漫画キャラバトルロワイアルPart12

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1Classical名無しさん
このスレは漫画キャラバトルロワイアルのスレです。
SSの投下も、ここで行ってください 、支援はばいばい猿があるので多めに

前スレ
漫画キャラバトルロワイアル Part11
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1200498002/l50
【外部リンク】
漫画キャラバトルロワイアル掲示板(したらば)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9318/
まとめサイト
http://www32.atwiki.jp/comicroyale
漫画キャラバトルロワイアル毒吐き2
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1200415345/l50

1/4 【アカギ】○赤木しげる/●市川/●平山幸雄/●鷲巣巌
1/2 【覚悟のススメ】○葉隠覚悟/●葉隠散
1/3 【仮面ライダーSPIRITS】 ●本郷猛/●三影英介/○村雨良
2/4 【からくりサーカス】○加藤鳴海/○才賀エレオノール(しろがね)/●才賀勝/●白金(フェイスレス指令)
1/4 【銀魂】 ●坂田銀時/○神楽/●桂小太郎/●志村新八
2/4 【グラップラー刃牙】○愚地独歩/●花山薫/●範馬刃牙/○範馬勇次郎
3/4 【ジョジョの奇妙な冒険 】○吉良吉影/●空条承太郎/○ジョセフ・ジョースター/●DIO
2/4 【スクライド】●カズマ/●シェリス・アジャーニ/○マーティン・ジグマール/○劉鳳
0/4 【ゼロの使い魔】●キュルケ(略)/●タバサ/●平賀才人/●ルイズ(略)
3/4 【ハヤテのごとく】○綾崎ハヤテ/○桂ヒナギク/○三千院ナギ/●マリア
0/3 【HELLSING】●アーカード/●アレクサンド・アンデルセン/●セラス・ヴィクトリア
2/4 【北斗の拳】●アミバ/○ケンシロウ/●ジャギ/○ラオウ
2/4 【武装錬金】●防人衛/○蝶野攻爵/○津村斗貴子/●武藤カズキ
2/4 【漫画版バトルロワイアル】○川田章吾/●桐山和雄/●杉村弘樹/○三村信史
2/4 【名探偵コナン】 ○江戸川コナン/●灰原哀/○服部平次/●毛利小五郎
3/4 【らき☆すた】○泉こなた/●高良みゆき/○柊かがみ/○柊つかさ
計 25人 / 60人
2Classical名無しさん:08/01/27 22:40 ID:fwmN/gmQ
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×

例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
3Classical名無しさん:08/01/27 22:41 ID:KxAaO0wo
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
 修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・修正要求ではない批判意見などを元にSSを修正するかどうかは書き手の自由です。
・誤字などは本スレで指摘してかまいませんが、内容議論については「問題議論用スレ」で行いましょう。
・「問題議論用スレ」は毒吐きではありません。議論に際しては、冷静に言葉を選んで客観的な意見を述べましょう。
・内容について本スレで議論する人がいたら、「問題議論用スレ」へ誘導しましょう。
・修正議論を見て修正するかどうかは書き手の自由ですが、原則、書き手は本スレで出された修正案以外には対応する必要はありません。

・展開予想、ネガティブな感想、主観的な意見は「毒吐きスレ」でお願いします。毒は溜め込まずに発散しましょう。
・議論スレと正式に分離したことで毒吐きでの感想は過激化している恐れがあります。見る必要性もないので、書き手は見ないことを推奨します。
4Classical名無しさん:08/01/27 22:41 ID:fwmN/gmQ
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
 修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・修正要求ではない批判意見などを元にSSを修正するかどうかは書き手の自由です。
・誤字などは本スレで指摘してかまいませんが、内容議論については「問題議論用スレ」で行いましょう。
・「問題議論用スレ」は毒吐きではありません。議論に際しては、冷静に言葉を選んで客観的な意見を述べましょう。
・内容について本スレで議論する人がいたら、「問題議論用スレ」へ誘導しましょう。
・修正議論を見て修正するかどうかは書き手の自由ですが、原則、書き手は本スレで出された修正案以外には対応する必要はありません。

・展開予想、ネガティブな感想、主観的な意見は「毒吐きスレ」でお願いします。毒は溜め込まずに発散しましょう。
・議論スレと正式に分離したことで毒吐きでの感想は過激化している恐れがあります。見る必要性もないので、書き手は見ないことを推奨します。
5Classical名無しさん:08/01/27 22:42 ID:KxAaO0wo
【能力制限】

◆禁止
・アーカードの零号開放
・武藤カズキのヴィクター化
・吉良吉影の“第三の爆弾バイツァ・ダスト”
・ギャランドゥ(ジグマールのアルター)の自立行動(可否は議論中?)

◆威力制限
・ゼロ勢の魔法
・空条承太郎、DIOの時止め
・スクライドキャラのアルター(発動は問題なし、支給品のアルター化はNG)
・アーカードの吸血鬼としての能力
・仮面ライダーの戦闘能力
・シルバースキンの防御力
・北斗神拳の経絡秘孔の効果
・激戦の再生力、再生条件

◆やや制限?
・グラップラー刃牙勢、北斗の拳勢、仮面ライダー勢、覚悟のススメ勢の肉体的戦闘力
・ジョジョのスタンド(攻撃力が減少、一般人でも視認や接触が可能)
・からくりサーカス勢の解体能力

◆恐らく問題なし
・銀魂キャラ、戦闘経験キャラなどの、「一般人よりは強い」レベルのキャラの肉体的戦闘力

【支給品について】
・動物、使い魔、自動人形などの自立行動が可能な支給品は禁止です。(自立行動を行わないならば意思持ちでも可)
・麻薬、惚れ薬、石仮面などの人格を改変するおそれのある支給品や水の精霊の指輪、アヌビス神などの人格乗っ取り支給品は禁止です。
・核金によって発現する武装錬金は、原作の持ち主の武装錬金に固定されています。
6Classical名無しさん:08/01/27 22:42 ID:fwmN/gmQ
【能力制限】

◆禁止
・アーカードの零号開放
・武藤カズキのヴィクター化
・吉良吉影の“第三の爆弾バイツァ・ダスト”
・ギャランドゥ(ジグマールのアルター)の自立行動(可否は議論中?)

◆威力制限
・ゼロ勢の魔法
・空条承太郎、DIOの時止め
・スクライドキャラのアルター(発動は問題なし、支給品のアルター化はNG)
・アーカードの吸血鬼としての能力
・仮面ライダーの戦闘能力
・シルバースキンの防御力
・北斗神拳の経絡秘孔の効果
・激戦の再生力、再生条件

◆やや制限?
・グラップラー刃牙勢、北斗の拳勢、仮面ライダー勢、覚悟のススメ勢の肉体的戦闘力
・ジョジョのスタンド(攻撃力が減少、一般人でも視認や接触が可能)
・からくりサーカス勢の解体能力

◆恐らく問題なし
・銀魂キャラ、戦闘経験キャラなどの、「一般人よりは強い」レベルのキャラの肉体的戦闘力

【支給品について】
・動物、使い魔、自動人形などの自立行動が可能な支給品は禁止です。(自立行動を行わないならば意思持ちでも可)
・麻薬、惚れ薬、石仮面などの人格を改変するおそれのある支給品や水の精霊の指輪、アヌビス神などの人格乗っ取り支給品は禁止です。
・核金によって発現する武装錬金は、原作の持ち主の武装錬金に固定されています。
7Classical名無しさん:08/01/27 22:42 ID:KxAaO0wo
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → MAP-Cのあの図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム
8Classical名無しさん:08/01/27 22:43 ID:KxAaO0wo
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの一時投下スレにうpしてください。
・自信がなかったら先に一時投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない一時投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
   ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
   その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。
9Classical名無しさん:08/01/27 22:44 ID:KxAaO0wo
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
10Classical名無しさん:08/01/27 22:44 ID:KxAaO0wo
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、スレには色々な情報があります。
・『展開のための展開』はNG
 キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
 紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効
 携帯からPCに変えるだけでも違います
11Classical名無しさん:08/01/27 22:45 ID:KxAaO0wo
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
 同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
 修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、ドラえもん(クレヨンしんちゃんも可)を見てマターリしてください。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
 やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
 冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
 丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。

【議論の時の心得】
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
 意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
  強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
12Classical名無しさん:08/01/27 22:46 ID:KxAaO0wo
【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
 程度によっては雑談スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
 例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
 この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
 こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
 後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
 特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。

【予約に関してのルール】

・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行います
・初トリップでの予約作品の投下の場合は予約必須(5日)
 ただし、予約せずに投下できなら、別に初トリでもかまわない

・予約時間延長(最大3日)を申請する場合はその旨を雑談スレで報告
・申請する権利を持つのは「過去に3作以上の作品が”採用された”」書き手
・修正期間は審議結果の修正要求から最大三日(ただし、議論による反論も可とする)
・予約時にはトリップ必須です。また、トリップは本人確認の唯一の手段となります。トリップが漏れた場合は本人の責任です。
・予約破棄は、必ず予約スレでも行ってください。

【MAP】
http://www32.atwiki.jp/comicroyale/pages/34.html
http://www32.atwiki.jp/comicroyale/pages/330.html (登場人物の位置あり)
13 ◆wivGPSoRoE :08/01/27 22:51 ID:KxAaO0wo
前スレ>>642
騙しあい……そして勝負は一瞬……これぞロワの醍醐味、
……非常な死こそが映える……。
とかアカギ調で言いたくなるくらい、素晴らしいSSでした。
エレオノールがもう、らしくて最高でしたね。
彼女の思考にすごく引き込まれました、GJ!! です。

前スレ>>661
鳴海ぃぃぃ、よく闘った。マジで感動した。
読んでて血が猛って猛って仕方が無かった。
まさにヒーローのタイミングでやってくるパピヨンもよかった、
独歩も渋みがあって素敵だった。
DIOは、最後まで反吐がでる悪党だった……。こりゃ褒め言葉ってことで。
だけど、ホント最後の鳴海の散って行く時の情景の描写で泣かされました。
GJ!! でした。

前スレ>>820
ジグマールが覚醒するなんて……。
ていうか、ジグマールとギャランドゥのコンビで目頭が熱くなるってのはどういうことだw
この2人でここまで熱い話が読めるなんて、全然想像してなかった。
すげえ、本当にすごいものを読ましていただきました。
これまたGJ!!

>>1乙です。
手伝うつもりが、結果的に邪魔してしまって申し訳ありませんでした。
謹んで謝罪させていただきます。


ケンシロウを投下します。
14 ◆wivGPSoRoE :08/01/27 22:53 ID:KxAaO0wo
 目の前の少女の体から温もりが消えていく。力なく己の手に回された手が、力を失っていく。
 抜けていく力を補うように、生へと少女をとどめようとするように、ケンシロウは腕に力を込めた。
 ふっと少女が笑った気配が伝わってくる。
 ケンシロウの見えぬ目に浮かぶのは、少女の美しい笑顔。
 生命の輝きと躍動感に満ちたあの笑顔に、男なら誰もが魅了されたであろう。
 だが、その笑顔もまた失われようとしている。

 少女の死と共に。

 ほとんど力を失っていた少女の指先に、わずかに、ほんのわずかに、力がこもった。
 それが最後の命の輝きであると、数知れぬ命を見送ってきたケンシロウにはわかった。
 指先から少女の想いが伝わってくる。
 ケンシロウは微笑みを浮かべた。

「……俺もだ」

 その言葉を聞いて少女はまた、笑ったようだった。
 唇がほんの少し動いたことが空気の流れで分かる。けれど、首の傷が少女から言葉を奪っていた。
 それでもケンシロウは安心しろというように何度も頷く。
 届いていると、伝わっていると、伝えるために。
 
 唐突に、少女の体から力が抜けた。

 激情の炎が一瞬にして心を埋め尽くし、心の壁を焼き焦がした。
 怒りと悲しみの炎を鉄の自制心で堰き止め、ケンシロウは口を開く。
「キュルケ……」
 穏やで優しい声だと生前少女が感じていた声で、ケンシロウは語りかける。
 答えは――
15 ◆wivGPSoRoE :08/01/27 22:55 ID:KxAaO0wo
 しばらく沈黙の海に沈んでいた男は、永遠に沈み続けるさだめとなった女を残し、一人、浮上した。
 少女の瞼を閉じさせてやり、その体を抱き上げ、リビングへと運ぶ。
 硬直を始め、冷たくなった体は、それでもまだ柔らかく――そして、軽かった。
 こんな体で、彼女はあのラオウに立ち向かい、自分の命を救ってくれた。
 ラオウから逃げるために、心の限りをつくして自分を遠くへと、運んでくれた。
 自分の生があるのは、この少女がいたからだ。
 だというのに。

 ――自分は一体何をしてやれたというのか?
 
 心の中に悔恨という名の嵐が吹き荒れるのを、ケンシロウは感じた。
 彼女の友を救うことができなかったばかりか、彼女の命すら守れなかった。
 湧き上がる悔恨と自分への怒りは闘気となって吹き荒れ、部屋の調度が不快な金属音を立てた。

 ――いかん。

 ケンシロウは闘気を封じ込めた。
(すまない……。キュルケ)
 胸中で謝罪の言葉を呟きながら、ケンシロウはキュルケの遺体の前にひざまずき、その乱れた髪を、整え始める。
 手探りであるから限界はあったが、それでも顔にかかった髪を整えてやることはできた。
 息を吐く。
 吐息と共に怒りと悔恨を吐き出そうとするが、心を燃やす炎と烈風は、容易に収まる気配を見せなかった。
 
 ――気付いてはいたのだ。

 女の殺気に。自分とキュルケを伺う女の気配に。
 気付いていながら――見逃した。
 この、誰も信用できない状況のせいで、神経過敏になっているのだろうと思っていた。
 半数近くのの人間が死んでいるという現実がある。
 生き残りが立った一人しか許されないという非常極まる現実がある。
16 ◆wivGPSoRoE :08/01/27 22:56 ID:KxAaO0wo

 ――そんな中で、女が一人でいるのはどれほど辛かろう。
 
 女を安心させてやろうと思った。
 こちらが手を出さぬという意思表示を優先し、ジグマールの時のように秘孔で確かめることも、
 何らかの言葉によって、牽制をかけておくこともしなかった。
 それは優しさ、慈しみと呼ばれる感情。本来は美徳とされるもの。
 だが、それは「甘さ」とも言えよう、
 そして、そのの甘さゆえに、キュルケは死んだ。
 何一つ報いることができぬまま、死なせてしまったのだ。

 ――守れていたのに。

 キュルケの側にいれば、あの女の凶行を防ぐことは容易かったというのに。
 家の中に入っていれば、そうせずとも、キュルケに一言伝えて警戒を促しておけば――
 いくもの「もしも」の文字が、ケンシロウの頭の中で踊り狂う。

 ――あの時、キュルケが襲われていた時、自分は何をしていた?

 ケンシロウは自身に問いかける。
 
――外で待っていた。
 
 ただ、待っていたのだ。
 あって間もない女とキュルケが二人きりという状態に対して何の危機感も、警戒心も、抱くことなく! 
 メイクがどうのとお気楽極まることを考えながら!
 悔恨の炎は胸の壁を突き破り、ケンシロウの頭に駆け上がった。
 怒りのあまり、思考に空白が生まれる。

 手に軽い痛み。
17 ◆wivGPSoRoE :08/01/27 22:58 ID:KxAaO0wo
 あまりにも強く握り締めたせいで、掌から出血していた。
 だがこの程度の痛みなど、キュルケが味わった痛みに比べれば、彼女の死の恐怖に比べれば、
 何だというだろう?
 胸中に嵐を抱えながら、ケンシロウは思考する。
 女を警戒すべき材料なら、それこそいくらでも転がっていた。

 ――あの老人にとって、保身の要とも言うべき制限の内容を、そう簡単に明かすだろうか?

 首輪について話し合った時に聞いた女の意見を一つ取ってみても、女が、感情を殺して行動するに長けた人間であることが分かる。
 ラオウと赤髪の男が対峙した時、老人は心底狼狽しているように見えた。
 100人がみたら99人は同じ感想を持つだろう。
 そして、あの老人は、あの場でラオウと勇次郎が闘争を開始することを予測していたろうか?
 あの老人は赤髪の男と顔見知りであったようであるから、ひょっとしたらと思っていたかもしれぬ。
 それでもなお、あれはやはり突発的な事態といえよう。その中で、能力の「制限」に関する情報をあの場にいた者達に、
 誤認させようという思考を伴いつつ、あそこまで狼狽した風を装おえるものだろうか?

 ――不可能に近い。

 できるとすれば、恐ろしいまでの演技力と人間離れした冷静さを持ち合わせた人間だけだ。
 ところが、あの女はいとも簡単にそれを口にした。
 あの口ぶりには、自分ならできる、という確信があった。
 合理的で、どんな時にも冷静さを失わない人間が、信用できないというわけではない。
 しかし、あの女がある種の冷徹さを兼ね備えた人間であるということには、気付くべきだった。
 否――気付いていたのだ。
 それでも、実際にあの女がキュルケに牙を向くその瞬間まで、女がキュルケを害するという発想は、
 ついにケンシロウの中で、現実感を持たなかった。

 ――何故? 自分はあの女の自由にさせてしまったのか?
18 ◆wivGPSoRoE :08/01/27 22:59 ID:KxAaO0wo
 ケンシロウは何度も自問する。
 いくつもの答えが浮かんでくる。その中でもっともしっくり来る理由は、
 
 ――女だったから。

 何度自問を繰り返しても、その答えが正解だとケンシロウの心は言っていた。 
 幾百、幾千の悪党をケンシロウは叩きのめし、時には無残に殺してきた。
 ところが、稀有というべきか、運命のめぐり合わせの奇跡というべきか、
 ケンシロウという男は、「女の悪党」という者に出会ったことがなかったのだ。
 男が超絶の力を持つケンシロウの世界では、女というのは例外なく保護すべき「弱者」でしかなかった。
 女が悪事を働かない、というのは、フェミニストを通り越して、ただの無想家の発想である。
 ケンシロウとて、女の悪人が存在することぐらいは知っていた。
 だが、人間は経験を伴わない限り、概念として知っていても、それを実感できない生き物でもある。
 マミヤ、リン、アイリ、そしてユリア……。ケンシロウが深く関わった女達は全て善良であり、優しさに満ちていた。
 特にケンシロウにとっての最愛の妻、ユリアが慈愛の権化のような人間であったことが、
 ケンシロウの女性観をどこか、理想がかったものにしていたのである。
 けれど、ここにおいて、ケンシロウは悟る。
 女にも、「悪」はいるのだということを。
(今まで女を手にかけたことは、なかったが……)
 あのラオウですら、その生涯において女を手にかけたことはなかったはずだ。
 なかったからこそ、ユリアは生きていたのだから。
 だがしかし。

 ――この非情さ、このすごみ……昔のケンシロウではないな。

 ジャギが自分を評して言った言葉がケンシロウの心に蘇ってくる。
 無数の敵の血を流し、甘さは捨てたはずだった。
19 ◆wivGPSoRoE :08/01/27 23:02 ID:KxAaO0wo
 ――だが、捨て切れてはいなかった。

 捨て切れていなかった証が、キュルケの死だ。
 ケンシロウは立ち上がった。
(女といえど……。容赦はせぬ)
 女の声は、はっきりと記憶している。風の流れが教えてくれた、その体格。
 何よりキュルケの言っていた特長的な銀髪。
(見つけ出す……。そして、必ず)
 ケンシロウの拳が、ごきり、と音を立てた。

 ――仇は取る。

 決意を定め、ケンシロウは立ち上がった。
 台所へ向かい、手探りで火種を探す。
 ライターを一つ発見し、ケンシロウはリビングへとってかえした。
 彼女の遺品となってしまった杖を、自分のディパックに移す。
 キュルケの友が、全て死んだことは知っている。
 だが、できるかどうかは分からないが、キュルケの杖は、彼女の家族の元へ返したいと思った。
 
 ――それくらいのことしかしてやれぬ。
 
 その時ふと、ケンシロウは自分に支給されたものの中に『般若心経』と書かれた紙が入っていたのを思い出す。
 拳法と仏教の関係は深い。それゆえ、何らかの経文であることがケンシロウには分かり、
 同時に、主催者に対する怒りも湧いた。

 死者が出るから、これで経を唱えろというつもりか、と。
 
 ゆえに開こうともせず、ディパックの中へ放り込んだ。
 けれど、こうなってみると、目が空いているうちに開いておかなかったことが、少し悔やまれる。
 目が見えなくなってしまっては、読み上げることもできない。
 そこまで考えて――ケンシロウは、拳を胸の前で打ち合わせた。
20 ◆wivGPSoRoE :08/01/27 23:03 ID:KxAaO0wo
 ――何たる惰弱。

 悔やむのは当然。自戒するのも当然。
 だが、経を唱えて何とする? それが本当に彼女の弔いになるのか?
 悔恨に負けて、経などで己の過ちを誤魔化そうとするは、許されぬ惰弱。 

 ――彼女が望んでいたことは、何か?
 
 あのマンションで、神楽と涙ながらに誓い合っていたキュルケの横顔が、鮮烈に、
 ケンシロウの見えぬ目の前に映し出される。

 ――私達みたいな思いをする人は、一人でも減らさなくちゃいけない。

 キュルケの望んでいたことは、一人でも犠牲者を減らすこと。

 ――この殺し合い、絶対に止めましょう

 殺戮に走るものを倒し、この殺し合いを根本から破壊すること。
(ならば俺のやるべきことは、決まっている)
 リビングから廊下へと歩み出しながら、ケンシロウは一度だけ振り返った。
 無論、盲目となったケンシロウの目には、何も映らない。
 けれど――ケンシロウには確かに、彼女の微笑む姿が、見えた気がした。
 時間だけを考えるなら、長い時を過ごしたとはいえない。
 しかし、彼女の生き様は、ケンシロウの中に深く刻み込まれていた。

 傷ついていてなお、躍動感と生気に満ちていた瞳。過ちを許す寛容さ。
 同じ世界の友や神楽の無事を祈る、優しげな表情。
 彼女は友を愛し、異性を愛した。己の生を、他者の生を、愛した。
 
 だが、彼女の生は否定された。
21 ◆wivGPSoRoE :08/01/27 23:06 ID:KxAaO0wo
 人の命を奪うことを、他人に悲しみを強いることを躊躇わない、あの銀髪の女に
 何よりも、彼女をこの地に連れてきて、彼女から全てを奪った主催者、愛を否定する者達に。

「ならば……」
 呟きながら、ケンシロウはライターで紙に火をつけると、それが大きくなるのを待って、
 リビングに放った。
 幸いにも、この家の周りに家はなく、燃え移る心配もない。
 ならば、キュルケと同じように、愛に生きた男、南斗水鳥拳のレイを弔った時と同じように、、送ってやりたかった。
 炎の熱を背中に感じながら、ケンシロウは廊下をわたり、戸口へと歩み出た。
 夜風がケンシロウの頬を撫でていく。

「キュルケ……。忘れはせぬ。お前もまた、よき強敵達と同じく、俺の中に生き続ける」

 まずは、炎を見て人が来るのを待つ。
 正義の心を持ち、力があるものならば、何かあったかと、義憤を抑えられずに駆けつけてこよう。
 戦闘を好むものなら、勇んで寄ってこよう。
 味方となるべきものなら列に加えてもらい、敵ならば撃つ。
 もし仮に誰もこなくとも構わない。その時はひたらすら、歩くだけだ。
 彼女の遺志は自分が継ぐ。

 愛を否定し、踏みにじる者達がいる。
 その者達が死を望み、殺し合いを望むなら――

「俺は、愛のために闘おう」
 
 燃え盛る火を、見えぬ目で感じ取りながら、ケンシロウは誓う。
 キュルケの残した熱は、ケンシロウの中で炎となって、燃えていた。
22 ◆wivGPSoRoE :08/01/27 23:07 ID:KxAaO0wo
【D-4 北東の民家(炎上中)。一日目 夜中】
【ケンシロウ@北斗の拳】
[状態]:カズマのシェルブリット一発分のダメージ有り(痩せ我慢は必要だが、行動制限は無い)全身各所に打撲傷
    キング・クリムゾンにより肩に裂傷 両目損失。吐き気はほぼ、おさまりました(気合で我慢できる程度)
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム(般若心境と書かれた紙(エニグマ/開かれていません)、他2つ、本人確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない。
1:人を待つ。来なければどこへでもいいから、とにかく歩く
2:エレオノールを捜索してキュルケの仇を討つ。
3:アミバを捜索、事と次第によれば殺害。
4:ラオウ・勇次郎他殺し合いに乗った参加者を倒す。
5:助けられる人はできるだけ助ける。
6:乗ってない人間に独歩・アミバ・ラオウ・勇次郎・エレオノールの情報を伝える。
[備考]
※参戦時期はラオウとの最終戦後です。
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました 。
※秘孔の制限に気付きました。
※ラオウが無想転生を使えないことに気付きました。(ラオウは自分より過去の時代から連れて来られたと思っています)
※民家の前に消防車が止まっています。
※オリンピアが懸糸の切れた状態で消防車の助手席の後ろに座っています。


<首輪についての考察と知識>
※首輪から出ている力によって秘孔や錬金が制限されていることに気付きました。
首輪の内部に力を発生させる装置が搭載されていると思っています。
23 ◆wivGPSoRoE :08/01/27 23:09 ID:KxAaO0wo
投下完了いたしました。
24 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 23:41 ID:XK./xUx6
投下乙です!ケンシロウ切ないなぁ・・・・・・。
女性に対する甘さをすてたケンシロウだけど目が見えなくて大丈夫だろうか


それとこっちは自作の事ですが、同名タイトルがあったのを忘れてタイトルをつけてしまった為、後日加筆、タイトル変更した上で一時投下スレに投下しようと思います。時間をかけてしまい誠に申し訳ありません
25Classical名無しさん:08/01/27 23:43 ID:gZBuvksk
感極まる。
ケンシロウがかっこよすぎて涙が、こんな時間なのに……
ああ、いいもんだな愛に生きる男というのは。

GJでした。
26Classical名無しさん:08/01/27 23:57 ID:Ia4ieiHM
投下乙。
これはいい補完。ケンシロウの心情と弱点の説明が上手い。
そして炎の魔法使いを炎で送るか……ニクいことをしてくれるぜ。
GJ。さて、この火事で誰が釣れるか楽しみだ。
27Classical名無しさん:08/01/27 23:58 ID:uAIjLyv2
投下乙です。
ああ切ない、本当に切ない。
おのれエレオノールめ、ケンの敵討ちが成就すること願ってる。
28Classical名無しさん:08/01/27 23:59 ID:ZWduLGJA
投下乙! ゴメン前スレ使い切っちゃってたんだ……気づかなかったよー。
漢が決意する様ってのはやっぱりいいもんですねぇ〜。
エレやべぇw 追いつかれたら命は無いってコレはw
それでも仇を取って欲しいし……なにこのジレンマ!
29Classical名無しさん:08/01/28 00:09 ID:4h5zJCNA
投下乙! てか早!
激情に任せず自分を諫めていくケンシロウがいいね
エレオノールはケンシロウに会ったら容赦されそうにないが、アミバの件が伝わればまた揺らぐか?

あと、ケンシロウってエレオノールが銀髪って情報どこかで入手したっけ?
30Classical名無しさん:08/01/28 00:10 ID:dxo10Sv2
今気づいたぜ!
投下乙!
ケン、仇を討つんだ。拳を叩き込め!
GJ!
31Classical名無しさん:08/01/28 00:15 ID:7JTXNi5U
>>14
投下乙……ってか……こ、これは……このSSは……
個人的に色々と思うところがあるなぁ。

まず、内容はGJ。ケンシロウの心理が深く描かれていて面白かったです。
女に甘いケンシロウの性格を踏まえた上での考察。ついでに、それを乗り越えてエレ殺害を決意するあたり。
GJとしか、言いようが無い。



個人的には。
>――あの老人にとって、保身の要とも言うべき制限の内容を、そう簡単に明かすだろうか?
この何気なく書いた一文から、エレの性格を推察した、◆wivGPSoRoE氏に乾杯です。
うーん、すごい。
32 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 00:17 ID:nNfaKdek
また題名がついてなかった……。
題名は「炎の記憶」です。

>>29
3人で夕食とったりしてるわけですから、
普通はどんな外見か、キュルケから聞いたりするのではないかと思って、書きました。
まずいようでしたら、修正いたします。

>>24
あの完成度で更なる修正とは……。
一書き手として頭が下がります。
修正頑張ってくださいませ。
33Classical名無しさん:08/01/28 00:37 ID:V5HvZCyU
こういうシーンがあるからこそ物語に深みが出るのですね。キュルケの死を悼むケンシロウの様子が
彼らしくとても素晴らしく書かれておりました。男前だなぁケンシロウ、とてもかっこよかったですGJ!
34Classical名無しさん:08/01/28 01:01 ID:xOP6bsD6
投下乙!
なんという速筆……その力を分けてくださいw
ケンシロウがいいね!
やっぱこいつはこんなところじゃ終わらんよ!
今後彼がどのような道を歩むのか……GJ!
35Classical名無しさん:08/01/28 02:12 ID:F2Xw3EpM
投下乙。そしてGJ!
なんという漫画版最速の人……と、いかんこれじゃあ標識を間違えて死んでしまうw
鳴海が死んだ今、ラオウや勇次郎と五分に渡り合える数少ない対主催だな。
こういうキャラの内面を掘り下げるエピソードはすごく重要だと思います。
四天王ばかりに目がいくけど何気にエレ、TQNと女性マーダーも結構活躍してるね。
36Classical名無しさん:08/01/28 09:36 ID:m2Gb0XPM
投下乙ー
綺麗な纏め方で凄いぜ……GJ
37Classical名無しさん:08/01/28 11:22 ID:sPZxvdeg
今さらだがケンシロウの眼は核金で治るのだろうか
エレオノールとかならともかく勇次郎とかラオウ相手に盲目はキツいぜ
38Classical名無しさん:08/01/28 11:26 ID:V5HvZCyU
>>37
核金で部位欠損治るってのは、ちとやりすぎかなーとか思う。原作でもそういう表現無かったしね
それにケンシロウには盲目と極端に相性の良い奥義があるから無問題かと。つかこの奥義強すぎ、ピクル所の話じゃねっつーの
39Classical名無しさん:08/01/28 18:32 ID:XXqRV8Yg
>>男とアルター
どこぞの暗殺チームのようなかっこよさだ。
この二人が目指す究極のアルターワールドを見たいと思うのは俺だけかな?

>>14
これでまた一つ死角が消えたな。もうこいつに勝てる奴いないんじゃないか?
しかし発想が勇次郎の花火と同じだw
40Classical名無しさん:08/01/28 18:37 ID:It1crtQE
そういや、雨が降り始めてるんだっけか?
41Classical名無しさん:08/01/28 18:50 ID:xE77zT8M
予約スレにパピヨン組の予約入ってるけど、確か前の話の作者氏が加筆するって言ってたから待つべきではないか?
いや、内容自体は殆ど変わらない感じだったからどうかわからんけど
42Classical名無しさん:08/01/28 19:40 ID:gXgmbHzQ
いつの間にかイパーイ投下が来てたよ遅ればせながら感想を

>>◆L9juq0uMuo
鳴海いぃーーよくがんばった…涙が溢れんばかりの感動作
感情の昂ぶりで強さが変わる熱血さ
本当に漫画ロワを代表するキャラだったよ鳴海は…
そして、DIOも悪役さながらの外道さ
二人の因縁の対決が炸裂でした
鳴海の死に際の独歩の何気ない会話が個人的に印象的でした


>>男とアルター
ジグマール覚醒!覚醒!
ギャラン=ドゥはいなくなったけど
お前なら脱出派の筆頭になれるかもしれない
がんばれジグマール


>>23
ケンシロウもキュルケの死に覚醒したよ
マーダーが強力なこのロワに
期待の星になったな……
キュルケの『炎』を引き継いでくれ!ケンシロウ


本当にみんな超GJ!!
43 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 20:57 ID:nNfaKdek
ジグマール、エレオノール投下いたします。
願わくば、支援を賜りたく思います。
44 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 20:58 ID:nNfaKdek
「ギャラン・ドゥ……」
 
 ジグマールは、自身の発した声で我に帰った。
 茫然自失としていたらしい。

 ――どうしよう?

 疑問符が今更ながらに浮かんでくる。
 どこかで頼っていた。
 窮地になっても、彼が出てきて助けてくれると思っていた。
 散々ブーたれつつも、彼はいつも自分を助けてくれたから。
 だが、彼はもういない。いないのだ。
 震えがジグマールの全身を駆け抜けた。

 ――アルター……は、死な、ない、一ヶ月……も、すれば、また……出て、こられる……

 彼は死んではいない。
 だが、彼が出てくるのは彼の言葉を信るなら、一月後。
 すなわち、自分ひとりで生き残らなくてはならなくなったのだ。

 ――たった一人で。

 そうと実感した時、ジグマールの心の水面は――揺らぎを止めた。
 開き直った、というのはこういう心境なのかもしれない、と心の中で呟きながら、
 ゆらり、とジグマールは立ち上がる。
「すまなかったな……ギャランドゥ。辛いことばかり押し付けて」
 言葉が唇から漏れ出していく。
 どうにもならなくなった時、いつも自分は彼に頼った。
 心の何処かで、『便利な道具』としか見ていなかった。
 それなのに彼は、いつも自分を助けてくれた。
 その彼の命は、今、自分と共にある。
45 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 20:58 ID:nNfaKdek
 ――死ぬわけにはいかない。

 絶対に死ぬわけにはいかない。
 最早、自分の命は自分ひとりのものではなくなったのだから。
 ゆえに、彼に頼る弱い19歳のジグマールではいられない。いてはいけないのだ。

 ――お前、は……もう……アルター、に……頼るな。お前……は、1人、で生きて……いける

「……その通りだ、ギャラン・ドゥ」
 彼には聞えていないだろう。
 けれど、言いたい。伝えたい。言わねばならない。
「僕……俺……。いや、私は……。最強のアルター使いだ」
 言い聞かせる。
 己自身に。そして、己自身の中にいる、彼に。
「大丈夫だ……。今からは、私、一人でやっていく」
 低い声で、ジグマールは宣言する。もう、彼には頼れないのだから。
 震えがジグマールを襲った。
 
 しかし、彼は唐突に気付く。
 
 自分が寂寥感や恐怖と共に、開放感もまた感じていることに。
 これからは、何でも自分で決めなくてはならない。
 ただしそれは、逆に言えば、自分で自分の道を決められるということだ。
 考えてみれば、今までの自分の行動には、必ず彼の意思が介在してきた。

 ――さあ、何をしよう?

 そう思った瞬間、
「奴のように、生きてみたい……」
 自然と口から漏れ出た言葉が鼓膜を震わせた瞬間、ジグマールは悟った。
 憧れていることを。
46Classical名無しさん:08/01/28 20:59 ID:IdPhRwV6
早いってwww
47 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:00 ID:nNfaKdek
 この世界で出会った、心を射抜く目を持ったアカギという男に、何の能力も持たないあの男に、
 憧れていることを、素直にジグマールは認めた。
 アカギはどんな状況でも、何一つ己を持たない自分とは違い、信念を貫いているように見えた。
 自分とはまったく逆の生き方を貫いている男、赤木しげる。
 だからこそ――
「奴に……勝ちたい」
 男という生き物は、誰もが一度は世界最強を目指す。
 世界最強を目指すということは、全ての他者を越えたいという欲求だ。
 憧れている人間を、自分よりも高いところにいる人間を打ち倒したいという思い。
 これは最早、男という生物の、本能といってもいいだろう。
 ジグマールは、自身が全宇宙の支配者になりたいと思っていると、思い込んでいたが、
 それは所詮、ギャラン・ドゥの欲求であり、ジグマールの欲求ではなかった。
 彼、マーティン・ジグマールという全アルターの使いの中でもトップクラスの能力を持つ男は、
 このバトルロワイアルという舞台において、初めて、彼自身の敵、すなわち越えたいと願う存在を、
 見つけたのである。

 ――アカギという男を越えたい、凌駕したい。

それは、飢餓感といっていいほどの、強い欲求だった。
ジグマールは考える。

 ――どうすれば、アカギを越えられるのか?

 答えは簡単だ。
 彼とは逆の道を歩き、彼を正面から粉砕すればいい。
(アカギ……。奴は、殺し合いに乗っているようには、見えなかった)
 方向も決めずに歩きながら、ジグマールはアカギの言葉を思い浮かべる。

 ――不条理こそギャンブルの本質…… そんな不条理に打ち勝ってこそ高みに登れる。

(不条理か……。確かにこれほど不条理な状況はないだろう……)
48Classical名無しさん:08/01/28 21:00 ID:RO0z3JXs
                  
49 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:01 ID:nNfaKdek
 その上、連れてこられた人間達は、超人的な力を持つ者ばかり。
 不条理という言葉が、これほど似合う状況も珍しかろう。
 アカギという何の異能力も持たない人間が、並み居る強者を打ち倒して生き残る、
 これでも十分、「不条理に打ち勝った」ことにはなる。
「ククク……」
 ジグマールは、喉の奥で笑い声を漏らした
(するものか……。あの男がそんなもので……満足、するものか……)
 ジグマールの唇が弧を描いた。

 ――そう思うと…おもしろくありませんか?
 
 アカギは、この状況を評して「おもしろい」と評してみせた。

 まさに狂気の沙汰。

 この世界につれてこられた人間の中で幾人が、この状況をおもしろいと評することができよう?
 しかしあの男は、間違いなく状況を楽しんでいた。
 不条理に打ち勝ち、高みに上るチャンスだと本気で考えていた。
 あの男にとって、打ち勝つ対称は大きければ大きいほどよく、不条理であれば不条理であるほどよいのだろう。
(アカギが狙うのは……ゲームそのものの破壊……主催者に反逆し、打ち勝つことだろう)
 その方が、奴にとって「おもしろい」だろうから。

「ならば、私の行くべき道は……決まっているな」
 
 ――優勝を目指す。

 仮に、アカギが道半ばで死んだとしても、それはアカギの負けではない。
 あの男は勝負に勝つためなら、ためらいなく命を捨てられる男。
 奴自身が死んだとしても、奴が撒いた布石によって、このゲームが、ひっくり返されたならば、それは奴の勝ちを意味する。
 布石も打たずに奴が死ぬ? それこそありえない。
50Classical名無しさん:08/01/28 21:01 ID:IdPhRwV6
s
51Classical名無しさん:08/01/28 21:02 ID:RO0z3JXs
                                  
52 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:02 ID:nNfaKdek
 ――そうはさせない。

「勝つのは貴様ではないぞ、アカギ。勝つのはこの私……。マーティン・ジグマールだっ!」
 ジグマールの瞳には、炯炯と決意の炎が燃えていた。
 


 その男をエレオノールが男よりも先んじて発見したのは、当然であった。
 「しろがね」の身体能力は、人間のそれより格段に高い。
 当然、視力、聴力も、人間のそれとは比べ物にならない。
(さて、どうする?)
 エレオノールは、自身に問いかける。
 男はありていに言えば、ボロボロで、丸腰だった。
 本来なら、カモが葱をしょってやってきたと小躍りする場面なのかもしれないが――
(油断は、できない)
 五体が武器、という人間を今日1日で嫌というほどみてきた。
 核鉄は、キーワードを発すれば武器に変わる。
 見かけで判断するには、危険すぎる。
 だが――何もしない、という選択肢は愚か過ぎる。
 成功の果実を手に入れるためには、冒険も必要であることは、さきほど学んだばかりだ。
 
 ――チャンスを生かし、殺す。
 
 問題はそのチャンスをどう作るか、だ。
 何もしなくては、チャンスなど生まれようはずもない。
 男が歩いてくる。
 月光に照らし出されたその男は――美形だった。
(あの顔なら、技量さえ伴えば、メインがやれるな)
 頭の中の芸人としての部分が、そんなことを囁く。

 ――馬鹿なことは考えるな。
53Classical名無しさん:08/01/28 21:03 ID:RO0z3JXs
                            
54 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:03 ID:nNfaKdek
 エレオノールは首を振って、雑念を追い払った。
 こちらにあるのは、人間よりも遥かに高い身体能力のみ。
(距離さえ維持すれば……。男から逃げることは可能だろう)
 彼がケンシロウのようなお人よしなら、行動を共にし、拙速より狡知を持って殺す。
 女と知って襲ってくる手合いなら、距離をつめられるまえに「しろがね」の体力で逃げる。
 意を決し、エレオノールは建物の影から躍り出た。
 男が身構える。

 ――距離は15メートル程度。

 両手を挙げながら、
「私はキュルケ。殺し合いをするつもりはない!」
 殺したばかりの少女の名前を借りておく。
 隙を伺うのは、次の放送までで十分だ。
 それだけの時間をかけて隙を見つけられなければ、自分は男に勝てないということ。
 それならさっさと次へ行った方が、効率がいい。
 男が破顔した
「私もだ! いや、よかった、実は放送を――」
 満面の笑顔で走り寄ってくる。

「近寄るな!」

 エレオノールの鋭い声が大気を割った。
 男の足が止まる。
「あ、ああ……すまない」
 謝罪しつつ、男があたまをかく。
「私は、マーティン・ジグマール!
実は、気絶していてさっきの放送を聞き逃してしまってね……。
禁止エリアに入ってしまわないかと気が気ではなかったんだ。
すまないが、教えてくれないだろうか?」
 懇願するように男が尋ねてくる。
55Classical名無しさん:08/01/28 21:03 ID:IdPhRwV6
sssss ssssssssss
56Classical名無しさん:08/01/28 21:04 ID:RO0z3JXs
                         
57Classical名無しさん:08/01/28 21:04 ID:IdPhRwV6
支援支援支援
58 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:04 ID:nNfaKdek
 ――男との距離はすでに11メートルほど。

「教えよう。だが、それ以上近づかないで欲しい。
疑っているようですまないが、さきほど不意打ちで仲間を失ったばかりなんだ。
過ちを繰り返すつもりは、無い」
 エレオノールは男に視線を叩きつけた。
 男の表情が曇った。
「そうか……」
 曇っていた表情が、怒りへと変わる。
「くそっ! 何でここはこんなに殺し合いをしたがる奴らが多いんだっ!?」
 怒りを露にしながら、
「ひょっとしてそいつは、サラリーマン風の男じゃなかったか?」
 男が尋ねてくる。
「……そうだ」
 警戒しつつ、エレオノールは答える。
 情報が引き出せる時に引き出しておくべきだ。
 だがそれより――
(どっちだ?)
 エレオノールの心の水面は大きく揺れていた。
 人生の長きをサーカス芸人として過ごしてきたエレオノールは、観客の感情を、感じ取る術を知っている。
 今、相手がどんな感情でいるのかを、感じ取ることができるのだ。
(本当に怒っている……のか?)
 しかし、何かがひっかかる。心の水面が泡立つ。
 逃げるべきか、留まるべきか、エレオノールは能面のような表情の向こうで葛藤する。
「やっぱりそうか!!」
 男の怒号が聞えてくる。
「私もそいつに襲われたんだ! 聞いてくれ、そいつの名前は吉良といって――」
「近づくなと言ったろう!」
 興奮して口泡を飛ばしながら近づいてくる男に、エレオノールは警告を発した。
 男の体がびくりと震え――ため息が聞えた。
59 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:05 ID:nNfaKdek
「……これで信用してもらえるだろうか?」
 声にほんのわずか苛立ちをにじませ、男がディパックを肩から外す。
 両手を開いて何も持っていないことを示し、
「ついでに、私の支給品も確認しておくといい」
 ためいき混じりに、男がディパックをエレオノールに向かって放る。
 ディパックがゆっくりと、弧を描いてエレオノールに向かって飛んでくる。

 それは本能的な反応。

 エレオノールの目がディパックの軌道を追い、体がディパックを受け取る体勢になった瞬間――
 男が駆けた。
 総毛立つ思いが全身を貫く。ディパックを叩き落して視界を確保。
 男の体がエレオノールの視界の中でみるみる拡大していく。

 ――間合いが詰まっている、

(チィ……)
 エレオノールの中で、逃げるという選択肢と迎撃するという選択肢がぶつかり合う。

 男の姿が消失。

 エレオノールの心が驚愕で埋まり、体が硬直する。
 心と体が自由を取り戻すのに一瞬先んじて、衝撃が後頭部を襲った。



(てごたえ十分!)
 人間ワープで後ろを取り、右拳を女の頭に叩きこんだ瞬間、ジグマールは勝利を確信してほくそ笑む。
 長年、中年のフリをしてホーリー舞台の隊長をやっていのだ、体裁をとりつくろうのには、演技をするのには、慣れている。
60Classical名無しさん:08/01/28 21:05 ID:RO0z3JXs
                          
61Classical名無しさん:08/01/28 21:05 ID:IdPhRwV6
あぁ、支援!
62 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:05 ID:nNfaKdek
 ――全て計画通り!

 女がたたらを踏みながら、こちらに視線を向けてくる。
(しぶといな……)
 心中で酷薄な言葉を呟きながら、その秀麗な顔面に左のハイキック。
 半円を描き、ジグマールの足の爪先は女の顔に吸い込まれた。
 爪先から衝撃。
 女の鼻から血が派手に噴出し、地面に斑の花を咲かせる。
(とどめ!)
 右の拳を握り締めた瞬間――
 女の目がこちらを向いた。

 ――敵対をやめぬ瞳っ!

 拳を振りぬくことを強制中断し、顔の前でガードを固める。

 衝撃は下から来た。 

 顎から衝撃が脳天に着きぬけ、意識が彼方へと吹き飛びかけた。
 視界が回り、脚がもつれる。歪む視界の中で、女の跳ね上がった爪先が見えた。

 ――サマーソルトとは!

 舌を噛む。痛覚で意識と体を強制接続。
 一回転した女が爪先から地面に着地
(味な……)
「真似を!!」
 怒号と共に、ジグマールは前蹴りを放つ。
 足裏から衝撃。
 女の体がくの字にまがる。
63 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:06 ID:nNfaKdek
 完全に入ったという歓喜が、足首を掴まれる感触に、瞬時に恐怖へと変貌。。
「はぁぁっ!!」
 女の気合がジグマールの耳を打ちぬき、いきなり体が宙へと浮かぶ。
 
 ――振り回されている
 
 と脳が認識するのに、半瞬かかった
 そのまま振り回され、投げ捨てられる。
 一瞬の浮遊感の後、背中から衝撃が突きぬけた。
「がっ! ぐっ!」
 呼吸が止まる。前進の傷と、背骨と肺が絶叫を上げた。
(ぐっ……お……)
 奥歯を噛み締め、ジグマールは立ち上がらんとする。
 その耳に届いたのは、女が迫ってくる足音。

 ――人間ワープ。

 座標もクソも何もない。
 ワープを用いての緊急回避。
 全てがホワイトアウトし、一瞬の後、全ての感覚が戻ってくる。
 女と目があった。

 ――対応が早い。

 こちらが消えると同時にその場を飛び、視線を巡らせている。
 単純だが、防ぐには有効な手だ。

 ――この女、戦い慣れしている!

 出し惜しみなどできる相手ではない。
「ぜえっ!!」
 咆哮と共に衝撃波を放つ。
64Classical名無しさん:08/01/28 21:06 ID:RO0z3JXs
                             
65Classical名無しさん:08/01/28 21:07 ID:IdPhRwV6
支援
 計画
  開始
66 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:08 ID:nNfaKdek
 さすがにこれには対応できなかったとみえ、女の体が吹き飛ぶ。
(まだだ……。あの女は、まだ終わらん!)
 一直線にディパックの所へ走り、鎖鎌を取り出す。
 体のあちこちに傷を抱えた女が身を起こす。

 ――ワープ。
 
 感覚が戻る

 ――さらにワープ。

 感覚が戻ると同時に――
「かぁっ!!」
 鎖鎌を投擲。ジグマールの瞳孔が拡大した。

 ――止められた!?

 ジグマールの体を驚愕が貫く。
 女の手が、鎖鎌の刃を捕えていた。
(なんという動体視力だ……)
 女が鎖を――
「くそっ!」
 力比べでは分が悪すぎる。
 鎖鎌から手を放すと、鎖鎌はすさまじい勢いで宙を飛び、女の手に収まった――
 
 と、思う間もない。
 
 ジグマールの視界を、女の手から放たれた分銅が埋めていた。
 仰け反って回避。女の攻撃が雑だったことが命を救った
「しばっ!!」
 怒りに任せて衝撃波を放つ。
67Classical名無しさん:08/01/28 21:08 ID:IdPhRwV6
支 援
 計 画
  開 始
68Classical名無しさん:08/01/28 21:09 ID:RO0z3JXs
しえn
69Classical名無しさん:08/01/28 21:09 ID:IdPhRwV6
これも支援か……
70 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:09 ID:nNfaKdek
 女が跳躍行動――回避しきれず、女が吹き飛ぶ。
 瓦礫に叩きつけられた女が、荒い息を吐きながら、立ち上がる。
 ジグマールは歯噛みした。
(この女……。パワー、スピード、反射神経で私を上回っている。その上――)

 ――なんたるタフさ。

 女、いや人間の範疇を越えている。
 とその時。

 ――今更、『ありえない』は無しだ。

 頭の中に響いたアカギの声に、ジグマールは舌打ちする。
 少なくとも、この空間で「ありえない」などということは通用しない。
(まだまだ、ということか……)
 知識として理解していても、心で理解していなかった。
 アカギに及ばない自分に苛立ちつつ、ジグマールは後退を開始する。
 こんな、タフな女と削り合いをするのは、得策ではない。
 女はまばたき一つしようとせず、こちらを見ている。

 ――なんという殺気に満ちた視線。
 
 というより、満ちすぎていた。純粋な殺意のみが伝わってくる。他に感情は無い。
(この女……。人を殺したことがあるな?)
 銀髪の女の目に宿るのは、攻撃を受けた怒りではなく、漆黒の冷徹さだ。
(この目……。養豚場の豚を見る目……。
カワイソウだが明日肉屋の硝子ケースに並ぶ運命なのだな、と切り捨てる目……)
 人を殺しなれていない人間は、殺す時必ず感情が出る。
 それなりに場数を踏んだものだけが、感情を殺せるようになるのだ。
 この女の目は、場数を踏んだもののそれだ。
(だがこの女、軍人の類ではない……)
 半警察、半軍人のようなホーリー部隊を束ねていた身だ。
71Classical名無しさん:08/01/28 21:09 ID:vI6Hs9H.
 
72Classical名無しさん:08/01/28 21:10 ID:IdPhRwV6
xxxx支援xxxxx
73 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:10 ID:nNfaKdek
 職業柄、同業者には鼻が利く。
 別にこれはジグマールに限ったことではない。
 大体の人間は、自分と同じ職業の人間を嗅ぎわけることができる。
 それが、軍人などという特殊な商売ならなおさらというだけの話だ。
 さらにいうなら、女の目はいくらなんでも酷薄すぎる気もする。
 少なくとも義憤に燃える正義の味方の目では、断じてない。
 となれば、この女はひょっとして……。
(殺し合いに乗っている?)
 言うだけならタダだと割りきりつつ、ジグマールは口を開く。
「君の実力はよく分かった……。見事なものだ」
 女の表情にまったく揺らぎは無い。
 ジグマールは、かまわず続けた。
「そこで提案だ……。私の仲間になりたまえ!」
 凍りついたような女の眉が、髪の毛一筋分ほど角度を変えた。
「仲間という表現が嫌なら、表現を変えよう……。私と、組まないか?」
 アカギと交わした言葉を思い出しながら、ジグマールは言葉を紡ぐ。
「この場には、強者がひしめている。私や君では、及びもつかない強者達が。
例えば、我々が集められた場でみた、拳王と名乗った男、赤髪の勇次郎という男に、
君は、一人で勝つつもりかね? それは少しばかり――甘い認識だといわざるをえない。
私や君程度の力で最後の独りになるのは難しい……。否、敢えて不可能に近いと言わせてもらおう」
 これはまごうことなき、ジグマールの本音であった。
 目の前の女が、勝ち残りを狙っているのなら、同じことを感じているはず。
 仮にジグマールと女が戦い続けた場合、相打ちか、勝っても重症を負うだろう。
 その程度の力では、あの化物達に勝つことはできない。
「今だけ……。もしくは、一時的な同盟ということだ。
私と君が手を組んで、他の参加者を殺していけば……極めて有用な武器が手に入るかもしれない。
一人で奪うことの半分の能力でね。そして、集めた武器を使って化物どもを倒せばいい。
まあ、この場には君が知っているかどうかは知らないが、正義の味方もたくさんいる。
彼らと化物が共倒れになるのを待つ、もしくは闘って疲弊している方を、我々で倒すのもいい……。
どうだろう? 私の言っていることは間違いだと思うかな?」
74Classical名無しさん:08/01/28 21:11 ID:RO0z3JXs
                         
75 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:11 ID:nNfaKdek
 ジグマールの提案は、言ってしまえばアカギが持ち出した提案の模倣、悪く言えばパクリである。
 しかし、ジグマールは一切恥じていない。
 なぜならば、自分が最強のアルター使いではあるが、最強にして最高の生物ではないと、認識したからだ。
 能力面でDIO、精神面でアカギ。
 自分よりも上の存在がいると認識したことは、ジグマールに謙虚さをもたらしたのである。
(オリジナルを越えるためには、まず、模倣からだ。自分より優秀な人間の模倣することから全ては始まる……)
 ジグマールは、銀髪の女に目をやった。

 ――貴様、考えているな?

 女の闇色に染まった銀の瞳の中に、わずかに違う光が混じっていることにジグマールは気付く。
 突如、女の視線が鋭くなった。

 ――どうする? どうする? 貴様はどうする?

 ジグマールの見つめる先、女が素早く身を翻し、闇の中へと消えていく。
 完全にその姿が見えなくなってしばらくして、ジグマールは緊張を解いた。
 軽い失望は――ある。
 だが、ジグマールは笑みを浮かべてみせた。
 あの男、アカギが浮かべていたような笑みを。
(やつなら……。何があっても揺らがぬあの男なら、この程度でオタつくことはあるまい)
 奴を越えるためにはまず、あの何が起きても揺るがぬ精神を模倣する必要がある。
 一つ、深呼吸をして、ジグマールは歩き出した。



(危うかった……)
 男から離れながら、エレオノールは胸中で嘆息をもらした。
 空間を渡り、衝撃波を放つ。
76Classical名無しさん:08/01/28 21:12 ID:IdPhRwV6
あああ支援あああ
77 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:12 ID:nNfaKdek
 男がつかったのは、まさに人外の技以外の何ものでもない。
 奴の能力に対応できたのは、常に想定外を意識した戦いをしてきたからだ。
 自動人形の体に常識という物は通用しない。体のどこから何が飛び出すか分かったものではない。
 腹から、口から、足から、目から。銃弾が、酸が、矢が飛び出す。
 そんな異常な相手との戦いを長年続けてきていた経験が、己を救ってくれた。
「同盟……だと?」
 
 ――馬鹿げている。

 いつ寝首をかかれるか分からない相手と組むのは、愚の骨頂だ。
 そう切り捨てようとするが――
 自分の心の水面が揺らぎを止めないことに、エレオノールは苛立つ。
 揺らぎが止まらない理由は分かっていた。
 あの男の指摘したことが全て真実であり、エレオノール自身が、ずっと痛感してきたことだからだ。
 人形を持っても、オリンピアを持っても、しろがねの身体能力があっても殺せず、
 ようやくさっき隙を突いて、少女を一人殺しただけ。
 一人殺せたことで自信を取り戻しかけた所に、あの男との戦闘。
 奴もまた強者。良くて重症、悪くて相打ちか敗北。
 エレオノールは唇をかんだ。
(強い武器があれば……。あの男を殺すのは不可能ではなかった……)
 しかしそれは、あの男も同じことだ。
 奴が決め手となる武器を持っていたなら、今頃自分は死んでいた。
 男から奪った鎖鎌に、エレオノールは目を落す。
(ないよりは、マシだが……)
 この鎖鎌で、ケンシロウに勝てるか? 刃牙と死闘を繰り広げていた勇次郎に勝てるか?
 隻眼の男に勝てるか?

 否――断じて否。

 しろがねの身体能力をもって、抜き手や爪先で急所を狙えば勝てると考えた時期もあったが、
 それは今しがた否定された。
78Classical名無しさん:08/01/28 21:12 ID:RO0z3JXs
                          
79 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:13 ID:nNfaKdek
 格闘術を磨いたことのない自分では、訓練を受けた者達に、素手で致命傷を与えるのは至難の技だ。
 無力感が込み上げてくるのを、エレオノールは感じた。
(なんということだ……。このままでは鳴海にスペクタクルをみせることができない……)
 すなわちそれは、人間になることができないということを意味する。
 絶望がエレオールの心の壁を這い登った。
 と、その時。

(何だ、この匂いは?)

 しろがねの鋭敏な鼻が、異臭を捕えた。
 異臭の出所は――
(あそこは、さっきの民家ではないか?)
 自分がキュルケを殺してきた方向から、匂いは漂ってくる。
 一跳ね、二跳ねして、エレオノールは屋根に登り、そして――見た。

 頭が真っ白になった。

(そ、そんな……)
 炎が上がっていた。
 赤々とした炎は、大分離れたこの場所からもはっきりと見えた。
(火はちゃんと始末したはずだ……。では、やはり……)
 ケンシロウ、あの男が火をつけたのだ。
 その大胆極まる行動にエレオノールは戦慄する。
 あの男は、まったく恐れていないのだ。
 始めの会場で暴れ出した赤髪の男も、拳王という男も、何も――恐れていない。

 ――来るなら来い。

 あの火は、その意思表示に他ならない。
 そのことを認識した瞬間、エレオノールの心に嫉妬の炎が燃え上がった。

 ――何たる不条理か。
80Classical名無しさん:08/01/28 21:13 ID:IdPhRwV6
支援 支援 支援 支援 支援
81Classical名無しさん:08/01/28 21:14 ID:vI6Hs9H.
  
82Classical名無しさん:08/01/28 21:14 ID:RO0z3JXs
                  
83 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:14 ID:nNfaKdek
 自分が全てを振り絞っても、あの男にはまったく及ばない。
 何故あの男はあんなにも強いのか。力を持っているのか。
 自分とて、人形繰りに何十年という歳月を費やしてきた。
 死線ならば、自分とて何度も何度も越えてきた。
「くそっ……。ふざけた真似を……」
 ケンシロウに嘲笑われているように、エレオノールは感じた。
 俺にはお前の姑息な手など通用しない、そういわれた気がした。

 ――だが、事実。

 事実がそのまま事実であることが、エレオノールを打ちのめす。
 俯いて拳を震わせたまま、エレオノールは思考する。
 今のままではどうやってもあの男には勝てない。
 武器が必要なのだ。力が必要なのだ。
 人間になるためにはどうしても必要なのだ。
 そのためには――

 エレオノールは顔を上げた。漆黒の決意と共に。

「攻め手を……変える……か」
 次の瞬間、エレオノールは飛ぶように走り出す。
 猛禽のごときめで、眼下を見下ろしながら、屋根を蹴り、塀を蹴り、まるで獣のように。
 ひとしきり走ったころ――その足が、止まった。

「……よく戻ってきてくれた。私は君を歓迎するよ、大いにね」

 足元から聞こえた声に、エレオノールは表情を変えることなく、頷いてみせたのだった。



 夜風が吹き、闇に沈む町を照らし出す蛍光灯の下で、一筋の金色が舞った。
84Classical名無しさん:08/01/28 21:15 ID:IdPhRwV6
支 援   支 援   支 援   支 援   支 援   支 援
85Classical名無しさん:08/01/28 21:15 ID:vI6Hs9H.
 
86 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:16 ID:nNfaKdek
 続いて銀色が舞う。
 闇の中、二種類の音程が響いていた。
「――なるほど。あくまで、彼らが拠点を変えていないとすればだが、
彩崎ハヤテ、三千院ナギ、隻眼の男、加藤鳴海、パピヨン、泉こなた、赤木しげる、
この7人が揃っているかもしれない、ということかな?」
 名簿で名前を確認しながら、ジグマールは尋ねる。
 そして、歓喜する。アカギの名前が入っていたことに。
 仮に残りのメンバーがまだそこにいれば、アカギが戻ってくる可能性は、高いといえた。
(思ったより早く決着付けられるかもしれんな、アカギよ……)
 一人ほくそ笑むジグマールの表情に気付いているのかいないのか、
「この中で注意するべきは3人。隻眼の男、加藤鳴海、パピヨン、だ。
隻眼の男と加藤鳴海は、腕が立つ。私一人で勝つのは、無理だろう。
そしてこのパピヨンと名乗った蝶の仮面を被っていた男、この男も油断がならない」
「理由は?」
「ホムンクルスと名乗った。私の世界にはもう残っていない錬金術の技術だが、
他の世界に残っている可能性がある。したがって奴の言葉は虚偽ではないと考えておくべきだ」
 ジグマールは黙って頷いた。
 なんといってもこの状況で、「ありえないということはない」のだから。
「人間ではないということは、何らかの異能を持っていると考えた方がいいだろう。
そして、肉体的能力や異能という面では劣るが、赤木という男の洞察力は悪魔的だ。
それと、こいつらよりも脅威は少ないが、彩崎ハヤテという少年も、それなりの身こなしだった。
一応警戒した方がいいだろう」
 エレオノールが淡々と述べていく。
(他人を冷徹なまでに客観的に見る目……。GOOD!)
 彼女と組んだのを間違いなかった。
 とはいえ――問題は多いのだ。
「ふぅむ……」
 ジグマールは唸り声を上げた。
(随分とまた、戦力が揃っているな)
 
――これをどうやって切り崩したものだろう?
87Classical名無しさん:08/01/28 21:17 ID:IdPhRwV6
支 援   支 援   支 援   支 援

残念、彩崎じゃなくて綾崎
88 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:17 ID:nNfaKdek
「私の考えだが……。彩崎ハヤテがお嬢様と呼んでいた、三千院ナギという少女、
そして、泉こなた、この二人の足手まといを攻めることに突破口があるように思う」
「同感だな」
 ジグマールは頷いてみせた。
 集まっている人間は、正義感の強い人間が多いと聞く。
 しかし、人質を取られれば、その正義感が足を引っ張るだろう。
「とはいえ……。やすやすと、人質を取らせてくれるメンツではない、か」
「お前が、奴らの仲間になったフリをするというのはどうだ?」
 エレオノールの提案に、
「そうしたいのは山々だがね……。吉良良影、神楽、江戸川コナン、キュルケ、ケンシロウ……。
君の情報からして、ケンシロウとキュルケがいる可能性がないと分かったのは朗報だが、
吉良、そしてコナンという少年が、喫茶店にいた場合、もしくは喫茶店にいる人間がコナンや吉良から話を聞いていた場合、
私には破滅が待っている。君が、どうしてもリスクを取ってくれというのなら取るが……」
 そこでジグマールは一度言葉を切り、
「それよりも、君が仲間に復帰したいといって懐に入るほうが、成功の可能性は高いと思うがね?
君の話を聞いた限りでは、鳴海という男の過失は明らかだ」
「私はその後、隻眼の老人と勝という子供を襲撃している」
「喫茶店の人間がみんなグルだと吹き込まれた、ということにするのは……。少し、苦しいか」
 苦さをわずかにブレンドさせてジグマールは言った。
(さて、どうする?)
 ジグマールは自問する。
 もっとも、答えはすでに出ていたのだが。

 ――馬鹿だなぁ…もともとリスクゼロで得られる情報なんて価値が無いに等しい

(その通りだな……。アカギ)
 リスクをとらずに手に入れられるものなど、知れている。
「……分かった。私が、彼らに接触してみることにしよう」
「私はかまわない。だが、本当にいいんだな? ことと次第によっては……」
89 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:18 ID:nNfaKdek
 ジグマールは肩をすくめた。
「別に私を見捨ててもかまわんよ。好きにしたまえ。
というより、ぜひとも露見した場合は、一目散に逃げて欲しい所だな。
私の能力は、君が見たとおり、空間をわたる能力なのでね……。逃げるのには最適というわけだ……。
さて、道中で万が一、ラオウ、ケンシロウ、勇次郎にあったらとにかく逃げる。
他の者については、相手の装備と人数を見て対応する……というところで、いいかな?」
 エレオノールが頷くのを待って、
「では、侵攻を開始しよう」
 重々しく宣言して、ジグマールは歩き出す。
 ところが、ジグマールはふと思い出したというように、その足を止め
「ああそうそう。今回の襲撃で、何らかの戦利品が獲られた場合、選択の優先権は君にあるとしておこう。
そして仮に1つしか戦利品がなかった場合だが……。その場合は君が使いたまえ」
 エレオノール目が鋭く細められた。
「……どういうつもりだ?」
「どういうつもりだ、とは?」
「気前が良すぎる、ということだ」
 エレオノールの指摘に、ジグマールは、軽く微笑んでみせた。
「友愛、友情、愛情……全ては信頼から始まる、と私は思っている。
仮初の同盟ではあるがね……。いくばくかの信頼は必要、ではないかな?」
 言い捨てて、ジグマールは駆け出す。
 その背後から、無音で女が追走してくるのを感じ、ジグマールは口元をゆがめた。
(リスク……。不条理……。敵……。気の置けぬ仲間……。
これらを楽しんでこそ、だろう? アカギ)
 ジグマールは、ここにはいない一人の男に向かって語りかけた。


(この男……。先ほどと、変わった?)
 というより、変化し続けているようにも感じられる。
 顔は10代といったところなのに、たまに40ぐらいの男を前にしている気がして、
はっとするのだ。
90Classical名無しさん:08/01/28 21:18 ID:tBPshi.Y

91Classical名無しさん:08/01/28 21:18 ID:IdPhRwV6
支 援   支 援   支 援   支 援
92Classical名無しさん:08/01/28 21:19 ID:tBPshi.Y
 
93Classical名無しさん:08/01/28 21:19 ID:RO0z3JXs
                             
94 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:19 ID:nNfaKdek
 エレオノールの直感は当たっていた。

 ジグマールは、エレオノールと同盟を組むにあたり、
 ホーリー部隊をまとめていたころの「体裁」 を取り繕うとしていたのだ。
 しかし、果たしてジグマール本人も気付いているのだろうか?
 蒼乃大気を筆頭とするスーパーホーリーの3人、それにストレイト・クーガー、劉鳳……
 ホーリー部隊の面々は、誰もが「キワモノ」と呼べる性格の持ち主であり、同時に超絶の力の持ち主であった。
 彼らは、決して「体裁」とやらで制御できるような人間ではなく
 それなりの実力と貫目を持ち合わせた人間でなくては、制御などできるはずもなかったのである。
 つまり、彼らを束ねていたのは、間違いなくマーティン・ジグマールの実力なのだ。
 役職や肩書きは人を作る。なぜなら、役職や肩書きに相応しい人間であることを要求されるからだ。
 そして、役職に相応しい人間たれるかどうかは、本人の努力と資質にかかっている。
 ジグマールにはその資質があったとみてよい。
 しかし、年齢のせいか、はたまたギャラン・ドゥに対する依存症が異世界に来て表に出たのか、
 ジグマールは、この世界に来た瞬間、どこか重荷に感じていた「ホーリー隊長たる」ことを放棄し、
 それゆえ、一気に年齢相応か、それ以下の精神年齢に堕してしまったのである。
 ところが、ここに来てそれが裏返った。
 パートナーを持ち、半強制的に独り立ちを余儀なくされたジグマールは、
 一人前の大人でなければならなかったころ、つまり、かつての「隊長」であった己を、
 取り戻さざるを得なくなっていたのである。それに加えて、アカギの模倣による効果。
 ジグマールの精神は、「隊長」であったころをさらに越えつつあるといえよう。

 もちろん、そんなことをエレオノールが知るはずも、知ることができるはずも無い。
95Classical名無しさん:08/01/28 21:20 ID:IdPhRwV6
支 援   支 援
96 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:20 ID:nNfaKdek
(……まあ、どうでもいいことだ)
 エレオノールは、役に立たない思考をアッサリと打ち切った。
 どうやら、ジグマールという男はすぐに裏切る気もなさそうであり、役に立ちそうでもある。
 エレオノールにとってはそれで十分。
(待っていてくれ、鳴海……。今から、素敵なスペクタクルを見せてあげるから)
  唇に微笑を浮かべながら、
「おい……」
「何かね?」

「言い忘れていたが……。私のことは、フランシーヌと呼べ」

 エレオノールは、人形の名を宣言した。
97Classical名無しさん:08/01/28 21:21 ID:tBPshi.Y
  
98Classical名無しさん:08/01/28 21:21 ID:RO0z3JXs
                           
99Classical名無しさん:08/01/28 21:21 ID:IdPhRwV6
あいうえお支援
100 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:21 ID:nNfaKdek
【D-3 南部 1日目 夜中】
【マーティン・ジグマール@スクライド】
[状態]:全身に負傷中(傷がいくつか開きました)、顎に打撲、美形 、
大程度の疲労(しかし意気軒昂)
[装備]:
 アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙
 法儀礼済みボールベアリングのクレイモア地雷(リモコン付き)@HELLSING(未開封)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:アカギを越える
1:喫茶店に(もしくはその周辺)にいる人間のグループにもぐりこみ、エレオノールと共に攻撃する。
[備考]
※エレオノールと情報交換しました
※アカギと情報交換しました
※人間ワープにけっこうな制限(半径1〜2mほどしか動けない)が掛かっています
連続ワープは可能ですが、疲労はどんどんと累乗されていきます
(例、二連続ワープをすれば四回分の疲労、参連続は九回分の疲労)
※ルイズと吉良吉影、覚悟、DIO、ラオウ、ケンシロウ、キュルケはアルター使いと認識しました
※吉良吉影の能力は追尾爆弾を作る能力者(他にも能力があると考えています)だと認識しました。
※DIOの能力は時を止める能力者だと認識しました。
※ギャラン=ドゥはエネルギー不足で外には出てこられなくなりました。
 ですがジグマールは、人間ワープの能力を問題なく使えます。
101 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:22 ID:nNfaKdek
【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:精神不安定、全身に打撲と裂傷(しろがねの再生力で再生中)、
[装備]:本部の鎖鎌@グラップラー刃牙
[道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式
[思考・状況]
基本:加藤鳴海以外を皆殺し
1:ジグマールと共に、喫茶店にいるはずの集団を攻撃する
2:人形以上に強力な武器が欲しい。
3:殺戮を繰り返せば、ナルミは笑ってくれるはずだ……。
4:強い者とは無理に戦わない。
[備考]
※ジグマールと情報交換をしました
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※夢の内容はハッキリと覚えていますが、あまり意識していません。
※エレオノールが着ている服は原作42巻の表紙のものと同じです
※ギイと鳴海の関係に疑問を感じています。
※メイクは落としました
※フランシーヌの記憶を断片的に取得しています。
※「願いを叶える権利」は嘘だと思っています。
※制限についての知識を得ましたが、細かいことはどうでもいいと思っています。
※ケンシロウとキュルケを恋人同士だと思っています。
102Classical名無しさん:08/01/28 21:22 ID:IdPhRwV6
あいうえおかきくけこさ支援
103 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:23 ID:nNfaKdek
投下完了いたしました。
題名は「求めたものは」です
104 ◆wivGPSoRoE :08/01/28 21:24 ID:nNfaKdek
大変失礼いたしました。
いつものことながら、永のご支援、誠にありがとうございます。
謹んでお礼申し上げます。
105Classical名無しさん:08/01/28 21:26 ID:IdPhRwV6
早いって、投下早いってマジでwww
それにしても、マーダー連合か。
どっちも、自分の力不足を実感しているだけに可能な話だな。
マーダーとしての力量は、はっきり言って下から数えた方が早い2人ではあるが、
それでも、人生経験トップ2じゃないか、この2人。
がんばって欲しいもんだ。
106Classical名無しさん:08/01/28 21:28 ID:tBPshi.Y
投下GJです!

