘を諦めることにした。
 少し残念そうな表情を浮かべて、瓦礫の山に背を向けるとPDAを取り出すナタク。
 次の相手を探すために、ナタクがPDAを操作して高性能探知機を取り出そうとした時だった。
 ナタクの背に、上方から声がかけられたのは。

「オイ、オイ、オイオイ、まだ相手が立ち上がってるってのに、相手に背を見せるってのはどういう了見だ?」

 両耳が声を捉えると同時に、ナタクが声のした方へと勢いよく首を捻る。
 ナタクの視界に入ったのは、全身に負傷を負い満身創痍の一人の男――城茂。
 ナタクは城茂の変身後の身体――仮面ライダーストロンガーの姿は知っているが、城茂の姿は知らない。
 だが、城茂のにおいは知っている。
 大して強いにおいではないが、変身することで一気に強者のにおいを放つようになる。そのことを、ナタクは知っている。
 ゆえに、ナタクはPDAをしまいこんで、茂の方へと体を向ける。
 城茂との戦闘は終わったのではなく、未だ最中であると判断したため。

「貴様、あの中にいて何故無事で済んでいる」

 ナタクの口から発せられるは、当然の疑問。
 茂がいるのは、かつて豪邸であった瓦礫の山の頂点。
 瓦礫の中から出てきたのは明白、しかしそれにしては茂の身には傷が少ないのである。
 茂の全身には幾つもの傷が刻まれているが、それでも『瓦礫の山に潰されたが、その瓦礫を押しのけて出てきた』にしては傷が少ないのである。
 その質問に対し、茂は息を吐き捨てて飄々と答える

「へっ、そんなこと俺が知るか」

 茂のこの答えは、嘘。
 ただ、ナタクに教える気を欠片も持ち合わせていないというだけ。
824Classical名無しさん:08/09/13 22:56 ID:PT1MDaSM


「……何だと?」

 ストロンガーが何を言っているのか、心底理解できないという様子のナタクを無視して、ストロンガーが叫ぶ。
 腹の底から気合を込めて、思いっきり声を張り上げる。

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ! 悪を倒せと、俺を呼ぶ!
 聞け! シグマの下らぬ戯言に耳を貸し、殺し合いを加速させる悪党よ!!」

 ナタクを睨み付けながら、両腕をまっすぐと右側に伸ばす茂。
 これまでの戦闘によって、茂の絶縁体製手袋は破れてしまい、電気人間の証である無骨なコイルアームが露になっている。
 伸ばした両腕を反時計回りに旋回させ、左斜め上四十五度のところで腕を静止させる。
 そのまま、帯電しているコイルアームを一気に擦り合わせる。
 プラスとマイナスの電極の接触。その結果、バヂィンと青白い電撃がスパークする。
 茂の両腕から、ストロボを思わせる強烈な発光。
 一気に茂の全身を包み込んだ強烈な光は、ゆっくりと光が収まったいく。
 そして、完全に消灯した時、先刻まで城茂がいた場所にいたのは……

 黒いボディスーツに、赤いプロテクターを纏った戦士。しかし――

 全身を覆う黒色のボディスーツは、各所がズタズタに破れてしまっている。
 上半身を守る赤色のプロテクターには、ところどころに亀裂が入ってしまっている。
 両の掌にはめた、銀色地に赤色のラインをあつらえた手袋。これまた数箇所切れてしまっている。
 顔面には、緑色の巨大な複眼。額には、カブトムシを模した巨大な赤い角『カブトショッカー』。
 右のカブトショッカーは途中にて分断され、そこから先がない。左の複眼は一部が抉り取られ、そこを中心にヒビが入っている。
 立っているだけでも辛いであろうことが、傍目にも分かる。
 だが、腰に巻かれた刺々しいベルト『エレクトラー』の点灯は、普段以上の光度を放つ。
 複眼も、ヒビなど存在せぬかのようにキッとナタクを見据えている。
 胸部アーマーに描かれた、大きなS字マークもどこか普段より色濃く見える。
826Classical名無しさん:08/09/13 22:57 ID:EoahB.CE
 
827Classical名無しさん:08/09/13 22:57 ID:jKJxPO9E
   

 満身創痍の彼を立ち上がらせたのは、胸に秘めた決して砕けることのない正義の心。
 ボロボロの状態でも、バトルロワイアルを止めるべく男の名は!
 その名は、その名は――――!

