漫画キャラバトルロワイアル Part14

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1Classical名無しさん
このスレは漫画キャラバトルロワイアルのスレです。
SSの投下も、ここで行ってください 、支援はばいばい猿があるので多めに

前スレ
漫画キャラバトルロワイアル Part13
ttp://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1202920120/
【外部リンク】
漫画キャラバトルロワイアル掲示板(したらば)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/9318/
まとめサイト
ttp://www32.atwiki.jp/comicroyale
漫画キャラバトルロワイアル毒吐き2
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1200415345/l50

1/4 【アカギ】○赤木しげる/●市川/●平山幸雄/●鷲巣巌
1/2 【覚悟のススメ】○葉隠覚悟/●葉隠散
1/3 【仮面ライダーSPIRITS】 ●本郷猛/●三影英介/○村雨良
1/4 【からくりサーカス】●加藤鳴海/○才賀エレオノール(しろがね)/●才賀勝/●白金(フェイスレス指令)
1/4 【銀魂】 ●坂田銀時/○神楽/●桂小太郎/●志村新八
2/4 【グラップラー刃牙】○愚地独歩/●花山薫/●範馬刃牙/○範馬勇次郎
1/4 【ジョジョの奇妙な冒険 】●吉良吉影/●空条承太郎/○ジョセフ・ジョースター/●DIO
2/4 【スクライド】●カズマ/●シェリス・アジャーニ/○マーティン・ジグマール/○劉鳳
0/4 【ゼロの使い魔】●キュルケ(略)/●タバサ/●平賀才人/●ルイズ(略)
1/4 【ハヤテのごとく】●綾崎ハヤテ/○桂ヒナギク/●三千院ナギ/●マリア
0/3 【HELLSING】●アーカード/●アレクサンド・アンデルセン/●セラス・ヴィクトリア
2/4 【北斗の拳】●アミバ/○ケンシロウ/●ジャギ/○ラオウ
2/4 【武装錬金】●防人衛/○蝶野攻爵/○津村斗貴子/●武藤カズキ
1/4 【漫画版バトルロワイアル】○川田章吾/●桐山和雄/●杉村弘樹/●三村信史
2/4 【名探偵コナン】 ○江戸川コナン/●灰原哀/○服部平次/●毛利小五郎
2/4 【らき☆すた】○泉こなた/●高良みゆき/○柊かがみ/●柊つかさ
計 20人 / 60人
2Classical名無しさん:08/03/14 21:43 ID:Io6jsvmw
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×

例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
3Classical名無しさん:08/03/14 21:44 ID:Io6jsvmw
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
 修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・修正要求ではない批判意見などを元にSSを修正するかどうかは書き手の自由です。
・誤字などは本スレで指摘してかまいませんが、内容議論については「問題議論用スレ」で行いましょう。
・「問題議論用スレ」は毒吐きではありません。議論に際しては、冷静に言葉を選んで客観的な意見を述べましょう。
・内容について本スレで議論する人がいたら、「問題議論用スレ」へ誘導しましょう。
・修正議論自体が行われなかった場合において自主的に修正するかどうかは、書き手の判断に委ねられます。
ただし、このような修正を行う際には問題議論用スレに一報することを強く推奨します

・展開予想、ネガティブな感想、主観的な意見は「毒吐きスレ」でお願いします。毒は溜め込まずに発散しましょう。
・議論スレと正式に分離したことで毒吐きでの感想は過激化している恐れがあります。見る必要性もないので、書き手は見ないことを推奨します。
4Classical名無しさん:08/03/14 21:44 ID:84UG2Z22
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×

例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
5Classical名無しさん:08/03/14 21:44 ID:Io6jsvmw
【能力制限】

◆禁止
・アーカードの零号開放
・武藤カズキのヴィクター化
・吉良吉影の“第三の爆弾バイツァ・ダスト”
・ギャランドゥ(ジグマールのアルター)の自立行動(可否は議論中?)

◆威力制限
・ゼロ勢の魔法
・空条承太郎、DIOの時止め
・スクライドキャラのアルター(発動は問題なし、支給品のアルター化はNG)
・アーカードの吸血鬼としての能力
・仮面ライダーの戦闘能力
・シルバースキンの防御力
・北斗神拳の経絡秘孔の効果
・激戦の再生力、再生条件

◆やや制限?
・グラップラー刃牙勢、北斗の拳勢、仮面ライダー勢、覚悟のススメ勢の肉体的戦闘力
・ジョジョのスタンド(攻撃力が減少、一般人でも視認や接触が可能)
・からくりサーカス勢の解体能力

◆恐らく問題なし
・銀魂キャラ、戦闘経験キャラなどの、「一般人よりは強い」レベルのキャラの肉体的戦闘力

【支給品について】
・動物、使い魔、自動人形などの自立行動が可能な支給品は禁止です。(自立行動を行わないならば意思持ちでも可)
・麻薬、惚れ薬、石仮面などの人格を改変するおそれのある支給品や水の精霊の指輪、アヌビス神などの人格乗っ取り支給品は禁止です。
・核金によって発現する武装錬金は、原作の持ち主の武装錬金に固定されています。
6Classical名無しさん:08/03/14 21:46 ID:Io6jsvmw
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → MAP-Cのあの図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。
7Classical名無しさん:08/03/14 21:46 ID:Io6jsvmw
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの一時投下スレにうpしてください。
・自信がなかったら先に一時投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない一時投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
   ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
   その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。
8Classical名無しさん:08/03/14 21:47 ID:Io6jsvmw
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
9Classical名無しさん:08/03/14 21:48 ID:Io6jsvmw
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、スレには色々な情報があります。
・『展開のための展開』はNG
 キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
 紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効
 携帯からPCに変えるだけでも違います
10Classical名無しさん:08/03/14 21:48 ID:Io6jsvmw
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
 同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
 修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、ドラえもん(クレヨンしんちゃんも可)を見てマターリしてください。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
 やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
 冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
 丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。

【議論の時の心得】
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
 意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
  強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
11Classical名無しさん:08/03/14 21:50 ID:Io6jsvmw
【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
 程度によっては雑談スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
 例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
 この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
 こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
 後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
 特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。

【予約に関してのルール】

・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行います
・初トリップでの予約作品の投下の場合は予約必須(5日)
 ただし、予約せずに投下できなら、別に初トリでもかまわない

・予約時間延長(最大3日)を申請する場合はその旨を雑談スレで報告
・申請する権利を持つのは「過去に3作以上の作品が”採用された”」書き手
・修正期間は審議結果の修正要求から最大三日(ただし、議論による反論も可とする)
・予約時にはトリップ必須です。また、トリップは本人確認の唯一の手段となります。トリップが漏れた場合は本人の責任です。
・予約破棄は、必ず予約スレでも行ってください。

【MAP】
http://www32.atwiki.jp/comicroyale/pages/34.html
http://www32.atwiki.jp/comicroyale/pages/330.html (登場人物の位置あり)
12 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 21:52 ID:84UG2Z22
乙でした! では続きの投下に入ります
13交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 21:53 ID:84UG2Z22
「あるさ、簡単な事だ。お前のような間抜けには決して気付けない事だろうがな。そもそも、何故武藤との決着を至上の目的とするこの俺が、武藤の死に動揺していないのか不思議に思わんのか?」
斗貴子も言われて気付いた。
パピヨンにとってもカズキはその目的の為に必要な人間のはず。
だから以前にも協力出来たのだ。
「……お前がカズキなんてもうどうでもいいって考えたからだろう。所詮ホムンクルスなぞその程度……」
「黙れ!」
突然の怒声に驚く斗貴子。
「所詮その程度はこっちのセリフだ! 武藤ならば最後のその瞬間まで決して生きる道を違えなかったはずだ! だがお前はあっさりと堕ちた! それが奴とお前との決定的な違いだ!」
カズキと斗貴子とは違う人間。
当たり前のはずのその言葉は今の斗貴子には耐え難い言葉であった。
怒りに任せてサンライトハートをパピヨンに突き出す。
パピヨンがそれをかわしざま、斗貴子の足元を足で払うと、盛大な音を立てて斗貴子は引っくり返る。
斗貴子はすぐに起き上がるが、その手にあるべき物が失われていることに気付いて大きく狼狽する。
パピヨンは、斗貴子を引っくり返した拍子に奪い取ったサンライトハートをその手にしながら彼女を睨みつける。
「お前が何故これを持っている? 武藤の心臓からえぐり出したか?」
「返せ! 私がやったんじゃない! あの男がカズキを……」
「誰がやろうと一緒だ。今のお前が持っていて良い物じゃない。これを使って次々人を殺す? お前武藤をコケにするのも大概にしろよ」
サンライトハートを突きつけ、パピヨンは斗貴子に言い放つ。
「いいか良く聞け間抜け。俺達は時間軸の違う場所から呼び出されている。ならば、元の世界に戻れば、そこの時間軸の武藤に会える。こんな殺し合いの事など何も知らない武藤とな」

「…………え?」

斗貴子は一瞬、パピヨンが何を言っているのか理解できなかった。
カズキに会える? この殺し合いの事を知らないカズキに?
14交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 21:53 ID:84UG2Z22
「どんな手を使ったかは知らないが、少なくとも俺が呼び出された時間と、武藤の呼び出された時間では明らかな差異が認められた。俺が居た世界の武藤と、今この場で殺された武藤とでは同一人物ではあるが、同じ人間ではない」

え? それは、どういう……

「つまり、お前が元の世界に戻れば、お前の時間軸に居る武藤がそこに居る。こいつらに生き返らせてもらわんでもな。そもそも人を生き返らせるなどと、どんな魔法だ。そんな馬鹿げた力を持つ魔法使いが俺達を殺し合いさせてまで欲しいものなどあると思うか?」

ああ、そうか、うん。そうかもしれない。だってカズキに会えるんだから。

「俺達に殺し合いをさせる、そこから『何か』を得ようとする程度の存在に、人を生き返らせるなんて芸当が出来てたまるか。出来たとして別の時間軸から同じ人間を連れてくる程度の事だ」

それでも構わない。けど、そんな事しなくても、元の世界に戻るだけでいいんだろう? なら……

「この殺し合いで優勝する必要は全く無い。むしろ、優勝者の望みを叶えるメリットが主催者側に無い以上、それを信用するなど間抜けの極みだ」

うん、私は間抜けでいい。それでカズキに会えるんなら……

「だが、お前はもう駄目だ。武藤には二度と会えん」

……………………え?

「な、何故だ!? 何故私だけ駄目なんだ!」
「わからんのか? これだけは断言出来る。お前は二度とお前の知っている武藤に会う事は出来ない。もう二度とだ」
「わからない! どうして私だけ……」
パピヨンはそのマスクで自らの表情を隠しているせいで、何を考えているのかわからなかった。
15交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 21:54 ID:84UG2Z22
「お前、もう人を殺したろう。それも殺し合いに乗ってないだろう人間を。そうでなきゃ、お前がそんな顔出来るわけがない。その一線を越えているからこそ、お前はそんな顔をしているんだろう」
それが、重要な事と思えなかった斗貴子は強く言い返す。
「それは全てカズキの為にやった事だ! 私が望んでやったわけじゃ……」
「いいや、それが今のお前の望みだ。人を殺し、武藤が望まない全ての事をやった上で、お前をすら見限る武藤との再会をお前は望んでいる」
「馬鹿な!」
「馬鹿は貴様だ!」
マスクに隠れていてもわかる。パピヨンは、常に無い程怒っている。
「今のお前の姿、武藤が見たらどうなる? お前想像も出来ないか? それでも武藤はお前を救うべく動くだろう。その時の武藤の表情を、お前は想像する事すら出来なくなったのか?」
前半分は今までにも言われた事がある、だが後ろ半分は初めてだ。
「他人を殺し、それを仕方が無いと言い切るお前を救うため、武藤は進んでお前以外の誰かの為にその命を投げ出すだろう。それが大事だと言いたいが為、それをお前に理解させる為に」
パピヨンの言葉は、カズキを良く知る者の言葉だ。
そうだ、カズキならきっとそうする。
私の為に、必死で頑張ってくれる。
「だがお前はもうそんな武藤を理解する事が出来ない。最後にはお前は武藤を疎ましく思うようになる」
「ならない! 私がカズキを疎ましいなんて思うはずが無いだろう!」
「武藤からお前に語られる言葉も、今俺が言ってる事とおそらく一緒だろう。それでもお前は鬱陶しいと思わないのか? そして、今のお前には他人の為に何かをしようとする武藤を許す事が出来ない。それは、武藤という存在自体を否定する事と同じだ」
パピヨンは斗貴子がどれだけ否定しようとも、その言葉を止める事は無い。
「お前達二人はいつまでたっても平行線のまま、一方的に武藤だけが擦り切れていく。笑う事も無い、喜ぶ事も無い武藤を、果たしてお前は最後まで見続けられるのか?」
パピヨンには、その様が目に映るようなのだろう。
「無理だね。お前からは既に耐えたり我慢したりする能力が失われている。すぐさま武藤に怒鳴り散らし、それでもと説教を繰り返す武藤は、さぞや憎らしく思える事だろうな」
「いい加減にしろ! 私は決してカズキを嫌ったり疎ましいなんて思わない!」
16交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 21:56 ID:84UG2Z22
「言っておくが、今俺が言ってる比ではないぞ武藤の鬱陶しさは。あいつがやると決めた時のしぶとさはお前も良く知っているだろう?」
首を大きく何度も横に振る斗貴子。
「うるさいうるさいうるさい! 私はもう一度カズキに会うんだ!」
「だから会えると言ってるだろう。お前が武藤の好みから大きく外れただけだ」
いきなり俗っぽい言い方になるパピヨン。
「いいか、武藤がお前に惹かれたとすれば、それは武藤の知る正しさや強さをお前の中に見出したからだろう。
それは、今のお前の何処かに残っているのか?
お前は武藤に尊敬されるような何者かなのか? いいや、お前は武藤の最も軽蔑する女だ。そういう類の人間に、お前はもうなってしまった」
愉快そうに笑うパピヨン。
「正にどのつら下げて、って奴だな。どうする? そんな武藤に会いたいのなら、俺に協力すれば何とかしてやるが」
「お前に何が出来る!」
「以前そうだったように、今度もまたうまくやる。お前に出来ない様々な事を、俺は出来るからな」
斗貴子は、そう言うパピヨンを拒絶する。
「嫌だ! 私は優しいカズキに会うんだ! お前の言う事なんて信じられない!」
そこで、パピヨンはまた大きく笑った。
「武藤はそもそも誰にでも優しいだろう。その中で、特別な一人であったお前は、自らその優位な位置を放り捨てたんだ。それを今更愚痴愚痴と何を言ってるんだ」
今度こそ明らかな殺意を込めてパピヨンを見る斗貴子。
「……私だけのカズキを、私にだけ優しいカズキを優勝して手に入れる……」
彼女は、既にパピヨンの知る津村斗貴子ではなくなっていた。
懐かしむような顔で、手に持ったサンライトハートを見つめるパピヨン。
「そうだな……そんな武藤は、魔法でも使わんかぎり、きっと手には入らん。それがお前の望みなら、武藤に会わせてやるというこちらのカードも効果は無い……か」
パピヨンは、彼にしては珍しく物静かで落ち着いた口調になる。
「津村、一つだけだ。優勝なんて不確実でない方法で、一つだけあるぞ、お前の望みを叶える方法が」
斗貴子はパピヨンをにらみつけたままだ。
「お前の言葉など信用出来ない!」
壁によりかかり、目の前にサンライトハートを立てるパピヨン。
17Classical名無しさん:08/03/14 21:56 ID:AYRZ2Ix6
初めての支援
18交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 21:58 ID:84UG2Z22
「あるんだよ。一つだけお前の望むとおりに。それは、おそらく武藤や他の偽善者共が望む結末に近い……最悪の手が。俺が全てを笑いものに出来る解決策がな」
パピヨンは、斗貴子のそれが望みを叶えるのに近い状態であると、わかってて言った。
斗貴子は信じようとしていないが、やり方は簡単だ。
それを教えてやれば、この女は必ず実行する。
これ、といったやり方があるわけではないが、比較的目指す状態に近づけるよう、その症状が出やすいようにしてやればいいと思う。
「……目を閉じて、武藤の声を聞くんだ。ひたすらに、ただそれだけを考えていればいつのまにか本当に武藤の声が聞こえてくる……」
パピヨンは斗貴子の方を見てはいない。
じっとサンライトハートを見つめているだけだ。
「それが第一段階。次に、武藤と一緒に居るお前の世界を想像しろ。そこはどんな場所だ? 家はあるのか? 食事は? 景色は? いつも何をして過ごしている? そこでの武藤の癖は何だ? お前達は何を楽しみにしている?」
斗貴子は、訝しげにパピヨンを見ている。
「周りから、お前の噂をする何者かの声も聞こえてくるだろう。お前が不安に思う全ての事が現実となる。そう、武藤がこの世から失われるといったありえない不安ですらな……」
「うるさい! 嫌な事を言うな!」
斗貴子の言葉まどまるで意に介さず、呪文のように言葉を紡ぐパピヨン。
「武藤がお前を軽蔑する。武藤がお前を毛嫌いする。武藤がお前を傷つける。武藤がお前を無視する。武藤がお前以外の誰かと共に過ごす。武藤が……」
「止めろ! 殺すぞ貴様!」
そう言いながら殴りかかってくる斗貴子の腕を取り、床に捻じ伏せる。
以前の戦闘では、技術が斗貴子とパピヨンの地力の差を埋める事はあったが、今の斗貴子にその技術を求める事は出来なかったのだ。
「無残に引き裂かれた武藤、助けを求めお前に手を伸ばすも、お前はその手を取る事が出来ない。絶望に立ち向かう武藤、届かぬ力を嘆きお前に助けを求めるも、お前は奴を救う事は出来ない」
パピヨンは知らなかったが、それは斗貴子の知る限りにおいての、カズキの最後の姿に酷似していた。
「……やめろっ……やめてくれ……」
19Classical名無しさん:08/03/14 21:58 ID:b82coTCI
20交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 21:58 ID:84UG2Z22
「二度と武藤がお前を救う事も無く、二度とお前が武藤に救われる事も無い。お前の中の武藤はいつでも苦渋に満ちた顔でお前を見つめ、そしてそれに答える術をお前は何一つ持たない」
床に引き倒されながら、必至にパピヨンの声を聞くまいと耳をそむける。
パピヨンは何をしようと聞こえるよう、よく通る低い声を心がけた。
「お前がどんなに近づこうとしても、武藤はお前から遠ざかる。決して触れる事は出来ない。その声を、嬉しそうな、お前を見て喜ぶそんな声を、二度とお前は聞く事は無い」
斗貴子は震えながら顔を伏せている。
「そんなお前にあいつは言う『その顔の傷が無ければな』『もう少し女らしく、そう妹のようであればな』『まさに何とかと刃物だ』『戦士? なら戦っていればいい。俺に近づくな』『俺は、お前がキライなんだ』……」
うわ言のようにぶつぶつとパピヨンの言葉を否定する斗貴子。
「この戦いに勝利し、様々な時間から武藤を集めるも、全ての武藤が口を揃えて言う『失せろ人殺し』『俺は絶対お前を認めない』『吐き気がする、何という人間の屑だ』」
「……カズキはそんな事言わない……カズキはそんな事言わない……カズキはそんな事言わない……カズキはそんな事言わない……」
「武藤はお前の知らない誰かを守るため、お前にサンライトハートの刃を向ける。そんな武藤を、お前は怒りに任せて嬲り殺す。お前が、武藤を殺すんだ」

「お前が武藤を殺したんだ」

否定の声すら発しなくなった斗貴子に、今度は囁くように告げる。
「聞こえてこないか? お前の噂をする声、お前を非難する声、廊下の窓の外、教室の端、校庭の隅、皆が皆お前を否定する。一際大きな声でそれを口にする、武藤の声がお前にも聞こえるんじゃないのか?」
パピヨンが考える解決策。
津村斗貴子を殺さず、その上で彼女の優勝に至る殺人を止める手段。
それは、津村斗貴子の判断能力を極限まで奪い取る、発狂と言われる手段であった。



精神病とは何なのか。
以前程認知度が低くは無くなったが、それでも誤解の多い病気であるのは確かだろう。
そもそも、これらは身体に異常が発生し、それゆえ様々な症状が出るという事を理解している人はどれだけいるのだろうか?
例として、旧名精神分裂症、統合失調症を例にあげよう。
21Classical名無しさん:08/03/14 21:59 ID:B4EuAEXs
支☆援 もっと愛を込めて!
22交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 21:59 ID:84UG2Z22
これは発作が起きると、脳の判断能力を司る部位が過剰に反応する状態になり、それゆえに正常な判断を下せなくなるというのだ。
この病気の代表的な症状である幻聴もこれで説明出来る。
脳が、本来鼓膜の振動を通して外部の刺激を『音』として聞き取るその機能を損ね、鼓膜の振動を介さず脳に『音』の情報を伝えてしまう。
だからこそ、聞いている当人には本当に外部から聞こえてくる音との区別がつかないのだ。
そしてこれに対するには、その部位の反応を落ち着かせる薬が効果的である。
昨今この薬の進歩により、劇的にその改善例は増えてきている。
しかし、これが不治の病であると関係者達は言う。
完治が難しく、周囲の協力なしには改善すら見込めない。
季節の折ごとに、大きなライフイベントを迎えるごとに、僅かなストレスが原因で、病状は悪化する。

これは余談だが、身体の異常が原因ならば、生命の水にて回復が見込めるのではと考える事も出来る。
判断に迷う所であるが、生命の水の力で脳細胞の働きを常に正常に保つ事が可能なら、そもそもそれを飲んだ人間の記憶に混乱が生じるという事がまずありえない。
勝がダウンロードを阻止する為に生命の水を使う、といった事もあった為、一概に否定出来るものでもないが。
この辺りの一定でない効果と非常に応用範囲の広い回復能力こそが、錬金術の奇跡と呼ばれる所以であり、また複製を困難にしている原因の一つではないかと考えられる。



パピヨンは、津村斗貴子が既にこの状態に近いと見ていた。
それでも健常者は振り子の針が揺れるように、元の状態に戻る事が出来る。
これを元に戻せないのが病気であるのだが、どんな人間が戻せなくて、どうすれば戻せる人間になれるのかは未だ解明されていない。
遺伝にその理由を求める学説もあるが、発病の理由は不明のままなのだ。
激した時の苛烈さから、津村斗貴子はそもそもその振り子の針を戻しにくい人間であると、パピヨンは見ていた。
後は簡単だ。
病気が発病した人間と同じ状態を繰り返すようにしてやればいい。
振り子の針を、病気になった時の状態で固定してやればいいのだ。
判断能力が完全に失われた状態で、確信を持って何かをやり続ける事は出来ない。
23交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 22:00 ID:84UG2Z22
当人のストレス耐性が極度に落ちるので、自分に都合の悪い事を好んで考えようとはしなくなり、当然、武藤が死んでいて二度と会えないとは考えなくなる。
ましてや、それを生き返らせる為に苦痛に満ちた殺人の道程を歩もうなどと、決してしなくなる。
基本的な思考は自らの妄想に支配され、他者に何かを強制する事はほとんどなくなると言っていい。
ストレスに満ちた殺し合いの場でこの症状が発症するという事は、最早この病気の改善は絶望的な状態にまで陥ると考えてよい。
それでも、生きてさえいれば良い。
誰も殺そうとせず、生きていれば良いというのであれば、当人が既にあの状態である以上これが最善の案だ。

「聞こえる!? カズキの声が聞こえるぞ! だ、誰だ!? 誰か……私の噂をしているだろう……何故影からこそこそと言うのだ……」

パピヨンが考えてた以上に、この女は発病間近まで来ていたらしかった。



一部始終を見ていた赤木が呟く。
「手間と解決のバランスから考えれば、確かに良手だ。俺はこれを、生きてるとは認めないがね……」
パピヨンはそちらを見もせずに答える。
「人それぞれだろう。いつまでも判断能力が低下しているわけじゃない、戻る時もある。そんな自分を知ってこの女がどう考えるかは知らんが」
赤木が見たパピヨンという人間は、そうまでして殺人を忌避するような人物には見えなかった。
「……何故この結末を選んだ?」
パピヨンはサンライトハートを核金に戻すと、それを手の中でくるくると回して遊ぶ。
「こいつが、殺すなってうるさいもんでね。あいつはあのまま放っておけばいい、移動したとしてもせいぜい学校内をうろつく程度だろう」
今のパピヨンには、それよりも大切な事があった。
「それより泉は何処だ?」
無性に泉に会いたい。
怪我をして意識を失っていようと、顔を見るだけでもいい。
きっとそれだけで、気分は晴れてくれるだろう。そんな気がしていた。
24交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 22:02 ID:84UG2Z22
赤木の案内でこなたの居る場所へと向かう。
職員室の一角、砕けた机の破片に埋もれるように、彼女達は居た。
「大砲か何かが直撃したらしい。少々……ショッキングな内容と見た目なんで、悪いがあの場では嘘をつかせてもらった……」
赤木らしい淡々とした口調でそう説明する。
パピヨンは他人には散々偉そうな事を言っておきながら、そこらに飛び散った赤黒い破片を泉こなたと認める事が出来そうになかった。


マズイ、あの時のように、一瞬だが完全に『俺』が飛んだ。
いや一瞬じゃない。
今でも気を抜くと『俺』が無くなってしまいそうだ。
今この瞬間をこの赤木という男が狙っていたのなら、完全にしてやられていた。
蝶天才のパピヨンが、こんな愚にも付かないような男にだ。

赤木を怒鳴りつけ、泉は何処だと問い詰めてやりたい。
馬鹿な、コレが泉だ。異論の余地はない。

込みあがる吐き気に任せて、噴出す感情に任せて、何もかもをそこらにぶちまけてやりたい。
天才は、そんな無様を決して晒さない。

何も無かった事にして、泉を探しに行きたい。
蝶人たるこのオレが現実を受け入れられないなんてみっともない真似出来るか。

既に核金に戻した、カズキのサンライトハートを強く握り締める。

『武藤! お前ならば何があろうと最後まで自らを貫く! ならばこの蝶天才たるパピヨンが! こんな所で折れてたまるものか!』

25交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 22:02 ID:84UG2Z22

彼女の目の前に、一人の男が現れた。
何か見覚えのある男だったが、カズキではないのですっと目線を逸らす。
何か言ってきたので、一つ気になっていた事を聞く事にした。
「痛そうだな」
男は返事をしなかった。
そうとなると少し悔しい。
「痛いのは嫌いだ。私が錬金の戦士だった頃も、実は痛いのは嫌いだったんだ。優しいのがいい、それが一番だ」
男はじっとこちらを見ている。
「だから私はカズキにならって、優しくしようと思ったんだ。きっと私はうまくやれていた。そうだ、お前怪我が痛いんなら、私がさすってやろうか?」
男は何も言わないでこっちを見ている。うん、きっと私が優しくしているから照れているんだ。
「遠慮するな。そうだ、包帯と……湿布は何処だ? 後絆創膏。これは大事だ、これがなくては始らないからな。何をさておき絆創膏だ。お前もそう思うだろう?」
ようやく、男が口を開いた。
「戦わない……のか?」
何を言っている。何故私がそんな事をしなければならない。
「痛いのは嫌いだ。だからそんな事しない」
男は繰り返す。
「ならば、もう誰も殺さないのか?」
殺す? 痛いの極みだ。そんな真似するものか。
「殺したら痛いじゃないか。そんな事しない」
また男が増えた。二人程。
何やら話し始めたが、難しそうなので知らない。面倒だし。
私に話しかけていた男が新しく来た男、ああ、こいつパピヨンだ。
変な奴だ。カズキも友達は選ぶべきだ、まったく。
「なあパピヨン。実はさっきそっちの物陰から人がたくさんこっちを覗いてたんだ。それでな私の顔の傷の事をぼそぼそと呟くんだ……」
26Classical名無しさん:08/03/14 22:03 ID:KXHn9Cdc
うわあああああああああああああああああああああああああああああ
27Classical名無しさん:08/03/14 22:03 ID:AYRZ2Ix6
クーガー「支援が足りないッ!」
28交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 22:03 ID:84UG2Z22
パピヨンは何故か面倒そうな顔でこちらを向いた。
「それは大変だな」
「ヒドイだろう! 今度連中にパピヨンから言っておいてくれないか?」
「気が向いたらな」
「ああ! 是非そうしてくれ!」



待ち合わせ場所で津村斗貴子を待つ川田。
しかし、いつまで経っても彼女は現れない。
「……やられたか?」
だとしたら、いつまでもこの場に留まっているのはよろしくない。
斗貴子が待ち合わせ場所を漏らしている可能性もあるのだ。
ハルコンネンを抱え、移動を始める川田。
「一人……か」
一番最初のプログラム。
たった一人で他の全員を殺して回ったあの時以来だ。
随分と一人でない事に慣れてしまっていたようだ。
「だがまあ、今は一人がありがたいか」
自分は今、さぞ人に見せられないような、大層凶悪な顔をしているだろうと川田は思ったが、わざわざそれを鏡で確認しようとは思わなかった。



彼女の豹変っぷりに葉隠覚悟は戸惑っていた。
川田が去った後、そのありえない程に鍛えぬいた肉体の回復力で、何とか動けるようにまではなった覚悟。
あの川田が、卑劣な罠を仕掛けて覚悟を殺そうとしてきた。
29交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 22:04 ID:84UG2Z22
それが信じられず、そしてその罠に完全にはまった自らの不甲斐なさも手伝って、足元も覚束ない程に覚悟は動揺していた。
そんな敗北感に打ちひしがれ、半死半生のていで学校に戻ってみれば、探し続けた銀髪の女が居るではないか。
しかし、女の様子が以前とは違う。殺意に満ちた彼女の視線がまるで失われている。
そこに現れた二人組みの男。
彼らに事情を聞くと、パピヨンと名乗った男が説明してくれた。
「つまりだ。あの女は今判断能力とストレス耐性が極端に低下している。だから、自分にとって面倒な事や嫌な事は全く考えようとしないし、無かった事として行動する」
「それと彼女が殺し合いを行わないと言っている事にどう関係が……」
「察しの悪い奴だな。人を殺すなんて面倒極まるストレスの塊みたいな行動を、あの女は取らなくなったという事だ」
驚きに大きく目を見開く覚悟。
「それは……貴方が?」
「そうだ」
突然覚悟がパピヨンの手を握り締める。
「ありがとう!」
この行動にはさしものパピヨンも面食らう。
「私の大切な友人に託された願い、貴方が聞き届け、叶えてくれたというのか! ありがとう! 貴方は素晴らしい人格者だ!」
心底面倒そうな顔で、パピヨンは覚悟に訊ねる。
「で、その願いってのはどんな願いで、誰の願いだったんだ?」
覚悟が斗貴子から聞いたルイズの最後の言葉を語ると、パピヨンはえもいわれぬ顔でぼやいた。
「……世に偽善の種は尽きんものだな。武藤みたいなのがここらにゃゴロゴロしてるのか?」
感極まった表情の覚悟は、パピヨンのそんな皮肉に動じる様子も無かった。
「俺にはどうして良いのかまるでわからなかった! ただ拳を交える事しか知らない俺に出来ないことを貴殿は見事やってのけたのだ! こんな素晴らしい人物に出会えるとは望外の喜びだ!」
その様子を見て堪えきれないのか、パピヨンにもわかるように笑う赤木と、それを苦々しい顔で見返すパピヨン。
「笑うな」

パピヨンは、本気で笑うなんて気になれない。
この男があまりに滑稽で、そして悲しすぎるから。
30交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 22:05 ID:84UG2Z22
最初に言った通り、パピヨンはこの男と、この男の友人の想いをコケにしてやったのだ。
相手が武藤なら、爽快感に胸がすく想いだったかもしれない。
だが、初対面の見知らぬ男に対しては、何故か胸くその悪い、最低の気分にしかなれない。
これしか手段が無かった、何て言う気も無い。
そんな津村と同じような事を、考えるのも嫌だった。

『それでもさ、パピヨンは津村さんを殺さなかったんだよね。その上でどうすればいいか、考えてくれたんだよね』

くそっ、オレにまで幻聴が聞こえてきやがった。

どうしてこんなに気分の悪い事ばかり起こるのだろう。
もしかしたら、この殺し合いが始ってからずっと気分の悪い事ばかりだったのだが、それを感じ無かっただけだったのではないだろうか。

アイツが居たから、泉が居てくれたから。
なら、何故今、泉はここに居ないんだ。

俺は津村とは違う。
決して、自分を見失ったりはしない。
例え心の何処かでその想いを理解出来たとしても。
ほんの少し前、津村を怒鳴りつけている時までは想像もつかなかった。
だが今ならわかる。ああ、視界に入る全ての人間をぶち殺したら泉が帰ってくるというのなら、いくらでもやってやる。
そんな事をしても無駄なので、俺はやらないがな。
俺は天才だ。蝶天才なんだ。理にかなわない無意味な事などほんの少ししかやらない。
ほんの少し、今は何もやる気にならないだけだ。
もう少しだけ、泉の事を考えていたいだけなんだ。
そんな大それた事なんて、俺は望んでいない。
ただ俺は、お前に俺の事を、もっと聞いて欲しかったんだ……
31Classical名無しさん:08/03/14 22:05 ID:b82coTCI
32交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 22:06 ID:84UG2Z22



【泉こなた@らき☆すた:死亡確認】
【残り19人】



【C-3 二日目 深夜】
【川田章吾@BATTLE ROYALE】
[状態] 健康
[装備] マイクロウージー(9ミリパラベラム弾13/32)、予備マガジン5、ジッポーライター、
    バードコール@BATTLE ROYALE
[道具] 支給品一式×3、チョココロネ(残り5つ)@らき☆すた、ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン 、
    文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ツールセット、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
    缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(4本消費)、ツールナイフ、つかさのリボン
    ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾4発、劣化ウラン弾、残弾0発)@HELLSING
[思考・状況]
基本行動方針:最後の1人になってつかさを生き返らせ、彼女を元の世界に戻す。
1:当面、斗貴子と組んで他の参加者を減らしていく。斗貴子もいずれ必ず殺す。

参戦時期:原作で死亡した直後
[備考]
※桐山や杉村たちも自分と同じく原作世界死後からの参戦だと思っています
※首輪は川田が以前解除したものとは別のものです
※津村斗貴子と、他の参加者の動向に関する情報交換をしました。
33交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 22:06 ID:84UG2Z22
※つかさの遺体を、駅近くの肉屋の冷凍庫に保管しました。
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※主催者の目的は、@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、A最強の人間の選発、の両方。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくためのもの。 零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※覚悟は死んだと思っています


【C-4 学校 二日目 深夜】
【津村斗貴子@武装錬金】
[状態]:しろがね化、心臓代わりに核鉄、精神崩壊、 統合失調症発病
    全身に火傷の痕、頭部に傷痕、鼻骨骨折(簡単な整復済み)、右手首消失、
    右手複雑骨折(添え木つき)、胸部骨折、右肩から胸に深い裂傷(簡単な縫合済み)、腹部に裂傷
    いずれの怪我もきっちりと手当て済み・しろがねの力で回復中
    普段のセーラー服ではなく、ホーリーの制服@スクライド を着用。
[装備]:ホーリーの制服@スクライド
[道具]:支給品一式×2 (カンテラのみ-1)
[思考・状況]
基本:?
1:?
2:?
3:?
※川田章吾と、他の参加者の動向に関する情報交換をしました。



【パピヨン@武装錬金】
[状態]:疲労。全身に打撲。
34Classical名無しさん:08/03/14 22:07 ID:B4EuAEXs
    
35交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 22:08 ID:84UG2Z22
[装備]:猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険、デルフリンガー@ゼロの使い魔(紐で縛って抜けないようにしてます)
    サンライトハート@武装錬金
[道具]:地下鉄管理センターの位置がわかる地図、地下鉄システム仕様書
    ルイズの杖、参加者顔写真&詳細プロフィール付き名簿、
    支給品一式、小さな懐中電灯
[思考・状況]
基本:首輪を外し『元の世界の武藤カズキ』と決着をつける。
1:エレオノールに警戒。
2:核鉄の謎を解く。
3:二アデスハピネスを手に入れる。
4:首輪の解体にマジックハンドを使用出来る工場等の施設を探す。

[備考]
※参戦時期はヴィクター戦、カズキに白い核鉄を渡した直後です
※スタンド、矢の存在に興味を持っています。
※猫草の『ストレイ・キャット』は、他の参加者のスタンドと同様に制限を受けているものと思われます
※独歩・シェリスと情報交換をしました。
※逃げられてしまったゼクロスにさほど執着はないようです
※詳細名簿を入手しました。DIOの能力については「時を止める能力」と一言記載があるだけのようです。
※三村の話を聞きましたが、ほとんど信用していません。クレイジー・ダイヤモンドの存在を知りました。
※こなたの死に動揺しつつ、それに耐えようと必死です


【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に火傷(治療済み) 胸に火傷、腹部に軽い裂傷。頭部他数箇所に砲弾による衝撃のダメージあり
    胴体部分に銃撃によるダメージ(治療済み) 頭部にダメージ、
    両腕の骨にひびあり。
36交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 22:09 ID:84UG2Z22
[装備]:滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)
[道具]:大阪名物ハリセンちょっぷ
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者BADANを必ず倒し、彼らの持つ強化外骨格を破壊する。
1:川田を説得する。
2:全てを終えて、S7駅でヒナギクたちを待つ。


【備考】
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※2人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首2には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている
※2人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論
※三村とかがみについて
三村の吹き込んだ留守禄の内容を共有しています。
かがみと三村に対してはニュートラルなら姿勢です。
とにかくトラブルがあって、三村がかがみを恨んでいると事実がある、
37交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 22:09 ID:84UG2Z22
とだけ認識しています。


※ハヤテのDIOの能力についての知識と考察の情報を得ました。
目から弾丸を発射する能力(空裂眼刺驚)を持っている。
血を吸って仲間を増やすことができる(肉の芽については知りません。
一度DIOの仲間にされてしまった者は、救えないと考えています)


@時を操作する A超スピードで動く+超高速の麻酔針発射装置、Bその場にいる全員に集団幻覚を見せる。
DIOの力は、@~Bのどれか、特に@が有力だと考えています。


※BADANに関する情報を得ました。
【BADANに関する考察及び知識】

このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって”都合がイイ”状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては”どーでもイイ”状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。

38交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 22:10 ID:84UG2Z22

【赤木しげる@アカギ】
[状態]:脇腹に裂傷、眠気 核鉄で自己治癒中
[装備]:シルバースキン 基本支給品、 ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス (残り9本)
[道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)
 始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます)、
 水のルビー@ゼロの使い魔、工具一式、医療具一式 沖田のバズーカ@銀魂(弾切れ)
[思考・状況]
基本:対主催・ゲーム転覆を成功させることを最優先
1:学校で仲間を待つ。
2:対主催を全員説得できるような、脱出や主催者、首輪について考察する
3:強敵を打ち破る策を考えておく
4:『Dr伊藤』とのチャットについて、考察する

[備考]
※マーティン・ジグマールと情報交換しました。
 またエレオノールとジグマールはもう仲間に引き込むのは無理だと思っています。
※光成を、自分達同様に呼び出されたものであると認識しています。
※参加者をここに集めた方法は、スタンド・核鉄・人形のいずれかが関係していると思っています。
※参加者の中に、主催者の天敵がいると思っています(その天敵が死亡している可能性も考慮しています)
 そして、マーティン・ジグマールの『人間ワープ』は主催者にとって、重要なにあると認識しました。
※主催者のアジトは200メートル以内にあると考察しています
※ジグマールは『人間ワープ』、衝撃波以外に能力持っていると考えています
※斗貴子は、主催者側の用意したジョーカーであると認識しています
※三千院ナギは疫病神だと考えています、また彼女の動向に興味があります。
※川田、ヒナギク、つかさの3人を半ツキの状態にあると考えています。
39交差する運命 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 22:11 ID:84UG2Z22
※ナギ、ケンシロウと大まかな情報交換をし、鳴海、DIO、キュルケの死を知りました。
※こなたのこれまでの経緯を、かなり詳しく聞きだしました。こなたに大きなツキがあると見ていますが、それでも彼女は死にました
※『Dr.伊藤』の正体は主催側の人間だろうと推測しています。

『Dr伊藤』とのチャットによりわかった事
1:首輪は霊的に守護されている
2:首輪の霊的守護さえ外せれば、後は鋭い金属を継ぎ目に押し込む程度で爆発無しに外せる
3:既にその霊的守護を外した者が居る。そいつが首輪を外したかは不明だが、おそらく外してはいない
4:監視カメラは存在せず。首輪についた盗聴器のみでこちらを監視。その監視体制も万全ではない
5:敵には判断能力と機転に乏しい戦闘員が多い
6:地図外に城? がある
7:城には雷雲を突破しなければならず、そのためには時速600キロ以上の速度が必要
40 ◆1qmjaShGfE :08/03/14 22:12 ID:84UG2Z22
以上です。今回は予約延長から、スレまたぎ、他様々なご迷惑をおかけしました
心よりお詫び申し上げます。本当にスミマセンでした……

何かお気づきの点ございましたら、ご指摘の方よろしくお願いします
41Classical名無しさん:08/03/14 22:18 ID:2zhG5xDI
乙!GJ!
こなたが死んでしまったか……
川田……は気づいてないだろうがつかさの親友なのになぁ……
42Classical名無しさん:08/03/14 22:18 ID:AYRZ2Ix6
乙です。
マジで手汗モノの戦闘描写とパピヨン、斗貴子のやりとり。
そして漂う悲壮感、こなた・・・。
アカギ、パピヨンの頭脳チーム&覚悟のこれからに期待します。
43Classical名無しさん:08/03/14 22:27 ID:UknionB2
投下乙!
パピヨンの斗貴子への精神攻めは嫌な汗が出てしまうほど、描写が凄かった……。
斗貴子は前より更に酷い状況に落ちたね。
というかアカギ……いや、確かにあの状況では正しいかもしれんが、予想外すぎてびっくり。
こなた……あの世で元気にやってくれよ。

GJ!

44Classical名無しさん:08/03/14 22:28 ID:OIkpguK.
らき☆すたボーナスはここで打ち止めか……
しかしアカギ、パピヨン、覚悟といいメンバーが揃ったな

パピヨンと斗貴子さんのシーンはとてもよかった
セリフがパピヨンが言いそうで、ホント素晴らしい
45Classical名無しさん:08/03/14 22:34 ID:oxXXtDhM
乙です。
こなたが死んでしまった・・・・・・・
そしてTQNがどう転ぶか解らないですね・・・
戦力的には安定している対主催の3人に期待します。
さいごにどうでも良いことなんですが、
所々の赤木シゲルの表記は赤木しげるだと思います。
46Classical名無しさん:08/03/14 22:40 ID:E.jadq5c
投下乙
こなた……お前とパピヨンがふざけて話してるとこしか想像できなかったよ
TQNは殺さないためにはこうなるしかなかったんだよな。
パピヨンの責め苦が素晴らしく似合ってると思いました
47Classical名無しさん:08/03/14 22:47 ID:eVRAj.l6
投下乙
パピッ! ヨンッ! 絶好調。
首輪の解除フラグも手に入れて、ほぼ対主催者では怖いもの無しのチームに。
斗貴子を責めるパピヨンの凄みが凄かった。
一人になった川田はどう動くか。
GJ!
48Classical名無しさん:08/03/14 23:07 ID:mKrROY.w
投下乙
赤木・・・二代目ナギはお前だな
疫病神にもほどがあるぜ・・・
しかしパピヨンの描写が半端ないなー
思わず本棚から武装錬金取り出したわー
49Classical名無しさん:08/03/14 23:18 ID:g4yxJJKI
投下乙です
ああ、こなたが逝ったか……
川田……つかさを元の世界に返すために、その帰るべき世界をぶち壊したんだな……
パピヨンの斗貴子さん詰問タイムは、ゾクゾクした
まさかこういう結末になるとは

……ところで、斗貴子さんは核鉄を心臓にしてるから、長時間サンライトハートを奪われてると死んじゃうよね?
50Classical名無しさん:08/03/14 23:55 ID:mcRTfEZY
前回、幸運の星と言われていたこなたが死ぬとは…
51Classical名無しさん:08/03/14 23:58 ID:CSUJn.ZQ
投下乙
>>23
>パピヨンはサンライトハートを核金に戻すと、それを手の中でくるくると回して遊ぶ。
ってあるな。これもう心臓からぶち抜いてるってことじゃ…
52Classical名無しさん:08/03/15 00:00 ID:ld/bgNdU
>>51
普通にサンライトハートを核鉄状態に戻しただけだと思いますよ。
53Classical名無しさん:08/03/15 00:17 ID:QYRTrwY.
だから、TQNは心臓代わりに核鉄入れてるんだろ?
つまり核鉄状態に戻したらTQNの胸に戻るのであって、パピヨンが回して遊んでたんじゃTQNは死ぬことになんね?
54Classical名無しさん:08/03/15 00:21 ID:ld/bgNdU
>>53
死ぬな。次の書き手まかせでいいでしょう。それくらい
55Classical名無しさん:08/03/15 00:54 ID:X4UzznW.
心臓(核鉄)無しで平然としているのはおかしいんじゃないかと思う
いくらしろがねだからって心臓無くなったらすぐ死ぬだろう
56Classical名無しさん:08/03/15 01:01 ID:ld/bgNdU
>>55
武装錬金見たら、サンライトハートとカズキの距離がある程度離れてもすぐには死んでいないな。
気にすることでもないだろう。
57Classical名無しさん:08/03/15 01:16 ID:B36FnvbY
 くそう…。
 読み終わって30分以上経つのに、心臓のゾワゾワが収まらないぜ…っ!
 なんという…なんというSSだ……っ!
58Classical名無しさん:08/03/15 01:31 ID:dpaY.aJQ
>>56
サンライトハートの状態なら一定時間はカズキから離れてても大丈夫だが
核鉄の状態に戻る時はいつも心臓の部分におさめてなかったっけ?
ヴィクター化した時は核鉄の状態から直接、心臓から取り出してたけどな

にしても、これは凄い鬱展開だな・・・強烈だ。
59Classical名無しさん:08/03/15 01:42 ID:yJtGbDbI
この展開は……!
知直を駆使したバトル、予想外の展開……すげぇ
まじでそこに痺れる、憧れるぅぅぅ!

まあ、思いのほか気に入りだしたこなたがサドンデスアッサリ風味で逝っちまったのが残念だが
それによる予想外のどんでん返しと、きれいな閉めを考えると……これだけの物に文句は付けれないな

しかし最近、やけに女子率が減るのぉ……
60Classical名無しさん:08/03/15 01:55 ID:B36FnvbY

 漫画ロワのキャッチフレーズが、「熱血」 から 「男臭」 に変わりつつあるな…っ!
 私は一向にサムワン!!
61Classical名無しさん:08/03/15 02:00 ID:7ag1paN2
こなたが逝っちまった……
逝っちまったよぉ……

斗貴子も逝っちまったな……精神的な意味で
こうなるくらいなら死んだ方がマシというアカギのような考え方もあるかもしれないが本人的にはこれで幸せかもな……

しかし覚悟、それでお礼言うなよ
お前に一番引いたわ
……まあ、元々覚悟がいた世紀末な世界を考えれば生きてるだけましなのかもしれないな
再起する可能性だってあるわけだし
62Classical名無しさん:08/03/15 02:02 ID:7ag1paN2
パピヨンも悲しいだろうが、少し休んだらまた頑張れるよな
残り少ない専門的な知識がある頭脳派なんだから、勝利はお前にかかってるぞ
63Classical名無しさん:08/03/15 02:13 ID:QYRTrwY.
覚悟、ハルコンネンが至近距離で直撃したのに生きてるとかどんだけ頑丈なんだよw

>その頭部は金属で覆われ、弾の直撃を防いでいる。

で気になったんだがこれって何?滝スーツのヘルメットじゃないよな
64Classical名無しさん:08/03/15 02:16 ID:Gcf1h.D2
最後のパピヨンの心情に涙した。
いくら天才でも、ときには声をあげて泣いていいんだよ、とか思った。
こなたの死に様があっさりし過ぎていて却ってロワの非情さを思い知った。
にしてもアカギの冷静さが怖すぎる。
65Classical名無しさん:08/03/15 02:18 ID:Gcf1h.D2
>63
参戦時期から考えて、零式鉄球かな。
覚悟は体の何%だかを金属化出来るはず。
66Classical名無しさん:08/03/15 02:21 ID:7ag1paN2
>>63
覚悟や散の身体に埋め込まれている零式鉄球
普段は球の形で身体に埋まってるけど、戦闘時には皮膚を覆って硬化する
覚悟は8つの零式鉄球を身体に埋め込まれていて、身体の56%を鎧化できる
67Classical名無しさん:08/03/15 02:44 ID:QYRTrwY.
>>65>>66あり
零がないとそういうのできないって思ってたよ。
68Classical名無しさん:08/03/15 02:51 ID:B36FnvbY
 零式鉄球の説明は、本文にあった方が確かに良かったかもしれない。
 今までほとんど言及されていないし、原作知らないと分からないしね。

 あと覚悟のトキコへの反応に違和感があるという意見もあるし、同感もするけど、改めて考えると、
覚悟は元々トキコがどんな人間か知らないから、トキコがどれほど壊れてしまっているかは、よく分
からないっちゃあ分からないんだよね。
69Classical名無しさん:08/03/15 22:14 ID:QuezACDA
 投下乙です! ああ、こなた……
 これで川田、次にパピヨンに遭遇した終わりだな。


 零式鉄球の説明については、自分も必要だと思います。零式鉄球のことは知っていたけど、
前後に説明がなかったので>>65>>66が説明してくれるまで気が付けませんでした。

 覚悟のパピヨンへのお礼の言葉も、斗貴子の精神が破綻しているのを覚悟が易々と受け入れるのには違和感がありました。
「あれが最高ではないけども、彼女にこれ以上外道を歩ませずに済ませてくれたことに感謝する」
ぐらいに、なんというか、喜ばしくはないけど納得はしている程度ぐらいの方が、しっくりくるんじゃないでしょうか?
70Classical名無しさん:08/03/16 03:04 ID:qasjbToQ
ヤバイなこれ・・・俺の中じゃ桂、ルイズ死亡に並ぶ程の良作だったぞ。
71Classical名無しさん:08/03/16 10:28 ID:HUZnJsl6
乙です
こなた…油断した…氏の演出力に脱帽です…
最後の最後に思いっきり、ドンと鬱にさせられたよ
パピヨンのTQNへの設問には震えそうになったよ
その後だけに、こなたの無残な死が辛い…
核鉄の長時間分離での死に関しては次の書き手さん次第かな?

後、誤字ちょっとだけ見つけたんで指摘です
>>23>>24
核金じゃなくて核鉄です…でもこれ何気に間違えやすいんですよねぇ…鉄って書いて『がね』って読ませるから…
72Classical名無しさん:08/03/16 13:34 ID:H3BUEcyU
こなたが逝ってしまったか…。アカギが認めた『幸運』の持ち主だけに残念。
こなたが死んで明らかにツキは落ちたと思うけど、致命的なレベルになってない事を祈るばかりです。

ちなみに本編とはあんまり関係ないんだけど、こなたの死によって残り女性キャラが5人になりました。
(エレオノール・神楽・ヒナギク・斗貴子・かがみ)対して男性キャラは14人。
残りの女性陣も、エレオノールはケンシロウとの因縁で強烈な死亡フラグ。斗貴子はこの状態で生き延びれるとは思えないし、
かがみは首輪解除へのフラグ持ちとはいえヒナギクも含め一般人だし、
神楽は戦闘能力も高くいまだに怪我らしい怪我もないという状態ではあるものの、
勇次郎のすぐ傍という最悪の場所。下手すると次の放送を待たずして全滅もありうるかも…。
73Classical名無しさん:08/03/16 13:48 ID:TQzE2AVk
ところでヘルシング読む限りハルコンネンにスコープなんて付いてないと思うのだが
74Classical名無しさん:08/03/16 15:31 ID:AQ5QNW7.
心臓の核鉄はインフィニティによると、完全破壊、長時間の分離によって死亡ってあるけど
今回は完全に核鉄の状態で抜き取っちゃってるからなあ、それだと分離も糞もなく死亡になりそうなもんだが。
75 ◆1qmjaShGfE :08/03/16 15:58 ID:iEjf3wTE
みなさま、様々なご意見、ご感想本当にありがとうございます。ありがたくて涙出そうです

今回の『交差する運命』に関して、みなさんのご指摘確認しました所、心臓の核鉄、及びハルコンネンのスコープの有無に関しては
確実に修正が必要と考えました。他の部分に関しても色々と考えましたが、その部分のみ修正して、他はいじらずといった形にしようと思っております

後、誤字と零式鉄球の説明も……_| ̄|○
76Classical名無しさん:08/03/16 20:00 ID:86cvPCWk
>>74
「しろがね化してるんだから、しばらくは持つ。どの程度まで持つかは書き手任せ」でもいいかと思うが……
まぁ、修正するということなので、それを待とう
77 ◆05fuEvC33. :08/03/17 02:00 ID:s0EqENbE
>>75
大人数で大変だと思いますが、修正がんばって下さい。
 
すいません、自分の予約の延長を申請します。
78Classical名無しさん:08/03/17 03:27 ID:9eakBZ0M
wiki管理人さんにお願いがあるのですが
よろしかったらギャルゲロワ2ndで漫画ロワが使ってる便利な現在位置プログラムをお借りしたいのです
ですのでもしお借りしてもよろしいのでしたら、メールの方までデータを送っていただけたら幸いです
79Classical名無しさん:08/03/17 03:44 ID:DZ8chJwY
>>76
しろがね化してようがアーカードだろうが心臓ぶちぬかれたらさすがに即死するだろ
80Classical名無しさん:08/03/17 03:54 ID:Jyne/TxU
>>79
脳味噌なら「虎眼流だから」で済むのに!
81Classical名無しさん:08/03/17 09:08 ID:iKkCQsKs
しろがねって心臓ぶち抜かれても生きてなかったっけ?
82Classical名無しさん:08/03/17 11:07 ID:sBwBP/FY
心臓ぶち抜かれて生きてた描写はなかったと思うが……
大体、しろがねは出血多量で死ぬと書いてあるんだし、心臓ぶち抜かれりゃ死ぬだろ。
ただ、問題は今回の描写って、心臓ぶち抜かれるのとは微妙に違うんだよな……
83Classical名無しさん:08/03/17 11:18 ID:iSx7N/UQ
心臓の代わりをしていた核鉄が外されたけど、しろがね化しているんだよなぁ。
でも心臓(核鉄)が無くなったことで血(生命の水)の循環も止まるだろうから、遠からず身体が崩壊するんでね?
84Classical名無しさん:08/03/17 14:46 ID:/6sH8suQ
>>80
虎眼流www
あれは人間じゃないでしょww
85 ◆1qmjaShGfE :08/03/17 22:13 ID:iltlcx8.
『交差する運命』修正分を一時投下スレに投下しました
前述した通り、核金、ハルコンネンのスコープ、零式鉄球と、サンライトハートが槍状のままである故の斗貴子のセリフ追加分のみの修正です
ご迷惑おかけしました
86Classical名無しさん:08/03/17 23:49 ID:J0kFN4EY
>>78さん、
http://comicroyale.hp.infoseek.co.jp/chizu.zip
にメインのファイルを置きました。

このほかに、各キャラのアイコン
http://comicroyale.hp.infoseek.co.jp/img/sugimura_d.gif
などが必要になります。他に何か必要なことがあれば、いってください。
あと、これはperlの素人が書いたプログラムなので、非常に非効率だと思います。
直していただけたら、こちらにもらえると嬉しいのです。
8778:08/03/18 16:49 ID:Y3LDcfl.
>>86
ありがとうございます
こちらも素人なので余り期待されるとつらいですがw
上手く改良できたらこちらにうpしてみます
88 ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:19 ID:1pbMAmkA
独歩、ジグマール、ヒナギク、かがみ、村雨を投下します。
89Classical名無しさん:08/03/19 22:19 ID:xgSzrgqU
    
90Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:20 ID:1pbMAmkA
支給された時計で放送の時間が近いのを知った愚地独歩は、近くの民家に入っていく。
周囲の気配を読める独歩にとっては、遠隔から狙われる危険が少ない屋内の方が安全に放送を聞ける為だ。
玄関の下駄箱の前に座り込み、左肩の傷の状態を見る。
(出血は止まってるし、大事無いみてぇだな……)
長年に亘る空手の修行と実戦で、多くの負傷を経験してきた為
自分の怪我の度合いが深刻で無い事は、予め分かっていた。
(それにしたって一人で追うのは、少し焦り過ぎたかな…………)
ケンシロウが自分と同じく怪我の治療より、エレオノール等の追跡を優先していると理解したので
エレオノールをケンシロウに任せ、独歩は単独でジグマールを追う事にした。
独歩としては、最良の判断をしたつもりである。
それでも加藤鳴海とした約束が、気に掛かっていた。
(…………すまねぇな鳴海よ、エレオノールはできる限り何とかしてみせると言っておいて結局人任せにしちまった…………
 けどエレオノールはよ、もう完全に殺し合いに乗っちまってたんだ………………)
三千院ナギを殺害し、しかもその事実をケンシロウ相手に駆け引きの材料として使おうとしていたエレオノール。
その無感情な冷徹さを見て独歩は、エレオノールがそもそも殺し合いに乗る事に僅かな躊躇も持たない人間だと見抜いた。
ただ機械の如く目的の為に動き、殺人にも躊躇も後悔も無い。
そういう人間を説得するには、実利(メリット)を示し交渉をする他無い。
そして独歩に、エレオノールと交渉出来るだけの材料は無かった。
(悪いが鳴海よ、次にエレオノールに敵として会ったら殺す…………
 頭の出来の悪い武術家の俺には、やっぱりそうするしか無いみたいだわ………………)
 
―――さて諸君、頑張っておるかのう?
 
