1 :
Classical名無しさん:
2 :
Classical名無しさん:08/07/26 21:43 ID:Exa2TECs
参加者名簿一覧 【計46名】
○…生存 ●…死亡
男子 女子
○1:麻生 広義 ○1:一条 かれん
○2:石山 広明 ○2:稲葉 美樹
○3:今鳥 恭介 ○3:大塚 舞
○4:梅津 茂雄 ○4:音篠 冴子
○5:岡 樺樹 ○5:城戸 円
○6:烏丸 大路 ○6:鬼怒川 綾乃
○7:斉藤 末男 ○7:嵯峨野 恵
○8:菅 柳平 ○8:サラ・アディエマス
○9:田中 一也 ○9:沢近 愛理
○10:天王寺 昇 ○10:周防 美琴
○11:東郷 雅一 ○11:高野 晶
○12:奈良 健太郎 ○12:種田 芽衣子
○13:西本 願司 ○13:俵屋 さつき
○14:野呂木 光晴 ○14:塚本 天満
○15:花井 春樹 ○15:塚本 八雲
○16:ハリー・マッケンジー ○16:東郷 榛名
○17:播磨 拳児 ○17:砺波 順子
○18:冬木 武一 ○18:永山 朱鷺
○19:坊乃岬 大和 ○19:塀内 羽根子
○20:三沢 伸 ○20:三原 梢
○21:飯合 祐次 ○21:結城 つむぎ
○22:吉田山 次郎 ○22:雪野 美奈
.○23:寄留野 香織
.○24:ララ・ゴンザレス
【以上22名】 【以上24名】
>>1 サンクス
とりあえず言いだした人間としていくつか話題を
・参加時期について
→歩行祭開始前か天満渡米後か。廃人五秒前の烏丸がネック
・参加者
→2-C+1-D5人娘+2-Dの3人で決定?教師や留学生は?
モブの名前は1stのを使いまわせばいいかも
・主催者
→1stでは物語後半でも決まらなくて足かせになった感じがするので
決めておきたいところ。ショーンが有力?
マックスは使える
5 :
Classical名無しさん:08/07/26 22:05 ID:Exa2TECs
天満と烏丸が渡米しちゃったら、二人がロワに参加できなくなっちゃうからな。
歩行祭前が丁度いいんじゃない?
黒幕はショーンが一番いいかと。
マックス達、留学生軍団は中村同様、お助けキャラでいいんじゃないか?
他にもいくつか
地図
→1stと違うものを用意したいけれど難しいので同じものになりそう
まとめサイト
→ある程度実現性が出てきたら作成する予定。したらばも。
書き手、読み手等のルール
→ほぼ1stのを準拠?
アメリカに行ったはずの天満と烏丸も連れて来られて、でもいいと思ってる
もしくは烏丸渡米〜廃人化の前とか。主催側の強権を示す一例としていいサンプルになるのではないかと。
あとある程度超常現象の制限をゆるくしてもいいかと個人的に考え中
○烏丸の意識が何故か復活しているor廃人にならない
○非常事態に伊織の入れ替わりが発動する
○天満がスプーン曲げ程度の念力を発動する
○極めて強い気持ちなら八雲の読心が発動する
×死んでも愛の力で生き返る
×伊織が手軽に簡単に入れ替わりする
×播磨がどんな小動物とも意思疎通をする
×八雲が大半の男子の読心をする
×いきなり幽子が介入してきて全てを破壊していく
こんな感じ
乙〜
俺も黒幕はショーンに一票
1stで出た問題点なんかを覚えている人がいたら書いて欲しいな
8 :
Classical名無しさん:08/07/26 22:32 ID:Exa2TECs
アソミコに異様に粘着する書き手がいて、問題になったな。
1stの問題
・黒幕とその目的
これがはっきりしないのが書き手の負担になっていたと思う
原作でショーンが悪役でなおかつ沢近でも対抗が難しいと判明してるから丁度よさげ
目的(裏の目的があるとしても表向きの目的)がはっきりしてるとなおよい
・リレー
特定のカップルにのみ執着して進めていくのは後々問題になる
特定のキャラ達のみ書くのはやめましょうというルールを追加したい
・ズガン
1stの日本刀チームのように後半であっさり死なれるとかなり荒れる
ルールで縛るのもどうかと思うしこれはどうにもならないかも
・対主催
ただの学生なんだし当たり前だが対主催に強烈なハンデがある
超能力解禁や支給品増やしたりでカバーしてやりたい
別に必ずしも対主催じゃないといけないわけじゃないけど
・黒幕とその目的
確かに書き手さんが困ってた
早めに設定固めた方が吉
・リレー
個人的にこれは職人の自主性にまかせたいってのが願望
自己リレーは禁止されてるし、書き手の障害にもなりえる
基準をどうするかも難しいと思う
・ズガン
これに関しては読み手の目が厳し過ぎたかなと思う
岡なんかはあそこまで残ってたというだけで見せ場あったんじゃないかと思わなくもない
一番荒れたのは播磨、荒れる要素があったけど花井の死は麻生関連のゴタゴタでうまく流されたな
・対主催
難易度上げ過ぎたな
対主催の人間が次々死んでいったのが大きい
書き手同士の情報交換、話し合いはどうする?
前回はそれに否定的な書き手さんが多かったね
リレーの醍醐味を取るか、作品としての作りやすさを取るか
・黒幕
ほぼショーンで決定、けど目的が微妙。
嫌がらせとか沢近に断られたからとかだと小物っぽい。
後付で裏の目的をつけてもよし、ないならないで許可ってことにする?
・時期
個人的には歩行祭後を推したい。烏丸と天満はさらってきたことにする。
動かしにくいといわれていた烏丸が自分から動くのも期待できる。
石山とかおり、花井と高野、花井と周防、周防と麻生、麻生とサラ、
播磨と天満、播磨と八雲、播磨と沢近あたりの人間関係に影響を与える要素もある
・参加者
2-C+1-D+2-Dは決定として、個人的には谷・郡山・加藤・女教師三人も参加側にしたい。
大人の力が必要なこともあるんでないだろうか。留学生はマックス一人でいいと思う
・超能力
ある程度解禁したい。幸いいきなり人を殺傷するような能力はない
播磨と八雲の便利すぎる能力をやや制限、くらいでいいと思う
・リレー、ズガン、対主催
職人の自主性に頼る面が大きいけれどルールや設定で補助したい。
自己リレー、同じキャラを続けて書く等はできるだけ避けてください。
くらいの一文を追加するのはどうだろう
このあたりの設定って鳥つけて勝手に進めて行ったほうがいいかな
急ぎすぎか?
あとSS書ける人、書いてみたい人ってどれだけいるんだろう。挙手ノシ
時間さえ取れれば書きたい
個人的な息抜き程度にしか参加できんと思うけど…
>>1乙〜
やるかやらんかはともかく、こういう祭りの前準備みたいな話は好きなんで書き込み〜
・黒幕
悪役キャラがショーンぐらいしかいない。
黒幕にしてもいいし、中ボスみたいな扱いにしてラスボスは実は
○○だったみたいな展開でもいいかも。
・時期
どっちかというと歩行祭直前派。または歩行祭会場でロワ開始。
歩行祭当日なら留学生以外は、全員あの場にいたと思う、
・参加者
歩行祭参加者+その他(留学生など)
教師陣やマックス達3人は黒幕側のほうがいいかな。
ただ前回よりも裏切りフラグを立てやすくしとけば、後で味方にしやすいし便利かと。
・超能力、リレー、ズガン、対主催
この辺は職人しだいかな。制限したっていいし、しなくたっていいと思う。
あまり便利に使いすぎれば、他の書き手から制限やリスクを加えられると思うし。
・その他
こういう企画だと二番煎じやマンネリ化を防ぐために、
特別ルールを設けたりするけど、できれば何かほしいなあ。
歩行祭夜に寝泊りするとき留学生らもいたし、歩行祭当日なら・・
あのシーンにいたキャラを丸々さらってくればいいんじゃないだろうか
舞ちゃんが説明してた歩行祭マップがあったけどあれを会場にって無理かな?無理だよね
地図作る技術はないし島じゃなくなるし人はドコ行っただし
・・でも矢神が舞台だったら特別ルール、というか特色になるなあとふと思った
単一作品ロワってことで特色はあるんだけどね
>>11 ノシ
一応1stでも書いてた。
そういや、黒幕候補として理事長Jr.も使えないかな?
微妙に1stと似通ってしまうか……
・黒幕とその目的
とりあえずショーンでいいと思う。
・リレー
自己リレー禁止、だけで充分かと。
1stの時より人口は減っている気がするので、あまり制限を加えると
話が完全に停滞する危険性がある。
・超能力
作中で明確に描写されている分には問題ないと思う。
具体的にはこんな感じ。
・八雲は、花井と天満の心なら完全に読めるけどそれ以外は無理。
・播磨はナポレオンやアレクサンダーとかに限定。
・伊織の入れ替わりは作中で入れ替わった経験のあるキャラのみ。
・対主催
どちらかと言えば学生? な面子が多いスクランだから、そうハンデがあるとも思えない。
前回のも、ハリーか晶が対主催だったら? 東郷がもうすこし長生きしていたら?
って感じだったし。
烏丸は歩行祭後の方が感情的に動きそう
天満は渡米前後で覚悟というか意志の強さに差がありそう
確かに開催時期で変わるキャラは多いか
ちょっとまとめ
ほぼ決まり
・黒幕はショーンと理事長Jr
・自己リレーは期間をおいて(1stと同じ)
・ズガン、対主催は職人に任せる
・超能力は作中準拠
参加時期がちょっと割れてるね、歩行祭後か前か
あと教師達は今回も主催側って意見が多いからそれも決定
留学生はどうだろう、前回と同じ流れにならないよう参加側で入れたい
マックスは強キャラだしジョーカーでもいい
ショーンについて知ってる人物も欲しいから留学生に期待したい
留学生軍団も入れたら、49人か。
ちょっと多過ぎるような気がせんでもないが・・・。
思い切って原作でキャラ固まってないモブを削るのも手かな
その場合、整合性と誰を削るかが問題になるけど
トトカルチョで誰も賭けた人間がいなかったみたいな理由つけて最初に主催側にズガンしてもらうやり方もある
とりあえず前作のキャラクターの行動に囚われないようにしたいね
決定といってもまだ暫定扱いの方がいいんじゃないか?
まだまだ人を集めてる段階だし、早すぎるってw
>>14 > ・・でも矢神が舞台だったら特別ルール、というか特色になるなあとふと思った
矢神が舞台ってのは、俺も考えたんだけど。
かなりのファンタジー設定が必要になってくるんだよなあ。
別のとこにそっくりな街を作って、4方の柱で囲ってごっそり入れ替えるとかw
小説で八雲が似たようなことやってたよな
2-Cら丸ごと別世界に移動させてた
え?あれって八雲がやったの?
幽子が「八雲が決めないとだめだよ、だってこの世界は・・・」
みたいなこと言ってたな
坊主はともかくおかっぱ、メッシュ、のっぽは誰?って人も多いだろうし
ミック・サミュエル・マックスと入れ替えしようか
それで男子22人女子24人、誰かが見せしめになって実質45人
動物達は支給品で出したい人が出せばいいんでないの
>>26 いやいやいや。
その3人を抜かれるのはちょっと困る。
ズガン要員も必要だろ。
石山や三沢あたりでもいいんじゃね?>ズガン
前回は天王寺ですらズガンみたいなもんだったし
まあ49人でもいいんじゃないかとは思う
どうせ見せしめやズガンで45人くらいになるだろうし
マーダーがちょっと不安だな
ハリーと高野が大暴れっていうのは前回とかぶるから避けられる傾向にありそう
天王寺・烏丸(病気発症後)あたりはマーダーとして期待できそう。
あと、ウィリーが前回のハリー並に活躍しそうな予感。
>>28 天王寺は元から殆ど出ていない存在だったからな。
ズガン要員にされてもしょうがない。
>>29 > マーダーがちょっと不安だな
> ハリーと高野が大暴れっていうのは前回とかぶるから避けられる傾向にありそう
それはあるなあ。
マーダー化するきっかけor考え方みたいなのは前回で大体やったし、ネタがかぶりそうな気がする。
円悪女説、黒つむぎなんかも前回やっちゃったからな。今回やっても「またか」と言われそう。
かといってセイカクハンテンダケみたいな面白アイテムに頼っても仕方ないしなあ。
でもぶっちゃけ、ネタが前作と被るのは仕方無いでしょ。
ネタ被りは禁止という規則がある訳でもなし。
つーか、前作でマーダー化しなかったキャラでマーダーになれそうな奴ってあんまりいねぇし。
今度こそ奈良がマーダーになれる
高野は今回は対主催に回って欲しいな
最近の話でわりと友情に厚いけど無力なキャラって感じになってきたし。
まあ似たような役割になっても違う組み合わせにすることはできる
ハリーが麻生や花井と戦ったり天満が後半まで生き延びたり色々なかったストーリーが生まれてくるでしょ
マックスや烏丸がマーダーになってくれるかもしれない
後何か考えておかないといけないことってあるかな
あるいみ前作のマーダーはベタというか理想的だったな
反主催のキーパーソンはやっぱり高野や東郷、沢近(家)だろうな
マーダーは播磨も面白い
予約期間は三日、延長一日でいいのかね
放送も六時間毎
支給品は1つだけ?1〜3ランダムでもいいと思うんだが
1stのときスタート地点が学校なのに移動しすぎってつっこみがあったから
某ロワのように一度眠らされて再度バラけてからスタートがいいと思う
予約期間は必要と思った人が提案すればいいんじゃない?
書き手同士の相談も必要と思われてきたら提案で。
放送は六時間毎で問題ないと思う。昼開始になるんかな
支給品はまあ複数合ってもいいと思う。予備マガジンだって必要だろうし
結局参戦時期はいつにするの?それが決まればはじめることができるんじゃない?
書き手候補の人達がやりやすいのがいいと思うけど意見聞きたいな
■歩行祭直前・当日派
参加キャラを不自然な理由なく参加させることができる
■歩行祭後派
烏丸や天満が動かしやすい・意思が強い
キャラの関係に強い影響がある
始まったら絵書くぜ
ああそうか
絵と言えば、歩行祭前夜や当日だと服装が体操服かジャージになってしまうな
やっぱり制服の方がカッコイイよね?
むしろそっちのほうがよくない?
島を歩くんだし歩行祭当日の格好のほうが適してる
ジャージに俺も賛成
教師はどうする?
前作に囚われないようにするんなら
参加させないほうがいいか
主催側だと前回と同じになっちゃうんだよね
・登場させない
・参加者側で登場させる
・主催側で登場させる
スクランのロワだし、谷サと女教師三人には今回は参加側になって欲しいかな
生徒以外になったり50人越えで多めになってしまうけど
前回でいうナカムラポジに入るのもアリかもしれん。特に絃子。
・参加時期
歩行祭前日、又は当日が有力?服装については制服を支給すればいいと思う
・参加者
ミック、サミュエル、マックスら込みで49名。
教師の扱いをどうするか
あと決めるのはこの二点くらいか。週末くらいからはじめられるといいな
書き手が二人くらいしかいないようだが大丈夫か・・・?
>>48 そんなに早く始めたいなら他力本願じゃなくてプロローグくらい自分で書けば?
そもそも
>>1は書けるのか
人に書かせる気で立てたカスじゃあるまいな
書き手が集まるのをもう少し待った方がいいな。
とりあえず参加時期と参加者についての意見は出尽くしたのかね
・黒幕
「本当の黒幕はショーンでもイギリス貴族でもない…300人委員会だったんだよ!」
「な、なんだってー!?」
そんなMMR展開
書き手以前にまとめは誰がやるんだい?
おお乙
人集まるといいねー
1stのサイトからリンクしてもらうように頼んでみたらいくらかここの存在を知る人が増えるんじゃない?
1stの書き手・読み手をある程度取り込めれば序盤が楽になるかも
もう愛想つかせた人が結構いると予想
>>59 原作者に愛想をつかしたからこそ、俺達ファンが本当の最終回を作るという考えもあるぜ。
61 :
56:08/07/29 23:00 ID:pGzDwLyA
このまま企画倒れなのは避けたいので進行役をやろうと思います
こういった事は初めてで見苦しい点等あると思いますが皆様よろしくお願いします。
・・さてどうしましょう
人が集まるまで待つのもいいと思うのですが、
このスレができた時に週刊少年漫画板やIFスレで呼びかけがありました。
なのでこれ以上待っていても人が来るより去っていく人の方が多いのではないかと不安です。
現状のまま進めていったほうがいいのではないかと考えています。
前回のスクロワでは、ある程度話題が出尽くす→当時の1さんがプロローグ投下→投下開始→まとめサイト作成
という流れだったので、週末くらいにプロローグを書いてみようかと思います。
となると参加者や作中時期等の意見が割れている部分は暫定ですが私が判断して決めてしまうことになります。
(もちろん後で修正すればいいのですが)
この二点についてはできれば今のうちに意見が出尽くして欲しいなと思っています。
・・・自分が急ぎすぎなのでしょうか?何か問題等ありましたらお願いします。
確かに、IFスレで反応は無いし、本スレでも人は離れていくばかり、
という現状で、少しでも話を展開・加速したいという気持ちはわかる。
…んだが、スレの現状から推測するに書き込んでいる人間は20人
に満たず、その中でリレーに参加できる人間となると5人いれば奇跡
といってもいいと思う。
ここは、宝くじでも買ってみる気持ちで、マガスペで始まるらしい続編が
出るまで待ってみては?上手くいけば少しはスレ住人を増やせるかも。
ま、ハイリスク・ローリターンなのは認めるけどなw
63 :
Classical名無しさん:08/07/30 00:31 ID:0o31BSk6
本編がアレだったしなおまだ書こうって人は少ないんでないの
まとめががんばってるのに
人が集まらないとは・・・
本当にみんな嫌だったんだな最終回
スクランはすでに1stやったし、あれじゃわざわざ労力かけて2ndやる気力も失せたよ。
マジで最悪だったからな
もうキャラに魅力が無いから動かす気もない
67 :
Classical名無しさん:08/07/30 21:36 ID:ddDz203o
ロワで俺の好きな○○にしてやろうとするとか
いや別にロワでなくてもいいんだけどねw
今のところ名乗り挙げている書き手さんが
>>61に賛成なら
その流れでもいいんじゃない?
自分は
>>54みたいな馬鹿なことしか書き込めない賑やかし要員です。うまく進むといいね
69 :
Classical名無しさん:08/07/31 00:37 ID:b.inTCJo
過疎スレでそれはただのひやかしに見えるw
元々三割ぐらいは大して書きたいと思えるキャラでもないのに、
追い討ちでメインキャラ書く気もなくなったもんなぁ。
マーダーキャラは前回と被る事になるから、いっそサバゲーにしてみたら
原作の終わり方に不満が強いからこそ、
ファンが本当の最終回を作るという考えもあるのにな。
本当に皆スクランを嫌いになってしまったのか・・・?
>>72 ここで言う台詞かよ
ロワそのものは嫌いじゃないが、さすがにキャラ同士でヌッコロしあって「本当の最終回」はないわ
ロワはあくまでロワだろ
>>72 じゃあてめえが作れや
面白けりゃ読んでやるよ
75 :
Classical名無しさん:08/07/31 20:58 ID:BGuyJn2o
さすがにロワでラブコメの本当の最終回はないだろw
でもまあ天満と播磨をガチ告白させてみるとか
本編でできなかった状況が作れる
>>75 そんなことされると荒れそうだな
主に旗とおにぎりで。
ただイマイチは見たい。
塚本姉妹の両親不在の解明もお願いします
それは天満か八雲に語らせりゃいいから楽だな
近況報告でも
プロローグを少しずつ書いてます。日曜の夜くらいには投下できると思います
さすがにロワがスクランの本当の最終回だというつもりはないですが、
書き手と読み手、皆で楽しくできたらなという気持ちで進めていきたいと思ってます
80 :
Classical名無しさん:08/08/01 03:02 ID:3GsSfDic
俺もイマイチ見たい
つーかもうイマイチだけでいいよ
「播磨よぉ…最初に言っとくけどよ」
「あ?」
「俺は…いざって時は、イチさんしか守らねえからな」
「…わかった」
みたいな
何その死亡フラグw
イマイチは1stでもあったし次はどうかなあ
天満の「茫然自失状態だと(家事を)完璧にこなす」とか、
時々異常な身体能力発揮とかロワに生かせませんかね
とりあえず、1stの思い出話でもしようか。
イマイチのドジビロンアタックの話は良かった。
播磨と花井の直接対決もしくは共闘が見たかった
対主催同士の合流は潰されやすいから
実現してたら更なるズガンを呼んでた気がする
優勝したらなんか褒美とか出したほうが面白いんじゃね?
前回はただ帰れるだけだったから優勝狙う奴が出にくかったような
褒美とかじゃなくて、全員顔見知りだとか仲良しクラスだからとか
その辺が原因なんでないかね
仲良しのクラスメイトをブッ殺せるほどの褒美じゃないとな
クリムゾンの迷宮って小説では食事に興奮剤が混ぜてあって一部の人間が凶暴化してたな
金とか地位とか、そんなもんで殺し合いに乗るやつらじゃないから難しいな
1stだって最初から殺しにアクセル全開だった訳じゃないよ
少しずつ死人が増えて、生存者の精神が危うくなった所で天満や周防のようなキーマンが死んで一気に追い込まれてたし
ちょっと気になるんだが
今このスレにはやるやらないは関係無しで
書ける奴がどのくらいいるんだろうな?
95 :
56:08/08/03 16:12 ID:4kYIhvfY
プロローグができたので投下しようと思います
進行の役に立てれば幸いです
96 :
プロローグ:08/08/03 16:13 ID:4kYIhvfY
「あー疲れたぁ。こんなに歩いたのいつ以来だろ」
続々と生徒らが体育館に集まってくる。額には汗が浮かんでいて声からは疲労が伺えた。
一人の少女が提案した学年最後の企画、『歩行祭』。
クラスを超えて学校行事にまで発展したお祭りの一日目が終了したのである。
「男女雑魚寝か〜」
「まあウチの男子に限っては何も起こる気しないけど」
「冬木君撮影の準備ダス」
「女子諸君ー!健全な青少年達と朝まで語ら合おうじゃねーの」
「アンタとはイヤ」
一部にはまだ気分が高揚している男子もいるようで、館内で何やら叫んでいる。
疲労はしたもののそれに見合う充分な見返りがあったのか、並べられた布団の上で各々でグループを作り
皆が思い出を存分に語り合っていた。
「で、結局一日頑張って成果なしか」
「こうなったら夜に賭けるしかねえ!」
「全然進歩してないわねウチの男子」
もうこのクラスでいられる時間は長くない。思えば一年間様々なことがあった。
辛いことも楽しいことも過去の話、よき思い出となって話は進む。
「あれ?私達もここで寝るの?」
「いーじゃん布団余ってるし、八雲も一人じゃさみしいだろうし」
「下手につっつくのも何だけどね。でも制服で寝るとシワになっちゃうかな」
スタッフとして参加していた一年生が余った布団を並べていく。
裏方に徹しているはずだった彼女らも諸事情により(手錠で捕まる、遭難する等)共に寝泊りすることになっていた。
97 :
プロローグ:08/08/03 16:14 ID:4kYIhvfY
「ホウ、なかなかの体躯をしているナ。良きファイターだ」
「うるせー馴れ馴れしく肩に手を乗せんな」
「フーやれやれ二人とも、荒ぶる魂を解放したくてたまらないようだな」
突然参加の留学生達と彼らを率いる東郷も相変わらずずれた会話をしている。
学校でも一、二位を争う巨漢である天王寺とサミュエルは意気投合したのか肩を組み笑いあう。
各々が楽しげな表情を浮かべていた。疲労はあっても瞳はまんざらでもなさそうに輝いていて、皆が充実した時を迎えている。
多少のトラブルはあったものの歩行祭は概ね順調だとこの時までは誰もがそう信じていた。
「あー皆お疲れ様。明日は朝早いんだ、夜食のおにぎりを食べたらすぐ寝るように」
2−C担任であり歩行祭の責任者でもある谷速人が大きな荷物を抱えて登場する。
夜食という単語に反応し、わっと生徒らが集まって頬張り始めた。
谷は食料を運んできた疲れを吐き出すべくため息をつく。
ちなみに他にも引率・責任者の教官はいる。本来ならば一緒に生徒らの面倒を見なければならないはずなのだが
彼女らの助力を谷は既に諦めていた。見れば体育館の隅に天幕が張ってあって三人分の寝息が聞こえてくる。
「ちゃんと食べておくんだぞー皆に分けろよーお茶もあるからなー」
「はーい谷先生ありがとー!」
「不思議な香り。ぽかぽかして身体が温まるね」
「おにぎりは誰が用意したの?」
「はーい私達がお昼の間に準備しておきました!」
「アンタは遭難してたじゃん……」
(……)
幸せそうな教え子達の様子を目に焼き付けて体育館を後にした。
あたりに誰もいないことを確認し、懐から携帯電話を取り出してボタンを押す。
「……私です。全て言われたとおりに……はい」
どこか達観した表情で、谷はそう呟いた。
98 :
プロローグ:08/08/03 16:17 ID:4kYIhvfY
ある一角では本日起こったアクシデントの対応に追われていた。
塚本八雲と播磨拳児がさる事情により手錠で繋がれてしまったのである。
特に興奮気味の花井春樹はガチャガチャと鎖を鳴らすが憎き手錠を外すことはできない。
どうしたものかとつながれた二人はため息をついた。
配られてきた食料を口に含みつつ、周囲の人間も思い思いのことを口に出す。
「このままじゃ一緒に寝るしかないですね」
「許さん許さーん」
「でもアンタも嬉しかったりするワケ?」
「おめーより100倍マシだがよ」
「八雲、お姉ちゃんがお猿さんから守ってあげるから安心して!」
「え、えっとだから姉さんそれは違……」
知人らの議論から顔を背けて、塚本八雲はふと館内を見回す。
その中には昼間は姿を見かけなかったはずの烏丸大路の姿もあった。
「……あの人は」
昼間少しだけ見かけた彼。誰とも話すことなく一人隅の布団の前に座りおにぎりを食べていた。
だが誰も気付いた様子がない。姉の天満は彼を待ちわびていたようだが気付いているのだろうか?
「許しません!私が間に入って寝ます。さー八雲寝るよ」
「超眠ぃ。今にも倒れそうだぜこりゃ。ってことで寝るとしようぜ妹さん」
そこまで考えたところで腕を強く引かれる。そのまま布団に転がり込むことになった。
「えっあっ……姉さん乗られると重い。あと髪を結んだまま寝るのは。それに私は制服……」
それ以降八雲は烏丸のことを考える余裕がなくなってしまった。二人に翻弄されたのもあるが、
突然まぶたが重くなり考える力が失せていったためである。いつもの発作とは何か違う気がした。
99 :
プロローグ:08/08/03 16:17 ID:4kYIhvfY
――ガラガラと体育館の扉が乱暴に開かれる。すると薄闇の中大勢の人間が現れた。土足禁止のはずの体育館に躊躇なく入り込んでくる。
だが生徒達は誰一人その異常に気付かず眠り続けていた。その様子を確認すると侵入者の一人が命令する。
「運べ」
それを合図にして彼らは一斉に動き出し、寝入った生徒達に近づいていった。一人一人を抱えて外に運び出す。
いつの間にか体育館の外には大型のバスが数台並べられていた。
「どうした?何かあったのか?」
ある二人を運ぼうとしていた人物が事情を説明した。二人はひっついているわけではないが、一定以上の距離を離れない。
二つの人間の影は一本の線で結ばれていた。ガチャガチャと重く鈍い音が状況を把握させる。
先程命令を下した人物が懐から何かを取り出し握りしめた。月は半分だったがよく晴れていて、光が差し込む。
それは月の光を受けて濡れたように黒く光っていた。
――!
テレビや映画の中でしかなじみのない鈍い音が夜の体育館に響く。決して無視できる大きさの音ではないはずだった。
それでも生徒達は全く目覚めない。――キン、コロロロ……小さな金属の破片か塊が転がった。やはり生徒達は変わらず寝息を立てている。
繋がれていた二人、播磨拳児と塚本八雲が何事もなかったかのように離れていく。
「運べ」
男は再度命令した。
「ねえ、ここはどこ?」
「体育館は!?」
「眠ってから何があったか覚えてる?誰か知らない?ねえ!」
「一体これはどういうことだよ!」
「……ほえ?」
周囲の声が妙に騒がしい。まぶたの向こう側は暗いのでまだ夜のはずでは。ああでも今日は違うんだ……
そこまで思い立って塚本天満は重い頭をあげる。まず目の前には心配そうにこちらを見ている友人、沢近愛理がいた。
「あれ?愛理ちゃんおはよー。何でこんなに騒がしいの」
「……天満、いいからおとなしくしてなさい」
思わず立ち上がり大声をだしそうになるが沢近に止められる。その表情は真剣だった。
(?あれ?)
ふと違和感を感じて首を傾ける。斜めになった視界に映る沢近の首元に、きらりと光るリングがあった。
「愛理ちゃんその首につけてるの何?新しいチョーカー?でも苦しくない?」
「あんたにも首輪がついてるけど知らないわ。いつの間にかついてたの。ついでに言うとこんなの私の趣味じゃない」
そっと指先で首元をなぞるとヒヤリとする感触がした。
「私と美琴にもついてる。触らないほうがいいかと思う」
「うわっオメー高野いつの間に」
近くで寝ていた友人、高野と周防も目を覚まし会話に加わる。少し会話をするがいまいち進展は見られない。
やがて一人、また一人と目覚めていく。だがその反応はほぼ同じだった。
天満は戸惑いながらもとりあえずポケットから髪止めを取り出して手早く髪をセットした。
そしてまだ意識がはっきりしない頭を回して周囲を見渡す。
「あれ、ここ体育館じゃないよね?」
明らかに自分達が寝ていたはずの体育館とは異なっていた。広さは同じくらいであったが――空気が違う。
壁や天井は薄暗くて長い間耐えてきたのかあちこちが欠け落ち磨り減っている。
バスケットのゴールやバレーのラインも見当たらず体育館というより倉庫のように感じられた。
周囲には見知った顔が多くいたが、目に入る誰もが不安な表情を見せている。
何かがおかしいと天満の心にも灰色の雲が広がっていく。たまらず視界を広げて出口を求めさまよい、気付く。
周囲には映画によく出てくるアルファベットを並べた名前の特殊部隊――のような格好をしている大人達がいた。
ならば手にしているアレは確実に人を殺傷できる道具、なのだろうか。
「……ね、あの人達は誰?」
「さあ。とにかく私達に動くなってさ」
「――!あ、あれ見て。谷先生が特殊部隊の人達と一緒にいる」
「反対側には郡山先生と加藤先生もいるわよ」
大発見のつもりだったがどうやら自分が遅かっただけらしい。昨日の新聞を読んで大騒ぎしたような恥ずかしさを覚えた。
気を取り直して他の事、例えば妹の八雲はどこだと考えようとしたところで声が届く。
「ハリーアップ、諸君。静かにしてこちらに注目するように。予定をオーバーしてしまっているぞ」
張りのある大きな声が倉庫に響く。声だけなら自分達とそう変わらないような印象だった。
だが声の主は丸い眼鏡をしているが鼻が高く目元の彫りも深くて自分ら日本人とは違う雰囲気を漂わせている。
「ウィリー?お前何でここに」
ウィリーと呼んだのは留学生達だ。そうだ修学旅行にいた、と一部の記憶していた生徒が囁く。
そういえばあの時は……と話が脱線しそうになったところで怒号が流れを断ち切る。
「静かにせい、お前ら!今からゲームの説明じゃい!」
「まったくこれだから2−Cは。元が悪いのか教育が悪いのか……失礼しましたウィリーさん」
いつの間にか郡山と加藤がウィリーの隣に仕えるように並び立つ。
遅れるように谷がやってきて生徒達をぐるりと見回した。
「いいか皆、おとなしく説明を聞くんだ。この人やボスに逆らうんじゃない、殺されるぞ」
そう言って谷は無造作に無骨な鉄の塊――銃を取り出して、何の躊躇もなく発砲した。
耳元で爆竹を鳴らしたような炸裂音が雑音の全てを押し流す。
「きゃあっ!」
「セ、センセ?谷センセ何を……ッ!」
叫びだそうとした生徒に片っ端から谷が銃口を突きつける。
郡山と加藤もそれに倣って各々の武器を取り出し生徒に向けた。
「静かにせんかい。ワシはこんなもん使ったことないんじゃから手元が狂っても知らんぞ!」
「学習能力がないのか?黙っていることもできないのかね?」
五秒、十秒……やがてパラパラと先ほどの鉛球を受けて砕けた天井の一部が降りかかる音が聞こえる程に
静かになったのを確認してウィリーがふんと口を鳴らした。
「ではこれよりゲームの説明をさせてもらう。ボス」
そしてウィリーの背後から一人の美男子が現れた。
「皆ご苦労様。遠路はるばるようこそ」
「あ、あなたは……!確か修学旅行のときの」
主に女生徒から黄色い声が挙がる。蒼の瞳と流れるような金髪、長い足に甘いマスクはいかにも女子ウケしそうだった。
よくよく目を凝らすと彼の周囲にだけ異国調の絨毯が敷き詰められていて、巨大な織物が壁にかかっている。
更に谷達やウィリーは一歩距離を置いてうやうやしく頭を垂れて挨拶をした。
それだけでその男子個人の位や身分がこの場の何者に比べても比較にならないことが伝わってくる。
「久しぶり。修学旅行以来だね。皆に来てもらったのはちょっとした余興に付き合ってもらおうと思ったから。
改めて自己紹介しよう、僕の名はショーンだ。この学園の本校であるイギリス校の生徒だよ」
だがきゃあきゃあと女子達が沸き起こるはずもなく『はあ』という元気が感じられない反応をするのみ。
起きたら見知らぬところにいて、周りは武装した軍人達。ただのレクレーションとは誰にも思えない。
「ここは君達の町から遠く離れた小さな島だ。この場にいるのは歩行祭とかいうイベントに参加していた人達。
僕の協力者である先生方、あとは私兵だ。さて本題に入ろう……ああそうだ」
ショーンは一瞬、何かを思い出したかのように口をつぐむ。
「これから言うことは『参加側』の人達には一切関係ないことなんだ。僕の友人や先生達にも相談はしていない。
だから何があっても彼らを責めないでね。じゃあ……」
居間で紅茶を勧めるかのごとく、ショーンは宣言した。
「皆には殺し合いをしてもらいます」
何を言っているのだろう。ブリテンジョークだろうか?日本語が並外れて不自由なのか?自分の耳がおかしい?
様々な反応を見せる生徒達。互いに顔を見合わせて疑問符を浮かべる。
ある生徒が教師である谷の顔色を伺うと、メガネで隠されているが笑っていないのがよくわかった。
「最後の一人になるまで殺しあってもらうよ。家族も警察もこのことは知らないし、殺しあうしかないルールもあるから……あれ?」
未だに自覚がない呆けた顔をしている者が大勢いることに気付き、ショーンは深くため息をつく。
「あれ、分かりにくいかな?うーん……そうだね、ゲームだよ。バトルロワイヤルっていうゲーム。
これには殺しあう――『乗る』人、あくまで主催者に立ち向かう人、人を信じようとする人、信じられない人。
色々な人が出てくる面白いゲームだ。ホコーサイとかいうものよりよっぽどね。
まあ面倒な説明や管理、運営はウィリーにお願いしてるから僕はのんびりと楽しませてもらうね」
くすくすと嫌な感じの笑い声が漏れていた。それだけを告げると立ち去ろうとするショーン。
だがとっさの声が彼の足を止める。
「ショーン、待つ!こんなこと、いけない……!いくらボスでもやりすぎ!」
立ち上がり叫んだのは留学生グループの一人サミュエルだった。友人のミック、マックスも傍に居る。
その巨体から生まれる声は太く強くたくましく、皆の代理となって会場全体に響き渡る。
兵士らが銃を突きつける威嚇するがサミュエルは臆すことなく言葉を続けた。
「今すぐ謝って、皆を帰す!」
「……ああそうだ、大事なことだけ僕から説明しておこう。まだ事情を飲み込めてない人達もいるようだから」
片手で兵士達を制してショーンが平然と睨み返す。懐からなにやらとりだし操作をした。
ひっと声があがるがそれは大勢が想像した凶器、銃ではなくリモコンの類であるようだった。
「君達につけられた首輪にはセンサーが収められていてこちら側で生死の判断や現在地がいつでもわかるんだ。
そして爆弾も内蔵されていて、爆発すれば確実に死ぬ。まあこっちの定めたルールを守ってれば大丈夫だから安心してね」
爆弾という単語にざわっと会場が騒がしくなり皆の顔色が変わる。ある生徒は悲鳴のようなものまであげていた。
「爆発する条件は……まず僕達が定める禁止エリア、ああ後で地図を配るんだけどそこのフィールドに踏み入れること。
六時間毎の放送で死者と一緒に発表するから聞き逃さないようにね。次に、無理に外そうとすること。強い衝撃を与えないようにね」
周囲を見回しながらショーンは軽く説明を続ける。声をとめると彼はくるりとサミュエルのほうに向きなおした。
何が起こるか察したのか、サミュエルの周囲からサササっと幾人か飛び退り、ひっと悲鳴が上がる。
「バカヤロウ、やめろショーン!」
顔に傷のある留学生――マックスが立ち上がり大声で制しようとする。だが遅かった。
ショーンの指が動くと同時にピピッと何かの機械音がする。
「そして主催者である僕に逆らおうとした場合だ。こんなふうにね!」
ボンッ――皆が想像した結果がそこに待ち構えていた。
「サ、ササミュエルッ!」
か細い悲鳴がこだまする。ぐらり、絶命したサミュエルの巨体が崩れ首元から大量の血が噴出し辺りを赤く染めあげる。
倒れた巨体からどくどくと流れ出ていく真紅の川の前に、生徒達がモーゼの滝のように退いていく。誰かが叫んだ。
「きゃああああああああああああぁぁぁっ!」
最初の悲鳴をきっかけに伝染していく死の香り。恐怖にかられパニックを起こす生徒達。
「あぁ……あああああああああああ!」
「マジでやりやがった!!ひぃぃぃっっっ!!」
口元を押さえて気持ち悪そうにしている者もいた、震える足が思うように動かずすぐ転倒する者もいた。
そのままへっぴり腰で這い蹲る。静寂の中に涙ぐむ声や興奮した吐息が混ざり合う。
「うえぇぇぇ!もうやだ、帰りたい!」
「やれやれこうもうるさいと話もできない。仕方ないね」
再びショーンの指が動く。誰かがそれに気付いて勇気を持って叫んだ――だが遅かった。
同じような音の後に同じような花火があがる。
「は、羽根子……羽根子ぉぉ〜〜っ!!」
周りの生徒らに赤い飛沫が降りかかり、つぼみを毟られた花のように力なく塀内羽根子の体は崩れおちた。
灰色の地面が赤い模様に染められていく。どうしようもない致命傷だと誰の目にも明らかで、
少女はもう口を開くこともなかった。
先程のサミュエル同様に髪の毛を焦がした臭いを濃縮してばらまいたような異臭が鼻につく。
「あぁ……ああああ……」
「まだ状況を理解してない人はいるかな?」
これ以上手間取らせるなら殺す。そう言わんばかりのショーンの態度に全員の背筋が凍った。
首輪の抑止力を自覚し、混乱のさなかでも誰一人暴れださなくなる。
常に命を握られている恐怖は心を締め付け体を強くこわばらせ、息をするので精一杯。
やがてカチカチ歯がかみ合う音やかすかなすすり泣きだけが残る。
「……質問がある。誰も殺しあわなかったら?決着がつくまで未来永劫続ける気かい?」
「二十四時間誰も死なないと全員の首輪が爆発します。三日過ぎると全員の首輪が爆発します。安心してくださいネ、ティーチャー」
沈黙を破ったのは生徒ではなかった。立ち上がって質問したのは生徒らに混じって集められていた刑部絃子。
近くには同僚の笹倉葉子に姉ヶ崎妙の姿も見られる。彼女らの首にも生徒同様光るものがあった。
だが刑部、笹倉、姉ヶ崎は首輪をつけられ丸腰なのに対し谷、郡山、加藤の三人は武装していてショーン側に立っている。
男と女で教師の立場が明らかに違っているのは誰の目にも明らかだった。
「絃子さん……?あの、これは一体。私達もまさか?」
「谷先生。こんなレクレーションは聞いていませんでしたが」
「口止めされていたもので。すいませんね、歩行祭に協力するなんて言わなければこんなことには。まあ頑張ってください」
「そんな!谷先生、ひどい!私達にこの子達と殺……なんて、そんなこと」
姉ヶ崎は声と視線で谷を訴えても、刑部が無言で睨み付け抗議しても飄々とした様子で谷は取り繕わなかった。
そしてそんな態度をやれやれといった風に加藤が切って捨てた。
「あなた方は教師のくせに遊んでばかりいるからですよ……さて生徒諸君も呆けてないで気を引き締めたまえ」
「そうじゃ。日ごろの鍛錬の見せ所じゃい!友人だ、教師だ、後輩だと、遠慮することはないぞ!」
生徒達はその言葉に愕然としていた。嘘だ冗談だと言ってほしかったのに。
殺しあえという今の言葉はあまりにも辛く、寂しく、冷たくて胸が押しつぶされそうになる。
薄暗いこの場所が妙に白っぽく見える。谷達の姿が近くなったり遠ざかったり、縦に伸びたり横に伸びたりして見えて
脳がぼんやりとしてくる。けれども耳に残る爆発音とまぶたに焼きついた光景はまごうことなく真実だった。
「じゃあ僕はこれで。皆の頑張りを期待しているよ。ウィリー後はよろしく」
用は済んだとショーンは爽やかな笑顔で会場を立ち去っていった。もはや彼の蒼い瞳は腐りかけた魚の目のように見える。
何か言わなくてはいけないはずなのだがショックが抜けきらず水が清むように沈静していく。
「では説明を続けよう。先生方も座ってください」
パンパンと両手を叩き、ウィリーは何でもなかったかのように合図をする。
二人の兵士が死体袋を用意しサミュエルと羽根子の亡骸は片付けられていった。
「羽根子……」
「ササミュエル……」
誰かが悲しそうにつぶやいた。死体が消えても惨劇の記憶は消えない。
「君達にはこの後眠ってもらい島の各所に運ばれる。薬の量からして途中で目覚めることはまずありえないだろう。
だが起きる時間はほぼ均一、平等だ。そして一人一人にリュックを与えよう。
中には食料と水、島の地図に筆記用具・メモ。今説明した内容が書いてあるルールブックと参加者の名簿。
替えの制服も入っているから必要なら着替えるといい。そして中身に差はあるがいくつかの武器や道具が入っている。
それらを駆使して頑張ってくれたまえ。説明は以上だ」
いつの間にか会場には大型のボンベのようなものが並べられていた。それらから一斉に勢いよくガスが吹き出てくる。
兵士や男性教師達、ウィリーは同時にマスクをかぶりだす。それ以外の人間は観念したのか腰が引けたのか特に抵抗を見せない。
あれほどまでに生き生きとしていた笑顔はそこにはなく、日常は遠い過去のようになってしまっていた。
一人、また一人と眠りについてやがて全員が静かになった。
【サミュエル:死亡】
【塀内 羽根子:死亡】
――残り50人
109 :
56:08/08/03 16:32 ID:4kYIhvfY
・・・いかがだったでしょうか。
というわけで参加者は
>>2+留学生のマックス、ミック、サミュエルに絃子さん葉子さん妙ちゃんの52名。
主催側はショーンで手下としてウィリー・谷サ・ゴリ山・カトセン
見せしめはデカくてタフ強そうなサミュエルと二連続で羽根子ちゃんでした。
>>109 お疲れさん。
さてこの後はどうする?
丁度夏休み期間中だし、書き手が沢山集まってくれるといいんだけど。
前作を書いてくれていた人達は今、どこで何をしているんだろう。
>>109 またえらく気合が入ったのを・・・まぁGJ
とてもじゃないけどもう書いてくれる人も
いないだろが応援はさせてもらうぜ。
まぁ、一人でも頑張ると言う気概は見させてもらったぜ!
残念ながら自分は今回は参加するつもりはないけど、他の人はどうかな?
書き手が一人ってのは悲惨だなあ
>>109 いいプロローグ乙!
ダメ子は生き残ったがハネ子は連続で見せしめかwまあ仕方ないな。
ところで場所は沖木島かな?そしてゲーム開始時刻は?
そういや留学生らのフルネームって何だろう
2-C名無しのように誰か決めたほうがよくないか
>>114 一人の書き手で完結させたロワを俺は知っているけど、あれは30人だった。
今回は前作の倍の50人だからな。
書き手一人じゃ、きついぞ。
前作の書き手達に一人でもいいから、戻ってきて貰いたい。
別に前作に縛られなくても、やってみようって人がやればいいんでないの
もう初めから播磨と花井が合流とかでいいよ
発案者の天満への憎悪の種が、参加者のほぼ大半に蒔かれた流れもイイ
天満の死は天満ってスクランの主人公にはなりきれなないけど
それでもスクランを象徴するキャラだったんだと認識させられた。
123 :
120:08/08/04 10:55 ID:diAnRHGo
や、展開の可能性としての話だ。ごめん
124 :
56:08/08/04 21:07 ID:21s7G0OY
皆様どうもありがとうございました。
場所は地図がないので沖木島、時刻はゲームスタートが昼頃を想定しています。
留学生は確かにフルネームがあったほうが・・
支給品や登場話など不確定の部分をリレーを繋いでいくのが
やはり楽しいと思うので多くの職人さんの参加をお待ちしています。
・・・さて次はどうしましょうか
プロローグができて基本設定ができたなら後は本編スタートになりますが
>>124 すみません。
文章力の無い私にはこのくらいしか、出来る事がありません。
>>124以外に本当に書き手はいないのか?
参加者名簿一覧 【計52名/残り50名】
○…生存 ●…死亡
男子 女子
○1:麻生 広義 ○1:姉ヶ崎 妙
○2:石山 広明 ○2:一条 かれん
○3:今鳥 恭介 ○3:稲葉 美樹
○4:梅津 茂雄 ○4:大塚 舞
○5:岡 樺樹 ○5:刑部 絃子
○6:烏丸 大路 ○6:音篠 冴子
○7:斉藤 末男 ○7:城戸 円
●8:サミュエル・モールス ○8:鬼怒川 綾乃
○9:菅 柳平 ○9:嵯峨野 恵
○10:田中 一也 ○10:笹倉 葉子
○11:天王寺 昇 ○11:サラ・アディエマス
○12:東郷 雅一 ○12:沢近 愛理
○13:奈良 健太郎 ○13:周防 美琴
○14:西本 願司 ○14:高野 晶
○15:野呂木 光晴 ○15:種田 芽衣子
○16:花井 春樹 ○16:俵屋 さつき
○17:ハリー・マッケンジー .○17:塚本 天満
○18:播磨 拳児 ○18:塚本 八雲
○19:冬木 武一 ○19:東郷 榛名
○20:坊乃岬 大和 ○20:砺波 順子
○21:マックス・ホフマン ○21:永山 朱鷺
○22:ミック・ジャガー ●22:塀内 羽根子
○23:三沢 伸 ○23:三原 梢
○24:飯合 祐次 ○24:結城 つむぎ
○25:吉田山 次郎 ○25:雪野 美奈
○26:寄留野 香織
○27:ララ・ゴンザレス
【以上25名】 【以上27名】
>>127 どーしよう(´・ω・`)
これじゃ、企画オチまっしぐらだよ。
俺の中じゃ前回を越えるストーリーは考えられん。
以上。
ここにいるぞー <書き手
思ったより早かったんで、ちと戸惑い気味。
まぁ、ぼちぼち頑張りますわ。
・岡 樺樹
・野呂木 光晴
・坊乃岬 大和
・飯合 祐次
・種田 芽衣子
こいつら具体的に何してたっけ
歩行祭にいた?
皆普通にいたし、台詞もあった。
野呂木を除いて。
ミックジャガーってwwwww
ミックに期待が膨らむ
【小さき復讐者(リベンジャー)】
「……OK、まだ誰も来てないな」
――息を切らせて目的地へと駆けつけたのは、生粋の英国人でありながら、
お世辞にも美男子とは言いがたい風貌の小男だった。
目が覚めた直後から状況を理解するまでには数分を要したものの、我に返ってからは、
周囲の確認や現在位置の把握など、最低限必要な行動を次々と果たしていった。
行き止まりになった道の少し先に灯台が見えることから、どうやら自分は島の南東部に居るらしい。
ラッキーだ。ミックはそう考えた。
無人の灯台に忍び込んで拠点とすれば、戦略上非常に有利になる。
だが、自分の思惑通りに事が運んだとはいえ、彼自身の灰色の眼は、
倉庫で惨劇を目の当たりにした時と同じく、只ならぬ輝きを放ったままであった。
平時ならば常に薄ら笑いを浮かべているであろうその顔からも、下卑た不真面目さは微塵も感じられない。
灯台の中、入り口付近の階段の陰に座り込むミック。
「…………」
沈思黙考。
気配を殺して佇む彼の姿は、第三者から見ればきっと、嘗てこの国に居た“忍び”と呼ばれる存在を彷彿とさせたであろう。
――尤も、彼の心を満たしているモノは、かつての主人に対する復讐のみであったが。
『見せしめ』――
無二の親友は、そんな下らない理由で、無残にも首の辺りを吹き飛ばされた。
笑いを取るのが大好きだった彼の最後が周囲の恐怖を煽る結果となったのは何とも皮肉であり、本人にとってもさぞかし無念だったろう。
忠実な“駒”として、第三者からの恨みや侮蔑などをひたすら請け負ってきた存在。
仲間曰く『便器一杯のゲロに頭を突っ込むような真似』を当たり前のように行なってきた毎日。
幸せとは程遠い日々だったが、それでも、同じ境遇の仲間がいたからこそ、耐えられた。
辛い思いをしているのは、自分だけじゃない。
端から見れば屑のような存在でも、それが自分の置かれた立場なら、精一杯足掻いて生きてやる。
お世辞にも誉められるような生き方ではなかったが、彼にとってはそれでも良かった。
だが。
かつての主人にとっては、そんな生き方すらゴミ屑同然にしか映らなかったらしい。
状況如何では使い捨てとなる可能性もあったとはいえ、自分に代わって汚名を被ってきた“駒”だ。
なのに。
それさえ、奴は薄笑いを浮カベナガラ――
「―――!」
弾かれたように、それまで地面に向けられていた顔を上げる小男・ミック。
怨恨に満ち満ちた回想を繰り返していた自分の迂闊さに、思わず頬をぴしゃりと叩く。
まずは、協力者を探さねば。
可能ならば独りでも何とかしたいところだが、今、自分の置かれている状況下では、復讐どころではない。
このゲームに乗る気がなく、且つ、それなりの戦闘能力もしくは頭脳を持ち合わせた人物を探し、
協力して――場合によっては利用して――最終的な目的・サミュエルの仇を討たねばならない。
マックスが近くに居てくれれば百人力だが、倉庫に集められた時、ざっと見ただけでも30〜40人の
生徒が居た筈だ。
恐らく、参加者は島全域に散らばっている以上、そんな簡単に出会えるとも限らない。
――それよりも、まずは支給品をもう一度確認しなければ。
場所移動を優先するあまり、手持ちの武器さえ碌に確かめていなかった己の不注意を哂いながら、
ミックはリュックの中を開けた。
「………チッ、はずれか」
袋の中に入っていたのは、滑り止め加工が施された二本の木製の柄に鎖が取り付けられた、所謂
『ヌンチャク』と呼ばれる代物。
クナイ・手製爆弾など、日本製(?)の武器を扱うスキルには長けている彼ではあったが、残念ながら
香港映画には詳しくなかったようである。
――ミック・ジャガー、親日家。確認。
とはいえ、支給品がまともに使えない以上、早めに誰かを見つけ、武器を交換・もしくは強奪しなければ
これから先、生き残るのは難しい。
なにしろ、主催者側の説明から推測するに、銃火器すら普通に配られている可能性が高い。
自身は銃を扱った経験は無いに等しいが、操作自体はそう難しくないだろうと感じていた。
問題は、所有者自身の技術(スキル)である。
至近距離ならいざ知らず、ある程度の距離をとった状態で標的を仕留めるには、相当扱いに
慣れてないと難しい。
弾数も限られているだろうし、予備のマガジンが支給品に含まれているとも限らない。
加えて、ゲームが始まって時間が経った後ならともかく、今の時点では複数の人間が
グループとなっている可能性は低い。
ましてや、夜になれば、狙いを定めるだけでも至難の業である。
ならば、今、自分の武器を手に入れるのであれば、やはり自分が扱い慣れている獲物――ナイフ等の
近接用武器――が望ましい。
勿論、後々に備えて長距離用の銃火器も欲しいところだが。
そんな思考を巡らしつつ、この場から動くか否かを決めようとした矢先。
「!」
およそ数百メートル先の道路を、金色頭のジャージ姿の人物が歩いてくるのをミックは目にした。
「誰だ……?」
参加者の大半が日本人を占める中、金髪の持ち主は数えるほどしか居ない。
髪の毛を染めている者も何名か居たような気がするが、それにしては見事に輝く金髪である。
「サワチカ……か?」
かつての主人の元・婚約者、そして、仲間内でのリーダー格だった男・マックスの想い人。
恐らく、修学旅行の件で嫌われてはいるだろうが、彼女ならば、間違っても主催者側の思惑に乗ることはないだろう。
女子ということで戦闘能力はあまり期待できないが、足手まといになる程ではない。
むしろ、支給されている武器次第では、強力な戦力にもなり得る。
「……確か、クレー射撃が得意だ、って言ってたな」
マックスが教えてくれた、どこから仕入れたのか分からずじまいだった情報を思い出す。
(多分、奴から聞いてたんだろう)
適当に脳内補完しつつ、ミックは、灯台の入り口の天井付近に身を隠した。
数分後。
ようやくターゲットの足音が聞こえてきた。
どうやら、相当急いでこちらへ来たらしい。入り口付近で腰を下ろし、休憩しているようだ。
『ハァッ、ハァッ……』
早足で移動していたためか、かすかな息切れが聞こえる。
(やっぱり、女……か?)
音を立てずに戦闘態勢を取り、ミックは考える。
ならば、負ける要素はまず無い。
たとえ銃火器が相手でも、所詮は素人。こちらに気がついていない以上、工夫次第で主導権を握るのは容易い。
残念ながら、彼は知らなかった。
銃火器を手足のごとく扱い、自分を叩きのめした漢・播磨すら恐れる最強の女性、刑部絃子の存在を。
イタリアンマフィアを相手に銃撃戦を繰り広げた実績を持つ孤高の女子高生、高野晶の存在を。
……だが、今の状況での彼の思い違いは、はっきり言ってさほど影響が無かったりする。
さて、ターゲットの動向である。
先ほどから息切れを繰り返すばかりで、特別な動きは何も感じられない。
パニック状態で、色々考えるどころではないのかもしれない。
どうやら、休憩も終わったようだ。
足音が徐々に近づく。
やや小さめの影が、すぐ足元を通り過ぎる。
来た――
ターゲットの頭が自らの足元を通過した直後、ミックは飛び降りざまにヌンチャクの柄を銃身に見立て、着地音に気づいた金髪の後頭部にすぐさま押し当てた。
「Hold Up」
『……!!!』
ターゲットの体が一瞬ビクッと震え、直後、ガタガタと痙攣し始める。
「……?」
小柄な体格から女だろうと思っていたが、どうやら違うらしい。
「ゆ、許してくれっ、誰だか知らねーけど荷物も全部やるっ、パシリでも何でもするから、た、頼むっ!」
――駄目だ、こいつじゃ戦力にならない。
金髪の小柄な男……吉田山の小者っぷりを本能的に察知して落胆したミックだが、所持品次第では何とかなるかもと思い、念のためにもう少し情報を引き出してみることにした。
「……What's Your Name?」
「よ……吉田山っ、吉田山次郎っ!」
「何を受け取った?」
「……え? 日本語喋れんの?」
「あんまり難しい言葉は喋れねーよ。 で、何を貰ったんだ?」
「あ、ああ、リュックの中だけど――」
「Stop!」「ひぃっ」
念のため、リュックに右手を突っ込んだ吉田山の動きを止めるため、柄を強く押し当てる。
あり得ないとは思うが、万が一銃口を向けられたら堪ったものではない。
「――ゆっくり、そのまま右手に持ってる物を手から放せ」
「は、はいぃっ、分かったから撃たないで……」
無言で吉田山からリュックを奪い取り、空いている左手で中身を確認する。
「……Hair Spray?」
「そ、それが俺の支給品なんだ……嘘じゃねーって」
「…………Shit」
「ご、ごめんなさい、俺のせいじゃないけどごめんなさい許してください殺さないで頼みますお願いし」
「Shut Up !!」「ひぃぃっ……!」
――標的自身も支給品も期待外れだった所為か、どっと疲れが押し寄せたミックであった。
【ミック・ジャガー】
〔現在位置〕I−10
〔状態〕健康、多少落胆気味
〔道具〕ヌンチャク(柄は木製、使い手次第では殺傷力有)、ヘアースプレー(非可燃性)、支給品一式
〔行動方針〕ショーンに復讐(あくまでも私怨なので、完全に対主催側という訳ではない)。
協力者(+使えそうな武器)を探す。場合によっては脅し取る
【吉田山 次郎】
〔現在位置〕I−10
〔状態〕恐慌状態(逆立てた金髪は目立つため、整髪剤は支給された水を使って洗い落としてます)
〔道具〕支給品一式
〔行動方針〕とりあえず強そうな奴に媚を売って生き残る、隙があれば成り上がる
以上です。
何か不備がありましたら指摘願います。
時刻、記入し忘れてましたorz
午後1時半でお願いします。
書き手は少ないんだし、こうなったらまったり進めていこう。
wktk
147 :
Classical名無しさん:08/08/05 16:45 ID:/i9/oUj.
今回はミックが主人公か
すみません、
書き手の中に天満で書いてる、もしくは書こうとしている方はいますか?
