漫画キャラバトルロワイアル Part8

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1Classical名無しさん
このスレは漫画キャラバトルロワイアルのスレです。
SSの投下も、ここで行ってください 、支援はばいばい猿があるので多めに

前スレ
漫画キャラバトルロワイアル Part8
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1195652318/
【外部リンク】
漫画キャラバトルロワイアル掲示板(したらば)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9318/
まとめサイト
http://www32.atwiki.jp/comicroyale
漫画キャラバトルロワイアル毒吐き
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1183133225/l50

・参加者リスト・
1/4 【アカギ】○赤木しげる/●市川/●平山幸雄/●鷲巣巌
1/2 【覚悟のススメ】○葉隠覚悟/●葉隠散
1/3 【仮面ライダーSPRITS】 ●本郷猛/●三影英介/○村雨良
3/4 【からくりサーカス】○加藤鳴海/○才賀エレオノール(しろがね)/○才賀勝/●白金(フェイスレス指令)
3/4 【銀魂】 ●坂田銀時/○神楽/●桂小太郎/○志村新八
3/4 【グラップラー刃牙】○愚地独歩/●花山薫/●範馬刃牙/○範馬勇次郎
4/4 【ジョジョの奇妙な冒険 】○吉良吉影/●空条承太郎/○ジョセフ・ジョースター/○DIO
3/4 【スクライド】●カズマ/○シェリス・アジャーニ/○マーティン・ジグマール/○劉鳳
2/4 【ゼロの使い魔】○キュルケ(略)/●タバサ/●平賀才人/○ルイズ(略)
3/4 【ハヤテのごとく】○綾崎ハヤテ/○桂ヒナギク/○三千院ナギ/●マリア
1/3 【HELLSING】○アーカード/●アレクサンド・アンデルセン/●セラス・ヴィクトリア
3/4 【北斗の拳】○アミバ/○ケンシロウ/●ジャギ/○ラオウ
2/4 【武装錬金】●防人衛/○蝶野攻爵/○津村斗貴子/●武藤カズキ
2/4 【漫画版バトルロワイアル】○川田章吾/●桐山和雄/●杉村弘樹/○三村信史
2/4 【名探偵コナン】 ○江戸川コナン/●灰原哀/○服部平次/●毛利小五郎
3/4 【らき☆すた】○泉こなた/●高良みゆき/○柊かがみ/○柊つかさ
計 34人 / 60人
2Classical名無しさん:07/12/13 01:34 ID:OTXosA.A
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×

例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
3Classical名無しさん:07/12/13 01:34 ID:OTXosA.A
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
 修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・修正要求ではない批判意見などを元にSSを修正するかどうかは書き手の自由です。
・誤字などは本スレで指摘してかまいませんが、内容議論については「問題議論用スレ」で行いましょう。
・「問題議論用スレ」は毒吐きではありません。議論に際しては、冷静に言葉を選んで客観的な意見を述べましょう。
・内容について本スレで議論する人がいたら、「問題議論用スレ」へ誘導しましょう。
・修正議論を見て修正するかどうかは書き手の自由ですが、原則、書き手は本スレで出された修正案以外には対応する必要はありません。

・展開予想、ネガティブな感想、主観的な意見は「毒吐きスレ」でお願いします。毒は溜め込まずに発散しましょう。
・議論スレと正式に分離したことで毒吐きでの感想は過激化している恐れがあります。見る必要性もないので、書き手は見ないことを推奨します。
4Classical名無しさん:07/12/13 01:35 ID:OTXosA.A
【能力制限】

◆禁止
・アーカードの零号開放
・武藤カズキのヴィクター化
・吉良吉影の“第三の爆弾バイツァ・ダスト”
・ギャランドゥ(ジグマールのアルター)の自立行動(可否は議論中?)

◆威力制限
・ゼロ勢の魔法
・空条承太郎、DIOの時止め
・スクライドキャラのアルター(発動は問題なし、支給品のアルター化はNG)
・アーカードの吸血鬼としての能力
・仮面ライダーの戦闘能力
・シルバースキンの防御力
・北斗神拳の経絡秘孔の効果
・激戦の再生力、再生条件

◆やや制限?
・グラップラー刃牙勢、北斗の拳勢、仮面ライダー勢、覚悟のススメ勢の肉体的戦闘力
・ジョジョのスタンド(攻撃力が減少、一般人でも視認や接触が可能)
・からくりサーカス勢の解体能力

◆恐らく問題なし
・銀魂キャラ、戦闘経験キャラなどの、「一般人よりは強い」レベルのキャラの肉体的戦闘力

【支給品について】
・動物、使い魔、自動人形などの自立行動が可能な支給品は禁止です。(自立行動を行わないならば意思持ちでも可)
・麻薬、惚れ薬、石仮面などの人格を改変するおそれのある支給品や水の精霊の指輪、アヌビス神などの人格乗っ取り支給品は禁止です。
・核金によって発現する武装錬金は、原作の持ち主の武装錬金に固定されています。
5Classical名無しさん:07/12/13 01:35 ID:OTXosA.A
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → MAP-Cのあの図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム
6Classical名無しさん:07/12/13 01:36 ID:OTXosA.A
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの一時投下スレにうpしてください。
・自信がなかったら先に一時投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない一時投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
   ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
   その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。
7Classical名無しさん:07/12/13 01:36 ID:OTXosA.A
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
8Classical名無しさん:07/12/13 01:36 ID:OTXosA.A
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、スレには色々な情報があります。
・『展開のための展開』はNG
 キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
 紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効
 携帯からPCに変えるだけでも違います
9Classical名無しさん:07/12/13 01:37 ID:OTXosA.A
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
 同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
 修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、ドラえもん(クレヨンしんちゃんも可)を見てマターリしてください。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
 やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
 冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
 丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。

【議論の時の心得】
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
 意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
  強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
10Classical名無しさん:07/12/13 01:37 ID:OTXosA.A
【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
 程度によっては雑談スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
 例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
 この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
 こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
 後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
 特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。

【予約に関してのルール】

・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行います
・初トリップでの予約作品の投下の場合は予約必須(5日)
 ただし、予約せずに投下できなら、別に初トリでもかまわない

・予約時間延長(最大3日)を申請する場合はその旨を雑談スレで報告
・申請する権利を持つのは「過去に3作以上の作品が”採用された”」書き手
・修正期間は審議結果の修正要求から最大三日(ただし、議論による反論も可とする)
・予約時にはトリップ必須です。また、トリップは本人確認の唯一の手段となります。トリップが漏れた場合は本人の責任です。
・予約破棄は、必ず予約スレでも行ってください。

【MAP】
http://www32.atwiki.jp/comicroyale/pages/34.html
http://www32.atwiki.jp/comicroyale/pages/330.html (登場人物の位置あり)
11 ◆uiAEn7XS/. :07/12/16 01:40 ID:QUun/8pM
アーカード、投下します
日が落ちる。
真っ赤に染まった太陽がその下にあるすべてを紅く染める。
遠くに見える町並みから風が吹き、人気のない林と鉄塔とアスファルトだけの風景を駆け抜けていく。
そしてその先に建つ飾り気の無い変電所、そこにたたずむ男が一人。
男はその風を吸い込み、空を仰いだ。

――懐かしいにおいがする。

打ち倒される男のにおい、突き刺される女のにおい、撃ち殺される子供のにおい。
血にまみれた死のにおい。
いくさのにおい。
さあ征こう。その死の、そのいくさの真っ只中へ。

「――だが、その前に」
男はおもむろに傍らの金網の支柱を素手で、しかも片腕で引っこ抜いた。
邪魔な金網をやはり素手で引きちぎり、そのままがりがりと地面にこすりながら、歩いていく。
目指す先は男がはじめて目にする場所だ。だがその景色を、その男は知っている。
そこに何があるのか、その記憶を「食った」から知っている。
アスファルトの道路を外れて、木々が林立する林の中へ、そしてやがて土を掘り起こしたような形跡のある場所で足を止める。
ざくり、とそこの地面に引きずっていた鉄柱を深々と突き刺した。
「ゴールド・エクスペリエンス」
その声と同時に、何の前触れも無く黄金のヒトガタが出現する。
人とは思えぬ、だが機械とも思えぬそれが、地面に突き刺さった鉄柱をビシリと拳で打つと、何の変哲も無い鉄の塊が見る間に枝を広げ、一本の木へと姿を変えた。
そして、その木は地面に突き刺さった部分からも枝を広げていき、その周りの土を掘り起こしていく。
やがてその枝によって持ち上げられ、土の中から姿を現したのは、ひどく傷ついた少年の無残な死体だった。
男はその少年に会ったことは無いが知っている。
その記憶を持つ者を「食った」から知っている。
男は血液という命の貨幣を媒介として食った人間のすべてを受け継ぎ、永遠の時を生きる呪わしき化け物だからだ。
13Classical名無しさん:07/12/16 01:43 ID:nO3vnZJU

「はじめまして。そして、また会ったな」
そう言って笑う男は、吸血鬼アーカード。
物言わぬ少年の遺体は生前、桐山和雄と呼ばれていた。

桐山の死体は死後数時間を経た今、あちこちに死斑が浮かび、早くも虫がたかっている。
だがアーカードはそんなものを一切気にせず、死体を抱え上げてその顔をゆっくりとなで、そして顔を近付けてそっとささやいた。
「お前は死んだ。お前の望むままに。この殺戮遊戯を盤ごとひっくり返す逆転劇のために。
お前には何があった?防人には化け物を打ち倒すほどに研き抜かれた力と技があった。
DIOには、私とは別種の吸血鬼としての能力と、スタンドという超常の能力があった。
散には零式という技と、強化外骨格「霞」があった――ではお前は?」
桐山の死体が答えるはずも無く、だがアーカードは構わず次の言葉を紡ぐ。
「お前には何も無い。何故ならお前は人間だからだ。
私は体を変化させ、使い魔を使役し、力をふるい、心を操り、再生能力を持ち、生き血をすすり己の命の糧とする。
だがお前は何もできない。この殺し合いの場で、鬼札ぞろいの鉄火場の中で、手にあるのは己の命という名のちっぽけなチップ一枚。
それでもお前は勝利を目指した。己の命すらも捨て駒に使い、防人という手持ちの中で最大の切り札を温存した。
お前は正しい。防人は私の心臓を掴み出す、手の届くあと少しのところまでたどり着いた。だが――」
アーカードの手にわずかに力が入り、桐山の頬にその指が食い込む。
血はすでに流れきっており、赤い肉の断面がわずかに覗いただけだった。
「届かなかった。その原因はお前が防人を温存したことにより、結果として私に食われた散の持っていたDISCだ。
皮肉だな。まったく持ってお前は正しい。これ以上ないほどに。だが、ゆえに私は勝利した!敗れることはできなかった!!」
それはささやきではなくもはや慟哭のようであった。風が木々を揺らす音はそれすらも運び去っていく。
「不死というものはあまりに強大だ。強大な力はあまりにも眩しい。何も見えなくなるほどに。
だがそれでも、だがそれゆえに、それゆえに化け物を倒すのは――人間でなくてはならないのだ!!」
やがて日は沈み、影は伸びていく。風はいつのまにか止んでいた。
静まり返った林のなかで、命の音は何一つとして聞こえない。
「くくくくく…………はははははははははははははは」
アーカードは笑う。いつものように傲岸不遜に笑う。
鬼は泣かない、化け物は泣かない。そのために「そう」なったのだから。
だから笑うのだ。次の戦いのために、戦いを楽しむために笑うのだ。

「ゴールド・エクスペリエンス、首輪を蛇に変えろ!」
アーカードの命じるままにスタンドの拳が桐山の首に巻きついた金属のフレームに触れる。
首輪がぐにゃりと形を変え、そして蛇となって桐山の首から外れ――なかった。
バチバチと生命エネルギーがショートするように火花が飛ぶ。
歪んだ首輪の形が伸びたり縮んだり、むちゃくちゃに変形を繰り返し、やがて爆発。
爆発の衝撃で舞い上がった桐山の首をアーカードが器用に片手でキャッチする。
彼の手を離れた胴体から下はそのまま地面に崩れ落ちた。
「…………はん。やはりな。そう単純なことにはならんか」
爆発に巻き込まれたもう片方の手を再生させながらアーカードはつまらなそうに呟いた。
この首輪は見るからに機械としか思えない。
だが、DIOの『世界』や、ジョセフの『隠者の紫』、さらにはこの『G・E』といったスタンド能力を考えれば、ただの機械では簡単に外されてしまう。
『G・E』は生物を変化させることはできない。ならばこの首輪は生きているのか。
いや、むしろ他のスタンド能力による解除を防ぐならば、これ自体がスタンド能力であるほうが――

そこでアーカードは考えるのをやめた。それは自分の目的ではない。
自分の目的、それは闘争だけだ。
殺し、殺されるために。倒し、倒されるために。ただそのためだけに。
ならば敵に塩を送るのも、戦いを楽しむためには悪くないかもしれぬ。ふと、そう思った。
「……余興のうちだ。ただの下らん、普通のな」
核鉄。そしてスタンド。
どちらも人間が生み出した、化け物を倒すための力であり、化け物を生み出す力でもある。ならば、すでに化け物である自分には不要のものだ。
16Classical名無しさん:07/12/16 01:46 ID:nO3vnZJU
 

「ゴールド・エクスペリエンス。この首を梟に変えろ」

桐山の首が2倍ほどの大きさに膨れ上がり、大型の梟に変化する。
そしてアーカードは自らの頭部からDISCを抜き出した。
梟はそれを核鉄とともに、その爪で掴み上げて夕焼けの空へ舞い上っていく。

梟ならば夜目も利くだろう。
いけ。
この殺戮の狩場で怯えて震えるものが運よく拾ったのなら、その力で足掻くがいい。
もし力を持つものが拾ったのなら、この私を打ち倒してみせるがいい。
化け物でもいい。狗でもいい。人間ならば素晴らしい。
だが自らの無力を嘆き、諦めを踏破することのできない者は必要ない。
絶望に染まったものは生きながらにして死人と同義だ。ならば死ね。
諦めるな。
その瞳に希望の炎を宿せ。


そして―――この私を打ち倒してみせろ。

18Classical名無しさん:07/12/16 01:49 ID:nO3vnZJU

*  *  *

梟が夕闇の彼方に消えていくのを見届けてから、アーカードは次なる行動に移ることにした。
村雨はこの会場の東部にいる。
DIOはあれからだいぶたってはいるが、北部へ向かったはずだ。
まだ見ていないエリアはこれらの方角と一致しており、さらに線路沿いの施設にはまだ見ぬ他の人間、もしくは化け物がいるかもしれない。
どちらもここからは距離がある。
――ならば、これを使うか。
そして一枚の紙片を取り出した。
その紙片を指先で器用に開くと、アーカードの目の前に一台のバイクが飛び出す。
そのことに今更驚く風でもなく、口の端をわずかに歪めて、そのバイクにまたがった。
「……む」
アーカードの体格は軽く190cmはある。偉丈夫といっていいだろう。
だがそれは50ccのいわゆる原付バイクであり、さらに元の持ち主と比べると、西洋人系のアーカードの体格に合っているとは言い難い。
どこがというと…………体格全体、特に足の長さとか。
アーカードは顎に手を当てて、視線をどこかに定めるでもなく宙を仰いだ後、ぐるりと周りを見渡した。
変電所、アスファルト、鉄塔、夕闇の林、所々にぽつんぽつんと建っている民家に車やバイクといった類のものは見えない。
この原付バイクを使うしかないとなれば――

「……まあいい。ならばこちらの体を合わせるまでだ。姿形など私にとっては何の意味もない」
20Classical名無しさん:07/12/16 01:50 ID:Nwc85DEQ
SIENだ!
*  *  *

ぺけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ……

軽快なエンジン音を響かせながら、一台の原付バイクが夕闇迫る道路を疾走する。
そのバイクに跨る人影はつやのある長い黒髪をなびかせ、それが地平線に落ちる寸前の夕日にきらめいていた。
小さな背中にデイパック。そこから飛び出したショットガン。
コートの上から首にかけたマフラーをなびかせて、美しい黒髪の少女――アーカードは目的地目指してさらにスピードを上げる。

新しい夜が来る。闘争の夜が来る。
パーティが始まる。お相手はよりどりみどり。
人をやめた化け物共、そいつらを打ち倒すために研き抜かれた戦士達。
何の武器も技も持たず、だがそれでも足掻く人間たち。
一木一草ことごとく、立ちふさがる敵を朱色に染め上げよ。
見敵必殺。見敵必殺!

王立国教騎士団『HELLSING』所属ゴミ処理係、吸血鬼アーカード――――出撃。原チャリで。

ぺけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ……


22Classical名無しさん:07/12/16 01:52 ID:nO3vnZJU
     
【A-8 変電所周辺/1日目 夕方】



【アーカード@HELLSING】
[状態]:原チャリで移動中。ロリ状態(外伝および9巻参照)。
全身にダメージ中、特に頭部、胸部、腹部にダメージ有り(吸血鬼による能力+核鉄により自然治癒中)、

[装備]:フェイファー ツェリザカ(0/5) 、レミントンM31(4/4) 、銀時の原チャリ(@銀魂)、
[道具]:支給品一式×3スタングレネード×4、
色々と記入された名簿×2、レミントン M31の予備弾22、 お茶葉(残り100g))
[思考]
基本:殺し合いを楽しむ。
1:戦いの相手を探す(行き先は次の書き手さんに任せます)。
2:満足させてくれる者を探し闘争を楽しむ。
3:DIO、柊かがみ、劉鳳、アミバ、服部とも再度闘争を楽しむ。
[備考]
・参戦時期は原作5巻開始時です 。
・首輪は外れていますが、心臓部に同様の爆弾あり。本人は気づいてます。
・DIOの記憶を読み取り、ジョセフと承太郎及びスタンドの存在を認識しました。
・柊かがみをスタンド使いと認識しました。
・散、ブラボーの記憶を読み取り、覚悟・マリア・村雨・劉鳳・タバサ・服部・アミバ・斗貴子・パピヨンの情報を得ました。
・首輪そのものがスタンドではないかと推測。

ゴールド・エクスペリエンスのDISC、核鉄(シルバースキン)を持った梟(桐山の首)が会場をさまよっています。
ゴールド・エクスペリエンスは人体を創る事は出来ません。
変電所周辺に桐山の首なし死体が放置されています。
24 ◆uiAEn7XS/. :07/12/16 01:53 ID:QUun/8pM
投下終了でゴザイマス。……その、なんだ。スマン。
しえんありがとうございました。
25Classical名無しさん:07/12/16 01:58 ID:Nwc85DEQ
おお、アーカードがG.Eとシルバースキンを捨てたか…これは吉と出るか凶と出るか
つか、幼女化てw 本人に欺くつもりもない分誰かと会ったときどうなることやら
気になるつなぎだ
26Classical名無しさん:07/12/16 01:59 ID:nO3vnZJU
投下GJ!!
ロリカードきたあああああああ!
口調が更に難しくなるが、GJだ!!

DISCや核鉄をほかの参加者に渡してしまったり、闘争のありそうな方へ向かったり……
桐山への言葉とか、すごく旦那らしかった! GJ!
27Classical名無しさん:07/12/16 01:59 ID:nO3vnZJU
>>25
ヒラコー曰く、見た目幼女だけど声一緒らしいぜw
28Classical名無しさん:07/12/16 02:09 ID:xR1nAM7U
旦那、かっけー
台詞も思考も、まさに旦那! 最高にGJ!
ディスクと核鉄すてちゃう辺り、さすがだな


しかし、原チャリを乗り回すロリカードは……すごく、シュールですww
29Classical名無しさん:07/12/16 02:11 ID:n1sFramY
桐山の死体と対面して「何か」を感じた後だからこその行動、って感じですねぇ。
そして……ぽつんと離れた場所からの移動手段がソレかよw
GJw
30Classical名無しさん:07/12/16 04:23 ID:JUqVwj6Y
スマン、状態表が核鉄で治療中なのは消し忘れ?
31 ◆uiAEn7XS/. :07/12/16 08:20 ID:a9hdaNKg
ぎゃーーーーーー色々と間違ったorz

とりあえず、修正箇所は
>>14
×桐山の死体は死後数時間を経た今、あちこちに死斑が浮かび、早くも虫がたかっている。
>○桐山の死体は死後数時間を経て、あちこちに死斑が浮かび、凄まじい血の臭いが鼻につく。
とりあえず会場には他の生き物が存在しないっぽいから、虫がいるのも変じゃね?てわけでその描写を削ります。

同じく>>14
×皮肉だな。まったく持ってお前は正しい。
>○皮肉だな。まったくもってお前は正しい。

あと、ロリカードがわざわざデイパック3つ持って原チャリ運転するのも不自然なんで、
>>21
×小さな背中にデイパック。そこから飛び出したショットガン。
>○小さな背中に荷物をまとめたデイパック。そこから飛び出したショットガン。

で、>>23の状態表を破棄して下記の修正した状態表と入れ替えます。
新しくwikiに載せる操作はできませんが、載ったらすぐに修正しますので、よろしくお願いします。
32 ◆uiAEn7XS/. :07/12/16 08:26 ID:a9hdaNKg
A-8 変電所周辺/1日目 夕方】



【アーカード@HELLSING】
[状態]:原チャリで移動中。ロリ状態(外伝および9巻参照)。
全身にダメージ中、特に頭部、胸部、腹部にダメージ有り(吸血鬼による能力で自然治癒中)、

[装備]:フェイファー ツェリザカ(0/5) 、レミントンM31(4/4) 、銀時の原チャリ(@銀魂)、
[道具]:支給品一式、スタングレネード×4、
色々と記入された名簿×2、レミントン M31の予備弾22、 お茶葉(残り100g))
[思考]
基本:殺し合いを楽しむ。
1:戦いの相手を探す(行き先は次の書き手さんに任せます)。
2:満足させてくれる者を探し闘争を楽しむ。
3:DIO、柊かがみ、劉鳳、アミバ、服部とも再度闘争を楽しむ。
[備考]
・参戦時期は原作5巻開始時です 。
・首輪は外れていますが、心臓部に同様の爆弾あり。本人は気づいてます。
・DIOの記憶を読み取り、ジョセフと承太郎及びスタンドの存在を認識しました。
・柊かがみをスタンド使いと認識しました。
・散、ブラボーの記憶を読み取り、覚悟・マリア・村雨・劉鳳・タバサ・服部・アミバ・斗貴子・パピヨンの情報を得ました。
・首輪そのものがスタンドではないかと推測。

ゴールド・エクスペリエンスのDISC、核鉄(シルバースキン)を持った梟(桐山の首)が会場をさまよっています。
ゴールド・エクスペリエンスは人体を創る事は出来ません。
変電所周辺に桐山の首なし死体が放置されています。
またその傍に名簿を抜いた支給品一式が入ったデイパック×2が放置されています。
33Classical名無しさん:07/12/16 10:53 ID:10JE3LHY
乙!&GJ!
持ち上げて落とした所が素晴らしく面白い!
原チャリアーカードは意外だけど、ロリに変身している時なら案外似合ってるかも、だけど笑えるなww

あと、前スレのアンケート今見ました。全てオールクリアで見れましたよ。
管理人さん、乙です!
34Classical名無しさん:07/12/16 13:56 ID:A.Pew.SY
旦那なら原付使うより自分で走った方が速いと思うのは俺だけか?

原付に乗った旦那想像したらワラタw
35 ◆YbPobpq0XY :07/12/16 15:03 ID:/OcFM1fI
スイマセン……期日にまで間に合いそうに無いので延長させてください
36Classical名無しさん:07/12/16 17:01 ID:EOj95vmk
>>35
ガモン追加は大変だろうけど、頑張ってなー
37Classical名無しさん:07/12/16 18:47 ID:ThufsmBE
遅くなったけどアーカード投下乙!
実にアーカードらしい心理描写……「永遠の夢に向かって」の時も思いましたが
本当にアーカード描くの上手いですね!
俺も見習いたいです!
そしてロリカード……誰かやると思ってましたw
延長了解です!
無理せず頑張って下さい!
期待してます〜。


そして俺はこのスレの住人に言いたい事がある……何故だれも>>1に対して乙を言わない!?
俺は言うぜ!だって俺スレ立てできないもんw
という事で超亀だけど>>1乙ぅぅぅぅぅっっっ!!
38Classical名無しさん:07/12/16 18:54 ID:hp/xlw4.
投下乙
ロリカードktkr
そして桐山フクロウはどこにいくのやら
39Classical名無しさん:07/12/16 19:59 ID:uf2TKe4c
ロリカードwwww絶対来ると思った。
原チャリの音狙ってるだろwww
そして、何気に廃棄支給品増えてるな
40 ◆ctWQeRff.I :07/12/16 22:36 ID:uf2TKe4c
>>33
気付くのが遅れて申し訳ありません。アンケートご協力ありがとうございます。
また、今回のアンケートにつきましては、既に終了させていただきましたので、
せっかくご協力いただいた結果を生かせず申し訳ありませんが、
結論は前スレの通りです。

再度、ご協力ありがとうございました。
41Classical名無しさん:07/12/17 22:14 ID:49zR1RlE
とりあえず題名の時点で噴いてしまったwww
42Classical名無しさん:07/12/17 23:29 ID:H1K/28UU
>>41
何のことだと思ってもう一度題名を見たら俺も噴いたwwwww
43Classical名無しさん:07/12/18 19:06 ID:x52gJ.LE
お客様の中に前スレの露伴先生の絵をWikiに載せてくれる人はおりませんか?
44Classical名無しさん:07/12/18 20:30 ID:t5r3yl0s
挿絵みたいにのせることってできるのかな?
45Classical名無しさん:07/12/18 21:05 ID:VBU54Xqw
あそこのうpってログイン制だっけ?
もしそうじゃないなら、露伴先生画集として俺が載せようと思うけど
46 ◆1qmjaShGfE :07/12/18 21:16 ID:kZ/XLm5c
神楽、新八、コナン、ルイズ、吉良、シアーハートアタック投下します
コナン、ルイズの二人は仲間の危地を救える人間を探していた。
そこに現れたのは神楽、外見少女、中身は人外パワーの宇宙人。宇宙最強種族の出らしい。
どうやら新八と知り合いらしいこの少女に、今の状況を何と話したものか口篭るルイズであったが、コナンはすぐに彼女の問いに答えた。
「お姉ちゃん、新八兄ちゃんの知りあい? 今新八兄ちゃんが僕達を逃がす為に、爆発する小さい戦車の足止めをしてくれているんだ」
突然の闖入者相手でも即座に必要な情報を過不足なく与えられるのは、コナンの高い知性を表している。
「新八が爆発して戦車になった挙句族止めされてるアルか!? それは大変アル!! 最近のマッポは手加減を知らないネ!!」
受け取る側に問題があったようだが。
(……そりゃ、確かに大変だな)
あんまりな返事だったのでルイズが機嫌を悪くする。
「真面目な話なのよ! ふざけないで! シンパチやキラやギントキの命がかかってるんだからね!」
ルイズが羅列した名前に、神楽は驚きルイズの襟首を掴む。
「やっぱり銀ちゃんもこの先に居るアルか!?」
神楽に凄まれながらもルイズは引かない。
「そうよ! だから早く助けになる強い人を探さなきゃならないの! ふざけてる場合じゃないのよ!」
神楽は至って真面目であるのだが、それをルイズに理解しろというのもやはり無理があるようだ。
この二人の会話の相性はすこぶる悪い。ついでに言うと、こいつらがこうして騒いでいるのは大層やかましい。
となればコナンの出番になる。コナンは銀時、新八を思い出し、そしてそこから知り合いであるという神楽という人間を推測した。
(つーか、銀時さんと同系って事だろ)
難しい言い方は避け、出来るだけ簡素化した言葉を選ぶ。それならボケる余地も無いだろう。
「凄い強い人が襲ってきたんだ。銀時さんも、新八お兄ちゃんもまだ残って戦ってる。だから助けになるような強い人、お姉ちゃん知らない?」
突然神楽は持っていた木刀を両手に持ち、構える。
何やらガムをくちゃくちゃさせるかのごとく、口をやる気無く動かしながら、木刀をぶらぶら振っている。
(……もしかして、バッターか何かのつもりか? 外人枠?)
「OH! ゼッコーキューネ!!」
(いや、後ろのそれ日本語だろ)
48Classical名無しさん:07/12/18 21:19 ID:VBU54Xqw
カリ……これは青酸支援!!
コナンの心中ツッコミはさておき、神楽は木刀を真横に振るう。
ブロック塀に向けて叩き込まれた木刀は、容易くそれを砕き、切り裂き、神楽が木刀を打ち込んだ周辺のブロックを巻き込んで崩れ落ちる。
「う〜ん、レフトスタンドオーバーネ」
欠片の一つが彼方へとかっ飛んでいくのを眺めながら神楽はそんな事を呟いた。
神楽は、心から安心していた。
どうやら銀時と新八はこいつらガキ共を逃がす為に残って戦っているらしい。
それは神楽の知る侍銀時であり、新八そのものであった。
そうであるのなら、万事屋が負けるなんて事はありえない。こうして、三人の居所は全て知れたのだ。何も恐れる事は無い。
「さあ行くアル! 二人は何処ネ!」
コナン、ルイズはその余りのパワーに驚き、言葉も無かった。
こんな少女が覚悟並のパワーを持っているなど、誰が想像出来ようか。
しかし、いち早く立ち直ったコナンは神楽に新八が居る場所を説明する。
説明という程ややこしい事でもない、この道をまっすぐ行くだけだ。
すぐに駆け出そうとする神楽だったが、それをコナンが止めた。
コナンは、この神楽という強力な助っ人を得て尚、二人と一体の襲撃者に対するには不足であると考えていた。
コナン、ルイズが足手まといである事実は変わらない。ならば二人がすべきは更なる協力者を探す事。
そして、その鋭い観察眼は神楽のバッグのふくらみから、そこにある物に気付いていた。
「お姉ちゃん、そのバッグの中身って何かな。もしかして、メガホンみたいなものが入ってるんじゃないかな」
コナンの言いたい事がよくわからない神楽は面倒そうにコナンを見やる。
「黙れガキ。こっちは急ぎの用なんだから、お前は家に戻ってママのおっぱいでもしゃぶってるアル」
鬼のような事を平然と言う神楽であったが、コナンは額に青筋を立てながら続ける。
「あのね、もしそういう物なら、大声で助けを呼べるんじゃないかなって」
言われてみれば、確かにその通り。神楽はバッグから拡声器を取り出した。
(良しっ!)
心の中で喝采をあげるコナン。
「そうネ。お前みたいなガキがほんの僅かでも役に立ちたいと思うんなら、これ使ってせいぜい足掻くといいアル」
これはあまり知られていない事だが、神楽は真選組随一のドSと張り合う程のSである。
これに晒されているコナンは、自制心に富んでいる方だと思われる。
しかしいくらなんでもここまでの扱いには、一言言ってやりたくもなる。
が、隣に居る今にも暴れ出さんばかりの顔をしているルイズの存在が、それを止めてくれていた。
というか、フォローしないととてもまずい。
ルイズが何か言い出す前にコナンは慌てて口を開く。
「わ、わあ! 拡声器だ! これなら遠くまで声が聞こえるね! ありがとうお姉ちゃん! 良かったねルイズお姉ちゃん、早くこれで仲間を探そうよ!」
ルイズは怒りに震えながらも、自分が足手まといであり、神楽がそうでない事実を認めてはいたので、なけなしの忍耐力を総動員して爆発を堪える。
「そ、そうね。あなた、シンパチ達の事お願いするわ。絶対助けてあげてね」
「あったり前アル! お前みたいなキンキン声の奴に言われるまでも無いアルネ!」
ぶちーんとキレた。
「あんたに言われたくないわよ! 何よその趣味の悪いくすんだピンクの頭は!」
ぶちぶちーんと神楽もキレた。
「お前こそ何アルかその頭の悪そうなショッキングピンク! うわっ、目が、目が痛いある。キモイピンクが目に突き刺さるアル!」
「なんですって! 大体あなたのその中途半端に高い声のくせに時々思いっきり低くタチ悪そうな雰囲気醸し出すその声が気に食わないのよ!」
「お前こそ! 何アルかそのブリブリーなかん高い声! 聞いてる人間の心の中にドス黒い何かを植えつけるよーな声が癇に障るアル!」
「声声って、アンタの声が一番気に食わないのよ! 生理的に受け付けないわその声!」
「あー! ピンクの頭もその幼い声も、何もかもが気に食わないアル!」
ちなみに一番の被害者はそれを両サイドからステレオ放送で聞かせられているコナンであろう。
(どっちもうるせーーーーー! 似たような声で喚き散らすんじゃねーよ!!)
ここで同様にコナンまで喚きだしたら収集がつかない。それに、時間が無いのだ。
「あの、お姉ちゃん達。急がないと新八兄ちゃんが……」
二人共にとって無視出来ない内容である。渋々双方矛を収める。
「お前覚えておくネ。後ですり潰してひらべったく伸ばした後酢昆布にしてやるアル」
「アンタこそ覚えてなさいよ。貴族に対する礼儀を叩き込んでやるんだから」
ふんっと二人同時にそっぽを向くと、神楽は新八の居る方へと駆けて行った。

走り去っていく神楽の背中を、羨ましそうに見つめるルイズ。
いや、それは羨ましさといった正の感情だけではないのだろう。
コナンはそれを察したが、今の手持ちで出来る限りの事をやる以外に何が出来ようか。
「行こうお姉ちゃん、少し高い所からコレを使えば遠くまで聞こえるよ」
無言で頷くルイズ。
そこで、神楽が居る所では聞けなかった事をコナンに訊ねた。
「ねえ、それって何?」
拡声器を指差すルイズ。
コナンは頷いて、わかりやすく説明する為に実演してみせた。
「えっとね、これはこうするんだよ」
スイッチを入れ、取っ手のトリガーを引きながら声を出す。
音量はある程度抑えたので、それほど大きな音ではなかったが、それでもルイズを驚かせるのには充分であった。
使い方を納得してもらった所で、周囲にある建物を見渡す。
おあつらえ向けの建物が見つかった。
三階建ての雑居ビル、周囲にそれより高い建物は無し。
消防法に基づいてきっちり非常階段もついている。これなら中の階段と外の非常階段の選択が出来る。
「お姉ちゃん、あのビルの屋上から声をかけよう。それなら遠くまで届くよ」
これは非常に危険な行為だとコナンにもわかっている。
だが、あのチャイナ服の娘は殺し合いに乗った人間ではない。
そんな彼女が居たこのブロックは、そうでない場所より比較すればであるが危険人物が居る可能性は低い。
こんな状況でなければ絶対選ばない選択肢ではあるが、いつだって、最良の選択肢なんて望むべくもないのだ。
それに、こうしてやるべき事が見つかったルイズは、とても嬉しそうだったのだ。
「そうね、急ぎましょう! シンパチ達にもっとたくさん応援呼んであげなくっちゃ!」
神楽と出会えて、応援の目処も立った。新八との約束も守れた。
そして今は更なる応援を呼ぶべくやれる事がある。足手まといだけど、それでも何か出来る事がある。
そう思えた事が、何より嬉しかったのだろう。
コナンは自分達の存在意義に関して、正確に現状を把握していたが、敢えてそれを口にしてルイズのやる気を削ぐような真似はしなかった。