「俺は正義の戦士! 仮面ライダーストロンガー!! ――とおッ!」

 瓦礫の山の頂点にいたストロンガーが、思いっきり跳躍。
 太陽を背に、十数メートルほど上昇した頃であろうか。ストロンガーのスピードが、少しずつ弱まっていく。
 制限を感じさせぬ勢いで飛び上がったストロンガーが、地面に立ちすくんでいるナタクへと言葉を投げつける。

「俺達仮面ライダーの前に――正義の前に、悪がどれほど無力なのか……
 その身に叩き込んでやるぜ! チャージアァァアアーーーーップ!!」

 右腕を太陽に向かってピンと伸ばし、空中で叫ぶストロンガー。
 同時に、再改造手術によって埋め込まれた『超電子ダイナモ』が音を立てながら激動。
 生み出された超電子のエネルギーが、ストロンガーの体内に漲っていく。
 あまりに強大なパワーゆえに、ストロンガーの内部だけでなく、見た目にも異変が起こる。
 プロテクターの胸部に描かれたS字マークが、高速で回転。同じく胸部の装甲に、くっきりと銀色のラインが入る。
 ストロンガーの頭部から生える二本のカブトショッカーが、バチバチと音を立てて電撃を纏う。
 そして、いつのまにやら、カブトショッカーは赤色銀色へとその見た目を変化させていた。

「――ゆけ」

 ストロンガーから、これまでを遥かに凌駕する強者のにおいを感知したナタクが、M.W.S.からボムを二発射出する。
 ナタクは燃料やボムの弾数に気を配り、ストロンガーとT-800との戦闘では主にスペルブレードを使用していた。
 しかし、今のストロンガーとの戦闘中に余計なことを考えていれば危険だと判断し、戦法を変更したのである。
829Classical名無しさん:08/09/13 22:57 ID:1chg/Vu6
 
830Classical名無しさん:08/09/13 22:58 ID:MUt2PKp.
 

「はッ! この程度で……こんなもんで! 今の俺を止められると思うなァ!!」

 叫びながら、ストロンガーが空中で方向転換。
 真っ直ぐとナタクへと向かうルート。しかし、道中には迫り来る二つの爆弾。
 当たってしまえば一たまりもない――ただの改造人間ならば。

「超電急降下パァァアアアアンチ!!」

 ナタク目掛けて、頭から一直線に突っ込んでいくストロンガー。
 普通に考えれば不自然で体勢を崩してしまいそうだが、そのまま右腕を振り上げて落下スピードを上乗せさせたパンチを放つ。
 空中で二度、立て続けにストロンガーから繰り出される右ストレート。
 どちらも、M.W.S.から射出された二つのボムを完璧に捉えた。
 衝撃によりボムが爆ぜるも、チャージアップ化によって増幅した電気エネルギーが、爆炎を相殺する。
 結果、M.W.S.より放たれた二つのボムは、ストロンガーにダメージを与えることが出来ずに壊された。
 妨げとなるものを破壊したストロンガーが、ナタクに三発目の右ストレートを放つも、それをナタクはギリギリで回避。
 破壊された二つのボムは、ストロンガーにダメージを与えることは出来なかったが、ストロンガーの勢いをほんの少しだけ弱めることは出来たのである。
 ナタクがいなくなったことにより、ストロンガーの右拳は地面へと激突する。
 その際に生まれるであろう隙を狙おうとしていたナタクだったが、それは叶わなかった。
 ストロンガーの右拳は地面を抉り取り、巨大なクレーターを作り上げたのだ。
 あまりに予想外の事態に、ナタクは一瞬目を奪われ、その間にストロンガーは体勢を立て直していた。

「く……ッ、『イナヅマブロー』!」

 拳からバチバチとスパーク音を鳴らしながら、己を見据えるストロンガーに、ナタクが電磁ロッドを展開させる。
 出現した電磁ロッドから、オレンジ色の電気エネルギーが発せられる。
 前に使ったときと違い、今度は拳に纏わせるのではなく、そのままストロンガーに向かって放電させる。
832Classical名無しさん:08/09/13 22:59 ID:EoahB.CE
 
