漫画キャラバトルロワイアル Part15

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1Classical名無しさん
このスレは漫画キャラバトルロワイアルのスレです。
SSの投下も、ここで行ってください 、支援はばいばい猿があるので多めに

前スレ
漫画キャラバトルロワイアル Part14
ttp://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1205498413/l50
【外部リンク】
漫画キャラバトルロワイアル掲示板(したらば)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/9318/
まとめサイト
ttp://www32.atwiki.jp/comicroyale
漫画キャラバトルロワイアル毒吐き2
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1200415345/l50

1/4 【アカギ】○赤木しげる/●市川/●平山幸雄/●鷲巣巌
1/2 【覚悟のススメ】○葉隠覚悟/●葉隠散
1/3 【仮面ライダーSPIRITS】 ●本郷猛/●三影英介/○村雨良
1/4 【からくりサーカス】●加藤鳴海/○才賀エレオノール(しろがね)/●才賀勝/●白金(フェイスレス指令)
0/4 【銀魂】 ●坂田銀時/●神楽/●桂小太郎/●志村新八
2/4 【グラップラー刃牙】○愚地独歩/●花山薫/●範馬刃牙/○範馬勇次郎
1/4 【ジョジョの奇妙な冒険 】●吉良吉影/●空条承太郎/○ジョセフ・ジョースター/●DIO
2/4 【スクライド】●カズマ/●シェリス・アジャーニ/○マーティン・ジグマール/○劉鳳
0/4 【ゼロの使い魔】●キュルケ(略)/●タバサ/●平賀才人/●ルイズ(略)
1/4 【ハヤテのごとく】●綾崎ハヤテ/○桂ヒナギク/●三千院ナギ/●マリア
0/3 【HELLSING】●アーカード/●アレクサンド・アンデルセン/●セラス・ヴィクトリア
2/4 【北斗の拳】●アミバ/○ケンシロウ/●ジャギ/○ラオウ
1/4 【武装錬金】●防人衛/○蝶野攻爵/●津村斗貴子/●武藤カズキ
1/4 【漫画版バトルロワイアル】○川田章吾/●桐山和雄/●杉村弘樹/●三村信史
2/4 【名探偵コナン】 ○江戸川コナン/●灰原哀/○服部平次/●毛利小五郎
1/4 【らき☆すた】●泉こなた/●高良みゆき/○柊かがみ/●柊つかさ
計 17人 / 60人
2Classical名無しさん:08/04/07 21:48 ID:2L34dWao
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×

例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
3Classical名無しさん:08/04/07 21:49 ID:2L34dWao
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
 修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・修正要求ではない批判意見などを元にSSを修正するかどうかは書き手の自由です。
・誤字などは本スレで指摘してかまいませんが、内容議論については「問題議論用スレ」で行いましょう。
・「問題議論用スレ」は毒吐きではありません。議論に際しては、冷静に言葉を選んで客観的な意見を述べましょう。
・内容について本スレで議論する人がいたら、「問題議論用スレ」へ誘導しましょう。
・修正議論自体が行われなかった場合において自主的に修正するかどうかは、書き手の判断に委ねられます。
ただし、このような修正を行う際には問題議論用スレに一報することを強く推奨します

・展開予想、ネガティブな感想、主観的な意見は「毒吐きスレ」でお願いします。毒は溜め込まずに発散しましょう。
・議論スレと正式に分離したことで毒吐きでの感想は過激化している恐れがあります。見る必要性もないので、書き手は見ないことを推奨します。
4Classical名無しさん:08/04/07 21:50 ID:2L34dWao
【能力制限】

◆禁止
・アーカードの零号開放
・武藤カズキのヴィクター化
・吉良吉影の“第三の爆弾バイツァ・ダスト”
・ギャランドゥ(ジグマールのアルター)の自立行動(可否は議論中?)

◆威力制限
・ゼロ勢の魔法
・空条承太郎、DIOの時止め
・スクライドキャラのアルター(発動は問題なし、支給品のアルター化はNG)
・アーカードの吸血鬼としての能力
・仮面ライダーの戦闘能力
・シルバースキンの防御力
・北斗神拳の経絡秘孔の効果
・激戦の再生力、再生条件

◆やや制限?
・グラップラー刃牙勢、北斗の拳勢、仮面ライダー勢、覚悟のススメ勢の肉体的戦闘力
・ジョジョのスタンド(攻撃力が減少、一般人でも視認や接触が可能)
・からくりサーカス勢の解体能力

◆恐らく問題なし
・銀魂キャラ、戦闘経験キャラなどの、「一般人よりは強い」レベルのキャラの肉体的戦闘力

【支給品について】
・動物、使い魔、自動人形などの自立行動が可能な支給品は禁止です。(自立行動を行わないならば意思持ちでも可)
・麻薬、惚れ薬、石仮面などの人格を改変するおそれのある支給品や水の精霊の指輪、アヌビス神などの人格乗っ取り支給品は禁止です。
・核金によって発現する武装錬金は、原作の持ち主の武装錬金に固定されています。
5Classical名無しさん:08/04/07 21:51 ID:2L34dWao
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → MAP-Cのあの図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。
6Classical名無しさん:08/04/07 21:51 ID:2L34dWao
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの一時投下スレにうpしてください。
・自信がなかったら先に一時投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない一時投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
   ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
   その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。
7Classical名無しさん:08/04/07 21:51 ID:2L34dWao
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
8Classical名無しさん:08/04/07 21:53 ID:vWoSyxmg
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、スレには色々な情報があります。
・『展開のための展開』はNG
 キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
 紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効
 携帯からPCに変えるだけでも違います
9Classical名無しさん:08/04/07 21:53 ID:vWoSyxmg
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
 同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
 修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、ドラえもん(クレヨンしんちゃんも可)を見てマターリしてください。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
 やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
 冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
 丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。

【議論の時の心得】
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
 意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
  強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。

10Classical名無しさん:08/04/07 21:54 ID:vWoSyxmg
【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
 程度によっては雑談スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
 例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
 この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
 こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
 後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
 特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。

【予約に関してのルール】

・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行います
・初トリップでの予約作品の投下の場合は予約必須(5日)
 ただし、予約せずに投下できなら、別に初トリでもかまわない

・予約時間延長(最大3日)を申請する場合はその旨を雑談スレで報告
・申請する権利を持つのは「過去に3作以上の作品が”採用された”」書き手
・修正期間は審議結果の修正要求から最大三日(ただし、議論による反論も可とする)
・予約時にはトリップ必須です。また、トリップは本人確認の唯一の手段となります。トリップが漏れた場合は本人の責任です。
・予約破棄は、必ず予約スレでも行ってください。

【MAP】
http://www32.atwiki.jp/comicroyale/pages/34.html
http://www32.atwiki.jp/comicroyale/pages/330.html (登場人物の位置あり)
11こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:25 ID:2L34dWao
(私はもう、人間になれなくてもいい。御前が、ケンシロウが、ナギたちが私を人間と見てくれているなら。
だから行こう。私の、サーカスを演じに!)
 エレオノールの眼光が光、正面を見つめる。
 その身に、使命を乗せて。


 エレオノールに目的を告げ、ケンシロウは見えぬ目で後方を見つめ、その思考を神楽へと向ける。
 ケンシロウは一度、神楽を救いに行くか、独歩を助けに向かうか迷った。
 通常なら、独歩でなく神楽を優先する。独歩は戦士だ。
 よっぽどのことがない限り、死ぬことはない。
 しかし、相手はジグマール。姑息で小物だが、最初に会ったときと違ったものをケンシロウは感じていた。
 その違和感が先ほどから気になってしょうがない。
 神楽が放送で呼ばれなかったのも、独歩を優先した理由の一つでもある。
 確かに神楽は力があるが、ケンシロウはその力を圧倒する強者を知っている。
 その強者がいて、なおかつジグマールのように姑息な手段を使う殺人鬼から逃れ続けたのは、彼女の傍に強い味方がいたのだろうと判断した。
 楽観的な考えも混ざっているが、神楽がここまで生き延びた、というなら心強い味方を得たのだと考えた方が自然だからだ。
 不安は消えないが、ケンシロウは神楽の安全をまだ見ぬ仲間に託した。
(すまない。神楽、俺はまだ戦わねばならない。必ず、俺はお前の元に向かう。だから、それまで生きていてくれ)
 その拳を、人を活かすために使うと、ケンシロウは内心で吠えた。
12こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:26 ID:2L34dWao
 北斗の拳、哀愁を乗せて、今走り出す。


 人を活かす拳。

 生命を尊重し、己の技を鍛え続けると同時心を鍛え上げる。
 拳法修行の目標である自己確立、自他共楽、理想郷建設の基礎となる教えである。
 揺らがぬ人となり、拳士となる手段。
 現代では、それを活人拳と呼ぶ。

 そして、暴力に嘆く弱き人を救い、地獄のような日々に安心できる理想郷を作り上げる。
 活人拳と同じ道を目指し、突き進む救世主の拳法。
 世紀末では、北斗神拳と呼ぶ。

13こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:27 ID:2L34dWao

【E-4 池の公園 2日目 黎明】



【ケンシロウ@北斗の拳】
[状態]:全身各所に打撲傷と火傷。肩に裂傷 両目損失。腕に切り傷。 疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム(般若心境と書かれた紙(エニグマ/開かれていません)、日本刀@現実
    本部の鎖鎌@グラップラー刃牙
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない。
1:エレオノールと共に、独歩を助けに行く。
2:1の後学校へ行く。
3:2の後、神楽を探す。
4:ラオウ・勇次郎他殺し合いに乗った参加者を倒す。
5:助けられる人はできるだけ助ける。
6:乗ってない人間に独歩・アミバ・ラオウ・勇次郎・エレオノール・ジグマールの情報を伝える。
[備考]
※参戦時期はラオウとの最終戦後です。
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました 。
※秘孔の制限に気付きました。
※ラオウが無想転生を使えないことに気付きました。(ラオウは自分より過去の時代から連れて来られたと思っています)
<首輪についての考察と知識>
※首輪から出ている力によって秘孔や錬金が制限されていることに気付きました。
首輪の内部に力を発生させる装置が搭載されていると思っています。
※ナギ、こなた、アカギと大まかな情報交換をしました。またジグマールの能力、人間ワープ、衝撃波についても簡単に聞いています
※公園の池周辺に地面に亀裂あり。池が干上がっています。
14こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:27 ID:2L34dWao

【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:疲労大、気絶
[装備]:エンゼル御前@武装錬金、あるるかん(白金)@からくりサーカス(頭部半壊、胸部、腹部に大きな損傷、全身にへこみと損傷あり)
[道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式、生命の水(アクア・ウィタエ)
[思考・状況]
基本:主催者を倒す。
1:ケンシロウと共に、独歩を救いに向かう。
2:夢で見たギイたちの言葉を信じ、魂を閉じ込める器を破壊する。
3:ナギの遺志を継いで、殺し合いを潰す。
4:一人でも多く救う。
[備考]
※ジグマールと情報交換をしました。
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※夢の内容はハッキリと覚えていますが、あまり意識していません。
※エレオノールが着ている服は原作42巻の表紙のものと同じです。
※ギイと鳴海の関係に疑問を感じています。
※フランシーヌの記憶を断片的に取得しています。
※「願いを叶える権利」は嘘だと思っています。
※制限についての知識を得ましたが、細かいことはどうでもいいと思っています。
※自転車@現実は消防署前に落ちています。
※才賀勝、三千院ナギの血液が溶けた生命の水を飲みました。2人の記憶を取得した可能性があります。
 が、断片的かもしれないし、取得していないかもしれません。
 才賀正二の剣術や分解などの技術は受け継いでいません。
※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると核鉄に戻ります。
15Classical名無しさん:08/04/07 22:28 ID:hyQQryBo
 
16 ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:29 ID:2L34dWao
投下終了。
テンプレ引継ぎ、ありがとうございます。

前スレ>>768の、

> そう思っているフランシーヌの前に、疾風が身体を駆け抜ける。

を、

> そう思っているエレオノールの前に、疾風が身体を駆け抜ける。

に修正します。

それでは、誤字や矛盾の指摘をお願いします。
多くの支援、ありがとうございました。
17Classical名無しさん:08/04/07 22:31 ID:tbO5Ec1o
投下乙
やけに夢の中でおしゃべりが多いんじゃないかなと思ったが
エレオノールとナギたちの会話がすげえよかった、エレオノールが対主催に転身したし
エレオノールの記憶の旅もすっごい感動した
18Classical名無しさん:08/04/07 22:33 ID:hyQQryBo
投下乙です
何という説得ラッシュ
死んでも説得するとか、皆頑張り過ぎだぜ……
個人的に、キュルケの
>「約束しなさい、エレオノール。
>今また戻ったら……燃えるような恋をして。それが、わたしの願いよ」
が凄いツボでした(勿論良い意味で)
19Classical名無しさん:08/04/07 22:39 ID:4yPNtLJs
投下乙!
死者大集合、そしてエレオノールへの言葉で思わず胸が熱くなってしまった……。
ナギと勝の記憶を辿りエレオノールがなんともまた……。
そしてケンシロウがかっこいいよ!台詞がニクイ!!
あとギイが強化外骨格に居るというアイディアにも驚きました!
GJ!!
20 ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:47 ID:2L34dWao
エレオノールの状態票に気絶の表記があります。
wikiに乗り次第、修正します。
21Classical名無しさん:08/04/07 23:06 ID:55vi2Tlk
投下乙です!
死して尚、エレオノールを説得し、受け入れたナギ、キュルケ、勝に感動!!
そして思いがけず、没ネタスレにあったのと似た展開になったのも驚きました
(仮死状態になり幽体離脱のような状態になって、強化外骨格の中に行く、というもの)

それにしてもギイ先生、こっちに来た途端に爆死とかw 大首領の御心は本当に分からねぇ。
22Classical名無しさん:08/04/07 23:59 ID:ywm.gSdI
投下乙!

やばい。マジやばい。
何がヤバイかってナギとキュルケの立ち位置がフランシーヌ達に恋について語られる原作のシーンと被るんだよぉぉぉ!
謀略や幻想によって血塗られた道を歩んでしまった彼女が、白銀がフランシーヌのためを想って造った生命の水によって救われるという演出も原作らしい演出でグッドッ!
今すぐにでも抱きつきたい気持ちを抑える勝、壁の向こうで彼女を想い佇む鳴海。
悲しくも先に外骨格に取り込まれていてしまったギイ先生の台詞回しなどは原作ではありえなかったもう一つのからくりサーカス!
さらに彼女を待つ強く優しき拳法家とグリポンを思わせる御前様……これが泣かずにいわれるかっ!
コイツらには何にも代え難い"生きる意志"があるッ!

機械仕掛けの神の存在を思わせるような感動の一作でした!
23 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 04:13 ID:tHk80RUQ
独歩、村雨、ヒナギク、かがみ、投下します
24愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 04:14 ID:tHk80RUQ
それは微かな振動。
今にも消え入りそうな、そんな音。

ずっと待ち望んでいたそれを、しかしヒナギクはどうしても信じられず、すぐ側に居る村雨に聞いて確かめる。
「ねえ……今、動いた……わよね」
心臓マッサージを担当していた村雨は、ヒナギクと全く同じ顔をしていた。
「お前も……そう、感じた、のか」
独歩が二人の肩を掴みながら、横になるかがみの顔を覗き込む。
「お、顔に赤みが戻ってきてやがる。やったじゃねえか二人共」
そう言って、ぽんと二人の肩を同時に叩く。
四つんばいになりながらかがみに人工呼吸を行っていたヒナギクは、上体を起こすと地面に座り込んでしまう。
独歩に倣って心臓マッサージを行っていた村雨も、ヒナギク同様に腰を落とし、両手を後ろに回して地面に付く。
「やった……やったぞ」
村雨の心の底から沸き起こる感情、随分と長い事こんな想いとは無縁だった気がする。
「うん、うん」
ヒナギクの顔に、歓喜が満ち溢れていく。
村雨は勢い良く上体を起こし、ヒナギクの方に乗り出す。
「やった! やったんだ!」
ヒナギクも身を乗り出して村雨の両手を掴む。
「出来た! 私にも出来たわ!」

ずっと奪う側だった男。
ずっと奪われるだけだった少女。
二人は救われてくれた大切な命に、ありったけの感謝を込めながら歓声を上げた。


25愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 04:15 ID:tHk80RUQ
「嫌よ!」
ヒナギクの怒声が室内に響く。
独歩と村雨の二人はそんなヒナギクを困った顔で見ている。
「なあ嬢ちゃん。別に俺が何かするって訳じゃねえのはわかるだろ、だから聞き分けてくれや」
「絶対に嫌! 私はかがみが目覚めるまでここを一歩だって動かないわよ!」

かがみが息を吹き返した後、すぐ近くの雑居ビルに彼女を運び込む三人。
テナントの一つに簡易のベッドが設えてあったのを見つけ、そこにまだ意識の戻らないかがみを寝かしつけた。
ようやく一息つけた所で、独歩が二人に提案したのだ。
「この子は俺が見てるから、二人で医療品見つけてきてくれねえか」と。
村雨はその提案を快く了承するが、ヒナギクはかがみの側から決して離れようとしなかった。
ならば村雨が一人で行けばいい。
そう村雨は思ったのだが、何故か独歩はヒナギクと村雨の二人で行くという事に拘った為、遂にヒナギクが怒ったという次第だ。

村雨が自分の思いつきを口にしようとすると、独歩はそれを遮って村雨を部屋の外へと連れ出した。
部屋の外、ヒナギクに聞こえない場所まで行くと、独歩は頭皮を掻きながら村雨に言う。
「参ったな。なあ兄ちゃん、何とかヒナギクって子をあそこから引き剥がす事出来ねえもんかね」
村雨には独歩の考えがわからない。
「何故そんな事を?」
苦々しい顔で、独歩は村雨の顔を覗き込む。
「わかんねえか? かがみって子が目を覚ましたら一番最初にする事……」
一時は心停止状態にまで陥ったのだ。
記憶障害や身体障害の可能性は十二分にありうる。
そしてそれ以上に確実な事が一つ。
だが、独歩はため息を一つついて、その考えを口にするのを止めた。
どんな場合であろうと、すぐにかがみが意識を取り戻す事はあるまいと思い直したからだ。
ならしばらくは時間が……
26愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 04:15 ID:tHk80RUQ

「嫌ああああああああっ!!」

突然女性の叫び声が轟く。それはヒナギクとかがみの居る部屋から聞こえてきた。
何事かと駆け出す村雨。
独歩は再度、今度は深くため息をついた。
「ま、目を覚ましゃそーなるわな」



「わ、私の手が……手がっ!?」
恐慌状態に陥り、暴れまわるかがみ。
ヒナギクはそんなかがみの体を必死に押さえる。
「落ち着いてかがみ! 今から説明するから……」
「何よコレ! 一体何なの!? 何で私……手が……手が……嫌、こんなの嫌ああああああっ!!」
ドアを開けて駆け込んでくる村雨と独歩。
かがみの恐慌する様に衝撃を受ける村雨の後ろから、独歩は大声で怒鳴りつける。
「やかましい!」
自らの肉体のみを頼りとし、空手の道では彼こそが第一人者と万人が認めるまでに上り詰めた男の一喝。
一瞬で部屋中から騒音が消え去る。
「村雨、ヒナギクの嬢ちゃんを隣の部屋に連れてけ。一緒になって騒がれちゃたまらねえ」
一種の錯乱状態である。
ヒナギクはかがみに対してどうすれば良いのかわからない。
かがみもかがみで一体何がどうなっているのかわからない。
そして村雨も、何故彼女達が混乱しているのかわからない。
そんな中でどうすべきかを力強く明示する独歩の言葉。
又、ヒナギクと村雨にとってはかがみを救う手段を、誰よりも早く、冷静に判断した独歩の言葉でもある。
27愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 04:16 ID:tHk80RUQ
その理由を問う事すらせず、村雨もヒナギクも独歩の指示に従ったのだった。

二人が部屋を出るなり、独歩はベッドの側にある椅子に腰掛ける。
「さて、かがみ。お前さんジグマールと戦った時の事ぁ覚えてるかい?」
かがみの真っ白になってしまった頭の中が、少しづつ整理されていく。
「あ、うん。……そうよ。ヒナギクが飛び込んで来て……それで……」
「ジグマールがアンタの腕を斬りおとしたと。思い出したか?」
独歩の言葉を聞くなり、背筋の凍るようなあの感覚を思い出す。
信じられない。もうこの腕は元には戻らないの?
「文句なり、恨み言なり言いたいってんなら直接ジグマールにでも言いな。それ以外は筋違いだぜ」
「そんなっ! ……そんな言い方って……わ、私だって好きでこんな……」
左腕が失われた。
恐ろしい、この先どうなるのか、どんな事になってしまうのか、まるで想像がつかない。
恐くて堪らない。何で私がこんな目に遭わなくてはならないの。
揶揄するように独歩は言った。
「こんな事になるぐらいだったら、死んだ方がマシ……ってか?」
怒鳴りつけるように肯定してやろうとして、辛うじて踏み止まった。
死ぬ。死んだ。この単語からすぐに連想出来る名前が頭に浮かんだから。
『つかさ、みゆきさん、灰原さん、桂さん、ハヤテ君……』
特にハヤテはその死を直接目にする事になった。
人が死ぬ。それがどういう事なのか。
止まらない血、深く抉られた傷、蒼白を通り越して土気色の表情、痛そうなんてものじゃない。
包帯の巻かれた自分の左腕を見下ろす。
全然違う。こんなんじゃ死んだりなんてするはずない。
急に恥ずかしくなってきた。
これ以上に痛くて、恐い思いをしたはずのハヤテは、最後のその瞬間まで一言もそんな事は言わなかったというのに。
ただ、大切な人を案じ続け、最後の時を迎えたというのに。
28愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 04:17 ID:tHk80RUQ
残った右手を強く握り締める。
「こ……こんなの……」
恐い、嘘ついてる。物凄く恐くて堪らない。けど……
「こんなの、全然……どうって事無い……わよっ!」
言った。言ってしまった。もう引っ込みなんてつかない。
どんなに恐くても、そんな事無いって顔しなきゃならなくなった。
髪の毛が絶望的に薄いおじさんは、少し驚いた顔をしていた。
「ほお、なんでえ、まだ強がる根性残ってたか」
「強がってなんかないわよ! ほ、本当に全然、どうって事無いんだからっ!」
おじさんは何が楽しいのか、愉快そうに笑っている。ちょっと悔しい。
「笑わないでよ! バカ!」
なのでその顔目掛けて枕をぶん投げてやった。
敬老精神なんて言葉このおじさんにはもったいない。ふん、いい気味よ。

こいつは見誤った。流石にここまで生き残るだけあってタフな嬢ちゃんだ。
もう少し時間は居るだろうが、この調子なら自力で乗り越えていけそうだ。
女の身ながら、ウチの門下生に見習わせてえぐらいの良い根性してやがる。
となると残る問題はあの二人だな。
村雨は、まあ男だし自力で何とかしやがれ。
んでヒナギクの嬢ちゃんだが、ありゃマズイな。
かがみみてえにうまくは行かねえ……だろうなぁ。
いやコイツもこんなにうまく行くたあ思って無かったんだけどよ。
そんな事を考えていると、かがみが声をかけてきた。
「ねえおじさん、結局あの後どうなったの?」
ははっ、先にそいつが気になるか。
普通順番違うだろ、何より先にその腕が元に戻るかどうか訊ねるもんなんじゃねえのか?
全くもってイカした嬢ちゃんだ。克己の嫁に来てくんねえかな。
29Classical名無しさん:08/04/08 04:25 ID:zk2GevGo
30Classical名無しさん:08/04/08 04:32 ID:s9g08EsY
test
31Classical名無しさん:08/04/08 04:33 ID:s9g08EsY
abc
32愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 04:40 ID:tHk80RUQ
「いいぜ、あの後だな……」
やっぱ駄目だ。こんな良い女、克己にゃもったいねえや。



村雨は引きずるようにしてヒナギクを隣の部屋へと連れて行った。
そこはまだテナントが入っていないのか、がらんとした何も無い部屋で、村雨が明かりを付けると、申し訳程度のオレンジの光が部屋を包む。
幸い、あれ以上かがみの悲鳴が聞こえてくる事は無い。
独歩がうまくやってくれているのだろう。
かがみ蘇生の時といい、頼りになりっぱなしで申し訳なくなる。
「ねえ、かがみ……大丈夫だと思う?」
ヒナギクが虚ろな目でそんな事を尋ねてきた。
「かがみには独歩がついている。それよりお前の方がよっぽどヒドイぞ」
「え?」
やはり気付いて無かったようだ。
「顔中真っ青だ。それに震えが止まらんのだろう」
蘇生に成功した時のあの喜びに満ち溢れた表情なぞ欠片も残っていない。
膝が震え、自分の力ではとても歩けそうにない程だ。
「私なんてどうでもいいの。それより、かがみの腕……元通りになる?」
「…………」
返事などしようがない。
「ねえ! 元通りになるわよね! ねえってば!」
頼むからそんなにがなるな。そうだ、俺があの時ジグマールの手を読みきってさえいれば、あんな事には……
「……私が、私があんな事しなければかがみは……」
驚いて顔をあげる。ヒナギクも俺と同じ事を考えている?
彼女の顔は完全に色を失い、混濁した瞳にはうっすらと涙を湛えている。
「つかさの時だってそうよ……私が、私さえもっと動けていれば……あんな事になんて……」
33愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 04:40 ID:tHk80RUQ
「それは違うぞヒナギク!」
自らを追い詰めて行く彼女を見ていられずに、その両肩を掴む。
「何が違うのよ! あのかがみが、あんなに強い彼女があんなにも動揺して……当たり前よ、腕が無くなったのよ? それで普通にしていられるわけないじゃない!」
「落ち着けヒナギク!」
「うるさいっ!」
力任せに村雨を振り払うヒナギク。
その手が偶然村雨の頬に当たる。
「あ……」
村雨はさして気にならなかったが、彼女は目に見えて落ち込んでしまう。
「また、やっちゃった……ごめんなさい村雨さん」
ハヤテが倒れ、ナギが亡くなった時と同じように動揺して、他人に当り散らす自らを恥じているのだろう。
それ以上言葉を発する事無く、俯き、床を見つめるヒナギク。
村雨も彼女にかける言葉が見つからない。
彼も又、同じ疑念を自らに問うている真っ最中で、それに答えを出せずに居るのだから。
随分長い間そのままで居る二人。
ヒナギクが僅かに残った他人を配慮する余裕を使い、村雨に声をかける。
「ごめん村雨さん、少し、一人にして……」
この言葉に抗う術を、今の村雨は何一つ持ち合わせていなかった。



一通り聞き終えると、かがみはベッドから半身を起こし、僅かに考え込んだ後、独歩の表情を伺うように上目遣いで問いかける。
「ねえ、もしかして……ヒナギクや村雨さん、気にしてるかな」
桂、そう呼ぶのに少し抵抗があったので、しれっと名前で呼んでみたのだが、案外違和感が無い。
「間違いねえな。どっちも責任感ありそうだしよ、特にヒナギクの嬢ちゃん何かはありゃヤベェわ」
「そうよねぇ。まずったな〜、ああもう! 何だって私はこんなに弱いのよ! 頭に来るわ!」
独歩はそんなかがみを微笑ましそうに見ている。
34愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 04:41 ID:tHk80RUQ
「いや〜、若いねぇ嬢ちゃん」
「……人が真面目にヘコんでるってのに、そんなやる気の無さそうな顔するのってあんまりじゃない?」
「…………」
どうやらかがみには微笑ましく見守る独歩の顔が、適当な愛想笑い浮かべているようにしか見えないらしい。
あまりといえばあまりな言葉に、逆に独歩が少しヘコんでしまうが、かがみは気付いてないのか自分の考えに耽る。
そこに、ノックの音と共に村雨が戻って来た。
まだ考えはまとまっていないので、つい慌ててしまうかがみ。
「わっ、わわっ。ちょ、ちょっと待って村雨さん」
「す、すまん。取り込み中だったか?」
驚いて部屋を出ようとする村雨。
そんな様を見て更に慌てるかがみ。
「へ? あ、違う違う! そうじゃなくって……えっと、その……」
こほんと咳払い一つ。
かがみの行動が全くわからない村雨は、首をかしげてそれを見ている。

「村雨さん、助けてくれて、ありがとう」

まずはこの一言。絶対にこれは言わなきゃならない言葉だった。
そしてこれを言ってから色々とフォローの言葉を繋げようと勢い込むが、村雨の様子が変なので言葉を止める。
「村雨さん?」
村雨は俯き加減のままなので、その表情は見えない。
良く見るとその両肩が小刻みに震えている。
「えっと……むらさめ……さん?」
くるっとこちらに背を向け、上を向く村雨。
「かがみ、調子はどうだ?」
何か声がくぐもって聞こえるけど、これは突っ込まない方が良いんだろうなと思ったかがみは、元気良く聞こえるように声を張り上げた。
あんな所見せちゃったんだ、きっと心配してるから、そんなの全然平気だよって、そう、伝わるように。
35愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 04:42 ID:tHk80RUQ
「うん! もう大丈夫よ!」
村雨の体がびくっと跳ねる。
少しの間、言葉を発せずに居た村雨が、擦れた声で口を開く。
「独歩、貴方は何でも出来るんだな」
鼻を鳴らす独歩。
「馬鹿言え、俺は何もしちゃいねえよ。この嬢ちゃんが凄ぇだけだ」
「……そう、だな。本当に素晴らしい人だと、俺も思う」

いきなりのこのお言葉。
下手な告白よりも照れるんですが。いや、告白なんてされた事ありませんが。
「ちょ! ちょっと村雨さんいきなり何言い出すんですか!」
ああ、ほらおじさんが調子に乗った顔してる。
「う〜ん、この年になって愛の告白見る事になるたあなぁ。まあいいさ、これも縁だ。仲人は俺っちが引き受けてやるよ」
「おじさん!」
背を向けている村雨さんは、多分今笑っているんだと思う。
「それこそ馬鹿な話だ独歩。こんなに素晴らしい彼女に、俺何かが釣り合うはずないじゃないか」
ぬあ、何という切り替えしをしてくれますか村雨さん。
「だからそれはもういいっつーの! 照れるんだから勘弁してくださいよ!」
したり顔で頷くおじさん。おじさん、顔がタチ悪そうに笑ってるわよ。
「ほうほう、村雨には敬語で俺にゃ無しか。まあ年頃の娘だしな、そのぐらい受け入れる度量は俺にもあらぁ」
「さっきの自分の言動を振り返って下さい! ああもう! 何だってこんな事になってるのよ!」
やっと、村雨さんが振り返ってくれた。ほら、思ってた通り、背丈に似合わない可愛い顔で笑ってる。
「そうだな、今こうして笑っていられるのは、間違いなくかがみの人柄のおかげだ。ありがとう」
……だーれーかー、この人なんとかしてー。


36愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 04:43 ID:tHk80RUQ
独歩、村雨(←コイツは天然)によるかがみんいじりも一段落すると、かがみは真顔で二人に提案する。
「とにかく、ヒナギクを何とかしなくちゃならないわ」
男二人もそれには同意する。
「ただ、彼女人一倍責任感強そうだし、下手な慰めや発破とかは逆効果な気がするのよ……」
それしか思いつかなかった村雨は、唸りながら考え込んでしまう。
独歩は真顔で自らの考えを述べてみる。
「……いっそ、よってたかってくすぐって、無理矢理笑わせちまうってのはどうだ?」
かがみと村雨に同時に睨まれ、すごすごと引き下がる独歩。
かがみは、こんな風にふざけてくれる独歩に随分と救われている。そんな気がした。
「でも、笑うってのは大事だと思う。ただそれだけで、色々と違ってくるんじゃないかなって、私は思う」
そしてかがみには、切り札、リーサルウェポンとも言うべき、一つのネタがあった。
「これなら、確実に笑ってくれると思う話はあるのよ。ただ、急にそんな話になっても、ちょっと流れが変かなってだから……」
無茶を承知で、かがみは村雨に問いかける。
「村雨さん、何か笑える話……無い?」

いきなりとんでもない事言い出されて、つんのめりそうになるぐらい驚く村雨。
「俺がか!? いや、そういう話なら独歩の方が適任な気が……」
「だっておじさん顔恐いし」
さらっとヒドイことを言うかがみ。
「それに、どうせなら格好良い人にそうしてもらった方が良いと思うのよ。ヒナギクも女の子だしね」
そしてトドメも忘れないかがみさん。
「……そりゃアレかい? かっこ悪くて人相も悪い俺っちはどんな面白い話してもダメって事かい?」
「女の子はデリケートなのよ」
かがみは、仕返しが出来て大層ご満悦な模様。
在り得ない無茶振りをされた村雨は、しかし、それがヒナギクの為になるのならと真剣な表情でネタを考え始める。
その様を見て、かがみと独歩は同時に思った。
『この調子じゃ絶対無理かも……』
37愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 04:44 ID:tHk80RUQ
『この調子じゃ絶対無理だろ……』
結局、ネタは三人で考える事になった。

独歩は時々かがみの様子を見ていたが、ベッドに座る彼女からは病人の気配を感じる事が出来なかった。
確かに核金という道具はある。それは今も継続して使用中だが、それにしても回復が早すぎる。
心停止していたのはついさっきだ。
その期間の長さから脳障害すら考えていたというのに、まるでそんな事無かったかのようなこの元気はどうだ。
彼女の生きようとする意志に、体が応えていると言わんばかりではないか。
どんなに強い意志があろうと、人は死ぬ。
ならば彼女の回復には意思以外に何かがあるという事だろうか。
彼女の身にまとう衣装を見て、不意に突拍子も無い発想が思いつく。
『神様のご加護があるってんじゃないだろうな』
バカバカしい、巫女服着ただけで神のご加護がもらえるというのなら、正月は日本中加護だらけになる。
そんな考えを振り払い、真面目に考えてみるも、独歩にその答えを導き出す事は出来なかった。

「とりあえず、あんまりに露骨なお笑いはダメよね」
視線を泳がせる独歩。別に目を逸らしているのではなく、何かアイディアの元になるものはないかと室内を探しているのだ。
「自然な会話の中で、ふっと笑みを溢すような……そんな話がベストだな。駄洒落系はどうだ?」
「それ露骨すぎない?」
「いや、村雨がやるってんなら、こいつは天然で通せるだろ。当人気付いてないが駄洒落になってるって……そんな感じだ」
独歩の言葉にかがみは嬉しそうに頷く。
「うんうん、それならいいかも。となると後はネタよね……かがみ、鏡は基本として、後は……」
何やら相談しながらその内容を独歩が紙に記してゆく。
正直、聞くに堪えない。そんな駄洒落が次々と出されていく中、村雨はぽつりと呟いた。
「……なあ、俺達何やってんだろうな?」
すぐさまかがみにどやされる。
「それは言うな! ……というかお願いです、正気に戻るような事言わないでください。やってるこっちがやるせなくなってくるから……」
38Classical名無しさん:08/04/08 04:44 ID:s9g08EsY
aafdefdas
39Classical名無しさん:08/04/08 04:45 ID:s9g08EsY
afsesfdsssasssfasss
40Classical名無しさん:08/04/08 04:45 ID:s9g08EsY
dafdsafsafasdasfdsafdsafaweasfdasdfasdfafdsa
41Classical名無しさん:08/04/08 04:51 ID:s9g08EsY
dsdsdsdsdsdadsaadsasdadsasdadadsadad
42Classical名無しさん:08/04/08 05:03 ID:AGv4uxSQ
 
43愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 05:04 ID:tHk80RUQ



練習する事十三回。
馬鹿げているとは思いつつも真剣に取り組んだ村雨は、かがみ独歩プロデュースのネタ本を完全に暗記し終えていた。
恐ろしく緊張する。
このネタ本には、かがみと独歩のヒナギクが元気になって欲しいという願いが込められているのだ。
それらを村雨は一身に背負い、何としてでもヒナギクを笑わせてやらなければならない。
ヒナギクの居る部屋の前で深呼吸。
強張った顔では、決してヒナギクは笑ってはくれないだろう。
意を決してドアを叩く。
「居るかヒナギク? 入るぞ」
さっき出ていった時と寸分違わぬ部屋。
薄オレンジの明かりが、時折点滅しながら室内を照らす。
この部屋に居る。それを知っていなければ見落としてしまったかもしれない。
そんな薄暗い部屋の隅に、ヒナギクは座り込んでいた。
この部屋の殺風景な広さが、彼女の孤独を更に際立たせているようだった。
胸が苦しくなる。
こんな所に一人残してすまなかった。
今、俺が側に行ってやる。
「ヒナギク……」
俺があの二人にどれだけ救われたか。
お前にも、同じ悩みを抱えるお前にも伝えてやりたい。
あんなにも心優しい二人が、俺達を心配してくれてたんだ。
「今、かがみと話をして来た」
かがみという単語が出ると、僅かにだけ反応してくれた。
「隣、座るぞ」
44愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 05:08 ID:tHk80RUQ
返事を待たずに隣に座る。だらしなく片足を伸ばし、片膝を曲げた楽な姿勢だ。
「俺を見るなり、かがみ何て言ったと思う?」
やはり返事は無い。それでも構わない。聞いてさえくれていれば。
「ありがとう、と。助けてくれて、ありがとうと言ってくれた……俺はあの一言で不覚にも泣き出しそうになった」
今、ヒナギクはどんな顔をしているだろう。
「あの一言で、俺は何処まででも戦い抜ける。そんな言葉だった」
不意に左手に何かが触れる。
そちらを見ると、ヒナギクは村雨の手の上に自らの手を添えながら、信じられないといった顔で首を横に振っていた。
何度も何度もそうしていた。
「……だって、かがみあんなになって……それなのに……」
俺は今どんな顔をしているだろう。
この子を安心させられる。かがみのような、独歩のような顔が出来ているだろうか。
「ほんの少しの間だ。ヒナギクとここで話をして、戻ったらもうかがみだった。強くて優しいかがみだった」
添えられた手を引きながら立ち上がる。
「かがみが待ってる。行こうヒナギク」
手を引かれるままに立ち上がるヒナギク。しかしその表情は晴れない。
「俺を、独歩を、そしてかがみを信じろ」
泣き笑いのような、そんな複雑な顔で、それでもヒナギクは村雨に付いてきてくれた。
かがみの寝る部屋の前。
そこで村雨はもう一度訊ねる。
「かがみが待ってる。行けるな」
随分と間が空いた。
村雨は答えを急かすような事はせずにじっと待つ。
彼女の中でどんな葛藤があるのか、手に取るようにわかる村雨はただじっと待っていればよかったのだ。
きっと、彼女は……

「…………うん」
45愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 05:09 ID:tHk80RUQ
ほらな。心根のまっすぐなこの子だから、絶対にこう言ってくれると思っていたんだ。



ドアを開け、部屋に入っていくヒナギク。
「あ、ヒナギク! あのね、まず最初に言いたい事が……」
そうそう、この瞬間がとんでもなく恐ろしいんだ。

「……ありがとう、助けてくれて」

それで引っ張っておいてこれだ。こっちの心臓が止まるかと思ったぞ。
「かがみっ!」
そう叫び、駆け寄る音が響いてくる。
「ごめんね、ごめんね、ごめんねかがみ……」
そこまで聞いた所で静かに扉を閉める。
俺の役目はここまでだ。
かがみ、やはり伝えたい想いがあるのなら、君が直接彼女に伝えた方がいい。
きっと、その方がいいと俺は思う。
二人っきりにしてやろうと部屋の前を離れ、廊下を歩くとその先に独歩が待っていた。
「よう、うまくいったかい?」
この男には、何でも見透かされていそうだ。
「ああ、後はかがみに任せるさ。独歩は行かなくていいのか?」
両手を広げる独歩。
「ぶさいくで悪党面の俺の出る幕は無いとさ」
本当に、この男は人を笑わせるのがうまい。
「何だ、拗ねているのか?」
「うるせえ」
46愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 05:11 ID:tHk80RUQ
大人なのか子供なのかまるでわからない。
ふと、思い出した事があって村雨は独歩に問う。
「そういえば、随分と零を見ていないが、あいつはどうした?」
「あ」
すぐにビルの外へと駆け出す村雨と独歩。
零は、かがみを寝かせていた場所のすぐ側に、ちょこんと所在無く佇んでいた。
『……思い出してくれたのならそれで良い』
そうぽつりと呟いた零は、ほんの少しだけ寂しそうだった。



ハヤテ、お前には申し訳ないと思っている。
俺は今すぐにもそちらに行って、お前に詫びなければならないのに。
こんな俺にも、守りたいと思う人達が出来てしまったんだ。
なあハヤテ。そんなに待たせるつもりは無いが、後少しだけ。
彼女達が平和な世界に戻るまで、ほんの少しだけ、待っていてはくれないか。
きっと俺がこうして今ここに居るのは。
その為だと思うから。



「でね、そこでバス停のベンチに座ったら、そこにこなたが来たのよ」
ベッドから上半身だけを起こした状態で、ベッドのすぐ側にある椅子に座るヒナギクにかがみは話しかける。
「友達のこなたさんよね」
「そうそう、まあどうしようもない奴なんだけどね。それでそいつがまた下らない話ばかりしてくるの。夢の中でまでお前何してんだと」
最初の頃に比べれば、ヒナギクの表情も幾分か柔らかくなってきたと思う。
それでもまだだ。まだこんなものじゃ足りない。
47愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 05:12 ID:tHk80RUQ
「色々と話したなぁ。そんな事してたら、遂に待ってたバスが来たのよ。これ乗っていけばいいのかなって」
「うんうん。それで?」
「こなたは先に乗ってたから、じゃあ私もって思ったら、急にさ……その……」
「ん?」
妙に話しづらそうにしているかがみを見て、ヒナギクは不思議そうに問い返してくる。
えいくそ、いいわよ。言ってやるわよ。
「その時急に……」



「は? ごめん、かがみんもっぺん言って?」
バス乗り込み口から怪訝そうにそう問い返すこなた。
コイツ、絶対わかってて言ってるんだ。相変わらずムカツク。
「……だから、ちょっと……その、お腹が……痛いかなって……だから」
「お腹?」
あー! もう! 結局最後まで言わせる気か! デリカシーの無さは変わらんなコイツは!
「ちょっとおトイレ行ってくるって言ってるの!」
全く、このぐらい察しなさいよ。
えっと、おトイレは……あれ? トイレ何処かに無かったっけ?
ってあれ? バスは? こなたは何処? あれ?



ヒナギクは流石に二の句が告げない模様。
「いやね、後から考えるとお腹っていうより、ちょっとその上だったかなぁなんて思うんだけど。ほら、何せ夢だからそういう細かい所まで気付かないって言うか……」
ほけーっとした顔でこちらを見ているヒナギク。
「独歩さんに聞いたけど、私危なかったんでしょ? そうやって考えるとあのバスってつまりアレだったのかなぁなんて思ったりして……」
48Classical名無しさん:08/04/08 05:15 ID:s9g08EsY
asdadasfasdsafdsaaaa
49愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 05:15 ID:tHk80RUQ
右手でベッドをどんと叩く。
「大体なんでこなたなのよ。普通こういう時ってもっとこうかっこいい男の人とか、そういう流れじゃない。何だってアイツはいつもいつもいつもいつも……」
あれ? ヒナギク俯いちゃった。
もしかして……私外した? 思いっきり外しましたー!?

ゆっくりと、顔をあげたヒナギクは、ようやく、本当ようやく。
可愛い顔立ちに似合いの、最高の笑顔を見せてくれました。
ええ、このためなら恥も外聞もどうでもいいわよ。
どうせ私はトイレで帰ってきた女よ! うっさい、文句あるか!



バスの中、もう何度目になるか、思い出し笑いをするこなた。
「普通さ、あそこで『おトイレ行ってくる』は無いよねぇ。もう駄目、笑いすぎてこっちのお腹が破裂しそう」
同乗しているつかさもいまだに笑いを堪える事が出来ずにいる。
「お姉ちゃん面白すぎ。もう色んなものどっかに飛んでっちゃいそうなぐらいおかしかったよ」
「最後までかがみんは予想の斜め上を決めてくれたねぇ。グッジョブかがみん!」
「心配し甲斐が無いっていうか、どっか違うのがお姉ちゃんらしいって言うか」
もう見えなくなってかなり経つが、かがみが居た方に向かって振り向く二人。

「じゃあねお姉ちゃん。向こうに帰ってもその調子で元気でね」
「かっがみーん! 冥土の土産は確かに受け取ったよー! やっぱかがみんは最高だー!」
50Classical名無しさん:08/04/08 05:15 ID:s9g08EsY
dafdadasdsadasaaaaaaaaaaaaaa
51Classical名無しさん:08/04/08 05:16 ID:s9g08EsY
j
adafdsaja
dafsaafdas2ss safasdkfjakl
52愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 05:20 ID:tHk80RUQ
【D-2 南部 2日目 黎明】
【愚地独歩@グラップラー刃牙】
[状態]:体にいくつかの銃創、頭部に小程度のダメージ、左肩に大きな裂傷
[装備]:キツめのスーツ、イングラムM10(9ミリパラベラム弾32/32)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:闘うことより他の参加者 (女、子供、弱者) を守ることを優先する
1:ヒナギク、かがみ、村雨と情報交換する。
2:ジグマールを見付け出し倒す。
3:学校へ行き、アカギと合流。鳴海の事を伝える。
4:ゲームに乗っていない参加者に、勇次郎の事を知らせ、勇次郎はどんな手段をもってでも倒す。
5:その他、アミバ・ラオウ・ジグマール・平次(名前は知らない)、危険/ゲームに乗っていると思われる人物に注意。
6:乗っていない人間に、ケンシロウ及び上記の人間の情報を伝える。
7:可能なら、光成と会って話をしたい。
8:可能ならばエレオノールを説得する。
9:手に入れた首輪は、パピヨンか首輪解析の出来そうな相手に渡す。
[備考]
※パピヨン・勝・こなた・鳴海と情報交換をしました。
※刃牙、光成の変貌に疑問を感じています。
※こなたとおおまかな情報交換をしました。
※独歩の支給品にあった携帯電話からアミバの方に着信履歴が残りました。



【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 顔と手に軽い火傷と軽い裂傷。右頬に赤みあり。
[装備] バルキリースカート@武装錬金
53愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 05:21 ID:tHk80RUQ
[道具] 支給品一式。ボウガンの矢17@北斗の拳
[思考・状況]
基本:BADANを倒す。
1:村雨、かがみと共にS7駅で覚悟と合流する。その後、首輪、BADAN、強化外骨格について考察する。
2:ラオウ、斗貴子に復讐する。(但し、仲間との連携を重視)
[備考]
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです
※桂ヒナギクのデイパック(不明支給品1〜3品)は【H-4 林】のどこかに落ちています
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました
※バルキリースカートが扱えるようになりました。しかし精密かつ高速な動きは出来ません。
 空中から地上に叩きつける戦い方をするつもりですが、足にかなりの負担がかかります。



【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]全身に無数の打撲。
[装備]十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (0/2) 、マイクロチェーン(2/2) 核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金
核鉄(モーターギア)@武装錬金
[道具]地図、時計、コンパス 454カスール カスタムオート(0/7)@HELLSING、13mm爆裂鉄鋼弾(35発)、ニードルナイフ(15本)@北斗の拳 女装服
    音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾、ベレッタM92(弾丸数8/15)
[思考]
基本:BADANを潰す!
1:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る
2:かがみ、ヒナギクの安全の確保後、ラオウを倒しに行く。
3:ヒナギク、かがみと共にS7駅で覚悟と合流する。
4:ジョセフ、劉鳳に謝罪。場合によっては断罪されても文句はない。
5:パピヨンとの合流。
54愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 05:21 ID:tHk80RUQ
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です
※参戦時期は原作4巻からです。
※村雨静(幽体)はいません。
※連続でシンクロができない状態です。
※再生時間はいつも(原作4巻)の倍程度時間がかかります。
※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。
※また、零の探知範囲は制限により数百メートルです。
※零はパピヨンを危険人物と認識しました。
※零は解体のため、首輪を解析したいと考えています。
※記憶を取り戻しました



【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:全身に強度の打撲、左腕欠損(止血済み)、休息により(?)それなりに回復
[装備]:巫女服
[道具]:
[思考・状況]
基本:BADANを倒す
1:みんな元気になれっ……もちろん自分も
2:村雨、かがみと共にS8駅で覚悟と合流する。その後、首輪、BADAN、強化外骨格について考察する。
3:仲間と共にジョセフと合流。
4:さっき見た首輪の異変について、考えてみる。
5:神社の中にある、もう一つの社殿が気になる。
6:ジョセフが心配。
7:こなたと合流する。
55愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 05:23 ID:tHk80RUQ
8:つかさとハヤテ、ナギの死にショック(大分収まり、行動には支障なし)

【三人の備考】
※一通りの情報交換は終えています
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※3人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首2には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている
※3人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論
※BADANに関する情報を得ました。
【BADANに関する考察及び知識】
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって”都合がイイ”状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては”どーでもイイ”状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
56Classical名無しさん:08/04/08 05:24 ID:s9g08EsY
sdafadsadfasd
57愛すべき日々 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 05:24 ID:tHk80RUQ
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。



※かがみの主催者に対する見解。
@主催者は腕を完璧に再生する程度の医療技術を持っている
A主催者は時を越える"何か"を持っている
B主催者は@・Aの技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
Cだが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
※首輪の「ステルス機能」および「制限機能」の麻痺について
かがみがやった手順でやれば、誰でも同じことができます。
ただし、かがみよりも「自己を清める」ことに時間を費やす必要があります。
清め方の程度で、機能の麻痺する時間は増減します。
神社の手水ではなく、他の手段や道具でも同じことが、それ以上のことも可能かもしれません。
※ステルス機能について
漫画版BRで川田が外したような首輪の表面を、承太郎のスタープラチナですら、
解除へのとっかかりが見つからないような表面に 偽装してしまう機能のことです。
ステルス機能によって、首輪の凹凸、ゲームの最中にできた傷などが隠蔽されています。
※S1駅にハヤテのジョセフに対する書置きが残っています。
※ボウガン@北斗の拳と強化外骨格「零」(カバン状態)@覚悟のススメとクルーザー(全体に焦げ有り)はD-2 南部の路上に置いてあります。
58 ◆1qmjaShGfE :08/04/08 05:25 ID:tHk80RUQ
以上です。こんなとんでもない時間帯にも関わらずのご支援、本当にありがとうございました
問題点等ございましたら、何なりとお申し付け下さいませ
59Classical名無しさん:08/04/08 05:31 ID:AGv4uxSQ
 
60Classical名無しさん:08/04/08 09:13 ID:A1DgeAlM
投下乙です。
柊かがみ、復活ッ! 柊かがみ、復活ッ! 柊かがみ、復活ッ! 柊かがみ、復活ッ!
やっぱりかがみんがいなくちゃ駄目だよ。ジョセフの方はもう治ったけどこれで某ドイツ軍人から義手を付けて貰えばジョセフとペアr・・・
GJでした。
ところで義手で思い出したんですが状態表の
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
これ、ジョセフの事なら右腕じゃなくて左腕だと思いますよ。
61Classical名無しさん:08/04/08 09:21 ID:Ma63hZu6
投下乙
かがみん復活か
狙われている村雨が一応首の皮一枚でつながったか
そしてヒナギクは相変わらずヒナギクだなw
それぞれのキャラクターがキャラクターらしく動いていたのがよかったかな
62Classical名無しさん:08/04/08 09:53 ID:YhtIxdy.
投下乙!
かがみん完全復活!
ほのぼのしたやり取りは、氏らしい作品だと思いましたw
村雨さんのてんねんっぷりも素敵だ。
すねる零と独歩もかわいいw
GJ!
63Classical名無しさん:08/04/08 21:05 ID:QjzozALY
投下乙!
かがみん復活キタ!!
何故だろう。ヒナギクやかがみんは勿論、村雨や独歩や零すらも可愛いキャラに見えてくるw
終盤なのにとても良いほのぼのを堪能させてもらいました〜。
GJです!!
64Classical名無しさん:08/04/09 00:22 ID:3IiiQv/6
GJ!!
かつての覚悟・ヒナギク・つかさ・川田チームを彷彿とさせてしまうな。
65Classical名無しさん:08/04/10 02:30 ID:uR0KcqdQ
とりあえずGJ
やっぱ基本的にらき☆すたとハヤテのキャラは相性いいよね
性格が違うのにかがみんが
ヒナに対するハム(西沢さん)っぽく見えて仕方ないんですけどw

しかしヒナが精神的に復活してもかがみんがまた心配だな・・・
こなたの訃報に耐えられるか、あるいは第六感で分かってるのか
でもつかさのも耐えたんだしこのチームなら何とかなるぜ!…たぶん

>『つかさ、みゆきさん、灰原さん、桂さん、ハヤテ君……』
これはかがみの心中、でいいですかね?
かがみ→みゆきは呼び捨てなので、細かいですが訂正を
66Classical名無しさん:08/04/10 03:02 ID:nk4Zv9R.
しかしかがみの生存率はものすごいな。おじさん惚れ惚れしちゃうよ
67Classical名無しさん:08/04/10 10:53 ID:XWQZqAgo
それに比べて主人公の方は・・・・・グスン。
68 ◆05fuEvC33. :08/04/10 22:32 ID:oA953Hz6
江戸川コナン、範馬勇次郎、投下します。
69鬼が来たりて笛を吹く ◆05fuEvC33. :08/04/10 22:34 ID:oA953Hz6
神楽の頬の透き通りそうな位白い肌に、淡い桃色の花びらが舞い落ちる。
満身創痍の身体に、しかし花に囲まれ穏やかな笑みを浮かべた神楽の亡骸は皮肉なほどに美しい。
それを江戸川コナンは、生気の無い表情で眺めていた。
もうどれ位こうしているだろう? 時間の感覚を失くした為に分からない。
 
『私はこっちが良いアル』
 
そう言って神楽は、友と決別した自分に同行してくれた。
理由は良く分からない。
神楽より年少の姿をした自分が、一人で行動するのを不憫に思ったのだろうか?
同行する理由は何であれ、そんな神楽の存在がどれ程心強かった事か。
範馬勇次郎の凶行から、身を挺して守ってくれた。
 
『お前、無茶苦茶ネ!』
『お前が言うんじゃねえよ!』
 
何より共にいるのが、楽しかった。
出会って一日も経っていないのに、まるで旧知の友人の様に笑い合えた。
その神楽が殺されたのに、コナンはどうする事も出来なかった。
(何が探偵だ……守られっ放しで、何にもしてやれなかったじゃねぇか……………………)
無力感が全身を包み、立ち上がる事も出来ない。
裏腹に穏やかな笑みを湛えた神楽の亡骸は、まるで死んだ事が嘘の様だ。
 
グシャッ
 
鈍い音と共に、神楽の顔が何物かの足に踏み潰される。
コナンはその足から、胴体を辿って頭まで視線を上げた。
喜色を浮かべる鬼――範馬勇次郎が、そこに居た。
70Classical名無しさん:08/04/10 22:34 ID:ZlXCglGQ
かもーーーーーーーん
71Classical名無しさん:08/04/10 22:34 ID:HrcCxR1U
 
72鬼が来たりて笛を吹く ◆05fuEvC33. :08/04/10 22:35 ID:oA953Hz6
勇次郎が足を持ち上げ、更に踏む。
踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む。
呆気に取られるコナンが見る間に神楽の頭は頭蓋が歪み、眼球が潰れ、血が周囲へ飛び散る。
それでも勇次郎は構わず、神楽の頭を踏み続けた。
やがて神楽の頭はプレスをかけられた様に、地面に押し付けられる形で平らに潰された。
 
「くたばってからも、無駄に頑丈な奴だぜ」
「……何のつもりだ…………」
「探偵さんは首輪を外したいんだろ? なら、首輪のサンプルが要ると思ってな」
 
ようやく言葉を振り絞ったコナンの問いに、勇次郎は神楽の首下を爪先で触りながら答える。
「首輪を取り易くしてやったぜ」
見れば確かに頭部が無くなった為、神楽の首輪が取れる様になっていた。
動かないコナンを、勇次郎は膝で軽く突く。
「どうした、要るだろサンプルは? さっさと用事を済まして、情報を集めに動かねぇとな探偵さんよ」
コナンは怒りに駆られスタンド、ゴールド・エクスペリエンスを発現しかけるも
勇次郎の眼が僅かに細まったのを見て、すぐに気を持ち直す。
(やべ! 手出ししたら、殺される所だったぜ)
勇次郎はこうやって穏やかに話していても、次の瞬間には相手の身体を引き裂いておかしくない類の人間だ。
ましてこちらから仕掛けるなど、虎口に飛び込むも同然。
 
「…………意外と親切なんだなアンタ、わざわざ手を煩わせてくれるなんてよ……」
悔しいがここは、勇次郎の言う通りなのだ。
既に4回目の放送までに、全体数の3分の2に当たる40人が死んでいる上
一向に殺し合いのペースが落ちる気配は無い。
今は一分一秒とて、時間を無駄に出来る状況に無いのだ。
一刻も早く脱出の為に動かないといけない。
(……悪ぃな神楽)
コナンは神楽の首下から、ゆっくりと首輪を外しデイパックに仕舞う。
コナンの様子を見ていた勇次郎は、やがて神楽のデイパックを漁り
食料と水だけを取り出すと、それを自分のデイパックに押し込んだ。
 
73Classical名無しさん:08/04/10 22:35 ID:RZYSCTwM
し・え・ん
74Classical名無しさん:08/04/10 22:35 ID:mC7IVibI
 
75鬼が来たりて笛を吹く ◆05fuEvC33. :08/04/10 22:35 ID:oA953Hz6
 
勇次郎は思う。
戦力で言えば自分の餌にも到底足らないコナンだが、やはり興味をそそる。
勇次郎の危険性、気性を見抜いて尚、交渉し利用しようとする度胸と狡猾さ。
面白いと思ったからこそ、一度離れたにも関わらずまたコナンの下に戻り
消沈するコナンの前で、神楽の頭を潰し発破をかけた。
無論それは、コナンの為ではなく完全に自分の為の行動。
地上最強の生物たる自分に、あれだけナメた口をきいて挑発したのだ。
今更絶望に足を止め、楽になるなど絶対に許さぬ!
 
ややあって、勇次郎はその場を立ち去ろうとする。
コナンは慌てて、その後を追う。
コナンの立てた作戦、情報を引き出す事を口実に勇次郎の殺人を抑止する。
それを確実に遂行する為には、勇次郎の傍らに居る必要が有った。
何しろどんなにトドメを刺さない事の、メリットを言い含めても
勇次郎の性格では、それを無視して相手を殺す場合が充分に考えられる。
勇次郎がトドメを刺そうとする瞬間に居合わせられるよう、コナンが同行しなければならない。
 
「俺が喰い残した連中から、情報を聞く……」
突然後ろから追い縋るコナンに振り向きもせず、勇次郎が喋り始めた。
「それが主催者側の強者との戦いに、繋がるやもしれぬ……確かそういう話だったな」
「ああ。それに、首輪の解除にもな」
「保証は有るのか?」
「……保証?」
「貴様が必要な情報を得たとして、本当に俺の首輪を外し主催者側の強者を引きずり出す保証だ」
 
勇次郎らしくない質問だと思った。
そして、ある意味当然の疑問だとも。
とにかくそれを聞いてきたという事は、少しはコナンの話に興味を示している証拠と言える。
何も問題は無い。コナンは勇次郎の問いに、答えを持っている。
76Classical名無しさん:08/04/10 22:36 ID:HrcCxR1U
   
77Classical名無しさん:08/04/10 22:37 ID:ZlXCglGQ
 
78鬼が来たりて笛を吹く ◆05fuEvC33. :08/04/10 22:37 ID:oA953Hz6
「もし首輪の解除が成功し、この場からの脱出が可能になったとする。そうなったら主催者が、参加者を黙って見逃すか? 
 主催者にとって参加者は敵でしかない、当然主催者は参加者の脱出を阻もうとあるいは始末しようとするだろう」
コナンの話を、勇次郎は黙って聞いていた。
「主催者側の強者は1人か2人居るきりだと言ったがそれは強者に限定した話で、全体の戦力がどれ位になるかは見当も付かない。
 これだけ大掛かりな殺し合いをお膳立て出来るんだ、主催者はかなりの人員を動員出来ると考えていい。
 そうなるとこの場からの脱出を試みる以上は、主催者側との戦闘は避けて通れないという事になる。
 当然こちらも可能な限り、戦力を用意する必要がある。
 つまり俺にとっては、否も応も無くアンタの力を当てにするしかない状況なんだ。
 それがアンタの首輪を外して、主催者側の強者を引きずり出す『保証』だ」
勇次郎はコナンに背を見せ歩き続けたまま、目だけを向ける。
「俺を主催との戦闘に際し、用心棒か露払いにする腹か?」
コナンは不敵に、口角を釣り上げる。
「アンタにとっても、悪い話じゃねーよな?」
 
コナンが勇次郎に聞かせた話に、嘘は無い。
主催者との戦闘が不可避である以上、脱出するには戦力が要る。
仮に殺し合いに乗っている者も含め現在生存している全員を戦力として組み込めたとしても、主催者に対抗出来る保証は無い。
勇次郎程の強者を味方につけられるなら、コナンにそれを逃す手は無いのである。
コナンは勇次郎を、対主催の主戦力として味方に引き入れるつもりだ。
 
「ククク、成る程悪い話じゃない。倒してもトドメを刺さず情報を集め首輪を外し、脱出の行きがけに主催者側の強者とやる……」
コナンは勇次郎の笑いに、嫌な予感が過ぎる。
「だったら、探偵さんはいらないよな? 俺だけで用は足る」
嫌な予感は的中。どうやら笑っている時の勇次郎は、碌な事を考えていないらしい。
勇次郎はゆっくりと、コナンに近付いていく。
79Classical名無しさん:08/04/10 22:37 ID:mC7IVibI
  
80鬼が来たりて笛を吹く ◆05fuEvC33. :08/04/10 22:38 ID:oA953Hz6
「アンタ一人で、情報を集められる訳ねーだろ。アンタは殺し合いが始まってから今まで、好き勝手暴れて殺して回ってたんだろ?
 そんな人間が主催者に反抗する者から信用されるには、仲介する……!!?」
コナンの視界が、突如として天地逆になる。
勇次郎に足を掛けられ、転倒させられたと理解した時には
その勇次郎に喉を踏まれていた。
「口先で人を利用するなら、相手を選べ」
喋る事はおろか呼吸も出来ず苦しむコナンを、勇次郎は強い視線で見下ろす。
「小賢しい策を自慢げに披露し、この俺を己の駒の如く扱おうなど……」
喉を潰さんばかりの圧力以上に、勇次郎の視線に危機感を覚えたコナンは
ゴールド・エクスペリエンスで、勇次郎の脚を払おうとするが空振り。
勇次郎は足を、自分の顔の高さまで持ち上げている。
(ちょっと待てよ! あんなもん頭に落とされたら、死んじまうだろ!!)
「頭でっかちな探偵に一つ教えてやろう……餌を喰らうのに、理由は要らん!!」
そのまま勢いよく、振り下ろした。
 
地面が揺れ、轟音が響く。
コナンの耳の横に落とされた勇次郎の踵を中心に、地面がひび割れクレーターが出来ていた。
(おいおい、後5センチずれてたら俺死んでたぞ……)
「俺が貴様を殺すのに理由は要らんが、あえて生かして置くのには理由が要る。心して置けい」
姿勢を戻した勇次郎は、再びコナンに背を向けた。
 
(何だか訳分かんねーが、助かったみてーだな……)
歩き始めた勇次郎を、再びコナンが追いかける。
(しっかし、こいつはある意味神楽より行動が読めねーんだよな…………)
幾らコナンが卓越した推理力を持っていると言っても、他人の行動を完璧には予測出来ない。
特に神楽や勇次郎の様に、自分の予定にも無い行動を思い付きで取る人物の行動を予測するのは難しい。
だからこそ神楽にも勇次郎にも、その行動を制御出来ず振り回された。
だがコナンが付いて行くのを勇次郎が黙認しているのは、コナンの言葉に少しは心動かされている証拠である。
そうでなければ病院で勇次郎にあれだけ暴言を吐いたコナンは、とっくに殺されている筈だ。
 
81Classical名無しさん:08/04/10 22:39 ID:mC7IVibI
   
82Classical名無しさん:08/04/10 22:39 ID:KJ1XVINE
      
83鬼が来たりて笛を吹く ◆05fuEvC33. :08/04/10 22:39 ID:oA953Hz6
 
(けど、このままただ黙って付いて行ってる……場合じゃねーよな…………)
息を切らし棒の様な脚で、コナンは必死に勇次郎を追う。
(…………勇次郎をもう少し、殺人を抑止する方向に…………念を押さないと……………………)
進む度に足の裏が痛むが、今でも勇次郎に付いて行くのが精一杯なのだから速度を落とす事は出来ない。
(……………………駄目だ……こんな状態じゃ、まともに頭が働かねーよ…………)
コナンは頭脳は大人と言えど見た目は子供、体力も子供並みである。
勇次郎は徒歩でもコナンとは歩幅が違う、走って付いて行くのがやっとだ。
ただでさえ消耗していたコナンの体力も、限界に達しようとしていた。
コナンが今になって思い返してみれば、新八もルイズもあの掴み所の無いと思えた神楽も
共に居る時はコナンの体力を気遣って、行動してくれていたのが良く分かった。
今前を歩く勇次郎には、そんな気遣いは一切見られないのだから。
(とりあえず、勇次郎の足を止めねーと…………
 つっても俺の体力が限界来てるって言って、素直に休んでくれる奴じゃねーしな…………)
「……ハァ……ハァ…………ところでさっそくアンタから、情報を得たいと思うんだがよ……勇次郎さん…………」
勇次郎はコナンに背いたまま、足を遅める様子すらない。
(無視か!! こいつ俺が情報集めなきゃ、主催者側の強者と戦えないって本当に分かってんのか!?)
 