新八は何とか致命傷を受ける事もなく逃げ回っていた。
シアーハートアタックの速度もリズムも一定なので、慣れればさほど恐れる事はない。
もっとも気を抜いたら即座にボンッだが。
(二酸化炭素、二酸化炭素、二酸化炭素、二酸化炭素が出てる所……)
二酸化炭素に拘りつつうまい手を考えているが、何一つ思いつかない。
「そんな都合の良い場所あるかあァァァァ!! どうせなら酸素か窒素にして現状で満足しとけゴルアァァァァ!!」
この案は諦めよう。次の案首輪爆弾は、現在の所何とかする手は思いつかない。いや、思いついてはいるがやったら体の何処か取れてしまいそうなので却下。
そもそも、手がかりになるからと取ってきたもの爆発とかさせたら覚悟に会わせる顔が無い。これは最後の手段にする。
何か別の手を……
そこでぴんとひらめいた。これならいけるかもしれない。
新八はシアーハートアタックを引っ張りながら少し大きめの建物を探す。
あった、御あつらえ向き五階建て鉄筋コンクリート。道路に面した部分がガラス張りになっているのが難点だが、周囲にこれより大きい建物は見つけられない。
(万事屋は銀さんだけじゃないって事、見せてやる!)
ビルに駆け込む新八。通りすがりに案内板を見て階段の位置を確認する。
「コッチヲミロー」
「黙れゴキブリ戦車! 殺虫剤さえありゃお前なんてとうに成仏してる所だコノヤロオォォォ!!」
階段を駆け上がる。もしかしたら戦車はこれを登れないかもしれないという淡い期待もあった。
「コッチヲミロー」
全然余裕で登ってきてます。本当にありがとうございました。
「何その悪路走破性能!? 調子こいてんじゃねえぞ無限軌道オオオォォォ!!」
二階まで着くと、そこから更に三階へと向かう。
ここからはオフィスに使われている階だ、ここならばきっと目当ての場所があるはず。
最初に見つけたドアを開けて中に入る。
53Classical名無しさん:07/12/18 21:23 ID:VBU54Xqw
ちょwwバーローwwww
支援
そこは、道路に面した大きな部屋で、テナントが入るのを待っているのか、もしくは何か別な理由があるののか、家具も何も置いていない殺風景な部屋であった。
アテが外れる新八であったが、もう部屋には入ってしまっているし、後ろからはシアーハートアタックが迫ってきている。
もう一つ別のドアでもあれば、簡単に逃げられるのだがと部屋を見渡してみるが、どうやら出入り口は一つしかないようだ。
「おいィィィ!! 普通こんだけデカイ部屋ならドアの二つや三つあるだろォォォォォ!! 何でこんな所に天然デストラップ仕掛けてやがりますかァァァァァ!?」
部屋の奥へと逃げる新八、ガラス張りの壁に背をつけてシアーハートアタックの動きをじっと見る。
シアーハートアタックはやはり一直線に新八目指して走ってくる。
(よし! これをひらりとかわして……)
迫る戦車の骸骨顔、正に一触即発、全神経を戦車へと集中する。
「って、そんなひらりとか絶対無理イイイィィーーーー!!」
寸前で空中に飛び上がったシアーハートアタックを大きく横に飛んでこれをかわす。
小さい動作で次に繋げながらとか、そんな事してる余裕は無かった。
転がる新八に、更に襲い掛かるシアーハートアタック。
それをわたわたと両手両足をつきながらよける新八。みっともないだとか言ってる場合ではないのだ。
何とか部屋の外に逃げ出さなければならない。
しかし、飛ぶは跳ねるはするコイツに接近されているのは、思っていた以上に厳しい事であった。

新八の居ると思われる場所へと急ぐ神楽。
さっきの子供に言われた場所には着いたが、そこに新八の姿は見えない。
物音も聞こえない。目を凝らして辺りを見る神楽。
「居たアル!!」
ビルの三階、動く物も無いこの風景で、唯一動いているそこに、ガラスの壁に背を向けている人物、新八が居た。
すぐにそちらに向かって走るが、どうやら新八は何かに襲われているようだ。
それが何なのかはわからなかったが、新八は今武器を手に持っていない。
ならば、と神楽は手に持った木刀を思いっきり振りかぶる。
「新八! 受け取るアル!!」
そして宇宙最強種族と言われた夜兎一族の怪力を持って、それを新八に向けて全力で投げつけた。
55Classical名無しさん:07/12/18 21:27 ID:VBU54Xqw
スキ!!キライ!?!支援!
それに気付けたのは、何故であろうか。
長い付き合いのせい? 何度も一緒に危地を乗り越えた仲間だから? 神様は死んだ魚のような目をする銀髪より眼鏡がお好き?
よくわからないが、とりあえず自分にとって一番気分の良い理由で納得する事にした新八。
見下ろしたそこに居た懐かしい顔、時間にしてみれば大した事は無いのかもしれないが、本当に懐かしい、そして待ち焦がれたその顔が、何かをこちらに向けて放り投げていた。
まっすぐにこちらに向かってくる物体。
それが何なのかまるでわからないが、このピンチを乗り切る為に神楽がしてくれた事なのだ。新八にとって悪い事であるはずがない。
例えば神楽があの距離からこの戦車に向けて何かをぶん投げて攻撃してくれたとか。
神楽の怪力ならそれも不可能ではないだろう。おあつらえ向きに、ちょうど戦車をかわしたせいで奴は方向転換の真っ最中。狙うのなら今だ。
(……でも気のせいかな。まっすぐに、僕の方に向かってきてる気が……)
思いっきりその場で仰け反る新八。
その真上を、ガラス壁をぶち破ってきた物が凄まじい速度で突き抜けていく。
「殺す気かァァァァァ!! こんな場面で平然とボケるなァァァァ!!」
今にも引っくり返りそうなぐらい反り返った上体を無理矢理引き起こす。
その顔のまん前に、例の戦車君が居た。
「そういえばアンタ居たっけェェェェ!!」
身をよじりながら、真横に大きく跳ぶ新八。
あまりに近寄りすぎていたせいか、シアーハートアタックの起爆機能が反応し、その場で爆発を引き起こす。
爆風に煽られながらもごろごろ転がって移動し、すぐさま立ち上がる新八。
そこで神楽が放り投げた物を確認出来た。
木刀だ。それが、モルタルだかコンクリだかの壁に深々と突き刺さっている。
「ざけんなァァァァァァ! 渡すつもりで投げたんならこっちに狙い定めてんじゃねェェェェェ!!」
そんな文句を溢しながら、突き刺さった木刀に手を伸ばす。
「でも、助かったよ神楽ちゃん!」
一気に引き抜き、壁を背に青眼に構える。
「贅沢は言ってられなそうだし、この部屋でやる!!」
飽きもせずこちらに向かい突進してくるシアーハートアタック。
『新八、おめーはやれば出来る子だと思ってたよ』

以前、そんな事を銀時が言ってくれた。
(銀さんがそう言ってくれたんだ。だったら僕も出来ないなんて言ってられるか!!)
寸前で跳び上がり、新八に喰らいつこうとするシアーハートアタック。
新八はそうやって跳び上がったシアーハートアタックの真下を、思いっきり体勢を低くしてくぐりぬける。
その際、体を反転させ、上半身は真後ろを向くように、踏み込んだ左足を軸に半回転しながら右足を大きく引き、タメを作る。
この時既に、新八の真上をシアーハートアタックはすり抜けて行っている。
シアーハートアタックは壁に向かって跳び続けていた。
「おおおおおおっ!!」
その真後ろに、新八は右足を踏み込みながら全力で突きを放った。
木刀正宗の力か、はたまた新八渾身の突きの威力か。
その突きはシアーハートアタックごと壁に突き込まれ、押し付けられた壁が崩れ、その中にシアーハートアタックを埋め込む。
「よっしゃあァァァァァ!!」
シアーハートアタックからきゅらきゅらと音がするが、相当深くめり込んだようですぐに出てくる様子は無い。
すぐに部屋を飛び出す新八。
ドアを閉め、そこらから椅子やらテーブルやらをかき集めてドアの前にバリケードを築く。
その時に見つけたモップをつっかい棒にして、ドアは開かないようにしてある。
「蚊だろうと二酸化炭素だろうと、こうして閉じ込めてしまえば、それに反応して爆発する事もない。爆発しないんなら、ここからなんて抜け出せない」
そして、万事屋独特の、あのニヤケ笑いを見せる。
「ゴキブリがキャタピラ付けたぐらいでエラソウにしてんじゃねーぞコノヤロー」
ここが普通の街ならば、誰がまたここに入るかわからないしとても安全とは言えない。
だが、今ここに居るのは60人の参加者のみ。ならば、ここに敢えて入る人間がいる可能性は極めて低い。
志村新八、会心の策であった。
出来れば壁より強度の低い窓の無い部屋に閉じ込められれば万全と思っていたのだが、この際贅沢は言ってられない。
念のためにバッグから紙を取り出して注意書きを書き、張っておく。
『この中は危険です、決して入らないでください。万事屋銀ちゃん、志村新八より』

神楽は下に居た。すぐに合流しようと階段を降りる新八。
だが、上から何やら不穏な声が聞こえた気がした。
「危険? 何言ってるアルか! 中に新八が居るのにこんな張り紙……はっ!? これがまさかかの有名な孔明の罠アルか!?」
どうやら神楽は別の階段で昇って来た模様。
踵を返して階段を駆け上がる新八。
「おおい! 僕の筆跡ぐらい見てわかれよ! というか孔明って誰ッ!?」
「うらー! 新八助けに来たアルよーーーー!!」

がっしゃーん

ちょうど、階段を三階まで昇りきった所で、その、器物を吹っ飛ばすよーな音が聞こえてきた。
「お前やっと現れたと思ったら何してくれてんだァァァァ!!」
絶叫虚しく、新八会心の策は破綻した。
(ぼ、僕の会心の策……一分と持たないとかひどくない? あれ? 何か目から汗が……)
新八の目から光る何かが零れ落ちたとして、誰がそれを責められようか。
がっくりとその場に膝を付く。
周囲の空間すら巻き込んで真っ暗にヘコむ新八であったが、はっと我に返る。
神楽が戦っているのだ、手伝わなければならない。
木刀正宗を手に部屋へと駆け込む新八。
部屋の中では神楽がシアーハートアタックを蹴飛ばしている所であった。
「神楽ちゃん!」
シアーハートアタックは部屋の奥まで吹っ飛んでいる。
「新八か? 助けに来たアルよ! 無事ネ?」
「いや、アンタのおかげで再びピンチになった所だよ」
神楽は油断無くシアーハートアタックを睨みつけている。
「あのちびっこ戦車、どうやらひたすらに人の後をつけてくるらしいアル。それに思いっきり頑丈ネ」
「知ってる」
不敵な笑みを浮かべる神楽。
「だけど、私良い手思いついたネ。あいつを何処かの部屋に閉じ込めてやるアル。そうすれば……」
「うおィィィィ!! それ考えたの僕! 何自分の手柄にしやがってますかァァァァァ!!」
「これならいくら相手が硬くても問題無いアル。それにこれだけ部屋が多ければ閉じ込める部屋にも苦労しない……」
「ちょっと何そのしてやったぜー顔!? だからそれ僕! 僕の会心の策だって! JAROに訴えますよォォォォ!!」
バカやってる間に再度シアーハートアタックがこちらに接近する。
しかし、今はさっきまでとは違う。
新八が一歩踏み込み、木刀を振るって叩き返す。
「これ僕使っちゃってるけど、神楽ちゃんは他に武器は無いの?」
そう言う新八に不機嫌そうに答える神楽。
「それは新八が使うネ、侍が剣無しじゃカッコつかないアル。それに私には武器なんて必要無いアルよ」
「神楽ちゃん……」
なんだかんだ言っても、神楽は木刀を投げて新八を援護してくれたのだ、やはり恩はあるのだろうと感謝の言葉を述べようとする新八。
神楽は、いつのまにか懐から取り出した見た事も無いぐらいごつい真っ黒のハンドガンを片手で構えている。
何処から持ってきたのかサングラスまでかけてシアーハートアタックに銃をがんがんぶっ放す。
「神楽ちゃんそれ武器ィィィィ!! 木刀目じゃないぐらい武器ですからァァァァ!! それにそのサングラスうぜェェェェ!!」
「新八にハードボイルドは百年早いアル。おしめが取れるようになってから酢昆布持って出直すね」
「何そのサングラスと銃でハードボイルドとか安易な考え! ムカツクんですけど! というかハードボイルドが酢昆布要求してんじゃねェェェェ!!」
「このサングラス、一階の受付にぽーんと置いてあったアル。だから私ドロボウじゃないネ」
「食いつくのサングラスかよ!! 銃だろ普通!! それにその辺にあった物勝手に持ってきたら文句無しでドロボウでしょうがァァァァ!!」
二人の話を邪魔するように、シアーハートアタックが喚く。
「コッチヲミロッテイッテンダロォォ!!」
二人は揃ってシアーハートアタックを鋭い目で睨みつける。
「新八、閉じ込めるじゃ生ぬるいネ。コイツの足止めどのくらい出来るか?」
「五分。それ以上は勘弁して下さい、マジキツイっす」
「うるさい、十分後に屋上で待ち合わせネ」
「欲しい時間決まってんならハナから聞かないで下さい」
一瞬だけ顔を見合わせて笑った後、神楽は部屋から駆け出し、新八はシアーハートアタックと相対する。
「かかって来いオラァァァァ!! でもどうしてもっていうんならちょっと一休みしてもこっちは全然オッケイですよォォォォ!!」

神楽が部屋を出てから五分以上は過ぎたと思われる。
何をやっているのかはわからないが、時々下から聞こえる轟音が、神楽が行動している事を教えてくれる。
(……というか、本気で何してんだろ神楽ちゃん)
もう何度目になるかわからないシアーハートアタックの突撃を、木刀で打ち落とす。
この木刀を持ってから、驚くぐらい身が軽くなっている。
本当に五分がギリギリだと思っていたのだが、どうやらこれなら何とかやっていけそうだ。
(剣筋も鋭くなってる。これ、もしかして凄い木刀なんじゃないのか?)
流石に剣を学んでいるだけあって、この木刀が並でない事にはすぐに気付いた。
屋上にちょうど十分後に辿りつくよう誘導する自信は無い。
だったら、さっさと屋上まで逃げてそこで時間を稼ぐしかない。
屋上ならばさっきの部屋よりも広く、逃げるのにやりやすかろう。
新八はそう考え屋上で神楽が来るのを待ちながら、シアーハートアタックの相手をしていた。
いっその事ここから叩き落してやれば、粉々になってくれるのではないかとも思うが、神楽をして『頑丈』とまで言わしめる相手だ。
それでもぴんぴんしてて動き出す可能性も否定できない。
いずれにしても、神楽が何か考えがあるというのなら、それを試してからでもいいだろう。
幸い、木刀のおかげか今までよりも楽にコイツをあしらえる。
ただ、新八も人間であり、体力には限界がある。神楽の策がうまくいかないようだったら、とりあえず下に落として一休みぐらいは必要になるだろう。
あれから十分弱、遂に神楽が屋上に姿を現す。
新八の無事を確認した後、近くにでーんと鎮座していた円筒形の給水タンクに目をつけ、それを両手で抱える。
「ふんごォォォォォ!!」
とても女の子とは思えない雄たけびをあげる。
総重量がどれぐらいになるか見当もつかない。直径2メートル、高さ2.5メートルの円筒タンクの中身は全て水なのだ。
それを、神楽は力づくで持ち上げる。
床との接地面にあった転倒防止アンカーがブチブチと紙か何かのように引き千切れる。
完全に肩の上にそれを担ぎあげた神楽は、歯を食いしばりながら新八とシアーハートアタックを見る。
新八は屋上をぐるぐると走り回り、シアーハートアタックはそれを追いかけ続けている。
「新八! 邪魔アル!!」
新八は神楽が抱え上げているものを見て、目をむいた。
今まで全速で走っていたと思っていたが、どうやら生命の危機にはそこから二割増しで速度が出るらしい。
「待って! 本当マジ待って! 死ぬから! かすっただけでそれ死ねるから!」
神楽はあまり待つ気は無かったらしい。
「どっせェェェェェェい!!」
走り抜ける新八の背中をかすめるように、神楽は給水タンクを叩き付けた。
そのど真ん中にシアーハートアタック。
超重量のそれを勢いよくぶちこまれた屋上の床がぶちぬけ、下の階へと落下する。
ぶちぬけた床の端に掴まってぶら下がる新八。
重力加速度により質量を増した給水タンクは更に下の階、下の階へと床を突きぬけながら落っこちていった。
半泣きになりながらよじのぼった新八が見たのは、屋上の柵に乗って勝鬨をあげる神楽の姿であった。
改めてぶちぬけた床を見直す新八。奥の方で給水タンクからぴゅーっと水が噴出していた。
「……幾らなんでもやりすぎだろ、コレ」
まだ何やら吼えている神楽の側に行く新八は、すぐにその異常に気付いた。
「あれ? 何かココ揺れてない?」
神楽は柵の上から振り返る。
「そりゃそうアル。下の階の柱私がぼこぼこにしてやったから。このまま奴を生き埋めにしてやるネ」
「おいィィィィ!! そういう大事な事は先に言おうよ! これどう考えても僕等も生き埋めになるんですけど!」
そこかしこを見渡す神楽。
「ああ、あそこ、あのビルに飛び移るアル」
「お前今探しただろ! 何も考えて無かったんだろ! 正直に言えゴルァァァァ!!」
「バカ言うなアル。私は一万年と二千年前から考えて、八千年過ぎた頃には完璧な案に練りあがってたアル」
「こんな策考えるのに一万二千年かけるとかどんだけ気が長いんだよ!! というか練りあがった八千年目にきっちり仕掛けとけよ! そっから四千年も寝かしてんじゃねェェェェ!!」
揉めながらもやるべき事はきっちりやる新八。
柵を越え、飛び移るビルを見下ろす。三階建てのその屋上までは、結構な距離と高さがあった。
「神楽ちゃんもしかして二階分の高さとか舐めてる? あれ、結構ヤバイよ。ほら、足にびーんって来て痺れる奴。まず間違いなく来るよね」
全く聞いてない神楽。
「行くアルよ新八!」
「聞けよォォォォ!! クッソォォォォ!! 死んだらァァァァ!!」
二人は同時に屋上から飛び降りる。
それに合わせるかのように、五階建てのビルが轟音と共に崩れ落ち始める。
給水タンクでぶちぬかれた穴に吸い込まれるように、中に向かって四方の壁が倒れ込む。
それぞれの壁、柱が相互にぶつかりあって、複雑怪奇な作用を生み出し、二階の床が外に飛び出したり、一階の壁が真上に飛び上がったりと職人によるビル爆破では到底見られない模様であった。
着地の音も鮮やかに、完璧な体勢で着地を決める神楽。
両足踏ん張って着地した後、勢い余ってごろごろ転がる新八。
「グアァァァァ!! 足がァァァァ!! ほら来た! ほら来た! 言った通りマジ痺れるしコレェェェェ!!」
飛び降りた勢いが無くなった後も、ごろごろ転がってのたうち回る新八。
あまりにウザイので神楽が蹴りを入れるとすぐに収まった。
「しかし……派手にやったねえ」
完全に倒壊したビルを見下ろし、そう言う新八。
五階分の瓦礫の山である。舞い上がった粉塵はしばらくの間落ち着くことは無いだろう。
例えあの戦車に百倍のサイズがあったとしても、この瓦礫からは逃れられない。
一安心といった所だが、新八はすぐに次の行動に移る。
「よしっ! 神楽ちゃん、銀さんを助けに行こう!」
「お前が仕切ってんじゃねえ!」
跳び蹴りが顎に当たって血を吹く新八。
倒れる新八に馬乗りになって更に殴り続ける神楽。
「オラ、誰のおかげだ? 誰のおかげで勝てたんだ言ってみろ? 神楽様だ、様付け忘れるなよ?」
「ちょ、ブゴッ、神楽ちゃんそれ所じゃ、へぶっ、痛っ、マジ勘弁してくだ、ヘボォ!!」

神楽と顔面がちょっと修羅場入っちゃってる新八の二人は並んで走りながら病院を目指す。
「あの戦車より神楽ちゃんに殴られた分の方がダメージ大きいってどうよ? ねえ、どうよ?」
「急ぐアル新八。銀ちゃんが待ってるネ」
「あれェェェ!! それ誤魔化してません!? ちょっとやりすぎちゃったーみたいな感じ出てないマジでェェェェ!!」

(あの時の不安が嘘みたいに消えてるアル。新八と会っただけなのに、それだけでこんなに……)

「それに神楽ちゃん、この先にもう一人吉良さんって人が居るんだ。その人も助けなきゃ」
「キラー? それはきっと殺し屋ね。私の女の勘がそう言ってるアル」
「いやそれ女の勘じゃ無いから! 凄い勢いで名前から取ってるでしょ!? ていうかただのサラリーマン容赦なく殺し屋扱いすんなァァァ!!」
「リストラされた恨みネ。それであんな快楽殺人者に……現代が生み出したヒズミって奴ネ」
「殺し屋から更に嫌な進化遂げてるんですけど!? なんでもかんでも時代のせいにしてあんな働き盛りの人リストラしてんじゃねェェェェ!!」

(ケンもマダオも、嫌な奴じゃないアル。でも、やっぱり私はココが良いアル)

「そういえば神楽ちゃん、向こうの方で女の子と小さい男の子見なかった?」
「ああ、居たアル。ガキはさておき、女はムカツク奴だったネ。後でシメるアル。特にあのピンク髪と声が許せないネ、キャラ被りすぎアル」
「嘘つけェェェェ!! いくらなんでもあんな高度な萌え属性アンタにはねェェェェ!!」
「一緒に新八もシメるアル」
「スンマセンッシタァァァァ!! マジ調子乗っちゃってました!! 土下座っすか!? 土下座っすね!? 幾らでもする準備ありやすよォォォ!!」

(……ココじゃないと、私ダメアル)


吉良吉影は津村斗貴子との戦闘の傷も癒えぬまま、ふらふらと彷徨い歩く。
全身に負った傷を治療するには、病院に行かなくてはならない。
それはあの大男の居る場所へ戻るという事だ。
坂田はどうしようもない男だが、こと戦闘に関しては信頼のおける男だ。
あれだけの身のこなしをする男が、本気で逃げに回ったらどんな奴がそれを捕らえられるというのか。
ならば、坂田に引き付けられたあの大男は何処へ行く?
そもそも、奴の目的は何だ? 何故病院に来た?
病院に来る目的は二つ、治療に来るか、治療に来た人間に用があるか、だ。
後者だった場合は皆逃げ散った後なので最早その用を成さない。それでもといったら、待ち伏せするぐらいか。
ただ、そうだとしても、明らかに逃げて行った人間達が居るのだ。普通はそれを追う事を考えるだろう。
そこまで考えて、その思考の不毛さに気付く。
今の吉良に選択の余地など残っていないのだ。
怪我の治療を行い、出血を抑える。その上で、休息によって体力を取り戻す。
それをしなければ、吉良は致命的な状態に陥ってしまうだろう。
そうなった吉良を見つけて助けてくれそうな相手は、ルイズ、志村、コナン、そして坂田の四人のみ。
他の奴等に出会ったらどんな事になるかわかったものではない。何より顔面傷女がこちらを狙ってくるだろう。
甚だ心外ではあるが、吉良は意を決して病院へと向かう事にした。

病院入り口、そこで吉良は驚愕に立ちすくんでいた。
「坂田……お前……」
そこに転がっていたのは、坂田銀時の死体。
自分も修羅場を乗り越えて生き延びた、だからこの男もそうであろうと、何故かそう思っていた。
あの大男にやられたのであろう、とても人のものとは思えない力で全身叩きのめされていた。
病院の建物もひどく痛んでおり、二人の激戦が偲ばれる。
彼の死体を見て、衝撃を受ける自分に、吉良は驚いていた。
坂田は気に食わない人間だ。それが殺され、無残な死体を晒している。それは吉良にとってプラス要素であるはずなのだ。
驚き、恐怖し、その場に立ち尽くす。何故、そんな事にならなければならない。
ようやく、その理由に思い至り、再度恐怖にその身を震わす。
そう、吉良は坂田の戦闘能力を認めているのだ。そしてそれ程の男ですらこの場所に於いて生き残る事を許されない。
自分が死んでしまう。一歩間違えばこの坂田の結末は自らが迎えていたかもしれないのだ。
それを感じ、恐怖しない人間など居ようか。
「だが、それでも尚私は生き延びる。幸運は、既に私の元にあるのだからな」
坂田はあの病院に居た集団の中で、唯一戦闘に長けた人間であった。
残るはルイズ、志村、コナンの戦闘弱者のみ。こいつら全員を消す、それはさしたる労力を必要としないであろう。
それを済ませれば、後は顔面傷女だ。あの様子ならば、仲間なども居ないであろうから、奴から吉良の能力が漏れる確率は低い。
そして、一番の問題ジグマール。こいつは何としても殺さなければならない。
まだ参加者は残っている。そいつらにこの吉良吉影の能力を知られるのは避けなければならない。
病院内から物音がしない事を確認しつつ、中に入って治療に必要な資材を集める。
消毒液、包帯、ガーゼ等に加え、点滴用パックまで見つかった。
やはり幸運である。点滴用のパックが吉良にもそれとわかる状態で置いてあったのだ。
予備の注射針と点滴パックをありったけバッグに詰める。
病院は今までの経験上、とても人が集まりやすい場所であるとわかった。
ならば資材だけ集め、治療は少し離れた場所で行うのが賢いやり方だろう。
不意に吉良の懐が跳ねる。
それに心当たりのある吉良は、そこから自らの千切れた左手を取り出した。
シアーハートアタックはどうやら何者かと戦闘中の模様、こんな調子で誰かと一緒に居る時に跳ねられたりしたら不審がられてしまう。
再度手を繋ぐ希望があるため、これを持ってきてはいたが、どうやら決断しなくてはならないらしい。
とりあえず目に付いたロッカーの中にこれを入れ、その鍵をとる。
これなら、手を繋ぐ目処が立った時、取りに来る事も出来るだろう。
その途中で、ふと目に付いた物がある。
坂田がこれを持って何やら言ったら、この物体が剣になったのだ。
何かの役に立つかもしれない、そう、それだけの理由だ。
坂田の形見分けなんて発想は、吉良吉影には無いはずなのだから。
その相手が例え、吉良の人生において唯一肩を並べ、同じ目的の為に闘った相手であったとしても。

声が擦れ、もう大きな声が出せなくなっていた。
それでもと続けようとするルイズを、コナンは服の裾を引っ張って止める。
「お姉ちゃん、もういいよ」
それでもルイズは続けた。
『私の仲間が危険な目に遭っているの! 誰か! この声が聞こえたのなら助けに来て!! 私はルイズ・フランソワーズ……』
「お姉ちゃん!」
コナンの怒鳴り声で、ルイズはようやく声を出すのを止める。
「……もう、行こう。これ以上ここに居るのは危険だよ」
コナンに顔を見せないまま、ルイズは篭るような小さな声で言う。
「まだ誰も呼べていないわ。もしかしたら、迷ってるのかもしれない。空耳かもしれないって、思ってるのかも」
「無駄だよ。もし今、人が来たとしても、多分銀時さんも、吉良さんも、新八お兄ちゃんも戦闘を終えている。間に合わないよ」
ルイズは勢い良く振り向く。
「だって! 私まだ何もしてないじゃない!」
コナンは首を横に振る。
「そんな事無い、お姉ちゃんはあのチャイナ服の子を……」
「あの子は! 私達に出会わなくってもきっとシンパチに会ってたわ! だってあの道まっすぐ行くだけだったんだもの!」
それに気付いていた事に驚くコナン。
「だから私は何としても仲間を連れていってあげなくちゃならないのよ。私だって、私だってみんなの為に何か出来るんだから……」
ルイズは、ゼロと呼ばれ無能者の烙印を押され続けて生きてきた。
それでも、いざ事が起こればその身を呈してでもという覚悟を持って、誇り高く生きてきたつもりだ。
いつかはきっと、誰かの役に立つ何かになれる。そう信じて努力してきたつもりだ。
しかし、現実はこんなにもルイズは無力で。今までそうであったように、ただ歯を食いしばってその屈辱に耐える事しか出来なくて。
涙は零さない、それではあまりにも惨めすぎるではないか。
コナンは、ルイズの目に溜まったそれを見なかった事にしてルイズを促す。
「行こう、お姉ちゃん」
ルイズは何も答えず、ただじっと下を向きながらコナンの後に付いて行く。
そのコナンの手が硬く握り締められている事にも気付かずに。
何も出来なかったのは、コナンも一緒なのだ。
(名探偵が聞いて呆れる。何も出来ない所か、女の子一人慰めらんねえなんてよ……)


神楽、新八の二人は病院が見える所まで走ってきていた。
途中新八は吉良を探してみたのだが、戦闘があった場所からは既に移動していたようで、その姿は見つからなかった。
それを見つけたのは、病院の正門に辿り着く直前であった。
「吉良さん! 無事だったんですか!」
喜び駆け寄る新八。
しかし、吉良が全身に負った怪我を見てその表情が硬くなる。
「吉良さん、ひどい……」
心配する新八に吉良は微笑んでみせる。
「私の事は心配いらない。それより、そちらのお嬢さんは?」
「神楽アル。お前銀ちゃん見なかったか?」
吉良は、病院の建物入り口のある方を見て言った。
「ああ、坂田なら入り口に居るよ。行ってやるといい、きっと彼も喜ぶ。志村君もさあ、早く行ってやりなさい」
そう言って新八の肩を叩いてやる。
自らの怪我より二人への配慮を優先するその態度に、新八は目指すべき立派な大人の姿を見た。
「はいっ!」
元気良く答えて、新八、神楽の二人は正門をくぐって入り口へと駆けて行った。

遂に銀時を見つけた。
その歓喜が恐怖に変わるのに、ほんの少しの時を要した。
倒れ臥す銀時を見て、驚き駆け寄る神楽は、間近でその姿を見た瞬間理解する。
あんな風に人をしたら、絶対に壊れてしまう。
ほんの半日会えなかっただけなのに、こんなのちょっと目を離した程度、何度ももっと危険な目に遭って、それでも銀時とは平気な顔でまた会えたのに。
何があろうと、何を敵に回そうと、絶対に銀時は屈する事も折れる事も無かったのに。
恐い、銀時に触れるのが、本当に恐ろしい。
壊れてしまった銀時なんて、夢にすら見た事が無かったそれを、こんな風に見る事になるなんて。
それでも触れずにはいられない。こんなになってしまった銀時は、きっと物凄く痛いだろうから。
恐る恐る、ゆっくりと銀時に手を伸ばす。
顔はまだ銀時と判別出来る程度の損傷で済んでいた。
その頬に触れる。冷たい。微かに体温が残ってはいるのだが、それは既に生者のそれではなかった。
怪我はした。たくさんしてきた。それを見て胸が潰れるような想いをした事も一度や二度ではない。
それでも、銀時はいつだって戻ってきてくれたのだ。
全身が震えるのを止められない。無理に表情を作って神楽は新八を見る。
「新八、銀ちゃん死んだ魚みたいアル」
神楽と同じく身動きが取れない程に衝撃を受けていた新八は、神楽の言葉で正気に戻る。
自らが為すべき事に気付いた新八は、神楽に歩み寄るとその両肩を掴み、そっと抱き寄せる。
「……神楽ちゃん!」
そこで、噴出しそうになった感情を、神楽は認めたくなかった。
銀時が死んだなんて、そんな事、絶対に嫌だ。
全力で新八を突き飛ばす。
嫌だ、銀ちゃんが死んだなんて嫌だ、銀ちゃんが死んだなんて認めたくない、銀ちゃんがもう動かないなんて嘘なんだ。

カチッ

突然新八の体に縦にひび割れが走る。
「神楽ちゃ……」
神楽の名を口にしながら、後ろに大きく突き飛ばされる新八の体に、ヒビが走ったのだ。
「あ……」
それ以上は何も言えなかった。
破裂する新八の体、その瞬間だけを神楽の瞳に焼き付け、直後に襲ってきた爆風に神楽は大きく吹き飛ばされてしまう。
目の前で起こった事が良く理解出来ない。
新八、あんな風に割れて、崩れたりしたらもう治らない。
それが幻であったと、この衝撃にブレる視界が落ち着けばそこに新八はまだ居ると、そんな期待に縋って頭を振りながら新八が居た場所を見る。
そこには二つの首輪が転がるだけだ。すぐ隣にあった銀時が同じく爆風に巻き込まれたのか、吹き飛ばされ、さっきの場所とは違う場所に転がっている。
下半身に力が入らない。足が震えて立つ事すら出来ない。
そして、その事にすら気付かずに必死に両腕を使って銀時に這い寄る。
「銀ちゃん、新八がバラバラになって消えちゃったアル。銀ちゃん、新八が大変アルよ。銀ちゃん、銀ちゃん……」
銀時の側に辿り着く。
銀時は、土気色の顔で神楽を迎えた。
「銀ちゃん、ひどい顔ネ。きっと風邪アル。そんな所で寝てるからそんな事になるアル。新八、風邪薬何処ネ? 銀ちゃんが大変アルよ新八……」
返事も無く、ゆっくりと振り返った先に、新八がそこに居た跡を見つける事は出来なかった。
「新八、隠れてちゃ駄目アル。バラバラになっちゃったんだから、早くくっつけないとダメアルよ。ねえ、銀ちゃんもそう思うネ?」
膝立ちになり、空を見上げる。
景色が滲んで見える。
何より大切だと、それがあるから生きていられる、大好きな自分で居られる、そう思っていた物が全て無くなってしまった。
ずっと不安だった。無くしかけて、また確認出来た。やっぱりこの二人は自分に必要なんだと。
あんなに不安だったのが、新八と出会った瞬間に全部吹き飛んだ。すごい、新八は本当にすごい男だった。
きっと銀ちゃんもそうだっただろう、銀ちゃんに会ってたなら同じ様に嫌な事も、辛い事も全部吹き飛んでしまってただろう。
でも、こんな殺し合いの場に連れてこられて、不安で不安で堪らない中、初めて目にした死体がそんな一番大切な人達で。
もう堪えられない。

「――――ッッ!! ――――ッッ!! ――――ッッ!!」

空に向かって大声で泣き叫ぶ。
でも、そんな声も言葉にならなくて、ただ息を吐き出すだけでも、それを止められなくて。
今度こそ絶対遅れたりしないから、また名前を呼んで欲しい。
神楽って、ロクでもない用事でも、何の用事も無くても、ただ呼んでみるだけでもいい。
その度に返事してあげる。どうしたの銀ちゃん、何かあったの銀ちゃん、イチゴ牛乳は冷蔵庫だよ銀ちゃん、ジャンプ買ってこようか銀ちゃん。
また、ステーションによじ登って私の名前を呼んで欲しい。
何処行くんだって、三人揃って万事屋なんだって、何度も何度も呼んで欲しい。
今度はシャトル越しなんかじゃなく面と向かって言ってあげる。
帰ってきたよ新八、私もずっと一緒に居たいよ新八、また一緒に銀ちゃん待ってよう新八、また一緒に銀ちゃん迎えに行こう新八。
もう他に何もいらないから、お願いだから、二人共返事をして。

戻らない日々を嘆き悲しむ神楽、今にもくず折れそうな彼女を支えてくれる人は、もう何処にも居なかった。


失望に舌打ちを禁じえない吉良。
まさかあんな勢いで突き飛ばすなど、想像も出来なかった。
志村の上着を爆弾に変え、近寄った所を二人まとめて吹き飛ばす作戦だったのだが、失敗に終わってしまった。
今はあの娘も混乱しているが、もし、冷静に戻って状況を整理したら薄い確率ではあるが吉良のスタンド能力を推理し得るかもしれない。
幸い、泣き叫ぶかと思われたあの娘は何やら奇行に走っているようで、その声を他人に気取られる心配も無い。
殺すのなら今だ。
だが、不安材料もある。
あそこまで接近していた志村を、一瞬でキラークイーンの爆発から逃れうる程突き飛ばしたあの怪力。
そして、懐から僅かに見えているあの銃。
心神喪失状態に近いとはいえ、もし、あの恨みの対象が自分であると知れたなら。
今の大怪我を負っている自分で、果たして倒しうるものなのか。
吉良が志村を吹き飛ばしたと考えるには、そう考える者が既にキラークイーンの能力を知っているという前提が必要だ。
問題は、吉良が神楽と志村に既に死んでいる銀時に会うよう促したという事実である。
いや、これは誤魔化しうる範囲だ。最後の別れを促したとでも言えばいい。

さあどうする吉良吉影、あの娘をここで殺すか否か。これ以上の判断ミスは確実な死を招くぞ。
71Classical名無しさん:07/12/18 21:44 ID:BRaghDmE
sss
72Classical名無しさん:07/12/18 21:46 ID:BRaghDmE
おわあああああMEGANEえええええ!!
【志村新八@銀魂:死亡確認】
【残り33人】


【F-4 病院/一日目 夕方】
【神楽@銀魂】
[状態]疲労、精神的に不安定(極度)
[装備] ジャッカル・13mm炸裂徹鋼弾予備弾倉(25.30)@HELLSING
[道具]支給品一式
[思考・状況]
基本:不明
1:不明
[備考]・原作18巻終了後から参戦。


【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左手消失、右手首裂傷、胸全体に真一文字の切り傷、出血多量、疲労大
[装備]:千切れた自分の左手
[道具]:支給品一式 核金ソードサムライX@武装錬金 包帯・消毒薬等の治療薬、点滴用セット(十パック)
    病院内ロッカーの鍵(中に千切れた吉良の左手首あり)
[思考]
基本:マリアのため、必ず生き延びる。ゲームに乗る事だって辞さない。
1:神楽を殺すか否か考え、それに従って行動する
2:治療をし、休息をとる。
3:顔に傷のある女(斗貴子)は襲ってきたら始末、マーティン・ジグマールを殺す。
4:自身を追うもの、狙うもの、探るものなど自身の『平穏な生活』の妨げになると判断した者は容赦なく『始末』する。
5:できる限り力無き一般人を演じる。
6:もし脱出できるのであればしたい。
[備考]
※『バイツァ・ダスト』拾得直後からの参戦です。
※『バイツァ・ダスト』が使用不可能であることに気づいていません。
※覚悟、ルイズ、ジグマール、劉鳳、斗貴子をスタンド使いと認識しています。(吉良はスタンド以外に超人的破壊力を出す方法を知りません)
※川田、ヒナギク、つかさの情報を手にいれました
※左手を失い、シアーハートアタックの解除が不可能になりました。
 吉良が死ぬまで永遠に、熱源を求めて周囲を動き回っています。
 ただし、制限の影響で破壊できる可能性はあります。


【F-5 北西/一日目 夕方】
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:ヌンチャク@北斗の拳
[道具]:基本支給品、スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険、鷲巣麻雀セット@アカギ 拡声器@BATTLE ROYALE
[思考] 基本:仲間を集める。
1:服部平次と合流する。
2:覚悟さん達と合流
3:ゲームからの脱出
4:ジグマールを警戒
[備考]
※メガネ、蝶ネクタイ、シューズは全て何の効力もない普通のグッズを装備しています。
※自分達の世界以外の人間が連れてこられていると薄々感づきました。これから、証拠を集めて、この仮説を確認しようとしています。
※川田、ヒナギク、つかさの情報を手に入れました。

【ルイズ@ゼロの使い魔】
[状態]:右足に銃創、中程度の疲労、強い決意、精神不安定
[装備]:折れた軍刀
[道具]:支給品一式×2 超光戦士シャンゼリオン DVDBOX@ハヤテのごとく?  キュルケの杖
[思考]
基本:スギムラの正義を継ぎ、多くの人を助け首謀者を倒す。殺人者に対する強烈な殺意
1:覚悟達と合流。
2:覚悟が戻ってきたら、スギムラを弔う
[備考]
※川田、ヒナギク、つかさの情報を得ました


【F-5 ビルの瓦礫の下】
【シアー・ハートアタック@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:五階建てビルの瓦礫に埋もれて行動不能
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:なし、単純自動行動。
[備考]
※制限のため、一般人でも何とか回避可能なスピードで攻撃してきます。
76 ◆1qmjaShGfE :07/12/18 21:49 ID:kZ/XLm5c
以上です。投下の度思いますが、支援ってありがたいものですね
77Classical名無しさん:07/12/18 21:54 ID:VBU54Xqw
投下乙
アンタ、すげぇよ
前半は銀魂を読んでいるかのようなコテコテのギャグだったのに
後半で一気に鬱になった。このギャップ素晴らしい
僕は、君に敬意を表するッ!
神楽、何気に銀魂勢で生き残ってるw
今までのロワと全く正反対だ

そしてバーローwwwww
拡声器はやべぇつうのw
まぁマーダー少なめだから大丈夫なのか?