833Classical名無しさん:08/09/13 22:59 ID:jKJxPO9E
  
834Classical名無しさん:08/09/13 22:59 ID:jiMhFEUg


「エレクトロファイヤーーッ!!」

 迫る電撃に気付いたストロンガーが、叫びながら地面に拳を叩き込む。
 ストロンガーの掌から、目視可能なほどの高電圧電流が放電される。
 その電気エネルギーは、地面に含まれる砂鉄を伝ってナタクへと襲い掛かる。
 チャージアップ前ならば、ストロンガーの負傷と疲労もあって、電気エネルギーは互角であったが――

「があアアああァぁあああァァアああア!?」

 ――超電子人間と進化した、今のストロンガーの超電子の技相手ではそうはいかない。
 M.W.S.から発射された電気エネルギーは、エレクトロファイヤーに接触しただけで軽く弾き返されて霧散。
 エレクトロファイヤーにより生まれた電気エネルギーは、これといって影響を受けることはなかった。
 そのまま地面を走り続け、無防備なナタクを飲み込む。
 あまりに強すぎる電気の出力に、ナタクが全身を痙攣させて苦悶の声を上げる。

「ナ、メ、る……なァアア!!」

 エレクトロファイヤーに身を焼かれながらも、ナタクは意識を落とすことなく、怒りを露に絶叫。
 その声に呼応するは、待機していた哮天犬。
 地面に掌を当てて電撃を流し続けるストロンガーに、体当たりを食らわせるべく宙を駆ける。

「トゥッ!」

 近づいてくる哮天犬の気配に気付いたストロンガーが、思いっきり跳躍。
 ストロンガーが地面から手を離したために、ナタクはエレクトロファイヤーから解放される。
 全身に火傷を負ったナタクが、意識を落としそうになるが、ギリギリで踏み止まる。
836Classical名無しさん:08/09/13 22:59 ID:HS15WOo2
      
837Classical名無しさん:08/09/13 23:00 ID:1chg/Vu6
 
838Classical名無しさん:08/09/13 23:00 ID:PT1MDaSM
   


「やってくれたな……!」

 怒りを顔面に浮かべたナタクが右腕を掲げ、右腕に装着されたM.W.S.を上空のストロンガーに向ける。
 電磁ロッドは収納され、今はビームランチャーを射出する形態となっている。
 ナタクの瞳に、撤退の意思は欠片もない。無論、ストロンガーも同じく。
 M.W.S.の銃口より、無数に射出されるビームランチャーの嵐。
 その全てが、ストロンガーの身を貫くべく直進する。
 ストロンガーの複眼が、光を放ちながら迫り来るビームランチャーを映す。
 されど、ストロンガーはたじろぐことはなく、退くこともない。
 右足をピンと伸ばし、左足でそれを支えるストロンガー。

「超電子いいぃぃぃぃ……――――」

 ストロンガーが呟いたのと同時に、ストロンガーの身体より放たれるビームランチャー以上の極光。
 その正体は、ストロンガーの体内に収まりきらずに、全身から溢れ出す電気エネルギー。
 あまりの光量に、さすがのナタクも一瞬だけ視線を逸らす。

 そう、一瞬。
 いや、もしかしたら一瞬に満たないかもしれないが、確かにナタクはストロンガーから目を離した。

 ナタクが目を離している間に、ストロンガーは腰を捻って身体を回転させる。
 落下エネルギーに上乗せされた回転の勢いにより、ストロンガーの速度が増していく。
 より一層加えられる捻りが、より一層の回転を生み出し、より一層の加速を実現させる。
 さらなる捻りが――/さらなる回転を――/さらなる加速を――/さらなる――/さらなる――/さらなる――!
 さらに捻りが――/さらに回転させ――/さらに加速――/さらに――/さらに――/さらに――!!
840Classical名無しさん:08/09/13 23:00 ID:jKJxPO9E
    
841Classical名無しさん:08/09/13 23:00 ID:HS15WOo2
     

「ッ!?」

 再びナタクがストロンガーの方へと顔を向けたときには、既にストロンガーの速度は、常人では目視できぬ領域に至っていた。
 ナタクでさえ、一筋の光の矢にしか見えぬ速度。かろうじて、ナタクにはストロンガーが回転しているのことが分かった。
 M.W.S.より放たれたビームランチャーの弾幕は、そのことごとくが錐揉み回転するストロンガーに弾かれて無力化。
 ナタクとストロンガーの距離は僅か。
 行く手を阻んでいた無数のビームは吹き飛んでいった為、ナタクとストロンガーの間に障害物はなし。
 勝利を確信しつつも、キックの勢いを緩めることなど、思考の片隅にもないストロンガー。
 足の先に肉体が接触したのを確認し、ストロンガーは叫ぶ。
 ストロンガーが超電子の得た時、最初に使用した技の名を。
 デルザー軍団の改造魔人が一人、ドクロ少佐に使用して以来、数多の怪人を葬ってきた――必殺と呼ぶに相応しい技の名を。