背後からのコナンの声を気にも止めず、勇次郎はある事を思案していた。
それは残った打ち上げ花火を、如何に使うか。
空模様から推して日昇まであまり時間は無い、出来ればそれまでに花火を打ち上げたい所だが
おそらく殺し合いの進行ペースからして、次の日昇までの打ち上げが
花火で他の参加者を引き寄せる、最後の機会。
(これまで花火で引き寄せられたのは、刃牙位か……)
花火の効果を上げる方法は無いものかと、勇次郎は思案を続ける。
(場所は今からじゃ、大して選べねぇ……そうなると花火と合わせて何か他の道具を使うか…………)
 
「休みたいみたいだな小僧」
勇次郎が足を止めて、顔だけコナンに振り向いた。
口元に浮かべている微かな笑みに嫌な予感がするが、今のコナンにはようやく一息付けた安堵の方が大きい。
84Classical名無しさん:08/04/10 22:40 ID:VYnkZ7j2
85Classical名無しさん:08/04/10 22:40 ID:mC7IVibI
    
86Classical名無しさん:08/04/10 22:40 ID:KJ1XVINE
   
87鬼が来たりて笛を吹く ◆05fuEvC33. :08/04/10 22:41 ID:oA953Hz6
「拡声器を持っているか?」
(拡声器? ああ、人を呼び寄せるのに使う気か……)
「ハァハァハァ…………ねーよ、そんなもん」
「心当たりは?」
「……有るには有る」
「案内しろ、拡声器が有れば一緒に休んでやる」
 
拡声器を求める勇次郎に、コナンはこれをチャンスと捉えた。
勇次郎が拡声器を使うとなれば恐らく不特定多数に呼び掛け、呼び寄せるやり方だろう。
それで集まりそうな参加者は、二種類の者が考えられる。
殺し合いに乗る者と、殺し合いに乗らない強者。
最初に参加者が集められた場所での言動と、これまでの殺し合いでの勇次郎の行動を推して
勇次郎が危険人物と参加者に認識されている可能性が、極めて高い。
ならば殺し合いに乗っていない上、自分の戦力に自身の無い者は当然勇次郎を避ける。
殺し合いに乗らず勇次郎に戦いを挑むとなれば、相当戦力を整えている者達であろう。
ならば如何に勇次郎相手でも、そうそう命を落とす心配も少ない。
そして勇次郎が拡声器を使うとなれば、更に利点が考えられる。
それは殺し合いに乗る者を、勇次郎に引き付ける事が出来る。
殺し合いに乗る者からすれば、勇次郎はいずれ自分で倒さねばならない相手になる可能性が高い。
彼等にとって勇次郎の居場所が一方的に分かって、先手を打てる状況は千載一遇の好機と言える。
あるいは人の集まりそうな勇次郎の近くで、網を張るかもしれない。
そうして近付いてきた殺し合いに乗る者と、勇次郎の間で戦闘になる。
そうなって勇次郎が勝ってもコナンの策が効いているなら、重傷にはなれど相手を殺す事は無い。
つまり殺し合いに乗る者を、殺害する事無く無力化する形になる。
その上コナン自身が多少勇次郎から引き離されても、拡声器の声で追い掛ける事が出来る。
 
88Classical名無しさん:08/04/10 22:41 ID:mC7IVibI
 
89鬼が来たりて笛を吹く ◆05fuEvC33. :08/04/10 22:42 ID:oA953Hz6
 
「……案内しても良いが、俺はしばらく動けそうにねーよ。先に休んでからだな…………」
地面に座り込むコナンを、勇次郎は片手で襟首から持ち上げた。
「運んでやるから、今すぐ案内しな。但し無駄足踏ませるな」
心当たりに案内して、もし拡声器が無ければ躊躇無くコナンを殺すだろう。
勇次郎はそれ程の殺気を放ち、コナンに言い放った。
(…………こりゃ早いとこ脱出方法を掴まないと、命が幾つあっても足りねーな……………………)
 
コナンには、拡声器の心当たりが二つ有った。
一つは服部平次が持つ拡声器。
だがコナンは平次が別れた時点で繁華街を目指していた事しか知らない為、案内する事は出来ない。
例え出来たとしても、勇次郎と平次を引き合わせる様な危険な真似をする訳にはいかない。
従ってもう一つの心当たりに当たる。
勇次郎に持ち上げられたままコナンは今までの道程を記憶して作成した脳内地図を検索し、F-3北部にある無線電気店に案内した。
コナンを持ち上げたまま、勇次郎はスチール製のドアを蹴破り店内に入る。
(まともにドアも、開けられねーのかよ…………)
呆れるコナンを床に下ろし、しばらく店内を物色していた勇次郎は
やがて商品として置いていた拡声器と、それの電力になる乾電池を手に入れ
コナンを放って、店外に出て行った。
(……別に礼を言われるのも、約束を守るのも期待してなかったけどな……………………)
僅かに回復した体力を振絞って、コナンは勇次郎を追った。
 
勇次郎は無線電気店近くの大きな交差点で、打ち上げ花火の用意をしていた。
それを見てコナンは市役所で、最初に会った時に勇次郎が花火を上げていたのを思い出した。
(まだ花火を持ってたのか……あれを上げるなら、しばらくこの場を動かないよな)
コナンは近くのアスファルトに座り込んだ。
とにかく疲れた。
考えなければならない事は山積みだが、今は只休みたかった。
自分の頭上遥か高くで舞い散る花火を、外見そのままの童心に帰った如く無心で見上げる。
 
90Classical名無しさん:08/04/10 22:43 ID:mC7IVibI
    
91鬼が来たりて笛を吹く ◆05fuEvC33. :08/04/10 22:43 ID:oA953Hz6
 
『この戦いに参加する、全ての者に伝える事が有る!!』
 
拡声器越しの、勇次郎の声が響き始めた。
 
『命を惜しむキサマ等に、もの知らぬ浅はかな者供があれこれと入れ知恵するだろう。
 殺し合う必要は無いだの、首輪を外すだの、毒にも薬にもならぬ駄菓子の如き助言。
 いらぬ世話をッッッ!』
 
コナンは妙な事を口走っていると訝しむが、今更止めようも無いので
勇次郎を放っておいて、デイパックから水を取り出し口に含む。
 
『一切聞く耳を持つなッ!』
 
口から水を派手に噴出した。
 
『生き残りたくば、俺を殺せ!!!』
 
呆然として見つめるコナンを余所に、勇次郎が語り続ける。
 
『さもなくばキサマ等を殺すッッッッ!!! 余す者無く、全てを殺すッッ!!!
 天地を穿つ強者であろうが、物の分からぬ赤子であろうが殺すッッ!!! 何処に逃げ隠れしても殺すッッ!!!
 殺して殺して殺し尽くすッッ!!!!
 俺以外の全ての弱者、弱き者供よ……俺を殺す他に命を繋ぐ道は無いと知れッッ!!!!』
 
流石のコナンも呆れ返っていた。
一緒に脱出を試みる話をした筈なのに、幾らなんでも殺すか殺されるかは無いだろう。
多分ハッタリであろうが、勇次郎の場合本気でそう試みる可能性も否定し切れない。
92Classical名無しさん:08/04/10 22:44 ID:KJ1XVINE
           
93Classical名無しさん:08/04/10 22:44 ID:mC7IVibI
      
94鬼が来たりて笛を吹く ◆05fuEvC33. :08/04/10 22:44 ID:oA953Hz6
(…………あれ? 勇次郎は?)
何時の間にか消えていた勇次郎の姿を捜すが、何処にも見当たらない。
突如背後から伸びた手に有る拡声器が、口に押し当てられる。
そして左手の小指の爪を摘まれ
(勇次郎? 何時の間に後ろに!?)
力任せに引き剥がされた。
 
『ウワァァァァアアアアアアアアアアアッッ!!!』
 
コナンの悲鳴が拡声器に拠って増幅され、響き渡った。
蹲るコナンに見向きもせず、勇次郎は拡声器を自分の口に当てた。
 
『あまり俺を待たせるな! さもなくば今悲鳴を上げた坊主と、遊ばして貰うぜ!!!』
 
 
 
打ち上げ花火の道具と拡声器を仕舞い込んで、勇次郎は交差点の角にあるファーストフード店に入っていった。
先程放送を行った場所が一望出来る席に座り、食料と水を取り出して食事を始めた。
(さて、探偵の坊主はどう出るかな?)
食料と水を全て取り終えた勇次郎は、未だ交差点に座り込んでいるコナンを一瞥する。
(骨の有るガキだからな、この程度で折れはしねぇだろ。さあ、その小賢しい頭で次は何を仕掛けてくるつもりだ?
 …………ま、花火を上げ放送もしたし、しばらくは待ちだな)
まだまだお楽しみは尽きない。
そう言いたげに、勇次郎は笑いを浮かべた。
 
95鬼が来たりて笛を吹く ◆05fuEvC33. :08/04/10 22:45 ID:oA953Hz6
 
【F-3北部 交差点 /2日目 黎明】
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:全身打撲。疲労極大。左肩と全身に湿布と包帯。左手の小指の爪欠損。
[装備]:ハート様気絶用棍棒@北斗の拳 、『ゴールド・エクスペリエンス』のDISC@ジョジョの奇妙な冒険
     懐中電灯@現地調達、包帯と湿布@現地調達 スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品(食料一食消費)、鷲巣麻雀セット@アカギ、 空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考]基本:この殺し合いを止める。
1:????????????????
2:範馬勇次郎を追いかけ行動を共にする。
3:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
4:ルイズの最後の願いを叶えたい。
5:ゲームからの脱出。
6:ジグマールを警戒。
[備考]
※メガネ、蝶ネクタイ、シューズは全て何の効力もない普通のグッズを装備しています。
※自分達の世界以外の人間が連れてこられていることに気付きました
※川田、ヒナギク、つかさ、服部、劉鳳、アミバの情報を手に入れました。
※平次と二人で立てた仮説、「光成の他の主催者の可能性」「光成による反抗の呼びかけの可能性」「盗聴器を利用した光成への呼びかけの策」 等については
まだ平次以外に話していません。又、話す機会を慎重にすべきとも考えています。
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。
 
[備考]
神楽の死体の傍に、
 神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂、ジャッカル@HELLSING(残弾数1)、
 基本支給品一式×2(食料一食消費) 陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた 首輪
が残っています。
神楽の死体を、『ゴールド・エクスペリエンス』で作られた花が取り囲んでいます。
 
96鬼が来たりて笛を吹く ◆05fuEvC33. :08/04/10 22:46 ID:oA953Hz6
 
【F-3北部 ファーストフード店内 /2日目 黎明】
【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】
[状態]右手に中度の火傷、左手に大きな噛み傷。 胸板に軽い切り傷。
   全身の至るところの肉を抉られており、幾つかの内臓器官にも損傷あり。
[装備]ライター
[道具]支給品一式、打ち上げ花火1発、拡声器@現地調達、フェイファー ツェリザカ(0/5) 、レミントンM31(2/4)
   色々と記入された名簿×2、レミントン M31の予備弾22、 お茶葉(残り100g)、スタングレネード×4
[思考] 基本:闘争を楽しみつつ、主催者を殺す。 (ただし、倒れた相手にトドメは刺さない?)
1:花火と放送に引き寄せられた参加者を待つ
2:もしコナンがついてくる気なら、好きなようにさせる
3:アーカードが名を残した戦士達と、闘争を楽しみたい。 (ただし、斗貴子に対してのみ微妙)
4:首輪を外したい
5:S7駅へ向かいラオウ、ケンシロウを探す。
6:未だ見ぬ参加者との闘争に、強い欲求
7:コナンの言う、「主催者側にいるはずの強者」と戦いたい
[備考]
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。
※ラオウ・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました。
※生命の水(アクア・ウィタエ)を摂取し、身体能力が向上しています。
※再生中だった左手は、戦闘が可能なレベルに修復されています。
※アーカードより、DIO、かがみ、劉鳳、アミバ、服部、三村、ハヤテ、覚悟、ジョセフ、パピヨンの簡単な情報を得ました。
ただし、三村とかがみの名前は知りません。
是非とも彼等とは闘ってみたいと感じていますが、既に闘っている斗貴子に関しては微妙な所です。
※拡声器を使って他の参加者を皆殺しにすると宣言しました。宣言通りに行動するかは、後の書き手さんにお任せします。
※どの程度コナンの言葉に心動かされているかは、後の書き手さんにお任せします。
97Classical名無しさん:08/04/10 22:46 ID:mC7IVibI
     .
98 ◆05fuEvC33. :08/04/10 22:47 ID:oA953Hz6
投下完了しました。
支援ありがとうございます。
問題点が有れば、指摘をお願いします。
99Classical名無しさん:08/04/10 22:50 ID:fEWKYsvo
投下乙!
や、やっぱ勇次郎は一筋縄じゃいかねぇぇぇぇぇぇ!!
コナンも良く奮闘しているというのにオーガは荷が重いのか……。
一番近い位置に居るのは劉鳳組だけどどうなるかな?
あと、勇次郎の宣言がとても彼らしい!
GJ!!
100Classical名無しさん:08/04/10 22:50 ID:ZlXCglGQ
コwwwwwwwwwナwwwwwwwwwwンwwwwwwwwwww スーパーコナンタイムのツケが来たかwwwwwwwwwwww
いいよいいよ、コナンふるぼっこだし勇次郎無法者だし、言う事なっしんぐっすよ!
まるで自重しねえ勇次郎が嬉しかったwwwwwwwww GJ!
101Classical名無しさん:08/04/10 22:52 ID:mC7IVibI
投下乙!
勇次郎はつくづく想像を超えてくれるw
コナンに期待してんだかバカにしてんだか、いやその両方を兼ねてるんだか。
そらコナンでなくても水吹きますわw
……あと神楽の遺体、哀れ。  GJ!
102Classical名無しさん:08/04/10 22:53 ID:KJ1XVINE
投下乙!
勇次郎が拡声器をwww
奴に拡声器の呪いは効くのか? 効きそうに無いw
コナンがwww GJ!
103Classical名無しさん:08/04/10 22:54 ID:HrcCxR1U
どいつもコイツも自重ってものを知らねえw
コナンの勇気と勇次郎の暴虐さがナイス!
神楽は…なんつかカズキほどでないにせよ痛いな
104Classical名無しさん:08/04/10 23:18 ID:oEwVWMcA
投下乙
それでこそ勇次郎だ
コナンも奮闘しているが少し涙目になった
熱いバトルが予想されるな
105Classical名無しさん:08/04/11 00:00 ID:ZHgn9C0s
投下乙です。
実に勇次郎らしい、やりたい放題すぎるw
そしてバーローwwwまぁ頑張れ
106Classical名無しさん:08/04/11 01:38 ID:m9lL6cJM
バーローって、マジに心が折れないんだな。
さすがはスーパーコナンだwwww
だが勇次郎の牙城は崩せず、難敵もいいとこだ。


それはそれとして、首輪はどうしたの?
神楽の首輪を取ってるはずなのに、状態表には書かれてないよ?
多分、元々神楽が持ってた奴と今回取った奴で二つないとおかしいのではないかな
107 ◆05fuEvC33. :08/04/11 01:42 ID:5fCq5j3.
>>106
指摘ありがとうございます。
コナンの状態表の道具欄に、首輪が書き忘れていました。
wikiに乗り次第、修正します。
108Classical名無しさん:08/04/11 02:56 ID:fHe0W85s
投下乙です。
勇次郎の傍若無人っぷりが遺憾無く発揮されてて本当に良かったです。
しかし銀さんにしろ神楽にしろ、死体になってもボコボコだなぁ。
109Classical名無しさん:08/04/11 13:50 ID:CrUPZci.
銀さん→ボコボコ
新八→木っ端みじん
ヅラ→DIO様によりグシャグシャ

銀魂の死体損傷率は凄いな
110Classical名無しさん:08/04/11 16:55 ID:cIKH1gm6
そう言えば、銀魂勢殺したのジョジョ勢と勇次郎ばXYつかだな。
111Classical名無しさん:08/04/11 23:30 ID:VndN/z4o
投下乙
112Classical名無しさん:08/04/12 15:38 ID:b5qgeT5A
前スレにKFXの画像があって吹いた
113Classical名無しさん:08/04/12 20:23 ID:9EdE0jsc
>>1のテンプレ作ったのは自分ですが、毒吐きへのリンクが間違っていました。
次に作る人は直しておくようにお願いします。
114 ◆14m5Do64HQ :08/04/15 20:17 ID:cctEpl0Q
自分が予約した覚悟、村雨、ヒナギク、かがみ、独歩のSSですが未だ書き上がりません。
なので申し訳ありませんが予約の延長を申請します。
115Classical名無しさん:08/04/15 20:19 ID:N7PfHTSw
>>114
了解です。頑張ってください
116 ◆bnuNxUeVnw :08/04/16 19:01 ID:EvDA8ZI.
>>114
頑張ってください。
自分もまだ書き上がってないため、予約の延長をお願いします。
117 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:01 ID:8jaDO6Qk
ケンシロウ、エレオノール、ジグマール、川田投下します
118進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:02 ID:8jaDO6Qk
闇夜をぬける銀と白の軌跡。
純白のそれは時折上に下にと揺れながら、銀のそれは一律の高さを維持しながら、アスファルトの森をかいくぐるようにすり抜けていく。
それらに影のように寄り添う物があった。
二つの輝きを導くように、支えるように寄り添うその影は、そうと知る者ですら見つける事が困難な程、見事にその存在を消し去っている。
取ってつけた『影』の役所ではない。
影として生まれ、影として生き、影として死ぬ事を定め付けられた、そんな存在であった。
しかし、彼はそれだけでは終わらなかった。
歴史を重ね、修練を重ね、不純物の一切無い純粋で濃密な影へと進化し続ける。
周囲を遍く照らし、力を与え、その支えとなる事の出来る影。

それは既に光と同義であった。



ケンシロウ達は独歩と別れた場所までたどり着く。
しかし、独歩が北に向かったらしい事はわかるが、それ以上の事はわからない。
そうケンシロウがエレオノールとエンゼル御前に告げると、エレオノールが自信満々に自らの胸をたたく。
「お任せ下さい。人が移動した跡を見つければよいのですね」
突然地面にへばりつくエレオノール。
真剣な表情でアスファルトに残るはずの無い足跡を探し始める。
『ケンは目が見えない。ならば私が彼の目にならなければ』
風は微風、これならば、全力で目を凝らせば踏みしだいた埃を見つけられるかもしれない。
などというありえない可能性を信じてゆっくり匍匐前進を始めるエレオノール。
ケンシロウは、何か彼女に勝算があっての行動かと思い黙認。
エンゼル御前のみが、この奇行に待ったをかける。
「……それは無理だと思うよエレノン」
しかし、エレオノールは真剣な表情で御前を見据える。
119進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:03 ID:8jaDO6Qk
「いえ、やらせて下さい。何としても痕跡を見つけ出してみせます」

三十分後、物凄く落胆した顔でエレオノールはとぼとぼとケンシロウの後を歩いていた。
「気にするな」
そう声をかけるケンシロウに、エレオノールは申し訳無さそうな顔をするだけだ。
一刻を争う事態だというのに、エレオノールの無駄な行為で時間を浪費してしまったのだ。
だが、エレオノールはケンシロウや御前の役に立つと決めたのだ。
『落ち込んでばかりはいられません。とにかく独歩と合流する方法を……』
何か良い物は無いかと辺りを見回し、ふと目に入った日用雑貨をごちゃごちゃと売っている中古屋の窓ガラス。
そこから見えるそれは、今の状況にぴったりだと思いついたエレオノールは、ケンシロウ達に少し待つよう伝えると、その店へと入っていった。

「さあケン、これに座って下さい」
そう言ってエレオノールが引っ張ってきたのは車椅子だった。
返答に困っているケンシロウに代わり、御前がエレオノールに意見する。
「あのさエレノン、ケンは別に病人じゃ無いんだから……」
そこまで言った所でエレオノールは御前を引っ掴むと、路地の方へと駆けていく。
ケンシロウには聞こえないであろう距離を取った所で、エレオノールは小さい声で御前に囁く。
「御前、ケンは目が見えないのですよ。私達に気を遣ってああやって普通にしていますが、きっとただ歩くだけでも信じられないぐらい消耗しているはずです」
「そ、そうかぁ?」
エレオノールはやはり自信満々に言う。
「試しに目を瞑って移動してみてください。それがどれだけ神経を使う行為か御前にもわかると思います」
やってはみなかったが、想像してみると確かにとんでもない事だと御前も思った。
そもそも、それであんな風に普通に行動するなんてありえないだろうとも。
「そんな訳ですから、少しでもケンには休んでいただきたいのです」
「そっか〜。でもエレノンも疲れてんだから無理すんなよ」
「心配無用です。私はしろがねですから、多少の疲れなどでどうこうなったりはしません」
話し合いが終わると、二人は示し合わせてケンを車椅子に座らせにかかる。
120進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:03 ID:8jaDO6Qk
実は二人の話し合いが聞こえていたケンシロウ。
その好意を無碍にするのも気が引けたようだ。
「疲れたらすぐに言うんだぞ」
そんな言葉と共にその行為を了承した。

そもそも体の大きいケンシロウが座るには適さない大きさであったが、身を縮めれば何とか座る事は出来た。
「では行きます。ケンはゆっくり休んでいて下さい」
しろがねのパワーか、はたまたエレオノールの気合のせいか、車椅子は自転車並の速度で走り出す。
御前はちゃっかりケンの膝の上に座っている。
「おお、こりゃ楽ちんだ。エレノンふぁいとー」
「はいっ」

車椅子は走る。
御前は搭乗者の膝の上。
押している人間は、車輪の強度が気になるのか遠慮がちに押してはいるが、それでも車椅子界のスピードレコードを容易く塗り替えられる速度を出している。
それを為している当人は涼しい顔である。
搭乗者はそんな彼に、申し訳無さそうに言った。
「……すみません、ケン」
車椅子を押しているケンシロウは、その無骨な体に似合わない優しげな笑顔で応えた。
「気にするな」
当初車椅子を押すのはエレオノールの役目だったのだが、ものの100メートルも押さない内に、貧血起こして倒れそうになってしまったのだ。
疲労が溜まっているのももちろんだが、そもそも、意識を失うような状態であった彼女がいきなりこんな激しい運動なぞすれば当然こうなる。

良かれと思ってやってみても、迷惑ばかりかけてしまう。
しかしエレオノールはそうやって落ち込みそうになる自分を叱咤する。
まだ何かやれる事があるはずだ。
食事はどうだ? 数時間前に用意させてもらったが、独歩と合流して学校に行ったらそれを振舞うのも悪くは無い。
121進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:04 ID:8jaDO6Qk
食材さえ用意出来れば栄養バランスの取れた良質の食事を提供出来る。
あの……時のような、ありもので適当に作ったような食事ではない、もっと一生懸命作った物を用意してあげたい。
食事の事を考えると、どうしても自分が手にかけたあの女性の事が頭にちらつく。
この罪悪感は、多分一生拭えないだろう。
「なーエレノン! エレノンの居た世界ってどんな場所なんだ?」
突然膝の上で御前がそんな事を言う。
「は、はあ。普通の所です」
あまりに唐突だったので、間抜けな返事になってしまった。
「そうじゃなくって! あーそうだな〜。じゃあさ、エレノンは向こうで何してた?」
「人形繰りをする必要の無い時は、サーカスに在籍しておりました」
エレオノールの言葉に御前が大袈裟なアクションで驚く。
「おおおお!! すげぇ! サーカスってあれだろ! 球に乗ったりすげぇ高い所のブランコに乗ったりするやつ! エレノンあれやってたのか!」
それがそんなに驚くような事と思えなかったエレオノールは不思議そうな顔をする。
「はぁ、前のサーカスではコントーションを……体の柔らかさを見せる番組をやらせていただいておりました」
御前はとても素直な性格なので、思った事がすぐに顔に出てしまう。
あからさまにがっかりしたような顔で、エレオノールに問い返す。
「えー、もっとかっこいいのじゃないのかよー」
「かっこいい……ですか。良くわかりませんが、派手な物でしたら、アクロバットなども良くやっておりました」
エレオノールの動きの良さを良く知るケンシロウは得心する。
「なるほど、お前のアクロバットなら充分芸になるだろう。一度見てみたいものだな」
御前はエレオノールの膝の上で、何かを我慢しているようだ。
「どうしました御前?」
エレオノールがそう言うも、御前は曖昧そうに笑うのみ。
そんな様子を見たケンシロウは、彼らしい控えめな笑いを見せる。
「御前、エレオノールは疲れている。彼女のアクロバットはまたの機会にな」
ケンシロウの言葉に、大きくため息をつきながら頭を垂れる御前。
「いえケン、見たいというのであれば私は……」
122進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:05 ID:8jaDO6Qk
「駄目だ。無理はするなと言ったぞ」
御前も悔しそうにしながらも、ケンシロウの言葉に同調する。
「そうだよエレノン、それにまだチャンスはあるさ! その時を楽しみにしてるぜ!」

ケンシロウは車椅子を押しながら、まだ賑やかに騒ぐ御前とエレオノールを見ている。
『彼女が落ち込んでいるのはわかっていたが……やはり、御前には敵わんな』
彼女の説得も、御前無しには為し得なかったと思う。
こんな場所での底抜けの明るさが、一際眩しく感じられる。
核金、支給品、そんな思考は最早ケンシロウには無く、御前もまた大切な仲間の一人だと、そうはっきりと認識していた。



川田章吾はジグマールが奪取したバイク、ヘルダイバーにジグマールと二人乗りしつつ、ジグマールとの情報交換をしていた。
しかし、ジグマールの話を聞くなり、あんまりな内容に思わず天を仰ぐ。
『……つくづく、嫌らしい展開になってくれやがる。ジグマールが遭遇したかがみってのは十中八九、柊かがみだろ……』
この男は、柊つかさの姉である柊かがみの腕を斬り落とし難を逃れたと言う。
ヘルメットの事といい、この世界は川田がこうして殺しに乗った事がよっぽどお気に召さないようだ。
殺しに乗った途端、今まで情報らしい情報も得られなかった柊かがみの生存情報が手に入るなんて、神様の嫌がらせとしか思えない。
『ぼやいても仕方がねえけどな。とりあえず学校には行って無いようだし、その件は後回しか』
ジグマールの同盟相手である、エレオノールとの合流も考えなければならない。
首輪探知機を持って南に下ってきているにも関わらず、その姿は一向に見つからない。
「ようジグマールさん、エレオノールってのは本当にこっちに向かったのかい?」
「ああ、だが敵に追われながらの事だ、進路の変更もあり得るかもしれんな」
川田はジグマールから聞いた二人が別れた位置と、現在位置を地図で見比べる。
「少し西に寄りすぎたかもしれないな。もう少し東側見てみるかい?」
現在位置は南南西というよりは南西と言っていいぐらいの位置である。
「……そうだな、同盟相手を見捨てるような真似はせんよ。最低限のフォローぐらいはしてやらんとな」
123Classical名無しさん:08/04/17 20:05 ID:CAlFlXks
      
124進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:07 ID:8jaDO6Qk
ジグマールは川田に聞かせるように、そう言った。
エレオノールと合流出来れば良い。だがその女を追うケンシロウという男と出会ったらどうする?
決まっている、バイクでさっさと逃げるまでだ。
そんな都合の良い展開を通す道具は、こちらの手の中なのだから。

学校にはあれだけ追い詰めながらも、津村を返り討ちにした奴が居る。
事前に津村が調べた時に居たのは、少女と青年。この男を津村は仇だと言っていた。
仇に返り討ちにされてりゃ世話が無い。
あれから川田自身も大きく戦力を増し、ジグマールという協力者も得た。
学校側の切り札の一つ、覚悟も潰した。
やるなら今だ。
「川田……学校は後回しだ」
不意にジグマールがそんな事を言い、バイクを止める。
首輪探知機が反応を示している。
二人は物陰に隠れ、息を潜めて待ち構えていると、そこに現れたのは車椅子を押す男とそれに乗る女。
そして女の膝の上で何やら騒いでいる小さな人形という奇妙な一行であった。
「ケンシロウ……か」
ジグマールから、その男の名は聞いている。
歩く悪夢だと、接近したが最後、何をする間も無く血祭りにあげられると。
ならば狙撃で仕留めるかと訊ねる川田に、ジグマールは顔色を蒼白にしながら川田の申し出を断る。
「……川田、アレは、アイツは私がやる。手を出せば……お前でも生かしてはおかん」
ジグマールの様子に果てしない不安を覚えるが、その言葉は川田に不利益な事ではなかったので、その不安を口には出さない川田。
「因縁がありそうなのはアンタの様子見ただけでわかるが……まあいいさ、好きにしろよ。ただ俺は隠れさせてもらう、文句は無いな」
「勝手にしろ。奴は必ず私が倒す!」

勝てる。今のこの装備なら、今の私なら今度こそ必ず勝てる。
今こそ、私が最強である事をこの男に思い知らせてくれる。
125Classical名無しさん:08/04/17 20:07 ID:CAlFlXks
     
126進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:08 ID:8jaDO6Qk
いや待て。まだ準備が足りない。もっと私は強化出来るはず。
「川田! お前確か銃を持っていたな!」
「あ? ああ持ってるが……」
「それを貸せ! ああ、私は……そうだな、代わりにこの……」
「おいおい、勘弁しろよ。悪いがこのライフルは渡せないぜ」
ジグマールは哀れを誘うような、そんな情け無い顔を見せる。
川田は瞬時に計算を立て、新たな提案を持ちかけた。
「このマシンガンなら構わない。そっちの首輪探知機をもらえるんならな」
首輪探知機の能力を考えれば、まるで割りに合わない条件だが、今のジグマールに必要なのは情報ではなく純粋な戦力である。
僅かに迷った後、ジグマールはその提案を受け入れる。

さあ、これで全ては整った。
同盟相手が見ている、無様に逃げ去るような真似は許されない。
前に進むんだジグマール!
「ケンシロウ!!」
そう叫んでヘルダイバーに乗りながら道路に飛び出すと、ケンシロウがそれに気付いて近づいてくる。
ええい震えるでない! それでも全宇宙を支配する者マーティン・ジグマールか!
車椅子に乗せられたエレオノールの姿も見える。
何だあの女? ケンシロウに懐柔でもされたか?
何やらぼそぼそと話した後、ケンシロウのみこちらに向かって歩み寄ってくる。
「ジグマール、観念したか?」
「寝ぼけるなケンシロウ! 私は今ここで貴様を倒す!」
盲目であるはずのケンシロウは、まるでそんな素振りを見せずに首を鳴らす。
「やってみろ」
ジグマールはヘルダイバーを駆り、声高に叫ぶ。
「武装錬金!」
ヘルダイバーのバイクとはとても思えない加速で、激戦をまっすぐ前に構え、ケンシロウ目掛けて突撃を敢行するジグマール。
127進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:09 ID:8jaDO6Qk
『いかに貴様が人間離れしてようと! エンジン相手ではどうしようもあるまい!』

中世の騎士が好んで用いた槍を使う戦闘方法に、チャージと呼ばれるものがある。
自らが跨る騎馬を突進させ、その前に長大な槍を構えて相手を突き殺すといったものだ。
騎馬の足の早さは人の比ではない。
この攻撃圏内から逃れる事は至難であり、その槍の長さから、攻撃される前にやり返す事も難しい。
また、当然馬にくくりつけた訳ではない槍は、相手の動きに合わせて自在に変化する。
この動きを見切り、かわす事は、よほど修練を積んだ者でも難しいとされる。
ジグマールはそんな歴史を知っている訳ではなかったが、彼の知能が導き出したバイクと槍とを用いた最適の攻撃方法がこれであったのだ。
ここからも、彼の知能が高い事を察しうる。
相手がケンシロウでなければ、これもまた有効な攻撃手段であっただろう。

ケンシロウはその場所から微動だにしない。
ただまっすぐ前に両手を伸ばし、その時を待つ。
ジグマールが必殺の間合いと確信したその位置で、槍を突き出す。
ヘルダイバー前部にあるウィングで斬りつける手もあったが、通り過ぎた時にバランスを崩す恐れがあったので、ジグマールは槍のみでの攻撃を選んだ。
バイクはケンシロウの向かって右側を駆け抜ける。
ジグマールと激戦を残して。
ケンシロウは、突き出された槍をその場から一歩も動かずに両腕で掴んでいた。
バイクの突進による勢いも、ケンシロウを僅か半歩すら動かす事適わなかった。
当然、槍を持っていたジグマールは槍に引っかかったままで、バイクだけそのまま真っ直ぐ走り抜ける事になったのだ。
思い切り前へ激戦を突き出していたジグマールは、その柄尻が自分の胴体にぶち当たってしまう。
その為、派手に吐瀉物を撒き散らしながら、その場に尻餅をつく。
腹部を襲う激痛を堪え、顔を上げたそこには、すぐ側まで歩み寄っていたケンシロウが居た。
「どうした? これで終わりか?」
必死に激戦を握っていたおかげで、腹部の痛みもすぐに引いていく。
「ふざけるなあああああ!!」
128Classical名無しさん:08/04/17 20:09 ID:CAlFlXks
       
129進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:10 ID:8jaDO6Qk
人間ワープで大きく間合いを取り、川田から借りたサブマシンガンを乱射する。
さしものケンシロウも銃には弱いのか、走りながら物陰へと逃げていく。
そうだ、ケンシロウは遠距離での攻撃手段が数える程しか無いはず。
ならばこれで距離を取りながら機会を待つ。
奥の手を使う、その機会を。
ケンシロウが逃げ込んだのは、コンクリートで覆われた古いビルだ。
流石にこの壁をマシンガンでは撃ち抜けない。
衝撃波は体力消耗の関係上、極力使わず別の手段で代用したい所だ。

ゴンッ!!

突然、そんな音がすぐ側で聞こえた。
あれ? 私は何故空を見上げている?

ドンッ

今度は後頭部を殴られた。
何だ? 何が起きて……
正気に戻って体を起こす。何かがぶつかって私は倒れていたのだ。
見ると、ケンシロウが隠れたコンクリートの建物に、一箇所だけ穴が空いていた。
何かがジグマールの顔にぶつかった。それは確かだ。
一体何が……そこまで考えて、はたと気付く。
まさかケンシロウは、コンクリートの壁を殴りぬいて、それを弾にしてこちらに飛ばしているのでは?

そのまさかであった。
コンクリートの壁の向こう。
今正にケンシロウがその拳を振り下ろさんとしていた。
130進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:10 ID:8jaDO6Qk

「あーたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたあたぁ!!」

今度は一発所ではない。
雨あられとコンクリートの塊が襲い掛かってくる。
ジグマールは慌ててワープにより逃げようとするが、所構わずそこら中に降り注ぐそれら全てをかわす事は出来ない。
そして、壁越しにも関わらず正確にジグマールの居場所を察知するケンシロウから、逃れる術も無かった。
ケンシロウは約五メートル四方あったコンクリートの壁を完全に崩し終わった所で射撃をやめる。
天井から降ってくる塵を払いながらケンシロウが建物から出てくるが、ジグマールはそこに銃を打ち込む所か、ぼこぼこに変形した自らの全身を再生させるの手一杯であった。
「……奇妙な技だなジグマール。それは何だ?」
そこで初めてケンシロウはジグマールの再生能力に気付く。
ようやく動くようになった口を確認しながら、ジグマールは精一杯強がって見せる。
「き、貴様になんぞ教えてやらん!」
接近戦は絶対にマズイが、かといってこうして距離を取ってもこんな手でやりかえしてくる。
ヘルダイバーのパワーも、この男には通用しない。
銃による射撃は、本音を言わせてもらえば、例え数千発撃ち込もうとまるで当てられる気がしない。
川田のライフルを奪えば? いや、あんなデカイ物振り回す余裕をこの男が与えてくれるとは思えない。
ならば、独歩との時のように人質を取るか?
居ないだろ、そんな都合の良い奴。エレオノールは……どうなのだろう。何故ケンシロウは車椅子に乗せるなんて真似を……
やってみる価値はあるか?
そこまで考えた所で、ジグマールは思考を止める。
ジグマールの視界からケンシロウが姿を消したからだ。
考え事はしていたが、そこから一瞬たりとも目を離した覚えは無い。
「あたぁ!」
真後ろからそんな叫び声と共に、トラックか何かが突っ込んで来たような衝撃が襲ってきた。
何をする間も無い。
まっすぐに壁に激突する。正面から突っ込んだせいで顔が潰れそうだ。
131進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:11 ID:8jaDO6Qk
直後、更なる叫び声が聞こえてくる。もうこの声トラウマになる、絶対。
「あーたたたたたたたたたたたたたたたたたたあたぁ!!」
背中一面に嵐のように拳を叩き込まれる。
そんな絶望的な攻撃を受けながら、ジグマールは自らの考える策がこの男には決して通用しないであろう事を悟っていた。

……とに……かく、この手を、離さな……け、れば……それでも、まだ、チャンスは……



人間ワープをする間も無かった。
あんなに殴られながら、何かを出来る奴なんて居てたまるか。
不意に昔の事が思い出される。
ああ、これが走馬灯という奴か。
力が欲しくて、必死になっていた時期があった。
アルター能力を身につけた時、あの時は嬉しかったなぁ、もう私に敵う者なぞ存在すまいとまで思ったものだ。
それでも敵は強くて、幾たびも進化を重ねてきた。
その都度自分は強くなったと、確信出来るのが何より嬉しかった。
ギャランドゥが自我を持った日。
私だけが辿り着けるその場所に、遂に辿り着く事が出来たあの日。
師すらこの手にかけた甲斐があったと、そう初めて思えたあの日。
大地の持つ進化の力を、全て我が手中に収めたと確信出来たあの日。
なんで、こんな事になってしまったのだろう。
たった一人の男に、こうまでいいように嬲られるこの姿を、あの日の自分に想像出来ただろうか。

アルターさえあれば、こんな男になんて、絶対負けたりしなかったのになぁ……

132Classical名無しさん:08/04/17 20:12 ID:CAlFlXks
    
133進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:12 ID:8jaDO6Qk

意識が戻る。
次々蘇る感覚に、ジグマールは自分の居る状況を思い出す。
『ケンシロウは!?』
身を起こして周囲を見渡すと、ケンシロウが居た。
ほんの少し驚いた顔で、こちらを見ている。
「なるほど……その槍に何か秘密があるようだな……」

ばれたあああああああああああ!! マーティン・ジグマール終了のお知らせえええええええええ!!

逃げるか? どうやって? この男に最早人間ワープは通用すまい。
私が連続ワープを用いてすら、容易く後を追ってきて、こちらの体力が尽き次第私を殺すだろう。
ヘルダイバーまで逃げればどうだ? そうだ、あの速度は幾らなんでも奴にだって……

『また逃げるのか?』

そして次の機会を待てばいい、今度は川田にも協力させて、狙撃を用いるのも悪くない。
人質、そうだ。ケンシロウならば幾らでもそういった付け入る隙があるはず。勝負はまだ終わってはいない。

『また、逃げるのか私は?』

アルターさえあれば、こんな男に負ける理由は何一つ無い。
それが回復するまで、ギャランドゥが戻るまでは何としてでも生き延びなければならない。

『アルターだと? それならあるだろう。人間ワープが使えるのに、何故アルターが出せない何て言えるんだ?』

ギャランドゥが戻れるまで私のアルターは完全とはいえない。
134Classical名無しさん:08/04/17 20:13 ID:CAlFlXks
          
135進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:13 ID:8jaDO6Qk
それまでは、何としてでも……

『馬鹿か私は、いや知ってて言ってるんだよな。
 アルターの特性を誰よりも知る私が、そんな言い訳で納得出来ると思ったか?』

『そこに大地はある。ならば、アルター力はいつでも私の呼びかけを待っているんだぞ』

『さあ、後は、私次第だ』



「無理だ!」
突然叫びだすジグマール。
ケンシロウにはその意図が読めない。
「あそこまで進化させるのにどれだけ時間がかかったと思っている! それを……それを……」
ジグマールは手に持った槍を持って大きく振りかぶる。
「うわああああああああああああ!!」
そしてそれを、力任せにケンシロウに向けて投げつけた。
簡単な一挙動でそれを弾いてみせるケンシロウに、ジグマールは半泣きになりながら怒鳴る。
「アルターとは進化の力! その源は全てを育む大地にあり! そしてそれはこの場所にも確実に息づいている!」
それは恐怖の為か、はたまたそれ以外の理由か。
ジグマールは零れる涙を、震える膝を止める事が出来なかった。
「アルター力を導くは確固たる信念! 強靭なる意志! それある限り、大地より吸い上げるアルター力に限界なぞ無い!」
両腕を正面でクロスさせ、力を一点に集中させる。いつもそうであったように、彼を呼ぶために。

「ギャランドゥ! 君が失われたのなら私は再び君を作り上げる! 再び自我を取り戻すまで進化させてやる!」
136進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:14 ID:8jaDO6Qk
周囲の物質が音高く削り取られる。
そうしてアルターと化したそれらは、ジグマールの眼前に集まり、人の姿を模っていく。

「活目してこれを見よケンシロウ! これぞアルターの真の特性! 進化の力!!」

悠久の時を経て、ようやく心を繋いだ最高の相棒。

「出でよ! 私のギャランドゥゥウウウウウウウウウ!!」

ジグマールの前、そこに、再びギャランドゥがその勇姿を現したのだ。



ケンシロウは初めてギャランドゥと遭遇するが、その姿は先だって戦ったDIOのスタンドに酷似していた。
故に、ジグマールの雄叫びに合わせて殴りかかってくるギャランドゥも、それと同種の物と見て対応する。
ギャランドゥから猛然と降り注ぐ拳の嵐。
その一発に焦点を合わせ、カウンターで拳をねじ込む。
「おぼっ!」
そんな悲鳴と共にジグマールの顔が変形する。
進化の初期であるせいなのか、ギャランドゥを自在に操るのに感覚のリンクが必要になっている。
そんな真似をすれば当然こうなるのだが、ジグマールは委細構わずそうし続ける。
ジグマールの事情を知らないケンシロウは、ジグマールのアルターをDIOのそれと同じ特性を持っていると認識した。
ギャランドゥは構わず拳を振り上げる。
今度は一発目から合わせる。
「はぼふっ!!」
それでもギャランドゥは拳を止めない。
次こそはと両手を用いて乱打戦を挑んで来る。
137進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:15 ID:8jaDO6Qk
ケンシロウはその全ての拳打に合わせて、カウンターの拳を叩き込んでやった。
「おぶっ! おぼっ! ほぼろわっ! あがぐえっ! ひひぇい!」
一発ごとにジグマールから悲鳴が上がるも、ギャランドゥがその拳を止める事は無い。
ならばケンシロウも拳を止める理由なぞ無い。
ジグマールが、この人形がそれを止めるまで、その拳全てに合わせてこちらの拳を撃ちこんでやろう。
「ほぉ〜あーたたたたたたたたたたたたたたた!!」
ジグマールは一歩も引かない。どれだけ殴られても、どれだけ痛い思いをしても。
その意思の強さは、信念の頑なさは、確実にギャランドゥに伝わっていく。
徐々に速度と力を増していくギャランドゥ。

「わらひぃが! 頑張ららいと! ギャランドゥが戻ってこれらいんだああああああああ!!」

遂にケンシロウをして応じきれない拳が飛んで来る。
「くっ!」
その拳を、ケンシロウはカウンターではなく、手の平で受け止める。
「ほぉぉぉぉあああああああああ!!」
ケンシロウはあらん限りの力を込め、受け止めたギャランドゥの拳を握り締める。
「ほあたぁ!!」
まるで熟れたトマトか何かのようにその拳を握りつぶすケンシロウ。
それでも、ギャランドゥは止まらなかった。
「ほれがろうひたあああああああ!!」
残った拳を振り上げ、ケンシロウに殴りかかるギャランドゥ。
その拳も、ケンシロウの手に受け止められる。
『ギャランドゥはもっと早かった! もっと強かった!』
今度はケンシロウにも握りつぶす余裕なぞ無い。
満身の力を込め、押し込まれんと堪えるケンシロウ。
『ギャランドゥは強かったんだ! 自我を持つ程に! 次元すら越えてしまう程に!』
138Classical名無しさん:08/04/17 20:15 ID:CAlFlXks
    
139進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:15 ID:8jaDO6Qk
「らああああめえええええええるううううううなあああああああ!!」
拮抗していた力と力は遂にその均衡を破り、ケンシロウは拳の勢いに殴り飛ばされ建物の外へと吹っ飛んでいく。
ギャランドゥはそれで止まらない。
吹っ飛んだケンシロウを追って建物の外へと飛び出すが、それをケンシロウは同じく拳で迎え撃つ。
「おおおおぉぉぉ!! ほあたぁ!!」
振り下ろされるギャランドゥの拳に、自らの拳を叩き込むケンシロウ。
一瞬、その場で完全に止まる両者の拳。
直後、ギャランドゥの腕にヒビが入ると、その拳が、腕が粉々に砕け散る。
ジグマールは発音が怪しくなっていた自分の顎を、壁に叩きつけて元の状態に戻す。
「引くな! 怯むなギャランドゥ! 一歩たりとも下がる事は許さんぞ!」
自分の腕も各所から血を噴出しているが、それに構うそぶりは欠片も見られない。
ハタ目に見てわかるほど、ギャランドゥの右足が膨れ上がる。
「蹴散らせえええええええ!!」
ギャランドゥは丸太のように太くなった右足を、ケンシロウ目掛けて振りぬく。
しかし、ケンシロウもそれを避けようとはせず、真正面から受け止めてやると言わんばかりにその足目掛けて蹴りを放つ。
「ほぉあたあああっ!!」
二人を包む空気が破裂する。
大地が跳ね跳び、二人を中心に大きくへこんで弾ける。
「ほおあああぁっ!!」
「ぬああああぁっ!!」
二人の力が反作用を生み、同時に二人が弾け飛ぶ。
空中で半回転して、着地するケンシロウ。
いや、弾けとんだのは一人だ。
ギャランドゥは先ほどの場所から動いていない。
何故なら、吹き飛ぶはずのギャランドゥを駆け寄ったジグマールが後ろから支えていたのだから。
「絶対に下がらせん! そう言ったぞケンシロウ!」
涙の跡、殴られた傷、噴出した血、こすりつけられてついた汚れ。
140進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:16 ID:8jaDO6Qk
それらでぐちゃぐちゃになったジグマールの顔には、しかし今までに無い、輝きが見てとれた。
ケンシロウは、この戦いで初めて北斗神拳の構えを取る。
「来いジグマール。北斗神拳の真髄、その体に焼き付けてやろう」
「無論だ! 決着を付けるぞケンシロウ!」



ジグマール操るギャランドゥは進化に進化を重ね、ケンシロウをすら凌ぐ速度と力を発揮していた。
ギャランドゥは確実にアルターとして成長を遂げている。
その成長は留まる事を知らず、一撃ごとに進化していく。
しかし、それをすら凌駕するのが北斗神拳。
純粋な力でいかに勝ろうとも、単純な速度がいかに優れていようとも、その素手での戦闘に特化した技術体系は容易くこれを粉砕する。
激戦を手放したジグマールは、傷の治癒を行う事が出来ない。
確実にその身にダメージは蓄積されていく。
本来の彼のタフネスは、実は相当高い物である。
カズマの全力の拳を受け、劉鳳にズタズタに切り刻まれて尚命があるそのしぶとさは、特筆に価する能力だ。
だがそれにも限度がある。
それを、ジグマールは無視して走り続けた。

「ケンシロウ! まだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだあああああああああ!!」

砕けた拳をケンシロウに向けて振り下ろすギャランドゥ。
ジグマールの意思に応え、既に数度の再生を行っているが、その都度ケンシロウに砕かれているのだ。
「あたぁっ!」
ギャランドゥの膝がへし折れる。
「ほあたぁ!」
その頭部が半ばから吹っ飛んで砕ける。
141進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:17 ID:8jaDO6Qk
「ほぉぉぉあたたたたたたたたたたたたたたあたぁっ!」
連打に次ぐ連打で全身がバラバラに砕かれる。
「この程度で終わるものか! 進化は何処までも続くからこそ進化なのだ!」
砕けた側から再生していくギャランドゥ。
再生する度、強く激しく進化していくも、ケンシロウは真っ向から受け止め、再生する側から打ち砕いていく。

エレオノールは、二人の戦闘を呆然とした顔で見つめている。
「御前……一体、何が二人をここまで……」
御前も似たような顔で二人を見つめている。
「おかしいだろ二人共。何だよこれ、意味がわかんねぇ……」
かつて同盟を組んだ男ジグマール。
少なくともエレオノールの知る限りにおいては、こんな無茶な戦い方をするような男ではなかった。
だが、今の彼はまるでケンシロウを倒す為に自分は生まれて来たとでも言わんばかりに、全てを投げ打ってこの戦いに挑んでいる。
「あれが、アルター……」
ジグマールの不屈の闘志に力が応える。
注意深く二人を見ていたエレオノールは気付いていたのだ。
ジグマールの怪我が、少しづつ治っていっているのを。
ケンシロウの勝利を疑う訳ではないが、それに立ち向かうジグマールの姿に、恐怖とそれ以外のあまり認めたくない感情を持っている事は、事実であった。

それは唐突にやってきた。
ジグマールは待ち焦がれたその瞬間を、実はケンシロウを殴らせる事に夢中でまるで気付いていなかった。
「おいおい、せっかく戻ったってのに、挨拶も無しかジグマール?」
ギャランドゥがジグマールの指示通りに動かず、今まで絶対に許さなかった後退を始める。
ケンシロウは様子が変わった事に気付き、警戒しながらそちらを見ている。
「……え?」
「えじゃねえよ。ようやく戻って来た相棒に、おめえは一言も無いのかって言ってんだ」
そんな事を言いながら、ギャランドゥはいつものあのかっこいいドリルになってる手でジグマールの頭をぽんと叩いた。
142Classical名無しさん:08/04/17 20:18 ID:CAlFlXks
           
143進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:18 ID:8jaDO6Qk
「良くぞ……良くぞ戻ったギャランドゥ!! 私は君を待っていた!」

これで、最後の賭けを挑む為の全てのカードが揃った。
完全に元の力を取り戻す事に成功した証、それがギャランドゥの自意識。
私は、ここから更に先へ行く。
それが出来ねばこの場で死んでやるわ!!

「ギャランドゥ、私のやりたい事がわかるかい?」
「当たり前だ。ここまで急速に俺を引っ張り上げたお前なら、必ず出来る!」

ジグマールとギャランドゥは並んで立ち、アルター力を最大限にまで引き上げる。
「最大限? 冗談ではないな」
「全くだ。俺達に、アルターに、限界なんて存在しねえんだ!」
ジグマールの側にある電信柱、それが一本丸々消滅する。
ギャランドゥの背後にあったクリーニング屋の店舗が完全に消えて無くなる。
それらはアルターの青白い輝きとなり、ジグマールを、ギャランドゥを包み込む。

「行くぞケンシロウ! マーティン・ジグマール一世一代の大技! 堪能して死ね!」

二人が同時に片腕を天に向けて突き上げる。

『 人 !』

その指先から、全身から噴出すアルターが二人の周囲で嵐となる。

『 間 !』
144進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:18 ID:8jaDO6Qk
限界を遙かに超越したそのアルター力を、二人は一つの意思の元に纏め上げる。



『ワーーーーーーーーープ!!』



二人が振り下ろした腕、その先に居たケンシロウは、北斗の技も奥義も出す暇すら与えられず、その場から消失した。



ほんの僅かの時間差も無かった。
ケンシロウはそれを感じ取れる能力を持つ。
ジグマール達の手から何かが放たれる。
そう感じたケンシロウはその場から飛びのいたのだが、確実にかわせる間合いでありながら、次の瞬間にはここに居た。
目は見えずとも感じられる様々な情報全てが言っている。
ここは、今までジグマールと戦って居た場所ではない、何処かであると。
それが何処なのか。
それは皮肉な事にケンシロウを弱体化し、その行動に制限を加えている首輪が知らせてくれた。

『禁止エリアに抵触しています。あと30秒以内にここを脱出しなければ爆発します』

どちらに向かえばよいのかわからない。
だが、この場に留まっていて良い事も無さそうだ。
ケンシロウは猛然と走り出す。
禁止エリアの大きさを考えるに、方向さえ間違えなければケンシロウの足ならば充分その範囲から抜け出せるはず。
145進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:19 ID:8jaDO6Qk

『あと20秒……』

走りながら周囲の気配を探るも、何処からも人の気配を感じない。

『あと10秒……』

さっきからまっすぐに向かっているこの方向からは、相変わらず何の変化も感じられない。

『あと5秒……』

恐怖は無い。例え行く先に絶望しか無かろうと、それでも進むが北斗の道なのだから。

『あと1秒……』

最後の瞬間まで、勝利を追い……

「ユリア……」



こうして、北斗神拳千八百年の歴史は、あまりにも呆気なくその幕を閉じたのだった。



完全に消失したケンシロウ。
手ごたえはあった。奴は、確実にジグマールの術中にあった。
146進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:20 ID:8jaDO6Qk
ならば、これは、つまり……

「勝ったぞ!! 私の勝ちだケンシロウ!! 見たか赤木! この私の! 勝ちだああああああああああ!!」

両腕を高らかと振り上げ、歓喜に叫ぶジグマール。
全身を覆う傷の痛みも吹っ飛んだ。
自分が今どんなみっともない格好をしてるかも、まるで気にならない。
体の奥底から湧き上がる達成感に、思う様その身を任せていたい。
こんなに爽快で晴れやかな気分は、生まれて初めてだ。
ギャランドゥがジグマールにすがりついてくる。
「見たかいギャランドゥ! 私がケンシロウに勝った……」

『……制御限界値を越えました。ただちに首輪を爆破します』

「いいから首輪を外せジグマール!」
ギャランドゥの必死の形相を、ジグマールは不思議そうな顔で見返し、そのままの顔が爆発音と共に宙に舞い上がった。

「ジグマーーーーーーーール!!」

絶叫するギャランドゥ。
その視界が反転する。
ジグマールを映していたはずの目は、地面を映し、背後にあった崩れかけたビルを映し、漆黒の空を映し、そして最後に、目までを覆うヘルメットを被った男を映して、その機能を失った。

首を失った二つの体が折り重なる様に倒れ臥す。
最後にその場に立っていたのは、ライダーマンのヘルメットを被り、ライドルをその手に下げた川田章吾であった。

147Classical名無しさん:08/04/17 20:21 ID:CAlFlXks
     
148進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:22 ID:8jaDO6Qk

状況についていけないエレオノールは御前と共に、その戦場に立っている川田と、首を失った二つの死体を見つめている。
言葉も出ない、思考が完全に停止してしまっている。
そんな二人に、どうやら再生はしてこないようだと安心した川田は、常と変わらぬ口調で問いかける。
「よう、幾つか聞きたい事があるんだが、いいか?」
その声で我に変えるエレオノール。
「な、何が起こった!? ケンシロウは何処へ行ったのだ!?」
表情は見えないが、その髭を撫でる仕草から、彼がどう応えたものか考えているのではと思われた。
「あくまで俺の推測にすぎないが、それでも良けりゃ聞くかい?」
御前と縦に並んで同時に首を縦に振るエレオノール。
「まずはケンシロウって男だが、奴はおそらくジグマールのワープによって何処かに飛ばされたと俺は考えている」
「そんな事が出来たのか奴は!?」
「出来なかったんだろうな。だが、見ててわかったろ。ジグマールは戦闘中とんでもない速度で成長していった。当人は進化とか言ってたがね」
川田はライドルを脇に挟むと、両手を使ってタバコを取り出し火をつける。
この話に少し時間をかけるつもりのようだ。
「奴の技、人間ワープは元々自分だけのワープ能力だったようだが、そいつを他人にも仕掛けられるよう進化した。そう考えるのが妥当だわな」
「ではケンシロウは何処かに飛ばされたというのか! それならすぐに探しに行かなければ!」
手をひらひらと振る川田。
「よせよせ、無駄な事だ。ワープでどれだけの距離飛ばせるかは知らねえが、少なくともケンシロウを禁止区域に放り込む程度の距離は可能なんだろうよ。だとしたら、奴はもう生きてねえだろ。でもなきゃ奴のあの勝利宣言の意味がわからん」
「そんな!?……そんな馬鹿な事が……あのケンシロウが死ぬはずが無いだろう! あんなに強いのだぞ彼は!」
「らしいな。初めて見た俺もそう思ったよ。ジグマール大逆転って所だ。もっともその代償に奴は命を支払う必要があったみたいだが」
そこで御前が口を挟む。
「そうだ! 何であの男の首輪が爆発したんだよ! それに、お前は何なんだよ! ジグマールの事良く知ってるみたいだし、ジグマールの仲間なんじゃないのか!」
川田は二人の疑問に一つ一つ丁寧に答えてやる。
149Classical名無しさん:08/04/17 20:22 ID:CAlFlXks
            
150進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:22 ID:8jaDO6Qk
「これも予想に過ぎないがね。首輪の制御能力すら越えるジグマールの進化って奴に、首輪が緊急避難的な対応したって話じゃねえのか? ありえねえ話でもねえだろ」
推論ばかりで確たる根拠も無いが、川田はこの持論に結構な自信があった。
「そして俺が奴を斬った理由だが、ジグマール達の身につけた新しいワープの力の事考えりゃ当然の行為だと思うがね」
「何故ジグマールの力が関係あるのだ?」
そう問うエレオノールに、川田は失望する。
もう少し知恵の回りが早いと思っていたようだ。
「見ただけで相手を好きな所に飛ばせる能力。こんな馬鹿げた無敵な能力持った人殺し放っておけるかよ。ジグマールの能力がそれと知らない相手なら百回戦って百回勝てるぜ」
そこから先は、言っても無駄なので川田は言わなかった。
その能力運用をジグマールが考えた場合、優勝するのに最早協力者は不要となる。
後は、ジグマールの能力を知ってしまっている川田、エレオノールと御前さえ消せば、ジグマールの無敵は約束されたようなものだ。
喜びに両腕を振り上げるジグマールを見ながら、追い詰められた川田がジグマールとギャランドゥ双方を消す機会を伺っていた所、首輪が反応してくれた。
後は首輪の爆発にタイミングを合わせて、残るギャランドゥの不意を突いて一撃で殺すのみ、という話だったのだ。
「そういう訳だ。んでそっちの質問には答えたんだ。俺の質問にも答えて欲しいんだがね」
突然のケンシロウの死、それを受け入れられず混乱するエレオノールは、言われるがままに頷く。
「その銀髪と綺麗な面、エレオノール、だよなアンタ。ジグマールと同盟組んでると聞いたが……その敵とつるんでるってなどういう話だい?」
川田の言葉から推察される事実。
川田はエレオノールが殺し合いに乗っている事を聞いている。
「わ、私は……もう人殺しはしない。ケンと御前と一緒に、この企みを打ち砕くと決めたんだ」
しばしの沈黙。
それを破ったのはエンゼル御前だ。
「そうだよ! エレノンはもう殺し合いなんてしないのさ! 俺が保証してやるさ!」
川田は、その右手をエレオノールに差し出した。
「そうかい、俺は川田章吾だ。あんたが本気でそう思ってるってんなら俺達はこれから一緒にやっていけるな」
その手を取ろうとエレオノールが伸ばしかけた手を、御前が止める。
151進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:23 ID:8jaDO6Qk
「待てよ。お前はジグマールと一緒に居たんだろ。だったらお前も殺し合いに乗ってるって事じゃないのかよ」
愉快そうに笑う川田。
「エレオノール、あんたならジグマールの性格良くわかるよな。知恵は回るがお調子者でプライドが高い。そんな奴を言いくるめて殺されないようするのはさして難しい事じゃない、そうだろ?」
「そうなのエレノン?」
エレオノールは考え込んでしまう。
ただでさえ頭が混乱しているのだ、そこにこのように判断に迷うような事を言われても、即断は出来ない。
「確かに、ジグマールはお前の言う通りの男だが……」
「悪いが一から十まで全部信用させられるような証拠なんて持ち合わせちゃいない。ここは信じてもらうしかないんだが、もし信じてもらえないのならせめて情報交換ぐらいはしたいんだが……それもダメかい?」
エレオノールは一瞬計算高いしろがねとしての思考が働きかけるのを、大きく首を振って打ち消す。
「いえ、貴方を信じます。私はエレオノール、こちらはエンゼル御前。私の大切な仲間です」
エレオノールのそんな迷いと決断が見て取れた御前は、嬉しそうに頷いた。
「おっけー! エレノンがそう言うんなら俺も信じてやるよ! よろしくなしょーちん!」



「川田、その、ケンは……本当に死んでしまったのですか?」
情報交換をしようという事になり、開口一番エレオノールはそんな事を川田に尋ねる。
「確認出来るのは次の放送の時だ。もし無事ならあれだけの男だ。それまでに倒されるって事ぁ無いだろ」
エレオノールは川田の言うケンシロウの死をどうしても認める気になれなかった。
そんな事、絶対にあって欲しく無い。
「とりあえず、エレオノールや御前が今まで出会った奴の事、教えてくれないか」
そうして二人の口から語られる話を聞き、川田は内心、苦虫をまとめて1ダース近く噛み締めてしまったような気分になる。
『……そうかい、次は泉こなたの情報が来るか……くそっ、何だってんだ畜生!』
しかしそれらを聞いて、ようやく川田は自分達とは違う場所で起こった一連の出来事の流れを知る。
『つまり、喫茶店を中心とした集まりがあり、そこにDIO、範馬勇次郎といった連中が絡んできてると』
二人の話から聞けた生存者と、名簿を照らし合わせる。
152進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:25 ID:8jaDO6Qk
川田が直接知る生存者は、ヒナギク、ラオウ、赤木、エレオノールの四人のみ。
ここに、泉こなたと同行していた男パピヨン、ジグマールを追っていったはずの独歩、超の付く危険人物範馬勇次郎、ジグマールから聞いた柊かがみの情報が加わる。
残る不明の人物は、劉鳳、服部平次、ジョセフ・ジョースター、江戸川コナン、村雨良の六人。
川田は詳細を若干変更しながらも、素直に自分の持つ情報を二人に分け与える。
これらを共有しながら、今後の行動を考えようとした矢先、御前からその言葉が漏れた。
「どっちにしてもこなたん学校に居るんだし、独歩拾ったらすぐ学校行くのがいいんじゃない?」
流石にその言葉は聞き逃せない。
「……何? ちょっと待て、泉こなたは学校に居る……のか?」
あの時は髪の色まで良く見えなかったが、まさか、あそこに居るのが泉こなただったと?
「ん、確かにケンがそー言ってた。赤木って奴と二人でそこ行ってるって」
『津村の野朗、お前が外見特徴もう少し丁寧に説明してくれてりゃ、こんな事に……』
本音を言わせてもらえば、川田は泉こなたや柊かがみを自らの手で殺したくは無かった。
気が付いたら何時の間にか誰かに殺されていた。こんな展開が理想だったのだが、やはり世の中そんなに甘くは無いらしい。
御前とエレオノールの話を整理すると、学校には泉こなた、赤木しげるの二人が居て、そこにパピヨンと言う男が戻る予定らしい。
パピヨンという男は、御前の話によると人間離れしている、というか人間ではない模様。
泉こなたは基本無力な女子高生と聞いているので、赤木しげるが本命、対抗パピヨン、大穴泉こなた、といった所か。
『段々絞れて来たな……俺の復讐を邪魔してくれやがった野朗は』
「良し、それじゃあとりあえず移動するとしようか。俺は荷物取ってくるからそこで待っててくれ」
そう言い残して自分の荷物とジグマールの荷物を回収する川田。
マイクロウージーにアラミド繊維内蔵ライター、スタングレネードに、核金激戦とヘルダイバー。
これにハルコンネンにライドル、ライダーマンのヘルメットとなるのだから、ちょっとした戦争気分だ。
重量のある物はヘルダイバーに乗せ、ハルコンネンを抱え、ヘルダイバーを押しながら戻る川田。
153進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:25 ID:8jaDO6Qk
「よし、距離は……こんな所か。この爆裂鉄鋼焼夷弾ってな近距離で使うようなものでもないしな」
エレオノールと御前は馬鹿面下げてこっちを見ている。
そこに川田はハルコンネンを向け、引き金を引いた。

あのケンシロウがジグマールに倒された。
しかしそのジグマールもまた、首輪と川田によって亡き者となった。
急な話すぎて、何が何やらわからない。
ケンシロウには返しきれない恩がある。もっと色んな事を返さなければならないのに。
心の整理が全くつかないままに、川田という男と同行する事になった。
とにかく、今は殺し合いに乗っていない全ての人の為に、出来る事をやるしかない。
そう思って顔を上げたエレオノールの視界に、長大なライフルを構える川田の姿が映った。
「え……」
「エレノン! 腕を奴に向けてあげて!」
御前が怒鳴る。
言われるままに腕を上げると、御前が腕に弓と矢を作り出し、それを放つ。
「間に合えっ!」
そのすぐ後だ、大量の炎がエレオノールを包み込んだのは。



噴き上がる炎に視界を奪われる。
あの人形、ハルコンネンの弾に矢をブチ当てやがった。
信じられない事をする。
それでも被害はあの女の方が大きいだろうが、あの人形の矢は厄介だ。
その威力の程はわからないが、少なくとも今の川田を貫くぐらいは簡単にやってのけるだろう。
こんな芸当の出来るエレオノールとの射撃戦はまずい。ならばこの炎に紛れて接近するか?
いや、この炎はすぐに晴れる。今の射撃で距離も開いただろう。
154進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:26 ID:8jaDO6Qk
まっすぐに突っ込むのはリスクが大きすぎる。
そこまで瞬時に判断し、川田はこの炎に紛れてヘルダイバーで逃亡する事を選んだ。
最高時速六百キロ、加速度もそれに相応しい力を持つヘルダイバーは、あっという間に川田を御前の射界から連れ去ってくれた。



「エレノン! しっかりしろエレノン!」
息が苦しい、全身が焼けるように熱い。
「起きろよエレノン! 頼むよ! まだ間に合うから武装解除って叫ぶんだ!」
「……ご、ぜん?」
「エレノン! 武装解除だ! そうすれば核金になってエレノンの治療が出来る! だから早く! そのまま意識無くしたらエレノン死んじゃうよ!」
御前の言葉は、いつだって安心出来るし心から信頼出来る。
だから、それに逆らう理由なんて一つも無かった。
「……ぶ……そう……かい…………………じょ」
御前の姿が消える。
後は、もうわからない。



【ケンシロウ@北斗の拳 死亡】
【マーティン・ジグマール@スクライド 死亡】
【残り15人】

【D-3 西部/2日目 黎明】

【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:疲労大 全身に火傷 気絶 (核金により治療中)
155進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:27 ID:8jaDO6Qk
[装備]:エンゼル御前@武装錬金、あるるかん(白金)@からくりサーカス(頭部半壊、胸部、腹部に大きな損傷、全身にへこみと損傷あり)
[道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式、生命の水(アクア・ウィタエ)
[思考・状況]
基本:主催者を倒す。
1:ケンシロウ、エンゼル御前と共に、独歩を救いに向かう。
2:夢で見たギイたちの言葉を信じ、魂を閉じ込める器を破壊する。
3:ナギの遺志を継いで、殺し合いを潰す。
4:一人でも多く救う。
[備考]
※ジグマールと情報交換をしました。
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※夢の内容はハッキリと覚えていますが、あまり意識していません。
※エレオノールが着ている服は原作42巻の表紙のものと同じです。
※ギイと鳴海の関係に疑問を感じています。
※フランシーヌの記憶を断片的に取得しています。
※「願いを叶える権利」は嘘だと思っています。
※制限についての知識を得ましたが、細かいことはどうでもいいと思っています。
※自転車@現実は消防署前に落ちています。
※才賀勝、三千院ナギの血液が溶けた生命の水を飲みました。2人の記憶を取得した可能性があります。
 が、断片的かもしれないし、取得していないかもしれません。
 才賀正二の剣術や分解などの技術は受け継いでいません。
※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると核鉄に戻ります。
※川田と情報交換をしました。


156Classical名無しさん:08/04/17 20:27 ID:CAlFlXks
         
157進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:28 ID:8jaDO6Qk
【D-3 西部/2日目 黎明】

【川田章吾@BATTLE ROYALE】
[状態] 健康 、小程度の疲労、ヘルダイバーに乗車中、ライダーマンに変身中(ライダーマンのヘルメット@仮面ライダーSPIRITSを装着中)
[装備] マイクロウージー(9ミリパラベラム弾32/32)、予備マガジン4、ジッポーライター、 ライドル@仮面ライダーSPIRITS
    バードコール@BATTLE ROYALE アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙、激戦(核鉄状態)@武装錬金
    ヘルダイバー@仮面ライダーSPIRITS
[道具] 支給品一式×3、チョココロネ(残り5つ)@らき☆すた、ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン 、
    文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ツールセット、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
    缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(4本消費)、ツールナイフ、つかさのリボン 首輪探知機@BATTLE ROYALE
    ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾3発、劣化ウラン弾、残弾0発)@HELLSING、不明支給品1(未確認)、
[思考・状況]
基本行動方針:最後の1人になってつかさを生き返らせ、彼女を元の世界に戻す。
1:学校を襲撃する。
2:斗貴子を殺した参加者を殺害する。
参戦時期:原作で死亡した直後
[備考]
※桐山や杉村たちも自分と同じく原作世界死後からの参戦だと思っています
※首輪は川田が以前解除したものとは別のものです
※津村斗貴子と、他の参加者の動向に関する情報交換をしました。
※つかさの遺体を、駅近くの肉屋の冷凍庫に保管しました。
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※主催者の目的は、@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、A最強の人間の選発、の両方。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくためのもの。 零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※覚悟、斗貴子は死んだと思っています
※ライダーマンに変身中のため身体能力が向上しています。勿論、カセットアームなどの機能はありません。
158Classical名無しさん:08/04/17 20:28 ID:CAlFlXks
        
159Classical名無しさん:08/04/17 20:28 ID:7aZ8YYHM
ケエエエエエエエエエエエエエエンンンンンンンンンンン
160進化 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:28 ID:8jaDO6Qk
※ライドルの扱い方を一通り理解しました。
※エレオノール、エンゼル御前と情報交換をしました
※赤木しげる、泉こなた、パピヨンの内の誰かが斗貴子を殺した犯人だと睨んでいます
161 ◆1qmjaShGfE :08/04/17 20:29 ID:8jaDO6Qk
以上です、支援ありがとうございました。お気づきの点等ございましたら、よろしくご指摘の方お願いいたします
162Classical名無しさん:08/04/17 20:38 ID:CAlFlXks
投下乙!
ケンシロウとジグマール、熱い戦いでした。
圧倒的強さを見せるケンシロウに、徐々にだけど成長しながら追い抜くジグマールを、マーダーなのに応援してしまいました。
落ちにもびっくり。
エレオノール……イキロ
川田は修羅の道を行くなぁw

GJ!
163Classical名無しさん:08/04/17 22:06 ID:vAUjRMPQ
投下乙ッ!!
うわあああああああああああああ
ケンシロウぅううううううううう!!

ジグマール対ケンシロウの予想外の結末に驚きました。
そしてさらにその結末を冷静に分析し、引き金を引く川田に寒気がする…。
またさらに装備も増え、これはあっという間に優勝候補。


そしてエレオノール、ピンチ!!
独歩とはまだ誤解が解けてないし、キュルケのことはまだ引きずってるし
これはもしかしたら……!!
GJ!
164Classical名無しさん:08/04/17 22:29 ID:PtOvxz1I
投下乙
ケンシロウ死んだ・・・対主催の最有力が墜ちたか
ますます優勝エンドの影が濃くなってきたな
165Classical名無しさん:08/04/17 22:31 ID:Xe0S/Pis
乙!
しかし、ケンシロウが死んだら対主催側が絶望的臭いな・・・・
ラオウや勇次郎に勝てる奴がいなくなってしまった感が。
166Classical名無しさん:08/04/17 22:47 ID:Xe0S/Pis
ていうかアレだよ
他の書き手がグズグズしてる内にケンシロウとジグマールが呆気なく死んじまった!
超名残惜しい。
ジグマールと赤木の勝負はケンシロウを殺したジグマールの勝ちかもしれんな。
167Classical名無しさん:08/04/17 22:54 ID:ZOLOsemo
>>165
覚悟、ゼクロス、パピヨン、ジョセフ、劉鳳、独歩……まだまだいけるって。
168Classical名無しさん:08/04/17 22:55 ID:7aZ8YYHM
ふむ、ケンシロウも死んでしまったが
これでマーダーは勇次郎、ラオウ、川田の3人になったな。
やはりこの面子だと川田が浮いてるな。
169Classical名無しさん:08/04/17 23:04 ID:Xz8tSdVw
>>165
おいおい、単純な戦力比なら対主催のが上だぜ?全く問題はない
まぁ多少誤解フラグがあるが、かがみいればゼクロスはどうにかなるだろ
しかしマーダーもう三人か…何気に川田の装備が凶悪なことにw
170Classical名無しさん:08/04/17 23:15 ID:nheJ3UvI
劉鳳にはまだs.CRY.edがあるし、覚悟もそろそろ零と合流するだろうからパワーアップも確実。
ZXは生かさず殺さず鍛えることで、鋼の如くその強度を増す(大首領談)。
シルバースキンは、独歩が装備したら凄いことになりそうだ。
捨てたものではないどころか、対主催はやはり強力。
171Classical名無しさん:08/04/18 00:23 ID:EJ4lbL.g
不和の種もまだまだあるがな
特にパピヨン周りがやばすぎるww
172Classical名無しさん:08/04/18 10:45 ID:u7NYbjfc
このロワを見過ぎたせいか、何故か勇次郎が義父になってる夢を見ちまった
恐ろしすぎて全く寝られなかった
173Classical名無しさん:08/04/18 15:17 ID:12UhPx4k
>>172
お前今日三国志対戦の筐体から、釘宮ボイスが流れる夢を見た俺とは、別方向に終わった夢見てるな
174Classical名無しさん:08/04/18 19:08 ID:nwUjBe02
>>173
つかさが生き返って川田を説得する夢を見た俺の方が上手のようだな
175Classical名無しさん:08/04/18 19:22 ID:UHxomW.E
>>172
俺は勇次郎を挑発しまくるバーローを必死で止める夢見たことあるぞ。
176 ◆14m5Do64HQ :08/04/18 21:03 ID:lXiPRkMw
>>161
投下乙です!
前半のエレの可愛さの表現が凄い上手い!
ギャランドゥの復活、ケンとジグマールの死闘に燃えた……そしてその結末にもびっくりです!
川田の冷静な分析が余計に不気味さを醸し出してると思います。
GJ!

