「ちはやふる」末次由紀避難所Part.191

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16Classical名無しさん
その晩、新は寝付けなかった。
あのあと日課のトレーニングである素振りを夜の分もこなした。
いつもなら入浴と夕飯を済ませると、床に就く頃にはほどよい眠気が訪れる。
しかし今日は頭から布団をかぶって枕に顔を突っ伏していた。
からかわれたのがよほど悔しかったのか。いや、そうではなかった。

そろりと耳を這う指の感触に上がっていく体温、耳孔に息を吹きかけられてゾクリと粟立つ皮膚。
そして、自分のではない手が、一番敏感な部分を掴んで擦る刺激―――村尾に触れられた部位が熱い。

夜になってもその感覚を思い出し、もやもやとしている。
最中、感じ良すぎ、と言われた気がする。
今の状態があまりに村尾の言葉通りで、新は今日何度目か分からないため息をついた。

…そりゃ経験ないし、あんなん慣れてえんし…いや慣れんでもええけど…。
ていうか突然あんなんされたら誰でもびっくりして声くらい上げるが。

……たぶん。
新は言い訳を脳内に巡らせつつ顔の向きを変えたりして、もぞもぞと落ち着かない様子で眠くなるのを待っている。
姿勢を変えるたび、うつ伏せになっている体の中心が布でこすれた。
すでに熱を帯びていたそこにますます血液が集まる感覚がする。

はあ…。
新はまたため息を付いた。こんなことで高ぶらせてしまう自分が半ば情けない。
しかしこのまま無視して寝ても夢精してしまったら嫌だなと思い、はあ、とまたひとつため息の数を増やすと、一連の処理をした。
洗面所に下りて手を洗い、ついでに顔も洗い、パン!と両頬を叩く。
そして自室へ戻り再び床に就くと、少しはもやが晴れたのか、すぐに寝息を立て始めた。