漫画キャラバトルロワイアル Part17

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1Classical名無しさん
このスレは漫画キャラバトルロワイアルのスレです。
SSの投下も、ここで行ってください 、支援はばいばい猿があるので多めに

前スレ
漫画キャラバトルロワイアル Part15
ttp://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1207572442/
【外部リンク】
漫画キャラバトルロワイアル掲示板(したらば)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/9318/
まとめサイト
ttp://www32.atwiki.jp/comicroyale
漫画キャラバトルロワイアル毒吐き2
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1200415345/l50

1/4 【アカギ】○赤木しげる/●市川/●平山幸雄/●鷲巣巌
1/2 【覚悟のススメ】○葉隠覚悟/●葉隠散
1/3 【仮面ライダーSPIRITS】 ●本郷猛/●三影英介/○村雨良
1/4 【からくりサーカス】●加藤鳴海/○才賀エレオノール(しろがね)/●才賀勝/●白金(フェイスレス指令)
0/4 【銀魂】 ●坂田銀時/●神楽/●桂小太郎/●志村新八
2/4 【グラップラー刃牙】○愚地独歩/●花山薫/●範馬刃牙/●範馬勇次郎
1/4 【ジョジョの奇妙な冒険 】●吉良吉影/●空条承太郎/○ジョセフ・ジョースター/●DIO
0/4 【スクライド】●カズマ/●シェリス・アジャーニ/●マーティン・ジグマール/●劉鳳
0/4 【ゼロの使い魔】●キュルケ(略)/●タバサ/●平賀才人/●ルイズ(略)
1/4 【ハヤテのごとく】●綾崎ハヤテ/○桂ヒナギク/●三千院ナギ/●マリア
0/3 【HELLSING】●アーカード/●アレクサンド・アンデルセン/●セラス・ヴィクトリア
1/4 【北斗の拳】●アミバ/●ケンシロウ/●ジャギ/●ラオウ
1/4 【武装錬金】●防人衛/○蝶野攻爵/●津村斗貴子/●武藤カズキ
1/4 【漫画版バトルロワイアル】●川田章吾/●桐山和雄/●杉村弘樹/●三村信史
1/4 【名探偵コナン】 ●江戸川コナン/●灰原哀/○服部平次/●毛利小五郎
1/4 【らき☆すた】●泉こなた/●高良みゆき/○柊かがみ/●柊つかさ
計 10人 / 60人
2Classical名無しさん:08/07/01 21:31 ID:ispBZ8gQ
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×

例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
3Classical名無しさん:08/07/01 21:32 ID:ispBZ8gQ
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
 修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・修正要求ではない批判意見などを元にSSを修正するかどうかは書き手の自由です。
・誤字などは本スレで指摘してかまいませんが、内容議論については「問題議論用スレ」で行いましょう。
・「問題議論用スレ」は毒吐きではありません。議論に際しては、冷静に言葉を選んで客観的な意見を述べましょう。
・内容について本スレで議論する人がいたら、「問題議論用スレ」へ誘導しましょう。
・修正議論自体が行われなかった場合において自主的に修正するかどうかは、書き手の判断に委ねられます。
ただし、このような修正を行う際には問題議論用スレに一報することを強く推奨します

・展開予想、ネガティブな感想、主観的な意見は「毒吐きスレ」でお願いします。毒は溜め込まずに発散しましょう。
・議論スレと正式に分離したことで毒吐きでの感想は過激化している恐れがあります。見る必要性もないので、書き手は見ないことを推奨します。
4Classical名無しさん:08/07/01 21:32 ID:ispBZ8gQ
【能力制限】

◆禁止
・アーカードの零号開放
・武藤カズキのヴィクター化
・吉良吉影の“第三の爆弾バイツァ・ダスト”
・ギャランドゥ(ジグマールのアルター)の自立行動(可否は議論中?)

◆威力制限
・ゼロ勢の魔法
・空条承太郎、DIOの時止め
・スクライドキャラのアルター(発動は問題なし、支給品のアルター化はNG)
・アーカードの吸血鬼としての能力
・仮面ライダーの戦闘能力
・シルバースキンの防御力
・北斗神拳の経絡秘孔の効果
・激戦の再生力、再生条件

◆やや制限?
・グラップラー刃牙勢、北斗の拳勢、仮面ライダー勢、覚悟のススメ勢の肉体的戦闘力
・ジョジョのスタンド(攻撃力が減少、一般人でも視認や接触が可能)
・からくりサーカス勢の解体能力

◆恐らく問題なし
・銀魂キャラ、戦闘経験キャラなどの、「一般人よりは強い」レベルのキャラの肉体的戦闘力

【支給品について】
・動物、使い魔、自動人形などの自立行動が可能な支給品は禁止です。(自立行動を行わないならば意思持ちでも可)
・麻薬、惚れ薬、石仮面などの人格を改変するおそれのある支給品や水の精霊の指輪、アヌビス神などの人格乗っ取り支給品は禁止です。
・核金によって発現する武装錬金は、原作の持ち主の武装錬金に固定されています。
5Classical名無しさん:08/07/01 21:33 ID:ispBZ8gQ
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → MAP-Cのあの図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。
6Classical名無しさん:08/07/01 21:33 ID:ispBZ8gQ
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの一時投下スレにうpしてください。
・自信がなかったら先に一時投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない一時投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
   ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
   その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。
7Classical名無しさん:08/07/01 21:34 ID:ispBZ8gQ
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
8Classical名無しさん:08/07/01 21:35 ID:ispBZ8gQ
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、スレには色々な情報があります。
・『展開のための展開』はNG
 キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
 紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効
 携帯からPCに変えるだけでも違います
9Classical名無しさん:08/07/01 21:35 ID:ispBZ8gQ
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
 同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
 修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、ドラえもん(クレヨンしんちゃんも可)を見てマターリしてください。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
 やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
 冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
 丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。

【議論の時の心得】
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
 意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
  強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。

10Classical名無しさん:08/07/01 21:35 ID:ispBZ8gQ
【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
 程度によっては雑談スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
 例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
 この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
 こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
 後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
 特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。

【予約に関してのルール】

・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行います
・初トリップでの予約作品の投下の場合は予約必須(5日)
 ただし、予約せずに投下できなら、別に初トリでもかまわない

・予約時間延長(最大3日)を申請する場合はその旨を雑談スレで報告
・申請する権利を持つのは「過去に3作以上の作品が”採用された”」書き手
・修正期間は審議結果の修正要求から最大三日(ただし、議論による反論も可とする)
・予約時にはトリップ必須です。また、トリップは本人確認の唯一の手段となります。トリップが漏れた場合は本人の責任です。
・予約破棄は、必ず予約スレでも行ってください。

【MAP】
http://www32.atwiki.jp/comicroyale/pages/34.html
http://www32.atwiki.jp/comicroyale/pages/330.html (登場人物の位置あり)
11 ◆hqLsjDR84w :08/07/01 21:36 ID:ispBZ8gQ
スレ容量を確認せずに投下してしまい、申し訳ないです。
投下再開しますね。
12ふしぎなおくりもの ◆hqLsjDR84w :08/07/01 21:38 ID:ispBZ8gQ
 最初から、シエスタは殺される予定だったのだ。殺される予定の者の支給品を用意するほど、BADANはマヌケではない。
 ならば何故存在するのか?
 言っただろう。伊藤博士が紛れ込ませたアイテムが幾つか存在する――と。
 伊藤博士は己の用意したアイテムを紛れ込ませる際に、もともと入っていたアイテムを抜いたのだ。
 そして伊藤博士は、その抜いたアイテムをシエスタに支給されるはずだった物ということにして、放置した。

 ――何故、わざわざアイテムを抜く必要があったのか。

 そこに疑問を感じずにはいられない。
 もともとのアイテムを入れっぱなしにしておいて、己の用意したアイテムも紛れ込ませればいいではないか。
 なんで、そうしなかった。
 なんで、わざわざ『シエスタのアイテム』なんてを用意した。
 なんで、BADANに感づかれるかもしれないのに、わざわざ残した。
 伊藤博士は決して馬鹿ではないし、常識を持ち合わせている。
 もともとのアイテムを入れたまま、自分の用意したアイテムも含ませる。そんな簡単なことを考えぬはずがない。
 ならば何らかの理由で、『シエスタのアイテムを用意せざるを得なかった』のではないだろうか。
 何らかの理由とは一体?
 ここで、上記のランダムアイテム表を見ていただきたい。
 ランダムアイテムは一参加者につき一〜三種支給される。『ランダム』に、だ。
 にしては、三種支給されている参加者が多すぎないだろうか。

 ランダムアイテムが一種支給された参加者:八人。
 ランダムアイテムが二種支給された参加者:十九人。
 ランダムアイテムが三種支給された参加者:三十三人。

 数えてみれば、上のようになる。なお、アイテムの詳細が不明の桂ヒナギクは含まず、シエスタを一応カウントしておいたことを言っておこう。
 明らかに三種支給された参加者が多く、一種二種の参加者は少ない。
 ここから何が言えるのか? 言えることなんて、一つだけだ。
 三種支給された参加者が殆どってこと、ただ一つ。
 おっと、ここで思い出して欲しい。
13ふしぎなおくりもの ◆hqLsjDR84w :08/07/01 21:39 ID:ispBZ8gQ
 伊藤博士は『アイテムの配布を担当していた構成員の部屋に潜り込み、デイパックに本来支給するべきでない道具を幾つか紛れ込ませた』のだ。
 彼は焦っていたことだろう。バレてしまえば、そこで終わりなのだから。
 何が? 彼の命が? 違う。
 彼がアイテムを紛れ込ませる計画が、だ。
 紙に封印したアイテムを持ち、部屋に侵入。速く事を済ませようと焦りながら、デイパックを開いた。

 ――しかし、殆どのデイパックにはアイテムが既に三種入っている。

 速く切り上げようとヤキモキしていた伊藤博士。
 そんな彼が開いたデイパックに既に三種アイテムが入っていたならば、彼はさらに焦っただろう。
 既に三種アイテムが入っているデイパックにさらにアイテムを突っ込めば、アイテムが四種入っているということになる。
 もしもデイパック内を確認されれば、怪しまれることは自明である。
 ただでさえ長居は出来ない。早急に去らねばならない。監視は無いにせよ、構成員が立ち寄る可能性が無くは無い。
 そんな状況で、伊藤博士はもう一つデイパックを開いた。
 しかし、それにも既にアイテムは三種入っていた。
 焦りを募らせていく伊藤博士。
 殆どのデイパックにはアイテムが三種入っているのでは――そう考えた彼が、咄嗟に取った行動。
 それが、『デイパックからアイテムを抜き、己の用意したアイテムを突っ込む。引き抜いたアイテムは、シエスタのものとして放置』という苦し紛れの行為。
 エンリコ・プッチは『シエスタのアイテムを用意したのは、不自然に増えたアイテムに違和感を持たせないため』と推測したが、以上が真実であったのだ。
 現実とは、いたく奇妙なモノである。
14ふしぎなおくりもの ◆hqLsjDR84w :08/07/01 21:40 ID:ispBZ8gQ

 さて、彼が紛れ込ませた道具とは一体なんなのだろう。
 一つは既に明かされている。
 ケンシロウに支給され、ケンシロウが命を賭けて託した『成仏鉄球』。
 それが封印された紙を開いたときに、伊藤博士からの手紙も共に出てきたことから明らか。
 では、もう一つは、何だ?
 一つが強化外骨格『凄』を無効化させるアイテムならば、もう一つはBADANの砦へとたどり着ける移動手段? 
 クルーザー? それとも、ヘルダイバー? 或いは、その他の雷雲を突き進むことが出来る移動手段?
 ノゥ。それら全て、もともとから支給されるべきであった支給品にすぎない。
 そもそも『成仏鉄球』には手紙が同封されていたのに、もう一つに同封されていないってのはおかしい。
 これまで幾つものエニグマの紙が開かれた。しかし手紙が入っていたのは、『般若心経と書かれた紙』=『成仏鉄球』だけ。
 ということは『紙から出ていない』アイテムこそが、伊藤博士の紛れ込ませたもう一つのアイテム……!

 つまり『■■■』か、或いは桂ヒナギクに支給されたどれかであろうか?

 いいや、片方は違う。
 『■■■』が伊藤博士が紛れ込ませたアイテムであることは、絶対にない。
 上記のランダムアイテム表を見て欲しい。
 『■■■』を支給されたのは、空条承太郎。彼のランダムアイテムは、『二種』。
 伊藤博士は元から三種アイテムが入っていたデイパックから一種アイテムを抜いて、自分の用意したアイテムを紛れ込ませた。
 『■■■』が紛れ込ませたアイテムならば、承太郎はもともと三種のアイテムを支給されるはずだったことになる。
 シエスタに支給されるはずだったアイテムは二種。一種はもともとケンシロウのデイパックに入っていた。
 承太郎のデイパックに伊藤博士がアイテムを紛れ込ませたなら、シエスタに支給されるはずだったアイテムは『三種』でなければならない! だが、違う!
 ゆえに、『■■■』は伊藤博士が紛れ込ませたアイテムに非ず……!


 つまり、桂ヒナギクに支給されたうちの一種が、伊藤博士が紛れ込ませた支給品ということになる。
 そして、桂ヒナギクの支給品が三種なのもここで確定となる。
 それら正体とは、はたして……――――――――


15ふしぎなおくりもの ◆hqLsjDR84w :08/07/01 21:40 ID:ispBZ8gQ
 ヒナギクの言っていたH−4に到着したので、車から降りる。
 車に乗ってた所為で、探し物が見つかりませんでした――じゃあ、面白くもねぇ。
 勇次郎とラオウの元へと向かう際に、乗り捨てた車を道中で見つることが出来たのは幸運だったな。
 飲酒運転は最近厳しいらしいが、缶ビール一本でそこまで酔うワケが無ぇだろ。むしろ落ち着いて、感覚が研ぎ澄まされるってもんだ。
 そもそも飲酒運転にどうのこうの言う連中、こんなとこにゃあ……いや、いるか。
 覚悟とヒナギクの姿が、頭に浮かんできやがった。
 アイツら二人で移動してったが、今頃は仲良くやってんのかねえ。

「しかし、こいつは酷ぇや」

 車から降りて暫く移動した頃、周囲に大量の黒い破片が散らばっているのが確認できるようになった。
 他にも、木々や石ころなど何もかもにこれまた真黒い煤が付着し、そこで激闘があっただろうと推測せざるにいられねぇ。
 注意深く探し物を探しながら、歩き回る。
 どれほど経っただろうか。
 黒い破片も煤も無い辺りまで着いた頃、やっと見つけた。宝物――ヒナギクのデイパック――を。
 それをひょいと拾い上げて、車を駐車した場所に戻ろうとしてやめた。
 ヒナギクによれば、アイツが最初に気の狂った神父に襲われた時、命を捨てて逃がしてくれた男がいるという。毛利小五郎とか言ったか?
 こんな端っこにゃあ、わざわざ誰も来ないだろう。
 墓を作る時間は無ぇが、供え物を捧げる時間くらいはあるだろう。
 さっきのビールでも持ってきてればよかったが、悪ぃな。水で我慢してくれや。



 全身を切り刻まれていた毛利小五郎――だったと思う――の死体の元に水が入ったボトルを置き、車の元へと駆ける。
 その道中でついつい気になってしまうのは、宝物だ。
 何が入っているのか。
 そこまで期待はしていないが、速く見てみたいもんだ。
 思い立ったがままにデイパックに手を突っ込むと、紙は三枚みてぇだ。
 適当に一枚選んで、紙を眺める。
 名前と説明が書いてあるはずだが……
16ふしぎなおくりもの ◆hqLsjDR84w :08/07/01 21:40 ID:ispBZ8gQ

「こりゃあ、どういうことでぇ」

 勝手に呟きが漏れてきやがった。
 だが、確かに意味が分からねぇ。
 書いてあったのは、二文字だけ。ただ、『列車』とだけ書いてあった。
 紙をひっくり返しても説明などはなく、疑問符だけが浮かんできやがる。
 紙を開いてみれば、今度は紙が二枚出てきた。
 一枚はやたら文字が書き込まれていて、もう一枚は少し文字が書かれているもほぼ無地。
 ほぼ無地の方をポケットに突っ込んで、もう片方に目を通す。

「……どういうことでぇ」

 またしても、勝手に言葉が口から零れた。



 愚地独歩が、キーを挿しっぱなしにしてあった乗用車に勢い良く乗り込む。
 元から持っていたデイパックも回収したヒナギクのデイパックも、後部座席に無造作に積み上げ、ポケットから二枚の紙を取り出す。
 一枚にはみっちりと文字が書き込まれていて、もう一枚には一言だけ『同封した注意書きを必読』と書かれている。

 ――これが、伊藤博士が紛れ込ませたもう一つのアイテム。

 再度文字が書き込まれた紙――伊藤博士からの手紙に、目を通す独歩。
 その表情は険しく、彼にしては珍しく冷や汗などというものを流している。
 何度も手紙を再読するとポケットに押し込み、『注意書きを必読』と書かれた紙――エニグマの紙を手にする。
 伊藤博士からの手紙には、まず成仏鉄球に同封された物と同じことが記されていた。
 当然ながら、上空に存在する衛星カメラと首輪内の盗聴器についての記述もあった。
 だからこそ独歩は、乗車するまで紙をポケットに突っ込んでおいた。
 また成仏鉄球に同封された手紙とは違うことも、独歩の読んだ手紙には書かれていた。
 それは、伊藤博士のが紛れ込ませたアイテムに関する説明。
17ふしぎなおくりもの ◆hqLsjDR84w :08/07/01 21:42 ID:ispBZ8gQ
『もう一枚の紙には、文が記された紙が封印されている。
 それを読み上げれば、接近物迎撃システムの反応できぬ速度でBADANの砦まで一直線に辿りつくことができる列車が出現する。
 しかしそれを護衛している怪人達も、列車は連れてきてしまうだろう。
 強い意志と怪人を倒しえる能力を持つ者達が集い、使い時が来たと判断したならば是非とも使って欲しい』

 ここに書かれた列車とはBADANがとある世界から調達し、現在サザンクロス内に保管してあるものである。
 研究者達とBADANの技術により、どこで呼び出してもサザンクロスまで一直線に疾走するよう改造してある。
 その改造を担当したのもまた――伊藤博士であった。

 それを知る由もない独歩が、ゴクリと喉を鳴らす。
 そして左の目をカッ見開くと、覚悟を決めたようにエニグマの紙を開こうとし――やめた。

(まあ、あとで構わねぇか)

 学校辺りで他の参加者達と合流してからでも遅くはない。独歩はそう判断した。
 エニグマの紙も手紙と同じポケットに押し込み、独歩はアクセルを踏む。
 学校へ向けて少しずつ動き出す車の中で、独歩はニィと笑みを浮かべる。

(それにしても――――列車、か)

 ハンドルを握る独歩の両手に力が篭る。
 列車。人生を空手に捧げた愚地独歩は、その文字を見た瞬間にすぐさま考えた。列車に乗った状態での、列車を護衛する怪人とやらとの戦闘を。
 走る列車の上。不安定な戦場。足に力を入れる事を重要とする空手の使い手には、不利な戦場と思うかもしれない。
 しかし、決してそんなことはない。
 空手とは、そもそも中国拳法が琉球へと伝わった者を祖とする。
 かつて琉球では海上での合戦が多く、列車内の比ではないほどに不安定な船の上での闘争が基本であった。
 その中で、多くの犠牲と試行錯誤、そして淘汰の果てに勝ち残った立ち方が存在する。
 ――三戦(サンチン)。
 攻撃防御の両面に優れ、何よりバランスのよさが特徴の構え。
 独歩は弟子に自ら伝授するほど、その構えを得意とする。
 故に、笑う。心を躍らせる。手に力が篭る。自然にアクセルを踏む力が強くなる。
 他の参加者を守ることを優先すると決めながら、独歩はこれから起こるであろう戦闘のことで頭がいっぱいであった。
18Classical名無しさん:08/07/01 21:43 ID:jZ38XTxo
19Classical名無しさん:08/07/01 21:43 ID:cyPTjHTM
20ふしぎなおくりもの ◆hqLsjDR84w :08/07/01 21:43 ID:ispBZ8gQ



【H−4 路上/2日目 朝】
【愚地独歩@グラップラー刃牙】
[状態]:体にいくつかの銃創、頭部に小程度のダメージ、左肩に大きな裂傷 左腕を深く抉られている
[装備]:キツめのスーツ、シルバースキン@武装錬金、車@現地調達、伊藤博士からの手紙(ポケット内)、『注意書きを必読』と書かれたエニグマの紙(ポケット内)
[道具]:基本支給品一式×3、首輪×2、ジャッカル@HELLSING(残弾数1)、神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂
ベレッタM92(弾丸数0/15)、ハート様気絶用棍棒@北斗の拳、懐中電灯@現地調達、包帯と湿布@現地調達、不明支給品×2
[思考・状況]
基本:闘うことより他の参加者 (女、子供、弱者) を守ることを優先する。
1:学校へ向かう。
2:可能なら、光成と会って話をしたい。


[備考]
※パピヨン・勝・こなた・鳴海・覚悟・村雨・ヒナギク・かがみと情報交換をしました。
※刃牙、光成の変貌に疑問を感じています。
※独歩の支給品にあった携帯電話からアミバの方に着信履歴が残りました。
※BADANの存在を知り、かがみから首輪のステルス機能の事、解除方を知りました。また零の暗雲についての推測も知りました。
※愚地流奥義にしたいと思っている技を会得しました(意を消した拳、これを拳のみならず他の空手技にも用いる事が出来る)
※繁華街のホテル(E-2中心部)内に鷲巣麻雀セット@アカギ、置手紙が放置されています。
※伊藤博士の手紙より、バトルロワイアルに関する情報を得ました。
※『注意書きを必読』と書かれたエニグマの紙を開けば、文が記された紙が出現します。
※その文を読み上げれば、護衛している怪人達共々『列車@???』が現れます。
21ふしぎなおくりもの ◆hqLsjDR84w :08/07/01 21:43 ID:ispBZ8gQ

【村雨、かがみ、覚悟、ヒナギク、独歩、エレオノール、服部、ジョセフ、八人の共通備考】
※一通りの情報交換は終えています
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※五人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首輪には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている 。
首輪にはステルス機能があり、身を清め水を掛ける事で解除可能
※五人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論
※BADANに関する情報を得ました。
【BADANに関する考察及び知識】
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
光成は司会役として脅されている。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって”都合がイイ”状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては”どーでもイイ”状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
22 ◆hqLsjDR84w :08/07/01 21:45 ID:ispBZ8gQ
投下完了です。
誤字、脱字、その他アレ? と思う点ありましたら、指摘してください。
スレをまたいでしまい、本当に申し訳ない。
支援、本当に感謝です。
23Classical名無しさん:08/07/01 21:45 ID:jZ38XTxo
24Classical名無しさん:08/07/01 21:47 ID:jZ38XTxo
投下乙!
すさまじい考察に驚いた!
支給品欄からここまで圧倒的な文章力と、納得力をかもし出すとは!
GJ!
25Classical名無しさん:08/07/01 21:54 ID:k/RNA0hk
投下乙。
なんという見事な理詰め! 列車はアレかw
今まで私が見てきた中で、最も自然な脱出フラグかもしれません!
皆が好き勝手に出したランダムアイテムからここまで持ってくるとはねぇ。
列車を呼ぶ時、独歩ちゃんには「あのセリフ」が似合いそうで仕方が無いw
26Classical名無しさん:08/07/01 22:19 ID:Vc.MaZHs
投下乙
丁寧な説明に加え、そこから導き出されたこの結論ッ!
僕はこのSSにッ!敬意を表するッ!

そして列車…
あれしかないでしょwwwww
27Classical名無しさん:08/07/01 22:34 ID:ANFA45AM
乙です。
道具に関する説明は、ストーリー的な整合性もさることながら、
読者にとっても道具の状況を理解する上で非常に有り難いと思います。

てか列車てなんなんだ・・・。
みんな分かってるのか、ちょっと悔しい。
28Classical名無しさん:08/07/01 22:41 ID:M7mwNXa2
でもあれ、速度は大したこと無いよ、だが盛り上がるといえば盛り上がるのは間違いない
29Classical名無しさん:08/07/01 23:05 ID:cWK007Rg
投下乙

あれ、脳裏に自然とあの列車の雄姿がイメージされるw
呼ぶのはこりゃもう独歩しかいませんな
30Classical名無しさん:08/07/01 23:05 ID:jMS6W0Q2
投下乙です!
凄い……支給品の分配についての考察には、ただただ圧倒されるばかりです。
伊藤博士が託した希望は、きっと実を結ぶはずだ!
これでクルーザーにぎゅうぎゅう詰めにならなくても大丈夫ww

>>28
伊藤博士が改造して、スピードや耐久力を向上させたんじゃないかな?

>>1
スレ立て乙!
31Classical名無しさん:08/07/01 23:06 ID:cyPTjHTM
投下乙です。
てかこの調べ物大変だったでしょう!? GJです!
こうして見ると博士も苦労してるなぁ。

列車は……速度無くても走り切れそうなイメージがw
怪人も一緒についてくるというそのハードル設定は上手いw
32Classical名無しさん:08/07/01 23:08 ID:KhMe6QVw
投下乙
列車か……むぅ、アレかな?
やってくれるな、伊藤博士

そして支給品分析も乙
こうやって解説されると分かり易い
しかし偏ってるよなぁ……
特に一種しか支給されず、しかもそれがハズレだった市川と杉村がカワイソス
旦那の支給品もアレだけどw
33Classical名無しさん:08/07/02 01:01 ID:nb9NmmFg
乙です。
列車……あれっきゃないわなぁw
しかもあれ、俺の記憶が確かなら速度と関係なしに雷雲突破できるし、まさに最適だな。
伊藤博士、よくやったな……w
34Classical名無しさん:08/07/02 10:17 ID:rLYbAMS.
列車? ああ、あれか。あの奇妙な……


久々にあの漫画、全部通して見るか。
35Classical名無しさん:08/07/02 18:57 ID:MZ11VPmc
3部小説の凶悪連結器ですね、わかります。
36 ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:36 ID:1GrjM3lo
ギリギリセーフ……投下します
37チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:38 ID:1GrjM3lo
「あ……ちょっと待って!」
ブルルル……と嘶くエンジン音に重なったそれは、金属の擦れあう様な高音であった。
クルーザーを発進させようとした村雨をかがみが制止したのだ。

「どうした? トイレか?」
村雨は心の内にある焦りを隠しきれないでいた。
首輪の解除にも成功し、プログラム崩壊の時は確実に近づいている。
この首輪の情報を伝えるためにも、一刻も早く仲間たちの元へ向かわなければならない。
それは無言で彼らを見つめているエレオノールからも感じられる事だ。

「違うわよ! 葉隠くんたちのことよ!」
「あ……」
パピヨンとの遭遇や伊藤博士からのメールなどで完全に忘れていた。
覚悟とヒナギクもこの学校へ向かっているのだった。
エレオノールも口をぽかぁんとあけて固まっている。
どうやらこの女も忘れていたようだ。

「入れ違いになったら困るでしょ?
 しばらくここで待っていた方がいいんじゃないかしら?」
確かに、2人と合流してから独歩のもとへ向かった方が確実である。
遅れてきた2人がこの激戦の跡を見たら、村雨達に何かあったと考えてしまうだろう。
書置きを残そうかとも考えたのだが、この広い学校にメモを残したところで、彼らがそれを見つけられる可能性は低い。

「そうだな。ここでしばらく待って、2人が来なければ集合場所へと向かうとしよう」
残った参加者の中で危険人物は、さっきまで自分達と戦闘をしていたパピヨンただ1人。
ならば彼らが道中で危険に巻き込まれた可能性は低い。
おそらく途中で独歩の元へ引き返したか、どこかで道草を食っているのだろう。

ハンドルを大きく右に切る。
大きな弧を描きながらクルーザーをUターンをさせる。
このバイク、スピードは申し分ない。だが大型バイクである以上、どうにも小回りが利かない。
それでも村雨は起用に校門へと車体を進入させると、そびえ立つ校舎へと進路を固めた。
38チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:38 ID:1GrjM3lo

学校というのは、災害時に避難所にも使われるほど丈夫に造られている。
数多の激戦の舞台となったこの学校も例外ではない。
ガラスが割れたり、壁が崩れたりなどの傷はところどころに見られる。
しかしその巨体は崩れる気配さえ見せない。まるで『何事も無かった』といわんばかりに。
まるで次なる戦いを受け入れるかのように。
幾ら戦いに巻き込まれようとも、中の人間の安全だけは守りぬく強い意思を感じる。

あぁ、強いってのはこういう事を言うのだな。
俺もこんな風に生きてゆきたいものだ。

白い巨城に威圧されながら、村雨はそんな事を考えていた。
思考を止め、感覚を研ぎ澄ませば向かい風が心地よい。
俺はこんな記憶すらも無くしていたというのか。なんとも勿体無い。
こんな気分でバイクを走らせるのは何時ぶりだろうか。
綾崎と共にこの会場を北から南へ駆け抜けたときは、こんな感触は感じる暇も無かったな。
なんだか、遠い昔の事のように思える。
人の記憶とは儚いものだ。いなくなった人物に関しての思い出は、特に。
我々の脳は、なんと出来が悪いことか。

「忘れてはならない事ほど、色褪せるのが早いのだな」
俺が囁いた言葉に反応したのか、エレオノールの顔が曇ったのが見えた。
クルーザーを昇降口の前に止めると、下駄箱で靴を履き替えることもせずに廊下へと足を踏み入れた。
敵などいないのは分かっているが、少しだけ警戒を強めてしまう。
ついさっき、この学校でパピヨンと戦った。
その記憶は、流石に色褪せてはいなかったのだ。


普段は学生であるかがみからすれば、土足のまま校舎を徘徊するのは違和感を感じた。
だが逆に言えば、普段なら教師に怒られるような事が許されているのだ。
その事実は彼女にとってみれば多少の開放感でもある。
殺し合いの時間から抜け出した気がして、ちょっとばかり足取りも軽い。
39Classical名無しさん:08/07/03 00:39 ID:YRuxeTm2
40Classical名無しさん:08/07/03 00:39 ID:YRuxeTm2
41チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:40 ID:1GrjM3lo

そのままの気分で広い廊下を見渡せば、なんだか見慣れた日常が広がってる錯角に陥る。
休み時間の終了を告げるチャイム。
掃除をサボって、箒で素振りをする生徒。
廊下を走る男子を注意する教師。
ほんの数日前まで、当たり前のように流れていた日常。

教室に入る。使い古された汚い教室。
それでいい。綺麗な教室などありえない。
生徒がいて、教師がいて、天井にはシミがあって、黒板はチョークの跡が取れなくて。
それでいいんだ。
その『そこに誰かがいた証』が残っているのが、心を落ち着かせてくれる。

どこでも、どこの教室もそうなのだ。
私達の学校でもそうだった。
休み時間、つかさたちのいる教室へと足を踏み入れる。
こなたが眠そうな目を擦りながら、よく分からないゲームの話をしている。
また徹夜してネットゲームでもしていたのだろう。
その話を、つかさがハテナマークを掲げながらも笑顔で聞く。
分かんないなら分かんないっていいなさいよね、全く……。
歩くみゆきをこなたが呼び止め、くだらない質問をぶつけた。
何で人生の役に立ちそうもない事ばっかりに興味を持つんだコイツは……。
訳の分からん質問をしたこなたに、絶好のタイミングで私がツッコミを……。

ツッコミを入れようとしたのに……。

なぜなのだろう。彼女たちの元へと歩み寄りたいのに。

それができない。

だって私には腕がないのだ。
42チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:41 ID:1GrjM3lo

切り落とされたのだ。あの男に。
私の『日常』は、あの男の指から伸びた糸で切断されてしまったのだ。
いとも容易く、なんとも無慈悲に。

だから私は彼女たちの元へは行けない。
私はもう、『日常』に踏み入る資格を持っていない。
こんな姿になってしまったのに、どう接したらいいのだろうか。

教室では、いまもこなたたちが……。
こなたたちが……。

「…………あ……」

鼻を突いたのは血の臭い。
飛び散った肉の臭い。
それらが腐った臭いだ。。

「こな、た……?」
泉こなたはバラバラになっていた。
彼女の原型は殆ど残されてはいない。唯一の手がかりは、その髪の毛。
グチャグチャの中で、生きていた頃と同じ形で残っていた彼女の髪の毛が、『この死体は泉こなただ』と私に伝える。
血液の赤と、臓物の桃色、骨の白が作り出した歪なマーブルが気持ち悪い。
泉こなたはもう二度と動かないというのに、零れ落ちた眼球は私を睨み続ける。
まるで、残った私を責めるかのように。

「……! つかさ!」
この視線から逃げたくて顔を逸らした先、私から見て右側に彼女はいた。
彼女の腹から突き出ているのは……何と言ったかな……。
あぁそうだ。サンライトハートだ。
突き刺さった根元から真っ赤な鮮血があふれ出し、床を汚す。
そのサンライトハートがつかさから生えていて、それを握っている女は笑っていて。
43Classical名無しさん:08/07/03 00:41 ID:YRuxeTm2
44チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:42 ID:1GrjM3lo
楽しそうにつかさを振り回して遊んでいて。
私は何も出来ない。
叫ぶ事すら出来ない。

(『私が帰る場所』なんて……残ってないじゃない……)
『日常』が消えたのだ。
たった1人の妹も、かけがえの無い友人も、ついでにこの腕も失った。
全て、私の大事な『日常』なのに……。

カチカチという音が聞こえる。
何の音だろう? 私には分からない。
時計の針のように規則正しく、一定のリズムで……。

『カチカチカチカチ……』

つかさの死体が私を見つめる。
彼女も私を責めているのか。
たった1人生き残った私を責めているのか。
助けてやれなかった事を恨んでいるのか。
なぜ、彼女はこんなにも冷たい視線を私に向けるのか、分からない。
とにかく今は、この視線が怖い。

目の前からはこなた、右側からはつかさが私を睨み続ける。
そしてそれらから逃れた先、左側には彼女がいた。
「みゆき……」
一目で解った。死んでいる。
だって首が無いんだから。
彼女の死体からは、血が抜き取られていた。
吸血鬼に殺されたらしい彼女の肌は青く、皮膚が所々黒ずんでいる。
知的な彼女ももういない。
私の知らないどこかで死んだのだ。
45Classical名無しさん:08/07/03 00:43 ID:YRuxeTm2
46チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:43 ID:1GrjM3lo

『カチカチカチカチカチカチ……』
またこの音か。
なんの音だか知らないが、いい迷惑である。
こっちは結構精神的にキツいのに、静かにしてはくれないものか。

一向に止まない音を無視して、3人の死体へ意識を戻す。
「どうしてこんな事になっちゃったのかしら……」
ジワリと両目に涙が滲んでくる。
私が無事にこの殺し合いを脱出したとして、失ったものはもう戻ってこない。
この片腕を失った体で、家族を、友人を失った日々を生きていく。
そんなの、耐えられる?

『カチカチカチカチカチカチカチカチカチ……』

強くならなくちゃいけないのに……。
足手まといになってはいけないのに……。
立ち止まってはならないのに……。
この手を零れた全てが、私の未来を絶望へと塗りつぶすのだ。
私を待っているのは、大事なピースが欠けた世界。
支えを失った私は、その世界で生きていけるのだろうか。

『カチカチカチカチカチカチカカチカチカチカチ……』

それにしても、なんて煩い。
悲しみにくれている人間に向かってこの仕打ちはなんだ?
少しは気を利かせて静かにしてくれても……。
その正体を探るため、イライラしながらも音のするほうに注意を向けた。

「……黒板?」
そうか、これはチョークで黒板に字を書いてる音か。
カチカチとゆっくりではあるが確実に、緑色に白い軌跡を刻んでいく。
47チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:43 ID:1GrjM3lo
そして、そのチョークを握っているのは……。

「エレオノールさん……」
名前を呼ぶと、彼女は振り向いて小さく笑った。
黒板へと向き直ると、綺麗に整列した文字列の末尾に新たな一文を書き加える。
カチカチと力強く、躊躇することなく書き下された言葉。

『人間は、不完全なのです』

「……あ」
視界が白く染まる。
今まで私を包んでいた幻想が消える。
現実へが広がる。決して幸せとは呼べない現実が。
消え行く思考の渦の中に、消えていった人の笑顔が見えた、気がした。


「大丈夫か?」
「村雨さん……大丈夫、ありがとう」
クラリと倒れかけた体を、村雨が抱きとめてくれた。
現実の時間では10秒にも満たないであろう白昼夢から覚めると、そこは何の変哲も無い教室。
つかさたちの死体も、鼻を突くような刺激臭も消え去っていた。
夢だったのか。
だが、この腕が消えた事実も、つかさたちが死んだ事実も消えることはない。
私の『日常』が失われたという事実は消えることはない。
分かっている。そんな事を考えている暇などありはしない。
村雨や覚悟、エレオノールの足を引っ張らないようにしなくてはならないのだ。
帰ってからのことなど、今は考えないようにしなければならない。
そう心に決めているのに、私の心からは不安と絶望の闇が拭い去れない。

怖い。
何もかもを失って、それでも日々を生きなくてはならないのが怖い。
今まで気付く事のなかった恐怖。
48Classical名無しさん:08/07/03 00:44 ID:YRuxeTm2
49チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:45 ID:1GrjM3lo
普通でないことが、普通の世界では恐怖として襲い掛かる。
私の世界は、私を受け入れてくれるのだろうか。

「かがみ……どうした? 顔色が悪いぞ?」
「なんでもない……なんでもないから」
村雨に心配をかけるような事だけは避けなくてはならない。
恐怖に耐えることくらいしか、今の自分にはできないから。
仲間達のように戦う事なんかできない自分にできる事など限られている。
つらくて立てないなどという言い訳は通じない。

「本当に……大丈夫、だから」
両の足に力を込め、自力で立つ。
あふれ出しそうになる涙を必死に押し留めながら。
泣いてはいけない。
泣く事は許されない。

『カチカチカチカチ』

この音は知っている。白いチョークの足音だ。
私を白昼夢から覚ましてくれた呼び声だ。
「エレオノールさん……」
名前を呼んでも、今度は振り向かない。一心不乱に白線を舞わせる。
黒板に目を移せば、そこには様々な言葉が綴られていた。
私が幻想の中で聞いた音は、これらの言葉を書き残していた音か。
それはエレオノールが様々な人間から送られたメッセージだった。

『お前の笑顔……可愛かった』
この殺し合いの最中、加藤鳴海に笑顔を褒められた。
正直に言えば、とてつもなく嬉しかった。

『幸せにおなり』
消防署での夢の中で、ギィが私に残してくれた言葉。
50Classical名無しさん:08/07/03 00:45 ID:YRuxeTm2
51チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:45 ID:1GrjM3lo
死んで尚、私を救うために……それなのに私はその言葉を……。

『きっと笑顔になれる』
私が殺した少女の言葉。
彼女は最期まで私を救おうとしてくれた。私に殺されるその瞬間まで。

『君が欲しい』
その少女が恋をした少年。
少女が死んだ今も、私の中に眠っている言葉だ。

『燃えるような恋を』
キュルケ。言葉の通り炎のような少女であった。
感情が豊かで、私とは真逆の、輝いている少女であった。

『お前はもう死んでいる』
ケンシロウが私の人間を証明してくれた言葉。
人形でないから私はこうして生きている……らしい。

カチカチカチカチ
チョークが再び踊りだす。
黒い大地に文字を刻む。それこそが、この物体が全力で演じるに値する役割。
『これらは全て私の中に眠る言葉です。
 死んでしまった人たちが託してくれた言葉です』
彼女が文字で会話しているのは主催者を警戒しての事。盗聴されているから声が出せないのだ。
だが同時に、しっかりと言葉を目に見える形で表したい彼女の願いもあったのだろう。

『人間を手に入れた替わりに全てを失った私の、生きる全てです』

そして……

      「しろがね!」
52Classical名無しさん:08/07/03 00:46 ID:YRuxeTm2
53チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:46 ID:1GrjM3lo

彼の言葉、ずっとずっと私を見てくれていた彼の言葉。
彼は未来の私を知っていて、それでいてあんなに汚れてしまった今の私さえも命を賭けて救おうとしてくれて……。
私が守らなくてはならなかったのに……。
いつからだろう。
この記憶の中の彼は、私を守ってくれていた。
見違えるほどに成長し、強くなっていた。
彼から届けられた言葉はたくさんあって、その全てが私の宝石なのだ。

でも……。
彼の言葉は、教えてあげない。
これだけは、私の中の秘密だから。

その代わり……。

スゥゥゥ……とエレオノールがある言葉の下に二重線を引く。
『人間は、不完全なのです』
「あ……」
この言葉は、さっきかがみを幻影から救った言葉。
地獄の光景にかがみが苦しんでいる時、笑顔でエレオノールが書いた言葉だ。
『これは私があなたたちに伝えたい言葉です』
決して上手とはいえないが、力強い文字であった。
 
『日常の大切さに気付いたときには、もう自分の望む日常は存在しない』
かがみの目が見開かれる。
エレオノールは彼女の苦しみを理解していた。
先ほど彼女の見た地獄を、なんとなく感じていた。
そして、かがみがそれを忘れようとしているのも知っている。
自分たちに迷惑をかけたくない一心で忘れようとしているのだろう。
だがエレオノールは、かがみが必死に考えまいとしているのを承知で、その事実と向き合わせた。

『忘れたくない思い出は、どんどん色褪せていく』
54Classical名無しさん:08/07/03 00:46 ID:YRuxeTm2
55チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:47 ID:1GrjM3lo
今度は、村雨。
彼が求めていた記憶は流動的で、永遠などそこにはない。
思い出は少しずつ剥がれ落ち、おぼろげになっている。
苦しい事は心の壁にこびり付いて洗っても洗っても落ちないくせに、大切な思い出は絶望的なスピードで風化していく。
あんなに求めた記憶のはずなのに。
ずっと、ずっと求めていた思い出なのに。

『やっと笑えるようになったのに、その笑顔を見せたい人はもういません』
エレオノールだってそうだ。
加藤鳴海は死んでしまった。
人間になった私の笑顔はとびきり美しいと評判なのに……。
今こそ、彼にこの笑顔を見て欲しい。本当の笑顔を伝えたいのに。
どうして、こうも上手くいかないんだろう。
どうして現実を生きることはこんなにも苦しいのだろう。

『だけど、変わってしまうから人間なんです。
 自分が、世界が変わっていくことはちょっと怖いけど、変われないことはもっと、遥かに、怖いはずです』

かがみは、村雨はこの言葉をどう受け取っただろうか。
もしかしたら、エレオノールの言いたいことなど全く伝わらないのかもしれない。
伝えたい事が伝わらない。これも人のなせる業だろう。
だけど今は、それでいい。
彼女たちが、自分の傷と向き合ってくれるなら、それでいいんだ。


「……うん。私の日常は変わっちゃうだろうけど……。
 それでも皆が残してくれた明日だもんね」
エレオノールさんの言いたい事、なんとなくだけど分かったよ。
そう言えば、私1人の命じゃないんだったわ。
つかさたちがいなくなって世界が変わったように、腕を切り落とされて私自身が変わったように……。
この世界で皆と出会って、この命も変わったんだな……。
56チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:48 ID:1GrjM3lo

「まだ気持ちの整理はつかないけど、なんとかやっていけそうよ。ありがとう」
取り合えず今は、背筋伸ばして、皆に笑われないような生き方をするとしますかッ!
流石に『闘争でリセットォッ!』とまではいかないまでも、皆と戦った末に見える答えもあるよね。
もし帰って、それでも辛いなら……。
また私が変わればいい。それが無理なら世界を変えればいい。
世界を変えるなんて、この殺し合いをひっくり返すよりは、全然楽チンなんだから!


「そうだな。俺の記憶は消えてしまう」
今も俺の出来損ないの脳細胞は、大切な思い出を少しずつデリートしてやがるのだろう。
でも俺は、その隙間に新たな思い出を詰め込んで生きている。
ならば、忘れてしまう事も受け入れよう。
忘れてはならない事は、できるだけこの心に刻んでしまおう。
そして……。

「俺も、お前も人を殺した。記憶のせいで人を殺した」
命よりも大事な……彼らの思い出を、力と変えよう。
永遠に消えることのない証としてこの身に刻み込もう。

外へ飛び降りるために、村雨は窓から身を乗り出す。

「これは、記憶に踊らされた俺とお前がッ! 辿り着いた1つの『決着』だッ!」
右足に力を込め、跳躍。
まるで空を飛ぶかのような勢いで窓から飛び出す。
2階建ての校舎は外から見るほど実際は高くはない。
地面に到達するまでにそんなに時間は残されてはいない。
だが、その短時間で充分。刹那で充分なのだ。
これは何度も何度も繰り返してきた言葉なのだから。

「変ッ身ッ!」
57Classical名無しさん:08/07/03 00:48 ID:YRuxeTm2
58Classical名無しさん:08/07/03 00:49 ID:YRuxeTm2
59チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:49 ID:1GrjM3lo

なんだ、今までずっと……俺はこうして変わってきたんじゃないか。
こうして姿を変え、相手を倒して。
変身が解けても、その俺は前より少しだけ変わっている。
強くなると言う事もまた、変わっていくことなんだな……。

着地したとき、その姿は村雨良の物ではない。
仮面ライダーZX。10人目の赤き戦士。
舞い上がった土煙の中、校庭の端に静かに立つ。
思い返すのは、自分にダメージを与えた者たち。
記憶の中にしっかりと刻まれた『痛み』。
思い返せば、俺に最初に『痛み』をくれたのはアイツだった。

右手を掲げる。真っ直ぐに水平よりやや高く。
アイツは悪人だったのだ。しかし誰にも影響されず、惑わず、美学を持っていた。
だから胸を張って言う事ができる。
アイツは、何よりも気高い生き物だと。

「螺ッ! 螺ッ! 螺ァッ!」
ちぎれるかと思えるほど強く腕を伸ばす。
まだ足りない。体全体、いや、自分が立っている大地からも力を……。
地球の力をこの右の腕に!

「螺旋ッッッッ!!!!!!」

       最初の1つ。葉隠散の『螺旋の力』

構えこそは同じだが、放たれた一撃は葉隠散の生み出すソレとは全く異なっている。
散の螺旋は山をも一瞬で吹き飛ばす力を一転に集中させ、敵の体内で回転を爆発させる技。
それこそが螺旋の真髄。
しかし村雨にそのような技術は無い。
故に彼の作り出した螺旋は暴風だった。
60チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:50 ID:1GrjM3lo
荒れ狂う竜巻が彼から、真横に走っている。
この技の本当の名前は『きりもみシュート』という。
だが地球の力すらも利用したその威力において、以前とは段違いなものとなっている。
今はこれが、『彼の螺旋』だ。
螺旋は地面を抉り、立ちはだかる全てをなぎ倒しながらレーザーのように突き進む。

だがこれで終わりじゃない。
彼の記憶の集大成は始まったばかりだ。
自らが作り出した暴風の中心に向けて疾走する。
恐れることなく、戸惑うことなく。
アイツは優しい男だった。戦いなんか向かないのではないかと思えるほどに。
だが、強く誰かを守るという一点においては、俺を遥かに凌駕した力を持っていた。
誰かの為に生き、誰かのために死んでいった。
そんな生き方、望んだからといってできる事じゃない。
それは、強さと優しさを兼ね備えた人間だけが辿り着ける高みなのだ。

「疾風の如くッ!!!!」

       2つ目。綾崎ハヤテの『突進』

体中のエネルギーを放出しながらの突進。
シンプルではあるが、超必殺技とはそういうものである。
単純な技の構造であるが故に、ただ単純に『強い』のだ。
放出されたエネルギーは無数のカマイタチから村雨の体を守り、彼は文字通り疾風のように駆け抜けた。
竜巻の先頭まで追いつき、荒れ狂う風のトンネルと併走する。

まだ終わらない。寧ろ本番はこれからだ。
単純な質問。ゼクロスは何だ?
そう、仮面ライダーだ。
ならば次に放つ技は決まっている!
この『プログラム』に連れてこられる直前、森の中でアイツと戦った。
仮面ライダー1号。本郷猛。
61Classical名無しさん:08/07/03 00:51 ID:YRuxeTm2
62チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:51 ID:1GrjM3lo
あの男のことは良く知らない。だが、アイツが俺に与えたダメージは忘れてはいない。
同じ仮面ライダーとして、この一撃を繋いでいかなくては。

「ライダーキック!」

       3つ目。仮面ライダーの『ライダーキック』

彼はそれをゼクロスキックではなく、ライダーキックと呼んだ。
説明不要の必殺技。
風を貫きながら、ライダーキックが槍のように突き進む。

「おおおおおおおぉおおおぉぉぉぉぉぉぉおおぉおッッ!!!」
ハヤテの超必殺技が体を覆っているが、それでも螺旋で作られた風の勢いは強く、加えてライダーキックの体勢は不安定である。
体の制御がきかない。
ガタガタと風に煽られるままに蹴りの軌道がブレ始める。

「ぐぅ……! おおぉぉぉおおぉおッ!!」

螺旋の軌道につられて体が回転し始める。
駄目だ。完全にコントロールを失った。
あとはこのままこの竜巻に切り刻まれてバラバラになるのみである。
「負け、て……たまるかああああぁぁぁぁッッ!!」

馬鹿な男であった。真っ直ぐな男であった。
望むものは秩序と平和。
従うものは己の正義。
アイツは『それだけ』で生きていた。嘘みたいな話だ。
その愚直な生命は何度も躓きながらも突き進み続け、ついに拳王を堕とした。
正義の証を、今この会場に生きている全てのものに刻んだのだ。
ならば自分も彼に倣おう。彼がそうしたように。
この一撃は『記憶の証明』。だから……何としても完成させなくてはならない!
63Classical名無しさん:08/07/03 00:52 ID:YRuxeTm2
64チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:52 ID:1GrjM3lo

        彼のその拳は、全てをの介入を拒み望むままに突き進んだ。
        放たれるがままの軌道で、何よりも強く。
            剛なる左拳“臥龍”

        彼のその拳は、空気の流れを受け入れ、流されるままに突き進んだ。
        周囲の力を吸収し、己の回転に変えて、何よりも強く。
            剛なる右拳“伏龍”

あの2つの軌道が、この状況を打ち破る鍵だ。
自分の思い描いたとおりの軌道で、それでいて流れに逆らわずに。
これは明らかな矛盾。だが、その無理を奴の正義て吹き飛ばす!
銀のアルターより放たれた2匹の飛龍。剛なる両拳“臥龍”“伏龍”のように。

「うおおおおおおおおぉぉぉぉッ!!!!
 絶ッッッッ!!!!!! 影ッッッッッッッ!!!!!」

        最後の記憶は、劉鳳の『軌跡』。

欠けていたピースがカチリとあるべき場所へと納められた。
振動が止んで、そこに生まれたのは秩序。
村雨良を中心として広がる螺旋の秩序。
彼が進めば、風は彼を守る盾となり、敵を切り裂く刃となる。

「もっとだッ!! もっと輝けッッ!!!」
疾風のように無人の校庭を意のままに駆け抜ける。
ドリルのように遮るもの全てを破壊する。

鮫のように、荒々しく獲物に肉薄し、鷹のように空に舞い上がって、風はその勢いをついになくした。
空中より見渡せば、校庭には遊具も何も残されてはいない。
数々の激戦に耐え切った学校。村雨はそれを一撃でここまで荒らしたのだ。
制限下でこの威力。
65チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:53 ID:1GrjM3lo
主催者もこの技を想定していなかったのだろう。ジグマールのように首輪が爆発する事はなかった。




「すっごおおおおおおおおおおおおおおおい!!!」
 村雨さん、なぁにあれぇ?!」
教室に戻ろうとしたのだが、廊下で待ち構えていたかがみの質問攻めにあってしまった。
あまりの興奮のため、同じ質問を何度も繰り返し聞かれている始末だ。

「いや……俺も無我夢中で……」
「なんて技なの? ねぇねぇなんて技?
 『超村雨スパイラル』とかどう? どうよ?!」
どうよといわれても、『それは普通にあり得ないです』としか答えられないのだが……。
人は興奮するとネーミングセンスが絶望的に悪くなるようだ。

「名前かぁ……どうするかな」
そういえば、技の名前を決めていなかった。
どうやら俺は『名前をつける』ということが苦手らしい。
こういうときはどういう風に決めるものなのだろうか……。

ここは皆の技名を合わせて……

「『螺・螺・螺・ライダー! 〜絶影の如く〜』といのはどうだろうか?」

「なによそれ! ラララライダーってちょっとかわいいじゃないの!
 つーか『絶影の如く』ってなによ『如く』って! 『絶影風味』ってこと? フランス料理じゃないんだから!」

どうやら『興奮するとネーミングセンスが悪くなる説』は俺にも当てはまっているらしいな。
かがみの言うとおり、これでは高級なシーフードか何かであろう。
さて、どうしたものか……。
66Classical名無しさん:08/07/03 00:53 ID:YRuxeTm2
67チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:53 ID:1GrjM3lo

教室の扉を開けると同時に聞こえてきたのは、あの音だった。
カチカチカチカチカチカチカチカチ
少女が希望を生み出す音。思いを伝えるための音色。
黒板は全体的に白く汚れている。何度も書いて、消した跡。

「あ……」

俺たちが帰ってきたのを確認するなり、書いていた文字を隠すように立ちはだかるエレオノール。
黒板に広がる他の文字を見る限り、彼女もあの技の名前を考えていたようだ。

「どんな名前をかんがえたのよ〜」
かがみがニヤニヤと詰め寄る。
自分のことは棚に上げて人のネーミングセンスを笑う気だなコイツは。

カチカチカチカチ
『私のは結構です!』
必死に文字を隠しながら、エレオノールが汚い字で抗議する。
声を出さないという決まりを律儀に守ってはいるが、その顔は羞恥で既に真っ赤になっていた。

「いいから見せろ〜!」
「うぅ〜」
かがみの余りのしつこさに、もはや抵抗するのを諦めたエレオノール。
押しのけられて避けた先に見えた文字は。

「『穿孔キック……』?」
もっとふざけた名前が飛び出すと予想してたのだろう。
虚を突かれたかがみは『穿孔』の意味を理解するのに苦労しているようだ。

カチカチカチカチカチカチカチカチ
『彼女たちの目の前に広がる絶望の壁に孔を穿つ。それが罪を犯した私と貴方の役目です』
「ほぉ……なるほどぉ〜」
68 ◆hqLsjDR84w :08/07/03 00:53 ID:.cBA/tDM
  
69Classical名無しさん:08/07/03 00:54 ID:.cBA/tDM
   
70チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:54 ID:1GrjM3lo
まだかがみは呆けていた。
どうやら、『興奮するとネーミングセンスが悪くなる説』は崩壊したようだな。

カチカチカチ
『ダメです……よね?』
真っ赤になりながら、上目遣いで問いかけられた。
孔を穿つ……。
キックの性質にも合致し、俺の成すべき役割にも合致している。
「いいんじゃないか……穿孔キックか。気に入った!」
もはやこれ以外の名前は思いつかない。

「うん! 穿孔キッーク! なかなか様になるんじゃないかしら!」
かがみもどうやら気に入ったようで、その答えを聞いたエレオノールの顔がぱぁっと明るくなる。
なんとも分かりやすいやつだな。
これで名前も決定。技も完成し、万事オッケーしいきたいところだ。
だが、そう上手くいかないのが現実なんだよな。

「喜んでいるところ申し訳ないが、この技はまだ未完成だ」

「え?」
飛び跳ねていたかがみが固まった。
そういえば彼女も感情が表に出やすいタイプだったな。

「取り合えず形にはなったものの、まだ満足する威力には達していない。
 穿孔キックを完成させるためには、まだ『何か』が足りない」
そう。風を制御して蹴りを放つ事はできたものの、まだ充分な衝撃を敵にぶつけるには俺には何かが足りないのだ。
重要なピースが欠けている。
「『なに』かが足りないんだ……。 それが何なのか、俺には分からない……」
足りないものは気持ちなのか、技術なのか……それすらも分からない。
あいつらの記憶を無駄にはしたくないと言うのに……。

カチカチカチ
71Classical名無しさん:08/07/03 00:55 ID:YRuxeTm2
72チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:55 ID:1GrjM3lo
『焦らないで、ゆっくり行きましょう』
エレオノールは知っていたのだろうか。
この技が未完成だと言う事を。
彼女なら、気付いていても可笑しくはない。
彼女は記憶を紡ぐ事の大切さを誰よりも理解しているはずなのだから。

カチカチカチカチ
『あなたは1人じゃないんですから』
こいつ……絶対気付いてたな。
全く、変な気の使い方は止めて欲しいのだがな。
まぁこの柔らかな笑顔で全てを許してしまう俺も問題と言えば問題か……。

「そうだな。誰かがその『足りない何かを』埋めてくれるかもしてない。
 今なら晴れやかな気持ちで言えるよ……」
窓から外を眺め、空に向かって手を伸ばす。
手のひらを大きく広げると、太陽すらも掴み取れる気がした。

「俺は記憶が欲しい。
 みんなを守るための記憶が」
エレオノールかもしれない。かがみかもしれない。
それとも覚悟や独歩かもしれない。
誰かがこの『足りない何か』をくれるのだろう。その記憶を以って穿孔キックは完成するのだ。
焦っても仕方ない。ゆっくりでいいよな。

散、ハヤテ、本郷、劉鳳、みんな……見ていてくれ。
俺はエレオノールと共に、この絶望に孔を穿ち……かがみたちの未来を創ってみせる!





(希望が芽生えましたね)
73Classical名無しさん:08/07/03 00:56 ID:.cBA/tDM
                
74チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:56 ID:1GrjM3lo
それからずっと、エレオノールは窓辺で空を眺めていた。
考えるのは、村雨の穿孔キックの事。死んでいった人々の事。
そして、蝶人パピヨンのこと。
御前から聞いた。
彼は人間である自分に絶望して、異形の化物へとなったのだと。
誰からも認められない蝶野攻爵という人間から脱皮し、パピヨンとして飛び立ったのだと。

(人間はそれほど魅力の無いものなのでしょうか……)
彼女がその存在の全てをかけて手に入れた『人間』とは、そんなに無価値なのか。
イモムシ程度の価値しかないのか。

(御前……)
両手で握り締めた六角形を胸に抱く。
(私は、彼を救いたい……)
そんな蝶野攻爵に彼女が抱いた感情は、怒りでも恨みでもなかった。
救いたい。人間に絶望した彼を。
(彼に、人間の価値を知って欲しいのです)
先の戦闘でみたパピヨンは制限といハンデはあったものの、自分よりも遥かに強い。
それでも、勝や鳴海、ナギやキュルケやケンシロウがそうしたように。
彼らが私を救ってくれたように。

(私も命を賭けたいと思います)
彼の元に『人間』を取り戻したい。
もちろん、エレオノールと蝶野攻爵は状況が違う。
エレオノールは人間を求め続け、その純真さが故に人を殺した。
蝶野攻爵は違う。選択肢を与えられ、それでも悪を選んだ。
それが悪だと知っていたのにも拘らず。
彼が手遅れならば仕方が無い。殺すしかないのだろう。
それに、勝や鳴海の魂を解放するのが最優先だ。
でも希望があるならば……可能性が残されているのならば……。
かがみたちに危険が及ばない範囲で、出来る限りの努力をしてみせる。
75チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:56 ID:1GrjM3lo

「覚悟たちは先に戻ったのか? そろそろ俺達も出発するぞ」
村雨が呼んでいる。行かなくては。
1人決意を胸に、廊下を突き進む。
握り締めた核鉄が、少しだけ熱を帯びたような気がした。






【C-4 学校 二日目 朝】



【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]全身に無数の打撲、頬に軽い腫れ 全身に更なる重度の打撲傷を負う 胸に貫通痕 核鉄の治癒力により回復中 疲労(小)
[装備]十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (0/2) 、マイクロチェーン(2/2)、核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金、工具
[道具]地図、時計、コンパス、 女装服
    音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾 支給品一式×3、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
    文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
    缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(5本消費)、ツールナイフ、デルフリンガー@ゼロの使い魔
[思考]
基本:BADANを潰す!
1:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る
2:繁華街のホテル(E-2中心部)で再集合。
3:穿孔キックを完成させる。
4:パピヨンを止める。
5:仲間の首輪を外す。
6:かがみを守る
76Classical名無しさん:08/07/03 00:57 ID:.cBA/tDM
    
77Classical名無しさん:08/07/03 00:57 ID:YRuxeTm2
78Classical名無しさん:08/07/03 00:57 ID:.cBA/tDM
  
79チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:57 ID:1GrjM3lo
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です
※参戦時期は原作4巻からです。
※村雨静(幽体)はいません。
※連続でシンクロができない状態です。
※再生時間はいつも(原作4巻)の倍程度時間がかかります。
※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。
※記憶を取り戻しました
※光成がBADANに脅されていると考えています。また、BADAN側にも強化外骨があると推測しています。
※勇次郎の放送を聴きました。
※エレオノールから改心に至る事情を聞きました
※ラオウ、勇次郎との戦闘を経て戦闘技術が劇的に向上しました
※神社で立ったまま微笑んで死ぬ死体(劉鳳)を見ました。
※ジョセフと和解しました。
※怒り等感情に任せて行動しないよう自制する事を覚えました
※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。
 首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。
 スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。
 また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。
※川田章吾の死体は、埋葬されました。
※穿孔キックを習得しました。原作で村雨が放ったものと同じものですが、まだ未完成です。




【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:全身に強度の打撲(ある程度は回復)、左腕欠損(止血済み)、核鉄の治癒力により回復中
[装備]:巫女服
[道具]:二アデスハピネス (核鉄状態)@武装錬金 ニードルナイフ@北斗の拳 つかさのリボン
[思考・状況]
基本:BADANを倒す
80Classical名無しさん:08/07/03 00:57 ID:.cBA/tDM
   
81チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:58 ID:1GrjM3lo
1:みんな元気になれっ……もちろん自分も
2:村雨と行動を共にする
3:神社の中にある、もう一つの社殿が気になる。
4:仲間の首輪を外す。
[備考]
※光成がBADANに脅されていると考えています。また、BADAN側にも強化外骨があると推測しています。
※勇次郎の放送を聴きました。
※零の暗雲についての推測を知りました。
※かがみの主催者に対する見解。
@主催者は腕を完璧に再生する程度の医療技術を持っている
A主催者は時を越える"何か"を持っている
B主催者は@・Aの技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
Cだが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
※首輪の「ステルス機能」および「制限機能」の麻痺について
かがみがやった手順でやれば、誰でも同じことができます。
ただし、かがみよりも「自己を清める」ことに時間を費やす必要があります。
清め方の程度で、機能の麻痺する時間は増減します。
神社の手水ではなく、他の手段や道具でも同じことが、それ以上のことも可能かもしれません。
※ステルス機能について
漫画版BRで川田が外したような首輪の表面を、承太郎のスタープラチナですら、
解除へのとっかかりが見つからないような表面に 偽装してしまう機能のことです。
ステルス機能によって、首輪の凹凸、ゲームの最中にできた傷などが隠蔽されています。
※S1駅にハヤテのジョセフに対する書置きが残っています
※神社で立ったまま微笑んで死ぬ死体(劉鳳)を見ました
※村雨との協力を申し出てくれた服部に感謝しています
※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。
 首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。
 スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。
 また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。
82Classical名無しさん:08/07/03 00:58 ID:.cBA/tDM
       
83チェイン ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:58 ID:1GrjM3lo





【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:疲労小 全身に火傷(ほぼ完治)。首輪が解除されました。
[装備]:エンゼル御前(核鉄状態&首輪@エレオノールが巻かれている)@武装錬金、あるるかん(白金)@からくりサーカス(頭部半壊、胸部、腹部に大きな損傷、全身にへこみと損傷あり)
[道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式、生命の水(アクア・ウィタエ)
[思考・状況]
基本:自分を助けてくれた者、信じてくれた者のためになんとしてでも主催者を倒す。
1:仲間達と共に行動する。
2:夢で見たギイたちの言葉を信じ、魂を閉じ込める器を破壊する。
3:ナギの遺志を継いで、殺し合いを潰す。
4:一人でも多く救う。
5:仲間の首輪を外す。
6:できる事ならパピヨンを助けたい(優先順位は低い)
[備考]
※ジグマール、村雨達(村雨、かがみ、覚悟、ヒナギク、独歩、服部、ジョセフ)と情報交換をしました。
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※夢の内容はハッキリと覚えていますが、あまり意識していません。
※エレオノールが着ている服は原作42巻の表紙のものと同じです。
※ギイと鳴海の関係に疑問を感じています。
※フランシーヌの記憶を断片的に取得しています。
※「願いを叶える権利」は嘘だと思っています。
※制限についての知識を得ましたが、細かいことはどうでもいいと思っています。
※自転車@現実は消防署前に落ちています。
※才賀勝、三千院ナギの血液が溶けた生命の水を飲みました。2人の記憶をある程度取得しました。
 才賀正二の剣術や分解などの技術は受け継いでいません。
84Classical名無しさん:08/07/03 00:58 ID:YRuxeTm2
85Classical名無しさん:08/07/03 00:59 ID:1GrjM3lo
※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると核鉄に戻ります。
※独歩の言葉が聞こえたかは不明です。
※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。
 首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。
 スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。
 また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。
86 ◆d4asqdtPw2 :08/07/03 00:59 ID:1GrjM3lo
以上で投下終了です。支援ありがとうございました。
87Classical名無しさん:08/07/03 01:06 ID:YRuxeTm2
投下乙……

ロワで特訓するライダーが読めるとは思わなかったw
かがみの欝かと思ったが、エレオノールを通して立ち直る描写が丁寧で素敵。
螺旋疾風絶影ライダーキック……まさに記憶の繋がり!
憎い演出でした。
GJ!
88Classical名無しさん:08/07/03 01:07 ID:.cBA/tDM
投下GJです!
螺旋疾風ライダー絶影キックかっこいいよ、螺旋疾風ライダー絶影キック!
未だ不完全ですがが、この一撃はBADANを叩き潰す必殺の武器になり得るか!?
そして、『人間は不完全』。
これを言うのが、人形ではない人間エレオノールだからこそなんとも素敵です。
改めてGJです!
89Classical名無しさん:08/07/03 01:10 ID:hE1c.GrE
乙ー!
こういう合体必殺技ってやっぱり燃えるなあ。
かがみも前に進めるようになってなにより。
これからの展開に超期待。
90Classical名無しさん:08/07/03 01:15 ID:P4mfjX.M
投下乙
チェインで連想するのはアンチェインだなあ
繋がれぬことを己の強さとした勇次郎
繋がることで己の強さとした村雨たち
キャラたちの意志を受け継ぐのは悲しむ反面、美しいよなあ
穿孔キックかぁ、原作にもあった技だっけ?それ
新たな技が身につくのもいい展開だ
91Classical名無しさん:08/07/03 01:37 ID:XxWWbIbc
投下乙!
ライダー+特訓=燃え
なんと単純で心地よい構図!
今に至るまでにあったからこその良展開に思わず胸ときめきました! GJ!
92Classical名無しさん:08/07/03 18:50 ID:aJHaWec2
投下乙 かがみたちの心理描写、村雨のライダーとしての特訓と
仲間たちの絆から得た新必殺技熱い展開でした。 
>>90 sprits原作ではZX穿孔キックとして登場、おやっさんとの特訓によって
身に付けデストロン幹部級3体を一撃の下に葬り、大首領とのライダーキック
打ち合いでも押し切ったほどの必殺技也
93Classical名無しさん:08/07/03 21:03 ID:6RdV1lKU
投下乙です!
最初は、かがみが『エンゲージ』状態になってしまうのかとハラハラしていましたが……
仲間達との繋がり、素晴らしいですね。
村雨とエレオノール、求めるものの為に悪行を重ねてしまった2人が、それを背負って、
絶望という壁に孔を穿ち突き進もうとする……感慨深いです。
そして、ここで得た記憶によって作られた、ZXの漫画ロワ版穿孔キック! これも素晴らしかったです!!
しかし、村雨よ、螺・螺・螺・ライダーってwww

あと、誤字というほどのものではないですが、>>38で村雨はハヤテのことを苗字で呼んでいますが、
彼と仲間になってからは名前で呼んでいたはずです。

最後に……デルフは、やっぱりいらない子なのか……? これからのデルフリンガーに期待。
94 ◆d4asqdtPw2 :08/07/05 00:37 ID:Orm9AQ.Q
すいません。村雨の状態票の最後の一行を以下のように修正します。
※穿孔キックを習得しましたが、まだ未完成です。見た目は原作で村雨が放ったものと大体同じものです。

あと、誤字、ハヤテの呼称などはwikiで。>>93指摘ありがとうございました。
95Classical名無しさん:08/07/05 16:13 ID:FrFsxrXE
螺旋疾風ライダー絶影キックに燃えた
96Classical名無しさん :08/07/08 01:26 ID:sUa06Qvk
まとめwikiで

Reckless fire
心を縛るものを ひきちぎればすべてが始まる(後編)
神に愛された男(後編)
悪鬼(後編)

各SSに『決戦』へのリンク貼られてなかったので貼ったのと
『決戦 完結編』の死亡者を赤字に、それと残り人数がなかったので追加した

とりあえず報告しなくてもいいだろうけど念のためご報告
97Classical名無しさん:08/07/08 02:49 ID:ptSCpPj2
>>96
乙。間違ってるの気付かなかったよ……。
98Classical名無しさん:08/07/08 07:26 ID:sUa06Qvk
>>97
なに気にするな
気がついた奴が何気なくフォローすりゃいいさ
俺は報告しちゃったけどなw
99Classical名無しさん:08/07/10 22:50 ID:kWxJsC2o
◆Qi1eK.TiFcブレード
◆WXWUmT8KJEtjRX
◆kNPkZ2h.rohitomi
◆bH5ADDHScw##j
◆C1.qFoQXNw1976
100Classical名無しさん:08/07/10 22:56 ID:kWxJsC2o
◆Qi1eK.TiFc   ブレード
◆WXWUmT8KJE   tjRX
◆kNPkZ2h.ro   hitomi
◆bH5ADDHScw   ##j
◆C1.qFoQXNw   1976
101 ◆40jGqg6Boc :08/07/10 23:29 ID:0TrrA9ME
新予約頑張って下さい!期待しています!