スクライド好きな俺は、本当は強ェのになーって思ってたから、うれしいぜ!
タフさには定評のある二人だから期待大だ!
107Classical名無しさん:08/01/28 21:29 ID:RO0z3JXs
投下乙。美形覚醒したのに道を間違えたァーーッ!
せっかく対主催フラグ立ったのにお前ときたら……やっぱり美形かw
喫茶店組は一般人だけだからマズイかも……って鳴海死んだの知ったらどうなるんだ?
108Classical名無しさん:08/01/28 21:35 ID:uI04BIZc
投下乙
アカギがまさかこんな形でマーダーの強化に手助けしてしまうとは…でもアカギ的には予想の範疇なんだろうなぁ、多分
美形が覚醒した一方エレオノールは割食ってるなぁ…キュルケと美形は遭遇済みだし鳴海は死んじゃったし
何気にこのロワ初のマーダーコンビに期待!
109Classical名無しさん:08/01/28 21:35 ID:B5fXzsSA
投下乙です!
あれ? 美形ってのび太くんじゃなかったの?
いつの間にそんな貫禄を身に付けたんだ。
ていうかそもそも持っていたものなのか。

そういやこのロワではマーダータッグっていなかったのか。
散様と村雨は闘うときは一対一だったし。
この二人なら卑怯なことも平気でしてくれそうだ。
110Classical名無しさん:08/01/28 21:36 ID:tBPshi.Y
>>108
しむらー、散様と村雨コンビがいたぞー
111Classical名無しさん:08/01/28 21:37 ID:tBPshi.Y
あ、確かに散様村雨コンビは、戦闘は別々だったね
112Classical名無しさん:08/01/28 21:45 ID:IdGKNLIA
 マーティン・ジグマールが裏返った ー―――― ッッ!!
 たまらん! よだれズビッ!! っていう展開だァ 〜〜〜ッ!!
113Classical名無しさん:08/01/28 21:50 ID:YNwZG1vM
投下乙。
ジグマール、化けやがった……!
もうこれ、隊長顔に戻った方がよくね?w アフロ美形じゃなくてさw
隊長モード入ったなら、あの人エゲつない策を平気で使ってくるからな……!
114Classical名無しさん:08/01/28 22:43 ID:s/bPnDG.
ゆるゆるだっ! てか?
115Classical名無しさん:08/01/28 22:52 ID:S0L65SpA
そういやジグマールって顔変えられなかったっけ?
普通に隊長だったころの顔に戻れば正体ばれずに接触できる気がする。
このジグマールにはぜひアカギにかってギャランドゥと宇宙征服を達成してほしいw
116Classical名無しさん:08/01/29 01:01 ID:E5F3Qq7U
投下乙

美形に「ダイヤモンドのように固い決意をもつ「気高さ」を見た」と思ったらw
しかしこの最近の投下ラッシュはなんなんだw
117 ◆ga/ayzh9y. :08/01/29 01:40 ID:WyVVGlI6
三村、投下します。
118Classical名無しさん:08/01/29 01:41 ID:bBkmu4pQ
さあこい
119Cool or Fool?  ◆ga/ayzh9y. :08/01/29 01:41 ID:WyVVGlI6
静かな夜道に、一つのエンジン音が鳴り響く。
三村は繁華街を目指して、依然北上を続けていた。
このペースならば、もうしばらくで繁華街に到着できるだろう。
繁華街の様な場所ならば、そこが禁止エリアにでもされていない限り、確実に誰かしら人はいるに違いない。
それが自分と同じく脱出を目指す者か、ゲームに乗った者かまでは流石に分からない。
万が一後者と、それも強力なのと出会った場合は、柊かがみの抹殺という目的を果たすどころではなくなるかもしれない。

(でもよ……怖がってちゃ、何も出来やしないんだ。
その程度のリスクがどうした……!!)

しかし三村に恐怖心はない。
先程も感じたように、それぐらいでビビッてて、あの怪物に勝てるわけがない。
今の三村にとって柊かがみはもはや、先刻出会ったアーカードと並ぶ、最大最強の敵として位置づけられつつあった。
彼女達に並ぶ恐怖というものは、今の三村には無かったのだ。
このまま彼女を放置しておけば、犠牲者は確実に増える。
一刻も早く、誰かと接触しなければ。
そう思い、三村は更にスピードを上げようとする……が。

「何……!?」

そんな彼の考えとは、真逆の事態が起こった。
急に、原付のスピードが落ち始めたのだ。
もしかしたら、どこか故障しているのではないだろうか。
三村はすぐさまクレイジー・ダイアモンドを発現させ、直そうとする。
だが……直らない。
スピードは、依然落ち続けている……直すことが出来ない。
120Classical名無しさん:08/01/29 01:42 ID:bBkmu4pQ
 
121Cool or Fool?  ◆ga/ayzh9y. :08/01/29 01:43 ID:WyVVGlI6
「何でだよ……どうして、直すことが出来ないんだ?
それとも故障じゃなくて、何か別の……あっ!?」

原因を調べるべく、三村は原付から降りた。
そして、キーを抜こうとした時……彼はその原因を知った。
彼の目に入ったのは、空になっていたガソリンのメーターだった。
原付が止まった原因は、ガソリン切れによるものだったのだ。
これを見て、三村は直せなかった理由を理解する。
ガソリンは消耗品、使えば使うほど消えていく。
幾らクレイジー・ダイアモンドといえど、無い物を直すことは不可能なのだ。

「ガス欠かよ……」

急ごうと思っていた矢先にこの事態。
三村の受けた精神的なダメージは大きかった。
放送を聞き逃して以来、どうにも不幸続きだ。
強力な力を持つ人外の怪物には襲われ、柊の危険性を説いた相手には殺されかけて。
これも全て、彼女の所為である。
そう思わなければ、正直やっていられなかった。
やり場のない怒りと苛立ちとを乗せ、足で強く地面を踏む。
それから、数秒が経過した後。
三村は大きく深呼吸をして、空に浮かぶ月を見上げる。

(いけねぇな……クールだ、クールになれ。
ここで焦っても、しょうがねぇ……前向きに考えねぇとな)

過ぎた事をどうこう言っていても、仕方ない。
気持ちを切り替えるべく、三村は両手で自分の頬を軽く叩いた。
ここで焦っては、冷静に物事を考える事は出来ないし、それに……更なる不幸を呼びかねない予感がした。
とりあえず三村は、原付をその場に残して歩き出した。
地図を見た限りでは、繁華街には給油の出来る施設は無い。
ならば押していっても、ただの荷物になるだけである。
122Classical名無しさん:08/01/29 01:43 ID:bBkmu4pQ
ああ…原付だもんな ガスも尽きるわ
123Cool or Fool?  ◆ga/ayzh9y. :08/01/29 01:44 ID:WyVVGlI6
(無いものは直せない、か……言われてみればその通りだけど、こいつは盲点だったぜ)

それにしても、意外なところにクレイジー・ダイアモンドの弱点があったものだ。
ガソリンの様な消耗品は、どう足掻いても直しようが無い。
万能な能力は存在しないということを、三村は深く実感させられるが……その時だった。
彼の脳裏に、ある閃きが過ぎる。

(待てよ……能力?
そういえば、柊の奴は……)

彼女の能力は、自分が見る限りでは『火炎を操る』という、シンプルだが強力な代物だった。
しかし……果たしてそれだけなのだろうか。
あの魔性の女の事だから、それとは別に何かしらの能力を隠し持っていたのではないのだろうか。
つい、三村はそう考えてしまった。
もしそうだとしたら、どんな能力を持っているのだろうか。
そう思った三村の脳裏に、真っ先に浮かんだのは……『他人を操る』能力。

(……ありえねぇ話じゃねぇよな。
俺達と離れてからの短時間で、奴は川田の仲間達からあれだけの信頼を得てた。
一体、どんな手を使いやがったんだって思ったが……)

三村は、柊かがみには文字通り他人を操る能力があるのではないのかと考えた。
それならば、先程対峙した二人があれ程の激怒を見せたのも納得がいく。
話術だとか演技だとか、そんなチャチなレベルじゃない……最悪の能力である。
尤も、そうだと断言する事は出来ない。
ならば何故、自分とジョセフにそれを使わなかったのかという疑問が残るからだ。
そうなると、やはり単なる話術や演技じゃないのかと考えられるが……だからと言って、切り捨てる事も出来ない。
能力を発動させるのには、何かしらの条件が必要だという可能性だってある。
可能性の一つとして、十分ありえるのだ。

「どちらにせよ、意のままに人を操れるのには違いねぇな。
とんだ魔女……いや、悪女だな」
124Classical名無しさん:08/01/29 01:45 ID:bBkmu4pQ
支援
125Cool or Fool?  ◆ga/ayzh9y. :08/01/29 01:46 ID:WyVVGlI6
どうこう考えているうちに、三村は繁華街に足を踏み入れていた。
ここからが正念場……より一層気を引き締めて、三村は他の参加者を探し始めた。


これは、幸なのか不幸なのだろうか。
三村が足を踏み入れたこの繁華街には、彼の推測した「人を操る能力」の存在を知る者達がいる。
そして、柊かがみの親友たる人物もいる。
果たして三村は、この先彼等と接触を果たせた時……何を見出すのだろうか。


【E-2/一日目/夜中】
【三村信史@BATTLE ROYALE】
[状態]:精神疲労(中)、鼻の骨を骨折、顎にダメージ有り(大)、原チャリで移動中
[装備]:トランプ銃@名探偵コナン、クレイジーダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険、銀時の原チャリ@銀魂
[道具]:七原秋也のギター@BATTLE ROYALE(紙状態)支給品一式×2
[思考・状況]
基本:老人の野望を打ち砕く。かがみはどんな手段を使ってでも殺す。
1:仲間になってくれそうな参加者に会う。
2:参加者に出会ったら第三放送の内容を訊く。そして「柊かがみという女は殺し合いに乗っていて、人を一人殺した」と伝える。
3:参加者にあったら柊かがみと一緒にいる、3人(覚悟、ヒナギク、川田)が柊かがみに騙されて、かがみを信じきっている。
  もしくは、柊かがみに操られているかもしれないと伝える。
4:再度ハッキングを挑む為、携帯電話を探す。
5:集められた人間の「共通点」を探す。
6:他参加者と接触し、情報を得る。「DIO」は警戒する。
7:『ハッキング』について考える。
8:アーカードは殺す。
126Classical名無しさん:08/01/29 01:47 ID:bBkmu4pQ
ラストだ支援
127Cool or Fool?  ◆ga/ayzh9y. :08/01/29 01:47 ID:WyVVGlI6
[備考]
※かがみは、人を操る能力を持っているのではないのだろうかと推測しています。
※つかさをかがみと誤認しています。
※つかさ、覚悟、ヒナギク、川田が柊かがみに、完全に騙されている。
 もしくは、操られていると思っています(説得不能だと考えています)。
※覚悟、ヒナギクの名前を知りません。

※本編開始前から連れて来られています。
※クレイジーダイヤモンドは物を直す能力のみ使用可能です。
 復元には復元するものの大きさに比例して体力を消費します。
 戦闘する事も可能ですが、大きく体力を消費します。
※ジョセフは死亡したと思っています。
※マップの外に何かがある、と考えています。
※彼が留守番電話にメッセージを残したのは、以下13ヶ所です。なお、メッセージは全て同一です。
 老人ホーム(A−1)、市役所(D−3)、病院(F−4)、消防署(D−4)、学校(C−4)
 総合体育館(D−5)、ホームセンター事務室(H−5)、総合スーパー事務室(D−6)
 変電所(A−8)、汚水処理場(B−8)、ホテル(D−8)、パブ(F−8)、ボーリング場(G−8)
※第三放送を聞き逃しました。
※ジョセフの話(波紋、吸血鬼、柱の男 etc)を信じることにしました。(どの程度まで詳しく話したかは任せます)
128Classical名無しさん:08/01/29 01:48 ID:bBkmu4pQ
まだあった支援
129Classical名無しさん:08/01/29 01:49 ID:9R4flxgc
                      
130Cool or Fool?  ◆ga/ayzh9y. :08/01/29 01:49 ID:WyVVGlI6
以上、投下終了です。
少し三村には可哀想な題名で申し訳ありません
131Classical名無しさん:08/01/29 01:53 ID:bBkmu4pQ
投下乙ー
三村もようやく人がたくさんいる場所に着たか…情報を得るかまた誤報をばら撒くか
でもどうせロクなことにならないんだろうなぁとボソッと

どうでもいいけど、KOOL、FOOL、COOL、略してKFC。ケンタッキーフライd(ry
132Classical名無しさん:08/01/29 01:53 ID:teaitRYM
乙です
三村…お前…踏んだり蹴ったりだな
アーカードは同じ化け物の勇次郎の前に敗れたし
独歩とパピは分からんがナギやこなたが信じるわけないしな…
いい加減、誰かに聞き逃した放送の内容教えてもらうなりで
ジョセフが死んだって認識自体違うと理解しないと取り返しのつかないことになるぞ…w
133Classical名無しさん:08/01/29 01:55 ID:g/LTgkSA
だが、“そこ”が三村のいいとこじゃあないかッ!!
134Classical名無しさん:08/01/29 01:55 ID:9R4flxgc
投下乙。
三村は随分前から「Fool」だったような気が……ゲフンゲフン。
しかし洗脳能力持ちとか、かがみんが三村の中でどんどん化け物にさせられてるw
Foolの和訳はもちろん「バーロ」ですね?!

一つだけ指摘を、クレイジーダイアモンドではなく、ダイヤモンドですよ。
135 ◆ga/ayzh9y. :08/01/29 01:59 ID:WyVVGlI6
>>134
指摘ありがとうございます。
掲載時に、そこだけ修正お願いいたします……
136Classical名無しさん:08/01/29 02:01 ID:s6t9q9EQ
乙です。
もうどんどん泥沼にはまってるね、この子は。
自分よりも焦ってる奴が近くにいるくらいの方が落ち着くタイプなのかも知れない。
人の振り見て…って感じで。
原作に鑑みるにそう思えてきた。
137Classical名無しさん:08/01/29 02:52 ID:4HKRTxgE
しかしこのロワは原作で悪役だった奴の方が輝くな。
アーカード達マーダー四天王やアミバとかジグマールとかギャランドゥとか。
138 ◆05fuEvC33. :08/01/29 07:15 ID:sq.cvZC6
投下乙です。
どんどん誤解に勘違いを重ねていっちゃってるなぁ、三村は。
何時になればジョセフの生存と、禁止エリアを知るんだろうw
 
自分の予約ですが、すいません延長をお願いします。
139 ◆L9juq0uMuo :08/01/29 20:35 ID:IzTz7REo
一時投下スレに改題&加筆修正版を投下しました。
今回は多大な時間をかけてしまい大変申し訳ありません。
140Classical名無しさん:08/01/29 22:06 ID:bBkmu4pQ
>>139
読ませていただきました
戦闘、別れのシーンの描写が追加されていてより錬度の高い作品になっていると思います
ジョジョ第一部を思い起こさせるようなDIO様の行動もGOOD! GJでした!
141 ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:17 ID:g5Th7b52
>>127
投下乙
もう三村だめだw
正直誰にあっても「こいつ、操られている…!」ってなりそう
誰か止めてやってください

それではコナン、服部、神楽、劉鳳、吉良吉影 投下します。
142地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:18 ID:g5Th7b52
「本当にいいのか……?もし違ったらお前は彼らの信頼を大きく裏切ることになるんだぞ……?」
「これしかないんや。このままじゃ安心して話ができへん。協力するにも脱出するにも100%互いに信頼できるようならなあかん。ここは賭けるときなんや」
カチリ カチリ 運命の輪が回りだす。
今、さいは投げられた…。



ひんやりとした空気が流れ、風が少し強くなり、肌寒くなってきた。空気は澄んでいて木の葉がゆれる音がコーラスのように心地よい眠気を誘う。


「綺麗な月やな、かぐや姫でも降りてきそうな夜や」
「君がそんなロマンチストだとは思わなかったよ」
小さい笑い、静寂。
「冷えるな…」
「せやな、風が出てきたな。風邪をひかないように気ぃつけな」
風が窓をガタガタ揺らす家から服部と吉良が外を眺めながら取りとめも無い会話に一息つく。
「風邪には睡眠が一番だよ。寝る前にあたたかいミルクを飲んだ後に20分ほどのストレッチで体をほぐして床につけば、必ず治る」
「せやけど吉良さんは風邪にかかったことなさようやな」
テーブルを挟んで2人はコーヒーをすすりながら話をする。これから先どうするか。
「それで、なんて言ったかな?情報収集?」
「だいぶ中心から離れてしもうたし、例の顔に傷がある女もどこに行ったか気になる所や。だいぶ休息もとれたことやから、もうそろそろ動きださなあかんと思ってな」
アミバの死で彼が目覚め次第行動するという当初の方針は崩れてしまった。
アミバが倒れている合間に情報交換は終わったし、食事もとり支給品の確認も行った。もっともアミバが残したもう一枚のDISCは手づかずのままだが。そろそろ動き出してもいい時期だと服部は判断したのだ。
「確かに体の傷は癒えただろう。私の体の調子もいい。出血も止まったからね」
そういって弱弱しく微笑みながらない左手首をなでる。
「しかし心の傷は……」
コップを掴んだ手の関節が白くなるほど強く握り、吉良は大きなため息をひとつ吐きうつむく。
彼の言うとおりだった。アミバの死はそれぞれに大きな爪あとをつけることになった。

143地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:19 ID:g5Th7b52
特に劉鳳の場合は深刻だった。彼はこのゲームで最も死を目の当たりにした男だろう。
自分の力が及ばず救うことができなかった 平賀才人
自分がいないところで、しかし防ぐことが可能だった キャプテン・ブラボー 桐山和雄の死
そして目の前で死んだ仲間 タバサ アミバ
「劉鳳はん、見張りをやるちゅうて言わりはったけどきっと気持ちの整理をしたいんやろ。自分自身にいらついている、無力感に浸ってる…」
服部の鋭い洞察力は彼の変化を見抜いていた。そして今何をすべきかをも考えていたのだった。
「この先このゲームで必ず劉鳳はんの力が必要になる。せやから、今のうちに迷いを無くしておきたいんや。そのためにもじっくりと話をする時間が欲しい。まぁ、ようは情報収集ちゅうのはついでや」
吉良は少しの間考え込んだが、頷きこう言った。
「君がそこまで考えているなら仕方が無い。しかし約束してくれ。必ず危険なことはしない、すぐにこの家に帰ってきてくれ。いいな?」


一人一人と固い握手をかわしながら思う。
「神楽はんのこと、頼みまっせ吉良さん」「大丈夫だ、任してくれ。彼女もそろそろ起きる頃だろう」
はやく出ていけ、このエセ関西人が………。
「気をもむな、劉鳳君。今はやるべきことをやるんだ」「ああ、あなたも気をつけてくれ」
…こいつよく見ると男のくせに綺麗な手をしているな。まぁ、私にそっちの趣味はないんだがね。
「鍵、しっかりかけてね。外に出歩かないでね?あ、あと絶対電気はつけちゃ駄目だよ」「わかってるよ、コナン君こそ危険なことはしないようにな」
なんだこれは?これではまるで私がガキのようじゃないか。こいつだけは死んで帰ってこなくていい…。
144地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:24 ID:g5Th7b52
「じゃ、約束の時間までに必ず帰ってきてくれ。みんな…死ぬなよ…」
三人の男たちの背中が見えなくなるまで眺め、ドアを閉めた。そのままリビングには入らず軽やかな足取りで階段を上り二階の神楽がいる部屋へと向かう。その顔には隠しきれない狂気と嫌悪の表情がありありと映し出されていた。
(ふぅ……やはり耐えるというのはストレスだ。そしてストレスは体調を崩す原因でもある。私にはやはり正義感あふれる偽善者を演じるのは難しいな。吐き気をこらえるのに一苦労だ。)
トン、トン、トンとリズムよく一段一段を踏みしめる。今、この家には吉良と神楽しかいない。それが吉良を少し“ハイ”にしているのだ。
145Classical名無しさん:08/01/29 23:24 ID:CQDMESM6
支援
146地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:24 ID:g5Th7b52
ドアをノックし、部屋に入ると神楽は睡眠中だった。ここ数時間でいろいろあったからだろう、宇宙最強の夜兎族と言ってもやはり女の子。
眠気に負けて二階で仮眠をとっていたのだ。それにしてもこうしてスヤスヤと寝息をたておとなしい姿を見るとただのカワイイ美少女なのだが…。
彼女が寝ていることを確認し、吉良は物音をたてないように静かに目的の“モノ”へと向かう。そしてベッドのそばで膝をつき、ウットリとした表情をうかべながらその“モノ”の美しさに酔う。
(見ろ、この美しさッ!!すらりとした指、それぞれの指の長さのバランス、関節の節目のへこみ具合、色の白さッ!!多少手の甲の骨の盛り上がりが足りないのが惜しいな…。少し乾燥肌なのも気になるところだ。)
147地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:31 ID:g5Th7b52
自分の世界へと入り込む吉良。彼の手フェチ議論はえんえんと続く。それもだんだんと白熱してきたのか神楽の手をとりながら。
(マリアさんには及ばないが、それでも一級品だ。爪はどうだ?あまり手入れは頻繁に行ってないようだな。小指の爪だけのばしているのか。
おや、なんだこれは?人差し指になんかついているぞ…ちゃんとキレイにしとかなければ。う〜む…欲をいえば全体的な肉の厚さかな…。もう少し女性らしく薄ければ…)
「…なにしてるアル」
どすの効いた声が吉良にかけられる。顔をひょいと上げると眠そうな神楽とばっちり目が合ってしまった。
いやな汗が背中を伝うのを意識しながら引きつった笑みで苦しい言い訳をする。
「お、おはよう神楽君。君の健康状態が気になってこうして脈を測ってたんだよ」
「ふむふむ、なるほど…。確かに健康状態を測るには脈を測るのが一番アル」
神楽の言葉を聞いてどうやら大丈夫そうだと思ったら…
148Classical名無しさん:08/01/29 23:32 ID:T3AXXSG.
支援
149地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:32 ID:g5Th7b52
「ってそんなわけあるかぁぁぁああああああッ!!」
盛大な乗りつっこみを受けて壁際まで吹き飛ばされる。寝起きにもかかわらずなんてテンションの高いヤツだ。
「これだから男は信頼できないアルヨ!!マミーが言ってたネ、男はみんな狼だって」
「ご、誤解だ!!私はなにも本当に君のことが心配で…」
「嘘おっしゃい!!そんな風に…嘘をつくような子に育てた覚えはありません!!ああ、天国のお父さんが今の吉影を見たらなんて言うか……」
「なんでお母さん?」
頭が痛くなるようなやり取りだ。ついついつっこんでしまったが、こんなのは私のキャラじゃない。
「本当に心配だったら食事の用意をひとつでもするもんじゃないのかネ、ええ?吉良君?」
「…わかったよ、下でなにか食べられるものを持ってくるから待っていてくれ」
そう言って立ち上がり一階のリビングへと向かう。それを見た神楽は二度寝をしようと布団をひきよせこちらに背を向ける。白くきめ細かい肌をした首があらわになる。
(くそッ!こいつにこの吉良吉影の“本性”を打ち明けてやりたい…こいつにこの“心の底”を聞いてもらいたい。お前のその細い首をこの手で絞め殺してみたいってことをな…)
ピクピクと震える欲望を無理矢理押さえ込み、階段を下りリビングへと向かう。
(なんとかしておさえるんだ。せっかくあのガキと関西人の信頼を得つつあるというのに下手な行動をとるとバレてしまう。まだだ、まだ時期じゃない。落ち着くんだ吉良吉影……)


150地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:33 ID:g5Th7b52
この家はリビングとキッチンがひとつになっているタイプの家だった。食べられるものといえば支給された食べ物と普通におかれている食べ物をさがすしかない。だが先がわからない現状は現地調達できるだけしたほうがいいだろう。
そう思い食料を探しに、まずリビングに入っていく。
リビングには電気がついていなかった。
(あの小僧は電気をつけるなといったがそんなのは関係ない。第一こんな民家に殺戮者なんてこないだろう。)
無視して電気をつけ食料品を探す。
(それにしても整理されなさすぎだろ?デイバッグはあちこちに放置されているし、なにに使ったがわからんがペンやメモまで散乱している。)
「ええい!気になる!こいつらはどこまで几帳面じゃないんだ」
部屋中に散らばったものを集め整える。部屋の隅に固めておく。メモや他の支給品も丹念に入れておいた。
「…これで落ち着く」
はやくしないと神楽がごねると思いキッチンの棚や冷蔵庫の中を覗き込む。
(こう見えて私は料理がうまく、評判がいいのだよ。なにか材料はないのかな?下の棚も色々探ってみるがなにもないなぁ…。それにここに住んでいた人物も相当適当だな。鍋や皿の中に無造作に小麦粉やマヨネーズがぶち込まれてるぞ。料理するときに困らないのか?)
吉良が几帳面に皿や鍋、調味料を整頓していた時だった。

151地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:34 ID:g5Th7b52
ぱりん

さっとリビングのほうに顔を向けるがなにも見えない。
音を不審に思いながらゆっくりと部屋全体が見えるようにキッチンをそろりそろりと移動したときだった。

ぱりん 二度目のぱりん
そして天井に設置されてあった電球が破壊される。その時吉良は見た、一直線の赤い閃光が家の外より放たれたのを。
ドドドドドドと自分の心臓が猛烈に鼓動しているのを聞くかのようだった。明らかに誰かから襲撃されている。そして今の自分の状況を冷静に分析しようと暗闇の中、なるべく身をかがめ考える。
(落ち着け、落ち着け!!相手の正体がわからない以上無闇に動き回るのは危険だッ!!落ち着いて相手の出方を窺う、この状況ではそれがベストだッ!!)
ほんのすこしだけ顔をキッチンの角からのぞかせリビング全体が見れるようにする。襲撃者は先ほどから容赦なく光線を打ち続けている。
赤い光が見えた、と思ったら閃光がはしり壁や床あちこちにこげあとをつけている。“数撃ちゃ当たる”の考えだ。こげあとから見て当たったら痛い、じゃすまされないだろう。額に汗を浮かべながら吉良は思う。
(この部屋から出るにはふたつだ。襲撃者がいる正面の窓からと玄関につながる扉。私の位置から扉には四歩半ってとこか…。
ふん、冷静になれば攻撃もワンパターン、こっちの姿が見えなくなるようにわざわざ灯りをけしてくれる…どうやら相手は“おつむ”はそこまでよくないようだな…。このまま逃げさせてもらうよ)
152地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:34 ID:g5Th7b52
その時だった。小さい爆発音と共に室内に風がふき、火薬のにおいが充満する。窓に近い位置から連続して爆発音が途切れずに聞こえてくる。そしてさきほど吉良が逃げようとした玄関へと続く扉の近くでも一発。
(ち…ちがう……私の推理は間違いだ!だいたいの見当をつけて“数撃ちゃ当たる作戦”をするつもり……というのは私の考え違いだ!ヤツの動きは計画的だッ!)
爆発が終わりまた赤い閃光。そしておさまった時にだんだん部屋の奥に追い込むように爆発。扉の近くは特に中心的に狙われている。
(ヤツは赤い閃光で私の動きを封じ、その後殺傷能力の高い爆弾で私にとどめをさすッ!!そして爆薬はだんだんと迫ってくるッ!!金魚すくいで金魚を捕まえるかのように隅に隅に私を追い込み、私に迫ってくるッ!!)
もう自分の能力を隠している暇もない。爆弾のスタンド「キラークイーン」を呼び出す。
(ゆ…床をぶち抜いて逃がれるんだッ!)
キラークイーンのラッシュを床に叩き込むが、片手しかないうえ体力・精神力ともに万全ではない今の状態ではくりぬいている時間が足りない。
153Classical名無しさん:08/01/29 23:35 ID:yZwxtWZA
154地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:35 ID:g5Th7b52
(落ち着け、落ち着くんだ!!この狭い部屋という空間でどうやってあの攻撃をかわすか?
三択−ひとつだけ選びなさい
答え1 ハンサムの吉良は突如反撃のアイデアがひらめく
答え2 仲間がきて助けてくれる
答え3 かわせない。現実は非常である。

私が○をつけたいのは答え2だが期待はできない…10分ほど前に外に出てった服部たちがあと数秒の間にここに都合よく帰ってきてジャジャーンと登場して
「まってました!」と間一髪助けてくれるってわけにはいかないな。逆に服部たちもすでに何者に襲撃されているかもしれない)
「答えは1だ…仕方ない、これだけはやりたくなかったんだがな…」
さきほど棚を整理していたときに出したマヨネーズを片手に持つ。
「キラークイーンッ!!このマヨネーズを爆弾にするッ!!」
吉良は見ていたのだ。一瞬きらめく閃光が映し出した人影を。爆弾に変えたマヨネーズをキラークイーンの精密機動性とパワーで正確にそこにいるであろう人影に向け、投げる。
そして

ドォゴオ―――――ン

155Classical名無しさん:08/01/29 23:35 ID:4ibfhDoE
          
156Classical名無しさん:08/01/29 23:36 ID:cSM9Qcus
                         
157地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:36 ID:g5Th7b52
相手の爆弾とはくらべものにならないほどの威力。人に直撃せずとも相当のダメージを与えたであろう。
「この吉良吉影の平穏を邪魔するものは誰であろうと容赦しない。消し去るだけだ…。」
誰に問いかけるわけでもなく言った独り言に答えるかのように突如懐中電灯が吉良の顔を照らす。
あまりの眩しさに目が眩む吉良に声がかけられる。
「それがあんたの正義なんか?だとしたらえらい自己中心的やな」
光に照らされた吉良の顔が驚愕に染められていくのがわかる。
そこには先ほどまで上で寝ていた神楽、そして10分ほど前に出て行った劉鳳、コナン、服部の姿があった。



通常探偵が犯人を告発する時にはいくつかの順序を踏む。まず、事件が起きた時の状況、殺害方法、犯人のトリックといった感じだ。もちろん中には例外があるが、犯人を名指しで言うのはほとんどがそれを説明し終えた後だ。
なぜなら真っ先に犯人の名を言うと反論や動揺が生じる。
彼女には不可能だ、彼なわけがない、などと言う言葉と供に犯人が暴れだす、被害者側が怒りに我を忘れるという行動が現場で発生し、混乱がおきる。そして混乱は新たな事件を起こす可能性がある。これが探偵たちが犯人を真っ先に名指ししない理由である。
しかし今回はまさしく例外だ。目の前の男に考える時間を与えてしまったら、逃走だけでなく新たな殺害の可能性も出てくる。よって二人の探偵は結論から組みたてることにしたのだ。
吉良吉影が犯人であるという結論から……。


158Classical名無しさん:08/01/29 23:36 ID:4ibfhDoE
           

159Classical名無しさん:08/01/29 23:36 ID:yZwxtWZA
160地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:37 ID:g5Th7b52
あ然とした吉良を見つめるコナンは自信と決意を込めた声でたったひとつの真実を告げる。
「一人の探偵として宣言する!!アミバさんを殺したのはお前だ、吉良吉影!!」
コナンのまさかの宣言に隣にいる神楽、劉鳳が息を飲むのがわかった。神楽がものすごい勢いで反論しようとするのを遮る。
あくまでCOOLで冷静に。
「殺害方法はスタンドまたはそのほかの能力などによる体内からの爆破。恐らくアミバさんの口から砂糖の臭いが微かにしたのと、近くに置いてあったコップから見て砂糖か、砂糖水そのものを使い殺害した。」
コナンがしゃべっている間になにかを探していた服部は目的のものを見つけ、それをみなに見えるように掲げながら自分の推理を付け加える。
「あんたの能力がわかったんのはさっきのマヨネーズのおかげや。わいが護身ように預かったニアデスハピネス、あんたはこれが武器だとは知らんかったみたいやけど、爆破したものはこうやって破片ができてるやろ?」
確かに服部の手には爆破によって破壊されたイスの破片がつままれていた。
「あのマヨネーズ、爆破したにも関わらず中身が散らばらなかった。一滴も、や。このことから中に爆弾が仕掛けられたちゅうのは有り得ない。
なにかわいらが見えない衝撃波や、気などを使ったとしても中身が消えたちゅうのに説明はつかへん。」
服部の言う通りだった。視線を外に向けるとそこにあるべきマヨネーズでグヂュグヂュになったものは一切なかった。
161Classical名無しさん:08/01/29 23:37 ID:cSM9Qcus
                           
162Classical名無しさん:08/01/29 23:38 ID:cSM9Qcus
                            
163地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:38 ID:g5Th7b52
「そのことから考えると、マヨネーズそのものが爆弾になったと考えるしかない。もちろん第三者の能力でマヨネーズが爆弾になったちゅう可能性もないわけはない。
せやけど仮にそうだとしたら投げた“モノ”がマヨネーズちゅうのはへんやろ。
普通この追い込まれた状況で相手にダメージを与える目的で投げるものは重いものとか大きいもの。にもかかわらず投げたのはマヨネーズ?棚を整頓してた時に鍋やフライパンが出てるにもかかわらず、やで?
ちゅうわけであんたの能力は“モノを爆弾に変える”ことができる能力。せやろ?」
言葉に込めるのは確信と誇り。お前のトリックは見抜いたという探偵の言葉。
「…言ってることがわからない…イカれてるのか?この状況で」
「その汗は嘘をついている汗だぜ…吉良吉影」
とぼけようとする吉良にコナンが皮肉をこめて言う。
普段ならばこんな穴の多い推理を彼らはしないだろう。ましてやここには核金・アルター・スタンドなどの不確定要素が多すぎる。しかし彼らは賭けたのだ。
自分たちの長年の勘とひとりの男のダイイングメッセージに。
アミバという一人の男の死ぬ間際の最後の「反逆」に。
164Classical名無しさん:08/01/29 23:38 ID:CQDMESM6
 
165Classical名無しさん:08/01/29 23:38 ID:4ibfhDoE
        
166地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:39 ID:g5Th7b52
「それにしてもこんな賭け、普通はやらんで工…コナン?あるかもしれない能力を知るために容疑者の命を危険にさらすなんて」
「バーロー、よく言うぜ。“武器がひとつだけじゃ変や”とか言って不慣れな核金をつかったのはどこの誰さんだよ?」
「まぁ、結果オーライやないか!!」
ニヤニヤする服部の軽口に同じくニヒルな笑みを浮かべ答えるコナン。
そして表情を一変させ、かつては仲間として信頼の目を向けていた目を今は憤怒と黄金の精神に輝かせ2人は吉良に指をつきつけ同時に叫ぶ。
「「吐き気をもよおす“邪悪”とはッ!!てめーの勝手な都合で他人を踏みにじることだッ!!ゆるさねえッ!!あんたは俺らの心を裏切ったッ!!吉良吉影、犯人はお前だ!!」」

167地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:40 ID:g5Th7b52
屈辱だった。かつて吉良吉影のプライドをここまでめちゃめちゃにした者はいただろうか?いや、いなっかった。
本名、吉良の本性「人殺しのさが」、スタンド能力。知られてはいけないものを全て知られた。なおかつそれを赤の他人の目の前で、証明され説明される。
吉良の「植物のような平穏な生活をおくる」という夢が根底から崩されてしまったのだ。
もう言い逃れはできない。
完膚なきまでに自らの策を潰された吉良。
彼の何かが、壊れた。そして

いつのまにか風は止んでいた。木も動かない。木の葉も動かない。

「ふふ、ふふふ…ふははははははははは!!」
ゆらりとその場に立ち上がる。
「そうだ、私がアミバを殺した」

―――雨が降り出しそうだった。
168Classical名無しさん:08/01/29 23:40 ID:4ibfhDoE
      
169地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:40 ID:g5Th7b52
【F-2 民家/一日目 夜中】
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:全身打撲。疲労大。左肩と全身に湿布と包帯。強い決意。
[装備]:ハート様気絶用棍棒@北斗の拳 、懐中電灯@現地調達 包帯と湿布@現地調達 スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品(食料一食消費)、鷲巣麻雀セット@アカギ、
[思考] 基本:この殺し合いを止める
1:吉良を問い詰め、真実を言わせる。
2:ルイズの最後の願いを叶えたい。
3:覚悟さん達と合流
4:ゲームからの脱出
5:ジグマールを警戒
6:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
[備考]
※メガネ、蝶ネクタイ、シューズは全て何の効力もない普通のグッズを装備しています。
※自分達の世界以外の人間が連れてこられていることに気付きました
※川田、ヒナギク、つかさ、服部、劉鳳、アミバの情報を手に入れました。
※平次と二人で立てた仮説、「光成の他の主催者の可能性」「光成による反抗の呼びかけの可能性」「盗聴器を利用した光成への呼びかけの策」 等については、まだ3人に話していません。又、話す機会を慎重にすべきとも考えています。
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。
※「DISCを使うと死ぬ可能性がある」という吉良による情報を考慮に入れていますが、確定はさせていません。

170Classical名無しさん:08/01/29 23:40 ID:4ibfhDoE
            
171地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:41 ID:g5Th7b52
【服部平次@名探偵コナン】
[状態]:健康。両頬が少し腫れている。
[装備]:スーパー光線銃@スクライド、木刀正宗@ハヤテのごとく、携帯電話 核鉄ニアデス・ハピネス@武装練金
[道具]:支給品一式(食料一食消費)、首輪、「ざわ……ざわ……」とかかれた紙@アカギ(裏面をメモ代わりにしている)、
    色々と記入された名簿、ノート数冊、ノートパソコン@BATTLE ROYALE、
    ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)、綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく(未開封)、
    ギーシュの造花@ゼロの使い魔、スティッキィ・フィンガーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険 (内容、使用方法不明)、
    キュルケの杖、拡声器、
    才人のデイパック(内容は支給品一式、バヨネット×2@HELLSING、
     紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)未確認)  
[思考・状況]
基本:江戸川コナンよりも早く首輪のトリック、事件の謎を解除する。
1:吉良を問い詰め、真実を言わせる。
2:ルイズの最後の願いについてはどうするか。
3:シェリスを発見し、真実を明らかにする。
4:範馬勇次郎以外の光成の旧知の人物を探り、情報を得たい。
5:自分自身にバトルロワイアル脱出の能力があると偽り、仲間を集める(一時的に保留)
172Classical名無しさん:08/01/29 23:41 ID:4ibfhDoE
     
173地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:41 ID:g5Th7b52
[備考]
※劉鳳と情報交換を行い、シェリスの名前を知りました。
※劉鳳、コナンの事は全面的に信用しています。吉良、神楽に対してはまだ保留しています。
※自分自身にバトルロワイアル脱出の特殊能力があると偽る策を考えています。
※バトルロワイアル脱出の特殊能力は10人集まらないと発動しません。(現時点での服部設定)
※脱出作戦を行うかはどうかは考え中。
※バトルロワイアル脱出の特殊能力についてはまだ吉良に言っていません。そのうち時期を見て言うかは保留です。
※銀髪銀眼の人物が殺し合いに乗った事を知りました。
※バイクCB1000(現地調達品)は、民家から少し離れた路地に、シートを被せて隠しています。
※コナンと二人で立てた仮説、「光成の他の主催者の可能性」「光成による反抗の呼びかけの可能性」「盗聴器を利用した光成への呼びかけの策」 等については、まだ3人に話していません。又、話す機会を慎重にすべきとも考えています。
※スーパーエイジャが、「光を集めてレーザーとして発射する」 事に気づきました。
※「DISCを使うと死ぬ可能性がある」という吉良による情報を考慮に入れていますが、確定はさせていません。

174地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:42 ID:g5Th7b52
【劉鳳@スクライド】
[状態]:疲労中、全身に小程度のダメージ、左肩と腹部にダメージ中、右拳骨折治癒途中(包帯が巻いてある)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料一食消費)、4色ボールペン、色々と記入された名簿、スタングレネード×2 、タバサの眼鏡
    タバサのデイパック(内容は液体窒素(一瓶、紙状態)、タバサの支給品一式 、色々と記入された名簿
[思考・状況]
基本:正義を全うし、ゲームとその主催者を断罪する。
1:吉良を問い詰め、真実を言わせる。
2:アミバの遺志を背負い、正義をなす。
3:ルイズの最後の願いについてどうするか。
4:悪(主催者・ジグマール・DIO・アーカード・村雨)は断罪、弱者(シェリス、キュルケ、神楽)は保護。
5:シェリス・防人の知り合い・桐山の知り合い・核鉄を探す。
6:シェリスに事の真相を聞きだす。
[備考]
※絶影にかけられた制限に気付きました。
※桐山・防人・服部・タバサ・吉良・コナンと情報交換しました。
※平次の策に乗る気はありません。
175Classical名無しさん:08/01/29 23:43 ID:cSM9Qcus
                     
176地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:43 ID:g5Th7b52
※銀髪銀眼の顔に傷のある人物が殺し合いに乗った事を知りました。
※「DISCを使うと死ぬ可能性がある」という吉良による情報を考慮に入れていますが、確定はさせていません。
※液体窒素の瓶(紙状態)、スタングレネードなどは、仲間の誰かに渡しても構わないと思っています。

【神楽@銀魂】
[状態] 軽度の疲労
[装備] 神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂 、ジャッカル・13mm炸裂徹鋼弾予備弾倉(25.30)@HELLSING
[道具]支給品一式×2(食料一食消費) 陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた 首輪
[思考・状況]
基本: 殺し合いに乗っていない人は守る、乗っている人は倒す。
1:吉良を問い詰め、真実を言わせる。
2:マダオ達を助けに行きアフロ(ジグマール)をぶっ飛ばす。
3:銀ちゃんと新八を殺した奴は許さない
4:新八を殺したのは一体……?
177地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:45 ID:g5Th7b52
[備考]
※原作18巻終了後から参戦。
※新八を殺した人間について、吉良の可能性は今の所除外しています。
※吉良がスタンド使いと知りません。 他の五人が行った情報交換の内容も正確には知りません。
※吉良のことはある程度信頼しています。
※キュルケとケンシロウについては細かいことをまだ四人に話していません。
※「DISCを使うと死ぬ可能性がある」という吉良による情報を考慮に入れていますが、確定はさせていません。

【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左手消失(止血済み)、右手首裂傷、胸全体に真一文字の切り傷、出血、疲労、ストレス、
[装備]:空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:支給品一式(一食消費)、核鉄ソードサムライX@武装錬金、
    包帯・消毒薬等の治療薬、点滴用セット(十パック)
    病院内ロッカーの鍵(中に千切れた吉良の左手首あり)
178地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:46 ID:g5Th7b52
[思考]
基本:心の平穏のため、自らの秘密を知る可能性のある者は全て始末する。主催者も含めて。
1:自分の秘密を知ってしまった四人を始末する。
2:空条承太郎の記憶DISCを死守し、誰にも見せない。
3:引き続き核鉄による治癒を続ける。出来れば休息も取る。
4:顔に傷のある女(斗貴子)は襲ってきたら始末、マーティン・ジグマールを殺す。コナン、服部等も折を見て始末する。
5:自身を追うもの、狙うもの、探るものなど自身の『平穏な生活』の妨げになると判断した者は容赦なく『始末』する。
6:できる限り力無き一般人を演じる。スタンドも無力になっている風を装う。
7:もし脱出できるのであればしたい。
[備考]
※『バイツァ・ダスト』拾得直後からの参戦です。
※『バイツァ・ダスト』が使用不可能であることに気づいていません。
 しかし、『バイツァ・ダスト』が敗れたことを知り、翻って、『バイツァ・ダスト』に何らかの盲点、弱点があると考えています。
179Classical名無しさん:08/01/29 23:46 ID:4ibfhDoE
      
180地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:46 ID:g5Th7b52
※川田、ヒナギク、つかさ、服部、アミバ、劉鳳、コナンの情報を手にいれました。
※左手を失い、シアーハートアタックの解除が不可能になりました。
 吉良が死ぬまで永遠に、熱源を求めて周囲を動き回っています。
 ただし、制限の影響で破壊できる可能性はあります。
※自分がスタンド使いであることがばれ、平穏な生活が離れたことから強いストレスを感じてます。またそのため、自分をスタンド使いと教えたコナンに不快感を抱いています。
※自分達の世界以外の人間が連れてこられていること、時代の違う人間が居ることに気付きました。
※承太郎の記憶DISCの内容から、自分が負けたこと、死んだこと、それより先の未来で承太郎が負けた (死んだ、と思っている)事を知りました。
※記憶をDISCにして抜き取る "黒い仮面を被ったような半身の溶けたスタンド" の事を知り、主催者なのではないかと疑っています。
※アルター、核鉄について知りました。
※核鉄、ソードサムライXの能力は知りません。また、所持していることは誰にも話していません。

181地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:47 ID:g5Th7b52
[共通備考]
※劉鳳、服部、アーカードの持つ名簿には以下の内容が記載されています。
 名簿に青い丸印が付けられているのは、カズマ・劉鳳・シェリス・桐山・杉村・三村・川田・才人・
 ルイズ・防人・カズキ・斗貴子・タバサ・キュルケ・コナン・服部 ・灰原
 赤い丸印が付けられているのは、ジグマール・DIO・アーカード・散・村雨
 緑色の丸印が付けられているのは、蝶野
※劉鳳、服部、コナンは吉良がスタンド使いということを知りました。
※ルイズをF-3の川岸に埋葬しました。折れた軍刀は墓標として刺してあり、キュルケの杖、拡声器は服部が所持しています。
※ルイズの最後の願いについてはまだ話し合っていません。
※吉良はスタンドのルールについてはなにも言っていません。
※アミバの持っていた支給品一式×3 (食料一食消費) は、F−2民家の中にあります。
※アミバの持っていたノートパソコンには、大東亜共和国謹製のOSが組み込まれています。
※吉良は服部たちが書いたメモの内容には目を通していません。
※吉良はデイバックに近接しています。どこになにが入っているかは整理したのでわかっています。
※服部たちはキラークイーンに接触起爆型、タイミングを任意で選択可能な爆弾の2種類があることを知りません。

182地獄へ道連れ ◆bnuNxUeVnw :08/01/29 23:49 ID:g5Th7b52
投下完了しました。
PCの調子が悪く、投下に時間がかかって申し訳ありませんでした。

誤字脱字矛盾点があれば指摘ください。
183Classical名無しさん:08/01/29 23:50 ID:jBRLfBgs
投下乙

キラさんwwwwそれは確実な死亡フラグwww
184Classical名無しさん:08/01/29 23:51 ID:T3AXXSG.
投下乙!
吉良まさかの早期露見。コナンと平次は正に「逆に考えるんだ」を実践しましたね
ところどころに入ったジョジョネタが良い感じだったと思います
しかし次の話は結構難易度高いような……
何はともあれGJ!
185Classical名無しさん:08/01/30 00:10 ID:5cFI4.Ig
投下乙!
探偵と吉良、これほど悪い組み合わせがあっただろうかっ!?
次回あたりで「コナン、探偵さ」とか言っちゃいそうなノリや開き直った吉良、ブチキレ劉鳳がどうするかなど期待の色が隠せない展開がなんとも…
186Classical名無しさん:08/01/30 00:14 ID:KuN.2Scc
投下乙。
これは……吉良ヤバいなぁ。
187Classical名無しさん:08/01/30 00:14 ID:xkHboQAM
一つ指摘
服部の一人称は「わい」じゃなくて「俺」だったと思う
188Classical名無しさん:08/01/30 00:27 ID:DdwCGIQ6
投下GJ!
吉良ヤベェ――――ッ!!
ていうか、何気にみんな鬼装備だぞ……

ああ、続きが気になるぜ! GJ!
189Classical名無しさん:08/01/30 00:33 ID:XOX/Q4ts
投下乙!
吉良は相手が悪すぎるw
神楽と劉鳳がどう動くかに期待。

しかし、服部に比べてバーローはと言われ続けたコナンがこんなにも輝く日が来るとは・・・
190 ◆WXWUmT8KJE :08/01/30 01:08 ID:6xbzccGQ
GJ!
まさしくコナン!
爆弾で爆弾の能力をあぶりだす……いい発想ッす。
やっぱ推理させると輝く。

それでは、ラオウ投下させていただきまする!
 満天の星が瞬き、闇の中に僅かな光を月と共に送る。
 人に光を与えんと瞬く星のもと、コンクリートで舗装された道路が照らされていた。
 吹き荒れる冷たい風の中、転がるものはゴミしか存在しない。
 道路の周囲にある団地群から考えれば、本来ならこの時間は帰宅に急ぐサラリーマンがチラホラいるであろう。
 それはこの殺し合いが行われている現在では無意味な事実。
 バダンに用意された舞台では参加者を追い詰め、精神に異常をきたすため以外に存在価値はない。
 孤独は人を狂わせる。
 ショッカーから続く悪の組織はその事を熟知している。
 ゆえに、この舞台の広さに、たった六十人しか存在させないのはバダンにとっても好都合だった。
 殺し合い、人数を減らす。
 誰もバダンがそのような事をするのは分からない。
 もしかしたら、進行役となっているものにも、分からないのかもしれない。
 大首領とは、バダンの一員にとっても恐れ多いもの。
 おいそれと真意を計ることは出来ない。
 まさに、バダンにとっての天。
 しかし、天を目指さんと道を往く漢が月の光の下に現れた。


 漢、筋骨隆々。短く刈り上げた金髪を持ち、威厳溢れる眼差しで全てを射抜く。
 弱きものが見れば、闘気で陽炎のようなものを漢の背中から見たのかもしれない。
 また、別の弱きものが見れば、あまりの巨大な影を錯覚し、地響きを感じたのかもしれない。
 その威圧感に押しつぶされ、地に伏したのかもしれない。
 一言で言うなら、圧巻。
 おそらく、この殺し合いに連れてこられた参加者の半分程度なら、目の前に立つだけで勝利を得ることが出来る。
 もっとも、漢にそんなものは興味はない。
192Classical名無しさん:08/01/30 01:09 ID:DdwCGIQ6
よし、支援
 もともと彼が存在していた世界は、核の炎に全てが焼かれ、力が全てとなった。
 その世界、彼にとってはまさに望んだとおりの世界だ。
 この殺し合いも同じ。
 ただ己の拳を信じ、己が覇道を信じ、己が戦いを信じ、歩んできた。
 だからこそ、立ちはだかるもの全てを砕いてきた。
 元いた世界で、天の道を往くために父であり、師であるリュウケンを自らの手で殺した。
 愛を持って挑むレイを秘孔新血愁を突き、苦しんで死ぬ役目を与えた。
 コウリュウをケンシロウとの戦いで得た傷の癒え具合を試すためだけに、その剛拳で葬った。
 病んでいる弟、トキと激突し、弱りきったその姿に人として最後の涙を流しきった。
 黒王号すらも背に跨らせたほどの漢、雲のジュウザを下し、山のフドウに恐怖を覚え、それでも天への道を諦めたことはない。
 突き進み、邪魔するものを砕く。たとえ邪魔するものが、無二の弟であったとしても。
 今までそうしてきた。これからもそうするつもりだ。
 一歩、ラオウが足を踏み出す。
 月光に照らし出されたその瞳に、最大の障害と判断した、弟のケンシロウ。
 そして、最大の敵と認めた範馬勇次郎。
 自分に立ちふさがるにふさわしい葉隠覚悟。
 まだ見ぬ強敵を映しながら。



 大通りを堂々と歩くのは、ある種ラオウの自信の表れだった。
 奇襲するなら好きにしろ、その程度では死にはしない。
 口には出さないが、ラオウの威圧感と、圧倒的な強さがそう示している。
 大またで道を往くラオウが、ふと足を止める。
 本郷の蹴りが突き刺さった、いまだ痛む脇腹へと手を当てた。
 あの者は強かった。素直にラオウはそう思う。
194Classical名無しさん:08/01/30 01:10 ID:eXVrltVg
     
 鍛え抜かれた身体から生み出す、脅威的な怪力。そのスピード。多彩な技。森林である地の利を活かそうとした冷静な判断力。
 何より、その凄まじい信念がラオウの心に焼き付いている。
 死をも辞さない一撃。信念とともに、本郷はラオウの心に一生生き続ける。
 生涯の強敵(とも)の一人として。
 その強敵も本郷だけではない。

 坂田銀時、彼もまたラオウの心に焼き付いている。
 死兆星を見たと答えたのは、ノリだと答えたつかみ所のない男。
 雲のジュウザを重ねるほど、ラオウにとっては理解しがたい、不思議な男であった。
 その剣術はみごとの一言に尽きる。
 ラオウと戦い、その間合いを利用して拳王に攻める隙を与えなかった。
 何より、勇次郎の腕を奪ったあの奇襲。
 もし、標的が自分であったなら、腕が切られたのは勇次郎でなくラオウであっただろう。
 そう思えるほど速く、美しい銀の輝きだった。

 そして、その戦いのさなか、再会を果たした男範馬勇次郎。
 もっとも、最初の場所で楽しめそうな相手と見初められ、ラオウ自身は最大の障害の一つと認識したにすぎない。
 お互いに激突は避けられず、また避ける気もなかった。
 熾烈といえるその戦い。
 本郷と負けないくらいの激戦を勇次郎と繰り広げた。
 銀時の奇襲がなければ、地に伏したのは己だったかもしれないと、珍しく思う。
 そこまでの思考を、凶暴な笑みで否定する。
 次に会えば、完膚なきまで叩きのめす。
 そのための北斗神拳。そのための拳王。
196Classical名無しさん:08/01/30 01:11 ID:DdwCGIQ6
 
 勇次郎の高笑いが、ラオウの耳に蘇り、いっそう強く地面を踏む。
 あの男は生きている。
 あの男はまた自分と戦う。
 再会は命を懸けたやり取りとなるであろう。
 それが、待ち遠しくてたまらない自分がいる。
 そのことにフッと笑って、自分に自嘲する。
 自分が心を躍らせるほどの強敵。
 そのものと出会えたことだけは、光成に感謝してもいいかもしれない。
 しかし、その思考も数秒。
 修羅として歩む拳王は脇腹より手を外し、またも歩みを進める。
 


 道を行きながら、ラオウはケンシロウが地下で北斗神拳究極奥義、無想転生を使った事実を思い出していた。
 自分と対等に渡り合える実力……いや、奥義を使える分、ケンシロウが上をいっているかもしれない。
 もっとも、ラオウはそんな考えは己のプライドで粉砕する。
 弟であるケンシロウが自分よりも上を行くなど、認められるはずがない。
 むしろ、ケンシロウでさえ身につけた奥義、ラオウのものにしてくれようと更に闘志を煮えたぎらせる。
 静かに目を瞑り、ケンシロウにあり、ラオウにないものは何か、考える。
 愛…………先ほどのトキとのやり取り。まるで、トキはラオウに足りないものは愛だと言いたげだった。
 確かにケンシロウなら愛に満ちているだろう。
 暴力が支配する世界で、無力な人間を救うために北斗神拳を振るっていた稀有な男。それがケンシロウだ。
 ラオウは今まで、そんなケンシロウを脆弱だと思っていた。
 だが、結果はどうだろう?
 ケンシロウは北斗神拳の究極奥義を身につけ、拳王に迫るほどの力を得た。
 そして、本郷に銀時。
 彼らもまた、ケンシロウと同じく愛を持って拳王に、勇次郎に傷を与えた。
 彼らに愛があったかと尋ねられれば、拳王はあったと答えるであろう。
198Classical名無しさん:08/01/30 01:12 ID:DdwCGIQ6
  
 おそらく、残された者も。
 その愛が、本郷のライダーキックに力を与えたのだろうか?
 その愛が、銀時に勇次郎の腕を斬りおとすほどの動きを見せたのだろうか?
 なら、二人にそれだけの力を与えた愛とはいったいなんだろうか?
 ラオウの疑問に月は答えない。
 今まではその答えを必要ともしていなかった。
 天を目指す覇者に愛はいらない。必要なのは力のみ。
 そう考えていたからだ。
 今でもその考えは間違っていないと信じているが、一つの疑問が生まれたのだ。
 力を得るために、愛は必要か。
 その迷いが、トキに指摘された。

 しかし、迷いを振り払ったのは、愛ではない。
 溢れるほどの獣性、勇次郎の不遜な闘気が幻影を振り払った。
 ラオウには勇次郎が愛によって強くなったようには見えない。
 むしろその逆、愛を持って強くなるものを餌に、己を練り上げていったように見える。
 実際そうなのだろう。あの勇次郎に愛など見受けられない。
 そして、赤木。
 ケンシロウたちを逃がすために拳王に立ち向かった男。
 それは愛などではないと彼は言い切った。
 確かに、思い返してみればあの男は正義感、慈愛、優しさ、ケンシロウや本郷が持つ雰囲気全てに当てはまらない。
 感じたのは、狂気。
 赤木はこの殺し合いに乗せられるのを良しとしない。
 ただそれだけで、ラオウへと立ち向かったのだ。
 狂気の沙汰といってもいい。
200Classical名無しさん:08/01/30 01:13 ID:DdwCGIQ6
   
 だからか。愛を持たず、強く存在する赤木をラオウが気になる理由は。
 強さに愛はいらぬ。
 その一言こそ、ラオウは待っていたのかもしれない。
 だからこそ……

「ケンシロウよ、うぬが愛を持って拳王に立ちふさがるのなら、この拳で打ち砕いてみせる。
愛などいらぬ。ただ覇道へと向かい、拳をまじあわせるものが強敵(とも)でよい」

 愛への興味を己がプライドで隠したラオウの呟きが天に飲み込まれる。
 彼の歩みは、ケンシロウを追ってS3駅へと向けられた。
 天の道を往く拳の王。
 それが――――ラオウだ。

202Classical名無しさん:08/01/30 01:14 ID:DdwCGIQ6
     
【E-2 南東大通り 1日目 夜中】
【ラオウ@北斗の拳】
[状態]内臓に小ダメージ 、鼻の骨を骨折、 胴体に刀傷 限界に近い程の全身フルボッコ(強がって気にしないフリをしている)
[装備]無し 核鉄(モーターギア)@武装錬金
[道具]支給品一式
[思考・状況]
1:ケンシロウを追うためにS3の駅へ向かう。
2:強敵を倒しながら優勝を目指す。
3:覚悟の迷いがなくなればまた戦いたい。
4:赤木が気に入った。
5:愛などいらぬ!(本当は愛について知りたい)
[備考]
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。又、秘孔を破られやすくなっている事にも
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました
※自らが認めた相手に敬意を払いその生き方をも認める事をしました
※コーラに対する耐性がつきました
※誰か猛者が逝ったの感じました。
※さらに強くなるにはもしかしたら愛が必要なのかもしれないと思っていますが、表面上では愛を否定しています。
204Classical名無しさん:08/01/30 01:15 ID:DdwCGIQ6
   
205 ◆WXWUmT8KJE :08/01/30 01:15 ID:6xbzccGQ
投下終了。
誤字脱字、矛盾などの指摘をお願いします。
206Classical名無しさん:08/01/30 01:19 ID:DdwCGIQ6
天の道を往き、拳の王となる者……これは仮面ライダー拳王フラグ!!