それでは遅くなりましたが、覚悟、村雨、ヒナギク、かがみ、独歩投下します。
分量が多いので支援をよろしくお願いします。
177 ◆14m5Do64HQ :08/04/18 21:04 ID:lXiPRkMw
一陣の風が入り組んだ市街地を走る。
あまりにも低空。
そして、目を見張る程の速さ。
決して零になることはない速度に、その風が持つ意思の強大さを見て取れる程に。
今は立ち止まるべきではない。
この身を擦り減らしてでも、一刻も早く行う目的がある。
それは仲間と、短い時間であるが確かに心を繋いだ仲間達との合流。
その目的を決して忘れぬように、取り零さないように一陣の風が大気を揺らす。
一陣の風の名は覚悟。
人間の世を裏側から守り続けてきた葉隠一族、次男坊・葉隠覚悟という男なり。

「到着完了! ようやく戻ってこれたか……」

一陣の風が急速に速度を落とし、やがて立ち止まる。
桂ヒナギクと落ち合う事を約束した場所、エリアE-7・S-7駅前に辿り着いた覚悟。
その呼吸には殆ど乱れはない
周囲への警戒を行いながら走ってきたため、全速力ではなかった事も関係するだろう。
だが、やはり覚悟の身体能力が常軌を逸している事が最大の要因。
零式防衛術を学ぶため人里離れた地で、幼少の時から修業を重ねた覚悟にエリア一つ分を走りきるなど造作もない。

「あとはヒナギクさんと合流するのみ! 話すべき事はあまりにも多い。よって、いたずらに時間を無駄にするべきではない」

また、厳密にいえばヒナギクとの待ち合わせ場所は駅のホーム。
キッチリと舗装された階段を飛び越え、着地時の衝撃音を駅内に反響させる覚悟。

――村雨殿は無事、記憶を取り戻し、ヒナギクさん仲間になってくれたのだろうか?
――柊かがみさんは彼女の妹、そして自分達の仲間、つかささんの死を受け入れる事はできたのだろうか?
――ハヤテは何故死んでしまう事になってしまったのか?
――川田が本気で自分を襲ってきた事をヒナギクさんに話せばどういう反応を示すだろうか?
――つかささんの仇、津村さんのまるで魂の抜け殻のような姿を見れば、ヒナギクさんはどういう反応を示すだろうか?
――そしてつかささんの友人、泉こなたさんは…………。
話すべき事は山ほどある。
出来るものならば充分と時間を掛け、慎重にヒナギクと話をしたい。
だが、残念ながら覚悟に残された時間は有限。
今もなお自分を待っている蝶野功爵と赤木しげるの元へ戻る事もあるため、あまり長々と話は出来ない。
ヒナギクと話を行い、直ぐに学校へ戻る決意が覚悟の胸に灯る。
決意という紐をもう一度きつく己の体に縛りつける。
そうして、覚悟の身体がもう一度一陣の風と化す。
真っ直ぐと待ち合わせのホームを目指して――

◇  ◆  ◇

何の変哲もない、ごく一般的な地下鉄。
車内放送もなく、車内で聞こえる音はガタン、ゴトンと電車が揺れるものぐらいしかない。
人間の話し声を除いては。

「ねぇ、ヒナギクはラノベとかは読まないの?」
「ラノベ? なに、それ? なにかシリーズ物の小説かしら?」
「え、えええええ!? ラノベって言ったらライトノベルのコトに決まってるじゃない!」
「ああ、なるほどね。ごめん、かがみ、私そういうの読まないのよ」
「へぇーそうなんだ……じゃあ今度読んでみなさいよ。私がおススメのを教えてあげるわ!」
「んー……じゃあお願いしようかしら」

二人の少女が年相応に雑談に精を出し、共に笑い合っている。
桃色の髪の毛を生やす少女の名は桂ヒナギク。
ヒナギクの横に座る紫色の髪の毛の少女の名は柊かがみ。
地下鉄が目的地のS-7駅に着くまでの間には特にやることはない。
そのために、他愛もない話をして時間を潰そうとヒナギクとかがみは考えていたのだろう。
そして二人が座る席から左斜め向かい側に座り、目の前に奇妙なバイクを停めた男が一人。
村雨良が横目でかがみとヒナギクを盗み見していた。
主にかがみの方に重点を置いて。
「おい、おまえさん。いけねぇなァ……お前さんは年下が趣味なのか?
こんな状況でもてぇ出したら立派な犯罪だぞ、わかってるかァ?」
「な! 何を馬鹿な! 俺は只――」

村雨の近くの手すりに両手をぶら下げた形で立っていた男、愚地独歩が小さな声で村雨をからかう。
独歩は取り敢えず村雨達について行き、覚悟なる男との合流を終えてから村雨達と情報交換を行おうと思っていた。
思いがけない独歩の言葉に村雨の表情が崩れる。
屈強な上面に浮かべるのは驚愕や己への弁護を示すもの。
車内に響く、村雨の多少の焦りに塗れた言葉。
そんな村雨の判り易い反応を見て、独歩がニヤニヤと薄ら笑いを浮かべる。

「ちょっと! 大の男が二人してかがみを狙う計画でも立ててるんじゃないでしょうね!?
ぜぇーったいに私が許さないわよ!」
「オイオイ! 俺は関係ないぜ、ヒナギクのお嬢ちゃん。
村雨の兄ちゃんだけだっての!」
「あら? それはどーかしら? だって村雨さんもそんなに人相が良くないとはいえ、独歩さんの人相は〜〜〜ねぇ? かがみ?」
「ム? 何故、そこで俺が――」
「んーそうねぇ、独歩さんには悪いけどかーなーり、危険領域よ! 村雨さんも較べる相手が悪くて助かったわね♪」
「おい、テメェら! それが年上の者に対する態度か〜〜〜ッ? 村雨の兄ちゃんとオレもあまり変わらないだろうがよッ!」
「だから何故、俺の名前が何度も何度も……」

村雨の言葉が聞こえたヒナギクとかがみが独歩と村雨の方を向き、攻撃する。
そしてそれに負けじと対応するのが独歩。
村雨は元々そんなに喋るのが得意ではなく、記憶を取り戻したばかりなのでなかなか発言できない。
勝手に独歩と較べる対象にされ、微妙に表情はむくれているようにさえ見える。

「は〜い、では、桂ヒナギク。愚地独歩さん、年長者のあなたのお言葉を有難く肝に銘じておきます!」
「じゃあ、また私達は私達で話でもしてるから、お二人でどうぞご自由に〜♪」
「テメェら……これっぽちも真面目に俺の話を聞いてねぇなァ〜〜〜ッ! そんな悪いガキ共には昔から尻をひっぱたたくってのが道理ってもんだッ!」
「キャア! 変態! チカン! あっちに行って逃げましょ、ヒナギク!」
「ええ! ちょっと身の危険を感じちゃうしね。ではごきげんよう〜♪」
だが、やはりヒナギクもかがみも正真正銘の女子高生。
常日頃、学校で友達とお喋りに興じている二人に独歩が勝てるわけもない。
ヒナギクとかがみが独歩と村雨から更に離れた座席へ脚を運ぶ。
しかし、二人が浮かべる表情はとても明るい。
独歩に対する微妙な中傷も決して本心ではなく、只の冗談。
何故なら、かがみの治療の件で二人にとって独歩も大切な仲間の一人だと認識しているから。

「全く、あのクソガキ共が……困ったもんだな、村雨?」
「? あまり困ったように見えないがな?」
「ハハハハハッ! バレたか! 鈍そうなお前さんにバレるってコトはとんだ失態だなッ!!」
「ム、放っといてくれ……」

村雨の隣に勢いよく腰を下ろす独歩。
独歩が浮かべる表情もまた、ヒナギクとかがみのそれと同様に明るい。
だが、村雨を茶化すような言葉は相変わらず続く。
そのため、少し不満げに村雨がそっぽを向く。

「それと言っておくが、俺は別にかがみを変な目で見ていたわけじゃない。只、俺は――」
「ああ、そのコトかよ。安心しな、さすがのオレにもお前が何を考えていたかは理解してたつもりだぜ?」

ふと、急に薄ら笑いを止め、真剣な表情へ変わる独歩。
口調もまた、先ほどの軽薄なものではなく、年相応な重みが溢れる。
独歩の変貌に村雨は驚く。
まるで雲のように掴みどころのない性格。
そして、こちらの考えを見透かしたような隻眼による眼光。
予想もつかない程の修羅場を越えてきた事が、用意に推測出来る程の独歩の闘気に村雨は押される。

「かがみの嬢ちゃんが心配なんだろ? 無理して頑張ってるが、あの歳じゃあつれぇだろうな……」
「……ああ、今は楽しそうに笑っているが……もしや、あんたは?」
勿論、独歩も村雨が男の欲望を滾らせながらかがみを見つめていたわけではないとわかっていた。
村雨が気にしていたのは左腕を失ったかがみの様子。
応急処置を施しても、幾らかがみが強がっても当然左腕は戻ることはない。
そんな時独歩の言葉を聞き、何かを閃いたような様子で顔を向ける村雨。
先程の独歩のかがみ達に対する、歳不相応な軽口や態度。
その言葉の意味が今になって村雨には理解できた気がしてならなかったから。

「もしや、かがみを元気付けるためにわざとあんな風に振舞ったのか? 彼女の気持ちを少しでも楽にさせてやろうと……」
「よせやい。あんまりオレを買いかぶるんじゃねぇよ。どうせオレには空手しかねぇからなァ、そんな芸当が出来るわけねェ」

他愛もないヒナギクとかがみの冗談に年長者としての威厳を敢えて消して、同じように彼女らと接した独歩。
結果として、ヒナギクもかがみの笑顔もより大きなものとなった。
村雨は独歩がこの結果を見越したのではないかという考えに至った。
推測を言葉に表し、実際に独歩に聞いてみた事で更に村雨の確信は強くなる。

「あんたも嘘がヘタなんだな、俺ですらも見抜ける」
「……けっ! 若造がつまらねぇコトいいやがって! まァ……そういうコトにしていいぜ。おっ、そういえば聞きてぇコトがあるんだが?」
「なんだ?」

そっぽを向きながら否定する独歩が新たに口を開く。
思えば今まで合流した直後にかがみの治療に専念していたため、碌に互いの状況の話をしていない。
誰か知り合いでもさがしているのだろうか。
そう思い、村雨が独歩に答える。

「範馬勇次郎って男を見なかったか? コイツはどうしようもねぇバケモンだ。それにな……」
「範馬勇次郎……いや、心当たりはない。そいつは一体何を?」

勇次郎の名を独歩が口にした瞬間、村雨は見た。
独歩の両眼が確かに戦士のそれに一段と推移していく光景を。
只ならぬ独歩の面影。
まるで自分とBADANとの関係のように複雑で、とても切れそうにはない因縁。
独歩が浮かべる表情から、勇次郎なる人物が独歩と良好な関係ではないと村雨は悟る。
「才賀勝という、未だ小学校も出てねぇ坊主を殺しやがった。俺の力が足りなかったせいでな……」
「そうか……そんな子供が……」

才賀勝という少年を殺した勇次郎という男。
勇次郎の存在を独歩から聞かされた村雨はやりきれなさを覚える。
強大な敵、ラオウと共に闘い、そして散っていった綾崎ハヤテの意思を継いだ村雨。
BADANの策に乗り、既に殺し合いに手を染めた者を止める、もしくは倒す事は村雨の役目。
殺し合いに乗っていない者を救い、BADANの目論見を叩き潰す事を決意した村雨に勇次郎のような者を許せるはずもない。
だが、村雨の胸中にはしこりともいえる負い目がある。

(俺は……俺は……)

思い浮かべるのは記憶を失くしていた自分。
現人鬼・葉隠散の人類完殺に手を貸していたあの暗闇の時期。
今では散の思想に全く同意は出来ないが、命を拾われた恩もある。
だが、村雨の気がかりな事はその時の自分の行為。
今、この場に居るかがみ、ヒナギク、独歩に言い出す機会が見つけられず言えなかった事。
この殺し合いを憎み、自分にはない正義を掲げた劉鳳と闘ってしまった事。
同じく正義を掲げた者、キャプテン・ブラボーと散の闘いを何もせずに傍観した事。
ブラボーの仲間、桐山和雄が散に闘いを挑んだ時すらも傍観した事。
そして何よりも――

(俺に勇次郎という男を憎む資格はあるのか? ヤツと同じように人を殺した……平賀才人を殺した俺には……)

劉鳳を助けるために飛び出した少年。
平賀才人を殺した事は村雨にとって決して忘れることは出来ない。
いや、忘れてはならない事だから。

「ところでさ、独歩さん。本当にこなたのヤツは学校に居るんでしょうね?」
「ああ、多分な。俺達は学校へ向かう途中だった。それにこなたの嬢ちゃんもパピヨンもアカギもあの放送で名前を呼ばれてねェ。
恐らく俺を待ちながら、三人で学校に留まっているだろうよ。勿論、この二人は俺達の協力者だから安心しろい」
183Classical名無しさん:08/04/18 21:12 ID:1M.zSmgs
 
184Classical名無しさん:08/04/18 21:12 ID:HvBi8OV6
185Classical名無しさん:08/04/18 21:12 ID:RlGs9jXc
 
186Classical名無しさん:08/04/18 21:13 ID:1M.zSmgs
 
187Classical名無しさん:08/04/18 21:13 ID:DvZlgm9U
188Classical名無しさん:08/04/18 21:13 ID:sD0BkZT.

「それならよかったわ。あいつが他の人に迷惑を掛けてないか、これからは私がキッチリと見張ってあげるんだから!」
「なんだか嬉しそうね、かがみ? まるで恋人に会うみたいに浮かれちゃって」
「な!ななななななな!なんで恋人なのよ!私とこなたは女同士だっての!! そりゃあ……嬉しいといっちゃあ嬉しいけどね……」
「あらあら? 顔が赤いわよ〜〜〜〜〜〜〜か・が・み♪」
「う! うっさいわね!!」

こなたの無事を独歩の口から確認したかがみの表情が喜びに緩む。
今まで全く所在を掴む事の出来なかった、今ではたった一人の元の世界での友人であるこなた。
かがみが喜ぶのは無理もないだろう。
そんなかがみをヒナギクが少しからかい、かがみは顔を真っ赤に染めながら苦し紛れの反論。
やがて形勢が不利と見たかがみはそそくさとヒナギクと独歩から離れ、一番端の座席に腰を下ろす。

(全く、もう! ヒナギクったら変なコト言わないでよ。私は同性愛者じゃありませんよーーーだ!)

両脚を組みながら、ぶつぶつと胸中で愚痴るかがみ。
だが、その表情からは別にヒナギクの事を嫌悪しているような様子は全く見られない。
言うなれば、他愛もない喧嘩に負け、逃げ帰った小さな子供のような様子。
自分の妹、つかさと僅か一日で友達となったヒナギクはかがみにとっても立派な友人となっていた。
そんな時、ふとかがみは考える。

(でも、パピヨンって夢の中でもこなたが言ってたけど……偶然よね? だってあれは夢であって、現実のコトじゃないし。
それにしても不思議ね……なんだか忘れてるような事もある気がするけど……)

パピヨン。
先程、独歩から聞いた名前。
そして先程の夢の中でこなたが言っていた名前。
二つの名前が一致した事にかがみは少し不思議に思う。
しかもあの時、こなたはもっと重要な事を言っていた気がしたが、かがみは忘れていた。
夢の内容は目が覚めた後は記憶に残らず、おぼろげながらに覚えている程度が殆ど。
なにか、気がついたらどうとか……そんな事をこなたが言っていたような事だけをかがみは辛うじて覚えていた。

「ねぇ、独歩さん。私も一つ聞いていいかしら?」
190Classical名無しさん:08/04/18 21:14 ID:1M.zSmgs
 
191Classical名無しさん:08/04/18 21:15 ID:sD0BkZT.


一人、悔しそうに呟くかがみを満足げに見送るヒナギク。
だが、急にヒナギクは腰を下ろす独歩の方へ振り向く。
浮かべる表情は先程かがみと会話をしていた時の優しい笑顔ではない。
少し強張った、真剣な眼差しで独歩を真っ直ぐ見つめる。
そして、ヒナギクの口から吐き出された質問が独歩へ投げかけられる。

「なんだ?」
「ナギを殺した人は才賀エレオノールっていう女の人……本当に間違いはないかしら?」

独歩がこなたの事を話した際、当然彼はナギの事も話していた。
以前、ナギからヒナギクの事を聞いていたからだ。
真剣な表情でナギを殺した人物、才賀エレオノールの特徴を独歩から聞いたヒナギク。
ヒナギクもまたかがみと同じようにもう一度確認するかのように独歩に聞き直す。
依然、浮かべる表情には一寸の緩みはなく真剣そのもの。

「ああ、そうだ。だが、エレオノールは俺がやる。あんまりヘンなコトは考えるんじゃねぇぞ」
「そうだヒナギク……戦闘は俺達に任せろ」
「……わかってるわよ」
独歩の口から返ってきた言葉は肯定の意を示すもの。
そして言葉と共にヒナギクの行動を制するために、独歩が釘を刺し、横に腰掛けていた村雨も続く。
独歩と村雨にはヒナギクが考える事はなんとなく予想はついた。
ヒナギクのあまりにも強い責任感が駆り立てる無茶な行動。
その行動をヒナギクが起こすのではないかと二人は警戒していた。
そんなヒナギクは一言、言葉を述べ、ドア近くの座席に歩を進め、腰掛ける。
あまりにも素直すぎるヒナギクの行動を独歩は気がかりに思い、更に決意を強める。
(ヒナギクの嬢ちゃんが無茶をしねぇようにしっかりと見てやらねぇとな……。それを手っ取り早く終わらせるにはァ……俺がさっさとエレオノールを倒すしかねぇ)
独歩は先程、かがみの治療時にヒナギクの人柄をそれなりに観察する事が出来た。
空手一筋とはいえども、伊達に歳は食っていない独歩にも人を見る眼はある。
かがみの怪我を自分のせいだと後悔していたヒナギク。
一言で言えば、恐ろしいほどに責任感が強い少女。
そして一人で、全ての物事の責任を背負うかのような気質も見受けられた。
今、この場で自分の友達のナギを殺した人物の名前を、ヒナギクが知ってしまったらどうなるか?
193Classical名無しさん:08/04/18 21:16 ID:1M.zSmgs
 
194Classical名無しさん:08/04/18 21:16 ID:5Ew8oaPA
 
自分達の元を飛び出し、エレオノールに復讐をするために無茶な事をしでかすかもしれない。
よって、ナギの事を話す時はヒナギクの動向に注意しながら話をした独歩。
結果としてヒナギクはそれ程取り乱した事もなく、今は安泰といえるが今後この状態が続くわけもない。
そのため、ヒナギクが復讐を行う可能性があるかもしれないエレオノールを、独歩は即急に倒す決意を行う。
勇次郎に勝を殺された時の足止め、あるるかんに気絶させられた借り、ナギの仇といった様々な因縁にケリをつける必要もある。
独歩は静かに闘志を燃やし続ける。

そんな独歩を尻目にヒナギクは座席に腰を掛けながら考える。
ハヤテやナギの死からはなんとか立ち直れたが、今も気がかりな事は胸中にしつこくこびりついているのが現状。
勿論、ヒナギクが気に悩んでいる事はナギを殺害したらしいエレオノールという女性の事。
とてもこの殺し合いには乗りそうにはなく、何より自分の友人であるナギを殺したというエレオノールをヒナギクは未だ許せてはいない。
だが、だからといって彼女は怒りと復讐に身を委ね、無茶を行うつもりはなかった。

(ええ、わかってるわ……もう、私はあんな風に取り乱さない。だって、私には覚悟くんやかがみ、村雨さんや独歩さんのような仲間が居るから。
でも、エレオノールっていう人もこのままにするわけにもいかない……! 私たちが、絶対に……あなたを止めてみせるわ)

以前、ヒナギクはハヤテを殺した男、ラオウ、そしてつかさを殺した女、斗貴子に復讐するめに冷静さを失った。
だが、その時、かがみに手痛い平手打ちを貰い、ヒナギクは冷静さを取り戻す事が出来た。
自分もたった妹であるつかさの死を必死に我慢し、自分を叱ってくれたかがみに感謝してもしきれない程に嬉しかったヒナギク。
かがみの気持ちを裏切らないためにも、もう自分を見失ったりはしないとヒナギクは誓った。
だが、エレオノールの事もこのまま見過ごす事をヒナギクには出来ない。
殺し合いに乗ってしまったエレオノールを放っておけば、また犠牲者が出て、誰かが、自分が悲しむ事になる可能性もある。
そんな事をみすみすと起こしてはならない。なんとしても自分達でエレオノールを止める。
ヒナギクもまた、独歩と同じように静かに決意を更に強く固め始めていた。
196Classical名無しさん:08/04/18 21:16 ID:DvZlgm9U
 
「良よ、気を抜くではないぞ! 覚悟との合流が出来るとはいえこれから先、何が起こるかはわからん!!」
「……ム? 零、お前……寝ていたんじゃなかったのか?」
「なに!? 良よ! 貴様、我々、強化外骨格『零』をなんだと思っているのだ!」
「いや、さっきから全く喋らなかったからな。割とお喋りなお前のコトだから……その、すまん」
「むむむ……まぁよしとしよう」

かがみ、独歩、ヒナギクの三者三様の葛藤が続く中、突如クルーザーに括り付けられた奇妙な鞄が声を発する。
その鞄の正体は三千の英霊を宿した鎧、強化外骨格『零』。
零は今まで余計な口は挟まずに、村雨達の話を黙って聞いていた。
そのため、一旦話が途切れた頃合を見計らって零は村雨に話しかけた。
本来の着装者である覚悟との合流が目前であり、心なしか大きな声で村雨に渇を入れる零。
だが、村雨のすっとぼけた答えに微妙に零は勢いを失くす。
しかし零にはそれ程落胆している様子は見受けられない。

(ふふふ、良のヤツめ! 記憶が戻り、どこか頼りなくなった気はするがまぁいい!
以前にはなかった、人間としての心意気が今のお前には感じる事が出来る!
これでやっと、覚悟と肩を並べられるといったところか!
そして覚悟よ……遂に我らが再会を果たす時! この零! この時が来るのを今か今かと待ち望んでいた!!)

零は今の村雨に素直に嬉しさを覚えていた。
以前、記憶を失い、散の野望に手を染め、自分の目の前でかがみを連れ去った村雨。
だが、今の村雨は違う。
人並みに会話も行え、何よりBADANという悪を憎む正義の心が今の村雨にはあると零は確信している。
ハヤテと共にラオウと行った激闘、大首領なる人物に対する叫び、変身と共に行ったラオウへの咆哮、そしてジグマールと闘い、かがみの治療に全力を尽くした村雨。
最早、零にとって村雨は立派な戦士であり、まるで自分の部下が成長を遂げたような気がし、喜びを見せていた。
そして覚悟との再会もまた零にとって嬉しき事。
己の装着者として認め、心を繋いだ戦友(とも)である覚悟との再会を零が喜ばないわけもない。
そんな時、地下鉄の速度が減速し始める。
どんどんと速度は遅くなり、ヒナギクは窓から地下鉄のホームを確認する事が出来た。
そしてホームに立つ一人の青年の姿を見つけ、ヒナギクの表情が喜びに緩む。
やがて電車の速度は零を迎え、ホームに隣接し停車。
いそいそと腰を上げ、自動ドアの傍に立ち、早く開いてくれといわんばかりにそわそわするヒナギク。
ほんの数秒の間を置き、横方向へ開かれる自動ドア。

「おお! 待ちわびたぞ!!」

後ろから聞こえる零の声がどこかやかましいがヒナギクはこの際、気にしない事にした。
そんなヒナギクの目の前には一人の青年が立っている。
見間違う筈もない。
過ごした時間は一日には満たないまでも、沢山勇気と強さを分け与えてくれた青年。

「正調零式防衛術、葉隠覚悟。 貴殿達との合流を成し遂げたコトを私は光栄に思う。
未熟な身ではあるが、これからどうかよろしくお願いする!」

馬鹿みたいに丁寧で、背筋をピンと伸ばした姿勢でヒナギク達に敬礼を送る青年。
葉隠覚悟。
漆黒のライダースーツを纏いし青年、覚悟がドアの近くに立っていたヒナギクを始め四人と一つを迎える。

(もう、こんな時くらいもっと嬉しそうな顔してくれてもいいじゃない。
これじゃあ一人で楽しみにしてた私が馬鹿みたい……べ! 別に覚悟くんが悪いわけじゃないけど……。
ま、いいか)

村雨、独歩、かがみとは初対面なせいか覚悟の態度は決してくだけたものではない。
ヒナギクとの再会を喜ぶよりも、村雨達への挨拶に重点を置いたような覚悟の対応。
自分は結構再会するのが嬉しいと思っていたのに。
これでは自分が少し、馬鹿みたいに思えてくる。
その事に少しヒナギクが不満そうな顔を浮かべるが、直ぐにその表情は移り変わる。

「久しぶり、覚悟くん。といってもそれほど、時間は経ってないけどね……」
済まし顔で駅のホームへ脚を運び、覚悟の正面へヒナギクは降り立つ。
そうだ。
嬉しさのあまり覚悟の胸に飛び込んで、泣きながら再会を分かち合うのは私らしくない気がする。
あくまでも冷静に、落ち着いて私らしく振舞おう。
冷静に、極めてクールに振舞おうとヒナギクは自分に対し必死に言い聞かせる。
だが――

「私、私のせいでハヤテ君が……村雨さんも頑張ってくれたのに……私のせいで……
それにナギも……ひっ…………ぐす……」

ハヤテとナギの死を大分受け入れる事が出来たといっても、完全にというわけではない。
遂に耐え切れずにヒナギクは少しずつ勢いを増しながら涙を流し始める。
その涙にはハヤテとナギの死に対しての悲しみだけではない。
それはハヤテとナギを救えなかったという自分に対するどうしようもない不甲斐無さによるもの。
悠然として構え、何事にも決して動じない覚悟を見ているといかに自分が無力な存在かが嫌という程思い知らされる。
今もなお、自分をジッと見つめる覚悟の澄んだ瞳を見つめながら、ヒナギクは俯く。
そして覚悟が動きを見せる。

「ヒナギクさん、顔を上げてくれ」

やはり、お決まりの動作。
両肩に手を乗せ、真っ直ぐヒナギクと顔を合わせる覚悟。
毎度毎度ワンパターン気味だが、嫌悪感や鬱陶しさは全くない。
ハヤテとはまた違った優しさを感じさせる面影。

「我らの友、ハヤテは確かに死んだ。だが、私にはわかる。
きっとハヤテは君を守るために、全ての牙無き人を守るためにその身を捧げたのだ。
『大義』という礎にその身を」

ヒナギクに続き、独歩やかがみもいそいそとホームへ降り立つが覚悟は気づいていないように思える。
今は只、ヒナギクに言葉をぶつけるのみ。
未だ地下鉄のドアも閉まる気配は見られない。
200Classical名無しさん:08/04/18 21:22 ID:DvZlgm9U
 
「私はそのハヤテの意志に応えたいと思う。諸悪の元凶、BADANを倒す。
当方の腕は牙無き人々を守る剣なり。
不器用な我が身にとってこれが最善の策。
私がハヤテ殿にしてやれるコトだと信じている。そして――」

決して饒舌とはいえない覚悟。
だが、今の覚悟には言うべき言葉が何故か易々と思い浮かべる事が出来る。

「この私に熱い拳を叩き込んでくれた、戦士・ハヤテの魂はいつまでも我が身の中で燃えている!
そうだとも。ヒナギクさん、君の中にも燃えているハズだ! ハヤテの熱く燃え滾る意志が!
そしてきっとハヤテも望んでいる。
ヒナギクさん、君が悲しみに立ち止まらずに一歩を、勇気ある一歩を踏み出すコトを!」

ほんの少ししか出会う事はなかったハヤテ。
だが、無様にも弱気になった自分を力強く戒めたハヤテの熱い心意気を覚悟は忘れる事はない。
そんなハヤテがどんな意志を貫き、果てていった事が容易に想像を行える。
だから覚悟は精一杯にヒナギクを励ます事が出来る。

「うん……ごめんなさい。私って本当に馬鹿ね。かがみにも叱ってもらったのに……。
また、弱気になっちゃって……頑張ってみるわ。
もう迷わない……このままメソメソしてたらハヤテ君やナギ、それに毛利さんや本郷さん、つかさにも笑われるし……ね!」

片腕で涙を拭い、ヒナギクが顔を上げるヒナギク。
涙を流していたため、未だ顔に赤みは消えきっていないがもう涙は止まっている。
精一杯の笑顔で覚悟に微笑むヒナギク。
それはいうなれば、戦場に咲く一輪の薔薇の如くに優しさに溢れた笑顔。
思わず覚悟の平常心に微かな揺らぎが生じる。
「あの〜……お二人さん?
お二人さんがドアの前に立ってたら村雨さんがバイクを出せないんですけど?」
「全くだ、このままじゃあ村雨の兄ちゃんだけ電車に取り残されるぜ?
ホレ、いちゃつくのはまた後にしろい」
「べ! 別にいちゃついてなんかいないわよ!」
「ッ!……同じく」

にやけ顔を浮かべた独歩とかがみが覚悟とヒナギクをからかう。
独歩とかがみの言葉を受け、急いでヒナギクは覚悟から離れ、焦りながら赤ら顔で反論。
覚悟もヒナギク程ではないが、確かな動揺が見える。
そして独歩とかがみは余計になんともいえない可笑しさを覚えた。
覚悟とヒナギクの反応がとても、子供っぽく、初々しく思えたから。

「あ、自己紹介がまだだったわね。私、柊かがみ。つかさの双子の姉よ。
それとつかさのコトで余計な気遣いは要らないわ。
私、あの子の分も頑張ろうって決めたから……ね」
「俺は愚地独歩よ! まぁよろしく頼むぜ!」
「……ああ、私は葉隠覚悟。共に力を合わせましょう」

自分が自己紹介をしていない事に気づき、かがみが口を開き、独歩がそれに続く。
だが、何故か覚悟はほんの数秒の間を置き、返事を二人に返す。
当然、ヒナギクの仲間と思われる独歩とかがみの二人が気に食わなかったわけではない。
只、かがみの名を聞いた時、覚悟の背筋に緊張が走った。
つかさの姉、そしてつかさの話からこなたの友人と聞いていた柊かがみ。
そんなかがみに対し、覚悟は言わなければならない事があるためだ。

「おい、村雨の兄ちゃん。さっさとお前さんも自己紹介しろ」

だが、独歩の急かすような言葉に覚悟の思考は中断される。
視線を独歩とかがみから離し、未だ開ききったドアの方へ向ける。
其処には一台の奇妙なバイク、クルーザーが前輪を向けて、少し宙に持ち上げられた後、こちらに車輪を進め、ホームへ降り立つ。
「覚悟よ! 最早、言葉では言い表せん! 永かった……この時が来るのを我々は永らく待っていた!」
「ああ! 俺もだ……零よ!」

そして、心を繋ぎし超鋼(はがね)、強化外骨格『零』の存在を確認した覚悟。
零との再会に対する喜びに覚悟の感情も昂ぶる
またクルーザーに括り付けられていた零は、今は宙に浮いている。
勿論、鞄に収納された零には浮遊能力などない。
今、零は一人の青年の片腕に支えながら、彼の肩に担がれていた。
やがて、零を担いでいた青年もホームへ降り立ち――

「村雨良だ……よろしく」
「こちらこそ、ハヤテから聞き存じていた。
どうやら……記憶を取り戻したと見受けられる。
私からもお祝いを述べたい」
「あ、ああ……」

村雨良。
零を担ぎ、片手でクルーザーを押しながら、村雨が覚悟に自己紹介をする。
ハヤテから話を聞いていた覚悟の声は暖かく、優しいもの。
だが、村雨はそんな覚悟を尻目に困惑していた。
現人鬼・葉隠散の弟、覚悟を目の当たりにして。

◇  ◆  ◇

地下鉄のホーム、中心部に備え付けられた一室。
待合室とも言える空間。
其処に設置された座席に覚悟、村雨、ヒナギク、かがみ、独歩の五人がアルファベットのUのスペルを描くように腰を下ろしている。
覚悟、村雨の二人とヒナギク、かがみの二人が向き合い、そして独歩が丁度Uの底となる位置座るような形だ。
そして零は覚悟の座席の下に置かれている。
彼ら五人は兎に角、互いの情報を交換する事を決めた。
お互いの行動、友好関係を結んだ仲間、そして危険と思われる参加者達についての情報交換。
だが、その情報交換は万事何事もなく、上手くいくという事は残念ながらなかった。
「なんですって! つかさを殺したあの女が……もう人を殺す気はないっていうの!?
そんなの……そんなの俄かには信じられないわ……」

あまりにも予想外な事実に驚きながらヒナギクが口を開く。
その内容は以前、つかさを殺した女、津村斗貴子の変貌について。
憎しみを滾らせながら自分達を狙った斗貴子がもう、人殺しをしないと言ってもヒナギクにはとても信じる事は出来ない。
以前、出会った時の斗貴子の言動や様子を考えればヒナギクの反応も可笑しくはないだろう。

「君の気持ちは私にも痛いほどわかる。
だが、彼女がパピヨン殿とアカギ殿によって人殺しはしないと誓ったのも事実。
ならば、今我らに彼女を悪鬼として討つ理由はない。
彼女に罪滅ぼしをして貰うのは、BADANを滅してからでも遅くはないハズだ」

だが、覚悟もヒナギクが納得できない事はわかっていた。
何故なら覚悟自身も完全には納得できるような事ではないからだ。
しかし、だからといって今は自分のせいでショックにより、気絶しているであろう斗貴子。
そんな斗貴子を殺す事など覚悟には出来る道理はない。
闘う意思のない、自分の事を一時的に忘れるほど弱りきった斗貴子に揮う拳など覚悟は持ち合わせていない。

「それもそうだけど……でも、こんなコト都合が良すぎるわよ……。
一時的とはいえ、私達のコトも忘れてるなんて……。
つかさも川田君も……こんなんじゃちっとも報われないじゃない……」

項垂れながら、ヒナギクがポツリポツリと言葉を漏らす。
あまりにもやりきれない思いを抱え、ヒナギクの声はか細い。
また、川田の名前が出た事に覚悟は思わず反応し、表情を歪める。
だが、各々ヒナギクの心境を察し、無言のまま俯いているので気づかない。
そして、当然、ヒナギク以外にも大きな衝撃を受けている者が居た。

「……わかったわ。だったら、私も……割り切ってみようと……思う……。
それで、葉隠君――」
いうまでもない、つかさの姉、かがみだ。
つかさを殺した女が自分達の仲間の一員になっている事に、かがみは複雑な心境を覚える。
だが、途切れ途切れの言葉ながらも覚悟の意志に同意し、口を開く。
かがみには他にどうしても疑問に思っていた事があったから。

「こなたは今どうしてるの?
確か、あいつも学校に居るハズなんだけど……ねぇ、独歩さん?」
「ああ、そのハズだ」

それは友人、こなたの事について。
独歩の話からすればこなたは恐らく学校に居る筈である。
だが、覚悟の話からはこなたの名前は一言も出てはいない。
その事にかがみはずっと疑問を抱いていた。
そして、かがみの質問をその身で受けた覚悟。
覚悟の表情には、微かな迷いが生じている。

(……この事実を柊さんに告げるべきなのだろうか……いや、隠し通せるコトではない。
そもそも、仲間である皆には、特に泉さんの友人である彼女には……知る必要はある……!)

全てを話してしまえば、かがみは勿論の事、此処に居る全員にも衝撃は走るだろう。
だが、隠し通す事は出来ない、隠し通すような事はしたくない。
そのため、覚悟は迷いを振り切り、かがみの疑問に答えようとする。
自分も、ついさっき知った衝撃的な事実。

「泉こなたさんは死んだ……。私が逃し、敗北した襲撃者の凶弾によって落ちし瓦礫。
その瓦礫の下敷きになって……。
そして――」
こなたが大型銃、ハルコンネンの砲撃により崩壊した職員室の瓦礫に巻きこまれ死んだ事実。
その事実を覚悟は重々しく語る。
驚きのあまり瞳孔が小さくなり、眼がまるで点のようになったまま覚悟を見つめるかがみ達。
彼ら四人の視線を一点に集めながらも、覚悟は再び口を開く。
悲しみともの苦しさに塗れた表情を浮かべながら――

「襲撃者の正体は川田章吾。かつて、私とヒナギクさんと共に行動していた男。
また、川田は恐らく泉さんを殺したコトに気づいてはいない……」

こなたを殺した男が、つかさを愛し、そしてこなたを殺した事に気づいていないという皮肉が利きすぎた事実を。
覚悟は言いのけた。

あまりの事実にかがみを始めとする四人は呆然とする。
覚悟の言っている事は嘘だと思いたい。
だが、目の前の覚悟がこの状況で嘘をつく理由など全くなく、覚悟が浮かべる表情は真剣そのもの。
覚悟が言っている事は真実であると認めざるをえない。

「……ちょっと一人にさせて。すぐ、すぐ……戻ってくるから……」

やがて、耐え切れなくなったのかかがみが席を立ち上がり、待合室の出口へ走る。
独歩がかがみを呼び止めようと顔を上げたが、少し遅かった。
既にかがみはドアノブに手を掛け、駆け足でホームの座席へ向かう。
独歩を始めとする四人はそんなかがみの後ろ姿を見送る事しか出来ない。

「今は、かがみの嬢ちゃんのいう通りにしておこう。
流石にショックを受けただろうからよぉ……」

心なしか独歩の口調も弱弱しい。
それも当然。
独歩はかがみにこなたの居場所を知らせ、結果的には途方も無いぬか喜びをさせてしまった。
意図せぬ出来事とはいえ、独歩はかがみに余計な悲しみを与えてしまった事に後悔していた。
そんな独歩の言葉に、残りの三人もゆっくりと頷き、肯定の意を示す。
207Classical名無しさん:08/04/18 21:28 ID:2K1zswKM
 
「でも……なんてコト。川田君……あなた、もう取り返しのつかないコトを……。
絶対に、絶対に止めなきゃ……!」
「その通りだ、ヒナギクさん。
そのためにも愚地殿、村雨殿、貴方方に協力を要請したい」
「おうよ! もとよりそのつもりよッ!!」
暫くの間、数分の間沈黙を続けていた四人。
だが、ヒナギクの言葉を皮切りにヒナギク、覚悟、独歩が己の決意を固める。
彼ら三人は今まで幾度も無く悲しみに身を沈め、その度に乗り越える事が出来た。
今はこの殺し合いを止め、そして最終的にBADANを叩き潰す。
その目的には変わりはない。
だが、何も言わずに俯く者が一人。

「どうかしたか? 村雨殿」
そう。いうまでもなく村雨だ。
かがみが駆けて行った方を呆然と見ていた村雨。
やっと覚悟の声に反応し、横に座る覚悟の方へ視線を向ける。
村雨が浮かべる表情から明らかな迷いを覚悟とヒナギク、独歩の三人は見て取れた。
何故なら、村雨はある決断をしたからだ。
「俺もお前達と共に闘いたいと思う……!
だが、俺はここに来るまで何人も、いや何百、何千と殺してきた。
ヤツラに全てを奪われ、BADANの尖兵として改造され、仮面ライダーとも闘った。
只、失った記憶を求めるためだけに……!」
今まで一番長く行動を共にしたかがみにすら言った事はなかった事実。
この殺し合いの首謀者、BADAN大首領・JUDOの器として改造された村雨。
村雨は世界全土に対する侵攻作戦の指揮を執り、米軍の戦力を停止させた暗い過去がある。
勿論、後方で指揮を取るだけなく直に殺戮を行った。
己の記憶、そしていつも自分を悲しそうに見守る女性、村雨しずかの意味を知りたいがために。
その今まで隠し通してきた過去を村雨が重々しく三人に話し始める。
初めて聞く村雨の過去に三人は驚きを隠せない。
BADANが村雨に、そして全世界へ行った仕打ち。
そのスケールの大きさは三人の予想を超えていた。
三人の表情を確かめながら、村雨は続ける。
「それに……葉隠覚悟。
俺はお前の兄、散と共にこの殺し合いに乗った時期があった……」
「なんと! 兄上と……」

そして、村雨の罪は未だ存在している。
自分を打ち倒し、痛みを思い出させた散と共に人間を皆殺しにすると村雨は誓った。
あの時の自分もまた、覚悟が言っていた悪鬼に変わりはない。
何故なら、自分は取り返しのつかない事をしてしまったから。

「俺は桐山和雄を見殺しにし、かがみを襲い、彼女をハヤテとジョセフ・ジョースターという男から拉致した。
それだけじゃない、俺は……」
己の両腕を堅く握り締め、歯軋りをしながら村雨が言葉を搾り出す。
己の罪の告白。
告白すればする程、己の心を痛めつける行為。
だが、村雨の口が止まる事はない。
村雨の罪は未だ終わっていないからだ。

「俺は劉鳳というこの殺し合いを潰そうとした男と闘い、そして平賀才人という少年を巻き添えにし、殺した。
だからだ……だから俺はお前達とは組まずに、一人で闘い続けようと思う。
そうすれば、きっと劉鳳もジョセフもお前達の力になってくれるハズだ!」
村雨が迷いながらも決断を下す。
ハヤテとナギを失くし、涙を浮かべたヒナギク。
同じくつかさとこなたの死に対し、悲しみに身を沈めたかがみ。
彼女達二人に対し、村雨は何も慰めの言葉を掛けてやる事は出来なかった。
何故なら自分も以前は奪う側の人間であり、きっと自分のせいで二人のように悲しみに暮れた者が居るだろう。
そんな過去の自分を、出来るものならば殺してやりたいほど村雨は憎む。
幾ら記憶を失くしていたとはいえ、過去にやった事実は消せない。
そのため、血を浴びすぎた存在である自分はそろそろ覚悟達の元から離れるべきだと村雨は考えていた。
暫くの間、何分間とも思える数秒間に新たに口を開く者は居ない。
だが、そんな村雨に唐突に襲い掛かる物が一つ。

――パン!
「ッ!」
「ち! ちょっと覚悟くん!?」
「こら、まーた豪快にいきやがったなァ……」

村雨がいきなり襲ってきたあまりにも小さな衝撃に驚き、ヒナギクと独歩も驚く。
軽快な音が響き、村雨の頭部にクリーンヒットしたものが一つ。
それは立ち上がった覚悟が握り締めている、なんの変哲も無い一本のハリセン。
先程の音は、覚悟が全力で村雨の頭部にハリセンを殴りつけた事によるものだった。

「村雨殿、貴方は思い違いをしている」
「そうだ! 良よ、この莫迦めがッ!!」

更にもう一撃のハリセン。
今度は村雨の頬に対し横殴りに叩きつける。
鍛え抜かれた拳とは違い、所詮ハリセンの打撃では改造人間である村雨にとって特に支障はない。
だが、覚悟の力も尋常ではなく、当然衝撃がないというわけではなかった。
叩きつけられた事で赤く腫れた村雨の頬。
当の村雨は唖然とした表情で覚悟を食い入る。
そんな村雨を尻目に覚悟と零が声を荒げながら捲したてる。
覚悟が浮かべる表情には一片の曇りなどない。

「確かに過去の貴殿は悪鬼そのものだったかもしれない。
だが、今の貴殿は悪鬼などではない! 悲しみそのものじゃないか!
それに貴殿には牙無き人々を救う力がある。
ヒナギクさんとかがみさんを守り、ハヤテの意志を引き継いだ貴方は……闘うべきだ!
志を共にする我らと共に

「良よ!
お前が殺した軍人が真の軍人であるなら、憎むべきものは侵略戦争そのもの!
滅すべきものはこの殺し合いを画策し、お前の全てを弄んだBADANという悪鬼共!
それでも、お前が彼らに申しわけが立たないのであれば……我々と共に突き進むのみ!
単独行動はこの零が許さぬぞ!!」
211Classical名無しさん:08/04/18 21:32 ID:aNVuUZtg
当方に支援の用意あり!
覚悟は知った。
ハヤテが村雨に己の正義を託した意志の意味。
そして村雨が強敵、ラオウからヒナギクとかがみを守りながら、ハヤテと共に闘った黄金の意思を。
零は知っている。
混沌を生み出し、多くの人々の涙を枯らし、命を吸い尽くす侵略戦争の残酷さ。
記憶を取り戻した事で今、村雨が侵略戦争に参加してしまった事に対するいいようのない後悔を。
何故なら、零もまた葉隠四郎率いる日本軍によって捕らわれ、研究材料として殺された犠牲者。
そんな零が侵略戦争に対し、苦悩する村雨を見過ごすわけもない。

「私も信じるわよ、村雨さん。
あなたが犯した過ちはきっとこの先ずっと付き纏う。
でも、逃げては駄目! 大事なのはあなたがその過ちをどう償うかよ。
そのために、あなたがこれから何をするか、それを私達と一緒に探しましょう。
私は……私はハヤテ君と一緒に闘ったあなたの意志を信じる!
本郷さんと同じ、仮面ライダーとして闘うと決意したあなたの意志をね!」

視線を見回せば、ヒナギクも自分に微笑みを見せながら、言葉を掛ける。
ヒナギクもまた、村雨の意志を、決意を己の目で目撃した一人。
自分達と共にラオウと闘い、かがみの治療にも尽力した村雨を信じていない筈はない。
本郷と同じく、仮面ライダーの資格を得た村雨を。

「まぁ、俺はあんましお前さんのコトは知らねぇが……そんなコトは問題じゃねぇ。
俺にとって村雨の兄ちゃんは今、俺の前で情けねぇツラで腐ってるだけの男だ。
これからは、そのBADAN野朗と闘うって決めたんだろう?
じゃあ、それで良いじゃねぇかァ。
それくらい単純でもいいと思うぜ……喧嘩が終わった後にでもゆっくりと考えろい。
俺達とBADANがやりあう大喧嘩が終わったあとでもなァ!」
見れば独歩も頭を掻きながら、村雨に言葉を投げ掛ける。
独歩は未だ、出会ってから数時間しか面識はない。
だが、独歩もまた村雨と共にかがみを救おうとした一人。
片腕を切断され、身体が冷たくなっていくかがみを本気で心配した村雨。
独歩にとって村雨を信用する理由はそれで充分すぎた。

「葉隠、零、ヒナギク、独歩……こんな、こんな俺にそこまで……!」

三人と零の予想もしない言葉にカッと眼を見開き、身体を震わせる村雨。
力強い言葉に思わず、胸の奥底が熱くなるような感情を村雨は覚えた。
だが、村雨の表情は未だ険しい。
村雨には確信はないが、どうしても危惧している事があった。

「……しかし! 俺は……このメモリーキューブのお陰で記憶を取り戻した。
このメモリーキューブがもし破壊でもされたら、俺はどうなるかはわからん!
俺が再び記憶を失い、お前達に襲い掛かる事になってしまう可能性があるかもしれない!
また、きっと俺のコトを憎んでいるあの少年のように、軍人などではない平賀才人を殺ったように……」

だが、村雨は焦りにも似た疑問を投げ掛ける。
村雨は自分が大首領の器として改造され、99%のシンクロ率を誇る村雨と大首領の意識を入れ替える事で彼の復活は完了する。
しかし、その事を村雨はこの殺し合いに呼び出された時期では知っていない。
そのため、自分の意識がメモリーキューブによってなんとか大首領の支配を逃れている事も知らない。
だが、村雨は本能的にメモリーキューブが今の自分にとって必要不可欠なものであるとなんとなく感じ取っていた。
このメモリーキューブが壊れでもしたりすればどうなるか?
運が良ければ何も起きないかもしれない。
だが、もしかすると自分の記憶は再び失われ、BADANの手先に成り下がるかもしれない不安。
その不安が邪魔をし、村雨は苦しみながらも覚悟達の言葉をどうしても受け入れようとはしない。
覚悟達に危険を及ぼす可能性など、一%も残しておきたくないからだ。
だが、覚悟は退かない。
退くわけがない。
「平賀才人殿もルイズさんも貴殿を恨んではいないハズだ。
何故なら、彼はルイズさんと固い絆で結ばれていた友人。
真の戦士であったと私は信じている!
真の悪鬼に殺されたのであれば、恨みの一つもあってもおかしくはない。
だが、村雨殿は真の悪鬼ではない!
これほどまでにも苦悩している村雨殿を見て、恨むのではなく、彼は悔いているハズ。
来るべきBADANとの闘いに、我らと共に背中を合わせ、闘えぬコトに!」
ハリセンを握り締め、覚悟が吼える。
この殺し合いで知り合い、交流を深め、自分に最後の遺言を残したルイズ。
村雨が平賀才人を殺したというルイズを知ったらどうするか?
考えるまでも無い。
ルイズは村雨に対し、復讐という刃を突きつけたりはしないだろう。
今は過去の自分を嘆き、BADANを叩き潰そうと考える村雨を。
そしてそれはきっと平賀才人にも言える筈。
覚悟はそう信じている。

「……葉隠、俺は……俺は……!」
覚悟の言葉を受け、村雨の表情に明らかな変化が見える。
覚悟の力強い言葉に村雨の心が大きく揺れていたからだ。
そんな時、新たな声が待合室に響く。

「村雨さん、ここまで言われて引き下がる……なんてないわよね?
それはちょっと男らしくないもんね」
「ッ!? かがみ?」
その声の主はかがみ。
誰も気づいてはいなかったが村雨の話が始まる辺りから、かかがみが待合室のドアから顔を覗かせていた。
予想外のかがみの登場に村雨は驚く。
何故なら、かがみはこなたの死で心に傷を負ったはず。
てっきり今もホームで一人きりだと思っていたからだ。
村雨だけではなく、残りの三人の驚いた目つきに見守られながら、かがみが歩を進める。
やがてかがみは村雨の隣の席に腰を下ろす。
依然、村雨はかがみを心配そうな眼で見ている。
215Classical名無しさん:08/04/18 21:35 ID:2K1zswKM
 
216Classical名無しさん:08/04/18 21:35 ID:nwUjBe02
支援完了!
「何? ああ、別にもう私は大丈夫よ。
だって……なんとなくそうなんじゃないかなって……。
あの変な夢は、最後にあいつが化けて出てきたのかなぁとも思ってたしね……。
それよりも――」

不審そうに覗き込んでくる村雨をジロっと睨み返し、かがみが口を開く。
またもや予想外な反応に村雨は一瞬たじろぐ。
よく見ればかがみの涙も既に乾ききっている。
そんな村雨の反応にどことなく満足げな表情を浮かべるかがみ。
村雨にはかがみの真意を確実に掴み取る事は出来ない。
だが、依然としてかがみの口が再び開く。

「『また記憶が無くなったらどうする? 俺達がまたお前達を襲う事になったらどうする?』ですって?
私は葉隠君のように力はないから、抵抗は出来ないだろうけど……。
別にいいんじゃない、その時はその時よ」
「ッ! 何を……何を言っている、かがみ!
俺がまた、あの時のように! お前を殺そうと襲いかかるかもしれない!
そんなコトはもう絶対にあってはならない! 俺はお前達の元から離れるべきだ!!」

あまりにも楽観的で刹那的でもあるかがみの言葉。
思わず村雨は叫び声にも似たような調子で声を荒げる。
村雨が思い浮かべる過去は以前、結果としてジョセフと共にかがみを救った時の事。
だが、あの時の村雨はかがみを助けるつもりなどなく、殺そうとしていた。
あの時のような出来事が繰り返される可能性があると知っても、かがみに動じる様子はない。
そのため、かがみがこんな事を言うのは村雨にとって全くの予想外な出来事。
もしやこなたの死を受け、かがみは冷静に物事を考えられなくなっているのかもしれない。
そんな嫌な考えが浮かび、再び村雨はかがみの顔を覗き込む。
218Classical名無しさん:08/04/18 21:37 ID:aNVuUZtg
支援ッ!
「だから、いいんじゃない。村雨さんはあの変な金ぴか……JUDOっていうヤツと闘うって言ったわ。
今の村雨さんは私を襲ったり、誘拐した時の村雨さんとは違う。
私はもう、絶対に村雨さんがあんな風にならないと信じてる! 今の村雨さんには信じれる価値があるわ!
そうよ。だから――」

かがみが思い浮かべる村雨の姿。
其処にはかがみに十字手裏剣を投げ、拳を向け、拉致した村雨の姿はもうぼやけている。
はっきりと浮かべる事の出来る村雨の姿は、自分を守り、闘い、そして今の前で心底不思議そうな表情をしている村雨のみ。
だから、かがみには信じる事が出来る。
たとえ、メモリーキューブなどが壊れても村雨の記憶は消えない。
いや、自分が絶対に消させない。
片方しかない手で握り拳をしながら、かがみが口を開く。
真っ直ぐ村雨の眼を見つめて。

「あなたは闘ってもいいのよ! もう、あなたは空っぽな人間じゃない!
私達の大事な仲間……一人の人間として!
村雨良、あなたは……私達のためだけじゃない、皆の……皆のために闘ってもいいのよ!!」

かがみは村雨に思いっきり、力のかぎり言葉をぶつける事が出来る。

「かがみ……」

驚きのあまり、村雨は碌に話す事すら出来ない。
こなたを失った悲しみで他人を気遣う余裕などないと思われたかがみ。
だが、現実は違った。
痛いほど心の中に訴えてくるかがみに村雨は動揺を隠せない。
「村雨殿。私も貴殿にもう一つ言っておきたい」

更にかがみの言葉に続く者が一人。
そう。再び覚悟が村雨に口を開き始める。
覚悟は村雨にどうしても言っておきたい事があった。

「たとえ、貴殿の記憶が再び失われ、悪鬼に堕ち、修羅の道を進み、もう戻れる見込みがないというのならば――」

自分が村雨にやらなければらないと感じた事を。
昔、自分がやり遂げる事が出来なかった事を。
こんどこそ絶対に為さなければならない事を。

「その時は! 私が全身全霊を持って、貴殿を倒す!
たとえ、一塊の肉片になりても再び貴殿に修羅の道を歩ません!
あの時、私は兄上が、葉隠散が現人鬼の道を歩むのを止めるコトは出来なかった……。
だが、もうあの時の過ちは断じてさせん!
だからだ。だから――」

覚悟が思い出すのは零式防衛術を学んだ、人里はなれた雪山の景色。
其処で強化外骨格『霞』の人間への底知れぬ憎しみ、おぞましさを知り、現人鬼として人類完殺を散は誓った。
その手始めとし、父であり師でもある葉隠朧に反旗を翻した散。
強化外骨格を纏いながら闘う二人を覚悟は止めようと奮闘したが、結局は失敗。
朧は殺され、激怒に駆られながらも闘ったが覚悟は散に敗れた。
あの時の悲劇を覚悟には繰り返すつもりは毛頭ない。
そのため、覚悟は万が一の場合、村雨を討つ決意を声高々に行う。
村雨に心置きなく、自分達に背中を預けてくれるように。
221Classical名無しさん:08/04/18 21:39 ID:HvBi8OV6
「我らに力を貸してくれ!
彼の意志に応えるためにも……村雨殿、貴方の力が必要だ!
何人も、いや何千も、何万の牙無き人々を救うコトが出来る貴殿が!
我らに貴殿を信用する用意……当然あり!!」

覚悟は言い放つ事が出来る。
一切合切の迷いを捨て、村雨に真っ直ぐ突きつける。
己の言葉を。
自分の右腕を村雨に対し、差し伸べながら。

「お前達……クッ! 俺を……俺を……」

両肩を震わせながら、村雨が言葉を漏らす。
村雨が両肩を震わせる理由。
覚悟を始め四人と零にはその理由がわかっていた。
何故なら、村雨の瞳に微かに光るものを見つける事が出来たから。
疑う道理もない。
間違っている筈もない。

「俺を闘わせてくれ……! 俺をお前達の……一人の仲間として……!」

村雨が覚悟の手を力強く握り返す事はわかっていた。
喜びの笑顔を見せた覚悟、ヒナギク、独歩、かがみの四人には。
ほんの少しの涙を流しながら、村雨が覚悟の手を受け入れる事を。
わかっていない者は居なかった。

◇  ◆  ◇
223Classical名無しさん:08/04/18 21:40 ID:DvZlgm9U
 
「では、私とヒナギクさんで先にS-3駅に先行しよう」
「村雨さん、かがみ、独歩さん、絶対に……絶対に会いましょうね!」
「おうよ!」
「わかった」
「ええ、ヒナギク達も気を付けてね」

S-7駅のホームで覚悟、ヒナギク、独歩、村雨、かがみが会話を交わす。
村雨の話が終わった後、彼ら五人は互いに情報交換を行った。
その情報交換の中でBADAN、BADAN側の強化外骨格、首輪、禁止エリアの先の暗雲、徳川光成について筆談を行った五人。
村雨の話からBADANには常識を逸脱した技術力は充分あり、異なる世界に住む自分達を集めたとしても可笑しくない事を全員は知った。
また、始まりの地で徳川光成が言っていた言葉、覚悟やヒナギクが以前から立てていた推測。
即ちBADAN側にも強化外骨格があるという事もどうやら間違っていないと五人は考えた。
現に以前、JUDOはどこか零の事を特に気にかけている様子も見られたからだ。
そして、以前かがみが水を使う事で偶然行えた首輪のステルス機能の解除。
ホームに備え付けられた水飲み場を使う事で、実際にその方法で一時的にもステルス機能を解除する事にも成功した。
また、独歩が知る光成とはとても似つかない言動からして彼は恐らくBADANに脅されている事。
零が暗雲の事について推測している事、即ち暗雲の先にはEADANの本拠地があり、あれを突破するにはかなりの速度が必要そうな事。
これらの事を五人はしっかりと頭に留めた。

「かがみ、本当に大丈夫? あまり無理はしない方がいいと思うけど……」
「大丈夫よ、ヒナギク! このくらいで立ち止まっていられないわ」
「じゃあ……お互いに頑張りましょう!」
「ええ! 負けないわ!」
225Classical名無しさん:08/04/18 21:40 ID:nwUjBe02
正 義 復 活 !!
結果は上々。
よって五人はひとまず分散する事を決めた。
今自分達がすべき事。
一つ目は友好関係に当たると思われる人物との合流し、来るべきBADANとの闘いにおける戦力を向上させる事。
情報交換でわかったのは津村斗貴子、パピヨン、アカギ、ケンシロウ、江戸川コナン、服部平次、神楽、劉鳳、ジョセフ・ジョースターの十人。
服部と神楽と面識がある者は居なかったがそれぞれコナンと志村新八の知り合いであると覚悟が知っていた。
そして独歩とかがみが首輪のステルス機能の事を斗貴子とパピヨンとアカギにも知らせるために、学校へ向かう事に決めた。

「村雨殿、いつか兄上の話でもいたそう」
「それは是非聞いておきたい。ところで葉隠、約束は覚えているな?」
「無論、その時が来れば私が貴殿を討とう。出来ればその時など来ぬコトを祈るが」
「ああ……」
二つ目は危険人物と思われる参加者を無力化する事であり、やむを得ない場合は殺す事。
同じように情報交換でわかった危険人物は範馬勇次郎、ラオウ、才賀エレオノール、川田章吾、マーティン・ジグマールの五人。
その内の一人、ラオウは現在神社で村雨を、強敵を待ち構えていると思われ、このまま放っておくわけにもいかない。
そのため、覚悟とヒナギクが地下鉄を使い、神社に最寄の駅。
S-3駅へ向かう事にしていた。
ならば、村雨と零はどうするのか?