「――ドリルキィィィイイイイイイックッッ!!」

 最初に民家が倒壊したときよりも。
 テントローでの体当たりを受けたナタクが、豪邸に突っ込んだときよりも。
 豪邸が倒壊したときよりも。
 超電急降下パンチでもって、地面に巨大なクレーターを出来上がったときよりも。
 さらに巨大な轟音が響き渡り、大地を揺るがせた。


  ◇  ◇  ◇


「ハァー……ハァー……」
843Classical名無しさん:08/09/13 23:00 ID:jKJxPO9E
                                    
844Classical名無しさん:08/09/13 23:01 ID:EoahB.CE
     

 超電子ドリルキックの勢いがじょじょに収まっていき、遂にストロンガーが静止した。
 その直後であった。やはり、勝手にストロンガーのチャージアップが解除された。
 T-1000の時の反省を生かし、一気に勝負を決めたのは正解だったな――そう胸中で呟くストロンガー。
 シグマによってかせられた制限により、チャージアップ後の疲労は半端ではない。
 今にも意識を落としそうになるも、ナタクの死体を見るまでは寝られないと、ストロンガーが足を動かす。
 超電子ドリルキックの加速の所為で、ストロンガーは戦場から結構離れてしまっていた。
 その距離をストロンガーは足を引き摺りながら歩き、やっとのことで豪邸だった瓦礫の前に到着する。
 辺りに目配せすると、ストロンガーは安心したように倒れこむ。
 ストロンガーは、天を仰ぎながら数十秒かけて呼気を整え、握りめた右拳を天に向けて思いっきり伸ばす。

「勝った……ぜ……!」

 ストロンガーの複眼が捉えたのは、ナタクが右腕に装着していたM.W.S.。
 ただそれだけが、地面に落ちていたのだ。
 それをストロンガーは、『ナタクは超電子の力で蒸発して、M.W.S.だけが残った』のだと認識した。
 スペルブレードや電磁ロッドを展開し、かつビームランチャーやボムを射出するM.W.S.は、ストロンガーにとって未知の武器。
 スバル・ナカジマが元々いた世界についての情報をT-800から聞いていたため、ストロンガーはM.W.S.を他の世界の武器なのではないかと考えていた。
 他の世界の武器ならば、超電子のパワーに耐えても不自然ではない。ストロンガーは、そう判断したのだ。

 ――だからこの後、ストロンガーは驚くことになる。

 勝利を噛み締めているストロンガー。
 その彼に、唐突に声がかけられる。

「おい」

 言葉自体は大したことのない、ごくごくありきたりなもの。
 寝そべっていたストロンガーは、声のした方に視線を流し――戦慄した。

「テメェ…………ッ!」

 立ち上がろうとするストロンガーだが、左膝が地面に付いたまま動かない。
 チャージアップの疲労が大きすぎるのだ。
 現状に、ストロンガーはただ拳を思いっきり握り締めるしか出来ない。
 ストロンガーの複眼の先にいるのは、倒したはずの――いや、ストロンガーが倒したと『思い込んでいた』ナタクであった。
 ナタクの右腕は、上腕の半ばから先がない。
 それを見て、ストロンガーは己の勘違いに気付く。
 戻ってきたストロンガーが見つけたのは、M.W.S.ではなく『M.W.S.ごと引きちぎられたナタクの右腕』だったのだ。
 ナタクの全身には、超電子の電撃によって生み出された火傷と裂傷。明らかにダメージは極大。
 しかし、それでもナタクは動いている。その事実に、ストロンガーが絶望する。

 ナタクがPDAを取り出し、左手で操作する。
 数度ボタンを弄くると、M.W.S.がナタクの前に出現。ナタクが左腕に装着する。
 一度PDAに戻してから、再転送させたのだ。
 続いて、ナタクが宝貝『哮天犬』を呼び出す。
 すると、どこからか哮天犬がナタクの元へ駆け寄ってくる。
 なるべく力を加えないように、哮天犬の口にはナタクの右腕が咥えられている。
 咥えられた右腕を確認すると、ナタクは地面に肩膝をつけたストロンガーを見下ろす。