これもいわるくぎみーのジンクスってやつなのか?
78Classical名無しさん:07/12/18 21:57 ID:3R1LZyDQ
投下乙!
新八死亡フラグ回避かと思ったのに( ノд`)
拡声器使ったバーロー、まだご存命のシアーハートアタック、ぶっ壊れ寸前の神楽にぶっ壊し寸前の吉良と誰がどうなってもおかしくない!

ところで一応備考に拡声器で声が伝わったエリア、伝わった可能性があるエリアを明記した方がいいかもしれません
79Classical名無しさん:07/12/18 22:14 ID:ph0bP0vY
投下乙!
これはいい欝展開ww
拡声器を使ったコンビと神楽の今後が気になるww
この流れは美味しすぎる!
もうGJ!!

吉良はやっぱり殺人鬼。なんか安心するなw
80Classical名無しさん:07/12/18 22:29 ID:8n24ew4w
乙!
吉良が銀ちゃんのことを驚いたことで改心とまでは言わないがおとなしくなると思った自分が馬鹿だった
流石吉良!そこに痺れる吐き気を催す!!!
81Classical名無しさん:07/12/18 22:30 ID:t5r3yl0s
なんというどんでん返し……銀魂のテンポのいい掛け合いで吹いて、最後で銀さんとの鬱な再会、んで更に突き落とすとは……。
この外道(ほめ言葉)!
一万年と二千年前のネタでマジ吹いたwwwwwww

あと、吉良の[装備]:千切れた自分の左手<これおかしくないですか
82Classical名無しさん:07/12/18 22:33 ID:VBU54Xqw
あと、wikiに露伴先生の画像載せといた
インタビューの方の性格とか大丈夫ですかね、露伴先生
そして贋と鷹と間違えてごめんなさい。
83Classical名無しさん:07/12/18 22:44 ID:x52gJ.LE
投下乙です!
新八…お前なりによくやったよ、死者スレはツッコミ満載だから安心してくれ。
だが今回一番不幸なのはバーロだろ、ダブルくぎみーの口喧嘩を聞かされちゃw
お互い胸のことは言わないのはせめてもの情けか!
そして>>82
ファンレター吹いたw
84Classical名無しさん:07/12/18 23:51 ID:cwQXK.5w
吉良は邪悪だなぁ……そこが素晴らしい。
そうだよな、こいつはこういう行動取るよな。GJ。
85Classical名無しさん:07/12/19 07:47 ID:moLCEcXo
結局吉良の第一の爆弾には制限掛からないんだな
旦那とかも上手くやれば一撃か
86 ◆hqLsjDR84w :07/12/19 15:41 ID:j2qBX9wE
投下GJです
このパートでギャグをやるとはw
神楽はちゃっかり旦那の銃使いこなしてるし、あのシアーハートを倒しちまったよw
と途中まで思ってたら、吉良……そうきたか。
持ち上げてから、どん底に落とす! さらにシアーハートは壊れていない。
痺れて憧れたぜ……
GJ!!


劉鳳・アミバ・服部の予約なのですが、病院を舞台にして書いてしまっていたので、矛盾が生じてしまいました。
練り直しますので、予約期間を延長させてください。
申し訳ありません。
87 ◆YbPobpq0XY :07/12/19 17:09 ID:Nlq18Bvs
マジで申し訳ありません……完成はしたのですが、遅くまでPCに近付けないので一時予約を破棄します
88Classical名無しさん:07/12/19 18:57 ID:FJ2K3Nag
SSの保存は非常によく解るが、あんな落書きを露半とかマンセーして載せるってのは
どうなの? マジで見事な絵だとか思ってるわけ? なんでもマンセーじゃ幼稚園児と
変わらんよ
89Classical名無しさん:07/12/19 19:00 ID:oBx9zxLU
      / ̄ ̄\
      | ・ U  |
      | |ι   \
    __匚     ヽ
    | 煽 |\     )
    | り  |  \  ノJ
    |   |  ||
            ̄
そんなあおりにはのらないぞう
90 ◆05fuEvC33. :07/12/19 20:54 ID:kOEdOChU
>>86
乙です、頑張って下さいお待ちしてます。
>>87
残念です。次の投下を楽しみにしています。
 
勝、鳴海、独歩、エレ、勇次郎の予約ですが延長を申請します。申し訳ありません。
91Classical名無しさん:07/12/19 21:02 ID:b9QHsGf6
ここで発狂フラグをボッキン逝くのもまた一興だと思う俺は異端
92Classical名無しさん:07/12/19 21:03 ID:b9QHsGf6
毒吐きスレと間違えたのはナイショだ
>>86、90がんばれ!
>>87は機会があればまた頼むぞ!
93 ◆1qmjaShGfE :07/12/19 21:19 ID:3GIyN5rM
>>78
拡声器に関してですが、これは1キロ四方も届かないだろうと考えてました。私が書いた限りでは無駄な行為という意味合いでやりましたです
>>81
おっしゃるとおりでございます。すみません、その部分は削っちゃって下さい
>>86
たった四分差の予約被りといい、色々と心苦しい思いをさせてしまってます
今度一緒に二神風雷拳学びましょう。多分相当イケます私達。カサンドラクロスでウイグル獄長に虐げられながらケンシロウを待つのです。ミツゥゥゥゥ!!
>>87
……南無です。強く生きるのです
>>90
多人数は大変でしょうが、どうか頑張ってください、応援してますです
94 ◆YbPobpq0XY :07/12/19 23:53 ID:gQMULLNA
ただいま帰宅いたしました。

これより投下いたします。
95コドクノテイギ ◆YbPobpq0XY :07/12/19 23:54 ID:gQMULLNA
「ハァ……ッ!ハァ……ッ!」
もうどのくらい走ったのだろうか?
息を吸うたびに、肺の中へと冷たい空気が流れ込んでくる。
乾いた空気が喉をくっつけて、今にも器官を塞いでしまいそうだ。
それに先ほどから胸が、シャックリが出来損なったようにエクエクと痙攣している。
胃袋に逆流できる物が残ってさえいれば、まだ救われたかもしれない。
「マリアさん……」
脳が絶えず酸欠を訴える中、ハヤテは捜し求める人物の名前を呟く。
「マリアさん……マリアさん…………!」
それはまるで祈りのように、彼の唇、舌の上でつむがれる。
繰り返すたんびにマリアの呆れ顔、怒り顔、そして照れくさそうな顔が、まるでスライドのように現れては消えた。
「マリアさんマリアさんマリアさん……ゲホ…マリアさん…………ッ!」
そして思い浮かべる彼女との記憶は、アルバムを辿るように過去のものへとなっていく。
「マリアさんッ!!」
最後に現れた映像……それは初めて出会ったクリスマスの夜、犯罪者として手を染めていた自分に向けてくれた笑顔。
自分に人のやさしさを教えてくれたあの笑顔だった……。

もう一度、もう一度あの笑顔を見たい……ただその思いだけが彼を突き動かし、走らせる。
ナギに拒絶され、ヒナギクには死なれてしまった今、もはやハヤテにはマリアしかいないのだ。
独りぼっちになりたくない、だから走り続ける。
96コドクノテイギ ◆YbPobpq0XY :07/12/19 23:55 ID:gQMULLNA

「うあ!!」
なぜかぬかるんでいた地面に、足を滑らせそのまま顔面からダイブしてしまう。
突然のことで受身もとれなかった。
そのまま重力に従い、コンクリートにプレスされた顔は一瞬平坦になってしまう。
「痛ぅ……コホッ……」
鼻の奥がムズ痒いような気がして手をあててみると、案の定指の隙間から並々と鼻血が溢れてきた。
夢中で気付かなかったが、自分の身体にかなり無理をさせてしまったようだ。
急に運動を止めた事で脳に過剰の酸素が行き届き頭が白くなる。
消耗した筋肉では咳き込む事も満足にはできない。
ただ酸素が供給された事がよかったのか、身体を動かす事だけに集中していた頭が、少しずつ冷えていく。
もっとも、彼には何かに夢中になっていた方がマシだったのかもしれない。
「ケホッ……どこに…………」
現状を把握してしまうと、どんどん彼の心をとある感情を埋め尽くしていく。
「どこにいるんです……マリアさん…………」
ハヤテの目から頬を伝い、涙が鼻血と一緒に顎から滴り落ちて行った。
「会いたい……会い…たい……会いたい……のに」
……行かなくては。
きっと彼女なら、誰よりも優しいあの人ならば自分を許してくれる……だから……。
会わなくちゃ、そうしないと……また一人ぼっちになっちゃう。
97Classical名無しさん:07/12/19 23:56 ID:OzIn8tRc
 
98コドクノテイギ ◆YbPobpq0XY :07/12/19 23:56 ID:gQMULLNA
再び、地面に手を置いて立ち上がろうとするが……
「…………え?」
グニリとした、明らかにコンクリートとは違う感触が手のひらに走る。
────イヤな予感
「ヒッ……!」
見た瞬間、思わず投げ捨ててしまう。
手に持っていたのは人間の足首。

「あ……」

先を見れば、指、爪、と……まるでヘンゼルがまいたパンくずのように、細かい部品が路上に続いている。

「………………」
その惨状を目の当たりにしてもハヤテの脳内は先ほどと比べて自身が驚くほど冷めていた。
ああ良く分からないけどここで誰かが死んだんだな、と。
そんな考えが頭を過ぎっただけだ。
今投げた足首のように、ある程度人間の原型を保っているものだったら生理的拒絶があった。
だが、ソレらはあまりに細かすぎて、無機質すぎて、まるでスーパーのハムを見ているような感覚しか沸いてこない。
それは自分がおかしくなってしまったからだろうか?
────確かめなきゃ
休息を求める身体に鞭打ち、ハヤテはその『ミチシルベ』を辿る。
どんな状況になればこんな風になるのか、そもそも最初からこんな物があっただろうか?
今のハヤテにはそんな事を考える余裕すら無い。
99Classical名無しさん:07/12/19 23:57 ID:zyDdoOv6
    
100Classical名無しさん:07/12/19 23:57 ID:zyDdoOv6
  
101Classical名無しさん:07/12/19 23:58 ID:OzIn8tRc
  
102コドクノテイギ ◆YbPobpq0XY :07/12/19 23:58 ID:gQMULLNA

空を見ると、もう太陽は半分以上その姿を隠していた。
落ちてくる……赤い空が、迫り来る……。

☆   ☆   ☆


終点は案外近くにあった。
(体育館……?)
頭の記憶回路からメモリーしてある地図を取り出し、現在位置や経路を換算して、目の前の建築物に目星をつける。
何十キロも走った気がしたのだが、実際は数キロも走っていなかったのだろうか?
遠目からでもその存在を確認できた施設は、入り口に立って見上げてみるといっそう何かの威圧感を感じ取れた。
このような状況でも無ければこの時間、中から竹刀をぶつけ合う音か、バスケットボールの弾む音でも聞こえてくるのだろう。
もっとも今は、その『こんな状況』なのだが。

すぐ足元にも、やはり人間の一部分──多分内臓のどこか──が落ちている。

すでにノブを掴んでいるが、そこからどうしても動く事ができない。
(コレは…………)
乾いていたはずの口に何時の間にか溜っていた唾を飲み込む。
(コレは一体……誰のなんだろう……?)
ようやく抱き始めた疑問に、恐ろしい答えが頭を過ぎった気がするが、それがハヤテの頭に意味として現れる事な無かった。
ここを開けちゃいけない……開けたら……きっと何かが終わってしまう。
そんな予感だけがハヤテを支配する。
だが、もはや後戻りなどできようも無い。
103コドクノテイギ ◆YbPobpq0XY :07/12/19 23:59 ID:gQMULLNA

どこかで感じ取っていた可能性を否定するため、ハヤテは強くドアを開け放った。

太陽が沈みかけている今、電気のついていないバスケットコートは暗く、そして不気味に静まり返っていた。
掃除が行き届いているのだろうか、小奇麗なのがかえって不気味である。
つまり、そこには『ミチシルベ』は無かった、必要とされていなかったのだ。
「……?」
センターラインの上に丸い何かが転がっているのに気付く。
一瞬バスケットボールかと思いながらも駆け寄る。

まるでそれを待っていたかのように、電気が灯った。

──何……コレ?
まるで脳が沸騰しているかのように、色々な感情が頭をシェイクする。

ハヤテは先ほどまで体育館入り口が終点だと思っていた。
しかしそれは違った……目の前のセンターライン上に転がっている物体、それこそが終点だったのだ。
ハヤテの足元に転がっていたそれ……。
「う……ううう…うううウうう…………!」
血と涙でグシャグシャになった自分の顔を抑えて、理性が目の前に存在する物を否定しようとする。
だが生理的本能はそれすらをも許さなかった。
「ウッ……ぶ」
今度は堪え切れなかった。
「う……げぇ…え………」
104Classical名無しさん:07/12/20 00:00 ID:Wvto7H/g
 
105コドクノテイギ ◆YbPobpq0XY :07/12/20 00:01 ID:TBhl6zn.

体育館にピチャピチャと言う、あまりに弱弱しい音が反響する。
空っぽだったはずの胃袋からはひたすら胃液が漏れる。
身体が何でもいいからと腹から搾り出そうとするが、その胃液すらもすぐに空になる。

──ああ、そうだ。思い出した……コレは…………

マリアがそこに居た。

☆   ☆   ☆

「ハ…………ハ……」
両手に抱えたマリアを見つめるハヤテの口から激しく短い呼吸が続く。
(マリアさん死んじゃった死んじゃった死んじゃった…………)
「ハハ……ハハハハ…………アハハ」
呼吸はやがて、乾いた笑い声へと変わっていく。
「ウフ…アハハハハハアハハ、アハハハハ!」
止まらない、どんどん強くなって行く。
面白い事なんて何も無いのに、悲しいのに、こんなに辛いのに。

「!」
ああそうか、とハヤテは思う。
悲しむ事なんて何も無いんだと。
マリアさんはここに居る、なのに何で泣く必要があるんだ?
アハ……一緒にいられるんじゃないか……アハハハハ……マリアさんとずっと一緒じゃないか!
「アハハハハはハハハハハハハハハはハハ!」
106Classical名無しさん:07/12/20 00:03 ID:1CRQK7GE
支援(最近は何も書かずに支援するのが支流なのかな…)
107コドクノテイギ ◆YbPobpq0XY :07/12/20 00:03 ID:TBhl6zn.
もはや彼の脳は、現実を見る事すらも拒み始めていた。

ボサボサになった銀髪。
横に大きく裂けた口から流れる涎も、鼻水も、そして涙を拭おうともせずに笑い続けるハヤテ。
もはや、かつての中性的ながら整っていた顔立ちは見る影も無い。

やがてその笑い声も途絶える。

「誰……?」
ハヤテの視界の隅に、一人の軍服の男が映っていた。

☆   ☆   ☆

これはもうダメだなと、鼻にかかるアンモニア臭を感じた時、ガモンはそう思った。
コイツはもはや、ここが禁止エリアになるか、あるいは殺し合いに乗った者がここに到着するのをひたすら待つ運命なのだと。
どうせ残った支給品の始末をしたかっただけだ、別の誰かを当たればいいだろう。
だがいわゆる駄目元と言う奴で斗貴子の時と同じように第二回放送……優勝者に関する褒美を持ち出した時、ハヤテの反応は意外なものだった。

「マリアさんが……元に戻るんですか?」

空ろだった目に僅かな光を灯すハヤテを見た時ガモンは、つくづく人の心とは本当に弱く、単純なものなのだなと思った。
「でも……そのためには…………人を……人を……」
後半はどもっていたが、『こなたさんも……お嬢様まで……』と言っているのだろう。
なるほど、さすがに斗貴子と同じようにはいかないようだ。
一応は理性を保とうとしているらしい。
ならば、と……ガモンはハヤテの性格を利用するもう一つの手段を執行する。
108Classical名無しさん:07/12/20 00:04 ID:DmDi6Tro
                 
109Classical名無しさん:07/12/20 00:04 ID:1CRQK7GE
 
110Classical名無しさん:07/12/20 00:05 ID:1CRQK7GE
    
111コドクノテイギ ◆YbPobpq0XY :07/12/20 00:06 ID:TBhl6zn.
「その女は……他人を庇って死んだ」

ハヤテがピクリと反応するのを、ガモンは見逃さない。
もう一息だ。

「そしてその助けた男は殺人鬼……彼女に関しては感謝など微塵みしておらん」
それは全て真実、むしろ殺人鬼の方はマリアが助けた事をきっかけとし殺し合いに乗ろうとしている。
彼女のやった事はプラスどころかむしろマイナス……。
それ以外の何でも無い。
「他人を助ける事がどれほどバカなのか……それはお前も理解しているだろう?
その女のやった事は美談でも何でも無い……ただの無駄死にだ」
ハヤテの不幸にまみれた前歴、それを知っているからこそ利用する。
真面目な人間は報われず、悪党ばかりがほくそえむ。
ここでもソレを突きつけられて、綺麗事をほざける人間などこの世にいまい。
「ならばキサマも……そんな事を考える必要はあるまい? 何ならナギと言ったか?
あの小娘を生き残らせて、願いを叶えさせる手もあるぞ?」
その言葉に、ハヤテは頭を抱えて俯いてしまう。
「承太郎に……カズキと言ったかな?」
「………………」
「後ろめたさと言うものもあるのだろうが……気にする事もあるまい。ヤツラが勝手にやった事なのだからな……。
それに、キサマにとっては得に承太郎という男は気に食わない男だったのだろう……?」
112コドクノテイギ ◆YbPobpq0XY :07/12/20 00:07 ID:TBhl6zn.
そのまま表情を見せず震えるハヤテ。
事実上の肯定の合図……仮にそうでなくても、もはや自分の言った事に従うのは時間の問題だろう。
「コレは……?」
目の前に放り投げられたそれ……一枚の紙にハヤテは疑問の声を漏らす。
「なに……ちょっとしたお情けのようなものだ……」
本来はシエスタにわたるはずだったもう一つの支給品……スタンドDISC。
それを手に取ってガモンに言われる通り頭に導入する。
その様子を見て、今度こそ殺しあう決意ができたのだと判断した。
「キサマがこの後どう動くか……楽しみにしているぞ」
そう言ってガモンは踵を返す。
これで余った支給品も無くなった……この舞台に関与する事もしばらくは無いだろう。

☆   ☆   ☆

「待ってください」
去り行く背中にかけられるハヤテの声。
何事かと振り向くガモンの目に映るハヤテ……それは明らかに先ほどの抜け殻とは違っていた。

──マリアさんの……死が、無駄……だって……?

いまだなお俯いてはいるが……その短い思考の中に含まれた意味。
それはマリアの死を受け入れたと言う事……そして…………。

──お前はカズキさんの……承太郎さんの事、何て言った?

二人には家族がいたし、恋人だっていた。
それなのに二人とも自分達を守るためにその命を散らしたのだ。
だが自分は何だ? 現実に眼を背け、あろう事かこの男の言う事に耳を貸しそうにまでなった。
113Classical名無しさん:07/12/20 00:08 ID:1CRQK7GE
   
114コドクノテイギ ◆YbPobpq0XY :07/12/20 00:08 ID:TBhl6zn.

「ふざけるなああああああ!!」

数メートル以上は離れた距離から高速で飛んでくる巨大な拳。
予想外の行動だったためかガモンはそれをまともに喰らい吹っ飛ばされ、奥に備え付けられていた金属ケースへと激突する。
まるでボーリングでピンを吹っ飛ばしたように、快音と共にバスケットボールが舞い散った。
『タイで繋がれている』自分の腕をしならせながら、その先を見つめる。

──お嬢様を、優勝させる?

それをしてしまったら、たとえヒナギクやマリア、みんなが帰ってきても……ナギは本当の意味で『独りぼっち』になってしまう。
何が正しいのかなんて分からないが、それだけは絶対に間違っている……!

【D-5 総合体育館 1日目 夕方】
【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】
[状態]激怒、下腹部、左肩、右頬に中程度のダメージ、右手分解 中程度の疲労、核鉄 により自己治癒中
[装備]454カスール カスタムオート(7/7)@HELLSING オー・ロンサム・ミーのDISC
[道具]核鉄(ピーキーガリバー)、支給品一式-水少量 13mm爆裂鉄鋼弾(35発)、ニードルナイフ(15本)@北斗の拳 女装服
音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾、ベレッタM92(弾丸数8/15)
[思考・状況]
基本:マリアの死を無駄にしないためにも、力の無い人を助ける。命を捨てる事も辞さない。
1:ガモンの撃破
2:力を得る
3:ナギにあわせる顔が無い
[備考]
※判断力が低下していたためヒナギクは死んだと思っています
115コドクノテイギ ◆YbPobpq0XY :07/12/20 00:12 ID:TBhl6zn.
投下完了いたしますた。
みなさん支援ありがとうございます。

矛盾点、誤字、脱字などがあったら指摘お願いします。

とくにガモン大佐のキャラなど……一応は調べたんですけど……。
116Classical名無しさん:07/12/20 00:14 ID:Wvto7H/g
投下乙!
げぇーっ!?
るるるのハヤテと化すかと思ったら不死鳥のごとく蘇ったーー!?
ガモンもこうなるとは思うまい……。

ところでSBRってありでしたっけ?
117Classical名無しさん:07/12/20 00:17 ID:1CRQK7GE
感想を書くのが下手だから気に触ったらスマン

乙です!ハヤテ…ルルル化と思いきや正義に目覚めた!
しかしこれからどこ行くかによってかなり運命が変わる予感が…
118Classical名無しさん:07/12/20 00:18 ID:DmDi6Tro
投下乙!
ハヤテにオー・ロンサム・ミー……
ルックスもイケメンだというのか!? どちらかというと女顔(ry
ガモンの思惑はあさっての方向に〜
GJ!
119Classical名無しさん:07/12/20 00:38 ID:uBTKUQHY
乙!&GJ!
そうきましたか!
フラグをいい意味で一刀両断した予想外の展開です。やはりこのロワは熱い!
120Classical名無しさん:07/12/20 01:45 ID:vHnPJWQU
乙です!
鬱話しかと思ったらまさかの熱血展開にびっくりです
いい意味で予想を裏切ってくれた事にGJ!
121Classical名無しさん:07/12/20 13:21 ID:6okC5Ufs
もう、いろんな意味でGJ!斗貴子に続いてハヤテもマーダーに成ってたら俺は・・・もうどうすれば良いか分らなくなって居た所だったよ(o^-')b
122Classical名無しさん:07/12/20 13:56 ID:XLguamdw
こうきたか……投下乙!
アンモニア臭って……おもらしか!おもらしかー!(おちつけ)
しかし何気にガモンと戦うにあたって、ハヤテもアイテムのスペック高いな。
カスールを撃てるとしたら、核鉄&スタンドと組み合わせてかなりテクニカルな戦法が使える。
劉鳳や下手をするとロリ旦那も乱入できるか?
123Classical名無しさん:07/12/20 17:46 ID:LrIzJq1Q
まさかこんな所で主催者脱落かー!?
中盤で主催者が死ぬって新しいかもしれんw
124Classical名無しさん:07/12/20 18:39 ID:6llL5bp.
>>123
だからガモン大佐は主催者じゃないと何度(ry
125Classical名無しさん:07/12/20 20:05 ID:4SJipsyk
>>122
ハヤテなら手持ちの全ての支給品を使いこなせそうな気がするな
ただガモン相手じゃなあ……
126Classical名無しさん:07/12/20 20:11 ID:NJjblaEY
GJ!
途中までハヤテも堕ちるかと本気で思っただけに
この展開は実に意外だった。
GJと言っておくっ!!
127Classical名無しさん:07/12/20 20:55 ID:JvNLgC5A
いやいやガモンこと暗闇大使は胴を仏契られてもダブルライダーと互角以上、
制限があってもハヤテの武装を駆使しても善戦できれば御の字かも…?
128Classical名無しさん:07/12/20 22:39 ID:j6t1QR9w
>>76
亀になってしまったが、超GJ!!
前半はもう、万屋の二人の掛け合いが面白すぎて何度も
吹きまくってしまった……。
やっぱこいつらええなあ、と心底思わされた。
だから、後半のダメージと絶望が大きいのなんのw
いやあ、これはよい欝話だ……。少しの間立ち直れなくて
感想書くのが今日になってしまったよw

もう一度超GJ!!
129 ◆hqLsjDR84w :07/12/21 18:57 ID:diOP3/Jc
投下します。
130男達、止まらず ◆hqLsjDR84w :07/12/21 18:59 ID:diOP3/Jc
 背中から生える2枚の漆黒の羽で、E−6の遥か上空を飛行している男、劉鳳。
 その両の手には、色白で眼鏡をかけた少女、タバサがいわゆる『お姫様抱っこ』の体勢で抱えられている。
 身長の差はあれど、両者ともかなり整った顔をしているので、それは絵になる光景であっただろう。
 この殺し合いの舞台でなかったならば、だが。

 実際は違う。絵になるなど、とんでもない。
 劉鳳は全身にかなりのダメージを負っていて、さらに慣れないニアデスハピネス展開により顔面蒼白。意識があることさえ不思議な状態だ。
 飛行の仕方も蝶野攻爵がするのような『華麗』な飛び方ではなく、どこか覚束ない。
 それは疲労の為であり、飛び始めた頃は『華麗』というほどではないが、まだまっすぐ飛べていたのだが。

 そしてタバサの方は、胸に巨大な穴が存在し、彼女の着こなしている制服は血で塗れている。
 体温は失われ、眼は焦点が定まっていなく、息も脈もない。
 御察しの通り、既に死んでしまっているのだ。


 最初はまっすぐに飛行できていた劉鳳が、フラリフラリと覚束ない飛行となってからどれくらい経っただろうか。
 劉鳳の意識が飛んだ。

  核鉄は使用者の生命力を変換し、武装錬金を展開する。
  元々連戦によって蓄積したダメージで弱っていた劉鳳が、ニアデスハピネスを展開させ続けたなら。
  ニアデスハピネスで以って、人間2人を常に持ち上げるだけの力を使い続けたのなら。
  こうなるのは、自明の理である。

 同時にニアデスハピネスが消失し、元の核鉄XLIVに戻る。
 羽を失った劉鳳は、重力の法則に従い地面へと落ちていく。
 全身に襲い来る落下感によって劉鳳が覚醒したのは、意識が飛んでから数秒経ってから。
 幸いにもタバサは抱えたままで、核鉄も右手で掴み取った。
 だが、真下には民家。劉鳳との距離、あと5m。
131男達、止まらず ◆hqLsjDR84w :07/12/21 19:00 ID:diOP3/Jc

 しかし、そこは劉鳳。
 ロストグラウンドの無法者が名を聞いただけで震え上がる、銀色のアルター『絶影』を持つ男、劉鳳。

「――クッ!!」

 ガァンという音と共に、民家の屋根の一部が抉り取られ虹色の粒子となり、絶影を構成する。

(第一形態が限界か……十分だ)

 絶影の2本の触鞭が、抱えられたタバサごと劉鳳を覆ってゆく。
 二重、三重、四重、五重……と幾重にも劉鳳を包んでいき、最終的に蛾類の幼虫が蛹となる際に作る、繭の様な形となる。
 一切の隙間が無い繭形の防護壁が完成したのが、民家に劉鳳が突っ込んだのとほぼ同時。
 次の瞬間、轟音が鳴り響き、民家は瓦礫と姿を変えた。



(タバサは……)

 落下の衝撃で、覆っていた絶影の触鞭が砕け、姿を現した劉鳳は両の手で抱えたタバサを確認する。
 そしてアーカードに打ち抜かれた傷以外に、傷が増えていないを確認した劉鳳は、フッと安堵の溜息を吐くと――前のめりに倒れこんだ。

 タバサの死体に、余計な外傷をつけずにすんだ安堵からか。
 はたまた絶影が砕かれた衝撃からか。
 それまでに蓄積されたダメージ故か。
 この世界に呼び出されてから、長時間の休みを取っていない為か。
 空に背を向けて倒れた劉鳳は、眠りへと落ちていった。
 深い眠りへと――

132Classical名無しさん:07/12/21 19:02 ID:aCUczeZI

133男達、止まらず ◆hqLsjDR84w :07/12/21 19:02 ID:diOP3/Jc

「う……」

 どれくらいの間、俺は眠っていたのだろうか。
 最後に太陽を見た時より、かなり太陽が落ちている気がする。
 結構な時間、俺は寝てしまっていたのか……
 しかし、かなり体が軽い。核鉄を持ちながら寝ていたからか?
 何にせよ、たまには休むというのも大切なものだな……

「絶影」

 すぐ近くに横たわっているタバサを確認すると、即座に周囲にある瓦礫を原子レベルに分解、絶影を再構成する。
 呼び出すのは、あえて第一形態。
 呼び出した絶影の触鞭で穴を掘り、そこにタバサを横たわらせる。
 そして、絶影の触鞭で土を被せていく。
 次に周囲にあった最も大きい石塊を乗せ、表面をアルターで分解し、『タバサ』――と彼女の名を刻み込む。
 供え物の代わりといってはあれだが、彼女がずっと読んでいた本を傍らに置いておく。
 本来ならば、食べ物や水なんかを置いていくべきだろうが……
 すまない、この状況だ。許してくれ。

「君の眼鏡は貰っていく。
 ルイズ、そしてキュルケという君の仲間と会ったときに、君に仲間を任されたという証として」

 タバサの眼鏡をデイパックにしまい込み、考える。
 これからどうすべきか?
 タバサが死んでしまった以上、病院に行く必要は無い。
 ならば変電所に戻り、ブラボーやアミバの助太刀に行くか?
 しかしもう戦闘が終わっていたら、どうする?
134男達、止まらず ◆hqLsjDR84w :07/12/21 19:04 ID:diOP3/Jc

 勝利したブラボー達が、既に病院に向かっていたなら……
 俺は病院に向かわねばならない。
 仮に……ありえないとは思うが、アーカードという男が勝利したならば……
 俺は変電所に向かわねばならない。
 どうする? 俺はどうすれば――

『……ルイズ……ヴァリエー……』

 ルイズだと?
 かなり小さい声だったが、いまルイズと言ったのか?
 ルイズ――平賀才人から伝言を託され、タバサに遺言で守るよう任された少女。
 その、ルイズが何を……?

『私……危険な目に…………この声が…………』

 なッ!? 危険な事態に遭遇しているだとッ!?
 俺が、守ると誓った人間が危険な目に……行かぬ理由は無いッ!!