「覚悟よ! 暫しの別れだが、また会おう! ここで死ぬなどあるまじき行為! しかと心に留めておけ!」
「もちろんだとも、零」
「へっ! 葉隠のコトが心配なら素直に言えってんだ」
「なに! 愚地独歩! お前は年長者でありながら、どこかふざけたような気を感じるぞ!」
「へいへい、そりゃあうれしいお言葉でェ」
村雨と零は村雨の強い希望で単独行動を取る事を決めていた。
その目的は劉鳳とジョセフに対し、接触を行う事。
村雨には彼ら二人には浅くは無い因縁がある。
恐らく村雨が接触を行えば、不要な争いも起きるだろう。
だが、村雨は四人に懇願し、彼らはそれを了承した。
また、単独行動とはいえども零が村雨に同行する事になっている
クルーザーの速度は速く、小回りも利き人の捜索にはもってこいだ。
227Classical名無しさん:08/04/18 21:42 ID:Vwwk51j2
 
228Classical名無しさん:08/04/18 21:43 ID:1M.zSmgs
 
しかし、更に効率よく彼らを探すために零の探知能力が必要だと考え、覚悟が村雨に託していた。
村雨は悪鬼ではない事は当然覚悟もわかっていて、彼に再び零を渡すのは何も問題はないと考えたからだ。
勿論、零の了承もとってある。
そして劉鳳とジョセフと協力を取り付けた後、覚悟とヒナギクと合流し、ラオウを倒す。
それが、彼らが取った作戦。

「では、全てが終わりし時、学校で再び落ち合う。異論はないだろうか?
……ならば――」

覚悟の言葉に四人が頷き、零も肯定の意志を示す。
周囲を見回し、異論がない事をしっかりと確認する覚悟。
少し、息を吸い込み、覚悟は再び口を開く。

「覚悟完了! 貴様達に対し、我らに沈黙を突き通す用意なし!」

ハリセンを宙に掲げ、覚悟は宣戦布告をする。
どこかで自分達の会話を盗聴しているであろうBADANに対し。
戦友、新八のハリセンに自分達のBADANに対する反逆を誓いながら。

◇  ◆  ◇
「ヒナギクさん、君にこれを預かってほしい」
「え? これって……」

S-7駅に停車した地下鉄の車内。
覚悟とヒナギクが肩を並べ、座席に座っている。
そんな時、覚悟がふとあるものを取り出し、ヒナギクに渡す。
言われるがままに受け取り、覚悟に渡されたものを見て、ヒナギクは驚く。

「これ、核鉄じゃない。どうしたの、こんなもの?」
「ああ、これは――」

ヒナギクの手に握られしもの。
それはシルバースキンの核鉄。
この殺し合いで鷲巣厳、アミバ、キャプテンブラボー、アーカード、アカギと多種多様な人間に渡った代物。
だが、ヒナギクには覚悟がどうして核鉄を持っているのかわからないため、不思議そうな表情を浮かべる。
そんなヒナギクの表情を確認しながら、覚悟はシルバースキンを手に入れた経歴をヒナギクに話し始める。
合流したアカギから、力が足りない者に与えるようにと託されたシルバースキン。
自分が無力な者と思われているのかと少しヒナギクは不満げに思いながらも、彼女は受け取った。
残念ながら、この殺し合いでは自分が弱者の部類に入る事はしかたのない事だからだ。

「覚悟くん、絶対に勝ちましょう! ラオウを倒した後は……川田くんも絶対に止めなきゃね」
「無論、そのつもりだ」

ヒナギクの言葉に短く返す覚悟。
やがて、地下鉄の発車の合図が響き、ドアが除々に閉まっていき、完全に閉まりきる。
発車の時は近い。
目的地、S-3駅へ向けて。
231Classical名無しさん:08/04/18 21:44 ID:DvZlgm9U
  
232Classical名無しさん:08/04/18 21:45 ID:1M.zSmgs
 
【S-7駅 地下鉄内 二日目 黎明】
【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に火傷(治療済み) 胸に火傷、腹部に軽い裂傷。頭部他数箇所に砲弾による衝撃のダメージあり
    胴体部分に銃撃によるダメージ(治療済み) 頭部にダメージ、
    両腕の骨にひびあり、
[装備]:滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)
[道具]:大阪名物ハリセンちょっぷ
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者BADANを必ず倒し、彼らの持つ強化外骨格を破壊する。
1:川田を説得する。
2:ヒナギクと共にS-3駅 へ向かい、村雨と合流。その後神社に居ると思われるラオウを倒す。
3:劉鳳、ジョセフ、ケンシロウ、コナン、服部、神楽の捜索。勇次郎、エレオノール、ジグマールには警戒。
4:斗貴子を牙無き人々の一人と見なし、守る。
5:2が終わった後、学校へ戻る。
6:村雨が再び記憶を失い、殺し合いに乗るようならば倒す
【備考】
※パピヨンの詳細名簿からケンシロウ、独歩の情報を得ました。
※こなたの死を知りました。それが川田のせいである事も知っています。
※パピヨンとアカギを全面的に信用しています。
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※かがみから首輪のステルス機能の事、解除方を知りました。また零の暗雲についての推測も知りました。
※主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※2人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首2には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている
234Classical名無しさん:08/04/18 21:45 ID:1M.zSmgs
 
※2人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論
※三村とかがみについて
三村の吹き込んだ留守禄の内容を共有しています。
かがみと三村に対してはニュートラルなら姿勢です。
とにかくトラブルがあって、三村がかがみを恨んでいると事実がある、
とだけ認識しています。
※BADANに関する情報を得ました。
【BADANに関する考察及び知識】
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって”都合がイイ”状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては”どーでもイイ”状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。

【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 顔と手に軽い火傷と軽い裂傷。右頬に赤みあり。
[装備] バルキリースカート(核鉄状態)@武装錬金 シルバースキン(核鉄状態)@武装錬金
[道具]支給品一式、ボウガン@北斗の拳、ボウガンの矢17@北斗の拳
[思考・状況]
基本:BADANを倒す。
1:ラオウに復讐する。(但し、仲間との連携を重視) 、斗貴子については戸惑い
2:覚悟と共にS-3駅 へ向かい、村雨と合流。その後神社に居ると思われるラオウを倒す。
3:劉鳳、ジョセフ、ケンシロウ、コナン、服部、神楽の捜索。勇次郎、エレオノール、ジグマールには警戒。
4:3が終わった後、学校へ行く。
5:川田を説得する。
[備考]
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです
※桂ヒナギクのデイパック(不明支給品1〜3品)は【H-4 林】のどこかに落ちています
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました
※バルキリースカートが扱えるようになりました。しかし精密かつ高速な動きは出来ません。
 空中から地上に叩きつける戦い方をするつもりですが、足にかなりの負担がかかります。
※かがみから首輪のステルス機能の事、解除方を知りました。また零の暗雲についての推測も知りました。

【零の考察】
•ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外に発見。放電しているのを目撃。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
「では、俺は行って来る」

S-7駅を出て、地上に出た村雨が口を開く。
村雨の傍らには、零が括り付けられたクルーザーが停車している。
そして村雨の視線の先にはかがみと独歩の二人の姿。

「村雨さん、ジョジョのコトはよろしく頼んだわ。あと、これありがとう。
有難く使わせてもらうわね。」
「勿論だ。あと核鉄の事は気にするな、かがみ。彼女を頼むぞ、独歩」
「わかってらァ、だから安心して行って来い! ちゃんとこの銃もパピヨン達に渡してやるからよ」

村雨にはZXへの、仮面ライダーへの変身能力がある武器は必要ではない。
そのため、村雨が所持していたモーターギアの核鉄を始めとする武器はかがみと独歩に譲っていた。
独歩が使用しない分はパピヨンとアカギに渡すように頼むのも忘れずに。
また、試したみたところモーターギアは両脚に使えば、機動力が増す事を知った村雨。
かがみがもし危険な目に遭ってしまった時、これがあれば逃走に用いる事は出来るだろう。
そう考え、村雨はかがみにモーターギアを渡し、かがみもある程度使い方は覚えている。

独歩に景気付けに両肩を叩かれ、村雨は怪訝そうな顔を浮かべる。
だが、それも一瞬の事。
ぎこちない微笑を浮かべながら、村雨は二人に背中を向ける。
直ぐにクルーザーに飛び乗り、アクセルを踏み、エンジンを吹かせ始めた。
その瞬間、三人の眼に、両耳に飛び込んでくるものがあった。
それは一発の花火が天に向けて昇った事。
そして――

『この戦いに参加する、全ての者に伝える事が有る!!』

一人の男、範馬勇次郎が咆哮を上げた事だった。

◇  ◆  ◇
独歩が無我夢中に走る。
村雨に譲ってもらった装備はニードルナイフ、454カスール カスタムオート、ベレッタM92の三種の武器。
それに加えてイングラムM10もあり、弾丸も武器も充分。
加えて何よりも独歩には生身の武器、そう鍛え抜かれた空手がある。
並大抵の相手には遅れを取る筈はない。
だが、独歩が今、向かっている人物はとても常識の範疇に収まろうとはしない人物であった。
その人物は恐らく、江戸川コナンを拘束していると思われる人物。

「勇次郎……ようやく、ようやく会えるぜェ……」
そう。今、独歩はかがみを村雨に預け、勇次郎の声がした方向へ走り出していた。
当然、勇次郎の咆哮は村雨とかがみも聞き、彼らは独歩に同行を願い出た。
だが、独歩の答えは断固としてNO。
さっさと劉鳳とジョセフとやらを探しだし、仲間にしてやれと独歩は一喝を行った。
しかし、それでも村雨とかがみは完全には引き下がろうとはしない。
二人の反応に独歩は業を燃やし、更なる言葉で二人をようやく引き下がらせる事に成功した。

『俺にはヤツを、勇次郎を必ず倒す手段がある! だから心配すんじゃねェ!
この愚地独歩が負けるハズはねぇからなァ!!』
独歩と勇次郎は同じ世界の住人である。
そのため、村雨とかがみはあまりにも自信満々な独歩の言葉に負け、遂に引き下がった。
だが、独歩には勇次郎に必ず勝つ手段など持っていない。
そんな手段があったら苦労はしない。
なにより相手は地上最強の生物、オーガの異名を持つ勇次郎なのだから。
しかし、独歩は二人に嘘を付いてまでも勇次郎と決着を着ける事を望んだ。

「勝つ見込みはねぇかもしれねぇ……だが、あいつらも未だケツが青いガキのくせに命をかけてやがる……。
けどよぉ、俺はどうだ? 空手家のくせにガキの一人も守れなかった俺は……
だからよォ――」
独歩が思い浮かべるのはこの殺し合いで痛い失態。
勝を勇次郎にみすみすと殺され、エレオノールにもナギを殺された独歩。
かがみの治療を手伝ったとはいえ、二人の子供の命を見殺しにした失敗は大きすぎた。
だから、独歩は決めた。
239Classical名無しさん:08/04/18 21:49 ID:1M.zSmgs
 
「てめェは俺が倒すぜ、勇次郎ッ!
これだけは譲れねぇ……俺自身のケジメをッ! キッチリとカタつけさしてもらうからなァッ!!」
勇次郎を倒し、コナンを保護する。
たとえ、この身が地に沈む結果となったとしても。
必ず勇次郎を倒す事を。
独歩は決意を固めていた。

【F-4 北部 2日目 黎明】
【愚地独歩@グラップラー刃牙】
[状態]:体にいくつかの銃創、頭部に小程度のダメージ、左肩に大きな裂傷
[装備]:キツめのスーツ、イングラムM10(9ミリパラベラム弾32/32)ニードルナイフ(15本)@北斗の拳454カスール カスタムオート(0/7)@HELLSING
13mm爆裂鉄鋼弾(35発)ベレッタM92(弾丸数8/15)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:闘うことより他の参加者 (女、子供、弱者) を守ることを優先する
1:勇次郎の声が響いた方向へ行き、 彼をなんとしても倒し、コナンを保護する。
2:ジグマールを見付け出し倒す。
3:学校へ行き、アカギと合流。鳴海の事を伝える。
4:ゲームに乗っていない参加者に、勇次郎の事を知らせる。
5:劉鳳、ジョセフ、ケンシロウ、コナン、服部、神楽の捜索。勇次郎、エレオノール、川田、ジグマールには警戒。
6:可能なら、光成と会って話をしたい。
7:可能ならばエレオノールを説得する。
[備考]
※パピヨン・勝・こなた・鳴海・覚悟・村雨・ヒナギク・かがみと情報交換をしました。
※刃牙、光成の変貌に疑問を感じています。
※こなたとおおまかな情報交換をしました。
※独歩の支給品にあった携帯電話からアミバの方に着信履歴が残りました。
※BADANの存在を知り、かがみから首輪のステルス機能の事、解除方を知りました。また零の暗雲についての推測も知りました。

【零の考察】
•ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外に発見。放電しているのを目撃。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
「独歩さん、本当に大丈夫かしら?」
「独歩は強い、それに策もあると言っていた。今は信じるしかない……」

前方を真っ直ぐ見つめ、クルーザーを操縦する村雨。
村雨は劉鳳の居場所は見当が付かないが、ジョセフの居場所は見当が付いている。
その位置は神社周辺。
以前、村雨がかがみを拉致した時、神社に来いと言ったからだ。
ジョセフのような男がかがみを見捨てるはずもない。
そう考え、村雨は神社方面へクルーザーを走らせていた。
そして、村雨の後でクルーザーの速さに振り落とされないようにかがみは村雨にしがみついている。
かがみは片腕しかないため、しっかりと力をこめられないので村雨はクルーザーの速度を落としていた。
これでは覚悟達との合流はかなり遅れる事になるだろう。
だが、今のかがみを思えばそんな事はいっておれず、また言うつもりもない。
何故なら、村雨は純粋にかがみを心配しているからだ。
そして、村雨にはかがみに言いたい事があった。

「かがみ、劉鳳とジョセフに会う事が出来たら……お前は隠れ、決して何も言わないでくれ。
俺が一人であいつらと話しをつける」
「えっ!?」
「むっ!? 何故だ、良よ! 何故、敢えて困難な道を選ぶ!?」

かがみと零が驚くのは無理もない。
劉鳳とジョセフにとって村雨に対する印象は最悪。
特に劉鳳に関しては、彼の性格も相まって有無を言わさず戦闘を行う羽目になるかもしれない。
だが、どうみても弱者であるかがみを村雨が保護しているとすれば、劉鳳もジョセフも少しは村雨の話を聞いてくれるだろう。
しかし、村雨はその手段を否定する。
「わかっている。だが、俺はけじめをつけたいと思う……。勿論、俺はお前達と共にBADANと闘い続ける。
しかし、あいつらだけはどんなコトになろうとも……俺がこの身体を持ってしても償いたい。
それだけだ……!」

背中越しに語りかけてくる村雨の強大な意志。
その意志の強さにかがみは唖然とする。
だが、その表情もやがておだやかな微笑へ変わりゆく。
まるで、聞き分けの悪い弟の我侭を寛大に受け止める姉のように。

「わかったわ、私は何も言わない。
それでね、私のほうにもお願いがあるんだけど……」
「どうした?」

村雨の頼みを聞き入れ、逆にかがみが村雨にある頼みを話し始める。
かがみは何を頼むつもりなのか?
生憎、村雨には到底予想が付かない。
だが、自分が行えるのであれば出来る限り協力しよう。
そう、考えかがみがこれから言わんとしている言葉に集中する村雨。
そんな時だ


――ふいに村雨の背中の辺りからなにか水分が付着した。
244Classical名無しさん:08/04/18 21:53 ID:1M.zSmgs
 
245Classical名無しさん:08/04/18 21:53 ID:DvZlgm9U
 
「ごめんね、ごめんね村雨さん……」
「ッ! かがみ?」

――その水分の量は止まる気配はない。

「ほんの少しだけ……少しだけでいいから……泣かせて。
情けないけ……ど……、もう私……限界だから……………」

――肩を震わせながら、かがみが嗚咽を漏らす。

「こなた……なんで、なんで死んじゃったのよ……それに殺したのはつかさが好きになった川田君…………。
こんな、こんなコト……残酷すぎるわよ…………ひっ…………」

――やがて、かがみは大声をあげて泣き出し始める。
――村雨の大きな背中をしっかり抱きしめながら。


「かがみ……」

かがみの悲痛な様子を見て、零は何も言葉を掛ける事は出来ない。
きっとかがみはあの時、先程村雨を励ました時からずっとこなたの死、そして川田の凶行に立ち直る事は出来ていなかったのだろう。
だが、かがみは健気にも必死に耐え、遂に限界が来てしまった。
その事実に零は只、かがみを心配し、彼女をこんな目に合わせたBADANに対し、怒りを募らせる事しか出来ない。
247Classical名無しさん:08/04/18 21:55 ID:1M.zSmgs
 
「良よッ! 一刻も速く――」
「わかっているッ!!」

感情のあまり怒声を飛ばす零に村雨が更に大きい怒声で返す。
そう。村雨には零の言いたい事が、そしてかがみの苦しみを痛いほど感じていた。
人目を気にせず、大声を上げ、拳を何かに揮いたい程に。


(姉さん、すまない……俺はもう、姉さんのためだけには闘えない……)

――無意識的に更にアクセルを強める村雨。

(俺は……俺は……かがみを、全ての人々を守るためにあいつらと闘う!
俺を受け入れてくれたあいつらと一緒に……それが俺の償いだ……)

――歯が砕けんばかりの歯軋りを村雨は行い、腰に奇妙な十字が施されたベルトが出現。

(だから見ていてくれ。もう、姉さんを泣かせたりはしなせはしない……
誰も失わせたくはないから……)

――赤い閃光に包まれ、無音無動作によるZXへの変身を村雨は完了し――

(俺の償いを、闘いを……!)

――透き通るような涙を零しながら、ZXは一陣の風となる。

自分のやるべき事を成し遂げる為に。
【D-4とE-4の境界 2日目 黎明】

【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]全身に無数の打撲、頬に軽い腫れ 核鉄の治癒力により回復中
[装備]十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (0/2) 、マイクロチェーン(2/2) 核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金
[道具]地図、時計、コンパス、 女装服
    音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾、強化外骨格『零』@覚悟のススメ
[思考]
基本:BADANを潰す!
1:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る
2:ジョセフ、劉鳳に謝罪し、協力を要請する。そのため、神社方面へ行き、二人を探す(場合によっては断罪されても文句はないが死ぬつもりはない)
3:2が終わり次第、S-3駅で覚悟、ヒナギクと合流し、神社に居ると思われるラオウを倒す
4:ケンシロウ、コナン、服部、神楽の捜索。勇次郎、エレオノール、川田、ジグマールには警戒。
5:頃合を見て、独歩の元へ駆けつける(時期は未定)
6:3が終わり次第学校へ向かい、パピヨン、アカギ、覚悟、ヒナギク、独歩との合流。
7:かがみを守る
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です
※参戦時期は原作4巻からです。
※村雨静(幽体)はいません。
※連続でシンクロができない状態です。
※再生時間はいつも(原作4巻)の倍程度時間がかかります。
※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。
※また、零の探知範囲は制限により数百メートルです。
※零はパピヨンを危険人物と認識しました。
※零は解体のため、首輪を解析したいと考えています。
※記憶を取り戻しました
※独歩、覚悟と情報交換をしました。
※光成がBADANに脅されていると考えています。また、BADAN側にも強化外骨があると推測しています。
※勇次郎の放送を聴きました。
【零の考察】
•ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外に発見。放電しているのを目撃。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。

【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:全身に強度の打撲、左腕欠損(止血済み)、休息により(?)それなりに回復 、核鉄の治癒力により回復中、深い悲しみ
[装備]:巫女服
[道具]:モーターギア(核鉄状態)@武装錬金
[思考・状況]
基本:BADANを倒す
1:みんな元気になれっ……もちろん自分も
2:村雨と行動を共にする
3:ジョセフと合流。
4:神社の中にある、もう一つの社殿が気になる。
5:川田を止める
6:劉鳳、ジョセフ、ケンシロウ、コナン、服部、神楽の捜索。勇次郎、エレオノール、川田、ジグマールには警戒

[備考]
※光成がBADANに脅されていると考えています。また、BADAN側にも強化外骨があると推測しています。
※勇次郎の放送を聴きました。
※零の暗雲についての推測を知りました。
※かがみの主催者に対する見解。
@主催者は腕を完璧に再生する程度の医療技術を持っている
A主催者は時を越える"何か"を持っている
B主催者は@・Aの技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
Cだが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
※首輪の「ステルス機能」および「制限機能」の麻痺について
かがみがやった手順でやれば、誰でも同じことができます。
ただし、かがみよりも「自己を清める」ことに時間を費やす必要があります。
清め方の程度で、機能の麻痺する時間は増減します。
神社の手水ではなく、他の手段や道具でも同じことが、それ以上のことも可能かもしれません。
※ステルス機能について
漫画版BRで川田が外したような首輪の表面を、承太郎のスタープラチナですら、
解除へのとっかかりが見つからないような表面に 偽装してしまう機能のことです。
ステルス機能によって、首輪の凹凸、ゲームの最中にできた傷などが隠蔽されています。
※S1駅にハヤテのジョセフに対する書置きが残っています

【五人の共通備考】
※一通りの情報交換は終えています
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※五人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首輪には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている 。
首輪にはステルス機能があり、身を清め水を掛ける事で解除可能
※五人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論
※BADANに関する情報を得ました。
【BADANに関する考察及び知識】
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
光成は司会役として脅されている。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって”都合がイイ”状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては”どーでもイイ”状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
253Classical名無しさん:08/04/18 21:59 ID:1M.zSmgs
 
254 ◆14m5Do64HQ :08/04/18 22:00 ID:lXiPRkMw
投下終了しました。
長い間、支援どうもありがとうございます。
それではご指摘や感想などをお待ちしています。
255Classical名無しさん:08/04/18 22:06 ID:aNVuUZtg
投下乙
ここは対主催唯一の希望だなあ
学校の騒動で消された燃料が再び燃え上がった感じだ
良はあえて苦難の道を選ぶか、ジョセフとの一戦があるのかなあ
かがみんはつよいなぁ

そして独歩は勇次郎のもとへ
う〜ん、どうやったら勝てるのか想像つかんw
256Classical名無しさん:08/04/18 22:40 ID:frxSUJ7o
良の葛藤、かがみの悲しみ、ヒナギクの再会、覚悟の漢気、独歩の禿頭……どれも素晴らしい出来です。
キャラも無理なくバラけましたし、GJです!


ところで誤字の指摘を2つ

>村雨が平賀才人を殺したというルイズを知ったらどうするか?
これだとルイズが才人を殺したみたいですぜwww

もう一つは
>零が暗雲の事について推測している事、即ち暗雲の先にはEADANの
はBADANのことですよね
257Classical名無しさん:08/04/18 22:48 ID:Vwwk51j2
おお………説得劇……なんと心地よいものか…
覚悟がルイズに会っていなければ、ヒナギクが本郷とともに行動していなければ、かがみが多くの人に救われていなかったら実現しなかった熱い言葉の数々
まさに熱血! まさに漫画ロワ!
別れた3組が見るは地獄か熱き漢達の姿か…! 目が離せないぞヒート!
気持ちのよいSSをありがとう!
258Classical名無しさん:08/04/18 22:50 ID:WiSocPeY
259Classical名無しさん:08/04/18 23:03 ID:3n/Fkmbc
投下乙!
すげぇ熱い展開に燃え尽きそうだぜ……。しかもタイトルが、俺の好きな歌の歌詞と来た!!
まさかかがみが、原作でのスカイライダーと同じように、良に発破をかけるとは!
良も敢えて茨の道を進むようだが、そこに痺れる! 憧れるぅ〜!!
覚悟がついに新八のハリセンを! 覚悟の友情に、視界がぼやけて来るぜ……
しかし、またも覚悟と零は合流せずか。何時になったら覚悟の「瞬着!!」が見れるのだろうか……
独歩さん、勇次郎との再戦に臨むか……コナンが何を言おうとも
「この男の事は、俺が良く知っている。そう……喰うかいのある餌だとなッ!!」
とか咆哮してノンストップだろうし。それでも……頑張ってくれ、独歩さん!!
260Classical名無しさん:08/04/18 23:19 ID:ErVMqV1c
とりあえず、コナンの説得が効いてれば独歩は死なないだろうけど
独歩がそれを許さずに立ち向かうなら話は別・・・だな。
というか、一度同じ形で殺されてるからデジャヴになりそう。
てか劉鳳やジョセフも勇次郎のとこに行きそうな距離じゃね?
261Classical名無しさん:08/04/18 23:29 ID:12UhPx4k
こういう新八のハリセンだとか、ヒナギクの仮面ライダー対する思いいれとか
色んなフラグが出てきたり首輪や主催に対する重要情報が、共有されたりするのを見ると
もう終盤なんだという実感が沸いてきます。

かがみんお前は今泣いていいんだ
村雨さん茨の道だが頑張ってくれ
覚悟とヒナギクお前らいちゃつくの自重しろw
そして独歩さんその「ここは俺に任せて先に行け」的なのは
典型的な死亡フラグだからww

>>260
距離的にはそうだが
劉鳳達は前回終了時深夜で、真・絶影とバイク移動中
勇次郎の放送は黎明なんだから、聞き逃してもおかしくは無い
262Classical名無しさん:08/04/18 23:30 ID:E8MYGkeg
そう言えば首輪が解除されたらスタンドが使えなくなったりしてデメリットが多いけどさ、
露伴先生のヘブンズドアーを何らかの形で奪取して5の康一がイタリア語話したみたいに
スタンドの適正を持つようになる、とか文面に書いたら解決するかな?
263Classical名無しさん:08/04/18 23:32 ID:6mnoVxOM
投下乙

熱い、熱すぎるぜ・・・!
264Classical名無しさん:08/04/19 02:21 ID:X/WQXzhY
投下乙です!

熱血と葛藤と悔恨、どれも素晴らしい描写です!GJ!!
そして最後はうまくバラけましたが独歩ちゃんに死亡フラグw

ところで誤字というか誤解を一箇所指摘

>独歩の両眼が確かに戦士のそれに
独歩は勇次郎に右目潰されてるので隻眼ですよ
265Classical名無しさん:08/04/19 03:11 ID:rSo0MGA6
覚悟は学校にもどらなくていいのか? 戻らないで神社へいく理由は書いてはあるが。
情報交換により別行動が決まるのはあることだが
当初、覚悟の行動方針は学校への再合流なので気になった。
266 ◆14m5Do64HQ :08/04/19 13:58 ID:IlmOM4eU
感想どうもありがとうございます。

>>256>>264
あ、うっかりしてました。どうもご指摘ありがとうございます。
wikiに収録され次第修正します。

>>265
神社へ行く理由+>>226の七行目、『そして独歩とかがみが首輪のステルス機能の事を斗貴子とパピヨンとアカギにも知らせるために、学校へ向かう事に決めた。』
これらによって学校へ行くのは二人で充分だと考え、覚悟は方針を変えたというのが自分の考えです。
確かに少しわかりにくかったのかもしれませんのでwikiに収録され次第加筆したいと思います。
どうもありがとうございました。
267Classical名無しさん:08/04/19 14:36 ID:hnc1v2jM
前話で既に黎明を迎えていた村雨達が、地下鉄に乗って移動して
覚悟と合流して情報交換とステルス機能の解除を終え、覚悟達が出発してから
勇次郎の放送を聞くのは、時間的に無理がないか?
村雨達は雑談して神社に行き、更に南下して独歩とジグマールに接触
かがみの腕が切り落とされその治療で、深夜の時間を使っていて
そこから雑談を重ねて上述の行動を、黎明に行われた勇次郎の放送までに取るのは無理が有ると思う。
268Classical名無しさん:08/04/19 14:45 ID:x7i3v.6U
>>267
これ以上本スレの指摘はテンプレにあるように、控えてください。
問題だと思うなら、議論スレへ
269Classical名無しさん:08/04/19 14:45 ID:o4REsgIQ
そこまで突き詰めると非常に行動を取らせにくいわけだが
270 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 19:47 ID:Fhczq3gI
ジョセフ、劉鳳、服部、ラオウ、プッチ神父SSですが申し訳ないですが
もう少し時間をください。
九時半ごろには投下しますのでそのときは支援お願いします。
271Classical名無しさん:08/04/19 19:50 ID:x7i3v.6U
>>270
了解! 頑張ってください
272Classical名無しさん:08/04/19 19:53 ID:x7i3v.6U
漫画ロワ 作品トーナメント編!!
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9318/1208602309/

作品投票スレです。
4/20 00:00開始です。
漫画ロワが盛り上がることを祈って!
273Classical名無しさん:08/04/19 20:49 ID:TQL394xg
【宣伝】
現在したらばにて作品と死者への人気投票を行っています。
是非ご参加ください。

漫画ロワ 作品トーナメント編!!
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9318/1208602309/l100

1 :強化外骨格「名無し」 :2008/04/19(土) 19:51:49 6yZ09GhI0
漫画ロワも盛り上がり、もう終盤。
ここは過去を振り返り、書き手のモチベーションを上げたいとおもいます。
それでは、第一回放送までで、投票を行いたいと思います。

予定スケジュール
投票期限:4/20(日)ー4/23(水)まで
第一回放送(73話 帝王と死神 )までの作品への投票
(第二回放送以降の投票スケジュールは、追ってお知らせします)

投票形式
上位5作まで選出可能(必ず5作選出しないと駄目、という訳では無い。一位のみへの投票なども可)
1位を5P、2位を4P、3位を3P、4位を2P、5位を1pとして計算する

・総合部門(作品名で投票)
・死者部門(キャラ名で投票)

必ず、すべての部門に投票する必要はありません。
部門の追加、日程など、提案があるのならお願いします。
274Classical名無しさん:08/04/19 20:49 ID:TQL394xg
リロードしてなかった……
275 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:04 ID:Fhczq3gI
お待たせしました。
それではジョセフ、劉鳳、服部、ラオウ、プッチ神父 投下します。
276 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:06 ID:Fhczq3gI
「なぁ〜服部、そろそろ行こうゼェ〜。僕ちゃん疲れちゃった。」
「ジョセフはん、あんた自分からこの駅のまわりを探す言うたやないかい。」
「だってよぉー、めんどくさいんだもん」

S3駅周辺で三人の男たちが疲れた様子で周囲の捜索を行っていた。わずか数時間前に誤解と偶然によって危うく互いに殺し会うところだったとは到底思えない三人組み。
色黒の西の名探偵、服部平治。
リサリサを師とする波紋の戦士、ジョセフ・ジョースター。
アルター能力「絶影」を操るHOLYの誇り高き隊員、劉鳳。
彼らは当初神社に向かおうとしていたが、綾先ハヤテの死から自分たちには情報が必要だと思いとりあえず主にE−2の北の繁華街を捜索していた。が結局何も見つけられず今現在S3駅の周りにいるということだ。

277 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:06 ID:Fhczq3gI
しかしながら三人はとても仲が良い仲間とは言い難く劉鳳はジョセフの怠慢な態度に怒り心頭になっているようだ。もっともとうのジョセフはまったく涼しい顔なのだが。
服部はかつてアミバと劉鳳の間で起きた喧嘩を思いだし、そしていまのこの険悪なムードから前のようにこの二人の仲を取り持つかと思うと頭痛がしてきた。

「ジョセフ、真面目にやれ!服部、E−3の近くまで見に行ったが猫一匹いなかった。」
地面にダルそうに横たわるジョセフに迫りながら劉鳳はその不機嫌さを隠さずに言い放つ。
「劉鳳よ、俺はいつだってマジだぜ。たがらこれ以上の探索は無駄だって言ってんだぜ。無駄なことは嫌いなんだよぉー、無駄無駄ァ。ところで無駄無駄って繰り返してるとダムって聞こえない?」
「そうゆう態度が真面目じゃないと言っているのだ、ジョセフ!」
「そんな怒んなってぇ〜。ほら、スマイルスマイル。せっかくの美男子が台無しだゼェ〜。あ、小ジワみィーっけ!」
「――ッ!!絶影ッ!!」
「だぁぁぁーっ!二人とも落ち着いて、とりあえず……」
とその時二人を止める服部の言葉が止まる。
なぜならこの殺し合いの場では場違いなほど派手な花火が綺麗な夜空に咲いたからだ。



漫画キャラバトルロワイアル 第230話 Reckless fire



278 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:07 ID:Fhczq3gI
「もっとこのバイクとばせねーのかよ?未来の世界ってぇのも大したことないんだな」
「これで精一杯、文句言わんでしっかりつかまっときや!」
エリアE-2とF-2の境目を一台のバイクが夜道を疾走している。
本来一人用のバイクは大の男二人の重みを抱えうなり、なんとか速度をあげようとそのエンジンをフル回転させている。
あの花火の元にはなにがあるのだろう?
再開?
遭遇?
戦闘?
279Classical名無しさん:08/04/19 21:07 ID:w0drKwfA
280 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:08 ID:Fhczq3gI
なにがあるかわからない。さきほどから二人の脳裏にさまざまな想像が浮かんでは消える。
二人とも不安からであろう、走行中の風に負けないように互いに大声で話し合っている。
その表情はたった今バイクの速度について文句を言いあった男たちのものではなく真剣な表情そのものだった。

「劉鳳のやつ、大丈夫なんだろうな?」
「大丈夫や。あの人はわいがこのゲームで一番長く一緒にいて、一番信頼できる人や。強い人なんや。」
時は少し前にさかのぼる…。


 ◇  ◆  ◇


先ほどからこの調子のままだ。
ジョセフはあの花火の下には確かに誰かいるかもしれないがそれよりも今確実に神社いるであろう村雨の元からかがみを救うべきだと主張した。
一方劉鳳は村雨の性格とクルーザーという乗り物のふたつからジョセフとの闘いを待たずしてどこか獲物を探しまわっているかもしれない、その場合あの花火を見て動きだすだろう。
それにあの花火の元にいる悪を断罪しなければさらに危険が広がるとの言い分だ。

281 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:10 ID:Fhczq3gI
「じゃ、お前はかがみが心配じゃネェーってのかッ!?かがみはただの女の子なんだぞッ?あの赤虫野郎、なにするかわからんぜッ?!」
「だからこそあの花火の元へ向かうべきだと言ってるんだ!!」
「じゃあお前のその予想が当たってるって証拠はあんのかよッ?エエ?賢い劉鳳さんよォ」
「どっちみちお前が来なかったらあの戦闘狂はお前を探しにくるだろう。今は確実にいるであろうあの花火の下の悪を断罪しにいくのが優先だ」
「ほぅ、おめーの言う正義っての弱者を簡単に見切るものってのよ〜くわかった。大変ですな、立派な正義を掲げる頭でっかちさんは」
「なにッ!?貴様ッ……、この俺の正義を馬鹿にするのかッ?!」
「やるってなら相手してやるぜ、この正義馬鹿が!!」

282Classical名無しさん:08/04/19 21:10 ID:w0drKwfA
283Classical名無しさん:08/04/19 21:10 ID:Y/a.WEH2
284 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:11 ID:Fhczq3gI
お互いに人を救いたいという気持ちは一緒のはずがこんなにも対立するのはもう、二人の根本的なとこが合わないということだろう。
劉鳳とカズマ、ジョセフと会ったばかりのシーザーのように。
進展しない話し合いにしびれをきらした劉鳳が服部に矛先を向けた。
「お前はどう思う、服部?」
それまでおとなしく聞いていた服部は笑みを浮かべはっきりと言った。
「二人とも納得できるような方法があるんやけど聞くか?」
その言葉に二人の注目が服部へ向く。
「少し長くなるかもしれへんけど聞いてくれや」

服部が提案したのは劉鳳が神社へ向かい、自分とジョセフは一緒に花火の元へ向かうということだった。最初はこの話に猛反対だった二人も服部が話していくうちに説得力ある話にしぶしぶながらも納得せざるを得なかった。

285Classical名無しさん:08/04/19 21:11 ID:x7i3v.6U
      
286Classical名無しさん:08/04/19 21:12 ID:w0drKwfA
287Classical名無しさん:08/04/19 21:12 ID:x7i3v.6U
     
288Classical名無しさん:08/04/19 21:13 ID:IlmOM4eU
 
289 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:13 ID:Fhczq3gI
服部が劉鳳を神社に向かわせるには二つの大きな理由からだ。
まず一つに絶影の早さだ。
最大限にとばせばバイクとは比べものにはならないほどのスピードがでるはずだ。
また周囲の捜索、把握も宙に浮いているため簡単に行えるだろう。
なおかつバイクではでる走行音がないため、神社に何者かがいたとしても容易には接近を悟られないという利点もある。

次に戦闘を行う場合を考えてのことだ。
今現在ジョセフと劉鳳、両者とも体力の消耗と肉体へのダメージは相当大きい。だがマイクロチェーンや肘にセットされている手裏剣を使いこなし、圧倒的な再生力をもつ村雨に対して波紋の力を使った拳や蹴りを得意とするジョセフでは部が悪いのは明白だ。
それに比べ劉鳳は一度破れたとはいえ、闘い相手の出方がわかるという経験は大きいだろう。
以上の理由から現在劉鳳は神社へ、服部とジョセフは花火の元へ向かっている。

290Classical名無しさん:08/04/19 21:13 ID:x7i3v.6U
       
291Classical名無しさん:08/04/19 21:13 ID:w0drKwfA
292 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:14 ID:Fhczq3gI
別れ際に服部はスティッキィ・フィンガーズのDISCを託す。
「アミバはんが拾ったこのDISC、きっとあんたに力を貸してくれるで。お守りとして持ってきや」
「あぁ…」
そういって劉鳳はそれをデイバッグに滑り込ませる。
三人は最後に固い握手を交し合った。第五回放送時に市役所で集合という約束を交わして。


 ◇  ◆  ◇


「それにしてもジョセフはん、劉鳳はんにつっかかりすぎとちゃいますか?もう少し仲良うなってもらわなあかんで」
「そりゃあの鉄仮面野郎が悪いんだぜ、服部。あいつのあのなにかとキザな部分はこのジョセフさんは認めれねぇ〜な〜」
「そんなこと言うても…」
劉鳳の性格と今のジョセフの言葉で二人の仲は絶望的だと服部はがっかりしたが次のジョセフの小さな呟きは聞き逃さなかった。
「だからよ、劉鳳のやつにはまた会わねーとな…。このジョセフさんのことを馬鹿にした罪はカガミンを助けたらチャラにしてやらぁ。」
そしてそれが仲間のことを真剣に思う言葉であったことが嬉しかった。

293 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:15 ID:Fhczq3gI
バイクは走る。二人を乗せて。
彼らが向かう先に鬼がいるとも知らず。

喜びに満ちた梟の鳴き声が聞こえた気がした。




【E-2とF-2の境目(バイクで移動中)/二日目/黎明】
【服部平次@名探偵コナン】
[状態]:肉体疲労中、精神疲労大、全身コールタールまみれ、三村を殺したことから大分立ち直りました
[装備]:スーパー光線銃@スクライド、携帯電話、核鉄ニアデス・ハピネス@武装練金、クレイジー・ダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:支給品一式(食料一食消費)、首輪、「ざわ……ざわ……」とかかれた紙@アカギ(裏面をメモ代わりにしている)、
    色々と記入された名簿、ノート数冊、ノートパソコン@BATTLE ROYALE、バイクCB1000(現地調達品)
    ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)、綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく(未開封)、
    ギーシュの造花@ゼロの使い魔、
    キュルケの杖、拡声器、 核鉄ソードサムライX@武装錬金、包帯・消毒薬等の治療薬、点滴用セット(十パック)
    病院内ロッカーの鍵(中に千切れた吉良の左手首あり)、才人のデイパック(内容は支給品一式、バヨネット×2@HELLSING、
     紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)未確認)  
294Classical名無しさん:08/04/19 21:15 ID:x7i3v.6U
     
295Classical名無しさん:08/04/19 21:16 ID:IlmOM4eU
296 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:16 ID:Fhczq3gI
[思考・状況]
基本:江戸川コナンよりも早く首輪のトリック、事件の謎を解除する。三村や仲間達に恥じることの無い行動をする。
1:花火の元へ向かう。
2:ルイズの最後の願いについてはどうするか。
3:三村をちゃんと埋葬してやりたい
4:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
5:自分自身にバトルロワイアル脱出の能力があると偽り、仲間を集める(一時的に保留)
6:第5回放送時に市役所で劉鳳を待つ。
[備考]
※劉鳳と情報交換を行い、シェリスの名前を知りました。
※劉鳳、コナン、神楽、ジョセフの事は全面的に信用しています。
※自分自身にバトルロワイアル脱出の特殊能力があると偽る策を考えています。
※バトルロワイアル脱出の特殊能力は10人集まらないと発動しません。(現時点での服部設定)
※脱出作戦を行うかどうかは考え中。
※銀髪銀眼の人物が殺し合いに乗った事を知りました。
※コナンと二人で立てた仮説、「光成の他の主催者の可能性」「光成による反抗の呼びかけの可能性」「盗聴器を利用した光成への呼びかけの策」 等について
 は、まだ他の人間に話していません。又、話す機会を慎重にすべきとも考えています。
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。
※三村信史の死ぬ直前の記憶を見ました。
※第四回放送の内容は劉鳳からの又聞きでしか記憶にありません。
※ハヤテとナギは一緒に死んだと推理しています。

297Classical名無しさん:08/04/19 21:16 ID:x7i3v.6U
      
298Classical名無しさん:08/04/19 21:16 ID:TQL394xg
 
299Classical名無しさん:08/04/19 21:17 ID:Y/a.WEH2
300Classical名無しさん:08/04/19 21:17 ID:x7i3v.6U
        
301 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:18 ID:Fhczq3gI
[服部平次と劉鳳の共通備考]
※劉鳳、服部の持つ名簿には以下の内容が記載されています。
 名簿に青い丸印が付けられているのは、カズマ・劉鳳・シェリス・桐山・杉村・三村・川田・才人・
 ルイズ・防人・カズキ・斗貴子・タバサ・キュルケ・コナン・服部 ・灰原
 ハヤテ、かがみ、こなた、ナギ、鳴海、エレオノール、ヒナギク、覚悟
 赤い丸印が付けられているのは、ジグマール・DIO・アーカード・散・村雨
 緑色の丸印+青色の丸印が付けられているのは、蝶野
※劉鳳、服部、コナン、神楽は吉良がスタンド使いということを知りました。
※ルイズをF-3の川岸に埋葬しました。折れた軍刀は墓標として刺してあり、キュルケの杖、拡声器は服部が所持しています。
※ルイズの最後の願いについてはまだ話し合っていません。
※アミバの持っていた支給品一式×3 (食料一食消費) は、F−2民家の中にあります。
※アミバの持っていたノートパソコンには、大東亜共和国謹製のOSが組み込まれています。

302 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:19 ID:Fhczq3gI
【E-2とF-2の境目(バイクの後ろに乗っている)/二日目/黎明】
[状態]:左手骨折、全身打撲、精神疲労大、体力消費極大、深い悲しみ、脇腹にダメージ大、全身コールタールまみれ
[装備]:マジシャンズレッド(魔術師の赤)のDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:七原秋也のギター@BATTLE ROYALE(紙状態)、支給品一式×2、木刀正宗@ハヤテのごとく
[思考・状況]
基本:BADANとかいうボケ共を一発ぶん殴る。
1:花火の元へ向かう。
2:かがみを助け、村雨は殺す。
3: マップの端を見に行く。
4:一応赤石も探しとくか……無いと思うけど。
5:第5回放送時に市役所で劉鳳を待つ。
303Classical名無しさん:08/04/19 21:19 ID:x7i3v.6U
       
304 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:21 ID:Fhczq3gI
[備考]
※劉鳳と服部の名簿に、追加事項を書き込むときに、今まで丸を付けられた人物を覚えました。
 二人から得た情報は今のところそれくらいです。スーパーエイジャの存在などは聞いていません。
※ハヤテ+零が出合った人間のうち、生き残っている人物及び知り合いの情報を得ました。
 (こなた、パピヨン、ナギ、鳴海、エレオノール、ヒナギク、覚悟)
※二部終了から連れてこられていますが、義手ではありません。
※吉良の名前に何か引っかかっているようです。
※水を使うことで、波紋探知が可能です。
※三村の留守電を聞き逃しました。
※主催者の目的は強者を決めることであり、その中にはイレギュラーもいると考えています。
※少なくともかがみとは別の時代の人間であるということを認識しました。
※波紋の力を使うことで対象のディスクを頭部を傷つけることなく強制排出することができます。
 ただし、かなりの集中力を要求します。
※マジシャンズ・レッドの火力は使用者の集中力によって比例します。
 鉄を溶かすほどの高温の炎の使用は強い集中力を要します。
 火力センサーは使用可能ですが精神力を大きく消耗します
 また、ジョセフのマジシャンズ・レッドは通常の炎の威力の調節が極端に難しい状態です。
 ただし、対象に直接マジシャンズ・レッドの手を当てて炎を出した場合に限り調節が可能です。
 修練をすれば通常の炎の精度が上がる可能性があります。
305 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:21 ID:Fhczq3gI
※S7駅がかなり脆くなっていることを発見しました。
※ジョセフとハヤテの約束。
 ハヤテはナギと会った後、ジョセフは仲間を募った後、必ず11時30分にS1駅に集合。
 その後、かがみ救出のために神社へ攻め込む。
※絶影をスタンドだと思っています。
※第四回放送は劉鳳からの又聞きでしか記憶にありません。
※以下のBADANに対する考察を服部と劉鳳に伝えました。

【ジョジョとハヤテのBADANに関する考察及び知識】
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。



306Classical名無しさん:08/04/19 21:22 ID:x7i3v.6U
      
307 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:23 ID:Fhczq3gI


 ◇  ◆  ◇

やはりジョセフ・ジョースターは範馬勇次郎の引力にひかれたか……。
イヤホン越しに聴こえた三人の会話と範馬勇次郎の首輪の音声からジョースターが花火の元へ向かうのがわかった。

ジョースター家は代々短命の一族。その運命を唯一克服したのが「私がいた時代」のジョセフ・ジョースターか……。
そう、わたしは信じているのだ。人間の幸福において克服しなければならないのが「運命」だと…。
わたしとDIOにとっての「運命」とは「ジョースターの血統」なのだ。ジョースター家を克服する、すなわち私の目的のために利用する。
DIOとジョースター家にまつわる奇妙な「因縁」は天国という「運命の夜明け」には持ち込めないのだ。

そのためにも必ずジョセフ・ジョースターは私自身が始末したい。
そうだ、はい上ってこい。一族の中でも一際強い引力はわたしを押し上げてくれるだろう。その時こそ天国の完成の瞬間であろう。

308 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:24 ID:Fhczq3gI
そしてもうひとつ、わたしがジョースターを見張っていた理由、正確にはジョースター「たち」を見張っていた理由は……

「…よし」
耳に神経を集中させ暗黒大使の足音が聞こえないことを確認したあと、夕方綾先ハヤテの元へ向かうために使った魔方陣を同じように使う。ホワイトスネイクを発動させ、慎重に中心に動かす。眩い光とともに消えていくホワイトスネイク。
思えば自分はなんとも危ない綱渡りをしてきたものだ。この魔方陣の仕組みを理解するため何度か利用したが、仮にBADANに感づかれたとでもしたら今ごろわたしの命はないだろう。つくづくわたしは神々に愛されている。

……どうやらホワイトスネイクが目的地へ無事到着したようだ。E-2の繁華街に。
ジョセフ・ジョースターと劉鳳、そして服部平治。
愚治独歩、桂ヒナギク、村雨良と柊かがみ。
彼らの行動次第でうまくいかなくなりかねたが、やっと安心できる。三人がE-2を探し始めたときには冷や汗が出たが、何とかうまくここまできた。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
309Classical名無しさん:08/04/19 21:24 ID:w0drKwfA
310Classical名無しさん:08/04/19 21:24 ID:x7i3v.6U
         
311Classical名無しさん:08/04/19 21:25 ID:Y/a.WEH2
312 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:25 ID:Fhczq3gI

ホワイトスネイクがゆっくりとその目的の物へと近づく。
「久しぶりだね…DIO。再び会えてとても嬉しいよ」
がらにもなく興奮しているようだ。独り言がもれてしまうとはな。
目的の物を手に入れたホワイトスネイクが再び魔方陣の力でわたしの元へ戻ってきた。
その手にDIOの骨をもって。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…



必要なものは『私のスタンド』である。我がスタンドの先にあるものこそが人間がさらに先に進むべき道なのである。
必要なものは信頼できる友である。彼は人の法よりも神の法を尊ぶ人間でなくてはならない。
必要なものは14の言葉である。
必要なものは『勇気』である。スタンドを一度捨て去り新しいものとなる勇気が。


313Classical名無しさん:08/04/19 21:27 ID:eGy/UjPc
支援
314Classical名無しさん:08/04/19 21:27 ID:x7i3v.6U
       
315Classical名無しさん:08/04/19 21:27 ID:w0drKwfA
316 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:27 ID:Fhczq3gI
そして必要なものは36名以上の魂である。

つまりそれは強化外骨格に納められている魂!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

落ち着け…落ち着くんだ…
素数を数えろ、素数は誰にもわることはできない…

2…3…5…7…11…13…17…

これは試練だ…BADANを裏切ることを誰にも悟られてはならない。
運命の夜明けのため、我が大いなる目的を達成するまでわたしは死ぬわけにはいかいのだッ!
そうだ、これは試練だ。
リンプ・ビズキットのDISCを使いDIOの意思を蘇らせ、強化外骨格の魂を吸収。
その先にあるのは天国…そうだ、天国だ…。
あとは期を待つのだ…リンプ・ビズキットのDISC、首輪を外すタイミングと方法、ジョセフ・ジョースター。
「DIO、見ていてくれッ!!君が目指した夢、必ずわたしは叶えてみせるッ!!全人類のためにもッ!!」

317Classical名無しさん:08/04/19 21:28 ID:x7i3v.6U
      
318 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:29 ID:Fhczq3gI
【??/?? 二日目/黎明】

【エンリコ・プッチ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康 強い決意
[装備]
[道具]死神13のDISC@ジョジョの奇妙な冒険 リンプ・ビズキットのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:天国に行く。
1:19…23…骨は手に入れた…29…あとは天国の時を待つだけだ!!
2:暗闇大使に首輪を起爆されるのは、避けねばならない。なんとかして解除を。
3:ジョセフ・ジョースターよ、私を押し上げてくれ。
4:盗聴ッ!聴かずにはいられないッ!
[備考]
※首輪をつけています。





 ◇  ◆  ◇

319 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:30 ID:Fhczq3gI
「思ったよりも時間がかかってしまったな…。急がねばかがみという少女が危ない」
手がかりを探しさらに広範囲の捜索、繁華街の周りなど神社へと続く道を飛び回ったのでので時間をくってしまった劉鳳は闇夜を急いでいた。
劉鳳は道中、ホテルの近くでの村雨との戦闘を思い返していた。あの時は負けた。あの時自分は死んでいた。だが生き残ったのだ。平賀才人の命を代償に。
(今度は負けない、いや負けてはならない!彼らのためにも必ず柊かがみを救ってみせる!)
熱い気持ちを胸に、拳を握った劉鳳は急ぐ。

それから少ししてようやく劉鳳は目的の物を見つけた。
予想外なものを見つけると同時に。
遠目から見ても目立つ立派な鳥居。そしてその下筋骨隆々たる巨漢が座禅を組み、瞑想を行っている。
そのただならぬ雰囲気、一目でわかるほどの圧迫感と数多の戦場を切り抜けたものが漂わせる人殺しの匂い。
そしてこのプログラムの始めに確かな存在感を示した男。

320Classical名無しさん:08/04/19 21:30 ID:x7i3v.6U
     
321Classical名無しさん:08/04/19 21:31 ID:w0drKwfA
322 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:32 ID:Fhczq3gI
劉鳳は大男から数メートル離れた地点に絶影の背より静かに飛び降り、声をかける。
「訪ねたいことがあるっ!!綾先ハヤテ、村雨良、柊かがみというものの名に心当たりはないか?!」
その言葉に大男はゆっくりと閉じていた目を見開き劉鳳の鋭い目を見つめる。
数秒の間、二人の瞳が交錯する。
そして立ち上がった。
その姿はまさに圧巻。
あふれでる闘気に劉鳳は蛇に睨まれた蛙という言葉を思い出す。
天の道を目指す覇王、拳王の名を誇るラオウ。

「うぬは北斗七星の脇に輝くあの蒼星が見えるか?」
「質問を質問で返すなぁ――っ!!今言った3つの名に心当たりはないかて聞いているんだッ!!」
仁王立ちをし、闘気を発するラオウに負けないよう劉鳳は強く言う。
自分の本能が騒ぎ立てる。この男は不味い。
そのうえ一見したところ村雨もかがみもいない。
劉鳳の頭に最悪のイメージが流れる。
デイバッグを放り投げ戦闘体制を整える。

323 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:33 ID:Fhczq3gI
「村雨良、綾先ハヤテ…やつらは強かった、この拳王に地をつけるほどに。だが所詮この拳王に及ぶものではなかった。我が拳の前に打ち砕けぬものはないわ!!」
「!…貴様ッ…!!この毒虫がッ!!」
「再び問おう。うぬは天に輝く北斗七星の脇に輝くひとつの星が見えるか?」
「答える義務はないッ!!絶影!!」

こうして二人の闘いの火蓋がきって落とされた。

ラオウが殴る、絶影が避ける。ラオウが打つ、絶影が身をかわす。
スピードを生かし、ラオウの空振りを誘い隙をうかがう絶影。ラオウも相手が相当の実力者であることを理解し、徐々に拳の速度を上げていく。
確かに絶影は速い。だが劉鳳は本調子でないうえに今頭の中は疑問で満ちている。
(どうゆうことだ?やつの言い方ではまるで綾先ハヤテと村雨良が共闘したかのようだった。状況しだいでは確かにやつらはともに戦うかもしれんが、だとしたら柊かがみはどこに行った?そして村雨は?なぜ綾先ハヤテは約束を守らなかったんだ?)
迷いがある攻撃では敵を捉えることはできない、ラオウが相手ならなおさら。それがわずかなものであっても。ラオウにとってもっと速く、もっとすばやい相手は見て来た。対処できない相手ではない。 

324Classical名無しさん:08/04/19 21:33 ID:w0drKwfA
325 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:35 ID:Fhczq3gI
ラオウが攻める、絶影は紙一重でかわす。ラオウが蹴る、危うく粉砕されかける。
明らかにペースはラオウにある。先ほどから絶影は攻めるに攻められず、苦しい状況に立たされている。
かすかにあたった拳が絶影の身体を削る。その威力に劉鳳の顔が険しくなる。
不利な状況を打破しようと不用意に仕掛けた攻撃をラオウは見逃さず、すばやく身をかわしカウンター気味に左足を振るう。避けきれずに絶影の身体にひびが入り、さらに衝撃で吹き飛ぶ。
だがこれは逆にチャンスでもあった。

「これ」は隙が大きすぎるためあの距離では打てなかったのだ。
またラオウも相手が距離をおいたからといって攻撃をやめてくれるほど親切ではない。
「剛なる左拳“臥龍”、剛なる右拳“伏龍”!!」
「北斗剛掌波!!」
326Classical名無しさん:08/04/19 21:35 ID:w0drKwfA
327 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:36 ID:Fhczq3gI
闘気の衝撃波を裂くように両拳が飛ぶが、それはまるで小さな台風の中を飛ぶようなもの。
瞬く間に失速していき、衝撃で削られていく両の拳。
「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!」
だがアルターは意志の力。劉鳳の意志を止めるには台風では物足りない。
波を切り裂きラオウを粉砕せんと宙を舞う。その様はまさに牙をむく龍。
凶暴な二つの拳。ラオウに危機が迫る。
「なにッ?!」
だからラオウは逆に向かっていく。その巨体からは想像できないほどの速さで剛掌波の後を追い、自ら迎え撃つ彼の中に“逃走”という言葉はない。そしてこれは彼が最良とはじき出した方法でもあった。
結果、伏龍は避けられ臥龍は地に叩き落された。そして絶影に鋭く重い一撃が入れられる。
さらに衝撃で絶影が動けない間にラオウはその尾をつかみ、砲丸投げのように投げ飛ばす。
狙いは本体である劉鳳!
爆発音のような音とともに立ち上る砂埃。
「貴様も人形遣いか…この拳王に二度も同じ手は通じぬわ…」



328Classical名無しさん:08/04/19 21:36 ID:x7i3v.6U
    
329 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:37 ID:Fhczq3gI
互いの姿がゆっくりと見えてきた。その姿は対照的。地に伏せる劉鳳。止めを刺そうと近寄るラオウ。
ふたりの距離が縮まった時劉鳳が顔を上げた。その顔には絶望の欠片もない。あるのは闘志のみ、ふっきれた表情であった。
(今の俺には考えている暇もないッ!!この男はこの俺が倒す!!グダグダ考えるのはその後だッ!!)

ゆらりと立ち上がりポケットに入っていた「モノ」を握り締める。
これは自分の罪の証。断ち切ることができない鎖。自らが背負った十字架。
(後悔するのは後からでいい…たとえこの身が朽ちようとも!!)
空高く舞い上がるタバサのめがね。あたりを照らさんばかりの眩い光。
それは新しい力。強制された進化の力。自らの命を削る力。
(見ていてくれ、タバサ。今度は、今度こそは守りぬいてみせる!!)
そして叫ぶ。



『s.CRY.ed』



「……こいつは! この光は! 俺とタバサの!!! 輝きだァッ!!!!!」
言葉と供に光が劉鳳を包む。
全身を包む群青色の鎧。首の周りから頭部を守るヘッドギア。そして本人の意思に通じる全てを貫き通す鋭利な刃。
絶対正義武装。彼の信念の形であった。

330Classical名無しさん:08/04/19 21:37 ID:w0drKwfA
331Classical名無しさん:08/04/19 21:37 ID:x7i3v.6U
        
332 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:38 ID:Fhczq3gI
「敵わぬとわかってなおも歯向かうか…小僧、名をなんと言う?」
その言葉はラオウが相手を認めた証拠。名を聞くに値する相手ということ。
「劉鳳…特殊部隊『HOLY』の誇り高き隊員、劉鳳だ!」
「劉鳳よ、死に行くうぬに訊ねよう。うぬにとって『愛』とはなんだ?」
その言葉はラオウが興味を持って聞いた言葉。
その言葉に劉鳳は思い出す。一人の女性、彼が愛を誓った相手。
「守り抜く、そして支えられる。そして…」
だが守れなかった、彼女を。


シェリス…


「…話はおしまいだ、俺に残されている時間は少ないのでな。」
「そうか、ならば見せてみろ。愛の力を!!」
第二ラウンドの始まりを告げるものは雨だった。

333 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:39 ID:Fhczq3gI
繰り出される剛拳。しかし今の劉鳳にとってその攻撃はあまりにスロウリィ。
跳躍してその攻撃を避けられたラオウはさらに攻め立てようとするが、その姿が見えない。
そう、ラオウの動体視力をもってしても捕らえきれない速さ。
その速さはバルキリースカートを使った本郷と同等、いやそれ以上。
境内をとびまわって相手をかく乱する劉鳳。後ろと思えば前。右かと思えば左。上かと思えば足元。
その動きはまさに縦横無尽。
だがラオウは慌てない。本郷のときと同じように相手が攻撃してきたところを避け、カウンターの一撃をぶつけるのが最善策と考える。
地を蹴り、宙を跳ねる音が響く中ラオウは目をつぶり集中する。
捉えきることことができないならば視覚などに頼っても意味がない。自分の第六感を研ぎ澄ます。

刹那、身をかわす。気配を感じ取ったラオウの読みはあたり劉鳳の攻撃は空振る。
瞬間拳が迫る。が、そこに劉鳳の姿はない。劉鳳の速さはもはやラオウの拳でさえも上回っていたのだ。

334Classical名無しさん:08/04/19 21:40 ID:w0drKwfA
335 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:40 ID:Fhczq3gI
「お前に足りないものッ!!それはッ!!」
言葉とともに背をとられたことに気づいたラオウの自分の中の緊急信号が騒ぎ立てる。振り向く。
「情熱ッ」直後、上体を大きくのけぞらせて腰から顔にかけての斬りを避ける。
「思想ッ」だがその場で回転し、切りつけられた攻撃は避けられず左腕に傷をつけられる。
「理念ッ」そのときに繰り出された蹴りでバランスを崩しかけたラオウに劉鳳は攻撃の手を緩めない。
「頭脳ッ」地を蹴った反動での突きを心臓めがけてくりだす。わきの下をえぐる。
「気品ッ」ラオウの肘打ちを避けきれず地面に叩かれるが、逆にそのまま膝を切りつける。なにかが削れるようないやな音が響く。
「優雅さッ」膝元から崩れたラオウの顔に猛スピードで刃が迫る。反射的にクロスした腕に受け止められる。
「勤勉さッ」そのまま顔面に膝蹴り。これは止められ足を掴まれる。
「そしてなによりもッ!!」が、足を掴まれたままの状態で逆立ちのような体勢をとり腹部に突き刺す。しっかりと刃は肉を切り刻む。さすがのラオウも苦悶の呻きをあげ、劉鳳の身体を離す。

「速さが足りないッ!!」空中で宙返りをし、横一文字の斬。胸に大きな傷を刻む。そこから多量の血が噴出す。地の雨と雨が混じり劉鳳を濡らす。
間合いを取った劉鳳。そして足を切りつけられ動けないラオウ。戦況は一目瞭然。
だがここから戦いは均衡状態に入る。

336 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:41 ID:Fhczq3gI
ラオウは動けないため一撃必殺のカウンターを狙い、さらなる集中力で辛抱強く劉鳳の隙を窺う。全身に無数の切り傷をつけられ、出血が止まらないその身体を容赦なく雨は体力を奪う。
劉鳳は少しでも動きを止めると北斗剛掌波が襲ってくるため、動きを止めるわけにはいかず攻め続けるが、首輪の影響もあり死が迫ってくるのを実感する。かといって不用意に近づけばラオウのカウンター。よって劉鳳は攻めるに攻めきれない状態だった。
ラオウの集中力と劉鳳の生命力。どちらが先に折れるのだろう。

雨が強くなった。
そしてこれが勝負を分けた。
飛び回る劉鳳。以前その姿をラオウは捕捉できない
(このままではジリ貧だ…やはりここで勝負を仕掛ける。ただし真っ正直からでは無理だ…やはり速さを生かすしかない)
さらに速さを高めようと意識を集中する劉鳳。徐々にラオウとの距離を縮め、期を待つ。
(やつはやはり俺の姿を追いきれていない!こちらに目さえ向けていない)

そして……
(今だッ!!)



337Classical名無しさん:08/04/19 21:42 ID:x7i3v.6U
       
338Classical名無しさん:08/04/19 21:42 ID:w0drKwfA
339 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:42 ID:Fhczq3gI
だがラオウには見えていたのだ。劉鳳の筋道が。劉鳳の姿が。
なぜか?その答えは雨にあった。
強くなってきた雨は劉鳳の身体が今どこにあるか示す。
貯まってできた水溜まりは劉鳳がどちらに向かうか示す。
いくら劉鳳が速いといっても全ての雨粒を避けきれるわけもなく、しっかりとその身をさらしていたのだ。 ラオウは観察からそのことを導きだし、そして賭けた。
賭けは当たった。
劉鳳がラオウを断罪せんと刃を突き立てようとした瞬間、間合いに入ったラオウの顔がこちらを向き、気づいた時には無様に吹き飛ばされていた。


またしても劉鳳は負けたのだ。あの時と同じように。


叩きつけられた劉鳳は、白濁していく意識のなか。やるだけやったんだから仕方がないと、死を受け入れようとする。
歩み寄ってくるラオウを、ぼんやりと劉鳳が眺めていたその時。
吹っ飛んだ際にデイバッグから出て額に沈んだスティッキィ・フィンガーズのDISCから、真の持ち主の記憶が流れ込む。

340 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:43 ID:Fhczq3gI
――ジョルノ……俺は……生き返ったんだ。
――故郷……ネアポリスでお前と出会ったとき。組織を裏切ったときに……な。
――ゆっくりと死んでいくだけだった俺の心は、生き返ったんだ……お前のおかげでな。
――幸運というのはこういうことだ。これでいい、気にするな……

流れ込んできたブチャラティの記憶に、劉鳳は自分を重ねる。
そして気付く。
(これでいいのか? いや……これだけは、絶対にノゥだ!!
 敗北とは、死ではない! 『弱い考えに負けること』だ!!)



『そうだ、反逆しろ!!』
「カズマッ?!」
突如聞こえた宿敵の声に劉鳳は幻聴かと驚く。しかし、そこにカズマはいた。確かにその足で立っている。
あの反逆を貫いたカズマは目の前に立ちこちらを噛み付くようににらみつけていた。
「今のお前の弱い考えは何だッ!? 生きて帰れないことか! それとも、ラオウとかいう大男に勝てないことか!」
「……違う。違うッ!」
「だったら、何だッ! 言え!!』
「俺自身の信念、正義をそしてアミバから受け継いだ、反逆をッ!貫くことが出来ないことだッ!!」
「だったらよォ……それに反逆しやがれええええええええええ!!」

341Classical名無しさん:08/04/19 21:43 ID:x7i3v.6U
        
342Classical名無しさん:08/04/19 21:43 ID:w0drKwfA
343 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:44 ID:Fhczq3gI
限界をむかえている足に力を入れる。膝が震え、身体を支えきれずまたその場に倒れる。折れそうになる心をなんとか奮えたたせる。

また起きあがる。また倒れる。その次も。その次も。しかし諦めない。心に「反逆」の言葉をもって。


カズマの横に影が増える。見覚えのある顔だ。
「劉鳳…」
「アミバか…」
「そうだ、自分に反逆しろ。最後の最後まで。この俺のように反逆するんだ!」
「ああ、任せてくれ。」

アミバがゆっくりと劉鳳に近づき、二つの指で身体に激励を込めたやさしい突きを打つ。
ふいに体が軽くなった気がした。足の震えが止まった。今度は倒れなかった。
「今、秘孔を突いた。これはお前の身体を反逆させる秘孔だ。そしてこの秘孔は…。」
さらにもう一箇所。心臓付近をとん、と突かれる。
「お前の信念、正義を確固たるものにするものだ!」
身体中に熱い何かが駆け巡る。

344 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:45 ID:Fhczq3gI
ふと、横をみると何者かが肩を貸し、自分の体を支えていてくれた。
「いいぞ、劉鳳!」
「その声は…ブラボー!ブラボーもいるのか!」
「さぁ、やつに見せてやれ。俺とお前の遥かなる正義を掲げて!」
「もちろんだ!」



決して諦めなかった。
決して恐れなかった。
そして決して折れなかった。
ラオウは問う。
「うぬはなぜ立ち上がる?」
劉鳳は答える。
「自分の信念、正義を貫き通すため。仲間の反逆を掲げるため」
「死が目前に迫っていてもか?」
「もうなにもいらない。自分の命さえ、ただひとつ俺というものの生きた証を残せたら」

ふいに劉鳳の姿が、信念を貫いた坂田銀時、正義を掲げた本郷猛の二人に重なった気がした。
ラオウはわかった。言葉ではなく心で理解できたのだ。

「認めよう、うぬがこの拳王の強敵(とも)であることを。かかってこい、劉鳳よ。貴様の信念、しかとこの拳で受け止めよう」
「ほざけぇぇえええッ!!」
345 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:45 ID:Fhczq3gI


もう当初のスピードとは比べ物にならないほど遅く直線的な攻撃。
しかし鬼気迫る攻撃。
二人の間の距離が縮まる。

あと15メートル。
10メートル。
6メートル。

ラオウが拳を振るう。劉鳳が叫ぶ。
「貫けぇぇえええ―――ッ!!」



そして貫いた。
雨は降り続いていた。神社のあちらこちらに水溜まりができ始めていた。劉鳳の足元にもひとつ、大きな水溜まり。

どす黒い、赤い血の水溜まり。
ラオウの右腕が劉鳳の腹を貫いた。
劉鳳の手刀はわずかにぶれ、ラオウの左肩に突き刺さり、その手を朱に染めていた。
吐血する劉鳳。

346Classical名無しさん:08/04/19 21:46 ID:x7i3v.6U
           
347Classical名無しさん:08/04/19 21:46 ID:w0drKwfA
348 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:46 ID:Fhczq3gI
彼を覆っていた鎧が雨粒に流される塗料かのように少し、また少し剥ぎ取られていく。そのさまで魂が、残りの命が確実に劉鳳の身体より離れていくのを物語っていた。まぶたが重くなり、意識が暗転しかける。
だが、だがそれでも。
劉鳳は…


「………ッ!!スティッキー・フィンガーッ!!」
「?!」
劉鳳の腕よりさらにもうひとつ異形の腕が浮かび上がり、それはラオウの腕を固定する。貫かれた自分の身体をジッパーで閉じることで。それはかつてサン・ジョルジョ・マジョーレ島でDISCの持ち主、ブローノ・ブチャラティがディアボロに対して行ったことと同じ。
ゆっくりと残りのすべてを左腕に託す。周りの雨粒、砂や風が消え去り新たな刃が再構築されていく。
カッと目を見開き睨みつける。目の前の断罪すべき相手を。
腕をゆっくりと挙げ後ろに引き、腰を回転させ自らの全体重を乗せた全力の拳。
劉鳳最後の一撃。

「…貴様の……負けだぁぁああああああああ―――――ッ!!」
「ぬん!!」



349 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:47 ID:Fhczq3gI
ぶつかり合う拳と拳。
そして

轟音とともに立ち上る砂埃と水しぶき。まるで巨象が倒れたかのような音とともにひとつの影が倒れる。
地に伏せたのはラオウ。
「見事なり……!」

雨が降り続いていた。

劉鳳は動かない。
身動きひとつしない。
劉鳳は立ったまま絶命していた。

意識を手放す瞬間、ラオウは思った。
戦闘を行う前から相手は満身創痍だった。自分も完璧でないとはいえ、瞑想を相当の時間を行い体調はよかった。にもかかわらず、あの一撃。残された全てを賭けた全身全霊の戦い。
仮に万全の状態で戦っていたら…
これが…愛の力か…

最後に彼がなにを思ったかは誰にもわからない。
ただ彼は微笑んでいた。今までにない優しさをこめた微笑を浮かべていた。





350Classical名無しさん:08/04/19 21:48 ID:w0drKwfA
351 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:48 ID:Fhczq3gI
雨は降り続いていた。
まるでひとりの男の暴力に満ちた心を洗い流すかのように。
雨は降り続いていた。
まるでひとりの男の死に天が涙するかのように。



【劉鳳@スクライド 死亡】
【残り14人】

【D-1 神社/2日目 黎明】
【ラオウ@北斗の拳】
[状態]内臓に小ダメージ 、鼻の骨を骨折、 胴体に刀傷、全身に無数の切り傷、胸に大きな切り傷、左膝・左肩・左拳に大きなダメージ、大量出血中
[装備]無し
[道具]支給品一式
[思考・状況] 気絶中
1:????????

352Classical名無しさん:08/04/19 21:48 ID:x7i3v.6U
    
353 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:49 ID:Fhczq3gI
[備考]
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。又、秘孔を破られやすくなっている事にも
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました
※自らが認めた相手に敬意を払いその生き方をも認める事をしました
※コーラに対する耐性がつきました。
※さらに強くなるにはもしかしたら愛が必要なのかもしれないと思っていますが、表面上では愛を否定しています。
※村雨との闘いを切に願っていますが、移動し、別の参加者とも闘おうという気もあります。
※BADANの存在を知りました
※劉鳳との戦いがラオウにどのような影響を与えたかは次の書き手さんにお任せします。

※雨が降っています。
※D-1の神社に劉鳳の遺体が立ち尽くしています。

354Classical名無しさん:08/04/19 21:49 ID:w0drKwfA
355Classical名無しさん:08/04/19 21:49 ID:x7i3v.6U
                
356 ◆bnuNxUeVnw :08/04/19 21:49 ID:Fhczq3gI
投下完了しました。誤字、脱字、修正点、があったらご指摘ください。
また時間軸や勇次郎の花火などで微妙なところもありますが、そこのチェックもお願いします。

>>hq氏
>>没ネタ投下スレ
>>毒吐き掲示板 
本編を書く上にあたって勝手ながら毒吐き掲示板にあったネタを頂き、没ネタ投下スレから引用もさせていただきました。
「俺のネタ、勝手に使うんじゃねぇええ!!」など許可がおろせない場合は、修正いたしますのでどうか面倒かもしれませんが一言ください。
357Classical名無しさん:08/04/19 21:54 ID:Gff4PVQs
投下乙。
劉鳳おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
これで頼りになる対主催がまた一人倒れたか、しかし拳王も大ダメージか・・・・・。
先が楽しみになる展開でした。
あと、綾崎ハヤテの綾崎が全部綾先になっていたのでお伝えします。
358Classical名無しさん:08/04/19 21:57 ID:IlmOM4eU
投下乙。
劉鳳……お前は頑張ったな。ゆっくりと眠れ。
拳王がこれからどうなるか楽しみ!
果たして愛の意味がわかったのだろうか……。
359Classical名無しさん:08/04/19 21:58 ID:x7i3v.6U
投下乙
劉鳳……拳王に大ダメージとは、やったな! さすが強力対主催屋の一角!
しかし……お前の死は、確実に重いぞ……!
ジョセフたちの行方も気になり、プッチも暗躍して今後が読めない!
GJ!!
360Classical名無しさん:08/04/19 22:13 ID:oB/M8QU6
劉鳳……アリーヴェデルチ!! 本当に、ブラボーな漢だ……ッ!!
クーガー、カズマの名言、そして近くに強化外骨格があることを逆手に取った、
ブラボーな戦友達との魂の交流に、心と身体が熱くなりました!!