149 :
56:08/08/05 20:25 ID:tgpBEG3g
>>144 投下ありがとうございます。サミュエルの分も頑張って欲しいところです。
吉田山と沢近の共通点を留学生にあてはめたのが上手いなあと思いました
>>148 自分は天満については何も考えていません
予約などのルールははっきり明文化したほうがよさそうですね。
1stのものを前提にちょっとつくってみようかと思います
150 :
56:08/08/05 22:10 ID:4U4hFn6Y
住民のルール
下記のルールを守れない方はこのリレー小説への参加・閲覧をご遠慮下さい。
・モニターの向こうにいるのは同じ人間です。相手を過度に刺激したり傷つけないよう、発言はマイルドに。
・書き手も読み手もお互いを尊重しましょう。どちらもいなければリレー小説は成り立ちません。
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・派閥の話は控えましょう。また、他の派閥を攻撃・批判するような発言はやめましょう。
・よそはよそ、うちはうちです。他のパロロワと比べて〜といった意見はやめましょう。
・過去の作品を物理的な矛盾以外で蒸し返すような事はやめましょう。
・過度の原作スクラン叩き、作者叩きはご遠慮ください
書き手のルール
・住民のルールや書き手のルールを守ってご参加ください。
・矛盾がある場合、修正や破棄を求められる場合があります。その場合は応じて下さい。(正・破棄対象の矛盾については作品のルール参照)
・予約がされていた場合、予約されたキャラを後々自分が使うなど言って予約者を混乱させないようにしましょう。
・また、作品投下後に「この展開だと自分の話が書けない」といった文句を言うのはやめましょう。
・自分の気に入らない展開という理由で批判をするのはやめましょう。
・読み手があってこそのリレー小説です。常に読み手がいる事を意識し、投下前に十分推敲して下さい。
・自己リレーは出来るだけ控えましょう。しかし他に書き手がいない場合などはその限りではありません。(自己リレーする時の注意点は投下のルール参照)
自己リレーかどうかの判断は、以下の例に従って判断して下さい。
例)自分が書いたキャラAの投下後に別の作者が他のキャラBCDをAの近くに移動させた場合
→Aを書いた作者がABCDの話を書く:自己リレーに当たらず。
→BCDを書いた作者がABCDの話を書く:自己リレーに当たる。
要するに、自分の投下後に他の作者が自分の投下キャラの状況に変化を齎す場合は自己リレーに当たりません。
逆に、自分が投下して生じた展開に更に連続で他のキャラを絡めた場合は自己リレーとなります。
・ルールを悪用しないでください(明らかな矛盾等はないが無意味な大量殺害の連発等)
151 :
56:08/08/05 22:12 ID:4U4hFn6Y
読み手のルール
・自分が気に入らない展開という理由で書き手を批判するのはやめましょう。
・書き手があってこそのリレー小説です。書き手の創作意欲を削ぐような批判や誹謗・中傷はやめましょう。
・NG・修正要請の必要を感じても発言はマイルドにお願いします。厳しすぎる言葉は作者の創作意欲を削ぎます。
・ルール違反や荒らしでもない作者を追放・批判するような事はやめましょう。
・面白い、続きが読みたい等を思いましたらできるだけ感想を書いてあげてください。作者のいい創作意欲になります。
152 :
56:08/08/05 22:13 ID:4U4hFn6Y
原作準拠のルール(+確認的ルール)
・最後の一人になるまで殺し合う。また、その手段は問わず。
・最終勝者への報酬等は現在未定。
・参加者全員に首輪が装着。首輪には発信機、爆弾がついている。
また、参加者には知らされないが首輪には盗聴器があり。
心臓の動きをセンサーで感知し、装着者死亡により停止する。
もし爆弾が爆発すれば普通は間違いなく死ぬ。
爆弾が作動するのは
・禁止エリア(後述)に侵入した場合(該当者の首輪が自動的に爆発)
・無理に首輪を外そうとした場合(該当者の首輪が自動的に爆発)
・ゲームの進行を妨害した場合(主催者の判断により該当者の首輪が爆破される)
・24時間以内に一人も死者が出ない場合(自動的に全員の首輪が爆発)
・本作ではゲームの期限は3日間であり、それを過ぎると全員の首輪が爆発する。
・参加者にはリュックサックと、以下のアイテムが支給される。
・地図
・コンパス
・筆記具
・食料:菓子パンが3つ。種類はランダム。
・水:1Lのペットボトルが2本
・ルールブック(禁止エリアルールや首輪、参加者名簿等の基本情報が記載)
・替えの制服(※元々制服の1年や教師は未定)
・アイテム(各自に1つ以上何かが配られる。武器・弾薬の他日用品、果ては生き物まで)
153 :
56:08/08/05 22:14 ID:4U4hFn6Y
・会場は沖木島。無人島となっている。まもなく春。
・会場内の電気・ガス・水道・携帯電話回線は止められている
・常温保存可能でない食料は腐っているし、お湯一つ沸かすにもそれなりの理由付けが必要
・発電用の発動機(自動車を含む)を回せば周囲にそこそこ大きな音が響く
・プロパンガスはボンベを撤去、カセットコンロはまあOK
・原作ロワでもそうだったが川や井戸、ミネラルウォーターで水を補給するのはアリ
・携帯は基本的に本部にしか繋がらない
・沖木島はアルファベットと番号で区画分けされている(地図参照)。
一つのエリアは歩いて一時間程度、走れば10〜20分で横断できる
(但し、舗装された道路や草木の有無などでその時間は異なる)
放送(後述)の際に禁止エリアが設定される。どこになるかはランダム。
禁止エリアに設定されたエリアに侵入した場合、首輪が爆発する。
禁止エリアは2時間毎に1つずつ追加され、6時間毎の放送で箇所を発表
(もし首輪が無力化した場合、侵入しても何の問題もない)
・6時間ごとに島全体に放送が流され、死者の名前の発表と禁止エリアの追加が行われる。
・出発地点はD-06にある倉庫のような場所。
倉庫内にはショーン・ウィリーら留学生に男性教師達がいる他、複数の兵士の存在が確認されている。
また、ゲーム開始後はD-06は禁止エリアとなる。
・参加者は矢神高校に通う2-C全員+2-D、1-D、留学生と教師の一部
・原作で本名不明のモブ及び留学生は、スレ内で決定した仮名を本名として使用。
154 :
56:08/08/05 22:15 ID:4U4hFn6Y
作品のルール、設定(本スレのローカル・ルール)
・前回までの作品に対する矛盾などがないか確認しましょう。
キャラの位置、性格や言動、時間等は特に気を付けましょう。また、ストーリーを壊すような投稿はやめましょう。
・前回の作品に対し辻褄が合わない作品はNG・修正対象です
(時間軸がおかしい、居場所が違いすぎる、移動速度が速すぎる、死んだはずの人物が生きている等)
また、明らかに前回の作品の流れを無視した場合も同様。
※NG・要修正ではないかという審議はスレ内で行われます。
※NGとなった作品は無効。修正を求められたら投下のルールに従って修正するか、応じることがどうしてもできなければ破棄してください。
※ちょっとした心変わり、フラグ折りは修正理由にはなりません。
・原作にない、極端なまでにオリジナルの設定を出すのはやめましょう。原作の範囲内でお願いします。モブキャラは自然に見える範囲で。
Ex: 各キャラの性格・性能は原作レベルにする(SSでたまに見られる最強の高野、黒サラなどはなしで)
・原作ではっきり触れられていない部分(イギリス組の境遇・家庭環境等)を描写するのは問題ないですがある程度原作に沿ったものに
・原作でいう歩行祭一日目終了時(20巻終了時)に拉致された事になっています。烏丸の発病までまだ猶予があります。
・ゲーム前に各キャラが持っていた物のうち、凶器となりえるもの(ナイフ、モデルガン等)や携帯電話は没収されています。
・おおまかでいいので時間を表記して下さい(例:12〜14時)
・エロもグロもほどほどに
155 :
56:08/08/05 22:15 ID:4U4hFn6Y
・安易なリストラはしない。殺すにしても見せ場を作る。
・超能力は原作の範囲内に。八雲の読心は花井や天満等の原作で描写があった相手のみ可能性有、播磨は原作で意思疎通した伊織やナポレオンなどの動物のみ。
天満の念力はスプーン曲げ程度の強さで、伊織が入れ替われるのは登場キャラでは塚本姉妹のみ、任意ではできない。
・新規キャラが突然登場したり死者の復活は禁止。
・サバゲー経験者の2-Cは全員、射撃姿勢やリロード等の基礎的なレクチャーを受けている。
東郷、ハリー、留学生、沢近あたりはおそらく経験者。絃子さんは多分ダントツ。
1年とララ、笹倉・姉ヶ崎は不明。使えるならそれなりの理由が必要。
・主催者はスクランでも数少ない悪人のショーン。手下にウィリー、谷、郡山、加藤の教師3人。
・参加者は歩行祭の夜に参加してたから、ただそれだけ。烏丸らしき人物も20巻131ページ右上にいるので含める。
・参加者らは2年及び留学生はジャージ着用、着替えが支給。1年は制服。教師は私服で参加
・野生の危険な生物(野犬、熊、毒蛇など)はいないよう(カラスのような小動物はいる)
※野生動物が播磨と意志の疎通を行なうのは無しで(原作で意思疎通していた動物のみ)
156 :
56:08/08/05 22:17 ID:4U4hFn6Y
投下のルール
・本編を投下する際、修正要望等がでる可能性があるので必ずトリップを付けて下さい(ネタや番外編はその限りではありません)。
・書きたいキャラを予約することができます。
予約:書きたいキャラを指名し、トリップを付けて宣言する。後日作品を投下する際はトリップを付ける。
期限は72時間。それを過ぎても何の意思表示も無ければキャンセル扱いとなります。
ここで言う予約とはプロットが完成していてあとはタイプするだけの段階で行うものです。
もし期限に間に合わない場合、必ずキャンセルかいつまでに投下できるかという意思表示を早めにお願いします。
予約延長:期限は24時間。但し、他に書きたいという方が出た場合は譲って下さい。
※遅すぎは困るので出来るだけ早めが無難です。投下が無理なら早めに予約を解除して下さい。
・もちろん予約されていないキャラの話ならば突然投下大歓迎。予約されたキャラがいたら諦めて下さい。
・自己リレーを行う場合、募集開始から3日以上空けてからお願いします。
予約宣言を必ず行い、また自己リレーである事を明記して下さい。
宣言後1日経って他に書きたいという人が出なければ、それから3日以内に投下をお願いします。
・キャラを握っておいて様子見云々を発言するのはNG 。
やるなら黙って、ただしそれで状況が変わって書いた話がパーになっても泣かない
・住民から修正が必要と判断された場合(基準は作品のルール参照)、書き手は修正宣言を行なって頂きます。
宣言は作品投下から24時間以内に行なって下さい(行なえなければ破棄となります)
※但し、修正が必要な理由が投下24時間以降に発覚した場合は、その限りではありません。
修正宣言から24時間以内に修正版を投下して頂きます(投下先はまとめの方にお願いします)。
その時間を過ぎると破棄扱いとなる為、ご注意下さい。
・予約期限、修正期限が切れた後も再投下をする事は認められますが、再び予約する事はできません。
※誤字・脱字の修正などの場合宣言は不要です。まとめの掲示板にどうぞ。
157 :
56:08/08/05 22:19 ID:4U4hFn6Y
以上、細部を直して暫定ですがルールとしたいと思います。
予約期間は3日間で延長は1日ですが、期間の再考などありましたら意見をお願いします
また主催者らは前回と同じD-06にいることになっていますが
なんだったら場所を変えてもいいかなと思ってます
>>157 ・・・お前って奴はorz
俺も書いてみようかな
>>157 あの最終回を見ても、まだこれほどまでに創作意欲を持っていた人がいた事に素直に感動。
>>142 チビ二人乙!
どうにもヘタレっぽいのが集まったなw
そして1stに続いて武器にも人員にも恵まれない吉田山w
>>157 ルール乙!
エロは禁止からほどほどになったかw
161 :
148:08/08/05 23:46 ID:skizZTwc
すいません、SS投下もロワも舐めてたかもしれませんが、書いてみますね
gkbr
ダメだこいつ、早くなんとかしないと・・・って感じだな吉田山
>>161 がんがれ
【Libera me】
昼過ぎの陽の光が瞼の裏にチカチカと乱反射する。その眩しさに耐えかねて、少女は目を開く。
遥かな高みには、春に向かう優しい色の青空が広がっていた。
「ん…」
塚本天満は上半身を起こす。半覚醒の頭で自分が体育用のジャージのまま、野原で寝ていたことに気づく。
(…なんで私草むらで寝ちゃっていたのかなぁ?え?歩行祭の途中で!?ええ〜〜っみんなは?)
慌ててそばにあったリュックサックに手を伸ばし、前転する勢いで立ち上がろうとするが、予期せぬ重さに尻もちをつく。
「あ、あれ?」
なんでこんなにも重いんだろうか?それにこれは、自分のリュックとは違う。
ふと、さっきまで見ていた夢の残滓が心に忍び込む。
「嘘、だってあれは夢だったし」
ひどく悪い夢だった。今まで自分が見たことのある悪夢をかき集めても、あんなに怖い夢にはならないだろう。
「もう起きたんだから、だから今はまだ歩行祭で、早くみんなに追いつかなくっちゃ。ミコちゃん達が心配しちゃうよね」
そう独り言を言いながらも、天満の手は無骨な袋の口を開け始める。
――夢は終わったはずなのに。
このリュックサックから出てくるものは一体何なのだろう。
水、食糧(こんな物を入れた覚えはない、お菓子ならたくさん用意して八雲に呆れられたけれど)、
ノートと筆記具、矢神高校の女子用の制服、見たこともない島の全体図が描かれた地図。
ルールブックと題された小冊子をパラパラとめくると目に飛び込んでくる「殺しあう」「死亡」「最後の一人」という単語。
これは何。
まだ自分は目を覚ましていないのだろうか?
それに夢は終わったのならば、首に感じるこの冷たいものは何なのだろう。
こんなにも風も空も優しいのに。
天満は自分の心臓と呼吸のリズムが、まるでひとつになったように奔るのを感じていた。
乱暴に最後の袋の中身を取り出した瞬間、天満は思わず悲鳴をあげてそれを放り投げてしまう。
玩具の重さではなかった。遠くに投げたつもりだったのに、半歩先に鈍い音をたててそれは落ちる。
「嘘、嘘、嘘…!!」
よみがえる悪夢より無慈悲な現実。
首から鮮血を噴き出して崩れ倒れた二人。
そんなに親しくなかったかも知れないけれど。同級生とイギリスからの留学生、かかわり方は違ったけれど。
自分の気軽なあいさつや、軽口にも応じてくれた笑顔は同じだった。
「なんで…なんで…?」
声が震え、涙が浮かぶ。
ただの二年生最後のイベントのはずだった。みんなで、ただ海まで歩くだけの歩行祭。
それだけで楽しいと思ったのだ。
最高のクラスメイトと、親友たちと、――好きな男の子といっしょに歩きたい。
それだけだったのに。
――それだけのために、ひとがしんだ。
「…私の、せいだ…」
塚本天満の思考回路は、一本道にその結論に辿り着いた。
元来、思い込みの激しさではクラスで一、二を争う彼女であった。
その外れた勘違いを修正する妹も友人もいない、ただ一人きりという環境も、結論を強く揺るぎないものにする。
――自分がが言い出さなければ こんな事は起こらなかった――
熱い涙がぽろぽろと頬を伝い落ち、膝が崩れる。
「…っ…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…!!」
頭を垂れ半身を折り、まるで見えない誰かに許しを乞うように言葉を振り絞る。
死んでしまった二人に、巻き込んでしまったみんなに、ただ一人の妹に、
そして愛しい想い人に――…
やがて、むせび泣く声は小さくなる。
「…みんなにちゃんと謝らなきゃ…」
緩慢な動作でリュックサックに荷物を戻し、未だ涙の止まらない少女は立ち上がる。
皆は自分を恨んでいるだろう。憎しみの眼差しを向けるクラスメイトを思い浮かべてみる。
だがたとえ、
詫びた結果、自分が殺されることになっても、今の彼女にとってそれは瑣末で当然のことに思えた。
けれども、もし、許してもらえたならば、あの留学生の偉い人にこのゲームを止めてもらうように頼みに行こう。
そして、もし、もしも、許されるならば。
「烏丸君に…言いたいな…」
その望みは「日常」と同じくらいに、この手から遠く離れてしまった。
それを知りながら少女は北へと歩き始めた。
(午後二時近く?)
【塚本天満】
【現在位置】H−05
【状態】悔恨の念で思考停止状態
【武器】不明
【道具】支給品一式
【行動方針】皆に会って謝りたい(人のいそうな方へ)
以上、塚本天満でした。
SSを晒すのは初なので読みにくかったらすみません。
天満キャラ違うよ、とか今後話を転がしづらいよ等ありましたら遠慮なく没にしてください。
ただ書いてみたかったんだ…なんだこの勢い
アイテム・武器は次に書く方が自由に料理してくださって構いません。
いやいや、全然没にするような出来じゃありませんよ。出来ればぜひ、このロワの主力書き手になって貰いたいです。
>>168 自分が皆を巻き込んだという、天満の心情が上手く描けていたと思う。
GJ。
乙ー!
ここから天満がどう転ぶか楽しみだ
>>168 乙!
天満の優しさや思い込みの強さ、自己評価の低さ等がうまく出てたと思う
今回は天満どうなるか楽しみだ
これからもよかったら書いてくれないか
トリップつけました
>>168 乙です。原因でないとわかってもどこか負い目を持っちゃいますよね
天満の心情に強く引き込まれました。がんばれ天満
田中、永山、石山を予約します
おー頼もしい!
自分も誰か挑戦してみよう
――苦しい。体がざらついた壁に張り付いている気がする。背中に硬いものを押し付けられているようだった。
体を動かすとぴりりと刺激が走る。だがその痛みで目が覚めた。
「いてて、何だこりゃ。俺は一体……うぉ!」
腕を使って上半身を起こす。目に映ったのは見知らぬ山中。大きく太い木の陰に自分はいた。たまらず叫び声を上げた。
寝ていた箇所からはとがった岩が顔をだしていた。先ほどから自分を痛めつけていたものはこれだったらしい。
「!そうだ、アイツ。あのムカツク外人ヤロー……」
やがて少し前の記憶が蘇ってくる。楽しい歩行祭のはずだったし実際楽しかったのだ。
今まで何の女気のなかった自分だが勇気を持って一人の女子に近づき、悪くない反応を得るという大収穫があった。
「何で俺がこんな目にあわなくちゃならないんだよ」
恨みがましくつぶやいて首輪を触る。これからだと思った人生は奈落の底に繋がっていたのだ。
長い冬の後に待っていると思っていた春は幻想で最後まで冬で終わる。
楽しかった過去も可能性にあふれた未来も全て何の価値もないものになってしまったと、石山広明は深く深く絶望した。
「菅や斉藤もどっかにいるかな」
無意識に求めたのは友人のこと。殺し合いをするかどうかすら考えることなく、ただこの気持ちを誰かと分かち合いたい。
特にリュックの中身を確認することもなく背負い、山登りする元気もなかったので力なく山を降りていく。
「どうなるんだろうな俺」
足が重い。腕が重い。さほど熱くないはずなのに汗が額を流れる。あの広間であったことを回想するとぞっとした。
文字通り命を握られている状態で、死にたくなかったら他の全員を殺さないといけない。
だが自分は二十年にも満たない生涯の中で、誰かを殺すどころか計画を立てたことも衝動に駆られたこともない。
『ぶっ殺す』などと口走ったことはあるかもしれないがそれは口先だけに過ぎない。なぜなら――
(犯罪だろ。法律で禁止されてるし)
――誰が見てる?
(ばれたら警察に捕まるんだぜ。堀の中だ)
――いないじゃん。警察。
(そもそもやらなきゃやられる状況なら正当防衛ってやつじゃ……)
「……いやいやいや俺は何考えてる?そうじゃないだろ、ダチを殺せるかよ」
社会のルールなど関係ない。親しい人間を失うなど冗談ではないと首を振る。
当然のことなのに自分の心に感じた異変に石山は怖くなった。
(でも実際死んじまったんだよな、塀内……既に誰か殺し合いやってんのかな)
誰かと誰かが殺しあっている光景を想像したら体が震えた。人の死を間近で見たからこそかつてないほど近くに感じる。
サバイバルゲームがいかにお遊びにすぎないことか。いつか自分も殺したり殺されたりするのだろうか。
日常でどちらがいいかと聞かれれば殺されるよりは殺すほうがマシと冗談まじりに返事をしただろう。
だが実際は……何の恨みもない相手を殺すなどと……そう、憎いのは
(ロンゲの留学生に谷センセ……ちくしょう何で俺が。歩行祭に参加したせいだってのか?歩行祭が悪かったのかよ)
恨みを募らせるうちにやがて少し喉が渇いてきた。背負っていたリュックの中に喉を潤す何かがあるだろうと手を伸ばす。
「――!ひっ……うう、マジで殺し合いやってるんだな俺」
リュックから顔をのぞかせたのは小口径の銃だった。きっちり支給されていた制服の上にのせられて
日の光を反射し自己の存在をアピールしている。映画や雑誌によく出ていたそれの名前は確かベレッタ。
ご丁寧に予備のマガジンがついていた。M9だとかM92だとか言われてた気がするがそこまでは坊乃岬でもあるまいし詳しくない。
手に取り記憶を掘り起こして映画で見たポーズをとってみるがどうにも格好はつかなかった。
さほど重い拳銃ではないはずなのに妙に腕にずしりとくる感覚――もちろん感覚に過ぎないが――は
頼もしくもあり怖くもあった。フレームの安全装置をパチリと外してみるが気になってすぐ戻す。
そのままリュックの中に放り込んで、結局彼は水分を取らないまま立ち上がる。
「ぉ〜ぃ」
「?」
獣道からようやく解放されそうなところまで歩いてきて石山は止まる。誰かに呼ばれた気がしたのだ。
丁度一人だけの状況に不安を覚えていた頃だったのもあり慎重に気を配る。
視線を更に下に向けるとそこには一人の男子がこちらに手を振っていた。
「おぉ〜い石山!俺だよ、田中だよ」
「お前か……」
クラスも部活も同じ、そして個人的な縁をもつ男子――田中一也。
縁、というのは言い換えれば恋だ。だが恋敵ではない。自分は永山朱鷺を巡っての敵にすらなれなかったからだ。
普段なら直接関わりたくない相手だったが、今はそうも言ってられない。
何より田中は自分と同じ、何の罪もないのに殺し合いを強要された、悲しみを分かち合える無力な同士ではないか。
「なんだよ元気そうだな田中。まあ誰かに会えてよかったぜ。一人なんじゃないかと不安でさ」
「そっかお前は一人か。まあお互い大変な状態だけどこれから頑張ろうぜ」
「はぁ?頑張るって……何を?ってか無理だろ色々と、俺達」
「なんだなんだ、そんなことでどうする!お前まで元気ないな。これからあいつらに立ち向かおうぜ」
「……お前、なんでそんなに元気あるんだよ」
目の前にいる田中は石山が知るとおりの人物だった。真面目で正義感が強い実直な人間。2−Cでは花井の影に隠れがちだが。
だがそれは失われた日常での話のはずだ。誰もが嘆くはずの異常事態で彼がここまで彼らしくあるのが石山には妙に鼻についた。
「麻生や花井だってきっと諦めてない。刑部先生達もいるし、ショーンって奴のことも留学生達なら知ってるかもしれない」
――弱音を吐いて辛い思いを共感し互いに認め合いたかった。どうにもならない文句を叫んで無力さを必死でアピールしたかった。
俺達はもうだめだ、死ぬ前にアレコレしたかった、贅沢をしてもっと遊んでもっと人生を、と先に進まない後悔を繰り返したい。
そしてこんなことになった元凶へ恨み言をつらつらと……少なくとも斉藤達だったらそのはずだと石山はギャップに戸惑う。
「石山、お前だってそうだろ?こんなとこで死んでたまるか!皆で協力すればきっと何とかなる!
……それに俺はこんなところで絶対死ぬわけにはいかないんだ!」
なのに田中は希望にあふれ未来を見据え活力に満ちている。何故こうも自分と違うのか。自分とここまでの差があるのか。
石山は納得いかなかった。田中の目の奥が輝いているように見える反面自分が非常に小さく見える。
心の奥がドロドロと溶けて重たいものが広がっていく。羨望に目が曇ってごくりと喉を鳴らした。
「永山に会ったんだ」
「――は?」
その一言は石山の頭に強い衝撃を与えた。理性と呼ばれた何かがはじける。
永山――永山朱鷺。自分が望んでも指先すらかすることなく飛び立った彼女。
目覚めて一時間も経っていない。なのに恋人達は出会ったのだ。この島は相当広そうだ。50人以上がまばらに散っている。
誰しもが会いたい人間はいるだろうが、その願いがどれだけ叶うのか。
早々にそれを実現したカップルのいかに恵まれていることか。神の手により二人と自分が隔てられている気すらした。
「永山、すごくショック受けてたみたいで……当然だよな。だから俺はあいつの分も頑張らないといけないんだ」
「……あぁ。そうだなぁ」
――ナゼだ!?何故こいつばかり?
「……お前ラッキーだったな。なあ永山はどこにいるんだ?」
「ああ、この先に鷹野神社ってところがあるんだ。あと10分も歩けば着く。実は起きたらすぐ近くに永山がいてさ。
でも精神的に参ってるみたいだったから休んでもらって、俺はちょっと探索してたってわけ」
何があっても田中は永山を守るだろう。殺人鬼に迫られても彼女の盾になり逃がそうとするだろう。
そして永山はますます彼を好きになっていく。田中以外見えなくなっていく。
(こいつがいる限り……俺が何をしても)
きっと、仮に協力して活躍してみせても、永山を危機から助けたとしてもきっと彼女に認められるのは自分ではなく。
「まあ、要するにえらそうなこと言ってるけど俺は永山を守りたいんだ。あいつを悲しませたくないんだよ」
そうか、自分と田中がこうも違うのは永山がいるからだ――と石山は思った。
あんなにかわいらしい彼女がいれば男なら奮い立つものだろう。腐らずに前を向いて現実と戦うことができるはずだ。
逆に考えれば自分に永山がいればきっと立場は逆転していたはずだと石山は根拠もなくそう思い込んだ。
友人を殺せるはずがない。彼ら、彼女らが痛い思いをしたり泣いたりするのは辛いこと――のはずだ。
だったら逆に泣いたり辛い思いをしてもかまわない相手だったら?あとは道徳とか良心とか正義とかいった自分の心一つ。
熱っぽく語って恥ずかしくなったのか田中は背を向けていた。石山は無言でリュックに手を伸ばす。
二度目ならもう驚く必要はない。サバイバルゲームで習ったことを思い出しながらそれを右手でしっかりつかむ。
体は左右のバランスを保ち、左右の足は肩幅と同じくらいにそろえる。そして左手で安全装置を外し、
銃身は地面と水平に、視線と銃口の向きをそろえて対象に狙いを定め――
「それで石山」
それは田中が丁度こちらを振り向いたところだった。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
生き残ることができる可能性は極めて低い。なのでせめて自分の思うこと、願うことをやりたかった。
そのために邪魔な障害は取り除かねばならなかったのだ。
地面にキスをしたまま物言わぬ田中を見下し、石山は納得する。じわ、と彼の体から赤い霧が漏れ出てきたので
急いでその場を離れた。先程までもがき苦しんでいた田中が手放したリュックは血にまみれていて放置した。
ベレッタを握る右手が熱い。たった三発分の衝撃は今もじんじんと手にその感触を残している。
後になって心臓がバクバク鳴っていることに気づいた。ツンとするのは硝煙の残り香だろう。
けれども石山には後悔がなかった。目撃者は誰もいない。完全犯罪だと確信していたためである。
そしてその脳裏には先ほどの田中のような輝きを持った自分がいて、隣には永山朱鷺がいた。
それは一生なかったはずの光景。手に入らないはずだった名誉だ。
人を殺しても石山の精神は比較的落ち着いていた。胸を打ち抜かれた人間など首を爆破された人間に比べれば
取るに足らないとすら感じられた。彼の心は既に理性という重たい鎧が剥がれ落ちて、狂気という衣を纏っていたのだ。
重なり合う木々の隙間から神社の境内らしきものが目に入る。既に足元はゆるりとしていて平坦な道とさほどかわらない。
その姿を目に留めると心臓が飛び出しそうになるほど緊張した。呼吸を整えて汗をぬぐう。
怪しまれないように銃をリュックにしまいこみ、大きく深呼吸をした。
「あれ?永山じゃないか。おーい!」
さも偶然見つけましたという風に叫んで永山の元に駆ける。すると彼女も気付いたのか逃げるどころか駆け寄ってきた。
それは映画のラストシーンのようにも見えて石山の心を満たす。
「あ、石山君……一人?ねえ、田中君知らない?石山君が来た方角に行ったはずなんだけど」
とたんに心が冷めて幻想が晴れていく。もう戻ってこない相手を待ち望む彼女が哀れに思え、どこか笑える。
けれどいずれ自分のものになると思えば許せた。
【石山広明】
【現在位置:G-06 鷹野神社】
[状態]:健康、精神的に危うい
[道具]:支給品一式 ベレッタM92F(残段12+1) 予備のマガジン×1
[行動方針]:永山と最後まで一緒に行動する。
【永山朱鷺】
【現在位置:G-06 鷹野神社】
[状態]:健康
[道具]:支給品一式 不明支給品
[行動方針]:石山と会話。田中を待つ
【午後:14〜15時】
【田中一也:死亡】
田中の荷物は全てG-06 鷹野神社から少し離れた位置に死体とともに放置されています
――残り49人
タイトルは【彼女は災いの元】です。
ごめん田中君……
イマイチかきてーな
マーダー第一号は石山君か。
>>184 なかなか書くペースが早いですね。
>>184 まさかの石山マーダー化乙!
これからどうなるか楽しみだよ
なかなかおもしろくなりそうですね
次が楽しみです。
書き手が三人か
これって大変じゃね。全員登場までいくのか?
もういい。
書き手とまとめが満足してくれればそれでいい。
前向きに行こう!
SS書くのって力量より度胸なんだよね、意欲が大事
最初はラノベ片手に1〜3Kくらいのものでもいい。
登場話なんて大して長文である必要ないしやってみたらどうだろう
俺?俺はロワが嫌いだから
登場話で半分ぐらい死なせる勢いじゃないとな
インパクトだけ狙ったって面白みの欠片もねーよ
地味にすすんできてるじゃねーかw
期待してる
まあ現在の書き手さんたちには頑張って欲しいし
新規の人、初心者の人でも歓迎って感じだな
◆X7WwwzkoUU
◆PhRNUx7oBQ
◆RHLa6nIQ9U
◆.Cb.m05RN
◆cx94bMr2cU等々、前作で主力となってスクロワを盛り上げた書き手さんはどこ行っちゃったんだろうな。
スクロワで力尽きたか、就職や勉強でSSを書いている余裕が無くなったか、それともただ単純にスクランを見限ったか・・・。
もしかしたら、現状の書き手の中にトリップを変えた状態で紛れ込んでいるという可能性もあるかな。
もうスクロワスレの書き手一覧に人たちは現れないのだろうか・・・
ダメだ俺には書けねえ
誰かイマイチ書いてくれ
あんまり前回の書き手にこだわるのはどうかと思うぞ
今書いてくれてる人がいるのに
>>201 いや、別に今の書き手に不満がある訳じゃないんだが・・・。
人数が少ないから心配で。
前作の人達にも戻ってきて貰えれば心強いかなって思って。
つか、企画始める前から呼びかけてるわけでもなし、前の人が前の人が〜って。それは無いわ
今から書こうって人の意欲を削いでるだろ
別にこのままダラダラやってりゃいいじゃん
やってりゃ書く人も増えてくだろ
>>184 乙!
石山マーダー化は俺も考えてたw
ただし犠牲者は永山だけど……
個人的には、ロワが成功するかどうかはスタートダッシュにかかってると思う。
見切り発車的にスタートした割には書き手も何名か居るし、心配いらんよ。
ってことで、天王寺・三原を予約。
これって後先考えずやってるの?
思いつきネタですが投下しようと思います
【Dear My Best Friend……】
彼の怒りに火を注いだのは支給された一枚の手紙だった。
送り主は考えるまでもない。自らの主、ショーンである。わざわざ手書きのそれは最も信頼する君に送るなどと書いてあった。
手紙にはやたら細かい文字で様々なことが書いてあった。例えば火つきが悪いであろう日本人達に刺激を送ること、
要するに彼らを殺し恐怖を振りまく等して楽しいゲームになるよう努力しろ――といった趣旨の命令。
他にもショーンがいかにしてこの企画を実現させるために金を使ったかなどとくだらない愚痴から
凝っている美術品の価値云々、最近手に入れた女やゴルフのベストスコア更新したなどと完全に逸脱した話題、
友人を危険に晒すことを心苦しく思う、ウィリーも無念そうだったなどというあからさまな嘘偽り、
そして他の参加者が得ることができない情報――例えば首輪に内蔵された盗聴器等を知った。
情報は武器になる。これらを駆使して鋭意努力して欲しいとのことだ。だがそれはもう手元にない。
読み終わった後でふざけるなと激昂し、半分に裂いて捨ててしまったためである。
もう奴のいうことは相手にしない。飼い犬は廃業し後は自分の好きにさせてもらうとマックス・ホフマンは決めていた。
ショーンはもはやボスではない。確かに彼のおかげで学校に行けたし仕えていれば人並みの生活はできた。
汚い仕事もやらされたし雪ぎきれない屈辱を味わったことも少なくない。だがそれは泥の中で生きる自分達が
少しでもまっとうな光を得るために必要な対価だと耐えてきた。
(けどそれもこれまでだなショーン。てめーから俺達を切り捨ててくれるとはよ)
もしこれが自分と何の関係もない、ただショーンに対立している勢力との争いで、
なおかつ友人がゴミのように始末されることがなければ従ったかもしれない。
だが今やショーンは彼女の幸せを脅かす存在で、何より親友サミュエルの仇と化した。
何としても一矢報いねばならないと彼の心は煮えたぎっていた。別に義憤や使命感に鼓舞されたわけではない。
ごく一部を除いて日本人などどうでもいい。邪魔なら排除する、歯向かうなら叩き潰すのみ。そう考える。
――そのごく一部に出くわすまでは。
ほっそりとした人影が目に入る。彫刻のように整った、見目麗しいその横顔は相変わらずだ。
彼女は顎をあげてきょろきょろと周囲を伺っているようだった。警戒というよりは人を探しているような動き。
隠れようとしないのは自分のように腕に自信があるからではなく、戸惑いと焦燥に駆られているためだろう。
やがてこちらの姿に気付くと彼女はつかつかと怒りを感じさせる足踏みで近寄ってきた。
けれどもいつものように皮肉気味に受け答えする術しか自分は持たない。
「ようハーフジャパニーズ」
「あなた!……これは一体どういうことよ!あいつは、ショーンは何を考えてるの!皆は何も関係ないじゃない!
私の家は何も逆らってない、言うとおりにしてたのに!何で皆を巻き込むの!」
浅からぬ縁を持つ少女――沢近愛理。親の仇を見るような目でこちらを強く睨んでいた。
燃え立たせるような瞳には強い意志が感じられてあかあかと輝いている。
自分をショーンと同類と思い込み、その憎しみをこちらへ向けているのは明らかだった。
それも仕方のないことだろう。対外的には己はショーンの忠実な部下なのだから。
自分達は彼をボスと呼ぶが、彼は自分を友と呼ぶ。もちろん本心からそう思っているわけではなく
ショーンが周囲に自らの人柄をアピールするための一要素に過ぎないのだが。
「ショーンの考えなんざいつだって分からねえ。やれって言われりゃ黙ってやるのが俺達だ。殺しでも誘拐でも脅迫でもな」
「!……あなた、まさか既に」
こちらを射抜くような視線に、口元に笑みを浮かべながら首を横に振って答える。
沢近はほっと息を吐きすぐさま表情を引き締めた。
「意外と早く会えてよかったわ。あなた達の思い通りになんてさせやしないから」
「好きにしな。で?何だ、俺を殺してみるか?」
「バカ言わないで。それじゃあなた達と同じになっちゃうじゃない」
彼女との久しぶりの会話には剣の切っ先を触れ合わせるような危うさがある。けして望んでやってるわけではないが。
「おい。一応言っておくが俺は別に……!」
そこまで出掛かって喉元で止まる。完全に無関係というわけではないのだ。処分してしまったが命令書を貰っている。
飼い主と犬の関係が終わったと思ってるのは自分だけで彼女にはそうもいかないだろう。
「別に?何よ。関係ないっての?信じられないわね」
「チッ」
こうなるのも仕方ないとマックスは一人ごちた。自分のしてきたことを考えれば信じろというほうが無理がある。
ショーンが憎いのは自分も同じだ、命令は受けたが従う気はないと主張しても今の状態では余計にこじれるとしか思えない。
(結局手のひらの上か。報われねえな)
マックスはこれ以上会話しても何にもならないと見切りをつけた。沢近を無視して先に進もうとする。
結局自分は何一つできない汚らしい犬。こうやって背を向けて本心から逃げるしかできない。
できることなら沢近を守り支えたかった。彼女は手強い意志のむこうにある弱さを隠しきれていない。
ショーンとの間柄に負い目を感じているのか、どこか焦っているように見える。何をしだすかわからない。
一人にするのは心もとないが本人が同行を認めるはずもなく――
「待ちなさいよ」
「?」
そっけない声が聞こえるのと同時に、逃げ去ろうとしたマックスの腕を、沢近のか細い手が強く握った。
「あんたみたいな危険な奴を野放しにすると思ってんの?一緒に来てもらうわよ。誰も傷つけさせないわ」
身体の中を奇妙な感触が駆け巡る。それはマックスにとって百の流れ星を見たような幸運だった。
「……はあ!?何言ってやがる。笑わせんな、テメーに俺を止められると思ってんのか?」
「ぅ……それがどうしたのよ。甘く見ないで、私はもう昔とは違うんだから!」
はっと我に返り急ぎ睨みを利かせてみても、すぐさま気丈に睨み返される。
腕をつかむ力はその気になれば振りほどける何でもないものだ。軽くあしらうことができるだろう。
だが不信故の言動であったとしても断る理由はなかった。妙に疼く胸の高鳴りを隠して精一杯の返事を返す。
「……勝手にしやがれ」
「ええそうさせてもらうわ」
それだけ言うと二人は道なり道に歩いていった。遥か後方、草葉の影からの視線に気付くことないまま。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
「……まさか沢近さんと留学生共がグルだったなんて」
二人の姿が見えなくなったその場所で悲劇の少女――種田芽衣子は恨みがましくつぶやいた。
親友の羽根子の死を嘆きつつ島をさまよい歩いていたら偶然マックスを見かけ、
そのまま二人の会合を覗き見してしまったのだ。何を喋っていたかは見当もつかない。
種田は強く羽根子の仇であるショーンを……彼とその仲間を恨んでいた。当然その中の一人、マックスなど許せるはずもなく
彼らと争うどころか会話するような人間も同じだった。そして脅されてる様子もなくむしろ高圧的な沢近。
悲しみと憎悪に駆られた頭で出した結論は一つ。ハーフとはいえ彼女もイギリス人。あちら側の人間なのだ。
でなければ顔に傷のある見るからに恐ろしそうな男と共に歩くはずがない。
留学生が殺し合いに参加しているのはおそらく殺しを促進させるため。疑惑と騒乱の種をばらまく役目があるに違いない。
自分達の調和と信頼を崩そうとするとんでもない連中に思わず吐き気がした。そして彼らの協力者が沢近愛理である。
(沢近さん!あなたって人は!)
このことを皆に伝えなくてはならない。だが沢近愛理はクラスでも人気者だ。
自分のような地味な人間の言うことを誰か信じてくれるだろうか?普通なら無理だろう。だが彼女には自信があった。
手の中とポケットにあるそれは強い自信を与えてくれる。
(これでばっちり撮ったもの。きっと大丈夫)
両手の中にある手のひらに収まるサイズのデジタルカメラを握り締め、ダメ子はほくそ笑む。
そしてこれには何かを話す二人――腕をつかむ沢近――並んで歩く二人――等々、数多の写真が収められている。
最新型らしく、遥か後方であってもズーム機能のおかげで顔を確認することもできた。
そしてポケットの中の紙切れをもう一度見る。マックスを尾行していた時風に乗ってこちらにまで届いたものだ。
「でぃあ、まいべすとふれんど、マックス……!」
これはどうやら手紙の一部。だが英文でしかも筆記体の手紙などとても解読できない。
自分に何とか読み取ることができたのは先頭の部分だった。けれどもそれだけで証拠として十分。
これはおそらくショーンが奴に送ったものだろう。自分の予想を裏付けるものだ。
写真と手紙。この二つがあればクラスメイトも説得できるに違いない。
(皆、早まっちゃダメだからね。パニックになって殺しあうなんて奴らの思う壺だよ)
強い決意とともに立ち上がると、種田はマックス達とは反対側、平瀬村のある方角へ走っていった。
【マックス・ホフマン】
【現在位置:D-07】
[状態]:健康
[道具]:支給品一式
[行動方針]:ショーンに復讐。沢近と行動
[備考]:ショーンの手紙の内容を知っていますが、今は話すつもりありません
【沢近愛理】
【現在位置:G-03】
[状態]:健康、ちょっと焦り
[道具]:支給品一式、不明支給品
[行動方針]:マックスを警戒しつつ皆を探す
【種田芽衣子】
【現在位置:G-03】
[状態]:健康
[道具]:支給品一式、最新式デジタルカメラ、ショーンの手紙(上)
[行動方針]:マックスと沢近のことを皆に知らせる
[備考]:留学生達と沢近がグルだと思っています
※ショーンの手紙
ショーンからマックスへの手紙。大事な情報からくだらない豆知識まで多種多様なことが書いてあります。
ただし英語なので解読には相応の知識が必要です。破られて(上)(下)になっており(下)はどこかに行きました
すいません沢近もダメ子も現在地はD-07でした。
早々に盗聴器を明かしていいものかちょっと悩んでこんな形に
GJです。
今気づいたが今回は名無し様はないんだな
>>217 今回は名無し様をやるとしたら、ハネ子一人のコーナーになってしまうからな。
>>215 今度は播磨じゃなくて、沢近包囲網かwww
面白そうな展開だ。
全員登場まであと41名…
今鳥ムズいな
1書き手につき14人くらいか
大変だな
Zさえ始まれば……
書き手も大変だろうし
こういう話があったらいいんじゃないかとかネタだしするとか
それは余計なお世話ってもんだ
こんなとこでネタばらまかれたらたまらんわ
それじゃ、播磨に原作であまり接点の無かった女の子とコンビを組ませて見るというのはどうだろう?
さくらんぼの順子もいいし、他に鬼怒川とか、ララとか。
書こうと思っているがどうしたものか……仕事が忙しいからな……
1stから見守ってきた俺で、ほかのロワでも一応活動しているしここは予約すべきか
明日までに予約が入ってなければ書くことにするよ
【blue】
「は〜〜あメンドくせ」
ごろりと横になり、さっそくやる気を無くしているのは、2-C屈指のアホと名高いこの男、今鳥恭介。
目覚めたばかりの彼は、早くも勝負を投げつつあった。
理由はさっぱり分からないが、どうやら自分とそのクラスメイトたちは何やら妙なゲームに巻き込まれたらしい。
眠らされる前のことを思い返してみると、何でも最後の一人になるまで殺し合わなくてはいけないのだそうだ。
「アホくせ」
今鳥は呟く。
「なんで俺がそんなかったるい事しなきゃなんねーんだよ、やってられるかっての」
元来面倒くさがりの彼のこと、たとえ自分の命が懸かっていようとそうそう能動的にはなれない。
クラスメイトと殺し合うなどという、面倒なことこの上ないゲームに参加する気など毛頭無かった。
「このままここで寝てりゃいいか」
今鳥が目覚めた場所は、どうやら神社のようだった。
誰もいない境内を見渡しながら、ついいつものあの歌を口ずさんでしまう。
「…イチたすイチは2〜…2たす2は4〜…」
ふと、心に何か引っ掛かるものを感じる。
「そういやあ…イチさんも、どっかにいるんだよな」
出会った頃こそ逃げ回っていたが、この一年間何かと縁のあった、一千万パワーの少女のことが脳裏をよぎる。
当たり前のことだが、彼女も自分と同じくこのゲームに巻き込まれてこの島のどこかに放り出されているはずだ。
それはつまり…クラスメイトとの殺し合いという残酷な現実を彼女も突き付けられているということなのだ。
「…大丈夫なのか?んなこと…できる女じゃねーよなァ」
いつだったか、彼女の涙を見たことがあった。いつもの彼女とは違う、弱く脆い少女。一千万パワーとはいえ、心はか弱い女子高生なのだ。
突然このようなゲームに参加させられて、平気でいられるとはとても思えない。
「…………」
それに。
彼女のことを考えると同時に、他のクラスメイト達のこともやはり思い出してしまう。
グラサンにヒゲの馬鹿のこと。欝陶しい馬鹿メガネのこと。褐色の留学生のことや、アメリカかぶれの馬鹿のこと。
そうだ。
手強い奴らはウヨウヨいる。いくら一千万パワーの彼女でもかなわないかもしれない連中がこの島にはいくらでもいるのだ。
「………ったく」
今鳥はいつの間にか立ち上がっていた。
「しょーがねーなァ〜〜」
放り出していたリュックを引っ掴み、急ぎ足で歩きだす。
「イマイチ気分は乗らねーが…」
今鳥は、いつか感じたような、なんだかモヤモヤとした…妙にイライラする気分を今また感じていた。
自分の知らないところで彼女は死んでしまうかもしれない。
そう思うと、もはやこのままこの場で寝転がっているわけにはいかなかった。
「待ってろよ、ピンク」
自分に言い聞かせるように呟き、ブルーは振り向かず神社を後にしたのだった。
【今鳥恭介】
【現在位置:E-02】
[状態]:健康
[道具]:支給品一式+未確認支給品
[行動方針]:とりあえずピンク(一条)を探す。モヤモヤしてます。
[備考]:基本的にやる気はありません。殺すのも殺されるのもごめんだと思っています。
うおさき越されたorz
乙〜やっぱり今鳥やる気ないなあ
まだ見ぬイエローグリーンブラックは出てくるのか今後に期待
>>216 乙です
沢近包囲網とマックスの恋の行方が楽しみだ
>>227 今鳥のセリフでイマイチ言われると妙な気分になるw
あとハリー・マッケンジーと雪野美奈を予約で
5:岡 樺樹
17:播磨 拳児
17:砺波 順子
を予約しようかな……
今回は違う方針で……
>>233-234 どっちも頑張ってね。
ところでロワもそれなりに起動に乗ってきた所だし、そろそろ前作のような仮まとめサイトが欲しい所だな。
>>223 本スレに使えそうなネタがあったから一応置いとく。
893 :名無しさんの次レスにご期待下さい:2008/08/10(日) 16:55:36 ID:raePD0q20
実はおキヌが好きなのはウメで
円を絡めて陸上部内のドロドロな三角関係が描かれる。
そう考えていた時期が俺にもありました。
このネタ、スクロワに使えそうにないかな?
【サダメ】
不安定な山道を男が歩いている。
スラリとした体で為される所作には無駄がなく、どこか洗練されたものさえ感じる。
木々の間から差し込む陽に金糸が輝き、それがまた一層その男の姿を引き立てる。
サングラスで表情を隠したその男はあてど無くブラブラと山道を歩いていた。
目覚めてからしばらく歩くとと建物の前に出た。
目の前には赤で塗られた鳥居。日本の宗教的建造物だと聞いたことがある。
つまりここは――
「お寺カ……」
石段に腰を下ろす。
ここに来るまで歩きながら様々なことを考えてきた。
ここはどこなのか。これは何なのか。何故自分達なのか。彼らの目的は何のなか。
そしてこれから自分はどう行動すべきなのか。
一番楽な選択はこのゲームに乗る事だろう。つまり人を殺すということ。
相手方の戦力も分からず、文字通り首輪をつけられ、命を握られている現状では、仲間を集めて反抗するよりも、
たった一つの椅子を賭けた命がけのゲームに乗る方が賢い考えだ。
なぜなら私にはこの争いを勝ち抜く力がある。
それは理解している。
ただこの一年弱の短い時間の中で思いのほか多くの大事なものが出来てしまった。
自分は彼らを殺せるだろうかと自問する。
……きっと殺せる。自分は酷薄な一面も持ち合わせている。
しかし出来るならば殺したくない。彼らとともに無謀な反抗を行って命を落とすのも悪くないなんて考えも浮かんでくる。
「自分では決められないナ」
幸い財布は無事だ。コインに決めて貰おう。
裏ならゲームに乗る。そう決めて手元のコインを高く弾いた。
綺麗に回転しながら宙を舞うコインが太陽の光を浴びて眩く輝いていた。
「これも運命カ」
独り言を呟きながら支給された道具を見つめる。
ワルサーP99。
手元あるこの銃はそういう名前らしい。
黒く冷たい鉄の塊。人の命を奪うための道具。
手にズシリとくる重さを感じる。これから奪っていく友の命はこれ以上にずっと重いものとなるのだろう。
当然、別の人間に彼らが殺される可能性もある。
しかし私がゲームに乗ればきっと彼らはその前に立ちはだかるだろうという妙な確信がある。私の友人達はそんな人間だ。
彼らとの記憶を反芻する。どれも大切なものばかりだ。
バッグの中のペットボトルを取り出し飲んだ。乾いた喉が潤される。
大丈夫だ、きっと殺せる。そう頭の中で繰り返し呟き、手の中のワルサーを強く握りしめた。
思考にふけっているうちにいつのまにか森の方から泣き声が聞こえるのに気づいた。
石段から腰をあげ、バッグを肩に担ぎそちらに足を向ける。
この声の主が私の最初の獲物だ。
出来ればあまり知らない人間であって欲しい。
1人殺せば心の中に残る僅かな迷いも無くなるはずだ。そうすれば彼らに会った時に躊躇い無く引金が引ける。
音を立てぬ様に慎重に足を運び、声のするほうに近づいていく。
女性の声のようだ。
空気が重い、銃を握る手が汗でべとつく。
これも最初だけだ。次からは道端の石ころ蹴飛ばすように何にも思わなくなる。
大きく息を吐いた。
だんだんと泣き声が大きくなってくる。
大きな木の根元。そこに彼女はいた。
ソバージュのかかった茶髪。抱えた膝に頭をうずめているため顔は見えない。
どちらにしろ知らない人間だ。無意識のうちに肩の力が抜ける。
茂みの間からじっと見つめる。彼女との距離は6ヤード程。
確実を期すためにもっと近づきたい。
ここからでも命中させる自信はある。しかし人を殺すのも銃を撃つのも初めてなのだ。
これまでよりも慎重に慎重に、そして息を殺して彼女の背後に回るように移動する。
あっけないほど簡単に移動は成功した。距離は1ヤードもない。
彼女がこちらに気づいた様子はまったく無い。
先ほどと変わらず嗚咽を漏らしている。
その嗚咽には人の名前らしきものが混じっている。
家族の名前だろうか、友達の名前だろうか、恋人の名前かもしれない。
しかしそれは私には関係なことだ。かぶりを振って思考を打ち切り、彼女の側頭部に銃口を突きつける。
後は引金を引くだけだ。
そうすればこの森と私の頭に絶えず響く嗚咽も途切れる。
簡単なことじゃないか。何故それが出来ない。
彼女が抵抗してくれればその瞬間に引金を引けるはずだ、そう思い銃口を彼女に向けたまま彼女の前方に移動した。
しかし彼女の様子は一向に変化しない。変わったとすれば嗚咽がより一層大きくなったことか。自分の死が近づいている
ことは分かっているのかもしれない。
このままなら彼女の泣き声を聞きつけて、他の参加者が寄ってくるだろう。
早く始末しなければ不味いそれはよく理解している。なのに引金が途轍もなく重い。
今の私はきっと苦虫を噛潰したような顔をしているはずだ。
歯軋りの音が聞こえる。
自分がフェミニストなのは知っていたが、ここまで甘い人間だとは思っていなかった。
いや、この日本でのぬるま湯のような生活で甘くなったのかもしれない。
クソッ、と自分を内心で罵りながらもどこかほっとしている自分がいることにも気づく。
友の顔が浮かぶ。ああ、悪くない気分だ。
これも運命なのだ。
「お嬢さん、立ってくだちイ」
いまだ泣いている彼女からは反応がない。腕をとり強引に立たせる。
目元が真っ赤になって腫れている。鼻水も垂れていて酷い顔だ。
ポケットからハンカチを取り出し彼女の顔を拭う。
彼女は涙も止まってされるがままにキョトンとしている。
混乱の極地に達したせいなのか。
あらかた拭い終えると、ハンカチはグチャグチャになってしまった。
その分彼女の顔はすっきりした。
目元の腫れは仕方ない、よく見るとなかなか可愛い顔をしている。
「え?あの……ハリー君?」
泣き続けたせいで少し嗄れているが決して声も悪くない。
「そうです。ハリー・マッケンジーです。君のような可愛い子に名前を知ってもらっているなんて光栄でス」
彼女の手を取って、お寺に戻る。
「え、あの、そうじゃなくて……えー! か、可愛いなんてそんな」
後ろで彼女が何か言っている。
いつかのサムライの言葉が蘇る。
――知らねーのか?ケツからブチ抜くのが最高にカッコいい勝ち方なんだぜ?
ああ、そうかもしれないな。
私を巻き込んだことを主催者達に後悔させてやろう。
「あの急にお付き合いってのは駄目だから、まずは友達からで、ね。いやハリー君のことが嫌いってわけじゃないの。
むしろ是非お願いしますって感じなんだけど、そのへんは節度もってというか、安い女じゃいられないというか……」
後ろで彼女はまだ何か言っている。日本語は難しいものだな。よく理解できない。
【ハリー・マッケンジー】
【現在位置:E-02】
[状態]:健康
[道具]:支給品一式、ワルサーP99
[行動方針]:主催に反抗。東郷達に合流。雪野を守る。
[備考]:それほど雪野に興味ありません。
【雪野美奈】
【現在位置:E-02】
[状態]:混乱。勘違い。
[道具]:支給品一式
[行動方針]:友達でもキスまではOK
[備考]:意外とアホの子です
えー投下完了です
ハリーには前回マーダーとして活躍してもらったので今回は反主催ということで
雪野に関しては前回のやつにイメージが引っ張られた感もある
>>225 播磨と榛名でちょっと書きたいな
>>242 乙カレ。
今回のハリーは対主催か。
雪野はすっかり、前作でアホキャラのイメージが付いてしまったんだな。
あいやー
ありがとう
ワルサーの残段数は16です
予備に関しては他の人に任せます
乙!ハリーは対主催か
となると強烈なマーダーが欲しいなあ
ハリー達は今鳥のすぐそこにいんの?
>>243 乙です。
前回と違う行動方針のハリーがこれからどのように動くのかが楽しみだ。
マーダー候補って何がいるかなあ
マックスとハリーが対主催は・・
251 :
Classical名無しさん:08/08/11 01:41 ID:md/KGAWA
天王寺とか烏丸とか花井とか播磨とか東郷とかララとかいくらでもいるではないか
播磨ならやってくれるさ
烏丸がランダムに発症すると期待できる
【Les Miserable】
(――オゥ、いいガタイしてんじゃねーか。格闘技でもやってんのか?)
(――い、いや、俺、ボディガードやってる。ボスの護衛)
(――へぇ、お前にも妹が居んのか)
(――あ、ああ、俺の妹、スゲー可愛い。 だから俺、ぜったい守る)
(――そうそう、やっぱ兄貴ならそーだよな! わかってんじゃねーか!)
(――家族大切にする奴、悪い人いない。 だから、お前もいい奴)
(――はっはっは、気に入ったぜ、兄弟!)
(――おいおいおい、それはねーだろ。 お人好しにも程があるぜ?)
(――い、いや、これは譲れない。 いくら親友でも、俺の考えは曲げられない)
(――お前だって散々苦労してきたんだろーが。 なのに「罪を憎んで人を憎まず」って、お前バカか?)
(――う、うん、俺多分バカ。 だけど、それでも構わない)
(――そこは否定しろよ……まぁ、てめーの考えにいちいち口出しする気はねぇけどよ)
(――けど、お前このままだと、絶対長生きしねーぞ?)
「――――!!」
身長2m近く・体重100kgを優に超える巨漢の天王寺昇が眼を覚ました場所は、島の海岸沿いの一角だった。
眼前には一面の砂浜と青々とした海が広がり、所々でウミネコの鳴き声が聞こえる。
まだ記憶がはっきりしない頭を抱え、気だるそうに体を起こす天王寺。
仰向けに寝ていたので、ジャージの背中部分が砂まみれになっていた。
ザーッと音を立てて零れ落ちる砂粒と共に、砂嵐状だった彼の記憶も次第に甦っていく。
「――畜生、夢じゃねぇのかよ……」
砂浜で片膝を立てながら呟く。
記憶が戻ったところで、良い事など何一つ無い。
高校2年最後のイベントで得た友情は、あまりにもあっけなく散ってしまったのだから。
あの時、寝る前に発した一言が、何度も頭の中で繰り返される。
「クソッ、やっぱ俺の方が正しかったじゃねぇか……」
バカヤロウが、という小さな罵声が口をつく。
事情を知らない人間が端から見れば、子供が不貞腐れているように見えなくもない。
……規格外のサイズ、という事実を除けばであるが。
実際、海岸線沿いに座り込む天王寺は、遠くからでも非常に目立つ。
なので、近くを通りかかった生徒が彼の姿に気付くのに、さほど時間はかからなかった。
(あれって……もしかして2−Dの天王寺君、だっけ? うっわー、でか……)
声の主は、日焼けした肌の上に抜群のスタイルを備えた“褐色のマーメイド”(命名:西本&冬木)こと三原 梢。
コルト・ディフェンダー……所謂『護身用小型拳銃』と呼ばれる、およそ女子高生には似合わない獲物を手に、砂浜に突如表れた巨大な影を呆然と眺めていた。
彼女は当初、ゲームに乗った人間を警戒しつつ海岸沿いの道路を歩いていた。
だが、眼前に広がる見事な海岸線を前に、ついついサーファーとしての血が騒いでしまう。
「いいなぁ……ここの波。 ボード持って来れば……、って無理か」
明らかに場違いな言葉を口走った三原は、未だに昨日の惨劇を信じられなかったのかもしれない。
彼女の言動自体が、用心深そうでありながら極めて無防備な今の状態を裏付けていた。
そんな折に表れた、砂浜の一角を塞ぐ岩のように佇む巨漢・天王寺。
『――これから、皆さんには殺し合いをしてもらいます』
英国風の優男から出た悪魔のような言葉が、三原の頭を通り過ぎていった。
「……誰だ、手前ぇ」
「三原よ。 2-Cの生徒、三原梢」
空高く昇った太陽を挟んで、海岸沿いに佇む二人。
三原の手に握られたステンレス製の銃身が、不自然に輝く。
「で、俺に何の用だ」
「別に、特別興味があるってワケでもないんだけどね」
「なら、さっさと消えろ。俺ァ機嫌悪いんだ」
「……やっぱりそう言うと思った」
三原は知っていた。
天王寺が何度かサーファーだらけの海岸を訪れ、その度に喧嘩騒ぎを起こしていたのを。
だから、彼の素っ気無い対応自体は、彼女の想定内であった。
「――けど」
「我侭言わないで、アタシの言う事聞いて欲しいの」
拳銃を握った右手が、ゆっくりと天王寺の方へと向けられた。
「テメェ……どういうつもりだ?」
「どういうつもりって、見たまんまよ。 大人しく従ってくれないかしら」
「ゲームに乗るってのか? このクソみてぇな悪ふざけに」
「まさか」
クスッ、と三原が哂う。
「ただ、アタシは誰かに殺されるのは嫌なだけ」
「……それが、俺を襲う事とどう関係があるってんだ」
「冗談。 あんたを襲うなんて危な過ぎるわよ」
「なら、一体何だってそんなモン――」
「ボディーガードよ。 アタシ一人じゃ危険だから、盾になって欲しいの」
「――んだとコラ?」
あまりにも身勝手な三原の言い分。
そして、癇に障る“ある言葉”が、只でさえ不機嫌な天王寺の心を最悪な気分へと駆り立てた。
(マズいな……もしかして失敗した?)
余裕綽々に見えた三原だったが、実のところは、単なる虚勢に過ぎなかった。
『カツアゲ対処法大特集〜不良の喧嘩同士は、8割方ハッタリ〜』
先週、兄から借りた雑誌に乗っていた記事の見出しである。
本人なりにアレンジして実践してみたものの、所詮は付け焼き刃に過ぎない。
……そもそも、不良である天王寺相手に下手なハッタリなど通用する訳が無いのだが。
「――冗談のつもりか?」
(や、ヤバいヤバいヤバい、どーしよ……完全にキレちゃってる)
「だとしたら笑えねーな。 ……どっこいしょ、と」
片膝をついて立ち上がる天王寺。
頭一つ分を優に越す身長差のおかげで、否が応でも恐怖感が割増しされる。
(ちょ、ちょっとちょっとマジで怖いって。 ってか銃取り上げられたら終わりじゃん)
改めて自分の状況を把握し、心の中で半泣きになる三原。
加えて、
「高校生がそんなモン持ってたらいけねぇ……って事で、没収だな」
(アンタだって高校生じゃないのよー!!)
野太い声と共に山のような巨体が迫って来たら、本人にとっては堪ったものではない。
だが。
(えーい! こうなったら――)
中学時代のトラウマを未だに引き摺っていた所為だろうか。
――騙される位なら、騙される側に回ってやる――
素直に謝れば良いものを、彼女は何とかして天王寺を利用してやろうと無茶をして――――
――バァン!!!
「「!!」」
あろう事か、最悪の結果を招いてしまう事となる。
「――――っ痛てぇぇぇぇ!!」
太腿の肉を抉り取られた天王寺が、叫び声を上げる。
呆然となって、その場に立ち尽くす三原。
数刻。
「………んの野郎がぁぁぁぁ!!」
天王寺の怒号と共に、
「キャァァァッッ!!」
三原の持っていた銃は体ごと弾き飛ばされ、波打ち際に転がっていった。
「――やだやだ助けて助けてぇ、誰かぁー!!」
「るせぇ、とんだ目に遭わせやがって!! 大人しくしやがれ!!!」
波打ち際で戯れる男女……なんてロマンチックな表現とは程遠い、端から見れば乙女の貞操の危機まっしぐらな展開を地で行く二人。
「おとーさーん!!!」
「やかましい! さっさと黙って――」
――そんな修羅場真っ只中な状況を打破したのは、
「お兄ちゃーん、助けてよぉー!!」
「!!!」
…………皮肉にも、兄の助けを求めて泣き叫ぶ“妹”の声だった。
「んな……俺は…………」
冷や水を浴びせられたような表情のまま、固まる天王寺。
「ぅぅ………ひっく…………」
自分の下に組み敷かれた形で横たわっているのは、髪の毛や背中を濡らし、涙をボロボロ零す少女。
目尻から顎にかけて流れる涙跡の先には――鎖骨とジャージの隙間から覗く下着。
ゴクリ、という音が脳裏に響く。
同時に、ひっ、と小さな声が上がる。
「…………?」
だが、声の持ち主は、自分の上に覆い被さる巨体の動きが止まった事に気がつくと。
「…………!」
恐怖に怯えた眼を、
「―――!!」
憎しみの瞳へと変え、
「――――でぇぇぇぇいっっ!!」
「#$%&’!?」
左足に乗せた怒りの一撃を、真っ直ぐ上方のアレに叩き込んだ。
「ぐぉぉぉ……!」
クリーンヒットは免れたものの、爪先が急所を抉り、再度のたうち回る天王寺。
その横を必死で這いずって逃れ、波打ち際ギリギリの所に跳ばされていた拳銃を再び握り締める三原。
だが、本人達は必死でも何処かコミカルさが残っていた先ほどの光景とは違い、今の空気は冗談で済まされるようなものではない。
――バァン!