トリを変更しますね。以後はこれで。
後に一応確認用のトリで書き込みますが……。
102 ◆Qi1eK.TiFc :08/07/10 23:30 ID:0TrrA9ME
一応確認用です。
それでは。
103 ◆WXWUmT8KJE :08/07/10 23:36 ID:P9CSFIRc
確認用
104 ◆KaixaRMBIU :08/07/10 23:37 ID:P9CSFIRc
そして新トリ
他ロワで使っているこいつで行きます
105 ◆03vL3Sy93w :08/07/12 19:00 ID:ORf8PZx.
完成しましたが、初めてということもあるので、一時投下スレに投下します。
何か問題や矛盾点があれば指摘お願いします。
106 ◆03vL3Sy93w :08/07/12 19:06 ID:ORf8PZx.
一時投下スレの投下が終了しました。
誤字脱字、矛盾点があれば指摘お願いします。
107Classical名無しさん:08/07/12 19:35 ID:cgtwFtOE
多分、大丈夫でしょう。感想は後ほど。
108Classical名無しさん:08/07/12 22:34 ID:tGue/fiA
一時投下乙です!
問題はないと思います。
感想は本投下後に書きますね。
109 ◆03vL3Sy93w :08/07/12 23:53 ID:ORf8PZx.
特に問題がないようなので、本投下します。
支援よろしくお願いします。
110 ◆03vL3Sy93w :08/07/12 23:54 ID:ORf8PZx.
…あれからどれくらい泣いたのだろうか。
気がつくと、自分は真っ白な空間の中にいた。
「…どこなのよ、ここ」
桂ヒナギクはその空間にただ一人ぽつんと立っていた。
(何でこんなところに…)
そう思っていたときに、一人の少女が姿を現した。
「だ、誰!?」
その少女は、自分にとって馴染み深い少女だった。

「…つか、さ?」

かつての仲間だった、柊つかさが、目の前にいた。

「久しぶりだね、ヒナちゃん」
「どうしてつかさがここに…?」
ヒナギクは、今目の前にいるつかさに驚いていた。
今の状況を整理しようと、とりあえず頭を回転させてみる。
しかし、つかさはそんなことも気にせずに話し始めた。

「お姉ちゃんは、元気にしてるの?」
「え?…うん。元気にしてるわ」
…とりあえず今は話し合おう。そう考えたヒナギクは、今いるつかさと話し続けた。
111Classical名無しさん:08/07/12 23:55 ID:sYP5CLzE
112雛菊想恋 ◆03vL3Sy93w :08/07/12 23:56 ID:ORf8PZx.

◆     ◆     ◆

ヒナギクはつかさに今までの状況を話した。
かがみに出会ったこと。村雨が記憶を取り戻したこと。勇次郎やラオウを覚悟たちが倒したこと。
色々なことをつかさに話した。
川田がゲームに乗ったことや、川田がこなたを殺したことは隠した。つかさがショックを受けるかもしれないからだ。

「…ねえ、つかさ。私、聞きたいことがあるんだけど」
「どうしたのヒナちゃん?」
状況を話し終えたヒナギクは、つかさに一つ聞きたいことがあった。
それは、覚悟を愛することをやめたヒナギクにとって重要なことだった。

「どうして、『違う世界にいる』川田君を最期まで愛することが出来たの?」
「……え?」
ヒナギクは、つかさが死ぬ間際に川田に愛の告白をしたことを思い出した。
川田もつかさも違う世界から来ている。今となっては無理だが、もし生きて帰るのならば二度と会えなくなってしまう。
それなのに何故愛し合うことが出来たのか?ヒナギクはそれが疑問でならなかった。
「えっと、……それってどういう意味?」
つかさはヒナギクの心情を知らないのか、少しおどけた表情で言葉を返した。

「……元の世界に帰ることができるようになっても、つかさは川田君とは違う世界にいるのよ。
 帰ったら、二度と会えないのよ。それなのに、どうしてつかさは川田君のことをずっと好きになれたの?」
ヒナギクが再び質問すると、意外な答えが返ってきた。
113Classical名無しさん:08/07/12 23:57 ID:cgtwFtOE
                 
114Classical名無しさん:08/07/12 23:57 ID:cgtwFtOE
                                   
115雛菊想恋 ◆03vL3Sy93w :08/07/12 23:58 ID:ORf8PZx.

「…人を好きになるのって条件がいるの?」
「え?」
「私は必要ないと思うよ。川田君がどこの世界にいても私は川田君のことが好きだったと思う。それに…」
つかさは、さらに言葉を続けた。


「人が人を好きになるのは自由なんだよ」


そう言ったつかさは、満面の笑みを浮かべていた。


◆     ◆     ◆


「………夢?」

ヒナギクが目を覚ますと、そこは覚悟と別れた場所だった。
恐らく泣き疲れていつの間にか眠っていたらしい。
今までつかさといたことは全て夢だったのだろう。ヒナギクはそう思った。
しかし、つかさが最後に言った言葉が脳裏に焼き付いて離れない。


       「人が人を好きになるのは自由なんだよ」


その言葉は、彼女が一度固めた『決意』を揺るがせるほどだった。
116Classical名無しさん:08/07/12 23:58 ID:cgtwFtOE
                       
117雛菊想恋 ◆03vL3Sy93w :08/07/13 00:00 ID:aVQwz5Rs
(…私はどうすればいいの?)
ヒナギクは迷っていた。つかさが川田を愛したように覚悟を愛するのか、それともこのまま愛さないのかを。
そして、彼女の答えは…



(…学校に行ってからにしよう。葉隠君たちが待ってるかもしれないから。)

…出なかった。ヒナギクは答えを出すことが出来なかった。
そして、答えがでないまま、ヒナギクは村雨たちがいる学校へと走り出した。


【C-3 中央部 2日目 午前】

【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 顔と手に軽い火傷と軽い裂傷。右頬に赤みあり。右肩が外れている、手の平に裂傷、勇次郎平手によるダメージ 、核鉄の治癒力により回復中
[装備] バルキリースカート(核鉄状態)@武装錬金、木刀正宗@ハヤテのごとく
イングラムM10(9ミリパラベラム弾0/32)454カスール カスタムオート(6/7)@HELLSING 13mm爆裂鉄鋼弾(28発) 陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた
[道具]支給品一式、ボウガン@北斗の拳、ボウガンの矢17@北斗の拳


118Classical名無しさん:08/07/13 00:00 ID:rghTQ5S2
                                        
119雛菊想恋 ◆03vL3Sy93w :08/07/13 00:00 ID:aVQwz5Rs
[思考・状況]
基本:BADANを倒す。
1:学校へ向かい、覚悟、村雨、かがみ、エレオノール、パピヨンと合流。
2:1が終わり次第、繁華街のホテル(E-2中心部)で再集合
3:覚悟に対して…?
[備考]
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです 。
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました 。
※バルキリースカートを使いこなしました。バルキリースカート本来の戦い方ができるようになりました。
※エレオノールと和解しました 。
※服は現地調達したものに着替えました。
※服部、ジョセフ、エレオノールと情報交換をし、友好関係を取っています。
※アカギと情報交換をしました。
※覚悟を愛するか愛さないかは、次の書き手にお任せします。
120Classical名無しさん:08/07/13 00:03 ID:rghTQ5S2
                         
121雛菊想恋 ◆03vL3Sy93w :08/07/13 00:04 ID:aVQwz5Rs
投下終了しました。
支援ありがとうございました。
ちなみに、死者スレで支援組曲用の歌詞と物語verの支援歌詞を載せていますが、ここに投下してもいいでしょうか?
もし良かったらここに投下します。
122Classical名無しさん:08/07/13 00:10 ID:rghTQ5S2
投下乙。支援歌詞は死者スレだけでいいと思うぜ。みんな見てるだろうしさ。
やっぱりヒナギクの心を動かすのはつかさだよなあ。
丁寧な描写だったと思います。さぁ、思いは「世界」を越えるのか? 楽しみです!
感動的なんだけど、川田のマーダー化が上手く「切なさ」を生み出してますね。
あと、仮投下のときに指摘し忘れたけど、「…」は「……」のように2つ連続で使うのがベネ。
そして「?」の後ろにはスペース推奨です。詳しい事はテンプレ参照です。細かい事言ってごめんなさい。
123Classical名無しさん:08/07/13 00:18 ID:2m.1eYu6
124Classical名無しさん:08/07/13 00:24 ID:2m.1eYu6
125Classical名無しさん:08/07/13 00:37 ID:LBLsEZKU
繋ぎ乙。
こういう話も大事だよね
126Classical名無しさん:08/07/13 01:57 ID:yLXZwHrw
とうかおつ
127Classical名無しさん:08/07/13 02:45 ID:mT4zyJUA
投下乙です!
つかさ、やっぱり良い娘だな……ちょっと目頭が……。
ヒナギクの心理もちょっと切なくていい感じだと思います。
キャラの掘り下げはそのキャラの魅力を引き立ててくれますし、良い繋ぎかとー。
今後のヒナギクの決断はどうなるかな……。
GJ!!
128 ◆03vL3Sy93w :08/07/14 21:53 ID:QEBBQDAs
>>122
了解しました。wikiに載った後で編集します。
とりあえず支援歌詞は死者スレだけにしておきます。
これからもよろしくお願いします。
129Classical名無しさん:08/07/14 21:56 ID:5tASp8TQ
あっと、投下着ていましたか。
投下乙!
丁寧な心理描写でした。
こういうつなぎも乙なものです。
GJ!
130Classical名無しさん:08/07/18 10:13 ID:v1ar9DgY
投下があったとき以外過疎りすぎだろjk
131Classical名無しさん:08/07/18 11:50 ID:MrX6XrY6
それjkの使い方がおかしくね?
132Classical名無しさん:08/07/18 22:40 ID:3xEJGAvA
きっと>>130は過疎スレ住民なんだよjk
133Classical名無しさん:08/07/20 00:49 ID:FRJChBGQ
りゃ
134Classical名無しさん:08/07/20 18:19 ID:7NfCOiVg
731:◆YumEnOQmVvc :08/07/21 23:30 ID:KAkeRaVdwA
初めてですが、全員を予約します。

732:◆YumEnOQmVvc :08/07/21 23:35 ID:KAkeRaVdwA
投下します

733:希望を胸に◆YumEnOQmVvc :08/07/21 23:36 ID:KAkeRaVdwA

覚悟「チクショオオオオ! くらえ暗闇大使! 新必殺技『輪廻』!」
暗闇大使「さあ来いカクゴオオ! オレは実は一回因果を決められただけで死ぬぞオオ!」
バオーッ(効果音)
暗闇大使「グアアアアア! こ このザ・潮健児と呼ばれる四天王のガモンが…こんな小僧に…」
ド ド ド ド ド ド ド
プッチ神父「暗闇大使がやられたようだな…」
再生アーカード「フフフ…奴は四天王の中でも最弱…」
再生ジャギ「人間ごときに負けるとは幹部の面汚しよ…」
覚悟「くらええええ!」
ドッギャーン!(効果音)
覚悟「やった…ついに四天王を倒したぞ…
    これでJUDOのいる虚空の牢獄の扉が開かれる!」
135Classical名無しさん:08/07/20 18:20 ID:7NfCOiVg
JUDO"よく来たなギャルゲマスター覚悟…待っていたぞ……"
ギィィィ(効果音)
覚悟(こ…ここが虚空の牢獄だったのか…! 感じる…JUDOの魔力を…)
JUDO「覚悟よ…戦う前に一つ言っておくことがある
     お前は我を倒すのに「死者達からの協力」が必要だと思っているようだが…  別になくても倒せる」
覚悟「な、何だって!?」
JUDO「そしてお前が来る途中倒れた仲間達や会場で死んだ者達は飽きたので
     元の世界へとすっかり元通りにしておいた。
     あとは我を倒すだけだなクックック…」
覚悟「フ…上等だ。オレも一つ言っておく。
    緑の赤ん坊とか伊藤博士とか村雨の未完成の必殺技とか強化外骨格とか顎が凶器の死神とかいたような気がしていたが
    別にそんなことはなかったぜ」
JUDO「そうか」
覚悟「ウオオオいくぞオオオ!」
JUDO「さあ来い覚悟!」

覚悟の覚悟が世界を救うと信じて…!  ご愛読ありがとうございました!


過疎だとか言われてやった。今も後悔している。
136Classical名無しさん:08/07/20 18:22 ID:y4xeK736
ちょww ソードマスターww
137Classical名無しさん:08/07/20 18:36 ID:EGRRIqmU
なぁにこれぇwwww
笑わせてもらったぜwwwww
138Classical名無しさん:08/07/20 21:46 ID:2U.0TeNA
ギャルゲマスター覚悟www
139 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:36 ID:lsOLDQG2
投下しようと思ったら、既に完結していた。何を言っているか分からないと思うがry


投下します。
140Classical名無しさん:08/07/20 22:36 ID:y4xeK736
 
141帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:37 ID:lsOLDQG2
 課せられた制限の重さを改めて認識し、意図せずとも舌打ちが漏れる。
 『外部からの刺激を受ける』ことなく、『矛盾を見つけた』だけで解除されてしまうとは。
 そもそも完璧な幻影を作るなど、とても骨が折れることだ。
 私が知らぬ事象は想像で補うしかない。そこを完璧にするなんてのは、ハッキリ言えば『無茶』だし『無理』だ。
 蝶野攻爵――あの奇抜な衣装の為に覚えている――は首輪を嵌めていないようなので、本来はスタンドが見えないはずだが……
 見ることが出来るのだ。私だけに課せられた、特殊な制限の所為で。
 よくも、こんな制限を……ッ。
 口に力が篭り、ギリリと歯の軋む音が頭に響く。
 冷静になれ。そう自分に言い聞かせて、思案する。
 伊藤博士は、私とも蝶野とも一定の距離がある場所に避難した。
 それでいい。そこならば、蝶野の操る火薬が及ぶこともないだろう。
 まあ、奴は伊藤博士を連れ去ろうとしていたので殺すことはないだろうが、流れ弾が飛来することもある。
 彼を救出したように見せかけ、さらにBADAN内での信頼を得るのも悪くない。
 何せ、あと『二日』あるのだ。

 ……しかし何故、伊藤博士なのだ?
 伊藤博士は、BADANの研究員の中で最も技術力があるという話は聞いている。
 それが目的ならば、伊藤博士を狙う理由は分かる。技術を奪いたいのだろう。
 だが、だとしたら蝶野はどうやって、そしていつ伊藤博士の技術力を知った?
 無差別に研究員を連れ去ろうとして、偶然に伊藤博士を選んだだろうか?
 何にせよ、崇高なDIOと私の目的にとっては、どうでもいいことなのだが。

 さて、先ほど見た研究員の記憶を思い出せ。
 蝶野の黒色火薬――『ニアデスハピネス』とか言ったな――の射程はかなり広大だった。
 おそらくは、私のホワイトスネイクの射程距離=二十メートルよりも。
 しかし、舞台は研究室だ。
 あの火薬の射程がどれだけかは知らないが、視界が広く開いた屋外のような場所で戦うよりはマシだろう。
 これだけ隠れる場所があれば、射程の広さで劣るホワイトスネイクでも接近できる可能性はある。
142Classical名無しさん:08/07/20 22:38 ID:y4xeK736
  
143帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:38 ID:lsOLDQG2

『暗闇大使様が、侵入者への討伐へと出征! 生存している兵士は、速やかに撤退。道を空けろ!』

 響き渡るアナウンス。暗闇大使が来る、か。
 ならば、ゆっくりはしていられない。
 暗闇大使が来る前に、速やかに蝶野の記憶を奪わねばならない。
 『道を空けろ』ということは、魔方陣は使用していないのだろう。
 そもそも使用していたのなら、既にこの場に到着しているはずだ。
 確か魔方陣は、奴の敬愛する大首領の能力だったはずだ。
 己の不手際を収束するのに大首領の能力を使うなどおこがましい――といったところか。
 『幸運』だ。魔方陣でここまで来られては、記憶を奪う事など出来なかっただろう。
 やはり、『天国』は私を『引』いているようだな。

 が、どう攻めるか。
 リンプ・ビズキットのDISCを差し込み、殺された怪人共を生き返らせて操るか?
 自分の案ながら、あまりに馬鹿馬鹿しい。
 ただでさえ疲労の大きさに困っているのに、この状況で慣れないスタンドで、これだけの量を生き返らせるなど愚行にもほどがある。
 ならば、死神13を使うか?
 昏睡している間ならばともかく、起きてしまった以上は使えない。
 何より、殺してしまってどうする。
 記憶を手にしなくてはならないのだ。
 フン、ここまで考えたが、そもそも完全に信頼出来るスタンドなど一つしかない。

 蝶野の背に羽が、生えた。それで以って、宙へと浮かぶ蝶野。
 飛ぶ際に、羽の下部が燃焼しているように見える。あの羽は、ニアデスハピネスによるものだろうか?
 天井付近で、蝶野の上昇が止まる。
 こちらの動くのを待っているのか、動かぬ蝶野を見据え、己の分身の名を軽く呟く。

 ――――来ないのならば、こちらからいかせてもらうぞ。

 タイムリミットは暗闇大使が訪れるまで。
 私の勝ちは記憶を手に入れること。敗北は天国へ行けないこと、だ。
144帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:38 ID:lsOLDQG2



 己の武装錬金の名を呟き、核鉄を展開。
 昏睡していた際に、それまで展開していたニアデスハピネスは核鉄に戻り、それまで宙を漂わせていた黒色火薬は消滅してしまった。新しく生成せねばならない。
 展開させるのは片方だけ、もう一つは核鉄状態にしてポケットへとしまい込む。疲労の大きさを考慮して、だ。
 目の前のスタンドは動かない。
 ニアデスハピネスを展開中の今がチャンス――とは言っても、やられはしないが――なのだが、おそらくは伊藤博士に流れ弾が飛ぶことを恐れているのだろう。
 目の前のスタンドは、伊藤博士を救出に来たようだ。
 尖兵は多いようだが、ここが研究室にもかかわらず研究員は少数だった。
 その研究員を殺されるのは、いくらBADANでも痛いということか。
 硬直状態。
 伊藤博士が一定の距離を取るまで、あのスタンドは動かないのだろうか。
 もしそうならば、好都合だ。
 その間に、周囲にニアデスハピネスを展開させてもらうとしよう。

 さて、その間何もしないのは馬鹿だ。考えるべきことは、大量にある。
 『貴様の能力は割れた』。目の前のスタンドにそう言ったが、それはハッタリだ。
 DIOから奪った詳細名簿によれば、バトルロワイアルに呼び出されたスタンド使いは三人。
 その中の空条承太郎でも、DIOでもない三人目の男。吉良とか言ったか。
 奴の頁には、『三種の爆破能力を持つ』とあった。
 そのことから、スタンドの持つ特殊能力が一種とは限らないことが分かる。
 目の前のスタンドは、何か能力を隠しているのだろうか?
 隠しているのならば、その能力とはいったい? ――見極め不可。
 現時点でも推測くらいは出来るかもしれないが、所詮は推測。
 それに意味はない。
 幻覚以外にも、何かしらの能力を隠している可能性がある――程度の認識で問題ないだろう。
145Classical名無しさん:08/07/20 22:39 ID:y4xeK736
   
146帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:39 ID:lsOLDQG2


 ――さて、疑問が二つある。


 一つは、あのスタンドが『どうやって』幻覚を見せたのか。
 幻覚といえば、思い出すのはクソヒイヒイジイの武装錬金。
 即ち、チャフの武装錬金『アリス・インワンダーランド』。
 拡散状態では有機無機のの神経系に作用し、方向感覚と距離感を狂わせること。
 そして密集させて濃度を上げた状態では、神経系の中枢である脳にまで作用して――幻覚をもたらす。
 それと同種の能力だろうか?
 ……いや、それだけは絶対にノン。
 アリス・インワンダーランドと同じ方法で幻覚世界へと落とされたならば、その瞬間に強烈な発光を感じていたはずだ。
 しかし、そんな感覚はなかった。
 試しに、瓦礫の破片を軽く蹴飛ばしてみる。
 破片は俺の足に正確に当たり、思った通りの方向へと転がっていた。
 あのスタンドから離れている状態だが、やはり方向感覚と距離感に異常はない。
 アリス・インワンダーランドと同種の能力ならば、離れている状態では方向感覚と距離感が狂ってしまうはずなのにだ。
 以上の事から、確定だ。
 同じ幻覚を見せる能力でも、その方法がアリス・インワンダーランドとは全く異なる。
 ゆえに、アリス・インワンダーランドと同じ対処方法ではどうにもならない。
 どの段階で、幻覚にかかっていたのかが鍵となる。
 今現在しかけてきていない――既に幻覚内でないならば――ということは、同じ相手に二度通じないのか?
 或いは、体力の消耗が大きく酷使できない?
 それとも、近付かねば発動不可なのか?
 分からない。
 それならばあえて近づかせればいい。特殊な能力は使わせず、物理攻撃を使わせる。
 食らう気はない。近づかせてから遠ざける。物理攻撃を放とうとした状態で遠ざけ、黒死の蝶で殺す。
147帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:40 ID:lsOLDQG2

 もう一つの疑問だ。
 なんで、『今の俺』がスタンドを視認できた?
 首輪を外している今の俺が、なんでスタンドを視認できているのか。
 実際それによって助かったのだが、激しく疑問である。
 赤木から聞いた、そこを歩いている伊藤博士からの情報。
 それによれば、『スタンド適正の付与』装置が首輪に収納されているらしい。
 その装置により、スタンドDISCが使用可能になると同時に、スタンドを視認できるようになる。
 ――とばかり思っていたのだが、首輪を嵌めていない俺がスタンドを視認できてしまった。
 どういうことだ。
 空条承太郎の口ぶりでは、俺がスタンドを見えているのはおかしい。また、あの場にいたナギとかいう幼女も同じく、見えていてはおかしい。
 おそらくは本来スタンドは、スタンド使いにしか視認できぬものなのだろう。
 それが、何故。
 これまでスタンドが視認できるのは、絶対にスタンド適正付与装置によるもの――と思っていたわけではない。
 赤木の情報による『エネルギー抑制機能』を持つ装置。縮めて、エネルギー抑制装置とでも言うか。
 それにより、スタンドを扱うものに制限をかけている――というのも考えていた。
 だったらば、首輪を嵌めていない俺でもスタンドを視認できた理由は説明できる。
 しかしそれならば、だ。

 ――何故、BADANの部下に制限がかけられている。

 理解不能である。
 あのスタンドの本体は、かつてL・X・Eにいた頃の俺のような不穏分子なのか?
 上に警戒されているのか?
 それで説明はつくが、どうにも釈然としない。
 そんな奴が、俺がいる場所に来るだろうか。わざわざ伊藤博士を救出に来るだろうか。
 まあ、推測にすぎないので何とも言えんがな。
 と、考えていたら、アナウンスが響いた。
148Classical名無しさん:08/07/20 22:40 ID:y4xeK736
    
149帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:41 ID:lsOLDQG2

『暗闇大使様が、侵入者への討伐へと出征! 生存している兵士は、速やかに撤退。道を空けろ!』

 暗闇大使……JUDOのことだろうか?
 脳裏を掠めるのは、村雨良の変身体に酷似した金色の男。
 しかし、その考えをすぐに塵とする。
 JUDOではない。
 赤木の推測が正しければ――JUDOの口ぶりでは、おそらくは正しい――、ここでわざわざ俺を討伐に来るような男ではない。
 それに来る気であれば、あの男は一瞬でこの場まで来ることが可能だ。道を空ける必要など、欠片もない。
 おそらくは、赤木の言っていた『強者を選定したかった主催者以外のBADAN勢』。
 それにしても、『暗闇大使様』ね。
 敬称がつくって事は、これまでの尖兵達とは一味違うかな。
 この疲労で目の前のスタンドと戦闘後、或いは同時に相手に出来るだろうか。
 だが、帝王に敗北はない。最終的に勝てばいい。逃走も手の一つだ。

 ――しかし、まだ早い。

 ヘルダイバーという名の優秀な足があるのだ。
 このヘルメットをかぶっている限り、来いと思えばやってくる優秀な足が。
 まだ早い。
 逃走しようと思えば、いつでも可能だ。
 伊藤博士を確保してから。
 目の前のスタンドを粉砕してから。
 暗闇大使とやらの力を確認してから。
 或いは、暗闇大使を殺害してから。
 それからでも、遅くはない。
150Classical名無しさん:08/07/20 22:41 ID:y4xeK736
     
151帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:41 ID:lsOLDQG2

 さて、火薬の総量はもはや十分すぎる。
 右手で空を斬る。すると宙に舞う火薬が集束し、背に生える漆黒の羽となる。
 念じるだけで、フワリと身体が宙に浮かびあがる。
 火薬を燃焼させることでの飛行。
 羽を持つもの――羽化して成虫となったものにしか出来ぬ行為。
 空中にいようとも、射程距離五十メートルを誇るニアデスハピネスは何ともない。
 むしろ相手が空中を攻撃する手段を持っていない限り、こちらが圧倒的な有利となる。
 ゆえに、飛行したのだ。
 伊藤博士は、結構前から俺ともスタンドとも一定の距離保った場所で動かない。
 スタンドが何故仕掛けてこないのかは分からないが……

 ――――来ないのならば、こちらから往かせてもらうぞ。

 ポケットに突っ込んであった回復に使っていた核鉄を取り出す。
 それに首輪を再び巻いて、展開させる。



 とりあえず研究室の隅まで来た。
 ここならば、パピヨンからもホワイトスネイクからもそれなりに距離がある。
 ふう、と息を吐く。
 同時にアナウンス。

『暗闇大使様が、侵入者への討伐へと出征! 生存している兵士は、速やかに撤退。道を空けろ!』
152Classical名無しさん:08/07/20 22:42 ID:y4xeK736
      
153帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:42 ID:lsOLDQG2

 ドクンと、鼓動が高鳴ったのを感じた。
 あの男が来る――それほどの大事になっているのか。
 しかし、これはもしかしたら幸運かもしれない。
 この混乱の所為で、私の行動は未だ問題にはなっていないようだ。
 もしかしたらBADANが気付かぬうちに、私の漏らした情報により首輪を解除した参加者がここへと訪れるかもしれない。
 私が情報を漏らしたのが明らかになる前ならば、
彼等の襲撃は奇襲となる。
 奇襲というものは対処しづらいものだ。
さらに結構な数の尖兵が、パピヨンに殺害された。
 ほんの少し運が向いてきている……のかもしれない。
 とはいえ、BADANはあまりに巨大な組織。私の考えが、あまりに希望的観測だということは分かっている。

 それにしても、パピヨンには驚かされた。
 壁を突き破っての唐突な登場に、その姿。よもや、ライダーマンのヘルメットが支給されていようとは。
 そして何より、首輪をつけていなかったこと。
 ライダーマンのスーツに隠れた首は見えなかったが、マップ外にもかかわらず警告音が鳴らないことに、何よりあの強さを見れば一目瞭然。
 先ほど送信したメールを確認したにしては早い、早すぎる。
 ならば、どうやって解除したのか。
 自分で方法を発見した? まさか。彼が御払いなど試すタイプとは思えない。
 ということは、オンライン麻雀の際に漏らした情報を手に入れたのだろうか。
 大首領に始末された赤木しげるは、命を落とす前に情報を他の人間へと託していた。
 どれだけの参加者を経たのかは分からないが、その結果パピヨンへと伝わり、首輪を解除した。
 そう考えるのが、自然だろう。これまらば、私の名をパピヨンが知っていた説明もつく。
 赤木しげるからパピヨンへと伝わる間に、BADANへ反抗する意思を持つ者の耳に情報が入っていることを祈りたい。
154Classical名無しさん:08/07/20 22:43 ID:y4xeK736
       
155Classical名無しさん:08/07/20 22:44 ID:y4xeK736
        
156帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:44 ID:lsOLDQG2

 そのパピヨンは、理由は分からないが私を連れ去ろうとしている。
 情報を漏らしてくれた人間を救うため?
 そんなワケがない。パピヨンがそういう人間でないことは事前の情報で知っているし、そもそも彼は私の名を知らないうちから連れ去ろうとしていた。
 ならば、どうしてだろうか。
 彼曰く、私には利用価値がある。
 ……私に何の価値があるというんだ。
 強大な力を持つBADANに尻尾を振って、科学を危険な方向へと導いたこの私に。
 人質? ありえない。意味を成さない。
 こんな私に何の価値があるというんだ。

 そう告げようとしたら、今度は背後からどこかで聞いたような声。
 同時に、パピヨンが倒れた。
 状況を掴めぬまま声のした方に首を回せば、そこにいたのはエンリコ・プッチのスタンド『ホワイトスネイク』。

 そもそも、バトルロワイアルの参加者達がスタンドを視認できるのは、『スタンド適正付与装置』のおかげだ。
 『スタンド適正付与装置』は、スタンドの適正がある進退にするだけでなく、『スタンドが目視可能な身体になる』効果も持つ。
 この効果は、DISCを入れていようと関係なく発動している。
 しかし、私は首輪を嵌めていない。
 なのに、何故ホワイトスネイクを視認できているのか。
 それはエンリコ・プッチには特別な制限がかけられているからだ。
 『出したスタンドが万人に見えてしまう』という制限が。
 暗闇大使が、私にそうしろと命じたのだ。
 何でも、エンリコ・プッチは信頼できないらしい。
 『スタンド適正付与装置』は大首領が作り出したものらしいが、制限の度合いの弄り方はなんとか分かった。

 支給品を調達する際に、少しだけその姿を見ていたために声に聞き覚えがあったのだろう。
 その能力は既に知っているつもりだった。
 『記憶とスタンドをDISCとして保存する』能力。そのように、私が紛れ込ませた手紙にも記してある。
 が、ホワイトスネイクは異なる能力を行使した。
 相手を昏睡させ、その間に部屋ごとドロドロに溶かすという恐るべき能力。
157帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:45 ID:lsOLDQG2
 後にパピヨンの発言から明らかになるが、昏睡している間パピヨンは幻覚を見せられていたらしい。
 パピヨンが暴れている間に響いていたアナウンスによれば、怪人収容所NO.1とNO.5の怪人がパピヨンを殺害すべくここに急行したらしい。
 怪人収容所一つにつき、中にいる怪人は約五十体。
 収容所二つ分の怪人ということは、その数なんと約百体だ。
 それを圧倒していたパピヨンでさえ一瞬で昏睡するほどに、その能力の前には無力だった。
 幻覚を振り払ったとはいえ、パピヨンはかなり危ない状況だった。
 目覚めるのがあと少し遅ければ、既に彼の肉体は原形を留めぬほどに溶解してしまっていたかもしれない。

 こんな能力を隠していたなんて、思いもよらなかった……
 もしもあの手紙がBADANに反抗する意思を持つ参加者の手に渡り、『記憶とスタンドをDISCとして保存する』能力だけだと勘違いしてしまったならば。
 そのまま、エンリコ・プッチと対峙したならば。
 大変なことになってしまう。
 例えば、村雨君。彼のスペックはよく知っている。
 エンリコ・プッチは暗闇大使に信頼されてないらしく、首輪による制限をかけられている。
 だから正面からの殴り合いならば、エンリコ・プッチのホワイトスネイクは村雨君の敵ではないだろう。
 しかし、もしも幻覚を見せられてしまえば……
 昏睡なんてしてしまえば、スペックで圧倒していても意味がない。
 人間以上の身体能力のパピヨンを昏睡させたことから、たとえ人造人間の村雨君でも安心は出来ない。
 どうにかして、ホワイトスネイクの恐るべき能力を伝えねばならない。しかし、どうやって……?
 研究室は、もはや瓦礫と怪人の死骸で埋め尽くされている。
 パソコンなどどこにあるやら分からないし、見つかったところでスクラップになってるだろう。
 麻雀をした部屋へ行けばどうにかなるが、行く暇などあるものか。
 エンリコ・プッチとパピヨンから離れるだけでも一苦労なのに、この大惨事だ。辺りそこらに、BADAN構成員がいるのは自明。
 だが、諦めるものか。考えろ。希望を捨てていいような立場にはいないんだ……!
 思案を巡らせる。脳をフル稼動させる。
 不意にキラリと輝くものが目に入った。
 ええい、そんな物はどうでもい――って、む? アレは……?
158帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:46 ID:lsOLDQG2
 目を凝らそうとしたのと同時に、轟音が響いた。
 始まった、か。



 ホワイトスネイクが動いたのと、パピヨンがサンライトハートを展開したのは、奇しくも同時。
 ホワイトスネイクは物体をドロドロにする能力で壁を溶かし、空中のパピヨンへと向かうべく壁を移動する。
 壁から天井へと移り、どんどんと距離をつめるホワイトスネイクに動じず、パピヨンはサンライトハートを握り締める。
 すると、サンライトハートから発せられていた山吹色の光が、さらに輝きを増し――切っ先が伸びた。

「――ッ!」

 驚愕に声を詰まらせるのは、ホワイトスネイクとそれを操作するエンリコ・プッチ。
 ホワイトスネイクは既にパピヨンの付近、その距離数メートル。
 パピヨンがニアデスハピネスの燃焼で以って空中で移動し、サンライトハートの切っ先がホワイトスネイクに迫る。
 即座にプッチは、ドロドロにする能力を解除。天井から自由落下するホワイトスネイク。
 下に逃げれば、伸びきったサンライトハートの切っ先から逃れられる。そう思っての行動。
 その推測は正しい。確かに落下すれば、サンライトハートの間合いからは外れる。
 しかし、その行動は過ち。
 ライダーマンのヘルメットから露出したパピヨンの口角が、三日月形に吊り上る。
 ホワイトスネイクの目よりそれを知ったプッチは、思案する。何故笑ったのかを。
 それはすぐに解決した。
 ホワイトスネイクが落下していく先に、既に八匹のニアデスハピネスで構成された黒死の蝶が地面の少し上で待機していたのだ。
 プッチが舌を打つが、それで現状は変わらない。
 壁を溶かしてそれに捕まろうにも、既に壁からは離れてしまっていて、今ホワイトスネイクがいるのは部屋の中央。
 ホワイトスネイクに、成す術はない。
159Classical名無しさん:08/07/20 22:46 ID:y4xeK736
         
160帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:46 ID:lsOLDQG2

「案外に大したことなかったな」

 パピヨンが侮蔑を込めた言葉を吐き捨て、サンライトハートを持っていない方の左手で空を斬る。
 それに答えるように、黒死の蝶が一気にホワイトスネイクを囲み――特攻。
 耳をつんざくほどの爆発音が、周囲に響き渡った。
 暫し経過し、もうもうと待っていた火薬の燃焼による煙が晴れる。
 爆発のあった場所は、ただでさえ瓦礫が散らばっている研究室の中でも、より一層雑然としていた。
 先ほどの爆発により、地面にはクレーターが出来ている。
 こんな場所に誰かいたなら、確実に命を落としている。
 そんなことは、誰の目からも明らかであった。
 しかし、パピヨンは武装錬金を展開したままだ。
 後に来る暗闇大使との戦闘に備えているのか?
 違う。もしそうならば、持久力に乏しいパピヨンのこと。回復に専念するため、核鉄へと戻しているだろう。
 ならば、何故戻していないのか。それは――

「スタンドは、そのままダメージが本体へとフィードバックする。
 先ほどの八匹の黒死の蝶を食らっていたら、確実に無事ではないだろう――が」

 ヘルメットとマスクで顔が隠れていなければ、パピヨンが警戒を緩めていないのが分かったことであろう。
 サンライトハートの伸びた切っ先を一時戻し、核鉄に巻いた首輪を外す。
 そしてニアデスハピネスのアナザータイプを展開し、パピヨンの両のふくらはぎに新たな漆黒の羽を生やす。
 火薬の総量を増やすためだ。彼が今から行おうとしていることには、それが必要なのだ。

「爆発の直前にスタンドを解除して逃れたということも、考えられる。
 スタンドを操作していた本体は、戦況を把握出来る場所――つまり近くにいるのだろう。
 先ほどの爆撃で死んだとは思うが、念には念を入れるに越したことはない」

 そう言い終えると、パピヨンは右手の指をパチンと鳴らす。
 同時に、パピヨンの右掌に体長五十センチほどの黒死の蝶が出現した。
161帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:47 ID:lsOLDQG2

 ――パピヨンの考察には、穴がある。
 こういう場合、スタンドの本体が必ずしも戦況を把握出来る場所にいる場所にいるとは限らない。
 本体の目の届かぬ場所でも自動で動くスタンドも、中には存在するからだ。
 だが、パピヨンはそれを知らない。だから、近くに本体がいるものと判断した。
 そして、それが正解。
 エンリコ・プッチは研究所の近くにいた。
 それは戦況を把握するためでなく、射程距離が二十メートルである為だが。

「入り口は二つに、戦闘で出来た穴が三つ。
 その五つのうちのどこかにいるワケか。順番に爆破していくか。まずは――」

 パピヨンがわざわざ喋っているのには、理由がある。
 もしもホワイトスネイクの本体が生存していた場合、これだけ喋られれば焦るだろう。
 焦りは軽率な判断を呼ぶ物。
 仮にニアデスハピネス起爆の瞬間に、スタンドを解除されていたのなら、冷静に取るべき行動を考察されてはまずい。
 そう考えてたパピヨンは、焦りを呼ぶべくあえて考えを漏らしているのだ。
 パピヨンにとって案の定、入り口の一つから影が飛び出した。
 物音に気づいたパピヨンがニィと笑みを浮かべ、その方向に首を捻った。



「スタンドは、そのままダメージが本体へとフィードバックする。
 先ほどの八匹の黒死の蝶を食らっていたら、確実に無事ではないだろう――が」
「ハァ……ッ、はあ……ッ」
162Classical名無しさん:08/07/20 22:47 ID:y4xeK736
          
163Classical名無しさん:08/07/20 22:48 ID:/xWJDIMA
     
164帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:48 ID:lsOLDQG2

 乱れた呼吸がなかなか戻らない。
 あの場でホワイトスネイクを解除したのは、いい判断だった。
 そうでもしなくては、フィードバックするダメージにより私は息絶えていたことだろう。
 その前がよくなかった。
 ホワイトスネイクより射程の広いニアデスハピネスが迫るより早く、こちらから仕掛けるという考えはよかった。
 しかし、他の武器の存在を失念していた。
 研究員の記憶により、剣や棒へと形状が変化する赤と白の武器の存在は知っていた。
 しかしそれを所持していなかったために、好機と判断して不用意に近づいてしまった。
 あんな伸びる槍――核鉄のようだ――を所持していたとは。

「爆発の直前にスタンドを解除して逃れたということも、考えられる。
 スタンドを操作していた本体は、戦況を把握出来る場所――つまり近くにいるのだろう。
 先ほどの爆撃で死んだとは思うが、念には念を入れるにこしたことはない。
 入り口は二つに、戦闘で出来た穴が三つ。
 その五つのうちのどこかにいるワケか。順番に爆破していくか。まずは――」

 クッ、情報通りだな。
 なかなかに頭が冴えるようじゃあないか。
 見てみれば、パピヨンの掌にニアデスハピネスが集い、巨大な蝶の形を構成している。
 仮にアレを食らえば……、
墨塵すら残らないかもしれないな……
 蝶野の口調から考えるに、私が死んだものと勘違いしているワケでないのは明らか。
 どうするか――思案しながら、ホワイトスネイクを再び発現する。
 再びホワイトスネイクを研究室に入れて、蝶野に見せ付ける。
 おそらくはあの巨大な蝶をぶつけてくるだろう。
 その瞬間に、再びホワイトスネイクを解除――駄目だ。
 ホワイトスネイクを研究室に入れる際に、私の居場所がバレる。少なくとも、『その方向にいる』程度は確実にバレてしまう。
 そうなってしまえば、ホワイトスネイクに蝶をぶつける理由がない。最初から私のいる方向を狙うだろう。
 だとすれば、どうする。
165Classical名無しさん:08/07/20 22:49 ID:y4xeK736
   
166帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:49 ID:lsOLDQG2
 ホワイトスネイクを部屋に入れて、それが蝶野にバレてしまっては駄目。
 バレぬようにホワイトスネイクを忍ばせる――方法がない。
 入り込めるのは、先ほど蝶野があげた五箇所のみ。
 その何処から入ろうと、全てを警戒しているであろう蝶野には見つかってしまう。
 どうする、どうする、どうする、どうする……

 ――――ッ!!

 そうだ。
 逆に考えろ。
 いまあげた方法が駄目な理由。それは私の居場所が推測されるから、だ。
 そうだ。
 ホワイトスネイクが見つかるから、私の居場所がバレる。
 入ってきた方向から推測できるし、私は壁を登ったりしてバレないように移動出来ないからな。
 見つからなかった方が、ここに残った方が壁を登れたなら? 居場所を変えることが出来るならば?
 最初に入ってきた方と異なる方の居場所を推測するのは、不可能ということになる――!

 しかしこれをするのは、あまりに分が悪い――が、ここで死ぬのは私の『運命』ではないはずだ。
 蝶野は、いわば私と天国の間の『壁』。
 現状は、天国へ向かうための『試練』。
 隔たる壁を打ち壊し『到達』せよという、『天国』へ至るための『試練』。
 私は、『天国』に『到達』するという『運命』を『引』き寄せるッ!



「なにッ!?」
167帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:49 ID:lsOLDQG2

 何者かが現れことに気付き、首を回してその方向を確認したパピヨンが、思わず驚愕の声を出す。
 そこにいたのは、全身に横縞模様と四種のアルファベットが刻まれた異型のスタンド『ホワイトスネイク』――ではなく。
 ホワイトスネイクの本体――――エンリコ・プッチ。
 まさか本体が現れるとは微塵も思っていなかったパピヨンは、ほんの一瞬動作が遅れる。
 その間に、プッチは持っていたDISCを思いっきり振りかぶり、投擲した。
 その方向は、パピヨンの頭部。


 突然だが、圧倒的耐久力を誇るホムンクルスにも、ここを攻撃されてはまずいという急所が二つ存在する。
 一つは、章印という名のマーク。
 動物型や植物型のホムンクルスには額に、人型ホムンクルスには左胸に存在することが多い。
 それをぶち抜かれてしまえば、どんなホムンクルスでも戦闘不能となる。
 そして、もう一つの急所は頭部。
 そこを攻撃されれば、どんなホムンクルスでも一時的に戦闘不能となる。
 章印をぶち抜かれるよりはマシだが、それでも戦闘中に一時戦闘不能になるのは、大きな弱みだ。
 しかし、パピヨンには急所の一つである章印は無い。
 不完全な幼生態によってホムンクルス化した為だ。
 ならば、弱点は頭部だけか?
 いいや、違う。そううまくは、いかない。
 彼は患っていた不治の病を引き継いだまま、不完全なホムンクルスとなってしまったのだ。
 異常なまでの耐久力のなさは、そのためだ。
 いわばパピヨンの弱点は、頭部と病。
 しかし戦闘において、殆どの人型ホムンクルスが頭部と章印のある左胸をまもりながら戦う中、パピヨンは左胸を守る必要はない。
 そこに急所はないのだから。
 戦闘中にパピヨンが守るのは、頭部だけだ。他の部位は傷ついたとしても、それこそどうにでもなる。
 つまり頭部の守る事に関してだけは、パピヨンは必死になる。そこしか守る箇所が無いのだから。
168Classical名無しさん:08/07/20 22:49 ID:y4xeK736
           
169帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:50 ID:lsOLDQG2

「頭を狙うか。その判断は正しい……が!」

 パピヨンが右腕を横凪に振るう。
 すると、そこに止まっていた黒色火薬で構成された巨大な蝶が、DISCに向かって飛来していく。
 研究室を揺らす轟音とともに、DISCを巻き込んで黒色火薬が盛大に起爆。
 発生した爆風にプッチは吹き飛ばされ、壁に背を叩きつけられる。
 一方、パピヨンは背とふくらはぎの漆黒の羽によって、空中で微動だにせずに体勢を保っている。
 そのままパピヨンは、その場で爆煙が晴れるのを待つ。
 その場所から動かずに。
 だから、パピヨンは驚くことになった。
 爆煙の中、パピヨンの額目掛けて突き進んできたDISCに。

 ――ホワイトスネイクにより取り出されたDISCは、『体内に入った状態で、DISCを入れていた者が死んでしまった場合にのみ』消滅する。
 ――たとえ思いっきり砕いても、潰しても、曲げても、再生して元のDISC状に戻るのだ。

 己の能力で出現した煙のあまりの濃さに、パピヨンは迫るDISCになかなか気付かなかった。
 気付いたときには、もはやDISCとパピヨンの距離はあと数センチ。
 ニアデスハピネスでの迎撃。手で以って受け止める。
 そのどちらも共に不可と判断し、パピヨンは咄嗟に首を横に動かした。
 かなりの俊敏さだったが、DISCに気付くのが遅かったのが災いする。
 半分ほどDISCはパピヨンの額に突き刺さり――流れるように、一人の研究員の記憶がパピヨンの脳内を駆け巡った。
 その記憶は、プッチがついさっき抜き取ったBADAN研究員のもの。
 数十年分の記憶が一気に流れるショックで、パピヨンの動作は止まる。
 ニアデスハピネスは展開されたままだが、燃焼させての飛行が難しくなり、フラリフラリとゆっくりと地面に落ちてくる。
 それを確認したプッチは、背を叩きつけられたダメージを意に介さず、己のスタンドの名を叫ぶ。
170Classical名無しさん:08/07/20 22:50 ID:y4xeK736
            
171帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:50 ID:lsOLDQG2

「『ホワイトスネイク』ッ!!」

 プッチが研究室に入り込む前に発現させ、研究所の外で待機させておいたホワイトスネイクが部屋に入る。
 ホワイトスネイクが駆ける。パピヨンとの距離を詰めるべく。DISCを抜き取るべく。
 しかしパピヨンの抵抗の所為で、研究員の記憶DISCは半分以上はみ出ている。
 すでに少し動かしただけで、勝手にずり落ちてしまいそうなほどだ。
 気付いたのか、パピヨンが動こうとしている――傍目には、のた打ち回っているだけだが――。
 これではホワイトスネイクがパピヨンの元へと辿りつく前に、記憶DISCが抜けてしまう。
 そう思ったプッチは――――自らもパピヨンの方へ走った。
 ホワイトスネイクは本体が近ければ近いほど、スピードとパワーが増す特殊なスタンド。
 だからプッチも駆ける。ホワイトスネイクに少しでも近づくために。ホワイトスネイクを加速させるために。
 プッチ自身が駆けたこともあってか、ホワイトスネイクがパピヨンの元へたどり着いたのと、パピヨンの額よりDISCが零れ落ちたのは同時。

「そこだァーーーッ! 抜き取れッ、『ホワイトスネイク』!!」

 プッチの叫びが、研究室に木霊する。
 ホワイトスネイクの手が、パピヨンへと振り下ろされようと――――



「『ホワイトスネイク』ッ!!」

 誰かしらの記憶が流れる中、スタンド使いの声が聞こえた。
 ホワイトスネイク――奴のスタンドの名か?
 この誰か――BADAN研究員らしい――の記憶によれば、あのスタンドは他人の記憶をディスクとして抜き出すようだ。
 そういえば、スタンドディスクなんてものが支給されているというのは赤木から聞いた。
 奴は、スタンドと記憶をディスク化出来るのか?
 或いは、他の何かもディスク化できると見るべきだ。
172Classical名無しさん:08/07/20 22:51 ID:y4xeK736
               
173帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:51 ID:lsOLDQG2
 BADAN研究員の記憶はディスクを抜かれれば、また最初に戻ってリピートされる。
 そこからの記憶が無い――ということは、ディスクを抜き出されればそこで死ぬのか?
 可能性は低くはない。
 どうにかして、動かねばならない。
 身体を動かそうとするも、なかなか思い通りにいかない。
 流れる記憶を眺めるほうにばかりに、脳が作動しているのか。

 ずるり、ずるり。

 少しずつ、額からディスクが抜けようとしている感覚。
 奴のスタンドが迫る。
 それとディスクが抜け落ちるのが、どちらが先か。
 無理矢理に身体を動かす。

 ずるり、ずるっ。

 やっと、ディスクが額から抜けた。
 脳の容量を大きく占めていたヴィジョンが消え、ふうと息が漏れる。
 そして目の前の状況に反応するべく
、脳を切り替える。
 チラリと奴のスタンドが、視界に入る。
 方向は右。

 ず――
174帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:51 ID:lsOLDQG2

 再びディスクが抜かれる感覚が、頭に響く。
 しかし、既にディスクの大きさは知っているぞ。
 その程度のスピードでは、完全に抜くまでに時間がかかるな。
 抜き終わる前に攻撃し、その後ディスクを戻せばいい。
 とはいっても、ニアデスハピネスを使用する時間はない。
 右を向く。瞳に移るおどろおどろしい異型のスタンド。
 一気に一閃するべく、右手で手刀を作る。

 るり、ずるっ。



 エンリコ・プッチにとって予想外だったのは、パピヨンが研究員の記憶のヴィジョンを見ながら、それなりに冷静であったこと。
 よもやパピヨンがホワイトスネイクの能力を分析し、DISCが抜き終えるまでの時間を計算していようなど、夢にも思っていないだろう。
 そしてパピヨンにとって予想外だったのは――…………


「そこだァーーーッ! 抜き取れッ、『ホワイトスネイク』!!」

 プッチが叫ぶと同時に、ホワイトスネイクが腕を振り下ろす。
 すると『二枚』の『大小』のDISCがライダーマンヘルメットを突き抜けて、ともに半分ほど姿を現す。
 ホワイトスネイクは迷わず小さいほうのDISCを指で摘み、引き抜こうとする。
 それとほぼ同時に、パピヨンが手刀を作る。
 しかしパピヨンの手刀が振り下ろされるより速く、『小さい方』のDISCは抜き取られてしまった。
 同時に、パピヨンの目の前が真っ暗になる。
175帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:52 ID:lsOLDQG2

 ホワイトスネイクが抜き取ったのは、『視覚』のDISC。
 パピヨンは、ホワイトスネイクが『記憶とスタンド以外の何か』もDISC化できる可能性を考慮していた。
 しかし、パピヨンは勝手にその『何か』のDISCも、記憶やスタンドのDISCと同じ程度の大きさだと思ってしまったのだ。
 実際には、僅か直径数センチ程度のものなのに。
 そしてパピヨンにとって予想外だったのは、『小さな』DISCの存在だ。
 とはいっても、これは仕方のない間違いだ。
 『記憶とスタンド以外の何か』をDISC化できると考えただけでも、パピヨンは素晴らしい。
 しかしその仕方なかったミスが、命取りとなる。

 突如視界を失ったパピヨンは暫し硬直するも、とにかく手刀で己の右方向を切り裂く。
 しかしそこに既にホワイトスネイクはおらず、パピヨンの手刀は空気を貫くに終わる。
 ホワイトスネイクはパピヨンの視覚を奪った時点で、困惑するパピヨンを放置して移動を開始していたのだ。
 ホワイトスネイクは、同時進行的にパピヨンの視覚DISCをプッチの方へ投擲し、プッチはそれをキャッチした。
 地面をドロドロにしたことにより、足音を立てることなく移動するホワイトスネイク。
 パピヨンの左側に回りこんで、パピヨンの記憶DISCに触れ、引き抜こうとする。
 ずるり、ずるり、という音が、パピヨンの脳内に響く。

「貴様――ッ!?」

 動転しているのが見て分かるような反応をするパピヨンが、咄嗟に黒死の蝶を四匹ほど形成して自身の左側に向かわせる。
 しかし、それはホワイトスネイクのあった空間で起爆するだけ。
 プッチがホワイトスネイクを解除したことにより、そこには既にホワイトスネイクはいない。
 プッチが三度目のスタンド発現を行い、パピヨンの元へと向かわせる。
 パピヨンが視覚を失っているのを承知で、ホワイトスネイクは駆ける。無論、地面をドロドロにするのは忘れずに。
 プッチは既にパピヨンから五メートル程度の距離にいるので、ホワイトスネイクの位置も近く、かつ速度もかなりのもの。
 パピヨンが、記憶のDISCを額に押し込む隙を与えない。そう考えての行動。
 ホワイトスネイクがパピヨンの元へと到達し、DISCに手を伸ばそうとした時だ。
 それまで沈黙していたパピヨンが――――ポーズを取った。
176帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:53 ID:lsOLDQG2
 両の手を空中に上げ、足は肩幅ほどに開いて、叫ぶ。

「パ・ピ……ヨン!」

 そして、跳躍。
 パピヨンはかつてライダーマンヘルメットを所持していた川田章吾と戦闘し、ライダーマンスーツの性能について聞いている。
 ライダーマンスーツは、単純に全ての身体能力が同じだけ上昇するというワケではない。
 所々、強化の強い箇所がある。特に――ジャンプ力やキック力は相当なモノ。
 その話を聞いていた。だからこその跳躍だ。
 一気に天井付近まで到達したパピヨンは、背とふくらはぎに生やした羽状のニアデスハピネスでホバリングする。

「……成程」

 空中で静止するパピヨンを視線で追ったプッチが、呟いた。
 同時に、パピヨンが突っ込んできた際に開いた壁の穴から、ブオンというエンジン音が響き渡った。
 そこに出現したのは、特殊バイクヘルダイバー。
 パピヨンがライダーマンヘルメットの無線通信で呼び出したのだ。
 空中からそのバイクに視線を移したプッチが、再度パピヨンのいる上空を見やり、口を開く。
177帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:54 ID:lsOLDQG2

「天井付近の全範囲全方位に浮かべた火薬の蝶。ホワイトスネイクの居場所を突き止めるのを諦め、上方に仕掛けていたか。
 起爆させれば自身もダメージを受けるが、そのバイクがあれば逃走可能。
 『視覚』を奪われた状況での最善の一手といえるだろう……」

 そう、パピヨンは既に天井付近に無数の黒死の蝶を配置していたのだ。
 自分の上空だけはそこに飛び込むために空け、そこ以外を埋め尽くす無数の黒死の蝶。
 その数は、三桁にまで達していることだろう。
 露出したパピヨンの口角が、ニィイとこれまでで最も吊り上る。

「お前ではない。仮面ライダー・パピヨンだ。
 もっと恐怖を込めて、俺の名を呼べッ! 往け、黒死の蝶ッ!」

 パピヨンが右手の指を鳴らす。
 それに呼応するように、天井付近で静止していた黒死の蝶達は――

「――『不可能』という点に目を瞑れば、だがな」

 ――消滅した。
 パピヨンは自身の記憶のDISCが抜け落ちたことにより、仮死状態となったのだ。
 仮死状態のものに、闘争本能が存在するわけがない。
 結果、展開していたニアデスハピネスは核鉄に戻った――というワケだ。
 パピヨンの額より飛び出し、引力のままに落下してきたパピヨンの記憶のDISCをプッチがキャッチする。
 核鉄二つとパピヨン自身には、プッチは目もくれず。ゆえに、そのまま地面へと激突した。
 どちらも耐久力はかなりのものなので、なんともないだろが。
 そんなことを気にも留めず、プッチは手に入れた記憶のDISCを己の額に挿入した。
178帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:54 ID:lsOLDQG2

 パピヨンの記憶DISCはホワイトスネイクが二度目に触れた時点で、既にゆるゆるであと少しでもホワイトスネイクが触れれば抜けてしまう状態だった。
 DISCを無理に押し込む暇を与えず、ホワイトスネイクはパピヨンに迫った。
 パピヨンは近づいてきたホワイトスネイクから距離を取るべく、跳躍。
 これがいけなかった。
 ただでさえ、ゆるゆるなDISCがこれのせいで九割以上顔を出してしまった。
 パピヨンは上昇の感覚により、ずるりずるりとDISCがずれる音に気付かず。
 そうなれば、あとは時間の問題だった。
 時間が経過するだけでも勝手にDISCが飛び出していただろうが、最後に指を鳴らしたのが引き金となり、額に沈んでいた僅かな部分も外に出てしまった。



「いつまで呆けている気だ。あの男は倒れているが、ただ一時的に眠らせたにすぎないからな。
 いまのうちに自室に戻っていろ。ここは危険だ」
「あ、ああ……」

 蝶野の記憶DISCを額から抜き取り、伊藤博士に言葉をかける。
 若干挙動不審気味な反応をした後、彼は彼の部屋への通路へと小走りで向かっていた。
 それにしてもこんなパッとしない男が、誰も気付かぬうちに情報を漏らしていたとはな。
 見かけによらず、なかなかに肝が据わっているのか。ただのキチガイか。
 このことを暗闇大使に明かしてもいいが、それはしない。別にどうでもいいこと、だからな。

 伊藤博士がいなくなったのを見計らって、ホワイトスネイクで『命令』のDISCを創り出す。
 この能力が制限されているのは、既に分かっていた。
 『創り出してから二秒以内に何かに差し込まねば、『命令』は消えてしまう』――とてもじゃないが、戦闘には使えない。
 だが、昏睡しているものが相手なら問題なし。
 創り出したDISCをすぐさま、蝶野に埋め込む。
 命令は、『視界に入ったもの』を『持ちうる全力』を使って『破壊』する。
 しかし、仮死状態でかつ視覚を失った蝶野は動かない。
 それでいい。
179帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:55 ID:lsOLDQG2
 すぐに動かれては、私自身が危険だ。
 倒れた蝶野の手元に、核鉄を置いておいてやる。
 そして蝶野の真上の天井をドロドロにして、そこに蝶野の記憶のDISCと視覚のDISCをくっつける。
 DISCは死に行く者に突き刺さない限りは消滅することはないので、溶けてしまうことはないだろう。
 さて、暗闇大使が来ない内に早々に研究所を後にするとしよう。
 暫し歩いたところでBADANから支給された携帯電話を取り出し、司令室に電話をかける。
 現在地は研究室から二十メートル以内で、かつ研究室内部から見られることはない。
 実に、実にちょうどいい。

『とぅおるるるる――ガチャッ。こちら司令室、構成員NO.057』

 侵入者の存在で焦っているのかは知らないが、すぐに反応があった。
 あたかも疲れてる風を装って――いや、実際に疲労はかなり大きいが――、それに答える。

「はあッ……、ハァー……、エンリコ・プッチだ。伊藤博士は保護し、自室に帰らせた。
 また侵入者を昏睡させたが、こちらの疲労が大きい。長くは持たないだろう……ッ。
 自室に帰還させてもらう。暗闇大使に伝えてくれ……」
『え? 急に破壊音が止んだため、てっきり蝶野攻爵を始末したものと……』

 意外そうな反応。
 それはそうだろう。相手は私の能力がうまくいけば、相手を仮死状態に出来ると知っているわけだしな。
 ここで、ホワイトスネイクのドロドロにする能力を解除する。
 解けていた天井は元の硬い素材に戻り、付着させたDISCは蝶野の額へと落下しただろう。

「いや、昏睡させただけだ。幻覚をかける能力――情報くらいは聞い、て……いるだろう?
 それを……使用したもの、の……ッ、予想以上に精神の疲労が――」
180Classical名無しさん:08/07/20 22:55 ID:y4xeK736
             
181帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:56 ID:lsOLDQG2

 ――ドッゴオ゛オ゛オ゛ォ゛オオオンッ!!

 聞き覚えのある爆発音。あの黒色火薬か。核鉄を放置した甲斐があったな。
 蝶野攻爵は仮死状態から立ち直り、視覚も再び手に入れ、『命令』の通りに動いているらしいな。
 未だ爆発音は続く。これだけの大音量ならば、電話の向こう側にも聞こえているだろう。
 『すまない、能力が破られた。帰還する』と簡潔に告げ、携帯電話の電源を切る。

 蝶野は何かが『視界に入る』限り、それを『全力』で『破壊』する。
 研究室から見えないこの位置ならば攻撃を受けることはないが、流れ弾を食らってしまったら笑えない。
 ホワイトスネイクを解除し、お暇させていただくとしよう。
 ――それにしても、疲労が大きいな。
 長期間の発現、ドロドロにする能力に、幻覚、そして『命令』のDISC生成。後ろ二つが特に大きかった。

 さて蝶野の記憶によれば、神に祈れば首輪の霊的守護は外れるらしいな。
 ……全ては、この時の為だったのだろうか。
 神父を志したのも――いや、そもそもはあの疑問を抱いたことが始まりか。
 全ては、『引』かれていたのだろう。
 私が首輪の霊的守護を祓う運命に、彼と出会う運命に、そして――『天国』へと到達する運命に。
 首輪を解除し、『生まれたもの』を『支配』する。
 その為に、蝶野を暴れさせた。
 別に仮死状態のまま朽ちていっても私にとっては関係なかったが、暗闇大使を足止めさせるには必要なことだった。
 生き長らえさせたことには、別に感謝してもらわなくていい。
 お前がそういう『運命』であっただけなのだからな、蝶野攻爵。

 それにしても――――お前が、『帝王』とはな。
182帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:57 ID:lsOLDQG2
 勝手に、拳に力が篭ってしまう。
 笑わせるんじゃあないぞ、蝶野攻爵ッ! なまっちょろいクソガキがッ!
 貴様は彼に憧れ、己を彼と同じ位置にいると『思い込んだ』にすぎない。
 確かに人のレベルを超えた身体能力に、圧倒的な破壊力を持つ異能力、そして頭脳。
 それらは、彼にもひけを取らないかもしれない。しかし貴様は、彼とは違う!
 『深遠なる目的』も持たずに帝王?
 BADANの技術を手に入れ、帝王として君臨する?
 彼が帝王を名乗ったのは、『深遠なる目的』ゆえのことだッ。
 全ては、『克服』する為だッ!
 貴様のような薄っぺらい目的でッ、『深遠なる目的』の彼と並んだとでも思ったかッ!
 貴様は、かつてドクトル・バタフライという男に言ったな。
 『眩い光に惹かれてうろつくだけで、一人では高くも遠くへも飛べぬ醜い蛾』と。
 そのような例えをするならば、貴様はギリシア神話に登場する工匠ダイダロスの息子、イカロスにすぎない。
 彼という神々しいまでの光を放つ太陽に、貴様は己の身の程も知らず不用意に近づこうとしたから身を焦がしたのだ。
 所詮、貴様はその程度の人間だ。『命令』に従ったまま、ゆっくりと己の身の丈をわきまえていろッ!