「待っていろ! いま、劉鳳(オレ)が行く……絶影が行くッ!!」
135Classical名無しさん:07/12/21 19:04 ID:aCUczeZI

136男達、止まらず ◆hqLsjDR84w :07/12/21 19:05 ID:diOP3/Jc

 そう言い放った瞬間、弱い考えが俺の脳裏を過る。
 核鉄と休みをとったおかげである程度回復したとはいえ、いまの俺は万全ではない。
 アーカードに攻撃された左肩と腹部は未だ痛むし、右の拳骨は折れてしまっている。
 さらに絶影も弱体化してしまっている、いまの俺が言っても無駄なのではないか――そんな考えが。

 しかし、アミバは言った。
 カズマは心臓を貫かれても、アルターで傷口を塞いで戦い続けた――と。
 あの男に出来て俺に出来ぬことなど、存在しない。
 まして俺の傷は、あの男の負った傷と比べて、かなり軽い。
 核鉄によってある程度治癒もしたし、休みもとった。
 ならば……やるしかないッ!
 正義を、信念を貫くことすら出来ず、楽な道を選ぶなどという弱い考えを選ぶなど――断じてノゥだ!!

「行くぞッ! 真・絶影ッ!!」

 貴様もそう思い、この地で果てたのだろうッ? カズマッッ!!

137Classical名無しさん:07/12/21 19:06 ID:Gn91XX9.
 
138男達、止まらず ◆hqLsjDR84w :07/12/21 19:07 ID:diOP3/Jc

 一方、バイクで劉鳳を追っていた服部とアミバは、数十分ほど前に田園地帯を抜けF−6を疾走中だった。

(カズマの墓は、この辺りだな……)

 バイクの後部座席に座るアミバは、己に信念というものを教えてくれた反逆者のことを思い出す。
 共にいたのは短い時間だった。話した時間はもっと短い。
 だが、あの男のおかげで俺は変われた――と。

(この殺し合いへの反逆が終われば、何か供えねばな……)
「アミバはん、聞いとるか?」

 少し気が早いが、そんなことを考えていたアミバだが、服部に声をかけられたので何の用だ、と聞き返す。

「何か聞こえへんか? よー聞き取れへんねんけど、アミバはんなら聞こえたりせえへんか?」
「む……確かに何か聞こえるな。少し、バイクを止めてみてくれないか?」

 バイクから降りて、アミバが耳を澄ませる。
 聞こえるのはかなり小さい音だが……常人の限界を超えた身体能力を持つアミバならば、聞き取ることは可能。
 そして、聞き取った音の正体に、アミバの表情が曇る。

「服部、バイクを出せ!」
「何でや!?」
「音のする方に向かいながら話す! 早くバイクを出せ! 北だ!」

 アミバの剣幕に押され、服部がバイクのアクセルを開く。
 その時、心の中で「何やっちゅーねん」と呟いたのだが、さすがに心の声まではアミバにも聞き取れなかったようである。



「――で、あの音は何やったんや!?」
139Classical名無しさん:07/12/21 19:07 ID:2h6BO7ls
支援のC!
140Classical名無しさん:07/12/21 19:07 ID:YUazwP32
支援します
141男達、止まらず ◆hqLsjDR84w :07/12/21 19:07 ID:diOP3/Jc

 バイクを出してからしばらくして、服部がアミバに問いかける。
 アミバの焦りように感化されたのか、服部の声も少し焦りを含んでいる。
 その服部の言葉に、同じく焦りを含んだ声でアミバが返す。

「ルイズという少女が助けを求めていた。
 焦り具合から判断するに、おそらくは一刻の猶予も無い! もう少し、スピードは出せんか?」
「これが限界や!! って、ルイズやて?」
「そうだ」

 服部も、ルイズという名に心当たりがある。
 タバサの知り合いで、彼女曰く『信用できると思う』存在。
 アミバもそのことを知っているから、こんなに焦っているのだろう。
 そう服部が判断していると、アミバが言葉を続ける。

「……もう1つ心配なのは、劉鳳だ」
「どういうことや?」

 服部の問いに、アミバが胸中で舌打ちしながら答える。
 服部からは見えないが、その表情はかなり苦々しい。

「声がしたのは病院の方角。そして劉鳳がいるはずなのは、病院。
 あの男がルイズという少女の声を聞いたなら、怪我を押してでも向かうだろう。
 例え、少しでも動いたら倒れてしまうような状態でも、だ……」
「それは、あかんな……」
142Classical名無しさん:07/12/21 19:07 ID:aCUczeZI

143男達、止まらず ◆hqLsjDR84w :07/12/21 19:09 ID:diOP3/Jc

 服部の脳内に浮かぶのは、最初に劉鳳と出会った時のヴィジョン。
 アミバが現れなければ、確実に劉鳳は変電所へ向かっていただろう。
 怪我や疲労など関係なく、だ。
 そんな男が、少女の助けを求める声を聞いたなら――
 考えるまでも無い。

(やれやれやな……)

 服部は、軽く溜息を吐いた。





(この辺りから声が聞こえていたはずだが)

 ルイズの声がした場所まで、劉鳳は真・絶影を全速力で駆動させた。しかし、そこには誰もいない。
 真・絶影の見た目に臆して出てこれないのかもしれない。
 そう思って真・絶影を消滅させたが、誰も出てこない。
 と言うよりも、人の気配すらしない。

(俺は遅かったのか……?
 いや、戦闘の跡が見つからない。どこかに逃げたのか? それとも、連れ去られたか……?)

 そこまで劉鳳が考えると、バイクのエンジン音と仲間の声が彼の耳に入ってきた。

「劉鳳!」 「劉鳳はん!」
「服部にアミバか。ブラボーは……」
144男達、止まらず ◆hqLsjDR84w :07/12/21 19:10 ID:diOP3/Jc

 服部とアミバの方を振り返らず、背中を見せた状態で劉鳳は彼らに返事をする。

「『勝算はあるから、お前達は劉鳳とタバサの元へ行け』と」
「そうか……あいつらしいな。ところで、ルイズという少女の助けを求める声が――」
「聞こえていた。だが、その前に聞かせてくれ。タバサはどうした?」

 ピクッと劉鳳の肩が揺れ、それを見た服部とアミバの脳裏に最悪の可能性がよぎる。
 しばらくして劉鳳がタバサのことを伝える為に、服部とアミバの方を振り返った。
 その劉鳳の顔を見て、思わず服部とアミバの表情が驚愕に染まる。

((お……))
「お前達に会ったら、言わねばならないと思っていた。タバサは――」

 服部とアミバの表情が驚愕に染まった理由、それは――
 劉鳳の右目から溢れた一筋の雫が、彼の頬を伝っていたから。
 そして劉鳳の態度で、彼の言わんとしている事を、ほんの少し悟ってしまったから。

((男泣き――――!!))





【F-5 北西/一日目 夕方】
145Classical名無しさん:07/12/21 19:10 ID:YUazwP32

146男達、止まらず ◆hqLsjDR84w :07/12/21 19:12 ID:diOP3/Jc

【劉鳳@スクライド】
[状態]:疲労中、全身に小程度のダメージ、左肩と腹部にダメージ中、右拳骨折(包帯が巻いてある)、核鉄で治癒中
[装備]:真・絶影、ニアデスハピネス@武装錬金(核鉄状態)
[道具]:支給品一式、4色ボールペン、色々と記入された名簿、スタングレネード×2 、タバサの眼鏡
     タバサのデイパック(内容は液体窒素(一瓶、紙状態)、支給品一式 、色々と記入された名簿)
[思考・状況]
1:タバサのことを服部、アミバに伝える。
2:近くにいるはずのルイズを探し、彼女を保護。平賀才人の伝言を伝える。
3:防人と合流、タバサのことを知らせる。
4:悪(主催者・ジグマール・DIO・アーカード・村雨)は断罪、弱者(シェリス、ルイズ、キュルケ)は保護。
5:シェリス・防人の知り合い・桐山の知り合い・核鉄を探す。
6:シェリスに事の真相を聞きだす。
[備考]
※絶影にかけられた制限に気付きました。
※桐山・防人・服部・タバサと情報交換しました。
※平次の策に乗る気はありません。
※タバサの遺体を抱え、制服の袖の部分がタバサの血で濡れています。
※E−6にタバサを埋葬しました。ネクロノミコンはそこに置いてあります。
147男達、止まらず ◆hqLsjDR84w :07/12/21 19:12 ID:diOP3/Jc



【アミバ@北斗の拳】
[状態]:健康、疲労小、強い決意、今までの自分に強い自己嫌悪
[装備]:ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)、携帯電話 、
[道具]:支給品一式(×3)(一食分消費済み)
     綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく、ノートパソコン@BATTLE ROYALE(これら三つは未開封)
     ギーシュの造花@ゼロの使い魔、神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂 、
     スティッキィ・フィンガーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険、空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:ゲームの破壊、主催者の殺害。
1:劉鳳の話を聞く。
2:近くにいるはずのルイズを探し、彼女を保護。
3:病院へ向かい、防人、タバサと合流。
4:ゲームに乗っていない人物と協力する。
5:ゲームに乗った人物と遭遇した場合説得を試みて駄目なら殺害する。
6:ケンシロウとラオウには出来れば会いたくないがいざとなったら闘う覚悟はある。
7:服部の策に乗り、脱出をネタに仲間を募る(一時的に保留)。
[備考]
※参戦時期はケンシロウに殺された直後です
※『スティッキィ・フィンガーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険』の説明書は存在しません。
※服部・タバサと情報交換をしました。
※スティッキィ・フィンガーズのDISC、空条承太郎の記憶DISCに興味を持っています。
※当然タバサが死亡した事について知りませんが、劉鳳の態度を見て悟りつつあります。
148男達、止まらず ◆hqLsjDR84w :07/12/21 19:13 ID:diOP3/Jc

【服部平次@名探偵コナン】
[状態]:健康 両頬が腫れている
[装備]:スーパー光線銃@スクライド、ハート様気絶用棍棒@北斗の拳 、バイクCB1000(現地調達品)
[道具]:首輪、「ざわ……ざわ……」とかかれた紙@アカギ(裏面をメモ代わりにしている)、支給品一式 、色々と記入された名簿。ノート数冊
     才人のデイパック(内容は支給品一式、バヨネット×2@HELLSING、
     紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)未確認)
[思考・状況]
基本:江戸川コナンよりも早く首輪のトリックを解除する。
1:劉鳳の話を聞く。
2:近くにいるはずのルイズを探し、彼女を保護。
3:病院へ向かい、防人、タバサと合流。
3:シェリスを発見し、真実を明らかにする。
4:江戸川コナンとの合流。
5:自分自身にバトルロワイアル脱出の能力があると偽り、仲間を集める(一時的に保留)
[備考]
※劉鳳と情報交換を行い、シェリスの名前を知りました。
※劉鳳、アミバ、タバサの事は全面的に信用しています。
※自分自身にバトルロワイアル脱出の特殊能力があると偽るつもりです。
※バトルロワイアル脱出の特殊能力は10人集まらないと発動しません。(現時点での服部設定)
※脱出作戦を行うかはどうかは考え中。
※当然タバサが死亡した事について知りませんが、劉鳳の態度を見て悟りつつあります。



[共通備考]
※劉鳳、服部、アーカードの持つ名簿には以下の内容が記載されています。
 名簿に青い丸印が付けられているのは、カズマ・劉鳳・シェリス・桐山・杉村・三村・川田・才人・
 ルイズ・防人・カズキ・斗貴子・タバサ・キュルケ・コナン・服部 ・灰原
 赤い丸印が付けられているのは、ジグマール・DIO・アーカード・散・村雨
 緑色の丸印が付けられているのは、蝶野
※コナンとルイズは既に去っていた模様です。どの辺りまで移動したかは不明。
149Classical名無しさん:07/12/21 19:13 ID:aCUczeZI

150Classical名無しさん:07/12/21 19:13 ID:YUazwP32

151 ◆hqLsjDR84w :07/12/21 19:15 ID:diOP3/Jc
投下完了です。

誤字、脱字、その他アレと思うところありましたら、指摘してください。
152Classical名無しさん:07/12/21 19:16 ID:Ka42bLWM
投下乙!!
153Classical名無しさん:07/12/21 19:20 ID:YUazwP32
拡声器が良い方向に作用したー!!
でも、もうその場所にバーローいないのか。さすが拡声器
激戦区に強キャラ到着……wkwkするぜ
GJ
154Classical名無しさん:07/12/21 19:21 ID:2h6BO7ls
投下乙
熱い男たちですねぇ
劉鳳の男泣きにしびれました
彼が無情と無力さを感じているんだなぁとふと思ってしまった
155Classical名無しさん:07/12/21 19:24 ID:aCUczeZI
GJ!!
こいつら、みんな熱いよ
劉鳳がカズマに問い掛けるシーンが何とも……
良い漢達だぜ……
156Classical名無しさん:07/12/21 19:33 ID:m3DjmPNo
ヤヴァーーーーーイ!! やっぱこいつら熱いって!! 拡声器さっそく関わってるのがナイス!!
つーか流石漫画ロワ! 拡声器の声聞いて速攻集まるのが正義の志士ばかりとはっ!wwwwwwww
プロット変更もあったろうに、良く頑張りました! お見事です!
157Classical名無しさん:07/12/21 22:08 ID:9/j3aMLE
GJです
拡声器の呼び掛けにいち早く駆け付けるのが、こいつらとはさすが漫画ロワwww
男泣きがここで来るとは……しびれたぜ
158Classical名無しさん:07/12/22 14:49 ID:J9fCuO/.
マーダーじゃなくて集まるのこいつらかよw
なんとも典型的な展開w

>>93
1km四方も届かない、ってことは見るにMAPで言うと、届いたのは銀時とかアカギまでを半径とした円くらい?
159 ◆1qmjaShGfE :07/12/22 15:50 ID:w0Jc0Tm6
>>158
はい、そうです。アカギ、ジグマールに聞こえるか否かギリギリのラインなので、それは書き手さんにお任せするという形が良いと考えます
160 ◆hqLsjDR84w :07/12/22 17:16 ID:6PpeTlDA
>>143で絶影を消しているのに、劉鳳の状態表に真・絶影があるのは不自然なので、wikiに掲載された際に修正します。
申し訳ありません。
161 ◆05fuEvC33. :07/12/22 17:33 ID:HV3t6SeA
投下します。
長くなったので、支援の出来る方はよろしくお願いします。
等間隔に点在する照明が如何にも頼りない、地下鉄線路内の暗がりの中を
範馬勇次郎は不貞腐れる様に、ゆっくりとS7駅方向に歩み続ける。
一度行った事の有る繁華街に行っても、仕様が無いと電車を降りてみたものの
今から慌ててS7駅に戻った所で、戦いの終わりには間に合わない。
勇次郎にとっては、不本意な状態に置かれていた。
 
(ケッ、面白くも無ぇ。せめて地上に出れば、誰か見付かるかもしれんが……)
天井を見上げ、破壊して外に出られないだろうかと思案する。
(天井までの高さは約5m、地上まで抜けるには時間が掛かり過ぎる。
 走ってきた電車に、駅まで掴まる方が早い……。他の手を探すか)
線路内の暗がりを見渡すと、側壁に上方へ伸びる鉄製の梯子を見付ける。
梯子の下まで行き伸びる先を見ると、円形のマンホールの蓋が有った。
(地上に出る、避難口といった所か)
勇次郎は梯子を二度蹴っただけで、マンホールの蓋まで上り
片手でマンホールの蓋撥ね飛ばし、地上に出た。
 
(さて、何処に向かうか……)
地下には無い風を受け、勇次郎は周りを見渡す。
少し風が強まり、左腕の切断面に痛みを覚えた。
(そういや、こいつを治す医者を捜さねえとな)
医者となる人間が集まりそうな所を思案した末、勇次郎は再度繁華街に向かう事とする。
(今度は花火を上げずに、捜して回るか……)
勇次郎は、溜まった鬱憤を紛らわす様に駆け出した

 ◇  ◆  ◇

愚地独歩、加藤鳴海、才賀勝は範馬刃牙を一人で輸送中の才賀エレオノールを追っていた。
3人の乗る逆十字号は、二本脚で車体を高く持ち上げられた形状をしている為
商店が建ち並ぶ街中でも、走行音と共に目立つ存在となる。
殺し合いの場では、当然危険人物に会う率も高くなる。
だが3人は足を遅めてまで、身を隠すのを潔しとしない。
3人は共に危険を承知の覚悟と、殺人者を自分に引き受ける気概を持っていた。
 
「兄ちゃん、おまえさん中国拳法やってんのかい?」
独歩が前を向いて運転しながら、助手席の鳴海に話し掛けた。
「な、何で分かるんだ?」
自分の拳法の事を話していない鳴海は、半ば驚きながら独歩に問い返す。
「俺は世界中回って、色んな格闘家と喧嘩してきたからよ。
 おかげで格闘技やってる奴の体付きを見りゃ、何やってるのか大体見当が付くんだ」
「……形意拳やってんだ、しかし凄ぇな独歩さん」
「どうよ、一段落着いたら俺と喧嘩してみないか?」
「……ハァ? あんた、何言ってんだこんな時に!」
口を顔の3分の1程の大きさまで開けて、鳴海が抗議する。
「嫌なのか?」
「バッカヤロウ! 意味も無くケンカしてたまるかよ!」
「へっ、若い癖に固いんだな。……おまえさんとなら、楽しく闘り合えるかと思ったのによ」
「…………それは俺を、買ってるって意味かよ?」
「大体どれ位鍛えてるかもな、見りゃ分かるんだわ」
楽しげに話し掛ける独歩に対し、鳴海の方は何処か難しげだ。
「…………俺は別にケンカが好きな訳じゃないし、今はとてもケンカを楽しめる気分じゃねぇよ……」
 
164Classical名無しさん:07/12/22 17:36 ID:eeFI5FOo
       
 
隣で話を聞いていた勝は、怪訝そうに眉を顰めていた。
「何だ坊主、おまえさんが俺と闘るかい?」
独歩は今度は勝に、話し掛ける。
勝は鳴海に名前を伏せて以来、二人の間には気まずいがあった。
だから独歩が自分を気遣い、話し掛けてくれている事を知っていた。
しかし遥かに年長の者から、冗談とも本気ともつかない調子で喧嘩を売られては
流石の勝と言えど、対応に詰まる。
「……本気で言ってるんですか?」
「やれやれ、そうゆうとこはまだガキだな。いいかいこんな場合
 避けたい時は勝手に冗談にして流して、受けたい時は本気に取った振りでもすりゃいいんだよ」
「…………そんないい加減な……」
「おまえさんもそうだ」
独歩は呆れる勝から、鳴海に向き直った。
「軽く受けるか流すかする手管って奴を、覚えといた方がいいな。
 一々あんな怒ってちゃ、これからの人生大変だぜ」
「あんたが場違いな事言ってんだよ、全く……」
鳴海は気まずい空気が紛れたのを感じながらも、そっぽを向く。
(……あいつは!!?)
鳴海は視線の遥か先、しろがねの視力がやっと届く位の後方から
自分達に向かって走り来る、隻腕の男を見付けた。
「独歩さん! ボウズ! 先に喫茶店へ行っててくれ!!」
そう言い捨て、鳴海は後方へ飛び出した。
 
独歩と勝は、鳴海の突然の行動に驚きながら後ろを見る。
「おい、どうしたんだ急に?」
「……あの走って来る人の、足止めに行ったみたいです」
「ありゃ勇次郎じゃねぇか!!」
「……! 独歩さん、危ない!!」
独歩と勝が、勇次郎の存在を確認した刹那
上空から2m程の大きさは有る白い人形が、2人に襲い掛かった。
166Classical名無しさん:07/12/22 17:37 ID:cDB5vWSc
支援ッッッッ!!

 ◇  ◆  ◇

勇次郎は鳴海の前に立ち止まり、値踏みする様に鳴海を見据えた。
鳴海の方は構えは取らずとも、何時でも戦闘に入れる体勢を取る。
しろがねである鳴海は、勇次郎が身体的に只の人間だという事が匂いで分かる。
しかし気を練り気で持って打つ事を本領とする内家拳である、形意拳を修めた鳴海には感じ取れた。
否、気を知らぬ者でもそうと分からず感じ取ったであろう。
それ程勇次郎の放つ気は、強大かつ凶々しいものであった。
 
「あんたは、殺し合いに乗っているんだな?」
鳴海にとっては、答えの分かっている問い。
言葉にして聞いたのは、自分の意思をはっきりさせる為。
「俺に取っちゃ殺し合いに乗るなんて、大層なもんじゃねぇ。
 テーブルに並んだ料理を、頂く程度の事だ」
「何でだ!? この殺し合いに巻き込まれた人の中には、命のやり取りするような術も覚悟も無い人だって居るんだ!
 年端も満たない子供だって、居るんだぞ!!」
「餌にも足らん雑魚に用は無い」
「直接手を下さなくても、お前がやってる事はそういう人達を死に追いやってんだ!!」
「考えたこともねぇ」
激昂する鳴海に対し、勇次郎はにべも無い。
「うまい料理を喰らうが如く……………………だ」
鳴海は内から湧く怒りと闘気に突き動かされそうな、自分の体を押し留める。
勇次郎の答えを受け、鳴海の意思は固まった。
「そうか、だったら……容赦はしねえ」
 
 
鳴海が取った構えは、腰を落とし半身を前に出す形意拳独特の構え。
「三体式……形意拳か。その若さにしては功を積んでいるようだが、俺に通じる程のものか……」
対する勇次郎が取った構えは、両足のスタンスと片手を大きく横に広げたもの。
鳴海はそれが格闘技の構えと言うより、肉食獣の獲物を前にした威嚇に近い物と読み取った。
「ケッ、俺を餌扱いする気かよ!」
「クククッ、せいぜい俺の餌に足る所を見せてみな」
(こいつ、舐めやがって!)
鳴海は自身の性情そのままに、一直線に勇次郎との間合いを詰めた。
「そんなに腹が減ってるんなら、血反吐を吐くまで喰らわしてやるよ!!」
丹田に溜めた気を拳と共に放つ自動人形をも一撃で倒す中段突き、崩拳を勇次郎の腹に打つ。
そして崩拳を打つ際無防備になった、鳴海の頬に勇次郎の拳が入る。
殴られた衝撃で後退した両者は、すぐに体勢を立て直し再び向かい合う。
 
鳴海は一合交えただけで感じ取れた、勇次郎の戦力に密かに戦慄した。
(こいつ本当に人間か!? こいつの拳はそこらの自動人形より、遥かに早えーし重い。
 それに崩拳くれてやった時、ゴムタイヤを鉄の硬さまで圧縮したみてーな手応えを感じたぜ。
 こりゃ一発二発打ち込んだ位じゃ、倒せそーにないぞ……)
勇次郎は一合交えただけで感じ取れた、鳴海の戦力に僅かに感心を示した。
「ほう、これ程の剄力を身に付けているとは、こいつは存外に楽しめそうだ」
 
勇次郎は再び威嚇の姿勢。
その姿勢からは肢体に滞り無く重心線、正中線共にぶれも無く達人の自然体並に隙が見出せない。
勇次郎の素早さと耐久力を相手に、小手先の技やフェイントは無意味どころか自分に隙を作るだけ
そう判断した鳴海は、再度一直線に勇次郎へ向かう。
大地への強烈な踏み込みを、そのまま拳の発剄の威力に上乗せする劈拳。
鳴海にとって全霊の速度と威力を込めた劈拳は、勇次郎の顔面を捉えた。
同時に鳴海の無防備になった腹に、勇次郎の膝が打ち込まれた。
並の自動人形以上の強力を、武の達人の如き力の集約で叩き込む勇次郎の打撃は
しろがねの中でも突出して鍛え上げられた、鳴海の強靭な肉体も確実に削っていく。
169Classical名無しさん:07/12/22 17:39 ID:eeFI5FOo
      
170Classical名無しさん:07/12/22 17:41 ID:eeFI5FOo
 
171Classical名無しさん:07/12/22 17:41 ID:cDB5vWSc
 
172Classical名無しさん:07/12/22 17:41 ID:eeFI5FOo
            
(何てヤローだ!! 俺の全力の劈拳喰らいながら、お構いなしで攻撃して来やがる!)
体勢を立て直す間も無く、勇次郎に胸を殴られる。
「ぐはっ!!」
(この威力で、連打できんのかよ!!)
殴られた衝撃を流しながら、鳴海は後退し間を取ろうと図るも
勇次郎に、瞬時にして間を詰められた。
 
鳴海の技は拳足を媒介にして、丹田で練られた気を打ち込む事を本分とする為
一定以上の威力を得るには、気を溜める間を必要とする。
対して勇次郎は強大な気を持つものの、それを操る体系的な修行によって身に付けた技は無く
その武技の内容は、鳴海より純粋な身体能力の比率が高い。
更には勇次郎の持つ身体能力は、鳴海の上を行く物である。
したがって鳴海より少ない溜めで、強打を打つ事が出来た。
二人の技の回転速度の差は、常人には認識不可能な程だが
正に鳴海と勇次郎の二人による戦いの次元では、優劣を決する差となった。
鳴海が一撃入れる間に、勇次郎は二撃を入れる事が出来る。
嵐の如きと言う形容すら足りないと思える、勇次郎の拳足による猛攻に
鳴海は次第に、受けの一方に追い詰められていった。
受けた腕からは流血し、体力は削られていく。
(こいつやっぱり人間じゃねーよ、攻め手が全然衰えやがらねー!!)
何時止むとも知れぬ勇次郎の猛攻を受け続け、鳴海は打開法を脳裏で探る。
 
174Classical名無しさん:07/12/22 17:43 ID:eeFI5FOo
     
175Classical名無しさん:07/12/22 17:43 ID:6PpeTlDA

 
鳴海が先程までとは打撃の質を変え、反撃に出る。
一撃一撃に十分な気を込めずとも量で持って押す、拙速と呼んでいい連撃。
鳴海と勇次郎は、ラッシュの応酬になる。
手数において勇次郎と拮抗するも、鳴海の技は勇次郎相手に有効打となり得ていない。
徐々に勇次郎が、力で押し始める。
鳴海が勇次郎の鳩尾に蹴りを入れるも、返しの回し蹴りで倒される。
立ち上がり様に貰いそうになった勇次郎の膝を、上体を捻り紙一重で避わした。
力負けを自覚しながら、鳴海は更に技の回転を上げようと試みる。
鳴海の繰り出す拳は、もはや気はおろか腰との連動も無い手打ちのパンチ。
それを胴体に喰らいながらも、勇次郎は微動だにせず拳を返す。
拳を側頭に喰らって鳴海は体が半回転するもその場に留まり、勇次郎に背を向けた体勢になる。
鳴海は勇次郎の死角で左腕の付け根のつまみをひねり刃、聖ジョルジュの剣を引き出した。
 
ここまでは、鳴海の作戦通り。
軽打をもって手数を増やし、勇次郎の油断を誘う。
勇次郎に不自然に思われぬ様、死角を作り左腕から聖ジョルジュの剣を引き出す。
狙いはもっとも回避し難い胴体。
(素手の相手には気が引ける真似だがよ、赤木に習って手段は選ばないと決めたんだ!)
鳴海は振り向き様、聖ジョルジュの剣を勇次郎の胴体目掛け横薙ぎに振るった。
 
「…………!」
聖ジョルジュの剣が、勇次郎に届く寸前
左腕の二の腕を、勇次郎の掌が受けていた。
「左腕に仕込刀か。だが踏み込みと重心を打撃から斬撃のそれに変えては、不意を付く意味が無かったな」
勇次郎の足先が、鳴海の腹を貫く。
「がはぁっ!!」
後ろにたたらを踏む鳴海の胸に、更に勇次郎の蹴りが入る。
鳴海は自分の胸骨に、ひびが入った事が分かった。
鳴海の顔に、絶望の色が混じり始めた。
177Classical名無しさん:07/12/22 17:45 ID:eeFI5FOo
                          
178Classical名無しさん:07/12/22 17:45 ID:6PpeTlDA

 ◇  ◆  ◇

上空からのオリンピアに拠る急襲を、独歩は逆十字号のハンドルを切り避ける。
「独歩さん、逆十字号を下ろして!!」
「地上で迎え討とうってのかい!?」
「今襲ってきたのは、しろがねなんだ! 僕はしろがねを説得してみせる!!」
独歩は勝の言葉に驚きつつも、逆十字号を二足歩行の状態から四輪に戻す。
逆十字号から降りた二人の前に、才賀エレオノールがオリンピアと共に降りて来る。
エレオノールはオリンピアを自分の前に出し、傀儡の構えに入る。
 
(しろがねが僕達を襲撃してきたという事は、多分まだ参加者が複数の時点から連れて来られたのに気付いていないんだ。
 ならそれを教えれば、もしかしたら説得の糸口になるかもしれない……)
勝は独歩を庇う様に前に出て、エレオノールを真っ直ぐ見据えた。
「僕の話を聞いてしろがね! 僕は本当は綾崎ハヤテじゃ無く、才賀勝なんだ!!」
エレオノールの動きが止まる。
「僕が人形繰りを出来るのも、ギイさんを知っているのも事情があるんだ!」
エレオノールは探る様に、勝を見る目を細める。
「この殺し合いの参加者はそれぞれ時間軸上の違う点か、もしくは並行世界間を移動して……」
「申し訳ありません、お坊ちゃま!!!」
勝の話を遮り、エレオノールは膝を折り頭を下げた。
 
事情説明に入ろうとした勝は、エレオノールから突然謝罪を受け困惑する。
(まだ説明の途中なのに、何でしろがねが謝ってるんだろう?
 お坊ちゃまと呼んだって事は、僕が勝だって信じたって事なんだろうけど……)
「知らぬとは言えお坊ちゃまを疑い、まして傷付けるなど幾ら謝罪を重ねても許される事ではありません!」
「…………えーっと、しろがねは何処まで事情を理解して……」
「ですが今は、殺し合いの渦中。どうかしろがねをお傍に置いて、お坊ちゃまを守る事を許して下さい!!」
 
180Classical名無しさん:07/12/22 17:45 ID:6PpeTlDA
 
181Classical名無しさん:07/12/22 17:46 ID:6PpeTlDA
  
 
(……経緯は分からないけど、どうやら僕が勝だっていうのは分かってくれたみたいだ)
勝は重荷を降ろした様に、心からの安堵の溜息をつく。
「……許す事なんて、何も無いよしろがね。
 だからそんなに畏まらないで、僕はまたしろがねと居られるだけで嬉しいんだから……」
「ああ、お坊ちゃまありがとうございます!」
勝との会話を終え、エレオノールはようやく立ち上がった。
 
少し二人から取り残された気分だった独歩は、気を取り直し話し掛ける。
「あー……何だか問題は解決したみたいだし、俺は勇次郎ん所に行ってきていいかい?」
(そうだった、こんな事してる場合じゃないよ! しろがねからは後で事情を聞くとして、今は鳴海兄ちゃんを助けに行かないと!!)
「鳴海が、この近くに居るのですか?」
「最初に僕達が集められた場所に居た勇次郎って人の所に、一人で向かっていたんだ!
 独歩さん! 僕も一緒に行くよ!!」
勝達の居る場所からは、建物の陰になって鳴海の様子は伺えない。
勝は気を揉んで、鳴海の下へ急ごうとする。
「私も同行しましょう」
エレオノールはオリンピアを動かし、逆十字号に乗り込もうとする勝と独歩の背後に立たせ
オリンピアの、肘から出した刃を振り下ろした。
 
「…………しろがね!?」
勝が振り返った時には、独歩が自分に振り下ろされた刃を避け
勝に振り下ろされた刃を、白刃取りにしていた。
「……嬢ちゃんよ、騙し打ちするんならもっと上手く殺気を消さねぇと……な!!」
独歩は前蹴りで、オリンピアを後方へ蹴り飛ばす。
「……くっ!」
 
183Classical名無しさん:07/12/22 17:47 ID:6PpeTlDA
    
 
一度安堵しただけに、勝はしろがねの変節に動揺する。
(……そんな、しろがねはやっぱり僕が勝だって信じてなかったの!?)
やっと得た希望を、しろがね本人に打ち砕かれた。
心に走る痛みで、泣き出しそうになる。
(…………こんな事で、止まってちゃ駄目だ……。僕は自分で、しろがねを止めるって決めたんだから!)
 
人形を構えさせるエレオノールと、前羽の構えを取る独歩が対峙する。
「LES ARTS MARTIAUX!(戦いのアート)」
「へっ、俺と人形で遊ぼうってのかい!」
勝が二人の間に、割って入る。
「待ってしろがね! 僕の話はまだ終わってないよ!!」
「おいおい、まだあの嬢ちゃんを説得しようってのかよ!?」
独歩の言葉を無視して、勝はしろがねの説得に臨んだ。
「しろがね、僕が勝だと信じられないならそれでもいい。
 でもこんなやり方で勝を守ったとしても、本物の勝が受け入れてくれると思っているのか?」
「……どうでもいい事だ」
エレオノールの言葉を聞き、勝の背筋に寒気が走る。
「私にはもう才賀勝そのものが、どうでもいい。勝を守らずとも、人間になる方法が有るのだからな」
「何だよ、その方法って!? もしかして、殺し合いの優勝者への褒美の事!?
 殺し合いの主催者の話なんて、信用出来る訳ないだろ!!?」
「今の状況では、少なくとも勝を守るより確実な方法だ」
 
185Classical名無しさん:07/12/22 17:47 ID:eeFI5FOo
                
186Classical名無しさん:07/12/22 17:48 ID:cc38kaPg
sien
 
(あの優しかったしろがねが、僕の命をどうでもいいって…………)
自分にとって優しい姉の様な存在だった、しろがねの冷淡な言葉に
勝は刹那、凍り付いた様に立ち竦む。
その隙を見逃さず、エレオノールはオリンピアで勝に切り掛かった。
「……おっと」
勝に伸びるオリンピアの腕を、独歩が手刀で払った。
「坊主、積もる話もあるみてぇだがここは一先ず俺に任せとけや」
「独歩さん一人に任せてなんて置けないよ! しろがねがああなったのも、僕に責任があるんだから!!」
勝にはエレオノールが殺し合いに乗る危険性を弁えていながら、何の手も打てなかった事に責任を感じていた。
(僕はしろがねとずっと一緒に居たんだから、何か手を打てた筈なのに……)
 
「やれやれ、武神だとまで謳われた俺も堕ちたもんだぜ。こんな浅はかなガキに見くびられるとはよ……」
「僕は独歩さんを見くびってる訳じゃ…………!!」
反論しようとする勝の眼前に、独歩が正拳を寸止めさせる。
(来ると分かってた拳に、反応出来なかった……)
独歩の繰り出す未知の技術に、勝は素直に驚きを見せた。
「下らない御託が多いとこが、浅はかだって言ってんだよ坊や
 お前さんは、あの嬢ちゃんを自由に出来る神様か? お前さんが全部背負い込んで、万事解決するってのか?」
「LA RONDE DE DESTRUCTION!!(破壊輪舞曲)」
「独歩さん、後ろ!!」
勝と話す独歩の背後から、オリンピアが縦回転で迫る。
頭上から落ちる、オリンピアの踵の棘付き拍車を手刀で往なし
斜め上から切り込んでくる刃を、掌で逸らし
全身を回転させ体当たりを図るオリンピアを、半身になり腹に肘を打って横に流した。
「矢でも鉄砲でもお人形さんでも持ってこいや!」
破壊輪舞曲は複数の自動人形をも、同時に破壊し得る技。
それを受け流した独歩の技量に、勝もエレオノールも驚嘆を隠し切れない。
「嬢ちゃんを死なない程度にやっつけて、とっ捕まえりゃ良いんだろ?
 餅は餅屋ってな。こういう荒事は、空手家の俺に任せときゃいいんだよ」
 
188Classical名無しさん:07/12/22 17:48 ID:6PpeTlDA
   
 
勝は下手な援護をしようとして、負傷したり人質になり足手纏いになるリスクを冒さず
独歩とエレオノールの戦いを、離れて見守る事にした。
オリンピアによる攻撃を、危なげ無く捌いていく様を見るに
エレオノールの相手は、独歩に任せて問題無いと判断し
勝は鳴海の様子を、建物の陰から伺う。
 
勇次郎の異常な戦闘能力。
手も足も出ず圧倒される鳴海。
その目で見ながらも信じ難い光景に、勝は愕然とした。
(あのままじゃ鳴海兄ちゃんは、確実に殺される!)
 