(切り札を使って、まだ倒しきれないとはな。やれやれ、絶望的な状況だぜ……)

 胸中で自嘲気味に呟くストロンガー。
 もしも城茂の姿をとっていれば、いまストロンガーは苦笑いを浮かべているであろう。
 成す術もない状況への絶望で気が狂ったか? 違う。
 その笑みは……

(だがな、切り札ってのは、二枚あるもんだぜ……
 アレは捨て身の技。放てば俺の命はない。それでもな、命には賭け時ってもんがあんだよ。
 アイツのそれが『あの時』だったように、俺のそれは『今』だ。――後は任せたぜ、先輩、そしてT-800)
847Classical名無しさん:08/09/13 23:02 ID:jKJxPO9E
          
848Classical名無しさん:08/09/13 23:02 ID:PT1MDaSM
     
849Classical名無しさん:08/09/13 23:03 ID:HS15WOo2
     

 そう、ストロンガーの浮かべる笑みは、自棄になった者の笑みではない。後に望みを託す者の笑み。
 電気人間であるストロンガーが改造されたのは、電波人間タックルと同時期。
 だから――使える。命を捨ててタックルが放った、捨て身の必殺技『ウルトラサイクロン』をストロンガーは、放つことが可能。
 ストロンガーは、己にトドメを刺すべくナタクが接近するのを待つ。
 近づいたと同時に、ウルトラサイクロンを放つために。
 しかし、ストロンガーの瞳に映ったのは、意外すぎるヴィジョン。

「……日が暮れた頃、スクラップ工場に来い。そこで決着をつける」

 哮天犬に跨って、ストロンガーに言い放つナタク。
 そのまま飛び立とうとするナタクに、ストロンガーが声をかける

「待ちやがれ……! こっちは、テメェを放っとくワケにはいかねぇんだよ。
 夜まで待つことなんてねえ。いま、決着を……くッ」

 言葉の途中でよろめき、雪原に崩れ落ちてしまうストロンガー。
 跨っている哮天犬を地上五メートルほどの高さに静止させながら、ストロンガーの方を見ていたナタク。
 ストロンガーの疲労困憊ぶりを見届けて、ナタクが口を開く。

「その弱弱しさで、俺と戦うだと? ふざけるな。俺が殺すのは、全力のお前だ。
 せいぜいさっきの力をもう一度俺に見せれるくらいに、体力を回復させておけ」

 それだけ言うと、ナタクは哮天犬をさらに上昇させて飛び立ってしまった。
 雪の上で倒れるストロンガーは、小さくなっていくナタクを見ることしか出来なかった。
 ナタクの姿が完全にストロンガーの視界から消え去った矢先に、ストロンガーの変身が解除されて城茂の姿に戻る。
851Classical名無しさん:08/09/13 23:03 ID:1chg/Vu6
 

(殺し合いに乗ってるヤツも止められず、挙句の果てに見逃されて、その上また寝る気かよ……
 T-800の救出もまだじゃねえか……不甲斐ねえ。本当に情けねえな……)

 胸中で自分を罵るも、茂の双瞼は勝手に落ちてくる。
 視界が暗くなってくる中で、茂はナタクの言い残した言葉を思い出す。

(回復させておけ、か。ナメ、やがって……
 野郎、次に……出会、ったら……絶対、ェに、ブチのめ、す…………)

 そこまで思考すると、茂の視界は完全にブラックアウト。
 意思に反して休息を求める身体に逆らえぬまま、茂は意識を闇へと飛び立たせた。

 ――――もしかしたら、この時に意識を落としたのは、茂にとって幸運であったのかもしれない。



 俺を追い込んだあの男――探知機を見る限り、あちらが城茂か。
 ということは、死んだ方がT-800ということになるな。
 今となってはもはやどうでもいいが、死んだものも探知機に表示されるということは分かった。