【マップ外/サザンクロス内部通路 二日目/昼】
【伊藤博士@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]後頭部に異変、少し興奮気味
[装備]無し
[道具]無し
[思考・状況]
1:バダンに反抗する覚悟を決めた。
2:現在の状況に混乱。とりあえず自室に戻る。
[備考]
※首輪をしていません。
※解除された首輪が、自室の棚に隠してあります。
※赤木しげるは、大首領により殺害されたものと判断しました。
183Classical名無しさん:08/07/20 22:57 ID:qBmw1lNk
184帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:57 ID:lsOLDQG2



【マップ外/サザンクロス内部通路 二日目/昼】
【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]骨を蘇らせた際に右掌に怪我、微植物化、強い決意、疲労(極大)
[装備]
[道具]死神13のDISC@ジョジョの奇妙な冒険、BADANより支給された携帯電話、リンプ・ビズキットのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:天国に行く。
1:首輪を解除する。
2:トイレの『生まれたもの』を確認しにいきたい。
3:『生まれたもの』が動き出せば、承太郎の記憶より知った『支配』する方法をためす。
4:ジョセフ・ジョースターよ、私を押し上げてくれ。
[備考]
※首輪をつけています。
※空条承太郎の記憶DISCは、既に確認した後です。
※暗闇大使とプッチの部屋の近くのトイレのロッカーに、『生まれたもの』を隠しました。
※ホワイトスネイクの幻覚攻撃が制限により体力が大きく消耗し、『外部からの刺激』がなくとも矛盾点を見つければ幻覚から目が覚めます。
※ホワイトスネイクは、『出したスタンドが万人に見えてしまう』という制限がかけられています。
※ホワイトスネイクの命令のDISCには、『創り出してから二秒以内に何かに差し込まねば、『命令』は消えてしまう』制限がかけられています。
※蝶野攻爵の記憶を見ました。
185Classical名無しさん:08/07/20 22:57 ID:y4xeK736
  
186帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:57 ID:lsOLDQG2



【首輪について】
※エネルギー抑制装置 = 身体能力、異能力を弱体化させる装置。電源でなく、生体エネルギーにより作動。
 スタンド適正付与装置 = 嵌めた者を強制的に、全てのスタンドDISCに対する『適性』が存在する状態にする装置。電源でなく、生体エネルギーにより作動。
 起爆装置 = 爆薬を爆発させる装置。マップ外や禁止エリアに入った場合三十秒以内に安全地域に戻らねば、作動。また作動スイッチを押されれば、十秒ほどで作動。
 盗聴器 = 振動を計測。その振幅を変調・音声として出力させる。
 GPS = 上空の衛星に信号を送り、それを受信機で受け取ることで、現在位置を知るシステム
 闘争心誤読装置 = 核鉄を誤起動させる装置。ただし、これがないと武装錬金世界出身の人物でないと、核鉄を発動できない。なお、機能は
              ・闘争本能を読み違いさせているのは核鉄のみ。
              ・シリアルナンバーごとに核鉄を誤読させている。
           である。電源でなく、生体エネルギーにより作動。
 生存感知装置 = 生存を感知する装置。

※上記の七つの装置に加え、爆薬が内蔵されています。
※能力制限装置は、制限する能力と制限の度合いを選択可能です。
※現在参加者に嵌められている首輪は、強者と弱者の格差をなくすように働いています。
※その為に弱者には軽い制限、強者には重い制限がかけられています。
※首輪が解除、或いは装着している者が死亡した場合、首輪はGPSを除く全機能を停止します。
 ただし、爆弾のスイッチをオフにした場合は、GPS、起爆装置、盗聴器、生存感知装置の機能停止します(ガモンの首輪はその原理を利用)
※スタンド適正付与装置は、『スタンドが目視可能な身体になる』効果も持っています。その効果は、DISCを挿入していなくても発動しています。
187Classical名無しさん:08/07/20 22:58 ID:/xWJDIMA
 
188Classical名無しさん:08/07/20 22:58 ID:y4xeK736
       
189帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 22:59 ID:lsOLDQG2






 パピヨンは、視界に入る全てのものを全力で以って破壊する。
 額に挿入された命令のDISCに従って。
 背とふくらはぎにニアデスハピネスで構成された漆黒の羽を生やして、周囲に黒死の蝶を浮かべる。
 ニアデスハピネスを燃焼させることで宙に浮かび、デイパックからライドルを取り出す。
 そして、目に入ったものを壊す。
 ただ壊す。
 黒死の蝶を向かわせて、起爆させる。
 ライドルで斬りつける、打ち据える。
 その人間をはるかに超越したパワーで、殴りぬける。
 今のパピヨンに意思はない。
 ただ、命令に従うだけのロボットも同然。
 だから今は何も考えず、一切の手加減もなくただ破壊する。
 瞳に映った全てのものを。
 今、パピヨンは視界に入る瓦礫や怪人の死骸を破壊している。
 この場に誰かが訪れたなら、本能的にパピヨンはその方向を確認するだろう。
 そうなればパピヨンの瞳には来訪者が映り、パピヨンはその来訪者を破壊しようとする。

 ――問題は誰が訪れるか、である。
190帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 23:00 ID:lsOLDQG2

 そんなもの、この場に向かっている暗闇大使以外にありえない?
 いいや、違う。
 もしかしたら伊藤博士が漏洩した情報により、首輪を解除した参加者がここを訪れるかもしれない。
 村雨良にとって、伊藤博士は父親の親友の研究仲間。
 研究所の場所を知れば、救助に来るのは自明である。
 サザンクロス内の地図は、伊藤博士が紛れ込ませた地図に記されている。
 それを見れば、研究所の場所は一目瞭然。
 村雨良がそれを知れば、どうするかは考えずとも明らかであろう。

 ――パピヨンを止める方法がないわけではない。

 額に衝撃を与えることで、命令のDISCを取り出せばいいのだ。
 そうすれば、パピヨンは命令に縛られることになる。
 しかしもしも命令のDISCを取り出せば、パピヨンは己がプッチに敗北したことを知るだろう。
 敗北してなお生きながらえていることを。
 己を帝王と称したパピヨンがそれを知り、いったいどういう行動を取るのか。
 絶望? 激昂? 歓喜? 慟哭? 自殺? 失望? 懐疑? 暴走?
 それは、まだ誰にも分からない。


191帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 23:00 ID:lsOLDQG2
【マップ外/サザンクロス内部研究室 二日目/昼】
【パピヨン@武装錬金】
[状態]:疲労(大)、ドブ川の濁ったような瞳、帝王への決意、首輪が解除、
[装備]:ライドル@仮面ライダーSPIRITS、マイクロウージー(9ミリパラベラム弾32/32)、予備マガジン2、
    猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険、アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙
    サンライトハート(核鉄状態&首輪@パピヨンが巻かれている)@武装錬金
    ニアデスハピネス・アナザータイプ=核鉄(激戦)@武装錬金、ヘルダイバー@仮面ライダーSPIRITS
    ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾1発、劣化ウラン弾、残弾0発)@HELLSING、ライダーマンのヘルメット@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式、チョココロネ(残り4つ)@らき☆すた、
    地下鉄管理センターの位置がわかる地図、地下鉄システム仕様書
    ルイズの杖、参加者顔写真&詳細プロフィール付き名簿、首輪探知機@BATTLE ROYALE、
    ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン
    首輪(鳴海)、解除済みの首輪の残骸×2(赤木、川田)、ツールセット、不明支給品1(未確認)
[思考・状況]
基本:『視界に入ったもの』を『持ちうる全力』を使って『破壊』する
[備考]
※参戦時期はヴィクター戦、カズキに白い核鉄を渡した直後です
※スタンド、矢の存在に興味を持っています。
※詳細名簿を入手しました。DIOの能力については「時を止める能力」と一言記載があるだけのようです。
※こなたの死体を『食べ』ました。
※覚悟、アカギのことを快く思っていません。
※首輪の構造を理解しました。少なくとも、死体(川田)の首輪の分解には成功しました。
 ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。
 首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。
 スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。
 また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。
※命令のDISCにより、命令以外の思考はしません。
※額に強い衝撃を与えれば、命令のDISCは取り出せます。
192Classical名無しさん:08/07/20 23:00 ID:y4xeK736
      
193Classical名無しさん:08/07/20 23:01 ID:y4xeK736
    
194Classical名無しさん:08/07/20 23:01 ID:/xWJDIMA
     
195帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 23:01 ID:lsOLDQG2





 その場を捜索することもなく早々と移動を開始したプッチは、気付くことはなかった。
 先ほどまで伊藤博士がいた付近に散らばっている、破片や怪人の亡骸の下に埋もれた携帯電話に。
 その携帯電話に表示された、『送信完了』の文字に。
 パピヨンがサザンクロスに侵入し伊藤博士と接触した際に、最初に伊藤博士の身を心配して声を上げた研究員。
 その後、彼はその場から逃走した。
 安全を求めて逃げた先で、プッチに記憶をDISC化されてしまうという不幸っぷりであったが、それは今はどうでもいい。
 問題は、彼が逃走する際に携帯電話を落としたということ。
 パピヨンとプッチが戦闘している最中に、その携帯電話を伊藤博士は拾い上げると、一気にメールを書き上げて送信した。
 時間が無かったこともあり、送信出来た場所は一つだけ。

 ――学校。

 理由は、彼が最後に首輪管理用のモニターを見た際、村雨良がそこに向かっていたから。
 記憶を取り戻した村雨が、まだそこにいることを願って。
 伊藤博士が送信したメールの内容は、以下の通りだ。

『ホワイトスネイクは、記憶とスタンド以外に『視覚』もDISC化出来るようだ。その場合、DISCはスタンドや記憶のそれよりは小型となる。
 そして幻覚を見せて相手を昏睡させる能力、物体をドロドロに溶かす能力も持っているようだ。   Dr.伊藤』
196帝王賛歌 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 23:01 ID:lsOLDQG2

 プッチがBADAN側についたスタンド使いで、スタンド名はホワイトスネイク。
 スタンドや記憶をDISC化して抜き取ることが出来る。
 という点や、プッチの見た目については、伊藤博士は既に『成仏鉄球』と『列車』に同封した手紙に記しておいた。
 しかしその手紙を誰かが確認したのかどうかは、伊藤博士は知らない。
 それにしては、メールの内容が短すぎるのではないか。
 唐突に『ホワイトスネイク』と言われても、意味が分からないのではないか。
 そう思うかも知れない。
 しかし長々と携帯を弄り続けた結果、パピヨンやプッチにバレてしまって携帯を破壊されてしまえばどうしようもない。
 だからこそ、伊藤博士はメールには上記の内容しか打たなかったのだ。
 実際、彼の手紙はBADANに反抗する意思を持つ者が、目を通してある。
 その者達の誰かが、伊藤博士の送ったメールに気付けば、ホワイトスネイクの能力はほぼ全て知られてしまうことになるだろう。
 エンリコ・プッチは現在、己の運命に少なからず感謝している。
 しかし伊藤博士の行動に気付かなかったことは、彼にとって大きすぎる不手際であろう。

 今はまだ、エンリコ・プッチはそのことに気付いていない。
 いずれ、嫌でも気付かざるを得ない事態に巻き込まれるのか。
 はたまた彼の運命は、そんな事態を引き寄せないのか。
 それもまた、今はまだ誰も分からない。

 ――いや、もしかしたら牢獄に幽閉された彼は、知っているのかもしれない。



※エリアC−4の学校に、以下の内容のメールが送信されました。

『ホワイトスネイクは、記憶とスタンド以外に『視覚』もDISC化出来るようだ。その場合、DISCはスタンドや記憶のそれよりは小型となる。
 そして幻覚を見せて相手を昏睡させる能力、物体をドロドロに溶かす能力も持っているようだ。   Dr.伊藤』
197 ◆hqLsjDR84w :08/07/20 23:02 ID:lsOLDQG2
投下完了です。支援、感謝です。
誤字、脱字、その他アレ? と思う点ありましたら指摘してください。
198Classical名無しさん:08/07/20 23:03 ID:y4xeK736
          
199Classical名無しさん:08/07/20 23:10 ID:y4xeK736
投下乙!
見事な頭脳戦。騙しあいが見事!
プッチの作戦が、パッピーの暴走がどう決着するか楽しみです。
GJ!
200Classical名無しさん:08/07/20 23:32 ID:EGRRIqmU
投下乙です!
投下前に終わっていたらびっくりですよねーww

パッピーとプッチーの武装錬金とスタンド、そして己が頭脳のぶつかり合い! そして意外と運否天賦!
読み応え十二分の素晴らしい作品でした。
それにしても、ノリノリの無双状態だったパッピーを斃すとは、ホワイトスネイク、恐るべきスタンド……!
伊藤博士も頑張っていますが……嗚呼、無常。村雨達は既に学校を去っている。
あの情報が村雨達に届くことがあるのか?……無理っぽいなぁ。
201Classical名無しさん:08/07/21 01:01 ID:SjTnFoo.
投下乙!
2人の思考が素晴らしいな…どこまでも裏の探りあい、されど場面は頓着せず…
ギリギリのところでクリアーしていくのがなんともいえない。
果たしてパピヨンはこのまま誰かの手にかかって倒されてしまうのか…あるいは別の展開が?
展開が呼ぶ展開に次も期待だ!
202Classical名無しさん:08/07/24 19:58 ID:arZkzqu6
みんながんばれー
203Classical名無しさん:08/07/25 00:55 ID:W2uOMnSU
暗闇来るの遅すぎません?
204Classical名無しさん:08/07/25 01:26 ID:FxX6QJLc
>>203
多分そんなツッコまなきゃいかんほどじゃないと思う
悟空が飛んだらそこまで時間かからないはずなのに
ピッコロのとこに着くまで時間かかってる漫画展開みたいなもんだと思えばいいと思う
205Classical名無しさん:08/07/25 17:10 ID:W2uOMnSU
>>204
むしろ暗闇は緑のスタンドで永遠にたどり着けなく…
 
とか夢想してたのも私だ。
206Classical名無しさん:08/07/25 18:09 ID:FZwJ.pzA
いや、実際に経過した時間はそれほどじゃないと思う。
思考描写が凄まじく細かいので長く思えるだけで。
207 ◆d4asqdtPw2 :08/07/25 22:01 ID:t82F8WII
すいません、延長させてください。
208Classical名無しさん:08/07/25 22:25 ID:62y3/t0M
把握です。期待してます!
209Classical名無しさん:08/07/25 22:56 ID:weBs/UlY
>>207
了解です。頑張ってください!
210Classical名無しさん:08/07/25 23:11 ID:y6XjjTJM
すいません、延長させてください。
211Classical名無しさん:08/07/27 18:06 ID:vXDrOGTY
すいません、延長させてください。
212Classical名無しさん:08/07/27 23:17 ID:iPFyOTI.
すいません骨延長させてください
213Classical名無しさん:08/07/28 00:05 ID:WSaOA5eY
>>212
どこのジャックだよw
214Classical名無しさん:08/07/28 12:44 ID:.l76Y4kA
すいません。浣腸させてください。
215Classical名無しさん:08/07/28 13:22 ID:U03/NeW.
おまいら自重しろwww
216Classical名無しさん:08/07/28 15:08 ID:qItJr02M
すいません、自重させてください。
217 ◆d4asqdtPw2 :08/07/28 23:32 ID:FSUvB6os
すいません、投下させてください。
218Classical名無しさん:08/07/28 23:33 ID:rZASxAVA
すいません支援させてください
219Classical名無しさん:08/07/28 23:34 ID:U03/NeW.
支援
生命の意味。
少なくとも俺たちが生きとった世界では、そんな事で悩むやつなんざぁおらへんかった。
部活のレギュラー争い。
期末試験の範囲。
週末のデートのプラン。
俺の周りの『健全な学生サマ共』はそんなもんばっかで悩んどった。
俺や『アイツ』みたいな『不健全な高校生探偵』(アイツは途中から小学生になってもうたけどな)でさえ大差ないわ。
『誰が誰を殺した』かなんて事を、出来のええ頭をフル回転させて悩んどった。そんな毎日や。

だから少なくとも俺たちの世界では、生きることに意味なんかあらへん。
目の前に広がる無理難題をなんとかするので精一杯やった。
誰もが『生きること』それ自体に四苦八苦しとったんや。
それでも死にたいとか思っとるやつなんかは(少なくとも日常を生きる俺の視界には)おらへんかった。
生きていることは当たり前のこと。
みんなそう思いながら、人間サマの楽園である大都会を優雅に歩いとったって事や。

いや流石に、あり得へん数の死体をみてきた俺や『アイツ』はそうは思っとらんかったで。
特に『アイツ』は結構な危ない目に会うてきたらしいからのう。
せやかて、そんな俺たちでも『生きること』の意味なんざ考えへん。
そんなもんは逝ってもうた後でも考えられるからな。
閻魔はんに金棒を突きつけられながら問い詰められてから考えればええんや。
そう思っとった。

それが間違いだったとは言わへんで。
仕方のない事や。平和やったんやから。
しかし、今の俺はそれが許されない状況におる。
この生命の意味を考えんとあかんねや。

勿論、『人はなんで生きとるんやろ?』とかいう哲学はパスや。
そんなもんはモッサイ髭を生やしたジジイの暇つぶしに任したらええ。
俺の議題は『何で俺が残ったか』。
(殺人鬼であるものの)吉良はんと、(誤殺であるものの)三村はんを殺した俺。
221Classical名無しさん:08/07/28 23:35 ID:rZASxAVA
アダルトなIDな俺が支援
タバサでなく、アミバはんでなく、ブラボーはんでなく、劉鳳はんでなく……工藤でもなく!
……なんで俺なんや?
無力な両手……血に染まった両手、こんな最悪な両手を持つ俺が……なんで残っとる?
『偶然殺されなかった』なんてそんな意味のない答えは求めとらん。
『神の意思なのだぁ〜』とかそんなお花畑な答えも聞きとうない。

『結果』や。俺が欲しとるのはこの生命の『結果』や。
タバサが劉鳳はんを守ったように、ブラボーはんが劉鳳はんに希望を託したように、劉鳳はんがラオウを殺したように、アミバはんが吉良はんの正体を残してくれたように。
工藤が信念を貫いたように!
生命に意味を与えるための『結果』が必要なんや。
俺が奪ってもうた命に恥じないような『結果』を、この無力な俺が残さなあかんねん。
この俺に何が出来る?
少なくとも、無害な人を殺してもうたんやから、信念なんてもんを貫く資格はあらへん。
ならば、この殺し合いをぶっ壊すために何かせぇへんとあかん。
波紋もアルターも無い俺が、借り物のスタンドと借り物の武装錬金と借り物の銃で。

……何が出来んねん。

村雨はんや覚悟はんが必死に戦っとる間に、部屋の隅っこでかがみはんらを守っとることくらいしかできんやろ。
もしかしたら、かがみはんの方が俺なんかよりも強かったりしてな。
……それは流石にないとしてもや、俺なんかが戦ったって邪魔なだけや。
仲間たちの足を散々引っ張るだけ引っ張って、アッサリ死んでまうのがオチや。
つまるところ、俺は『何もしない』のが一番なんやなぁ。

それでええんか?
……ええわけないやろ。
じゃあどうしたらええんや?

どうしたらええねん?!
223Classical名無しさん:08/07/28 23:36 ID:rZASxAVA
支援

……何で、何でこんなに役立たずやねん。

畜生……!

ちっくしょう……!


「……とり! …………オ〜イ服部ちゃーん?!」
鼓膜を大きく揺らしたのは、飄々とした声だった。
首を傾け視界を右へとずらせば、ジョセフの大きな口が待ち構えていた。

「服部ちゅわ〜ん? シカトですかぁ? そんなに冷たくされたら僕チン泣いちゃう!」
さて、うるさいのがいたのを忘れていた。
思考は中断。結論は後回しにしなければいけないらしい。
だが、殺し合いの緊迫感を盛大にブチ壊すような彼のこの軽さが今は少しだけ嬉しい。
これも彼なりのやさしさであるのだろう。
落ち込んでいる自分を見かねて、ワザとふざけてくれているのだろう。

「スマンな、ジョジョはん……」
「なんだよ服部〜。……もしかして生理か?」
前言撤回。確実に天然だコレ。
なんと言うか……コイツは大物になりそうだ。
絶対に『隠者』になんかはならない。
大統領になって国をソッコーで滅ぼすのとかがお似合いだ。

「はぁ……取り合えず、独歩はんとこ戻ろかー……」
何にせよ、ここでボーとしているのは時間の無駄だ。
パピヨンに会いに行った連中も、そろそろ戻っているころだろう。
今は一刻も早く、合流しなければ……。

「それなんだけどよ〜。……ちょっと俺の地図見てくれ。こいつをどう思う?」
ジョセフはゴソゴソと汚らしいデイパックに手を突っ込むと、中からグシャグシャの地図を取り出す。
「すごく……地図やな……」
「地図なのはいいからよォ〜、このままじゃ独歩のところに辿り着けないんだよなァ〜」
ジョセフが地図のE-2エリア、自分達の集合地点を指差した。
トントンとジョセフの人差し指が叩いた地点には、「9:00」の文字。

「あぁ……せやった。禁止エリアか……」
失念していた。集合場所がもうすぐ禁止エリアになるのであった。
主催者のささやかな嫌がらせだろうか。全くくだらない事をする。
とはいえ、まさか独歩も大人しく待っているわけにはいかないだろう。
参ったな、どこへ移動すればいいか検討もつかない。
適当な施設へ電話でも掛けてみるか……。

「おい……服部……」
俺が思案に暮れていると、ジョセフが多少震えた声を発しながら上着の袖を引っ張ってきた。
さっきまでの明るい声とは違い、まるで亡霊でも見たような声だな。
彼の視線を目で追うと、鳥居の下に佇む男が見える。
銀色の髪。鋭い目つき。覚悟から聞いた通りの服装。

「そんな、アホな……」
死んだはずの男が立っている。こちらを見つめている。
太陽が一番元気な時間にも拘らず、そこには『亡霊』が平気な顔をして立っていた。
だが俺の目に映った彼は『亡霊』と言うより『鬼』、いや違う……『死神』。
そう、何故だか俺には赤木しげるが『死神』に見えて仕方が無かった。


◆     ◆     ◆


「ここを進んだ先に強化外骨格が眠っているはずだ」
「うおー……なんか緊張してきたでー……」
手のひらに滲む汗を拭いながら、社に続く石段を一歩一歩進んでいく。
226Classical名無しさん:08/07/28 23:37 ID:rZASxAVA
支援 
この社に近づいたものの体調を狂わす、あの憎たらしい首輪の制限からは解放されたはずだ。
それにも関わらず、社から発せられる圧迫感が胸を締め付ける。
この禍々しさは、オーガのもつソレ以上か……。
そう、この先には、この殺し合いの全てを支配している強化外骨格がここに眠っているのだ。


あの後、つまり俺たちが赤木を発見した後の話をしよう。
ジョセフは一応赤木と面識があるらしかったが、それでも俺たちは赤木のことは殆ど知らなかった。
ちょっと前に覚悟から彼の名前と背格好を聞かされた程度。
放送で赤木の名前が呼ばれてからは、(ただでさえ少なかった)彼の情報は俺たちの記憶の隅の隅へと追いやられていた。
だから始めのうちは、『あれ』が赤木しげるだとは信じられなかった。
放送の通り赤木は死亡していて、あそこにいるのは『別の誰か』だと疑っていたのだ。

俺たちが彼が赤木しげるだと信じることができたのは、彼が首輪をしていない事に気付いたから。
首輪の解除法は、俺たちがこの殺し合いが始まってからずっと求めてきたものの1つ。
嬉しくて思わず叫びだすところだったのだが、俺だってそこまで馬鹿じゃあない。
主催者が彼の生存に気付いていない。
そんな事実くらい、赤木の首輪がないことを確認してから1秒で把握した。
赤木は数時間前に覚悟たちとも会っているらしく、俺たちはすぐに神社へと引き返して情報交換をすることにした。

俺たちが赤木しげるから入手できた情報は少なくない。
『伊藤博士』なる人物からの手紙。そこに書かれていた首輪の情報。神社の社に眠るもの。
大首領を殺す作戦。エンリコ・プッチなる人物。他にも様々な情報。
つまり、赤木が先ほど覚悟たちとしていた筆談の内容を、そっくりそのまま伝えられたのだ。
粗方情報交換が終わると(とは言え俺たちが赤木に与えた情報は皆無と言っていいが)、赤木は意外な提案を持ちかけてきた。

強化外骨格の眠る社の探索。
なんでも、彼が大首領と接触した彼はその後、神社の社にワープさせられていたらしい。
そこに眠っていたのが、強化外骨格。
柊かがみから伝えられた通り、社にはこの殺し合いを支配する鎧が祭られているようだ。
そして赤木は『大首領を殺す方法』を確かなものにするために、社の中で確認したい事があるという。
228Classical名無しさん:08/07/28 23:39 ID:rZASxAVA
支援
そこで、俺たちに同行して欲しいと提案してきた。

社の中を見ておきたかった俺にとって、この提案は願っても無いものだった。
先ほど俺とジョセフが決行した、社への侵入作戦が失敗に終わっていた。
これからのプログラム脱出作戦を立てる上で、社へ進入することは必要不可欠であると言えるだろう。
赤木が社に近づいても俺たちのように体調不良を起こさないことから、この体調不良は首輪の制限であると考えられる。
幸い赤木には首輪を解除する技術と知識があり、この問題もなんなくパスできる事となる。
ただし、ここで赤木から1つだけ条件が提示される。

首輪を解除するのはどちらか1人だけ。

一度に2人も首輪を解除したら、つまり『死亡』したら主催者が怪しむのではないか、と赤木が考えたからだ。
それならば、俺とジョセフのどちらか片方がいきなり死んでも、それは充分怪しいと思うのだが。
俺たちの間には何の火種も無いのだから。

とは言え、柊かがみに社の中を確認してきてくれと頼まれている。
この提案は断れないだろう。
それに首輪も解除してくれるのならば、こちらとしても万々歳である。

次に『どちらの首輪を外すか』だが、これは大した問題にはならなかった。
ジョセフが社の探索を辞退したからだ。
『俺にはめんどくさいことはよく分かんねーからな』だそうだ。
そんな訳で、ジョセフを見張りとして残し、赤木と首輪を外した俺は例の社へと向かったのだった。


「これが……!」
「ああ。これが強化外骨格だ……!」
俺の目の前に佇んでいるコレが……全ての絶望の元凶。
少女を貫いた弾丸も、青年を潰した拳も、全てはコイツから始まったのだ。
今すぐにでも破壊してしまいたい。
溢れ出しそうな怒りを、すり減った理性で必死に押さえつける。
230Classical名無しさん:08/07/28 23:41 ID:rZASxAVA
支援俺しかいない思念

「……ッ!」
俺の敵意に呼応するかのごとく、鎧の放つ禍々しさが色濃くなってくる。
そのオーラはブワリと充満し、木造の社を瞬く間に地獄の釜の中へと変えてしまう。
額から滲み出す汗はが服部の黒い肌を湿らせる。
震えが止まらない。
正直に言って、俺はコレに恐怖していた。

それと同時に、悔しかった。
一瞬で「コレには叶わない」と悟ってしまったことに。
分かっている。俺が無力な事くらい。
それでも、仲間の為に何かできる事を探したかった。
だけど、コレは、自分のような人間が立ち向かえる代物じゃない。

一言で表現するならば、『災害』。

大地震や津波のように、一人の人間ではどうする事もできない『災害』だ。
テレビの前で次々と死傷者が増加していくのを見ながら、爪を噛むことしかできない。
この悔しさは、そんな感情に似ている。

自分じゃどうする事もできない。

仲間の為にできる事なんか、存在していない。
俺はただ、見ていればいいのだ。
仲間がコイツを倒してくれるのを、ただ見ていればいいのだ。
仲間が血を流すのを、ただ傍観していればいいのだ。
邪魔にならないように、ひっそりと。
それが俺が唯一、仲間の為に出来る事だ。
それが、2人の人間を殺してまで生き残った俺のできること。
生きる意味。

俺なんかが戦うなんて事、しちゃいけない。
232Classical名無しさん:08/07/28 23:41 ID:cWK007Rg
ここにもいるぜ支援
233Classical名無しさん:08/07/28 23:41 ID:rZASxAVA
支援  
だって敵の抜け殻を前にしただけでこのザマなのだ。なんとも情けない。
隣の赤木は眉一つ動かさないで涼しい顔をしているというのに。
こいつは、少なくともこの男の精神は、人間じゃない。
俺のようなただの人間じゃないから、戦う資格があるのだろう。
ただ震えてるだけの惨めな俺とは、違う。

それでも、俺がコイツに憧れと言う感情を抱く事はなかった。
コイツのようになりたいとは、微塵も思わなかった。

「さて、服部平次よ。唐突で悪いが、貴様に頼みたい事がある……」
目の前の光景を、俺は信じられなかった。
赤木が笑った。笑ったのだ。この状況で、笑ったのだ……!
鎧が放つ狂気と同調するかのように。

「な、なんや……?」
「仲間の為に、死んで見る気はないか……?」
俺が最初にこの男を見たときに抱いた印象は『死神』だった。
その幻想は、今ハッキリと現実という形で俺に突きつけられている。
今なら、この男が地獄から来たと言われても信じてしまうだろう。

「なん……やと?」
「大首領を殺す作戦、貴様にも伝えたと思うのだが、この作戦には1つだけ欠陥がある。
 『強化外骨格の中の死者たち』がこの作戦を知らない可能性がある。
 そこで、必要になってくるのが……強化外骨格内部とのコンタクト……!」

「それで、俺にメッセンジャーとなれと……」
皆まで言われなくとも理解できた。出来てしまった。
確かにそうだ。強化外骨格の中の死者に協力を仰ぐのであれば、それを伝える人物は必要不可欠。
そして、その為には……誰かが死ぬしかないのだ。

「そういう事だ。話が早いな」
「……俺からアンタに聞きたい事が3つある。
235Classical名無しさん:08/07/28 23:42 ID:rZASxAVA
>>232のIDが>>29と全く同じ件について支援
 まず、死者がこの作戦を知らない可能性、つまり死者が『俺たちを見ていない』可能性はどのくらいや」
死者が強化外骨格の中からこの会場での出来事を感じている可能性は高いのだ。
エレオノールの夢に出てきた死者たちが、この殺し合いでの彼女の行動を把握していたからだ。
自分達が死んだ後のことを死者たちが知っていた事実。
これが本当なら、死者たちがこの作戦を知っている可能性はほぼ100%……!
ただ、その時エレオノールは他人の記憶を大量に取得していた上に、その精神は激しい不安定状態に陥っていた。
『彼女の夢の中で死者たちが言った事』に彼女の妄想が付け加えられている可能性も否定できない。
その可能性はどのくらいか……。俺が赤木に尋ねたのはそういうことだ。

「そうだな。先ほど神社で貴様に聞いた、エレオノールとか言う女の夢の話を考えると……。
 死者たちがこの作戦を知らない確率は……およそ5%」
俺の見立てと全く同じ数値だ。
死者たちがこの殺し合いの会場を見ている確率を、俺も5%程度と予測していた。

5%の確率で世界が滅ぶ。

5%……高い。高すぎる。

勿論、そんな事を言うのならば、俺たちが勇次郎やアーカードに皆殺しにされる確率のほうが遥かに高かった。
だが、それらは『立ち向かうしかない危険』なのだ。
勇次郎やアーカードを避けて脱出を成功させるなど、絶対に不可能であっただろう。
これはそれとは違う。不可避の危険ではない。
これは『俺が死ねば簡単に0%に出来る危険』なのだ。
『俺の命と比較しての5%』は、余りにも高すぎる。

「次の質問や、何で俺なんや? アンタはどないするつもりや?」
本音をブチ撒けてしまうと、この質問には殆ど意味はなかった。
おれ自身も、この質問の答えはなんとなく知っていた、感づいていたから。
だからこの質疑には、答え合わせ程度の価値しかない。
237Classical名無しさん:08/07/28 23:44 ID:cWK007Rg
まったくの偶然だ
ところであの列車って何なんだぜ?
238Classical名無しさん:08/07/28 23:45 ID:rZASxAVA
からくり支援

「貴様を選んだ理由は4つ。
 『他者への信頼が厚い』、『自分が死ぬことの重要度を理解できる』、『無力である事』……そして……」
赤木の顔が少しだけ歪んだ。
笑ったのだろうか、よく分からないが、少しだけ歪んだのだ。
それに呼応するかのように周囲の空気も淀む。

「『人殺しである事』だ……!」
ほら、やっぱりそうか。
自分でも分かっていた。俺以上の適任者はいない。
そしてこれは、俺という『生命』の最後のチャンス……!
仲間の役に立てる最初で最後の機会なのだ。

自分の『生命』の意味を考えた矢先にやってきた死神……。
なんというタイミングなのだろうか……。
まるで俺は、このために生かされたと言わんばかりのタイミングだ。
実際にそうなのかもしれない。
この化物が集まった殺し合いの中で、俺なんかができる事なんか無いに等しい。
それならば、これが俺に与えられた唯一の役割なのだろう。最初からこの台本が用意されていたのだろう。

「……アンタは…………?」
「俺は肉体だ……!」
これも予想通り。
コイツは自分が死にたくないが為に俺を自殺させようってわけじゃあない。
コイツはコイツで役割があるのだ。
この男にしか出来ない、大首領との賭けに勝利したこの男にしか演じる事のできない役割だ。
コイツじゃないと、大首領は降りてこない可能性すらある。
コイツはここで死んじゃいけない人間(?)だ。

「……最後の質問や……他の奴らには、俺が死んだ事なんて説明すんねん?」
ジョセフや覚悟、村雨たちは俺の事を仲間だと思ってくれている……はず。
『必要なんで死んでもらいました』じゃあ納得などするはずもない。
240Classical名無しさん:08/07/28 23:45 ID:rZASxAVA
あくまで俺の予想だぜ支援
241Classical名無しさん:08/07/28 23:46 ID:U03/NeW.
支援
242Classical名無しさん:08/07/28 23:46 ID:cWK007Rg
ああ、あれか。汽車かクラウンかよくわかってないが。
243Classical名無しさん:08/07/28 23:47 ID:FGXfwn7M
  
恐らく赤木の信用は地に堕ち、赤木の発案したこの作戦自体が成り立たなくなるかもしれない。

「『全て貴様が考えた』事にする……!
 『死者たちがこの作戦を知らない可能性』を貴様が俺に指摘し、『自殺する事』も貴様が思いついた。
 俺は貴様の自殺を止めることが出来なかった。それだけだ……!」
全く。アフターケアも万全か……。
コイツは狂っている。狂っているが、冷静に先を見通している。

『首輪を外すのは、俺かジョセフのどちらか片方だけ』と提案された時点で気付くべきだった。
こいつの話には裏があるのだ、と。
おそらく、ジョセフがこの社へ同行するのを辞退するのも分かっていたのだろう。
首輪を外したのも、この社で俺と2人きりになるため。
誰も介入できない条件を造るためだ……!

「さて、どうする? 服部平次……!」
こいつ、断れないのを分かってて訊いてきやがる。
死ぬのはあくまで俺の意思。赤木が強要したわけではない。あくまで『自殺』なのだ。

「答えなんか……決まっとるやろ……。
 死ぬ……しかないやんか……」
悩む事なんか許されない。
これは俺が役に立つ最後のチャンスだ。
このままズルズル生き延びて、仲間の邪魔になるくらいなら。
『世界が滅ぶ5%』を無くす為に死んだ方が遥かにマシだ。

「そうか、それならば、『そんなに死にたいならば仕方がない』……!」
明らかに棒読みなセリフを吐き出すと、懐からナイフを取り出した。
あんなに『俺の意思での死』に拘っていたのに、最後は自分の手で殺すのか……。
まぁ、その方がありがたい。自分で自分にナイフを突き立てるのは流石に勇気がいる。
赤木の掲げたナイフが、正確にこちらに狙いを定める。
これで、終わり。
俺の人生は、俺の命はこれで終わる。
245Classical名無しさん:08/07/28 23:48 ID:rZASxAVA
支援

「……ハハハ……ホンマにコレで終いかい……」
乾いた笑いしか出てこなかった。
こんな終わり方なのか……。
2人を殺し、仲間に思いを託された俺の最期が……コレか。
情けない。
こんな形でしか役に立てない事が、悔しい。

(弱いって罪なんやな……)
俺がもっと強かったら、結果は変わっていたはずだ。
覚悟や村雨のような力があれば、もっと違う死に方もあったのに。
死んだみんなに恥ずかしくないような死に方もできたのに!

「安心しろ、貴様の死は必ず役立たせる。
 貴様の仲間にも、そう伝えておいてやる」
役に立つ……? そうか、俺は役に立ったのか。
こんな俺でも、脱出の役に立てたのか。
死んでいった仲間達のように……。

仲間達の……ように……?

彼らは……タバサは、ブラボーは、アミバは、劉鳳は……。
彼らの死に様は……。

工藤の死に様は!

そうか、そうだったのか……。
今になって思い出したよ。

「スマン、ジョセフはん。俺はここまでや……」
ナイフが躊躇無く振り下ろされた。
小さなナイフなのだろうが、俺の目にはギロチンよりも大きく見える。
247Classical名無しさん:08/07/28 23:49 ID:rZASxAVA
支援 
死神の鎌。まさにそんなイメージだ。

銀を呈した刃は、ザクリと俺の肌を肉を抉り切る。
飛び散った血が数滴だけ、汚い床に赤い斑点を作りだした。


◆     ◆     ◆


「おっせぇなァー、服部のやつ……」
服部と赤木が社へと向かってから、既に1時間以上経つ。
社の中で確認したい事があると言っていたが、余りにも時間がかかりすぎではないのか?
仮に時間がかかるとしても、そんなに距離も離れてはいないのだから、ちょこっと出てきてそのことを伝えてくれればいいだけではないか。

「何かあったんじゃねーだろうな……」
服部は赤木を信用していたし、さっきまでは自分も特に赤木の事を害のある人物とは見ていなかった。
だが、今にして思うと……どこか信用ならない気配が漂っていたような……。
赤木が、服部に何かしたのではないか?

それに、例えそうじゃなくても、あの社には敵の親玉の最終兵器が眠っているという話だ。
もしかしたら、主催者の罠か何かにかかってしまったのでは……。

「オイオイ……ヤバイことになってるんじゃねぇのか?」
そう考えると、一気に不安な気持ちが押し寄せてくる。
服部の身に、何かあったのではないか……。

しかし、今服部たちがいるのは社の中。
自分は首輪の制限があって社の中に入る事はできない。
無理に入ろうとすればどうなるのか……。
おそらく、ただじゃ済まない。
249Classical名無しさん:08/07/28 23:50 ID:U03/NeW.
支援
250Classical名無しさん:08/07/28 23:50 ID:FGXfwn7M
 
251Classical名無しさん:08/07/28 23:50 ID:rZASxAVA
支援

「じゃあ、服部を見捨てんのかよ……!」
社からは今も気持ちの悪いオーラが漂っている。
ジョセフの五感全てが『近づいてはならない』と警告を発している。

「見捨てられるわけ……ねぇだろうが!」
社へ向けて歩き出す。一歩一歩。
体が重くなろうが、眩暈がしようが関係ない!
服部は必ず助け出す!
このままここで大人しくしているなんて……服部を見捨てるなんて考えられない。
例え服部が、人殺しでも……。
大切な親友を殺した張本人でも……。

「人を殺したアイツが許されないなら、間違いを犯した服部が許されないなら!」
社へ近づくたびに重くなる体。
おかしい……さっきよりも制限が強くなっている……。

まさか、強化外骨格が活性化しているのか?
大首領の復活が……近いから?
そうだとしたら、ますます服部が危険だ!

「服部がシンジに許してもらえないなら!」
もしも過去の罪が永遠に許されないならば、その罪に縛られて生きていかなければならないならば……。

「誰1人としてッ……許されるやつなんか……いないだろうがよォ!」
かがみは仲間の死に絶望して暴走した。
彼女だって許されないって言うのか!
そんなはずはない! そんな事あっていいはずがない!
過去の罪のせいで、前を向いて必死に生きているやつらが許されないなんて……俺は信じねぇ!

例え世界中が服部を拒絶しても、俺はアイツの隣で一緒に戦ってやる!
俺はアイツを許し続ける。
253Classical名無しさん:08/07/28 23:51 ID:rZASxAVA
     
254Classical名無しさん:08/07/28 23:52 ID:FGXfwn7M
   
255Classical名無しさん:08/07/28 23:52 ID:U03/NeW.
支援
許しちゃいけねー悪ってのはなぁ……間違っちまったヤツのことを言うんじゃねぇ!
俺は正義とか悪だとか、そんなことは良く分かんねーけど、コレだけは言える。

服部を許すやつがいないんなら……この世は地獄だ!
重ねた罪を消せないなら……生きていることは苦痛でしかない!

そんなのは……悲しいじゃねぇか!

「待ってろ服部……今行くから……待って……やがれ……!」
膝をつき、汗まみれになりながらも、それでもジョセフは進み続けた。
服部平次を許す為に。


【D-1 神社/2日目 午前】

【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左手骨折、全身重度の打撲、精神疲労中、体力消費大、深い悲しみ、脇腹にダメージ大、核鉄の治癒力により回復中
[装備]:マジシャンズレッド(魔術師の赤)のDISC@ジョジョの奇妙な冒険 、ソードサムライX(核鉄状態)@武装錬金
[道具]:七原秋也のギターをばらしたて出来た弦@BATTLE ROYALE、支給品一式×2、空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険 、スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:BADANとかいうボケ共を一発ぶん殴る。
1:社へ向かい、服部を救出する。
2:どこかで仲間達と再集合したい。
3:マップの端を見に行く。
4:気が向いたらこのディスクでも確かめてみるか……けど、なんでこれが気になったんだ?
[備考]
※二部終了から連れてこられていますが、義手ではありません。
※吉良の名前に何か引っかかっているようです。
※水を使うことで、波紋探知が可能です。
※三村の留守電を聞き逃しました。
※主催者の目的は強者を決めることであり、その中にはイレギュラーもいると考えています。
※少なくともかがみとは別の時代の人間であるということを認識しました。
257Classical名無しさん:08/07/28 23:52 ID:FGXfwn7M
 
258Classical名無しさん:08/07/28 23:52 ID:rZASxAVA
             
※波紋の力を使うことで対象のディスクを頭部を傷つけることなく強制排出することができます。
 ただし、かなりの集中力を要求します。
※マジシャンズ・レッドの火力は使用者の集中力によって比例します。
 鉄を溶かすほどの高温の炎の使用は強い集中力を要します。
 火力センサーは使用可能ですが精神力を大きく消耗します
 また、ジョセフのマジシャンズ・レッドは通常の炎の威力の調節が極端に難しい状態です。
 ただし、対象に直接マジシャンズ・レッドの手を当てて炎を出した場合に限り調節が可能です。
 修練をすれば通常の炎の精度が上がる可能性があります。
※S7駅がかなり脆くなっていることを発見しました。
※第四回放送は劉鳳からの又聞きでしか記憶にありません。
※服部との相互理解を深め、より信頼しあえる関係になりました
※服部の時のような誤解による失敗を二度とすまいと考えています
※服部から儀式のやり方を聞き、首輪のステルス解除のやり方を知りました
※社の奥に何かがある、そしてそれを守る為に近づくと体が重くなる装置がある事を知りました
※ 覚悟、村雨、かがみ、ヒナギク、独歩、エレオノールと情報交換をし、友好関係を結んでいます。
 また、アカギとパピヨンは協力者、川田は危険人物と認識しています。
※以下の事を考察しています。
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
※赤木と情報交換をしました。
※なぜか社から放たれる制限が強くなっています。
260Classical名無しさん:08/07/28 23:54 ID:rZASxAVA
支援
261Classical名無しさん:08/07/28 23:54 ID:FGXfwn7M
支援






◆     ◆     ◆


「……どういうつもりだ?」
赤木のナイフが切り裂いたのは、服部平次の右手の甲。
狙いを外したわけではない。
ナイフが首筋に到達する前に服部が防御行動を取った為だ。


「そうや、俺はここまでや……!」
誰かの役に立つ。
俺は、そんな事ばかり考えていた。
生き残ったことの意味は、脱出の役に立つ事で証明されると思っていた。
覚悟たちの力になる事が、自分がしなくてはならない事だと思っていたのだ。

「仲間の役に立つ?
 俺がそんな下らんことを考えるのはここまでやッ!」
覚悟は、仲間達を脱出させる為に命を賭けて戦っている。
村雨だって、仲間達の為にBADANと戦う決意をした。
そして彼らは、これからも仲間の為に戦い続ける。
確かにそれは素晴らしい事だし、そんな風に生きるべきなのだろう。

「死にたくないがために、開き直ったか……?」
「うっさいッ! このオモシロ顎オバケ!」
でもな、無理なんや。
そんな生き方、俺には無理や。
263Classical名無しさん:08/07/28 23:55 ID:rZASxAVA
       
俺は仲間の為には生きれへん。

弱いからじゃない。人を殺したからじゃない。
ここで死ぬからじゃない!

「タバサはなぁ! ずっと仏頂面しとって、感情なんかあるのかないのかも分からんかった……。
 そんなアイツが、命を捨ててまで劉鳳はんを守った理由が葉隠覚悟に分かるんか?!」
アイツは嬉しかったんや。
劉鳳はんが自分を助けてくれたことが。
だから、命を捨てた。
誰の為でもない。劉鳳はんのためでもないんや。
自分の為に。自分の気持ちを偽らんために。

「ブラボーはんがたった1人でアーカードに立ち向かった理由が村雨良に分かるんか?!」
あそこでブラボーはんが残ったのは、お世辞にもお利口な策とは言われへんわ。
ブラボーはん自身もそれは分かっとった。それでもあの人は残ったんや。
劉鳳の為じゃない。ましてや俺らの為じゃない。
自分の為に。
正義の意思を貫く為に。
自分の信念に嘘をつかん為にや。

「劉鳳はんがなんでラオウに勝てたのか、愚地独歩に分かるんか?!」
アルターが強いから? 違う。
ラオウが消耗していたから? 違う。
守りたい人間がいたから? 惜しいが、違う。

……馬鹿だからや。

馬鹿だから、ただひたすらに馬鹿だったから勝ったんや。
誰でもない自分の正義しか見えんかったから、勝てたんや。
自分の正義の為に勝利した。
265Classical名無しさん:08/07/28 23:56 ID:rZASxAVA
      
266Classical名無しさん:08/07/28 23:56 ID:FGXfwn7M
  
267Classical名無しさん:08/07/28 23:57 ID:U03/NeW.
支援

「アミバはんが叫んでいた。いつもいつも叫んでいた……」
今俺が言っとることは覚悟はんたちを侮辱しとるって事になるんやろうな。
それでええ。俺は一向に構わん!
俺の事を最悪だと罵るなら……罵るがええわ!
気に入らんのなら殴ればええわ……。
だがなぁ俺が出会った奴らってのは『そういう奴ら』やねん。
そういう最悪で自分勝手なやつらや。

「『反逆』っちゅー言葉の意味がお前に分かるんかコラァッッ!!!」
アミバはんは言った。
弱い心に反逆するんだと。
この殺し合いをぶっ壊すのも、誰かを守ろうとしたのも……その『反逆』の副産物に過ぎん。
自分の心のままに動いとっただけや。
みんな、俺の出会ったやつらはみんな……そんなケモノやった。

少なくとも俺にはそう見えたんや。
俺にはそれが美しいと思えたんや!

俺だってそうや! 俺だってあいつらと同じケモノや!

「俺は死ねんのや! 『大首領サマ』の面に一発ぶち込むまではなッ!」
ヘナチョコパンチでもええ。カス当たりでもええ!
たった一撃でええんや。

あいつらの思いは俺しか知らん。
この思いを『大首領』へと届けるのは俺しかおらんねん。

すまんな、覚悟はん、村雨はん。
あんたらの邪魔になるかもしれん。
もしかしたら、俺のせいで世界が滅んでしまうかもしれん。
269Classical名無しさん:08/07/28 23:58 ID:rZASxAVA
         

「……それが、こんな弱っちぃ俺が生き残った理由や」
あくまで『正解』は葉隠覚悟や。
覚悟たちの生き方が正しいし、俺のこの答えは確実に間違っとる。
そうや、こんなことするなんて大馬鹿モンや……俺を笑うか、工藤?

だが俺はもう、お前のような探偵やない。
人を殺した瞬間に俺は探偵じゃあなくなってもうたわ。

工藤……お前が正しかったんやな……。

「そんな事で……そんな身勝手な理由で、世界を危険に晒すのか……?」

「身勝手なのは分かっとる。地獄に堕ちるならそれでええ。
 それでもこの『気持ち』には嘘つきたくないんや。
 アミバはんに全てを託された俺は……『反逆』せなあかんのや。
 それでも俺に死んで欲しい言うなら……」
探偵で無いなら俺はなんや?
間違え続けた俺に残されてんのは『意地』。それだけ。
タバサがブラボーが劉鳳がアミバが俺に託した、少なくとも俺は託されたと思っとる、意地や。

「俺を殺してみせろや……アンタの意思でなァッ!」
「それが貴様の答えか……!」
死神はまだ動かんかった。
ナイフを手元でクルクルと弄びながら、つまらなそうにしてやがる。
その目は、酷く冷静で、それでいてナイフよりも尖っている。
赤木は強い。俺のような一般人とは格が違う。
例え、腕っ節では俺の方が強くても、何故か勝てるとは思えへん。

「いや……違うでぇ……」
だが、その弱い考えに反逆や……。
コイツに勝って……意地を貫く。
271Classical名無しさん:08/07/28 23:58 ID:FGXfwn7M
ブラボーだ……! 支援!!
272Classical名無しさん:08/07/28 23:59 ID:rZASxAVA
     

「『俺たち』の答えやッ!」
さぁ来い死神!
首輪を外してもうた俺たちには……スタンドも核鉄もない。
もちろんアルターも波紋も持ってない。
パンピー同士のしょーもないケンカや。



(どうしたものか……)
赤木しげるは考える。
どうやら服部平次を見誤っていたようだと。
赤木が葉隠覚悟から聞いた服部の人物像と目の前の実物の間には、かなりのズレが生じている。
折角いい流れで来ていたのに、コイツにかなり乱されてしまった。

しかし、こいつが死なない事には、作戦の穴が埋められない。
こいつが死ななかった場合……世界が滅ぶ確立は、5%……!
さて、このまま殺すか……それとも……。



ちょうどそのころ、パピヨンが再生怪人相手に大立ち回りを演じ、後から駆けつけたエンリコ・プッチと戦闘になっていた。
この殺し合いを彩った武器の双璧である、スタンドと武装錬金が激突していたのだ。
そしてそれと同じ時間に始まるかもしれないこの戦いは、スタンドも、武装錬金もない戦い。
オーガも北斗も人形もない。
プログラム始まって以来の、一般人同士の戦い。

その気配を感じ取ったのか、それとも復活のときが近いのか……。
部屋の隅で鎮座していた強化外骨格が怪しく輝く。

ジョセフの制限が強くなったのも、この輝きのせいだろう。
だが、首輪を外してしまった赤木と服部は、その微小な輝きには気付くことはなかった。
274Classical名無しさん:08/07/29 00:00 ID:bdm3BLTM
支援
275Classical名無しさん:08/07/29 00:00 ID:3Nxfdrfo
   





【D-1 神社 強化外骨格の眠る社/2日目 午前】
【服部平次@名探偵コナン】
[状態]:肉体疲労中(ニアデスハピネス換算で一発分のみ)、三村を殺したことから大分立ち直りました。首輪解除済み。
[装備]:スーパー光線銃@スクライド、携帯電話、モーターギア(スカイウォーカーモード)@武装練金、
クレイジー・ダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:支給品一式×2(食料一食消費)、首輪、「ざわ……ざわ……」とかかれた紙@アカギ(裏面をメモ代わりにしている)、
色々と記入された名簿、ノート数冊、ノートパソコン@BATTLE ROYALE ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)、
綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく(未開封)、 ギーシュの造花@ゼロの使い魔、キュルケの杖、拡声器、
ソードサムライX(核鉄状態)@武装錬金、包帯・消毒薬等の治療薬、点滴用セット(十パック) 病院内ロッカーの鍵(中に千切れた吉良の左手首あり)、
バヨネット×2@HELLSING、 紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)、外れた首輪(服部平次)
[思考・状況]
基本:一撃でいいから大首領をぶん殴る。
1:赤木が向かってくるなら戦う(殺すつもりは無い)。
2:ジョセフと再集合
3:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
4:全員が集合し次第情報の整理と休息を行いたい
[備考]
※劉鳳、コナン、神楽、ジョセフの事は全面的に信用しています。
※コナンと二人で立てた仮説、「光成の他の主催者の可能性」「光成による反抗の呼びかけの可能性」
「盗聴器を利用した光成への  呼びかけの策」 等については、まだ他の人間に話していません。又、話す機会を慎重にすべきとも考えています。
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。
※三村信史の死ぬ直前の記憶を見ました。
※第四回放送の内容は劉鳳からの又聞きでしか記憶にありません。
※ルイズをF-3の川岸に埋葬しました。折れた軍刀は墓標として刺してあり、キュルケの杖、拡声器は服部が所持しています。
※アミバの持っていた支給品一式×3 (食料一食消費) は、F−2民家の中にあります。
※アミバの持っていたノートパソコンには、大東亜共和国謹製のOSが組み込まれています。
※ジョセフとの相互理解を深め、より信頼しあえる関係になりました
※かがみから儀式のやり方を聞き、首輪のステルス解除のやり方を知りました
※社の奥に何かがある、そしてそれを守る為に近づくと体が重くなる装置がある事を知りました
※ 覚悟、村雨、かがみ、ヒナギク、独歩、エレオノールと情報交換をし、友好関係を結んでいます。
 また、アカギとパピヨンは協力者、川田は危険人物と認識しています。
※以下の事を考察しています。
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
※赤木と情報交換をしました。



【赤木しげる@アカギ】
[状態]:脇腹に裂傷、首輪がありません。
[装備]:基本支給品、ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス(残り9本)、マイルドセブンワン1箱
[道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)
 始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます)、水のルビー@ゼロの使い魔
工具一式、医療具一式、沖田のバズーカ@銀魂(弾切れ)、成仏鉄球@覚悟のススメ 、伊藤博士からの手紙
[思考・状況]
基本:対主催・大首領の肉体となる。
1:服部を殺す?
2:大首領との再会。バトルロワイアルに引きずり込む。
3:対主催を全員説得できるような、脱出や主催者、首輪について考察する。
4:強敵を打ち破る策を考えておく
278Classical名無しさん:08/07/29 00:01 ID:iSZGcHxM
支援
279Classical名無しさん:08/07/29 00:01 ID:JsBMRaSI
5:覚悟に斗貴子を死に追いやった事を隠し、欺く。
[備考]
※マーティン・ジグマール、葉隠覚悟と情報交換しました。
※エレオノールとジグマールはもう仲間に引き込むのは無理だと思っています。
※光成を、自分達同様に呼び出されたものであると認識しています。
※参加者をここに集めた方法は、JUDOの能力であると思っています。
※参加者の中に、主催者の天敵がいると思っています(その天敵が死亡している可能性も考慮しています)
 そして、マーティン・ジグマールの『人間ワープ』は主催者にとって、重要であると認識しました。
※主催者のアジトは200メートル以内の雷雲によって遮られていると考察しています
※ジグマールは『人間ワープ』、衝撃波以外に能力持っていると考えています
※斗貴子は、主催者側の用意したジョーカーであると認識しています
※三千院ナギは疫病神だと考えています、また彼女の動向に興味があります。
※川田、ヒナギク、つかさの3人を半ツキの状態にあると考えています。
※ナギ、ケンシロウと大まかな情報交換をし、鳴海、DIO、キュルケの死を知りました。
※こなたのこれまでの経緯を、かなり詳しく聞きだしました。こなたに大きなツキがあると見ていますが、それでも彼女は死にました
※『Dr.伊藤』の正体は主催側の人間だろうと推測しています。
※葉隠覚悟、桂ヒナギクと情報交換をしました。
280Classical名無しさん:08/07/29 00:02 ID:JsBMRaSI

『Dr伊藤』とのチャットによりわかった事
1:首輪は霊的に守護されている
2:首輪の霊的守護さえ外せれば、後は鋭い金属を継ぎ目に押し込む程度で爆発無しに外せる
3:既にその霊的守護を外した者が居る。そいつが首輪を外したかは不明だが、おそらく外してはいない
4:監視カメラは存在せず。首輪についた盗聴器のみでこちらを監視。その監視体制も万全ではない
5:敵には判断能力と機転に乏しい戦闘員が多い
6:地図外に城? がある
7:城には雷雲を突破しなければならず、そのためには時速600キロ以上の速度が必要

※大首領との接触により、大首領とBADANとの間のズレを認識。
※BADANという組織はあまり合理的に動かないと認識。


『大首領を殺す作戦』
・大首領を強化外骨格の中に降ろしてから、成仏鉄球で成仏させる。
・そのためには大首領を弱らせる必要がある。
・強化外骨格内部の死者ならば、大首領を内側から攻撃できる可能性が高い。
281Classical名無しさん:08/07/29 00:02 ID:3Nxfdrfo
 
282Classical名無しさん:08/07/29 00:03 ID:iSZGcHxM

 
283 ◆d4asqdtPw2 :08/07/29 00:03 ID:JsBMRaSI
以上です。支援ありがとうございました。
投下中に気付いたんですが、服部はジョセフの事をジョジョって呼んでましたね。wikiで直します。
284Classical名無しさん:08/07/29 00:05 ID:iSZGcHxM
投下乙!!!

正直、ジェセフの状態表を見たときは、
漫画ロワ初の激鬱作品か…と思ったけど、
何この熱い展開……服部、お前男だよ…読んでて目から汁が出てきちゃった…

そしてアカギ、お前は自重しろwwww
ともかく乙です!!
285Classical名無しさん:08/07/29 00:07 ID:Bup//i.E
投下乙!
服部生きてたああああああ!てっきり死んだものかと…
ジョセフ速く来てくれえ!
アカギは外道さがいつもより2割増ですね。初めてムカついたわw
286Classical名無しさん:08/07/29 00:09 ID:3Nxfdrfo
投下乙です!
西の名探偵に忍び寄る死神の魔手……するとどうでしょう、西の名探偵が反逆に目覚めると、
死神はオモシロ顎オバケになったのです。死神ならともかくオモシロ顎オバケならば勝ち目は十二分!
服部には死んでいった仲間達だけじゃなく、ジョジョだっている! ジョジョの侠気に報いる為にも、
頑張れ、服部!


あと、誤字等の指摘を。まず1つめ
・死者たちがこの殺し合いの会場を見ている確率を、俺も5%程度と予測していた。
→死者たちがこの殺し合いの会場を見ていない確率を、俺も5%程度と予測していた。
ではないでしょうか? これだと、95%の高確率で世界が滅んでしまいます。

2つ目ですが、『決戦』において劉鳳がラオウ戦で放った斬撃が、
強化外骨格を傷つけ、社も切り裂いていたはずです。この部分についての描写も必要かと思います。
287Classical名無しさん:08/07/29 00:14 ID:.eL5Iai6
投下GJです!
服部がかっけええええええ!! 正直、人殺しといて立ち直るの早いなーって思ってたけど、これまで出会った彼等を出されちゃあ文句は言えないぜ!
銀髪顎男に、一発ドカンとぶちかませ!
ジョセフも素敵だ!
しかし、アカギはどう動くのか……うーん……気になるw

あ、あと>>273の『ちょうどそのころ、パピヨンが――』のところですが
パピヨンとプッチが戦闘を開始したのは、状態表にある『午前』ではなく、昼ですよ。
288Classical名無しさん:08/07/29 00:15 ID:akAHYQxc
投下GJ!
いいぞ服部、このロワ最凶の死亡フラグに反逆する! その答えは間違っていないはずだ!
そしてアカギは服部をこのまま殺すのか、どうするのか!? 次がとても楽しみな作品でした!

しかし
服部の武器:スーパー光線銃、バヨネット×2
アカギの武器:ヴィルマの投げナイフ×9

これでも服部の勝ち目が薄い気がする不思議w
289Classical名無しさん:08/07/29 00:18 ID:.eL5Iai6
あ、あと、服部の装備欄の『モーターギア(スカイウォーカーモード)@武装練金』は、核鉄状態にしとくべきだと思います。
290Classical名無しさん:08/07/29 01:01 ID:CC2NP/Rc
乙!
アカギの初めての殺人は不発に終るのか否か、ワクワクします!
291Classical名無しさん:08/07/29 02:31 ID:PwmC7/MQ
投下乙
何と、服部が反逆!!
一瞬鬱かと思いきや熱血展開になるとはさすが漫画ロワだ
292Classical名無しさん:08/07/29 13:37 ID:IJghiD/6
投下乙!二人の対決も楽しみだけどアカギの性格的に殺さない気もして先が読めんw
293Classical名無しさん:08/07/29 18:25 ID:Y.xtQazM
投下乙です。
服部素直に殺されるとは思ってなかったが、なんという反逆!
服部も腕っ節はかなり強いだろうけどアカギって地味に喧嘩も強いンだよなぁ。
その辺のごろつき程度なら5人以下なら関わらない方が良いってくらいだし
一般人同士どう転ぶかわからんからマジで先が読めないな
294Classical名無しさん:08/07/29 20:42 ID:GzzhDNyk
もうアカギは完全にオリジナルだな・・・原作の延長どころか面影も無い
295Classical名無しさん:08/07/29 20:48 ID:JsBMRaSI
>>286>>289>>287
指摘ありがとうございます。全部wikiで大丈夫……かな? ダメなら修正版を後日投下します。
あと、自分でもう1つ間違いを発見……タイトルが間違ってました。
正しくは「ダイヤモンドダスト・クルセイダース」でした。
今回はミスが多くて申し訳ないです。
296Classical名無しさん:08/07/30 00:32 ID:shKb9kTE
>>294
気持ちは分かるがそういうのは毒吐きでやろうぜ?
あと投下乙くらいは言おうな。
297Classical名無しさん:08/07/30 00:44 ID:lCkrUKlk
毒は毒吐き、事実は本スレ
298Classical名無しさん:08/07/30 10:40 ID:iexFoKiE
>>296
毒は毒でやるのには同意だが投下乙なんて個人の判断だろ
299Classical名無しさん:08/07/30 14:16 ID:cWgpQhpA
投下してくれた書き手に感謝の一つもなく毒吐いてるのが問題なんだろ。
300Classical名無しさん:08/07/30 14:43 ID:iexFoKiE
>>299
いや問題は本スレで毒吐いてることだろ乙云々は今回あまり関係ない
301Classical名無しさん:08/07/30 15:05 ID:YYmz7tyI
とりあえずsageようか
302Classical名無しさん:08/07/31 20:26 ID:mY9R7P.c
>>295
いきなり昼まで飛ぶのは、ちょっと無理があるような。
午前のままの方が、自然かなーと思います。
でも、最後のパッピーとプッチの一文を消すのは勿体無いかー……
303Classical名無しさん:08/08/03 17:55 ID:lGKoR2xM
服部死亡フラグ回避か?
これ以上見せ場を作りようもない気がしてたから死ぬかとも思ってたんだがな
304 ◆40jGqg6Boc :08/08/03 18:27 ID:BwiPxvNk
申し訳ないです。
予約期限の延長を申請します。
305Classical名無しさん:08/08/03 18:42 ID:4n5CMDtQ
>>304
了解です。頑張ってください。
306Classical名無しさん:08/08/04 00:50 ID:XvqJruyM
307Classical名無しさん:08/08/04 01:07 ID:9X3A0e/2
>>306
スマン、助かる。ありがとう
308Classical名無しさん:08/08/04 01:08 ID:xIv6r/Ik
>>306
助かりました。本当にありがとうございます。
309Classical名無しさん:08/08/04 01:09 ID:UXny5YE6
>>306
すげえええ。ありがとうです。
310Classical名無しさん:08/08/04 02:35 ID:QYPzJQv6
>>306
読み手としても大感謝。ありがとう。
311Classical名無しさん:08/08/04 07:48 ID:6/Y5U0VY
wikiが消えたぞ・・・
312Classical名無しさん:08/08/04 10:57 ID:wZoFLHn.
ほんとだ、404になってる
313 ◆1qmjaShGfE :08/08/04 13:46 ID:9X3A0e/2
現在漫画ロワのwikiでトラブルが発生しておりまして、原因の究明と復旧に努めている最中です
通常の状態に戻るまで少々時間がかかりそうですので、申し訳ありませんがお待ち下さい

ご迷惑をおかけして大変申し訳ありません
314Classical名無しさん:08/08/04 16:21 ID:wZoFLHn.
>>313
おk、お疲れ様です
315Classical名無しさん:08/08/04 20:07 ID:X0AMrqOk
>>304
了解です。ゆっくり頑張ってくださいな

>>314
あ、やっぱり皆さんも見られなくなっていたのですね。
復旧作業、頑張ってください
316Classical名無しさん:08/08/04 21:23 ID:6DN4fiO2
>>313
お疲れです
317 ◆1qmjaShGfE :08/08/06 01:06 ID:AEfyy0kI
漫画ロワwikiの件です
wiki運営の方に問い合わせた所

調査しましたところ、
ご連絡頂きましたwikiにつきましては
既に退会済みとなっております。

といった返答が返ってまいりました。
結局こうして消えた理由はわからないのですが、私が以前の方よりwiki管理者を引き継いだ時にメールの登録変更をしていなかった為
本来wiki運営側からあるはずの一報を受け取れなかったのが急な消失の原因と思われます

現在ログを取ってくださった方のご協力もあり、新たにページを作成しております
それがある程度形になるまでは、wikiの利用が出来ず色々とご不便をおかけすると思います

漫画ロワに色んな形で携わっていらっしゃる、全ての方に影響の出る今回の事態は私のミスから発生したものです
面目次第もございません。本当に申し訳ありませんでした
318Classical名無しさん:08/08/06 01:09 ID:8jZgBZXc
>>317
了解しました。
無理はなさらないよう、お気をつけください。
319 ◆40jGqg6Boc :08/08/06 20:23 ID:FLE6A2t2
>>317
了解しました。
いつも本当にご苦労様です。無理せずにがんばってください。


それではお待たせしました。
覚悟、村雨、ヒナギク、かがみ、エレオノール、大首領、光成のSSを投下します。
320Classical名無しさん:08/08/06 20:24 ID:8jZgBZXc
 
321Classical名無しさん:08/08/06 20:24 ID:lpam8oJs
                           
辺り一面が砂で覆われた大地、運動用のグラウンド。
本来の目的はその学校に通学する生徒達の体育の授業、休み時間の息抜きに使用するもの。
だが、言うまでもなくこの場ではそんな意味は持っていない。
BADANが大首領・JUDO(ジュドー)の現世への復活のために、開催した鮮血の儀式。
通称“バトルロワイアル”のための会場の一部として用意された学校の周辺施設でしかない。
そして、そんなグラウンドに静かな風が吹いていた。
心地よい、だがそれでいてどこか荒々しくもある矛盾した風が。

「いくぞ、変身……!」

漆黒のジャケットを羽織ったパーマの男――村雨良が口を開く。
足を肩幅程に開き、両腕を構え、真っ直ぐ前を見据える。
続けて、村雨の腰にベルトのようなものが巻かれ、眩い閃光が広がった。

――変身。

村雨にとって大きな意味を持つ言葉と共に、彼の身体に変化が生じる。
やがて秒に満たない時間を経て、一人の戦士がその顔を再びこの世界へ覗かせた。
風にたなびく緑のマフラーが彼の存在を周囲にしらしめる。
BADANの野望を叩き潰す事を誓った真紅の戦士――仮面ライダーZXがエメラルドグリーンの両眼を発光させながら立ち尽くす。

そしてそのZXの視線を一身に受け止める者が一人。

「加減は不要なり。全力で応えよう――」

禍々しい外殻で装着者の全身を包み込む、漆黒の超鋼(はがね)。
数えること三千の英霊を持つそれは生ける鎧とも謳われる強化外骨格『零』。
その零を首から踵の部分まで纏いしは古風な顔立ちをした短髪の青年。
『生 七』の二文字、中央には五つの頂点を持った星が刻まされたヘルメットを右腕に抱えた青年――葉隠覚悟がZXに応えた。
言うや否や、ヘルメットを天に翳し覚悟は己の頭部をそれに滑り込ませ、着装を行う。
覚悟の顔は完全に隠れ、やがて赤き複眼を持つヘルメットに変化が生じる。
323Classical名無しさん:08/08/06 20:25 ID:8jZgBZXc
  
「当方に迎撃の用意あり!!」

額を覆う部分が一瞬の内に伸び、現れるのは口元を覆う強化外殻。
更に両耳に当たる部分、そして両頬に当たる部分から鋭利な突起物が突出。
そして、覚悟を包む零からバチバチという擬音が鳴り起こり、同時に真白なるマフラーが揺れ吹く。

――覚悟完了。

そう。それは覚悟が、零が全ての戦闘準備を終えた証。
最終格闘技・零式防衛術を極め、牙無き人々の剣として生きる事をこの世の華と認識した男。
零を完全着装した覚悟が両拳を構えた。
同じようにZXも少し腰を落としながら構え――

「「いくぞ!!」」

両者は同時に前方へ踏み出した。
昇降口から出てきた柊かがみ、桂ヒナギク、才賀エレオノールの三人の不安げな視線に守られながら。
仮面ライダーZXと葉隠覚悟の闘いの幕が唐突に上がり始める。

◇  ◆  ◇
325Classical名無しさん:08/08/06 20:26 ID:8jZgBZXc
   
326Classical名無しさん:08/08/06 20:26 ID:c6.zglZk
時間は少し遡る。
学校で自主的な特訓のようなものを終えた村雨。
今まで自分に大きな影響を与えてくれた人達――葉隠散、綾崎ハヤテ、仮面ライダー、劉鳳。
彼らの力を借りて未完成ながら『ZX穿孔キック』の雛形を物にする事が出来た。
その後、三人は荷物を纏めて、学校を離れようとしていた。
そんな時、彼らは前方から見慣れた人影が近づいてくるのに気がついた。

「葉隠……君?」

目を凝らしながら、かがみが少し自信なさげに口を開く。
かがみ達と覚悟らしき人影の間には結構な距離が開いている。
大体、80メートル程。確信を持って口を開くのは難しいのであろう。
だが、見る物に言い様のない威圧感を与える零の着装はいまも健在であり、距離が離れていてもその存在ははっきりとわかる。
かがみが知る限りでは零を着装出来る人間は覚悟只一人。
そのため、零を確認出来ただけでその人物を覚悟と断定出来そうなものであるが、どうにもかがみは自信を持てなかった。
除々に此方へ一歩ずつ近づく人影。
既に人影の顔を確認出来て、それを覚悟だと確認できたが、同時にかがみの中である疑問が更に膨れ上がる。
先程、かがみが自信を持てなかった理由。
それは覚悟が以前見せていた、堂々した態度は失われ、何か覇気も無くなっていたが関係していた。
そう。覚悟の様子がなんとなく弱弱しいものとなっているとかがみはおぼろげに思っていたからだ。

「申し訳ない。遅くなった」

極めて自然に口を開く覚悟。
浮べる表情にはなんの気負いや迷いは見えそうにはない。
あまりにも自然な口振りであったため、かがみは思わず自分の思い違いかとすらも思う。
(気にしすぎかな……?)