鳴海に援護を要するのは分かった。
だが、具体的にどうすればいいかが分からない。
丸腰の勝の戦力では、勇次郎相手では無きに等しいのは明らか。
武装する必要がある。
手持ちには武器に成りそうな物は無い。
ならば何処から何を調達するか?
 
「すいません独歩さん、逆十字号を借ります!!」
逆十字号を発進させる勝に対し、声を掛けられた独歩以上にエレオノールが気を取られた。
車で撥ねられる危険が頭を過ぎったエレオノールは、視線をそちらに向ける。
逆十字号が自分の方へ向かっていないのを確認し、視線を戻した時には
独歩は拳の射程距離内で、腰を落としていた。
エレオノールは、反動を付けず跳躍。
独歩の右中段突きが、エレオノールの足先を掠める。
オリンピアを軸、懸糸を半径に空中で半円を描き着地。
 
190Classical名無しさん:07/12/22 17:49 ID:eeFI5FOo
                             
 
「驚いた、嬢ちゃんその体格で天内並に飛べるんだな。一体どんな鍛え方してんだ?」
「私はしろがね、例え人形が無くとも普通の人間に遅れは取らない」
「何だそりゃ? 1億年以上前の地層から、塩漬けで出てきた原始人とか言うんじゃ無いだろうな」
「車を乗り逃げされたのに、放って置いていいのか?」
「ククク……俺に揺さぶり掛けてるんだとしたら、ちょっと外したなそれ。
 大体人の心配してられる状態じゃねぇだろ……嬢ちゃんはよ」
戦いはエレオノールがオリンピアで仕掛けるも、独歩がそれをを捌き
独歩がエレオノールとの間を、詰めるに詰められない膠着状態に入る。
(まいったな……あんまり手間取ると、勇次郎と居る兄ちゃんと坊主が危ないってのに…………)

 ◇  ◆  ◇

鳴海は勇次郎に対し構えながら、乱れた息を整えた。
「闘いこそが至上のコミュニケーション…………SEX以上のな……」
「訳の分かんない事言ってんじゃねぇよ、この変態ヤロー!!」
鳴海の中段蹴りを、勇次郎は脛で受ける。
蹴りを放った鳴海の全身に、衝撃が浸透する。
「喰いたいものも喰わず……抱きたい女も抱かず……」
今度は勇次郎の中段蹴り。
肋骨が折れ、鳴海は前に蹲る形になる。
「喰わず……遊ばず……楽しまず……」
鳴海の左側頭部に、勇次郎の張り手。
鼓膜の破れた音を最後に、鳴海の左耳から音声が消えた。
「そうしてたんねんに積みあげた技術を…………蹂躙する…………」
勇次郎の踵落としを頭頂に喰らい、アスファルト面にひびが入る程の勢いで叩きつけられ
鳴海はそのまま倒れ伏した。
「最高の娯楽だ!!!」
 
192Classical名無しさん:07/12/22 17:50 ID:6PpeTlDA
     
 
自分に近付いてくるてくる、自動車の走行音を聞き
勇次郎は鳴海を踏み付けようとする足を止め、そちらを見やった。
勝が運転する逆十字号が、勇次郎へ真っ直ぐに向かって来ていた。
「フン…………車で撥ねれば、俺を倒し得る。女子供の考えそうな事だ」
 
逆十字号は四輪の状態では、勝の知る乗用車と運転の要領はほとんど変わらない。
小学生の年齢の勝に、乗用車の運転経験は無いが
才賀正二とフェイスレスの記憶により、運転方法を知っていた。
アクセルを全開まで踏み、躊躇無く勇次郎を狙う。
勝の目には、自然体で直立していた勇次郎が
次の瞬間には右腕の先を、逆十字号のバンパーに突き刺していたとしか認識出来なかった。
逆十字号の前方に働く慣性力を受けて、勇次郎が殴って止めたと理解した。
(今だ!!!)
座席を蹴る力を慣性力に上乗せし、屋根の無い逆十字号から勇次郎に飛び掛る。
予想外の動きと速さに、勇次郎は勝を右肩に取り付かせる事を許してしまう。
勇次郎の頭突きを受け、勝は体ごと受身も取れない勢いで吹き飛ばされた。
勝は頭突きからも、勇次郎の想像を絶する膂力と技量を読み取る。
「キサマッッ…………」
勝を睨み付ける勇次郎の右肩から下は、力無く垂れ下がっていた。
 
勝が先程逆十字号で仕掛けた際は、鳴海を助けるに必死でそれ処では無かったが
改めて向かい合うと、勇次郎の威圧感は尋常ではない。
黒い太陽を連想させる、フェイスレスに匹敵する存在感と
経験の無い圧倒的な暴力の匂いに、勝は全身の震えがおさまらない。
ともすれば逃げ出したくなる衝動を抑え、勝は強い態度で言い放った。
「お前の右肩の関節は分解した! もう、お前に勝ち目は無い! おとなしく、降参しろ!!」
「この俺に降服勧告だと…………?」
勇次郎は周囲の空間を歪ませると、見紛うばかりの怒気を放つ。
「肩関節を外した如きで、ハネッ返りおって!!」
 
194Classical名無しさん:07/12/22 17:51 ID:eeFI5FOo
    
 
勝は勇次郎の注意を自分に引き付けられたのを確認すると、鳴海の様子を伺う。
呼吸はしているが体にほとんど動きが見られず、目は開いているがその焦点は定まらない。
(鳴海兄ちゃんの意識は、まだ完全には戻っていないか…………)
元より勝は勇次郎相手に勝てるとも、降服勧告が受け入れられるとも思っていない。
勝の目的は鳴海が戦うか、せめて逃げられる状態になるまでの時間稼ぎ。
(勇次郎の戦法は格闘のみ。その上腕も使えない今でも、攻撃を避け続けられる公算は低い。
 …………だからこそ、僕に油断はないよ)
 
勝は勇次郎との、間合いを計る。
才賀正二とフェイスレスの記憶から継いだ戦闘技術を、自身の訓練と実戦を以って血肉にした勝は
格闘戦において、間合いを制御する技術も持っていた。
勇次郎程の規格外が、相手で無ければの話だが。
勇次郎が一歩で間を詰める。勝の持つ3人分の経験と技術が、全てふいになる速さ。
左大腿部に鋭い衝撃。
勝は左腿から突き出た自分の骨を見て、ようやく勇次郎に蹴られたと理解する。
 
「もう……逃げられないぜ」
左腿の痛みに蹲る勝を見下ろす勇次郎は、凄絶としか例えようの無い笑みを浮かべた。
(こいつ、何て嬉しそうに人を傷付けるんだ…………)
一撃を受けただけで、勝は自分の勇次郎に対する認識の甘さに気付かされた。
右からの衝撃に、15mは地面と水平に飛ばされ民家の壁に激突。
左脚を上げた勇次郎を見ても、勝はまだ自分が蹴り飛ばされた実感が無い。
勝にとって大型車にでも追突されたと言われた方が、まだ納得がいく威力だった。
 
 
勇次郎が間を詰めてくる。またも途中経過を、認識出来ない速度。
「どうした坊や? 俺に勝ち目は無いんだろ?」
腹を蹴られ、口から血を吐く。
(…………これは、内臓をやられた……!)
 
鼻先に蹴りが入る。鼻の骨が一撃で砕けた。
 
肋骨が一蹴りで、何本も折れたのが分かる。
 
頭の左横を勇次郎の蹴りが通る。左耳の状態を確認しようとたら、既に無くなっていた。
 
右手を踏まれた。骨は原型を留めぬ程に粉砕されている。
 
もう一度右手を踏まれる。右手そのものが、機械で圧縮された様に潰された。
 
才賀勝は勇敢な子供だ。
自分をいじめる同級生にも
人形使いの大人にも
人の生き血を糧とする自動人形にも
臆する事無く、果敢に立ち向かっていった。
だが目の前の殺気を自分に向ける悪鬼(オーガ)に対し、今の勝は戦意を完全に失っていた。
「ガキは相応しい相手と遊んでりゃいいものを、俺に挑もう等と戯けた事を…………」
戦う事も逃げる事も適わない、絶望だけが勝に残された。

 ◇  ◆  ◇

どうも、意識がはっきりしない。
意識だけじゃない、視界もぼやけてやがる。
勇次郎に蹴り倒されてからの、記憶も無い。
そうだ、俺は戦ってたんじゃねぇか!!
 
近くで交通事故みたいな音がした。
何が起こったのか確かめたいが、どうしても視界が定まらない。
ついでに体中の力が抜けて、手足も動かないと来てる。
 
やっとましに見える様になって来た。
勇次郎が、誰かと戦ってるらしい。
相手は…………あのボウズだ! 何であのボウズが?
ボウズと目が合う。
言葉が有った訳じゃないが、あいつの意思が伝わった。
あいつは俺を庇う為に、戦ってるんだ。
胡散臭く思ってたボウズだが、今はそれ所じゃない。
子供に戦わせて、のんびり寝てられるか!
 
手足に脳からの命令を伝えるが、ビクともしない。
クソッ、体の何処にも力が入らねぇ!
鈍い破壊音。
ボウズの脚が折られた!
続く蹴りでボウズが殺されそうな程吹っ飛ばされた。
ボウズはまだ何とか、息があったみたいだ。
……いや、勇次郎の奴の笑みを見れば分かる。
あのヤローは、ボウズを殺さない様に嬲ってやがる!!
 
198Classical名無しさん:07/12/22 17:54 ID:6PpeTlDA
       
 
───また、守れないのかナルミ?
体の奥から力が湧き上がる。
これは力じゃない、怒りだ。
───おまえは……強かったのだろう!?
動かないじゃない、動けよ俺の手足!!
今動かないでどうする! 俺は何の為に強くなった!?
───また命は、俺をすり抜けて行っちまうのか!?
俺はあの女と約束したんだ!
あの子供を……助けるって……。
 
思い出した!! 何でこんな大事な事を忘れていた!!?
いいツラで笑う子供、あの水と炎と……崩れる壁の中で……。
今度こそ!! 今度こそは!!!

 ◇  ◆  ◇

背後で幽鬼の如く立ち上がる鳴海に、勇次郎は振り向く。
「まだ、やらせてくれんのか」
鳴海へ向かおうとする勇次郎に、勝が声を掛けた。
「…………待て、お前の相手は僕だろ……」
「クククッ、健気なもんだな……」
勇次郎は鳴海へ向かう足を止め、勝に止めを刺すべく戻ろうとする。
「…………!!!」
背中からの鳴海の突きを勇次郎は腕で受けるも、威力を吸収しきれず地を擦り体ごと後退した。
 
 
「……キサマッ、何者だ!?」
勇次郎が何故そう問うたのかは、自分にも良く分かっていない。
先刻に自分が戦っていた者と同一なのは一目瞭然であるし、名前等の個人情報が知りたい訳でも無い。
ただ鳴海の先刻までとはまるで異質な闘気に、図らずも言葉が出ていた。
「悪魔(デモン)さ」
満身創痍の筈の鳴海が、再び三体式の構えを取った。
 
「この俺を前にして悪魔(デモン)を名乗るとは、その度胸や良し」
勇次郎は右足の爪先で、地面をトントンと叩く。
「ただしその体調(コンディション)で俺の相手が務まると思うのは、ハネッ返り過ぎではないか?」
予備動作の無い拳以上の速さの右蹴りが、鳴海の左頬に伸びる。
鳴海は今までに無い鋭い踏み込みで、蹴りの打点ずらしながら中段突き。
勇次郎の体がくの字に曲がる。
間髪を入れず、鳴海は勇次郎の顎を蹴り上げた。
上下に体が伸びきった勇次郎の顎に、鳴海は更に拳を叩き込む。
勇次郎の体が回転しながら、民家の壁に叩き付けられ倒された。

勇次郎は怒りよりも、驚きが大きい。
先刻まで、自分が圧倒していた相手。
しかも立っているのもやっとの、重傷を負っている筈の者が
先刻より攻撃の重さも鋭さも、上がっている。
不可解な現象だが、勇次郎にとって確かな事は一つ。
自分が望む上等の餌が、現れたという事。
 
 
「……凄い…………」
勝が壁に手をつきながら、ゆっくりと立ち上がった。
「何だ……一人で立てんのか…………」
鳴海が勝に笑い掛ける。
 
「…………何時の間に、そんなに強くなったんだよ…………勝……」
 
勝の表情が、驚愕に染まった。
(─────今、僕を勝って)
勝は殺し合いが始まってから、自分の名を鳴海に教えていない。
それなのに鳴海は、自分の名を呼んだ。
「……………………鳴海兄ちゃん…………記憶が戻ったの…………」
勝の目から涙が、しかし表情には笑みが零れる。
 
勇次郎が憤怒の表情で立ち上がる。
瀕死と思われた者に、倒されたのが勇次郎の自尊心を傷付けていた。
「良く頑張ったな勝」
───やっとまた会えたな勝。
鳴海は勝を庇う様に、勇次郎に立ち塞がる。
「だけどもう寝てていいぜ、後は……」
───今度はお前を
悪鬼(オーガ)の気迫にも、今の勝に恐れは無い。
今の鳴海は、悪鬼(オーガ)に後れを取らない悪魔(デモン)だと分かるから。
「───俺が守ってやる!!」

 ◇  ◆  ◇
202Classical名無しさん:07/12/22 17:56 ID:eeFI5FOo
      
203Classical名無しさん:07/12/22 17:56 ID:w0Jc0Tm6
支援
204Classical名無しさん:07/12/22 17:57 ID:6PpeTlDA


もう何度目になるか分からないオリンピアの斬撃を、独歩のまわし受けが往なす。
(頑丈な人形だな、何発も打ち込んだってのにまるで堪えないでやんの
 それにしてもさっきから、嬢ちゃんの攻撃が妙に単調なんだよな……)
人形操りの合間にエレオノールは、民家からガラス窓を外していた。
(何やってんだ、あの嬢ちゃん?)
オリンピアの羽が広がり、独歩の視界を塞いだ。
エレオノールは窓ガラスを、地面に叩き割る。
横に飛んで羽をかわした独歩に、エレオノールの投げた鋭いガラス片が飛来。
七つのガラス片を、独歩はまわし受けで全て撃墜した。
その両腕を、オリンピアの両手が掴む。
(物投げながら、人形操れたのか!?)
 
「ここまで良く戦った、日本人の戦士よ。だがもう終わりだ、聖母に抱かれ安らうがいい」
オリンピアのもう一対残った両腕の指から、注射器が現れた。
「LA SAINTE VIERGE D’EMBRASSEMENT(聖母の抱擁)」
自動人形の疑似体液を注射器で抜き取る、オリンピアの武器。
そして2000ccの血液を放出すれば致死量に至る、人間に対しても必殺の武器となる。
計10本の注射器が、独歩に突き立てられた。
 
「呼ッ!!」
エレオノールの銀色の目が、驚愕に見開かれた。
空手道に伝わる、三戦(サンチン)の型を取る独歩の体に
人間より遥かに頑強な自動人形を貫いてきた、オリンピアの注射器が通らないでいる。
「俺はこの年になっても注射が嫌いなもんでよ、遠慮させて貰うぜ」
独歩は型のまま吸気に合わせ両肘を引き、呼気と共に両掌でオリンピアを突いた。
エレオノールの操作を離れ、中空を舞うオリンピア。
そのオリンピアの足先を独歩が蹴り、中空で激しく横回転する。
エレオノールの操作に無い回転に、オリンピアの懸糸は一本に捻じり取られていく。
一本になった懸糸は、独歩の手刀で切断された。
 
206Classical名無しさん:07/12/22 17:57 ID:w0Jc0Tm6
しえええええええええん
207Classical名無しさん:07/12/22 17:57 ID:cDB5vWSc
支援
 
(馬鹿な、懸糸を無手で断ち切るなど有り得ない!!)
オリンピアの懸糸は鋼線等より強靭な、特殊繊維で出来ている。
その上十本を一纏めにした状態では、素手の人間に切断など
エレオノールの知識で考えれば、絶対に不可能である。
「手に何も持たぬことを旨とする道、それが空手だ。
 武器より硬く、武器より切れるんだわ。俺の手はな」
 
どうやってか十指の指貫を同時に抜いて、エレオノールは背を向け走り出した。
「逃げる女を追うなんざ柄じゃねぇが、坊主に任せろって啖呵切っちまったからな」
独歩は、エレオノールを追うべく駆け出す。
エレオノールは振り向きもせず、手元に隠し持っていたガラス片を独歩の足下に投げた。
飛び上がって避ける独歩は、自分に飛んで来るもう一つのガラス片を払い落とす。
勢いを失くし着地した独歩は、エレオノールは建物の陰に消えていく。
独歩はその建物の陰に回り込むが、エレオノールの姿は発見出来なかった。
「……ちっ、結局逃がしちまったか」
エレオノールの追跡は不可能と判断し、独歩は勇次郎の下へ向かう。
 
 
 
雑居ビルとビルの間の路地に、座り込みエレオノールは辺りの気配と物音に注意を払う。
しばらく誰も近付く気配も無く、ようやく幾ばくか気を緩めた。
しろがねの体力を持っていても、人形操りは精神的な消耗がある。
エレオノールはしばし、その場で休む事とした。
 
(無手の人間に不覚を取り、オリンピアを失うとは……)
エレオノールは考える。
この会場には、人形以上の戦力を持つ人間が集まっていると。
(強い武器が要る。オリンピアより強力な武器が……)
束の間の安らぎにも、エレオノールは戦いを忘れられないでいた。
209Classical名無しさん:07/12/22 17:59 ID:w0Jc0Tm6
支援っ

 ◇  ◆  ◇

勇次郎が放った連続蹴りは、弾幕に例えられるほどに速度と変化と持続を併せ持っていた
傍で見ていた勝はおろか、鳴海の目にも一つとして捉えられない。
(目で見える必要は無い……)
しかしそれらは全て鳴海に受けられ、捌かれ急所に届かない。
(敵の骨の軋みと血の流れ……空気の流れを聞くんだ)
鳴海の心中は怒りに焼かれながら、体は武の師の教えを忠実に再現する。
 
勇次郎は蹴り続けたまま、軸足で飛ぶ。
しろがねを知る勝ですら、唖然とする運動能力。
鳴海の直上から、勇次郎の浴びせ蹴りが迫る。
それが届くより先に、勇次郎は背中から蹴り飛ばされた。
空中で身を捻って着地する勇次郎の腹に、鳴海の肘。
勇次郎の下段への蹴りを、鳴海は脛で迎え撃とうとする。
刹那、蹴りは中断に変化。鳴海も肘で受けの構え。
更に上段、鳴海の頭に蹴りは入る。
 
211Classical名無しさん:07/12/22 17:59 ID:w0Jc0Tm6
しーえん
 
「威力を保ったまま二段変化する蹴りか、器用なもんだ。
 けど全然効かねぇよ、テメエの蹴りなんざ」
鳴海は頭を前に出し、打点をずらしていた。
打点をずらしたと言えど、勇次郎の蹴りは肉を切り裂き頭蓋まで振動が伝わる。
「家族も……夢も……人生すら……奪われた人が居るんだ」
それでも鳴海の体は揺るがない、心は折れない。
「勝があれだけ傷付けられるまで、何にも出来なかったんだ」
勇次郎の蹴り足の、膝を踏み打つ。
腹への崩拳は、勇次郎の内臓まで発剄によるダメージを浸透させた。
「その痛みに比べりゃ、テメエの蹴りなんざ効いた内にも入らねぇよ!」
勇次郎は重心を落とし、全身に溜めを効かせる。
溜めを瞬発力にして、全体重で鳴海に突っ込んでいく。
渾身の体当たりに挑んだ、勇次郎の胸に鋭い痛み。
鳴海の左腕からの聖ジョルジュの剣が刺さっていた。
 
(刺さる直前、身を捻って心臓を外しやがった……)
聖ジョルジュの剣が当たった瞬間、勇次郎は反射的に心臓を避ける動きをしていたが
胴体には刺さった為に、内臓の損傷は避けきれなかった。
(…………剣が抜けない!?)
筋肉の締めで聖ジョルジュの剣が抜けない事に、鳴海が驚いた隙に
勇次郎の足刀が、鳴海の喉に入る。
鳴海は勇次郎の体を蹴り飛ばし、無理矢理聖ジョルジュの剣を抜く。
 
 
(こいつ、まだ戦るつもりか!?)
勇次郎は、未だ覇気が衰えず立ち続けるが
内臓を切り付けられ、このまま治療が為されない場合は確実に死ぬ状態だ。
「ククク、今の一閃で決められない甘さが、お前の命取りだな」
勇次郎の言葉を聞き、鳴海と勝は呆れを通り越した戦慄を覚える。
立っているのも奇跡的と言える、致命傷にあるのに
その声には一片の虚勢の響きも無く、その目には一片の陰りも無い。
二人は直感した。勇次郎は戦いを諦めない以前に、自分の勝利を未だに微塵も疑っていないと。
 
(…………ちっ、結局殺すしか無いのかよ。
 放って置いても死にそうだが、さっさと勝の治療に行きたい……
 手早く勝負を付けさせて貰うぜ!!)
聖ジョルジュの剣で、横薙ぎに切り掛かる。
勇次郎は垂れ下がった右腕で受ける。
体毎で剣に向かっていき、斬撃の威力を相殺。剣は右腕の骨で止まった。
(しぶといヤローだ! だが次は避けられないだろ!!)
鳴海の右拳が、勇次郎の顎を捉える。
勇次郎は首の捻りで、それを横に流していく。
 
「…………!!!」
横に逸れて行く鳴海の右手首に、激痛が走り鮮血が迸った。
「鳴海兄ちゃんっ!!!」
勝の悲痛な声にも、勇次郎に手首を噛み締められている鳴海は応えられない。
手首には勇次郎の歯が食い込んでいき、吹き出る血が勇次郎の口中に流れ込んで行く。
勇次郎の噛み付きは、その異常に発達した咬合筋力のみで成り立っていない。
全身の力を、咬合に集約させる技術までが使われていた。
手首を噛まれ体勢の崩れた鳴海が、何度か殴る蹴るを繰り返しても勇次郎の噛み付きは緩まない。
鳴海は丹田の気を用いた左拳の発剄で勇次郎を吹き飛ばすも、手首を噛み千切られた。
 
214Classical名無しさん:07/12/22 18:01 ID:6PpeTlDA
     
215Classical名無しさん:07/12/22 18:01 ID:w0Jc0Tm6
そして範馬支援
 
鳴海は、右手首の状態を確認する。
(しろがねの治癒力で直りそうだが、この戦いの間は使えそうに無いか……。それより問題は…………!!)
自分の右手首を見ていた鳴海の顎先に、勇次郎の蹴りが入る。
顎の振動が脳まで伝播し、鳴海の膝が崩れた。
(こいつまだこんな力が! いや、やっぱりこれは…………)
 
勇次郎は鳴海から離れ民家の壁際まで行き、関節が外れた右肩を当てる。
(……あの人、何をやってるんだ?)
訝しむ勝を余所に、勇次郎は右肩で民家の壁を押し壊す。
民家の中で何度も破壊音を立てた後、勇次郎は壊れた壁から出て来る。
その右手は、自力で指を開閉させていた。
(そうか、あの人は肩関節を力付くで填めていたんだ!)
勇次郎の体の切り傷や銃創が、見る間に小さくなり消えていく。
「待たせたな悪魔(デモン)」
(やっぱりこいつは、俺の血中からアクア・ウィタエを吸飲してやがる!!)
 
半身の構えの鳴海に、勇次郎は背を向ける。
その背中には、鬼が哭いていた。
(狙いは首だ。首を撥ねれば、アクア・ウィタエの効果があっても奴は死ぬ!)
聖ジョルジュの剣が、勇次郎の首目掛け一閃。
切れたのは首の皮一枚。
殴られた鳴海は、後方へ飛ぶ。
悪魔(デモン)の一閃より早く、悪鬼(オーガ)の一撃が決まっていた。
「勝ッ!!!」
勝は飛来する鳴海に巻き込まれる。
「良かったじゃねぇか、仲良く出来てよ」
 
 
仰向けに倒れた鳴海は、頭だけ起こして周囲を見る。
体の他の部位は、微動だにしない。
近くにうつ伏せで倒れる勝と、その向こうから近付いて来る勇次郎が確認出来た。
「…………勝……大丈夫か……」
鳴海が声を掛けても、勝に反応は無い。
勇次郎は勝を跨いで、鳴海に迫る。
その勇次郎の足に、勝が飛び付いた。
 
(勝、起きていたのか!!)
勝の狙いは、勇次郎の足首の関節。
「えっ?」
勇次郎の手が勝の左肩の近くを、通ったと思った次の瞬間
勝の左腕は、力無く垂れ下がっていた。
「僕の肩が……分解された?」
「クク、惜しかったなボウヤ」
勝は背中から踏み潰された。
「ぐああああああああああああああああああっ!!!」
「勝……ちくしょう…………」
「無様なものだ、おとなしくしていれば生き長らえたかも知れぬものを」
 
脊髄を潰された勝は、潰れた右手で勇次郎に喰らい付こうと試みる。
「まだ、もがいておるか」
「…………おじさんは……強いんだね……」
言葉を紡ぐのにも精一杯な勝を、勇次郎は黙って見下ろした。
「……そんなに…………強いなら……他の人と一緒に…………生き残る……
 努力を…………すればいいのに…………何で……そう…………しないの?」
218Classical名無しさん:07/12/22 18:02 ID:w0Jc0Tm6
鳴海尾にいちゃーーーーーーーーーーーーーん支援
勇次郎は勝の頭を乱暴に掴み、鳴海の方へ突きつける。
「お前の甘っちょろい思想の果てにあの姿がある!!」
鳴海は瞳から涙と血を流していた。
「たかだか人間の肉体を破壊し合うという単純な行為に、友情だの結び付きだの愛だのと
 上等な料理にハチミツをブチまけるがごとき思想!!!
 その心根がいかに勝利を遠ざけ、闘いの純性を損なうこととなるか
 そこにいる鳴海を目に焼き付け―――――とくと知れい!!!!」
 
勝が勇次郎に向き直る。
「……………………そんなものが…………おじさんの考える強さなんだ…………」
腫れと出血で、勝の顔は元の面影も残っていない。
「……僕はねぇ…………昔は泣いてばかりいた……弱虫だったんだ…………
 でも…………鳴海兄ちゃんにたくさんのものをもらって……………………少しは強くなれたんだ……」
その勝の傷だらけの顔からも、強い意が感じ取れた。
「おじさんは…………誰かに……何かをあげれるの? …………何かもらえるの……………………
 誰にも…………なんにも……あげられないんじゃ…………おじさんの強さなんて……何の価値も無いよ……」
 
「…………聞いたか鳴海よ、このボウヤ俺に説教しやがったぜ」
勇次郎は勝の頭から手を離した。
「大した性根だ、あれだけ痛めつけられながらな。……尊敬に値するぜ」
そしてゆっくりと鳴海に歩を進める。
「まだ幼年でありながら、力も知恵も勇気もある。ここで殺すのは惜しいと思う程だ」
勇次郎は屈み込んで、鳴海の顔を覗き込む。
「お前もそう思わないか?」
鳴海と勝は、勇次郎の意図を汲みかねて呆けた。
「俺はオーガなんて呼ばれちゃいるが、本物の鬼だって勝の崇高な姿を見たら悔い改めるぜ」
「お前、まさか……」
ようやく言葉を発した鳴海に、勇次郎が笑い掛けた。
 
220Classical名無しさん:07/12/22 18:05 ID:6PpeTlDA
   
 
勇次郎が地を蹴り、勝の頭部のある部分に拳を通過させる。
 
―――――鳴海には飛び散る肉片が、誰のものか分からなかった。
 
―――――鳴海には舞い落ちる脳漿が、誰のものか分からなかった。
 
―――――鳴海には崩れ落ちる体が、誰のものか考えられなかった。
 
「屈服しねぇ以上は俺との勝負を続けたってこと、決着をつけさせてもらったぜ。
勇次郎の言葉を聞き、鳴海はようやく何が起こったか理解した。
「ギザマアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
「悪いな、手が滑って勝クンを殺しちゃったよ。鳴海兄ちゃん」
鳴海が勇次郎に駆け寄り、聖ジョルジュの剣を振り被る。
「人が謝ってるのに、ボーリョクはいけないなぁ」
勇次郎は鳴海に足を引っ掛ける。
勢いのまま鳴海は転がった。
鳴海は立ち上がろうと手足をばたつかせるが、思う様に動かない。
「仇を見据える力も無いウジ虫が、俺に挑もうなどと」
 
「オーガ!!」
独歩が気勢を上げ、勇次郎へ向け駆ける。
「愚地独歩か、良い所に来た」
新たな餌の来訪に、勇次郎が喜色ばむ。
勝の死体に視線を向けた独歩は、沈痛な面持ちとなった。
(すまねぇな坊主、遅れちまった上……すぐに仇をって訳にもいかねぇ)
222Classical名無しさん:07/12/22 18:06 ID:w0Jc0Tm6
ま・さ・る! ま・さ・る! 支援
勇次郎と鳴海の間に入った独歩は、懐から取り出した紙を広げた。
間を詰めようとする勇次郎は独歩の紙から突然現れた馬、黒王号の巨体に弾かれる。
尻餅をついた勇次郎の隙に、黒王号の予想外の巨体に驚いていた独歩も気持ちを切り替ると
鳴海と近くに有った勝のデイパックを抱え、黒王号に飛び乗る。
黒王号は乗者を選ぶ馬である。独歩が拒絶されなかったのは僥倖と言えよう。
独歩は勇次郎から逃げるべく、黒王号を走らせた。
 
「ケッ、人喰い愚地が逃げを打つとはよ」
鳴海と独歩に逃げられた勇次郎は、つまらなそうに吐き捨てる。
済んだ事には拘らない勇次郎は、興味を自分の体の変化に移した。
鳴海の血を図らずも飲んで以来、最近の負傷が治っていっているのだ。
勇次郎はデイパックから氷漬けにしていた、自分の左腕を取り出す。
切断面は左腕を切り落とした坂田銀時の、鋭い剣筋によって一切乱れが無い。
おかげで切れ端同士を、完全に重ね合わせられた。
切断面がずれないよう、服の切れ端で強く縛る。
「……とりあえず、飯でも喰うか」

 ◇  ◆  ◇

黒王号に跨りながら、独歩は先程の勇次郎を思い返す。
独歩は当初勇次郎を見付け次第、1対1の素手による勝負を挑もうと思っていた。
勇次郎は常に成長を続けている、地下闘技場で闘った時より強くなっているのは予想していた。
だが先程見付けた勇次郎は、もうそんな次元の相手では無い。
その存在感は自分の、と言うよりどれだけ鍛えても只の人間に喧嘩相手が務まる者ではない事が読み取れた。
それを認める事は独歩にとって、死をも凌ぐ屈辱である。
しかし先程闘いを挑んでいたら、独歩と鳴海は確実に殺されていただろう。
そして勇次郎を何としても殺さなければ、この場に居る者は確実に皆殺しにされるだろう。
そうと分かったからこそ、先程は躊躇いも無く逃げを選んだのだ。
(楽しく闘り合う筈が、とんだ事になったな。……でもしゃーねぇ、ここは大人になるか)
 
224Classical名無しさん:07/12/22 18:07 ID:w0Jc0Tm6
まさるあああああああああああああああああああ 支援
 
独歩は肩に抱えている鳴海を見る。
その表情は、空虚としか表現出来ない。
それでも勝の死が、衝撃だった事は充分推測出来る。
(勝に報いる為にも、犬死は出来ねぇよな)
独歩は何れ来るべき勇次郎対策に、思いを馳せる。

 ◇  ◆  ◇

勇次郎は支給食料である、ビニールでパックされた市販品と思しき握り飯を食べていた。
生命の水(アクア・ウィタエ)の影響で活性化された細胞が、それを栄養として吸収して行くのが自覚出来る。
不意に自分の左肘に、注意を向ける。
微かに、だが確実に自力で動いた。
「クククク、こいつぁいいや!!! ハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!」
 
一人分の食料を食べ尽くしたが、食の太い勇次郎は満足を得ない。
そして食事以上に、勇次郎は餓えているものがあった。
強者への、闘争への餓えが。
(今なら、何時まででも闘えそうだ)
勇次郎の体内の、生命の水(アクア・ウィタエ)は
かつてない巨凶を、生み出そうとしていた。
 
【才賀勝@からくりサーカス:死亡確認】
【残り32人】
 
 
【D-3東部/1日目 夕方】
【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】
[状態]闘争に餓えている 左腕切断(アクア・ウィタエの効果により自己治癒中)
[装備]ライター
[道具]支給品一式、打ち上げ花火2発
[思考] 基本:闘争を楽しみつつ優勝し主催者を殺す
1:戦うに値する参加者を捜す
2:首輪を外したい
[備考]
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。
※ラオウ・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました。
※生命の水(アクア・ウィタエ)を摂取しました。身体にどれ程の影響を与えるかは後の書き手さんに任せます。

【D-4北部/1日目 夕方】
【加藤鳴海@からくりサーカス】
[状態]:胸骨にひび 肋骨2本骨折 左耳の鼓膜破裂 右手首欠損 全身に強度の打撲 出血多量 極度の疲労 自己治癒中 茫然自失
[装備]:聖ジョルジュの剣@からくりサーカス
[道具]:支給品一式×2(刃牙、鳴海)  輸血パック(AB型)@ヘルシング
グリース缶@グラップラー刃牙 道化のマスク@からくりサーカス
[思考]
基本:バトルロワイアルの破壊、誰かが襲われていたら助ける。赤木がいう完璧な勝利を目指す。
1:…………勝…………
2:喫茶店へ向かい、エレオノールと合流する
3:誰かが襲われていたら救出し、保護する
4:赤木との約束の為に、8時に学校へ行く
5:いつか必ずDIOと勇次郎をぶっ潰す
6:殺し合いに乗っている奴を成敗する
7:DIOの情報を集める
[備考]
※聖ジョルジュの剣は鳴海の左腕に最初からついていますので支給品ではありません
※参戦時期は本編18巻のサハラ編第17幕「休憩」後です
※勝とエレオノールの記憶を取り戻しました。
228Classical名無しさん:07/12/22 18:10 ID:6PpeTlDA
  

【愚地独歩@グラップラー刃牙】
[状態]:健康
[装備]:黒王号@北斗の拳、キツめのスーツ
[道具]:支給品一式×2(独歩、勝)、不明@からくりサーカス、書き込んだ名簿、携帯電話(電話帳機能にアミバの番号あり)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない。
1:何処かで加藤鳴海を治療する。
2:その後、駅に戻ってシェリスと合流。そのままシェリスの服を見立てる為に繁華街に行って、服を探す。
3:アミバ・ラオウ・ジグマール・平次(名前は知らない)と接触、戦闘。
4:乗っていない人間にケンシロウ・上記の人間・タバサ(名前は知らない、女なので戦わない)の情報を伝える。
5:シェリスとともに劉鳳を探す
6:勇次郎を手段を選ばず殺す
[備考]
※黒王号に乗っている場合、移動速度は徒歩より速いです。
※パピヨン・勝・こなたと情報交換をしました。
※不明@からくりサーカス
『自動人形』の文字のみ確認できます。
中身は不明ですが、自立行動可能かつ戦闘可能な『参加者になり得るもの』は入っていません。
※刃牙、光成の変貌に疑問を感じています
230Classical名無しさん:07/12/22 18:11 ID:eeFI5FOo
   

【D-3南部/1日目 夕方】
【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:健康
[装備]:ピエロの衣装、メイク@からくりサーカス
[道具]:青汁DX@武装錬金、支給品一式
[思考・状況]
基本:殺し合いに優勝し、人間になる。
1:人形以上に強力な武器が欲しい。
[備考]
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※オリンピアは懸糸の切れた状態でD-3東部に放置してあります。
 
[共通備考]
※地下鉄線路内には、地上に出る避難口が存在します。
※勝の首輪は遺体の側にあります
232Classical名無しさん:07/12/22 18:11 ID:gNVlrXw6
SIEN そして乙です、初めて勇次郎という勇次郎が見参としたとさえ思える狂気の
SSです、外された肩を克己式で入れなかったのは、勝の外し方がイスタス以上の
外し方だったんですね、独歩もかっこよかったGJです
233Classical名無しさん:07/12/22 18:12 ID:6PpeTlDA
 
234Classical名無しさん:07/12/22 18:12 ID:eeFI5FOo
     
235 ◆05fuEvC33. :07/12/22 18:13 ID:HV3t6SeA
投下終了しました。
多くのご支援、本当にありがとうございました。
指摘点が有れば、よろしくお願いします。
236Classical名無しさん:07/12/22 18:21 ID:cDB5vWSc
投下乙
悪魔(デモン)VS鬼(オーガ)はとても手に汗握りました
しかし勇次郎も、鳴海の生命の水摂取してさらに手がつけられないヤツになったな
そして勝、いい子だったのに……だがよくがんばったよ
237Classical名無しさん:07/12/22 18:22 ID:FaPosKkw
  
238Classical名無しさん:07/12/22 18:23 ID:6PpeTlDA
GJです!
勇次郎、アクア・ウィタエ飲んじまったよ……お前はどこまで……
鳴海・勝VS勇次郎の迫力は凄まじかったです。
鳴海が記憶取り戻したところは、スゲェ燃えました!
あと独歩さんも男前でしたし、エレオノールのマーダーっぷりにも何とも言えない気分になりました。
勝、お前は精神的にはその鬼と良い勝負だったぜ……
239Classical名無しさん:07/12/22 18:32 ID:eeFI5FOo
GJ!
勝ぅぅぅぅぅ!!!!
勇次郎と鳴海の対決のハイレベルの描写ッぷりに熱くなりました。
勝もここで惜しいと思えるほどの奮闘で、独歩も活き活きとしていました。
先頭描写も秀逸。もう一度GJ!!