っと冗談は、おいといて、ラオウやっぱり格好いいなあ。
強敵(とも)について考えているときの彼は、やはり悪役屈指の男前です。
決して、安心していられるダメージじゃないのになぁ。
それにしても、アカギ……。お前、いろんな奴に影響をwww
207Classical名無しさん:08/01/30 01:20 ID:ovzx6oCQ
投下乙。
>5:愛などいらぬ!(本当は愛について知りたい)
まさかのツンデレw
死んでった人々に敬意を表するあたり、どちらかと言えば原作で死亡直前のラオウに似てますね。
俺にはもうラオウ殺せないwカッコよすぎるもんw
208Classical名無しさん:08/01/30 01:22 ID:eXVrltVg
>>205
投下乙であります。
やべえ……拳王様の格好良さに痺れるぜ。
やっぱ北斗キャラはええなあ。
それとロワでの出会いによって、まったく真逆の道へと進むところもいいですね。
ケンシロウとは逆のベクトルを極めて欲しい所。
それにしてもアカギは、敵を強化する能力でも持ってるのかww
どんどん敵が成長していくw
209Classical名無しさん:08/01/30 01:25 ID:5cFI4.Ig
投下乙!
強者との出会いは人々を強くしていくもの…このロワはそれが極端すぎる
愛と狂気、どちらも限りない力だからこそラオウとて迷う。だがそれがいい
210Classical名無しさん:08/01/30 11:54 ID:mDeU/4io
交流所毒吐きで用語集みたいなの紹介されてたよ
211死亡者名鑑の守人 ◆vPecc.HKxU :08/01/30 16:02 ID:5cFI4.Ig
wikiに漫画ロワ用語集を追加しました。
死亡者名鑑、三行状態表と同じく好き勝手に書き込んでもらって構わないのでみなさんwikiを充実させちゃってください
212Classical名無しさん:08/01/31 00:38 ID:zk4P/Xjw
即予約についてのルールが新しく作られました。
詳細は議論スレにありますので見といてください。
213 ◆wivGPSoRoE :08/01/31 00:51 ID:oVNWdrNM
柊かがみ、村雨良を一時投下スレに投下いたしました。
自己リレーであることに加え、首輪、および主催者の目的に踏み込んだ内容になっています。
何卒、議論のほどをお願いいたします。

議論の結果を受け、廃棄するか、加筆修正を行って投下するかを判断したいと思います。
214Classical名無しさん:08/01/31 01:13 ID:zk4P/Xjw
乙です。感想は投下されたときに。
1つだけ、ステルス機能ってどういった機能のことを言うのでしょうか?
215 ◆wivGPSoRoE :08/01/31 01:46 ID:oVNWdrNM
>>214
ステルス機能について。

>スタープラチナの眼で注意深く観察しても、継ぎ目1つ見つからねえ。どーなってやがんだ?
(サンプル入手 ◆hqLsjDR84w氏 より)

川田が外したような首輪の表面を、承太郎のスタープラチナですらとっかかりが見つからないような表面に
偽装してしまうような機能のことです。
216 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:38 ID:qXNB5mqY
乙です。
私は特に問題となる箇所は、見付かりませんでした。
感想は本投下の時に、付けたいと思います。

投下します。
217 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:42 ID:qXNB5mqY
「ふふ……カズキ、キミのはとても大きくなるんだな…………」
津村斗貴子は潤ませた瞳で、既に大きくそそり立ったカズキのそれを見上げた。
瞳を細めながら上気したせいで熱を帯びた吐息が掛かるほどに、カズキのそれへ顔を寄せる。
「それにこんなに硬く……太くして…………んっ」
カズキのそれに軽く口付け、貪る様に吸い付き舌をはわせる。
「んん…………んはあっ……………………ちゅくっ」
湿った音をたてながら、上にそそり立つカズキのそれを舐め上げていく。
愛おしげに執拗に…………どれほど斗貴子が舌をはわせても
カズキのそれ―――サンライトハートからは、冷たい金属の味しか伝わって来なかった。
 
サンライトハートから口を離し、視線を遠くへ向ける。
今斗貴子が居るのは、病院の屋上に設置されて居る貯水タンクの上。
街灯の並ぶ夜景が広がるも、夜の闇に細部まで見通す事が出来ない。
冷たい夜風が身体を火照らした斗貴子には、心地よく感じられた。
「キミと初めて口付けしたのも、学校の貯水タンクの上だったな……」
 
―――キミと 私は 一心同体だ―――…
 
「ふふふ……まさかこんな形で、一心同体になるなんて」
サンライトハートをなぞっていた指を、自分の唇に持っていく。
 
―――キミと 私は 一心同体なのに
 
「キミとの口付けは、あれが最初で最後になったな……。二度目の時は、キミの妹に邪魔されたから」
潤んだ瞳は、陶酔し切っていて焦点が定まらない。
「…………キミの唇の感触は、今でも鮮明に覚えているよ」
 
―――キミとは口付け出来ないなんて
 
「……………………なのに何で、胸苦しんだろうな……」
 
218 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:43 ID:qXNB5mqY
 
―――あいつの所為だ
 
「あの女の口付けを見てから胸が切なく、苦しく、羨ましく……妬ましくどうしょうもない」
 
―――早くあいつを殺さないと
 
斗貴子の昂りに応じて、サンライトハートから光が漏れる。
「そうかカズキ、キミも同じ気持ちか…………当たり前だな。何しろキミと私は、一心同体なんだから」
一足飛びで貯水タンクから降りた、斗貴子の瞳は
先刻までの焦点の定まらない物ではなく、狂気を秘めた鋭い光を称えていた。
「行こうカズキ…………あの女を殺しに」

 ◇  ◆  ◇

桂ヒナギク、川田章吾、葉隠覚悟、柊つかさの4人は
電柱に取り付いている街頭の下で、川田の持つ1枚の地図を囲んでいた。
「ボーリング場に行くには、大まかに分けて2通りのルートを取れる。
 このまま街道を徒歩で行くか、S7駅まで戻り電車で南下するかだ」
地図上の道路と線路を、川田が指でなぞる。
「俺としては、電車で行きたいが…………」
「私は夜間に電車に乗るのは、目立つから避けたいわね。
 夜の内は街道の方が襲撃を受ける確率が低いから、そっちで行くべきよ」
「それでは時間を掛け過ぎる。電車に乗り、各駅を見回りながら移動すべきと判断する」
川田、覚悟とヒナギクの意見が割れる。
「徒歩でも急いだら何時来るか分からない電車と比べても、そう遅れないと思うわ」
「夜道を行くのに足を早めれば、周囲への警戒が難くなる」
「それだけ敵も、こちらを見付け難くなってるって事じゃない。どっちにしても電車よりは安全よ」
219 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:44 ID:qXNB5mqY
暫し3人の議論の後、間を見てそれまで黙っていたつかさが口を挟んだ。
「…………私は休みながら行けるから、電車が良いかな……」
ヒナギクは少し考える素振りを見せた後、つかさに笑い掛けながら答える。
「そうね、いざって時に体力が尽きてましたじゃ笑い話にもならないか……」
4人はS7駅へと、進路を取る事とした。
 
自分は迂闊だった。ヒナギクはそう思った。
夜だというのにうっすら汗を滲ませ歩くつかさのみならず、川田も疲労の色が見て取れる。
無理も無い。今日一日で何度か休みを挟んだとは言え、歩き詰めだったのだ。
全く足取りの衰えない、ヒナギクや覚悟の様な人間の方が少数派であろう。
それなのに自分を基準に考え、同行者への配慮が全く抜けていた。
(こんな事じゃ、白凰学院生徒会長の名折れ!!)
「あんまり気負うなよ、ヒナギクさん」
不意の声に、後ろを向きながら飛びのく。
「私の後ろをとるとは……やるじゃない」
「お褒めに預かり、どうも……」
両手を肩の高さまで上げ拳法の様な構えを取るヒナギクを見て、川田は肩を竦めた。
「そ、それより私が気負ってるってどういう意味?」
「だってヒナちゃん、こうやって手をぎゅってやってたから」
つかさが胸の前で右手を握り、ヒナギクを真似る。
(そ、そんなあからさまに態度に出てたの!?)
狼狽するヒナギクを見て、つかさと川田が顔を見合わせ笑い合うが
不意につかさは真っ赤になって俯き、川田も顔を赤らめ眉尻を掻く。
(もぉ! こっちまで恥ずかしくなるでしょ!!)
ヒナギク達は病院を出発してから、時折今の様な気恥ずかしい空気に包まれていた。
(別にこの雰囲気が悪いとは言わないけど、緊張感が殺がれる事甚だしいわ……)
 
220Classical名無しさん:08/01/31 14:45 ID:SJhvN59Y
しえん
221 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:45 ID:qXNB5mqY
 
不図前を歩く、覚悟の様子を伺う。
ヒナギク達を見る引き締まった表情には、僅かな揺らぎも読み取れない。
(あっちは泰然としたものね……)
「ごめんなさい、足を遅らせて……」
「何故謝る? 足並みを揃えなかったのは私だ」
「あら、私達が遅れたから怒ってるんじゃ無かったの?」
「いや、恥ずかしながらあなた達を羨ましいと思って見ていた」
ヒナギク、つかさ、川田は覚悟の言葉の意味が分からずに目を丸くしていた。
「私はあなた達の会話を、ずっと微笑ましく思って聞いていた。
 だがこの身は未だ未熟なれば、あなた達の打てば響くが如き会話の流れに入り込む間を見出せぬ。
 それゆえただ聞き入るしかない、我が身の未熟を恥じ入るばかり」
覚悟は相変わらず、厳格さを感じさせる態度で話をした。
事実覚悟自身、本心から話している。
幼少より父や兄といった、ほとんど決まった人物としか話さない環境で育ち
それ以後も友人と呼べる者は、零しか居ない状態だった覚悟は
同年代の人間との他愛も無い会話に有る、テンポや空気が今一つ読み取れずに居た。
だから今もヒナギク、つかさ、川田が身を震わせて笑いを堪えている理由が分からない。
「……覚悟君……今の間は完璧だったわ」
「二人共……そんなに笑ったらブフッ……葉隠に悪いだろ」
「…………だって、だって覚悟君……あんなに真面目に……」
破壊音。
ヒナギクはそれと、覚悟の走り出しに時差を見出せなかった。
つかさ目掛け伸び行くエネルギー流の先端の金属片を覚悟は横から殴打、エネルギー流はつかさの横を逸れていった。
エネルギー流はつかさに向け走り来る、銀髪で大きな傷を持った顔の女の手に持つ槍の様な武器に戻っていく。
222 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:46 ID:qXNB5mqY
覚悟がつかさの前に立ち塞がった。
女は槍を地面に刺し、走り高跳びの要領で覚悟の頭上を飛び越えようとする。
ヒナギクのボウガンの狙いは、女の速さを捉え切れない。
槍の地面を刺す部位に、川田が持つマイクロウージーの銃弾が浴びせられた。
衝撃で槍を支えにしていた女の身体が揺らぎ、つかさから離れて着地。
女はつかさを睨みながら、逆方向へ飛び退く。
その位置に、一瞬遅れて覚悟が入り込んだ。
 
「川田! ヒナギクさん! つかささん! この場は俺に任せ、先に行け!!」
「嫌よ!!」
「ヒナギクさん、今は地下鉄の時とは訳が違う。俺とつかささんだけで行かせる気か?」
川田の言い分は、ヒナギクには理解出来た。
敵は何故か、つかさに狙いを絞っているのだから
覚悟が敵の足を止め、他の者は敵の射程外へ逃げるのが最も安全な策であろう。
ここでつかさと川田だけ逃がしたら、今度はそちらの戦力が手薄になる。
それでも覚悟だけを残し、逃げ去る形になるのがどうしても納得出来なかった。
「覚悟君!」
つかさの声に、覚悟は女に対したまま目だけを向ける。
「……私、待ってるから」
「承知した」
覚悟とつかさ、共に一言だけの会話。
それだけでもヒナギクには、二人の間にある信頼が伝わって来た。
「葉隠、何処で待ち合わせるかは分かってるな?」
「心得ている。川田も道中、気をつけて避難されたし」
覚悟と川田の会話も僅かなもの。
それ以上は不要な程に、両者の意思は通じていた。
223Classical名無しさん:08/01/31 14:47 ID:SJhvN59Y
しえええん
224 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:47 ID:qXNB5mqY
ヒナギクとて、覚悟は信頼している。
覚悟が一人残ると言うのは、驕りや虚勢からではなく
それが最も理に適った布陣だとの、判断からだとも分かっている。
ヒナギクが引っ掛かっているのは、個人的な問題。
この場を任せるのは、自分が覚悟より戦闘において劣るのをはっきり認める事になる。
もし違うと言うのなら、自分が覚悟の替わりに残るのが上策だが
実際にそれをしても、女の武器を防げない。
(そんなの……分かってた事じゃない!!)
「私を追い払っておいて、こんな所で死んだら許さないわよ!!」
「了解した」
 
ヒナギク、つかさ、川田の3人は女の視界から走り逃れた後S7駅へ向け大きく進路を変えた。
「とりあえずS7駅で周辺を見回って、何も無かったら駅内ではなく駅全体
 それが無理なら駅の東側全体を見張れる場所に隠れて、葉隠を待つって所で良いな?」
「覚悟君と入れ違っちゃったりしないかな?」
「葉隠も捜しもしないで、俺達を置いて先にボーリング場へ向かうとはしないさ」
先頭を走るヒナギクは、後ろの二人の会話が頭に入らない。
本当に迂闊だった。そんな思考に、支配されていた。
女の襲撃を受けた時、直ぐに対処出来なかった程ヒナギクは弛緩していた。
しかしそれは、ヒナギクの責任ではない。
覚悟の様に幼少の頃から、『非常心にて生き抜くことを』という信条を下
何時命を落としてもおかしくない、過酷な修練を収めてきた者とは訳が違う。
心強い仲間に囲まれた状況で、常に往時に対応出来る心構えを保ってはいられない。
川田が直ぐに対応出来たのは、過去に2度のプログラムの経験が有った為である。
2度合わせても日数としては僅かであるが、それでも緊急時に意識を切り替える骨を身に付けていた。
225Classical名無しさん:08/01/31 14:49 ID:SJhvN59Y
しええええええん
226 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:49 ID:qXNB5mqY
(止めよう、仕方の無い事で何時までも悩むのは……)
恐らく同行している3人の中で、最も戦力が高い自分が為すべきは他の二人を全力で守る事.
後ろの二人を庇う様に走るヒナギクは、自分に課せられた責任の重さに身が固くなる思いがした。
 
 ◇  ◆  ◇

10m近い空間を挟んで、構えを取る覚悟と自然体を保つ斗貴子は対峙していた。
「存命したくば、次の質問に答えよ! 一、柊つかさを狙った動機。一、仲間の有無。制限時間15秒!」
有無を言わさぬ威を込めた、覚悟の質疑。
「あいつが覚悟だって、カズキ……」
斗貴子は答える、自分の手に有るサンライトハートに。
「……ほら、ルイズが死ぬ時に呼び掛けていた…………」
不意にルイズの名が呼ばれ、覚悟の眉が僅かに持ち上がる。
「質問追加! 一、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに関する情報一切。制限時間変更無し!」
(もしこの女が、ルイズさんを殺害したのならば…………
 俺に迷いは無い! 悪鬼として、この女を討つのみ!!)
拳を握り締め、覚悟は答えに逸る気持ちを不退転の決意に変える。
 
「ルイズが私を許して、そして救ってと呼び掛けていた相手だ」
「…………何だと!!?」
227 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:50 ID:qXNB5mqY

【F-4 1日目 夜中】
【津村斗貴子@武装錬金】
[状態]:しろがね化、心臓代わりに核鉄、精神崩壊、判断力低下(若干回復)
    右手消失、全身大火傷、頭部に刺し傷 (核鉄としろがねの力で回復中)。衝撃により、骨にヒビ。簡単な治療済み。
[装備]:サンライトハート@武装錬金
[道具]:支給品一式×2
[思考・状況]
基本:最後の一人になり、優勝者の褒美としてカズキを蘇らせ、二人きりで暮らす『夢』を叶える。
1:覚悟を殺した後、つかさを追い殺す。
2:可能ならば、なんらかの手段で戦力の増強を図る。
3:強者との戦闘は極力避け、弱者、自動人形を積極的に殺す。
4:アカギ、吉良、勇次郎、軍服の男(暗闇大使)は最終的に必ず殺す。アカギは特に自分の手で必ず殺す。
※数時間の休息をとりました。しろがねの血、核金の効果による回復が見込めます
 それがどの程度のものなのかは、次の書き手さんに一任いたします

【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に火傷(治療済み) 胴体部分に銃撃によるダメージ(治療済み) 頭部にダメージ、
    両腕の骨にひびあり 強い決意
[装備]:滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)
[道具]:ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾5発、劣化ウラン弾、残弾6発)@HELLSING 大阪名物ハリセンちょっぷ
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者を必ず倒し、彼らの持つ強化外骨格を破壊する。
1:ルイズさんがどうしたというのだ!?
2:斗貴子への対処の後S7駅へ行きヒナギク、つかさ、川田と合流する
3:ボーリング場周辺、および病院南方を探し、つかさの姉を捜索する
4:寺へ向かうか神社へ向かうか決めておく
5:生存者(コナン、吉良)の救出
 
228Classical名無しさん:08/01/31 14:51 ID:SJhvN59Y
ししししししえええん
229 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:51 ID:qXNB5mqY
 
E-4エリア市街の街道沿いの民家に、白いコートで全身を覆った男が入っていく。
男は玄関に入るなり横手に在る下駄箱の上に手を置きその手をナイフで勢い良く突いた。
「……武装解除」
コートが六角形の金属片―――核鉄になり、男の手の内に収まった。
手のナイフで突いた部分を、男が確認する。
(傷一つ無しか。…………まあ、ナイフが当たった感触さえなかったんだから……当然と言えば当然。)
核鉄を再びコートに戻し、男―――赤木しげるは学校に向け出発した。
 
先程までアカギは手に入れた武装錬金、シルバースキンの性能を試す実験をしていた。
全身を覆うコートという形状から、武装錬金としての特質は防御力に有ると踏んだアカギは
手頃な石等で、全身の到る所を殴打してみる。
案の定シルバースキンは傷付かず、衝撃は全て遮断された。
高所からの落下や、走り来る電車に飛び出す等の方法も考えたが
流石にシルバースキンの実験に、命まで賭けるのは止めて置いた。
(気になる点は……攻撃を受けた際の反応か…………)
シルバースキンには攻撃を受けた部分が、一瞬細かい金属片になって弾ける性質が見られる。
(…………恐らく同じ部分を、連続して攻撃されれば防ぎきれない。……それがこの武装錬金の弱点
 …………そしてこいつを着たままじゃ、煙草が吸えないな)
アカギはクククと苦笑を洩らす。
(後は顔が見えない……か)
 
230 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:52 ID:qXNB5mqY
 
アカギは今までの殺し合いの中で、故意に自分の顔を売って来ていた。
様々な場面で自分が打倒主催を目的とした者である事を、命を賭けて周囲にアピールしている。
それらはアカギにとって、全て後々の為の布石。
(主催者を倒す。…………それを為すには同じ目的の者で集団を作り、全員で一致した作戦を取る事は必須。
 その集団の中で俺が果たすべき役割は言わば頭脳、情報を纏め作戦を立案する立場…………)
だからこそ自分は命を賭けて、打倒主催を目指している事を周囲に信用させる必要が有ると考えていた。
(……人は他人の言葉に、理が有ると言うだけでは動かない…………命の掛かった場合なら尚更。
 自ら血を流し命を賭けてこそ、人を動かすことが出来る…………。
 蓄積された信頼は、いよいよ主催者に詰め寄ると言う場面で……必ず活きてくる。
 ククク…………もっとも、それまでに俺が生きていられたらの話だがな)
命を賭けるのだから、当然生きて潜り抜けられる保証は無い。
どれだけ信頼を積み重ねた所で、死ねば全て無に帰す。
(命をチップに…………ククク、正に狂気の沙汰だな。
 だがそれが出来ない様じゃ…………ここからの生還は不可能。……誰にとってもな)
アカギは三千院ナギが現状に怯え、立ち向かわないような人物なら切り捨てると考えていたが
それは三千院ナギに限った話ではない。
(逆境に立ち向かう者……それだけが死線を潜る鍵を得、生還への扉を開く)
思考を紡ぎながら歩くアカギ。
その耳に、断続的に機械がぶつかり合う様な轟音が聞こえる。
(戦闘の音か…………)
アカギはデイパックから時計を取り出し、時間を確認した。
(遅刻確定の上寄り道……ククク、鳴海は怒るだろうな。
 …………さて、行くとするか。死線を潜りに……)
 
 
 
231 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:52 ID:qXNB5mqY
 
アカギが建物の陰から遠巻きに見るのは、範馬勇次郎が倒れ伏す赤いコートの男を見下ろしている場面。
(戦闘が、勇次郎の勝ちで決着する所か…………)
勇次郎と赤いコートの男が言葉を交わすも、アカギにはその内容は聞こえない。
赤いコートの男が、塵と化し消えていく。
アカギにとって常識外の超常現象の筈が、それを見た同様は無い。
超常現象なんて物は、既に飽きるほど見て来ている。
やがて勇次郎も、その場に倒れ伏した。
(…………俺を誘う為の擬死、死んだ振りって線は……無い)
これまでの観察で、アカギは勇次郎の気性をある程度把握していた。
勇次郎の生死を確かめるべく、アカギが建物の陰から出る。
(…………あいつが死んでいたら、デイパックを頂いて学校へ向かう)
ゆっくりと、勇次郎へ歩を進める。
(そしてもし生きていた場合は…………)
勇次郎まで、後一歩。
「動かないで」
アカギから見て、斜め後ろからの声。
物陰からボウガンの矢をこちらに向ける、赤い髪の女が出てきた。
その後ろから、同年代と思しき男女も現れる。
(待ち伏せか……それとも偶然居合わせたか)
アカギが何時もそうする様に、クククと不敵に笑う。
(…………これだから、命をチップにした博打は怖い)
 
232Classical名無しさん:08/01/31 14:53 ID:SJhvN59Y
支援
233 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:53 ID:qXNB5mqY
 
【E-4 駅付近/1日目 夜中】
【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 健康
[装備] ボウガン@北斗の拳
[道具] 支給品一式。ボウガンの矢18@北斗の拳 、核鉄(バルキリースカート)@武装錬金
[思考・状況]
基本:ハヤテ達との合流
1:目の前の男への対処
2:S7駅付近で覚悟と合流の後、ボーリング場周辺および病院南方を探し、つかさの姉を捜索する
3:寺へ向かうか神社へ向かうか決めておくる
4:生存者(コナン、吉良)の救出
5:やれることを探してやる。だが無理はしない。
[備考]
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです
※桂ヒナギクのデイパック(不明支給品1〜3品)は【H-4 林】のどこかに落ちています
※ロードローラー@ジョジョの奇妙な冒険と捕獲網@グラップラー刃牙は【H-4 林】に落ちています
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました
※バルキリースカートが扱えるようになりました。しかし精密かつ高速な動きは出来ません。
 空中から地上に叩きつける戦い方をするつもりですが、足にかなりの負担がかかります。
 
234Classical名無しさん:08/01/31 14:54 ID:SJhvN59Y
支 援
235 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:55 ID:qXNB5mqY
 
【川田章吾@BATTLE ROYALE】
[状態] 健康
[装備] マイクロウージー(9ミリパラベラム弾13/32)、予備マガジン5、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
[道具] 支給品一式×2、チョココロネ(残り5つ)@らき☆すた
    文化包丁、救急箱、ZXのメモリーキューブ@仮面ライダーSPIRITS、裁縫道具(針や糸など)
    ツールセット、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、缶詰やレトルトといった食料品。
    薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(四本消費) ツールナイフ
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗っていない参加者を一人でも多く救出し、最後は主催者にカウンターパンチ
1:目の前の男への対処
2:S7駅付近で覚悟と合流の後、ボーリング場周辺および病院南方を探し、つかさの姉を捜索する
3:寺へ向かうか神社へ向かうか決めておく
4:仲間と一緒にPCと村雨を探す。PCが見つかったら、ハッキングを試みる
5:生存者(コナン、吉良)の救出
6:ゲームに乗っている参加者と遭遇した場合は容赦なく殺す。
参戦時期:原作で死亡した直後
[備考]
※桐山や杉村たちも自分と同じく原作世界死後からの参戦だと思っています
※首輪は川田が以前解除したものとは別のものです
 
236 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:56 ID:qXNB5mqY
 
【柊つかさ@らき☆すた】
[状態] 健康
[装備] なし
[道具] 支給品一式、ホーリーの制服@スクライド、ターボエンジン付きスケボー @名探偵コナン 、ツールナイフ
[思考・状況]
基本:ゲームには絶対に乗らない
1:目の前の男への対処
2:S7駅付近で覚悟と合流の後、ボーリング場周辺および病院南方を探し、つかさの姉を捜索する
3:姉が殺し合いに乗っていたら、絶対に止める。
[備考]
※川田、ヒナギク、覚悟、新八を完全に信用しています
 
【備考】
※神社、寺のどちらを捜索するかを話し合う予定です。
※4人の主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※4人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首輪には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている
237Classical名無しさん:08/01/31 14:57 ID:SJhvN59Y
しいいいいいいいいいいいえんんんんんん
238 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:57 ID:qXNB5mqY
※4人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論
※三村とかがみについて
三村の吹き込んだ留守禄の内容を共有しています。
かがみと三村に対してはニュートラルなら姿勢です。
とにかくトラブルがあって、三村がかがみを恨んでいると事実がある、
とだけ認識しています。
 
【赤木しげる@アカギ】
[状態]:脇腹に裂傷、眠気 核鉄で自己治癒中
[装備]:シルバースキン 基本支給品、 ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス (残り9本)
[道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)
 始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます) キック力増強シューズ@名探偵コナン
 水のルビー@ゼロの使い魔、工具一式、医療具一式 沖田のバズーカ@銀魂(弾切れ)
[思考]
基本:対主催・ゲーム転覆を成功させることを最優先
1:目の前の3人への対処の後、勇次郎の生死を確認。
2:学校に向かって、自分の情報を伝える。
3:脱出のカードを揃えてから、ジグマールを説得する。
4:対主催を全員説得できるような、脱出や主催者、首輪について考察する
5:強敵を打ち破る策を考えておく
6:このバトルロワイアルに関する情報を把握する
(各施設の意味、首輪の機能、支給品の技術 や種類など。)
7:ツンデレの意味を知りたい。
239 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:58 ID:qXNB5mqY
[備考]
※ツンデレの意味を色々間違った意味で捉えています。
※マーティン・ジグマールと情報交換しました
※光成を、自分達同様に呼び出されたものであると認識しています。
※参加者をここに集めた方法に、
 スタンド・核鉄・人形のいずれかが関係していると思っています。
※参加者の中に、主催者の天敵たる存在がいると思っています(その天敵が死亡している可能性も、考慮しています)
 そして、マーティン・ジグマールの『人間ワープ』は主催者にとって、重要な位置づけにいると認識しました。
※主催者のアジトは200メートル以内にあると考察しています
※ルイズと吉良吉影、覚悟、DIO、ラオウ、ケンシロウ、キュルケ、ジグマールはアルター使いと認識しました
※吉良吉影の能力は追尾爆弾を作る能力者(他にも能力があると考えています)だと認識しました。
※DIOの能力は時を止める能力者だと認識しました。
※ジグマールは『人間ワープ』、衝撃波以外に能力持っていると考えています
※斗貴子は、主催者側の用意したジョーカーであると認識しています
※三千院ナギは疫病神だと考えています
 
240Classical名無しさん:08/01/31 14:58 ID:SJhvN59Y
しえん
241 ◆05fuEvC33. :08/01/31 14:59 ID:qXNB5mqY
 
【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】
[状態]気絶中。右手に中度の火傷、左手に大きな噛み傷。
   全身の至るところの肉を抉られており、幾つかの内臓器官にも損傷あり。大量出血中
[装備]ライター
[道具]支給品一式、打ち上げ花火2発、フェイファー ツェリザカ(0/5) 、レミントンM31(2/4)
   色々と記入された名簿×2、レミントン M31の予備弾22、 お茶葉(残り100g)、スタングレネード×4
[思考] 基本:闘争を楽しみつつ優勝し主催者を殺す
1:戦うに値する参加者を捜す
2:アーカードが名を残した戦士達と、闘争を楽しみたい。
  ただし、斗貴子に対してのみ微妙な所です。
3:首輪を外したい
4:S7駅へ向かいラオウ、DIO、ケンシロウを探す。
5:未だ見ぬ参加者との闘争に、強い欲求
[備考]
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。
※ラオウ・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました。
※生命の水(アクア・ウィタエ)を摂取し、身体能力が向上しています。
※再生中だった左手は、戦闘が可能なレベルに修復されています。
※アーカードより、DIO、かがみ、劉鳳、アミバ、服部、三村、ハヤテ、覚悟、ジョセフ、パピヨンの簡単な情報を得ました。
ただし、三村とかがみの名前は知りません。
是非とも彼等とは闘ってみたいと感じていますが、既に闘っている斗貴子に関しては微妙な所です。
242Classical名無しさん:08/01/31 14:59 ID:SJhvN59Y
支援
243 ◆05fuEvC33. :08/01/31 15:03 ID:qXNB5mqY
投下終了です。
タイトルは
「われらのとるべき道は平常心で死にゆくことでなく非常心にて生きぬくことである」
でお願いします。
支援ありがとうございました。
244Classical名無しさん:08/01/31 15:13 ID:SJhvN59Y
投下乙!
もはやお約束のTQNのエロに始まり、アカギの狂人っぷりまでのキャラの書き分けは流石です。
強固な集団をTQN一人で分断し、ヒナギクたちも危険地帯に持って行くとは、
これは次の話で誰が死んでもおかしくない!
245Classical名無しさん:08/01/31 16:00 ID:BR6CtZZg
TQNエロはお約束かよwww
ついに覚悟と3人が分断されたか…覚悟は因縁持ちの対決だし、アカギが3人相手にどう出るか気になる
そしていつ目覚めるかわからない勇次郎も…といっても勇次郎が求める強者はこの場にいないわけで
次回が気になりすぎる! 投下乙!
246Classical名無しさん:08/01/31 17:42 ID:r2sMBjyE
勇次郎の手って吹っ飛んだんじゃなかったっけ?
247Classical名無しさん:08/01/31 18:17 ID:WIlEOGAQ
>>246 それは鳴海の手
248Classical名無しさん:08/01/31 19:11 ID:FTWb3C7E
勇次郎死んだなこりゃw
249Classical名無しさん:08/01/31 19:37 ID:qBUepduY
>>248
いや〜、それは無いだろww
勇次郎は勝を殺した後にも寝てるけどその時のSSに件の事が書いてなかったけ?
自分的にはヒナギク達が地雷源に足を踏み入れている気がするよwww
いつ起きるか分からないしさ
250Classical名無しさん:08/01/31 19:39 ID:K0Ga83Bc
寝てるっていうか気絶中だからな
誰か来ても起きれないんじゃないか?
251Classical名無しさん:08/01/31 22:12 ID:ACAyd9bw
投下乙!
TQNがこええ!
覚悟は真実を知り、何を思うか。
つかさたちの運命は!
勇次郎…………アカギと接触後強化?
まさかねw GJ!!
252 ◆14m5Do64HQ :08/01/31 22:15 ID:KqNJCmfQ
>>243
投下乙!
何人死ぬかと思いましたがこう来ましたか!予想外でしたが期待感が募る引き方だと思います。
覚悟がルイズの仇である斗貴子と遂に対面。
アカギと川田達の出会い、そして勇次郎の動向……正直どれも気になりまくりです!
あとやっぱ斗貴子はエロ路線なんですねw


それと自分は以前「君らしく 誇らしく 向ってよ」を投下したものなんですが、また鳥を変更したので報告します。
wikiの書き手紹介も編集やっときますのでよろしくお願いします。
253Classical名無しさん:08/01/31 22:20 ID:oOoqxUgE
>>249
いやあわからんぞ
気絶云々もそうだし全くの無戦力とはいえないまでも強いわけではない一般人クラス複数と
最強クラスの参加者の遭遇といえばある意味犬死フラグと言えるからな

俺はアカギ以外全員死亡の可能性を推すねw
254Classical名無しさん:08/01/31 22:57 ID:VGa7Ed.w
個人的に勇次郎はアカギと出会っても強化されない唯一の存在だと思うんだよなー、
自我が強すぎるから、アカギの狂気を見ても喜ぶだけ泣きがする。
255Classical名無しさん:08/01/31 23:12 ID:UyLjGM4A
>>252
重鎮である氏に敢えて言うのもはばかられるのですが、一応、前鳥で宣言、ID変化前に次鳥にて再度宣言とした方が、確実かと……
この場合、前鳥で24:00までにもう一度書き込めば、IDで確認出来ると思いますが
256Classical名無しさん:08/01/31 23:31 ID:KcuWkAjc
今の面子だと勇次郎を殺せそうな武器がないような気もするw

覚悟組も動き出したしどこもかしこも展開が気になるなー
というかだんだん北に集まってきたな

 「ふふふ。分かっていないなあ、ナギちゃんは。
 いいかい。貧乳はステイタスなのだよ?」
 「ステイ…タス…?」
 こなたの言葉に、ナギは怪訝そうにそう返す。
 「いや、だが…その、お、男というモノはみな、こう…お、大きな…」
 言いつつ、自分の胸を見る。
 「それだよ、それ。
 その思考が良くないのだよ。
 人などというモノは十人十色千差万別。
 『皆がこう思っているに違いない』 という決めつけは、全ての判断を鈍らせるのだなぁ」
 ほほえむ、というよりは、むしろにやりという笑い。
 「そして、全ては変わり流転する。
 つまり、だ。
 変わることよりも変わらぬ事の価値、というものもそこには存在するのだ。
 ナギちゃんはいままさに、ツルペタジーニ・チッチャイコフスキー垂涎の、萌え萌えビジュアル。
 数年後にもそれを維持し続けるのであれば、まさにステイタスなのだよ」
 少し、ひるむ。
 「こ…」
 ようやく出たのは、吐息とも言葉ともつかぬ音。
 「こなたの言うことは、難しすぎるのだっ!」
 難しい、にも、色々な意味がある。
 「サムソン・ティーチャー曰く、『大人になったらわかりまーす』 だよ」
 大人になる、にも、色々とある。
 「いや、わたしは、大人になったら、やはりこう、もっとグラマーになるぞ。マリ…」
 言いかけて、淀んだ。
 『マリアのように』『みゆきのように』
 1日前であれば、気軽に言えたはずの言葉が、今は出てこない。
 暗い喫茶店の中、僅かな沈黙。
 「グラマーってのはよ」
 向かい合って座っていた二人の間に、野太い声が割ってはいる。
 「つまりは、俺みたいに、って事だな、嬢ちゃん」
 声同様に野太い体躯を揺らし、愚地独歩が笑った。
 少しの間。
 「いやいやいや…たしかに、ガチムチ萌えというジャンルも無くは無いけど…」
 「そ…それは嫌だ!」
 こなたとナギの二人が口々に否定する。
 脳裏に浮かぶのは、独歩の身体の上に乗った自分たちの顔。
 「そうかい? うちの少年部にでも入って鍛えれば、数年後には良い体になれるぜ?」
 再び、笑った。

 真っ暗な街の中、喫茶店の中にだけ明かりがともされている。
 こなたとナギの二人は隅の一角に座り、愚地独歩は手に首輪探知機を持って入り口の側に立ち、外の様子をうかがっている。
 外には黒王号が居るが、見ているのはそこでは無い。
 はす向かいの花屋の入り口。
 中には、承太郎と刃牙、そしてシェリスの遺体。そして、残された鳴海の腕が、テーブルクロスにくるまれ横たえられている。
 
259Classical名無しさん:08/02/01 01:30 ID:s.nTvvqQ
 ◆◆◆

 DIOと鳴海が戦い、そして相打ちとなり果てた後、残ったパピヨン、こなた、ナギ、独歩の4人は、鳴海がアカギとした約束に従い、学校へと向かう方針を決めた。
 ナギとしはてハヤテとヒナギクを、こなたとしてはかがみとつかさを。
 それぞれに探したい、再会したい相手はいるが、とはいえ無目的に探し歩いて会える確率は低い。
 鳴海によれば、アカギも又、人を集めて学校へ向かうと言っていたという。
 ならば、彼らとアカギが合流しているかもしれない。
 その可能性に賭けるしかなかった。

 石となり砕け散った鳴海の遺体から、パピヨンは首輪を拾い上げ、それをしばし見つめてから自分のデバッグに納める。
 それから、残されている3人のデイバッグと、自分の持っていた余分を独歩に預けた。合計すると、10人分の支給品類を持っていることになるが、独歩にとってたいした量ではない。
 「首輪探知機を見せてくれ」
 言われて、背広のポケットに無造作に突っ込んでいたそれを取り出す。
 近くに6つ。彼ら4人と、鳴海、シェリスのものだ。
 「…刃牙、と、承太郎の死体は、喫茶店の前か」
 些か小さな声で、パピヨンが聞く。
 「ああ。まだ…そのままだ」
 「才賀勝、は?」
 「…喫茶店の手前…市役所の脇を5〜600m程進んだ通り…だな。地図で言えば、DとEの境界辺り。近くにあの、逆十字号の残骸があるはずだから、まぁ目立つだろうがな」
 「…ふむ」
 少し上に視線を向けて、一呼吸置く。
261Classical名無しさん:08/02/01 01:31 ID:s.nTvvqQ
とっさの奇襲に戸惑いつつ支援
 「あんた、あの二人をつれてまず喫茶店に行っててくれ。野暮用がある」
 そのまま、きびすを返そうとするパピヨンの腕が、す、と柔らかく大きな手に包み込まれた。
 「首輪なら、もう一個あるぜ」
 静かに、そう告げる。
 「承太郎、って男が、拾ってきておいたらしい。ナギ嬢ちゃんの話によるとな」
 お互いに、表情の読めぬ二人だ。
 黒い眼帯を点けた隻眼の大きな体躯の老人と、折れそうなほどに細く、青白く不健康そうな肌つやの顔をし、派手なバタフライマスクを付けた男。
 端から見ても、これほど異様な取り合わせもない。
 「サンプルは、多いに超したことは無い。
  既に2つあるとしても、さらに1つを取りに行くのはごく当然だ」
 きっぱりと言い切るパピヨンの声。
 視線が、絡み合う。
 その僅かな膠着を、先に破ったのは独歩だった。
 「…俺ぁ空手家だ。機械の事ァ解んねぇや。
 おめぇさんが必要だ、ってぇんなら、そりゃあ必要なんだろうよ」
 「ものわかりが良くて助かるね。ただの偽善者じゃあ無いようだな」
 パピヨンは、にんまりと口元に笑みを浮かべて言う。
 「だが、嬢ちゃんの遺体は、一旦つれてくぜ。
 やっぱ、野ざらしにゃあ出来ねぇからよ」
 瞬時に、口角が下がる。
 「…分かってるんじゃあ無いのか?」
 「解ってるぜ。だから言ってんだよ」
 独歩につかまれた腕を軽くふりほどこうとする。するが、柔らかいその握りは、ついと離れない。
 「さっき言ってた詳細名簿とかってんで知ってんだろうけどよ。
 俺ぁ空手家だ。そして、神心会100万の長だ。
 言ったって、たいしたもんじゃねぇ。
 ただ延々、この年ンなるまで人をぶっ叩いて、蹴り飛ばしてよ。
 どっちが強ェの何のと言って殴りっこし続けていただけだ。
 だからよ ―――」
 少し、止める。
 「だから何だ? 言っておくが、人型ホムンクルスのこの俺に、たかの知れた空手など通用しないぞ?」
 そう言うが、声に些か力がない。
 疲労もある。こなたを探して走り回り、些か体力を使いすぎていた。
 しかし ―――。
 「そうじゃ無ぇよ。ホルモンだかホスト部だかぁ、俺らの知った事じゃあねえよ。
 さっきも言ったが、俺ぁ機械の事なんざさっぱりだ。
 いいか、坊主。
 人間がぶっ壊れれば、何もない。無だ。ンな事ぁ解ってる。
 俺だって一度は死んだ身だしな。
 けど、生き残っている方は違う。
 そうだろ?」
 視線を、僅かにズラす。
 こなたと、ナギ。
 二人の少女が、少し不安げな面持ちでこちらを伺っている。
 「おめぇさんが、汚れ役をやろうってな解ってるよ。
 そのために、俺に嬢ちゃんらを託すってのも解ってる。
 だからよ」
 干涸らび、生命を吸い取られ枯れ果てたシェリスの死体。
 パピヨンの力で少しひねれば、その首は崩れ、首輪の回収も容易いだろう。
 だからこそ。
 「…ふん」
 大きく息を吐いた。
 「いいだろう。そっちは任せる。
 ひとまず喫茶店に行って、20…いや、30分だけ休んでろ。
 それまでに俺が戻らなかったら、先に学校に行け。後で合流する」
 「こいつは…いるか?」
 パピヨンの腕を放し、左手の首輪探知機を示す。
 「持ってろ。俺一人なら敵になど捕まらん。それと…そうだな、これを貰っておくか」
 手に取ったのは、一振りの剣。
 DIOの持っていたバッグに入っていたものだ。
 それを、背負ったデイバッグに突っ込みながら、
 「こなた! 蝶・天才の俺には色々と準備がいる! このお洒落センスのカケラもないおっさんと先に喫茶店に行ってろ!」
 そう言い放つ。
 「え…、パピ…ヨン…?」
 「さっきは細かく探さなかったが、喫茶店にもおやつがあったかもしれないな。適当に見繕っておいてくれ」
 翻って、立ち去ろうとするその肩を、再び独歩が引き留めた。
 「おーう、そう急くなって」
 またも、ふりほどけずに止まる。
 「ま、俺の知り合いがよ。こう言ってたわけよ。
 『強さとは、己の我が儘を貫き通す事』 だ、ってな」
 「…同意見だな。それが何だ?」
 「おう。その通りだ。
 けどな。そんな事ぁ良いんだよ。
 言い換えりゃ、なんつうか…そりゃ、強さの形だが…中身じゃあ無い。
 外側にあるモンだ」
 小鼻をかいて、独歩が続ける。
 「………」
 「付け加えりゃあよ。
 何を貫き、何を残すか。
 そっちの方が、重てぇんだよな。
 中身を置き忘れちまったその強さじゃあ、何も残せねぇし何も乗っかってこねぇ」
 「…説教でもする気か? 俺は貴様の門下生じゃあ無いぞ」
 不意に、両手を広げて、独歩がパピヨンを。
 抱きしめた。
 「善だの悪だの、偽善だの…。
 そういう理屈でモノ語るなぁ確かにガキの特権だ」
 「おい、待て…」
 流石のパピヨンが、面食らった。
 「男が語るのは、善悪じゃねぇ。『覚悟』、だ。
 …お前さん、天才なんだろ?
 きちんと、その天才の中身をぶら下げて、さっさと戻ってこいや」
 手を放し、肩をパンパンと叩き ――― 笑う。
 勢いに少しよろけるようにして、
 「間違えるな。俺はただの天才じゃない、蝶・天才だ。あんたこそ、迷子になるなよ」
 「バカにするねぃ。若い頃ぁアメリカで単身武者修行だってしてンだぜェ。
 見知らぬ街だって慣れっこだよ」
 再び、笑った。
 
266Classical名無しさん:08/02/01 01:33 ID:s.nTvvqQ
 
◆◆◆

 まったく、ここに来てから慣れねぇ事ばっかりだぜ ―――。
 喫茶店の入り口近く。
 首輪探知機を手にしたまま仁王立ちする独歩が、心中独りごちる。
 独歩の人生は、パピヨンに言った通りに、「どっちかどんだけ強ぇかの殴りっこ」 の繰り返しだ。
 毎朝毎晩、ただひたすらに自分の身体を虐め、鍛え続け、武に捧げ続けた人生。
 神心会100万人の長、等と言うが、それでも彼らは皆、空手家だ。
 空手というもの選び、空手という生き方を選んだ者達のトップ。
 人型ホムンクルスや、吸血鬼、そして何より、闘う意志のない無力な子供…。
 前者二つは論外としても、そういった者達の中でのまとめ役の様な役割は、お世辞にも向いているとは思っていない。
 だからつい、慣れない説教めいたことも言うし、下らぬ冗談で場を和ませたりもする。
 その事が、――― 身体に合わないだぶついたスーツを来ているような ――― 違和感になる。
 太い指で、襟首を少しゆるめる。
 僅かに首を動かして、こなたとナギ達を見やる。
 二人の少女 (実際にはかなり年が離れているのだが、パっと見には同い年にも見える) は、落ち着いた様子でテーブルに着いている。
 勿論、内心は不安だろうし、立ち直っては居ないはずだ。
 それでも、二人はもう取り乱したりせずに居る。
 立て続けに集まった荷物は整理して、手元に置いておきたい必要な物とかさばるものにより分けておいた。
 危険と思える物は、とりあえず独歩が持つ。
 先のことを考えれば、何が有用かは分からない。
 とりあえず、多すぎる基本支給品等は一つに纏め、黒王号の鞍に結わえて運ぶつもりでいる。
 そして、こっそりと懐に収めた鉄の塊に手をやり、すまねえな、嬢ちゃん、と心の中で呟いた。
268Classical名無しさん:08/02/01 01:34 ID:s.nTvvqQ
支援支援
 
 シェリスと、そして、刃牙、承太郎の遺体。それと、鳴海の腕の代わりであった人形の腕は、喫茶店の奥にあったテーブルクロスにくるんで、向かいにあった花屋の中に安置しておいた。
 街中では埋める事は出来ないが、かといって野ざらしにする訳にもいかない。
 一人は顔が完全に破壊され、一人は胸に穴が空き、一人は完全に干涸らびたミイラの様相を示している。
 どれも、むごい有様だった。
 丁寧に清める時間もない。ただ布で巻いて、三人の遺体と、鳴海の腕を列べる。
 その周りに、ナギとこなたが花を敷き詰めた。
 ナギにとって、刃牙は承太郎の敵だ。
 こなたにとって、シェリスは短くはない時間を共にし、そして裏切って命を狙ってきた相手だ。
 それでも。
 彼らは四人の死を同等に悼んだ。ここには居ない、才賀勝の死も悼んだ。
 そして同時に、何処で果て、何時失われたかも解らぬ友人達の死も悼んだ。
 マリア。
 高良みゆき。
 それぞれに、かけがえのない二人の命を。

 花山の奴は…。
 独歩は二人の少女の姿を見ながら、少し考える。
 多分、立ったまま逝ったのだろう。
 地下闘技場での、息子、克己との試合を思い浮かべてそう考える。
 お前さんの死を悼むのは、悪いが後回しだ。
 全部ケリがついてから、ワイルド・ターキーでも手向けてやろう。
 そう思う。
 
 パピヨンの事を思い出す。
 あの男は、強い。
 ひょろ長い体躯と四肢に、青白い相貌は、地下闘技場で死闘を演じた天内悠を彷彿とさせるが、それとも違う。
 天内はああ見えても、柔軟で鍛え抜かれた肉体の持ち主だし、又相当な修練をも積んでいた。
 シェリスとの間に割って入ったあの動きは、確かに常人離れしていた。
 だがそれは、日々の肉体鍛錬や、武術の修練によるものではない。
 人生の全てを武に捧げてきた独歩には分かる。
 あの動きは、素人のものだ。
 尋常ではない身体能力を持ち、ある程度には場慣れをしている。戦いの経験もあるだろう。頭の回転も良さそうだから、駆け引きや戦略も使えるだろう。
 だが、それらをまだ、もてあましている。
 危ういと、独歩は思う。
 しかしその危うさは、経験や技術の不足だけにあるのではない。
 人体の真ん中を縦に通る線を、正中線という。
 脳天から金的まで、急所が揃った線であるが、同時に人体のバランスを保つ要でもある。
 この正中線を正しく保つことは武道の基本であり、またそれが出来ねば、軸がぶれ、どれだけの怪力無双でも、隙が出来る。
 軸がぶれること。それは、体だけのことではない。
 生き方、心構え、覚悟。
 そういうものにも言えることだ。
 鳴海には、それがあった。
 鳴海は激情型で、気分の浮き沈みの激しい方に思えたが、しかしその中にある軸は、常にぶれず安定をしていた。
 だからこそ、鳴海の激情は、隙ではなく力となる。
 常にぶれない、真っ直ぐな軸を持っているからこそ、鳴海は "強い"。
 勇次郎もそうだと言える。
271Classical名無しさん:08/02/01 01:35 ID:s.nTvvqQ
 s
272Classical名無しさん:08/02/01 01:36 ID:s.nTvvqQ
 
 勇次郎のエゴに、ぶれはない。
 勇次郎の強さは、その驚異的な身体能力や、非道を厭わぬ残虐性にあるのではない。
 自らが最強者であると信じて疑わぬ自我の強さ、ぶれのなさにある。
 その軸がぶれたときに生まれる隙。それこそが、勇次郎の最大にして唯一とも言える弱点であり、だからこそ、地下闘技場での戦いの時に、独歩は勇次郎を一時的にも追いつめることが出来た。
 パピヨンの軸は、かなりいびつに歪んでいる。
 少なくとも独歩にはそう思える。
 ホムンクルスとかいうものが何か。それが機械であるとか薬物であるとか、そういう事は分からない。
 しかし何らかの外的手段で、おそらくは不意に得られた身体的能力。それを得るに至るまでの人生。
 そこに、大きな歪みがある。
 泉こなたを気にかけると同時に、一度敵対したシェリスに対して乾いた殺意を抱く。
 死者の首を切り落として首輪を得るのを厭わぬ決断力を持ちつつ、その姿を見られたくないと思う。
 同じ振る舞いでも、そこに覚悟があるかどうかにより、意味が変わる。
 理工学系のパピヨンとは別の意味で、独歩は現実主義者だ。
 人間は壊れるし、壊れて死ねば無に帰す。それらを、身体で識っている。
  
 死者を悼み送るのは、生者のためにすることだ。
 死をきちんと受け止め、生き残った者が次へと進む為に必要な儀礼だ。
 善悪ではない。覚悟だ。
 死者を ――― 特に、親しき者の死を ――― きちんと悼むことが出来ないと、人は容易く己を見失い、軸がぶれる。
 おそらくは、このゲームの中で、親しい者、守るべきはずの相手を失い、軸を失ってしまった者もいるであろう。ましてや、アナウンスでなされた 「ご褒美」 という言葉。
 己の心を見失わせ、軸を失わせる、嫌らしい餌。
 そこまでいかずとも、迷いは軸を揺らす。
 一時的であっても、その迷いは隙となり、ここではまさに命取りだ。
274Classical名無しさん:08/02/01 01:38 ID:s.nTvvqQ
男の子には支援があるだろぉ!?
275Classical名無しさん:08/02/01 01:38 ID:T1VAAp72
  
 それ以前に。
 ハナから軸がぶれているのならば、やはりそれも、危うさとなる。
 義憤と情熱であればそれは良い。強烈なエゴイズムならそれもそれでいい。
 軸のズレない意志と覚悟は、それだけで力となる。
 独歩はパピヨンの育ってきた環境を知らない。
 どこに生まれ、どう育ったか。
 何を望み、何を目指したか。
 それらを知りはしないし、それらをどうこう言う気もない。
 しかしおそらくはその中で。そしてその上でここに来て。
 パピヨンの歪な軸に、大きなぶれが存在しているであろう事を、独歩は感じ取っていた。
 自分以外を全て無価値と断ずるエゴ。勇次郎や、DIOの様なそれを持つのなら、それに徹していなければならない。
 自分以外にも大切なものを掲げて、慈しむ心。鳴海や、ナギ、こなたたちの様なそれを持つのなら、覚悟を持ってそれに徹する方が良い。
 過去に何をしてきたかは知らぬが、そこから逃げていては覚悟を持つのもままならない。
 そのパピヨンの危うさを、独歩は考える。


 一面の花の中に、純白の布に包まれた遺体が三体。人形の腕が一本。
 月明かりに照らし出される、静謐で厳かな空間。
 二人の少女は、そこに立ち続けている独歩を残し、先に喫茶店へと戻った。
 三人の内、ここに来る以前からの知り合いが居るのは独歩だけだ。
 二人ともその独歩の心情を、マリア、みゆきを失った自分たちに置き換えて捉え、そのお別れの邪魔にならぬようにと考えた。
 確かに独歩は、刃牙の死も悼んでいたが、今考えているのはそのことではなく、またここに一人残ったのもそのためではない。
277Classical名無しさん:08/02/01 01:39 ID:s.nTvvqQ
情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さそして何よりも! 支援が足りない!
 ナギとこなたに悟られぬよう。
 二人が立ち去ってからシェリスに巻き付けたテーブルクロスを僅かに開き、枯れ木のように干涸らびたシェリスの首をへし折って、首輪を外す。
 こいつも、パピヨンにきっちり渡してやろう。 
 
◆◆◆

 テーブルに着いているナギは、支給品の食料を少しずつ口に運ぶ。
 空腹は空腹だったが、食欲はない。
 それでも、半ば義務的に食べておく。
 これからの為にも、食べられるときに食べておく必要があると分かっているからだ。
 独歩も又、入り口付近で立ちながらも、山になっている支給品の食料からサンドイッチを取り食べている。
 こなたは既に数刻前に済ませていた為、飲み物を飲むだけだ。
 身体の痛みは、こなたから渡されたエンゼル御前の核鉄の力で、ずいぶん回復してきている。
 あとは、気力、精神力、意志の力 ――― そう言ったものだ。
 学校へと向かう。
 その行動方針に異論はない。
 ハヤテやヒナギクと会えるかもしれない。かもしれないが、所詮可能性に過ぎない。
 しかし同時に、このゲームに来た初めて会った男、JOJO、空条承太郎の事を思い出す。
 蝶変態のパピヨンとの一悶着の後、JOJOと二人で改めて決めた行動方針が、まずは大きな施設、学校へと行き仲間を探す、というものだった。
 それから、半日以上経つ。
 そのJOJOは命を落とし、再会したハヤテとも離ればなれになり、学校へ行くために変態のパピヨンをここで待っている。
 テーブルの上には、いくつかの荷物。
279Classical名無しさん:08/02/01 01:40 ID:s.nTvvqQ
支援ネタ集めるのに飽きた支援
 自分が持つ分の基本支給品等は手元に戻した。
 それ以外の、多くなりすぎた荷物は一旦ひとまとめにしてある。
 かさばらず、すぐに使えそうな物は二人で分けた。
 こなたは、「スパイ映画の秘密道具みたいだ」 と、腕時計型麻酔銃を腕にはめた。それは小柄なこなたにあつらえたようにぴったりだった。
 あまりに凶悪そうな、扱えなさそうな物は、独歩が管理している。
 そういえば、と、ナギは纏められた支給品類に目をやる。
 まだ "紙"のままで、確認していないものがいくつかあったようだった。
 ちょっと確認しておこうかと思い、バッグの中をまさぐる。
 
 向かいに座っているこなたは、喫茶店にあったジュースをちびちび飲みながら、ナギの様子を眺めたり、たまに他愛のない話をして気を紛らわせたりしている。
 半ばヒキコモリな生活をしていて、趣味はゲームや漫画というナギとは趣味嗜好は合う。
 合うが、所々に齟齬があった。
 こなたにとって常識レベルの作品をナギが知らなかったり、逆もある。
 フォローし切れていない、のでは無く、存在していない、のだ。
 同じようなタイトルのものも、細部で微妙な違いがあったりする。
 (違う世界の漫画かぁ…)
 普段なら些かわくわくするその事実も、こんな状況で現実に突きつけられると戸惑うしかない。
 何より、違う世界の漫画よりも、漫画以上にあり得ないと思えるものに溢れているのだ。
 こなたはパピヨンの事を思い出す。
 パピヨンが何をするために離れたか。
 こなたには分かっていた。
 独歩とのやりとりは、少し離れた位置でしていたために詳しくは聞こえていない。
 しかし、それでもおおよその見当はついた。
281Classical名無しさん:08/02/01 01:41 ID:T1VAAp72
   
 パピヨンは、首輪の解析のためにはサンプルが必要だと言っていた。
 それも、出来れば数が欲しいと。
 数刻前、この場所で話をしていた才賀勝の顔が浮かぶ。
 自分より遙かに若い少年なのに、ずいぶんと大人びた印象があった。
 大人びていると言えばナギもそうなのだが、才賀勝のそれはナギの持つ早熟な知性によるものとは異なるように思えた。
 まさに、「漫画っぽい言い方」 をすれば、『いくつもの修羅場をくぐり抜けてきた男』 のそれ、だ。
 (人気キャラになるよね。優しくて真っ直ぐな少年で、悲運の生い立ちにもくじけずに、仲間を愛し、自分より遙かに強い敵にタチムカウ…)
 彼が主人公の作品があれば、きっと読者みんなに好かれるはずだと、そう思う。
 パピヨンが手にしていたのは、おそらく、剣だ。
 そして、それを使ってすることを、パピヨンは自分たちに見せたくなかったのだ。
 それが、こなたにも分かる。
 「人食いのホムンクルス」
 DIOの言葉が、再び脳裏をよぎる。
 パピヨンは違う。
 パピヨンは、DIOとは違う。
 繰り返し、自分に言い聞かせるかのように、こなたはその言葉を口の中で呟く。
 パピヨンは、あんな奴とは違う。
 DIOは…まさしくこなたがそれまで 「漫画の世界の存在」 と思っていた、『吐き気を催す邪悪』 そのものだと、そう思えた。
 鳴海の命と引き替えとはいえ、DIOが倒されたことは喜ばしいことなのだろうと思う。
 少なくともこれ以上は、みゆきや、シェリスの様に、DIOの犠牲となる者は居なくなるのだから。
 (これが漫画なら…)
 巨悪を倒した主人公達の、大団円が待っているだろう。
283Classical名無しさん:08/02/01 01:41 ID:T1VAAp72
    
 それでもこなたは、これで仇を取ってやったと晴れやかな気分にはなれない。
 DIOのこと。シェリスのこと。パピヨンの事。みゆきの事…。
 やりきれない、名状しきれないわだかまりが心の奥に淀んで、静かに渦巻いているのが分かる。
 それはきっと ――― 目の前にいる小さな少女、ナギも同じだろう。
 そのやりきれなさを抱えたまま、それでも先へ進まねばならないのだ。
 (『しかしDIOは、我らマーダー四天王の中では一番の下っ端よ…!』 『な、なにー、お前等は…!?』 『し、知っているのか、パピヨン!?』 ってね…)
 頭の中にコマ割りごと思い浮かべて、少し笑った。
 そうだ、パピヨンの役割は、そっちの方だ。
 そうも思う。
 (それで、ネットで 「変態解説キャラ」 って言われるんだよな、うん。その方が…)
 しっくりくる。
 けれども。
 (本に……書いてあることなんて……。
 世の中全体のほんの一部だよ………パピヨン………)
 こなたが見て知っているパピヨンも、DIOの言った名簿に書かれているパピヨンも。
 どちらも、ほんの一部だ。
 
 不意に、何かが落ちる乾いた音がした。
 「あ」
 ナギが、小さく声を上げて下を覗き込む。
 どうやら支給品を纏めていたバッグから、ナギが誤って落としてしまったようだ。
 覗くと、ナプキンかメモか、何かの紙らしき白いものがひらひらと舞い落ちている。
 「これ―――」
 足下の方を見ると、折りたたみ式の小さな機械が開き、明るく光っているのが見える。
285Classical名無しさん:08/02/01 01:42 ID:s.nTvvqQ
 
 携帯電話だ。これで誰かに電話できる? 家に ―――。
 考えて、それは無理だと打ち消すが、拾い上げようと伸ばす手が僅かに震えた。
 文字が見える。
 アミバ、と言う表示名と電話番号。
 手に取り、誰だろうかと考える間もなく、不意に聞こえた独歩の声に気を取られ、無意識にどこかを押してしまったように思う。
 「何だ、ありゃ…火事か…?」
 ナギと二人、その声の主へと視線を向けた。
 いつのまにか、風は止んでいた。

 ◆◆◆

 冷たい夜の闇を、ただゆらゆらと深海魚のように歩いている。
 無人の街路は、僅かな月明かりの他に光源はほとんど無い。
 手にしたライトはしかしともさずに、ただ闇そのものをまとい、歩を進める。
 パピヨンはいつになく、無表情な面持ちで人無き街を進んでいる。
 陰鬱だ、と評する者もいるだろうか。
 悩ましげな、と言い表す者もいるだろうか。
 それらどうともとれるし、またどれでも表せない。
 バタフライマスクの下にある白面は、あるいは水面に映る月影のようなものかもしれない。
 才賀勝の死体から首輪を回収する。
 単独行動の表向きの理由はそれだ。
 勿論、嘘ではない。
 首輪は必要だ。
 出来るだけ多い方が良い。
287Classical名無しさん:08/02/01 01:43 ID:T1VAAp72
            
288Classical名無しさん:08/02/01 01:43 ID:s.nTvvqQ
支援ー
 空条承太郎が既に回収していたという一つと、石となり風に消えた鳴海の一つでは、些か心許ない。
 そうは言う。
 刃牙、シェリス、承太郎、そして、才賀勝。
 回収できるものがそこにあるのだから、それら全てを取っておいて構わない。
 そうも言う。
 しかし。
 一人、こなたたちと別行動をし、勝の死体から首輪を回収すると言う名目は、嘘ではないが、全てでもない。
 パピヨン自身、それは分かっている。

 死体の首を切り、回収するのは織り込み済みだ。
 が、しかし。
 それを見せたくはなかった。
 こなたたち ――― いや、こなたに見せたくは無かった。
 こなたであれば、「見るな」 と一言言っておけば済んだかもしれない。
 無闇な感傷に流されて、必要なこととそうでないことの区別がつかなくなることはないだろう。
 そうは思う。
 DIOの、あの一言が無ければ。
 「『人食いの怪物』ホムンクルス、パピヨン」

 こなたは言う。
 「パピヨンはパピヨンだ」
 あいつとは違う。
 パピヨンは言う。
 「今日今まででお前に見せた俺も、紛れも無く蝶人パピヨンたる俺自身の姿だ」
 あいつとは違う。
 それは事実だ。
 それでも。
 同じだ。
 耳元で、囁かれる。
 『私と君の、何が違う? 私は石仮面の力で人を辞め、人を越えた吸血鬼となり、欲望のままに人の血を飲み、意のままに支配する。
 君も又、自らの意志で人を辞め、練金の力で人を喰らうホムンクルスとなり、欲望のまま人を喰らい、ホムンクルスを生み出し支配する。
 何が違う? 君と私の、何が違う?
 私たちは同類だ。人を越えた存在だ。
 殺し、喰らい、破壊する。人を越えた化け物。
 何が違う?』
 違わない。
 詳細名簿に書かれていたことを思い出す。
 ディオ・ブランドー。
 19世紀生まれのイギリス人。
 養父ジョージ・ジョースターを殺し、その血を浴びた石仮面の力で吸血鬼となる。
 その後一度破れ、海底で100年の時を経て後復活。
 弓と矢により時を止めるスタンド能力を身につける………。
 パピヨンは苦々しくも思う。
 まるでもう一人の自分だ。
 置き換え可能なほど似たもの同士だ。
 自分が生きるために、父親を殺した。
 邪魔だからといって、弟 …ディオにおいては、義理の兄弟、家族… を殺した。
 DIOに対して感じる、ある種の共感と、ある種の憎悪。既視感。
 それらは、高祖父であり同じ人型ホンクルスでもあるドクトル・バタフライや、その組織、超常選民同盟にいた者達に感じる感情とは違う。
 ネットで悪口を言った奴。見下した目で俺を見る女。陰湿な教師。粗暴な元自衛官、町のチンピラ…。
 ただ邪魔だから。気に入らないから。煩わしいから。
 ホムンクルスの実験台にして、殺した。
 そして自分の生み出したホムンクルス達も、多くの無関係な人間を殺し、貪り喰らった。
 DIOがシェリスを支配し、刃牙を支配し、自分の手を下さずに人を殺させようとした事と、何ら変わりはない。
 同じだ。
 やり口も、振る舞いも。
 所詮は、同じ穴のムジナだ。
 生きるためにホムンクルスになる。
 居場所を得るために邪魔者を殺す。
 その目的と行動に何等ぶれは無いと、そう思っていたし、それは今でも揺るがない。
 薄っぺらい、偽善者の言葉などどこにも響かない。
 法も道徳も倫理も、何ら自分の救いとはならない。
 自分が生きるために誰を殺そうが、あるいは自分の生み出したホムンクルスが誰を殺そうが、そんなのは知ったことではない。
 自分が生きるために食べてきたパンの事を思いやる者が居るか? 居ない。
 それと、同じだ。
 だが、例えば。
 こなたの友人の高良みゆき ―――。
 自分が生み出し、野に放っていたホムンクルスが彼女を殺して喰らったとして―――。
 それは起こりえないことだ。
 こなたと自分は、元々住んでいた世界が違う。
 しかし、それは起こりえたことだ。
292Classical名無しさん:08/02/01 01:44 ID:s.nTvvqQ
支援 支援がっ
 こなた達がもし、私立銀成学園高校に通っていたとすれば、起こりえたことだ。
 DIOは "たまたま" 高良みゆきを殺した。
 パピヨンは "たまたま" こなた達とは違う世界に住み、"たまたま" 武藤カズキの妹や、友人達を殺さなかった。
 実験台にしたキングコブラのホムンクルス、教師の巳田や、廃工場をねぐらにさせていた猿のホムンクルス猿渡とその手下達が、学園の生徒や付近の住人を食い散らかすことは分かり切っていた。
 分かってなお彼らを作り、どれだけ人が死のうが誰が喰われようが知ったことではないから、するがままにさせていた。
 その中で、"たまたま"カズキの妹も、カズキの友人も、喰われなかった。
 DIOと自分の差は、その "たまたま" の成り行きにしかない。
 "たまたま殺した" か、"たまたま殺さなかった" か。
 それだけだ。
 こなたがパピヨンとDIOは違うと、そう考えていられるその根拠は、それだけでしかない。

 パピヨンにとって、セカイとは 『自分』 と 『それ以外』 しか無かった。
 だから、全てを壊し、燃やし尽くし焼き尽くしたとしても、構わないと思っていた。
 焼け野原となったセカイと、蝶人パピヨンと、配下のホムンクルス達が居るだけの、瓦礫の王国。
 それだけで構わなかった。
 あの腐り果てた蝶野家という牢獄の中で、ただ無意味に座して死ぬのを待つよりは、自らの手で作り上げた血塗れの王国で生きる方が遙かにマシだった。
 いつ死ぬとしれぬ病に犯された身体。
 不治の病を克服し、自らの居場所を作り出す。
 そのためには、何でもやると決めた。
 ホムンクルスは、そして錬金術は、蝶野攻爵という脆弱な人間の前に垂らされた、唯一の蜘蛛の糸だった。
 それはしかし。
 ――― やはり、同じだ。
294Classical名無しさん:08/02/01 01:45 ID:T1VAAp72

 そういう思いと、それを否定する思い。
 その二つが、パピヨンの中を漂っている。
 
 愚地独歩。
 不意に、その太い顔と太い声が脳裏に浮かんだ。
 見た目や、詳細名簿の印象とは違い、思いの外察しが良い。
 首輪探知機と死体の位置の二つだけで、首輪のサンプルを回収したいという意図を読み取った。
 それには勿論、事前に空条承太郎が回収していた首輪からの連想もあるだろう。
 ホムンクルスの事をどれだけ分かっているかと言えば、おそらくは何も分かっていない。
 あれは、自分の身体で得たことしか分からないというタイプの人間だ。
 言葉や理論ではない。
 皮膚感覚と直感でモノを知り、理解する手合いだ。
 その意味で言えば、武藤カズキに似ているかもしれないとも思う。
 だから、パピヨンの最も苦手とするタイプの人間だ。

 「ま、俺の知り合いがよ。こう言ってたわけよ。
 『強さとは、己の我が儘を貫き通す事』 だ、ってな」

 生きるため。生き延びたいという我が儘を押し通すため、人を殺し、喰らった。
 
 「付け加えりゃあよ。
 何を貫き、何を残すか。
 そっちの方が、重てぇんだよな。
 中身を置き忘れちまったその強さじゃあ、何も残せねぇし何も乗っかってこねぇ」
 
296Classical名無しさん:08/02/01 01:46 ID:T1VAAp72
                   
 神心会100万人の長。
 少なくとも ――― 独歩の貫く強さの上には、それが乗っている。
 
 「善だの悪だの、偽善だの…。
 そういう理屈でモノ語るなぁ確かにガキの特権だ」
 
 そんな事は ――― パピヨンも分かっている。
 分かっているからこそ、認められなかった。
 それを認めてしまうことは、自らのセカイを壊してしまうから。
 自らを否定した "善良なる価値観" を断罪しなければ、パピヨンのセカイは成り立たないから。
 
 「男が語るのは、善悪じゃねぇ。『覚悟』、だ。
 …お前さん、天才なんだろ?
 きちんと、その天才の中身をぶら下げて、さっさと戻ってこいや」
 
 ――― 糞!
 苛立たしいのか、あるいはそうではないのか。
 善でも悪でも、快でも不快でも言い切れぬさざ波の中を、パピヨンは漂う。
 
 「…甘く見るなよ! 俺は類い希なる蝶天才、蝶人パピヨンだ!
 天才の中身は、このふざけたゲームの破壊! 残すのは勝利だ!
 貴様等の命全てを乗せても、お釣りが来る!」
 
 ただ一つ。
 今のパピヨンにもハッキリと分かる、偽りきれない事実がある。
298Classical名無しさん:08/02/01 01:47 ID:s.nTvvqQ
 
 パピヨンの人生の中において。
 蝶野攻爵として生きてきた十数年において。
 あんな大人は、居なかった。
 あんな風に無邪気に笑い、諸手でパピヨンを抱きしめられるような大人は。
 パピヨンの周りには居なかった。
 そのことは、今のパピヨンにもハッキリと分かる。
 
◆◆◆

 (…やはり)
 パピヨン改めて考える。
 (才賀勝の首輪は無くても十分かもしれんな…)
 今パピヨンが持っている鳴海の首輪と、独歩が持っている一つ、そしてシェリス。
 喫茶店のあるであろう方を向き、勝の死体があるであろう方を見る。
 さほど離れては居ない。
 予定通りに回収しに寄っても良いし、すぐに合流しても良い。
 首を切っても良いし、切らなくても良い。
 どちらでも良いから、迷う必要もないハズの事だ。
 (覚悟、か…)
 先ほどの言葉がよぎる。
 どちらも出来るなら、どちらを行うかにこそ、覚悟が要る。
 デイバッグからはみ出た、剣の柄を触る。
 そう言えば、何かの本で読んだことがあるな、と思い出す。
 剣で首を切るのに必要なのは、力ではなく、技なのだと。
 (…せっかくのお洒落を、血で汚すのも何だしね♪)
 おどけた調子で、そうも考える。
 
 そう考える意識の横合いから、破裂音に似た響きが滑り込んでくる。
 (エンジン音…車…じゃないな。軽い。原付だ)
 飛び上がり、近くの民家の屋根に登る。
 路地二つほど先の通りを、ライトが光り、動いていた。
 (こんな状況で音と光をまき散らすとは、相当の馬鹿か、自分に自信があるノった奴か、あるいは ―――)
 そんな事を気にしている余裕のない、せっぱ詰まった者か。
 慎重に、屋根から屋根を渡り、はっきりと見える位置に行く。
 追跡されているという風ではない。何かを追っているようでもない。
 通り過ぎる原付に乗る少年の顔が、月明かりに映し出され、すぐに過ぎ去った。
 パピヨンは詳細名簿の内容を思い出す。
 年齢から察すれば、該当しそうな名は服部平次、川田章吾、三村信史。
 しかし服部は色黒だし、川田は年不相応に老け顔だ。
 (となると、三村信史…。
 大東亜共和国…とかいう国のある世界の、とりたてて特徴のない高校生か)
 三村とてただの高校生ではないが、人型ホムンクルスであるパピヨンにすれば、練金の戦士でもホムンクルスでも無いならば、"とりたてて特徴の無い高校生"だ。
 服部平次の "西の高校生探偵" という肩書きや、川田章吾の "過去二回、プログラムに参加。一回目に優勝" というプロフィールにはそれなりに好奇心がそそられるが、三村信史のものには特に無い。
 それでも。
 パピヨンは勝の首輪を回収することの判断を後回しにし、原付の跡をつけることにした。
 闇夜の中、幾分スピードを押さえているとはいえ時速40キロは出しているであろう原付の後を追う事など、常人であればまずなし得ないことだが、ホムンクルスの能力を持つパピヨンには可能なことだ。
 それでも、長時間の追跡であれば体力が持たなかったであろうが、幸いにもほどなくスピードが落ち始める。
301Classical名無しさん:08/02/01 01:48 ID:s.nTvvqQ
まだ欲しいのか いやしんぼめッ! 支援
 (あれは ――― ?)
 スピードが落ちたとき、三村の身体に重なるように現れた人形が、原付を殴って破壊し、すぐさま元に戻った。
 (何だ? 今のは? 
 いや、アレ自体はおそらく、"スタンド"だ。
 だが、殴って、破壊し、すぐに元に ――― 直った?)
 ただの高校生に過ぎない、と断じた三村のその能力に、パピヨンは興味をそそられた。
 原付はそのままゆるゆると速度を落とし、停車する。
 三村はいぶかしげな様子でガソリンキャップを開けて中を見ると、遠目にも分かるほど嘆息した。
 成る程、ガス欠だったようだ。
 立ち上がり、空を見上げる三村。
 少し離れた民家の屋根の上で、それを見やるパピヨン。
 時間は、別れてから既に十数分は経っている。
 この男と接触すれば約束の30分は過ぎ、首輪を回収する暇もなく、独歩達は先に学校へと向かうだろう。
 決断をするのにそれほど時間はかからない。
 パピヨンはゆっくりと立ち上がり、足を踏み出す。
 いつのまにか風がやんでいて、雨が降りそうな空気がしていた。

303Classical名無しさん:08/02/01 01:49 ID:T1VAAp72
               
【E-3 喫茶店/1日目 夜中】

【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:軽い打撲
[装備]:時計型麻酔銃(1/1)麻酔銃の予備針8本
[道具]:支給品一式、フレイム・ボール@ゼロの使い魔(紙状態)、んまい棒@銀魂、
    綾崎ハヤテの女装時の服@ハヤテのごとく
[思考・状況]
基本:みんなで力を合わせ首輪を外し脱出。
1:あれ? 携帯電話? え? 火事?
2:独歩・ナギと共にパピヨンを待ち学校へ向かう。
3:かがみ、つかさを探して携帯を借りて家に電話。
[備考]
※独歩・シェリスと情報交換をしました。
※ナギ、独歩等と大まかな情報交換をしました。
※独歩の支給品にあった携帯電話がかかったかどうかは未確定。

305Classical名無しさん:08/02/01 01:50 ID:s.nTvvqQ
支援
【E-3 喫茶店/1日目 夜中】

【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:軽い打撲
[装備]:時計型麻酔銃(1/1)麻酔銃の予備針8本
[道具]:支給品一式、フレイム・ボール@ゼロの使い魔(紙状態)、んまい棒@銀魂、
    綾崎ハヤテの女装時の服@ハヤテのごとく
[思考・状況]
基本:みんなで力を合わせ首輪を外し脱出。
1:あれ? 携帯電話? え? 火事?
2:独歩・ナギと共にパピヨンを待ち学校へ向かう。
3:かがみ、つかさを探して携帯を借りて家に電話。
[備考]
※独歩・シェリスと情報交換をしました。
※ナギ、独歩等と大まかな情報交換をしました。
※独歩の支給品にあった携帯電話がかかったかどうかは未確定。
【愚地独歩@グラップラー刃牙】
[状態]:健康
[装備]:キツめのスーツ、首輪探知機@BATTLE ROYALE
[道具]:支給品一式、首輪×2(フェイスレス、シェリス)、不明@からくりサーカス、
    イングラムM10サブマシンガンの予備マガジン×9、スタングレネード×1、
    書き込んだ名簿、干からびた肉の芽の残骸
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない。
1:何だありゃ? 火事か…?
2:こなた・ナギと共にパピヨンを待ち、学校へ行き、アカギと合流。鳴海のことを伝える。
3:基本姿勢を、闘うことより他の参加者 (女、子供、弱者) を守ることを優先する事に変更。
4:ゲームに乗っていない参加者に、勇次郎の事を知らせ、勇次郎はどんな手段をもってでも倒す。
5:その他、アミバ・ラオウ・ジグマール・平次(名前は知らない)、タバサ(名前は知らない、女なので戦わない)、危険/ゲームに乗っていると思われる人物に注意。
6:乗っていない人間に、ケンシロウ、及び上記の人間の情報を伝える。
7:可能なら、光成と会って話をしたい。
8:可能ならばしろがねを説得する。
9:手に入れた首輪は、パピヨンか首輪解析の出来そうな相手に渡す。