無意識的にかがみはまじまじと覚悟の表情を覗き込む。
覚悟との視線は合わない。意図的に逸らしているのだろうか。
何のために? いや、それがわかればこんな風に疑問に思いはしない。
兎に角、何かが引っかかる。
そう思い、かがみは口を開こうとした。

「構わない。それよりもヒナギクはどうした?」
「ああ、ヒナギクさんは……」

そんな時、かがみのそんな一抹の疑問を他所に村雨と覚悟が会話を始めた。
エレオノールは無言のまま、二人の話を見守っている。
何故なら村雨達と一芝居を打ち首輪を解除したため、BADAN側にとってエレオノールは既に死人の身として認識されているはずである。
当然、実は生存している事を彼らに悟られるわけにはいかない。
そのため、エレオールは口を開かず、その事情を簡潔に書き記した紙を覚悟に見せたため、彼も彼女には話しを振らず、目に見えていないように扱っている。
どうやら村雨とエレオノールの二人は覚悟の様子に対し特に疑問を感じないらしい。
やはり自分の勘違いなのだろうか。
だが、村雨とエレオノールは共に良い人ではあるがどこか抜けている気もあり、もしかすれば只気づいていないだけかもしれない。
此処は少し厚かましくなっても良いから突っ込むべきだろうか。
何せ、覚悟は共に闘う大切な仲間。
特に秀でた能力もなく、仲間といっても特に大した事が出来ないのであれば、せめて仲間のフォローぐらいは努めたい。

(でも、ヒナギクが居ないのも気になるわね。
もしかして酔っちゃって、どこかで休んでるとか? 結構な速さだったからなー……)

しかし、ヒナギクの事が気になるのもまた事実。
自分と同年代で一番親しみを持てる少女は今どうなっているのだろうか。
そもそも、自分達とは違い、己の足でここまで走りきってきたであろう覚悟にも少しは腰を降ろしてもらいたい。
そのため、かがみは取り敢えず先程感じていた疑問について詮索する事を取りやめた。
何も今聞かなくても、後で幾らでも聞くチャンスはある。
そう考え、かがみは覚悟がこれから出すであろう言葉の行方に注意を傾け始めた。
329Classical名無しさん:08/08/06 20:28 ID:c6.zglZk
支援
「……ヒナギクさんは途中で体調を崩し、後で此方に来る事になっている。
申し訳ないが、彼女が到着するまで少し待って欲しい」
「勿論だ」
(体調を崩されたのですか……心配ですね。むむむ……むー…………)

心なしか少し間を置いた後に覚悟が口を開く。
内容は偶然にもかがみが予想したものと特に相違がないもの。
覚悟の言葉に村雨は即答で了解の意を示し、エレオノールは口をへの字に曲げ、心配そうな表情を浮べた。
その表情は心底、ヒナギクの事を心配している様子でとてつもなく不安げなものであり、それでいて少女のように幼いものにも見える。
普段はまるでいいようのない冷静さを醸し出すエレオノールの整った小さな顔。
鋭い視線を持つ銀色の瞳が心なしか涙を浮かべているかの如く、か弱いものとなった。
それがこんなにもオロオロと、正直、同姓のかがみですらも妬いてしまう程に可愛げがあるものになるとは誰にも予想は出来やしない。
エレオノールの予想外なギャップにかがみは可笑しさを覚え、思わず噴出しそうになる。

(前は人形みたいな人だなーって思ってたけど……エレオノールさん可愛い!)

村雨と覚悟はエレオノールの様子に特に思うことはないようだ。
勿体無い。直ぐ傍では綺麗な年頃の女性が普段は見せない一面を見せているというのに。
本当にこの二人には朴念仁という言葉が良く似合うもんだなーとかがみは密かに思う。
そして同時にこんな時、あいつならエレオノールにどんな感想を抱いたのだろうか、という小さな疑問が涌いた。

『これぞギャップ萌え!ってヤツだね。うんうん、エレオノールさん、いいよ〜〜〜最近の萌えポイントをこれでもかってぐらいに押さえてる』

……きっとこんな感じかもしれない。
能天気な笑い声を上げて、心底愉快そうなにやけ顔を浮べながら。
そう。もう二度と見る事はない声と笑顔を伴いながら――
331Classical名無しさん:08/08/06 20:30 ID:8jZgBZXc
    
(と、何やってんのよ柊かがみ!
もう、充分泣いたじゃない。だから悲しむのはお預け……そう決めたんだから)

除々に下がっていくかがみの両の視線。
今もなお、脳裏に人一倍こびりつく青いロングヘアーをした少女の面影。
先程職員室で見た血生臭い肉片に姿を変えた少女。
そして、彼女を好いていたと告白した人物――蝶野功爵に文字通り捕食された少女。
友達、泉こなたの事を思い出し、再び悲しさがかがみの心を覆い隠そうとするが、彼女はそれを必死に振り払う。
負けるものか。泣くわけにはいかない。今はそんな時じゃない。
自分を奮い立たせる言葉を連ね、かがみは再び顔を上げる。
そこにはもう、弱気な意思は微塵も見えようとはしない。
この殺し合いで様々な事を経験し、成長した――柊かがみの少し強がったような表情があった。

(そうだ、 確か学校には保健室があるハズ……何かヒナギクさんに役立つものでもあるかもしれない。
ならば、私が集めてくればいいのです!)

そんな時ポンと手を叩き、さも名案が思いついたようにエレオノールの表情は明るいものとなる。
即座にエレオノールは行動をある開始。
いつの間にか学校から集めたメモ用紙を取り出し、急いで文字を書き連ね始めた。
その速度は速い。村雨と覚悟が思わず、ポカンと口を開けたままにしてしまう程に。
程なくしてエレオノールは自分がこれから行うべき行動を記した用紙を書き上げ、それを村雨、覚悟、そしてかがみに見せる。
そして三人が取り敢えず頷いた事を確認してエレオノールは――一陣の風となった。

「な! なんですって!?」

大声を上げてかがみが驚く。
かがみの視線の先にはエレオノールが居る――いや、今まで居た場所。
ワンテンポ程遅れて、村雨と覚悟も視線を飛ばした。
視線の先はかがみが見た場所よりも校舎寄りの地点。
しかし、それでもエレオノールの姿を捉える事は出来ない。
二人の視線が走るよりもエレオノールは次の一歩を踏み出し、目的の保健室を目指して只がむしゃらに走っているからだ。
333Classical名無しさん:08/08/06 20:31 ID:lpam8oJs
                     
334Classical名無しさん:08/08/06 20:31 ID:8jZgBZXc
     
大方、ヒナギクのためにいいものを調達するために掛ける時間を出来るだけ長く取るために、急いでいるのだろう。
その証拠にエレオノールの表情はとてつもなく真剣なものであり、尋常ではない速度で地を駆けている。
まさに疾風迅雷の如くの走り振り。
そして三者三様に驚きを見せているかがみ、村雨、覚悟からドンドンと離れていき――やがて立ち止まった。

そんな時だ。
ドテ!……と、不思議な擬音が昇降口の付近で聞こえた気がした。

(転んだな)
(……見事な)
(あー転んじゃったわね……)

だが、何故か彼ら三人は自分達でも驚く程に冷静であった。
勿論、急いだあまり、派手にすっ転んでしまったエレオノールが怪我をしたのかどうかは気になる。
しかし、その心配は無用なものと彼ら三人はなんとなく思っていた。
そう。転がり込んだエレオノールが直ぐに立ち上がって、前をキッと睨みつけ――

(ま、負けるものか……お待ちください、ヒナギクさん!
このエレオノールが今すぐ、目的の品を集めてきます!!)

昇降口に飛び込むように駆け込んだエレオノールが声高らかに叫び、再び疾走を開始した。
ええ、それはもう清清しい程に使命感に帯びた表情を浮かべ、両の瞳に固い意志を燃やす
程に。
エレオノールは再び小さな暴風となり、校舎内へ姿を消して行った。
「……取り敢えず、何処かで腰を降ろすか。色々と話さなければいけないコトがあるからな……」
「了解した。伝えるべきコトの有無は此方も同じく……」
「わかったわ」

微妙に呆れ顔を浮べた三人は、気を取り直して互いに話を始めた。
そんな時、かがみはふと覚悟が何かを書き記した紙を取り出した事に気づく。
恐らく此処に来るまでに予め用意していたのだろう。
男子としては感嘆するほどに綺麗に書き連ねた紙に書かれた事に目を通し、かがみは思わずハッと息を呑んだ。

『これから、私が話す事はBADANに知られては不味い。
教室の黒板でも使い、筆談で行う事にしよう』

それは奇しくも先程、村雨、かがみ、エレオノールの三人で行った事とほぼ同じ事
無言でコクリと頷く村雨とかがみの二人。
一瞬の内に彼らの中で緊張が走り、彼らは校舎に歩を進めていった。
急に会話が途切れたことでBADANから不審がられないように、当たり障りのない会話を行いながら。

◇  ◆  ◇

約数十の机や椅子が整然と並べられた教室。
其処には計二つの大きさが違う黒板があり、村雨達はその黒板の傍にそれぞれ自由に寛いでいる。
更に、その場に居るのは三人ではなく、既に四人。
保健室で酔い止め薬や何か得体の知れない錠剤や粉薬を手に入れたエレオノールも既に合流していたからだ。
また、彼らが見上げた先にある黒板には夥しい文字が並んでいる。
337Classical名無しさん:08/08/06 20:32 ID:8jZgBZXc
 
338Classical名無しさん:08/08/06 20:32 ID:lpam8oJs
                            
『津村斗貴子は川田章吾によって殺されてしまったらしい』
『パピヨンが生きていて、単独で何処かへ向かった。協力は難しい』
『死んでいたと思われていたアカギ殿が首輪を外し存命していた。今は別行動を取っている』
『また、アカギ殿は奴らの強化外骨格を破壊する道具を持っている。
それを使えば直ぐにでも強化外骨格は破壊出来るだろう。だが、大首領を倒す事には至らない。
よって、強化外骨格に眠るこの戦いの死者達となんらかの連絡を取り、大首領の力を弱め、その後例の道具を使用する手筈だ。
連絡の具体的な手段はアカギ殿に策があるらしく、今はそのために動いている』
『伊藤博士という協力者の方から首輪の解除方を教えてもらいました。現に私の首輪は一芝居を打って、解除してあります』
『核鉄による武装錬金は首輪が解除された場合、使えなくなるようです。
ですがパピヨンは問題なく使用していました。
パピヨンがあの核鉄があった世界出身の人間であるという理由かもしれませんが……村雨さんが見た話し、私の記憶では何か解除されていた首輪を巻いてきたような気がします。
それが核鉄使用の繋がるかはわかりませんが……気になりますね』
などなど。

様々な情報が書き並べられた黒板。
その中でも特に重要な事は『斗貴子の死、パピヨンとアカギの生存』『パピヨンが行方知れずになった』『首輪は今すぐにでも解除出来る』といったことだろう。
共にこのバトルロワイアルを潰す為の仲間であるパピヨンとアカギの生存は、彼らにとって単純に嬉しい事ではあった。
だが、パピヨンは自分達の輪から離反し、何処かへ去ってしまった。
いや、大体の目的地は見当がついている。
そう。パピヨンには本来は村雨が使用していた特殊バイク、ヘルダイバーがある。
最高時速は約600km……あの暗雲を突破する事は可能であろう。
パピヨンの性格上、あの時の言動振りから何処か別の場所でお茶を濁しているとは思えない。
きっとヘルダイバーで真っ先に向かったのだろう。
暗雲の先に存在すると思われるBADANの本拠地へ。
『パピヨンは強い。だが、BADANを一人で潰すのは無理だ。
奴らの保有する怪人の戦闘力、組織の技術力は高いからな……』
『同感だ。ならばアカギ殿、服部殿、ジョセフ殿、独歩殿と合流。
強化外骨格の破壊が完了した後、パピヨン殿の後を追おう』
『しかし、移動手段はどうするのですか? 私達は9人……これだけの人数が乗る事が出来て、高速で移動できる乗り物など……』
『手間と危険が伴うが……俺と葉隠が往復するしかないだろう。
確か零の力を使えばかなりの速度が出せたハズだ』
『その通り。噴射推進剤を全開にすれば村雨殿のバイクよりは速く移動する事は可能。
人一人抱えていても雷が我が身に落ちる前に駆け抜ける用意はある』
『あーさっき凄い速かったもんね……私は村雨さんのバイクの方がいいかな』

カツカツとチョークが黒板に擦れる音が響き、黒板に新しい文字が刻まれていく。
メモ用紙ではどうしても文字は小さくなり、複数の人間で情報を書き記すのは難しい。
その点、黒板なら大きな文字で書くことも出来、他の人間にそれを読み取ってもらうのも容易。
特に村雨、かがみ、エレオノールは一度同じような事をやっており、情報交換は円滑に終える事は出来た。
勿論、校舎に入るまでに行っていた偽装会話も忘れずに。
そして情報交換に掛かった時間は数十分程。
学校での目的が終わったため、彼らは黒板に書き込んだ文字が消し去ってしまおうと考えていた。
もう学校に戻ってくる予定もなく、黒板にはBADAN側に知られたくはない情報がびっしり。
BADAN側が此方に攻めて来る可能性も無きにはあらず、万が一知られでもしたら不味い事になる。
そのため、念には念を込めた行動であった。
よって、覚悟が黒板消しを手に取り、手を上の方へ伸ばそうとする――
341Classical名無しさん:08/08/06 20:35 ID:p3kh7Op6
342Classical名無しさん:08/08/06 20:36 ID:8jZgBZXc
      
「あ、ヒナギクよ! やっと来たわ!」

そんな時、ふと窓から外を眺めていたかがみの嬉しそうな叫び声が教室に響き渡った。
エレオノールが直ぐにかがみと同じように窓際に駆け寄り、村雨と黒板消しを持ったままの覚悟も続く。
ヒナギクの名前が出た瞬間、覚悟の表情に微妙な変化が生じた事に気づく者は居ない。
また同様に大きな声を出したかがみを咎めるものは一人も居なかった。
自分達がヒナギクを待っている事は以前のホテルでの会話から、BADANは盗聴やなんなりとで知っていても可笑しくはない。
逆に首輪解除などの重要な会話以外の事も全て筆談で行えばBADANに不審がられる事だろう。
数回の筆談を経て、それらの事を思いついた彼ら四人は既に互いに確認し合い、それを実践している。
バタバタと走り出すかがみの後をエレオノールが声を出さないように気をつけながら追いかける。
念のためにかがみの護衛を行うため、そしてヒナギクが未だ調子が悪いのであれば薬を上げるつもりなのだろう。
首輪が解除され、エレオノールのしろがねとしての身体能力は十二分に発揮できる。
またエレオノールは大事な仲間の一人であり、村雨と覚悟は黙って頷き、彼女ら二人を見送った。
やがてドアが開き、かがみが出て行き、それにエレオノールが続くように駆けて行く。
物分りがいいヒナギクはこの黒板を読めばきっと大体の状況を理解してくれるだろう。
そう考え、覚悟は黒板消しを所定の場所に戻し、そこら辺に腰掛ける。
その内、時間がゆっくりと過ぎていき、数分の時が流れた。

「覚悟、頼みがあるのだがいいか?」

そんな時、村雨がひどく真剣な様子で口を開いた。
344Classical名無しさん:08/08/06 20:36 ID:p3kh7Op6
  
345Classical名無しさん:08/08/06 20:37 ID:lpam8oJs
                             
「私に出来るコトであればなんなりと」

筆談ではないため、BADANに関する事ではないのだろう。
そのため覚悟は迷わず村雨の言葉に己の言葉で肯定の意を示す。
ふと覚悟は己が纏う零がブブブと唸り声を上げているのに気づく。
大方、零も村雨の言葉が気になっているのであろう。
この殺し合いで長い間村雨と行動を共にし、戦友として認め合ったのであるから。
やがて、再び村雨が口を開く。

「俺の特訓の相手になって貰えないか?
俺には、俺のZX穿孔キックには足りないものがある……だが、お前と闘えば何かがわかるかもしれない……。
そう、散の弟であるお前となら」

今まで村雨は大首領の器・ZXとして、仮面ライダーZXとして数多くの参加者と闘った。
葉隠散、劉鳳、パピヨン、アーカード、綾崎ハヤテ、ラオウ、範馬勇次郎。
勝利といって良いものは劉鳳、範馬勇次郎との戦いぐらいしかない。
だが、村雨は彼らの闘いを経て確実に強くなっている。
特に最後に行った勇次郎との闘いは村雨の戦闘センスを著しく向上させている
まさに闘えば闘う程に己の可能性を広げていく存在。
そんな村雨は今まで覚悟と拳を合わせた事はなかった。
そう。自分に新しい世界を見せてくれた散の弟である覚悟とは一度も。
殺し合いを演じるつもりは毛頭ないが、覚悟の力に村雨は興味を持っていた。
確証は勿論無いが、覚悟と闘えば自分に何か新しい力が芽生えるのではないかとう淡い期待を持ちながら。
ほどなくして村雨は口を閉じ、覚悟の反応を窺う。
だが、直ぐには答えは返ってこなかった。
何故なら村雨は知る事でないが、覚悟は私闘を好まない。
己の拳、零式防衛術は悪鬼を打ち滅ぼすために用いるもの。
仲間に向けて放つべきものではなからだ。
しかし――
347Classical名無しさん:08/08/06 20:37 ID:8jZgBZXc
        
348Classical名無しさん:08/08/06 20:37 ID:p3kh7Op6
村雨「覚悟、支援してくれ」
349Classical名無しさん:08/08/06 20:39 ID:p3kh7Op6
 
「了解した。村雨殿の役に立つのであれば喜んで相手を務めさせて貰おう」
「すまん」

覚悟は立ち上がり、村雨の頼みを受け入れた。
覚悟にも同じように村雨の力に対する興味はあったのだろう。
自分の実の兄、葉隠散と少しの間ではあるが共に行動していた村雨に。
純粋に一人の戦士として興味を抱いていたのかもしれない。
徐に覚悟はドアの方へ歩を進め、村雨がそれに続いた。

「お待たせ!あれ? 何処か行くの?」

そんな時、教室のドアが開きかがみの声が再び響き、彼女は驚いたよう顔を見せている。
かがみの後に続くのは同じように表情を歪めたエレオノール、そして桃色のロングヘアーをした桂ヒナギクだった。

「あ……」

覚悟と目が合い、ヒナギクは小さい言葉を漏らす。
それは声にならない程にか細いもの。
傍に居たかがみとエレオノールですらもはっきりと聞こえたかは定かではない。
一瞬、その場で硬直するヒナギク。
そして覚悟もまたヒナギクと同じようにその場で石のように立ち止まり、何も口に出す事は出来なかった。
「覚悟に特訓の相手になって貰う。だから、ちょっとグラウンドに出てくる」

しかし、村雨はヒナギクと覚悟の微妙な変化に気づかないようだ。
ヒナギクの五体が無事である事を確認し、村雨はスタスタと階段の方へ向かっていく。
そんな村雨を見て、意を決したように覚悟はかがみ達に一礼を行ってから村雨の後を追った。
去って行く村雨と覚悟を、いや覚悟をどこか名残惜しそうにヒナギクは見つめ続ける。
そしてエレオノールが無言で黒板を指差し、ヒナギクの方を向いて頷く。
恐らくヒナギクにパピヨンの事などの情報を教えるために、中に入って欲しいと誘導しているのだろう。
その意図を察し、ヒナギクも覚悟から視線を外し、エレオノールに頷き、教室に足を踏み入れた。
やがてエレオノールを続き、最後にかがみも二人に続いた。
微妙な反応を見せあったヒナギクと覚悟に若干の疑問を抱きながら。

◇  ◆  ◇

再び時間は巻き戻る。
特訓という名目で互いに戦闘を始めたZXと零を纏った覚悟が接近。
互いに地を走破する事により、地に降り積もった砂が四散し、天へ巻き上がる。
宙を漂う事を余儀なくされた砂の粒子が周囲の視界を曇らす。
しかし、その土色の砂粒は一息をつく間に再び周囲へ散ってゆく。

「オオオオオッ!」

地面を走り続けていたZXが前方へ跳び、拳を振りかぶる。
握られた拳は右のそれ。特訓といえども手加減をしていては成果など出やしない。
今の自分のフルスペック。いわば全力で覚悟にぶつかるという意思を心の中で燃やす。
腰を捻る事で反動をつけ、右の拳を突き出す。
覚悟の胸部に向かって弾丸のようにZXの拳が振り下ろされる。
352Classical名無しさん:08/08/06 20:40 ID:8jZgBZXc
  
353Classical名無しさん:08/08/06 20:40 ID:lpam8oJs
                              
354Classical名無しさん:08/08/06 20:40 ID:p3kh7Op6
    
――そして一閃の軌道が宙を落ちるように流れた

やがて手応えともいうべき衝撃がZXの右拳――いや、どちらかというと右腕から襲う。
しかも斜めの方向から擦るようなものをZXは感じた。
それもそのはず、ZXの拳は覚悟の胸部には届いていない。
覚悟は前に屈むことで、ZXの拳の軌道から身を避け、左腕を当てる事によりそれを捌いていたから。
そして、覚悟の右の拳が急速に固まり、やがてその凝縮されていた力が放出される。
あまりにも簡単に己の拳をいなされた事により、驚いたような様子を見せているZXに対して。

「ぬん!」

悪鬼を打ち滅ぼすための力、必勝の力が拳となりてZXを襲う。
その拳速は速い。ZXの拳を見極め、絶妙の頃合で打たれた拳撃。
右腕が伸びきったZXの胸部に向けて、真っ直ぐと拳が進んでゆく。
しかし、ZXも黙ってみているわけにはいかない。
彼も只、このバトルロワイアルで惰眠を行ってきたわけでもないのだ。
空いていた左手を翳し、自分に向かって打ち上げられた覚悟の拳を受け止める。

――ZXの左手を電撃のような衝撃が走る

(重い……!)

予想以上の衝撃。やはり覚悟は強い。流石は散の弟。
しかし、かといって諦めるわけにもいかない。衝撃に耐え、そのまま覚悟の右腕を掴み――右腕を引き戻した勢いで急速に距離を詰める。
同時に左脚をしならせ、覚悟の身体を横薙ぎに払うかのように振り抜く。
零のヘルメットから覗かれた覚悟の両眼がしっかりとZXの左脚を捉えた。
瞬時にそれを応じるかのように覚悟も右脚を振り上げた。
振り下ろされるZXの脚と振り上げられた覚悟の脚が絡み合うように近づき――やがて大きな衝撃を生んだ。
強靭な二つの蹴りが互いに打ち鳴らす衝撃で周囲の砂が風に吹かれ、やがて四散する。
(……やはり兄上に見入られただけのコトはある)

振り上げた脚を引きながら覚悟はZXについて感心する。
零を着装した自分に対し互角に渡り合う。
もし、この闘いが命を懸けた真剣勝負であれば、唇に紅をひいて応えなければならない事は必至。
そんな事を考えながら、覚悟は半歩後へ引き、同時に両腕を構えながらZXへ突っ込む。
覚悟の動きに反応するZXもまた構えを取った。
油断無く前方に翳されたZXの両腕が覚悟の両腕に向かい合う様に動かされ――再び互いを食い散らす獣の如くぶつかってゆく。
その速さは、力のせめぎ合いは何者にも止める事は出来ない。
本人達に停止の意思がない限りは。


「特訓というより……これって……」

グラウンドでヒナギクとエレオノールと共に立ち尽くしているかがみが言葉を漏らす。
かがみの両眼が追う影はZXと覚悟の二人。
ヒナギクに共有した情報を教え終えて、彼らの特訓を見届けるために三人は校舎から出ていたからだ。
そして目の前で闘い合う二人を見て、思わずある感想を抱いた。
心底、呆れ帰った表情を浮べながらボソッと。

「只の殴り合いじゃないのよ……」

今もなお縦横無尽に跳び動き、組み合い、互いに拳や蹴りを駆使するZXと覚悟。
その人間離れした身体能力には改めて感心させられる。
しかし、素人目に見ても双方特に考えもなしに闘っているにしか見えない。
果たしてこれが特訓といえるのかが、かがみには負に落ちなかった。
かといって自分がそんな旨を伝えても止まりそうにはない。
そのため歯がゆい思いを沸々と抱きながらも、かがみは結局断念し、暫くは静観する事を
決めた。
357Classical名無しさん:08/08/06 20:42 ID:lpam8oJs
                          
358Classical名無しさん:08/08/06 20:42 ID:p3kh7Op6
   
「……どうかしたの、ヒナギク?」
「え? な、なんでもないわ」

そんな時、かがみが急にくるりと横を向き、疑問の言葉を投げ掛ける。
かがみが振り向いた先には、彼女と同じように立っているヒナギクの姿があった。
その表情に映る感情は驚き。
突然かがみに話しかけられただけでここまで驚く程、ヒナギクの肝は小さくない筈。
まるで何か深い考え事をしていたから……それも横に居るかがみの存在を忘れていたかのように驚きを見せていた。
かがみはそんなヒナギクを見て、疑問を抱かずにいられず、ふと一つだけ確証はない心当たりを思いつく。

「もしかして……葉隠君と何かあったの? 悩んでる事があったら相談に乗るけど」

思い出すのは先程、教室のドア付近で起きた覚悟とヒナギクの余所余所しい様子。
ホテル前で別れた時のそれとは似ても似つかない。
自分達と行動を別にしている間に何か起きたのかもしれない。
そう考え、かがみは推測を口にし、同時にヒナギクを心配する。
見れば傍に居たエレオノールも自分の胸に手を当てて、力強く頷いていた。
言葉を出さずとも、かがみと共にヒナギクの力になるという意思の表れであるのは間違いない。
そんな二人を見て、ヒナギクは再び驚いたような顔を見せた。
無意識的に口をすこし開くほどに。
しかし、その表情はほどなくして変化を告げた。

「うん、ありがとう。でも大丈夫だから。だって――」

移り変わるヒナギクの表情。
今度はかがみとエレオノールが驚く番となった。
何故なら彼女達二人が予想していたことが事実と食い違ったから。
そう。ヒナギクが浮べた表情が何故か――
「答え、教えてもらったから……あの子にね」

とても穏やかなもので、何かを秘めた顔。
決して投げやりな、軽い気持ちで決めたようなものではない。
大きな、固く決めた意思がその表情にはあった。
ヒナギクのそんな顔を見て、かがみは驚きでハッと息を呑み、やがて何も言わなくなった。
何故だか、ヒナギクを見てどこか安心する事が出来たから。
そんな時、再び湧き上がる砂嵐。
ZXと覚悟の特訓と名を騙った闘いは未だ終わりそうにはなかった。

◇  ◆  ◇
361Classical名無しさん:08/08/06 20:44 ID:2JvWt8Cs
362Classical名無しさん:08/08/06 20:44 ID:p3kh7Op6
 
363Classical名無しさん:08/08/06 20:45 ID:lpam8oJs
                                         
殺し合いが今も行われている殺し合いの舞台。
その舞台から遠く離れた場所に位置する岩のような物体。
大きさはかなりのもので、何百、何千もの人間がその内部に居るように思える。
そう。其処こそが何れこのバトルロワイアルに反抗を志す者達が向かわなければならない場所。
BADANの総本山、サザンクロスであった。

「……わしはなにをやってるんじゃろうな」

そんな時、サザンクロス内の狭い一室で一人の老人が小さな声をポツリと洩らした。
声の主は徳川光成。この殺し合いで参加者ではなく、放送の司会役をBADANから担った者。
地下闘技場での史上最大のトーナメント戦を開催するなど、光成は強き者達が闘う姿を観戦する事は至上の喜びだ。
しかし、こんな悪趣味な事に喜びを見出せる程悪趣味ではない。
今すぐにでもBADANに反抗の意を示したいが首に巻きつけられた首輪によう生殺与奪を握られているこの状況ではどうしようもない。
そう。今まではそう思っていた。あの映像を見る前では。

「あの勇次郎を倒すとは……間違いない。
あやつらは何も恐れていない……わしと同じようにこんな首輪を付けられているというのに……決して諦めようとはせん」

第五回目の放送を執り行う数時間前に起きた闘い。
生き残った参加者十三人の内、九人を巻き込み、その中にはラオウ、勇次郎といった実力者も居た。
何人もの参加者を殺し、圧倒的な力を誇る二人。
だが、BADANに反抗する七人の参加者は互いに力を合わせ、一人も欠ける事なく勝利を収めた。
オーガという異名を持ち、史上最強の生物の名に恥じる事なく己の力を示し続けてきた勇次郎が相手であったにも関わらずに。
「だったら、わしも……ここで黙ってるわけにはいかんだろうに……!」

勇気を、寧ろ彼らに感化されたのでもいうのだろうか。
最後の放送を終えて、用意された部屋で光成は長い間考えた結果、己の行動を決めた。
いや、行動を決めたというよりも以前に較べ覚悟を強めたと表現するほうがしっくりくる。
同じくBADANに反感を抱いている伊藤博士と言葉を交わしてから、自分は何も為せてはいない。
自分よりも若い人間達が、そして自分の友人である愚地独歩が今も命を懸けてBADANとの戦いを続けているのに。
この状況が果たして最善なものといえるのだろうか。
きっと言えはしない。自分自身に勇次郎や独歩のような力がなくても――それはきっと何もしなくてもいい理由にはなりはしない。
せめて、BADANが行っていると考えられる参加者の会話の盗聴を邪魔するくらいはできるかもしれない。
いや、伊藤博士と再び連絡を取ればなんらかの策が浮かぶ可能性もあるだろう。

「先ずは伊藤博士を捜さねばな……」

そう考え、光成は部屋のドアを開け、徐に歩き出した。
ドアにロックはされておらず、見張りは居ない。
きっと光成が自分達に反旗を翻すとは夢にも思っていなかったのだろう。
放送の任を従順に全うし、特に自分から行動を示そうとはしなかった光成に対し、BADANは特に警戒をしていなかったためだ。
好都合だと思い、光成は薄暗い通路を進んでゆく。

「やつらに気づかれないとは限らんが……やるしかあるまい」

そんな光成には一つ見落としている事があった。
自分の後を一人の人間が追っている事に。
酷く禍々しく、見る者に威圧と恐怖の感情を与える眼を持つ人間に気づいてはいなかった。

◇  ◆  ◇
366Classical名無しさん:08/08/06 20:46 ID:2JvWt8Cs
367Classical名無しさん:08/08/06 20:46 ID:p3kh7Op6
    
グラウンドで今も闘いを続けるZXと覚悟。
共にBADANを倒す決意を秘めた、人類の希望ともいえる戦士。
この闘いで相手の強さを改めて認識する。
BADANとの闘いに向けて、更なる力を必要とした村雨が
しかし、この闘いを決めた動機は微妙に違っていた。

(懐かしいな。まるであいつらと闘っているように……)

右の拳を振りかぶり、ZXはふと思う。
アーカードやラオウ、勇次郎とは違い、覚悟の拳には純粋な破壊の意思はない。
当然、痛みは伴うがどこか違う。
そう。何かを守るために、譲れない意思を突き通すために行使する拳――まるで仮面ライダー1号、劉鳳、ハヤテが打ち出してきたそれと酷似しているような感覚。
覚悟の拳や蹴りをその身体で受けるたびにZXは実感する。
自分にはまだ足りないものがあるという現実を。
それを手に入れる術は未だわからない。

(俺もあいつらのように闘えているのか自信はないが………悪くはない。
悪くなんかない……良い心地がする……皆と闘えるコトは……!)

だが、いつかはそれらを手に入れる。
そう信じ、ZXは振りかぶった右腕に更なる力を注ぎ、眼前に意識を傾ける。
目の前に移る人影は漆黒の超鋼、零を纏いし覚悟。
覚悟の胸を借りて、只ありったけの力でぶつかる――その意思がZXに闘志を湧き立たせる。
まるで右腕を真紅の炎で燃やすかの如くに。
369Classical名無しさん:08/08/06 20:47 ID:c6.zglZk
 
370Classical名無しさん:08/08/06 20:48 ID:8jZgBZXc
     
371Classical名無しさん:08/08/06 20:48 ID:lpam8oJs
                                 
「ゼェクロォォォス――――」

口を開き、己の名前を叫ぶ。
脳裏に思い浮かぶ影は二つ。
元の世界で仮面ライダー1号と闘った時に彼らから受けた強烈な一撃。
そしてハヤテと共にラオウに向けて放った、記憶にも鮮明な一撃。
その時の感触、今はもう居ない彼らの事は酷くZXの記憶に残る。
忘れてはいけない記憶――自分を真の完成形に近づけてくれる重要な要素(ファクター)。
只、一心にそれを信じ、ZXは再び与えられた力を行使する。

「パァァァンチッ!!」

自分と同じように拳を突き出そうとしている覚悟に対して。
◇  ◆  ◇

『覚悟よ、やはり良はよくやる。うかうかしているわけにはいかんな』
(全くだ、零。俺も同感だ……!)

ZXと闘いながら、覚悟は零と交信する。
心を繋いだ仲である覚悟と零の二人にとってはいとも容易い事。
そしてそれぞれZXの力に感嘆し、彼との闘いに身を任せていた。
勿論、一対一の闘いであり特訓でもあるため、広範囲兵器などの使用は行っていないが。
己の迷いを殺し、一切の曇りも無い零式防衛術を用いて覚悟はZXに応じていた。
その筈だった。

(俺は……逃げていたのもかもしれん)
拳を打ち出しながら、覚悟は零に気取られずに己に対し疑問を抱く。
それは自分がこの闘いに身を投じた理由について。
勿論、ZXの頼みを出来るだけ叶えてやりたいという感情はある。
しかし、それよりもこの闘いに覚悟は別の意味を見出しており、それのために承諾の意を示したような感じがしていた。
簡単にいえば、ZXの申し出を山車にして、自分の都合を優先していた感じがしてならなかった。
373Classical名無しさん:08/08/06 20:49 ID:p3kh7Op6
   
374Classical名無しさん:08/08/06 20:49 ID:2JvWt8Cs
まるである出来事に対面する事から逃げ出すかのように。
当然、あまり立派な動機だとはいえない。
そんな覚悟の脳裏に浮かぶ人影は一人の少女――桂ヒナギクであった。

(理由はわからない。
だが、確かに俺はヒナギクさんを見て、何も言えなくなった……掛ける言葉を見つける事が今の俺には出来ない……!)

先程、教室でヒナギクに見つめられ、覚悟はどうにも良い言葉を出せなかった。
幼少の頃から零式防衛術の特訓に明け暮れ、しかも零式には色恋沙汰など最も相性が悪いもの。
ヒナギクから唐突に告白染みた言葉、そして禁愛の事を聞かされても覚悟にとって直ぐには反応を返せない。
そう。“恋は極力秘めるもの”という事を信条にしていた覚悟は暫く、ヒナギクの言葉について悩み抜いていた。
答えは殆ど心の中で決めているのだが、それをハッキリと伝えるための言葉がどうしても見つからず、言い出せなかった。
適当な場所で立ち止まり考えてもみたが、これといった最善の手も思いつかない。
しかし、かといっていつまでも時間を掛けているわけにもいかないのも事実。
学校で自分達を待っていると思われる村雨達の元へ行くために、覚悟は取り敢えず移動を再開。
未だ、明確な答えが出せぬまま、しかしそれでも表面上は平常そのものを装いながら、村雨達と合流を果たした。

(しかし、それ以上にわからないのは今のヒナギクさんだ……。
何かが違う。どこか元に戻ったような感じがしてならない。一体何が……?)

ふと、横目で自分達の闘いを見守っているヒナギクを見やる。
一瞬の内であったため、目は合わなかったが今も彼女は覚悟の思ったとおりの様子であった。
いつもと変わらない、どこか勝気な表情で時折、穏やかな笑顔を見せるヒナギク。
数時間前、自分と別れた時とは全く様子が違っていた事が覚悟に更なる疑問を抱かせる。
覚悟はその疑問に対しての答えを今も見つける事は出来ていない。
そんな時、周囲の空気が変わった。
見れば目の前のZXが大きく腕を振りかぶっている姿が見えた。
376Classical名無しさん:08/08/06 20:50 ID:2JvWt8Cs
377Classical名無しさん:08/08/06 20:51 ID:p3kh7Op6
   
(そうだ。今はそれらに気を取られている場合ではない。
今は零式を決めるコトが第一なり……!)

迷いや疑問を一瞬で殺し、覚悟はZXの動きに応える。
ZXが繰り出そうとしている右拳の動きに合わせ、己の右腕を動かす。
以前、自分が父、朧によって弾き飛ばされたあの懐かしき日々を懐かしむように思い出し
ながら――覚悟は放つ。

「因果!!」

最も慣れ親しんだ技、因果をZXの右拳――ZXパンチに向けて打ち放った。
刹那。
大きな轟音が周囲に響き渡った。


闘いを始めて既に数十分が経過した今。
一際目立つ轟音が起き上がり、ZXと覚悟が立ち尽くす。
互いに伸ばした右腕がぶつかったまま、活動を停止している。
一方は強化改造を受けた拳、もう一方は強化外骨格に覆われた拳。
常人どうしの闘いでは起こしようの無い音が完全に消え去った今でも、何故かZXと覚悟は動こうとはしなかった。
互いに未だ戦闘続行が可能であるにも関わらずに。

「はい! ストーーーップ!! 両者ドローってコトでお終いね」

まるで頃合を見計らっていたようにかがみが手を叩き、闘いの停止を呼び止める。
当人達は特訓とはいうが、いつまでたってもかがみにはそれが実戦そのものにしか思えず、内心ヒヤヒヤしていた。
その内、怪我でもしたらどうしようと不安であったため、隙あれば止めさせようと思っていたため、叫んだというわけである。
言葉を出す事が出来ないエレオノールも、無言で頷き、かがみの言葉に同意しているような意思を見せた。
ヒナギクもまた然り、彼女らの言葉に頷く。
そんな彼女らを見て、ZXと覚悟も互いに眼を合わせ、やがて右腕を引き、呼吸を整え始めた。
379Classical名無しさん:08/08/06 20:51 ID:2JvWt8Cs
「すまないな、覚悟。だが、良い経験になった……ありがとう」
「とんでもない、私の方こそ礼をいうべきコト。かたじけない、村雨殿」

二人も相応の手応えを感じ、満足がいったのだろう。
双方、今まで維持していた戦闘態勢を解き、言葉を交わす。
そこには更に互いの実力を認め合った二人の男が織り成す小さな空間があった。
ホッと安心したような表情を見せたかがみ、ヒナギク、エレオノールに見守られ、ZXと覚悟はそれぞれ彼女らの方を向き、歩を進める。
村雨はZXへの変身を解こうと、覚悟はヘルメットを脱ごうとするが――

そんな時だ。


「下らんな」


声がした。その場に居る五人同時に脳裏に届く声が。


「何をしているかと思えば……所詮は虫(ワーム)共といったところか」


校舎の屋上の上に腰を落とし、不敵に見下ろす人影。
金色のボディに、風にたなびかせるマントを持つその人影はZXに酷似していた。
そう。その人物こそがこのバトルロワイアルの発端となりし存在。


大首領、“JUDO”がその場に悠然と彼らに自分の存在を示していた。

◇  ◆  ◇
381Classical名無しさん:08/08/06 20:53 ID:8jZgBZXc
  
382Classical名無しさん:08/08/06 20:53 ID:2JvWt8Cs
383Classical名無しさん:08/08/06 20:53 ID:p3kh7Op6
  
「ッ! ジュドオオオオオオオオオオオオオッ!!」

ZXが吼える。
何故、ここに大首領が居るのか。
もしや、現世への復活が強化外骨格を使う以外の方法で成功したのだろうか。
様々な疑問が浮かんでは消えてゆき、ZXを惑わす。
だが、今は詳細について考えている暇などない。
変身解除を強引に取り止め、身体を捻じ曲げるように振り向き、ZXは数歩の助走を経て地を蹴り飛ばした。
更に両脚裏に内蔵されたバー二アーを稼動させ、宙に浮かせた身体の上昇速度を加速。
圧倒的な速度で屋上に接近し、右脚を上向きに突き出す。
当然、その先に居る者は大首領只一人。
未だ立ち上がろうとはせずに、ZXが自分の方へ向かってくるのを悠然と見つめるだけだ。

「ゼクロスキイィィィィィィィィィィィック!!」

再び咆哮をあげ、ZXが真紅の輝きを全身から放ち――シンクロ状態となりてZXキックを放つ。
それは第五回放送前に、範馬勇次郎を文字通り蹴り裂いた技と同等のもの。
下方から大首領に向けて、斜め一直線にZXキックの体勢で突き進む。
その速度はとてつもなく速く、かがみとヒナギクにとって眼で追いつくのがやっとの程。
やがて生み出されるであろう衝撃の大きさは言わずもがな、甚大なものとなるだろう。
しかし、上昇するように蹴り跳ぶZXに対し、未だ大首領は反応を見せない。
そうこうしている間にZXは大首領との距離を充分に詰め、最早ZXキックを避けるような距離間はなくなった。
そんな時、ふと思い出したかのように大首領は右腕をゆっくりと前方に翳し始め――

「何ッ!?」
「他愛もないな、ZX」

ZXキックを右の掌で受け、そして座ったままZXの脚を彼の身体ごと前方へ押し払った。
本当に容易く、まるでとても軽いものを押すかのように。
そして大首領の力を受け、ZXはきりもみを行いながら地面へと落ちていった。
最も、今のZXにとって大首領の力はあまりにも強大であり、その結果は当然といえたかもしれないが。
385Classical名無しさん:08/08/06 20:54 ID:lpam8oJs
                               
『覚悟! 奴こそが諸悪の根源、いうなれば真の悪鬼! 加減など不要、昇華弾を使うぞ!」
「任せろ、零! ヒナギクさん、柊さん、才賀殿、即急に退避してくれ!
昇華弾を使用する!」

地に落ちていくZXの着地を補助し、覚悟はヒナギク達に向かって言葉を飛ばす。
内容は即時退避。
目的は今まで使用してこなかった零の内蔵兵器使用による巻き添えを防ぐため。
予想もしなかった大首領の出現、そして彼の圧倒的な力に呆然としていた三人であったが覚悟の言葉で我を取り戻す。
直ぐに覚悟の言葉に従い、校門の方へ走り出してゆく三人。
そんな三人の退避が完全に完了したのを確認した覚悟は、今もなお腰を降ろし続けている大首領に右腕を向ける。
そして数秒の予備動作を経て、右の指先部分から赤い光が灯り――赤い光弾として放出された。
それこそが零の内蔵兵器の一つであり、人間を超えた化物、戦術鬼を一瞬の内に焼殺する昇華弾。
程なくして大首領に昇華弾が直撃し、巻き込まれた学校の屋上部分が音をたてて、破壊される。

『まだだ、 奴の保有戦闘力は計測不能! 万が一を考え、もう一発撃ち込むコトを勧める!』
「了解!」

地に降って来る破片を避けながら、覚悟は零と交信し、二発目の昇華弾使用を決める。
昇華弾の威力は凄まじく、着弾点は校舎の破壊により周囲は砂埃が覆っており、大首領の様子は窺えない。
直前まで大首領には避けた様子は見られなかったため、直撃はほぼ間違いないだろう。
高熱の炎で一瞬の内に対象を焼き尽くす昇華弾を受け、並みの人間が只では済むわけがない。
しかし、大首領の力は先程、ZXキックを簡単に無効化した事から強大であり、底が見えない現実が彼らに警戒の念を抱かせる。
そのため、零は念を押し、覚悟はそれに同意し、再び昇華弾を放つ。
止まる事なく昇華弾は宙を突き進み、大首領が居ると思われる地点に命中する。
387Classical名無しさん:08/08/06 20:55 ID:lpam8oJs
                     
388Classical名無しさん:08/08/06 20:55 ID:p3kh7Op6
  
389Classical名無しさん:08/08/06 20:56 ID:8jZgBZXc
  
(やったのか……?)

次第に砂塵は晴れてゆき、視界が鮮明になってゆく。
どの程度の手応えがあったかを確認するために、覚悟はヘルメット越しに両目を凝らす。
やがて、覚悟の視界に映りゆく影が一つ見え――覚悟の表情が驚きに染まった。

「葉隠覚悟、そして強化外骨格『零』か。
これでは足りん……この程度では超える気にもならん」

右腕、左腕を前方に翳し、文字通り宙に浮いた大首領が言葉を発する。
大首領の身体には目立った損傷は無く、それどころかマントすらも燃え尽きていない。
只、広げられた両の掌から煙が立ちこめているだけだ。
そう。昇華弾の直撃を片手で受け止め、特に気にした様子もない大首領に覚悟は驚く。
即座に次の行動について思案する覚悟。
そんな時、覚悟の横で豪風が過ぎ去った。

『あいつが親玉って奴だな! 相棒の仇、頼むぜ!!』
「任せろ、デルフリンガーッ!!」

いつの間にかデルフリンガーを手に取ったZXが走る。
ZXキックが通用しなかった事に悔やんでいる暇などZXにはなかった。
一発で効かないのであれば、何度だって叩き込む。その意思には曇りなど無い。
相棒――平賀才人を失ったデルフリンガーの想いと力を借り、ZXは駆け抜け、やがて再び跳躍。
宙へ浮いたZXを再び両脚裏のバーニアーが彼の姿勢を補助、同時に彼の上昇をも助ける。

『続け、覚悟!』
「応! 爆心!」

ZXの動きにワンテンポ遅れながらであるが、覚悟も疾走し、途中で大きく腰を落とす。
かと思いきや、両脚に着装した爆心靴を稼動させ――膨大な熱量を放射し、それを己の跳躍力に上乗せ、大空に向かって跳ぶ。
391Classical名無しさん:08/08/06 20:56 ID:GsUoqjno
392Classical名無しさん:08/08/06 20:56 ID:2JvWt8Cs
393Classical名無しさん:08/08/06 20:58 ID:p3kh7Op6
    
394Classical名無しさん:08/08/06 20:58 ID:lpam8oJs
                            
同時に覚悟は腰を回し、左脚を引き、ZXの背中越しに大首領の位置を完全に把握。
既に己の零式の技を叩き込む用意は完了済みだ。
やがて再び大声が周囲に響く。

『いけえええええええええッ!』
「ウオオオオオオオオオオオッ!!」

デルフリンガーに応え、大首領に向かってZXが大きな雄叫びを上げた。
咆哮の後、秒にも満たない時間を経て、デルフリンガーが縦一文字に一閃。
宙で一回転を終え、手に入れた遠心力をZXはデルフリンガーを振りぬく力に加える。
大首領の脳天をかち割らんとする勢いでデルフリンガーによる斬撃が襲う。
依然、大首領は先程と同じく只その一閃を眺めるのみ。
そう。ゆっくりと右腕を前方へ動かす動作もまた、先程と同じように動き――掴んだ。

「このような玩具で我に何かを為せると思ったのか、ZX?
本当に――」
『まだだ! もっと力をいれろ……村雨とやらよおッ!』
「勿論だ……こんなところでは終われん!」

デルフリンガーを受け止め、大首領は心底つまらなそうに口を開く。
刀身を素手で受け止めているにも関わらずに、大首領の手からは一滴の血も落ちようとはしない。
だが、その事実に臆することなくデルフリンガーとZXは更に力を、声を張り上げた。
大首領を今この場で倒す事が出来れば恐らく全ては終わる。
そのチャンスをみすみす見逃したくは無く、そもそもこんな殺し合いを仕組んだ大首領を許せる筈も無い。
大首領の言葉に耳を傾けずに、デルフリンガーを押し通す腕に更に力を込める。
ギリギリと音を立て、赤い火花を散らしながらデルフリンガーの刃が大首領を切り裂かんと前へ斬り進もうともがく。
しかし、そんな時ZXは今まで感じていた手ごたえを失った。
まるでデルフリンガーを手放したように感じ――やがてZXは言葉を失った。

自分の目の前で起きた出来事に。
396Classical名無しさん:08/08/06 20:59 ID:2JvWt8Cs
397Classical名無しさん:08/08/06 21:00 ID:lpam8oJs
                                      
「脆弱なものだな」

ZXの眼前で突如として夥しい数の破片が生まれる。
日光に反射し、幻想的な光を齎す“何か”の残骸が大首領の言葉と共にZXに降り注ぐ。
その“何か”が砕ける音と共に降り注いだそれは今までZXが手にしていたもの。

そう。それはかつて一振りの剣であったもの――大首領によって握られ、粉々に砕かれたデルフリンガーの成れの果てであった。

「デ、デルフリンガァァァァァァァァァァァァッ!!」

その事実を認識し、慟哭の叫びを上げるZX。
そんなZXに大首領はほんの一瞬、一瞥をくれたたけで片手を使い彼を軽く打ち払った。
本当に軽く、だがそれでいて今のZXにとって大きな丸太で吹き飛ばされたような感覚。
そして打ちつけられた衝撃でZXの身体が後方へ吹っ飛んだ。
しかし、大首領から離れていくZXと入れ変わるように突っ込む影が一つ。

「零式因果直蹴撃!」

言うまでも無い、零を纏った覚悟だ。
左脹脛の推進剤を吹かしながら、大首領に向かって左脚を振り上げる覚悟。
人間の数倍の体長はあり、異常な生命力を誇る戦術鬼を一撃のもとで粉砕する蹴撃。
零式を極めし覚悟によって真価が発揮されるその一撃が大首領の脳天を貫かんと空をきって、迫る。
やがて真っ直ぐと伸ばされた覚悟の左脚が、完全に大首領を捉えた。
399Classical名無しさん:08/08/06 21:00 ID:lpam8oJs
ですよねー……
400Classical名無しさん:08/08/06 21:00 ID:2JvWt8Cs
401Classical名無しさん:08/08/06 21:01 ID:p3kh7Op6
    
402Classical名無しさん:08/08/06 21:01 ID:c6.zglZk
 
「零式防衛術……こんなものでは意味はあるまい」

しかし、大首領は自分に向かう覚悟の蹴りですらも受け止め、そのまま掴む。
急激な圧力を受け、左の爆心靴が異様な歪み方をする。
拘束された左脚を奪還するために、右脚で大首領の身体を蹴り飛ばし、その勢いで抜け出そうとする覚悟。
だが、大首領はそんな覚悟の意図を察してか、彼の左脚を掴んだ腕に力を込め、横へ振る。
零の全重量と覚悟の体重をものともせずに、大首領にとっては取るに足らない力であるが、充分すぎる力を加え振り回し――やがてその手を離した。
一瞬の内に覚悟の身体は圧倒的な加速を受けざるを得ない状況となり、弾丸のように地面へ落下する。
そしてそこは先程ZXが落下した地点とほぼ同じ。
ほどなくして覚悟の身体は地面へ突き刺さり、ここ一番の砂埃が湧き上がる結果となった。
依然、大首領はそれらを只、じっと見つめるのみ。
そこにどんな感情が隠れているかは本人以外、誰にも理解は出来そうにもない。

「村雨さん! 大丈夫!?」
「覚悟くん! 零! しっかりして!」

未だ戦闘が終わっていないにも関わらずかがみとヒナギクが飛び出す。
ZXと覚悟の様子が心配で、いてもたってもいられなくなったのだろう。
彼女らの言葉を受け、ZXと覚悟は直ぐに立ち上がり、大首領を睨む。
その両眼からは未だ諦めていない意思が感じられ、特にZXからは怒りのようなものが感じられる。
理由はいうまでもなく、自分の仲間、デルフリンガーが大首領に粉々に砕かれた事について。
デルフリンガーを失った悲しみを己の糧に換え、ZXは再び大首領に向かおうとする気配があり、それは覚悟にとっても同じ事が言えた。
そんな時、彼ら四人の前に一つの影が何かを引き連れて駆け込む。
道化士を模したような人形、白金が製造したあるるかんを引き連れた銀髪の女性――才賀エレオノールの姿が其処にあった。
(あれが大首領、ジュドー………私の償いは彼を倒すコトで達成される……!
たとえ、この命尽きようとも……やってみせる!)