「ぐっ……!」
近付き様に放った三原の一撃が、今度は天王寺の肩に食い込む。
「……殺してやる」
「な――手前ぇ、さっきと言ってた事が違」
バァン!
「……!」
容赦ない追撃が、天王寺の側頭部を掠めていく。
(――おいおいおい、マジかよこいつ!?)
「予定変更よ! あんたみたいなケダモノ、絶っっ対ぶっ殺してやる!!」
周りの景色が急速に歪む。
辺りの音が遮断され、突如錯覚。
周囲のモノすべてが、コンマ一秒単位で動いていく感覚。
(冗談じゃねぇ、こんな所で死んでたまるか!
俺のダチをゴミみたいに殺しやがったあの野郎の―――)
……そして、天王寺の思考を遮った一言。
「ボディーガードにすら使えない奴なんか、役立たずに決まって――」
――――
――――――
―――――――――メキョッ。
『――ボディーガードの分際で口答えするなんて、役立たずだよね』
ショーンとやらが去り際に呟いた、あの言葉。
耳にこびり付いたまま未だに頭から離れない、呪いにも等しい言霊(ことだま)。
あいつが、友を殺した。
歩行祭を台無しにし、皆を下らないゲームに巻き込んだ。
そして……俺を怒らせた。
全部、あいつのせいだ。
だから。
そう、だから。
ここにあるモノは、俺の所為じゃない――――
【天王寺 昇】
〔現在位置〕I-04
〔状態〕銃創×3(太腿・肩・米神、いずれも軽症。全速力で走るのは困難)、急所片側擦過傷。 茫然自失
〔道具〕支給品一式、不明支給品(リュックには銃弾による穴が開いています。不明支給品や飲料が無事かどうかは不明)
〔行動方針〕とりあえず、この場から離れる。三原の支給品&銃(残弾3発)をどう扱うかは不明
【三原 梢】:死亡
〔備考〕死体は波打ち際に横たわっています。 首には絞め痕あり。
また、天王寺の返り血&着衣の乱れにより、発見者次第で新たな誤解を受ける恐れがあります
【午後2時〜3時】 ――残り48名
以上です。
何か不備がありましたら指摘願います。
GJ!
1stの優勝者が早々に脱落か
今度の天王寺は吹っ切ってマーダーになるのか?それとも罪の意識に苛まれるのだろうか?
前回があまりにもあっけなく終わった分、今回の天王寺には期待したい
あら
名前欄消し忘れ
>>268 ハラミ・・・前回活躍しすぎたその反動だな。
天王寺の心情がなかなか上手く描けていたと思う。
乙。
波乗りサーフィン派を期待していた俺の妄想はあっと言う間に打ち砕かれてしまったぜ!
>>229 前回と逆に自分から一条に動こうとする今鳥がいいですね。
播磨や東郷ら友人のことも考えいて成長が感じられました。
あと時間は13〜14時前後でいいでしょうか?
>>246 乙です。ハリーの苦悩がよく伝わってきて雪野のボケっぷりになごみました。
雪野を制御しつつ東郷と組めるか期待です。
時間の表記がないのですが、13〜14時くらいでよろしいでしょうか?
229氏と◆mWKUMdK/Cw氏の話は同じE-02で、おそらく時間帯も似通ってると思いますが
ニアミスしたorすぐ近くということでいいかと思います。
合流するかもしれないしすれ違うかもしれない。
>>268 天王寺が今回はどう化けるか楽しみです。
三原はもうちょっと器用にすればよかったのに惜しいことです。
あとすいません。したらばの議論スレにて、高野のイタリアの話を事実にするか指摘がありました。
おそらく◆cj4OQi4css氏の作品、【小さき復讐者(リベンジャー)】
にて高野がイタリアマフィアと戦った実績アリになっているからかと思います。
ただ実際は氏の作品投下の後で、自分が1stからのルール引継ぎで最強高野は禁止と追加してしまいました。
◆cj4OQi4css氏に修正をお願いするか、ある程度の強高野、ちょっと小悪魔なサラもOKという形にルールをあわせるか
悩んでいます。どうしましょう?
多くの書き手さんが集まってきてくれて作品も増えてきたので、そろそろまとめサイトを作ろうかと考えています。
お盆明け・・・にはできるといいかなあ。努力します
>>272 他の作品との整合性が取れるなら時間それで構いません
手をわずらわせてしまってすみません
いろいろ抜けてんな自分……
作品自体の修正が必要なら考えてみます
場合によっては没でも構いません
229氏や他の住人の方々もすみませんでした
高野に関してですが高野がある程度高い知識と戦闘力を有しているのはアリだと思いますが
イタリアでの高野を基準にするとパワーバランスが崩れてしまいかねないとも思います
それこそ1人で主催どうにかできるレベルじゃないかと
ただ前作を見ると書き手さん達が高野の扱いに苦心してたように見えましたので
書きやすいよう、あまり制限を加えずに書き手の裁量に任せたい気持ちもあります
個人的にスクラン原作の終盤になるにつれて高野のイメージがぶれてしまったので
この件に関してはあまりはっきりとした意見は持っていません
だから読み手書き手関わらず多くの意見を聞いてみたいです
まとめサイト期待してます
現在位置をまとめてみた。村に誰もいないな。北も人いねえ。これからか?
ミック・吉田山 I−10 灯台
天満 H−05
石山・永山 G−06 鷹野神社
マックス・沢近 G−03
ダメ子 G−03
今鳥 E−02 菅原神社
ハリー・雪野 E−02 菅原神社
天王寺 I−4 海岸
あとハリー組と今鳥の修正は別にいらないんじゃないの、ロワ序盤にはよくあること
銃声がしたとか拡声器使ったとかでもない。ハリーらは表で今鳥は裏にいたのかもしれん
せっかくの作品を没にしてスタートダッシュを腐らせる必要はない
高野はさすがにイタリアマフィア壊滅はまずいから一行でいいから修正して欲しい感じ
けど弱すぎるのも微妙だよな。原作終盤は烏丸とか沢近のことで役立たずもいいところだった
今鳥→E-02で目覚めてすぐピンク探し
ハリー→E-02近辺で目覚めて神社へ、ブルーはとっくにピンク探し
でいいんじゃね
まあどっちも序盤だし修正する必要ない気がする
高野の強さは書き手空気嫁でいいんでないの
修正の件、了解しました。
原作で登場したシーンを取り入れようとして、ロワ内でのパワーバランスを
軽視しかねない結果になってしまい、申し訳ありません。
尚、原作準拠の高野の戦闘力に関する別の描写
(忍びの格好で木々を跳び、冬木のカメラから逃れる様子etc.)等も、やはり
ロワということを考慮すると『ミックと同程度の身体能力』と扱った方が
しっくり来るかもしれません。
ということで、
修正前:『イタリアンマフィアを相手に銃撃戦を繰り広げた実績を持つ孤高の女子高生』
修正後:『ミック自身に匹敵する身体能力と、彼を遥かに凌駕する頭脳を兼ね備えた女子高生』
このような形で修正しようかと思います。
特に問題が無ければ、この修正案で宜しくお願いします。
あと、お手数ですが、修正案が通った場合、◆rJXTlJ7j/U氏のまとめサイト掲載分には
修正後の文章に訂正して頂けるでしょうか。
以上、長文失礼しました。
あ……あれ? お、おかしいな……
なんでこうなっちゃったかな?
初期のシナリオと違う方向にいってるような気がするけどまぁいいや
【シレン】ってタイトルでお願いします
280 :
◆HXrOGANlU6 :08/08/12 20:54 ID:AIuI79d.
「はぁ……」
何でこうなっちゃったのかな……
正面斜め20度くらいから燦々と降り注ぐ日光をさえぎる屋根。
屋根と同様に痛みが見られる木製の建物。
F-8にある無学寺に私、砺波 順子はいる。
友人の死を目の前で見せられた私の精神はぐしゃぐしゃだった。
涙が次々とあふれ出てくるし……頭の中は真っ白で……
真っ白なスクリーンには笛がバックリと砕かれた羽根子の姿が映るだけだった。
そしてジャージの下から上にかけて塗りたぐられた羽根子の血液が現実なんだと残酷なほどに示してくれる。
血液はすでに変色し始めて赤黒いパサパサしたものになっていた。
羽根子には悪いけど……体についた血液はタンパク質を焦がしたような脂っこいベタベタした臭いを発し、精神を揺さぶってくる。
そんな壊れてしまいそうな心を冷めた目線で見つめる自分もいた。
私は薬が切れて目覚めてからすぐに、リュックを担ぎここまでやってきたのだ。
ここまで来るとすぐに自分の身を守るための武器をリュックから取り出して確認する。
この間ほとんど時間はかからなかった。
羽根子の死よりも自分の命を優先している自分が少しいやになる。
同時に頭の切り替えが早い自分に少し驚くことになった。
そして今現在、私は無学寺で次の行動を考えているのだ。
優勝……無理だよね。
体育の成績は決して良くないし、沢近さん、周防さん、高野さん……
私の運動能力の2つ3つ上を行く人が何人いるのだろうか?
さらに麻生君、花井君……あと播磨君。
男子まで関わってくるのだ。
サバイバルゲームで最初のほうに戦死した私なんて優勝なんて夢のまた夢……
それこそアマチュアがオリンピック選手に挑むようなものだ。
脱出……無理……かな?
自身にはめられている首輪に手を当てる。
この首輪が爆発すれば死ぬことはもうすでに検証済みだ。
はずす方法も見当がつかない。
「はぁ……」
いっそ誰かに殺される前に自殺……
ハッとして首をぶんぶんとふり、今の考えを吹き飛ばす。
駄目だ……落ち込んでたって何も始まらない。
きっと生き残るいい方法があるはずだ。
そう思い込んで無学寺を出発しようとしたときだった。
「……ヘヘ、ついてる」
男の人の声が聞こえました。
〆
「岡……くん……」
「砺波か、沢近とか周防にはおよばねぇがソコソコの上物じゃん」
岡くんは横の茂みから現れるなりじりじりとにじり寄って来くる。
サッと血の気が引き、この人は危険だと察知する。
すぐにスカートに手を伸ばそうとする……
パッ!
紛れも無い火薬の爆ぜる音を聞いた。
直後、私の1mくらい前の地面に土煙が上がる。
岡くんが握っている1mくらいの長くて黒いもの……
社会の教科書とかで憲法第9条の欄に乗ってる自衛隊の挿絵、その隊員が持っているのに似ていた。
ライフルと言えばいいのかな? それを岡くんは持っていた。
「へへへ、ちゃんと撃てるな……これさえあれば優勝間違いなしだ!」
そういって今度は私に銃口を合わせる。
狂気にゆがんだ岡くんはやや興奮したような声で言う。
「動くなよ……もし動いたらこいつで穴だらけにするからな……」
背筋が凍るような気がした。
岡くんはじっと私を見つめ、指一本でも動かせば本気でライフル銃を発射しそうな雰囲気をかもし出している。
はっきりと銃を構えながらさらに私に近寄ってくる岡くん……
彼が何をしたいのか本能的に理解した。
銃を支えるほうの手を離し、すっと私の胸に手を添えた。
「………っ」
「へへへ……へへ……」
岡くんは興奮した笑いを浮かべながら少しずつ握力をこめていく……
私は何もすることができない。
その時、斜めから射す光が遮られ私は影に包まれた。
――ザシュッ!
まるでナイフで人を斬ったような……
「ああああああああぁぁぁあああああぁぁ!!」
いや……本当に斬った音だ。
わき腹から大量の血液を噴出しながら崩れ落ちる岡くん……
その後ろには大型の湾曲したナイフを持ったサングラスをかけた彼……播磨拳児が立っていた。
「あ……播磨……くん……」
「……………」
播磨は無言だった。
私は播磨くんの様子がおかしいと気がつくのに数秒かかった……
その数秒がいけなかった。
気配を察知し、数歩後ろに下がるが……遅かった。
血の滴る大型ナイフ……そのナイフが私の首元に当てられた。
「え?」
〆
隣子と播磨が出会う数十分前……
「…………」
播磨拳児、少しながら学習能力のある馬鹿。
彼は一本の木にもたれ掛かりながらサングラスの奥で思考をめぐらしていた。
「……最終回」
ぼそっと口から漏れた言葉『最終回』。
ちなみに彼が思考をめぐらせるときは大抵彼が惚れている女性、天満ちゃんのことである。
今回もまた然りであった。
播磨の脳内には自分と天満がこのゲームで活躍する姿だった。
「ま、待ってくれ! 天満ちゃん!!」
「いやぁあ……」
「くっ、くそぉ……」
出会いは最悪だった。
俺は小さなナイフでガトリングガンを装備した花井を殺した。
しかしその現場を偶然通りかかった天満ちゃんに見つかり人殺しのレッテルを貼られてしまう。
急いで追いかけても別の生徒が群れを成して襲ってくる。
「ウォォォオ! どきやがれ!!」
そのときの俺は鬼神のように強く一瞬でそいつらを吹き飛ばす。
「キャー!」
「天満ちゃん!!」
目の前に広がる光景に驚く俺。
「動くな、播磨……動くと殺すぞ」
烏丸が9mm拳銃を天満に突きつけているのだ。
「烏丸……またテメェか!」
「ククク……今日こそお前を殺す」
「へっ、何度でも返り討ちにしてやるぜ……掛かってきやがれ!!」
烏丸は銃を乱射する。
拳銃の装弾数をはるかにオーバーした弾幕が形成されるが播磨は分身するようにそれをよける。
「ちっ……」
弾が尽きたのだろう烏丸は肉厚なナイフで切りかかってきた。
その瞬間に播磨のサングラスが輝く。
ズシャァ!
「かはっ!」
烏丸の腹にはナイフが突き刺さっていた。崩れ落ちる烏丸。
俺は勝ったのだ……
「天満ちゃん……」
「拳児……!? 危ない!!」
直後後ろに気配を感じる。烏丸だ……烏丸は生きていてこちらに銃を向けているのだ。
「ぐっ……しま……」
「道ずれだ……播磨!」
俺はくるべき痛みに身を硬くする……しかし衝撃は来ない。
恐る恐る目を開けると烏丸は額に銃撃を食らって死んでいた。
「天満ちゃん……」
天満の手には小さな銃が握られている。彼女が撃ったのだ。
その後二人で島を歩き回り次々と強敵を倒していく。
そしてとうとう二人っきりになったとき……
「お前は生きろ……お前との過ごした時間は短かったが……楽しかったぜ。好きだ……」
自分の頭に突きつけたリボルバーの引き金を引く……
俺の薄れ行く意識で泣きながら俺を見取ってくれる天満ちゃんの顔を見る……
「完璧だ……」
何が完璧なのだろうか? それはさておき現時刻をもって彼の行動方針は決まってしまった。
まず天満以外を全滅させる。
クラスメイトという所は少々心が引けるが俺と天満ちゃんろラブロードの礎になってもらう。
そうと決まれば彼は行動に移した。
妄想で出てきたとおり彼に支給された武器はナイフ。
ククリナイフといわれる湾曲した刀身が特徴的な大型ナイフだ。
対人戦闘に用いるのには十分すぎる性能を持っている。
そのナイフを片手に人が集まりそうな所で、現在位置から最も近い無学寺に向かったのだった。
到着してすぐに二人の姿を目撃する。
おかっぱ頭の……えーっと……誰だっけ?
もう一人は……俺の隣の席の子。名前は知らない。
おかっぱは突撃銃を突きつけて隣の子を脅しているようだ。
これはチャンスだ。
あいつの注意は隣の子……略して隣子に向かっている。
この隙を突けば……たとえ相手が銃を持っていたとしても……俺は勝つことができる……
俺はおかっぱの後ろに回り込み、足音を立てないように近づく……そして……
思いっきり相手に叩き込んだ。
ナイフの切れ味は恐ろしい位鋭く、一回の斬激で腹の半分まで届く。
おかっぱは叫び声を上げながらくたばった。
次はこいつか……
何か言っているようだが俺の耳には入ってこない。
俺はいたって冷静にナイフを隣子の首に当てた。後は引くだけだ。
ナイフを引こうと腕に力をこめる……
その寸前、隣子は声を上げた。
「播磨くん!」
隣子の視線は俺の後ろを見ている。
背筋にいやな感覚を覚える……
バネではじかれるように後ろに振り返るとおかっぱが突撃銃の銃口を向けて今にも引き金を引こうとしていた。
おかっぱが受けた傷は確実に致命傷物だ。だが完全に死に至っていなかったのか?
「ぐっ!」
不味ぃ! ナイフで切りかかるよりもおかっぱが引き金を引くほうが早い。
逃げるにもおかっぱが引き金を引くほうが早い。
頭の中では何の役に立たないと分かっているが、腕を自身の前に構え身を固める。
直後に聞こえる銃声。
――妙だ、銃声は聞こえたが……距離が近すぎる。
ふと、先ほどの妄想が頭をよぎった。
よくよく考えてみれば今の状況と妄想は恐ろしいくらい似ている。
目が開くと俺を殺そうとしたおかっぱよりも隣子に視線を向けていた。
まっすぐに構えた視線。
その顔にはある種の決意を感じる。
右手に握られるのは大型の自動拳銃、H&K社のベストセラー。
USPピストル……
銃口の先にはおかっぱ。
脳天に開いた9mm大の穴と吹き飛んだ後頭部……
妄想が現実になった瞬間である。
違うところは登場人物だけであって、やったことは全て同じであった。
〆
播磨君は何かに驚いたようでボーっと岡くんを眺めていた。
「播磨君?」
不安に思い播磨君の名前を呼ぶとビクッと体を震わせて思い出したようにナイフを構えた。
「…………なんで助けた?」
ドスの利いた低い声だった。
播磨君は続けて話す。
「俺はお前にナイフを突きつけたんだぜ? 俺も殺す気だった……
俺を助けたって殺されるだけだ……なのに……」
確かにそうだ。播磨君の言っていることは正しい。
ナイフを突きつけられたとき、私は『殺される』と思った。
そして岡君が銃を構えようとしているのを見て『岡君は播磨君を殺そうとしている』と思った。
そのときの思考は混乱していたわけでもなく、狂っているわけでもない。
冷静な判断を下せた。
だったら、『岡君に播磨君を殺させる』が最善である。
自分の手を血で染めてまでして選択する選択肢が『播磨君を助けて自分が殺される』
ありえない選択だ。
だけど、選択したのは紛れも無いこの手。
「………わかんない」
「分からないって……」
「どうしてだろうね?」
「俺に聞くな!」
「……ちっ、まぁ助けてもらった礼だ。お前は殺さねぇ! 自由にどこにでも行きな」
そう言って播磨君は岡くんが持っていたライフルを奪って歩き出しました。
自由に……ね……
銃はあっても行くところもやる事もない私。
(だったらついていってもいいよね?)
私はUSPをいつでも使えるようにスカートにはさんでから播磨君の後を追いかけました。
【播磨 拳児】
〔現在位置〕F-8 無学寺
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式、ククリナイフ、89式小銃(29/30)
〔行動方針〕天満以外の奴を全滅させる(隣子は殺さない)
【砺波 順子】
〔現在位置〕F-8 無学寺
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式、USP(15/15+1)
〔行動方針〕とりあえず播磨についていく。襲ってくる人がいるなら容赦しない。
【岡 樺樹】:死亡
【午後2時〜3時】 ――残り47名
>>290 乙。
何だこの奇妙な関係はwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
岡はまた助平担当ですか。
予備弾の件についてはハリーが予備弾を持ってたらこっちも持たせてください
にしても9mm拳銃とか89式とか……いつの間に自衛隊がすきなってたんだ私は……orz
おかっぱまたエロ要員かよw
乙です
播磨のマーダーには期待
ただ播磨が天満以外を皆殺しにする理由が弱いというか軽いというかちょっと無理ないか?
天満の妹である八雲まで殺すだろうか?
播磨にはサラマンダーが似合う
代わりに隣子を血まみれにして・・・
そういう風に誘導する話をやればいい
>>294 ロワという戦場に駆り出されて、頭がプッツンしちゃったんじゃないの?
そして隣子も隣子で、殺人を正当化している辺り何かが狂い始めているww
・馬鹿だから。確認。
・後で我に返る(生まれてきてごめんなさい)
・今後絃子さんに愛の矯正を受ける
コミカル?でもシリアスでもどちらにでも転べそう…乙でした。
播磨はここでも天満とうまくいかないとすでに予想できるのがもうorz
299 :
Classical名無しさん:08/08/12 22:09 ID:MugvoJPk
サラマンダーって何?
サラマンダーって何?
殺す殺す言っておいて実際誰一人殺せないキャラのこと。ロワ用語
たいていはネタキャラにされる
>>297 うーん、それならそれでそういった描写も必要じゃね?
序盤から水を差したくないが前回の高野みたいになられても困る
>>294 ロワ開始後の播磨の周囲にいたのが彼にとってあまり関係の深くない者だから皆殺しに移れたんだろ。
現時点の播磨の頭の中には妄想していただけあって天満以外に関係の深い人物に対する考察や配慮はかけらもない。
だから今後八雲や絃子みたいに関係の深い人物に会った時にも即座に皆殺しに移れるとは限らないし、
むしろそういう人物にばったり出会って「しまった、殺したら天満ちゃんが悲しんでしまう」なんて考えになる可能性もある。
だから現時点で皆殺しの理由の強弱は特に気にしないでいいと思う
そういえば隣子は制服に着替えたの?
>>304 そういえば、あいつら制服じゃなくて体操着なんだよな。
何の違和感も無く読んでいたけど。
282と283の間のつながりがわかりにくいから
もう少し岡と隣子の具体的な行為の描写を追加すべきだと思う
播磨登場は事後でいい
皆殺しにするぜ!って軽く考えてるならいいけど
実際岡が死んでもフーン別にって感じだからね
殺害後がちょっと微妙すぎる
播磨には凶暴な面もあるし最後は殺されそうになったわけだし隣子も殺してない
改心なり何なりやり方はあると思うけどね
殺すこと自体は展開として全然ありだと思うけどその持っていき方は描写する必要があると思う
モブや名無しならまだしも原作で十分掘り下げられているキャラは特にそうじゃね?
今回はちょっとギャグのノリが強過ぎな印象、スクランらしいと言えばらしいんだけど
てか今や播磨はどうしようもないキャラという印象しかないからまったく気にならない
感想を参考にもう少し煮詰めてみることにします。
いきなり修正なんて……orz
先が思いやられるな……
>>310 同意。
別に修正しなくてもいいんじゃない?
皆前作の播磨の印象を引っ張り過ぎだww
修正しなくてもいいんじゃないか
問題無いって人の方が多いみたいじゃん
服装に関しては修正が必要だろうけど
修正の有無は作者さんにまかせたい
じゃあ修正じゃなくて加筆といわせてもらおうかな?
確かに描写が薄いなと思うところもありましたし……
まぁ心情とかは変わりませんから
>>286 そのナイフを片手に人が集まりそうな所で、現在位置から最も近い無学寺に向かったのだった。
ここでひとつ、殺すべき相手は何も烏丸や花井だけではない。
顔が狭い播磨にとっては他人同然のクラスメイトのほうが大半を占める。
だが、少ないながらも深い絆を作っているクラスメイトもいるのだ。
しかも、天満にとってクラスメイトは大切な人たち……
その人たちを殺してまで生き残った彼女は生きていることに喜びを感じるのだろうか?
だが、ここは播磨の妄想の世界……全てが彼の計画通りにうごくのだった。
>>289 私はUSPをいつでも使えるようにジャージにはさんでから播磨君の後を追いかけました。
最後にちらっと岡君を見る。
銃を撃ったことなんてサバイバルゲーム以来だったし、撃ったらどうなるかなんて知りもしなかった。
ドラマや映画のように弾が当たって穴が開くのは分かったけど……後頭部が爆発したみたいになるのは知らなかったよ。
岡くんを殺したのは私だ。
だけど、不思議と後悔は無かった。
ただ薬を飲んだ後のように後味が悪いだけだった。
私を犯そうとしたからかもしれない……それだけじゃないかもしれない……
まだ、よくわかんないや。
を追加して、スカートをジャージに変更してください。
あんまり変わっていないと思いますが……
まあそんな感じでいいんじゃないか
播磨の状態表に妄想の世界って追加したほうがいいかもしれんw
しかし書き手さん達の間の中じゃ
隣子=ちょい不思議ちゃん入ってる
雪野=アホの子
オカッパ=エロガッパ
このイメージが浸透してるのだろうか?
>>290>>316 乙です
播磨はこのままマーダーになっていくのか、隣子とともに反主催になるのか
隣子を殺さなかったことがキーになりそうな気もするがわからん
それにしても岡はまたもやっちゃったぜw
>>318 本編でもそんな感じだしなw
前回のロワでの雪野はレズで、アホというよりも痛い子ってイメージが強かったかも
今回のロワでは原作でちょいちょい描写されてるようなドジっ子っぽいが
前作のSMペアみたいにマーダーペアになったりして…サクランボペア。
予約がないようなので鬼怒川&冴子で投下します
【おおきくなりません】
「………」
「………」
ガレ場を歩く荒い呼吸だけが二人の間にある。
横を歩く音篠冴子は何も話さない。周囲に万遍なく――特に後ろに人影がないか視線を巡らせている。
私――鬼怒川綾乃も何も話さない。私の中には話すことがない。
今、私たちは歩行祭の続きをしている。開催期間とゴールは変更された。
さあ皆さん、三日間の間に51人が死ぬまでが歩行祭ですよ。気をつけて殺し合ってください、ということらしい。
まったく悪質でジョークにすらならない。私は泣くよりまず呆れた。
目が覚めてとりあえず自分のいる場所を確かめるために歩きだし、それ程時間がたたないうちに冴子に会った。
彼女の右手には黒光りする、ナイフとは違う刃物が握られていた(そしてそれは今も収められることはない)。
そして私の両手にはトンファという名前の持ち手がついた金属製の棒。
あまりにも藪から棒な対面だった。お互いこんなに早く誰かに会うとは思っていなかったのだ。
しばらくあんぐり口を開けて見つめ合い、やっと自分たちの置かれている状況を思い出し、どうしようかと思案して。
とりあえず私たちは、ぎこちなく笑い合ったのだ。
自然と二人で歩き始めた。こんな事態で仲の良い女友達に一番に会えたのは幸運だと言える。
冴子は時々涙をこぼしたが、泣き声を上げることはしなかった。
「だって…なんかコレが爆発する気がして、さ」
数時間前の恐怖が染みついて離れないのだろう、彼女は震える声で言った。
堀内さんはあの時泣き叫んだために殺された。あの場にいた誰もが犠牲になりえて、ただ運よく自分たちは生きている。
まだ、とりあえずだけど。
視界が開けた場所を避けて目的もなく歩きながら、自分が泣かない理由を考えてみる。
泣くということは、何かを、目に見えない何かを信じていたということだ。それに裏切られたということだ。
行きたい場所があり、離れたくない人がいるということだ。
冴子はそれをちゃんと持っている。私は――…
『またぁ、おキヌは冷めてんだから〜!』
別にどーだっていいし、と言ったあとは必ず周囲からそんな返しがあった。
部活帰りに円と、放課後街で遊んでた冴子や梢も合流してワスバーガーで喋った日常のひとコマ。
私の周りは皆、知りたがりで欲しがりだ。円も冴子も梢も男の子とかかわることを躊躇しない。
堂々と欲望に忠実で、それを満たすために邁進する彼女たち。世界の全ては彼女らのためにあった。
そんな中でなくても私は人一倍、欲が薄い自覚はある。それは男の子とか、恋愛とかだけでなく、将来、自分自身への興味や関心までに及ぶ。
高校生活の中で何か変わるんじゃないかと期待したけれど、2-Cの一年間でも私は変わらなかった。
(それなりに楽しかったのになぁ)
つまり環境によって私の本質は変わらない。こんな状況でも言ってしまいそうで、それが怖い。
(どうだっていいじゃん)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「………」
「………」
ガレ場を歩く荒い呼吸だけが二人の間にある。
おキヌは何も話さない。普段と変わらない表情で周囲の様子を時々確認している。
あたし――音篠冴子も何も話さない。今のあたしは話すどころじゃない。
冗談じゃない。なんだってこんな所で殺されなきゃならないの。
もっといっぱい遊びたい。これからがあたし達、最高の時なんだよ?
歩行祭なんてやっぱ参加しなきゃよかった。一体誰が言い出したの、死ぬのはそいつだけで十分よ。
リュックサックに入っていた武器は細長いひし形をした刃物が5本だった。頂点に輪っかになった持ち手が付いている。
ナニコレ?こんなんでどう生き残れっての?
目覚めて状況を把握したあたしは、とりあえず周囲の様子を窺おうと歩きだした矢先におキヌに会った。
一瞬、彼女の両手にあるのが銃に見え、自分が撃ち抜かれるイメージが頭をよぎる。
結局見間違えだったけれど、あたしは力が抜けて少し泣いてしまったんだ。
そんなあたしをおキヌは普段どおりの顔で見つめていた。あたしはたまらなく叫び出したかった。
――ねえ、なんでアンタはそんなにいつもどおりなの!?何で友達に会ってもその武器を片時も手放さないの!?
落ち着くのを待っておキヌがこれからの行動を提案した。
「目立たないように見通しの悪い場所を歩こうか。しばらくは誰かをみつけても出来れば隠れてやり過ごした方がいいと思う、…特に男子」
「なんで?オトコを味方にしなきゃ生き残れる訳じゃん!」
「相手が『乗った』人だったらどうする?あたしらの武器だと銃相手じゃひとたまりもないよ」
確かにどちらの武器も、近くの相手にしか効果のないと素人でもわかった。
「相手が男子ならこそ、あたしがそんな気おこさせないようにしてみせる」
この状況では『落としの冴子』とまで言われた自信も心も少し揺らぐけれど、そう言ったあたしにおキヌは、
「そう」
と肩をすくめただけで、それ以上強く言わなかった。
あたしは彼女のこういうところに時々ムカっとくる。
普段は別に怒ったり言い返したりはしない。疲れんじゃん、そんなの。
そんな時は携帯見たり話題を変えたり、別クラスの子から聞いたウワサを振ってればそんな感情はやり過ごせたし、笑いあえた。すぐに忘れた。
忘れちゃうんだから大したことないんだと思うけど、やっぱりおキヌとあたしの間には時々そんな瞬間があった。
むこうがどう思っていたかはわからない。
たぶん気づいてないんじゃないかな。
でもここには気を紛らわすものは何もない。いつもお守りのように持っていた携帯は取られてしまった。
(それがない右手には今、クナイとか言う刃物が握られている。今はこれがお守りだ)
おキヌもトンファを手放さないけれど、それは彼女にとってはお守りでなく武器だからだ。
彼女は生きてこの島を出たいのだ。――あたしと同じに。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
冴子は少し気が立っているようだ。無理もないと思う。
私はと言うと、こんな八方塞がりのゲームにそろそろ飽きていた。
自分の生死にすらも必死になれない、こんな人間が参加してたら観ている方も楽しくないだろう。
生き残るのは冴子みたいに怒ったり泣いたりできる子がいいし、実際そうだろうと素直に思う。
そんなことよりも、と私は晴れた空を見上げた。
(――走りたいなぁ…)
走るのは好きだった。あの、つまらない自分をスタート地点に置いて、本能と筋肉の動きのみになる感覚。
陸上をやっている時だけ、自分を好きと感じられた。
でもトラックを出たとたんに時間は泥濘のように淀んで流れ出すのだ。
何に対しても必死になれない私もいつか観念して大人になり、その後も続いていくであろう長い永いながい時間。
その一生分の時間を考えるとぞっとする。
私はそんなに生きなくてもいい、寿命は二十年あったら十分だ。
そんな思春期特有の考えは、高校に入ってからは消えかかっていたけれど、今日。
思いがけなく世界は反転した。
まるでB級映画や小説の世界だけれど、今、確かに私たちははここにいる。
(ああ、そうか)
自分が落ち着いている理由がわかった。ここでなら私は、死んでも何も言われないのだ。
ふと、あたしは怖くなる。
おキヌと歩いているこの道の先に、何が待っているのかを考えてしまったから。
どうして彼女が落ち着いたままでいられるのか、ある可能性を思いついてしまったから。
本当におキヌはあたしと最初に会ったの?
誰かと先に会っていたとしたら?誰かと打ち合わせてこの先で待ち伏せしていたとしたら?
――横で歩いているこの小柄な友達がこのゲームに乗る側だとしたら?
恐怖は物凄いスピードであたしの胸で膨れ上がった。
やだ、やだ、死ぬのはイヤ、そうだよゴリ山が言っていたじゃない、『友達だからといって遠慮は無用』…!!
梢に向かって得意げに言っていた自分の言葉も甦る。
『騙される位なら、騙される側に回るのよ』――そうなの?おキヌ、アンタもそうなの――?
脈拍が痛いくらいに最高潮にあがったその時、おキヌが口を開いた。あたしはすんでの処で悲鳴を上げるところだった。
「ねえ、冴子は大人になりたい?」
「…は?…何言ってんの、こんな時に」答える声がどうしようもなく震える。
「いや、別に…聞いてみたくなった」
まるで『あの彼とはどうなったの?』と聞くような表情で、そんな大事なことを聞かないで欲しい。
恐怖は確信に変わる。
負けるもんか、こんな所でなんかあたしは死なない。
あたしはもっともっと遊んで恋をして幸せに生きる!幸せに死ぬ!
奮い立たせるように右手の『武器』に力をこめて言った。
「なりたいに決まってる。誰にも邪魔なんてさせない!」
「そっか…」
その強い答えに私は少し笑った。やっぱり冴子は冴子だ。
自分は死んでも別にどうだっていいし、どこまで続くか見当もつかないけれど、友達の手助けになるくらいの間は多少生きていたっていい。
突然、冴子が腕を振り上げた。
ぎらり、と光るものが手に握られている。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
無言のまま。ひたすらに。
何度も何度もなんどもなんども仰向けに倒れた彼女に叩きつける。
彼女の手がこちらに伸びる。武器はもう奪われていて、その手に何かを握る力は残っていないことはわかった。
ただ攻撃を防ぐ為に本能的に伸ばされた手が、何故かこちらを求めるように見えた。
偽善とすら思わずに自然と手が動く。
自分が殺し、今まさに死んでゆく友人の手を取り握りしめる。温かだった。
涙も疑問も後悔もなく、
こみ上げるのは、友達と一緒にいるときにふと感じる愛しさだった。
ファミレスとかで喋り疲れて、何も話さずに窓の外を眺めている時のあの空気。
無言なのに何もかもわかりあえているような、奇跡のような瞬間。
冴子の温かい血を顔に感じながら、ようやく知った。
――なんだ、どうでもよくないこともあったんじゃん
突然の冴子の変貌、これがゲームの本質なのだろう。
信じていたことが疑いへ、そして殺意へと変わっていく。
そしてそれが私を本能と筋肉と反射だけの生き物に変えてしまった。この体は生き残ることを望み、ゲームに乗る側に私を置いた。
(別に冴子にだったらよかったんだけどな)
無気力な人間が生き残り、生きたいと叫んだ人間が殺される。
(でも私もたぶんすぐ死ぬと思うから。あんまり怒らないでよね)
殺された人間は友達だった。殺した人間はこんな時にも涙を流さなかった。
私はようやく初めて、泣きたいと思った。
頭を割られ、冷たくなっているであろう冴子を目に焼き付けて、そして私は走り出す。
肩が痛み、血が滲んでるのがわかったけれど構わない。泣けない自分を振り捨てたかった、ただの走る肉体になりたかった。
行く先はどこでもいい。人でも場所でもきっとそこには未来なんてない。
この島ではもう誰も大きくなんてなれないのだから。
【鬼怒川 綾乃】
〔現在位置〕E-06
〔状態〕右肩に傷
〔道具〕支給品一式、トンファ(伸縮式)二本、クナイ一本
〔行動方針〕別に死んでもいいし乗る気はないが、いざとなると体が動いてしまうので未定
【音篠冴子】:死亡
【15時残り46名】
以上です。なにかありましたらご指摘ください。
乙
冴子また死んじゃったか
キヌは今回はクールを通しそうで期待
>>330 乙カレ
特に問題は無いと思うよ。
それにしても今回のマーダーは皆瞬発的な判断でマーダーになってしまうキャラばかりだな。
石山、天王寺、隣子、鬼怒川。
前作のハリーや高野みたいな最初っから乗る気満々な奴が誰もいない。
播磨がいるじゃないか
>>330 乙でした
どう転ぶかわからないおキヌが怖いです。冴子が天満に出会っていたら・・
>>335 乙カレ
でも地図及び現在地をクリックすると、本編に繋がっちゃうんだけど・・・。
何かミスってない?
地図未練
むちゃくちゃ亀だけど、前回のゲーム開始一番最初に死んだ天王寺が一番最後まで生き残ったハラミを殺すって中々面白いな
おキヌがクナイ一本ってことはE-6に残りの四本があるってことでおk?
ということは冴子のリュックもおちてるのか?
(´・ω・`)ほんとだ
設定なおしました。すいません。
地図はエクセルで編集してるのでかなり見づらいかもしれません
>>340 生存者は赤で表記した方が見やすいと思います。
あと今気が付いたんだけど、ミックと三沢の出席番号が逆だ。
>>339 それでおkです
冴子のクナイの残り四本はリュックの中にE-6に残されたままです
>>341 今地図をなおせる環境にないですが次にそうしてみようと思います。
ミックと三沢の出席番号はいれかえておきました。
まとめプロローグ、途中で切れてるっぽいけど
>>343 遅れたけれど乙です
形になっていくまとめサイトが楽しみです
イチさんも書かなきゃなあ
>>344 ん・・すいませんちょっとわからないのですがどの部分でしょうか
まとめサイトがまだ途中といいつつ投下しますね
【泉にて】
時には誰かを探すために歩き、時には休むために足を止め、そして時には恐怖から逃げるために走る。
ツタが絡まりあった太木の下をくぐりぬけ、ひときわ大きな岩場を避けて、落ち葉の絨毯の上を進む。
小さな身体を満遍なく使って少女は動いていた。
「あ、泉……湖?じゃあここは地図にある……まあいいや、水は冷たいかな?」
リュックにあった水は温くていまいちだ。乾きは満たされても気分がよくない。
けれどこの泉ならと指先を浸してみると、想像以上に爽やかな感覚が伝わってくる。
触れた端から軽い痺れが走るほどによく冷えていた。
たまらず両手を突っ込んでばしゃばしゃと音を立てた。肘まで浸し、そのまま腕全体で掬うようにして顔にかける。
「あ〜生き返る。水道水よりよっぽどいいなあ」
喉を潤し満足したように俵屋さつきは顔をあげた。
殺し合いの最中にいることを感じさせないほどにその表情は明るい。
「大丈夫。うんきっと皆大丈夫」
同じクラスの友人達も憧れの先輩達もきっと無事に違いない。
あの暗い空間であったことは確かに怖かったし真剣に自分の命が危ういことを理解させられたが、
それでも他者を切り捨てるような冷酷な人間は矢神高校にはいないだろう。
「いくら命がかかってても八雲達やララ先輩が人殺しなんてするはずないし」
大気は澄んでいるし水はおいしい。部活の合宿や友人とキャンプするためにこの島に来れたなら
さぞかし楽しいことだろうと心弾んだ。現実逃避といわれればそれまでだが
悲しいことより楽しいことを考えたほうが気は楽だった。
(誰かがきっと、皆が助かる方法を考えてるはず。麻生先輩とか……)
頭脳労働は苦手だ。なぞなぞやクイズはいつもひっかかるし、宿題は八雲のお世話になっている。
だけど体力には自信があった。だてに長年バスケを続けていない。
もし誰かが早まって危険な行動に出たとしても大勢で説得すれば何とかなるだろう。
そのためにも自分は走り回って人を見つけてどんどん大所帯を作っていくべきだと俵屋は考えていた。
(えっと、現在地はどこかな?)
地図を広げる考える。泉の近くにいるのだからここは地図でいうところの高原池か源五郎池だ。
ふらふらと針が揺れておちつかないコンパスにやきもきしながらも、何とか東西南北を得る。
遠くに大きな山が見える。方角は南東。きっとここは高原池。
現在地の把握と地図が正しいなら北には村があるはず、そして人も集まりやすいに違いない。
うん、と納得したように彼女は笑顔で立ち上がり再び駆け出そうとした。
だが出発の前にエメラルド色に静まり返った湖面をじっと見つめる。
先ほど大自然が与えてくれた恵みをもう一度思い出していた。
「そうだ。せっかくだしおいしいお水を持っていこう。あれ?病原菌とか大丈夫だっけ……まあいいや」
飲んでから数分、頭痛や腹痛はないし身体の調子は悪くない。
また走るなら必要だろうと俵屋はリュックを手にして走り、湖を覗き込む。そこには自分の今の姿が映っていた。
――スポーツシャツに半ズボン、その上からバスケットのユニフォーム……背番号は4、などという
ピクニックには不向きな格好だが制服よりは運動に適している。
目覚めてからリュックの中身を確認したところ、水、食料、筆記用具、そして代えの制服……ではなくこれが入っていたのだ。
おそらく自分達1年生は元々制服なので2着になるのを避けるためだろう。変な配慮だと当初は苦笑いしたものだ。
(さっちん達は代わりに何が入ってるのかな。あれ、センセイも?)
口を閉じ、顔を水面に浸し、清水で汗を流して顔全体を強く冷やす。そして息を止めながら考えた。
……教師らが矢神高校の制服を纏う姿は少し見てみたい。
(いけないいけない)
首をぷるぷると振りまわす。代えの服などさして問題ではない。それよりも武器のほうだ。
ルールブック曰く『支給品は人によって違う』とあり、くじを引くような緊張感がある。
刃物のような凶器は危険人物はもちろん、ララのような熱くなりやすい人物でもなく、菅のような少し抜けている人物でもなく、
麻生やサラ、八雲のようなしっかり者に渡ってほしいと俵屋は祈った。彼らなら間違うことはないはずだ。
――ザッ
呼吸を止めるのもそろそろ限界。水面から顔をあげて息継ぎをと考えたところで後ろに人の気配がした。
(!?――)
はっとなり振り返ろうとするよりも早く、首元を恐ろしい力で抑えられ押し倒される。水面に自分以外の二人の影を見た気がした。
□ □ □ □ □ □ □ □ □
俵屋さつきは必死に抵抗した。手足をむちゃくちゃに振り回し、自分をつかむ腕を爪が割れることもかまわずひっかいた。
顔を水面のより深いところにまで押し付けられて、鼻や口、眼球からも水が浸食してきて肺の中に溜まり続ける。
その間、水辺では波しぶきがたち、脚が砂利を蹴散らして小石や砂の混じった埃が舞う。
ひときわ大きな石が腿に突き刺さり、漏れ出てきた赤い雫が健康的な肌を染め上げる。
それでも脳はより激しい緊急信号を発して俵屋に生きるための強い力を与える。
筋がちぎれるほどの力で彼女は両足をじたばたとさせもがき続けた。ただ闇雲に生をつかもうと必死にあがく。
だがやがて水をたらふく飲まされて腹が膨れ、内臓はひきつき、奮い立っていたはずの全身の力が弱くなっていく。
やがて酸素の供給が途切れ脳も活動を続けることができなくなり、俵屋さつきは短い生涯を終えることになった。
「ありがとう茂雄。私一人じゃ殺せなかったと思う」
「……いいんだ。円のためだから」
溺死した姿を見つめ、円と呼ばれた少女は恋人に向かって優しく微笑みかけた。
目覚めて早々に出会った恋人達。女はその手を血に染める道を選んでいて、躊躇なく男を誘った。
『茂雄、私は死にたくないの。大事な私達の未来のためにこんなところで死ぬわけにはいかない』
『だからって皆を殺すなんて……俺と協力してなんて……他に手段はないのか?』
『そんな事はもう言ってられないのよ。お願い分かって。……失いたくないの。私と、茂雄の命を』
『円!?……そんな顔しないでくれ。お前に泣かれたら俺は』
『私と茂雄、二人で頑張って生きよう。皆いなくなってからあの留学生にお願いすればきっと私達は許してくれる』
『……まどか……』
そうして彼は恋人という悪魔と契約を結び、まっとうな人生との別離を決めた。
この選択は間違っていると思ったし自分の命のために他人を殺すのは許されないことだと分かっていた。
けれども梅津は、ほぼ全員が助からないであろう死の舞台で無力なまま朽ち果てるよりは、
恋人の生涯最後になるかもしれない願いを聞き入れたほうがいいのではないかと考えた。
良心との狭間で彼は必死で戦った。けれどもその誘惑はあまりに強すぎたのだった。
首を絞めて必死で抵抗されている間は一刻も早く死んでくれと祈っていた。
名前も知らない相手からひしひしと生きたいという願いが伝わって今にも力を緩めてしまいそうだった。
すまない、許してくれ――終わった今でも梅津は辛く強く悩んでいた。
(思ったより頑張ってくれるんだ)
城戸は梅津のよき理解者だった。望む方向に誘導することが容易いほどに。
彼はこれからも悩むだろう。けれどもその度に自分の味方になってくれるだろう。
――自分が利用されるだけだと理解しながら。
だからこそ殺そうとせず協力を提案した。
操り人形と理解してなお忠実。これ以上便利なものがあるだろうか。
プライドを捨てて媚びる必要も、餌をぶらさげて対価を払う必要もない。
既に一人殺した彼はきっとこれから次々と罪を犯し慣れていく。
(……少しくらい反対してくれたっていいのに。損な性格)
少しだけ矛盾したことを考えながら、見知らぬ相手……おそらく後輩だろう人物の荷物を拝借し、自分の鞄に詰める。
制服はこれ以上必要ないのでその場に捨てた。
「行きましょう茂雄」
「……ああ。そうだな」
ふらつく彼の腕にとびついて、そっと体を重ね合わせる。驚いたのかおぼつかない足取りがさらに崩れそうになっていた。
「元気だして。私がついてるわ」
「ありがとう円」
春風のように暖かく蜂蜜のように甘いささやきは、決して逃れることができぬほどの容赦のない愛を与える。
恋人の腕に残った爪痕を撫でて聖母のように彼を労わる円。その瞳には次なる獲物への殺意が漲っていた。
【午後2時〜3時】
【城戸円】
〔現在位置〕D-04
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式・不明支給品二人分
〔行動方針〕梅津を利用して優勝する
【梅津重雄】
〔現在位置〕D-04
〔状態〕健康、精神的苦悩
〔道具〕支給品一式・不明支給品
〔行動方針〕城戸の言うとおりにする
【俵屋さつき:死亡】
バスケのユニフォームを着ています。制服が傍に捨ててあります。
――残り45人
というわけで1年生初の犠牲者に。
梅津君は今回は報われるといいですね
何だかすごく先行きが心配になってきたぞスクロワ2
陽性のキャラがいないな
>>355 乙!
梅津はまたも速攻で城戸と合流かw
どう転んでもロクな目にあわないのも相変わらずというかw
そしてまとめサイトも乙です。
大変とは思いますが頑張って下さい。
各キャラの状況の把握がしやすくてとても便利ですよ。
>>330 GJ!
2人の思考の違いが面白いです
>>356 こちらもGJ!
円の単純なようで微妙に複雑な気持ちがこれからどうなっていくのか楽しみです
あと問題を蒸し返して申し訳ないが、手遅れになる前に聞いておきたい
播磨の話は本当に通すの?
これを基準にすれば物理的な矛盾以外はどんな話でも通りそうなんだが…
できれば他の書き手さんの意見を聞かせて欲しい
>>360 もういいじゃないの・・・別に。
今後の展開次第で十分方向修正可能なんだし。
まあ確かに野暮ですね
すみませんでした
忘れてください
>>360 個人的には・・播磨が妄想の世界に浸ってるところがあって
結局殺せなくて迷いもあって、今後の描写次第でひっくりかえせるかなと思います。
(いきなり人に切りかかったりしてますが・・まあ人が襲われていたので)
落ち着いてから播磨を悩ませ後悔、改心させてもいいですし絃子先生や塚本姉妹もいます。
播磨に限ってはたとえマーダーまっしぐらでも天満の一言で改心も不可能ではないでしょうし。
登場話と違って、今後は前回の話も影響してくるので、
どんな話でも物理的矛盾以外は通るということはないかなと思います。
気をつけていきたいですね。心配して頂きありがとうございました。
これからも何か気がかりな点あったら遠慮なくお願いします。
トリップ抜けてました。すいません
播磨ってあんなもんじゃん
何の問題もない
了解です
わざわざありがとうございました
あと残り28人か。
それにしても今回は溺死とか、締め殺されたりとか、嫌な死に方が多いなww
つうか、どしどし死んでいくな
まあこんなもんだろう、マーダーに箔をつけなきゃならん
東郷とか西本とか頼れる対主催が気になるな
高野と絃子もどっちかは味方について欲しいものだが
前回よりハイペースだ
まあそろそろ止めないとしばらく死者がでないなんてことになりかねんな
前作でも、最初の放送までに10人が死んでいるんだから、あと3〜4人はOKだと思う。
ぶっちゃけ原作よろしくハイペースで殺らないと
過疎っちゃう気がするぜ
>>372 その10人中、6人は名前も無いモブキャラだった。
残りの4人も天王寺、梅津、永山、吉田山と作品の都合上、居ても居なくてもどーでもいい様な奴ばかりだったし・・・。
今死んでるのだって三原とか田中とか全然必要ない奴らばかりだろ
>>375 三原は初代優勝者だし、
冴子はその三原の親友という割と重要なポジションだった。
岡は前作の西本軍団の中じゃ、西本と共に最後まで生き残った伏兵だし、
田中は首輪の秘密を逸早く見抜いたキレ者。
ハネ子冥界の世界を盛り上げてくれた功労者じゃん。
原作でどうとかならともかく前作の話なんてまったく意味ないじゃねーかよ
キレ者が欲しけりゃ今いる奴の誰かにキレ者属性付ければいいし
三原とか冴子とか岡とか結局はモブなんだよ
>>376 ハラミは優勝者っつってもそれが今回アドバンテージになる訳じゃないしねえ。
前回は今鳥が結構好きって感じだったが最近の本編じゃ別に特別好きって訳でもなさそうだったし…
むしろ前作で活躍した分早死にするのは二部物では結構ある事だと思うよ>おかっぱとか
俵屋なんて初登場なのにズガンだぜ
前作にこだわるのはよくない
教訓としてある程度意識はした方がいいだろ
アソサラとか死者のペースとかは教訓にすべき
播磨・沢近・八雲
できるだけこいつらは引っ張らないで欲しい
>>384 でも引っ張りすぎたのが原因で後半グダグダになったというのもある。
八雲なんて一体何回黒化したことか。
>>383 同感だ。天満、播磨、烏丸で引っ張るべきだよな
斉藤・西本・一条・大塚で予約します。
>>387 頑張ってください
地図を更新しました。生存者は地図上で赤く表記されています。
おつかれさまです
短いけれど、スタート直後だからいいよね?投下。
【Sleeping Beauty】
彼女が目を覚ますと、そこは床の上だった。
自分の周囲から漂う不自然な香りが、彼女を一瞬懐かしい気分にさせる。
最初は夢うつつだったが、数分かけて意識を覚醒させるにつれ、
どうやらここは病院か診療所か何かの施設らしいと気がついた。
「・・・意地が悪いわね」
彼女は静かに嘆息する。
無理もない。
床に横たわっていた彼女のすぐ横には、ふかふかのベッドがあったのだから。
彼女はゆっくりと思い出す。
自分の身に起こった事を。
そして、自分がなにをしなければならないかを。
彼女はベッドの上のリュックサックをぞんざいにどかす。
彼女は、高野晶は、迷わずに、
二度寝することにした。
【高野 晶】
〔現在位置〕I−07
〔状態〕睡眠状態
〔道具〕支給品一式
〔行動方針〕とりあえず寝る
ちょww寝るな
高野にしては珍しく現実逃避だなぁ
>>397 現実逃避というより、カオスな行動って感じだな
本当に寝たいから寝たのか、何か策があって寝たのか
原作のとおりの晶って感じだな
>>395乙
乙
なんかペンギン姿の高野で再生されたw
今回のスクロワは酷い殺され方とコメディのギャップでかいな
新しいパターンだ!
ピンクまだあああああ
投下します。
【THE GANDHIN】
C-5地点、道路脇を進む二つの人影。
「誰にも会いませんね……」
「……そ、そう、ね」
「みんな、どこ行っちゃったのかなぁ」
「あ、案外、人が、居そうな所に、固まってるとか?」
「だったらいいけど……」
「――って、ちょっと、一条さん、あんた歩くの早過ぎ!」
「あっっ、ご、ごめんなさい!」
「こっちのペースも考えてよ……歩行祭から歩きっぱなしなんだから」
「あぅ……」
声の主は“鬼軍曹”こと大塚舞、そして“武神”一条かれん。
強さのベクトルは違えど、二人とも『2−C最強』の称号に相応しい猛者である。
そんな二人が進む先は、C-3・C-4地点に広がる鎌石村。
ゲーム開始十分もしないうちに出会った彼女らは、緊張の糸が切れたようにへたり込み、泣き、安堵した。
お互い、間違ってもゲームに乗るようなタイプではなかった事も幸いしたのだろう。
一通り落ち着いた後、二人は今後の行動方針を決めた。
――まずは他のクラスメートを探し、何とかして、この馬鹿げたゲームから降りる方法を考える。
教師を合わせると、実に50人近くもの人間がこの島に連れて来られたのだ。大騒ぎにならない筈がない。
きっと今頃、保護者や学校関係者が大慌てで行方を追っているだろう。
もう少し。それまでの辛抱だ――
二人の頭には、『もし、ゲームが終わるまでに助けが来なかったら』という考えは存在しない。
冷静に考えれば八方塞がりな状況なのは明らかな筈だが……自己防衛本能の成せる業だろうか、
彼女らの心は、そのような“夢も希望もない結末”を無意識のうちに締め出していた。
「ふぅ……もう少しで観音堂、か。 誰か居ないかな?」
「どうだろ。 案外、気の弱ーい男子がコソッと隠れてたりするかもね」
「今鳥さん、大丈夫かなぁ……」
「……そこで今鳥の名前が出てくる辺りは流石よね。やっぱアイツのこと心配?」
「え、そりゃあ……///」
「どっかで泣いてる、とか」
「え……」
「――うっわ、駄目だわそれ。 自分で言っておいてなんだけどカッコ悪すぎる」
「泣く、ってより……『どーでもいいや』って自棄になってそうな気がして」
「あ、それすっごく判るわ」
一条かれんの想い人は、良くも悪くも『頑張らない』男である。
思い詰めて暴走する『危うさ』も無ければ、逆境を克服するための『諦めの悪さ』も殆ど無い。
――ま、いーか。どーせ生き残れねーんだし。
……不意に、一条の頭に、普段通りの無気力な彼の声が響いた。
ぶんぶんぶん。 ぶんぶんぶん。
(いけない。そんな簡単に諦めたら駄目)
あってはならない“結末”を髣髴とさせる台詞を、必死で頭から振り払う。
「……」
(なーんか思い詰めてるわね……)
大塚は、そんな一条の切羽詰った仕草を複雑な表情で見守りながら。
「――観音堂って……もしかして、あそこに見えてる建物かな」
改めて、二人の注意を目的地へと移した。
※ ※ ※ ※ ※
「……誰か、来たようダスな」
大塚と一条が向かった観音堂には、先客が居た。
2−Cダントツの図体を誇る巨漢、西本願司。
その堂々たる巨躯に似合わぬ滑らかな語りは雄(おとこ)の本能を余すところ無く刺激し、
『仏の西本』として男子生徒からの尊敬と羨望の眼差しを一手に引き受ける凄腕のエロ・ソムリエ。
……とはいえ、今の状況で彼のスキルが役立つ筈も無い。
『現役高校生が、女教師も含めた男女で入り乱れて――』
ここまでなら、ある意味お約束のパターン。西本にとってはお馴染みの展開だった。
だが、今の状況は、それに『殺し合い』という言葉が付く。
それも、銃や刃物など、企画物AVに出てくるような模造品とは違う――本物の凶器を存分に用いて、である。
あまりにも現実離れした展開。 ・・・・ ・・・・・・・
そして、昨晩に起こった惨劇を、ただ一人、間近に居ながら実感できなかったという事実。
「……運が良いのか悪いのか、分からんダスな」
どこか諦観にも似た笑みを浮かべ、西本は本尊に背中を預けたまま動こうとはしなかった。
※ ※ ※ ※ ※
同時刻。
「――畜生、死ぬかと思ったぜ……」
青ざめた顔で小走りに山道を駆け抜けるのは、ジャージ姿がやたらと不自然なツンツン頭・斉藤末男。
彼の目覚めた場所は、獣道すら見当たらない完全な山の中だった。
大まかな現在地を確認後、支給品のハチェット(手斧)を振り回して藪をかき分け、現在に至る。
とはいえ、つい先程まで地図に最初から記されていた×印の意味が分からずに危うく禁止エリアに進入しかけた辺りは、やはりドMの血が成せる業なのだろうか。
一歩間違えばそのままお陀仏、という事態だっただけに、全身は汗びっしょりである。
「もうすぐ観音堂、か。 誰か居る……よ、な?」
この時点で、ゲーム開始から既に2時間以上経過していた。
鎌石村への入り口付近に位置し、且つ島を外周する道路からさほど離れていない場所……となれば、
観音堂は絶好の休憩ポイントである。 先客が居ても不思議ではない。
それでも、彼が其処を目指したのは、今後の事を考えた結果、とも言えよう。
手斧という支給品自体は決して外れではなかったが、銃器と比べれば明らかに分が悪い。
その点、何処かで待ち伏せしていれば、一対一の戦いでも充分勝機はある。
相手が多人数の場合は、ただ合流すれば良い。主催者側が『勝利するのは一人』と明言している以上、
ゲームに“乗った”人間がチームを組むことは考えにくいからだ。
……ただ、誰かが一人で拠点としている場合は別だ。 従って、結局のところ、リスクは五分五分だった。
「どーすっかな……ノコノコ入るのも危ねぇし、誰も居ないのに外で張ってるのもアホ臭いし」
茂みの中に身を隠している以上、誰かが居るとしても現時点でこちらに気付く心配はまず無い。
ただ、こちらも建物内の様子が分からない以上、このままでは手詰まりだ。
斉藤としては、せめて日が暮れるまでには誰かと合流するなり篭城するなりして、足場を固めたい所である。
「……石、投げてみっかな――――って、あれ?」
先客の有無を確認するため、手頃な石を探そうとした矢先。
目的地を挟んで遥か向こう側に伸びる二つの人影が、斉藤の視界に入った。
※ ※ ※ ※ ※
「ごめんね、一条さん……何か武器があれば私も援護出来るんだけど」
「そんな、気にしないで下さい。 大塚さんの防弾チョッキもあるし、これも付けてますから大丈夫です」
そう言ってはにかむ一条の頭には、工事現場の作業員が身に付けるようなヘルメットが被せられていた。
二人とも、支給品の中に武器は入っていなかった。
リュックの中に入っていたのは、人を傷つける道具ではなく、危険から身を守るための道具。
だが、始めからゲームに乗る気など全く無いこの二人にとっては、余計な精神的動揺を招きかねない武器よりも遥かに有難い支給品だった。
幸い、素手ならば、一条は学年でもトップクラスの実力を誇る。
頭と上半身を防具で固めれば、そう易々と致命傷を与えられることは無いだろう。
大塚としては、自分が殆ど役に立たない事を申し訳なく感じていた。
悔しいが、武器も戦闘力も持ち合わせていない自分は、今は足手纏いでしかない。
けど、きっと、力を振るう以外の形で、自分だって何かの役に立てる筈だ。 いや、役に立ってみせる。
そう思うことで、一条だけに危険な役割を強いる自分の立場に負い目を感じつつも、大塚は無理やり今の状況を納得させていた。
……幸い、一条と大塚に危害を加える者は誰も居なかった。
一通り見回してみたものの、誰かが隠れている気配も無い。
ひとまず安心した二人は、既に薄暗くなりかけた本堂の中に足を運び、休憩することにした。
「は〜〜、つっっっかれた〜〜〜………」
薄く積もったホコリを軽く吹き飛ばし、大の字で寝そべる大塚。
「そうですね……でも、変な人も居なかっ『その声は、大塚さんと一じ
…………。
「「―――キャアアアアア!!!」」
……盛大な悲鳴が、廃寺の隅々まで響き渡った。
「なっ……ヤベェって、何だよ今のは!」
突如響いた二人分の悲鳴は、様子を窺っていた斉藤の耳にも入った。
焦る斉藤。
だが、先程の悲鳴は、普段学校で何度か耳にする“普段通りの声”と同質の、
斉藤自身にも馴染みの深い、何処か『お約束』の悲鳴にも聞こえる。
さぁ、どうする。
女子を助けに乗り込むか、それとも見捨てて鎌石村へと向かうか。
男として果てるなら前者、生き残る方を優先させるなら後者。
(――Are You Ready?)