独歩の旧知である、徳川光成の声が聞こえてくる。
旧知の人物が殺し合いを進行している事にも慣れ、当初は感じていた違和感も無くなっていた。
 
 
 
―――それでは、また6時間後の放送が無事に聞けるといいの。
 
91Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:21 ID:1pbMAmkA
 
知った名前が脱落者として何人も呼ばれたが、それらの人物の死はどれも予め知っていた為に驚きは無い。
多くの人間の死を告げられる事にも慣れた自分に、僅かに自嘲的な気持ちが過ぎる。
(…………さて行くとするか、俺の頭で何時までも座りって考え込んでたって休んでるのと変わらねぇ。
 所詮、武術家は身体を張って動くいて結果を示すしかないもんだ)
脱落者と禁止エリアのチェックを入れ終えた独歩は、名簿や地図をデイパックに仕舞い込み民家を出発する。
自らの美意識に反して持つ、右手のイングラムM10がやけに重く感じられた。
(…………へっ、手前ぇの力が足りないから勝も、鳴海も、ナギも助けられなかったんだろうが。
 手前ぇにはもう、美意識や誇りに拘る資格なんざ無ぇんだよ。ええ、独歩ちゃんよ…………)
自らの力が足らぬ事を思い知り、武神の誇りを失ってなお
未だ折れぬ闘志と共に、独歩は戦いの場へ赴く。

 ◇  ◆  ◇

「……DIOが死んだか…………」
ケンシロウから逃れた後、手近の民家の中にあるベッドで身を休めていたマーティン・ジグマールは
4度目の定時放送を聞き終え、ベッドの真ん中で仰向けに天を仰いでそう呟いた。
空間を操る自分にすら不可能な、時間を操り停止させる能力者DIO。
ジグマールにとっては再び最強のアルター使いとなる為に、乗り越え倒すべき敵として思い定めていた相手だった。
それが自分の与り知らぬ所で、死んでいた。
 
ジグマールも胸中の空虚な失望感に、しばしその動きが止まり
「…………フン。なるほど……DIOを倒す程の者が、まだこの殺し合いの中に居るという事か」
やがて不敵な笑みを浮かべ、ベッドから身を起こした。
「DIOを倒したのは劉鳳か? ケンシロウか? それともまさかアカギか?
 フフフ、何れにしても殺し合いに勝ち残ればDIOと……そしてそれを倒した者を乗り越えた事になる!」
戦闘に支障が無い程には体力が回復し、傷口も出血が収まったのを確認する。
(フフン……アカギよ、お前ならこの程度の事で動じたりはしまい。そうだろう?)
自らが頂点に在らぬ事を思い知り、友を失ってなお
未だ折れぬ矜持と共に、最古のアルター使いは戦いの場へ赴く。
(……………………あ)
92Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:22 ID:1pbMAmkA
そして民家から出るなり、それはすぐに見付かった。
通りすがった隻眼にイングラムM10を携えた男、愚地独歩に見付かったからだ。
(ど、どうする? どうする? どうする? 私はどうする?
 落ち着け! 見た所奴は単独で、私を追い掛けて来た様だ。
 ケンシロウが居ないのならば、勝ち目も有る。
 しかし奴は私とフランシーヌの二人を相手取り、あれだけ渡り合えた程の猛者だからな。
 それに今奴はイングラムを仕舞ってない……って言うか、こっちに向けてきた!!)
ジグマールが下した戦術的判断は撤退。
即座にイングラムの射線上から、駆け出す。
独歩もジグマールの後を追い走り出した。

 ◇  ◆  ◇

身を切る様な夜の冷気を、更に高速で以って切り裂くが如くに走るバイク―――クルーザー。
3人という人数にとっては、決して広くないそのクルーザーの座席部分に
桂ヒナギク、村雨良、柊かがみは、身を寄せ合い座っていた。
ヒナギクがS8駅で待ち合わせている、強大な戦力を持ち
今は村雨が持っている強化外骨格「零」の着装者、葉隠覚悟と合流すべく急いでいた。
 
「ちょ、ちょっと、スピード出し過ぎじゃない!?」
「ここには取り締まる警察は居ない、制限速度を守る必要は無いさ」
「そうじゃなくて、怖いって言ってるのよ!!」
 
クルーザーの運転をしていた村雨は、かがみの声に停車する。
かがみはようやく一息ついて、胸を撫で下ろした。
「あんた、街中で一体何キロ出してんのよ……」
幅5m程の車道を時速80キロ以上の速度で走り、そのまま速度を落とさず直角のカーブを曲がる運転は
村雨にとっては、同乗者を気づかって速度を抑えていたものだが
かがみにとっては村雨の卓越した運転技術を知り、クルーザーの高性能を知っていても生きた心地のしないものであった。
それでも先程まで村雨の背にしがみ付き、何とか耐えてきたが
結局は体力が持たなくなって、一旦クルーザーを止めて貰う事とした。
 
93Classical名無しさん:08/03/19 22:23 ID:xgSzrgqU
     
94Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:24 ID:1pbMAmkA
 
「すまん…………」
村雨は素直に謝罪をする。
「どうする、やっぱり電車で行く?」
平然とした様子で、かがみの更に後ろに座っていたヒナギクは問う。
「……………………大丈夫、休んだら行けるから…………
 でも、もう少し安全運転で行ってよ…………」
「……了解」
村雨はかがみに、苦笑いを浮かべながら答える。
 
クルーザーは先程より速度を抑えて、街道を走り始めた。
村雨は後ろに座る、かがみを伺う。
村雨の運転には、慣れてきている様子だった。
強い人だ。
村雨はかがみをそう思う。
妹の死を知らされて、まだほとんど時間も経っていないのに
前に進む事を止め様とはしない。
態度には出さなくても、それは決して容易ではないだろうと
姉の存在とその死を思い出した、村雨には思えた。
勿論かがみと村雨の心境を、一括りに出来るものではないが
強い悲しみを乗り越えたのは、充分に察する事が出来た。
 
『良、約100m前方に人の気配を確認』
零が警告を発すると、村雨は瞬時に思考を中断し前方の気配を捉える。
村雨は内心、懸念していた事態が起こったと苦虫を噛んだ。
零の索敵能力とクルーザーの機動力で、移動中の安全を守ろうと考えていたが
進行方向上に誰かが居た場合、発見した時には既に大きく距離を詰めている危険がある。
その懸念通りクルーザーを止めた時には、前方のカーブから姿を見せた長髪の男と大きく距離を縮めていた。
「逃げろ!! 私は殺人者に追われている!」
男はこちらを見て、一瞬驚いた様な表情を見せた後そう叫んだ。
95Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:26 ID:1pbMAmkA
その後ろから、スキンヘッドに隻眼の男が走って来る。
(クルーザーなら今からでも逃げられるか……
 いや方向転換と加速の間に、どうしても隙が出来る。それに…………)
接触か逃走か、刹那の判断を迫られた村雨は―――
「二人共、その場を動くな!!」
(俺は仮面ライダーだ、危機に陥っている人を見過ごせはしない!)
逃走できる距離を保っての、接触を試みた。
 
 
 
「「武装錬金」」
「変んっっっ身!」
かがみが激戦、ヒナギクがバルキリースカートを練成し、村雨は仮面ライダーZXに姿を変える。
動きを止めたジグマールと独歩の間に入る村雨達を見て、ジグマールは内心ほくそ笑んだ。
「逃げろ」と言ったにも関わらず、2人を制止して接触してきたという事は
村雨達は十中八九、殺し合いに乗っていない連中だろうと推測出来る。
(まあ一枚岩とは限らんし、油断は出来んがな。フフン、それでも幾らでも取り入って利用する余地は有りそうだ)
ジグマールは独歩を指し、焦った様子で話す。
「私はそこの殺し合いに乗っている男に追われていたんだ!」
「殺し合いに乗っているってのは、てめぇだろうが!!」
「私達に無断の言動を取ると死ぬわよ」
ジグマールと独歩の話に、ヒナギクが割ってはいった。
(殺すではなく、死ぬと脅してくる辺り中々強かな女だな……)
戸惑う演技をしながらジグマールは、村雨達を値踏みする。
3人を戦闘力で比べれば、村雨が最も強くかがみが最も弱いと推測される。
「あなた名前は?」
ヒナギクからの問いに、ジグマールは隻眼の男が独歩と呼ばれていた事を思い出しながら
更に大まかに暗記していた、名簿の内容を検索する。
「私の名前は愚地独歩。設定年齢19歳蟹座のB型ッ!!!」
現状から推して、マーティン・ジグマールより警戒されないであろう偽名を名乗った。
96Classical名無しさん:08/03/19 22:26 ID:xgSzrgqU
    
97Classical名無しさん:08/03/19 22:26 ID:xgSzrgqU
          
98Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:27 ID:1pbMAmkA
「よくもぬけぬけと、俺の名前を名乗れたもんだなジグマールさんよ―――アァ?」
怒り心頭といった笑みを浮かべ、独歩はジグマールに詰め寄ろうとする。
 
「動かないよう言った筈よ」
「姉ちゃんよ、俺はそこの兄ちゃんに大事な用があるんだ。姉ちゃんの用事は後にしてくれや」
「あなたが殺し合いに乗っていないと分かるまで、勝手な事は許さないわよ」
「オメぇは関係無いだろ!! 指図される云われは無ぇんだよ!!!」
 
独歩の応答に同じく怒り心頭といった笑みで、ヒナギクはクルーザーから降りる。
 
「そう……関係無いっていうなら、あんたの事情も私には関係無い」
「……だったらどうしようってんだ、ええ? おい!」
「こっちは、力付くで取り押さえても良いのよ?」
「ほう…………面白ぇ事言う姉ちゃんだな」
 
ヒナギクも独歩も、売られた喧嘩は買うタイプの人間だ。
両者の覇気が、間の空間が歪みそうな程にぶつかる。
「ちょっと、止めなさいよ二人共!」
『かがみの言う通りだ。今は二人の意思を知る事が急務だ』
かがみと零が、二人を止めに入る。
「俺とジグマールの意思を知る方法が、有るってのかい?」
『有る』
独歩の問いに答え、零の入った鞄が僅かに開き
ジグマールへ向けて、触手を伸ばした。
「うわああああああっっ!! い、一体何の真似だ!?」
『脳髄から情報を吸引する』
ジグマールは伸びてくる触手から、悲鳴を上げて逃げる。
「何故逃げる? 情報を吸引されて、不都合な事でもあるのか?」
「得体の知れない鞄から、触手が伸びて来るんだぞ? その鞄が、脳髄から情報を吸引するとか言ってるんだぞ!?
 そんなもの、何も無くても嫌がるに決まってるだろ! 常識的に考えて!!」
訝しげに問う村雨に、ジグマールは捲し立てた。
99Classical名無しさん:08/03/19 22:28 ID:xgSzrgqU
        
100Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:28 ID:1pbMAmkA
「……いや、今のは誰でも逃げるって…………」
「…………うん、今のはしょうがないわ…………」
若干引き気味になっている、かがみとヒナギクが擁護する。
『これなら確実に、あの男が殺し合いに乗っているか否かが確認可能だ』
「何と言われようと、生理的に受け付けないのでね……」
「なら、俺を調べてくれや。そうすれば、あの兄ちゃんがどんな奴かも分かる」
「そうそう。触手などと下品な物は、そっちの男にこそお似合いだ…………え?」
固辞するジグマールを余所に、独歩が名乗り出た。
「どうしたのよ? 急に物分りが良くなって」
「そこの鞄も含めて、悪い連中じゃないと分かったってだけだよ。偉そうな姉ちゃんは別にしてな。
 一応聞いとくが、大丈夫なんだろうな?」
『危険は無い』
「じゃあ、さっさとやってくれや」
ジグマールは慌てて口を挟んだ。
「いやいや、ちょっと待て! それでその鞄が私をクロだと言ったら、キミ達はそれに従うのか?
 そんな訳の分からない鞄に判断を委ねる等、無意味だ! 滑稽だ!! ナンセンスだ!!!」
もし鞄の情報吸引能力が本当なら、ジグマールは殺し合いに乗った事が明るみになる。
4人を相手にするのは無謀と考えたジグマールは、必死に零を留めようとする。
「零は俺達の仲間だ。信用出来る」
だがジグマールの強弁も、村雨は意にかえさない。
かがみとヒナギクも、同様の様子だ。
(その目 信頼を止めぬ瞳……って何、鞄と信頼関係を結んでるんだ!
 人間としてのプライドは無いのか、キサマ等は!!)
心中自分にも良く分からない抗議を上げるジグマールを余所に、零は独歩に触手を伸ばし始めた。
101Classical名無しさん:08/03/19 22:29 ID:xgSzrgqU
             
102Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:29 ID:1pbMAmkA
(どうする? あの鞄の言っていた情報吸引能力とやらは、どうもブラフでは無いらしい……)
ジグマールは考える。
例え鞄の情報吸引が無理でも、今の流れでは自分より独歩の方が確実に信頼される。
そうなればこの場で殺し合いに乗っていると断定されなくても拘束、良くても監視される可能性が高い。
そしていずれ自分の本性を知る者と接触し、殺し合いに乗っていると露見。
勝機の無い状況で殺される。
ならば出来るだけ早く機を見て、この場から逃げるのが最良手。
(そして、おそらくその好機は―――今だ!)
ジグマールは意を決して走り出した。
 
 
 
零の触手が独歩に接触する直前、ジグマールの方から小刻みな足音が聞こえた。
ジグマールは真っ直ぐ、村雨とかがみの乗るクルーザーへ賭けて行く。
村雨はジグマールへ向き直り、マイクロチェーンを放つ。
それが当たる直前、ジグマールの姿が消えた。
次の瞬間には、ジグマールはクルーザー上のかがみの首を羽交い締めにしていた。
村雨が手を伸ばすと今度はかがみごと消え、羽交い締めのまま2m程離れた地点に現れた。
 
「おっと、彼女を危険に晒したくなければおかしな真似はしないで貰おうか」
身構える村雨とヒナギクに、ジグマールは制止を掛ける。
「言い損ねたが、あの野郎は瞬間移動出来るから気を付けろ」
「早く言いなさいよ、そんな事は!!」
苛立ちにヒナギクは声を荒げる。
(完全に隙を衝かれたわ! まさかワープが出来るなんて!!)
「そんな鞄の言う事に命を預けるなど、承服出来ないからね。私はそのバイクを頂いて、お暇させて貰うとしよう。
 キミはバイクから離れて貰おうか」
ジグマールからの要求に、村雨はゆっくりとクルーザーから降りて離れる。
 
103Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:31 ID:1pbMAmkA
 
ジグマールは羽交い締めにしたかがみを、村雨達に向けながらゆっくりとクルーザーに近付く。
村雨とヒナギクと独歩は、ジグマールを睨みながら動きが取れない。
かがみは喉を締められている為、喋る事が出来ず激戦を握り締めてジグマールを睨み上げる。
激戦は本来戦士として恵まれた体格と、鍛えられた体力を持つ戦部厳至が武器として扱い易い様に練成された物だ。
その質量と重量は、かがみにはとても自在に扱える物ではなく
まして今のかがみの様に両手で強く握り、後ろから締め上げる人間を攻撃するなど不可能である。
かがみの耳元で、ジグマールが囁く。
「そう怖い顔で睨むのは止めてくれ、キミに危害を加えるつもりは無いんだからな。
 私が無事逃げ果せれば、キミは解放する」
ジグマール以外の全員が、その言葉を信用出来ずに居る。
事実ジグマール自身も逃げ果せば、かがみを殺害するつもりだ。
人質として利用できるとしても、ジグマールの体力でかがみを長期間連れ歩くのは無理が有る。
かがみは自分の生命の危機に対する自覚が強まり、恐怖に震えた。
ヒナギクは村雨に、話し掛けようと近付く。
「私の目の前でひそひそ話は、しないで貰おう」
それすらもジグマールに制止された。
 
(下手に動く事も出来ないわね。でもこのまま逃がしたら、かがみは殺される……)
最高の集中力で頭脳を回転させ、ヒナギクは打開策を練る。
かがみは激戦を持っている為、一見今の状況ではジグマールに殺されないと思える。
だがジグマールが締め上げている箇所は、かがみの首。
参加者が殺し合いを円滑に進める為に、制約されている様に
支給武器にも、同様の制約が為されていると考えるのが妥当である。
ならば激戦の再生力も、首輪の爆破には及ばないと推測される。
そしてもし制限の内容が、首のダメージ全てに該当するならば
ジグマールに首を捻られれば、かがみは死ぬ。
 
104Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:33 ID:1pbMAmkA
 
かがみを抱えたジグマールは、クルーザーの前まで来ていた。
(考えている時間は無い! 多少は冒険してでも、やるしかないわね)
ヒナギクが出した結論は拙速の近接攻撃で以ってジグマールを打ち、かがみの安全を確保。
瞬間移動は今までのジグマールの動向からいって、距離と回数に限界がある筈。
ヒナギクのバルキリースカートなら、連続して攻撃が可能だ。
かがみを盾にされても、首から下なら激戦で再生される。
(そしてそれをやれるのは、私のバルキリースカートしか無い……)
かがみがボウガンで撃たれて無事なのを見られたら、首を攻撃される危険が有る。
村雨は姉と重ねているかがみを盾にされたら、攻撃が出来ない。
記憶が戻った事でそれが無効になってるかもしれないが、今は確認を取るのは不可能。
激戦を知らないであろう独歩も、当然当てには出来ない。
同時複数の条件を満たすには、ヒナギクのバルキリースカートが最適格。
 
 
 
クルーザーへ向く為、ジグマールが身体を捻った刹那
弾けた様にヒナギクは、ジグマールへ向かう。
ジグマールとヒナギクの視線が交差すると同時に
バルキリースカートの刃が2本、ジグマールへ伸びる。
抱えられたままのかがみの身体が、ジグマールとヒナギクの間に割って入った。
バルキリースカートの刃が伸びる先は、かがみの胸と腹。
問題無い。
自分にそう言い聞かし、更に激戦を強く握り締める。
105Classical名無しさん:08/03/19 22:33 ID:xgSzrgqU
         
106Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:33 ID:1pbMAmkA
その指が両の親指を残して全て、切れ落ちた。
激戦もかがみの手から、零れ落ちる。
それを受け取ったジグマールの手中に有る、ライターの様な物から
血がこびり付いた、糸が垂れているのを見てようやく事態の理解に到る。
(あれで私の指が、切り落とされたんだ……)
他人事の様にそう考えるかがみの胸と腹に、バルキリースカートの刃が突き刺さった。
背後のジグマールからの衝撃波に拠って、更に深く刃が突き刺さり
そこでかがみの意識は途絶えた。
 
 
 
かがみが刺されたと認識した刹那、思考よりも早く村雨は零を置いてジグマールへ向かっていた。
ジグマールは衝撃波を放ち、かがみとヒナギクを村雨に向けて吹き飛ばす。
村雨の動きを見ての反応ではなく、予め計算していた行動だろう。
村雨は自分の身体に急制御を掛け、2人を受け止めた。
素早く視線を巡らし、2人の状態を改める。
ヒナギクは衝撃で意識の混濁が見られるが、大事無い。
かがみは―――――。
『良、敵を逃がすな!!』
零の声がした時には、ジグマールはクルーザーに跨っていた。
クルーザーの運転要領は、一般的なバイクと変わらない。
豊富な人生経験を持つジグマールは、バイクの運転方を知っていた。
ジグマールはクルーザーのエンジンを掛ける。
その胸に独歩が放った、イングラムの銃弾が撃ち込まれる。
そして銃痕は即座に塞がった。
ジグマールは一瞬驚くが、直ぐに納得の要った表情を浮かべ
クルーザーを発進させ、走り去っていった。
 
 
 
107Classical名無しさん:08/03/19 22:35 ID:xgSzrgqU
          
108Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:35 ID:1pbMAmkA
 
(なるほど、負傷を瞬時に再生する能力が付加された武器か……)
手に持った激戦を見て、ジグマールは一人ほくそ笑む。
ジグマールはかがみが激戦を持っていた様子から、違和感を感じ取っていた。
かがみは激戦を両手で強く握り締めていたが、そうしては武器を上手く扱うことは出来ない。
そして激戦の特殊能力で、ジグマールを攻撃する様な様子も見られなかった。
そこからかがみは、武器として激戦を持っているのでは無い事に気付く。
更に激戦は防御か回復等の、付加能力を持った道具だと推測出来た。
ならば敵の攻撃に合わせて、隠し持っていたアラミド繊維内蔵ライターで激戦を奪えば
敵の意表を衝いて、逃げる事も出来る。
(フン、悠久の時を過ごしアルターを強化させてきた私の裏をかくなど1000年は早い!!)
 
不敵に笑うジグマールの表情には、かつて最強のアルター使いを自負していた頃の自信が蘇って来ていた。
ジグマールは思う強力な武器が手に入れ、殺し合いを勝ち抜いて来ている自分は
かつて以上の高みを、臨む事が出来ると。
(まっててねギャラン=ドゥ……ぼくはもう直ぐ……
 今まで以上に大きくなって、キミに会える気がするよ!!)

 ◇  ◆  ◇

朦朧とした意識が、少しずつ鮮明になってきたヒナギクは
未だにはっきりしない記憶を辿り始めた。
(……私、どうしたんだっけ…………)
曖昧な視点は、やがて自分の脚から伸びるバルキリースカートのアームを追う。
(…………そうだ、かがみが捕まえられて……)
バルキリースカートのアームを刃まで目で追う内に、記憶も戻って来る。
(………………助けなきゃって思って……それで…………)
視線が辿り着いた先で、ヒナギクは全てを思い出した。
バルキリースカートの刃は、柊かがみの死体の胸と腹を深くまで貫いていた。
109Classical名無しさん:08/03/19 22:35 ID:xgSzrgqU
             
110Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:36 ID:1pbMAmkA

【柊かがみ@らき☆すた 死亡確認】
【残り人数:18人】
 
【D-2 南部 2日目 深夜】
【愚地独歩@グラップラー刃牙】
[状態]:体にいくつかの銃創、頭部に小程度のダメージ、左肩に大きな裂傷
[装備]:キツめのスーツ、イングラムM10(9ミリパラベラム弾29/32)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:闘うことより他の参加者 (女、子供、弱者) を守ることを優先する
1:ヒナギク、村雨と情報交換する。
2:ジグマールを見付け出し倒す。
3:学校へ行き、アカギと合流。鳴海の事を伝える。
4:ゲームに乗っていない参加者に、勇次郎の事を知らせ、勇次郎はどんな手段をもってでも倒す。
5:その他、アミバ・ラオウ・ジグマール・平次(名前は知らない)、危険/ゲームに乗っていると思われる人物に注意。
6:乗っていない人間に、ケンシロウ及び上記の人間の情報を伝える。
7:可能なら、光成と会って話をしたい。
8:可能ならばエレオノールを説得する。
9:手に入れた首輪は、パピヨンか首輪解析の出来そうな相手に渡す。
[備考]
※パピヨン・勝・こなた・鳴海と情報交換をしました。
※刃牙、光成の変貌に疑問を感じています。
※こなたとおおまかな情報交換をしました。
※独歩の支給品にあった携帯電話からアミバの方に着信履歴が残りました。
111Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:37 ID:1pbMAmkA

【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 顔と手に軽い火傷と軽い裂傷。右頬に赤みあり。
[装備] ボウガン@北斗の拳、バルキリースカート@武装錬金
[道具] 支給品一式。ボウガンの矢18@北斗の拳
[思考・状況]
基本:BADANを倒す。
1:????????????????
2:村雨と共にS8駅で覚悟と合流する。その後、首輪、BADAN、強化外骨格について考察する。
3:ラオウ、斗貴子に復讐する。(但し、仲間との連携を重視)
[備考]
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです
※桂ヒナギクのデイパック(不明支給品1〜3品)は【H-4 林】のどこかに落ちています
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました
※バルキリースカートが扱えるようになりました。しかし精密かつ高速な動きは出来ません。
 空中から地上に叩きつける戦い方をするつもりですが、足にかなりの負担がかかります。
112Classical名無しさん:08/03/19 22:37 ID:xgSzrgqU
              
113Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:37 ID:1pbMAmkA

【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]全身に無数の打撲。
[装備]十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (0/2) 、マイクロチェーン(2/2) 核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金
核鉄(モーターギア)@武装錬金
[道具]地図、時計、コンパス 454カスール カスタムオート(0/7)@HELLSING、13mm爆裂鉄鋼弾(35発)、ニードルナイフ(15本)@北斗の拳 女装服
    音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾、ベレッタM92(弾丸数8/15)
[思考]
基本:BADANを潰す!
1:????????????????
2:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る
3:ヒナギクの安全の確保後、ラオウを倒しに行く。
4:ヒナギクと共にS8駅で覚悟と合流する。
5:ジョセフ、劉鳳に謝罪。場合によっては断罪されても文句はない。
6:パピヨンとの合流。
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です
※参戦時期は原作4巻からです。
※村雨静(幽体)はいません。
※連続でシンクロができない状態です。
※再生時間はいつも(原作4巻)の倍程度時間がかかります。
※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。
※また、零の探知範囲は制限により数百メートルです。
※零はパピヨンを危険人物と認識しました。
※零は解体のため、首輪を解析したいと考えています。
※記憶を取り戻しました
114Classical名無しさん:08/03/19 22:38 ID:xgSzrgqU
      
115Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:39 ID:1pbMAmkA

【二人の備考】
※一通りの情報交換は終えています
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※2人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首2には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている
※2人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論
※BADANに関する情報を得ました。
【BADANに関する考察及び知識】
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって”都合がイイ”状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては”どーでもイイ”状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
116Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:40 ID:1pbMAmkA
※首輪の「ステルス機能」および「制限機能」の麻痺について
かがみがやった手順でやれば、誰でも同じことができます。
ただし、かがみよりも「自己を清める」ことに時間を費やす必要があります。
清め方の程度で、機能の麻痺する時間は増減します。
神社の手水ではなく、他の手段や道具でも同じことが、それ以上のことも可能かもしれません。
※ステルス機能について
漫画版BRで川田が外したような首輪の表面を、承太郎のスタープラチナですら、
解除へのとっかかりが見つからないような表面に 偽装してしまう機能のことです。
ステルス機能によって、首輪の凹凸、ゲームの最中にできた傷などが隠蔽されています。
※S1駅にハヤテのジョセフに対する書置きが残っています。
※強化外骨格「零」(カバン状態)@覚悟のススメはD-2 南部の路上に置いてあります。
 
117Climax Jump ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:41 ID:1pbMAmkA
 
【マーティン・ジグマール@スクライド】
[状態]:全身に負傷中、顎に打撲、HOLY部隊長状態、中度の疲労
[装備]:クルーザー(全体に焦げ有り)、アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙 道化のマスク@からくりサーカス)、 激戦@武装錬金
[道具]:支給品一式 、不明支給品0〜3(未確認)、首輪×2(フェイスレス、シェリス)、首輪探知機@BATTLE ROYALE、光の剣(ただのナイフ)@BATTLE ROYALE、
輸血パック(AB型)@ヘルシング、グリース缶@グラップラー刃牙、イングラムM10の予備マガジン×5、スタングレネード×1、ライドル@仮面ライダーSPIRITS
[思考・状況]
基本:アカギを越える
1:ヒナギク、村雨、独歩から逃げる。
2:優勝を目指す。
[備考]
※エレオノール、アカギと情報交換しました。また、彼女本人の名前を知りました。
※人間ワープにけっこうな制限(半径1〜2mほどしか動けない)が掛かっています。
連続ワープは可能ですが、疲労はどんどんと累乗されていきます。
(例、二連続ワープをすれば四回分の疲労、参連続は九回分の疲労)
※ルイズと吉良吉影、覚悟、DIO、ラオウ、ケンシロウ、キュルケはアルター使いと認識しました。
※DIOの能力は時を止める能力者だと認識しました。
※ギャラン=ドゥはエネルギー不足で外には出てこられなくなりました。
 ですがジグマールは、人間ワープの能力を問題なく使えます。
118 ◆05fuEvC33. :08/03/19 22:43 ID:1pbMAmkA
投下終了しました。
支援ありがとうございます。
問題点があれば指摘お願いします。
119Classical名無しさん:08/03/19 22:46 ID:NxPrADpo
投下乙
こっちのかがみんも恵まれねえええええええ
さらにややこしいことになったなぁ
もしこの後ジョセフがきたらまず真っ先に村雨に向かいそうだ
そしてジグマール、激戦をゲットして一気に強マーダーにおどりでたか
120Classical名無しさん:08/03/19 22:52 ID:xgSzrgqU
投下乙!
ご、誤殺とは……激戦の能力を過信させ、ジグマールの支給品を上手くつかったテクニカルな話がツボでした。
ロワっぽい死に様が増える中、村雨たちはどう思うか……
クライマックスだぜ、な話、GJ!
121Classical名無しさん:08/03/19 23:11 ID:3tpvUYp.
投下乙。
これは……なんという誤殺。
アイテムは所詮アイテムか……さてこれを知ったらジョゼフはどう思うか。
クルーザーも奪われ、さてどうなる? GJ!
122Classical名無しさん:08/03/19 23:26 ID:LzD6M.Y.
投下乙。
かがみいいいいいいいん!!! 何てことだ!
アラミド繊維が役に立つとは思わなかったwジグマール、本当に覚醒してるんだなぁ・・・。
ヒナギクにとっては最悪の事態なわけだが、ヒナギクは折れない・・・と信じたい。
123Classical名無しさん:08/03/19 23:39 ID:Vm9IMTuk
投下おつです。

……かがみぃーっ!
ジグマール、なんてやつだ……。
それよりつかさの姉であるかがみを殺してしまったヒナギクが心配だ。
124Classical名無しさん:08/03/20 00:08 ID:yAOVU97w
投下乙。
支給品がうまく利用されててよかったです。
これでらきすた勢は全滅か。
125Classical名無しさん:08/03/20 02:02 ID:rqwd9sSY
ってかがみが死んだ事でお祓い技能持ちがいなくなったのか…
126ギャルゲロワ地図作成中:08/03/20 02:48 ID:xL9gzIY2
投下乙でした
原作通りアラミド繊維で手ぶった切るとは予想外でした
つかさ死亡からヒナギクマジカワイソス
でもこんな欝展開こそバトロワっぽいです
さてこの悲劇の後どうなってしまうのか楽しみ

追伸 wiki管理人さんへ
ギャルゲロワ2ndの地図とりあえず、ここまで形になりました
ttp://galgerowamap.hp.infoseek.co.jp/

今@Nameと@FullNameの部分をこちらのキャラに書き換え
アイコンを全キャラ(@Nameの名前)+(_d_m_o_u).gifの四種類用意してあるのですが
アイコンの表示の仕方で詰まっています.
「# 各キャラのアイコンを描写する。」のいじり方や
どこのディレクトリにアイコンのデータを置けば良いのかなどを教えて頂けませんか
お借りする身でありながらこの体たらくで申し訳ありません。
127Classical名無しさん:08/03/20 09:06 ID:zQl/2F7Q
かがみーーーーーーーーーんんんんんんんんんんんんんんん
途中まではまた誘拐されてお前はピー○姫かって言おうとしたのに死んだーーーーーー
らき☆すた勢全滅しちゃったよ・・・・・
まあとにかく乙でした。
あと、ジグマールは真っ直ぐ、村雨とかがみの乗るクルーザーへ賭けて行く。
ジグマールは真っ直ぐ、村雨とかがみの乗るクルーザーへ駆けて行く。
だと思います。
128Classical名無しさん:08/03/20 11:57 ID:SSyHZ5cw
某ロワといいこのロワといい不死身キャラが板についてきたかがみんもここで脱落か
ヒナギクが疫病神化してるなあ。独歩と合流できたのはいいけどかがみんしんじゃったし
赤木の言ってた通り半ツキ状態なんだな。これでジョゼフとの対立フラグも立ったし
やはり最後に物を言うのは経験か。さすがはこのロワでも何気に最年長のジグマール隊長
129Classical名無しさん:08/03/20 12:58 ID:4GCaWgsY
まさかこんな形でかがみが死ぬとは…

誰か1人は残ると思ったんだけどなぁ…コレでらきすた勢は全滅か


コレをジョセフが知ったらどうなるか…

対主催の脱落率が多くなる中、コレからどうなるか見物です

本当にGJでした
130Classical名無しさん:08/03/20 15:12 ID:DCHUOCSs
投下乙です
なんという無情…前回といい今回といいらきすたキャラは死ぬときはバッサリいきますな
てかヒナギクが発狂しそうでやべぇ

後私見ですが、羽交い締め状態から激戦を握った両手の指だけを切り落とすのはさすがに無茶ではないかと思います
これがそういうものを扱うようなキャラなら別ですが、流石に素人(ですよね?)のジグマールがそこまでできてしまうのはどうでしょうか?
131Classical名無しさん:08/03/20 15:20 ID:DCHUOCSs
すいません。正直先走りました
↑のはとりあえずスルーしてください
132Classical名無しさん:08/03/20 16:17 ID:nE8LCaME
トキコ死んだ?まだだろうな。
133 ◆d4asqdtPw2 :08/03/20 20:10 ID:oMzX2dxA
申し訳ないです。延長させてください。
134ギャルゲロワ地図作成中:08/03/20 22:46 ID:xL9gzIY2
新しいソースをうpして頂き感謝の極み
おかげでどうにかこうして形になることが出来ました
ttp://galgerowamap.hp.infoseek.co.jp/
これでこちらの現在位置把握が非常に楽になりました
本当にありがとうございます
135 ◆hqLsjDR84w :08/03/20 22:50 ID:GV/zhRkY
>>133
把握です。頑張ってください。
自分も急がねば……



さて、いま自分の予約しているうち、服部と劉鳳についてなのですが。
◆1q氏の「二人の探偵」後編にて、彼等はバイクに二人乗りをして移動を開始しました。
しかし、状態表の備考欄に『バイクは民家に隠してある』という項目が消えていなかったようです。
そのため、◆VA氏の『Shine On You Crazy Diamond』では、服部と劉鳳は徒歩で、ジョセフと三村の方へ向かっています。

そこで『Shine On You Crazy Diamond』にて、服部と劉鳳がバイクに乗っていない理由を、こちらで勝手に補完してしまってもよろしいでしょうか?
136Classical名無しさん:08/03/20 22:52 ID:my24wmqA
>>118
今回投下された氏の「Climax Jump」について、以下の点での修正をお願いします
・ヒナギクが知るはずのない村雨が姉の面影をかがみに重ねているという心理描写の修正
・バイクによる逃走時、銃撃後で発進する前に激戦を核鉄に戻しておく描写の追加
→槍を持ちながらバイクを動かすのは、かなり難しいため
・槍を握っている指に繊維を巻きつけて切る、などの物理的に不可能な部分や、体勢的に極めて高い技量を要する繊維の扱い等のあるジグマールの激戦奪取の過程
→どのような形かはおまかせします。したらば、問題用議論スレにも幾つか修正案があるので、そちらさえよろしければ参考に……
137 ◆05fuEvC33. :08/03/20 23:18 ID:LTovDB3k
>>133
把握しました、頑張って下さい。
>>127>>136
ご指摘ありがとうございます。「Climax Jump」の内容、誤字等を修正したいと思います。
138Classical名無しさん:08/03/20 23:26 ID:oSQNwpyA
>>133 >>135 >>137
がんばってください!
139 ◆1qmjaShGfE :08/03/20 23:45 ID:mKhuUHLk
>>135
すみません! 私が見落としてました! 補完していただけるというのであれば、是非ともお願いしたく
本当申し訳ありませんでした

>>133
物語も後半に入ってきて、様々なフラグが乱立する中書かれるのは大変な苦労だと思いますが、頑張ってくださいっ!

>>137
修正作業は大変でしょうが、応援してます。頑張ってくださいー!
140 ◆hqLsjDR84w :08/03/21 00:22 ID:2xNCw4bw
>>139
いえいえ、お気になさらずに。
了承が得られて、自分も安心しておりますw

>>137
修正頑張ってください。期待してます。

>>138
応援、どうもです。頑張ります。
141Classical名無しさん:08/03/21 05:44 ID:9r4MuhD6
いくら再生されるとはいえヒナギクがかがみを傷つけることをあっさり考えすぎじゃないか?
「どうせ治るから構わないだろう」ってキャラじゃないと思うが
たしかにこの状況なら仕方ないけど、それならもうちょいヒナギクの心理面を描いてほしい
142Classical名無しさん:08/03/21 14:24 ID:jn3ZE4Yo
ちょっと疑問ですが、バルスカで美形の頭を狙うのは不可能なんですか?
脳漿をぶち撒けろぉぉぉぉ!……という感じで
143Classical名無しさん:08/03/21 15:34 ID:EzAp9kjY
つ誤爆スレ
つ議論スレ
144Classical名無しさん:08/03/21 15:48 ID:TD44MAlA
最後の一人が死んでらき☆すた厨必死杉
145Classical名無しさん:08/03/21 16:52 ID:FvdyXdJU
一々煽るなよ
不満が狩る奴も取り合えず修正中なんだからしばし待ちたまえ
146Classical名無しさん:08/03/21 17:52 ID:cner58wA
まあこれで首輪外せるフラグ消滅だしなw
マジでこの後の展開どうすんだとは思う
147Classical名無しさん:08/03/21 18:06 ID:8gBau.zw
詰んではないよ。かがみじゃなくてもお祓いすればステルスは解ける
効果は薄まるかもしれないが、村雨辺りは見てたしパピヨンも情報得てるからなんとかなる
148Classical名無しさん:08/03/21 20:45 ID:WxnKCf0k
しかし、誰でもお祓いできるかと言うと、それは疑問が残るな
穢れを元々持っていた人間もいれば、ロワ内で穢れた人間も多いし。

まあ、これはこれで面白いんじゃないか。
対主催が巻き返せるのか、あるいはこのまま優勝ENDへまっしぐらか。
149Classical名無しさん:08/03/21 22:14 ID:l/q1milE
うーむ、首輪解除技能持ちがフラグを継承することなく死に、主催本拠地突入アイテムといわれていたクルーザーもマーダーに奪われ、
さらに対主催グループ同士の対立フラグまで立ったか

元々マーダー側の戦力が優勢だったというのに、脱出派にはさらに厳しい状況になったな
150Classical名無しさん:08/03/21 23:55 ID:MRc3PXcA
コナンが勇次郎を説得できれば状況はひっくり返るんだが・・・コナンだしな
151Classical名無しさん:08/03/22 00:58 ID:lBZaqQ4E
確かに対主催者側がかなり厳しいな。マーダーは勇次郎、ラオウ、エレオノール、美形、川田と強力な奴らなのに、更に勇次郎とエレオノールは生命の水、美形は激戦と再生レベルの回復能力
持ちだからな。首輪解除の可能性があるかがみまで死に(まあ村雨も見てたから可能性はあるが記憶が戻る直前の混乱状態だから不安が残る)ちとこっから対主催者側が持ち直すのはある程
度強引になってしまう気がする。
まあそこら辺は作者さんの力量になるし、絶対対主催者側が勝たなきゃならんわけでもないから仕方ないんだが、一気に選択肢が減って残念ではあるな。
152Classical名無しさん:08/03/22 01:02 ID:/WU0zgKQ
オレがやってやんよッ!!
153Classical名無しさん:08/03/22 01:06 ID:DMdY10Uc
まだ15人以上残ってるのに、このまま行けば来週中にもルートが固定されそうだな
154Classical名無しさん:08/03/22 01:22 ID:mxwzE0dQ
>>152
頑張ってくれ。期待してる
155Classical名無しさん:08/03/22 03:14 ID:qY2yPvJo
すべてはバーローにかかってるわけだな。
ここらで主人公らしいとこを見せて欲しいものだ
156 ◆hqLsjDR84w :08/03/22 04:29 ID:.MfKreOI
予約期限まであと暫くあるのですが、今日明日に外せない予定が入ってしまい、本日九時くらいからPCを触ることが出来ません。
おそらくあと五時間弱では書き終わらないので、予約期間を延長させてください。
157Classical名無しさん:08/03/22 13:01 ID:B.1Z8aqo
人間ワープにクルーザーといった殴りこみに必要だと言われてきたものが一か所に集まったなあ
本当にジグマールととギャランドゥの友情エンドになるかもなw
158Classical名無しさん:08/03/22 13:28 ID:0Lg99yjI
問題は、シグマールには首輪解除の術がなさそうなことだw
159Classical名無しさん:08/03/22 16:17 ID:VuHkJRx6
>>156
把握しました。
難しいパートだと思いますが、頑張ってください。
160Classical名無しさん:08/03/22 19:10 ID:/7Hc6G.E
マーダー同士の争いに希望を持ってるのはオレだけか…?
161Classical名無しさん:08/03/22 19:48 ID:AddLV7l6
各マーダーの距離が大分離れてるし、大抵がマーダーと遭遇する前に対主催と遭遇する配置だ
修正中だが、今回の話でクルーザー奪ったジグマールが可能性ありそうだが、どうだろうね
162 ◆05fuEvC33. :08/03/23 11:52 ID:JViic07A
『Climax Jump』の修正版を、一時投下スレに投下しました。
問題点が有れば、指摘お願いします。
163Classical名無しさん:08/03/23 12:07 ID:HBjM3kgo
修正乙です
164Classical名無しさん:08/03/23 13:18 ID:SkfmCgOo
乙です
165 ◆14m5Do64HQ :08/03/23 15:45 ID:pnKGyQxU
>>162
修正作業乙です。

それと自分の予約なのですが期限通りに完成させる事が出来ません。
申し訳ありませんが予約期間の延長を申請します。
166 ◆d4asqdtPw2 :08/03/23 22:25 ID:kIjwlzW6
>>162
乙です。
>>165
難しそうなパートですが、頑張ってください。

……間に合ったw
それでは、投下します。
167Classical名無しさん:08/03/23 22:25 ID:9oylakRs
支援
(今は、逃げなくては……)
暗闇の中を走る。
今自分がどこにいるのか、どこに向かって走っているのかも分からない。
ただ、自分を中心として球形に広がる漆黒からは、絶え間なく恐怖が供給されていた。

ケンシロウという男がいるのだ。
エレオノールを追ってきているだろう男だ。
彼は、エレオノールに対する強い怒りを胸に、暗闇を走っていることだろう。
もし、あの男に捕まったら、勝ち目はない。
抵抗する機会も与えられぬまま、あの男に嬲り殺されるだけ。
そうなれば、今までの苦労が、何十年にも渡る苦労の日々が無駄になってしまう。
人間になるために今まで苦しんできた事が、全て……。
だから……今は逃げなくては。
逃げて、また再び戦わなくては。
この世界を血で染め上げるために。
カトウナルミを笑わせるために。
また、戦わなくては……。
だから、逃げなくては……。

しかし、いつまで逃げればいいのだろうか。
スタミナも走る速度も、ケンシロウはエレオノールを遥かに凌駕している。
いつまで走れば逃げ切れるのか。
もう撒いたのだろうか。
もしかしたら、この暗闇のすぐ向こうまで迫ってきているのではないだろうか。
いつまで走ればいいのか分からない。
どちらへ向かえばいいのか、分からない。
ゴールが見えない恐怖は、まるでエレオノールの歴史を反映しているようだ。

どれだけ頑張れば人間になれるのか。
どう頑張れば人間になれるのか。
全く分からないまま、ずっと『人間』を求め続けた。
『才賀勝を守れ』という言葉にすがり付いて、今までの長い時間を過ごしてきた。
169Classical名無しさん:08/03/23 22:28 ID:52h.tUSo
支援
いつまで守れば、どうやって守ればいいのか分からない。
それ以前に、いつ『才賀勝』が私の前に現れるのかも分からない。
怖かった。
不確かな言葉にしか、すがりつけない事が怖かった。
それでもその言葉に操られるまま、生きなくてはならなかった。
私は、人形なのだから。

だから、この殺し合いの褒美を知ったときは、『それしかない』とさえ思った。
褒美が明らかにされたタイミングの不自然さや、今までの主催者の理不尽さも考えずに。
簡単にその言葉にすがりついた。
その言葉に操られるがままに動かされた。
仕方ない。
私は人形なのだから。
拠り所を探し、操り糸に縛られていないと動けない、哀れな人形なのだから。

そして、今私はフランシーヌとして、殺戮を行っている。
『殺戮』という演目で、カトウナルミを笑わせようとしている。
ギィ先生が教えてくださった。
そうすれば人間になれる、と。
もう私にはそれしかないのだ……。
才賀勝も断ち切った。
優勝の褒美も嘘だと分かった。
私にはこの方法しか残されてはいない。
この方法にすがりつくしかない……。
だから、カトウナルミが本当に死んでしまったとしたら、私は、私は……。

「……クソッ!」
加藤鳴海のことに思考が及ぶと、途端に足が重くなった。
両の足が、走りたくないと、もう止まっていたいと叫びだすのだ。
駄目だ。今は逃げないといけない。
……加藤鳴海のことは一旦忘れよう。
どれだけ悩んだって、彼の生死は、放送があるまで分からないのだ。
171Classical名無しさん:08/03/23 22:29 ID:PtLYcUGQ
それまでは必死に生きなければ。
彼が生きている限り、人間になる可能性が残されている限り、まだ死ぬわけにはいかないのだから。
それまでは、それまでは……。

加藤鳴海を脳の最奥地へと閉じ込めると、相変わらず走る気のない両足を奮い立たせて闇夜を進みだした。
しかし、依然として闇は彼女を包み込み、ネチネチと恐怖を与え続ける。
五感を研ぎ澄ませば、雨で湿ったアスファルトの臭いがする。月夜に淡く照らされた町並みが見える。
それらさえも、暗闇と協力して彼女に恐怖を与え続けた。
いつまで走っても同じアスファルトの大地。
明かりのない町並みは、どれも同じものに見える。
今、自分はどこにいるのだろう。
この地図のどこにいるのだろうか。
それすらも分からなくなっていた。

だから、地図に示された建物を見つけたときは安心した。
ここには一度、来たことがある。
マップ中央にそびえ立つ消防署。
彼女はここで夢を見た。
ギィが自分に道を示してくれた夢を。
その夢の中で、ギィは『自分の命をかける舞台』を探せと言った。
その言葉の導くままに、彼女は殺戮という演目を演じてきた。
今、彼女は再びここに降り立つ。
彼女の舞台の始まりの地へ、舞い戻ってきた。

そう、ここは『始まり』の場所。

そして『終わり』の場所。

彼女が消防署の前に立つと、ガラスの扉が静かにスライドした。
ウィン、と電子音。
扉が開ききる前に、消防署内部へと足と踏み入れた。
それは『終わり』の始まり。
173Classical名無しさん:08/03/23 22:30 ID:52h.tUSo
 
174Classical名無しさん:08/03/23 22:30 ID:PtLYcUGQ
彼女の舞台の最終章が開始した合図。

カーテンコールは、もうしばらくお待ちを。
今はただ、彼女の無様なダンスをご堪能ください。

カーテンコールは、もうしばらく……。


◆     ◆     ◆


……空気が流れる。
殺意に満ちたこの空間にも、平和な大地と同じような空気が流れる。
規律を守って、ゆっくりと空間を漂う。
そこに異物が走り抜ければ、空気の流れは容易にかき乱される。
それは一瞬であるが、真っ黒なコーヒーに純白のミルクを垂らしたかのように、はっきりと感じ取れる。
エレオノールは、東に向かった。
視力を失ったことが、ケンシロウにとって大きなアドバンテージとして働いた。
失った視覚を補うために、他の感覚が本来以上に研ぎ澄まされていたのだ。
それでなくとも、荒廃した世界で戦い続けた肉体の感覚は、常人のソレを遥かに凌駕する。
皮膚感覚や聴力を初めとした彼の感覚は、もはやレーダーと呼べる次元まで高まっていた。

そしてこの暗闇。
逃げるエレオノールは、この漆黒を克服するのに悪戦苦闘していることだろう。
自分は全く支障はない。理由は言わずもがな。
既に目を駆使することを捨てた事が、この暗闇を見方につけた。
エレオノールとの距離は徐々に縮まってきている。
このまま行けば、放送前には確実に彼女に追いつける。
追いついて……。

追いついて、殺害できる。
176Classical名無しさん:08/03/23 22:31 ID:H0pzBG1Y
177Classical名無しさん:08/03/23 22:32 ID:rhJo/aZI

178Classical名無しさん:08/03/23 22:32 ID:PtLYcUGQ

「……ふぅ」
雨に濡れたアスファルトを踏みつけると、キュゥ、と心地よい音がした。
それに呼応するかの如く、ケンシロウの呼吸器官も溜め息を奏でる。
見事な不協和音だ。

……そうだ、あの女は殺さなくては駄目だ。
救いようがない外道なのだ。
あの女はしてはならないことをした。
キュルケは優しく、気高い女性であった。
ナギは幼いながらも、最後までエレオノールを救うために戦った。
あの女は彼女たちを切り裂いた。
それは決して許されない。
あの女は自分のいた世界の無法者どもと同じだ。
だから、奴等と同じように、殺さなくては……。
もう、キュルケやナギのような犠牲者は出すわけにはいかない。

「……止まったか」
前方を逃げていたエレオノールが、その動きを止めたのを確かに感じた。
あれは、消防署だったか……。
他の建造物よりも数段大きめに造られた建物があるのが分かる。
定かではないが、前に見た地図の記憶と照らし合わせると、あれは消防署らしい。
あの女はここに入った。
なぜここを選んだ?
恐らく、あの女はここに来たことがあるからだ。
建物内で戦う上で、その建物の内部構造を知っているか否か、は大きい。
奇襲や退路の確保などには特に大きな影響を及ぼす。
そして、あの女はそのどちらかを選択するつもりだろう。
もともと、自分と正面から戦うなどとは考えてはいないはず。
キュルケを騙まし討ちして、逃走したことが裏付けている。
あの女は……殺しを楽しんでいる。
自分の安全は確保しつつ、弱いものを殺す快楽殺人者だ。
それならば……。

「エレオノール! 聞こえるな?!」
消防署内部に響き渡るように大声で呼びかけた。
ありったけの殺気を撒き散らして。
「今から貴様を見つけて殺す! 逃がしはしない!」
ここがあの女の領域ならば……。
それならば、巣穴から引きずり出す。
ここまで追いつかれたのだ。
今更ここから逃げることなど出来ないのは分かっているはず。
この殺気で焦って飛び出してくる可能性は大きい。
そこで命乞いをするか、戦うか……。
どちらにしても、許すつもりなどない!

それからどのくらい沈黙の時間が流れただろうか。
集中しているケンシロウにとってはかなりの時間が流れたように思えたかもしれない。
だが、正確には3分も経過してはいない。
エレオノールの決断は早かった。
元より部屋の隅でガタガタ震えて、命乞いをするつもりなど毛頭無い。
もう逃げ切れないと分かった以上……。

彼女の決断は、戦闘だった。

ケンシロウの遥か頭上で窓ガラスが砕け散った。


ガシャンと心地よい破壊音。
それと共に無数のガラス片がケンシロウ目がけて落ちていく。
その中に人影が感じ取れる。
間違いなくエレオノール。
こちらに向かって落下してくるつもりか。
ならば迎撃するのみ!
181Classical名無しさん:08/03/23 22:33 ID:PtLYcUGQ
182Classical名無しさん:08/03/23 22:33 ID:rhJo/aZI

空中で身動きが取れないエレオノールを迎撃するなど容易い事。
このガラス片で怯むとでも思ったのだろうか。
甘い。
命を賭けた戦いにおいて、ガラス片など雨粒のようなもの。
皮膚が切れたとて、負傷のうちには入らない。
意に介さずにエレオノールに狙いを定める。
拳を握り締め。腕を振りかぶる。
大きく息を吐き出すと、自分の肺が萎んでいくのが分かった。
エレオノールに顔を向けることなく狙いを定める。
視力を失ったことで、対象を目で確認するという作業を省略できた。
上腕に、肩に力を込め、さらに足で大地を蹴る準備。

エレオノールは、重力に従って下方向に等加速。
それ以外の移動は不可能。
ケンシロウへと吸いこまれるように落ちるだけ。

外さない。
外すわけが無い!

「ほぁたぁ!」
咆哮と共に大地を蹴る。
舗装されたアスファルトにヒビが入った。
メロンの皮のような亀裂がアスファルトを舞い踊る。
反作用によりケンシロウにも上空の方向に力がかかる。
その力を腰、肩、腕と無駄のないように伝え、拳に乗せて天に放った。
高く振り上げた拳が空を裂き、その衝撃波が降り注ぐガラス片をさらに細かく砕いていく。
全力の一撃、当たればそれで勝負は決する。
この勝負、一瞬でケリがつきそうだ、とケンシロウは思っていた。

エレオノールが重力に逆らって、その自然落下を止めるまでは。

「なに?」
ケンシロウの必殺の拳は空を切り、細かく砕かれたガラス片が衝撃波に煽られて雪のように舞い上がった。
エレオノールが落下を止めて、空中に静止した。
まるで、糸に吊るされたあやつり人形のように。
いや、それは比喩なんかではなく、確かに繰り人形だった。
窓を破壊して飛び出してきたのはエレオノールではなく、彼女の操るあるるかん。
あるるかんは繰り糸にぶら下がることで重力を克服していた。
それを確認するまでにケンシロウが要した時間は約0.5秒。
すぐに本体の居場所を探す。
空気の流れを見て気配を探る。
どこかに……どこかに必ず。

「上か!」
あるるかんが破った窓よりやや高い位置にもう1つの気配。
上空からの奇襲をフェイクに使い、さらに上からの奇襲というわけか。
あるるかんを確認してから1秒程しか経っていない。
常人ならば反応できないだろうが……。
この男は常人ではない。
ケンシロウである。
1秒は彼にとって長すぎた。
迎撃準備を整える。約0.5秒経過。迎撃準備完了。
あとは落下を待つのみ……。

「……! またか!」
上空から落ちてくるソレはエレオノールではなかった。
再びのフェイク。
それは先ほどの繰り人形とは違い、人間とは似ても似つかないモノだ。
おそらく一瞬だけ注意を逸らせればそれで良かったのだろう。
全てはケンシロウの注意を上空に縛り付けるため。

相手の狙いに気付いて、急いで意識を地上へ戻す。
だが、既に背後から鎖鎌の刃が迫ってきていた。
「……っく」
185Classical名無しさん:08/03/23 22:36 ID:3BO27Yx2
186Classical名無しさん:08/03/23 22:36 ID:PtLYcUGQ
身を翻して刃を避けようとするが、一瞬遅い。
迫り来る刃を避けきれない。
仕方なく、両腕を体の前でクロスする。
ザクリという音が聞こえた。
鮮血が噴出す。
腕を深く切りつけられてしまった。
その数秒後に、空から自転車が落ちてきた。


「……クソ! 浅いか!」
ジャラジャラと鎖を手繰り寄せながら、エレオノールが吐き捨てた。

数分前のこと、エレオノールが消防署内に身を潜めていると、突如ケンシロウの声が響き渡った。
この暗闇の中、ここまでエレオノールを見失うことなく追ってきた、というわけか。
だとしたら、もうここから逃げることは不可能。
戦うしかない。
ケンシロウと、戦うしかない。
しかし、あのケンシロウ相手では勝機は薄い。
あるとすれば、確実に初撃を決めるしかない。
できれば一撃で殺す。
無理でも傷は負わせる。
相手がこちらの出方を伺って、受身になっている今なら。
今なら奇襲で一撃与えることも不可能ではない。

そのために必要なのは、相手の注意を逸らすこと。
相手の意識の外から攻撃すること。
まずはあるるかんをフェイクとして使うことにした。
最も使い慣れている『懸糸傀儡』を捨て駒にするのは不安だったが、どうせあるるかんは奇襲には使えない。
大きすぎるため、接近している間に悟られてしまう。
だが裏を返せば、その人間に近い身なりは、『悟らせる』にはこの上ない道具である。
この緊迫した状況で、空から人間のようなものが迫ってくれば、対処せざるを得まい。
と言うか、対処しなかったらあるるかんに切りつけられて終わりである。
188Classical名無しさん:08/03/23 22:37 ID:3BO27Yx2
189Classical名無しさん:08/03/23 22:38 ID:PtLYcUGQ
ケンシロウなら絶対に気付く。
それが人間でないと気付くか否かは別にして、『人間のような何か』が迫っている事には気付く。
それで十分。
後は、あるるかんを拳が届かないだろう高さで停止させ、後ろから鎖鎌で切りつける。
保険として、消防署内で手に入れた自転車も空に放り投げておく。
流石に人間だと誤認させるのは厳しいが、一瞬だけ意識を空に留めておくくらいの効果はあるはず……。

ここまで周到な用意をしておいた上での一撃。

外さない。
外すわけがない。

鎌を振るうその瞬間も、そう信じて疑わなかった。
刃が放たれたその瞬間も、ケンシロウの意識は上空。
鎖鎌の軌道は……。
完璧だ。寸分の狂いもない。
ケンシロウへと吸い込まれるように、一直線。
まるで千の夜を越えて再開した恋人達のように、惹かれ合い、引かれ合う。
このまま行けば当たることは間違いない。

私の勝ちだ。
これでまた、この大地を紅く染め上げることができた。
それも、極上の血だ。
これでまた、人間に一歩近づいた……。
これで、鳴海が笑ってくれるんだ。
こんなに嬉しいことはない。
だが……まだ油断は禁物だ。
当たるその瞬間まで気配を殺せ、殺意を気取られるな。
まだだ……まだ笑うな……。

ケンシロウが罠に気付いたのは、刃がすぐそこまで迫ってからの事だった。
あまりにも遅い。
191Classical名無しさん:08/03/23 22:39 ID:3BO27Yx2
いや、当たる前に気付いただけでも上出来か。
気付かないまま死んでいた方が、幸せだっただろうに。
「さようなら、ケンシロウ」
これで、人間にまた一歩……。

理由? そんなもの決まっている。
奴が、ケンシロウが私の予想を遥かに凌駕していたからだ。
私は、ケンシロウという男を侮っていたのだろう。
ケンシロウの何を侮っていたのか?
奴の状況判断能力、身体能力、防御力……。
それはもう、数え切れないほど。
だが、仕方がない。
あの状況で、死なない事ができる人間なんて見た事がない。
まさか、一瞬のうちに反転して、更に防御姿勢まで取る事ができる人間がいるなんて……。
誰も思わない。

奴を殺す最大のチャンスが……。
生き残る最大のチャンスが……。
失敗に終わった。
そして、目の前にいるのは私の予想を遥かに超えた化物。
そう、化物だ。

「どうした? それで終わりか?」
化物が歩いてくる。
両腕から濁った紅を垂れ流してはいるが、戦闘に支障はないようだ。
勝てない。
絶対に勝てない。

「……クソ……」
逃げるしかないか?
では、逃げ切れるのか?
無理に決まっているだろう。
193Classical名無しさん:08/03/23 22:40 ID:3BO27Yx2
194Classical名無しさん:08/03/23 22:40 ID:3BO27Yx2
195Classical名無しさん:08/03/23 22:40 ID:PtLYcUGQ
「…………」
では、諦めるしかないな。
道は閉ざされた。
目の前の扉は、何があっても開かない。
諦めるよりほかない。

(諦める……?)

命を、未来を、人間を。

諦める……。

「終わりだ、貴様は毛も一本も……」
確かにこの扉は開かない。
鍵など無いし、開く機能すら備わっていないかもしれない。
それでも……。
「死ぬ……わけには……」
それでも私は……。

「……どうした? まだ……」
「ここで死ぬわけにはいかんのだ!!!」
それでも私は、この生き方しか知らないのだ。
人間になるために進むしかないのだ。
扉が開かないなら破壊する!
それも駄目なら……よじ登る!

「ナルミが死ぬ、その時まで!」
指にはまっている2本の繰り糸を引く。
あるるかんは、自らがぶら下がっていた木の枝を破壊し、エレオノールの元まで戻ってきた。
残りの繰り糸を指にはめると、人形はまるで生命が宿ったように踊りだした。

運命の放送まで、もう間もなく。
197Classical名無しさん:08/03/23 22:41 ID:PtLYcUGQ
198Classical名無しさん:08/03/23 22:43 ID:rhJo/aZI

199Classical名無しさん:08/03/23 22:43 ID:3BO27Yx2
閉ざされた扉に、歪みが生じた、気がした。


(……おかしい……)
ケンシロウが感じた違和感は小さなものだった。
エレオノールが立ち向かってくるとは思わなかった。
命乞いをするか、抵抗せずに殺されるかだと思っていた。
しかもこれは、ヤケになっているわけではない。
最後まで、戦い抜くつもりだ。
ケンシロウが見てきた悪党どもとは何かが違う。
快楽殺人者とは何か違う。

「武装錬金」
エレオノールの掛け声と共に、エンゼル御前が展開される。
矢を放ちながらのバックステップでケンシロウから距離を取った。
「……もうやめようぜ?」
「そうはいかんのだ。あなたは黙って私に使われていろ」
逃げるでもなく一定の距離を取って矢を放ち続ける。
ケンシロウが距離を詰めれば、後退する。
それでも接近すれば人形で切りつける。
その戦闘スタイルは逃げ腰に見えるが、その目の闘志は燃え尽きる事は無い。
彼女は、倒すために戦っている。

エレオノールのその姿に、『義星』のレイが重なった。
ラオウに挑んだ、レイの姿が。
なぜ、あの気高き男とこの外道が重なるのか。
小さな、小さな違和感だった。
それが少しずつだが、確実に膨らんでいく。
違和感はケンシロウの行動を1テンポづつ遅らせる。

「……!」
思考の隙を突いた矢の大群がケンシロウに襲い掛かる。
201Classical名無しさん:08/03/23 22:45 ID:3BO27Yx2
202Classical名無しさん:08/03/23 22:45 ID:PtLYcUGQ
たまらず横に跳び、地面を転がって矢をかわした。
しかしそれは絶対の隙を作ることとなってしまう。
「貰った!」
激しい回転と共に、あるるかんがケンシロウを捉えた。
虎乱と呼ばれる突進技。あるるかんの全身を凶器と変え、迎撃しようのない一撃を食らわせる。

(まだ……遅い!)
ケンシロウがヒュウ、息を吐き出し、その身を這い蹲らせた。
獲物に飛び掛る虎のような姿勢で、身を低く屈めながらの突進。
人間が動けるはずのない姿勢だが、そのスピードは人間の全力疾走以上。
あるるかんの脇を潜り抜け、エレオノールに迫る。

「死ぬのは、貴様だ」
背中に力を込め、上体を起こす。
突進はやめない。絶対の一撃をかわされて呆気に取られるエレオノールに肉薄する。
拳を振りかぶる。これで終わりだ。
これで、この外道を殺し、少女達の無念を晴らす。
弾丸のようなスピードで、ブルドーザーのような巨体が迫る。
「まだだ!」
それでも……エレオノールは諦めない。

(こいつは……違うのか?)
ケンシロウのいたのは、核戦争で荒れた世界。
その世界の小悪党たちは皆同じような思考回路だ。
戦い方や、殺し方の嗜好の違いはあるが、蓋を開けてみれば同じような者たちだ。
弱きものを嬲り殺し、強きものに媚びへつらう。
この女もそうだと思っていた。
だが、こいつは違う。
冷酷だが、無慈悲だが……苦しんでいる。
生きる事に苦しんでいる。
それでも生に執着している。
(駄目だ、考えるな)
204Classical名無しさん:08/03/23 22:45 ID:3BO27Yx2
油の切れた機械のように、動きが鈍くなった。
だが、思考をやめるなとケンシロウの脳が訴える。
そのまま、彼女の戦う理由も知らぬまま殺すなと訴える。

「私は……人間になるんだッ!」
今から人形を手元へ呼び寄せることは無理と判断し、エレオノールは防御行動を開始する。
腕を勢いよく右下へ振り払い、指から伸びる糸をカーテンのようにケンシロウと自分の間に張り巡らせた。
揺れる糸を足で踏みつけると、繰り糸は盾となり、ケンシロウの拳を受け止める。
糸はギチギチと目一杯に伸びきり、エレオノールが踏みつけているのとは逆の端、つまり人形をケンシロウの方まで引っ張る力を生み出した。
(俺の力を利用して、人形を……)
エレオノールの手元まで舞い戻った人形を確認して、ケンシロウが追撃を諦めて後ろへと下がる。
「今だ! 撃て!」
「ゴメンよ……」
エレオノールの叫びとともに、申し訳なさそうにションボリする人形から無数の矢が放たれる。
まだ地面へと着地していないケンシロウに矢が流星群のように襲い掛かる。
「やったか?!」

「お前は……」
だが、そこにいたのは、矢を全て叩き落したケンシロウだった。
「お前は、なぜ人を殺す?」
ついに、疑問を口にした。
答えが出ないまま、エレオノールを殺すのは無理だ。
自分は殺すために戦っているのではないから。
それでは、あの悪党どもと何も変わらない。
苦しむ人間がいたら、救ってやらねばなるまい。
たとえそれが、少女達を殺した張本人でさえも。
キュルケだってそう望んでいるはずだ。
ナギはそのために命を賭したのだ。
彼女達の思いは出来る限り繋いでいく。
そのために、この拳がある。
そのために、この拳は万物を砕くのだ。
206Classical名無しさん:08/03/23 22:46 ID:PtLYcUGQ
207Classical名無しさん:08/03/23 22:46 ID:3BO27Yx2
208Classical名無しさん:08/03/23 22:46 ID:PtLYcUGQ

消防署前で始まったはずの戦闘だが、2人は既にその右斜め上のエリアにある、池の公園まで来ていた。

「まさか無傷とはな」
エレオノールはデイパックからタオルを取り出し、汗を拭う。
消防車の中から拝借したものだ。
デイパックの中に戻すのも面倒なので、首にかけておいた。

「答えてもらおうか。『人間になる』とはどういことだ?」
「そのままの意味だ」
戦いを中断しているものの、2人の間には張り詰めた空気が流れている。
特にエレオノールは、会話をしている間にケンシロウに隙が生まれないかを探っているようだ。

「そのままの意味だと? ……貴様は人間ではないのか?」
「私が人間? 本当にそう思うか?」
エレオノールが口にしたその質問は、なんとも馬鹿馬鹿しい質問であるように聞こえるが、その口調は決して相手を馬鹿にしたようなものではなかった。
この容姿が人間のそれであることはエレオノール自身も分かっている。
周りの人間が自分を人間として見ている事も分かっている。
しかしエレオノールは人間ではないのだ。
ケンシロウなら、外見ではなくその真実を見通す事が出来ると思っていた。

「私は人形。哀れな人形だ」
だが、そのケンシロウでさえも彼女の真実を見通す事などできなかった。
この苦しみを誰も理解してはくれない。
結局のところ、彼女は一人でもがく以外に道などはなかったのだ。

「それで、人を殺せば人間になれるとでも?」
それは、ケンシロウの世界が核戦争になる前の事だ。
意思を持った人形が動き出すという怪談を聞いた事がある。
人から人へ伝えられるたびに尾鰭がついたその話は、地方によって詳細が大きく異なる。
ケンシロウが聞いた話では、その人形たちは人間に憧れるあまり、人間になろうとするらしい。
そして、人間を殺し、その皮を剥いで、肉をそぎ落として、我が物とするとか。
210Classical名無しさん:08/03/23 22:47 ID:PtLYcUGQ
しかし、それではキュルケの死体を放置した事が不可解だ。
それに、目の前の女の体は紛れも無く人間のもの。
彼女の説明は、いまいち要領を得ない。

「人形が人間になるためには、誰かを笑わせないといけないらしい。
 だから私は決めた、カトウナルミという男を笑わせてやろうと」
「人を殺せばその男が笑うのか? カトウという男にそう命令されたのか?」
一番自然な答えは、彼女がカトウナルミに洗脳されているという事だ。
カトウが彼女を人形だと教え、人間になりたければ人を殺せと命令する。
結果、自分は何もしなくてもエレオノールが敵を減らす。
そう考えると彼女の行動や、不可解な言動、全てに説明がつくが……。

「ナルミンはそんな事しねぇー!」
エレオノールの周りを飛び回っていたエンゼル御前が反論した。
こなたと一緒に行動していたエンゼル御前は、加藤鳴海の行動を粗方把握していたし、彼の人間性もよく知っている。
「あぁ、命令されたわけではない。私が彼を選んだ。
 そして人を笑わせるための最適の演目は、虐殺だ」
言い終ると、再び構えを取る。
冷たい殺気がケンシロウに向かう。

「そんな事をしてまで人間になりたいのか?」
対するケンシロウは未だ迎撃をする素振りを見せない。
仁王立ちで、ただただ疑問を投げつけるだけ。

「お前に何が分かる!」
叫びながら、セント・ジョージの剣を振り落とした。
怒りに任せた一撃。
そんなものがケンシロウに当たるはずも無く、ケンシロウが右に跳んだだけで刃は地面へと突き刺さる。

「生まれながらにして、人形の体を与えられ!」
鎖鎌で横薙ぎ。
だが、届かない。
ケンシロウは一歩も動くことは無かった。
ジャラリと伸びきった鎖が、死んだ蛇のように地面に落ちていった。

「『才賀勝を守れば人間になれる』と言われて育てられた!」
手を振りかざすと、エンゼル御前から矢が放たれる。
エンゼル御前も、何も言わずにエレオノールを眺めていた。
矢を放つ事に文句の1つも言わなかった。
放たれた矢がケンシロウに当たらないことを知っているからだろう。
事実、走るケンシロウを矢が捉える事はただの一度もなかった。

「そしてこの殺し合いで、主催者に願いが叶うと騙された」
攻撃手段を失って、その場に項垂れる。
この戦いが始まって初めて、完全に無防備な状態を晒す事となった。
だが、ケンシロウは動かない。
離れた場所で、項垂れる彼女をただ見つめていた。

「もう才賀勝は死んだ。主催者も信用できない。
 私に残されてるのはカトウナルミだけなんだ!」
「でも……ナルミンは死んだんだよぉ。DIOってやつを倒してさ」

「…………そんなことは分かっているさ……」
搾り出すような声だった。
掠れた声で、カトウナルミの死を肯定した。

「ナギと言う少女は、嘘をついている気配は無かった」
「なら、なんでまだ戦うんだよー!」
本当は、ナギに告げられた時から、鳴海は死んだと分かっていた。
自分はもうと人間になれないと、分かっていた。
分かっていたけど、信じたくなかった。

「それでも、私はそのためにずっと……。
 そのために90年も生きてきたんだ!」
213Classical名無しさん:08/03/23 22:50 ID:PtLYcUGQ
つぅ……と流れた水は頬を伝って、雨に濡れた大地をもう一度、少しだけ湿らせた。
涙を流して、震える姿は、ただの少女のようにしか見えなかった。

「放送までは、放送でナルミの名が告げられるその時までは!
 私は止まるわけにはいかないんだ!」
なぜ、雨が止んでしまったのだろうか。
雨が降っていたなら、この涙を誤魔化すことができたのに。

「お前……」
エンゼル御前の正式な持ち主は、早坂桜花という人物だった。
エンゼル御前の精神は、彼女を元にして創られていた。
だから分かる。
エレオノールは桜花に似ている。
早坂桜花も、自分の生命を否定されていた。
実の親に否定された。
それでも生きてこられたのは弟がいたからだ。
だけど、エレオノールには何もない。
彼女はたった1人で否定される日々と戦ってきたのだ。
たった、1人で……。


「ケンシロウ」
それでも、顔を上げなければなるまい。
前を見据えなければなるまい。
「私はこの生き方しか知らないんだ。放送までは、あなたを殺す事を諦めない!」
目線の先にいる男、ケンシロウ。
エレオノールに立ちはだかった鋼鉄の扉。
215Classical名無しさん:08/03/23 22:51 ID:3BO27Yx2
216Classical名無しさん:08/03/23 22:52 ID:PtLYcUGQ

破壊できるだろうか。

無理だろうな。

それでも、壊さなければ。

たとえ扉の向こうに、道が無くても。

私はその生き方しか知らないのだから。


「……分かった」
やはり、目の前の少女は苦しんでいた。
自分の生命を否定され続けてきた。
自己の証明の為に走り続けてきた。

ただ、それだけのために。

だが、自分は彼女を殺さなくてはならない。

そうすることでしか、彼女は救えないから、

「貴様は……お前は、俺が殺してやる」
だからケンシロウは初めて、泣き叫ぶ少女をこの手で殺す。

それは正しい事なのだろうか。
この拳はそのためにあるのだろうか。
答えは、見つからなかった。
218Classical名無しさん:08/03/23 22:52 ID:3BO27Yx2

「それじゃあ、行こうぜ。エレノン!」
エレオノールの肩に、エンゼル御前がちょこんと止まる。
それは彼なりの協力の合図だったのだろう。

「あなたは……」
「人形同士、仲良くやろうぜ!」
もともと、持ち主の意のままに動かざるを得ないのだが。
それでも、彼女は嬉しかった。

「すまない、ありがとう」
その言葉の相手は、エンゼル御前かケンシロウか。
あるいはその両方……。

そのお礼の言葉を合図に、3人、いや、1人と2体は走り出す。お互いの命を狙って。

涙が、止まらなかった。


「あたぁ!」
ケンシロウの蹴りがエレオノールに伸びる。
直撃すれば、骨を数本持っていかれるほどの威力。
だが、冷静になれば対処できない攻撃ではない。
高い攻撃力に惑わされるな。
あくまで攻撃は直線。
当たらなければどうってことはない!
横に身を捩って攻撃をかわす。
ケンシロウの足は空を切り、エレオノールに背を向けた状態で静止する事になる。
その隙を突いて反撃に出る。

「あるるかぁん!」
叫びと共に繰り糸を引いた。
220Classical名無しさん:08/03/23 22:54 ID:3BO27Yx2
221Classical名無しさん:08/03/23 22:54 ID:PtLYcUGQ
222Classical名無しさん:08/03/23 22:54 ID:3BO27Yx2
糸から伝わる情報を元に、あるるかんは腕から生えた刃を掲げ、振り下ろした。
ケンシロウの背中へ、セント・ジョージの剣が迫る。
しかし、ケンシロウに生まれた隙はそれほど大きいものではなかった。
最初から大技で決めるほど、相手を舐めきっているわけではない。
故に、背中から伸びてきた攻撃をかわす事は造作もない。

「ほぉおぁあ!」
アメフトの選手のように、あるるかんを抜き去って、エレオノールに突進。
ダダダ……という銃声のような足音が公園の空気を揺らした。
エレオノールに逃げる暇などない。
射程範囲まで近づくと体を屈めて足払いを放つ。

「甘い!」
だが、初撃がかわされる事はエレオノールも予想していること。
隙が小さいのは彼女も同じ。
後ろへ跳んで足払いをかわすと、着地を待たずに鎖鎌をケンシロウに投げつける。
エレオノールの手から離れた銀色の蛇は、大きな弧を描いてケンシロウまで綺麗に迫る。

「……ひゅぅ」
刃が直撃する直前、小さく息を吐いた。
精神の統一する事が白刃取りの最大のポイント。
チョキの形で右手を横に構えると、あとは動かなかった。
それ以上動く必要が無かったからだろう。
絶好の軌道で空を飛んだはずの銀の蛇は、ケンシロウの人差し指と中指の間で静かに息絶えていた。

「オレを忘れてんじゃねぇー!」
ケンシロウに向けて叫ぶのはタマネギ頭のキューピッド。
今だけは、エレオノールの仲間だ。
とは言っても、矢を放つのはエレオノールの意思なのだが。
エンゼル御前から放たれた矢が、鎖鎌に気を取られていたケンシロウに迫る。

「……フン」
224Classical名無しさん:08/03/23 22:55 ID:PtLYcUGQ
ケンシロウは、このキューピッドの射撃性能が以上に高いことを、先の戦いで知っていた。
だから、その矢が『ケンシロウのいる位置』に寸分違わず命中する事も知っていた。
少しだけ、ほんの少しだけ軸をずらすと、矢は全てケンシロウの横をすり抜けていった。
それでも矢の攻撃を警戒したのだろうか、エレオノールへと走って距離を詰める。
こちらが武器を持っていない以上、遠距離ではエレオノールに分がある。

「エレノン! アイツとんでもねーぜ!」
「そんな事は、初めから分かっていたはずだ!」
ケンシロウが近づいてくる。
だが、後ろに引くことはしない。
ここでエレオノールは距離を取る事をやめたのだ。

『さて諸君、頑張っておるかのう?』

放送が開始したからだ。
もう時間がない。
遠くからチマチマと当たらない矢を打つよりは……。
あるるかんで、ぶつかって行く!