[備考]
※パピヨン・勝・こなた・鳴海と情報交換をしました。
※不明@からくりサーカス
 『自動人形』の文字のみ確認できます。
 中身は不明ですが、自立行動可能かつ戦闘可能な『参加者になり得るもの』は入っていません。
308Classical名無しさん:08/02/01 01:51 ID:T1VAAp72
                                        
※刃牙、光成の変貌に疑問を感じています。
※こなたとおおまかな情報交換をしました。
※独歩が確認した 「火事とおぼしき光」 は、【D-4 北東の民家】 で、ケンシロウがキュルケを送るために点けた物です。距離があるため、はっきりと火事とは分かっていませんが、月明かりのみの真っ暗な町並みなので、何かが光っていることはハッキリと分かります。
 
 
【E-2/一日目/夜中】
【パピヨン@武装錬金】
[状態]:疲労。全身に打撲。
[装備]:猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険、デルフリンガー@ゼロの使い魔
[道具]:地下鉄管理センターの位置がわかる地図、地下鉄システム仕様書
    ルイズの杖、参加者顔写真&詳細プロフィール付き名簿、
    支給品一式、小さな懐中電灯
[思考・状況]
基本:首輪を外し『元の世界の武藤カズキ』と決着をつける。
1:三村信史をどうするか? 才賀勝の首輪を回収しておくべきか?
2:喫茶店で、こなた・独歩・ナギと合流し、学校へ行きアカギと会う予定。
3:エレオノールに警戒。
4:核鉄の謎を解く。
5:二アデスハピネスを手に入れる。
6:首輪の解体にマジックハンドを使用出来る工場等の施設を探す。
[備考]
※参戦時期はヴィクター戦、カズキに白い核鉄を渡した直後です
※スタンド、矢の存在に興味を持っています。
310Classical名無しさん:08/02/01 01:52 ID:s.nTvvqQ
最期まで支援しきる!
※猫草の『ストレイ・キャット』は、他の参加者のスタンドと同様に制限を受けているものと思われます
※独歩・シェリスと情報交換をしました。
※逃げられてしまったゼクロスにさほど執着はないようです
※詳細名簿を入手しました。DIOの能力については「時を止める能力」と一言記載があるだけのようです。


【三村信史@BATTLE ROYALE】
[状態]:精神疲労(中)、鼻の骨を骨折、顎にダメージ有り(大)、原チャリで移動中
[装備]:トランプ銃@名探偵コナン、クレイジーダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険、
    銀時の原チャリ(ガス欠)@銀魂
[道具]:七原秋也のギター@BATTLE ROYALE(紙状態)支給品一式×2
[思考・状況]
基本:老人の野望を打ち砕く。かがみはどんな手段を使ってでも殺す。
1:仲間になってくれそうな参加者に会う。
2:参加者に出会ったら第三放送の内容を訊く。そして「柊かがみという女は殺し合いに乗っていて、人を一人殺した」と伝える。
3:参加者にあったら柊かがみと一緒にいる、3人(覚悟、ヒナギク、川田)が柊かがみに騙されて、かがみを信じきっている。
  もしくは、柊かがみに操られているかもしれないと伝える。
4:再度ハッキングを挑む為、携帯電話を探す。
5:集められた人間の「共通点」を探す。
6:他参加者と接触し、情報を得る。「DIO」は警戒する。
7:『ハッキング』について考える。
8:アーカードは殺す。

[備考]
※かがみは、人を操る能力を持っているのではないのだろうかと推測しています。
※つかさをかがみと誤認しています。
※つかさ、覚悟、ヒナギク、川田が柊かがみに、完全に騙されている。
 もしくは、操られていると思っています(説得不能だと考えています)。
※覚悟、ヒナギクの名前を知りません。

※本編開始前から連れて来られています。
※クレイジーダイヤモンドは物を直す能力のみ使用可能です。
 復元には復元するものの大きさに比例して体力を消費します。
 戦闘する事も可能ですが、大きく体力を消費します。
※ジョセフは死亡したと思っています。
※マップの外に何かがある、と考えています。
※彼が留守番電話にメッセージを残したのは、以下13ヶ所です。内、病院の電話は破壊済み。
 なお、メッセージは全て同一です。
 老人ホーム(A−1)、市役所(D−3)、病院(F−4)、消防署(D−4)、学校(C−4)
 総合体育館(D−5)、ホームセンター事務室(H−5)、総合スーパー事務室(D−6)
 変電所(A−8)、汚水処理場(B−8)、ホテル(D−8)、パブ(F−8)、ボーリング場(G−8)
※第三放送を聞き逃しました。
※ジョセフの話(波紋、吸血鬼、柱の男 etc)を信じることにしました。(どの程度まで詳しく話したかは任せます)
[共通備考]
※独歩が喫茶店でひとまとめにしてある装備類は以下の通り。
 基本支給品一式×10(食料2食消費)、不明支給品0〜5(フェイスレス、ナギ、承太郎)、
 輸血パック(AB型)@ヘルシング、グリース缶@グラップラー刃牙、
 道化のマスク@からくりサーカス)、ライドル@仮面ライダーSPIRITS、
 携帯電話(電話帳機能にアミバの番号あり)、光の剣(ただのナイフ)@BATTLE ROYALE
 
314Classical名無しさん:08/02/01 01:54 ID:s.nTvvqQ
 
315Classical名無しさん:08/02/01 01:54 ID:AP49zE02
316 ◆MANGA/k/d. :08/02/01 01:55 ID:BPa2MbDU
 以上にて、投下終了で御座います。
 ミス、間違い、矛盾等ありましたご指定下さい。
 そして勿論、「キラキラと輝くもの」とは、独歩の頭で御座います。
 嘘で御座います。
 ご支援有り難う御座います。
 これは本当で御座います。
317Classical名無しさん:08/02/01 01:58 ID:AP49zE02
今から読むんだけど、ナギは死んだのか……
状態表がない。
【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】
[状態]軽い打撲、右頬に軽いダメージ、精神疲労、核鉄にて治癒中
[装備]スパイスガール@ジョジョの奇妙な冒険、エンゼル御前@武装錬金(核鉄状態)
[道具]支給品一式(食料1食分消費)
[思考・状況]
基本:殺し合いを止め、家に戻る
1:携帯電話? 火事? 紙?
2:ハヤテ、ヒナギク、ジョセフと合流する。
3:カズキの恋人という『斗貴子』とやらに会って、カズキの死を伝える。
4:こなた・独歩と共にパピヨンを待ち学校へ向かう。
5:ハヤテに事の真相を聞きだし、叱りつける
6:可能ならばしろがねを説得する。

参戦時期:原作6巻終了後
[備考]
※スパイスガールが出せるかは不明です。
※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると核鉄に戻ります。
※ヒナギクが死んだ事への疑念は晴れました。
※独歩の話を聞き、光成の裏に黒幕が居ると睨んでいます。
※鳴海、独歩と情報交換をしました。
※こなたとおおまかな情報交換をしました。
※集められている不明支給品(0〜5)の内容を確認できたかどうかは未確定。


*--------------------------*
 すみません、間違えてこなたを二重に書き込みました。
 これを状態表2回目のこなたと入れ替えで。
319Classical名無しさん:08/02/01 02:09 ID:sHX3/5nI
投下おつです。
独歩ちゃんがカッコ良過ぎる。
普段門下生を指導しているときもこんな感じなんだろうか。
原作では確認しようも無いけど。

そしてここでKOOL登場。
彼がまっとうに活躍できる日は来るのだろうか。
320Classical名無しさん:08/02/01 02:14 ID:FxLp9lNo
投下乙
独歩輝いてるなぁ。あんなに空気だったのにw
そして三村を見つけたパピヨンはKOOLを止めてくれるのか、それとま悪化するのか、はたまた放置するのか
321Classical名無しさん:08/02/01 02:15 ID:s.nTvvqQ
投下乙ー

独歩いいね。現ロワ年長者(本当はしろがねの方が年上だけど)としてちゃんと役目を果たしてる
こなたや独歩がいなかったらパピヨンはどこかで軸がぶれてたかもしれないなぁ……そう思うといい役してるよ
そしてKOOL登場したと思ったらまさかの放置プレイwww
いつになったら気がつくんだお前はw
322Classical名無しさん:08/02/01 02:25 ID:AP49zE02
おぉ、独歩とパピヨンの独り言がいい感じだな。
独歩がまともな大人に見えるのは、漫画ロワだけって感じだww


でも、三村は高校生じゃなくて中学生じゃなかったか?
323Classical名無しさん:08/02/01 03:31 ID:s.nTvvqQ
えっと、毒吐きで話題に上がったのですが、「地獄の季節」で承太郎と刃牙が死んだのはD-3の喫茶店なのですが、3人がいる喫茶店の表記がE-3になっています
これは喫茶店が二つあり、火事を見て3人が移動したということでしょうか? それとも勘違いでしょうか?
324 ◆MANGA/k/d. :08/02/01 06:20 ID:BPa2MbDU
 うへぇ。間違いだらけの水泳大会。
 三村信史の、“とりたてて特徴のない高校生” は “とりたてて特徴のない中学生” の間違い。
 位置表示は、【E-3 喫茶店/1日目 夜中】 ではなく 【D-3 喫茶店/1日目 夜中】 の間違いであります。
325Classical名無しさん:08/02/01 10:11 ID:fWaWvPbI
投下乙です。
それなんて男塾w
そして誤解フラグの帝王FOOLはパッピー単発で遭遇か・・・
こいつはくせえッー!誤解フラグのにおいがプンプンするぜっーーーーッ!!
こんなFOOLには出会ったことがねえほどなあァーーーーーッ
かがみんのせいで暴走しただと?ちがうねッ!!
こいつは生まれついてのFOOLだッ!
蝶野さん早えとこ頭冷やしてやんな!
あと誤字なんですけど
ナギとしはてハヤテとヒナギクを、こなたとしてはかがみとつかさを。

ナギとしてはハヤテとヒナギクを、こなたとしてはかがみとつかさを。
だと思います。
326 ◆14m5Do64HQ :08/02/01 10:29 ID:pFdsqLQk
投下乙!
独歩の独り言がうまいですねー、自分も独歩を描く時は参考にさせて貰いたいです!
そういえばパピヨンには碌な大人が居なかったねw今後のパピヨンに期待!
何気にこなたとナギの乳トークにはいつか来るかな?と思っていたので面白かったですw
三村はどうなんのかな……頑張れ三村w

>>255
申し訳ないです。昨日はちょっとあの後やる事があったので見落としてました。
今から前鳥の確認を行いたいと思います。
327 ◆1WtHqYWV9M :08/02/01 10:32 ID:pFdsqLQk
前鳥です。
それでは失礼〜。
328 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:00 ID:.oHsazFs
村雨良、柊かがみを投下いたします。
願わくば、支援を賜りたく。
329 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:02 ID:.oHsazFs
(気のせい……だったのかな?)
 社務所の廊下を歩きながら、かがみは思考を巡らせていた。
 あの一瞬、確かに首輪が色を変えたと思ったのだ。
 指先で、首輪の表面をなぞってみる。不自然なほどに凹凸がない。
 
 首輪。

 品性というものを一時捨てるなら、「クソ忌々しい」と形容したくなるような、拘束具。
 これがあるから逃げられない。闘わなくてはならない。四六時中、命を握られている恐怖に怯えなくてはならない。
 けれど、ジョセフの言っていた、ジョースター家に伝わる伝統的な発想法とやらで考えるなら、

 ――これさえ外せれば、全ては裏返る。

 逃げられる。無駄な戦いをやらなくてすむようになる。
 みんなで――つかさと、こなたと、ジョセフと、三村と、こなたの無事を教えてくれようとしたあの優しそうな子と、

 ――帰れる。

 そう思った瞬間、かがみの足は勝手に走り出していた。
 脱兎の如くかがみは洗面所に走りこみ、イライラとコップに水を注ぐと、備え付けの鏡を睨み付けた。
 ごくり、とかがみの喉が鳴った。
 手が……震えた。

 ――お願い
 
 その願いは、思わずハっとしてしまうほど、切実だった。
 ダメ元だ、気のせいに決まってる。そう、自分に言い聞かせるのに、

――全然、そう思えない。
330 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:03 ID:.oHsazFs
願望で胸が破裂しそうだ。
首輪に水を……かける。鏡を食い入るように見る。

 ――変わらない。

 変わったのは鏡の中の自分の顔。
 絶望で歪んだ自分の顔。
 もう一回。

 ――変わらない。

 頭に血が上って、何も考えられなくなった。
 気がつくと、コップの水は空っぽになっていて、上着の首元がぐっしょりと濡れていた。
 
 胸から吹き上がった激情の炎が思考を塗りつぶした。

 気がつくとコップを壁に叩きつけていた。聞えてきた音は、どこか遠くに聞えた。
(……何やってんだろ、私)
 さっき外に出た時にわかったが、晴れていた空を雲が覆いつつある。
 雨が降れば首輪は濡れる。
 時間をいじり、肉体をいじって、殺し合いをさせるようなやつらが、天候のことを考えていないわけはない。
 そもそも天候を云々しなくても、首輪が水に濡れることぐらいあるだろう。
 余裕さえあれば、かがみだってシャワーぐらい使ったかもしれない。
 だからこの結果は、当然。自分の考えが足りなくて、勘違いしていたにすぎない。
 ただそれだけのこと。それだけのことなのに。

 ――なのに。

 何故こんなにも目の前が真っ暗なのか、足から力が抜けていくのか。
331Classical名無しさん:08/02/01 21:04 ID:s.nTvvqQ
 
332Classical名無しさん:08/02/01 21:04 ID:BPa2MbDU
  
333 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:04 ID:.oHsazFs
 ――希望を持ってしまった。
 
 つかさやこなたと合流したいとずっと思っていたけど、その先は考えないようにしていた。
 だって、首輪が外せなければおんなじなのだ。
 仮に、積極的に願いをかなえようとしている奴や、自分を連れてきた男みたいな戦闘狂が全員死んだとしても、
 この殺し合いを計画した奴らが、それですませてくれるはずはない。

 ――殺しあわなければ、首輪を爆破する。

 そういって脅しをかけてくるに違いない。
 そしたらどうなる? また殺し合いが始まってしまうかもしれない。
 結局行き着く先は――
 
 死。
 
「何でよ……」
 勝手に言葉が口から飛び出す。
「何で私達がこんなことに巻き込まれなきゃなんないのよ!?」
 
――つかさや、ジョジョや、自分が、一体どんな悪い事をしたというのか? 
 
 昨日まで普通に学校に通い、普通に生きてきたのに。
 どうしてこんな、超能力者や超人や怪人が跋扈する世界でサバイバルを強いられなくてはならないのか?
 理不尽すぎるではないか! 不条理すぎるではないか!!
 その不条理の中で、みゆきが、桂が、灰原が――死んだ。
そして次はひょっとしたら……。
 そんなことを考えていると、死んでいったみなの顔が次々と浮かんでくる。
 そして彼の顔も……。

 大きく揺らいでいたかがみの心の水面は――揺らぎを止めた。
334Classical名無しさん:08/02/01 21:05 ID:s.nTvvqQ
 
335 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:06 ID:.oHsazFs
 吐息を一つ漏らし、
「まったく……。一人だとどうしても暗くなるな……」
 泉こなたと話している時のような、どこかぞんざいともいえる口調でかがみは呟く。
 無論、意図してのことだ。口調一つで心のありようは変わる。
(やっぱり、この状況をなんとかしなきゃ……。
こんな状態がずっと続いたら、絶対どっかおかしくなっちゃう)
 桂やジョジョのように鋼の精神を持ち合わせている人間ならいざしらず、
 自分やつかさのような人間に、この環境は過酷過ぎる。
(つかさ、大丈夫かな……。無事ってことは、誰か強い人と一緒にいるんだろうけど……。
あの子、男慣れしてないからなぁ……。
できたら女の子も一緒にいてくれたら精神的にも大丈夫なんだけど……。って、それはちょっと欲張りすぎか)
 妹のことを考え始めると、心配で心配でたまらなくなる。
 あの、のほほんとして、競争ごとに不向きなつかさが、どうしているかと思うと……。
 かがみは腕組みをした。

 ――へこんでいる暇はない。

 無論、そんなことは百も承知だ。
 死んでいった仲間のためにも、妹のためにも、落ち込んで、自棄になっている場合ではない。
 桂小太郎は、どんな状況でも侍だった。みゆきは、みゆきだった。灰原は、あんなに小さいのに冷静――
 かがみの顔が歪んだ。
 彼らの生き様は、誇りと次の一歩を踏み出す勇気を与えてくれる。
 けれど同時に、悲しみと喪失感、絶望も……。
 二つの相反する感情が、かがみの心をぎりぎりと締め上げ、引き裂こうとする。
(ジョジョ……)
 思わず、かがみは彼の名を口にする。

"でも成長まで慎ましやかになる事ぁ無ぇとも思うがね、HAHAHA"
336 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:06 ID:.oHsazFs
 思わず噴出しそうになった。
 いくらなんでも、あんまりだろうと思う。
 一体何をどうやったら、これだけ絶望的な状況で、ああいう台詞を口にできるのか。

"Oh〜ブラの方だったか。意外と小さいのを気にしてんのね!"

「……っの……スカタン」
 小声で悪態を呟く。
 少し心が温もりを取り戻した気がした。やっぱり、彼のことを考えると、楽になれる。
(助けてもらったから……。だけじゃないな、きっと)
 助けてもらったことには感謝している。彼があの態度なので、どうにもちゃんと気持ちを伝えられないが、
本当に感謝しているのだ。
 ジョセフが止めてくれなかったら、いまごろ自分は絶望の中で死んでいた。
 それに、ジョセフといると、安心できた。悲しみを少し、忘れられた。心が何かに守られているような気が、した。
(何でアイツは、あんな風にしてられるんだろ?)
 死ぬことが怖くないのだろうか? 落ち込んだりしないのだろうか? 

 ――恐れては、いると思う。

 死ぬことがまったく怖くない人間などいない。
 いるかもしれないが、ジョセフは死ぬより生きてた方がイイに決まってると、言い切るタイプ。

 ――落ち込んだりもするそうだ。

 シーザーという友達が死んだ時、敵地のど真ん中で泣いてしまったと、彼は言っていた。
 では何が違うのだろう?
 状況に追い詰められ、絶望ですぐに足を止めてしまいそうになる自分と彼とでは、何が違うのだろう?

"だが俺達はいつまでもその事でクヨクヨしているわけにはいかねぇ"
337 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:07 ID:.oHsazFs
 彼はいつまでも引き摺らない。
 引き摺らないけど、忘れない。だって、友達のことを語る彼の目は、本当に優しかったから。
 それでも、クヨクヨはしないのだ。
 多分それが、彼、ジョセフ・ジョースターの根幹なのだと思う。
 クヨクヨせずに、前を向いて歩く。歩き続ける。
 
"生きる事って良い事だぜ、かがみ!"

 あの時の彼の顔は、彼から伝わってきた『波紋』という力は、生に満ちていた。
 生きていることは楽しいか? といえば彼は、きっとなんの躊躇もなくYESというだろう。

 ――ああ、そうか。

 彼は命というものに「敬意」を払っているのだろう。
 命に敬意を払っているから、彼は生を謳歌しようとする。他者の死を受け入れて進もうとする。
 どんな時、どんな場所であろうとも、例え、こんな地獄のような所でも、彼はきっと……。
 だから、彼の側にいた時は、絶望や悲しみを忘れられていたんだろう。
 彼の精神は、絶望の闇夜においてすら、暖かく輝く光だ。
(……なんて、少し褒めすぎたか?)
 こんなこと、口が裂けてもジョセフの目の前では言ってやるつもりは無い
 アイツが悪いのだ。散々、人のことを子ども扱いするから。
 とにかく――
(よし……。とにかく、元気出た! っということにしておこう)
 カラ元気であると、もっとも自覚できるのは自分であるところが悲しい所だが、
 元気が出たと言い聞かせておく。
(もう一回繰り返してみれば、はっきするはずよ)
 かがみは、ゆっくりと廊下を歩き出す。
 俯かずに顔を上げて。俯いたら負けだと、そんな気がした。
 これからどんなことがあっても、顔を上げて闘ってやるのだ。

 ――アイツみたいに。
338Classical名無しさん:08/02/01 21:07 ID:s.nTvvqQ
支援支援
339Classical名無しさん:08/02/01 21:08 ID:s.nTvvqQ
もいっちょ
340 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:09 ID:.oHsazFs
「うっし!」
 気合を一ついれ、かがみは社務所のドアをひき開けた。




 ――またか!?

 疲れと困惑を感じつつZXは、屋根の上から跳躍した。
 女を拘束しておいた方が良いというのは、分かっている。
 だが、女に力を振るえば、幻影女が涙を流す気がするのだ。
 いや――気がするというレベルではない。ほとんど確信に近いレベルだ。

 ――何故だ!?

 疑問という名の烈風がZXの中で吹き荒れる。
(分からない……。クソっ……。これも記憶がないからか……)
 自分を拘束する、無くなった記憶を要因として心に起こる「結果」にZXは苛立つ。
 その苛立ちを、苦労してねじ伏せつつ、ZXは思考する。
 自由にしろと言いはしたが、それはあくまで建物の中でということだ。
 このまま動き回らせていては、男やこの神社に近づくものを、十分に見張ることができない。
 それでは対応が遅れかねない。ここまで手間をかけたことが、無駄になりかねない。
 こちらに視線を送ってくる女に、ZXは強烈な視線を叩きつけた。
「……建物の中に入っていろ。自由にしていいとはいったが、外を歩き回ることは許可しない」
「前言撤回ってわけ? さっきは『好きにしろ』っていったくせに」
 女の辛辣な物言いに、ZXは言葉に詰まる。
(こういう時は……。どうすればいいんだ?)
 三影の言っていた言葉を思い出す。
 次の瞬間、ZXは拳を、石畳に向かって叩きつけていた。
 ゴガンという異様な音と共に、石畳が拳大に陥没。
「お前は、自分の立場というものが、分かっているのか?」
341Classical名無しさん:08/02/01 21:10 ID:s.nTvvqQ
 
342 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:10 ID:.oHsazFs
 心に走るノイズに耐えつつ、ZXは平静を装って言った。
 威圧的に聞えるように、恐怖を与えるように。
 女の眉が動き、唇がわずかに震えた。

 ただ――それだけだった。

 ZXの心に焦燥が込み上げる。
(この女……。死が怖くないのか?)
 
 ――ひよわな生き物は死を恐れるのではなかったのか? 

 戸惑いつつも、ZXは女に向かって拳を放つ。
 大気を裂いて拳が突き出され、女の顔の寸前で停止。
 風圧で女の髪が、派手に宙を舞った。
 心に走る多大なノイズに悩まされつつ、
「戻れ。最後の警告だ」
 心を隠す装甲の向こうでZXが固唾を呑んで見守る先、

「じゃあ、やれば? 殺しなさいよ、速く」

 無機質な声が響いた。
 女の瞳にはまったく感情の色が無かった。
 まるで実験データーに目を通す、BADANの研究者のような透徹した目で、ZXを見返してくる。
「……ィ」
 微量の舌打ちがZXの発声機構から漏れ出た。

 ――どうする?
 
 ZXの心は、困惑と混乱に支配されていた。
 恐怖では女を動かすことはできない。それがZXを打ちのめす。
(この女……。弱者では、ないのか?)
 もう一度、女を観察してみる。
343Classical名無しさん:08/02/01 21:11 ID:PRMgaIRQ
344 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:11 ID:.oHsazFs
 隙だらけ。非武装。身体的スペックも、まったく自分に及ばない。
 不可解さが増し、混乱が余計に増した。
(この女の行動パターンは不明……。拘束、するしかない)
 ついにZXはその結論に達した。
 心に縦横に走るノイズの群れをなんとか制御しつつ、ZXは――

 いきなり、女が顔を覆った。

「そんなの……。そんなの……」

 呆気にとられてZXが見つめる先で、

「う……うぅ……酷い……。そんなのって……あんまりよ……」

 女がうずくまって泣き始める。
 ZXの心に吹き荒れる混乱の嵐は、ついに最大風速を記録した。
(一体何なんだこの女は!? 何故、泣く!?)
 そして。

 ――どうして心がこんなに乱れる!?

 耐え難い精神の嵐に揺さぶられ、ZXの脳は混乱を極めた。
 ややあって、
「……お前の好きにすればいい」
 どこか疲れたようにZXは告げた。
 譲歩が過ぎるという気がしないでもないが、これ以上女に精神をかき乱されては、闘いどころではなくなってしまう。
「ほんと……に?」
「本当だ!」
 ZXは吐き捨てた。
 女が目をこすりながら顔を上げる。
345Classical名無しさん:08/02/01 21:12 ID:PRMgaIRQ
346 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:12 ID:.oHsazFs
 ――ん?

 目から涙が流れた形跡がないような気がする。
 ZXは首をひねるが、すぐに思考を打ち切った。
 些細な疑問より、これ以上女にかかずらいたくないという気持ちの方が、圧倒的に大きい。
(まあいい……。要は女と周辺に近づく人間の両方に気を配ればいいだけだ)
 空間を多方面から捉え、探索できるフォログラフィアイの能力を、フルに使えば何とかなる。
 踵を返そうとしたZXの肩を、誰かが叩いた。
「……なんだ?」
 疲労と困惑を多量にブレンドさせてZXは尋ねた。
 女が袂から紙を取り出し、素早く字を書き、手渡してくる
『二つやってみたいことがある。それを手伝ってくれるなら、もう外にはでないと約束する』
 ZXは、しばし黙り込んだ。
 女の提案は、なかなか魅力的なものに思える。
「行っておくが……」
『逃がしてくれ、ジョセフと連絡を取らせてくれ、という要求はしない』
 ZXが言葉を発するのに先んじて、女が紙をつきつけてくる。
『時間もそんなにかけないと約束する。それと、ここからは筆談で会話したい。
答えがYESなら頷いて欲しい』
 さらにしばらく黙考した後、ZXは――頷いた。




 ――やった!

 ガッツポーズをしたくなる衝動を、必死でかがみは抑えつけた。
 顔が緩むのを悟られないように、後ろを向く。
 湧き上がる安堵の気持ちと共に、精神的疲労と恐怖が今頃押し寄せてきて、足が震えそうになった。
 正直、人物眼に自信があるか問われれば、「それほどない」と答えるだろう。
 それほど社交的ともえいない自分に、普通の人間以上の人物眼があるとも思えないから。
347Classical名無しさん:08/02/01 21:13 ID:PRMgaIRQ
348 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:14 ID:.oHsazFs
 まったく見えない速度で繰り出される、桁外れの破壊力を秘めた男の拳が、怖くなかったといえば、嘘になる。
 だが、不幸なことに――どうしても幸運とはいいたくない――
 今日は、二度も女だろうが容赦なく殺しにかかる化物に遭遇している。そのうちの一人とは、殺し合いまでした。
 だから分かる。

 ――目の前のコイツは本気で殺そうとしていない。

 それは、連れ去られる時、連れ去られた後の騒動もふまえて、かなりの確信をもって推測できた。
 だからこそ、背筋が凍る恐怖を感じつつも、なんとか耐えられたのだ。
 けれど、拘束される可能性はあった。何せ一度されていのだからこっちは警戒すべき。
 くわえて、いまからやることには、協力者が必要。

 だから、「約束」を持ち出した。
 
 どういうわけか、目の前の男は異様ともいえるほど「約束」にこだわる。
 どう考えてもハッタリの、自分とジョセフの「約束」を無下にできなかったように。
 ゆえに、約束を交えて取引を持ち出せば、乗ってくる可能性は高いと考えたのだ。
 
 ――ここまでは計画通り。
 
 にしても、ここまで上手く行くとは思わなかった。
 実の所、失敗する可能性も高いと思っていたのだが、予想以上に上手くいった、
 自画自賛するなら、男の呼吸を読んで、それなりに絶妙のタイミングで動けたと思う。
(……なんか、似てんのよね)

 ――つかさに。

 無論、つかさとこの男は、似ても似つかない。
 しかし、なんというか根本の所が似通っているというのか……。
 少なくとも、どういう風に振舞えば言うことを聞きそうか、というのが何となく分かるのだ。
349Classical名無しさん:08/02/01 21:15 ID:PRMgaIRQ
350 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:15 ID:.oHsazFs
 チラッと後ろに目線を向けながら、
(なんていうか……。こなた流に言うと、コイツっていわゆる――)

 ――弟属性。

 とにかく、今の所、ツキの流れはあるようだ。
 が、こんな所で幸運を使い果たしていて欲しくもない。
 手水の前に行き、足を止め、かがみは男に手早く実験の内容を説明する。
 やることがやることなので、断られるのではないかと一瞬ヒヤリとしたが、男は黙って頷いた。
(本当に約束は守るんだな……。こいつは)
 少しばかり感心しながら、柄杓に水を満たし――男の首元にむかってぶっかけてみる。
 かがみの極限まで凝縮された視線が、男の首輪に集中した。

 変化は――なし。

 かがみの奥歯が軋んだ。
 もう一回。
 またも――変化なし。
 男がなんの感情も移さない目で見つめてくる。
 かがみの視界が揺れる。

 ――馬鹿か、私は。
 
 虚脱感と諦観の大波を必死でせきとめながら、
『あなたの番よ』
 筆談で指示する。
 男が、黙って頷いた。
 今度は男が、かがみに向かって水をかけてくる。
 目線だけで、「どうだ?」と期待を込めて尋ねてみる。
 男が首を振った。
 もう一度やっても――結果は同じだった。
351 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:16 ID:.oHsazFs
 夜風が吹き、かがみは身を震わせた。

(着替えなきゃ……)
 濡れてしまった上着を着替えなければと思うのだが、手と足が動かない。
 視線が足元を向きそうになる。
 
 かがみは顔を上げた。
 
(落ち込むなっ! クヨクヨするのはいつでもできる!)

 必死に自分で自分を叱咤する。

 ――落ち着け。COOLになれ。

 別れてしまった三村の口癖を思い浮かべながら、
 かがみは、心の中の弱い考えと格闘する。
(同じことをやったはず……。さっきと何が違うんだろ?)

 ――ただの目の錯覚だったのでは?

(黙れっ!)
 かがみは唇を噛んだ。
「おい――」
「まだ終わってない!」
 我ながら八つ当たりに近いと思ったが、男の反論を怒気を込めた一言で封殺。
 そのとき、唐突に、かがみの頭に上った血が下がった。

 ――ちょっと待て。

(そうだ……。さっきは、作法どおりやっていたら、こいつにチョッカイかけられて……)
 かがみの頭の中で、閃くものがあった。
 何も変わらないだろう、という声も頭の中でしたが、そっちは黙殺しておく。
352Classical名無しさん:08/02/01 21:16 ID:PRMgaIRQ
353 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:18 ID:.oHsazFs
 大きく深呼吸。
 ゆっくりと、右手で柄杓を持って水を汲み、左手にかけて左手を清める。
 次に左手に持ち替えて、同じように右手を清める。 再び柄杓を右手に持ち――
 男に合図する。
 男が黙って、受け入れる体勢を作る。

 ――お願い!!

 かがみの思いを込めた水が、男の首輪にかかり――色が、

 変わった。
 
 生涯で一、二を争う速度で、かがみは男に針走りより、目を皿のようにして首輪を観察した。
 普通といっていいのかどうか知らないが、今、首に巻きついているよりもはるかに普通だ。
 
 ――継ぎ目だって、ある!!

 かがみの視線の先、首輪が徐々に色をかえ、元に戻っていく。

 ――やっったっ!!

 ほとんど無意識に、かがみは男の手を取って何度も振り回す。
 男が呆気に取られたような顔をしている。
 そんなことも気に入らないほど、感情が暴れ狂っている。制御なんかできない。
 かがみは、駆け出し、社務所に飛び込んだ。

 ――盗聴されているかもしれない。聞かれては駄目だ。

 わずかに残った理性が警告を発した。
 暗闇の中で何度もかがみはガッツポーズを繰り返す。
 みんなの顔が次々と浮かんでくる。
(みゆき、灰原、桂さん、つかさ、ジョセフ、こなた、三村、みんな……。やったよ!)
354Classical名無しさん:08/02/01 21:19 ID:PRMgaIRQ
355 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:19 ID:.oHsazFs
 涙が、かがみの頬をつたった。



 二つ目の約束を果たすためにもう一つの社殿へと向かう途中、女から事情を聞かされ、ZXは目を丸くした。
(ステルス機能ということか?)
 何故、手順を踏んで水をかけるだけでステルス機能が麻痺するのか見当もつかないが……。
(零やハヤテが聞いたら喜ぶかもな)
 ぼんやりとそんなことを思う。
 女の顔を見ると、歓喜の表情が浮かんでいる。
 
 女と目が合った。

 そらされるかと思ったが、嬉しそうに微笑んでくる。
「ねえ……。ジョセフと闘うの、やめなさいよ」
 女の声はどこか弾んでいた。
 どうやら、さっきのことが尾を引いて、自分の立場を忘れているらしい。
(ちゃんと建物の中に戻るんだろうな?)
 そちらの方が何倍も大事だ、と思いつつ
「できない」
 淡々とZXは答えた。
すると女は怒ったようにペンを取り出し、
『言ったでしょ? この首輪、外せるかもしれないのよ!?』
「俺には関係のないことだ」

 "この…………大馬鹿者ッッッ!!!"

 "記憶を取り戻す方法は、連中を捕まえて吐かせましょう!!"

 耳の奥でほとんど同時に響いた音程の異なる声に、心をかき乱されつつも、ZXは横を向いた。
(ステルス機能を破ったくらいではまだ分からん。それに……BADANの戦力とこちらの戦力では……)
356Classical名無しさん:08/02/01 21:19 ID:s.nTvvqQ
 
357 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:20 ID:.oHsazFs
 ――勝負以前の問題だ。

「関係ないってどういうことよ!? アンタ、そんなに人殺しがしたいの!?」
 その声には怒りと叱責の響きがあった。
 何故か、心がざわめき始めるのを感じつつ、
「闘いだけが、俺に記憶をくれるんだ!
それにしても……。お前も、ハヤテも、零も、どうしてそんなに他人のために必死になる?」
 ZXは吐き捨てた。
 この女もまた、他人のために怒る類の人間だ。
 黙っていればいいのに、この女は得た知識を自分にも教えた。
 そして、今の言葉――明らかに、ZXのことをも、心配している。
(こいつも、ハヤテと同じ目をするんだな……)
 妙なことに、女の口調からも、女が自分のことを心配していることがZXには分かった。

 ――こういう声は、聞いた事がある気がする。

(いつ? どこで? まただ……また、何も分からん。思いだせん)
 ずっと感じてきた苛立ちの炎が、またも自分の心を焼き焦がすのをZXは感じた。
 ZXの言葉に、女が意表を突かれたという表情をした。
「他人って……。そっか……確かにそうかもね。出会ってからの時間だけ考えたら、他人、か……」
 だが、そこで女は顔を引き締め、
「でもね……。ジョセフは、アンタが闘おうとしてるあいつは、私を助けてくれた。
『仲間だから』ってそう言って、出会ったばかりの私を命をかけて、助けてくれたわ。
だから、私も!」
 結ばれた口元と、女の瞳には、眩いばかりの決意があった。
「それに、ここには妹が、つかさがいる……。友達もね。あなたは、誰かいないの?」
 ZXの足が止まった。
(妹だと……。すると、こいつは……)
 ZXの心の水面が大きくその流れを変えた。
 流れは徐々に、激流へと変わっていく。
358Classical名無しさん:08/02/01 21:20 ID:PRMgaIRQ
359 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:20 ID:.oHsazFs
「……妹? じゃあ、お前は……」
 口が勝手に動いた。
 女が小さく眉を上げ、
「ええ……。私は、お姉ちゃん、ってわけ。
やっぱり妹は、私が守らないといけないから」

 ――……が……ま……ってあげ……わ。
 
 声が響いた。
 何故か呼吸ができない。
 痛みが、痛みが、痛みが、心を締め上げていく。

 ――俺……を……守……から。

 誰かの声が聞こえた。
(……れなかった。約……束を……れ……った……)
 頭が勝手に思考を作った。

「おっ……」

 心が壊れる。痛い、いたい、イタイ、痛い、痛――

「オオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 絶叫が聞えた。自分の声だ。
 勝手に喉が絶叫を迸らせる。目から勝手に何かが溢れ出る。
 心を破壊せんと何かが暴れ狂っている。

 ――分からない。何も。
360Classical名無しさん:08/02/01 21:21 ID:PRMgaIRQ
361 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:22 ID:.oHsazFs
 コツ、コツ、と暗い部屋にかすかな音が響いている。
 机を爪で叩く暗闇大使、ガモンの表情には、険があった。
(奴らの能力、どの武器を最大限に使用しても、あの社は破壊できぬ)
 例え、ハルコンネンを叩きこんでも、傷一つきはしない。
 例え、ZXが元の力を発揮したとしても、破壊は不可能だ。
 したがって、その中にある、強化外骨格が破壊される可能性は皆無。
(とはいえ……。衛星でしか監視できぬというのは、もどかしいものよ)
 神社に隠しカメラを持ち込みたいのはやまやまだったが、これ以上人工物を持ち込んでは、
 神社の「霊場」としての格が落ちるので、諦めなければならなかったのだ。
 まあ、首輪が嵌っている以上、生贄どもは社殿に対し、一定以上の距離を近づくことができない。
 近づけば――「制限」が最大限に発動し、行動を不能にする。
(神おろしの儀、誰にも邪魔をさせるわけにはいかぬ)
 ついに、大首領の降臨まであと一歩のところまできたのだ。

 ――失敗は許されない。

 多少神経過敏になっているのかもしれない。
 だが、どうにも、あの場にいるのが、「柊かがみ」であることが、気になる。
 ZXもいるが、そちらはどうでもいい。
 勝ち残ったならば、強化外骨格を纏わせ、大首領の肉体となってもらうが、それは他の参加者でもかまわない。
 誰が勝ち残ろうと、強化外骨格に宿った大首領の魂を拒むことなど、不可能だ。
 葉隠散がたかだか一人の女にその意志をのっとられたように、人間ごときに大首領の魂を拒むことなど不可能の極み。
 強化外骨格に宿る、既に大首領の一部となった有象無象の霊と共に、優勝者の魂は、大首領の魂の一部となる運命。
 やはり問題は、柊かがみの方である。
 本来なら、柊かがみのような何の力も持たない娘は生贄要員でしかなく、とるにたらぬ存在である。
 神主の娘であるが、それだけならば、どうということはない。
 しかし、彼女達の神社が祭っていた「神」が問題なのだ。
362 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:24 ID:.oHsazFs
 柊家が代々神主を勤めてきた「鷹宮神社」が祭る神は、天照皇大神――アマテラス。

 そして、素戔嗚尊――スサノオ。

 おそらくそれが、柊の名をもつ二人が大首領に召還されてしまった理由。
 大首領の力にわずかといえど共鳴してしまったがゆえに、次元を超えて召還されたのだろう。
(もっとも……あの御方の御心は、我らには計り知れぬ。何か他に、理由があるやもしれぬがな)
 時空と次元を越えた参加者の人選および召還は、大首領が全てをつかさどっている。
 その人選の無作為さは、BADANの科学者力でも、法則性は見出すことはできない。
 怪人達ですら屠る強者達はともかく、力を持たぬ一般人が何を基準に選出されているかは、まったく不明であった。

 ――考えても無益なこと。

 下僕は主の命に従うもの
 BADANが行うべきは、集められた参加者の管理――例えば肉体を修復する、記憶を覗いて能力等を把握する。
 そして神おろしの進行。
(……あの神社は霊場としての格は高く、当然、そこにあるモノ全てが清められている。
そしてそこにいるのは、大首領の力にわずかとはいえ、共鳴したかもしれぬ娘、か)
 暗闇大使の眉間に刻まれた皺が、陰影を増した。
(首輪の中に在る、大首領の一部となった魂の「祓い」に対する抵抗力は高いとはいえぬ………)

 ――まさか、な。

 小娘二人に何ができる、と思いつつも暗闇大使の額に刻まれた皺は、消えることはなかったのだった。



「ど、どうしたのよ?」
 驚愕で後ずさりながら、かがみは問いを発した。
363Classical名無しさん:08/02/01 21:24 ID:PRMgaIRQ
       
364 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:25 ID:.oHsazFs
 男が空に向かって慟哭している。
 涙がとめどなく流れだし、石畳の上に小さな水溜りを作っていく。
 男は全く気付いていない。頭を抱え、泣き声を上げ続けている。

 ――逃げられるんじゃないか?

 心に響いたその誘惑は、抗いがたい響きを持っていた。
 このまま逃げれば、ジョセフと合流できるかもしれない。男とした約束なんか破ってしまえばいい。
 前に感じた、男の目の向こうにある悲しみの色なんか、忘れてしまえ。
 気を許してどうする。一緒に共同作業をやったとはいえ、こいつは敵なのだ。自分をここへ無理矢理さらってきた奴なのだ。
 なのに。

 ――なのにどうして、体が前に行くのか。

 何故か、ほうっておけない。

 ――妹のことを口にしてしまったからだろうか? 

 泣いている男が、つかさの姿と重なる。

 ――つかさは、私が守らなきゃ。

 つかさは、優しすぎて、おっとりしすぎているから、お姉ちゃんである自分が守る
 子供のときからずっと抱いてきたその気持ちか今、何故か大波のように湧きあがってくる。
「ちょっと……ねえ……。どうしたって、いうのよ?」
 気がつくと手を差し出していた。
 その手が男に触れる寸前、かがみは手を止めたる。

 ――どうすればいいんだろう?

 虚空に手を漂わせたまま、かがみは泣き続ける男をただ、見つめ続けたのだった。
365 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:26 ID:.oHsazFs
【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:全身に無数の打撲。疲労(中)
[装備]:クルーザー(全体に焦げ有り)、十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (0/2) 、マイクロチェーン(2/2)
[道具]:地図、時計、コンパス 、強化外骨格「零」(カバン状態)@覚悟のススメ
[思考]
基本:殺し合いに乗って最後の独りになるかどうかは保留。だが、強い奴との戦いはやめない。
1:何だ……。この心の痛みは?
2:力を得るために、ジョセフと闘う。(ハヤテでも可/ハヤテは殺さない)
3:アーカードを倒し散の仇を討つ。
4:アーカードを倒した後、零との約束(DIOを倒す)を果たす。
5:劉鳳と次に会ったら決着を着ける。
6:散の愚弟覚悟、波紋に興味あり。
7:パピヨンに恨み?
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です
※参戦時期は原作4巻からです。
※村雨静(幽体)はいません。
※連続でシンクロができない状態です。
※再生時間はいつも(原作4巻)の倍程度時間がかかります。
※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。
※また、零の探知範囲は制限により数百メートルです。
※零はパピヨンを危険人物と認識しました。

【零の考察】
 ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外に発見。放電しているのを目撃。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
366Classical名無しさん:08/02/01 21:26 ID:s.nTvvqQ
 
367Classical名無しさん:08/02/01 21:26 ID:PRMgaIRQ
          
368 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:26 ID:.oHsazFs
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:左肩、左脇腹に打撲、精神消耗(小)
[装備]:核鉄「激戦」@武装錬金、
    巫女服
[道具]:
[思考・状況]
基本:生きる
1:どうしたんだろ、急に?
2:男(村雨)の隙を突いて脱出してジョセフと合流。
3:さっき見た首輪の異変について、考えてみる。
4:神社の中にある、もう一つの社殿が気になる。
5:ジョセフが心配。
6:こなた、つかさと合流する
7:三村に謝りたい
[備考]
※ZXが、自分に危害を加えられないことに気付きました。
※少しZXに心を許しました。
※アーカードを不死身の化け物と思っています。
※「激戦」は槍を手から離した状態で死んだ場合は修復せずに死にます。
 持っている状態では粉々に吹き飛んでも死にませんが体の修復に体力を激しく消耗します。
 常人では短時間で三回以上連続で致命傷を回復すると意識が飛ぶ危険があります。
 負傷して五分以上経過した患部、及び再生途中で激戦を奪われ五分以上経過した場合の該当患部は修復出来ません。
 全身を再生した場合首輪も再生されます。
 自己修復を利用しての首輪解除は出来ません
 禁止エリア等に接触し首輪が爆破した場合自動修復は発動しません。
※精神消耗のためしばらくスタンドは出せません
※三村の留守電を聞き逃しました。
※ボウリング場にかがみのメモを張っています。
※主催者は目的は強者を決めることであり、その中にはイレギュラーもいると考えています。
※波紋、ジョセフが知る吸血鬼の能力について知りました
369 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:29 ID:.oHsazFs
※かがみの主催者に対する見解。
@主催者は腕を完璧に再生する程度の医療技術を持っている
A主催者は時を越える"何か"を持っている
B主催者は@・Aの技術を用いてある人物にとって"都合がイイ"状態に仕立てあげている可能性がある
Cだが、人物によっては"どーでもイイ"状態で参戦させられている可能性がある。

※首輪の「ステルス機能」および「制限機能」の麻痺について
かがみがやった手順でやれば、誰でも同じことができます。
ただし、かがみよりも「自己を清める」ことに時間を費やす必要があります。
清め方の程度で、機能の麻痺する時間は増減します。
神社の手水ではなく、他の手段や道具でも同じことが、それ以上のことも可能かもしれません。

※ステルス機能について
漫画版BRで川田が外したような首輪の表面を、承太郎のスタープラチナですら、
解除へのとっかかりが見つからないような表面に 偽装してしまう機能のことです。
ステルス機能によって、首輪の凹凸、ゲームの最中にできた傷などが隠蔽されています。
370Classical名無しさん:08/02/01 21:29 ID:s.nTvvqQ
 
371Classical名無しさん:08/02/01 21:30 ID:PRMgaIRQ
 
372 ◆wivGPSoRoE :08/02/01 21:31 ID:.oHsazFs
投下完了いたしました。
タイトルは「姉」です。

支援したいただきありがとうございました。
373Classical名無しさん:08/02/01 21:42 ID:PRMgaIRQ
投下乙!
この解除方法はパピヨンとかじゃまず思いつかないな・・・かがみんGJだ!
そしてZXにまさか弟フラグが立つとはw
今後が実に楽しみ、Gj!
374Classical名無しさん:08/02/01 22:06 ID:s.nTvvqQ
投下乙ー
首輪に関する考察はフェイスレスや承太郎がしてたけどまさか1番に謎解いたのがかがみとは…実家のモデルの設定といい恐ろしい偶然を突く
姉属性の発言や記憶に苦しむ村雨など原作設定もバッチリ抑えて見事な作品でした
あと、何気にかがみの精神疲労が大から小に…お清めには他にも何か効果が?

一応一箇所だけ目に付いたところを
村雨が「行っておくが……」 と言うところは「言っておくが……」 の間違いかと
375Classical名無しさん:08/02/01 22:13 ID:BPa2MbDU
 原作設定の使い方、これまでのSSでの細かい考察との絡め方が御美事!
 スバラシ過ぎる。
 大きく全体がごりっと動きそうな期待感が盛り上がりますぞね。
376Classical名無しさん:08/02/01 22:37 ID:/nyOaLzg
投下乙!
意外! 首輪を解く鍵は、柊姉妹に――
今まで放置されていた神社がここに来て活躍!
村雨も姉を思い出しかけて、一歩進んだかな?
とにかくGJ!
377Classical名無しさん:08/02/01 23:17 ID:6ZAzHvsI
投下乙
これはまた面白い首輪解除フラグ

それにしても、まるで吸い寄せられるかのように村雨の元に脱出フラグが集まるなぁ……
川田チームやパピヨンたちみたいに、マジメに脱出を考察してる連中を差し置いてw
378Classical名無しさん:08/02/02 20:24 ID:3DD5vors
379 ◆YbPobpq0XY :08/02/04 15:37 ID:thzynycc
スイマセン、吉良・劉鳳・コナン・服部・神楽の予約ですが今夜までに書きあがりそうに無いんで延長お願いします……
380Classical名無しさん:08/02/04 17:23 ID:1I0RQQOE
>>379
息詰まるパートですががんばってください
錬度の高い作品を期待してます!
381Classical名無しさん:08/02/04 21:48 ID:dd9X5F7A
>>279
どうぞごゆっくり! ご無理をなさらずに書いてくださいませ
382Classical名無しさん:08/02/05 00:14 ID:FofBl7y.
久しぶりにスレを覗いてみたら斗貴子さんが更に凄い事になってたw
しかし本当に別ロワのルイズと被るな・・・
383 ◆9igSMi5T1Q :08/02/06 21:00 ID:uFNoz74c
延長をお願いします。
384Classical名無しさん:08/02/06 21:01 ID:BM4Bglyw
>>383
延長了解 がんばれー
385 ◆9igSMi5T1Q :08/02/06 21:02 ID:uFNoz74c
SSの内容が若干長くなってしまったため、延長をお願いいたします。
投下が遅れてしまい、申し訳ありません。土曜日までには、何とか間に合わせたいと考えております。
386Classical名無しさん:08/02/06 21:56 ID:lU8/YAlw
無理しないで頑張って下さいね
387 ◆wivGPSoRoE :08/02/06 22:26 ID:vkVJ1/9.
延長を申請いたします……。
複数のパートを停滞させて申し訳ありません。
388Classical名無しさん:08/02/06 23:01 ID:GBzOsaO.
吉良吉影の奇妙な冒険(ドジこいたーーーーーッ!!)
389Classical名無しさん:08/02/08 20:21 ID:wpJ7dP4w
 
390 ◆wivGPSoRoE :08/02/08 22:43 ID:.HftVF02
深夜0時前後から投稿を始めたいと思っております。
深夜ですが、願わくば支援を賜りたく存じます。
391Classical名無しさん:08/02/08 22:58 ID:XWdRl/2w
当方に支援の用意アリ!
392Classical名無しさん:08/02/08 23:06 ID:jGC8U42E
支援せずには居られぬ
393Classical名無しさん:08/02/08 23:12 ID:/fAnSugo
ふふふ……ながいこと(支援)やってなかったものですから……
溜まっちゃってギンギンですよ……

今 か ら 支援ッ!!
394 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:00 ID:0MUq1BL.
覚悟、つかさ、川田、ヒナギク、アカギ、勇次郎を投下します。
395 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:01 ID:0MUq1BL.
失礼。斗貴子も追加。
396Classical名無しさん:08/02/09 00:01 ID:8ELRL1mU
      
397 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:01 ID:0MUq1BL.
 曇天の雲の下、漠々たる闇と静寂が支配する中、男と女がにらみ合っていた。
 電柱に備えられた街灯が、ぼんやりと照らし、ディパックから転がりでたランタンが光を放っている。
 どこか冷え冷えとしたものを感じさせる周囲とは異なり、二人からは闘争の熱が発せられていた。

"ルイズが私を許して、そして救ってと呼び掛けていた相手だ"

 女の言葉を何度も頭の中で反芻し、その意味を認識する。
 そのたびに、驚愕の風が覚悟の心の水面を揺らした。
(どういう意味だ? 何故、ルイズさんとこの女との間に一体何が……。
許せ、そして救えとは、どういうことなんだ? ルイズさん)
 何ゆえ、柊つかさを殺害しようとした悪鬼を救ってくれ、などとルイズが言ったのか。
 普段は波紋一つおきぬ覚悟の心の水面は、大きく揺らいでいた。
 わずかに、覚悟の構えが緩む。

 その隙をついて女が駆けた。猛禽の速度で突進してくる。

「臓物ぉぉ――ッ!!」
 槍から光が迸る。
(っく!)
 覚悟の体が発光。
「ブチ撒けろっっ!!」
 まさに間一髪。
 零式鉄球体内吸引により硬質化した覚悟の腕が、突き出された槍の腹を叩き、槍の軌道を逸らす。
 否――逸らしきれない。
 女と覚悟の体が猛速で交差。エネルギーの奔流が覚悟の脇腹をわずかにかすめ、ライダースーツが裂けた。
 覚悟が零式鉄球体内吸引により硬質化できるのは、肉体の6割。
 硬質化できぬ部分から血が飛び、闇の中に赤の飛沫が散った。
398Classical名無しさん:08/02/09 00:02 ID:bkLJX6mw
支援
399Classical名無しさん:08/02/09 00:02 ID:s7WYlYKo
来たキタきた北ァ―――――ッ゛!!! 支援
400 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:02 ID:0MUq1BL.
 ――浅い。

 寸毫たりとも表情を変えることなく覚悟は女を見据え続ける。
 元より、傷ごときで動きと心を鈍らせる男ではない。
 ひびの入った腕から走る痛み、今しがた受けた脇腹の裂傷。

 ――仔細なし。

 我が身は必勝の手段。ゆえに姿など、どう変わろうと問題なし。

 ――問題なのは。

 女の発した謎の言葉。
(この女を救ってくれというのがルイズさんの遺志であるなら、果たさねばならぬ)
 彼女の遺志であるなら、継がねばならない。自分には継ぐ義務がある。
 けれど、目の前の女とルイズの関係が、まったく分からない。
 ルイズの話していた二人の学友が、目の前の女なのか?

 ――さにあらず。

 ルイズから聞いた二人の学友と一致する身体的特徴は、皆無。
「再度問う!
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに関する情報一切。
制限時間――」
「うるさいな、君は」
 無機質な声が響いた。
「ギャンギャンと耳障りな声で吼えないでくれ。
まったく、そんなんだから、私やカズキまでが、『最近の若者は』と言われるんだ」
 どこか恍惚とした表情で、女が槍の穂先を舐める。
「なぁ、カズキ。やはりこいつみたいな下品な人間がいる世界は私達にふさわしくない……。君もそう思わないか?」
401 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:03 ID:0MUq1BL.

 ――狂っている。
 
 銀の瞳に宿るは狂気の黒炎。
 明らかに目の前の女は正気ではない。
(救ってくれとは……。
この女が罪を重ねる前に撃ち滅ぼし、救済してくれと、そういうことなのか?)
 女の顔を伺う。
 意思の強さや凛とした佇まいを演出したであろうその顔は、無残に傷つき、焼け焦げ、目ばかりが爛々と光っている。
 女の眼光が鋭さを増した。
「っぁあっ!!」
 気合と共に女が飛び上がり、刃が覚悟の脳天めがけて高速で落下。
 半身で回避。
 女の着地と同時に刃が閃光となって閃き、横薙に軌道変化。
「直突!」
 覚悟の体が猛速で前へ突進し、女の間合いを簒奪。
 正拳が彗星となって女の胸に繰り出される。
 女が吹き飛んだ。鉄の地面と水平に飛んで壁に激突。

 ――不十分!

 打突の瞬間、女は後方に跳躍し、勢いを殺している。
 当たらぬとみての咄嗟の回避行動。讃えるべき判断力、そして経験に裏打ちされた技。
 とはいえ、覚悟の拳は鋼鉄すら粉砕する。不完全だろうが、普通の人間ならこれで終わりだ。
 しかし、覚悟は構えをとかない。

 ――まだ、先がある。
402 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:04 ID:0MUq1BL.
 覚悟の見つめる先、
「キサマぁァ……」 
 怨嗟の声を上げながら、女が身を起こす。
「それほどの力を持ちながら、何故それを人のために使おうとせぬ!」
 人とは思えぬほどの強靭な肉体と、高い戦闘技術を持ちながら、何故、悪鬼に身を堕とすのか。
 女がピクリとわずかに体を震わせた。
「人の……ため。誰かの……ため……か……」
 風にのって女の独白が聞えてくる。
「カズキはいつも……そう……」
 俯むき、女がブツブツとなにやら呟いている。
 
 ――カズキ。

 二度に渡って口にされたその名前。
(男の名……おそらくは、友……恋人か?)
 
 ――まさか!?

 覚悟の中で思考が集約を始める。
 女が顔を上げた。射すくめるような視線。
「いたからっ! 纏わりつく奴らが、いたからっ!!」
 耳をつんざくような絶叫と共に、槍の穂先が覚悟の顔面めがけて殺到してくる。
 
 ――遠い。

 そこからでは届かない。
(怒りに囚われ、我を忘れたか?)

"先方の武器分からぬ時は大砲の筒先と思うべし!"
 
 覚悟の思考を、零の教えが切り裂いた。体が反射的に回避行動を取る。
403Classical名無しさん:08/02/09 00:05 ID:8ELRL1mU
      
404 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:05 ID:0MUq1BL.
 その瞬間、女の槍が爆発的に伸張し、穂先が覚悟の顔面を掠めた。
(伸縮自在か!)
 驚きを感じつつ、続いて離たれた二連突きを冷静に回避。
 風圧で覚悟の髪が左右に揺れる。
「寄生虫どもめっ!! 私とカズキの邪魔をして! 命までっ!!」
 槍が一挙に引かれた。
「だからカズキは――」
 
 ――来る。

「私が守るっ!!」
 突きの中で最もかわしにくい胴突きが、高速で突き出される。
 しかしそれは覚悟の読みどおり。
 女の技は感情が前に出すぎているせいで、どこか粗い。
 一流同士の戦闘においては、致命的だ。
「ぬん!」
 半身でかわしつつ、硬質化させた肘を槍の腹に打ち落とす。
「重爆!」
 覚悟の左足が女の足に向かって弧を描く。
 覚悟の視界の中で女が後方跳躍、そして、覚悟の足先に空を切る感覚。
(未熟つ!)
 覚悟は己自身を叱責した。
 刀、手槍、長槍と、瞬時に変化する敵の間合いが測りづらいのは事実なれど、今の隙で決められぬとは何たるザマか。
 それよりまず何より、
 
 ――心に迷いを抱えたまま撃つとは、何事かっ!!

 揺れる心で放った攻撃が何故当たろう?
 覚悟は、その鋼の自制心を持って心の波を静めようとする。
 だが、女の言葉によって心の水面に発生した波は、静まるどころかその大きさを増すばかり。
405Classical名無しさん:08/02/09 00:06 ID:bkLJX6mw
俺 支援!
406 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:06 ID:0MUq1BL.
 
 "たとえ、アナタからみて悪鬼だとしても、その者には何か守るべきものがあるかもしれないじゃないか"

 コナンの発した言葉もまた、覚悟の心を揺さぶる。
(あの女は、守ると口にした……。
なれど、あの口ぶりからしてカズキという男は既に死んでいる可能性が高い。
この女こそ、コナン少年が言っていた、悲しき悪鬼なのか?)
 思い起こせば、放送で呼ばれた名の中にカズキという男の名があった気がする。
「お前の望みは、カズキという男の蘇らせることなのか?」
 覚悟の視線を女は嘲笑で応じた。
「はっ! アイツも……。お前も、同じことを言う。
そうだっ! 私はカズキを生き返らせる!! どんなことを、してもだっ!」
 女が再度突進してくる。
 喉元に迫る槍をかわしつつ、
「他者の屍の山の上で蘇ったところで――」
「カズキは喜ばない? カズキが悲しむだけだ? だからこんなことをはやめろ?
ハっ! アハハハハ! おんなじだっ! 聞いたか、カズキ!? まったく、独創性に欠ける奴らだ!!」
 女の唇が半月を描いた。
「さぁ、次はなんといって私を、改心させてくれるんだっ? ええ!?
受けいれるしかない、か? あなたの気持ちは痛いほど分かる、か? 
フッフフ……フハハハ、アハハハっ!!」
 狂気の笑みを浮かべて女が笑う。
 ひとしきり笑い続けた後、女は唐突に、笑うのをやめた。
「うざったいんだよ、お前らみんな」
 冷え冷えとした声は、地獄の底の冷たさを感じさせた。
「私と彼は一心同体だ。カズキの死ぬ時が私の死ぬ時。私が死ぬ時がカズキの死ぬ時。
そう誓い合ったんだ……」
 覚悟は愕然とした。
(それほどまでに誓い合った仲であったのか)
 目の前の女は、カズキという男を心から愛していたのだ。
407 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:07 ID:0MUq1BL.
 ――喪失の悲しみで狂ってしまうほどに。

 女の身の上を思えば、悲しみが込み上げる。
 好き合った二人を修羅地獄に叩きこんだ、悪鬼共への怒りもつのる。
 だが、だがしかし――
 零の時のように、女の悲しみを知り、同じ涙を流そうという気には、なれない。
 心の底から、女を許そうという気にはなれない。
 原因は分かっている。
 女の心にあるのが、悲しみと理不尽な死に対する怒りだけではないからだ。
 女の心には妄執がある。女の心は歪んでいる。捻れ曲がっている。
 それに――
 この女は、ルイズを殺した。勇敢で誇り高く、だが無邪気さや可憐さを感じさせたルイズを殺した。
 この女は、柊つかさを狙った。あんなにも朗らかで、心優しい、自分を友と呼んでくれたつかさを。
 自分に降りかかる痛みにならいくらでも耐えることができる。けれど友の痛みだけは我慢できない。
 心を濁らす愛憎怨怒を滅殺するのが零式防衛術。

 ――なれど。

 揺れるはずのない覚悟の心は今、ルイズや新八を失った時よりも、揺れていた。
「私とカズキの間に、誰も、入るなっ!!」
 絶叫と共に女の体がたわんだ。おそらく次の攻撃は、先ほどよりもさらに速い。
 身構えつつも、覚悟は葛藤する。

"覚悟さんはどうするつもりなの?"

 悲しき悪鬼をどうするのかというコナン少年の問いが、覚悟を悩ませる。
(今の俺に、因果が撃てるのか? 撃って、いいのか?)
「私とカズキは二人だけの世界で暮らすんだ!カズキは私だけのモノだ!」
408Classical名無しさん:08/02/09 00:07 ID:HUNERyDE
支援
409 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:08 ID:0MUq1BL.
 覚悟の心が瞬時に沸騰した。

――誰にも人をモノ呼ばわりする権利はない。

(この女の心にあるのは、献身ではない!)
身を捨ててまで相手に尽くそうとしているのではなく、自分の欲望を通そうとしているだけだ。
 覚悟の心の熱が拳となって具現化する。
 零式防衛術、水鏡の構え。一撃必殺の因果を叩きこむ構えである。
「邪魔を、するなあぁぁ――っ!」
 飛燕の速さで女が迫る。
 覚悟の間合いに女が入る――刹那。女が横っ飛び。
 
 ――霍乱機動か。
 
 覚悟の視線が淀みなく女を追う。
 女の唇がつりあがり、
「ああっ!!」
 地面から何か――地面に落ちたランタン――を打ち払った。
(これは、当たる)
 集中によって全てが低速化した世界の中でゆっくりとランタンが迫り、女がランタンの後を猛追してくる。
(避ければ隙が生まれる)
 覚悟の鋼鉄の胸にランタンが命中し、甲高い破壊音が鳴った。
 一瞬遅れて胸と顔から焼けつく痛みが走る。皮膚がこげ、神経が燃え、脳の神経が悲鳴を上げた。
 覚悟の構えに動きはなく、表情は毛筋ほども揺るがない。

 ――覚悟とは苦痛を回避しようとする本能すら凌駕する魂である。
 
 女の顔に動揺が走り、槍の穂先がほんのわずか鈍った。
 瞬時に覚悟の後ろ足が地面を蹴る。
410Classical名無しさん:08/02/09 00:09 ID:8ELRL1mU
    
411Classical名無しさん:08/02/09 00:09 ID:qqGr8Jik
 
412Classical名無しさん:08/02/09 00:10 ID:/BDTG/B6
しえん
413 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:11 ID:0MUq1BL.
 ――因っ……

 "許して"
 
 ルイズの声と共に覚悟の瞼の裏で桃色の髪が舞う。

「零式積極直突!!」





 ――動けん。

 男が近づいてくる。
 斗貴子の背筋を氷塊が滑り落ちた。
(強い、この男は、強い……)
 あの変態筋肉と互角に戦える力の持ち主だ。
 正面から闘う愚を冒した迂闊な己を斗貴子は呪った。
 
 ――あの、疫病神め。

 あの女、ルイズの名を口にした瞬間、固まっていたはずの心に小さな亀裂が生まれた。
 その亀裂は、男と闘えば闘うほど、大きさを増していばかり。
おかげで、戦闘に集中しきれずこのザマだ。
「水月経由で脊髄中枢に刺激を加えた。その力……。二度とつかえまい」
 淡々とした宣告。

 ――ふざけるな

 斗貴子の心で爆炎が生まれた。
414 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:12 ID:0MUq1BL.
 ――これぐらいのことで、誰がっ!!

「ぐぅっ!」
 伸縮させたサンライト・ハートの穂先を腿につきたて、抉る。
「うがぁぁっ!!」
 右腕の傷口を道路に押し付け摩り下ろす。
 ぐじゅずりと骨と肉が腕からこそぎとられ、地面に赤黒い線を引いた。
 常人なら発狂するほどの痛み。脳の神経回路が焼ききれんばかりの熱を発した。
 激痛という名の刺激で神経と脳を強制的に接続。
「さぁ……どうした? 来ないのか?」
 荒い息を吐きながら、斗貴子は男をねめつけた。
 太ももと右手の傷口から間断なく痛みが襲ってくる。男の拳を受けた箇所から鈍痛が走る。
 痛みの混声合唱を執念で黙殺し、斗貴子は男に向かって歩を進めていく。
「があっ!!」
 割れた声で気合を上げ、槍を突き出す。
 槍が虚空をついた。
「っあ!」
 そのまま横薙ぎ。男が顔を逸らしてかわす。足がふらついた。
「クソっ!」
 袈裟懸け。狙いがそれている。
「糞っ!」
 喉狙いの突き。遅い、遅すぎる。
「くそおぉっ!」
 足払い。余裕持って回避された。足先と脳神経が連結しきっていない。

――当たらない。当たる気がしない。
 
 絶望と憤激の炎が斗貴子の胸を焦がす。
(このままじゃカズキが……。カズキを、生き返らせられないじゃないかっ!!)
 胸の炎が命じるまま、男の顔面に刃を叩きつける。
415Classical名無しさん:08/02/09 00:12 ID:7ls9zeqg
まて、ここは俺に任せて先に支援しろ!
416Classical名無しさん:08/02/09 00:13 ID:/BDTG/B6
支援・・
417 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:13 ID:0MUq1BL.
 男の鉄と化した手刀が閃いた。
 手刃と槍刃が激突し、ぎぃんと耳障りな金属音を発した。
 力では敵わなかった。
 槍刃が弾かれ、力のベクトルが急激に変化。てこの原理で槍の動いた方向に腕を引っ張られ、斗貴子の体がおよいだ。
 体勢が崩れたところに、男が高速の右回し蹴りを放ってくる。
 避けられなかった。脇腹に衝撃。
 息が止まりかけた。
 浮遊感があって、一瞬遅れて背中から全身に衝撃が突き抜け、傷口が悲鳴を上げた。
「ごっ、ぐげぇあ!」
 吐瀉物を吐き出して、斗貴子はのたうった。
「え、ぐぅぐ……」
 込み上げるものを無理矢理の見下し、斗貴子は乱暴に口元をぬぐう。
「あなたの、そんな姿をみればきっと――」
「絶対にありえない仮定はやめろ! たくさんだっ!」
 男が口をつぐんだ。
「見られないんだ、カズキは。見ていたら、こんな……。お前なんか……一発で……
それが死ぬってことだろうっ!?」
 斗貴子は顔を上げた。
 男の悲しみの視線と斗貴子の視線が衝突。
 男の目の光が、斗貴子には無性にカンに触った。
「どうして、生き返らせたいと思わないんだ?」
 不思議でどうしようもない。

"お願いだから正気に戻って。カズキって人が悲しむだけだから……"

 あの女の声が響く。
「うるさい!! カズキはもう、悲しむことすらできないんだと言ってるだろうが!?」
 男が戸惑ったような顔をしている。
「どうして分からない!? 死んだ人間は、喜ばない!!
悲しまない! 怒らない!! 笑わない! 何でお前らはそれが許せるんだ!?」
 泣き顔だっていい、もう一度彼の顔が見たい。
418 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:14 ID:0MUq1BL.
 斗貴子の瞳の中の男の像が、ぼやけた
「カズキは……妹のことを大事に思ってて、思われて……。
私と違って友達だってたくさんいて……いつだって、人のために闘って、闘って、
一度は、命を投げ出して全てを救おうとしたんだ!! そんなカズキが何で死ななきゃならない!?
こんなのわけの分からない、意味もない戦いで! いきなり! 不条理に!!」
「それほどの人間を、お前の行いが汚そうとしていることに何故、気付かん!」
「馬鹿かお前は!? そうしなきゃ、生き返らないからに決まっているだろう!?」
「汚れた手段で現世に引き戻された人間が、喜ぶとでも思っているのか?
あなたは、命を奪われた人間から名誉まで奪うつもりか!?」
「知ったことかっ!! 他の世界の奴らにどう思われようがっ!!
私とカズキの世界に、私達を罵るやつらなんかいない! いたら私が殺してやるっ!!」
 手が震えてまともに槍を持っていられない
 斗貴子は左掌に噛み付いた。
 金臭い味と共に妙な味が舌を刺激するが、すぐに斗貴子はその疑問を抹殺する。
 今は目の前の男を殺すことだけを考える時だ。
「おしゃべりは――終わりだっ!!」
 サンライト・ハートの柄を最大に伸張。
(間合いを取って闘う……。怪我の一つも負わせられれば御の字だ……)
 目の前の男には、今の自分のような回復手段はあるまい。
 傷を負わせて撤退するだけでもこの際、かまわない。
「ィィイっ!!」
 体を動かすだけで全身から走る痛みを気合と共にねじ伏せ、胴突きを放つ。
 男が半身でかわす。

 ――逃がさん!

