ある意味、再び傷口をえぐられたような感覚を味わいながら銀時はゆっくり返答した。
「……ああ。まぁ、ありえねぇぐれーぼろぼろだったけどな。キセルふかしてガンつけて、俺らより先に逃げてったよ」
結局、この男がいつまでもあの野郎を気にしているらしいことが腹立たしい。高杉のことが、そして何よりあれほど苦しめられてなお野郎のことを気にかけている桂自身が。
なんだかまた、薄暗いどろどろとした感情が胸の中で膨れはじめたような気がする。
「生きてて欲しかったのか?」
銀時が憎々しげに吐き出したその言葉に、桂が笑った。
え、笑っ……?
「ならば、いい……」
怒気をはらんだ声音で、彼はもう感情を隠さなかった。
「今度相対するときは、俺がこの手で必ず葬ってやる……その時は、手を出すなよ銀時」
あれ? こいつもしかして怒ってる?
どう好意的に見てもそうとしか思えない顔つきだった。
「そもそもあの館で最初に人斬りなぞと会わずあやつに会えていれば……捕まる前にぶった斬ってやれたものを」
「……ははは」
銀時は思わず肩の力を抜きながら笑った。桂にはあいつに対する執着心はあっても、考えていた方向とベクトルが違うらしい。
ややおいてから、銀時は鼻で笑った。
「馬鹿言うな、俺がたたっ斬っといてやるから譲っとけよ。大体オメーよぉ、あの野郎にまともに勝ったこともねーんじゃねーか?」
「稽古の時は防具が邪魔でやりにくかっただけだ。実践では負けんぞ」
「いや、どうかねぇ。あいつ、ちっとも腕さびついてなかったよ。もっかいやったら、またとっ捕まるんじゃねーの?」
「……次は、もうない」
「あん?」
「俺たちにはもうどちらが斬り伏せるか、それしかなかろう。会えば必ず敵対し、斬り合うことになる。そんなことはわかりきっている。……いや、喧嘩を売った春雨に捕まることはあるかもしれんな。いずれにせよ、次は決着をつける時だろうと俺は思う」
覚悟のようなものを感じさせる声音だった。庭を見つめる視線も、まっすぐ前だけを見ている。そのくせどこかはかなく危ういような、矛盾した感覚を覚えさせられた。