「ちはやふる」末次由紀避難所Part.191

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13Classical名無しさん
「冗談や」

村尾が新の下半身に触れていた手を離してそう言うと、新の驚愕の声はピタリと止んだ。
何が起こったのか理解しようと村尾を見やると、村尾の口元はからかうように端がつり上がっていた。

「悪かったな、ふざけてもた」
「え…」
「ほんなぁ反応するから、ついな」
「なっ…」
「触り返すくらいして反抗すればええのに、おっ前、うぶやのぉ」
「うぅ……」

新は羞恥で赤面した。
新は一人っ子であり、友人と悪ふざけするタイプではなかったから、こういう冗談には慣れていない。
だからと言って、村尾のからかいに容易く翻弄され、変な声まであげてしまうなんて…。
そう思うとますます恥ずかしくなった。

「こ、高校生からかうとか、大人気ないですよ…」
赤い顔を精いっぱいムッとさせて言う新だったが、村尾には「ははっ、ほやの」と軽く去なされた。
「まあ、悪かったな。今度の練習日になんかおごるから」

からかった村尾には腹が立つが、同時に子供扱いされている自分も気にくわない。

「別に…いらないですよ。ほんなら明日も自主練つきあってくれる方がええ」
「分かった分かった。じゃあ明日も来るでの」

拗ねた子供をなだめるように言うと、村尾は新の部屋を出て階段を下り、「またな」といつもと同じ様にして玄関を出た。
習慣で玄関先まで見送った新だったが、からかわれた悔しさなのか、何だかむず痒い思いがした。