 槍の穂先が円を描いた。
 巻き込み――槍術や昆術の基本技で、男の服を絡め取る。
 そのまま振り回して叩きつけようとした瞬間、男が槍の柄を掌握。
 槍が強制停止させられ、槍に加えた力が逆流してくる。
 男の打撃を受けた胸部と脇腹から走った痛みが全身を貫き、斗貴子の奥歯が鳴った。
419Classical名無しさん:08/02/09 00:14 ID:/BDTG/B6
siennS
420 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:15 ID:0MUq1BL.

 ――動かせない?

 左腕一本とはいえ、あの液体を飲んで力を得た自分と互角とは、なんという力か。
(いや……。負けている?)
 男はまだ余力を残している。
 鉄面皮な男なので表情からは分からないが、槍を通して伝わってくる力から、それぐらいは読み取れる。
「どうしても戻る気はないのか? 人の道へ」
 押し殺した男の声。
「人の道? はっ! そんなもの……」
 会話に応じながら抜け目なく槍を揺さぶってみるが、鉄のボルトで固められたかのように、動かない。
「雨が降って地固まるという言葉はある。されど、仮にカズキという男が蘇生し、
あなた達二人が再び共に生きることになったとして、あなた達二人の絆が強くなるとは俺には思えない。
あなたの愛したカズキという男が、友を愛し、家族を愛し、人を愛した男なら、きっとあなたの行いを知れば、
苦しみ、怒るのではないか? 血の雨を浴びた後に強まるものなど、あろうはずがない!!」

「人の話を聞いていろっ!!」

 男に倍する声量で斗貴子は怒鳴った。
「私とカズキは、二人の世界に行くんだ! カズキだって、分かってくれる!
私以外に愛する人さえいなければ、きっとまた、私を愛するようになる。そして、愛し続けてくれる!」
「キサマ!!」
 男の怒号が斗貴子の鼓膜を振動させた。
 同時に斗貴子の体が宙に浮き、横方向に強制移動。
 
 ――叩きつけられる!?
421Classical名無しさん:08/02/09 00:15 ID:8ELRL1mU
       
422Classical名無しさん:08/02/09 00:15 ID:/BDTG/B6
支援
423Classical名無しさん:08/02/09 00:16 ID:yJMJWrUQ
424 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:16 ID:0MUq1BL.
 咄嗟にサンライト・ハートを分解。間一髪で間に合った。
 桁外れの男の力に更なる危機感を感じつつ、斗貴子は男に神経を集中させる。
「やはりキサマの愛は侵略行為! 他者を、そして、想い人すら蹂躙するだけのものだ!」
 男の声には、闇を払う清冽さと厳しさがあった。
「……うるさい。だから、何だ……。だって、そうしなければ……側に、いてくれないじゃないか……」
 発せられた言葉は驚くほど弱弱しかった。

"死んでもやっちゃいけないコトと死んでもやらなきゃいけないコトがあるんだ!"

 カズキと出会ったばかりの頃の記憶が、斗貴子の脳裏に蘇ってくる。
 蝶野の作り出したホムンクルス・鷲尾との戦いで、
 カズキは、永らえるために他者を犠牲にした蝶野に怒りを露にしていた。
 自分の命より大事なことがあるといっていたカズキ。彼は死ぬ時までその信念を貫いたに違いない。
 きっと、自分のやっていることをカズキはきっと許さない。カズキに嫌われるかもしれない。
 カズキに嫌われるのは嫌だ。諦めるなんて絶対に無理だ。

 ――諦められない。

 どうしても、どうやっても、諦められない。カズキの側にいたい、カズキと共にありたい。
 愛している、カズキを心から愛している。
「カズキ……。カズキ……」
 何かが頬をつたうのを斗貴子は感じた。
(涙? くそっ……。敵の、前で!)
 無理矢理自分を叱咤し、斗貴子は槍を構えなおす。
 斗貴子の思考に空白が生まれた。

 男が両腕を広げている。
425 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:16 ID:0MUq1BL.
「何の、つもりだ……?」
 喘ぐように斗貴子は言った。
(あの構え……。あの構えからどういう技を?)
 斗貴子の動揺を見透かしたように、
「構えにあらず! 策でもない!」
「じゃあ、何のつもりだっ!?」
「ルイズさんがそうしたように、私もあなたを救いたいのだ!!」

"違うわ。『わたし』を救うの"

 男の姿が笑顔のルイズの姿と重なり、二つの音程の違う声が斗貴子の頭の中で何度も鳴り響く。
 斗貴子の体を震えが襲った。
 あの時の恐怖が蘇ってくる。微笑を浮かべたルイズに抱きしめられた、あの時の恐怖が。
「ふざけるな! 同情のつもりか!?」
 男の気持ちを、ルイズの気持ちを受け入れてしまえば、引き換えしてしまえば、もう二度とカズキに会えなくなる。
 永遠に喪ってしまう。
(駄目だ、ダメだ、それだけはだめだ!)
 駄々をこねるように、斗貴子は何度もかぶりをふった。
 男は無言で両手を広げている。腕を切り落とされても悲しい微笑を浮かべながら、両手を広げて来たルイズように。
「闘え! お前らの偽善なんぞ、クソっくらえだ!!」
 悲鳴じみた絶叫が夜の大気を引き裂いた。
「ようやく、ルイズさんの気持ちが分かった……。
暴力で想い人を奪われたあなたに、どうして因果が撃てようか!」
「黙れっ! 何が救うだ。思い上がるのも大概にしろっ!!」
 喉も枯れよとばかりに、斗貴子は喚きたてた。

"本当に好きだったんでしょう? 悲しいよね。けど、受け入れるしかないの"
426 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:18 ID:0MUq1BL.
 ――やめろ! 言うな!

 斗貴子の心で荒れる狂う感情の乱流は心の堰という堰を押し流して荒れ狂っていた。
 心が……壊れそうだ。
 すべてを押し殺してしまおうと、斗貴子は目を硬くつぶった。
 と、その時。

 ――何でためらうのさ?

(何だ、この声は?)
 心の奥底、深遠から響いてくる聞き覚えのない声。

 ――せっかくアイツが隙を作ってくれたんじゃないか。速く殺しちゃいなよ。

 斗貴子の戸惑いをよそに声は、陰々と響き続ける。

 ――やっちゃえよ。自分のためになることは全部イイことさ。

 それは悪魔の囁き。信じる心を嘲笑い、命を斬り捨て、一人の女のために世界すら滅ぼそうとした、悪鬼の心。
 斗貴子の心に打ち込まれた白金の毒が、またも、斗貴子の心を侵食していく。
 わずかに色を取り戻しつつあった津村斗貴子の心が、またも闇に染め上げられていく。
 悪鬼の毒に抗うには、斗貴子の心は、既にあまりにも弱りきってしまっていた。狂ってしまっていた。
 
 武藤カズキを、愛しすぎていた。
 
 出口を求めて荒れ狂っていた斗貴子の心は、開いた奈楽へと落下していく。
 押し留めるようとするいくつかの声も、すぐに奈楽の底に消えた。
 斗貴子は目を見開いた。
 男は、斗貴子が目を閉じる前と全く変わらぬ姿で、両手を広げている。
 斗貴子の胸の中で渦巻いていた乱流は、嘘のように静まっていた。
427Classical名無しさん:08/02/09 00:18 ID:/BDTG/B6
支 援
428Classical名無しさん:08/02/09 00:19 ID:qqGr8Jik
   
429 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:19 ID:0MUq1BL.
(私は、何を迷っていたんだ?)
 迷うことなんて何もなかったというのに。

 ――おっと。

 思わず微笑んでしまいそうになった。
 慌てて、唇を元の形に戻す。
(そうだ、自分のために生きて何が悪い。泥を引っかぶりたがるのは奴らの勝手だ)
 自分は、意地悪な運命の神に負けずに闘っているだけなのだ。
 何も間違っていない。
(私は、負けない)
 諦めずに追いかけ続けて、絶対にカズキを取り戻す。
 たとえ無限の闇が阻もうと、その先にある光を、二人の未来を信じ続ける。
「その手は食わない!」
 男に向かって冷酷な口調で告げる。
「見損なうな!」
 男の返答。
「どうだかな!」
 疑うような言葉を叩きつけながら、斗貴子は心の中で嗤った。
(馬鹿だ、こいつは大馬鹿だ)
 おそらく、この目の前の男は槍を受け入れてくれるだろう。あの桃色の髪の馬鹿女と同じように。
 槍の穂先を男の胸に合わせる。
「どうか! どうか……。人を殺めるのは、これで、最後にしていただきたい!」
 真摯な眼差しと誠実さと暖かさにに満ちた響きが斗貴子の鼓膜を揺らす。
 けれど、男の言葉を脳が認識しても、斗貴子の心の水面には、波紋一つ起きなかった。
 耳障りなあの女の声は、もう聞こえない。
(ありがとう、私と出会ってくれて。君が、この殺し合いの参加者でよかった……)
 
 ――おかげで一人分、殺す労力が少なくてすむ。
 
 斗貴子の踵が地を打ち、サンライト・ハートが光を放つ。
430Classical名無しさん:08/02/09 00:19 ID:i9G7k25.
「お前は追いながら奴を支援する俺たちは逃げながら奴を支援する」つまり

ハサミ討ちの形になるな…
431 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:20 ID:0MUq1BL.
 爆発的な推進力で一気に斗貴子の体を前に運ぶ。
 視界がみるみるうちに狭くなる。
 男は動かない。
(死ねっ!!)
 男は、動かない。
 槍の穂先が男の胸に迫る。
 男は――

 動いた。

 胸に衝撃。視界がいきなり後ろに流れ出す。
 壁に叩きつけられ、後頭部から衝撃が突き抜け、意識が一瞬吹き飛んだ。
 地面に叩きつけられる感触で、意識が引き摺り戻された。

 ――やられた。
 
 胸から込み上げる破壊的な痛みより何よりその思いが頭を真っ白に、塗りつぶした。

 ――見抜かれていた。

 自分の心根を見抜かれた気がした。
 心が熱く熱くて焼け付いてしまいそうだ。
「糞っ!」
 吐き捨てて斗貴子は、今の一撃で間合いが開いたのを幸いとばかりに、逃走を開始する。
 男は追ってこない。

 ――追う価値もないということか!?

 殺意と憎悪の炎が、斗貴子の脳天に駆け上がった。
(殺す、絶対に殺してやる!!)
 自分をコケにし尽くした男を必ず殺してやる。
432Classical名無しさん:08/02/09 00:21 ID:7ls9zeqg
 フフフ…しかしこの支援は我ら支援四天王の中では一番の雑魚…
433Classical名無しさん:08/02/09 00:21 ID:eHaMa2sI
                   
434 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:21 ID:0MUq1BL.
 絶望の淵に叩きこんでやる。必ず、必ずだ。
 斗貴子は気付かない。
 彼女の胸を満たす怒りには、最後の救いの蜘蛛の糸を切り落とした己自身に対する怒りも混じっていることに。
 闇の中でか細い光を発していた蜘蛛の糸を切り落としてしまったことに。
 気付かぬまま、悪魔の毒で染められた心が命じるままに、斗貴子は誓う。
 
 男への復讐を。





 女が消えていくのを覚悟は呆然と見ていた。
 視線を右の拳に落とす。

 ――何故動いた、俺の拳。
 
 女の涙を見たとき、女の狂気が愛から生まれた深い哀しみと絶望によるものだと、心が認識した。
 悪鬼ではなく、目の前にあるのは哀しみそのものだと思った。
 理不尽な暴力によって生まれた哀しみに、暴力を加えても哀しみは増すばかり。
 ゆえに両手を広げた。広げるしかないと感じた。
 救いたかった、ルイズの遺志を継ぎたかった。

 ――それなのに、何ゆえ?

 目を開けた女の目の中に、暗い炎を見てしまったのだ。
 深い悲哀に満ちていた先ほどとはまったく違う、利己の塊を。
 他者を糧として燃え上がる歪んだ心を。
(言い訳をするなっ!!)
435Classical名無しさん:08/02/09 00:22 ID:s7WYlYKo
くらえ――――!! しええええええぇえん!!
436Classical名無しさん:08/02/09 00:23 ID:bkLJX6mw
支援ッッッ
437Classical名無しさん:08/02/09 00:23 ID:8ELRL1mU
        
438 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:23 ID:0MUq1BL.
 己の心に覚悟は満身の力を込めて怒声を浴びせかけた。
 女の槍が胸を貫かんとしたとき――

"……私、待ってるから"
"葉隠、何処で待ち合わせるかは分かってるな?"
"私を追い払っておいて、こんな所で死んだら許さないわよ!!"

 三つの声が響き、ヒナギクの悪戯っぽい笑顔が、つかさの柔らかな笑顔が、川田の不敵な笑顔が、
 次々と脳裏に浮かび、思ってしまったのだ。

 ――まだ、死ねない。

 湧き上がったその思いは刹那の時で心を埋め尽くし、精神と一体化した父の教えすら吹き飛ばしてしまった。
 仲間達を待つのは、自分の数瞬の忍耐などとは比較にならぬ、大試練。
 仮に目の前の女を救い、一人の悪鬼が人間に戻ったとしても、戦鬼ラオウがいる。赤髪の鬼がいる。
 首輪の謎は解けず、仮に解けたとしても、その先に待つのはラオウすら捕えた悪鬼の群れ。
 世慣れぬ自分、悪鬼の血を引く自分を「友」と呼んでくれた仲間達を、未熟な自分の歩みを支えてくれた友達を残し、
 何故死ねよう?
 死なせたくない。ルイズのように、新八のように。
 守りたい。守り抜いて、友たちが生きるべき世界に帰るのを見届けたい。
 牙なきもの全て剣となるのが、零式防衛術を継ぐものの役目。誰か一人の戦士たれぬ我が身。
 けれど、もし、願いが許されるなら――

 気がつけば、拳を振り切っていた。

 気の抜けた、迷いに満ちた拳を。
439Classical名無しさん:08/02/09 00:24 ID:7ls9zeqg
 堀江さん。君には支援があるじゃないか。
440Classical名無しさん:08/02/09 00:24 ID:eHaMa2sI
                           
441Classical名無しさん:08/02/09 00:24 ID:/BDTG/B6
支x援
442Classical名無しさん:08/02/09 00:24 ID:yJMJWrUQ
 
443 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:24 ID:0MUq1BL.
(ルイズさん……。許してくれとは最早言わぬ。
存分に罵ってくれ! 呪ってくれも構わない。
俺は、あなたを守れなかっただけでなく、あなたの遺志を汚してしまった……)
 言行不一致。卑劣漢。大嘘吐き。不覚悟者。未熟者。
(俺はあの瞬間、あなたの遺志より、友を選んでしまった)
 ルイズの遺志に泥を塗り、女に卑劣極まる攻撃を仕掛けた自分にする罵倒の言葉は、
 悔恨の念と共に大波となって絶え間なく押し寄せ、覚悟の心の壁を粉砕せんとする。
 だが、その感情の波をさらに越える思いに突き動かされ、覚悟は走り出す。
(無事でいてくれ! ヒナギクさん、つかささん、川田!)
 女が去ったのは病院の方角。
 おそらくは、傷を癒しにいったのであろうから、女からの危機はさったといえよう。
 なれど、ここは多くの悪鬼が蠢く場なのだ。
 
 一心に友の無事を祈りながら、覚悟は駅への道を急いだ。
444Classical名無しさん:08/02/09 00:24 ID:i9G7k25.
逃げろ!あれは重力子放射線射出支援装置だ!!!
445Classical名無しさん:08/02/09 00:25 ID:HUNERyDE
「支援する」と心の中で思ったのならッ!そのときすでに支援は完了しているッ!
446Classical名無しさん:08/02/09 00:25 ID:eHaMa2sI
いや待て、ここは俺が罵られようじゃないか
447Classical名無しさん:08/02/09 00:25 ID:/BDTG/B6
支援、支援
448 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:25 ID:0MUq1BL.


「動かないで」
 自分の声に震えがないことを確認し、ヒナギクは内心で安堵の息を漏らした。
 喉がからからに干上がり、心臓の拍動が回数を増している。
 素早く男の全身に目を走らせる。
(武器は……。もっていないようね)
 だが、全身凶器という人間、人を超えた異能を持つ人間で溢れかえっているこの場においては、そんなもの、何の慰めにもならない。
(弱くも……ないか)
 立ち方自体は素人のそれだが、この男は強い。素手でやりあったら多分負ける。川田と二人がかりでも危ういかもしれない。
 道場の試合だけではなく、実戦をそれなりに積んでいるヒナギクには、それが分かった。
 けれどそれは、些細なこと。
 圧倒的に問題なのは――男の目。
 武道の基本は、相手の目を見、呼吸を読むこと。
 にもかかわらず、目の前の男とまともに目を合わせる気にはなれない。
 怖くてできないのだ。
 男の感情の映さない瞳で、全てを透過するよう瞳で見つめられたら、

 ――見抜かれてしまう。

 全てを。心の動きを何から何まで。
 冷や汗が頬をつたうのを、ヒナギクは感じた。
「おい……」
「な、何よ?」
 口から発せられた語調が上ずっていることに、ヒナギクは舌打ちする。
「……集団の頭を張る気なら……。もっと場を見なきゃだめだろ」
 
 ――場?

 男の発する得体の知れぬ気に当てられ、8割方静止していたヒナギクの脳が、回転を始める。
449Classical名無しさん:08/02/09 00:26 ID:qqGr8Jik
ざわ…ざわ…
450Classical名無しさん:08/02/09 00:26 ID:eHaMa2sI
                         
451Classical名無しさん:08/02/09 00:27 ID:yJMJWrUQ
ザワイド
452Classical名無しさん:08/02/09 00:27 ID:s7WYlYKo
ぐにゃあ〜……支援
453 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:27 ID:0MUq1BL.
 どうやらそれは川田も同じだったようで、視線をあちこちに飛ばす気配が伝わってくる。
(なんてこと……)
 そもそも、目の前の男に警告を発したのは、男が倒れた人間の側に立っていたからだ。
 一瞬でも早く、男が危険かそうではないかを確かめる必要があったというのに、そんなことすら忘れていた。

 ――目の前の男に、完全に呑まれていた。
 
 焦りを封じ込めつつ、ヒナギクは血溜まりの中に倒れている人間に、目を向けた。
 見事に体中傷だらけだ。
 それにしても傷の異様さといったらどうだ? 何かに噛み千切られたかのようだ。
 性別は男、黒服に、闇夜でも目立つ火のような――

 戦慄がヒナギクの全身を駆け抜けた。隣にいる川田の顔が引きつり、つかさが川田の服をぎゅっと掴む。
 心臓を氷の手で握られたような感覚に耐えながら、
「武器を向けたのは謝ります。とにかく、この場から離れませんか? 
できれば情報交換がしたいんですけど」
 ヒナギクの提案に、男の瞳が刹那の瞬間だけ、色を変えた。
「……まずまず……かな……」
 男のかすかな呟きが、大気を揺らす。
 何か言ったかと問いかけたい衝動を押さえつけながら、ヒナギクは男を促して、歩き出そうとする。
「ヒナギクさん……」
 ヒナギクの足が止まり、男の視線が川田に向いた。
「悪いがヒナギクさん、つかささんと先にいってくれ。俺は、やることがある」
「……川田君?」
「なあに……。すぐに追いつくさ」
 心細げに川田を見上げるつかさに、川田が心配するなというように、どこかぎこちない笑みを浮かべる。
 ヒナギクの滑らかな眉が、わずかにひそめられた。
(川田君、あなた……)
454Classical名無しさん:08/02/09 00:27 ID:8ELRL1mU
      
455Classical名無しさん:08/02/09 00:28 ID:7ls9zeqg
.  (⌒⌒)  「ほら… 支援ってハートの形してるだろ…!」
  \,/  
   △ 
456Classical名無しさん:08/02/09 00:28 ID:eHaMa2sI
                               
457 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:28 ID:0MUq1BL.
 
 ――とどめを刺す気か。

 苦い思いをヒナギクは噛み殺した。
 暴風のようなラオウの気を撥ね退けてみせた、赤髪の男の危険さは、考えるまでもない。
 武道なり格闘技なりの心得がある人間なら、あの男を一目見ただけで、否。経験などなくとも分かる。
 
 ――絶対に勝てない。

 結局、分かるものなのだ。絶対に勝てない存在と命が脅かされている瞬間というものは。
「行きましょう、つかさ」
「う、うん」
 渋るつかさを引き摺るようにして、ヒナギクは歩き出す。
 傷ついて倒れている者を殺すという行為に、忌避感を感じないといえば嘘になるが、
 そんなことを言っていられる状況ではない。
 殺しに来る奴に容赦していては殺されるのだ。自分が、仲間が。
 それに――
「ごめんなさい、川田君」
 川田の耳元でヒナギクは囁く。
 汚れ役を引き受けようとする川田の覚悟を思えば、こんな程度の後味の悪さなど、
 飲み下さなくてどうするというのか。
「情報はあって損はないと思うんですけど?」
 足を止めたまま川田の方を見ている男に、ヒナギクは声を送った。
「……その手は……急ぎすぎだ……」
「……え?」
 訝しむヒナギクの方を見ようともせず、男が再び口を開く。
「……簡単に言っちまうと……欲張りすぎってことだ」
 川田のため息が聞えた。
「意味が分からねえんだが?」
 川田の言葉を聞いているのかいないのか、男は淡々と言葉を紡いでいく。
「お前さんの殺意の出所は……恐怖……」
458Classical名無しさん:08/02/09 00:28 ID:/BDTG/B6
支   援
   支   援
459 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:28 ID:0MUq1BL.
 男が一瞬、視線をつかさに向けた。
 つかさの顔がこわばり、川田の瞳に動揺の色が浮かぶ。
「失いたくない……少しでも危険から遠ざけたい……」
 川田が唇を噛んだ。
「悪いか?」
「冷静に考えているつもりでも、心の芯に震えがある……怯えている……。
だから軽々に勝負を急ぐ……。誘惑に、溺れる……」
 川田とヒナギクの視線が、銀髪の男から赤髪の男へと移動した。
(気絶して……ないわけ?)
 気絶していないのなら、こんな所でのんべんだらりと話している場合ではない。すぐに、逃げるべきだ。
 けれど、それは銀髪の男も同じはずなのだが、男に逃げようとする気配は、まったくない。
 困惑の波が、ヒナギクの心の水面を揺らした。
「とにかく……その男はまだ終わらない……終わる流れにはいない」
 集中力という集中力を引き出しきったヒナギクの視線が、再度赤髪の男に収束。
(どう見ても、気絶してるようにしか見えないけど……)
 ここで赤髪の男を見逃せば、自分達は千載一遇の好機を逃すことになる。
 けれど、銀髪の男の言葉を無視することもできそうにない。
 男の言葉は、あまりにも真実の響きを持っていた。
 込み上げる葛藤に心を揺さぶられ、ヒナギクは、川田の様子をうかがった。
 大概のことには動じない川田にも、動揺と困惑の色が濃い。意味もなく銃をもてあそんでいる。
 沈黙の泥が、その場にいる人間達をとらえた。
「……クク……」 
 突然、銀髪の男が、笑みらしきものを浮かべた。
「まあ、今言ったのも……理由の一つではあるんだが……」
「……どういうことだ?」
 苛立ちを露にして川田が男に尋ねる。
「やってみたいんだよ、俺が……。その男と……。本当の勝負ってやつを」
 
 ヒナギクの思考に空白が生まれた。
 全てが白で満たされた空間に、男の声だけが響き渡る。
460 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:29 ID:0MUq1BL.
「仮に……万一……その男が今、死ねば……俺はその男の本当の力を知らずに、ここを去る事になる……。
鬼とみまごう男の本質……その力を見ずして終わる……。せっかくの機会を、逃すことになる……
「そんなもんを見て、どうするってんだ!?」
 川田の声は驚愕に満ちていた。
 ヒナギクは心の中で川田に同意した。
 銀髪の男であろうと、赤髪の男と闘えば死が待っているだけだ。

 ――それなのになぜ?

「近づけるじゃないか……」
「何にだよ?」
「理不尽な死……その淵に近づける……。ニセの勝負じゃ埋められないものが埋まる……。
クク……。勝負の醍醐味だろう?」
 震えがヒナギクの全身を襲った。 
 ヒナギクは認識する。
(違う……。この男は、違う……)

 ――この男は、われわれとは違う。
 
「行きましょう、つかさ。川田君も」
 この男とかかわってはいけないという思いが、ヒナギクの体を突き動かす。
 ヒナギクは踵を返した。
「間違ってねえぜ、ヒナギクさん」
 隣に並んだ川田がボソッと言った。
「アイツもラオウと同じ種類の人間だ。この状況を楽しんでやがる。
『強い奴と闘いたい』の次は、『勝負の醍醐味』かよ……。
ふざけやがって! 殺し合いの何がそんなに面白いんだっ」
 川田の声音に多量の怒りとともに、恐怖も含有されていることに、ヒナギクは気付く。
 元々、理知的、理性的な二人にとって、銀髪の男の得体のしれなさは、恐怖そのものだった。
 彼はあまりにも、ヒナギクや川田の思惑の外にいる人間であり、言動と感性は常軌を逸していた。
 はっきりいって狂っているとしか思えない。
461Classical名無しさん:08/02/09 00:29 ID:/BDTG/B6
援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援支
462Classical名無しさん:08/02/09 00:30 ID:7ls9zeqg
 まさに…… 狂気の支援っ………!
463Classical名無しさん:08/02/09 00:30 ID:eHaMa2sI
                           
464 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:30 ID:0MUq1BL.

 ――あの男と居てはいけない。

 あの男といれば、その狂気に引き摺られ、その先にはきっと死が――
「……一つだけ、聞いていいか?」
 振り返ろうとせず、ヒナギクは足を速めた。
「……ツンデレって……なんだ?」

 ――は?

 今の自分は、人生の中で、一、二を争うほど珍妙な顔をしているだろうとヒナギクは思った。
 川田も完全に虚をつかれ、口を半開きにしている。
「……ある男に言わせると……俺は、ツンデレらしいんだが……。
どうにも意味がつかめなくてな……。あんたら、知らないか?」

 ――何なんだコレは?

 目の前にいるものが人間であるかどうかすら、ヒナギクには分からなくなっていた。
「えと……ツンデレっていうのは……」
「つ、つかささん?」
 川田が焦ったように声をかけるが、つかさは頓着せずに続けた。
「周りに人がいる時は邪険にするんですけど、二人きりになったらデレデレっていうか、
急に仲良くしようとする人のこと……じゃないかと」
 つかさの説明に、
「……なるほどね……そんな風に見えたか……。クク……随分的を外してやがる……」
 男の目にわずかに感情の色が宿り、すぐに消えた。
「ありがとよ……」
「ど、どういたしまして」
 何故かペコリと頭を下げるつかさに軽い頭痛を感じつつ、
「行くわよ!」
 つかさの腕を引っ張って、ヒナギクはその場を足早にその場を後にした。
465Classical名無しさん:08/02/09 00:31 ID:eHaMa2sI
                                
466Classical名無しさん:08/02/09 00:31 ID:yJMJWrUQ
 ぷるぁ
467Classical名無しさん:08/02/09 00:31 ID:/BDTG/B6
支援
468 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:31 ID:0MUq1BL.


(面倒くせぇ……)
 これが、人の気配によって眠りから覚醒させられた範馬勇次郎の、まごうことなき本音であった。
 アーカードとの闘いは、かつて味わったことのないほどの高揚、満足感をもたらしてくれた。
 拳を交換し合うたびに、肉を裂きあい、骨を砕きあうたびに、血が沸騰したかと思うほど熱くなり、全身を歓喜が駆け抜けた。
 最高の美酒と最高の料理を喰らいきれぬほど喰らい尽くした後にやってきたのは、メス餓鬼二人に、取るに足らぬ男二人。
 
 ――口直しどころか、口が穢れる。

 瞬時に屠ってしまうかどうかを検討する最中、勇次郎はある事実に気付く。
(あん時の銀髪は……コイツか)
 刃牙とやり合っている時にナイフを投げつけ、そのままどこかへ消えた男だ。
 あの時は間近に居た刃牙の気が強すぎてわからなかったが、男はなかなか面白いものを纏っている。
凍てついたような気配の中に薫る、濃厚な破滅と死の香りが漂ってくる。
勇次郎の興味は、自然と男に集中していった。
 添え物にすらならぬカスの群れが去り、闇の中に。勇次郎と銀髪の男だけが残された。
 なおも男は去ろうとせず、勇次郎を見下ろしている。
(何故、逃げん?)
 猛禽すら凌駕する銀髪の男の眼光は、刹那の交錯の際に、勇次郎の頭にはっきりと刻まれている。
彼我の圧倒的な戦力差が読めぬ程度の器では、決してない。
にもかかわらず、さっきの言動。

 ――解せん。

 落命の際にいると知りつつも去らぬ男の意図が、勇次郎には読めない。
 とにかくこの男は、『意』を読ませないのだ。
 おそらく、愚地独歩の菩薩拳に匹敵する境地。
(面白ぇ……)
469Classical名無しさん:08/02/09 00:32 ID:7ls9zeqg
 遠藤…まさに歓喜の支援……!
470Classical名無しさん:08/02/09 00:32 ID:eHaMa2sI
                                      
471 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:32 ID:0MUq1BL.
 勇次郎の中の獣が、身を起こした。
 獣臭と気配が爆発的に勇次郎の体から流れ出し、拡散していく。
 寝転がったまま、勇次郎は口を開いた。
「キサマ……。どういうつもりだ?」
 しばしの静寂の後、
「……聞いていたんじゃ……ないのか?」
 人を食ったような答えに、勇次郎の唇が釣りあがった。
「……街のチンピラなどでは何人かかろうが、キサマを倒せまい」
 男は無言。
「だが……。逆に言えば、貴様の力はその程度にすぎん。
その程度の力で俺の本気が見たいというのは……。いささかハネっ返りが過ぎるのではないかッッ!?」
 次の瞬間、勇次郎の殺気が炸裂した。
 常人ならばすり潰されかねない殺気の奔流を、男は風と受け流す。
 男が懐から何かを取り出した。
 勇次郎の双眸に、紅蓮が生まれた。
「……まさかとは思うが、その手の中にある玩具で、俺を殺せるとでも思っているわけではあるまいな?」
 勇次郎から放たれる殺気が、さらにその力を増していく。
 男が口を開いた。
「……まんざら……凌げなくもない……」
 勇次郎の頭に業火が生まれた。
 主の意志に反応して、瞬時に体が地面から跳ね上がる。
 さきほどの激闘から、ほとんど時間は過ぎていない。
 アーカードから受けた傷から夥しい傷から血が噴出し、激痛が脳神経を焼く。
 それら一切を意に介せず、
「この俺を前にして、よくぞそこまでほざけたものっっ!!」
 鬼の怒号が天地を揺るがした。

「武装錬金」
「邪ァァァ――っっ!!」
472 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:33 ID:0MUq1BL.
 声が交錯。
 勇次郎の体から大量の血液が飛び散って闇夜に赤い華を咲かせ、男の体が大砲から打ち出された砲弾の如く吹き飛び、壁に激突。
 濛々と粉塵が舞い上がり闇を白く染めた。
 一刹那の後、何事もなかったかのように、白い外套を纏った男が立ち上がる。
 無傷、全くの無傷。
 勇次郎の拳を受ける前と変わらぬ姿が、そこにあった。
「ほぉ……。なかなかのもんじゃねえか……」
 必殺の拳を受け止められたにも関わらず、勇次郎の顔には嘲笑があった。
「なかなかの鎧だが、欠陥品だな、オイ。一撃だけ止めても、意味はあるまいによ!」
 ただの一撃。インパクトの瞬間に感じた感触のみで、勇次郎はシルバースキンの弱点を看破する。
 ところが、鉄壁の鎧の謎を解かれ狼狽するかと思いきや、男は毛筋ほどもその気配を見せない。
やがて、勇次郎の顔に浮かんだ嘲笑に、わずかに困惑の皺が混じり始めた。
「まだ何か、隠してるみたいじゃねえか?」
 勇次郎の問いかけに、男は唇をわずかに動かし、
「……クク……教えてやってもいいんだが……」
 ひとしきり熱のこもらぬ笑声を響かせた後、
「まあ……そいつはやめとこう……。見たけりゃ俺の中から引きずり出せばいい……。
あんたの力でな……」
 再び静寂の川が二人の間に横たわった。
 ややあって、
「エフ……。エフッエフッ……」
 勇次郎の口から妙な音が漏れ始めた。
「エフッ、フッ、フハハハハハハハッッ!!」
 音は次第に哄笑へと変わっていった。

――このペテン師がッッ!!

 ラオウやアーカードに比べ、銀髪の男は、あまりにも脆弱。
 範馬勇次郎を相手に、奥の手を隠し続けられる水準には、到達していない。
 仮に奥の手があったとしても、二人の間にある圧倒的な戦力差を、埋められるはずもない。
473 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:34 ID:0MUq1BL.
――なのにどうだ。

 目の前の男の揺るがなさを見ていると、ありえる気がしてくる。
 力の差を埋める、否。それ以上のことをやってのけるのではないかと、思わされる。
 心が勝手に形を取り始める。己の認識が真かどうか、分からなくなる。
 口先では、小手先では決して不可能の技。
 男から放たれる気が、凄みが、男の言動に底知れぬ力を与えているからこそ、可能。
(この範馬勇次郎を、揺るがせやがるとはッッ!)
 目の前の男に、思う存分拳を打ち込んでみたいという欲求が猛烈に込み上げてくる。
 だが、同時に湧き上がって来る、別の思いもあった。

 ――今、喰っちまうには勿体ねえ。

 肉体を鍛え上げ、力を求め続けた己やラオウとは別種の違う領域の高みにいるこの男を、
 今この時、この場で喰らってしまうのは、惜しい気がする。
 昼間遭遇した時、目の前の男は、この防護服を持っていなかった。
 この男は道具を持っていて使わない、使えないという類ではないから、間違いない。
(となりゃまだ……。伸びる余地はあるわな)
 幸いなことに腹は満ちていた。未だかつてないほどに。
(ガッつくこたぁ、ねえか……)
 勇次郎から無尽蔵に溢れ出ていた気の奔流が、止んだ。
 それでも男には何の動きも見られない、ただ無言で立ち尽くすのみ。
 小さく鼻を鳴らし、
「テメエ、名は?」
「……赤木……赤木しげる……」
「そうか……。アカギとやら――」
 踵をかえしつつ、首だけで振り返り、
「せいぜい己を高めることだ。
喰らっても喰らっても、喰らいつくせぬ餌になれッ!! 俺を満足させる餌であれッ!!
そうすりゃ見せてやる、この範馬勇次郎をッッ!!
いつでも歓迎するぜ!? ク、クク、ク、は、は、ハッハハハッハハハっ!!」
474Classical名無しさん:08/02/09 00:35 ID:/BDTG/B6
支援
475Classical名無しさん:08/02/09 00:35 ID:eHaMa2sI
                                       
476 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:35 ID:0MUq1BL.
 愉悦の笑みを口元にうかべ、笑声を響かせながら、勇次郎はその足先を駅へと向ける。
 歩くうちに、勇次郎は己の足取りが重いことに気付いた。
(忘れてたぜ……)
 アカギとの邂逅で昂ぶらされたせいか、アーカードとの死闘で力を使い果たし、甚大な肉体的損傷を受けて昏倒してしまったことを、
 すっかり失念していた。
 勇次郎は、一つの民家に目をつけると、無造作にそのドアを蹴り開け、中へと歩みを進めた。
 ベッドを発見し、勇次郎は大の字に寝転がる。
(アカギか……。面白れぇ奴もいたもんだ。つくづくここには喰い応えのあるのが揃ってやがる。
アーカードの野郎、アカギのことを知りゃあ、闘えなかったとことを悔しがるだろうが……。
なぁに、すぐだ。すぐにアカギも送ってやる。楽しみに待ってな……)
 まだ見ぬ、アーカードから聞かされた多くの強者達、その中にはいなかったアカギという別種の強者。
 再び、胸が高鳴り始めるのを勇次郎は感じた。
 
 ――最高だ。最高の夜だ。

 目を閉じるとすぐに、勇次郎の意識は闇に落ちていく。
 薄っすらと笑みを浮かべたその寝顔はまるで、明日何をして遊ぼうかと考えて眠る子供のようだった。
 

 ■
 

「……生き延びた……か」
 絶体絶命の危機を乗り切ったにも関わらず、アカギの表情には、喜色一つなかった。
 
――死ぬ時がきたら、ただ死ぬばいい。
 
 命を突き放している男が、命を永らえて喜ぶはずもない。
477Classical名無しさん:08/02/09 00:36 ID:yPbjwt.s
アカギフラグ獲得支援
478Classical名無しさん:08/02/09 00:36 ID:eHaMa2sI
                            
479 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:36 ID:0MUq1BL.
 足を学校へと向けながら、アカギは思考する。
(勇次郎の向かった方角は駅の方角……鉢合わせしなきゃ、いいが……)
 さきほど出会ってすぐに別れた3人組もまた、勇次郎と同じ方角へと消えていった。
(まあ、二分ってとこだな……)
 いくら闘争本能の塊である勇次郎であろうと、あの傷で駅へと乗り込むことはあるまい。
 何処かで休息を取るはずだ。次の闘争のために。心の底から闘争を楽しむために。
(……赤髪の女と坊主頭の男……資質としては、まずまず……)
 アカギと勇次郎の戦力差を念頭に置いて、アカギの言葉から、アカギが殺し合いに加担していないと判断したのはまずまずだ。
 あの場においては、勇次郎という圧倒的強者から遠ざかるのが第一。戦力的に差のない男の見極めは、後でもできる。
 判断力の速さと鋭さは及第点といっていい。
 坊主頭の殺しに対する腰の据わり具合と、勝ちに行く姿勢も、悪くない。
 やり方こそ最悪だったが、あの場は、攻めなければ生き延びられぬ流れであると、本能的に悟っていた。
 
 ――仲間に加えても、足は引っ張るまい。
 
 そう考えたからこそ、アカギは勇次郎の目を己に引き付けたのだ。
 勇次郎が気絶したままである可能性を、アカギは、まったく考えていなかった。
 コンディションだのなんだのという小賢しい理屈を蹴散らし、その時になれば、あの男は必ず起き上がってくる。
 となれば、アカギの打つ手は一つ。
 まず勇次郎の興味を己に引き付け、3人を逃がした後、勇次郎に力を認識させ、その上で、今戦うには惜しいと思わせる。
 これが最善の一手。
 頭を低めてやり過ごすのではなく、こちらから攻め込んでいくことのみが、暗黒の虎口に出口を作る。
(……ツキは……あった……)
 あの場にいた者達にとっての最大の幸運。
 それは範馬勇次郎という闘争を糧とする生物が、食事を終えたばかりで満腹していたこと。
 生物というカテゴリーに入るものは、すべからく、満腹時には闘争本能が薄れる。
480Classical名無しさん:08/02/09 00:36 ID:/BDTG/B6
援支援支
481Classical名無しさん:08/02/09 00:37 ID:eHaMa2sI
                                     
482Classical名無しさん:08/02/09 00:37 ID:/BDTG/B6
支援支援支援支援支援支援支援支援支援支援
483 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:37 ID:0MUq1BL.
 さもなければ、鬼のテリトリーに入ってしまった時点で、あの場にいた者全てが血煙と化していただろう。
 鬼が満腹であるという一点の突破口をついた賭けを、アカギは打った。
 結果としてあの場にいたもの全員は、命を拾うことができた。
(フフ……嘘だな……)
 一連の思考の流れをアカギは、否定する。
 無論その考えもあるにはあったが、やはり違う。

 ――飛び込みたかったのだ、業火に。

 どう考えても苦渋は必死。匂ってくるのはきな臭い破滅の気配ばかり。
 3人組をあの場から遠ざけるため己の異質さを敢えて表に出したが、口にした言葉は間違いなく本音。
 状況が苦境であればあるほど好ましいという博打好きの習性、アカギという男の本質……。
 範馬勇次郎という極めつけの業火に焼かれて死ぬなら、それもまた……本望。
(正しいさ……お前らは……)
 赤髪の女と坊主頭の男の、異星人でもみるかのような目を思い出し、アカギは悪魔の笑みを浮かべた。
 己が偏っている、狂っている。そんなことは、とうに知っている。
 火の粉が飛んでくる前に逃げようとするのは、人間として正しいこと。
(……あの嬢ちゃんは……何も考えちゃいねえな……)
 無垢な目を向けてきた少女を思い出し、わずかにアカギは相好を崩す。
 この世に理解できないものはない。あっても少ないと思っている人間ほど、理解できないものに恐怖する……。
そういう意味では才気すぐれる者ほど脆い。
理解できぬものをそれとして受け入れるのもまた、心の在り方としては正しい。
脆そうではあるが、あの様子なら仲間が生きている限りは、逆境においても崩れはすまい。

 さて、ここで疑問が生じる。
 別れた3人のことをそれほど悪くないと考え、3人を虎口から脱させるための手段を講じておきながら、
 何故アカギは、最後まで名乗りもせず、名も聞かず、喫茶店や学校といった鳴海達がいるであろう場所を教えなかったのか。
484 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:38 ID:0MUq1BL.

――繋がっていない。

(……今のままでは繋がらない……。世界に……)
 世界と繋がらない流れにあの3人はいる。
 まず、役になっていない、チームとして、体をなしていない。
 先ほどの接触にしてもそう。
 あの場面で、警告の言葉を発していいのは強者、それも圧倒的な強者のみ。
 仮にアカギが殺し合いに加担する人間で、一瞬にして3人を殺せる人間であったならどうか。
 あのチームは全滅していただろう。それこそ、あっさりと。 
 素手の人間にそんなことはできない、などと考えるのは、この場においては最大の過ち。
 未知の能力と道具が溢れ、強者達が跋扈するこの場において、まだ、そんな考えを抱いているなら、愚か過ぎる。
 要するに、3人で生き残ってきたにしては、先ほどの対応は、ぬるすぎるのだ。
(一枚……欠けている……)
 圧倒的な強者が一人加われば、あの集団は完成形になる。
 逆に言えば、その強者を欠いてあの集団は成り立たなのだ。絶対に。
 手牌が変われば、打ち方も変えなくてはならない。
 にもかかわらず、その強者を欠いて不完全になっているという自覚がない。自覚があったにせよ足りない、不足している。
 そこそこ力があるものだから、坊主頭も赤髪の女も、強者の抜けた穴を完全にではなくても埋められる、という意識がある。
 そこに落とし穴がある。分を超えれば、どこかに無理がでる、隙が生まれるというのに……。

 ――流れも悪い。

 集団としてのいびつさから考えて、あの3人が強者と別れてから、それほど時間はたっていまい。
 死んだのか、別れ別れになったのかは不明だが、強者がいなくなってすぐ、集団としての新しいスタイルが出来上がる前に、
 虎口に飛び込んでしまう運の悪さ。
 ただし、鬼が満腹していたという幸運、アカギというイレギュラーな存在がいたという幸運にも、同時に恵まれている。
485Classical名無しさん:08/02/09 00:39 ID:/BDTG/B6
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486Classical名無しさん:08/02/09 00:39 ID:eHaMa2sI
                       
487Classical名無しさん:08/02/09 00:39 ID:8ELRL1mU
       
488 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:40 ID:0MUq1BL.

 ――ここが、最悪。

(奴らは半ツキの状態にある……。よりにもよって……)
 半ツキ。博徒達にとって、これ以上はないというくらいの最悪の状態。
 それなりによいところまではいく。だが、後一歩で必ず途切れる。決して世界と繋がることはない。
 不運を自覚できぬ分、不運よりもタチが悪い。
(仲間には……できないな……)
 既に、三千院ナギという曲者、運に見放された疫病神を抱えこんでいる。
 この上、半ツキの人間まで取り込めば、待っているのは破滅だ。
 だから教えなかった。名も、仲間の居場所も。
(とはいえ……変わりやすいからな、ここは……)
 多くの人間が持つ流れが絡みあい、流れすらねじ伏せる強者もいる。
 だから一応、助けはした。
(あとは……お前ら次第……。世界に繋がるか……俺達に破滅をもたらすのか……。
どっちだ……?  クク……読めない……こればっかりは……)
 いかにアカギといえど、読めないものはある。

(……これだからここは、面白い……)
 
 薄く笑みを浮かべながら、アカギは闇夜を見つめたのだった。
489Classical名無しさん:08/02/09 00:40 ID:/BDTG/B6
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490Classical名無しさん:08/02/09 00:40 ID:bkLJX6mw
支援伝説アカギ
491 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:40 ID:0MUq1BL.
【D-4 /1日目 真夜中】
【赤木しげる@アカギ】
[状態]:脇腹に裂傷、眠気 核鉄で自己治癒中
[装備]:シルバースキン 基本支給品、 ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス (残り9本)
[道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)
 始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます) キック力増強シューズ@名探偵コナン
 水のルビー@ゼロの使い魔、工具一式、医療具一式 沖田のバズーカ@銀魂(弾切れ)
[思考]
基本:対主催・ゲーム転覆を成功させることを最優先
1:学校に向かって、自分の情報を伝える。
2:脱出のカードを揃えてから、ジグマールを説得する。
3:対主催を全員説得できるような、脱出や主催者、首輪について考察する
4:強敵を打ち破る策を考えておく
5: このバトルロワイアルに関する情報を把握する
(各施設の意味、首輪の機能、支給品の技術 や種類など。)
[備考]
※ツンデレの意味をつかさから聞きました。
※マーティン・ジグマールと情報交換しました
※光成を、自分達同様に呼び出されたものであると認識しています。
※参加者をここに集めた方法に、
 スタンド・核鉄・人形のいずれかが関係していると思っています。
※参加者の中に、主催者の天敵たる存在がいると思っています(その天敵が死亡している可能性も、考慮しています)
 そして、マーティン・ジグマールの『人間ワープ』は主催者にとって、重要な位置づけにいると認識しました。
※主催者のアジトは200メートル以内にあると考察しています
※ルイズと吉良吉影、覚悟、DIO、ラオウ、ケンシロウ、キュルケ、ジグマールはアルター使いと認識しました
※吉良吉影の能力は追尾爆弾を作る能力者(他にも能力があると考えています)だと認識しました。
※DIOの能力は時を止める能力者だと認識しました。
492Classical名無しさん:08/02/09 00:41 ID:eHaMa2sI
                        
493 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:41 ID:0MUq1BL.
※ジグマールは『人間ワープ』、衝撃波以外に能力持っていると考えています
※斗貴子は、主催者側の用意したジョーカーであると認識しています
※三千院ナギは疫病神だと考えています。
※川田、ヒナギク、つかさの3人を半ツキの状態にあると考えています。

【E-4 /1日目 真夜中】
【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】
[状態]熟睡中。右手に中度の火傷、左手に大きな噛み傷。
   全身の至るところの肉を抉られており、幾つかの内臓器官にも損傷あり。大量出血中
[装備]ライター
[道具]支給品一式、打ち上げ花火2発、フェイファー ツェリザカ(0/5) 、レミントンM31(2/4)
   色々と記入された名簿×2、レミントン M31の予備弾22、 お茶葉(残り100g)、スタングレネード×4
[思考] 基本:闘争を楽しみつつ優勝し主催者を殺す
1:放送まで寝る。
2:アーカードが名を残した戦士達と、闘争を楽しみたい。
  ただし、斗貴子に対してのみ微妙な所です。
3:首輪を外したい
4:S7駅へ向かいラオウ、DIO、ケンシロウを探す。
5:未だ見ぬ参加者との闘争に、強い欲求
[備考]
※シルバー・スキンの弱点に気付きました。
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。
※ラオウ・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました。
※生命の水(アクア・ウィタエ)を摂取し、身体能力が向上しています。
※再生中だった左手は、戦闘が可能なレベルに修復されています。
※アーカードより、DIO、かがみ、劉鳳、アミバ、服部、三村、ハヤテ、覚悟、ジョセフ、パピヨンの簡単な情報を得ました。
ただし、三村とかがみの名前は知りません。
是非とも彼等とは闘ってみたいと感じていますが、既に闘っている斗貴子に関しては微妙な所です。
494Classical名無しさん:08/02/09 00:42 ID:/BDTG/B6
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495Classical名無しさん:08/02/09 00:42 ID:eHaMa2sI
                     
496 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:43 ID:0MUq1BL.


 銀髪の男の姿が見えなくなってしばらく歩いた後、
「……ヒナちゃん、怒った?」
 引き摺られるようにして、男の前から退場させられたのが引っかかっていたのか、
 つかさが尋ねてくる。
「ん? 別に、怒ってなんかないわよ」
 周囲に神経を配りながら、ヒナギクは生返事を返す。
 さっきのように弛緩するわけにはいかない。最も戦力が高い自分が、二人を守らなくてはならない。
 責任感と義務感で心を張り詰めさせながら、ヒナギクの目を凝らす。
「変な人だったね……」
 ヒナギクの眉が急激に角度を変えた。
(何でそんなに、軽い物言いなわけ?)
 つかさの顔をうかがってみるが、別段、普段と変わった風にもみえない。
 そのことが逆にヒナギクを混乱させる。
「……まあ、変人には違いねえだろうな」
 川田もまた、微妙な顔で相槌を打つ。
「ねえ、つかさ……」
「何? ヒナちゃん」
「つかさは、アイツから何も……感じなかったの?」
 自分とはまったく異質な存在と相対しているような恐怖を感じなかったのだろうか、
 そんな疑問を感じて、ヒナギクはつかさの顔に視線を送る。
「う〜ん……」
 可愛らしく首をひねりつつ、
「すっごく鋭い人だなあって、思ったし、ちょっと怖かったけど……。
乱暴な人には見えなかったかなぁ」
「そ、そう……」
「私、あの人は、そんなに悪い人じゃないと思うんだけどな……」
 思わずヒナギクは状況も忘れ、つかさの顔を直視した。
(つかさってひょっとしら、すっごく大物なんじゃ……?)
 ふと気になって目線だけで川田の顔を見ると、彼もまた、微笑とも苦笑とも取れるものを顔に浮かべていた。
497Classical名無しさん:08/02/09 00:44 ID:eHaMa2sI
                          
498 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:44 ID:0MUq1BL.
「どしたの? ヒナちゃん」
 ヒナギクの視線に気付いたつかさが、目をしばたたかせた。
「え? ああ……ええと……。ごめん、言いたいこと忘れちゃったかも……」
 ヒナギクが慌てて誤魔化すと、つかさは口元をほころばせ、
「ううん! あるよねぇ、そういうこと……」
 こんな時だというのに、ニッコリと笑うつかさの顔を見ていると、なんだか心が温かくなる。
(っと……いけない、いけない)
 弛緩していい時ではない。
 小さな笑みを返しつつ、ヒナギクは視線を前に戻した。
(少し……警戒しすぎちゃったかしら?)
 闇の中に、銀髪の男の酷薄な顔と闇を秘めた鋭い瞳が見えた気がして、ヒナギクは顔をしかめた。
(目的は多分、同じだと思うんだけど……)
 あまり一緒にいたいタイプの人間ではない。
 ヒナギクはもう一度、つかさに視線を移動させた。
 柔らかな頬に、人のよさが滲み出ている優しげな瞳。
 どこか人を拒絶するような気を発散していたあの男とは、正反対だ。
 きっと姉のことで心に重い物を抱えているだろうに、さっきのつかさの笑顔は、
 人の心を暖かくさせる、柊つかさらしさを、失っていなかった。
(ホント、いい顔で笑うのよね……)
 本人に自覚はないだろうが、この笑顔に、疑うことを知らない瞳に、どれだけ癒されてきたことか。
 だから、つかさの瞳に悲しみが見え隠れしたりすると、どうにも落ち着かなくなる。
 ヒナギクは川田に目配せをし、川田が分かったと頷くのを待って、口を開いた。
「大丈夫よ……」
「え?」
 つかさが、きょとんとした表情になる。
「私のお姉ちゃん、私の通ってる学校の先生をしてるんだけど……。なんていうのか、
けっこう無茶する人なのよ……」
 つかさが、その大きな瞳を見開いた。
「お給料もらってもほとんどお酒につぎ込んじゃって……。そのせいで給料日まえになると、
私にまでお金借りに来るの。12も離れた妹によ? おかしいと思わない?」
499Classical名無しさん:08/02/09 00:45 ID:qqGr8Jik
  
500Classical名無しさん:08/02/09 00:45 ID:yJMJWrUQ
ぽいーん
501 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:45 ID:0MUq1BL.
 ぐいとヒナギクに顔を近づけられ、目を白黒させながら、つかさがコクコクと頷く。
「借金はつもりつもって400万オーバー。
そんなんだから、当然、アパートも借りられなくて、学校の宿直室にすんでるのよ?
言っておくけど、歳は38歳! ホント、信じられないわよ!」
「そ、そうなんだ……」
「補習授業を受け持たされたら野球やっちゃうし、誰にでも彼にでもたかって、オゴらせよとするし……
本当に困ったもんだわ! つかさのお姉さんとは大違い!」
 もはやなんと相槌を打てばいいのかも分からず、口を開いたり閉じたりするつかさを見て、
 ヒナギクはクスリと笑った。
「でもね……。そんなお姉ちゃんだけど、私が本当に悲しむことだけは、絶対にやらないの」
 つかさが息を呑む気配が伝わってくる。
「どんなに苦しい時も、辛い時も……。私の本当のお父さんとお母さんが、借金だけ残して蒸発しちゃって、
行く所がなくて公園で寝泊りしてた時も、お姉ちゃんはお姉ちゃんだったな……」
 ヒナギクは、春風のような優しげな微笑を浮かべた。
「つかさは、お姉さんに嫌なこと、されたことある?」
 つかさが首を大きく横に振った。
「つかさのお姉さんは、つかさが悲しむようなことをする人?」
 また、同じ向きに首が振られた。
「だったら、ね……?」
 つかさは、俯いたまま動こうとしない。
 その肩が小さく震えているのを見て取り、ヒナギクは、指を伸ばすとつかさのおでこをチョン、と付いた。
「っわ!」
「ほら! 泣かない! そこは直さないと駄目だっていったでしょ!」
「う、うん……。ごめんね、ヒナちゃん」
「すぐ謝るのも禁止!」
「そ、そんな……」
 困り果てたようなつかさの表情が可笑しくて、思わずヒナギクは噴出してしまう。
 釣られたようにつかさも噴出す。
502Classical名無しさん:08/02/09 00:46 ID:/BDTG/B6
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支援
503 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:46 ID:0MUq1BL.
 仕切りなおすつもりで咳払いを一つし、
「何か理由があったのよ。トラブルになっちゃうような理由が。仕方の無い理由が……。
ていうか、どこの誰がなんと言おうと、つかさがお姉さんのこと信じてあげなきゃどうするのよ」
大体、何よ? 迷惑かけてたから嫌われたかもしれないって……。
そんなことで嫌いになれるんなら、私なんかとっくにお姉ちゃんのこと嫌いになってるわよ!」
「……ヒナちゃんは、お姉ちゃんのこと大好きなんだね」
 ヒナギクの頬にさっと朱が刺した。
「ま、まあね……。つかさほどじゃ、ないと思うけど……。
と、とにかくつかさはお姉さんのことを信じてればいいのよ! 分かった!」
 つかさが大きく頷いた。ほとんど同時に、川田が噴出す気配。
「……何か文句あるの? 川田君」
「いや……。ヒナギクさんの彼氏になる男は大変だろうと思っただけさ」
 うっとヒナギクは一瞬たじろぐが、すぐに体勢を立て直し、
「よかったわねえ、川田君は。料理が上手くて優しい彼女がいて」
「なっ……」
 呻き声を漏らして川田はしばらく固まっていたが、どうやらこれ以上藪をつつかないほうがいいという結論に達したらしく、
「悪かった」
 ペコッと頭を下げてくる。
「よろしい!」
 さっきのお返しとばかりに、ヒナギクが薄い胸を逸らすと、川田は心底まいったというように、
 つかさと顔を見合わせ、笑みを交し合う。
 ホッと、ヒナギクは気付かれないように安堵の息を吐いた。
 また、思いつめて一人で姉のところに行ったりしないように注意していなくてはと思う。
 弛緩した集中力を再び引き締めなおし、ヒナギクは足を勧め始める。
(まったく……。当たり前だけど、最低な場所ね、ここは……)
 危険な奴は多いし、気を抜くとすぐ、心が闇に蝕まれてしまう。

 ――頑張らなければ。

 また、大事な人が目の前からいなくなってしまうのは、嫌だから。
504Classical名無しさん:08/02/09 00:46 ID:yJMJWrUQ
 
505Classical名無しさん:08/02/09 00:47 ID:s7WYlYKo
乙 GJ!
アカギはやはり異常、異端……
某1stロワの考察、心理描写も驚いた記憶があるが、
ここまで危ない雰囲気と、キャラ独特の考察を見たのは初めて。
正直感動すら覚えた。

何が言いたいか? 漫画ロワは一味違うってことを、改めて思い知らされたよ
506 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:47 ID:0MUq1BL.


 どれくらい歩いただろう。
(やっと……。着いたわね)
 ヒナギクは額につたう汗をぬぐった。
 小さな物音にまで細心の注意を払って移動するのはかなりきつい。
(覚悟君がいないだけで、こんなに違うなんて……)
 きっと、心の根っこのところで、常人を遥かに越えた力を持つ彼に、頼っている所があったのだろう。
(覚悟君……ついてるかしら?)
 襲ってきた傷女の狂気に満ちた瞳を思い出し、ヒナギクは顔をしかめた。
 まさか彼がやられるなんてことは――

「ヒナちゃん!」

 つかさに袖を引っ張られ、ヒナギクはつかさの指差す方向を見た。

 ――いた。

 覚悟が駅の入り口に仁王立ちし、あたりを睥睨している。
(よかった……)
 ヒナギクは安堵の吐息を漏らた。
 やり遂げた、という心地よい達成感と共に、疲労が込み上げてくる。

 ――もう、安心だ。

 彼と合流できれば、もう心配はいらない。
 川田に目をやると、彼もまた、額の汗を拭いながら、心底ホッとしたという表情を浮かべている。
 つかさは安堵のあまり、座り込んでしまっている。
 責任を果たそうと極限まで張り詰めてさせていたヒナギクの筋肉と精神が、弛緩していく。
 つかさのように、座り込んでしまいたいという衝動を押さえつけ、
「葉隠君!」
507Classical名無しさん:08/02/09 00:47 ID:eHaMa2sI
                            
508Classical名無しさん:08/02/09 00:47 ID:/BDTG/B6
雪路は28だよおおおおおおお!!! 支援
509 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:47 ID:0MUq1BL.
 建物の影から出ると、弾んだ声でヒナギクは呼びかけた。
 彼がこちらの方を向いた。
 刃のように細められていた瞳が丸くなり、鋼の表情がわずかに緩んだ。
「ヒナギクさん!」
 覚悟が足早にこちらに向かってきた。
 なんだか妙に心が浮ついている。
 疲れが気にならなくなり、重かった足が、軽くなったような気がする。
 片手を挙げ、ヒナギクもまた、覚悟に向かって足を速めた。
 二人の距離が数メートルまで狭まりかけた――その時。

 轟音が轟き、閃光が弾け、光の奔流がヒナギクに向かって奔った。





 女は待っていた。
 呼吸を殺し、気配を殺し、獲物が来るのを待ちうけていた。
 あの体力の無さそうな女を連れてボーリング場まで行くとすれば、地下鉄を使うに決まっている。
 盗み聞いた会話の内容、そして分かれる際に4人がかわした会話で、駅に4人が来る可能性は高いと踏んだ。
 病院に向かうと見せたのはフェイク。
 覚悟が見えなくなった時点で、すぐに斗貴子は進路を変えていたのである。
 まったく違う場所で落ち合うのではなく、駅自体を集合場所としたのなら、覚悟が先についているか可能性は高い。
 細心の中の細心の注意を払って駅へと接近し、あの液体を飲んで爆発的に向上した視力を活用して、遠間から葉隠覚悟を確認した後は、
 注意深く下準備を済ませた後、襲撃ポイントへと向かい、そこに身を隠した。
 錬金の戦士としてキャリアを積んできた、津村斗貴子の戦士としての能力は、多岐に渡る。
 一対一の戦いでは覚悟に譲ったとしても、隠密行動や奇襲計画を立案し、実行するスキルにおいて、
 斗貴子は覚悟を上回っていたのである。
510 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:49 ID:0MUq1BL.
 建物の陰に身を隠した後は、戦士としての忍耐力と自制心を最大限に働かせ、彼女は待った。
 葉隠覚悟から受けた拳によってできた怪我から発生する痛みすら、殺意と力に変換し、ひたすら待った。
 そして――

 ――葉隠君!

 斗貴子の双眸がくわっと見開かれた。
 瞬時に4人の位置関係を把握。
 斗貴子の唇が弧を描いた。これ以上ない、絶好の位置関係だ。
 頭の中でシミュレーションしておいたとおり、淀みなくカズキの遺槍、サンライト・ハートを構える。
 迷いも躊躇も一切ない。3人が別ルートから来れば襲撃しないとまで決めておいた、必殺の待ち伏せ策だ。
 後は、行くのみ。
「っ!!」
 無音の気合を槍に浴びせる。
 刹那の差もなく槍から光が迸り、凄まじい加速と重力が彼女を襲う。
 見る見るうちに視界が狭まる。行く手には女。
 集中力を極限まで高める。
 集中の極地に到達――音が消え、全てがスローになる。
 視線の先で女がようやくこちらに視線を向ける。

 ――遅い。

 葉隠覚悟が女に向かって走りよる。こちらは速い、とてつもなく速い。何たる超反応!
 おそらく槍の穂先よりも、奴の方が速い。
(予測――どおりだっ!!)
 気合と共に穂先ではなく石突を伸張。アスファルトに叩きこんで、速度減殺しつつ強制方向転換。
 あまりの急速な方向転換に、重力や慣性といった科学法則が斗貴子に多重連激でのしかかってくる。
 酷使に耐えかねた体の筋肉が悲鳴を上げ、傷が存在を申告してくるが、奥歯を噛んでも黙殺
511Classical名無しさん:08/02/09 00:49 ID:yJMJWrUQ
ぎゃあああああああ
512Classical名無しさん:08/02/09 00:49 ID:/BDTG/B6
支援支援
513Classical名無しさん:08/02/09 00:49 ID:8ELRL1mU
      
514Classical名無しさん:08/02/09 00:49 ID:i9G7k25.
ちょちょちょちょちょちょちょまてまてまてまて
515Classical名無しさん:08/02/09 00:49 ID:4buEG186
516Classical名無しさん:08/02/09 00:49 ID:eHaMa2sI
                               
517 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:49 ID:0MUq1BL.
 槍を取り巻くエネルギーの奔流によって抉られたアスファルトが瀑布となって、覚悟たちに殺到していく。
 破片の弾丸を覚悟が叩き落とし、破砕音が連続して響く。
 目の端に覚悟の焦燥の表情が映り、斗貴子の唇が、耳元までつりあがった。

 ――気付いても、もう遅い。
 
 視線を目標に向ける。
 途中で坊主頭とすれ違った。坊主頭の絶望が混じった視線と斗貴子の冷笑を宿した視線が一瞬だけ絡み合う。

 ――馬鹿が。

 身の程を知らず、その程度の力で仲間まで守ろうとするから、ボロが出る。
 視線の交錯が途切れ、後方で銃声が鳴った。
(どこを撃っている!)
狂気と愉悦を口元に浮かべ、斗貴子は獲物を睨み据えた。
目標はリボンの女、柊つかさ。恐怖と驚愕で体を硬直させ、大きく目を見開いている。

 ――死ねっ!!
518Classical名無しさん:08/02/09 00:50 ID:4buEG186
支援
519Classical名無しさん:08/02/09 00:51 ID:yJMJWrUQ
はわわ
520Classical名無しさん:08/02/09 00:51 ID:/BDTG/B6
リボンの女支援
521Classical名無しさん:08/02/09 00:51 ID:HUNERyDE
うわあああああああああ支えn
522 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:51 ID:0MUq1BL.
 槍が虚空を高速疾走し、目標をぶち抜いた。
 槍の先から肉を貫く感触が伝わってくる。勢いが減殺されるが、斗貴子の前進は止まらない。
 穂先が女の体を貫通。血が闇に散華し、斗貴子の頬を塗らした。
 スピードが零になり、集中が途切れる。
 同時に音が、戻った。

「つかさぁぁァ――っっ!!」

 裏返った耳障りな女の絶叫。
「てめぇぇっ!!」
 鬼の形相で坊主頭が突進してくる。
 狂笑を浮かべ、斗貴子は貫いた女の体ごと槍を持ち上げ、穂先を坊主頭に向けた。
 槍の穂先から女の呻き声がし、坊主頭が足を止める気配。
(奴の真似をするのは、シャクだが……)
 カズキの肉体を投げつけてきた吉良吉影の顔が頭の中に蘇り、斗貴子の殺意の炎が火勢を増した。
(全てはカズキを取り戻すためだ!)
 吉良の顔を、斗貴子は頭から追い払った。
「く、そ、がぁァ……」
 怨嗟と憎悪に満ちみちた声が聞こえてくる。
(フフ……。愛しい女の体が目の前にあっては、手出しできなよなぁ?)
 たとえ死体であろうと攻撃できない。そういうものだ。
 人一人支える負担に耐えかねた左腕の筋肉が軋みを上げ、腕の傷からは血が噴出する。
 その痛みすら、今の斗貴子には心地よい。
 自分を苛立たせる存在は消した。
湧き上がってくる、人の運命をこの手に握る快感ときたら、どうだ。
(安心しろ。一緒に、あの世へ送ってやるっ!)
 最悪一人しか殺せないかもしれないと思っていたが、もう一人やれそうだ。
 嗜虐心と狂気に突き動かされるまま、斗貴子は体内エネルギーを槍に注ぎこむ
(穂先では気付かれる可能性があるか……)
 赤髪の女と葉隠覚悟が接近してくる。
(グズグズしている暇はない)
523Classical名無しさん:08/02/09 00:51 ID:4buEG186
支援2
524 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:51 ID:0MUq1BL.
 ――最小の力で男を突き殺し、速やかに予定の経路で撤収する。
 
 斗貴子の殺意に反応した槍の石突部分から光があふれ出し、再び爆光が夜を裂いた。



 ――痛い、いたい、イタイ

 つかさの頭は、その言葉で埋め尽くされていた。
 腹部から絶えまなく痛みが押し寄せてくる。まるで全身が痛みになったみたいだ。
 熱くて、苦しくて、息ができない。
 宙に浮く感覚と振り回される感覚。先ほどまでに倍する痛みが、瞬時に頭頂に突き抜けた。
「ぐっ……うふぇ……」
 熱い塊が勝手に口からあふれ出す。
 涙が止まらない。目の前がぐちゃぐちゃで、何も見えない。
(イタイ、痛い……。助けて誰、か助け……)
 いくつのも顔が、脳裏を閃いて消えていく。
(何で? どうして? どうして何で? 何でこんな……)
 つかさの心でいくつもの「何故」が踊り狂う。
 どうして、自分はこんなに痛い目にあっているのか。何故、こんなことになってしまったのか。
 答えの出ない疑問の乱流がつかさの心で荒れ狂う。
 激痛と取りとめもない思考の中、つかさの意識は徐々に混濁していく。

 ――く、そ、がぁァ……

(川田、君……?)、
 途絶えようとしていたつかさの意識が急激に覚醒を始めた。
 意識が戻ると同時に襲ってきた痛みに呻き声を漏らしつつも、
つかさの思考は一つに集中していく。
(逃げ……てって、言わな、きゃ……)
 もう自分は駄目だと伝えなければ、この女から逃げてと言わなくては。
525Classical名無しさん:08/02/09 00:52 ID:8ELRL1mU
    
526Classical名無しさん:08/02/09 00:52 ID:/BDTG/B6
C円
527 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:52 ID:0MUq1BL.
 ――嘘!?