そして、拳王……劉鳳の正義、信念、反逆、そして愛に、彼は何を想うのか……
本当に、素晴らしい作品でした!!
361Classical名無しさん:08/04/19 22:25 ID:6m78WGJ.
ジョセフ頑張れ、確かに勇次郎は強力だが、柱の男に身体能力でも遅れを取らなかった
ジョジョなら・・・ジョジョならやってくれる
362Classical名無しさん:08/04/19 22:31 ID:dSgYCbZI
そういえば、スティッキー・フィンガーのDISCはどうなりましたか?
まぁ、十中八九、劉鳳の死に引きずられているとは思いますが。
363Classical名無しさん:08/04/19 23:02 ID:IATz8AQ2
投下乙!
劉鳳がすげえかっこよす、いろんな人々から受け継いだ魂の拳は
拳王をも貫く!
よかった作品だ、これからの伏線もでてきたし期待大
364Classical名無しさん:08/04/20 00:25 ID:NEPQdiZw
投下乙

あぁ劉鳳良くやった、見事な立ち往生だったよ。
お前はたぶん今断罪出来なくて悔しいんだろうけど、胸を張っていいと思うんだ。
そしてこういう今まで死んでいった仲間達が、力を貸してくれるというのは個人的に大好き。

指摘を一箇所
暗闇大使が暗黒大使になってますよ
365Classical名無しさん:08/04/20 00:58 ID:pH0fd4Gc
乙です。

気がついたんですけど、>>302のジョジョの状態表の部分に
【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】が抜けてますよ。
366Classical名無しさん:08/04/20 11:30 ID:cWK007Rg
乙です!
桐山が出なかったのが少し残念。
367Classical名無しさん:08/04/20 18:22 ID:NEPQdiZw
>>1qmjaShGfE氏
「進化」をwikiに収録しようかと思うのですが
私の読解力が足りないためか、ジグマールの死を川田のスコアにカウントしていいのか判りません
どうかご一報ください
368Classical名無しさん:08/04/20 18:58 ID:uNIh.F1M
スクライド勢全滅か・・・・アニメロワでもそうだったが
カズマや劉鳳は力を出し切って勝ってるのに絶命パターンばっかだな。
いや、そうなるだろうなってお約束に近いものなんだろうけど
好きなキャラが死ぬのが分かってるってのも寂しいな。
最初から死兆世が見えてる状態って感じ。
369Classical名無しさん:08/04/20 19:00 ID:bUymdfIY
>>368
死兆世
誤字だと解ってるのにすげえな世の中と思っちまったwwwww
370 ◆bnuNxUeVnw :08/04/20 20:43 ID:DLaUVMRY
>>357
>>364
>>365
指摘ありがとうございます。wiki収録の際に修正しておきます。

>>362
あ、すみません書き忘れてました。
こちらもwiki収録の際下の文を書き加えておきます。

※スティッキー・フィンガーのDISCは劉鳳の死に引きずられました。
371 ◆1qmjaShGfE :08/04/21 01:38 ID:TZb7hg5k
>>367
ジグマール死亡は、ジグマールの能力が首輪の制限能力を超えた故の爆破ですので、厳密に言えば川田にキルマークは付かないと思います
描写不足でした。申し訳ありません
372367:08/04/21 15:20 ID:LPf9bO82
>>371
いえいえ、こちらこそお手間を取らせて申し訳ない。
回答ありがとうございました。
373Classical名無しさん:08/04/23 23:11 ID:GtiD84TM
漫画ロワ 作品トーナメント編!!
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9318/1208602309/

結果発表です。
投票、ありがとうございました。
374 ◆05fuEvC33. :08/04/25 19:43 ID:t53ZAYJY
すいません、予約の延長を申請します。
375Classical名無しさん:08/04/25 19:58 ID:XEPDmKtc
了解です!
終盤で色々と大変だと思いますが、期待して待っています。
頑張って下さい〜。
376Classical名無しさん:08/04/26 00:33 ID:c3ef/D2.
>>374
頑張ってください。
楽しみにしています。

皆さんに確認が。
第二回放送までの話の投票の件についてです。
投票日は4/26〜4/29のちょうど三日間でよろしいでしょうか?
今回の投票は

・総合
・死者
・台詞

の三項目。ギャグ部門、繋ぎ部門、対決部門はおってお伝えしたいと思います。
それでは、お答えお願いします。
377Classical名無しさん:08/04/26 00:35 ID:c3ef/D2.
間違えたorz

期間は4/27〜4/30までで
378Classical名無しさん:08/04/27 00:01 ID:anKkvtFU
第二回放送前のSS投票を始めたいと思います。

今回は投票フォーラムを借り手の投票です。
詳しいことは下記のスレにて。

漫画ロワ 作品トーナメント編!!
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9318/1208602309/
379 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:09 ID:Y3XLwTmY
江戸川コナン、愚地独歩、桂ヒナギク、葉隠覚悟、範馬勇次郎、投下します。
380悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:10 ID:Y3XLwTmY
『ご乗車中のお客様に申し上げます。この列車は現在、禁止エリアを通過中です。
 車両から出ますと、お客様の首輪が爆発し大変危険です。飛び降り等の行為はお止め下さい』
 
地下鉄車両内に居る桂ヒナギクは、場違いな程丁寧且つ棒読みな車内放送を流す
屋上に備え付けて有るスピーカーに、大粒の汗を流して冷ややかな視線を向けていた。
(サービスのつもりで流してるのかしら…………)
そして座席に座り込み、安堵の息を付く。
(…………でもこれで、禁止エリアでも列車内なら大丈夫だって分かったわね)
ヒナギクが葉隠覚悟と乗り込んだ列車が、3時から禁止エリアになるE-3エリアを通過すると気付いのは
S-7駅を出発して少し経ってからであった。
3時をまわっている事を確認し狼狽するヒナギクと、泰然とした様子の覚悟が
 
「どど、どうしよう覚悟くん!! 運転席に行って、列車を止める!?」
「既に列車は禁止エリアに入った。うろたえても埒は明かぬなり」
 
といった会話をした直後に、件の放送が流れた。
(…………そう言えば、覚悟くんは?)
ヒナギクの近くに居た筈の覚悟が、何時の間にか姿が見えなくなったのに気付く。
周囲を見回した後、前後の車両にまで視線を伸ばすと前の車両に覚悟の姿を見付ける。
ヒナギクは慌てて覚悟の所へ向かった。
「もー、黙って居なくならないでよ。心配するじゃない」
覚悟は車両の最前部から、扉を隔てた先の運転席に向かいながら
右手の指先を自分の側頭に指し、見事に背筋を伸ばして直立していた。
 
「何やってるの?」
「運転席に礼」
「……何でそんな事してるのかしら?」
「私はこの列車の世話になっている身、礼を欠かす事は出来ぬ。まして私は無賃乗車、せめて敬礼だけでも返したい」
「…………そうね。私達、運賃を払ってないわよね……」
 
381悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:11 ID:Y3XLwTmY
 
どれ程覚悟と打ち解けても、やはり感性のズレは気になってしまう。
それは生まれ育った世界の違いか、覚悟と自分の個性の違いに拠るものかとヒナギクは取りとめも無く考える。
それにしても何故、急に運転席の前まで来たのか?
その疑問の答えは、自分も無人――今初めて知った――の運転席を眺めて分かった。
列車が緩いカーブに差し掛かると、それに合わせハンドルが独りでに切られる。
「自動運転か。ま、考えてみれば当然だけどね」
「ヒナギクさんが運転席の話題を出した折、気になって確かめに来た。
 無人である以外、特に不審な点は見られない」
(列車内に、脱出に繋がる糸口は無しって所か……)
 
「……………………ヒナギクさん、今爆発音…………いや、花火が上がった音がしなかったか?」
「…………聞こえ無かったけど?」
唐突な質問に訝しむヒナギクを余所に、覚悟は車両側面の窓を開けた。
『この戦いに参加する、全ての者に伝える事が有る』
小さいが確かに機械を通した、しかし定時放送とは違う男の声が聞こえる。
(この声は最初に集まった場所で、勇次郎と呼ばれた男のもの!)
「どうしたのよ一体!?」
「範馬勇次郎が拡声器を使い、放送をしている」
地下鉄内の覚悟が、地上で行われた勇次郎の放送が聞けたのは
以前に勇次郎自身が開けたまま放置していた避難口が、近くに有った為と
覚悟自身の高い聴力故である。
ヒナギクの耳には、とても聞こえる音量ではない。
 
「……コナン君!!」
「…………何があったの?」
放送を聞き終え苦渋に顔を歪ませる覚悟に、ヒナギクは何処か不安げに説明を求める。
覚悟は放送内容を、全て話す事にした。
予定を変更する理由を説明する為に。
 
 
 
382悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:12 ID:Y3XLwTmY
 
「…………以上が放送の全てだ」
覚悟はヒナギクに、放送内容を一字一句洩らさず伝えた。
ヒナギクは押し黙ったまま、何の反応も示さない。
恐らく怒っているのだと、覚悟は解釈した。
覚悟自身が心中を、怒りの情念に焼かれていたからだ。
しかし認識(こころ)の制御を本懐とする零式防衛術を修めた覚悟は、怒りに任せた判断などしない。
あくまで合理的に、自分の行うべき事を考える。
「ヒナギクさん、ラオウは相応の実力を持つ者しか相手にしない武人。
 またラオウが待つ神社は地理的、施設の性質的に見ても余人の立ち寄る可能性は低い場所。
 ならば今はラオウが待つ神社よりも、コナン君が捕らえられている思しき勇次郎の下へ行くのが急務と思われる」
覚悟が話に一拍置く。
ラオウは本郷猛と綾崎ハヤテの仇、ここからの話はヒナギクが了承するかは分からない。
それでも話さないと言う訳にはいかない。
「S-3駅に着いたならば、神社は後回しにして……」
「先に勇次郎の所へ行くわよ。あなたが嫌だって言ったら、私一人で行くから」
予想外の返事に調子の外れた覚悟だが、すぐに気を持ち直す。
 
「ありがとうヒナギクさん」
「何のお礼よ?」
「あなたは一刻も早く、ラオウの下へ向かいたいだろう……」
「勘違いしないで、私が行きたいから言ってるのよ!!
 それにラオウも勇次郎も両方倒すべき敵なんだから、どっちが先か何て順番の問題よ!」
 
ヒナギクの気勢に、覚悟は若干気圧される。
「ヒナギクさん、くれぐれも無理はしないように……」
「覚悟くんも、一人で先走らないでよ」
「……了解」
 
ヒナギクが勇次郎に怒りを覚えるのは、コナンだけが原因ではない。
(俺以外の全ての弱者? 殺しに来い? 自分以外の全参加者が束になって掛かっても、勝てる自信が有るっていうの!?
 よくもまあ、それだけ思い上がれたものね! あんたの身の程がどの位か、教えて貰おうじゃない!!)
383悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:13 ID:Y3XLwTmY
今まで大抵の事を人並み以上に上手くこなせた故に、人から認められそれを自信に繋げて来た。
しかしこの殺し合いに巻き込まれてから、その自信を何度傷付け歪められて来たか。
それでも自分の非力を認め、出来る事を探して来たのだ。
勇次郎はそんな自分を嘲笑うかの様に、己が絶対の強者であり他は全て弱者であると高らかに意思表示した。
嫉妬にも似た歪な怒りが、ヒナギクを揺さぶる。
それにヒナギクは以前にも一度、勇次郎と接触した事が有る。
その時は最初の会場で主催者に掛かって行く等の好戦的な言動以外、勇次郎が殺し合いに乗ったと考える根拠は無かった。
しかし川田が気絶している勇次郎を殺害しようとするのを黙認し、自分はつかさを連れて去ろうとした。
何故そんな人任せで、短絡的な行動を取ったのか?
勇次郎に怯えていたのだ。直接殺し合いに乗ったか、問い質す勇気も持てない程に。
アンデルセンの時の様に、ある程度冷静に戦力差や戦略を考えて逃げたのならまだ納得出来た。
だが臆病風に吹かれ尻尾を巻いて逃げ出したまま済ますのは、ヒナギクのプライドが許さない。
(このままじゃ逃げっ放しだわ!! この私が臆病者のままで、終わっていい訳が無いじゃない!!)
 
『列車は只今、禁止エリアを通過しました』
再び場違いな調子の車内放送が流れ、禁止エリアを抜けた事を告げる。
「では早急に下車して、勇次郎の下へ向かおうヒナギクさん」
「え? …………ちょ、ちょっと何するのよ覚悟くん!?」
「喋らないで、舌を噛む」
ヒナギクは突然覚悟に抱えられ、昨日の本郷猛に続いて2度目のお姫様抱っこをされる。
そして覚悟は、開けられていた窓から飛び出した。
ヒナギクの頭髪が、窓枠に擦る。
「……!」
車両外に着地し、地下鉄線路側壁の上方へ伸びる鉄製の梯子を足だけで駆け上り
マンホールを蹴り飛ばして、地上に降り立った。
息を荒げるヒナギクを、地上に下ろす。
「ヒナギクさん、もう喋っても大丈夫だ」
「大丈夫じゃないわよ、バカー!!」
覚悟の頬に、ヒナギクの平手が炸裂した。
384悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:14 ID:Y3XLwTmY

 ◇  ◆  ◇

夜の闇が存在しないかの如く、照明の光に満たされたファーストフード店内の座席。
そこに座り食事を終え時間を持て余した範馬勇次郎は、自分の両手を開閉させ体調を内観する。
左腕はほとんど治り、内臓の損傷も回復に向かっていた。
勇次郎は元来壮健な人間だが、それでも今の回復力は異常である。
今までは戦いを求めるのにかまけ、特に気にしていなかったが
改めて考えると、勇次郎の身体に理解を超えた変化が起こったのは明らかだ。
(やはり鳴海のマズイ血を飲んだのが、きっかけだろうな)
勇次郎は加藤鳴海との戦闘中に、図らずもその血液を飲み
それによって、以前以上の剛力を発揮出来るようになり
それによって、以前以上の速さで動ける様になり
それによって、以前以上の回復力を手に入れた。
(あの時鳴海の血からは、妙な匂いがした。あいつの血中には、普通の血液には無い成分が含まれていたみたいだ)
もしその成分と同じ物が含まれた血液、あるいは成分そのものの液体を再び飲めば
更なる強きを得、更に闘争を楽しめる身となれる。
(同じものが在るかどうかすら分からんが、一応頭に留めて置くか……)
 
やがて座して待つのにも飽きた勇次郎は、ファーストフード店から出る。
最初に花火を上げた時と同じく、近くを巡回する事にした。
店の前の交差点では、江戸川コナンが倒れたまま動かない。
意識が無いらしいが、勇次郎にはどうでもいい。
悪鬼は餌を求め、闇に消え入った。

 ◇  ◆  ◇

愚地独歩がその奇妙な場所を遠目から見付けたのは、F-3エリアの河原であった。
一面緑の野草で埋め尽くされた河原に、遠目からも分かる色取り取りの花に埋め尽くされた箇所。
その中央部には、蝿が集っている。
 
385Classical名無しさん:08/04/28 19:15 ID:MM6k1vUk
    
386悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:15 ID:Y3XLwTmY
 
「…………こいつは酷ぇな……」
その場所に行ってみると、原形を留めない程頭部を潰された少女の死体があった。
(……妙だな首輪が外されているし、デイパックは残ってやがる)
残された死体のデイパックの中には、食料と水以外の基本支給品に
規格外の質量を持つ拳銃と、セーラー服に首輪。そして妙に重たい傘。
死体から首輪を持ち去りまでした者が、何故これらを残していったのか?
(…………ま、俺が幾ら考えても分かる訳ねぇか)
独歩はデイパックを拾い上げ、勇次郎の下へ出発する。
 
(それにしても、随分武器が充実したもんだ)
現在独歩が所持する武器はイングラムM10、ニードルナイフ、454カスール カスタムオート、ベレッタM92
そこに大型拳銃まで加わった。
しかも独歩の主武器は、その中には無い。
独歩が最も信頼する武器は、徒手で虎を屠り材木を断ち切る空手。
己が武術に大量の銃火器を携え、万全の体制を持って勇次郎へ向かう独歩は思う。
 
(……やっぱり、勝てる気がしねぇな)
 
勇次郎は世界中の戦場を渡り歩き、軍隊を相手に戦い抜いて来た。
兵器を扱うプロの集団を相手に勝ち抜いてきたからこそ、地上最強の生物等と大袈裟な呼ばれ方をされているのである。
火器の素人である独歩が、どれだけそれを所持しても勇次郎に敵う道理は無い。
また空手を武器に戦うには、手中の銃はむしろ邪魔になる。
並の相手なら銃と空手どちらも使えるのは戦術の幅として有効だが、勇次郎相手にそんな中途半端な認識はむしろ命取りになる。
それに独歩の空手で勝てる相手ならば、勝を殺された時に逃げてはいなかった。
独歩とて格闘戦においては百戦錬磨、そうそう相手との力量差は見誤らない。
(かっこつけないで、村雨やかがみと来れば良かったか? 今更言ってもしょうがねぇけどよ……)
387悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:16 ID:Y3XLwTmY
考えれば考える程、勝ち目が薄れる気すらしてくる。
例えばケンシロウや加藤鳴海や葉隠覚悟等は、他者を守る為に自分の命を賭け正々堂々戦うだろう。
だが独歩の考える武の本懐は勝つ事、そして何を置いても生き延びる事。
だから不意討ち等の卑怯も辞さないし、敵前逃亡にも躊躇は無い。
早急に劉鳳とジョセフ捜しに行くべきと判断したから、嘘を吐いてまで村雨達と別れたが
もしそうでなければ二人と共に、勇次郎を倒しに来ていた。
武人が多勢で一人に挑むかと笑われようが、みっともなくとも勝って生き延びなければ話にもならない。
だが今となっては、戻って助けを請う事も不可能だ。
いっそ勇次郎を無視するかとも思える、命を拾えるならそれも独歩にとっては恥ではないと考える。
しかし捕らえられていると思しきコナンが居るから、それも出来ない。
コナンが捕らわれているというのは独歩の誤解だが、放送の内容を聞く限りそう解するのも無理は無い。
(勇次郎の下ににつく振りをして、隙を窺ってコナンと逃げる……駄目だ、勇次郎が聞く訳ねぇや。
 どうしたもんか。二人以上居れば、囮と救出で役割分担も出来るんだが…………)
 
「愚地殿、貴殿も来ていたのか」
思考に耽りながら歩いていた独歩に、不意に声が掛かる。
若い男女の二人組みが、駆け寄って来た。
 
「覚悟とヒナギクじゃねぇか! お前ぇさんらこそ、何でここに居るんだ?」
「勇次郎の放送を聞いて、予定を変更したのよ」
「……地下鉄で聞けたのか? 凄ぇなそりゃ」
「私が聞いたんじゃないわよ。覚悟くんがそれを聞いて……」
「へぇ…………覚悟よ、頬はどうした?」
独歩は覚悟の左頬に、手形の赤い痣を見付けた。
 
「問題ない」
「そ、そうそう。これは何でも無いのよ!」
「…………まァ、若い男と女が一緒に居れば人に言えない事も有るってか」
「ど! どういう意味よそれは!!? 私と覚悟くんとは、別に何も無いってば!!」
「はいはい、そういう事にしとくか」
「何よそのいいかげんな返事は! もぉ、覚悟くんも何とか言ってよ…………どうしたの覚悟くん?」
 
388Classical名無しさん:08/04/28 19:16 ID:MM6k1vUk
   
389悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:17 ID:Y3XLwTmY
 
明らかに張り詰めた様子で、覚悟は遠方を見つめる。
それを見て、ヒナギクと独歩の緊張感も一気に増す。
「……勇次郎か?」
「然り。先方もこちらに気付き、接近開始」
「捜す手間が省けたって訳ね、好都合じゃない」
通りを歩み来る勇次郎の姿が見え、3人ともに身構える。
 
「コナンの姿が見えねぇな」
「それなら、勇次郎に聞けばいいんじゃない? 手荒な聞き方になると思うけど」
「勇ましいな嬢ちゃん。けど、簡単な相手じゃねぇぞ」
「あら、怖気付いたの独歩さん?」
「この期に及んで怯える位なら、最初から来てないって」
 
勇次郎と3人の距離が、30mを切った。
「正調零式防衛術、葉隠覚悟。停止を要求する」
覚悟の言葉を聞き勇次郎はクスクスと軽薄な笑みを浮かべ、足取りを僅かに速める。
多勢に無勢の状況で、まるで臆する様子の無い勇次郎にヒナギクは苛立つ。
「存命したくば、次の質問に答えよ! 一、現在の行動目的。一、江戸川コナンの所在。一、江戸川コナンの状態。制限時間15秒!」
勇次郎の双眸に獣の光が宿り
「存命したかったら、何で質問に答えなくちゃなんないのかな〜〜〜?」
闘気で頭髪が逆立った。
「わかんないな〜♪ すっごく気になるな〜〜♪」
「……15秒も待つ必要、無いみたいね」
ヒナギクは怒りを抑えきれない様子で、前に出ようとする。
花火と放送による挑発のみならず、多勢を相手にこのふざけた態度。
人を舐めるにも程がある。
 
390悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:18 ID:Y3XLwTmY
 
覚悟はヒナギクと独歩を庇う様に、勇次郎の方へ歩み出る。
「現在位置から勇次郎の居る方向へ約500m先が、花火の打ち上げと放送が行われた地点。
 私が勇次郎の足を止める間、ヒナギクさんと愚地殿はそこに向かいコナン君の捜索に当たられたし」
「……覚悟くん、一人で先走らない約束だったわよね?」
「コナンは拷問を受けて、悲鳴を上げさせられたんだ。早く捜し出して、状態を確かめないといけねぇよな」
ヒナギクは視線を落とし、刹那の思考に耽る。
「…………コナンくんを捜し出したら独歩さんが保護して、私は覚悟くんの加勢に戻る。
 その後の待ち合わせ場所は、コナンくんの状態を見て決める。それでいい?」
「ああ」
「覚悟くんも、危ないとなったら私達を待たずに逃げるのよ?」
「了解」
 
「今!」
覚悟の声を合図にヒナギクと独歩は、横の路地へ駆け込んだ。
覚悟は一歩で勇次郎との間合いを大きく縮め、二歩目を踏み込みながら左の蹴りを放つ。
「零式積極直蹴撃」
並の人間の拳を遥かに凌ぐ速度の蹴り足を、勇次郎は脛に肘で打ち込み止める。
覚悟の全身の骨に、衝撃が走った。
(踏み込みが有れど、威でこちらが劣るか!?)
覚悟は一足飛びに、勇次郎から離れる。
「いいのかい、お友達を行かせちまって?」
「正道を進む者が、数に頼む戦いはせぬ!」
(そうとも悪鬼を討つのに、ヒナギクさんの手は煩わせぬ!!)
覚悟は強い表情で、零式防衛術破邪の構えを取った。
(因果でこそ、大邪心を堕としめる!!)

 ◇  ◆  ◇
391悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:18 ID:Y3XLwTmY

ヒナギクと独歩は、覚悟と勇次郎が戦う場所を迂回して
覚悟が指示した地点を目指し、走っていた。
ヒナギクがどこか思い詰めた様に、覚悟の居た場所を見やる。
「心配するのも分かるけどよ、惚れた男の事はも少し信用してやんな」
独歩の言葉に、ヒナギクは赤面し声を荒げる。
「誰が惚れた男よ!! 覚悟くんとは、何も無いって言ったでしょ!」
「覚悟の事だ何て、俺は言ってないぜぇ〜」
「……後で憶えてなさいよ」
「おぉ怖、こりゃ覚悟も苦労しそうだぜ……………………嬢ちゃん、あれがコナンじゃねぇか?」
急に鋭さを増した独歩の視線の先に、交差点の真ん中で蹲る子供が居る。
その子供は覚悟から聞いた江戸川コナンの特徴と、一致した外見を持っていた。
コナンの身体に、点々と雨粒が落ち出した。
「降り出して来たな……」
ヒナギクと独歩はコナンに駆け寄り、様子を窺う。
「悲鳴の原因はこれだな」
独歩はコナンの、爪が剥がれた左小指を見る。
 
「気を失ってるだけで、爪の他は大事無いみたいだ」
「……そう、なら私は覚悟くんの救援に戻るわ」
「ああ、俺はコナンを何処かで休ませてからそっちの様子を見に行くぜ」
独歩の返事を聞くか聞かないかの内に、ヒナギクは走り出した。
 
 
 
392Classical名無しさん:08/04/28 19:19 ID:MM6k1vUk
      
393Classical名無しさん:08/04/28 19:19 ID:lnjpzCOo
394Classical名無しさん:08/04/28 19:19 ID:MM6k1vUk
    
395悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:20 ID:Y3XLwTmY
 
(……………………あれ、俺眠っちまってたのか? 痛ぅ!)
おぼろげに意識を覚醒させてきたコナンは、左小指の痛みで完全に眼がさえる。
「起きたか坊主?」
「……あんたは?」
「俺は愚地独歩だ、勇次郎の放送を聞いて覚悟とヒナギクって姉ちゃんと一緒にお前ぇさんを助けに来たんだ」
独歩は少しでもコナンの信頼を得易い様に、覚悟の名前を出す。
「他の2人は? それと勇次郎がどうしてるか知らないか!?」
即座に状況把握の為の質問に入る。たとえ寝起きであっても、必要と在らばコナンの頭の回転は速い。
「覚悟は勇次郎の足止めだ。ヒナギクは、覚悟の応援に行った」
 
(勇次郎と覚悟さんが交戦してるのか……)
コナンは考える、勇次郎と覚悟の戦闘において如何に死者を出さずに済ますかを。
覚悟が勇次郎に勝ったなら、それは比較的容易い。
自分が説得すれば、覚悟は話の分からない人間ではないだろうから。
問題は勇次郎が勝っている場合だ。
例え殺害の現場に居合わせ、自分が直接説得に当たっても応じるかどうか分からない。
(どっちにしても、戦闘が行われている場所に行ってみない事には始まらねーか。
 いや、その前に逃げる足を用意しないと…………)
 
「坊主、お前ぇさんを何処かで……」
「坊主じゃねーよ。江戸川コナン、探偵さ」
「…………コナンお前ぇさんを何処かで休ませて、俺も覚悟の応援に行きてぇんだが……」
「もしかして、策も無く行くつもりか?」
「……どういう意味だ、そりゃ?」
「俺に勇次郎を説得する策が有るって意味さ」
 
策と言うより賭けだ。しかも分の悪い。
コナンは心中、そう自嘲した。

 ◇  ◆  ◇
396悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:20 ID:Y3XLwTmY

打ち付ける雨の勢いが強まっても、覚悟は破邪の構えのまま動きを見せない。
勇次郎がゆっくりと歩み寄る。
(やはり一流の戦士、歩む姿に一分の隙も見てとれぬ!)
両者の制空権が触れ合うも、共に攻撃に出ない。
更に勇次郎が間合いを詰める、それでも攻撃は出ない。
勇次郎の歩みは止まらず、胸が覚悟の左手と接触する。
「邪ッ!!」
構えの無い体勢から、知覚すら不可能と思われる速度で勇次郎の右拳がくり出される。
だがそれが覚悟に届く前に、覚悟の右拳が勇次郎の顔面に届いていた。
勇次郎は地面と水平に飛び、民家を一軒貫通する。
 
(カウンターを喰らっただと!? この俺が!!?)
世界中のあらゆる格闘技に精通する、勇次郎の理解を超えた一撃。
覚悟が今放った技、零式防衛術『因果』は考えられない程精妙無比な技術で勇次郎の威力を返した。
勇次郎が起き上がり、先程の技の対策を考える。
覚悟は充分な迎撃体勢を取ったからこそ、勇次郎の威力を返せたのだ。
ならばカウンターを打てぬ、死角を衝けばいい。
ちょうど地下鉄駅で、DIOを相手にした時の様な戦法だ。
 
民家を迂回し迫り来る勇次郎の姿が、覚悟の眼前まで来て突如視界から消えた。
視界から見失っても、覚悟は勇次郎の気配を捉えている。
左斜め後ろ。そこから覚悟の腹に勇次郎の蹴り。回避も防御も間に合わない。
勇次郎の居る左斜め後ろに向き直る。否、もうそこには居ない。背後から勇次郎の拳。
(速い! 因果を極める間が取れぬ!!)
勇次郎の戦術は、覚悟を軸に周囲を高速で撹乱し移動しながら死角から打つ。
言葉にすると平易だが、対人戦でそれを実行するは至難。
まして覚悟は体捌きにおいても、卓越した技術を持っている。
人間の限界を思わせる覚悟の速度と技量を相手取り、何故勇次郎は撹乱を出来るのか?
答えは単純、勇次郎の動きが人間の限界を凌駕したものだからだ。
 
397Classical名無しさん:08/04/28 19:22 ID:MM6k1vUk
             
398悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:22 ID:Y3XLwTmY
 
(零式鉄球 体内吸引!)
覚悟の体内にある8個の零式鉄球が、形状を変え表皮に露出。
「零式鉄球 防弾形態!!」
皮膚の56%を鎧化した。
勇次郎は異形と化した覚悟を見ても、意に介さず攻めを続ける。
覚悟の胸に死角からの蹴り。貰いながら鉄甲で覆われた拳を返す。
反撃は勇次郎の腹に当たった。
勇次郎と言えど、攻撃をする瞬間は動きが止まる。
因果は出来なくとも、回避や防御を捨てれば相打ちは可能。
 
常人なら一撃で死に至らしめる打撃を、無数に交差させる両雄。
嵐の如き勇次郎の攻撃は、一向に勢いが衰えない。
覚悟も打ち返すが後手になる為、どうしても威力で負ける。
その上勇次郎の精度は上がり、零式鉄球防弾形態の隙間を狙い打って来た。
徐々に覚悟が押し負けていく形になる。
 
「ぐはッ!!」
覚悟の鉄甲の無い脇腹に、勇次郎の拳が刺さった。
覚悟が体勢を崩し、後ろに踏鞴を踏んだ。
勇次郎が渾身の拳を振るうべく、大きく踏み込む。
その眼前に金属製の球が飛来した。
「零式鉄球 防熱膜形態!」
球は勇次郎を覆いつくさんと、薄く広がっていった。
(フン、虚仮脅しにもならぬ!!)
更に強く踏み込み、零式鉄球を身体ごと突き破った。
その向こうで覚悟は破邪の構えを取り、勇次郎を真っ向から待ち構える。
(誘いか!? 賢しい真似を!)
今から拳を打つのを止める? いや、無理に止めれば無防備で動きが止まりそこを狙われる。
(面白ぇ!!)
399Classical名無しさん:08/04/28 19:23 ID:JO.lxTYk
400悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:23 ID:Y3XLwTmY
勇次郎は破邪の構えに、渾身の拳を放つ。
覚悟はそれを因果で迎え撃った。

 ◇  ◆  ◇

コナンと独歩は、合流した地点から近くの車のマークの付いた看板がついた店に立ち寄った。
その店は、以前コナンが神楽と入った店である。
ガラス壁の穴もその折に、神楽に開けられたものだ。
コナンは再びその穴から、今度は独歩と乗用車に乗って出て来る。
運転をする独歩は免許を持っていないが、コナンに運転方法を教えて貰っていた。
独歩の持つ集中力と勘の良さに、教えるコナンの要領の良さが相まってすぐに基本的な運転方法は学習出来た。
それでも車の調達と出発に時間を取られ、独歩は焦りを抱えながら覚悟の下へ急いだ。
そもそも何故独歩は、コナンと車を調達したのかと言うと
仮に覚悟が勇次郎に敵わなかった場合に3人連れで逃走出来る手段として、コナンに薦められたからだ。
(確かに車が在った方が逃げられる確率は高い。だがオーガが相手で、車に乗り込んで逃げる隙が有るかどうか……。
 …………この坊主は、自分が何とか隙を作ると言っていたが……………………)
独歩は助手席に座る、コナンの横顔を覗く。
就学するかしないか位の、幼い子供にしか見えないが
その話振りからは年齢不相応所か、独歩が出会った事も無いほどの知性を感じ取れる。
 
コナンは車を調達しながら、独歩に自分が立てた作戦を聞かせていた。
自分が勇次郎を、脱出への情報を餌に殺人を抑制し主催者側に1人か2人居る切りの強者への戦いに向け誘導してきた事。
それを基に、勇次郎を来るべき対主催との戦闘の主戦力として味方に組み込む案。
だからコナンが勇次郎の戦いに割り込んで交渉を行い、その間に他の者は勇次郎から車で逃げる。
それがコナンが独歩に聞かせた、作戦の概要だ。
勇次郎を良く知る独歩には、どう考えても不可能としか思えない作戦。
しかしコナンが語ると、不思議に現実味を帯びて聞こえる。
401Classical名無しさん:08/04/28 19:23 ID:lnjpzCOo
402悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:24 ID:Y3XLwTmY
「勇次郎は、簡単に手綱に繋がれる奴じゃねぇぞ?」
「真っ向から戦いを挑むよりましさ。3人の中じゃ1番戦力が高いから、覚悟さんが足止めをしたんだろ?
 もしその覚悟さんが敵わなかったら、3人で掛かっても結果は同じだ。勇次郎は、数で挑めば何とかなる相手じゃない」
「…………ハッ。嫌な事言う坊主だね、お前ぇさんは」
「だから坊主じゃねーって」
軽く笑って言葉を返しながら、独歩はますますコナンに感心する。
独歩の簡素な説明で、的確な戦力分析までやってのけた。
本当にコナンなら、勇次郎を手玉に取れるかもしれない。
  
「しかし、勇次郎相手に交渉とは…………見上げた度胸だなコナン」
「度胸があって、やってる訳じゃねーよ。他に手段の取りようが無かっただけだ……」
コナンは日常的にそうしてる子供の真似を、既にしていない。
もうそんな余裕さえ、コナンには無い。
今は大人の探偵として独歩の信頼を得る、それが今のコナンの戦術だ。
「どうやらその先で、勇次郎が闘り合ってるみてぇだぜ」
独歩が指し示す先には、民家しか見えないが
独歩には気配か何かを感じ取れているのが、その緊張した面持ちから見て取れる。
「独歩さんここから戦闘の現場を視認したら、勇次郎に見付かるかな?」
「多分な。だが闘り合ってる最中なら、こっちに仕掛けちゃ来ねぇさ」
コナンは車を降り、建物の陰から勇次郎の戦闘を窺った。

 ◇  ◆  ◇
403悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:25 ID:Y3XLwTmY

ブロック壁に叩きつけられる衝撃で、覚悟は目を覚ました。
混濁する意識で、自分が戦いの渦中にあった事を思い出し更に記憶を探る。
勇次郎に因果を放ち、相打ちになった所で意識が途切れたと思い出した。
(相打ち!? 因果の極まりが、不十分だったか? いや、技の入りに不備は無かった!)
因果は、敵の威力を受けずにそのまま返す零式防衛術の奥義。
(技の極まりが完全なれば、相打ちになる事はありえぬ筈!!)
地を這う様に身を低くして、勇次郎が駆けてくる。
覚悟は再び因果を打つべく、構えを取る。
一度の相打ちで、零式の技への信頼は揺るがぬ。次こそは因果で以って、悪鬼を堕とす。
 
勇次郎が因果の間合いに入る。
予備動作の無い勇次郎の右拳が、覚悟へ放たれた。
それを殺す体勢で、覚悟が右拳の因果を打ちに入る。
――――――因果が極まった。
そう覚悟が思った刹那、覚悟の右拳の下に勇次郎の上体が潜り込んだ。
全くの不意を衝いた勇次郎の行動に、まるで認識が追い付かない。
その覚悟の顔に、勇次郎の踵が叩き込まれた。
 
アスファルトに穴が開く勢いで、地面に叩きつけられた覚悟は
ややあって焦点の定まらない目を開き、震える頭を起こそうとする。
その顔面を勇次郎が殴り付けた。
覚悟の鼻骨が折れる。
もう一度勇次郎が顔面を殴打。覚悟は鼻血を吹き出した。
勇次郎が腕を振り上げる。
覚悟は両腕を眼前で交差させる。
拳が覚悟の胸に落ちた。
「どうした……防御するんじゃないのか?」
404悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:26 ID:Y3XLwTmY
更に覚悟の胸を殴る。
覚悟の肋骨は折れ、胸骨は砕けた。
それでも反撃の出来ない覚悟の胸を殴る。
勇次郎は暴力の愉悦に浸った。
この類稀なる戦士である覚悟を、自分の手によって叩き潰し思う様に打ちのめしている。
(最高だ!!)
勇次郎の全身が、細胞が暴力の喜悦に叫びを上げる。
叩く! 打つ! 潰す! 圧す! 抉る! 砕く! 喰らう!
トドメを刺さずに情報を引き出す? 戯言を! この至福以上に優先される事などあるものか!!
魂の底から暴力への、加虐への、殺傷への渇望が止まない。
暴力への意思とも、殺傷への本能とも付かぬ黒が勇次郎を満たす。
突如勇次郎は無造作に背後に腕を払い、飛来した矢を叩き落す。
振り返る勇次郎の背後から少し離れた場所に、ボウガンを構えたヒナギクが居た。
 
完璧に不意を衝いた筈の、ボウガンの攻撃があっさり払われヒナギクは困惑する。
(矢を素手で払い落とすって!……………………上等じゃない、慣れない飛び道具にはもう頼らない!)
ヒナギクは、ボウガンを仕舞い構えを取った。
「……ほう、今度は逃げ出さないのかい?」
軽薄な勇次郎の調子に、ヒナギクは歯噛みする。
「勇敢なお嬢さんに敬意を表して、こいつで相手をしてやろう」
勇次郎はヒナギクに向けて右手を伸ばし、中指と人差し指を立てた。
勇次郎の意図が読めず、困惑するヒナギクに構わず
シュッ、シュッと声を出しながら2本の指を振る。
(…………もしかして、指2本だけで私と戦うつもり!?)
ヒナギクはかつて無い程、怒りが込み上げた。
ヒナギクとて、勇次郎を甘く見ていた訳ではない。
こうして対峙しているのも、決死の覚悟を振り絞っての事である。
それを目の前の花火と放送で人を弱者呼ばわりして呼び寄せた男は、指で迎え撃とうとしている。
何処まで人を舐めれば気が済むのか!
 
405Classical名無しさん:08/04/28 19:27 ID:lnjpzCOo
支援
406悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:27 ID:Y3XLwTmY
 
「武装錬金!」
ヒナギクは大腿から、先に鎌の付いた多関節のアーム――バルキリースカートを伸ばしながら
勇次郎へ向けて走り出した。
走る勢いを殺さず、前方の地にバルキリースカートの鎌を刺し棒高跳びの要領で空へ舞う。
高さへの恐怖を押し殺す。
自身の体とアームをバネにして、勇次郎の頭上を越えるまで飛んだ。
雨の中で頭上は、雨滴が目に入る為死角となる。
そのヒナギクの読み通りか、勇次郎はヒナギクを見やりもしない。
「ハラワタをォォォッブチ撒けろォォォォォッッッ!」
高速で全身をきりもみ回転させ、自由落下しながら鎌で勇次郎に切りつける。
突如ヒナギクの回転が止まり、切りつけた勢いが全て吸収される。
個別に高速回転し切り掛かった筈の4本の鎌が、勇次郎の2本の指の間に収まっている。
そのまま指2本で、ヒナギクは投げ飛ばされた。
バルキリースカートの最大威力の攻撃が、指2本で受けられた。
ヒナギクは起き上がり、勇次郎を周回する。
そして可能な限りバルキリースカートの鎌で、多角的な攻撃を仕掛ける。
手数に拠る攻撃に切り替えるが、やはり通用しない。
勇次郎の2本の指に、バルキリースカートの攻撃が全て防がれる。
「……ッ!!」
逆に隙を衝かれて、勇次郎に腹部を叩かれ倒れる。
(な、何でこんなにデコピンが効くのよ!!?)
痛みに蹲りながら、バルキリースカートの3本の鎌を勇次郎に向ける。
(……!? 鎌が1本足りない?)
ヒナギクは視線を巡らして鎌を探し、遂にそれを見付ける。
勇次郎の指の間に。
「お遊戯なら一人でやってな」
そう言い放ち、勇次郎はヒナギクの股下に鎌を投げ飛ばす。
鎌はヒナギクの脚を掠め、地面に刺さった。
 
407Classical名無しさん:08/04/28 19:27 ID:MM6k1vUk
     
408悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:28 ID:Y3XLwTmY
 
ヒナギクは尻餅を付いたまま立ち上がれない。
立ち上がっても、どう戦えばいいのか見当も付かないのだ。
彼我の戦力差は圧倒的、どう考えても絶望にしか結論は至らない。
もはや座して死を待つのみに思われたヒナギクだが、何故か勇次郎からの攻撃は来ないでいた。
勇次郎はヒナギクではなく、立ち上がる覚悟を見ていた。

 ◇  ◆  ◇

「後はさっき説明した手筈通りに、動いてくれ。俺と反対方向から覚悟さん達に近付き
 俺が説得に当たってる間に、隙を見て3人で逃げる。いいね?」
独歩はコナンの作戦に無言で了承する。
幾ら分の悪い策だと思っても、代案が思いつかない以上はコナンを信じる他は無いのだ。
「それと俺のデイパックをあげるよ。もう要らないしな」
コナンは独歩に、デイパックを差し出す。
「おい、死ぬ気が無いならおまえが持ってろよ」
「もし作戦が成功すれば、勇次郎と同行するから俺に武器は要らなくなる。
 失敗なら命は無い。何れにしろこいつは要らねーよ」
やはり理屈ではこいつに敵わない、そう思いながら独歩はデイパックを受け取る。
「……コナンよ、今更無茶するななんて見当違いは言わねぇけどよ
 探偵だろうが、無理だとなったら命を守る為に逃げ出すのは恥でも何でもねぇぜ?」
「分かってるさ。もう、誰も死んで欲しくないから行くんだよ。
 血塗られた鬼のゲーム(殺人)に、終了のホイッスルを鳴らす為にな」
そう言い残し、コナンは独歩に背を向け去って行った。

 ◇  ◆  ◇
409Classical名無しさん:08/04/28 19:28 ID:MM6k1vUk
       
410悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:29 ID:Y3XLwTmY

覚悟は満身創痍ながら、ヒナギクを愚弄された怒りに立ち上がる。
(怒りを胸に沈めてはならぬ。怒りは両足に込めて、己を支える礎とせよ)
「まだやらせてくれると言うのか……………………」
覚悟に勝算は無い。
だが、元より勝算を計っての戦いをする覚悟では無い。
(我が身は牙を持たぬ人の剣なり。この身が肉片になろうとも、牙を持たぬ人を守るのみ)
覚束無い足取りで立ち上がる覚悟に、喜色を浮かべ勇次郎が歩み寄る。
 
「範馬勇次郎は、主催者の打倒に必須だ!!!」
 
勇次郎が声のした方向へ向くと、コナンが立っていた。
 
勇次郎も覚悟もヒナギクも、意味が分からないと言った様子でコナンに注目している。
場に居る全員が、コナンの話を聞く体勢になっているのだ。
ここまではコナンの作戦通り。
「覚悟さん、勇次郎はこの先不可避な主催者との戦闘において必要不可欠な戦力だ!
 今は説明出来ないが、絶対に必要不可欠だという根拠が有る!」
主催の戦力は未知数である。故にコナンは、可能な限りの戦力を揃えるべく勇次郎を説得した。
しかし主催の戦力は未知数なのだから、勇次郎が必要不可欠だという根拠は無い。
つまりコナンの嘘である。
「だから勇次郎は殺すのは勿論、戦闘不可能になる程の負傷も負わせてはいけないんだ」
やはり覚悟もヒナギクも、コナンの意図が掴めない様子だ。
「勇次郎、これで覚悟さんとヒナギクさんはお前とまともに戦えないぞ!! 2人とも脱出を目的としてるんだからな!」
勇次郎の反応は無い。
「お前がこれ以上覚悟さんとヒナギクさんを攻撃する事は、お前の怯えと言う事になる。
 つまりお前の負けだ! 2人とまともに戦いたかったら、この殺し合いから脱出してからだ。そうだよな!?」
411Classical名無しさん:08/04/28 19:29 ID:lnjpzCOo
 
412Classical名無しさん:08/04/28 19:29 ID:JO.lxTYk
413Classical名無しさん:08/04/28 19:30 ID:MM6k1vUk
               
414悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:30 ID:Y3XLwTmY
勇次郎は戦闘の相手を選ぶ。それは市役所で、コナンと新八を無視した事からも明らかだ。
ならば勇次郎と敵対する者を、条件から外せばいい。
例え勇次郎が求める様な強者でも、まともに戦えなくなれば弱者と変わらない。
そうなれば再び戦える様になるまでは、戦闘を保留せざるを得ない。
「それとも弱い者苛めをして、満足出来るのか勇次郎さんがよ!?
 偉そうに兵ぶっておいて、相手が抵抗出来ない状態でしか戦えないのか!!?
 だったら好きにしろ!! 俺の言う事なんか聞く必要ねーよ!! 俺の方も弱い者苛めしか能の無い腰抜けに、用は無いからな!!!」
勇次郎の強者を求め、己の強さを顕示しようとする気性ならこの指摘は無視出来ない筈だ。
そう信じて、コナンは叫んだ。
「……分かったぜ」
勇次郎はそう呟く。
そして次の瞬間に姿を消した。
(……!!)
何時の間にかコナンの顎が、勇次郎につかまれていた。
「よぅく分かったぜ、貴様は生かしておけないとな」
 
勇次郎自身は何を言われようと、笑って聞き流す事も出来る。
何を言われようが、いざとなれば無視すれば良いのだから。
だが今コナンがやった事は、目の前の覚悟という上等な料理に蜂蜜をぶちまけるが如き所業。
それは勇次郎にとって、絶対に許せない事だった。
勇次郎はコナンの顎の骨を、周囲の肉毎引き千切った。
コナンは内部が露出した喉と口から、大量の血を流し倒れる。
 
「キサマ…」
何処にそんな力が残っていたのか、覚悟が勇次郎に向かって行く。
路地から駆けて来た独歩が覚悟の腹を殴り、気絶させる。
そして覚悟を肩に担いだ。
「嬢ちゃん、逃げるぞ!!」
独歩はヒナギクに叫ぶ。
 
415悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:31 ID:Y3XLwTmY
 
「そう何度も逃がすかよ」
独歩に向かおうとする勇次郎の足が止まる。
まだ息があったコナンが、『ゴールド・エクスペリエンス』で殴ったマンホールから
蔦が伸び、勇次郎の両足に巻き付いているからだ。
 
「コナンくんはどうするのよ!?」
「顎を引き千切られたんだ、生きていられる訳ねぇだろ!!」
辛そうに顔を歪ませ、独歩が叫ぶ。
ヒナギクも奥歯を噛み締める。冷静に考えれば、コナンはもう助かるはず無いのだ。
 
「フン、足止めのつもりか?」
勇次郎は足下の蔦に手刀を打ち込む。
「ッッ!!!」
勇次郎は自分の手刀を打たれた様に、凄まじい勢いでアスファルトに叩きつけられる。
事実、勇次郎は自分の手刀を受けた。
『ゴールド・エクスペリエンス』で生み出された生物への攻撃は、そのまま攻撃した者に返っていくのだ。
 
「さあ逃げるぞ、早く!!」
「嫌よ! ここで逃げたら、何の為に来たのか分からないじゃない!!」
「そうかい! じゃあ、俺は覚悟を連れて逃げるぜ! こいつは絶対死なす訳にはいかねぇからな!!
 けど言っておくぜ。嬢ちゃんが残っても何にも出来ねぇ、無駄死にするだけだ! コナンは何の為に命を賭けた!!?」
ヒナギクは奥歯を痛い位に噛み締める。
その腹に独歩の正拳が入った。
意識が途切れたヒナギクを、覚悟と反対の肩に担ぎ元来た路地に走り出す。
 
顎を引き千切られたのに、コナンに痛みはほとんど無い。
痛みのみならず、感覚も意識も薄れていく。
ただ死が近いと言う事だけが、コナンに理解出来る。
殺人を止めに来た筈が、結局それは防げなかった。
江戸川コナン――この場合は工藤新一か?――という被害者が出てしまった。
416悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:31 ID:Y3XLwTmY
(探偵が殺人を止めに来て、犯人に殺されるなんてよ…………小説だとしたら冴えないラストだぜ)
「取るに足らぬ、羽虫の如き餓鬼が…」
勇次郎が怒りの形相で、こちらに這って来る。
(誇り高い勇次郎様があんな無様な格好をさせられてるんだから、そりゃ怒るだろうな……)
「よくもここまで、この俺をコケにしてのけたものッッ!!」
(ハハッ……放っておいても俺は死ぬってのに、トドメを刺して楽にしてくれようってのか。
 それはご苦労なこった…………)
勇次郎はコナンの胴体の上へ、腕を振り上げる。
何時ぞやの時と違い、今度は外さないだろう。
コナンが最後に思うのは、服部や覚悟等この殺し合いの中でそれに反抗する者達の事。そして――
(後は頼んだぜ…………この殺人ゲームで、哀しいバッドエンドを迎えるのは…………俺で最後にしてくれ
 ……………………蘭、すまない…………最後までお前に真実を伝えられなくて…………………………………………)
勇次郎の腕が振り下ろされる、それがコナンの最後の知覚となった。

 ◇  ◆  ◇

予めエンジンを付けっぱなしにして待機させておいた車の後部座席に、怪我の重い覚悟を横たわらせ
ヒナギクは助手席に座らせて、独歩は車を発進させる。
バックミラーで、勇次郎が追って来ない事を確認しようやく一息ついた。
助けに来た筈のコナンを死なせ覚悟は重傷、救出作戦は無残な結果に終わった。
独歩は勇次郎を思い出す。
対峙してはっきり分かった。
もはや自分とは強さのレベルどころか、次元が違う。
元々人間離れした怪物だったが、今はもう映画に出てくる様な怪獣に近い。
為す術も無く逃げ出した事を、悔しいとさえ思えない。
一介の武術家が、1人でどうこう出来る対象では無くなったのだ。
仮に今の勇次郎を倒せたとしても、味方の被害は甚大なものになるだろう。
独歩は考える。もう今の勇次郎は避けて通る以外、脱出の可能性は無い。
(いや、もう一つ方法があったな……)
あるいはコナンがそうしようとした様に、味方に付けるしか無いと。
 
417悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:32 ID:Y3XLwTmY
 
【江戸川コナン@名探偵コナン:死亡確認】
【残り13人】
 
【F-3 中央部 2日目 早朝】
【愚地独歩@グラップラー刃牙】
[状態]:体にいくつかの銃創、左肩に大きな裂傷
[装備]:キツめのスーツ、イングラムM10(9ミリパラベラム弾32/32)ニードルナイフ(15本)@北斗の拳454カスール カスタムオート(0/7)@HELLSING
13mm爆裂鉄鋼弾(35発)ベレッタM92(弾丸数8/15)
[道具]:基本支給品一式×2、神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂、ジャッカル@HELLSING(残弾数1)、 陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた、首輪×2
    ハート様気絶用棍棒@北斗の拳 、懐中電灯@現地調達、包帯と湿布@現地調達 スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
    鷲巣麻雀セット@アカギ、 空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:闘う事より他の参加者(女、子供、弱者)を守る事を優先する
1:勇次郎から逃げる。
2:ジグマールを見付け出し倒す。
3:学校へ行き、アカギと合流。鳴海の事を伝える。
4:ゲームに乗っていない参加者に、勇次郎の事を知らせる。
5:劉鳳、ジョセフ、ケンシロウ、服部、神楽の捜索。勇次郎、エレオノール、川田、ジグマールには警戒。
6:可能なら、光成と会って話をしたい。
7:可能ならばエレオノールを説得する。
8:勇次郎を避けて脱出するか、味方に付ける。
[備考]
※パピヨン・勝・こなた・鳴海・覚悟・村雨・ヒナギク・かがみと情報交換をしました。
※刃牙、光成の変貌に疑問を感じています。
※こなたとおおまかな情報交換をしました。
※独歩の支給品にあった携帯電話からアミバの方に着信履歴が残りました。
※BADANの存在を知り、かがみから首輪のステルス機能の事、解除方を知りました。また零の暗雲についての推測も知りました。
※コナンから勇次郎が首輪解除と主催者側の強者との戦闘に興味を持っていると聞きました。
418Classical名無しさん:08/04/28 19:32 ID:JO.lxTYk
支援!
419悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:33 ID:Y3XLwTmY

【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 顔と手に軽い火傷と軽い裂傷。右頬に赤みあり。気絶。
[装備] バルキリースカート(核鉄状態)@武装錬金 シルバースキン(核鉄状態)@武装錬金
[道具]支給品一式、ボウガン@北斗の拳、ボウガンの矢16@北斗の拳
[思考・状況]
基本:BADANを倒す。
1:ラオウに復讐する。(但し、仲間との連携を重視) 、斗貴子については戸惑い
2:覚悟と共にS-3駅 へ向かい、村雨と合流。その後神社に居ると思われるラオウを倒す。
3:劉鳳、ジョセフ、ケンシロウ、服部、神楽の捜索。勇次郎、エレオノール、ジグマールには警戒。
4:3が終わった後、学校へ行く。
5:川田を説得する。
6:勇次郎を倒す。
[備考]
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです
※桂ヒナギクのデイパック(不明支給品1〜3品)は【H-4 林】のどこかに落ちています
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました
※バルキリースカートが扱えるようになりました。しかし精密かつ高速な動きは出来ません。
 空中から地上に叩きつける戦い方をするつもりですが、足にかなりの負担がかかります。
※かがみから首輪のステルス機能の事、解除方を知りました。また零の暗雲についての推測も知りました。
420Classical名無しさん:08/04/28 19:33 ID:lnjpzCOo
支援
421悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:34 ID:Y3XLwTmY

【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に火傷(治療済み)、頭部他数箇所に砲弾による衝撃のダメージあり、胴体部分に銃撃によるダメージ(治療済み) 頭部にダメージ、
    両腕の骨にひびあり、全身に強度の打撲、肋骨8本骨折、鼻骨骨折、胸骨粉砕骨折、気絶、零式鉄球在庫7個。
[装備]:滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)
[道具]:大阪名物ハリセンちょっぷ
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者BADANを必ず倒し、彼らの持つ強化外骨格を破壊する。
1:川田を説得する。
2:ヒナギクと共にS-3駅 へ向かい、村雨と合流。その後神社に居ると思われるラオウを倒す。
3:劉鳳、ジョセフ、ケンシロウ、服部、神楽の捜索。勇次郎、エレオノール、ジグマールには警戒。
4:斗貴子を牙無き人々の一人と見なし、守る。
5:2が終わった後、学校へ戻る。
6:村雨が再び記憶を失い、殺し合いに乗るようならば倒す
7:勇次郎を倒す
【備考】
※パピヨンの詳細名簿からケンシロウ、独歩の情報を得ました。
※こなたの死を知りました。それが川田のせいである事も知っています。
※パピヨンとアカギを全面的に信用しています。
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※かがみから首輪のステルス機能の事、解除方を知りました。また零の暗雲についての推測も知りました。
※主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選抜
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
422Classical名無しさん:08/04/28 19:34 ID:JO.lxTYk
423悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:35 ID:Y3XLwTmY
※2人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首2には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている
※2人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論
※三村とかがみについて
三村の吹き込んだ留守禄の内容を共有しています。
かがみと三村に対してはニュートラルなら姿勢です。
とにかくトラブルがあって、三村がかがみを恨んでいると事実がある、
とだけ認識しています。
※BADANに関する情報を得ました。
【BADANに関する考察及び知識】
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は驚異の技術を用いてある人物にとって”都合がイイ”状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては”どーでもイイ”状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。

【零の考察】
・ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外に発見。放電しているのを目撃。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
424悪鬼 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:36 ID:Y3XLwTmY

【F-3 北部 /2日目 早朝】
【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】
[状態]右手に小度の火傷、左手に大きな噛み傷。 胸板に軽い切り傷。 全身に中度の打撲。
   全身の至るところの肉を抉られており、幾つかの内臓器官にも損傷あり。
[装備]ライター
[道具]支給品一式、打ち上げ花火1発、拡声器@現地調達、フェイファー ツェリザカ(0/5) 、レミントンM31(2/4)
   色々と記入された名簿×2、レミントン M31の予備弾22、 お茶葉(残り100g)、スタングレネード×4
[思考] 基本:闘争を楽しみつつ、主催者を殺す。 (ただし、倒れた相手にトドメは刺さない?)
1:花火と放送に引き寄せられた参加者を待つ
2:アーカードが名を残した戦士達と、闘争を楽しみたい。 (ただし、斗貴子に対してのみ微妙)
3:首輪を外したい
4:S7駅へ向かいラオウ、ケンシロウを探す。
5:未だ見ぬ参加者との闘争に、強い欲求
6:コナンの言う、「主催者側にいるはずの強者」と戦いたい
7:鳴海の血中に在った物と同じ成分(生命の水)を摂取したい
[備考]
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。
※ラオウ・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました。
※生命の水(アクア・ウィタエ)を摂取し、身体能力が向上しています。
※再生中だった左手は、戦闘が可能なレベルに修復されています。
※アーカードより、DIO、かがみ、劉鳳、アミバ、服部、三村、ハヤテ、覚悟、ジョセフ、パピヨンの簡単な情報を得ました。
ただし、三村とかがみの名前は知りません。
是非とも彼等とは闘ってみたいと感じていますが、既に闘っている斗貴子に関しては微妙な所です。
※拡声器を使って他の参加者を皆殺しにすると宣言しました。宣言通りに行動するかは、後の書き手さんにお任せします。
※どの程度コナンの言葉に心動かされているかは、後の書き手さんにお任せします。
※近くにあるコナンの死体の頭部に『ゴールド・エクスペリエンス』のDISC@ジョジョの奇妙な冒険が挿入されています。
425Classical名無しさん:08/04/28 19:36 ID:MM6k1vUk
                       
426 ◆05fuEvC33. :08/04/28 19:37 ID:Y3XLwTmY
投下完了しました。
支援ありがとうございます。
問題点等があれば指摘お願いします。
427Classical名無しさん:08/04/28 19:39 ID:MM6k1vUk
     
428Classical名無しさん:08/04/28 19:40 ID:JO.lxTYk
投下乙!
覚悟VS勇次郎の濃密な戦闘描写による白熱バトルに燃えました!
独歩ちゃんもヒナギクも自分なりに頑張っていたというのに……やはり勇次郎は強い。
勇次郎の描写が特に素晴らしかったと思います!そりぁ勇次郎なら怒るわw
そしてコナン……かっこよかったぜ。一時の時とはうって変わってこんな変貌を遂げるなんて!最期の言葉もいい!
GJでした!!
429Classical名無しさん:08/04/28 19:41 ID:MM6k1vUk
投下乙ッッ!!
勇次郎、なんと言う迫力!
文から、台詞から、全てにおいて勇次郎の凄みが伝わってきました。
コナン、充分頑張ったよ。存分に眠れ。
覚悟、ヒナギク、独歩、彼らがどう動くのか……
GJ!

あと、指摘というか質問です。
GEはコナンの死に引きずられなかったのでしょうか?
430Classical名無しさん:08/04/28 21:25 ID:qDu8.55M
投下乙。
勇次郎……強い。実に強い。
自分の体質変化に気づいてますます手に負えなくなってるよ。
コナンもここまでの流れからしてそうなるよなぁ……GJ!

しかしドッポちゃん立ち直れるんだろうか、コレ……。
431Classical名無しさん:08/04/28 21:32 ID:zNPRVL3M
 嗚呼独歩ちゃん独歩ちゃん、まるで白馬での張飛のようだ…。

 「この虎殺し神心会100万の長、愚地独歩様がよォォ〜〜!
 逃げにばかり長けちまったじゃねぇかよ〜〜〜〜!
 情けねぇ、情けねぇぜッ!!」

 『蒼天航路』 よりの引用で御座いやす。
432Classical名無しさん:08/04/28 23:22 ID:/VP2xrfM
投下乙
勇次郎は本当につええなぁ
覚悟も圧倒する力を持つなんてもう誰にも止められないなこりゃ
そしてコナンの志は独歩ちゃんに受け継がれたかいかに!?
433Classical名無しさん:08/04/28 23:36 ID:alAV2Mr6
投下乙です。
最初の頃はバーローwww扱いだったコナンが…。
よく頑張った。本当によく頑張った。
434Classical名無しさん:08/04/28 23:38 ID:eNrzdjco
投下乙です。
コナンがここで退場か。
序盤の足手まといっぷりと後半の考察力とのギャップが良かった。
覚悟×ヒナギクカップルいいなぁ。
独歩ちゃんの茶々入れがなんとも。
435Classical名無しさん:08/04/29 02:05 ID:le/pETzc
投下GJ!
コナン・・・頑張ったよ、お前は。
勇次郎を説得しようとした時点でこうなるとは思っていたが
予想以上に頑張った。コナンにもGJ!
436Classical名無しさん:08/04/29 21:54 ID:Vfaw0zdA
ゴールド・エクスペリエンスのDISCはまだ使えるのか?
437Classical名無しさん:08/04/30 00:10 ID:RauOt8Vc
投票終了。
結果は明日中にお知らせします。
438Classical名無しさん:08/04/30 01:09 ID:2QN0jf/2
勇次郎強すぎる
今ならラオウすら圧倒するんじゃ無いか?
439Classical名無しさん:08/04/30 02:57 ID:7hmI9gbA
まだだ!ラオウには無想転生がある
まぁそれすらも戦力の差を埋めるかどうかはきわどいかもしれんが
440Classical名無しさん:08/04/30 19:48 ID:VwvXNIU2
ラオウが愛の力に目覚めればあるいは……っ

でも、そんなラオウは想像できないw
441Classical名無しさん:08/04/30 20:14 ID:RauOt8Vc
漫画ロワ 作品トーナメント編!!
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9318/1208602309/

結果発表です。
投票、ありがとうございました。
442 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 21:08 ID:1rOw3BOs
推敲のため時間をください。
早ければ夜中2時くらい、遅くても明日中には投下しますので。
よろしくお願いします。
443 ◆vPecc.HKxU :08/05/02 21:55 ID:5A9A/b3U
>>442
テメーは俺を期待させた…待ってやるからゆっくりやんな
444Classical名無しさん:08/05/02 21:56 ID:5A9A/b3U
アッー!
最古の4人がうち1人にトリつきで半暴言を(((;゚д゚)))
失礼しました…orz
445Classical名無しさん:08/05/02 22:05 ID:V/zSYsC.
こうしてドットーレは漫画ロワを去っていくのでありました。
後に残ったものは◆vPecc.HKxUの首吊り死体唯一つ
446Classical名無しさん:08/05/02 22:06 ID:1rOw3BOs
>>443-445
ごめん、ちょっと癒されるw
447Classical名無しさん:08/05/02 22:36 ID:tdB2HXHg
投下楽しみにしてます
448Classical名無しさん:08/05/02 22:43 ID:0n5WP8Ao
いいじゃあないの、ちゃんと承り太郎ってことはわかってくれるさ
ここの住民は
449 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:31 ID:1rOw3BOs
早めですが、推敲終ったので投下を開始します。
450Classical名無しさん:08/05/02 23:32 ID:BlqHVhok
 
451Classical名無しさん:08/05/02 23:32 ID:5hiqJPVI
                  
452神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:32 ID:1rOw3BOs

 砂で出来た山がいくつも存在し、風が吹くたびに砂が舞い、さらさらと流れ落ちていく。
 ただただ広大な砂漠が広がる中、対峙する男が二人。
 片方は黄金の身体に隻腕、カマキリ虫に似た仮面と触角を持ち、黒いマントをはためかせていた。
 もう片方は銀髪の痩身の男。鋭い顎と鼻、猛禽類を思わせるような視線で黄金の怪人を射抜いている。
 銀の髪を持つ者の名は、赤木。
 殺し合いに参加して、プログラムを潰すことにたった一つしかない命を投げだす、酔狂な男である。
 黄金の怪人の名はJUDO。
 仮面ライダーたちに大首領と呼ばれた男であった。
 その外見は参加者の一人、村雨良が変身したZXに酷似していた。赤木はZXの存在を知らないため、その事実に気づくことはないが。
 彼が今しがたコンビを組んでいた相手、パピヨンなら気づいたであろうが、赤木はパピヨンからZXの情報を得ていない。
 そこまで、信頼されていないということだろう。
 もっとも、その情報を得ても赤木は気にも止めなかっただろう。
 主催者と似た姿の男がいる。ただ、それだけの情報が手に入った、そうとしか思わない。
 それよりも、現在の状況が赤木にとっては興味深かった。
 膝をついて、お椀を振り下ろしたままの体勢で大首領を睨みつけているだけの赤木。
 赤木はゆっくりと口を開いた。
「半か…………丁か…………」



 赤木が歩くたびに、木製の床がギシギシ不快な悲鳴をあげてくる。
 視界に入るのはおおよそ、薄汚れたコンクリートの壁。赤錆が浮かぶ古い蛇口。風でガタガタうるさい窓。降りしきる雨。
 かなり年季が入った校舎を見回しながら、赤木はタバコを吸おうとして、自分がタバコを手に入れていなかったことを思い出し、僅かに眉を曇らせる。
 まあ、別に問題ないとパピヨンがいる方向へと視線を向ける。
 特に感情はこもっていない。せいぜい、パピヨンがここに来る。その事実を認識しているだけだ。
 赤木はパピヨンをどう見ているのか?
453Classical名無しさん:08/05/02 23:33 ID:xVNwm9GY

454神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:33 ID:1rOw3BOs
 覚悟と同じくこの殺し合いを壊す手札となりえるか? それとも、殺し合いを加速させかねない危険人物とみなすか?
(いや……どちらでもないな…………)
 赤木が周囲を見回すと、狙撃により焦げた廊下が眼に入る。
 川田という殺し合いに乗った男の狙撃でこなたはあっさりと死んだ。
 さっきまで運がよかった人間が、運に見放されてあっさりと逝く。
 これがあるから勝負場とは面白い。自分の値踏みさえ、上回る結果の到来。こなたのような少女でさえ、命を賭ける賭博場。
 ここには偽の勝負などありはしない。たった一つの命のやり取りする場。
 まさに狂気の沙汰だ。
 それこそ、赤木の望んだもの。赤木が求め続けたもの。
 もっとも、パピヨンの認識は違う。
 こなたの死に明らかに動揺を見せている。人間らしい感情を浮かばせている。
 おそらく、パピヨン自身もこなたに何らかの好意を持っていたのだろう。
 そして、見たところパピヨンは好意を持つことも、持たれることにも慣れていない。
 好意を持っていたこなたが、逝ってしまったのだ。
 パピヨンは奇しくも、放送直後のこなたと似た精神状態に陥ったのだ。
 とはいえ、あの時とは違い赤木としては馴れ合う気はないうえ、修羅場を潜っているパピヨン相手なら言葉をかける必要ないと放っている。
 同時に、赤木はパピヨンがその感情をどう処理するのか楽しみにしている。
 初めて遭遇するおおきな感情のうねりにどう対応するか。
 対応しだいによって、パピヨンがブタにも最強の手札にもなる。
 人の変わり節、誰にも訪れるそれが、今パピヨンに訪れていたのだ。
 ナギやこなたはそこを乗り切れなかった。なら、パピヨンは?
 クックック……と赤木は口角を上げ、そろそろパピヨンと合流しようかとその場を離れようとする。
 ふと、赤木は振り返った。
455Classical名無しさん:08/05/02 23:33 ID:BlqHVhok
  
456神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:34 ID:1rOw3BOs
 彼の後ろには何もない。赤木は無言で、再びパピヨンの元へと向かう。



 ぴっちりと全身を包む黒い全身スーツに蝶の仮面をかぶる男。
 言われずとも、蝶人パピヨン、その人である。
 爆発の跡を色濃く残す校舎にて、その背中にどこか力がない。
 ここに来てすぐ、月の光に身を晒したときのような、覇気がないのだ。
 普段は目立つ、寝そべれば小山を築く彼の一物も、今は黒いスーツの背景と化している。
 握る黒い核鉄を手に、パピヨンはこなただった物に背を向けて、赤木の元に戻るために道を歩く。
 雨が降りしきる音と、ギシギシと木製の床が鳴り、パピヨンの耳に不快ながらも、気分を紛らわせるのに役に立った。
 パピヨンは苛立つ。蝶人たる自分が、まるで人間みたいな、まるで昔の自分が持っていた感情に振り回されることに。
 彼は全てを捨てたはずだった。
 己の名も、己の家も、己のつながりも、己の家族も。
 全てを捧げて、人型ホムンクルスの力を手に入れた。
 その過程で犠牲になる人間など知ったことではない。なかには泉こなたのような善良な少女もいたのだろう。
 事実を取り繕うつもりなどない。罪だと糾弾したければ、すればいいとも思う。
 幾多の屍を犠牲にしても、死ぬのはごめんだったし、芋虫のように他人に軽んじられる日々など、地獄でしかなかった。
 自分はあの黒色火薬の色をした夜に生まれ変わったのだ。
 自分の人間の名など、捨て去ったはずだった。
 なのに、今のパピヨンはこなたの死に揺れている。
 教室で同級生が恋の話に浮かれているのを内心馬鹿にしていた。
 しょせんは雄と雌の生殖活動。そこにロマンを求めるなど、くだらない。
 そう思っていた。それが彼の感想であるはずだった。
 こなたの死に崩れた今のパピヨンにはそれを否定できるのか、自信はない。
457Classical名無しさん:08/05/02 23:34 ID:BlqHVhok
   
458神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:35 ID:1rOw3BOs
 こなたがいないことが無性に寂しい。
 そんな自分自身が許せず、パピヨンは苛立ちを募らせていった。
 赤木との合流までの時間が、やけに長く感じる。


「ふん。待ちきれずお前からきたか」
「…………クク。お前もまた……随分長い用足しだな……」
 パピヨンは赤木の見透かしたような視線を避け、苛立ちを示す。
 その様子に赤木は、見定めるように泰然と構えている。
 相手に見透かされるのは好きではない。人食い動物のような視線をもってねめつけるが、赤木はそれを面白い、という表情を返した。
 相手にするのも無駄だと判断し、パピヨンは覚悟と赤木よりもたらされた情報を統合し始める。
 パソコンを立ち上げても、『Dr伊藤』からの反応はなかった、ということもある。
 赤木の情報で抜けているところがないか、確認するのも悪くはない。
 いけ好かないが、謎の多い主催者側の情報を持つ貴重な相手。
 覚悟からの情報と合わせて、すべて自らの思い通りになると思い込んでいる主催者たちを叩きのめさねばならない。
 己の苛立ちを敵にぶつける。いささか乱暴だが、今までと変わらない。
 それに、自分ではそう思いたくないが、カズキやこなたなら、パピヨンが主催者を潰すのに賛同しただろう。
 その己の思考に、パピヨンは反吐が出そうになる。死者は喋らない。考えない。
 なのに、自分に都合のいい言葉を死者に求める。これでは津村斗貴子を笑えない。
 パピヨンは幻想を強く頭を振って振り払い、思考をまとめる。
 ツカツカとパピヨンは黒板に向かい、チョークを手にとって赤木に示した。
 赤木は静かに紙と鉛筆を取り出し、パピヨンの行動を待つ。
『お前が得た情報によれば、首輪は外見をステルスされている、ということだったな?』
『ああ。泉との外部の接触により判明したことだ』
『そして、敵の本拠地に迎撃装置の存在。監視体制が万全でない。首輪の構造は単純。赤木、お前は馬鹿か?』
459神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:36 ID:1rOw3BOs
『馬鹿……とは?』
『罠以外なんでもない。しかも、子供でも引っかかるか怪しいほど単純なもの。
こちらに有利な情報が多すぎる。敵に裏切り者が出ない限り、この情報を得ることは不可能だ』
『俺はこの情報、真実だと思う』
『根拠は?』
『一致している……いや、型にはまりすぎている、といった方がいいか』
『どういう意味だ?』
 パピヨンは不快感を示しながら、赤木の顔をうかがう。彼の表情は変わらない。
『俺が遭遇した参加者に、面白い制限を受けた男がいる』
『ほう? どんな制限だ?』
『その男は『人間ワープ』というアルター能力持ちだ。奴の意思一つで自在に移動が出来る。
しかし、奴の能力は制限を受けた。疲労の少ない能力に多大な負担を課し、距離をたった二百メートルまでに縮める。
まるで、奴の能力に恐れるように』
『…………なるほど。お前はこの迎撃装置のことを言いたいのか』
『理解が早くて助かる』
 パピヨンは舌打ちをし、赤木から聞いた迎撃装置のことを頭から引き出す。
 時速六百q以上の速度でないと避けることのできない雷。
 その攻撃を避けるのなら、何らかの乗り物で乗り越えるか、はたまた『人間ワープ』によって雷を避けながら敵の本拠地へと接近していけばいい。
 つまり、主催者側にとって『人間ワープ』を重く制限するのは必須だといえる。
 ここまで推理できれば、後は子供でも簡単に答えを導けれる。
 赤木は本拠地の情報が信実である根拠をもっている。
 ゆえに、この情報の信憑性が高い。そういいたいのだ。
『しかし、罠を仕掛けるなら美味しい餌を入れておくのが常套手段だろう。
本拠地の話が真実だとして、なぜそこまで信頼する?』
460Classical名無しさん:08/05/02 23:36 ID:5hiqJPVI
                    