勇次郎は止まるところを知らないなww
240Classical名無しさん:07/12/22 18:41 ID:w0Jc0Tm6
独歩かっけええええええええええ!!
まあああさあああああああるううううううう!!
なるみいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!
勇次郎がすんげー勇次郎してる。シビレたこの勇次郎にゃ!
エレオノール対独歩、そして勝・鳴海対勇次郎のバトルは本当に凄かった
二人のキャラクターをきっちり把握した上で、二人共を魅せてくれました
フェイクかますしろがね、勝の記憶を取り戻す鳴海といった演出を交えながらのバトルは本当に素晴らしかったです
そして後半、勝の最後を彩るに相応しい演出の数々、とても良かったです
何より、それらを蹂躙する勇次郎の圧倒的な力が余すところなく表現されているのが素晴らしいです
戦闘も、台詞も、思考からその動きまでがとても勇次郎らしく活き活きとしていました

……なんだってこーここはこーいう熱いバトルが止まらねーんだwwwwwwww

勇次郎怪我してても全くそれを感じさせないのが素敵すぎ
なーにパワーアップまでしてんだこのおっさんはwwwwwwww

素晴らしい力作でした。GJ!!

後、一点だけ気になった場所が
>自分に近付いてくるてくる、自動車の走行音を聞き
ここは、てくるが一つ要らないですね
241Classical名無しさん:07/12/22 18:48 ID:jF59A/b.
GJ。
勇次郎やっぱシャレにならねぇ……!
両手潰されてコレかよ。たまんねぇ。
勝……鬼相手に関節分解2度目なんて、同じ手を狙うから……。
でも精神的には勝ってた気ィするよ。

人形相手に圧勝した独歩ちゃんも相当だったけど、これは勝てない。確かに逃げる。
さて、そして気になるのがエレオノールの今後。こっからどう動くのか。
242Classical名無しさん:07/12/22 19:24 ID:cc38kaPg
勇次郎が分解覚えて、しろがね化って……どこまで強くなるんだこの化け物は。
もはや、人間じゃねーだろ。
243Classical名無しさん:07/12/22 21:04 ID:ql/Fy77Y
投下乙!
勇次郎が飲んだのが鳴海の血ってことはそこまで濃くはないんだよな。
まだ何とかなりそうな範囲か。人数的にそろそろマーダー四天王のうちぶつけ合ってもいい頃かな?
勝の台詞がかっこ良すぎる。よそのとこの死に様と比べたら天と地だなw
鳴海もリベンジフラグ立ったし、エレオノールとの誤解フラグも楽しみなところ。
しかし空気だった独歩がここまで渋い役回りになるとは想像できなかったな。
244Classical名無しさん:07/12/22 21:21 ID:5T4FjKUo
もうなんか勇次郎かDIOかラオウが優勝してほしいわ。
超乙。
245Classical名無しさん:07/12/22 21:25 ID:eSAwmuR.
一瞬のからくりサーカス、乙&GJです
エレオノールのスタンスからして勝の死は予想していたけど、これまた予想以上の健闘で血がたぎりました
オーガ本来の残虐さや独歩関連の因縁など、原作では消えつつある要素も掘り下げ、盛り上げてくれファンとして嬉しい限りです
つくづくここの書き手さんの勇次郎の使い方は上手いなと感心いたします
246Classical名無しさん:07/12/22 21:48 ID:ZSK2cReY
勇次郎を初めっから人間と思いたくねー。
悪魔対鬼! あると思ってたけどやはりバキとは違って勇次郎圧勝……
途中でオマエ片手ねーんだよね……っておもったけど、まぁ勇次郎だから納得できるんだよなぁ。
しかも鬼畜ッぷりというか、外道ッぷりが初期のそれで、読んでる最中からだが熱くて熱くて、

そして気づいたんだが、対主催の主力がどんどん減ってないか…
承る、バキ、  =死。 
赤木      =ピンチ。
ケンシロウ   =両目喪失。
神楽      =精神不安定。
劉鳳      =ぼろぼろ。
独歩      =勇次郎に対して力及ばないこと理解。
鳴海      =ぼろぼろ、精神的ショック。

対するマーダー勢
ロリ旦那、   =装備ある程度あり、至って意欲万全。
ラオウ     =傷だらけで疲れているが……
美形      =なんか半ステルス化してないか? 状態ほぼ万全健康。
疵顔      =いろいろ高揚感。
しろがね    =決意を新たに……
DIO様    =疵は多いが回復できる範囲かと、吸血鬼だし。
吉良      =疲労多し、しかしさっそく一人 ボンッ!
勇次郎     =腕くっつきそう、疵治った。すこし力があがった。

ジョセフにかがみ、ルイズやナギやハヤテやパピヨン。西の探偵にアミバ、
そして個人的に一番好きなチームである川田たちにがんばって欲しいが結構無事で強力なマーダーが多い。
どーすんだ?


ん? バーロー……だれそ(ry?
247Classical名無しさん:07/12/22 21:56 ID:5T4FjKUo
>>246
つ【勇次郎VSアーカード】

まぁもうそろそろマーダー同士を潰し合わさせる時期かな。
248Classical名無しさん:07/12/22 22:00 ID:lyTu6.k6
>>246
覚悟完了した人を忘れてる余寒。
249Classical名無しさん:07/12/22 22:01 ID:lyTu6.k6
sage忘れた。すまn
250Classical名無しさん:07/12/22 22:06 ID:gNVlrXw6
>>243 でも鳴海の血は最も濃い血なんだよね
251Classical名無しさん:07/12/22 22:08 ID:ZBNEfn.w
>>248
覚悟はフラグ立て過ぎ
252Classical名無しさん:07/12/22 22:11 ID:eeFI5FOo
>>246
乙だぜ。

マーダーと非マーダーの配分が結構整ってきたとおも。
いい感じ。
253Classical名無しさん:07/12/22 22:43 ID:ZSK2cReY
247で思い出したが、某ロワでその対決ノロウイルスでけり付いてたな……

あと246でキュルケのこと忘れてたわ。
覚悟は一応川田たちに入ってる意味で書かなかった。
わかりにくかったみたいですんません。
254Classical名無しさん:07/12/22 22:51 ID:GYzFeFhc
村雨のことも忘れているぞ。
255Classical名無しさん:07/12/22 22:59 ID:ZSK2cReY
さらに苦し紛れな補足しとくと、村雨はチップ一つでどうなるかわからん
(本人も記憶を求めているようだし、)ので入れなかった。
らきすた陣は戦闘できそうな奴が少ないのでいれず、
そしてシェリスを忘れていた。   orz
256Classical名無しさん:07/12/22 23:03 ID:ZSK2cReY
連投ごめんなさい。でも突っ込まれる前に自らツッこむ。
三村は一応対主催だ! わすれていましたすいません。
257Classical名無しさん:07/12/23 00:40 ID:Bd/0ZekM
じゃあついでにチーム表もおさらいしておこう
こっちはマーダーのチームが現在存在していないため対主催のみだな(以前は散と村雨コンビがいたんだが

チーム【イギリス紳士と慎ましき大和撫子】
(ジョセフ&かがみ)
所持品[ハイパーヨーヨー×2、激戦、マジシャンズ・レッド、柊かがみ着せ替えセット]

考察:情報量や所持品は少ないものの、ジョセフの強さあってかがみの精神もある程度安定している。
   しかし三村の迷走、村雨やDIO,アーカードとの因縁など先行きに不安がある。
   道具の使い方に定評のあるジョセフの力を生かすためにもなんとか早急に他のチームとの合流を図りたいところ。


チーム【挽歌の漢達】
(アミバ&服部&劉鳳)
所持品[ノートパソコン、ギーシュの造花、神楽の仕込み傘(強化型)、スティッキィ・フィンガーズ、
    空条承太郎の記憶DISC、スーパー光線銃、液体窒素、バイク、タバサのメガネ、他]

考察:タバサやブラボーを失ったものの、戦闘要員と頭脳要員が揃う優秀な三人組。
   アミバと劉鳳の衝突が心配だったがそれもなんとか解消なるか?
   所持品は多いもののいまいち使いこなせるものが少ないため、なんとか生かす手段を見つけたい。


チーム【何かしら小さい奴ら】
(コナン&ルイズ)
所持品[スーパーエイジャ、キュルケの杖、折れた軍刀、拡声器、他]

考察:多分現状もっとも力不足なチーム。ポケモンで例えるとLv5のヒトカゲと自爆しか使えないビリリダマ。
   シアーハートアタックから逃れてきて慌てている上に拡声器を使うという死者スレ歓迎会真っ最中な状態。
   このままネタで終わってしまうのか、それとも新たなネタとなるのか、それが1番の焦点だ。
258Classical名無しさん:07/12/23 00:41 ID:Bd/0ZekM
チーム【何かしらでかい人達】
(ケンシロウ&キュルケ)
所持品[ランダムアイテム*3、タバサの杖]

考察:なんか威力重視な人たち。いろんな意味で。
   ケンシロウは盲目状態だがなんかむしろパワーアップしたような気がするし、
   キュルケは一応現状では唯一魔法がまともに使える人員である。
   それにしてもルイズといいキュルケといい、クロスオーバーカポー成立の予感に死者スレの才人が涙目な気がする。

チーム【折れた闘志】
(鳴海&独歩)
所持品[輸血パック(AB型)、携帯電話、黒王号]

考察:単純にネームバリューだけで考えればデモンに武神と隙のない2人組み。
   しかし双方精神ダメージ大に加え鳴海はサハラ戦後を越えるであろうショック状態。
   もっともこのまま終わる漢達ではないのだろうが…

チーム【奇跡のほぼ15歳ズ】
(川田&覚悟&ヒナギク&つかさ)
所持品[ハルコンネン、ハリセン、ZXのメモリーキューブ、ホーリーの制服、ターボエンジン付きスケボー、その他一般装備一式]

考察:結託の強さなら負けない4人。絶対全員15か16には見えねぇ。
   戦闘力の高い覚悟、ロワについての知識に最も長ける川田と一見有力に見えるが、
   一般人マーダーにも勝つ見込みが薄いヒナギクやつかさがいるため一瞬の決断が全体を左右すること間違いなし。
   零を持ち、かつ記憶を求めているZXとの接触が生存への鍵となるか、或いは全滅への入り口となるか…


以前に比べるとチームが減ったなぁ…
259Classical名無しさん:07/12/23 00:54 ID:DXB/zKPM
>>231
遅ればせながら超絶GJ!!
プラボーといわずになんと言えばいいのだろう?
迫力ありまくりの格闘描写にしびれまくった……。
独歩カッコよすぎるし、勝も男を見せたし、鳴海と勝の再会には
涙がでそうになった。

だがしかし! それらを全て粉砕する勇次郎の強さがやっぱたまらねえ。
勇次郎最高だぜ!!
心の底からブラボーと叫ばせていただきます!!
260Classical名無しさん:07/12/23 02:23 ID:uIdYocbA
>>257-258
こなた・パピヨン・シェリスのチームを忘れてまする。
シェリスは一応ステルスマーダーだけど、今の所はこのチーム、対主催考察としちゃかなりいい所いってんだよなぁ……
261Classical名無しさん:07/12/23 02:27 ID:4XEDLpNs
>>247
他のマーダー四天王と違って勇次郎は
旦那の心臓狙わないで、自力で残機全部減らす方選びそうで怖いw
ただ身体能力ならさすがに旦那の方が上だろうしなぁ…
ピクルより下には思えん。
262Classical名無しさん:07/12/23 02:41 ID:Bd/0ZekM
うっかりしてたぜ このチームを忘れるとは

チーム【新・サービス担当組】
(パピヨン&こなた&シェリス)
所持品[猫草入りランドセル、地下管理センターの場所の地図、地下鉄仕様書、
    フレイム・ボール(多分使い捨て)、エンゼル御前、他]

考察:裸の付き合いを経て奇妙な友情(?)を得たチーム。ちなみに左から読者が見て興奮すると思われる順である。
   考察及び戦闘はパピヨン、発想はこなたが担当している。シェリスはパピヨンに現在は押さえつけられているが、
   心境の変化がないまま他の対主催チームと合流したときにはひと波乱ありそうだ。
   
   
   
263Classical名無しさん:07/12/23 04:13 ID:EXYrdR.U
編集された地図を見て改めて思う。喫茶店組、病院組は壊滅状態だな。なんて対主催に厳しいロワなんだここはwwwwwwwww
264Classical名無しさん:07/12/23 08:38 ID:nIMyObY6
>>262
まとめ乙!
こういう風にまとめてくれると凄いありがたいぜ!
対主催で単独行動のナギ、ハヤテ、三村、アカギがどこに入りこむかが鍵だな。
265Classical名無しさん:07/12/23 09:49 ID:UFeSApx6
あら、ルイズが虚無魔法を修得する機会ってもう完全に失われたんだっけ?
もし修得できれば最弱チーム及び対主催者側の補強になると思うんだが……
266Classical名無しさん:07/12/23 10:32 ID:7vxWtluc
ぶっちゃけ始祖アイテムと何らかのルビーがあればいいなら、不明支給品からまとめて出す荒業もできるかもな。
ゼロ魔詳しくないから、できるかどうかは分からんが。
267Classical名無しさん:07/12/23 10:33 ID:oyzwwPD2
>>265
「始祖の祈祷書」と「水のルビー」は共に赤木が持ってる。
268Classical名無しさん:07/12/23 12:23 ID:t8fgT4v.
しかし仮にその二つが手に入っても気力だか魔力だかの再チャージに数ヶ月必要。
一発撃ったら終わりの大砲みたい魔法だからいまいち使えるんだか使えないんだか。
269Classical名無しさん:07/12/23 12:39 ID:Xdq5ccLw
小説設定乙
270Classical名無しさん:07/12/23 14:08 ID:Bd/0ZekM
ここは漫画ロワだぜ?
スクライドの最後の方みたいな無茶苦茶があっても多少は許されそう
271Classical名無しさん:07/12/23 14:15 ID:96mBTIbA
それ思いっきり「習得したら即死亡フラグ」なんですけどー!w
272Classical名無しさん:07/12/23 14:24 ID:HGCTqpEc
 チームまとめ乙!説明文とチーム名がナイスすぎる!!
273Classical名無しさん:07/12/23 16:34 ID:EXYrdR.U
少なくとも俺はルイズに戦力を期待していない。奴に期待するは「それ以外」だ
物語を彩るキャラクター達はバリエーションに富んでいるほうがより魅力的なストーリーになるってもんさね
大体このロワじゃ、下手に戦力持ってたらそれこそ四強マーダーの餌食じゃねーかwwwwwwwww
274Classical名無しさん:07/12/23 16:37 ID:nIMyObY6
>>273
確かにw
全く無力なら相手にされないもんなw
275Classical名無しさん:07/12/23 16:45 ID:EXYrdR.U
>>274
そしてそんな強マーダーにすらケンカを売るのがルイズクオリティ。バーロー早くそいつの側から逃げてーーーーーーwwwwww
276Classical名無しさん:07/12/23 17:48 ID:DXB/zKPM
>>273
確かにw
漫画ロワのマーダーは強い奴が大好きだからなあ・・・。
277Classical名無しさん:07/12/23 20:57 ID:4jGE/2K6
参加者の対主催者かマーダーの区分けは早計じゃあるまいか。
そもそも対主催者の定義は脱出派だけでなく主催者打倒も含まれてたはず。
ならばマーダー四天王も広義的な意味では立派な対主催だw
ぜったいこいつら主催者相手でも喧嘩売るぞ。
278Classical名無しさん:07/12/23 21:12 ID:KofMUIug
主催者の居場所が解らない限り、参加者を狙い続けるだろうからそう呼ぶにはちょっと無理があるぞ
勇次郎なんかは首輪の解除者をも用が済めば即殺しても不思議じゃないし
279Classical名無しさん:07/12/23 21:18 ID:9hERWWp.
う〜む、何かイベントを起こして『弱者のために戦う人間を尊敬できる勇次郎』を少しは出さないとな
このスレの勇次郎って第一部仕様なんだもんなー
280Classical名無しさん:07/12/23 21:22 ID:QeYC.SLc
>>277
あいつらのうち誰かが優勝しちゃったら、主催が可哀相だな。
281 ◆05fuEvC33. :07/12/23 21:26 ID:zVxWZhKA
>>240
返事が遅れてすいません。
ご指摘ありがとうございます。指摘部分をwikiで修正したいと思います。
282Classical名無しさん:07/12/23 21:29 ID:KofMUIug
>>280
アニロワのと違って、主催もガチで強い上に異能力持ちもいるから単独だと返り討ちにしてしまうと思う
283Classical名無しさん:07/12/23 21:31 ID:HYhISD9M
でもアライというか、アリ程の「強者でありながら弱者の為に戦う」って人は居ないからなぁ
弱いものの為に己の命を捨てて戦う程度じゃ、実話が漫画を超えてるアリには及ばない
からなぁ、勇次郎が昔からアライを知ってる以上、そのアライを超えるような印象を勇次郎
に抱かせるキャラはいないんじゃないかなぁ
284Classical名無しさん:07/12/23 21:52 ID:7vxWtluc
可能性があるとしたらOPで宣戦布告した覚悟くらいじゃないか。
高確率で死亡フラグ追加だけど。
285Classical名無しさん:07/12/23 22:05 ID:QeYC.SLc
書き込めるかな? とりあえず、主催連中の強さが分からない俺はライダー嫁ってことだな。
それと本スレ……じゃない、毒吐きがなくなってるんだが
286Classical名無しさん:07/12/23 22:07 ID:bmJIuBoA
死亡フラグなんてアカギにかかればところがぎっちょんだぜ
287 ◆L9juq0uMuo :07/12/23 22:20 ID:FN/QURxg
神楽、吉良投下します
288Classical名無しさん:07/12/23 22:22 ID:ljgEevFM
支援します! ……したらば、落ちてるのかな?
289 ◆L9juq0uMuo :07/12/23 22:22 ID:FN/QURxg
さて、どうするか。
この現状を前に、この吉良吉影が神楽とかいう小娘を相手に選択できる行動を整理する。
一つは逃走。
一つは殺害。
そしてもう一つは懐柔。
逃走は悪手だ。あの心神喪失状態の小娘に関わらずにすむという点は魅力的だが、彼女が、私がいなくなったと知れば疑いを持つだろう。
しかも、死んだのはよりにもよって彼女と親しい間柄の様に見えた志村新八だ。最悪、あの顔面傷女の様にこちらを執念深く襲ってくるかもしれない。これは極めてよろしくない。
残ったのは二つ、殺害と懐柔。
彼女はいつ爆発するかも知れない危険な状況だ。一番いい手は殺害だろう。
しかし、懐柔という手にはそれはそれで魅力的な面もあるのだ。
今現在の時間までこの殺し合いの場で誰にも遭遇していない人間はかなりの確立で0だろう。殺し合いに乗っている乗っていないに関わらず、参加者の情報が手に入ればその人物に対してこちらがイニシアチブをとれる。
もう一つの利点。それもこの吉良吉影だからこその利点がある。
悩んでいる時間は無い。時間をかければかけるほど怪しまれる確立は比例して上がっていく。
そして私は一つの選択を取った。

銀ちゃん。
新八。
地球に来て、一番心を許せた私の大事な仲間。
290Classical名無しさん:07/12/23 22:23 ID:ljgEevFM
 
291 ◆L9juq0uMuo :07/12/23 22:24 ID:FN/QURxg
「もお、銀さん。またジャンプ買ってきたんですか? この前ジャンプ卒業って言ってたじゃないですか」
「仕方ねーだろ、あの冨樫先生が連載復活しちゃったんだから。1年と何ヶ月ぶりだ? 俺はずっとYOU助とTOグロ弟の対決がなぁ」
「それ、連載終了してる方でしょぉぉぉぉぉ! あんた冨樫興味無いんだろ!? もっともな理由つけてジャンプ読み続けたいだけろうがぁぁぁぁ!」
「馬鹿言っちゃいけねーよ。 俺、冨樫先生大好きだぜ。ほら、あのボンズとかいう可愛い娘。早くまた出てこねぇかなー」
「死んでるぅぅぅぅぅぅ! それ随分前にあっさり死んでるからぁぁぁぁぁ!」
「新八、ギャーギャー喧しいアル。ジャンプの一冊や二冊でガキじゃあるまいし」
「仕方ねーよ神楽、新八君はジャンプの一冊や二冊が気になるお年頃なんだろうよ」
「え? 何この僕が一番悪いみたいな流れ」

何気ない日常。だけど、とっても楽しくて幸せだった掛け替えの無い日常。
それはもう、帰ってこない。
銀ちゃんは無残な姿で目の前で倒れている。新八はいきなり粉々になった。
昨日までの万屋の馬鹿騒ぎがもう何十年も昔に感じられた。
涙が溢れて止まらない。何で、何で、私達がこんな目に合わなきゃいけないアル。
私達が何したっていうね。ただ毎日毎日精一杯生きていただけなのに、……生きていたかっただけなのに……。
292Classical名無しさん:07/12/23 22:25 ID:JQj1DypQ
支援アルネ
293 ◆L9juq0uMuo :07/12/23 22:25 ID:FN/QURxg

ザリ。

何の音アルか? 後ろの方を振り向くと、一人の男が呆然としていた。

「これは……、新八君が……、何で……?」

確か、新八が吉良って言ってた男アル。信じられないって顔で私を見ているアル。

「君が突き飛ばしたら新八君が吹き飛んだ。まさか……君が?」

新八を、私が殺した……? その瞬間、私の頭は真っ白になった

「ふざけるなァァァァァァァァ!」

駆け寄って、目の前の男を押し倒した。

「私が! 私が新八を殺したって、そう言いたいのかテメェェェェェ! 新八は、私の! 私たちの! 大切な……、大切な……!!」

涙で前が見えない。気が付くと私は、本気で目の前の傷だらけの男を殴ろうとしていた。

「銀……ちゃん……、新……八……」

あれだけ泣いても、涙はまだ止まらなかった。

それからからしばらく私が泣き止み、少し落ち着くまで待っていた吉良とかいう奴と一緒に、奇跡的に無事だった新八のデイパックを手に私は病院の入り口の階段に座っていた。
294Classical名無しさん:07/12/23 22:25 ID:QeYC.SLc
sien
295Classical名無しさん:07/12/23 22:25 ID:ljgEevFM
  
296Classical名無しさん:07/12/23 22:27 ID:QeYC.SLc
sien
297Classical名無しさん:07/12/23 22:27 ID:49jHVPxI

298 ◆L9juq0uMuo :07/12/23 22:27 ID:FN/QURxg
「何で、銀ちゃんが喜ぶなんて嘘をついたあるか?」

そんな事を言わなければ、あんな思いはしなかったのに。

「嘘ではない。私がその場に着いた時、彼はまだ息があった。手当てをしようと言ったが、彼に『自分はいいから新八君達を助けに行ってくれ』と頼まれてね」

銀ちゃん、本当に大馬鹿ね。そんなボロボロになって。

「その矢先、君達と会ったんだ。急げばまだ間に合うと思ったんだが……、間に合わなかったようだ」

本当に悔しそうな顔しているアル。
どうやらこいつ、そんなに悪い奴じゃない見たいアルね。

「銀ちゃんは」
「ん?」
「銀ちゃんは、他に何か言ってたあるか?」

もし、他にも何か言ったのなら全部聞いておきたかった。

「そう言えば、最後に一言だけ言っていたよ」
「何て言ってたアルか?」
「『最後は死ぬほどパフェ食って、パフェに埋もれて死にたかった』実に彼らしい台詞だったよ」

吉良が苦笑いを浮かべている。本当に銀ちゃんらしい言葉アル。馬鹿アルなぁ……、本当に……馬鹿……。

「今は泣くといい」

ぽん、と、吉良が私の肩に、手を当てた。

「私は彼らの分も生き、この殺し合いを破壊するつもりだ。君にも協力して欲しい」

勿論ね、私たちをこんな所に連れてきた奴も、銀ちゃんと新八を殺した奴も、絶対許さないアル。
299Classical名無しさん:07/12/23 22:28 ID:ljgEevFM
 
300 ◆L9juq0uMuo :07/12/23 22:28 ID:FN/QURxg
……あれ? 新八は誰が殺したアルか? 私が新八と合流した後に会ったのはこの吉良だけ。
でも、もしこいつが乗っていたら、私を慰める必要なんて無いアル。じゃあ、誰が……?

 計  画  通  り  !
懐柔のもう一つの、吉良吉影だからこその利点。それは懐柔した相手を爆弾に変える事。
後は、対主催を志す奴らに使うもよし、乗った奴らに使うもよしだ。
そしてキラークイーンはついさっき彼女の服を爆弾へと変えた。後は好きな時に起爆スイッチを押すだけだ。
しかし、この小娘何と言う馬鹿力だ、まだ節々が痛む。
流石に殴り飛ばされるかと思った時はいつでもキラークイーンの拳をブチこめるようにしていたが、我ながらよく騙し通せた物だ。まぁ、奴を知る人物だからこそ、捏造した最後の一言にも信憑性が湧いたと言う所か。
少しずつだが運は私に味方してきているようだ。そう思うと笑いが込上げてくる。
そういえば彼女の手、よくみると白く透き通っていて、まるで陶磁器のような美しさを醸し出している。
マリアさんの腕が手に入らなかった今、彼女の手を狙うのも悪くは無いな。

「さて、ここに立ち止まっている訳にもいかない。道すがら、この殺し合いで知り合った人物などがいたら教えて欲しいんだが」

何か考え事をしていたのだろうか、彼女は、はっと我に返ると私に続いて立ち上がった。

「知り合いアルか、なら頼りになる奴が……」

そこまで言って、彼女の顔が強張る。何か厄介な事情でもあるのだろうか、できればそう言った物には関わりたくないのだが。

「あの美形、やっぱり嘘ついてたって事はケンとマダオが危ないある!」

何? 美形だと……?
301Classical名無しさん:07/12/23 22:28 ID:49jHVPxI
ペロ!これは……

支援
302Classical名無しさん:07/12/23 22:28 ID:QeYC.SLc
siensiensi
303Classical名無しさん:07/12/23 22:30 ID:ljgEevFM
  
304 ◆L9juq0uMuo :07/12/23 22:30 ID:FN/QURxg
【F-4 病院/一日目 夕方】
【神楽@銀魂】
[状態]疲労 深い悲しみ 服が爆弾化
[装備] ジャッカル・13mm炸裂徹鋼弾予備弾倉(25.30)@HELLSING 木刀正宗@ハヤテのごとく
[道具]支給品一式×2 陵桜学園高等部のセーラー服@らき☆すた 首輪
[思考・状況]
基本: 殺し合いに乗っていない人は守る、乗っている人は倒す。
1:吉良に美形やマダオ達の事を伝える。
2:マダオ達を助けに行き美形をぶっ飛ばす。
3:銀ちゃんと新八を殺した奴は許さない
4:新八を殺したのは一体……
[備考]
※原作18巻終了後から参戦。
※新八を殺した人間について、吉良の可能性は今の所除外しています。
305Classical名無しさん:07/12/23 22:30 ID:QeYC.SLc
Sien SienX
306 ◆L9juq0uMuo :07/12/23 22:30 ID:FN/QURxg
【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:左手消失、右手首裂傷、胸全体に真一文字の切り傷、出血多量、疲労大
[装備]:
[道具]:支給品一式 核金ソードサムライX@武装錬金 包帯・消毒薬等の治療薬、点滴用セット(十パック)
    病院内ロッカーの鍵(中に千切れた吉良の左手首あり)
[思考]
基本:マリアのため、必ず生き延びる。ゲームに乗る事だって辞さない。
1:神楽から詳しく事情を聞く
2:治療をし、休息をとる。
3:顔に傷のある女(斗貴子)は襲ってきたら始末、マーティン・ジグマールを殺す。
4:自身を追うもの、狙うもの、探るものなど自身の『平穏な生活』の妨げになると判断した者は容赦なく『始末』する。
5:できる限り力無き一般人を演じる。
6:もし脱出できるのであればしたい。
[備考]
※『バイツァ・ダスト』拾得直後からの参戦です。
※『バイツァ・ダスト』が使用不可能であることに気づいていません。
※覚悟、ルイズ、ジグマール、劉鳳、斗貴子をスタンド使いと認識しています。(吉良はスタンド以外に超人的破壊力を出す方法を知りません)
※川田、ヒナギク、つかさの情報を手にいれました
※左手を失い、シアーハートアタックの解除が不可能になりました。
 吉良が死ぬまで永遠に、熱源を求めて周囲を動き回っています。
 ただし、制限の影響で破壊できる可能性はあります。
307Classical名無しさん:07/12/23 22:31 ID:49jHVPxI
支援
308Classical名無しさん:07/12/23 22:31 ID:ljgEevFM
  
309 ◆L9juq0uMuo :07/12/23 22:37 ID:FN/QURxg
以上で投下終了します。支援感謝です。
そして題名を付け忘れた事に気づいた今日この頃orz
題名は「殺人鬼は密かに笑う」でお願いします。

新八の支給品一式ですが万屋銀ちゃんの店仕舞で特に触れられていなかったのでこのような形にしましたがよろしかったでしょうか?
310Classical名無しさん:07/12/23 22:37 ID:QeYC.SLc
投下乙。
新八殺した奴そこ! そこにいるから。そいつだから、犯人。
やっぱ、バーロがいないと犯人が誰か分からないんだな……



ちなみに、細かい事ですが確立は確率だと思います。
311Classical名無しさん:07/12/23 22:39 ID:ljgEevFM
GJ!!
さすが吉良! DIO様やオーガが使わないであろう手段を、平然とやってのける!
そこに痺れる憧れるゥ!!
神楽暴走かと思われたが、優しい会社員が近くにいてよかったぜ……
美形www
312Classical名無しさん:07/12/23 22:40 ID:y53XrjD.
乙ー。
吉良は瀕死状態でも能力が能力だから侮れんなー。
313Classical名無しさん:07/12/23 22:45 ID:nTnefXOs
乙!!
314Classical名無しさん:07/12/23 22:47 ID:bmJIuBoA
乙ー

でも神楽が一緒のときに襲われでもしてキラークイーンの能力使ったらアウトだよな…
意外に吉良自身も爆弾背負ってね?w
315Classical名無しさん:07/12/23 22:48 ID:SYUogzhw
計画通りてww
吉良、容赦無いなぁ。
こいつは基本的に油断が無いから、ある意味じゃDIOより怖いかも……


>>311
優しい……会社員……?
316 ◆L9juq0uMuo :07/12/23 22:48 ID:FN/QURxg
>>310
アッー!
wiki掲載時に直そうかと思います。今回は大丈夫だと思ったのにorz
317Classical名無しさん:07/12/23 23:11 ID:9hERWWp.
GJ うほ いいステルス!
神楽は持ち直したが、吉良がどんどん期待した方向に向かってる……以前危機の中だな。
しかし美形がまたピンチだなーw

>>315
ああ……とても優しい人だよ
上手くいけば神楽は何も知らずに死ねるんだからな!
318Classical名無しさん:07/12/23 23:18 ID:96mBTIbA
うわぁ……。吉良さん潜りこんじゃったよ……。
確かに吉良さん見かけだけならまっとうそうだし、演技力も高いしねぇ。
GJ。
319Classical名無しさん:07/12/23 23:20 ID:49jHVPxI
アルルの神楽となると思いきや
美形ピンチ、そして吉良極悪

投下乙
320Classical名無しさん:07/12/23 23:21 ID:sW4gi6D6
服を爆弾に変えた……ということは、吉良戦闘のさいやばくねーかなあ、

321Classical名無しさん:07/12/23 23:28 ID:JQj1DypQ
吉良「神楽だ!」

でも吉良は対して力ないからなぁ
322 ◆1qmjaShGfE :07/12/24 00:25 ID:FahT7zRE
>>309
すみません、新八の支給品に関する記述を完全に失念しておりました。そのフォローで綺麗に行くと思いますので、それでお願いします。ありがとうございました
323Classical名無しさん:07/12/24 02:11 ID:DUAdosp2
キラークイーンしばらく爆破の能力使えないな。
吉良戦闘能力大幅ダウンだなぁ。でもそのための神楽懐柔か。
なんにせよ投下乙
324Classical名無しさん:07/12/24 05:23 ID:bKJQovy.
吉良にだけは激戦やシルバースキン拾ってもらいたくないなw
キラークイーンと相性が良過ぎる
325Classical名無しさん:07/12/24 07:13 ID:I7x0JS76
そういう事口に出して言うと現実にそうなるってばっちゃが言ってた
326Classical名無しさん:07/12/24 15:14 ID:t6oY5/mI
どうせ人前じゃキラークイーンの能力隠しとくつもりなんだから爆破能力弾切れでもさして問題ないと思うけどね。
ところでなんで「服」なんだろうな。神楽本人を爆弾にした方が確実だと思うんだが。