例の如く、言葉を出せないエレオノールは両腕を――懸糸傀儡を操る糸が内蔵された指輪を嵌めた指を動かす。
両腕を交差させるように天に向かって上げられたエレオノールの細い腕の動きに追従し、あるるかんに生命が吹き込まれる。
そう。エレオノールが操る十本の糸により、まるで人間のように動くあるるかんはそんな風に表現することがしっくりといった。
そして、エレオノールが燃やす瞳の色もまたZXや覚悟と同じく、大首領に対する反抗の意思を示していた。
キュルケ、三千院ナギ、ケンシロウ、ギイ、そして才賀勝と加藤鳴海といった大勢の仲間に命を繋いで貰ったエレオノール。
託された様々な思いを指先に乗せ、エレオノールは大首領に向かって突撃を試みようとし、ZXと覚悟も各々かがみとヒナギクを振りきり、彼女に続いた。

「焦るな、虫共。キサマらでは我に勝てん。
そもそも我はキサマらと戯れるつもりでわざわざ此処まで来たわけではない」

そんな時、依然腕を組み、宙に浮遊している大首領が意味深な台詞を吐く。
大首領の言葉は気に留めず、そのままエレオノール達は走り続けようとする。
しかし、これほどまでにも強大な大首領が自分達に何を言おうとしているのか。
この殺し合いに従おうとしない自分達が気に喰わないのであれば、言葉など掛けずに今すぐその力でねじ伏せればいいのに。
何故こんなタイミングで大首領に自分達に言葉を掛ける意味があるのか。
その事がどうしても彼らの疑念を抱き、結果として彼らの足を止めさせた。
そんな光景を見て、大首領は心なしか満足した様子を浮かべ、ゆっくりと右腕を横へ掲げる。
まるで上げられた腕が何かの合図を示すかのように。
405Classical名無しさん:08/08/06 21:01 ID:GsUoqjno
406Classical名無しさん:08/08/06 21:02 ID:lpam8oJs
                         
407Classical名無しさん:08/08/06 21:02 ID:2JvWt8Cs
「理解したようだな。ならば、しかとその眼で見るが良い」

途端に、昇降口付近でバチバチと不気味な音が響く。
そして周囲の空間がぐしゃぐしゃに歪み、円の形をした奇妙な紋章のようなものが出現する。
顔をしかめる村雨以外の人間はは知る由も無いがそれこそが大首領の力の一環、魔方陣。
様々な物体を、空間を越えて移動させる事ができ、参加者を各々のスタート地点に送り込んだのは容易く、スペースシャトルの移動さえも行える代物。
やがて魔方陣の中心部から一際大きな音が鳴り響いた。
魔方陣の実態を知らない者でも、今から何か自分達の予想を超えた事が起きると予想できる程に魔方陣の中心部には変化が生じている。
一同が息を呑む中、ほどなくして中心部から一つの人影が見えた。

「ッ! あれは!?」

大首領以外の五人の声が重なり、一様に驚きの声をあげる。
何故なら彼らの予想を超えた人物が魔方陣から姿を現したから無理も無い。
頭髪は禿げきってしまった、初老の老人、そして五人にとって見覚えがある人物――

「む、ううう……」

徳川光成が彼らの方へ歩を進めてきていた。
何故か下腹部を押さえながら、ゆっくりと、本当にゆっくりと。
どこか不自然な空気を周囲に漂わせながら。
光成は一歩ずつ、彼らの方を目指していた。

「ッ!」

状況の把握が追いつかず、暫く呆然としてた五人の中でZXが一際早く飛び出す。
この殺し合いの放送役を務め、度々その声を聞かされた徳川光成。
だが、独歩の知り合いであり、光成は性格上の問題からBADANに脅されていたと思われる。
ならば、保護しなければならない。
そう考え、ZXはまさに忍者の身のこなしで風をきって、彼の元へ辿り着く。
409Classical名無しさん:08/08/06 21:03 ID:8jZgBZXc
  
「おい、大丈夫か!?」
「キサマらにはほとほと失望させてもらったぞ。
充分すぎた時を与えてやったというのに……未だに我の牢獄、暗雲すら越えるコトもせんとはな」

大首領が口を開く。
その言葉には苛立ちのようなものが感じられる。
同時にZXを始め、彼ら五人はその言葉に何か違和感のようなものを感じたが先ずは光成の方へ意識を集中させた。
一番に辿り着いたZXの後を覚悟、エレオノール、ヒナギク、かがみが続いて駆け寄る。
一斉に彼らの視線を受ける事となる、光成。

「そこでだ。我は良い余興を思いついた。
キサマらがさっさと我の元へ辿り着いてくると考えるように……」

しかし、光成は何故か言葉を出そうとはしない。
いや、何か喋ろうとはしている様子は窺えるのだが、光成は口を一向に開かない。
まるで何かを我慢しているかのように。
依然上空から聞こえる大首領の意味が不鮮明な言葉が何故か彼らの不安を更に煽る。
やがて、どこか体調がすぐれないのかと思い、ZXが更に光成に近寄ったその時。
ZX、覚悟、エレオノールの三人は何か、言いようの無い悪寒を感じ、エレオノールは無意識的にヒナギクとかがみを強引に後へ振り向かせた。
そして、数秒にも満たない後に光成に異変が生じ――


「このようなコトをな」


終に口を開いた光成のそれから“何か”が顔を出した。
おぞましく、そして大蛇のようにうねりながら外の世界へ出ようと動きめぐる。
やがてその“何か”は完全に光成の身体が飛び出し、地面へと落ちた。
411Classical名無しさん:08/08/06 21:04 ID:lT04ky82
いきなり死者があああああ
「ほんとうに……すまんかっ…………た…………………」


何かに対し、謝罪の言葉を呟いた光成の目に生気が失われる。
力なく地面に倒れ付した光成の身体と共に、その“何か”の正体――光成の内臓が地面で脈打っていた。
村雨と覚悟の表情が一際驚愕なものに歪む。
何故なら、目の前の光景に以前にも見覚えがあったから。
生暖かそうな血液を帯び、今も直不気味に蠢く内蔵が彼らに認めたくない現実を見せ付ける。
そう。たった今、自分達の目の前で光成があっけなく絶命したという事実。

「何を驚いている、虫共。虫の一匹、そんな取るに足りんモノが一つ壊れたくらいで。
だが、我を許せないのであればキサマらがやるコトは一つ。
さっさと我らBADANの居城まで辿り着け。
まあ、つまらん小細工などを仕掛け、爆弾如きに脅えるようでは話しにならんがな」

目的を果たした魔法陣が大首領の言葉を皮切りに消えてゆく。
同時に大首領の身体も突如として除々に消えてゆき、彼自身も少し不思議そうに自分の身体の変化を見やっていた。
だが、やがて大首領は自分の身体から眼を離し、視線を戻す。

「ジュドオオオオオッ! キサマは……キサマはああああああああああッ!!」
「悪鬼め……! 誰にも人をモノ呼ばわりする権利などないッ!!」

一際大声で怒声を放つZXと覚悟。
デルフリンガーを失い、光成をみすみすと死なせた自分の不甲斐無さと大首領への怒り。
とても押さえきる事は出来ない感情がZXと覚悟の中で蠢き、ZXは先程よりも更に赤く光り、覚悟は全ての推進剤、爆心靴を稼動し、飛び上がる
シンクロ状態となったZXは再び跳び、ZXキックの体勢を。
空中で右の握り拳をこれでもかと握り締め、覚悟は必勝の拳、因果の構えを取り、尋常ではない速度で突き進む。
しかし大首領の身体はみるみる内に薄くなり、やがて――完全に消え去った。
413Classical名無しさん:08/08/06 21:04 ID:GsUoqjno
414Classical名無しさん:08/08/06 21:04 ID:2JvWt8Cs
415Classical名無しさん:08/08/06 21:04 ID:eg5z0dGU
 
416Classical名無しさん:08/08/06 21:04 ID:lpam8oJs
GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!
「その刻が来るのを待っているぞ。
わが器、ZX……そしてツクヨミの子らよ」


暫しの別れの言葉を残して。
ほどなくして、学校には彼ら五人と粉々になったデルフリンガー、物言わぬ身体となった光成が残された。


【徳川光成@グラップラー刃牙:死亡確認】

◇  ◆  ◇
418Classical名無しさん:08/08/06 21:06 ID:lT04ky82
支援
419Classical名無しさん:08/08/06 21:06 ID:p3kh7Op6
 
420Classical名無しさん:08/08/06 21:06 ID:2JvWt8Cs
421Classical名無しさん:08/08/06 21:07 ID:lpam8oJs
                          
永遠にどこまでも広がっているような錯覚さえも覚えさせる虚空の空間。
以前、参加者の一人である赤木しげるが“特別”に招待を受けた場所。
その空間こそが大首領の魂を幽閉している虚空の牢獄。
また、大首領と同等の存在であり嘗ての仲間、そして彼に反旗を翻した存在が己の肉体を引き換えに造りし空間でもある。
その存在こそ今もなお、大首領を封印する事に全力を尽くし、碌に現世へ実態を現せられない――人間の始祖、ツクヨミ。
牢獄は一度大首領に完全に破られたが、ZXを始めとした10人に仮面ライダーと引き換えに彼は再び封印されたというわけだ。
そして牢獄に一つの魂が今現世へより帰還した。

「時間切れというわけか……ふっ、なるほどな」

今や住み慣れてしまいすぎた牢獄に大首領が降り立つ。
その表情には嬉しさと物足りなさが同居しているような印象がある。
いや、どちらかといえば嬉しさの方が強いだろう。
何故なら先程、彼は一時的に牢獄の突破に成功したのだから。

「ツクヨミの力が弱まっているのか……それとも我の力が強まっているのどちらか」

言葉を並べている途中で大首領は後者の線が強いと考える
何故なら大首領は以前の彼とは違う。
そう。今までツクヨミの牢獄に為すすべも無く、封印されてきた時とは違う事がある。
それは簡単に言えば時を越える力。
この殺し合いの参加者を集めるために行使した力の有無が過去の大首領と今の大首領の大きな違い。
その力が発現した理由は今ですら大首領自身にもわからない。
再び強いられた幽閉生活に大きな飽きと怒りを覚え、ツクヨミの牢獄を打ち破ろうと何度も破壊を試みていた間に宿った未知の力。
それは一種の“進化”ともいえたのかもしれない。
ずっとツクヨミに封印されていたお陰で、10人ライダーに再封印されるまで彼は完全な敗北を知らなかった。
大首領を何度も邪魔した仮面ライダー達は何度も敗北を喫し、その都度に立ち上がり、“進化”を行っていた。
423Classical名無しさん:08/08/06 21:08 ID:8jZgBZXc
  
424Classical名無しさん:08/08/06 21:08 ID:GsUoqjno
425Classical名無しさん:08/08/06 21:08 ID:lpam8oJs
                                           
そう。以前、牢獄でツクヨミによって招かれたZXとの闘いで演じる事が出来なかった“進化”を。
結果論にしか過ぎないが、大首領は敗北の味を知り、初めて“進化”を行う機会を得て、それを達成出来た成果が時間跳躍能力なのかもしれない。
そして大首領の“進化”は更に別の出来事によって感化し、更なる向上を見せ、先程の一時的な脱出が行えたのだろう。
別の出来事、大首領には一つだけ思い当たる節がある。

「もしやアカギか? あやつの存在が……我に影響を与えたというのか」

大首領と対面し、臆する事なく会話し、あまつさえ賭けまで行い勝利を収めたアカギ。
先程の学校での時と同じく破滅のイメージ、“BADANシンドローム”は引き起こそうとはしなかったが、アカギの態度は堂々としていたものだった。
自分を恐れぬその態度、賭けを持ちかける度胸はそれほど珍しくは無い。
事実、最後の決戦時に自分を打ち倒した10人ライダーはその域に達する程、強固な意志を持っていた。
だが、問題はアカギ自身、何も力は持っていない事。
魂なき再生怪人一体すらも倒せそうにない身でありながら、あのような行動を行える存在。
あの時、交わした言葉はどれも興味深く、特に飢えているのだろうという発言は大首領を滾らせた。
そしてその滾り始めた大首領の感情は一刻も早い現世への復活の欲求に繋がり、一時的に成功したのだろう。
時間差があった事は未だその進化が不完全であり、ツクヨミの力は伊達ではないコトが予想される。
427Classical名無しさん:08/08/06 21:09 ID:2JvWt8Cs
「クッククク……面白い、わざわざ手間を掛けてこの戯れを行った甲斐がある。
あとはヤツらがいつサザンクロスまで辿り着くかだな……
一人、虫が紛れ込んだようだがどうせ、死ぬしかあるまい。まあ、切り抜けるのであれば興味はあるが」

そう言って、大首領は笑い始める。
一人、既にサザンクロスに乗り込んでいる者も居るようだが特には気にならない。
サザンクロスに単身で乗り込むなど自殺行為に等しく、余程酔狂な者と見える。
向こうの方から辿り着くまで特に何もする必要も無いだろう。
そして最早、大首領には彼らに殺し合いをやってもらうつもりはない。
既に参加者の半分以上は死に絶え、彼らの結束は固く、仲たがいはほぼないと言っていい。
ならば、さっさとサザンクロスへ乗り込み、その脆弱な肉体に乗せた命を極限まで燃やし、闘う事を大首領は期待していた。
その方が大首領にとっても眺めている分には有意義なもので、退屈も凌げるものだからだ。
勿論、これはガモン大佐を始め、BADAN側の人間は誰一人も知らない。
しかし、BADANとは大首領の一部、彼の意のままに動く組織であり、彼がそう決定したのであれば従わざるをえないだろう。
既に殺し合いには興味は無く、そのため死者の名前を呼び上げるための役目を持つ人間など要らない。
伊藤博士のようにある分野に特化した頭脳、類まれな肉体を持っていれば話は別だが、生憎、件の人物にはなにもない。
そのため、大首領はその人物――光成を始末、いや有効に利用するために学校へ出向いた。
其処は現時点で参加者の数が一番多く、自分に対する憎しみを募らせ、サザンクロスへの突入を煽るのにも持ってこいといえるだろう。

「そして葉隠覚悟、強化外骨格『零』……どちらも我の障害にはなりそうにないな。
余もそう思わんか?」

ふと、大首領が口を開く。
大首領を降ろす器となる強化外骨格『凄』の開発のために、BADANは強化外骨格のデータをとり、彼もまた零と着装者、覚悟については知っている。
虫にしては強いほうではあるが、自分と較べたら所詮天と地の差。
そのような感想を洩らし、大首領は視線を動かす。
視線の先には方膝をついて、大首領に忠誠の意のようなものを示している人物が一人。
429Classical名無しさん:08/08/06 21:10 ID:lpam8oJs
             
430Classical名無しさん:08/08/06 21:10 ID:2JvWt8Cs
431Classical名無しさん:08/08/06 21:11 ID:YBXD8EOk
              
そしてその人物こそ先程、内蔵を吐き、死に絶えた光成に手を下した、首輪をつけた軍服の男。
覚悟と散が操る零式防衛術、彼らが纏う強化外骨格、そして散が新たに製造し、覚悟の先に立ちはだかったであろう戦術鬼。
それら全ての基礎を創設し、夥しい数の人間を殺戮した男が口を動かし――。

「はっ、仰せのままに……」

齢百十九歳の老軍人であり、覚悟の大祖父上でもある、葉隠四郎が答えた。
酷く禍々しい両の瞳――零が称するならまさに“邪眼”というのに相応しい瞳には、苦渋の色などなかった。

◇  ◆  ◇
433Classical名無しさん:08/08/06 21:11 ID:8jZgBZXc
  
「フハハ……やはり、私は運が良い」

牢獄から現世へ舞い戻された男、葉隠四郎は己の幸運さを噛み締めた。
百十九の歳でありながら、その身はまるで五十台か六十台程のものでもあり、零式防衛術すらも操る。
覚悟の居た世界で日本軍を率い、第二次大戦と呼ばれる戦争で虐殺行為を行い、アジア最凶の悪鬼と表された戦争犯罪者でもある。
そんな四郎がこの場に居る理由。
それは血涙島で瞬殺無音部隊と共に覚悟と散による真の零式防衛術継承者決定の闘いを待っていた時、大首領の接触を受けたからだ。
流石に、いきなり『史上最強の強化外骨格製造のために協力しろ』と言われた時は面食らった。
何故なら自分とは別の世界から来て、大首領――JUDOと名乗った男の世界では自分の存在すらないらしい。
所謂SFといったやつなのだろうかと思ったが、四郎には俄かに信じられなかったのも事実。
しかし、半ば強引に連れて来られた後、四郎は思わず感嘆した。
自分の目の前に広がるBADANの充分すぎる施設、そしてこちらも充分すぎるほどの人体サンプル。
助手の能力もこれまた優秀であり、全てがあの時と段違いであった。
そう。大日本帝国による世界制服のために、米軍を殲滅するべく強化外骨格製造に一心を捧げていた時とは全く。

「霞をも越える『凄』。
私の世界だけでは為せはしなかった強化外骨格の完成、なんと心躍るコトか」

時は少し不足気味だったが、四郎は大首領の命により『凄』の製造に尽力した。
外殻に惜しげもなく多大なサンプルを使用し、人智を超えた存在、大首領が憑依すれば史上最強の名に相応しい代物となるだろう。
あとは大首領を降ろすだけで『凄』は完成の状態に仕上がり、四郎はまるで我が子のように喜んだ。
また一応、裏切りを防ぐために大首領からは首輪を巻き付けられたが、四郎は別にそんな事を気にする事はなかった。
理由は四郎には大首領に反抗する気はさらさらなく、逆に歓んで開発に勤しんだ。
何故なら、大首領から協力を要請された時、駄目元で言ってみた『凄』完成の暁の報酬の約束を覚えていたから。
435Classical名無しさん:08/08/06 21:12 ID:lpam8oJs
ジジイ帰れwww
436Classical名無しさん:08/08/06 21:12 ID:2JvWt8Cs
437Classical名無しさん:08/08/06 21:12 ID:p3kh7Op6
 
「そして……『凄』が完成し、大首領が復活した時。
その時こそが……我らの真の勝利の瞬間でもある!
今度こそ負けはせん……圧倒的な勝利で収め……神国を建国し、零式を天に知らしめるなり!
その時が来るまでこの葉隠四郎、死ねる身にあらず……!」

その内容は大首領の時を越える力で、四郎の世界の過去に戻る事。
そう。自分が率いる大日本帝国軍が、米軍に負けを喫した歴史を改変する事を目的とした時間跳躍。
大首領にとって数多くある世界の内、別に四郎の世界に固執する必要も無かったため、どうでも良かっただろう。
大首領は了承の意を示し、その約束が四郎の情熱を更に大きなものにさせた。
勿論、大首領が本当に約束を守るかはわからない。
しかし、この話し以外に四郎の欲求――米軍への勝利を達成する手段などない。
そのために四郎は力を注ぎ続けた。
あの時は零式防衛術も、強化外骨格も、戦術鬼も充分なものではなかったが、今は違う。
既にその三つは覚悟や散によって完成されており、更にBADANの技術力が加われば最早米軍に劣るわけがない。

零れ落としてしまった勝利の栄光を、今度こそこの手に掴む。
揺ぎ無い、真っ黒な意思を膨張させながら四郎は大首領に協力し、先程も光成に螺旋を喰らわせ、時間差で彼を死に至る状態にさせた。
螺旋の創始者である四郎にとってそのくらい造作でもない。
与えられた自室に歩を進め、ベッドに横になる。
また、あくまでも『凄』完成のために呼ばれたため、必要以上の情報は与えられていないので、パピヨンがサザンクロスに侵入した事は、彼は知らない。
そのため、特にする事もないため、四郎は休憩を取ろうとする
「しかし、散が死に、覚悟が生き残るとはつくづく奇妙なものよ。
覚悟はどうやら女子と何かがあったようだが……まあ、よい。
覚悟がいかの程、零式を極めたか。それもまた何れこの手で見極めばなければな」

時折、監視カメラで殺し合いの様子を、覚悟と散の様子を観察していた四郎。
当然、先程の覚悟の闘いもサザンクロス内で見物しており、零式が通用しない場面は四郎にとってもあまり良いものではなかった。
しかし、相手は時を越えるだけでなく、異世界に介入するほどの力を持つ大首領。
相手が悪いにも程があり、覚悟があっさりと負けを喫したのはいたしかたないと結論付ける。
また、幾ら四郎といえども覚悟の全てを把握しているわけではない。
主に観察していたのは彼らの闘いであって、それ以外の時を逐一見ていたわけではないからだ。
そのため、覚悟の抱えた悩みなど知る由も無く、彼の傍には良く同じ年頃の女性が居たくらいしか認識が無かった。
そして何れ、覚悟との再会を期待しながら一眠りをしようと四郎は両目を瞑ろうとする――

(そういえば……『凄』は今どうなっているだろうか?)

ふと、神社に保管されている『凄』の様子が気になった。
いや、BADANの技術者が言うには参加者の首輪が外れ、全力の一撃叩き込んでも壊れないだろうという事。
素晴らしい技術力を誇るBADANの人間がいうのだから、信憑性はかなり高いだろう。
そう。自分が心配する事はない。
『凄』が神社に隠されている事など参加者は知る筈もないのだから。
だが、それでも何故かほんの少しだけ何かが引っかかった。
その小さな違和感が頭から離れない。
このまま一時、休憩するために寝てしまおうという気持ち。
そして、自分の部屋に置かれた子機を操作し、神社内に隠された監視カメラで『凄』の状態をチェックしようという気持ち。
ほぼ、同程度の強さを誇る考えが四郎の思考を揺らしていた。
そしてそれは丁度、赤木しげると服部平次が互いに対峙し、ジョセフ・ジョースターが字彼らの元へ向かっている時と同じ。

そう。禍々しい不気味さを誇る『凄』の目の前で。

◇  ◆  ◇
440Classical名無しさん:08/08/06 21:13 ID:lpam8oJs
                       
441Classical名無しさん:08/08/06 21:14 ID:8jZgBZXc
     
「デルフリンガー……徳川さん、ゆっくりと眠ってくれ……」

学校から少しはなれた場所。
一段と土が盛り上がった場所を振り返り、村雨がそう言って立ち去ってゆく。
出来るものであればもっと時間を掛けて、立派な墓を造ってやりたい。
だが、生憎、碌な時間はないため、村雨は下唇を噛みながら、自分の前を歩くかがみとエレオノールの元へ進む。
既に涙は流れていない。
涙を流しきる時間は、無力さを悔しむ時間、デルフリンガーと光成を悼む時間は充分に経過したから。

「村雨さん、やはり急がねばなりませんね」
「ああ、そうだな……」

口を開いたのはエレオノール。
首輪を外したため、今までその存在をBADANから隠すために発言を避けてきたエレオノール。
しかし、エレオノールは惜しげもなく言葉を発し、村雨とかがみもそれを不自然とは思わない。
何故なら既にBADANの親玉、大首領にエレオノールの生存はバレている。
ならば、今更エレオノールの生存を隠す事もないと彼らは決めた。

「俺と葉隠の力も元通りになっている……この力で奴らを叩く、大首領と覚悟の祖父、そして徳川さんを殺した葉隠四郎もまとめてッ!
大首領の口振りから奴は俺達との闘いを望んでいる。
何があったかはわからないが……この機会を利用しない手はない。
直ぐに皆と合流するぞ……!」

そしてそれは首輪の解除の事も言えた。
首輪によって制限された力では大首領には全く叶わない。
今までは首輪を考えもなしに解除すれば、BADANの不審をかう事を恐れていた彼ら。
しかし、先程の大首領の口振りから彼は自分達が暗雲を抜ける事を希望している。
村雨の記憶からBADANの全てを握っていると思われる大首領。
そんな大首領の意思はなによりも優先され、村雨達が彼らの本拠地へ辿り着くまで手出しを行う可能性は低いと思える。
443Classical名無しさん:08/08/06 21:15 ID:2JvWt8Cs
よって、彼らは一種の賭けに出て、全員の首輪を外した。
また、核鉄には解除した首輪を巻き付けて、パピヨンのように武装錬金が発動出来る事は確認済み。
BADAN側は首輪の反応が消えたため、不審に思っているのは間違いない。
今すぐにホテルへ戻り、アカギ、服部、ジョセフ、独歩との合流し、暗雲を突き抜けるしかない。
暗雲を突き抜けた後はどうするか。
考えるまでも無い。
螺旋によって殺された四郎、そして大首領率いるBADANを彼ごと叩き潰す。
覚悟の話からこの世に螺旋を使える者は、散以外に零式防衛術創始者である葉隠四郎しかないらしい。
恐らく強化外骨格開発のために協力を求められたのだろう。
それが双方望むべき協力関係かどうかはわからない。
だが、四郎は既に何千人も虐殺した悪鬼らしく、倒すべき敵を考えて可笑しくはないだろう。

「ええ、そうね。
そういえば、葉隠君とヒナギク遅いな……何処で話してるんだろう」
「私が見てきます」

そんな時かがみのふとした言葉に答え、エレオノールが何処へ走り去る。
既にデルフリンガーと光成を埋めてから数十分以上が経過し、充分に追悼を終えた覚悟はヒナギクに話があると言い、彼女と何処か別の場所へ行った。
流石に目の前光成が死んだ事もあり、かがみはそんな二人を茶化す気にはなれなかった。
きっと、あの時不自然にギクシャクとしていた態度に何か関係があるのだろう。
よってあまり二人を心配している気持ちはなかったが。
そして、その場には村雨とかがみの二人が残った。
暫く二人とも特に何も話さそうとしないため、静寂が流れ始める。

「……すまないな、また俺は守れなかった
俺の完敗だ……」

悔しそうに呻く、村雨。
かがみはどうやって声を掛けてやればいいのかわからない。
気安く気にするなとはいえない。
人一人が実際に死んでしまったのだから。
だから、かがみは顔を上げて口を開く。
少しでも村雨の助けになる事を願いながら――

「頑張ろう。私達、皆で徳川さん達の分も頑張ろう……今はそれだけしかないわ。
きっとね……」

村雨に言葉を投げ掛けた。
控えめながらかがみの表情に映る笑顔。
それは穏やかで、村雨にとって懐かしい思い出を呼び戻させるもの。
一度は手放してしまった、決して忘れたくは無かった記憶。
今は取り戻す事が出来た記憶をかがみの笑顔から噛み締め、そしてそれは村雨の生きる糧となる。
そう。幼い頃、いつも救われ、いつの日かは自分が絶対に守り通すと誓い、結局は失ってしまったもの。

「ああ、そうだな……」

姉の笑顔を再び思い出しながら、村雨は頷く。
BADANとの最終決戦――その時は刻一刻と近づいていた。

◇  ◆  ◇

村雨とかがみが二人きりになったほぼ同時刻。
デルフリンガー、光成の追悼を終えて、覚悟とヒナギクは学校のグラウンドに居た。
酷く真剣な表情を互いに浮べながら。

「ヒナギクさん、私は考えた……」

ゆっくりと口を開く覚悟。
既にヘルメットは脱いでおり、覚悟の口元の動きはヒナギクの視界にはっきりと映っている。
覚悟は先程の戦闘で負ったであろう疲れや負傷は微塵も見せない。
そんな覚悟を見てヒナギクは相変わらず強い人だなと、心の中で呟き、思う。
自分に向けられた覚悟の言葉に頷き、次に続くであろう彼の言葉を待ちながら。
446Classical名無しさん:08/08/06 21:17 ID:2JvWt8Cs
447Classical名無しさん:08/08/06 21:17 ID:8jZgBZXc
  
「私が持つものは零式。
只、悪鬼を打ち倒すための威力(ちから)であり、屍山血河を築く事しか出来ず、人々の未来は創るコトは出来ない。
だが、私は零式に頼るしかない。勿論、苦痛に感じるコトは全くない。
私には零式を操り、果たさなければならない使命があるから……。
もう、これ以上悪鬼共に……徳川殿のような人々の生命を弄ばせんためにも……!」

覚悟の言葉の語気が強まる。
思わず拳を握り、不器用な自分を覚悟は恥じる。
只、零式防衛術で敵を砕く事しか出来ない自分を。
ヒナギクは頷くだけで無言のまま。
何も言葉が思いつかないわけではない。
只、どうしても口を開けなかっただけの事。
何故なら覚悟の表情がとても険しく――それでいて何かを思い悩んでいるように見えたから。

「そして零式は己を、己の感情を殺し常に流水の如く冷静な精神(こころ)で完成される。
敵に対する怒りや憎しみも抱いてはいけない。それらは拳を曇らせてしまう。
只、自分を殺すだけが必要なり……だからだ、だからヒナギクさん…………」

覚悟の表情が一瞬、ほんの少し歪む。
その時、ヒナギクは確信した。
自分が先程感じ取った疑問。
覚悟が見せた表情からどうにも気になった事。
そう。覚悟が口を開きながら、何かに思い悩んでいる事が確実的な事をヒナギクは確信した。
また同時にもう一つ重要な事も。
それは覚悟が今から言おうとしている事が、彼が一番言いたい言葉であるという事実。
自然にヒナギクの身体に緊張が走る。
今まで何度も顔を合わせていた覚悟の表情を見つめ、彼の言葉を待つ。
449Classical名無しさん:08/08/06 21:18 ID:p3kh7Op6
 
450Classical名無しさん:08/08/06 21:19 ID:2JvWt8Cs
451Classical名無しさん:08/08/06 21:19 ID:lpam8oJs
                                                
一言も覚悟の言葉を聞き逃さないように。
そんな意思を両目の視線に乗せて、ヒナギクは覚悟の口元が動くのを見つめ続け、やがて覚悟が言葉を口にする。
大きい声ではない、良く通る声で。


「私の人生に愛はいらない」


ヒナギクに短く言い放った。
覚悟の表情に映る感情。
先程までは確かに迷いが生じていた顔には、最早目に見える迷いはない。

「BADANに我が大祖父上、葉隠四郎が居るコトがわかった今、尚更私は零と共に因果を極めなければならない。
邪眼の瞳を持ち、今もなお彷徨える亡霊、葉隠四郎を野放しにするのは葉隠一族の恥。
徳川殿の、零を始めとした英霊達の無念を晴らす為にも、葉隠四郎は葉隠一族の名に賭けて、私が必ず倒す。
だから、ヒナギクさん。
以前、君が言ったコトには私も――」

続けて覚悟は口を開く。
葉隠四郎は先の戦争の大罪人。
幾ら、血が繋がった者でも許せるわけにはいかない。
死んでいたと思われる四郎をこのまま野放しにする
四郎の生存確認は覚悟に以前よりも自分に課せられた使命の重さを再認識させた。
そしてそれは自分を愛していたと言ってくれたヒナギクに、自分には男女の愛は必要ないと言い放つ覚悟すらも持たせてくれた。
直前まで生じた小さな迷いも完璧に断たせる程に。
更に覚悟の言葉は続き、その内容は以前、ヒナギクが覚悟の言った事について。
そう。ヒナギクがもう、覚悟を愛さないといった言葉に対する返事の事。
(そうだ、これで終わる。
これさえ言えば……また、俺達は元通りの仲間だ)

肯定の言葉を自分に言い聞かせる覚悟。
ヒナギクに言われるまでは微塵も気づかなかった。
だが、今となっては自分が崩れそうな時、いつもヒナギクに助けられたあの時を思い出せば――ゆれていたかもしれない。
自分を優しく、時には叱咤しながら言葉をくれたヒナギクの存在が他の仲間より大きなものになっていたかもしれない。
この殺し合いが始まって、直ぐに出会った桃色の髪の少女、ルイズとゲームセンターに行った時に感じたものと同じようなもの。
生憎、ルイズと過ごした時間はヒナギクに較べて短く、その感情は小さいものであったため、正体はあの時の覚悟にはわからなかった。
あの感情を更に大きくさせたもの。所謂、男女の恋心を自分はヒナギクに抱いていたのかもしれない。
いや、きっとそうだったに違いない。そうでなければここまで悩みぬいたわけがない。
そう。自分がヒナギクに惹かれていたのは最早、覆い隠せない事実。
しかし、覚悟は零式の教えに則り抱いてしまった感情を殺し、言葉を出そうとする。
勿論、あの時の返答の内容は今覚悟自身が言った言葉と同じもの――自分には愛はいらない。
自分も以前、君が言った言葉と全く同じ気持ち――自分も君を愛さないコトをヒナギクに伝えようとする。

だが、そんな時、突然覚悟の口元を何か柔らかい感触を持ち、温かいものが塞いだ。

454Classical名無しさん:08/08/06 21:21 ID:8jZgBZXc
  
455Classical名無しさん:08/08/06 21:21 ID:lpam8oJs
                                      
456Classical名無しさん:08/08/06 21:21 ID:p3kh7Op6
 
「わかってるわ……私にもわかってるから、最後まで言わないで葉隠くん」

声を出したのは当然、覚悟の目の前に居たヒナギク。
見れば覚悟が口を開いている間に近づき、右の中指と人差し指を突き出して、彼の唇を押さえている。
指先に感じる覚悟の感触に少し、ヒナギクは顔を赤らめながら口を開く。
その表情には、不思議と覚悟の言葉に対する動揺やショックといったようなものはなかった。
寧ろ、どこかあっけらかんとした様子さえも窺える。
やがて突き出した指をゆっくりと戻し、半ば唖然とした覚悟にヒナギクは面と向かって言う。

「葉隠くんと零は皆の戦士なんでしょ?
助けを求めている皆を助ける……そう、アニメに出てくる正義のヒーローのような感じかな。
だったら、私だけを特別扱いするわけにいかないわ。
そんな不公平は駄目だもの。だから、私も貴方を特別扱いしない。
私達はこの殺し合いに反抗する仲間であって只の友達……それだけよ」

依然、ヒナギクが浮べる表情には迷いのような感情はない。
逆に清清しい程にヒナギクは毅然とした態度を取り、言葉を並べる。
覚悟は只、驚いたような表情で頷くだけで何も言わない。
ヒナギクの反応が自分の予想を越えたものであっただめだろう。

「だから、約束しましょう、葉隠くん。
もう、お互いを絶対に愛さないってコトをね……」

腰に両手を当て、覚悟の顔を覗き込むようにヒナギクは口を開く。
真剣な眼差しが覚悟を射抜く。
自分に向けられた視線に乗せられたヒナギクの真意は覚悟にはよくわからない。
だが、ヒナギクの言葉に対しての答えは悩みぬいた結果、既に出ている。
先程言ったようにヒナギクをもう、愛さない事。
その意思には変わりはなく、覚悟は大きく頷く。
そんな覚悟の反応を見て、ヒナギクは満足げな表情を浮べ、優しげな笑みを見せた。
「うん、よろしい!
じゃあ、村雨さん達に直ぐに出発しようって言わないとね」
「ああ……」
「あ、私はちょっと用があるから先に行ってくれないかしら。
大丈夫、直ぐに追いつくから」
「り、了解」

そういってヒナギクは覚悟の背中を叩き、彼を急かす。
零を着装しているため、あまり衝撃は覚悟に伝わらない。
それでもヒナギクの急な行動に覚悟は驚かされ、早足気味に歩く結果となった。
二人分のデイバックを担ぎ、覚悟はヒナギクから離れていく。


『覚悟よ……辛い選択であっただろうが、ヒナギクが言うようにお前は牙なき人々の剣。
誰か一人のための戦士ではないのだからな……』
「わかっているさ、零。
俺もヒナギクさんと同じ意思。彼女と交わした約束は必ず守る……」
「ならばよい。では覚悟……必ず奴らを倒すぞ。
我らの倒すべき悪鬼、葉隠四郎もあの強大な力を誇る大首領もな」
「……応!」

零との交信で覚悟は己の決意を高める。
そう。自分には葉隠四郎と大首領を倒すという大義を為さなければならない。
そのためには恋など不要だ。
自分にはヒナギクを始めとした仲間が、心を繋いだ超鋼がある。
これ以上何を望めるだろうか。
いや、望めはしない。充分すぎる程の後方支援が自分にはある。
ヒナギクにどんな心の変化があっただろうかは気にはなるが、詳細はわからない。
だが、所詮、拳を奮うしか能がない自分には女子の心はとても未知なもの。
それならば、いっそ何も考えない方がいい。
その方が己の零式にも、ヒナギクにとっても都合がいい事であろうと思ったから。
459Classical名無しさん:08/08/06 21:24 ID:lpam8oJs
                            
ほどなくして、覚悟はある場所へ再び辿り着く。
其処は学校に来てから、村雨達に教えてもらった場所。

「川田……」

そう嘗ての友、川田章吾の小さな墓だった。
彼らの仲間、柊つかさを津村斗貴子の凶刃によって失い、修羅の道へ進んでしまった男。
斗貴子と組み、つかさの友人である泉こなたを殺してしまい、斗貴子も殺し、そしてこなたと仲が良かったらしいパピヨンに殺され、その人生を閉じた。
殺されたから殺したの連続。
もし神がこの世に居るのであれば何故、これほどまでに過酷な運命を用意したのだろうか。悲しみの連鎖が綺麗に繋がれ、何人も死ぬ結果となった惨劇に覚悟は心を痛める。
その惨劇の裏にいつも男女の愛が関係していた事が尚更、悲壮さを強調していた。
だが、だからといって川田に何も罪がないわけではない。
同情できる理由、わかってやりたい理由があっても人を二人も殺した事実は拭えない。
殺し合いに乗っていないこなたは勿論、心身が疲弊しきった斗貴子をきっと抵抗させる間もなく殺したのだから。
また、零によって川田の脳髄から情報を得るのを覚悟はしなかった。
以前、共に語らい、友好を築いた友の頭部を壊し、脳を取り出す事はなんとなく気が引けたから。
やがて、覚悟は徐に口を開く。

「お前は罪を犯した。今、お前がやるコトは黄泉の国で己の罪を償うのみ……。
だから、俺はお前を悪鬼とは言わない。
いや、悪鬼なんかじゃない。
お前も村雨殿や才賀殿と同じく、悲しき存在、そして我らと肩を並べるべき存在であったと俺は信じる……!
だから、俺はこの言葉を送ろう、川田よ…………」

思い浮かべるのはあの懐かしき記憶。
初めて、川田、つかさ、ヒナギクの三人と出会った時。
半日ほどの時間でしかなかったのに色々なことがあった。
嬉しい事も可笑しい事も、そして身が裂けるような事も。
今でも鮮明に覚えているそれらを胸に秘めて、覚悟は言葉を送る。
461Classical名無しさん:08/08/06 21:25 ID:8jZgBZXc
  
「我らは常に戦友なり!
決してつかささんとの愛の詩を忘れはしなかったお前を……俺は一人の戦士であったと認めよう!」

言葉を言い終え、覚悟はその場を立ち去る。
その力強い背中を見せたまま、決して振り返る事なく進む。
そして覚悟は顔を上げ――

「ゆれるな俺の心……既に進むべき道は一つ!」

全ての迷いを、懐かしいあの記憶を殺し、覚悟は只、進み続ける。



覚悟が村雨達の元へ向かった事でその場にはヒナギクが一人残される。
覚悟が充分離れた事を確認し、ヒナギクはふと溜息をついた。
大きく息を吐き、その場に座り込む。
別に立っていられなくなるほど疲れ果てたわけではない。
只、なんとなく座りたかっただけ。
大きな仕事をやり遂げた時に感じられる達成感のようなものを、ヒナギクは噛み締める。
ふと視線を上に上げれば日光が差し込む、蒼穹の青空がどこまでも広がっており、ヒナギクは暫しその美しさに見とれてしまった。

「うん、これで良かったのよね……これで……」

自分が出した答えを何度も考え、ヒナギクはその都度それは正しかったのだと言い聞かせる。
夢の中でつかさと言葉を交わし、今一度覚悟を愛するべきか愛さないべきかを悩み、彼に会ってから全てを決めようとした自分。
学校で待つ仲間達に余計な心配を掛けないように、精一杯平常さを保ち、脚を運んだつもりであった。
だが、教室を出ようとする覚悟の何処か悩んでいるような顔を見て、何も言えなくなった。
きっと自分が突然、愛していたと言ってしまい、流石の覚悟も多少は混乱してしまったのだろう。
一方的に自分の気持ちだけを伝え、覚悟の言葉を待たずに彼を突き放してしまった自分。
そんな自分を少し後悔したため、なかなか覚悟に話しを持ちかける事は出来なかった。
やがて、村雨と覚悟の特訓を目の当たりにして、再度覚悟は自分と違う事を認識し、ヒナギクの決意は強まった。
463Classical名無しさん:08/08/06 21:26 ID:p3kh7Op6
  
464Classical名無しさん:08/08/06 21:26 ID:8jZgBZXc
    
「やっぱり、葉隠くんは違うんだ……ハヤテくんよりももっと違う……私達とは根本的にね」

BADANによって改造手術を受けた、尋常でない力を誇る村雨。
そんな村雨と同等にやりあう覚悟は、やはり自分とはあまりにも違いすぎる。
そう。あの夜、白皇学園で自分が待っていた綾崎ハヤテよりも。
自分の目の前で繰り広げられる闘いの規模の大きさに、ヒナギクは答えを決めかけた。
それは自分が以前言った事を突き通す事。
覚悟の足を引っ張らないために、彼の負担にはならない事。
即ち、身を引く事である。
やがて村雨と覚悟の闘いが終わり、大首領が現れ一連の出来事が終わりを告げた時。
ヒナギクの答えは完全に決まっていた。

「だって、葉隠くんにはやらないといけないコトがある……。
私なんかがあの人を迷わせて、それで死ぬコトになるなんて……私は絶対に嫌。
葉隠くんには死んで欲しくない、出来るものならば彼を支えたい。
けど私に出来るコトはあの人に較べてあまりにも小さい……だったら、彼の負担にならないようにするだけよ」

言っている事は数時間前に、覚悟に話した言葉を同じ。
だが、あの時よりもヒナギクの表情には更に固い決意が見える。
つかさは言った。『愛するのには理由はいらない』と。
確かにそうかもしれない。人を好きになった理由なんて聞かれてもパッと答えは出ない気がする。
結局、『好きになったから』と、特に理由っぽくない答えを返してしまいそう自分の姿をなんとなく想像してしまう。
だが、好きになって事により、相手にどんな影響を及ぼすか。
特にこの殺し合いではいつ命を落とすかもわからず、この先相手と一緒になれる可能性があるかもわからない。
それに愛を育む事で良い事だけが起こる訳でもない。
嘗ての仲間、川田とつかさは皮肉な事だがとても良い実例であり、大きすぎる悲しみをヒナギクに与えた。
結局、この場で他の人を愛してはいけない。
あの時と変わらない結論をヒナギクは下し、覚悟と約束を交わした。
もう、決して互いを愛さないコトを。
終にはっきりと口に出してしまい、覚悟に伝え、彼の同意を確認し、なんだかとても疲れたような感覚に陥る。
そんな時、ヒナギクに近寄る人影が一つあった。
466Classical名無しさん:08/08/06 21:28 ID:lpam8oJs
                              
「エレオノールさん……?」
「先ずは盗み聞きしてしまったコトを謝らせてください、ヒナギクさん」
「ってコトは……私が覚悟くんにふられたのも見たの?」
「? 良くわかりませんが一部始終はしっかりと……」
「あーそう……まいったわねぇ……あはは……」
「も、申し訳ございません!!」
「ん、いいわよ。気にしてないからほら、土下座はやめてってば」

今まで飛び出す機会がなかったエレオノール。
意図したわけではないが、結果として盗み聞きの形になった事をエレオノールはとてつもない勢いで謝る。
そんなエレオノールをヒナギクは笑みを浮べながら、宥め始める。
自分がやった事には後悔はなく、別に見られてもそこまで気にする事ではない。
おずおずと子犬のように顔を上げ、此方を見てくるエレオノールを見て、次第に元気が涌いてきたような感覚に陥った。
屈みこんでエレオノールを立たせる事を補助して、ヒナギクは立ち上がる。

「さっ、行きましょう。皆が待ってるわ」

そう行ってヒナギクは歩き出す。
足取りは力強いものであり、エレオノールから次第に離れてゆく。
やがて、その場に棒立ちになっていたエレオノールも直ぐにヒナギクの後を追ってゆく。

(ギイ先生、私には愛の事についてはよくわかりません。
ですが、一つだけわかるコトがあります……)

持ってきたデイバックを担ぎ、己の胸に手を当てて、歩くエレオノール。
自分の心臓の鼓動を掌越しに感じ、己の生命の歯車が止まっていない事をしっかりと認識。
自分のやるべき目的を今一度、己の身体に刻む。
(ヒナギクさん達は死なせません。
私が追い求めた笑顔……彼女達がそんな笑顔を浮かべ、愛し合える未来。
その未来が広がる世界を創るためにも、私はこの舞台に立ち続けましょう。
BADANを倒すというフィナーレを迎えるまでは……必ず……!)

自然と両腕に力が篭り、エレオノールは自分の鼓動が早まったのを感じる。
それは戦の直前に武者震いを起こす戦士の如く。
そんな時、エレオノールには一つだけ気づいていなかった。
自分の前を歩いてゆく、ヒナギクの頬から一滴の雫が垂れ落ちた事を。
なんのために流した涙なのだろうか。
明確な理由はわからない。流したヒナギク自身にもよくわかっていない
だが、一つだけヒナギクに思い当たる節もあった。
自分がほんの一滴の涙を流した理由。
きっとそれは最後の涙だったのだろう。

(さよなら、私の小さな恋…………)


覚悟に抱いた、淡い想いを完全に洗いきる涙だったのかもしれない。


469Classical名無しさん:08/08/06 21:29 ID:p3kh7Op6
       
【C-4 学校周辺 二日目 午前】

【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に火傷(治療済み) 胸に火傷、腹部に軽い裂傷。頭部他数箇所に砲弾による衝撃のダメージあり 首輪が解除されました。
    胴体部分に銃撃によるダメージ(治療済み) 頭部にダメージ、
    両腕の骨にひびあり、零の推進剤により高速移動中
[装備]:強化外骨格『零』@覚悟のススメ
[道具]:大阪名物ハリセンちょっぷ 滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)、首輪(覚悟)
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者BADANを必ず倒し、大首領を殺す。
1:村雨とかがみの元へ向かい、繁華街のホテル(E-2中心部)に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。
2:村雨が再び記憶を失い、殺し合いに乗るようならば倒す
3:葉隠四郎を必ず倒す
4:ヒナギクを愛さない
【備考】
※こなたの死を知りました。それが川田のせいである事も知っています。
※パピヨンとアカギを全面的に信用しています。
※ラオウを倒した男が劉鳳だと知りました
※零と一体になる事に迷いはありません
※服部、ジョセフ、エレオノールと情報交換をし、友好関係を取っています。
※アカギと情報交換をしました。
※首輪を解除したため、身体能力への制限は解けました。
【零についての備考】
※零の探知範囲は制限により数百メートルです。
※零はパピヨンを危険人物と認識しました。
※零は解体のため、首輪を解析したいと考えています。
※零は村雨の体を調べ、その構成が、極めて高位の霊魂ならば、強化外骨格同様受け入れられる構造になっていると知ります

『大首領を殺す作戦』
•大首領を強化外骨格の中に降ろしてから、成仏鉄球で成仏させる。
•そのためには大首領を弱らせる必要がある。
•強化外骨格内部の死者ならば、大首領を内側から攻撃できる可能性が高い。
471Classical名無しさん:08/08/06 21:30 ID:lT04ky82
支援
【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]全身に無数の打撲、頬に軽い腫れ 全身に更なる重度の打撲傷を負う 胸に貫通痕 核鉄の治癒力により回復中 疲労(小)首輪が解除されました。
[装備]十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (0/2) 、マイクロチェーン(2/2)、核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金、工具
[道具]地図、時計、コンパス、 女装服
    音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾 支給品一式×3、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
    文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
    缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(5本消費)、ツールナイフ、[思考]
基本:BADANを潰す!
1:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る
2:覚悟達を待ち、繁華街のホテル(E-2中心部)に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。
3:穿孔キックを完成させる。
4:パピヨンを止める。
5:仲間の首輪を外す。
6:かがみを守る
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です。
※参戦時期は原作4巻からです。
※村雨静(幽体)はいません。
※連続でシンクロができない状態です。
※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。
※BADAN側にも強化外骨があると推測しています。
※ラオウ、勇次郎との戦闘を経て戦闘技術が劇的に向上しました
※神社で立ったまま微笑んで死ぬ死体(劉鳳)を見ました。
※怒り等感情に任せて行動しないよう自制する事を覚えました
※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。
 首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。
 スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。
 また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。
※川田章吾の死体は、埋葬されました。
※穿孔キックを習得しましたが、まだ未完成です。見た目は原作で村雨が放ったものと大体同じものです。
※首輪は解除され、身体能力、再生能力への制限が解けました。また首輪は核鉄(ピーキーガリバー)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます
※デルフリンガーは破壊されました。


【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 顔と手に軽い火傷と軽い裂傷。右頬に赤みあり。右肩が外れている、手の平に裂傷、勇次郎平手によるダメージ 、核鉄の治癒力により回復中 首輪が解除されました。
[装備] バルキリースカート(核鉄状態)@武装錬金、木刀正宗@ハヤテのごとく
イングラムM10(9ミリパラベラム弾0/32)454カスール カスタムオート(6/7)@HELLSING 13mm爆裂鉄鋼弾(28発) 陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた
[道具]支給品一式、ボウガン@北斗の拳、ボウガンの矢17@北斗の拳
[思考・状況]
基本:BADANを倒す。
1:村雨とかがみの元へ行き、繁華街のホテル(E-2中心部)に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。
2:覚悟を愛さない
[備考]
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです 。
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました 。
※バルキリースカートを使いこなしました。バルキリースカート本来の戦い方ができるようになりました。
※エレオノールと和解しました 。
※服は現地調達したものに着替えました。
※服部、ジョセフ、エレオノールと情報交換をし、友好関係を取っています。
※アカギと情報交換をしました。
※首輪は解除されました。また首輪は核鉄(バルキリースカート)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます
474Classical名無しさん:08/08/06 21:30 ID:lpam8oJs
                                    
475Classical名無しさん:08/08/06 21:31 ID:8jZgBZXc
  
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:全身に強度の打撲(ある程度は回復)、左腕欠損(止血済み)、核鉄の治癒力により回復中 首輪が解除されました。
[装備]:巫女服
[道具]:二アデスハピネス (核鉄状態)@武装錬金 ニードルナイフ@北斗の拳 つかさのリボン
[思考・状況]
基本:BADANを倒す
1:みんな元気になれっ……もちろん自分も
2:覚悟達を待ち、繁華街のホテル(E-2中心部)に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。
3:神社の中にある、もう一つの社殿が気になる。
4:仲間の首輪を外す。
[備考]
※BADAN側にも強化外骨があると推測しています。
※零の暗雲についての推測を知りました。
※かがみの主催者に対する見解。
@主催者は腕を完璧に再生する程度の医療技術を持っている
A主催者は時を越える"何か"を持っている
B主催者は@・Aの技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
Cだが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
※首輪の「ステルス機能」および「制限機能」の麻痺について
かがみがやった手順でやれば、誰でも同じことができます。
ただし、かがみよりも「自己を清める」ことに時間を費やす必要があります。
清め方の程度で、機能の麻痺する時間は増減します。
神社の手水ではなく、他の手段や道具でも同じことが、それ以上のことも可能かもしれません。
※ステルス機能について
漫画版BRで川田が外したような首輪の表面を、承太郎のスタープラチナですら、
解除へのとっかかりが見つからないような表面に 偽装してしまう機能のことです。
ステルス機能によって、首輪の凹凸、ゲームの最中にできた傷などが隠蔽されています。
※S1駅にハヤテのジョセフに対する書置きが残っています
※神社で立ったまま微笑んで死ぬ死体(劉鳳)を見ました
※村雨との協力を申し出てくれた服部に感謝しています
477Classical名無しさん:08/08/06 21:33 ID:lpam8oJs
                                           
※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。
 首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。
 スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。
 また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。
※首輪は解除されました。また首輪は核鉄(二アデスハピネス)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます


【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:疲労小 全身に火傷(ほぼ完治)。首輪が解除されました。
[装備]:エンゼル御前(核鉄状態&首輪@エレオノールが巻かれている)@武装錬金、あるるかん(白金)@からくりサーカス(頭部半壊、胸部、腹部に大きな損傷、全身にへこみと損傷あり)
[道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式、生命の水(アクア・ウィタエ) 保健室で手に入れた様々なもの
[思考・状況]
基本:自分を助けてくれた者、信じてくれた者のためになんとしてでも主催者を倒す。
1:村雨とかがみの元へ行き、繁華街のホテル(E-2中心部)に向かい、全ての参加者と合流し、暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。
2:夢で見たギイたちの言葉を信じ、魂を閉じ込める器を破壊する。
3:ナギの遺志を継いで、殺し合いを潰す。
4:一人でも多く救う。
5:仲間の首輪を外す。
6:できる事ならパピヨンを助けたい(優先順位は低い)
[備考]
※ジグマール、村雨達(村雨、かがみ、覚悟、ヒナギク、独歩、服部、ジョセフ)と情報交換をしました。
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※夢の内容はハッキリと覚えていますが、あまり意識していません。
※エレオノールが着ている服は原作42巻の表紙のものと同じです。
※ギイと鳴海の関係に疑問を感じています。
※フランシーヌの記憶を断片的に取得しています。
※「願いを叶える権利」は嘘だと思っています。
※制限についての知識を得ましたが、細かいことはどうでもいいと思っています。
※自転車@現実は消防署前に落ちています。
※才賀勝、三千院ナギの血液が溶けた生命の水を飲みました。2人の記憶をある程度取得しました。
 才賀正二の剣術や分解などの技術は受け継いでいません。
※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると核鉄に戻ります。
※独歩の言葉が聞こえたかは不明です。
※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。
 首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。
 スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。
 また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。
※解除した首輪は核鉄(エンゼル御前)にパピヨンがやっていたように巻きつけており、使用できます。


【空間の牢獄 二日目 昼】

【大首領JUDO@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:空間の牢獄を脱出する。
1:赤木との再会。
2:肉体を得る。そして、赤木のいう「酔い」を味わう。
3:参加者がサザンクロスに突入するのを待つ
【備考】
※大首領はあくまで、「肉体を得る」ことを優先しています。
※強弱は拘っていません。また、バトルロワイヤル開催の理由は、ただの戯れ。
※一時的に牢獄を脱出できましたが、持続的ではありません。明確な理由は不明です。
【サザンクロス内の一室 二日目 昼】

【葉隠四郎@覚悟のススメ】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:不明
[思考・状況]
基本:『凄』完成、大首領の復活の暁に、自分の世界で神国建国を行う
1:大首領の指示に従う
2:『凄』の様子をチェックする、もしくは一先ず休憩する。
3:覚悟の実力を見定める。
【備考】
※首輪はついていますが能力制限装置はなく、起爆装置のみです。
※血涙島で覚悟と散を待っている時に集められました。
481Classical名無しさん:08/08/06 21:35 ID:c6.zglZk
 
482 ◆40jGqg6Boc :08/08/06 21:35 ID:FLE6A2t2
投下終了しました。
長い間、支援どうもありがとうございます。
それでは誤字などの指摘、ご意見や感想をお待ちしています。
483Classical名無しさん:08/08/06 21:35 ID:8jZgBZXc
    
484Classical名無しさん:08/08/06 21:36 ID:8jZgBZXc
投下乙!
大首領の圧倒的実力が凄い迫力。
ここで葉隠四郎が来るとはw
デルフ……徳川さん……成仏しろよ。
GJ!
485Classical名無しさん:08/08/06 21:38 ID:p3kh7Op6
        
486Classical名無しさん:08/08/06 21:44 ID:lpam8oJs
投下乙。徳川さーーーーーーーーーーーーーん!!
徳川さん報われないなあ……いい感じな鬱要員でしたねえ。
そして大首領w前々から分かってたけど、コイツ強すぎるだろw
葉隠四郎のジジイが来て他のキャラにも活躍フラグが立ってGJ

2つだけ指摘を
>>339での核鉄の情報ですが、エレが首輪外した直後に、御前に首輪巻いて発動しているはずです。
・集合場所のE-2は禁止エリアになったはずなので、状態表に修正が必要かと……。
487Classical名無しさん:08/08/06 21:44 ID:lT04ky82
投下乙
まさか大首領がいきなり2人も命を奪うとは…!
覚悟はちょっとさびしいなあ…確かに迷いがあるとまずいし
恋愛フラグは死亡フラグだし、仕方ないね
そして黒幕っぽい四郎きたな、物語はもうラストスパートですねえ

488Classical名無しさん:08/08/06 21:56 ID:p3kh7Op6
光成さぁーン!(つд`)
せめて、せめて見せ場を……デルフも参加したロワが悪かったとしか言いようがない…だがそれがい(ry
しかしコイツら臆面もなく会場で修行を…w まだまだパワーアップの余地があるZXに対し、どことなく陰りが見え隠れする覚悟…大丈夫だろうか
そしてアカギまたやりやがったw 葉隠四郎からは光成さん匂いがプンプンするけど今後はいかに……
とにかく大波乱な展開をありがとう!


あと、一応指摘を
>まるで頃合を見計らっていたようにかがみが手を叩き、闘いの停止を呼び止める。

かがみは激しく片腕です…
489Classical名無しさん:08/08/06 22:10 ID:YBXD8EOk
投下GJです!
光成さんとデルフに合掌。
うーん、やっぱり大首領は強い。実にバケモンだぜ。
そして葉隠四郎ktkr! コイツ、外道で好きなんだよなあww
490Classical名無しさん:08/08/06 23:45 ID:k9UEb/0E
投下乙です!
デルフ、徳川さん……どうか安らかに……
そして、『不完全』となり、それによって『進化』を成した大首領……おいおい、『凄』って必要なのか?
制限を差し引いても、圧倒的で絶望的な力の差……それでも、ZX達の勝利に倍プッシュだ!
そして、ここでまさかの四郎登場。黒幕の座を奪われたかと思いきや、主催側にいたのか、この爺さんw

最後に……アカギの支援伝説、マジで自重www
491 ◆40jGqg6Boc :08/08/07 20:21 ID:S/rSowdg
感想ありがとうございます。
それとご指摘どうもです

>>486
核鉄の方は該当の表記を削除、目的地の方は「集合場所付近の北へ向かう」という方針に修正しますね。

>>488
すっかり見落としてました……こちらも収録され次第、片腕ということに修正します。

そして首輪を解除し、ZXに再生速度が元通りになったため、十字手裏剣、衝撃集中爆弾の数を0/2から2/2に修正ということでお願いします。
492Classical名無しさん:08/08/07 21:33 ID:LH6XXZ96
うぃきまだ?
493Classical名無しさん:08/08/08 00:22 ID:.8anX/OE
はやくしろよかす
494Classical名無しさん:08/08/08 00:57 ID:.8anX/OE
おせーーっての
495Classical名無しさん:08/08/08 01:04 ID:.8anX/OE
◆1qmjaShGfE、ちゃんと仕事しろ
496Classical名無しさん:08/08/08 01:50 ID:uRHATB/Y
※当セット内の葉隠覚悟には、愛という名の後方支援はついておりません。
497Classical名無しさん:08/08/08 13:19 ID:vy9ncogU
サザンクロス内の暗闇大使達はすでに昼に突入しているのに
午前の段階で反抗がばれる行動を取ってしまっていいのかな
午前から昼の間ずっと気付いてないとしたら間抜けすぎる
498Classical名無しさん:08/08/08 13:45 ID:iiWNvGfY
パピヨンがサザンクロスに侵入したのは、『朝』。
ホワイトスネイクの幻覚からパピヨンが帰還したのが、『昼』。
パピヨンは再生怪人やコマンドロイド相手に無双したり、ホワイトスネイクの幻覚にはめられてたのは、朝から昼の間。
ってことは、『午前』も含むワケで。
499Classical名無しさん:08/08/08 13:48 ID:X832CTXk
ふざけんな! さっさとwiki作れカス
500Classical名無しさん:08/08/08 14:42 ID:vy9ncogU
>>498
>884 :帝王無双BADAN〜白蛇対峙〜 ◆c7qzxSVMQs :08/06/29 20:34 ID:fN7xAWd6

>「エンリコ・プッチ、パピヨンと接触!」

>プッチに首輪を表す光点が研究所へと到着していた。

盗聴器はともかくプッチの首輪を把握してるなら参加者の首輪も把握してるんじゃない
首輪を外したパピヨンが襲来しているのに不自然な首輪に反応を示さないのは変だと思う
501Classical名無しさん:08/08/08 15:04 ID:iiWNvGfY
うーん……接触の時点では、まだ覚悟達は首輪を外していないってのじゃ駄目かな。
パピヨンとプッチの第二ラウンド開始時が昼であって、対峙した時点では未だ午前。
そんで暗闇が被害状況を聞いて司令室を出たのも、未だ午前。

>「虫けらが如きがいい気になりすぎたな」

暗闇がこう呟いた瞬間に、やっとこさ時刻は昼に。これとパピヨンが幻覚から帰還したのが、同時。
司令室を出たのと、暗闇が上の言葉を呟く間に、覚悟達は首輪解除! だから、気づかなかった!
ってことにすれば……、無理あるね。
502Classical名無しさん:08/08/08 15:18 ID:WbEu3GMk
そんなにwikiが欲しけりゃ俺が途中まで復旧作業してて飽きたのがあるから
頑張って自力で完成させてくれ
http://www36.atwiki.jp/comicrowa/
503Classical名無しさん:08/08/09 01:25 ID:Md0A59bM
>>502
ちゃんと最後までやれよ
504Classical名無しさん:08/08/09 02:28 ID:b7i87IW.
>>503
一人でやるのはやっぱ無理
俺はジェバンニにはなれない
505Classical名無しさん:08/08/09 23:35 ID:b.siSGfs
本編時間順だけやってみた
こりゃ無理
506 ◆1qmjaShGfE :08/08/10 00:06 ID:M7QPAmqw
みなさんに色々御心配をおかけしております。wiki復旧途中経過ですが、現在本編70話までの収録が完了しております。
わざわざwikiを借りてくださった方までいらっしゃるようで、ありがたいやら申し訳ないやら……
とにかく本編の収録を最優先とし、それが全て完了次第こちらにアドレスを張ろうと思っております
時間ばかりかかって申し訳ありませんが、どうかそれまでお待ちいただきたく、よろしくお願いいたします
507Classical名無しさん:08/08/10 00:15 ID:wjD6FjvY
何度かSSを収録した事があるので、wikiに70話も登録する大変さは判るつもりです。本当にお疲れ様でした。
俺の借りたwikiは所詮途中で諦めてしまった残骸なので気にしないでください
508Classical名無しさん:08/08/10 00:24 ID:87mBWRcs
>>506
YOU晒しちゃいなよ、胃山路で
509Classical名無しさん:08/08/10 01:20 ID:biwe9OqY
乙です!
何か手伝える事があればいいんだが。
510Classical名無しさん:08/08/10 10:24 ID:CASw0gzU
応援することしかできませんが、頑張ってください
511Classical名無しさん:08/08/10 16:02 ID:87mBWRcs
ttp://www31.atwiki.jp/mangaroyale
製作お疲れ様です!
512Classical名無しさん:08/08/10 20:20 ID:M3Syq1mM
ここは少しマシな仕事をしてるな
だがおせーよ
513Classical名無しさん:08/08/10 20:56 ID:4.rfmZwA
>>512
文句言うんだったら自分で作ればいいじゃないか
514Classical名無しさん:08/08/10 21:36 ID:faHTSaRQ
>>513
荒らしに構うな
515Classical名無しさん:08/08/10 22:42 ID:RX/vm0EA
隙間がスカスカなんですけど、仕様ですか?
516Classical名無しさん:08/08/11 00:05 ID:475cP/EI
リンクの青文字が見難いです。…は真ん中に表示して欲しいです。
仕事はちゃんとやって欲しいです
517 ◆S52NT51/9g :08/08/11 23:33 ID:061NJYb2
wikiが正式オープンするまでの仮住まい的なHPを作ったのですが公開しても平気でしょうか?
518Classical名無しさん:08/08/11 23:41 ID:/r1EKFJc
氏ね
519Classical名無しさん:08/08/11 23:44 ID:/FuyX4/U
>>517
了解です。楽しみにしています。
520Classical名無しさん:08/08/11 23:46 ID:qdawXbRc
>>517
いいと思いますよー。
521 ◆S52NT51/9g :08/08/11 23:47 ID:061NJYb2
ありがとうございますそれでは公開します
ttp://galgerowamap.hp.infoseek.co.jp/1.html
htmlがうpされた分に関しては収録されているはずです
522Classical名無しさん:08/08/11 23:48 ID:/r1EKFJc
さらしてんじゃねーよカス
523Classical名無しさん:08/08/11 23:50 ID:/FuyX4/U
>>521
おお! 乙です。最高だ!
524Classical名無しさん:08/08/11 23:50 ID:qdawXbRc
>>521
スゲェ! GJです!
525Classical名無しさん:08/08/11 23:54 ID:/r1EKFJc
褒めてんじゃないよ、調子に乗るだろ
526Classical名無しさん:08/08/12 02:19 ID:BPZV8Itk
>>521
遅くなりましたが乙です
527Classical名無しさん:08/08/12 04:01 ID:1zy0JMXU
>>521
GJ!貴方が神か…!
528Classical名無しさん:08/08/12 14:45 ID:rjsdr2qE
>>521
GJでした!これは凄い。
529Classical名無しさん :08/08/12 17:29 ID:m/v8W.kI
>>521
おつかれさまです。
仮住まいってレベルじゃねえぞ!
530Classical名無しさん:08/08/12 22:36 ID:F1FdhKqg
>>521
乙です。やはりまとめサイトがあると安心できます




ctさんへ
ttp://jlcbr.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/toct.cgi
531 ◆ctWQeRff.I :08/08/13 01:37 ID:tTK0FwqE
>>530
あんがと、だいぶ気が楽になったよ
でもアンタはいいんかそれで?
532Classical名無しさん:08/08/13 01:45 ID:tTK0FwqE
それと皆様へ
サイト消失の件は申し訳ありませんでした。
少し魔が差したので、色々とやってしまいました。
本当に申し訳ありません。
533Classical名無しさん:08/08/13 04:15 ID:27Ub6o1I
>>532
分かったから、これからも達者で暮らせよ?
534勉強男 ◆drwetRDQqY :08/08/14 00:15 ID:4nU4DELU
>>532
ばーか
535Classical名無しさん:08/08/15 00:56 ID:RXUToMC2
そういや、パピヨンの持ってる猫草文字通り空気だな、空気を操るスタンドだけに。
やっぱり扱いにくいのかな?
536Classical名無しさん:08/08/15 01:24 ID:8QGV9AOw
出すっつっても空気だからな
吉良の場合は空気弾を爆薬にして有効利用したけど
爆弾みたいな能力をパピヨンもってるからな、使用する必要がないかと思われる
537Classical名無しさん:08/08/15 10:55 ID:hGYaujiw
そういえば猫草忘れてたなw
吉良と出会えば強マーダーとしてかなり化けたかもしれん。
538Classical名無しさん:08/08/15 12:44 ID:RXUToMC2
現生存者で相性いい奴いねえかな?
といってもほとんどが格闘系と一般人ばっかで超能力系が少ないんだよなあ・・・
ジョセフの波紋と組み合わせれば使えるかも。
せめてアヴドゥルがいれば火炎空気弾とか使い道はあったんだが・・・
みんな時止めに入れるんだもん!僕くやちい!
539Classical名無しさん:08/08/15 13:06 ID:zIgf9mco
猫草単体でも相当強いぞ?w
540Classical名無しさん:08/08/15 13:24 ID:we4gYHlg
猫草の使い道?男なら煮る一択だろ。
541Classical名無しさん:08/08/15 14:28 ID:RXUToMC2
>>539
それはみんなご存知だろう。だけど問題はな・・・
あいつ一人じゃ動くことが出来ないんだよ・・・
542Classical名無しさん:08/08/15 14:40 ID:hGYaujiw
デルフリンガー以上に空気だった猫草……この先出番があるか気になるなw
543Classical名無しさん:08/08/15 14:50 ID:zIgf9mco
案はある……あとはリアルの事情と作中の状況次第
ま、予約被りとかで消える覚悟はあるし、その時には没ネタとして晒すよ
544Classical名無しさん:08/08/16 03:26 ID:QoqLTpz2
猫草はロワ最大の萌えキャラ
545Classical名無しさん:08/08/16 09:01 ID:QHWOmwpY
>>544は梨央ちゃんのパンティにまさかの3タッチで爆死。
546 ◆1qmjaShGfE :08/08/18 02:58 ID:lGZcGzdM
お待たせしました。wiki本編分のみですが編集が完了しました
こちらが新漫画ロワwikiのアドレスとなります
http://www31.atwiki.jp/mangaroyale/pages/1.html
又、現在位置は◆WXWUmT8KJE氏改め◆KaixaRMBIU氏とライダーロワ有志の協力により無事完成いたしました
この場を借りてお礼申し上げます

それ以外のページに関しましては、随時復旧していきたいと思います

そしてお願いなのですが、手元のログが7/19分までですので、以下の分の修正がなされていません
大変申し訳ありませんが、該当の方は今一度修正の方お願いいたします


136 : ◆03vL3Sy93w:2008/07/25(金) 18:16:11 ID:9E4MkTd60
「雛菊想恋」の指摘された箇所などを修正しました。


137 : ◆hqLsjDR84w:2008/07/26(土) 23:35:27 ID:LnU/p/rA0
『ふしぎなおくりもの』の脱字と改行を修正しました。


138 : ◆hqLsjDR84w:2008/08/01(金) 23:04:39 ID:H5GAXeUY0
『帝王賛歌』、前編後編共に改行とかを修正しました。


wikiで何か問題点等見つけた方いらっしゃいましたら、ご報告ください。出来る限り対応したいと思います
もし御自分で修正しようと思ってくださる方いらっしゃいましたら、修正後、したらばwiki編集報告スレッドまでご報告願います

長期間皆様にご不便おかけした事を深くお詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでした
547Classical名無しさん:08/08/18 07:11 ID:9MXevzuE
>>546
本当にお疲れ様です。
548Classical名無しさん:08/08/18 13:54 ID:4t5lWrbA
>>546
本当にお疲れ様でした!
凄い助かります。
どうも有難うございます。
549Classical名無しさん:08/08/18 20:20 ID:0YZfcyOg
>>546
おお! お疲れです!
550勉強男 ◆drwetRDQqY :08/08/19 12:24 ID:FLB3t2Ro
お つ か れ ちゃーん
551 ◆hqLsjDR84w :08/08/24 21:10 ID:pa83MvNo
間に合わなそうなので、予約期限を延長させてください。
552711:08/08/24 21:28 ID:bF88iP/g
>>551
了解です。頑張ってください
553Classical名無しさん:08/08/25 02:58 ID:Qb0DGEMw
>>551
待ってます。頑張ってください。
554 ◆S52NT51/9g :08/08/26 01:41 ID:xV3rUBmQ
HPの容量がいっぱいになったので仮まとめサイトを閉鎖します。
ご迷惑、ご不便をかけて申し訳ございません。
555Classical名無しさん:08/08/27 14:35 ID:JgRtBrW2
>>554
すごく便利で助かりました。ありがとうです。
556Classical名無しさん:08/08/27 15:07 ID:42FUqRP6
>>554
マジで乙でしたー
557 ◆hqLsjDR84w :08/08/27 20:51 ID:JgRtBrW2
そろそろ期限切れなのですが、長い話でもないのに未だ七割といったところです。
限界まで延長し、長期間キャラを拘束しておいて大変申し訳ないのですが、予約を破棄させてください。
558Classical名無しさん:08/08/27 22:08 ID:jxwv/4tA
お前が無責任でいい加減な人間だと言うのは理解できた。出来もしない事を出来ると
思ってると言うこともな
559Classical名無しさん:08/08/27 22:11 ID:hwpX.44E
>>557
了解しました。気落ちせず、次の機会も頑張ってください。
560勉強男 ◆drwetRDQqY :08/08/27 22:59 ID:jUL3Aysc
>>557
二度と来るな
561俺はアホだ、だから言う。:08/08/27 23:07 ID:LQvGhQok
>>557
次の機会に期待してますよ。
>>560
だったらお前が書け。書く気が無いならトリを着けるな。
562Classical名無しさん:08/08/27 23:17 ID:E3sWpP/I
とりあえず宣伝だけ

なんかエロなしのSS用の板ができたよ
今日できたてほやほやの新板

http://namidame.2ch.net/mitemite/ 創作発表

こういうことらしい

「新しく出来た小説(SS)やイラストなどを書いて(描いて)感想を貰う板です。
一次、二次、競作等幅広く受け入れています。
※PINK系該当作品は該当板へお願いします。」
563Classical名無しさん:08/08/28 03:45 ID:Qj8I3/vI
>>560は有名なクズだぞ、あいてにしてはいけない
564Classical名無しさん:08/08/28 07:24 ID:GU4yp7GY
煽りに反応してる時点でそいつも同レベルだよな
565勉強男 ◆drwetRDQqY :08/09/02 11:54 ID:OkwcmDls
過疎りすぎバカすwwwww
566Classical名無しさん:08/09/05 17:54 ID:MOIsCAaI
勉強男が出没したって聞いて飛んできました
567Classical名無しさん:08/09/05 18:34 ID:J1vcExqM
3日間もかけて飛んで来るとは
ご苦労様です
568勉強男 ◆drwetRDQqY :08/09/07 00:43 ID:ApnwqP0E
マジでこの過疎り具合だと完結が怪しいぞ。
6年間以上パロロワ見てきた俺が言うんだから間違いない。
569Classical名無しさん:08/09/07 01:08 ID:nZWZaU.g
>>568の目は節穴のようです。
570Classical名無しさん:08/09/07 16:29 ID:N5/m2m5A
いちいち構うなよ
571Classical名無しさん:08/09/07 20:12 ID:HM6DysKc
とりあえずスルーしようか
俺は投下を待つ
572 ◆1qmjaShGfE :08/09/08 19:07 ID:9c3/XF2M
服部平次、赤木しげる、ジョセフ・ジョースター、葉隠覚悟、村雨良、桂ヒナギク、柊かがみ、才賀エレオノール、愚地独歩の予約延長を申請します
573Classical名無しさん:08/09/08 19:09 ID:Y0BjrJyc
>>572
了解です。
大人数予約、大変でしょうが頑張ってください。
574Classical名無しさん:08/09/08 20:00 ID:nIAk0O9o
>>572
了解です。首を物理的に長くして待ってます
575Classical名無しさん:08/09/08 21:22 ID:/5RzcxCs
>>572
全裸で待ってる
576勉強男 ◆drwetRDQqY :08/09/08 22:35 ID:60iF9HYE
>>572
予約嵐乙
577 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:12 ID:pXdO/Vhg
お待たせしました。これより投下します
578集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:13 ID:pXdO/Vhg
社の中で対峙する赤木シゲルと服部平次。
赤木はナイフを手に持ち、対する服部は無手のままだ。
微笑を浮かべながら服部への間合いを一歩、また一歩と詰める赤木。
その行為に赤木の意思を感じた服部は、唾を吐き捨てると懐に持っていた核金を手に取り叫ぶ。
「武装錬金!」
ソードサムライXの武装錬金は剣道を嗜む服部には、ありがたい武器である。
しかし、その核金は服部の声に応えてはくれない。
首輪を外した事で、核金の能力が失われているのだ。
服部にはそれに驚く間も与えてはもらえなかった。
赤木の素人とは思えぬ踏み込みであっという間に懐に入り込まれる。
まっすぐ服部の心臓を狙った赤木のナイフは、即座に核金を諦めた服部の左手に手首を捕まれる事で、胸前数ミリの所で停止していた。
「……ちょっとは躊躇とかしたらどうや。可愛げの無いやっちゃ」
「そんな間抜けが生き残れると思うか」
「そういう善人は生き残る価値があんねん!」
叫びながら上体を捻りつつ赤木に蹴りを放つ。
同時に動いていた赤木の蹴りと絡まり合い、双方体勢を崩す。
しかしやはり武器を持っている方が有利である。赤木が体勢を崩しながらも真横にナイフを凪ぐと、服部の胸部を覆うシャツがまっすぐに切り裂かれる。