 ――さて、城茂との再戦の前にやるべきとが二つ。
853Classical名無しさん:08/09/13 23:04 ID:HS15WOo2
         


 一つ目は、俺の身体の修理。
 全身の火傷や裂傷は、気にするに値しない。
 ただの仙人ならば戦闘不可能に陥るかもしれないが、俺は強い。
 問題は右腕。当然のことだ。
 M.W.S.は左腕でも使えるし、俺は腕が飛ぼうと足が飛ぼうと戦えるが、どうにも違和感が拭えない。
 何より、シグマに奪われた火尖槍や乾坤圏を回収しても、このままでは満足に使えない。
 なんとしても、くっつけなければならない。
 そして右腕のほかに――城茂の電撃によって受けた霊珠へのダメージ。
 銀色に変化した城茂の電撃は、俺の身体だけではなく霊珠にまで届いた。
 霊珠へのダメージは少ない――かつて胸を開いた状態で、アイツに握りつぶされたときよりは――が、霊珠の損傷は致命傷となり得る。
 霊珠を傷つけた経験は乏しい。
 だが、確かに四肢が吹っ飛んでも戦える俺にしては珍しく、霊珠にこれまでダメージを食らった時は『危険』というものを味わったように思う。
 すぐに哮天犬で城茂を遠ざけた為、ダメージは少ないが気に留めておくべきだろう。
 とは言っても、である。
 あの男がいない以上は、俺自身にはどうしようもない。
 物を治す力など、戦いには必要ない。そんな暇があれば、撃て。撃ち続ければ、相手は死ぬ。
 そう思っている俺が、修理する技術など持っているワケがない。
 と言っても、もしかしたら修理工場には、俺にも使える道具が置いてあるかもしれない。とりあえずは向かってみるか。


 そして、やるべきことの二つ目。
 それは、強い武器の入手。
855Classical名無しさん:08/09/13 23:05 ID:1chg/Vu6
  
856Classical名無しさん:08/09/13 23:05 ID:EoahB.CE
 
 M.W.S.は近接戦闘用の武器も搭載しているが、如何せん火力が弱い。弱すぎる。
 ビームランチャーの連射スピード、一発一発の威力。ともに、金碑に劣る。
 ボムを射出する速度、威力。ともに、乾坤圏に劣る。
 スペルブレードの切れ味、そしてリーチ。ともに、火尖槍に劣る。加えて火尖槍は、刺した物体を燃焼させることが出来る。
 電磁ロッドの出力。九竜神火罩IIが相手を捕獲する時に放つ電力に、遥かに劣る。
 さらに言えば、飛行用の風火輪、水を操る混天綾。どちらの効果も、M.W.S.は持ち合わせていない。
 もう一つの支給品である哮天犬で飛行は出来るし、M.W.S.の搭載武器よりも威力のある攻撃が出来る。
 だが、それでも乾坤圏や金碑と比べては、攻撃力が劣る。
 さらに、哮天犬を相手にぶつける間は、俺自身が飛行できない。

 ――このままでは、全力が出せない。

 城茂が見せた技を思い出す。
 空中に飛び上がって回転、その回転の速度を上乗せさせた飛び蹴り。
 いつも通りの宝貝があれば、迫る城茂に全力で攻撃を放つことが出来た。
 止められたかは分からないが、いい勝負となったはずだ。
 最後に勝つのは、俺だろうが。

 ――しかしあの時、城茂のキックに攻撃を放つことは出来なかった。

 城茂の飛び蹴りに、哮天犬を正面からぶつけることは出来た。
 だが、あの威力ではおそらく弾き返された。
 哮天犬でも火力が足らないのは、明らかだった。
 当然だ。あの蹴りは、金碑と乾坤圏の両方を全力で放って、やっと何とかなりそうな威力だった。
 哮天犬が弾き返されても、城茂のスピードはおそらく減速することはなかった。
 減速しなければ、城茂の飛び蹴りは俺の上半身を抉り取り、霊珠をも粉砕していったことだろう。
 だから、咄嗟に俺は『俺自身』に哮天犬を体当たりさせた。
 不本意ながら、体当たりの勢いで回避するしかなかったのだ。
 完全に避けきるはずだったが、城茂の加速は凄まじく右腕を奪われた。
 奴は、城茂は強い。戦いたい。倒したい。
 でも、今の武装では、俺は全力を出し切れない。
858Classical名無しさん:08/09/13 23:06 ID:MUt2PKp.
 
860Classical名無しさん:08/09/13 23:06 ID:HS15WOo2
     
861Classical名無しさん:08/09/13 23:07 ID:EoahB.CE
 
862Classical名無しさん:08/09/13 23:11 ID:jKJxPO9E
うめ
863Classical名無しさん:08/09/13 23:48 ID:pSeLIWn.
うめます
864Classical名無しさん:08/09/14 00:04 ID:V.kLyBro
うめよふやせよちにみちよ
865Classical名無しさん
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