「人形は少し、やっかいだな」
ケンシロウは、あるるかんとの接近戦に苦戦していた。
人体の構造を熟知し、その弱点を突くという戦闘を長年行ってきた。
だが、これは人間のような形をしているが、全く人間ではない。
中に入っているからくりの知識など何1つ分からない。
その事が邪魔をして、ケンシロウは後一歩攻めきれないでいた。

『まずは禁止エリアの発表じゃ』

ならば、本体を叩くことに集中。
そのためには、この人形を弾き飛ばさなくては。

「ほぁたぁ!」
ケンシロウの張り手が、あるるかんの顔面にヒットした。
衝撃を受けたあるるかんが右に大きく吹き飛ぶ。
一撃で魂が掻き消されたように、あるるかんは動かない。
エレオノールが繰り糸を指から離したからだ。
ここで一緒になって吹き飛ばされたら、次の一撃を避ける事が出来ない。

『続いて、この6時間で死んでいった者たちの発表じゃ』

ケンシロウの右ストレート。
ギリギリ、本当にギリギリだったが避ける事ができた。

『アミバ』

エレオノールは右手に握った紙を開く。
消防署で入手したもう1つの武器が出てくる。
「まだ終わっていない!」
日本刀がケンシロウの首を捉えた。
今までの戦いを見ていれば分かる。
いくらケンシロウでも、これを避ける事は不可能だ。

そう、不可能だった。

『アーカード』

「まさか、これを使う事になるとは」
北斗神拳の究極奥義がケンシロウの体を包み込んでいた。
まだ武器を持っていたとは思わなかった。
だが、これでエレオノールは万策尽きただろう。

『キュルケ』

「これで終わりだ!」
227Classical名無しさん:08/03/23 22:57 ID:3BO27Yx2
228Classical名無しさん:08/03/23 22:58 ID:3BO27Yx2
229Classical名無しさん:08/03/23 22:58 ID:PtLYcUGQ
230Classical名無しさん:08/03/23 22:59 ID:3BO27Yx2
無想転生で放った一撃をかわす手立ては持たないだろう。
たった今、キュルケの名前が呼ばれた。彼女は俺の事を見てくれているのだろうか。
これで、終わり。
全ての悲しみに、幕が……。

「痛ってぇぇぇ!」
だがその一撃は、エレオノールには届かない。
ケンシロウの拳は、彼女を庇う様に前に出たキューピッドに阻まれていた。
強烈な一撃を受けてエンゼル御前は強制的に武装解除される。
だが、最悪の攻撃は乗り越えた!

『シェリス・アジャーニ』

浮力を失ってゆっくりと落下するケンシロウに狙いを定めて走り出す。
もはや防御の事など考えていない。
構えた日本刀は、鋼鉄の扉を切り裂くべく、一瞬だけ銀色に光った。
最大の奥義を防がれたケンシロウもまた、防御を捨てた。
明日の事よりも、今目の前の彼女に全てを捧げる。

『DIO』

「届け……」

銀色の少女の銀色の刃が踊る。

とても美しかった。

とても美しかった。

「はぁぁぁ……」

数え切れない地獄を乗り越えた男の拳が踊る。

とても美しかった。

「届けぇ!!!」「あたぁっ!!!」

『加藤鳴海』

とても、とても美しかった。


◆     ◆     ◆


「結局、私は人間になれなかったのですね」
自分の目の前で止まったケンシロウの拳を見ながら、エレオノールが悲しそうに呟いた。
だが、涙は止まっていた。
悔いはないと言ったら嘘になる。
だが、最後にケンシロウと戦えた事は大きな意味があった。

「頼みがあります」
「なんだ?」
自分の首を切り裂く寸前で止まった刃を感じながら、ケンシロウが聞き返した。
彼女の頼みなど分かっている。
それでも聞き返した。
彼女の口から聞くまでは、彼女の願いを知らない事にしたかった。

「私を、殺してください」

「あぁ、お前を生かしておくわけにはいかない」
本当ならば、断りたかった。
殺意のない少女を、殺す事などしたくはなかった。
だが、彼女を救えるのは自分だけだという事も分かっている。
233Classical名無しさん:08/03/23 23:00 ID:PtLYcUGQ
234Classical名無しさん:08/03/23 23:01 ID:PtLYcUGQ
235Classical名無しさん:08/03/23 23:01 ID:52h.tUSo
 
236Classical名無しさん:08/03/23 23:02 ID:PtLYcUGQ
この拳は、そんなことをするためには存在しない。
それでも、殺さなくてはならない。

「覚悟はいいか?」
「あ……ちょっと待ってください」

ケンシロウを静止すると、後ろを振り向いてゆっくりと歩き出した。
2メートルほど歩くと、そこに落ちている核鉄を拾う。

「彼を……」
「あぁ……」
投げ渡された六角形を受け取る。
それはひんやりと輝いていて、ケンシロウが殴ったにも関わらず、傷1つ付いていない。
エレオノールに説明されるとおり、武装錬金と呟いた。

「あ〜! 痛かったじゃねーか!」
キューピッドへと展開するやいなや、ケンシロウの頭をぺちぺちと叩き出した。
この様子なら、大丈夫だろう。
エンゼル御前が生きていて、本当に良かったと思う。
彼は、最期の最期にできた、仲間だったのだから。

「ふふ……」
おかしな風体の生物が、大男の頭を叩いている。
それを見て安心している自分を見ると、なんだか可笑しくなって、笑ってしまった。
自然と笑みがこぼれる。

「いい笑顔だ」
目が見えないケンシロウだったが、彼女の笑顔は何故か感じ取れた。
柔らかに笑う少女に投げかけた言葉は、死に行くものへの世辞ではない。
彼が感じたエレオノールの笑顔は、本当に……。

「ありがとう。少しは人間らしく見えたでしょうか」
238Classical名無しさん:08/03/23 23:04 ID:PtLYcUGQ
239Classical名無しさん:08/03/23 23:04 ID:rhJo/aZI

「お前は、人間だ」
笑顔を感じたら、耐えられなくなってしまった。
言わずと決めた言葉をせき止める事が出来なかった。
「ケンシロウ……?」
「お前は、人間だ。エレオノール……!」
やはり、伝えなくてはいけない。
彼女を人形のまま殺したくはない。
それでは余りにも彼女が報われない。

「自分で決めたのだろう? カトウナルミを笑わせると。
 誰に命令されたわけでもない。誰に操られたわけではない。
 お前の意思だ。
 確かに、やり方は間違っていた。許されるものではない。
 だが、操り糸を断ち切ったその瞬間から……」
エンゼル御前も、真面目な顔で聞いていた。
ナギが命を賭けたその答えが、その言葉にある気がして。
ナギ命の意味が、その言葉に眠っていると信じて。

「お前はずっと人間だったんだ……!」

涙が、涙が止まらない。
今までの生命が少しだけ肯定された気がした。
後悔は尽きない。
決して良い人生ではなかった。

涙が、止まらない。
それでも、少しだけ幸せだった。

「ありがとう、ケンシロウ」
「エレノーン……」
エンゼル御前のどこにそんな機能があるのか、涙を滝のように流していた。
全く、こいつは何度見ても可愛くないな。
241Classical名無しさん:08/03/23 23:05 ID:3BO27Yx2
エンゼル御前のどこにそんな機能があるのか、涙を滝のように流していた。
全く、こいつは何度見ても可愛くないな。

「御前も、ありがとう」
「エレノン……」
涙をゴシゴシと拭う。
必死に涙を止める。
彼女の笑顔に答えるには、自分も笑顔にならなければ。
「エレノンは、エレノンだから……」
御前の言葉は、彼なりの答えだった。
つたない言葉だが、伝わって欲しい。
伝えなければ!

「たとえ人間でも人形でも、エレノンはエレノンだ、オレの仲間だ!」

これが全てだ!
小さい体からあふれ出した、全てだ!

「ありが……とう。
 本当、に……あり、が……とう」

雨が上がってよかった。
この涙を誤魔化すことができないんだから。

「では、私を終わらせてくれますね?」
「あぁ……」

体が重い。
動かない。
それでも、拳を硬く握り、振りかぶった。

エンゼル御前も目を背けない。
243Classical名無しさん:08/03/23 23:07 ID:PtLYcUGQ
ナギが死んだとき、自分は核鉄状態だった。
ナギが死んだその瞬間を見なかったことを後悔した。
死ぬ瞬間の彼女はとても気高かったはずだから。
もう、仲間の死から目を背けたくない。

つらくても、耐える。

「行くぞ」
「えぇ、お願いします」
エレオノールの胸に、一撃。
心臓を破壊する。

「あり、がと、う…………出、会、って……くれ、て…………」

彼女は、小さな池の中へと落ちていった。
その、笑顔はとても……。






さて、ケンシロウが最後に放った一撃、エレオノールの心臓への一撃の話をしよう。
打撃の衝撃を心臓に集中させる
人体を熟知して、力を自由に伝える事のできるケンシロウだから出来る技である。
他の部位を傷つけず、心臓のみ破壊できる。
エレオノールの死体を汚さないための配慮であろう。

それが、奇跡の引き金だった。


◆     ◆     ◆
245Classical名無しさん:08/03/23 23:08 ID:3BO27Yx2
246Classical名無しさん:08/03/23 23:08 ID:PtLYcUGQ


「死んじゃったな……エレノン」
「あぁ……」
ケンシロウの心は迷宮の中にあった。
彼女を殺した事は、本当に正しい事だったのだろうか。
本当は間違っていたのではないか……。
それ以上に、正しいのかどうかも分からないまま、彼女を殺してしまった。
あの時、彼女の願いを断るわけにはいかなかったのだから、それは仕方のない事なのだ。
だが、不誠実な気持ちのまま、彼女の命を絶ったのは事実。
キュルケだったらどうしただろう?
ナギだったら?
彼女達はこれを望んでいたのだろうか?

「ケン……あんまり気にすんなよ……」
「分かっている……」
ここは、世紀末ではない。
救いようのない悪ばかりではない。

俺は何のために戦ってきた?
殺すためか? 違う。
英雄になるためか? 違う。
楽しいからか? 違う!

救うためだ。

……彼女は救えた。
救えたんだ……。

それなのに……。

俺の拳は、凶暴すぎる。
248Classical名無しさん:08/03/23 23:08 ID:3BO27Yx2
249Classical名無しさん:08/03/23 23:09 ID:PtLYcUGQ
250Classical名無しさん:08/03/23 23:09 ID:3BO27Yx2
キュルケのような、ナギのような柔らかい手は持っていない。
俺は……戦う事しか……。


「な……なんだありゃ?!」
エンゼル御前が叫に声が、ケンシロウを思考の迷宮から呼び戻した。
何事か、敵襲でもあったか?
いや、変な気配は感じられないが……。

「どうした?」
「池が……光ってる」
「なんだと?!」
目の見えないケンシロウは気付かなかっただろう。
エレオノールの死体が浮かんだ小さな池が、バラ色に光り輝いていた。

ケンシロウの放った一撃は、正確にエレオノールの心臓に衝撃を与えていた。
そう、正確に。

「生きている……」
「ケン? 今、なんて?」
確かに、心臓の鼓動を聞いた。
彼女の脈を感じた。
考えるより早く、ケンシロウは池の中へと足を進めた。

問題は、エレオノールの心臓が他の人物とは違う事。
それはエレオノールすらも知らない事実。

彼女の心臓は、柔らかい石と同化していた。

ケンシロウの拳から放たれた衝撃は、彼女の心臓部を『正確に』攻撃した。
そしてその衝撃は、彼女の心臓ではなく、石のほうを砕いたのだ。
252Classical名無しさん:08/03/23 23:10 ID:3BO27Yx2

粉々に砕かれた石は彼女の体外の水と反応し、池の水を生命の水に変えていった。

「ほ、本当に生きてるのか?」
「あぁ、確かに生きている」
確かに心臓は規則正しく鼓動を繰り返している。
公園のベンチに彼女を寝かせる。

「いったい何が起こったんだよ〜?」
「俺にも分からない……だが」
だが、生きていてよかった。
本当にそう思う。

確かに彼女は人を殺した。
許されない事をした。
俺も許す事はないだろう。
だけど、彼女には明日があった。
例え彼女が望まなくても、もう一度やり直せる明日があったのだ。

苦しむ彼女に手を差し伸べることは出来たはずだ。
殺してはならなかった。
殺したら、一生後悔するところだった。

キュルケなら、ナギなら彼女を救ったはずだ。

「なぁ、ケン……」
「……なんだ?」
エレオノールを抱えたときの感触が腕に残っていた。

「やり直せるかな?」
「やり直せるさ」
それは、キュルケの暖かさと、人間の暖かさと、何一つ変わらないものだった。
254Classical名無しさん:08/03/23 23:10 ID:r9lmigC6
are
255Classical名無しさん:08/03/23 23:11 ID:PtLYcUGQ

「彼女も……俺も……」



才賀勝は彼の祖父である才賀正二の記憶を取得した事がある。
才賀正二が自らの血から血液の成分を抜き出して生成した生命の水を飲んだからである。
また、エレオノールがフランシーヌの記憶を取得しているのは、フランシーヌの髪の毛が溶けた生命の水を飲んだからである。

さて、たった今エレオノールが飲んだ生命の水。
そこにも記憶が溶けていた。
彼女が大量に浴びた返り血だ。
これは彼女が殺した三千院ナギのもの。

そしてもう1つ。
こちらの方が重要だろう。
ケンシロウとの戦いの途中で、彼女が首に巻いたタオルである。
このタオルは、消防車の中で彼女が入手したもの。
彼女はそのとき、このタオルで手についた血を拭っていた。

才賀勝の血を。

彼女は砕けた扉を越えて進む。
そこには道など存在しなかった。
だが、彼女の歩いた後には、確かに道が存在した。

エレオノールの舞台は終わらない。
カーテンコールは、まだ早い。

だが、彼女が起きるまで、開幕ベルが鳴り響くまで……。
彼女の舞台は一時閉幕する。
257Classical名無しさん:08/03/23 23:11 ID:3BO27Yx2
【E-4 池の公園 2日目 深夜】

【ケンシロウ@北斗の拳】
[状態]:全身各所に打撲傷と火傷。肩に裂傷 両目損失。腕に切り傷。 疲労(中)
[装備]:エンゼル御前@武装錬金
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム(般若心境と書かれた紙(エニグマ/開かれていません)、日本刀@現実
    本部の鎖鎌@グラップラー刃牙、あるるかん(白金)@からくりサーカス(頭部半壊、胸部、腹部に大きな損傷、全身にへこみと損傷あり)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない。
1:エレオノールを保護する。
2:学校へ行く。
3:ラオウ・勇次郎他殺し合いに乗った参加者を倒す。
4:助けられる人はできるだけ助ける。
5:乗ってない人間に独歩・アミバ・ラオウ・勇次郎・エレオノール・ジグマールの情報を伝える。
[備考]
※参戦時期はラオウとの最終戦後です。
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました 。
※秘孔の制限に気付きました。
※ラオウが無想転生を使えないことに気付きました。(ラオウは自分より過去の時代から連れて来られたと思っています)
<首輪についての考察と知識>
※首輪から出ている力によって秘孔や錬金が制限されていることに気付きました。
首輪の内部に力を発生させる装置が搭載されていると思っています。
※ナギ、こなた、アカギと大まかな情報交換をしました。またジグマールの能力、人間ワープ、衝撃波についても簡単に聞いています
※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると核鉄に戻ります。
259Classical名無しさん:08/03/23 23:11 ID:lfe/n9To

260Classical名無しさん:08/03/23 23:12 ID:kIjwlzW6



【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:疲労大、気絶
[装備]:
[道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式
[思考・状況]
基本:???????
1:???????
[備考]
※ジグマールと情報交換をしました。
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※夢の内容はハッキリと覚えていますが、あまり意識していません。
※エレオノールが着ている服は原作42巻の表紙のものと同じです。
※ギイと鳴海の関係に疑問を感じています。
※フランシーヌの記憶を断片的に取得しています。
※「願いを叶える権利」は嘘だと思っています。
※制限についての知識を得ましたが、細かいことはどうでもいいと思っています。
※自転車@現実は消防署前に落ちています。
※才賀勝、三千院ナギの血液が溶けた生命の水を飲みました。2人の記憶を取得した可能性があります。
 が、断片的かもしれないし、取得していないかもしれません。
 才賀正二の剣術や分解などの技術も受け継いだかは不明。
261Classical名無しさん:08/03/23 23:12 ID:PtLYcUGQ
262 ◆d4asqdtPw2 :08/03/23 23:13 ID:kIjwlzW6
以上です、支援ありがとうございました。
263Classical名無しさん:08/03/23 23:15 ID:3BO27Yx2
投下乙!
ケンシロウが男前過ぎるが……エレオノールと御前の友情に感動。
鳴海の死を知っていてもそれに縋るしかないというエレオノールの必死さが良く描写されていました。
御前もまさかの大活躍。
GJ!
264Classical名無しさん:08/03/23 23:16 ID:Wq0uEtkU
投下乙
これはいいね
北斗神拳を操ることに疑問を持つケンシロウ
勝とナギ生命の水を飲んだエレ
面白そうな展開マンマンだな
265Classical名無しさん:08/03/23 23:17 ID:OjfQX8bs
投下乙。
まさかのラストに驚きました。
これからケンシロウとエレオノールがどうなるか楽しみな一作でした。
GJでした!!
あと
ケンシロウは、このキューピッドの射撃性能が以上に高いことを、先の戦いで知っていた。

ケンシロウは、このキューピッドの射撃性能が異常に高いことを、先の戦いで知っていた。
だと思います。
266Classical名無しさん:08/03/23 23:17 ID:lfe/n9To
投下乙!
エレオノール対主催くるかな?
ケンシロウとエレオノールはやり直せるのか期待が止まらない
267Classical名無しさん:08/03/23 23:19 ID:PtLYcUGQ
投下乙。
これは……なんとも綺麗な戦いでした。
まさか御前がエレオノールに心から味方するとは思わなかった。
この先どうなるのか。GJです。
268Classical名無しさん:08/03/23 23:19 ID:52h.tUSo
エレェーーーーーッッッ!!
やばい、原作のシーンが沸々と……そうだ、エレには生命の石が丸ごと入ってたんだよなぁ
お前はキュルケやナギに限らず多くの人に支えられて生きてるんだぞ……
ケンシロウも苦渋の判断ながらよくやった! エンゼル御前もいい度胸してたぞ!
久々に希望を見せてくれる良SSだった! 投下乙!

269 ◆d4asqdtPw2 :08/03/23 23:37 ID:kIjwlzW6
みなさん感想ありがとうございます。
>>265
指摘ありがとうございます。wikiで修正します。
270Classical名無しさん:08/03/24 00:09 ID:d5CD5NGg
投下乙!
綿密な戦闘、心理描写に感動しました!
エレオノール、ケンシロウ、御前に凄い感情移入がしやすくてわくわくしました!
ラストのアイディアには思わず脱帽ものです!。エレオノールがこの先どんな生き方をするのかが楽しみ。
GJ!!
271Classical名無しさん:08/03/24 00:24 ID:1HmIo.ts
やばい、久々にガチ泣きしてしまった
ただ人間になりたいと願い、鳴海にすがり続けるエレオノール
その悲しみを感じ取り、救いの言葉を発せずにはいられないケンシロウ
二人の心がこれ以上ないほどに伝わってきた
そして今後の展開がすごい気になる引きも見事

あと
>ナギ命の意味が、その言葉に眠っていると信じて
これってナギの命の脱字でしょうか
272Classical名無しさん:08/03/24 01:35 ID:HGYQ/VTY
つまりここの池は飲めばそれだけでしろがねになるというお手軽強化ポイントw

しろがね+核鉄ならケンシロウの眼は治るかな
273Classical名無しさん:08/03/24 03:45 ID:jLS2BJpQ
これでまた一人マーダーが減ったか
しかしTQNといいエレといいしろがねのマーダー同盟者は死なずに戦線離脱するやつばかりだな

ところで生命の水が溶けた水源ってどんなものでも溶かしちゃう性質がなかったっけ?
これだとエレオノールの体も溶けちゃわないか
あと池に入ったケンシロウも
274Classical名無しさん:08/03/24 08:02 ID:5Kb.8dJ.
>>273
ガイドブックによると人間が溶けるには時間がかかるらしい。
原作でもクローグ村の住人が井戸から引き上げてたし
275Classical名無しさん:08/03/24 11:36 ID:30m5zqLI
>>273
しかし戦線離脱してない方は武装が強化される罠。
276Classical名無しさん:08/03/24 15:12 ID:LgUsJiUQ
>>275
確かに。川田は覚悟を殺したと思い込んで、完全に迷いを断ち切っていよいよ殺意満々になり、
ジグマールは激戦とクルーザーを強奪して武装がとんでもなく強化された。
片や対主催、片やへたれだったのが信じられないくらい、どちらも侮れない強マーダーになった。
277276:08/03/24 15:22 ID:LgUsJiUQ
修正版の確認を怠ったorz
どちらにしろ、激戦の再生能力だけでもかなりの脅威だが
278Classical名無しさん:08/03/24 15:27 ID:3A/rt08s
てs
279 ◆d4asqdtPw2 :08/03/24 19:08 ID:wVTOk.cA
>>271
そうです。指摘ありがとうございます。wikiで修正します。

見返したら、他にも誤字が幾つかあったので、wikiで修正します。
あと、「だが」を使いすぎなのでそれも修正しますw
内容に変更はありませんので。
280 ◆hqLsjDR84w :08/03/25 01:29 ID:TMUnFAV.
十分後くらいから投下できると思います。
281 ◆hqLsjDR84w :08/03/25 01:38 ID:TMUnFAV.
投下します。
282Classical名無しさん:08/03/25 01:38 ID:zS6R/oSg
 
283Classical名無しさん:08/03/25 01:38 ID:e2uCRWgQ
       
 劉鳳はんとの移動中。戦闘音が突如耳に入った。
 気のせいなどではない。バイクの後部座席に座る劉鳳はんの反応を見れば、一目瞭然。
 戦闘音の発生源は、西側。すぐに向かおうとするが、生憎繁華街の中心部。
 狭い路地が入り組んでいるので、バイクで向かうのにはかなりの運転技術を必要とする。しかし、チンタラやっている場合は無い。早く、早く向かわねばならないのだ。
 ほんの少しだけ迷って、すぐに決断する。

「劉鳳はん、この細い路地をバイクで速く移動するのは厳しい! バイクはここに置いとくから、声のした方まで走るで!」


 というわけで、バイクをその辺の民家に立てかけて向かってみれば、ボロボロの男が二人。
 一人は俺よりも年下に見える少年。もう一人は俺より年上に見えて、アミバはんと比べても優劣決めがたいほどに筋肉ムキムキの男。
 少年の方は地面に腰掛けているが、男の方は寝転がっている。いや、あれは倒れているのか?

 少年の方が、倒れている男に手を伸ばす。
 すると、二人の間に現れるこれまた筋骨隆々な三人目が現れる。否、あれは違う。人ではない。背後霊のようなもの。名前は『スタンド』。
 殺人鬼である吉良吉影が、アミバはんを殺した男が持っていたものと同じ。
 スタンドがその手を掲げ、それを振り下ろさんとしている。考えるまでも無く、対象は明らか。倒れている男。
 ならばスタンドの持ち主は? それもまた考えるまでも無い。倒れていない方の少年。

 倒れている方の男は、迫る拳を回避する余裕も、受け止める余裕も無さそうなのが、遠目から見ても明らか。それだけ満身創痍。
 そんな男に拳を叩き込む。それも、人間の力を遥かに凌駕する力を持つスタンドの拳をだ。
 トドメを刺そうとしているのか? はたまた吉良吉影のように、触ったものを何かに変える能力があり、それを行使する気か?
 そういえば、アーカードと名乗った吸血鬼もスタンドを使っていた。頭にディスクを差し込んだら、金色のスタンドを呼び出したのだ。
 また、俺は何も出来ないのか?
 先程の放送で、アーカードの名は呼ばれなかった。
 『キャプテン・ブラボー』も呼ばれなかったが、もとよりそんな名は名簿に載っていない。即ち偽名である。
285Classical名無しさん:08/03/25 01:39 ID:m9FJy7Lo
布団から這い出て、そっと暖房を付け直して……支援開始DA!!!
286Classical名無しさん:08/03/25 01:39 ID:e2uCRWgQ
           
 何故偽名を名乗っていたのかは不明。放送で名が呼ばれても悲しませないためとも考えられるが、それは所詮推測の域を出ない。本当の答えは、キャプテン・ブラボーしか知らない。
 何にせよ、アーカードは呼ばれなかったのだ。
 どうポジティブに考えようとしても、キャプテン・ブラボーは死んでいる――その結論に至ってしまう。
 何故、死なねばならない。
 タバサ、キャプテン・ブラボー、アミバ、面識は無いが工藤が出会った志村新八もだ。彼等四人が何故殺されねばならない。
 みんな、このふざけた殺し合いに乗らず、現状をどうにかしようと抗っていた。
 しかし、全員殺された。
 スタンドを持った人間――吉良吉影曰く、スタンド使い――に殺された。
 そして今、目の前にスタンド使いがいる。スタンドが発現している。
 倒れている男――どう見ても決着はついている――に、スタンドがその拳を振り下ろそうとしている。
 またスタンドが、スタンド使いが命を奪おうとしている。
 吸血鬼がしたように、殺人鬼がしたように、命を奪おうと。
 させてなるものか。止める、止めてみせる。
 そうだ、俺は決心したんだ。
 もう被害者は出さない。その為ならば、手を汚すことも辞さない。そう、心に決めたのだ。

 スーパー光線銃を取り出し、スタンド使いの少年に照準を合わせる。
 しかし、どちらが先に攻撃を仕掛けたのかは分からない。
 もしかしたらスタンド使いの少年は、襲い掛かってきた男を断罪しようとしているだけなのかもしれない。
 ならば、どうする? 考えている間に、スタンドは動こうとしている。
 そうだ、まずは両方とは離れた場所を撃てばいい。警告の為に。殺し合いに乗っていないのならば、こちらに何らかのアクションを起こすはず。
 このスーパー光線銃には、幸いにも弾切れというものが存在しないのだから。
 
引き金に手を当て、そのまま指に力を込める。
 銃口より射出された光線は、目標どおりの場所を穿った。
 同時に――そこにガソリンのような、可燃性のものが撒かれていたのだろうか――炎が燃え上がり、その炎が少年を巻き込んだ。

 驚愕した。そんなはずじゃ無かった。俺は、まだ加害者と断定できていない少年をそんな目にあわせる気は無かった。
 そう思っていると、さらにショッキングなことが起こった。
 炎の中の少年の操るスタンドが、倒れている男を殴り飛ばしたのだ。ここから見ても分かるほどに、その行動には躊躇が感じられなかった。
 そういうことか、どうせ死ぬなら道連れにしてやる――ということか。吉良吉影のように。
 劉鳳はんもそのことに気付いたのだろう。舌打ちをして、彼のアルターの名を叫んだ。

 想定外な事態だったが、少年――いや、殺人鬼が炎に呑み込まれてしまったのは幸運だった。
 いま構成されたばかりの絶影ではいくら速かろうと、殺人鬼に追いつくまでに結構な時間を使ってしまう。それでは、被害者の男が殺されてしまうかもしれない。
 だが、炎のせいで動きがスローになっている状態ならば、大した狙撃の経験の無い俺でも当てることが出来る。

 さらに動きをとり辛く為に、まずは足に照準を合わせ、指に力を込める。

 殺人鬼の左膝から先が千切れて、殺人鬼はそのまま倒れた。しかし、スタンドは未だ健在なようで。
 必死に両の拳をアスファルトに叩きつけている。飛び散る破片で被害者の男を攻撃する気なのか。
 そこまでするというのか……。殺人鬼に対する何とも言えない嫌悪感が、全身を走り抜けていく。
 今度は右手を落とす。もう終わってくれ。
 しかし、未だ止める気は無いようだ。左拳で必死にアスファルトを殴り続けている。
 そんな状態で、いったい何をする気なんだ。

「なあッ!?」

 つい驚愕の声が漏れる。同じくそれに気付いた劉鳳はんもギリ……と、歯を噛み締めている。
 先程まで砕いていたアスファルトの破片、それが連なり壁を形成していたのだ。
 吉良吉影のスタンドが『物質を爆弾とする』ように、あのスタンドは『物質を別の形に組みかえる』ようだ。
 何のためにあんなことを? 考えるだけで虫唾が走る。
 あの影にいるのは、先程殴られて吹き飛んだ被害者の男。彼を作り上げた壁で押し潰そうというのだろう。
 殴り飛ばされる前から既に満身創痍に見えた。その後もう一発殴られた状態では、倒れてきたあの壁を避けることなど不可能だろう。
 その為にひたすらアスファルトを殴り続けていたのか……そうはさせるか、させてたまるものか。
289Classical名無しさん:08/03/25 01:40 ID:zS6R/oSg
  
290Classical名無しさん:08/03/25 01:41 ID:e2uCRWgQ
    
291Classical名無しさん:08/03/25 01:41 ID:m9FJy7Lo
しえn
 もう、一刻の猶予すら無い。確実に、そして早急に死に至る部位――背を狙う。
 引き金を引こうとして、一瞬だけ指が動かなくなった。
 全身を炎に包まれ、片足と片腕を失い、すぐに死に至る男にトドメを刺すことへの躊躇……なのだろうか?
 だが、そんなことしている場合ではない。あの殺人鬼の息の根をすぐに止めねば、被害者の男が死ぬのだ。
 躊躇など――――するものかッ!!
 トドメは確実に刺す。その為に二度、指に力を込めた。

 しかし、それでも――十分過ぎるほどに致命傷なのにもかかわらず、スタンドは消えない。
 スタンドがあるということは、男もまだ生存ということだ。
 だから撃つ。まだスタンドが見える、撃つ。まだある、撃つ。まだ、撃つ。まだ、撃つ。まだ、撃つ。
 何度指に力を込めたのだろうか。
 気付いたらスタンドは消失し、殺人鬼は、炎の中でまるで砂の城の様に崩れてバラバラになっていた。

「はァ……はァ……――――」

 それを確認したと同時に、全身から大量の汗が流れ出てきた。
 人を殺した。二度目だ。全ては、もう被害者を出さないための行い。自分が誰よりもそのことを認識しているのに、震えが止まらない。
 これが世に言う、人を殺したことの重圧なのだろうか。
 ああ、何人もの悪を断罪してきたという劉鳳はんはやっぱり強いな。アルターの絶影だけではなく、重圧に耐えられる心が。
 俺はこの重圧に耐えられるのだろうか。いや、耐えてゆかねばならない。
 もう殺し合いに乗った者達によって、殺し合いを良しとしない者が殺されないように。殺された者の知り合い達が、悲しまない為に。
 殺し合いに乗った者で、説得不可とみなした者は、殺さなくちゃならない。
 そう思うと、いつのまにか流れていた汗はすっかり引き、震えも止まっていた。

「よくやってくれた。壁の向こうに、被害者がいる。息はあると思うが……迅速な処置が必要だ。民家に立ち寄るべきだろう」
「ああ、そうやな。放送も近いから、早く灯りのある場所に行かなあかんしな」
「幸い、ここは繁華街の一角だ。周囲に民家や店がいくつもある。その内のどれかに入ろう。
 先程まで乗っていたバイクを絶影で持ってくるから、少し待っていてくれ。ああ、被害者の男に声をかけて、状況の説明を頼む」
293Classical名無しさん:08/03/25 01:41 ID:uT/XsDWk

294Classical名無しさん:08/03/25 01:41 ID:e2uCRWgQ
      

 劉鳳はんはそう言うと俺の了承も待たずに、すぐ隣に呼び出していた絶影と共にバイクを置いてきた場所に走っていった。

「さて……と」

 少しの間、小さくなっていく劉鳳はんの背中をぼうっと見ていたが、すぐに立ち上がる。
 そして被害者の男の下へ向かうために、足を踏み出した。



 服部平次が、アスファルトで出来た壁の無効に倒れているはずの男――ジョセフ・ジョースターの下へ向かう途中。
 足元がやけに滑りがいいことに気付き、地面を指でなぞる。
 灯りが無いためにそれが何色なのか分からず、より近くで見ようと指を近づけて、服部は鼻につく独特の臭気に顔をしかめた。
 指を顔に近づけたことで、強烈な独特の臭いに鼻孔を刺激されてしまうハメなったが、そのおかげで服部は地面を覆う物質の正体を見定めることが出来た。

(これは、コールタール……!光線銃を撃ったとき男が炎に包まれたのは、これのせいやな……。
 しかし、なんでこんなもんが地面に撒かれとるんや?)

 しかしその疑問を服部が抱いていたのは、ほんの少しの時間だけであった。
 すぐに「どうせ誰かの支給品なのだろう」という結論に至ったのだ。
 彼が最初に出会った青髪の少女――タバサの支給品が液体窒素であったのを知っていたから、コールタールが支給品でもおかしくは無いと判断したのだろう。
 コールタールが散布されているために、服部は滑る足元に注意してアスファルト製の防護壁まで歩く。
 また、服につけば当分の間臭いが取れないので、そのことにも注意は忘れない。
 とはいえ、もともと暗闇の中で目視可能な距離まで歩くだけなので、大した時間はかからなかった。

(この裏におるんやな)

 そんなことを考えながら、三村信史が死ぬ寸前に力を振り絞って作り上げたアスファルトの壁に目を向ける。
 探偵としての本能か、その壁を調べてみたい欲求に駆られるが、それを抑える。
 壁の向こうにいるはずの、先程まで殺人鬼に襲われていた要救助者の元にいち早く向かうために。

 服部は、その足を踏み出した。ただ救助するために。ただ、善意故に。
296Classical名無しさん:08/03/25 01:42 ID:zS6R/oSg
   
297Classical名無しさん:08/03/25 01:42 ID:e2uCRWgQ
         
298Classical名無しさん:08/03/25 01:42 ID:eTnxHfPY
 
 瞬間、彼の視界がグルリと、上下逆転した。
 彼が、その理由を何者かに投げられたからだと気付いたのは、コールタールまみれの地面に背中を叩きつけられて数秒ほど経過した頃だった。

「テメェが……テメェがシンジを……ッ!!」

 立ち上がった服部の視界に入ったのは、全身ズタボロで左手が曲がってはいけない方向に曲がってしまっている男――ジョセフ・ジョースター。
 全身にコールタールが付着して、さらに夜中であるために表情が読み取りにくい状態でも、その表情が怒りに染まっていることは自明であった。
 勿論服部もそれに気付いた。
 そして、その理由を『先程まで殺人鬼に襲われていたために、錯乱している』と判断した。
 ならばどうするか……少し考えて、結論を出す。

 一種のショック療法を試みる。
 錯乱しているのならば、一度何らかの大きなショックを与え、現実に引き戻せばいい。
 それが服部の導き出した結論。
 大きなショック……少し考えると、服部はポケットに収納したスーパー光線銃に手を伸ばし、そのまま腕を上に伸ばす。
 そして銃口を上空へ向けたまま、指に力を込めた。射出された光線はまるで月に吸い込まれていくかのように空へと昇っていき、少し立ってから見えなくなった。
 服部が上を撃ったのは、別にどこを撃っても良かったからというわけではない。
 コールタールが撒かれている地面に撃つと、ジョセフと背中にコールタールが付着した自分に引火しかねないので、銃口を上空に向けたのだ。

「落ち着いてくれたか?」

 先程まで右の拳を握り締めながら服部を睨みつけていたジョセフは、今ではその顔を地面に向けて、一言も喋らない。
 落ち着きを取り戻したのだろうか?
 服部がそう思った矢先に、ジョセフは服部の方に駆け出した――右手を掲げながら。

「ッ!?」

 服部が驚愕する。ジョセフの表情は見えないが、彼の右拳が服部を狙っているのは明らかだった。
 咄嗟に横に飛ぶことで、ジョセフの拳を回避する。
 そのまま足を止めずに距離を取ろうとするが、コールタールに足をすべらせ、五メートルほどしかジョセフとの距離が空いていない場所で倒れてしまう。
300Classical名無しさん:08/03/25 01:43 ID:uT/XsDWk
  

「お、落ち着いてくれ! なんで、そんなに錯乱してんねん!?」

 ジョセフは先程まで服部がいた場所で、静かに倒れている服部を見下ろしている。
 未だジョセフが襲い掛かってくる理由の分からない服部は、錯乱しているものだと信じ込み、現実に引き戻そうと声をかけ続ける。

「錯乱? はッ! スゲェ冷静だぜ。冷静に怒ってるのさ、アンタに対してな」
「どーいうこっちゃ!?」
「テメェの心に聞いてみやがれェェエエエーーーーッ!!」

 ジョセフは状況を把握しきれていないという様子の服部を一蹴し、右拳を掲げて走り出す。
 その態度に、服部は考えを改める。

(この様子……。もしかしてあのスタンド使いの少年と、目の前の男は両方とも殺し合いに乗っていたのでは……?)

 その考えが今まで浮かんでこなかったことに服部は苛立つ。
 とりあえず距離を取ろうと服部は立ち上がろうとするが、全身コールタールまみれで、さらに焦りのせいで体が思うように動かず。再び滑り、地面に膝を着く。
 対してジョセフは波紋でコールタールを弾きながら移動しているために、普通の地面と変わりない速さで、服部との距離をつめていく。
 どんどん近付いてくるジョセフをスーパー光線銃で撃つことは、銃の素人の服部にも可能だろう。
 しかしスーパー光線銃本体も、服部自身もがコールタールまみれな現状では、それは危険すぎる。
 ポケット内の核鉄を取り出して武装錬金を展開しようにも、黒色火薬の武装錬金『ニアデスハピネス』もまた現状では危険。
 携えていた木刀正宗は、最初にジョセフに投げられた時点で、手放してしまった。
 だから銃をジョセフに向けるくらいしか、威嚇のしようが無かった。
 しかし、それでもジョセフは止まることは無く。
 服部は、ただ絶望するしかなかった。

302Classical名無しさん:08/03/25 01:43 ID:m9FJy7Lo
                                    
303Classical名無しさん:08/03/25 01:43 ID:eTnxHfPY
 
304Classical名無しさん:08/03/25 01:44 ID:e2uCRWgQ
          
305Classical名無しさん:08/03/25 01:44 ID:zS6R/oSg
    
306Classical名無しさん:08/03/25 01:44 ID:eTnxHfPY
 

 シンジがスタンドで作り上げたアスファルトの壁に背中を密着させて、息を潜める。
 聴覚を研ぎ澄ます。

 足音が止まった。
 少しして、再び足音が聞こえだしてきた。シンジの仇の足音が。

 もう少しだ。
 シンジをあんなに何度も撃ったんだ。おそらく最後の一人になる為に、トドメは確実に刺すタイプだろう。
 だから、絶対に俺の方に来る。俺の生死を確認するために。生きていた場合、俺を殺すために。
 その瞬間だ。その瞬間を狙う。
 その瞬間に、シンジの仇を投げつけ、コールタールまみれにしてやる。
 コールタールは波紋を通しやすいし、その臭いのおかげで逃げられても、すぐに発見できる。逃がすものか。

 足音が近い。おそらくあと七メートル、六メートル、止まった。
 壁のすぐ向こうで、止まっている。武器の確認か?
 力を込めて壁を押し倒せば、すぐに殺せるが、それはダメだ。
 シンジにあんな痛みを味わわせたんだ、絶対にブン殴ってやるッ!
 足音が再開。あと五メートル、四メートル、三メートル。今だッ!!

 右手首を掴んで、そのまま地面に投げつける。
 べちゃり。奇妙な音がひびく。
 失敗した。全身コールタールまみれにするはずが、背中にしか付いてねェ。

「テメェが……テメェがシンジを……ッ!!」

 しかし、もうバレちまったんだ。怒りを抑えて、息を潜めている理由は無い。
 堂々と姿を現し、マヌケ面引っさげて呆然としてやがる男に、言い放つ。
 俺が、テメェを投げた理由を。
 すると男は、銃を取り出した。
 上に向けて、何をする気だ……? 何か策があるのか? すると、そのまま空に光線を撃ち出した。見覚えのある光線を。
 イカレてるのだろうか、そんな考えが脳内に浮かんだとき、男は言った。
308Classical名無しさん:08/03/25 01:44 ID:eTnxHfPY
 
309Classical名無しさん:08/03/25 01:44 ID:rKXn8aO2

「落ち着いてくれたか?」

 ……そういうことかよ。
 俺にシンジを殺した光線を見せて、挙句の果てに落ち着いたかだと?
 はッ! そうか、嘗めてくれちゃってんのか。
 シーザーやリサリサ先生、そしてシンジがここにいたら、『怒るな』というだろうが、それは無理だぜ……!
 こんなモンを見せられて、怒らねェ奴はいねェ!!

 骨が折れていない方の右拳を握り、そのまま男の方に向かい、殴りぬける!

「ッ!?」

 すると、どうだ?
 あんな挑発してきたくせに、いざ攻撃されるとやたら焦ってやがる。
 情けねえ……。こんな奴が、シンジを……!
 右拳をさらに強く握り締める。

「お、落ち着いてくれ! なんで、そんなに錯乱してんねん!?」

 こんなことを言い出す始末だ。
 なんで錯乱してるか? テメェがシンジを殺したからだろうが……ッ!
 ただ、怒りだけが募ってくる。苛立つ。
 勝手に転んで全身コールタールまみれになっているから、地面にを殴ることで波紋を伝わせられるが、それは断る。
 コイツは、一発ブン殴らなくちゃあ気がすまねェ!!

「錯乱? はッ! スゲェ冷静だぜ。冷静に怒ってるのさ、アンタに対してな」
「どーいうこっちゃ!?」

 まだ白を切る気か。
 やれやれ、本当にやれやれだ。付き合いきれねえ。
311Classical名無しさん:08/03/25 01:45 ID:e2uCRWgQ
             

「テメェの心に! 聞いてみやがれェェエエエーーーーッ!!」

 足からは波紋を流し、滑らないようにしているが、腕には波紋を流さない。
 何故か。コイツに、波紋で気絶でもされたら困るからだ。
 コイツは想いっきりブン殴って、その痛みに悶えてもらう! 気絶なんかさせるかってんだ!
 あと二メートル。男は銃を構えるが、撃たない。
 シンジが燃えたところを見ていたのだから、当然か。

「思い知れェェェエエエエエエエーーーーーーーッ!!!」

 シンジの痛みを思い知らせる。ただその為に、拳を振るう。

 不意に、腕が動かなくなった。

 不思議に思い、腕を見ると――青いゴムみたいなものが巻きついていた。
 それが伸びてきた先を見ると、そこには銀色のスタンドと、青い服の男が立っていた。



 バイクに絶影の触鞭を巻きつかせ、そのまま絶影に担がせて移動していた劉鳳。
 一応バイクに乗ろうかとも考えたのだが、狭い路地でバイクを乗り回す技術を持ち合わせていなかったために、絶影に担がせているのだ。
 狭い路地をバイクを担いだ絶影が通るのは難しかったので、屋根の上を通らせたりさせていたので、彼にしては時間がかかったが、それでも普通の人間よりはかなり速く戻ってきた。
 その戻ってきた彼の目に映ったのは、今にも殴りかからんとするジョセフと、今にも殴られようとしている服部。

(あの男は、明らかにこの殺し合いに乗っていると思われる男と戦っていた。それが何故、服部に拳を向けている……?)

 一気に頭に浮かんでくる疑問。
 劉鳳は、すぐさまその疑問の答えを見出す。

(つまり、殺し合いに乗っていたのは服部が断罪した少年だけでなく、あの男の方も――ということか。
 殺し合いに乗った二人が、お互いの命を砕こうとしていたのか。あのアーカードと散のように! ちッ、毒虫が……!)
313Classical名無しさん:08/03/25 01:45 ID:zS6R/oSg
  
314Classical名無しさん:08/03/25 01:46 ID:uT/XsDWk
   

 あまりに短絡的な結論だが、もともと社会不適合者と見なした相手に対してはすぐに頭に血が上り、手がつけられなくなるタイプなので仕方が無い。
 アーカードや散と同じ。勝手にそう判断したことで、疲労もあったとはいえ彼等を断罪できなかったことを思い出し、さらに劉鳳の怒りは増した。

「絶影!」

 即座に己のアルターの名を呼び、持たせていたバイクを地面に置かせる。
 二本の触鞭は長い状態のまま巻き取らずに、ジョセフのほうへと伸ばす。
 宙を駆ける絶影の触鞭がジョセフの拳に一気に追いつき、二重三重に絡みついていき、その勢いを殺していく。
 数多の吸血鬼、四人の柱の男との戦いを越えてきたジョセフ・ジョースターの拳は、常人では目視することすら不可能なほどのスピードで服部に迫っていた。
 しかしその拳の勢いは、厚さ僅か数センチの触鞭によって完全に殺された。
 当然といえば、当然。
 ジョセフが吸血鬼や柱の男と激闘を繰り広げてきたように、劉鳳はロスト=グラウンドで無数の無法者――勿論ネイティブアルターを含む――を取り締まってきたのだ。
 だがジョセフはその事を知らない。だから一瞬、一見脆弱に見える絶影の触鞭に拳を止められたことに驚愕し、動きが止まる。
 とはいえ、あくまで一瞬だけ。
 アルターは知らないが、スタンドの知識をこの殺し合いに呼び出されてから得たジョセフは、絶影をスタンドと判断。
 ならばと、波紋の呼吸を試みる。スタンドは波紋を通す、そのことは実践済み。
 コオオオオォォォォォォォ。奇妙な呼吸音が響く。
 絶影を操る劉鳳と、絶影がジョセフを止めている間に距離をとろうとしていた服部の頭上に、クエスチョンマークが浮かぶ。

 いったい、この音は何だ? いったいどこから聞こえるのだ? ――服部の抱いた疑問。
 あの男は奇妙な音を立て、何をしようとしている? ――劉鳳の抱いた疑問。

 疑問の内容が違うのは、音源を見定めることが出来たか否かの差。
 かつてHOLYに所属していた時も、HOLY離反後も無法者を断罪し続けてきた劉鳳は、その豊富な戦闘経験から辺りに響く音がジョセフの口から流れてきていると気付いたのだ。
316Classical名無しさん:08/03/25 01:46 ID:zS6R/oSg
      
317Classical名無しさん:08/03/25 01:47 ID:e2uCRWgQ
    

 劉鳳はジョセフに向けた視線を、一瞬だけ座り込んでいる服部に移す。
 口には出さないが、『今のうちに、そこから動け』という意味であることを服部は理解した。
 劉鳳が来たことによる安堵感により、それまでの焦りがほんの少しだけ消えた服部は、ゆっくりとだが滑ることなく移動を開始した。
 戦闘に巻き込まれないようにあえて劉鳳の方ではなく、その逆方向でもなく、路地の中へと入り込む。
 視線はあくまでジョセフに向けているが、そのことに気付いた劉鳳は、目配せに気付いた服部に心の中で感謝をした。

 警戒を怠らず、険しい顔を保っていた劉鳳。しかしその表情はすぐに崩れた。

「ッ!?」

 スタンドのように受けたダメージがそのまま本体のダメージとなるわけではないが、自立型アルターが受けたダメージはある程度本体へとフィードバックする。
 それ故、ジョセフの腕から、絶影の触鞭へと流れた波紋のエネルギーは、劉鳳へとフィードバックする。
 ジョセフの腕を拘束していた触鞭は緩まり、その隙に腕を無理矢理引き抜ことする。
 それに気付いた劉鳳が絶影の触鞭に力を込めるが、遅い。
 自分よりも遥かに身体能力が勝る相手と戦ってきたジョセフ・ジョースターは、相手の一瞬の隙を逃さない。
 触鞭は空中で何かを掴む動きをするだけに、終わった。

 ジョセフが、自由になった右腕をクルクルと回す。
 それに対し触鞭を巻き取った絶影は、今度は触鞭を伸ばすのではなく、ジョセフの方へと走る。
 鞭のように触鞭を遠距離から伸ばすのでなく、硬質化した触鞭を近距離で一気に打ち込む戦法へと変更したのだ。
 ドンドン迫ってくる絶影に焦らず、ジョセフはギリギリで回避。
 安心しきっているジョセフ。しかし、絶影は即座に地面を蹴って、方向転換。再びジョセフの方へ向かう。
 その方向転換の速さに、疲労もありジョセフは対応出来ない。
 あと硬質化した絶影の触鞭と、ジョセフの首の距離、あと五十センチ。

「オラァッ!」

 ジョセフは、今まで服部を殴るためポケットにしまっていたヨーヨーを絶影に投げる。
 無論、波紋を流すことは忘れない。ヨーヨーはコールタールでまみれているので、波紋伝導率は凄まじいものである。
319Classical名無しさん:08/03/25 01:47 ID:eTnxHfPY
 
 アルターはスタンドと違い視力を持たないため、劉鳳は迫る物に気付かず。

「ァぁああアあああアアあ!!」

 フィードバックしてくる波紋により、痺れるハメになる劉鳳。
 ジョセフは棒立ちする絶影を意に介さず、劉鳳本人の方へ走る。
 その前に、キッチリとヨーヨーを回収している辺り、さすがジョセフ・ジョースターといったところか。

「邪魔するんじゃあ……ねェェエエエーー!!」
「本体を狙うか……いいだろう、迎え撃ってやる! 来い!!」

 波紋による痺れはとうに消え、迫るジョセフを睨む劉鳳。

 過去に劉鳳はカズマのシェルブリットを素手で受け流し、即座に反撃を叩き込んだことがある。
 成長前とはいえ殴ることに特化したアルター、シェルブリット。それを素手で受け流したのだ。
 HOLYにて実戦経験を積んできたおかげ。
 アルターだけが劉鳳の武器ではなく、自身の身体能力もまた彼の戦力の一つなのだ。
 そのことを誰よりも知るのは劉鳳自身。
 だからこそ、自らに放たれるであろうジョセフの拳を受け流す為に、拳法のような構えをとる――!

 劉鳳とジョセフの距離は、あと五メートルほど。
 その時、ジョセフが拳を振りかざすと――跳んだ。

(上空――!)

 一瞬の判断。劉鳳はその行動を、『自然落下による加速を拳に乗せるため』と考えた。
 しかし、それは判断ミス。
 前方上空に視線を投げた劉鳳の表情が、驚愕に染まる。
 落下エネルギーを乗せた拳を劉鳳に叩き込むなら、いるはずの前方上空。そこにいるべきジョセフが劉鳳の瞳に映らない。
 焦りに支配された劉鳳が、首を振って周囲を確認。すると、すぐさまジョセフを視認。
 いたのは劉鳳からも、絶影からも離れた場所。
 逃げる気か? そう思いかけた劉鳳は即座にその認識を改める。
321Classical名無しさん:08/03/25 01:47 ID:uT/XsDWk
    

「しま――――」

 ついつい、劉鳳の口から漏れる情けない言葉。
 一度劉鳳の方へ向かったのは、ただ隙を作るため。
 絶影の操作から意識を別の場所――迫るジョセフを迎え撃つ準備へと移させる。
 迎え撃つことに集中していた劉鳳は、跳躍によって移動した方向が別でも、上空を向くまでは気付かない。
 隙は数秒に満たないだろうが、それだけの時間があれば波紋戦士であるジョセフは軽く見ても五メートル移動可能。

 スタンドの操作にかなり意識を集中させねばならないこと。
 迫る相手を素手で迎え撃つことに、かなりの集中力を要すること。
 スタンドの知識と、人外の化物との数多の戦闘経験を持ち、その二つの事を知るジョセフだから思いついた作戦。
 絶影はスタンドではなく、アルターなのだが――それの操作もまた、スタンドの操作と同じくかなりの集中力を要する。少なくとも、首輪の制限下では。

 狙いは、もとより別だったのだ。
 ジョセフの走っている先にいるのは、服部平次――三村信史を殺害した張本人であった。



「しま――――」

 スタンド使いの男の声がする。
 あの男は、俺がシンジの仇を殺そうとしているときに、攻撃をしかけてきた。
 確実に殺し合いに乗っていない。
 だから、波紋を流すだけにした。
 波紋は、後に何の悪影響も与えないからだ。
 シンジの仇をしこたまブン殴ってから、事情を説明すればいい。
 シンジの仇が持っている銃と、コールタール、焼け焦げたシンジの遺体があれば、理解させるのは難しくない。
323Classical名無しさん:08/03/25 01:48 ID:m9FJy7Lo
                            
324Classical名無しさん:08/03/25 01:48 ID:eTnxHfPY
 

「ク……ッ!」

 シンジの仇も、俺が追って来ていることに気付いてはいるようだが、コールタールで覆われた地面は歩きづらいらしく、普通に歩いているよりも遅い。
 対して俺は、波紋でコールタールを弾いている。
 当然ながら、すぐに距離は縮まっていく。
 ついにシンジの仇は、逃げられないと悟ったらしく、足を止めた。
 そこは丁度、シンジの死体がある場所から数メートルの場所だった。
 オーケー、都合がいいぜ。シンジ、見ていてくれ。

「しかるべき報いを与えてやらァァアアアアーーーッ!! 覚悟しやがれェェェエエエエエエーーーーーッ!!!」

 あと五歩。
 四歩。
 三歩。

 ――グニャリ。

 え?



 社会不適合者が服部の下へ走る。
 服部が逃げようとしているが、足を負傷しているのか、足取りが覚束ない。一方社会不適合者は、速い。またしても俺に、散やアーカードを思い出させるほどに。
 すぐに絶影の操作に、意識を集中する。
 触鞭をゴムのようなしなやかな形態に戻し、少しずつ伸ばしていく。その上で絶影自身も走らせる。いち早く社会不適合者に追い着き、断罪するために。

 ――ありえないことがおこった。

 ある程度走ったところで、絶影が足を滑らせたのだ。
 驚愕する。絶影が転倒しただと? 何故だ、理解不能。
 これも主催者による制限? ありえない、これまでの戦闘では走っている絶影が転倒したことも、そんな素振りを見せたことも無かった。
 疑問符が脳内を埋め尽くす。だが、考えている暇は無い。
 絶影をすぐに立ち上がらせ、社会不適合者を即断罪する。考えるのはそれからで十分。
 が、立ち上がった絶影が再び転倒。

 立ち上がっている絶影の姿を一瞬だけ見て、やっと理解した。
 絶影は『黒い何か』にまみれていた。
 おそらく――いや確実に、あれが絶影の動きを鈍くした原因。推測だが、油の一種だろう。
 あの社会不適合者は、そこまで用意していたのか……ッ。
 苛立つ。何故あれだけの身体能力、先程絶影を痺れさせた能力、機転を持ちながら、それを制御できないのか。
 制御できない力は、ただの暴力にすぎないというのに。

 社会不適合者と服部の距離は、既に十メートルほど。
 絶影は立てない。
 一度解除して再構成するか――いや、それでは間に合わない。
 真・絶影を開放して、飛行させる――それならば絶影は滑らないが、開放にかかる一瞬の時間のせいで、間に合わない。
 いくつもの弱い考えが浮かんでくる。

 間に合わないのか
 俺は、諦めるしかないのか。
 絶影では、俺の正義では、救えないのか。

 弱い考えが浮かんでくる。

「それでも……!」

 それでも、抗わせてもらうッ!
 足を取られたくらいで! 主催者に何らかの制限を科せられたくらいで! 立てないくらいで!
 タイムマシンで過去へと飛ばされようと、砕けなかった絶影を嘗めるなッ!!

「■■■■■■■■■■■■■■■ーーーッ!! ■■■■■■■■■■■■ーーーーーッ!!!」
327Classical名無しさん:08/03/25 01:48 ID:e2uCRWgQ
      
328Classical名無しさん:08/03/25 01:48 ID:zS6R/oSg
          

 社会不適合者の声。
 聞き取ることは出来ないが、そんなことはどうでもいい。
 問題は、奴と服部との距離。既に五メートル以下。

 間に合え。立つことは出来ないが、事前に触鞭をしなやかな形態にしておいたのは得策だった。
 触鞭を伸ばす。限界速で。
 これならば、足を取られようと関係が無い。

「間に合ええええええええええ!!」

 咆哮。
 二本の触鞭が宙を奔る。
 社会不適合者よりも、遥かに速い。
 その名の通り、影をも絶やす速度。
 だが、触鞭を伸ばし始めるのが遅かった。
 社会不適合者の拳が、服部に当たる方が速い。
 認めたくない。だが……ッ。

 そう考えた瞬間だった。
 社会不適合者が、宙を舞った。いや、舞うという表現は適切ではない。
 どちらかというと、アレは――ズッこけたというべきか。
 それまで異常なスピードを出していたこともあり、そのまま行けば思いっきり背を打つだろう。

 黒い物質を撒いた本人が、それに足を取られたのか。
 なんという愚かさ。しかし社会不適合者がマヌケでなければ、服部は既に――
 本来、絶影の触鞭は間に合わなかっただろう。

 だが、幸運でも構わない。
 本来間に合わなかったとしても、現実では間に合ったのだから。今は、その幸運を甘んじて受け入れよう。

「撃ち滅ぼせえええええええッ! 絶影ッ!!」
330Classical名無しさん:08/03/25 01:49 ID:uT/XsDWk
 
331Classical名無しさん:08/03/25 01:49 ID:e2uCRWgQ
       



 コールタールを波紋で弾いていたジョセフが、何故何かに足をとられそのままズッこけたのか。
 それは、あくまで偶然。偶然により発生したこと。
 その偶然は、劉鳳と服部にとってこれ以上無い幸運であったが、ジョセフにとっては最悪のことだった。

 ジョセフが足をとられたものは、コールタールではない。
 弾力があり、全体にヌメヌメとした液体がコーティングされ、曲げると自分で元の形状に戻ろうとする――『クレイジー・ダイヤモンド』のDISC。
 三村信史がジョセフの為を思って託したDISCが――

「撃ち滅ぼせえええええええッ! 絶影ッ!!」

 劉鳳の叫び声。
 転倒中のジョセフが空中で振り返り、驚愕。目に映ったのは、触鞭を伸ばしている絶影。
 ジョセフにとって、絶影の触鞭が既にここまで迫っているのは予想外な事態。ゆえに、驚く。
 しかし驚きながらも、何もしないわけではない。
 足に流していた弾く波紋を一旦解除。全身に波紋を流し、全身をガードする。
 生半可な攻撃では、波紋使いのガードの前では無意味。
 しかし、

「ガあ……」

 ジョセフが呻き声をあげる。
 脇腹に思いっきり絶影の二本の触鞭を叩き込まれたせいだ。
 絶影の攻撃は、生半可なものではなかった。
 それでも脇腹だけに波紋のエネルギーを集中していれば絶えれたかもしれないが、絶影がどこに攻撃をしかけるかはジョセフに分かるわけもなく。
 ジョセフはそのまま殴られた衝撃で吹き飛び、背を民家の壁に打ち据え、意識を落とした。
 そう、三村信史がジョセフの為を思って託したDISCが、ジョセフが意識を落とす原因になってしまったのだ。
 現実は非常である。



「服部ッ!」

 ジョセフが意識を落としたのを確認し、劉鳳はコールタールまみれの絶影を解除。
 再構成した絶影を隣に、劉鳳は服部の下へ駆け寄る。
 その道中で、劉鳳は絶影にまみれていた黒い物質がコールタールであると気付き、服部がスーパー光線銃で撃った三村が炎上した理由にも気付いた。

「……服部? おい、どうかしたのか?」

 劉鳳が、服部にそう尋ねる。
 服部は目の焦点が定まっていなく、その状態が劉鳳を不安にさせたのだ。
 劉鳳が声をあけたのとほぼ同時に、服部の膝ががくんと折れた。


 誰も、近くにいたジョセフも、服部本人でさえ気付かなかったことだ。
 ジョセフが踏みつけた衝撃で、『クレイジー・ダイヤモンド』のDISCは宙を舞った。ジョセフが全力疾走していたこともあり、地面に落ちていたDISCは二メートルほどの高さまで飛び上がった。
 ジョセフの脇腹に、絶影の触鞭が叩き込まれた頃。DISCは重力の法則にしたがってゆっくりと落下していき――

 ――吹き飛ぶジョセフを見ていた服部の頭にぶつかると、そのままずぶりと沈んでいった。

 『クレイジー・ダイヤモンド』のDISCは三村信史が無理矢理に引き抜いたために、三村信史の死ぬ直前の記憶がこびり付いていた。
 エルメェス・コステロが無理矢理に引き抜いた、サンダー・マックイイーンに埋め込まれた『ハイウェイ・トゥ・ヘル』のDISCに、記憶がこびり付いていたように。

334Classical名無しさん:08/03/25 01:50 ID:uT/XsDWk

335Classical名無しさん:08/03/25 01:50 ID:m9FJy7Lo
                               
336Classical名無しさん:08/03/25 01:50 ID:eTnxHfPY
 

 がくん。膝が折れる。

 ゆっくりと柔らかい何かに沈んでいくような、低い重力の空間を落下していくような、形容しがたい浮遊感に襲われる。
 足元がフラついたので、踏みとどまろうとするが力が入らず、情けないことにガクリと前のめりに倒れてしまった。
 何故か、先程まで鬱陶しいくらいに感じたコールタールの臭いも感じない。
 どういうこっちゃ、ワケが分からへん。立ち上がろうとするが、今度は力が入らないだけでなく、焦点が定まらずに視界がボヤけていく。

「どうした、服部! 聞いているのか? おい!!」

 劉鳳はんが絶影を消して、かけよってくる。
 気持ちは分かるが、揺らさへんでほしいな。そのことを伝えようとするが、池の中の鯉のように口がパクパクと動くだけで、言葉が出ない。
 あかん。劉鳳はんの表情が確認出来んほどに、視界が不明瞭になってきよった。

「おい! どこ――か――打っ――――た――――か――――――――――?
 は――と――――大丈――か――――襲――――た――――――――――」

 耳もおかしくなってきた。どういうわけか、先程まで鼓膜を激しく揺らしてきていた劉鳳はんの声が、ブツリブツリと細切れにしか聞こえなくなってきているのだ。
 その事を理解するとほぼ同時に、ボヤけていた視界のほとんどが黒で覆われていることに気付く。
 どうにか目を見開こうとするが全く力が入らず、数秒と待たない間に目に見えるものは何もなくなってしまった。
 ついには、こちらが痛いほどに俺を揺らしてきた劉鳳はんの腕すらも、感じなくなった。

 機能しなくなった筋肉、嗅覚、聴覚、視覚、触覚。世界が暗転した――

 ――はずだった。

 それなのに何故か切れたはずの意識が、嫌に明確になっていく。
 どういうことだ? 考えようとする間に、どんどん鼓膜に振動を感じる、視界が開けてくる。
 映ったのは――――赤。そして外国人風の男……先程襲い掛かってきた奴やないか!?
 状況を認識しようとしているのを待とうともせずに、今度は思考が流れてくる。
 同時に、全身に焼けるような痛みが駆け巡る。
338Classical名無しさん:08/03/25 01:50 ID:zS6R/oSg
   
339Classical名無しさん:08/03/25 01:51 ID:e2uCRWgQ
                 

 ◇ ◇ ◇

 ――熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ。

 ――咄嗟に目に映るのは、ジョジョ……ジョジョ!?

 ――そうだ、とにかくジョジョは助けねばならない。

二度も殺させはしない、させてたまるか。

 ――火が及ばないように壁を作る、クレイジー・ダイヤモンドで、治す能力で。

 ――右腕が落ちた。かまうものか。ああ、痛いさ、泣きそうだ。だが、どうせ死んじまうんだ、その時まで休まなくったっていいだろう。

 ――火傷を負ったが、まだ繋がっている左腕でアスファルトを殴る。背中が貫かれる。痛くて、熱い。どうせ死ぬんだ、我慢しな。

『シンジッ! その壁をどかしやがれッ! そんな炎、俺が波紋で何とかしてやるッ!』

 ――自分だってボロボロのくせに、無茶を言いやがる。だが、それでこそジョジョだ。安らかな死を捨て、最期まで醜く抗って助けるだけの価値がある。

『いいからその壁をどけやがれッ! 今からそっちに行くッ!』

 ――お前は柊に会わなきゃならねえだろ。今になって気付いたが……どこか七原に似てやがるかもしれねえな。

『シンジッ! 今すぐに行くッ! 少しだけ待ってろッ!」 』

 ――ひたすらクレイジー・ダイヤモンドの拳を打ち込んで、完成した防護壁。安堵、同時に体に衝撃。もう無理だな。

『だまってろッ! くだらねえこと話すんじゃあねえッ!」 』

 ――まあいいさ、最期に一番守りてえヤツを守れたんだ。ジョジョなら、プログラムを潰してくれるはず、任せられる。
341Classical名無しさん:08/03/25 01:52 ID:m9FJy7Lo
                                             

『シンジィィィィィィィィィィィッ!』

 ――白色に覆われていく世界。終わりはすぐそこだ。間に合うかはわからないが、『DISC』をジョジョに投げる。お前なら、つか、い、こ……な…………

 ◇ ◇ ◇

 再び、世界が暗転。
 先程まで見えていたものは、いったい何なのか――考えたくない。

 熱かった、痛かった。だが、それでもシンジと呼ばれた男は意識を落とさず、必死にスタンドで地面を殴り壁を作った。
 ジョジョと呼んでいた仲間の為に、痛い思いして。腕、落とされてるのにもかかわらず。
 気絶しとけば痛い思いなんかしないで楽に死ねたのに、仲間を助けたかったから、殺し合いを止めたかったから……
 殺し合いを止めるために、仲間を助けて、死ぬ寸前なのに意識を落とさずにDISCを引き抜いて、それを託して。

 誰が殺した――考えたくない。

 あんなに仲間想いの男を、誰が殺した――考えたくない。

 あんなに仲間想いの男に、あのような無惨な死に様を迎えさせたのは誰だ――考えたくない。

 何も考えたくない、考えたくない、考えたくない、考えたくない、考えたくない、考えたくない、考えたくない、考えたくない。

 しかし、分かってしまった。

 あのスタンドの形状。ジョジョと呼ばれた男の姿、負傷具合。景観から判断した場所と時間。
 そして、必死な思いで彼が作ったアスファルト製の防壁。俺に襲い掛かってきた男の言葉。

 認めたくない、認めたくない、認めたくない、認めたくない、認めたくない、認めたくない、認めたくない、認めたくない。
 認めたくない、認めたくない、認めたくない、認めたくない、認めたくない、認めたくない、認めたくない、認めたくない。
 しかし、認めねばならない。『俺が』やってしまったことだ。
343Classical名無しさん:08/03/25 01:52 ID:e2uCRWgQ
      

「シェ……ス……、……ケ……」

 突如耳に入ってくる、劉鳳はんの声。聴覚が復活してきたのだろう。
 もし俺がやったことを伝えたら、劉鳳はんはどういう反応をするだろう。
 許してくれる――わけが、ないやろな。

「三村信史」

 参加者の中で唯一、『シンジ』を含む名前。
 なんで、劉鳳はんがそれを口にしたのか。
 聞こうにも、未だ立ち上がれない。口も動かない。

「お前達を殺したのが誰かなのかは、俺には分からない。
 だが……! 俺はお前達の遺志を継いでみせる! お前達を殺した輩を――」

 やめてくれ。
 そこから先は言わないでくれ。頼む、まだ駄目だ。
 黙ってくれ。心の準備をさせてくれ。
 言わなくても、分かっているから。

「――悪と断定し、必ず断罪する!!」

 黙れ、黙れ。黙ってくれ。頼む、黙れ、黙れ。黙って、黙れ。黙ってくれ。黙れ。



 時は、少し遡る。
 服部が三村信史の記憶を覗き込み始めた数秒後。
 即ち、午前零時。四度目の放送が始まった時間へと。
345Classical名無しさん:08/03/25 01:53 ID:zS6R/oSg
    

『さて諸君、頑張っておるかのう?』

 会場全体に響き渡る哀れな偽主催者、徳川光成の声。
 その声を聞いて、放送が近かったことを思い出した劉鳳。手に抱えていた服部を静かに地面に横たわらせる。

『まずは禁止エリアの発表じゃ。
 午前1時からF−8、午前3時からE−3、午前5時からB−5』

 五時間以内に入ることが許されなくなる三つの地点を、劉鳳は頭の中に刻み込む。
 本当は支給品である4色ボールペンを取り出して、名簿か地図の余白に記しておきたいと思ったが、暗いのでそれを諦めたのだ。

「続いて、この6時間で死んでいった者たちの発表じゃ。諸君の思い人の名前など呼ばれなかったらいいがの」

 ドクン、と。劉鳳の鼓動がそれまでより大きく波打った。
 徳川光成の発した言葉、思い人。劉鳳にとってそれに該当する人間が一人いて、その女性はこの殺し合いに参加している。
 劉鳳の心臓が高鳴るのも当然といえば、当然だ。
 速くなる鼓動を収めるように、左胸に手を置く。
 大丈夫、彼女が死ぬわけが無い。そう言い聞かせるように。



『それでは、また6時間後の放送が無事に聞けるといいの』

 放送が終わる。
 放送に耳を傾けていた劉鳳の表情は暗い。いや、呆然と言った方が近い。
 彼らしくなく、口はだらしなく半開き。発現しておいた絶影も、消えてしまっている。

 四番目に呼ばれた名前、シェリス・アジャーニ。それは、劉鳳の思い人の名だった。
 しかし正直な話をすれば、劉鳳はそこまで意外だとは思っていない。
 絶対壊滅無敵殲滅軍団を拳一発で壊滅させたカズマが死んだのだ。シェリスが死ぬのも、ありえないことではないと思っていた。
 それでも、劉鳳はシェリスの生存を信じていた。信じたかった。
347Classical名無しさん:08/03/25 01:53 ID:eTnxHfPY
 

 キッチリ十秒。時がすぎる。

「……」

 何も言わずに、先程までの気が抜けたような表情から、険しい表情へと戻る。

(悲しんでいる暇など無い)

 劉鳳は、自分にそう言い聞かせる。
 シェリスの他にも、彼が合流したかった人物の名が呼ばれた。
 キュルケと三村信史。
 キュルケの方は、劉鳳を守って死んだタバサに『守ってくれ』と託された人物。
 三村信史の方は、劉鳳がこの殺し合いに呼び出されて二番目に出会った少年、桐山和雄のクラスメイト。
 劉鳳は、その両者を守らねばならない対象とみなしていた。
 その名が呼ばれたのだ。

(アーカードとDIOが死んだのは喜ばしいことだが、奴等が正義の心を持つ者に殺されたとは限らない。
 悪同士で殺しあって、勝手に死んでいったのかもしれない。その場合、散に勝利したアーカード以上の力を持つ悪がいることになる)

 だから、今は悲しむ暇など無い。
 そう判断し、心の中で先の放送で呼ばれた者達に、侘びを入れる。
 劉鳳は気付いていない。
 悲しむ暇は無いと思いながらも、彼の右目から溢れた涙が、一筋の雫となり彼の頬を伝っていることに。

「シェリス、キュルケ、三村信史!」

 いきなり劉鳳が上空に向けて、口を開いた。

「お前達を殺したのが誰かなのかは、俺には分からない。
 だが……! 俺はお前達の遺志を継いでみせる! お前達を殺した輩を悪と断定し、必ず断罪する!!」
349Classical名無しさん:08/03/25 01:54 ID:e2uCRWgQ
          
350Classical名無しさん:08/03/25 01:54 ID:uT/XsDWk
  

 それは自らの覚悟の証明。
 そして誓い。自らの心に刻んだ者達への。
 そのまま少しの間夜空に視線を流すと、首を下ろす。そしてあることに気付き、その方に駆け寄る。

「服部! 気が付いたか!」

 意識を失っていた服部平次が、体を起こしていたのだ。
 しかし声をかけても返事をよこさないことに、劉鳳は不思議がり、疑問を投げる。

「おい、服部。どうかしたのか……?」

 その言葉に服部は答えず、ただ口の中で何事かを呟いていた。
 ついさっきまで意識を失っていたために、まだ体が完全に目覚めておらず、うまく話せないのではないだろうか。
 そう劉鳳は判断し、何を言っているのか聞き取るために、服部の口元に耳を近づける。

「なッ!?」

 瞬間、劉鳳が発したのは驚愕の声。
 それも仕方が無いことだ。いきなり何者かに背後から首根っこを掴まれ、そのまま持ち上げられたのだから。

(一体、何が……)

 首を捻って背後を確認した劉鳳は、またしても驚愕する。
 何故なら、彼を掴んでいたのは――

(先程服部が断罪した男のスタンド!?)