……何故か、コイン片手に微笑む鬼怒川の顔が脳裏に浮かんだ。
※ ※ ※ ※ ※
「もー! 何なのよ何なのよアンタは、先に声ぐらいかけなさいよっっ!」
「お、大塚さん、落ち着いて……」
「落ち着いていられますかっての! この馬鹿、死ぬかと思ったでしょーが!!」
涙目で罵声を浴びせる大塚と、必死にそれを宥める一条。
だが、彼女らを『死ぬほど』驚かせた張本人である西本は、大塚に叩かれた坊主頭をさすりながらも、
顔色一つ変えていない。
「……ワスは目立つ場所に居たと思うんダスが」
「気配消し過ぎよ! 後ろにある本尊と同じカッコしてたじゃない」
「偶然ダス。 けど、ワスの気配は一条さんにも分からなかったダスか?」
「は、はい。 なんか、完全に背景と溶け込んでました……」
恐らく、彼からの殺気が一切感じられなかったからだろう。 一条はそう思うことにした。
「――まぁいいわ。 じゃ、改めて休憩、ね」
「そうですね。 あ、折角だから此処で食事にしませんか?」
「フム、良案ダスな。
では早速ダスが、ワスのリュックがその辺に転がって「自分で拾えっ!」
「あ、あのっ、私持って来ますから……」
――少し、ほんの少し、人の居る温もりを取り戻した廃寺。
三人の後ろに佇む本尊が、ほんの少し、笑ったような気がした。
【時刻:午後3時〜3時半】
【一条 かれん】
〔現在位置〕C-06 観音堂
〔状態〕健康。 今鳥の身を案じて精神的に多少動揺
〔道具〕支給品一式、ヘルメット、防弾チョッキ(装備中)
〔行動方針〕とりあえず休憩。ゲームに乗るつもりはありません
【大塚 舞】
〔現在位置〕C-06 観音堂
〔状態〕健康。 戦闘で役立てない分、何とかして誰かの助けになりたい
〔道具〕支給品一式
〔行動方針〕まずは休憩。西本のエロ暴走を食い止める。ゲームに乗るつもりはありません。
【西本 願司】
〔現在位置〕C-06 観音堂
〔状態〕右足を軽く捻挫&全身擦り傷だらけ(山道で何度も転んだ結果)
コンタクトが無いので現在視力0.1以下、生き残るのは難しいと感じている
〔道具〕支給品一式、M26A1破片手榴弾(懐に隠し持っています)
〔行動方針〕ゲームに乗る気はなし。 今後、大塚・一条と行動を共にするかどうかは不明
【斉藤 末男】
〔現在位置〕C-05/C-06の境界線辺り(観音堂の近く)
〔状態〕健康。 全身汗だく
〔道具〕支給品一式、手斧
〔行動方針〕生き残ること優先、だが女子相手にええカッコもしてみたい。
(装備品・状況次第でスタンスは変わる可能性あり)
以上です。
何か不備がありましたら指摘願います。
>>414 乙です。
武器なしか…。一条以外だったらきつそうだけど、彼女なら平気そうだ。
>>414 お疲れさん。
さて所で斉藤は今後一体どうなるんだろうな・・・。
このキャラ、前作のロワで「好きな女性を守るために唯一特攻して死んだキャラ」だから
あのロワを見て以降、すっかりファンになっちゃったんだよね。
原作では空回りしてばかりで何の活躍もしていないのに。
関係ない話でスマソ。
>>395 乙です。二度寝に噴出しました。
時間は2時、不明支給品を追加して収録しておきました。
あとこれからはできればトリップ付でお願いします。
修正の場合、最悪本人確認がとれなくて破棄になってしまう可能性がありますので・・
>>414 お疲れ様です。
斉藤のエエかっこがちょっと見たくなりました。
観音堂付近の地図が見づらくなってしまいました、すいません
舞ちゃんって1stでもここで死んだんだよな
目の前には広大な大海原。そのむこうには水平線。
空はどこまでも広く高くて何を持ってしても埋まりそうになく、届きそうにない。
「ふう……」
この海の向こうには自分の祖国や親友の国があるのだろう。そしてそこには自分達はいないけれど今も数多の幸せの灯があるはず。
それが絶望の底に落とすための安心でありませんように。永遠に続きますように。
そんなことを思いながらサラ・アディエマスは海岸に立っていた。
先程の惨劇に心壊れてしまったわけではない。だが正義感を高ぶらせ怒りに打ち震えているわけでもなかった。
「甘かったのかな」
それだけ呟き、目を瞑って手に持ったそれを砂浜に突き立てる。
彼女が握るのは細身の片手剣――レイピアだ。
近代では戦いというより儀式・装飾品として用いられるものであるが彼女のそれは違う。
元々斬るには適さない武器であり、両側の刃は長い時間研磨されていないのか古びたカッターナイフのように頼りない。
けれどもその1Kgを越える武器の先端には今尚本来の殺傷力が秘められているのは間違いなかった。
「よしっ」
瞑っていた目を見開き、蒼い瞳を覗かせる。同時に何かを決意したかのように息を吐き出した。
レイピアを引き抜きそのまま真っ直ぐ突き出して、素人なりの構えをとる。
武器をわざわざこのような形で扱ったのは儀式のため。日常とかけ離れたこの島での自分を決意する儀式。
「サラ君、こんなところで何をしている?」
「わあ!」
■ ■ ■ ■ ■
私、サラ・アディアマスが目覚めてから結論を出すまで一時間はかかったと思います。
本当は一日中悩んで悩んで悩みぬきたかったけれど時間がありませんでした。
わかっていても頭ばかりを動かしていて、すぐ傍にまで近づかれていた事に気付けなかったようです。
この人だからよかったものの下手をすれば私は死んでいました。
「花井先輩ですか」
「いかにも、2-C学級委員花井春樹だ。無事でよかった、八雲君も喜ぶだろう」
「……」
目の前の花井先輩は隙を突いて襲い掛かるわけでもなく、極めて紳士的に手を差し伸べてきました。
ここは人目につくから移動しようということでしょう。裏表のないその行動。私の身を気遣ってくれる彼に対し、私は――
「……サラ君?」
――切っ先を突きつけた。
花井先輩はよく2-Dや茶道部に来る。確実に八雲目当てだけどたいていは空振りに終わってしまう。
思ったことは口にだすしYesNoがはっきりしてて、八雲はその押しの強さを苦手にしていた。
でも八雲以外に矛先が向くことはないのでその分私や稲葉、高野先輩にはかなり弱い。
迎撃に私も約一年間関わってきたので男の人の中ではかなり親しい部類。他には麻生先輩とかもいるけど。
「……安心して欲しい。僕は決して誰かを騙したり傷つけたりはしない。皆で協力して」
「そう言うと思ってましたがハズレですね」
そんな人と最初に出会うなんて。まさか、いきなり、知らない人のほうが多いはずなのに。
でもこれはいつかは通らないといけない道。私が私の望みを叶えるために。
「何?ハズレとは一体」
「先輩が考えてる私のことですよ。私は決めたんです……ショーンさんの言葉を借りるなら――」
日本に来て楽しかった一年間。沢山出来た友人達。お世話になった先輩や先生。さようなら。
決意を体の内から外に。自分の言葉で世界に宣言します。
「私はこのゲームに乗ります」
「馬鹿な……君はそんなことをする子ではないだろう!ショーン?あの留学生か?何故奴の言うことを聞く必要がある!」
露にも考えてなかったのでしょう、花井先輩は驚きながらも爆発したように私に問いかけてくる。
そうだろう、普通の日本人なら……先輩のような人間なら特にそんな選択はありえない。私もよくわかる。
「……花井先輩はショーンさんについてどれだけ知っていますか?」
「知らん!僕は修学旅行中気絶していたか乳母車の中だったからな!」
「なんですかそれは?はあ……いいですか?彼は学生ですが同時にある世界的にも有数の名家の一族です、しかも本家。
彼の一族は政治や経済にも強い影響力を持っています。学校や先生、理事長なんて話になりません」
私が知っていること……といっても人から又聞きしたことですが少し話してあげました。
石油や金鉱で当てた成金などではなく、代々国の支配者達と深い関わりをもち、長年かけて敵を減らし権力を拡大。
今や金持ちを育て彼らを統べる金持ちとでもいうべき存在で沢近先輩の家だってその配下の一つ。
「もし殺し合いを阻止して帰れたとしても彼はきっと黙っていません。何らかの形で報復してきます」
「まさか。そこまでするとはとても思えない。僕達が一体何をしたというんだ」
実感が湧かないだろう花井先輩は信じられない様子で私の話を聞いてます。
英国上流階級にとってのメンツというものを一々説明するのも大変なので私は直接的に告げました。
「もう一度言いますが、ショーンさんはお金持ちです。社会的貢献、奉仕もすごいんですよ」
金融事業や土地、技術・能力開発にも力をいれてるらしいけれど私にとって一番身近なのはそれでした。
あの人からの寄付で孤児院や教会が沢山できた。今も続いている援助がないとやっていけないはず。
学校もいくつか経営していて学生の国際交流を盛ん。私もその一人。
女の子は気に入られれば引き揚げてもらえるし、男の子は実力を評価されてボディガードや召使にしてもらえば食べていける。
黒い噂は絶えないし実際そういうことにも手を染めてるはず。けれど……
「敵も多いですが感謝してる人だって大勢いるんです」
そのようなことを花井先輩に話しましたがやはり分かってはくれませんでした。まあ別に理解を求めたわけではないですけど。
「だが奴は実際こんな馬鹿げたことをした。二人既に殺されたんだ!それでも君は彼の肩をもつのか?」
「私の恩人はもうおばあさんです。いつ難病を患って治療が必要になるかわかりません。
世間からはじきだされて泥と埃の中で暮らす子供達が大勢います。彼らはお金がないと学校へ行けません。
教会以外には住むところもなくて、雨の日は濡れて身を寄せ合って暮らすんです。屋根のあるところにいると追い出されますから」
そこまで言うと、花井先輩は私のいわんとすることを理解してくれるようでした。
口を開くとあの頃の嫌な思い出が湧き上がってくる。肌が汗ばんでべたつくのに唇だけは乾いてきて胸が苦しい。
そのまま私の体は動かず唇だけが形作ります。
「花井先輩は当然ショーンさんに逆らいますよね?負かすつもりなんですよね?懲らしめるにせよ命を奪うにせよ。
日本人が海外で暴れれば日本人全体が嫌われます。学生が修学旅行先で事件を起こせばその学校は来年同じ場所には行けなくなるでしょう」
先輩はそのままじっと私の話を聞いてくれました。眼鏡の億は真剣そのもの。そういえば人に話を聞いてもらうなんて私久しぶりだな。
「もし私が逆らって機嫌を損ねて……そうなったらあの子達は食べていけるんでしょうか。家は無事なんでしょうか。
社会的な評判をあげるため、人材開発のための投資ですよ、他にいくらでも代えはいます」
私が日本に来て驚いたのはこの国の裕福さだった。花井先輩達には分からないだろう、
飲んでもお腹を壊さない水を手に入れることがどれだけ苦しいことか。
もちろんその後で日本にも孤児は大勢いて苦しい生活をしている人もいることを知った。自殺者だって段違いに多い。
私の知らない問題だってあるはず。けれど私の知るイギリスのスラム街、アイルランドの貧困層に比べたら……
「待ってくれ、それはもう脅迫だ。君は利用されているだけになる。奴の思う壺じゃないのか?」
「Exactly。でも例えその裏にどんな悪意があっても恩人は恩人。私一人の勝手で済む話じゃないんですよ」
自由も意思も権利も食べ物も、全て神様でなくて偉い人から与えられるもの。生まれながらにして持つものでもない。
孤児の私は悲しいことに、シスターとして学び神様を信じる一方で無慈悲で不愉快な現実を理解しながら育った。
「私は……私の後ろにいる人達まで巻き込みたくありません。幸せが突然失われるのはもう嫌なんです」
マザーが聞いたらどうなる思うだろう、ごめんなさい。でもこうしないと皆が……教会や孤児院の皆、未来の子供達を守るために。
つららの上を素足で歩くような生活はさせたくありません。
「だが……君の友達は辛いぞ。八雲君は泣くかもしれない」
ついに花井先輩は触れて欲しくない部分に触れてきた。私の日本で初めての、そして一番の親友。
稲葉達には悪いけど、私の中で一番は八雲。ゲームに乗るとはその親友を殺すということ。
……そして花井先輩の狙い通り私に八雲を殺すのは無理だろう。
だから――悩んだ。ここからが悩みに悩んだ末の最悪な選択。だが私の腹はもう決まっている。
「私、自分のことはいいんですよ。最期までショーンさんの娯楽になれば。いいですか?
一人しか助かることができないということは……逆に言うと誰か一人は生かすことが許されるんです」
花井先輩は完全に私の考えを理解したようだった。握り締めた拳を真っ直ぐ下に向けて震えさせている。
「ダンナー、ルールブックの用語集を読みましたか?あっしみたいなのを奉仕マーダーというらしいです――よっ!」
私の話に完全に気をとられているのがわかる。だから私は両手で指が白くなるほど力を込めて剣を握って
「!サラく――」
花井先輩に飛び掛った!
ガッ―――
だけど!
「落ち着くんだ、サラ君!」
奇襲とはいえ、素人の私の剣で武道の達人と名高い花井先輩を仕留めようというのは甘かった。
突きをあっさり見切ったこの人は片腕を使い脇で私の両腕を挟みこみます。
密接した状態で両手を封じられては逃げることもできません。これが本当のお手上げという奴です。
「そんな答えが本当に正しいと思っているのか!深呼吸したまえ!」
「離して下さい!もうおしゃべりはいいでしょう!」
じたばたと何とか拘束から逃れようとしますが無駄です。すごく強い力で抑えられていて、体全体を動かしても
子供が駄々こねるように体当たりをするだけでした。やがて腕に疲労がたまり、からんとレイピアを落とします。
「きっと君は今混乱しているんだ。人が目の前で死んで、恩人に殺し合いを強要されて」
「勝手なこと、言わないで下さい。……はあ、花井先輩にはわかりませんよ……はあ、はあ」
私はひたすら肩で息をしながら答えます。わずかに唇を開閉しますがあまり声になりません。
でも私と違って花井先輩は全く疲労していないようでした。
「……確かに。が、君を楽にしてやることはできる」
思ってもいなかった言葉に『え?』と、私がそう言うより早く、花井先輩は懐から何かを取り出して私に……
素早くてはっきり見えませんでしたが光を反射するそれは鋭い刃物のように見えました。
(――!)
世界が白くぼやけます。その瞬間、心臓の音は聞こえなくなり時折吹く微風も感じません。全ては一瞬のことでした。
ああそうか――私が今死ねば全部丸く収まるのです。ショーンさんにも反逆者でなくただの使えない奴と判断されて終わり。
誰かが私を殺してくれればそれでよかったんだ……八雲ごめんね。でも花井先輩は悪くないから。許してあ『ガチャッ』
……あれ?
■ ■ ■ ■
「……なんてことするんですか」
「ハッハッハッもう君は僕から逃れることはできないな。嫌かもしれないが我慢してもらおう!」
花井先輩が取り出したのは包丁のような刃物ではありませんでした。というか武器ではありません。
あれです、八雲が歩行祭で播磨先輩と一緒にやってたアレ。手錠でした。当然八雲のとは別物ですが、今は私と花井先輩を繋いでいます。
殺されかけたのに先輩は私を非難するどころかからかってる様子。何でそんなことができるんでしょう。
「笑ってないで鍵、返してください」
「ダメだな。こんなものはこうだ!」
「あっ」
飛びかかりますが花井先輩は器用に鍵を高いところで左右に振るい私を誘導します。
そしておおきくふりかぶり――それは大空に放たれました。
鍵は綺麗な放物線を描いてお日様の光を浴びながら……ぽちゃん、と海に落ちていきました。
あまりの出来事に私は子供の喧嘩のように情けない声をあげることに。
「あああぁぁ〜〜!?何考えてるんですか、どーやってこれ外すんですか!」
「鎖を破壊すればいい。あの時は素手で不可能だったが、今はこの剣がある。鎖の繋ぎ目に挟み込んでだな」
先輩は剣を拾って自慢げに説明してくれますが私にそんなパワーあるわけありません。
力で勝てるはずないので、引っ張ってリードすることも不可能です。
もし先輩に死なれたら私は何十キロの重りを引きずっていけばいいんでしょうか。
酷い。こんなことをされたら私の決意は全て水の泡です。
だって――体が動かないならどうしても考えてしまう。自分の道が正しいのかどうか。
このまま先輩と繋がっていれば何をやっても邪魔されます。当然これを続ければいいのではないかという考えも出てきます。
そんな甘い話はないと思うけれど、でも……確かに私は少しだけ楽に、心のどこかがじんと暖かくなりました。
「本当に勝手で強引ですね。そんなだから八雲に避けられるんです」
「オホン……とにかく!どうか考え直してくれないか。いざとなったら僕の道場を孤児院なり教会代わりにしてもいい」
「へ?いやいやいや、だめですよそんなの」
そんなことを話しながら花井先輩は歩き始めました。私も不本意ですが慌ててついていきます。
これまでは八雲にしか向けられていなかったから、横から突くことができたけど……今は正面にあるその優しさが辛い。
デリカシーのない真っ直ぐすぎるこの人を見ているとまぶしくて目がかすんで前が見えにくくなる。
二度と戻ることのできない世界へ行くはずだったのに。私はごしごしと目の汗を拭きました。
【午後2時〜3時】
【サラ・アディアマス】
〔現在位置〕C-02 海岸
〔状態〕健康。 手錠で左手が花井の右手とくっついています
〔道具〕支給品一式、手錠の片割れ
〔行動方針〕しょーがないので花井についていく。ゲームに乗るつもりだが……
【花井春樹】
〔現在位置〕C-02 海岸
〔状態〕健康。 手錠で右手がサラの左手とくっついています
〔道具〕支給品一式、手錠の片割れ、レイピア(手入れされていませんが突くことは可能)
〔行動方針〕皆との合流。サラには考えを改めてもらう
※手錠はそれほど頑強ではないので力の強い男子が道具を使えば外せる程度です
というわけでサラと花井でした。
タイトルは【Chane Jail】。
サラのキャラや設定これでいいのかな〜と悩みましたので問題でしたら取り下げます。
乙!
遂に花井にも誤解フラグがw
ショーンの設定、今の所は問題無いかと。
脱出フラグを潰すような無茶設定……ってワケでもないし。
そういや、順調に作品も増えてるけど、放送や外部キャラクター(中村など)はどうする予定なんだろう?
任意の書き手に委ねる形でOKなんかな?
ったく金髪にはろくなのがいねーな
手錠無理やり外すのは銃でもない限り無理だろ
ロープじゃないんだからさ
改めて思うがロワって詰んでるんだな
>>435 道具≒銃・斧、って位置付けで良いかと。
まぁ、分かりにくいかもしれんから修正した方が良いかもしれんが。
>>436 詰んでる、と愚痴るにはまだ早いぜ?
>>432 乙カレ
前回はアソサラで今回は花皿か。
しかしパートナーが変わっても、サラは陰のある様な役柄ばっかしだなww
Chainじゃないのか
>>432 乙でした!まったく花井はいい奴だなぁ。サラよ引きずられてしまえ
…つむぎサンが見たら…
>>432 乙です。
サラも花井もいい感じのキャラになってるな。
これは本当に花井なのか
1stもそうだけどロワの花井と今鳥のカッコよさは異常
だが、それがいい!!
今回の主催者はショーンとハッキリしている分
反主催はできそうだな
そうか?むしろ不可能だと思ったが。
お嬢の家でも逆らえないっておかしくね?
あくまでも『合法的には』逆らえないって話じゃね?
ナカムラ、執事辞任
↓
2-C救出&ショーンフルボッコ
↓
ショーン側復讐
↓
沢近父「はて、何のことやら」
これでOKだろ。
もし沢近父が日和って敵に回っても、ぶっちゃけナカムラの軍人時代のコネとか使ったら問題なくね?
まぁ、確かにショーンがそんなVIPなら修学旅行の取り巻きがもっと凄い事になってそうだがw
どうせなら、ショーンの絶大な権力は『英国内のみ、もしくは日英両国と両国による政治的圧力が強い国のみ』に限定してみては?
それなら脱出エンドの芽を摘む事にはならんだろうし、サラがゲームに乗った理由付けもしっかり有るし。
今回のことはショーンの独断だから家は関係ないみたいなことを本人に言わせりゃ問題ないんじゃね
もちろんサラはそんなこと知らないからバックボーンを気にして葛藤するという
すでに島の人間と関わりのある者が、連絡が取れないのを怪しんでるかもしれないし、
生徒が帰ってこない事で、親もすぐに警察に連絡するかもしれないね。
一クラスの生徒が消えると言う規模の大きさから言って隠蔽は不可能だし、
日本の警察も逃しはしないだろうね。
これほど、世界的に見てもセンセーショナルな事件を起こした時点で、
ショーンも荷担した教師も人生投げてるよね。
そこまでして一体なにがしたかったんだろうね。
>>447 その辺は闇の力で隠蔽しちゃったんでしょ。
ぶっちゃけ表沙汰にさえ出来ればショーンの家なんてどうとでもなるだろ
一般人ロワの宿命だな
まあ前回もそうだったけどそのへんはご都合主義になるんじゃないの
皆様どうも感想ありがとうございました。
手錠は斧や銃で壊せるくらいに修正しようかと思います。あとタイトルも修正します
ショーンについては全部サラ視点の話なので確定扱いにしなくてもいいかなと
なんか全員登場話だけで終わりそう
明らかに不要なモブ男子がいるんだがどうすんだろうね
まだあと21人残ってる。
先は長いけど、ゆっくりと着実に進めていくしか無いよ。
>>454 つズガン要員
不要かどうかは書き方次第
ノッポやメッシュはともかく坊主なんか結構使えそうじゃないか
以外とモブでもかっこよくできるのがスクロワクオリティ!
正直な話、優勝はメインキャラじゃなくても良いのだよ
たぶん?
手錠とタイトルを修正してショーンについての記述を若干変更し収録しておきました
未登場キャラも半分は切ったのでこの調子で投下していけたらなと思います
今日初めてこのロワの存在に気づいて一気読みした読み手なんだが、一寸疑問を
◆HXrOGANlU6 氏の「シレン」で、砺波順子の名前が播磨のシーンでは隣子になっているのは作品の仕様なのか?
まとめサイトにも投稿時の形のまま掲載されてるし、私が勘違いしてるならそれで良いんだが……
作中で名前が思い出せず隣にいるから隣子だって感じに
勝手に名前つけてなかったっけ。お嬢とかメガネとかマカロニとかと同じ
ああ、成程……女子の名前が判明していない方の隣子とは別物か
勘違いしていたよ。サンクス
播磨隣子組がメインになれそうだな
ショーンさんの姓って判明していたっけ
不明だな
まあ参加者じゃないしな・・
「こんな事を始めて、只で済むと思うなよ、ショーン・〜〜!」的なセリフの時にアレかなぁ、と。
黒幕、スクランでは斉藤と扱われ方同じだったんだな…
なら勝手に決めればいい
それっぽい偉そうな名前をつけよう
駄目だコネリーしか浮かばねえ
ショーン・ベンでいいじゃないか
で、日本校の生徒達に馬鹿にされたから復讐をはじめたと
ショーン・レノン
・比較的若いイメージ
・絶対的な権力を所持
・残酷な支配者
って事で、ショーン・クロムウェルってのはどうよ?
英国繋がりだし。
>>471に一票
ミック・ジャガーが居るからショーン・レノンも捨てがたいが、イメージ合わなさ杉w
てか過疎ってるな
職人さん達は執筆中なんだろうか……
残りのキャラ微妙な人選だからな
>>473 メインキャラも沢山残っているし、そんな微妙な人選とは思えんが。
一年とか教師とか誰と絡ませればいいんだって気がする
過疎ってるな←他力本願
早くも暗雲が
>>474 案外、書きたいキャラって被ってるのかもしれん
ここまで出てきたほとんどキャラは自分もプロット立ててたキャラだし
実際に自分が投下したやつも書いてる途中でキャラに予約が入って配役変更したw
そういうもんか
まあ職人の人達も事情があるしじっくり待とう
これからも頑張ってくれ
480 :
適当 ◆HQrLOwPbgA :08/08/27 10:14 ID:b7cBe3E.
初めてこんなの書いてみました。短いですが。
タイトル「担任教師とその生徒」
八雲は目をゆっくりと開ける。夢から覚め、現実へと戻ってくる。
「やあ、気が付いたか?」
いきなり声がする。八雲が振り返ると、そこには拳銃を弄りながら、いつも通りの雰囲気の彼女の担任がいた。
刑部の銃を見たからではないが、記憶が蘇ってきた。殺し合いという状況に投げ込まれたというのは、思い出したのだが、どうも現実感がない。
「・・・刑部先生」
「こんな状況になっても、相変わらず幸せそうに眠ってるんだなと、少々感心したよ」
「どうして先生が・・・」
「いや、眠っている君をたまたま見つけてね。そのまま放って置く訳にもいかないから、この空き家にね」
そういうと再び拳銃のチェックを再開する。八雲は知らないが刑部が触っているのは、陸上自衛隊で採用されている9mmミネビア自動拳銃であった。
「さて」
拳銃がちゃんと使えそうだというのを確認し、絃子は八雲に向き直る。
「これからどうするね。塚本君」
え、これから?八雲はそう聞かれても、自分がどうしたいのか、とっさに思いつかない。つい自分の担任教師に聞き返してしまう。
「・・・先生は、・・・どうなさるのですか?」
「私か?・・・そうだな、柄ではないが皆を助けたいとは思っているが・・・。一応、教師ってことになってるみたいだしな」
そう言うと一旦、言葉を区切り、小声で漏らす。
「それに、あの馬鹿の事も心配だしな・・・」
あの馬鹿と、刑部が口にしたのが、彼女の従弟である播磨拳児であろうというのは、八雲にも容易に想像がついた。
播磨の顔が八雲の心に思い浮かぶ、複雑な思いで・・・。そして彼が想いを向ける相手・・・塚本天満・・・八雲の姉・・・。
「そうだ、姉さん」
思わず口に出す。姉さんはどうしたんだろう?姉さんも今頃、私の事心配してるかもしれない。
とりあえずどうしたらいいかは、わからない。でも、姉さんに会いたい。そう八雲は思った。そして・・・播磨さん・・・。
「・・・私は、姉さんを探します」
静かに、だが強い決意をもって、そう八雲は答えていた。
481 :
適当 ◆HQrLOwPbgA :08/08/27 10:15 ID:b7cBe3E.
教え子たちを守る。その第一歩として、八雲を守ってあげなければ・・・その為にはどうしたら?
刑部絃子は、八雲の返事を聞きながら、思考をめぐらせていた
【午後2時〜3時】
【塚本八雲】
〔現在位置〕G-02 平瀬村の空き家の中
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式、武器はまだ確認してない
〔行動方針〕天満に会いたい。播磨に・・・?。
【刑部絃子】
〔現在位置〕G-02 平瀬村の空き家の中
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式、9mmミネビア自動拳銃
〔行動方針〕教え子達をまもりたい。
>>481 乙。
前回は参加者ではなかった先生の動かし方を楽しみにしてるよ。
塚本さん!・・・・」
自分の声で目が覚める。ゆっくりと目を開けると、土の上に横たわっている自分に気が付く。
どうやら、生きているようだ。何があったか記憶を遡る。大丈夫、まだ思い出せる。例えそれが悪夢の記憶であっても。
どうやら夢を見ていたらしい。この1年で親しくなった少女、塚本天満のことを。変わり者と言われる彼の事をまっすぐに見つめてきた彼女。
彼女のまっすぐな気持ちにどんなにはげまされてきたことか。だが、それももう終わる。
彼、烏丸大路は、病の治療の為に、アメリカへ渡ろうとしていた。過去の記憶が失われていくという原因も治療法も未解明の奇病。
最近、確かに物忘れが酷いように感じる。時々、自分が今何をしていたのか?と呆然とする事があるのだ。
だが、彼自身の忘れたくないという強い意志が効いているのか、2-Cのクラスの事、特に塚本天満のことはまだ忘れていない。
今回の歩行祭、参加しないつもりだった。彼女に別れを告げずに黙って去るつもりだった。
だが、塚本天満に一目会いたい、そう思ってつい来てしまった。そして、今の状況。
烏丸はこれからどうすべきか、考え込む。
どうせ自分という人間は消える人間だ、記憶が無くなるという事は人格がなくなるということ。
確かに肉体は生きているかもしれないが、天満の事を忘れてしまって生きるのは生きるって言わないのではないか?
そうだ、どうせ自分は死ぬんだ。その時期が早くなっただけのこと。ならばこの命、愛する少女の為に使おう、天満を生き残らせる、その為に。
そう思うと、力がわいてくる。そんな気がした。
ふと思い出し、烏丸は支給品を確認する。荷物の中に、見慣れない電子機器があった。説明書がついている。
そこには、こう書かれていた。これは参加者の首輪の位置を表示するアイテムです、と。
電源を入れると画面には簡単な地図が表示され、その真ん中に赤い光点がある。どうやらこれが自分を示しているらしい。画面の見える範囲に他に光点はない。
光点からは誰なのかは不明だが、近くに誰かがいるのは判る。そういうアイテムのようだ。
これを使えば、塚本天満を探せるのではないか?今の自分には、最適のアイテムの様に思える。
とにかく出発しよう。烏丸は立ち上がり歩き出す。塚本天満を求めて。
【午後2時〜3時】
【烏丸大路】
〔現在位置〕A-02 海岸
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式、参加者の位置情報が表示できるPDA
〔行動方針〕天満を生き残らせる。その為に死んでもいいし、どんなことでもする。
ごめんなさい。つい連投してしまいました。
ルール違反で廃棄してもいいです。判断はお任せします。
>>485 乙です。
まだキャラが多いから、俺はこのくらいの連投ならいいと思うよ。
>>485 絃子さんと八雲キター!!烏丸もついにキターー!!
役者が揃ってきましたね、乙でした。
武器無しの烏丸、とりあえず獲物の調達から始めるのか?
>>485 乙!ルール違反ではないと思うよ。
ただ短い話を連続して投下するよりもうちょっと長い話を1本読みたいかな
登場話だからいいけど今後は一話辺りの長さを増やして欲しい。
長文ならいいってわけでもないけど短文すぎるのもね。
話の内容としてはよかったよ。絃子さん頼れるし烏丸が自分から動いてくれるのは
書き手にとって動かしやすそう
北が安全すぎねえ?ハリー花井絃子八雲ってなんだよ
梅津&円が居るじゃないか
武器さえあれば殺戮マシーン化するんじゃね?
いきなり絃子が銃持ってるのはパワー的にどうかと思うが、
残弾さえ調節すりゃ何とかなるだろ
ドラグノフやキャレコみたいな長距離or速射型の銃器も出てきてないし
そういや9mmミネビア自動拳銃の残弾数はどうなってるんだろ
まさか弾切れ済なんて展開もありか?
>>485 投下ありがとうございました。特に問題はないと思うので両方とも収録させて頂きました。
予約なしでも連続投下でも問題はありません。
短くても登場話ですし、キャラの目的や動機がはっきりしていてよかったと思います
残弾や予備のマガジンについては指定してもらえればそのように対応しますが、
特に指定がない場合は次の書き手さん次第になります
ナカムラ・マサル・他一名を予約……したいのですが、参加者が全員投下されていない時点で募集キャラ以外を予約するのはやはりNGでしょうか。
皆さんの御意見を聞かせて頂ければと思います。
姉ヶ崎妙はどこともしれない場所を走っていた。その思考は混乱していた。
彼女は見たのだ。彼女にとってよく知る男子生徒であるハリオ、すなわち播磨拳児が人を襲う様を。
驚きが大きいと悲鳴もでないというのは本当だった。その光景を物陰から見ていて硬直してしまった為に、播磨ともう一人の女の子には見つからずに済んだのだが。
硬直が解けると、視線の先に男子生徒の遺体が目に入ってしまった。確か、保健室に押しかけてきた男の子の一人。
それが、ただの物体となって転がっている。
遺体なんか見たくない、こんなの現実じゃない。だって、あの優しいハリオが進んで人を襲うなんて。
そう、これは悪い夢なんだ・・・。そう思い込もうとするものの、視線の先の遺体は消えない。
目の前から消えないなら、消してしまえばいいんだ。そう考えたのか、姉ヶ崎妙は遺体から逃げるように走り出した。
どこへ行けばいいのか。そんなことは判らなかったが、とにかくここから離れなければ。そう思って走り続けた。
「はあ、はあ」
息が上がる。さすがに走り続けるのに体が悲鳴を上げる。ここがどこだから判らないが、とにかくここまでくれば。
ひとまずそう思う事にして、地面にへたりこむ。
「なんで、ハリオが・・・」
また、疑問が頭に浮かぶ。クラスメイト同士で殺しあうという異常な状況が彼を狂わせたのだろうか、でも、ハリオはこんな時でも狂うというのには縁遠いのではないかと思っていたのだが。
逆に考えれば、彼のような人間でも狂気に囚われるとすれば、他の人間も同じように狂気に取り付かれ人を殺すのかも、そう考えると他の男の子達、いや女の子達だってなにやら恐ろしく思えてきた。
とにかく、今の状況は非常に危険だ。恐怖という本能に支配され、姉ヶ崎はどうすれば、この危険から脱することができるか考え込む。
恐怖の為に、視野が狭くなっていた彼女が思ったのは、自分を守る武器があればいいという事だった。
「・・・そ、そうだ・・・ぶ、武器よ・・・」
震える手で、支給品の入ったリックを地面に下ろし、開けてみる。
「・・・あった」
そこには黒光りする拳銃が入っていた。
「そうよ。これさえあれば・・・」
意外に軽いんだ。そう思いながら拳銃のグリップを握り、引き金に軽く指をかける。
「こ、こうかしら・・・」
アクション映画で見た記憶を頼りに、拳銃を構える格好をする。すると、引き金が簡単に動き、パーンと音が響く。
「・・・え・・・」
拳銃から出たのは、弾ではなかった。何本ものカラフルなテープが銃口から飛び出していた。
「そ、そんな・・・おもちゃ・・・なの?」
信じられないものを見るように、それが間違いであって欲しいかのように手の中の拳銃を何度も見るが、たとえそうしたとしても手の中の物が本物に変わるはずもなかった。
呆然とした時がすぎると、再び恐怖が湧き上がってくる。武器もない状態で、こんな危険な場所に放りだされた。
どうする。どうする。どうしよう。どうしよう。誰か、助けて。死にたくない。
ぐるぐると混乱した頭で、考え始める。そんな姉ヶ崎だから、当然周囲の状況など目に入ることも、耳に入ることも無く。
彼が近づいてくるのに気が付かなかった。気が付くと、彼はすぐ側にいたのだ。
「あれ、姉ヶ崎先生ですか?」
のんびりと緊張感の無い声で、話しかけてきたのは奈良健太郎である。ごく普通のメンタリティの持ち主である彼は、クラスメイト同士が殺しあうと言われてもピンとくる事もなく、1人でいる心細さよりも仲間で一緒にいたいと思い、他のクラスメイトを探していたのだった。
西本君や吉田山君ならいいな。そう思って探していたのだが、最初に出会ったのは美人で優しいと評判の女教師だった。彼もごく普通の男子、こんな状況でも美人に会えたのは素直に嬉しかった。
姉ヶ崎先生といえば、誰にでも優しい笑顔を向けてくれる、そんなイメージがあったし、彼、奈良健太郎もその姿を見ることで癒されるような気分になっていたのだった。
「大丈夫ですか?先生・・・」
嬉しさを抑えきれず、姉ヶ崎に近づいていく奈良。姉ヶ崎の様子がおかしいという事など、鈍感な彼に気づけというのが無理である。
ごく普通に、校内であった時の様に近づく。少なくとも奈良はそのつもりだった。
男性の声で、姉ヶ崎は我に返った。声の方向に視線を動かすと、手に鎌を持った男子生徒が自分に向かってくるではないか。
いつの間に・・・。手に鎌を持ってニコニコと笑いながら近づいてくる生徒を見て、再び、姉ヶ崎は思った。
こ、殺される。・・・は、早く逃げないと・・・。
手に持っていたおもちゃの拳銃を放り出し、ずずっと後ずさりする。しかし、男子生徒はますます近づいてくる。
姉ヶ崎は這うように遠ざかろうとする。どうやら腰が抜けるとか、そういう事はなかったらしい。逃げる、その1点のみを考えて、荷物を持つことも忘れて奈良に背を向ける。
まだ、体力は十分回復してないが、とにかく逃げなければ。そう思って再び走りだした姉ヶ崎だった。
「あ、待って、先生」
せっかく会えた知り合いに逃げられると、また1人ぼっちになってしまう。それだけはイヤだなという本能で姉ヶ崎を追いかけ始める。
手にした鎌が、姉ヶ崎を恐怖させたなどと思いも及ばない。奈良はただ、山道や草むらを歩くのなら道を切り開くのに丁度いいやと思い、支給品を活用していただけだった。
「待ってくださいよ。先生・・・。どうしたんですか?何故、逃げるんですか?」
そう呼びかけるが当然、姉ヶ崎の足は止まらない。なかなか追い付けない奈良が、あきらめようかと思った時、姉ヶ崎がバランスを崩し、転倒する。
「大丈夫ですか?先生」
そう言いながら姉ヶ崎の前に回りこむ奈良。顔を上げると視線の先に鎌の刃が光っている。
「い、いや。こ、殺さないで・・・」
震える声で思わず、そう哀願していた。相手が気の弱い生徒だという事も思い出せず、ただただ哀願を続ける姉ヶ崎だった。
「ど、どうしたんですか?先生」
そんな姉ヶ崎の態度に、ようやく先生の様子が普通でないことに気が付く奈良。どうやら姉ヶ崎先生は自分に殺されると思い込んでいるみたいだ。
「こ、殺さないでください。なんでもします。だから・・・」
あまりに普通でない姉ヶ崎の状態に、奈良もとっさにどうすべきか迷ってしまう。
でも、なんかこんな光景。どこかで見たような・・・。どこだったかな?自分の記憶をたどる奈良。卑屈なまでに震える姉ヶ崎の姿を見つめると、それがどこだったかを唐突に思い出す。
そうだ、これはあのDVDと一緒だ。西本君の家で見たエッチなDVD。気弱な生徒が、女教師の弱みを握って、教師を脅して奴隷として犯す。そんなストーリー。出ていた女優もなんとなく姉ヶ崎先生に似ていたような気がする。
もしかして、僕、今、先生を支配してる?そう思うと奈良は高揚した気分になる。そうか、これが僕の本当のブレイクの時なんだ。こんな展開が2年生の最後にやってくるなんて。
考えてみれば、最後の一人になるまでの殺し合いなんて、勝ち残る自信なんて全くないし。
どうせ播磨君やハリー君、天王寺君なんかのような不良の人たちと戦っても、殺されるだけだろうし。
それなら、3日間。どこかに隠れて姉ヶ崎先生と二人で、最後の思い出を作るのもいいかもしれない。
できれば、死ぬ前に童貞も捨てたいし。そうだ、そうしよう。
高校生らしい、若い情動(性欲ともいう)に突き動かされ奈良は、そう決意した。
【午後2時〜3時】
【奈良健太郎】
〔現在位置〕E-08
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式、草刈用の鎌
〔行動方針〕奈良ブレイク計画発動。目指せ脱童貞。
【姉ヶ崎妙】
〔現在位置〕E-08
〔状態〕完全なパニック状態。
〔道具〕なし(奈良から逃げる時、全て置き忘れてます)
〔行動方針〕死にたくない
残弾等、描写してない部分はあとの人にお任せで。
今日から仕事復帰なんで、次いつ時間取れるかわからないけど、進展祈ってます。
>>493 まあいいんじゃないの?
まだ序盤だからあまりにもつっこんだ内容だとNGだろうけど
やってみる価値はあると思うよ
>>500 ちょwこれは・・・・まあいいのか
>>493 自分も序章的なものなら面白いと思うのですが、皆さんはどうか?
>>500 奈良よ、エロはほどほどに。ほどほどにってば!w
スレッドの住人や書き手を増やすためにも、エロネタ大歓迎にロワの規定を変えません?
お断りします。
寸止めエロエロマーダー冴子を書くつもりだった
でも冴子死んじゃった…
マジレスするとエロ増やしても別にスレは活性化せんだろ
妙ちゃん危ないよ妙ちゃん
真面目に書くと、エログロ規制のロワ規定をあまり緩める予定はありません。
が、エロネタがあまりに氾濫してしまうと逆に禁止にする必要が出てくるかもしれません
そのあたりは住人の皆さんで空気を読んでほどほどにやっていきたいところです
奈良ブレイクの話を収録しました。
>>493 すいません、補足です。
ロワの前提として序盤から外部から救助があるのは認められませんが、
終盤何らかの形で絡んでくるためには今のうちから登場させるのはアリだと思います
特に対主催の方向にしたい場合、参加者だけでは厳しいと思いますし
仮にNGになったとしてもそれはそれで番外編として収録させて頂けたらなと。
まとめサイトには予約として乗せていませんが、よかったら書いていただけたらと思います
あんまりエロ・下品ばっかになるのは嫌だな。スクランに合わないしルールどおりほどほどにして欲しい。
あんまりエスカレートしないよう気をつけて書き手の人達頑張って
俺も下ネタばっかになったら読まないし書かない
今思えば
どれみロワって、小学生が題材なのにエロネタやりたい放題だったよな・・・。
レイプされて処女を失った直後にその相手の男に殺された女の子とか出てきたり、
双子の男女の近親相姦ネタがあって、そのままセックスとかやってしまったカップルまで出てきた。
小学生でここまでやってOKだったんだから、
高校生なら、何の問題無いよね。
>>502,508
了解しました。
では、改めてナカムラ・マサル・その他を予約します。
どれみロワとスクロワ2は何の関係もねーよwまあ現状の書き手の人らなら大丈夫だろう
同じロワ仲間じゃん!
どれみがやりたきゃよそ行け
一回目のロワの時って完結するまでどのくらいかかったんだ?
丸一年
目覚めると、そこは島の火葬場の脇だった。
「死んだら、ここで焼かれるのかしら・・・?」
意識が戻り、昨日の事を思い出してから、最初に考えたのはそんな事だった。
結城つむぎは、周囲を見渡し、とりあえず危険はなさそうだという事を確認すると、支給品の入ったリックサックを開けた。
「何はともあれ、まずは冷静になる事よね。自分の現状もちゃんと把握しておかないと・・・」
半ば、自分に言い聞かせる為に声に出しながら持ち物をチェックしていく。
地図、コンパス、筆記具、菓子パンが3つ、水のペットボトルが2本、ご丁寧に着替えの制服まで入っている。
「ルールブック・・・ねえ・・・」
あまり見たくないが、取り合えず情報が必要だと言い聞かせ、丁寧に読んでいく。
首輪にしろ、禁止エリアにしろ、3日間の期限にしろ、殺し合いを強制させる為の仕掛けとして、「なかなか良く出来ている」と、客観的にそう思った。
だからといって、自分の置かれた状況が愉快なわけでもない。いい脱出方法が無いか考えてみるが、現状では難しいだろうと結論せざるを得ない。
状況を甘く見たかったが、学年でも上位の成績を誇る彼女の頭脳は、ちゃんと働き、正しいけど望まない答えを導き出した。
アイテムチェックの手を休め、周りを再度見回す。ふと、思いついた事が口に出る。
「そういえば、島の外はどうなっているのかしら?」
50人以上の人間が消えて、大騒ぎにならないはずがない。警察やマスコミの追及だって当然あるだろう。それらを完全に抑えられる程、彼らの組織は強大なのだろうか?
ましてや、消えた人間がみんな死んだら大騒ぎどころではない気がする。そう考えると3日以内に助けがくる可能性も否定できない。もちろん、全てが終わってからやってくるというのもありうるが。
「恐らく助けは来る。でも、それが間に合うかどうかは判らないわね・・・」
取り合えず、そう結論をつけると一旦、思考を打ち切り、支給品のチェックに戻る事にする。
残ったのは2つの箱。1つは割と大きく重い。もう1つは小さく軽い。
「これが武器・・・っていうやつかしら?」
とりあえず大きい箱から開けてみる事にする。よく見ると箱には「最後の贈り物:君たちに愛を込めて」と書かれていた。
「・・・何・・・?」
あまりに状況にそぐわない言葉を不可解に思いながら、箱を開ける。
「・・・アルバム?」
ご丁寧に表紙には、「思い出」と書かれている。めくってみると、入学式、体育祭、文化祭、そしてつい先月の修学旅行までの大量の写真であった。
2-Cだけでなく、他のクラスや1年生のものもあるようだ。クラスメイト達の幸せそうな顔がそこにはあった。
こんなもの支給してどうするつもり?と思いながら、ページをめくっていくと手紙が挟んである。
そこには、これを使って現実逃避するも良し、最後の思い出にするも良し、恋敵などの殺したい奴を思い出すなり、好きにしなさいとある。
「・・・悪趣味ね」
殺し合いの為の支給品として、これを考えた人間を軽蔑しながら、つむぎはもう一つの小さい箱を手に取る。
これも大して期待できそうにないと思いながら開けると、そこには携帯電話と、紙切れが入っていた。
「今度は何?」
紙切れを広げてみる、つむぎ。
この携帯のアドレス帳に唯一登録されているのは、主催者が参加者を監視している監視ルームに直通の番号であるという事。
他の番号には繋がらない事。
クラスメイトを売って、監視ルームと連絡を取る気があるなら、優勝する為に色々と便宜を図ってやるということ。
例えば、指定する相手の現在位置を教えたり、聞き逃した放送などの情報を聞けたり、気に入らない相手の首輪を吹き飛ばしたり、禁止エリアの指定や一時的な解除、等々。
このゲームが面白くなると主催者が判断したなら、何でもOKだということ。
ただし、主催者側を頼りすぎたり、怒らせるような事をすれば、携帯の持ち主の首輪を吹き飛ばす事もありえること。
「・・・何事も自己責任です。まずは自分で出来ることを全力でやりましょう。そうすれば我々は喜んで君の勝利に協力します。よい返事をお待ちしてます。では幸運を」
声に出して、読み終える。
「・・・こんな、あからさまな罠に誰が乗るものですか・・・。本当に悪趣味!」
そうつぶやき、目にするのも嫌だといわんばかりに視線をそらす。
ちょうどその視線の先には、周防美琴と楽しそうに笑いあう花井春樹の写真があった。お湯を入れたカップラーメンが伸びてしまうくらいの時間、写真をじっと見つめる。
「・・・とりあえず敵とコンタクトできるツールを、みすみす捨てる事は無いわ・・・」
ここにいない誰かに向かって、言い訳するように携帯を箱に戻し、リックサックに詰める。
そして、再びアルバムの写真を見つめる、つむぎだった。
【午後2時〜3時】
【結城つむぎ】
〔現在位置〕H-07 焼場の近く
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式、思い出のアルバム、主催者側にしか繋がらない携帯電話
〔行動方針〕とりあえず主催者の思惑には乗りたくないが・・・
乙だけどもうちょっと長い話かこうぜ
投下ペース速いのはいいけど密度が薄い気がする
残りキャラ全部短編で埋められるのはきつい
確かにもう少し長い話もやって欲しい
でも乙
>>520 乙ー。
つむぎもどう転ぶかwktkだな。携帯も色んな展開に繋がりそうだし
前回のスクロワの時は一つ一つの話が長すぎるなんて言われていたものだけどなー
今は序盤だし、特に一人だけの登場だと短い話でも仕方がないんじゃないかね?
後半になれば嫌でも長編が増えてくるんだし
>>520 乙!すごい勢いの執筆ペースだ
天満も話の長さは同じ位だと思うので、単独登場時はかまわないかと思う
>>520 乙です。
また面白そうなアイテムがでてきたな。
没ネタ覚悟で番外編。正式採用しなくても、没ネタとして収録してもらえれば。
タイトル「番外:週刊ジンマガ編集部にて」
「・・・とんでもないことになったなあ・・・」
談講社の週刊ジンマガ編集部に席を置く、若い編集者・三井雅顕は、三日も風呂に入っていない頭を書きながら仕事の手を休め、編集部においてある10年落ちのオンボロTVを見つめていた。
21世紀、冷戦構造が崩壊した世界では小規模な紛争・民族争いが頻発していた。これに対し唯一の大国アメリカの強圧的な平和の押し売りは、更なる反発を生んでいた。
そして、ついにある国際テロ組織の大規模な報復を招いてしまう。これに対しテロとの戦争を宣言するアメリカ。日本も同調し、世界は泥沼のテロとの戦いに進んでいった。
テロ組織の憎悪は、アメリカと、その盟友イギリス、そしてアジアでは日本に向けられ、犯行予告が度々行われた。
3月も終わりのこの日、テロ組織は日本に対する大規模な攻撃をついに成功させた。
矢神町とよばれる都会からやや離れた町がターゲットになったのだ。夜、町内の8箇所から同時に火の手があがり、町は大パニックとなった。
また、最大の攻撃は、同日レクレーションをしていたという矢神学院高等学校の生徒達の宿泊していた体育館を、大量の爆弾で木っ端微塵に吹き飛ばしたという事である。
何故、矢神学院高校が狙われたのか?同学院は、テロのもう一方の標的であるイギリスに本校があり、イギリス本国との繋がりが深いという事が原因ではないか?といわれていた。
現在も、矢神町では身元不明の遺体の確認、行方不明者の捜索が行われているということであった。
無責任なコメンテーターのもっともらしい意見を聞きながら、三井はふと気が付いた。
「そういえば、二条先生って矢神じゃなかったかな・・・。それに田沢君も・・・。大丈夫かなあ」
本当に心配してるのか?と思われるようなのんびりした口調のまま、TVから目を離せずいる三井だった。
ずん、ずん、ずん。
地響きがする。
「いけない。編集長だ」
今夜は印刷所の締め切りなのだ。とりあえず矢神のニュースを頭から追い出し、仕事に戻った三井だった。
度々失礼します。
現在執筆中の番外編ですが、先程投下された526氏の作品と明らかな矛盾が生じてしまった為、現行ルール(予約で優先されるのはキャラのみ。別の人が予約無しに投下した作品で状況が変わって話がパーになっても泣かない)に基づいて予約を破棄します。
ご迷惑おかけしました。
修正。執筆中だったのは
×『番外編』
○『ナカムラ・マサル・その他で予約した作品』
の間違いでした。
何度も申し訳ない……
この場合は…どうなんでしょう
526さんも没ネタ覚悟とありますし、まとめサイトの掲示板の方で投下して
読み手の皆さんの意見を待つ、というのは?
526氏の話を正式に採用するかボツネタにするか、ですね。
トリップがないので作者さんの判断に任せるのは難しく住人の皆さんで決めるしかありません。
526氏の話には時間が表記されていないので、527氏の後に回せば
致命的な矛盾を回避できるのではないかと思いますが・・・
トリップ必須としながらもない作品も採用してきた自分にも問題があり、
◆cj4OQi4css氏にも迷惑をかけることになってしまって申し訳ありませんでした。
以降はトリップ必須、ID等で証明できない場合は番外編扱いにしようかと思います
あと笹倉先生を予約します
>>527 工エエェェ(´д`)ェェエエ工 勿体無い・・・
ってか、現行ルールの『優先されるのはキャラだけ』ってやばくね?
今後、悪意ある書き手が予約中の書き手をインターセプトしないとも限らんぞ。
今回はたまたまだろうけど、場合によっちゃ
書き手A氏がB-1に居るキャラを予約
↓
書き手B氏が隣接する(B-2等)キャラをB-1にわざと移動させる展開を書き、予約無しに投下
↓
書き手A氏の展開と矛盾、A氏涙目
なんて可能性もある訳で。
その辺はっきりさせとかないと、今後色々厄介になるかも。
532 :
526:08/08/30 17:21 ID:UklefYUc
色々すみません。
ひょっとすると◆cj4OQi4css氏に迷惑かかるかな?って思ったので、没
でもいいとしたし、あえてトリップつずに書いたんですけどね。
50人以上が消えたことを、少なくとも短期的に主催者達がどうやって一般人をごまかしているのか?って所をはっきりした方が、今後の書き手さんの為になるかと思って。
◆cj4OQi4css氏が、もっと面白い方法を考えていたなら、そっちでも良かったんですが。
申し訳ない。
533 :
526:08/08/30 17:24 ID:UklefYUc
だから◆cj4OQi4css氏には、ぜひ投下してもらいたいなと思いますが、どうですか?
>>520 非常に面白い支給品だと思いました。携帯電話が誰の手に渡るのか楽しみです。
ここまでの話を収録しました。
526氏の話を収録するかどうかは◆cj4OQi4css氏が予約を本当に
破棄してしまうのかどうかで決めようかと思います。
ルールに1つ追加しました。
今後はトリップなしの投下の場合、今回のように不都合が起きたら先着だとしても破棄されます。
531氏のいうケースはできるだけ書き手同士の配慮で乗り切りたいところです。時間もある程度あやふやなのはそのためですし。
明らかにおかしい場合は修正・破棄される可能性もありますが。
(診療所を目的としていて時間的にまもなくたどり着くはずのキャラAがいるけれど、
キャラBが登場し診療所で待ち続けいつまで経ってもAが現れない等明らかに他キャラの行動制限が見受けられる場合)
度々失礼します。
予約取り消しの件ですが、
>>530でまとめ氏が提案された『526氏の作品と時間軸を入れ換える』という方法が許されるのでしたら、何とか修正して投下してみようと思います。
ホント済みません……_| ̄|〇
謝ることでもないかと
頑張れ〜、期待して待ってます
>>535 了解しました。修正頑張ってください。
作品を一本投下します。
【Corsica】
頬がこそばゆい。ざらざらした何かが肌を撫でて耳をくすぐる。
「う〜んもう食べられない、うう……」
人工的でない、野性的な何かを顔に近づけられているような感覚に息が苦しくなってきた。
青空からの強い光が、生い茂る葉のカーテンを通し顔に突き刺さってくる。
かすかな潮の香りが漂ってきて笹倉葉子はとうとうぱちりと目を開いた。
「あらおいしそうな豚」
自らの視界の半分以上を占めるミニブタの姿を確認すると彼女はまずそう呟いた。
そのおっとりした外見からは想像もつかない速さでブタ――ナポレオンの背中を掴み抑える。
「#!☆$!」
「冗談よ。さっきからくすぐったかったのはアナタね?私の……えっと支給品、かしら」
胴体を地に押しつけられてもがくナポレオンの様子を見てくすくすとおどけてみせる。
だが笹倉はその時既に眠る前のことを思い出していた。一瞬張り詰めた静寂が喉を通る。
2-Cを中心に歩行祭というイベントが急遽企画、先輩がそれに協力することを知る。
ならばとちゃっかり便乗して、昼間から経費で飲酒したりゴロ寝したりと
宴会気分で幸せな時間を過ごさせてもらう、それだけのイベント……そのはずだった。
「あなた大分人に慣れているのね。誰か飼い主がいるのかしら?」
「……ブヒ」
だが幸せから棒が一つ抜け、文字通り一変してしまった。最後のクラスのお祭りは辛い人生の締めくくりと化したのだ。
思い出作りに高まる期待、楽しそうな声、どっと笑い崩れる姿は儚く消えた。
既に一人みせしめのように殺されてしまったこともはっきりと覚えている。
そして、自分達も生徒に混じり殺し合えと宣告されたことも。
「ちょっと待っててね。まず荷物を調べるから……あら、あなたナポレオンって言うの」
豚がいたらしきスペース(おそらく閉じ込めたままではストレスでやられてしまうからだろう)に
添えられていた紙には『この豚の名前はナポレオンです』と注意書き。
ナポレオンといえばジャック・ルイダヴィッドの絵画。最も実際はこの子のように白き騎馬でなくロバだったという話だが……
細かいことはおいておいても、おそらくこの子はナポレオンなのだろうと笹倉は素直に納得する。
(えーとこれはダッフルコートね。『制服の代わりです』ふーん……)
春近しとはいえまだ三月。夜になれば必要になるだろう。しかもスノーホワイト、お気に入りの色だ。
ありがたく頂戴することにする。個人的には制服でもサイズさえ合えば構わなかったのだが。
「どこかに行きたい?待っててね、今準備してるから…………豚汁」
「!」
何故か自分から離れようとせず、しかし落ち着かないのかウロウロとするナポレオンに笑顔で語りかける。
震えている彼に冗談冗談と微笑みかけるがどこか通じていないらしかった。リアルに嫌な思い出があるのかもしれない。
「あら?」
思わず声を挙げてしまった。広げたリュックの最奥にあったのは二冊の本。片方はルールブックのはず。だがもう一冊は……?
とりあえずルールブックを手にとってパラパラとめくると参加者の名前や首輪等について簡潔にまとめてある。
(困ったわね、私ほとんど知り合いがいないからなあ)
自分は美術教師。担任のクラスを持ってるわけではない。もちろん覚えのある生徒もいるだろうが
生死の掛かった状況で信頼できるほどの相手は数える程度。
まずは長年の親友である刑部絃子。そして彼女や自分にとって弟のような存在である播磨拳児。
(2/50はちょっと期待できないかな。後は……塚本さん二人にサラちゃん、姉ヶ崎先生)
それでも5/50。低すぎるとふうと笹倉はため息をついた。もう少し生徒達とのコミュニケーションをとっておくべきだったか。
学生人気はまずまずだという自信もそれは平和な世界での話だ。
こちらが相手を信用しきれないように相手もこちらを信用できないだろう。
面識の低い相手ならば躊躇しない人間がいてもおかしくないし、味方してくれる望みも薄い。
最悪だと人間関係の薄さが祟って男子が逸ったり、教師という立場上余計な反感を買うかもしれない。
(生徒から身を守らないといけないって教師としてどーなんだろう?)