皮一枚、と肉が少々。服部の被害はそんな所だ。
荒事慣れしていない者なら、これだけで戦意喪失しそうなものだが、当然服部平次を止めるのにその程度では役不足だ。
とはいえ、無手ではいかにもこちらが分が悪い。
核金が反応しない理由に既に思い当たる節のある服部は、核金には固執していなかった。
同じ理由で支給品の武具全てが疑わしく感じられたが、赤木がナイフを使用している事から、とある一つの武器はおそらく使用可能と考える。
問題はそれが入ったバッグの落ちている場所まで行って、暢気にそれを取り出すなんて真似を赤木が許してくれそうに無い点だ。
赤木の立ち回りからはこれといった格闘技の動きを見出す事は出来ない。
しかし、シャープな踏み込みとナイフの振るい方から察するに場慣れはしているようだ。
こちらは剣道有段者である、武器が無かろうとおいそれと素人に遅れをとるような事は無いが、この底知れぬ男が相手となるとそんな自信も消えてしまいそうだ。
服部はほんの一瞬悩んだ後、直接聞いてみる事にした。
579Classical名無しさん:08/09/11 20:13 ID:HJ/t87SM
 
580集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:13 ID:pXdO/Vhg
「ちょっとタンマや。俺の武器バッグの中なんやけど取ってきてええか?」
赤木は鼻腔から息を漏らすように軽く笑うと、快く承諾する。
「ククク……好きにしろ」
「さよかっ!」

赤木の承諾を得るなり、一歩の助走で服部は大きく宙へと飛びあがる。
たったそれだけの助走距離で一メートル近く飛びあがった服部は、狙う目標、赤木の頭部目掛けて必殺の飛び蹴りを見舞う。
頭部への重い打撃は対象の動きを鈍らせる。
それはナイフを急所に刺された時のような致命的な隙となろう。
もちろんそんな大技をいきなりもらう程赤木も弱くはない。問題は、この一撃をどう捌くかである。
これにナイフで同時反撃を試みるのは愚策。
せいぜい相手の足をどちらか片方使用不能にするぐらいしか出来ず、相手の飛び蹴りを体の何処かにもらう事になる。
ならば、大きく身をかわして着地の隙を狙うか。
おそらくこれが最善であろう。着地の状態を予想し、服部から死角となるような位置に移動しておけば万全の体勢で次へと繋げる事が出来る。
服部のそれへの対処案があったとしても、体勢の不利さは覆ようもない。
しかし、赤木はそんな妥当な案に乗らなかった。
まっすぐ服部に向かって一足飛びに飛び込む。
否、正確には飛びあがった服部の真下に滑り込むように低い姿勢で駆け込んだのだ。
同時に逆手にもったナイフを体を大きく捻りながら服部へと突き上げる。
これをやっては赤木の体勢も大きく崩れる事になるが、ここで狙う服部の胴への一撃がなされればそんな事を考える必要も無くなる。
赤木の動きを見るなり、服部が空中で無理矢理向きを変えにかかる。
左足の踵を赤木に向けて大きく振る。
これは赤木への打撃というよりは、防御の為に振ったというべきだろう。
服部の顔の位置からだと、赤木の動きは見えないはずだから、ただ赤木が避ける為だけに前へと飛び込んだ訳ではないと読んだ故の動きだ。
もちろん赤木が振り上げた腕の位置も見えておらず、分の悪いギャンブルである。
ただ、実は赤木からも服部の位置が正確に見えてはいなかったのだ。
前へと踏み込んだのだし、何より下を向いた状態から上向き側へ体を捻り、それに乗せて腕を振るいでもしない限りナイフが刺さる程の力は生み出せない。
581集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:14 ID:pXdO/Vhg
二人は交錯し、赤木は前へと突っ込んだ勢いで滑るように、服部は空中で無理に前に回転したため顔面から地面へと落ちつつ、ごろごろ転がりながら立ち上がる。
腿の辺りから血を流しつつ、服部は赤木を睨む。
赤木は赤木で狙い通り、服部の鞄のすぐ側で立ち上がって服部に再度対峙する。
これがこの会場に参戦していた数多の猛者達相手ならば、どちらもこの交錯で命を落としていただろう。
しかし赤木は服部を刺し殺す事は出来ず、服部も赤木を蹴り飛ばす事すら出来ずにいる。

『くっそこの顎、嫌な事嫌な事ばっかしてきよる……』
服部が考える最も勘弁してほしい選択肢をさらっと選んで来る。
そしてこちらの選択肢を狭めるような動きを常に忘れないのだ。
村雨や覚悟のような圧倒的な強さではないが、やる事なす事が一々いやらしくこちらの考えに絡み付いてくる。

服部の考える最も勘弁して欲しい選択肢。
これは一応可能性の一つとして頭の中に入ってはいた。極めて薄い可能性ではあったが。
説明はしていないので、確かに気付かない可能性はある。だが少し、そうほんの少し考えればわかる事だ。
そんな真似をあの…………


「何処だ服部いいいいいい!!」


社の最深部、首輪の制限のせいでまともに身動きも取れなくなるような場所。
そこに、ジョセフ・ジョースターが乱入してくる。
閉めておいた扉を両手で力強く叩き開け。
よっぽど辛いのだろう、顔中から脂汗を流している。
にもかかわらず第一声から服部を気遣う言葉、それほど心配だったのだ。
そんなジョセフに、服部平次が真っ先に思った言葉はこれだ。
582集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:14 ID:pXdO/Vhg

『こんのドアホオオオオオオオオオオオ!!』


一瞬で赤木とアイコンタクト。
この小憎らしい男は決して愚か者ではない。
ならば事態の重大さを理解してくれるかと思い期待を込めてそちらを見たが、彼もすぐに察してくれる。
赤木が手に持ったナイフを服部に向けて放り投げる。
目の前の床に落ちたそれを拾い上げた服部は、赤木にナイフの刃を持ちながら柄を突き出す形で返す。
休戦は成立。同時に二人は動き出す。
「へ? 何だよお前ら……」
赤木は右、服部は左、それぞれジョセフの脇を掴んだまま猛烈な勢いでダッシュ。
「ちょっと待て! 何だよ! 何なんだっての!」
二人に引きずられながらジョセフが何やらほざいているが、返事はしない。少しでも迷いの種は残しておくべきだ。
あっという間に社を飛び出し、外のお手水のある場所へと。
何も言わずともわかってくれた赤木と共に、息ぴったりのコンビネーションでそのお手水の中へとジョセフの頭部を叩き込む。
ジョセフからの文句が聞こえてくる前に、服部はかがみより教わった祝詞を唱え、同時に赤木がジョセフの首輪解除作業に入る。
BADAN首輪解除コンテスト筆頭優勝候補として名乗り出たくなるぐらいの速度で、あっという間に首輪が外された。
同時にジョセフが赤木を突き飛ばしながらお手水の中から体を起こす。
「てめえらどういうつもりだ!」
ジョセフは激怒している。当然だろう。
だが、怒りたいのはこっちだ。
「やかましい! いいからさっさと行くで!」
ジョセフの怒りを宥めようともせず服部は駆け出す。赤木もそれに続く。
「お、おい待てって! 何だよ! 何がどうなってんのか説明しろって!」
身体能力はこの三人の中で最も高いジョセフもすぐに追いついてきた。
走りながら服部は、ムカムカする頭を冷やしつつ説明する。
583Classical名無しさん:08/09/11 20:15 ID:HJ/t87SM
  
584Classical名無しさん:08/09/11 20:15 ID:HJ/t87SM
   
585Classical名無しさん:08/09/11 20:15 ID:t6ofOEBo
支援!
586集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:15 ID:pXdO/Vhg
「あのな、もう首輪の反応も無い、既に死んだはずの奴の名をあの状況で呼んだら、BADANの奴等どう思う? 首輪自力で外したんちゃうと考えんか?」
前後の状況から服部が首輪の反応を失った、つまり死んだ時ジョセフも側にいたはず。
ならば、極稀な例外を除きジョセフは服部死亡を知っているはずなのである。
そのジョセフが服部の名を呼びそれを探し回る。錯乱して奇行に走ったと取る事も出来るかもしれないが、普通は別の受け取り方をする。
首輪の安全面に関して危機感を少しでも持っている人間ならば、首輪解除の可能性を当然考えるはずだ。
そして……
「そんでな、BADANの連中に俺等が首輪解除の手段持ってるてバレたらどないなる?」
「あん? ……そりゃ、おめぇ……」
赤木が並走しながらすぐに答える。
「この殺し合いが成り立たなくなる……なら、全てをご破算にしてもおかしくはない。自衛の意味でもな……」
そこまで言われてようやく気付いたようだ。
「あー、そりゃーあれだお前、つまりだな、えっと…………ごめんなさい? これでいい?」
「いいわけあるかああああああああああああ!!」
やっぱり全て冷静なままで話をするのは不可能な服部であった。





監視カメラの映像は幹部である者の特別のコードを用いれば自室の端末にて確認が出来る。
これは映像に限らず音声もだが、基本的にはあまり推奨出来ないといわれている。
セキュリティ上の問題、そう言う科学者達の言葉を理解していないわけではないが、つい利便性を優先させてしまう。
セキュリティ永遠の課題であろうそれに、葉隠四郎も打ち勝つ事は出来なかった。
モニターに強化外骨格『凄』の姿が映し出される。
機能美の極地、崇高で偉大なその姿は見ているだけで四郎に安堵感を与えてくれ……
「………………………………キズ?」
全身が凍りつく。
587集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:15 ID:pXdO/Vhg
苦労に苦労を重ねて作り上げた傑作に、傷がついている。
慌ててカメラを操作して室内を映し出すと、室内に一箇所、明らかに外部からのものと思われる破損箇所が見つかった。
外から飛び込んできた『何か』が凄に傷をつけたと思われる。
衝撃のあまり身動きが取れなくなるも、すぐにより重大な事実に気が付く。
焦りに焦った表情で部屋を飛び出す四郎。
凄は四郎の功績である。これあるからこそ新参者であるはずの四郎が重用されているのだ。
そんな凄があっさり破損するようなシロモノだったとわかった日にはどうなるというのか。
原因を追究する必要がある。それも他の者には内密に、大至急だ。
盗聴室に居る奴等ならばこの周辺で起こった出来事を知っているだろう。
四郎は大慌てで室内を後にする。

後ほんの数秒、それだけの差で四郎は服部と赤木の姿を確認し損ねた。
ジョセフが来なかったら間違いなく見つかっていただろう。
正に値千金なジョセフの突入であったのだが、不幸な事にジョセフも服部も赤木も、葉隠四郎ですらそれを知りえなかった。
服部の望む僅かなタイムラグ、それはその必要性を作り出したジョセフ自身の手によってもたらされていた。





「赤木! ジョジョ! 待ち合わせ場所は既に禁止区域や! 学校に行った連中はおそらくそのまま学校で待機しとるやろ! そっちに向かうで!」
走りながら行く先を説明する服部、ついでにバッグからメモを取り出し何やら書き込んでいる。
ジョセフは器用なもんだと感心しながら訊ねる。
「よう、独歩はどうすんだよ」
独歩の向かった先は11時から禁止エリアとなる。
バッグの探索だけならさして時間もかからないだろうから、とうにその場は離れているだろうが集合場所が禁止区域となっている以上そこで選択を迫られているはず。
「多分ぎりぎりまで集合場所で待って、その後で移動したと思う。移動先は、村雨達と他に約束したとかでなければ、人数も多いし学校行ったやろな」
588集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:16 ID:pXdO/Vhg
三人は走る、ひたすらに。
既に手遅れの可能性もある。
これだけの大仕掛けである。これを全てご破算にするのは幾つかの段取りが要るだろう。
間違っても盗聴器をチェックしている人間がいきなり爆破を決定出来るはずもない。
最高責任者に確認を取り、判断を仰ぐという流れはBADANとて同じのはず。
そしてその最高責任者の判断もそう簡単には降りないはず。
何度もチェックし、内容を吟味した上で判断を下すはず。
必ず猶予の時間はある。それを信じて服部は走る。
隣を走る顎男が一切文句を言わないのがせめてもの救いだ。
この男も服部と同じように判断したからこそ、殺し合いから一転して協力してくれているのだろうから。
仮にも戦闘中であったのだ。いつ隙を付かれるかわかったものではない現状にありながら、平然とそうしてくれているこの男。
BADAN打倒を考えているのなら、何よりも優先してこう動くべきだろう。
そういう服部からの無言のメッセージをあっさりと受け取って確実にこなす。
一言も発せずにジョセフの首輪解除に動く所などは、内心感嘆の息を漏らしたものだ。
この男とのこうした言葉によらぬやりとり自体は嫌いではない。

服部はほんの少しだけ工藤新一を思い出して、すぐにそれを考えるのを止めた。





――三戦(サンチン)。
 攻撃防御の両面に優れ、何よりバランスのよさが特徴の構え。
 独歩は弟子に自ら伝授するほど、その構えを得意とする。
 外部からの衝撃に強い体勢で、バットで殴りつけさせて体の鍛え方を誇示する時にも使われる類のもの。
589集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:16 ID:pXdO/Vhg
そんな空手の極意のような構えは、どうやら当人にしか通用しないものらしい。
マンションの壁に斜めに突っ込んでボンネットから煙を噴いている車を前に、独歩はそんな事を考えていた。
人の居ない街並みを自由気ままに走り回る。
これは思いのほか楽しい作業であり、また途中別の事を色々考えていた結果でもあった。
そんなこんなで徒歩にて例の場所へと戻ったのだが、やはりまだ誰も戻ってはきていない。
リミットまではまだ少し時間がある。
ならばと考えた独歩はホテルの中へと入っていき、フロントで鍵を手に入れ勝手に部屋へと入り込む。
「そういやあいつら、ここ来て風呂とか入ったのかね?」
自分は二度目になるシャワータイムと洒落込むつもりの独歩はそんな事を呟いた。
590Classical名無しさん:08/09/11 20:17 ID:HJ/t87SM
         
591Classical名無しさん:08/09/11 20:18 ID:t6ofOEBo
  
592集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:20 ID:pXdO/Vhg

             _(こ^)、_
            〃、__ノノ、__,ヽ
              {.っ>  <っト、
            (⌒i  (千于`ー┴'─────┐
         (O人  `ー|                |
           /⌒ヽ(^う 見せられ.      |
           `ァー─イ    ないよ!   |
           /  (0::|__________|
             /\____/
          /   /  ⌒ヽ
      ___/  / ̄ ̄`)  ノ
     (__r___ノ     (.__つ
593集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:20 ID:pXdO/Vhg
「ふう、さっぱりしたぜ」
洗面所で無精ひげも剃り、汚れた衣服をホテルの外で見つけたカジュアルショップから持ってきた物に着替える。
どこかの元全裸さんとは違い、あっさりと着替えも見つかる辺り、日頃の行いに差でもあるのだろう。
紅を引く覚悟ではないが、やはり大勝負の前となればこういった所にも気を遣うべきだ。
戦場に赴く前の時間を幾たびも経験している独歩ならではの準備である。
これは他の若い者達にはそうそう出来ない余裕というものだろう。
ひとっ風呂浴びたはいいが、やはりまだ誰も戻る様子は無い。
ならば、神社か学校かに向かうべきか。
人数比から考えるに、とりあえず学校にでも行こうか。
独歩の考えはその程度であった。
この自然な思考が幸いし、彼は一つの危機を回避する事となる。





定時放送が終わった後、首輪盗聴作業室ではBADAN監視員十六名程、欠伸を堪えながら盗聴を行っていた。
放送室にても盗聴は可能だが、そのすぐ隣の部屋にも盗聴施設を整えており、常時の監視はここにて行っている。
元々は別目的で用意された部屋なのだろう。
ごてごてしい機械の山とは別に、仮眠用のパイプベッドがかなり無理矢理な形で数台置かれている。
彼等は改造人間ではない。
皆拉致されてきた人間であり、BADANに従うのなら命は助けてやるとの言葉に一も二もなく飛びついたのだ。
暗闇大使率いるBADAN改造人間の恐ろしさは彼等が一番良く知っている。
が、いい加減付き合いも長くなってくるとどう対処すればいいのかもわかってくる。
幹部候補改造人間やエリートコマンドロイドの顔(というか形)を覚えておき、彼等にだけ注意すれば後は人形と一緒だ。
決められた内容に逆らわなければ大抵の事は好きにやれる。
だからこそチャットを用いた麻雀などという物まで存在するのだ。
594Classical名無しさん:08/09/11 20:21 ID:HJ/t87SM
   
595Classical名無しさん:08/09/11 20:22 ID:t6ofOEBo
>>592
ちょww
596集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:22 ID:pXdO/Vhg
福利厚生だの賃金だのを無視すれば、食事も悪くは無いしそれなりの職場環境だ。
などと人権という概念にさして思い入れの無い、他者より自分を優先する者達は考えていた。
何にせよ、死ぬよりかは遙かにマシなのである。
良きにつけ悪きにつけ、人間とは慣れる生き物なのだ。
不意に盗聴室の扉が開く。
そこから顔を出してきたのは、いわゆる要注意人物、幹部候補の三人であった。
軽薄そうな若い男の外見を持つジゴクロイド、妖艶な美女姿のカマキロイド、杖をついた老人カニロイドの三人。
気分屋でこちらの事など虫けら以下としか思っていない無法者達。
いつも三人揃って行動している事と、暗闇大使を父と呼ぶ事から『暗闇三兄妹』などという捻りも何も無いネーミングで呼ばれている。
ドロンジョ、トンズラ、ボヤッキーの三バカでも通じるが、これは間違っても当人達を前に口には出来ない事だ。
にやにやとしまりのない顔で通称ボヤッキーことジゴクロイドが、盗聴用ヘッドホンを耳に当てていた者からヘッドホンをひったくる。
十六人は誰一人欠ける事なく、彼等が入室すると同時に立ち上がって礼をしているというのに、完全に無視である。
「ようよう、何か面白い事起こってねえのかよ?」
ここでバカ正直にそのまんまを口にすると、ボヤッキーの逆鱗に触れる事になる。
監視員A君は慎重に言葉を選んだ。
「はいっ。先ほど優勝候補の二人が死亡しましたが、葉隠覚悟、村雨良、愚地独歩、ジョセフ・ジョースター、エレオノールといった猛者達は健在であります。それ以外ではこれといって目立った事はありません」
ここで間違っても積極的に殺し合いを行う者は全て死亡しました、などと言ってはいけない。
暗闇大使考案の今作戦を少しでも否定するような言葉はNGなのだ。既にそれにより犠牲になった者も居る。
「そうかい、問題無いのはいい事だけどよ。少しは俺達の手を煩わせるような事も起きてもらわねぇと暇でしょうがねえよ」
そんな事アンタに報告したら、こっちの命が危ないだろ。
といった言葉を飲み込んで男は無言で頭を下げる。
そこで、意を決したように一人の監視員が前へと出た。
「一つ、気になる事がありまして……その、報告するような事ではないのですが、よろしければお耳に入れておきたいと思うのですが……」
597集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:23 ID:pXdO/Vhg
残る十五人がぎょっとした顔で彼、監視員Bを見る。
ジゴクロイドは驚きつつも、彼の言葉に興味を持ったようだ。
「へぇ、何だよ。言ってみな」
緊張しきった面持ちで監視員Bは口を開く。
「実は服部平次なのですが、少々言動に不自然な点がありまして……」
カマキロイドも気になるのか口を挟んでくる。
「不自然て何がよ?」
「はい、彼の会話に不自然さはないのですが、彼と会話を交わす相手の言葉が……少々ちぐはぐな印象を受けるのです。
 話題の振り方が会話の流れに沿っていなかったり、突然会話が途切れたりと……」
彼の言いたい事がわからないらしく、ジゴクロイドはイライラしたような顔になる。
それだけで、残る十五人は心の中で監視員B君の冥福を祈り始める。
「つまり、彼等はこちらの盗聴に気付いているのでは……と。それでもただ殺し合いをするだけならば問題はありません。
 ですが、そこで敢えて盗聴を誤魔化すとしたら、それは脱出や逆襲を考えての事ではないでしょうか」
ジゴクロイドの代わりにカマキロイドがつまらなそうに答える。
「だから首輪があるんじゃない」
「はい、ですから問題無いとは思うのですが……特にここ数時間はそれが顕著になってきているので、少し気になったのです」
ジゴクロイドは既にその話題から興味を失っていた。
話の途中で別の監視員に面白い事あったかどうか訊ねている。
しかしカマキロイドは僅かに興を惹かれた様子。
「ふぅん、確かに首輪の霊的防御抜いた奴が居るって話は聞いたけど」
これには監視員Bも驚いた。そういった事は彼等には知らされていないのだ。
もちろん首輪の構造も知らないのだが、何やら参加者達が首輪解除に近づいているという事だけはわかる。
「で、では……」
「それでもどうせ外には出られないわよ。ここに来るのはもっと無理だし……ねぇ、でもちょっと気になるわね」
カマキロイドは監視員Bに首輪を外した可能性のある死者を挙げるよう命じる。
「現状ですと疑わしいと思える者もおりません。いずれも前後の展開を聞く限りにおいてはですが」
小さく頷くカマキロイド。
「なら今後そういう者が出たのなら……」
598集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:23 ID:pXdO/Vhg
そこでカマキロイドは言葉をとめて、各人の生存確認モニターを見やる。
軽い警告音と共に、地図上に示されていた首輪を示す光点が一つ、消えてなくなった。
無様な話だが、この光点が消える瞬間、誰一人として盗聴に集中していたものは居なかったのだ。
光の消えた当事者であるエレオノール、そしてすぐ側に居たはずの村雨良、柊かがみの分の盗聴担当者は同僚の無茶と、自分がとばっちりを食うか否かという事のみ考えていた。
つまる所、カマキロイドは彼等から充分な話を聞けなかったのだ。
担当者達は自分に非がある事を認めれば命が無い。当然全力で誤魔化しにかかる。
曰く「問題ありませんでした」である。
村雨達の演技をそれが如何に違和感の無いものであったかと力説する。
しかし、既に疑惑を口にしてしまっている監視員Bは引っ込みがつかない。
「エレオノールが殺し合いに? バカな、あの状況で人質を取ったとはいえ村雨良に挑むなど考えられません」
そう反論するも口から泡を飛ばして主張する皆を納得させる材料も持ち合わせていなかった。
そこでジゴクロイドが面倒くさそうに言う。
「じゃあ見てくりゃいいだろ」
あっさりとそう言うジゴクロイドを、バカにしたような目で見下すカマキロイド。
「そもそも、それが許されてればこんな暇してるはずないじゃない」
「そりゃそーだけどよ……ってそうだよ、あいつらが首輪外したんなら関係ねえじゃねえか。そうなりゃもう殺し合いもクソもねえんだし、俺達参加したってよくねえか?」
「誰が首輪外したって?」
「エレオノールとかいう奴だよ、お前ら今そんな事言ってたろ」
自分に都合の良い事だけは良く聞こえるらしい。
しかも首輪解除の事を、他人が言うのは癇に障るが自分が言うのは構わないという素敵思考の持ち主だ。
あまりのバカさ加減にあきれ果てるカマキロイドだが、すぐに思い直して監視員Bに命じる。
「貴方、今までの録音データから貴方がそう判断するに足る内容を拾えるかしら?」
どうやら彼女もジゴクロイドの発想に付き合う事に決めたらしい。それっぽい言質が取れれば暗闇大使にも申し開きが出来るという算段だ。
そしてこの部屋に入って一言も発していないカニロイドはというと、
「…………」
仮眠用ベッド一つを占領して完全に熟睡していた。
599集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:23 ID:pXdO/Vhg





服部平次の推理能力は、日常の行動における様々な優位性を確保してくれる。
洞察力に優れた彼は、当然事件の推理以外においてもこれを発揮するからだ。
同様に赤木シゲルもまた、その高い知性によって日常生活における様々な利便性を得ていた。
普通ならば気付けない部分、予想出来ない部分を考慮に入れて行動する二人は、この合流を考えるといった状況においても他者とは比較にならない正確な推察を得ていた。
「多分この道やろ」
「……ああ」
そう考える理由すら説明しない。
交わした会話は数える程だが、服部は驚く程赤木との意思疎通に慣れてきていた。
彼の思想が理解出来ているわけではない。そもそもそんな話を服部は赤木としていない。
だが、目的に対しての選択がブレない。
もしブレがあったなら、それは服部の考える赤木の目的が実際のそれとブレているからだ、と考えられる程赤木の知性を服部は評価していた。
人と人との関係としては最悪といっていいはずの殺し合いまで行った赤木との共同作業。
実は服部にとっては賭け以外の何物でもなかった。
もし赤木が服部殺害に固執していたら? 服部自身がそう考えていると赤木が疑っていたのなら?
双方深い疑心暗鬼に捉われていた事だろう。
それを回避しえたのは、赤木の知性と他者への恐怖を押さえ込む自制心故である。
服部が無用な疑いを持たぬよう、あらぬ疑いをかけられるような行為を意図的に避けていると、そう見えるように行動する赤木。
そしてそんな真似をした所で、決して絶対確実に信用を得られるなどと欠片も信じて居ない所などは見事の一言である。
愚地独歩は禁止区域である集合場所にギリギリまで留まり、そこから学校へと移動する。
そんな予想から独歩の現在位置を推測した二人は、ちょうどそれとぶつかるよう移動しており、その遭遇予想地点はほんの少し先であった。
二人は同時に、もう一人の同行者に対して発言する。
「ジョジョ! 独歩はんを見つけても俺に任せてお前は黙ってるんやで!」
600集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:24 ID:pXdO/Vhg
「……お前はしばらく口を閉じてろ」
注意するタイミングまで一緒だった模様。





盗聴室に緊迫した空気が流れる。
先ほどエレオノール死亡を報告したばかりだというのに、今度は服部平次の死亡が確認されたのだ。
その瞬間をカマキロイドも監視員Bも聞いていたが、確かに問題は無い。
しかし、疑ってかかっている二人からはそれすら偽装ではないのかという疑念が晴れない。
「……どう、思います?」
「難しいね、これだけじゃ言い訳にはならないよ」
そして決定的な出来事が起きる。
『おっせぇなァー、服部のやつ……』
ジョセフ・ジョースターのこの発言。
顔を見合わせるカマキロイドと監視員B。
直後、村雨良から驚くべき内容の言葉が漏れ聞こえてきた。
『ッ! ジュドオオオオオオオオオオオオオッ!!』
これには他の監視員をからかって遊んでいたジゴクロイドも仰天してこちらを振り向く。
「何だぁ!?」
そこで首輪からの通信が完全に途絶える。
辛うじて存在の発信はなされているも、音声はまるで聞こえて来なくなる。
苛立たしげに盗聴用コンソールを叩くカマキロイド。
「何だってんだい! 大首領だって? 何だってここで出てこれるってのよ!」
大慌てで盗聴設備の確認を行うも、異常は無し。
原因は会場内で何らかのジャミングにも似た行為が行われているせいと思われる。
601集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:25 ID:pXdO/Vhg
現に存在を示す光点も、薄くか細い点滅となってしまっている。
「復活……なされたのです……か?」
信じられないといった顔で監視員Bは言葉を漏らすも、カマキロイドは怒鳴るように否定する。
「バカ言うんじゃないよ! そんな簡単に復活出来てたらこっちはこんなに苦労してないわよ!」
監視員Bを除く十五人は大慌てで復旧に務めるも、何ら効果を挙げられずにいる。
いい加減カマキロイドやジゴクロイドの我慢も限界に近づいてきた頃、ようやく盗聴が復活する。
するなりいきなり死亡したはずのエレオノールの声が聞こえてくる。
完全に状況から置いてきぼりになる十五人の監視員とジゴクロイドと、自らそうあろうとしたカニロイド。彼はまだ寝ていた。
監視員Bは鋭い視線のまま確信を言葉にする。
「彼等は首輪解除の手段を得ています。これ以上の作戦遂行は困難と考えます。暗闇大使様に至急報告しなければ」
暗闇大使と通信を繋ぐべく回線を開くが、ホットラインと呼んでも差し支え無いはずのその回線は何故か繋がらなくなっていた。
俄かに室外が騒々しくなる。
監視員Bは外に飛び出すと走り回っているコマンドロイドのコマンダーの一人を捕まえる。
「何事ですか!」
たかが人間ごときにこんな生意気な態度を取られる言われは無い。
そう考え、怒鳴りつけてやろうと思ったが、何と彼の後ろにはカマキロイドが居るではないか。
彼に答えるのは不愉快だが、カマキロイドに答えるのであれば、まあ納得は出来ると思い直す。
「カマキロイド様、侵入者です。迎撃に出たコマンドロイドが数体、既に破壊されております」
驚く暇も無い、今度は室内から首を出した監視員の一人が大声で叫ぶ。
「カマキロイド様! 連中堂々と首輪外すとか言ってます! どうしましょう! 爆破しますか!?」
次から次へと起こる不足の事態に、苛立ちを隠そうともせず怒鳴り返す。
「暗闇大使への連絡はまだ取れないの!?」
監視員曰く、どうも侵入者が通信網の一部を爆破した影響らしい。
だとしたら判断を仰ぐのはもう間に合わない。
この企み『バトルロワイアル』の終了を決められるのは、全ての責任者である暗闇大使のみ。
カマキロイドが迷うのも無理は無い。
602Classical名無しさん:08/09/11 20:25 ID:HJ/t87SM
    
603Classical名無しさん:08/09/11 20:25 ID:t6ofOEBo
   
604集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:26 ID:pXdO/Vhg
そして何より、最後の最後には自分で皆殺しにしてやればいい、そう考えている為、彼女は首輪爆破の決断を下せずに居た。
迷っている間に学校組、葉隠覚悟、村雨良、柊かがみ、桂ヒナギクの光点が消滅。もちろんこれが死亡の合図だなどと、誰も考えてはいなかった。
次いで、ジョセフ・ジョースターから服部平次の生存と思しき発言が再度漏らされた後、ジョセフ・ジョースターの光点も消える。
「………完全に後手に回ったわね」
例え制限が無かろうと暗闇の子である自分が破れるなぞありえない。
しかし、小生意気なこいつらが暗闇の企みを破壊しようとするのをただ見ているというのも腹の立つ話だ。
ジゴクロイドが嬉々とした顔でカマキロイドを誘う。
「おい行くぞ! 侵入者だってよ! クハハ! こうでなくっちゃなあ! おらお前もとっとと起きろ!」
カニロイドの寝ているベッドを蹴飛ばしながら今にも駆け出しそうなジゴクロイドを、カマキロイドは首を横に振って止める。
「馬鹿ねえ、そんなものよりもっと面白いのと遊べるようになったんじゃない」
カマキロイドは暗闇大使考案の今作戦終了を確信した。
つまり、実験動物ではなく明快な敵として扱っても良い、暗闇のおもちゃから自分達のおもちゃとなった参加者達。
各世界の強者達から選りすぐられた英傑、侵入者などよりよっぽど愉快な相手ではないか。
監視員Bにカマキロイドは命じる。
「調整中の私達のバイク、今すぐ持ってこさせてちょうだい。改造に出してもう結構経つからいい加減出来上がってるはずよ。
 それと私達が向こうに行ってる間、貴方がこちらの状況を逐一報告なさい」
この言葉が示す事実。
監視員Bを専属として扱うというカマキロイドの意思の現れである。
歓喜に震える監視員Bはガッツポーズを内心で決め、元気良く返答する。
「はっ! おいっ、工作室に行ってすぐに二台をお持ちしろ。それと通信機の用意、戦闘の差し障りにならない改造人間専用の奴だぞ」
既にここの誰より一段上である。
当然の権利として彼等を配下として扱いながら、自らの幸運を神に感謝する。
このまま功績を挙げれば、もしかしたら自由意志改造人間への改造も叶うかもしれない。
言いたい文句を堪えながら指示に従う監視員達。既に彼等の仕事は無くなっていたので問題は無かった。
605集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:27 ID:pXdO/Vhg
雷雲突破はこちら側からもそれなりの準備を要する。
瞬間移動にも似た魔法陣を使用すればあっという間だが、あれには暗闇大使の許可が居る。
その暗闇大使と連絡が取れない以上使う事も出来ず、ならば雷雲を時速600キロ超で突破しなければならない。
それすら可能なジゴクロイド、カマキロイド、カニロイド専用装備であるバイクは、
ジゴクロイドの我儘により両手離しでも簡単に操作出来、バックまで可能というおおよそバイクなぞと呼べないような代物に改造を施されてる真っ最中だったのだ。
盗聴室周りの城内通信設備が不通の今、人が走って各所に連絡するしかない。それは時間のかかる事だ。
本来待たされるのを嫌うはずのカマキロイドは、同じ性癖のはずのジゴクロイドと上機嫌に相談しながら時を待つ。
よっぽど動ける理由が出来たのが嬉しかったようだ。カニロイドは我関せずとばかりにベッドから動こうともしなかったが。
「ゼクロスは俺がぶっ殺す。文句は言わせねえぞ」
「いいわよ、私はあの覚悟とかいうのもらうから」
「ふざけろ、あれも俺のだ。お前にゃジジイやるからそれで満足しやがれ」
「はっ、どうせアンタじゃ力任せに塵にして終わりでしょう。そんなつまらない殺し方なんて全然ダメよ、外連がわかってないわ。せっかく女の子達も居るんだしもっと盛り上げてあげないと」
二人の相談を横目に指示を出していた監視員Bは、三人の更なるお気に入りを目指し、新たな提案を申し出る。
「奴等の下に赴くのでしたら、いわゆる宣戦布告、というのをなさってはいかがでしょうか? これがお前達の運命だと知らしめる為に」
こういった話題に彼が入ってくるのが意外だったのか、二人は少し驚きながらちらと振り向く。
監視員Bは自信満々の顔で後ろ手にモニターを指差す。
「ジゴクロイド様もあまりお気に召さないようですし、未だ首輪がついてる最後の一人、奴等が共に範馬勇次郎やラオウと戦った仲間である愚地独歩の首、今すぐ吹き飛ばしてやりませんか?」
ジゴクロイドはぱんぱんと大きく手を叩く。
「うははっ! そいつはいいや! ジジイの首なんざどうでもいいから景気良く吹っ飛ばしてやれよ!」
カマキロイドも悦に入った表情でうんうんと頷いている。
「いいわねぇ、そういう発想大好きよ私」
606Classical名無しさん:08/09/11 20:27 ID:HJ/t87SM
   
607集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:27 ID:pXdO/Vhg
予想以上の好反応に監視員Bは再度内心ガッツポーズ、俺伝説始ったな、などと絶好調であった。
では早速とばかりに、まだ寝ているカニロイドを置いて三人は隣の放送室に移動すると、
監視員Bはそこにあるコンソールのボタンを押さんと、ゆっくりと腕を振り上げる。





学校へと向かう独歩、彼の視線は道路のど真ん中に止まっている車へと向けられていた。
道を塞ぐように道路に対し直角にとめられた真っ赤な車、そのドアに張られた白い紙は殊の外目立って見えた。
『服部平次より、俺達は事情により首輪を外した。すぐに独歩さんの首輪も外すからその間口を開かないで欲しい』
ちょうど独歩が読み終わるタイミングで、姿を現す服部と赤木。
二人の姿を見て、独歩自身思う所もあったが彼等に頷いてみせる。
それを確認するなり赤木と服部はジョセフの首輪を外した時以上の速度で首輪を解除する。
もうお前らそれでメシ食っていけよと言いたくなるような、惚れ惚れする程の手際の良さであった。
「独歩さん! 悪いけど時間が無い、学校行って残りの連中の首輪外すで!」
正に至れり尽くせりで、何の感慨も無くさんざ苦労させられた首輪を外してもらった独歩。
まるで問題解決能力に欠く愚か者の妄想のようだ。
現実とは厳しく辛い物とさんざ思い知っている独歩は、喜ぶべき事にも関わらず何処か納得いかない顔をしていた。
二人に急かされるままに車へと乗り込む独歩。ジョセフも姿を現して全員真っ赤な車へと乗り込む。
「何ていうかよぉ……こんなんでいいのか?」
「いいわけあるかい。首輪解除は全員同時でないとアカンかったんや。でもしゃあない、既にこっちが首輪解除出来る事は向こうに知られとると考えるべきなんやから」
後部席に座ってようやく得心する独歩。
「だよなぁ、こんなうまい話あるはずねえんだ。…………間に合うか?」
服部のその言葉だけで主催者による首輪爆破に思い至った独歩は、同時に最悪の事態も考える。
「あわせるさ! 猶予の時間はあるはずなんや!」
そう口にしておきながら、服部はその可能性が極めて薄い事を、理解していた。
608集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:28 ID:pXdO/Vhg
それでも、それでもなお、ほんの僅かな相手側の手違いの可能性に賭け、服部は車を走らせた。





独歩の処刑は、出発を待つ間の暇潰しとしては充分に楽しめるものであった。
ここまで生き残った猛者であるはずの男が、たった指一本であっさりとその命を散らす。
その無情さ、哀れさはジゴクロイド、カマキロイドのドS心をいたく満足させてくれるものだった。
監視員Bのフェイントも愉快だった。
ゆっくりもったいぶって押そうとしている間に、逆の腕で見えないようにさくっとボタンを押して光点を消した大技はジゴクロイド、カマキロイドの二人に爆笑をもって迎えられた。
カマキロイドは、奴等が大切にしている命とやらを冗談の種であっさり消してしまう感性が素晴らしいと解説まで入れる始末。
「いいわ貴方、凄くいい。戻ったら暗闇大使に改造人間に推しておくわ。相当愉快な奴が出来るはずよ」
正に大絶賛である。
そんな賑やかな待ち時間であった為、ジゴクロイドもカマキロイドも待つという行為をまるで苦とせず出立の時を迎える。
実際にジゴクロイドとカマキロイドが動くとなると、ようやくカニロイドもベッドから起き出して来た。
「じゃ、暗闇大使には貴方からうまく言っておいてね」
「ははっ、御武運を」

ジゴクロイドは自分のバイクに、カマキロイドはサイドカーのついたそれにカニロイドを乗せ、楽しみに胸膨らませながらアクセルを回す。
そんな三人を見送り、姿が見えなくなった後で監視員Bは頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
『やっべええええええ!! 俺ボタン押してねえしいいいいいいいい!!』
いざ押そうと手を振り上げた瞬間、突然モニターの光点が消えたのだ。
あまりといえばあまりなタイミングに、監視員Bが硬直していると、ジゴクロイドが大笑いしながら突っ込んできたのだ。
「お前このタイミングでフェイントかますかよ! マジで騙されたじゃねえか!」
あの時の自分は神がかっていた。
ジゴクロイドの言葉を聞いた瞬間、瞬時に振り上げた腕に中空でうろうろと迷ったそぶりをさせてみせたのだ。
609Classical名無しさん:08/09/11 20:28 ID:t6ofOEBo
     
610集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:28 ID:pXdO/Vhg
「あれ? あれ? あれれ〜?」
おどけた感じでそう言ってジゴクロイドの言葉に調子を合わせる。
それを見たカマキロイドは、妖艶で美しいその容姿に相応しい響くような笑い声をあげてくれた。
それどころか自分を改造人間に推挙してくれるというのだ。しかも感性が気に入ってという事なら自分の意思は残ったままだろう。
もう一度やれと言われても絶対無理な起死回生の大逆転。
だが、おそらく事実はボタンを押す直前に首輪が解除されたという事なのだろう。
ならば会場に向かった三人はほどなく愚地独歩と遭遇してしまう。
『俺伝説始った途端いきなり大ピンチって勘弁してくれよおおおおおおおお!』
至福の絶頂から地獄の底にまで叩き落された監視員Bは苦悩に身もだえする。
流石に先ほどのような奇跡の大逆転技は、すぐには思いつきそうになかった。





学校、そこは未来への希望に満ちた若人の集う場所。
その校庭で、服部平次は絶望にも似た感情を味わっていた。
放心し、校庭に座り込んで仲間達の顔を見つめる。

どいつもこいつも、アホばっかりや!

「いやぁ良かったぜぇ〜、こっちでも首輪外してたのかよ」
バカ面下げたジョセフがケタケと笑いよる。コレ、俺キレてええんちゃう?
「凄いな、自力で外し方を見つけたのか」
村雨は服部達も首輪を外していた事に素直に驚いている。いや驚くで済ますな。
「まあな。でもよぉ、外すんなら全員同時じゃねえともしかしたらBADANの連中が残った奴の首輪吹っと飛ばすかもしれねえんだぜ」
それを我が事のように自慢するジョセフ。うーん殺したい。せめて殴らせろ、一発と言わず気が済むまで。
611集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:29 ID:pXdO/Vhg
ジョセフの言葉を覚悟が否定する。
「否、BADANの長ジュドーなる者は我等との正面からの対決を望んでいる。ならばそのような手段は採るまい」


だったら始めっから殺し合いなんぞさせんと、強そうな奴と勝手にタイマンでも張っとれやああああああああ!!


こちらと合流せんとしていた覚悟と行き違いにならずにすんだので、まあ良しとするべきであったのかもしれないが、
とてもじゃないがそんなお優しい気持ちにはなれそうにない服部であった。





「指揮をする者が一人ではないのだろう」
赤木が呟いた言葉はおそらく真実であろう。
覚悟や村雨、赤木から伝え聞いたジュドーと呼ばれる人物(?)像から考えるに、この殺し合いのような回りくどい手法を採るとは思いがたい。
又、その復活に死者の魂云々といった件も、実はそこまで重要なファクターではないと思われる。

いつまでも校庭でそんな話をしているのも何なので、校舎内に場所を移しての情報交換。
場所は何故か家庭科室である。
ガスの通ったそこで、ヒナギク、エレオノール、かがみがきゃいきゃい騒ぎながら支給された食料をいかにおいしく食べるかに挑んでいる。
ちゃっかりジョセフも女性陣に混じっているが、それを見たせいで服部は文句を言う気も失せてしまう。
彼特有の陽気であけっぴろげな雰囲気は、自然な形で片腕のかがみの料理をフォローする、といった至難な芸当を可能にしていたからだ。
おどけるジョセフにかがみとヒナギクが二人がかりでつっこみ、それを見たエレオノールがおろおろしている。
一番の問題は、そんな女性陣プラス1の様を見てこの世の幸福ここに極まれりといった顔で生暖かく見守るバカ男二人。
「……独歩はん、とりあえず覚悟はんと村雨はんは放置って事でどや?」
612Classical名無しさん:08/09/11 20:32 ID:t6ofOEBo
   
613集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:32 ID:pXdO/Vhg
「ま、まあそう言ってくれんな。こういう景色守る為に生きてるよーな二人なんだからよ」
「よく居るやろ、授業中幸せそーな顔で女子の体育眺めてニヤニヤしとるアホ。あれの延長みたいなもんやろ?」
毒々しい言葉を隠そうともしない。
よっぽど首輪の一件が頭に来ていたらしい。
最早盗聴を気にする必要も無く、今までの事を一つ一つ順序立ててまとめ、整理する。
このやりとりの中で全員の思考速度や考えの方向性を見定めようと考えていた服部は、こんなほのぼのにその思惑を潰され不機嫌の極みであった。
ただ、収穫もあった。
雷雲への突入を可能とする独歩が回収してきた支給品『列車』である。
BADAN内部に協力者が居る事は既に知れた。
そして赤木の説明に従ってネット麻雀を確認しようとした所、その協力者と思しき者からの通信を発見。
既に知れている暗闇大使以外の強力な敵の存在を知る事が出来た。
「ただ、列車を使わずとも村雨の持つクルーザーや零を纏った覚悟なら突入は可能……か」
激戦の予想される城とやらへ、かがみやヒナギクを連れて行く事に抵抗のあった服部は思わず唸ってしまう。
服部の呟きに、突如女性陣の空気が変わる。
今までの穏やかな気配など一瞬で消し飛び、彼女達の優しげな佇まいが溢れんばかりの存在感に切り替わる。
剣呑な視線で服部を睨むヒナギク。
「服部さん、もしかして……余計な事考えてるんじゃないわよね」
能面のような無表情となり、物静かな迫力を湛えるエレオノール。
「お二方のみを行かせる気なぞ、毛頭ありません。むしろお許しいただければ私が一人で参りましょう」
二人の突然の変化にも動じる事無く、しかしほのかに苦笑するかがみ。
「みんな優しい人だから……服部さんも、みんなもきっとそういう心配するって思ってた。
 それが、心配だったの。私達の誰一人置いていくような真似、絶対許さないわよ」
覚悟はそれを表に出さないだけの配慮が出来た。
しかし、村雨は顔に出てしまう。自分は出来ればそうしたかったと。
独歩は彼女達の反応は予想通りといった所らしい、かがみ同様に苦笑している。
ジョセフは何も言わなかった。彼は、その戦闘能力同様、思考や行動が読みずらい。
それぞれの反応を見ながら、赤木は静かに提案する。
614Classical名無しさん:08/09/11 20:32 ID:HJ/t87SM
     
615Classical名無しさん:08/09/11 20:33 ID:t6ofOEBo
 
616集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:33 ID:pXdO/Vhg
「なら……試してみるか?」
独歩の持って来た列車の入った紙。これをひらひらと振ってみせる。
「ここに居る怪人だか戦闘員だかと戦い、示して見せればいい。それが本当に出来るというのなら、おそらくお前達も城で戦える」
望むところだと言わんばかりのヒナギクとエレオノール。
しかし、ただでさえ一般人している上、片腕というハンデを背負ったかがみは俯いてしまう。
そんなかがみの背に、ヒナギクとエレオノールが両サイドからそっと、支えるように触れる。
「かがみを守りながら戦えれば文句無いわよね」
「おぼっちゃまをお守りするよう、その為に戦わんとしていた私に、出来ぬと思いましたか?」
赤木はちらりと服部を見た後、彼女達の提案を了承する旨を伝えた。





核金は首輪をまけば使用可能という、まるでとんちのような発想で何とか使う事が出来るので、ソードサムライXとニアデスハピネスは服部に、
バルキリースカートとシルバースキンはヒナギクに、エンゼル御前はエレオノールに、モーターギアを赤木にそれぞれ使用させる。
何せみんながみんな解除のサンプルになるだろうと考え、首輪を回収していたのでこれは何の問題も無かった。
又、ヒナギクは元の世界でも使用経験のある木刀正宗を手に持っている。
慣れていない核金の使用は逆効果の恐れがあるため、又それぞれに因縁ある物であったりもするので、基本的に装備の移動はあまり行わなかった。
結局スタンドディスクは使用不能。まさかディスクに首輪を巻いた挙句頭に入れるわけにもいくまい。
赤木には、服部の勧めで454カスールカスタムオートも渡してある。
それを受け取った時の赤木の表情が、服部の意図した意味を正確に把握していると言っていた。
近接戦闘は行わず、後方より全体の戦況を把握しつつ、必要な時に対処を行う。そんな役割を服部は赤木に振ったのだ。
全員、誰一人無傷の者は居ない。それどころか安静にしていなければならない者ばかりだ。
だが、列車を使う為に戦闘が必要と知るや誰一人それを避けようとはしなかった。
その為の武器や作戦を考えている間、ふと話題が途切れた所で服部は赤木に断りを入れる。
「悪いがお前の煽りに乗ってる暇は無いで。フォーメーションは俺が考えさせてもらう。ええな?」
617集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:34 ID:pXdO/Vhg
「クククッ、好きにしろ。どの道戦えるかどうかは見ればわかるだろう」
服部は極力単純な形での戦闘を考えていた。
オフェンスとディフェンスのみの二つに絞る。
覚悟、村雨、ジョジョをオフェンス組とし、残る独歩、エレオノール、ヒナギクにオフェンス組が務まるか否かをこの戦闘により判断する。
かがみはディフェンス組固定、そして赤木と服部がそれぞれオフェンス組とディフェンス組に分かれて加わる。
この段階で既に、突入のやり方に関し幾つかの腹案があった服部の発案は、全員にすんなりと受け入れられる。
列車での戦闘は突入時の模擬戦的な意味合いもある。
服部はオフェンス組には正面からの戦闘を担ってもらい、BADANの戦力を根こそぎ剥ぎ取るのをその役割とし、
ディフェンス組は、それによって出来た間隙にBADAN城内での破壊活動を行わせるといった旨を皆に伝えてある。
その際一つだけ赤木から質問があった。
「核金ニアデスハピネスの能力を教えろ」
そう言ってきた赤木に服部は渋い顔で説明すると、赤木らしい人の悪そうな笑いで答えてきた。
「なるほど、なるほど……な。服部、悪いがお前の考え通りにはいかない、と、俺は思うがね……」
憎まれ口の類にも聞こえるが、服部は素直に赤木に問い返す。
「やっぱ……ちっと無理ありすぎかな?」
「屋内だろう。飛行可能だからといって、この戦闘はともかく突入の時お前がオフェンス組に加わるのは無理があるだろう。それではお前の意図したチーム分けがそもそも意味をなさなくなる」
服部が二つにチームをわけようと考えた最大の理由。
それこそ赤木が求める物であった為、赤木は彼の考え通りに話を勧める事に協力していた。
つまり、飛びぬけた戦闘力を持った者達を足手まといの居ない、気兼ねなく暴れられる状態にしようというのだ。
更に深く考えていくと、完全にチームをわけてしまえば、仮に足手まといが死亡したとしても、それを知り衝撃を受ける事もないだろう、と。
服部はこれを皆に敢えて伝えてなかったが、オフェンス組こそが特攻と見られそうなこのチーム分けの本質は、
最強の壁を失ったディフェンス組こそが特攻状態となる事である。
618Classical名無しさん:08/09/11 20:35 ID:t6ofOEBo
  
619Classical名無しさん:08/09/11 20:35 ID:HJ/t87SM
       
620集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:35 ID:pXdO/Vhg
オフェンス組はバイクや単身による潜入なので、列車による突撃に比べて遙かに組織立った迎撃を受けずらく、
列車組、つまり覚悟と村雨の居ない自動的にディフェンス組となるそちらのチームが囮とならざるを得ない。
零は覚悟にしか纏えないし、時速六百キロを越えた状態のバイクを操れる人間など村雨以外にいるはずがないからだ。
「それもこれも今回の戦闘の趨勢如何やな。戦闘員が全部あの勇次郎とかラオウとかやったら俺は裸足で逃げ出すで」
もちろん本気でそう思っているのではなく、極端な例である。
「ジョセフ・ジョースターは確定か?」
「ああ、あいつの波紋は応用範囲が物凄く広い、その上であの鍛えぬいた肉体ってんやからあれは別格や。後は……独歩はんかエレオノールか……って所やな」
クルーザーの後部席、そして覚悟が抱えて移動する。追加二人が限度であろう。

赤木は服部平次がいわゆる善人であると思っていたし、今でもその考えを変える気は無い。
そんな服部が非情とも言える作戦を考えてまでBADAN壊滅を望む理由に、彼は心当たりがあった。
もちろん倒れていった仲間達への想いは、彼の中で重要なファクターであろう。
しかしそれとは別に、服部は決してBADANの存在を許す事が出来ないであろうと。
大首領ジュドーが行った並行世界からの人間の召喚。
これはほんの少し想像すればわかる事だが、圧倒的なまでの、そう核だの世界が滅びるだのとは比べ物にならないほど、危険なのだ。
そもそもどの世界だろうと、そんな技術が存在しているはずがない。
だからこそ相互不可侵であり続けたのだろうし、それぞれ独立した世界として存在し続けられたのだ。
何処か、何処でもいい、たった一つの世界がこの技術を用いた瞬間、全ての世界は時間すら越えて同時に一つの世界として存在してしまうのだ。
世界が世界としてあり続ける為の理、人が安心して生きていられるのは、その理を大なり小なり理解している部分があるからで、
突然それが全く通用しないと突きつけられて、それを受け入れ今までと同じように平穏な生活を営める者など極少数だろう。
概念的な事でわかりずらいのなら、具体例を考えればいい。
単純な話だ。BADANがそれと望んだだけで、見知らぬ世界に放り込まれてしまう現状。
621集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:36 ID:pXdO/Vhg
おそらく細部までのコントロールは難しい、ないし幾つかの制限のある技術なのだろう。
でなくばジュドーの復活すら、それが為し得た世界と繋ぐ事で簡単に達成出来る理屈だ。
服部にはそれが理解出来ていると赤木は考えていた。
自分が世界開闢以来の危機に立ち会っている事を。
この技術が円熟すれば全ての破滅に繋がる事を。
人を守る事を自らに課している人間ならば、こんな状況を見過ごせるはずがない。

服部平次とはつまる所そういう人間であるのだが、赤木シゲルはその上で、それもまた世界のありようなのだろうと思っていた。
人が生まれて死ぬように、自然の流れでそうなっていくのなら、それもまた是なりと考えるのだ。
だが、服部が考える程ヒドイ事にもならないのでは、そうも考えている。
そこに居るのが人間であるのなら、例え最初は未曾有の災害と思われるような状況であったとしても、そんな中で人間は生きていくものだと。
各世界が一つになったテストケースである今を見ればよくわかる。
もし仮に、最初の移動以外BADANの介入が全く無かったとしても、今こうして生き残っているタフでしぶとい連中は、
この閉じられた世界でどうにかこうにかやっていくのだろうと思っていた。
それこそが人間だと。
では人間以外の存在の介入を招いたら?
そんな存在との共存が適わぬのなら、その時はどちらかが滅びるだけ。それが自然の流れだ。
赤木は自然の流れの中で、自身である赤木シゲルがここに居ると自らが確信出来ればそれだけでよかった。
「その為に戦う。それが人間だ」
例え相手が神とも呼ばれるような存在であろうとも、だ。





間の悪い時というのはあるもので。
大慌てで盗聴室へと赴いた葉隠四郎は、部屋から聞こえてくる暗闇三兄妹の声を聞いて部屋に入るのを断念する。
622Classical名無しさん:08/09/11 20:37 ID:HJ/t87SM
  
623Classical名無しさん:08/09/11 20:37 ID:t6ofOEBo
        
624集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:38 ID:pXdO/Vhg
BADANにおいて、葉隠四郎の存在を一番面白くないと感じている者が居るとしたら、それは暗闇大使であろう。
計画の最初期から参加している最高責任者、組織のNO2である彼は大首領ジュドーへの忠誠心に篤く、同時に嫉妬深い人物である。
そもそも彼は大首領が自分を介さずに組織の者と接触する事を好まないのだ。
強化外骨格への憑依という手段にしても、エネルギー変換装置による復活を併用する形を取ったのは、彼のそんな心の現われであろう。
当初葉隠四郎は肉体への憑依により異次元からこちらへの帰還を果たすという大首領復活のプロセスを聞いた時、
そこにエネルギー変換装置の入り込む余地は無いと考えたのだが、彼はその点に固執した。
その技術の素晴らしさを四郎も認めていたし、そこから生じる莫大なエネルギー値を見た時は何としてでもこの技術を持ち帰ろうと心に決めたものだ。
基礎研究不足の為、この分野の技術は四郎が持ち帰ったとしても実用化するのに百年では済まぬとの研究者達の言葉によりそれは断念したが。
いずれは元の世界へ戻る。あくまで仮住まいとしてBADANに身をおく四郎を、暗闇大使は快く思ってはいない。
隙さえ見つければ四郎失脚を目論んでいるだろう。
今部屋に居る三兄妹は、そんな暗闇直属の部下である。彼等にだけはこの事実知られるわけにはいかない。
そうこうしている内に侵入者だの何だのとサザンクロス内が騒々しくなってくるが、こちらはそれ所ではない。
やきもきしながら三兄妹が消えるのを待っていたのだが、随分と待たされた後ようやく何処かへと消えてくれた。
用心の為、更に時を待ってから盗聴室に向かう監視員の一人を捕まえた。
「疾く、我が問いに答えよ! 昨晩から今までの間に社周辺にて戦闘を行いし者はあるか!」

必殺の解決策を見出すべく頭を捻っていた監視員Bは、今度は葉隠四郎に捕まってしまった。
こっちはそれどころではない、などと間違っても口には出来ない。
彼もまた慈悲の心を持たぬBADAN幹部の一人であるのだから。
「や、社ですか。昨晩からですと、ラオウが滞在していた事もありラオウ対村雨と綾崎、ラオウ対劉鳳の戦闘がありましたが……ああ、後その少し前に村雨対綾崎も」
「ふむ。社に向けて強力な攻撃が放たれた事はあるか?」
監視員Bは小首をかしげるも、記憶には無い。
625Classical名無しさん:08/09/11 20:38 ID:HJ/t87SM
      
626集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:38 ID:pXdO/Vhg
「いえ、そもそもそんな真似した所で誰も得しませんですし……あるとすれば流れ弾と言うか流れ斬撃とか流れ衝撃とかぐらいですか。
 流石に盗聴だけでは戦闘の詳細全てを把握する事も出来ませんし、誰かが戦闘を監視衛星で見ていたとかでも無い限りは……」
「では社周辺で放たれた最も強大な一撃とは誰のどのような一撃であったかわかるか?」
監視員Bも全ての音声を聞いているわけでもない。
あくまで予想でよければとの言葉に頷く四郎。
監視員Bは村雨とハヤテによる二人の同時パンチがそれに当たるだろうと答えた。
他の盗聴担当者がその轟音に思わずヘッドホンを放り出した程であったと聞いている。
もしくは劉鳳があのラオウを滅ぼしたとされる断末魔の一撃か。
葉隠四郎、この返答だけで瞬時に一つの在り得る物語を作成する。
首輪による制限限界をすら越えたというアルターの存在。
その使い手であるマーティン・ジグマールは死亡したが、同じアルター使いである劉鳳にもそこまでの力を出しうる能力があるやもしれぬ。
社の室内映像を見る限り、打撃によるそれとは思いずらかった故、劉鳳の一撃こそがそれに当たると四郎は考えたのだ。
それにこちらなら、その使い手たる劉鳳は既に死亡している為問題ともしずらい。
正義を志す劉鳳なる者、末期の足掻きにより諸悪の根源たる強化外骨格『凄』に一撃を放つも、かすり傷一つ残し『凄』は大健在なり。
こんな所であろうと、一人納得する四郎。
「大儀であった! では最後の勤めを果たすが良い!」
「は、はぁ」
視点が真横にずれ飛んで行くありえない視野が監視員Bの見た最後の光景であった。
四郎の手刀により一撃で首をはねられた哀れな胴体は、ゆっくりとその場に崩れ落ちる。
「死して機密厳守を全うせよ!」
幹部の制裁による構成員死亡率の高さ。
BADANのこんな所も四郎は気に入っていた。




627Classical名無しさん:08/09/11 20:40 ID:t6ofOEBo
支援
628Classical名無しさん:08/09/11 20:42 ID:t6ofOEBo
 
629Classical名無しさん:08/09/11 20:43 ID:t6ofOEBo
B……w
630集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:44 ID:pXdO/Vhg
戦闘のプロである覚悟に問いつつ陣立てを確実な物にしていこうと思っていた服部の思惑は、見事に外される事となった。
「策など不要なり! ただ正面よりこれを粉砕するのみ!」
たったの一言で自分の存在意義を全否定された。
あまりといえばあんまりなプロの姿に、思わず覚悟の常日頃の戦闘スタイルを確認してみた所、服部なりに納得出来る部分もあった。
そもそも覚悟には集団で戦闘を行うという意識が無い。
敵が多数であろうと、守るべき対象が複数居ようと、常に単身で戦闘に望む。
そんな馬鹿げた戦争を可能とする為の零であり、覚悟の学んだ零式防衛術なのだろう。
劉鳳も随分と極端な男だったが、覚悟もどっこいである。
常日頃から極端であり続けた故のこのありえない強力さ、そう言葉にするのは簡単だが実際に行動に移すのはまともな神経で出来る事ではない。
服部と覚悟のやりとりを見ていた独歩は、悪いとは思いつつ、つい噴出してしまう。
そんな中、控えめに村雨が言葉を発する。
「……俺はかつて記憶を失っていた時、BADANに居た事がある。それが少しでも役に立てばと思うが、どうもその時とは随分ありようも変わっているようで使える情報かどうか……」
そもそもがBADANによる改造を受けた改造人間である村雨。
何処から材料を調達したものか、炒め物を作り終えたエレオノールが、手を拭いながら至極最もな疑問を口にする。
「それはムラサメのような強者がBADANには多数存在するという事でしょうか」
想像するだに恐ろしい状況を、ありがたい事に当の村雨が否定してくれる。
「当時のリーダーはニードルという男だったが、その頃の俺ですら一対一ならば何とかなると思っていた。
 同格の改造人間も数人居たが、ああいった指揮を行えるレベルの改造人間はそうたくさん作れないはずだ」
内容が内容である。村雨の言葉に沈んだ口調が含まれるのも無理は無かろう。
「よく俺の面倒を見てくれた、ココにも来ていたはずの三影が色々教えてくれた。
 その頃の俺はまるでその辺の事に興味を持てなかったので、正確に全てを覚えているわけではないのだが」
意外そうなのは覚悟だ。
「ほう、卑劣な悪鬼の巣窟とばかり思っていたが、BADANにもそのような者が居るとは」
三影の話をする時、村雨はほんの少しだけ優しそうな顔に戻った。
631集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:46 ID:pXdO/Vhg
「あいつは、あいつだけが、BADANに居た頃の俺の味方だったんだ。ただ、三影はきっと殺し合いに乗っていた……と思う。
 口癖のように言っていたあの言葉は覚えている。とてもじゃないが誰かを守る為に戦うような男ではない」
村雨の彼に対する感情は複雑である。自身も整理し切れていないのだろう。
決して晴れぬ霧のように彼の心を覆うたくさんの出来事の、それもまた一つの欠片であった。
「はいっ、村雨さん」
村雨のすぐ横からひょいっと顔を出して、村雨の分の皿を目の前に置いたのはかがみだ。
食事の完成かと思い皆一度話を切るが、かがみは先に食器の準備をしているだけでもう少し時間はかかりそうだった。
「で、どうなの? 良い作戦出来そう?」
服部はぐでーっと机に突っ伏す。
「敵さんの戦力特定が不可能な現状でどーせーっちゅーんじゃー。覚悟はんの言う通り当たるを幸いなぎ倒してく以外あるかーい」
実はそんな単純な話でもないのだが、服部はものすごーくわかりやすくそんな事を言う。
少し離れた所でサラダを用意すべくボールの中身をこねくりまわしていたヒナギクが、大きな声で話に加わってくる。
「あら? もしかしてそれ弱音?」
「んなわけあるか! 誰が弱音なんて吐くかい!」
クスクスと笑っているヒナギクを服部は苦々しい顔で横目に見やる。
「……くっそ、腹立つ女やなぁ」
それでもあの範馬勇次郎に猛然と立ち向かう様をこの目で見ている服部は、それを聞こえない程度の声に留めるぐらいには自制した。
というかちょっと怒らせるのが恐いと思ってるのは内緒である。
「ああ、そや柊かがみ。社にはアンタの予想通り強化外骨格あったでー」
何とか話題をそらそーとして出す内容ではなかった。

自分がやる分と決めていた調理を終えたエレオノールは、かがみを手伝うべく食器を手に取る。
向かう先は、赤木シゲルの前。
「アカギ、貴方の分です」
「ああ」
赤木はほとんど話し合いには参加せず、黙ったまま彼等の話を見守っているのみ。
632Classical名無しさん:08/09/11 20:46 ID:t6ofOEBo
   
633集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:46 ID:pXdO/Vhg
そんな様子をエレオノールは時折横目で見て知っていた。
「アカギは皆と面識が?」
「幾人かとはな」
激戦の北部地域、最初期から周辺に強大な力を持つ殺人者、範馬勇次郎、ラオウ、DIOを擁していたこの地域の、二人は数少ない生存者である。
喫茶店に大集結した人間達は、遂にこの二人と離脱したパピヨンのみとなってしまった。
「皆心優しく、そして強い方々です。アカギも安心していてください」
エレオノールは赤木が不安がっていると、そう思ったのかもしれない。
彼を安心させられるよう、つい先ほどの決戦の様子を語って聞かせるエレオノール。
そんな彼女のあり様が、一番最初の出会いとあまりに違いすぎて、話の途中でつい失笑してしまう。
赤木のこういった笑いは相手に不快感を与える事が多い。
だがエレオノールにとっては、赤木が笑ったという事がそもそも嬉しすぎたせいで、笑いの種類など気にもならなかった。
よし、ならもっと楽しんでもらおう。
そう考えると、話す言葉にも力が篭る。
いつしか必死に語り始めている彼女に、残る全員の視線が集まる。
その瞬間、絶妙のタイミングで赤木はこちらを見ている者達をエレオノールにわかるように指差す。
はたと気付いたエレオノールがそちらを確認し、注目を集めている事と自らの痴態に気付き赤面すると、部屋中が笑い声に包まれる。

それはとても恥ずかしかったが、自分のした事でみんなが笑ってくれたのは、本当に、本当に嬉しかった。





「服部ー、そーいやスタンドディスクって使えねえって話だったよな」
食事の用意が完了し、皆でランチタイムを楽しんでいる時、唐突にジョセフがそんな事を訊ねた。
「ああ、俺も試したけど無理だったで」
「そっか〜、じゃしゃーねーか。記憶ディスクっての、結局中身見れなかったな〜」
634集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:47 ID:pXdO/Vhg
どうせ使えないからと、ブーメランにでもして飛ばしてやろうかと構えるジョセフ。
食事中というのにお行儀の悪い事この上ない。
いつもならば本気で投げていた。
そう自分で確信出来るジョセフだったが、どうしたものだか、このディスクにそんなぞんざいな扱いは出来ない模様。
どうにも投げ捨てる気にならず、やはり懐に収める。
しかし、そうなるとちょっと悔しい。何というかとてもディスクを投げたい気分なのだ。
確かマジシャンズレッドのディスクもあったなと近くに置いておいたバッグを漁り出す。
「あっれ〜。よう服部、マジシャンズレッドのディスクってどうしたっけか」
「俺が知るかい。ジョジョが持ってたんちゃうんか? 確かずっと頭に入れっぱなしだった……や……ろ……」
一つの可能性に思い至る服部。ジョセフも気が付いたらしい。
「ちょ、ちょっと待て! いけるか? いける……か?」
ジョセフは祈るように念じる、マジシャンズレッドよ、この場に姿を現せと。