 ――『クレイジー・ダイヤモンド』だったのだから。


 種明かしをすれば、簡単な話。
 クレイジー・ダイヤモンドのDISCが、現在は服部の額に挿入されているだけ。
 近距離パワー型スタンドに分類されるクレイジー・ダイヤモンドの射程距離は、約二メートル。
 服部の言葉を聞き取ろうと、劉鳳は服部にかなり近付いていた。確実に、二メートル以内まで。
 そのため、クレイジー・ダイヤモンドは発現した時点で、劉鳳の背後をとることが出来たのだ。
 服部は、劉鳳を黙らせようとした。
 それは、ただ自分を悪だと言われたくなかったから。せめて、もう少し待って欲しかったから。
 そう服部が強く願った結果、クレイジー・ダイヤモンドが発現、劉鳳を黙らせた。
 服部には、劉鳳に危害を加える気は無かった。
 しかし、クレイジー・ダイヤモンドは動き続ける。黙らせるために。
 俗に言う、スタンドの暴走というやつだ。クレイジー・ダイヤモンドは止まらない。


 クレイジー・ダイヤモンドが、劉鳳を掴んでいない方の右の拳を握る。
 状況を飲み込んでいないものの、とりあえずクレイジー・ダイヤモンドを黙らせようと、劉鳳が絶影を操作しようとして、放送を聴いた際の同様で消滅させてしまったことに気付く。
 ガァン、ガァン。
 地面が抉り取られ虹色の粒子となり、それが集束。絶影を構成していく。
 しかしそれはどう見ても、遅い。
 クレイジー・ダイヤモンドの拳が劉鳳に打ち据えられ『黙らせる』方が、明らかに速い。
 劉鳳は諦めない。とはいえ既にアルターの構成スピードは、今の速度でほぼ限界。

 しかし、拳は振り落とされず。

「つうッ!?」


 服部が、苦悶の声をあげる。
 突如走った衝撃により、クレイジー・ダイヤモンドは劉鳳を手放し、劉鳳はそのまま落下する。
 構成を終えた絶影の触鞭に自らをキャッチさせた劉鳳が、何故か苦悶の表情を浮かべている服部に視線を向ける。
353Classical名無しさん:08/03/25 01:55 ID:zS6R/oSg
 
354Classical名無しさん:08/03/25 01:55 ID:eTnxHfPY
 

(あれは……!)

 劉鳳が二つのことに気付く。
 一つは、服部の額から本の少しだけはみ出ているDISC。
 しかし、それによって服部がスタンド能力を得ているということは分かっても、何故攻撃を仕掛けてきたのかが劉鳳には分からない。
 そうしてもう一つは、クレイジー・ダイヤモンドの右拳に絡まっている物。薄黄緑色のヨーヨー。

「――――お、い……」

 遠くから呼ぶ声に、劉鳳が気付く。
 その声の主こそが、ヨーヨーを投げた張本人。

「テメェ、何してんだよ……ッ!
 シンジの……スタンドを……勝手に使おうとしてくれてんじゃあねえぜ……!」

 名は、ジョセフ・ジョースター。



 絶影の攻撃により意識を落としたジョセフ・ジョースターは、実は数秒前に既に目を覚ましていた。
 全身を波紋でガードしていたおかげで、意識を落としてから大して時間がかからないで、起きることが出来たのだ。
 さらにこれはジョセフが狙ってやったことではないが、全身がコールタールまみれであったことも、波紋を流しやすくなったという点で運が良かった。

 とはいえ目覚めた直後は、視界がぼやけていた。
 そんなジョセフの視界に最初に飛び込んだのは、スタンド『クレイジー・ダイヤモンド』だった。
 知り合ってからの時間は短いが、志を同じくした紛れも無いジョセフの親友だった、三村信史が操っていたスタンド。
 それが瞳に映ったことで、意識を取り戻したとはいえ完全には覚醒しきっていなかったジョセフが、完全に目醒めた。
 どんどん視界が広くなれば、当然クレイジー・ダイヤモンド以外のものも視界に入る。
 まずクレイジー・ダイヤモンドに首根っこを掴まれている劉鳳、そして額から数ミリDISCが飛び出している服部。
 すぐにジョセフは、服部がクレイジー・ダイヤモンドを操っていることを理解した。
 そして――キレた。
356Classical名無しさん:08/03/25 01:55 ID:m9FJy7Lo
                               
 三村を殺した男が、三村が使っていたスタンドを使っていることに。
 三村のスタンドを、血で濡らそうとしていることに。
 しかも相手は勘違いとはいえ、殺人鬼と判断した自分に恐れず、本気で立ち向かってきた男だ。
 そう考えると、ジョセフは咄嗟にポケットの中のヨーヨーに波紋を流し、投擲した。



「テメェ、何してんだよ……ッ!
 シンジの……スタンドを……勝手に使おうとしてくれてんじゃあねえぜ……!」

 先程眠らせた男が、目を覚ましたようだ。
 服部が気を失ったことと、放送、そして服部の暴走。
 いきなり色々なことが起こりすぎて、やるべきことを見失っていた。まずは、奴を縛るなりしておくべきであった。
 しかし、この男はいま『シンジのスタンド』と言った。
 名前にシンジという文字列を含む参加者は、名簿を見る限り一人だけ。
 『三村信史』のみ。
 三村信史、桐山の学友にして守るべき対象。
 その三村信史のスタンドとは、一体どういうことだ。
 そして何故奴はヨーヨーを投げて、俺を助けたのか。
 断罪する前に、聞きださねばならない。

「…………」

 考えている間に、苦悶の表情を浮かべていた服部は、ブツブツと何かしらを呟いている状態に戻っている。
 スタンドに絡まったヨーヨーの紐は引きちぎられ、薄黄緑色の球体だけとなっている。
 その薄黄緑の球体をスタンドは掲げると、そのまま投擲した。
 ヨーヨーを投げたと思われる、先程眠らせた男に。

「くッ!」

 ボーッと考え事をしていた自分に苛立つ。
 いまその男を殺されるわけには、いかない。聞かねばならないことが多すぎる。
358Classical名無しさん:08/03/25 01:56 ID:e2uCRWgQ
           
 手刀で宙を薙いで、絶影の真の力を思念を以って制御している拘束具を解除する。
 既に第一形態の絶影を発現させておいたので、真・絶影を開放するのにかかる時間は僅か。
 大した時間もかからないで出現した真・絶影に飛び乗り、全速力で駆動させる。
 目標は先程眠らせた男。
 しかし、スタンドに投擲されたヨーヨーのスピードもかなりのもの。
 距離は縮まっていくが、男までの距離が短い。このままでは先に男が、ヨーヨーに体を抉られる。

「剛なる右拳、伏龍!」

 だから、絶影の腕を飛ばす。
 ロケットを思わせるスピードで宙を駆け抜ける伏龍は、瞬く間にヨーヨーを追い越し、男を掴み取る。
 男を掴み取った伏龍を真・絶影に戻すと、一時的に服部の攻撃から逃れるために、絶影の尾で地面を叩く。
 その圧倒的な衝撃の反動で、一気に上空へと昇る。
 その際にビチャリと気色の悪い音を立てて、コールタールが周囲に飛び散ったのだが、気にしないでおこう。

「なんで、アンタに襲い掛かった俺を助けたんだ?」

 空中で絶影を静止させると、絶影の右拳に掴まれた男が尋ねてくる。

「ふん。別に貴様など、どうなってもいい。だが、貴様は『シンジのスタンド』と言ったな?」
「……ああ、言ったぜ」

 やはり、聞き間違いでは無かったか。
 ならば――

「それは、どういう意味だ? 服部が操っているスタンドのことなのか? 三村信史と何か関係があるのか?
 類稀なる知恵者で悪を断罪する決心をした服部が、何故あんなにも錯乱しているのか、分かるか?
 そして――何故、俺に襲い掛かってきた貴様が、俺を助けた?」
360Classical名無しさん:08/03/25 01:56 ID:eTnxHfPY
 
361Classical名無しさん:08/03/25 01:56 ID:zS6R/oSg
      

 俺がこう言うと、男はかなり驚いたようだ。
 暫く何か考えたような素振りを見せると、今度は恐ろしく真剣な表情で俺を見据えて、口を開いた。

「オーケー、アンタが何を言っているのか全く理解を超えているが、ありのまま俺の知っていることを話すぜ。
 たぶん何を言っているか分からねーと思うが、俺も何が起こっているのか分からねー。
 とりあえずは、最後まで聞いてくれ」



【E−2 上空(真・絶影の右拳に握られている)/二日目/深夜】
【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左手骨折、全身打撲、精神疲労大、体力消費極大、深い悲しみ、脇腹にダメージ大、全身コールタールまみれ
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考・状況]
基本:BADANとかいうボケ共を一発ぶん殴る。
0:劉鳳に、自分の知っているありのままを話す。
1:つーか、なんでこいつはシンジを知ってんだ? アイツが、類稀なる知恵者で、悪を断罪する決心をした男? はァァアアア!?
2:シンジ殺したクソッタレをブン殴る。
3:S3駅、S1駅周辺を探し、かがみ救出のための仲間を探す
4:かがみを助け、村雨は殺す。
5:マップの端を見に行く。
6:一応赤石も探しとくか……無いと思うけど。
[備考]
※ハヤテ+零が出合った人間のうち、生き残っている人物及び知り合いの情報を得ました。
 (こなた、パピヨン、ナギ、鳴海、エレオノール、ヒナギク、覚悟)
※二部終了から連れてこられていますが、義手ではありません。
※吉良の名前に何か引っかかっているようです。
※水を使うことで、波紋探知が可能です。
※三村の留守電を聞き逃しました。
※主催者は目的は強者を決めることであり、その中にはイレギュラーもいると考えています。
363Classical名無しさん:08/03/25 01:57 ID:m9FJy7Lo
                                
※少なくともかがみとは別の時代の人間であるということを認識しました。
※波紋の力を使うことで対象のディスクを頭部を傷つけることなく強制排出することができます。
 ただし、かなりの集中力を要求します。
※マジシャンズレッドの火力は使用者の集中力によって比例します。
 鉄を溶かすほどの高温の炎の使用は強い集中力を要します。
 火力センサーは使用可能ですが精神力を大きく消耗します
 また、ジョセフのマジシャンズ・レッドは通常の炎の威力の調節が極端に難しい状態です。
 ただし、対象に直接マジシャンズ・レッドの手を当てて炎を出した場合に限り調節が可能です。
 修練をすれば通常の炎の精度が上がる可能性があります。
※S7駅がかなり脆くなっていることを発見しました。
※ジョセフとハヤテの約束。
 ハヤテはナギと会った後、ジョセフは仲間を募った後、必ず11時30分にS1駅に集合。
 その後、かがみ救出のために神社へ攻め込む。
※絶影をスタンドだと思っています。

【ジョジョとハヤテのBADANに関する考察及び知識】
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって”都合がイイ”状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては”どーでもイイ”状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。



【E−2 上空(真・絶影に乗っている)/二日目/深夜】
【劉鳳@スクライド】
[状態]:疲労中(随時蓄積中)、全身に小程度のダメージ、左肩と腹部にダメージ中、右拳骨折治癒途中(包帯が巻いてある)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料一食消費)、4色ボールペン、色々と記入された名簿、スタングレネード×2 、タバサの眼鏡
    タバサのデイパック(内容は液体窒素(一瓶、紙状態)、タバサの支給品一式 、色々と記入された名簿
[思考・状況]
基本:正義を全うし、ゲームとその主催者を断罪する。 死んでいった同志達の遺志を背負い、正義をなす。
0:男(ジョセフ)の話を聞く。
1:服部を止める。場合によっては――?
2:ルイズの最後の願いについてどうするか。
3:悪(主催者・ジグマール・村雨)は断罪、弱者(神楽)は保護。
4:防人の知り合い・桐山の知り合い・核鉄を探す。
[備考]
※絶影にかけられた制限に気付きました。
※桐山・防人・服部・タバサ・吉良・コナンと情報交換しました。
※平次の策に乗る気はありません。
※銀髪銀眼の顔に傷のある人物が殺し合いに乗った事を知りました。
※液体窒素の瓶(紙状態)、スタングレネードなどは、仲間の誰かに渡しても構わないと思っています。
※服部が撃った男(三村信史だが、名前は知らない)を殺し合いに乗った人間だと思っています。
366Classical名無しさん:08/03/25 01:58 ID:zS6R/oSg
     
367Classical名無しさん:08/03/25 01:58 ID:uT/XsDWk

368Classical名無しさん:08/03/25 01:58 ID:m9FJy7Lo
                     
369Classical名無しさん:08/03/25 01:58 ID:eTnxHfPY
 
370Classical名無しさん:08/03/25 01:59 ID:e2uCRWgQ
       





 上空の真・絶影に掴まれているジョセフと、真・絶影に乗っている劉鳳。
 彼らをどこか呆然とした様子で見つめている服部とクレイジー・ダイヤモンド。
 ただ無言。

「…………」

 『お前達を殺した輩を悪と断定し、必ず断罪する!!』
 劉鳳が自らの覚悟の証明として、守れなかった者達への誓いとして、夜空に叫んだ言葉。
 それが服部を今の状態へと陥れた。
 劉鳳が『お前達』という前にあげた名前の一つ、三村信史。
 彼の記憶を見てしまったが為、服部は己の非常に浅はかな行動に気付いてしまった。
 それだけだったならば、まだ引き戻れた。
 しかし、気付いていなかったとはいえ、劉鳳は言ってしまった。
 三村信史を殺した輩は悪だ――と。断定してしまった。

 普通の人間よりは強い精神を持っているとはいえ、服部はまだ高校生。
 劉鳳に自分の行動を告白しても、劉鳳が簡単に許すとは思っていなかった。
 しかし、悪だと言い切るとも思っていなかったのだ。
 覚悟も出来ていない状況で、いきなり、唐突に。悪だと、断定された。
 服部は咄嗟に思った。
 『黙れ』と。
 するとそれに答えるかのように、クレイジー・ダイヤモンドが発現した。
 そして劉鳳とジョセフを『黙らせようと』動いた。
 しかし、今のクレイジー・ダイヤモンドは不完全。所謂、暴走状態。
 元々滅茶苦茶に良いというわけではない、精密動作性が最悪に。もはや、激昂した三村が操っていたときと大して変わらない精度。
 結果。劉鳳には殴りかかり、ジョセフにはヨーヨーを思いっきり投擲。
372Classical名無しさん:08/03/25 02:00 ID:zS6R/oSg
   
 服部は吉良吉影から、スタンドは持ち主の精神をヴィジョン(像)にすると聞いていた。
 故に、服部は自らを嫌った。
 黙らせようとして殴りかかるスタンドに、自らの精神が具現化されているのだと、思い込んで。

 スタンドとは、その持ち主の『精神力の強さ』で操るモノ。『闘いの本能』で行動させるモノ。
 自らを嫌い、自暴自棄になっている今の服部には本来、スタンドを行動させる力がない。
 それなのにも関わらず、首輪によりスタンドを操る『適性』が存在する状態になってしまっている。
 そのせいで、服部は今もクレイジー・ダイヤモンドを発現させられているのだ。
 しかし本来はスタンドを行動させる力が無い以上、スタンドはマイナスに働き、持ち主に『害』になってしまっている。

 参加者に一人だけ、その事を知っていた男がいた。
 母親にスタンドが発現したものの彼女に操るだけの精神力が無く、自らに発現したスタンドは暴走状態になってしまうという、数奇な運命を克服した男が。
 しかし参加者で唯一その事についてを知っていた男――空条承太郎はもういない。
 この状況で、服部のスタンドの暴走を止めることが出来る者はいるのだろうか……


  To be continued ......




【E−2 地上/二日目/深夜】
【服部平次@名探偵コナン】
[状態]:精神疲労中(随時蓄積中)、全身コールタールまみれ、スタンドの暴走状態、精神力が弱まっているのでスタンドが害になっている
[装備]:スーパー光線銃@スクライド、携帯電話、核鉄ニアデス・ハピネス@武装練金、クレイジー・ダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:支給品一式(食料一食消費)、首輪、「ざわ……ざわ……」とかかれた紙@アカギ(裏面をメモ代わりにしている)、
    色々と記入された名簿、ノート数冊、ノートパソコン@BATTLE ROYALE、
    ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)、綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく(未開封)、
    ギーシュの造花@ゼロの使い魔、スティッキィ・フィンガーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険 (内容、使用方法不明)、
    キュルケの杖、拡声器、 核鉄ソードサムライX@武装錬金包帯・消毒薬等の治療薬、点滴用セット(十パック)
    病院内ロッカーの鍵(中に千切れた吉良の左手首あり)才人のデイパック(内容は支給品一式、バヨネット×2@HELLSING、
     紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)未確認)  
[思考・状況]
基本:江戸川コナンよりも早く首輪のトリック、事件の謎を解除する。
1:俺は――――――――
2:ルイズの最後の願いについてはどうするか。
3:シェリスを発見し、真実を明らかにする。
4:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
5:自分自身にバトルロワイアル脱出の能力があると偽り、仲間を集める(一時的に保留)
[備考]
※劉鳳と情報交換を行い、シェリスの名前を知りました。
※劉鳳、コナンの事は全面的に信用しています。吉良、神楽に対してはまだ保留しています。
※自分自身にバトルロワイアル脱出の特殊能力があると偽る策を考えています。
※バトルロワイアル脱出の特殊能力は10人集まらないと発動しません。(現時点での服部設定)
※脱出作戦を行うかはどうかは考え中。
※バトルロワイアル脱出の特殊能力についてはまだ吉良に言っていません。そのうち時期を見て言うかは保留です。
※銀髪銀眼の人物が殺し合いに乗った事を知りました。
※コナンと二人で立てた仮説、「光成の他の主催者の可能性」「光成による反抗の呼びかけの可能性」「盗聴器を利用した光成への呼びかけの策」 等について
 は、まだ3人に話していません。又、話す機会を慎重にすべきとも考えています。
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。
※クレイジー・ダイヤモンドのDISCには、三村信史の死ぬ直前の記憶がこびりついています。
※三村信史の死ぬ直前の記憶を見ました。



[服部平次と劉鳳の共通備考]
※劉鳳、服部、アーカードの持つ名簿には以下の内容が記載されています。
 名簿に青い丸印が付けられているのは、カズマ・劉鳳・シェリス・桐山・杉村・三村・川田・才人・
 ルイズ・防人・カズキ・斗貴子・タバサ・キュルケ・コナン・服部 ・灰原
 赤い丸印が付けられているのは、ジグマール・DIO・アーカード・散・村雨
 緑色の丸印が付けられているのは、蝶野
※劉鳳、服部、コナン、神楽は吉良がスタンド使いということを知りました。
※ルイズをF-3の川岸に埋葬しました。折れた軍刀は墓標として刺してあり、キュルケの杖、拡声器は服部が所持しています。
※ルイズの最後の願いについてはまだ話し合っていません。
※アミバの持っていた支給品一式×3 (食料一食消費) は、F−2民家の中にあります。
※アミバの持っていたノートパソコンには、大東亜共和国謹製のOSが組み込まれています。



[E−2地点に関する備考]
※三村の死体の傍に、マジシャンズレッド(魔術師の赤)のDISC@ジョジョの奇妙な冒険、
 七原秋也のギター@BATTLE ROYALE(紙状態)、支給品一式×2、木刀正宗@ハヤテのごとくがあります。
※幅数メートルのアスファルト製の壁があります。
※壁周辺にコールタールが散布されています。
※バイクCB1000(現地調達品)はE−2の路上に放置してあります。
376Classical名無しさん:08/03/25 02:02 ID:e2uCRWgQ
    
377Classical名無しさん:08/03/25 02:02 ID:K9uo3IaQ
支援
378Classical名無しさん:08/03/25 02:02 ID:uT/XsDWk


379Classical名無しさん:08/03/25 02:03 ID:TMUnFAV.
投下完了です。
誤字、脱字、その他アレ? と思う点がありましたら、指摘してください。
深夜にもかかわらず多数の支援、本当にありがとうございました。
380 ◆hqLsjDR84w :08/03/25 02:03 ID:TMUnFAV.
トリップ忘れてた。
IDで分かると思いますが、>>379は自分です。
381Classical名無しさん:08/03/25 02:05 ID:K9uo3IaQ
投下乙
だれが死ぬか分からない状況が作れたのはうまい
マジでハラハラした

しかし服部、劉鳳やっちゃったなぁ
ジョセフとのギスギス感は当分解消できないね
382Classical名無しさん:08/03/25 02:11 ID:m9FJy7Lo
投下乙! ……ちょっと6部見返してくるわ。このジョジョマニアめw
吉良を殺しているとはいえ、やはり対主催殺しは服部には重かったか。
誤殺という(少なくともこのロワでは)特殊な殺害方法をかなり上手く利用した展開ですね。
このDISCの利用の仕方はマジでびっくりさせられました。GJ!
383Classical名無しさん:08/03/25 02:12 ID:e2uCRWgQ
投下乙!
ギリギリの三人。そして服部の自分に対する疑心。
劉鳳とジョセフはこの壁を乗り越えれるのか?
上手い展開構成だと思いました。
GJ!
384Classical名無しさん:08/03/25 02:13 ID:1BV93kmo
投下乙

また対主催が追い詰められてる…w
短気と言うことでは劉鳳もジョセフも中々のもんだから説得は難しそうだw
385Classical名無しさん:08/03/25 02:15 ID:uT/XsDWk
>>380
GJです。
服部がヤバそうだ。立ち直れるのだろうか……?
いや、もしかしたらジョジョと劉鳳の協力くるか!?……厳しそうだw
しかし、DISCの初期設定持ち出してくるとは。
ああ、続きがきになるぜ!
386Classical名無しさん:08/03/25 02:18 ID:zS6R/oSg
投下乙!
これは……哀しい戦いだ。
劉鳳も服部も、おまえら、道化だよ……哀しすぎる道化だよ……。
387Classical名無しさん:08/03/25 02:46 ID:ZdbYUeGk
投下乙
DISCをこう使うとは…予想外でした。
服部もあの記憶を体感したら、さすがにこうなるか……
ジョセフ、服部、劉鳳、誰がどうなってもおかしくない状況を、巧く演出できていたと思います
GJ!
388Classical名無しさん:08/03/25 04:14 ID:rKXn8aO2
投下乙!
ジョジョお前巻き込まれ体質だな。今回ばっかは他人のせいでもないけどw
三村の友情は厚かったからその分服部には重いだろうな……復活はできそうだけど時間かかりそうだ
つか三村死んでも行動が浮かばれねぇw

分かり合えそうなのに分かり合えない3人を描く息詰まるSSでした!
389 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 17:51 ID:0anXLhzo
投下乙!
そうか……スタンドDISCにはこういう使い方もあるんですね。自分には全く思いつかなかったw
DISCの使い方、三者三様の葛藤の描写が素晴らしい!
三村の最期の記憶を見てしまった服部のこの先が特に気になってしまいました!
GJ!!


それと延長している自分の予約、覚悟、斗貴子、パピヨン、アカギのSSですが21時半頃に投下予定です。
長い間お待たせして申し訳ない。
少し長めなので、予定がなければ是非支援をお願いします!

390Classical名無しさん:08/03/25 18:48 ID:m9FJy7Lo
了解です。頑張ってください
391Classical名無しさん:08/03/25 20:17 ID:k3cgmL2o
392Classical名無しさん:08/03/25 20:22 ID:k3cgmL2o
途中送信しちゃった。

>>380
投下乙です。
ああ、みんなの行動が裏目に……
服部の決意も、三村がクレ・Dを投げたことも、ジョセフが仇をとろうとしたことも、劉鳳が正義を口にしたことまでも。
服部はどうなってしまうのか。本気になれば、劉鳳は服部を倒せるだろうけど……
いやあ、すごくハラハラするSSでした。しかし最後の最後でジョセフw ポルナレフじゃないかww

>>389
把握しました。待ってます。
393Classical名無しさん:08/03/25 20:34 ID:tDs1USo6
クレイジーだのフールだのと蔑称で呼ばれ続けても、俺は三村が好きだった
というかジョセフ&三村のコンビが大好きだった
だからだろう、この展開から全く目が離せん…ジョセフ頑張れマジ頑張れ

投下GJでした
394 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 21:32 ID:0anXLhzo
それでは覚悟、斗貴子、パピヨン、アカギ投下します。
395Classical名無しさん:08/03/25 21:59 ID:uOJGuCfA
396 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 21:59 ID:0anXLhzo
「――以上だ。簡潔ながら私の今までの行動を話させてもらった。」

校舎に存在する一室。
出入り口、直ぐ横に位置する教室で葉隠覚悟が口を開く。
背筋を伸ばし、礼儀正しく椅子に腰掛ける覚悟。
固い意志を燃やすその瞳の先には二人の男。
また、廊下側の壁に背中を預け、座り込んだ少女が居た。

「なるほど、礼を言うぞ。先程の襲撃の片割れは川田章吾という男か。しかもお前の元同行者だとはな」

椅子に腰掛け、黒いタイツに包まれた両足を、机に投げ出しながらパピヨンが口を開く。
そして、少し距離を開け、覚悟と向かい合っているパピヨンの斜め後方、窓際の壁。
そこに赤木しげるが壁にもたれながら腕を組み、覚悟の話を聞いている。
パピヨンとは違い、無言で覚悟の話に耳を傾ける。
言うまでもなく覚悟、パピヨン、アカギは今、情報交換を行っていた。
主に覚悟がこの殺し合いでどんな人物と出会い、どんな状況を潜り抜けてきたかについてを。

「その通りだ。だが、川田は真の悪鬼ではない。川田は――」
「その話は先程聞いた。泉の友達……柊つかさを救うために殺し合いに乗ったんだってな?そして――」

覚悟にはヒナギク達との待ち合わせの約束がある。
あまり多くの時間は掛けられないが、覚悟は川田とつかさの事は丁寧に説明を行った。
先程の襲撃者、川田の人柄や状況をパピヨンとアカギによく理解してもらいたかったからだ。
だが、飲み込みが早いパピヨンにとっては十分であり、わざわざもう一度言われなくても理解は完了している。
故に、覚悟の言葉が言い終わらない内に、パピヨンが口を挟む。
柊つかさを殺し、川田がこの殺し合い乗る事となり、泉こなたが死亡する要因を間接的に作った人物。
その人物のやってきた事が今になって、やっと知ることが出来たパピヨン。
にわかに信じられない事実を自分に言い聞かせるように、もう一度呟く。

「この女、津村斗貴子が少なくとも二人は殺したというコトを。正当防衛じゃない、積極的に殺しに行ったというコトをな」
397Classical名無しさん:08/03/25 22:00 ID:qWViBVp6
398Classical名無しさん:08/03/25 22:00 ID:m9FJy7Lo
                              
399Classical名無しさん:08/03/25 22:00 ID:IZ5fU41A

400 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:00 ID:0anXLhzo
声の調子から怒っているとは思えない。
かといって穏やかとはとても言えないパピヨンの声が響く。
その声を受け、覚悟は無言で頷いた。
一方、アカギは未だ静観を決め込む。
パピヨンが視線をチラッと、壁側に座り込む少女、津村斗貴子の方へ向ける
一般の者なら身震いを起こしそうな程に、鋭く研ぎ澄まされた瞳。
そんな瞳が斗貴子を刺し貫くように、睨みをきかせる。
だが、斗貴子は核鉄を行使し、人外の化物であるホムンクルスと闘う戦士。
幾多の闘いを潜り抜けてきた、斗貴子ならパピヨンの睨みにも身震いを起こす事もないだろう。
そう。『以前の彼女』ならば。

「ど……どうしたんだパピヨン? そんな怖い顔して……やめてくれ……やめてくれ……。
そんな怖い顔をされたら……私はおかしくなってしまいそうなんだ」

今の斗貴子は誇り高き戦士としての、面影は微塵も感じさせない。
想い人、武藤カズキともう一度会うため、斗貴子は堕ちた。
そしてつい先程、パピヨンに自分を否定され、斗貴子の精神は更なる異常をきたした。
判断力が極限まで失われ、ストレスが伴うような行動は絶対に起こさない。
自分が既に、異常な精神状態に置かれていると自覚がない程だ
そんな状況ではあるが、斗貴子は立ち上がり、ゆらゆらとした足取りで教壇の方へ歩き始める。

「津村さん……」

今にも倒れこみ、机や床に頭をうちつけそうな斗貴子。
そうこうしている内に、斗貴子の体勢が大きく崩れ落ちた。
思わず覚悟は立ち上がり、手を差し伸べ、斗貴子の転倒を阻止し、彼女に痛みが伴わないように引っ張り上げる。
牙なき人々を守るために存在する覚悟の手に、斗貴子の真っ白な手が重なり合う

「ありがとう。君は優しいな」
「……仔細ない」
401Classical名無しさん:08/03/25 22:01 ID:uOJGuCfA
402Classical名無しさん:08/03/25 22:02 ID:m9FJy7Lo
                               
403 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:02 ID:0anXLhzo
以前闘った時、確かに覚悟の瞳に焼きついた殺意に満ちた斗貴子の瞳。
その瞳が今ではあまりにもうつろなもので、別人とも思える程、変貌している事に覚悟は驚きを隠せない。
闘った事があるにも関わらず、素直にお礼を言う斗貴子。
パピヨンに精神を破壊され、未だ混乱の真っ只中にいる斗貴子は、覚悟が誰か気付いてはないからだ。
己の恋人、武藤カズキを殺したと思い込んだ相手、アカギ。
そのアカギにさえも、斗貴子は彼を忘れ、絆創膏を張ってあげようと優しく接した。
その事から混乱状態に陥っている斗貴子が、一時的に覚悟の事を忘れていても可笑しくはない。

「だけど私はカズキのものなんだ。君の気持ちだけは受け取っておく事にしておくよ」

急に脈絡のない言葉を口走り、斗貴子は少しぶっきらぼうに覚悟の手を振り解く。
予想外の言葉を受けた事で、覚悟は唖然としながらその場に立ち尽くす。
先程の言動からして、斗貴子の状態が最悪に近い事を再認識する覚悟。
再び歩を進めた斗貴子を、複雑な瞳で見送っていく事しか覚悟には出来ない。
やがて、パピヨンの前に立った斗貴子がうわ言を呟くかのように口を開く。
その表情が浮かべる感情を、言葉で表現するのは難しい。

「カズキの……私だけの……サンライトハートを返してくれ。これさえあれば私は何も要らないから……」

生前、カズキが己の信念を貫くために用いたサンライトハート。
教卓の上に置かれた、銀の刀身、橙の色彩が施されている一本の槍へ斗貴子は視線を向けた。
カズキそのものとも言える、サンライトハートは斗貴子にとって大きな意味を持つ。
次第に恍惚な表情を醸し出しながら、斗貴子は手を伸ばそうとする。
勿論、サンライトハートをもう一度、握り締めるために。

「待て、津村。俺は許可していない。貴様には勝手に行動する権利は与えていないからな。さっさとそこら辺にでも座っていろ」
404Classical名無しさん:08/03/25 22:03 ID:uOJGuCfA
405Classical名無しさん:08/03/25 22:03 ID:m9FJy7Lo
                    
406 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:03 ID:0anXLhzo
だが、斗貴子の行動をパピヨンが抑制する。
聞くものを威圧させるかのように、低く、ドスがきいた声が斗貴子に届く。
視線を合わせなくても、感じられるパピヨンの威圧感に斗貴子は思わず手を止める。
サンライトハートは欲しい。
でも、これ以上パピヨンに怒られ、痛い目は見たくない。
あまりにも臆病な思考下に置かれた、斗貴子の身体は硬直し始める。
しかし、どうしてもサンライトハートの、カズキの温もりをまた感じたい。
そう意を決し、パピヨンの方を振り向き、口を開こうとするが――

「聞こえなかったか? 座れと言ったんだ。グズグズするんじゃない……!」

先程の表情よりも険しく、言葉だけの時とは段違いな威圧に塗れた恐怖。
自分を下等な蛆蟲のように、見下す視線を受けた斗貴子の表情が歪む。
立ち尽くしていた覚悟は、心なしかパピヨンを非難するかのような視線を送る。
アカギは未だ静観を続け、パピヨンはそんな覚悟とアカギに一切の視線は送らない。
只、脅えた表情で自分を凝視し続ける斗貴子だけに、鋭い眼光を注ぐのみ。

「……ひっ! ごめんなさい……」

より鋭さが増したパピヨンの両眼。
その両眼から逃げるように、斗貴子が後ずさる。
両肩が、身体全体が不自然な身震いを起こし、へたれ込む斗貴子。
湧き上る恐怖を必死に押さえつけるかのように、頭を両腕で抱える。

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
もう逆らいません。だから……痛いのは止めて………………」
407Classical名無しさん:08/03/25 22:03 ID:uOJGuCfA
408 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:04 ID:0anXLhzo
先ほどの言葉を皮切りに、頭を抱えながら謝罪の言葉を繰り返す。
金切り声にも取れる程、悲痛に満ちた声と共に吐き出された大粒の涙。
パピヨンによって、自分の全てを否定された斗貴子はパピヨンへの恐怖が強くなっている。
ヴィクターのような力関係から来る恐怖とは、また異質な恐怖。
先程、感じた恐怖はもう絶対に嫌だ。
そのため、パピヨンの感情を逆立てするような事はやめ、ひたすらに許しを願い続ける。
一方、パピヨンは斗貴子を心底軽蔑した眼つきで見下す。
最早、誇りなどいう言葉には全く無縁になった斗貴子に、冷め切った視線を突き刺す。
そんな時だ。

「……津村さん。少し私と話が出来ないだろうか?」
「え? も、勿論だ! 私と一杯話そう!」

ふと、覚悟が斗貴子に自分と話をするように持ち掛ける。
覚悟の事を未だ思い出せていない斗貴子はパピヨンから逃げるように、覚悟の方を振り向く。
恐怖の元凶であるパピヨンの機嫌を損ねずに、自分のストレスが溜まらないなら何だっていい。
その表情には喜びが広がり、今にも覚悟の方へ抱きついていきそうな様子さえもある。
そんな斗貴子の表情を、覚悟はどうにも直視出来ない。

「俺達は席を外そう。適当な時間に戻ってくる」
「かたじけない」

少し退屈そうに、席を立ち、サンライトハートを持ちながらドアへ向うパピヨン。
パピヨンに律儀にもわざわざ一礼を行う覚悟。
鼻に付く礼儀正しさに、パピヨンがほんの僅か表情を歪めるが、直ぐに顔を背ける。
そのまま振り向く事もなく、教室からパピヨンが出て行った。
だが、依然この教室には覚悟と斗貴子以外に、一人居る事を忘れてはならない。
409Classical名無しさん:08/03/25 22:05 ID:K9uo3IaQ
倍支援だ
410Classical名無しさん:08/03/25 22:05 ID:uOJGuCfA
411Classical名無しさん:08/03/25 22:05 ID:eTnxHfPY
 
412Classical名無しさん:08/03/25 22:05 ID:e2uCRWgQ
  
413 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:05 ID:0anXLhzo
「なぁ……あんた、一体何を話すつもりなんだい……?」

そう。今まで、黙って覚悟、パピヨン、斗貴子のやり取りを静観していたアカギだ。
不敵な表情を浮かべ、覚悟に疑問の言葉を投げ掛ける。

「私には津村さんを知りたい」
「……知ってどうする? その後、仲良く手を取り合うつもりか……この女はいきすぎた……それでも、出来るのか……?」

毅然とした態度で返答を返す覚悟に、アカギが更に質問を続ける。
強固な意思に漲る覚悟の両眼を、どこか冷やかな眼で眺め返すアカギ。
アカギの両眼に映る意志を覚悟はいまひとつ掴む事は出来ない。
真剣な眼差しで対峙する覚悟とアカギを心配そうに見渡す斗貴子。
そんな斗貴子を苦渋の表情でチラッと眺め、意を決したかのように覚悟がアカギと再度向き合う。

「……過酷な道だとは思う。
川田やヒナギクさんも直ぐには受け入れるコトは無理かもしれない。つかささんの姉、柊かがみさんもやりきれない想いを抱えるかもしれない
だが、それでも私は――」

自分でも甘い考えだとは思う。
たとえ牙なき人々のため、心を繋いだ仲間達を守るためとはいえ一時は裏切ってしまった約束。
今さらどんな顔をして、もう一度この約束を口にすればいいのだろうか?
煮え切らない気持ちを無理やりにでも、決意の糧に昇華する。
どうしてもやり遂げなければならない事だと心で感じたからだ。

「私はルイズさんの願いを叶えたい。気高く、この世界に咲き誇る一輪の薔薇のように、華美に散った彼女の意思を……もう無駄にはしたくない。
彼女が、己の命が果てるまで貫き通した信念を……私が受け継ぐ! それがルイズさんとつかささんへの最上の供養になるハズだ!」

桃色のウェーブがかかったロングヘアーの少女、大切な仲間であるルイズから託された言葉。
『もう一人の自分』と斗貴子を称し、温かな笑顔と共に散ったルイズの意思。
一度は断念した『斗貴子を救う』という目的を、ルイズの意思を覚悟は更に胸の奥底で燃やす。
これからも、斗貴子を一人の牙なき人と見なし、守る事を決意する覚悟。
声の調子が明らかに勢いづいた覚悟をアカギは冷静に観察する。
414Classical名無しさん:08/03/25 22:05 ID:m9FJy7Lo
                                
415Classical名無しさん:08/03/25 22:05 ID:eTnxHfPY
 
416Classical名無しさん:08/03/25 22:05 ID:IOujpPvQ
 
417Classical名無しさん:08/03/25 22:06 ID:uOJGuCfA
418 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:06 ID:0anXLhzo
「なら……いいさ。幸運を祈っている……上手くいくといいな……」
「かたじけない! やはり貴殿達は素晴らしい人格者だ!」

だが、斗貴子は既に二人は殺している事が判明しており、手首がない事から他にも戦闘を行っている事はわかる。
あまりにも、道を外れてしまった斗貴子を今更救う。
甘い考え、無謀な考えだと非難されても仕方ないと覚悟は思っていた。
だが、アカギは非難する事もなく、それどころか励ましの言葉を掛けてくれた。
アカギのその行動は自分を尊重する思いやりから来たものだと覚悟は理解した。
何故なら斗貴子に殺し合いを止めさせた、パピヨンとアカギには覚悟は一目置いているからだ。
勿論、二人がどんな手段を使い、斗貴子に殺し合いを止めさせたかは知らないが。

「…………ああ。それじゃあ後でな……」

覚悟の一礼に送られながら、アカギがドアへ向う。
ドアを開け、廊下に出たアカギは直ぐ横の壁にパピヨンが持たれかけているのを見つける。

「……笑えんな」
「…………さぁな」

目線を合わせずに、パピヨンとアカギが言葉を交わす。
とても短い言葉をぶつけて。
419Classical名無しさん:08/03/25 22:06 ID:eTnxHfPY
 
420Classical名無しさん:08/03/25 22:06 ID:e2uCRWgQ
   
421 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:07 ID:0anXLhzo
「時間を取らせて申し訳ない。それでは――」

床に座りこんでいる斗貴子の目の前に、正座をし、覚悟が口を開く。
以前闘った時の言動からして、斗貴子が何故殺し合いに乗ったのかは予想出来る。
深い愛に結ばれていたと思われる人物、武藤カズキという男との再会。
十中八九その線が強いと考えていた覚悟は別の事を、彼女の生い立ちなどを知ろうと口を開きかけるが――

「わかっている。カズキのコトが知りたいんだろう?」
「なっ!?」

覚悟の言葉に割り込み、出てきた斗貴子の言葉はまたもやカズキについて。
カズキの事を一言も口にしていない、覚悟の表情に驚きが浮かぶ。
覚悟が本当に知りたい事はカズキの事ではなかったが、とてもその事を覚悟は口に出来ない。
何故なら自分を見る斗貴子の顔がとても、嬉しそうな笑顔をしていたから。
以前、悪鬼そのものとも言える形相を浮かべていた顔と、同一のものとはとても思えない。
痛々しいとも思える程の笑顔が覚悟を嬉しそうに見つめていた。

「カズキはな。とてつもなく強いんだ!ホムンクルスの化物共を一匹残らず殺せる!
君やパピヨンが何人居たって絶対に敵わない! サンライトハートでどんな敵だって倒せる!
カズキのサンライトハートはとても固くて、深く、どんな時でも奥まで突き刺さる!
いつも皆のために、ううん、違う。私だけのために闘ってくれる。私だけの男なんだ。優しくて、雄雄しくて、誇り高くて最高だ!
カズキになら私はなんだってやってあげられる! どんなものでも差し出す事も出来る!
私はカズキが一番だ!
勿論カズキもきっと私が一番だ! そうに決まっている。いや、そうじゃないと可笑しい!
だって私はこんなにもカズキを愛している! 私の愛が報われないわけがないさ!」

流れるように、それでいて長々とカズキへの賛美を続ける斗貴子。
事実と己の中で生み出した妄想で塗り固められたカズキの人物像を、斗貴子は歓喜の表情で述べる。
自分だけの存在であって欲しいカズキへの願望を、吐き出しているに過ぎない状況に斗貴子は気付かない。
声のトーンも大きさも増長した斗貴子のそんな言葉一つ、一つを覚悟は只、黙って聞くことしか出来ない。
422Classical名無しさん:08/03/25 22:07 ID:uOJGuCfA
423Classical名無しさん:08/03/25 22:07 ID:K9uo3IaQ
蝶・支援!
424Classical名無しさん:08/03/25 22:07 ID:e2uCRWgQ
         
425 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:07 ID:0anXLhzo
(一体どうしたというのだ? 以前よりも更に身勝手な言動。これでは……あまりにも哀れすぎる……!)

身勝手な願望を述べる斗貴子には覚悟は嫌悪というより、哀れみさえも感じてしまった覚悟。
以前、自分の言動には全く耳を傾けなかった斗貴子の変貌。
パピヨンに過剰とも言える程、恐れを抱いている斗貴子の現状。
この事からパピヨンとアカギが多少強引な手を使い、斗貴子を説得した事は予想がつく。
だが、自分の予想以上に厳しい説得、いや尋問じみた事が行われた事に覚悟は思わず顔を顰める。

(だが、津村さんから殺意を失わせなければ、更に牙なき人々の命が失われたかもしれん。彼らの行動は間違っているとも思えない……
この手段しかなかったハズだ……)

しかし、斗貴子が以前、自分と出会ったままの状態の方が尚更悪い事も事実。
今は混乱状態にあるため、きっと自分でも何を言っているのかよくわからないのだろう。
ならば、これから自分達が斗貴子を落ち着かせていけばいい。
そう考え、覚悟はパピヨンとアカギの行動を正しかったと認識する。

「カズキは只の高校生だったんだが、私を守るために戦士になった。きっと私達は予め結ばれる運命だったんだ! うん、そうに間違いない!」

だが、覚悟の意を尻目に斗貴子の言葉は依然終わる気配を見せない。
既に斗貴子は覚悟の方を向いていなく、どこか俯いた様子で喋る。
覚悟に向けて話すというよりも、自分に言い聞かせているという方がしっくりくる。
そんな哀れとしか言いようのない斗貴子を見つめる覚悟。
こんな状態では、自分の聞きたい事を問うのは止めておいた方がいいかもしれない。
そう考え、閉じきった唇を開き、適当な相槌を打つために覚悟は言葉を出そうとする。
そんな時、ふと斗貴子が口を開いた。
426Classical名無しさん:08/03/25 22:08 ID:uOJGuCfA
427Classical名無しさん:08/03/25 22:08 ID:.dPvHPQM
428 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:09 ID:0anXLhzo
「そういえばさっき君はルイズ、つかさと言っていたが……私はその二人を知っている気がするんだ。
それに、そもそも――」

極度の混乱状態から斗貴子はアカギや覚悟の記憶を一時的に失っている。
彼女が持っている記憶は元の世界の知り合い、パピヨン。そして最愛の存在であるカズキ。
あまりにも印象は強いが、斗貴子がルイズやつかさと関わったのは数十分程しかない。
斗貴子が一時的に彼女達を忘れていても、絶対に有り得ないというわけではなかった。
ルイズとつかさの事を口に出した斗貴子を、覚悟が真剣な眼差しで見守る。
覚悟の視線を受け、満を持して斗貴子の口が再び開いた。

「君は誰だ? 私は君にもどこかで会った気がするんだが……教えてくれ。君は一体――誰なんだ?」

心底不思議そうな、無垢な両の瞳。
その瞳に一瞬気持ちが揺れるが、今、自分の名を教えては無用な刺激になってしまうのではないか?
そんな考えを走らせる覚悟。
だが、斗貴子は自分やルイズ、つかさの事を覚えていないという事実もある。
何よりも斗貴子は忘れてはならない。
斗貴子は自分がやってしまった事の償いから逃げる事など許されない。
そう考え、心を鬼にし、覚悟は口を開く。

「……葉隠覚悟。牙無き人々の剣、葉隠覚悟だ」

斗貴子と出会った事は言及せず、己の名を告げる。
そんな覚悟の名を聞いた時、斗貴子の表情に変化が生じた。

「覚悟……? まさか……嘘だ……まさかあの……い、いやだ……私に、私に……」
429Classical名無しさん:08/03/25 22:09 ID:gSwaOeWk

430Classical名無しさん:08/03/25 22:10 ID:m9FJy7Lo
                             
431Classical名無しさん:08/03/25 22:10 ID:uOJGuCfA
432Classical名無しさん:08/03/25 22:10 ID:e2uCRWgQ
        
433Classical名無しさん:08/03/25 22:11 ID:m9FJy7Lo
                      
434 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:11 ID:0anXLhzo
動悸が激しくなり、呼吸が荒々しくなる。
呼吸によって吐き出された息が音を立てるほど、激しい。
HOLYの制服である短いスカートがはだけるのをも構わずに両腕、両足を必死にバタつかす。
身体を覚悟から1ミリでさえも離れようと、不自然にくねらせる。
喘ぐ様に吐き出す声が、斗貴子の状況を象徴するかのように何度も零れる。
そんな斗貴子の様子を見て、覚悟は自分の軽率な行動を後悔するが既に遅い。
斗貴子は思い出してしまったから。
自分と闘い、自分にとても痛い、苦痛が伴う拳を与えた男。

「私に近づくなああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!」

葉隠覚悟の事を斗貴子は思い出してしまったから。


ありったけの叫び声を上げ、自分を傷つけた存在である覚悟を避ける斗貴子。
怒りではない。只、もう二度と傷つきたくない一心で、斗貴子は覚悟に脅える。
尋常ではない様子の斗貴子を案じ、覚悟が彼女に近づこうと試みる。

「落ち着いてくれ、津村さん! 私は――」
「来るなッ! 私を殺すんだろう!? そうに決まっているッ!!」

覚悟の言葉には全く耳を傾けず、ひたすら恐怖をぶち撒ける。
既に覚悟は斗貴子にとって闘いあった敵、それもカズキと同等の強さを持っている程の強敵。
サンライトハートもない今、自分がこの男に勝てるわけがない。
それにもう、ストレスが溜まるような殺人は犯したくない。
パピヨンの話からすれば、カズキもその事を認めないだろう。
かといって、逃げる事もきっとこの男は許さないはず。。
435Classical名無しさん:08/03/25 22:11 ID:eTnxHfPY
 
436Classical名無しさん:08/03/25 22:12 ID:uOJGuCfA
437Classical名無しさん:08/03/25 22:12 ID:gSwaOeWk
  
438Classical名無しさん:08/03/25 22:12 ID:e2uCRWgQ
         
439 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:12 ID:0anXLhzo
「私は貴女を救いたい! もう二度と人を殺めないと誓うのなら!!」

覚悟の自分を救うという言葉は斗貴子にとって、斗貴子は到底信じられない。
覚悟の真剣な表情は斗貴子にとって、偽りで塗り固められているようにしか見えない。
覚悟の眼差しは斗貴子にとって、とても汚らわしく、耐え難い不快感が湧き上る。
覚悟の事を思い出した斗貴子には、彼が信用に値しない人物だと確信しているから。

「――――嘘だ。嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、絶対に嘘だッ!!」
「何故だ!? 何故そこまで私のコトを!?」

心底不思議そうな表情を向ける覚悟に斗貴子は恐怖が混じった瞳で、見返す。
斗貴子が覚悟を信じる事が出来ない理由。
いたって単純で、それでいて解決するのは困難な事。

「どうせ、あの時のように私を騙すんだろう!? 『策はない』とか言っておきながら、私を騙して……今度こそ私を殺すつもりなんだろう!
それしか考えられないじゃないか!!」

それは以前、闘った際に覚悟が取った行動が関係していた。
ルイズの意思を尊重し、抵抗はせずに斗貴子を救おうとした覚悟。
だが、斗貴子のサンライトハートに貫かれる寸前、覚悟の心は揺れた。
ヒナギク、つかさ、川田の守りたいと願った笑顔が脳裏に浮かび、気が付けば反撃を行っていた。
だが、斗貴子は覚悟のそんな心境を知っているわけがない。
斗貴子にとって覚悟は初めから嘘をつき、自分を騙そうとした事実しかない。
覚悟の事を思い出しただけで、依然、混乱状態にある斗貴子は判断力も低下している。
一度そう思い込めば、それが揺るぎようの無い事実だと斗貴子は確信してしまった。
440 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:25 ID:0anXLhzo
「ッ!……否! 断じて否! 落ち着いて私の話を聞いてくれ、津村さん!」

確かに以前、自分の行動を考えれば斗貴子が自分の事を信じられないのも無理はないかもしれない。
いくら言葉を飾り、言い繕っても自分が騙しうちの形で斗貴子に手傷を与えたのは事実。
だが、このまま斗貴子に誤解される事は避けなくてはならない。
何故なら、覚悟の中では斗貴子は既に守るべき対象の一人になっている。
そのため、斗貴子の誤解を解くために、覚悟は再度彼女に言葉を掛ける。
斗貴子が落ち着いて自分の話を聞いてくれるように、彼女の両肩に手を掛けようと両手を伸ばす。

「――い」

だが、覚悟の斗貴子を案じた行動は彼女に更なる感情を煽った。
覚悟の両腕。それは牙なき人々を守る両腕。
だが、斗貴子にとっては所詮、ある感情の対象でしかない両腕。
筋肉で塗れ、自分の身体を幾度も無く打ち付けた両腕が斗貴子の両肩に迫る。
覚悟の両腕がまるでビデオテープのスロー再生のように、自分に迫るのを斗貴子は凝視していた。
だらしなく口を開け、ある感情によって引きつった顔で斗貴子は座り込んでいる。
やがて、覚悟の両腕が斗貴子の両肩に触れた瞬間。
斗貴子の全身に、痺れを伴う不愉快な電流が駆け巡った。
斗貴子が感じた感情によって。
そう。言うまでもなくその感情とは――
441Classical名無しさん:08/03/25 22:27 ID:LM2nKsdY
 
442Classical名無しさん:08/03/25 22:27 ID:qCsESksg
443Classical名無しさん:08/03/25 22:28 ID:K9uo3IaQ
支援ッ!
444 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:28 ID:0anXLhzo
「嫌ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっ!!」

精神が押しつぶされる程の恐怖という感情。
斗貴子にとっては恐怖の対象でしかない覚悟の両腕が自分に触れた。
自分を傷つけた存在が、自分を騙した存在が再び自分に触れる。
馬鹿みたいに強い力を引き出す両腕が自分の直ぐ傍まで伸びている。
何のために? 自分をどうするつもりか? 考えるまでもない。
きっと、いや、絶対に自分を――殺すつもりなんだ。
そう考えた瞬間、斗貴子の意識は闇に沈んだ。

◇  ◆  ◇

「津村さん!……くっ! 私は愚かだった……」

耐え切れない恐怖により、気絶してしまった斗貴子。
自分の責任を悔いながら、覚悟は斗貴子を介抱する。
斗貴子の全身は汗に塗れ、発熱すらも起きていた事に覚悟の焦りは募る。
素早く教室の机を並べ、斗貴子を横にさせ彼女の身体に手を掛けようとする覚悟。

「おーい、そろそろいいか? 入るぞ……ん?」
「…………どうした? 何かあったか……?」

そんな時、ドアを開け、パピヨンとアカギが教室に戻った。
直ぐに横たわる斗貴子を見つけた二人の表情には当然、驚きの色が見える。
覚悟の元へ駆け足で近づく二人。

「真に申し訳ない! 実は――」

やはりパピヨンとアカギは斗貴子の身を案じていた事に嬉しさを感じながら、覚悟が口を開く。
自分が斗貴子とどんな話をし、彼女がどんな行動を取ってしまったかについてを。
445Classical名無しさん:08/03/25 22:29 ID:K9uo3IaQ

446 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:29 ID:0anXLhzo
「――以上だ。仔細無く眼を覚ましてくれればいいが……私は津村さんに無要な恐怖を与えてしまった。私は未熟だ……」

事の詳細を全て話しきった覚悟が口を開き、項垂れる。
真剣な表情で聞いていたパピヨンとアカギ。
覚悟の話の途中に口を挟む事なく、表情もあまり変化せずに二人は聞き入っていた。
その無言が自分の行動を戒める事を、暗に意味しているのではないかと覚悟は思い始める。
そもそも一度説得に失敗し、あまつさえ騙し打ちをしてしまった自分。
そんな自分は斗貴子と必要以上に関わるべきではなかったかもしれない。
だが、覚悟の両耳に思いがけない声が入る。

「気にするな。いずれこの女は思い出さなければならん。寧ろ、葉隠、お前の行動は賞賛に値する」
「ああ……お前はよくやった、ベストの手ではないかもしれない……だが、少なくともベターではある……俺はそう思う……」

依然、真剣な表情で覚悟へ賞賛の言葉を送るパピヨンとアカギ。
更に彼ら二人は片腕を覚悟へ伸ばしている。
その二人の行動が、自分に更なる友好を示していると見て取った覚悟の心が感動に呑まれた。

「かたじけない……! 貴方方の……貴方方のような人格者達と出会えたコトは一生の名誉だ!」

パピヨン、アカギという順で彼らの手を両手で握り返す覚悟。
その表情には喜び一色。
パピヨンとアカギの人柄に感動を覚えたため、一覚悟は一種の興奮状態にある。
そのため、握手に込めた力が少し強くなった事に覚悟は気付いていない。

「気にするな。この女はしばらくこのまま寝かしていれば、大丈夫だろう。それよりも――」

嫌な顔はせずに、あまり表情は変えずにパピヨンが口を開く。
何事か?と思い覚悟が耳を傾ける。
だが、パピヨンはそれ以上口を開こうとはしない。
447Classical名無しさん:08/03/25 22:30 ID:Ob76TlVU
448 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:30 ID:0anXLhzo
「やってもらいたいコト……知ってもらいたいコトがある…………」

何故かパピヨンの言葉をアカギが続けたから。

◇  ◆  ◇

エリアD-4を、弾丸のように駆け抜ける影が一つ。
漆黒のライダースーツを纏った男、葉隠覚悟が疾風となり駆けていた。
学校を出る時、入り口の近くに一台の常用車を発見した覚悟だったが彼には運転は出来ない。
そもそも、覚悟には鍛え抜かれた両脚があるので特に意味を持たなかった。
そして覚悟が向う目的地はS-7駅。
そう。覚悟はパピヨンとアカギにヒナギク、村雨、かがみとの合流を即座に行うように頼まれていた。
元々、放送が終わった後にS-7駅で落ち合う約束をしていた覚悟とヒナギク。
かなり時間が遅れてしまっているため、覚悟は一刻も早く向いたかった。
また、川田の行き先も見失ったため、彼を追えば時間を無駄にする可能性もある。
そのため、パピヨンとアカギの提案を覚悟は快く了承した。
斗貴子の様子が少し気になったが、パピヨンの言った言葉。

『この女は俺達に任せておけ。警戒を強め、外部からの侵入は鼠一匹も許さん』

信頼に足る人物、パピヨンの言葉に覚悟は深い安心感を覚えた。
更に学校にはケンシロウ、愚地独歩という男もやってくるらしい。
パピヨンが持つ詳細名簿で、容姿、生い立ちに眼を通すかぎりでは十分過ぎる程信用に値した。
そもそも、パピヨンとアカギの協力者という時点で、覚悟には彼らの人柄を疑う余地はない。
そして、覚悟はパピヨンから衝撃的な話を聞いていた。
449 ◆14m5Do64HQ :08/03/25 22:31 ID:0anXLhzo
「すまんパピヨン殿……貴殿も必死に思いを耐えていたのか。それを知らずに私は川田のコトを……。私があの時、川田を止めていればあんなコトには……」

川田のハルコンネンの砲撃によって崩壊した職員室を案内された覚悟。
そこで覚悟は見てしまった。理解してしまった。
思わず鼻を摘みたくなる様な異臭。
瓦礫の山々の随所に姿を見せていた赤黒い肉片。
衝撃により引き裂かれ、辺りに散乱した青い髪の毛。
つかさの友人、そしてパピヨンの同行者であった泉こなたの死。
しかも川田の襲撃のせいで、こなたが死んだという事実は覚悟の心を激しく動揺させた。
こなたが最期の時に感じた恐怖を伴う痛み。
パピヨンが川田の事を擁護する自分の話を、どんな気持ちで聞いていたか。

「川田……お前は、お前は愛するつかささんの友人を……彼女の想いを踏みにじってしまった! 今のお前に私はかけてやる言葉すら浮かばない……」

心の中で覚悟は涙を流す。
きっと川田は自分が誰を殺したかをわかってはいない。いや、わかるはずもない。
だが、川田がこなたを、つかさの友人を殺したという残酷な現実は消えない。
その事実の鎖が知らず知らずの内に、川田の全身に巻き付いている事に覚悟は悲しみを見せる。
だが、今は悲しみに打ち震え、脚を止めているわけにはいかない。
覚悟には、未だ待っている人々が居るから。

「アカギ殿に託されたこの核鉄。ヒナギクさんか柊かがみさん、もしくは別の牙無き人。
彼らに託すまでは……私に停止する意思はない!
アカギ殿が私を信じてくれた想いは無駄にはできん!」

また、覚悟はアカギから核鉄、シルバースキンの核鉄を預かっていた。
幼き頃から零式防衛術を学んでいた覚悟にとっては、己の身体があれば戦闘に十分。
そのため謹んで拒否しようした覚悟だったが、アカギの言葉により覚悟は核鉄を預かる事になった。
450Classical名無しさん:08/03/25 22:59 ID:l5or8U92
支援
451Classical名無しさん:08/03/25 23:00 ID:r3u0kGGM
支援
452Classical名無しさん:08/03/26 00:51 ID:/02YLQu6
 
453Classical名無しさん:08/03/26 01:16 ID:mRKSHS.s
支援
454Classical名無しさん:08/03/26 01:39 ID:qsJ.s/i6
 >>449 以降は、負荷のため途中で書き込み不能になっていたため、残りが一時投下スレに貼られています。
455 ◆14m5Do64HQ :08/03/28 20:02 ID:qBzsHqN2
上の自分の作品ですが、少し思う事があったので登場人物の時間を深夜に変更します。
誠に申し訳ないです。
456 ◆1qmjaShGfE :08/03/28 23:56 ID:3v.6EDEI
そろそろ期限となりますが、大変申し訳ありません。まだ書き終わっておりません
コナン、神楽、勇次郎の予約を破棄します。長期間に渡りキャラを拘束した事、また度々の延長、深くお詫び申し上げます
457Classical名無しさん:08/03/28 23:58 ID:Q90tLQ.A
残念です……でも、一日二日くらい再延長したっていいじゃない。だって終盤だもの。
458 ◆1qmjaShGfE :08/03/29 00:05 ID:u30tKSoE
もし、書き終えて……それでも誰も予約していなかったら、再度予約し、落とすといった規定に従おうと思います

だってコナンですよ、ネタ王神楽ですよ、最凶マーダー勇次郎ですよ、そんなんみんな書きたいに決まってますです
でもそんな一言がとても嬉しいです。ありがとう
459 ◆YbPobpq0XY :08/03/29 10:24 ID:MEC6RHjY
>>458
頑張ってください


それとスイマセン、自分も書き終わらんので延長お願いします
460Classical名無しさん:08/03/29 22:48 ID:lZ368wHo
了解です。お二人とも、頑張ってください
461Classical名無しさん:08/03/29 23:15 ID:dAy3Ch2c
お二人とも頑張って〜。
あとwiki編集してくれた人もGJ!
462 ◆9igSMi5T1Q :08/03/30 13:00 ID:GORuF522
ラオウ予約延長します。報告遅れてすいません。
463 ◆1qmjaShGfE :08/03/30 19:54 ID:ipfvt3xI
コナン、神楽、勇次郎、投下します
464鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 19:55 ID:ipfvt3xI
勇次郎の後方200メートル地点にてその様子を伺うコナンと神楽。
不意に、梟がその進行方向を変える。
真後ろに、そう、コナンと神楽が居る、その方向に向かって。

押し殺した声で呟く神楽。
「あのクソ鳥叩き落していいアルか?」
「バカ! そんな事やってる場合か! 居所がバレる前に逃げるぞ!」
小声で怒鳴るという器用な真似をするコナンは、神楽の手を引き逃げようとするが、神楽は引きつった笑いで逆にその手を引っ張って止める。
「……手遅れ……アルよ」
どうやらあの梟の挙動だけで、神楽とコナンの存在は勇次郎へと知れてしまったようだ。
あの勘の良さは、どう見ても野生動物のそれだ。
本当に奴が人類ヒト化に分類されるかどうか、本気で悩みだすコナンであった。



範馬勇次郎は激闘の予感に導かれ、梟の後を追っていたのだが、そこで出会ったのは子供が二人。
わざわざここへと案内した梟に微かな殺意を覚える。
『ま、所詮鳥のやる事か』
だがまあ彼にとってはその程度である。
今までそうだったように、適当にぶらついていれば何がしかに当たるだろう。
その程度の認識であり、同時にそこで出会った二人の子供、コナンや神楽など路傍の小石程度にしか思っていなかった。
そんな小石に鷹揚に声をかける勇次郎。
「おいガキ共。ここらで誰か強そうな奴に会わなかったか?」

最初に出会った時と一緒だ。
この範馬勇次郎という男、自らが認める程の強者以外にはほとんど興味を示さない。
今なら安全に逃げられる。この男の機嫌さえ損ねなければ。
465鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 19:55 ID:ipfvt3xI
しかし、いいのか?
この男とこうして出会える機会など、もう残っていないのではないのか?
この機会を逃すという事は、更なる犠牲者を容認するという事に他ならないのではないのか?
危険極まりない自問自答だとの自覚はある。
それでも、それこそが今のコナンにとっての真実であった。
策はたった今考えた。
穴は策を進めながら埋めていけばいい。
同時複数思考、人間マルチタスクは得意だ。
話をしながら、冗談を言いながら、この男から逃げながら、完璧な策に仕上げてやればいい。

いいぜ、命賭けの大勝負。やってやろうじゃねえか!