461Classical名無しさん:08/05/02 23:36 ID:BlqHVhok
 
462神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:36 ID:1rOw3BOs
『そうだな。首輪の情報に嘘が仕掛けられていれば、俺たちは終わりだ。慎重になるのも無理はない。
むしろ、状況に流されないその姿勢、評価に値する』
『黙れ。俺はお前の評価など、興味はない』
『知っている。だからこそ、そこを認識しているからこそ、俺はこの情報が信憑性が高いと考えている』
『なんだと?』
 パピヨンは露骨に疑問を浮かべて、赤木を見る。
 赤木は、むしろパピヨンが信じないことが、おかしいという表情をしている。
 パピヨンはさらに苛立ち、チョークがあっさりと折れた。
『この話に虚偽が混ざるなら、首輪の情報だろう。しかし、与えられた情報はどうだ?』
 赤木は少し鉛筆を持ち上げ、やがて箇条書きに首輪の情報を書いていく。
『首輪の機能で、語られたことは、
1.霊的保護で外見をステルスされていること。
2.構造は単純。
3.監視は盗聴に頼りきり。その上、監視体制も万全でない。
俺たちにとって有利すぎる情報だ。警戒心を抱かないほうがどうかしている』
 パピヨンはもったいぶるなと告げようとするが、赤木が右手を差し出して制される。
 相手の思うように動かされるのは不快極まりなかったが、何とか耐えて続きを促す。
『そうだ、一つでも虚偽が混ざれば、俺たちは詰む。なおかつ、どれも俺たちに確証が持てない。
なにせ、俺と泉にこの話が真実だと確信できる情報が何一つないのだからな。なのに、俺たちにこの情報が届いた。
それこそが、この首輪の情報を真実だと告げている』
 確信を秘めた赤木の目がパピヨンを射抜く。絶対を信じるその強さに、パピヨンは不快な表情をさらに深める。
『俺と泉は、この学校に来て間がない頃にこの情報を送られてきた。
つまり、安全圏に逃げ出した俺たちを移動させるために虚偽の情報が送られてきた線は潰れる。
むしろ、禁止エリアで移動させるほうが確実だ。
次に可能性があるのは、俺たちの始末。しかし、先ほどの津村の様子を伺うに、奴らは任意で爆破できる。
そんな回りくどいことをする必要はない。俺たちを始末するための情報でないのは確実だ。この線もなし』
463Classical名無しさん:08/05/02 23:37 ID:BlqHVhok
  
464Classical名無しさん:08/05/02 23:37 ID:nmWbJy9s
 
465神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:38 ID:1rOw3BOs
 赤木は次々と可能性を潰していき、鉛筆を一旦止めてパピヨンに向きなおる。
 不敵な笑みは変わらない。やがて、赤木が一文を紙に追加した。

『一番ありえる可能性は……パピヨン、主催者は俺たちに来て欲しがっている』

 その文を見て、パピヨンは眉を顰めた。
 赤木を見つめる視線には、正気を疑う色が混じっていた。


「信じられない……という顔だな……」
「当たり前だ」
「ククク……パピヨン。どう考えても……おかしいだろ?
この参加者……多種多様といえば聞こえはいいが……まるで子供が遊びで選んだように……適当だ……」
 いきなり声に出す赤木に、パピヨンが憤る。
 当然の反応だ。しかし、赤木はやめない。
「パピヨン……お前はこの集められている人間に……何の疑問も持たないのか?」
『疑問などとっくに持っている。ここに集められた連中は規則性がない』
「そうだ……葉隠からの説明から察すれば……目的が二つある。
英霊を集めること。強者を選定すること。しかし……それは正しいのか?」
『今のお前の妄言よりはよっぽど説得力がある』
「クク……考えても見ろ。この弱者が優勝しやすい状況……強者が協力しやすい状況……どう考えても強者を選定するのに向かない……」
 強者が優勝する。そのためだけなら、トーナメントや勝ち抜き戦を行った方がいい。
 騙まし討ち、強者同士の相打ち、協力、明らかな共通の敵『主催者BADAN』。
 この殺し合いには、なんでもあり、そして殺し合いを妨げる要素に満ちている。
 ここに集められた強者は、潰し合いをしやすい者が多い。
466Classical名無しさん:08/05/02 23:38 ID:5hiqJPVI
                                 
467神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:39 ID:1rOw3BOs
 最初の広間での勇次郎の行動をみれば、好戦的でないと感じない奴はいない。
 勇次郎は、強者を、弱者を喰うために動く。強者との戦いは起こしやすい人物だ。
 そして、ラオウ。赤木が見る限り、ラオウもまた強者と戦うことを優先していた。
 この殺し合いは、弱者が強者に殺されるのと、強者が強者と潰しあう確率がほぼ同等である。
 また、恐怖に押し潰れた弱者がいたとしたら、と赤木は思考する。
 ケンシロウの話からすれば、エレオノールは騙まし討ちをした。
 覚悟やケンシロウ、鳴海のような強者は比較的、引っかかりやすいだろう。
 必ずしも強者が戦って死ぬような状況を作れるわけではない。
 それに弱者でも、強者にする手段はある。
 スタンドディスクやパピヨンが言う『本来とは違う形で発動する核鉄』など、弱者を強者にする手段などありふれている。
 どんな弱者でも勝ち抜ける可能性を持たすアイテム、この支給は強者を選定する、という目的とはずれている。
 強者だけにこれらのアイテムが支給される、というなら分かる。
 だが、実際はどうだろうか。御前、とかいう核鉄は三千院ナギに支給された。
 猫草はこなたに支給されていた。僅かとはいえ、彼女たちが優勝する可能性を上げている。
 また覚悟やケンシロウといった同じ志を持つものが戦うような状況を作りにくい。
 そして、『主催』の存在は、ケンシロウや覚悟といった正義感を結ばせるのに、一役買っている。
 この殺し合いは、明らかに強者の選定は不向きだ。
 覚悟の言っていた強者の選定が主催者の目的と外れる、という結論になる。
 パピヨンが黒板に文字を書こうとして、諦め、赤木に向き直って口を開く。
「待て、ならなぜ優勝者を選定するということだ?」
「クク……正しくは強者を選定したかったのだろう……主催者以外のBADAN勢がな……。
実際そうなのだろ? 名も知らない……主催者さん」
 赤木が告げると同時に、教室の端に揺らぎが生じる。
468神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:40 ID:1rOw3BOs
 金のカミキリムシのマスク。黒いマントで黄金のボディをおおう、仮面ライダーZXに似た黄金の怪人が現れた。


 いきなりの登場にパピヨンは警戒心を露にするが、赤木は右手で制する。
「はじめまして…………とでも言うべきか……?」
『構わん。我が名はJUDO。ワームよ、キサマはなぜその考えに至った?』
「……簡単なことさ。こんな酔狂なゲーム……キサマのような奴しか開催しないと思ったからさ……」
『ほう』
「俺はここで……鳴海やパピヨン、葉隠……おおよそ、ありえないような世界の人間とであった…………。
お前は……そいつらを連れ出せる力がある……。ここに俺たちがいる理由……それはお前の力だろ……?
おまけに、主催者連中……BADANだっけか? そいつらを自由にできる力がある……」
『だとしたら、どうだ?』
 赤木の問いにあっさりと答えるJUDO。その答えに、パピヨンが僅かに口角を下げるが、それだけだ。
「それだけの力……組織……権力……お前はこの世で必要なものを持ちすぎている……。
断崖絶壁……誰も立ち寄れない孤高の位置…………終わることなく続く成功の道…………。
お前の異能……どれほどの時を生きていたか……想像もつかない……。
だからこそ……分かる……。お前は……」
 赤木は静かにJUDO……大首領に歩み寄る。
 威圧を……常人なら動けなくなるほどの圧力を、そよ風のように受け流して眼前に赤木は立つ。

「お前は……飽いている…………!!」

 断言する赤木。とたん、風が吹き、窓がガタガタうるさくなる。
 パピヨンはただ傍観する。己の出番はまだだと告げるように。
469Classical名無しさん:08/05/02 23:40 ID:Ze45rObo
470Classical名無しさん:08/05/02 23:40 ID:5hiqJPVI
                                
471神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:41 ID:1rOw3BOs
「ぶっちぎりだと思っているんだろ……? 己の先頭を走るものが……誰もいないと。
誰もいない場所で……誰も届かない場所にいるんだろ……?
だからこそ、満たされない。お前が抱えているのは……大きな絶望だ……!
そういう奴こそが、この殺し合いを開催する……!」
 もはやそれは理論ではない。ただの決め付け、ただの妄想。
 なのに、それこそが真実であるように、それこそが世界の答えであるように、大首領を評していく。
「誰がこようが……誰が優勝しようが……いや、脱出しようが……お前は構いやしない。
ただその渇きが……飢えが満たせれば……それでいい……。
だが、それは無駄だ……JUDO…………!!」
 JUDOが赤木を興味深そうに見つめる。
「お前は俺と同類だ……。ただ、己の持つ力に……発散するものなしに……飽いていく…………燃え尽きていく……!」
 とたん、赤木の首輪が甲高い電子音を発する。
 BADANにとっては敬愛する大首領に向かって、同類だと言い切った赤木が許せないのだろう。
 しかし、赤木は一切首輪の音を、死が近付くのを意に介さない。ただ、大首領のみを視線を入れる。
「俺はここで……充実したぞ……。本物の勝負……いつ命を失うか分からない状況……まさに、命を賭けるのに相応しい。
JUDO、お前も来い……。お前もここに来て……俺たちのように勝負をすれば……その渇きは癒える……!!
成功し続ける生など……死が訪れない生など……何の「酔い」ももたらさない……!!
JUDO……お前こそ……この殺し合いに参加すべきだ……。
こい! 異能者よ、ここには……キサマすら殺せる…………濃厚な「死」がある!!」
 言い終えてただ大首領を赤木は見据える。ピッピッピッピ、と首輪の音は間隔を早くしていく。爆破はもうすぐだ。
 大首領がはじめて動き、顔を赤木へと向けた。
『黙れ』
 大首領の瞳が、輝いた。



 ヘルダイバーのアクセルグリップを握り締め、市街地をかけていく男が一人。
472神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:42 ID:1rOw3BOs
 民家を何軒も通り抜け、無機質に青から赤へと変わる信号のある交差点を疾風のごとく駆け抜けた。
 降りしきる豪雨に全身ぬれねずみだが、構わず進む。
 目指すのは学校。復讐の邪魔をしたと思わしき赤木、もしくはパピヨンの始末。
 今の自分はライダーマンヘルメット、ハネルコン、ライドル。
 支給品をかき集め、全力で復讐を果たす。たとえ、憧れた正義の象徴、仮面ライダーを汚しても。
 川田にとって柊つかさとは、そういう存在だ。己の全てを賭けて、生かしてやりたかった少女だ。
(思い出すな……最初にプログラムに巻き込まれたときを……)
 あの時、慶子を川田は守れなかった。その苦味を糧に、二回目のプログラムはくそったれな政府にカウンターパンチを食らわせることを誓った。
 まさか、ここで同じ気持ちを味わい、殺し合いに乗って生き返らせるなどという願いを持つとは思わなかった。
 自分が死んでいなければ、きっと二度目の消失の重さに耐え切れず自らの命を絶ったのかもしれない。
 たった一日の付き合いなのに、たった一日傍にいただけなのに、こんなにも想ってしまう。
 坊主頭に無精ひげの自分じゃ似合わないな……と自嘲しながら、身体を傾け交差点を右折した。
 ヘルダイバーの後輪が火花を散らしてすべり、排気音が甲高く無人の市街地に響いた。
(本郷さん……俺は殺す。仮面ライダーの力を使って。
いや、今の俺に『仮面ライダー』の力なんて相応しくない。この力は、この能力は……)
 バイクのスピードを加速させ、川田は進む。まるで、罪悪感から逃げるように。
 そうでなければ、崩れ落ちそうだったのだ。

「俺は……復讐の鬼だ!」

 かつて、ライダーマンヘルメットを装着した男と、同じ宣言をする。
 そうとは知らずに、そうとは気づかずに。
 後に、その男が仮面ライダーと名乗ったことも知らずに。


 ヘルダイバーを停車して、ライダーマンヘルメットによるカメラアイで校舎を探る。
473Classical名無しさん:08/05/02 23:42 ID:5A9A/b3U
 
474Classical名無しさん:08/05/02 23:42 ID:5hiqJPVI
                        
475神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:42 ID:1rOw3BOs
 窓際に移ったのは……パピヨン、そして赤木。
 好都合だ……川田は呟いて、両腕でハネルコンを持ち上げた。
 ライダーマンの強化服からもたらせる、身体能力はハネルコンの反動に耐えられる怪力をもたらせてくれた。
 もはや身体とハネルコンを固定する必要などなくなった。
 銃口を赤木とパピヨンの間を彷徨わせる。
 どちらを殺すか、一瞬だけ迷うが、構わず銃口を固定した。
 川田は照準がぶれないようにハネルコンのストックを肩に乗せ、ハネルコンの砲身を左腕で持ち上げる。
 右頬をハネルコンのストックにつけ、一定箇所に密着させた。膝をついて、銃口を徐々に持ち上げていく。
 かすかなぶれもなく、ハネルコンが固定された。
 ライダーマンヘルメットと、強化服がなければこうはいかなかっただろう。
 引き金に触れて、目を瞑る。瞼の裏に撃ち抜かれる覚悟の姿が再生された。
 ゆっくりと目を開いていくと、静かな炎が川田の目に表れる。
 急に、ピタリと雨が止んだ。
 ありえないことだったが、川田は構わなかった。いまさら、どんな奇跡が起ころうとも構いやしない。
 川田の右手の人差し指がゆっくりと引き金を押し込んでいく。
 まるで時の流れがゆっくりになったような状況だが、川田には馴染み深い感覚だ。
 凄まじく集中したときに起こる、周囲の認識感覚の異常な発達。
 砲身に火薬が広がる様子が見え、砲弾が放たれていく。反動が川田の肩を駆け抜け、身体が僅かに揺れる。
 砲弾は神速の勢いで飛び出し、校舎の壁に炸裂する。
 再び、花火のような爆発が校舎に轟いた。
 川田はライダーマンヘルメットを取り、タバコを吹かす。じっと、校舎から誰か飛び出てくるのを待ち続けた。



 カラン……と乾いた音と共に金属の塊が零れ落ちる。
476Classical名無しさん:08/05/02 23:43 ID:5hiqJPVI
                                     
477神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:43 ID:1rOw3BOs
 甲高い電子音を首輪は告げない。赤木の首には、一日中拘束していた枷が外れている。
 同時に、雨が降りしきる音が止み、あたりに静寂が訪れた。
 パピヨンは呆気に取られ、大首領を睨んでいる。
 大首領の念動力により首輪の外れた赤木は何事もなかったかのように大首領に試すような視線を送っていた。
『これでうるさい物はなくなった。続きをいってみろ』
 大首領は首輪だけでなく、雨に対してもうるさいと感じたのだろう。
 あっさりと、天候を操作して見せた。
 あまりの非常識な出来事。もっとも、ここにいる二人は気にしなかったが。
「ああ……お前はこの殺し合いに来るべき存在だ……。事実……お前は俺たちに来て欲しがっている……。
でなければ……俺たちに情報が渡るような状況なんてありえないはずだ……。
こうして……この場に現れるのがいい証拠……。お前は……一部始終……全てを知ることができる……。
霊的処置……そんなことができるのに……余りにも情報を得る手段が稚拙……。
つまり……BADANには霊的処置を施せない……。施せるのは……キサマのみ……!
キサマは俺たちの干渉が皆無……つまり、俺たちにキサマの元に来て欲しがっている……。
この殺し合いに……混ざりたがっている……!
首輪の霊的処置……つまり、英霊はキサマ自身……強化外骨格はこの殺し合いに混ざるための、身体……。
優勝者に……強者にBADANは強化外骨格を着せたがっていたが……お前は別。誰が着ようが、関係ない。
ただ、この殺し合いに混ざればいい……その、飢えを満たすために……」


『ただの戯れのつもりだったが……』
 大首領がゆっくりと動く。まるで山が動くような錯覚を感じたが、このにいる二人は揃って狂人。
 その程度で動揺はしない。
『なかなかどうして、面白い。
我にとって、虫けら(ワーム)の動向でここまで心を動かしたのは、キサマが初めてだ。
クク……たしかにどいつが優勝しようが、我は構わぬ』
478Classical名無しさん:08/05/02 23:43 ID:zacT0TqE
 
479Classical名無しさん:08/05/02 23:44 ID:BlqHVhok
 
480Classical名無しさん:08/05/02 23:44 ID:D0LU8MfM
 
481Classical名無しさん:08/05/02 23:44 ID:5hiqJPVI
                       
482神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:44 ID:1rOw3BOs
「どういうつもりだ?」
『お前は虫けらの強弱を気にかけるのか? アリが最強のアリを名乗ったところで、いったい我に何の価値がある?』
 要するに、人間とは違う生物だといいたいのだろう。
 軽んじられることを嫌うパピヨンが不快な顔をする。
「だろうな。それに、たとえ三千院ナギが優勝しようと……そこにいるパピヨンのように……身体を強化できる手段はある……。
肉体の優劣など……何の意味ももたらさない」
 ホムンクルスのことをいわれたパピヨンが不快の表情を深めるが、赤木の意識は大首領に向いていた。
 自分に似ている、異端に。自分と同じく、自らを持て余す存在に。
「JUDO……キサマの目的は……肉体を得ること。そのためにBADANを使っている。
だが……この殺し合いはただの遊び……。肉体を得る手段はすでにある……」
『後は……神降ろしの儀式を待つだけだ。それにしても、ここには邪魔者が多いようだな』
 大首領が呟いた瞬間、教室の壁が爆発をする。
 とっさに赤木とパピヨンは飛び退くが、爆風により壁に叩きつけられる。
 いや、赤木に限っては、叩きつけられるはずだった。
 赤木は宙に浮かぶ自分の身体を見つめ、大首領に視線を動かす。
『少し……移動する。続きはそこでだ』
 魔法陣らしき物体が宙に浮き、赤木がその魔法陣に吸い込まれていく。
 視界に光が広がり、やがて赤木の意識が拡散した。


 瓦礫に埋もれながら、パピヨンは静かに天井を見つめる。
 先ほどの襲撃者……川田とおよぼしき人物が再度襲ってきた。
 一度逃がした獲物を、今度こそはということか。
 パピヨンは笑う。
483Classical名無しさん:08/05/02 23:45 ID:xVNwm9GY


484Classical名無しさん:08/05/02 23:45 ID:zacT0TqE
  
485神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:45 ID:1rOw3BOs
 先ほどはこなたの死が影響したのか、赤木と大首領の会話に圧倒されるだけだった。
 なんと言う、蝶人パピヨンらしくない反応だと、自嘲する。
 これでは斗貴子を笑えないではないか。パピヨンは瓦礫を跳ね除ける。
 よく考えれば、赤木の言うとおりこの殺し合いには不審な点が多かった。
 弱者の強化、強化外骨格の存在、第一回放送で死者の復活を告げるほど、殺し合いに乗る人間の不足。
 一つの目的をかなえるにしては、余りにも不確定の要素しかない。
 だからこそ、赤木の推理は正しかったのだ。今の頭の冷えたパピヨンにも理解できるほど。
 敵は一枚岩ではない。あのJUDOという主催者、少なくともBADANという部下とJUDOは連携が取れていない。
 いや、連携を必要としていない。こちらの協力者の存在もそうだ。
 BADAN側の連中は驚くほど足並みが揃っていない。
 あの様子を見るに、JUDOのワンマン組織だったのかもしれない。なら、あの情報は十中八九正しい。
 首輪の手がかりは得た。JUDOとかいう奴も、こちらの行動を制限する気はないと知った。
 気をつけるのは、不揃いなBADANの連中。
(武藤……俺はやるぞ。やつらを、BADANを、あのJUDOを、そして……俺を翻弄したと勘違いしている赤木を、すべてねじ伏せる!
ああ……俺も甘くなった。泉があんな目に遭ったのが原因だ。もう、それは認める。逃げはしない。
だからだ、武藤、いず……こなた。俺は全てを賭ける。この殺し合いを潰すことに、蝶人パピヨンの全てを!)
 パピヨンは全身に力を込めて、地面を蹴る。
 まさに蝶人に相応しい跳躍。三階から一気に躍り出る。
 外に軽やかに着地して、川田を前にする。心なしか、パピヨンの股間は勢いを取り戻し、隆々とそそり立って存在を主張していた。


「いよ、一つ聞かせろ。お前が津村を殺したか?」
「そうだな。正確には違うが、殺すところまで追い詰めた」
「そうか、ならいい。ちょうどお前に用があるからな」
486Classical名無しさん:08/05/02 23:45 ID:VDAd519w
487Classical名無しさん:08/05/02 23:45 ID:V/zSYsC.
さげ
488神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:46 ID:1rOw3BOs
 川田は右前方にヘルダイバーを止め、ライダーマンヘルメットを両手で掲げた。
 別に、斗貴子が死んでも川田は心を痛めない。むしろ、自分の手で殺したかったのだ。
 斗貴子を殺せず、川田の心に不完全燃焼する恨みの心が残っている。
 だから、合理的でない、ただの八つ当たりのような感情をぶつけることを平気でする。
 随分道に外れたもんだと、川田は自分に嫌悪を持つ。しかし、ヘルメットを振り下ろす勢いは止まらない。
 そのまま無言で、ライダーマンメットを頭に被る。
 光が包まれ、川田の身体が強化スーツに包まれた。
 青い頭部。X字のラインに二つの触角が生える。剥き出しの口元は真一文字に結ばれた。
 赤いプロテクターが鈍く光り、黒いスーツが川田の鍛え抜かれた身体を包んだ。


「奇遇だな。俺もお前に用があった」
「泉さんのことか。皮肉だな」
 たしかに皮肉だ。あのこなたが、楽しそうに語っていた友達と繋がりの深い男なのだから。
 覚悟なら苦悩しただろう。こなたを殺し、友であった川田を殺すことに。
 そんな偽善、パピヨンにはない。
 あるのは罪を贖わせることのみ。斗貴子と共に、パピヨンの中にある確固としたつながりを断った罪は軽くはない。
 パピヨンが全身に力を込めて、筋肉が隆起して両腕を蝶が羽を広げるように、上に持ち上げる。
 どぶ川のように濁った瞳は川田へと向き、左足は膝を曲げて持ち上がる。
 芋虫から蝶への変身。それを果たしたのは自分。
 赤木であろうと、JUDOであろうと、自分を軽んじたことを後悔させる。
 この殺し合いを終らせるのは、蝶人たる自分だ。
 パピヨンは再び羽ばたくためにその構えをとる。
489Classical名無しさん:08/05/02 23:46 ID:zacT0TqE
   
490Classical名無しさん:08/05/02 23:46 ID:0n5WP8Ao
しーえん
491神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:47 ID:1rOw3BOs
 左手に黒い核鉄を握って。


 二人は無言でにらみ合う。
 川田はライドルとハネルコンを手に。
 パピヨンは黒い核鉄を握り締めて。
 お互いの復讐の心が、黒く燃え上がる。
 


【C-4 学校・グラウンド 二日目 早朝】



【川田章吾@BATTLE ROYALE】
[状態] 健康 、小程度の疲労、ライダーマンに変身中(ライダーマンのヘルメット@仮面ライダーSPIRITSを装着中)
[装備] マイクロウージー(9ミリパラベラム弾32/32)、予備マガジン4、ジッポーライター、 ライドル@仮面ライダーSPIRITS
    バードコール@BATTLE ROYALE アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙、激戦(核鉄状態)@武装錬金
    ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾2発、劣化ウラン弾、残弾0発)@HELLSING、ヘルダイバー@仮面ライダーSPIRITS
[道具] 支給品一式×3、チョココロネ(残り5つ)@らき☆すた、ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン 、
    文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ツールセット、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
    缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(5本消費)、ツールナイフ、つかさのリボン 首輪探知機@BATTLE ROYALE、不明支給品1(未確認)、
[思考・状況]
基本行動方針:最後の1人になってつかさを生き返らせ、彼女を元の世界に戻す。
492Classical名無しさん:08/05/02 23:47 ID:D0LU8MfM
 
493Classical名無しさん:08/05/02 23:47 ID:5hiqJPVI
                                  
494Classical名無しさん:08/05/02 23:47 ID:V/zSYsC.
さげ
495神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:48 ID:1rOw3BOs
1:パピヨンを殺す。
2:こなたを殺したことによる罪悪感。
参戦時期:原作で死亡した直後
[備考]
※桐山や杉村たちも自分と同じく原作世界死後からの参戦だと思っています
※首輪は川田が以前解除したものとは別のものです
※津村斗貴子と、他の参加者の動向に関する情報交換をしました。
※つかさの遺体を、駅近くの肉屋の冷凍庫に保管しました。
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※主催者の目的は、@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、A最強の人間の選発、の両方。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくためのもの。 零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※覚悟、斗貴子は死んだと思っています
※ライダーマンに変身中のため身体能力が向上しています。勿論、カセットアームなどの機能はありません。
※ライドルの扱い方を一通り理解しました。
※エレオノール、エンゼル御前と情報交換をしました


【パピヨン@武装錬金】
[状態]:疲労。全身に打撲。 核鉄の治癒力によって回復中。深い悲しみ(?)
[装備]:猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険、デルフリンガー@ゼロの使い魔(紐で縛って抜けないようにしてます)
    サンライトハート(核鉄状態)@武装錬金
[道具]:地下鉄管理センターの位置がわかる地図、地下鉄システム仕様書
    ルイズの杖、参加者顔写真&詳細プロフィール付き名簿、
    支給品一式、小さな懐中電灯 、首輪(鳴海)
[思考・状況]
496Classical名無しさん:08/05/02 23:48 ID:zacT0TqE
    
497神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:49 ID:1rOw3BOs
基本:首輪を外し『元の世界の武藤カズキ』と決着をつける。
1:こなたを殺した男、川田を必ず殺す。
2:エレオノールに警戒。
3:核鉄の謎を解く。
4:二アデスハピネスを手に入れる。
5:首輪の解体にマジックハンドを使用出来る工場等の施設を探す。
6:覚悟に斗貴子を死に追いやった事を隠し、欺く。
7:赤木、大首領に自分を舐めたことを後悔させる。

[備考]
※参戦時期はヴィクター戦、カズキに白い核鉄を渡した直後です
※スタンド、矢の存在に興味を持っています。
※猫草の『ストレイ・キャット』は、他の参加者のスタンドと同様に制限を受けているものと思われます
※独歩・シェリス・覚悟と情報交換をしました。川田が殺し合いに乗った経緯、つかさやヒナギクの存在も知っています。
※逃げられてしまったゼクロスにさほど執着はないようです
※詳細名簿を入手しました。DIOの能力については「時を止める能力」と一言記載があるだけのようです。
※三村の話を聞きましたが、ほとんど信用していません。クレイジー・ダイヤモンドの存在を知りました。
※こなたの死に動揺しつつ、それに耐えようと必死です
※覚悟は少し快く思っていません。また、アカギは覚悟以上に快く思っていません。
※大首領の目的を確認。また、BADANと大首領では目的にずれがあることを認識。

【その他共通事項】
※大首領の念動力により、雨が晴れました。

498Classical名無しさん:08/05/02 23:49 ID:5hiqJPVI
                                
499Classical名無しさん:08/05/02 23:49 ID:zacT0TqE
      
500神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:49 ID:1rOw3BOs


 カラッと降り注ぐ陽光の胡散臭さに赤木は思わず目を細める。
 ここは偽者の空間。ゆえに、目に映るものはすべて信じられない。
 流れる砂漠の砂も、身体を吹きぬける風も、天空から降り注ぐ太陽の光も、すべて偽者。
 にもかかわらず、悠々と赤木は歩く。生まれついての自信、不安など捨て去ったかのように。
 やがて、視界に黄金の怪人JUDOが入る。
「ここがキサマらが目指す、我が牢獄だ」
「クク……なるほど。ここに閉じ込められている……というわけか」
「うむ。せいぜい、我が抜け出れるのは、その首輪サイズくらいだ」
「……俺たちをずっと見ていた、というわけか。
まあ、あの時は盗聴器から気づいて、何らかのアクションが来ると思っていたがな」
 赤木の言葉に、大首領は人間で言えば、『呆れる』という行為をとる。
 赤木の行動は余りにも分の悪い賭けである。主催陣を挑発するような物言い、下手をすれば先ほど首輪が遠隔操作されたように、命を失いかねない。
 ただ、大首領と話をする。そのためだけの行動としては、普通はありえない。
「ほう……お前は、死ぬかもしれないという恐怖はないのか?」
「……ありはするさ。5%くらいはな。だが……それもよりも恐れるものがあるッ!」
 大首領は不思議そうな視線を向ける。まるで、ペットが急に体調が悪くなったのを気にする飼い主のような姿だったが。
「俺が俺らしく死ねないことだ……」
「死を望む人間か。珍しい……いや、違うな。いたな、死を厭わない、裏切り者たちが」
 大首領が何かを思い出すように天を睨みつけている。
 赤木には関係ない。誰と重ねられようとも、自分は自分だ。
 仮面ライダーと呼ばれた男たちの話に、赤木は一切興味を示さなかった。


「JUDO……一つ賭けをしないか?」
501Classical名無しさん:08/05/02 23:50 ID:VDAd519w
502Classical名無しさん:08/05/02 23:50 ID:zacT0TqE
       
503Classical名無しさん:08/05/02 23:50 ID:5hiqJPVI
                             
504神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:50 ID:1rOw3BOs
「賭けだと?」
 赤木がデイバックから取り出したのは、お椀とサイコロ。
 どちらも学校から調達したものだ。
「半丁賭博という賭け事がある。二つのサイコロをこいつの中で転がし、下に降ろす。
二つのサイコロの目を足した数が……半(偶数目)か丁(奇数目)か」
「それくらい我が力で臨む結果を出せる」
「いいや……あんたは出来てもやらない。
分かっているはずだ……これは久しぶりの……勝敗の分からない勝負のチャンスだと……」
 赤木はさらに大首領に近寄る。
 鷲巣の時に感じた共感を、鷲巣以上に大首領へと赤木はぶつけた。まるで、恋焦がれていたように。
「JUDO。俺は賭けよう……この半丁賭博に……俺の命を……!!」
「ほう……」
「こいつを俺が振り、降ろした時の目……JUDO、お前が勝てば俺は自らの手で首を切ろう……。
お前に俺が勝ったら……そうだな。勝ったとき、一つ軽い願い事をかなえてもらおう……」
 どうだ、とJUDOに赤木は声をかけて、サイコロを弄ぶ。
 大首領は呆れたような視線を赤木へと向けた。ため息まで吐いている。
「余りにも、キサマが死ぬ確率が大きいぞ。我はその目を操作するなど、造作もない。
たとえしない、と我が約束をしたとしても、それを破ってお前を殺すかもしれないが?」
「それなら、俺はそこまでの男だったと言うことさ……」
 常人では考えられないほどの狂気の行動。
 赤木はこの殺し合いを潰すことに全力を賭ける、といった証明である。
 もともとこの殺し合いを潰す確率など、無に近い。この機会、大首領との接触は殺し合いを潰す確率を上げるために必須。
 命ごとき賭けなければ、おおいな利益は得られない。
 とはいえ、大首領との接触事態、幸運中の幸運、奇跡に近い。
 首輪まで外れた。いつ赤木の運が尽き、無残に死ぬか。
505Classical名無しさん:08/05/02 23:51 ID:zacT0TqE
         
506神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:51 ID:1rOw3BOs
 生か死か、その狭間にいることを自覚しながら、赤木はなお笑う。
 そこが、自分の居場所だと言わんばかりに。
 大首領は数秒赤木を見つめていたが、やがて返事をする。
「いいだろう。その戯れ付き合ってやる」
「感謝する……」
 大首領が約束を守る保証などない。そのなかで、赤木はお椀に二つのサイコロを放り投げ、地面に振り下ろした。
 膝をついたままの姿勢で、視線を大首領へと向ける。
 無機質な、それでいて圧倒的な威圧感を持つ大首領を前に、赤木は口を開いた。
「半か…………丁か…………」


507Classical名無しさん:08/05/02 23:51 ID:5hiqJPVI
                           
508Classical名無しさん:08/05/02 23:51 ID:zacT0TqE
                   
509神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:52 ID:1rOw3BOs
 窓からぞのく空の闇が晴れていき、紫色へと変化していくなか、赤木は悠々とタバコをふかしていた。
 久々のニコチンの味を感じながら、静かに煙を吐いた。
 見る人間が見れば、神に対して不遜だと罵ったのだろう。
 赤木は北にある神社の、ご神体が祭られる社で堂々とタバコをふかしていたのだから。
 最も祭られているのは、この殺し合いの参加者にとって馴染み深いもの。
 誰もが目撃したもの。
 強化外骨格、大首領の魂を宿す存在。
 赤木は勝負に勝った。戦利品を手に強化外骨格に背を向ける。
 台座に機械に組み込まれた核鉄を――赤木は知らないが、核鉄を組み込んだ機械をRS装置という――を尻目に。
 扉に手を当て、赤木は一旦後ろを振り向いた。
「……JUDOだな。機会があれば……また会おう」
 初めて会えた同類よ、赤木は内心でそう言い残し、扉を開ける。
 その先には――


【D-1 神社・強化外骨格が祭られている社 二日目 早朝】


【赤木しげる@アカギ】
[状態]:脇腹に裂傷、眠気、首輪がありません。
[装備]:基本支給品、 ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス (残り9本)、マイルドセブンワン二箱
[道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)
 始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます)、
 水のルビー@ゼロの使い魔、工具一式、医療具一式 沖田のバズーカ@銀魂(弾切れ)
[思考・状況]
510Classical名無しさん:08/05/02 23:52 ID:zacT0TqE

511Classical名無しさん:08/05/02 23:53 ID:5hiqJPVI
                                        
512神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:53 ID:1rOw3BOs
基本:対主催・ゲーム転覆を成功させることを最優先
1:大首領との再会。バトルロワイアルに引きずり込む。
2:対主催を全員説得できるような、脱出や主催者、首輪について考察する
3:強敵を打ち破る策を考えておく
4:覚悟に斗貴子を死に追いやった事を隠し、欺く。



[備考]
※マーティン・ジグマール、葉隠覚悟と情報交換しました。
 またエレオノールとジグマールはもう仲間に引き込むのは無理だと思っています。
※光成を、自分達同様に呼び出されたものであると認識しています。
※参加者をここに集めた方法は、スタンド・核鉄・人形のいずれかが関係していると思っています。
※参加者の中に、主催者の天敵がいると思っています(その天敵が死亡している可能性も考慮しています)
 そして、マーティン・ジグマールの『人間ワープ』は主催者にとって、重要なにあると認識しました。
※主催者のアジトは200メートル以内にあると考察しています
※ジグマールは『人間ワープ』、衝撃波以外に能力持っていると考えています
※斗貴子は、主催者側の用意したジョーカーであると認識しています
※三千院ナギは疫病神だと考えています、また彼女の動向に興味があります。
※川田、ヒナギク、つかさの3人を半ツキの状態にあると考えています。
※ナギ、ケンシロウと大まかな情報交換をし、鳴海、DIO、キュルケの死を知りました。
※こなたのこれまでの経緯を、かなり詳しく聞きだしました。こなたに大きなツキがあると見ていますが、それでも彼女は死にました
※『Dr.伊藤』の正体は主催側の人間だろうと推測しています。


『Dr伊藤』とのチャットによりわかった事
1:首輪は霊的に守護されている
2:首輪の霊的守護さえ外せれば、後は鋭い金属を継ぎ目に押し込む程度で爆発無しに外せる
513Classical名無しさん:08/05/02 23:53 ID:0n5WP8Ao
支援
514Classical名無しさん:08/05/02 23:53 ID:5hiqJPVI
                                            
515神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:53 ID:1rOw3BOs
3:既にその霊的守護を外した者が居る。そいつが首輪を外したかは不明だが、おそらく外してはいない
4:監視カメラは存在せず。首輪についた盗聴器のみでこちらを監視。その監視体制も万全ではない
5:敵には判断能力と機転に乏しい戦闘員が多い
6:地図外に城? がある
7:城には雷雲を突破しなければならず、そのためには時速600キロ以上の速度が必要

※大首領との接触により、大首領とBADANとの間のズレを認識。


【その他共通事項】
※大首領の念動力により、雨が晴れました。
※社には強化外骨格が祭られており、RS装置に核鉄『バスターバロン』が組み込まれています。




 降り注ぐ日差しの中、大首領は地面に置かれたお椀とサイコロを見つめる。
 賭けは赤木の勝ち。
 サイコロの目は六ゾロの半。大首領は丁を選択した。
 赤木との約束を守って、自らの能力を使わなかったわけではない。むしろ、使ったのだ。
 赤木を生かすために。
 やがて、大首領の右前方に、亡霊のように同じ姿の黄金の怪人が現れた。
 名を、ツクヨミ。
 大首領をこの時の牢獄に閉じ込め、今また裏切り者であるZXを支援する邪魔者である。
「何か言いたげだな?」
516Classical名無しさん:08/05/02 23:54 ID:5hiqJPVI
                                
517Classical名無しさん:08/05/02 23:54 ID:zacT0TqE
     
518神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:54 ID:1rOw3BOs
「……なぜあの男を生かした? よりにもよって、お前が……」
 大首領は無言で歩き、サイコロを手に取る。
 肩の震えが大きくなり、やがては天を仰いで笑い出した。
「ツクヨミ……我は奴の望みが気になり、答えを待った……」

 ―― キサマの勝ちだ。願いを言ってみよ。そうだな、死者を蘇らせてもいいぞ?
 ―― そうだな。……タバコをくれ。
 ―― なに?

「ククク! ツクヨミ、我は虫けらなど、どうでも良い」
 実際そのはずだった。
 大首領は、己の肉体になる人間などに興味はない。
 ただこの牢獄から脱出さえ出来ればいい、それでよかった。
 そのために、ZXを開発させた。
 そのために、強化外骨格に目をつけた。
 平行世界への干渉する能力を得たのは偶然だ。
 そこで目に付けた強化外骨格の技術は、己が肉体を得るのに相応しい技術。
 強化外骨格に必須な英霊を集める手段に、このプログラムを選択したのはただの気まぐれ。強化外骨格の完成までの余興。
 BADANは、ガモンあたりは優勝者を、最も優れた能力者を自分の肉体にしようと画策している。
 それとは反対に、大首領は人間など、虫けら(ワーム)など歯牙にもかけたことはない。
 最強の生物範馬勇次郎も、零式防衛術継承者葉隠覚悟も、吸血鬼アーカードも、北斗神拳伝承者二人も、興味を示さない。
 強化外骨格は完成間近。あと必要なのは、数人の魂と大首領が強化外骨格に乗り移るためのエネルギー。
 エネルギーの確保自体もまた、容易であった。RS装置――エネルギー物質変換装置――は火薬もプルトニウムも必要としない。
 核爆発を引き起こせるほどのエネルギーを生み出せる悪魔の機構。
 核鉄「バスターバロン」の質量をすべてエネルギーに変換させ、牢獄と強化外骨格へのゲートを開く。
 そして装着者。
519神に愛された男 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:55 ID:1rOw3BOs
 大首領は装着者など、誰でもよかった。
 今も、装着者など誰でもいいと思っている。ただし……
「アカギ、名を覚えたぞ。キサマが我に「酔い」を与える日を楽しみにしておこう。
今のままでは味わう気にもならん。我を同類というのなら、我をそこへと引きずり込め。もしくは、再びここへ来い」
 大首領は、初めて人間に期待をする。
 彼はもともと、亜空間に幽閉されていることも相まって、命の尽きる恐怖など味わったことがない。
 ショッカーが仮面ライダー1号2号に追い詰められても、V3が心臓に拳を食らわせても、他のライダーたちにいくつも組織を潰されても、彼自身は死を感じなかった。
 赤木に言われるまで気づかなかったが、自分は参加したいのだろうと思った。
 度し難い退屈。終わりのない生。
 ゆえに、大首領は思う。
「クク……一刻も早く、我に肉体を与えよ。あのアカギと、我は再会したいのでな……」
 その命令は、やがてBADANを震え上がらせ、動揺させる。
 大首領、かつては人に神とあがめられ、BADANには神とされる存在。
 彼は、赤木しげるを愛した。

【空間の牢獄 二日目 早朝】


【大首領JUDO@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:空間の牢獄を脱出する。
1:赤木との再会。
2:肉体を得る。そして、赤木のいう「酔い」を味わう。

※大首領はあくまで、「肉体を得る」ことを優先しています。
※強弱は拘っていません。また、バトルロワイヤル開催の理由は、ただの戯れ。
520Classical名無しさん:08/05/02 23:55 ID:zacT0TqE
                    
521 ◆WXWUmT8KJE :08/05/02 23:56 ID:1rOw3BOs
投下終了。
RS装置については、仮面ライダーSPIRITS最新刊14巻より把握が可能です。

支援、ありがとうございました。
指摘、感想お待ちしております。
522Classical名無しさん:08/05/02 23:57 ID:0n5WP8Ao
支援ッッッ!
523Classical名無しさん:08/05/02 23:58 ID:0n5WP8Ao
投下乙
アカギがすっかり主人公っぽくなったw
BADANの実力者たちにも対等に渡り合える度胸はすげえ

そしてパピヨンと川田!
因縁の対決も見逃せないな
524Classical名無しさん:08/05/03 00:02 ID:FB3RLjHE
投下乙!
アカギの考察すげえええええ!
大首領もついに出現し、終盤って感じだ!
因縁の戦闘を始したパピヨンと川田も凄いあとが気になる引き方です!
アカギと大首領の対話は緊迫感があって凄いドキドキしました。
RS装置やバスターバロンの存在も確認出来て今後どうなるんだ……。
GJ!!
525 ◆WXWUmT8KJE :08/05/03 00:03 ID:G0jLym7.
誤字発見。「ハネルコン」を「ハルコンネン」へwikiに収録したときに、修正します。
申し訳ありません。
526Classical名無しさん:08/05/03 00:05 ID:UAMX5Mhs
投下乙! アカギが予想の遥か斜め上を突き進んでるw
因縁の対決も開始されて、ラスボスまで登場して物語が大きく動き出しましたね。
でも風呂敷畳める気がしないw
527Classical名無しさん:08/05/03 00:08 ID:UE7nC5Tg
投下乙。
アカギ……そこまでして獲得したのがタバコかよ!w
パピヨン・川田の因縁の対決にも邪魔はいなくなって、さてどうなることやら。
528Classical名無しさん:08/05/03 00:21 ID:YBIWkCrU
投下乙!
大首領に愛されるとは……しかも、大首領をやる気にさせるとは、支援伝説アカギ、恐るべし
ただ、大首領がわざとアカギを生かしたのは、彼にとって誤算なのかどうか、気になるところ。
そして、遂にパピヨンVS川田! 個人的にはパピヨンを応援したいですが、どうなることやら……

私の読解ミスかもしれませんが、大首領は別に肉体を失っている訳ではありませんよ。
それどころか、虚空の牢獄を破れるのであれば、自分自身のオリジナルの身体で復活も可能なようです。
大首領が器を欲していたのは、自分の魂とその器の魂を交換して、器の肉体で持って現世に帰還するためです。
以上のことを踏まえると、RS装置の存在は展開に矛盾が生じてしまうと思うのですが、如何でしょうか?
529Classical名無しさん:08/05/03 00:25 ID:c1qb2PCw
投下乙です

誰か死ぬ話になると思ってたらこの展開は意外
大首領様そんな気持ちだったのか
ワープしたアカギや因縁の対決には期待大ですね

指摘一箇所
願いを叶える権利について言われたのは第二回放送だと思います
530Classical名無しさん:08/05/03 00:29 ID:3W3frTFE
投下乙!
とりあえず問題云々はほぼ気にせず乙といいたい!
アカギとうとう主催者にまで支援しやがったw
アカギの状態表を見たときなんか道具増えてると思ったらタバコかよとw
もうアカギがアカギらしすぎてもうねw

一方でとうとう組まれた川田VSパピヨン…どちらかが倒れるか或いは介入者が現れるか…
すごい展開だなー……
531 ◆WXWUmT8KJE :08/05/03 00:32 ID:G0jLym7.
>>528-529

了解です。

RS装置に関しては、核鉄「バスターバロン」をエネルギーとした場合、魂のみしか抜け出せる夜にしかなっていない、
という方向での修正はどうでしょうか?
無理であるなら、RS装置のくだりは削除します。
532Classical名無しさん:08/05/03 00:49 ID:8rpMmO8w
誤字多いなぁ
面白い展開なのに勿体無い。
人間ワープの解説シーンは二百メートルじゃなくて二メートルだ。
533Classical名無しさん:08/05/03 01:22 ID:gKxM0Bgw
>>531
バスターバロンは某コン○と同じ全長と重量を誇る巨大ロボット(?)で、ほぼ間違いなくその質量はキングダークと同等かそれ以上のはず。
それで魂抜け出すのがやっと、というのは無理があるのでは? 
そもそも、奪われたり破壊されたりしたらそれこそとんでもないことになるものを、会場に置いてあるのもどうかと思いますし。
534 ◆WXWUmT8KJE :08/05/03 03:05 ID:G0jLym7.
漫画ロワのススメ(問題議論用スレ)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9318/1182436193/

とりあえず、本スレで修正項を提案。
535 ◆WXWUmT8KJE :08/05/03 18:43 ID:G0jLym7.
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9318/1183170755/507-516

修正版を投下しました。
指摘、ありがとうございました。
536Classical名無しさん:08/05/03 19:38 ID:cubA0ZWU
修正お疲れ様です。
私はいいと思いますよ。
537Classical名無しさん:08/05/04 08:48 ID:4kTmzuMs
私も特に悪い所は無いと思います。
修正お疲れ様でした。
538Classical名無しさん:08/05/04 13:31 ID:nYKC3Exo
>>535
細かいところなのですが一カ所だけ

 窓からぞのく空の闇が晴れていき

 窓からのぞく空の闇が晴れていき
ですね
539 ◆1qmjaShGfE :08/05/04 20:36 ID:lmC/U6R2
ラオウ、勇次郎、服部、ジョセフ、覚悟、ヒナギク
独歩、村雨、かがみ、エレオノール の予約を延長します
540Classical名無しさん:08/05/04 20:40 ID:WIuTv/LU
>>539
了解。頑張ってください
541Classical名無しさん:08/05/05 13:43 ID:zIV/lYsM
第二回放送前話投票後半戦、始めたいと思います。
投票期間は今から8日の0時まで
一日一票、24時間後で無いと投票出来ません、三日間で手持ちの三票を自由にお使いください。
バラバラに投票しても、三表全てを同じ項目に投票してもOKです

対決部門
ttp://vote2.ziyu.net/html/rowa2.html

「項目を追加する」にて、○○VS○○みたいな感じで記入して投票を行ってください。
投票したい対決が前にある場合は、その項目に投票してください。

ギャグ部門
ttp://vote2.ziyu.net/html/rowa.html

繋ぎ部門
ttp://vote2.ziyu.net/html/rowa1.html

上記二つは「項目を追加する」にて、タイトル記入して投票を行ってください。
投票したいタイトルが前にある場合は、その項目に投票してください。

では投票をお待ちしております。
542Classical名無しさん:08/05/05 23:41 ID:NvoEreGA
なんか最近レスが少ないから、折角だから叫んでおこう。

女が足りない!!
543Classical名無しさん:08/05/06 00:27 ID:g/2pykIk
>>542
究極生物のかがみんがいるじゃないか!!
544Classical名無しさん:08/05/06 00:37 ID:s7XwJNW6
死者スレ行こうぜ
545Classical名無しさん:08/05/06 00:54 ID:aEqTddqg
気持ちいいくらいアカギだな
546Classical名無しさん:08/05/06 19:12 ID:05s4Wk3c
18時間書き込みが無いのは寂しいな…

なんとなくwktkしておく
547Classical名無しさん:08/05/06 20:21 ID:RQQAoZNg
そんなお前らに朗報だ

パッピー、川田に予約がきた
548Classical名無しさん:08/05/06 20:50 ID:1yNXzTOk
それはとても素晴らしいことだ。
549Classical名無しさん:08/05/06 20:52 ID:aLI0KGeY
パロロワではよくあること
550Classical名無しさん:08/05/07 04:37 ID:nqDrZhrA
wktk
551Classical名無しさん:08/05/07 16:40 ID:qd.RmViw
12時間レスが無いのは寂しい…

折角だからwktk
552Classical名無しさん:08/05/07 18:27 ID:o5LDfimo
男にはクールに待ってなきゃダメなんだ
普通こういうモンは書き込みは返って来ないほうが自然と考えなければいけん
553 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 21:46 ID:DCm2xBoY
大変お待たせしました
覚悟、村雨、独歩、エレオノール、かがみ、ヒナギク、ジョセフ、服部、ラオウ、勇次郎
の投下をしたいと思いますが、130kbを越えてしまっておりますので、下手をすると新スレまたいでしまうかもしれないのです
先に新スレを立てた方が良いでしょうか
554 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 21:55 ID:DCm2xBoY
とりあえず、落としてから、足りなかったら立てるとします。では以下に投下を始めます
555 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 21:56 ID:DCm2xBoY
雨足の音が強くなる。
木々は所々削れ、薙ぎ払われ、鳥居に至る石畳も随所が砕け、無残な姿を晒している。
激闘の爪跡は戦闘が行われた周辺に留まらず、十数メートル先の大木の幹までが醜く剥げ落ちている。
この場において最も重要な施設である社も、その被害を免れ得なかった。
壁面が貫かれ、漆喰の隙間から壁全体を支える柱がむき出しになっている。
それを為した片割れである大男、ラオウは一時手放した意識を取り戻す。
頭を振り、意識をはっきりとさせる様は何処にでも居る普通の人間と変わらない。
しかしその身に刻まれた無数の傷跡が、彼とそれ以外とを大きく隔てる証拠となっている。
こんな傷を負って意識のある人間など居るはずがない。
しかるにラオウは、何事も無かったかのように立ち上がり周囲を確認する。
「……村雨はまだ来ぬか」
たった今激闘を終えたばかりだというのに、既にラオウの興味は次の戦いへと向けられている。
ラオウの体に降り注ぐ雨粒は、彼の体に触れる事無く煙となって消えうせる。
劉鳳との戦いの熱がまだ覚めやらぬせいだろうか。
否、もっと単純な理由である。
悲鳴をあげているのだ。彼の体が。これ以上の酷使には耐えられぬと。
それがわからぬラオウではない。
そして、それを理由に目前にまで迫った戦いを放棄するようなラオウでもなかった。
首だけを曲げ、真上を見上げる。
覇気を少しだけ抑えると、まっすぐ天より降り注ぐ雨粒がラオウの顔で跳ねる。
その心地よさを僅かに堪能した後、薄く目を開くと、雲の切れ間に微かに星が見えた。
刹那、衝撃がラオウの全身を突き抜ける。

「馬鹿な……ありえぬっ!? このラオウの頭上に死兆星だと!?」

すぐに雨雲が天を隠す。
これで再び天にその意思を問う事も適わなくなった。
556Classical名無しさん:08/05/07 21:56 ID:Qcu4HffU
   
557Classical名無しさん:08/05/07 21:56 ID:mQjvHpLM
>>553
お前が思ったときッ! すでに行動は終わっているんだッ!
ってわけで立てといたぜ
558 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 21:56 ID:DCm2xBoY
苦痛も悩みも、抱えていた全ての物を激情が塗りつぶす。
何人が拳王を倒しうるというのか。
ラオウの脳裏に浮かぶ数多の猛者達。
その中でラオウが絞った二人の男。
勇次郎、ケンシロウ。
何故かすぐにケンシロウがその候補から外されてしまう。
どちらとも手合わせしたラオウは、二人が優劣付け難い強敵である事を知っている。
ケンシロウの用いる無想転生さえなければ。
ならばラオウの死に最も近い存在はケンシロウであるはずなのだが、不思議とラオウはケンシロウをその存在として考えられなかった。
それは、無意識の内にケンシロウの死を察していた故の心の動きであったのだが、今の怒りに震えるラオウには気づけない。
ただ猛り狂う心の赴くままに、鳥居の上へと飛び上がる。
降りしきる雨の中、これが天への返礼だと言わんばかりにラオウは声を張り上げた。

「勇次郎おおおおおおおおおおおおおお!!」

天がラオウを望まぬのなら、この拳にて天をも打ち砕く。
そんな彼が選んだ道は、最強の死出への使者を倒し、死の運命にすら抗う事。
溢れ出んばかりの覇気を身に纏い、今ラオウは運命に挑む。



小癪な手で逃げおおせた覚悟、独歩ともう一人。
覚悟は良かった。存分に楽しめるだけの男であった。
しかし、かつて戦った時の覇気を失った独歩。
勇次郎を前にしながら、車などという道具を用いてまで必死に逃げ惑う独歩。
彼は唾棄すべき存在になり下がっていた。
それが勇次郎には残念でならない。
559Classical名無しさん:08/05/07 21:57 ID:j.AcfZCs
560 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 21:57 ID:DCm2xBoY
「殺す価値も無くなっちまったな。人食い愚地もこれまでか……」
珍しい事でもない。
勇次郎の成長速度についていけず、脱落していった男達の数などそれこそ星の数程居た。
かつて勇次郎の食欲をそそった相手が、ほんの少しの間に出来た天地程もある実力差に恐れおののく。
そうやって堕ちた相手が、再び勇次郎の前に姿を現す事は無い。
期待をかけていた分落胆もあるが、それに拘る勇次郎でもなかった。
当然目の前に居たらバラバラに壊しているのだが、わざわざ追いかけてまでという気にはなれなかった。
降りしきる雨を見上げる勇次郎。
「水差されちまったか」
色々と小細工してくれたあの小生意気な小僧ももう居ない。
となると物足りなく感じるのは、勇次郎という人間の貪欲さであるが、
この場にはまだまだ楽しめる者が存在する。

声が聞こえた。

ほら、すぐに次が来てくれやがった。
コイツだ。コイツは覚悟程甘くもなく、独歩のように逃げ出したりもしない。
最後の最後まで付き合ってくれる極上のディナーだ。
アーカードの時のような……いや、あの化物のような珍味ではない。
もっと俺に近い、俺の好む味を魅せてくれる。
わざわざ俺を呼ぶなんざ乙な事してくれやがる! お前はやっぱり最高だ!

ビルの谷間を蹴りあがり屋上へと昇る勇次郎。

「ラオオオオオオオオオオオオオウ!!」

向こうの声は微かに、そうほんの僅かに鼓膜を揺らした程度であった。
561 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 21:58 ID:DCm2xBoY
だからこちらもそうであろうと思ったが、これがラオウに届く事を勇次郎は露ほども疑わなかった。



伝えるべき事を伝えた勇次郎はまっすぐに道を往く。
期待に胸を膨らませ、恋人に会う為帰路を急ぐ女のように。

当然ある、そう思っていた返礼があった事に満足するラオウ。
遂に天がこの手に届く所まで来ている。それが証が死兆星、そして狂獣勇次郎。

二度も拳を交え、決着の付かない男なぞ生まれて初めてだ。
お前、いいぞ。お前はとてもいい。これからの時間を思うだけで股座がいきり立つ!

貴様こそが天への最終関門、悩み迷う全てに決着を付ける好敵手よ。
死兆星輝くも当然。このラオウの道はとうの昔に天の望みを外れておるわ!

踏み出す足に力が篭り、知らぬ内にアスファルトを踏み抜いている。
そんな勇次郎の意思に応えるように、その髪全てが白銀に燃え上がる。

知らず漏れる闘気が通り過ぎる窓ガラスを砕き、電柱、信号機をくの字に曲げる。
吹き荒れる闘気により巻き起こる嵐、雨すら彼を恐れているように見える。



そして、二人は巡り合う。


562Classical名無しさん:08/05/07 21:58 ID:j.AcfZCs
支援
563 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 21:59 ID:DCm2xBoY
車の中で覚悟が突然目を覚ます。
その様子を敏感に感じ取ったヒナギクは助手席から嬉しそうに声をかけるが、
それには応えず身を起こす覚悟。
「覚悟君?」
締め切った窓の外をまんじりともせずに見つめる覚悟。
「……鬨の声が聞こえる」
「え?」
覚悟の言葉の意味がわからないヒナギクは怪訝そうな声を出すが、
覚悟はやはりヒナギクの方を見ようともせず運転席に居る独歩に声をかける。
「止めてくれ独歩。私は行かなければならない」
「あん? 行くって何処にだよ」
バックミラーで覚悟の表情を見る独歩。
彼は常と変わらぬ真顔でこう答えた。
「戦だ」



服部、ジョセフの二人は汚れてすすだらけになった服のまま、道を走る。
ジョセフは不愉快さを隠そうともせず大声で喚く。
「やってらんねー。何だってこんなド下手の運転に付き合うハメになったんでしょうかね〜」
これで四度目になる反論を服部は口にする。
「アンタが調子に乗って後ろの席に立つからやろ! 挙句バランス崩して落っこちそうになったんフォローしたの俺やで!」
「何がフォローだ! 結局コケちまったじゃねえか!」
「頭からアスファルトに突っ込まんで済んだ事! ちっとは感謝したらどうやねん!」
つまり、ジョセフがバイクの後席で何を思ったか面白半分で立ち上がり、
バランスを崩したのを服部がフォローすべきハンドルを切った所、
縁石に乗り上げて更に大きく体勢を崩し、正面に迫るコンクリの壁から二人揃って跳んで逃げた。
564Classical名無しさん:08/05/07 21:59 ID:IE1Ckvvo
 
565 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 21:59 ID:DCm2xBoY
そういう事である。当然バイクは大破している。
コールタール塗れではマジシャンズレッドもニアデスハピネスも使いづらいと、
適当な店で見つけた新しい衣服に着替えた矢先の出来事である。
「それでもよー、服部が直るかもしれないとか何だとか、ぐちゃぐちゃやってなきゃこんなに時間かかんなかっただろうになー」
「ぐっ……それは、そうやけどな……」
バイクは大事な足である。
強敵と偶発的に遭遇してしまったとしても、これさえあれば逃げるだけなら何とかなる。
むしろこの足無しで危険地帯に飛び込むのは無謀極まると言っていい。
幸いフレームは曲がってなかった事から、服部はこれの修理を試みたのだが、
短時間でどうこうなるような状態でもなかったのだ。
花火が上がってから既に結構な時間が経っている。
二人は何かに急かされるように先を急ぐ。
そこに、勇次郎の雄叫びが聞こえてきた。
込められている圧倒的なまでの存在感に身震いする服部。
「……何やコレ?」
同種の存在感に覚えのあるジョセフは視線を鋭くする。
「さあな。だけど、コイツはやべぇ気配がぷんぷんしてきやがる……急ぐぞ服部」



村雨は後ろに乗るかがみを気遣うようにしながら、クルーザーを走らせる。
目指す神社まであと1キロまで迫った所で、二人はラオウの叫びを聞いた。
そこに込められている感情を何と形容すればいいものか。
敵意、殺意、害意……ありとあらゆる攻撃的な衝動が交じり合う。
ただ、一つだけわかる事は、それが敵への呼びかけであるだろうという事。
村雨は背中に当たるかがみの体が、小刻みに震えている事に気付く。
「かがみ、大丈夫か」
566Classical名無しさん:08/05/07 22:00 ID:Qcu4HffU
       
567 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:00 ID:DCm2xBoY
歯の根も合わないかがみは、それでも気丈を声を絞り出す。
「ご、ごめん村雨さん……で、ででででも、震えが、止まん、ない……」
震えが収まる間も無く、すぐさま勇次郎の咆哮が木霊する。
それを聞いたかがみは、今度は呼吸が荒くなり、苦しそうに村雨の背中にしがみつく。
「かがみ!」
「だ、大丈……夫。はぁ……こ、こんなの、全然……うはっ、大丈夫、だか、ら」
クルーザーを止め、かがみが落ち着くのを待つ村雨。
「かがみ、君はここで休んで……」
「大丈夫よ! だから行きましょう!」
振り返った村雨の目に映る、顔中を脂汗まみれにしているかがみの姿からは、
とてもではないが、大丈夫なんて言葉は出てきそうにない。
「無理は駄目だ。何があったのかは俺が確認するからお前は……」
「絶対駄目! 私も行く!」
「聞き分けろかがみ、そんな状態じゃとてもじゃないが連れてはいけん」
ガチガチと歯を鳴り合わせながら、全身から汗を噴出すかがみ。
「今逃げたら私もう二度とこの声の主と戦えなくなる! だから絶対に駄目!」
平凡な女子高生でありながら、たった一日の間に様々な経験を積んできた柊かがみ。
恐ろしい敵との遭遇、仲間との永遠の別離、戦闘、片腕欠損……
危機に敏感になっている彼女の感覚が告げているのだ。
あの声の持ち主に近づいてはならないと。
目を瞑り、ゆっくりと三度深呼吸をするかがみ。
再び目を開く時には、震えも汗も止まっていた。
「行きましょう村雨さん。あの声、あれを放っておいちゃ絶対に良くないと思う」
そう言うかがみの目は強い輝きを宿し、ほんの少し前の怯え動じる姿は微塵も感じられない。
「……大丈夫、か?」
「もちろん!」
村雨はかがみが一体どんな魔法を使ったのか聞いてみたくも思ったが、
568 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:00 ID:DCm2xBoY
それを問うのも無粋な気がしたので、それ以上は問わずにクルーザーを発進させる。
走りながらクルーザーに括りつけた零が呟いた。
『銃後に置くには惜しい女子よ』
後席に座りながら、完全に調子を取り戻したかがみが陽気に答える。
「あら、ありがと」
しかし、零は相変わらずの堅苦しい口調のままだ。
『良よ、一つ聞きたい事がある』
「何だ零?」
『お主はかがみを好いておるか?』
村雨、かがみの双方共がバランスを崩してクルーザーから落ちかける。
「いきなり何て事を言い出す零!」
「何でそんな話になるのよ!」
持ち主に似た何処までも本気な口調で零は続ける。
『もし良がかがみを嫁にと考えておらぬのなら、覚悟の嫁に相応しいと思ってな。どうなのだ良よ』
二人共、零の言葉には無言でお返事。
『良よ、これは大事な事だ。かがみからも言ってやってくれぬか、これは良の意思が大切なので……』
零なりの結婚観とやらも把握出来た二人は、やはり無視してやる事に決めたのだった。



そこは繁華街の外れに位置し、片側二車線の大きな国道になっている。
道幅は大きく取ってあり、上下線を区切る縁石以外これといった障害物も無い。
その中心で、二人の漢は対峙していた。

短く揃えた髪、見上げんばかりの巨体、発達した全身の筋肉は不自然なまでに圧縮し凝縮され、他に類を見ない程の硬度を誇る。
眉間に刻まれた深い皺は、自らに、そして他者に厳しく生きた半生を現している。
彼は越えるべき壁を前にして、口の端を上げる。
569 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:01 ID:DCm2xBoY

獅子の鬣を思わせる程無造作に伸び散らかした毛髪は、銀一色に染まり彼の歓喜を表すがごとく波打っている。
おおよそ苦労という感情と無縁であり続けた不遜な半生は、
彼の顔から謙虚さや慎ましさといった物を根こそぎ奪い去ってしまっている。
極上の食事を、彼はこれ以上無いという満面の笑みで迎え入れる。

お互い気になる事もある。問いたい事もある。
だがそれ以上に、一刻も早く、この男に拳を打ちこみたくて仕方が無いのだ。
「勇次郎おおおおおおお!!」
「ラオオオオオオオウ!!」
同時に拳を振り上げ、二人は激突する。
双方共に頭部を狙った一撃を、すんでの所で首を捻りかわす。
両者の剛拳が唸りを上げて空を切る。
勇次郎は絡み合った腕を抜く間も惜しみ、残った腕でラオウの脇腹へと拳を叩き込む。
それをラオウも残った手で拳を握り、勇次郎のそれへと叩きつけることで防ぐ。
最初に放った拳を勇次郎はすぐに抜き、次なる打撃に備えるも、ラオウはその状態のまま勇次郎の襟首を掴み取る。
そのまま片腕のみで勢い良く勇次郎の巨体を持ちあげる。
振り回した反動で勇次郎の下半身が大きく後ろに振られるが、
勇次郎はその際大地を強く蹴り、ラオウが望む勢い以上の回転を付け、真上からラオウ目掛けて足を振り下ろす。
ラオウはその勇次郎の動きを見るなり、左の拳を大きく引く。
かわす動作はしない。それ以上の打撃を与える好機であるのだから。
頭頂に振り下ろされる勇次郎の蹴り。
それをラオウは全身の力を込めて耐え、蹴りの反動で一瞬動きの止まる勇次郎に向けて渾身の左拳を放つ。
空中で為すすべの無い勇次郎の胴中央に、ラオウの拳が炸裂する。
もんどりうって倒れる勇次郎。
その口からは黒とも赤ともつかない液体が吐き出される。
しかしそれを見下ろすラオウの頭部からも、額を伝って赤い筋が零れ落ちていた。
570Classical名無しさん:08/05/07 22:02 ID:Qcu4HffU
        
571 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:02 ID:DCm2xBoY
『構えていて尚この衝撃か』
『俺の蹴りを堪えて反撃とはな』
ラオウは勇次郎に右の拳を振り下ろす。
勇次郎はそれを半身になるだけでやり過ごして右の裏拳を放つ。
軽く仰け反るだけで勇次郎の拳をかわしたラオウは、左の掌打にて勇次郎の脇腹を狙う。
右膝を上げ、ラオウの肘を叩く事でそれを外させた勇次郎は、上げた右足をそのまままっすぐ上へと伸ばしてラオウの顎を狙う。
既に引き戻した右腕で軽く真横を叩くだけで勇次郎の蹴りを外すラオウ。
こんなやりとりをほんの数秒の間に何度も繰り返す。
少しづつ、勇次郎の速度が上がっていく。
不意にラオウが技の切り替えし速度を跳ね上げる。
勇次郎はその速度に僅かに対応が遅れ、ラオウの蹴りを受けた体勢のまま大きく跳ね飛ばされる。
「……勇次郎。相も変わらず、まずは手を抜くのが貴様の流儀であるようだな」
煩わしそうに髪から滴る水滴を払いながら、勇次郎は立ち上がる。
「そうしねえと、すぐに終わっちまうじゃねえか」
そんな勇次郎の不遜な態度も、ラオウの機嫌を損ねるには至らない。
むしろ勇次郎らしいと、そんな事をラオウは考えていた。
「馬鹿が、相手は選ばぬか」
「そうだな。お前に殴られると無性に腹が立つんでな、俺もさっさと全力でやらせてもらうわ」
そもそも勇次郎が殴られるという事自体まず無いと言っていい。
ならば腹が立つのも当然なのだが、それに気付かぬ程に、勇次郎は興奮していたのだ。



「馬鹿な事言わないで覚悟君!」
覚悟の言葉を聞くなりヒナギクが大声を出す。
当然であろう。
たった今必死に、コナンを見捨ててまで逃げてきたあの場所に覚悟は戻るというのだから。
572Classical名無しさん:08/05/07 22:02 ID:IE1Ckvvo
 
573Classical名無しさん:08/05/07 22:02 ID:j.AcfZCs
574 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:02 ID:DCm2xBoY
独歩も覚悟の言葉には賛同しかねた。
「覚悟よぉ、もう少し落ち着いたらどうだ? どの道その怪我じゃロクに戦えやしねえだろ」
説得する二人を覚悟は見ていない。
「零も……」
「あん?」
「先に行っているであろう。あれはそういう漢だ」
ヒナギクが癇癪起こして怒鳴りだす。
「何言ってるのか全然わかんないわよ!」
覚悟の様子がおかしいと思った独歩は一度車を止めると、振り返って覚悟の顔をじっくり眺める。
そして悟った。覚悟は既にこの場に居る何者をも見てはいない。
勇次郎とやりあった時に見た、戦士の顔で彼方を見やっていた。
『コイツにとっちゃ、生き死になんざどうだっていいんだろう……ただ戦って死ぬ。それしか考えてねえって顔してやがる』
武術の世界に身をおいて長い独歩であるが、こんな顔を簡単にしてみせる男など見た事が無い。
そんな覚悟を決めた上で、心底戦いを楽しみにしている。
技術の優劣を競うだの、どちらが強いかを知りたいだの、そんな次元の話ではない。
覚悟の頭の中では何時でも戦争をやっているのだ。
百人居たら生きて帰れるのが十人に満たないような戦争、そこに怯えず平常心で赴く為の心構えを常日頃から用意してあるのだ。
「死ぬ気か?」
独歩は我ながら馬鹿な事を聞いてると思った。
「必勝を期されたこの身なれど、必ず生きて戻ると確約しきれぬが戦なり。ただ……」
そこで覚悟は初めてヒナギクを見た。
「それでも私は戦い、勝利し、生きて戻る。そう信じてくれる者が居る限り」
突然話を振られたヒナギクはきょとんとした顔で覚悟を見返している。
「え? ……う、うん。信じる。覚悟君は絶対死んだりしないって……信じてる……」
死を覚悟した戦士の顔が、その言葉を聞き僅かに綻ぶ。
が、ヒナギクがそんな言葉で説得されるはずもなく。
「でもそれとこれとは話が別でしょっ! 私は絶対に反対よ!」
575 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:03 ID:DCm2xBoY
そう言って反対するヒナギクだったが、覚悟はそんなヒナギクから顔をそらす。
「……始った」
「何がよ!」
怒り顔でそう言うヒナギクに、覚悟はそちらを見たまま答える。
「おそらく勇次郎という男とラオウ……二人の戦だ。これはまだまだ大きくなる……」
まるで見てきたかのような確信を持って覚悟はそう言う。
憧れるような、羨むような、そんな覚悟の横顔を、ヒナギクは理解出来ずにいる。
それでも、何を言おうと彼が行ってしまうだろう事だけは彼女にもわかった。
ヒナギクはそれを認められずに居る。
「関係無いわよ! そんなの戦いたい人だけやらせておけばいいわ!」
言葉の語尾に重なるように、独歩の笑い声が聞こえてくる。
「何笑ってるのよ独歩さん! 笑い事じゃないでしょ!」
膝を叩いて笑う独歩は、覚悟に問うた。
「零が先に行ってると言ったな。そいつは村雨達もそこに向かっているという事かい」
「然り。探し人の事あれど、ラオウとの決戦を望む村雨殿がこの機会逃すはず無し」
息を呑むヒナギク。
「なあヒナギクの嬢ちゃん。そろそろ俺達の感覚で覚悟を縛るのは止めてやろうや」
「え?」
「コイツは優しい奴さ。今までずっと俺達の人死が珍しい世界に合わせてくれてたんだろうよ」
「…………」
「だがな、ここは違うんだよ。六十人も居た人間がたったの一日で1/3にまで減っちまうような場所だ」
覚悟は黙ったまま独歩の言うに任せている。
「ここじゃ死んじまうのが普通だ。男も女も老いも若いも関係無くみんな死んじまう」
ここでたくさんの死を見てきたヒナギクには、独歩の言に返す言葉が見つからない。
「なら、そんな世界に生きてきただろう覚悟に……」
独歩は既に笑ってはいない。
「俺達が合わせるべきなんじゃねえのか」
576Classical名無しさん:08/05/07 22:03 ID:Qcu4HffU
         