胸が冷えるような寂しさを感じて物思いに耽りながら二冊目の本に手を伸ばす。
だがその内容を読んだとき彼女には光明が差したように――
どろどろと暗くて重い大気が一瞬で清浄なものへと澄みきったように感じられた。
「……『麻生広義、6月27日生まれで蟹座のA型。バスケット部所属で次期キャプテン候補。
成績○、身体能力○、友人は主に同じクラスの菅柳平。2-Cの隠れた実力者。器用で何でもそつなくこなすが異性の扱いは苦手で恋人なし。
そのせいか過去に周防美琴とつきあうが別れる。バイト先の後輩にサラ・アディエマス(あらサラちゃん)……家族は……』」
思わず声に出しながら呟く。名前と顔写真の隣に記載された数々の個人情報、その身辺、人間関係。
ぱらぱらとめくっていくがどうやら参加者全員分が記載されているらしかった。
こんなものをどうやって調べ作ったのやら。気になって思わず自分のページを見る。
「『笹倉葉子、7月18日生まれで蟹座のA型。矢神高校美術教師だが能力は平凡・体力低し。キュビズム展等、芸術家としては優秀(まあ)
友人は高校時代からのつきあいである刑部絃子。パトロンはいるが近しい異性はないが教員としての人気は男女共に高い(あら嬉しい)
但し相当な酒豪でありカードの浪費癖、金銭感覚はレッドゾーン……それを表すような真紅のNSXが愛車だがスピード狂で(失礼ね)
飲酒運転……危険運転暴走行為による免許停止経験、あり……』ってうぅ、学校には隠してたのにどーして?」
これはひどい、人権の侵害だと後半は喉の奥で唸る様な声をだし嘆く。
落ち着いて考えればこれらは人を使えば調べられる程度の内容だ。
そして本人や近い間柄の人間からすれば常識、あるいは古い情報だったり本人の認識と違っている可能性もある。
(私と拳児君は親しいのにここには書いてないみたいにね。案外この子も近い存在だったりして)
載っていることが全てというわけではないのだろう。それでも情報量で劣る自分にとって、
他人の詳細情報が記載されたこの本は大変嬉しい。不安要素の一部はこれで補えそうだった。
残る最大の問題は自分の意思。一体これからどうしたいのだろう。殺人は遠慮したいが
縁の薄い生徒を守る程の熱き正義感はない。痛いのは嫌だし我が身は可愛いとまあ人並みには思っている。
けれど親友や弟分の彼は心配だ。コーラで酔うが一際センスの光る姉、熱心に筆を取って努力する姿を見せる妹も気になる。
まあ自分は人の心配をできるほど――少なくとも腕っ節という意味で強い人間ではないのだが。
精神的にはタフで図太いとよくヒドイ事を言われるけれど。
「ブヒ」
「あらごめんなさい。待たせちゃったわね。そうね、そろそろ行きましょう」
遠くには海が、その反対側には集落のようなものが見える。
ならばどこか適当な空家を見つけてじっくり読書し、そしていざというときに備えることにしよう。
どうせ逃げてもいつかはトラブルに巻き込まれるに違いないのだから。
そして何かを決めたらそれを貫く。絵と同じ。モチーフやイメージを変え続けては迷路には迷ってしまうものだ。
「あら足が速いのね。置いて行かないでね…………しょうが焼き」
生徒と教師が殺しあう異常極まりない島の一角で、震える豚とクスクスと笑う美術教師の姿がそこにはあった。
【午後2時〜3時】
【笹倉葉子】
〔現在位置〕B-04
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式(制服の代わりにダッフルコート)、参加者の詳細プロフィール帳
〔行動方針〕殺し合いもゲームを阻止する予定もなし
知人は心配だがまずは安全そうな場所でプロフィール帳に目を通す
〔備考〕豚料理はそれなりに得意です
【ナポレオン】
〔現在位置〕B-04
〔状態〕健康
〔行動方針〕とりあえず喰われたくないがひとりぼっちはさみしい
目が覚めて、彼女が最初にした事は腹ごしらえだった。
「イチ・ジョー ガ イッテタゾ。マズ、ブシハ クワネド タカヨウジ ダト」
完全に間違った言葉を口にしながら、いつもの調子で支給品のパン(種類が何だったのかも見ないまま)と水1本をあっという間に全て平らげ、ララ・ゴンザレスは我に返った。
「シマッタ。・・・モウ、ナイノカ。マダ、ハラ、ヘッテルゾ」
ララは、通常の参加者に与えられる支給品の入った共通のリックの他に、傍らに置いてあった海外旅行に持っていくような、小柄な人間なら入りそう巨大なスーツケースを開ける。
どうやら、それがララに与えられた支給品らしい。
中には、雑多はモノが詰め込まれていたが、正直ララには意味不明のものが多かった。
「・・・ナンダ、コレ?」
●魔法少女アニメの主人公が使うステッキの玩具
●役舎丸広事のサイン
●ドジビロンピンクのマスク
●Gペン・インク・ケント紙・ベレー帽(漫画家セット)。
●エロDVD
●皿・甲羅・足ひれ・口ばし・傘(河童セット)。
●ジョーダンのバスケットシューズ
●組み立て前のガンプラ
まだ、まだあるようだ。
「・・・マア、イイカ」
あんまり深く考えず、何かの役に立つかもしれないと思い、常人なら抱えきれない巨大なスーツケースを肩に載せると、ララは走りだす。
そうなのだパンを3つ食べたくらいでは、空腹は全然収まらない。次の食料を調達しないと。
「・・・マッテロ。ワタシ ノ ゴハン!」
鋭い目付きで、文字通り獲物を探す野生のララであった。
********************
坊乃岬大和は、武器をチェックした後、ため息を漏らす。
「なんだ、外れかよ」
彼に支給されたのは、木刀だった。これが学生同士の喧嘩であるなら、相当凶悪なアイテムになりうるものだが、殺し合いの武器としては物足りない。
「どうせなら、アサルトライフルとかなら良かったのによ」
銃マニア・サバゲーおたくの彼としては本物の銃器が使えるかもと一瞬心が動いたのは確かである。
その結果が、刃物ですら無いものが武器として与えられたのだから、彼の無念は想像に難くない。
もちろん、それをクラスメイトに対して使えるか?というと話は別であるが。
なんといっても、彼が普段親しんでいる、また文化祭出し物決定の際に実行されたサバゲーとは異なり、本当に人が死ぬのだから。
でも、今の彼は、せっかくの武器を入手しそこなった無念でいっぱいだった。
「それに、ヤラないとヤラれるんだ。仕方ないんだ・・・」
悲劇のハードボイルドな主人公を気取る坊乃岬である。
「さて、これからどうするかな?」
サバゲーのセオリーから行けば、やたら動き回るのは得策ではない。どこかに隠れて機会を伺い、どうにかして強力な武器を手に入れるというのが作戦としては順当な所だろう。
最終的に1名しか残らないとはいえ、やはり仲間がいた方が生き残る確率は上がるだろう。例え、強大な敵でも、チームで当たれば勝つのは難しくないというのも、サバゲーで彼が学んだことである。
とりあえず、目立たないように隠れながら移動し、信用できそうな人間を探そう、そして銃を何とか手に入れよう。
とにかくリスクを避ける為に、物陰や草むらの中を移動しながら、手近な氷川村を目指す。
人里へ行けば、武器はなくても何か役立つものが手に入るかもしれないし、誰かいるかもしれない・・・。
そう考えて移動を開始する。
********************
「ム・・・。ナニカ イル」
空腹によって研ぎ澄まされたララの野生は気配を感じ取る。食べられる動物なんかだといいのだが。
獲物に気がつかれないように、気配を消しながら近づいていく。
視線の先にララが捉えたのは、残念ながら食料たる動物ではなく、挙動不審と思える程にオドオドしながら、あたりを警戒して歩く坊主頭の少年だった。
多分、あれは自分と同じ連れてこられた参加者なのだろう。2-Dの人間ではないので、イチ・ジョーのクラスメイトということらしい。
そう言えば、イチ・ジョーやイマドリはどうしたんだろう?彼らの消息がふと気になる。
目の前で、2人の人間が殺害されたとはいえ、元来、善人であり、日本人の善意というものを信じていたララは、「さあ、殺せ」と命じられても、そんなモノに誰も乗るはずは無いと思っていた。
だから、彼女のとった行動は、学校における振る舞いとなんら変わりがなかった。
「オーイ。ソコノ オマエ!」
大きな声で呼びかけ、大きな荷物を抱えたまま全力で近づいていく。
驚いたのは、坊乃岬大和である。
いきなり呼びかけられたと思うと(サバゲーではありえないことだ・・・)、罠か?と思うまもなく、土煙を立てて褐色の肌の外人レスラー女が向かってくるではないか。
やばい。2-Cで誰よりサバゲーに詳しい自分が、文化祭に続き、ここでもあっさりリタイアするのか?あっという間にララに追い付かれる。
ララの殺気(腹が減ってるので、少し苛立ってる)を感じ、肉弾戦では絶対かなわねえ、どうすると自問する。
「オマエ イチ・ジョー シラナイカ?」
相手の心の裡など知る由も無いララは、そう尋ねる。
「へ?」
・・・・・
無言の時間がすぎる・・・。
どうやら、敵ではないようだ・・・。そう判断して、大きく息をつく。
「・・・い、いや。お前が初めて会った人間だが」
正直に答える。
「ソウカ・・・」
ララは残念そうに声のトーンを落とす。
しばらく考え込んだかと思うと、再びララが口をひらく。
「オマエ クイモノ モッテルカ?」
「そりゃ、支給のパンはあるけど・・・」
思わず反射的に答えてしまう。
「・・・クレ」
「は?・・・」
再び、思考が止まる坊乃岬。
「パン クレ!」
なんと、坊乃岬のパンを要求するララ。
「・・・ば、馬鹿野郎。貴重な食料を、渡すかよ」
生き残る為のパンを取られたらたまらない。
坊乃岬は、深く考えもせず。ちょいとした脅しのつもりで、手に持った木刀をララに向かって振り下ろす。
無論、当てる気はなかった。ララは木刀を片手で握り受け止める。
「・・・ナニヲ スルノカ?」
そう言うと、ララは噂の馬鹿力で、ひょいと木刀を取り上げ、そしてそのまま折ってしまった。
「あ〜!!」
唯一の武器を破壊され悲鳴を上げる坊乃岬。
「コウイウモノハ ヒトニ ムケテハ イケナイ」
ララの野生の瞳(食料を求めるさもしい目ともいう)に睨まれ、この場は観念する坊乃岬。生き残る為だ・・・そう自分に言い聞かせる。
「判った・・・判ったから・・・。パンやるよ。1個だけだぞ」
そう言うと一番小さいアンパンをララに向かって差し出す。
「アリガトウ」
礼を言って受け取ると、あっと言う間にアンパンはララの胃の中に消えていった。
パンを食べた後、しばらく荷物をあさっていたララ。
いきなり何のつもりか、役舎丸広事のサイン色紙を差し出す。
「コレ、オレイ。ウケトレ」
「・・・お、おう」
とりあえず、逆らわない方がいいと思い、素直に受け取る。
「ソレカラ、コレハ ソイツ ノ オワビダ」
折れた木刀の指差しながら、DVDケースを差し出す。
伝説のAV。いけない保健室シリーズの幻の最終作であった。エロソムリエ西本の話には度々出てきたが、坊乃岬はまだそれを見た事はなかった。
「・・・おお。これは、いい物だ」
こんな殺し合いの場で、しかも再生機器もないのに、一瞬我を忘れて喜ぶ坊乃岬。所詮ハードボイルドを気取っても底が浅い。
どうやら喜んでくれたらしい。
やっぱり、殺し合いなんかにならない。普段と変わらない優しい人間関係が残ってる、そう確信する事が出来てララは満足だった。
「ソレデハ ワタシハ サキヲ イソグ」
別の世界へいっちゃてる坊乃岬を残して、来た時と同じく怒涛のように去っていくララ。
********************
「・・・・は?」
坊乃岬が我に返ると、そこにはララの姿はもう無かった。
こうして、ハードボイルドを目指した坊乃岬の戦いは、最初から波乱含みではじまった。
以下、次号。
【午後3時〜4時】
【ララ・ゴンザレス】
〔現在位置〕H-09
〔状態〕健康(空腹)
〔道具〕支給品一式(食料なし、水は残り1本)、ガラクタが多数入った大型スーツケース
〔行動方針〕食料確保。イチ・ジョーなど知り合いを探す。殺し合いなんて誰も参加しないと思ってる。
【坊乃岬大和】
〔現在位置〕H-09
〔状態〕リアルサバゲーという状態にやや興奮。だがいきなりララに翻弄され呆然
〔道具〕支給品一式、折れた木刀、菓子パン残り2つ、エロDVD、役舎丸広事のサイン色紙
〔行動方針〕リスクを避けつつ氷川村へ。銃を撃ってみたい。
…ショーンやる気あんのかい
アイテムという単語が妙に気になる
パンの種類もどうせなら1つくらい指定してほしかった。
あとマーダーの種類少なすぎる
まさかここまでハイペースに埋まってくとは思わんかった
予約さっさとしとくべきだったな…
どうしてこんな事になったのだろう。
たまたま見つけた洞窟の中に身を潜め、寄留野香織は動かない頭脳を必死で動かそうとする。
目の前で起きた惨劇。2人の人間の死。
自分の手の中にある、ずしりと重い銃。それが、猟銃として使われる自動装填式の散弾銃であるという事はもちろん彼女の知識にはない。
銃の重さが、昨日の惨劇が現実だと告げていた。
ここから逃げ出したい。
今頃は、歩行祭も終了し、自宅でゆっくりしていた頃なのだ。
「・・・そうよ。塚本さんのせいだわ」
彼女さえ歩行祭なんて言い出さなければ、こんな事には。
自分も、それに賛同した事も忘れ、ここにいないクラスメイトを非難する。
もしかして、こうなると判って塚本さんは歩行祭を計画したのでは?
思考はひたすら暗黒面へ向かって、降下し続ける。
「そうよ、きっとそうだわ・・・」
寄留野香織は、恐怖の為に冷静になれずそう考える。いや、既にもう切れてしまったのかもしれなかった。
たった一人の思考は既に妄想へと進んでいった。
塚本天満とショーン達留学生はグルなんだ。
待って。沢近さんって、ショーンの婚約者だって修学旅行の時に・・・。
じゃあ、沢近さんも?そうよ、同じイギリス人なんだし。
そういえば、あの沢近さんのお嬢様然とした、人を見下したような態度も腹が立ってきた(香織の脳内世界での補完です)。
許さないわ、こんなこと。
塚本、沢近とくれば、彼女達の友達である周防美琴もきっとグルに違いない。
あの人の良さそうな顔をして、友人達を地獄へ連れてくるなんて、最低だわ。
そして、高野晶。文化祭のサバゲーを言い出した彼女。
ひょっとすると、あれは今日の為の予行演習だったのかもしれない。
もはや、証拠も何も無く、論理や理性とは無縁の憎悪と偏見に彩られた頭脳で、彼女は2-Cを代表する4人を断罪する。
普段の日常では決してありえない。
あの4人だけは、絶対許さない。
2-Cが変な目で見られたのも、あの連中のせいだ。大多数の普通の生徒は目立たない真面目な生徒なのに。
真面目なみんなの幸せの為に、あのクラスのヒロイン気取りのオンナどもにワタシが天罰を下す。
確かに他の書き手が泣いてると思うと嫌だな
マーダーが一人も出てこない話ばっかりだし
似たような話が続くなら
しばらく過疎になるまで自重してくれんかね
幸い、ワタシにはこれがある。
もちろん本物の銃は撃ったことないが弾は沢山ある。
これだけあれば、絶対に逃したりしない。
寄留野香織は、正義の鉄槌を下すべく、クラスの敵の待ち構える戦場へ向かって出て行った。
【午後3時〜4時】
【寄留野香織】
〔現在位置〕F-05
〔状態〕健康。狂気
〔道具〕支給品一式、自動装填式の散弾銃
〔行動方針〕天満・沢近・高野・周防の4人を殺す
>>556 うーん……乙と言いたい所だけど、ちと投下ペース早過ぎないかな。
結城の話と比べると、心情描写がいまいち唐突で分かり辛いかと。
あと、沢近の婚約者がショーンって知ってる人は少ないと思うよ。
修学旅行で天満や播磨が勘違いしたように、許嫁=マックスと思っている人の方が多いんじゃないかな。
補足だけど、モブキャラは『本編での出番が少ない』だけで、完全オリジナルキャラとは別物。
だから、ほんの少しでも原作を彷彿とさせる描写があると嬉しい。
例えば、香織なら歩行祭での石山との会話なんかを取り上げてみる、とか。
執筆ペースや意欲は凄いからこそ、その辺を頑張って。
修正用掲示板に落とすべきかもしれないが。こっちに落としてみる。
**********************************
どうしてこんな事になったのだろう。
たまたま見つけた洞窟の中に身を潜め、寄留野香織は動かない頭脳を必死で動かそうとする。
目の前で起きた惨劇。2人の人間の死。
自分の手の中にある、ずしりと重い銃。それが、猟銃として使われる自動装填式の散弾銃であるという事はもちろん彼女の知識にはない。
銃の重さが、銃身の熱さが、昨日の惨劇が現実だと告げていた。
ここから逃げ出したい。
「・・・そうそう、結構石山君がしつこかったんだよね・・・」「・・・まんざらでもなかったんでしょ」「そんなことないわ」
今頃は、歩行祭も終了し、友人達と、そんなつまらないおしゃべりでもしていた頃なのに。
それがあんな事になるなんて・・・。
「・・・そうよ。塚本さんのせいだわ」
彼女さえ歩行祭なんて言い出さなければ、こんな事には。
自分も、それに賛同した事も忘れ、ここにいないクラスメイトを非難する。
もしかして、こうなると判って塚本さんは歩行祭を計画したのでは?
思考はひたすら暗黒面へ向かって、降下し続ける。
「そうよ、きっとそうだわ・・・」
寄留野香織は、恐怖の為に冷静になれずそう考える。いや、既にもう切れてしまったのかもしれなかった。
或いは、自分の罪を認めたくない自己正当化の賜物なのかもしれない。
たった一人の思考は既に妄想へと進んでいった。
塚本天満とショーン達留学生はグルなんだ。
待って。じゃあ、沢近さんも?そうよ、同じイギリス人なんだし。
そういえば、あの沢近さんのお嬢様然とした、人を見下したような態度も腹が立ってきた。
許さないわ、こんなこと。
塚本、沢近とくれば、彼女達の友達である周防美琴もきっとグルに違いない。
あの人の良さそうな顔をして、友人達を地獄へ連れてくるなんて、最低だわ。
そして、高野晶。文化祭のサバゲーを言い出した彼女。
ひょっとすると、あれは今日の為の予行演習だったのかもしれない。
もはや、証拠も何も無く、論理や理性とは無縁の憎悪と偏見に彩られた頭脳で、彼女は2-Cを代表する4人を断罪する。
普段の日常では決してありえない。
あの4人だけは、絶対許さない。
2-Cが変な目で見られたのも、あの連中のせいだ。大多数の普通の生徒は目立たない真面目な生徒なのに。
真面目なみんなの幸せの為に、あのクラスのヒロイン気取りのオンナどもにワタシが天罰を下す。
幸い、ワタシにはこれがある。
もちろん本物の銃は撃ったことなかったが、さっきの経験で使い方も判った。
幸い弾も沢山あるし。
これだけあれば、絶対に逃したりしない。
とにかく出発しよう。香織は洞窟を出る。
******************************
香織が出た洞窟のすぐ先に、彼女が生まれ変わった場所があった。
かつてクラスメイトと呼んでいた少年の死体。
今となっては、彼がどういう目的を持っていたのかは確かめるすべもない。
一人で恐怖に震えていた香織の前に、彼は突然現れたのだ。
びっくりして、つい引き金を引いてしまった。
ただ、それだけだった。
「・・・あなたの仇も討ってあげるわ」
そう、メッシュの髪の物体に向けて、言い放つ。
彼が死んだのも、あの4人のせいなんだから。
寄留野香織は、正義の鉄槌を下すべく、クラスの敵の待ち構える戦場へ向かって出て行った。
【午後3時〜4時】
【寄留野香織】
〔現在位置〕F-05
〔状態〕健康。狂気
〔道具〕支給品一式、自動装填式の散弾銃
〔行動方針〕天満・沢近・高野・周防の4人を殺す
【飯合祐次:死亡】
支給品は散弾でボロボロな為、死体と一緒に放置してあります
残り44人
死者増えてるww
メッシュじゃこうなっちゃうよな。最近はあんたばっかり投下してるけど
結構楽しませてもらってる。まあもちろん弊害もあるんだろうがね
形だけでも予約した方がいいんじゃないの
552みたいな意見を見るとちょっと気の毒に思えてくるな
一人で進めると後で自己リレーだらけになりかねん
投下します。
大幅に遅れて申し訳ありません。
(――どうした、何事だ?)
(――し……侵入者一名発見! 直ちに排除します!)
(――先程始末した男の仲間か?)
(――わ、分かりません、何しろ動きが早過……っぐわぁぁぁ!!)
(――もしもし? もしもし、応答せよ!)
――バシュッ! パシュ、ドシュ!
(――くっ、逃がすな!)
(――死ねぇ、この化け物がぁ!!)
――――グァッ…!
(――どうだ、殺ったか!?)
(――手応えアリ、このまま追い詰めます!)
(――よし! 油断はするな、相手は素手とはいえ相当の手練だ。確実に息の根を止め次第報告せよ)
(――はっ!)
(――申し訳ありません。 あと一歩の所で取り逃がしました)
(――まぁいい。 胴に十発近く撃ち込んで海に落ちたのなら流石に生きてはいまい。 後の始末は日本側に任せる)
(――では、我々も)
(――あぁ、撤収だ。 既に矢神町方面で設置班が作業中だ、我々も急ぐぞ!)
(――了解!)
※※※※※
「……ムゥ」
「……やはり、嫌な予感が当たったか」
生徒達を拉致した“実行部隊”が富士沢市立体育館を離れてから、およそ一時間足らず。
歩行祭の様子を探らせていた部下に加え、沢近邸からも一切の連絡が取れないという異常事態に直面していた
ナカムラ達は、まずは雇い主の一人娘・沢近愛理の安否を確認すべく、飛行機から直接富士沢市郊外へと
パラシュートで降下。
迅速さと用心深さを兼ね備えた方法だったが、現場に向かった彼らを待ち受けていたのは、歩行祭と呼ぶには
あまりに物々しい光景だった。
灯りの消えた建物の周りを取り囲む、十数個の影。
加えて、現場付近から微かに聞こえた、建築現場で使う釘打ち機のような音。
あれはサイレンサー装着時の銃声に間違いない。 傭兵時代の経験から、ナカムラはそう確信していた。
勿論、ナカムラの心配そのものが杞憂に過ぎない、という可能性もあった。
そもそも、突拍子も無い生徒達で知られる2−Cのことだ。
文化祭の出し物をサバゲーで決めた時のように、突然、何かの企画が入ったのかもしれない。
もう暫くすれば、何事も無かったかのように連絡が来る――そう思っていた。
そう、思いたかった。
だが、『大至急戻るように』とこちらに念を押していた人物からの連絡は、未だに無い。
電源を切っているらしく、GPS機能も使えないまま。
そして何より、最近入手した“ある情報”が、この異常事態を裏付ける証拠となり得る……という事実が、
ナカムラ達の焦りを加速させていた。
「ムゥ………」
「気に病む必要は無かろう。そもそも、鍵を届けるのが早ければ、我々とて無事で済んだかどうか」
「……ム゛」
元々は、鍵を届けるだけの単純な仕事だった。
武装した敵を退けるには、アンゴラで使った狩猟用装備では力不足は否めない。
それに、もしも彼らが時間通り到着していたら、生徒共々巻き添えを食っていた可能性もある。
――だが、このまま指をくわえて様子を見ている訳にはいかない。
「……さて、奴らの狙いは何であれ、まずはお嬢様達を救出せねば」
「ムッ」
「マサル、お前は裏手から海岸沿いへ。異変が無いかどうか確認し次第、こちらに連絡を」
「ム」
「くれぐれも、無茶はするな」
「……ム゛」
市内とはいえ、体育館は登山道の入り口付近に建てられており、付近に民家は見当たらない。
また、矢神市以外の隣町とは海岸沿いの幹線道路で行き来するようになっており、
特に市の境界線付近では、道路を挟んだ陸地側が切り立った崖状になっているため、人気も殆ど無い。
こちらが退く時だけでなく、秘密裏に応援を呼ぶ際にも使えるルートである。
だからこそ、妨害が無いことを祈るしか無かった。
※※※※※
「……?」
マサルが去った後、引き続き体育館周辺を監視していたナカムラは、程無くして相手側の奇妙な動きに気付く。
(兵士が、減っている……?)
現場を占拠している以上、最低限、周囲の状況に気を配れる程度の人数は残すのが鉄則である。
たとえ館内に数十名単位の生徒や教師が拘束されていたとしても、内部で騒ぎでも起きない限り、
割り当て人数をわざわざ増やす意味は無い。
実際、外を監視する兵士が少なくなれば、こちらにとっては好都合なのだ。
……何かが、おかしい。
そもそも、歩行祭には、件の御曹司に近しい留学生達が幾人か参加していた筈。
主人の娘と許婚の間柄でもある彼――ショーン・クロムウェルは、英国ではVIP扱いされている。
たかだか数十名単位のテロ集団が矢神高校の生徒を狙ったとして、果たして向こう側の護衛・取り巻きに
気付かれずに成功させられるものなのだろうか――
――ヴィー、ヴィーン
「!!」
考え事をしていたナカムラの携帯が、メールの着信を知らせる。
−−−−−−−−−−−−
from:スズキ マサル
件名:緊急連絡
本文:事件の目撃者を発見しました!
大至急、西側の海岸までお越し下さい。体育館の監視は必要ありません!
−−−−−−−−−−−−
「……なんと………!!」
※※※※※
時間は少し遡り、幹線道路沿いの海岸にて。
『――生徒全員が誘拐!? どういう事です、一体!』(注:スペイン語)
『……ワシにも分からん…………奴ら、こちらに気付くと、問答無用で撃ってきおった…………』(注:スペイン語)
マサルに抱きかかえられる形で事情を話しているのは、ララの父親、ペトロ・ゴンザレス。
幹線道路よりも更に南、海岸沿いに打ち上げられるような形で横たわっていた彼は、マサルに発見された時には
既に虫の息だった。
幾つもの銃創による大量失血・三月の海に長時間冷やされた結果の体温低下などが著しく、まさに生きている事自体が
奇跡に近い――
マサルは、そう思った。
だが、すぐにでも病院へ連れて行こうとする彼の手を払いのけ、ゴンザレスはひたすら『ララ……』と声を漏らす。
日本人離れした服装や体躯から「南米系の外人ではないか?」と踏んだマサルは、子供時代、南米での生活で覚えた
スペイン語で声をかけてみたが、これが見事に功を奏した。
まさか地球の裏側で母国語で話しかけられるとは思ってもいなかったゴンザレスは、マスクの下に隠れた表情を
一瞬強張らせた後、真剣な面持ちで事情を説明し始めたのであった。
支援
※※※※※
程無くして海岸へと到着したナカムラを加え、ゴンザレスの独白は続いた。
『……祖国の時と、同じだ……』
『同じ、とは?』
『ワシが現役のレスラーだった頃、隣村の友人が村人ごと行方不明になった。彼らは二度と戻って来なかった……』
『……やはり、その時も誘拐だ、と?』
『ワシの国では、人の命などはした金で売り買いされる……恐らく、金持ちの道楽とし――ゴフッ!』
『――いかん! マサル、すぐに病院へ『よせ……ワシはもう……助からん』
並の人間なら悲鳴を上げる程の力でナカムラの腕を掴み、息も絶え絶えにゴンザレスは訴える。
『見知らぬ友らよ……一つだけ、頼みがある……』
『……なんなりと』
『ワシには、たった一人で日本に来た一人娘が居る……もし、彼女に会うことが出来たら、伝えてくれ……
“何もしてやれなかった父を、どうか許して欲しい”、と……』
『何と……そのような『なりません!』
突如、ナカムラの声を遮るかのようにマサルが叫ぶ。
『貴方は、娘さんの身を案じたからこそ、命を懸けて立ち向かったのでしょう!? それを、何故
“何もしてやれなかった”等と!』
『……!』
『貴方の行動は決して無駄なんかじゃない。 貴方が命がけで奴らの気を引いてくれたからこそ、私達は無事でいられた。
そして、貴方からの情報で……娘さんを含む生徒達は、無事に帰ってきます』
『マサル……』
『その時こそ、確かに娘さんに伝えましょう。
“貴方の父は、命をかけて皆を救った。彼こそ、本当のヒーローだ”と』
『……ありがとう。
ありがとう、友よ――』
マサルの言葉を聞き、ゴンザレスの表情が緩み――
――――そして、そのまま、肺に溜まった息を全て吐き出し…………動かなくなった。
「……マサル、ここは危険だ。 早く離れて――」
「…………」
「……彼の遺志は我々が継ぐ。その為にも、我々は生きねばならん」
「……ム」
互いの瞳に宿された炎。
父親として、ヒーローとして。
娘を護る為に犠牲となった漢(おとこ)の想いを乗せ、二人はその場を去った。
(金持ちの道楽、ですか……ならば辻褄は合う)
(となると、我々が事前に入手していた情報自体が“囮”と考えた方が良いでしょうな)
(いずれにせよ、まずは行き先を割り出さねば……一刻も早く)
マサルと共に幹線道路沿いを歩きながら、暫し黙考に耽るナカムラ。
その間にも、海岸に残った二人の足跡は潮の満ちと共に次々と消えてゆく。
“証拠隠滅班”がゴンザレスの遺体を発見した時には、既にナカムラ達の行方は掴めなくなっていた。
――矢上市炎上まで、あと○時間。
【ナカムラ】
〔現在位置〕富士沢市郊外
〔状態〕健康
〔行動方針〕沢近達を救出する。生徒達の行き先を割り出す
【スズキ・マサル】
〔現在位置〕富士沢市郊外
〔状態〕健康。 ゴンザレスの仇を討とうと息巻く
〔行動方針〕沢近達を救出する。『金持ちの道楽』に関する情報を更に引き出す
【ペトロ・ゴンザレス】:死亡
【歩行祭の実況を行なっていたナカムラの部下】:死亡
【沢近邸の使用人やメイド達】:安否不明
以上です。
大幅に内容を差し替えたため、どこか矛盾等がありましたら指摘願います。
(一応、時間軸は
>>526氏の作品の前、という形になっています)
ララの父親の名前が間違っていました。
×『ペトロ・ゴンザレス』
○『ペドロ・ゴンザレス』
失礼しました……
タイトルを書き忘れてました。
【Your Father was the Hero】でお願いします。
>>571 支援感謝します。
修正乙カレ様
ちょっと気になったが前作の仮名キャラって修正しなくてよかったのか?
坊主とかハネ子とか見切り発車で異論があったらしいが
>>511 あっちは薄口の間接的描写だからな
お前さんが期待しているような仏蘭西な黒い文庫レベルのブツは無理だと思うぞ
◆cj4OQi4cssさんお疲れです。
すばらしい出来です。この調子で次回も期待してます。
乙です。上手いこと繋げたなぁ。
・・・なんかゴンザレスのセリフが気になったと思ったら、元ネタDQ3のオルテガっすかww
そーいやどっちも覆面&パンツだwww
>>580 そーなん?
他に適当な名前って結局だれも考えてなかったと思うけど。
つかララが片言すぎておかしいぞ
完全にロボットだ
ララの台詞修正バージョン。掲示板の方に投下した。
ここまでの話と地図、キャラクター情報を収録しました。
笹倉先生も問題ないようなのでそのままにしてあります。
住人の皆様どうもありがとうございました。
モブの名前についてはまあしょうがないかなと思っています
本当は考え直すべきだったのかもしれませんが・・・
◆rJXTlJ7j/Uさん。まとめいつも、お疲れ様です。
個人的に、いくらかやんわりと批判も受けてるので、未登場キャラ全部出たら、既登場キャラ含めて話が動かせるかな?と思って、つい連発してしまいましたが、もう少しペース落とす事にします。
確かにちょっと暴走気味だった所もあったので反省してます。
現在いる書き手さんだけでなく、もっと幅広い書き手さんが着ていただけるといいですね。
個人的には、ぜひ自分の手で殺害したい(死亡シーンを書きたい)キャラがいるので、それが書けたらいいなと。
まとめサイトの掲示板で没ネタ発表をしてもいいでしょうか?
>>506 何と言うか本当にすみません…
>>587 ドンマイ
冴子の代わりに天満でエロエロマーダーやるから
>>587 いやいや謝ることじゃないからw
俺の予定通り書いてたらスレが荒れてた気もするから逆に良かったw
つーかあなたの冴子とおキヌの話はこのロワの中でもかなり好きな話だ
あ、あと没ネタ投下はいいんじゃない
今は荒れそうな火種もないし
最初はどーなるかと思ったけれど、大分ロワも活性化してきたね。
大分ロワなんてあるのか。浦和とか鹿島ならともかく渋いなw
普通に考えれば、ウェズレイが生き残りそうではあるが。
しかし微妙なメンツだな残りは。多分全員対主催になりそうだし・・
周防はまた最後になるんじゃないだろうなw
>>585 いつも、まとめ乙です。
笹倉先生の話で気になったんですが、信頼できそうな参加者の数が5/50ではなく6/50ではないでしょうか?
>>586 乙です。
これからの話も期待してます。
自分を除けば5/49だな
しかしマーダーの人数がちょっと少ないのが心配だな。
確実に期待が持てるのはウメマド、香織、烏丸ぐらいなものだ。
あとは天王寺、隣子、鬼怒川は完全な正当防衛だし。
播磨、サラはサラマンダー化する可能性が高いから期待は持てないし。
石山も永山次第でどう転ぶかワカラン。
未登場組でマーダーに出来そうなのは三沢、野呂木ぐらいしかいない。
最初どうなるかと思ったロワも結構、順調にペースが伸びてきたのはいいけれど
先行きちょっと不安だ。
大丈夫か?
マーダーに関しては大丈夫でしょう。
例えば天満・沢近・周防・高野・八雲のうち、マーダーに変える展開がまだ思いつかないのは周防くらい。
残りは、リレーという不確定要素はあるが、変貌させる事はできる。
大体、最初から善悪確定してたら面白くないじゃない?
順逆が逆転するその瞬間が楽しいんんだから。
カップル要素に遠慮して毒にも薬にもならない話を重ねるより
マーダーとしてはっちゃけたほうが人気出そうだよなw
播磨隣子組には超期待してる
烏丸なら原作の桐山並の殺害数も期待できるし、まぁなんとかなるんじゃないか。
>>590 ありがとうございます。まとめの掲示板の方に没ネタを投下しました。
別世界の彼ら彼女らとして楽しんでもらえたら幸いです
おつかれ〜
最後のオチまでマジで真剣に読んだ。番外編として是非まとめに収録して欲しいね
>>601 お疲れ様です。番外編として収録させていただきました
ちょっと自分の投下ペースが落ちるかもしれませんが収録だけはなんとかやっていこうと思います
test
嵯峨野・麻生・菅を予約します。
……が、もし
>>604氏が上記の三名を含む作品を投下予定の場合、そちらを優先します。
3月下旬、すぐ4月になる頃だっけ?
島の場所にもよるけど夜とか朝方は大変だな
日付を過ぎた時点で連絡が無かったので、このまま進めます。
という事で、麻生・菅・嵯峨野を正式に予約。
(勿論、期限は
>>605の予約時間から72時間後)
まとめサイトに繋がらない?
全員登場まで一桁というところまで見えてキター
ここまでの全部の書き手の皆さん&管理人さんの頑張りと、住人の感想と意見の賜物だと思うよ
個人的にはここはハラハラ見守っていくのも楽しいので、
書き手さんにはそれぞれのペースで納得のいくものを作っていって欲しい
◆cj4OQi4css氏を待って投下しようと思ったが。
*************************************************
こういってはなんだが他人の気持ちを察するのは得意だ。
カメラのファインダー越しになら、人の恋心も見抜く事が出来ると自負してる。
だが、正直成績は良くないし、こんな極限状態から抜け出す方法を考え付く程、頭は良くない。
運動神経も良い方ではないし。
そう考えると、このゲームで自分自身が生き残るのは難しいように思える。
目が覚めると腕の中には、自分の愛用のカメラが残っていた。
こいつは取り上げられなかったらしい。
死との背中合わせの中での撮影か・・・。
かつて、西本と出会うまでは、戦場カメラマン志望だったんだ・・・。
やれるさ。
例え、自分が死んでもカメラは残る。
そう考えると、自分が生きていた証は残せるような気がする。
だが、ふと脳裏に浮かんだ一人の少女の姿。
眼鏡を掛けた、おさげ髪のクラスメイト。
文化祭のバンドの練習で。
冬のあの日、学校の屋上で。
ずっと見ていた。
彼女は、どうするのだろうか?
クラスの仲間の大半は、彼女はクールで強い人間だと思っているようだが、自分には少し違うように思える。
自信なさげで、自分の良さに気が付いていない少女。
彼女を守ってあげなければ。
自然と、体は動いていた。
どこへ行けば、会えるのか。
あても無いのに。
ただ、じっとしているのだけはごめんだった。
**************************************
「しかし、誰にも会わねえなあ・・・」
思わず、愚痴が出る。
実際、誰かに出会ったらどうしようと思うけど。
そんなに広い島ではないはずなのに、かれこれ2時間近く歩きまわっているが、本当に誰にも会わない。
もしかしたら、この島には誰もいないのか?
或いは、既に皆殺し合いをして、死んでしまったのか?
そんなはずは無い。
きっと・・・。
**************************************
時計が、3時を指そうとする少し前。
ようやく、人に出会った。
よりによって、2-Dのマカロニ野郎だ。
思わず、心の中で毒づく。
目の前に立っている、そいつ・東郷雅一は、あきれるくらい、いつも通りだ。
「Hey!確か、冬木だったな。お前は、この糞ゲームに乗ってるのか?もし、そうなら俺はお前の敵って事になるぜ!」
「どうして、そうなるんだよ。人殺しなんかするかよ」
「・・・そうか。じゃあ俺たちは同士だ。この糞ゲームをぶっ潰す為のな!」
そういって右手を差し出してくる。
その手を握り返しながら、マカロニに問う。
「で、何か策があるのか?」
「ふ・・・。そいつは未だ言えねえな!」
「・・・なんだ、何も考えてないのか・・・」
つい、ぽつりと本音をこぼす。
幸い、マカロニには聞こえなかったらしい。
「お前が、最初の仲間だ。歓迎するぜ。相棒」
「で、まず、どうする?」
「とりあえず、休息と仲間を集める拠点が必要だな」
そういいながら、マカロニの奴はズンズンと先に進む。
「おい。・・・あてがあるのかよ?」
「とりあえず、近くにあるというホテル跡に向かっている。まあ、任せておきな」
他に策がある訳でもなく、マカロニ野郎の後を追う。
****************************************
ホテルへの道すがら。マカロニ野郎が尋ねてくる。
「そういえば、訊いてなかったが。お前に支給された武器は何だ?」
「・・・お前それ嫌味か?これが見えないのかよ」
そういって、カメラと共にもう一つ肩から提げているハンドスピーカー(いわゆる拡声器って奴だ)を指差す。
「・・・そいつは見えていたが、最近は拡声器を持ち歩くのがはやっているのかと思ってな」
「そんな、はやりがあるか!」
駄目だ、やはりこいつは。そう思いながらたずねる。
「そういう、お前の武器は何だよ?」
「俺か?俺はコレさ」
そういって、マカロニ野郎が懐から取り出したのは、ごつい銃だった。
「コルト・パイソン357マグナム。我が魂の母国アメリカ・コルト社製の傑作さ」
お前、アメリカ人じゃないだろうって心の中でツッコミを入れる。
でも、マグナムっていやあ、漫画や映画でも良く知られる破壊力抜群の拳銃だ。そう感心していると、マカロニが続ける。
「確かに破壊力はあるが、弾が6発しかない。おまけにこいつは扱いが難しい。当たれば確かに必殺だが、そもそも当てる事が難しいな」
まるで、撃ったことがあるみたいに語りやがる。
こいつの話は何処まで信じていいのか、本当にわからねえ。
****************************************
日差しもだいぶ優しくなってきた頃、ホテル跡が見えてくる。
とりあえず、あそこに着けば休憩できると思うと、自然と足も速まる。
「おい、待て。何か危険があるかもしれない・・・」
マカロニ野郎が、なにやら言っているが耳に入らない。
そもそも、肉体派であるマカロニと違い、こっちは普通の人間だ。
この歩きづめの苦行から一刻も早く開放されたいという、肉体からの要求に従いホテル跡へと近づいていく。
「・・・あぶねえ!」
マカロニの声が聞こえたと思うと、天地がひっくり返った。
どうやら、マカロニに押し倒されたらしい。
「・・・ち。どうやらゲームに乗った糞野郎がいるみたいだぜ」
マカロニ野郎に、無理やり引き起こされ、物陰に引っ張られる。
振り返ると、自分が倒れていた場所のすぐ傍にボウガンの矢が突き立っていた。
「・・・動けるか?」
そう、マカロニは俺に尋ねる。
俺は、がくがくと無言でうなずいた。
「・・・結構。クックック、ゲームに乗った馬鹿な奴を、ちょいと懲らしめにいくぜ!」
そういうと、マカロニはホテルの上の階に向かって走り出す。
「・・・お、おい。待てよ!」
自分を殺そうとした人間を追うのは恐ろしかったが、一人になるのはもっと嫌だった。
そうだ。こんなときこそ。
愛用のカメラを手に構え、ファインダーを覗く。そこから覗いて見ると恐怖感が和らぐようだ。
よし、行ける。これさえあれば。カメラを握り締め走り出す。
マカロニの野郎は、迷うことなく上の階へ進んでいく。
あんな一瞬で、どこからボウガンが放たれたのか、見ていたようだ。
「・・・大した奴だ」
思わず感心する。
マカロニは、3Fで階段を降り、廊下へ出る。そのまま迷いなく。ある部屋の扉を開ける。
「・・・誰もいない?逃げたんじゃないのか?」
「・・・それは、どうかな・・・」
そう言いながら、マカロニは部屋の風呂場の扉を開ける。
「・・・ひぃ・・・」
中から声がする。覗いて見ると、そこにはボウガンを抱えたまま、震える野呂木君の姿があった。
「・・・知っている奴か?」
「・・・クラスメイトだよ」
マカロニは、軽くうなずくと、芝居がかった動きでコルトパイソンを野呂木君に突きつける。
「・・・さて、この東郷雅一に喧嘩を売ったんだ。覚悟は出来ているだろうな。ベイビー」
「・・・ひぃ・・・」
「何で、あんな真似をした?返事次第じゃタダじゃおかないぜ」
マカロニが、野呂木君のボウガンを取り上げようと手をかける。
「こんな状況だ。誰だって・・・」
そう言って、クラスメイトの為に、一方的なマカロニを非難する。その時だった。
鈍い音が響く。
気が付くと、目の前、マカロニの左の脇腹に、ボウガンの矢が突き立っていた。
「・・・ち。この東郷雅一ともあろうものが・・・」
大して驚いた表情も見せず、マカロニ、いや東郷の奴は、野呂木君からボウガンを取り上げた。そして一言。
「・・・うせろ」
東郷の凄みのある目で睨まれた野呂木君は、泣きそうな顔をして、自分の荷物を抱えて、出て行った。
「・・・・●×▲・・・・」
意味不明の叫び声をあげながら、野呂木君の足音が遠ざかって行く。
呆然と成り行きを見守っていた僕が我に返ったのは、東郷の声だった。
「おい。冬木。すまねえが、手貸してくれないか?」
東郷は、そういうと部屋に放置された汚れたシーツを手に取り、引き裂き始めた。
************************************************
「とりあえず、これで良し」
シーツを引き裂き包帯代わりにし、持っていたタオル・ハンカチを傷口にあて、東郷の処置は終わった。
かなり傷は深いようで、出血もあったが、少なくとも東郷の奴は顔色一つ変えなかった。
「・・・本当に大丈夫・・・なのか?」
「これくらい、ニューヨークのサウス・ブロンクスでストリート・ファイトしていた頃はいつもの事さ」
「・・・だがよ。・・・それに俺があそこで話かけなければ・・・」
「気にするな。仲間の事は誰も責めたりしない。それが俺たちの掟さ」
あんな目にあったのに人を責めようとしない。
この暑苦しい、常識外れの男が、少なくとも大物であることは確かなようだ。
傷の手当て終了後、しばらく考え込んでいた東郷が、唐突に口を開く。
「さて、我が友・冬木よ。もう一つ頼みがあるのだが・・・」
「なんだ?」
「お前の、ハンドマイクを貸してくれ。それから屋上へ連れて行ってくれないか」
「ああ」
東郷が何を考えているのか、わからなかったがとりあえず頷き、肩を貸す。
***********************************************
ホテルの屋上はヘリポートのようだった。
既に、夕日となった太陽がまぶしい。
「どうする気だ?」
「こうするのさ」
そう言うと、東郷は拡声器を構えて話はじめる。
「レディース アンド ジェントルメン。聞こえるかみんな。この2-Dクラス委員長・東郷雅一の声が!!
今、俺は高原池の南にあるホテル跡に居る。・・・俺は誰の挑戦も受ける。
この糞ったれたゲームに乗った人間がいるなら、まずこの東郷雅一を殺しに来い。返り討ちにしてくれるぜ!!」
東郷の奴、何を言い出すんだ?
「クックックッ・・・・。もう一度、繰り返すぜ。俺は誰の挑戦でも受ける。東郷雅一の首を取りに来る勇者はいねえのか!!
じゃあ、期待せずに待っているぜ、この臆病者(チキン)野郎ども!!」
一方的にまくしたて、東郷は拡声器を下ろす。
「ふう・・・。だいぶ最初の計画とは違っちまうが・・・。これも愛(ラヴ)の為・・・。漢・東郷、お嬢ちゃんの代わりになら、悔いはないぜ。」
なにやら、東郷の奴がつぶやいてる。
「・・・ありがとうな。我が友・冬木よ。聞いた通りだ、これからココは戦場になる。危険だから逃げた方がいいぜ・・・」
なにやら、振切ったような顔でそういう東郷。
確かに、自分の居場所を明かした上で、あんな挑発をしたんだ。
そう、島中に聞こえたとは思えないが、かなりの広範囲に声は届いたと思う。
ゲームに乗った人間が来ないとは言い切れない。特に、あのイギリス人達は、ショーンの手先として動いているのかもしれないし。
そう考えると、東郷が言うとおり、ここを離れた方がいいのかもしれない。
これから、どうする?
東郷と共に、ここに残るか?それとも他の仲間を探すか?あるいは最初の目的である結城つむぎを探すか?
俺・冬木武一は、カメラを握り締めた。
【午後5時〜6時】
【東郷雅一】
〔現在位置〕E-04 ホテル跡
〔状態〕左脇腹にボウガンによる怪我。本人は表情を変えないので、本当の具合は不明。
〔道具〕支給品一式。ハンドスピーカー。コルトパイソン357マグナム(弾6発)、ボウガン(矢1ダース)
〔行動方針〕対主催だが・・・。恨まれているであろう天満の代わりに憎悪を自身に引き付ける囮となる
【冬木武一】
〔現在位置〕E-04 ホテル跡
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式。自身の一眼レフのデジカメ
〔行動方針〕皆で生き残る。それが難しいならカメラマンとしてこの戦いの写真を後世に残したい。
【野呂木光晴】
〔現在位置〕E-04
〔状態〕健康。パニック(恐怖)。
〔道具〕支給品一式。武器は無し
〔行動方針〕とにかくホテルから離れる。
乙!東郷は相変わらずだなあ。また冬木とコンビか、頑張って
ただ、拡声器で5〜6時に聞こえた範囲不明ってかなり以降の書き手を縛ってしまう気がする
ここには聞こえたのにこのエリアにいたこいつらにも聞こえてるはずだ、とか色々ややこしそう
個人的には、あんまり広範囲ではないのではないかと思います。
何か聞こえるというレベルはまだしも、内容まではっきり聞こえる範囲はかなり限られるかと。
まあ、そこら辺は今後の書き手さん次第で、活用していただければ。
極論すれば、冬木と野呂木以外誰も聞いてなかったというオチもありかと。
まあ、全ては次の書き手さん次第ですね。
あとは周防、三沢、プリキュアコンビのみになったな。
度々御迷惑おかけします。
現在予約中の作品が、◆HQrLOwPbga氏の作品と舞台が完全に被ってしまった(ホテル周辺)ため、予約を破棄します。
場所を移す事も考えましたが、そうすると三名を予約した意味自体が薄れてしまいそうなので……
本当に済みませんでした。
◆cj4OQi4css殿 すみません。
こっちの場所を、修正しようかと思いますが、どうでしょう?
候補としては、釜石村役場か消防分署など、やや高いと思われる建物がある所。
ただ、どちらも近くにキャラが居ることになるので、
にも会わなかったという話がやや不自然かもしれない。
偶然、会わなかった(或いは相手は見ていたけど、隠れてた)として処理すれば、いいかと。
ナカムラ達といい◆cj4OQi4css氏悲惨だな・・
東郷達がホテルでなくてもいいならできれば譲って欲しいところだ
>>620 乙! キャラも展開も熱かった。
◆cj4QQi4css氏との兼ね合いも上手くいくといいな。
俺はホテル跡を釜石村役場に変えれば問題ないと思うけど。
時間帯も、ほんの少し早める程度で十分だと思う。
あんまり早すぎると、殆ど誰も聞いてませんでした→東郷涙目みたいな展開になりかねんw
とりあえず、舞台を釜石村役場に変更。
東郷の宣言を4時前後に繰り上げる事にすることにする。
(この時間はある程度明確になっていた方が、のちの書き手さんにとって助かるかと)。
場所が変更になったおかげで、聞いた人間が確実に存在しそうだ。
その他、若干微修正したものを、修正掲示板に再投下します。
>>630 乙です!
参考ですが、仮に3月29日だとすると完全に日が落ちるのは丁度6時ごろ(東京都だと)。
夕日と拡声器片手の東郷がすごく絵になって頭に浮かんだので。
両方の修正が上手くいくことを願います。
>>630 お心遣い感謝します。
こちらがさっさと投下すれば良かったものを、チンタラしてて申し訳無い……orz
あと、自分の発言を確認してみた所『予約破棄→再度予約』という流れが今回を含め、二度も起きてしまったワケで……
今後、ロワが滞り無く進む上での妨げになるんじゃないか、と心配してます。
書き手や住民の皆さんには迷惑かけまくりだしorz
いえいえ、こういうトラブルも一緒に楽しみながら乗り越えていきましょう。
だから、迷惑だとか考えなくていいですよ。
全然関係ないけど、自分で書きながら思った。
天満の為に、皆殺しを画策する播磨
天満の為に、犠牲も覚悟の東郷
天満を生き残らせようとする烏丸
天満を殺そうとする香織
さすが、主人公。周りに影響与えまくりだ・・・。
投下します。
春の陽気に包まれた、穏やかな昼下がり。
本土ならば厳しい冬を乗り越えた木々の芽が徐々に姿を見せる頃だが、ここ沖木島は
亜熱帯に位置するためか、すでに島全体は緑に包まれている。
そんな島の中心部に聳え立つ、標高およそ300m程の神塚山。
様々な種類の植物が生い茂る急勾配の地形は、訪れる者の体力と気力を確実に削いでいく。
「はぁ……」
「……」
「はぁぁ……」
「……んだよ」
「はぁぁぁ〜〜〜」
「だぁーっ! いい加減にしやがれっ」
「うっさい! ため息ぐらいでグダグダ言うなっ」
……だが、神塚山の西斜面を下る生徒二名(特に一名)は、別の意味で気力を失いつつあった。
「何なんだよ、オレが一体何したっつーの!」
「アンタのツキの無さに飽きれてんでしょーが!」
「んなの関係ねーだろ! だいたい支給品は向こうが勝手に決めてんだぞ!」
「なら、さっさと捨てなさいよ、あんな物!」
「あ……アレだって一応役に立つかm「んなワケあるかっ!」
二人の口論の元となっているのは、長身の茶髪高校生・菅柳平の支給品。
単なるハズレ品ならまだしも、普段の彼なら即座に歓喜の雄叫びを上げていたであろうソレは、
エロソムリエ西本・直選のDVDに出演していた女優の艶姿が余す所無く収められた、所謂“エロ本”。
ゲーム直後、支給品を懐に複雑な笑みを浮かべていた菅を発見した嵯峨野は、
てっきり彼が“当たり”――所謂銃火器の類――の支給品を手にしていたと勘違い。
第一発見者が菅、ということ自体は嵯峨野にとってプラスでもマイナスでも無かったのだが、
丸腰の自分を誰かが守ってくれれば……という期待があっただけに、その失望たるや尋常では
無かったらしい。
ましてや、持っていたのはエロ本である。
彼女が不機嫌になるのも、無理からぬ事であった。
「なぁ……本当にこっちでいいのか?」
「うっさいわね、地図通りに進んでるんだから文句言わない!」
「へいへい」
「ったくもう……何でこんな疲れなきゃいけないのよ」
「そりゃこっちのセリフd「なんか言った?」
「……いやいや、気のせいっしょ」
「はぁ……」
疲れが見えてきたのか、愚痴が次第に少なくなる。
結局、二人が当初の目的地であるホテル跡に到着した時には、午後2時半を回っていた。
※※※※※
「ふぅ……やっと着いた」
「あ゛〜〜〜、つ〜か〜れ〜た〜〜」
「バスケ部の癖にスタミナ無さ過ぎ。そんなんだからディフェンスが弱い、って
言われるんでしょーが」
「おいコラ、途中で荷物持ってやったのは誰だよ!」
「あら、か弱い女の子にしんどい思いさせる気? そりゃモテないわ、ご愁傷様」
「それとコレとは関係ねー!」
持ち前の要領の良さで菅を手玉に取る嵯峨野と、何だかんだで荷物持ちを引き受けた菅。
傍目には相性抜群のコンビにしか見えないのだが、残念ながら本人達にはそんな気が
これっぽっちも無い(特に嵯峨野)のが悔やまれる所である。
ただ、バスケ部同士という事もあってか、このゲームの参加者なら誰もが考えるであろう
『目の前に居るクラスメートは“乗り気”なのか?』という疑問すら欠片たりとも
湧き上がって来ない、という点では、彼らは十分恵まれているのだが。
「で、どうするよ? 誰が居るか全く分からんぜ」
視線の先にそびえ立つホテル跡を睨み、菅が呟く。
「まぁ……確かめるしか無いわよね」
「おいおい、ゲームに乗り気な奴が居たらどうすんだ」
「そりゃ、逃げるしかないでしょ」
「って、そう簡単に逃げ切れるのか?」
「さぁ……アンタの足次第、かな?」
「そっか…………ってオイ、“俺の足”ってどーゆーこった」
「決まってんじゃない。 コレを使うのよ」
そう言って嵯峨野がリュックから取り出したのは、二個一組の小型インカム。
「二人一緒だと、万が一襲われたらどうしようも無いしね」
「……ちょっと待て! その話の流れだと、俺が囮になって様子を見て来い、ってか?」
「とーぜん」
「いー加減にしろ! 俺はお前の奴隷じゃ――」
「助かったらデート、ってのは?「任しとけ!」
――即答。何とも菅らしい対応である。
※※※※※
周囲に気を配りつつ、嵯峨野に渡された十数個の石を両手にホテルへと侵入した菅。
『……こちら菅、玄関には誰もいない様子。どうぞ』
『了解。 引き続き内部の確認求む』
『了解。
……デートの約束忘れんなよ、これで死んだら化けて出てやっからな』
『……はいはい、約束くらい守ったげるから、死んだままストーカーは勘弁して頂戴』
『おうよ、任せとけ』
(そういや、昔遊んだゲームでこんな感じの奴があったな……)
相手に見つからないようにしつつ、ナイフ片手に敵部隊を全滅させる高レベルクリアが熱かった。
そんな事を菅は考える。
まさか、ゲームさながらの状況を自分自身が経験するとは思わなかったのだろう。
先ほど嵯峨野と交わした約束も相まって、彼の感情と集中力は異常な高まりを見せていた。
ある時は慎重に、またある時は石を使ったフェイントを織り交ぜつつ、迅速に部屋の安全を確認していく。
菅がホテルの内部を網羅し尽くすまで、さほど時間はかからなかった。
※※※※※
――ホテル内部と周辺、両方の安全確認のためには止むを得ないとはいえ、自分の提案は間違いなく
クラスメートの命を危険に晒す行為だ。
交換条件を提示したらあっさりと引き受けてくれたものの、もし彼が誰かに襲われて命を落とす、
なんて事になれば、自分は今後、死ぬまで『クラスメートを死地に送り込んだ最低女』という
レッテルを抱えて生きなければならない。
そんなのは、御免だ。
道を切り開くための手段が思い浮かばない? なら、手元にある人材や道具をフルに使えば良い。
だが、今の自分が首を突っ込んでいるのは、結果云々よりも努力した過程が重要視される色恋沙汰とは
まるっきり違う。
どんなに努力しても、結果が悪ければどうしようも無いのだ。
幸い、向こうの報告を聞く限りでは、ホテル跡に誰かが居る気配は無い。
けれど、一通り調べ終わるまで、絶対に気は抜けない――
『……オッケー、確認終了。 屋上やらトイレやら全部調べたけど、誰も居ねーぜ』
――良かった。
『お疲れさん、じゃあ今から私もそっちに向かっ――』
……ちょうどその時、私の後ろでガサッ、という音がした。
――ドクン。 心臓が撥ねる。
ゆっくりと振り向き……視線の端に写ったのは、長身のクラスメート。
表情は逆光に阻まれてよく見えない。
そして、右手には黒光りすル何カガ――
『――ひっ!?』
――ガッ、プツッ……
『お、おい! どうした!? おい、嵯峨野、返事しろ!!』
※※※※※
――ダダダダダッ、タッ。 ダダダダダ……
突如連絡の途絶えた嵯峨野の元へと、猛スピードで階段を下りる菅。
(畜生、中じゃなくて周りに隠れてやがったのか!)
(ヤベェ、デートなんてレベルじゃねぇ、嵯峨野の命がヤベェ!)
無理を言ってでも二人で行動しなかった事を、彼は激しく後悔し。
(――しっかりしろ菅柳平、女一人守れねぇなんて男が廃るだろーがっっ!!)
心の中で自らに檄を飛ばし、玄関を一目散で駆け抜け。
「――うぉぉぉぉおおおっっっ!!」――バァンッ!
扉を蹴飛ばし。
『もしもし〜? ごめ〜ん、アソっちに声かけられてびっくりし』
――ズドドドドドドドド――
……菅柳平は、砂煙を上げながら盛大に斜面を転がっていった。
※※※※※
ホテル跡2F、一番奥の客室にて。
「……大丈夫か?」
「大丈夫かじゃねーよ、てめぇのお陰で全身傷だらけだろーがっ!」
「アンタが慌て過ぎ。
……けど、アソっちも後ろからいきなり声かけるのはナシでしょ」
「済まん。 お前らの姿見て浮かれちまった」
「そんなモン持ちながら浮かれんな! 普通にビビるわっ」
「……そうか?」
先程まで麻生が持っていたのは、短機関銃キャリコM950。
700発/分という驚異的なペースで弾丸をばら撒く代物で、人間をあっという間に蜂の巣にする
極めて危険かつ強力な武器である。
今は無造作に地面に置かれているが、持っているだけで相手に与えるプレッシャーは
相当なものであろう。 嵯峨野の慌てぶりも頷ける。
「まぁ、私達二人とも丸腰だったしね……にしても助かったわ、これで安心ね」
「命がけで中の様子探った俺の苦労は一体……
アソ、恨むぞ」
「まぁ……その、なんだ、忘れろ」
「そーそー、小さな事に拘ってちゃ駄目っしょ」
「グレてやる! 絶っっ対、グレてやるっっ!!」
……そこはかとなく理不尽な二人の対応に、大袈裟に涙する菅であった。
「で、これからどーする?」
「そうだな……俺としては、ここで誰かが合流するのを待つ方針で」
「あたしもー」
「けど、合流した奴がゲームに乗ってたら?」
「それは俺も考えた。
一番確実なのは、相手にまず武装解除してもらうって形だが……」
「それ、やばくない? 私達の方が怪しまれるじゃん」
「いや、俺たちが疑われることは多分無いと思う。こっちから名乗りさえすれば大丈夫だろう」
「ま、このメンバー全員がゲームに乗る、ってあり得んわな」
「多少嫌な思いをさせるかもしれんが、仕方ない。 安全第一だ」
「……ってか、今日はアソっちよく喋るねー」
「だよなー」
「そうか?
……まぁ、お前らに会うまで独りだったしな。 で、正直言って助かった」
「え? どゆこと?」
「もし、相手が面識のない奴だったら最初から脅し半分で対応してたかもしれん。
協力なんて夢のまた夢だ」
「ま、モノがモノだし、普通に疑われるわな」
「ああ、下手すりゃ“お尋ね者”だ」
「そっか〜。 そう考えると、いきなりこの三人が集まるって結構凄くない?」
「おぉ、そういや全員バスケ部だ」
「部長・副部長にマネージャー、か。 ……出来すぎだな」
「どうせならもう一人くらい女子が欲しいけど」
「だな、一条とか周防とか……ってか、サラちゃん辺りならアソも大歓迎じゃね?」
「……何でそーなる」
「そうそう、さつきちゃんも居たじゃん!」
「おいおい麻生君、自ら手取り足取りじっくりねっぷりと教え込んだ後輩を
お忘れとはこれ如何に?」
「ちょっと待て、何で俺……ってか、その言い回しはやめろ。マジで」
「はっはっは、何をおっしゃる麻生君」
「あらあら、可愛い後輩なのに……ねぇ?」「ねぇ?」
「ハモるな! つーか二人ともニヤけるなっ」
※※※※※
――バスケットボール、特に3on3(3対3の試合)において、ポジションはそれほど厳密でない。
各プレイヤーが多くの役割をこなすことが理想とされている――
だが。
たとえば、麻生広義。
高い身体能力と頭脳は、攻防両面で大きな役割を果たすだろう。
たとえば、菅柳平。
彼の柔軟な思考とノリやすい性格は、チームの士気を鼓舞するムードメーカーとして期待できる。
たとえば、嵯峨野恵。
常にチームメイトの状態を把握し的確な言葉をかけられる彼女は、司令塔として、
また補佐役としても相応しい。
――各々の役割が自然と振り分けられた、仲間同士の絆が強いチーム。
それは、バスケットボールのみならず。
様々な局面においても。
――たとえ、それが“殺し合い”という非日常の場であっても――
【午後3時〜4時】
【麻生広義】
〔現在位置〕E-04 ホテル跡
〔状態〕健康。 菅らに会えてホッとしている
〔道具〕支給品一式。 キャリコM950(弾100発)
〔行動方針〕対主催。 合流者を待つ(但し、安全確保のために用心深く行動)
【菅柳平】
〔現在位置〕E-04 ホテル跡
〔状態〕健康。 擦り傷多数
〔道具〕支給品一式。 エロ本(そこそこ分厚い)、インカム×1
〔行動方針〕皆で生き残る(エロ本を無事持ち帰る&デートの約束を果たす)。
合流者(特にフリーの女子)を待つ
【嵯峨野恵】
〔現在位置〕E-04 ホテル跡
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式。 インカム×1
〔行動方針〕皆で生き残る。 合流者(特に一条、結城、俵屋など関係の深い女子)を待つ
以上です。
何か矛盾点・問題点等ありましたら指摘願います。
タイトルは【3on3】で。
>>648 お疲れ様です。バスケ3人の掛け合いがよかったです。
特に矛盾はないかなと思いますが、特に何もないようなら後ほど収録させて頂きます。
>>620 こちらもお疲れ様でした。修正版が投下されましたら収録させていただこうと思います
自分も予約しようと思います。周防と三沢で。
あ、すいません既に修正されていましたね。
どうもすいませんでした
お疲れ!菅それは死亡フラグだ・・
でもちょっと麻生の口調がひっかかったかな?