コナンは勇次郎に向かって笑顔で手を振る。
「あ、おじさん久しぶり。おじさん、強い人に会いたいの?」
コナンのフレンドリーな会話と表情に目をむく神楽。
「軽っ! 恐いもの知らずにも程があるヨ!?」
にこにこしながら神楽に答えるコナン。
「前に会った事あるんだ。別に何もされなかったよ」
改めて勇次郎に問いかけるコナン。
「ねえおじさん。強い人に会いたいんなら、案内してあげよっか?」
勇次郎はにやにやしながらコナンに歩み寄る。
「……何考えてるんだ小僧? 言ってみろ?」
コナンは天使の笑みと自らが信じるスマイルと共に、にこやかに言う。
「頼まれたんだ。おじさんと同じように強い人に出会ったら連れてくるようにって」
それを頼むという事は、コナンにそんな強い人間と接触しろと言う事である。
466鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 19:56 ID:ipfvt3xI
そんな事を頼む奴が仮に居たとしたら、そいつはよっぽどの間抜けか人非人かのどちらかだ。
勇次郎はそこまでわかった上でコナンの顔を見るが、その表情から何かを掴み取る事は出来なかった。
そんな勇次郎を他所に、自分達の話を進めるコナン。
「じゃあそういう訳だから、お姉ちゃんは先に行っててよ。僕達が初めて会った場所に戻るだけだからボクも迷ったりしないと思うし」
神楽にわかって、勇次郎にわからない言い方で神楽の移動先を指示する。
神楽の方を向きながらそう言うコナンの瞳が一瞬、鋭く輝いたのを神楽は見逃さなかった。
口調は張り倒してやりたくなるようなふざけた口調だが、その危険すぎる内容はコナンの決死の覚悟の表れなのである。
その意思、全てを口に出さずとも神楽に伝わった。
『俺はこいつを何とかする。危険すぎる賭けだから神楽は避難していてくれ』
そんなコナンの決意に、自らの行動に迷う神楽は即答を避け、勇次郎の返事を待つ。
勇次郎は、にやにや笑いを消さないままに言った。
「そうかい。じゃあお前には教えてやるよ」
勇次郎の笑みが深くなる。とても危険な兆候だとコナンは察したが、ここで逃げるわけにはいかない。
「俺と話をするにゃ資格が要るんだ。お前が俺に頼み事をするって事は、俺はそいつを、ひどく気は進まないが、お前にも試してやらなきゃなんねえ」
もちろんこれは勇次郎がたった今思いついた話だ。
要するに嫌がらせであるが、これを範馬勇次郎という男がやるとなると相手は命懸けで応えなければならなくなる。
当然、コナンにそんな能力は無い。
コナンに向かって瞬時に振るわれる裏拳。
来る、そのタイミングは今のやりとりで読めた。
だがそれでも、コナンはこの裏拳に全く反応が出来なかった。
それを代わりに止めてくれたのは、コナンが逃げるよう言っておいた神楽であった。
神速で振るわれた勇次郎の二の腕に、大きく踏み込み、自分の腕の背を押し当て、その腕が振り切られるのを力づくで止める神楽。
当初の神楽の狙いである、勇次郎の腕を弾き飛ばす事は、神楽の怪力を持ってしても適わなかった。
そのまま中空にて微動だにしない二人の腕。
勇次郎は神楽を試すように徐々に腕に力を込めていく。
467鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 19:57 ID:ipfvt3xI
対する神楽も、こんな怪傑ライオン丸みたいな奴にやられるのは気に喰わないとばかりに渾身の力を腕に込める。
既に並みのプロレスラーでは、ほんの一秒すら耐えられない圧力となった二人の力比べ。
余裕の笑みを見せる勇次郎に、それが腹立つのか、奥歯を食いしばった震える笑いで応える神楽。
「案外やるじゃねえか」
「そ、そっちこそ不潔そうな頭のワリにそこそこやるアル。もちろん私はまだまだイケるネ」
「そうかい!」
範馬勇次郎相手に、こんな挑発を平然とかましてくれる奴なぞそうそう居ない。
嬉しそうに更なる力を込める勇次郎。
流石にキツクなってきたのか神楽の額を脂汗が流れ出す。
「ふんがあああああぁぁぁぁぁぁ!!」
踏ん張る神楽の足元のアスファルトにひびが入る。
それでも、二人の腕は最初の位置からまるで動いていなかった。
これが全力とばかりに神楽が渾身の力を込めると、さしもの勇次郎もその余裕が消える。
だが、ここで技ではかわさない。力のみで対抗するのが範馬勇次郎という男である。
それを、神楽が突然腕を引いてかわした。
「ちょっとタンマアル」
一方的にそう宣言して、コナンの手を引いて少し離れた場所に行く神楽。
「セコンド、何かアドバイスするね。第一ラウンドはこれで終了アル」
予想外すぎる展開であったが、即座にこれに反応出来るのはコナンならではであろう。
「……ちょっと待て。お前……もしかして勇次郎と五分でやれるのか?」
「まっぴらゴメンアル! 見るネこの腕! 私のまのうぉーのよーな腕がもう痺れちゃって大変アル!」
「まのうぉーって何だよ、白魚だろ。痛いのか?」
「痛いのかじゃないアル! こういう時一流のセコンドは気を利かせて対戦者に気付かれないように怪我の治療スルね!」
流石の勇次郎も調子を狂わされるのか、頭をかきながら声をかけてくる。
「おい、続きはまだか?」
そんな勇次郎を怒鳴りつける神楽。
「やかましいアル! わ、私はべべべ別に腕が痛いから休んでるワケじゃないネ! ほら! こんなに元気アル! ふんぬっ!」
468鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 19:58 ID:ipfvt3xI
気合の声と共に勇次郎とぶつけあっていた腕を自らぶっ叩く神楽。
「んのぉぉぉおおおおぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉ!!」
絶叫を上げ、自分の腕を押さえてそこらを転がりまわる。
勇次郎は、見たままの感想を素直に述べた。
「お前馬鹿だろ」
その言葉を聞くなり跳びおきる神楽。
「誰が馬鹿アルか!? レディに向かって何って失礼な奴ネ! もうお前なんて知らないアル! えんがっちょ切った! あっかんべーアルー!」
そう言うが早いか、神楽はコナンの襟首を引っ掴み、猛スピードで走って逃げ出した。
そのあまりのスピードに、両足をぷらんぷらん揺らしながらコナンは呟く。
「……お前、行動が全く読めねぇよ」
「女は予測がつかない生き物ネ」
「これを女の行動として規定するのに、物凄い抵抗があるんだけどよ……」

最初に会った時はあっさりと見逃した。
どっちの眼鏡もいじってもつまらなそうだからだ。
だが、今回一緒に居る女はそこそこ楽しめそうだ。
あの女の力は勇次郎の知る知識では説明出来ないのだ。
筋量があるわけでなし、かといって中国拳法で言う所の発勁とも違う。
発勁は魔法ではない。全身の力の伝達方法を効率的にしているというだけの話だ。
それをやっていれば、すぐにそれとわかるが、そんな洗練された技術とも違う。
単純に力を込めただけ、ならば筋肉に何かその要因があるのか。
いずれにしても、一見で見破れないその力は、僅かにだが勇次郎の興を引いた。
馬鹿だが。全く予測がつかないほどの馬鹿だが。
「もう少しからかうか」
そう決めると、勇次郎は神楽の後を猛然と追いかけ始めた。
469鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 19:59 ID:ipfvt3xI
「神楽来た! あいつ追ってきたぞ!」
コナンは真後ろを向く形で神楽に襟首を引っ掴まれてるので、その様子が良く見える。
「ふふふふふ、この私に追いつこうなんて身の程知らずも良い所ヨ。力尽きて道端に汗の湖を作るがいいアル」
「全然あっちのがはええって!」
「そんな事言って脅したって無駄……」
走りながら振り返った神楽は、事実を正確に把握した。
「おおおおおお!! 銀河帝国の絶対エースを見くびってたネ!」
「……時速二百キロ越えてんだろそれ」
なんて言葉を返しながらも、現状を打破すべく思考を巡らしているコナン。
すぐに何かを見つけたのか、神楽にそこに入るよう指示する。

二人の後を追う勇次郎。
すぐに回り込めるかと思いきや、あの小娘が意外に素早く追いつくのに少しかかりそうだ。
奴の身体能力は並ではない。それだけで下手な格闘家など太刀打ち出来ないレベルと思われる。
馬鹿だが。
小僧が何やら喚くと、小娘は何かの店に飛び込んだ。
その上にある車のマークの付いた看板を見てぴんと来る。
『おいおい、あんなガキに運転出来んのかよ』
運転出来ようと出来まいと一緒だが。
勇次郎はその店のガラス張りの壁の前に立ちはだかる。
案の定、二人のガキは中に飾ってあった車に乗り、ガラスをぶち破って外に出ようとしていた所であった。
二人が店に入ってからさして時間は経っていない。
その間にここまで素早く行動している事に少し驚いた勇次郎。
『何、次はお前等が驚く番だぜ』
あの程度の質量、速度ならまるで問題にならない。
真正面から受け止めてやろう。
二人の驚愕に歪む顔を見てやろうと、運転席付近を良く見る。
470Classical名無しさん:08/03/30 19:59 ID:nHu8kv/A
471鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 19:59 ID:ipfvt3xI
生意気にオープンカーなどに乗っているこの二人は、何と運転を分業していた。
『クックック、とことん笑わせてくれる連中だな』
小娘が運転席に座り、助手席に座る小僧が身を乗り出してハンドルを握っている。
確かに、小娘の馬鹿さでは運転が可能とは思えないし、かといって小僧ではアクセルに足が届かない。
勇次郎が真正面に出ると、案の定小僧が悲鳴に似た声を上げるのが聞こえた。
が、小娘は何を思ったか傘をこちらに向けてくる。
『何のつもり……っっ!!』

違う! あれは傘なんかじゃねえ!

瞬時にそう判断して真横に跳びのくと、勇次郎の居た位置を強力なエネルギー弾が貫く。
勇次郎と違って自立移動が不可能なガラス壁は、それをまともにもらって粉々に砕け散った。
さしもの勇次郎も、あんな子供の持つ傘からあんなものが飛び出してくるのは予想外である。
飛びのいた勇次郎の隣をすりぬけ、車は道路へと飛び出して行った。
見事にしてやられた形の勇次郎。
だがそれは俗に言う『火に油』と呼ばれる行為に似ていた。
『ガキ共……ちっとおいたがすぎたみてぇだな……』
普通の人間なら当たれば死ぬだろうモノを、範馬勇次郎に向けて撃ったのだ。もうからかうでは済ませられない。
半ば以上本気で、勇次郎は走る車を追い駆け出した。



「お前何て物撃つんだよ! 殺す気か!?」
ハンドルを握りながらコナンが怒鳴る。
「あの程度で死ぬような可愛げのある奴じゃないアル!」
「可愛かろうが気色悪かろうが当たったら死ぬだろ! もうそれ使うな!」
アクセルを踏み込みながら、体をよじって傘を後ろに向けている神楽。
472鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:00 ID:ipfvt3xI
すぐ後ろで運転席に乗り出してハンドルを握っているコナンに不満そうな顔を向けるが、生憎コナンは車の進行方向を見ていたので、それを察してはくれそうにない。
「……わかったアル。確かに人殺しは良く無いネ」
渋々傘を引っ込める。
代わりに懐から真っ黒な銃を取り出し、狙いを定めて勇次郎へと放つ。
「死ねクソ筋肉があああぁぁぁぁぁぁ!」
「お前全然わかってないだろ!」
いらないとか言っておきながら、この銃を神楽は結構気に入ってるのかもしれない。
ちらちらと後ろの神楽を振り返るコナンに、神楽もそちらを向いて真顔で言った。
「やっぱり駄目アル。きっとハードボイルドが足りないネ」
先ほど何処からかガメてきたサングラスをかける神楽。
「これで完璧! 百発百中ネ! …………ぬおっ!? 前が! 前が見えないアルぅぅぅぅ!!」
「あたりめーだ! 夜中にサングラスかける馬鹿何処に居んだ!」
二人が馬鹿やってる間に勇次郎はぐんぐん迫ってくる。
サングラスを放り捨てた神楽は、コナンの言葉を無視して銃を撃ち続ける。
「こうでもしないと追いつかれるヨ!」
コナンも勇次郎の走る速度が車を越えているとは予想外だったので、そう言う神楽に文句を言いずらい。
実際、あそこで真正面から止めに来た勇次郎をかわせたのも、神楽の瞬時の判断のおかげであるし。
「ええいくそっ! わかったよ! けど絶対当てるなよ!」
「当てて欲しいんならこの揺れ何とかしてからにするアル!」



さて、では江戸川コナンが現在やっている事を整理してみよう。
神楽がアクセルを踏み、コナンはハンドル操作のみで車をコントロールしている。
これが如何に危険な行為か。
神楽はそれが当然持って生まれた権利であるかのごとく、アクセルをベタ踏みしている。
彼女にそもそも細かい調整などを期待するのが間違っているのだ。
473鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:00 ID:ipfvt3xI
二人の乗る車は走る速度に合わせて自動でギアが変わってくれる、最近では珍しくも無い便利仕様のオートマ車である。
だがこの車の特性として、アクセルをベタ踏みすると自動的に低速ギアに切り替わり、急加速を行ってしまうのだ。
勇次郎から逃げるという点からだけ見れば、それは有効な操作ではある。
しかし時刻は深夜、明かりは申し訳程度の外灯と車載されているライトのみで、そもそも車の運転を許されていないコナンがこれをコントロールしなければならないのだ。
にも関わらず車は何かに引っかかる事もなくスムーズに進行している。

何故か?

コナンはこの道路を記憶していたのである。
もちろん自分が通っていない道もあるが、それは今まで通った道路や街並みから推測して脳内に道路図を作り上げているのだ。
道幅からカーブの角度に至るまで、正確に脳内に再現させ、その予測の元運転を続ける。
コナンはこれが必要になると思っていたから、街並みも道路も記憶していたのか?
いかに名探偵とはいえ、そこまで神がかった予知は出来ない。
そもそもここで車に乗って逃げる事自体、彼にとってはイレギュラーであったのだから。
コナンは、今まで見た街並みを思い出しつつ、道路図を自らの脳内に作り上げながら車の運転を行っているのだ。
もちろん全てを推理しきるのは無理なので、運転しつつ街並みを観察し、脳内道路図を完全な物に仕上げながら、である。
そしてもう一点。
小さくなる前は高校生、今にしてもその時にしても、彼は大っぴらに車の運転を許された身ではない。
それでも、今こうして危なげなく運転をこなしている。
これは至極単純な理由で、彼が工藤新一だったころ、車の運転を父優作に教わっていたのだ。
しかし、いくら教わったからといって、その後定期的に運転する機会をもてなかった彼が、こんな危険な運転を行えるだろうか。
出来る。出来てしまうのが江戸川コナンなのである。
彼の持つ卓越した知能は、自らの持つ知識を限りなく現実の挙動に近い物として脳内に再現させる。
正に天才の面目躍如といった所か。
不幸な事に、その奇跡に近い能力を理解してくる人は身近には存在しないのだが。

「下手くそ! もっと揺れないようにするネ!」
474鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:01 ID:ipfvt3xI

それ所か、文句まで言われているのだから報われない事この上無い。
尤も、今更報われないのを嘆くようなコナンでもないのだが。

「揺れないようにしたらお前当てちまうだろうが!」

推理の手柄を小五郎に持っていかれ続けている間に、随分とタフになったようである。



事態は完全にコナンが予想していた状況の斜め上である。
勇次郎の反応や能力もそうだが、神楽の言動全てが予想外過ぎて、当初のプランなど最早欠片も残っていない。
だがその神楽の馬鹿力と機転により、何とか最悪の事態は脱した。
ならば次の手だ。
少しぐらいうまくいかない程度で引っ込むようなヤワな神経を、江戸川コナンは持ち合わせていない。
コナンが頭の中で次の手を組み立て始めた直後、同時に考えていたもう一つの事柄が、致命的な状況予測をコナンに突きつけてきた。
『やべぇ、三つ先の急カーブ絶対曲がれねえ……』
神楽は片足を思いっきり後ろに伸ばしながらアクセルを踏み、もう片方の足を座席に乗せ、左手で体を固定しながら後ろに銃を撃っている。
選んだのがオープンカーでなければ出来ない芸当だ。
この状態で体勢が安定している今の神楽に、ブレーキも踏めというのは少々酷である。
かといってコナンがブレーキを踏むと、踏んでいる間は前が見えなくなる。
既に他の減速方法、ガードレールにこすりつける、ハンドルを切ってタイヤを滑らせる、サイドブレーキを用いる等々問題の無い程度に試してはみたのだが、全てうまくいきそうにない。
あまりに技能を要求される領域の操作は無理であるし、逆に減速しすぎてもまた困るのだ。
即座に次善案を考えるコナン。
脳内地図にある次のカーブを曲がらず、真っ直ぐに突っ切るのが最適と答えを導き出す。
475鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:02 ID:ipfvt3xI
そのままゴールまでの進路をイメージ完了。
ただ一点に目を瞑れば、勇次郎の能力を勘定に入れてもこれで完璧に突破しきれるはず。
そして、勇次郎への策もそこそこ形になってきた。
ひどく気が進まない。神楽を巻き込むつもりは無かったのだが、こうなっては最早手遅れだ。
コナンが考える勇次郎像に従って推理すれば、既に勇次郎は神楽を見逃す気は無くなっているであろうから。
『……やるっきゃねえよな。ここでビビってちゃ服部に会わす顔がねえ!』
景気付けにカーステに入っているCDをかける。
気分が大事だ。勇次郎を、神楽を、そして自分すら騙しきる必要がある。
たまたま入っていたCD。
脇に無造作に放り投げてあるCDジャケットには『 L'Arc?en?Ciel  Driver's High 』と書かれていた。
「おあつらえ向きじゃねえか……行くぜ!」

アップテンポな曲がかかると神楽は少し驚いてコナンの方を振り向く。
コナンは前を向いたまま不敵に笑っている。
やかましいだけの音楽に文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、揺れがひどすぎてコナンの方を振り向いたままで居るが難しく、面倒になったので止めた。
コナンは前方に僅かな余裕を見つけ、ハンドルを固定したまま勇次郎に向かって振り向く。

「勇次郎! アンタは一々やる事が原始的なんだよ! 少しは文明の利器に触れたらどうだ!?」

そう言って、コナンは範馬勇次郎に向け、中指をおっ立てて見せた。

さあこれでケツに火がついたわけだ。
範馬勇次郎、あの男は元の世界ではどんな風に見られていたのだろう。
それがどんなものであれ、コナンの世界に居たとしたら、間違いなく自然災害レベルの悪夢となっていただろう。
そんな男を相手にしながら、しかしこの高揚感は何だ。
なるほど、良く見る若気の至りってのはこういう感覚から出てくる発想なんだろうな。
476鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:02 ID:ipfvt3xI
やってはいけない事をやる快感、実際にやってみないと確かに、心底までは理解しえない。
「へっ! せいぜい原始人らしく地べたを走り回ってな! この猿野朗!」
予定外のセリフまで飛び出してくる。
全くもってこの高揚感は御しがたい。
付加効果として、例のカーブ問題解決策をやるのに躊躇や恐怖というものが無くなってくれた。
ありがたい話だ。
「神楽! 頭下げろ!」
「へ? ……っておうわぁああああああ!!」
神楽の返事を待たず、コナンは大手スーパーの一階正面入り口に車を突っ込ませた。


ガッシャアーーーーーーーーーン!!


最初に店を飛び出した時の倍以上のガラス片を撒き散らし、車は店内へと突入する。
ついでに柱も削り取ったらしい。ガラスやら何やらの破片がそこらを飛び散っている。
当たったらタダじゃ済みそうに無い。

 だ か ら ど う し た !

店内の通路はかなり大きく取ってあるので、車一台がすり抜けるぐらいのスペースはある。
もちろん、車が走るようには出来ていないので、余裕なぞ欠片も無いが。
入り口催事場にあるカツラ売り場を蹴散らし、ファーストフード店のカウンターを削り取る。

ヤバイ、これは本気でヤバイ状態だ。
多分今俺めちゃくちゃ笑ってるわ。
血管千切れそうなものすげぇ笑い顔。
477鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:03 ID:ipfvt3xI
きっと、このままどっかに突っ込んで死にかけても笑ったままだ。
横から聞こえてくる神楽の悲鳴が、最高のBGMに聞こえる。
サービスカウンターを斜めに横切ると、中身すかすかのカウンター台が弾け飛ぶ。
食料品売り場に入った。
ここだ! ここが勝負の分かれ道!
入り口を一瞬で見極めろ! 何、失敗しても最高の気分のまま死ぬだけだ!
強引に中央部に切り込むと、乾物コーナーが棚ごと吹き飛んだ。
ちょうど真正面! 良し! あそこが裏口への抜け道だ!

両開きのスイングドアを抜けると、すぐそこは受け渡しになっていて店の真後ろへと抜ける事が出来た。
道路に出るには、段差と呼ぶのもおこがましい1メートル弱の高低差を飛び降りる必要があるのだが。
「神楽! 舌噛むんじゃねえぞ!」
マズイ! これはマズイ! 勢い落とさず飛んだら道路奥のフェンスに突っ込んじまう! その先は川だぞ!

 う る せ え !

寸前で僅かに戻った理性でハンドルを切る。
車体が斜めを向いたまま大きく宙を舞う。
フェンスまでほんの数秒、それが妙に長い時間に感じられた。

がっしゃーーーーーーーーーん!!

フェンスに衝突した時の振動で、車外に振り落とされそうになるのを何とか堪える。
直前でハンドルを切ったおかげで、車は空中で真横を向いてくれ、タイヤはすぐに地面に接地した。
そして驚くべき事に、神楽はこの期に及んでまだアクセルを踏みっぱなしだったのだ。
すぐに加速を始め、道路を一直線に走り出す。
川沿いの道、今までとは比べ物にならない楽な道を通りながら、神楽は心底楽しそうにコナンに言った。
478鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:04 ID:ipfvt3xI
「お前、無茶苦茶ネ!」
そう言う神楽は、真後ろにがんがん銃をぶっぱなしながら笑っているのだ。
それを見ていたら、腹の底から笑いがこみ上げてきた。
「お前が言うんじゃねえよ!」
二人は狂ったように笑いながら走り抜ける。
二人共、後ろの勇次郎の事などもうどうでもいいと言わんばかりに、今のこの瞬間を楽しんでいた。



コナンが予め考えていたプラン。
当初考えていた急カーブを使わない事には、どうしても目的地に辿り着く事が出来ない。
他のルートだと、より酷い事になってしまう為だ。
そこでコナンが考えたのが、大手スーパーのど真ん中を突き抜けるやり方。
入り口はガラスドア。多数の人間を同時に入れられるよう大きくとってある。
そして店内は、大手ならではの広めの通路幅を取ってあるだろう。
問題は裏側に抜けられるかどうかだ。
店の位置と道路の関係上、受け渡し、荷物を乗り降りさせる場所が入り口真裏にあるのは予測出来た。
だが、売り場から受け渡しに抜ける通路がどれだけ広いかが予想できなかったのだ。
途中の通路に荷物が置いてあっても同じ。
車が通過出来ない場合、やっかいな事だがこのスーパーで勇次郎を迎え撃つ事になる。
それでも、食料品から日用品まで揃えてあるのなら、何とかやりようはある。
もちろん目的地で迎え撃つのが最高ではあるので、出来れば避けたかったが。
幸い受け渡しに通じる道は両開きのスイングドアで、車で押し開ける事も、通り抜ける事も可能だった。
一番の難所は、それが出来るか否かの見極めを一瞬でしなければならなかった事。
大手スーパーとはいえ、一番奥の食料品売り場は当然見通しが悪い。
見やすいような位置に移動する為に無理矢理すぎる進路変更をすると、速度が落ちすぎて勇次郎に追いつかれてしまう。
そのさじ加減の見極めが必要だったのだ。
479鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:05 ID:ipfvt3xI
もちろん商品重量の小さい乾物コーナーを通り、出来るだけ減速を抑えたのは彼の瞬時の判断によるものである。



『   〜〜 続 名も無き戦闘員による報告書 〜〜


既に半数が死亡した現状、優勝すら囁かれていた強者が倒れて行く中、何故明らかな弱者が生存しているのか。
今回はその具体例として江戸川コナンの事例を挙げてみたいと思う。
卓越した推理力を誇る以外、身体的には学生組にすら劣る彼。
戦闘こそが至上であるこの会場において、確かに序中盤は逃げ惑う一般人の座に甘んじていた。
しかし、彼の持つポテンシャルはそんなものではないと断言する。
現に、一部では最も優勝に近い男と呼ばれていた吉良吉影を追い詰めたのは彼の功績であるし、
勇次郎、ラオウ、斗貴子と実績ある猛者に遭遇しながら生き残ったのは評価に値すると思われる。
ではそうやって生き残ってきた彼の能力とは、一体如何なるものかについて言及したいと思う。

江戸川コナンには、工藤新一には無い能力がある。
高校生探偵工藤新一として活躍した半生、しかしその頃以上の事件を江戸川コナンは体験している。
そんな中、コナンはその推理力だけではとても予測出来ないような様々な事件に遭遇しているのだ。
事件の中には、コナン自身の生死に関わるような物も数え切れない程あった。
それらを、コナンは持ち前の推理力とその時その場に最も適切な行動を瞬時に選べる能力によって、切り抜けてきたのだ。
この能力は生来の物ではないだろう。
与えられた僅かな時間、いや瞬間に、正しい選択肢を選ぶ思考の素早さと決断力。
元々の知能の高さを、例え短時間の思考でも発揮出来るそのもう一つの能力は、彼が年齢不相応に修羅場を潜り抜けて来た証でもある。
しかも、彼は大抵の場合、自分だけでなく他の仲間達の命まで背負ってそれらを決断してきたのである。
もちろん工藤新一であった頃も、人並み外れた思考の素早さがあったのだろうが、生死の際を数多くぐりぬけてきた江戸川コナンとは比べ物にならない。
480鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:06 ID:ipfvt3xI
服部平次と江戸川コナンに差があるとすれば、この点である。
服部は工藤新一時代同等であった経験に、大きく水をあけられている。
自らの生命の危機に瀕する。
そんな状況で、果たして人は冷静に物事を判断し得るものなのだろうか。
ましてや、他人の命まで預かるとなれば、そのプレッシャーたるや想像を絶するであろう。
腕が縮む、足がすくむ、当然である。その状況において平素と同様の行動を取れる人間がおかしいのだ。
そう、江戸川コナンはおかしいのである。
眼前に暴走車が迫る。高度数千メートルの高さで安全を確保できない。爆弾のすぐ側で殺意に満ちた人間の相手をする等々……
こんな状況で冷静に先を読み、推理し、数多の問題を解決に導く。
まともな精神でそんな真似が出来るはずがない。
彼の最も凄まじい所は、彼の持つ高い知能をいかなる場面においても発揮しうる精神力にあるのだ。
そしてそんな場面において要求される思考の速度。
瞬時の判断ではない。瞬時の推理という、おおよそ名探偵と呼ばれる者達ですら持ち得ない能力を彼は持っているのだ。
卓越した推理力、修羅場に動じぬ鋼の精神力、神速の思考力。
敢えて言おう、江戸川コナンはこの会場に呼び出された猛者達に劣らぬ異能者なのであると。


    PS:これ以上こいつを褒めるの私には無理です。
       いくら倍率差がひどいからって、トトカルチョの情報操作なんて真似、あまりオススメ出来ないのですが……  』



遂に、コナンが目指していた建物、病院へと辿り着いた。
病院は最後に見た時と同じように、今にも崩れ落ちそうな惨憺たる有様である。
「ここでいいアルか?」
「ああ、ここが最高だ」
神楽の表情が暗くなるのを、コナンは見逃さなかった。
481鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:07 ID:ipfvt3xI
ここは銀時の遺体があった場所であり、新八が殺された場所なのだ。
そうなる事はわかっていたが、ここ程今度の策に適切な場所が無かったのだ。
入り口前で車を止め、二人同時に飛び降りる。
勇次郎の姿が見える。
本気で怒ってるんだろうなあと思われる鬼の様な形相だ。
そりゃ、あれだけ一方的にバカスカ銃を撃たれれば怒りもする。
銃を恐れずまっすぐ突っ込んでくる辺り、やっぱ怪獣なんだなぁと改めて思うコナン。
あの身体能力なら、先回りや迂回、普通に追いつく事も出来ただろうし、そうしようと考えたのだろう。
コナンはそれら全てを、移動経路の選択の仕方だけで封じ込めてやったのだ。
肝はあの大手スーパー突入だ。
道路以外をあんな風に突き抜ける事が出来るのなら、道路の先に回った所で意味は無い。
そんな事をしてる間に、道路以外を突き抜けて何処か予想外の場所に飛び出したなら追跡は不可能になる。
まっすぐコナン達の姿を視界に納めたまま追跡する以外に無い。
そしてまっすぐに追いつくには、神楽の銃弾による牽制をすりぬけなくてはならない。
こちらは当てる気は無い、神楽も多分当てる気は無かった、いや、絶対無かったはずだ、にしても、当たれば大変な事になる。
あの銃は特製だ。大の大人でも持てないような重量のハンドガンなんて、何に使うのかわからないようなシロモノである。
幾ら勇次郎でもあの威力は無視出来なかっただろう。

だが、ここで捕まっては全てが水の泡になる。
最後の直線で結構離したので少し余裕はあるが、こっちもやる事は多い。
見た目以上に必死に病院内へと駆け込むコナンと神楽。
すると、神楽がひょいっとコナンの襟首を掴んで持ち上げる。
「お前、俺を猫か何かだと思って無いか?」
「こんな可愛くない猫居たら、生まれた事謝らせた上で下水に流すネ」
そのままぽんと、通路脇に置いてあった車輪の付いたベッドの上に放り投げる。
「いっくアルよーーーーーーー!!」
神楽はそのベッドを後ろから押しながら、病院の廊下を疾走する。
482Classical名無しさん:08/03/30 20:11 ID:nHu8kv/A
483鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:11 ID:ipfvt3xI
確かにこれは楽だし早い。階段がちとしんどいが。
コナンはベッドの先に立ち、次々神楽に指示をしていく。
最初は色々とその意図を訊ねていた神楽だったが、すぐに面倒になったのか、何も聞いてこなくなった。
「つーか、俺の言ってる事半分も理解してねーだろ神楽」
「わかったネ。私も同じ事考えて……」
「言い終わる前に嘘だとわかるよーな嘘つくんじゃねえよ!」



範馬勇次郎は憤怒の表情で、病院前に仁王のごとく聳え立っていた。
何と運の良いガキ共だ。
勇次郎が走る車に何か仕掛けようとする度、何かしらで不都合が起こる。
先回り出来るような道路は無く、車がカーブを曲がり向こうの視界から外れた時に別ルートから回り込もうとしても、うまい事あった更なるカーブであっさりと逃げられる。
それにあのスーパーへの突入。
あれは完全に予想外だ。
中で止まると思い、余裕を見せたのがまずかった。
まさか真裏から平気な顔して出てくるとは。
イカれた顔でケタケタ笑うあいつらならば、また同じ事をしでかしかそうで僅かでも目を離せない。
そして何よりもあの銃だ。
あんな威力のある拳銃なぞ、戦場でもお目にかかった事は無い。
二人が何故こんな病院で止まったのか。
イカレた奴等の考える事、深く考えてもしかたがない。
とは勇次郎は考えなかった。
『ただの狂人にかわされる程、俺はヌルくねぇ。どっちだ? 小僧の方か?』
小娘のあの馬鹿さは天然だと思われる。
となれば後は小僧しか居ない。
484鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:12 ID:ipfvt3xI
見た目通りのガキではないと思っていたが、ここまで小賢しい真似をしてくれるとは。
全部が全部ではないだろう、しかし幾分かの不都合はあの小僧の仕掛けと思われる。
ならば、病院でも何かを仕掛けてくる。

「俺に策が通じる幸運、何時までも続くと思うなよ」



コナンと神楽が段取りを半ばまで終えた所で、勇次郎が病院内へと侵入してきた。
モニターに映る勇次郎は、静かに、しかし確実に、病院内を進んでいく。
『嫌な予感は当たるもんだな。くそっ、全く油断してねえ』
用意していた仕掛け、その大半の使用を諦めるコナン。
病院内を疾走し、あの短時間で数種類の仕掛けを用意した。
これは、辿り着く前にコナンが何処をどう通って何をどう仕掛けるかを予め決めておいたおかげだ。
コナンは病院内の構造を、マリアや銀時達と一緒に居た時既に、ほぼ完璧に把握していたのだ。
しかし、そんな仕掛けの数々も勇次郎があの様子では通じそうに無い。
全くもって気は進まないが、どうやらコナンも覚悟を決める必要がある。
仕掛けさえ通じればコナンの考える最善に近い状態に勇次郎を持っていく事が出来たのだが、ここでまた予定変更を余儀なくされそうだ。

突然モニターから勇次郎の姿が消え失せる。
右上のモニターに一瞬その姿が映ったかと思うと、次は左端の一番下のモニターに居る。
どのモニターが何処に繋がっているのか理解していなければ、ワープでもしたのかと見まごうばかりの移動速度。
それを正確に理解出来る人物なら、勇次郎が一つ一つしらみつぶしに部屋を探している事がわかるだろう。
それはモニターだけを情報源とするのなら、そもそも病院内部の構造を熟知していなければ不可能な芸当だ。
素早く、そして確実に部屋を潰していく勇次郎。
そんな勇次郎に院内放送の声が届く。
485鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:13 ID:ipfvt3xI

『よう原始人。相変わらず効率の悪い事してんなぁ』

小憎らしいガキの声。
間違いない、これはあのガキの声だ。

『やっぱ頭使えねえ奴はダメだね。遊び相手ぐらいにしかなりゃしねえ。まあそれなりに楽しめたがよ』

院内放送? ならば放送室、いやそれで俺を呼び出してその隙に逃げる気か?

『しっかしお前、直接相手してよーっくわかったわ。てめえがどうしようもねえボンクラだって事がよ』

しらみつぶしは続行する。それを嫌がるからこそ、奴はこんな放送を始めたのだろう。

『弱い奴ばっか相手にしてボクちゃん強いのでちゅーってか? 死んだ方がいいぞお前。普通さあ、まずその首輪何とかしようって思うだろ』

一階は全て回った。次は二階だ。ここで仕掛ける。

『首輪を仕掛けられるような強い奴にゃ逆らわねえ。その癖俺は強いとかぬかして弱そうな奴から潰して優勝狙いか? 腰抜けにも程があんぞ』

突然策敵速度と順番を変える。壁をぶちぬき、柱をけり倒して最短距離を突っ走る。

『そんなチキン野朗だからこんな首輪に騙されるんだよ。俺はお前みたいなクソ見てるとムカムカしてくんだ』

好き勝手抜かしてやがるが知った事か。ぶち殺す時の楽しみが増すだけだ。
486鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:14 ID:ipfvt3xI
『お前俺が見た目通りじゃないって所まで見抜いておいて、何でその先に気付かないかねぇ。やっぱ直感だけの脳筋野朗にゃちっと難しかったか』

ここだ。ここから声が漏れてきやがる。けっ、酔狂な笑い声あげてんじゃねえ。

『ダメだ、やっぱ笑いが止めらねえわ。お前さ、この期に及んで俺が普通の参加者だと思ってねえか?』

ドアを蹴破り中に飛び込む。
そこは、ナースステーション内の放送室。
マイクの前に置かれていたテープレコーダーからその声は漏れ聞こえてきた。

『んな訳ねーだろ! 首輪の飾りごときに騙されてんじゃねえよ! 俺はこの企画の主催者側だバーロー!』



病院を抜け出し、神楽とコナンは近くの民家に避難していた。
「あれでよかったアルか? もっとあいつぶちのめすような手とかの方が……」
コナンはソファーにうつ伏せに寝っ転がりながら答えた。
「それじゃ、あいつの協力は得られねえよ。本当はもっと良い形で協力して欲しかったんだけどな」



『ここまで会場の事熟知してるぜーっての教えてやってたのにまるで気付かねえんだもんな。普通に逃げたらそりゃ捕まるって、衛星からの指示でももらわなきゃあんなん普通無理だろ』
いいだろう、言わせてやる。
好きなだけ言ってみろ。
『そもそもよぅ、この会場内でこんなガキがどうやって生き残るってんだよ。お前最初に会った時偉そうに言ったよな。己を偽ってるってよ。あの時俺ぁ噴出すの必死に堪えてたんだぜ』
大した記憶ではない。印象には残っていないが、一応記憶の片隅ぐらいには残っている。
487鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:15 ID:ipfvt3xI
『くだらねえ参加者風情がこの俺に説教かよってな。お前の目の前に居るっての、その首輪の事良く知る人間がよーって腹抱えて笑ったぜおい』
首輪、最初こそ癇に障ったが、今までさして気にはしていなかった。
『お前のその偉そうな態度も俺がボタン一つでボンだっての。全く、前の参加者の方がよっぽど骨があったぜ。連中俺の前まで来やがったからな』
ここまで、頭に来たのも久しぶりだ。
『お前じゃ無理だろうがな、連中頭も良かったしよ。そいつをちっと期待した俺が馬鹿だったって話だ。まあいいさ、優勝したらお情けで生かしといてやるからせいぜい頑張れ』
我慢する気なぞハナから無い。
勇次郎は腕を振り上げる。
『しっかし、首輪付きの鬼ってのも新しい発想だよ……』
勇次郎がその腕を振り下ろすと、置かれていた机ごとテープレコーダーは粉々に粉砕された。



「本当にこんなんでうまくいくアルか?」
神楽は勝手に冷蔵庫を開け、中にあったバナナを食べながら言う。
「勇次郎は俺が見た目通りの子供じゃ無いって見抜いてた。そこがポイントさ」
「?」
神楽にはまるでコナンの言いたい事がわからない。
「あいつは俺が見た目通りじゃないと見抜いた。じゃあ俺は何者だ? もしその隠してた物が肉体的な何かだったならあいつも気付いたろ。得意分野みたいだしな」
コナンが何を言いたいのかまだわからない神楽は首を小さく傾げる。
「だが、それが何かまで具体的にはわからなかった。だからその正体が主催者側の人間だったとしても不思議ではない、となる訳だ」
神楽は腕を組んで難しそうな顔をする。
「そんなもんアルか〜」
「車で逃げてた時、俺明らかにアブナイ人だったろ? もちろんそれも演技だけど、それが演技故の不自然さなのか、元々違う人物が子供のフリをしていたゆえの不自然さなのかなんて、判断付かないだろうぜ」
不自然さが漏れてしまう事前提の演技。しかしコナンはそれを自己暗示をかける程のレベルで実行していた。
しかもやってる事は命賭け、そんなギリギリの気迫と徹底が、説得力を生むとコナンは知っているのだ。
488鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:16 ID:ipfvt3xI
「それがダメでも、最悪あいつの中に首輪を外さなきゃならないって意識を植え付ける事は出来るだろ。そうすれば、無差別に会う奴会う奴殺して回る事は出来なくなる」
「なんで?」
即座に問い返す神楽に、ずっこけるコナン。
「だーかーら! 殺した奴が首輪外せるかもしれない奴だったらどーすんだよ! もし俺の仕掛けを信じたのなら、あいつの気性じゃ主催者側に外してもらうなんて考え無くなるだろうしな」
わかったんだかわからないんだかな顔をする神楽。
「うんわかったネ。それじゃ私お風呂入ってくるヨ」
「はいはい、お好きに……って何!?」
「お風呂。覗いたら殺すアル」
大慌てでソファーから跳ね起きるコナン。
「いやお風呂じゃねーよ! 勇次郎がここ嗅ぎ付けたらどうするつもりだ!」
ひらひらと手を振る神楽。
「そうならないようにコナン色々やってたネ。だから大丈夫ヨ」
「待ておい! それでもアイツ相手じゃ……」
コナンの話も聞かずに脱衣所に入っていく神楽。
ここまで来ると、中に入って文句を言う事も出来ない。
相変わらずの危機感の無さに、ため息をつくコナン。
「あいつにゃ恐い物ってのがねえのか?」
そんな事を言ってはいるが、神楽は神楽でたくさんの辛い事を乗り越えて今の場所に居る事をコナンは知っている。
それでもこうしてコナンを信頼し、一緒に居てくれている。
何としても守りたい。無事に家に帰してやりたい。
だが、その為とやった手がこれである。
本来勇次郎をバックに置く事で、他参加者への牽制とする予定だったはずが、勇次郎が今後出会う人間が、条件さえ合えば何とか殺されないかもしれない程度までランクダウンしている。
「服部にあれだけ大見得切っといてこのザマだ。情けないったらありゃしねえ」
ここには居ない人に問いかけるコナン。
「なあ、俺はアンタみたいにやれてるかな」
その人とは、振り返ってみればほんの僅かな時間一緒に居ただけだった。
489鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:16 ID:ipfvt3xI
「俺はもっとやれたんじゃないのか、アンタみたいにもっと深く、強く」
それでも、コナンは生涯その人を忘れる事は出来ないと思う。

「なあルイズさん、俺はアンタみたいに勇敢で、優しい人になれるかな……」



シャワーを全開にして、その下にあられもない姿を晒す神楽。
普段ひっつめている髪をほどいており、少し癖のついたそれも、今はシャワーの水流に負けまっすぐに降ろされている。
タイル壁に両手をつき、俯き加減でお湯を全身に浴びる。
「銀ちゃん、新八。私、絶対泣かないアルよ……」
とめどなく零れる涙をシャワーで洗い流しながら、悲しみが過ぎ去るのを待っている。
色んな事を考える余裕が持てると、我慢出来なくなる。堪えきれなくなる。
それでも、我慢しなければならない。
頑張らなければ、頑張って頑張って絶対に勝つんだ。
「それまで、私絶対泣かないネ」
シャワーを止め、真上を向く。
涙はもう止まっていた。



シャワーを浴び終えると、神楽がコナンの居る居間へと戻ってくる。
少し様子が変わった事に気付いたコナンが、それを神楽に訊ねる。
「髪、降ろしたのか?」
「へ?」
慌てて自分の髪を撫でてみる。そういえばリボン付けるの完全に忘れていた。
慌てて取りに戻ろうと思い、それをやってはコナンに自分が動揺していた事がバレてしまうと思いなおし、瞬時に言い訳を考える。
490鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:17 ID:ipfvt3xI
「イメチェンアル。ガキの相手するには大人っぽい雰囲気が不可欠ネ」
笑えるぐらいわかりやすい神楽の挙動を見て、コナンは悪いとは思ったがつい噴出してしまう。
「ぷっ、そうかい。似合ってるぜ」
「……何がおかしいネ?」
「おかしくなんてない。似合ってるって言ったんだ」
「なら何で笑うネ!」
「笑ってねえよ。気のせいだ」
「いーや、絶対コナン笑ったネ!」
「気のせいだって、俺は知らねえよ。ほらさっさと行こうぜ」
「誤魔化す気アルか!? 大体コナンは……」
ぎゃあぎゃあ喚く神楽を引きつれ、楽しそうに神楽をいなしながら家を出るコナン。
二人共、先ほどの事など無かったかのように、いつもの調子で歩き出した。
話し相手にもなる、張った意地を見せ付ける相手にもなる。
どんな時でも、一人でないというのはとても大切な事なのだ。

『一度や二度うまくいかないぐらいで、俺は絶対諦めたりしねえ』
『こんな事しでかした連中、全員まとめてぎゃふんといわせてやるネ』


491鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:20 ID:ipfvt3xI
【F-4病院近くの民家 /2日目 深夜】

【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:全身打撲。疲労大。左肩と全身に湿布と包帯。強い決意。
[装備]:ハート様気絶用棍棒@北斗の拳 、懐中電灯@現地調達 包帯と湿布@現地調達 スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品(食料一食消費)、鷲巣麻雀セット@アカギ、 空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考] 基本:この殺し合いを止める。
1:範馬勇次郎を仲間に引き入れる。
2:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
3:ルイズの最後の願いを叶えたい。
4:ゲームからの脱出。
5:ジグマールを警戒。

[備考]
※メガネ、蝶ネクタイ、シューズは全て何の効力もない普通のグッズを装備しています。
※自分達の世界以外の人間が連れてこられていることに気付きました
※川田、ヒナギク、つかさ、服部、劉鳳、アミバの情報を手に入れました。
※平次と二人で立てた仮説、「光成の他の主催者の可能性」「光成による反抗の呼びかけの可能性」「盗聴器を利用した光成への呼びかけの策」 等については、まだ平次以外に話していません。又、話す機会を慎重にすべきとも考えています。
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。



【神楽@銀魂】
[状態] 軽度の疲労  悲しみ
[装備] 神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂 、ジャッカル・13mm炸裂徹鋼弾予備弾倉(30)@HELLSING
492鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:21 ID:ipfvt3xI
[道具]支給品一式×2(食料一食消費) 陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた 首輪
[思考・状況]
基本: 殺し合いに乗っていない人は守る、乗っている人は倒す。
1:コナンを守ってやりたい。
2:キュルケ…
3:筋肉眉毛(ケンシロウ)に会い、話を聞く。
4:銀ちゃんとキュルケを殺した奴は許さない。
[備考]
※原作18巻終了後から参戦。
※キュルケとケンシロウについては細かいことをまだ服部、劉鳳、コナンに話していません。
※髪を降ろしています



【F-4病院 /2日目 深夜】
【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】
[状態]右手に中度の火傷、左手に大きな噛み傷。
   全身の至るところの肉を抉られており、幾つかの内臓器官にも損傷あり。
[装備]ライター
[道具]支給品一式、打ち上げ花火2発、フェイファー ツェリザカ(0/5) 、レミントンM31(2/4)
   色々と記入された名簿×2、レミントン M31の予備弾22、 お茶葉(残り100g)、スタングレネード×4
[思考] 基本:闘争を楽しみつつ優勝し主催者を殺す
1:Fuck you ……ガキめら……
2:アーカードが名を残した戦士達と、闘争を楽しみたい。
  ただし、斗貴子に対してのみ微妙な所です。
3:首輪を外したい
4:S7駅へ向かいラオウ、ケンシロウを探す。(1が終わるまで保留)
493鬼ごっこ ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:21 ID:ipfvt3xI
5:未だ見ぬ参加者との闘争に、強い欲求
[備考]
※シルバー・スキンの弱点に気付きました。
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。
※ラオウ・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました。
※生命の水(アクア・ウィタエ)を摂取し、身体能力が向上しています。
※再生中だった左手は、戦闘が可能なレベルに修復されています。
※アーカードより、DIO、かがみ、劉鳳、アミバ、服部、三村、ハヤテ、覚悟、ジョセフ、パピヨンの簡単な情報を得ました。
ただし、三村とかがみの名前は知りません。
是非とも彼等とは闘ってみたいと感じていますが、既に闘っている斗貴子に関しては微妙な所です。
※出血は止まりました

※梟は勇次郎に闘争を届けるため、ほかの参加者の下へ飛んでいます。
※梟が持っているDISCに勇次郎は気づいていますが、興味はありません。

※勇次郎がコナンの策にはまったか否かは次の書き手にお任せします
494 ◆1qmjaShGfE :08/03/30 20:23 ID:ipfvt3xI
以上です。度重なる延長の件ですが
今後予約に関して、自らに何らかの制限を課す形を考えております。重ね重ね、申し訳ありませんでした
495Classical名無しさん:08/03/30 21:04 ID:IoWWmBEI
支援
496Classical名無しさん:08/03/30 21:13 ID:IoWWmBEI
投下乙!
バーロー、一時期うぜえ奴って言って本当にすまんかった!!
神楽がいるとはいえ勇次郎にここまで健闘するとは思わなかった

髪おろし神楽もかわいいな、そして戦闘員レポートも
面白くてよかった
497Classical名無しさん:08/03/30 21:17 ID:QHOZwSFo
投下乙。
バーローが酷いw そこまで挑発し尽すかw 命知らずにも程があるw
なんか余計なことしてくれた気がするのは私だけだろうか?w
しかしよく逃げ切った。乙。
498Classical名無しさん:08/03/30 21:29 ID:emIFQojo
投下乙
また戦闘員の報告www
ルイズを思い出すコナンにほろりときた。
このコンビが好きになる話でした。
HJ!
499 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:05 ID:7Aiakt0.
>>462
了解です。新作お待ちしてます。

>>494
投下乙!
神楽がアグレッシブに動きまくってるwコナンもこれは予想出来ないw
そして、コナンの作戦、そう来ましたか……この挑発は酷いwでもコナンカッコいいよ!
戦闘員レポートも復活してて、面白かったですw


それでは川田、ジグマール投下します。
500Classical名無しさん:08/03/30 22:06 ID:emIFQojo
       
501 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:07 ID:7Aiakt0.
息を絶え絶えに、一定の間隔で後ろを振り向きながら走る人影が一つ。
青、白、黒の三色で彩られた特徴的な制服。
“アルター”という異能を扱う集団で構成された特殊部隊、通称“HOLY”
今もなお、走り続ける人影はそのHOLY隊員が纏う制服を着ていた。
そう。その人影、彼こそが正真正銘なHOLY部隊長。
設定年齢19歳、蟹座のB型、マーティン・ジグマールであった。

「はぁ、はぁ、流石に撒くコトに成功したか、やはりヤツラは甘い……」

必死に呼吸をしながら、後ろを振り返るジグマール。
瞬く間にジグマールの視界に映る光景。
其処に人影を確認出来ない事にジグマールは安堵の溜息を付き、次第に走りを緩める。
現在、ジグマールは愚地独歩、村雨両、柊かがみ、桂ヒナギクの四人から逃亡の真っ最中であった。
しかし、今の所、彼らは自分を追ってきてない事はジグマールにはわかった。
彼らには移動用のバイクも有り、速度の違いを考えれば直ぐに追いつかれるのは明確。
だが、未だ姿が見えない事からするとジグマールが負傷させた少女、柊かがみの治療に専念しているのだろう。

「ハハハッ! 私は本当にツイてるぞ! ハハハ……」

やがて、脚の動きは完全に停止し、ジグマールはその場に腰を落とす。
人間ワープの多用、逃走のための全力疾走が重なり、ジグマールの疲労は確実に蓄積している。
疲労を落とすために休憩を行いながら、ジグマールは先程出会った参加者の事を考え始めた。
赤い怪人に変身し、自分の人間ワープの先を読み、攻撃を行える程の反応を見せた良という男。
独歩だけでも手こずるというのに、彼ら二人に襲われれば必ず勝てるという保証は全くない。
しかし、ジグマールは少女の腕を千切り、本格的な戦闘は免れた。
そのため、結果的に見逃された自分の幸運さにジグマールは喜び、笑い声を上げる。
だが、その笑い声は次第に乾いたものとなってゆく。
502Classical名無しさん:08/03/30 22:08 ID:emIFQojo
   
503Classical名無しさん:08/03/30 22:08 ID:QHOZwSFo
 
504 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:08 ID:7Aiakt0.
「……駄目だ。こんなコトでは何も変わらない……私は何も為せてはいない……何も変えるコトは出来ていない……!
私は今までの自分と決別したのだ……!」

今までの喜びが嘘のように、ジグマールの表情は険しくなり、必死に自分を戒める。
以前のジグマールなら、この幸運さえも己の実力と見なし、慢心したに違いない。
だが、ジグマールはこの殺し合いでは自分より強い者が数多く居る事を知った。
今はもう死人となったが奇妙な人形を操り、人間ワープを超える力を持つ男、DIO。
鋼のような肉体を持ち、全てを圧倒する剛拳を放つ男、ケンシロウ。
そして、特に秀でた能力は持たないものの、ジグマールに多大な影響を与えた男、アカギ。
彼らの存在を知ったジグマールは以前とは違う。
彼らを全て倒し、自分が森羅万象、全ての存在の頂点に立つ。
その目的のために、油断や敗北などは許されない。

「だが、未だ挽回は行える。そう! 私の状況は未だ最悪ではない! ここからどう切り返すか……それが問題、それが全てを決める!」

だが、ジグマールはたった今、無様に敵前逃亡を喫してしまった。
これでは以前の、慢心しきっていた自分と何も変わらない。
そのために、ジグマールは自分の行動を見直し、これからの行動に役立てようと思考を練っていた。
ギャラン=ドゥが居ない今、ジグマールには戦力が乏しい。
やはり自分の装備を整える事がこれらからに備えて、最優先事項と言える。
そんな時、ふとジグマールは自分の手に握られていたものを思い出す。
505Classical名無しさん:08/03/30 22:09 ID:emIFQojo
    
506 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:10 ID:7Aiakt0.
「そういえば、あの少女はこの核鉄を大事そうに持っていたな。ふぅむ……やはり、これは単純に武器として扱うのか? しかし――」

六角形状の金属、先程かがみから奪った激戦の核鉄。
坂田銀時が持っていたものと同種と思われる支給品。
武装錬金の使い方は、銀時と闘った時から知っており、ためしに発動してみる。
核鉄から形成されたのは、やはり十字槍のような武器、激戦。
激戦がしっかりとジグマールの右腕に握られる。
だが、説明書もなければ、本来の持ち主、かがみが激戦を扱った姿もジグマールは見ていない。
このまま、純粋に槍として使うのが本来の使用法なのではとジグマールは思う。
だが、ジグマールにはどうしても気になる事があった。

「あの少女は私にこの槍を構えようとはせずに、大事に抱えていた。あの行動に私は疑問を隠せない。
武器を扱えずとも、槍の先端でも私に向ければそれだけで威嚇になる。だが彼女はそれすらもしなかった……何故だ」

かがみが激戦を大事そうに抱えていた事をジグマールは疑問に思う。
それに単純に武器として使用するのが正しい使用方法だとしても、かがみには扱える代物とは思えない。
激戦の長さはかなり長く、かがみの背丈と同じくらいの長さはある。
いくら身を守るために武器を持つといえども、使えないものを持つ理由はない。
それならば村雨に譲り、彼の戦力を上げ、守ってもらう事の方がよっぽど効率的だ。
しかし、かがみはそれをせずに意固地に激戦を抱え続けた。
一体何故なのだろうか?
そこまで考えている内に、ジグマールにある考えが浮かぶ。
507Classical名無しさん:08/03/30 22:11 ID:emIFQojo
       
508 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:11 ID:7Aiakt0.
「もしや……試してみる価値はあるな。何せ、此処にはアルターと同じくらいミステリアスなものに溢れている。
私の予想はあながち間違っていないかもしれん」

意を決したかのように、制服の左袖を捲くり、ジグマールの左腕が露呈する。
激戦を左手に持ち替え、右腕を左腕に添え、右中指の爪を立てる。
ジグマールが浮かべる表情は真剣そのもの。
一瞬の間を置いて、ジグマールは爪を引いた。
当然、小さな痛みと共に生じる赤い一閃の軌跡。
だが、次の瞬間、ジグマールの表情が喜びと驚きに染まった。

「やはりそうだ! この槍は負傷を癒すもの! しかも、異常と言っていいこの再生速度! あの少女はこれで身を守っていたということか。
ハハハッ! これはイイ! ベリイイイィィィィィィィィグッド!!」

瞬時に切り傷が修復されていく事に、ジグマールは素直に喜びを見せる。
ジグマールはかがみが、さも「これさえあれば大丈夫」と言わんばかりに激戦を抱えていた事に注目し、激戦の能力を予想した。
言うまでもなく、負傷を治す類の能力だと思っていたジグマール。
しかも自分の予想以上に、早い再生を見せた激戦の能力はジグマールを充分に満足させた。
流石に、たとえば自分の腕を切断してまでも、ジグマールは能力の程を確かめるつもりはないが。
しかし、武器としても上等で、かつ身体の負傷を修復してくれる激戦でジグマールの戦力がかなり整った事実は変わらない。
確かな収穫を確認し、ジグマールは激戦を核鉄状態に戻す。
核鉄は待機状態の時、疲労回復の効果がある事をジグマールは走っている際に、気づいていた。
意気揚々とジグマールは歩き出そうとする。
しかし、問題といえば問題がある事をジグマールは自覚し、再び立ち止まりデイパックを漁り始めた。
509Classical名無しさん:08/03/30 22:12 ID:RreCa05k
 
510Classical名無しさん:08/03/30 22:12 ID:QHOZwSFo
 
511 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:13 ID:7Aiakt0.
「私の戦力はかーなーり増強された! しかし……これらはどうするか。それに未だ確認していないものもある。
フランシーヌもあのあるるかんという奇妙な人形があるし、私もこの激戦だけで充分だしな……かといってこのまま遊ばせておくのも……」

デイパックから取り出すものは、一本のナイフ、奇妙な棒のような武器、そして三枚の未確認の支給品。
人間ワープ、そして両手からの衝撃波を、主な攻撃手段とするジグマールには激戦だけで充分過ぎる。
今は居ない、協力者、フランシーヌこと才賀エレオノールにもあるるかんがある。
自分達の武器が敵に奪われた時のために、大事に温存していく手も考えた。
だが、自分達の敵はかなり強い。
生半可な状態で仕掛ければ、逆に返り討ちに会う可能性も充分にある。
そのため出来る限り、支給品を有効に活用したいとジグマールは考える。
しかし、いくら悠久の時を過ごしてきたといえども妙案が直ぐに浮かぶとも限らない。

「……兎に角、未だ確認していないものの品定めでもするとしよう」

考えが纏まらないため、兎に角、未だ確認していない支給品を確認しようとジグマールは決断を下す。
もしかしたら、自分の悩みを解決し、妙案を閃かせてくれるものがあるかもしれない。
手に取った一枚の紙を取り出し、ジグマールは無造作に開き始める。

「おお! これは……素晴らしい! やはり普段の行いが良ければいいコトが起きるものだな!!」

エニグマの紙から現れたのは漆黒のバイク、ヘルダイバー。
村雨がBADANの尖兵だった時期に乗り回していた、高性能なバイク。
核融合エンジンを搭載し、最高時速は600km。
飛行や潜行を可能とするハイドロジェットエンジンをも搭載している。
説明書に書かれたスペックを、ジグマールは心なしか鼻歌交じりに眼を通す。
このバイクがあればいざとなれば逃走にも使え、一撃離脱の戦法も可能となる。
紛れもなく当たりといえるヘルダイバーにうっとりしながら、ジグマールはもう一枚の紙を開こうとするが――
512Classical名無しさん:08/03/30 22:13 ID:emIFQojo
      
513 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:14 ID:7Aiakt0.
「あんたは、この殺し合いに乗っているのか?」

ウージーを真っ直ぐジグマールの方へ向けた、坊主頭の男が立っていた。
少し浮かれ、警戒がおろそかになっていたジグマール。
そもそも、自分は首輪探知機という便利な道具も持っていたので、今回は元より、先程、独歩の接近を気づけたはず。
今まで首輪探知機の存在を失念していた事、他の参加者の接近を許しすぎた事にジグマール舌打ちを打つ。
増強した力で返り討ちにしてやろうかと思い、ジグマールは思考を回す。
そして、ジグマールの目の前の男の口が再び開いた。

「もし乗っているなら、俺の話を聞いてくれないか? 悪い話じゃないぜ」

口を開いた男、その男の名は川田章吾と言った。

◇  ◆  ◇

「なるほど、川田章吾。お前はその津村斗貴子とやらと同盟を組み、他のヤツラを襲った。だが、その津村が戻って来ない。一人ではやがて限界は来る。
そのために、このマーティン・ジグマールと協力関係を結びたい。そういうコトだなッ!?」
「ご丁寧にどうも、そんな感じだ。ジグマールさんにとっても悪い話じゃないと思うぜ。
俺がさっき話した情報をよく考えればな。」

川田が直ぐに銃口を落とした事で、ジグマールは取り敢えず川田の話を聞く事にした。
見る所、銃を持っている以外、無力そうな存在である川田。
自分にはとって碌ではない話に決まっている。
粗方聞き出したら始末してやろうかとジグマールは考えていた。
だが、優勝を目指し、自分と協力関係を結びたいと言い出した川田にジグマールは興味が湧いた。
514Classical名無しさん:08/03/30 22:15 ID:emIFQojo
       
515 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:16 ID:7Aiakt0.
聞くところによると、川田と津村斗貴は病院を襲ったらしい。
その時に川田は二人の男女に対し、襲撃を行い、かなり強力な男を殺害。
川田がジグマールに見せた、大型銃・ハルコンネンによる連射。
伊達に悠久の時を生きてきたジグマールは様々な人間に出会い、その中には彼を騙して来る人間も居た。
そのため、常人よりは嘘を言っている人間をジグマールは見分ける事が出来る。
だが、そんなジグマールでさえも川田が嘘を言っているかのようには見えなかった。
まぁ川田自身、自分は葉隠覚悟を殺したと思い込んでいるので当然ではあるが。
兎に角、ジグマールは川田の話を取り敢えず信用する事にした。

「ふむ、まぁ良いだろう。丁度、私も手強いヤツラに追われている。協力者が欲しいと思っていたからな」
「交渉成立だな、よろしくジグマールさん」

フランシーヌと待ち合わせの場所も決めておらず、合流する当てはあまりない。
ならば今は取り敢えずの形とはいえども、川田と同盟を組み、敵に備える。
一人より二人の方が有利なのはいうまでもなく、敵の攻撃も分散する。
もし川田が途中で裏切り、自分を攻撃してきたらどうするか?
その時は簡単だ。
HOLY部隊長として、スーパーHOLYを率いていたように、力で屈服させればいい。
それに危なくなれば自分はヘルダイバーで川田を見捨て、フランシーヌとの合流を目指す選択もある。
ジグマールにとってデメリットよりはメリットの方が大きい。
自分に舞い込んできた更なる幸運にジグマールは心の奥底でほくそ笑む。

(フハハハハハハハッ! 少し前がまるで嘘のような幸運さ!
やはりこのマーティン・ジグマールは全宇宙の支配者に相応しいという神からのお告げなのかッ!!)

沸き立つ喜びを押さえ、必死に体裁を繕う。
本来の顔より、威厳溢れるこのHOLY部隊長としての顔は崩さないようにジグマールは努める。
ジグマールと川田の目的は優勝を目指すため、協力し他の参加者を殺害する事。
その協力関係には明確な期限は設けられていない。
そう。川田が斗貴子と組んだ協力関係のように。
ジグマールがフランシーヌことエレオノールと結んだ協力関係のように。
いつ、どちらかが裏切っても可笑しくない協力関係。
516 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:17 ID:7Aiakt0.
だが、ジグマール一人ではこの殺し合いに勝ち残る事はあまりにも厳しい。
そのために他の参加者、川田と同盟を結ぶ事に成功したジグマールが喜ばないわけがない。
早速、今後の動き方などを話し合うために、ジグマールは口を開こうとするが――

(待てよ……少し賭けになるかもしれないが、やってみる価値はあるかもしれんッ!)

妙案が思いつき、開きかけた口を閉じた。
不気味ともいえるような喜びを含んだ笑顔を見せながら。

「……それでだ。行く当てがなければ俺は学校へ行きたいんだが? 俺が既に一人……厄介なヤツは殺したから残りは二人の男女。
怪我を、運がよければどちらかが死んでる可能性もある。襲撃するにはもってこいだ」

ジグマールの表情の変化を不審に思いながらも川田は提案する。
ついさっき、川田が斗貴子と共に襲撃した学校。
覚悟は既に殺害し、斗貴子は死んだかもしれないが、恐らく相手にはなんらかの負傷を負った可能性は間違いない。
なんせ、斗貴子の異常性と力は川田自身、良く知っており、彼女が只でやられる事もないと思っていたからだ。
そのため、学校に現在居ると思われ、負傷している可能性もある二人の男女。
彼らを追撃するために川田はジグマールに問いかけた。

「グッド! それはいい狩場となるだろう! だが、川田、その前に私と“ゲーム”でもやってみないか!?」
「ゲームだって……?」

意気揚々と川田の提案をジグマールは了承の意を示す。
だが、“ゲーム”という言葉が気になり、川田の表情が何かを探るような目つきを浮かべる。
その表情には決して手放しで喜ぶ事は出来ない川田の意思が見え隠れしていた。
そんな川田を見て、想定の範囲内の反応だと考えるジグマール。
もう少し曖昧な事を言って、川田の反応を楽しんでも良かったが時間は惜しい。
こうしている間にも学校に他の参加者が集まる、もしくは独歩や村雨達が追ってくる可能性もあるからだ。
そのため、フフンと鼻を鳴らしながら、ジグマールは二の句を続ける。
517Classical名無しさん:08/03/30 22:18 ID:emIFQojo
     
518 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:18 ID:7Aiakt0.
「そう、ゲームというか実験だな。実はわたしのこの槍は、負傷を瞬時に治す能力があってね。
しかし、それがどの程度の負傷を治すかもわからない。
そこでだ、川田、君にこの槍の性能を確かめてもらいたい」
「具体的に言うと、俺に何をやらせるつもりだ……?」

口を開きながら、武装錬金を発動させ、ジグマールの手に激戦が握られる。
嬉しそうな表情を浮かべ、ジグマールが望むものは激戦の能力の調査。
先程、自分の腕に爪を立て、多少は能力の確認を行ったが未だ完全ではない。
そのため、ジグマールは川田に自分がやった以上の事をやって貰いたかった。
一方、川田の表情は険しい。
頭の回転も良く、状況を見定める力を持つ川田もジグマールの言いたい事はおぼろげに予想出来ていた。
そんな時、ジグマールはデイパックからライドルを取り出し、空いていた手で握り締める。
そう。ジグマールがやってもらいたい事、厳密に言ってしまえば――

「なぁに、話はいたってシンプル!
君がこの槍を右手に持ち、私がこの剣みたいなもので、 君の左腕を華麗に切り落とし、本当に再生が行えるかどうかを確かめる。
その時、感じる感覚などを教えてくれればいい!」

それは実際に川田の身体の一部分を欠損させ、再生の程度を知る事。
腕を切断するという、残虐な行為をジグマールは何も躊躇なく言い飛ばす。
激戦の能力の程度を知っておかなければ、戦闘の立て方にも影響は出る。
そのために、自分の身体には傷を付けずに、ジグマールは川田の身体を使い実験を試みようとしていた。
また、もう一度爪をたてて、修復を行わせている事を川田に見せ付けているため、激戦に再生の能力があるという事は川田にも理解させている。
だが、出会ったばかりのジグマールに、支給品を確かめるために腕を切断しろと言われても川田は直ぐに頷けない。
ジグマールを鋭く睨みつける川田の表情には、拒否の意が浮かび上がる。
519Classical名無しさん:08/03/30 22:18 ID:h3t88XA.

520Classical名無しさん:08/03/30 22:19 ID:emIFQojo
       
521 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:19 ID:7Aiakt0.
(フフフッ! まぁ黙ってしまうのは無理もないだろう! この条件を呑む人間は余程のお人よし、いや、只のバカでしかない!
誰だってそーする! 私だってそーする! しかし、これならどうかな……?)