577 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:04 ID:DCm2xBoY
搾り出すようにヒナギクは問う。
「……私達にも死ねっていうの」
「嫌も応も無く死んじまうって言ってんだ。
 だから、生きて帰る事なんざハナから諦めちまえば、随分と出来る事増えるんじゃねえのか」
そこでようやく覚悟が口を挟む。
「独歩、それは彼女には……」
独歩は覚悟の言葉に首を横に振る。
「一緒だ。ヒナギク嬢ちゃんが戦おうと戦うまいと、
 勝やシェリスやナギやさっきの小僧がそうだったように死ぬさ。
 だったら死に方ぐらい選ばせてやってもいいんじゃねえのか」
尚も独歩の言葉を認めたくない覚悟は、大きく被りを振る。
そんな覚悟に独歩は言い放った。
「いい加減認めろや。この場に安全地帯なんてありゃしない。全部が戦場なんだよ。
 俺も、ヒナギクの嬢ちゃんも、お前もここで死ぬしかねえんだ」
そして独歩が一番問いたい言葉を覚悟に向ける。
「だとしたら、お前はどうやって死ぬんだ覚悟?」
「無論戦って死ぬ」
覚悟の即答を受けた独歩は、今度はヒナギクに問う。
「嬢ちゃん、あんたはどう死ぬ?」
いきなり死に方なぞ問われ、即答出来る者など一握りのみだろう。
ましてやヒナギクは、覚悟と違う平和な生活を十年以上営んで来た人間だ。
事故や病気などではない死など、想像もした事が無い。
それでも、この場に来てからの二十四時間が、彼女に答えを指し示してくれた。
自らの正義に従い、ラオウに立ち向かい倒れた本郷。
川田を想い、死の間際まで彼の為に出来る事を探し続けて逝ったつかさ。
大切な物を守る為、恐れる気も無く強敵に立ち向かい倒れたハヤテ。
ヒナギクの眼前で倒れた仲間達が、ヒナギクの進む道を教えてくれた。
578Classical名無しさん:08/05/07 22:04 ID:IE1Ckvvo
 
579 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:04 ID:DCm2xBoY

「……みんながそうだったように、私も戦って死ぬわ」

それは覚悟の望み、倒れていったみんなの望みとは違った道であろう。
それでも、それ以外の道をヒナギクは選ぶ事が出来なかった。

ヒナギクの言葉を聞いた覚悟は、それ以上何も言わなかった。
自らの感情がどうあれ、戦士を侮辱するような事を覚悟は決してしない。
独歩は二人の返事を聞き満足したのか、前を向いて車を発進させる。
「どうせ死ぬんなら仲間と一緒がいいやな。まずは村雨達と合流するぜ。ケンシロウは来るかね」
「一流の戦士ならば、この戦の気配を見逃すはずがない。
 エレオノールという女を倒しているのであれば、きっと駆けつけるだろう」
「そうかい」
それ以上は覚悟もヒナギクも口を開かない。
重苦しい空気が漂う中、それを壊したのは最初にその空気を作った独歩であった。
「さて、堅苦しい話はこのぐれぇにしてだ」
いきなり口調を代える独歩。
「もし万が一、何かの間違いで生き残っちまったら、俺っちは浴びる程酒飲んでやろうかと思ってるんだが二人も一緒にどうだい?」
それにはヒナギクが不満そうに答える。
「一応私未成年なんですけど」
「構う事ぁねえだろ。門下生1万人ぐれぇに周囲見張らせてりゃ後の事なんざ考えなくてもいいだろうしよ、どうだい覚悟は」
顎に手をやって僅かの間考えた後、覚悟は静かに語る。
「握り飯……」
「あん?」
「酒は嗜まぬが、握り飯ならいただこう。戦の後の握り飯は、きっとこの世の物とは思えぬ程に美味であろうから」
ハンドルを握ったまま独歩が大笑いする。
ヒナギクも手を叩いて喜んでいる。
580Classical名無しさん:08/05/07 22:05 ID:Qcu4HffU
        
581 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:05 ID:DCm2xBoY
「そいつはいい! 間違いなく滅茶苦茶うめえぜその握り飯は!」
「うん! 私もそう思う! 絶対そんな時のおにぎりはおいしい!」
二人の好反応に、覚悟からも笑みが零れる。
「んじゃうまい握り飯の為に気張るとするか!」
「おー!」
「応っ!」



頭部が完全に失われたコナンの亡骸の前で、服部が両膝を付いたまま俯いている。
「こんなん嘘や……何で誰も殺さんと頑張ってる工藤が死んで、俺が生きてんねや……おかしいやろ」
服部の衝撃の受け方に、ジョセフは覚えがある。
信頼する友を失った時の、頼れる仲間を失った時のそれだ。
しかし今は時間が無い。
花火が上がり、それをやったと思しき者の叫び声が聞こえてきた。
あの声からはそう時間が経っていない。
「服部、悪いが俺はこれをやった奴を追うぜ。落ち着いたら追いかけて来いよ」
コナンの遺体から目を離さないまま服部は即座に答える。
「何処に行ったか見当は付いてるんか?」
「そりゃ……わかんねえけど、まだ近くに居るんだしよ……」
ゆっくりと立ち上がる服部。

「そこらのアスファルト見てみ、あちこちにヘコみがあるやろ。
 恐らく戦闘の後や、それも相当に重量ないしパワーのある連中がやりあってる。
 でもなきゃこないにへこむなんてありえへんやろ。崩れたブロック壁も一緒や。
 そして殺された工藤、こいつは殺し合いを止める為やったらどないな無茶でもやってのける男や。
 工藤にアスファルトへこますような真似は出来ん。
582Classical名無しさん:08/05/07 22:05 ID:IE1Ckvvo
  
583Classical名無しさん:08/05/07 22:05 ID:Qcu4HffU
                
584Classical名無しさん:08/05/07 22:06 ID:m4z4K2wA

585 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:06 ID:DCm2xBoY
 だったらこのヘコみは工藤をやった奴と、そいつと戦った誰かが付けたものや。
 そしてそこに二箇所見える車のタイヤが滑った跡。
 一つは止まる時のもの、もう一つは急発進の時についたものやろ。
 以上の事から、この場には最低で工藤を含む四人以上の人間が居た事になる。
 アスファルトにへこみ作る程の脚力を持つ奴が、車なんぞ必要とするとは思えへん。
 もし必要とするのなら、守るべき誰かを抱えて逃げる必要がある人間だけや。
 せやから俺はここに居た人間の内、最低三人は殺し合いに乗ってへんかったと推測する。
 その三人以上の誰か達は殺し合いに乗った男、仮にAとしとくわ、そいつに敗れた。
 三人以上なんてややこしい言い方しよるのは、そこの壁に突き刺さった剣のせいや。
 それが何を現すのか、もう一人の存在か、既に居る三人によるものかは判断つかへん。
 低い可能性やけど、殺し合いに乗ったもう一人の存在があるかもしれんが、まあ置いておくとするで。
 ともかく、このAと戦ったA同様アスファルトにへこみ作れる程の男Bは、Aとの戦いに敗れ、
 車に乗った男Cの助けを得て逃亡した。その戦いの最中か、逃げ遅れるだかした工藤はAに殺された。

 遺体を見るに、首の前方付け根辺りに付いている傷と、後頭部下に付いている傷の向きが違うねん。
 これは、まず顎周辺を引っ張って引き千切り、その後、頭部に前から衝撃を与えたんやと思う。
 幾らなんでも戦闘中にそないな手間かかる事せえへんやろ。
 以上のような遺体の状態と工藤の性格から察するに……多分工藤が足止めを買って出て、
 それを為しえた工藤を、怒り心頭のAが殺害、顎を引き千切った段階で
 既に死が確定しているはずの工藤にトドメの一撃を放った。こんな所や。
 もうちょい戦闘跡調べられれば具体的な人数も絞れるやろけど、今はいらん。
 重要なのは、この殺し合いに乗っている男Aがどんな人間かや。

 俺達に聞こえた声。
 あの聞こえ方は、低い場所から建物の隙間を縫うように響いてきた声ちゃう。
 それやったらもっと複雑な反射してどの方向から来たかわからんようになるぐらいでないとおかしい。
 あのまっすぐ俺らに届いた声は、障害物の少ない何処か高い所から発した声に違いあらへん。
586Classical名無しさん:08/05/07 22:06 ID:IE1Ckvvo
   
587 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:06 ID:DCm2xBoY
 それは何処や?
 そこに見える一際大きくへこんでいるアスファルト、それが鍵や。
 男Aは近くの建物の上に登ってあの声を発した。
 ラオウと聞こえたあの声、参加者名簿にもある名前や。
 そいつに呼びかけた後、建物から飛び降りてその大きなヘコみの所に着地する。
 でもな、そこについた足の向きが変なんや。
 普通建物から飛び降りたら、その建物に対して直角に足は着地するはずやろ。
 にも関わらず、足は建物とは並行な形に着地している。
 空中で向きを好きに選べる奴やったら、その向きは行くべき方向を向いてるはずなんちゃうか。
 つまり、Aはこの足型の先の方へと向かったということや。
 そしてAの能力や。常人にはありえへん程の膂力を誇ると俺は見てる。
 その上で同じぐらいの力を持つBを圧倒する何かを持っている。
 それがスタンドや核鉄によるものなら、おそらく俺やジョセフの持つような物ちゃう。
 もっと単純で、純粋な力に似た何かやと思う。
 それ以外である痕跡がまるで見当たらへんからな」

澱みなく、暗記していた原稿を読み上げるように語り終える服部。
頭の回転には自信があるジョセフであったが、これだけの情報からここまでの推理を組み立てる事など出来ようはずもない。
しかも服部は彼が工藤と呼んだ少年を見るなり彼に駆け寄り、周囲を調べた様子も無かったのである。
雨で夜などという悪条件すら、服部には通用しないようであった。
「お前、いつの間にそこまで見てたんだよ……」
少しだけ悲しそうな顔をして。
「職業病や。すまんジョセフ。もう俺は大丈夫や、先を急ぐで」
服部は推理によって脳を活性化させる事で、冷静さを取り戻した。
しかし、ジョセフはそれでもその場から動こうとしなかった。
「ジョセフ?」
「一つだけ聞かせろ服部」
588 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:07 ID:DCm2xBoY
何時ものふざけた雰囲気は何処かに消えうせている。
「そこまで出来るお前が、どうしてシンジを誤解した。お前ならあの状況も見抜けたはずじゃねえのか」
二人の間の空気が固まる。
ジョセフは覚悟を持ってこの問いを発している。
返答如何によっては、タダでは済ますまいと。
そして服部も、この理由を気安く語って聞かせるつもりもない。
流れる沈黙の時間は二人の真剣さを確認する為の物。
「……言い訳でよければ、聞いてもらえるか……」
「ああ、聞きてぇな」
自分の右手を見つめながら、服部は静かに語る。
生まれて初めて人を殺した事。
それまで人殺しを忌避し、決して許さない立場にあった事。
それでも今は必要だからと人を殺した事。
そして冷静さを欠いたせいで人生最大のミスを犯してしまった事。
自虐的にそれを語り終える服部。
「シンジも……そうだったのか。あいつも何かショックな事があって、それで動揺して誤解してたのか」
「どんな人やったんや?」
「頭は悪くねえよ。色々と出来るみてえだし、器用なタチだったんだと思う」
言う程長い付き合いでもない。
最初に出会ってから別れるまでの間にあった事を思い出すジョセフ。
「今にして思えばかがみが暴走した時、あの前辺りからシンジも落ち着きが無かったしな……」
ふと気が付いて手をぷらぷらと振るジョセフ。
「っと悪い、それは別の話だな。急ごうぜ、さっきも言ったがあの声からは嫌な予感しかしてこねえ」

ジョセフは服部の話に納得してくれた。
だからこそ、三村信史の話もしてくれたのだろう。
こうやって話し合い、お互いを解りあう時間が取れてさえいればあんな事にもならなかっただろう。
589Classical名無しさん:08/05/07 22:07 ID:IE1Ckvvo
     
590 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:07 ID:DCm2xBoY
服部にとって、そんな状況を立ち上げる事が出来なかった我が身の未熟さが、何よりも悔やまれてならなかった。
大きく息を吐いて、ネガティブな思考を頭の中から追い出す。
あれが出来ていれば、こうしていれば、そんな事全てが終わってから考えればいい。
『工藤、悪いが今は置いてくで。お前は嫌がるやろけど、いずれ俺もそっち行くから詫びはその時にな』



打ち込む拳が飛沫を上げる。
ラオウや勇次郎程の技量の持ち主になると、拳一つ打ち込むにも全身の筋肉を用いる事になる。
まっすぐに突き出した腕が、引き手となる逆腕が、捻りを加えた胴体が、大地を蹴り出す両足が、
際限無く纏わり付く天の恵みを都度跳ね飛ばしている。
『拳王の真の恐ろしさ……その身で味わえ勇次郎!』
突如助走も何も無しで真上に跳びあがるラオウ。
天から獲物を狙う鷹のような俊敏さと鋭さを持ってラオウは勇次郎に迫る。
『動きが変わっただと?』
ラオウの動きが、流れるような所作と円を基調にした動きから、より直線的で鋭角的な動きに切り変わる。
その鋭さに反撃の猶予を持てず、髪一本分の差でラオウの蹴りをかわす。
「愚か者が!」
その蹴りが中空で変化し、切り裂くように真横に振るわれる。
後退を嫌う勇次郎をしてそうせざるを得ない程の速度に、大きくラオウから距離を取る勇次郎。
ラオウはそれを許さず、着地するなり両腕を広げ、全身を回転させながら勇次郎に迫る。
『この動きはっ!?』
遠心力を味方に付け、大きく勢いを増した両腕を、勇次郎の眼前でSの字に交差させる。
全てをかわしきれず、胴の前部から血を噴出す勇次郎。
「てめぇ……まだ技隠してやがったか……」
両手の指を鳴らし笑うラオウ。
「貴様の動き、この拳王が見切れぬと思ったか」
591Classical名無しさん:08/05/07 22:08 ID:j.AcfZCs
592Classical名無しさん:08/05/07 22:08 ID:IE1Ckvvo
       
593 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:08 ID:DCm2xBoY
ラオウは、勇次郎を強敵せしめている理由を見抜いていた。
それは圧倒的なまでの反応速度。
一度見た技は、例えそれが北斗神拳であろうとほぼ通用すまい。
これまでの手合わせで幾つかの奥義を見せてしまってはいるが、彼は拳王とまで呼ばれた男。
カサンドラクロスなどという牢獄まで造り、数多の奥義を習得したラオウにとって、
技の引き出しなどそれこそくれてやる程持ち合わせている。
「トドメは北斗の技で刺してやる。それまでせいぜい足掻くがよいわ!」



クルーザーは走る。
声が発生したと思しき場所は神社と西の方角。
どちらに向かうかで迷ったが、村雨達はまず神社へと行く事にした。
そこには、一人の男が立っていた。
何があったのかは見ただけでわかる。
全身至る所に残された傷跡、にも関わらず微笑んだまま絶命する男。
散の言葉が思い返される。
『散り際に微笑むのは、見事な奴……だったな』
無残さに息を呑むかがみと、その姿の余りの誇り高さに胸を打たれる村雨。
「これ程の男をよくも…………ラオウッ!!」
怒りに任せてクルーザーに跳び乗る村雨。
『待てい良! 行ってはならぬ!』
それを零が止める。
「何故止める零!」
『笑止! 自らの様がわからぬというか! それほどの男を前にしながら自分が晒している醜態に気付かぬとぬかすか!』
「何だと!」
捻りかけたアクセルから手を離し、零に向き直る村雨。
594Classical名無しさん:08/05/07 22:09 ID:Qcu4HffU
                     
595 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:09 ID:DCm2xBoY
『怒りに任せ蛮勇を振るうなぞ犬畜生にも劣る所業! それがわからぬお主でも無かろう!』
その言葉で思い返されるのはハヤテと最後に共闘したラオウとの戦い。
あの時、村雨は怒りに任せて動きすぎ、ハヤテの死の原因を作る事になってしまった。
「なら……ならどうすればいい! 怒るなだと!? これを見てそんな真似が出来るか!」
『否! 存分に怒るがいい! それがお前の力となる! だが……それを決して表に出してはならん!』
それこそが村雨に必要な事だと、零は信じていた。
それさえ乗り越えられれば、村雨は覚悟と並ぶ戦士になれると。
『怒りでその身を動かしてはならぬ! 悲しみに心砕く事も許さぬ! それらは全て己が身の内に収めよ!』
出来ない、言葉でなく表情でそう語る村雨に、零は尚言い募る。
『ハヤテを思い出せ! 奴の最後は怒りと共にあったか!? あの男は悲しみながら逝ったというのか!?』
最後の瞬間まで主を想い、案じ続けていたハヤテの姿を忘れられるはずがない。

だが、この俺にハヤテのような真似が出来るのか?
決して拭えぬ罪を背負ったこの俺に、今も噴出しそうな怒りに身を焦がしているこの俺に。

ぽんと村雨の肩を叩く者が居る。
「出来るわよ、村雨さんなら。だって私知ってるもの、本当の村雨さんはとっても優しい人だって」
目線を降ろした村雨と目が合うと、彼女は……
「ねっ」
そう言って笑いかけてくれる。

俺はどれだけこの人に救われただろう。
千の言葉を重ねても感謝の想いを伝えきる事など出来やしない。
どうしてこの人は、一番支えて欲しい時にこうして支えてくれるのだろう。
そして、俺が間違えそうになった時、まっすぐに叱咤し、必死に正そうとしてくれる零。
何度も期待を裏切ってきた俺を、それでも信じ言葉をかけてくれる。
こんな仲間、何処探したって見つかるものか。
596Classical名無しさん:08/05/07 22:09 ID:m4z4K2wA

597Classical名無しさん:08/05/07 22:09 ID:IE1Ckvvo
 
598 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:10 ID:DCm2xBoY

「わかった、やってみる……ありがとう二人共」

『うむ!』
「うん」

村雨とかがみの二人は並んで、立ちながらにしてその命を終えた戦士に一礼すると、クルーザーに跨る。
『良よ、移動中で構わぬので少しお主の体を見させてはもらえぬか?』
「構わないが、何かあるのか?」
『損傷箇所と度合いを正確に把握しておくだけでも違うものだ』
「わかった、よろしく頼む」
クルーザーを発進させるのと同時に、零である鞄から触手のような物が伸び、村雨に絡みつく。
「……ねえ零、もうちょっと……何とかならない?」
村雨は気にもしていないが、見ていてあまり気分の良い物でもないので、かがみはとりあえず抗議してみる。
『ならん!』
こんな時まで全力で答えなくてもいいのに、とかがみは内心ため息をつくのだった。



突然ラオウの見せた技は南斗の技。
秘孔により内部からの破壊を考える北斗とはまるで技術体系が違う。
ラオウが嘲笑うようにしながら繰り出す数々の技は、
全てがそれぞれの流派における奥義と呼ばれるもの。
ただの一つたりとて容易くかわせるような技など無い。
手を鋭い剣の切っ先に見立て、斜め下から振り上げる。
勇次郎はその振り上げられた手に合わせ、こちらも腕を振り下ろしそこに叩きつける。
599Classical名無しさん:08/05/07 22:10 ID:j.AcfZCs
600 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:10 ID:DCm2xBoY
ギィン!

まるで金属同士がぶつかりあったような音が響く。
「ぬ!?」
ラオウの腕は振りぬかれ、勇次郎の腕は大きく弾かれるも、ラオウは攻撃の手をそこで止める。
腕をぶらぶらと振りながら、勇次郎は小首をかしげる。
「おっと、少し甘かったか?」
ラオウは勇次郎のその奇跡の技に驚きを禁じえない。
勇次郎は、南斗の技を見続ける中で、自らそれに類する技を編み出してきたのだ。
それが奥義に足る技である事は、ラオウの刃と化した腕を止めてみせた事からも明らかだ。
「良し、もう一度来い」
次こそはと自信満々で待ち構える勇次郎。
ラオウは、怒りよりも半ば呆れたような顔で勇次郎を見ている。
「つくづく……貴様という男は……」
「何でぇ、せっかく後一息って所なんだから攻撃の手止めるんじゃねえよ」
右手の肘を軽く曲げてみせるラオウ。
「肘の加減だ。間合いはそれで良い」
それだけで意図が通じたのか、勇次郎は試みに腕を振るってみる。
勇次郎の振るう腕の後に、光の軌跡が流れるように続く。
「……お前、教師の才能あんじゃねえのか」
「戯れだ。地獄の鬼にでも見せてやるがよい」
ラオウは構えを北斗の構えに戻す。
「良かろう、余興はこれまでとする」
「けっ、結局てめえだって本気を小出しにしてやがるじゃねえか」


601Classical名無しさん:08/05/07 22:10 ID:IE1Ckvvo
        
602 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:11 ID:DCm2xBoY
ジョセフ、服部の二人は建物の影からラオウ、勇次郎の二人を覗き見ていた。
「声と前後の状況から察するに、あの銀髪が容疑者A、コナン殺った男やろ」
服部の見立てにジョセフが追加する。
「金髪の方も、相当嫌な雰囲気漂うな〜……正直に言わせてもらうと、どっちともお近づきにゃなりたくないね」
金髪の巨漢は、おそらくコナンから伝え聞いていた病院を襲った男ラオウであろう。
「どっちも敵や。常套手段で行くなら二人のどちらかが潰れた後に手出すんが正解やろけど……」
拳を交える二人を、ジョセフは一瞬たりとも見逃すまいと凝視している。
「生き残った片方をしとめるってのも、至難を極めるぜ。
 スピードは、ギリギリついていけるかどうかって所だ。パワーは……ここからだけじゃわからねえな」
あれを前にしてジョセフからそんな台詞が出てくる事に驚く服部。
確かに鍛えぬいた逞しい体つきをしているが、あの人外世界に踏み込むのはまた別の話だ。
「ほな……これ使うか?」
服部は手に核鉄を握る。
ジョセフはそれを見て、いたずらを仕掛ける子供のような顔をした。
「OK乗ったぜぇ〜。お互いが居るせいで身動き取れない内に、二人まとめて吹っ飛ばすのが最高だ」



第三ラウンド。
ここに来てラオウは奥義を放つ事を止め、正調北斗神拳の動きによる拳打攻撃に切り替える。
勇次郎は見慣れた物で、右に左に綺麗に避けてみせるが、ラオウは拳を休めない。
勇次郎の獣じみた動きのせいか、勇次郎からの反撃は人間ではありえないはずの角度から襲ってくる。
ラオウも又、そんな勇次郎の動きに慣れたせいか、見る事すら適わぬその攻撃を容易く見切る。
どちらの攻撃も当たらない。
振りぬいた拳の衝撃が、道路沿いのショーウインドウにヒビを入れる。
踏ん張る足下のアスファルトが音を立てて砕ける。
二人の振るう拳の速度と威力に負け、降り注ぐ雨も二人を染める事が出来ずに居る。
603Classical名無しさん:08/05/07 22:11 ID:Qcu4HffU
           
604Classical名無しさん:08/05/07 22:12 ID:IE1Ckvvo
   
605 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:12 ID:DCm2xBoY
これ以上の近接後退はお互いの拳の威力を下げるのみ、と二人は最も拳の威力が出る位置から動こうとしない。
大気が振動し、その拳から漏れ出したエネルギーが二人の居る空間を包み込む。
既に二人共お互いの事以外何も考えていない。
それ故、ゆっくりと、二人を包むエネルギー空間が二人を空へと持ち上げている事も気にかからない。
周囲が、世界が、どうなろうと知った事かと。

俺は、この男を、殴り倒す。

高まるモチベーションが限界に達したその時、二人の拳が同時に放たれた。

パキーン!!

乾いた何かが割れるような音、甲高いその音は空気を割いた音なのか。
一メートル以上浮き上がった二人が大地に再び帰ってくる。
自らの右腕を相手に押し当て、その体勢のままぴくりとも動かない。
力で負ける事は断じて許せぬ。
万力ですら泣きながら土下座するような力比べ。
勇次郎の筋肉が異常なまでに盛り上がり、対するラオウの体からは闘気が噴出す。
両者の体が、少しづつ地面へと沈み込む。
二人が大地を蹴る力に、地面が耐えられないのだ。
沈む度にその大地は踏み固められ、硬度を増すはずのそこに、二人の足がゆっくりと沈み込んで行く。
遂にその深度は、二人が膝下まで大地に吸い込まれる程になる。
どちらも引く事など考えてはいない。
自分が勝つまで続ける。そんな二人だ。
ここでもまた、二人はお互いの事しか見えていない。
それが、本来の二人には有り得ない隙となった。
606Classical名無しさん:08/05/07 22:12 ID:IE1Ckvvo
     
607 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:12 ID:DCm2xBoY
「おっしゃああああああああ!!」

天から掛け声と共に文字通り降ってきたのは、波紋の闘士ジョセフ・ジョースター。
どちらも引かぬその性癖が災いし、この動きにどちらも対応しきれない。
しかもその両足は大地に深くめり込んでいる。

「喰らえ化物共! 山吹色の波紋疾走!!(サンライトイエロー・オーバードライブ!!)」

ぶつけ合った二人の腕のど真ん中に、ジョセフは波紋の拳を叩き込んだ。
ジョセフの拳からのみならず、二人を覆う水滴を伝いラオウ、勇次郎の全身に波紋が流し込まれる。
両者の体が振動で跳ね上がる。
そしてすぐにジョセフ含む全員の視界が閉ざされる。
完全な闇。
その正体はそこから漂う香りが教えてくれる。
体が痺れて動けないなどという、前代未聞の事態に見舞われたラオウ、勇次郎の二人は同時にその正体に気付いた。
『火薬だと!?』
闇の奥、遙か頭上から、最後を告げる言葉が轟く。
「二人まとめて消し飛べや!」

数ブロック先まで聞こえる程の爆音。
それを仕掛けた服部は、空中高くでそれを見下ろす予定が、
ほんの少し予定より爆発が大きすぎた為に、派手に跳ね飛ばされて宙を舞う。
「おわあああああ!! っと! こなくそ! なんとーーーー!?」
くるくる空中を回るも、奇妙な悲鳴と共に強引に体勢を立て直す。
核鉄ニアデスハピネスでの飛行は、最初にその説明書を読んだ時から構想はあったのだ。
他にも、これを用いた様々な戦術を服部は考えていた。
ようやく落ち着いて真下を見下ろすと、雨にも関わらずそこらから上がる煙でまるで下が見えなくなっている。
608Classical名無しさん:08/05/07 22:13 ID:m4z4K2wA

609Classical名無しさん:08/05/07 22:13 ID:j.AcfZCs
610 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:13 ID:DCm2xBoY
「……雨やからて、多目に仕掛けたん失敗やったかな。ジョセフ死んでへんよな?」
とりあえずあの二人は粉々になったと確信を持って言える。
ジョセフは爆発の影響の少ない地下への逃げ道を探しておいたので、大丈夫だとは思うのだが……
「飛べ服部!」
真下から聞こえるジョセフの叫び声。
服部は確認すらせず更に上空へと舞い上がる。
その真下を、真横から跳んできた黒い影が飛び抜けた。
「嘘やろ!? あれをかわしたんか!?」
下の煙が雨に潰され、道路の様子が鮮明に見えてくる。
その一部が、異常な輝きに包まれている。
下では、ジョセフがその輝きに向かって猛然と駆け寄っている。
その必死の形相を見て服部は悟る。
あれは、確実に死に至る何かだと。
大急ぎで建物の影に隠れんとする服部。
煙が完全に晴れる。
そこに悠然と立つ大男は、怒りの表情のままその輝きを放つ。

「北斗剛掌波!!」

同時にビルの隙間にすべり込む服部。
全速で飛ぶ服部の背後のビルが、輝きに削り取られていく。
「死ぬ! ホンマに死ぬてこれ!」
放たれた最後の輝きを、靴の先っぽ焦がすだけでかわしきった服部は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「やりたないなー。これ絶対やりたないて……ええい、やればええんやろやれば!」
黒シャツ男の移動速度を見た服部は、一つの結論を既に出していた。
『あの男はこの意味わからんビームの直後に仕掛けてくる!』
服部はこれをかわす為、現在飛行中の自分の真下で、ニアデスハピネスにより作り出した、
611Classical名無しさん:08/05/07 22:13 ID:Qcu4HffU
           
612 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:14 ID:DCm2xBoY
黒色火薬を爆発させた。
「ぐうううういいいいいいっ!!」
その爆風により上方に向かって跳ね上げられる服部。
ニアデスハピネスによる爆発は、爆弾によるそれと違い弾欠を持たない。
ならば空中に居る場合は、その爆風を用いて緊急時の移動手段とする事も可能である。
当人にかかる負担を無視すればの話であるが。
またも、その真下を飛びぬけていく黒い人影。
奴はどうやら壁をぶちぬいて攻撃してきたらしい。
あれだけの広範囲爆発をかわしたり耐えたりした上で、この移動速度。
こんなのとまともにやりあえるか!
屋上まで一気に吹き飛ぶ服部は、そこでまた一つの予測を立てる。
銀髪男と対等にやりあっていた金髪。
同程度の能力を持っていると推測される彼が服部を狙っているとしたら。
「ああああああああ……もう俺再起不能になりそ……」
屋上に飛び出した瞬間、もう一度自らの真下で爆発を起こす服部。
その爆風から身を守るべく、両手を顔の前に持っていっている金髪の大男の姿を屋上に認めた時、
服部は自らの判断の正しさを知ったのだった。
『こんなん逃げるだけでこっちがどうにかなってまうて!』
大きく空へと跳ね上がる事で、何とかものを考える余裕が持てた服部。
パーフェクトな奇襲。
回避不能な仕掛けであったはずが、気が付けば逃げるだけでもう体中が限界値。
ニアデスハピネスの乱用で、根こそぎ体力を持っていかれたような脱力感に襲われながらも、
ターゲット二人の位置確認は怠らない。
ビルの屋上ではいつのまにそこまで昇ってきていたのか、ジョセフとラオウが対峙していた。
一秒と前に立っていられず、殴り飛ばされ屋上から真っ逆さまに叩き落されるジョセフ。
「誰がギリギリ付いていけるて!? ふざけんなや!」
悪態を付きながら、空中で方向転換して救出に向かう服部。
613 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:14 ID:DCm2xBoY
しかし、何と驚くべき事か。
ジョセフが空中でビルの壁面に足を伸ばすと、まるでそこだけ重力を失ったかのように落下が止まってしまう。

そのまま壁を垂直に歩いて降りるジョセフ。
屋上に居た金髪も、とても許しがたい光景ではあったが、そこから軽く飛び降りてくる。
隣のビルの窓から飛び出してきた銀髪も揃い、道路上では三人が対峙している。
「ラオウ、二度目の邪魔者だが、また俺が食うぞ」
闘気で防いだとはいえ、あの爆発の直撃を受けたラオウは僅かに不満に思うが、
一々相手をするのも面倒と思ったのか、今回もあっさりと勇次郎に譲る。
そのやりとりを、ジョセフはにやにや笑いながら聞いていた。
「アンタ等吸血鬼とやりあった事ある? 両腕から竜巻吹いて建物吹っ飛ばす奴とは?
 全身を沸騰した血液が通ってる化物は? 不老不死、永久に再生する完璧な生物は?」
人差し指を立て、それを振りながら二人の前を行ったり来たり。
「無いよなぁ。ならアンタ等より俺の方が強いって事にならない? なるよな?
 というかだ、人間相手に無敵だからってあんた等ちょっと調子に乗ってない?
 ほら、そこの悪趣味な銀髪のおっさん、何なら俺の余裕の証として一発殴らせてやろうか?
 ほれほれほれほれほれほれほれほれほれほれほれほれ、ど〜〜〜〜〜〜〜よ?」
自分の頬をちょんちょんと突きながら、勇次郎の前に顔を突き出すジョセフ。
ジョセフは軽薄な印象のある男だが、決して愚か者ではない。
勇次郎の能力を把握し、その上でいかに対処すべきかを考えている。
ラオウではなく、やると言った勇次郎を挑発し、殴る場所を挑発により限定させる。
対する勇次郎もジョセフの意図に気付いていながら、敢えてその通りに動く。
自らの豪腕に自信あればこそだ。
二人の意図が合致し、勇次郎の左拳がジョセフへと迫る。
その速度をジョセフは完全にはかわしきれない。
だが、それで充分だ。
当たる予定の右頬に弾く波紋を集中、衝撃の方向を逸らして打撃を無効化する。
614 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:15 ID:DCm2xBoY
同時に、右足を振り上げ足刀蹴りを勇次郎の腹部に向かって放つ。
ジョセフの靴は、足から波紋を通しやすいようビルを昇った時既に脱いである。
『こいつで波紋を流し込んで動きを止め、袋叩きにしてやるぜえええええ!!』
ジョセフが本気で放つ波紋が通れば、完全に動きが止まる。
それが例え数秒の事であろうとも、それを拳にて叩き込み続ければいい。
勇次郎は反撃すら許されず、一方的に殴られ続ける事となろう。
したたかさでは海千山千の参加者達の中でも群を抜くジョセフ。
その彼の読みは、至極簡単に勇次郎の能力に敗れ去る。
半身になるだけでジョセフの蹴りをかわす勇次郎。
「残念だったな」
今度こそ勇次郎の右拳がジョセフを捉える。
脇腹に突き刺さるように抉り込まれる拳。
たまらず口から唾液混じりの何かを吐き出すジョセフ。
波紋修行の過程で、身体能力も充分に鍛えぬいたジョセフであったが、
勇次郎の拳はそんなジョセフの自信を木っ端微塵に打ち砕いた。
『この野朗……パワーはワムウと同等……それ以上……か?』
無論それだけで済ます勇次郎ではない。
左の拳を、右の膝を、右の肘を、次々叩き込むべく体にそう指示を下す。
「な……に?」
しかし、勇次郎の体はその意思に逆らい、ぴくりとも動いてはくれなかった。
足元に違和感を覚える。
そこには巻きついている……紐?
その隙に距離を取り、波紋の呼吸を整えるジョセフ。
「次にお前は『何をした?』と言う」
「何をし……チッ!」
「へっへっへ、ボクちゃんやらせていただきましたァン。
 アンタが踏み込んでくるだろうそこに、波紋を流し込めるギターの弦を垂らしておいたんだよ!」
615Classical名無しさん:08/05/07 22:15 ID:Qcu4HffU
                      
616 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:16 ID:DCm2xBoY

全て計算通りとばかりに胸をそらすジョセフ。
しかし内心は必死に焦りを押し隠していた。
『クソッ! こいつの拳はヤバすぎるぜェ、本来ならあの紐から反撃の糸口にするつりだったんが、逃げるだけで手一杯だっての!』
直接流し込む波紋でなければ、ほんの一瞬動きを止めるのが精一杯。
さっきの爆発すらかわしきる俊敏さを持ち、そのパワーは柱の男並。
しかし、上空に居る服部の助力は頼めない。
つまらなそうにこちらを見ている金髪は、どうやら手を出す気は無いようだが、
二対一となれば、どう動くかわかったものではないからだ。
ここで一対一で銀髪を倒し、残る金髪を二対一で黙らせる。
卑怯なんて知った事か、命賭けのデスマッチに遠慮なんてしてる余裕は無いのだ。
「服部! 剣をよこせ!」
そう叫ぶジョセフの意図を、瞬時に把握する服部。
手持ちの核鉄ソードサムライXを、服部が作り出してジョセフに放り投げる。
これならば、ソードサムライX顕現による体力消費は服部が背負う事になる。
そのまま空中からジョセフの側に降り、すぐ隣をすりぬける。
「……銀髪の腹の中に黒色火薬を必要量仕込むのに、おおよそ十分。それまで堪えてや……」
すり抜けざまに小声でそう呟く。
服部は勇次郎に気付かれぬよう少しづつ、ニアデスハピネスにより作り出した黒色火薬を、
口から体内へと侵入させると言っているのだ。
そのあまりの悪党ぶりに、にやりと笑うジョセフ。

今、生存者の中でも屈指の知略を誇る、正義の卑怯者コンビが範馬勇次郎へと挑む!



エレオノールが意識を取り戻すと、周囲にあったはずの炎は既に鎮火しており、
617Classical名無しさん:08/05/07 22:16 ID:IE1Ckvvo
 
618Classical名無しさん:08/05/07 22:16 ID:Qcu4HffU
             
619 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:16 ID:DCm2xBoY
川田の姿も見当たらなかった。
胸元に置いてある核鉄をぎゅっと握り締める。
ケンシロウに救われ、人を信じようとした矢先の裏切り。
心に黒い染みが広がっていくのが自分でもわかるが、それを核鉄を握って堪える。
「……人を裏切り続けた私に対する、当然の報いです」
体を起こそうとすると、ふっと意識が遠のく。
随分と体力を消耗しているようだ。
それでも意識をしっかり持てば、何とか歩き回る事も出来そうなので、立ち上がり荷物を探す。
すぐにでも御前を呼んで、側に居て欲しいと思う。
だがエレオノールが負っている怪我は決して軽くはなく、
又、これ以上御前に迷惑をかける事をエレオノールが良しとしなかったのだ。
エレオノールは自分の力で歩き始める。
今度こそ、困っている誰かの力になれるようにと。



ジョセフは、数度勇次郎と拳を交えて結論を出す。
『十分どころか三分だってもたねえええええ!!』
小細工する暇すら与えてもらえず、一方的に攻撃され続ける。
それを凌ぐジョセフの能力と波紋は確かに素晴らしいものかもしれない。
何度勇次郎に殴られても傷一つ付かないソードサムライXの硬度も大した物であるし。
だが、それだけで凌ぎきらせてくれる程、この男範馬勇次郎は甘くは無かったのだ。
「大言の責を取れ」
勇次郎は既にジョセフを殺すのではなく、いたぶる目的での攻撃に変えている。
ジョセフの両手足を千切るべく放たれる手刀や足刀を、波紋を応用して受け流すのも限界が近い。

服部にとっても格闘戦時における勇次郎の技術の高さは計算外であった。
620Classical名無しさん:08/05/07 22:17 ID:m4z4K2wA

621Classical名無しさん:08/05/07 22:17 ID:IE1Ckvvo
  
622 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:17 ID:DCm2xBoY
遠からずジョセフの防御を抜け、勇次郎の痛撃が直撃する事だろう。
ジョセフが一撃入れられれば波紋を使う事で、ほぼ勝利を確定出来るのと同じように、
勇次郎渾身の乱打を数秒間喰らえば、それだけでジョセフは死に至るのだ。
ニアデスハピネスはまだまだ目標の1/3にも達していない。
しかし、この段階で爆発させて隙を作るのも手である。
目標量にしても、内蔵は常人と同じであろうという発想の元で考えている。
そもそも、その量で足りるかどうかもわからない。
『せやかて、ここでやらんとジョセフがヤバイて!』
意を決して爆破の意思を固めようとしたその時、勇次郎が攻撃の手を止める。
『しまった!』
そう思った時にはもう遅い。
一瞬で胸いっぱいに空気を吸い込み、それを噴き出す。
これで、服部の仕掛けが勇次郎に見抜かれていた事が判明した。
『アホな!? どないな手使えばこの手がバレるねん!』
勇次郎は服部が何かを仕掛けている事を、その微妙な仕草で見抜いていた。
そして、服部は絶対にバレないと確信していた極微量の黒色火薬の移動。
これが口に入る際生じる不自然な空気を流れを、勇次郎は感じ取っていたのだ。
それがどんな物なのかは、勇次郎にはわからなかった。
少なくとも口に入った瞬間効果を発揮する類のものでない事は、服部の様子から察してはいたが。
そして今服部から放たれた必殺の意思。
それに、理屈でなく感覚のみで反応した結果の行動がこれである。
理不尽極まりない話であるが、結果的にそれは勇次郎にとって最善の行動であった。
「ここは小賢しい奴が多すぎる」
勇次郎が必殺の連撃をジョセフに放たんとしたその時、
人影がジョセフの真横に飛び込んできた。
全力でジョセフを蹴飛ばし、勇次郎から距離を取らせる。
「ほう、貴様も来たか」
623 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:18 ID:DCm2xBoY
大した興味も持てず、退屈そうに戦闘を眺めていたラオウが興を取り戻す。
その人影は、ジョセフを蹴飛ばした反動で、同時に自分も勇次郎から距離を取った。
「ラオウ……そしてお前が勇次郎か」
白と赤のボディに、赤い頭部、額から伸びる二本の触角。
ジョセフを蹴り飛ばした男、村雨良は勇次郎、ラオウの順に彼らを睨みつけた。
「これ以上貴様等の好きには……」
そこまで言った所で、眼下に大きく踏み込んだジョセフの姿が見えた。

「居やがったな赤虫野朗おおおおおおおおおおおお!!」

地面をこすらんばかりに振り回した腕から放たれるアッパー。
これをまともに顎にもらった村雨は、真後ろに引っくり返る。
当然のごとくジョセフは波紋全開である。
機械の体である村雨とて、体内を液体が流れている。
その流れを波紋によって狂わされれば、その行動は阻害される。
「ま、待てジョセフ!」
「気安く人の名前呼ぶんじゃねえ! かがみを何処にやりやがったてめえ!」
首を掴み、引きずり上げるジョセフ。
そのジョセフの全身が、そのままの姿勢で真横にズレて、いや吹っ飛んでいく。
「勝手に盛り上がってんじゃねえよお前等」
勇次郎がジョセフに両手で掌打を放った模様。
「どけい勇次郎! そ奴は我が敵よ!」
そんな勇次郎に一足飛びに踏み込んで来たラオウの豪腕が襲い掛かる。
これは勇次郎にとっても意外だったのか、とっさにかわしきれず両腕を交差させて受け止める。
拳の勢いに負け、たたらを踏んで数歩下がる勇次郎。
「……そうかい、ならこっからは乱戦って事でいいんだなラオウ!」
624Classical名無しさん:08/05/07 22:18 ID:Qcu4HffU
                     
625Classical名無しさん:08/05/07 22:18 ID:j.AcfZCs
626 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:18 ID:DCm2xBoY

四人が集まる場所から少し離れた所に柊かがみは居た。
村雨から危険なのでここに隠れているように言われたのだが、
村雨からはジョセフを説得する際は、姿を隠し村雨に任せるよう言われていたのだが、
幾らなんでもこんな乱戦状態での再会は予想していない。
たまらず飛び出し叫んでしまう。

「ジョセフ!」

その声に振り向くジョセフと服部。
再会が成ったと喜ぶジョセフの顔が、一瞬で凍りつく。
彼女にあるべき物が足りない。何故彼女の左腕が失われている?
あまりの衝撃に、頭が真っ白になったかのように立ち尽くすジョセフ。
その衝撃の大きさは、容易く怒りへと変わっていった。

「赤虫野朗! てめえかがみに何してくれやがったあああああああ!!」

ラオウに向かい飛びかからんとする勇次郎に、その背後を取ったジョセフが蹴りかかる。
「邪魔だどけええええええええ!」
真上に大きく飛びあがり、これをかわす勇次郎。
空中で振り返ってジョセフに蹴りを放つも、ジョセフは低い姿勢でその下を駆け抜け、村雨へと迫る。
下から掬い上げるように手に持った剣を振り上げる。

服部は一歩引いた所で戦況の変化に対応すべく頭を捻らす。
ジョセフは柊かがみの様を見て、完全に我を忘れている。
さもあらん、服部も腸煮えくり返る思いだ。
だが、現状の不利さに気付けない程冷静さを欠いても居なかった。
627Classical名無しさん:08/05/07 22:19 ID:IE1Ckvvo
   
628 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:19 ID:DCm2xBoY
勇次郎のみならず、金髪まで参戦してきて、その上村雨まで現れた。
全員敵同士であろうとは思うが、戦力的には圧倒的不利。
それよりも、村雨を倒すべく向かった劉鳳はどうしたのか?
まさか倒された?
だとしたら、この村雨という男の戦闘力は最早手に負えるレベルではないという事になる。
逃げただけという事もありうるだろうが、今の段階では判断は出来ない。
ここは逃げの一手であろう。
幸い柊かがみは離れた場所におり、殺し合いに乗っている三人はお互いを敵とみなしている。
服部、ジョセフのどちらかが致命的な損傷を受ける前にここは一時引くべきだ。
「引けジョセフ!」
ニアデスハピネスによる低空飛行で戦場に飛び込む服部。
服部の対応能力では、三人居る敵の誰一人としてまともに戦えはしない。
『それでも置いていくわけにもいかんやろ!』
強引に戦場に突っ込み、ジョセフを抱える服部。
「てめっ! 何しやがる!」
文句は後で聞くと決め、無視して更に奥へと飛び抜ける。
「誰が逃げていいと言ったッッッッッ!!」
即座に勇次郎がこちらをロックオン。
『それも、計算の内や』
服部が飛び込む直前に仕掛けた黒色火薬を爆発させると、勇次郎、ラオウ、村雨に無数の破片が襲い掛かった。
ニアデスハピネスは火薬を爆発させるのみである。
それ単体での殺傷能力は当然、中に弾欠を仕込む地雷や手榴弾と比べて著しく落ちる。
火薬の量を増やし爆風と衝撃のみで殺せばいいだけの話であるが、
火薬を大量に用いるのは体力や運用面においてあまり効率的ではない。
ならば爆発で何かを壊し、その破片を爆風で飛ばす事で効率化が計れないかと服部は考えた。
道路脇のゴミ箱、電信柱、店舗の窓ガラス、中央分離帯に植えられた草木。
そういった物に、黒色火薬を仕込んで置いたのだ。
629Classical名無しさん:08/05/07 22:19 ID:qd.RmViw
630 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:20 ID:DCm2xBoY
しかもこのやり方の利点は、吹っ飛ぶ物の位置と火薬の位置を調節する事により、ある程度指向性を持たせられる事。
服部が逃亡に選んだルート以外に、それらの破片は満遍なく降り注いでいった。
あらぬ方向からの攻撃ではあるが、勇次郎は破片を一つ残らず見切ってかわしてみせる。
村雨はそんな破片ごとき気にもせずラオウに向かって飛び込む。
そしてラオウは、自らに襲い来る破片を全て投げ返してみせたのだ。
北斗神拳奥義、二指真空把。
飛んで来る飛び道具を二本の指で捉え、投擲者に投げ返す奥義である。
常人には同時にしか見えないような破片達であるが、当然僅かな着弾時間差はある。
それを見切り、順に一つづつ二本の腕で全てを投げ返しきる。
飛びかかっていた村雨は、その集中砲火を浴びて後退する。
そんな予期しえぬ攻撃すらかわしてみせる勇次郎。
逃げに徹する服部に抱えられながら、ジョセフは無理矢理体勢を変える。
全身に波紋を漲らせ、服部への盾となる。
二人はもんどりうって道路へと転がり落ちた。
そしてその怪我を確認する間も二人には与えられない。
「くだらぬ者が多すぎるわ……まとめて消え失せい!」
倒れた二人への追撃を考えていた勇次郎は、ラオウの気配に気付いて大地に伏せる。
初見の村雨は、ただ危険な何かだと察し警戒するのみ。
倒れているジョセフと服部には対応のしようが無い。

「北斗神拳奥義! 天将奔烈!」

服部が先ほど放ったニアデスハピネスによる爆発以上の衝撃が周囲一帯を包み込んだ。



ラオウを中心に、道路が浅いすり鉢状にえぐれている。
631 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:20 ID:DCm2xBoY
道路に面した建物の窓ガラスは一つ残らず割れ散り、外灯、標識、電柱すらへし折れている。
地面に伏してかわさんとした勇次郎は、めくり取られるように跳ね飛ばされビルの壁面に叩きつけられている。
村雨は、道路の数十メートル先まで跳ね飛ばされていた。
いや、直前で危険に気付いて距離を取ろうとしたのだが、当然逃げ切れるはずもなく、
大きくジャンプしたその背中に喰らったせいで、こんなに遠くまで飛ばされていたのだ。
一番被害が大きかったのはジョセフと服部の二人であろう。
破片によるダメージを波紋にて軽減したまでは良かったが、
同様に天将奔烈も防ごうとしたジョセフはまともにそれをもらってしまっていた。
衝撃を殺しきる事も出来ず、真後ろに居る服部も巻き込んで壁際に激突。
どちらも大きなダメージを負ってしまっていた。
それでも鍛えぬいた体のおかげか、ジョセフが先に立ち上がる。
「痛っえぇ……おい服部! しっかりしろてめぇ!」
薄目を開けた状態で仰向けに倒れながら、服部は言った。
「……意識はしっかりしてるでぇ……体の方はまるで言う事聞いてくれへんけどな……」
口調は弱々しいながらも、へらず口を叩く余裕ぐらいはある事に安堵するジョセフ。
「しばらくそこで寝てな。後は俺が何とかしてやるからよぉ」
「ドアホ……さっさと逃げる手考えんかい……」
「あいつらが許しちゃくれねえよ」

体は全く動かない。しかし頭はまだまだ働く。
それをフル回転させて心に残る違和感を、少しづつ解決していく必要がある。
服部は全身の力を振り絞り、戦況を把握出来るよう体を横向きに寝かせる。
『……何で左腕何や?』
柊かがみを捕えた村雨がまず考える事は、彼女の逃亡を防ぐ事である。
それを許してしまえば、逃げた柊かがみがジョセフ達と合流した場合、
村雨の望む戦闘が行われなくなる。
だが、それが理由で柊かがみを傷つけるとするのなら、左腕というのは変だ。
632Classical名無しさん:08/05/07 22:20 ID:Qcu4HffU
              
633Classical名無しさん:08/05/07 22:21 ID:IE1Ckvvo
  
634 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:21 ID:DCm2xBoY
足なり目なり、より適切な手段があったはず。
柊かがみが村雨を怒らせた為、怒りに任せて腕を落とした?
だとしたら、柊かがみの顔にまるで傷が無いのがおかしい。
通常怒りに任せて行動した場合、まずは頭部に一撃あるのが自然だろう。
そうでない場合もありうるが、何よりの違和感はあの治療跡。
腕一本斬りおとす程の怪我をしたのなら、それに見合った治療が必要のはず。
残った片腕のみであそこまでの治療を自ら施した?
激痛と出血に耐えながらの処置は想像以上の労苦を伴う。
それをあの年の少女が為すというのは、不自然すぎる。
死んではマズイので村雨が治療した?
確かに放送前にあの怪我を負ったというのなら、それもありうる。
一応話の筋は通ったが、違和感は残る。
首だけを動かして柊かがみを視界に収める。
距離があるので確認はしずらいが、目を凝らしその挙動を細かく観察する。
『くそっ、雨が邪魔や。よう見えへ…………アカン! しゃっきりせえ俺!』
飛びそうになった意識を意思の力だけで引きずり戻す。
その表情、視線の動き、体の向きを確認していると、程無く大変な事実が判明する。
『柊かがみは、ジョセフと同頻度であの村雨の動きを目で追ってるやん!』
憎むべき敵であるのなら、危機的状況の中戦うジョセフと同じ頻度で村雨を見るような真似はしない。
つまり柊かがみにとって村雨は、ジョセフと同じぐらいその戦闘の一部始終が気になる相手という事になる。
そしてこれは少し前から気付いていたが、村雨は決してジョセフを攻撃しようとはしていない。
最初の蹴りのみ。しかもこれは、勇次郎の攻撃から逃れさせる意図があったと見る事も出来る。
『……なるほど、ほなら……ちょっとは勝機が見えてきたか』
確認する方法はある。そしてそれがうまく行けば戦況はまた変わる。
ジョセフは今必死に戦っており、服部の策を聞く余裕は無い。
なら、これは服部がやらなければならない。
『ええい動かんかい! ここで動かな俺ここまで生き残った意味無いで!』
635 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:21 ID:DCm2xBoY
息を吸うだけで痛い。多分これを思いっきり吐き出したらもっと痛いのだろう。
痛みで声が変わらないよう、対痛覚の覚悟を決めて、服部は怒鳴る。

「村雨! 俺達と共闘する気あるか!」

何故そうなったのかはわからないが、柊かがみという人間を信用するのなら、
彼女が気にかけている村雨という男は、あの金銀の大男より話が通じるはず。
見た所、村雨という男の戦力はあの二人の大男より劣るようにも見えるし、
下二人が組むというのは、殺しに乗っていたとしても悪く無い手のはず。
あの村雨という男にそれを理解出来る脳があれば、この窮地を乗り切れる。
予想通り、ジョセフはぎょっとした顔をしている。
そして当の村雨は、即座に返事を返してくれた。

「元よりそのつもりだ! 俺はお前達の力になりたい! 一緒に戦わせてくれ!」

……いや、そこまで言ってくれるとは思って無かったわ。
どうにもジョセフや劉鳳から伝え聞く村雨像からはかけ離れた印象を受ける。
すぐに柊かがみの反応を見ると、これまた驚くべき事に、とても嬉しそうにこちらを見ている。
特に俺に向かって感謝感激雨あられといわんばかりに頭を下げているではないか。
「服部! どういうつもりだテメェェェ!!」
「ぐだぐだ抜かさず言う通りにせえ! 俺達がやられたら柊かがみまで死ぬんやげほごふぐほっ!」
最後まで言い切れず咳き込んでしまうが、とにかく伝えるべき事は伝えた。
後はジョセフ次第だが、これは少し心元無い。
ジョセフは脳の回りの悪い人間ではないが、どうにも感情的な部分も持ち合わせているようで。

服部から共闘の話が出た時は、服部の気でも狂ったかと思ったが、
即答してきた村雨、そして何よりその話が出た時のかがみの様子を、ジョセフはしっかりと見ていた。
636 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:22 ID:DCm2xBoY
今一解せない話であるが、それはこのピンチを乗り切ってから確認すればいい話だ。
『それでも協力なんざ冗談じゃねぇ。服部の奴ぁこのジョセフ様がこのままやられるとでも思ってんのか!』
口に出してそう言ってやりたいが、言ったらバレて対応されてしまうので我慢するジョセフ。
ジョセフの狙い、それはすり鉢上にヘコんだこの道路そのもの。
止まぬ雨のおかげで、戦場となっているここには、雨水がたまってきているのだ。
『準備は万端、さーていっちょかましてやるゼェェェ!』
全員位置関係は確認済み。
ジョセフは練りに練った波紋を、その両足から解き放つ。

「青緑波紋疾走!!(ターコイズブルー・オーバードライブ!!)」

一瞬で伝わる波紋の力、それは水溜りに足を踏み入れていたラオウ、勇次郎、村雨の三人を容易く捕える。
「ぬっ!?」
「またかっ!?」
「くっ!」
三人の動きが完全に止まる。
その中でジョセフがターゲットに選んだのは、範馬勇次郎であった。
「テメェが一番外道に見えるんでな!! 真っ先に潰させてもらうゼェェェ!!」
勇次郎にするかラオウにするか。
どちらかであったのだが、ジョセフは勇次郎に的を絞った。
直感といえば簡単すぎるが、勇次郎からカーズのような男から感じる、より強い悪のオーラを感じたのも事実であった。
そして今度は最も波紋の伝わりやすい拳での一撃。
身動き取れぬ勇次郎はこれもまともに喰らってしまう。
「かはっ!」
受ける事も、筋肉を硬化させる事も出来ない状態での一撃。
流し込まれた波紋と相まって、あの勇次郎が苦悶の表情を浮かべる。
「こうして波紋をブチ込みながら! てめえが死ぬまで殴り続けてやらアアァァァ!!」
637Classical名無しさん:08/05/07 22:22 ID:IE1Ckvvo
            
638Classical名無しさん:08/05/07 22:22 ID:m4z4K2wA

639 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:23 ID:DCm2xBoY
二発目、今度は顔面に叩き込むと、勇次郎の視界が円を描いて回りだす。
当然だ、波紋は液体に効果のある技。眼球のようなゼリー状のそれが影響を受けぬはずはない。
「オオオオォォォ!!」
三発目、今度は右脇腹に突き刺さるような一撃。
それはジョセフが考えているより僅かに軽い一撃であった。
『マズイ! 波紋の呼吸が練れなくなってきてやがる!』
全身に負った損傷が、実力差のある男との戦いが、ジョセフを常以上に消耗させていたのだ。
「だったら一撃で首を跳ねるまでだっての!!」
ソードサムライXを真横から首目掛けて振りぬく。
勇次郎はその剣の勢いに逆らわず、真横に体を倒す。
そのまま頭部を下に、脚部を上に振り上げると、ジョセフが振るう剣よりも早い速度で勇次郎の体が一回転する。
その体術にジョセフが驚く間も無い。
一回転して再び頭部が上に戻って来ると同時に、勇次郎は振り回していた腕をジョセフに叩きつけていたのだから。
ラリアットの要領で大きくジョセフを跳ね飛ばす勇次郎。
「この俺に拳を打ち込むとはな……」
頭を振って起き上がったジョセフの前に、完全に回復した勇次郎が立っていた。

ジョセフの波紋により、身動きが取れなくなったのも数秒で、
すぐに動けるようになった村雨は、ラオウをその標的に定める。
「行くぞラオウ!」
ラオウも既に回復しているようで、悠然と村雨を待ち構えている。
村雨に加減は無い。
全速で踏み込み、全力で拳を振るう。
村雨に技術が無い以上、改造され強化されている身体能力を活かすにはこれが最適である。
目標目掛け、ただひたすらに突き進むその拳は村雨らしい拳であるとも言える。
ラオウはそれを紙一重で見切り、同時に拳を放って村雨を殴り飛ばす。
後ろ足を踏ん張り、殴り飛ばされる事だけは阻止した村雨は、
640 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:23 ID:DCm2xBoY
再び拳をラオウに向ける。
それをラオウは今度は前蹴りで迎え撃ち、村雨の拳より早いその一撃で今度こそ村雨を蹴り飛ばした。
「……なるほど、僅かの間に随分と気構えが変わっている」
それだけで動きが変わるというのは、村雨がいかに未熟であるかを証明しているようなものなのだが。
蹴り飛ばされながらもバランスを崩さず、地面に足を滑らせ飛ぶ勢いを殺す村雨。
すぐに次の攻撃に移る。
「その動きに迷いも無い」
踏み込んでの回し蹴り。これに村雨は仕掛けをしておいた。
分身を限定使用し、蹴り足が二重三重に見えるように仕込む。
正しい足を選んで受ける、ないし避けなければこれにカウンターを取るのは難しいはず。
ラオウはその正しい足をあっさりと見抜き、片腕で受けながら村雨に回し蹴りを放つ。
村雨も全く同じ体勢で腕を上げてラオウの蹴りを受けるが、その重さに思わず顔をしかめる。
「だが……」
両者蹴りを受けた体勢のまま動かない。
「まだまだ未熟っ!」
軸足を回転させ、全力で足を振りぬくラオウ。
それを止める事が出来ずに、やはり先ほど同様蹴り飛ばされてしまう村雨。
今度はラオウがまっすぐに踏み込む。
そこに技は無い。二の打を考えず、その一打に全ての力を注ぎ込む。
拳の振るい方にも工夫は見られない。一直線に、最短距離を突き進む。
村雨は顔目掛けて伸びるその拳をまっすぐに見つめる。
ラオウがそうしたように、紙一重で見切ろうとギリギリまでそれを堪える。
ここが見切る瞬間と踏み村雨が動こうとした直後、ラオウの拳は最後の加速を見せた。
タイミングを外された村雨は、その拳をまともにもらい壁際まで殴り飛ばされてしまう。
背後の壁が村雨の形にヘコむ程の勢いでそこに叩きつけられる。
ラオウは尚も容赦せず、一瞬で距離を詰めると村雨に拳の連打を打ち込む。
衝撃は大きかったが、意識は手放していなかった村雨はこれをかわさんと先ほど同様にラオウの拳に集中する。
641Classical名無しさん:08/05/07 22:24 ID:IE1Ckvvo
   
642Classical名無しさん:08/05/07 22:24 ID:Qcu4HffU
         
643 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:24 ID:DCm2xBoY
一、二、三……かわせた……四、五、かすった……六、七、八、九……



かがみは悲鳴を上げたくなるのを必死に堪える。
ジョセフが銀髪の猛攻に遭い、その身に耐えがたき打撃を何度も受ける。
村雨が金髪の連打を喰らい、壁に埋め込まれていく。
その一撃一撃がどれだけ重いものなのか。
まるで自分が殴られているような痛みを覚える。
それでも邪魔をしてはならない、足手まといにだけはなってはならない。
そう言い聞かせて泣き声を堪え続ける。
金髪、銀髪がようやくその拳を止めると、二人は声も無くその場に崩れ落ちた。
それが限界だった。
「いやあああああああああ!!」

動かぬ体を、それでもと何度も服部は力を込め、その都度全身を走る痛みに悶え苦しむ。
ニアデスハピネスを用いる体力も残っておらず、出来る事といえばソードサムライXを維持する事のみである。
他からの助力無しには最早戦況を覆す事適わぬとの判断を服部は下す。
せめて柊かがみだけでもと、自分が動こうとするも、やはりそれも出来ず。
幾ら策を考えた所で、それを実行に移す体が無くては意味が無い。
後悔はしない。そんな暇があったら次の手を考える。
クレイジーDのスタンドを用いれば、移動だけなら何とかなる。
その為にはソードサムライXの維持を解く必要があるので、最後の瞬間まではとその使用を控えてきたのだが、
どうもその最後の瞬間が近づいているらしい。
いや既に時を逸してる感もある。しかし服部には二人の戦闘中に逃げ出す事など出来なかったのだ。
『ハンパ者もええ所やな……まだ俺には覚悟が足りひん……それがこの結果か』
644 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:24 ID:DCm2xBoY
遂に決着の付いた戦場、そこに一人の女性の凛とした声が響き渡る。

「お二人に問います! 何故そこに倒れる人を攻撃したのですか!」

ビルの屋上に立ち、勇ましく弓を構え、そう問いただすのはエレオノール。
張り詰めた神経の為せる技か、まっすぐに立つその姿勢に不安定な所は見られない。
ラオウは心底面倒そうに勇次郎を見やる。
目線でお前がやれ、と言っている。女などラオウは眼中に無い。
そして当の勇次郎はというと、次から次へと現れるエサ達に喜びの色を隠せないといった所だ。
「何故かって? クッ、クックックックックックック…………」
勇次郎の髪の色から、彼がしろがねなのではとの疑いを持つエレオノール。
「ウマそうだから、喰った。それだけだ」
そしてすぐにその疑念を打ち消す。
彼がしろがねかどうかはどうでもいい事だ。
邪悪としか形容しようのないその表情、彼は今のエレオノールが倒すべき敵だ。
「御前、やりますよ」
「おうよ!」

獣のごとき俊敏さでビルへと駆け寄る勇次郎。
そこに、御前が放つ無数の矢が降り注ぐ。
勇次郎からは弓しか見えていなかったのが突然矢が現れ、
しかも常識から逸脱した速度での連射を行う。
予想を外され、大きく横へと跳んで避ける勇次郎。
勇次郎の後を追うように、次々矢が突き刺さっていく。
精密高速射撃、この特性を最大限に活用すべくエレオノールはビルの屋上に陣取ったのだ。
このビルに近づけさせなければ、同じく射撃武器でなくばエレオノールを攻撃する事は出来ない。
もしこの大男達が射撃戦を行うというのなら、それこそエレオノールの望む所。
645Classical名無しさん:08/05/07 22:25 ID:qd.RmViw
      
646Classical名無しさん:08/05/07 22:25 ID:qd.RmViw
    
647Classical名無しさん:08/05/07 22:25 ID:m4z4K2wA

648 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:25 ID:DCm2xBoY
銃なぞでは御前に対抗する事など出来はしないのだから。
これに対して勇次郎が取った行動は、エレオノールが居る隣のビルへの侵入。
遮蔽物の関係上、この行為をエレオノールが射撃にて止める事は出来ない。
勇次郎の対応速度の速さに舌を巻くエレオノール。
このビルと勇次郎が侵入したビルとの距離は3メートルも無い。
あの速度で走れる勇次郎なら、難なく飛び越えて来れるだろう。
だが、同時に勇次郎からエレオノールの動きを見る事も出来なくなった。
エレオノールは微笑する。
「御前はアクロバットが見たいとおっしゃってましたね」
「え? ああ、そりゃ言ったけど、急にどしたの?」
「良い機会ですから、ご堪能下さいませ」
エレオノールの踵は屋上の端にあり、体はビル屋上入り口を向いている。
そこから真後ろに倒れ込むように、エレオノールは屋上から飛び降りた。
「ちょっ! えれのん何しよっとかああああああ!!」
謎な方言で悲鳴を上げる御前。
エレオノールは御前を左肩に乗せたまま、御前の位置がずれないようバランスを取る。
そのまま一回、二回と縦に回転しながら落下する。
左手に持った弓はそのまま、時折ビル壁面の突起部と右手右足を使って減速しつつ、
ビルの壁面沿いを流れる水滴のごとくひらりひらりと落ちていく。
そこには見ていたラオウが、思わず感嘆の声を上げかける程の美しさがあった。
フィニッシュは両足を揃えての着地。
片腕を前に出し、肘を曲げて一礼する。
そして、肩の上に居る御前に感想を問う。
「いかがでしたでしょうか?」
「……何でオレ肩に乗ったままなのか、不思議でならないんだけど……」
「それがアクロバットというものです」
御前の驚きの表情が、エレオノールには何よりの拍手となった模様。
649Classical名無しさん:08/05/07 22:25 ID:IE1Ckvvo
           
650 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:25 ID:DCm2xBoY
そのまま屋上を見上げると、そこには体を乗り出してこちらを憎憎しげに見下ろす勇次郎の姿があった。
勇次郎ならばそこから飛び降りる事も可能だ。
だが、そんな真似をすれば身動き取れない空中で矢襖にされるのは自明の理。
踵を返し、再度下へと向かう勇次郎。
それを確認したエレオノールは、今度は更に別のビルに向かおうとするが、
真横から駆け寄ってくる何者かの気配を感じ、大きく前に飛びのく。
数瞬前までエレオノールが居た空間を、刃の雨が通り過ぎる。
「勘は、いいみたいね……」
振り向いて攻撃者を確認するエレオノールの前には、
学生と思しき制服を身につけ、長い髪から雨粒を滴らせ、
両足から機械のアームと刃を生やした女性、桂ヒナギクが立っていた。



怒り顔で階段を駆け下りる勇次郎。
出口に向かい駆け寄る彼の視界に、一人の人影が映る。
「よう、再戦希望だが暇あるかい?」
彼が再び現れる事が意外だったのか、怪訝そうな顔をする勇次郎。
「逃げ出した負け犬が何の用だ独歩。よもや……この俺とやりあいたいなどと寝言をほざきに来た訳ではあるまい」
独歩は拳を鳴らしながら勇次郎に歩み寄る。
「再戦希望っつってんだろ。耳遠くなったんじゃねえのかお前?」
怒りに任せて大地を踏みしだく勇次郎。
その挙動だけでビルの床が割れ砕ける。
「負け犬がッッッ!! この俺と戦うだとッッッッッ!!」
独歩は銃器も核鉄も持って来てはいない。
完全な無手。
そんな状態で独歩は、自らのきらりと輝くハゲ頭をこんこんと叩く。
651Classical名無しさん:08/05/07 22:26 ID:IE1Ckvvo
       
652Classical名無しさん:08/05/07 22:26 ID:qd.RmViw
     
653 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:26 ID:DCm2xBoY
「雨に濡れるのは嫌いでね。知ってるかい、雨ってな頭皮と毛髪に悪いんだってよ」
マイペースでそううそぶきながら、もう何万回目になるかわからない空手の構えを取った。



かがみはこの期に及んで身動きの取れない我が身を呪う。
突然の乱入者により、ジョセフ、村雨へのトドメの一撃は放たれていない。
しかし、あの場にはまだラオウが完全なフリーで残っている。
かがみが踏み込めばあの大男が黙ってはいまい。
今のかがみには、ジョセフが、村雨が立ち上がってくれるのを祈るしか手は無いのだ。
『……かがみ!』
零が何かを言っているが、それにも気付かない程、かがみは戦場を凝視していた。
不意にその肩が何者かに叩かれる。
完全な不意打ちに驚き、振り向くかがみの前には、

「待たせて済まない」

牙無き人々の希望、葉隠覚悟が立っていた。



零を前に、覚悟は僅かに躊躇する。
独歩の強い勧めでこちらに来たが、果たして今の自分に零を纏う資格があるのかと。
しかし零の言葉でそんな思いなど消し飛んでしまった。
『待ちかねた、待ちかねたぞ覚悟! ただ見ている事しか出来ぬ無念……ようやく晴らせる!』
零は覚悟にしか纏う事が出来ない。
助言をし、知恵を貸す事は出来ても、自らのみで戦うことは出来ないのだ。
654Classical名無しさん:08/05/07 22:27 ID:qd.RmViw
      
655 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:27 ID:DCm2xBoY
戦士である零にとって、これほどの口惜しさがあろうか。
覚悟は独りよがりで零を遠ざけた自らを恥じる。
「零よ……共に、戦ってくれるか」
『言うに及ばず!』
鞄が開き、中から触手と共に魂持つ鎧、強化外骨格零が飛び出す。
そしてかがみが悲鳴を上げる。
「ぎゃああああああ!!」
何故か覚悟が服を脱ぎ、全裸で飛びあがったせいだ。

   再会の瞬着!