 それを見た瞬間、痛みも何もかも、全てが吹き飛んだ。
 女はもう、はつかさを見ていない。
つかさの後ろ――川田を見ている。

 ――殺す気だ。この女は川田を殺そうとしている。

(駄目……それだけは、絶対に……駄目……)
 逃げてと叫ばなければならないと思うが、口は血で溢れかえっていて、言葉を出せない。
 口から血を吐き出そうと、体に力を入れると、意識が吹き飛びかけるほどの痛みが襲ってきて、口から血が溢れ出た。
 絶望がつかさの胸の壁を這い上がる。

 女が、腰を落とした。

 つかさの胸に怒りという名の灼熱が生まれた。
(向けないで……あなたはそれを、川田君には……向けないでっ!!)
 その怒りは、立ち寄った民家で、みゆきが「高良みゆき」としてではなく「単なる弱者」として殺されたと知ったときに感じたものよりも、
 さらに大きかった。
 一動作のたびに、痛みが走り、涙がこぼれ出る。
 それでもつかさは、動かなくなりつつある指を動かし、必死に目的の物を探る。
 幸いにも、女はまったくといっていいほどつかさには、注意を向けていない。
 つかさの後ろにいる川田に、覚悟に、ヒナギクに、神経を集中させている。

 ――あった。

 血で濡れたつかさの指先が、目的のものを探り当てた。
 ピンク色の、取っ手部にディフォルメされた猫のイラストが描かれているツールナイフ。
 川田とホームセンターで見つけたナイフ。
 お守りのつもりだった。人を実際に傷つけることなんて、できるとは思えなかったから。
528Classical名無しさん:08/02/09 00:53 ID:4buEG186
支援支援
529Classical名無しさん:08/02/09 00:53 ID:eHaMa2sI
                          
530 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:53 ID:0MUq1BL.
 でも今は――
(守らなきゃ……私が……今は、私、が……)
 ずっと守ってもらった。支えてもらった。
 だから今度は、自分の番だ。
 焦点の定まらないつかさの瞳が、鋭く細められた。
 女の掌は傷ついていて、皮膚が赤く染まっている。
(動……いて……)
 指の感覚がほとんどない。握っているという感覚がどんどん薄らいでいく。
 力が抜けてい――
 突如、女から殺気が炸裂した。槍の後方部分が発光。

 ――駄目! 

 その瞬間、柊つかさという少女の命が煌いた。
心から吹き上がった力の激流が、つかさの腕に伝わり、指先に到達。
「っあ!」
 言葉にならぬつかさの叫びとともに、ナイフの刃が闇の中で閃いた。
 指先から衝突の衝撃がつたわり、ナイフがつかさの手から吹き飛んだ。
 がくん、と下方に体が落ちる感覚とさらに違う臓器が抉られる痛み。
 すでに限界に達していたつかさの意識は、彼方へと吹き飛んでいく。
 しかし、意識が闇に多い尽くされる瞬間、つかさは確かに見た。
 女の、雷にでも打たれたかのように凍りついた表情を。

 ――やった。

 つかさは、闇に意識を委ねた。




 ――まさか、そんな……
531Classical名無しさん:08/02/09 00:54 ID:4buEG186
さらに支援
532Classical名無しさん:08/02/09 00:54 ID:/BDTG/B6
  支援
C援助
533Classical名無しさん:08/02/09 00:54 ID:yJMJWrUQ
――く、そ、がぁァ……
534 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:54 ID:0MUq1BL.
 斗貴子は狼狽していた。
 明らかになんの訓練も受けてない、ただの少女に。
 気弱そうで、誰かに庇護されなくては生きられそうになかった少女に……。
 反射的に、槍を分解し、地面に向かって突進して自爆するのを防ぎつつも、
 斗貴子の心は驚きで満たされ、思考は停止していた。
 戦士としての本能が斗貴子の心に怜悧さをもたらし、思考を回復させるまでの一瞬、

 その一瞬で状況は逆転していた。
 
 盾としていた少女は坊主頭の腕の中にあり、
「よくも……。よくもつかさをっっ!!」
 上空から声の端々にまで殺意が満ち溢れた声が斗貴子の耳を打つ。
 視線を上向きにする。
赤髪の女が憤怒で燃える視線を叩きつけてくる。
(舐めるなっ!)
 バルキリー・スカートのことは誰よりも知り尽くしている。
 その軌道も速さも、知り尽くして――
 
 戦慄が全身を貫き、斗貴子の体の全細胞が、最大警戒警報を叫んだ。

(しまっ!?)
 女に気を取られて、いの一番に警戒すべき人間のことを、失念していた。
 超速で葉隠覚悟が突進してくる。
咄嗟に手首のない右腕を上げられたのは僥倖と言ってよかった。
「ぶち砕くっ!!」
 衝撃。右腕と鼻から激痛が走り、吹き飛ばされた。
 左手でなんとか後頭部をカバーする。浮遊感の後は、お決まりの後頭部から顔面へと突き抜ける衝撃。
 体が地面を滑っていく。何かに激突してようやく止まった。
 右腕が砕けて鼻にめり込んでいる。
 無理矢理引き離すと、鼻と腕から走った痛みが高圧電流となって脳の神経を焼き、 
 にちゃりという音とともに、粘性のある液体が、服と鼻の間に橋をかけた。
535 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:55 ID:0MUq1BL.
(立たな、ければ……)
 ストライキを叫ぶ足に、刃を振り下ろし、斗貴子は体を持ち上げる。
 歪む視界の中で赤髪の女が突進してくる。
「死ねっっ!!」
 女の声が斗貴子の鼓膜を震わせた。
 4つの鎌が4つの軌道を描いて斗貴子を狙う。
(こ、の……)
 軌道も荒ければ、精度も足りない鎌の動き。
 だが、体の動きが鈍い。鼻が砕けているせいで呼吸がほとんどできない。
 斗貴子の顔が恐怖で歪んだ。
 葉隠覚悟が、女の攻撃を縫うようにして接近してきている。
 その眼差しには、遠慮呵責のない殺意があった。
(こいつの攻撃だけは……)
 バルキリー・スカート4刃うち致命傷になりかねない2刃のみを回避。
 残り2刃の防御を放棄し、周囲の把握を優先。
(ぐぁっ!)
 右肩から胸にかけて、さらに刹那遅れて脇腹から、焼け付くような痛み。
 漏れでそうになる呻き声すら体内に押し込め、体内に残留する全てのエネルギーを石突から放出。
 間一髪で覚悟の直蹴りを緊急回避。
 宙を飛んだ斗貴子の体が、目的の建物に迫る。斗貴子は息を止めた。
 突き刺すような痛みと全身に打ち据えられたような衝撃。
 
 ドアをぶち破り、斗貴子の体は、駅に隣接する名も知らぬ店の床に叩きつけられた。
 
 全身から走った痛みを気付けとして、意識を引き摺り戻す。
 立ち上がると、血が派手に飛び散った。
 大分前にガス栓を捻っておいたのだから、かなりのガスが充満しているはずだが、鼻が砕けているせいで、よく分からない。
 店の間取りは既に把握している。斗貴子は後ろも見ずに、足を無理矢理動かして奥へと走り込んだ。
 後方で、店内に誰かが駆け込み、立ち止まる気配。
536Classical名無しさん:08/02/09 00:55 ID:/BDTG/B6
  支援
  支援
  支援
  支援
  支援
  支援
537Classical名無しさん:08/02/09 00:55 ID:4buEG186
支援だ
538Classical名無しさん:08/02/09 00:56 ID:yJMJWrUQ
539Classical名無しさん:08/02/09 00:56 ID:8ELRL1mU
       
540Classical名無しさん:08/02/09 00:56 ID:i9G7k25.
うぃんうぃんうぃんうぃんうぃん
541Classical名無しさん:08/02/09 00:56 ID:yJMJWrUQ
もう一丁
542 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:56 ID:0MUq1BL.
(さすがに気付くか……)
 もっとも、そのために準備をしておいたのだから、そうしてもらわなくて困る。
 止まらずに、店の裏口へといっさんに駆ける。
 裏口から道路へ飛び出し、見つけておいたターボライターに着火。

 ――ブッ飛べ。

 ライター建物の中へ放り込む。
 爆熱と衝撃波を背中に感じながら、斗貴子は闇で満たされた路地をひた走った。
 しばらく走って追手がないことを確認し、斗貴子は足を止めた。
 というよりも、止めざるをえなくなった。
 目が眩む。物体が二つにも、三つにも見える。
(クソっ……胸の方は思ったより……深い)
 シャツを脱いで切り裂き、胸の傷を止血する。脇腹の傷も浅くはない。
 片手でやらなくてはならいので、相変わらずやたらと時間がかかる。
 鼻と右手の怪我は激しく自己主張をし、出血を無視して走ってきたせいか、酷くめまいがする。
 それでも斗貴子は、応急処置をすませると槍を杖代わりに、歩き始める。
 その体から血が流れ落ち、地面に小さな血溜まりを作っていく。
(病院に戻って、ちゃんと止血しなければ……)
 4人組の移動ルートの把握というアドバンテージを生かし、下準備まで行って、完璧なタイミングで奇襲をかけたにもかかわらず、
  殺せたのは1人。その上、猛烈な反撃をくらって見事に重症。
 今まで追ってきた傷に加えて、顔は大穴でも開けられたように痛み、脇腹と胸の裂傷は熱を伴って激しく痛む。
 体内のエネルギーは掛け値なしに残量ゼロ。
 それでも斗貴子の顔には、歪み切った笑みがあった。
「フフ……ハハハ……」
 一度声が出てしまうともう止まらない。
 声の振動で痛みが増すのもかまわず、血まみれの姿で斗貴子は嗤う。
 目障りだったあの女を殺すことができた。あの偽善者から奪ってやった。
 自分は、地獄の機械に翻弄される存在ではない。
 人の運命を翻弄し、弄ぶ側に立っている。
543Classical名無しさん:08/02/09 00:56 ID:eHaMa2sI
                           
544Classical名無しさん:08/02/09 00:57 ID:/BDTG/B6
  支      援
545Classical名無しさん:08/02/09 00:57 ID:yJMJWrUQ
もう一丁  
546Classical名無しさん:08/02/09 00:57 ID:4buEG186
支援支援さらに支援
547 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:57 ID:0MUq1BL.
(それにしても、傑作だった)
 赤髪の女の、坊主頭の、偽善者野郎の怒りと絶望で歪んだ顔、顔、顔。

 ――ざまをみろ。
 
「フフ……はハハははは、は。は、アハハッハ!! ハーハッツハッ!!」
 
 厚く覆われた真っ黒な空に向かい、斗貴子は狂声を響かせた。

【F-4 1日目 夜中】
【津村斗貴子@武装錬金】
[状態]:しろがね化、心臓代わりに核鉄、精神崩壊、判断力低下(若干回復)
    全身大火傷、頭部に刺し傷 (核鉄としろがねの力で回復中)。衝撃により、骨にヒビ。簡単な治療済み。
    鼻骨粉砕骨折、右手首消失、右手複雑骨折、胸部骨折、右肩から胸にかけたて深い裂傷(簡単な止血済)腹部に裂傷
[装備]:サンライトハート@武装錬金
[道具]:支給品一式×2 (カンテラのみ-1)
[思考・状況]
基本:最後の一人になり、優勝者の褒美としてカズキを蘇らせ、二人きりで暮らす『夢』を叶える。
1:病院に戻って止血をする。
2:可能ならば、なんらかの手段で戦力の増強を図る。
3:強者との戦闘は極力避け、弱者、自動人形を積極的に殺す。
4:アカギ、吉良、勇次郎、軍服の男(暗闇大使)は最終的に必ず殺す。アカギは特に自分の手で必ず殺す。
※数時間の休息をとりました。しろがねの血、核金の効果による回復が見込めます
 それがどの程度のものなのかは、次の書き手さんに一任いたします
548Classical名無しさん:08/02/09 00:57 ID:eHaMa2sI
                                 
549Classical名無しさん:08/02/09 00:58 ID:/BDTG/B6
支     援
 支   援
  支 援
   支援
550 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:58 ID:0MUq1BL.


 ――かさ

 呼ぶ声がする。
(もう、いいよ……)
 このまま眠らせて欲しい。
 もう、頑張りすぎるくらい頑張った。
 今ですら、おなかの辺りが痛くて痛くて、たまらないのに、起きたらもっと、酷い苦しみがまっている気がする。
 それなのに、

 ――つ……さん。しっかりしろ。

 ――かさ、目を開けて

 いくつもの声が、

 ――さん、起きるんだ

 誰かの頬を叩く手が、握り締められた左手から伝わってくる温もりが、つかさを現実へと引き摺り戻そうとする。
 満足なのに。もう十分なのに。
 テスト勉強の計画でさえ、最後までやりきったことがない自分が、怖くて歯医者をしょっちゅうサボってしまう自分が、
 あんなに頑張れた。大事な人を守ることができた。
 だからもう、いいのに……。

「死なないで……。つかさ……お願いだから死なないで……。私なんかのせいで、しなないで……」

 ――え?
551Classical名無しさん:08/02/09 00:59 ID:yJMJWrUQ
頑張れ
552 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 00:59 ID:0MUq1BL.
 意識が浮上していく。
「ごめんなさい、私が……。私の、せいで……」
 頬に何かがポタポタと落ちる感覚が伝わってくる。
(違うよ、ヒナちゃん……。そんなこと言っちゃ……。駄目だよ)
 そんなこと全然ないって、言わなければ。
 感謝してるって、ずっと一緒にいてくれてありがとうって、励ましてくれて、叱ってくれて、
 ありがとうって、言わなきゃ――
 瞼を開ける。それだけのことのために、とてつもない力と集中が必要だった。
 ぼんやりとした視界の中には、顔を歪め、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになったヒナギクの顔があった。
(ヒナちゃん……怪我……してる)
 髪に少し焦げているところがあって、顔や手に真新しい切り傷がある。
 つかさは、ほとんど持ち上がらない手を、何とかあげようとする。
 ヒナギクに手が届いた所で、何がどうできるというわけではないけれど、それでもそうせずには、いられなかった。
「……ちゃ……どう、し……」
 喋ろうとすると胸の痛みと体の痺れが酷くなって、呼吸ができなくなる。
 何も言えないのが、もどかしくてたまらない。
「バカ……。こんなの、これくらい、何でも……。つかさの方が、ずっと……」
 ヒナギクが両手で、つかさの手を握り締めた。その大きな瞳からこぼれた涙が、つかさの頬をつたっていく。
「頑張るんだ! つかささん」
 目線だけ動かすと、立ち上がって周囲を警戒している覚悟の背中が映った。
 大きな、頼りになる背中。
 この背中や、凛とした立ち振る舞いに、どれだけ元気をもらったことか。
「葉隠の言うとおりだぜ、つかささん、さっき看て見たが、それほど大した傷じゃない。
今、核鉄で治療してるからな……。後は、気の持ち方一つだ」
 川田の優しい声。
(やっぱり……)
 つかさの左手は川田の手の中にあった。
あの暖かい手、闇の中でもずっと感じていた手は、彼のものだったのだ。
553Classical名無しさん:08/02/09 01:00 ID:/BDTG/B6
支援
554Classical名無しさん:08/02/09 01:00 ID:eHaMa2sI
                                   
555 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:00 ID:0MUq1BL.
 彼に向かってなんとか微笑もうとするが、上手く行かない、唇がちゃんと笑みの形をとってくれない。
(何で、分かっちゃうのかな……?)
 好きな人のことは何でも分かるっていうけど本当なんだ、なんて、場違いな考えが頭に浮かぶ。

 ――やっぱり死ぬんだ、私。

 そう認識した瞬間、恐怖が一瞬でつかさの心を埋め尽くした。
 怖い。凄く怖い。やりたいことも、やってないことも、たくさんある。
 お父さんにもお母さんにも、お姉ちゃん達にも、言いたいことが、たくさんある。
(ごめんね、お姉ちゃん……。ごめんなさい、お父さん、お母さん、まつりお姉ちゃん、いのりお姉ちゃん……)
 一言のありがとうも、一言のごめんなさいも言えない。
 何回でも言いたいのに、言うことが出来ない。
 涙が溢れて視界がぼやけた。
 
 突然、ぼやけた視界が一瞬だけ、真っ暗になった。
 
 心臓を氷の手で鷲づかみにされるような恐怖がつかさを襲う。
 
 ――時間が無い。

 早く言わなければ、残さなければならない言葉を、遺さなければ。
「……ナちゃん、かくご……君、川田、くん……」
 荒い息と共に、つかさは必死で言葉を搾り出す。
「何? つかさ」
 ヒナギクが
「どうしたんだ? つかささん」
 覚悟が、
「どうしたんだ?」
 川田が――
 一斉に言い、顔を寄せてくる。
556Classical名無しさん:08/02/09 01:00 ID:yJMJWrUQ
  
557Classical名無しさん:08/02/09 01:00 ID:i9G7k25.
りゅうほう「アルターの意味を教えてやろう!!「支援」という意味だ!!!」
558Classical名無しさん:08/02/09 01:00 ID:/BDTG/B6
援 支 援 支
559Classical名無しさん:08/02/09 01:00 ID:yJMJWrUQ
   
560Classical名無しさん:08/02/09 01:00 ID:B8q72e5I
生きろ!! 支援
561 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:01 ID:0MUq1BL.
 こんな時なのに、噴出しそうになった。
 胸から響いてくる鈍痛に顔をゆがめつつも、つかさは少しだけ笑った。
 この人たちに会えてよかった。みんなといると、どんな時でも、自然と笑えるから。
「……おねえ、ちゃんに……会ったら……」
「駄目よ! そんなことは、自分でいいなさい! 私はそんなこと、頼まれたって、やらないだからっ!」
 涙声でヒナギクが叫ぶ。
「ヒナギクさん……」
 宥めるような声と共に、その肩に覚悟の手がおかれた。
 覚悟の顔にも、苦渋の表情がありありと表れていた。
 小さな子供が嫌々をするように、ヒナギクが首を何度も振る。
「……分かった」
 川田がゆっくりと頷いた。
 穏やかな表情とは裏腹に、川田が痛いほど自分の手を握り締めるのを、つかさは感じた。
 彼の悲しみが、怒りが、やるせなさが伝わってくる。
 込められるだけの力を込めて、握り返しながら、
「……ずっと大好きって……つた……」
 もっと伝えたいことは一杯あるのに、口がまともに動いてくれない。
 それだけしか、言えない。
 つかさの喉の奥から熱いものが込み上げてくる。
 ゴボっという嫌な音と共に、つかさの口から血があふれた。
「つかさっ!」
 ヒナギクが悲鳴のような声をあげ、覚悟の唇から血がすっと流れた。
 険しい顔をした川田が、気道を確保するためにつかさの顔に手をかける。
(嫌だな……)
 川田の処置を受けながら、つかさは心の中で呟く。
 みんなを見ているのが、辛い。
 あんなに仲良くしてもらったのに、あんなに助けてもらったのに、みんなに辛い思いをさせるなんて、嫌だ。
 せめて、今、心の中にあるものを遺していかなければ、死んでも死に切れない。
 つかさは、焦点が合わなくなりつつある視線をヒナギクに向けた。
562Classical名無しさん:08/02/09 01:02 ID:/BDTG/B6
支援支援支援支援支援
支援支援支援
支援支援支援支援
563Classical名無しさん:08/02/09 01:02 ID:aDBIOasg
支援……支援……!!
564Classical名無しさん:08/02/09 01:02 ID:yJMJWrUQ
ぐほっ     
565 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:02 ID:0MUq1BL.
 始めて出会った時、すっごく綺麗な子だなあって思った。ちょっと、引け目を感じるくらいに。
 頭もすごくいいんだって、すぐに分かった。
 でも、あのマンションで一緒に料理を作った時に思い切って、「ヒナちゃんって呼んでいい?」って聞いたら、
 驚いた顔をしたけど、すぐに笑って「いいわよ」って言ってくれた。
 その顔が嬉しそうだったのがなんだか意外で、とっても嬉しくて、
 ヒナギクのことをすぐに好きになった。
 本郷の死に耐え切れずに、都合のいい世界に逃げ込もうとした時、「ちゃんと見なきゃダメだ」って叱ってくれた。
 その後もずっと心配して、見ていてくれた。
 歩いてる時も、放送の後も、ホームセンターに行ったときも……。
 いつだって心配してくれた。姉のことを疑いかけた時に、大丈夫だって言ってくれた。
 嫌いな人なんているんだろうか? なんて思ってしまうくらい、桂ヒナギクという女の子は、素敵な女の子だと思う。
 
 ――でも、どうしてだろう。

"帰りを待つ人がいるなんて、覚悟くんは幸せものねぇ"

 ヒナギクには、どこか自分を大事にしない所があると思っていたけれど、あの言葉を聞いた時、
 独りで泣いている小さなヒナギクの姿が、見えた気がしたのだ。
 今も、見える。
 分からない。きっとたくさんの人がヒナギクの周りにはいて、きっとみんな、ヒナギクのことが大好きなはずなのに。
 だからあの時、音の正体を確かめるために、ヒナギクが覚悟と一緒に出て行こうとした時、
「待ってるから」って言ったのだ。
 ちゃんと伝わっているだろうか? どうか、伝わっていますように。
 悔しいけど、本当に悔しいけど、もう自分にはそれを伝えることはできないから。
 そんなことも全部ひっくるめて、もっともっとヒナギクと話したかった。仲良くなりたかった。
 でも口がもう動かないから。伝えられる言葉は少ないから、だから――
 残り少ない力で唇を動かすと、ヒナギクが泣きはらした目でこっちを見てくる。
「泣か、ないで……」
566Classical名無しさん:08/02/09 01:03 ID:yJMJWrUQ
泣くな      
567Classical名無しさん:08/02/09 01:04 ID:aDBIOasg
ごめん、俺は泣いた
支援
568 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:04 ID:0MUq1BL.
 ヒナギクの顔が崩れた。顔を覆って嗚咽を漏らしている。
 これ以上、何も言ってあげられないのが悲しい。
 ヒナギクには、泣かないで、友達に囲まれて笑っていて欲しいのに……。

 本当に、息が苦しくなってきた。
 時間が、なくなってきている。

「はがくれ……君」
「何だろうか?」
 温かみのある真っ直ぐな声。
 つかさは覚悟をしげしげと見つめた。
 初対面での葉隠覚悟の印象は、一言で言えば超人だった。
 力が強いとか、足が速いとか、そういうことじゃ――勿論それもあるけど――ない。
 彼の凄さは意志の強さ。
 夏休みの宿題一つ、自分の力でやったことがない自分には想像もつかないほどの意志の強さ。
 彼は、ありとあらゆる心の弱さを跳ね返してしまう心の強さがある。
 鉄の理性と鋼の精神を持ち、覚悟は何があっても揺らいだりしない人なんだと思った。

 ――そんなことは全然なかった。

 信じられないほどの修行で身に着けた精神の鎧の下には、温もりと優しさがあった。
 本当は、葉隠覚悟という男の子は、すごく情熱的で人の何倍も優しい男の子なんだと思う。
 その感情を表す手段を持っていない、というか、慣れていないだけで……。
 人と上手く付き合えないのを気にしているとか、そんな普通っぽい部分もあって。
「……あり、がとう……」
 覚悟の顔に痛みが走ったのが分かった。
 きっと覚悟は自分を責めている。無理をしなければいいのにな、と思う。
 十分すぎるほど、彼は頑張って、みなを守ってくれたのだから。

 つかさは、川田に視線を向けた。もうほとんど目が見えない。
 でも、握られた指先から心が伝わってくるから、平気だった。
569Classical名無しさん:08/02/09 01:04 ID:/BDTG/B6
支援
570 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:04 ID:0MUq1BL.
「かわだ……くん」
 彼の名前を呼んだら、心にあった言葉が消えてしまった。
(変、だな……)
 思い出すことも、言いたいこともたくさんあるはずなのに、言葉が出てこない。
 上手く考えが、まとまらない。
 だから、指先に力を入れる。彼が握り返してくれる。
 それだけで胸が一杯になってしまう。
(嬉しかったな……。男の子に抱きしめてもらったのなんて、始めて……)
 男の子の肌があんなに暖かいなんて、男の子の手があんなに優しいなんて、知らなかった。
 抱きしめてもらった後、心がどうしようもなくなってしまったから、キスしてしまった。

 その後、ほんの少し夢をみた。
 
 彼と一緒に学校へ通う夢を。
 一緒に同じ時を過ごして、楽しいことも、悲しいことも、悩みも、分かち合っていけたらいいなって、考えてしまった。
 川田はしっかりしているから、きっと姉のかがみとも気が会うだろうけど、
 もし、かがみが川田のことを好きになっちゃったらどうしようとか、
 彼がうちの神社の神主さんになってくれたらお父さんも喜ぶかも、なんてバカなことも考えた。
 本当に夢の話、子供が夢見るような、ありえない話。
 でも、そうなったら、どんなによかっただろうって今でも思う。
 もっと川田のために、何かしてあげたかった。してあげればよかった。
 こんな風に言葉すら満足に出な――

 口が、動かない。

(嘘……まっ……て……ま、だ……)
 息がもうほとんどできない。何も見えない。体のほとんどがなくなってしまったようだ。
 彼の手に握られている指先の感覚すら、どんどんなくなっていく。彼が遠くなっていく。
 命のカケラにすがりつくように、つかさは指先に力を込めた。
 その時、耳に誰かの息がかかった。
571Classical名無しさん:08/02/09 01:04 ID:eHaMa2sI
                          
572 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:05 ID:0MUq1BL.
「俺は多分……。君と会うために、ここへ来たんだと思う」
 耳元で声がした。あの人の声だ。
「あのマンションの部屋で始めて会った時からずっと――ずっと、君が好きだった」
 つかさの心に火が灯った。
 凍てついていく体に灯った火は眩い輝きを放ち、刹那の間、つかさの体に力を蘇らせた。
 渾身の力を振り絞ってつかさは瞼を押し上げた。
 彼の顔が見えた。静かに微笑む彼の顔が。

 ――大好きな人の笑顔を、息のかかる距離で見られるって、こんなに素敵なことだったんだ。

(なんていい気持ち)
 ふっと、つかさの体から力が抜けた。心に灯った火が、急激に輝きを失っていく。
 体の全てから力が抜け、意識が底知れぬ深遠へと落下していく。

 ――お願い。

 魂の全てをかけて、全身全霊を込めてつかさは祈る。
 お願いだから、もう一度だけ動いて、私の体。
 私が私を手放してしまう前に、私の想いを伝えさせて。








「…………すき」


573Classical名無しさん:08/02/09 01:05 ID:/BDTG/B6
支∵∴援
574Classical名無しさん:08/02/09 01:06 ID:eHaMa2sI
                        
575Classical名無しさん:08/02/09 01:06 ID:8ELRL1mU
これは涙ではない!熱き、支援だ!
576Classical名無しさん:08/02/09 01:06 ID:yJMJWrUQ
シエンシアーノ
577Classical名無しさん:08/02/09 01:07 ID:/BDTG/B6
∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
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578 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:07 ID:0MUq1BL.


 少女が最後に震わせた大気が、夜風にさらわれていく。
 柊つかさの顔には柔らかな笑みがあった。やり遂げたというような、安らかな微笑が浮かんでいた。
 そう、彼女は守り抜いたのだ。命の限りをつくして想い人を守りきったのだ。
 
 ――それに比べて、なんと己の不甲斐ないことか。

 ヒナギクの嗚咽が響く中、拳を握り締め、覚悟は立ち尽くしていた。
 川田が、つかさの遺骸を抱いて立ち上がった。
「ヒナギクさん、葉隠、悪いが……」
 覚悟は黙って首を振った。
 すまん、というように頭を下げ、川田は何処かへと消えていく。
 独りで埋葬をすませたいという川田の気持ちは、痛いほど分かる。
(俺の……せいだ)
 覚悟の腕の筋肉が盛り上がり、奥歯が砕けんばかりに噛み締められる。
 葉隠覚悟は苦悩する。

 ――何故守れなかった。

"それは分からん。拉致するだけなら奇襲で事足りる。 ラオウを拉致してきたからと言ってラオウ以上の戦闘力があるとは言えん"

 夕刻、さかしらに自分がつかさ達に言った言葉を思い出した瞬間、憤激の炎が全身を焼き焦がした。
(何たる浅はかさ! 何たる愚鈍!)
 奇襲をかけてきた時点で、あの女は全ての準備を終えていた。
 何故それに気付けなかったのか。何故、周囲を探索しておかなかったのか。
 ガスをつかった先ほどの仕掛け。
 幸いにもすぐに店のとびだしたゆえ、二人とも無事ですんだが、一歩対応を謝れば、ヒナギクと己のどちらかが死んでいた。
579Classical名無しさん:08/02/09 01:08 ID:pzB4yDYg
支援は支援であることを吼えたりせぬ!
580Classical名無しさん:08/02/09 01:08 ID:/BDTG/B6
しえんC\
581 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:08 ID:0MUq1BL.
(零に、頼りすぎていたのか……)
 零がいれば、その場にいて周囲を探索できたはず。
 まだ零が近くにいる気分でいたのか。知らず知らずのうちに、心のどこかでまだ零に頼っていたのか。
 覚悟の顔に刻まれた皺が陰影を増した。
(それよりまず、何より……)

 ――何故あの時、あの場で、女を倒してしまわなかったのか。

 それが己には、できたというのに。そうすればつかさは、死ななかったというのに。
 遺言ではなく友を守ると決意したなら、何故あの時女を倒してしまわなかったのか。
(半端ものがっっ!!)
 心の何処かで、仲間の無事を確保した後で遺言を果たそう、とでも思っていたのか。

 ――馬鹿奴!

 それはいつだ? いつの話だ?
 それまでにあの女が、何人、他の参加者を手にかけるかもしれぬというのに。
 あの女が手にかけるのは、いまだ見つからぬコナン少年かもしれぬ、吉良吉影かもしれぬ
 それなのに何故、討ってしまわなかったのか。
  
 覚悟の思考はいわば繰言であった。
 いくら覚悟であろうと、視力が及ばない範囲は見えないし、斗貴子の隠密行動は覚悟の関知能力を上回っていた。
 一度目の遭遇の際、斗貴子を追ったとしても、斗貴子が逃げに徹すればそれなりの手間と労力を要したであろう。
 そうなれば、つかさ達は駅に辿り着き、参加者が利用する可能性の高い駅という施設に、
 覚悟を待つために、とどまり続けなければならなくっただろう。
 そしてその間に、つかさ達に、殺し合いに加担する強者が襲い掛からなかったという保証は、無い。
582Classical名無しさん:08/02/09 01:09 ID:/BDTG/B6
(支援+支援)÷2=支援
583Classical名無しさん:08/02/09 01:09 ID:8ELRL1mU
  
584 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:09 ID:0MUq1BL.
――分かっている。

 覚悟の頭の冷静な部分が告げるその低dの内容は、覚悟とて分かっている。
 あの時、それらを考慮した上で、まっすぐに駅へと向かう道を選択したのだから。
 けれど、悔恨の風は消えない。傷の女への、そして己への怒りの炎は消えない。
 思考の陰にあったであろう、ルイズの遺言も仲間を守ることも、どちらも果たしたいという浅ましい思いが、どうしても許せない――

「ありがとう」

 振り返った覚悟の瞳に映ったのは、真っ赤な目をしたヒナギクの姿。
「つかさは、覚悟君に感謝してたわ……。それじゃ、不満?」
「ヒナギクさん……」
 ヒナギクが苦しげに笑った。
 本当につらそうに顔をゆがめ、握りこぶしでぐいぐいと目をこすりながら、
「覚悟君、自分を責めるのは、後にしましょう。
今は、それより先にやらなきゃならいことがあるもの……。違うかしら?」
 ヒナギクとて、自分を責めていることに関しては、覚悟に引けを取らないはずだ。
 けれど彼女は、つかさの最後の言葉を無駄にしないために、泣かないのだ。
(ヒナギクさんの、言うとおりだ)
 覚悟は無言で首肯した。
 後悔は後でいくらでもすればよい。
 死んでから、あの世で再会した時に、土下座でも切腹でもして詫びればいい。
「さて、どれから手をつけたものかしらね……」
 ヒナギクが独白じみた言葉を吐き出した。
「あの女を見つけて、仇を討ちたいのは、やまやまだけど……」
 ヒナギクの声が震えた。
 赤髪が逆立ち、殺意がヒナギクの体から噴出して陽炎のように、ゆらゆらとゆらめく。
 その光景を見てみぬふりをしつつ、
「俺は……。つかささんのお姉さんの行方を確認したい。その方がきっとつかささんが……」
585Classical名無しさん:08/02/09 01:10 ID:/BDTG/B6
(支援×支援)÷支援=支援
586Classical名無しさん:08/02/09 01:10 ID:aDBIOasg
つかさ……支援……
587 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:10 ID:0MUq1BL.
「喜ぶ、わね。きっと……」
 殺気を消し、寂しげな笑みをヒナギクが浮かべる。
「とはいえ、全ては川田の意見を聞いてからだ。俺は、川田の意見を尊重したい」
 ヒナギクが無言で同意を示した。
(もし、川田が復讐を望むのなら……)

 ――その復讐、望む所。

 もはや、覚悟の心の中からは、女を救いたいという気持ちは、消え去っていた。
 友を奪われた怒りの炎は、零式ですら消せぬ。消す気も無い。
 乱れた心で因果が撃てぬのら、拳で粉砕してやるだけのこと。

「あっ……」

 ヒナギクが短く声を上げた。
(川田……)
 川田が、こちらに向かって歩いてくる。
 その手の中に、先ほどまで在った少女の姿は無い。
 ただ、その右手につかさが身につけていたリボンが、握られているだけだ。
「川田君……」
 沈痛な表情でヒナギクが口を開く。
「言える立場じゃないのかもしれないけど……わたし、つかさに一言お別れを言いいたいわ……。
その……。お墓の場所を――」
 まあ待て、というように川田は片手を挙げ、
「葉隠、お前の持ってる大砲を見せてくれ。チェックしておきてえ……」
 一瞬の沈黙の後、
「分かった」
 覚悟は川田に、立てかけてあったハルコンネンを手渡した。
 ハルコンネンの重量に川田は顔をしかめつつも、
「弾もだ」
 促されるままに、覚悟はディパックから弾丸を次々と取り出し、川田に渡していく。
588Classical名無しさん:08/02/09 01:11 ID:eHaMa2sI
                            
589 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:11 ID:0MUq1BL.
 弾丸の受け渡しが終わると、川田は二人から離れ、自分とつかさのディパックをひっくり返し始めた。
(……川田?)
 疑問という名の水滴が、心の水面に落ちるのを覚悟は感じた。
 別に川田の行動を、咎めるつもりは無い。
 つかさの残した持ち物を使うのは、川田が相応しいだろうと思う。
 仇を討つために、自身の戦力の拡充を図るのも大事だ。
「なるほどな……。こうすりゃ、肩に担げるようになるのか……。便利にできてやがる」
川田の呟きが風に乗って聞えてくる。
 何かが。何かが……引っかかる。
 川田が、つかさのディパックから何かを引っ張り出した。

 ――なんだ、あれは?

 荒廃した世界にすむ覚悟にとって、川田が取り出したジェット・スケボーは未知の物だった。
「川田……君?」
 ヒナギクの口調にも、不可解さが多量に混じっている。
 覚悟の心の水面にできた波紋の数が、その大きさと数を増していく。
 川田が振り返った。
「ヒナギクさん」
 平坦な、平坦すぎる声だった。
「何かしら?」
「つかささんの墓の場所なんだけどな……。悪いが、教えられねえ」
 空気が張り詰め始めるのを覚悟は感じた。
「……どうして?」
 喘ぐようにヒナギクが尋ねる。
「土に埋めて、損傷が酷くなっちまったら――」
 川田の手が素早く翻った。
「川田!?」
「川田君!?」
 覚悟とヒナギクの声が響き渡った。
590Classical名無しさん:08/02/09 01:11 ID:eHaMa2sI
                               
591Classical名無しさん:08/02/09 01:12 ID:aDBIOasg
支援
592Classical名無しさん:08/02/09 01:12 ID:/BDTG/B6

援支
援支援
支援支援
支援支援支
援支援支援支
援支援支援支援
593Classical名無しさん:08/02/09 01:12 ID:yJMJWrUQ
 
594 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:12 ID:0MUq1BL.

「生き返れなくなるかもしれないだろ?」

 銃口を覚悟に向けながら、川田省吾は、二人に向かってそう告げた。





「……川田……馬鹿な真似は、よせ……」
 しばらくたってから、覚悟はようやくそれだけを、喉の奥から搾り出した。
「馬鹿な真似、なんだろうがな……」
 自嘲気味に川田が笑う。
「これしか方法がないから、仕方ねえさ」
「川田君……あなた……。
こんなことをやる奴らが、本気で願いなんかかなえると、思ってるの?」
 信じられないというように目を見開きながら、ヒナギクが問いを発する。
「俺がこうして生き返っているという事実がある。
あの爺さん達が、人を生き返らせる力を持ってるのは、間違いない。後はまあ――」
 肩をすくめるような動作をし、
「体が欲しけりゃ全部やる。俺の命と引き換えにしてもいい、とでも頼めば、悪魔だって情の一つも見せるかもしれねえ」
「そんなわけ――」
 声を荒げて反論しようとしたヒナギクが、やにわに、その行為を中断した。
 ややあって、
「まさっ……。命と引きかえって……。川田君、あなた……」
 正解だというように、川田が頷く。
「あの爺さん達にとってデメリットが無い願いだ。聞いてくれる可能性は、低くないと思う」

 ――そういうことか。

 覚悟はようやく、川田の言葉の意味を悟る。
595Classical名無しさん:08/02/09 01:13 ID:/BDTG/B6
支援
596Classical名無しさん:08/02/09 01:14 ID:/BDTG/B6
支援支援支援支援支援支援支援支援支援
援支援支援支援支援支援支援支援支援支
支援支援支援支援支援支援支援支援支援
援支援支援支援支援支援支援支援支援支
支援支援支援支援支援支援支援支援支援
援支援支援支援支援支援支援支援支援支
支援支援支援支援支援支援支援支援支援
援支援支援支援支援支援支援支援支援支
支援支援支援支援支援支援支援支援支援
援支援支援支援支援支援支援支援支援支
支援支援支援支援支援支援支援支援支援
援支援支援支援支援支援支援支援支援支
支援支援支援支援支援支援支援支援支援
援支援支援支援支援支援支援支援支援支
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援支援支援支援支援支援支援支援支援支
支援支援支援支援支援支援支援支援支援
援支援支援支援支援支援支援支援支援支
支援支援支援支援支援支援支援支援支援
援支援支援支援支援支援支援支援支援支
支援支援支援支援支援支援支援支援支援
援支援支援支援支援支援支援支援支援支
支援支援支援支援支援支援支援支援支援
援支援支援支援支援支援支援支援支援支
597Classical名無しさん:08/02/09 01:14 ID:eHaMa2sI
                         
598 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:14 ID:0MUq1BL.
 老人達の目的は、殺し合いを経験した魂の収集と強者の選発。
 この殺し合いが最後まで続いた場合、59の死者と1人の生者という構図になる。
 おそらくこの時点で強化外骨格に収まる魂は59。
 つまり、強化外骨格に必要な魂の数は59ということ。
 ならば、1人分を抜いても、1人分を補給してやれば足りる。
 最後の1人に何をさせるつもりなのかは分からないが、強者を選び抜くことが目的なら、おそらく狙いはその肉体。
 そしてその肉体だけが必要なのだとすれば……。

 覚悟が思考する間も、ヒナギクと川田の問答は続く。
「60人全員の死体が必要だって言うかもしれないじゃない!」
「それも考えたが……。仕方ねえ。
人を生き返らせるためのリスクだ、そのくらいは負うべきだろ?」
「ていうか、それ、以前に……」
 口を何度か開け閉めし、首を左右に振った後、ヒナギクは意を決したように眦を吊り上げた。
「どうせ、川田君ことだから考えてるんでしょうけど……。それでも言わせてもらうわ!!
川田君……。あなた、こんなことをしてつかさが喜ぶと思うわけ!? つかさが悲しむとは思わないの!?」
「死人は喜びも悲しみもしないぜ、ヒナギクさん。そいつは、一度死んだ俺が一番よく知ってる」
 激発寸前のヒナギクとは対照的に、川田の言動はどこまでも淡々としていた。
「幸いっていっていいかどうか分からないが、つかささんの世界は、ヒナギクさんの世界ほどぶっ飛んでないらしいからな……。
おそらく、俺の世界と同じようなもんだろう。死んだ人間に意志が残るなんて、そんな奇跡はなさそうだ」
「いい加減にしてっ!!」
 ヒナギクは絶叫した。
「自分だけが悲しんでると思わないで!! 私だって悲しいわ! 
つかさが生き返ることができたら、どんなに素晴らしいかって思うわ! 覚悟君だってそうよ!
でも、どんなに状況が酷くても、理不尽でも、やっちゃいけないことってあるでしょっ!? どうしてそれが! どうして、それが……」
599Classical名無しさん:08/02/09 01:14 ID:B8q72e5I
まさかここに来て! 支援
600Classical名無しさん:08/02/09 01:14 ID:eHaMa2sI
                             
601 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:15 ID:0MUq1BL.
 ヒナギクの目から涙が溢れ出した。
 すると川田は、顔をわずかに歪ませながら、ポケットから何かを取り出し、ヒナギクに向かって放った。
 ゆるやかな放物線を描いたそれは、ヒナギクの手の中に納まった。
 ヒナギクの顔色が変わる。
 それは、川田が本郷から託された、村雨良のメモリーキューブ。
「それは、ヒナギクさんが、持っててくれ。俺にはもう、持つ資格がなくなっちまった」
「何よ……それ……」
 ヒナギクの足から力が抜けた。
「いったじゃない! 本郷さんの頼みをやり遂げる覚悟はできてるって!あれは嘘だったの!?」
「……悪いな、ヒナギクさん。優先順位ってやつさ。
本郷さんにも悪いとは思うんだが……。ハハっ……。地獄であったら土下座でもしないといけねえな」
「ふざけないで……。こんな、もの……。押し付けないで……。
どうして、つかさも、川田君も、自分でやろうと、しな……」
 もう後は言葉にならなかった。
 泣きながら地面に座り込むヒナギクに代わり、覚悟が一歩前に出た。
「川田……。お前が、悪鬼の側に回るというのなら、俺は、お前を……」
 覚悟の耳に、ため息が聞えた。
「お前やヒナギクさんとはやり合いたくねえが……。仕方ねえか」
 覚悟の胸に灼熱が生まれた。
「何故だ? あれほど、この状況に、そしてあの老人に怒りを燃やしていたお前が何故!? 
何故、お前が……」
 思慮深く、情にも厚い、川田省吾。
 便りになる仲間であり、この世界で出来た友の一人。
「つかささんを殺した女は、お前と同じく、この世界で理不尽に殺された想い人を生き返せようとして、凶行に走った。
理不尽な悪鬼の侵略によってつかささんを奪われたお前が、同じ悪鬼になってどうする!!」
602Classical名無しさん:08/02/09 01:15 ID:8ELRL1mU
     
603Classical名無しさん:08/02/09 01:15 ID:/BDTG/B6
川田君、まさかのマーダー化
604Classical名無しさん:08/02/09 01:16 ID:eHaMa2sI
                                   
605Classical名無しさん:08/02/09 01:17 ID:8ELRL1mU
    
606 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:17 ID:0MUq1BL.
奪われる痛みを、苦しみを、誰よりも知っているお前がっ!!」
 叫びながらも、覚悟は自分の心の壁に、絶望が這い上がるのを感じていた。

 ――とどかない。

 女の時と同じだ。哀しみに満ちた心には、言葉など――無力。
 絶望に打ちのめされながらも、覚悟は必死で言葉を紡ごうとする。
「川田っ! 聞いてくれ――」

「すまねえな、葉隠」

 川田と己の間に千尺の崖が開いたように、覚悟は感じた。
 すぐ側に姿が見えているのに、遥か遠くにいるように感じられる。
「葉隠……。出会ったのがこんな世界じゃなく、つかささんやヒナギクさんが生きてるような、平和で暖かい世界だったら、
俺はお前達といい友達でいたいと心底、思ったろうぜ……。いや、今もそう、思ってる……」
 ふいに、川田の表情が崩れた。
 激しい苦しみと悲しみが瞳に光彩となってあらわれ、顔に刻まれた皺が苦悩の深さを示す。
「俺もだ!」
 覚悟が、
「私もよ!」
 ヒナギクが、思いよとどけとばかりに、必死でいいつのる。
 川田の持つ、ウージーの銃口が震えた。
「ありがとよ……。けどな……」
 川田が片手で自分の胸を指差した。
「俺のつたない脳が、もう、決めちまったんだ。
 つかさは、俺を守ってくれた。あんな風になりながら、こんな俺を……。
 もう死んじまってる、俺をっ! だから俺は、この命を彼女のために使う!
 つかさのの命は、俺が取り戻す! つかさは必ず、彼女が生きるのにふさわしい世界に、俺が帰す!!」
「川田……頼むっ……」
607Classical名無しさん:08/02/09 01:18 ID:HUNERyDE
いや、川田なら・・・川田なら・・・!支援
608Classical名無しさん:08/02/09 01:18 ID:i9G7k25.
これ以上オレをドキドキさせるな

支援なんかしないぞ!絶対だぞ!
609Classical名無しさん:08/02/09 01:18 ID:eHaMa2sI
                              
610Classical名無しさん:08/02/09 01:18 ID:yJMJWrUQ
まだ変わる
611Classical名無しさん:08/02/09 01:18 ID:/BDTG/B6
kawata....まさか、これって……
612 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:18 ID:0MUq1BL.
 血を吐くような覚悟の叫びに、川田の唇が震えた。
「なあ、葉隠……俺は、思うんだが……」
 川田が笑みを浮かべた。深い悲しみを秘めた笑みを。
 川田の持つウージーの震えが――止まった。

「つくづく、人間ってのは……因果な生き物だぜ」

 心に吹き上がった激情に突き動かされ、覚悟は地を蹴った。
 ほとんど同時に、ウージーの銃口がヒナギクの方に向き、覚悟の注意がそちらに逸れる。
 その瞬間、川田の体が爆発的に加速した。
「なっ!?」
 驚きの声を上げる覚悟の視線の先、川田の背中が見る見るうちに遠ざかっていく。
 速い。覚悟の走力でも追いつけない
「川田君っ!!」
 ヒナギクが叫ぶ。
 川田は振り返らない。

「――つ!!」

 言葉にならぬ叫びと共に、覚悟は手を伸ばした。

 伸ばした手は、ただ、虚空を掴んだだけだった。

 心を繋いだ友は、闇の中へと――消えていった。
613Classical名無しさん:08/02/09 01:18 ID:8ELRL1mU
     
614Classical名無しさん:08/02/09 01:18 ID:aDBIOasg
川田……お前……支援……
615Classical名無しさん:08/02/09 01:19 ID:xMW6pCdk
kawadaかkawata・・・・そんな馬鹿な!!!
616Classical名無しさん:08/02/09 01:19 ID:eHaMa2sI
                               
617Classical名無しさん:08/02/09 01:19 ID:/BDTG/B6
kawata……やっぱ、違ったか……
618Classical名無しさん:08/02/09 01:20 ID:yJMJWrUQ
そうですね
619 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:20 ID:0MUq1BL.
【E-4 駅付近/1日目 夜中】
【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 顔と手に軽い火傷と軽い裂傷。事態の急変に混乱。
[装備] ボウガン@北斗の拳
[道具] 支給品一式。ボウガンの矢18@北斗の拳 、核鉄(バルキリースカート)@武装錬金  ZXのメモリーキューブ@仮面ライダーSPIRITS、
[思考・状況]
基本:ハヤテ達との合流
1:???
[備考]
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです
※桂ヒナギクのデイパック(不明支給品1〜3品)は【H-4 林】のどこかに落ちています
※ロードローラー@ジョジョの奇妙な冒険と捕獲網@グラップラー刃牙は【H-4 林】に落ちています
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました
※バルキリースカートが扱えるようになりました。しかし精密かつ高速な動きは出来ません。
 空中から地上に叩きつける戦い方をするつもりですが、足にかなりの負担がかかります。

【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に火傷(治療済み) 胸に火傷、腹部に軽い裂傷
   胴体部分に銃撃によるダメージ(治療済み) 頭部にダメージ、
    両腕の骨にひびあり、事態の急変に混乱。
[装備]:滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)
[道具]: 大阪名物ハリセンちょっぷ
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者を必ず倒し、彼らの持つ強化外骨格を破壊する。
1:???
620Classical名無しさん:08/02/09 01:20 ID:s7WYlYKo
うそだろ川田……! し、支援なんて……そんな
621Classical名無しさん:08/02/09 01:20 ID:eHaMa2sI
                           
622Classical名無しさん:08/02/09 01:21 ID:eHaMa2sI
                          
623Classical名無しさん:08/02/09 01:21 ID:8ELRL1mU
    
624Classical名無しさん:08/02/09 01:21 ID:yJMJWrUQ
ktkr
625Classical名無しさん:08/02/09 01:21 ID:/BDTG/B6
あぁ……支援
626Classical名無しさん:08/02/09 01:21 ID:bkLJX6mw
 
627Classical名無しさん:08/02/09 01:21 ID:qH9Ql6Co
嘘だろ、川田!?
628Classical名無しさん:08/02/09 01:22 ID:xMW6pCdk
宇粗朶嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼
629 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:22 ID:0MUq1BL.
【備考】
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※2人の主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
※4人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首輪には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている
※4人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論
※三村とかがみについて
三村の吹き込んだ留守禄の内容を共有しています。
かがみと三村に対してはニュートラルなら姿勢です。
とにかくトラブルがあって、三村がかがみを恨んでいると事実がある、
とだけ認識しています。
630Classical名無しさん:08/02/09 01:22 ID:i9G7k25.
あぁうそだぜ…
だが間抜けは見つかったようだぜ
631Classical名無しさん:08/02/09 01:23 ID:yJMJWrUQ
 
632Classical名無しさん:08/02/09 01:23 ID:8ELRL1mU
      
633Classical名無しさん:08/02/09 01:24 ID:pzB4yDYg
please not say KAWADA!
634Classical名無しさん:08/02/09 01:24 ID:s7WYlYKo
フッフッフッ……気づかないの、お兄ちゃん?
……気づきたくなかったよ
635Classical名無しさん:08/02/09 01:25 ID:/BDTG/B6
うわぁー……4人の考察じゃなくて2人だよ……
多分
636 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:25 ID:0MUq1BL.
【川田章吾@BATTLE ROYALE】
[状態] 健康
[装備] マイクロウージー(9ミリパラベラム弾13/32)、予備マガジン5、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
[道具] 支給品一式×3、チョココロネ(残り5つ)@らき☆すた ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン 、
    文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)
    ツールセット、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、缶詰やレトルトといった食料品。
    薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(四本消費) ツールナイフ  つかさのリボン
    ディパック(柊つかさに支給されていたもの)、ホーリーの制服@スクライド、
    ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾5発、劣化ウラン弾、残弾6発)@HELLSING
[思考・状況]
基本行動方針:最後の独りになってつかさを生き返らせる。
1:覚悟たちから遠ざかる。
2:覚悟やヒナギクとはなるべく闘いたくない。
参戦時期:原作で死亡した直後
[備考]
※桐山や杉村たちも自分と同じく原作世界死後からの参戦だと思っています
※首輪は川田が以前解除したものとは別のものです

【備考】
※つかさの遺体を、駅近くの肉屋の冷凍庫に保管しました。
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※2人の主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。
637 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:26 ID:0MUq1BL.
以上、投下完了いたしました。
深夜にもかかわらず長の支援、真にありがとうございました。
心よりお礼申し上げます。
638Classical名無しさん:08/02/09 01:27 ID:xMW6pCdk
つかさああああああああああああああああああああああああああ
kawadaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
639Classical名無しさん:08/02/09 01:28 ID:qH9Ql6Co
川田、この馬鹿野郎がぁぁぁぁぁぁぁ!
覚悟ぉ、何とかしてくれぇぇ!!
640Classical名無しさん:08/02/09 01:29 ID:pzB4yDYg
GJ! GJだ! だが、これは……こんなことになるとはッ!

ほのぼの四人組の終焉は予感していたが、まさか川田が!
あの原作での熱い展開を乗り越えた男の信念まで、変えちまうのか……

なんて苛酷なロワなんだッ!

再度言うぜ、GJ!
641Classical名無しさん:08/02/09 01:29 ID:8ELRL1mU
もうあれです。最高です。
ルイズの熱血死が欝を呼ぶ。
負の連鎖のデフレスパイラル。そして川田の悲しき決意。
全てがすごすぎる。
GJ!!!!!!
642Classical名無しさん:08/02/09 01:31 ID:qqGr8Jik
葉隠とヒナギクが残されちゃいましたね……
二人はどう行動にするのか……
643Classical名無しさん:08/02/09 01:32 ID:i9G7k25.
しかしバーローうぜぇwww
644Classical名無しさん:08/02/09 01:32 ID:bkLJX6mw
もはやGJというほか無いッ。
この名無し感服いたした!
645Classical名無しさん:08/02/09 01:33 ID:aDBIOasg
乙です……つかさああぁぁぁぁぁぁ!!
しかも、ここにきて川田がまさかのマーダー化……!!

対主催代表格だった四人組が、ついに崩壊……これは、今後が恐ろしすぎる
646Classical名無しさん:08/02/09 01:33 ID:JMUfuRmM
超大作、乙です!!!
斗貴子の鬼畜っぷりが腹立たしすぎて逆に清清しいくらいです。
この腐れ外道がどんな死に様を見せるのか、今から楽しみだ。
楽には死んで欲しくない。
あの世でルイズその他に謝れと言いたい。

アカギが半ツキとか言い出したときは思わずニヤっとしてしまいました。
阿佐田哲也さんの博打理論みたいだ。
しかしこいつは他人の運を吸い取りでもするのか?

ここで終わりなのかと思いきや、まさかの超展開。
つかさの死はもう悲しすぎてとても正視に耐えたもんじゃ無い。
そして川田。
もし川田の参戦時期が死亡直後でなかったら………。
それが悔やまれてならない。

こんな鬱な気分になったのは久々です。
本当にグッジョブでした。
647Classical名無しさん:08/02/09 01:33 ID:eHaMa2sI
投下乙。って何してんだお前(川田)ーーーッ!
もうね、TQNは地獄に送るしかないと思うのよ。もう許さんこの俺の嫁!
これで残り3人なのはハヤテだけか……。だいぶ減ったなぁ。
終盤に近いのにスタンス変更を違和感なく行ったのは見事!

つかさの死亡表記がないですよ。
あと、タイトルはどうしましょう?
648Classical名無しさん:08/02/09 01:34 ID:gwRU5i9E
くっ……熱血展開なのか鬱展開なのか最後まで見抜かせないとは……
まさかアカギと勇次郎でさえ前フリに過ぎないとはな!
GJという言葉を送るしかない……!
649Classical名無しさん:08/02/09 01:34 ID:s7WYlYKo
バーロ……貴様はどれだけ被害を拡大すれば気が済むのだ―――ッ!?
650Classical名無しさん:08/02/09 01:35 ID:T53bcGeg
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ



川田まさかのマーダー化、そして残されたヒナギクと覚悟はどう動くのか?
凄くGJな作品でした。
651Classical名無しさん:08/02/09 01:39 ID:/BDTG/B6
川田マーダー化……そして、TQN暴走止まらず、
相変わらず、赤木とバーロォが、脅威を振りまきまくりだなwwww

バーローの言葉さえなけりゃ、TQNの暴走は止まっていただろうによぉ。

GJだぜ
652Classical名無しさん:08/02/09 01:40 ID:xMW6pCdk
GJです。
あ〜あ川田が・・・ちくしょう。
ルイズの熱血死が逆に鬱を呼び込むとは・・・・なんて事だ・・・
そして川田がマーダー化、最後まで先の読めない展開GJでした!!
そして慶子さん涙目。
あどどうでも良いことですが
サンライト・ハートとか
バルキリー・スカートとか
・は入らないと思います。
653Classical名無しさん:08/02/09 01:45 ID:e0j5RNpI
投下乙。
うわぁぁぁ…………! ひどい、これは酷すぎる……(←褒め言葉)。
TQNは外道だし川田は堕ちるし、バーローの言葉は完全に裏目に出るし、なんというか、まさに最悪……。
しかもこれ、アカギの見立てが正しければ、このチームにとっての最悪の展開じゃないか?!
GJ。ホームセンターののどかな買い物が遥か昔のことのようだぜ……。
654Classical名無しさん:08/02/09 01:45 ID:7imwZGZE
四人は…揃って…ゲームから脱出する。
そんな風に考えていた時期が…俺にも…ありました…

ものっそい喪失感が…
655Classical名無しさん:08/02/09 01:45 ID:qTVJK5Mg
こういう展開のほうが血が滾る俺は確実に異端。
wikiだとちょうど「すき」あたりで分割されるんじゃないかと思うとあとで読み直すのも楽しみなところ。
最高にGJでした。

あとすでに言われてるけど、つかさの死亡表記とタイトルがなさげですね
656Classical名無しさん :08/02/09 01:52 ID:w/5y3xwI
ロワを読んで初めて泣いた!! GJ

ああ、川田よ何処へいく…
657 ◆wivGPSoRoE :08/02/09 01:55 ID:0MUq1BL.
>>647

【柊つかさ@らき☆すた:死亡確認】
【残り24人】

題名は、「笑顔」」です
wikiに収録する時は、
>>443までを@
>>493までをA
>>572までをB
残りをC でお願いします。

>>652
そうでした……。ありがとうございます。

>>501
× 38歳
○ 28歳です
658Classical名無しさん:08/02/09 02:15 ID:7ls9zeqg
 なんという…なんというSS…!
 まだ心臓がドキドキしているぜ…ッ!
659Classical名無しさん:08/02/09 02:30 ID:OFstCJHY
投下乙
つかさが死亡し、川田がマーダーに
恋愛フラグにアカギのマーダー強化フラグが結びついて
こんな結果になるとはだれが予想しただろうか!

それにTQNもうだめだめだなぁ、愛にまっしぐらすぎ
覚悟、もう躊躇しないでやっちまっていいよ
660Classical名無しさん:08/02/09 02:34 ID:sIVpPqmk
投下乙。
つかさああああああああああああああああああああああああああああああああああ
もう涙で画面が見えないよ…。
なんという悲劇。これがトロワなのか…。
661Classical名無しさん:08/02/09 02:42 ID:s7WYlYKo
いっそヤってくれた方が幸せだろ……とおもったが、
このるるる、初代るるると違って自分が死ぬことをあんまり
許容してないんだよな。
あっちは自身が死ぬ間際にそれなりの幸福感があったからまだましだった。
ちょっとまとめてみた、穴があったら埋めてくれ。
【対主催】
覚悟、ヒナギク   精神的ショックでか過ぎ。
アカギ       もうこいつが一番のジョーカーじゃね?
世紀末救世主    盲目、心に深い傷。
ジョセフ      対主催とか、そんな話どころではない。
かがみ       意外というかなんというか、多分一番対主催で重要。
独歩、オタク×2  一番まともなチーム……というよりここ以外にまともなチームがもうない
ハッピー      がんばって欲しいが、迷いがある。 危ない。
りゅう、服部、
バーロ、神楽    吉良しだい、りゅうほしだい。正直危険なにおいしかしない。     
          あとバーロ、オマエは天然最強マーダー。
FOOL        ぼうそうちゅー……がんばれハッピーとしか言いようがない
ハヤテ       意外と希望の一人。気づいたけど単独で唯一まともだ――――ッ!!

  


662Classical名無しさん:08/02/09 02:47 ID:ruP2FzQs
読み終えた!何たる長さ!!それでいて何たる密度と展開の嵐!!
中だるみ?ナにそれおいしいのと言わんばかりのスゲェ名作だぁっぁぁぁっぁぁ!!
663Classical名無しさん:08/02/09 02:51 ID:s7WYlYKo
【マーダー】
オーガ    相変わらず危険。第一級の爆薬。
拳王      覚悟完了! しかし、マーダーで一番悶着ありそうな人。改心はあるか……?
TQN       吐き気を催す外道とか、そんなレベルではない。重症だが
        気持ちが大高揚!
吉良      マーダーで一番ヤバげな立場。だがこいつは最後の一瞬まで
        なんかしでかす気が……
人形、美形  こいつらは完全に予測不可。放送なりでどうとでもなるがとりあえず覚悟完了済み。
川田      策士で、人情深く、冷静な判断も下せる貴重な一般人マーダー、
         先行きが(個人的に)一番心配。

【その他】
村雨      キューブさえあれば……
664Classical名無しさん:08/02/09 03:04 ID:/BDTG/B6
1/4 【アカギ】○赤木しげる/●市川/●平山幸雄/●鷲巣巌
1/2 【覚悟のススメ】○葉隠覚悟/●葉隠散
1/3 【仮面ライダーSPIRITS】 ●本郷猛/●三影英介/○村雨良
1/4 【からくりサーカス】●加藤鳴海/○才賀エレオノール(しろがね)/●才賀勝/●白金(フェイスレス指令)
1/4 【銀魂】 ●坂田銀時/○神楽/●桂小太郎/●志村新八
2/4 【グラップラー刃牙】○愚地独歩/●花山薫/●範馬刃牙/○範馬勇次郎
2/4 【ジョジョの奇妙な冒険 】○吉良吉影/●空条承太郎/○ジョセフ・ジョースター/●DIO
2/4 【スクライド】●カズマ/●シェリス・アジャーニ/○マーティン・ジグマール/○劉鳳
0/4 【ゼロの使い魔】●キュルケ(略)/●タバサ/●平賀才人/●ルイズ(略)
3/4 【ハヤテのごとく】○綾崎ハヤテ/○桂ヒナギク/○三千院ナギ/●マリア
0/3 【HELLSING】●アーカード/●アレクサンド・アンデルセン/●セラス・ヴィクトリア
2/4 【北斗の拳】●アミバ/○ケンシロウ/●ジャギ/○ラオウ
2/4 【武装錬金】●防人衛/○蝶野攻爵/○津村斗貴子/●武藤カズキ
2/4 【漫画版バトルロワイアル】○川田章吾/●桐山和雄/●杉村弘樹/○三村信史
2/4 【名探偵コナン】 ○江戸川コナン/●灰原哀/○服部平次/●毛利小五郎
2/4 【らき☆すた】○泉こなた/●高良みゆき/○柊かがみ/●柊つかさ
計 24人 / 60人
665Classical名無しさん:08/02/09 04:13 ID:qqGr8Jik
はてさて、川田はどうなってしまうのか…説得できるのだろうか……俺的に考えて。
その説得するのにも大変だろうけど
666Classical名無しさん:08/02/09 04:30 ID:W.eGDVVU
今読み終えました
TQNは本来そこまで自己中ではないんだ…ただ、白金の悪魔のささやきが…
しろがね化をすることなくただマーダーとなってたのならまた違う運命を迎えてたのかもな…
そして……つかさあああああああああああああああああ!!!!!!
つかさと川田は二人でらきすた世界に帰っていずれ…そんな風に考えていた時期が俺にもありましたorz
とはいえつかさ死亡までなら覚悟完了してたと言いたいわけだが…川田…その道へと転んでしまったか
本当に強い絆で結ばれてたからなぁ…反面、どちらかが欠けるようなことになってしまって…
川田が呼び出された時期が死亡直後なのも最悪に働いた…何という運命の残酷さ
大作、乙でした
オアシス4人組の極鬱の終焉、堪能させていただきました
…さて…追悼スレに逝くとしようか…あんた達もそうするだろ?

あ、一つだけ指摘です
501レス目のヒナギクの台詞で
>歳は38歳! ホント〜
とありますが28歳の間違いかと
667Classical名無しさん:08/02/09 04:31 ID:W.eGDVVU
あ、すいません
投下終了後の作者氏からのレスを見落としていました
改めて本当に乙でした
668Classical名無しさん:08/02/09 05:05 ID:HUNERyDE
川田が優勝するためにはつかさの姉のかがみも殺さなきゃならないんだよな・・・辛いとこだ
669Classical名無しさん:08/02/09 10:06 ID:reh0Xk12
投下乙ッ!!
赤木と勇次郎の駆け引きがすごすぎる…
対主催者で一番期待できるのはやはり赤木かッ?!

斗貴子はいい子になる…
そんな風に考えていた時期が…僕にも…ありました…
やっぱ死ぬときはろくな死に方しないんだろうなぁ

そして
つかさぁああああああああああああ!!!!
お姉さんと会ってほしかったです…

さらに
おまえ何をやってるんだ川田章吾――――――ッ!!
スピードはともかく理由を言え――――ッ!!