しかし、そんな事はジグマールも予想している。
あまりにもデメリットしかない行為に、川田が乗るはずもない。
そのため、ジグマールはあるものを用意する事にした。
川田にとって“飴”といえるような代物を。

「勿論、ただとは言わない。
この実験に協力してくれれば、この剣のようなものを借そう。更にだ! もう一つ、おまけにこの未だ開けていない支給品も貸すコトも約束する。
どうだ、なかなか良い条件じゃないか? もし、実験が成功すれば君は二つも支給品を得るコトとなるッ!」

武装錬金を解除し、再び激戦は核鉄の状態へ姿を変える
それは川田に、自分の協力者である川田に支給品を貸して与える事。
現状は激戦とヘルダイバーで充分と考え、ライドルなどの武器はジグマールにとって、あまり意味はない。
一方、川田は聞く所、何も異能はなく、ケンシロウのようなもの達を相手にするには装備が貧弱。
更に未確認の支給品を貸す事で川田の実験へのやる気を引き上げる事を狙った。
依然、特に表情を変えない川田の足元に、ジグマールは激戦の核鉄を投げつける。
だが、いうまでもなく川田がジグマールの実験に乗らず、あまつさえ激戦を奪い、彼を襲うかもしれない。
それに、仮に実験が成功したといっても、川田がジグマールを騙し、襲ってくる可能性もある。
その時は力ずくで捻じ伏せ、自分が絶対的な存在である事を知らしめる。
そんな事を考えていたため、ジグマールにあまり危機感は湧いていなかった。

(ここで私との約束を破り、私と決別すればこの男は孤立する……! 今もケンシロウやドッポ、それに劉鳳のような正義バカが山ほどいるこの状況ッ!
更にラオウやユージローのような殺し合いに乗った者達も忘れてはならない!
弱者でありながら優勝を目指すものが、この状況でむざむざ孤立するようなコトは愚の骨頂ッ! さぁ、どうする? どうする? どうする?)
522Classical名無しさん:08/03/30 22:20 ID:QHOZwSFo
 
523 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:20 ID:7Aiakt0.
何故なら、ジグマールは川田が約束を破り、自分に襲い掛かる可能性は低いと考えていたから。
一度、斗貴子と同盟を結んだという事は、川田には一人で優勝する自信はないはず。
そんな川田が自分を倒し、支給品を一人占め出来るといえども、この先孤立するような真似はしない。
孤立してしまえば、殺し合いを止めようとする者、もしくは殺し合いに乗った者に殺される確立は上昇する。
目先の出来事に惑わされず、長期的に考えれば、ここで川田が自分と決別するのは彼にとってあまり良くない。
腐っても、HOLY部隊長であり、指揮官の地位に就いていたジグマールはそう確信する。

「さぁ、川田章吾! 君の答えを聞こうッ!」

ジグマールが大声を上げ、人差し指を川田に向かって突き出す。
ジグマールの人差し指と真っ直ぐ向き合う川田。
やがて、川田が足元に投げつけられた核鉄に手を伸ばした。
一連の行動に、戸惑いや躊躇といったようなものは全く見せずに。

「――武装錬金」

あまりにも機械的な川田の行動が、いいようのない不気味さを醸し出していた。

◇  ◆  ◇

赤い斑点が地面に走る。
未だ乾ききってはいなく、滑らかな液体の形を取っている。
言うまでもなく、その正体は血液。
天から降ってきたわけでもなく、地から噴き出してきたわけでもない。
ある人物のある部分の肉が切れ、皮が破られた事によって垂れ落ちた血液。
驚きと喜びが混じりあった表情を浮かべる男。
マーティン・ジグマールの目の前に、血だまりの上に立つ男が居た。
いうまでもなく、その男は川田章吾。
どこか冷めたような目つきでジグマールを睨み付ける。
524Classical名無しさん:08/03/30 22:20 ID:emIFQojo
         
525Classical名無しさん:08/03/30 22:21 ID:QHOZwSFo
   
526 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:22 ID:7Aiakt0.
「ハハハッ! なるほど、なるほど! 川田、君の意思はよくわかった!」

声高々に笑うジグマールは只、純粋に笑い、喜びにふける。
目の前の川田がどうやら予想以上に、眼を見張る程の度胸がある事を知る事が出来たから。
そんなジグマールの片腕に、刀身が血に塗れたライドルが握られている。
ここまでくればいうまでもないだろう。

「実験は成功だな。では、激戦を返して貰おうか?その後、この武器と支給品を貸し出そう!」

そう。ジグマールの提案に乗り、川田は激戦を発動し、左腕を差し出していた。
垂れ落ちた血液は当然、川田の左腕がライドルによって切断された時に流失したもの。
この殺し合いに優勝するための覚悟がなければ、到底出来ない行為。
切断された左腕を、冷静さを保ちながら、五体満足で川田は黙って見つめる。
やがて、川田は武装錬金を解除し、核鉄をジグマールに投げつける。
核鉄を取り返した、ジグマールは満足げに、川田に約束のライドル、そしてエニグマの紙を投げよこした。
ここでジグマールが川田との約束を破れば、彼にとっても協力者が減る事となる。
この殺し合いに優勝するには、今は協力者が必要だとジグマールは考えているので当然の行動といえる。
軽い音をたてて、地に落ちたライドルとエニグマの紙を川田が拾う。

「どうも、ありがたく貰っておくぜ。それとさっき、結構疲労があった。多分再生する箇所や程度によって疲労が伴うっていう仕組みだろうな」

ライドルを入念に調べながら、川田が口を開く。
ジグマールとの約束、激戦を使用した時の感触を説明するのも忘れずに。
その川田の言葉にジグマールは納得がいったような表情を見せる。
瞬時に傷を、欠損した身体さえも再生する激戦の能力はあまりにも強い。
疲労が伴うくらいのデメリットはあっても当然だろう。
激戦の特性、弱点を大体理解する事が出来たジグマールの表情は明るい。
やがてジグマールが新たな行動を見せる。
527 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:23 ID:7Aiakt0.
「なるほどな。まぁ、これから宜しく頼むぞ、川田。君の度胸は、優勝への覚悟は素晴らしい!
HOLY部隊長として、君のような者と同盟を結べるコトを光栄に思おうッ!!」

差し出されたものは右の手。
川田が先程見せた勇気、覚悟に対して純粋に感じた敬意の表れ。
普通の感性を持つ人間ならきっとそう思うだろう。
だが、生憎ジグマールを普通の感性を持つ人間と言うのは難しい。

(フハハハハハハッ! 精々利用させて貰うぞ、川田! まさかあんなにアッサリと決断するとは思わなかったが、だがそれだけだ!
所詮、キサマはアルターもなければ、恐ろしい力もない! この私の手足として、死ぬまで行使してやろう!
全宇宙支配の夢を持つ、このマーティン・ジグマールに使われるコトを光栄に思いたまえッ!)

激戦の入手に始まり、ジグマールには幸運な事が続いた。
その事が少しジグマールの感情を浮き立たせ、一種の高揚感を持たせた。
今、ジグマールは俗にいう最高にハイってヤツだ!という状況に近い。
そのため、川田の行動にも然程感心はなく、彼が自分の協力者になったという事実の方への喜びが強い。
思わず口に出して、叫びたい衝動を抑え、建前上は川田の行動を賞賛するためにジグマールは握手を求める

だが、決して慢心に溺れきっているわけでもない。
川田の行動で彼の優勝の覚悟はかなり筋金入りだったという事は流石のジグマールも理解した。
その強固な覚悟は同時に、優勝のために自分を裏切る可能性も充分に強い事を意味する。
そのため、自分は威厳溢れる実力者である認識を川田に植え付け、自分を裏切れば死ぬ。
そんな事を思わせるためにも、ジグマールは敢えてHOLYの名を出した。
HOLYがなんたるかを知らずとも、なんらかの軍事組織であると川田が考え、自分の強さに警戒する。
ジグマールはそれを狙っていた。
528 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:24 ID:7Aiakt0.
「ああ、こちらこそ宜しく頼むぜ……」

差し出されたジグマールの手を握り、川田がしっかりと握手を行う。
川田の両眼に宿る意思の光。
その光が数分前より、少し鋭いものになっているような感覚をジグマールは覚えた。

◇  ◆  ◇

今、川田はジグマールから貸し出されたライドルの扱い方を試行錯誤しながら、練習している。
グリップに備え付けられたL・R・S・Hの各スイッチを押す事で形状を変えるライドル。
調べている内に川田はそれらのボタンを発見し、大体の扱いや特性は覚える事は出来た。
元々機械いじりや飲み込みが早い川田なら、それなりに戦闘に扱う事も不可能ではない。
そんな時だ。
ふと、川田がもの思いにふける。

(やっぱ……あいつは死んだか。津村斗貴子……)

脳裏に浮かぶのは自分の協力者であり銀髪の女、津村斗貴子。
川田がこの殺し合いに乗った目的は、この殺し合いで出会い、心を惹かれあった柊つかさにもう一度命を与える事。
一度、確かに死んだ事のある自分がこうして生きているという実例があるために、迷いなく行える行為。
そして斗貴子はつかさを殺した張本人。
ジグマールと出会う前、川田は斗貴子と落ち合うと約束していた場所で彼女を待ち続けていた。
だが、いつまでも待っても斗貴子はやって来る事はなかった。
やがて川田の脳裏にある事実が浮かぶ。

――津村斗貴子は死んだ。

自分と同列な目的で殺し合いにのった斗貴子が他の参加者の説得に応じ、降伏する事は考えにくい。
それに斗貴子は病院を襲った事もあり、彼女が危険人物であるという情報はかなり広範囲に広まっている可能性もある。
そんな斗貴子を危険視し、即急に始末する考えを持つ者も居るだろう。
更にかなり消耗していた斗貴子の生存は絶望的な状況といえ、川田はその考えに至った。
529 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:25 ID:7Aiakt0.
その考えが浮かんだ直後は自分でも怖いくらい冷静に、川田はその事実を受け止めた。
恐らく、この殺し合いで心を通わせた友人、葉隠覚悟の殺害で一種の興奮状態にあり、感覚が麻痺していたのだろう。
そうでなければ斗貴子の死を平然と川田が受け入れるわけもない。

(この世界に神様ってヤツが居るなら……俺は恨むね。あいつは俺が殺すべきだったんだ……殺されないといけなかったんだ……。
つかささんを殺したあいつだけはな……)

川田の目的はつかさの蘇生ともう一つ、いうまでもなく斗貴子の殺害があった。
あっさりと殺すわけにはいかない。
つかさを殺した斗貴子には生きている事を後悔させる程の痛みを伴わせ、地獄に叩き落す。
両腕、両脚を切断し、達磨となり必死に足掻く斗貴子の顔にハルコンネンを叩き込む。
それかもしくはそのまま禁止エリアに放り込み、恐怖で怯える斗貴子を遠めで眺めながら殺害するのもいいかもしれない。
いや、両目に指を突き刺し、失明させ、徐々に身体の一部を切り落とし、殺害するのも良かったかもしれない。

だが、そんな憎き相手でもあるが、川田は優勝のために斗貴子と手を組んだ。
いや、自分は結局、この殺し合いではかなり弱い部類に入るために組まざるを得なかった。
しかし、そんな斗貴子は死亡した可能性が強い
その事実が徐々に、確実に川田に対し大きな失望感を与えてしまった。
やるべき事の一つ、つかさの蘇生と同じくらいやり遂げたいと望んだ事が失われてしまったから。
いいようのない、失望、怒りといった感情が渦巻く中、川田はある疑問を覚える。
何故こんな事態になってしまったのか?
いつでもあの憎たらしい斗貴子を殺す機会はあったのに。
これなら同盟を結ぶ事もなく、さっさと斗貴子を殺害すれば良かったかもしれない。
今更言っても仕方のない後悔に塗れた疑問。
やがて、その疑問と解く答えは至極単純なものであったと川田は気づく。

(俺に力があれば……あの女の力に頼らなくとも、この殺し合いに優勝出来る力があれば……こんな最悪な結果は生まなかったハズだ……)
530Classical名無しさん:08/03/30 22:26 ID:B.W2qA1.
 
531 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:27 ID:7Aiakt0.
闘いにおいて、戦術を組み立てる知力は極めて重要だ。
たとえ戦力が相手よりはるかに劣っていようと、相手の上を行く知力で為される戦術があれば戦況はひっくり返される。
数多の歴史の動乱で幾度もなく証明された、鉄壁の掟。
事実、川田も正面から闘えば、勝てる見込みは全くないといっていい相手、覚悟に勝利を収めた。

しかし、それでも最低限の力は必要だ。
あまりにも戦力がなければ勝ち続ける事は難しい。
そう。斗貴子と同盟を結んだ時の川田はあまりにも戦力に乏しかった。
あの時に、自分に覚悟と同等の力が、自分達を救った本郷猛のような力があれば。
斗貴子を殺してでも、優勝を狙えるほどの力があれば。
全てを叩き潰し、つかさの蘇生を簡単に実現出来る程の力があれば。
そんな力を労せずに、手に入るわけもないという感情も当然ある。
覚悟や本郷はきっと、血を滲む様な特訓に全てを賭け、守りたいものを守るために、実戦で敵を打ち砕き、あの力を培ってきたのだろう。
自分がそんな力を安易に求めても手に入るはずはない。
だが、それでも、それでも川田は力を願った。

(もう二度とごめんだ……これ以上は取り零したくはねぇ)

もう、結果を引き起こさないためにも。
こんなやりきれない思いを、二度と抱かないためにも。
斗貴子が恐らく死亡した事をどうにか受け入れ、川田は取り敢えず学校を離れた。
恐らく斗貴子を殺した相手は負傷している可能性もある。
だが、もしかして斗貴子を無傷で殺害出来る力の持ち主かもしれない。
生憎、自分にはハルコンネンとウージーしか装備はなく、常軌を逸する速度で懐に飛び込まれたらアウトだ。
そのために、力が必要だった。
新たな協力者、そして自分の新たな武器が。
よってその後出会ったジグマールとの同盟を結べた時は内心喜び、ジグマールの実験という提案にも興味が湧いた。
532Classical名無しさん:08/03/30 22:27 ID:QHOZwSFo
 
533 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:28 ID:7Aiakt0.
(我ながら分の悪い賭けだとは思うがね……俺にもよく、あんなにアッサリ踏み込めたのかはわからない。だが……結果オーライってコトだ。
お陰でいいものも手に入ったしな)

ジグマールの傷跡が修復されているのを見て、激戦に再生能力がある事は理解した。
しかし、左腕を切断させろと言われた時は正直面喰った。
流石にそこまでジグマールの実験に協力する義理はない。
だが、ライドルと未だ確認していない支給品の存在は川田にとって魅力的だった。
斗貴子の死で、より一層力を求めた川田にとって、ジグマールとの協力関係を崩さずに力を得る事は何よりも好ましい。
激戦を奪うという考えもあったが、未だ20人程生存していると思われる状況で、孤立する事はできれば避けたかった。
そのため、川田は意を決し、左腕を差し出す事を決めた。
半ば目先の力に溺れてしまい、先の事を考えない軽率な行為だったとは思う。
だが、それでも川田は力を手に入れたかったから。
二度と、自分の力が足りない事で悲惨な結末を見たくはなかった。
結果として、川田は賭けに勝ち、更なる力を得る事にはなったが。

(さて、このジグマールという男だが、胡散臭い気はするがこいつは善人というタイプじゃなそうだな。
まぁこういう相手なら、手を切る時も心が痛まないから良いけどよ……)

ライドルを振りながら、ふと新たな協力者、ジグマールの方へ川田は眼をやる。
説明書を片手にジグマールはヘルダイバーを入念に調べている。
HOLYという得体の知れない組織、斗貴子に与えた制服の説明書に書かれていた組織を束ねる人物らしいジグマール。
年齢はパッと見て、40代ぐらいに見えるが言動は何処となく幼稚さを感じさせた。
だが、それでいて斗貴子以上の貫禄が感じさせるジグマールを川田は只者ではないと確信する。
自分と同じく周りを蹴落としてでも、優勝を目指すタイプなのだと推測し、警戒を続けようと川田は考えを決めた。

「さて! そろそろいいかな、川田! 私の方はこのバイクのチェックを行ったからいつでも行けるぞ!」

やがてジグマールは口を開き、ヘルダイバーに跨る。
川田に運転させてやっても良かったが、この先、自分の手足となるヘルダイバー。
上手く扱うためにも練習は行っておきたいとジグマールは考えていた。
534 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:29 ID:7Aiakt0.
「ああ、了解……いや、ちょっと待ってくれ。こいつをチェックしていなかった」

ライドルをデイパックにしまい、川田が思い出したように口を開く。
今まで、ライドルの扱い方を覚えるために、開封していなかった支給品を見ていなかったからだ。
少し不機嫌そうな表情を見せたジグマールを尻目に、説明書に眼を通す川田。
その瞬間。
川田の表情が驚きと苦悶なものに変貌したのをジグマールは見逃さなかった。

「どうした? そんなに良いものだったのか!?」

表情ではあくまでも冷静さを装うが、ジグマールは内面焦っていた。
川田に譲った支給品。
あの支給品は内容をチェックする前に川田と出会ってしまい、内容は知らなく、もしあの支給品が激戦を上回るものならば不味い事になる。
だが、わざわざ内容をチェックしてから川田に譲るというのも、なんだか自分が酷く小さな人間に見え、ジグマールのプライドが許さなかった。

(な! なぁに! 私はもう一つ支給品を温存している! なんとかなるだろう!)

だが、ジグマールにはもう一つ、未確認の支給品がある。
もし、あれがとんでもない支給品で川田が自分に襲い掛かってくれば、この支給品を使ってでも反撃、もしくは逃走すればよい。
いくらでも選択肢はあり、自分が死ぬという事は先ずない。

そう確信し、体裁を繕うジグマールにはなんの関心も見せずに川田はジッと説明書を眺めていた。
湧き上がる驚きと迷いに両肩を、全身を小刻みに震わせながら。


どうする? この支給品を使うか?
川田が感じた疑問はそれだ。
確かにこの説明書に書かれた支給品を使えば、自分の戦力は向上し、優勝出来る可能性も上がるだろう。
だが、この支給品に書かれたキーワード。
これは川田にとって、つかさや桂ヒナギクにとっても大きな意味を持つ。
出来ればこの思いを踏みにじり、殺し合いの道具にさせたくはない。
535Classical名無しさん:08/03/30 22:29 ID:0QJTh2aU
 
536 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:30 ID:7Aiakt0.
(だが、俺は……俺は既に葉隠を……この手で、この手で殺した……あいつの思いを踏みにじった……)

しかし、今更自分が綺麗事を口に出すわけにはいかない。
最後まで自分を説得しようと、最高の仲間だった覚悟を川田は殺してしまったから。
殺し合いに乗った、愚かな自分に最後まで言葉を投げつけてくれた覚悟に容赦なく弾丸を撃ち込んだ。
今更、自分が引き返せるはずもない。
引き返す事は許されない。

(そうだ、決めたはずだ。願ったはずだ。踏み入れたはずだ。全てを……全てを失くしてでも、優勝すると……俺は……俺はつかささんを……!
だからよ……)

エニグマの紙に手をかけ、説明書に書かれた支給品を手に入れるために開封しようとする。
だが、なかなか開く事は出来ない。
力が入らないわけではない。
寧ろ、勢いあまって破ってしまいそうな勢いの力が篭っている。
だが、このまま開かないわけにはいかない。
何故なら自分は決めたから、この力を、この思いを踏みにじってでも――

――叶えたい願いがあるから。

(すまねぇ……つかささん、ヒナギクさん……)

ジグマールが固唾を飲み込み、見守る中、川田がエニグマの紙を開く。
現れたのは奇妙な複眼が備えつけられたヘルメット。
両手に掴んだヘルメットを川田は一瞬、苦渋の表情で凝視した後、意を決した表情で被る。
537Classical名無しさん:08/03/30 22:30 ID:QHOZwSFo
   
538Classical名無しさん:08/03/30 22:31 ID:emIFQojo
            
539 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:32 ID:7Aiakt0.
(本当にすまねぇ……本郷さん、これじゃあ地獄であんたに殺されちまうかもな……だが、俺は決めたんだ。だからあの言葉を言わせて貰うぜ……
たとえ、あんたの想い、あんたの仲間の想いを踏みにじってでも……)

今は亡き本郷への謝罪を呟きながら、川田の身体が閃光に包まれ始める。
その時、川田は始めて気づいた。
自分の両頬に雫が流れていた事を。
だが、その事実は直ぐに記憶の彼方へ飛んでいく。

「――変身」

本郷が生前、叫んでいた言葉を、誇り高き言葉を川田は小さく呟いた。

◇  ◆  ◇

「おお、これはこれは……なかなか素晴らしい」

あっけにとられながらもジグマールは川田の変貌に感想を述べる。
口元が露出し、赤い複眼が付いた青のヘルメット。
黄色のマフラーを風になびかせ、漆黒の強化スーツ、赤い胸部アーマー。
仮面ライダー4号、ライダーマンの姿を借りた川田がジグマールの目の前に立っていた。
川田がジグマールから譲り受けた支給品はライダーマンへの変身を可能にさせる特別なヘルメット。
川田の掛替えのない仲間、本郷と同じく正義のためにBADANと闘う男。
ライダーマンこと結城丈二の誇りともいうべき姿を、力を川田は借りた。
本郷や結城が抱いたものとは違い、あまりにも限定的な目的のために。

「……行こうぜ。ジグマールさん。俺はもう、全てに踏ん切りがついた……後は――」

ライドルを再び手に取り、川田が口を開く。
川田が知る由もないが、本来ライドルは仮面ライダー5号、Xライダーが平和のために用いたもの。
人間の自由のために、平和のために己を犠牲にしてまでもGODと、BADANと闘ったXライダーこと神敬介。
540 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:33 ID:7Aiakt0.
だが、今の川田には見ず知らずの他者のために命を賭ける気は毛頭ない。
本郷を始めとする仮面ライダーの願いを踏みにじってでも、川田はある人のために闘い続ける事を誓った。
いうまでもない、その人物は――

「殺すだけだ。躊躇なく、全力で、どんなヤツだろうと……絶対にな……!」

柊つかさ。
彼女のために川田は全てを捨てる決意をした。
かつて、自分と心を繋いだ者達の想いをどれだけ踏みにじろうとも優勝を目指す。
そう言って、川田はジグマールの方へ歩を歩ませる。
悲しい事など何もないはずなのに、今もなお、何故か涙を流し続けながら。


ヘルダイバーがジグマールとライダーマンに変身した川田を乗せ、南下する。
目的地は学校。
川田が先程襲撃を行った場所。

だが、川田は知らない。
自分の武器になったライドル。
そのライドルがつかさの友人、高良みゆきが最後まで誇りを貫くために用いた形見の品であるという事を。
自分の新たな協力者、ジグマール。
そのジグマールがつかさの姉、柊かがみの右腕を卑劣にも切断したという事を。
自分が先程、戦闘を行い、勝利を収めた葉隠覚悟。
その覚悟が今もなお、存命し、自分の説得を諦めてはいない事を。
自分が先程行った学校への襲撃。
その襲撃でつかさの友人、泉こなたの命を無常にも奪ってしまったという事を
また――
541 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:34 ID:7Aiakt0.
(つかささんの仇……津村斗貴子。この女はきっと死んだ。だが……俺の気が晴れるわけはねぇ。だから……)

泉こなたの死が一人の男にある影響を及ぼした事を川田は知らない。
その男がつかさの仇、斗貴子を死に追いやった要因であるとも川田は知らない。
そして――

(俺が殺してやる、俺の復讐を台無しにしたヤツはな……)

その男が自分と同じように、自分に対し、殺意を湧いている事を。


川田は知らない。


【C-3 中部 二日目 黎明】

【川田章吾@BATTLE ROYALE】
[状態] 健康 、小程度の疲労、ヘルダイバーに乗車中、ライダーマンに変身中(ライダーマンのヘルメット@仮面ライダーSPIRITSを装着中)
[装備] マイクロウージー(9ミリパラベラム弾13/32)、予備マガジン5、ジッポーライター、 ライドル@仮面ライダーSPIRITS
    バードコール@BATTLE ROYALE
[道具] 支給品一式×3、チョココロネ(残り5つ)@らき☆すた、ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン 、
    文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ツールセット、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
    缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(4本消費)、ツールナイフ、つかさのリボン
    ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾4発、劣化ウラン弾、残弾0発)@HELLSING
[思考・状況]
基本行動方針:最後の1人になってつかさを生き返らせ、彼女を元の世界に戻す。
1:当面、ジグマールと組んで他の参加者を減らしていく。ジグマールもいずれ必ず殺す。
2:ジグマールと共に学校を襲撃する。
3:斗貴子を殺した参加者を殺害する。
参戦時期:原作で死亡した直後
542Classical名無しさん:08/03/30 22:34 ID:QHOZwSFo
 
543 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:35 ID:7Aiakt0.
[備考]
※桐山や杉村たちも自分と同じく原作世界死後からの参戦だと思っています
※首輪は川田が以前解除したものとは別のものです
※津村斗貴子と、他の参加者の動向に関する情報交換をしました。
※つかさの遺体を、駅近くの肉屋の冷凍庫に保管しました。
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※主催者の目的は、@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、A最強の人間の選発、の両方。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくためのもの。 零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※覚悟、斗貴子は死んだと思っています
※ライダーマンに変身中のため身体能力が向上しています。勿論、カセットアームなどの機能はありません。


【マーティン・ジグマール@スクライド】
[状態]:全身に負傷中、顎に打撲、HOLY部隊長状態、疲労(大)、核鉄により回復中 、ヘルダイバーを運転中
[装備]:アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙、道化のマスク@からくりサーカス、 激戦(核鉄状態)@武装錬金 、ヘルダイバー@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式 、不明支給品1(未確認)、首輪×2(フェイスレス、シェリス)、首輪探知機@BATTLE ROYALE、光の剣(ただのナイフ)@BATTLE ROYALE、
輸血パック(AB型)@ヘルシング、グリース缶@グラップラー刃牙、イングラムM10の予備マガジン×5、スタングレネード×1、
[思考・状況]
基本:アカギを越える
1:ヒナギク、かがみ、村雨、独歩から逃げる。
2:優勝を目指す。 そのため、当面、川田、エレオノールと組んで他の参加者を減らしていく。二人もいずれ必ず殺す
3:エレオノールと合流する。
544 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:36 ID:7Aiakt0.
[備考]
※エレオノール、アカギ、川田と情報交換しました。エレオノール本人の名前を知り、川田の動向を知りました。
※人間ワープにけっこうな制限(半径1〜2mほどしか動けない)が掛かっています。
連続ワープは可能ですが、疲労はどんどんと累乗されていきます。
(例、二連続ワープをすれば四回分の疲労、参連続は九回分の疲労)
※ルイズと吉良吉影、覚悟、DIO、ラオウ、ケンシロウ、キュルケはアルター使いと認識しました。
※DIOの能力は時を止める能力者だと認識しました。
※ギャラン=ドゥはエネルギー不足で外には出てこられなくなりました。
 ですがジグマールは、人間ワープの能力を問題なく使えます。
※激戦の能力を大体理解しました。少なくとも腕の欠損ならば瞬時に再生し、疲労が伴うくらいはわかっています。
※「激戦」は槍を手から離した状態で死んだ場合は修復せずに死にます。
 持っている状態では粉々に吹き飛んでも死にませんが体の修復に体力を激しく消耗します。
 常人では短時間で三回以上連続で致命傷を回復すると意識が飛ぶ危険があります。
 負傷して五分以上経過した患部、及び再生途中で激戦を奪われ五分以上経過した場合の該当患部は修復出来ません。
 全身を再生した場合首輪も再生されます。
 自己修復を利用しての首輪解除は出来ません
 禁止エリア等に接触し首輪が爆破した場合自動修復は発動しません。
545 ◆14m5Do64HQ :08/03/30 22:38 ID:7Aiakt0.
投下終了しました。
支援どうもありがとうございます。
感想や矛盾などの指摘をお待ちしています。

タイトルは「たとえ罪という名の仮面をつけても――」でお願いしますね。
546Classical名無しさん:08/03/30 22:42 ID:IoWWmBEI
投下乙
この川田めぇ、お前にTQNの仕打ちをそのまま返してやりたいぜ
ジグマールと合流し、ライダースーツも装着しさらなるパワーアップか
こいつらも強マーダーの一角となったな
547Classical名無しさん:08/03/30 22:49 ID:QHOZwSFo
投下乙。
これは……ヤバイのが順当に組んだなぁ。
腕切断実験とは、こりゃ予想以上に凄いことをやってくれる。
しかも未確認支給品がそのヤバさ。悪の側に回るとタチ悪い……!
548Classical名無しさん:08/03/30 22:56 ID:ipfvt3xI
やべえええええええてらかっけええええええええええ!!
ライダー! 普通ここでライダー持ってこれるか!? ちくしょう! 俺はアンタが大好きだ!

なんて熱すぎる展開、もうわたくし眩暈が止まりませぬ。やってやれ川田、どいつもこいつも叩き潰せやあああああ!!
549Classical名無しさん:08/03/30 23:09 ID:3.TUAxNU
投下乙です!

ジグマールの不明支給品がヘルダイバーと知った時、
「自爆フラグ?」などと思ったのは、多分自分だけですね。
(ヘルダイバーは核融合エンジンを搭載しており、破壊されても周囲に甚大な被害を齎す、という設定が)

そして、まさかのライダーマンヘルメット。本郷の正義を踏みにじった思っている川田は、
ライダーマンが元々、悪の組織に属していたなんて知る由も無いでしょうね。
ライダーマンと同じく、改心することはあるのか!? それとも外道に落ちてでも一途に愛を貫くのか!? 今後が楽しみです!!


しかし、チェンジアタッチメントがないライダーマン、露になった口元は恐らく無精髭のライダーマン……
とても……貧相で頼りないイメージだ。ケンシロウや劉鳳に遭遇したら勝ち目は薄そう。
550Classical名無しさん:08/03/31 01:37 ID:ial5WvO.
>>549
> しかし、チェンジアタッチメントがないライダーマン、露になった口元は恐らく無精髭のライダーマン……
> とても……貧相で頼りないイメージだ。ケンシロウや劉鳳に遭遇したら勝ち目は薄そう。

吹いたwwwというかその姿を想像してでてきたのがヨロシク仮面だったwww
551Classical名無しさん:08/03/31 02:15 ID:5BCc7lLc
ライダーマンの強化服はスゴいよ
結城さん装備時で成人男性の6倍の身体能力と10mの跳躍力を誇るらしい
はっきり言って微妙……
552Classical名無しさん:08/03/31 03:42 ID:.jBXA21Q
乙です。
川田・・・・・・
どんどん落ちていく・・・・・
覚悟が可哀想だ・・・・、
そして最後の支給品、皮肉だな、本郷の正義を汚す事になるとは・・・
とにかくGJでした。
あと、川田と津村斗貴は病院を襲ったらしい。
は、川田と津村斗貴子は病院を襲ったらしい。だと思います。
斗貴じゃ北斗の次男坊に・・・・いや、何でもありません。
553Classical名無しさん:08/03/31 08:53 ID:ZNrPvTsk
投下乙です。
これで川田も十分危険な強マーダーの仲間入りですか。
個人的にはもう一回対主催に戻ってほしいとは思うけど、難しいでしょうね…。

後一つ上で指摘されてる間違いですが、斗貴子の名前のほかに、
襲撃したのは”病院”ではなく”学校”ではないでしょうか?
554 ◆14m5Do64HQ :08/03/31 12:04 ID:fNV4EIHM
感想どうもありがとうございます。

>>552->>553
あっ、間違えました。
ご指摘どうもありがとうございます。
wikiに収録された時に修正します。
555Classical名無しさん:08/03/31 19:55 ID:pXtV5wbg
投下乙!
よりにもよって、川田の手にライダーマンヘルメットが渡るとは。
ジグマールも絶好調。ヘルダイバーがこの二人に殺戮をもたらせるのか、闇を斬り裂く光となるのか。
仮面ライダーに関わり深い川田ゆえの話だと思いました。
GJ!
556Classical名無しさん:08/03/31 21:20 ID:s043sETA
見事につかさを裏切りつつあるな川田よ…
557Classical名無しさん:08/03/31 21:33 ID:B12CtXIQ
>>494
乙です
バーロー…かっこよすぎるだろ…
序盤の頃、人殺しいくないとかうぜぇ…とか思っててマジすまんかった!
お前本当に凄い奴だわ!!
コナンの最大の賭けとも言えそうな壮絶なブラフを勇次郎はどんな風に受け取ったのか…
先がものすごく楽しみになる1作でした!
GJ!!!!!

>>545
乙です
川田…こっちは…バーローは輝いてきてるのに
お前はどんどん外道に堕ちていってるな…
お前にそのライダースーツを装着する資格はない…
つかさをはじめとする皆の思いを踏みにじりやがって…
みゆきの遺品のライドルも、お前が使う資格はない
ジグマールは、かがみを傷つけた外道だ
そしてなにより、お前はつかさの大事な友達のこなたを殺した…
…許されることじゃねえぞ?
558Classical名無しさん:08/03/31 22:01 ID:bacQ42Qc
あげ
559 ◆YbPobpq0XY :08/04/01 11:16 ID:Kin6pvNo
予約していたサービスシーン組を一時投下しました
誤字、脱字、矛盾点の指摘をお願いします

……またしても、いろんな意味で危険な気がするので
560Classical名無しさん:08/04/01 14:02 ID:mV6VUDeg
>>559
一時投下乙です
うーん……治療のシーンが皆無なのが気になるところ
どういった描写にだったかは後の作者に任せるという形でいいのでしょうか?

あと、以前氏はジョセフを死んだような描写をしましたが、そのとき死亡人数表記はしないようにしていたと思いますのでそこは消したほうがよろしいかと
561Classical名無しさん:08/04/01 14:29 ID:YcYiw80M
一時投下乙。
自分も、治療の描写が無いこと、かがみが復活した明確な描写がないことが引っ掛かります。
彼らの手持ちの支給品に、そんなに便利な復活アイテムは無かったはずですし。
それに、片腕を失ったのにかがみが元気すぎる感じもします。
片腕を失ったら身体のバランスが崩れて、歩くのも危うくなる……はずだと思いますし。

あと、なんか天使っぽいのが出ていましたが、アーカードの夢にも出てきた銃の精霊の一種のようなものですか?
562 ◆YbPobpq0XY :08/04/01 16:40 ID:Kin6pvNo
>>560-561
了解です、議論スレの意見とも会わせてこれより修正作業に入ります。
その間、他にも問題があれば。

延長フルに使って、こんな感じで……マジでスイマセン……

そーいや、片手を失うとバランスが崩れるって前に書いてたんだよなオレ……
563Classical名無しさん:08/04/01 18:12 ID:mV6VUDeg
>>562
了解しました。修正頑張ってください
564Classical名無しさん:08/04/01 22:05 ID:8/1uIjRM
投下乙

美形惜しいことしたなw
早く確認してればライダーマンで身体能力、ヘルダイバーで機動力、激戦で再生力と死角なしだったのにw
565Classical名無しさん:08/04/01 23:39 ID:PA2KkBUA
>>562
了解です。
頑張ってくださいね
566 ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:32 ID:ibkj14cI
予約していた分、投下します。
567夜兎と範馬(前編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:32 ID:ibkj14cI

月明かりの下、少年は唐突に足を止めた。

「……あ、そうだ」
「何か忘れ物でもしたアルか?」

病院近くの、何の変哲もない民家の玄関先。そこから数歩踏み出したところで。
急に動きを止めた江戸川コナンに、神楽は怪訝そうな顔を向ける。

波乱万丈の大暴れの末、勇次郎も撒いた。シャワーも浴びて気分も一新した。
楽しく笑い合って、2人の絆もさりげなく確認しあった。
さあこれからだ、という時に、何を言い出すつもりなのだろう? と思っていると……。

「ごめん、ぼく、トイレいきたい。今のお家にちょっと戻ろう? ちょっとだけでいいから」
「なぁぁぁぁ!? おまえッ、よりにもよってこの流れで水差すネ? 嫌がらせアルか!?
 てか便所くらい人がシャワー浴びてる間に済ませとけェェェ! こんガキがぁぁぁぁ!」

神楽が目を剥いて怒るのも無理はあるまい。
つい数分前までのシリアスな、大人顔負けの真面目な表情はどこへやら。
股のあたりを押さえてモジモジするその姿は、まるっきりただの子供。
声色すら幼い様子に戻って、潤んだ目で神楽を見上げる。

「でもぼく、漏れちゃうよ〜。がまんできない〜」
「男ならその辺で立ちションでもなんでもするネ!」
「いや、小さいほうじゃなくて、おっきい方。ウンコ漏れちゃうよ。
 あ、あとついでだから、ぼくもシャワー浴びとこっかな。汗かいちゃったし」
「てめぇぇッ、都合のいい時だけガキに戻ってんじゃねぇぇぇ! てかワザとやってるだろそれ!
 あれか?! ツッコミ不在の中で私に慣れないツッコミさせて芸風広げさせようっていう親切心か?!
 余計なお世話だっつーかチャームポイントのエセ中国人喋りも吹っ飛んじまったじゃねーかコノヤロー!」
「お姉ちゃん、何言ってるの? ぼく子供だからよくわかんない」
「ダッシャァァァァァ!」
568Classical名無しさん:08/04/04 00:33 ID:NM8wWyFQ
 
569Classical名無しさん:08/04/04 00:33 ID:NM8wWyFQ
  
570夜兎と範馬(前編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:34 ID:ibkj14cI

ゴッ。キレた神楽の膝蹴りが炸裂し、鈍い音が響く。コナンの小柄な身体が、小さく揺らぐ。
彼女はそして、半分KOされた状態のコナンを引き摺るようにして、出てきた家に逆戻りして……。

静かに、梟だけがそれを見ていた。
鈍く光る円盤を掴んだ一羽の梟だけが、それを見つめていた。

         ※      ※      ※

江戸川コナンは、考える――

仮に、あの範馬勇次郎が殺人を犯したとしよう。
人殺しである。当然、事件になる。殺人事件だ。
だがそれは果たして、推理小説の題材となりうるであろうか? 探偵の出番がありうるであろうか?

……まず、無理だろう。
探偵に投げかけられるのは、大抵次のどちらかの問い。
「誰がやったか?」と、「どうやってやったか?」だ。
容疑者が複数いて1人に絞り込めず、探偵の知恵が求められる場合。
容疑者が複雑なトリックを用いていて、何をどうやってその犯行を行ったか分からない場合。
探偵小説の分類で言えば、「フーダニット(犯人探し)」と「ハウダニット(トリック破り)」。
この2つの問いこそ、探偵の知恵が最もよく現れる部分。

だが――範馬勇次郎の犯行においては、その2つは論じるまでもないのだ。
誰がそれをやった? ――範馬勇次郎だ。彼は逃げも隠れもしない。
どうやってそれをした? ――その、圧倒的な暴力で。彼は下らないトリックなど使いはしない。
かくして2つの問いは事件発覚と同時に解決され、探偵は警察の奮闘を観戦するだけの存在に成り下がる。
571Classical名無しさん:08/04/04 00:34 ID:8wSXMvbQ
      
572Classical名無しさん:08/04/04 00:34 ID:NM8wWyFQ
   
573Classical名無しさん:08/04/04 00:35 ID:8wSXMvbQ
  
574夜兎と範馬(前編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:35 ID:ibkj14cI

とはいえ……。江戸川コナンは考える。
探偵としての実体験以上に、推理小説を読み漁った経験の方から考える。
推理小説においては、もう1つのスタイルがある。
「ホワイダニット(動機の問題)」。何故それをやったのか、という問いかけ。
それを範馬勇次郎に当てはめるとしたら。

最初の大広間での、徳川光成とのやりとり。
始まって間もない頃、新八と共に出会った時の会話。
そして、ついさきほどの追いかけっこの時の態度や様子。

それらの情報から浮かび上がる、範馬勇次郎の「動機」――
それは現実の犯罪者には稀な、推理小説の中にこそ多い犯罪者類型。
「犯行そのものが目的」であるタイプだろう。
つまり。

彼は、闘争そのものを楽しみとし、生き甲斐とし、そして目的としている。

そう考えなければ、あの言動は説明がつかない。
圧倒的な暴力に裏付けされた、バトルジャンキー。戦わずには生きられない「生き物」。
そして戦いそのものを楽しみ、目的としながら、もう1つの目的――「自らの強さの証明」も意識している。
犯行自体を目的とする頭脳派犯罪者が、芸術的計画でもって自らの知性をアピールするのにも似た心理。

で、あるならば。誘導は可能だ。江戸川コナンはそう考える。
彼を繋ぎとめることの出来る鎖は、この世に存在しない。
コナンたちの世界の警察力をもってしても、範馬勇次郎は止められない。
けれど、この狂った殺し合いの場であればこそ、「ある一定の方向」に誘導することは出来る。
だから、コナンは。

         ※      ※      ※
575Classical名無しさん:08/04/04 00:36 ID:8wSXMvbQ
   
576Classical名無しさん:08/04/04 00:36 ID:NM8wWyFQ
    
577Classical名無しさん:08/04/04 00:36 ID:tHvybDPs
支援!
578夜兎と範馬(前編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:37 ID:ibkj14cI

再び明かりの灯った、病院近くの民家――その裏手。
小さな窓から這い出してくる、小柄な影があった。
彼はデイパックを先に窓の外に落とすと、狭い窓に身体を捻じ込むようにして抜け出す。
綺麗に着地を決めて、ほっと一息。

「悪ぃな、神楽……ここから先はちっとばかしデリケートな話なもんでな」

民家の中、待っているはずの仲間に対し、少年は小さく謝罪の言葉を漏らす。
トイレとシャワーを口実に民家に戻り、神楽に居間で待っているように言っておいて脱衣所の窓から脱出。
普段は不便の多い子供の身体だが、今回ばかりは役に立った。高校生の体格では窓から出られない。
窓の中からは、出しっぱなしのまま放置してきたシャワーの水音が今も聞こえてくる。

「しかし……おまえのせいで、計算がめちゃくちゃだぞ。どうしてくれんだよ」

コナンはそして、頭上を見上げる。
近くの電柱の上。住宅街ではあまり見かけることのない1羽の鳥が、じっと彼を見つめていた。
この梟こそば、全ての元凶。
先ほどまでの勇次郎との命がけの追いかけっこの原因であり……
一旦民家から出ておきながら、再び民家の中に引き返した理由でもあり……
そして、こうして神楽を欺き、家の中に釘付けにしてでも忍び出なければならなくなった理由でもある。
コナンが睨みつけてみても、無表情のまま見返すばかり。

「……移動しよう。ここじゃ、ちとマズいからな」

通じなくて元々、とコナンが一声かけて歩き出すと、少し離れて梟もついてきた。
少し羽ばたいては次の電柱に止まり、コナンの移動を待ってまた羽ばたき。
まさか人間の言葉が分かるわけでもあるまいが、何らかの意志と意図は持っているのだろう。
梟の挙動を視界の隅に捕らえながら、病院から離れる方へ……川に沿って北へ歩を進める。
やがて広がる、雨上がりの濡れた地面。濡れた芝生。
昼間ならキャッチボールでもするのに適していそうな、河原の公園。
格好の場所を見つけたところで、頭上から「何か」が降ってくる。
579Classical名無しさん:08/04/04 00:37 ID:8wSXMvbQ
     
580Classical名無しさん:08/04/04 00:38 ID:NM8wWyFQ
     
581Classical名無しさん:08/04/04 00:38 ID:8wSXMvbQ
           
582夜兎と範馬(前編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:38 ID:ibkj14cI

それは――そう、どこか見覚えのある、1枚のディスク。
頭上を飛び去る梟が、去り際にずっと抱えていた「宝物」を落としていったのだ。
それを空中で見事にキャッチしたコナンは、その「贈り物」を片手に、小さく溜息をついて。

「スタンドDISCか……まあ、ねーよりはマシかもしれねえけど。
 こんなもんがあっても、到底かないっこねーんだよなァ……あんただって、そう思うだろ?」
「…………」
「……で、頭は冷えたかい? 範馬勇次郎」
「……ああ」

小さく呟くコナンの背後に、鬼がいた。
凶悪な笑みを剥き出しにした鬼が、梟に導かれて来た鬼が、音もなく少年を見下ろしていた。

「少なくとも、貴様に俺の首輪を爆破する力などない、と分かる程度には冷えたぜ」

         ※      ※      ※

結局のところ――範馬勇次郎が「そのブラフ」を見抜いたのは、理屈ではなく経験だった。

友人の家に遊びに行く気軽さでホワイトハウスに殴りこみをかける彼は、既に知っている。
「指先1つで核ミサイルを発射できる人間」の纏う空気を知っている。
そして、そういう権限を持つ人間が、その矛先を自分に向けた時に発する殺意を知っている。
知っているからこそ、範馬勇次郎はここまで生き延びてこられた。

その経験と照らし合わせて……コナンの態度は、「腑に落ちない」。
もし彼が病院のテープレコーダ越しに言っていたように、本当に主催者側の人間だとしたら。
もし本当に、ボタン1つで範馬勇次郎を爆殺できる立場だったとしたら。

江戸川コナンの纏う空気は、もっと違うものになってなければおかしいのだ。

         ※      ※      ※
583Classical名無しさん:08/04/04 00:39 ID:Xk5FBXR2
 
584Classical名無しさん:08/04/04 00:40 ID:8wSXMvbQ
        
585夜兎と範馬(前編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:40 ID:ibkj14cI

「……なるほどね。
 まさかアメリカ合衆国大統領とアポなしで会える身分でいらっしゃるとは、思わなかったぜ」
「そうは言っても……まだお前の腹の底は読めてねぇんだがな」

コナンのからかうような口調に、勇次郎はやや平坦な声で答える。
表層上は落ち着いた……しかし、煮えたぎる怒りを奥底に押し留めているような空気。
いつその腕が振るわれ自分の命が刈り取られるか分からぬ緊張の中、それでも江戸川コナンは笑う。
冷や汗を浮かべながらも、それでも勇次郎に負けぬ好戦的な笑みを浮かべる。
こうして食いついてくれたことには、喜びを隠しきれない。
彼の思い描いていたいくつかのシナリオの中でも、かなり良い部類に数えられる展開だ。

「最初にネタバレしておくと、あのテープレコーダーに残したメッセージは全部嘘さ。
 俺は主催者側の人間じゃあない。衛星から指示貰ってたりもしない。
 もしもこの馬鹿げたゲームを『運営している側』の人間がここにいたら、ああ考えるだろうってだけのこと。
 アンタみたいな強い奴を連れて来い、と誰かに頼まれた、ってのも真っ赤な嘘だ。
 ただ……」
「ただ?」
「全部が全部、根も葉もない嘘ってわけじゃない」

たとえ勇次郎が殺したいくらいに怒っていたとしても、ここで問答無用で殺してしまうわけにはいかない。
飛びぬけた暴力が目に付くこの地上最強の生き物は、しかし決して愚かでも馬鹿でもない。
むしろ、相手の意図や狙いを見抜く眼力は、闘争においても必須の能力。情報収集もその範疇。

だから……コナンは十分過ぎる勝算を持って言葉を続ける。
少なくとも、話すべきことを語りきるまでは殺されない。その確信をもって、言葉を続ける。

「俺は、アンタを満足させられる『強い奴』の居場所を知ってるぜ。
 そして、俺はアンタをそいつらの所に案内したいんだ」

         ※      ※      ※
586Classical名無しさん:08/04/04 00:40 ID:8wSXMvbQ
            
587Classical名無しさん:08/04/04 00:40 ID:NM8wWyFQ
      
588夜兎と範馬(前編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:41 ID:ibkj14cI

江戸川コナンは、考える――今度は主催者側の事情を、考える。

ここに、首輪がある。
爆弾が仕込まれ、盗聴器が仕込まれ、おそらく参加者の現在位置を把握するための発信機が仕込まれ。
見ても触っても継ぎ目すら見つからず、容易なことでは外すこともままならぬであろう拘束具。
果たして、これを首尾よく参加者に嵌めたことで、主催者サイドは「もう安心」と考えるだろうか?
勇次郎のような規格外の強者を前にしても、「首輪をつけたからもう大丈夫」、と考えるだろうか?

……ありえない。それは、ありえない。
どんな超技術で作られた道具であっても、それが道具である以上、故障する危険はある。
ふとした拍子で機能しなくなる怖れもある。誤作動を起こす可能性もある。
組織が大きくなれば裏切り者も出るかもしれないし、そうなれば首輪の秘密も漏洩しかねない。
これだけ非人道的な『ゲーム』をしているのだ、主催者側からの脱落者もきっと出るはずなのだ――
黒の組織から抜け出した、灰原哀(シェリー)のように。

ここまでの状況を見るに、この主催者側は「1つのミス」で全てが台無しになるような迂闊なことはしない。
首輪の存在に自信を持っていたとしても、「首輪が外れてしまった時」のことも必ず考えている。
最悪の場合、首輪のなくなった勇次郎やラオウが歯向かってくる可能性を、考慮している。

だから――必ず、あるはずなのだ。
規格外の強さを持つ参加者と戦うハメになっても勝てる、と思える程の「戦力」が、あるはずなのだ。

「つまり……俺やラオウ、アーカードにも匹敵する奴がいるってのか?!」
「ああ。間違いなく、いる。
 それも、たぶん……強い奴が、1人か2人いるきりだ。あまり大人数になれば、組織がまとまらねーしな。
 用心棒的な存在か、それとも組織のリーダー格なのかはまだ分かんねぇが……
 勇次郎、アンタとまともにケンカしても勝てる、と『思ってる』奴が、絶対にいる。
 そいつの『思い込み』が正しいかどうかは分からないが、すさまじく『強い』奴がきっといる」
589Classical名無しさん:08/04/04 00:41 ID:8wSXMvbQ
       
590Classical名無しさん:08/04/04 00:41 ID:NM8wWyFQ
       
591夜兎と範馬(前編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:42 ID:ibkj14cI

もちろん、それは「戦力を持っている」というだけのこと。
主催者サイドは、その戦力を積極的に使う気もないのだろう。
そこから浮かび上がるその人物像は、一言で言ってみれば「陰険」。
それこそ、コナンが勇次郎に「演じてみせた」ような、参加者の奮闘と努力を高みから嘲笑う人格。
自身の絶対的優位を確信し、弱者同士で強さを競う姿を馬鹿にする、歪みまくった性格。

コナンは知る由もないが……それはまさに、「暗闇大使」と呼ばれる男の姿でもある。

仮に勇次郎が優勝したとして。果たして、その「戦力」と戦う機会が訪れるかどうか。
まず、無理だろう。
この殺し合いの場に連れてこられた時だって、勇次郎は戦って捻じ伏せられたわけではない。
その時と同様、戦う間もなく「かわされる」可能性が高い。
きっと勇次郎1人では、その主催者側の強者とまともに拳を交わすことすらできない。

「だけど……俺は探偵だ。こう見ても、数え切れないほどの難事件を解き明かしてきた探偵だ。
 十分な時間と情報さえあれば、奴らの手の内、奴らの考えを見切れる自信はある。
 その『主催者側の強者』を、俺たちと同じ高さにまで引きずり出す自信がある」

コナンは断言する。
勇次郎が己の暴力に絶大な自信を持っているように、コナンもまた自らの推理力に自信を持っている。
主催者側がいかに複雑な企みを企て、いかに常識外れな能力と技術を持っていたとしても……
所詮は「犯罪者」に近い発想を持つ連中だ。知恵比べという一点において、名探偵が負ける道理がない。
いつだって最後には、「たったひとつの真実」は彼の手の中に納まるものなのだ。

ただ、ここが探偵の辛いところだが……
いかな名探偵であっても、推理の礎となる「情報」が足りなければ、真実に届くことができない。
そしてコナンはまだ、生き残っている全ての参加者と接触できているわけではない。
集めうる全ての情報を手にするところまでは、いっていない。
コナンたち「探偵」が負けるとしたら、一番ありうるのがこの部分。
重要な情報を握っている者の無為な死、あるいは、情報不足のままのタイムオーバーである。
592Classical名無しさん:08/04/04 00:42 ID:8wSXMvbQ
     
593夜兎と範馬(前編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:43 ID:ibkj14cI

だから、コナンは賭けに出た。
範馬勇次郎に接触し、命を賭けたギャンブルに出た。
彼をとことんまで挑発し、範馬勇次郎をも含めた全参加者を嘲笑う存在がいることも示唆し。
途中、梟の挙動に計算を狂わされ、神楽相手につまらないトリックを使う羽目にもなったが……
こういった駆け引きにおいては邪魔にしかならない彼女を遠ざけ、こうして勇次郎とサシで話す場を得て。

犯罪者のトリックを解き明かす時と同じ要領で、こうして自分の推理と企みを語っている。

         ※      ※      ※

「で……その探偵とやらは、この俺に何をさせる気だ?」

探偵の長い長い解説が終わり、勇次郎は問う。
回答次第によっては、ここでブチ殺す。そんな殺気を隠しもせずに問い掛ける。
ここまで話を聞いてもなお、勇次郎はコナンを快く思っていない。
……それはそうだろう。悪名高い「悪鬼(オーガ)」相手に、あれだけナメた口をきいてくれた奴はそう居ない。
この上、さらに下らない「お願い」でもしてくるようなら……!

そんな殺気を背に受け、しかしコナンは動じない。
目の前には、夜の川。
ルイズが流された川。ルイズがコナンを護るため、津村斗貴子もろともに飛び込んだ川。
いまはそこに飛び込む者もなく、静かに流れ続けている川。
コナンは背後の勇次郎を振り返らず、静かに川を眺めたまま答える。

「アンタは今まで通り、好きに動き回って好きにケンカを楽しんでくれればいい。
 元々、アンタが俺の言う通りに動いてくれるとは思っちゃいないさ。
 俺にはアンタを止める能力も権利もねーよ。ただ……」
「ただ?」
「ただ、倒した相手にトドメを刺すことだけは、勘弁してくれ。
 いくら俺でも、死人からは情報を引き出せない。
 情報を聞き出す余地さえ残してくれれば、あとは俺が勝手にやる」
594Classical名無しさん:08/04/04 00:43 ID:NM8wWyFQ
            
595Classical名無しさん:08/04/04 00:44 ID:6qzfSdc6
しえんですね
わかります
596夜兎と範馬(前編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:44 ID:ibkj14cI

江戸川コナンは、譲歩する。
殺人という最悪の事態を回避するために、暴力そのものは見逃す譲歩をする。
誰かを傷つけ、大怪我を負わせ、下手すれば後遺症すら残ってしまう可能性を、認めてしまう。
範馬勇次郎という天災にも等しい相手に、ここまでは譲歩してしまう。

その代わり、「殺さない」ことにプラスの意味を付加してみせる。
相手が死にさえしなければ、話を聞きだすことが出来る。情報を引き出す余地が残る。
それらの情報が回りまわって、勇次郎の首輪を外すことにも繋がるかもしれない。
主催者側にいる強者を、この舞台に引きずり出すことにも繋がるかもしれない。
最後の一撃を我慢することで、遠くない未来に、極上の闘争を楽しめるかもしれない――!
きっと範馬勇次郎は、その誘惑には打ち勝てない。
コナンへの苛立ちも何もかも、その「新たなるご馳走」の前には些細なことになってしまうはず。

この提案を勇次郎が呑んでくれれば……「参加者のほぼ全員を」守ることができる。
僅かな「例外」を除き、守ることができる。

実のところ……コナンにはもう1つ「策」がある。
範馬勇次郎の「殺人」を止める、もう1つの「安全装置」を考えている。
ただ、こちらは条件が難しい。
タイミング良く、勇次郎がトドメを刺そうとする瞬間にコナン自身が居合わせなければ使えない。
だから、この段階で勇次郎が納得してくれるのなら、それが一番いいのだが……!

「……なるほどなァ。色々考えるモンだぜ。これで俺は迂闊に殺せなくなる……そういう狙いかよ」
「だけど、嘘は言ってないぜ。アンタも幸せ、俺も幸せ。みんな幸せになれる提案さ」
「クックック。ものは言いようだな。ま、小僧の言う通りだが」

勇次郎が笑う。朗らかに笑う。
……おかしい。ここでその笑いは、ちょっとおかしい。コナンは逆に不安を覚える。
いくら理の通った説得を受けたからといって、この男はあっさり納得するような性格ではない。
であれば……まさか。コナンはハッとして振り返る。
597Classical名無しさん:08/04/04 00:45 ID:8wSXMvbQ
          
598Classical名無しさん:08/04/04 00:46 ID:NM8wWyFQ
                  
599夜兎と範馬(前編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:46 ID:ibkj14cI

範馬勇次郎は、コナンの方を見ていなかった。
彼が見ていたのは、電柱に止まってこちらを見つめる、あの梟。その真下。
ここまで慌てて走ってきたのか、荒い息をつきながら肩を上下させる、番傘を持った少女――

「コナン……何してるネ!」
「小僧の言う通りだが――あの小娘は、喰っちまっていいんだろう?
 今更お前の知らねェ話も持ってねェだろうし、何より馬鹿だ。
 探偵さんの大好きな屁理屈で言えば、『生かしておく理由がねェ』」

勇次郎が、獰猛な笑みを剥き出しにする。底意地の悪い笑みを浮かべる。
それはコナンが最も怖れていた事態。さきほどの策で守れない数少ない「例外」。

勇次郎が興味を持つに足る戦闘力を示してしまった、怪力娘。
コナンと共に行動をしており、それはつまり、情報交換は既に十分済んでいると考えられる相手であり。
そもそも、主催側との知恵比べには役にも立ちそうにない頭の悪さを露呈してしまっている。

神楽は――神楽だけは、勇次郎にとって容赦なく殺してしまっていい相手。
勇次郎との接触において、最大の問題となる存在だった。

         ※      ※      ※

神楽は、怒っていた。
いつまでもシャワーから出てこないコナンに業を煮やし、扉を破壊し突入してみれば。
そこに残されていたのは、出しっぱなしのシャワーに開け放たれた窓、そしてコナンの置手紙。

曰く、神楽を騙して置いていくことを、申し訳なく思っていること。
曰く、あの梟がまた近くまで来ており、勇次郎に見つかる危険が高いこと。
曰く、自分1人なら彼をなんとかできる策があり、是非任せて欲しいこと。
曰く、ここから先はコナンの指示に従う必要はない、神楽が好きなように動いてくれていいこと――

その文面が、逆に神楽の心に火をつける。
600Classical名無しさん:08/04/04 00:47 ID:8wSXMvbQ
     
601夜兎と範馬(前編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:47 ID:ibkj14cI

「てめーにわざわざ言われなくてもなァ……こちとらとっくに『好きに動いてる』アルヨ!」

怒りのままに、巨大な拳銃を構えて引き金を引く。
それは何に対する怒りなのだろう? 神楽自身にも分からない。
無茶をしたコナンに対する怒りか。
無茶せざるを得ない状況を作った勇次郎に対しての怒りか。
それとも、そんな無茶をむざむざ見過ごしそうになった自分に対する怒りか。
ともかく勇次郎は敵だ。戦って勝てる気がしなくても――コナンのために、やるしかない!

「はははははッ! ヤル気は十分ってわけか、面白ェ!」
「ちょっ、神楽っ、どこ狙ってやがるっ! 俺まで一緒に殺す気かぁっ!?」
「ええい五月蝿いガキアル、どうせだから一緒にここで死ぬネ!」

自分でもどこまで本気か分からぬ軽口を叩きながら、勇次郎とコナンの間に銃弾を打ち込む。
悲鳴を上げながら、コナンが転がるように逃げる。高笑いを上げながら勇次郎が横っ飛びに飛びのく。
2人の距離が、離れる。

神楽が見つけた時、2人の間の距離は手を伸ばせば届きそうな程しかなかった。
コナンを護るためには、2人の中間、僅かな空間に弾を叩き込まねばならない。
慣れない銃。コナンの身体に1発でも掠れば命取りになりかねない威力の銃。
でもそうであればこそ、勇次郎も避けてくれる。2人の間に距離を作れる。
コナンが逃げる隙も、作れる。

「どこまで本気でてめぇはぁぁぁぁぁ!」
「私はいつも本気ネ!」

そう、神楽はいつだって本気。銃を乱射しながら、河原を駆ける。
ここまでの経緯も状況も分からないまま、たった1つの目的のために銃を撃ち、番傘を振るう。
神楽が戦うたった1つの理由、それは。

「私は本気で……みんなを護りたいネ!」
602Classical名無しさん:08/04/04 00:47 ID:NM8wWyFQ
                        
603Classical名無しさん:08/04/04 00:47 ID:6mdNIF9U
test
604夜兎と範馬(前編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:48 ID:ibkj14cI

         ※      ※      ※

範馬勇次郎は――奇妙な既視感を覚えていた。

逃げるのではなく、積極的に向かってくる神楽の姿に、最初こそ期待したものの……
その攻撃はいずれも甘く、大振りなものばかり。
銃弾もはじめから当てる気が無いとしか思えず、傘で殴りかかってくる姿もいまいち殺気が足りず……。
パワーはある。スピードもある。タフネスもある。
銃の扱いも、剣代わりの番傘を振るう腕も、いずれも十分に一級品。ただの小娘の力ではない。
なのに、「何がなんでもコイツを倒す」という気迫が感じられない。これは一体何なのだろう。

そう考えて、すぐに気付く。
ああ……こいつは、この探偵を自称するガキを守ってるつもりなんだ、と。
範馬勇次郎を倒すことより、江戸川コナンがこの場を逃げられることを重視しているような、そんな攻撃だ。
まったく、見当違いにも程がある。
そもそもこのガキは、神楽に守ってもらおうなんて考えちゃいない。そもそも逃げる気なんてありはしない。
ほら、だから。流れ弾の届かぬ距離から、心配そうに見てるだけじゃないか。
大体、この程度の距離を稼いだからといって何にもならないのだ。
この程度では、勇次郎がちょっと本気を出せば意味がない。一呼吸の間に間を詰め命を奪える距離だ。

いつでも決着をつけられる状態の中……
適当に避け、かわし、あしらいながら、勇次郎は考える。

この既視感は、いったい何だろうと。

ああ、そういえば……女と戦ったことは、数えるほどしか無かったか。
それが、「戦い」と呼べるのなら、だが。
銃を使う女としてまず思い出したのは、ベトナムで会ったジェーン。それから、誰かを護ると言えば……!
605Classical名無しさん:08/04/04 00:48 ID:6qzfSdc6
606Classical名無しさん:08/04/04 00:48 ID:8wSXMvbQ
        
607夜兎と範馬(前編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:49 ID:ibkj14cI

         ※      ※      ※

剣のように番傘を振り回す――当たらない。
番傘を振り回した勢いを利用しての回し蹴り――当たらない。
そのまま身を捻って左手の巨大な拳銃を撃つ――当たらない。

神楽の額に、汗が滲む。
その一撃一撃が、既に全力だ。今の彼女が繰り出せる最大最高の一撃。
なのに、勇次郎は……明らかに遊んでいる。
じゃれつく犬をからかうような態度で、神楽の攻撃もフェイントも何もかも、全部見切ってかわしている。
からかうようにかわすだけで、ほとんど攻撃らしい攻撃すらしない。
いくらなんでも、ここまで差があるなんて。傍で見守るコナンも、唖然とするしかない。

「技も未熟、駆け引きも未熟……心身共に、まだ成長途上。
 だが、パワー・スピード共に一級のアスリートクラス。いや、既に下手な金メダリストよりも上か。
 あと2、3年ってとこだな。まだまだ伸びる余地はある」

渾身の力を込めて振り下ろされた番傘が、何気なしに振るわれた掌に受け流され、虚しく地面を叩く。
軽い調子で繰り出された膝蹴り、しかしカウンター気味に入ったそれを腹部に喰らって、悶絶する。
必死の神楽。余裕たっぷりの勇次郎。
まるで、戦いにならない――絶望の影すらよぎり始めた、神楽とコナンに対し。

「そう、2、3年だ。それくらいすりゃ、身体も出来上がる。ちったぁ女らしくもなる。そしたら――」

勇次郎は、ニヤリと笑った。
ニヤリと笑って、とんでもないことを言い放った。

「俺のガキを産ませるのも、悪くない」

         ※      ※      ※
608Classical名無しさん:08/04/04 00:49 ID:NM8wWyFQ
                           
609夜兎と範馬(後編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:50 ID:ibkj14cI

空気が、凍りついた。
はらはらしながら戦いの行方を見守っていたコナンも、必死に番傘を振るっていた神楽も、共に凍りつく。
こいつは、何ていった? ついさっきまで戦っていた相手に、一体何を?

「――おい、勇次郎。おめぇ、こんな時に何を」
「そうアル! まったくなんてぶしつけな男ネ?! プロポーズするなら、その前に愛の告白アル!」
「そうだ物事には順番ってものが……ってちょっと待て!?」

思わず突っ込みかけたコナンは、割り込むように叫んだ神楽に一瞬同意しかけて、ぎょっとする。
見れば神楽は頬を真っ赤に染め、モジモジと身をくねらせ……

「……いやいやいや、それはねーだろ!
 なんで『まんざらでもない』って顔してんだよ、お前は!」
「でも綺麗で可愛いジャンプヒロインの私に一目惚れしちゃう気持ちも分からなくもないアルヨ♪
 そして好意を向けられて嫌がる女はいないネ。不器用だけど、こんな情熱的アプローチ初めてアル。
 ああでも私家事とか出来ないヨ。三食昼寝つきの優雅なセレブ生活でないと奥さんなんて無理ネ。
 その立派な筋肉でちゃっちゃと稼いで私を楽させるアル。そうしたら結婚も考えてやっていいネ」
「いや……だからどーして結婚前提の話になってんだよバーロー!
 あとお前がセレブとか言うな、絶対どんな生活か分かってねーだろ!」
「あ、ご飯は三食鮭茶漬け。これは外せない条件アル。三食ふりかけご飯なら門前払いネ」
「えらくしょぼいセレブ像だなオイ! てかちゃんと三食別々のもの食べろよ!」

突っ込んだら負けだと思いつつ、思わず突っ込まずにはいられないコナン。ボケ倒す神楽。
そんな2人を前に、勇次郎は。

「馬鹿だ馬鹿だとは思っちゃいたが、ここまで馬鹿とはな……ま、それもコイツの強さの一端か」
「いやいや、褒めても何も出ないネ♪ おっぱいかお尻くらいしか出せないネ♪」
「褒めてねーよ! バカだって言ってんだよ! てか出すなそんなもん!」
「馬鹿だが……これなら刃牙のような、戦い甲斐のあるガキが出来そうだ」

――その勇次郎の何気ない一言に、再び、空気が凍りついた。
610Classical名無しさん:08/04/04 00:51 ID:NM8wWyFQ
          
611Classical名無しさん:08/04/04 00:51 ID:6qzfSdc6
612Classical名無しさん:08/04/04 00:51 ID:8wSXMvbQ
      
613夜兎と範馬(後編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:51 ID:ibkj14cI

         ※      ※      ※

鬼は哂う。闇の中、実に楽しそうに哂う。

「何しろ、喰い応えのある奴はそうそういねぇもんでな――なら、範馬の血に期待するのも手だ。
 そこそこ楽しめた刃牙もくたばっちまったし、この辺で『次』を仕込んでおくのも悪くねェ。
 上手く行けば、ジェーンや江珠の時より強いガキが出来るかもしれん」

そうだ。コナンは服部と共にこう推理してたのではなかったか。
同じ「範馬」の姓を持つ2人の男。血縁関係にありそうな2人。
共に、光成が言った「地下闘技場」に関わりのあると考えられる存在――

(しかし……そこまでするかよ!
 いくら戦いが好きだからって、そんな、わざわざ子供まで作って……!)

コナンの背に、冷たいものが伝う。
範馬勇次郎の闘争に対する欲望が尋常ならざるものであることは、既に分かっていた。
しかし、これほどのものとは。
わざわざ自分が戦うために、倒すために子供を作り、産ませ、育てる!
それも今の話によれば、範馬刃牙1人ではないのだ! 少なくとももう1人――あるいは、それ以上!
そして、神楽もまた――!