それとおまえら、キラークイーンは一応クレイジーダイヤモンドのラッシュを真正面からさばける近接パワー型だってことを思い出してあげてください。
327Classical名無しさん:07/12/24 15:31 ID:Gdggr5p.
>>326
とても捌けていたとは思えないが……
328Classical名無しさん:07/12/24 15:44 ID:ARvsfV76
クレイジーDは無理だったが、ACT3のラッシュを捌いてたな。
一応アレも近距離パワー型
329Classical名無しさん:07/12/24 15:49 ID:Ut97cJ/U
>>324
ニアデスハピネスなんて拾われたら、もっと最悪だと思うぞ。
あとは、黒王号みたいな回避の難しい支給品も最悪な組み合わせだ。
330Classical名無しさん:07/12/24 15:53 ID:ARvsfV76
あなた、覚悟して来てる人……ですよね。
このスレにをそういう事を書くって事は、それが事実になるという危険を常に覚悟して来ている人ってわけですよね……?
331Classical名無しさん:07/12/24 15:54 ID:iYlgh/E.
いっそのこと、吉良を参戦除外してルイズにキラークイーンのDISCとニアデスハピネスの鉄を支給したらよくわからないことになってたかもしれない
いや、単純に男のロマンを感じたいだけなんだが
332Classical名無しさん:07/12/24 15:56 ID:SQKoy1zg
吉良がバイツァダスト使えないってことは……バイツァダスト、DISCになって抜き取られてる?
流石に支給品に混ぜたりしないだろうが……。
333Classical名無しさん:07/12/24 15:57 ID:4bEYkLVk
みんな吉良のこと大好きだなw
334Classical名無しさん:07/12/24 16:07 ID:FahT7zRE
>>331
あの格好するルイズ想像して噴いた
ルイズ「蝶サイコーよ才人!」
才人「すみません、使い魔契約の破棄に関して話し合いたく」
ルイズ「わかったわ!キラークイーン!」
才人「ちょwwwwww俺爆発っすかwwwwwwヒドスwwwwww」
335Classical名無しさん:07/12/24 16:15 ID:DpXhdTRk
>>328
人の身体をぶち抜ける破壊力もあるし、『しばッ!』の時に見せたスピードもある……。
特殊能力抜きにしてもかなりヤバイんだよな
336Classical名無しさん:07/12/24 16:41 ID:nMkC8Nu2
>>332 あれは普通に能力制限でしょ、DIOだって9秒も止められたら主人公補正のない
このロワじゃ無敵になっちゃうからこその能力制限だし
337Classical名無しさん:07/12/24 17:17 ID:pLx4dqRI
>キラークイーン
まあ格闘能力だけなら、ザ・ワールド≦一線級の格闘キャラってなバランスだし、
鳴海クラスが相手だと、動きがスッとろいぜになるんじゃないかね。
本人の危惧どおり、能力を知られてるか否かが分かれ目か?
338Classical名無しさん:07/12/24 18:53 ID:EPmUdgn2
そんなことよりも、また美形終了のお知らせが…
339Classical名無しさん:07/12/24 20:32 ID:bKJQovy.
>>329
一撃必殺の矛は既にあるんだから無敵の盾付けた方が安定すると俺は思うんだけどなあ
キラークイーンの近距離では自分に類が及ぶから爆破出来ないってのも打ち消せるし
ダメージ度外視でとにかく触って即爆破って出来る
340 ◆6YD2p5BHYs :07/12/25 00:05 ID:9dNHY6U.
勇次郎、投下します。

――そこは、薄暗い空間だった。
布張りの壁と天井。木組みの観客席。円形の舞台。頭上に張り巡らされた綱渡り用ロープや空中ブランコ。
巡業サーカスのテント……だろうか?
周囲を無人の観客席に取り囲まれた圧迫感は、東京ドームの地下闘技場を思い出させる。
何故こんな所に自分が居るのか。さっきまで居た『殺し合いの舞台』からいつの間に移動したのか。
その疑問に、しかし不安を覚えることもなく、男は悠然と周囲を見回す。

「……本来なら私は、前もってお前に言っておかねばならなかった」

深く響く重みのある声。常人なら威圧され身が竦んでしまうような、そんな声。
気配は一切無かった。まるで闇の中から滲み出てきたかのような感触。
だが男は動揺の色すら見せず、ゆっくり振り返る。
そこに居たのは――道化のような奇妙な仮面を被った、立派な体格の怪人物。
その奇妙な装束は、この舞台には似合いすぎる程に似合っている。
彼は男の反応を待たず、淡々と語る。

「私は、『それ』を飲む前に尋ねなければならなかった。お前の意志を確認せねばならなかった。

    『生きのびたいか、それともここで死んでいくか』、と」

「……ケッ。話が読めねぇぜ」
「本来なら、その『液体』は――その者の血は、生死の境にある者が飲むものだった。
 生死の境にある者が、究極の選択を前にして、己の意志で選び取るものだった。
 公平を期すために、予め言っておかねばならないことであった」

男の苛立ったような問いかけにも、仮面の人物の口調は変わらない。
仮面の人物は、懐から指先ほどの小さなビンを取り出す――その中に、既に液体はない。
微かに薔薇のような残り香が立つだけ。
諦めと落胆の混じった声で、宣告する。
342Classical名無しさん:07/12/25 00:07 ID:ISrUC8sQ
   

「だがお前はもう『飲んでしまった』。問い掛ける間もなく、『飲んでしまった』。
 飲んでしまった以上、お前はこの先、人生の様々なものを諦めなければならない。

   お前は、『生命の水(アクア・ウイタエ)』のあやつり人形となるのだ。

 これから先、お前の人生は自動人形(オートマータ)との戦いに捧げられることになる。
 長き寿命と強き肉体の代償として、お前は自動人形への憎しみを背負うことになる――!」

それは、あまりに重過ぎる宣告。
過去、数多くの者が狂気と現実の狭間で悩み、苦しみ、のたうち回るハメになったその宣告を前に。
無数の人生が狂わされ、無数の涙と血を流すことになったその宣告を前に。

  男は、ただ哂った。
  傲岸不遜に、鼻先で哂い飛ばした。

「……ふッ。なるほどなァ。色んなこと考えるモンだぜ、弱っちィ連中ってのはよォ」

欠伸を噛み殺すような仕草。あまりに相手を馬鹿にした態度。
男はその場の重厚な雰囲気にまるで怖じることなく、平然と言い放つ。

「原理も理屈も、てんで分かりゃしねぇが……
 なんてこたァねェ、自分だけじゃ何もできねェ弱者が、『こんなモノ』でなんとかしようって腹かよ。
 あの悪魔(デモン)を名乗ったアイツも、所詮は『こんなモノ』の操り人形に過ぎなかったってわけか!
 ざまァねェな! お前も悪魔(デモン)も、あまりに弱ェ!
 あまりに哀れで、ツッコむ気にもならねぇよ! クハハハッ!」

数多の悲劇と哀しみの果てに辿り着いた「しろがね」たちの決意を、彼は哂う。
『生命の水』を介した記憶の伝達、それによって全て直感的に分かってしまった上で、なお哂う。
仮面の人物は、そんな男に対して、哀れみすら抱きつつ、
344Classical名無しさん:07/12/25 00:08 ID:ISrUC8sQ
      

「……そうは言っても、お前は既に飲んでしまった。飲んでしまった以上は……」

  「 五 月 蝿 ェ 」

ガシッ。
それは、唐突に。
視界を塞ぐように、何かが仮面の人物の頭を鷲掴みにする。
男の右手だ。右手1本で、仮面もろとも無造作に頭を掴んでいる。いったいいつの間に距離を詰めていたのか。
仮面の人物も相当に立派な体格だ。だが男の体躯もそれに負けてはいない。
むしろ、その身から滲む迫力だけなら男の方が圧倒的。
丁度プロレス技のアイアンクローの要領。こうなってしまえば、逃げられるものではない。

「……俺の悪友に、ビスケット・オリバって奴がいてよォ。
 『Mr.アンチェイン』とか大層なアダ名で呼ばれてな、『誰にも繋がれない』ことを誇りにしてる奴だ」

世間話でもするかのように男が呟くが、仮面の人物はそれどころではない。
両手で男の腕を掴み、必死で引き剥がそうとする。必死に逃れようと足掻く。
男の方は右腕1本、対する仮面の人物は両腕を使っての抵抗。なのに全く外れる気配がない。
仮面の下から、声にならない悲鳴が漏れる。
男はニヤリと哂うと、さらに腕に力を込める。仮面と頭骨から嫌な軋みが響きはじめる。

「だが、あのオリバでさえ、他の誰にも繋がれねェんだ。
 この俺が――この『オーガ』が、お前らに大人しく繋がれていると思うか?!」

まるでその友人が乗り移ったかのような怪力。
男の、いや悪鬼(オーガ)の問いかけに、仮面の人物は答えられない。もう意味ある言葉を口にする余裕もない。
『生命の水』の意志、『生命の水』に溶けた老錬金術師の遺志、白銀(パイ・イン)の魂のカケラ。過去の幻影。
それが範馬勇次郎の圧倒的なパワーの前に、屈服させられようとしている。
346Classical名無しさん:07/12/25 00:10 ID:ISrUC8sQ
    

もちろんここは「現実の空間」ではない。「しろがね」にならんとする者に覚悟を問うための、心の中の世界だ。
だから悪鬼(オーガ)の強靭な肉体も、白銀の老いた肉体も、本当は関係ない。
ただの力任せでは、この仮面の白銀をこうもあしらうことなど出来ないはずなのだ。
しかし――範馬勇次郎の最強たる所以は、その強固な確信。
『自分こそが最強』。
その事実に対する、微塵も揺るがぬ自信。
その事実に対する、執拗なる証明の意志。
彼が真に常人を越えているのは、まさにその部分。
地震すらも拳で止められると信じる、己自身への絶対的な信頼。
この場において仮面の人物を吊るし上げていたのは、まさにその意志の力によるものであった。
誰もが抵抗できないはずの洗脳をも、逆に捻じ伏せてしまう豪腕のような強烈な意志。

ピシッ。ピシッ。
万力のような締め付けに、仮面にヒビが入る。ヒビが広がっていく。
『生命の水』の中にある『白銀の存在そのもの』が砕かれていく。

「まぁ小物なりに、面白ェモンを作ったことは認めてやろう。
 すぐに傷が治って、調子もいい。この身体、遠慮なく使わせて貰うぜ」

範馬勇次郎は技術を否定しない。
その気になれば鞭打だって使える。消力(シャオリー)だって使える。琉球王家の秘伝・御殿手さえも使える。
長距離移動の必要に迫られた時には、自動車や飛行機だって使う。
技術なり、他人の能力なりを利用すること自体は、勇次郎の信じる強さの「哲学」には反しない。
必要となればそれらを駆使することを躊躇わない。それらを使って勝利することも厭わない。
勇次郎にとって譲れないこと、それは単に、「一番に信じるもの」が己の肉体であり、己の強さであることだけだ。
だから、彼はこの「しろがねの身体」を否定しない。こんなもの、手持ちのカードが1枚増えただけのことだ。
そして「その程度のこと」としか思っていないから。
仮面の人物の足が、地面から浮く。顔面を鷲掴みにされたまま、腕1本で吊り上げられる。
348Classical名無しさん:07/12/25 00:12 ID:ISrUC8sQ
     

「だが――この俺からその代価を求めるには、ちィと弱過ぎたなァ? ええオイ?」

受け取っておいて、支払いは暴力任せに踏み倒す。範馬勇次郎というのは、そういう男だ。
自動車が必要になれば、誰かに運転させる。飛行機が必要なら、米軍基地に殴り込んで戦闘機を徴用する。
代償も見返りも与えない。最強である自分が求めているのだから、相手はそれを差し出すのが当然なのだ。
傲慢、といえば傲慢。
しかしその事実を面と向かって指摘できた人間など、指摘して無事で居られた人間など、1人として存在しない。
そして、『生命の水』に宿る過去の幻影である白銀も、また。

勇次郎の胴着が破ける。背中が露出する。凄まじいパワーが圧縮された筋肉が、ひとつの形を作り出す。
それは――鬼の貌。
腕1本で大柄な白銀の身体を吊り上げ、鬼が哂う。

「他人に力を与えておいて、他力本願とは……なんたる軟弱ッ!
  消 え う せ ぃ ! 」

グシャ。
あっけない音と共に、脳漿が飛び散る。鮮血が無人の観客席に降り注ぐ。
仮面と頭蓋骨がまとめて卵のように握りつぶされ、幻想上の白銀は、無人のテントの中、静かに崩れ落ちる。
刹那、世界が揺らぐ。幻影のサーカスが揺れる。
周囲を見回す勇次郎もろとも、全てが揺らぎ、掠れ、消えて、そして――


 ◇  ◆  ◇


……範馬勇次郎が顔を上げた時には、空は茜色に染まっていた。
うたた寝をしていたのだ、と気付いた彼は、軽く首を振って立ち上がる。

「……いけねェな。らしくもねェ夢見ちまった」
350Classical名無しさん:07/12/25 00:13 ID:cgHgh.EE
支援

呟きながら、左手を開き、そして閉じる。
まだ完全とは言えないが、動く。少なくとも食事の時よりは格段に動くようになっている。
それを確認し、満足げにニヤリと笑う。

食事の後の、僅かな午睡――。
この殺し合いのゲームが始まって以来、実は勇次郎はロクに休みを取っていない。
常人離れした体力と気力を考えれば、1日や2日、飲まず喰わず眠らずで動き回ることは可能だったはずだ。
休んでいるヒマがあったら戦いたい、と、積極的に動き回っているはずだ。
それでも彼が、いや彼の肉体がここで『睡眠』を選んだのは、その身に受けた負傷のため。

どんな野生動物でも、その身に傷を負えば休息を図る。じっとして、眠って、回復を図る。
身体を動かすエネルギーを全て傷口の再生に回し、可能な限り短い時間での復帰を図る。
範馬勇次郎がここで僅かな時間とはいえ眠りを取ったのは、彼の類稀なる『野生』の一環だった。
常人ならば、休息を取る必要を理性で理解したところで、こんな無防備な場所で眠れるものではない。
自分の強さを確信していればこそ。異常があればすぐに飛び起きられる、頭抜けたカンのよさがあればこそ。

いくら『生命の水』が含まれた鳴海の血を飲んでいても。いくら腕の切り口が鏡のように綺麗だったとしても。
腕1本繋げるのは、容易なことではない。身体への負担は相当なものだ。
このタイミングで食事を取り、このタイミングで睡眠を取った勇次郎の判断は、まさに最適だった。
理屈ではなく、彼の野生と直感がその答えを導き出したのだ。

「さて……日が暮れたら、またコイツの出番だ……!」

勇次郎は荷物を担ぎなおし、これまでに会った強者たちを思い返す。
闘争を好む者たちは、花火が見えればまたきっと向こうから来てくれるだろう。
闘争を好まぬ者たちの中にも、花火と勇次郎の関係を知っている者がいる。仲間も増やしているかもしれない。
力に自信があれば、あえて勇次郎を倒すべく向かってきてくれるだろう。弱き者を悪鬼の牙から守るために。
どちらにしても、また極上の闘いを楽しむことが出来る。
夕陽に紅く染まった街を歩き出しながら、勇次郎は乱暴に頭を掻く。

「問題はどこで打ち上げるか。どこを戦いの場に選ぶか、だな。……ん?
 ケッ、白髪かよ。俺もヤキが回ったなァ。年は取りたくねェもんだ」

ピッ。
前髪に混じって1本だけ、たった1本だけ生えていた銀髪は無造作に引き抜かれて捨てられて。
それっきり、範馬勇次郎はそのことを忘れた。
自動人形(オートマータ)のことなど、思い出しもしなかった。

地上最強の生物を縛れる鎖など、この世には存在しない。
それがたとえ、錬金術最高の叡智と技術と、無数の涙と哀しみで織り成されていたとしても、だ――!




【D-3東部/1日目 夕方】
【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】
[状態]闘争に餓えている 左腕回復中(一度切断されたが、生命の水の効果により自己治癒中)
[装備]ライター
[道具]支給品一式、打ち上げ花火2発
[思考] 基本:闘争を楽しみつつ優勝し主催者を殺す
1:戦うに値する参加者を捜す
2:日が暮れてから次の花火を打ち上げる。打ち上げるのにいい場所を探す。
3:首輪を外したい
[備考]
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。
※ラオウ・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました。
※生命の水(アクア・ウィタエ)を摂取しました。少なくとも、自動人形への強い憎しみなどは今は無いようです。
 身体にどれ程の影響を与えるかは後の書き手さんに任せます。
353Classical名無しさん:07/12/25 00:15 ID:ISrUC8sQ
              
354 ◆6YD2p5BHYs :07/12/25 00:15 ID:9dNHY6U.
投下完了。支援感謝です。
355Classical名無しさん:07/12/25 00:20 ID:ISrUC8sQ
GJ!
さすが勇次郎!! 生命の水(アクア・ウィタエ)の影響なんて目じゃねえ!!
そこに痺れる! 憧れるぅ!!
勇次郎のキャラを十二分に堪能させてもらいました。
それと筆が本当に早いww
356Classical名無しさん:07/12/25 00:25 ID:aV8Ks2Fo
相手が悪かった感じだなー。
『人間だったことがある』アーカードやDIO様なら、幾分かは影響があったかもしれないが、
勇次郎は生まれたときから既に最強の生き物だものな。
他人のために動く、という概念すら無かったと言うか。
357Classical名無しさん:07/12/25 00:25 ID:wpapKdFc
>>354
GJGJゥ!
ゲェ――ッ! しろがねを全否定しやがったァ――ッ!!
さすが勇次郎。
チャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ
358Classical名無しさん:07/12/25 00:36 ID:yuwXuzc2
投下乙
勇次郎つえええ
白銀の意志をも跳ねのける!
トンデモなキャラだが勇次郎らしくてよかった
359Classical名無しさん:07/12/25 00:51 ID:EL6oiEY6
ふざけんなと怒鳴りつけたくなる展開を平然と納得させる勇次郎、そしてをそれを納得させる描写
素晴らしかったです、そして、叫ばせてください

勇次郎テラかっけええええええええええええええええ!!GJでした!
360Classical名無しさん:07/12/25 07:59 ID:GnuwlwPc
ところで……今更ですまないが「殺人鬼はひそかに笑う」で
美形は神楽に会った時、顔をはらしていたので「美形」と言われて通じるのか?という突っ込みが毒吐きにあったんだが……。
本人ではないが、自分も疑問に思ったんでここにカキコしとく。
361Classical名無しさん:07/12/25 09:19 ID:ISrUC8sQ
>>360
オーラで美形って言われたんだよ。

と、言われても不思議じゃないのが漫画版スクライド。
あと毒吐きの意見を転用ってのは考え物だと思う。
362 ◆L9juq0uMuo :07/12/25 11:27 ID:Sua8uB2c
>>360
確かに、神楽は美形とは判断していませんでしたね、夜になってしまいますが家に帰り次第、誤字と共に修正します。毒吐きの方共々ご指摘感謝です
363 ◆MANGA/k/d. :07/12/25 17:41 ID:CUm8moZE

 愚地独歩、加藤鳴海、三千院ナギを投下しますが、よろしいですね!
364夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 17:43 ID:CUm8moZE
 肌に、冷たい風がかかる。
 日が暮れ始め、次第に暗がりがその形を大きくしている。
 本来なら、学校帰りの子供達や、夕飯の買い物に行く主婦等で賑わっていたであろう、街中の大通り。
 だが。
 今、静まりかえり、生き物の気配すらないそこを動くのは、漆黒の、巨大な体躯をした馬と、そこに跨る2人の影のみ。
 本来ならば世紀末覇者を名乗る"拳王"ラオウが跨りし愛馬、黒王号に乗った愚地独歩と、加藤鳴海だ。
 武神と称される空手家、独歩であるが、乗馬の経験はない。
 しかしこの黒王号は、まるで乗り手の意志が分かるかのように、ちょっとした仕草に応じて、進路を選び進んでくれる。
 太ももの締めは、三戦の応用ですぐに分かった。手綱の引き具合にも慣れてきている。
 流石に、疾走とまでは行かないが、だく足で2人の男を運ぶのには、不自由はない。
 蹄の音をさせながら、大きく黒い影が、無人の街を駆けている。 

 かすかに、嗚咽が聞こえる。
 加藤鳴海のものだ。
 先ほどまで、半死半生と思えた負傷だったが、目に見える傷の多くは治りかけている。
 黒王号である程度の距離を引き離し、ひとまずの応急手当をしたときにもそれは分かった。
 信じられぬほどの治癒力だ。
 鳴海自身の言う、しろがねの血故なのだろうか。
 しかし。
 むしろ肉体よりも、精神のダメージの方が大きいのかもしれない。
 範馬勇次郎の暴挙から、少年 ――― 才賀勝 ――― を守れなかったことが、相当堪えているのだろう。
 独歩も同様である。
 が、たしかこの加藤鳴海と才賀勝は、ついさっきが初対面だったはずだ。
 いや、違う。
 勝は、鳴海を知っているが、鳴海は勝を知らない…。たしか、そんな話だった気がする。
 落ち着いて、詳しい話をしたわけではないが、先ほどのしろがね ――― エレオノールとの闘い、やりとりの中にも、違
和感がある。
365夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 17:44 ID:CUm8moZE
 かみ合ってない。
 そう、様々な事がかみ合っていない。
 勇次郎 ―――。
 愚地独歩は考える。
 かつて二度闘い、二度敗れた相手。
 一度は、不意打ち。
 自らの起こした空手道神心会の本部ビル完成を祝う、内輪の集まりでの事だ。

 『愚地独歩だな』
 声がした。
 背後から聞こえたその響きに、反応するのがコンマ2秒。
 ザク。
 熱い。
 視界に、赤い膜。
 よろめいた。
 『なッ』 『館長ォ』
 同席していた門下生の声。
 襲われている。
 『何者だキサマッッッ』
 構え ―――
 ゴッ
 右顎に
 身体が
 衝撃で
 意識が
 飛んだ。
 混濁する視界に映りこむ。
 黒い影が、猛獣の笑みが、ざわめきが ―――。
 『これが 「神の拳」 とまで言われる男とはな…』
 『ガッカリさせやがる…………』
366夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 17:46 ID:CUm8moZE
 
 酒が、反応をコンマ一秒遅らせた…。

 後に、その息子、刃牙にそう述懐していた。
 事実だが…言い訳にはならない。
 いや、何であろうと、武道家に言い訳など無い。
 言い訳が出来ると言うことは、負けて、生きながらえたと言うことだ。
 ただ死ななかったと言うだけだ。
 ならば。
 やはり、武道家に言い訳などはない。
 
 地下闘技場で、リベンジマッチの機会を得る。
 が。
 二度、負けた。
 そして、

 「死んだンだよ。一度な…」

 心臓の真上に、勇次郎の打撃を受けた愚地独歩は、心停止状態になる。
 そこに、鎬紅葉という名医がいなければ、独歩の人生はそこで終わっていた。
 あばらの下から直接手を突き入れての心臓マッサージという荒技で、蘇生には成功し。
 愚地独歩は再度、生きながらえた。
 右目と引き替えに。

 曰く、地上最強の生物。
 曰く、ワン・マン・アーミー。
 常に成長を続け、飽くなき闘争心と、歴史上のどんな偉人にも匹敵するエゴを持つ男―――。
367夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 17:47 ID:CUm8moZE

 あれが…勇次郎か?
 そこにも、かみ合わないものを感じる。
 確かに、範馬勇次郎という男に、社会性だとか倫理観だとか言うモノを求めるのはナンセンスだ。
 彼は、何にも縛られない。
 人であろう、法であろう、道義情愛美徳…人類が生み出し、獲得してきたあらゆる価値観の全てを、自らのエゴイズムで
粉砕し得る男だ。
 範馬勇次郎が 「破壊」 してきた武道家、格闘家は枚挙に厭わない。
 勿論、再起不能となった者も居る。
 断片的に聞いた情報としても、かつてベトナム戦争に傭兵として従軍し、その戦闘技術に磨きをかけてきたと聞くし (彼にとって戦場とは、際限なく楽しみを得られる遊技場であり、又手っ取り早く実践経験を得られる道場でもある)、刃
牙の母親、朱沢江珠の死や、その元夫である朱沢グループ会長の死にも関わっているのではないかという話もある。
 だが。
 独歩は思い出す。
 年端もいかぬ少年。
 才賀勝を撲殺し。
 嬉々としてその死体の上に立つ姿。
 その死体を弄び、鳴海にその飛沫を浴びせる、血まみれた姿 ―――。
 勇次郎 ――― それじゃあまるでよ。
 ただの殺人狂じゃあねぇか…。
 
 自分は武道家だ。
 常に、死線の上を歩んでいる。
 自分が誰かと闘い、勝ち、あるいは敗れ…。
 目を抉られ、骨を折られ、四肢を失い、あるいは、死ぬ。
 殺すことを目的としては居ないし、死ぬつもりで居ることもない。
 しかし、誰かを殺すことも、自分が死ぬことも、ある。
 武道家だからだ。
 そうやって生きるのが ――― そうやって生きるしか無いのが、武道家だ。
 そのどうしようもない本性を、なんとか人としておく為のモノ ――― 道 ――― それが、"武道"だ。
368夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 17:48 ID:CUm8moZE
 武道は人格形成の役に立つ…。
 等と、たしかにそううそぶく。
 しかし、逆だ。
 俺や…ほとんどの武道家ってぇヤツは。
 年がら年中、人をぶったたき、打ちのめし、破壊する事を考え、旨い飯を食うことより、いい女抱くことよりも優先して
…求めている。
 そんな連中ばかりだ。
 だから、武道という規律、規範で、人に留めておく必要がある。
 武道があって、初めて人でいれる。
 そうでなければ。
 闘うことと、ただ殺しをすることに、違いは無くなる。
 ただ殺すことを。
 弱き者…手当たり次第に女、子供を殺すこと。
 それらを求めるのならば、武道など必要ない。
 本当に殺そうと思えば、鉛筆一本で人など殺せるのだ。
 小学生程度の腕力でもってしても。

 勇次郎は違う。
 それが、明確に分かった。
 アレが…子供の血を浴びて喜悦するあの姿が…勇次郎の本性だというのなら―――。
 愚地独歩の知らぬ、戦場での勇次郎の姿なのならば…。
 
 「止めるしか…ねぇよなぁ…」

 それが出来る…とは、言い切れない。
 だが、それをするのは、自分か…あるいは、刃牙の役目だろう。
 そう思う。
369Classical名無しさん:07/12/25 18:08 ID:yuwXuzc2
 
370夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:13 ID:CUm8moZE

 視線を後ろにやり、半ば茫然自失の加藤鳴海を見やる。
 不意に、不肖の弟子、加藤清澄のことが頭をよぎった。
 喧嘩空手を称し、いったんは神心会を飛び出した跳ねっ返り者。
 門下生の中で飛び抜けて優れた資質があるというわけでもないが、その気性や、あるいは勝利への執念に、まるで若い頃
の自分を見るようで、なんとはなしに目をかけていた。
 鳴海とは単に、名字が同じというだけでしかない。
 それだけでしかないが、独歩にとってこの若い拳法家、加藤鳴海とその不出来な弟子が重なって見えてくる。
 その、加藤清澄が殺されたとしたら…。
 例えば、死刑判決を受ける様な殺人狂が、自らに連なる弟子、縁者を無惨にも殺したとしたら。
 武道家である。
 闘いの中で死ぬこともある。
 だが。
 殺すこと自体を楽しみとする殺人狂に殺されたとしたら?
 如何なる時、如何なる場所であれ、武道家にとって不覚を取るのは負けだ。
 しかし。
 だからといって、大人しく引き下がるわけにはいかない。
 たとえ門下100万人を総動員してでも、犯人を倒しにかかったかもしれない。
 
 この殺し合いの場に連れてこられて、独歩は先ほど初めて 「闘い」 をして、初めて 「死」を目にした。

 オーガよ。
 アレがお前の本性だというならば。
 そしてアレがお前の、「戦場」 での振る舞いだというならば ―――。
 確かに、俺ぃらにゃあ、覚悟が足りてねぇのかもしれねぇ。
 ここが既に 「戦場」 だという覚悟が足りていなかったのかもしれねぇ。
 けどなぁ…。
 俺ァやっぱ。
 「空手家」だぜェ…。
 
     ◆ ◆ ◆
371夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:15 ID:CUm8moZE

 「御老公…?」
 加藤鳴海が、そう繰り返した。
 「ああ。
 徳川光成…。あの、時代劇でも有名な水戸黄門サンの子孫で、日本有数の財閥会長…。
 俺はまぁ、御老公と呼んでんだがな。
 つきあいは…長ぇさ」
 独歩の話す内容は、鳴海にとってかなりの混乱をもたらすものだった。
 秘密裏に地下闘技場を取り仕切る、子供のように無邪気な老人、徳川光成。
 地上最強の生物、範馬勇次郎とその息子、刃牙の確執。
 神心会の長としての刃牙との関わりと、そして勇次郎との闘い、二度の敗北…。
 先ほど、逆十字号に乗っているときに話した内容とかぶる部分もあったが、この狂気の沙汰の開催を告げた老人、光成に
ついては初耳だ。
 光成。
 あの、小さな老人。
 少し前までの鳴海なら、その名を聞いただけでも、全身の毛が逆立つほどの怒りに身を震わせていたかもしれない。
 だが今は。
 消耗が激しすぎた。
 身体的なものだけではない。
 いや、身体的な消耗というのならば、しろがねの血の効果で回復してきている。
 精神的な消耗 ―――。
 サーカスの呼び込みをしているときに出会い、そのまま遺産分配に関わるもめ事から起きた、人形を操る殺し屋達との争
いを経て関わり合いになった少年、才賀勝 ―――。
 記憶をなくし、しろがねとして右手を機械に変えながらも復活し、自動人形との闘いの中に身を投じ ―――。
 そして再び、この狂気の殺人ゲームの中で再開し ―――。
 ようやく取り戻した記憶の中にある笑顔が…目の前で砕かれた ―――。
 そう、文字通りに砕かれた ―――。
 そのことでの消耗。
372夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:16 ID:CUm8moZE
 それらが全て、頭の中を渦巻いていて、濁っている。
 まるで心と体、感情と思考の間に薄膜を貼られたような非現実感がある。
 だから、光成の名が独歩の口から出たときも。
 又、光成との旧知の仲であることを語られたときにも。
 鳴海の中にその事実が鋭く、深くは入ってこなかった。
 
 「やっぱりな、かみ合わねぇンだよ」
 独歩はそう続ける。
 「刃牙の話…さっきしたときもそうだったがよ。
 俺ぃらにゃあ、別人としか思えねぇ。
 別に俺ぁ、刃牙の全てを知っているたぁ言わねぇが…それでも、ヤツが進んで殺し合いなんかに乗るってなぁ…な。
 しっくりこねぇんだよ。
 あいつはあの勇次郎を、止める事を目標にしていたんだからな。
 ここで殺し合いなんかに乗ったら、止めるべき相手と同じになっちまう」
 
 勇次郎…。鳴海の目の前で、勝を惨殺したあの男…。
 類い希なる格闘センスと、凶悪なまでの身体能力を持つあの男。
 刃牙が、その息子だと言われるのは、説得力がある。
 その双方と拳を交えた鳴海だからこそ、それは分かる。
 そしてその勇次郎を止めようとしていたという話は…分からないでもない。
 勿論、鳴海の知っている刃牙は、数刻前に死闘を演じた刃牙であり、凶悪な殺人者そのものだ。
 しかし、独歩の話の中に出てくる刃牙は…それとは全く違う顔をしている。
 思い当たる節もある。
 ――― DIO様と約束したんだ。俺に力をやるって親父を殺すための力をやるって。
 親父を殺す力。
 たしかに、刃牙はそう言っていた。
 止める、という事と、殺す、という事は違う。
 違うが、共通してはいる。
373夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:17 ID:CUm8moZE
 
 「御老公もさ。
 あの人ぁ…ただ純粋に 「強い者同士が闘う」のが好きなんだよ。
 こんな…ただ人が人をなぶり、殺し合う様なモン…御老公の発想じゃあねぇ」
 
 独歩はそう断言する。
 
 「かみ合わねぇんだよな…」

 再び独歩はその言葉を口にする。
 記憶を無くしていた鳴海。
 鳴海のことを覚えていた勝。
 勝のことも、鳴海のことも知らない ――― 道化のメイクをし、まるで出会ったばかりの頃のような ――― しろがね…
エレオノール。
 そうだ。
 かみ合わないことだらけだ。

 「どう…してだ…?」
 誰に問うとでもなく、鳴海はそうつぶやいた。
 「分かんねぇが…」
 独歩はそれを自分への問いと受け取ったのか、そう返す。
 「俺ぃらにゃあ、"推理" だとか "考察" だとかッてなぁガラじゃあねぇしよ。
 “何故” ってな事ァ、もっと分からねぇ。
 けどよ。
 どうも俺には、御老公の後ろに誰かいるんじゃねぇかッてぇ気がするぜ」
 「あの、光成って爺さんが主催者じゃない…?」
374夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:18 ID:CUm8moZE
 「『わしも知らされておらんかった』 『ワシの命がかかってる』
 この言葉が、ズット気にかかっててな。
 そもそも、御老公の趣向たぁ思えねぇし、大財閥の財力があるたぁ言え、あの、紙っぺらからばかでかいモノが出てくる
仕掛けだとか、街一つ丸々会場にしちまうだとか…この、厄介な首輪だとか…な。
 全部、御老公一人で出来る事たぁ思えねぇんだよな。
 だからよ。
 誰かが、無理矢理御老公にやらせている…。
 そう考えた方が、しっくりくるンだよなぁ。俺には」
 そう言って、独歩は自分のその言葉に納得したかのように、顎をさする。
 「刃牙の事ァ…」
 先ほどより幾分小さく、そしてこれこそ自分に言い聞かせるかのように続けて、
 「DIOとかいう野郎に会ってみねぇ事にゃ、ワカらねぇだろうけどよ…」
 そう言った。
 鳴海は独歩に抱えられるようにして、小さくうずくまる少女 ――― 三千院ナギを見やった。

     ◆ ◆ ◆

 血の匂いだ。
 むせかえるほどの、血の匂いだ。
 地面に咲いた、鮮血の華。
 赤黒く、さびた色。
 どろり。
 乾き始めた血の光沢が、傾き始めた日の光に照らされてぬらぬらと光る。
375夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:19 ID:CUm8moZE
 
 「刃牙…」
 黒王号から降り、その死体を確認した独歩が、そうつぶやいた。
 見覚えがある。
 その身体に、その傷に、見覚えがある。
 顔は分からない。
 顔があった場所に、顔だった物が、見て取れるだけだ。
 完全に、頭がつぶれていた。
 頭蓋が四散し、血だまりの中に散らばっている。