本当にッ熱血あり、ほのぼのあり、鬱ありロワらしい作品でした
僕は敬意を表するッ!
670Classical名無しさん:08/02/09 13:02 ID:FPnN9q5w
GJです。
覚悟とTQNの濃厚な心理描写と台詞の掛け合いに唸らされ、アカギと勇次郎の激突にハラハラし、つかさの最期にマジ泣きし、川田に驚かされました。
だが何より…………。




「うざったいんだよ、お前ら」「私とカズキの間に、誰も、入るなっ!!」




……最高すぎる。あんた、蝶・最高だよ、TQN!ゾクゾク来た!
是非、川田と救いようがないほどの鬱なドロドロの殺し合いをやってほしいぜ!
671Classical名無しさん:08/02/09 13:08 ID:1BcloCMw
しかし一番恐ろしいのはアカギだと言いたい。
あいつの推察がまた当たったよ。学生組壊滅。
お前はどこのアンサートーカーだとw
672Classical名無しさん:08/02/09 16:29 ID:FMpIUKT6
つかさァァァァァ!川田ァァァァァ!
涙で画面がほとんど見えない……
673 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 00:05 ID:Jew70342
すいません、2/10の朝には間に合うと思うのですが。
ちょいと、遅れ気味です。数時間余裕をいただけないでしょうか?
10時までに間に合わなければ、諦めます……
674Classical名無しさん:08/02/10 00:10 ID:J/5K8uTQ
>>673
いや、別に明日の夜でもいっこうにかまいませんぜ。
ご無理なさらずに頑張ってください。
675Classical名無しさん:08/02/10 00:26 ID:XqKC0Xp6
>>673
乙です
ここもまた大人数の難しいパートだと思いますが頑張ってください
期待しています
676Classical名無しさん:08/02/10 03:04 ID:48FRTG7.
川田・・・最後の遺言を思い出せよ・・・かがみも、殺すのか?
677Classical名無しさん:08/02/10 04:46 ID:IZITjegY
なんて、壮絶な。GJ!
678Classical名無しさん:08/02/10 05:22 ID:2CUjoE3A
ちくしょうっっ!つかさっっ!川田っっ!ちくしょうっっっっっ!
679 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 09:44 ID:G.VysfK2
>>674
すいません。お言葉に甘えて、2/10(今日)のPM10:00までに投下させていただきます……
AMのつもりだったんですが、まだ間に合わない。これで、間に合わなければ、本当に予約破棄するんで。
死ぬ気でやります。
680Classical名無しさん:08/02/10 10:09 ID:6.PYbNp2
>>679
 頑張ってください
681Classical名無しさん:08/02/10 11:50 ID:eiVQVvPg
しかし原作の川田の最後を思えばまだ希望があるんじゃないかと期待したりもする
682Classical名無しさん:08/02/10 16:50 ID:szlj2eC6
主催者ぶちのめして技術を奪い、全員生き返らせるって発想は……ナシ?
683Classical名無しさん:08/02/10 19:16 ID:MnDjs1zs
なしだな
684 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 19:59 ID:Ohpd/VS6
そんなわけで、9時過ぎに投下を開始します。
あと、大変申し訳ないのですが、結局間に合わなかったので
三村+パピヨンの分の予約は破棄します。

大変長い間、拘束していて申し訳ありません。
では、9時にまた。
685Classical名無しさん:08/02/10 19:59 ID:ccw4TFWs
さすがにそれをやられたら夢オチと一緒でご都合主義すぎると思う。
しかし俺個人の意見としては一人か二人程度が生き返るのは内容次第でアリと思う。
686 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:14 ID:Ohpd/VS6
大変時間をかけてすいません。
徳川光成、愚地独歩、泉こなた、三千院ナギ、ケンシロウ、エレオノール、ジグマールを投下します。

タイトルは「何をしても勝利を」です。
687Classical名無しさん:08/02/10 21:14 ID:TUL75oTg
                        
688Classical名無しさん:08/02/10 21:15 ID:Ohpd/VS6
 数時間前に伊藤博士から言われた事は分かる。
 地下闘技場のような道楽を持っているとは言え、光成とて、人並みの倫理観も持ち合わせているつもりだから、
彼の期待に応えたいと思う気持ちはある。
 けれど、自分に何が出来るのだろう。
 それなりの財産はある。祖先から守り続けてきた権力もある。
 だが、一匹の雄としてはすこぶる無力だ。
 BADANという得体の知れない組織に対して、何をもって抗うことが出来るのか。自分には殆ど分からない。
 この20時間で、彼らの姿が輪郭だけぼんやりと見えてきた気がする。
 それは、山にたとえるなら富士山と言うよりエベレストと言うより、海中深くに存在する標高10000mを超えた巨大な存在。
 それは、星にたとえるなら地球と言うより太陽と言うより、ブラックホール。
 そこにあることは分かっていても、掴みきれず。
 掴みきれないのだけれども、圧倒的な存在感で人々に畏れられる。
 あるいは、神という存在があるのなら、それは彼らなのかも知れない。
 そんな彼らに対して、自分はどうやって抗ったらいいのだろうか……
 情報はある。
 その情報を放送で、それとなくリークしてやればいい。
 たったそれだけのことだ。自分に課せられた使命は、放送時に一言発するだけで達せられる。
 だが、それが難しい。
 自分にその難題がこなせるだろうか……
 失敗、すなわちBADANにばれること。
 この失敗を逃れて、参加者のみに情報をリークすることが成功だ。
 そんな成功、ありはしない。
 BADAN監視下で、BADANに気付かれないように情報を流す。早い話が、暗号。
 参加者名簿には、暗号解読の得意な少年が記載されていたが、問題はそちらではない。
 光成の方だ。
689Classical名無しさん:08/02/10 21:15 ID:TUL75oTg
                                
690 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:15 ID:Ohpd/VS6
 光成に、そんな暗号を考える能力がないのだ。
 安易な暗号を考えれば、BADANにばれる。
 そうなった時、自分だけでなく残された参加者の命も危ない。
 BADANが、どうやって自分たちを集めたのか定かではないが、集められることは分かった。
 これは、彼らに失敗した後のリセットが許されている事を示している。
 自分たちの目的が達成困難になった場合、全首輪を爆破して再度同じ事を繰り返せばいい。
 時空を飛びまわれる彼らにとっては同じメンバーを集めることですら困難ではないだろう。
(わしはどうしたらいいんじゃ……)
 無力。
 光成が痛感していることを一語で記せば、無力である。

 ふと思う。
 こんなとき、自分の知っている独歩はどんな行動をとるだろう。
 彼は、恐らく自分より教養がない。暗号を考えろなどと言っても、決して考えられない。
 それ以前に、考えようとさえしないだろう。
 雄として、知力ではなく武力に頼り生きている独歩。
 彼なら、きっと己の拳一つで抗うはずだ。
 妻のことを想いながらも、妻のためにただ生きて帰る事を良しとしない。
 武人として功を上げねば、生きている価値なし。
 きっと彼は、そんな風に考えているだろう。
 そして、武人としての功とは、警察や自衛隊などの功と違う。
 守る生き様ではなく、攻める生き様。
 それが武人であり、武神である独歩。
 そして、その彼がこの場にいたならば、きっと体一つでBADANに立ち向かったであろう。
 その結果がどうなろうと……独歩とは、そういう男だ。
 然るに光成はどうだ。光成には、そんな武力があったか。
 70を超える自身の人生を振り返り、光成は自分にそんな物が存在しないことを確認する。
691 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:16 ID:Ohpd/VS6
 何時だったろう。自分の腕力が絶対でないことを思い知ったのは。
 勇次郎のように暴力を押し通せて当然、と思わなくなったのは何時だったろう。
 もう。覚えていない。
 母親に折檻されたときだったか。近所の友人と喧嘩したときだったか。
 分からない。
 けれど、それが凡人というものだ。
 光成は凡人なのだ。
(何にも出来んのじゃ……)
 当たり前だ。
 武神などと大仰な二つ名を持つ友人とは違う。
 地上最強の生物などと畏怖されている化け物とも違う。
 この世に解けない謎なんて塵一つないなどと豪語できるほどの知力もない。
 いたって凡庸。才のかけらもない愚図。けれど、それが凡人。
 そして凡人だからこそ。光成は、憧れていた。自分が捨ててしまった夢を50年以上持ち続けたあの男に。
(独歩よ、おぬしの力が羨ましい。おぬしはきっと、わしにとってヒーローなんじゃろうなぁ……)

◆ ◇ ◆

692 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:17 ID:Ohpd/VS6
 不意に、携帯電話のボタンを押してしまった。
 電話帳から、ワンタッチでのダイヤル。
 便利なのもいいが、少し考えてもらいたい。
 などと考えるこなたではないが、反射的に電話を切ってしまった。
(いやぁ、他人の携帯電話ってなんとなく使いにくいもので……)
 かけ直すか。
 いや、相手の状況が分からないのでは、かけづらい。
 これが普段の高校生活ならともかく、今は殺し合いの現場だ。
 冗談抜きで、電話の向こうは拳銃を突きつけられている可能性だってある。
 安易にかけられない。
 それよりは、こちら側に余裕のある現状。一旦電話があったことだけ向こうに知らせておき、折り返しがあるのを待つべきだ。
「な、なぁこなた。あの火事は一体なんだと思う?」
 思考をさえぎり、ナギの声が届く。
 殺し合いの会場。時は太陽が睡眠中の夜。天候は小雨。
 そんな中、周囲の空気を読まずに目立つ民家の火事。
「んん〜〜、分かんないけど……なんだろね?」
「喧嘩があったんだろうよ」
 独歩は喧嘩というが、喧嘩で出火など考えられるのだろうか。
 いや……十分考えられるな。
 修羅●門に出てくる龍造●徹心みたいな独歩が隣にいるのだから、らんま1●2に出てくる阿修羅みたいなのがいて火を吐いててもおかしくない。
 とは言え、戦闘があったという仮定が正しかったとしたら、重要になってくるのは、その結果だ。
 先ほど鳴海が、シェリスが、死んでしまった。
 自分たちは、ほとんど無傷だったが戦闘による被害が軽視できないのは当然のことだ。
「しかし、もし喧嘩だとしたら誰か被害者が残っておるかも知れんな」
「うーん、そうかなぁ……」
693Classical名無しさん:08/02/10 21:17 ID:J/5K8uTQ
         
694 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:18 ID:Ohpd/VS6
 ナギは恐らく、戦闘による被害者が火事場に残されている可能性を指摘しているのだろう。
 けれど、この可能性はあくまで考えられるもののうちの一つ。
 仮に戦闘による出火だとしたら、一番考えられるのは当事者の逃亡。
 勝利したにせよ、敗北したにせよ。出火した場所に残り続ける理由はない。
 目立つ場所には人が集まる可能性が高いわけだし、どんな人間もすぐその場を離れる。
 離れないとすれば、何らかの理由により移動が出来なくなってしまった可能性だが、そんなことありえるだろうか?
 正直言ってほとんど無いと、こなたは思う。
「DIOのような者がおるのだぞ、戦闘で出火してもおかしくあるまい」
「いや、そうじゃなくてね。戦闘が終わって残ってる人がいるかなぁと」
「動けなくなっている人が、いるかもしれないじゃないか」
 うーん……
 確かに、戦闘終了して負傷者が残っている可能性は0じゃない。
 でも、それって高いか? いや、それ以前にあれが戦闘による出火だということ自体、推測に過ぎないじゃないか。
(パピヨンなら、行かないよね)
 パピヨンならきっと、火事など無視して学校へ進むだろう。
 火事場が安全かどうか、そんなものは行ってみなければ分からない。
 現状、自分たちに余裕があるのだから、万一負傷者がいた場合助けてみたくなるというナギの気持ちは分からないでもない。
 だが、その可能性は低いのだ。低い可能性のために、無茶をする必要はない。
695Classical名無しさん:08/02/10 21:18 ID:J/5K8uTQ
     
696 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:18 ID:Ohpd/VS6
(そういえば、パピヨンはどうしてるだろう)
 パピヨンといえば、首輪を取りに行ったきり戻ってこない。
 まさか、パピヨンに限って戦闘で不覚を取るということは考えられないが、どうにも心配になるではないか。
 こなたの頭にあるのは、基本スペックで上回る相手を翻弄したパピヨン。
 まるで、怪獣映画のワンシーンでも見せられているかのような戦闘。
 戦っているのは、全身タイツに身を包んだ円●プロの役者みたいな男だ。
 その時から、パピヨンの姿がこなたの知るある姿と被って見えた。
 そして、その考えがさらに加速したのは、シェリスに囚われた時だ。
 ナギも、独歩も、御前様でさえ、どうにもならない時。
 首筋に当てられたナイフという死線。だが、そこにパピヨンは颯爽と現れたのだ。

──パピ♪ヨン♪ もっと愛を込めて。

 ニヒルな笑いを浮かべながら、ヒロインのピンチに駆けつける、その姿は正にヒーローだった。

◆ ◇ ◆

697 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:19 ID:Ohpd/VS6
(火事か……)
 時間は気にならない。だが、場所は大きな問題だ。
 承太郎たちと死別した地点から見て南側。つまり、ハヤテが向かった側。
(違うかも知れん……ただの失火……そうだと思いたいが)
 ハヤテと分かれて既に3時間以上経つ。
 会いたいと思う気持ちは時間を追うごとに強くなってくる。
(ハヤテ……お前なのか)
 独歩は軽い口調で、喧嘩でもあったのだろうと言った。
 だが、喧嘩があったのなら負傷者……いや、この場では死者の方が……
(違う、そんな訳ない。わたしのハヤテは無敵だ。絶対に大丈夫さ)
 だが、あの場にいるのがハヤテという可能性は否定できない。
 そして、ハヤテがいるのなら……それは負傷者としているのか。それとも死傷者としているのか。
(馬鹿なことを考えるな、ハヤテとわたしは結ばれる運命なのだ。そのハヤテが死ぬわけないじゃないか)
 信念。ハヤテなら、絶対に生きていられるという信念。その根拠は、ナギとハヤテとの間にある絶対的運命。
 思い出すのはハヤテと初めてあったクリスマスの日。あの日から、運命を感じたんだ。

 母がいなくなってから、周囲の大人たちの見る目が変わってきた。
 三千院家。日本最高の財閥の一つ。その金目当てに、ナギに近づく大人たちが多くなってきた。
 気のせいとは思えない。クリスマスのパーティーも、そんな大人たちで溢れていたのだから。
 だから逃げ出した。
 マリアの誕生日パーティーというなら、逃げるつもりはなかったが、ただの迎賓館で行われたクリスマスパーティーだ。付き合う必要はない。
 そして、その脱走が運命の出会いを呼んだんだ。

───僕と付き合ってくれないか? 僕は君が欲しいんだ。

 出会った直後の告白に、正直戸惑いはした。
 だが、母・紫子の面影を感じさせるハヤテの言葉をナギは断れなかった。
698Classical名無しさん:08/02/10 21:19 ID:J/5K8uTQ
           
699 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:20 ID:Ohpd/VS6
 その日から、ハヤテはナギにとってかけがえのない存在になった。
 実を言うと、マリアに対してのハヤテの言葉がナギを不安にさせることもあった。

───でもやっぱり、緊張しちゃうよ。マリアさんみたいなキレーな人と一緒だと。

 そりゃ、確かにマリアは綺麗だ。そう思う。
 比べて、ナギは身長138cmのちんちくりん。胸だってペッタンコ。
 ルックスではビッグボディとフェニックスぐらい桁違いの差がある。
 でも、たとえそうだとしても、ハヤテは自分を愛してくれている。
 ナギはそう思っている。いや、確信している。
(だって、お前は助けてくれたもんな……私が捨てたのに……助けてくれたんだからな)
 ハヤテを伊澄に売り飛ばした日。
 彼の両親と変わらぬ程の悪行をハヤテに対して行ってしまった日。
 正直な話、愛想をつかされても仕方がないような状況だったにもかかわらず、ハヤテは助けに来てくれた。
 銃を持って、ロボットと戦いながら自分を守ってくれた。
 もう、ハヤテの愛を疑わない。
 そう、ハヤテはナギにとってヒーローだ。

◆ ◇ ◆

700 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:21 ID:Ohpd/VS6
 フランシーヌ。彼女が名乗ったこの名前は本名ではない。なにせ、これは名簿に載っていないのだから。
 出会った時に使った名も論外だ。その名前の持ち主、キュルケには既に会ったことがある。
 もちろん、作戦会議の際にキュルケではないことを女も告白していたが、本名は明かさなかった。
(名も知らぬ相手との共闘……クックック、それも面白い)
 この殺し合いなど、ジグマールにとって通過点でしかない。
 赤木を模倣しているのも、彼を超えるためであり、超えることによって自身をより高みに上げるためだ。
 今のままでは、時系列を超越して全宇宙を支配することなど出来はしない。

──ああ、申し訳なかったね。私の名はHOLY部隊隊長マーティン・ジグマール。
──この星を……いや時系列を越え全宇宙の支配者となる男だ!

──……すいません、意味が分からないんでスけど

 今にして思えば、あの少女が意味不明と言ったのは、自分の能力がなかったからだ。
 あの時戦った少女にも苦戦させられ、吉良というサラリーマンにも勝ちきれなかった。
 つい先ほどのフランシーヌ戦でも危うかった。
 そんな自分が、全宇宙の支配者となるなどと、よく言えたものだ。
 たった一つ、ほんの少し優れていただけのアルター頼み。
 それすら、DIOに及ばないといった有様。
 全宇宙という規模を考えれば、ケンシロウやDIOさえ強いとは言い切れない。
 たとえば、ホーホッホッホホと笑いながら指先一つで惑星を破壊するオカマの宇宙人みたいなのがいてもおかしくない。
 自分はそんな奴に勝てる自信などない……

  今は、だ。

701Classical名無しさん:08/02/10 21:21 ID:J/5K8uTQ
       
702 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:21 ID:Ohpd/VS6
 一ヶ月もすれば、ギャラン=ドゥが戻ってくる。
 それまでに、今まで以上の高みを目指し上り詰めれば、可能性が出てくる。
 そう、これは試練なのだ。
 そして、試練とは超えられぬものには、決して与えられない。
 自分はこの試練を乗り越えられる。そして、自分は確かに一歩だけだが、進んでいる。
 フランシーヌとの共闘は明らかな前進だ。
「フランシーヌ、サインを決めよう」
「サイン……?」
「あぁ、サインだ。戦闘中の連携を円滑にするためのね」
 ジグマールはそう言いながら、体を動かし、言葉を交えながらサインを決定していく。
 身振り手振りで行うサインは、お互いが確認しあえる状況であるという前提のもとで決定される。
 もちろん、ここで作っておいたとしても、実際の戦闘ではほとんど活用できないだろう。
 共闘が必要になる敵はケンシロウやDIOなどの圧倒的強者。
 サインを送っている余裕も、見ている余裕もない。
 だが、やれることは少しでもやる。これがプラスになるかどうかは分からない、マイナスになるかもしれない。
 でも、思いついたからにはやる。
(だって、安心して見てられないだろ……ギャラン=ドゥ)
 自分を裏切ることがない、絶対の相棒。
 時代が違えばジグマールを殺すことになるアルターではあるが、今のジグマールにとっては友であり師であり、仲間である。

(……ギャラン=ドゥ。今度、君が私に会うとき。それは全宇宙支配に乗り出すときだ!)
 今は胸の中に眠っている盟友を思い、バトルロワイアルの制覇を誓う。
 ギャラン=ドゥ。
 ジグマールにとっては正にヒーローそのもの。

◆ ◇ ◆

703Classical名無しさん:08/02/10 21:22 ID:J/5K8uTQ
      



 
704 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:22 ID:Ohpd/VS6
「ハヤテがいるかも知れん」
「ハヤテが……」
 火事を見て、少女2人がその可能性に気付くのは必然といえた。
 2人はハヤテと少なからぬ縁を持つ。
 片や、執事と主。片や、バトルロワイアル開始直後の知り合い。
 共に、ハヤテが今どこで何をやっているのかと気をもんでいるのだ。
「わたしはハヤテに……あいつに言ってやらんと駄目なんだ!」
「一体、どうしたんでぇ?」
「それは言えん」
 ナギは、それっきり黙りこくりながら、炎の方を見つめる。
「ハヤテは、ナギの執事なんだよ」
 無言のナギに代わり、こなたが説明する。
 ハヤテから聞かされたことではあるが、ナギはハヤテの主人であり、恩人。
 冗談みたいな借金生活と、生きているのを呪いたくなるような両親の下で育ったハヤテ。
 詳しいことは分からないが、数億円する絵画の贋作を小学校に入る前の幼児を使って売りさばいていたという悪人両親だ。
 その両親に捨てられた後、借金の肩代わりをし、拾ってくれたのが三千院ナギだ。
 ハヤテは笑いながら、デパートを歩いている途中に話してくれたが、彼が笑顔を取り戻すまで、一体どれほどの時間を要しただろうか。
 三千院ナギと、ハヤテの関係がどんなものなのか、こなたには想像もつかないが、ただの主従関係でないことは間違いない。
「ナギよぉ、お前はハヤテと再会したいって訳か?」
 ナギは独歩の顔を見て、無言で頷いた。
「なら行くか」
 既にパピヨンとの約束、30分は過ぎている。
 予定通りこのまま学校に向かう訳だが、少々寄り道をしても構うまい。
 どうせ、あの家に行っても数十分もかからない。
 3人は学校に行く途中で、火事現場へと足を運ぶことに決めた。

705 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:23 ID:Ohpd/VS6
 星空は雨雲に隠されて黒く塗りつぶされている。
 そこから、落ちてくる水は無色のままであって、明かりのない今の時間帯では何一つ見えない。
 肌に触る水の感触と、冷たい温感。そして、アスファルトにはじける水音だけが、雨の存在を伝えてくる。
 だが、3人にはハッキリと分かった。これから深夜にかけて、この雨は豪雨に変わるだろう事が。
 そうなった場合、もちろん件の火事は消火される。だが、問題はそんなことではない。
 ただでさえ体力を消耗している現状だ。すぐさま、安全な場所で休みを取る必要がある。
 急がなくてはならない。
 全員がそう思った。なぜなら、ここには小学生と変わらぬ体躯の少女がいるのだから。

 そんな折、首輪探知機が二つの反応を見つけた。
「誰かいるぞ……」
 場所は、火事を起こした家ではない。
「2人か……という事は、殺し合いに乗っている者ではなさそうだな」
「うん、そだね」
 ナギとこなたは独歩の後ろに隠れつつ、その反応の場所へと進んでいく。
 そして……

「な、何をやっているのだお前は……」

 そこに、ありえない格好をした男女2人を見つけた。

◆ ◇ ◆

706Classical名無しさん:08/02/10 21:23 ID:J/5K8uTQ
       

   
707         :08/02/10 21:23 ID:J/5K8uTQ
     
   
708Classical名無しさん:08/02/10 21:24 ID:TUL75oTg
                              
709 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:25 ID:Ohpd/VS6
「誰かいるな……」
 そのことに気付いたのは、フランシーヌだった。
 常人よりも遥かに優れた感覚能力と、70年積み重ねた戦闘経験は敵をかなり素早く見つけることが出来る。
「人数は?」
「分からん、だが一人ではない」
 ジグマールは、身振りでフランシーヌに隠れるよう指示を出す。だが……
「待て、向こうはこちら側の人数にも気付いている」
 わずかに聞こえてくる声から、フランシーヌはその情報を掴み取っていた。
 そして、言いながら上着を脱ぎ両手を後ろに回しながら、脱いだ上着に手を絡め、うつ伏せになって倒れる。
 一瞬、彼女の行動分からなかったジグマールだが、直ぐに理解する。
 上着で両手を縛り、頭を踏みつける。
「っくそ、こいつ逃げ出そうとしやがって」
「っ貴様、離せ!」
 とっさの演技。その瞬間、1人の男と2人の少女が現れる。

「な、何をやっているのだお前は……」
「いや何、この女を取り押さえていたところだ」
「そいつは……」
 現れてきた3人は、ジグマールとフランシーヌの姿に三者三様の反応を見せている。
「まさか、お前。こんなところで、その……」
「なんというエロゲ展開……」
 いや、違う。
 少なくとも、エロゲ展開ではない。
 だが、今のところジグマールが危険人物なのかどうか決めかねているといった様子だ。
「お、おい、ふざけるな。あ、相手は……お、女だぞ」
 半裸の女が、頭を押さえつけられながら倒れている。
 両手は後ろ手に縛られ、ほとんど身動きできない。
710 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:25 ID:Ohpd/VS6
「……っく、た、助けてくれ」
 上手い演技だ。ジグマールはフランシーヌに対して、素直にそう思う。
 だが、一体この演技に何のメリットがあるというのだろうか。
「おめぇは……」
「や、止めろ。助けてやってくれ」
 金髪少女は激しく困惑しているが、善意を失っていない。
 当然のことだろうと、ジグマールも思っていたが……
「待てナギ。その女は、俺や勝に襲い掛かって来た奴だ」
「なんだと……」
 ようやく理解できた。
 よく見れば、男はフランシーヌの語っていた隻眼初老の男。
 つまり、我々が倒すべき敵の一人であり、フランシーヌを敵視している男でもある。
 フランシーヌは気配から、彼がいることを察したのか……
 いや、違うな。
 恐らく賭けたのだ。はっきり言って残りの人間は限られている。
 その上で誰が数時間前はどこにいたのかという情報があれば、かなりの確度で遭遇する人間を予測できる。
 フランシーヌはそう予測し、隻眼の男がいる可能性にかけたのだろう。
 いや、彼がいなくとも、彼の仲間にフランシーヌの特徴を伝えていたとしたら、この作戦は効果的だ。
(なるほどな……かなり高確率で成功する見込みがあったわけだな。しかし……)
 改めて思う。
 フランシーヌの冷徹さを。
 考えてみれば、この女は出会った当初から異常だった。
 何食わぬ顔で、キュルケの名をかたり無害を装いつつ近づいてくる用心さ。
 戦闘時の無表情さ。冷徹さ。
 そこまではいい。
 問題は、一度戦闘した相手に対する切り替えの早さだ。
 ジグマールは共闘を依頼した側だし、赤木という手本があるので気持ちの切り替えは早く済んだ。
 だが、この女にはないはずだ。
(まともな感情というものがないのかフランシーヌは。味方でいるうちは頼もしいがな……)
711 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:26 ID:Ohpd/VS6

「……一体、どういうことだ。その女は何をやったんだ」
「わ、私は何もやってない」
「騙されてはいけない、この女は私に、こうやって騙まし討ちを……」
「独歩さん……」
 少女たちは、隻眼の男の方を見つめている。
 彼も、どうしたものかと判断に迷っているようだ。
 一度自分を襲ってきたフランシーヌを信用することなどあり得まいが、かといってジグマールを直ぐに信じていいかどうかも分からない。
 刹那。
 フランシーヌの体が揺れ動く。ジグマールの足をはずし、一瞬のうちに飛び跳ねて体勢を立て直す。
 そして、攻撃。
 両腕を縛られたまま、柔軟性に富んだ蹴り主体の攻撃をジグマールに浴びせかけてくる。
(ナイスだ、フランシーヌ)
 無論、本気ではない。
 一度戦ったジグマールには分かる。確実に、これは演技だ。
「き、貴様……ふざけてた真似を」
 演技には演技を。
 ジグマールとて、長年ホーリー部隊隊長を務めた男である。
 劉鳳などの猛者を騙し続けた演技派だ。
 互いに傷つかぬように力を調整しつつ、攻撃を繰り返していく。
「た、頼む……、私を信じてくれ。その男の言うとおり、この女は騙し打ちの常習者だろう。ここで抑えておきたいんだ……」
 攻撃は、見た目だけ派手になっていく。
 当たるはずもない大振りな蹴りや拳がお互いの間を駆け巡る。
712Classical名無しさん:08/02/10 21:26 ID:J/5K8uTQ
      
713Classical名無しさん:08/02/10 21:26 ID:TUL75oTg
                                  
714 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:27 ID:Ohpd/VS6
「アンタは、この女に襲われたんだろ……頼む。その子達のためだ、手を貸して欲しい」
 一旦、フランシーヌとの距離をあけて、隻眼の男に近づく。
 まだここでは手を出さない。
 男が共闘を受け入れ、フランシーヌに近づいたとき。
 そのときが、戦闘開始の合図だ。
「アンタのその鍛え上げられた体は伊達じゃないはずだ。私、ジグマールと共に戦えば、あの女を殺さずに押さえつけられる。
頼む、これ以上の犠牲者を出したくない」
「……」
 無言のまま、男が構えを取る。内心のガッツポーズを抑えるのに苦労する。
「すまない……恩に着る。では、行くぞ」
 ジグマールが男と共に、フランシーヌに突撃しようとした……
 その瞬間だった。
 後頭部に、激しい衝撃を感じ、ジグマールは大きく弾き飛ばされた。

「なぁに茶番やってやがんだ」

 男の攻撃は、ジグマールに襲い掛かってきたのである。

「独歩さん、何をしてるんだ?」
「気のねェ攻撃ばかり。どれもこれも紛い物……くだらねェ……」
 背負ったデイパックを振り落とし、男がジグマールとフランシーヌに向かって歩いてくる。
「おめぇさんたちが、仲間だって事はさっきのやり取りでよく分かったよ」
 眼帯をはめた傷だらけの顔全体に笑みを貼り付け、男はジグマールに襲い掛かる。
(は、速い……)
715Classical名無しさん:08/02/10 21:28 ID:TUL75oTg
                  
716Classical名無しさん:08/02/10 21:28 ID:J/5K8uTQ
          
             
717 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:28 ID:Ohpd/VS6
 とっさに人間ワープを使ってかわすが、男はその技を見て笑い声を上げる。
「くっくっく……、おめぇさん。何で今の技を使わなかったんだ?」
「そ、それは……体力を大幅に消耗するから使いたくなかっただけだ……」
「そいつは面白ェ……」
 男の表情は、こちらの言い分などまるで信じていない様子だ。
 どう見ても確信している。自分たちが、共犯だということを……
(どうする。どう言い訳する……)
「拘るなジグマール、最善は潰れたが、まだ次善以降が残っている」
 ジグマールの悩みをあっさりと壊し、フランシーヌは自分たちの関係を暴露する。それだけでなく目的までも。
「な、何を言ってるんだ……貴様、この期に及んで命乞いか」
「もう芝居はいい。それより良く見ろ。勝機は他にも転がっている」
(あの男は、お前が強いと言っていた奴じゃないのか? 自分では勝てない、そう言っていただろうが)
 ジグマールはフランシーヌの言葉の矛盾に激しい苛立ちを覚える。
(逃げだ。今は打つ手がない……)
 と思い、おかしいと気付いた。
(隻眼の男の脅威を教えたのはフランシーヌだった筈だ)
 勝てない。
 武器がなければ、太刀打ちできない。
 そう言っていたはずだ。フランシーヌがそう言っていたはずだ。
 それを翻して、勝機はあると言うからには、それなりの根拠があるはずじゃないのか。
 わずかな逡巡。
 だが、その間に男はジグマールに対して、攻撃を開始する。
 人間ワープを使えばかわせる攻撃ではあるが、体力の消耗を考え出来る限り使わずに避けていく。
718 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:29 ID:Ohpd/VS6
(何たるスピード、パワー……。本当に勝機などあるのか……フランシーヌ、援護を……)
 だが、ジグマールの考えを他所にフランシーヌはあらぬ所へと走っていく。
(裏切る気か!)
 フランシーヌが向かった先は、2人の少女。
「スパイスガール、武装……」
 金髪の少女が何かの人形を出した瞬間、フランシーヌはその人形を足場にして、横っ飛びをしてもう一人の少女の方に飛び掛る。
 少女が、腕時計のようなものを構えるが、それより早く少女の体を電柱の上へと放り投げた。
「えっ、ちょ、ちょっと……」
 そして、自身も猿のような身軽さをもって電柱の上へと駆け上がる。
 電柱の頂上で、少女を掴みとり右手で足からぶら下げる。そして、左手を横にまっすぐ伸ばしバランスをとる。
「や、止めてよ離してよ……」
 ジタバタと動く少女を気にも留めず、フランシーヌは冷ややかな視線を送るのみだ。
(なるほど、勝機か……)
「形勢逆転だな……」
「開き直りやがったな」
 構えを解こうとしない男を前に、冷静さを取り戻したジグマールは告げる。
「おっと、もう攻撃しない方がいい。彼女は冷酷でね、上にいる娘の命は保証できない」
 両手をだらりと下げ、男が抵抗の意志をなくす。
 だが、その瞳にはまだ闘志が残っているようにも見える。
 けれど、彼には何も出来ないだろう。その筈だ。
「だが、私は彼女と違って若干の温情がある。君が、勇次郎、ラオウ、ケンシロウの三人のうち誰か一人を倒してくれるというのなら、あの娘の命を助けてもいい」
「随分な言い草じゃねェか」
 3人の名前に、DIOを加えようかどうかは悩んだが、結局入れなかった。
 DIOは自分を超えるアルター使いだ。あの男は、ジグマール自身で倒さないと成長できない。
「あまり長く猶予を与えるわけにも行かないんだがね……悩んでいるようなら、人質は2人いるんだ。一人には退場してもらっても構わないんだが」
719Classical名無しさん:08/02/10 21:30 ID:J/5K8uTQ
     
    
     
720 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:30 ID:Ohpd/VS6
 辺りを静寂が包む。雨音だけが、支配するその空間。
 雨足は徐々に強くなり、次第に本降りへと姿を変えていく。
「どうする、どうする? 君ならどうする?」
「……返事はノーだ」
 隻眼の男ではなく、金髪の少女が応えた。
「立場が分かっているのかね」
「分かっているさ、武装錬金」
 掛け声と共に現れたもう一体の小さな人形。「狙いはあの男だ」少女の声に従って、そこから小さな矢が放たれる。
 他愛ない攻撃。だが、逆らったことに変わりない。
「落とせ、フランシーヌ」
 ジグマールの声と共に、金髪の少女が駆ける。
 隻眼の男が、ジグマール目掛けて攻撃を再開する。
 フランシーヌは娘から手を離す。
 金髪の少女は、娘の落下地点へと移動する。
 ジグマールが、その場所へ人間ワープする。
「見え見えなんだよ」
 予測していたといわんばかりに、隻眼の男がその場所へ現れる。
 ジグマールに一撃。
 娘の落下寸前に、少女が大きな人形を使って地面を殴る。
 落下した娘は、まるでトランポリンに跳ねるように優しく跳ね返される。
 隻眼の男が、ジグマールに追撃をかける。
 跳ね返された娘が、中空で半回転しつつ地面に着地する。
 金髪の少女が武装解除と呟きつつ、娘のそばへと駆け寄る。
 フランシーヌが地面に飛び降りる。
 男の追撃が、さらにジグマールへと襲い掛かる。
 鉄片を渡された娘が、武装錬金と呟き小さな人形を顕在させる。
721Classical名無しさん:08/02/10 21:30 ID:J/5K8uTQ
          
722 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:31 ID:Ohpd/VS6

 この時点で、男と少女2人の距離は10mを越えた。
(十分だ)
 ジグマールはフランシーヌに向けて、作戦決行のサインを送った。
 そして、フランシーヌは男が投げ捨てたデイパックを拾い上げる。
 形勢は一瞬にして決まった。
「動かないでもらおう」
 デイパックの中に運良くあった武器、イングラムM10を突きつけてフランシーヌが冷淡に告げる。
 今度こそ、妙な人形の加勢は期待できまい。

 実を言えば、フランシーヌが娘を人質に取った行為。あれ自体がフェイクだった。
 フランシーヌが、娘をぶら下げたときにとった左手を横にまっすぐ伸ばすという行為は『武器を奪え』のサインだ。
 もとより、人質一人とったところでどうなる訳でもない。男が無視して攻撃を続けてくれば、こちらの負けだった。
 なぜなら、幼女2人を殺したところで、戦闘の勝利ではないのだから。
 男に人質というものが意味を成さなかった場合、どちらの女を人質にしても、ジグマールたちに勝利はなかっただろう。
 だがら最初から、人質に期待はしていなかったのである。
 期待していたのは、男に出来る隙だ。一瞬でも隙を見せてくれれば、武器を奪い取れる。
 中に何が入っているかは運任せになるが、この程度の幸運を引き当てられないようでは、到底勝ちは望めない。
 そして、奪い取った武器はもちろん……
「ぱらららっ」
 男に使うためのものだ。

◆ ◇ ◆

723 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:31 ID:Ohpd/VS6
 フランシーヌだか、エレオノールだか言う女の手から放たれた銃弾を、銃口と引き手の動きだけで独歩は避けた。
 全て避けきれるものでもない。数発は被弾する。
 しかし、驚異的な瞬発力でエレオノールとの間合いを詰める。
 独歩が正拳を構える。女が銃を構える。
 こなたが飛び出して、女の体制が崩れる。そこへ、独歩の拳が飛び出そうとした瞬間。
 ジグマールからの衝撃波が、独歩に襲い掛かった。
 吹き飛ばされつつも、一瞬のうちに体勢を立て直し再びエレオノールに向かう。
 途中、三千院ナギが背を向けて、どこかへ走り去る姿が見えた。
 逃げ出したのか。それがいい。こなたも逃げ出してくれ。
 そう思いながら、独歩はとび蹴りを放つ。
 一撃食らわせたが、背後からジグマールの攻撃を食らいまたも弾き飛ばされた。
(どうにも、状況が悪ィねェ……)
 2対1、得体の知れない衝撃波と瞬間移動。加えてサブマシンガン。
 形勢は誰がどう見ても、独歩に不利だ。
 こなたも何とか加勢してくれようとしているらしいが、逆に邪魔だ。ナギのように逃げて欲しい。

 動きつつ、的を絞らせないようにして銃弾を回避する。
 だが、銃に集中していては変幻自在のジグマールは捕らえきれない。
 それどころか、守に集中していたら攻が疎かになり、打ち込めなくなる。
 攻めあぐねる独歩を尻目に、2人の攻撃は苛烈さを増す。
 予備マガジン数は9個。使い切るまで凌ぎ切れれば勝機も出てくる。
 だが、そんな時、またもこなたが行動を起こした。
「行くよ、御前様」
「おう任せろ」
 核鉄が発現させた篭手を装備し、そこから矢を放つ。
724Classical名無しさん:08/02/10 21:32 ID:J/5K8uTQ
              
     
725 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:32 ID:Ohpd/VS6
(ば、馬鹿……何やってやがる)
 放たれた矢は、確かに速い。
 だが、銃弾ほどではない。瞬間移動により一気に間を詰めたジグマールが、衝撃波をもってこなたを弾き飛ばす。
「まだまだ……」
 弾き飛ばされながらも、こなたは天性の運動神経で体制を整え、再び矢を射掛けようとする。
 そして、ジグマールは衝撃波でこなたに追い討ちをかけていく。
 寸前、独歩が衝撃波からこなたを庇った。
「無茶やってんじゃ……  「ぱららら……」
 そして、独歩の背後でイングラムM10の声が響き渡り、銃弾が吸い込まれるようにこなたへと叩き込まれた。

「て、てめーら……」
 とっさにこなたの体を投げ飛ばし、そのままの勢いでエレオノールを蹴り上げ、銃を奪おうとする。
 だが、その瞬間。背後からジグマールの攻撃を受けてしまう。
 銃を奪い返せなければ、勝ちはない。だが、2人の連携によってそれもままならない。
(負けるかよ……)
 己の敗北を悟り、どういう訳か独歩は微笑んでいた。

◆ ◇ ◆

726 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:32 ID:Ohpd/VS6
 徳川光成は思う。
 なぜ、自分は独歩のことが、これほど愛しいのかと。
 幼い頃憧れた最強への夢を、彼に託しているから。
 それもある。
 空手に50年費やしてきた男の拳には、確かな強さが宿っている。
 あの男なら、もしかしたら地上最強の夢を叶えてくれるかもしれない。
 そう思わせてくれる。
 けれど、それだけではない。
 強さだけなら、独歩も認めているように義理の息子克己がいる。
 空手を終わらせた男とまで言われ、烈海王に敗れはしたものの、花山薫に打ち勝ち驚異的な身体能力を見せ付けた。
 たとえば音速拳。
 あれを独歩に打てといっても、打てるもんじゃないだろう。
 独歩が見せた菩薩の正拳も、あれに比べればどう見ても劣る。
 だが、どうしてだろう。
 自分は克己の空手より、独歩の空手に憧れてしまう。
 昔馴染みの友人だからと言ってしまえば、それだけかも知れない。
 けれど、恐らくそれだけじゃない。
(多分なんじゃが……独歩の空手は泥臭いんじゃ)
 克己vs花山の決着は、腰をすえた状態からの音速拳連打であった。
 対して、独歩vs天内の決着は片足を壊された状態からの目潰し。
 もちろん、オーガの乱入というアクシデントはあった。
 だが、それはともかく、本来なら戦闘不能になってもおかしくない怪我を負っておきながら、目潰しという卑劣な攻撃ができる。
 それが独歩の空手ではないだろうか。
 後退のネジをはずしていると自称する彼は、綺麗なフェアプレーをする男ではない。
 恐らく、虎殺しと称される過程で、人間用の空手を捨ててきたのだろう。
 攻めて攻めて攻めまくる。
 たとえ泥臭くとも、勝利を得る。
 それが独歩の空手なのではないだろうか。
(だから、好きなんじゃな……)
727 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:33 ID:Ohpd/VS6

◆ ◇ ◆

 襲い掛かる銃弾の中を愚地独歩は突き進む。
 先ほどまでの動きが、銃弾に対して横であったのに対し、今の動きは縦に近い斜め。
(勝てねェなら、逃げても意味ねェよなァ)
 イングラムの銃弾は、着実に独歩の肉を削いでいく。
 先ほどまで、彼は射手の目線と手の動きから、銃弾を出来る限り避けようとして動いていた。
 だが、今の独歩は違う。
 よける事を捨てた。
 紙一重で、銃弾をかわすことは、業で可能だ。
 けれど、独歩はその更に上を行く。
 紙一重の内側。
 銃弾に、その身を晒すという愚行。
 その愚行こそ、独歩に攻撃をもたらす。

 敵の攻撃を避けてばかりいては、いつまで経っても、満足な攻撃を当てることが出来ない。
 腰の入った一撃が決められない。だからこそ、攻をとるために守を捨てて突撃する。

 銃声飛び交う中。雨に混じって、独歩の血しぶきが舞う。
 だが、彼の攻撃は止まらない。銃弾をかわさずに、攻撃しているため、拳のいくつかは確実にエレオノールを捉える。
 ジグマールが瞬間移動で、独歩の間合いに入る。
 エレオノールに密着している状態では、衝撃波が使えない。
 それでも、ジグマールの体術とてホーリー部隊隊長になったほどの腕前。
 それをもって、ミドルレンジでの殴り合いを独歩に挑む。けれど……
728Classical名無しさん:08/02/10 21:33 ID:J/5K8uTQ
            
729 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:34 ID:lws7J5sU
「あめェんだよ」
 ジグマールの技は全てかわされ、鮮やかな交差法が叩き込まれる。
 一瞬、エレオノールが間合いをとり銃を構える。
 独歩がジグマールを盾にして防ぐ。
 エレオノールが銃口をはずす。
 ジグマールが人間ワープで、その場を離れる。
 独歩がワープをし終えたジグマールを掴み上げ殴る。
 殴る。
 ただ、ただ殴る。
 削岩機のような音が、周囲に響き渡る。
 ジグマールも必死に抵抗を試みるが、格が違う。
 独歩の攻撃は、まさに嵐。
 止まることを知らない、拳と足がジグマールに襲い掛かっていく。
 あまりのダメージに、ジグマールはいつしか人間ワープを忘れてしまった。
 機械的に繰り出す攻撃も、受けによって弾かれる。
 ありとあらゆる技は、全て武神には通じない。

 だが、そのとき背後からイングラムの銃撃。
 鉛の銃弾が、灼熱の温度でもって背骨に叩き込まれる。
 肋骨が折れる、背骨が砕かれる。
 武神の膝がおれ、前のめりになりながら、腕で体を支える。
 ジグマールはその隙に逃げ出し、エレオノールは銃撃を止めた。

730Classical名無しさん:08/02/10 21:34 ID:J/5K8uTQ
                           
731 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:34 ID:lws7J5sU
「なんで、銃弾を止めたんだ?」
「これ以上はもう意味がない」
 エレオノールはイングラムを下ろしながら構える。
「なんの意味がねェんだーーーアァ?」
「弾の無駄遣いだ」
「ッケ、下らねェこと言ってんじゃねェ」
 骨のむき出した背中に気遣いもせず、独歩は立ち上がる。
「俺たちァ、ここにままごとやりにきてんじゃねェ。殺し合いだぜ?」
「その通り。だからこそ、手負いの雑魚に貴重な武器を消費することなど……」
「どう雑魚だってんだ!」

 愚地独歩が駆ける。エレオノールが駆ける。
 2人が間合いに入ったとき、両者の攻撃がヒットし始める。
 50年、空手のみに人生を費やしてきた男と、70年人形繰りのみをやっていた女が、打ち合う。
 拙い女の鎌捌きをかわしながら、男は数多くの技を叩き込んでいく。
「50年、打ち続けてきたんだ。テメェにそれが返せるか!!」
 武神とて、背中に銃弾を浴びた状況ではまともな攻撃など出来ない。
 けれど、やはり武神。
 身体能力が常人よりも優れているしろがねを相手にして、面白いほど攻撃を決めていく。
 しかし、その姿を見てもエレオノールは銃を使わない。
 否、もう必要ないと思っている。
 残弾数が6本のマガジンに限られているこの状況で、独歩ごときに弾を消費するわけにはいかない。
「たかが50年の生で何の力を語る空手家。私はその倍近い生で、戦うことを研鑽してきた」
 拙い攻撃を続けるエレオノール。
 鎖鎌の扱いなど知らないその手足は、刃筋も何も関係なく、ただ叩きつけるように動いていく。
 だが、それでも当たる。
732Classical名無しさん:08/02/10 21:34 ID:TUL75oTg
                                     
733 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:35 ID:lws7J5sU
 愚地独歩のダメージは、既に戦闘不能なほどに拡大している。
 この状況で、受けや守りを考えていては勝てない。
 だからこそ、独歩は打ちだけに専念している。
 そして、エレオノールも守りを捨てている。
 もとより、圧倒的な耐久力を誇るしろがねの体。
 減衰した男の攻撃をいくら受け続けても、致命傷にはならない。
 ならないから、攻めるのみ。
 次第に、殴り合いの均衡は崩れていく。
 どれほどダメージがあろうと、しろがねがいくら強かろうと関係ない。
 武神の攻撃が、徐々に割合を増していく。
 威力を減らしても、速さをなくしても、強さは失わない。
 いつしか、エレオノールの攻撃は全くなくなる。

 トドメだ、と武神の拳が菩薩掌を形作る。
 だがその時……彼の背骨が大きな音を立てて、ぶち折れた。
 大きな音を立て、命令の行き届かなくなった武神の下半身は、一瞬にして機能を停止した。

「こうなることは、分かっていたはずだが……」
734 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:35 ID:lws7J5sU
 体の屋台骨が折れ、立ち上がることも出来ない独歩を見下ろし、エレオノールは無表情に告げる。
 鉛玉は、確かにこの男の体に打ち込まれていたのだ。
 その状態で、攻撃を続けていれば、体に負担をかけ続けていれば、いずれ壊れる。
「どうにも日本人はカミカゼが好きらしいな」
「武道家は……特攻隊じゃ…………ねェ」
 動くのは、既に両腕のみ。それでも前進する。
 ぬれたアスファルトの上で、血まみれの匍匐前進。
 武神の瞳は、ここに来てなお、勝利を捨てていない。
「まだ……戦………える」

 エレオノールの鎌が、独歩に振り下ろされる。
 独歩の拳が、それに合わせてカウンターを放つ。

   グシャ

 両者の拳が交差した……

◆ ◇ ◆

735 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:35 ID:lws7J5sU
 女と男に銃を奪われた直後、三千院ナギは逃げ出した。
 こなた達を見捨てたわけではない。
(待っててくれ、すぐに助けに行く)
 苦しいときは、いつも助けてくれたあの男。
 その男が、今にも消えようという火事場にいるかも知れない。
 その男がいたのなら、あの2人にも勝てる。
 だから呼びに行くのだ。仲間を助けるために。

 特訓したとは言え元は50mすらも走れなかった引き篭もりの体。
 その体に鞭を打ち、必死に前へと進む。
「ハァハァ……」
 燃えさかる火炎から生まれる煙が、ナギの体を襲う。
 ただでさえ、呼吸が苦しい中。煙を吸い込んだナギの体は前進を拒んでいく。
 けれど止まれない。
 スパイスガールの肩を借りて、前進する。
「ハヤテ、どこだハヤテ!」
 空に広がる雨雲は、母の星を隠し、彼女が頼れる人はもうハヤテしかいない。
 必死に、その人の名前を叫ぶ。
「仲間が危ないんだ、ハヤテ。ハヤテ。ハヤテ……助けてくれ……」
 走っていた体は既に歩くことしか出来ず、スパイスガールは体力不足により消えた。
 だが、それでもナギは歩みを止めない。
「ハヤテ……来てくれ。頼む、お前が……」
 辺りを見ても、ハヤテらしき人影は欠片も見当たらない。
 彼女がその事実に気付くまで、そう時間はかからなかった。
「い、いないのか……」
 絶望と疲労で、倒れるナギの体。
736Classical名無しさん:08/02/10 21:36 ID:J/5K8uTQ
                       
737 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:36 ID:lws7J5sU

(どうしてだ……いつだって、助けてくれたじゃないか……)
 ナギの心に宿る英雄ハヤテ。
 呼べばいつも来てくれた。いつだって、側にいてくれた。
(なのに……どうして……)

 そんなナギの元へ一人の男が現れる。話しかける気力もない。
「捜し人か」
「……」
「俺がそのハヤテの代わりになれるかは分からんが……」
「……」
「力になってやることなら出来る」
 男の言葉を聴いて、ナギはその場に倒れこんだ。
 倒れる寸前、男は「助けてくれ……」という小さな声を聞いた。
「あぁ、分かった……」

 男の名は、世紀末救世主・ケンシロウ。

◆ ◇ ◆

738 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:37 ID:lws7J5sU
 背中に銃弾が入った。
 内臓はグチャグチャ、骨だって折れてる。
 痛いなんてもんじゃない。
 こなたはそう思っていた。
 けれど何故だろう。実際には、痛みなんて欠片も感じなかった。
「な……何が……」
 打たれていたはずの体は、全くの無傷。
 それどころか、来ている服まで違う。
 辺りに街はなく、深夜で暗い雨の中だったのに、いつの間にか明るい室内にいる。
「どうしちゃったんだろう……」
 見慣れた8畳の部屋に、小さめの衣装箪笥と四足のちゃぶ台。
 障子戸が部屋を区切り、壁には幼い頃につけた落書きが残っている。
「まさか、ここって……」
 間違えるはずもない、そうじろうと共にすごした我が家だ。
「夢だったの?」
 独歩やナギ、襲い掛かってきた2人の男女。
 そして、お洒落な蝶仮面のパピヨン。
 全て幻の世界にいたということなのだろうか。
739Classical名無しさん:08/02/10 21:37 ID:TUL75oTg
                         
740 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:38 ID:lws7J5sU

 体を起こして、そうじろうを呼ぼうとする。
 が、何かがおかしい。
 もう一度、辺りを見回してみた。
「あ……仏壇が…………」
 母、かなたに供えられたはずの仏壇。この部屋にあったはずなのに、それがない。
「一体どういうこと?」
 怪訝に思うこなたの耳に、声が聞こえた。
「久しぶりね」

 声の主を見つめる。
 ありえない、いるはずがない。
 独歩たち以上に、ありえない人がそこにいる。

「随分大きくなったじゃない……こなた」

 母・かなただった。

◆ ◇ ◆

741Classical名無しさん:08/02/10 21:38 ID:J/5K8uTQ
             
         
742Classical名無しさん:08/02/10 21:38 ID:TUL75oTg
                       
743 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:38 ID:lws7J5sU
 振り下ろされたフランシーヌの鎌は、隻眼の男の頭を叩き潰した。
 彼女は何事もなかったかのように鎌の血を拭う。
(何てクールな奴なんだ……)
 赤木とはまた毛色が違う。
 どちらも病的なまでに冷静であり冷徹だが、赤木が悪魔のような生物性を感じさせるのなら、
フランシーヌは時計のような機械性を感じさせる。

──まさに不条理な世界だ…。くく…だけど……おもしろいと思いません?

 赤木の狂気は、不条理を楽しむというもの。
 無意味な死すらも、博打の必然と言い放つ彼の理念は、常人に理解できない世界だ。
 けれど、フランシーヌはそれと全く違う狂気……いや、狂気ですらないものを孕んでいる。
(この女は、ここが殺し合いの場だろうと、乱交会場だろうと、誰もいない月面の上だろうと、どこでも変わらないに違いない)
 楽しむとか、理不尽とか、そんなものをどこかに置いてきたような女。
 彼女は、機能を停止した男の体には興味もないといった様子で、振り返ることもせずデイパックの確認を行っている。

(素晴らしいじゃないか、ここは……)
 全宇宙を支配するには、超えなければならない山がいくつもある。それをバトルロワイアルは具体的に見せてくれる。
(フランシーヌ、私は君の持つ、その無生物性も超えて見せるさ)

 赤木が見せた狂気と、異常なまでの洞察力。
 フランシーヌの見せる機械的な無感情さ。
 どちらも、ジグマールに欠けている要素だ。

 だが、いずれ。いずれ超えてみせる。
 一ヵ月後、共に戦う仲間のために……
744 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:39 ID:lws7J5sU
【愚地独歩@グラップラー刃牙 死亡確認】
【残り23人】



【D-3 中部 1日目 真夜中】
【マーティン・ジグマール@スクライド】
[状態]:全身に負傷大(傷がいくつか開きました)、顎に打撲、美形
大程度の疲労(しかし意気軒昂)
[装備]:
 アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙
 法儀礼済みボールベアリングのクレイモア地雷(リモコン付き)@HELLSING(未開封)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:アカギを越える
1:エレオノール(名前は知らない)と共に行動し、強敵を減らす。
2:優勝を目指す。
[備考]
※エレオノールと情報交換しました。ただし、彼女本人の名前は聞いていません。
※アカギと情報交換しました。
※人間ワープにけっこうな制限(半径1〜2mほどしか動けない)が掛かっています。
連続ワープは可能ですが、疲労はどんどんと累乗されていきます。
(例、二連続ワープをすれば四回分の疲労、参連続は九回分の疲労)
※ルイズと吉良吉影、覚悟、DIO、ラオウ、ケンシロウ、キュルケはアルター使いと認識しました。
※吉良吉影の能力は追尾爆弾を作る能力者(他にも能力があると考えています)だと認識しました。
※DIOの能力は時を止める能力者だと認識しました。
※ギャラン=ドゥはエネルギー不足で外には出てこられなくなりました。
 ですがジグマールは、人間ワープの能力を問題なく使えます。
745Classical名無しさん:08/02/10 21:39 ID:TUL75oTg
                           
746 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:39 ID:lws7J5sU
【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:全身に打撲と裂傷(しろがねの再生力で再生中)
[装備]:本部の鎖鎌@グラップラー刃牙、イングラムM10+予備マガジン×6
[道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式
[思考・状況]
基本:加藤鳴海以外を皆殺し
1:ジグマールと共に行動し、強敵を減らす。
2:隻眼の男(愚地独歩)が持っていた武器の確認。
3:殺戮を繰り返せば、ナルミは笑ってくれるはずだ……。
4:強い者とは無理に戦わないが、勝機を逃すつもりはない。
[備考]
※ジグマールと情報交換をしました。
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※夢の内容はハッキリと覚えていますが、あまり意識していません。
※エレオノールが着ている服は原作42巻の表紙のものと同じです。
※ギイと鳴海の関係に疑問を感じています。
※メイクは落としました。
※フランシーヌの記憶を断片的に取得しています。
※「願いを叶える権利」は嘘だと思っています。
※制限についての知識を得ましたが、細かいことはどうでもいいと思っています。
※ケンシロウとキュルケを恋人同士だと思っています。
747 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:40 ID:lws7J5sU
【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:重傷、気絶中
[装備]:時計型麻酔銃(1/1)麻酔銃の予備針8本、エンゼル御前@武装錬金(核鉄状態)
[道具]:支給品一式、フレイム・ボール@ゼロの使い魔(紙状態)、んまい棒@銀魂、
    綾崎ハヤテの女装時の服@ハヤテのごとく
[思考・状況]
基本:みんなで力を合わせ首輪を外し脱出。
1:気絶中で夢を見ている。
2:かなたと話す。
[備考]
※独歩・シェリスと情報交換をしました。
※ナギ、独歩等と大まかな情報交換をしました。
※独歩の支給品にあった携帯電話がかかったかどうかは未確定。
※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。それ以上離れると核鉄に戻ります。
748 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:40 ID:lws7J5sU
【D-4 北東の民家(鎮火)/一日目 真夜中】
【ケンシロウ@北斗の拳】
[状態]:カズマのシェルブリット一発分のダメージ有り(痩せ我慢は必要だが、行動制限は無い)全身各所に打撲傷
    キング・クリムゾンにより肩に裂傷 両目損失。吐き気はほぼ、おさまりました(気合で我慢できる程度)
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム(般若心境と書かれた紙(エニグマ/開かれていません)、他2つ、本人確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない。
1:目の前の少女を助ける。
2:エレオノールを捜索してキュルケの仇を討つ。
3:アミバを捜索、事と次第によれば殺害。
4:ラオウ・勇次郎他殺し合いに乗った参加者を倒す。
5:助けられる人はできるだけ助ける。
6:乗ってない人間に独歩・アミバ・ラオウ・勇次郎・エレオノールの情報を伝える。
[備考]
※参戦時期はラオウとの最終戦後です。
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました 。
※秘孔の制限に気付きました。
※ラオウが無想転生を使えないことに気付きました。(ラオウは自分より過去の時代から連れて来られたと思っています)
※民家の前に消防車が止まっています。
※オリンピアが懸糸の切れた状態で消防車の助手席の後ろに座っています。
<首輪についての考察と知識>
※首輪から出ている力によって秘孔や錬金が制限されていることに気付きました。
首輪の内部に力を発生させる装置が搭載されていると思っています。
749 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:40 ID:lws7J5sU
【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】
[状態]軽い打撲、右頬に軽いダメージ、精神疲労大
[装備]スパイスガール@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]支給品一式(食料1食分消費)
[思考・状況]
基本:殺し合いを止め、家に戻る
1:目の前の男と共に独歩、こなたの下へ戻る。
2:ハヤテ、ヒナギク、ジョセフと合流する。
3:カズキの恋人という『斗貴子』とやらに会って、カズキの死を伝える。
4:こなた・独歩と共にパピヨンを待ち学校へ向かう。
5:ハヤテに事の真相を聞きだし、叱りつける。
6:可能ならばしろがねを説得する。
参戦時期:原作6巻終了後
[備考]
※スパイスガールは疲労により出せません。
※ヒナギクが死んだ事への疑念は晴れました。
※独歩の話を聞き、光成の裏に黒幕が居ると睨んでいます。
※鳴海、独歩と情報交換をしました。
※こなたとおおまかな情報交換をしました。
750Classical名無しさん:08/02/10 21:40 ID:TUL75oTg
                                
751Classical名無しさん:08/02/10 21:41 ID:J/5K8uTQ
            
        
752 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 21:42 ID:lws7J5sU
終了
753Classical名無しさん:08/02/10 21:44 ID:J/5K8uTQ
>>752
独歩ぉぉぉぉぉぉぉぉっつ!!
頑張ったよ、独歩、強かったよ独歩。
エレオノールとジグマールのコンビが強いとは。
タッグを組んだマーダーの凄みを死ぬほど堪能させていただきました。
全編通して伝わってくる、寒気のようなものが真によい。
これはGJ! を通り越してブラボーと叫ばざるを得ない……。
754Classical名無しさん:08/02/10 21:46 ID:TUL75oTg
投下乙。って独歩おおおおおおおおおおおお!
もういい! 疫病神ナギは自殺してくれ! 頼む!
マーダーチームの絶妙なプレーは素晴らしかったです。
徳川さんの独歩ファンぶりもナイス!
755Classical名無しさん:08/02/10 21:50 ID:G1gqHCgY
投下乙
サービスシーンまで見せた独歩ちゃんがここでリタイアなんてあんまりだなぁ〜
対主催の一頭だと思っていたのだが
しかしジグマールとエレのコンビはなかなか強力じゃあないか
独歩チームが一気に壊滅状態だなんてホントパロロワは地獄だぜフゥーハーハー

そしてケンシロウ!キュルケの弔い合戦になるか期待だ
756Classical名無しさん:08/02/10 22:01 ID:bF8cbGiA
投下乙
独歩ちゃん……!
この散り方はショックだなぁ。こなたも薮蛇つついただけだし。
でもってケンシロウは間に合うんだろうか。
757Classical名無しさん:08/02/10 22:02 ID:olro1j0M
投下乙ッ!!
独歩さん、悲しいよ…
パピヨンに見せた漢らしいやさしさがまた見たかった
勇次郎と戦いができないとは無念ッ!!

ケンシロウとナギ、マーダコンビがどう動く?
そしてこなた、死ぬなよぉおおお
758 ◆9igSMi5T1Q :08/02/10 22:03 ID:lws7J5sU
【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:不明、気絶中
[装備]:時計型麻酔銃(1/1)麻酔銃の予備針8本、エンゼル御前@武装錬金(核鉄状態)
[道具]:支給品一式、フレイム・ボール@ゼロの使い魔(紙状態)、んまい棒@銀魂、
    綾崎ハヤテの女装時の服@ハヤテのごとく
[思考・状況]
基本:みんなで力を合わせ首輪を外し脱出。
1:気絶中で夢を見ている。
2:かなたと話す。
[備考]
※独歩・シェリスと情報交換をしました。
※ナギ、独歩等と大まかな情報交換をしました。
※独歩の支給品にあった携帯電話がかかったかどうかは未確定。
※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。それ以上離れると核鉄に戻ります。
※傷の状況については、あくまで回想の中で思い込んでいるだけで、実際とは関係あるかどうかは分かりません。
----

かなり苦しいですが、
>>738はこなたの心象世界意見であると言うことで、実際に内臓がどうとか、骨がどうとか言うのは分からないことにしておいてください。
759Classical名無しさん:08/02/10 22:04 ID:ADAc.ZVg
 私の…スーパードッポちゃん…。
760Classical名無しさん:08/02/10 22:50 ID:RnuIOufE
乙です
武神・独歩の執念、堪能させていただきました。
そしてそれを難なく凌駕した頭脳派Mコンビの立ち回りも見事の一言。
実に名勝負でした、GJ
761Classical名無しさん:08/02/10 23:25 ID:48FRTG7.
正直、言うほど面白くはなかったかな。
銃弾程度に武神がやられたり、ナギが逃げ出したり、こなたが邪魔したり。
マーダーコンビがいい感じの連携の割に、独歩側が幼稚な動きにしか見えなかった。
762Classical名無しさん:08/02/10 23:55 ID:B697okXY
お疲れ様です、感想は絶賛だけじゃなくてもいいんですよね?
>>761さんほどではないですが、エンゼル御前って村雨のクルーザーにさえ必中って程
正確だったのに、全くあたらないのに違和感を感じました、独歩の死に様は素晴らしいと
思うのですが・・・ 9パラじゃ頭にでも受けない限り平気なんじゃと思ってしまいました
763Classical名無しさん:08/02/11 00:05 ID:3AG4ee7c
>>762
>お疲れ様です、感想は絶賛だけじゃなくてもいいんですよね?

>>1 にある毒吐きスレが見えないのか?
そういう感想は、毒吐きスレで言うもんだ。
764 ◆6YD2p5BHYs :08/02/11 00:07 ID:wcyEJtlk
えー、これより投下します。
765Classical名無しさん:08/02/11 00:08 ID:0jOHkKPY
                         
766Classical名無しさん:08/02/11 00:09 ID:ai3aCOZ.
救援の支援
767Classical名無しさん:08/02/11 00:09 ID:ai3aCOZ.
支援

「……麻酔もないから痛いだろうが、動くなよ。下手に動かれると余計にややこしいことになる」
「んッ……グッ……うっ……!」

適当に侵入した民家の中。
優しさの欠片もない前置きの後、鼻の穴から1本の箸が突っ込まれる。
ごりっ、ごりっと、潰れた鼻骨が鼻腔の側から押し上げられる。
男の言葉通りの痛み――いや、痛いなんてものではない、思わず叫びだしたくなるような激痛だ。
それでも内側から持ち上げ、外側から形を整え、へし曲がっていた鼻が元の形に近い状態になる。
鼻の上に横一文字の傷痕が残る、普段通りの彼女の顔だ。

続いて鼻の穴に突っ込まれたのは、何の変哲もない1本のストロー。
男は迷わずその一方の端に口を当てると、ズズッと吸い出す。
ペッ。
乱暴に吐き捨てられた赤黒いゼリーのようなものは、鼻腔の奥に溜まっていた固まりかけの血液と鼻水。
二度三度それを繰り返し、もう出てくる液体が無くなったところで、ようやくストローが引き抜かれる。

「……これでよし。乱暴な処置だが、多少は呼吸が出来るようになったんじゃないか?」
「……ああ。だいぶ楽になった。ありがとう……と言っておくべきかな」
「礼はいらん。あくまで俺のためになるからやったことだ。
 お前の鼻が潰れてようが曲がってようが構わないんだが、お前の動きに支障が出るのは困るんでね」

鼻の骨折で困るのは、潰れた鼻腔と溢れる鼻血のせいで呼吸が困難になることだ。
口は塞がっていないので窒息はしないが、この状態で激しい運動をすれば途端に息苦しくなる。動きが鈍る。
今、男が行った鼻骨骨折の整復も、美容的な観点より運動能力の維持を重視したものだ。
乱暴に縫合された肩から胸にかけての傷も、右腕に当てられた添え木も、似たような観点で施された処置だ。
『後に傷を残さないこと』よりも、『今すぐ動けるようになること』に重点を置いた手当て。
醜い傷痕を残すため、普通なら未来ある年若い乙女に施すような治療ではない。

「さて、これで大体終わりか。あとは……そうだな、これをたっぷり飲んでおけ」
「……ペットボトル? 中身は水ではないようだが……」
769Classical名無しさん:08/02/11 00:09 ID:CvguOnNE
支援します
770Classical名無しさん:08/02/11 00:10 ID:aCd4F1uk
    

ドン、とテーブルに置かれたのは、共通支給品の水入りペットボトル。
ただし既にその封は開かれ、中に満たされているのはほんのり白く染まった液体。

「スポーツドリンクだ。
 こんなこともあろうかと、ホームセンターでレトルト食品と一緒に確保しておいた。
 水に溶かす粉末タイプの奴でな。もっとも、お前に飲ませるつもりで用意してたわけじゃないが」
「…………」
「お前の身体は、どう見ても血を流し過ぎだ。まだショックで心臓が止まっていないのが不思議なくらいだぜ。
 血が流れた分だけ体液量は減っているわけで、早急に補っておく必要がある。
 本当は輸血をしたい所なんだがな……あるいはせめて、リンゲルの点滴でも出来りゃいいんだが。
 まあ、無いものねだりしても仕方がない。あるもので最善の手を打っておくしかない」

スポーツドリンクなら吸収も早いしミネラル分も補えるしな、と呟いた男は、そしてふと女の視線に気付く。
疑うような目。警戒を剥き出しにした目。
男は思わず苦笑する。女の懸念に気付いて、苦笑いを浮かべる。

「ああ……心配しなくても、毒なんて入れていないぜ。今はまだ、そんな時期じゃない」
「それはつまり、時期が来れば私に毒を盛るつもり、ということか?」
「毒でなく銃弾か刃物かもしれないぜ。その時の状況次第だ。だが、今はまだそのつもりはない」
「『今はまだ』ね」
「ああ、『今はまだ』だ」

女は薄っすらと笑う。男も薄っすらと笑う。
どちらも心温まるような明るい笑いではなく、見る者の背が寒くなるような歪んだ微笑。
共にドブ川の濁ったような目で、全く笑っていない目で、2人は唇の端だけを持ち上げる。

「全く……お前との共闘は気が休まる暇もなさそうだな、川田章吾」
「それはお互い様だ、津村斗貴子。
 なにせ、どんなに頑張ったって『生き返る』のは1人だけなんだからな」
772Classical名無しさん:08/02/11 00:10 ID:0jOHkKPY
                
773Classical名無しさん:08/02/11 00:10 ID:11xMAl52
si

        *     *     *

津村斗貴子はその男が目の前に現れた時、てっきり仇を討ちに来たのだと思った。

高速で疾走するスケートボードに乗り、斗貴子の前に回りこんできた坊主頭の男。
先の遭遇では見せなかった巨大な銃……いや、大砲と称しても間違いのない凶器を構え、目には強く鋭い光。
病院目指して傷ついた身体を引き摺っていた斗貴子は、一瞬、苦しい戦いをも覚悟した。
既に気力も体力も尽きかけ、その身に負った傷は深く、今度は策も逃走ルートも用意していない。
こちらの手持ちのカードはあらかた明かしてしまった後であり、対する敵の武器の情報は全く無い。
あの一番の難敵・葉隠覚悟がいないのは幸いだったが、それでも楽観などできる状況ではなかった。
が……まさかそこで、あんな申し出を受けることになるとは。

(『手を組まないか』、か……。フフフッ、まさかアイツがあんなことを言ってくるとは思わなかった)

そう。
川田章吾が全ての感情を噛み殺したような表情で持ちかけたのは、まさかの同盟の申し出。
曰く――
彼もまた、斗貴子に殺されたつかさの復活を目指し、優勝狙いに方針を変更したこと。
舌先三寸で死蔵されていた武器を掠め取り、覚悟たちとの正面衝突を避けて逃げてきたこと。
しかし彼の力だけでは、覚悟や勇次郎といった強者たちに勝てる自信はまるでないこと――
最初は何か自分を騙そうとしているのだと思った。嘘でも吐いているのかと思った。
しかし、彼の目に宿る光は、本物だった。

『……いろいろ考えたんだがな。腹立たしいが、他に組める相手は居そうにねぇんだ。
 そこそこ戦えて、優勝狙いで、でも1人でやることには限界を感じ始めてる。そんな奴はな。
 お前だって、覚悟の奴と正面からやりあって勝てる自信はないだろう?』
『だ、だが私は、あの女を……』
『状況がこうじゃなけりゃ、つかささんの敵討ちも考えるがね。
 いや正直言って、まだ完全には諦めちゃいない。本当なら、今すぐお前を八つ裂きにしたいんだぜ。
 でもな、悔しいがこれも優先順位って奴だ。何も考えず目先の感情を優先させるほど、俺は馬鹿じゃない』
775Classical名無しさん:08/02/11 00:11 ID:CvguOnNE
川田あああああああああああああああああ
何してんだああああああああああああああ
776Classical名無しさん:08/02/11 00:12 ID:aCd4F1uk
   
777Classical名無しさん:08/02/11 00:12 ID:ai3aCOZ.