まあどうでもいいけど
またマシンガンの類か麻生
今度は変な形になって欲しくないなあ。嵯峨野や菅とのサポート期待
インカムについてはこのままでいいのかな?1stでは親と子に別れていて親からのみって制限あったけど
こいつらも大分頼れるチームだが前回の花井達みたいにバラバラになっていくのか、辛いなあ
あとはプリキュアだけか。
ホテルは大量死亡の地だからなあ、不安でしょうがない
サブキャラ代表としてがんばってくれんかな
6時間毎の放送の第1回目は、次の午後6時でいいのか?
放送は誰が書くの?前回は大体管理人さんが書いてたけど、今回は各書き手さん任せ?
禁止エリアの指定も書き手さん任せでいいのかな?
各エピソード共、大体、2〜3時くらいのグループが多いから、それぞれもう1アクションはできそうだが。
それとも、プリキュア出たら、あとはどうしてもっていうくらいで放送行っちゃう?
どちらにしろ、放送投下だけは、他にアクションないね?って確認してから投下が必要だね。
放送は午後6時です。
特に希望する人がいなければこちらで用意したいと思います。
禁止エリアはスレの意見を読みつつ最終的に放送SS書き手さん任せかと。
ほどほどにキャラ達の時間が進んで、放送前の話を書きたいという人が
いないと判断できたら放送に移行すればいいと思います
では投下します。
【今度は最後じゃない】
ひょろっとした生気のない男子が一人、平瀬村の一帯をふらふらと歩いていた。
生活臭が感じ取れない家が立ち並ぶ中で左右に揺れながら前進している。
表情は厳しく苦虫を噛み潰したようで形をゆがめる口からは意味のない言葉がブツブツと生まれて消える。
「ちくしょう、何でこんなことに……歩行祭なんてなけりゃ。結局女子とも仲良くなれねーし」
悲しく、訴えるような声。助けを求め彷徨い漂う。
「俺なんてただの地味でモテないただの学生だぜ?何考えてんだよあの留学生。
殺し合いなんて花井とか播磨とか強え奴らでやればいいんだ」
ぶつぶつとネガティブな話は続く。理不尽な状況に理不尽な愚痴で、感情の赴くままに吐き捨てる。
そうでもしないと絶望に心が沈んでしまいそうだったから。何かにぶつけなくては気が済まなかった。
やがて歩き疲れたのか、三沢伸は座り心地がよさそうな草の上に腰を下ろした。
自然と膝を抱えてうずくまるような格好を取り口だけを動かす。
「先公達もふざけやがって。なんだよあの態度……くそ。まるっきりいいなりじゃねえか」
瞳一杯に水を溜めながら三沢はかすれるような声を必死で振り絞る。
だが最も憎むべき相手への文句はそこで途切れた。
銃を携えて学校とはまるで別人の教師達と背後に控える留学生。
そのような得体の知れない脅威へ歯向かう気勢が既に失せていたのだ。
代わりに彼らの頭の中に浮かんでくるのは――クラスメイト達とその現状。
自分と立場が同じはずなのに、そのビジョンには明確な違いが存在する。
(俺達2-Cってたまに何でもできると思うことがあったけど……違うんだな。すげえ奴らのおかげだったんだ)
それは格差。同じクラスに属していながらも感じていた如何ともし難い壁。
クラスの中心はいつも同じ。学力も才能も人望も、異性の好意さえ何もかもがそこに集まる。
そして一種のプレッシャーともいえるそれらに確実に応えるものだから、なおさらその立場は確固たるものになっていく。
「ニャア」
「うるせえあっち行けって行ったろ!黒猫なんて縁起でもねーよ!」
首だけ後ろを向かせ声を出してがなり立てる。すると猫は捨て台詞のように一声吠えてから去っていった。
リュックから出てきたのは生き物だった。額の傷が特徴の黒猫。名前は紙に書いてあった気がするが覚えていないし確認する気力もない。
当初はすぐさま自分から離れて行ったのだが、何故か村から離れようとせず何かを探すようにふらふらしていたのだ。
だが右も左も分からないこんな状況では験も担ぎたくなる。
不幸の象徴と言われるそれと再会してはまた追い払うを先程から何度か繰り返していた。
一人になってようやく三沢は考えることを再開した。
だが情けないことに無力なまま死に絶える自分の姿がありありと浮かぶ。
せいぜい机を盾に、敵地深くに切り込んでそのまま果てるくらいか。しかし――
花井春樹は正義感の塊。おそらくサバイバルゲームの時のように、周防美琴と共に勇敢に立ち向かうに違いない。
沢近愛理はイギリス富豪の出。もしかして一人だけ特別扱いされてるかもしれない。
高野晶はその類まれなる頭脳でとてつもない妙案を導き出す可能性が高い。
一条かれんが体育祭で見せたあの超人的な強さなら誰にでも対抗できるのでは?
今鳥恭介は命がけの状況でもやはり女子と仲良く、自分よりは幸せに生きるだろう。
麻生広義が隠れた実力者であることはこの一年で皆に知れ渡っている。その技と智はここでも冴えるはずだ。
播磨拳児は元来の暴力性を発揮して極めて強力な戦力になるに決まっているが、自分ら貧弱な人間の味方になるだろうか?
「……あいつらで勝手に終わらせてくれればいいのにな」
誰もいないはずなのに思わず声に出る。自分が持ち合わせていないものを当たり前のように持つ彼等。
それははっきり言って嫉妬だ。日常では隠されて、だが誰しもが持っている感情。
だがこの非常事態においてそれが良心の歯車の狂いに拍車をかける。
「高野あたりがさ〜こうぱーっと解決してくれねえかな。首輪をちょいちょいと外してさ。
それか沢近。お嬢様気取るのもいいけど、だったら早く俺ら庶民を助けて欲しいぜ」
村の中で独り言とは思えない声をあげる。本来決してこのようなことを言う人間ではなかった三沢。
それを可能にしていたのは、異常な状況にも対応しようとする人の本能。
彼の大事なところから『使命感』という部品が抜けて他者への押し付けという別のものにすりかわる。
自己の安定を図るため、心はあるべき動きからずれて歪な音を奏で始める。
「菅は麻生の腰巾着やってんだろな。まーその麻生も周防を振るような最低野郎だけど」
なおも続く、第三者がいれば聞くに耐えないだろう級友への暴言。心に閉じ込めているよりも
口に出して発散しているほうがよほど楽しい。普段なら決してできないことをやるのは爽快感があった。
やがて悪意は一つの方向性を持ち始める。それはより弱い相手に向けられていった。
「雪野とか砺波とか気の弱い女子はガタガタ震えてるんだろうな。他にも一年の子とか塚本とか。
あ!塚本って言ったらアイツのせいだし、見つけ次第ソッコー責任とらせないと」
好き放題の意見が飛ぶ。三沢は羨んでいた相手に限らず、同等の者や弱者と分け隔てなく公平に罵った。
それだけに夢中になったため、彼は自分の背後からの存在に気付くことができずにいる。
「でも花井なんか案外騙されてあっさり死ぬかも。ショックだろうなー、周防。でもチャンスか?」
「誰がだバカッ!」
……一際大きくてはっきりとした声が、何かを殴る音と共に響き渡った。
「あのなーさっきから聞いてりゃ勝手なこと言いやがって。悪うござんしたね、どーせ振られましたよ!」
「す、周防!……さん……ごめん。痛て、でももうちょっと手加減してくれても」
涙目になりながら頭をさすり、周防さんと呼んだ彼女――肩で揃ったセミロングの髪、大きくて力強さを感じさせる瞳。
更に人一倍女らしい体つきの――周防美琴の剣幕に押されて三沢は一気に情けない態度になる。
そして曲がったことが嫌いな、彼女らしく堂々とした口調で咎められた。
「全部聞いてたぞ。高野も沢近もできないことはあるだろ?そしてこの状況は塚本のせいじゃないだろ!」
「あ……あぁわかってる。お、俺だってわかってるけどつい」
片手は後ろに回して地面に突きたて、転んだような格好の三沢。長身の周防は立ったまま彼を見下すように叱責する。
その様子が、先程の想像と寸分違わず自分との差をそのまま表しているようで三沢は更に情けなくなった。
だがそれを意識すると少し前の暗い心がむくむくと体積を増して盛り上がってくる。
「菅君とか麻生とか友達を悪く言ったら駄目だろ!そんで女の子なら心細くて当然なんだ、男のくせにだらしねえ!」
機関銃のように一気に自分を攻め立ててくる言葉の弾幕。その一方的な口撃に三沢は耐えられなかった。
反省よりも反逆の意志が勝り堰を切ったかのように心が爆発する。
「う、うるせえな!俺だって分かってる、でも辛いんだ、死ぬと思うと苦しいんだ、死にたくねえ!仕方ないだろ!」
「な……」
すぐさま立ち上がり、腹の奥から振り絞った声は周防のそれを一瞬でかき消した。
やや背の高い彼であるから並べば逆に周防を見下ろす形になる。目に見えるその表情はあっけにとられたようだった。
「全部聞いてた!?なんだよ、そんな前から見つけてたのなら最初から声かけてくれよ!殺し合いしろなんて言われたんだぜ?
村中歩いても誰もいなくて……一人なら愚痴だって文句だってあって当然だろ!
花井や麻生みたいなお前の彼氏と一緒にすんな、何の取り得もない俺はそれすらダメなのかよ!」
反論の最後に無意識のまま腕を振り回す。それは嬉しいことがあった時のガッツポーズ、或いは演説中の身振り手振りのようなものだ。
だがどこか突き放す言い方が影響したのか、腕が偶然至近距離にいた周防の体に当たり後ろに突き飛ばしてしまう。
「あっ!」
どおっとリュックごと倒れる周防。ふらつく程度ではなく、数歩分は後ろに下がって転んだように倒れこむ。
その声は信じられないほど女らしかった。
「!」
とたんに三沢の頭が冷めていく。当たった部分はじんと暖かかった。そして感じる女性特有の柔らかさ。
確かに手加減するような余裕はなかったし不意打ち同然だ。けれども男同士でどつき合っていた日常ではここまでにはならない。
体重差というものを、思春期を迎えた男女の力の差というものを三沢は初めて実感した。
(やばい、謝らないと)
荷物がクッションになり怪我はしてないだろうが一歩間違えれば取り返しがつかなかった可能性もある。
先程の怒りはすっかり姿を潜めていた。自分でも信じられない速さで動き、手を伸ばせば届く距離にまで接近する。
腰を低くして膝を折る。倒れた彼女を間近で見てぎりりと後悔で歯を食いしばった。
「周防さん、俺……!」
緊張してジャージが汗で蒸れて息が荒くなる。息を吸ったり吐いたりして空気が歯の隙間を通り抜ける鋭い音がした。
目にギラギラした強い光を宿しながら、肩を強くつかんで身体を起こさせようとする。そしてそれだけでは足らないと気付く。
花井のように熱っぽく語りかけ、こちらの謝意を伝えよう。それには土下座だ。頭を地面にこすりつけて詫びるのだ。
三沢は心の底からそう考えて誠意を尽くそうと最初の言葉を捜していた。
――だが
「嫌、やめろ……!」
こちらに気付いた周防は突然三沢を振り払い、そのまま四本足で動き、素早く後ずさった。
その顔には警戒と怯え。疑心と憎悪。何故こんな態度をされるのか三沢には理解できない。
確かに暴力を振るったのは自分だが……そこまで痛かったのだろうか?
「え?ちょっと周防さん」
「くっ来るな!」
器用にも後ろに飛び跳ねるようにして立ち上がり、両手をクロスさせ上半身を隠すような構えをする。
そのまま踵を返して周防は走り去ってしまった。三沢はただただ立ち尽くしてぽかんとする。
まるで怖いものから逃げ出すような扱いをされて何が何だかわからない。
村の外に出たあたりで、もう豆粒のように小さくなってしまった彼女から何かが零れ落ちる。
それは彼女のリュックなのだろうと頭のどこかでなんとなく思った。
「?…………え…………ちょ、ちょっと周防さん待って!俺そんなつもりじゃなかったんだ!」
やがて三沢も何かが爆発したように飛び跳ねる。手足をがむしゃらに動かして、肺から息を必死で吐き出して駆け出した。
彼女の様子は普通ではなかった。怖いもの・恐れるもの・男の自分が思い当たらない恐怖――
男が突然怒鳴って突き倒し、興奮気味に身体を掴んできた。圧し掛かろうとしたようにも見えたかもしれない。
もしかすると、自分が激昂して乱暴しようとしたと彼女には感じられたのではないだろうか。
最初話しかけてこなかったのはきっとどこか不安があったのだろう。
それは三沢伸という人間だから警戒したというわけではなく、殺し合いという地獄に対する彼女の感情の表れだったのだ。
(ああ俺は馬鹿だ)
彼女だって、勇猛果敢で武道を嗜む男勝り、堂々とした口調で振舞っていても自分と同じ。高校生だから当たり前だ。
自分の泣き言は肯定する一方で、自分の目線で彼女を特別扱いしそれを押しつける。三沢は先ほどまでの言動を悔いた。
「周防さん!?周防さーん!」
村の入り口付近で彼女のリュックを拾いあげる。相当焦っていたのだろう、落としたままになっていた。
三沢は体育祭で応援するよりも大きな声で、目の前に広がる広い大地に力強く吠えた。
だが遠くで小鳥が羽ばたいたくらいしか変化がない。喉の奥から粘りっこく糸を吐くような不快感が湧き上がってくる。
「ちくしょう、何でこんなことに……ちゃんと謝ろうとしたのに。俺は何してもダメなのかよ」
「ニャー」
視界の端に映った黒い点。何度も追い払ったはずの黒猫だった。とことこと自分の目の前を横切っていく。
猫の瞳には自分は非常に滑稽なピエロに写って見えるに違いない。そう思った三沢の心は再び爆裂した。
「はは、あはは……おかしいよな。笑ってんのか?お前…………あっち行けって言っただろ!」
ダン!と地面を踏み鳴らし拾った周防のリュックを投げつける。
影が猫の姿を隠すが、猫はひらりと避けてそのまま猛スピードで村の奥へ駆けて行った。
猫にまで馬鹿にされてしばし立ち尽くし、空しく残った荷物を拾ってかすれた声で呟く。
「……思ったとおりだ。ロクなことにならねえ……」
肩を上下して重たい息を何度も吸ったり吐いたりする。そしてふらふらと頼りない足取りで平瀬村から離れていく。
前へ前へと進む度に嘆きが増す。少しずつ落ち着いてきた彼の心に再び暗い暗雲が立ち込めてきた。
■ ■ ■ ■ ■ ■
「……っ、……三沢君」
平瀬村へと伸びる道から少し離れた場所で周防は大きめの岩を影にして休んでいた。
人目にはつきそうにないこの場所に隠れていられる事が彼女には嬉しかった。
「何で……サバゲでもいい奴だったじゃん」
2-Cあげての大騒ぎの一つであったことを思い出す。比較的最後のほうまで三沢と共に自分は生存していた。
銃弾の飛び交う最前線において、彼は残った僅かな仲間のために決死の突撃を実行。
その雄姿に、勇気を出して誰かのために動ける人間だと感心したものだ。
だけど、と両手で自分の肘を抱き、体を支えるようにして息を吐く。呼吸は整ってきたけれど心は未だ曇り空。
最大の禁句といえる殺人が強制・許可されているのだ、今起きたことは想定していた嫌な事の一つが当たったに過ぎない。
平和な日常ですら時折そういった事件は起きている……それでも自分達なら大丈夫とどこかで思っていた。
「……ダメだ。こんなのアタシらしくない。早く塚本達と合流しないと。そうだ、花井も」
幼馴染の名前を呟く。すると心が温かくなって勇気が湧いてきた。ぱんっと頬を叩いて無理矢理気合を入れる。
みっともないところは見せられない。そう誓って立ち上がり、晴れた空を見上げながらゆっくりと進みだした。
友人達の身を案じ、どうかこれが嘘であるようにと願いながら。
【午後2時〜3時】
【三沢伸】
〔現在位置〕F-02 南端部
〔状態〕健康、精神的疲労、強いストレスと無力感
〔道具〕支給品一式×2、周防の不明支給品
〔行動方針〕周防との誤解を解きたいので探す。特に目的地は決まっていません
【周防美琴】
〔現在位置〕G-02 中部
〔状態〕健康、精神的疲労
〔道具〕なし
〔行動方針〕友人と花井を探す。信頼してる男子以外はちょっと……
【伊織】
〔現在位置〕F-02 平瀬村
〔状態〕健康
〔行動方針〕???
以上です。
書いてる内に段々内容が・・・
問題があったら指摘願います
>>670 乙!
三沢は奈良と仲良く危険人物認定かw
個人的にはいい感じに仕上がってると思う。
ただ、三沢って瓢々としたイメージがあるせいか、周防を「さん」付けで呼ぶのに少々違和感が……
(頭叩かれた時のアレはしっくり来たけど)
今度のロワ、きっかけ次第でどう転ぶか分からんキャラが多いな。
ナカムラ達も前より早く動けそうだし、選択肢が色々あって楽しみだ。
乙です。
今回は播磨が普通にマーダーだから、他の人で勘違いフラグが立ってるね
プリキュアがまだ出てこないのは、まさか前のロワの影響が……
>>670 新作&まとめ更新、乙でした。
一ヶ月強でほぼ全キャラ出揃うハイペースを維持出来たのも、氏の積極性の賜物だと思っています。
引き続き、無理せぬ程度に頑張って下さい。
あと、まとめの人物紹介、冬木のみコメントが入ってなかったので報告しておきます。
最後になりましたが、稲葉を予約します。
>>670 守りたくなる周防ですね。
管理人様、番外編収録と修正していただきありがとうございます。
榛名と坊乃岬で予約します。
お疲れ様です。
一気に、全員登場ですね。
基本的に予約なしで、いきなり投下で続けようと思ってたのですが。
予約を入れてみようかと。
天満・沢近・マックス・石山・永山・おまけでショーン達で。
感想どうもありがとうございました。三沢から周防へのさんづけだけ修正して収録を
・・・と地図を見ていて気付いたのですが刑部先生と八雲もG-02だったんですね。
脳内で平瀬村=F02のみと決め付けていたので地図では二人の位置がF-02になっていました。
三沢は村からある程度外、周防は大きく村の外をイメージして書いたので地図上のこの4人の位置を調整しました。
冬木のコメントやララ坊主の同行等いくつかのおかしい点を修正。どうもご迷惑をおかけしました。
多数の予約ありがとうございました。投稿お待ちしております。
おかげさまで全員登場そして二週目へとなりました。今後もどうかよろしくお願いします
おお予約ラッシュか。これは楽しみ
意外と四人娘集合も早いかな?メインキャラが南に偏らないか少し心配だ
予約分、一応完成。
先の二人をとりあえず待って、投下予定。
>>678 お疲れ様です。
こちらも一応完成しましたので、投下します。
◆q8.UJLtEPY氏・◆HQrLOwPbgA氏両名とも、もし投下予定の作品にとって
不都合な展開・設定などがありましたら、遠慮なくお知らせ下さい。
タイトル:【ひとりぼっちじゃない】
「――へくちっ!」
カビ臭さが充満する、暗闇の通路脇。
時折、可愛らしいくしゃみを聞かせていた一人の少女――稲葉美樹が目を覚ましたのは、
ゲーム開始から既に一時間を過ぎた頃だった。
リュックを抱き枕代わりに横たわっていた彼女は、薄手の制服姿で長い間放置されていたためか、時折ブルッと
身震いしながら体を丸めて辺りの様子を窺う。
「……んぁ? あれ? あれれ?」
寝ぼけ眼をゴシゴシ擦りながら、四方が暗闇に囲まれた空間で間の抜けた声を上げる美樹。
――数十秒間の沈黙。
「ここ、何処〜〜!?」
……残念ながら、彼女が現状を認識するには、もう少し時間が必要なようだ。
目を覚ました当初、美樹の振る舞いがどことなく浮世離れしていたのには、もっともな理由がある。
歩行祭で拉致される直前まで洞窟で遭難していたため、目覚めた場所――沖木島東部に位置する東崎トンネルを
遭難場所と勘違いしてしまい、その間に起こった出来事を無意識のうちに『夢』と思い込んでいたのだ。
だが、たとえ自己防衛本能を働かせようと、現実がまさしく悪夢そのものであろうとも、今の状況に変わりは無い。
その事を思い知らされたのは、美樹自身の首につけられた金属製の首輪の存在に彼女が気付いた時だった。
※ ※ ※ ※ ※
「……ひっく……夢……じゃ、無かったの……?」
「……うぇぇ……酷いよぅ……」
理不尽極まりない己の境遇を呪い、ただ一人泣き続ける美樹。
こんなことなら、いっそのこと遭難したままの方が良かった――そんな考えが頭をよぎるが、即座に否定する。
たった独りで取り残されたとしても、何の意味があろうか。
八雲とは違う意味で友人への依存度が強い美樹にとって、友人が居なくなる未来など到底考えられなかった。
涙も枯れ果てた頃、美樹はようやく今の状況について考える。
「……榛名や八雲達も、この島に居るのかな……」
今すぐにでも連絡を取りたいところだが、携帯は没収済みなので彼女の願いは叶わない。
当然、徒歩で探さなくてはならないのだが――
「この島、三つも村がある……」
――厄介なことに、この島は相当広い。
海岸沿いを走る道路を一周するだけで、美樹の足ならば丸一日はかかるだろう。
もし、ゲームに乗った人間が居たとすれば、道中の安全も保証はできない。
……ならば、支給された品を使えば、友人の探索も多少はスムーズにいくのではないだろうか?
「……何が入ってるかな?」
少しの期待と不安を抱え、恐る恐るリュックを空ける美樹。
中に入っていたのは、電子手帳のような機械だった。説明書が同封されていたので、そのまま目を通す。
『注:バッテリー駆動時間は約8時間です。ACアダプタはありませんが、予備バッテリーが支給されている
参加者が居ます。頑張って手に入れましょう』
当然、“手に入れる”とは手段を選ばず、という意味も含まれるのだが、美樹は気付いていない。
『このミニノートPCには、殺し合いを有利に進めるための便利な機能が収められています。
放送ごとに新しい機能が一つずつ追加されますが、無条件で使うことはできません。
それぞれの機能に応じたクイズが出題されます。 見事正解すれば、心強い味方となってくれるでしょう』
“殺し合い”という言葉に一瞬顔をしかめたが、どうやらこのアイテムは中々便利な代物のようだ。
彼女はそう考えた。
『ただし、答えを間違えてしまうと、回答者の首輪が即・爆発します。 回答は慎重に行ないましょう』
「え……嘘…………」
読む者の胃がひっくり返るような説明を見て、美樹は思わず腰が抜けてしまう。
だが、他に役立ちそうな支給品は入っていない以上、嫌でも読まないわけにはいかない。
そう思いつつ、微かに震える手でページをめくっていく。
『クイズに正解するまでは、同じ問題が出続けます。 どうしても答えが分からなければ、回答者はクイズを
棄権することもできます。
ただし、一度棄権した回答者が再度クイズに挑戦することはできません。誰か別の人に答えてもらいましょう』
『回答者を決める手順は、以下のようになっています。
1.ソフトを立ち上げる 2.回答者を決め、その人の首輪に記されたID番号を指示に従って打ち込む
回答者はあくまでも“リスクを支払う人”ですので、クイズを解く時は、何人かで相談しても構いません。
ID番号は鏡で確認するか、誰かに教えてもらって下さい。
見知らぬ人から、勝手に回答者にされてしまう可能性もあります。 自分のID番号はむやみに人に教えない方が
良いでしょう。 なお、当然ですが、既に死んでしまった人のID番号を使うことはできません』
説明書は、ここで終わっていた。
※ ※ ※ ※ ※
「これ、怖くて使えないよ……」
使い手次第では強力なアイテムとなり得ただろうが、勉強の苦手な美樹にとっては文字通りのお荷物。
だが、それは“彼女だけで”使う、という前提での話だ。
気軽に話せる頭の良い友人もしくは知り合いが居れば、少なくとも無駄にはならないし、運次第では
様々な恩恵を受けられるかもしれない。
ならば、自分にできる事は、協力者を見つけること。
「榛名や八雲達ならまず安心だし、結城先輩や高野先輩なら頭いいから期待できるかな……あっ、花井先輩!
あの人なら絶対信用できるし、勉強もできるし、言う事無いじゃん!!」
自らが想いを寄せる、頼れる先輩。
彼ならば、どんな状況でも、少々暑苦しい笑顔と抜群の行動力で皆を引っ張ってくれる。美樹はそう確信していた。
「よーし、そうと決まれば善は急げ、先輩を探さなくちゃ!」
先ほどまでの落ち込み具合は何処へやら、取り出したミニノートを大事にしまって勢いよく立ち上がる美樹。
その楽観的な性格ゆえか、彼女は、島全体を取り巻く様々な“負の感情”――妬み・疑念・怒り・
失望etc――に押し潰されることは無かった。
良くも悪くも、それが稲葉美樹。 底抜けに明るい、高校一年生の恋する少女だった。
【午後2時〜3時】
【稲葉美樹】
〔現在位置〕E-07北東 東崎トンネル西出口付近
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式、ミニノートPC(残り駆動時間:8時間)
〔行動方針〕友人、知り合いを探す。特に花井・榛名・八雲・さつき・サラ・結城・高野・沢近etc.
自分の身の安全についてはあまり考えていません(単に不注意なだけ?)
以上です。
色々と設定を詰め込んだ分、リスクも大きい作品になってしまった気が……
スレ住民の遠慮無い御意見、お待ちしております。
乙です。
展開としては特に問題ないです。
これはまた面白そうな支給品だ。没にするのは惜しい
うーん失敗すると死亡というのはリスク高すぎるかもしれんね。
ペナルティはあるが具体的な問題のとき発表とかどうだろう
外道マーダーが奴隷を揃えて・・って展開も面白いが。
>>678 不安ならしたらば使って仮投下ということでどうだろう
というか殺したい奴の番号打ってわざと間違えれば殺せるんだよな
ちょっと危険か?
>>685 乙です。
少し、殺す道具として優秀すぎる気がするかな。
〜前回までのあらすじ〜
少年坊乃岬大和は、餓えた野生のララ・ゴンザレスに唯一の武器である木刀を折られた上、貴重な菓子パン1つを奪われてしまう!
ひきかえに手に入れたのは世界進出中の日本人俳優・役者丸広事のサイン色紙と幻のエロDVD。
彼の明日は、いや、そもそも彼は明日を迎えることが出来るのか!?
***
「なんてこった」
坊乃岬の状況は悪化していた。
あの褐色の食欲原人に会うまでも十分悪いと思っていたが、あそこが自分にとって不利な度合がゼロだとすれば、今はマイナスである。
こんな物より銃が良かったと思っていた木刀も、折られる前の姿がひどく懐かしい。
そしてもしかしたら自分はサイン色紙と観ることの叶わないDVDを手に死ぬかも知れないのだ。
(…嫌過ぎる…)
いつか死ぬ運命だとしても、せめて男らしく銃を手に、戦い抜いてからその時を迎えさせてはくれないものか。
氷川村へ向かう道すがら、周囲に警戒する態をとりながらも彼の頭は繰り返し、こんな愚痴を流れるにまかせていた。
理不尽な現状に諦めかけている自分も、この島の中の事態も、すべて言い表している情けない言葉をもう一度呟く。
「…なんてこった」
きっとハードボイルド小説の主人公はこんな台詞は吐かないだろう。
やがて道が二つに分かれる地点に到着した。まっすぐ行けば氷川村、左へは灯台へ行きつく。
と、その地面に見覚えのある布製の何かが落ちているのが目に入る。
自分の背中にありララ・ゴンザレスも背負っていた、恐らく参加者すべてに支給されているであろうリュックサックだ。
口が開かれぞんざいに捨て置かれているそれに、恐る恐る近づき拾いあげる。
「…誰かがここにいたんだ…って食糧は!?」
ハッと期待して漁るが、中身は目一杯かさが増すように丸められたルールブックのみ。
しばし坊乃岬はその紙玉を手に動きを止める。
誰のものなのか、このリュックの持ち主の身に何が起こったのか。
そして今、耳に届く"これ"はとうとう狂った自分の錯覚なのか。微かに、立ち止まり耳を澄ましてやっと聴こえるボリュームのこれは――…
どう考えてもこれは日曜朝の子供番組で流れるようなテーマソングだった。
****
立ち上がり周囲を見回す。茂みの陰に、さっきはリュックサックに気を取られて見えなかった光る物が見えた。
携帯型のラジオだ。拾い上げようと思わず駆け寄る――が。
「うわあっ!!」
何かに足を取られて坊乃岬は派手に転んだ。
(な、なんだ!?あ…罠…っ!)
それは草の束を結んで足を引っ掛けさせる、トラップとも呼べない子供騙しの罠。
そして彼が起き上がるよりも早く、頬に当てられた冷たい感触は、
「動かないでください」
――間違いようもない。刃物のそれであった。
「手をそのまま伸ばして置いてください、起き上がったりすると耳が飛びますよ」
彼の手からあと1メートルの場所で、ラジオは「破天荒ロボ・ドジビロン」の主題歌を高らかに歌い上げ、ディスクジョッキーのトークに移る。
地べたにひれ伏した自分の背後の高みから聞こえてくる声は、聞いたことがないやけに落ち着いた少女の声。
坊乃岬のリュックを探る感触が背中を通して伝わってくる。
(誰だ!?2-Dの人間か?――くそっ油断した…!)
「ぶ、武器は持ってない!取って得するような物もない!」情けないが声が少し裏返る。
「…はい、そうみたいですねー…あ、ちょっと失礼します」声の主もそれを確認したのか、次に思わぬ行動に出た。
「え」
ペロンとジャージの上をめくられた。嫌な汗をかいた背中に春の風が心地いい。…なんだか腰の方まで風を感じたのだが気のせいか。
「……あの」
なんだか色々とまた失った気がする坊乃岬。彼の顔に当てられていた刃が消えるのと、彼のジャージが元に戻されたのは同時だった。
「――もう終わりました。立ってください」
ゆっくりと立ち上がり、後ろを振り向く。
そこには、やはり見慣れない黒髪の少女が制服姿で日本刀片手に、頬を少し赤らめて立っていた。
*****
「あの、乱暴な真似をして本当にいろいろとすみません」
まるで学校の廊下でぶつかったのを謝るようにはにかむ、どうやら一年生の少女。
サラサラのストレートヘアと落ち着いた瞳が印象的だ。
本当にここが学校で、彼女がポン刀を構えてなければ、このまま恋が生まれそうなシュチュエーションである。
「あのさ、俺はとりあえず君相手に何かするつもりはないから…それ、仕舞ってくれないかな」
幸い今すぐ自分をどうこうするわけではない相手のようだが、ギラギラする光りモノが常時視界にあるのは精神的にきついので言ってみる。
「――まだそれは出来ません」
真っ直ぐ刀を坊乃岬に向けたまま、彼をコンパスの中心にして円を描くように、少女はラジオに歩み寄る。
「それは君の?」
「はい…私の他にも支給品が複数の人も居たんですね」
つまり、ラジオと日本刀が彼女の支給品だ。そのストラップ付きの携帯ラジオは今、雑音まじりに甘いラブソングを少女の手の中で歌っている。
この番組の選曲、おかしくないかと坊乃岬は頭の隅で考える。
「いや、俺の支給品は一つだけで」
「じゃあ、あとの物は私物なんですか?」
「違う!!」
あれを見られたのだ、幻の保健室シリーズ。お詫びの品に貰ったモノだから返すつもりはないが、違う。説明は出来ないがとにかく違う。
彼の言葉にならない慌てぶりに、少女は少し笑って、
「私は1-Dの東郷榛名といいます。…東郷雅一はご存知ですよね?アレの妹です」
記憶の中の2-Dのお騒がせ男と、目の前の彼女をつなぐのに坊乃岬が数秒かかったのは無理からぬことであった。
******
「俺は坊乃岬。あの、基本的なこと聞いていい?君は…このゲームに『乗る』側か?」
榛名の和らいだ表情が再び硬くなり、瞳に力が宿るのを少年は見た。
「それには後で必ず答えます…私も先輩に聞いてみたいことがあって。教えていただけませんか?」ひと呼吸おいて、榛名は言った。
「先輩のクラスの人達は…あの人の不興を買うようなことをしたんですか?」
「あの人って?」
「ショーン・クロムウェル――このゲームの『親』です」
「矢神高校に来る前はイギリスに3年ほどいましたが、彼について私もよく知っているわけじゃありません。ただ、父からある事を聞いていただけです」
「それは…どんな」
本音を言えば坊乃岬はそんなに知りたい訳ではなかった。知ってもどうしようもない予感があった。
榛名の言葉は端的であった。
「『彼に関わるな』と」
やはり、と坊乃岬は再び思い知る。
ああ、そうか。俺達は関わっちゃいけない人間に関わってしまったのだ。虎の尾を踏んでしまったのだ。
――それなのに、体から力が抜けないのは、手を握る力が強くなるのは何故だろう。
(でも何をしたってんだ?俺たちが!?)
(修学旅行の喧嘩の一件か?ああ、あれがお坊ちゃま達のプライドを傷つけたってか?)
「…不興?修学旅行で女子連中をかっ攫われたこっちが文句を言いたいな」
口をついて出たのは、泣き事でもクラスメイトへの怨嗟でもなかった。
さっきまでとは随分威勢が違うじゃないかと、坊乃岬は自分のことながら思う。
ならば、この感情の出所は先刻まで無かったものなのだろう。
それは自分の目の前の少女の瞳にある強い光だ。そこに映し出されている自分の姿だ。
「あんな事でここまでするなんてな、確かに危険人物だ」
「――修学旅行でのトラブルは大したことじゃなかった、と?こうなったのは誰かの責任じゃないと?」
「俺はよく知らないけどそう思うよ。
それに、あん時播磨が留学生連中とやりあったの聞いて、俺思ったよ。おお、やるじゃんって」
ふぅっと息をついて、榛名は刀を下ろした。
「やっぱり、噂に聞いていたとおり。2-C の人達ってすごいですね」
「そ、そうかな」
「ええ。こんな状況です、誰だってマイナスの感情でそんな言葉が出る人の方が少ないと思う。
兄が褒めていましたよ?あんなクラスは滅多にない。最高のライバルだって」
違う、と坊乃岬は思った。少なくとも自分はそんな褒められる人間じゃない。
本当は、誰かにすべての責任を押し付けて、被害者然として不平と恨み節を言おうと思った。
だが、ここまでに会った人間に調子を狂わされた。
ララ・ゴンザレス、あいつは乱暴者で略奪者だったが全く警戒も疑いもしなかったのだ。
こちらが殺意を抱いているかなんて微塵も思わず、まるで昼休みに2-Cに乗り込んで来るいつもの調子だった。
彼女が、ハードボイルドを気取っていた自分に思い出させてくれた。
馬鹿騒ぎが好きで、ノリの良さだけは一級で、
レベルの低い争いをしても結局仲が良かった自分のクラスの空気を。それこそ空気も読まず。
「まァ、兄に褒められても嬉しくありませんよね」
「…苦労してるんだね」
「そりゃあもう!!」
憮然とした、だがどこか嬉しげな表情に変わる。初めて榛名が年下に見えた気がした。
「それでですね、東郷さん」
「榛名でいいです。乗るかどうか、の答えですよね」
頷くのを見て榛名は眼を落す。
「私は、兄がやろうとしている事と同じことをするつもりです」
*******
「あの兄が傍にいたらこちらも手綱を握るのが楽なんですが…どこに居るやらわからないし。
でも、あのヒトがやりそうな事はわかるんです。不幸にも兄妹ですから。そしてなんだか正攻法じゃない気も…」
「やりそうなって何をやらかすんだよ、榛名…ちゃん」
榛名は顔をあげ、可愛らしく首を傾げながら、坊乃岬の問いに今度も端的に答えた。
「このゲームの"親"に痛い目遭わす?」
しばし沈黙が流れた。
「無理無理ムリ!!絶対無理だ!何でそんな事思いつくんだよ!!ありえないね、出来っこない!」思わず叫んでしまう坊乃岬。
「そうですね〜、まァ無理だと思います」
溜息をもう一度つき、彼女は自分の手のひらを見つめる。
「私、ここでやりたい事を数えてみたんです。友達の稲葉や八雲や、サラにさっちゃんが心配だから探しに行きたい。
お兄ちゃんがとんでもない事をやらかさないか探しに行って見張りたい。誰も殺したくない。そしてもちろん死にたくないし生きていたい」
指折り数えた望みの数は、片手にも満たなかった。
「全部叶えたいけど全部は無理かも知れない。それどころか全部無理かも知れない。ひとつも叶わず死ぬかも知れない」
「先輩は聞いた事がありますか?戦争中、信じられない状況で生き残った人たちの話」
――それは榛名の大勢いる父や祖父が話してくれた記憶だった。
昔の戦争、今の戦争と時を経ても変わらない人の愚かさと逞しさの物語。
「何か役割を受け持ったり目的を持つと、結構人って生き延びるんです」
幼い頃は怖くて耳をふさいでいたのに、今の自分には寄って立つ柱となる物語。
「目標は大きい方がいいと思いまして。それにこれなら何個か叶いそうじゃないですか?」
********
坊乃岬は喉がカラカラになった。自分の呆然としたかすれ声が聞こえる。
「そんな事できると思ってるの?ひとりで、ラジオと刀で?殺されるぜ?仲間のあてもないのに?」
いいや、と頭の隅で声が反論する。――ひとりじゃないだろう?ここにもう一人いるだろう?
「やると決めたら出来ることからやるだけの事ですよ…でも」
榛名の、瞳が少しだけ揺らいだ。
「ここに連れてこられたのは二年生の人達と、留学生の人、先生達、それに私や稲葉や八雲、サラ、さっちゃん…、一年生は5人です」
そういえば、と坊乃岬は思い出す。昨日の昼間に炊き出しに一年の女の子達が来ていた。あの少女たちが榛名の友人なのだろう。
「友達は信じられる、けれど正直2-Cの人達は知らない人がほとんどです。…先輩」
――そうだよ、俺が彼女に2-Cのみんなの事を教えられるじゃないか?そうだ言ってしまえよ。
「このゲームに乗っていない、恨みに目が曇っていない人が」
「ストップ。それ以上言うな」
片手で榛名の言葉を止める。
――ああ、きっと俺はこの後、彼女の失望した顔を見るんだろうな。
坊乃岬は手をそのままに、しばらく自分のスニーカーを見つめた。長い時間、瞬きを忘れたように。
そしてゆっくり顔をあげて言う。
「…俺、サバイバルゲームとか得意だから。役に立つんじゃないかな」
出てきた言葉に信じられないという表情を浮かべたのは、果たして一人だったか、両方だったか彼にはわからない。
*********
「さて、そんじゃ行きますか」太陽はすでに西へと傾いて、光は金色混じりになって来た。
「あ、荷物があるんですよ、ちょっと待ってもらえますか」
榛名は離れた茂みに駆け寄り、支給品一式を抱えて戻ってくる。
「やっぱり、そのリュックもひっかけ?」
「一生懸命考えたのが成功して良かった〜!実は結構ドキドキだったんですよ〜」
あまりそうは思えない調子で、荷物をリュックに詰め込みながら言う。
たぶん自分の立場が中立だったから引っかかったと思うし、少年としてはそう思いたい。
だが、あれは本気の人間が相手だったら上手くはいかなかっただろう。考えてみるとこの一年生の度胸は怖いものがある。
「お待たせしました、…いざ、氷川村ですね」
リュックを背負い、東郷榛名が歩み寄る。刀はもう鞘に納められている。
まったく、ハードボイルドを気取っていたら本当にそうなってしまった。いや、大きな目的を持つ女の子を助けるという展開は少年漫画的か?
「そうそう、まだあまりお互いの情報って知りませんね。…順番こに出しあいましょうか」
「なんで順番?じゃあまあ、今度はそっちから」
そういえば彼女にララの事を話していないな、そう考えながら坊乃岬は道を歩き出す。
んー、としばらく榛名は考えて、
「じゃあ、情報10個分に値するこちらの情報をひとつ!」
「私の大好きな歌手はさだまさし。これ、どうです?」
「…はいぃぃ!?」
「まっさん好きに悪い人はいないんですよ。知りませんでしたか?」
これで自分を信用するには十分だろう、と言わんばかりの表情の少女に、少年は唐突に笑いだしたくなる感情に襲われる。
お互い明日をも知れないというのに。数時間後すらも知れないというのに。
こらえ切れない笑いの発作に顔を背けながら、この状況を一言で表す言葉をもう一度、胸のうちで唱える。
――ああ、まったくなんてこった。
【午後4時半〜5時半】
【坊乃岬 大和】
〔現在位置〕H-08
〔状態〕健康。気力は十分
〔道具〕支給品一式、折れた木刀、菓子パン残り2つ、エロDVD、役舎丸広事のサイン色紙
〔行動方針〕榛名と行動を共にする。サバゲーの経験を役立てたい、やっぱり銃を撃ってみたい。
【東郷 榛名】
〔現在位置〕H-08
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式、携帯ラジオ、日本刀
〔行動方針〕対主催。氷川村へ。なんだかんだ言って兄の事は信頼。
【Hard-boiled/Hard luck】
以上です。ぬるい話ばかりですみません
◆HQrLOwPbgA様、大変遅くなってしまい申し訳ありません
◆cj4OQi4css様、こちらは支障ありませんでした
乙です。
いい話だなあ・・・。
じゃあ、せっかくのいい話を暗転させる話を、出勤前に投下しようかと。
永山朱鷺は、みかけによらず頑固だった。
「田中君を待つ」そう言って、なかなか鷹野神社を動こうとしなかったのだ。
だが、30分、1時間と時が経過しても田中一也が戻らないと、さすがの彼女も不安が湧き上がってきたようだった。
しかし、「いつ彼が戻ってくるか判らない」、そういって鷹野神社からあまり離れずに周囲を捜索するのがせいぜいだった。
(ちくしょう。どうする?)
このままだと、そのうち田中の死体が見つかってしまう。
石山は、永山が鷹野神社からあまり離れないのをいいことに、少し様子見てくると言って放置してあった田中の死体と荷物を少し移動し、
木の葉や草でぱっと見にはわからない程度には簡単に隠したが、それでも時間の問題だ。
こうして石山が、次第に自分の嘘に追い詰められていった頃、2人の前に思わぬ者達が現れたのである。
平瀬村の方向から登ってきた沢近とマックスの2人組である。
「待って!敵意はないわ。安心して」
そう、いいながら沢近が近づいてくる。
彼女の武器、台湾警察も採用しているというスタンガン付きの特殊警棒を持った手を降参とばかりに挙げて、敵意の無いことをあらわしている。
「そっちの転校生は、ショーンの仲間だろ?信用できるのか?」
べレッタをマックスに向けて構えながら、石山が叫ぶ。
背中を汗が流れていく。
そんな石山と対照的に、マックスは、さも面倒臭そうに答えを返す。
「お前たちにジャパニーズに興味は無い」
素直にマックスの言葉を信じる気にはなれなかった石山だが、意外な所からマックスには援軍がやってきた。
永山朱鷺がマックスを擁護したのだった。
「多分、大丈夫だと思う。その人、悪い人じゃない、と思う」
沢近愛理の喧嘩腰の態度とは違う、永山朱鷺のまっすぐな瞳に心を動かされたのか、マックスは降参とばかりに両手を上げ、指示に従う事をアピールした。
(完全に疑いが晴れたわけではないけど、とりあえず敵対する気が無いと言っていたのは本当みたいね)
沢近愛理は、自身のマックスに対する評価をやや好転させた。
こうして4人の出会いは悲劇的展開を迎える事もなく、とりあえず情報交換と休息をという事になった。
鷹野神社まで戻る短い道のりで、沢近と並んだ永山が、尋ねたのは相変わらず姿を見せない田中一也の事だった。
「ねえ、沢近さん・・・」
「何?永山さん?」
「・・・途中で、田中君に会わなかった?」
永山が田中の事を口にした時、少し前を歩く石山が、動揺したようにも沢近には見えた。
「いえ、会わなかったわ。ごめんなさい」
「・・・そう」
そのまま永山は黙ってしまったが、沢近はそれよりも、石山の態度に、やや違和感を持ったのだった。
**********************************
「ねえ・・・。石山君、ちょっと話があるんだけど」
しばしの休憩の後、生理的欲求に従い、姿を消していた沢近愛理が、戻ってくるなり険しい顔つきで石山に話かけてきた。
そういえば、マックスの姿も見えないようだ。
「・・・永山さんには内緒で・・・」
少し離れた場所に、座ってうなだれる永山を見ながら、そう小さく付け加えると、話はじめた。
「あなた達、田中君を待ってるって言ってたわよね」
「ああ」
「・・・私、見たのよ。その・・・田中君の・・・」
クラスメイトの死体を見つけたというのに、意外な程冷静に沢近愛理は話す。
「・・・」
「・・・で、相談なんだけど。これからどうしよう?」
「・・・どうしようって?」
「馬鹿!永山さんに何て言うのよ?・・・それに、あんまりこんな事言いたくないけど、彼を殺した人間がまだ近くにいるかもしれないわ」
一旦、言葉を切り、
「しかも、同じクラスメイトかもしれないのよ・・・」
「・・・間違いなく同じクラスメイトだよ」
思わず本当の事を言ってしまいそうになる。
「何か言った?」
「何も」
そんな石山の態度に、先の違和感と併せて不信を持つ、沢近。
「何か知ってるんじゃない、あなた?」
「何も」
全く誠実さの感じられない石山の返答は、ますます沢近愛理の不信感を増幅させた。
石山相手ではらちが明かないと思った沢近は、永山に近づいていく。
石山は、自分の態度が沢近に不信を抱かれたのだと、ようやく気が付く。
だが、彼の得た結論は、自身の後ろめたさによって増幅され、とんでもないものと化していた。
(このままでは、やばい。きっと沢近は、俺が田中を殺したと疑ってるに違いない)
自身の動揺・恐怖を、勝手に妄想と結びつけて、おびえる石山。
(破滅だ。せっかく永山を手に入れたのに、沢近が全部話せば終わりだ)
せっかく手に入れた永山だ。誰にも邪魔をさせるものか。
自然に石山の手が動く。至近距離の金髪の背中に向けて、ベレッタを構える。
3発の銃声が響いた時、沢近は地面に倒れていた。
金髪が、真っ赤な血で染まっていく。
沢近愛理は自分の身に何が起こったのか、正確には理解できなかった。
気が付くと、自分の体が地面に倒れており、血が流れだしているらしいという事が判った。
体の自由が効かない・・・。
(あれ?どうしちゃったの私?・・・あれ?もしかして、私、死ぬの・・・?)
もやのかかって来つつある頭で考える。
(いや。こんな所では死ねない。私は、まだ何もしていない。恋も、夢も、まだ・・・何も・・・)
誰かが近づいてくるのが判る。それがどうやら彼女にトドメを刺そうとしてるのを理由も無く悟る沢近。
(天満・・・、晶・・・、美琴・・・、お父様・・・お母様・・・)
これが走馬灯というものだろうか?親しい人々の顔が浮かんでは消えていく。
(何をしてるの?早く助けに来なさいよ、ヒゲ!)
僅かに動く腕を伸ばしながら、そう呟く。
次の瞬間、轟音と共に、沢近の意識は永遠に暗黒へ沈んだ。
永山朱鷺は、銃声で我に返った。
彼女が見たのは、沢近愛理の頭にトドメの鉛の玉を撃ち込む石山の姿だった。
声も出せずに、悪鬼のごとき様子の石山を見つめる永山。
「あ、危なかったな、永山。沢近の奴、やっぱり俺たちを殺そうとしてたんだぜ」
何やら、石山が言い訳をしているようだが、永山は半分も聞いていなかった。
クラスメイトがクラスメイトを殺害する光景を見たのだ。
(いや、いや、嫌〜っ)
あまりの衝撃に、魂の抜けた人形のように呆然とする永山。
「とにかく、逃げるぞ。あの外人が戻ってくる前に・・・」
呆然としたままの永山を立たせ、逃亡を図ろうとする石山。
「おい、永山!!」
だがそこに、銃声を聞いたマックスが戻ってきたのだ。
地面に倒れた血まみれの沢近の姿を見て、マックスはそこで何が起こったか、全てを理解した。
愛する者の変わり果てた姿に、彼の思考は完全に停止し、怒りに身を任せる鬼神と化したのだ。
「ガッデム!」
彼に支給された武器・ダガーナイフを抜き、永山と石山に向かっていく。マックスが一気に間合いを詰める。
沢近の死に動揺した永山はもちろん、石山もマックスの動きへの対処が遅れた。
ざしゅ、と無防備に呆然と立ち尽くしていた永山朱鷺の胸をダガーナイフで一突きにする。
永山朱鷺がこの世で最後に思ったのは、目の前に現れたマックス、この人、背が高いな・・・、ということだった。
マックスの強力な一撃で、ナイフは彼女の心臓へ達し、そのまま彼女を昇天させた。
永山朱鷺は、彼女の恋人・田中一也の死を知らないまま、彼の後を追ったのだった。
返り血を浴び、傷だらけの顔をより凄惨なものとしたマックスは、永山の胸からナイフを引き抜く。
自失の時が過ぎ、慌ててべレッタを向けようとした石山に向かって、そのまま切りかかる。
「うおおお・・・!」
「てめえ!よくも永山を!!」
ナイフは、石山の右手を掠め、思わずベレッタを取り落としてしまう。
「痛!」
再びマックスがナイフを振るう。そのまま、ベレッタを諦めて逃走する石山。
神社の奥、山の方へ向かって逃げる石山。
その後を、マックスは追っていく。石山の命もこれまでかと思われた時、
「うわっ」
悲鳴を上げ、突然、石山の姿がマックスの目の前から消えた。
足元には、崖が真っ暗な口を開けていた。
日没も近く、また森の中足元が見えてなかったようだ。
追跡は不可能のようだ。それに奴も死んだに違いない。
そう自分を納得させて、マックスは来た道を戻っていった。
********************************
とりあえず危険は去ったようだ。
崖から落ち、全身に痛みがあるが、幸い途中の草木がクッションになったようで致命傷は負わなかった。
真っ暗な森の中で、石山広明は座り込む。
(ちくしょう。どうしてこんなことに)
邪魔な田中を始末し、永山を自分の物にするつもりだったのが、わずか数時間で瓦解してしまった。
そして、彼女は永遠に手に入らない場所へ行ってしまったのだ。
(マックスの野郎、俺の永山をよくも・・・)
絶対に、許さない。
だが、武器を失い、奴にどうやって対抗すればいいんだ・・・。
(そうだ、田中の荷物がまだ残ってるかもしれない。奴の武器が使えれば・・・)
マックスに切られ血がにじむ右手を抑えながら、石山広明は、マックスへの怒りの炎を燃やしていた。
********************************
一方、石山を見失ったマックスも怒りに支配されていた。
ショーンは気に食わない奴だったが、たった一つ本当の事を言っていた。
かくも簡単に自分達の仲間、クラスメイトを殺害するとは、ジャパニーズって奴はやっぱりケダモノ、猿だ。
こんな連中を、ジャパニーズを一瞬でも信じた自分が愚かだった。
残された沢近と永山の荷物から、武器と水・食料をまとめ、マックスは立ち上がった。
自身のナイフ、石山のベレッタ、沢近の特殊警棒、そして永山の対人地雷と武器も揃った。ようやく、ショーンへの復讐への準備は整ったのだ。
だが、その前に。エリの仇を討たなければ。
「・・・ジャパニーズどもめ。きっと皆殺しにしてくれる」
********************************
全てが終わり、関係者がみな立ち去った後、彼女・塚本天満は鷹野神社に現れた。
クラスメイトに謝る為に、人里を目指していたはずだったが、何故か反対方向の山の方へと来てしまったのだ。
「・・・・おっかしいなあ。みんなどこにいるんだろう」
そうこうしているうちに、鷹野神社を見つける。
ここなら、誰かいるかもしれない。
そう思った天満の期待は、最悪の形で実現する事となった。
それを見つけたとき、最初はなんだか理解できなかった。
大きく広がった黒い髪。
地面に横たわる、赤く染まった金髪。
あれは・・・。まさか・・・。
見たくない、でも確かめないといけない。
そうやって、こわごわ近づく。それは変わり果てた、かつて沢近愛理と永山朱鷺と呼ばれていたものだった。
「・・・え、愛理ちゃん・・・。永山さん・・・」
そう、謝ろうと捜し求めたクラスメイト。
やっと見つけたクラスメイト・親友は、既に物言わぬ屍と化していた。
「・・・ど・・・どうして?どうして・・・愛理ちゃんが・・・。永山さんが・・・」
疑問と、涙が一気に溢れてくる。
そして、再び自責の念が湧き上がる。
私のせいだ・・・。
私が大切な友人達の命を奪ってしまった・・・。
神様はきっと、私を許したくないんだ・・・。そうとしか思えなっかた。
「私、一体、これからどうすれば・・・」
塚本天満の問いに、誰も答えない。
********************************
ウィリーからの報告を受け、ショーンは婚約者の死を知った。
「・・・買いかぶりすぎていたかな。彼女のことを。もう少し楽しませてくれると思ったが・・・」
心底、つまらなそうな表情でつぶやく。
だが、ウィリーが続けた報告を聞くと、再び喜色を浮かべた。
「・・・そうか・・・。マックスの奴が・・・。これでこのゲーム、面白くなるな・・・」
満足そうに、執事に向かってショーンはワインを持ってくる様に伝える。
彼女(沢近)は、ゲームの真の開幕にあたっての、魔王(マックス)を覚醒させる為の生贄だったのだ。
「彼らの前途に幸あれ」
そういうとショーンは、ゲームの成功を確信し血の色のワインで満たされたグラスを宙にかかげるのだった。
【午後6時少し前】
【塚本天満】
〔現在位置〕G-06 鷹野神社
〔状態〕健康。後悔。呆然。
〔道具〕支給品一式。武器不明。
〔行動方針〕これからどうしたらいいの?
【マックス・ホフマン】
〔現在位置〕G-06
〔状態〕健康。憎悪、怒り
〔道具〕支給品一式×3(沢近、永山分)。ダガーナイフ、べレッタM92F(残弾8+1,予備マガジン1)、スタンガン付き特殊警棒、小型対人地雷(永山武器)
〔行動方針〕エリを殺害した日本人全体に不信・日本人を皆殺しにする。ショーン達に復讐。
【石山広明】
〔現在位置〕F-06
〔状態〕右手にナイフによる怪我。崖から落ちて打撲・擦り傷・切り傷
〔道具〕支給品一式。武器なし
〔行動方針〕マックスへの復讐。隠した田中の荷物回収。
【沢近愛理:死亡】
【永山朱鷺:死亡】
――残り42人
最初予定では、沢近の遺体を見つけて泣いている所を、
戻ってきたマックスに訳もわからないうちに天満は殺される予定だったのですが、
主人公らしく生きて苦しんでもらおうと、こんな形に。
第1回放送前のヒロイン退場は、議論呼びそうだ・・・。
ちなみに私は、旗です。
荒れるな、間違いなく。荒れるほど人がいれば、の話だけど。
誤解フラグもぶっ潰しちゃったし、早朝にわざわざ投下って時点で確信犯だし、
誰も旗だと信じまいて。
やるなら中盤、もっと盛り上がってからだろ、常考
>>711 話に矛盾はないし、面白かったよ。
マックスの完全マーダー化や天満のこれからがとても楽しみだ。
沢近は残念だが、ロワなんだから死ぬときゃ死ぬさ。
>>712 乙です。
特に矛盾などはないと思いますが、とにかく壮絶ですね…
沢近の死体を発見したときに、天満は呆然するだけとは思えないので、そこは少し違和感がありました。
>>685 乙!
面白そうな支給品だ。てか稲葉、死亡フラグ立ったな……
クイズの件だけど、間違った時のペナルティは残した方がいいかも。
ただ、いきなり死ぬのは強力杉だから、罰ゲームみたいなのを放送時に発表するのはどうかな?
罰ゲームを守れなかったら、その時は首輪ボン!とか。
>>699 乙!
新・日本刀派に期待。
榛名可愛いよ榛名(;´д`)ハァハァ
>>711 乙。
うん、絶対荒れるな。
特に『私は旗です』発言が痛かった。
旗なら、沢近の誤解フラグをキャラごと潰すなんて考えられんし。
以前『個人的には、是非ともトドメを差したいキャラがいる』と言っていたが、あれは沢近の事かな。
残念だが、この作品を見る限り、貴方はアンチ沢近にしか思えない。
石山達の使い方次第では、沢近を追い詰める方法は幾らでもあっただろうに……
>>711の作品に関して、幾つか質問を追加。
・マックスが武器持ちの石山ではなく、丸腰風の永山を狙った理由は?
・石山がわざわざ永山の前で沢近の頭を潰した意図って何?
私個人的に見た意見なのだが
起承転結があるとしたら突然起から転にきたような感じだな……
客観的に見たらまぁ問題ないんだろうけどね……
要するに
「嫌いな沢近を殺してやったぜ!!
マックスも魔王になったし辻褄は合わせたから文句はないよな?」
こういう事か
普通こんなに飛んだ話を入れるなら「批判されるかも」って思うものなのに
自分から「賛」否両論って言う時点で確信犯だろ
やってることはほぼズガンだな。報復で八雲も殺されるだろうし、終わったな、こりゃ。
何回か見直したんだけど、やっぱあかんわ
死ぬ展開は悪くないと思う。なんだかんだ言って、これロワだし
でもズガンはないって普通
中盤くらいまで同行させて、沢近の仲間への想いを聞かせたり、手を貸して少し信用させたりすれば良かった
そこで殺せばマーダー化にも納得ができるのに
せっかく騎士っていう本編に無かった立ち位置で面白くなりそうだったんだ
どうせ目覚めさせるならサウザーみたく優しさを持たせた後に覚醒すれば良かったものを
もともと狂犬だったのに、それを大げさに「魔王が覚醒した」って煽っても正直大して変わんないんだから
マックスには知り合いがいないから、このまま改心せず修羅道は確定してドキドキ感がないし
ステルスならともかく虐殺マーダーは最後まで息が続きにくいものだし
誤解の輪がどう広がるかも消えたし
作者が個人的な沢近潰し以外に何を期待したのかがわからないんだけど
714さんへ>天満の行動については、そうですね遺体を埋葬するとかそういうのを付け加えましょうか?