祈りは通じた。

ジョセフはマジシャンズレッドのディスクを頭に入れたままだったのだ。
彼の背後に幽鬼のように立ち上る鋼の肉体持つ真紅の鳥。
最早お行儀の域を軽く通り越している行為だったが、誰もそれを責めたりしないどころか、喝采で迎えられる。
「おおおおおお!! 何!? 入れっぱなしだったらオッケーって事か!?」
思わぬ出来事を単純に喜ぶジョセフ。しかし服部は少し納得がいってない模様。
「何やねんそれ、そないな単純な話なん? ……ジョジョ、記憶ディスクの方はどや? 今の状態でそれも使えるか?」
使用を躊躇していたジョセフだったが、ディスクが使えた事が嬉しかったのか、上機嫌で早速試してみる。

そんな気軽に使うような物ではなかったと知ったのは、すぐ後の事である。


635Classical名無しさん:08/09/11 20:47 ID:t6ofOEBo
  
636集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:48 ID:pXdO/Vhg


ハイテンションだったジョセフの表情が重苦しく沈み込む。
参加者でもある空条承太郎の名を冠する記憶ディスクは、参加した彼ですら知りえない、未来の彼の記憶であった。
体調を心配し、声をかけてきたかがみを手だけで制し、少し整理の時間をくれ、とこのディスクに関する発言を拒否するジョセフ。
今まで同行した事のあるかがみも服部も知っている。
ジョセフは決してブレない。
同行者がどれだけ大きく揺れ動こうとも、揺るがぬ大樹のように側にそびえ立つ。
軽薄で浅慮に見える彼の本質は、骨太で逞しい無類のタフガイであると。
そんなジョセフの言葉である。
ならば、とかがみは一つだけ確認してその言葉を了承する。
「今、辛い? 何か出来る事ある?」
首を捻り、誰に言うでもなくぼそっと呟く。
「辛い……って訳じゃねえんだけどな、どうもこの空条承太郎っての、俺の孫みたいなんだわ……流石のジョセフ様も自分の未来図見せられりゃ反応にも困るって……」
ショッキングな事をさらっと言い放つジョセフ。
時間軸のズレ、それを知っては居たがまさかこのような形でそれを見せ付けられるとは誰も思ってはいない。
ジョセフの心境たるやいかばかりか、と皆が心配そうにジョセフを見つめる。
そしてジョセフはジョセフでそんな視線にも気付かずに考え込んでいる。
「とてもじゃねえが信じられねえな〜。大体何だよ俺に隠し子って。こんな真似したらスージーに刺し殺されるぞ未来の俺」
あっという間に女性陣の視線の意味が変わる。
敵意といっても差し支え無い程の鋭い視線でヒナギク。
「へぇ、それはおモテになるのねえジョセフさん」
心配していた分が丸々引っくり返ったかがみ。
「刺されればいいんじゃない」
難しそうな顔のエレオノール。
「やってしまったものは仕方ありません。ですがせめて両者に誠意を持って……」
637集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:48 ID:pXdO/Vhg
まだやってもいない事で何故にこんなにも責められねばならんのか。
パピヨンと一緒で、それを知ってしまった事により既に未来は変わってしまっている。
その事に気付いていた服部だが、説明してやるのが面倒なので放置していた。
フォローをしてきたのは、何と意外や意外、赤木シゲルだった。
おそらく未来は変わっているだろう。ならばそれは知識として以外何ら意味の無い記憶だと。
そう言って女性陣を渋々ながらも納得させると、食事の途中ながら席を立つ。
「一服してくる。ジョセフ・ジョースター、お前も付き合え」
ジョセフに喫煙の嗜好は無いが、少々居心地の悪くなったここから逃げ出せるというのであれば嫌も応も無い。
いいね、俺も一服したかったんだ。さあ行こう、すぐ行こう、んじゃちょいと失礼。と赤木を引き連れさっさと部屋を後にする。





外に出た服部とジョセフの二人。
ジョセフは気安く赤木の肩をばんばんと叩く。
「いやぁ助かったぜぇ。お前顎に似合わず気が効くじゃねえか!」
何をどう考えても顎は関係していない。
「それはいい。それより、記憶が入ったディスクと言ったが……BADANに関する情報はそこにあったのか?」
肩をすくめるジョセフは、スタンドに関する知識はエライ量があったが、核金や改造人間云々といった話はほとんど無かったと語る。
承太郎の記憶の中では、ジョセフもディスク抜きでスタンドを操っていた。
波紋と非常に相性の良いハーミットパープルのスタンドを、自分も使えないかと試してみたのだが、やはり無理であった。
参加者の中では吉良吉影とDIOに関する知識が有効であったと思われるも、二人共既に死亡している。
赤木はそう聞くと、それ以上このディスクに関して期待するのを止めた。
列車や成仏鉄球のようなBADANに反旗を翻す為の装備である事を期待していたのだが、どうもこれは元来用意されていた支給品らしい。
この知識で重要と思われたのは一つだけ。
スタンドや記憶をディスクにして抜き取るスタンドが存在するという事。
638集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:49 ID:pXdO/Vhg
記憶の中の承太郎はこれによる攻撃を受け、それがディスクに残る最後の記憶となっている。
正体のわからぬスタンド使い、各種のディスクを支給品に加えたであろうその男がBADAN側についている可能性は極めて高い。
「それは、全員に伝えておいた方がいいな……それと、お前は恐らくオフェンス組、最も戦闘の激しい場所で戦う事になるが、勝算はあるのか?」
そう問う赤木に、ジョセフは偉そうにふんぞり返る。
「孫子の言葉でこういうのがある、『兵は詭道なり』ってな。敵の心を動揺させ、その隙をつくってやり方よ。正に俺にぴったりだぜ」
浅薄な印象しか受けないジョセフの言葉、微妙に赤木の問いに対する答えになっていない所も聞いている人間に不安を抱かせるに充分。
「それはお前の本来のスタンスか?」
「おうよ! 戦う前から勝負は始ってんだ、そしてその量と質で勝敗ってな決まる。なら、俺が負ける要素は何処探したって見つからねえぜ!」
波紋という能力の特性、それを事前に聞いていた赤木はこれこそが波紋を用いる者に必要な要素である、そう考えていた答えをジョセフから得られた事に満足する。

それ以上ジョセフから聞くべき事も無い赤木は、部屋に戻って食事を続け、最後に服部だけに聞こえるようこう伝えた。
「必要な情報は全てお前に伝えた。なら死ぬべき時は、自身で判断出来るな」
服部からの返事は無かった。

ジョセフがスタンドを使える、これはどうやら予め入れておいたマジシャンズレッドのみならず、
何か一枚でも頭に入ってさえ居れば、他のスタンドも使用出来るという事らしい。
そうでない可能性を確認する為に、ジョセフの頭の中にディスクが無い状態を作るような真似をしなかったので、
実際どうかは誰にもわかっていないのだが。
おかげでクレイジー・ダイヤモンドのスタンドでエレオノールのあるるかんを簡単に直せたのは正に僥倖であった。





赤木の推察どおり、服部はBADANの危険性を正確に把握していた。
それでもみんなにそれを伝える事をしなかったのは、その必要が無いと判断したからだ。
そんな事、言うまでもなく誰しもが決死の覚悟で戦いに挑むだろう。
639集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:50 ID:pXdO/Vhg
突入前の腹ごしらえが済む頃には、のどかな雰囲気はなりを潜め、
各々が誰に言われるでもなく集中力を高めるべく各人それぞれの方法でモチベーションを高めていく。
この上何を伝えた所で単にプレッシャーを増やすだけの話だ。
その必要すら無い、常在戦場の心構えを持つ覚悟が、全員の意識が研ぎ澄まされた瞬間を見極め、席を立って皆を促す。

「行こう」

簡潔で穏やかな言葉、そこに込められた覚悟の想いを、決意を、受け取れぬ者など一人も居なかった。





全ての陣形が整うと、覚悟は誇らしげに胸を張り、威風堂々とした佇まいで宣言する。

「ここが駅なり! 駅長殿鳴らす笛ぽっぽう!! 我等の元へと馳せ参じよ!」

こんな台詞も覚悟が言うと重々しく感じるから不思議である。ぽっぽうはさておき。
覚悟の言葉に応えるように大地が振動する。
誰もがそれがどのようなものなのか想像も付かない中、それは現れた。
校庭のど真ん中に大地を突き破って飛び出してきた列車。
先頭から突き出された二本のドリルが両手を模し、車両の前面には真っ白な顔と真っ赤な丸い鼻、お洒落な帽子を被ったそれは正にピエロそのものだ。

二本のドリルにより地中すら走行可能の完全自立式列車型自動人形、長足クラウン号ここに見参!
640Classical名無しさん:08/09/11 20:50 ID:t6ofOEBo
 
641集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:52 ID:pXdO/Vhg
【C−4 学校/2日目 昼】

【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左手骨折、全身重度の打撲、精神疲労中、体力消費大、深い悲しみ、脇腹にダメージ大、首輪解除済
[装備]:マジシャンズレッド(魔術師の赤)のDISC@ジョジョの奇妙な冒険 クレイジー・ダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:七原秋也のギターをばらしたて出来た弦@BATTLE ROYALE、支給品一式×2、空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険 、スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:BADANとかいうボケ共を一発ぶん殴る。
1:列車の中に居る怪人を倒す
2:敵の城へと乗り込む

[備考]
※二部終了から連れてこられていますが、義手ではありません。
※吉良の名前に何か引っかかっているようです。
※水を使うことで、波紋探知が可能です。
※三村の留守電を聞き逃しました。
※主催者の目的は強者を決めることであり、その中にはイレギュラーもいると考えています。
※少なくともかがみとは別の時代の人間であるということを認識しました。
※波紋の力を使うことで対象のディスクを頭部を傷つけることなく強制排出することができます。
 ただし、かなりの集中力を要求します。
※マジシャンズ・レッドの火力は使用者の集中力によって比例します。
 鉄を溶かすほどの高温の炎の使用は強い集中力を要します。
 火力センサーは使用可能ですが精神力を大きく消耗します
 また、ジョセフのマジシャンズ・レッドは通常の炎の威力の調節が極端に難しい状態です。
 ただし、対象に直接マジシャンズ・レッドの手を当てて炎を出した場合に限り調節が可能です。
 修練をすれば通常の炎の精度が上がる可能性があります。
※S7駅がかなり脆くなっていることを発見しました。
※第四回放送は劉鳳からの又聞きでしか記憶にありません。
642Classical名無しさん:08/09/11 20:52 ID:t6ofOEBo
   
643集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:52 ID:pXdO/Vhg
※服部との相互理解を深め、より信頼しあえる関係になりました
※服部の時のような誤解による失敗を二度とすまいと考えています
※服部から儀式のやり方を聞き、首輪のステルス解除のやり方を知りました
※社の奥に何かがある、そしてそれを守る為に近づくと体が重くなる装置がある事を知りました
※ 覚悟、村雨、かがみ、ヒナギク、独歩、エレオノールと情報交換をし、友好関係を結んでいます。
 また、アカギとパピヨンは協力者、川田は危険人物と認識しています。
※以下の事を考察しています。
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
※赤木と情報交換をしました。
※強化外骨格が大首領の復活を近いと感じ取ったせいか、なぜか社から放たれる制限が強くなっています。
※承太郎の記憶ディスクの中身を確認しました



【服部平次@名探偵コナン】
[状態]:肉体疲労中(ある程度回復)、三村を殺したことから大分立ち直りました。首輪解除済み。
[装備]:スーパー光線銃@スクライド、携帯電話、ソードサムライX(核鉄状態)@武装錬金、二アデスハピネス (核鉄状態)@武装錬金
[道具]:支給品一式×2(食料一食消費)、首輪、「ざわ……ざわ……」とかかれた紙@アカギ(裏面をメモ代わりにしている)、
色々と記入された名簿、ノート数冊、ノートパソコン@BATTLE ROYALE ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)、
644集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:53 ID:pXdO/Vhg
綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく(未開封)、 ギーシュの造花@ゼロの使い魔、キュルケの杖、拡声器、
包帯・消毒薬等の治療薬、点滴用セット(十パック) 病院内ロッカーの鍵(中に千切れた吉良の左手首あり)、
バヨネット×2@HELLSING、 紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)、外れた首輪(服部平次)
[思考・状況]
基本:一撃でいいから大首領をぶん殴る。
1:列車の中に居る怪人を倒す
2:敵の城へと乗り込む
3:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
4:赤木に任された強化外骨格への連絡をどうするか
[備考]
※劉鳳、コナン、神楽、ジョセフの事は全面的に信用しています。
※コナンと二人で立てた仮説、「光成の他の主催者の可能性」「光成による反抗の呼びかけの可能性」
「盗聴器を利用した光成への  呼びかけの策」 等については、まだ他の人間に話していません。又、話す機会を慎重にすべきとも考えています。
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。
※三村信史の死ぬ直前の記憶を見ました。
※第四回放送の内容は劉鳳からの又聞きでしか記憶にありません。
※ルイズをF-3の川岸に埋葬しました。折れた軍刀は墓標として刺してあり、キュルケの杖、拡声器は服部が所持しています。
※アミバの持っていた支給品一式×3 (食料一食消費) は、F−2民家の中にあります。
※アミバの持っていたノートパソコンには、大東亜共和国謹製のOSが組み込まれています。
※ジョセフとの相互理解を深め、より信頼しあえる関係になりました
※かがみから儀式のやり方を聞き、首輪のステルス解除のやり方を知りました
※社の奥に何かがある、そしてそれを守る為に近づくと体が重くなる装置がある事を知りました
※ 覚悟、村雨、かがみ、ヒナギク、独歩、エレオノールと情報交換をし、友好関係を結んでいます。
 また、アカギとパピヨンは協力者、川田は危険人物と認識しています。
※以下の事を考察しています。
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
645集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:53 ID:pXdO/Vhg
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
※赤木と情報交換をしました。



【赤木しげる@アカギ】
[状態]:脇腹に裂傷、首輪がありません。
[装備]:基本支給品、ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス(残り9本)、マイルドセブンワン1箱、モーターギア(核鉄状態)@武装練金
[道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)
 始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます)、水のルビー@ゼロの使い魔
 454カスール カスタムオート(6/7)@HELLSING 13mm爆裂鉄鋼弾(28発)
 工具一式、医療具一式、沖田のバズーカ@銀魂(弾切れ)、成仏鉄球@覚悟のススメ 、伊藤博士からの手紙
[思考・状況]
基本:対主催・大首領の肉体となる。
1:列車の中に居る怪人を倒す
2:大首領との再会。バトルロワイアルに引きずり込む。
3:対主催を全員説得できるような、脱出や主催者について考察する。
4:強敵を打ち破る策を考えておく
5:覚悟に斗貴子を死に追いやった事を隠し、欺く。
[備考]
※マーティン・ジグマール、葉隠覚悟と情報交換しました。
646Classical名無しさん:08/09/11 20:53 ID:t6ofOEBo
         
647集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:54 ID:pXdO/Vhg
※エレオノールとジグマールはもう仲間に引き込むのは無理だと思っています。
※光成を、自分達同様に呼び出されたものであると認識しています。
※参加者をここに集めた方法は、JUDOの能力であると思っています。
※参加者の中に、主催者の天敵がいると思っています(その天敵が死亡している可能性も考慮しています)
 そして、マーティン・ジグマールの『人間ワープ』は主催者にとって、重要であると認識しました。
※主催者のアジトは200メートル以内の雷雲によって遮られていると考察しています
※ジグマールは『人間ワープ』、衝撃波以外に能力持っていると考えています
※斗貴子は、主催者側の用意したジョーカーであると認識しています
※三千院ナギは疫病神だと考えています、また彼女の動向に興味があります。
※川田、ヒナギク、つかさの3人を半ツキの状態にあると考えています。
※ナギ、ケンシロウと大まかな情報交換をし、鳴海、DIO、キュルケの死を知りました。
※こなたのこれまでの経緯を、かなり詳しく聞きだしました。こなたに大きなツキがあると見ていますが、それでも彼女は死にました
※『Dr.伊藤』の正体は主催側の人間だろうと推測しています。
※葉隠覚悟、桂ヒナギクと情報交換をしました。



『Dr伊藤』とのチャットによりわかった事
1:首輪は霊的に守護されている
2:首輪の霊的守護さえ外せれば、後は鋭い金属を継ぎ目に押し込む程度で爆発無しに外せる
3:既にその霊的守護を外した者が居る。そいつが首輪を外したかは不明だが、おそらく外してはいない
4:監視カメラは存在せず。首輪についた盗聴器のみでこちらを監視。その監視体制も万全ではない
5:敵には判断能力と機転に乏しい戦闘員が多い
6:地図外に城? がある
7:城には雷雲を突破しなければならず、そのためには時速600キロ以上の速度が必要

648集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:54 ID:pXdO/Vhg

※大首領との接触により、大首領とBADANとの間のズレを認識。
※BADANという組織はあまり合理的に動かないと認識。


【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に火傷(治療済み) 胸に火傷、腹部に軽い裂傷。頭部他数箇所に砲弾による衝撃のダメージあり 首輪が解除されました。
    胴体部分に銃撃によるダメージ(治療済み) 頭部にダメージ
    両腕の骨にひびあり
[装備]:強化外骨格『零』@覚悟のススメ
[道具]:大阪名物ハリセンちょっぷ 滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)、首輪(覚悟)
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者BADANを必ず倒し、大首領を殺す。
1:列車の中に居る怪人を倒す
2:暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。
3:村雨が再び記憶を失い、殺し合いに乗るようならば倒す
4:葉隠四郎を必ず倒す
5:ヒナギクを愛さない
【備考】
※こなたの死を知りました。それが川田のせいである事も知っています。
※パピヨンとアカギを全面的に信用しています。
※ラオウを倒した男が劉鳳だと知りました
※零と一体になる事に迷いはありません
※服部、ジョセフ、エレオノールと情報交換をし、友好関係を取っています。
※アカギと情報交換をしました。
※首輪を解除したため、身体能力への制限は解けました。
【零についての備考】
※零の探知範囲は制限により数百メートルです。
649集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:54 ID:pXdO/Vhg
※零はパピヨンを危険人物と認識しました。
※零は解体のため、首輪を解析したいと考えています。
※零は村雨の体を調べ、その構成が、極めて高位の霊魂ならば、強化外骨格同様受け入れられる構造になっていると知ります



『大首領を殺す作戦』
?大首領を強化外骨格の中に降ろしてから、成仏鉄球で成仏させる。
?そのためには大首領を弱らせる必要がある。
?強化外骨格内部の死者ならば、大首領を内側から攻撃できる可能性が高い。



【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]全身に無数の打撲、頬に軽い腫れ 全身に更なる重度の打撲傷を負う 胸に貫通痕 核鉄の治癒力により回復中 疲労(小)首輪が解除されました。
[装備]十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (0/2) 、マイクロチェーン(2/2)、核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金、工具
[道具]地図、時計、コンパス、 女装服
    音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾 支給品一式×3、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
    文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
    缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(5本消費)、ツールナイフ、
[思考]
基本:BADANを潰す!
1:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る
2:列車の中に居る怪人を倒す
3:暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。
4:穿孔キックを完成させる。
650Classical名無しさん:08/09/11 20:55 ID:t6ofOEBo
 
651集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:57 ID:pXdO/Vhg
5:パピヨンを止める。
6:かがみを守る
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です。
※参戦時期は原作4巻からです。
※村雨静(幽体)はいません。
※連続でシンクロができない状態です。
※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。
※BADAN側にも強化外骨があると推測しています。
※ラオウ、勇次郎との戦闘を経て戦闘技術が劇的に向上しました
※神社で立ったまま微笑んで死ぬ死体(劉鳳)を見ました。
※怒り等感情に任せて行動しないよう自制する事を覚えました
※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。
 首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。
 スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。
 また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。
※川田章吾の死体は、埋葬されました。
※穿孔キックを習得しましたが、まだ未完成です。見た目は原作で村雨が放ったものと大体同じものです。
※首輪は解除され、身体能力、再生能力への制限が解けました。また首輪は核鉄(ピーキーガリバー)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます
※デルフリンガーは破壊されました。




【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
652集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 20:58 ID:pXdO/Vhg
[状態] 顔と手に軽い火傷と軽い裂傷。右頬に赤みあり。右肩が外れている、手の平に裂傷、勇次郎平手によるダメージ 、核鉄の治癒力により回復中 首輪が解除されました。
[装備] バルキリースカート(核鉄状態)@武装錬金、木刀正宗@ハヤテのごとく、シルバースキン@武装錬金
イングラムM10(9ミリパラベラム弾0/32)、陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた
[道具]支給品一式、ボウガン@北斗の拳、ボウガンの矢17@北斗の拳
[思考・状況]
基本:BADANを倒す。
1:列車の中に居る怪人を倒す。
2:暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。
3:覚悟を愛さない。
[備考]
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです 。
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました 。
※バルキリースカートを使いこなしました。バルキリースカート本来の戦い方ができるようになりました。
※エレオノールと和解しました 。
※服は現地調達したものに着替えました。
※服部、ジョセフ、エレオノールと情報交換をし、友好関係を取っています。
※アカギと情報交換をしました。
※首輪は解除されました。また首輪は核鉄(バルキリースカート)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます




【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:全身に強度の打撲(ある程度は回復)、左腕欠損(止血済み)、首輪が解除されました。
[装備]:巫女服
[道具]:ニードルナイフ@北斗の拳 つかさのリボン
653集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 21:00 ID:pXdO/Vhg
[思考・状況]
基本:BADANを倒す
1:列車の中に居る怪人を倒す。基本見てるだけしか出来ませんがー
2:暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。

[備考]
※BADAN側にも強化外骨があると推測しています。
※零の暗雲についての推測を知りました。
※かがみの主催者に対する見解。
@主催者は腕を完璧に再生する程度の医療技術を持っている
A主催者は時を越える"何か"を持っている
B主催者は@・Aの技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
Cだが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
※首輪の「ステルス機能」および「制限機能」の麻痺について
かがみがやった手順でやれば、誰でも同じことができます。
ただし、かがみよりも「自己を清める」ことに時間を費やす必要があります。
清め方の程度で、機能の麻痺する時間は増減します。
神社の手水ではなく、他の手段や道具でも同じことが、それ以上のことも可能かもしれません。
※ステルス機能について
漫画版BRで川田が外したような首輪の表面を、承太郎のスタープラチナですら、
解除へのとっかかりが見つからないような表面に 偽装してしまう機能のことです。
ステルス機能によって、首輪の凹凸、ゲームの最中にできた傷などが隠蔽されています。
※S1駅にハヤテのジョセフに対する書置きが残っています
※神社で立ったまま微笑んで死ぬ死体(劉鳳)を見ました
※村雨との協力を申し出てくれた服部に感謝しています
※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。
 首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。
654Classical名無しさん:08/09/11 21:02 ID:t6ofOEBo
           
655集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 21:02 ID:pXdO/Vhg
 スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。
 また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。
※首輪は解除されました。また首輪は核鉄(二アデスハピネス)にパピヨンがやっていたように巻き付けており、使用できます




【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:疲労小 全身に火傷(ほぼ完治)。首輪が解除されました。
[装備]:エンゼル御前(核鉄状態&首輪@エレオノールが巻かれている)@武装錬金、あるるかん(白金)@からくりサーカス
[道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式、生命の水(アクア・ウィタエ) 保健室で手に入れた様々なもの
[思考・状況]
基本:自分を助けてくれた者、信じてくれた者のためになんとしてでも主催者を倒す。
1:列車の中に居る怪人を倒す。
2:暗雲を突破しサザンクロスへ突撃する。
3:夢で見たギイたちの言葉を信じ、魂を閉じ込める器を破壊する。
4:ナギの遺志を継いで、殺し合いを潰す。
5:一人でも多く救う。
6:できる事ならパピヨンを助けたい(優先順位は低い)
[備考]
※ジグマール、村雨達(村雨、かがみ、覚悟、ヒナギク、独歩、服部、ジョセフ)と情報交換をしました。
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※夢の内容はハッキリと覚えていますが、あまり意識していません。
※エレオノールが着ている服は原作42巻の表紙のものと同じです。
※ギイと鳴海の関係に疑問を感じています。
※フランシーヌの記憶を断片的に取得しています。
※「願いを叶える権利」は嘘だと思っています。
656Classical名無しさん:08/09/11 21:04 ID:t6ofOEBo
   
657集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 21:04 ID:pXdO/Vhg
※制限についての知識を得ましたが、細かいことはどうでもいいと思っています。
※自転車@現実は消防署前に落ちています。
※才賀勝、三千院ナギの血液が溶けた生命の水を飲みました。2人の記憶をある程度取得しました。
 才賀正二の剣術や分解などの技術は受け継いでいません。
※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると核鉄に戻ります。
※独歩の言葉が聞こえたかは不明です。
※首輪の構造、そして解除法を得ました。
※ちょっとした神棚と簡単な工具さえあえれば十分に解除の条件は揃うようです。
 首輪の外装を外し、電源をオフにすれば外せます。しかし、制限装置、闘争心誤読装置は沈黙しません。
 スタンド適正付与装置はどうなるか、不明です。少なくとも、首にまかない限りはスタンドは使えません。
 また、首輪がなければ核鉄は武装錬金世界出身者以外の闘争心には反応しません。
※解除した首輪は核鉄(エンゼル御前)にパピヨンがやっていたように巻きつけており、使用できます。


【H−4 路上/2日目 朝】
【愚地独歩@グラップラー刃牙】
[状態]:体にいくつかの銃創、頭部に小程度のダメージ、左肩に大きな裂傷 左腕を深く抉られている
[装備]:キツめのスーツ、車@現地調達、伊藤博士からの手紙(ポケット内)、『注意書きを必読』と書かれたエニグマの紙(ポケット内)
[道具]:基本支給品一式×3、首輪×2、ジャッカル@HELLSING(残弾数1)、神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂
ベレッタM92(弾丸数0/15)、ハート様気絶用棍棒@北斗の拳、懐中電灯@現地調達、包帯と湿布@現地調達、不明支給品×2
[思考・状況]
基本:闘うことより他の参加者 (女、子供、弱者) を守ることを優先する。
1:列車の中に居る怪人を倒す。
2:可能なら、光成と会って話をしたい。


658集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 21:05 ID:pXdO/Vhg
[備考]
※パピヨン・勝・こなた・鳴海・覚悟・村雨・ヒナギク・かがみと情報交換をしました。
※刃牙、光成の変貌に疑問を感じています。
※独歩の支給品にあった携帯電話からアミバの方に着信履歴が残りました。
※BADANの存在を知り、かがみから首輪のステルス機能の事、解除方を知りました。また零の暗雲についての推測も知りました。
※愚地流奥義にしたいと思っている技を会得しました(意を消した拳、これを拳のみならず他の空手技にも用いる事が出来る)
※繁華街のホテル(E-2中心部)内に鷲巣麻雀セット@アカギ、置手紙が放置されています。
※伊藤博士の手紙より、バトルロワイアルに関する情報を得ました。
※『注意書きを必読』と書かれたエニグマの紙を開けば、文が記された紙が出現します。
※その文を読み上げれば、護衛している怪人達共々『列車@???』が現れます。




【村雨、かがみ、覚悟、ヒナギク、独歩、エレオノール、服部、ジョセフ、八人の共通備考】
※一通りの情報交換は終えています
※神社に強化外骨格の存在を確認しました。
※主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※五人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首輪には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている 。
659集結 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 21:06 ID:pXdO/Vhg
首輪にはステルス機能があり、身を清め水を掛ける事で解除可能
※五人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論
※BADANに関する情報を得ました。
【BADANに関する考察及び知識】
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
光成は司会役として脅されている。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって”都合がイイ”状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては”どーでもイイ”状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
660Classical名無しさん:08/09/11 21:06 ID:t6ofOEBo
 
661 ◆1qmjaShGfE :08/09/11 21:07 ID:pXdO/Vhg
以上です。支援ありがとうございました。問題点等ありましたらご指摘の方よろしくお願いします
662Classical名無しさん:08/09/11 21:51 ID:1LS5Xf3c
キタ――
乙です
663Classical名無しさん:08/09/11 21:55 ID:Bcd78Pls
だれもしなないばとるろわいある
664Classical名無しさん:08/09/11 22:16 ID:Lbt/GTWk
投下乙ッ!!

とうとう集まった8人の戦士達の決起!!!
これが壮大な戦いへの序幕と言わずしてなんと言うかッ!!

殺し合いまで至った服部とアカギのクールな行動ッッ、ジョセフのラッキーさとジョースター家の運命の全容ッッ、独歩の見せられないよ!!
ヒナギクとかがみの忘れられない日常へと望郷させる会話ッッ、しろがねの本編序盤の頃の初々しさッッ、暗闇と葉隠の暗躍ッッ!!!
そして偉大なる戦士、覚悟と村雨の姿が此処にあるッッッッッッッッッッ!!!

少年漫画を彷彿させる幕引きに、次回を俺は待つゾォォォォッ!!
665Classical名無しさん:08/09/11 22:17 ID:HJ/t87SM
投下乙!
ついに最終決戦!
戦力も新たに、彼らを待ち受けるものは!
そして、暗闇の子ぉぉぉぉぉぉぉぉお!!

相変わらずほのぼのの鬼だw
GJ!
666Classical名無しさん:08/09/11 22:27 ID:2Eflh1l6
乙!!
667Classical名無しさん:08/09/11 22:32 ID:2Eflh1l6
首輪解除で飯が食えるとか顎呼ばわりとかいちいち吹いてしまってくやしいww
なごやかムードから戦闘へ気を引き締める描写がもうたまらなくイイです
すっげーわくわくしてきたwwww
668Classical名無しさん:08/09/11 22:36 ID:o5gQXtbI
投下乙!
所々に挟まれたギャグ素敵です
669Classical名無しさん:08/09/12 00:04 ID:I6m2.Buw
投下乙です!
いよいよ始まる最終決戦にワクワクが止まらない!
そして調子に乗ってた監視員Bの末路には笑いが止まらない!!
670Classical名無しさん:08/09/12 02:12 ID:9.9sUf2I
投下乙!
正直あの展開からどうやって今回の予約メンバーの話に持っていくのかと思って
たがまさに文句のつけようのない話に痺れた!
てか顎www
671Classical名無しさん:08/09/12 17:50 ID:TMaOMMmg
乙!めちゃめちゃ面白かった!!
赤木の描写上手すぎです!!!
672Classical名無しさん:08/09/12 19:01 ID:nLy86DHQ
投下乙!!
素晴らしい!!素晴らしすぎる!!
シリアスの中にギャグを散りばめた最終決戦前夜
俺はいま猛烈に感動している!
あのロイド3人組がまんまヤッターマンの3悪で脳内再生されたぜ
673Classical名無しさん:08/09/12 19:30 ID:insvStGg
全く不自然な点がなくて素晴らしい…! これならまた時間が経っても続きを待てる…!
ところで一つ疑問があるんだ……無粋かもしれんが。
首輪の制限がなくなってるならクレイジーDでジョジョ以外の傷は治せないのかい?
それともディスク自体に制限がかかってるから参加者の傷は治せないんだっけ?
どこかで制限がかかってる描写があったと思うんだがまとめサイトが所々消失してるから参照できないんだよな……。
あとジョジョ本人の骨折は波紋で治せるんではないかと思うんだがどうなんであろう。
674Classical名無しさん:08/09/14 12:09 ID:8AGFktII
「死して機密厳守を全うせよ!」 

このコマの背景は日章であると確信する
675Classical名無しさん:08/09/14 14:37 ID:PRfVOck.
乙。「赤木シゲル」の表記がちょっと気になるんだけども
676Classical名無しさん:08/09/14 14:45 ID:1AgM2hGg
あの赤木には"しげるっ!"みたいな柔らかそうなイメージがもはや想像できん
677Classical名無しさん:08/09/14 14:48 ID:yn93kt4o
でもさ、「ゲル」って結構柔らかそうじゃね?
678Classical名無しさん:08/09/14 19:15 ID:MDJWCrL.
>>673
制限は首輪でやってるはずかと
679Classical名無しさん:08/09/14 21:14 ID:hFCieiW6
>>675>>676.>>677
お前ら、少しは頭を使え!!

アカギ(原作アカギ)→赤木シゲル(漫画ロワアカギ)→赤木しげる(天アカギ)
と赤木しげる(赤木シゲル)は進化していってるんだ!!
680Classical名無しさん:08/09/15 15:22 ID:g7YV50uc
仮にこのロワで死んでも何食わぬ顔で天の世界にいるんですね、分かります。
681Classical名無しさん:08/09/15 16:56 ID:chAL3ako
漫画サロンにアカギの墓を立てるスレとかあって吹いたw
しかも住人が真剣に語りあってるあたりアカギは信者多いんだな
682Classical名無しさん:08/09/15 17:29 ID:I51lh3BQ
アカギ、替え玉説浮上
683Classical名無しさん:08/09/15 23:48 ID:z7NTTYUs
ニセアカギですね、分かります。
684Classical名無しさん:08/09/16 01:20 ID:kxQbh7e2
ニセアカギはロワの中でも死にたくな〜いって言いながら
鷲頭様に殺されてなかったっけ?w
685Classical名無しさん:08/09/19 17:55 ID:OdOlhUDw
予約きたな
686Classical名無しさん:08/09/20 17:46 ID:2leS.5P6
がんばれー
687Classical名無しさん:08/09/21 20:48 ID:/Qb6zqc.
予約……パッピー逃げてー!!
688 ◆6YD2p5BHYs :08/09/23 12:20 ID:2yUVsN9I
すいません、今の予約中のパピヨン以下数名分、予約延長させて下さい。
なお、延長期限いっぱい使うつもりは、今のところありません。
明日か明後日には投下できると思います。
689Classical名無しさん:08/09/23 12:27 ID:siUZNUWk
>>688
了解です。楽しみにしています。
690Classical名無しさん:08/09/23 13:23 ID:enie/ntg
>>688
了解です。頑張ってください。
691Classical名無しさん:08/09/24 20:38 ID:KM9U.D4Y
まだかなー
692 ◆6YD2p5BHYs :08/09/24 21:25 ID:Sa1r.ku.
1日延長してしまってすいませんでした。これより投下します
693Classical名無しさん:08/09/24 21:27 ID:1QRSe0WU
 

――広いサザンクロスの片隅。参加者の突入騒ぎからは遠く離れた一角で――。
1人の小柄な人物が小脇に丸いモノを抱え、足早に通路を歩いていた。
全身タイツのような衣装。顔を覆い隠す奇妙な仮面。そして、両耳の位置から突き出した円錐形の突起。
BADANにおける下級戦闘員、『コンバットロイド』である。
身体改造を一切受けていない「ただの人間」が強化服を着ただけの、弱いが安上がりな戦闘員で――
改造人間『コマンドロイド』が量産される今では、既にその数は逆転し、かえって珍しい存在となっている。

そんな過去の産物と呼んでもいい戦闘員は、そして、そのエリアにある構成員の詰め所に足を踏み入れる。
そこには少しくつろいだ姿ながらも、状況の推移を伝える通信機に耳をそばだてる男たちがいた。
小柄なコンバットロイドは、彼らに問い掛ける。

「おい、状況はどうなってる?」
「なんだ、ボウズか。相変わらずヒマそうじゃねぇか。」
「ボウズじゃねぇ、『先輩』って呼べ。BADANに入ってからの時間なら俺が上だぜ」

コンバットロイドの言葉に、部屋の中にいた男たちがドッと笑う。どこか嘲笑の色も混じった笑いだ。
そう――この小柄な人物は、10人ライダーとの戦いで一度は壊滅した『旧』BADANの頃からの古株。
今の『新生』BADANになってから入った構成員からすれば、それは確かに『先輩』なのだが……
優秀で組織貢献度の高い人材から順に改造処置を受けている現状からすれば。
誰も明言したりはしないものの、古参のコンバットロイド、という時点で失笑するしかないのだった。
仮面の下で憮然とした表情を浮かべているであろう年下の『先輩』に、男たちはそれでも一応は応えてやる。

「なんでも参加者の1人が単身乗り込んできたらしいぜ。向こうのエリアじゃ改造人間とか出動して大騒ぎだ」
「具体的には、どの辺だ? 誰が乗り込んできた?」
「サザンクロスの、反対側の端の方さ。名前は……パピヨンとか言ってたかな。
 どうせすぐ鎮圧されるだろうし、ボウズが心配しなくてもここは影響でねぇよ」
「俺が担当してる研究室の『研究員』は、何かあったってすぐには避難できねぇんだよ。
 そんくらい知ってるだろうが」
695Classical名無しさん:08/09/24 21:28 ID:1QRSe0WU

コンバットロイドは苦々しげに言うと、部屋の片隅の端末に歩み寄る。
内部の構成員向けの情報を一通り確認し、現状を把握。
首輪を外した元参加者の侵入者・パピヨンがどう移動し、どう大暴れしているかを一通り把握して……
からかいの言葉を投げかける男たちを残して、その詰め所を出た。

そのまま廊下を歩き、角を曲がり、周囲に誰も居ないのを確認してから、彼は覆面を押し上げる。
マスクの下から現れたのは――意外と幼い印象の残る、少年の顔。
乱暴な脱色のせいか、色素の抜けた髪はかなりボサボサ。鼻の上を横切って走る大きな傷痕が目を引く。
彼はそして、ずっと小脇に抱えていた、黒っぽい球体に『話しかけた』。

「聞いたかよ! よりにもよって、『パピヨン』だぜ……! 『アンタ』の言った通りだ! これなら……!」
「…………」
「ああ、分かってる。こっからは俺の仕事だ。この『ジュクの秀(ヒデ)』……小島秀紀に任せといてくれ」

スイカほどの丸い物体に強く頷いてみせたコンバットロイドの少年は、そして懐からあるものを取り出す。
6角形をした、金属板。
錬金術の粋を集めた技術の結晶、核鉄。
組織内でも最下級に近い位置にいる彼には、あまりに不似合いな貴重品。
そしてその核鉄を握る手首には、どこか参加者の首輪にも似たデザインの腕輪が光る。
ジュクの秀、と自称した少年は、小さく呟いた。

「――武装、錬金」

        ※      ※      ※


暗闇大使は、怒り狂っていた。

パピヨンのあまりにも大胆な単身突入と、それに伴う甚大な被害。
暗闇大使としても、流石に我慢の限界を超えていた。
10人ライダーの前に一度は組織壊滅の憂き目に合い、満身創痍の所から必死に立て直した今のBADAN。
その過程で異世界の技術も取り込み、新たな人員も獲得し、大首領復活のメドも立ち。
いよいよようやく……というところで、その、実に1/3ほどもがごっそりと失われたのだ。

必ずや、自らの手で制裁を加えてやる。
そう強く誓って急行する最中にも、プッチ神父からBADAN構成員を介したメッセージが届く。
つまり――『パピヨンと交戦、一時は昏倒させるところまで行ったものの、予想以上の疲労で破られた』と。
暗闇大使はさらに急ぐ。

(プッチへの『制限』を強くし過ぎたか……?
 まあいい。一時でも足止めをしてくれたなら、この場は十分だ)

報告のあった位置は、通路を曲がったそのすぐ向こうだ。
行く手からは絶え間なく続く破壊音。どうやらなおも暴れているらしい。

暗闇大使は足音も荒く、その「かつて研究室だった部屋」へと踏み込んで――絶句した。

そこには――全てが破壊しつくされた空間には、パピヨンの姿は影も形もなく。
パピヨンの代わり、と言わんばかりの『表情』で部屋の中央にいたのは、小さな緑色の『生き物』。
植物とも動物ともつかない姿の、植木鉢の上に鎮座した『生き物』。
そして『そいつ』は、入ってきた暗闇大使の姿を認めると、『顔』を上げて。

「――にゃぁ。」

気の抜けるような鳴き声と同時に、明確な殺意を伴った空気の弾丸が放たれた。
698Classical名無しさん:08/09/24 21:31 ID:1QRSe0WU

        ※      ※      ※

……背後から響き続けていた破壊音の調子が、突然変わった。
一定の調子で放たれてい空気弾の着弾音が、ランダムで複雑な調子に。まるで誰かと戦っているように。
微かに罵声と、反撃らしき別の破壊音も聞こえてくる。
低速で走るヘルダイバーに跨りながら、満身創痍のパピヨンはチラリと背後を振り返る。

(配置した『囮』は、役目を果たしてくれているようだな……!)

『猫草』。パピヨンが泉こなたと持ち物を交換し、獲得した支給品の1つ。
その空気弾は強烈な威力を持つものの、正直持て余していた代物だ。
そのコントロールこそが一番の問題だったのだが……皮肉にもその点は、パピヨンの『敵』が用意してくれた。

(俺自身の前後の状況と状態、猫草の動きから判断するに、あの『ディスク』の効果は大体見当がつく。
 頭に差し込まれた者が、『全力で周囲のものを破壊する』……。
 俺が正気を取り戻すまでの時間と、消耗の度合いと、破壊の痕跡から考えて、そんなところだろう♪)

吐血の後が残る口元で、パピヨンはニィッと笑う。
そう、エンリコ・プッチ神父は『命令ディスク』を作り出す際、ある重大なミスを犯していた。
それは――絶対的に持久力の足りぬパピヨンに、『全力で』暴れ続けるよう『命令』したこと。
『命令』の奴隷となり、理性を失い、苦痛を感じる感覚すら失っても、体力自体が底上げされるわけではない。
こんな『命令』に突き動かされていては、人間や食料を『食べて』回復することもありえない。
そして、『持ちうる全力で』という条件に忠実に、彼は破壊に最も適した状態を選んでいた。
ニアデスハピネスを発動させて、空中に浮かんでいた。
『破壊』以外のあらゆることを後回しにし、後先考えずに『破壊』に専念していた。

結果、元より体力のないパピヨンは、すぐに疲れ果てて制御を失い――落下した。


無様に落下して、無様に床に頭を打ちつけて――『命令』のディスクから、解放された。
たまたま頭から打ち、たまたま綺麗にディスクが抜け落ちて、解放された。
誰の手によることもなく、ただ偶然によって解放された。
暗闇大使が現場に到着する、その前に。

確かにパピヨンは、エンリコ・プッチと正面から戦い、『敗北』した。
だが――この結末に気付いてしまえば、その意味すらも変わってくる。

(奴はこの俺に『勝利』したつもりだろうが……生憎こうして、俺はまだ生きている。
 スタンド『ホワイトスネイク』の手の内はかなり明かされた。知っていれば防げるものも多い。
 対する俺の手札は、分かっていても対処が困難なものばかり。
 もし『次』があれば必ずや俺が勝つ――さて、これで俺が『負けた』と言えるのかい?
 帝王にとって、過程や方法なんてどうでもよいのさ♪)

敗北ではなく、中断。
自分の幸運も、自分の実力のうち。
相手の油断や判断ミスも、相手の実力のうち。
そう思えば、プライドに無用の傷を負うことはない。反省点はあったとしても、落ち込むことはない。

ただ……『敗北』に打ちのめされずに済んだとはいえ、その身の消耗は激しかったわけで。
あのままでは、這って逃げることすら厳しかった。バイクに跨ることすら難しかった。
幸い、担いでいた荷物はパピヨンの『視界の外』に位置し、だから持ち物は全て残されており。
極度の疲労の中、彼はそれでも必死にデイパックを漁る。
回復のためには人間を捕食したい所だったが、生憎周囲にマトモな死体は残っていない。
全て焼けて焦げて灰になり、栄養にはならない。

ゆえに、震える手で口に運んだのは――手元にあった、いくつもの『チョココロネ』。
川田を殺して奪った荷の中に見つけた、高カロリーな食料。
もちろん大食漢なパピヨンにとっては、何個食べようと全然食い足りないものではあったが……
その僅かな食事のお陰で、なんとか立ち上がれる程度には回復したのだった。

 『――ねぇねぇ、パピヨンはチョココロネどっちから食べる? 頭派? それともしっぽ派?』

脳裏に蘇る、懐かしい声。
『彼女』が執着していた食べ物が、『彼女』を殺した男が持っていたものが、今ここで『彼』を救うという偶然。
そういえば結局自分はどっちから食べたのだったっけ。あまりに必死だったせいか、思い出せない。
――いや、今はそんなことはどうでもいい。
頭を振って感傷を振り払うと、パピヨンは考察を続ける。

(スタンド、記憶、視覚、そして命令……いや、最後の1つは抜き出すものではなく、差し込み専門か?
 ともあれ、俺から抜け落ちたものを猫草に差し込んだら、あの大暴れだからな)

『命令』のディスク、その機能を咄嗟に理解したパピヨンは、猫草を利用することにした。
猫草の生態は大雑把にだが理解している。光さえ遮断してやれば、すぐに大人しくなるのだ。
その頭部(?)にディスクを差し込んで、即ランドセルの蓋を閉めれば、パピヨン自身は襲われずに済む。
あとは十分に離れてから、そのランドセル「だけ」を極小の黒死の蝶で破壊すればいい。
爆煙が視界を遮っている間に通路の角を曲がり、猫草から見えない場所まで移動すればいい。
身体に負担のかかる高速走行は困難だが、ヘルダイバーという足もあったことだし。

(しかし 『ホワイトスネイク』とやら、相当に便利で応用の効く能力のようだが――
 その能力で『命令』したのが『あんなこと』とはな、『エンリコ・プッチ』!)
702Classical名無しさん:08/09/24 21:37 ID:q7HIPChs

唾棄するかのように表情を歪め、パピヨンは自らを圧倒した敵の名を呟く。
パピヨンはプッチとの戦闘中、BADAN研究員から抜き取られた『記憶DISC』を投げ込まれている。
それにより、『ホワイトスネイク』の『本体』のことは、大雑把にだが分かっている。
容姿。体格。エンリコ・プッチという名。BADANの組織内での彼の立ち位置。BADAN構成員からの印象。
それらに自らの手持ちの情報を合わせてみれば、かなりの推察ができる。例えば。

(戦いの最中にも見た知的で冷静な姿と、この短絡的で近視的な『命令』は、少し噛み合わない。
 俺のスタミナも無視して『全力で』などと命じるのは、『普段のヤツらしくない』。
 与えた『命令』の方向としても、『パピヨン』への敵意や侮蔑が垣間見える。
 となれば――最も考えられる可能性は、『怒りに我を忘れた』ということ。
 それも、このパピヨンにトドメを刺せる、その状態になってから)

人が判断ミスをする際、その原因が怒りであることは実際多い。
そしてパピヨンに消耗を強い、操り人形のような扱いを強いる所には、『恨み』に近い感情すら感じられる。
『命令』の内容には他にも不審な点があり、それは後ほどまた検討するとして……
まず考えるべきは、何故そのタイミングで怒ったのか、ということ。

(いや、それについては考える必要すらない。間違いなく、『パピヨンの記憶を読んだから』だ。
 あの状況下であの能力。敵の無力化に成功すれば、『あの男がそれをやらない理由がない』。
 そして、俺の記憶の一部に『怒り』を覚え、あんな『命令』を選んでしまった……!)

では、パピヨンの記憶のどこがエンリコ・プッチの『怒り』の琴線に触れてしまったのか。
この『ゲーム』に連れてこられる前……は、まず無関係だろう。
恐らくは『ゲーム』が始まってからの話。それも序盤のことではなく、相当後になってからのこと。
プッチ神父の性格と組織内での自由度から考えれば、会場内の動きの概要を掴んでいないとは思えない。
そして、予め知っていたことならば、『記憶を読んではじめて』怒るとは考えにくい。
時間的なロスがあるとしたら……そう、広めに見積もっても、放送1回分、6時間ほど。
直観的にそう判断を下したパピヨンは、そして当たりをつける。
704Classical名無しさん:08/09/24 21:39 ID:WVFAlL1I
705Classical名無しさん:08/09/24 21:40 ID:q7HIPChs

(『帝王』パピヨン――この俺の新たな名乗りが逆鱗に触れたか、プッチ!
 ……いや、『ていおうパピヨン』、確かに語呂はイマイチだな。
 これからはより華麗に、『カイザー・パピヨン』とでも名乗るか。
 とはいえ、プッチが怒ったのは語感の悪さのせいではない。
 奴の能力の使いこなしから見て、『ホワイトスネイク』に相当に『慣れ親しんで』いる。
 おそらくは、『スタンド使い』が本来いる世界の出身。
 となれば……プッチの正体は、おそらく『帝王DIO』の関係者。
 それもDIOと相当親しく深い関係にある、理解者気取りの信奉者だ――!)

きっと『誰よりもDIOを理解している』と自認していたゆえに、そこで冷静さを失ってしまったのだろう。
パピヨンなりの理解と決意に基づいて名乗った『帝王』が、DIOの下手な『贋作』に見えたのだろう。
こう考えれば、プッチのちぐはぐな行動が説明できる。
『記憶』を覗くチャンスが来るまで冷静だったことも、その後に激昂したのも、綺麗に説明できる。そして。

(そして大事なことは、エンリコ・プッチの『忠誠』の対象は、BADANという組織ではないということだ。
 彼が敬愛し傾倒していたのは、おそらくDIOひとり。
 BADANには能力を制限され首輪をつけられ、協力を強要させられていただけ。
 それにしてはDIOの参加や死には絶望もせず、反乱も試みていないようだが……
 理解者気取りの奴にとっては、DIO自体の生死よりも大事な『何か』があるんだろうな。
 例えばそう、革命家の信奉者が、革命家自身の命よりその理想を優先するように。
 なんにせよ――こうなると、あの『命令』の意味も見えてくる)

先ほど一旦棚上げにした課題――『命令』に込められた不審な点。
それは、『パピヨンを殺すことなく』『あたかも誰かに対する足止めのように』配置されたこと。
あんな『命令』を与えた、その狙い。

ここまでのプッチ神父に関する考察は、実のところさほど信憑性は高くない、とパピヨンは思っている。
まだ「こう考えれば綺麗に説明できる」という1つの『仮説』に過ぎず、『断言』できるほどの材料は手元にない。
ひょっとしたら、全く見当違いなことを考えていたのかもしれない。
だが、これだけは断言できる。
707Classical名無しさん:08/09/24 21:41 ID:WVFAlL1I

間違いなくエンリコ・プッチ神父は、BADANに対し何らかの叛意を抱いている。

(戦闘中にも少し考えたが、これはもう確定だ。奴はBADANに忠実な僕ではない。
 首輪や制限など、組織の側からも警戒されているようだが……
 何か状況が動いたか? それともBADANにはバレないと踏んだか?
 ともあれプッチは、遠くないうちに『何か』行動を起こすつもりなのだろうな。俺への『命令』も、その一環だ)

もう少し『命令』の効果が持続していれば、きっとプッチのこの企みは誰にも気づかれることはなかったろう。
『命令』に縛られ破壊活動を続けるパピヨンを、BADANの援軍が甚大な被害を出しつつも倒していただろう。
しかるに、プッチの真の狙いは『その向こう』にあるということになる。
BADANの被害を増やすような真似をして、暴れるパピヨンに注目を集めさせて、そして、その先は?

(……これ以上は、いくら考えても分からんな。判断材料が不足している。
 だが――これで、分かったことがある。
 この『BADAN』という組織には――この『帝王』パピヨンが奪い支配するだけの価値が、ない)

プッチの真意はまだ見えないが、代わりに別のことが良く分かってしまった。
そう、このBADANという組織……あまりに、『裏切り者』が多い。
それも、重要な位置に多い。
首輪の開発にも関わった『伊藤博士』は、明らかに上層部に隠れて情報のリークを行っていた。
スタンドディスクの担当者とも言える『プッチ神父』は、何やら意図を持って暗躍している様子。
放送を担当していたあの『徳川』という老人も、思えばこの殺し合いへの不満を口にしていた。
どうやら一番上にいるらしい『大首領』も、部下たちを無視して勝手な行動を取り続けている。

一言で言えば……組織として、まともな意思統一が出来ていないのだ。

突入して目撃した下位の構成員の能力も、首を傾げざるを得ない者が多い。
蹴散らした怪人の中にはそこそこの戦闘力がある者も混じっていたが、ほとんど知性というものがなく。
あれだけの数がいれば多少の連携も出来るだろうに、策もなく突っ込んでくるばかりだった。
ゆえに、パピヨンは方針を変える。
709Classical名無しさん:08/09/24 21:42 ID:q7HIPChs

(やはり欲しいものは自分で奪い取ってこそ、ということか。
 トップだけ挿げ替え、組織の方に俺が合わせるなど、考えて見れば俺の流儀じゃない。
 必要なものだけピックアップして、後は綺麗さっぱり焼き払うのが最善か)

一度はBADANを丸ごと乗っ取ることも考えたが……そのプランは、ここで完全に破棄する。
こんな組織、貰ったところで使いようがない。
欠陥だらけの組織を奪って修復するより、自分なりの組織を1から作った方が早い。

もちろん、いくつか奪う価値のあるものはあるだろう。
錬金術に通じた蝶・天才の視点から見ても、彼らの技術は相当高いものと推測できる。
構成員の中にも、ピンポイントで釣り上げて部下にする価値のある者もいるだろう。
そう、それは例えば……

いつの間にか音も無く気配もなく、虚空から染み出るようにそこに出現していた、『仮面の男』のように。

「……なるほど、『お前』がここに居るか。その可能性は、考えなくもなかったが……」
「…………」

パピヨンの言葉にも、その小柄な人影は何も応えない。
黒い兜の中央、楕円形のミラーシールドに遮られ、その人物の表情を窺い知る事はできず。
ゆったりとしたデザインのマントは身体のラインを覆い隠し、性別すらも判然としない。
それでもその『懐かしい顔』に、パピヨンは黒い笑みを深める。
目の前にいる人物ではなく、『その向こう』にいるはずの人物に声をかける。

「それでお前は、この蝶・華麗なる帝王『カイザーパピヨン』に何の用だ?
 ニュートンアップル女学院の『仮面の男』――いや、錬金術師アレキサンドリア・パワード」

        ※      ※      ※
711Classical名無しさん:08/09/24 21:44 ID:WVFAlL1I

――ぶちり。

苛立ちと共に大きな足が踏み下ろされ、小さな『いきもの』の息の根を止める。
緑色の身体から滲み出る、血液とも草の汁ともつかぬ体液。
予想外の難敵を下した暗闇大使の顔に、しかし勝利の喜びはない。

「無駄にてこずらせおって……!」

ちっぽけな、参加者ですらない支給品、『猫草』。
しかしそれは、恐るべき強敵だった。
目視困難な勢いで放たれる、高速の空気の弾。フェイントのように混ぜられる、遅い弾。
ここは放置してパピヨンを探しに行こうと思っても、放たれた空気の枷が暗闇大使の足を縛り付ける。
不自由な体勢の中、空気弾を避けながら反撃を加えても、本能で展開した空気のクッションに防がれる。
攻防共にバランスの取れた、実に手強い相手だったのだ。

もちろん最終的には、地力の差でこうして勝利を収めたのだが……暗闇大使には、苛立ちしかない。
様々なアイテムを他世界から取り寄せ用意した側の者として、『猫草』の潜在能力は知ってはいた。
しかし、なかなか参加者の意のままにはならぬ存在だからこそ、ああやって支給品として放出したのだ。
いったいどうやってああも自在に操ったのだろう? 暗闇大使は首を傾げる。
『命令』のディスクは猫草の死に『引き摺られて』消滅し、ゆえにその謎を解く鍵は残されていない。

「親父……」
「あらあら……クスクス」
「…………(ブツブツ)」
「ウフフ。『こっちも大変なことになっていたようだな』、ですって、暗闇大使」

わなわなと身体を震わせる暗闇大使の背に、3つの声がかけられる。
ジゴクロイド。カマキロイド。カニロイド。
『暗闇の子ら』と呼ばれた、3人である。
713Classical名無しさん:08/09/24 21:45 ID:q7HIPChs

「会場の方も大変なことになってるようだしよ、親父の指示を仰ぎたいと思って来たんだがな」
「ついでに苦戦してるようなら助けなきゃ、と思ったのだけど……また状況が変わっているようね」
「…………」

ボリボリと頭を掻く、不良風の容貌のジゴクロイド。
カマキロイドはその色気ある口元を歪ませ、老人の姿をしたカニロイドはただ無言。
彼らの言葉に、暗闇大使は僅かに落ち着きと余裕を取り戻すと、振り返る。

「ふん……何が起こった?」
「首輪をつけてる生存者が、いなくなったのよ。1人もね」
「どうも、何人か首輪の解除に成功したらしいぜ。明らかに怪しい会話が盗聴に引っ掛かってた」

ピクリ。
暗闇大使の表情が一瞬引き攣り、そして――何故か浮かべたのは、満面の笑み。
歪んだ喜悦に満ちた、歪な笑みだった。
それは、そう、パピヨンや猫草に受けた屈辱など忘れてしまうほどの、絶大な喜び。

「そうか…………クックック! これはいい!
 こうなればもう、逃げたパピヨンのことなど後回しだ。すぐに『最終段階』に取り掛からねば」
「親父? そりゃ……どういうことだ?」

てっきり怒り出すと思い込んでいた『暗闇の子ら』は、この暗闇大使の豹変が理解できず。
ジゴクロイドの問いに、暗闇大使はギュロ、とさらに笑みを深くする。


 「なに――大したことではない。『バトルロワイヤル』が、つつがなく『終了した』、ということだ」


        ※      ※      ※

――コポッ。コポッ。
無数の容器の中を循環する液体が、静かに音を立てる。
六角形を基調とした奇妙な部屋の中、2人の人物が向かい合っていた。
パピヨンと――そして、ニュートンアップル女学院の、『仮面の男』。

「よく、一目で私だと分かったわね。武装錬金だけ奪われている、とは考えなかったの?」
「なに、『スタンドディスク』の専門家、エンリコ・プッチと会ったばかりだったからな♪」

パピヨンはニヤリと笑うと、小さく指を振ってみせる。
『帝王』を名乗るようになっても、彼の明晰な頭脳は健在。筋道立てて己の推理を語っていく。

「首輪に仕込まれた、武装錬金の発動を狂わせる『闘争心誤読装置』の存在――
 BADANの技術がいかに高かろうとも、その開発には『俺たちの世界の錬金術』の知識は必須。
 そして奴らの組織体質を思えば、『優秀な研究者』の誘拐に走るのは必然さ」

『スタンドディスク』を必要としたら、プッチに首輪をつけてでも協力を強いる。
そんな彼らが、素直に一から錬金術の研究を始めるわけがない。
既に優れた技術を持っている者を連れてきて、彼らを脅して働かせるに決まっている。

「貴様であれば、その技術も能力も十分。
 なにしろ、『黒い核鉄』や『白い核鉄』を開発した核鉄研究のエキスパートだ。
 そして何より、貴様なら一度誘拐してしまえば、1人で逃げ出すこともできない。監視の手間もかからない。
 違うか、のーみそ」
「…………」

パピヨンはそう言うと、目の前の人物ではなく周囲の四角い培養槽に目を向ける。
『のーみそ』。そう、パピヨンが呼んだ通り、周囲の培養槽に入っていたのは……剥き出しの、人間の脳。
それも1つや2つではない。数十、あるいは百を越えるかもしれない数の脳が、ずらりと並んでいた。
周囲に壁のように重ねられたソレは、ちょっとした壁のような迫力を伴っている。
716Classical名無しさん:08/09/24 21:47 ID:qwKMd2Dg
 
717Classical名無しさん:08/09/24 21:48 ID:q7HIPChs

これが、錬金術の研究者アレキサンドリア・パワードの真の姿、真の肉体。
遥かな昔、彼女は錬金術のとある実験で大怪我を負い、首から下の肉体の機能を完全に失った。
そして7年間の意識喪失の後、辛うじて生き延びた彼女は、一人娘の協力の下に、今のこの肉体を得た。
クローン培養した肉体=脳を大量に並べた、この状態。
彼女自身の命を引き伸ばすと同時に、多数の脳の並列思考によって自らの計算能力を高めているのだ。
パピヨンの指摘に、仮面の人物は小さく溜息をつく。

「……まったく。キミは相変わらず察しが良いのね。
 ええ、キミの言う通りよ。培養槽やその維持装置も含めて、丸ごと誘拐されてきたの。
 そして、ヴィクトリアの居る元の世界に帰して貰うことを条件に、とある課題を解くことを強いられたわ。
 『誰にでも武装錬金が使えるようになる仕組み』――キミの言う、『闘争心誤読装置』の開発をね」

開発にはそう苦労しなかった。アレクサンドリアはそう語る。
元々、武装錬金には『アナザータイプ』と呼ばれるものが知られている。
他人が使用していた核鉄から武装錬金を発現させた際、『前の持ち主の武装錬金』の意匠が混じる現象だ。
それらはあくまで外見変化に留まり、性能には影響を与えないのだが……彼女は、ここに目をつけた。

『アナザータイプ』があるということは、核鉄には『前の持ち主』の『闘志の影響』が残っているのではないか。
長年愛用した道具に持ち主の匂いが染みつくように、『闘争心のパターン』の痕跡が残されるのではないか。
これをより直截的に発現させることが出来れば、『前の持ち主の武装錬金そのもの』が作れるのではないか。

そうした仮説の下に作り上げたのが、この『闘争心誤読装置』――『闘争心同調フィルター』。
『闘争本能』を『フィルター』に通すことで、一度、個性も波長パターンもない『真っ白でフラットな状態』にして。
『純粋な闘争心』は、『核鉄に残された過去の波長パターン』に『同調』し、『前の』武装錬金を作り出す――。
細かい理屈を抜きに概念的な説明をすれば、こういうことになる。
719Classical名無しさん:08/09/24 21:49 ID:1QRSe0WU

首輪として付ければ、その人物から発せられる『闘争心』の全てが『フィルター』を通ることになる。
核鉄に巻いて使えば、その核鉄に流し込まれる『闘争心』だけが『フィルター』を通ることになる。
それぞれ、『その核鉄の前の持ち主』の武装錬金を発現させることが出来る。

「後者の方法は、私も想定していなかったのだけど……
 その方法を思いついたということは、原理の概要は分かっていたようね。キミは優秀な錬金術師だし」
「フン。この程度は、少し考えればすぐに分かることだ。のーみそに教えてもらうまでもない。
 むしろ、俺が聞きたいのは……
 貴様が何故今になって行動を起こし、何故この俺に接触したのかということなんだがな。
 こうして俺を匿っているのも、BADANに知れたら大変なことだろう?
 臆病で慎重な貴様にしては、かなり大胆な行為だな?」

腕を組んだまま、パピヨンは不機嫌そうに鼻を鳴らす。
今更、この蝶・天才な頭脳を褒められても何も出ない。
それより気になるのは、こうしてアレキサンドリアがBADANの裏事情を堂々と喋っているという事実。
こうしてパピヨンを自分の目の前に連れてきて、匿っている事実。
それはつまり、BADANへの裏切りの意志を固めた、ということなのだろうが……
正面からの戦いでは被害が大きい、と見たパピヨンを嵌める罠の可能性も、ないでもない。
その疑いの視線には気付いているのだろう、仮面の人物は苦しそうに告白する。

「最初の約束が、守られなかったのよ。
 いえ……最初の約束を交わした時点で、私と彼らの間に認識の齟齬があったと言うべきか」
「ほう?」
「私は『闘争心同調フィルター』を開発した時点で、解放されると思っていた……。
 けれど彼らは、その性能に納得しなかったの。
 魂なき『再生怪人』が、武装錬金を発現させることが出来なかったから」
721Classical名無しさん:08/09/24 21:50 ID:q7HIPChs

アレキサンドリアがBADAN側から求められたのは、『誰にでも武装錬金が使えるようになる方法』。
それに応えての『闘争心同調フィルター』であったが、しかし、その『誰でも』の言葉の範囲が問題だった。
普通の人間は、例え異世界の住人であっても、核鉄を武装錬金にすることが出来た。
彼らには生きる意志が、すなわち『闘争心』があり、『闘争心』さえあればあとは『フィルター』が働くのだから。
しかし――『魂のない』再生怪人には、その、『生きる意志』がない。『闘争本能』がない。

再生怪人。それは、BADANが以前から持っていた技術だった。
戦いに倒れて死んだ怪人を、その名の通り『再生』させる技術。
しかし、幸いと言うべきか、残念ながらと言うべきか――再生させられた怪人は、元の怪人よりも弱い。
ほとんどの再生怪人は知性もなく、感情もなく、個性や人格も損なわれ。
文字通り、『魂がない』と呼ぶべき状態になってしまう。
そんな彼らに、『闘争本能に反応して発現する』武装錬金が扱える道理もなかった。

「そういえばさっき俺が戦った中にも、クモやらトカゲやらの怪人がいたな。
 ま、みな歯ごたえはイマイチだったが」
「それらはおそらく、実験的に再生された下級の怪人じゃないかしら。
 BADANは『過去に倒された強力な怪人』をゾンビのように蘇らせて、いずれ幹部の座に据えたいみたい。
 そうしておいて、数の限られる核鉄を彼らに与えたいようよ。
 十面鬼、百目タイタン、悪魔元帥……暗闇大使がいくつか名を口にしたのを、覚えているわ。
 もっとも組織の噂に名前が挙がったことはないから、まだ再生途中か、再生を計画中、ってとこでしょうね」
723Classical名無しさん:08/09/24 21:52 ID:1QRSe0WU

ともあれ、BADANの真意は『魂のない再生怪人に、異世界の強力な武器・核鉄を使わせたい』。
それ以外の部分は――例えば、今回の戦いに『闘争心誤読装置』が組み込まれたのは、ちょっとした余禄。
殺し合いの加速に使えるのならば使っておこう、程度の認識であったようだ。
ゆえに、アレキサンドリアの開発した『装置』は別のチームの手に渡り、小型化の研究が別個に行われ。
アレキサンドリアには、今度は『なんとかして再生怪人に武装錬金を使わせる研究』が押し付けられた。
今度は全く道筋さえ見えない、新しい研究。新たな課題は、遅々として進まなかった。

「……ところでのーみそ。1つ聞きたいんだが……」
「何かしら」
「お前は俺のことを『知っていた』ようだが……お前に残された『時間』は、あとどれほどだ?
 平行世界や時間軸のズレには、既に気が付いているはずだ。
 お前は『いつから来た』Dr.アレクだ?」
「…………キミは本当に察しがいいのね。冷徹で、残酷な程に……」

そう、そして新たな研究を押し付けられ、行き詰ったアレキサンドリアが反抗を考え始めた理由。
それは、彼女自身に残された『残り時間』の少なさだった。
クローン培養や培養槽などの技術を組み合わせても、本来のDr.アレクは既に100歳を越える老齢。
そう遠くないうちに細胞の限界が訪れ、彼女の組織は砂のように崩れていくことだろう。
彼女が当初BADANに素直に協力したのも、そうなる前に娘の下に帰るため。
しかし、課題を1つ仕上げてもさらなる課題を押し付けられ、しかもその解決のメドも立たないとなれば……!