778Classical名無しさん:08/02/11 00:12 ID:0jOHkKPY
                               
779Classical名無しさん:08/02/11 00:13 ID:11xMAl52
sien
川田は淡々と語る。
最愛の人の仇を目の前にしているにしては、あまりに淡々とした、平坦過ぎる態度。
その彼の表情に、斗貴子は理解した。直感的に理解してしまった。
こいつは……狂っている。
斗貴子とはまた違う形で、でも度合いとしては十分に、狂っている。
言ってみれば、それは静かな狂気。
たった1つの目的のために、「それ以外」の全てを捨てる覚悟を決めてしまった者の眼。

――面白いゲームになりそうじゃないか。

心の底のどこか奥深くで、何かが囁いた。
先の戦いで、覚悟との戦いの第一ラウンドの最中に聞こえてきた悪魔の囁き。
身の破滅すら招きかねない危険な遊戯を目の前に、それでも愉快そうに笑う声。
遥か深淵から響くその哄笑に、思わず斗貴子も笑みを浮かべてしまう。

そう……これは『ゲーム』。殺し合いのゲームの中に挿入された、『もう1つのゲーム』だ。
川田章吾が提示した『同盟関係』は、いずれ破綻することが約束されている、実に危ういもの。
優勝狙いの人間が2人。復活させたい死者も2人。
だが実際に優勝できるのはたった1人、叶えられる願いも1つきり。
2人の間には遺恨もあり、想い人への想いも強いものがある。優勝を譲り合うことなどありえない。
しかしここで協力でもしなければ、2人に進む道が無いのも事実。
会場内を闊歩する強者たちに怯え、隠れ、彼らの相討ちを願っても、都合のいい展開になるとは限らない。
下手をすれば、勝ち目など有り得ぬ圧倒的強者と2人きり、という終局の形もありうるのだ。

ここで川田と組めば、その最悪の結末を回避できる余地が生まれる。最低でも2対1の形には持ち込める。
川田との同盟は、また同時に斗貴子が望んでいた「戦力の強化」にも繋がる。
彼自身の言によれば、正規の戦闘訓練こそ受けていないものの銃は扱えるという。武器も持参してきている。
その無骨な外見からは想像しづらいが、医師の父の下でちょっとした医療技術も身につけているらしい。
いや、しかし、そんなものが無くても「協力者が1人いる」というだけで状況は大きく変わってくるわけで。
取れる作戦の幅も広がる。戦術の幅も広がる。発想の幅も広がる。単純に手数が増え、戦力も上がる。
やりようによっては、1人では勝てないような強敵を倒すことも可能かもしれない。
781Classical名無しさん:08/02/11 00:13 ID:lwpFR8L6
 
782Classical名無しさん:08/02/11 00:13 ID:IdJ0LJcw
ちょwwwwwwwwwwwwwwwwかwwwwwwwわwwwwwwwwwだwwwwwwwww支援
783Classical名無しさん:08/02/11 00:14 ID:lwpFR8L6
 
784Classical名無しさん:08/02/11 00:14 ID:aCd4F1uk
     
785Classical名無しさん:08/02/11 00:14 ID:CvguOnNE
 
786Classical名無しさん:08/02/11 00:14 ID:3AG4ee7c
      
     

つまりは、川田の提案はこういうこと。
同盟の期限は定めない。同盟の条件も定めない。
「とりあえず」手を組み、「とりあえず」2人で協力して参加者を減らしていく。
いつ、どちらが裏切るかは分からない。というより、いつか必ず裏切る時が来る。
会場内の他の参加者の動向、手強い者たちの生存状況を見極めながら、いつか決断せねばならない。
決断できるチャンスは1回きり。決断を下せるのは1人きり。
斗貴子が川田を早めに切ってしまえば、強者に囲まれ共闘する仲間を失い、斗貴子は苦境に立たされる。
斗貴子が川田を切る決断を遅らせれば、逆に背中から撃たれてしまう。
そして、それらの条件は川田の側にとっても同じことで――!
裏切り上等、恨みっこなし。
自制心と状況判断能力が問われる、命がけのギャンブルへの誘い。
双方共に、最適最善の「同盟破棄のタイミング」を見定めることのみが、優勝への道を開きうる。

――面白い。彼の企みも彼の想いも、実に面白いじゃないか。

斗貴子は心の奥底から含み笑いを漏らす。
こういう緊張感は嫌いではない。
再殺部隊から逃れつつ、仇敵パピヨンと呉越同舟の探索行をしていた時のことが思い出される。
緊張を孕みながらも、あれは確かに楽しい一時だった。充実感溢れる日々だった。
あえて因縁深い敵と行動するというのも、あながち悪くない。そいつが優秀ならば尚更だ。
パピヨンとはまた異質ながら、こういう発想が出来る川田も優秀と言っていいだろう。

そしてまた、彼の動機もいい。
斗貴子と同じような喪失感を抱きながら、ルイズのように自分を非難してきたりはしない。
むしろ斗貴子と共に、斗貴子と同じ方向に向かって暴走していこうとする魂。
だが、彼の大事な人の命を奪い、彼の暴走のきっかけを作ったのは、他ならぬ斗貴子自身なのだ!
まるで彼の運命や因縁が全て掌の上に載っているような錯覚。神にでもなったかのような万能感。
人の運命を弄ぶ愉悦を知ってしまった今の彼女に、その誘惑はあまりに強すぎた。

しばらくの逡巡の後、斗貴子が川田の提案に頷いたのは、だから、必然だったのかもしれない。
788Classical名無しさん:08/02/11 00:15 ID:3AG4ee7c
      
          
789Classical名無しさん:08/02/11 00:15 ID:11xMAl52
sssasss
790Classical名無しさん:08/02/11 00:15 ID:0jOHkKPY
川田氏ねw

        *     *     *

覚悟たちの所から逃げ出した時には、川田章吾はプランの大筋を練り上げていた。

この殺し合いの場において彼に有利な点があるとすれば、それは過去の経験だろう。
今の状況によく似た『プログラム』への2回の参加。そして、2回の優勝経験。
2回目の「優勝」自体は厳密に言えば微妙なものではあったが、それはさておき。

川田章吾は、誰よりも「1人で戦い抜くこと」の限界を知っていた。
この会場にいる誰よりも深く、「数の力」の意味を知っていた。

1人きりでは戦えば戦うほど消耗していく。1人きりでは満足な休息も取れはしない。
人数が増えればそれだけ手数も増えるし、周囲を警戒する目と耳も増える。
これらの事情は、超人たちが闊歩するこの殺し合いの場でも変わりはない。
いや、超人たちには関係が無くとも、彼らのような常人にとっては外せない視点、とでも言うべきか。
それは、生き残って主催者へのカウンターパンチを狙う場合も、単純に優勝を狙う場合も変わりはない。
むしろ譲歩や和解に持ち込めない分、優勝を狙う場合にこそ。

(だがそうなると、組む相手の選定に困っちまう。
 七原たちみたいなお人よしを探して騙して利用する、という手も無いわけじゃないんだが……どうもな)

そんな卑怯な手が取れるくらいなら、覚悟やヒナギクと別れたりはしない。
川田章吾は頭も回り、演技にもそこそこ自信があり、目的のためなら手段を選ばない部分があるが……
それでも根っこの所では善良な性格だ。本当の嘘はつけない性格だ。
彼らとの間に築いた信頼を、最悪の局面で裏切ることなど出来なかった。
だからああして別れを告げた。せめて憎み、恨んでもらうためにも、ああいう別れ方をした。
そう、どこかで「パートナー」を裏切り殺さねばならないのだとしたら。

(どうせ裏切ること前提の同盟なら、そうと分かって組んでくれる奴の方が気が楽だ。
 たとえそのせいで、逆に俺が殺される恐れが生じるとしても、だ)
792Classical名無しさん:08/02/11 00:16 ID:QyF7.Bto
そこまで堕ちたか、川田……。
組むなら殺し合いに乗っている奴がいい。本気で優勝を狙っている奴がいい。
そういう奴らなら他の人間を殺すのに躊躇はしないだろう。確実に参加者を減らしていける。
確実に、優勝に近づける。確実に、つかさの復活に近づける。
そして最後には、後腐れなく縁を切り、後腐れなく殺し合うことが出来る。

(だが……奴にも言ったが、そうなると「組める奴」ってのは限られてくるんだよなァ……)

川田のこの計画の最大の問題――それは、その肝心のチームメイト候補の選定だ。
殺し合いに乗っている者は、自分の力に自信がある者ばかりだろう。あるいは、自分の支給品の力か。
彼自身、過去2回の『プログラム』で痛いほどよく知っている。
ましてやこの場には、過去の『プログラム』には居なかった異能の者たちがおり、異能の品々があるのだ。
銃や刃物では勝機のカケラも見出せないような絶対的強者というものが、存在する。
そういう奴らは、川田が同盟を持ちかけても鼻先で笑うだけだろう。そしてその場で瞬殺されて終わりだ。

同盟相手は、既に殺し合いに乗っている必要がある。
同盟相手は、組むに値するだけの戦闘力を持っている必要がある。
同盟相手は、しかし1人で戦い抜くことには限界を感じていなければならない。
同盟相手は、チームを組むメリットが理解できる程度には、知性と冷静さを保っていなければならない。

もしこの時、ジグマールやエレオノールの存在を知っていたなら、また違う展開にもなっていたかもしれない。
だが、彼はその2名のことを知らなかった。その2名の今現在の状況を知らなかった。
彼がこの時点で知っていたほぼ唯一の候補、それは。

(……これしか相手がいねぇなら、仕方ねぇよな)

確実に殺し合いに乗っている人物。たった1人で戦っている人物。
策を巡らせる頭の良さもあり、噛み合わないながらも会話は成立し、つまりそれは交渉する余地があり。
覚悟という強者を前に逃げの一手しか打てず、数の力を身をもって体験し、限界を感じているはずの人物。
そして同時に、川田自身が誰よりも深く憎み、手酷い裏切りをしたとしても心が痛まないような相手。

津村斗貴子。柊つかさの、仇だった。
794Classical名無しさん:08/02/11 00:17 ID:3AG4ee7c
        
            
795Classical名無しさん:08/02/11 00:18 ID:ai3aCOZ.
川田も変わったな
796Classical名無しさん:08/02/11 00:18 ID:aCd4F1uk
   
797Classical名無しさん:08/02/11 00:18 ID:CvguOnNE
川田…つかさが泣くぞ…?
798Classical名無しさん:08/02/11 00:18 ID:0jOHkKPY
                     

(もっとも、あのまま奴にも逃げられちまう可能性もあったが……ま、そこは結果オーライって奴だ。
 怒りを我慢することさえできるなら、これ以上ない理想の同盟相手だしよ)

発見は容易だった。
覚悟とヒナギクから受けた傷は相当の深手だったらしく、彼女の逃走した後には点々と血痕が残されていた。
彼はただその後を追うだけで良かった。
負傷ゆえに彼女の移動スピードは遅く、すぐに追いつき、その前に回りこむことが出来た。
ハルコンネンも手元にあったし、あのまま戦っていればつかさの仇を取ることも出来たかもしれない――だが。

(だけど、それじゃダメなんだ。それじゃつかささんは生き返らない。
 この女が俺の申し出を蹴っていたなら、また違ったんだろうが)

つかさを生き返らせるために、何でもすると心に決めた。どんな状況にも耐え抜くと決めた。
そのためなら敵討ちすら諦め、先延ばしにする。この世で最も憎んでいる相手と手を組み、共闘さえする。
徹底的な合理性追及と、自然な感情の蹂躙。激情ゆえにその激情を押さえ込むという矛盾。
川田章吾は、狂っていた。
彼は静かに、冷静に、穏やかに狂っていた。

(それに……こいつ、既にボロボロじゃねぇか。こりゃ、下手に放り出すわけにもいかねぇぞ。
 ここで別れたりしたら、きっとすぐに誰かに殺されちまう。俺の知らない所でコイツに死なれちまう。
 流石にそいつは我慢ならねぇ展開だぜ)

津村斗貴子の身体は、明らかに満身創痍だった。むしろ死んでないのが不思議なくらいの状況だった。
彼女は病院を目指していたようだが、そこまで持つかどうかも怪しいくらいの出血量。
血痕を残さぬよう注意しながら手近な民家に連れ込んで、急いで応急処置を施して、ようやく一息ついて。
彼は、歪んだ笑みを浮かべ、心の中で呟く。

(お前はこんな所では死なせない。こんな所で誰にも知られず失血死なんて、そんな楽な死に方は許さない。
 お前には、つかささんを殺した罪を償ってもらう必要がある。
 お前には、つかささんの蘇生のために他の参加者を殺してもらわなきゃならねぇ。
 もっとボロボロになるまで戦わせて、戦わせて、戦わせ続けて、最後には俺がこの手で引導を渡してやる)
800Classical名無しさん:08/02/11 00:18 ID:lwpFR8L6
  
801Classical名無しさん:08/02/11 00:19 ID:3AG4ee7c
         
      
802Classical名無しさん:08/02/11 00:19 ID:aCd4F1uk
    

決して許さないからこそ、傷の手当てをしてやる。
いつか必ず自分の手で殺すために、共に行動する。
他の参加者に復讐対象を奪われないために、彼女をフォローし援護しその命を守る。
斗貴子の願いであるという、「武藤カズキを生き返らせて2人で暮らす」。
それが決して叶わない夢であろうことを知った上で、あえてそのことを語らない。
主催者側の狙いに関する、自分たちの考察を伝えない。
丁寧に説明してやれば彼女を絶望に叩き込めるはずだが、今はまだ、あえて教えてやらない。

それは明らかに歪んだ思考。
今の川田にとって、津村斗貴子はただ殺すだけでは飽き足りない相手だ。
徹底的に利用し、その苦痛と絶望をどこまでも引き伸ばし、最後の最後に無惨な死に方を与えてやるのだ。

幸い……と言っていいのか分からないが、斗貴子の戦闘スタイルは、槍を用いた接近戦。
対する川田は、銃による銃撃。
自然と斗貴子が前衛・川田が後衛というポジションに落ち着くことだろう。
であれば、戦闘があれば傷を負うのは斗貴子の方だ。さらなる苦痛を味あわせることができる。
余裕があるようなら、流れ弾を装い弾を当ててもいい。余計な傷を負わせてやってもいい。
いや、最後の時には必ず背中から撃ってやる。最悪のタイミングで裏切ってやる。そして絶望を教えてやる。
誇りも希望も何もない、無為で無駄でどうしようもなく惨めな死に様こそ、この女には相応しいはずだ。

(だから……こんな所で動けなくなって貰っちゃ、困るんだ。
 『今はまだ』お前を殺さない。『今はまだ』毒も盛らない。『今はまだ』お前の傷の手当てをしてやる。
 お前は武藤カズキのためじゃなく、柊つかさのために戦って、柊つかさのために苦しみながら死ぬんだ)

焼けつくような憎悪を歪んだ笑みで押さえ込み、心に突き刺さる小さなトゲを無理やり飲み下し。
川田章吾は、自らの意思で、その静かな狂気を選択したのだ――

        *     *     *
804Classical名無しさん:08/02/11 00:20 ID:QyF7.Bto
 
805Classical名無しさん:08/02/11 00:20 ID:0jOHkKPY
川田いつかぶっ殺すw

「……準備はいいか?」
「ああ。しかし、この服は裾が短いな。動きやすいのは有り難いんだが」
「他に無かったんだ、我慢しろ。それに、お前の汚い下着なんて、見えたところで何の興味も湧かねぇよ」
「ふん。私だってカズキ以外の男に興味は無いさ。カズキはお前のように冷たくはなかった」
「そりゃどうも。俺だって優しくする相手は選ばせて貰うさ」

一通りの手当てを終え、僅かながらも休息を取り、互いの知っている参加者の情報を交換した後。
2人は潜んでいた民家から忍び出ながら、剣呑な囁きを交わす。
川田章吾は先ほどまでと同じ格好。対して、津村斗貴子は服装が大きく変わっている。
スタイリッシュな詰襟の制服。冗談のように短いミニスカート。セットで用意された黒のニーソックス。
柊つかさに支給され、川田章吾が遺品の1つとして持ってきたホーリーの制服だった。
斗貴子が着ていたセーラー服は、既に散々に血で汚れている。止血のために裂いてしまった部分もある。
2人して殺し合いに乗るにしても、騙し討ちのような搦め手を使える余地は残しておきたい。
血に汚れた服を着て、初対面の相手に無闇に警戒されるのは得策ではない――そう考えての着替えだった。
どういうわけだか、民家の中には彼女の体格に合う服は見当たらなかったことだし。

「では、行くぞ。最初はどっちに向かう?」
「そうだな……まずは……」

いつ寝首を掻かれるかも分からぬ緊張感が、かえって2人の思考を研ぎ澄ます。
深い憎悪と確かな打算で結ばれた2人は、そして新たな獲物を探すべく、深夜の街へと踏み出した。


【F-4 1日目 真夜中】
【川田章吾@BATTLE ROYALE】
[状態] 健康
[装備] マイクロウージー(9ミリパラベラム弾13/32)、予備マガジン5、ジッポーライター、
    バードコール@BATTLE ROYALE
[道具] 支給品一式×3、チョココロネ(残り5つ)@らき☆すた、ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン 、
    文化包丁、救急箱、裁縫道具(針や糸など)、ツールセット、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、
    缶詰やレトルトといった食料品、薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
807Classical名無しさん:08/02/11 00:21 ID:CvguOnNE
川田…目を覚ませ!
つかさがどんな思いで…息も絶え絶えの状態でナイフを振るう意地を見せたか…
どんだけ優しいお前が好きだったか分かってるのか!?orz
808Classical名無しさん:08/02/11 00:21 ID:ai3aCOZ.
川田…
809Classical名無しさん:08/02/11 00:21 ID:3AG4ee7c
                
        
    マイルドセブン(4本消費) 、ツールナイフ 、つかさのリボン
    ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾5発、劣化ウラン弾、残弾6発)@HELLSING
[思考・状況]
基本行動方針:最後の1人になってつかさを生き返らせ、彼女を元の世界に戻す。
1:当面、斗貴子と組んで他の参加者を減らしていく。斗貴子もいずれ必ず殺す。
2:覚悟やヒナギクとはなるべく闘いたくない。
参戦時期:原作で死亡した直後
[備考]
※桐山や杉村たちも自分と同じく原作世界死後からの参戦だと思っています
※首輪は川田が以前解除したものとは別のものです
※津村斗貴子と、他の参加者の動向に関する情報交換をしました。
※つかさの遺体を、駅近くの肉屋の冷凍庫に保管しました。
※神社、寺のどちらかに強化外骨格があるかもしれないと考えています。
※主催者の目的は、@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、A最強の人間の選発、の両方。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくためのもの。 零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。


【津村斗貴子@武装錬金】
[状態]:しろがね化、心臓代わりに核鉄、精神崩壊、
    全身に火傷の痕、頭部に傷痕、鼻骨骨折(簡単な整復済み)、右手首消失、
    右手複雑骨折(添え木つき)、胸部骨折、右肩から胸に深い裂傷(簡単な縫合済み)、腹部に裂傷
    いずれの怪我もきっちりと手当て済み・核鉄としろがねの力で回復中
    普段のセーラー服ではなく、ホーリーの制服@スクライド を着用。
[装備]:サンライトハート@武装錬金、ホーリーの制服@スクライド
[道具]:支給品一式×2 (カンテラのみ-1)
[思考・状況]
基本:最後の一人になり、優勝者の褒美としてカズキを蘇らせ、二人きりで暮らす『夢』を叶える。
1:当面、川田と組んで他の参加者を減らしていく。川田もいずれ必ず殺す。
2:強者との戦闘はできれば避け、弱者、自動人形を積極的に殺す。
3:アカギ、吉良、勇次郎、軍服の男(暗闇大使)は最終的に必ず殺す。アカギは特に自分の手で必ず殺す。
※川田章吾と、他の参加者の動向に関する情報交換をしました。
811Classical名無しさん:08/02/11 00:21 ID:11xMAl52
s支s援s
812Classical名無しさん:08/02/11 00:21 ID:lwpFR8L6
いやっほうーエロ師匠最高ー!
813 ◆6YD2p5BHYs :08/02/11 00:21 ID:wcyEJtlk
投下完了。
この2名がこれからどちらに歩き出すかは、次の書き手さんにお任せします。
814Classical名無しさん:08/02/11 00:22 ID:QyF7.Bto
GJ。
ただ一言。
川田、TQN、お前らまとめて地獄へ堕ちろw
815Classical名無しさん:08/02/11 00:24 ID:.WjyZyFY
投下乙
川田、きみはじつにばかだな(いい意味で)
しかもTQNの手当までしてつかさの思いをこれでもかと言っていいほどに踏みにじってるなw
近距離TQNに遠距離の川田、まじにやばいコンビになりそうだ
816Classical名無しさん:08/02/11 00:24 ID:3AG4ee7c
>>813
超絶GJ!!
あなたのSSを読み返して、あなたならこういう話を書いてくれると信じてましたとも。
最高の展開ですね。思考に無理がなく、かつビンビンと伝わってくる狂気。
こうでなくっちゃあねえ……。
重ねてGJ!!
817Classical名無しさん:08/02/11 00:24 ID:ItzViJg2
GJです。
本当、嘘だと言ってくれ、川田。
TQNと比べて冷静な思考の下に狂っているから、TQN以上に手遅れなのかもしれないけど。
818Classical名無しさん:08/02/11 00:25 ID:IVpc10RI
819Classical名無しさん:08/02/11 00:26 ID:aCd4F1uk
川田、堕ちたお前を見て俺は思った。
最高だ。
もう、このコンビを組ませるなんて最高!
ここまでいくと堕ちた川田を見るのが楽しくてしょうがない。
超GJ!
820Classical名無しさん:08/02/11 00:26 ID:0jOHkKPY
投下乙。川田氏ねw
よりにもよってそいつと手を組むかー。でも心理描写は完璧だったから文句はないさ……。
つかさとの思い出がよかった分、これはつらい。
最後に一言、川田氏ね。
821Classical名無しさん:08/02/11 00:27 ID:iEPIT3fg
投下乙
やべえ、凄い好みの展開だw
戦力的には微妙ながらも、見所満載のマーダーコンビ結成
合理性を追求した辺りも、実に川田らしい
最高のGJを贈らせて頂こう
822Classical名無しさん:08/02/11 00:28 ID:wvx/6VQg
 これは良い川田 (本来的には悪い意味で、しかしロワ的にはディ・モールト良い意味で)。
 この発想はなかったわ。
823Classical名無しさん:08/02/11 00:30 ID:ai3aCOZ.
GJ! 二人が改心する日は来るのか…
周りが崩壊してる今、この二人は色々とやらかしそうw
824Classical名無しさん:08/02/11 00:30 ID:CvguOnNE
乙です
川田ぁ…この大馬鹿野郎がああああああああああああああ!!!!
あの世のつかさに謝りやがれえええええええええええええ!!
しかし…またジグ&エレとは違った意味で恐ろしいコンビが誕生してしまった…
ハヤテ、ジョセフ、かがみあたりが頑張って村雨を主催に引き込んで
尚且つ残りの主要戦力の脱落最低限くらいにならないといよいよ対主催終わりそうだ…
825Classical名無しさん:08/02/11 01:30 ID:VxX/tB/k
てかこのロワはマーダーが凶悪すぎるwww
アーカードが死んだと思ったら、増えたり組んだりと・・・・・・
心体共に強いチームが多かったのに今じゃかなり分裂してるしなー
826Classical名無しさん:08/02/11 01:39 ID:PoWjtsrg
五体満足な対主催てもうジョジョとハヤテしかいないなw
戦える強キャラにしてもケンシロウに覚悟は負傷してるし。マーダー同士の戦いも増えてきそうだ
827Classical名無しさん:08/02/11 01:40 ID:VkYWEcUM
メモリーキューブがあれば……
828 ◆1qmjaShGfE :08/02/11 01:40 ID:IdJ0LJcw
申し訳ありません、思ったよりも難産でして前回に引き続きで申し訳ありませんが、延長を申請します
829Classical名無しさん:08/02/11 01:42 ID:0jOHkKPY
>>828
どうぞどうぞ。全裸で待ってます。
830Classical名無しさん:08/02/11 01:42 ID:3AG4ee7c
>>828
その延長望む所。
831Classical名無しさん:08/02/11 07:34 ID:bNiK2ygQ
川田…敵討ちとの行動とか某ロワのつかさみたいじゃないかwwwwwww
832Classical名無しさん:08/02/11 13:33 ID:VkYWEcUM
そう言われればそうだなww
833Classical名無しさん:08/02/11 14:04 ID:36W0TMj6
FOOL以上のFOOLになっちまったのか、川田
834Classical名無しさん:08/02/11 14:26 ID:0UHhIr/U
それでも川田なら…川田なら何とかしてくれる
835Classical名無しさん:08/02/11 17:16 ID:ZrirFgkY
川田お前何やってるんだ…
マジでかがみもこなたも殺す気満々じゃないか
もしつかさを生き返らせても誰も残ってないんだぜ…
あーもう、これからどうなるんだーw
836Classical名無しさん:08/02/11 17:45 ID:12ZjGlEU
川田お前……ちょっとォォォォォ!!!
強マーダーが消えたらまた新たなマーダーが出るなこのロワは。
新マーダー四天王が誕生する日も遠くないぞこりゃ。
837Classical名無しさん:08/02/11 18:34 ID:djKBL/J6
投下乙ッ
おまえ何をやってるんだ川田章吾――――――ッ!!
理由はともかく時を考えろ――――ッ!!

このふたりに仲良くしてほしいと思う自分は異端だろうか?
あぁ、続きがきになるゥッ!!

838Classical名無しさん:08/02/11 21:50 ID:3AG4ee7c
>>752
修正必須ではありませんが、
黒王号の場所についての情報が足りないのではないかという意見があります。
ご一考くだされば幸いです。
839 ◆9igSMi5T1Q :08/02/12 00:56 ID:CGL2Q9xo
>>838
修正版を投下しました。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9318/1183170755/369-385

黒王の描写追加です。
840Classical名無しさん:08/02/12 02:01 ID:kjwIMwXE
しかしギャンブラーが増えてきたなw
アカギと接触した直後から信用できない女と組んでゲームに乗ったのが二人も。
841Classical名無しさん:08/02/12 08:26 ID:CjcHf..k
>>839
修正作業お疲れ様です。
ですが何故話の展開、特に独歩の生死に変更があるのでしょうか?
特に矛盾も指摘されていなく、修正前のでも問題はないと思うのですが。
理由も教えて下されば幸いです。どうかお願いします。

842 ◆9igSMi5T1Q :08/02/12 21:07 ID:D1LNQ6c6
>>841
そのほうが話のしまりが良くなると感じたからです。
元々、かなたを出した理由はや独歩を殺した理由は、最初考えていた後半の展開に繋げるための布石だったのですが、
その後半の展開が間に合わず、どちらもぶつ切り状態になってしまいました。
なので、これらの状況を変更した次第です。

以上です。
843Classical名無しさん:08/02/12 21:31 ID:CjcHf..k
>>842
返信どうも有難うございます。
それならば一言、本スレにでも予約スレにでも宣言するべきだったと思いますが……。
疑問が解決したので自分の方からはもう何も言える事はありません。
本当にどうも有難うございました。
844Classical名無しさん:08/02/12 22:08 ID:I87yIwWw
>>842
修正お疲れ様です。
独歩の生死が変わってしまったのは残念でしたが、
内容的には良い所で終わっているので、これからが楽しみになるSSでした。
845 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:02 ID:0hACfM..
お待たせして申し訳ありません
コナン、服部、神楽、劉鳳、吉良投下します
846Classical名無しさん:08/02/14 00:03 ID:yTwrCX9w
支援るゅ
847『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:03 ID:0hACfM..
民家の中、ダイニングキッチンの奥に立つ吉良吉影。
そしてキッチン入り口に服部、コナン、劉鳳、神楽の四人。
劉鳳は事前に示し合わせていたのか、そこからリビングの方へと移動する。
残る三人もゆっくりと吉良を遠巻きに取り囲む。
キッチンと入り口の間に服部、そこから少し離れたリビング寄りの場所にコナン。
リビングの中心に劉鳳、その側に神楽といった布陣だ。
吉良が逃げ出す為には、正面の服部を抜いて入り口から出るか、キッチンとリビングを隔てる調理場やシンクも兼ねるカウンターを乗り越え、リビングのサッシ窓から外に逃げるかのどちらかだ。
正面の服部は例の核金とやらを持ち、その上銃を手にしている。
リビング側には怪力の神楽と、戦力不明の劉鳳が居る。
(いいだろう。そんなに私を怒らせたいのなら、その通りしてやろうじゃないか。だが、決して貴様等の思い通りになぞ行かない事思い知らせてやる)
大人しく、無害な人間を装うのは止めだ。
知恵の回る油断ならない奴と思われてでも、この危機を乗り切り、しかる後全員欠片も残さず消し去ってやる。
吉良は大きく笑い、そして言った。

「そうだ、私がアミバを殺した」

その一言に吉良を除く全員の視線が鋭く変わる。
しかし、すぐに激発はしなかった。
それが少し意外であったが、吉良は構わず言葉を続ける。
「更に言おうか、君達の推理はつまり、志村新八君の殺害犯も私だと言いたいのだろう?」
ここまで言えば激昂するだろう、そう考えていたのだが神楽は微動だにしないまま吉良を見つめている。
吉良は少々困惑する。誰かが怒りを顕にし、それに対するといった形を取ろうとしていたからだ。
だが予定は変わらない。このままでも充分ではある。
「ああ、もう一つ。コナン君、君からは見えなかったかもしれないが実はマリアさんを殺したのも私だ」
コナンが吉良に対してそれなりの距離を取っていてくれているおかげで、このカウンター越しでも彼の顔は良く見える。
「ついでに言うとこの殺し合いを考えたのも私だ。ああそう、この世に重力があるのも天地開闢も全て私がやった。これで満足か?」
遂に服部が激昂する。
848『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:06 ID:0hACfM..
「ふざけんな!」
服部が怒鳴るタイミングに合わせて吉良は怒鳴り返す。
「ふざけてるのはどっちだ! いい加減にしたまえ! 私は今これまでに無い程怒りに震えている!
そんなにまでして私を人殺しに仕立て上げたいのかね!?」
好むやり方ではないが、ここは激怒してみせるのが効果的だと吉良は判断した。
「爆弾を作る能力? 誰にでも使える手段でその能力を手にしている君が、私がそれを持つから私を人殺しだと断言する事が、
どれだけ矛盾しているかわかって言っているのか!?」
劉鳳の方に視線を移す吉良。
「劉鳳君! 君も既に社会に出ているのだろう! 何故こんな愚かな真似を黙認したのだ! 子供の無軌道を正すのは大人の役目だろう!」
吉良はわざとらしくため息をつく。
「服部君、君はもう高校生か? いい加減分別も弁えて良い年だろう。それが何だ? この危険な状況も考えずに探偵遊びだと?
いい加減にしろ! 人が死ぬという事がどれだけ重大な事か良く考えたまえ!」
コナンが吉良の話に割って入る。
「あの爆弾はどう説明すんだよ」
即座に怒鳴り返す吉良。
「そうだ! あの隠し持っていた爆弾が私の切り札だった! 君達の悪ふざけで失ってしまったがな!
近くで戦ってくれるスタンド以外に戦闘手段が無い私にとって唯一といってよい飛び道具だった! 神楽さんを守るため! 私の身を守る為のだ!」
震える手で目の前のキッチンを叩く。
「危うく私は君達を殺しかけたのだぞ! この私がだ! 君達は万全の注意を払ったつもりだろうが、いつどんな事故が起こるかわからない!
あの爆弾の威力があの程度で無かったらどうするつもりだったんだ!」
何かを言おうと口を開きかけるコナンを遮る吉良。
「頼むからこの期に及んでマヨネーズ云々などと戯言を言わないでくれよ。一々反論する気も起きないが、
外にマヨネーズが飛び散っていないから何だ? 切り札の爆弾の名前をマヨネーズにしたとでも言えば満足か?
私は高揚した状態でも冗談の一つも言ってはいかんのか?」
誰も吉良に反論しようとはしない。
それはそうだ、こんな真似をして実は間違いでしたなどとなって、自らを恥じない人間など居るわけがない、と吉良は彼等の沈黙をそう受け取った。
(ふん、私を怒らせるからこういう事になるんだ)
849Classical名無しさん:08/02/14 00:08 ID:wroorPUA
諸君 私は支援が好きだ
850『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:08 ID:0hACfM..
「劉鳳君、君は年は服部君とさして変わらないが仕事をしている人間に相応しい貫禄がある。
ならば私が居ない場所では君が彼等を窘めなければならないんだ。それが一人前の大人としての義務だ、わかるな」
四人共充分に頭も冷えたと判断した吉良は、最後の締めに入る。
「誰も怪我が無くて良かったよ。だが、もう二度とこんな真似はするんじゃないぞ。」

コナンは吉良から目を逸らし、考え深げに顎に手をやって一歩、二歩と歩く。
「……そうだな、俺が最初に会った時から吉良さんは常に誰かと一緒に居た。そんな人が人殺しなんてするはずがない……」
彼得意の無邪気な声ではない。元のトーンは高いが、重みのあるはっきりとした発音で言葉を紡ぐコナン。
「俺が会った時は既にマリアさん、銀時さんと一緒だった。その後も常に誰かと共に居た。
一人になったのは唯一あの顔に傷のある女と対峙した時のみ。その後もすぐに神楽、新八と合流していたな」
この口調は気に喰わないだろうが、吉良を擁護する内容だ。これなら邪魔はすまいとのコナンの読みだ。

「だから不思議なんだよ。何故アミバさんは今際の際に『吉良は殺人鬼』なんてメッセージを俺達に残したのかがね」

服部とコナン以外の三人がコナンの発言に激しく動揺しているのがわかる。
それはそうだろう、神楽にも劉鳳にもこの場では何があろうとコナンと服部の二人に任せ、沈黙を守るよう言ってあるだけなのだから。
新八、そしてアミバ殺害の犯人を確実に追い詰める為という明快な理由が無ければ、二人共納得してくれなかっただろう話だ。
「内容もそうだ。何故『殺人鬼』などと使う? あの僅かな間に、床を叩いてモールス信号という手段を取ったにも関わらず
『犯人』や『殺した』といった単語ではなく文字数の多い『殺人鬼』とした理由は?」
即座に服部が言葉を繋ぐ。
「簡単や。アミバはんは吉良が複数の人間を殺した事を知っていたんや。
もちろんまだこの段階ではアミバはん以外の誰を殺したのかまではわからへんがな」
吉良が何かを言い出す前に更にコナンが言葉を繋ぐ。
「アミバさんの最後の行動、遺体の状態から、彼は発声器官と脚部に何らかの異常を持っていた事ははっきりしている。しかしそこに出血は無かった」
挑むように吉良を見やるコナン。
851Classical名無しさん:08/02/14 00:09 ID:4ZPANhXE
どこからともなく現れて 支援
852『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:10 ID:0hACfM..
「さて、犯人がどうやってアミバさんを殺したか。これは繰り返しになるが聞いて欲しい」
吉良は無言だ。コナンが何をどれほど掴んでいるかが不明な以上、余計な口を挟む事が出来ないのだ。
「極小の爆発物を体内にて爆発させた。それも、時限式ないしリモコン操作可能なものでだ」
そこで突然話題を変えるコナン。
「実はずっと不自然に思ってた事があるんだ。吉良さん、あの銀髪の女と戦ったんだよね」
コナンが何か一言言う度に思考を高速回転させているのだろう、吉良はじっとコナンを見つめている。
ここからは一息に決める。コナンは聞き取れないなどという事の無いよう注意深くはっきりと言葉を重ねる。

「俺もルイズさんと一緒に奴に遭遇してる。でもその時銀髪女が負っていた傷は火傷と裂傷。
 まるで複数の爆発に身を晒したみたいにね。切り札の爆弾とやらはそんなにたくさんあったのかい?
 俺達に気付かれず、懐なりに隠しておける程度の爆弾で、あんな大きな傷を作る事が出来るのかい?
 別の誰かがやったかもしれない? 時間的に考えてそれも不自然だ。
 俺達は吉良と別れた後、2キロ先まで移動し、そこで拡声器による呼びかけを行った。
 銀髪女が俺達の前に現れたのはそのすぐ後だ。その間に対吉良戦を含む二度の戦闘を行う?
 限りなく低い可能性だね。今までの俺達の他者との遭遇率考えてみろよ。

 吉良さんが爆発物を作り出せると考えれば全ての辻褄が合うんだよ。
 そしてアンタの爆発物を作る能力は状況から考えるに、自在に爆発の大きさと爆発するタイミングを選ぶ事が出来る。
 それならば、アミバさんが声が出なかった理由も、足が動かなかった理由も、新八殺害の手段も、あの女の負っていた怪我も
 全てに納得が出来る。気絶した状態のアミバさん相手に極小の爆発を仕掛け、爆発させればやられた当人にすら
 それが爆弾によるもので、吉良さんがそれを仕掛けたなんて夢にも思わないだろうしな。
 それからコップの水の中に爆弾に変えた砂糖を仕込めば、喉の痛みに苦しむアミバさんなら放っておいても飲んでくれるさ。
 服部の持つ核金を使えば同じ事が出来る? こんな精度の高い使い方をか? 昨日今日使い始めた人間が?
853『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:11 ID:0hACfM..
 バカ言うな、こんな難易度の高い作業を一発で決めるなんて、よっぽどこの能力を使い慣れてでもいなきゃ無理な芸当だよ。
 冷静に並べてみれば、アミバさん殺害、新八の事故死、銀髪の女の傷、
 いずれも爆弾と吉良の双方が関わっているのは一目瞭然なんだ。
 そしてここからが一番大事な所だ。
 アンタは人殺しを忌避しない。そんなアンタがこんな殺し合いの場に放り込まれていながら何故最初に俺達を殺さなかったのか。
 自在に爆弾を作り出せ、そのタイミングも大きさも自分で選択する事が出来る。こんな化物相手に誰が勝てる?
 だがアンタは病院に居た人間を誰一人殺さなかった。
 いや、殺せなかったんだ。それがアンタの弱点を教えてくれた。

 アンタの能力では同時に複数の対象を爆破する事が出来ないんだよ。
 そして巨大すぎる物を爆弾にする事も出来ない。だから常に三人以上で行動していたアンタは、俺達を殺す事が出来なかった。
 その内に覚悟さんや銀時さん、あの金髪の巨漢や銀髪の女を見て自分の能力だけでは生き残る事が困難だと考え直した。
 神楽から合流した時の事は聞いてる。新八と神楽を一緒に吹き飛ばす気でいたんだろ?
 確かにあの状況なら、二人がすぐ側に居続けると普通は思うからな。けど失敗して方針を転換したんだ。
 それはアンタの能力のもう一つの欠点。爆弾は自分のすぐ側では爆発させられない事からだ。
 だからスタンドの腕力やスピードを大きく超える力、例えば覚悟さんや剣を持った銀時さんに本気で攻撃されたら
 爆弾を使う間も無く倒されてしまう。だから、俺達を殺さず利用する事を考えた」

一気にそこまで説明すると、コナンは聞き入っている全員の顔を見渡す。
何時もはこの説明を直接自分ではやらないので、こうして聞いてくれている相手の顔を見ながらというのはコナンにとってもあまり無い経験である。
そのあまりのやりやすさに、元の世界に戻ったら今後も何とかこの形を取れないか、などという考えが頭に浮かぶ。
気を抜いていた訳ではないが、そこで一瞬間が空いたのも事実だ。
その隙に吉良が考えを纏めたのか反撃に出てきた。
「コナン君。それは服部君が考えたのかね? いや、それにしても流暢にそこまできちっと説明出来るのは、君の年からすれば考えられない凄い事だよ」
854『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:12 ID:0hACfM..
吉良の目から視線を離さず、コナンは答える。
「そいつはどうも」
それ以上言葉は続けない。敢えて吉良の反撃を待っているのだ。
余裕の笑みを崩さずに吉良は続ける。
「言葉に迫力がある。そして聞いている人間にそうと思わせるだけの話の組み立て方も見事の一言だよ。ただね、敢えて言わせてもらえば……」
そこで言葉を切ってコナン、服部の表情を確認する吉良。彼はこの企みの首謀者がコナンと服部の二人であると踏んでいた。
「全ての前提が『私が爆弾を作れる』というナンセンスに基づいているという事だな。いずれにしても君の想像の域を出ないのだろう?」
神楽と劉鳳の二人には、吉良の言いたい事が半分しか伝わらなかったようだが、コナンと服部の二人はその意図を完全に把握する。
服部は重要な部分に入ってからは、コナンの話に口を挟まない。コナンを、そして彼の能力を信頼しているが故だ。
吉良は肩をすくめて首を横に振る。
「正直に言うが、あまりの事に怒りを通り越してしまった。探偵ごっこもここまで来れば立派な芸だな、劉鳳君、神楽さん、彼の話には大事な物が欠けている事に気付いているかい?」
吉良もコナンや服部同様気付いている。今この場で大事なのは、被告と原告が議論する事ではなく、傍聴人である劉鳳と神楽をどちらが納得させられるかなのだ。
劉鳳は怪訝そうな顔をし、神楽は何と答えてよいのか返答に迷う。
二人の反応の鈍さに満足しつつ言葉を繋げる吉良。
「理由と証明だ。説明しようか?」
敢えてコナンと服部の方を向いてそう言う吉良。
コナンは即答する。
「アンタが殺人を犯す理由と、殺害方法の証拠だろ。いいぜ、そいつを今から説明してやる」
首もとの蝶ネクタイを締めなおすコナン。

「俺も核金『ニアデスハピネス』の存在を知るまでは、確証が持てなかった。
 核金、アルター、スタンド、これらには俺達の理解を超える特殊な機能がある。
 なら、アンタにもそんな能力があっても不思議ではない。まともな推理が通用しない訳だぜ、こんなの反則も良い所だ。
 吉良の爆弾化能力。これが全ての鍵だったんだ。
 例えば、そんな能力がある人間が普通に暮らしていたとして、その能力を他人に見せるか?
855『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:13 ID:0hACfM..
 普通に生活している分にはそんな真似はしない。その必要も無いし、それが元で偏見を持たれるかもしれないからな。
 では危機に陥ったなら? 当然使うさ。自分の命がかかっているんだ、ここで使わず何時使うってんだ。
 だが、アンタは金髪の巨漢に襲われた時、奴を銀時さんに任せて逃げる道を選んだ。何故だ?
 銀時さんと組んだ上で、その能力を銀時さんに知らせていればあの巨漢相手ですら、何とかする手はあった。
 でもアンタはそれを選ばなかった。下手をすれば銀時さんが抜かれて自分一人であの男と対する危険があったにも関わらずだ。
 そのリスクを負ってでも、アンタは爆弾の能力を隠したかったんだよ。だからあの後銀髪の女に襲われた時も俺達を逃がした。
 見誤ったよ、アンタはあの時隠そうとしていたが、その表情の下から隠しきれない怒りの思いが漏れ出していた。
 だから俺はマリアさんの死に、それを理不尽に為したあの女にアンタが本気で怒ったと思ってたんだ。
 だが、アンタは違う。誰が危機に陥ろうとただ自分の能力を隠そうとしていただけだ。
 知っているんだよ、自分の能力が隠す事で最も力を発揮する能力だってね。
 そして、体に染みこんでるんだ。能力を隠す事こそ自らの生存に繋がるってね。
 だからこそ、スタンドの存在が俺達にバレた時あんなに動転したんだろ?

 俺と服部はアミバさんの遺体を見つけてからずっと、アンタの挙動を見てきた。
 人を殺した人間ってのは、どうしても挙動不審になるか、何かしら不安定な精神状態を見せる。
 普通に人生を送ってきた人間なら、無意識下で人殺しに罪の意識を覚えるからこれは当然の行為でもある。
 だが、アンタからは全くといっていいほどその仕草が見られなかった。
 だからアンタは殺していない? いいや違うね。
 命を天秤にかけるような事態ですら能力を隠す事を優先する冷徹さを考えると、

 アンタはこの場に来る以前から人を殺してきてるって事だ! それに罪の意識を覚えない程にな!

 だがそれを裁くのは元の世界での話だ。今アンタが償うべきは、アミバさん、新八の件。
 その両方でアンタはミスを犯した。
 まずは新八。その目的と能力から考えれば殺しにかかるべきじゃなかった。
856Classical名無しさん:08/02/14 00:14 ID:yTwrCX9w
がんばれー
857『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:14 ID:0hACfM..
 神楽と新八の二人を味方につけ、その中に潜り込んでいた方がずっと生存率は上がってたんだよ。
 それを、怪我のせいだろうな、落ちていた判断力で軽率に二人を殺そうとして失敗した。
 その上新八の死ぬ所を神楽に見られるという、最悪のミスをやらかした。
 そしてアミバさん、これが決定的だ。
 アミバさんの最後は余りにも不自然すぎる。体内に爆弾? しかも声も出ず、身動きも取れない。何故こんな事を?
 ただ殺すだけなら、それこそ水を飲ませるだけで充分だったんじゃないのか?
 お前はアミバさんから何かを聞きだしたかったんだ。口を開かずとも確認出来る事で。
 何を聞き出すか? アンタがここまで無理してでも聞き出し、確認したい事なんてたった一つしかない。
 アンタの爆弾の能力に関する何かだ。それをアミバさんは知ってしまった。だからお前は彼を殺したんだ。

 さて、ここで質問だ。吉良さん、アンタの大事な秘密。どうやってアミバさんは知ったんだろうな?
 少なくともあのディスクを頭に入れる前のアミバさんは、アンタに対して敵意を持っていなかったよな?
 お、気になったかい? 手が大事なディスクを入れてある懐の上に行ってるぜ?
 そうだよ、その上着の内ポケットに入ってるはずのディスクが、鍵になってるんじゃないのかい?」

コナンは吉良に倣うように自分の上着の内ポケットに手をやり、ゆっくりとその中から一枚のディスクを取り出してみせた。

吉良の驚愕に歪んだ顔、すぐに自分の懐をまさぐるが、当然そこには何も入っていない。
コナンは冷笑を浮かべ、服部の方を顎で指す。
「訴えるんなら、そこの手癖の悪い男にしろよ。俺はやっちゃいないぜ」
不満気にコナンを見返す服部。
「俺だけ悪者かい。ああ、コイツが言うたやろ吉良はん、アンタの動きはきっちり監視してたって。せやからアンタが大事そうに懐にしまう所もばっちり見させてもろたわ。全く気付いてへん所見ると、俺も案外この手の才能あるみたいやな」
いつの間にやら吉良からディスクをすりとっていた服部は、そんな陽気な言葉とは裏腹に銃を抜いて吉良に向け構える。
「動くんやないで。もちろん、スタンドを出すのもダウトや」
コナンがトドメを刺すべく神楽、劉鳳の方へと歩み寄る。
858『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:15 ID:0hACfM..
「後は既に確信を得ている俺と服部以外、そうだな、神楽がこのディスクを頭に入れて確認すればいい。悪いが、アンタが誤魔化しで言った『死ぬかもしれない』はもう通用しないぜ」

全身伝う嫌な汗が止まらない。
延々生意気な推理とやらを披露してくれたが、どうやらこの小僧はあのディスクの中身を確認しているようだ。
そうでなければ、ここまで正確にこの吉良吉影の能力を言い当てる事など出来ようはずがない。
しかし、この場に来てからの吉良の行動や心理を、例えディスクを見たとはいえ、こうまで見事に見抜いてみせるとは。
鋭い小僧と思っていたが……無理に機会を作ってでも殺しておくべきだった。
いや待て、抜けている。一つ抜けている事があるぞ。
ディスクを見たのなら、シアーハートアタックの事も知っているはず。
なのにそれについて一言も言及が無い。
……いや、奴等にシアーハートアタックは見せていない。ならばここでその説明を私や彼等にする必要も無い。
それに、既にシアーハートアタックは私の手を離れている。全く意味の無い発見だ。
そして肝心要の所だが、私の能力を知った連中にどうやってバイツァーダストを仕掛けるか。
事ここに至っては彼等を全て殺すか、最後の手段であるバイツァーダストを用いて時間を戻すかのどちらかしかない。
先ほどの襲撃さえなければ、神楽を爆弾化したままだったので、幾らでも抜け出す手立てはあったというのに。
そこにクソ忌々しい小僧の声が聞こえてくる。
「俺達が襲撃した理由、もうわかったよな。俺達がアンタを追い詰めるには、アンタが誰かを爆弾化していない状況を立ち上げる必要があったんだよ」
一々癇に障る。いいから少し黙れ、こっちはその小生意気な声を聞くだけで吐き気を催すんだ。
「そして劉鳳さんのアルター能力があれば、お前が目の前の何を爆弾にしようと通用しない。俺は諸共の自爆すら許す気無いぜ。素直に負けを認めて俺の指示に従いな」
ふざけるな、ケツのクソ小汚いジャリガキが。まだ何か手はあるはずなんだ、考えろ吉良吉影。
「もっともそれ以前に、お前がそんな動きを見せるより早く服部がアンタを射抜くがね」
何が何でもコイツは殺す。まだ下の毛も生え揃わないようなガキがこの吉良吉影を追い詰めるなぞ絶対に認めん。
859『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:15 ID:0hACfM..
このガキがここまで追い詰めておきながらトドメを刺しに来ないのは、ここまでわかっていても私を殺す気が無いからだ。
ならば、私を捕縛する為必ず誰かがこちらに近づいてくる。そのチャンスを使ってバイツァーダストを……
「吉良、状況が理解出来たんならこの水を飲んでもらう」
何? 水だと?
「コイツの中には服部の持つ核金『ニアデスハピネス』で作った黒色火薬が混ぜ込んである。これを飲めば、アンタは二度と服部に逆らう事が出来なくなる」
小僧は小さめの蓋の付いたプラスチックボトルをカウンターの上に置く。
小憎らしい事に、ちょうど服部と私との中間点である位置にそれを置きやがる。これでは跳びかかってもすぐに避けられてしまう。
「本当はこんな手は使いたくなかったんだけどな。アンタを殺さずに無力化する方法、これ以外思いつかなかったんだ、悪いな」
悪いと思うのなら今すぐ止めろ。善人面して結局これか、人殺しめ、お前は最低の人間だ。

コナンの言葉に、初めて劉鳳が口を開いた。
「コナン、服部、まさかお前達この男を生かしておくつもりか?」
その瞳からは紛れも無い殺意が見てとれる。
コナンは負けじと劉鳳を睨み返す。
「吉良の殺人を見抜いたのは俺と服部だ。だからこいつの処遇は俺達が決める。今の俺のやり方で無力化は可能だろ?」
劉鳳の流儀がコナン達のそれと大きくかけ離れているのは、服部から聞いて知っている。
だから服部のアドバイスに従って、こういう言い方をしてみたのだ。
劉鳳もそれを見抜けなかった負い目があるせいだろう、完全に納得したわけではないが、それ以上この場では口を挟まなかった。
神楽は何を考えているのかわからない表情でじっと吉良を見つめている。
真っ先に騒ぎ出すと思い、それを制する手を幾つか考えていたのだが、不要のまま終わってくれそうだ。
ここが最後の勝負所なのだ。
コナンと服部は今回の仕掛けに関して、確実ではない幾つかの『賭け』を余儀なくされていた。
まずは最初の襲撃。
この時吉良が爆弾化の能力を用いてくれる事。これは吉良の爆弾能力確認の意味もある。
次に吉良の反論を極力押さえつつ吉良の犯行を説明する事。
これはこの殺し合いの場において、各人個別に説明していたのでは同行者を納得させる事は困難だと感じたからだ。
860Classical名無しさん:08/02/14 00:18 ID:HcpI3xW2
     
   
861Classical名無しさん:08/02/14 00:19 ID:HcpI3xW2
     
               
862Classical名無しさん:08/02/14 00:20 ID:3wOXgrkA
 
863『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:22 ID:0hACfM..
幸い今までそんな事は無かったが、普通なら一歩間違えば集まった仲間達が疑心暗鬼に囚われていたかもしれないような状況なのだ。
だから、劉鳳、神楽が立ち会う場所で、吉良の感情的でない反論を許しながら、彼を論破しなければならない。
それでこそ、劉鳳と神楽の理解が得られるのだ。
そして三つ目。実はこれが一番危険なのである。
コナンはこのディスクを使ってはいなかったのだ。
吉良の言った「死ぬかもしれない」はブラフと見切ったが、それでもアミバが倒れたのは事実だ。
散々検討したが、アミバが倒れた事に吉良が介入している可能性は極めて低い。
死にはしないかもしれない。だが、倒れるような事になっては話にならない。
口でどう言い繕っても、コナンが倒れれば吉良はディスク使用の可能性に思い至る。
舞台が整うまでは決して吉良に気付かれてはならない。それが吉良を無力化する絶対条件なのだから。
故に、コナンはこのディスクに入っていると思しき内容を推理のみで言い当てなければならない。
前後の状況からそれを読み取る事は可能だし、自信もあったが、ここで僅かでも外していた場合、やはり吉良にディスクの件を気取られる。
だから不明瞭な点に関しては特に言葉に気を遣った。冷汗が出てないか確認したいのを堪えるのに苦労したものだ。
まずは吉良の能力が爆弾化である証拠を明示して、しかる後動機の説明とした方が聞いている方にも説得力はあるのだが、敢えて逆にした理由もこれである。
吉良の犯行、能力を証明する唯一の物的証拠を、コナンは確認していなかったのだから、無茶もいい所だ。
これに気付かせない内に水を飲ませて動きを封じ、吉良が自暴自棄になる前に病院に行って睡眠薬を手に入れて昏倒させる。
吉良は劉鳳のアルターに関する知識を持っていない、という点まで利用しての全力全開なハッタリ攻勢であった。
(好きな時に爆弾を作れるなんて無茶な技、まともな手で止められるかっての)
推理で追い詰めるだけなら、ディスクを手に入れた時点で終わりなのだが、爆弾化の能力を無効化しつつ、殺さずに捕えるとなると、正直最初は途方にくれたものだ。
そんな難題も、後一歩で成し遂げられる。

とにかく時間を稼ぐんだ。少しでもいい、考える時間を、妙案を思いつく時間を。
吉良は神楽に訴えかける。 
864Classical名無しさん:08/02/14 00:22 ID:duSccGzM
865Classical名無しさん:08/02/14 00:23 ID:HcpI3xW2
     
       
866Classical名無しさん:08/02/14 00:23 ID:HcpI3xW2
     
                               
867『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:23 ID:0hACfM..
「神楽さん、君も私が人を殺したと本当に思っているのかい? 一緒にルイズさんを助けようとした私を疑っているのかい?」
この四人の中で、未だに怒りの表情が見られないのは彼女のみ。
やたら賑やかなこの娘が沈黙したままなのは、おそらく迷っているせいだろう。
突如、部屋中に聞いた事も無いような音が響いた。
僅かに視線をずらす。するとその先には、激怒する劉鳳とその隣に尻尾を使って立つスタンドの姿が見えた。
「……この期に及んでまだ足掻くだと? しかも、こんな少女の心を利用してまで生き延びようなどと……」
すぐに服部が劉鳳を落ち着かせるべく口を開くが、あれは止まらないだろう。
「劉鳳はん! ここは俺らに任せるんやなかったのか!?」
「黙れ! これ以上一秒たりともこのクズを生かしておけるものか!」
どうやら強烈な地雷を踏んでしまったようだ。
しかしこれはチャンスだ。今しかこれを突破する機会は無い。
「服部君! 悪いが最低限、自分の身だけは守らせてもらう! まだ私はコナン君の話に納得はしていないからね!」
そう言ってキラークイーンを呼び出す。
コナンは殺人に強い嫌悪感を持っている。ならばその彼と旧知である服部も同じなのでは、といった思考が吉良にはあった。
そしてそれ抜きでも、まだ全てに決着が着いたわけではない今ならば、スタンドを呼び出す言い訳はつく。
そこに僅かでも迷いが生じれば、引き金を引く事は出来ない。殺人に慣れていない人間の性だ。
後は乱戦になってしまえば、あの銃は無力化するだろう。ならば逃げ出すだけなら何とかなる! いやしてみせる!

劉鳳はんにしては我慢した方……と考えるべきやな。
アミバはんの事があったのに、良くもここまで耐えてくれたわ。
俺の事、きっと信じてくれてたんやろな。ありがたいでホンマ。
にも関わらずの暴発。これはもう止められへんやろ、劉鳳はんなら奴の爆弾をかわして勝つ事も出来るかもしれへん。
せやけど、リスクでかすぎや劉鳳はん。劉鳳はんだけやない、下手すりゃこのごたごたで他の誰かが死ぬ事になる。
吉良の能力はどんな状況下でも、捨て身になれば誰かを地獄へ道連れに出来る、そんな能力なんやで。
次は、俺との約束最後まできっちり守ってもらうで、ええな。
俺はあの時、決断すべき時には、決して迷わないと決めたんや。
868Classical名無しさん:08/02/14 00:24 ID:HcpI3xW2
                                
869『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:24 ID:0hACfM..
そして俺は、躊躇う事なくスーパー光線銃の引き金を引いた。

その光景を、コナンは信じられない思いで見つめていた。
服部が、吉良を撃った?
まだ劉鳳を説得すれば、殺さずに捕える事も出来たはずだ。
確かに吉良はスタンドを出した。だが、それすらも困難ではあるが克服不可能な障害ではなかったはずだ。
誰も死なずに事を収める方法は、まだ残っていたはずなのだ。
もう劉鳳の動きも目に入らない。

「服部! 何故撃った!?」

服部はその一撃で倒れ臥した吉良の様子を確認した後で、こちらを向いた。
「吉良の命より、劉鳳はんや他のみんなの命の方が大事やからや」
コナンの言いたい事も理解しているようだ。その上で撃つ? 何を考えているかまるでわからない。
殊更に事務的な口調を続ける服部。
「吉良の意識は無い。瞳孔も開いとるから、死んだと考えて間違い無いやろ」
吉良は既にその身に損傷を負い体力が低下していた。そこにあんな衝撃ぶつければ、当然そうなる。
元気な時ですら、あんな衝撃を受ければ死にかねないのだ、ほぼ即死に近かっただろう。
「工藤、お前の言いたい事はようわかっとる。それでも、必要な時に必要な事が出来ん奴は、俺が今失った物以上の何かを失う事になる」
歯を食いしばり、搾り出すように言葉を口にするコナン。
「……命を比べるのかよ?」
「二度と零したないだけや」
そう答えた服部の達観したような表情が、それ以上の反論を封じてしまった。
その能力を、判断を心から信頼している。そんな服部が下した決断を、コナンは一般論だけで説き伏せられると思えなかった。
ふいっと服部から顔を逸らし、劉鳳と神楽に問いかける。
「アミバさんと新八殺害の件、納得してくれたか?」
870『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:25 ID:0hACfM..
神楽は無言、劉鳳は深く頷く。
重い足取りで倒れ臥した吉良に近寄る。
仰向けに倒れる彼の瞳孔は確かに開いている。器具も無しでこの状態からの蘇生は不可能。
病院と専門の医師が居れば辛うじて可能性はあるかもしれないが、それらをこれからすぐに手配する事も出来ない。
吉良吉影は、死んだのだ。
無力感に苛まれながら、コナンは服部に向き直る。
「服部、少し話がある」
「ああ、わかっとる」
阿吽の呼吸ですぐさまそう答える服部。この打てば響くような軽快なやりとりも、もう素直に楽しめなくなっていた。

服部もコナンも消沈した様子で歩き出す。
劉鳳には二人の表情の理由が理解出来ない。だが、元気づけてやりたいとも思った。
「二人共、見事だったぞ」
どちらも振り返りはしなかった。
そして、隣で無言のまま俯いている少女の事もわからない。
「神楽、お前は何故そんなに落ち込んでいるんだ?」
答えは返ってこない。
どうしたものか途方にくれるが、とりあえず空気を変えるのが一番と考える。
「とにかく外に出よう。この中は……その……あまり良くない」
慣れない事をしていると思う。これで良いのかまるでわからなかったが、神楽は素直に言う事を聞いてくれた。
家を出て、ブロック塀にもたれかかる。
落ち着ける場所として、真っ暗な家の外を選ぶ辺りがこの手の事に疎い劉鳳の限界なのであろう。
神楽はその隣で、同じくブロック塀にもたれながら、地面に座り込む。
暗くなった空、外灯の光のみが二人を照らし出す。
「……今でも、信じられないアル」
そう神楽が呟いた。
「何がだ?」
871Classical名無しさん:08/02/14 00:25 ID:4Q2MVszU
ペロ……これは火薬!
872『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:25 ID:0hACfM..
「……吉良が新八を殺したなんて信じられないアル。吉良は優しかったネ」
「そうか……」
相手が男なら、大人なら、何を下らない事をと発破をかけてやる所だ。
だが、ここに居るのはまだ年端もいかない少女。
何か慰める手立ては無いかと考えてみるが、今までの人生においてそんな機会に出会わなかったせいか、何のアイディアも浮かんでこない。
そもそも、昔の劉鳳なら慰めようなどと思う事すらなかった。それは自分の役目ではないと割り切って。
それがカズマと出会い、かなみや他の人間達を知るようになって、少しづつ変わっていったのだ。
と、いうか。カズマはとてもうまくかなみと付き合っていた。あの男に出来て俺に出来ないはずがない。
(確かカズマの奴は、かなみにぬいぐるみを持っていってやってたな)
そんな物は何処にも無い。
(……では、他に子供が好きそうな物……あれだ! 確かバッグに入っていたはず!)
「少し待っていろ」
それだけ言い残してバッグを取りに戻る劉鳳。途中倒れる吉良に憎しみの視線を向け、バッグを手に取り小走りに外に戻る。
自分では急いだつもりなのだが、一人取り残されていた神楽はさっきよりも重苦しく落ち込んで見えた。
「神楽、これをやる」
劉鳳が手にしていたのは、ビスケットの詰まった缶であった。
支給品の食料として入っていたものだが、日持ちしそうなので食べるのを後回しにしていたのだ。
きょとんとした顔でビスケットを見る神楽。
(菓子ならばと思ったが……もしかして、ビスケットは嫌いなのか?)
何も言わずにそれを受け取り、蓋を開く。
神楽は劉鳳と目を合わせようともせずに、それをもしゃもしゃと食べはじめる。
ほっとしていた劉鳳に、神楽から感想の言葉が送られた。
「まずいアル」
その返事は予想していなかった。
「そ、そうか。すまん」
873『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:26 ID:0hACfM..
どうフォローしたものかと、また思案にふけりそうになる劉鳳を他所に、神楽は勢い良く立ち上がる。
「おっしゃあああ! 気合入れるアル! いつまでも落ち込んでてもしょうがないネ!」
いきなりの大声に驚く劉鳳の背中を、神楽は勢い良く叩く。
「何沈んだ顔してるネ! ヘコんでる暇なんて無いアルヨ!」
ずんずんと歩きながら家へと向かう神楽を見ながら、一人劉鳳は悩み続けていた。
(うまくやれたのか? いや、勝手に立ち直った? ええいわからんっ!)
二人の元に、コナンの大声が聞こえてきたのはその時であった。

コナンと服部の二人は別室で対峙していた。
「服部、あの段階で吉良を拘束出来る可能性は残っていた。それは認めるな」
これは服部による吉良殺害の正当性を、否定する為の質問だ。
劉鳳があれ以上接近さえしなければ、吉良にスタンドを引っ込めるよう交渉する余地は確かにあった。
「ああ。工藤、吉良がどうやって対象を爆弾にするかは未だ不明。おそらく接触に近い何かと思われる。これで良かったな?」
これはあの状態の吉良の危険性を認めさせる為の質問。
見ただけで爆弾に出来る等の利便性の高い条件であった場合、銀髪女に怪我をさせられている理由がわからない。
「そうだ。なあ服部、自ら殺しに手を染める理由は何だ? 俺にわかるように答えてくれ」
立っているのが疲れたのか、服部はソファーに深く座り込む。
コナンもそれに倣って対面の椅子に腰掛ける。
「タバサって子がおったって話したな」
「ああ」
「あの子は劉鳳を庇って死んだ。タバサ自身は何の力も無い普通の女の子やった。劉鳳はな、俺等の切り札言うてもええぐらい強い男や。そいつと自分の命と天秤にかけてどっちが今居る集団に必要かって判断、お前に出来るか?」
文句を言いかけるコナンを服部は手で遮る。
「別にあの子はそんな事考えてへんかったと思うで。劉鳳が危ないから飛び出した、そんだけやと思う。それは綺麗でまっすぐな思いや。でもな……」
それを話すのは服部にとっても辛い事なのだろう。
その表情には陰鬱な影が付き纏っている。
874Classical名無しさん:08/02/14 00:26 ID:yTwrCX9w
 
875Classical名無しさん:08/02/14 00:27 ID:HcpI3xW2
            
876『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:27 ID:0hACfM..
「あの時の俺達にとっては最善の手やった。アーカードって化物を前に、自分だけ残って俺達を逃がしたブラボーはんの選択もな」
服部は背もたれによりかかって天井を見上げる。
「無理や。あの化物を殺さずに捕える? いや、それ以前や。どうやったら殺せるのかすら皆目検討つかん」
諦めの言葉、それを発したコナンを服部は怒鳴りつけたではないか。その服部から同じ諦念の言葉が漏れた事にコナンは納得がいかなかった。
服部はコナンの方を見ようとしない。
「吉良は確かに厄介な相手やった。せやけどな、俺達に向いている相手でもあったんやで。工藤はターミネーター2って映画見た事あるか?」
服部の意図を掴みかねたコナンは、聞かれた事だけに答える。
「ああ」
「元の世界やったら絶対言わへん事やけどな。もし、あの流体金属の化物が俺らの町に出たら、お前捕まえられるか?」
ようやく服部の言いたい事が理解出来たコナンは、苦々しげに答えた。
「……状況による」
「せやろな。だがどの場合でも、間違いなく人は死ぬ。もし化物の正体知れてない時にコイツを追い詰める手立て考えたら最悪の事態になる。せやな?」
返事はしたくないのか、コナンは何も答えなかった。
「お前ももう気付いてんやろ。ここに集められた人間は普通の連中ちゃう。俺達の持つ知識は普通の連中用に詰め込んだ知識や。そんなん全部通用せんわ」
コナンが頭に思い描いたのは、黒シャツの大男と金髪の巨漢の姿。
アレは完全に別格だ。アレに狙われるぐらいなら、戦闘ヘリがこちらを狙って頭上で旋回している方がまだマシだと思える。
様々な修羅場を潜り抜けてきたコナンをして、一度も出会った事が無いと思わしめる圧倒的な存在感。
ぎしっと音を立ててソファーを立つ服部。
「それでも……や。それでも何とかせなならん。だから俺は一つ手段を増やした。劉鳳はんの戦闘に介入出来る程、無茶なスピードに慣れて無い俺には、これでもギリギリの判断だったんやで」
殊更に明るく振舞う服部。
コナンの目から見ても、彼が無理をしているのがわかった。
自らが禁忌としていた行為に手を染めたのだ。吉良に言い放った通りだ、罪の意識は決して消えてはくれないだろう。
拳を強く握り込むコナン。
「それでも……だ。俺は殺人を許容出来ない」
877Classical名無しさん:08/02/14 00:28 ID:duSccGzM
aaaa
878『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE :08/02/14 00:28 ID:0hACfM..
服部は、残念そうな、それでいてほっとしているような、そんな顔をした。
「ほなしゃあない、その度にケンカするとしよか」
「服部!」

何も出来なかった。ずっとただ守られるだけの見た目通りの子供同然であった。
そんな中、小五郎が、そして灰原が倒れた。
それでも服部なら、あの男なら生き延びている。簡単にやられるような男じゃない。黙って引っ込んでいるような男じゃない。
そう信じ、その思いに応えてくれた。
コナンが望む全てに、万全で応えてくれる男。こんな友はそうそう持てるものじゃない。
二人でなら何者が相手だろうと、知恵の面で遅れをとる事は無い。ここから、ようやく誰も死なせない結末に向かって動き出せる。
そう、信じていた。
服部は正義を捨ててはいない。それはわかっている。この男は最後の最後まで誰かを守る為に戦い抜く。
この企みを打ち砕くべく、最後までその思考を止めたりはしない。
それでも、こんなに悲しいのは何故だろう。
服部は扉に手をかけながらぽつりと呟いた。
「……警察の存在しない世界で、俺達探偵はどう生きたらええんやろな」
捕える者も無く、裁く者も無く、矯正を行う余裕も無い。
「待て服部! 考え直せ!」
「断る」
ここで止められなければ一生止める事は出来ない。
「俺達は俺達の法に従う! それが俺達の正義だろう!」
服部の意思は変わらない。
歩みを止めない服部に、コナンは最後の賭けに出る事にした。
「なら、俺は……お前とは一緒に居られない」
ようやく足を止める。
「……らしくない、卑怯な手使いよるな」
「こっちも一杯一杯でね、手加減してやる余裕がねえんだ」
879Classical名無しさん:08/02/14 00:28 ID:HcpI3xW2
       
                            
880『二人の探偵』 ◆1qmjaShGfE
服部の体が震えている。両手で拳を握り、何かを堪えるように。
「地図の端や。時間も経ち、状況が煮詰まってきてる今、そこに近づこうっちゅー奴はおらん」
一緒に居られないのならコナンはそこに避難していろ、そういう意味である。
コナンがこれが最後と差し伸べた手も、服部には届かなかった。

服部は劉鳳に、コナンは神楽に、それぞれの主張の違いからコナンが別行動を取る旨を伝える。
硬い表情のまま説明する服部の言葉を、劉鳳は納得出来なかった。
「コナンどういう事だ! 服部が吉良を殺したのは正しい事だろう! 奴がたくさんの人を殺したと言ったのは他ならぬお前だろうに!」
怒りもあるのだろう、コナンは撥ね付けるような口調になる。
「俺達に誰かを裁く権利なんてねえよ」
劉鳳はそれを服部への侮辱と受け取った。
「権利だと!? では誰が吉良を裁く!? 野放しにでもしておけというのか!? 奴は断罪されるべき存在だった! 服部は何一つ誤っていない!」
劉鳳の怒りに満ちた怒声を、真っ向から受け止めるコナン。
「あんた達の世界にあるかどうかは知らねえけどな! 俺達の所じゃ犯罪者は矯正施設で罪に見合った罰を受ける事になってんだよ!」
「矯正施設なら俺の所にもある! だが、吉良のあの悪逆な行為は断じて許されるようなものではない!」
「それをアンタが判断してる所が傲慢だってんだよ!」
「傲慢だと!? 俺の正義を傲慢と抜かすか! 言わせておけば……」
そこで家中に響き渡る程の爆音が轟いた。
神楽が、家の壁に全力で正拳をぶちこんだのだ。
「やかましいのは嫌いアル」
『いや、お前のがやかましいだ(や)ろ』
服部、コナン、劉鳳の三人は同時に脳内でツッコンだが、それを口に出して言う程子供でもなかった。
それでもちょうどいい仕切りだったので、ようやく服部が口を挟む。
「劉鳳はん。俺とコイツが居た国ではな、犯罪者を殺さずとっ捕まえて専用の施設に何十年も閉じ込めておく余裕があんねん。実質死刑が存在せんしな。それが常識になってる世界なんや」
止めに入ったのは他ならぬ服部である。