そうこうしているうちに再び立ち上がる力を取り戻しそう。
716さんへ>&719さんへ>キャラが嫌いかどうか、言っても水掛論になるので、そこは議論はやめましょう。
好きなキャラ程悲惨にしたいっていうのは、本当の事なんですがね。
716さんへ>殺害したいキャラ3人の中の1人ですね(ちなみに全部女性キャラ)。
フラグに関しては、楽しみにしてた方には申し訳ないが、全てが成立する事もないわけで、フラグを折るという事を選択しただけです。
717さんへ>
質問1について:永山の方がマックスに近かったからというのが書いていた時の頭にあった情景。
頭に血が上ったマックスなら、武器の有無など目に入らないってのもありかなというのが少々。
質問2について:沢近の口を確実に塞ぐ為。永山の前でわざわざというのは石山の頭にはないです。
頭をしたのは、まあ表現上一番絵になるかな?っていうのもありますが。
>>155 >・安易なリストラはしない。殺すにしても見せ場を作る。
はっきり書いてあるのにな。嫌がらせ乙としか。
720さんへ>&721さんへ>
殺す時期が早いか、遅いかは個人の希望・考えもあるでしょうが、いわゆるズガンのつもりはないのだが。
721さんへ>
マックスマーダー確定とか、もうストーリーが完全に決まったみたいなものは早計かと。
改心させることすら可能ではないかと。
723さんへ>
リストラしたつもりはないんだけどなあ。
元々が、ラブコメなんで、常識的に進むと進行が遅くなりそうだから、
殺し合いを加速させる為の、仕掛けの1つという意味があるのは確か。
作中のパラダイムを変えたいくらいの意味。
そういう意味では、重要な転回点の死者という意味で、見せ場なんだけどな。
描写が下手って言われれば、そうかもしれないが。
沢近死なれるのはきついなあ。ちょっと厳しく見てみよう
・田中の死体
永山が銃声を聞かなかったくらいの距離にはあるんだろうし沢近に見つけることができるんだろうか
おそらく神社すぐ傍にある厠だろうし
・マックスのナイフ
支給品は手紙だけじゃないのか?複数ある人とない人がいるだろうけど
あの状態表からはもうないと読み取れたんだけど
天満も殺そうとしたとか頼むから勘弁してほしい
1stと同じ流れになってしまうし自身が立てた烏丸や東郷のフラグも台無しだし
天満に矛先が向くという面白くて危険な状態をあっさり消すのはあんまりだ
旗ですとか殺したいキャラがいるとかそういうことは表に出さないほうがいいと思う
ただ荒れるだけにしかならない
できればキャラを殺したいからじゃなくて皆が楽しめるロワ進行のために頑張ってくれないかね
まだまだ面白そうなキャラが何もしないまま死んで一気に順調だった進行が止まることだってある
播磨やつが通ったのだからこれも普通に通るっしょ
あと旗ですってのは余計だったと思う
>>725 死体見つけた件はブラフのように見えたが、読み返すとそうでもないようだな。
いずれにしても、わざわざ揺さぶりをかけた相手に背中向けて殺されるという
素晴らしい演出だった。
播磨の奴は犠牲者が岡だったし播磨も死んでないから戻せる。ぶっちゃけ岡が死んでも問題ない。ただ沢近だと話が違ってくる
人気キャラだし数少ない誤解フラグ楽しみにしてる人も多いはず
序盤での死亡は決して住人が多いとはいえないスクロワ2にとってはマイナスだと思うね
マックスにはそれほど強いバックボーンがあるわけじゃないからマーダーとしての魅力もハリーほどにはない
725さんへ>
1つ目。山中の神社だし、無人で厠なんかない、私は思ってた、それだけです。
だから、それなりの場所を探してたうちに奥に・・・。
2つ目。手紙が支給品とは思ってなかったので、武器がまだあると思っていた。
武器なしなら武器なしでも、後半の修正は可能。マックス・石山の心情はだいぶ変わりそうだが。
その方が、面白いかもしれない。
728さんへ>
そこら辺りは、頭の中の話を文字にする際の、描写不足ということかと。
もう少し追記するのは可能かと。
そうすると沢近はしばらく一人で行動してたことになるね
ちょっと描写が短すぎてそこまで時間経ってるとは思えなかった
それだけの間マックスは石山や永山とも離れて何してたんだってことになるが
馴れ合いはしなくても目の届く位置においておくでしょ
沢近の死をターニングポイントにしたいなら中盤以降にしたほうがよかったね
そのほうが沢近やマックスの描写に厚みができたはず
今死んでも強さだけで厄介なマーダーが一人できただけだと思う
どうしても取り下げるつもりはないようだけど
キャラ殺したいために物語書かれると凄く不安だ
いつかの烏丸と隣子があっさり殺された時の無念が今回以降もまだ続くのかと
>>730 ↑を見ればやり方は分かると思うけど、レスする時は安価した方が見やすいんで出来ればそうして欲しい。
そして
>>725の指摘を見て気付いたけど、やはりマックスがナイフを持ってるのはおかしいね。
前の話でマックスの状態表には支給品一式としか書いてないから、それ以外の物が出てくるのはまずい。
俺は播磨が一条をボコったあげくジャーマンで殺された時を思い出した
作者、必死だな
なんか可哀想になってきた
一言で言うとひたすら勿体無い!
駄目子の存在意義なくなったし、新しい書き手がこの展開で増えるか疑問だ…
一人の意見だけど、キャラをどんどん減らして早く完結してもらうより、面白いものが読みたいんだ
フラグ折りでは修正希望通らんだろ?
修正の要件って詰めてあるんだっけ?
ごめん他の作品の感想忘れてたホントすまん
>>685 稲葉らしくていいね、天満がアレになっちゃったんで明るいキャラを通して欲しい
他の人も言ってるけどデスノートみたいなものだから即死は確かにヤバイと思う
>>699 榛名もいいね、行動力があって一年組じゃ一番頼れそうだ
女のリーダーっていうのは新鮮だし期待
ごめん、俺も忘れてた。
711の作品のインパクトが強すぎて…正直、沢近の序盤の脱落はきつい。
>>699 乙です。
かなりいいと思います。榛名がいい味だしてるよ。
しばらく議論が続きそうだな。
フラグ折りでは修正にならんからこそ
不評なので我を通すより空気読んで取り下げて欲しいのだが
なかなか書き手空気嫁ってのは難しそうだな
ちょっとルール見直してきたけど議論になるのはこのへんか?
住民のルール
・過去の作品を物理的な矛盾以外で蒸し返すような事はやめましょう。
書き手のルール
・ルールを悪用しないでください(明らかな矛盾等はないが無意味な大量殺害の連発等)
作品のルール、設定(本スレのローカル・ルール)
・前回までの作品に対する矛盾などがないか確認しましょう。
キャラの位置、性格や言動、時間等は特に気を付けましょう。また、ストーリーを壊すような投稿はやめましょう。
・前回の作品に対し辻褄が合わない作品はNG・修正対象です
(時間軸がおかしい、居場所が違いすぎる、移動速度が速すぎる、死んだはずの人物が生きている等)
※ちょっとした心変わり、フラグ折りは修正理由にはなりません。
・安易なリストラはしない。殺すにしても見せ場を作る。
個人的にはここで沢近が死ぬのは寂しいと思う
ロワのリアリティを追求するのなら誰がいつ死んでもおかしくないけど
あくまで娯楽だから終盤にメインキャラがいないとつまらん
まあこれは俺がメイン陣が好きだからだけど
ただ客観的には細かい修正があれば問題ない作品かと
あとすでに書き上げた作品に空気読めは厳しいだろ
前回みたいにそういう空気が出来上がってればまた話は別だと思うけど
結局のところ、書き手サイドの悪意が透けて見えるかどうかがボーダーラインだと思う。
たとえ悪意があったとしても、最低限の見せ場が描かれていれば、みんな認めざるを得ない。
逆に悪意がなかったとしても、それがなければ読み手側は拒否反応を示す。
無論、今回の書き手には悪意があったんだとは思うけど。
私は旗です、とか余計な一言のせいで
どうも裏に何か悪意があるんじゃないかと仕方ない
惜しい、残念という人が多いように沢近の格を考えるとモブじゃないんだからちと安易なリストラもいいとこだと思う
誰がいつ死んでもおかしくない=誰を何時殺してもいい
ってわけじゃない。そもそもスクロワは単一だし他のロワとイコールじゃない。物語の面白さを要求したいから自分は撤回して欲しいな
こんなに読み手がいたのか、ちょっと安心したw
正直書き手の方が多いんじゃないかと
なんか凄いことになってる。
もう何がなんだか。
とりあえず、作者が一人一人にレス返すのは悪手だと思う。
ルール的に問題ないのは分かってるんだし、結局の所
皆が言ってんのは「沢近をここで殺すのは惜しい」という漠然としたもの。
そんなのはちまちま言い負かされてもどうなるもんでもないし、
自分の意見を否定されたという悪感情が残るだけ。
>>744 >>723 作者がまじめに書いて殺してるならいいんだけど、見え透いてるからな。
本家の三村とか、中盤で死んでるけど誰も扱いがひどいとか言わない。
もったいないという意見はあっても。
今回のはあからさまに荒らし目的だからなあ。
とりあえず修正版準備完了。
投下は再度読み直してから。とりあえず今日は寝るわ。
これは駄目みたいだね…
>>747が二度と目覚めないことを祈るほかないな。
すげえ笑えるw
とりあえず、◆HQrLOwPbgAが今回の話を引っ込めるまで、他の書き手さんには投下を控えてほしい。
現状のままで次に投下した人は、◆HQrLOwPbgAの共犯扱いされてしまうだろうし。
ただ、どっちにしてもこの企画はどうも厳しそうだな。小林尽級のKYに粘着されたらどうにもならん。
>>749 違うな。
本当の意味で『目覚めて』くれる事を期待した方が建設的だ。
前回の東郷の話は誰も文句言わなかったんだぜ?
ただ、否定的な意見は聞き入れにくくなる部分が不味い。相当不味い。
香織登場話で「石山の事はノータッチ?」と指摘した住民が居たよな。
あの時、修正が結構おざなりだった上に、いきなりメッシュをズガンしてたのを見て『あ、これはヤバいかも』と感じたんだ。
で、今の状況だ。
我を通せば、確かに今回の話は通る。
だが、もう彼の酉はここの住民の大半から支持を失うだろうな。
GEI氏の二の舞いだ。
一応、書き手からの意見だ。
もし仮に今回パスしても、奴にはあと2人悲惨に殺したい女キャラがいるんだぞ
やっぱ殺したいっていうほどだからメインキャラだろうし
しかも空気読めないのが今のではっきりわかったし
文章も微妙、まともな話なんか東郷のやつくらいじゃないか
簡単に想像できる
盛り上がったところもしくは伏線を消化する前にズガンされるメインキャラ
殺すだけ殺して気が済んで、何も言わずに消えていく
>>747 そしてメインキャラが消えて面白みが無くなるこのロワ
修正版では沢近が死なないとかはないのかな。
>もし仮に今回パスしても、奴にはあと2人悲惨に殺したい女キャラがいるんだぞ
第1回の放送の前にいなくなったりなんてことは…。
「スクールランブルバトルロワイアル」で久しぶりに検索したら……
随分と懐かしいことやってるな。
書き手の人は鳥だしたらどうかね
遅れましたが感想と意見を少々
>>◆cj4OQi4css氏
お疲れ様です。クイズとはまた面白い展開になってきました。大人組や頭脳キャラに期待できますね。
外れたときの首輪爆発に少々修正意見が出てるようなので、その点だけ一考お願いします
>>◆q8.UJLtEPY氏
こちらもお疲れ様です。榛名は頼もしくていいですね。さすが東郷の妹。
特に修正意見は挙がってない様なのでこのまま収録させていただこうかと思います
>>◆HQrLOwPbgA氏
ひとまずお疲れ様です。修正版をお待ちしております
とはいえうーんどうしましょうか・・
◆HQrLOwPbgA氏の話で絶対修正が必要なのはマックスのナイフくらいですね
そこさえ修正されればルール上では没にすることはできません。
天満については今回で呆然、行動(埋葬その他)は次の話で描写してもOKかと。
↓↓以下眠い頭で考えたこと
ただ今回の話は見た限り大半の住人の皆様に色々受け入れられていないので今後を考えると不安ではあります。
こういう言い方は問題があって、楽しみにされている方に失礼かもしれませんが、
極めて人が多いロワというわけではないので、今回の話をきっかけに過疎・・というのは避けたいところです。
カウンタ見てると最近は人も増えてきてせっかくいい流れになってきているので。
自分としても本音を言えば沢近が死ぬには早過ぎると感じています。
正直なところ、まとめ人という立場上禁句かもしれませんが
スクロワ2を支えてくれている人達の多くが不満があるのに本当通していいんだろうか?と悩んでます。
まとめがルール守らなくてどうする!というのももちろんありますが。
今回の話が通って似たような事例がまた起きたら・・最悪ルール悪用とみなしてでも・・と考え中です
◆HQrLOwPbgA氏も、特定派閥やキャラの好み・ロワの趣向等、作品とあまり関係ない発言は
他の人と衝突する要素になるので余計な争いを避けるためにできれば控えていただけると幸いです。
特定の誰かを殺すためにという自らの動機のためもいいと思いますが、
できればそこに他の人達も満足できる要素を加えた話の両立を目指していただけると有難いです。
多忙と思われる中での頻度の高い投下をいつも感謝しています。
多くの未登場キャラを投下して下さり、おかげさまで思った以上の速さで2周目に突入できました。
面白い要素を持った支給品の用途をあれこれ考えています。
とてもとても支えられていると実感していますが、今回の話は中々容易に決定できず難しいところです
>>757 書き手本人から頼まれれば一応バラす予定。
リスクは高いけどね……
『この作品は、書き手も否定的だよ』って事実だけでも知って欲しかったんだ。
書き手が居ないと成り立たないのは事実。
けど、名無しの意見だって立派な意見。
どちらが欠けてもロワは成功しないんだし、出来れば通すのを控えて(犠牲にして)欲しい。
ここで没にしても、タイミング次第では好きなキャラを退場させるチャンスはあるんだし。
そういや中村達も涙目だな
「沢近?もう死んでるよ」
なぁ俺も今度からさ
好きなキャラが死んだらまだこいつはここで退場するようなキャラじゃない!とかこいつが消えるのは寂しいとか何とか言って批判していい?
そしたら俺のキャラ殺されずにすむかな。悪いけど全然修正の理由になってないし、信者がアンチ扱いして騒ぎたててるよいうにしか見えないわ
普通に面白いし、こんなの書き手しだいでまだ十分面白く出来る範囲内だろ。
『メインキャラは終盤まで殺害禁止』ってテンプレに入れたらどうだ?
スクロワにピッタリだろ?
まぁ、ぶっちゃけて言ってしまうとだな。
空気読めない書き手が序盤から参加してる時点でこのロワは詰み。
>>762 信者って旗という事か?少なくとも自分は違うけどな
あと書き手だって仕事で書いている訳じゃないんだから。
ここから面白い展開が見えるなら貴方が書き手に加わるべきだ
人気キャラが死んだ場合、騒げばNGに出来る…………これはまさに某ジャンロワと同じレベル!
そこまで落ちぶれていいのか?!
つ【基本ルール】
『よそはよそ、うちはうちです。他のパロロワと比べて〜といった意見はやめましょう』
まぁ、ある程度議論は出尽した……かな。
悪意を持った書き手が存在しないという前提じゃないとこういう企画は成り立たないからな。
今回はその前提が崩れてるわけだから。
今回の嫌がらせを通すにせよ消すにせよ、禍根を残すことになりそうだ。
【基本ルール】
『自分の気に入らない展開と言う理由で書き手を批判するのはやめましょう』
だそうですよ。
つーか今までの流れをしっかり読めばいいのに
誰も「好きなキャラが死んだから認めない!!」なんて言ってないだろ(心の中では思っている人もいるだろうが)
これはロワなんだから好きなキャラが死ぬことについて、皆少なからず覚悟はできてるんだ
それを面白そうなフラグ潰されて残されたのはつまらないフラグで
しかも明確な悪意を持って殺されたから皆怒ってるんじゃないか
ズガンが悪い事とは言わないが、ズガンされることによって際立つ何かが欲しいってのは贅沢なんだろうか
組み立てたトランプを一気に崩すみたいな
さすがに文句言ってる人達をキャラ厨扱いしてるバカは荒らしだろ
通っても取り下げられても、もう投下後に普通に乙ってレスがつく雰囲気じゃなくなるなら寂しいな…
これが仮に取り下げられたら、普通にこれで面白いと思う人達が「旗厨乙」とか「沢近で騒いでこの展開はいいのかよ」と言うのが目に浮かぶし。
通ったら通ったで…orz
ザコキャラならすんなり通ったんだろうがな
次からキャラごとにランクでも付けて重要度をアピールしとけ
774 :
Classical名無しさん:08/09/12 13:40 ID:dV5MGu.w
メインキャラの沢近さんがあっさり逝ったのに驚いたけど
冷静に考えればアニロワやギャルゲロワは主人公でも序盤であっさり逝くから別にいいや。
>>774 そっちのは、主人公キャラが「何人も」いるし、単一作品のロワじゃないから、
なんらかの作品の主人公級が何の役割も持っていない序盤においてなら、他の参加者に与える影響も小さいからズガンされても問題は無いんだがな。
単一作品において、面白そうなフラグを内包している主人公級キャラがなんの役割を果たさぬままズガン、てのは流石に構成としてドヘタと言わざるをえない。
特に今回、黒幕がショーンだからな。
前回は、黒幕が曖昧であったから沢近の扱いがどうであろうと話はいくらでも組めたんだが、
ショーンを出してきた時点で物語の構成上沢近家+沢近が、最後まで生き残らないとしてもある程度の役割を担わなきゃいけなくなったわけだ。
つまり、悪いのは「今回の話」か「序盤の話し合い」のどちらかだろう、
と昨日このスレを見つけた俺が言ってみる。
>>759 とりあえずさ。
>>155の
>・安易なリストラはしない。殺すにしても見せ場を作る。
この規定に乗っ取って
>>710の作品は破棄(或いはボツネタコーナー行き)。
これでいいじゃん。
これ以上長くこの議論を続けていても、他の書き手の執意欲を損なうだけだ。
>>776 訂正
×執意欲を損なうだけだ。
○執筆意欲を損なうだけだ。
なんか無理やり破棄させようとしてる奴いるな
何と言われようとそういう奴はかぎってキャラ厨にしか見えないっての
キャラ厨どうのじゃなくて、普通にこの展開は寂しいと思う。
でも、通さなかったときは、後で人気キャラが死んだときにこの話を比較に出す人がでてきそうだし…。
>>776 最終的に破棄だとしてもその前に修正だ
それにこの作品の破棄を決める権利は書き手の◆HQrLOwPbgA氏以外にはないだろ
俺もこの展開は寂しいしもっとやりようがあるだろとは思うがそれとこれとは話が別
ここまで来ると通っても通らなくても禍根が残りそうだな
>>780 >それにこの作品の破棄を決める権利は書き手の◆HQrLOwPbgA氏以外にはないだろ
その規定はどうだろ?
実際の編集の現場は担当の編集に何回もボツにされて泣き寝入りしている作家がごろごろいるんだぞ。
事実、この作品はまとめを始めにして、多くの読み手から批判意見が沢山出ているのが現状でしょ。
だからこれ以上、スレッドが荒れる前に沢山の読み手から批判意見が続出するような作品は問答無用で破棄。
或いは修正依頼を出すとか、そういう感じにした方がいい。
書き手一人が良い作品だと思っていても、沢山の読み手に認められない限り、本当に良い作品というモノは作れないんだよ。
第一、そういう独りよがりに滅茶苦茶なストーリー展開を続けていって、最終的に全読者から見放された漫画家をここの住人が一番よく知っていると思うけどね。
てか寂しいなんて理由で通そうとしてりゃ当然、比較されるに決まってんだろ
破棄しようとしてる連中はキャラ厨じゃないなんて言ってる割にずっと沢近の死の事だけにしか触れてないんだよ
そりゃキャラ厨の疑いかけられるわ。なんだかんだで一番空気読めてないのって読んでる側だろ
>>782 ×沢近の死
○色々見所があり、尚且つまだ見せ場を貰ってないキャラの死
……まぁ、メインとモブの扱いに差がある、と考えるのも無理はないけど。
修正版をしたらばに投下しました。
この形で問題無いかどうか、判断お願いします。
>>784 修正乙です。
すぐに死んでしまうよりも、ペナルティという形のほうがいいですね。話は問題ないと思いますよ。
>>782 言いたいことはよく分かる
ルールは守る為にあり、そこにキャラ人気は関係ないってことも分かってる
けどなぁ…そういう考えを利用してるとしか思えないんだわ、今回の作者の場合
あとキャラ厨はあんまり関係ないんじゃないかな
例えば、今回同じ作者がいきなり「マーダーにズガンされる隣子の話」を書いたとしても十分荒れたと思う
フラグ折りやがって、って感じで
それはない
ないない
ズガンの定義ってけっこう曖昧な感じ
「殺したいキャラ」云々言った時点であの作者は信用失ってる。
通すにしても破棄にしても、今後も書いていくのなら次からトリップ変えて欲しい。
でないと純粋に作品を楽しめなくなりそうだ。
シャクだが、負けを認めるしかないかもな。
今回の話を通せばそれを免罪符にして次々とメインキャラを虐殺することができるし、
蹴ればキャラが死ぬたびに今回の件を持ち出して荒らすことができる。
うまい手を考えたもんだ。
(注)以下、一応穏当な表現を心がけましたが、聖人でないわが身ですんで、
多少愚痴とか嫌味とか入ってるかもしれませんが気にしないで下さい。
そんなに深刻なものではないんで、(私に聞こえないように心の中で)笑い飛ばしてくれればいいですから。
色々と腹の立つ、納得いかないこともありますが、
一応、この議論はこれで終わりにしたいので、結論を。
今回の話、及び予約そのもの含め全て破棄としますよ。
廃棄の理由は、例えるなら、売れない商品は意味がない。
それだけですね。
それから用意した修正版はどうするか考えます。
没に入れてもらう為に、修正掲示板に投下するかどうか。
ここだけははっきりさせておくけど、
悪意があるとか、荒らすとか、そういう気は一切無いので。
本当に、この企画がちゃんと続いていく事を望んでいますよ。
もちろん、56 ◆rJXTlJ7j/U他の方に迷惑かけるのは本意ではないので。
ただ、こんなにも反応が激しいものなんだ?というのが、正直な感想ですね。
多少は感情的反発は、あるかなくらいだったんだが・・・。
SS書くのもはじめてなら、2chに書き込みするのも初めてだったし。
トリップの事も最初わからなかったし。現在も返事の仕方わかんないし(こういう奴ね・・
>>900)。
(定期的に読んでいるという板も無かった。ごくまれに世間で話題になったとか、検索とかでひっかかった時に見てたくらい。
前回のスクロワは最終盤にちょっと見てたくらい。他のロワは知らない)、
だから自分では大した発言を書いたつもりもないのに、こんなにも広がるんだなって素直に関心した。
いい勉強になったって考えますよ。
ただ、皆さん。もうちょっと穏当な表現を考えましょうね。
ほんのちょっぴり傷心の私からのお願い(笑)
はい、という訳で、雰囲気を元に戻しましょう。
以上。
おつかれさまです
客観的に見れば本当に問題のない作品だけに
こういう結果になったのは非情に残念です
ただ書き手は発言を本当に慎重に行った方がいいですよ
特にロワ自体がある意味危険物ですので痛くもない腹を探られることがあります
貴方のこれまでの貢献とこれからへの個人的な期待を込めて
あらためて乙です
>>791 やはりSS経験どころか2ch経験自体浅かったか…
あなたの一連の書き込みには明らかに不適切な内容がいくつかあった理由が分かった気がした。
とりあえず1stの過去ログを読むとか、他のロワやSSスレを読んでみるなど、
他の人が、特に書き手が2chでどのように書き込みをしているか勉強してみては?
どういった書き方が好印象をもてるか、或いは荒れてしまうかが掴めるかも知れない。
書き手はSSを書く機械ではないのでもちろん個性を出すのはいいと思うが、それも良し悪しがある。
どういった言動が大勢の人にどう受け止められるか、その辺の想像力を身に付け言葉を選ぶスキルは大切だよ。
もちろん、自分の書こうとしているSSが今後のリレーにどう影響するかを考えるのも大切だけど。
そういうのを身に付ける為にも、ROMってみるのは結構おすすめ。
あと、SSを破棄するのもまた勇気がいる行動だ。
辛い決断だっただろうけど、SSを書く事やリレーに慣れてくれば、きっとこの苦い経験も活かせるようになるはず。
しばらくは凹むだろうけど、がんばってほしい。
とりあえずケリはついたか。しかし、謝罪の一言もなく、捨て台詞だけかよw
破棄してくれたのはいいが、元の雰囲気に戻すとか至難の業だぞ、これ……。
もうダメかも知れんね。せっかく細々とやってきたのに。
>>794 いや、もう十分だよ。
2ch初心者だったんだし悔しさもあっただろうに、悪意がない事を説明してくれた
>>794 いちいち蒸し返して雰囲気悪くするのもどうかと思うぞ?
俺としては、彼は粗削りな部分もあるが充分貴重な戦力だと思ってる。
特に、東郷や結城の話などは続きを考えるのが楽しみだし。
確かに、彼が第二のGEI氏になるか、はたまたCb.氏のようにロワで急成長した書き手になるかはまだ分からん。
けど、俺は期待したいな。
>>◆HQrLOwPbgA氏
この度は一斉の負担をかけることになりすいませんでした。
修正版については投下して頂ければ番外編に収録させて頂きます。
>>住人の皆さんへ
◆HQrLOwPbgA氏の決断によりもう決着がついたことなので引きずり続けるのはいいことだと思えません
氏の発言や心境も住人として考えておくべき点があるかと
やたら今後を悲観したり不必要にこの件を続けようとする方のほうがマイナスになります
榛名の話までを収録しました。地図は明日以降更新になると思います
スクロワUはスクランが終了の後だから穏便に行くと思ったが
みんなまだまだ熱いね。
>>791 お疲れ様でした……
書き手として色々と辛いかもしれませんが、引き続き期待しています。
>>797 毎度ながら手早い更新、感謝します。
スレ内の空気を考えると、タイミングが微妙かもしれませんが……
花井・サラ・今鳥を予約します。
空気を変えるには丁度いいけど
いま一人でも殺すと波乱が……
死ぬワケないじゃん!
序盤で死んでいいのはモブだけだよ
>>799 雑音は気にせず頑張ってくれ
期待してます
新人さんかな?頑張って欲しい。余計な連中は無視
ぐっは鳥付け間違えてたあぁぁぁ
一生の不覚……orz
腫れ物に触るならそれなりの反応と責任を取る覚悟がなきゃいかんよ
最後に捨て台詞を残すなんて甘いとしか言いようがないな
>>804 ど ん ま い !
ところで参加者のジャージの色って、アニメ三学期では男子:青、女子:赤だったけど同じでいいのかな
いつまでも引っ張ってるここの連中を見るかぎり結局沢近を生かして欲しかっただけか
もういいじゃん
これ以上引っ張るなよ
やはり初代スクロワを超えるのは難しかったか
ここまとめスレあるっけ?
>>809 まだ、始ったばかりだし、それは終わってから言うべきことでは
構うな
どさくさに紛れていつまでも引っ張って終わらせようとしてる奴がいるから
タイトル
【オンナとオトコとオトコとオンナ】
「ね、ねぇキミ? ……なにをするつもりなの?」
「……」
「ねぇっ! ねえったら!?」
奈良に手を引かれながら、姉ヶ崎は山中をわけもわからないまま歩いていた。
殺されると思ったら、手で引き上げられ立たされて、何もわからないまま、歩くこと約10分。
何が起こっているのか姉ヶ崎にはわからなかったし、自分から状況を推理しようという冷静さを持ち合わせてもいなかった。
「殺さないでくれるの? ……それとも、別の場所で殺すの?」
返事はない。
「……なんでさっきから何も言わないの? ねぇ、キミ?」
返事は、ない。
「ねぇ、ねえったら……」
不安と恐怖で、涙が流れ姉ヶ崎の視界を奪っていた。
もう、これ以上歩けない。
ヘナヘナと、姉ヶ崎はその場に座り込む。
グイグイと、手が引っ張られている感覚はあるのだが、駄目だった。
「お願いだから、ねぇ、何か言って……」
そう言って姉ヶ崎は、涙で歪んだ視界の中ではっきりとは見えない奈良の顔をのぞき見る。
「ねぇ、お願い……」
殺さないよ、と。
そう言ってほしい。
そうとさえ言ってくれれば、たとえそれが嘘だとしても、自分は立ち直れるかもしれない。
ハリオの“あんな姿”を見た後でも、それでも……
わずかな期待を込めて見上げた奈良の口が、微かに動き、そして……
「……たたないし」
期待ハズれなモノを見るような、そんな目をした男が吐き出した言葉に、姉ヶ崎は恐怖した。
自分を棄てた男たちも、自分のもとから去る前に、こんな目をしていた。
思い通りにならない女を、棄てる時の冷酷な瞳。
今の状況で棄てられるということは、すなわち、殺されるということだ。
「……ふぇっ、えっ」
大声で泣いてしまいたかった。泣いてすがりたかった。
でも、いままでそうしたことで、自分を棄てずにいてくれた男がいただろうか?
泣いている自分に、手を差し伸べてくれた男がいただろうか?
――ハリオ。
あの可愛い年下のオトコノコも、今はもう変わってしまった。
泣いてすがっても、慰めてくれる男なんていやしない。
姉ヶ崎はフラフラと立ち上がり、奈良に引かれるままにまた歩き出した。
絶望と恐怖を抱いたまま、何も考えられずに。
※ ※ ※ ※ ※
――どうしよう。……どうしよう。
姉ヶ崎の手を引きながら、奈良は混乱する頭で今の事態をどう収拾するか悩んでいた。
リアルAV展開をこの手にっ!
と意気込んだまではいい。
こんなところじゃアレだから、近くにあるという無学寺まで姉ヶ崎を連れて行こうとしたのはいい。
――だけど……どうするの、これから?
小市民、奈良健太郎は、心の底から困っていた。
姉ヶ崎の手を引きながら、どうすれば長生きできるか、どうすれば姉ヶ崎と一緒に「楽しい時間」を過ごせるのかと考えていたが、これがどうにも八方塞がりなのだ。
無学寺に行ったとして、そこで安全が確保できるのか?
答えは“NO”だ。
むしろ、地図にも書いてあるくらいの建物なのだから、人が集まってくる可能性もあるだろう。
無学寺でお楽しみの最中に、後ろからぐっさり、なんてことも考えられる。
じゃあ、山の中に隠れていた方がいいのか?
そう思い、周囲に視線を巡らせた奈良の目に入ってきたのは、一面の緑。
茂みの向こうには、何も見えない。
もしも、飛び道具を持った人がこっそり近づいてきたら?
お楽しみ中の自分の頭がボンッ! なんてことも考えられる。
――ならば……どうすればいい?
――このままじゃ……
正しい答えなんて出るはずもない。
けれど、奈良は考え続けていた。
小市民として生きてきた彼だからこそ、考え続けることができた。
奈良健太郎には、播磨のような動物的直観はないし、奈良健太郎は花井のように直情的でもない。
奈良健太郎は高野のように冷静沈着に状況判断を下すことはできないし、奈良健太郎は東郷のように自らの危険を顧みない行動はとらない。
奈良健太郎は、どうしようもないほど小市民なのだ。
考え、悩み続けることしかできないからこそ、こんな状況でも頭を回転させることができていた。
もっとも、それが正しい答えを導き出すことにつながるワケではないけれど。
急に姉ヶ崎を引く手が重くなったような気がして後ろを振り返ると、姉ヶ崎は座り込んでいた。
泣きじゃくり、何かをつぶやいているのだが、涙と鼻水をすすりあげる音と相まってよく聞き取ることはできない。
そんな姉ヶ崎を見ていると、徐々に自分のしようとしていることに対する罪悪感も膨れ上がってくる。
何度もヌいたシチュエーションである、学園脅迫モノのAVも、レイプモノも、保健室で保健の先生が保体の授業(レッスン)を、的なAVも、
所詮はAVなのだ。
つくりものであり、
それを見ることに、
それでヌくことに、
虚しさはあっても罪悪感はない。
だが、目の前のこれはリアルなのだ。自分はこれから、彼女の命を脅迫材料として、童貞からの脱却と、束の間の快楽を味わおうとしている。
これは、罪ではないのか?
法律的な罪ではなく、人としての罪。
男の子の仕事ってのは、泣いている女の子を慰めることであって、女の子を泣かすことではないんじゃないか?
それにだ、
そんな倫理的な問題よりなにより、目の前で実際に泣きじゃくる美人女保険医の、着衣が乱れた艶かしい姿を見ていても、奈良のムスコは……
「……勃たないし」
これは死と隣り合わせの現状が原因なのか、それともシチュエーションが原因なのか。
そういえば、女教師モノのAVではちょっと女王様入った女優から攻めたてられるシチュの方が好きだったな、などと考えつつ、奈良は急に立ち上がった姉ヶ崎の手を引きながら再び歩き始める。
とりあえず色々と考えたが、向かう場所は無学寺で変わりない。
役に立つ道具なんかも、探すことができるかもしれないから。
人が集まるかもという危険性はあるが、それでも、周囲の見通しが悪い山の中で震えているよりはましだろう。
――でも、もっといい手はないのかな?
――もっと、安全な、もっと……
奈良健太郎は考える。
姉ヶ崎の言葉が、何も聞こえてこないほどに真剣に。
お互い会話を交わさぬまま、彼らは無学寺へ着実に近付いていた。
※ ※ ※ ※ ※
「ねぇ、播磨くん? ……ドコいくつもりなの?」
「……」
「ねぇっ! ねぇったらっ!?」
ズンズンと前を行く播磨を追いながら、砺波順子はその背中に声をかけ続けていた。
播磨が2つの武器に加え、荷物を2つ持った状態でなければとっくに置いていかれていたかもしれない。
播磨がククリナイフで邪魔な草木を斬り開きながら歩いているのも順子の追跡を容易にしていた。
ただ、それでも。
こんなに近くで追跡しているのにも関わらず、順子は播磨が遠くにいるような気がしてならなかった。
だからだろうか。
最初はなんとなく追っていた播磨の背中だったが、いつの間にかムキになって追っていた。
鼻息も荒く、傍から見たらすねた子供を追いかける母親のようでもあった。
「どこいくんですかー播磨くん? そっちにはなにもありませんよーっ!?」
「……わかってんなら、ついてくるなよ」
後ろを振り向かないまま、播磨が小声で答える。
「あっ! ……ほぅらぁーしゃべれるんじゃんっ! なんでさっきから無視するのかなー播磨くんっ」
「……」
「……おーい」
黙々と歩を進める播磨の背中を、溜息をつきながら追い続ける。
かれこれ、30分くらいになるだろうか。
無学寺からは、ドンドン遠ざかっていた。
向かっているのは南。
初めは播磨も無学寺に留まろうとしていたのだが、自分に順子がついて離れないということを悟った途端、急に歩き出したのだ。
ちょっと東によればちゃんとした道があるのに、わざわざ林の中を突っ切るように歩いているのは自分を諦めさせるためだろうと、順子は薄々、というかむしろはっきりと感じ取っていた。
湧き上がった感情は、苛立ち。
なんで自分から離れようとするのか。
なにが不満なのか。
なんでそんなに、ムキになっているのか。
播磨に対する疑問符が頭のなかに浮かびつつ、それに答えを出さない播磨に憤りを感じつつ、順子は口をヘの字に曲げて歩き続けていた。
「私だって、さびしーんだぞ」
思わず、心の中の感情が理性などのフィルターを通さずに口に出てくる。
背中ばかり見せられて、播磨拳児という人がそれ以上見えてこない。
それを見てどうするのか、と聞かれても答えようがないけれど、でも、今はそれを見たいのだからしょうがない。
なぜだろう、と順子は考える。
播磨を信頼しているわけでもない。現に、播磨はつい30分前に自分を殺そうとした男だ。
普通なら、今の無防備な彼の背中を撃ち抜くのが正しい選択だろう。
そうすれば、自分の身の安全はしばらく確保できる。少しでも、生き残る可能性が出てくる。
播磨拳児という男が何を考えているのかなんて、知る必要はない。
ないはずなのに。
順子は、それを探っていた。知りたいと、思ってしまった。
だから、播磨が「自由にしろ」と言った時、彼についていく道を選んだのだ。
自分にその道を選ばせたものの正体は、わからなかった。
播磨の態度以上に、自分のわけの分からない心の中身が、順子を苛立たせていた。
「私、泣いちゃうぞー。いいのかなー播磨くん。女の子を泣かすなんて、キミ、男の風上にもおけない人だよー」
そういうと、播磨は初めてその場に立ち止まり、振り向きざまに89式小銃の銃口を順子に向けた。
「うるせーな。……何でついて来るんだよ。これ以上俺の邪魔をするなら、コイツを使うことになるぞ」
「あっ……」
思わず、順子は一歩後ずさる。
頭に思い浮かんだのは、ついさっき自分が殺した岡の、頭が吹き飛ぶ光景だった。
目の前の銃が火を噴けば、自分の頭は岡の様に吹っ飛び、あとに残るのは見るも無残な死体だけ。
なんの感動的なシーンも無く、瞬間的に、自分の命は刈り取られるだろう。
そんな恐怖が、順子の足を一歩後退させた――けれど、
「わかったら、とっととどっか行けよ」
順子はその一歩で踏みとどまり、
「……?」
そして、そのまま播磨との間の数メートルの距離を小走りで詰めながら自分の腰に手を伸ばし、
「ちょっと、お前なにを……」
取り出したUSPを播磨の眉間に押し当てて、堂々と学校一の不良に対峙する。
「……何してんのか、わかってるのかよ」
冷たい口調でそう言い放つ播磨に対して、順子は引き下がりはしなかった。
「わかってるよ、播磨くん。でもね、私、絶対に負けない」
「何の勝負なんだよ」
「わかんない……けど」
怒りと困惑が半々の播磨の顔を見上げながらも、順子は自分の意思を貫き通す。
「ここで播磨くんを見捨てて、別れたら、なんか一生後悔しそうで。……そしたら、なんか負けのような気がして」
「見捨て……つーか、一生って……お前、えーと、あの、かなりの確率で一生ってのは後3日もねぇんだからさ……」
「そっ、そーかもしんないけどっ!」
混乱する頭の中で、けれど順子は必死で考えをまとめて言葉に成そうとしていた。
「でもね、なんだかね、播磨くんについていってみたいんだよっ! もしかしたら、あと数時間で私は死んじゃうのかもしれないけど、でもね、それでもっ」
こんな状況で、頭も運動神経も器量も並レベルの自分が長く生き残るなんて至難の技だろうけれど。
冷静に状況判断をしていけば、もっとほかにやるべきことというものを導き出すことが出来るのかもしれないけれど。
「お前、ちょっと落ち着いて……」
「私はっ!」
もう、明らかに困惑しか浮かべていない播磨の顔を見つめながら、順子はまくし立てる。
「……私は、播磨くんが『自由にしろ』って言ったから、だから、キミについてきたんだよ?
この状況でさ、『自由にしろ』って言われたって、そんなの、卑怯だよ。
それはさ、私に対して何の興味もないってことでしょ? そんなの……寂しいじゃん。すごくっ!」
気付けば、順子は泣いていた。
悲しかったわけではない。けれど、悔しかったのかもしれない。
苛立ちをぶちまけるしかなかった自分の弱さになのか、別の何かに対してなのか、それはわからなかったけれど。
順子の目からは涙が流れていた。そして順子は、それを止めようとは思わなかった。
ただ、何となくこのままでは負けな気がして、それだけはどうしても嫌で、憎まれ口が溢れ出る。
「それになにさっ! 銃なんか突きつけて……。殺さないって言ったクセにっ!
アレは嘘? 男のクセに? 男に二言はないんじゃないの? それとも自分が言ったことをもう忘れたのっ?
……だったら馬鹿だよ播磨くんはっ! もう、前から薄々、てゆーかだいぶ思ってたけど、播磨くんは大馬鹿だっ!」
――なんかもう、めちゃくちゃだ。
出てくる涙と鼻水を止める術をもたず、順子はただひたすらに「馬鹿」と言い続けた。
播磨に対してなのか、自分に対してなのか、それすらはっきりとしないまま、順子はそう言い続けるしかなかった。
これほどまでに溢れ出る感情を、いままでに持ったことがなくて。
この感情の名前を、思い出すことができなくて。
順子は、ひたすらに「馬鹿」と泣き続けていた。
そうすることで、何かを誤魔化せる気がして。
※ ※ ※ ※ ※
――どうすればいい? ……どうすれば。
目の前で泣いている少女をどう扱うべきか、播磨拳児は悩んでいた。
普通に考えれば、置いて行くのがいい。
誰に襲われるかわからないこの状況で、大声で泣くような少女を手元に置いておくわけにはいかない。
最初はばっちり眉間に合わせられていたUSPの照準も、今は泣きじゃくる彼女の手の中であちらこちらを行ったり来たりの状態だ。
逃げることもできるし、実際、永久に黙らせるコトだってできる。
それなのに、だ。
「ぶあぁぁ……かぁ。ばぁ、くわあぁぁぁぁぁ……」
「……ったく」
引き金を引くことはできなかった。
女だから、というわけではない。
塚本天満は別として、その他の見知らぬ女相手ならなんの感情も持たずに殺せるだろうと、そう予測していた。
実際、いま目の前で泣いている少女だって、先ほどの不測の事態がなければ今頃ククリナイフの錆になっているはずだったのだ。
それなのに、である。
そんなどうでもない女のために、自分の足は止まっている。
なにかをしてやれないかと、そんなことまで考えている。
彼女の言葉は支離滅裂で、なにを言っているのかわからなかったし、それを理解するだけの余裕もなかった。
けれど、一つだけわかることはある。
彼女を追い込んだのは、自分だ。
それだけが、播磨が唯一確信を持って言える事であった。
「女を泣かせる趣味はねぇんだよ俺は……」
そんな男は屑にも劣ると、絃子が言っていたことを思い出す。
その言葉に同意するかは別として、実際問題、播磨は目の前の状況に心底困り果てていた。
言葉どおり、女が自分のせいで泣いている姿というのはあまり気分のいいもんじゃないし、それに、
「……ダブるじゃねーかよ」
怒ったり、泣いたり、罵ったり、また泣いたり。
感情がコロコロと変化する順子を見てるうちに、思い出すのは天満のことだった。
女ってのは皆こうなんだろうか、と思うほどに、順子と天満の姿が播磨の中で重なっていく。
別人なのはわかっている。けれど、一度そう思ってしまうとそれを完全に無視することなどできはしない。
こんな自分は馬鹿なんじゃないかとも思う。
――まぁ、でも、しょうがねぇ。
溜息をつきながら、心の中で呟く。
播磨拳児は馬鹿なのだから。それはもう、自他共に認めるほどに。
気付けば、播磨は89式小銃をジャージの間にはさみ、空いた手で順子の手を掴んでいた。
「まったく、なにやってんだか俺もお前も……」
「……ふぇっ?」
泣き顔のままの順子の手を引き上げ、立ち上がらせてからジャージの袖で順子の涙と鼻水をふき取りながら、播磨は自分の滑稽さに笑うしかなかった。
「もー、いいや。俺の負けだ。……ついてきてもいいぜ。ただし、邪魔するようなら置いてくけどな」
「えっ……!?」
涙を溜めたままの瞳を驚きで丸くしながら見つめる順子の顔に天満をダブらせながら、播磨はいつの間にか地面に落ちていたUSPを拾い上げて順子に渡す。
「俺はこれから、他の奴らを殺しにいく。……それでもついてくるってんなら、俺はもう止めねぇよ」
この島から天満を生きて助け出すには、もうそれしかないから。
だから自分は天満以外の全てを殺さなくてはいけない。それを邪魔しない限りは、この目の前の女を生かしておいても構わないだろう。
明らかに矛盾している論理を無理やりに肯定しながら、播磨は進むしかなかった。
進んで進んで、その先に答えがあることを期待するしかなかった。
「どうした? 来ないなら、やっぱり置いてくぞ」
ボケッと播磨を見上げるだけの順子に、播磨は問いかける。
すると順子は慌てたように涙をふき取り、手に持ったUSPをジャージの間に挟みこんで、
「い、いくっ! 行きますっ! そう決めたんだからっ!」
ところどころ鼻声でそう答えてしゃんと背筋を伸ばし、しっかりと播磨の目をにらみ返した。
鼻水をすすりり上げながらもそう宣言した順子に少しだけ安心し、播磨は南へと再び歩き出す。
無学寺からはだいぶ離れてしまった。
また戻るのもあまり芸が無い。だったら、このまま一気に南へと下り、氷川村を目指してみるのもいいかもしれない。
村に行けば色々と役立つ道具があるかもしれないし、なにより、近くにある診療所ならば薬なども見つけられる可能性がある。
怪我をした際に、消毒液や痛み止めがあるかないかではずんぶんと事情が違ってくる。そう考えると、早い時期にそこを目指さない理由はないだろう。
「今から、氷川村にむかうからな。お前、歩くのに疲れたらいつでも別行動とっていーぞ」
「ぜ、絶対に離れませんからねーだっ! それに、私には“お前”じゃないくて砺波順子って名前があるのっ。播磨くん、覚えてないでしょっ!」
背後から聞こえる怒りの声に、そういやそんな名前の女が隣の席にいたことがあったよーな気が、と思った播磨だったが、こんな顔だったかと記憶の中を探る前にめんどくさくなって諦めた。
「あー、はいはい。じゃあ、砺波。無理せずいつでも棄権していいから、とりあえず、ついてこいよ」
「……それ、何言ってるか意味不明なんだけど」
この状況のが意味不明だろ、と思いつつ、播磨は黙って歩き続ける。
ただし、今度は後ろの気配を気にしながら。
ちゃんと彼女がついてこれるように、茂みをナイフで切り開きながら、こころなしか歩を緩めて。
何時終わるかもわからない奇妙な男女の行進は、とりあえず、始まったばかりだ。
午後3時〜4時】
【奈良健太郎】
〔現在位置〕F-8 無学寺近辺
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式、草刈用の鎌
〔行動方針〕奈良ブレイク計画発動。目指せ和姦で脱童貞。
【姉ヶ崎妙】
〔現在位置〕F-8 無学寺近辺
〔状態〕無気力&パニック状態。
〔道具〕なし(奈良から逃げる時、全て置き忘れてます)
〔行動方針〕死にたくない
【播磨 拳児】
〔現在位置〕G-8
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式 食料・水は2人分(岡から回収したもの)、ククリナイフ、89式小銃(29/30)
〔行動方針〕天満以外の奴を全滅させる(今のところ順子は殺せない)
【砺波 順子】
〔現在位置〕G-8
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式、USP(15/15+1)
〔行動方針〕意地でも播磨についていく。襲ってくる人がいるなら容赦しない。
ま、まさかの大御所降臨キタ―――(゚∀゚)―――!!!
超乙でした!!
乙です!
…何、この一人遊びを出来のいい兄に見られた的な感じ!
高野晶は、鍵を手に入れた。地図を手に入れた。次に行うべきイベントが判った。
(ゲームならファンファーレと共に訪れるイベントね)
手の中にある物を見つめながら、そんな事を考える。
窓の外の風景が、昼から夕暮れへと変わるすこし前。
ようやく診療所のベッドから身を起こし、現実へと戻ってきた高野晶。
(ベッドはまあこんなものでしょうけど、枕はいただけなかったわ・・・)
そんな事を考えながら、寝る前に悪者扱いしたリックサックを取り上げる。
中身をチェックして出てきたもの、それがジャラジャラと音のする鍵の束。
そしてもう一つ、全員に配られているものとは、別の地図。
所どころに番号が振られ、説明が書かれている。例えば、@診療所のガレージA平瀬村廃校倉庫B・・・
(診療所?)
思ってもいなかった展開に、周囲を警戒しながら、診療所のドアを開ける。
目の前に広がる海が太陽光を反射し、思わず目を細める。
春の海を横目に見ながら、診療所の横に回る。
目的の場所は直ぐに見つかった。
診療所の横に立つ色あせたガレージ。
「・・・ここね」
シャッターを上げようとするが、ガタガタゆれるだけで開かない。
やはり、鍵を使うしかないようだ・・・。
鍵束の中から、それらしいものを選び鍵穴に突っ込む。・・・・入らない・・・。
「・・・これは私に対する挑戦ね・・・」
幾本かの試行錯誤の末、ガレージを開けることに成功する。
ガタガタと音を立てて、シャッターを持ち上げる。薄暗い建屋の中に真っ赤なオープンカーが鎮座している。
(笹倉先生なら、喜んで飛びつきそうね・・・)
とりあえず運転席に回ってみる。キーは付いてない。
(確か・・・)
手の中の鍵束の中にある車のキーらしきものを選び出す。
(これか・・・)
当たりである。だが、動かない。ガソリンが空のようだ。
(そういえば、先ほどの地図に・・・)
この地図によると、次は平瀬村へ向かえとあり、明記されていないが、そこに車を動かす為に必要なもの・ガソリンがあるというのだろう。
ただ、本当にガソリンがあったとしても、それを抱えて、ここまで戻ってくるのは大変なことになりそうだが・・・。
(本当に、お使いRPGみたいね・・・。じゃあ、彼らはこの世界の神?それとも勇者に倒される魔王かしら?)
どちらにせよ、彼らのシナリオでは勇者は最後に敗北する事になっているのだろうが。
ふと、地図を見て気が付く。5箇所のマークの最後の場所、Dにはこう書かれている。
−−−釜石小中学校・本部動力センター。
もちろん、そこは禁止区域の中。だがここを潰せれば彼らの計画が頓挫する可能性が高い。そういうことだろう。
或いは、そう思わせて勇者パーティを誘き寄せる為の罠。本命は別にあるのかもしれない。
どちらにしろ、主催者はこの私に安っぽいゲームの主人公・伝説の勇者たれと言っているようだ。
(ガラじゃないわ)
そう思い首を振る。
第一、こんな本当かどうか判らない地図だけを頼りにするのは危険だ。そもそもA〜Cにガソリンがあるとも限らない。
思わせぶりなクズ・アイテムが出てくるだけかもしれないのだ。
では、代わりに何をすべきだろうか。
積極的に自分で成したい事が咄嗟に出てこない。
高野晶の生き方は誰かのシナリオ通りに動くことより、自分のシナリオで他人を動かす方を志向している。
そういう意味で今の状況は、彼女にとって相当不本意な状況であるのは確かである。
今の状況で、何をする事が一番面白そうなのか?再度考える。
こんな時にも、面白いかどうかを判断基準にする辺りに高野晶の偽悪的な性を見ることができるかもしれない。
そんな中、彼らに一杯食わせる事、特にあの美形の主催者の表情が崩れる様を見てみたいという、あまり上品とはいえない欲望が頭をもたげる。
となると、この殺し合いを潰す、少なくとも彼らの望む終わり方にはしない、という事になるのだろう。
だが、自分達は両手・両足を縛られ、目隠しと耳栓をされた状態で、相手は五体満足な人間、その状況で殴り合いをしろ、というハンデがある。
もう少し、ハンデを軽減する事ができないだろうか?
再度、手元の地図を見る。とりあえずは、このゲームに乗ってみるのも悪くないかもしれない。
恐らく彼らが、こういうものを準備したのは、反抗の希望があると我々に抱かせるためだろう。
絶望というのは、希望が無い中よりも、わずかな希望が潰れた時の方が深い。恐らくその瞬間を見たい。その一心で。
また、反抗する人間をイチイチ掃討するよりも組織化させて、一網打尽にする方が効率がいい。そういう目的もあるのかもしれない。
ならば、いきなりこちらの意思を挫くようなアイテムが出てくるという事もないだろう。
少なくとも、これなら行けると我々に錯覚させるに足るものを用意してあるに違いない。
業腹だが、現状でこちらのやれる事は、シナリオに乗ったと見せて、シナリオ自体を書き換える。それしかないだろう。
彼らの思惑を超えることができるかどうかは、我々プレイヤーの力量に掛かっているが、やってみて損はない。
情報とアイテムと、仲間、そして・・・一分の相手のスキにかける・・・。
決して分がいい、ギャンブルでは無いが。
(まあ、状況が変われば、方針を変更すればいいし、それに、殺し合いをするよりも、こっちのゲームをした方がまだマシね)
そう考えるとガレージに再び鍵をかけ、出発の準備をする。
(地図の場所を巡り、アイテムの確認をしながら、まずは伝説の勇者を探す事かしら。RPGにはパーティが必要ね)
とりあえずは、つまらないシナリオ通りの動きを行う事になるが、その全面に立つ勇者には、やはり自分はなれない。
それは、彼女自身の性向そのものが、そんな自分のあり方を否定するからだ。
自分は、陰で勇者を操る黒幕、そんな役回りこそふさわしい。
そして、その結果として、美味しい所を掻っ攫っていくのだ。
用意されたシナリオとは言え、その中でどうやって自分なりに楽しむか?
正義感馬鹿やお人良しのクラスメイト達の顔を思い浮かべつつ、誰にどの役を振るか考えながら歩き出す高野晶であった。
【時刻:午後4〜5時】
【高野 晶】
〔現在位置〕I−07
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式、鍵の束(直接関係ない鍵も含まれてます)、5箇所のマークの入ったクエスト地図
〔行動方針〕とりあえず彼らのRPGシナリオに乗ってみる。ショーンの間抜け顔を見てみたい
(備考)地図のBCの場所はご自由に。又、車の車種もご自由に。
@とりあえずリハビリ第1作の投下
A問題の廃棄作品の第3版(再修正版)を、修正掲示板に投下。
マックスの武器がなくなったので、永山が生き残り、その関係で天満の出番がオミットされました。
>>835 乙!
なんつーか……タフだなあんたw
高野ならではの行動方針も中々Good。
廃棄作品も、意気込みは充分伝わった。
ただ……欲を言えば、もう少し時間を取って投下した方が良かったかも。
直前の書き手が感想を貰う前に投下するってのは、少々失礼に当たるし。
まぁ、その辺の明文化されてない部分は徐々に学んでくれると有難い。
>>827 GJ!
これで播磨の頭の中が少しずつ分かりやすくなったかな
2組の泣いてる女とそれに対する男の対比も面白い
>>835 GJ!
本当にタフだな、その姿勢見習いたい
高野もすごいらしいし、アイテムが鍵ってのも斬新でこれからが楽しみだ
>>827 乙でした。妙ちゃんが心配で心配でたまりません。奈良は・・
播磨と砺波の関係がいいですね。ちょっとずつ矛盾に気付いてきたのもいい感じ。
実は同組で話を書いてたのですが・・ということで多分通ると思うので播磨・砺波・ララを予約します
>>835 お疲れ様です。相変わらず支給品が面白いですね。高野の行動もらしいと感じました。
修正版のほうも番外編に合わせて収録させて頂きます。
ふざけんなー!!
沢近を序盤で殺すなんてアホだろ
やりなおせー!!
断固はんたーい
>>827 乙です 播磨がいい感じに育ってきたな。これからの播磨の行動に期待
>>835 高野もいい感じだ ガソリンは燃料のほかに武器としても使えるから運用が難しそうだ
しかし播磨ここらへんでどうにかしないと・・妄想の世界に従ってホントに八雲や絃子さえ殺すつもりなんだろうか
結構、軌道修正できていると思うよ
最初の話がアレ過ぎたから今はこれが精一杯じゃない?
話が進むにつれてどうにかなると思う
まあ、展開によってはマーダー一直線もありだとは思う
純粋に疑問なんだけど、特別な地図やら鍵やらを使って手に入れさせるってことは
主催側の心理としてそれは一種のスペシャルアイテムってことだよな?
……ってことは逆に言えば、この島の住民達が所持していたであろう車やガソリンは
既に撤去されているということになるのだろうか?
実際、@のポイントで空の車見たらA〜Cで期待するのはガソリン。
でもガソリンは実はその辺の民家にもありますよ、じゃ「シナリオ」的に興醒めなわけだし。
多分、傍目には判らないよう隠してるんだと思う。
ルールによれば『家庭用プロパンガスは撤去されている』そうだし、廃車以外の車やガソリンが見当たらないとしても不思議じゃない。
あっても不思議ではない。だが確実にあるのはA〜Cとか……
それに車は何も乗るためだけに使えるわけではないからね
農作業用の道具とか農薬、肥料 下手すれば忘れ去られている猟銃だってあってもおかしくはない のか?
>>827 乙です。
播磨の今後に期待。
>>835 乙です。
また面白い支給品ですね。いろいろありましたが、これからの作品にも期待しています。
隠すくらいなら、禁止エリアの学校に持ってっちゃった方が自然かな。
ロワの原作や1stじゃ普通に放置されてたから、あれっと思った。
一応テンプレに何か加えといて欲しいかも。
隣子がウザ可愛いです。
高野姐さん、おっかないよ。
さすがに猟銃はないと思います。農作業具くらいはあるかもしれませんね。
ガソリンについても他の車にあってもまあおかしくないかと。古かったり不純物が混じってても知りませんが。
そしてシナリオ的にあれですが。
では投下します。
【His daughter is a hero, too】
もはやナイフを振るう必要はなかった。播磨が砺波の同行を許してから暫く南下すると彼の視線に開けた大地が目に入る。
何となく、ただ無駄に体力を消費するのが嫌だからだとわざわざ言い訳をして彼は砺波をそちらに誘導した。
「あ〜ズボンが草だらけ。けっこうあちこち引っかいてるなあ」
「植物ってのも意外と馬鹿にできねえぞ」
何十という種類の植物で埋められた足場の悪いところから一転して草原に出る。
周囲のよく見える丘の途中で二人は暫く座り込んで休憩した。
「お前、友達とかいねーの?そいつら探さなくていいのかよ」
「私は今はいいよ、どうせどこにいるかわからないもん。播磨君こそいいの?」
俺はちゃんと探してるっつーの、と答えて播磨は罰が悪そうに項垂れた。もちろん塚本天満を探すアテなどない。
氷川村に行こうというのも彼女を悪から助け出すための準備を整えるのに都合がいいからに過ぎない。
もっと具体的な目標があれば地球の裏側でも駆けていくに違いないのだが。
「さっきの男みてーな奴に襲われてたりしてな」
「多分大丈夫だよ。皆いい人だから……岡君が多分例外なんだと思う」
皆、という単語を聞いて播磨は数える程度しかいない――だが無視することはできない彼らのことを考える。
シナリオ通りなら烏丸は絶対悪で花井は奴の手下のはずだ。周防、高野は自分を頼るしかないただの無力な村人だ。
沢近は……存在しない。いや、偉そうな女王で自分に褒章を与えるとか言って無視されて赤っ恥かかされる役目がいい。
エロメガネや梅津、奈良のような背景同然の連中が祝福する中で自分達は――
そう、自分と塚本天満は結ばれ「塚本さんの妹とか刑部先生もいるんだよね」れRerrるるrwwrr
「ちょっと待て」
いつの間にかルールブックを開いて読んでいた砺波のそれを強引に奪い取り、凝視する。
『ねえ播磨君は後輩の子とか先生でお友達っている?私は全然』と続いた砺波の声は耳に入らない。
「……2-Cだけじゃねえの?」
「?何言ってるの?あの留学生の人が言ってたじゃん」
そういえば手錠がいつの間にか外れていたが、確か塚本八雲とはつながった状態で眠ったはずだ。
刑部絃子も確か歩行祭の進行役だと言っていたような……既に妄想の世界にトリップしていたから気付かなかったが
よくよく考えると目覚めた先では彼女の声も聞いた気がした。
「播磨君?もしもーし?」
「……いくぜ。休憩は終わりだ。疲れたならそのまま休んでて構わねえぞ」
ルールブックを放り投げ無理矢理話を打ち切って、早足で播磨は動き出す。
後ろからは砺波が慌てて荷物をまとめて駆け寄ってくる足音、少し荒い息遣いがしたがほとんど耳に入らない。
(やばいやばいやばいやばいやばいやばい。妹さんに絃子だと?葉子さんやお姉さんの名前まであるじゃねーか)
シナリオと違う、という意味不明の呟きをする播磨を砺波は不思議そうに眺めていた。
「オーイ!そこのオマエタチ!」
「考え事の最中だ、静かにしろ砺波」
「……はいあっち。私じゃないよ」
何やらうんうん唸りつつ足元だけを見ていた播磨。そんな彼をあきれ気味に観察している砺波。
そんな二人に空気を押しつぶすような巨大な声が叩きつけられる。
片手で大きなスーツケースを抱えたままでララ・ゴンザレスがまるで警戒せずに近寄ってきた。
そして播磨からの何ともいえない、ピリピリした威圧感のようなものを感じて砺波は何となく彼の考えが分かり数メートル後ろに下がる。
「ハリマと……誰ダ?まあイイ。イチジョーやサツキを知らないカ?」
どすんとスーツケースを地面に立たせて通せんぼするように立ちはだかるララ。
ふるふると揃って播磨も砺波も首を振る。砺波だよ、と『誰ダ』と言われた本人が付け加えてもまるで相手にしてもらえなかった。
「ララ。お前こそ塚本を知らねえか?」
こんどはララがフルフルと首を振る。そーかよ、と一言述べて会話を切る播磨。
塚本という単語が出てきたことに砺波だけが驚いたのか二人と違った反応を示していた。
「残念ダ。そうだハリマ。パンを一つくれないか?腹が減ってしまったんダ」
「……ああいいぜ。ちょっと待ってな」
ララの目の前で堂々とリュックの中に手を入れる播磨。あの中には確か先ほどまで芝刈りに使っていたあれが――と砺波は思う。
「ほらよ俺のパン一つやるよ」
「Gracias、ハリマ!」
ララにコロッケパンを一つ手渡しながら播磨はもう一度手をリュックに入れてララの背後に回った。
ビリッとパンの袋が破れる音。無言でククリナイフを取り出す。砺波はそれを見ているはずだが何も言わない。
(……とにかく、これでいい……これでいいはずだ。ここは俺の思い通りになる世界のはず……妹さんや絃子がいたって)
食べている間は隙だらけだ。あとは――
「ごちそうさまデシタ!」
(はええよ!噛んでねえ、呑んだだろ!)
播磨がそう思ったのは今まさに凶器をララの頭上に振り下ろさんとする時だった。
振り向いたララの純粋な視線と自分のサングラス越しのそれが交じり合う。
「!っ「フンッ!」」
迷いのまま逆に不意をつかれた形になった播磨の腕よりも、ララの野生のほうが一際早かった。
歩行祭にて沢近愛理に蹴られたソコに、彼女より遥かに強烈なパワーを持つララのそれが突き刺さる。
「くぁwせdrftgy!!」
こと弱所を突くことに関してララは容赦がなかった。
うずくまる播磨の頭を掴んで引き寄せ、そのままこめかみに膝を叩き込む。
更にとどめとばかりに再度同じ箇所に頭突きを加えた。
意識が飛び立った播磨の手に握ったナイフも懐にしまっていた小銃もごろりと転がり落ちてしまう。
「え?あ、播磨君!」
(失敗だ、殺されちゃう!)