「察しの通り、私が『この世界』に連れてこられたのは、キミたちと初めて会った直後。
 それから『この世界』の中で一ヶ月近くが経過して、私に残された時間は、あと僅か。
 『元の時代』に置いてきた『精製中の白い核鉄』は、きっと自動制御によって完成する頃合だと思うけど……
 それでもまだ、やり残したことがある。
 私には、娘と夫に伝えたい言葉がある。私が『終わる』前に、伝えておきたい遺言がある」
「……感傷だな」
「そうね、つまらない感傷かもしれないわね。でもそれが、臆病で慎重な私を突き動かしている、『全て』よ」
725Classical名無しさん:08/09/24 21:53 ID:qwKMd2Dg
 
726Classical名無しさん:08/09/24 21:53 ID:qwKMd2Dg
  
727Classical名無しさん:08/09/24 21:54 ID:WVFAlL1I

己の身の上話を一通り終え、アレキサンドリアは溜息をつく。
彼女にはもはや、BADANに与えられた課題をこなすだけの時間はない。
残された時間のうちに、彼らの要求に応え、その報酬として元の世界に帰還する望みは断たれてしまった。
ゆえに、彼女はBADANを裏切る。BADANを裏切る者に接触して、一刻も早い帰還を目指す。
アレキサンドリアの真意を理解したパピヨンは、つまらなそうに蝶の仮面を押し上げた。

「つまりは、のーみそ。
 お前は、元の世界に帰れる見込みがあるなら、このカイザーパピヨンに忠誠を誓うと。そういうことだな」
「……いつの間にキミは名前を変えたのかしら。
 まあ、『私から』の条件は、その通りよ。ただ、私『たち』が協力するための条件は、もう1つある」
「私たち? どういうことだ?」
「忘れたの? 『仮面の男』は、2人で1人。つまり――」

その言葉と同時に――『仮面の男』が、その『仮面』を外す。
その下から現れたのは、鼻を横切る傷痕も印象的な、小柄な少年。
彼は臆することなくパピヨンを見上げると、はっきりと言い切る。

「Dr.アレクの条件だけじゃ、俺は協力できねぇ。
 俺はBADAN構成員、Dr.アレク研究室の警備・雑用担当、ジュクの秀。
 俺が組織を裏切って協力したから、Dr.アレクもここまで出来たんだ。
 帝王だかなんだか知らねーけど、この俺様抜きで、話を進めるんじゃねえよ」
「ふむ。で、秀とやら。その条件とは?」

  「三影の兄貴の……怪人『タイガーロイド』の『再生』に、手を貸してくれ」

        ※      ※      ※
729Classical名無しさん:08/09/24 21:54 ID:qwKMd2Dg


 
730Classical名無しさん:08/09/24 21:54 ID:q7HIPChs
731Classical名無しさん:08/09/24 21:55 ID:1QRSe0WU

ジュクの秀、こと小島秀紀と、Dr.アレク、ことアレキサンドリア・パワードの関係は、一月ほど前に遡る。

早く娘の下に帰りたい一心で、BADANへの協力を承諾したアレキサンドリアだったが……
研究を進めるに当たって、『肉体』がないことが大きな障害となった。
何をするにも、やはり2本の腕は要る。

そして脳だけの存在であるアレキサンドリアは、その欠陥を補える武装錬金を持っている。
『兜(ヘルム)』の武装錬金、『ルリヲヘッド』。
特性は、その兜を被った者の肉体を支配し、自由に動かせるというもの。
だから、アレキサンドリアに核鉄と、支配するための生贄を1人渡せは、それで全て丸く収まる。
その2つさえ揃えば、すぐにでも手も足も備えた研究者となり、与えられた課題が進められるのだが。

BADANの側は当初、アレキサンドリアがその『肉体』を使って謀反を起こす可能性を懸念していたのだ。

下手にコマンドロイドの『肉体』など与えて、大暴れされては堪らない。
かといって研究員の『肉体』を与えれば、その脳内をスキャンされてBADANの機密技術が漏れてしまう。
通信要員など信用の低い新入りでは、アレキサンドリアと共謀して反乱を企む可能性もある。
またアレキサンドリアの側でも、改造を受けた怪人相手では、兜のシンクロ率が低下する問題があった。
ゆえに、『アレキサンドリアに協力し肉体を貸す人員』として、この少年のコンバットロイドが選ばれたのだ。
組織の中ではかえって珍しい、『ただの人間』。
コマンドロイドほどの戦闘力は無いから、仮に暴れだしてもすぐに鎮圧できる。
その一方で強化服を着れば最低限の戦闘力はあるから、研究室直属の護衛としてちょうどいい戦力になる。
ずっと下っ端で研究にも機密にも深くは関わってないので、脳をスキャンされても大した問題はない。
何より、壊滅前の『旧』BADANからの古顔なので、この少年が裏切る可能性は低いはず――、だったのだ。

        ※      ※      ※
733Classical名無しさん:08/09/24 21:57 ID:WVFAlL1I

「だけど、あいつらは……『今の』BADANは、三影の兄貴を見捨てやがった。
 誰よりもBADANに忠実だった兄貴を、使い捨ての駒みてぇに、見殺しにしやがったんだ」

――先ほどと同じく、六角形を基調とした奇妙な部屋の中。
つまり、『避難壕(シェルター)』の武装錬金、『アンダーグラウンド・サーチライト』内の部屋。
今の彼らの目の前には、明らかに外部から持ち込まれたと分かる、周囲と意匠の異なる水槽があった。
ちょうど棺くらいの大きさのプールの中、いくつものコードに繋がれ、沈んでいた裸の男は。

三影英介。
またの名を、タイガーロイド。
殺し合いのゲームの序盤に、定められたエリアの外に踏み出て爆死した、BADAN所属の改造人間だった。

もちろん、既に死んでいる。首と胴体とを断ち切られては、いくら改造人間でも生きてはいられない。
だがその首の傷口は繋ぎ合わされ、何やら修復が始められているようだった。
彼が浸かっているそのプール……サザンクロス内部で散々暴れたパピヨンには、見覚えがある。
秀の腕の中に抱かれた格好の『ルリヲヘッド』が振動し、その推理を補足する。

『このシステムは、私がBADAN側に無理を言って提供してもらったものよ。
 『再生怪人に核鉄を使わせたいのなら、再生怪人を作るシステムごと調べさせてくれ』――そう言ってね。
 技術の一端でも掴めれば何かに利用できると思ったのだけど、こういう風に役立つとは思わなかったわ』
「兄貴の身体は、昨日の夜中に、俺が『ヘルメスドライブ』の核鉄を使ってこっそり回収してきた。
 まだ、BADANの上の連中は気付いてないはずだぜ」
「なるほど。『アンダーグラウンド・サーチライト』と『ヘルメスドライブ』のダブル武装錬金か」

『闘争心誤認装置』の開発に成功したアレクサンドリアは、それよりBADANの信頼をも得た。
『ルリヲヘッド』の核鉄のみならず、避難壕や探知機(レーダー)の核鉄をも貸し出させることに成功したのだ。
『アンダーグラウンドサーチライト』は、よりよい研究環境を作るために。
『ヘルメスドライブ』は、核鉄の方に手を加えて再生怪人にも使えるようにする実験の材料、という名目で。
それぞれ、無期限の貸与を受けていた。
735Classical名無しさん:08/09/24 21:57 ID:q7HIPChs

パピヨンは思い出す。通路で『仮面の男』と出会い、この場所に来るまでのことを。
あの時も、『仮面の男』は音も無く姿を現し、そして、音も無くパピヨンと共にこの部屋に移動した。
『探知機(レーダー)』の武装錬金、『ヘルメスドライブ』の特性は『索敵』及び『瞬間移動』。
当然そこには、その武装錬金の使用者が要る。アレキサンドリア以外に、自発的な協力者が必要となる。
ニュートンアップル女学院の、いやBADANの『仮面の男』も、2人で1人。
アレキサンドリアと秀が協力してこそ、こうして行動を起こすことが出来たのだ。

ただ、秀は既に『アンダーグラウンド・サーチライト』を展開している。
武装錬金の展開自体は、その手首につけた腕輪――『闘争心誤読装置』の試作型で補えるとしても。
ここにもう1つ『ヘルメスドライブ』を展開するのは……『ただの少年』に過ぎない秀には、相当な負担だ。
ダブル武装錬金という大技、本当ならば、軽い気持ちで素人がやれることではない。
いったい、何が彼をここまで駆り立てるのか。

「兄貴が……三影の兄貴がいたから、俺はこのBADANに入れたんだ。
 兄貴が居なきゃ、俺はきっとまだあの街で、クズみたいな生き方を続けてたと思う。
 その兄貴が、何も教えられずに、こんなバカなイベントに放り込まれて、こんな姿になっちまって……。
 俺、もう今のBADANには、ついていけねぇよっ……!
 こんなの、兄貴が認めてたBADANじゃねぇっ……!
 散々無茶苦茶なことはしてはきたけど、俺たちが信じたBADANは、身内に対してこんなことしねぇ!!」

秀は拳を震わせる。
誰よりもBADANに忠実で、誰よりもBADANに自らの存在を賭けていた三影英介、タイガーロイド。
だが、その彼を当のBADAN自身があっさり裏切って見せたのだ。
三影との縁でBADANに入り、三影に心酔していた少年が組織を見限るには、十分過ぎる理由である。
737Classical名無しさん:08/09/24 21:59 ID:WVFAlL1I

「……ここにいる『三影英介』は、お前の知っている『三影英介』ではないかもしれないぞ?
 下手をすれば、お前の存在すら知らない可能性がある」
「分かってる。てか、ンなこともう知ってる。
 『俺の知ってる過去』の中じゃ、兄貴は10人の仮面ライダーとの戦いで、正々堂々戦って散ったんだ。
 俺、頭はあんま良くねぇけど……Dr.アレクに何度も説明してもらったから、もう分かってるよ」
「再生怪人は、魂がなくなるんだろう? 蘇ってもお前のことなど理解できないかもしれないぞ?」
「それも、とっくに散々Dr.アレクに言われたよ。
 それでも目の前に兄貴がいるなら……兄貴が蘇るかもしれない方法があるなら、じっとしてられねぇよ!」

秀には、圧倒的な力への憧れがあった。BADANへの忠誠心もあった。
けれども、最も強い動機をあえて探すのならば、それは三影への激しい憧憬なのだった。
三影のためなら、危険だって犯せる。
三影が愛した組織も、裏切れる。

「Dr.アレクのお陰で、ここには怪人再生用の設備は整ってるけど……時間が、足りねぇんだ。
 普通に三影のアニキを再生しようとしたら、何日も時間がかかる。俺たちにはそんなに時間がねぇ。
 それで、あんたなら既にある技術に手を加えて、間に合わせることが出来るかも、って言うから……!」
「それで俺に泣きつく気になったと。まあ賢明だな」

アレキサンドリアの寿命は、すなわちBADAN上層部に隠れてタイガーロイドの死体を隠し持てる限界時間。
彼女が死ねば、おそらくすぐにこの研究施設の設備は取り上げられる。秀1人で反抗を続けるのは難しい。
大体、そう頭の良くない秀だけでは、再生怪人を再生させる原理も理屈も分からない。

パピヨンは思案する。
怪人を再生怪人として蘇らせる技術――設備と手引書が揃っているなら、きっとパピヨンにも理解できる。
素早く分析し独自のアレンジを加え、再生に要する時間を一気に短縮できるかもしれない。
蝶・天才たるパピヨンが得意とするのは、他人が開発した技術の『応用』と『発展』。
ドクトルバタフライの『再生フラスコ』を応用発展させたり、短時間で『白い核鉄』を完成させたり……
既存の技術を踏まえ、自分なりの創意工夫を加え、時間短縮を図るのは得意中の得意と言っていい。
739Classical名無しさん:08/09/24 21:59 ID:1QRSe0WU
740Classical名無しさん:08/09/24 21:59 ID:q7HIPChs

「ふむ、ついでに『クローン技術によるホムンクルス再生』の技術も織り込めば、面白いことになりそうだな。
 ちょうど片手間に、以前部下だった動物型ホムンクルスを蘇らせる研究をしていたところでな。
 理論上は、知性も蘇る。『魂がない』という状態には、ならないはずだ。
 ま、ホムンクルスと改造人間では勝手の違う所もあるから、上手く行くかどうかは分からないが……」
「で、出来るんだな!? 三影の兄貴を、ちゃんと生き返らせられるんだな!?」
「まあ、五分五分といったとこだがな。時間を短縮しようと思ったらさらに確率は下がる」
「兄貴が生き返ったら、きっと手を貸してくれる! 裏切ったBADANと戦ってくれるはずだ! だから……!」
「俺としても三影英介は『興味のある』相手だ。が……」

詳細名簿で読んだ三影のプロフィールを思い出し、パピヨンは自らの顎を撫でる。
『偽善者』を嫌い、力を信奉するその態度。名簿を見ていて、一度会って見たかったと思った相手の1人だ。
その能力を考えれば、『帝王』パピヨンの部下に加えられるなら加えてやりたい。そう思う。
とはいえ……。ここで素直に頷いてしまったら、それはもう『パピヨン』ではない。彼にも譲れぬ哲学がある。

「だが、NON! この俺が素直に貴様の願いを聞くと思ったら、それは大間違いだな」
「ちょっ、なんでだよ!」
「蘇った三影に、俺のために働いて貰うのはもちろんだ。だがジュクの秀、お前は何が出来る?
 帝王たるこの俺を働かせる代償として、お前は何を差し出せる?」
「……何が望みだよ。俺に出来ることなら、何でもやるぜ!?」

必死な想いの滲む、秀の言葉。そしてパピヨンは、ニタァッ、と黒い笑みを浮かべた。

「なに、大したことを頼みはしない。
 無能ゆえに今のポジションに配置された貴様に、俺は何も期待していない。
 だが今の俺は、何をするにも消耗しきっているのでな。
 だから――ジュクの秀。
 抵抗せず、素直にこのカイザーパピヨンに、『餌』として『糧』として、命を捧げろ。
 そうすれば、三影を『蘇らせてやってもいい』」

        ※      ※      ※
742Classical名無しさん:08/09/24 22:02 ID:q7HIPChs
743Classical名無しさん:08/09/24 22:02 ID:WVFAlL1I

パピヨンは、不完全ではあるがホムンクルスである。

食人衝動は一切ないが、その最高の食料は『人間』だ。
それ以外のモノでエネルギーを補給しようとすれば、莫大な量が必要になってくる。
彼自身、その生態を一度は封印していたが……こなたの遺体を『喰って』からは、再び解禁していたわけで。

そして、今。
『帝王』のプライドゆえに、平気な様子を装ってはいたが……パピヨンは、疲労の極致にある。
プッチ神父の『命令』で大暴れした挙句、一度は墜落までした身だ。
数個のチョココロネを貪った程度では、全然足りはしない。

「俺は『人喰いの化物』だ。この消耗しきった身体を癒すには、人間を喰らうしかない。
 だが不幸なことに、このBADANには喰えるような『人間』がそもそも少なくてな。
 ホムンクルスが他のホムンクルスを捕食できないように、改造し過ぎた改造人間も、どうやら捕食できない」
『ぱ、パピヨン君! それなら……』
「のーみそは黙っていろ。俺は今、この秀という男と会話をしている。『なんでもやる』と言ったのはこの男だ。
 あんまり五月蝿いようだと、培養槽ごと叩き割るぞ」

パピヨンは近くの培養槽を軽く叩いて、アレキサンドリアを黙らせる。
命を差し出せという、あまりの要求。声の出ない秀の顔を、歪んだ笑みを浮かべて覗き込む。
その恐怖混じりの表情は、既にアレキサンドリアから『ホムンクルス』の生態を聞いているのだろう。

ここまでの疲労の極致にあれば、長時間集中して作業を続けるのは難しい。
三影の早期再生、という目的には、明らかに障害になる。
さりとて、核鉄と休息で回復を待つには、時間がない。
外に出て適当にBADANの人間を襲うのも論外だ。せっかく上手く隠れたのに、あまりにリスクが大きすぎる。

「それに、命の代価には、やはり命が相応しい。そうは思わないか?」
745Classical名無しさん:08/09/24 22:03 ID:zHB97KaY
   
746Classical名無しさん:08/09/24 22:03 ID:KM9U.D4Y
キター
747Classical名無しさん:08/09/24 22:03 ID:qwKMd2Dg
 
748Classical名無しさん:08/09/24 22:03 ID:WVFAlL1I

パピヨンの楽しそうな問い掛けに対し……しばし、沈黙。
俯いていた秀は、そして絞り出すような声で答えた。

「…………分かった」
『秀君ッ!?』
「だけど、パピヨンッ!」

少年は叫びながら顔を上げる。
ジュクの秀。そう名乗っていた、新宿の裏通りをうろつく安っぽいチンピラ。
世を恨み捻くれ果てて、力だけを求めてBADANに入り込んだはずの、少年。
BADANの組織の最底辺で、改造処置の順番が回ってこないことを愚痴ってばかりいた彼。
その彼が――今は、憧れの兄貴のために。

「パピヨンッ! 俺は死んでもいいからっ! 絶対、絶対兄貴を生き返らせてくれっ!
 でないと……でないと俺、恨んで出るぞっ! ええおいっ!」

涙が溢れる。顔が歪む。
今きっと自分はとても酷い顔をしているに違いない、そう、秀は思う。
はっきり言って死ぬのは嫌だし、怖いし、悔しい。何で俺が、と思わなくもない。
まだまだやり足りないことはいっぱいあって、何より、三影の兄貴にもう会うことは出来ない。
これで三影が復活するとしても……秀自身は、その三影と会うことは出来ない。

ぽん、と秀の頭の上にパピヨンの手が乗せられる。
Dr.アレクが以前した説明によれば、『ホムンクルス』はこうやって掌から人間を喰らうことが可能だという。
死をもたらす『人喰いの化物』の手の感触に、秀は、『これが兄貴だったらな』と、意味もなく考えていた。

――ああそうだ。きっと俺は、兄貴に、認めて欲しかったんだ。

        ※      ※      ※
750Classical名無しさん:08/09/24 22:04 ID:q7HIPChs
751Classical名無しさん:08/09/24 22:04 ID:zHB97KaY
 

――コポッ。コポッ。
無数の容器の中を循環する液体が、静かに音を立てる。
六角形を基調とした奇妙な部屋の中、何かを咀嚼する音に混じって、会話が続く。

「ところで、のーみそ。この『アンダーグラウンド・サーチライト』、BADAN側にどれほど隠し通せる?」
『そうね……入り口はさっき封鎖して偽装したから、こちらから開かない限り、半日は隠し通せると思うわ』
「…………おい」
「半日も持てば十分か。向こうの動きを探る手段は?」
『予めライフラインと一緒に、こっそりサザンクロス内部の通信回線を引き込んでいるわ。
 大雑把な動きでよければ、これで掴めるでしょう』
「ふむ。……それにしても、『コレ』は不味いな。好き好んで喰う奴の気が知れん」
『あら。娘は美味しい美味しいって食べてた自慢の一品なのに。やっぱりミートパイにしないとダメかしら』
「…………おいっ!! なに呑気に食い物の話なんてしてんだよっ!」

いくら呼びかけても振り返らぬ2人に、少年はとうとう声を荒げる。
少年。
そう……パピヨンに『命と引き換えに』三影の復活を頼んだはずの、ジュクの秀だった。
苛立つ彼に、パピヨンは手にした『肉の塊』(?)を齧りながら振り返る。

「なんだ、お前も喰いたいのか? だが人間にはあまりお勧めできんな。倫理的に同族喰いはマズいぞ」
「そういう意味じゃねぇよ! なんでそのっ、お前っ……!」
「『お前』じゃない。『カイザーパピヨン』と呼べ。それも、もっと畏怖を込めて」

むしゃむしゃ。ごっくん。食べかけの肉塊を飲み下すと、パピヨンは秀に向き直る。

「貴様は、俺に命を預けて見せた。口約束を反故にされかねない状況で、命を差し出して見せた。
 そんな信頼を寄せられて、そう簡単に殺せるわけがないだろう。
 せいぜい、命がけで働いてもらうぞ。
 その働き如何では、後で改造人間にでも人間型ホムンクルスにでも、何でもしてやる」
753Classical名無しさん:08/09/24 22:06 ID:q7HIPChs
754Classical名無しさん:08/09/24 22:06 ID:zHB97KaY
   

そう――最初っからパピヨンは、秀を『喰らう』つもりなど無かったのだ。
試したかったのは、彼の忠誠心。彼の覚悟。
そして刷り込みたかったのは、帝王カイザーパピヨンへの畏怖。

消耗回復のための食事は、別にアテがあった。
あの時、横から声を上げかけた、アレキサンドリア。
無数の脳から成る彼女の身体はクローン培養で増やされたものであり、そしてその培養は、時に失敗する。
そして彼女の『現状』を維持するには、クローン培養は常に続けなければならない。
パピヨンと同様のホムンクルスであった、アレキサンドリアの娘・ヴィクトリアの『主食』。
アレキサンドリア・パワードの『クローン失敗体』。
クローンとしては失敗作としても、十分に『人間の肉体』だ。ホムンクルスの栄養源にはなる。
ヴィクトリアはこれをミートパイの形などに調理し、『ママの味』などと嘯いていたものだが……

「不味い上に、まだまだ足りんな。おいのーみそ。『ミートパイ』の『材料』、あるだけ全部よこせ」
『はいはい。そこに保管してあるから、いくらでもどうぞ』
「それと秀。お前も休める時に休んでおけ。
 また『ヘルメスドライブ』を使うことになるかもしれんからな」
「いや、それはいいけど、これからどうすんだよ、パピヨン……いや、帝王様よォ」

秀は不安げな声を上げる。まあ、それはそうだろう。
BADANの強さ、怖ろしさは、彼自身がよく知っていることなのだ。
パピヨンはそんな彼の前で、チッチッ、と指を振って見せた。

「まあ焦るなよ♪
 おそらく、そう遠くないうちにBADANに大きな動きがある。
 俺たちを無視して、BADANに戦いを挑む連中が出てくる。
 それに乗じて、俺たちも動けばいい。
 『帝王』とその一味を甘くみた連中を――最高のタイミングで、横合いから、思い切り、殴りつけるのさ♪」
756Classical名無しさん:08/09/24 22:08 ID:zHB97KaY
     

パピヨンは考える。
エンリコ・プッチは、いつかきっと反乱を起こす。
会場内に残った生存者たちも、いつかきっと、サザンクロスに突入してくる。
行動を起こすとしたら、まさにその時だ。BADANが彼らに対して全力を投入している隙に――奇襲する。
技術や人材や、核鉄などの重要アイテム。これらを横から、奪い取る。
『時と世界を超える技術』も奪えるのなら奪えば、例えばアレキサンドリアの帰還を果たすこともできる。

当面の目標は、『帝王』として従えるに値する『部下』の確保。
畏怖をもって皆を支配する道……そのためには、力が必要だ。
圧倒的な、力が必要だ。

幸い――準備の時間はある。
現在この『アンダーグラウンド・サーチライト』は、サザンクロスの床面から展開している。
しかし避難壕本体は亜空間に位置し、出入り口も偽装や移動させることが出来て。
BADANサイドがパピヨンたちを探そうとしても、相当の時間、誤魔化すことが出来る。
回復や、作戦の検討の時間が作れる。。

(再生処理中の死体。
 のーみそ。
 ただのガキ。
 『帝王』の『最初の部下』としてはなんともしまらんが……今は仕方ないか♪)

タイガーロイドの再生が間に合うかどうかはまだ分からず、再生しても素直に従うかどうかはまだ不明。
他人を乗っ取れるアレキサンドリアの武装錬金は便利だが、当のアレキサンドリアがいつまで持つものやら。
そして、ある程度の装備は手元にあるものの、当人はただの無力な少年でしかない秀。
部下としては、実に不安の募る陣容ではある。だが。

(闇の帝王たるDIO。世界、いや全ての平行世界をも支配せんとするBADAN。
 さらなる高みの存在を知って、羽撃かずにいられる俺ではないッ!
 いや、奴らのさらに先には、奴らでさえ未だ届かぬ広い空が広がっているッ!)
758Classical名無しさん:08/09/24 22:08 ID:q7HIPChs

この地に呼び出される前の彼なら、そんなこと考えもしなかったろう。
武藤カズキも泉こなたも居ない世界など何の意味もない、と絶望に落ち込んでいたかもしれない。
だが、パピヨンは既に知ってしまった。パピヨンには見えてしまった。
世界をただ燃やし尽くすよりも遥かに深い、偽善の対極にある道――。ならば。

(エンリコ・プッチ。確かに今の俺は貴様すらも満足させられない存在かもしれない。
 従える部下も、今はどうしようもない雑魚ばかりなのかもしれない。だがな)

「俺は必ずや、更なる高みにまで翔んでみせるっ!
 いずれ全てを支配する帝王、カイザーッ、パピ、ヨンッ!
 その蝶・華麗なる名を、畏怖と共に、心に刻み付けろッ!」

帝王カイザーパピヨンの覇道は、まさにここから始まるのだ。


【マップ外/『アンダーグラウンド・サーチライト』内 二日目/昼】
【パピヨン@武装錬金】
[状態]:疲労(大)、ドブ川の濁ったような瞳、帝王への決意、首輪解除済み。食事で回復中。
[装備]:ライドル@仮面ライダーSPIRITS、マイクロウージー(9ミリパラベラム弾32/32)、予備マガジン2、
    アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙
    サンライトハート(核鉄状態&首輪巻かれている)@武装錬金
    ニアデスハピネス・アナザータイプ=核鉄(激戦)@武装錬金(ニアデスハピネスとしては消耗大)、
    ヘルダイバー@仮面ライダーSPIRITS、ライダーマンのヘルメット@仮面ライダーSPIRITS
    ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾1発、劣化ウラン弾、残弾0発)@HELLSING、
[道具]:支給品一式、ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン
    地下鉄管理センターの位置がわかる地図、地下鉄システム仕様書
    ルイズの杖、参加者顔写真&詳細プロフィール付き名簿、首輪探知機@BATTLE ROYALE、
    首輪(鳴海)、解除済みの首輪の残骸×2(赤木、川田)、ツールセット、不明支給品1(未確認)
    アレクサンドリア・パワードのクローン失敗体(人間数人分)
760Classical名無しさん:08/09/24 22:09 ID:zHB97KaY
          
761Classical名無しさん:08/09/24 22:09 ID:WVFAlL1I
[思考・状況]
基本:BADANを打倒し自らの部下を揃え、蝶華麗なる帝王・カイザーパピヨンとして世界に君臨する。
1:他の生存者やプッチの行動によって、BADANに何か動きが起きるまで待つ。
2:タイガーロイドの再生・復活を試みる。
3:ジュクの秀、アレキサンドリア、(再生すれば)タイガーロイド、を部下として、BADANを打倒し技術を奪う。
4:赤木、プッチ、大首領に自分を舐めたことを後悔させる。
[備考]
※猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険、「目に入ったものを全力で破壊する」命令のDISCは、
 パピヨンが逃げる際の囮として置き去りにされ、暗闇大使の手で破壊されました。


【アレキサンドリア・パワード@武装錬金】
[状態]:健康。寿命が近い?(正確な残り時間は不明)
[装備]:(ルリヲヘッド@武装錬金)、大量の脳の培養槽
[道具]:研究施設(核鉄関連の設備、再生怪人関連の設備)
[思考・状況]
基本:寿命が来る前に、娘の所に戻って最期の遺言を伝える。そのためにBADANに反逆する。
1:当面はパピヨンに従い協力する。


【ジュクの秀(小島秀紀)@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(大)。Dr.アレクへの信頼。パピヨンへの恐れと信頼。
[装備]:コンバットロイドの強化服、アンダーグラウンド・サーチライト(展開中)@武装錬金、
     闘争心誤読装置・試作型(腕輪型)、
     ルリヲヘッド(アレクサンドリアのコントロール下で発現中)@武装錬金
[道具]:核鉄(ヘルメスドライブ)@武装錬金、
[思考・状況]
基本:三影のアニキ(タイガーロイド)を復活させる。現BADANへの不信と疑い。
1:当面はパピヨンに従い、命がけで協力する。
2:パピヨンが三影を復活させることに期待。
3:三影が復活し、三影がパピヨンと対立しないのなら、その後もパピヨンに従って動く。
[備考]:ここにいる三影とは、出身の時間軸が異なります。そのことを既に理解しています。
763Classical名無しさん:08/09/24 22:11 ID:zHB97KaY
     
764Classical名無しさん:08/09/24 22:11 ID:q7HIPChs

【三影英介@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:死亡済み。現在再生処置中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]:??
[備考]:
マップ外に放置されていた彼の遺体は、ジュクの秀の手で(ヘルメスドライブで)秘密裏に回収されました。
暗闇大使を始めとした、BADAN上層部はまだその事実に気付いていません。
現在、アンダーグラウンド・サーチライト内のアレキサンドリアの研究室で、再生処置を受けている最中です。

[備考]:
パピヨンは、独自の技術(動物型ホムクルスを再生させる技術)の応用で、
三影を『魂のない再生怪人』でなく、知性ある再生怪人として復活させられる可能性があると踏んでいます。
ただし、今の限られた時間と状況の中でそれが可能なのかどうかは分かりません。
(特に、強化外骨格に、会場内で死んだ死者の魂が取り込まれている状況下においては……?)


(初出の重要アイテム)
【闘争心誤読装置・試作型(腕輪型)@オリジナル(武装錬金)】
 BADANに誘拐されたアレキサンドリア・パワードが開発した、闘争心誤読装置の試作第一号。
 (なお、開発時の名称は『闘争心同調フィルター』)
 黒い核鉄・白い核鉄の開発にも関わったアレキサンドリアの技術の結晶。
 この設計図を元に、後に伊藤博士たちのチームが小型化し量産し、首輪の中に組み込んでいる。
 (なお、伊藤博士のグループは、この基本の製法の出所を正確には知っていない)
 サイズと形状以外は、首輪の中に仕込まれている「闘争心誤読装置」と同じもの。電源不要。
 腕輪の型をしており、片方の手首に装着して使う。
 これをはめた手に持って発動させた武装錬金は、「その核鉄の元の持ち主の武装錬金」になる。
 現在は「魂なき再生怪人に武装錬金を使用させる研究」のため、アレキサンドリアの手元に残されていた。
 ゼロから製作するには時間も材料も要するため、今から新たに作り出すのは状況的に困難。
766Classical名無しさん:08/09/24 22:11 ID:WVFAlL1I
767Classical名無しさん:08/09/24 22:13 ID:Nhnq4xxc
支援

【コンバットロイドの強化服@仮面ライダーSPIRITS】
 BADANの低級戦闘員・コンバットロイドに与えられる、身体強化機能のある服。全身タイツ状。
 「ライダーマンのヘルメット」同様、強化や改造といった身体操作を受けていない「ただの人間」用の装備。
 着用することで防御力や身体能力は向上するが、改造処置を受けたコマンドロイドには大きく劣る。

【アンダーグラウンド・サーチライトの核鉄@武装錬金】
 避難壕(シェルター)の武装錬金。核鉄番号はLT(51)。
 本来の持ち主は、アレキサンドリアの娘、ヴィクトリア・パワード。
 壁や地面に、六角形を基調としたデザインの、巨大な避難壕を作ることが出来る。
 避難壕は亜空間に存在しており、入り口を閉じた状態では発見が困難。
 ライフラインを周囲から引っ張り込むことが出来、また、1ヶ月程度は自給も可能。

【ルリヲヘッドの核鉄@武装錬金】
 兜(ヘルム)の武装錬金。核鉄番号はL(50)。アレキサンドリア・パワードの武装錬金。
 特性は被った人間に取り付き、その身体を支配し操作すること(発動者以外に被せること前提の性質)。
 被った人間の記憶や思考を探ることも出来、また、その気になれば被った者の意識を保つことも出来る。
 兜にはマント、及び帯状の紐や先端にナイフのついた紐がついており、これらを操っての戦闘も可能。
 装着者がいなくても、ある程度ならば共鳴音を利用し会話をすることも出来る。
 なお、原作中では女性の方がシンクロ率が高くなる、という説明があった。

【ヘルメスドライブの核鉄@武装錬金】
 探知機(レーダー)の武装錬金。核鉄番号はXCV(95)。本来の持ち主は楯山千歳。
 核鉄そのものを巨大化させたような六角形の板で、片面にレーダーの画面がついている。
 非常時にはそれ自体が盾や打撃武器になる頑強さを兼ね備える。
 その特性は索敵、及び瞬間移動。移動できるのは成人2人分が限界(使用者+1名)。
 
(以上3つの核鉄は、アレキサンドリアが『研究とその効率化のため』BADAN側に提供させたもの。
 BADAN側は『本来の持ち主の手にない』これらの核鉄の性能を低く見積もっている可能性がある。
 (避難壕のステルス性や、ヘルメスドライブの跳躍距離など) )
769Classical名無しさん:08/09/24 22:14 ID:zHB97KaY
                      

        ※      ※      ※

「な、なあ親父。なんだって言うんだよぉ。説明してくれよ」
「ククク……! 全ては上手く進んでいる……!」

ガモン大佐――暗闇大使は後ろに『暗闇の子ら』を引きつれ、サザンクロス内部の通路を引き返す。
おもむろに姿を消したパピヨンの捜索は、既に部下達に命じてある。
無差別に暴れまくる方針から一転、息を潜めて隠れることにしたようだが……何、見つかるのは時間の問題。
隠れ潜んだ、ということは、彼の体力や戦力も限界が近いのだろう。見つけさえすれば、制圧可能。
サザンクロスから出た形跡も出る方法もない以上、いずれ解決する。暗闇大使はそう判断する。

それよりも今重要なのは、『会場内の全ての参加者の首輪の反応が消えた』という、この一点。
暗闇大使は、後ろにつき従う『暗闇の子ら』に問い掛ける。

「全ての反応が消えた、と言っていたが……では、『最後まで』首輪の反応が残っていたのは誰だ?」
「え? えっと、それは……愚地独歩だけど……それがどうかしたのかしら?」
「ククク。確か空手家だったか。予想外ではあったが、資格は十分だな」
「資格って、何のことだよ!?」
「強化外骨格を纏う資格よ。つまり……」

暗闇大使は、そして宣言する。暗く歪んだ満面の笑みをもって、高らかに宣言する。


  「全ての参加者の『ドロップアウト』をもって、『バトルロワイヤル』は無事『終了』。
   これより、BADANの総力を挙げて『優勝者』愚地独歩の回収を行う!」


「なっ……!」
「で、でも、愚地独歩は……!」
「…………!」
771Classical名無しさん:08/09/24 22:14 ID:Nhnq4xxc
 
772Classical名無しさん:08/09/24 22:15 ID:zHB97KaY
              

暗闇大使の宣言に、暗闇の子らは揃って息を飲む。
表情に乏しいカニロイドの顔にさえ、焦りと驚愕の色が滲む。
なにしろその愚地独歩は、つい先ほど、彼らが戯れ半分に『処刑』してしまった相手である。
いや、実際にはその寸前に首輪の解除が間に合っていたのだが、それは彼らの知るところではなく。

「で、でもよ親父! もし、愚地独歩が死んでたりしたら……! 首輪の反応消えたってこたぁよ……!」
「そそ、そうよ! それに、まだ生きてるバカどもはいっぱい残って……!」
「…………(ブツブツ)」
「あ、『強化外骨格に篭める魂の数はどうするんだ』ですって。そうよカニロイドの言う通りよ!」
「ククク……! そんなこと、どうでもよい……! どうとでもなる……!
 もちろん、我らに逆らう者・我らの邪魔をするものは、全て鏖(みなごろし)にするところだが……」

焦る3人に、それでも暗闇大使は笑みを崩さない。
彼の余裕は、崩れない。

もちろんこんな形での終了は、彼も望んではいなかった。
生き残った反逆者の存在は厄介だし、未だ行方の知れないパピヨンのことも気にはなる。
強化外骨格に集めた魂は当初の予定よりいくつか少ないし、この状態で儀式が上手く行く保障はない。
けれど、その程度の問題、どうしたというのだ。
大首領は絶大なる力を持つ御方なのだ。全てを超越した御方なのだ。
多少の問題は軽々と越えられるはず。そして大首領さえ降臨すれば、他の全ての問題は些事に過ぎない。
今は、その中核となるモノ……大首領を『降ろす』ための『器』を手に入れることが、最優先だ。

「生死は問わん。この『選考』で最後まで残った『愚地独歩の肉体』を探し出し、回収しろ。
 首輪を外して生きているなら、それはそれでよし。生け捕りに出来れば手間も省ける。
 死んでいたとしても、再生怪人の要領で『修復』すればそれで済む話だ」

魂までは取り戻せない、再生怪人の再生処置。
そして必要とされているのは、あくまで優勝者の『肉体』のみ。そこに宿る『魂』は、最初から求めていない。
そう、彼の計画はその根幹のところで、実に順調に進んでいたのだった――
774Classical名無しさん:08/09/24 22:16 ID:WVFAlL1I


――遠くから、更なる異変を告げる叫びが聞こえてくるまでは。



  「た、大変だァーーッ! 『長足クラウン号』が、勝手に動き出したぞォーーッ!!」



【マップ外/サザンクロス内 二日目 昼】
【暗闇大使@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]疲労(小)、
[装備]エニグマのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]不明
[思考・状況]
基本:大首領の命令のままに。
1:『優勝者』愚地独歩の肉体を確保し(できれば生きて、しかし死体でも可)、早急に大首領を降ろす
2:引き続き、消えたパピヨンを探させる。発見したら殺させる
3:他の首輪解除済みの反逆者も、発見しだい殺させる
4:……!? 長足クラウン号が!?

[備考]
※首輪をつけてます。
※ガモン大佐がつけている首輪には、エネルギー抑制装置、盗聴器、GPSが付けられていません。
※起爆装置は点けられていませんが、付いてはいます。スタンドDISCが使えます。
※プッチに大して少し不信感を抱いていたが、現在はある程度信用しています。
※赤木しげるは、大首領により殺害されたと思い込んでいます。
776Classical名無しさん:08/09/24 22:16 ID:zHB97KaY
 
【ジゴクロイド@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康、焦り
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]:
基本:暗闇大使のために働く
1:暗闇大使の命令に従う
2:愚地独歩の(暗闇の子らの独断による)処刑をなんとか誤魔化したい
3:その過程で派手に沢山殺したい


【カマキロイド@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康、焦り
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]:
基本:暗闇大使のために働く
1:暗闇大使の命令に従う
2:愚地独歩の(暗闇の子らの独断による)処刑をなんとか誤魔化したい
3:その過程で外連(けれん)の愉しみを満喫したい


【カニロイド@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康、焦り
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]:
基本:暗闇大使のために働く
1:暗闇大使の命令に従う
2:愚地独歩の(暗闇の子らの独断による)処刑をなんとか誤魔化したい
3:でも面倒くさいことは出来るだけ避けたい
778 ◆6YD2p5BHYs :08/09/24 22:18 ID:Sa1r.ku.

以上、投下完了。支援感謝です。

新キャラを出してしまいましたが……もしマズいという声が多いようなら、修正も考えています。
具体的には、秀、アレキサンドリア、タイガーロイドの3名が出ない・絡まないバージョンも考えてはいます。
(多少の編集、加筆修正は必要になりますが)
他にも指摘等ありましたら、よろしくお願いします。

三影の再生が間に合うかどうか(パピヨンが改良改造できるかどうか)は、後続の書き手にお任せします。
779Classical名無しさん:08/09/24 22:21 ID:WVFAlL1I
投下乙です!
アレキサンドリアと秀が登場するとは予想外。
兄貴のために命を捨てる覚悟を固める秀がかっこいいなあ…。
新キャラ登場については、自分はO.Kだと思います。
780Classical名無しさん:08/09/24 22:23 ID:0qTckmdE
投下乙です。
猫草とチョココロネが出てきたことにびっくり。
さらに、パピヨンがこなたのことを思い出しているシーンに感動した。

ていうか独歩ちゃん……思わぬところで最重要人物になっちゃったな。
781Classical名無しさん:08/09/24 22:24 ID:zHB97KaY
投下GJです!
 ど う な る ん だ ! ? w
ジュクの秀がなんか男前で意外だw
のーみそとか、もうマジ意外すぎる。
カイザーと神父の因縁も、なんだか素敵だぜ!
そして、三影さん…… 再生できるか……出来たなら、どちらにつくのか……
うっおーーー、くっあーーー、気になる!w
782Classical名無しさん:08/09/24 22:30 ID:bQ2EmXwI
投下乙です!
新キャラですって?面白ければそれでよかろうなのだー!って感じだと思いますよw
神父の言動や行動でDIOとの関連性を推測するパピヨンが素敵過ぎるw
アレクと秀のまさかの登場、核鉄の謎、秀の決意には只驚くばかりでした……三影さんも復活しそうで気になるw
そして遂にクライマックスへ行き着きそうだぜ……これは期待するしかない!
GJでした!!

783Classical名無しさん:08/09/24 22:43 ID:XJjc9GGE
草ネコとチョココロネがともに実にいい味を出しました!
そして闘争誤認装置の説明に納得。
そっか、アナザータイプかあ!
パピも神父の怒りで皮肉にも助かり、部下もゲーット!
しかもまさかあの二人とは!
最後に。
カイザーッ、パピ!ヨン!
784Classical名無しさん:08/09/24 22:48 ID:Nhnq4xxc
投下乙です!
それでは、愛と畏怖を込めて……カイザァァァァァァァァ・パピッッッッヨォォォォォォォォォン!!!
予想外の新キャラの登場に、パピヨンの新たなる決意と急造チームの結成。
そして意外に慌てず、ドロップアウトによるゲーム終了を宣言した暗闇大使。
何故かバダンにその身を狙われることになり、当面顎オバケ最大のライバルとなった我らのヒーロー・独歩さん。
様々な要素が丁寧に纏められ、これからの展開が待ち遠しくなって堪らなくなる作品でした!
そして、三影まさかの復活フラグ!? 強化鎧骨格には劉鳳のつけた傷があり、ZX激励シーンの前例がある……孤高の戦士三影の復活はどうなる……!?
ちくしょう! 今からワクワクが止まらないぜ!
785Classical名無しさん:08/09/24 22:48 ID:Z8KMlk6Y
投下乙!
カイザー・パピ!ヨン!
三影さん復活フラグだと!? もっとも愛を込めて呼んでやるぜ!
先が見逃せない!
GJ!
786Classical名無しさん:08/09/24 22:53 ID:aGGoXCQs
投下乙!
いよいよもって終盤ならでわの神展開!
タイガーロイドの復活は序盤から予想していた展開なので大いに期待!
しかし2転3転余裕でしそうだ…
787Classical名無しさん:08/09/24 23:53 ID:EDep9KYk
アレキサンドリア登場の流れは納得できたし確かにと思ったけど、三影復活はやりすぎのきがするなぁ
788Classical名無しさん:08/09/25 02:35 ID:NDUKoDLE
投下乙です!
予想外の新キャラ投入ですが話が盛り上がったので個人的に全然おk!
神展開に燃えました
三影がパピヨンの手によって復活させられたら
身体のどこかに蝶の模様を入れられそうwwwww
789Classical名無しさん :08/09/26 01:16 ID:/6etVQNk
まずは投下乙!

ついでに遅くなったが◆1qmjaShGfE 氏に一つお聞きしたいんだが
『集結』をwikiに収録しようと思うんだけど、どこで前・後編で分ければよろしいか?
790 ◆KaixaRMBIU :08/09/27 22:40 ID:vsH8GGn.
展開に無理が出たため、予約を破棄します。
長期キャラを拘束して申し訳ありませんでした。
791Classical名無しさん:08/09/27 22:56 ID:De6m0SO6
マジっすか……残念です。
792Classical名無しさん:08/09/27 22:58 ID:De6m0SO6
途中送信してしまった……失礼しました。

マジっすか……残念です。
終盤ですから慎重にならざるを得ないのは仕方ないですね。
またの機会を楽しみにしています。
793 ◆1qmjaShGfE :08/09/28 00:29 ID:/bRhU4ho
>>789
おお、何とありがたいお言葉
赤木の独白の後、以下の所から後編としようかなーとか考えておりました

間の悪い時というのはあるもので。
大慌てで盗聴室へと赴いた葉隠四郎は、部屋から聞こえてくる暗闇三兄妹の声を聞いて部屋に入るのを断念する。

これの直前の所ですね
……が、実際やってみんと容量的に難しい部分もありますから
もしやっていただけるというのであれば、そこら辺はお任せいたします

>>790
慎重な姿勢は大切だと思います。無念な心お察ししたします
794Classical名無しさん:08/10/03 22:46 ID:PMaCFTNQ
書き込みテスト?
795Classical名無しさん:08/10/06 10:25 ID:5ACtbT2g
796Classical名無しさん:08/10/09 16:18 ID:CmhEPnuA
797Classical名無しさん:08/10/09 22:26 ID:yaSSMuZs
798Classical名無しさん:08/10/09 22:27 ID:uNjrRooc
799Classical名無しさん:08/10/10 00:03 ID:q2T.nCrI
800Classical名無しさん:08/10/10 20:48 ID:luAdlad.
X
801Classical名無しさん:08/10/10 22:39 ID:IemED60M
802Classical名無しさん:08/10/10 23:56 ID:pTiIBWuc
>>796-801
『かがみんX7』(かがみんエックスセブン)は、
20XX年7月7日にDOPOから発売された
プレイステーション2専用のアクションゲームである。

かがみんXシリーズ第7作。
ハード移行に伴って、従来の蝶サイコーグラフィックが、
覚悟完了グラフィックに変更された。また、後述するダブルツンデレヒロイン制の導入、
基本アクションに倍プッシュの追加、エンディングがキャラクター別に変更、
バルキリースカート以外のヒナギク専用武器の登場、
こなたのツンデレクチャーによって得られる強化ツンデレの存在によって
周回プレイといったやりこみのしがいが増すなど、
意欲的な要素が追加されている。
なお、周回プレイの原案は『カガミンX 波紋疾走ミッション』にある。
プレイヤーキャラクターには新キャラクターとして「エレオノール」が加わった。
803Classical名無しさん:08/10/11 16:53 ID:lX1CxJnM
>>802

えと・・・ 君さ、すっごい寒いんだけ面白いとか思ってる?
804Classical名無しさん:08/10/11 17:04 ID:viLSfJLk
その前にこの半過疎状態を何とかすべき人はいないのかな。
805Classical名無しさん:08/10/11 19:53 ID:dGoxNNPU
hoshu
806Classical名無しさん:08/10/11 23:09 ID:iybLxj1w
>>802
不覚にも噴いたw 基本アクション倍プッシュってなんだよw
807Classical名無しさん:08/10/12 01:31 ID:jvr0uGf.
>>802
芸細けぇよwwwwwwwwwwwwwwwww
808Classical名無しさん:08/10/12 02:57 ID:ai5SPD8Q
>蝶サイコーグラフィックが覚悟完了グラフィックに変更
…抽象的すぎるw
809Classical名無しさん:08/10/12 20:07 ID:MIVMUj5k
酷い自演をみた
810Classical名無しさん:08/10/12 20:30 ID:zRbSle6w
正直もうどれが自演かわからん。

そしてこの過疎り具合をどうにかしてくれ。
811Classical名無しさん:08/10/12 21:09 ID:5Oys88wA
仮面ライダーなんてマイナー漫画を主催に据えた時点で決まってたようなもんだけどな
812Classical名無しさん:08/10/12 21:44 ID:i0vMf9tk
終盤だから書き難いってのはあるよね
813Classical名無しさん:08/10/13 21:19 ID:CfqmS9OA
しかも後半でvs敵組織にするとか何考えてたんだろうな? 今までの展開台無しだし
首領以外にプッチ+暗闇+暗闇の子達(しかも合体あり)とかねぇ
814Classical名無しさん:08/10/13 22:26 ID:EJt.E91k
なんかおかしなのが湧いてるみたいだね
815Classical名無しさん:08/10/13 22:36 ID:s0L9pIN2
気にしない、気にしない。
人がいなけりゃ埃が溜まって虫も涌く、後で使うときに掃除すりゃいいのさ。
816Classical名無しさん:08/10/14 00:14 ID:hU6qNAvQ
>>815 自分をそんなに責めるなよ
817Classical名無しさん:08/10/15 00:00 ID:GTdCmSXY
男なら黙って予約を待つんだ
818Classical名無しさん:08/10/15 13:16 ID:qqhoMYJE
…でもそろそろ容量的に次スレ作った方がよくない?
819Classical名無しさん:08/10/15 16:11 ID:7foU7RHo
予約が来てからでよろしかろう
820Classical名無しさん:08/10/15 20:06 ID:ZWHHgdp2
つスルースキル
821Classical名無しさん:08/10/18 21:19 ID:k9CAiDJc
予約来たみたいだぜ
822Classical名無しさん:08/10/21 00:24 ID:cEt7YatI
予約だと!? イヤッホォォォォォウ!!
823 ◆KaixaRMBIU :08/10/21 18:39 ID:piOa9dcc
仮投下しました。
意見をお願いします。
824Classical名無しさん:08/10/21 20:42 ID:X9DhqapA
投下乙!
問題となる部分は特に無いと思います。
感想は本投下がされた際に付けます。
825Classical名無しさん:08/10/21 20:58 ID:Z1Qr5Ry.
独歩よ菩薩拳の覚醒にまでは至らなかったか・・・ しかしフェイスレスが生きてたら味方が
大軍団になってたな、取りあえず乙です、面白かった
826Classical名無しさん:08/10/21 21:24 ID:watZch3M
投下GJです!
感想は投下後に。
いやー、めっちゃくちゃおもしろかったw

容量的に、新スレ立てたほうがよさそう……だよね?
827Classical名無しさん:08/10/21 22:08 ID:epkqCg3w
仮投下乙です! 感想は本投下の時に。
今からワクワクが止まらないぜ!
828Classical名無しさん:08/10/21 23:07 ID:SUpSRqQQ
しかし読んでて思ったが……
かつてこれほど強力な主催がいただろうか?
名のある怪物が次々出てくるじゃないか……
829Classical名無しさん:08/10/22 09:09 ID:tHMWa6N2
前回の「集結」で、服部の作戦としてはオフェンス組には覚悟と村雨が組み込まれ
後2名が覚悟、村雨と行動する予定ではなかったでしょうか?
830Classical名無しさん:08/10/22 18:02 ID:yToK/g3s
投下GJです!! サイコーです!!
831Classical名無しさん:08/10/22 18:04 ID:7TWEgmuw
832Classical名無しさん:08/10/22 19:13 ID:Z8nWC9n.
GJ!!面白かったです。
ただ気になる点が2点
ジョセフがプッチに”俺のかわいい孫と曾孫を殺す”って言ってたのを”俺のかわいい孫と曾孫を殺そうとする”の方がいいと思いました。

あとはプッチの状態表が疲労(小)は回復しすぎのような気がします。
833 ◆KaixaRMBIU :08/10/22 19:42 ID:eQ6927rQ
漫画キャラバトルロワイアル Part18
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1224671738/

次スレ立てました。

それでは、指摘部分の修正も行なった本投下を開始します。
容量を使い切り次第、新スレに移行したいと思います。

 雷雲が空を覆い、時折雷鳴が轟いている。
 岩肌が目立つ地面の見張り塔の中、空に漂う雷雲を見つめ、男は門へと視線を戻した。
 全身白装束に身を包み、すらっとした体格の男は、深々とため息を吐いた。
「変化なし。…………当然だがな」
 透明なフードの下の視線を、物言わぬかつての同僚百つ目タイタンへと向けてジェネラルシャドウはどこか虚しげに呟いた。
(大首領……なぜ、ストロンガーのいないこの世界に俺を蘇らせたのだ……)
 かつてシャドウと仮面ライダー七号に呼ばれた男は、敬愛する大首領へと疑問を投げかけた。


 もしも、参加者が首輪を外すという不測の事態が起きれば、真っ先に訪れる門の見張りをシャドウが任された理由はいくつかある。
 一つは、他の再生怪人と違って、判断能力があるからだ。
 シャドウを始めとして、デルザー軍団の改造魔人は魂を持たない存在である。
 ゆえに再生しても、他の改造人間たちのように意思を持たない人形とならず、適切な行動が取れるシャドウが指揮を執っているのだ。
 二つ目は、パピヨンの侵入だ。
 誰も入ってこないと思われ、今まで百つ目タイタンに指揮を任されていたが、あっさり突破された。
 失った戦力の補充として、急遽シャドウがここの指揮官として派遣されたのだ。
 三つ目が、バダンが首輪と雷雲の防壁に、まだ絶対の自信があるからだ。
 見張り程度、暗闇や暗闇三兄妹でなくとも、充分務めることができるということだ。
 ようするに、シャドウは冷や飯食いなのだ。
 シャドウは、暗闇にかけられた言葉を今でも覚えている。
『誰も来ぬ門の見張り程度、破れた組織の再生怪人でもできるだろう』
 後ろに控える彼の物の子供を名乗る三人の嘲笑と共に、聞こえてきた声が耳に蘇った。
 昔のシャドウなら即座に剣を突きつけただろう。
 しかし、今の彼のその覇気はなかった。
835Classical名無しさん:08/10/22 19:43 ID:WMs/EaVw
 
(なぜ……マシーン大元帥でなく、俺なのだ……。ストロンガー……)
 彼の宿敵とも言えるストロンガーは、大首領との戦いで死んだと聞かされている。
 このバトルロワイヤルことプログラムに、大首領の力を持って呼び出されたのは1号ライダーと10号ことZXだけだ。
 せめて、ストロンガーがいるのなら、首輪を解除して雷雲を突破し、自らの眼前に立つと確信して楽しみにしていたのだが。
 シャドウは己の中に燻る感情を持て余し、無為に時間を過ごしていた。
(あの1号ライダーも死んだ。ストロンガー、キサマのいない生存者がここに来ることもないだろう。
……なぜキサマは死んだ。俺は、お前の超電子の技を覚えている。お前の力を刻んでいる。
なのに……なぜいない! そして、お前のいないこの世界に、なぜ俺がいる!?)
 シャドウの独白に答えるものなど、もういなかった。
 くるりと踵を返し、少し休憩を取ろうと考えた。
 ビーっと、電子音が塔内に響く。不快な電子音はシャドウの耳に入り、雷雲を突破した連中がいると気づく。
 シャドウはその場を後にし、戦場へと向かった。


 風を切り裂き、音をたなびかせ、神速をもって攻める影が二つ。
 落ちてくる雷を、右へ左へと巧みに避けながら、前へ前へと進み続ける。
 一つは、クルーザーにまたがり、群がる怪人を轢き倒す赤い稲妻。
 仮面ライダーZXが弾丸となって道を切り開いていた。
 その隣に並ぶ漆黒の人影が、一匹の怪人を胴から真っ二つにした。
 背面に取り付けられたブースターが火を噴き、時速600Km以上の速度を生み出している。
 神風となり、ただ目指すは敵の拠点、サザンクロス。
 その後方を走るクラウン号を引きつれて、二人はただ加速を続けていた。



 時は突入する前に遡る。
837Classical名無しさん:08/10/22 19:44 ID:tHMWa6N2
>>833
スレ立て乙です。
このスレは、後は埋めでいいかな。
838Classical名無しさん:08/10/22 19:44 ID:WMs/EaVw
  

「ここが駅なり! 駅長殿鳴らす笛ぽっぽう!! 我等の元へと馳せ参じよ!」

 全員が声をそろえて呼び出した列車は、ピエロのような顔を持つ奇妙な列車だ。
 構えていたZXはやや拍子抜けをし、
「村雨殿、油断するな!!」
 覚悟の鋭い声に射抜かれる。ハッとしたZXは左手をかがみの顔に出して、列車より飛び出た銃弾を弾いた。
 その銃弾が合図となって、クラウン号から次々と影が飛び出してくる。
「これはっ!」
 エレオノールの透き通る声が驚愕で染まる。なにしろ、相手は彼女がよく知る敵なのだ。
「あはははは……アタイが全員撃ち殺してやるよ!」
 カウボーイの格好をしたブロンドの自動人形が笑いながら銃を発砲してくる。
 四本の腕が異形をの印象を強めていた。
「あらァ、今日のディナーは貴方たちなのね。なんて素敵なんでしょう」
 貴婦人の上半身に、蜘蛛の下半身を持つ自動人形が気品溢れる笑みを向けた。
 その背後よりぶわっと、あふれ出る自動人形の山が、ZXたちを襲ってくる。

「あるるかぁぁぁん!!」

 エレオノールの声が一際大きく響く。
 白い道化人形が宙を跳び、エレオノールが両手の指を巧みに動かして、刃を煌かせた。
 聖ジョージの剣が自動人形を斬り裂いて突き進む。
「ちぃ、しろがねぇぇぇぇ!!」
 道化の仮面をつけた自動人形が牙と爪をエレオノールを襲うために突進してくる。
 しかし、エレオノールは微動せず、眼前の自動人形を破壊していく。三体の自動人形がエレオノールの背後に迫った瞬間、その頭が爆ぜた。
840Classical名無しさん:08/10/22 19:45 ID:tHMWa6N2
 
 十字型の手裏剣が、自動人形の頭を砕いたのだ。そのまま、自動人形の群れに突撃した赤い影が、竜巻を起こす。

「ライダァァアァアきりもみシュゥゥゥゥゥトォォォォォォォ!!」

 舞い上がった自動人形の群れに向かい、あるるかんが空を翔る。
 エレオノールは指を巧みに動かし、何千回、何万回繰り返した指繰りを行なう。
 あるるかんの胴部が割れ、歯車がむき出しになる。

「LES ARTS MARTIAUX!(戦いのアート) 虎乱!!」

 むき出しの歯車が激しく回転して、あるるかんの上半身が第二の竜巻と化す。
 無防備な姿を晒す自動人形を細切れにして、あるるかんと共にエレオノールが地面に着地する。
 エレオノールの背中に、ZXが背中合わせに立った。背後に戦いを任せられる仲間がいる。
 その事実をこの上なく喜び、エレオノールは指を操りあるるかんを駆った。


「波紋疾走ッ!!」
 腕に走る太陽のエネルギーをジョセフは自動人形へと叩き込む。
 波紋のエネルギーは自動人形の装甲を抜けて、擬似体液へと到達した。
「ぎぇっ! な、何だ……体液が沸騰……ッ!!」
 自動人形の体液が残らず逆流し、太陽のエネルギー・波紋によって蒸発する。
 いかに永遠の命を持つ自動人形たちでも、擬似体液がなければ動くことも敵わない。
 崩れ落ちる自動人形を尻目に、後方に控える服部へとジョセフは振り返る。
「駄目元でやったら効果抜群じゃないの」
「ええからつづけれ!!」
842Classical名無しさん:08/10/22 19:45 ID:WMs/EaVw
   
 服部が余裕の表情のジョセフを苦々しく見て、スーパー光線銃の引き金を引く。
 面白いように自動人形が吹飛んでいくが、当事者である服部は生きた心地はしない。
 味方をいつ撃ちかねないか、不安でしょうがないからだ。ニアデス・ハピネスも同様だ。
 爆発力を正確に把握していない服部では、味方を傷つけかねない。ソードサムライXを使おうにも、覚悟や村雨のように人間離れした身体能力は持っていない。
 服部は、赤木の言うとおり自分は死ぬべき人間でないか。不穏当な思考が脳裏を掠めた。
 それでも、服部が死という結論を出さない。
 前に進むと決めたのだ。その決意にだけは嘘を吐きたくない。
 もう一度、スーパー光線銃の引き金を引いた。


 火炎放射器を備えた自動人形が火を噴き、一人の男を焼き尽くそうとする。
 しかし、構えを取っていた独歩は微動だにしない。炎が独歩の身体に到達する瞬間、独歩は二の腕を回した。
「げえっ! 炎を受け流しただと!!」
「まわし受けっていうんだ……よっ!」
 独歩が言葉を切ったと同時に、貫手を自動人形の胴の間接部に、疾風のごとくの速さで抉りこんだ。
 そのまま自動人形の体内で歯車を掴み、引き抜く。苦悶の表情で崩れていく自動人形を無視して、直進する。
 ヒナギクの背後に、自動人形が一機迫っていたのだ。
 地面を蹴ってとび蹴りを浴びせて、独歩は危なげもなく着地する。
 前羽の構えを取りながら、ヒナギクの背を庇うように立つ。
「あ……ありが……とう……」
 息も荒く礼を告げるヒナギクの声を耳にして、独歩は軽く笑った。
 必死で疲労を隠そうとしている姿が健気でしょうがない。少し前まで、普通の(と、言えば多少は語弊があるが)学生だったのだから疲労が大きいのも当然だ。
 今では世界の、SFの作り話のような、平行世界すべての平和のために戦っているのである。
 木刀正宗をヒナギクが振るい、自動人形が胴から二つに別れる。間隙を縫い、独歩が正拳を自動人形の顔に叩き込んで砕いた。
844Classical名無しさん:08/10/22 19:46 ID:WMs/EaVw
    
 ドラム缶をも粉砕する正拳が、自動人形の装甲に負けるはずがない。理屈などないが、独歩は信じて疑わなかった。


「重爆!!」
 覚悟の零を纏いし蹴りが、自動人形を三体まとめて吹き飛ばした。
 地面に降り立つ覚悟の覇気に、自動人形の群れが一歩退く。されど、覚悟に悪を許す堕落はない。
「く、くそっ! たがが鎧纏った人間一人にびびってんじゃね!!」
 そう鼓舞する自動人形の言葉に反応して、群れが動く。
 四方を囲まれても、覚悟は眉すらも微動だにしなかった。
「遅いッ!」
 覚悟の拳が自動人形の上半身を砕く。後ろから襲い掛かる自動人形を、振り向きもせずに背面回し蹴りで葬った。
 覚悟の猛攻を潜り抜け、数機の自動人形が組み付く。
「非力ッ!」
 覚悟は気合一閃、組み付いた自動人形をまとめて地面に叩きつける。
 背面のバーニアに火をともし、自動人形を焼いて宙に舞う。その腕が赤く染まり、全てを切り裂く熱が宿った。
 赤熱した両腕が次々と自動人形を切り裂いていく。
 銀の体液を飛ばしながら、崩れていく自動人形を見下ろしながら、大きく息を吸い込んだ。

「腑甲斐ないぞ! キサマら!! 斬られるだけなら犬でもできる!!」

 覚悟の怒号が自動人形を貫き、行動を制限した。
 そのまま雷鳴を思わせるような速度で落下して、自動人形を一体踏み潰す。
 血よりも赤い強化外骨格「零」の二つ目が不気味に光る。
 前方の腕がドリルになっている自動人形が突いてくるが、覚悟はすでに見切っている。
 紙一重で躱し、その胸に貫手を繰り出した。
846Classical名無しさん:08/10/22 19:47 ID:WMs/EaVw
     
「突いてこい!」
 そのまま腕を赤熱化して、自動人形から引き抜き、次の標的を定める。
 盾を掲げる敵を、上下真っ二つに引き裂いた。
「斬って来い!!」
 続けて、自動人形の顔を掴んで地面に押し倒す。背中のバーニアが噴射して、削り進む。
 悲鳴が聞こえるが、冷徹に覚悟は自動人形を削り続けた。
「骨のある奴出て来い!!」
 悪に容赦などしない。正義を守る覚悟を持つ。
 これが、覚悟だ。


「くくく……」
 赤木は声がつい漏れてしまう。この激戦のなかに身をゆだねても、赤木は赤木であった。
 迫り来る自動人形を横目に、ナイフを一本取り出した。
 なんとなく、銃よりもナイフのほうが、流れがいい。その程度の確信だった。
 だが、その程度の確信を物にせずして、手に入れる未来などに赤木は興味はない。
 ナイフをすっと投げて、自動人形の額に刺さる。
「げぇぇぇ!」
 未来のエレオノールの血が付属したナイフは、自動人形の毒以外になりえない。動きの止まった自動人形を前に、確信を持たないはずの赤木はニヤリ、と微笑んだ。
 454カスールを眼前に掲げ、引き金を引く。頭の失った自動人形が倒れるのを見届けて、覚悟たちの戦力を正確に頭に叩き込む。
 彼らはいわば、手札だ。
 いかに切り捨て、いかに活かすのか、その判断をしていかなければならない。
 ただ、赤木にとっては己さえも、手札の一つに過ぎないと認識している。
 流れを見るのは自分だ。自分に与えられたおもな役割だ。
 そう、
848Classical名無しさん:08/10/22 19:48 ID:tHMWa6N2
 
849Classical名無しさん:08/10/22 19:48 ID:WMs/EaVw
      
(キサマも……この様子を見ているんだろう……? JUDO)
 すべては、同類と再会するために。


 柊かがみは、彼らの足を引っ張らないために隠れていることが精一杯だった。
 ヒナギクもかがみと似たような立場のはずなのだが、決定的な違いがあった。
 ヒナギクも戦える。ただそれだけなのに、今は溝を感じた。核鉄があったところで、隻腕のかがみにできることなどたかが知れている。
 スタンドディスクなど、使えない。首輪のステルスの解除法を見つけたのはかがみとはいえ、解除した今彼女の居場所はここにはない。
 それが、他のみんなと違う。とてつもない隔たりが、かがみに訪れた。
 だけど、彼女の周りの人間は、かがみを不必要と見ていない。
 彼らにとってかがみは、日常の象徴なのだ。
 いつか帰る。
 だが、かがみに気づける手段はなかった。



 ガシャン……と音を立てて、自動人形の破片が崩れ落ちる。
 自動人形が何十体いたのか、もはや数えようがない。
 分かるのは、彼らが長足クラウン号に設置された罠の自動人形を全滅させたことだけだ。
 赤木は煙草を吸いながら周囲を見渡す。
「え、えらい余裕やっちゃな……」
「まあな…………」
 赤木が視線を周囲にめぐらせて、各々の体調を探り始める。
 覚悟、村雨、ジョセフはさすがというべきか、息も切らしていない。
 自動人形の瓦礫を前に、すでに警戒を解いて楽な姿勢にして、次の戦いに備えている。