空中で覚悟を取り囲むように、腕を、足を、腰部を、腹部を、そして頭部を零が包み込む。
神経接続がなされ、脳波がシンクロし、完全に装備を終えた強化外骨格の背後からスカーフが飛び出す。

守る! くじけない心!

討つ! 悪鬼ラオウ! 狂獣勇次郎!


    心は一つ!


   正義! 完成!



「完成じゃないっ! 何でいきなり脱ぐのよ!……ああぁぁぁ、見ちゃった、見ちゃった……もう駄目。色んな意味で終わったわコレ」
656 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:28 ID:DCm2xBoY
かがみの苦悩などまるで意に介さずラオウに向けゆっくりと歩を進める覚悟。
「かがみさんは下がっていてくれ」
「……はい、そうします」
文句を言う気も失せたかがみは素直に言う通りにする。
ようやく希望が繋がったと思ったらコレ。落差ひどすぎない?
なーんて事を考えてるかがみの視界に、フランシーヌに襲い掛かるヒナギクの姿が映る。
「覚悟君、あの人は敵なの?」
「うむ、独歩が言うには人を騙す悪女だとの事。しかしヒナギクさんならば遅れは取るまい」
覚悟がヒナギクをそう評した事に、少しかがみは驚いた。
「今のヒナギクさんには戦士の覚悟がある! 決して打ち倒されたりはせぬ!」



エレオノールにとって、接近戦は苦手分野ではない。
屋上に置いてきてある、あるるかんさえあればむしろ得意とする分野だ。
しかし今それを扱うのは難しい。
人形操りは多大な集中力を要する。
その点御前ならば、核鉄使用による体力消耗のみで済む。
接近さえ避ければ、こちらの方が効率的で効果的だ。
そして御前の速射性能ならば、近接状態から相手を引き剥がすのも容易であるのだ。
最初の一撃をかわしたエレオノールは、すぐに御前を襲撃者へと向ける。
御前も心得ているのか、エレオノールが狙いを定めるなり矢を放つ。
襲撃者はまっすぐこちらに向かって来る。あれでは良い的だ。
「バルキリースカート!? まずいエレノン! 距離を取って!」
御前が焦った声を出す。
弓は襲撃者に向けたまま、エレオノールは遮蔽が取れるよう建物へ向かって駆け出す。
放った矢は、襲撃者が足から生やす刃によって悉く打ち落とされる。
657Classical名無しさん:08/05/07 22:28 ID:qd.RmViw
          
658 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:28 ID:DCm2xBoY
「アレは何です!?」
「使う奴の思う通りに動いてくれる剣だと思って!」
手よりも多いアームの数を見て、この相手との接近戦は絶対に避けるべきとエレオノールは考える。
身体能力はどうやらエレオノールの方が上らしい。
全速で走れば追いつかれない。
襲撃者の女は、降り注ぐ矢の雨は全て剣で打ち落としながら、空いた腕を背中に回す。
そこから取り出したのは、サブマシンガンであった。
「っ!?」
つい先ほど川田の放つ銃弾を打ち落として見せた御前だが、こんな大量の弾を叩き落とすなんて無理に決まっている。
慌てて建物に飛び込むエレオノール。
幸い襲撃者は銃に慣れていないのか、一発も命中弾は無かった。
「御前、遮蔽を取って時間を稼ぎます。そうすれば倒れている人が逃げる余裕が出来るかもしれません」
「了解! バルキリースカートにゃ因縁があるからね〜。今度こそぶっ倒してやる!」

ヒナギクが想像してた以上にエレオノールの動きは良い。
ケンシロウという人が追っていたというが、恐らくそれをかわしてこの場に来たのだろう。
ナギを殺した張本人、絶対に逃がすものか。
突然ヒナギクの真後ろで窓ガラスの割れる音が聞こえる。
それと共に独歩が建物の外に放り出されてきた。
駆け寄るヒナギク、独歩はすぐに起き上がるが、ヒナギクはその横を駆け抜ける。
すぐに窓から飛び出してきた勇次郎に向かい、マシンガンを放つヒナギク。
独歩も起き上がって再び構えを取る。
「独歩さん止まっちゃ駄目! エレオノールは弓を使うわ!」
言い終わる前に、エレオノールが隠れた場所から矢が飛んでくる。
エレオノールはヒナギクの銃撃を警戒してか、遮蔽から一瞬姿を現しただけだ。
その間に五本もの矢を放つ御前も大したものだが、独歩はヒナギクを狙うその矢を全て手刀で叩き落とす。
ヒナギクの眼前に迫る勇次郎。
659Classical名無しさん:08/05/07 22:29 ID:qd.RmViw
                    
660 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:29 ID:DCm2xBoY
『間に合え!』
「武装錬金!」
銃弾をかわし襲い来る勇次郎の蹴りがヒナギクに当たる寸前、シルバースキンがヒナギクを覆いこの打撃を防ぎきる。
しかし、勇次郎はシルバースキンの破り方を既に知っている。
撥ねた装甲が戻る直前に次なる攻撃を、そうしかけた勇次郎は真横に跳ぶ。
「銃が一つだけなんて誰が言ったのよ!」
ヒナギクは左手で背中からもう一つの銃、454カスールカスタムオートを抜きざまに放つ。
既に勇次郎は移動済み。ヒナギクの真後ろで拳を振り上げていた。
「そいつはすげぇや」
銃の反動で痺れる左腕、かわすなんて出来っこない、頼みはシルバースキンのみ。
コケにするようにそう言う勇次郎の側面から、ヒナギクには手は出させんとばかりに独歩が正拳を放つ。
そのせいで、ヒナギクには一発殴りつけるのみになってしまう。
勇次郎は独歩の拳を片手で受け止めんとするも、急にそれを取りやめ独歩から距離を取る。
「銃はもう一丁あるんだなコレが」
ヒナギクの背中に刺してあった三つ目の銃ベレッタM92を、独歩は何時の間にか抜き取っていたのだ。
走り抜ける勇次郎を追うように独歩は銃を撃つが、やはり銃に関しては素人。
影を捉える事すら出来ず全弾撃ちきってしまう。
「あちゃ〜、やっぱこういうのは向かねえなぁ」
シルバースキンを解き、独歩の隣に並ぶヒナギク。
「何よ、勇次郎は任せとけとか言ってたくせに」
「いや〜悪い悪い、どうにもうまく行かなくってな〜。だがコツは掴んだぜ、次は任せろい」



ラオウは、覚悟のその姿を見ただけで以前の覚悟と違う存在であると認める。
身に纏った覇気がまるで違う。
「それが全力か?」
661 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:29 ID:DCm2xBoY
「いかにも!」
ラオウの意識は完全に覚悟へと向けられている。
その隙を、村雨はずっと待ち続けていたのだ。
「もらった!」
村雨渾身の拳、一度入ればいかにラオウとて崩せるはず。
その拳を、一足飛びに踏み込んだ覚悟が腕を取って止める。
「覚悟!? 何を……」
「馬鹿な真似をするな!」
そう怒鳴りつける覚悟。
驚く村雨に、覚悟は昂然と言い放つ。
「正道を歩むのならそれに相応しき戦い方がある! 不意打ちなど言語道断!」
覚悟はラオウに深々と頭を下げる。
「こちらの不手際、深くお詫びする」
堅苦しい覚悟の謝罪を、ラオウは受け入れる。
「構わぬ」
覚悟に代わり、今度は零が村雨を嗜める。
『良よ、覚悟の言う通りだ。戦士として未熟なお主はまだまだ学ぶべき事は多い。今はお前の為すべき事を為せ』
「俺の為すべき事?」
『ジョセフ・ジョースターとその仲間の説得だ。これは今を置いて他に機会は無いぞ』
村雨は覚悟と零の言葉に納得出来ない。
「そんな事言っている場合か! 向こうにはもう一人バケモノが居るんだぞ!」
「問題ない。戦士独歩と戦士ヒナギクが居る」
「独歩ではあいつの相手は無理だ!」
「否!」
覚悟の気合の篭った声に気圧される村雨。
「戦士がやると言ったのだ。ならば必ず為せる!」
覚悟が確信を持ってそう口にすると、何故だか本当にそんな気になってくるから不思議である。
662Classical名無しさん:08/05/07 22:30 ID:qd.RmViw
                         
663 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:30 ID:DCm2xBoY
『今あの二人の誤解を解いておかねば、更に悲しみが増す事になるやもしれぬ! その重大さがわからぬか!』
確かに村雨はジョセフを説得しなければならない。
それを自らに課したのは他ならぬ村雨自身だ。
「……わかった。ラオウは任せる」
ハヤテを殺された怒りを忘れる事は出来そうにない。
だが、零やかがみが信じてくれている。
怒りに任せて行動したりしない。それに惑わされるような事はしないと。
変身を解き、ラオウに背を向け倒れるジョセフの元へと向かう村雨。
その背に零が語りかける。
『良くぞ耐えた良。お前は確実に正しき戦士の道を歩んでいる。それを信じろ』



再び勇次郎と相対する独歩。
覚悟はラオウとやりあっている様だが、位置が結構離れてしまっているので、
向こうの様子は良くわからない。
ヒナギクはエレオノールを倒すべく建物の影を伝うように移動を始めている。
「さてと、再開だ。次はうまくやってみせっからよ」
俯き加減に構える独歩。
それは、空手の型とは似て非なる型。
右足を引き、右拳を胸の横に当てるように引く。
すぐに今度は左足を引き、左拳を同じく胸の横に当てるように引く。
ちょうど前とは左右対称な構えを取る。
「さっきっから何やってんのか知らねえが……コケ脅しがこの俺に通じるか!」
相も変わらず直線的な勇次郎の動き。
そこから繰り出される拳に対し、独歩は意識ではなく感覚のみで対応する。
一度はうまく行ったのだ、後はそれを他でもやってやればいいだけだ。
664Classical名無しさん:08/05/07 22:30 ID:qd.RmViw
           
665Classical名無しさん:08/05/07 22:31 ID:qd.RmViw
                     
666 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:31 ID:DCm2xBoY

パチィッ!!

軽い、そんな印象しかもてないような音。
しかし、その音に弾かれるように勇次郎の巨体が宙を舞っていた。
ゆっくりと振り上げた足を下ろす独歩。
「良し、完成だ」
地響きと共に大地に倒れる範馬勇次郎。
驚きの余り、言葉も出ないようだ。
愚地独歩が目指す完璧な拳。
その理合は、意を消すに通じる。
その更なる高みにある技を独歩はその目で見ていた。
北斗神拳継承者ケンシロウの操る体術は、独歩の意を消す技術を更に突き詰めたものだった。
殊更に意識せず、全ての行動から意を消し去る技をその目にした独歩が考えたのは、
自らの意を消す拳を、全身に用いる事が出来ないかという事であった。
秘奥を拳に宿すまでに費やした時間、それと同等の時間をそれ以外にも割いてきたのだ。
左拳に、足に、頭頂にすらその時間を割いてきた。
ならば、全てにおいてそれが出来ぬと誰が言えようか。
範馬勇次郎相手の、ぶっつけ本番な緊張感も悪くない。
出来ねば死ぬ。それが最高の集中力を生み出してくれる。
そして、見事それを果たして見せたのだ。
「……それが、お前の奥の手か」
そんな必殺の蹴りを受けてすら、立ち上がれる勇次郎。
「ああ、悪かねえだろ」
戦意を消し、殺意を消して敵を迎え撃つ。
そういった戦い方を、勇次郎は心の底から嫌っていた。
「バカモノがッッッッ!! 戦闘とは力みの集大成! そのように脱力した状態で何を倒すつもりだッッッ!!」
667 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:31 ID:DCm2xBoY
「お前さんだよ。それ以外誰に使うってんだ」
完璧に意を消しきった攻撃は、意を察する事で回避を行う全ての行為を無力化する。
その影響は、当然勇次郎であろうとも受ける。
怒りに任せ、力みに満ちた全力攻撃を放つ勇次郎。
独歩はそれらを、何一つ意識せずに受け、かわし、そして同時に反撃する。
それすらかわすが範馬勇次郎の反射神経であるが、全てをかわす事は出来ず、一発、二発とその身に打撃を受けてゆく。
『これがオイラの最高だ。それでも時間稼ぎぐらいにしかならんだろうがね……』
覚悟がラオウを倒し、ここに来るまでこれで凌ぎきる。
それが、独歩が自らに課したこの戦場における役割であった。
『こっちは俺が何とかする。嬢ちゃん、エレオノールは任せるぜ』



建物の中を伝い、射撃されぬようエレオノールの元へと急ぐヒナギク。
そこに、何と向こうからエレオノールが来てくれたのだ。
通路になっている場所で、その姿を見つけたヒナギクは、彼女がこちらに弓を向ける前に、銃を突きつける事に成功する。
「動かないで。弓を捨てなさい」
サブマシンガンを腰溜めに構え警告する。
エレオノールはすぐに弓を捨てる。
「あの、もしかして、貴女は独歩の仲間なのですか?」
「もしかしなくてもそうよ。ナギを殺したのは貴女ね」
ヒナギクの銃を持つ手が震える。
「……あの子まだ十三歳よ……そんな子を……よくも……」
それはエレオノールの急所である。
かける言葉も見つからなくなり、黙り込んでしまう。

「何だよお前ナギリンの友達か! そんでもって独歩の仲間なら敵じゃ無いじゃん!」
668Classical名無しさん:08/05/07 22:32 ID:qd.RmViw
 
669 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:32 ID:DCm2xBoY

重苦しく沈み込んだ空気をまるで理解していない御前の発言であった。
「何? 人形?」
「人形じゃねえよ! 俺エンゼル御前! よろしくな!」
「……よろしくされる言われ無いんだけど」
全く警戒を解かないヒナギク。
「独歩の仲間なんだろ? ならこの御前様が面倒見てやるさ! 遠慮すんなって!」
「するわよ! あんたその女の仲間なんでしょ!」
御前は腕を組んで頭をかしげる。
「ん〜、その辺の説明が面倒なんだよな〜。よし、んじゃエレノンこのまま外に行こうぜ。独歩には俺から話してやるよ」
「は、はぁ」
エレオノールはもう完全に言われるがままである。
「ちょっと! 何勝手に決めてるのよ!」
抗議するヒナギクもガン無視の御前。
「んじゃ行こうぜー。あ、そこの弓拾っといてなー」
「こら! 勝手に動くんじゃないわよ!」
さっさと先に行こうとする御前と、おろおろと二人を見比べるエレオノール。



      風が吹く



「意識はあるな、ジョセフ・ジョースター」
村雨の呼びかけに、ジョセフは倒れたまま半目を開く。
「……バレてたのかよ」
670 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:32 ID:DCm2xBoY
どうやらジョセフも死んだフリをしていた模様。
「俺はもう殺し合いには乗っていない。かがみや零や独歩、覚悟、ヒナギクと一緒に、これを仕組んだ奴等を倒そうとしている」
ジョセフも、かがみの反応、そしてジョセフには一切攻撃してきていない事に気付いている。
「事情の説明がいるぜ」
「もちろんだ」
ジョセフは寝転がった状態から上半身のみを起こす。
「……屋上から弓を撃ってきた女、ありゃ敵じゃねえだろ」
「何故そう言い切れる? ヒナギクが戦っているのだから相応の理由があると思うのだが」
口の中に広がる鉄の味が勘に触るのか、憎憎しげにそれを吐き出す。
「奇襲の機会潰してまで戦闘の理由問う奴が、殺し合いに乗ってるわきゃねえだろ。
 ヒナギクっつーのか? あの剣生やした女がお前の仲間ならさっさと行って止めて来い」
そう言いながら立ち上がる。
「シンジも服部も、冷静に対処してりゃあんな事にゃならなかったんだ……」
数度呼吸を繰り返し、波紋の力を確かめる。
「三度も同じミスしてたまるかよ。ジョセフ・ジョースター様をなめんじゃねえ」



   殺し合いの陰鬱な空気を



ジョセフは、村雨にヒナギク、エレオノールを探しに行かせると、自らは服部の元へと向かう。
足元は覚束ず、何度もよろけながら服部の元へと辿り着く。
「村雨は敵じゃねえとよ」
「……そうかい」
服部は「そんなに簡単に信用していいのか」という言葉を飲み込む。
671Classical名無しさん:08/05/07 22:33 ID:qd.RmViw
              
672Classical名無しさん:08/05/07 22:33 ID:m4z4K2wA

673 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:33 ID:DCm2xBoY
極限状態に追い込まれた人間がどんな風になってしまうのか。
僅かな判断ミス、誤解、躊躇がどんな結果を生み出すのか。
それを知っている服部は、このジョセフの言葉を頭ごなしに否定する事が出来なかった。
村雨に関して聞いていた、劉鳳やジョセフの言葉を信じない訳じゃない。
しかし、しかるべく事情があれば、善意を持つ人間ですら殺人を犯しうる。
それを誰よりも知っているのは、服部なのだから。
そしてその過ちを認め、赦し、共にある事を選んだジョセフ。
これは、そんな二人だから出来た選択なのかもしれない。
「どっちにしても事情聞くのは、もうちょい後やな。俺も……起きな……」
引きずるようにして、その身を起こす服部。
壁に手を付き、突起に手をかけ、よりかかるようにして何とか立ち上がる。
「アカン、立つのが精一杯や」
「……お前が立った事に驚いたよ俺は」



   様々な因縁を吹き飛ばす



村雨はヒナギクが向かったと思われる建物へと走る。
正面の自動ドアは戦闘の余波によって砕かれており、割れ損なったガラスを蹴飛ばしながら中へと向かう。
ちょうど、ヒナギクと御前がやりあっている所であった。
「わかんねえ奴だな! この御前様の言う事が信じられないってのか!」
「見た事もない人形がしゃべったからって、何信じろってのよ!」
エレオノールは二人の真ん中で、口も挟めず大層困った表情である。
「ヒナギク!」
674Classical名無しさん:08/05/07 22:34 ID:qd.RmViw
      
675 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:34 ID:DCm2xBoY
村雨が声をかけると、二人は口論を止める。
「その女は殺し合いに乗っていないかもしれない。まずは話を聞こうと思うから銃を収めてくれ」
そんな言葉、如何に村雨の言葉とて聞けるはずもなく。
「な、何行ってるの村雨さん! コイツは……コイツはナギを殺したのよ! こんな人殺しの何信じろってのよ!」
それは憎むべき敵に対する弾劾の言葉であった。
しかし、その言葉は敵であるエレオノールのみならず、村雨の持つ傷をもえぐる、そんな言葉である。
すぐにそれと気付き、口を閉じるヒナギク。
しかし出てしまった言葉は戻せず、悲痛そうな村雨の表情を見る事になる。
「ご、ごめんなさい……わ、私そんなつもりじゃ……」
青ざめるヒナギクに、村雨は自分の感情を押し殺して答える。
「彼女の話を聞きたいと、俺は思う。どうか銃を降ろしてもらえないか」

これは「IF」に類する話である。
エレオノールと村雨が悪意を持って組んでいるとヒナギクが考えたとしたら。
どちらも人を殺した事がある。そしてそんな人間同士が組む事をヒナギクは伝え聞いている。
もし、村雨がハヤテと共に悪に立ち向かう強い心を持っていなかったら。
もし、村雨がハヤテの死を悲しむような優しい心を持ち合わせていなかったら。
もし、一緒になって必死にかがみの蘇生をしていなかったら。
もし、一緒に息を吹き返した彼女を前に喜び合っていなかったら。
もし、苦悩するヒナギクに村雨が手を差し伸べていなかったら。
共に居た時間は短い。
その短い時間に、村雨とヒナギクはたくさんの事を共有していた。
そんな時間がヒナギクに教えてくれた。
本郷が後事を託した戦士村雨は、ヒナギクが考える正義の味方であったと。

「……事情は村雨さんが聞いておいて……私は独歩さん助けに行くから」
それでも、彼女が感情を整理しきるには至らず。
676 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:34 ID:DCm2xBoY
ぎりぎりの妥協点として、そんな言葉で村雨への信頼の証とする。
村雨はヒナギクに向け優しい笑顔で頷いてみせた。



    強く暖かい風が



黒光する鎧を身に纏った葉隠覚悟。
彼を前に、ラオウはかつて無い程に闘気が充実する自分に驚いていた。
『勇次郎と相対していた時から感じては居たが……何だこの感覚は』
天将奔烈の威力も以前より遙かに増していた。
しかし、ラオウにはその理由に思い当たる節が無い。
そしてそれ以上に気になるのは、戦闘を前にしてまるで高ぶる事の無い精神であった。
勇次郎に挑む前まであれ程に満ちていた怒りはなりを潜め、心は揺れる事無き水面のようである。
全身にも無数の傷を負い、特にあの劉鳳という男との戦いで受けた傷は、
決して無視出来ないはずであるのだが、そうあれと気を送るだけで出血は簡単に止まる。
「正調零式防衛術、葉隠覚悟、参る」
まっすぐに伸び来る前蹴り。
村雨同様、曲がる事を嫌うその性質が良く現れた一撃だ。
特に意識もせず、歩法のみでこれをかわす。
覚悟の得意とする技に関しては既に見知っている。
それをさせぬには、こちらからの攻撃を抑え、逆に同様の手段で返す事。
次に放たれる左正拳に合わせ、同じく左拳を覚悟の胴へと叩き込む。
その一撃は、奇妙な手ごたえと共に覚悟の鎧へと吸収される。
これでは崩れぬと悟ったラオウは、次に繋ぐのを諦め、覚悟の攻撃を待つ。
677 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:35 ID:DCm2xBoY
覚悟はラオウのその巧みな技を警戒してか、踏み込んでは来ずに大きく下がる。

『何という見事な技! 覚悟よ! あの男相手に接近戦は不利! 距離を取っての昇華弾使用を提言する!』
たった一度の拳のやりとりでその類まれな技量を見抜く零。
「否! 飛び道具に頼るなぞ恥辱の極み! 我に秘策あり!」
覚悟は腰を落とし、左腕を前へ、右腕を大きく後ろに引く。
これぞ陸上選手が発進の際用いる構え、スタンディングスタート。
頭を落とすクラウチングスタートは覚悟の誇りが許さぬのだ。
「行くぞラオウ!」
攻撃が点であるから避けられる。
ならば面による打撃、体当たりならこれを避けるは至難。
背後のバーニアが火を噴く。
こうなった覚悟は全身の何処に触れようとただでは済まぬ。正に打撃技葉隠覚悟。
如何にラオウが身を翻そうと、まっすぐにその動きを見る覚悟の目から逃れる事は出来ない。
即座に軌道修正し、ラオウを捉えるだろう。
これに対するラオウ。
両手を前に突き出し、真っ向から受け止める構え。
「流石は一流! その意気や良し!」
覚悟も全力でこれに飛び込み返礼とす。
この速度でありながら、飛び込む覚悟の両肩を正確に掴み、
自らの強い体勢を維持しえたのはラオウならではであろう。
しかし、覚悟の勢いは止まらず。
ラオウを支える大地ごとこれを貫かんとす。
もしここで僅かでも体勢を崩せば、如何にラオウといえどただでは済まぬ。
五体余さず木っ端微塵と成り果てる。
しかしラオウもまた戦いの天才。このままで終わるはずも無い。
覚悟の速度が充分に落ちた事を確認すると、即座に両腕を離し上体を後ろへ傾ける。
678 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:35 ID:DCm2xBoY
それは避ける為の動作ではない。
上体を後ろに下げる事により、下半身を前に突き出さんが為。
振り上げた膝の威力を高める為の行為であった。
ラオウによって速度を落とされた覚悟が、ラオウに体当たりを決める僅かな間。
その間を縫ってラオウの膝蹴りが覚悟の胴を直撃する。
自らの速度も相まって、その衝撃は強化外骨格を突き抜け、覚悟を貫く。
この状態でのバーニア噴射は覚悟に致命的な損傷を残す。
そう判断した零がバーニアを切ると、覚悟は大きく後ろに飛ばされていった。
大地に転がり、血を噴出しながら覚悟は笑う。
「ははは、一本取られたな零よ」
『今までの傷も含めると、残り戦闘可能時間50分だ覚悟!』
「何と! 俺はまだそんなにも戦えるのか!」
不敵に笑いながら立ち上がる覚悟。
「全ての悪鬼を堕とすに十二分なり!」
『戦闘が終われば治療を行ってやる! まだまだ50分程度の戦闘で満足はさせぬぞ!』
今度はこちらの番とばかりに宙に飛びあがり、覚悟へと迫るラオウ。
それを覚悟は零式防衛術、破邪の構えにて迎え撃つ。
飛びあがったラオウから放たれる蹴り。
これは一撃に留まらずその後に連撃へと繋ぐ、疾風怒濤の猛攻撃。
その最初の一撃を見切り、覚悟は必勝の技、因果を放つ。
正光一閃。
身を捻りこれをかわさんとするラオウの脇腹を抉るように打ち抜いた。
宙空にてこれを受けたラオウ、二回三回と真横に回るも、大地との距離は失わず。
巨体に似合わぬ優雅さで、見事大地へ着陸を果たす。
ラオウにとってもこれは一度見た技である。
にも関わらず、これを見切る事能わず。
如何なる攻撃に対してもカウンターを取るこの因果。
679Classical名無しさん:08/05/07 22:35 ID:qd.RmViw
                    
680Classical名無しさん:08/05/07 22:36 ID:qd.RmViw
                     
681 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:36 ID:DCm2xBoY
その技の軌道、間合いは都度変化する変幻自在の拳。
如何にラオウとて完全な状態の因果を見切る事は出来ぬ。
なればこそ、必殺、必勝の技なのだ。
「技を放った後に因果をかわすその体術! 見事の一言なり!」
打たれた脇腹を見下ろした後、ラオウは眼前にて拳を握る。
「一撃必殺の拳か。良かろう、ならば今度は拳王必殺の拳を受けるが良い」
拳に闘気を集中する。
闘気を操る術において、ケンシロウですらラオウの域にまで辿り着く事は出来なかった。
そんなラオウだから出来るこの闘気に輝く拳の形成。
北斗剛掌波にも匹敵する闘気を込めた拳だ。
それを、ラオウは直接叩き込まんと大きく拳を振りかぶる。
このような構え、戦い方は北斗神拳には無い。
にも関わらず、まるで覚悟に合わせるかのようにラオウはそんな戦い方を選ぶ。
「見事受けきって見せい!」
覚悟にもその威力がわかるのか、額を汗が垂れ落ちる。
『警告! あの拳を受けたれば強化外骨格とて紙屑同然! 一撃の下に塵と消えると心せよ!』
「それでこそラオウよ! 当方に迎撃の用意あり!」



ようやく勇次郎が乱打を止め、アタックレンジから外れる。
これまで独歩に致命的被弾ゼロ。
勇次郎は十数発の拳、蹴りをその身に浴びていた。
勇次郎もその気になれば、所謂柔の拳、カウンター主体の戦闘スタイルも取る事が出来る。
しかしそれは勇次郎の主義に著しく反する。
それに、既にこの独歩の構えを打ち砕く手は見つけてある。
独歩の反射神経を大きく凌駕する動きで、独歩の頭上後方まで飛びあがる勇次郎。
682 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:36 ID:DCm2xBoY
そこから後ろ蹴りで独歩の後頭部を狙う。
それを、独歩はしゃがみこんでかわした。
しかし、この攻撃への反撃は行われず。
「一つ! 反撃の際、その動きは空手の動きに限定される」
コンクリートで出来た電信柱、これを蹴りの一撃でへし折る。
電線を引きずりながら倒れる電信柱。その倒れる先には独歩が居た。
構えを解いて、飛びのき避ける独歩。
その避けた先に勇次郎は居た。
強烈なハイキックを、辛うじて上段受けで止める独歩。
「二つ! 空手の受け、避けにて対応しきれぬ物を止める事は出来ない」
背なに鬼の相すら見える程力を込め、全力でのフックを独歩の胴中央へと放つ。
これはかわさず、膝を上げ、肘を落として受けに回る。
その勇次郎の膂力により、いともあっさりと弾き飛ばされる独歩。
「三つ! その行動は反射の域を出ない為、受けるべきでない打撃を自ら選ぶ事は出来ない」
道路に転がる独歩を見下ろす勇次郎。
「以上の理由により、キサマのその技術は不完全だと言わざるを得ぬ」
最後の一撃で左の二の腕の肉をごっそりと抉られた独歩は、それでもと同じ構えを取る。
衝撃でまともに前も見えやしない。
「……もう少し間を持たせようや。俺はコイツを独歩流空手の奥義にしようと思ってたんだぜ」
「所詮負け犬の児戯にすぎぬッッッッ!! これで奥義とは片腹痛いわッッッッ!」
独歩にはもう手は残されていない。
残りの時間は体で稼ぐしか無さそうだと、腹を決めた時、彼女が独歩の前に立つ。
「……言う事為す事、一々勘に触るのよ貴方」
バルキリースカートを前に突き出し、ヒナギクは吐き出すようにそう言った。
「懲りねえ女……」
みなまで言わせず正面から突っ込むヒナギク。
勇次郎は闘牛士のようにそれをひらりとかわす。
683 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:37 ID:DCm2xBoY
そして、コケにするような笑い顔で通り過ぎたヒナギクを見て言った。
「所詮女なんざこんな程度よ」
すれ違う瞬間、勇次郎は打撃ではなく、ヒナギクの上着からスカートまでを綺麗に切り裂いていたのだ。
下着はどうやら狙いづらかったのかそのままだが、あっという間も無くヒナギクの制服が脱げ落ちる。
「それがどうしたあああああああ!」
ヒナギクはほんの僅かな動揺すら見せず、再度勇次郎に斬りかかる。
意外そうな顔で勇次郎は振り下ろされる剣をひょいひょいとかわす。
不意にヒナギクがバルキリースカートの三本ある刃を一本にまとめる。
「こんのおおおおおおお!!」
ヒナギクの見せる目、それは勇次郎の記憶にもある目だ。
戦場で命を賭けるのは当然である。
新兵ならまだしも、ある程度熟練の兵ならば当然その覚悟は決めている。
だが、戦場にはその先がある。
後先など何一つ考えず、そもそもそれで敵を倒せるかどうかもどうでも良い。
ただ一点、例えば敵の弾薬庫に飛び込み銃を撃つ、例えばこちらに近寄る戦車に鉄パイプを叩きこむ。
一撃入れられればそれでいい、命すらいらぬとばかりに飛び込む命知らずが居る。
我が身の為しうる全てをその為に使って来るのだ。
その一撃の重さ、鋭さは技術の有無に関わらず須らく比類なきものとなる。
この一撃、正にそんな一撃だ。
これは気を抜けば確実に抜かれる。
なればこそ勇次郎も本気でこの刃をへし折りにかかる。
そんな命すら込めた一撃を、蹂躙する事の何と心地よきか。
核鉄は込めた想いが力になる。
そんな刃を勇次郎は両手を組み、真上から振り下ろして粉砕する。
破片を撒き散らし砕ける刃、だが、全てをまとめたその刃は、
一本のみ、それが彼女の信念の証とばかりに砕けず残った。
勇次郎に向け吸い込まれていく刃を、勇次郎は脇の下に挟むようにして押さえ込む。
684 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:37 ID:DCm2xBoY
そして残った腕でヒナギクの首を掴み、締め上げる。
「やるじゃねえか、お前」
即座に足を振り上げ、股間を蹴り飛ばそうとするも、勇次郎が足を軽く曲げるだけでそれを阻止。
次に左腕を伸ばして勇次郎の目を潰さんと狙うが、勇次郎が首から手を離すなり、
ヒナギクの右手を取って捻り上げた事で、ヒナギクの体が勇次郎とは反対側を向いてしまい、
その意図を果たせず振り回されてしまう。
ヒナギクは、そうして狙いを外された左手を地に這わせる。
そこには、へし折られたバルキリースカートの刃があった。
素手でそれを引っ掴むと、勇次郎により捻り上げられた腕に、逆らうように逆回転して勇次郎の脇腹につきたてる。
当然、そんな真似をすれば腕の関節が外れる。
それを自力でやれる程の力は無い、そう勇次郎に思われていたヒナギクは、
回転の勢いでいともあっさりそれを行い、勇次郎の脇腹に、遂に刃をつきたてる事に成功する。
皮膚から数ミリ、実際に刺さったのはその程度だ。
それ以上に刃を素手で持つヒナギクの手の方が切れている。
流れ出る血もそれがどちらの物なのか判別が付かない程だ。
「どうした? それで力込めてんの……」
まるで痛痒を感じないそんな一撃を鼻で笑ってやろうとする勇次郎。
それでも、ヒナギクは勝ち誇ったように勇次郎に顔を近づける。
「はん! 剣刺してやったわ! ざまあ見なさい!」
直後横っ面を張り飛ばされて道路を転がるヒナギク。
まるで床体操で側転を連続してるかのようにぐるぐる回って吹っ飛ばされる。
それを、通りの反対側にすべりこんだジョセフが受け止めた。
「……無茶すんなぁ、お前」
あられもない姿を晒すヒナギクを見下ろしながらそんな感想を呟く。
軽薄そうに見えてもジョセフは紳士である。
自分の上着を彼女に貸してやるぐらいの配慮は持ち合わせていた。
ヒナギクは身を起こすなり肩にかけられた上着に気付くが、動くのに邪魔と思い、ゴミでも払うようにそこらに放り捨てた。
685 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:38 ID:DCm2xBoY
「おおおおい! それは無いんじゃねええかあああ!!」
「あら? もしかして受け止めてくれたの? ありがと、助かったわ」
「気付くの遅えよ! というかせっかく人がかけてやった服捨てんなよ! それとズレそーなブラぐらい直せ!」
「うるさいっ!」
それだけ言い残し、またもや勇次郎へと突っ込む。
道路の1/3程まで走ると、視界がぐるぐると歪んでいる事に気付く。
「あら?」
そのまま足を縺れさせ、全速力で走った勢いそのままに派手にすっ転ぶ。
三回転程した所で、ようやく止まる。
ジョセフが恐る恐る彼女に近寄ると、そこには目を回してぶっ倒れる半裸少女が居るだけだった。
範馬勇次郎にぶん殴られて、起き上がるのも奇跡だが、その後に走るなんて真似をしたら当然こうなる。
彼女の心意気はさておき、現実は非情なのである。
本来健康な男子ならば半裸の美しい少女を見て、心惹かれる部分があるかもしれない。
しかし、雨水と泥に塗れ、顔から水溜りに突っ込み尻を突き出し倒れる彼女。
そんな姿を見て、申し訳無いがジョセフはまるっきりそんな気にはならないのである。
「……火の玉みてぇな女だな。頼むからかがみんはこんな女になるんじゃねえぞ」

ヒナギクの大暴れから自爆まで、勇次郎はその様を眺めていたが、
まだ独歩が残っていてくれている事を思い出し、その相手をするかと思った矢先、
無視出来ぬ感覚を勇次郎は覚える。



ラオウにとってもこの様な戦いは始めてである。
生死を賭した戦場に於いて、戦士の心構えを失わぬ剛の者は居た。
しかし、ここまでそれを徹底し、その上で笑い戦う男は初めてである。
戦いの最中にありながら、まるで夏に吹く涼風のように清々しく、
686 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:39 ID:DCm2xBoY
それでいてそびえ立つ山脈のごとき雄々しさを合わせ持つ。
今のラオウには相応しき相手、そう自ら思えるような好敵手であった。

覚悟にとって、戦士に礼を尽くすは至上の事。
牙無き人を守り、悪鬼を駆逐するのと同じように守るべき範である。
迷い、悩み、そして誤った。
それらは今でも心に残り、決して忘れる事は出来ないであろう。
しかし、そんな迷いを残しながらも、零を纏い、敵を打ち砕くと決めたのだ。
守るべき物の為に戦い、そして死ぬ。
どれだけ迷おうとも、その点だけは決して揺るがぬ。
戦士の礼を守りながら、悪鬼と戦い牙無き人を守る。
これは全てを守るが至難と思われる時もある。
しかし迷い悩んだ覚悟には、それでも揺るがぬ自信がある。
何故なら、今覚悟は一人ではない。たくさんの心繋いだ仲間と共にあるのだから。
そしてこれら全てが、守るべき正道、正義なのだから。

ラオウの剛拳と覚悟の因果の激突。
体を傾ける事でこれをかわそうとした覚悟は、それでも避けきれず顔を捻りラオウの剛拳をすかす。
完全に避けきったはずのその拳は、強化外骨格の頭部側面を衝撃のみで砕く。
ラオウの持つ力を利用した覚悟の因果、これをラオウは先に拳を叩き込む事で避けようとしたのだが、
確実にそれより早く因果が極まると見たラオウは、拳を振りぬく勢いそのままに半身になってこれをかわす。
胸部横、脇の下をすりぬけるように仕向けられた覚悟の拳は、
その威力から、周囲に竜巻のごとき空気の渦を形成していた。
それにより、ラオウの胸部横、脇の下が削り取られる。
どちらも不発に終わった必殺の拳。
その体勢のままラオウと覚悟の視線が絡み合う。
どちらもこれで終わりなどと思っていない、そんな顔だ。
687 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:39 ID:DCm2xBoY
「おおおおおお!!」
「ぬおおおああ!!」
その場に留まり無数の拳を交し合う。

離れた場所で、かがみは二人の闘いを見つめていた。
「凄い……けど」
人知を超えた戦いだと思う。
間違っても自分が手を出せるような領域ではないとも。
だからであろうか。
そんなにも次元に差があるからこそ……
「……二人共、凄く、楽しそうに見える」
まるでやんちゃな子供達が、ガキ大将の座を争い殴りあっているようで。
喧嘩が終わった後、笑いながら肩を組んで帰るとお互いわかっているようで。
そんな印象と、現実に行われている血飛沫舞う死闘がどうしても結び付けられず、
かがみは二人の闘いからただ目を離せずに居た。

無心でただ拳のやりとりを繰り返す。
天への道も、覇王としての生き方も、気付けば全て忘れていた。
そうと決めた時から片時も忘れた事のない絶対の決意。
それをこうもあっさり忘れていた事にラオウは驚き、戸惑う。
それは気付いてはならない事だったのだろう。
しかし、ラオウが今まで自分に強いてきた生き方が、それを許さなかった。
失望、無念、落胆、そんな負の感情はまるで浮かんでこず、
むしろそうとわかってしまえば全てに納得が行くと思ってしまう。
ならば、残るは全て戯れだ。
そこまで考え、平静であった心、そして常と違う戦い方をする自分を理解する。
688 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:40 ID:DCm2xBoY
ラオウは通じないとわかっている秘孔を突くべく、北斗の構えを取る。
『無数の乱打。この中から真の一撃を見抜く力はあるか』
北斗百烈拳、そう呼ばれる無数の拳。
ラオウならばその一撃一撃全てにおいて、秘孔を突く事が可能だ。
しかしラオウはそれらは拳打による打撃を目的とし、ただの一撃のみにあの鎧すら貫く必殺の秘孔を放つ。
覚悟は、その一撃に絞って因果を放ってきた。

覚悟の胸の前、そこで指を止めたままラオウは問う。
「何故止めた?」
ラオウの胸の前に拳を突き出したまま、覚悟は答える。
「因果は大邪心を堕としめる技。邪心無き拳を打つ事は出来ぬ」
その拳はラオウのそれより僅かに早かったのだ。
ラオウは拳を引く。
そこまで見抜いているのなら、最早語る事は無い。
覚悟に背を向け歩き出すラオウ。
覚悟も手を出す事はせず、それを見送る。
ラオウは目を付けた一つの建物に向かうが、その途中で一度だけ振り返る。
「覚悟よ、一つ覚えておくがいい」
長年に渡り王たらんとした男の顔。
深い彫りと険しい表情で固まったそれこそ、覚悟の目指す戦士の顔であった。

「劉鳳、それが拳王ラオウを倒した男の名だ」

言い終えると同時に、ラオウの全身から血が噴出る。
特に左肩と胸部からのそれがひどく、まるで噴水のように流れ出るそれにも、ラオウは動じる事は無かった。
「確かに、心に刻みました。おさらばですラオウ殿」
覚悟の言葉を背に建物へと消えて行くラオウ。
689 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:40 ID:DCm2xBoY

遺体は晒さぬ。
その為にこの建物の中に入り、そこらの柱をへし折っておいた。
とうの昔にラオウの肉体は滅びていたのだ。
劉鳳の最後の一撃で心臓を貫かれ。
そのあまりに鋭すぎる切っ先は、ラオウの肉体がそれと気付くのにこれだけの時間がかかってしまう程であった。
あの為すべき事を成し遂げた誇り高き笑顔。
その意図を計り損ねた我が身の不覚であった。
死者は天を目指さず、敵も討たぬ。
それでも戦うとなれば、それは戯れ以外の何物でもない。
死してから生きる時間があるとは思いもよらなかったが、
これはこれで、そう悪い時間では無かった。
最後の時、誰も見ておらず、何をしようと構う事など無い時間。
ラオウはその時間を、ただ死を待つ事に費やし、そして降りてきた死を、
静かに、安らかに迎え入れた。



胸がざわつく感覚に、事情を聞くのを中断して村雨は建物の外に飛び出す。
ラオウの後姿がビルの中へと消えて行き、少しした後その建物全てが崩れ落ちるのが見えた。
「覚悟! 何があった!」
頭部、ヘルメットに当たる強化外骨格を外し、覚悟は答える。
「戦士が逝った」
それは予想以上に村雨に衝撃を与えた。
「……そう、か……」
巌のようにそびえ立つあの男が倒れる姿が想像出来なかったのだ。
「急ぐぞ村雨。独歩とヒナギクさんが待っている」
690Classical名無しさん:08/05/07 22:40 ID:qd.RmViw
        
691 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:41 ID:DCm2xBoY
「あ、ああ、わかった」
二人が同時に一点を凝視する。
そこに何時こちらに来たのか、黒シャツ銀髪の大男、範馬勇次郎が居た。
「おい、ラオウが……死んだのか?」
「然り、天晴れな最後であった」
勇次郎はそれがショックであったのか、頭を垂れる。
如何な狂獣とて、その衝撃は覚悟にとっても察して余りある。
戦うべき強敵を失った衝撃は、善悪の理屈ではない。
そんな感覚を村雨は覚悟と違ってはっきりとわかるわけではないが、
漠然とそれが自然だと思うようにはなっていた。
「…………ク………クック…………」
だから、勇次郎からそんな声が漏れた時、最初にそれが何なのかわからなかった。
勇次郎は勢い良く顔を上げ、エリア一帯に響き渡らんばかりの大声で笑い出したのだ。

「クハーーーーーッハッハッハッハ!! ハーッハッハッハッハッハッハッハ!!」

勇次郎の笑い顔を見て理解する。
この男はラオウの死を悼んだりなどしていないと。
それを見た覚悟は、正視に耐えぬと顔を顰める。
何時までも止まらず哄笑を続ける勇次郎。
その声に引かれ、服部が、ジョセフが、独歩が、エレオノールが、御前が、この場に集まってくる。
意識を失っていたヒナギクも、その気配に気付いて目を覚ます。

「ば、馬鹿じゃねえのかコイツ! あんだけかっこつけといて俺以外に殺されてんじゃねえよ!」

堪えきれぬとばかりに腹を叩く。
笑い声は何時までも止まない。
692 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:41 ID:DCm2xBoY

「北斗神拳はどうした! 無敗だの拳王だのはったりだったのか!? は、腹がよじれる……クハーッハッハッハ!!」

ジョセフはすぐ隣に来た服部に言う。
「俺には良く事情がわからねえが、あの金髪は……戦士だったんだと思う。戦士はそれに相応しい死に様見せるもんだ」
「……そんなもんなんか?」
「ああ、許せない敵でもよ、敬意を払いたくなるような戦士ってのは居る。だからこそ……」
拳を強く握り締める。
「あの銀髪に無性に腹が立って来たゼェェェ!!」

下着姿のまま、あっちにふらふらこっちにふらふらするヒナギクを、
独歩は両肩引っ掴んで無理矢理その場に座らせる。
「いいからおめぇは大人しくしてろ」
「う〜る〜ぅさーいー。アイツ叩きのめすのは、わ〜たーし〜らっ」
まだ頭がしっかりしていない模様。
無いよりはマシだろと、雨に濡れ重く湿った上着をヒナギクにかける。
ヒナギクは煩わしそうにそれを払おうとするが、腕をうまく狙う位置に移動出来ず、その手はわたわたと宙を掴むのみだ。

覚悟と村雨が並んで立つそこに、エレオノールが歩み寄る。
「あの男を倒すのであれば、是非手伝わせて下さい」
その肩に乗る御前は、エレオノールが消耗している事を知っていたが、
アレを倒さなければ、先が無い事にも気付いており、エレオノール参戦に異は唱えない。
「もっちろん俺もやるぜー! この御前様に任せろい!」
覚悟がそれに答えようとするが、その前に村雨がエレオノールの肩に手をやる。
「体力の消耗が激しいのだろう、お前は休め」
「しかしっ!」
「いいから、お前はそこで見ていてくれ」
それだけ言うと覚悟に向き直る。
693Classical名無しさん:08/05/07 22:42 ID:qd.RmViw
               
694Classical名無しさん:08/05/07 22:42 ID:Qcu4HffU
          
695 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:42 ID:DCm2xBoY
「覚悟、アイツは俺がやる」
覚悟は無言だ。
そのまま二人は静かに睨みあう。
すっと覚悟が村雨から視線を外し、村雨に背を向け、勇次郎の方を向く。
「……骨は拾ってやる。存分に戦え」
「任せろ」

村雨にも味方の戦力状態を把握するぐらいの事は出来る。
服部は身動きすら取れず、ジョセフは辛うじて動けるようだが、それも僅かの時間だろう。
独歩はまださしてダメージを負っていないように見えるが、足止めであの傷を負っているのだ。
勇次郎の相手をするのは難しいだろう。
ヒナギクは、何やらとんでもない格好になっているが、いずれにしても戦闘は無理だ。
エレオノールは話を聞けば、随分と無茶な戦闘を繰り返してきている。
見た目にわかる火傷もあり、これ以上の戦闘をさせるべきではない。
そして覚悟だが、当人は涼しい顔をしているが、ラオウとの戦闘の直後である。
あの鎧の下にどれだけの怪我を負っているのか、想像もつかない。
そして……

勇次郎へと歩み寄る村雨に、後ろで見守るかがみからの贈り物。

「村雨さん! 頑張って!」

これで、もう何も恐くない。

「お前達の命! この俺が預かる!」

腕を振り上げ、ゆっくりと回す。
696Classical名無しさん:08/05/07 22:43 ID:qd.RmViw
           
697 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:42 ID:DCm2xBoY
これが俺の正義のスイッチ。


「 変身! 仮面ライダーゼクロス! 」


そしてこれが俺の正義の信念だ!



範馬勇次郎はこの男が一人で前へと出てきた事が少し意外であった。
覚悟、そう呼ばれている男が息子刃牙のように甘ったるい男である事はわかる。
だが他の者達は必ずしもそうではない、奇襲を仕掛けてきた者にしても、
命を賭して飛び込んで来たあの女にしても。
しかし、村雨が前に出ると、明らかにヤるつもりだった彼らも静観の構えを見せる。
これだけ居るのだ、一瞬で蹴散らしてやっても一人二人は残るだろう。
その程度に考えて居たのだが、一人一人時間をかけて楽しんでも良いというのなら、
そうさせてもらうだけの事だ。

一挙手一投足に至るまで、何一つ見落とすまいとその挙動を凝視する村雨。
怒りに目を曇らす事無く、それでいて溢れんばかりの闘志を漲らせる。
そうあらんとした時、村雨の全身から余分な力が抜け落ちる。
視覚情報だけでは、残像しか残らぬ勇次郎の瞬歩。
それに付いていけるだけのスペックは、充分持ち合わせている。
左側から回り込もうとする勇次郎の真正面に移動し、こちらの機動力を誇示する。
再度背後を取ろうとする勇次郎の、その又後ろを取る為速度を上げる村雨。
単純な速度勝負ならいざ知らず、こういった駆け引きにおいて村雨は勇次郎に遠く及ばない。
698 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:43 ID:DCm2xBoY
それを互角にまで持っていかねばならない、集中力だけが頼りだ。
経験の差、それは可能性を何処まで把握しているかの差でもある。
特に雨が降り続き、戦場全体に悪条件が重なっているこの場ではそれが顕著に現れる。
アスファルトの大地は雨ごときに左右はされないが、戦闘の余波により砕けたそれはその限りではない。
そして勇次郎は村雨の動きの先を読み、それを誘発するぐらいの事は容易くやってのけるのだ。
案の定悪い足場に踏み込み、バランスを崩す村雨。
すわとばかりに先制の一撃を見舞う。
一度は崩れた村雨の体勢、しかしこのタイミングで攻撃を受けるのは初めてではなかった。
膝に力を込めると、それだけで強い体勢を確保する。
振り下ろされる勇次郎の腕に合わせ、村雨は肘を突き出す。
コンマ数秒遅れた。
村雨の肘も勇次郎に当たるが、その僅かの差故、損害は村雨の方が大きい。
しかし、肘を当てるべく踏み込んだ分、次の一打は村雨の方が早いはず。
逆腕の肘を振りぬく村雨。
勇次郎はそれを村雨と同じく、肘を当てて止める。
そこから次への連携は、勇次郎の方が早い。
右膝、逆肘、頭突き、これらで距離が開くなり次は回し蹴り、左フック、飛び膝と繋がっていく。
村雨は、この全てを反射的な動きのみでかわす。
かわす動作の訓練を受けていない村雨には、これ以外手段が無いせいでもあるが。
訓練によらぬ動きは、次への繋ぎに支障をきたす事が多い。
それを見抜いて即座にそこを突くのもまた、範馬勇次郎の能力故だろう。
連携の組み立てで、村雨の回避をすりぬけ頭部に一撃。
そこから崩れた村雨に暴風のごとき乱打を。
しかし村雨は頭部への一撃のみでは崩れず。
その後の乱打を半分は避け、受けてみせる。
受けた拳の反動と、自らの両足の力で距離を取り、一呼吸開ける村雨。
699Classical名無しさん:08/05/07 22:43 ID:qd.RmViw
     
700Classical名無しさん:08/05/07 22:44 ID:qd.RmViw
                        
701Classical名無しさん:08/05/07 22:44 ID:Qcu4HffU
        
702Classical名無しさん:08/05/07 22:45 ID:m4z4K2wA

703Classical名無しさん:08/05/07 22:45 ID:no0f4Jks
704Classical名無しさん:08/05/07 22:46 ID:qd.RmViw
               
705 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:46 ID:DCm2xBoY


御前とエレオノールは呆けた顔のまま村雨を見送る。
「驚きました……」
「うん……あの優しそうな顔、ケンみたいだった」
「村雨、そう呼ばれていましたね。きっと彼は……」
「ああ、ケンみたいに凄い奴なんだと思うぜ!」

服部はまんじりともせず戦いを見つめるジョセフに訊ねる。
「一回だけなら、ニアデスハピネスで奴の注意そらせるで」
「……村雨がヤられたら、その時は頼むわ」
「今参加せえへんのか?」
「『命を預けろ』そう奴は言ったぜ。だから俺はそうする」

村雨を見送った姿勢のまま、身動き一つしない覚悟。
『覚悟よ、村雨の体を隈なく調べた結果を聞け』
「体を?」
『奴の体は全身これ機械。その性能だけならば何人にも引けは取らぬ』
「ほう」
『そして何より、あの作りは我等強化外骨格に類似している』
「零と似ている……と?」
『然り、強化外骨格に比べれば微々たる物であるが、あれは霊魂の寄り代に足る』
「それが意味する事がわからぬ」
『目的は不明。しかしかなり高位の霊魂でなくばそれを為すには力不足であろう事はわかる』
「だとすると村雨はどうなる?」
『不明!』
つまり村雨の実力同様、将来性は未知数という事かと覚悟は無理矢理零の言葉を納得する。
706Akagi煙草吸中さん:08/05/07 22:46 ID:qd.RmViw
       
707 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:46 ID:DCm2xBoY
二人で並んで座りながら仲間の戦いを見つめる独歩とヒナギク。
「村雨さん倒れたら、次私が行くわよ」
「……縁起でもねえ事言うなよ」
「縁起でもないような事になる前に、行くわよ」
「そん時ぁ全員で万歳突撃とするかね」



辛うじて戦闘にはなっている。
不利は否めないが、体の頑強さでそれを補っているといった形だ。
しかし村雨から勇次郎への効果的な命中打は未だ無し。
焦る心を自ら戒める村雨。
『考えるんだ、どうすれば奴に攻撃を当てられるか。どうすれば奴を倒せるか……』
そんな村雨の思考を嘲笑うかのように勇次郎の猛攻が始る。
全力で集中すれば半分はかわせる。
そうであったのは、最初の一度のみ。
勇次郎は村雨の未熟な技術を見切り、それに相応しい攻撃を繰り返す。
村雨が倒れるまで、何度でも何度でも飽きる事無く。
村雨には背負っているものがある、決して倒れる事は許されない。
そんな村雨の決意を感じ取った勇次郎は、満面の笑みでこれを駆逐する。
秒単位で蓄積されていくダメージ、意識すら刈り取られそうな打撃を何度も喰らい、
その都度自らを支えるもの達にすがり、堪える。
意地でも倒れまいとするその足元を刈られ転倒する。
跳ね起きた側から背後より蹴り飛ばされ、またも転倒する。
起き上がりこぼしのように何度も蹴り殴り転ばされ、そんな様を笑う勇次郎を、
睨み返して再びその身を起こす。
届かぬ拳を何度も振り上げ、その都度手痛い反撃を被る。
708Classical名無しさん:08/05/07 22:47 ID:Qcu4HffU
             
709Classical名無しさん:08/05/07 22:47 ID:qd.RmViw
      
710 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:47 ID:DCm2xBoY
どうすれば奴を倒せるか。
それを考え実行すると、決まって勇次郎はその先を読み、村雨の浅慮を嘲笑う。
頭部への集中打により、意識が朦朧とする。
これを避ける為に頭部の防御を優先させると、手足への打撃にあっさり切り替えられ、
その動きに集中すると、今度は胴中央正中線に連打を打ち込まれる。
何もかもが裏目に出る。
一度膝を折れば、二度と立ち上がれないかもしれない。
そう感じた次の瞬間、勇次郎の回し蹴りが膝裏に入り、低くなった頭部に肘の一撃を打ち込まれ転倒する。
ただの一撃でいい、そう思えば思う程に勇次郎が遠くなっていく。
手を、足を出さなければ、勇次郎の攻撃を止める事は出来ない。
ただ守るだけでは駄目だ。
そう言い聞かせ、どんな状態からでも反撃を行ってきた。
それも、もううまく行かない。
何をすればいいのかわからない。
しかし同じくらい諦める事も出来ない。
今までにこんなにも一つの事を考え続けた事は無かった。
ここまで考える前に答えが出るか、それとも諦めるかしていたから。
だが、今回ばかりはそうは行かない。
答えが出ようと出まいと、考える事を止める訳にはいかない。
勇次郎を倒す、その為にどうするかを考え続けなければならない。
きっと何かを背負うという事は、そういう事なのだろうから。



村雨の戦闘を見守る者達、誰も一言も発しなくなって随分と経つ。
降りしきる雨の音と、時折勇次郎の放つ哄笑と罵声。
ある音と言えばそのぐらいだ。
711Classical名無しさん:08/05/07 22:47 ID:m4z4K2wA

712Classical名無しさん:08/05/07 22:48 ID:Qcu4HffU
         
713Classical名無しさん:08/05/07 22:48 ID:qd.RmViw
                
714 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:48 ID:DCm2xBoY
零は二人の戦闘を確認し、二人の戦力分析を終えていた。

村雨良の勝率3.6%

これはこの戦闘における村雨の異常な成長を含めた数字である。
これにもし覚悟や零が声をかけ、村雨の成長を促すよう計らえば勝率は1.2%程上昇する。
これで4.8%。約二十回に一回は勝てる計算だ。
しかし、ここから更に自ら成長する可能性が未知数である。
覚悟や零が声をかければ成長は1.2%分で終わる。
村雨はそれ以上に自ら成長する可能性がある。
ならば、それに賭けるが上策と零は無言を続けていた。

覚悟は零のように計算の上で無言を保っているわけではない。
戦士の戦に口出し無用とそう思っているだけだ。
怒りには限度がある。
そう他の人間は言うであろうが、覚悟にそれは無い。
怒りとはどんな時でも堪えるべきものであり、であるのなら、須らく忍耐すべき物。
そうとでも考えなければ、とても堪えられそうに無い。
村雨の感じる悔しさ、怒りを我が事のように思う覚悟は、
両腕を組み、その腕を強く握る事でこれに耐え続けていた。



既に考えつく手は全て打ち尽くした。
それでも勇次郎には届かず、いずれこのまま消耗し倒れるだろう。
そんな村雨に、ふと思いついた手があった。
それは余りに無謀な手で、幾らなんでも通じはしないだろうと思いやっていなかった事だ。
715Classical名無しさん:08/05/07 22:48 ID:qd.RmViw
 
716 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:48 ID:DCm2xBoY
そんな事をしてしまう事自体、思考停止なのでは、とも思ったが、
よくよく考えてみれば、これはあのラオウの取った手段。
村雨にはわからなくても、何らかの良い効果がありうるのでは、そう思い実行に移す事にした。

体を大きく後ろに捻り、拳の強打にて勝負を挑む。
今から右拳で一撃する、それ以外読み取れないその体勢。
奇しくもそれは、勇次郎に殺害された花山薫の構えに酷似していた。
正に必殺の一撃を、勇次郎は両手を垂らし、構え一つ取らずに迎え撃つ。
数メートルある距離をただの一歩で埋め、前にラオウに仕掛けた時より一歩分浅く踏み込む。
ラオウが村雨にしたように、寸前での最後の加速を成す為に。
速さとパワー、その双方のみを追及した一撃。
しかしいかに速度があろうと、狙う場所のわかっている打撃を受ける程勇次郎は甘くない。
拳の軌道を見切り、首を捻ってこれを回避。
直後の反撃を狙う。
村雨の拳を空を切り、辛うじて勇次郎の耳をかするのみ。
しかし、勇次郎から即座の反撃は来なかった。
村雨の放つ拳がかすった事により、勇次郎の脳がほんの僅かだが頭蓋骨内で揺らされたのだ。
僅かでもかすらせる速度と、僅かにかすっただけでも脳を揺らす威力。
どちらが欠けてもこの成果は成し得なかっただろう。
そして、村雨はラオウにそうされて反撃の余地が持てなかった攻撃、
必殺の一撃後の乱打を狙う。
一撃目は獣の反射神経によりかわされる。
二撃目はぶれる視界の中で強引に振り上げた勇次郎の腕に阻まれる。
三撃目、今まで村雨がやった事のない、下から突き上げるような拳を勇次郎の顎に叩き込む。
遂に命中打を与えた村雨。
これで止まってはならないとばかりに更なる拳を繰り出すが、その時既に勇次郎は回復していた。
四撃目の拳に合わせ、カウンターにて村雨を蹴り飛ばす。
717Classical名無しさん:08/05/07 22:49 ID:qd.RmViw
    
718Classical名無しさん:08/05/07 22:49 ID:yYkzyawY



719Classical名無しさん:08/05/07 22:50 ID:qd.RmViw
      
720 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:50 ID:DCm2xBoY
それにより、またも大きく距離を開ける事となった。



かがみにはもうどうしてあげる事も出来ない。
代わりに殴られてあげたい。代わりに立ち上がってあげたい。
そんな事ばかり頭に浮かぶが、そんな事は出来っこない。
どっちが有利でどっちが不利か、そんな事すらわからない。
たった一人で戦う彼の為に、自分が出来る事は何か無いのか。
そう思った時、かがみは自然に幼い頃から教わってきた、
両手を胸の前に合わせ祈る仕草を行っていた。



劉鳳が立ち尽くす神社の敷地内。
社の中、衝撃を受け、ヒビ割れた漆喰の奥の奥に、それはあった。
強化外骨格、そう呼ばれるその鎧は魂を受け入れやすいようそこに安置されている。
決して触れられるような事があってはならぬ品。
そんな室内であったはずのその部屋の壁は、一部が明らかに崩れ落ちていた。
それは劉鳳の信念の証。
彼の正義はラオウを貫き尚留まる事を知らず。
遂には、社に安置されている、強化外骨格にまで傷を負わせていた。



『間合いがぬるい』
そんな声が聞こえた。
721Classical名無しさん:08/05/07 22:51 ID:m4z4K2wA

722 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:51 ID:DCm2xBoY
『踏み込みはあれで良い。しかし彼我の距離感を計るが甘い』
勇次郎の飛び蹴りが村雨に襲い掛かる。
拳にて迎え撃たんとした村雨は、肩をぽんと叩かれた気がした。
そのタイミングに合わせて拳を振りぬくも、勇次郎の蹴りの速度が勝る。
顔面を強打され、後方に転がり倒れる村雨。
『愚か者が、腰の伸ばしが足りぬ。一流に対し後先考えた拳を放つなど、
 鋼板に水鉄砲を放つがごとき所行ぞ』
すぐに立ち上がり次の攻撃に備える村雨。
その表情、構えは次の一撃に全てを賭けんとする気迫に満ちていた。
再び襲い来る勇次郎。
正面から来る、そう思われてた姿が村雨の眼前から消え失せる。
『右後ろ後方、放つ時は教えてやる』

「ゼクロス……」

振り返り様に、学んだ全てを注ぎ込んだ拳を叩き込む。

「パーーーーーーンチ!!」

勇次郎の宙空からの蹴りは村雨の脇をすり抜け、村雨の拳が勇次郎の胸板へと吸い込まれていく。
肉が裂け、骨の砕ける確かな感触と共に、拳を振りぬくと、
勇次郎は大きく殴り飛ばされ、十メートル近く道路を転がる。
常の勇次郎のようにすぐに立ち上がれなかったのは、一重にその威力故。
「散……」
相応しい不遜な笑みを村雨は見た気がした。

『こっちです村雨さん』
723Classical名無しさん:08/05/07 22:51 ID:Qcu4HffU
           
724Classical名無しさん:08/05/07 22:52 ID:qd.RmViw
     
725 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:52 ID:DCm2xBoY

また声が聞こえた。
空から聞こえるその声に導かれるように飛びあがる村雨。

『さあ、三度目の正直です。今度こそ絶対に倒しきりますよ』

飛びあがる村雨に並ぶように彼は居た。
「ハヤテ……」
逆側には村雨と良く似た姿の男が居てくれる。
「本郷……」
マスク越しなので良くわからないが、今彼が笑ってくれたと、そう村雨には思えた。

覚悟の右腕が自然に額へと上がる。
「兄上、どうぞ村雨をお導き下さい」
両手を口元に当てるヒナギクの両目から、止め処なく涙が零れだす。
「本郷さん、ハヤテ君……」

村雨の全身から真っ赤な輝きが迸る。
怒りを、悲しみを、悔しさを、喜びを、感謝を、全身に漲らせ、
かつて無い程の力が体中を駆け巡る。

「ゼクロス!!」

お前達に会えて、本当に良かった。



「キーーーーーーーーーーーック!!」
726Classical名無しさん:08/05/07 22:53 ID:qd.RmViw
                     
727 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:53 ID:DCm2xBoY



真っ赤な閃光の軌跡が、範馬勇次郎の目に止まる事はなかった。
範馬勇次郎をして反応出来ぬ程の速度。
その肉体をして耐え切る事の出来ぬ力。
村雨が彼を越えられる唯一の可能性は、そこにあったのだ。

輝きは勇次郎の腹部を貫き、その体を真っ二つに引き裂く。
勇次郎の背後に抜けた村雨は、そのまま路面を滑り徐々にその速度を落とす。
村雨のボディは勇次郎により機能不全寸前まで痛めつけられていた。
再生能力はある、いずれ体は回復しようが、今すぐという訳にもいかない。
何より、ようやく役割を果たせたのだ。
今はとにかくこの達成感に浸りながら横になりたい、と思った。

それを油断と呼ぶのは酷であろう。
空高く舞う勇次郎の上半身が、未だ自らの勝利を露程も疑っていないとは誰であろうと夢にも思うまい。
大地に激突する寸前、その両手を付き、腕の力のみで跳躍。
村雨の背後を突くなどと予想出来る方がどうかしている。
「たかが半身をもぎ取った程度でこの俺に勝てると思うな!」
振りかざす左腕。
振り向く事すら出来ない村雨の、後頭部をその拳は捉える。

ズリッ

村雨は頭部を襲う衝撃が思っていた程無かった事に驚き振り向く。
全力でたたきつけた反動で、勇次郎の左腕のみが大きく跳ね飛んでいた。
728Classical名無しさん:08/05/07 22:54 ID:qd.RmViw
    
729Classical名無しさん:08/05/07 22:55 ID:m4z4K2wA

730Classical名無しさん:08/05/07 22:55 ID:Qcu4HffU
              
731Classical名無しさん:08/05/07 22:55 ID:Qcu4HffU
          
732 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:55 ID:DCm2xBoY
その切れ口は、まるで鏡のように綺麗である。
これには勇次郎も驚いたようで、目を大きく見開いている。
仕方なく一度右腕にて着地を試みる勇次郎。
今度はその右腕が奇妙な音を立て、へし曲がる。
当の勇次郎にも何が起こっているのか理解出来ていないようだ。
では、次はどうやって攻撃してやろう。
そこまで考えた所で、首まで辿り着いていた石化現象が顎、鼻、目とを順に覆い、
遂には頭頂にまで辿り着き、砕けて散っていった。

範馬勇次郎がその身に負った傷の数々が、身体の衰弱に伴い表面化した。
そう言葉にする事は簡単かもしれない。
しかし、村雨にはそれ以上の理由があるような気がした。
ここまでたくさんの人に支えられ戦い抜けた自分が、
最後の最後で運に救われたとは、どうしても思えなかったからだ。
きっと、これもまた見知らぬ誰かの助けであろうと、そう思えてならなかった。
今にも倒れる。
もう限界だ。
しかし、これだけは言わなければならない。
みんな聞いてくれ。


「勝ったぞおおおおおおおおおおおおお!!!」


拳を握り、その腕を天へと向かって振り上げる。
そこかしこから歓声が返って来た気がするが、それが誰の声なのか、もう良くわからなくなっていた。
733 ◆1qmjaShGfE :08/05/07 22:56 ID:DCm2xBoY



【ラオウ@北斗の拳 死亡】
【範馬勇次郎@グラップラー刃牙 死亡】




【E-2 中央/2日目 早朝】
【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]全身に無数の打撲、頬に軽い腫れ 全身に更なる重度の打撲傷を負う
[装備]十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (0/2) 、マイクロチェーン(2/2) 核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金
[道具]地図、時計、コンパス、 女装服
    音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾、強化外骨格『零』@覚悟のススメ
[思考]
基本:BADANを潰す!
1:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る
2:ジョセフ、劉鳳に謝罪し、協力を要請する。
3:ケンシロウ、コナン、服部、神楽の捜索。勇次郎、エレオノール、川田、ジグマールには警戒。
4:3が終わり次第学校へ向かい、パピヨン、アカギ、覚悟、ヒナギク、独歩との合流。
5:かがみを守る
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です
※参戦時期は原作4巻からです。
※村雨静(幽体)はいません。
※連続でシンクロができない状態です。
734 ◆1qmjaShGfE
※再生時間はいつも(原作4巻)の倍程度時間がかかります。
※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。
※また、零の探知範囲は制限により数百メートルです。
※零はパピヨンを危険人物と認識しました。
※零は解体のため、首輪を解析したいと考えています。
※記憶を取り戻しました
※独歩、覚悟と情報交換をしました。
※光成がBADANに脅されていると考えています。また、BADAN側にも強化外骨があると推測しています。
※勇次郎の放送を聴きました。
【零の考察】
?ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外に発見。放電しているのを目撃。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。



【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:全身に強度の打撲、左腕欠損(止血済み)、休息により(?)それなりに回復 、核鉄の治癒力により回復中、深い悲しみ
[装備]:巫女服
[道具]:モーターギア(核鉄状態)@武装錬金
[思考・状況]
基本:BADANを倒す
1:みんな元気になれっ……もちろん自分も
2:村雨と行動を共にする
3:神社の中にある、もう一つの社殿が気になる。
4:川田を止める