「今はこんなんでも、女は女。こいつの身体能力と範馬の血が混じれば、きっと……」
「――黙るアル」

銃声。
勇次郎の言葉が、無造作に放たれた一発の銃弾に遮られる。
彼の顔からニヤニヤ笑いが消える。コナンもまた、ハッとして振り返る。

神楽のまとう空気が――雰囲気が、変わっていた。
614Classical名無しさん:08/04/04 00:52 ID:8wSXMvbQ
       
615Classical名無しさん:08/04/04 00:52 ID:8wSXMvbQ
             
616夜兎と範馬(後編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:53 ID:ibkj14cI

         ※      ※      ※

戦闘種族、夜兎族。
色素の薄いその肌の色以外は、ほとんど人間と変わりない姿を持つ彼らは。
その強さこそ広く宇宙に知れ渡っていたものの、ほとんど絶滅しかけていた種族だった。
戦うことしか知らず、戦うことをやめられず、その数を減らして言った一族。

神楽には、忘れられない思い出がある。
夜兎族に伝わる古い風習。忌まわしき「親殺し」。
戦士は親を乗り越えてこそ一人前。
そんな乱暴な考えに基づいた、忘れられかけていたその蛮習を――神楽の兄は、実行しようとした。
滾る戦闘種族の血そのままに、自らの父に挑みかかった。
目の前で命を奪い合う父と兄。肉親同士の凄惨な殺し合い。

結果、父は片腕を失い。兄は父に殺されかけ。一家は一緒にいられなくなって、バラバラになった。

その体験は、神楽の奥底に強く強く刷り込まれ……やがて、彼女は1つの信念を抱くようになる。

         ※      ※      ※

「私は……お前のような奴にだけは、許せないアル!」
「――ッ!?」

絶叫と共に、飛び込みざまの鋭い斬撃。勇次郎の顔色が、変わる。
そこは流石の勇次郎、直撃こそ喰らわないが……しかし、次の瞬間、血が宙に散る。
どう見ても鈍器でしかない番傘、それがまるで一本の名刀のように、勇次郎の胸板を切り裂いていた。
皮一枚切られただけではあるが、それでも勇次郎が間合いを見誤るとは。
驚く勇次郎は、しかし続けざまに放たれた神楽の前蹴りを避けられず、その身を大きくのけらせる。
617Classical名無しさん:08/04/04 00:53 ID:NM8wWyFQ
            
618Classical名無しさん:08/04/04 00:53 ID:8wSXMvbQ
                   
619Classical名無しさん:08/04/04 00:53 ID:Xk5FBXR2
 
620夜兎と範馬(後編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:54 ID:ibkj14cI

「私の子には――この子には、あんな想いは絶対にさせないアル!」

片手で自らの下腹部を押さえながら、神楽は叫ぶ。叫びながら番傘を振るう。
いやお前、まだそこに子供いねーだろ、と突っ込む間もない鋭い連続攻撃。
勇次郎の態度から、遊びの色が消える。
防戦一方では押し負ける、と判断したか、勇次郎もまた拳を繰り出すが……当たらない。
獣のように繰り出した拳が、片端から番傘に撃ち落される。

「範馬も夜兎と一緒アル! みんなみんな、大馬鹿野郎アル!」

拳と傘で打ち合ううちに、勇次郎の拳がついに神楽の胸部を捉える。
肋骨が折れる鈍い音が、見守るしかないコナンの耳にもしっかりと届く。
しかしそれでも神楽は揺るがない。苦痛の色1つ見せない。
逆にその腕を捕まえて……力任せに、ぶん投げる。あの範馬勇次郎を、空高く投げ飛ばす。
もちろんそこは勇次郎、無様に尻餅をつくこともなく、空中で姿勢を建て直し、足から着地を決めていたが……

(な……なんだよ、こりゃぁ……!)

コナンは呆然とする。思いがけない神楽の「強さ」に、唖然とする。
素人目にも、さっきまでの神楽が決して手を抜いていたわけでないことくらい分かる。
にも拘らず、この豹変ぶり。「あの」範馬勇次郎を圧倒するほどの力。
これは、ひょっとして……!?

(ひょっとして、こいつぁ……!!)
「クックック……ひょっとしたら、俺が小娘に倒される。そう思ったか、探偵?」
「!?」
621Classical名無しさん:08/04/04 00:55 ID:8wSXMvbQ
               
622夜兎と範馬(後編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:55 ID:ibkj14cI

ひょっとして、勇次郎が神楽に倒されてしまうのではないか。そう思った瞬間。
目の前で、「鬼が哂った」。

「まさか小娘相手に使うとは思わなかったが……見せてやろう!」

見間違いではない。
コナンの目の前で、勇次郎の背面が盛り上がり、1つの形を作り上げる。
純粋なる格闘の中で培われた悪魔の筋肉、その姿は。

「これが――鬼(オーガ)の正体だッ!」

鬼が哂う。打撃用筋肉で模られた鬼の面が哂う。そして――コナンたちは、絶望に叩き込まれる。

         ※      ※      ※

神楽が蹴りを放つ――直撃しても、ビクともしない。
神楽が左手の拳銃でゼロ距離射撃――その直前に手刀を喰らい、銃を持った手首ごと変な方向に曲がる。
神楽が右手で番傘を振るう――斬撃に等しいその攻撃も、あっさり空中で掴まれ、止められる。

通じない。
つい先ほどまで圧倒していたその攻撃が、全く通じない。
通じないどころか……勇次郎の反撃が始まった途端に。

勇次郎の拳が顔面を捉える――嫌な音と共に、数本の歯が折れ飛び、口から飛び出す
勇次郎の蹴りが腹に突き刺さる――身体をくの字に折り、血の混じった吐瀉物を盛大に撒き散らす。
勇次郎の踵落としが叩き込まれる――地面に盛大に叩きつけられ、ちょっとしたクレーターが出来上がる。

潰れたカエルのようにピクピクと。見るからにヤバそうな痙攣をしている神楽の身体。
勇次郎は、さらに足を振り上げ、振り下ろす。
単なる踏み付け。しかし勇次郎のパワーで放たれるそれは立派な殺人技。
一発ごとに、神楽の身体が壊れていく。一発ごとに、神楽の命が削られていく。
623Classical名無しさん:08/04/04 00:56 ID:NM8wWyFQ
 
624Classical名無しさん:08/04/04 00:57 ID:.h0bIJac
 
625夜兎と範馬(後編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:57 ID:ibkj14cI

「や、やめろっ!」

ついに見かねたコナンが飛び出す。勇次郎の暴虐を止めんと果敢に飛び出す。
手の中には先ほど梟から受け取った1枚のディスク。
アミバの末路が脳裏を過ぎるが、今は躊躇っている場合ではない。
勇次郎に突撃しながら、それを自らの頭に突き刺し、

「『ゴールド・エクスペ』……!」
「五月蝿ェ」

脳裏に過ぎったスタンド名を叫びきる時間すら与えられず、勇次郎に張り倒された。
咄嗟に黄金の人影、『ゴールド・エクスペリエンス』でガードするが、堪えきれない。吹き飛ばされる。
……やっぱり無理だ。
全くの無手よりは遥かにマシだが、スタンド1つで勇次郎を止めることなど出来ない。
ならば。
立ち上がることもできないまま、コナンはそれでも必死に顔を上げる。
なおも神楽に攻撃を加えんとする勇次郎に、必死で呼びかける。

「勇次郎、お前の勝ちだ! だが……そこから先は、やっちまったらお前の負けだぞバーローッ!」
「…………」
「お前、さっき言ったよな!?
 あと2、3年もすれば神楽はもっと強くなる、と! また伸びる余地があると!
 なら……そこから先は、おめーの『怯え』でしかねぇ!」
「怯え、だと……?」

勇次郎がゆっくりと振り返る。
『ゴールド・エクスペリエンス』での乱入にも振り向きさえしなかった彼が、振り返る。
コナンの考えていた、「勇次郎に殺人を犯させないためのもう1つの策」。
勇次郎と戦い、倒され、相手が無抵抗になった瞬間にしか使えないその指摘――
626Classical名無しさん:08/04/04 00:58 ID:NM8wWyFQ
  
627Classical名無しさん:08/04/04 00:59 ID:Xk5FBXR2
 
628Classical名無しさん:08/04/04 00:59 ID:8wSXMvbQ
             
629夜兎と範馬(後編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 00:59 ID:ibkj14cI

「そうだ、お前は怯えてんだ! 将来神楽があんたを越えちまう、その可能性に!
 今は確かにお前の方が強いさ。だけど、この先どうなるかは分からねぇ!
 ……神楽だけじゃねぇぞ、KOされた奴をあえて殺すってのは、そういうことだろ?!」
「…………」
「それでも殺すってなら、お前の負けだ!
 お前はここで神楽を殺すことで、『未来の神楽』に負けを認めたことになるんだ! 違うか!?」

コナンは叫ぶ。必死に叫ぶ。
勇次郎は単に戦闘そのものを目的としているわけではない。
そこに加えて、自らの強さの証明という目的をも持っている。
ならば――この指摘で、必ず「揺らぐ」。そのはずだ。

そして、しばしの沈黙。

「……小僧が、考えやがったな。俺も認識を改めなきゃならねぇ。
 『探偵』……ただ屁理屈を並べるだけの小賢しいガキだと思っていたが、なかなかどうして、面白い」
「…………!」
「だが」

勇次郎はそして、静かにコナンの眼力を讃える。
コナンの洞察力、コナンの発想を素直に認め褒めた上で、その顔になお浮かぶのは好戦的な笑み。
彼は、静かに自分の背後を指差す。
親指で、自らの「背後に立つ」人物を指し示す。

「だが……頭でっかちな小僧が考えるより、『闘争』というものは奥深い……!」
「…………!!」
「クククッ、こういうことがあるから、やめられねェ……!」

神楽が、立っていた。
満身創痍の身体で、白目を剥いたままで、それでも番傘に寄りかかるようにして、立ち上がっていた。
630Classical名無しさん:08/04/04 01:01 ID:8wSXMvbQ
      
631夜兎と範馬(後編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 01:02 ID:ibkj14cI

         ※      ※      ※

「完全骨折:右前腕1、左前腕2、右肋骨2、左肋骨1、下顎骨1、右大腿部1……」
「私は……お前と違うネ……! 私は、人を護ることも出来るネ……!」

勇次郎が、嬉々とした表情で負傷をカウントする。
神楽は、目の焦点も合わぬまま、うわごとのように呟き続ける。

「不完全骨折:右上腕1、左前腕1、右鎖骨1、左頬骨1、前頭骨1……」
「戦って、戦って、夜兎滅びたネ……パピーも兄ちゃんも、ひとりぼっちになってったネ……」

それぞれに呟きながら、距離を詰める。
それぞれが、前に進む。

「裂傷7、打撲21。歯の欠損5、脳内出血、及び内臓の一部破裂……よくぞ立ち上がってくれた!」
「範馬も夜兎と一緒ネ……このままでは、みんなひとりぼっちになってしまうヨ……!」

歓喜に震える勇次郎が、両手を高々と挙げる。
足元すら覚束ない神楽が、それでも折れた腕で番傘を持ち上げる。
背後でコナンがなにやら叫んでいるが、2人の耳には届かない。もう、言葉では止められない。

「2年も 3年も待てやしねぇ……ましてや、ガキが育つまで待ってられるかッ! 今! ここで! 全力で!」
「戦うべきは、自分自身ネ……! そういう風にしたら、友達、いっぱい……」

勇次郎の背で、鬼が哭く。ただ思いっきりブン殴る、勇次郎最大最強の一撃の構えを取る。
神楽が傘を刀のように構える。侍のように斬り付ける構えを取る。

「 喰 ら わ せ て も ら う ッ ! 」
「……でき……」

動いたのは全くの同時。2つの影が交錯し――鈍い音が、河原に響き渡った。
632Classical名無しさん:08/04/04 01:02 ID:NM8wWyFQ
   
633Classical名無しさん:08/04/04 01:02 ID:Xk5FBXR2
 
634夜兎と範馬(後編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 01:03 ID:ibkj14cI

         ※      ※      ※


  光の中で、2人の男が待っていた。
  懐かしい顔。もう会えないと思っていた顔。
  彼らの出迎えに、頭の回りの良くない彼女もその意味に気付く。

  ああ、仕方ないな。彼女は僅かな諦観と共に小さく微笑む。
  あいつらはダメだから。自分が一緒にいてやらないと、ダメな奴らだから。
  だから、自分も奴らの所にいってやらねば。

  (3人揃っての、万事屋だからネ……仕方ないアル)

  ただ、ちょっとだけ残念にも思う。
  残してきたコナンのこともそうだし……夜兎と似た定めを負っているらしい、あの男。
  夫になったかもしれなかったあの男は……幸せになれるのだろうか。
  ああやって戦い続けて、幸せ、なのだろうか。
  少しだけ、気になった。

  「……なんて、殺した相手の心配して、それで満足できるかー! 帰るアル! 『あっち』に帰るアル!」
  「無理だよ神楽ちゃん、僕らもう『こっち』に来ちゃってんだから! 暴れても無理だって!」
  「やれやれ……まあいちご牛乳でも飲んで落ち着けや」

  しんみり終わるかと思いきや、いつもと変わらぬドタバタ劇。
  夢と現の狭間で、それでも思う。やっぱり、自分は「ここ」がいい、と。

  この場所が――この2人の間のポジションが、やっぱり一番いい。


         ※      ※      ※
635Classical名無しさん:08/04/04 01:04 ID:8wSXMvbQ
          
636夜兎と範馬(後編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 01:04 ID:ibkj14cI

川は静かに流れ続け、夜の河岸はまた元の静けさを取り戻す。

勇次郎が、静かに歩み去る。
極上の闘争を味わい尽くした鬼が、コナンのことなど眼中にないとばかりに背中を向け、去っていく。

後に残されたのは、1人の少女と、1人の少年。
もう動くことのない少女と、膝をついたまま立ち上がれない少年。

「くっ……そぉっ……!」

悔恨の拳が地面に叩きつけられ――そこから静かに植物が伸びる。
『ゴールド・エクスペリエンス』が作り出した花の中に埋もれるようにして……少女は、笑っていた。
穏やかに、静かに微笑みながら、息絶えていた。

「……しかし、一日に2度もガキに説教喰らうとはな……この俺も焼きが回ったモンだぜ」

勇次郎の小さな呟きだけが、風に乗って届き、そして夜の闇に溶けていった。
彼らを見守る梟はもうおらず――川は、ただ静かに流れ続ける。



【神楽@銀魂  死亡】

637Classical名無しさん:08/04/04 01:04 ID:NM8wWyFQ
     
638Classical名無しさん:08/04/04 01:04 ID:8wSXMvbQ
     
639夜兎と範馬(後編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 01:05 ID:ibkj14cI

【F-3中央部 河原 /2日目 深夜】
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:全身打撲。疲労大。左肩と全身に湿布と包帯。強い無力感。
[装備]:ハート様気絶用棍棒@北斗の拳 、『ゴールド・エクスペリエンス』のDISC@ジョジョの奇妙な冒険
     懐中電灯@現地調達、包帯と湿布@現地調達 スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品(食料一食消費)、鷲巣麻雀セット@アカギ、 空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考]基本:この殺し合いを止める。
1:範馬勇次郎を追いかけ行動を共にする? 神楽を丁重に葬る?
2:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
3:ルイズの最後の願いを叶えたい。
4:ゲームからの脱出。
5:ジグマールを警戒。
[備考]
※メガネ、蝶ネクタイ、シューズは全て何の効力もない普通のグッズを装備しています。
※自分達の世界以外の人間が連れてこられていることに気付きました
※川田、ヒナギク、つかさ、服部、劉鳳、アミバの情報を手に入れました。
※平次と二人で立てた仮説、「光成の他の主催者の可能性」「光成による反抗の呼びかけの可能性」「盗聴器を利用した光成への呼びかけの策」 等については、まだ平次以外に話していません。又、話す機会を慎重にすべきとも考えています。
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。

[備考]
神楽の死体の傍に、
 神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂、ジャッカル@HELLSING(残弾数1)、
 基本支給品一式×2(食料一食消費) 陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた 首輪
が残っています。
神楽の死体を、『ゴールド・エクスペリエンス』で作られた花が取り囲んでいます。
640Classical名無しさん:08/04/04 01:06 ID:6qzfSdc6
641Classical名無しさん:08/04/04 01:06 ID:9P0HB5sU
 
642夜兎と範馬(後編) ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 01:06 ID:ibkj14cI

【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】
[状態]右手に中度の火傷、左手に大きな噛み傷。 胸板に軽い切り傷。
   全身の至るところの肉を抉られており、幾つかの内臓器官にも損傷あり。
[装備]ライター
[道具]支給品一式、打ち上げ花火2発、フェイファー ツェリザカ(0/5) 、レミントンM31(2/4)
   色々と記入された名簿×2、レミントン M31の予備弾22、 お茶葉(残り100g)、スタングレネード×4
[思考] 基本:闘争を楽しみつつ、主催者を殺す。 (ただし、倒れた相手にトドメは刺さない?)
1:もしコナンがついてくる気なら、好きなようにさせる
2:アーカードが名を残した戦士達と、闘争を楽しみたい。 (ただし、斗貴子に対してのみ微妙)
3:首輪を外したい
4:S7駅へ向かいラオウ、ケンシロウを探す。
5:未だ見ぬ参加者との闘争に、強い欲求
6:コナンの言う、「主催者側にいるはずの強者」と戦いたい
[備考]
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。
※ラオウ・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました。
※生命の水(アクア・ウィタエ)を摂取し、身体能力が向上しています。
※再生中だった左手は、戦闘が可能なレベルに修復されています。
※アーカードより、DIO、かがみ、劉鳳、アミバ、服部、三村、ハヤテ、覚悟、ジョセフ、パピヨンの簡単な情報を得ました。
ただし、三村とかがみの名前は知りません。
是非とも彼等とは闘ってみたいと感じていますが、既に闘っている斗貴子に関しては微妙な所です。

※どの程度コナンの言葉に心動かされているかは、後の書き手さんにお任せします。
643Classical名無しさん:08/04/04 01:06 ID:NM8wWyFQ
       
644 ◆6YD2p5BHYs :08/04/04 01:07 ID:ibkj14cI
以上、投下終了。支援感謝です。
645Classical名無しさん:08/04/04 01:09 ID:8wSXMvbQ
投下乙!
か、神楽〜〜〜!!
夜兎族と範馬一家を重ね合わせる上手さに驚きました。
神楽の奮闘も、コナンの頑張りも目頭が熱く。
勇次郎はふりーだむ。そして外道w
GJ!
646Classical名無しさん:08/04/04 01:11 ID:LuJwnpBg
大作乙でした! GJ!
神楽……遂に散ったか……。
でも最後に意地を見せて、万屋に合流するラストは感動。
勇次郎の嫁発言と、神楽の夜兎の宿命はうまいと思いました。
バーローの言葉、再び届かず……しかし、曲がらずに頑張ってほしい。

最後にもう一度、GJでした!
647Classical名無しさん:08/04/04 01:12 ID:9P0HB5sU
乙&GJ!
ああ、神楽……
648Classical名無しさん:08/04/04 01:12 ID:56RmwgO2
おつかれさんっしたああああああ!!
神楽のキャラクターをきっちり掘り下げてのエンディング、お見事っしたあああああ!!
範馬、夜兎を持ってきて勇次郎のあの台詞言わせておきながらのこの綺麗なまとめ方! 何より!

コナン虐め最高! 上げて落とすをわかってらっしゃる!
前回からの引継ぎ方も綺麗だし、素晴らしい一品でした! GJ!
649Classical名無しさん:08/04/04 01:12 ID:Xk5FBXR2
投下乙
神楽ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
銀魂勢は皆普段は笑えるギャグ飛ばしてばかり
だけどいざバトルになったら皆熱い魂を発揮してくれた
皆良く頑張った、ホントかっこ良かったよ
650Classical名無しさん:08/04/04 01:12 ID:tHvybDPs
投下乙!
神楽ーーー!まさか、神楽がここまで勇次郎と張り合うとは……!
最悪な敵に良く頑張ったよ、お疲れ様……。
コナンの作戦に勇次郎が乗ると少しでも思ってしまった自分が馬鹿だったorz
コナンも勇次郎も今後どうなるか凄い楽しみ!
GJ!
651Classical名無しさん:08/04/04 01:14 ID:NM8wWyFQ
投下GJです。
この間までコナンを馬鹿にしてたけど……、本当に凄いわこいつ。
ゴールド・エクスペリエンスの使い手として相応しいくらいに、『覚悟』と『信念』がある!
神楽と勇次郎・バキを重ねたところも、実によかった。
しかし、勇次郎は鬼だな……
652Classical名無しさん:08/04/04 01:25 ID:HQFqdhhY
投下乙
ついに神楽が散ったか、お前はよくがんばった
もう釘宮のジンクス?何それみたいな感じだよなこのロワは
なるほど、範馬と夜兎、どちらも温かい家庭ではないんだったなぁ
それにしても勇次郎を止められるやつがもうほとんどいないかもな
やはりバーローのような懐柔しかないのか!?
653Classical名無しさん:08/04/04 02:10 ID:XiMIPhYA
投下乙!
神楽ぁぁぁぁぁ! お前勇次郎相手によく健闘したよ……
それはそうと俺の嫁発言は笑ったw 夜兎と範馬の妙なつながりに着目するとは恐るべし。
そういえば勝も勇次郎に自分の信念をぶつけ切ったんだよな……コナンとの差はそこに妥協があったか、か
654Classical名無しさん:08/04/04 16:24 ID:1AmwR9Fw
今ロワにおける声優が釘宮なキャラの死亡状況

ルイズ→自分を殺した相手(TQN)を説得しながら死亡
ナギ→自分を殺した相手(エレオノール)を説得しながら死亡
神楽→自分を殺した相手(勇次郎)を説得しながら死亡

どういうことだよこれはwwwwww
655Classical名無しさん:08/04/04 16:33 ID:14JgtHtM
>>654
ある意味(漫画ロワ限定)釘宮のジンクスだなwwwww
656 ◆YbPobpq0XY :08/04/04 17:10 ID:yLb2REAg
三日立っちまった……
スイマセン、完成はしたんですが一応もう少し推敲をしたいんで……
終わるまで予約破棄をします
657Classical名無しさん:08/04/04 17:14 ID:qw7XOhJk
>>654
偶然とは恐ろしいな。
或いは、ルイズの死に様が強烈であったが故に、他の2人もそうなったのか。

<<656
了解です。頑張ってください
658 ◆YbPobpq0XY :08/04/04 17:49 ID:yLb2REAg
一応……一時投下しました…………
前回との話の矛盾、文章力、誤字脱字など指摘お願いします……
659Classical名無しさん:08/04/04 18:16 ID:Oc1zvvTs
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9318/1183170755/494-502
読みやすいようにリンクペタペタ

今から読みます。
660Classical名無しさん:08/04/04 18:17 ID:1AmwR9Fw
投下乙
私見ですが内容には問題がないと思います
661Classical名無しさん:08/04/04 20:37 ID:Xk5FBXR2
>>658
◆YbPobpq0XY氏のミスでは無く、大分前から間違ってるみたいなんですが
ヒナギクと覚悟が待ち合わせしたのはS8駅ではなくS7駅だと思うのですが
これを機に訂正をお願いしたいです

本編の内容に関して問題があるとは思いません
662Classical名無しさん:08/04/04 20:50 ID:KJsfwzyU
※画像はイメージです。実際の展開とは一切関係ありません。
ネタをネタとわかる人だけ笑ってやってください。

ttp://sube.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/uploader2/img/437.jpg

>>658
いいと思いますよ。
ただ、ダッシュや三点リーダの多用が少し気になるような。
私もつい多用しがちになるんですが、多すぎると『どこを強調して伝えたいのか』がわかり辛くなるみたいです。
663Classical名無しさん:08/04/04 22:04 ID:KfXQa9DQ
乙です。でも、死亡表記の所が少し足りませんよ。
【神楽@銀魂:死亡確認】
【残り17人】
664Classical名無しさん:08/04/04 22:18 ID:b1OwM94o
>>662
DIOwwwwwwwwww
665Classical名無しさん:08/04/04 22:53 ID:6quj1f1M
>>662
ちょwなんだこれはwww
GJ!
666Classical名無しさん:08/04/04 23:55 ID:Spbhvl/E
投下グッジョブです。
勇次郎の鬼畜っぷりが際立ってて良かったです。
まさか本当に神楽と子作りを考えるとは。

>>662
MUGENか。
ジョジョ北斗キャラとこなた使って俺も同じようなことしてた。
気が付いたら深夜一時……我ながら昼夜逆転すげぇ

>>660-662
どうもです、コレより投下いたします

タイトル:深い傷を抱いて、繰り返そう 悲劇が待ってたとしても……!
668Classical名無しさん:08/04/05 02:19 ID:VSrRfkCw
薄れる意識の中で、星の無い空を見上げていた。

(空が……きれい……)

視界の端に割り込む、色とりどりのネオンなどは不純物にすぎない。
黒はこんなにも深い物だと言う事を、かがみは今日まで知らなかった。
吸い込まれそうなほど単調な風景に、どこまでも心を奪われる。

闇を切り裂いて、一筋の流れ星が目に入る。
誰も見ていないが、この舞台では過去二回流れ星が降った。

『かがみの見ていない所で』三つ目の流れ星が落ちたのだ。

ほんの一秒ほどで消えたかすかな光。
だが、それは人工的に作られたネオンなどと違って、いつまでもかがみの目に焼き付いていたのだった……。

☆   ☆   ☆

「かがみ……」

かがみのその瞳が急にドス黒く濁ったかと思うと、その首がカクンと後ろに垂れてしまう。
バサリと力無く地面に広がるツインテールが、まるで最悪の事態を表しているかのように見えた。

「かがみっ!」
かがみを呼び起こそうと肩を掴み揺さぶった途端、
「ッッかやろぉ!!」
罵声と共に独歩の拳がヒナギクへと飛んだ。

平たい胸に重たい衝撃。
虎殺しの拳になす術は無く、彼女の体は数メートル後ろに飛ばされてしまう。
「な」 何すんのよ!
舌まで乗りかかったその言葉が、声となる事は中断された。
「…………あ」
見れば、独歩は依然としてかがみの腕を止血しながらも、先ほどまでヒナギクが持っていたはずの核鉄を傷口に強く押し当てている。
まだ塞がっていなかった傷口から流れてた出血が再び収まる。

ようやく自分がかがみから核鉄を外してしまったのだと理解した。

「ご、ごめんなさ――――」
「後にしな、それより早くコイツを押さえてくれ」

言われたとおりに独歩に変わって、再び核鉄を持つ。
かがみの『断面』から、つかさの腹部からこぼれる血をどうしても連想してしまう。
つかさに続いてかがみまで殺してしまう所だったのだ……。
涙ぐみそうになるのを堪え、ヒナギクはかがみの腕を肩を強く握り締めていた。

「それと……いや、何でも無ぇ」
「……そうか」

かがみの傍らにて村雨の掌は、その半分程度の大きさしかないかがみの右腕を包み込むようにして握り締めている。
それを見ると、何とも居た堪れない気持ちが溢れてしまう……。

「かがみ……」

彼女は、もう一度目の前の少女の名前を呼んだ。
起きるはずの無い、奇跡を信じて……。
かがみは太陽が嫌いでは無い。
子供の頃は日焼けをするまで外で遊んだ事もある。
暑すぎても困り者だが、むしろ好きな方と言っていいだろう。
それでも、ここの太陽に限っては妙な『ウソ臭さ』を感じるのだ。
まるでビルのネオンを白くしただけのような……。

最初に感じたそんな疑問を一時保留し、無限に続く白い空間にポツリと存在するバス停にて、かがみはベンチに腰掛け目の前の地平線を眺めていた。
足に肘を置いて頬杖をついていると、視界の中に見慣れた青いアンテナが進入した。
見間違えようの無い存在。
やがてソレは、かがみに対して手を挙げる。

「ぐーぐるー」
「何だそりゃ」
「『ヤフー』に続く新作法! 私が(たった今)考えました」

いつも、どんな時でも自分を翻弄してくれた憎らしいあんちくしょう。
泉こなたがそこに居た。

☆    ☆    ☆

眩しいくらいに夜空を照らす繁華街が、やけに滲んで見えた。
まるで全ての光が自分達に集まっているように感じる。
もっとも、その中に夜空の星は含まれてはいない。
人口の光に紛れて、全て覆い隠されてしまっている。

「……………………」
671Classical名無しさん:08/04/05 02:21 ID:cvOmj5vg
                  
数行抜けてしまった……>670はコレに差し替えてください……

☆   ☆   ☆

白く透き通った空から、太陽光は絶えず地上へ降り注ぐ。
本来なら、ありとあらゆる生命の源たる存在。
なのに、今のかがみにはその太陽がとてつも無く不愉快だった。

かがみは太陽が嫌いでは無い。
子供の頃は日焼けをするまで外で遊んだ事もある。
暑すぎても困り者だが、むしろ好きな方と言っていいだろう。
それでも、ここの太陽に限っては妙な『ウソ臭さ』を感じるのだ。
まるでビルのネオンを白くしただけのような……。

最初に感じたそんな疑問を一時保留し、無限に続く白い空間にポツリと存在するバス停にて、かがみはベンチに腰掛け目の前の地平線を眺めていた。
足に肘を置いて頬杖をついていると、視界の中に見慣れた青いアンテナが進入した。
見間違えようの無い存在。
やがてソレは、かがみに対して手を挙げる。

「ぐーぐるー」
「何だそりゃ」
「『ヤフー』に続く新作法! 私が(たった今)考えました」

いつも、どんな時でも自分を翻弄してくれた憎らしいあんちくしょう。
泉こなたがそこに居た。

☆    ☆    ☆

673Classical名無しさん:08/04/05 02:23 ID:cvOmj5vg
                                           
眩しいくらいに夜空を照らす繁華街が、やけに滲んで見えた。
まるで全ての光が自分達に集まっているように感じる。
もっとも、その中に夜空の星は含まれてはいない。
人口の光に紛れて、全て覆い隠されてしまっている。

「……………………」

再び核鉄を地面に落としても、もう誰も何も言わなかった。
かがみの呼吸が止まり、心拍が止まり、脈拍が止まり、全てが止まって数分ほどしただろうか?
少し顔をあげると、苦虫を噛み潰しながら、かがみの白い顔を見下ろしている独歩。
俯いているため表情の見えない村雨。
零にしても、何を言っていいのか分からないのが良く分かった。

────また、守れなかった

その呟きが誰のものか、あるいは自分の物だったのか。
ヒナギクには分からない。
毛利小五郎、本郷、つかさ、そしてハヤテ……ここに来てから、自分は誰か一人でも助けられただろうか?
答えは……否だ。
いつだって自分は守られて、助けられて、何もできていない……。
傍に居るものも守れず、無残に死なせている。

乗り越えたと思っても乗り越えたと思っても、挫折は常に彼女を包み込んでいた。
ヒナギクは知らないが、村雨もまた同じように姉を失っているのだ。


675Classical名無しさん:08/04/05 02:24 ID:VSrRfkCw
もしかすると…………、と、ヒナギクは思う。
目の前できっと打ちひしがれた表情をしているだろう独歩もまた────
「え…………?」
そんな表情などしていない。
『何かをしようとしている』決意の表情だ。

「な……!」

何を思ったのか、独歩はかがみの巫女服の襟を掴んで、大きくはだけさせる。
重力に影響されない程度の、形のいい乳房が震えた。
血の気が失われ始めているそれでも、見る者が見れば性的欲求を高めるのは間違い無い。
それだけ彼女の体は魅力的だ。

一瞬で、かがみの上半身は裸同然にまで晒されてしまった。

「お前っ!」
「ちょ、ちょっと……」
『貴様、何をするか!?』

村雨にヒナギク、そして零が三者三様に咎める言葉も何のその。
見上げると、彼はその握り締めたその拳を、力いっぱい掲げている。
聞き様によっては爆発にも聞こえる音が、彼女達のいる繁華街に響き渡った。

あまりにもの事に、ヒナギクは呆気にとられてしまった。
どうしたと言うのだろう?
先ほどかがみの止血をしてくれていた独歩が、今度は彼女のその胸に拳をめり込ませている。
676Classical名無しさん:08/04/05 02:25 ID:cvOmj5vg
支援
677Classical名無しさん:08/04/05 02:25 ID:VSrRfkCw
すなわち、かがみの亡骸を思い切り殴りつけた。

独歩はかがみの左胸を、コンクリートをも砕くその拳で、打つ、打つ、打つ……。
そのたびに、打ち付けられる彼女の体が何度も跳ねた。

「やめて!!」

ヒナギクは優等生ではあるが、決して感情より理性を優先できるタイプ無い。
叫んだ時には、すでに独歩の頬を思い切り叩いた後だった。

「あんた……一体なに考えてんのよ!!」

ヒリヒリと痛む手を撫でながら、ヒナギクが叫んだ。
先ほどまでは絶望から流していた涙が、今は激しい怒りによる涙となっている。
もう無駄なのに、なぜこの男はこんな事をするのか?

「もういいでしょ、かがみを休ませてあげて!」

そんな事をしたって奇跡など起こらない、起こった所でまた同じ苦しみを味あわせるだけ。
それだけはさせたく無い。

「休むかどうかは、あんたが決める事じゃねえだろう」

ヒナギクの言葉は、独歩の顔がズズイとよって来た事でせき止められる。
微妙に心臓に悪い。
だがその瞳から、独歩が半端な気持ちでやっているのでは無い事が理解できる
678Classical名無しさん:08/04/05 02:26 ID:cvOmj5vg
                                 
「違うかい?」

言葉が行き着く先は耳だけでは無いのだろう。
現に、その短い言葉の一文字一文字はヒナギクの胸へと突き刺さっているのだ。

「悪いが、邪魔しねぇでくれ。さっさとこの嬢ちゃん起こして、悪者退治しなきゃいけねぇんだ」
「助けられるのか?」

村雨がそう言うと、握りつぶさんばかりの力で独歩の手首を締め付けていた
よほど強い力で握り締めていたのだろう、緩んだ隙間から垣間見える独歩の皮膚はやや赤くなっている。

「それで……本当に、助かるのか?」
「俺も、昔コレで一回助かったらしいからな。もし、ダメだったら……」

再度問いかけるその表情は、まるで咎めるかのように厳しいもの。
しかしその語調には明らかに、希望に縋り付く物が含まれていた。

「この嬢ちゃんを殴った一万倍、俺を殴ってもいいぜ」

再びかがみの鳩尾付近に打ち込みを始める独歩。
それに対して文句を言う者は、もう誰もいない。

680Classical名無しさん:08/04/05 02:27 ID:VSrRfkCw
ヒナギクは、かがみの後頭部を持ち上げて、鼻を摘む。
躊躇い無く唇を重ねると、お互いの前歯がカチカチと当たった。
まだ瑞々しさを保っているかがみの味が口内に広がる。

もう迷わない。
最期まで諦める物か。

その想いを胸に、ヒナギクはその吐息を思い切り彼女へと吹き込んだ。


☆    ☆    ☆


彼女はトテトテと足音をたてながら、かがみの隣に座る。

「あんた……、いつの間にここにいたのよ」
「いやぁー私にもよく。何かピカッてなって気が付いたらここに来てたんだよ」
「またいい加減な……。自分が死んだ瞬間くらい理解しとけっつーの」
「一生に一回の事だったのにね、かなり失敗かも。でさぁかがみん、私の事心配してくれた?」
「ああ、すげえ心配だったよ。アンタが人様の足引っ張ってないかね」

少し前までは待ち望んで仕方が無かった再会、それがこんな所では感慨も何もあったものでは無い。
だから喜びを分かち合う抱擁は無い。
その代わり、お互いの死を嘆き悲しむ事も無い。

681Classical名無しさん:08/04/05 02:28 ID:cvOmj5vg
                                            
682Classical名無しさん:08/04/05 02:28 ID:VSrRfkCw
「でさ、そのパピヨンってのが面白い奴なんだよ。顔には蝶マスクをつけてて服装はあーなっててこーなってて……
まぁ最初は怖いヤツだと思ったんだけどね」
「滅茶苦茶怖いだろ、そんな格好……まぁあんたとなら趣味があっても不思議じゃないけど」
「いやいやかがみ殿、私とパピヨンはそれ以上で繋がっているのですよ。あの世とこの世で隔てられてもそれは変わり無いのデぃっス。
私……無事に帰ったらパピヨンが主人公で私がメインヒロインのギャルゲーをやるんだ……」
「お前って奴は〜、死んだの大して応えて無いのか?」
「アハ♪」
「こっちは散々苦労したっつーに……」

死んだ後に死亡フラグを立ててくれるこなたに、かがみは呆れはてるばかり。
二人が始めたのは、そんな調子での会話。
こなたが話してくれたのはこの舞台で、出会った仲間の話題……、
例えば中性的な顔つきの執事少年、いろんな意味で羨ましい体付きをしていた少女、かがみと良い勝負になりそうだというツインテール少女。
途中、自分とも関わりが深かった人物も居たが、こなたが一番話したがっていたのは……。

「驚いたわよねー、二次元にしか興味の無かったあんたが」

歯をちらつかせながら、意地悪い笑みを浮かべる。

「で、そのパピヨンさんとやらに迷惑かけまくったってワケ?」

これはほんのささやかな仕返し、いつも散々自分を引っ掻き回してくれたこなたへのささやかなからかいのつもりだった。
だがこなたは意外にも……。

「うん……」

多少、顔をうつむかせて肯定してしまった。
すぐにいつもの猫口糸目に戻るが、一瞬だけ出したその表情をかがみは見逃さない。
683Classical名無しさん:08/04/05 02:29 ID:cvOmj5vg
                                     
「結局、お礼どころか最期のお別れもできなかったんだけどね……」
「…………っっ!」

その表情を見た瞬間、気が付けばさっきの一言をひどく後悔し、自分の無神経を恥じた。
いつもと変わらないこなたの振る舞いに甘えていたと言っていいかもしれない。

────もしかすると、自分が死んだ事も気にして無いんじゃないか?

そんな事あるはず無いのに、今の今までそう思って対応してしまったのだ。
何だかんだで仲間に看取られて、悔いなく逝けた自分と違い、こなたの場合は……。

「ホントどこで選択肢間違えちゃったんだろね? 物語を解決するキーアイテムを手に入れたのに……
普通、ああいう場面の後は感動の再会、イベントCG追加じゃん。どっかのサウンドノベル三作目くらいに不条理な展開だよね……
それともレバ剣取った時に運使い果たしちゃったかな? アハハ……」
「こなた……」

指を立てながら、こなたはまるで自虐ネタを披露するかのように話してくれた。
ワザと明るく振舞っているのが、かえって逆効果だ。
もう、歯軋りしかできない。
必死に泣き顔を見せないようにつとめる彼女を、自分に慰める資格など存在しない。

「ゴメンね……」

自然と口から出てきたのは────

「散々苦労したってさっき言ったけど……アレ嘘なの」

こなたの顔を見る事ができない。

「言うけどね、私……ここに来てから足引っ張ってばっかりで……」

685Classical名無しさん:08/04/05 02:30 ID:cvOmj5vg
                                      
686Classical名無しさん:08/04/05 02:30 ID:VSrRfkCw
かがみは話す。
自分のミスがきっかけで、せっかく再会できたみゆきとバラバラになってしまった事……、
自分の暴走で、仲間とはぐれてしまった事……、
何度も人質になって、足を引っ張ってしまった事。
もしかすると、自分は単なる疫病神に過ぎないのでは無いかと言う想いも……。

首輪について分かったのも、殆ど偶然のようなものだ。
もしも村雨が危険な人間だったら自分の命は無かったのかもしれない。
最悪、ジョセフの努力をムゲにしかねなかった。

「かがみ……」
「でも、こんな私でも……やる事をやりとげた、って思って……いいのかな……?」

そう言った途端、横からフゥ、と言う溜め息が聞こえた。

☆   ☆   ☆

約二十秒の間に、押しつぶさない程度の力で心臓マッサージを14回。
肺の八割ほどの息を吹き込む人口呼吸を二回。
これを交互に繰り返す。
お互いの体格により誤差はあるが、これが一般的な人口呼吸だ。

3分ならまず蘇生可能、だが10分以上経ってから息を吹き返したのは、たった一つの例外を除いて存在しない。
ましてや、水難事故による呼吸停止の場合だ。
失血状態になってからの心臓マッサージなんて行えば、医者なら免許剥奪、ライフセイバーも持たない一般人なら過失致死として書類送検。
仮面ライダーなら……定かでは無いが。

現在、アバラを砕かんほどの心臓マッサージ一回、頭が白くなりそうなほどの息を吹き込む人口呼吸が一回。
そんな独歩ヒナギク流蘇生法が始まってから15分が経過した所だ。
687Classical名無しさん:08/04/05 02:30 ID:zN.zVox.
 

「独歩さん……、で、いいのよね?」
「ああ、なんだい?」

額に汗の雫を浮かべている彼に、ヒナギクは声をかける。
そこにはもはや初対面の時みたいに、刺々しい雰囲気は無い。

「さっきから何分もそうしてるわよ、私が代わるわ」
「となると、俺がそのお嬢ちゃんにチューする事になっちまうな」

こんな状況でおちゃらけて応える独歩の顔には不敵な笑み。
だが、決して腹が立つような物では無い。
むしろ、人の命がかかっている状況なのに自分も笑いそうになった。
なぜだか、まだ希望があるようにすら感じる……。

一人の少女を救うための行動、それが結果として二人の間の何か黒い物を奪い取っていた。
たとえ、それが無駄である事を心のどこかで感じていても……。

「それに、お前さんの力だとコイツを起こすのは難しいぜ? だからアンタはそっちを担当……」
「俺がやる」

村雨に声をかけられた。
彼は、二人がかがみの蘇生を試みている間付近を見張るようにさせていたのだが、やはり彼も仲間のために何かをしたいのだろう。

「そうか……すまん、任せるぜ」

それだけ言って、独歩は後ろへと下がる。
先ほどまで自分が座っていた位置に付く村雨が、同じように拳を高く振り上げた。

689Classical名無しさん:08/04/05 02:31 ID:548eKuVE
      
690Classical名無しさん:08/04/05 02:32 ID:cvOmj5vg
                  
それだけ言って、独歩は後ろへと下がる。
先ほどまで自分が座っていた位置に付く村雨が、同じように拳を高く振り上げた。

「こんな感じでいいのか?」
「俺が口出ししちゃ意味がねぇ。好きにやりな」

自分は紅葉のような医者では無い。
医学の知識など、スズメの涙。
この蘇生法だって、後々自分がやられた事を聞いてやってみただけだ。
正しい方法では無いのは分かっている。

(それでもよぉ……)

村雨の心臓マッサージは、独歩より幾分か弱々しいかもしれない。
だが、何か想いが込められている、傍目にそう感じた。

────初対面である自分がやるより、よっぽど効果的だとも。

それはまるで、拳からかがみに生命を吹き込んでいるようにも見えたのだった。

☆   ☆   ☆

見上げると、いつの間に到着したのか?
そこには一台のバス。

「いいよ、かがみも頑張ったんでしょ?」
692Classical名無しさん:08/04/05 02:32 ID:cvOmj5vg
                                          

乗り込んでいるこなたが、かがみにその手を差し伸べる。

「もう行こう、向こうじゃつかさやみゆきさん達も待ってくれてるみたいだし……」

こんな所にも風が吹くのだろうか?

「後は、残ったみんながきっとやってくれるよ? ね」

なびかれる蒼くて長い髪が、何だか七夕に見た天の川を連想させた。

「ホラ、乗ってよ」

早く早くと急かすこなた。

かがみは、答えた。
694Classical名無しさん:08/04/05 02:33 ID:548eKuVE
           
695Classical名無しさん:08/04/05 02:34 ID:cvOmj5vg
                              
【D-2 南部 2日目 深夜】
【愚地独歩@グラップラー刃牙】
[状態]:体にいくつかの銃創、頭部に小程度のダメージ、左肩に大きな裂傷
[装備]:キツめのスーツ、イングラムM10(9ミリパラベラム弾32/32)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:闘うことより他の参加者 (女、子供、弱者) を守ることを優先する
1:かがみの蘇生後にヒナギク、かがみ、村雨と情報交換する。
2:ジグマールを見付け出し倒す。
3:学校へ行き、アカギと合流。鳴海の事を伝える。
4:ゲームに乗っていない参加者に、勇次郎の事を知らせ、勇次郎はどんな手段をもってでも倒す。
5:その他、アミバ・ラオウ・ジグマール・平次(名前は知らない)、危険/ゲームに乗っていると思われる人物に注意。
6:乗っていない人間に、ケンシロウ及び上記の人間の情報を伝える。
7:可能なら、光成と会って話をしたい。
8:可能ならばエレオノールを説得する。
9:手に入れた首輪は、パピヨンか首輪解析の出来そうな相手に渡す。
[備考]
※パピヨン・勝・こなた・鳴海と情報交換をしました。
※刃牙、光成の変貌に疑問を感じています。
※こなたとおおまかな情報交換をしました。
※独歩の支給品にあった携帯電話からアミバの方に着信履歴が残りました。
【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 顔と手に軽い火傷と軽い裂傷。右頬に赤みあり。
[装備] バルキリースカート@武装錬金
[道具] 支給品一式。ボウガンの矢17@北斗の拳
[思考・状況]
基本:BADANを倒す。
1:かがみを蘇生する。
2:村雨、かがみと共にS7駅で覚悟と合流する。その後、首輪、BADAN、強化外骨格について考察する。
3:ラオウ、斗貴子に復讐する。(但し、仲間との連携を重視)
[備考]
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです
※桂ヒナギクのデイパック(不明支給品1〜3品)は【H-4 林】のどこかに落ちています
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました
※バルキリースカートが扱えるようになりました。しかし精密かつ高速な動きは出来ません。
 空中から地上に叩きつける戦い方をするつもりですが、足にかなりの負担がかかります。

【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]全身に無数の打撲。
[装備]十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (0/2) 、マイクロチェーン(2/2) 核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金
核鉄(モーターギア)@武装錬金
[道具]地図、時計、コンパス 454カスール カスタムオート(0/7)@HELLSING、13mm爆裂鉄鋼弾(35発)、ニードルナイフ(15本)@北斗の拳 女装服
    音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾、ベレッタM92(弾丸数8/15)
[思考]
基本:BADANを潰す!
1:かがみを蘇生する。
2:ハヤテの遺志を継ぎ、BADANに反抗する参加者を守る
3:かがみ、ヒナギクの安全の確保後、ラオウを倒しに行く。
4:ヒナギク、かがみと共にS7駅で覚悟と合流する。
5:ジョセフ、劉鳳に謝罪。場合によっては断罪されても文句はない。
6:パピヨンとの合流。
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です
※参戦時期は原作4巻からです。
※村雨静(幽体)はいません。
※連続でシンクロができない状態です。
※再生時間はいつも(原作4巻)の倍程度時間がかかります。
※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。
※また、零の探知範囲は制限により数百メートルです。
※零はパピヨンを危険人物と認識しました。
※零は解体のため、首輪を解析したいと考えています。
※記憶を取り戻しました


【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:全身に強度の打撲、左腕欠損(止血済み)、仮死状態
[装備]:巫女服
[道具]:
[思考・状況]
基本:?????
1:?????
※仮死状態です、このまま死ぬか、もう一度目覚めるかは後の書き手氏にお任せします

699Classical名無しさん:08/04/05 02:36 ID:cvOmj5vg
                            
【三人の備考】
※一通りの情報交換は終えています
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※3人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首2には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている
※3人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論
※BADANに関する情報を得ました。
【BADANに関する考察及び知識】
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって”都合がイイ”状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては”どーでもイイ”状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
701Classical名無しさん:08/04/05 02:37 ID:cvOmj5vg
                                
※かがみの主催者に対する見解。
@主催者は腕を完璧に再生する程度の医療技術を持っている
A主催者は時を越える"何か"を持っている
B主催者は@・Aの技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
Cだが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
※首輪の「ステルス機能」および「制限機能」の麻痺について
かがみがやった手順でやれば、誰でも同じことができます。
ただし、かがみよりも「自己を清める」ことに時間を費やす必要があります。
清め方の程度で、機能の麻痺する時間は増減します。
神社の手水ではなく、他の手段や道具でも同じことが、それ以上のことも可能かもしれません。
※ステルス機能について
漫画版BRで川田が外したような首輪の表面を、承太郎のスタープラチナですら、
解除へのとっかかりが見つからないような表面に 偽装してしまう機能のことです。
ステルス機能によって、首輪の凹凸、ゲームの最中にできた傷などが隠蔽されています。
※S1駅にハヤテのジョセフに対する書置きが残っています。
※ボウガン@北斗の拳と強化外骨格「零」(カバン状態)@覚悟のススメとクルーザー(全体に焦げ有り)はD-2 南部の路上に置いてあります。
 
703Classical名無しさん:08/04/05 02:38 ID:cvOmj5vg
                                  
支援ありがとうございました
投下完了です

引き続き、誤字脱字などがあれば指摘よろしくお願いします

いくつか投下ミスった……
705Classical名無しさん:08/04/05 02:41 ID:548eKuVE
投下乙!
かがみとこなたのやり取りがよかった。
この二人らしくてw かがみんの蘇生に頑張る独歩が相変わらずカッコイイ。
ヒナギクたちの頑張りはどうなるか……
GJ!
706Classical名無しさん:08/04/05 02:43 ID:cvOmj5vg
投下乙ー。
独歩さんがもの凄くカッコいい……今回は村雨より男前だったわw
心臓マッサージの描写の完璧だと思います。自分にはそっちの知識ないけど。
かがみがバスに乗るのか、帰ってくるのかこれは楽しみでしょうがない!
707Classical名無しさん:08/04/05 08:00 ID:x7Ha1DdY
投下乙。
今までの展開から考えると蘇生しそうだが、さてどうなるやら。

それと>>662にレスくれた人ありがとう。正直叩かれるか不安だった。
ちなみにMUGENじゃないですよ。私もMUGEN好きだけど。
708 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:11 ID:O337cX3U
ジョセフ、劉鳳、服部投下します
709贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:12 ID:O337cX3U
「つまりだ、あの野郎は折角仲直り出来た俺の親友であるシンジを、殺してくれやがったんだよ!」
民家の屋根の上でジョセフは、ありのまま起こった事を劉鳳に話し終えた
二人の眼下には服部が、さながら振子のようにクレイジー・ダイヤモンドで、周囲の物を何度も何度も破壊と再生を繰り返させている。
「そうか……」
劉鳳の口から、彼らしくない苦汁に満ちた声が響いてくる。
服部は罪の無い守るべき少年である、三村信史を殺した、それが犯罪者すら殺さない世界からやって来た服部を、どれだけ苦しめているか劉鳳にも痛いほど判る。
しかも劉鳳は三村信史を殺した人間が「悪」であると、服部を前に断言した。その言葉はナイフの様に服部の胸を貫いたのは想像に難くない。
710Classical名無しさん:08/04/05 21:13 ID:O337cX3U
「だから、俺はあの野郎をしこたまぶん殴る、当然だろーが!」
「それでも服部は、本来は罪の無い人間を殺すような男ではない!誤った行動を取ってしまったとしても大切な俺の仲間だ!俺は服部を救う」
ジョセフの体がわなわなと震えていき、徐々に怒りが体から漏れ出て行く。
「仲間だと……ふざけたこと言ってんじゃねぇ!」
満身創痍であるはずのジョセフの拳が劉鳳の頬を捉える、強烈な一撃を受け劉鳳の足元が大きく揺らいだ。
劉鳳はふと思い出す、立浪の一件を受けてカズマと戦ったあの時を、そうあの時は立浪が罪の無い少女を殺し、カズマも怒りを露にして殴ってきた。
似ている、この男とカズマは実に良く似ている、そう劉鳳は感じた。
「服部のミスは謝罪する……お前の怒り、そして今の一撃を受け止める、だが服部がこのふざけたゲームを壊そうと戦ってきた仲間だ、だから……頼む、ここは力を貸してくれ」
劉鳳の視線が真っ直ぐジョセフを貫く、彼が信奉する絶対正義を表したかの様な、激しくそれでいて誠実な視線だ。
その視線を見てジョセフは思い出す、数時間前に分かれた中性的な顔立ちに熱い闘志を宿していた少年
そして自分を救うために命を掛けた波紋の戦士を
711贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:15 ID:O337cX3U
「たくっ、良い目をしやがる、あいつらを思い出しちまうじゃねぇか、いいだろOKだ、ここは協力してやる
 あいつはたぶんシンジが使っていたスタンドDISC入れたせいでああなっちまっている。
俺にはあいつの頭ぶん殴れば、あいつが今頭に入れているスタンドDISCを出すことが出来る、だからてめぇがあいつのスタンドを止めろ」
「感謝する」
「ただし、これが終わったら今度はこっちの用事を手伝ってもらうぜ」
「いいだろう」



「行くぞっ、絶影っ!!」
スタンドのダメージは本体へフィードバックしてしまう、ならば劉鳳はカズマにどこか似たジョセフが何とかしてくれと信じて
絶影でスタンドを傷つけずに引き付けるしかない。それはただ相手を倒すのに比べれば遥かに難しい、だが他に方法は無い。
屋根から降り立った絶影に、スタープラチナとも殴りあえる、クレイジー・ダイヤモンドの拳が迫る。
劉鳳のアルター絶影はカズマとは違い、相手と殴りあいをすることで真価を発揮するアルターではない。
殴り合いを行えば不利は明らか、だが今絶影でクレイジー・ダイヤモンドを斬ってしまっては服部を傷つける。
ならばと、近距離での殴り合いを行いつつ、体捌きで本体である服部から遠ざけんとする。
だが劉鳳は知らないクレイジー・ダイヤモンドは近距離パワー型、服部から遠ざけるにはあまりに射程は余りに短い
服部と遠ざけようと動いてもクレイジー・ダイヤモンドはそう簡単には遠ざかってはくれない。
結果離れさすこともできず、アルターとスタンドはただ殴り合いを続ける。

712贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:16 ID:O337cX3U


クレイジー・ダイヤモンドの右手が迫る、対する絶影は左手で払いのける。
続いて迫りくるは左手、岩をも砕く一撃を絶影は右手で捌き、身をよじりなんとか避ける。
三撃目は右足、両腕はさきほどの動作の隙で間に合わない、頭部へ迫るその足をこちらの足で防ぐのは不可能だ。
「早いっ」
すんでのところで触鞭で打ち払うが、蹴り足を完全に避けきれず、絶影の体をかする
かすっただけの一撃でありながら絶影の体は削り取られる。
絶影の両腕と触鞭を使っていても、捌ききる事の出来ない怒涛の連撃。
このまま殴り合うのは圧倒的に不利、そんなことは劉鳳にも判っていた、だがそれでもこれしか手はない。
劉鳳はそう信じて、拳を払い、蹴りを捌き、アルター削られようとも戦い続ける、全ては友を救うために。
だが殴り合えば殴り合うほど目に見えるほど絶影は徐々に削られていき、劉鳳の体には疲労は溜まっていくのは誰の目にも明らかだ。
絶影は服部を中心とした円を描くように描くように移動させ、クレイジー・ダイヤモンドを戦っていく。
何度目かも判らないギリギリの回避を続けながら、劉鳳は服部に問いかける


「服部!いつまでこんな事をする気だっ!仲間達の為にも戦い続けるのではなかったのか!?」
劉鳳の言葉を受け、クレイジー・ダイヤモンドの動きが刹那の間止まる、たとえ刹那の間であろうとも劉鳳にはそれで十分
クレイジー・ダイヤモンドはジョセフの反対側へと誘導済み、仕掛けるタイミングは今をおいて無い。
刹那の隙を突き、地面から一匹の蛇が飛び出し、大蛇はクレイジー・ダイヤモンドを雁字搦めにしてみせる
地中に忍ばせておいた触鞭によって、クレイジー・ダイヤモンドを拘束する、その為に危険を承知で今まで一本打ちあってきた。
劉鳳の策は実りクレイジー・ダイヤモンドは動くことは出来ない、後はこのまま締め付け続ければいい。
713贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:17 ID:O337cX3U

「今だ、やれジョセフ」
「ウオォォォォォリャァァァァ」
劉鳳の言葉が発せられた瞬間には、すでにコールタールに塗れた右手を波紋の光で輝かせたジョセフは、雄叫びと共に屋根から飛び出し服部へと迫る。
ジョセフを見て安堵し力が緩んだのだろうか、クレイジー・ダイヤモンドは触鞭を引きちぎって拘束を振りほどき、本体の危機を救うためにジョセフ向かっていく。
自らの未熟を悔いたが逡巡すること無く劉鳳は力を振るう
「させん」
絶影がクレイジー・ダイヤモンドへ向けて突撃する、最早技も何も無い、ただ渾身の力を込めたタックルをぶつけにいく。
カウンターの一撃が絶影の腹へと響いた、だがそれでも絶影は止まらない、両腕でクレイジー・ダイヤモンドを掴み共に倒れこむ。
腹部へのダメージは無視できないが、服部に飛び掛らんとするジョセフを見て劉鳳は満足げに笑みを浮かべる。

しかし服部を見て彼の笑みが強張る、今まで反応を示していなかった服部の体が本能的に頭部を腕で庇っている。
宙に舞っているジョセフは今更止まることなどは出来ない、ならば劉鳳があの手を除けなければならない。
「届けっ、絶影!」
残る触鞭が服部へと迫る、だがジョセフはもう拳を振り下ろせば服部に届く距離だ。
ジョセフの拳が服部にぶつかるまであとわずか、瞬きをすれば拳はすでに振るわれているだろう。
「間に合えぇぇぇぇ」
劉鳳の執念の触鞭は服部の両腕を弾き飛ばし、頭部を空ける。

714Classical名無しさん:08/04/05 21:19 ID:O337cX3U

「いくぜっ、太陽のエネルギー波紋、てめぇへの借りはこの一発でチャラにしてやるぜ」
重力と全体重そして波紋の力を乗せた一撃が服部に届く、服部の血と折れた歯が口から零れていく。
頭からは三村の形見であり、服部の暴走の発端である、DISCが空へ向けてクルクルと回転しながら舞っていく
そして倒れこむ服部の足元に、DISCが中空から落ちて、そのまま転がりながら民家の壁へとぶつかり止った。
ジョセフが波紋を流した肩から受身を取って振り返る、服部は地面に伏せたまま動きを止めていた



ジョセフは三村の形見であるDISCを拾いあげて感慨深く眺める、これが無ければ自分もシンジもそしてこの二人の運命も大きく変わっていただろうと。
劉鳳が歩を進めると靴が何かを踏んだ、そこには白い歯が転がっている。
「やりすぎだ」
劉鳳はそういいたい感情を抑えつけた、ジョセフの怒りは甘んじて受けねばならない。腹を抑え苦痛に限界まで抗いながら問いかける。
「やったようだな」
「あぁ、これでスタンドはもう出せねぇはずだ」
「おいっ、しっかりしろ、服部」
劉鳳が駆け寄り服部を抱き起こす、だが気絶しているのか服部の反応は鈍い。
何度か頬を叩き揺さぶり続けていくとゆっくりと服部の瞼が開いていった。
「無事か」
劉鳳問いかけに答えるように、服部の瞳に光が灯っていく、そして光を灯した瞳から涙が零れ落ちてくる
「なんで……」
服部が何かを問いかける、だが何を問いたいのかはジョセフと劉鳳には判らない
なんで……こんなことになってしまったのか?
なんで……こんなことをしてしまったのか?
なんで……三村信史を救うことが出来なったのか?
様々な問いかけが二人の頭によぎる。
715贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:22 ID:O337cX3U
「なんで……俺を殺してくれへんかったんや?」
だが、出てきたのは二人の考えてもいなかった質問だった。
「俺は三村はんみたいな人を守りたい、そう思って今までやってきたや……」
弱弱しい声が空気を揺らしていく
「なのに、俺は三村はんを殺して、しかもずっと仲間だった劉鳳はんやジョセフはんまで傷つけた」
瞳からは涙を、口元からは血を流しながらただ切々と服部は語り続ける。
「そんな俺がこの場で生きてええと思えへん、後は工藤いやコナンがやってくれる、俺に生きてる価値なんてあらへん」



「服部……」
呆然として告白を聞いていた劉鳳に感情取り戻されていく、その感情は同情やましてや憐憫などではない。
劉鳳がこんな時に抱く感情はたった一つしかない。
「貴様は……貴様は情けなくはないのか!!」

――それは怒り!顔を朱に染め、あらん限りの声だして服部に叩きつける。

「貴様それでも男か!今の自分を鏡で見てみろ!情けなくないのか!情けなくて情けなさすぎて怒りが沸いてこないのか!?
 お前がルイズの死に打ちひしがれたコナンへ向けて言った『絶対に止まらん』というあの時の言葉は嘘だとでも言うのか!?
 アミバの事を思い出せ!あいつは過去に罪を犯した、だがそんな弱い過去の自分に反逆していた
 お前の正義は、反逆はこんな簡単に折れてしまうのか!?答えろぉ!服部っ!」

劉鳳の言葉受けていつしか服部の涙は止まっていた。
「今の俺に……助けられる人なんておるんかな?」
「俺には吉良がアミバを殺した事を見破ることは出来なかった、だがお前達は見破った
 服部、お前が正義と反逆を貫くことを、止めない限り助けられる人は必ずいる!」
716Classical名無しさん:08/04/05 21:22 ID:mVmFZXKs
717贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:22 ID:O337cX3U

劉鳳の言葉は服部の胸の奥深くへ浸み込んでいく、ここに来て今まで服部はいろんな仲間に会ってきた。
タバサ、劉鳳、アミバ、ブラボー、コナン、神楽、皆これ以上ないほど大切な仲間だった。
だがもうそんな仲間達で今も一緒にいるのは劉鳳一人だけだ。
「あぁ、そやった、俺がこんなんやったら、皆に笑われてまう、コナンと再会した時、あの世行ったとき会わせる顔があらへん」
服部は決意を秘めて、ジョセフへと向き直る。
「ジョセフはん、ほんますまんかった、許してもらえるわけない、俺を心いくまでなぐってえぇ、だけどお願いや、俺達に力を貸してくれへんか?」
地に額を擦りつけ、誠心誠意頭を下げ続ける、服部が今三村のために出来ることなどこれくらいしかないのだから。
「OK、だったらギブアンドテイクだ、こいつにはさっきもう言ったが俺も手伝ってもらいたいことがある
 神社であの赤ムシ野郎からかがみん助け出すのを手伝ってもらうぜ」
「ほんま……おおきに」
ジョセフが服部を一発殴ってチャラにしたのは、本来はこの為だ。今のコンディションでは自分一人では村雨には勝つのは難しい
だからこそ、この二人を仲間とするために、あそこまで体を張って協力したのだ。

「赤ムシ?それはもしや村雨良のことか?」
「そういえばそんな名前だったな、何だ、あいつの事知ってんのか?」
劉鳳の胸に忌まわしい記憶が蘇る、悪しき毒虫に後れを取り、守るべき人を守れなかった最悪の記憶だ。
「奴は俺の目の前で平賀才人を殺した危険な男だ、奴は必ず断罪して借りを返さなければならん」
「あんのぉ赤ムシ野郎!、やっぱ人を殺すような奴だったんだな、こうしちゃいられねぇ早く行くぜ」
ジョセフ今にも息巻いて、今にも走り出そうとするところへ、服部が声を掛ける
「待ってくれへん、俺は放送聞いて無いんや、まずは情報を交換せんか?」
そんなの移動しながらしやがれと、言わんとしたところでジョセフも放送を気絶して聞き逃していたのを思い出した。
「しかたねぇ、さっさと終わらせて行かせてくれ」
「すまへんなぁ」
二人の視線が唯一放送を聞いているはずの劉鳳へと向けられる。

718贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:24 ID:O337cX3U
三人は近くの民家へ移動し、明かりが周囲へ漏れないよう気をつけ、メモを取れる環境を整えた。
「ます禁止エリア午前1時からF-8 、午前3時からE-3 、午前5時からB-5これは覚えている」
劉鳳の発言に合わせて服部がメモを取り、その間にジョセフは4色ボールペンを使って、劉鳳と劉鳳の名簿に今まで知った情報を書き込む、こうして時間をわずかでも節約するため三人は、分業して情報を整理していく。
「次に死亡者だが、すまない俺も全員は覚えていない、アミバ、吉良、キュルケ、シェリス、三村、アーカード、DIOが呼ばれたのは覚えているのだが……」
「そっか、しゃあないな、他に願いを叶える権利やら、24時間ルールとか新しい情報はあらへんかったか?」
「いや、その手の情報は……、いや支給品をチェックしろなどと今更言っていたな」
「なるほど、おおきに」
(今更支給品をチェックしろなどとは意味わからへん、となるとこれは俺とコナンが考えた仮設が合ってるのかもしれへんなぁ
 つまり『光成の他に主催者がいて光成による反抗の呼びかけ』主催側に都合の悪いものが支給されてるかもしれんから良く調べろ、言うことか
 スーパーエイジャみたいに、一見するだけじゃ効果が判らん品もあったし、そういうのが鍵になるかもしれへん)

719Classical名無しさん:08/04/05 21:25 ID:82BIZ3.k
支援だ
720Classical名無しさん:08/04/05 21:25 ID:mVmFZXKs
721贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:27 ID:O337cX3U
「ほら、こっちは終わったぜ」
そういってジョセフが名簿を服部へ二枚渡す、新たに青い丸がついたのは
ハヤテ、かがみ、こなた、ナギ、鳴海、エレオノール、ヒナギク、覚悟、の八人
加えてパピヨンの所に追加で青い丸が付けられていた。
「こりゃえぇ、かなり多いやないか」
「俺が直接会ったのはハヤテとかがみんの二人だけだ、残念ながら後はハヤテからの又聞きだ」
大きく増えた青い丸に満足した服部は、一枚を劉鳳へと渡す。
そして下にあったもう一枚に目を落とし、丸が付けられた名前を確認しようとすると
欄外にいろいろ書いてあるのを見つけた、先ほどの名簿には書いてなかった事だ
おそらく情報量が多いくて、二枚に書く時間を取られたくなかったから、一枚だけに留めたのだろう。
服部はそこに書かれた事を読み進むにつれて、胸が高鳴りを抑えきれないのを感じた。
BADANを名乗る黒幕の組織、その使い暗闇大使という凶悪な男、エリア外に存在すると思われる雷雲に守られた敵の本拠地、これらの情報を綾崎ハヤテから得たと書かれてある。
服部は手が震えるのを止められなかった、これは間違いなくこのゲーム壊すために欲していた重要情報の一つだ。
こうなると先ほどの『光成の他に主催者がいて光成による反抗の呼びかけ』という仮説も真実味を帯びてくる。
服部は先ほどの放送をちゃんと聞けなかったのが悔やんだが、だが今更悔いても仕方ないと思い直す。
722Classical名無しさん:08/04/05 21:29 ID:mVmFZXKs
723贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:30 ID:O337cX3U
服部は無言で欄外を指差しながら劉鳳と名簿を交換する。
興奮して震えている服部を、怪訝な目で見つめていた劉鳳も、この情報を見ては衝撃を隠しきれなかった
「ハヤテ……、綾崎ハヤテか」
「どないしたん劉鳳はん」
劉鳳が珍しく、眉をひそめ、困惑した様子で唸っていた。
「その名前、先ほどの放送で聞いた記憶がある、それと丸が付けてある三千院ナギ、加藤鳴海も聞いた記憶がある」
ジョセフは大きく息をのむ
「あのハヤテが死んだぁ、しかもハヤテが探しにいったナギってお嬢様も一緒にか」
「そうなる、な」



「オイオイつまりどーゆうこった、俺とハヤテは11時30分にS1駅に集合してから赤ムシ野郎を倒しに神社行くって約束してたのに
 ハヤテの奴は、探しにいったナギお嬢様とやらと、一緒に死んだってことか?」
「劉鳳はん、この三人の名前が呼ばれたのは間違いあらへんか?」
「間違いない、待て……そういえば綾崎ハヤテのすぐ次に三千院ナギと呼ばれていたぞ」
「つーことはそのハヤテって人が死んだ後すぐに、ナギって娘が死んだってことやないか、
劉鳳はんその二人が呼ばれたのって何番目くらいか覚えてへん?アミバはんや吉良はんの前か後でもえぇ」
「吉良より後で最後の方だったな」
724贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:32 ID:O337cX3U
服部は考えを巡らせ始める、ハヤテは11時30分にS1駅でジョセフと待ち合わせて、ナギを探しに行った。
そして二人は連続して死亡している、死亡時刻は吉良死亡後から12時の間。
これらの情報からハヤテ達の行動を推理し始める。
二人が連続で死んだということは二人で一緒にいた可能性が高い。
また11時30分にS1駅で待っていた人間が神社へ行って12時以前に死ぬとは考えにくい
となるとS1駅二人待っている間に殺された、もしく二人が合流してS1駅へ行く途中殺されたと考えるのが妥当
ここまで考えたが情報が圧倒的に足りない以上、直接神社に行ってみるしかないという結論が出た