一瞬の攻防の後にようやく砺波は状況を理解して武器を握る。
USPの焦点も定まらないまま、播磨に当たる可能性を考えないまま無我夢中でトリガーを引いた。
砺波の心は既に岡を殺したときのそれに戻っている。自分が殺して、播磨が助かる。敵は――
シネ。
――!――!――!
三発の銃弾が放たれる。
一発はララにも播磨にも当たることなく通り過ぎ、二人の遥か後方へ。
次の一発は更に的をはずれ、高く澄みきった大空と流れ行く雲の中へ。
最後の一発はやや低い弾道ながらも真っ直ぐララ目掛けて――彼女のトランクケースに当たり、火花を立てて跳ね返った。
(えっえっ外れた?弾かれた!?一体何でできてるの?)
「コラァ!」
銃弾を弾いた恐るべき盾をララは掴み、そのまま砺波に投げつける。やはり容赦なく全力で。
危険だ、ということだけ何とか理解した砺波は目を瞑って身を投げ出すように地面に伏せる。
頭の上を何かが通り過ぎてすぐ後ろに落ちる音がした。それだけで全身に滝のような汗がぶわっとあふれ出てくる。
このまま眠って全てをやり過ごしたい衝動に駆られて中々目を開くことができない。
だがそんな現実逃避は近くにやってきたララの足音、
そして無理矢理頭を掴まれて持ち上げられることにより儚く消える。
「いたたたた!痛い痛い痛い!許して、ごめんなさい!」
「これハ、預かっておくゾ!」
唯一の武器も奪われて砺波は完全な丸腰状態になる。あとはこのまま絞め殺されるだけだと
真っ暗になったところで彼女はふっと身が軽くなった。一瞬後にどすんと重力を感じて着地したことを知る。
「痛た……あ、あれ?」
「何でこんなことをしたんダ?」
「……だって、播磨君が殺されそうに」
泣きが入り、枯れ落ちそうな声で、しかし播磨の部分だけはしっかりと発音して砺波は答える。
「私ハ誰も殺さナイ。ハリマだってちょっとKOしただけダ」
「え……播磨君!」
額が痛むのか手でさすっているララの視線の先には、まだぴくぴくと痙攣している播磨の姿。
それを見て砺波は急いで駆け寄る。どこにそんな元気が残っていたのかは砺波本人にもわからない。
播磨がちゃんと息をしていることに安堵して、全身からすっと力が抜けていく。
先程の殺意も緊張も死への恐怖もたちどころに失われていった。
ふと振り向くと、いつの間にか投げたはずの防弾を兼ねているらしいスーツケースを持っているララがいる。
彼女は自分と播磨の武器を中に入れてそれとは別の何かを取り出して差し出した。
「サイン色紙……?」
「さっきのヤツにもそれヲ。じゃ、危険だから武器は貰っていくゾ」
そうして再び風のように去っていくララ。たった今の戦いも何のその、まるで疲れを感じさせない俊足でみるみるうちに小さくなっていく。
強引ながらも堂々としていて勇敢で強く逞しく、戦いとなればその姿は烈火の如く。
だが相手の命は奪わない。相手への恨みも憤怒も何もない。
まるで自分とは違う輝きを持つララ。ああはなれないな、という羨む思いでその姿を見送る。
砺波にはそのサイン色紙がヒーローが去り間際に残していく唯一の自己アピールのように感じられた。
「えーと何て読むんだろうこれ」
播磨が目覚めるまでの間、砺波は特にやることもなく上下左右を逆にして悪戦苦闘するのだった。
■ ■ ■ ■ ■ ■
「う……」
「播磨君大丈夫?どこも悪くない?」
播磨が何やら呟いて目覚めた頃、ララの姿は完全に見えなくなっていた。
何とか上体を起こそうと砺波が踏ん張る声がする。
「あいつは?」
「うん。行っちゃったよ。武器は全部とられちゃった」
「……そうか。ん?何だその色紙」
砺波が持つサイン色紙。それが役舎丸広事のものだと播磨は一目で看過し、無言のまま見つめ続けた。
(……いつだったか、没落して妻子を養うために悪代官の用心棒になった凄腕の元武士の話があったな)
数多く覚えている万石の物語のうちの一つを播磨は思い出していた。
金銭に困った武士は元君主の殺害を命じられる。だが手にかける前に万石に完敗。
だが万石は彼の妻子を見捨てるようなことはしなかった。黒幕まで打ち倒し彼とその家族に金銭を与え自由にしたのである。
そして武士が感謝しようと探しても既に万石はその場から姿を消していたのである。
自分は万石のようなヒーローに憧れていて、今も尊敬しているはずだった。
(俺は万石でなくて武士のほうだったんだな)
幾重にも重なった、濃い霧のヴェールがかかった頭がすっと冴えていく。
悪い夢を見ていて現実に引き戻されたような……否、実際に自分は夢を見ていたのだ。
「夢を見てたぜ。今みたいに俺達2-Cがどこかわけのわからんとこに飛ばされてな。
俺は最初そこが俺の夢描いた世界だと思ってた。やがて真の愛の印、オーパーツを求めて大海原に漕ぎ出すのよ」
「わけがわからないよ播磨君」
くすりと笑いながらも砺波は自分の話に耳を傾けてくれている。そして話しやすいように頭と地面の間にリュックをはさんでくれた。
「その夢は嵐の海で鮫との戦いで終わって、目が覚めたら見知らぬ島。ナイフもあった。俺は夢が現実になったと喜んだ。
だって目覚めたら殺し合いしろなんて夢だって思うだろ?自分の夢なら何してもいいって思うだろ?」
……だからさっきの男やお前を殺そうとした、と低い声で続ける。砺波は女の子がお姫様になる夢を見るようなものかとふと思った。
「でもお前に妹さんや絃子もいるって知らされてあれ?と思って……さっきララに気絶させられて
俺はまたその夢の続きを見たんだ。いろいろあってオーパーツは見つけたんだがよ、
……結局色々あってそこは俺の望んだ世界じゃなかったんだ。それどころか間違えてお嬢に告白しちまうし。
その後落ち込んでるところを妹さんに励まされて一緒に漫画を描くのよ」
「ふうん。そうだったんだ」
お嬢とか妹さんとか言われてもいまいちわからない砺波。まあ多分お嬢は沢近さんのことで妹さんというのは
塚本天満の妹である塚本八雲なのだろうと思った。塚本……播磨君がさっき聞いたのも塚本。
それはおいておいても、これで先ほどから播磨の様子がおかしかった理由がなんとなくわかる。
「もしかして播磨君、今まで夢が現実……ファンタジーかメルヘンと思ってたの?」
「……ああ」
「ぷっ……あはははははははは!何それすごく面白ーい冗談!」
「うるせええええ!俺だっておかしいなとか少ーし思ってたわい!」
二人は一通り笑い続けた。どうしようもなくおかしくなって、腹の底から思い切り声を出す。
砺波がまだ幼さの残った白い顔を思いっきり変形させる度に播磨は戸惑いと羞恥を覚えて大声で叫ぶ。
誰もいない草原での馬鹿馬鹿しい行為はしばらく続いた。
■ ■ ■ ■ ■
「ララは北に行ったんだよな」
「?うん。あっちの山のほうに……北西かな?行っちゃったよ」
サンキュ、という短い単語を最後に播磨は無言で歩き出した。その足は明らかに氷川村を向いていない。
いくらなんでも方向を勘違いしているということはないと思い砺波は黙って播磨の後をついていった。
そして日が傾いて空が橙に染まりかける頃、足元は既に柔らかい草花から硬く張った木の根や幹、藪の多い道へと姿を変えていた。
「お前一人で氷川村行ってもいいぜ。もうナイフもないからな」
「ここまで来てそれを言うの?だから、そーはいきませんよーっだ」
いーっと舌を出す様子を確認して播磨はため息と共に苦笑いをする。
どうせ塚本天満の具体的な場所は分からない。手がかりがつかめればそっちを優先するのは当然だが、今はあいにくそれがない。
ならばどこへ行っても彼女を探すことと矛盾しない。ではどうするかといえば――何となくララに一言告げたい。
外見は似ても似つかないが万石のようなヒーロー。作中では武士は礼を言えなかったが自分はそうはなりたくない。
傷薬も悪くはないのだが恩返しのほうがまだ気分がよかった。
「ねえねえさっきの夢の話だけど……播磨君が見た夢なんだよね?でも播磨君の世界じゃない。ってことは誰のだったのかな?」
「もーいいだろ知らねえよそんなこと。秘密だぜ、誰にも言うな」
播磨はこのことを口止めをしてそれ以上のことに答えなかった。
もうこれ以上無責任なことは言えない。考えるのは絃子あたりがやればいい。それより他にやるべきこともある気がする。
現実を認めるのは辛いが矛盾した考えを持ったまま歩くよりいい。その証拠に何だか身体が軽くなった気がする。
(あ〜あ。けどどうする?結局は一人しか生きられないんだぜ……天満ちゃんだけは何が何でも守らねえといけねえけどよ)
漫画のアシスタント、恐ろしい大家、恩人。頭の中のヒロイックファンタジーは少々描き直す必要がありそうだった。
もちろん第一目標は変わらないのだが。そしてクラスメイト達もまあよくよく考えると死なれたら寝覚めが悪い。
皆殺しは最後の手段としてともかく今は没ネームとしておこう。
全くプロの漫画家は辛いものだ、と播磨はサングラスをかけ直して現実を一歩一歩踏み出していた。
(播磨君……)
短い間で変わってしまった。黙々とララの後を追うように歩いていく播磨。
殺すと言って殺さなかったり、南に行くといって北を目指したり、夢を現実と勘違いしてましたとか。
目の前の人がよく分からなくなりつつある。胸の中の不安が少しずつ形を成していく。
(あれ?私播磨君に変わって欲しくないと思ってる?)
ヒーローのような彼女……ララと会う。それって大事なの?それとも追いかけて殺すの?
塚本というのがどちらかわからないけどそれって好きな人?それとも憎い人?
現実だからってそれで何か変わるの?誰も殺さなくなっちゃうの?
私だけに気を配ってくれていたんじゃないのかな?岡君はあのまま放っておいていいのかな?
疑問ばかりを束ねながらも砺波は黙って播磨についていく。
双眸に宿りつつある冷たい意志は誰にも悟られることはない。
足元の枯れ木を踏み潰す音が妙に大きく聞こえた気がした。
【午後4時〜5時】
【ララ・ゴンザレス】
〔現在位置〕F-07
〔状態〕健康(空腹)
〔道具〕支給品一式(食料なし、水は残り1本)、ガラクタが多数入った大型防弾スーツケース(ククリナイフ、89式小銃(29/30)、USP(12/15+1)入り)
〔行動方針〕食料確保。イチ・ジョーなど知り合いを探す。殺し合いがあったら止める
【播磨 拳児】
〔現在位置〕F-07
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式 食料・水は2人分(岡から回収したもの。食料一つ消費)
〔行動方針〕天満探し再開。ララにもできれば会いたい
〔備考〕正気に戻りました。天満以外全滅計画は保留です
【砺波 順子】
〔現在位置〕F-07
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式
〔行動方針〕とにかく播磨についていく。襲ってくる人がいるなら容赦しない
〔備考〕塚本……?播磨君……
マーダー不足が懸念されてるのにこういう話はどうなの?と思いつつ
前から言われていた播磨の軌道修正を試みて見ました。あれ?砺波が・・
問題点等の指摘をお願いします
GJ 播磨気づくの早かったな まぁいいけど
隣子もいい感じにロワの毒に……
しかしここで武器を失ったのは痛いな
遠距離の小銃、中距離のUSP、近距離のククリナイフと野生のカン
あれ? ララが今マーダー化すれば最強じゃね?
でもさらに播磨砺波組に期待が持てるようになった
GJ
ララァはカッコいいな
播磨は岡の死についてどう思ってるのだろう?
いずれ播磨が砺波にnice boatされそうだw
播磨も正気になったし、
高野・イトコ・花井・東郷のリーダー・ボスクラスが手を組み、他を統括していけば
今回はクラスの主力は脱出などで結束できそうだ。
あとはスクランおなじみの誤解さえなければ・・・。
無理か。
誤解での死者がどこまで減らせるか?が勝負だな。
あと、ガソリンは別に外にあるでもいいでない?
ガソリンが隠してあるというのは明記されてないし。
車も放置してあるでも。
ただ、倉庫の奴を除けばそれなりの知識を持つ人間が修理しないと動かないくらいにしておけば。
続き、放置車は少なくとも鍵はないだろうし、良くは知らないが壊れて無くても直結しないと動かせない。
少なくとも知識のない一般人は無理。
隠してあるのって、ガソリンじゃなくて放置車両からガソリンを移す為の道具(ポンプとかタンクとか良くわからんけど)かもしれないよ。
とりあえずここまでの話を収録しました。
地図は後日反映させる予定です
播磨まわりの展開がはえーな
大御所がうまく軌道修正してくれたんだから、もうちょっとこのままでも良かったかも
ファイナルブローで東郷たちとまとめて倒されたララが播磨にガチで勝てるのはちょっと意外
まあ、面白い話ではあるけど
遅くなりましたが、投下します。
【馬鹿と自己中と頑固者】
「ん……?」
菅原神社を出発して、およそ一時間弱。
同じ道ならば高低差の少ない方を――と考えて海岸沿いを北上していた今鳥が、遥か向こう側を歩く一組の生徒を視界に捉える。
距離にして数百メートル。 向こうはまだこちらに気付いていないらしい。
ほんの微かに声が聞こえるが、距離を考えれば相当大きな声で叫んでいるようだ。 喧嘩でもしているのだろうか?
「おいおい、あれじゃ誰かに狙われたら一発じゃねーか……アホかあいつら?」
自分だって碌に警戒などしていない癖に、そこはしっかりと棚に上げる今鳥。
どこまでもマイペースで、自分勝手な男である。
「だーかーら、先輩は歩くの早過ぎなんです!」
「えーい、少しは我慢したまえ! 本当なら、走ってでも先を急ぎたいんだ」
「ちょっとは乙女の体力のことも考えて下さい!」
「うぬぬ……そうこうしている内にも、八雲くんの身が危険に晒されて……」
「そりゃ、私だって心配ですよ。 けど……」
「――むぅ、こうなったら止むを得ん。 サラ君、済まないが少々我慢してくれ給え」
「……へ?」
「とうっ」
――――ポフッ。
「――きゃあぁっっ! 何するんですかっっ、先輩、ちょっと!!」
「こらっ、暴れると怪我をするだろうが、大人しくし給え」
「じょーだん言わないで下さい! ってゆーか、頼むから降ろして下さいっっ!!」
「何を言う、この方が早く走れるだろう」
「走らなくていーですからっ!!」
「…………あの馬鹿、ホントに何やってんだ」
ジャージ姿の眼鏡男が、制服姿の金髪女子高生を突如お姫様抱っこして全力ダッシュ。
殺し合いの舞台にはあまりにも似合わない光景に、今鳥はそう呟くのが精一杯だった。
※ ※ ※ ※ ※
互いの姿を確認して「危険は無い」と判断したのか、サラの提案で三人は道路下の川岸に腰を下ろしていた。
名目は『休憩と水の補給』という形で、実際は花井の暴走を一時的に食い止めるために。
「……なぁ、お前、やっぱ本当は馬鹿だろ?」
残り少ない水を飲み干しつつ、最初に口を開いたのは今鳥だった。
「何を言う! 貴様とて何も考えずに歩いていただろうが」
委員長としてのプライドが傷付けられたのか、半ば反射的に花井も反論する。
「いや、俺ん事は別にいーっての」
軽く受け流す今鳥だったが、実際には“ピンクを探す”という目的を持っている。
だが、本人が『一条を意識している』という事実を頑なに認めず、また無意識のうちに気取られまいとしている以上、傍目には『何も考えていない男』としか映らない。
束縛を嫌う男・今鳥恭介の子供じみたプライドがもたらした結果、とも言えよう。
「あの、今鳥先輩……」
「ん? どったの?」
「……コレ、何とかなりません?」
そんな中、鉄の輪と鎖で繋がれたサラが気まずそうに左手を上げる。
花井とは間逆の、どこか飄々としたこの先輩なら、今の状況を変えることが出来るだろうか。 そんな淡い期待を込めて。
「……うん。 駄目。 無理だわ」
「えーい、役立たずめっ」
「勝手なこと言うなっつの。 んな簡単に外れりゃ苦労しねぇよ」
「やっぱり駄目ですか……はぁ……」
時間にして、僅か五分足らず。
海岸沿いに大の字で寝転がる今鳥を横目に、岩場に打ち寄せては砕け散る白波をぼけーっと眺めるサラ。
あぁ、『木っ端微塵』ってこういう時に使うんだろうな……そんな事を考えながら。
今鳥の支給品は、PC用バッテリと電池・そして――革製のムチだった。
(調教でもしてみる? と真顔で手渡しした今鳥自身は最初の犠牲者となった)
当然ながら鎖をどうこうできる代物ではないので、結局、レイピアを頼りに三人がかりで鎖を外そうと試みる。
だが、体力的に花井に遥かに劣る今鳥が加わったところで、鎖を断ち切れるような力や根性が生まれるはずも無く。
元々諦めの早い彼が即・ギブアップ宣言するのも、無理からぬことだった。
「――ま、俺に頼んだのが間違いだって」
「むぅ……仕方無い。
サラ君、不本意だとは思うが、もう少し付き合ってもらう事になりそうだ」
「……なんかもー、どーでもいいです。 好きにして下さい」
こっちの“目的”が知られている以上、手錠が外れたところで、花井は自分から離れようとはすまい。
(八雲が居れば、話は別だろうけど)
すでに諦めの境地に達したはずのサラだったが、何故か心の中の苛立ちは残ったままだった。
「で、手錠の事なんだけど」
ギクリ。 今鳥の言葉に、サラの表情が強張る。
(まずい。 もしここで彼に事情を知られたら、ますます行動しにくくなる。 というか、今鳥先輩なら何も考えずに言い広めそうな気さえする)
「それって、ひょっとして……」
二重瞼を乗せた大きな眼をギラーンと輝かせ、今鳥の予想は二人の秘密の核心へ――
「播磨たちのマネ?「「違う/違いますっ!」」
――ではなく、あさっての方向へと向かっていたらしい。
播磨たちの手錠=相手(八雲)を無理矢理拘束するもの、と勘違いしていた花井。
一方、手錠=二人の絆の証、と思い込んでいたサラ。
受け止め方は違えど、結果的には全く同じ反応が返ってくるという不思議。
両者の心情など知るはずも無い今鳥だったが、彼の目には、二人の反応が酷く滑稽に映った。
「……じゃあさ、結局ソレってどういう意味なワケ?」
自身の予想を真っ向から否定されたせいか、今鳥が少々ムッとしながら尋ねる。
「そ、それは――「うむ、実はだな……目が覚めたら繋がっていたのだ」
「――はぁ?」「え?」
真相を伝えかねていたサラを余所目に、しれっと嘘をつく花井。
「恐らく、僕の活躍を危惧した奴らが嫌がらせの一種として思いついたんだろう。 全くもって迷惑な話だ」
あまりのスムーズな説明っぷりに、サラは口を開けたまま固まってしまう。
もしかすると、今鳥と出会うずっと前から、彼は言い訳を考えていたのだろうか。 というか、あの花井先輩が?
普段の彼らしからぬ周到さに裏打ちされた気遣いが、サラの心を揺さぶる。
「あのー……私、言いたい放題言われてるみたいなんですけど」
「うむ、気にするな」
「しますって!
何なんですか、人を勝手に拘束……じゃなかった、私と繋がってる事自体が嫌がらせって」
かなり動揺していたのか、聞く人によっては誤解を招く文句を口にするサラ。 案の定、今鳥には照れ隠しと映ったらしい。
「あれ? サラちゃん、ひょっとしてコイツと一緒の方がいいの?」
「何でそーなるんですかっっ! 噛み付きますよっ」
がるるるる。 変なうなり声を上げるサラを背に、今鳥は苦笑いを浮かべるしかなかった。
※ ※ ※ ※ ※
西日を背に受けて、束の間の休憩を終えた三つの影が動き出す。
「んじゃ、そろそろ出発しますか、っと」
「うむ、日が暮れるまでには村に到着しないとな」
「ですね、少し急がないと」
海岸沿いの道路に戻り、大きく伸びをする三名。
「それじゃあ、花井先輩」
「ああ」
「いざ、平「鎌石村へ向かって――」」
「「……え?」」「へ?」
「えーい、けしからんっ。 お前に協調性は無いのかっ」
「うん」
「即答するなっ!!」
「けどよー、八雲ちゃんが平瀬村に居るってワケでもねーんだろ?」
「ふっ……この花井春樹、八雲君を探す事に関しては誰にも遅れを取らん!」
「根拠になってねーし。 てか、こーゆー時は平等にジャンケン勝負だろ」
「馬鹿を言え、多数決に決まってるだろう。 なぁサラ君」
「うーん、そうですねぇ……じゃあ、多数決なら私も鎌石村に一票」
「なっ――」
「おー、さっすがサラちゃん、話が分か「待て待て待て待てぇいっ!!」
「なんだよ花井、多数決なんだろ?」
「……うむ、どうやら僕が間違っていたようだ。 三回勝負でどうだ?」
「はんたーい」
「むぅ、ならば仕方ない。 五回勝負にしよう」
「ちげーよ!」
「あのー……どーでもいいけど早く決めてくれません?」
――個性的過ぎる三人の旅路は、まだ、始まらない。
【午後4時〜5時】
【花井春樹】
〔現在位置〕D-02 海岸沿い
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式(片方のPETボトルには川の水を入れてます)、手錠の片割れ、レイピア
(手入れされていませんが突くことは可能)
〔行動方針〕サラを説得する。 皆と合流する(八雲を最優先)
【サラ・アディエマス】
〔現在位置〕D-02 海岸沿い
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式(片方のPETボトルには川の水を入れてます)、手錠の片割れ、革製のムチ
〔行動方針〕八雲を守る。 しょーがないので花井についていく。 一応ゲームには乗るつもりだが……
【今鳥恭介】
〔現在位置〕D-02 海岸沿い
〔状態〕健康。 多少モヤモヤしてます。 サラをおちょくって少々ご機嫌
〔道具〕支給品一式(片方のPETボトルには川の水を入れてます)、電池(単三×10、単一×4)、
ミニノートPCバッテリ×1
〔行動方針〕ピンクを探す(花井とサラには秘密にしてます)。ゲームには乗る気なし
以上です。
何か矛盾点・問題点がありましたら指摘願います。
…………甘い。 甘過ぎだわコレorz
申し遅れましたが……
◆X7WwwzkoUU氏・◆HQrLOwPbgA氏・◆rJXTlJ7j/U氏共に乙でした。
予約⇒投下の間にスレが一気に活気付いてて、正直焦りましたが( ´Д`)
>>882 乙でした
手錠が外れて機会が巡ってきても更に葛藤しそうなサラですね。
電池の用途はアレとあと何だろう…
>>873 危ういバランスでほのぼのだったのが、最後隣子さんにぞわりとさせられました。
それとまとめサイトの方ですが、
◆HQrLOwPbgA氏の番外編で、掲示板のレス番で言うと29が重複していて
30が抜けているようなのでお知らせします。
>>882 お疲れ様でした。特に問題はないと思います。
サラ・花井・今鳥とキャラ達の掛け合いがいいですね。
これもまた一つの誤解
>>884 ご報告ありがとうございました。該当箇所を修正しました。
◆HQrLOwPbgA氏もどうもすいませんでした。
天王寺で予約します
隣子が不思議ちゃん通り越して、ヤンデレっぽくなってるな・・・。
:.
::::..
::::... 隣子、俺もう一人身ENDかな?
::::… , ´ `ヽ
::::... ∧_!,irlリ从リ),,
::::.(Д▼ii,il、゚ヮ゚ノ} バカヤロゥ!
r -( ( O┰O、 私達はこれから始まるのよ!!
..::ii'⌒< < ) 冊冊〉
::'、__,,l!しし(_)l!lJ´
'、__,l!j
いつこんなENDを迎えてもおかしくなさそうだ。
前回の1さんが見たら、泣いてしまいそうな展開ではある
>>886 期待してます
花井達の話まで収録して地図を対応しました。これからもよろしくお願いします
色々支給品あるけど有効利用できるんだろうか
>>891 他と組み合わせないとなんの効果も無い、ってのとか
特殊な効果のやつとかが前作に比べても多い気がするね。
リレー企画の難しさってのを後々思い知ることにならなきゃいいがな。
奈良・姉ヶ崎・つむぎ・管理サイドの人達を予約してみます
短いですが天王寺投下します。
頭の中に女の悲鳴が繰り返される。
(「――お兄ちゃん、助けてよぉ!!」)
手の平を何度拭っても、あの感触は消えなかった。
(「――お兄ちゃん、助けてよぉ!!」)
壊れたCDプレーヤーのように、まとわりつく油のように、それは消えない。
(「――お兄ちゃん、助けてよぉ!!」)
「黙れ…」
(「――お兄ちゃん、助けてよぉ!!」)
「黙れってんだよ!」
何かを殴りつけた拳の痛みと同時に、叫び声は止んだ。
2メートル近い巨体から繰り出された鉄拳は、決して細くはない幹を震わせ頭上の梢を揺らす。
「…ハアッ…ハアッ…ッ頼むから…黙るんだ――いいな?」
天王寺昇はあの渚から逃げて来た。
始めは後じさりながら、やがて撃たれた痛みにも構わず足を早めて。
だが、後ろから追いかける"声"は、それを嘲笑うように彼に追いついた。そして、決して彼の手の届かない場所へと入り込んだ。
どんなに走ったところで逃れられない。捕らえることも出来ない。
どれだけ三原梢の死体から離れようと、"声"は天王寺の頭から離れてくれはしなかった。
ここが一体どこで、あれからどのくらいの間走ったのか。
時々駆けあがるような痛みも、もはや気にならなかった。こめかみの血はいつの間にか乾いていた。
そもそもこんな怪我は彼の喧嘩において、日常茶飯事なものだ。
それがかつて「魔王」と呼ばれた播磨拳児と互角に渡り合った、天王寺昇という男。
だが、今の彼はすべての力を使い果たしたように、樹の根元に片膝をついている。
口をついて出る言葉も、苛立ちと困惑と弁解の色を含むもの。
「俺が悪いんじゃない…あの野郎が…あのイギリス野郎だ…」
脳裏から離れない二つの顔があった。ひとつは友の仇、そしてもうひとつは。
「…あの女があんな事を言わなけりゃ…」
*************
あの女――C組の三原という女は自分を撃ち殺そうとし、言ってはならない言葉を吐いた。
(「――ボディーガードにすら使えない奴なんか、役立たずに決まって――…」)
あの糞ったれのショーンと同じセリフ、奴と同じ思考。
誰が許せるだろうか?誰が自分を責めることができるだろうか?
だが、あんな女も誰かの妹だった。自分にとっての天王寺美緒であったのだ。
その現実が、天王寺をこんなにも苦しめる。
「……生き残ったって一生あいつに顔向けなんかできねぇ…」
いつも自分を見上げている、幼い少女の姿が思い浮かぶ。
自分に似ていない年の離れた妹は、彼の一番の泣き所だった。
風が強くなったのか、目覚めた時より大きく波の音が響く。
頭の中のあの悲鳴も、今だけは聞こえない。
「…美緒、すまねえ…」
遠い場所にいる妹に天王寺は呼びかける。
自分は美緒を人殺しの妹にしてしまった。この命一つで詫びが足りるのであれば喜んで差し出すだろう。
だがしかし。
「俺はダチの…サミュエルの仇をとらなきゃいけない。それまで死ぬわけにはいかねえんだよ」
自分を友と呼んでくれた、自分が強敵(ライバル)ではなく友と認めた男の仇をとる。
それが少し前の天王寺の全てであった。
――だがしかし。
「…あの女があんな事を言わなけりゃあ、何も起こらなかったんだ。ああ、なんにもだ…あんな――あいつ、あの野郎と同じ言葉を」
突然、あの時の光景が眼前に甦ってくる。
向けられた銃口。
怒号と至近距離からの銃声。
爆竹がはじけたような激痛。
手を伸ばした。三原の首を片手で掴めたことを思い出す。
「――それにあいつの首があんな細くて…」
三原梢の首を絞めた手の平を開き、閉じ、また開く。しばらくそんな手の動きを天王寺は呆けた様子で見つめていた。
――柔らかく熱い肉を捕らえ、その中から固いものを探り当てた感覚があった。
メキャリ、と音をたて、小気味よい程にそれは折れた。
絞めたのはほんの数秒だったが、殺すつもりがなかったとは言えない。
「あぁ……」
うめき声が口から洩れた。
どうやら彼の記憶は、ショーンの存在に全責任を負わせることには失敗したらしい。
そもそも自分は悪くないのであれば、あの声は何故自分を追ってくる?
あの時、確かに自分は『折れてしまえ』と思った事を、天王寺は思い出してしまった。
*************
次の瞬間だった。
(「ぅぅ………ひっく…………」)
『声』が再び頭の中に帰ってきた。
今度はすすり泣くだけの声。それを当然彼は三原のものだと思った。自分の下に組み敷かれた時の彼女の声。
だが、あろうことかそれは、
――美緒のものだった。
(「――お兄ちゃん、最低だよ」)
妹の声が彼を責める。
なにより天王寺にとって堪えたのは、その声が軽蔑の色を含まず、ただひたすらに悲しく涙交じりだったことだ。
「違う、美緒!」
無人の周囲をぐるりと見回して、天王寺は吠える。妹がこの島にいるはずもない事は、彼も頭の隅では理解していた。
だが、幻聴だろうが何だろうが妹の泣く声を無視できる兄ではなかった。
(「あんなお姉さんを…ろしちゃうなんて」)
嗚咽がひどく交じり、美緒の声が不明瞭になる。
それとも、その"言葉"が妹の口から出るべきでない言葉であり、彼自身が認めたくない事実だと無意識下で拒否したせいなのか。
(「お兄ちゃん言ってたよね、俺は弱い奴や女と喧嘩したって嬉しくなんかないって。あれは嘘なの?」)
「嘘じゃねえよ、美緒、お前の兄貴が相手をするのはいつだって、俺より強えぇ、俺が気に入らねえ奴だけだ!」
(「でもお兄ちゃん…ろしちゃったじゃない。たすけて、って言ったのに。お兄ちゃんたすけてって、あたし言ったのに!!」)
「違う、違うんだ!俺は…」
(「お兄ちゃんがあたしを――)
「――俺はお前を殺しちゃいねえ!!」
*************
――違う、違う、違う。
天王寺は繰り返し口の中で呟き続ける。
すでに彼の頭の中では、三原梢は美緒と同化していた。あの海岸に打ち捨てられているのは妹で、自分が折った細い頚椎は妹のものになった。
――違う、お前の兄貴はそんな男じゃない、信じてくれ、兄貴が妹を殺すなんて事あってたまるものか…!
美緒の泣く声が、天王寺の脳に直接痛みを与えるように揺さぶり続ける。
妹の泣く声は苦手だった。一刻も早く何かをしなければならない衝動に駆られる。
こんな時――妹が泣き、兄がうろたえる構図の時――はいつだって、天王寺はひたすら下手な言葉や約束を連ねるしかなかった。
それは今も変わらない。
天王寺昇という男が、妹が信じる通りの男だとする証明が今、なんとしても必要だった。
「――そ、そうだ、美緒!こんな糞みたいなゲームに喜々として乗っかっている奴がいるはずだ!そいつを俺が全部片付けてやる!」
そうだ。こんなゲームで人を殺すような奴はショーンと同等の下衆に決まっている。
その連中を殺すことはショーンを殺すことと同じだと言える。
下衆の人数が多ければ多いほど、サミュエルの仇を何回だってとることが出来るのだ。
それをやり遂げれば、自分は妹に胸を張れる人間に戻れるだろう。
天王寺は銃痕の開いたリュックサックを開く。目に飛び込んでくるのは大口径の自動式拳銃(オートマチック)。
巨体にふさわしい大型のそれを手にして、彼はあたりを見回す。まるで誰かに見せるかのように。
「なあ、美緒…だからあの女を殺ったのだってチャラになるはずだ…!」
*************
この時、天王寺の精神は暗い深淵を渡りきったところにあった。
ひとりの殺人を贖う為の、更なる殺人。
それはどう釈明しようと、彼が憎んだこの『ゲーム』に乗るということにも、すでに天王寺は気づかない。
それが彼のもっとも憎むべき、ショーンの思う壷だということにも。
*************
――もう、妹の声は聞こえない。
当たり前だ。もうすぐ日が暮れる時刻になる。
妹の住む街も、この島も。
たぶん、安心して家に帰ったのだろう。
天王寺昇もようやく訪れた静けさの中で、自分のやるべき目的を得たことにこの上ない安堵を覚えていた。
【午後4時〜5時】
【天王寺 昇】
〔現在位置〕H-03
〔状態〕銃創×3(太腿・肩・米神、いずれも軽症。全速力で走るのは困難)、急所にまだ痛み、幻聴症状あり
〔道具〕支給品一式(銃弾による損傷で水・食糧の損傷はまだ不明)、50AEデザートイーグル(残弾7+1)(動作に支障がないかは不明)
〔行動方針〕ゲームに乗る人間を殺す
※三原の支給品および銃はI-04に放置してあります
…タイトルは【羅刹】でお願いします。
いろいろあると思うのでご指摘頂きたいです。
>>893 いつも素早い更新乙です、期待してます。
>>901 乙でした。 天王寺……つД`)
特に問題はないかと。
乙でした
ゾクゾクする心理描写が上手ですね。
問題はないと思いますので後日収録させて頂きます
俺。メインキャラが死んだら死者図鑑書くんだ………。
ここまでの話を収録しました。地図も対応させました。
死者名鑑はもし書かれたら収録させてもらいますね
906 :
Classical名無しさん:08/09/18 22:48 ID:tjL4f2Qs
つーか、人いねぇな今回……
書き手が5人くらいのようだけど自己リレーやらないとつらいんじゃないかという気になる
っていうか、やった方がいいと思う。
自己リレー禁止というのが人が多くいるロワの場合の話だ。
書き手が5人しかいないロワじゃ、途中行き詰ってしまうのは目に見えてるよ。
勿論自己リレーをしたい人は他の書き手に「自己リレーをします」という予約をして
OKを貰ってからの話だがな。
待て。5人以上要るだろ、たぶん
前回は即死だったが天王寺はやる時はやる男さ
容量ってまだ大丈夫?
>>911 ◆HQrLOwPbgA=8作(1作)
◆rJXTlJ7j/U=8作(まとめ)
◆cj4OQi4css=7作
◆q8.UJLtEPY=4作(1作)
◆HXrOGANlU6=1作
◆mWKUMdK/Cw=1作
◆X7WwwzkoUU=1作
7人しかいないけど、大丈夫かね。
>>881 乙です
なかなか珍しい組み合わせで面白い
ただ位置的に安全すぎるなあ
闘いになった時手錠がどう影響するかが楽しみだ
>>901 乙です
やっぱりこういうマーダーは話を盛り上げるために必須
ハゲ天さんには前回の屈辱を晴らして貰いたい
それと地図の1マスって距離的はどれぐらいですかね?
そろそろ次スレですね。だいたい1マスは1〜2キロ?そのあたりは曖昧だったような
その前に話を投下します
「ねえ待って!ここって……本当に行くの?」
見覚えのある場面に姉ヶ崎は悲鳴に近い声をあげた。地面の色や木の並び、それらが形作る風景。
そして何より前方に見える崩れたような布の塊。先程自分が落とした荷物だとすぐに分かる。
ならばあの死体も――そして『彼』もまだ近くにいるかもしれないと体の心から凍りつく。
(死にたくないよ)
それだけを考えながら、ふらふらになった体に鞭打って奈良の後を必死で追う。
削りゆく精神と肉体疲労とのせめぎ合いで彼女は心身ともに限界にあった。
(でももう疲れちゃったかな……死んだらそれで楽になるのかな)
曇り空というわけではないのに姉ヶ崎の見ている世界は灰色だった。
ぼたぼたと掻いたことのない大きな汗が額や細い顎を伝って大きな滴となる。
ふいに前を歩く奈良の足が落し物の前で止まった。
「誰かの荷物かな?あっ銃だ!……テープ?」
「……それは私の。ニセモノの銃で使えないわ」
鎌を手放してまで喜んでみせる奈良に対して姉ヶ崎はうんざりしたように答える。
唯一の救いは全ての荷物が無事なので『彼』は意外とこの近くには来ていない可能性が高いことくらいだった。
「……せめてお水貰っていい?」
「そっか残念。はいじゃあ……あれ?先生これなんですか?」
ごそごそと荷物を漁る奈良は不思議そうな声をあげた。やがて取り出したそれを見て、
姉ヶ崎は自分がリュックの中身全てを確認した覚えがないことを思い出した。偽者の銃に目を奪われていたためだ。
「携帯電話!やったわこれで助けを呼べば……!」
突如元気を取り戻した姉ヶ崎は、奈良から携帯電話を強引に奪い電源を入れて110番をコールする。
一方の奈良はその変化に驚き固まってしまう。やむなく備え付けの紙きれに目を通す。
彼は姉ヶ崎とは違って、まさかこんな手段で助かってしまうのか?という疑問のほうが先だった。
るるるる るるるるる とぅうるるるるるるる
「早く出てよ……何やってるの」
機械的な音声に爪先を噛みながら苛立つ姉ヶ崎。一秒一秒がテレビの中のクイズ番組よりよほど長く感じられる。
ちらちらと横目で見ながら読み進める奈良。
「!先生これって」
『はいもしもし。困りますね、ちゃんと登録してある番号でかけてください姉ヶ崎先生』
奈良が状況を理解することと谷速人の懐かしい声が姉ヶ崎に届くのはほぼ同時だった。
■ ■ ■ ■ ■
ピピピ……
「え?何この音」
聞きなれない、だが日常の名残を持った音を感知する。
結城つむぎが氷川村までもう一息という場所で休息をとっている時だった。
元々走るのも長く歩くのも得意ではないし、歩行祭では友人達がいたからいいものの今はそうもいかない。
怪我でもしたらたまったものではないと、彼女は決して無理をしないように足を休めながら氷川村に向かっていた。
(まるでメールの着信みたいな)
最初の心当たりである携帯電話を取り出す。するとそこには案の定、手紙のようなアイコンが点滅していた。
携帯電話というものはえてして使い方が似通っている。見たことのない機種であっても操作に問題はない。
さほど迷いなく操作を進め、やはり一件メールが来ているようなので急ぎ内容を読む。
『双方の電源がONになったので携帯電話同士でのメールが可能になりました。このメールに返信すると相手にメールできます』
しばしその一文を眺め続ける結城。これはあの悪趣味な連中に繋がるらしい電話だが、
まさか今まであちらの準備が整っていなかったとは思えない。となると……この携帯電話と同じものを持った誰かが他にいるのだ。
少し考えて自己紹介だけをすることにした。それ以上は返答次第。
『こんにちは。こちらは結城つむぎです。あなたは誰ですか?』
一瞬自分の名前を出していいものか迷うが、そこまで疑っては話が進まない。
こちらの居場所さえ知らせなければ安全だろうとそのままメールを送信することにした。
(花井君や嵯峨野達に繋がってくれると嬉しいんだけど)
なんとなく眼鏡のカメラ男には届いて欲しくないと思いながら立ち上がり携帯電話をジャージの間にはさむ。
目の前にある朽ち果てた木の看板には文字が刻まれていた。
(『氷川村診療所まもなく→』ずいぶん古そうだけど日本語だしここは一応日本なのかしら)
軽自動車がギリギリ通れるくらいの幅の道。足元は長年人によって踏み固められたそれになっている。
やがて誰かと出会うだろうと、彼女は診療所めざして慎重に進んでいった。
■ ■ ■ ■ ■
『……というわけです姉ヶ崎先生。この電話で助けを呼ぶことはできません、おとなしく従ってください』
「そんな!無理です、私はただの保険医。暴力団とは違うんですよ、何で私が!」
電話に出てからずっと口論を続ける二人。奈良は完全に置いていかれていることに退屈し鎌で地面をこつこつ叩く。
気分を紛らわせるためにこれからのことを考え、少し離れたところにいる姉ヶ崎の体をニヤニヤと眺めていた。
谷の声は聞こえないが何を言っても無駄なのだと既に諦めていたのでどうでもいい。
助かることが無理ならやはり欲望のままに生きるのがいいだろう。近くにあるはずの寺に早く行って彼女とお楽しみといきたい。
『ですので……というのは……』
「え……」
教師達がいがみあう姿はなかなか見れるものではないが、後の楽しみに比べたらたいしたことはない。
もはや耳に入れる気もなくなって、姉ヶ崎が早く諦めること・誰も邪魔しに来ないことの二点を期待して待ち続ける。
空はどこまでも広くて歩行祭の山の中で見たそれと変わらないとなんとなく思った。
「……わかりました」
『はい、ではすぐに……』
電子的な小さい音がした。それが通話を切った音だとすぐに気付いてそちらを見る。
携帯電話を握って悩ましげな表情をしている彼女が目に入って飛び出したくなる気持ちになった。
支援
「やっと終わったんですか?じゃあ先生行きましょう。早く早くっ」
「……」
「先生?姉ヶ崎先生?」
ぶらぶらと鎌をちらつかせながら急かそうとしても彼女はこちらを見ようともしない。
その瞳は学校での大きくぱっちりとした愛らしいものではなく、先ほどまでの絶望に沈んだ灰色のものでもない。
自分の荷物を拾って水を含み、うっすらと口紅の残った小さな口が開く。
「谷先生が来るんですって。命令だから仕方ないし、悪いけどしばらく待っててくれる?」
「ええ?どういうことですか?一体何を話したんです?」
「黙ってればいいわ」
思わぬ返事に奈良は言葉に詰まる。それ以上何も言えず、口は開閉を繰り返し棒立ちのまま。
握った鎌がぶらぶらと行き場なくさまよい続けていた。
(先生が来るって……どうして?)
下手なことになれば先生とて袋叩きだ、と奇妙な心配をしながら半信半疑で待つ。
やがて十分ほどするとどこか遠くからエンジン音のようなものが耳に入ってきた。
ほどなくして視界の端に一台のサイドカーが姿をあらわす。みるみるうちに接近してきて石を投げればあたる距離で停止した。
「どうもーお待たせしました」
担任教師である谷はいつものちょっとよれたワイシャツを着ていて、その口調はのんびりと出席をとる時のものだった。
「こんなものしかないんですか?」
「もっと頑張ってくれませんとこれ以上は」
側車から荷物を取り出した谷が何やら姉ヶ崎に手渡して会話し、首を左右に振っている。
どう見ても救出に来てくれたようには見えない。頑張る?何を?どうして自分のほうを見てくれない?
湧き上がる疑問に急激に不安になっていく。まるで自分を相手にしていないこの態度。
心細さを隠すため、奈良の心に攻撃的な感情――不満と怒りがふつふつと沸いて来る。
(殺し合いやれとか言っておいて今度は無視?何なんだよ先生)
いつの間にか鎌を握った手は汗にまみれていた。少しだけぬるりとするが扱うことに問題ない。
これをちらつかせれば姉ヶ崎は従順だったし谷とて今は武器を何も持っていないように見える。
一瞬二人がちらりとこちらを向いたと思ったらまた興味なさそうにヒソヒソ話を再開されて、とうとう我慢の限界を振り切った。
(見せつけるんだ、僕の力を。そして姉ヶ崎先生はまた僕に脅えて……谷先生だって逆らえないようにしてやる!)
「少しは……僕のほうを向いてくださいよ」
語尾を強めて声を荒げて……だがどこか小市民的な面を隠しきれないまま二人の間に割って入る。
谷はさも心外だという表情で、奈良を聞きわけのない子に接するように見下ろした。
「おいおい先生達の邪魔をするものじゃないぞ」
「……まあいいじゃないですか先生。丁度よかったです」
姉ヶ崎は見慣れない皮袋から小さな何かを取り出す。
どこかで見覚えがあるような――文化祭の前にあったサバイバルゲームの撮影ビデオで見たような――
そう、確か今のように相手に押しつけるようにして――
「ひっ!?」
「……さよなら」
自分がとっくに見捨てられていたことに気がついたのは最後の瞬間だった。
■ ■ ■ ■ ■
自らの血でできた水溜りに大の字で横たわる奈良。
姉ヶ崎が恐れた岡の死体と同様に、死への恐怖と怒りの形相が浮かび上がり凄惨な有様を予想していた。
だが覚悟していればそれほどではなかったらしい。最後の瞬間彼が落とした鎌を血で染まる前につまみあげる。
播磨のときよりも間近で見ているにも関わらず、どこか落ち着き払っているのがわかった。体がずっと滑らかに動く。
「……私は証明してみせました。本当に殺し合いに協力すれば助けてくれるんですよね?」
「はい。それが許されるのがこの電話です。姉ヶ崎先生が誠意を見せて下されば僕もあなたの勝利を支援します」
先ほどの口論を姉ヶ崎は心の中で反復する。提案されたのは奈良を殺せということだった。
そしてこれで契約は成立したことになる。殺し合いを受け入れる代わりに自分は支援を約束してもらった。
「僕も本音を言えば姉ヶ崎先生に生き残って欲しいと思っていますから、出来る限り力になりますよ」
「嬉しい!」
「む、無理を言ってなんとか武器の前借もできました。……護衛はつけてもらえませんでしたが」
いくら頼まれても救出することはできない、死にたくなかったら殺しあうしかない。それが絶対のルール。
逆に言えばそれに従うならそれなりの見返りも与えられるから、と説得されて姉ヶ崎の心は動かされた。
そして谷も決して自分が憎いわけではなくて、留学生達に無理矢理命令されている。
だからルールに乗っ取って自分を助けようとしてくれている――そうなのだろう。
心は保健室で寝ている最中に晴れ晴れとした日差しが差し込んできた気分になった。
(元々鎌を振り回す危ない子だったしいつか私を殺すつもりだったんだわ)
奈良の姿を見てももはや同情や後悔の念は沸いてこない。
心はほんの数時間前にこの場所で銃を握ったときと同じ気分になっていた。力を手に入れたことで自信と落ち着きが戻ってくる。
そして今度は偽者ではない。何より殺し合いの舞台で彼らの支援を受けられるほど心強いものはないだろう。
「途中までですが送っていきますよ」
「はい、お願いしますね」
サイドカーの隣に座り込んで可愛らしい声を挙げる。谷の協力なしには非力な自分が助かることはない。
寄りかかって生きるしかない。同情でも哀れみでもいい、馬鹿な女と思われてもいい。自分はそれしか知らないのだ。
姉ヶ崎は渡された物の入ったリュックを強く握り、内心必死になりながらもそんなことを考える。
車は加速していき風景は線の集まりになって流れていく。奈良の死体には一度も振り向きはしなかった。
■ ■ ■ ■ ■
「ではここまでですね。道に沿って北上してください。古い記録ですが確か寺に生徒達が固まっていたと思います」
「はいどうも。あ、そうだ谷先生」
ちゅっ
「あ、姉ヶ崎先生!?」
「お礼です、えへへ。ありがとうございました」
それだけで姉ヶ崎はさっと身を翻し元気よく北に向かって走り去る。前後にせわしない足元には雑草がまとわりついていた。
谷は真っ赤になったままその姿を呆然と見つめ立ち尽くす。唇が触れた右頬はかすかに暖かくて桜のような匂いがした。
(さて……頑張らないと。そして『実績』をあげてもっともっと助けてもらうの)
新たに手に入れたものは四つ。
一つは切り札の携帯電話。メールがあったが結城つむぎなる人物は聞き覚えはあるが思い出せない。今は無視して本体も隠そう。
一つは奈良の使っていた鎌。武器としては頼りないのでよほどの機会が来たときに。やはり隠し持ったほうがいい。
一つはデリンジャー。高い確率で命を奪えるが残弾があと1しかない。例によって隠す。
一つは自分にとてもよく似合うと谷がくれた救急箱。こんな状況では怪我が怖くない人はいないはず。
傷の具合によっては素人の手に余るだろう。診療所は遥か南にあることだし、治療のために生かしてもらえるかもしれない。
これは見せびらかして生徒達の興味を得るために利用したほうがよさそうだ。
ちなみに食料類は複数持っていると怪しまれるというアドバイスがあったので、奈良のそれは持っていない。
死にたくないのなら、自分らしく勝ち残る――笑顔で近づき集団に紛れ込み、隙を見て殺す。それしかない。
播磨に植えつけられた恐怖を殺意に置き換えて、疲れの残るからだを動かして姉ヶ崎妙は今一度死の舞台に足を踏み入れた。
自分には谷がついている。きっと彼が助けてくれる……そう信じて。
■ ■ ■ ■
「どうも、戻りましたー」
「遅かったですのう谷先生」
姉ヶ崎と別れて学校に戻り、一通りの身体検査を受けた後で教師用の管理室に戻ってくる谷。
その部屋にずらりと並べられた各種電子機器には参加者達の情報がつらつらと表示されて常に更新されている。
盗聴器で事情は分かっている同僚の加藤や郡山は谷を冷ややかな目で迎え入れた。
「認められているとはいえ何事も度が過ぎれば……私は反対しましたからね、知りませんよ」
眉間にシワをよせて爪を噛む加藤。言葉の節々から咎める様な意図が含まれている。
一歩間違えればルールに私情を混ぜていると受け取られかねない谷の行動を非難するものだ。
姉ヶ崎の支援を留学生に交渉した勇気は男子として認められるものかもしれないが。
そんな加藤に郡山はうむうむと同調するが、谷は二人を無視して自分の席に座る。右頬を優しくさすりながら。
【午後4時〜5時】
【結城つむぎ】
〔現在位置〕I-07 氷川村近く
〔状態〕健康
〔道具〕支給品一式、思い出のアルバム、主催者側にしか繋がらない携帯電話(他の携帯とメール可能)
〔行動方針〕とりあえず主催者の思惑には乗りたくない。診療所をめざす
【午後4時〜6時】
【姉ヶ崎妙】
〔現在位置〕D-07
〔状態〕疲労
〔道具〕支給品一式、主催者側にしか繋がらない携帯電話(他の携帯とメール可能)、草刈用の鎌、デリンジャー(残1)、救急箱
〔行動方針〕死にたくないので優勝を目指す。集団にもぐりこんで隙を見て殺し、実績をあげて谷から支援してもらう
【谷速人】
〔現在位置〕D-06 管理室
〔行動方針〕姉ヶ崎には助かって欲しい
【加藤】
〔現在位置〕D-06 管理室
〔行動方針〕???
【郡山】
〔現在位置〕D-06 管理室
〔行動方針〕???
【奈良健太郎:死亡】
荷物と玩具の銃は死体の傍に放置してあります
――残り43人
以上です。タイトルは【奈良ブレイク計画ブレイク】
ステルスがいないなあと思ってこんな話に
同じ支給品があるとか教師の介入はアリか?とか色々あると思います
指摘をお願いします
乙です
奈良の死にはいい意味で驚き
ただ奈良が妙ちゃんに再び欲情するまでにワンクッション欲しかったかも
教師の介入はアリだとは思いますが程々に抑えといた方がいいかと
1マス1〜2キロですか
誤差が倍だけど話が進むにつれてはっきりしてくるか
>932
乙。
ただ、びっくり箱みたいなララの鞄の中身は別として、
「じつは支給品がもう一個ありましたー」的な話は、どうなのだろう?
今回の話に限らず、今後にも影響してくる話ね。
ちなみに、スクロワTでは地図は一マス3km。
変えるにしてもこのままにするにしても、今のうちに話し合っておくのが吉かと。
>>932 乙です!
ああ…奈良やっぱり…(合掌)
妙ちゃんの今までの恐怖に晒された時間を考えると無理からぬ選択です。
ただ、自分も奈良のニヤニヤする表情には少しだけ違和感が。
>>934 今現在、複数支給されている人は(高野の物を1セットと考えて除外すると)
・石山(予備マガジン)
・今鳥
・妙ちゃん
・榛名
・結城
・ララ
この6人か。多いか少ないか、もうこれ位でやめとくか?
感想どうもありがとうございました。一マス3kmならそれでルールにのせようかと。
まとめてるときに気付いたことですが妙ちゃんの支給品については
状態表に落としましたとしか書いておらず、不明の有無すら記述なし、作中でも描写なしのため
じつはまだ支給品がありました系とは全く別と考えますが、ダメなら話まるごと没にします
奈良についての描写は少し増やそうかなと思います
>>922 支援ありがとうございました
>>936 乙です。
奈良、やはりルールの壁は厚かったか……
『奈良ブレイク〜』で偽銃を見つけた後にリュックを調べる記述が無かった以上、整合性については問題無いかと思います。
一マスの広さ、自分は2kmに一票。
走って15分程度だとすれば、3kmは少々厳しいかな、と。
(高低差や荷物を考慮すればの話だけど)
>>914 正直死んだはずのキャラがなんとなくで死ななかったことになった時点で萎えた
ただ殺したくないからでキャラの生き死に見たいな大事なことが覆るようじゃやってられないよ
あの作品は絶対普通に通すべき
>>938 >正直死んだはずのキャラがなんとなくで死ななかったことになった時点で萎えた
いや、もう奈良は死んでいるんだぞ。
ナニ言ってんだお前・・・。
まぁ、奈良の死を認めたくないという気持ちはわかるけどさ。
別に物語を進めていく上で特に問題は無いんだから
>>932の話は通すべき。
またこの手の荒らしか
書き手さん達の迷惑になるから消えろ
>>939 沢近のことだよ
わざわざ名前出したくなかったんだけどな
いや、たぶん沢近さん死亡のやつの事だと
ハネ子「ハネ子とー!」
三原「え、え?「ハラミとー!」
冴子「冴ちゃんのー!」
ハネ子&冴子「「絶対☆名無しチルドレーン!!」」
三「ちょ、ちょっと待ってよ、何なのコレ?」
ハ「決まってんじゃない、番外編よ番外編。
そう、それは放送前にズガンされた私達の恨み辛みを捻り出す超目玉企画――」
冴「こらこら、本音言っちゃダメ。 その辺はスマートに逝かないと♪」
三「おーい、字が違いますぜ旦那」
冴「いーのよ、どーせ私ら頭カチ割られたり喉潰されたりロクな死に方してないし」
三「全っ然スマートじゃねー!」
ハ「うっはー、冴ちゃんも見事に毒吐くねぇ。 さすが1stロワのマーダー、悪女っぷりにも磨きかかってます」
冴「いー女には裏がある、って言うでしょ。 素敵じゃない?」
三「……あのー、のっけからすっごく微妙な雰囲気なんですけど」
ハ「おっといけない、サクッと進めなきゃ司会降ろされちゃう」
三「何のだよ」
三「――で、結局私達は何をしたらいいワケ?」
ハ「うん、ここは基本的に冥界ネタを扱うことになってるの。
ロワから退場した生徒たちをゲストで呼んだり、本編の感想ぶっちゃけてみたり」
冴「細かいことはハネちゃんに任せてOKって事ね。1stでも大活躍だったし」
ハ「……冴ちゃん、何気に酷いこと言ってるよねー。 頭割られた腹いせ?」
冴「まっさかぁ、そんな事ないわよ? こっちはこっちで色々楽しめそうだし」
三「――ちょ、冴子、何その色々とアブない道具は!?」
冴「やーねぇ、悲鳴上げちゃって。 ひょっとして興味津々?」
ハ「キャー、なんか音立ててるぅー♪」
三「いいから! もう、エロトークはいいからさっさと進めてっっ!!」
ハ「じゃあ、まずは今までの感想、って事で」
冴「やっぱり、今回の目玉は播磨君よねー。 いきなりゲームに参加するなんてびっくり」
ハ「今はちょっと落ち着いたみたいだけどね。 代わりに順ちゃんがヤバくなってるけど」
三「円は……まぁ、案の定、かな」
冴「梅津君も気の毒よねー。 別の人に会ってたら無事にズガンされてたかもしれないのに」
三「いや、それどっちも地獄ですから」
冴「ちょっとした誤解でマーダーになっちゃった人も多いよね。 天王寺君とかおキヌとか」
ハ「あ、天王寺君で思い出したけど……梢ちゃんの体ってそのままだよね」
三「え゛」
冴「良かったね、奈良君とか近くに居なくて。 見つかったら……きゃー♪」
三「――やめてぇっ! 寒イボ立つうっっ!!」
ハ「修学旅行の写真でも勝手にコラされてたらしいしね」
三「……マジ? って、どっからそんな情報仕入れてんの」
ハ「冬木君」
三「あんにゃろー、こっち来たら文句言ってやる」
ハ「あ、最新情報。 奈良君こっち来るみたいよ。 呼んでみる?」
三「いらねー。 てか来んな」
冴「妙ちゃんに手出そうとしたのが運の尽きよね。 こっちでも多分ボッコボコかな」
ハ「今回、支給品に捻りが効いてるのも面白いよね」
三「主催者側と交渉できるケータイとか、色々使い道ありそう」
冴「あの眼鏡っ子……つむぎちゃんだっけ? 使う気配ムンムンよねー」
三「ムンムン、て……」
ハ「おっ、さすが妙ちゃんに次ぐ今ロワのエロ担当。アダルティな言葉満載ですな」
冴「えー、誉めてもムチ……ゲフンゲフン笑顔しか出ないよ?」
三「誤魔化すの遅いっつーの」
ハ「そう、ムチといえば今鳥君の支給品。 そして今鳥君といえば三原さんっっ!」
三「ちょ、何その無理過ぎる前振り」
冴「あ、そういや梢の初恋の人って今鳥君ソックリなのよねー」
三「――ストオォォォッッップ!!! 何でアンタがそんなトップシークレット知ってんの!?」
冴「冬木君」
三「ぶっ殺す! アイツ、こっち来たら奈良と一緒にぶっ殺す!!」
ハ「さぁ、トークも盛り上がってきたところで、いよいよゲストの登場です!
栄えある第一回目はっ!!」
――――ドロドロドロドロ「お化け屋敷かよっ」ドロドロドロドロ……ドン!
ハ「――記念すべき死者第一号にして2-C一の幸せ者、田中君でーす!」
冴「おっ、イケメン登場」
三「ま、妥当なトコかな。 おーい、こっちこっち」
田「な、永山はっ!? 永山はどうなったんだっっ!!?」
ハ「まーまー、まずは落ち着いて」
冴「そうそう、そんな慌てなくてもどーせすぐ会えるし」
三「ちょっ! 冴子、毒、毒!」
田「――あっ、石山っっ! あいつに騙されて、俺……」
三「あー、悪いけど、彼、永山さんと一緒だよ」
田「なにぃっっっ!?」
ハ「嫉妬に狂った男の成せる業……あぁっ、なんて美味しいシチュエーションっっ!」
冴「あの子、大丈夫かなぁ……こっち来た時には傷モノ、とか?」
田「う……嘘だ嘘だ嘘だっっ、うわぁぁぁあぁぁっっっっ!!!」
三「……なーんで死者に鞭打つよーな事言うかなぁ。 あ……どっか行っちゃった」
ハ「ま、そんなこんなで、ロワもまだまだ序盤。 どんな大番狂わせが待ってるかな?」
冴「意外なあの子がマーダー化? 地味なあの子が大活躍? 次のゲストはハリー君?」
三「ちょ、最後願望入れちゃダメだって!」
ハ「私もハリー君がいーなぁ。 1stで実現できなかった夢を今度こそっっ!」
三「職権乱用ダメだっつの」
冴「あと、この番外編は誰が書いてもOKみたいよ。 ただし、投下する時は空気を読んで、ね。
じゃないと、私達のキツーいお仕置きが待ってるよ♪」
三「……なんか余計にハッスルしそう」
田「はぁっ、はぁっ……クソッ、出口はどこなんだ」
冴子「お、やっほー♪」
田「あ、冴子……か。 悪い、永山の居場所教え――ぶっ!」
冴「あれ、どしたの?」
田「ちょ、何だその格好!?」
冴「あ、私のジャージ汚れてたから。 田中君の制服借りたの、ゴメンね♪」
田「いや、その、制服はいいけど、下が、その」
冴「あら、私は別にいいのよ? 丁度ヒマだったし、ここの男子なら田中君がダントツだし」
田「え、いや、その、俺には永山が」
冴「えー、永山さんってまだ向こうじゃん。 折角だから楽しも、ね?」
田「どわぁぁあっ、学ラン脱ぐなあぁぁっっ!」
冴「えいっ♪」
田「ぐおぉぉぉっっ、永山っ、早くこっちへ来てく……じゃなかった、来るなー!
いや、やっぱこっち来てくr………
アッ――!」