そんな結論は判りきっていたはずだが、今まで何度もいろんな事件で推理をしてきた、
今まで幾度と無く反復してきた思考は、服部の心を落ち着かせてくれた
劉鳳のアルターやジョセフの波紋の様な力を持たない服部にとって、探偵として培われた推理力こそが彼の最大の武器なのだから。

(あんまり考えるだけじゃあかんなぁ、今はとにかく神社へ行ってかがみって娘を助けにいかなあかん
 ハヤテはんから直接話しを聞いてみたかったがそれも叶わん、だが村雨って人はBADANの一員だったちゅー事は
 貴重な情報を持っててもおかしくない、となると何とかして情報を頂きたいところやな)

725Classical名無しさん:08/04/05 21:33 ID:mVmFZXKs
726Classical名無しさん:08/04/05 21:33 ID:82BIZ3.k

727贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:33 ID:O337cX3U

「ハヤテの奴が死んじまってるなら一刻の猶予もねぇ、さぁ早く行こうぜ」
「あぁジョセフはん手間取らせたな、ほないこか」
三人は荷物を纏めると、外へと飛び出す。
「絶影っ」
劉鳳は絶影を発動し、バイクを運びんでくる、戦闘前に乱暴に地面に置いたせいか全体的に車体が歪んでいて、このまま乗るには少し心もとない。
「ジョセフはん、あのDISC貸してくれへん?――俺が直してやりたいんや」」
ジョセフは一瞬の躊躇の後、服部の瞳を見つめる。
もう決して前回の様にはならない、服部も強い決意を瞳に込める。
その瞳を見てジョセフはクレイジー・ダイヤモンドのDISCデイバックから取り出し服部へと渡す。
服部は少しの間じっと手元のDISCを見つめ、決意と共に頭へと入れる

頭の中に炎の記憶が一瞬蘇り、まさに身を焦がし、骨を焼く熱気が心の中に宿る。
そのまま炎に身を任せたい衝動に駆られてしまう、だがそれを押さえ込んで炎の記憶の外にある現実に目をやる。
劉鳳は絶影いつでも動かせるように待機して、ジョセフはすぐに頭を叩けるように右手を構えている。
服部は二人を安心させるため、手を挙げて自分は平気だとアピールする

「さぁ、いくで、クレイジー・ダイヤモンドっ!」
発現したスタンドは拳をふりあげ、バイクを殴る、殴られた衝撃で大きく壊れたバイクは、テープを逆戻しにするかのパーツが元の位置に戻り
そこには殴られるより遥か前、服部が組み上げた時の様な綺麗なバイクに再生した。
「三村はん、あんたの力貸してもらうで」
このスタンドは物を再生させることが出来る、この特性は戦闘でいろいろ応用可能な優れたスタンドだ。
服部にしてみれば頭の使い甲斐がある武器と言える、加えてスーパー光線銃など武装には恵まれている。
「俺もこの力で一人でも多くの人救ってみせる」
決意を新たに彼は、一人呟いた。

728Classical名無しさん:08/04/05 21:35 ID:mVmFZXKs
729Classical名無しさん:08/04/05 21:39 ID:O337cX3U
後はこれに乗って出発するだけ、だがその前に服部にはもう一つやりたいことがあった。
「三村はんのところいかせてもらってえぇか」
三人がたどり着いた場所は、外気にさらされてはいたが、まだ人の肉が燃えた強烈な悪臭が立ちこめたままだった
そこには体じゅうに穴が穿たれ、全身焼け焦げた無残な死体が一つあるだけ。
瞼を閉じさせてやりたかったが、顔の皮膚は焼け落ち、左目は眼窩の中で眼球が露になっており、右目は視神経だけで繋がって眼窩から零れ落ちている。
誰もが目を背けたくなる、そんな光景だった。
だが服部は目を逸らさず見つめ続ける、これが自分の行いの証なのだから、しっかりと焼き付けなければならない。
服部は皮膚の代わりに肉が晒されている体を。地面へ静かに横たえ、両腕を胸の前で交差させる。
続いて零れている右目を掴む、柔らかいその目をそっと眼窩の中へとしまう、少しでも生前の姿に近づけてやりたかった。


埋めてやりたいが今は時間が無い、手を合わせ、瞳を閉じ、強く心に思う。
(どんだけ謝っても謝りたりん、でも頼むお願いや、俺がしばらく生きるのを許したってや
 こんなふざけたゲームをぶっ壊す、そう仲間と誓ったんや)

三村の遺品などはジョセフがデイバックへと回収し、服部はバイクへ跨る
後ろにはジョセフが乗り込み、右手で掴まっている。
「ジョセフはん、片腕だと難儀かもしれへんが後ろでしっかり捉まってもらうで」
大柄なジョセフは窮屈なようだがよっぽど危ない運転をしない限り落ちはしないだろう
「真・絶影っ」
真・絶影を開放し、劉鳳はその背に飛び乗る。


「村雨良、今度こそ貴様を断罪してみせる!」
「かがみん、待ってろ、今助けにいってやるからな!」
「もう迷ったりせえへん、今度こそ一人でも多くの人を救ってみせるんや」
三人はそれぞれの決意を抱きながら、進んでいく、前へ向かって。


730贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:42 ID:O337cX3U
E−2(バイクで移動中)/二日目/深夜】
【服部平次@名探偵コナン】
[状態]:肉体疲労中、精神疲労大、全身コールタールまみれ、三村を殺したことから大分立ち直りました
[装備]:スーパー光線銃@スクライド、携帯電話、核鉄ニアデス・ハピネス@武装練金、クレイジー・ダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:支給品一式(食料一食消費)、首輪、「ざわ……ざわ……」とかかれた紙@アカギ(裏面をメモ代わりにしている)、
    色々と記入された名簿、ノート数冊、ノートパソコン@BATTLE ROYALE、バイクCB1000(現地調達品)
    ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)、綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく(未開封)、
    ギーシュの造花@ゼロの使い魔、スティッキィ・フィンガーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険 (内容、使用方法不明)、
    キュルケの杖、拡声器、 核鉄ソードサムライX@武装錬金、包帯・消毒薬等の治療薬、点滴用セット(十パック)
    病院内ロッカーの鍵(中に千切れた吉良の左手首あり)、才人のデイパック(内容は支給品一式、バヨネット×2@HELLSING、
     紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)未確認)  
[思考・状況]
基本:江戸川コナンよりも早く首輪のトリック、事件の謎を解除する。三村や仲間達に恥じることの無い行動をする。
1:神社へいってかがみを助ける、村雨からは情報を得たい。
2:ルイズの最後の願いについてはどうするか。
3:三村をちゃんと埋葬してやりたい
4:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
5:自分自身にバトルロワイアル脱出の能力があると偽り、仲間を集める(一時的に保留)
731贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:45 ID:O337cX3U
[備考]
※劉鳳と情報交換を行い、シェリスの名前を知りました。
※劉鳳、コナン、神楽、ジョセフの事は全面的に信用しています。
※自分自身にバトルロワイアル脱出の特殊能力があると偽る策を考えています。
※バトルロワイアル脱出の特殊能力は10人集まらないと発動しません。(現時点での服部設定)
※脱出作戦を行うかはどうかは考え中。
※銀髪銀眼の人物が殺し合いに乗った事を知りました。
※コナンと二人で立てた仮説、「光成の他の主催者の可能性」「光成による反抗の呼びかけの可能性」「盗聴器を利用した光成への呼びかけの策」 等について
 は、まだ他の人間に話していません。又、話す機会を慎重にすべきとも考えています。
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。
※三村信史の死ぬ直前の記憶を見ました。
※第四回放送の内容は劉鳳からの又聞きでしか記憶にありません。
※ハヤテとナギは一緒に死んだと推理しています。

[服部平次と劉鳳の共通備考]
※劉鳳、服部の持つ名簿には以下の内容が記載されています。
 名簿に青い丸印が付けられているのは、カズマ・劉鳳・シェリス・桐山・杉村・三村・川田・才人・
 ルイズ・防人・カズキ・斗貴子・タバサ・キュルケ・コナン・服部 ・灰原
ハヤテ、かがみ、こなた、ナギ、鳴海、エレオノール、ヒナギク、覚悟
 赤い丸印が付けられているのは、ジグマール・DIO・アーカード・散・村雨
 緑色の丸印+青色の丸印が付けられているのは、蝶野
※劉鳳、服部、コナン、神楽は吉良がスタンド使いということを知りました。
※ルイズをF-3の川岸に埋葬しました。折れた軍刀は墓標として刺してあり、キュルケの杖、拡声器は服部が所持しています。
※ルイズの最後の願いについてはまだ話し合っていません。
※アミバの持っていた支給品一式×3 (食料一食消費) は、F−2民家の中にあります。
※アミバの持っていたノートパソコンには、大東亜共和国謹製のOSが組み込まれています。
732贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:46 ID:O337cX3U
【E−2(バイクの後ろに乗っている)/二日目/深夜】
【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左手骨折、全身打撲、精神疲労大、体力消費極大、深い悲しみ、脇腹にダメージ大、全身コールタールまみれ
[装備]:マジシャンズレッド(魔術師の赤)のDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:七原秋也のギター@BATTLE ROYALE(紙状態)、支給品一式×2、木刀正宗@ハヤテのごとく
[思考・状況]
基本:BADANとかいうボケ共を一発ぶん殴る。
1:S3駅、S1駅周辺を探し、かがみ救出のための仲間を探す、
だがハヤテの死亡を確認したりして状況が変わったので直接神社に行くか
それとも駅に寄るかは次の書き手に任せます
2:かがみを助け、村雨は殺す。
3: マップの端を見に行く。
4:一応赤石も探しとくか……無いと思うけど。
733Classical名無しさん:08/04/05 21:49 ID:cvOmj5vg
                             
734Classical名無しさん:08/04/05 21:55 ID:O337cX3U
[備考]
※劉鳳と服部の名簿に追加事項を書き込むときに今まで丸を付けられた人物を覚えました。二人から得た情報は今のところそれくらいです
スーパーエイジャの存在などは聞いていません。
※ハヤテ+零が出合った人間のうち、生き残っている人物及び知り合いの情報を得ました。
 (こなた、パピヨン、ナギ、鳴海、エレオノール、ヒナギク、覚悟)
※二部終了から連れてこられていますが、義手ではありません。
※吉良の名前に何か引っかかっているようです。
※水を使うことで、波紋探知が可能です。
※三村の留守電を聞き逃しました。
※主催者の目的は強者を決めることであり、その中にはイレギュラーもいると考えています。
※少なくともかがみとは別の時代の人間であるということを認識しました。
※波紋の力を使うことで対象のディスクを頭部を傷つけることなく強制排出することができます。
 ただし、かなりの集中力を要求します。
735Classical名無しさん:08/04/05 21:57 ID:cvOmj5vg
                         
736贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:57 ID:O337cX3U
※マジシャンズレッドの火力は使用者の集中力によって比例します。
 鉄を溶かすほどの高温の炎の使用は強い集中力を要します。
 火力センサーは使用可能ですが精神力を大きく消耗します
 また、ジョセフのマジシャンズ・レッドは通常の炎の威力の調節が極端に難しい状態です。
 ただし、対象に直接マジシャンズ・レッドの手を当てて炎を出した場合に限り調節が可能です。
 修練をすれば通常の炎の精度が上がる可能性があります。
※S7駅がかなり脆くなっていることを発見しました。
※ジョセフとハヤテの約束。
 ハヤテはナギと会った後、ジョセフは仲間を募った後、必ず11時30分にS1駅に集合。
 その後、かがみ救出のために神社へ攻め込む。
※絶影をスタンドだと思っています。
※第四回放送は劉鳳からの又聞きでしか記憶にありません。
※以下のBADANに対する考察を服部と劉鳳に伝えました。
737Classical名無しさん:08/04/05 21:58 ID:VSrRfkCw
支援ローラーだっ!
738贖罪の拳、煉獄の炎 ◆S52NT51/9g :08/04/05 21:59 ID:O337cX3U
【ジョジョとハヤテのBADANに関する考察及び知識】
このゲームの主催者はBADANである。
BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
だが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。
ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
739Classical名無しさん:08/04/05 22:01 ID:O337cX3U
【E−2(真・絶影に乗っている)/二日目/深夜】
【劉鳳@スクライド】
[状態]:疲労大(随時蓄積中)、全身に中程度のダメージ、左肩と腹部にダメージ中、右拳骨折治癒途中(包帯が巻いてある)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料一食消費)、4色ボールペン、色々と記入された名簿、スタングレネード×2 、タバサの眼鏡
    タバサのデイパック(内容は液体窒素(一瓶、紙状態)、タバサの支給品一式 、色々と記入された名簿
[思考・状況]
基本:正義を全うし、ゲームとその主催者BADANを断罪する。 死んでいった同志達の遺志を背負い、正義をなす。
1:村雨を断罪し、かがみを救出する。
2:ルイズの最後の願いについてどうするか。
3:悪(主催者・ジグマール・村雨)は断罪、弱者(神楽)は保護。
4:防人の知り合い・桐山の知り合い・核鉄を探す。
[備考]
※絶影にかけられた制限に気付きました。
※桐山・防人・服部・タバサ・吉良・コナンと情報交換しました。
※平次の策に乗る気はありません。
※銀髪銀眼の顔に傷のある人物が殺し合いに乗った事を知りました。
※液体窒素の瓶(紙状態)、スタングレネードなどは、仲間の誰かに渡しても構わないと思っています。
第四回放送の内容は戦闘中に聞いたのでちゃんと覚えていません、つかさ以外の死者と禁止エリアついてはメモしてあります。

[E−2地点に関する備考]
※幅数メートルのアスファルト製の壁があります。
※壁周辺にコールタールが散布されています。
740 ◆S52NT51/9g :08/04/05 22:03 ID:O337cX3U
以上投稿終了です。
指摘等ありましたらお願いします。
741Classical名無しさん:08/04/05 22:12 ID:82BIZ3.k
投下乙
一事はどうなるかと思ったが3人トリオが結成されてよかった
服部と劉鳳いいな
そして村雨の絶体絶命のピンチ!
742Classical名無しさん:08/04/05 22:14 ID:cvOmj5vg
投下乙。
上手い事死人なしで和解しましたね。喜ばしい事だ。
これはかなり強いパーティになりそうだ。
それにしても村雨恨まれてんなーw
743Classical名無しさん:08/04/05 23:31 ID:548eKuVE
投下乙!
村雨に恨みのある素敵チームにw
今後どうなるか、気になる話でした。
744Classical名無しさん:08/04/05 23:36 ID:0J2B7Oxk
投下乙!
服部が正気に戻った!なんという漫画ロワ的展開w
服部、ジョセフ、劉鳳安定した対主催組に期待!
村雨が可哀相な気もするけどw
745Classical名無しさん:08/04/06 00:31 ID:XnWZUFmg
GJ!
まあ村雨も覚悟しているようだからどうにかなるだろう。かがみがちゃんと生き返れば楽にいくんだろうが。
このスレは漫画キャラバトルロワイアルのスレです。
SSの投下も、ここで行ってください 、支援はばいばい猿があるので多めに

前スレ
漫画キャラバトルロワイアル Part14
ttp://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1205498413/l50
【外部リンク】
漫画キャラバトルロワイアル掲示板(したらば)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/9318/
まとめサイト
ttp://www32.atwiki.jp/comicroyale
漫画キャラバトルロワイアル毒吐き2
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1200415345/l50

1/4 【アカギ】○赤木しげる/●市川/●平山幸雄/●鷲巣巌
1/2 【覚悟のススメ】○葉隠覚悟/●葉隠散
1/3 【仮面ライダーSPIRITS】 ●本郷猛/●三影英介/○村雨良
1/4 【からくりサーカス】●加藤鳴海/○才賀エレオノール(しろがね)/●才賀勝/●白金(フェイスレス指令)
0/4 【銀魂】 ●坂田銀時/●神楽/●桂小太郎/●志村新八
2/4 【グラップラー刃牙】○愚地独歩/●花山薫/●範馬刃牙/○範馬勇次郎
1/4 【ジョジョの奇妙な冒険 】●吉良吉影/●空条承太郎/○ジョセフ・ジョースター/●DIO
2/4 【スクライド】●カズマ/●シェリス・アジャーニ/○マーティン・ジグマール/○劉鳳
0/4 【ゼロの使い魔】●キュルケ(略)/●タバサ/●平賀才人/●ルイズ(略)
1/4 【ハヤテのごとく】●綾崎ハヤテ/○桂ヒナギク/●三千院ナギ/●マリア
0/3 【HELLSING】●アーカード/●アレクサンド・アンデルセン/●セラス・ヴィクトリア
2/4 【北斗の拳】●アミバ/○ケンシロウ/●ジャギ/○ラオウ
1/4 【武装錬金】●防人衛/○蝶野攻爵/●津村斗貴子/●武藤カズキ
1/4 【漫画版バトルロワイアル】○川田章吾/●桐山和雄/●杉村弘樹/●三村信史
2/4 【名探偵コナン】 ○江戸川コナン/●灰原哀/○服部平次/●毛利小五郎
1/4 【らき☆すた】●泉こなた/●高良みゆき/○柊かがみ/●柊つかさ
計 17人 / 60人
747Classical名無しさん:08/04/06 04:04 ID:zR.owLQA
投下乙です。
初トリの方ながら各キャラの立ち位置、精神描写をうまく表した良作だったと思います。
3人が誰も死ぬことなく和解できたのもファンとしてとても喜ばしく思います。
てか村雨逃げてw


ところで気になった点をいくつか。
まず、戦闘中絶手に手があるかのような描写があるのですが、両手を使えるのは真・絶影形態です。
あと、劉鳳はこれまでに「死亡者の名前が死亡順に並べられている」ということを推察した人物と遭遇したことがありません。(唯一推察したのはフェイスレスのみのはず)

なので、戦闘描写・名前の並び順の考察の修正をしていただきたいのですが、いかがでしょうか?
748Classical名無しさん:08/04/06 17:32 ID:LI/ZAI6.
投下乙! 村雨哀れwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
劉鳳が服部の心情に配慮してる所とか、立浪の例を思い出してカズマと重ねる所とか、嬉しかったね。本当はこいつも良い男なんだよなぁ
ちょっとだけ正義が溢れて止まらないだけで。
あんだけ色々うまくいかない、人を救えない劉鳳が、それでも堂々と「お前に助けられる人間は居る」とか断言する件めっちゃ好き
何て折れない男だ……こいつらに絶望発狂フラグは通用しねぇw
749 ◆S52NT51/9g :08/04/06 17:46 ID:gvipj6c6
指摘、感想ありがとうございました
指摘された点については修正と開始します
750 ◆S52NT51/9g :08/04/06 17:47 ID:gvipj6c6
修正を開始します
ですね、正直アフォとしか……
751Classical名無しさん:08/04/06 18:03 ID:MeQkkeb.
修正頑張ってください。
752 ◆S52NT51/9g :08/04/06 20:51 ID:gvipj6c6
修正版を一時投下の方へ投稿させていただきました
753 ◆WXWUmT8KJE :08/04/06 21:10 ID:jeOcvSg.
>>752
修正乙です。
特に問題はないと思います。

エレオノール、ケンシロウの予約の延長をお願いします
754 ◆S52NT51/9g :08/04/06 22:32 ID:gvipj6c6
>>753
ありがとうございます。
執筆の方頑張って下さい。
それと私は明日はおそらくPCに触れないので
初投稿がこんなで申し訳ありませんが
もしまだ私の作品に問題があるようでしたら破棄して構いません。
755Classical名無しさん:08/04/07 18:45 ID:qu5M9Zms
>>破棄して構いません。
だが断る。ここ、断っていい所だよな?

私が見る限りでは、問題は無かったと思います。お疲れ様でした
756 ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 21:44 ID:2L34dWao
書きあがりったのですが……容量が足りませんorz
すいませんが、どなたか新スレを立ててもらえないでしょうか?
757 ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 21:48 ID:2L34dWao
758 ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 21:53 ID:2L34dWao
さて、投下を開始します。
759こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 21:54 ID:2L34dWao
 暗闇の中にいるエレオノール。
 ふわふわと身体に感じる浮遊感。まるで水の中に浮かぶような感覚に、エレオノールは戸惑う。
 自分は死んだはずだ。確かに、心の臓にケンシロウの拳をくらい、意識を手放したはずだ。
 ケンシロウは一流の戦士。しとめそこなうなど、ありえない。
 なら、ここは地獄だろうか?
 それもありえない、とエレオノールは自嘲する。
 地獄とは、人間が逝く道だ。人形が辿り着くのは無の極地。
 おそらく、自分が意識あるのは神様の気まぐれ。鳴海の残滓。三千院ナギの優しさ。エンジェル御前の友情。
 だから、自分の意識などあってはいけない。すぐに消えてなくならねばならない。
 なのに……
(生きたい)
 許されるはずがない。生きていていいはずがない。
 エレオノールは人形だ。人形である自分は人形を破壊するために生き、今また人間になるために人間を殺してきた。
 その両手は真っ赤な血に汚れている。
 しかも、ただの血ではない。

 自分が人間になるためには守らねばならないといわれた、才賀勝。
 エレオノールが直接手を下したわけではない。
 それでも、彼を死へと導いたのは、不要と判断したのは自分だ。
 血を踏みにじり、想いを踏みにじり、死体すらも踏みにじった。

 自分に信頼を寄せてくれた少女、キュルケ。
 彼女に手をかけたことにより、エレオノールの手は本格的に血に汚れることになる。
 エレオノールは選んだのだ。信頼を利用し、不意打ちで殺す、と。
760こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 21:55 ID:2L34dWao
 人形に相応しい卑劣な殺害方法だ。人間にはできることではない。

 自分を救おうとしてくれた少女、三千院ナギ。
 鳴海の遺志を受け継ぎ、真っ直ぐ自分にぶつけてきた。
 鳴海を理解し、鳴海を想い、辛くても、弱くても、よりにもよって倒すためでなく、救うために立ち向かってきた少女。
 その彼女を、エレオノールは無慈悲にも殺した。

 一体、どれだけの罪を重ねたのだろう。
 一体、どれだけ許されないことをしたのだろう。
 ギイが自分に呆れた言葉を投げかけてきたのも分かる。
 いや、やっと理解できた、といったところだ。
 なのに、遅すぎる。彼らは自分を人間にしようと現れてくれた。
 『人間でありたい』からと拒否したのは、他ならぬ自分だ。
 ギイは言った。

『“シェイクスピア曰く……この世は舞台なり――誰もがそこでは一役、演じなくてはならぬ”という言葉がある』

 エレオノールは、『人間になる人形』の役目を演じきれるは、自分自身の力だと思っていた。
 そのために鳴海に会いにいき、鳴海を笑顔にするために人を殺す決意をした。
 なのに、エレオノールは理解する。いや、理解してしまったのだ。
 『役目』とは、得るものではない。誰かがいて、お互いに与えあうものだと。
 ずっと才賀勝はそのことを訴え続けていた。
 自らが、才賀勝の偽者だと偽りの役目を受け入れても。
 加藤鳴海は、そのことを信条としていた。
761こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 21:56 ID:2L34dWao
 決して、弱者を見捨てない。悪を、刃牙を、DIOを許さないという信念の元。
 まるで、人を救うことが、他人が存在することが、自分の役目の全てだと言わんばかりに。
 ケンシロウも、鳴海と似たような信念を持つ。
 キュルケを殺した自分を許さず、この殺し合いに怒りを示し続けた。
 その瞳が、光を映さなくても。
 キュルケは友を失い、それでも気丈に生きようとしていた。
 親友であるタバサのことを自分に告げようとしていた。
 彼女の『役目』を、今なら知って置けばよかったと後悔してしまう。
 友への想い、今のエレオノールが持ち得ないものだから。
 そして……
(三千院ナギ……)
 自分を救うために、しろがねとなった少女。
 彼女は素人でしかなかったのに、まだ十代前半の少女でしかなかったのに、小さな身体の持ち主だったのに、『鳴海の想いを無駄にしな

い』役目を立派に果たした。
 エレオノールが知る加藤鳴海に迫るほど、三千院ナギは人間だった。
 そんな三千院ナギが救いたいと決意するほど、自分に価値があるのか、エレオノールは苦悩する。
 胸が熱を持ってナイフで抉られるように痛み、胃は鉛が放り込まれたように重くなる。
 すっぱい臭いが口に広がり、思わず手で押さえた。胃液の味がエレオノールの舌に広がる。
(ああ、私は……)
 壊れた人形。エレオノールは意識をあえて、闇へと沈ませていく。
 世界の全てを拒否するように。


 パアン、と甲高い音と共に、エレオノールの頬が熱くなる。
 ぶたれた、と判断して目を見開いた先には、熊のきぐるみを着た鳴海が存在していた。
762Classical名無しさん:08/04/07 21:57 ID:kV6Kr7eg
763こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 21:58 ID:2L34dWao
 鳴海の背が高く感じる。なぜなら自分の視線がまるで見上げるような形だったからだ。

『あきらめるな!』

 怒鳴り声と同時に、エレオノールの首を鳴海は抱きかかえる。
 懐かしい感触に、エレオノールの胸がいっぱいになった。

『キツイ時には「助けて」とどなれ! ハラが立ったら悪態をついてやれ!!』

 鳴海は、エレオノールの知る鳴海と寸分違わず、己の『役割』を果たしている。
 もっとも、無自覚なのだろうが。

『おとなしくかっこつけてあきらめんな、あがいてあがいてダメだったらそん時ゃ……』

 鳴海の敵に向ける獰猛な顔がだんだん穏やかになっていく。
 まるで、誰かを安心させるように。

『にっこり、笑うしかねえけどよ』

 強く、優しく、一歩も引かない鳴海。
 ここで出会った彼そのものであった。
 なぜ、自分はこの鳴海を知っているのだろう?

 エレオノールは知らないことだが、公園の池に溶けた勝の血が、かつて、才賀正二が勝に血を飲ませて、己の記憶を見せたように、勝自身の記憶をエレオノールに見せていたのだ。
 ゆえに、彼女が見ている鳴海は、勝がはじめて見た鳴海だ。
764Classical名無しさん:08/04/07 21:58 ID:hyQQryBo
 
765こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 21:59 ID:2L34dWao
 もっとも、そのことをエレオノールは知らない。だから単純に、このことを奇跡だと思った。
(ああ、神様。人形にも、あなたは慈悲を与えてくれるのですね。
私はこの奇跡を胸に抱き、あなたに感謝します。だから、私はもう、死にます)
 エレオノールは春風のような穏やかさを胸に、死ぬ勇気をもらう。
 目を瞑り、意識を闇へと落とした。



 黄金の光を淡くまとう月が、公園を照らす。
 佇む二メートルを越える男は、銀の髪と瞳を持つエレオノールをベンチに横たえらせている。
 傍には桃色の自動人形、エンジェル御前が軽く飛びまわっていた。
 公園の遊具を越え、ベンチの上に眠るエレオノールは穏やかな寝息を……
「おい! ケン!! エレノン息をしてねーぞ!!」
 驚愕の表情を浮かべるエンゼル御前を前に、ケンシロウは動じず、その手先でエレオノールの身体を探る。
 北斗神拳は人体を知り尽くした暗殺拳。人を殺すことも思いのままなら、逆にトキが行ったように人を救う術にもなる。
 いまエレオノールの身体を探り、様子を見る。
「……仮死状態か」
「なんだよ! 仮死状態って! 心臓にダメージがいってないんだろ!!」
「ああ。しかし、一つ問題がある」
 太く、濃い眉を微動だせず、エンゼル御前にケンシロウは告げる。
 その瞳を、悲しみの色に染めながらも。
「エレオノールに生きる意志がない」
「なんだよ、それ!!」
「…………彼女の最後の願い、お前も覚えているだろう」
「『私を殺してください』かよ。けど、生きているじゃねえか!?」
766こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:00 ID:2L34dWao
「肉体は。しかし、生きる意志、なにより心が死を望めば、エレオノールは終わりだ。
その危うい境界線に、彼女は立っている」
「な! ケン、なんとかしろ! ナギリンだって、エレノンが死ぬのは望んじゃいねえ!!」
 エンゼル御前の言葉に、ケンシロウは見えない瞳にキュルケの顔を思い浮かべる。
 彼女も、ナギと同じくエレオノールの死を望まないであろう。
 だが、自分ではどうすることも出来ない。
 トキほどではないが、肉体の損傷ならある程度どうにかできる。しかし、心まで直す術などない。
 ケンシロウは拳を握る。人を殺すことは得意でも、人を救うことの出来ない拳を恨んだ。
「彼女の手は血でぬれている……」
「ケン!!」
「だが見ろ。俺の手は、北斗神拳は彼女が生きている前よりも、屍を重ね続けてきた。
そのためだけの拳だ。奪うだけの、な」
「ケン……お前……」
「この俺が生きている。なのに彼女が生きるのに文句をつけるはずがない。
エレオノールが生きたいと願うのなら……」
 ケンシロウの脳裏に浮かぶ、ナギのエレオノールの説得の言葉。彼女の願いは、エンゼル御前を、エレオノールを通して伝わった。
 キュルケが生きていたら、どう思うかは分からない。
 しかし、ケンシロウには、笑って後押しする彼女の姿しか思い浮かばない。
 ゆえに、ケンシロウは拳に誓う。
「俺が全力で生かす。今度こそ……」
「ケン…………」
 エンゼル御前の滝のような涙が、生え揃う緑の芝生を濡らしていく。
 月光の下に、男と自動人形は少女を囲み、佇む。
767Classical名無しさん:08/04/07 22:01 ID:hyQQryBo
 
768こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:01 ID:2L34dWao
 生きる意思に賭けて。



(ここはどこだ……)
 エレオノールの疑問に答えるものはいない。彼女は、またも地獄へと向かわなかった。
 目の前にあるのは、雪が降る見知らぬ公園。
 自動販売機を前に、エレオノールは立ち尽くしていた。
 自動販売機の買い物の仕方を知らないのだろうか? 自分の行動なのに、不思議な疑問を持つ。
 戸惑っているうちに、男が声をかけてくる。エレオノールも何度も経験した男の誘い。
 またか、と頭は冷静なのに、身体は違う。戸惑いの声も、まるで初めての出来事が起きたような対応だ。
 自由にならない身体に、エレオノールは悟る。これは、誰かの記憶だと。
 休憩を取ったときに見た、フランシーヌの記憶。あの時と状況が似ていたのだ。
 今度は、誰の記憶を見ているのだろうか?
 そう思っているフランシーヌの前に、疾風が身体を駆け抜ける。

『人の獲物に手を出すなぁ!!』

 内心、誰が獲物だ、誰が、などとツッコンでいるのにも構わず、声をかけてきた男たちがすごすごと引き下がっていく。
 呆れるエレオノールの思考に構わず、声が聞こえてきた。
769Classical名無しさん:08/04/07 22:02 ID:hyQQryBo
 

770Classical名無しさん:08/04/07 22:02 ID:hyQQryBo

771Classical名無しさん:08/04/07 22:03 ID:hyQQryBo
 
772Classical名無しさん:08/04/07 22:03 ID:vWoSyxmg
 

 

773Classical名無しさん:08/04/07 22:03 ID:hyQQryBo
 


774Classical名無しさん:08/04/07 22:03 ID:w9MYUTFs
775こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:04 ID:2L34dWao
 発しているのは自分。しかし、聞き覚えのあるその声は……

『あ……ありがとう……。なんか知らんが……助かったよ……』
(ナギ……)

 最後まで、自分を救うことを諦めなかった少女の声だった。


(あの少女の記憶……)
 エレオノールはナギの記憶だと知ると、興味を示す。
 三千院ナギはエレオノールを前に、素人なのに戦うことをやめなかった。
 いや、違う。
 彼女が、三千院ナギがやめなかったのは、戦うことではない。
 彼女がやめなかったのは……
(私を救うことだ……)
 彼女は必死に訴えていた。鳴海の想いを。彼女の優しさを。
 それを踏みにじる自分に、負けることなく。
(知りたい…………)
 なにが、彼女を強くしたのか。なにが、彼女の想いを支えていたのか。
 エレオノールは覗き見る、ということに罪悪感を抱きながら、目の前の出来事を見続ける。
 相変わらず、コントのようなやり取りを続けていた。

『僕は……君が欲しいんだ(人質として)』

 その言葉に、ナギが赤くなる。言葉だけを聞けば愛の告白に聞こえなくも無い。
776こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:04 ID:2L34dWao
 しかし、目の前の少年の雰囲気には追い詰められたものが持つものだった。
 決して、穏便な意味ではあるまい。もっとも、目の前の少年は絶対にことを成功させることはないだろう。
 なんと言うか、善良な人間であるのが伺える。大それたことは出来まい。
 待っているように告げる彼を待つナギを見つめて、エレオノールは羨ましく見つめていた。

 エレオノールは人形としての生を送り続けた。
 ナギや目の前の少年のような暖かい日々は遠い世界の出来事だ。
 ただ、自動人形を潰す。それだけに、九十年の月日を費やしてきたのだ。
 人形であり続け、人間に憧れ、ただ才賀勝を守ることが人間になる唯一の術だと思い続けた。
 この殺し合いで手っ取り早く人間になれると、優勝する決意をした。
 笑う赤子を見て、カトウナルミを笑わせれば、人間になれると思い続けた。
 全ては、目の前のナギや少年のように、暖かい日々を得るために。

 思い返しているエレオノールの目の前で、ナギが二人組みの男にさらわれていく。
 マヌケな少年と違い、こちらは悪事を平気で働けそうだ。もっとも、こちらも抜けているが。
 自分であれば用意に乗せられた車から脱出できるだろう。
 しかし、ナギではどうすることも出来ない。
 下手に刺激すれば、危険でしかない。
 それを知ってか知らずか、ナギの挑発は止まらない。自分を説得したときのように。
(そうか。あなたはそういう人間なのか)
 正しいことを正しいと主張する強さ。たとえ、どんな危険であっても。
 後先を考えない、無謀な人間だと嘲笑するものが多いだろう。ナギのような無力な人間に、なにが出来るのかと。
 だが、エレオノールは知っている。彼女の決意は、自分を止めるために戦い続けれるほど、強いものだと。
 しかし、今のナギではその正しさは命取り。曲がらない彼女の強さに苛立った男二人が狭い車内で迫ってくる。
777Classical名無しさん:08/04/07 22:05 ID:hyQQryBo
 
778Classical名無しさん:08/04/07 22:05 ID:ywm.gSdI
 
779こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:05 ID:2L34dWao
 エレオノールが歯噛みしているが、相変わらずナギは折れない。

『命がけで私をさらうと誓った。だから呼べば来るさ!!』

 ナギが叫んだその瞬間、月光を遮り、車を飛び越える自転車に乗った先ほどのマヌケな少年が現れた。
 今までと比べ物にならないくらい、その瞬間は色鮮やかだった。


 エレオノールはそれからも、さまざまなナギの記憶を覗き見る。
 ところどころ飛んでいるのは、エレオノールの知らないことだが、池に混ざったナギの血が少量だったからだ。
 ゆえに、ナギの記憶はナギが死の直前に強く思った出来事しか映さない。
 彼女が最後に思ったことは……
「ナギ、あなたはハヤテという従者が本当に好きだったのですね……」
 闇の中に消えるエレオノールの呟きは、静かに溶けていく。
 エレオノールの胸に浮かぶものは、加藤鳴海の存在。この殺し合いの場で、自分に影響を与えた男。
「鳴海……私は……」
 答えは、エレオノール自身にも分からない。
 結論のでないエレオノールの漆黒の景色が、突如色を取り戻す。
「これは……」
 エレオノールの知る景色。ナギの記憶は、エレオノールにこの殺し合いでの想いを伝えようとしていた。


 ナギが体験した出来事が、断片的だが嵐のようにエレオノールの身体を、心を駆け巡る。
 自分とは違う場所で、自分とは違う想いを掲げ、自分とは違う道を歩み続けたナギ。
780Classical名無しさん:08/04/07 22:05 ID:w9MYUTFs
781Classical名無しさん:08/04/07 22:06 ID:hyQQryBo
 
782こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:06 ID:2L34dWao
 やがて、鳴海の泣き顔をエレオノールは見ることになる。

『すまねぇな……オレのせいで空条のヤツも死なせちまって、
ハヤテとかいうヤツが何処かに行っちまったのも全部オレのせいだな……。
ほんとにすまねぇ……』

 鳴海は、本当にすまなそうにナギに謝り続けた。
 話が進んでいくうちに、自分が死ぬきっかけを作った勝の死に、自分を責めていることを理解する。
 エレオノールの胸が痛む。
 ハンマーで頭をおもっきり叩かれたような衝撃を抱えながら、後悔に襲われているのだ。
 何より、鳴海を悲しませたのは、追い詰めたのは自分だ。
 直接手にかけていなくても、勝の死の要因は自分だからだ。
 鳴海に、恨まれてもしょうがない。そう目線を落としたときだった。

『オレはどういうわけかこの殺し合いに乗っちまったエレオノールを……しろがねを止めてみせるぜ!
きっと勝もオレにずっとその事をオレに伝えたかったにちがいねぇ!
それだけは譲るつもりなんざ……あるわけがねぇんだよッ!!』

 エレオノールは目を再び見開く。あれだけ鳴海を裏切ったのに、鳴海を追い詰めたのに、彼は自分を救うと宣言してくれている。
 再び、エレオノールの胸が痛む。
 この間、自分がしてきたことを思えば当然だ。
(ナルミ……私はあなたに答える資格は無い。あってはいけない……)
 己が顔を覆うエレオノール。両の手から涙が零れ落ち、木製の床に落ちて弾ける。
 何故、自分は鳴海を裏切ったのだろう。彼を信じてやれなかったのだろう。
783Classical名無しさん:08/04/07 22:07 ID:hyQQryBo
  
784こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:07 ID:2L34dWao
 エレオノールはまたも、死を渇望し続けた。



 またも、場面が変わる。今度は燃え落ちる城の中だ。
 背中にいるのは、自分。奇妙な光景を見ながら、知らない誰かの記憶だと、エレオノールは気づいた。

『本当にお坊ちゃまはお強くなられたのですね……』

 穏やかな表情で告げる自分の姿に、エレオノールは驚いた。
 この言葉が本当なら、背負っているのは……

『そんな……ぼくなんてぜんぜんちがうよ……』

 才賀勝。殺し合いで守ろうと決意し、やがては見捨てた存在。
 なのに、この記憶……いや、エレオノールは薄々気づいていた。
 この記憶は、才賀勝の記憶。今のエレオノールから見たら、未来の出来事だ。
 未来の自分の顔は、人形とは思えないほど柔らかかった。
 こんな表情も出来たのか……と、新たな発見に喜びつつも、エレオノールは消失間に襲われる。
 もう、自分がこの表情を手に入れるのは無理だ。この手は、今喜んでいる勝、キュルケ、ナギの血で汚れている。
 ここに、戻れる資格などない。だからこそ、

『ありがとうね、チャンスをくれて』

 未来の自分に対して礼を言う勝の言葉が、刃となってエレオノールの心を抉るのだ。
785Classical名無しさん:08/04/07 22:08 ID:hyQQryBo

786Classical名無しさん:08/04/07 22:08 ID:4yPNtLJs

787こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:08 ID:2L34dWao
 私は罪人であると。
 燃え落ちる城の階段を上り、青空に向かう勝に対してエレオノールは涙を流す。
「申し訳ありません。お坊ちゃま。申し訳ありません。申し訳ありません。申し訳……」
 謝ったところで、許されるはずがない。許されていいはずがない。
 己の犯した罪の重さがエレオノールにのしかかる。
 それは、彼女が裏切ったものに対する、罰だった。

 後悔と破壊に彩られた人生。これほど無駄なことはなかったとエレオノールは思う。
 ナギの記憶も途絶えた。きっとナギは伝えたかったのだろう。
 自分に、生きる価値はないのだと。エレオノールは深い闇に身体を委ねる。
 そろそろ、死ぬ時間だ。
 最後に後悔の余地を与えるため、罪を自覚させた神様は残酷だったのだろうか? それとも、慈悲深かったのだろうか?
 分からないが、エレオノールはただ意識を闇へと落とす。
 もう、生きるのに疲れたのだから……
「私に……生きる資格などない」



「そんなわけないだろ!!」
 聞こえるはずのない声に、エレオノールが振り返る。
 ただただひたすら白い空間に、エレオノールの背後で三千院ナギが腕を組んで偉そうにこちらを睨んでいた。
「ナギ……」
「何でお前がここにいるのだ。身体は無事なんだから、さっさと戻れ!」
「そういうわけにはいかない。私は…………」
788Classical名無しさん:08/04/07 22:09 ID:hyQQryBo
 
789Classical名無しさん:08/04/07 22:09 ID:vWoSyxmg
abababacc
790Classical名無しさん:08/04/07 22:09 ID:hyQQryBo
 
791こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:09 ID:2L34dWao
「戻れったら、戻れ!!」
 非力な力でナギはエレオノールを押し返そうとする。
 そのいじましさに、エレオノールは表情を悲しみに歪めた。
「ナギ……あなたはお人好し過ぎます。自分を殺した人に、生きろだなんて……」
「ならさ、わたしもあんたに生きてって言ったら、戻ってくれる?」
 エレオノールが目を見開いて振り向くと、こちらに掌を向けてひらひら振ってくる少女の姿が眼に入った。
 エレオノールは彼女を知っている。なぜなら、殺したのは自分だからだ。
「キュルケ…………」
「正解」
 生前と変わらない、真っ直ぐな笑顔をキュルケはエレオノールに向けていた。
 やはり、ここは死後の世界ではないのか? だから……
「私は死ぬべきだ」
「そんなことはない!!」
「そうよ。痛かったし苦しかったしけど、それよりも頼みたいことがあるのよね」
「……私にその資格はない。特に直接手をかけたあなたたちに……」
「違うのだ! エレオノール。私は、私はむしろ嬉しいのんだ!
だって、ようやく鳴海との約束を果たせそうだから! だから、戻ってくれ。鳴海を報いさせてくれ」
 ナギの必死の訴えにも、エレオノールは表情を暗くしたままだ。
 そこに、フラッとキュルケがエレオノールの前方に立つ。
 キュルケの真っ直ぐ射抜く視線に耐え切れず、エレオノールは眼を逸らす。構わずキュルケは言葉を発した。
「…………わたし、言ったよね? あなたとタバサが似ているって……」
 エレオノールは無言で頭を横に振る。
 彼女の親友に重ねられる資格など、自分にはない。
「無表情なままで喋る所……本当は、それ以外にも似ているところがあるんじゃないかって、思っていた」
792Classical名無しさん:08/04/07 22:11 ID:4yPNtLJs
793こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:11 ID:2L34dWao
 そんなはずはないと、心を軋ませながらエレオノールは否定する。
 キュルケの親友と、血で汚れた自分を重ねるのは、彼女をも汚しているような気がしたからだ。
 エレオノールが痛みに折れそうな心を抱えても、キュルケは構わず言葉を紡ぎ続ける。
「今のあなたを見て確信したわ。タバサはお母さんを救うために戦い続けた。
あなたを知っているナギから聞いたわ。あなたも、惚れた男のために頑張った。
わたしがあなたの立場なら、同じことをしたわ。女なら、惚れた男のために燃え上がるものでしょ?」
 キュルケがナギと一緒にエレオノールの手を握る。
 感じるはずがないのに、幻想のはずなのに、夢のはずなのに、二人の手が暖かく感じた。

「シェイクスピア曰く、「乙女と乙女の間の真の友愛は、男女間の愛よりも尊いものかもしれない」と……」
 
 聞きなれた声に、驚愕の表情を浮かべたエレオノールが振り返ると、銀髪を前分けにした、銀眼の整った顔。
 すらりとした均整の取れた肢体を持つ青年が、現れた。
「ギイ先生……」
「やあ、エレオノール。ようやく、君の『役目』を掴みかけているようだね」
 にっこりと温かくエレオノールを迎えるギイを前に、エレオノールは驚愕の表情を浮かべ、佇んでいた。


「先生……何故ここに…………」
「ああ、簡単なことさ。本来なら、僕もこの殺し合い……連中はプログラムと呼んでいるけど……の参加者の一人だったからさ」
 ギイからもたらされた真実にエレオノールは目を見張る。
 本当なら、一体ギイは誰に殺され、そして名簿にも載っていなかったのか。
 エレオノールの疑問に答えるように、ギイはゆっくりと口を開く。
「けど、ここに呼び出された時点の僕は死体だった。勝くんと同時召還したのがいけなかったみたいだ。
召還する力のある奴が適当でね、自爆スイッチで身体が吹き飛んだ瞬間にここに呼び出されたのさ。お笑い種だろ?」
794Classical名無しさん:08/04/07 22:11 ID:hyQQryBo
 

795こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:12 ID:2L34dWao
 皮肉気に口の端を持ち上げるギイを前に、エレオノールはどう答えていいか分からなかった。
 その戸惑いを見抜いているギイは構わず続ける。
「おかげで、この器に僕は自動的に入った……というわけさ」
「器……ですか?」
「ああ。彼らはなにを企んでいるか分からないけど、この器に死者を集めるのを目的の一つとしているらしい。
勝くんと僕を呼び出したのはいいけど、何で僕は死ぬ直前だか……まあ、おかげで君とコンタクトを取れたけどね」
「けど、ギイ先生。私は…………」
「あの後の君の行動は確かに賢いとはいえない。人間になることを目指すのはいいけど、その手段が間違っていた。
第一、僕の時間軸……勝くんと同じ時間軸では、君は人間だったよ。
そこにいる乙女たちと同じように、恋をしている……ね」
「私は……その手段を自分から手放しました……」
「けど、君は幸運にも全てを失っていない」
「そうだ! エレオノール。まだ引き返せる。まだ生きれる」
「これから人間として生き続ければいいのよ。ケンのことはライバルとしては悔しいけど……任せるわ。
死んでいちゃ、何もしてあげれないもの」
「……だから、なぜあなた方はそう私に優しくしてくれるッ!?」
 耐え切れない、とエレオノールは叫ぶ。
 オロオロするナギの手を優しく振り払いながらも、エレオノールは慟哭を続ける。
「私は……あなた方を殺したんだぞ! なぜ、恨み言を言わない!? なぜ、私を許そうとするんだ!?
私は…………私は…………」
 押しつぶされそうだった。ナギの暖かさが、キュルケの言葉が、ギイの存在が、罪を犯したエレオノールには重すぎた。
 涙が零れ落ち、静かに白い床に落ちていく。
 ただ、エレオノールのすするような泣き声が白い空間に響いた。


「後悔しているのかい? エレオノール」
796Classical名無しさん:08/04/07 22:12 ID:hyQQryBo
 
797Classical名無しさん:08/04/07 22:13 ID:4yPNtLJs
798こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:13 ID:2L34dWao
 ギイの発する言葉は優しい。涙でぬれた顔をエレオノールは上げる。
 エレオノールの頭をギイの手がなでる。懐かしい感触だ。
「エレオノール。僕にとって君はなによりも優先する妹のような存在だ。
君が望むことなら、僕は叶えてあげたい。君が間違うのなら、正してやりたい。
けど、もう僕には無理だ。死人だから、こうして君をなでてやることも、今回が最後だ」
 寂しげに、それでいて辛そうにギイは呟く。
 それでも、優しくエレオノールをなで続ける。愛しそうに、名残惜しむように。
「エレオノール。君がしてきたことは確かに許されることではない。
それでも、僕のエゴとしては生きていて欲しい。たとえ、泥水をすすってもね……」
「エレオノール」
 ナギがエレオノールの手を握り、胸に手を当てる。
 ナギの温もりをエレオノールは感じながら、その瞳を見つめる。
「まだ……あの生命の水(アクア・ウィタエ)にとけた私の血が残っているなら……感じてくれ。
最後に、私が思ったことを…………」
 ナギの声と共に、エレオノールの意識が再び反転した。



 ナギの最期……自分との戦い。
 無慈悲な自分の一撃一撃を、エレオノールは目を逸らさずに見つめる。
 ナギはその一撃を受けながらも、諦めずに立ち上がっていた。
 全ては――自分を人間だと肯定するために。

(しろがね…………のコト…………が…………すこし気に…………なるが…………)

 今は亡きナギの言葉の呟きが、エレオノールに降り積もる。
799Classical名無しさん:08/04/07 22:13 ID:hyQQryBo
   
800Classical名無しさん:08/04/07 22:13 ID:qu5M9Zms
 
801Classical名無しさん:08/04/07 22:14 ID:hyQQryBo
       
802こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:14 ID:2L34dWao
 ナギは痛みを与えた、命を奪った自分を案じてくれた。
 石化していく中で、鳴海たち仲間と同列に、自分を想ってくれた。エレオノールの頬に涙が流れる。
 暖かい雪のごとく、エレオノールの心にナギの思いやりが、エレオノールの胸に宿る熱に溶かされ、目を通して涙として流れたのだ。

(私の…………一番…………大切な……人……大好きな…………ハヤテ…………)

 再び、エレオノールの心が抉られる。彼女の想いを踏みにじったのは自分だ。
 放送から判断するに、彼女がハヤテと再会することはなかっただろう。
 だが、その事実がナギの想いを踏みにじった罪を消すわけがない。
 なのに……それなのに……ナギは生きろと告げている。
 どうしてそこまで、自分を気にかけてくれるのか? どうしてそこまで、自分を救おうとするのか?
 エレオノールは急に彼女に問いたくなってきた。
 彼女になら、確かめられるはずだと信じて。
 その心を知るために、エレオノールは虚空へ向き直る。ナギがいた、その場所へ。
 一言、彼女に問うために。

「ナギ…………私は…………生きていいのですか……?」

 エレオノールの呟きと共に、世界が白く戻った。



「もちろんだとも」
 ナギはエレオノールを力一杯肯定する。
 ナギの死を、この手を血に染めても生きたいと願うのは汚いと、ナギは責めない。
803Classical名無しさん:08/04/07 22:14 ID:4yPNtLJs
804こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:15 ID:2L34dWao
 その優しさが痛くて、その痛みこそ罪だとエレオノールは受け入れる。
 おずおずとキュルケを見ると、彼女もまた笑顔でエレオノールに頷いた。
「言っただろ? 私たちと一緒にこの殺し合いを潰そうって。
もう私は死んでしまったけど、エレオノールが殺し合いを潰してくれるなら、私の望みは叶う」
「だから生きなさい。ついでに、こんなところを潰してくれるなら、いい男を捜しにいけるし。
まあ、ここにもいい人はいっぱいいるけどね」
 二人が笑い、エレオノールは目を瞑って俯く。
 なぜ、この二人を殺したのだろうか? この二人なら自分と友になれたはずなのに、と後悔が訪れるが、今度は死を望まなかった。
「私は……この殺し合いに乗った。そのことは悔やんでも、悔やみきれない。
だが……ナギ、キュルケ。もし、もう一度生きるというなら……私はこの命を贖罪に使う!」
 強い意志を宿し、生気に溢れた瞳をエレオノールは二人に向けた。
 ナギは嬉しそうに頷くが、キュルケは逆に不満そうだった。
「駄目よ、そんなんじゃ」
 キュルケが険しい顔をしながら、エレオノールに迫る。
 キョトンとするエレオノールの両肩をキュルケは掴んだ。
「約束しなさい、エレオノール。
今また戻ったら……燃えるような恋をして。それが、わたしの願いよ」
「そこのオッパイ星人の言うとおりだ。エレオノール、恋はいいものだぞ」
「誰がオッパイ星人よ。まったく、神楽といいルイズと似たような声をする奴はどいつもこいつも……」
 言い争いをする二人を尻目に、ギイが近寄る。
 彼は穏やかな表情を変えず、エレオノールに声をかけてきた。
「エレオノール。この殺し合いを潰すには、器を破壊する必要がある。
そうしなければ、彼女たちはここに捕らえられたままだ。安心しろ。君が彼女たちのために、やれることはある」
「本当ですか? ギイ先生」
805Classical名無しさん:08/04/07 22:15 ID:hyQQryBo
 
806こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:16 ID:2L34dWao
「そうだった。エレオノール、この器を壊して、私たちを助けてくれ!
でなければ来世でハヤテとまたラブラブになれない!」
「そうねえ。こんなところで閉じ込められているよりは、解放されて男を探しに行くのがわたしの趣味だから、助けてくれるとありがたいわ」
 自分にもまだ、彼女たちにやれることがある。贖罪の機会を知ったエレオノールの心が燃える。
 彼女たちを殺した事実は消えない。だからこそ、余計にエレオノールは闘志を燃やしたのだ。
「私が、あなた方を救う」
 その瞳に三人は満足気に頷いた。エレオノールは踵を返そうとして、ハッとする。
 この場に、才賀勝がいないことに気づいたのだ。
 自分は彼に謝らなければならない。傷つけたことを謝らなければならない。
 そのためにギイに声をかけようとして、躊躇って結局声を発せずにいた。
 勝に会って、否定されるのを恐れたのだ。しかし、それは受け入れるべきだと覚悟しようとする。
 そんなことを知らないナギやキュルケは怪訝な顔をするが、ギイは全てを見通しているように優しく頷いた。
「勝、もういいよ」
 ギイが呟いた瞬間、どこから現れたのか、エレオノールの胸に飛び込む影があった。
 驚くエレオノールの目の前で、才賀勝が力一杯飛び込んできたのである。
「よかった……! しろがねが、優しく戻って……本当によかった……」
「お坊ちゃま……」
 勝を抱きしめていいのか、エレオノールは一瞬迷いながらも、そっと背中に手を回す。
 傷だらけで、鍛えられた筋肉で出来た背中は男らしい硬さを持っている。
 十の少年が持つには多すぎる傷を、後悔と愛しさでなでる。
「申し訳ありませんでした……私が、私が愚かだったばかりに……」
「そんなことはもういい! しろがねが、元の優しいしろがねに戻ってくれたなら、僕はもう……」
「お坊ちゃま……お坊ちゃま!!」
 喜びを分かち合う二人に、ナギが涙ぐむ。キュルケは身内の無事を知った姉のような表情でギイに振り向いた。
807Classical名無しさん:08/04/07 22:16 ID:hyQQryBo
 


808Classical名無しさん:08/04/07 22:17 ID:4yPNtLJs
809Classical名無しさん:08/04/07 22:17 ID:hyQQryBo
  
810こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:18 ID:2L34dWao
「なかなかいい演出じゃない。それに、あなた結構いい男だし……今度デートでもする?」
「微熱の二つ名以上に美しいあなたのお誘い、身があまるほど光栄です。
今度ワインとチーズとおもに、食事をしましょう。意外と、運命を感じるかもしれませんよ」
「あら、お上手ね」
「…………お前たちは何をやっているのだ」
 勝とエレオノールが感動の再会をしている横で、デートの約束をしているギイとキュルケの様子をただ一人ナギは呆れながら見つめていた。


「お坊ちゃま……申し訳ありません。私はもう少しだけ、長く生きていようと思います。
用事が済みましたら、すぐに駆けつけますから。もっとも、坊ちゃまと違って、私は地獄に行くのでしょうけど」
「しろがね! 駄目だよ、長生きをしなくちゃ……」
「……ありがとうございます。しかし、私はお坊ちゃまやナギたちに心配される資格はないのです。
ただ、この身でお坊ちゃまたちを救う。その使命に全てを賭けるために、私は戻るのです」
「しろがね……」
 勝の瞳にたまった涙を、エレオノールはやさしく拭う。
 まるで、勝の知る『未来のしろがね』のように。
「私は生きます。皆を救うために。ギイ先生、待っていてください。私が向かうまで!」
 決意を込めて、エレオノールが踵を返す。
 もう迷わない。罪は重くても、贖う手段を手に入れた。
 許してくれなくても構わない。だが、自分が手にかけた人たちに報いれるなら、エレオノールは死んでもかまなかった。
「エレオノール」
 その背中に、ギイの声がかかる。
 懐かしい、温かい声。いつも、一人でギイから離れるときに聞いた、温かみのある声。
811Classical名無しさん:08/04/07 22:18 ID:hyQQryBo

812Classical名無しさん:08/04/07 22:19 ID:hyQQryBo
 
813こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:19 ID:2L34dWao
 そして、年の離れた兄が妹を送り出すような穏やかな笑顔のまま、ギイは昔と変わらない言葉をエレオノールに送る。

「Bon Voyage(よい旅を)」

 その言葉を背に、エレオノールの表情は歪む。
 涙が落ちるのこらえ、ひたすら白き道を走り続ける。振り返ってはいけない。振り返るのは許されない。
 彼らを救わねばならないからだ。贖罪のために……


「行っちゃったな……会わなくてよかったのか? 鳴海」
 ナギが振り返り、白い壁の向こうにいる鳴海に声をかける。
 姿を見せた鳴海は、エレオノールに満足気な笑みを向けるだけだ。
「いいさ。今、俺が会ったって出来ることは少ないからな」
「そりゃそうだ。それに、僕のかわいいエレオノールに君の馬鹿がうつると困るし」
「誰が馬鹿だ。誰が」
 鳴海はギイの首に手を回し、頭に拳固を打ち込む。
 たんこぶの出来たギイは涙を浮かべ、取り上げられたペンダントを見つめてママン、と呟いていた。
「さてと。勝、エレオノールの迎えを大人しく待つとするか」
「うん!」
「まあ、こっちはこっちで、厄介なのがいるけどね」
「なに。俺たちには些細なことさ。エレオノールが立ち直ったって、事実を知った俺たちにはな」
「…………違いない」
 フッと微笑むギイは目を細め、エレオノールに向かって内心呟いた。
(エレオノール……)
 思い出すのは、アンジェリーナに託されたあの夜。
814Classical名無しさん:08/04/07 22:19 ID:7erHF2OA
 
815こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:20 ID:2L34dWao
 アンジェリーナ、フランシーヌ人形、正二、いくつもの命を背負って、エレオノールという赤子は生かされてきた。
 彼らは常に、エレオノールに幸せになって欲しいと願い続けてきた。
 兄として存在するギイもまた、例外ではない。ゆえに、ギイがかける言葉は……

 ―― 幸せにおなり……

 その一言以外、ありはしない。



 月光下にて、エレオノールを守るように見下ろすケンシロウ。
 その発達した大胸筋を呼吸に合わせ、静かに上下する。
 星が瞬き、夜の風がさあっと通り雨の湿気を含みながら通り過ぎる。
 ケンシロウの周りには、相変わらずエンゼル御前が飛びまわって、エレオノールの顔を覗き込んでいた。
「なあ、エレノンは大丈夫だよな?」
 ここ、何度か繰り返したか分からないエンゼル御前の言葉を、ケンシロウは耳に入れる。
 答えは決まって、『まだ分からない』だ。今回も同じ答えを返そうとしたケンシロウだが、エレオノールの顔を見て、眉をピクリと動かす。
 先ほどまで白かった頬に、赤みがさしてきた。まるで魂を取り戻していくように。
 とっさに、身体の状態を探る秘孔をついて、身体の様子を探る。
 エレオノールの弱々しかった心臓の鼓動が、力強さを徐々に取り戻してきた。
「まさか……まさか!!」
 エンゼル御前の顔に喜びが広がり、エレオノールの上を旋回する。
 自然、ケンシロウの頬にも笑みが広がった。


 公園のベンチに寝かされ、毛布に包まれた、エレオノールの身体が動く。
816Classical名無しさん:08/04/07 22:20 ID:hyQQryBo
        
817Classical名無しさん:08/04/07 22:21 ID:hyQQryBo
 
818こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:21 ID:2L34dWao
 身体が震えて、彼女を眠らそうとする冷気に対抗している。
 プラチナの輝きのごとく、月光を反射するエレオノールの長いまつげが震えて、ゆっくりと全てを吸い込むような銀の瞳を開いていく。
 完全に瞳を開ききったエレオノールは身体を起こした。
 春に流れる川のごとくゆったりとして、それでいて優雅な仕草はどこかの貴婦人のような高貴さを漂わせていた。
 そのままエレオノールは両足をそろえて降ろし、ケンシロウに向き直る。
「…………ずっと守っていてくれたのですか?」
 ケンシロウは無言だ。もとより、自慢げに己のしたことを自慢するような男には見えない。
 この反応は予想内だが、それにしたって一言あっていいものだ。
 もっとも、エレオノールはそのことを責める気などない。いや、責める資格などないと考えている。
「エレノ〜〜ン!!」
 エンゼル御前がエレオノールの胸に飛び込んできた。
 ケンシロウとの戦いで友情を結んだ、初めての仲間。
「御前……まったく、あなたという人は……」
 呆れたように呟くエレオノールの言葉に、喜色が混じる。
 エレオノールがこれから行うことは大きい。一人でも、仲間が欲しかった。
 ケンシロウに協力を要請する気はない。さすがに、そこまでずうずうしくなれないからだ。
「ケンシロウ……あなたに頼みがあります」
 ケンシロウが無言でエレオノールを見返す。まるで、値踏みするように。
 その威圧感に負けないようにエレオノールは見つめ返す。彼女の方には、勝の、鳴海の、ギイの、ナギの、キュルケの魂がかかっているからだ。
「御前を……私に貸してください」
「その目的を言え」
 さらに強まる威圧感に、エンゼル御前はちびっていた。普通の人間でもこの威圧感の前に晒されれば、恐怖で動けなくなるだろう。
 以前のエレオノールでも、動きが鈍るのは必至だ。
 だが、エレオノールは威圧感をそよ風ほども感じていないかのように、力強く一歩前へ出る。
819Classical名無しさん:08/04/07 22:22 ID:hyQQryBo
 

820こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:23 ID:2L34dWao
「夢なのかもしれません……私の願望なのかもしれません……」
 しょせんは夢の出来事。本当だと確信することなどで気はしない。
 なにより、エレオノールに都合がよすぎる。死んだ者の遺志を確認する手段など、現世にいる人間には不可能だ。
 だから、ケンシロウに断られてもいい。一笑されてもいい。
 それが自分の罪だ。それでも、エレオノールは彼らを救うことを諦めない。
 彼らを閉じ込める『器』があると確信を持って。
 もう、エレオノールの償える手段は、主催者を倒し、ギイたちの魂を開放する。それしかないから。
「だけど、私は彼らに償える手段があると知りました。彼らが死後も捕らえられていることを知りました」
 エレオノールの言葉に徐々に熱が帯びていく。
 左手を胸に当て、身体を前に突き出して必死にケンシロウへと訴える。
「ですから、エンゼル御前を私に預けてください。主催者を倒して、ナギたちに償いをする。
信じなくても構いません。私は……」
 エレオノールは息を吸い込んで、ゆっくりと吐く。
 鷹のような眼光をケンシロウに向け、その身を構える。
 殺すための構えでなく、立ち向かうための構え。

「私は生きます! 救いたい人たちがいますから!!」

 無手で構えるエレオノール。ケンシロウ相手では絶対勝てないと分かっていても、闘志は消えない。
 彼女の大切な人たちを、助けるために。
 彼女のサーカスが始まる。



 自分を前に、徒手空拳の構えをとるエレオノールを前に、ケンシロウは感慨深げにため息を吐く。
821Classical名無しさん:08/04/07 22:23 ID:hyQQryBo
 


822Classical名無しさん:08/04/07 22:23 ID:tbO5Ec1o
 
823Classical名無しさん:08/04/07 22:23 ID:w9MYUTFs
824こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE :08/04/07 22:24 ID:2L34dWao
 目の見えないケンシロウでは、エレオノールがどのような表情をしているか、確かめるすべはない。
 もっとも、北斗神拳は暗殺術。目が見えない程度で、エレオノールの輝く命を見間違うはずなどなかった。
 エレオノールから伝わる呼吸。彼女が動くたびに感じる、微細な風の流れ。そして、彼女の放つ言葉。
 その全てが、偽りでないとケンシロウに告げる。
 彼女は本気で、主催者を倒すつもりなのだ。
(ナギ…………君のような子が修羅に心を取り戻させたのだ。
その生き様、誇っていい。俺には出来なかったことだ)
 ケンシロウは彼女の顔を見ることはなかった。
 殺人鬼を前にしても怯まず、そしてエレオノールの心を動かしたナギ。
 その生き様は、ケンシロウの信念に刻み込まれている。
 目の前にエレオノールに、どう刻まれたか見極めるため、ケンシロウは威圧感を緩めない。
 エレオノールは怯まず、ケンシロウに真っ直ぐ視線を向けているのを感じる。
 皆を救う、というエレオノールの言葉を疑いはしない。
 しかし、ケンシロウは知りたかった。その言葉に、エレオノールがどれほど命を賭けれるのかを。
「駄目だ。人形の言葉は信用できない」
「ケン!!」
 エンゼル御前が非難するような視線をケンシロウに向ける。エレオノールが僅かに怯んだ隙を見せた。
 瞬間、ケンシロウは駆ける。土砂が跳ね上がり、刹那の時間でエレオノールの額に指を突いた。
「お前はもう死んでいる」
 その瞬間、空気が変わる。エンゼル御前が怒りこめて突進し、小さい手足で蹴り殴る。
 エレオノールは一瞬呆け、すぐに表情を引き締めた。
「なら……私は死ぬその瞬間まで、諦めないだけです」
 エレオノールの目は死なない。そのことを確かめ、ケンシロウはフッと頬を緩め、腕を下ろした。
 エレオノールの賭けるものは、命以上の『魂』だ。
 これ以上に、エレオノールが賭けれる物はない。だからケンシロウは、エレオノールを信じる。
825こころはタマゴ ◆WXWUmT8KJE
「……北斗神拳は暗殺拳。今の奥義で『人形である者が即死する』秘孔を突いた。人形であるものは、一瞬にして死ぬ」
 エレオノールはポカンとする。泣きながら殴る蹴るしていたエンゼル御前も、頭に疑問符の嵐を浮かべて、ふよふよと滞空した。
「そして、エレオノール。人間であるお前は生きている。俺は『人間』であるお前を二度と殺さない。
ナギが与え、刻み込んだ人間のお前をな」
 ケンシロウは武装解除して、六角形の核鉄に変えたエンゼル御前をエレオノールに投げる。
 もう二度と、失いはしない。そう誓いながら。



「もう、ケン。びっくりしたぜ〜」
「すまない。しかし、けじめだからな」
 そう呟くケンシロウに感謝しながら、エレオノールは破壊された池を見つめる。
 ケンシロウに頼んで、地面を砕き、生命の水を流し続けたのだ。
 地面を裂くほどの力を見せるケンシロウに驚きつつも、彼なら出来そうだと納得した。
「これでよかったのか?」
「……ああ。私たち、しろがねが捜し求めていた、柔らかい石が私の体内にあったかは知らない。
しかし、しろがねは再生力と身体能力を上げる。この殺し合いでは殺人者を強化するものに使われかねない。
もっとも、これくらいは持っていこう。私が持つ少量の生命の水は、怪我を負った方に分けていけば多くの人を救える」
 ペットボトルに詰めた生命の水を見ながら、エレオノールはケンシロウに向く。
 ナギたちの魂を開放するといっても、手がかりはないに等しい。
 今は情報を集めるのが最適な手だ。
「なら、独歩のところに向かおう。彼なら、俺たちに協力をしてくれるはずだ」
 学校に向かうか、独歩のところに向かうかケンシロウは迷ったが、ジグマールと戦っていたであろう独歩の身を案じてエレオノールに提案する。
 エレオノールが静かに頷く気配を感じながら、ケンシロウは隣に並んで足を進めた。
「任せろ」