 勇次郎から逃れた後、黒王号に乗った独歩と鳴海は、一旦は南へと進んでいった。
 とは言え、そのまま南下してしまうと、当初の目的地からなお離れてしまう。
 喫茶店で集合する、という予定だったし、エレオノール…今は鳴海も思い出している、しろがねの事もある。
 鳴海自身はそれらの事を考えられる精神状態ではなかったが、既にある程度のことを聞いていた独歩が、当初の予定通り
に行くべきだと判断した。
 地図で言う、消防署に行く前で右手…西に進路を変え、そのままぐるっと回り込んで、C-2の禁止区域をギリギリで逸れ
つつ、話に聞いていた喫茶店の位置へと向かう。
 勇次郎の動向は気になった。
 危険な賭でもある。
 しかし、だからこそ喫茶店に行く必要があった。
 もし、勇次郎が先に喫茶店に行ってしまったら?
 鳴海や勝の話では、ここで集まる手はずになっている者達の中には、小さな少女も居たという。
 独歩はそのことを考える。
 勝を殺し、喜悦の表情を浮かべる勇次郎。
 殺し合いのゲームという場で解き放たれた勇次郎の狂気は、目にした全ての者を破壊せずにいられぬ、人ならぬモノ。
 今の独歩にとって、かつて知っている…そして闘った勇次郎と、今ここに居る勇次郎は、まるで別のモノだ。
 その少女と勇次郎を会わせてはならない。
 そう思う。
376夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:20 ID:CUm8moZE
 幸いにも、道中誰にも会うことはなかった。
 勝の死に強いショックを受けていた鳴海も、喫茶店の位置を確認する為のやりとりをしていく中で、次第に集中力を取り
戻し始めていた。
 道すがら、鳴海は自分が失っていた記憶を取り戻したこと、勝、しろがねとの関わり、そこで得た、「最高の笑顔」 の
事などを、言葉少なに独歩へと語った。
 語ることで、少しだけ落ち着きを取り戻してきているようだった。
 細かい路地を数度曲がり、目的地である喫茶店のある通りに出る。
 一見して、大きな破壊の痕跡が見て取れた。
 通りに面した建物のガラスが打ち破られ、辺りに四散している。
 地面自体も、まるで巨大なハンマーで打ち据えられたかのようなくぼみが出来ている。
 そのくぼみの中に、それはあった。
 史上最年少、17才の地下闘技場王者。
 範馬刃牙の骸だ。
 
 その数メートル先に、学生服姿の別の男が横たわっている。
 こちらも既に死んでいるのは明らかだった。
 長身で、偉丈夫な体躯は、鳴海にもひけはとらない。
 数刻前までは空条承太郎だったモノだ。
 相打ちか。
 鳴海はそう思った。
 独歩の言ったとおり、核鉄を刃牙に渡したことは致命的だったのだろう。
 回復した刃牙は、エレオノールから逃れ(…そのエレオノールが、何故勝、独歩達に襲いかかってきたのかは分からない
が)、喫茶店に先回りして、この場にいた青年と闘い、相打ちになった……。
 何もかもが、後手に回っている。
 「…俺が…」
 はき出すように、鳴海。
 「俺が…こいつを…」
377夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:21 ID:CUm8moZE
 刃牙を殺していれば…。
 核鉄を渡さないでいれば…。
 自分もエレオノールと共に向かっていれば…。
 空条承太郎は死なずに済んだかもしれない。
 「俺がこいつを…ッ」
 す、と。
 膝をつき、声なき声で慟哭する鳴海の前に、太い腕がかざされる。
 「鳴海よ」
 顔は向けず、表情も見せず。
 「そいつぁ、言いっこ無しだぜ…」
 独歩が言う。
 「たら、れば、は、無しだ」
 鳴海は気づく。
 独歩と刃牙は旧知の仲だ。
 多くは語っていないが、比較的親密な間柄だったようにも思う。
 確かに、鳴海が刃牙を殺していれば、空条承太郎は死なずに済んだかもしれない。
 だが、独歩の知る刃牙が、何故鳴海と闘った悪辣な殺人鬼となったのかは分からない。
 静かにたたずんでいるかに見える独歩の心中は、どれほどのものなのだろうか。
 割り切れないものだけが、そこに渦巻いている。
378夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:22 ID:CUm8moZE
 
 「神心会…100万人の長…」
 つぶやくように、あるいは謳うように、太い声がする。
 「虎殺し…武神…神の手…」
 鳴海は顔を上げ、声の主に目を注ぐ。
 「今…」
 呼。
 息が、吐きだされる。
 「全部捨てたぜ」
 拳。
 正拳一本突きを、空に放つ。
 鋭く。
 速く。
 まとわりつく空気そのものを絶つかのような、拳。
 「たった今から、俺ぃらあただの、“空手家・愚地独歩”だ」
 「50年間、空手に捧げ続けたこの拳」
 「そいつだけを持って」
 型。
 上段突き。
 前蹴り。
 裏拳。
 鳴海の前に向き直る。
 「先に進むぜ」
 風が、鳴海の頬をなでた。
379夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:23 ID:CUm8moZE

 喫茶店の周辺を調べて、数十メートル離れたところに呆然と歩いていた三千院ナギを見つけたのは、それからしばらくし
てだ。
 衣服も血にまみれ、見るからに凄惨な様子だった。
 目立った怪我はない。この血はおそらく、空条承太郎のものだろう。
 鳴海の姿を見ても、すぐに反応できぬほど憔悴している。
 ここに、勇次郎より…あるいはエレオノールや、他の “乗っている” 参加者より早く来る事が出来たのは幸運だった
と、独歩は思う。
 それほどまでに、無防備だったのだ。
 しばらくして、ポツリポツリと、事の経緯を語る。
 刃牙…短パン姿の男に襲われたこと。
 承太郎が応戦し、自分もスパイスガールのスタンドで加勢したこと。
 最期に、承太郎と刃牙が相打ちになり…死んだこと。
 そして、その後ハヤテが居なくなったこと…。
 ナギの話をまとめると、そういう事のようだった。

 「ハヤテが、居なくなってしまったのだ…」

 そうつぶやいたナギの姿が、夕陽の中ににじんで、そのまま消えてゆきそうに見えた。
 鳴海は、まだ治りきらぬ自らの怪我も顧みず、強く抱きしめた。
 再び、悪魔は慟哭する。
 声も出さずに、強く慟哭する。
 勝のため、そしてナギのため。
 この闘いの中で、無意味に失われた、全ての命のため ―――。

 荷物をまとめて、三人は黒王号に跨る。
 承太郎が回収したフェイスレスの首輪や、喫茶店の店内に置いてあった首輪探知機も持ってきた。
 ナギを独歩が抱えるようにし、その後ろに鳴海。
 これが普通の馬ならば、こんな乗り方が出来るわけはない。
 遠目にはまるで象と見間違えかねぬ巨躯を持つ黒王号だからこそ出来る事だ。
380夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:23 ID:CUm8moZE
 
 承太郎は死んだ。
 ハヤテは何処かへと走り去ってしまった。
 エレオノールは、わずかの間に心変わりをして、殺し合いに乗ってしまった。
 赤木とは別れたままだが、今どこにいるかは分からない。
 こなた、パピヨン、そして独歩が別れたシェリスは、北にいる。

 ここに、このまま居るのは拙い。
 出来るだけ早く離れるべきだろう。
 独歩はそう思う。
 手に持った、首輪探知機を見る。
 真ん中に4つ。
 自分たちだ。
 ほど近くに2つ。
 刃牙と、承太郎の死体のもの。
 東…おそらくは先ほど闘った場所に、動かないのが2つ。
 勝と…勇次郎だろう。
 南に、動いているのが1つ。
 これは、エレオノールだろうか…?
 鳴海に視線をやる。
 エレオノールは、今、ゲームに乗っている。
 しかし鳴海にとって、勝同様にかけがえのない存在の様だった。
 北か南。
 北に行き、近くにいる勇次郎の脅威をこなたやパピヨン達に伝えること。
 南に行き、鳴海と共にエレオノールを説得すること。
 考えられる選択肢は、大きく分ければ二つになる…が。
 再び独歩は、自分の前に座らせた少女 ――― あまりに小さく、か細く、今にも壊れてしまいそうな少女 ――― 三千院
ナギを見る。
 この少女は…守らなければならない。
 そう思う。
381夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:24 ID:CUm8moZE

 ふぅ、と大きく息を吐く。
 「鳴海よぅ…」
 いずれ、誰かに話しておくべきだと思っていた事を、独歩は切り出す。
 「…ああ?」
 「どーにも、かみ合わねぇんだよなァ…」
 「…どういう事だい、独歩さん…?」
 再び、息をつく。
 「うん…。まぁ、御老公のことなんだがよ…」

 紫色に染まる空を背に、人の居ない伽藍堂の町並みの中を、2人の男と、1人の少女を乗せた黒馬が駆ける。
 さらなる漆黒の闇、さらなる混沌の渦に向かって。

382夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:25 ID:CUm8moZE

【D-3:喫茶店付近/1日目 夕方】
【愚地独歩@グラップラー刃牙】
[状態]:健康
[装備]:黒王号@北斗の拳、キツめのスーツ
[道具]:支給品一式×3(独歩、勝、承太郎)、不明@からくりサーカス、書き込んだ名簿、携帯電話(電話帳機能にアミバの番号あり) 首輪探知機
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない。
1:鳴海と行動を共にし、ナギを保護する。
2:基本姿勢を、闘うことより他の参加者 (女、子供、弱者) を守ることを優先する事に変更。
3:シェリス、パピヨン、こなた等や、他のゲームに乗っていない参加者に、勇次郎の事を知らせておきたい。
3:その他、DIO、アミバ・ラオウ・ジグマール・平次(名前は知らない)、タバサ(名前は知らない、女なので戦わない)、エレオノール等、危険/ゲームに乗っていると思われる人物に注意。
4:乗っていない人間に、ケンシロウ、及び上記の人間の情報を伝える。
5:赤木と合流するために、鳴海と共に8時に学校へ行くのもアリだとは思っている。
6:余裕があれば、シェリスとともに劉鳳を探してもいいかもしれない。
7:勇次郎を倒す確実な機会、方法を慎重に選ぶ。
8:可能なら、光成と会って話をしたい。
[備考]
※黒王号に乗っている場合、移動速度は徒歩より速いです。
※パピヨン・勝・こなた・鳴海と情報交換をしました。
※不明@からくりサーカス
 『自動人形』の文字のみ確認できます。
 中身は不明ですが、自立行動可能かつ戦闘可能な『参加者になり得るもの』は入っていません。
※刃牙、光成の変貌に疑問を感じています。
※実際の次の進路は、次の書き手さんにお任せします。
 
383夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:26 ID:CUm8moZE
 
【D-3北部:喫茶店付近/1日目 夕方】
【加藤鳴海@からくりサーカス】
[状態]:胸骨にひび 肋骨2本骨折 左耳の鼓膜破裂 右手首欠損 全身に強度の打撲 出血 疲労 自己治癒中
[装備]:聖ジョルジュの剣@からくりサーカス
[道具]:支給品一式×2(刃牙、鳴海)  輸血パック(AB型)@ヘルシング グリース缶@グラップラー刃牙 道化のマスク@からくりサーカス
[思考]
基本:バトルロワイアルの破壊、誰かが襲われていたら助ける。赤木がいう完璧な勝利を目指す。
1:ひとまずは独歩と行動を共にし、ナギを保護する。
2:エレオノールと再開し、話をしたい。
3:誰かが襲われていたら救出し、保護する。
4:赤木との約束の為に、8時に学校へ行く。その旨をパピヨン等にも伝える。
5:いつか必ずDIOと勇次郎をぶっ潰す。
6:殺し合いに乗っている奴を成敗する。
7:DIOの情報を集める。
[備考]
※聖ジョルジュの剣は鳴海の左腕に最初からついていますので支給品ではありません
※参戦時期は本編18巻のサハラ編第17幕「休憩」後です
※勝とエレオノールの記憶を取り戻しました。エレオノールとフランシーヌ人形が酷似していることについては、考えていません。
※勇次郎との戦闘での負傷はある程度回復していますが、戦闘には支障があります。
384夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:26 ID:CUm8moZE

【D-3北部:喫茶店付近/1日目 夕方】
【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】
[状態]全身に打撲、右頬に中程度のダメージ、首に痣あり、精神疲労(大) 、茫然自失
[装備]スパイスガール@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]無し
[思考・状況]
基本:殺し合いはしない
1:ジョジョ……ハヤテ……。
2:ハヤテ、マリア、ヒナギク、ジョセフと合流する。
3:カズキの恋人という『斗貴子』とやらに会って、カズキの死を伝える。
4:独歩、鳴海のことは、信頼していると言うよりは、警戒する気力がない状態。
参戦時期:原作6巻終了後
[備考]
※スパイスガールが出せるかは不明です。
※ハヤテの変貌に恐怖を感じています。またハヤテの事が気懸かりになっています。
※ヒナギクが死んだ事に当然確信はありません。
※独歩、鳴海に対しては、「ハヤテが倒れた刃牙をピーキーガリバーで粉砕していたこと」は伝えていません。
 ハヤテが死んでいる刃牙にそうしていたのか、まだ息のあった刃牙にとどめを刺していたのかについて、どう捉えているのかは分かりません。
※独歩が鳴海に話していた、光成に関しての違和感は、耳には入っていますが、意識には入っていません。
385夕闇に悪魔、慟哭す ◆MANGA/k/d. :07/12/25 18:29 ID:CUm8moZE

 以上。
 誤記誤変換、ミス、矛盾、うそ、おおげさ、紛らわしい等のご意見苦情など御座いましたら、
ご指摘指導ご鞭撻、JAROへのご報告等よろしくお願いしましたか? [既におかしすぎる]
386Classical名無しさん:07/12/25 18:34 ID:EL6oiEY6
支援
387Classical名無しさん:07/12/25 18:34 ID:GnuwlwPc
投下乙!
嘘だろ……独歩がカッコEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!
ナギを抱きしめる鳴海兄ちゃんのシーンや、独歩の考察にも感心させられました。
なんか最近軒並みレベルが跳ね上がってるぜ……燃えてきたあああッ!

>>361
すまんね。
毒吐きが別の話題で沸騰中だったし、軽い修正で済むと思ったからあえて書き込んじゃったよ。

>>362
乙です。頑張って下さい。
388Classical名無しさん:07/12/25 18:34 ID:yuwXuzc2
投下乙
オロチいいキャラしてるちょっと前までお色気担当と言われてたのに
このチーム鳴海とナギがあやういな。戦力が不安だがこれからがんばってほしいチームだ
389Classical名無しさん:07/12/25 18:51 ID:EL6oiEY6
なんだ! なんなんだ独歩! ここにてきて独歩の株が急上昇おおおおおおおおおおおおおお!!
前回といい今回といい渋すぎるぜ独歩!!
描写も細かく、思考も正確、とても独歩らしい素晴らしい話でした!GJ!
390 ◆6YD2p5BHYs :07/12/25 19:27 ID:9dNHY6U.
投下乙。
確かに……独歩なら気付けますね。
ドッポだからこその魅力が溢れんばかりで、凄いです。GJ。


それから、昨夜投下した勇次郎の話……
いくつか選択肢は考えてますが、正式に意見が出てからにします。
正直、こちらから言い出すべき段階かどうか判断に迷うので……。
391Classical名無しさん:07/12/25 19:34 ID:4XzmWapc
>>385
独歩が一体どんだけカッコいいんだよオイ・・・。
惚れてしまいそうだぜw
空手家、愚地独歩の独白、堪能させていただきました。
作品全体から伝わってくる悲しみの雰囲気もいいし・・・。

こりゃすげえ作品だ。GJ!!
392Classical名無しさん:07/12/25 20:00 ID:2kH4mFes
バキキャラが別世界なのに原作との違和感無しで感動した、独歩は菩薩拳を持っているのかいないのか
とにもかくにもGJでした
393Classical名無しさん:07/12/25 20:13 ID:n9shbXxA
>繋がれざる鬼
投下乙! ちゅーか、やっぱり、こいつが一番自由というか我侭というか……
相手が悪すぎたな白銀も……

ちなみに、パイ・インではなくバイ・インだと思われ。

>夕闇に悪魔、慟哭す
独歩かっけーよ。ってか、書き手さんのバキに対する愛情がヒシヒシと感じられた……
しかし、この格好いい独歩、悪い方向に行きそうに見えるのは俺だけだろうか。
ともかくもGJだぜ
394 ◆6YD2p5BHYs :07/12/25 20:30 ID:9dNHY6U.
>>393
あっ。確かにそうです。
何で間違えたかな……指摘感謝です。
395Classical名無しさん:07/12/26 01:43 ID:lDqEAAFU
考えるのは仕事じゃないといいながら、しっかり考える独歩が渋い!
あと、3行状態表の更新もハエエwいつもGJ!!
396死亡者名鑑の守人:07/12/26 20:08 ID:v6sENDfo
3行状態表の更新が激しいので一旦161話verで状態を保存して状態表2を作りました
以後は状態表の1を更新してもらえるとありがたいです
397Classical名無しさん:07/12/26 20:18 ID:XOWCHRZk
>>396
乙っす。
三行状態表は毎度笑えるから困るw
398 ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:34 ID:KSfTiMFM
皆さん筆が早すぎですよ……。
俺も頑張らないとw

という事でロリカード、三村投下します。
399三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:36 ID:KSfTiMFM
「さて、これからどうするか」
乗用車の運転席に腰を下ろしながら一人の青年がそう呟く。
青年の名は三村信史。また“ザ・サードマン”という二つ名を持つ青年でもある。
金の色を帯びた短髪を逆立たせ、中学生にしては引き締まった身体を学生服で包んだ三村の表情は重い。
数時間の仮眠をとったお陰で、完全にとはいかないが、疲労が取れたにも関わらず。
それもそのはず、三村には最終的にやらなければならないことがあまりにも多いからだ。
「かがみの事について俺にはもうやれる事はない、後は出会った参加者に直接警戒を促せばいい。それよりも……」
つい先刻、地図に記入されているめぼしい場所には、もうかがみに対しての警戒のメッセージを残している。
現時点の自分の持ちうる手段では最善策ともいえる手段だ。
ならば自分が今行うべき事は他の行動を起こす事だと三村は判断を下した。
「この首輪の謎を解く、携帯を手に入れる、そしてあのジョジョのような……仲間を見つける事か」
数時間前までの同行者、ジョセフ・ジョースターの名を口に出した時、三村の表情に一段と曇りが浮き出る。
だが、いつまでも死人の事を女々しく考えるわけにはいかない。
そんな事はこのクソったれのプログラムをブチ壊してから考えても遅くはないはずだ。
そう考え三村は目の前に存在するハンドルに両手を掛ける。
「やることが多すぎるな……だが、ここで何もしないわけにはいかねぇ。
そうさ。ここで何もやらずに只、隠れている事なんてもっての他だ」
いっそ今まで居た民家の中で隠れ続けるというのはどうか?という考えも浮かんだ事には浮かんだが
三村は頭を左右に振って否定していた。
ならば自分がやるべき事の中で最もやるべき事はなにか?
信頼すべき仲間をたった一人の少女によって無残にも失くしたこの状況の中で何をするべきなのか?
電気信号が走り、その答えを見つけるべく三村の頭脳が回転する。
そう。極めてクールにこれからやるべき事を進めていくためにも。
400三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:37 ID:KSfTiMFM
「だったらまずは仲間を集めるとするか。ならどの方向に向かうか……ん? あれは?」
そんな時、三村は此方に向かってくる物体をフロントガラス越しに偶然にも見つける。
その物体は、三村が乗っている常用車ではなく、スクーターのようなものである事が判別出来る程、距離は近い。
どうやら思考に気を取られすぎ、不用意にもかなり接近を許していたようだ。
その事を悔やみながらも三村は接触を試みようと一応デイパックを肩に掛け、運転席から腰を上げ、その物体に近寄る。
勿論万が一有無をいわさずに襲われる事を考えて、クレイジーダイヤモンドをいつでも出せるように身構えて。

◇  ◆  ◇

万屋の店長、坂田銀時が愛用する原チャリ。まぁ平たく言えばスクーターであるそれの座席に腰を下ろし、
長い漆黒の髪を靡かせた少女が一人。
年齢は十もいくかどうかはわからない程幼く、愛くるしいその顔はきっと幼児愛好者でなくても将来に期待してしまうだろう。
そう。彼女の本性を知る事がなければ。
「遅いな。まったくもって遅すぎる」
姿形など意味を持たない不死の血族“吸血鬼”であるアーカードがそう口を開く。
その表情にはハッキリと不快感が読み取れる程、歪みが生じている。
原因はアーカードが今現在、運転している原チャリの速度の遅さによるものだ。
別に原チャリがそこまで遅いというわけではなく、速度を最高時速で走らせているためそれなりの速度は出ているのにも関わらずに。
だがアーカードはその遅さをとてつもなく不満に思う。
何故ならアーカードは吸血鬼になる前、いや遥か遠い過去に人間としての生を受けてから原チャリには乗った事がなかったからだ。
まぁ人間の時は一国の王、吸血鬼である現在は王宮国立騎士団、通称“ヘルシング機関”にゴミ処理係として所属するアーカード。
そんなアーカードが原チャリに乗って、愛用の銃・ジャッカルの鉛弾をブッ放し、笑いながら闘う姿はあまり想像したくないものだ。
401三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:39 ID:KSfTiMFM
「これでは意味がない。これを使わずに走った方が速いかもしれない。
そんな事では何も意味を為さないぞ」
どう考えてもあなたの足の速さが速すぎるんですよ!
だいたいそんな一端のグータラ人の銀さんの原チャリにそこまでハイスペックを期待すんじゃねぇよォォォォォ!
と眼鏡をかけた少年がこの場に居たらそう突っ込んでくれるかもしれない。
それほどまでにも理不尽な不平をアーカードはぼやく。
勿論、依然座席にチョコンと座り、小さな体躯で運転し続けながら。
「ん?あれは?……なるほど、いいものだな」
そんな事を考えながら運転していると、アーカードの視界に一台の常用車と三村信史の姿が入る。
見たところ何も能力がなさそうな青年。
そう。先程闘ったキャプテン・ブラボー、劉鳳、アミバのような実力者とはとても思えない三村に
アーカードは落胆の意志を見せる。
それでも三村の横にある、常用車は今のアーカードにとって魅力的なものだった。
この闘争を楽しむためには、一秒でも早く己の移動速度は速い方がいいからだ。
あの常用車はどう考えても、この奇妙で不格好な文字が描かれた乗物よりは有益だろう。
そう考えアーカードは三村の常用車を奪い取るべく、行動を起こす。
「あ」
腰を上げ、デイパックを担ぎ、瞬時に原チャリから飛び降りるアーカード。
華麗ともいえるその身のこなしで地に着地したアーカードはあんぐりと口を開けた。
彼女の視線の先にはまるで大いなる敵に、捨て身の特攻をしかけようといわんばかりの勢いで原チャリが、
最高時速で爆走しているその勇姿が写っている。
更にその原チャリの栄光のロードの先にはアーカードが目を付けた、愛しの常用車が存在している。
そう。彼女はブレーキも掛けずに飛び出していた。
当然、原チャリは止まる気配を見せるはずもなく、一直線に爆走し続ける。
「なんだ? 自動停止機能すらないのか? どうしようもなく使えんな」
事の張本人、アーカードには全く悪びれた様子はなかった。
そりゃあもう、逆に清清しいくらいまでに。
402三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:40 ID:KSfTiMFM
「何ッ! なんてクレイジーなヤツだ!」
その状況に驚いたのはアーカードだけでなく、当然三村も相応に驚いていた。
どう考えても小学生くらいの少女が原チャリを運転していた事にも驚いていたが、まさか原チャリをそのままぶつけてくるとは思わなかったからだ。
咄嗟に危険を回避するために三村は横方向に飛びのく。
「クレイジーダイヤモンド!」
原チャリと常用車がぶつかる事により、生み出されるであろう車体の破片から身を守るため飛びのく。
三村がクレイジーダイヤモンドを発現した瞬間。
三村はアーカードの自分を見る眼の色が変わった事に気付く事は出来なかった。
遂に原チャリと常用車がぶつかり、派手な轟音が周囲に響き渡る。
だが三村にはその二つの乗物の破壊状況を確認する時間など存在しない。
降りかかる破片を三村はクレイジーダイヤモンドの両腕で器用に振り払う。
近接パワー型のスタンドであるクレイジーダイヤモンドを使えばこのような事は造作でもない。
崩す事を余儀なくされた体制を戻し、三村はその視線を飛ばす。
「なんのつもりだお嬢ちゃん……?」
未だ自分の視線の先に居るアーカードの、その幼い姿に対して信じられないような表情を三村は浮かべる。
既に一見普通の女子高生に見えたかがみですら暴走するこのプログラム。
どうしようもなく信じられないが、目の前のアーカードが危険人物である可能性を三村は考えてしまう。
「五秒以内に何処かへ行ってくれ。俺は君のような小さな女の子には興味はないんだ。
もし五秒以内に逃げなければ……君の身の安全は保障できない」
自分一人の身を守るだけで精一杯で、しかもいきなり原チャリをぶつけてきた少女を保護する義理もないと考え、三村は若干心を痛めながらも彼女を拒絶する。
そう。当然三村はアーカードの事を何も知らない。
目の前に居る少女、アーカードが既に三人の参加者、しかもその一人は現人鬼というれっきとした化け物を殺した事を。
クレイジーダイヤモンドをもってしても、アーカードは到底三村には打ち倒す事が出来ない存在という事も。
よって三村は嘘を交えた、己の脅しは全く意味がない事にも気付いていない。
そして五秒の時間が、ほんの短い時間が経過する。
403三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:42 ID:KSfTiMFM
「貴様は何を言っている? 身の安全は保障できない? 酔狂な事を言ってくれるものだなヒューマン」
逃げるはずもないアーカードが口角を吊り上げて、妖艶に笑う。
そのアーカードの無邪気ともいえる笑い顔に三村は心を奪われる。
只。可愛らしさから心を奪われたのでなく、もっと別の感情によって。
アーカードの笑い顔から垣間見える、何かドス黒い感情に恐怖を覚えてしまったからだ。
この少女は一体? そう思った瞬間、三村の視界に入っていたアーカードの姿が何倍にも大きくなる。
それはアーカードの、闘争というダンスのお相手に指名された事と等しいものだった。

◇  ◆  ◇

「ッ! クレイジーダイヤモンド!!」
自己防衛のためクレイジーダイヤモンドの右腕をアーカードの腹部に向かって揮う。
勿論、アーカードを殺すような事はしない。
何故ならジョジョを殺したかがみが相手であれば話は別だが、アーカードには先程の一件以外特に恨みはないからだ。
そのため三村はクレイジーダイヤモンドの拳にせいぜい気絶するくらいの力を込めた。
「遅いな」
いくら手加減されたといえども、決して遅くはないクレイジーダイヤモンドの拳に対して体をヒョイと動かしアーカードは避ける。
その表情にはブラボー達と闘った時に見せた歓喜の表情は言うまでもなく、クレイジーダイヤモンドに驚く表情すら見えない。
大層な事をいいのけた三村の実力のなさに早くも、アーカードは再び落胆の意を見せている。
その表情は反撃を行う事さえも面倒そうな辛気臭いものだった。
「くっ! それなら!」
今度は両腕でアーカード沈黙させようとクレイジーダイヤモンドを動かす。
同時に拳に込めた力も更に強いものとさせる。
だが、未だ全力の力を込めているというわけではない。
大の男やかがみが相手なら全力で応戦する気は勿論あるが、今のアーカードはあまりに幼い少女。
そのアーカードの姿は戦士としての覚悟がない三村にとって迷いを持たせるのには十分過ぎる要因だった。
404三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:43 ID:KSfTiMFM
「ふん。こんな狗に加減を受けるとはな」
迷いを持った三村が繰り出すクレイジーダイヤモンドの右拳、左拳が相次いで空を切っていく。
いや、きっと全力の力を込めていたとしても避けられたに違いない。
今のアーカードは体格が小さくなった代わりに、以前よりも機敏にその身体を動かす事が出来たからだ。
只。必然的にその分両腕、両足のリーチは狭まってしまったというデメリットも存在していたが。
「狗なら狗らしく最後まで抵抗してみるがいい。貴様のスタンドは只の飾りか?
早くその答えを私に示して見せろ! HURRY!」
追撃のクレイジーダイヤモンドの拳を、その小さな身体を揺らしながらアーカードは潜り抜ける。
更にあまりにも小さな、だがそれでいて桁違いの強さを秘めた拳。
そのアーカードの拳が天に向かって圧倒的な速度で打ち上がる。
「がッ!……やりやがったなてめぇ!」
そしてアーカードの拳と天の間に存在していたクレイジーダイヤモンドの顎にその拳が激突する。
伝達された大きなダメージによろけ、衝撃のあまりながらも三村は再度反撃の拳を打ち出す。
最早三村にはアーカードに対する迷いなどない。
クレイジーダイヤモンドの拳を避け、あまつさせアッパーを食らわせたアーカードが只の参加者ではなく、
正真正銘の化け物である事に気付き始めたからだ。
化け物ならたとえ殺す事になっても微塵の後悔もない。
自分が生き残るために、三村は極めてクールにこの判断を下した。
そう。三村にとってこの状況で最善の策を取ったハズであった。
「つまらん。これほどまでにつまらない闘争は久々だな。どうやら貴様では狗の餌にすらならないようだ」
だが、現実は非情にも刻一刻と流れていく。
それも三村にとって不利な方向へ。
アーカードは悠然と構え、身体を捻らせ楽々とクレイジーダイヤモンドの拳を避ける。
依然その表情は見る者に恐怖を与える程、不機嫌極まりないものだ。
クレイジーダイヤモンドの拳が虚しく空を切ったのを確認して顔を歪める。
405三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:45 ID:KSfTiMFM
「まだだッ! てめぇをこのまま放っておくわけにはいかねぇ!」
だが、三村もこのまま自分に不利な状況を甘んじて受け入れるつもりはない。
クレイジーダイヤモンドを戦闘に使う事により起きる疲労に耐えて、こんどこそアーカードを仕留めるため、
渾身の力を込めた拳を揮う。
今のアーカードの身の丈はクレイジーダイヤモンドより遥かに小さいので、斜め下方向へ剛拳が放たれる結果となる。
自分の身の安全のためにという考えも渾身の拳を揮う一つの要因となっていたが、
それよりもアーカードの存在は三村にとって最早無視出来るものでなかった。
先刻の襲撃を考えれば、間違いなくこのプログラムに意気揚々と乗っていると思われるアーカード。
こんな人物を野放しにすれば、自分と同じくこのプログラムを潰そうと考えている参加者にもいずれ害が及ぶのは明確だ。
ならば今、この場所で出来ればアーカードを仕留めたいと思うのはほんの少しの正義感や倫理があればそう思うのは不思議ではない。
実際、三村もそう思い、行動を起こした。
だが三村が挑む壁は、アーカードという壁は彼にとってあまりにも強大なものだった。
「五月蝿い。所詮貴様はこの程度だったという事だ」
道端で必死に歩く蟻を見下すような眼つきで低く、感情の篭っていない声でアーカードは呟く。
少女の姿をしているため、華奢になった吸血鬼の両足。
その両足の内、左足の方へ力を込め、地を蹴飛ばし、アーカードの身体が宙に舞う。
対象の位置が変動したため、またも行き場を失くしたクレイジーダイヤモンドの腕が伸びきる。
更にアーカードはその小さな体躯を活かし、今度は右足でクレイジーダイヤモンドの腕へ着地。
「くそ!」
予想外なアーカードの行動に驚き、慌ててクレイジーダイヤモンドの腕を動かす。
当然その腕に両足を乗せ、こちらを嘗めているとしか思えないアーカードを振り払うためだ。
そんな三村の意志に基づき、斜め上方向にクレイジーダイヤモンドの腕が空を走る。
406Classical名無しさん:07/12/26 22:46 ID:BBQvEo9o
支援
407三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:47 ID:KSfTiMFM
だが、アーカードは既に両足を使い、更に上方へ跳び上がっていた。
アーカードがそのクレイジーダイヤモンドの動きに対応できないハズもない。
吸血鬼の並外れた身体、反射能力、そして戦闘の経験などあるハズもない三村のクレイジーダイヤモンドの、
動作の粗さが原因となっていたからだ。
ならば今度こそ、と思い三村は急いで顔を上げ、アーカードが跳んだ方向へ視線を投げる。
「終わりだヒューマン」
だが、三村とアーカードの視線が重なるほんの少し前に彼女の声があがる。
その言葉の意味を考えようとした矢先、三村の顔面、特に鼻の部分に強い衝撃が走った。
それはクレイジーダイヤモンドの顔面にアーカードの右膝が直撃した事による衝撃。
横殴りに叩き込まれた強烈な右膝を受け、三村は常用車を駐車してある位置から横方向へ、派手に吹っ飛ばされる結果となった。
更に背中からしこたま大地へ激突し、声にならない嗚咽をあげ、三村は苦痛の表情を浮かべ蹲る。
そんな三村の様子を観察し、アーカードは短い舌打ちを行い、歩を進める。
最早三村には興味はなく、自分が殺さずともどこかで無様に死に行くだろうと思ったからだ。
三村にトドメを刺さずに、自分のこれからの足となる常用車に乗り込むためアーカードが悠然と歩き続ける。

所詮、スタンドDISCを手に入れたとしても誰もがTVアニメや映画のヒーローのようにカッコよくはいかないものだ。
その現実をアーカードは元より、三村も十分理解している。
そう。そんな事は理解しているハズだ。誰よりもクールにもの事を考える事を重視している三村は。
「ほう、未だやるつもりか……おもしろい! 少しは貴様の認識を改めなければならないようだな!!」
アーカードは歩ませていた歩を止め、ここに来て初めて彼女の表情に嬉しさが蘇る。
そんな表情を浮かべたアーカードの視線の先には、全身を震わせながらも四肢を使い、
必死に立ち上がろうとする三村の姿が入っていた。

◇  ◆  ◇

408Classical名無しさん:07/12/26 22:49 ID:BBQvEo9o
 

409三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:50 ID:KSfTiMFM
嬉しそうな表情をしたアーカードに見守られながら三村は遂に、ゆっくりと立ち上がる。
顎には今も強烈なダメージは残り、鼻から流れる真っ赤な鮮血も一向に止まる気配は見せていない。
どう考えても絶体絶命のこの状況。
そのまま蹲っていればこんな状況に陥りはしなかった事は、アーカードの歩の進め方を見れば明確であり、三村もその事は認識していた。
(なんで、わざわざ立ったんだろうなぁ……いや、考えるまでもないか。
俺のやる事はもう決まってるぜ……)
だが、三村は立ち上がった。
自分の命を優先するならこの三村の行為はあまりにも無意味といえるハズだ。

「再び闘争にその身を投げ出した事は褒めてやろうヒューマン。だが、何か策はあるのか?
化け物であるこの私を、吸血鬼・アーカードを打ち倒す策はあるのか!?」
アーカードには三村の行動が理解できず、だがそれでいて期待していた。
そのスタンドの扱い方から恐らくDISCの力によって、スタンドを使えるようになった三村は葉隠散とは違い、純粋な人間だと思っていたからだ。
『化け物を打ち倒すのはいつだって人間ではならない』、この殺し合いに呼ばれる以前からアーカードが言っていたこの言葉。
アーカードは今もなおこの言葉を覆すつもりはなく、その瞬間が来る事を密かに期待していた節もある。
「そんなものはない……そんな策があったらとっくに実行に移してるぜ」
「くだらん。つくづく私を失望させてくれるなヒューマン!」
だが、そんなアーカードの期待をよそに、三村はあまつさえ薄ら笑いさえも浮かべて返答し、その答えに彼女は憤慨する。
三村のつまらない返答に、アーカードは身に付けていたレミントンを引き抜く。
アーカードはレミントンの照準を真っ直ぐ三村の左胸へ、心臓の位置へ向ける。
「俺にはジョジョっていう仲間が居たんだ……てめぇよりよっぽど強ぇヤツがな」
「ジョジョ? ジョナサン・ジョースター……いや、ヤツはこの場には居ない。空条承太郎の事か?」
そんなアーカードの行動を尻目に三村は呟く。
DIOの記憶から得た情報を元に三村の話から出た『ジョジョ』という人物が承太郎かと思い、そう問いかける。
何故ならDIOの記憶の中では三村が言っている人物よりも、承太郎の方が印象は強かったからだ。
410Classical名無しさん:07/12/26 22:50 ID:BBQvEo9o

411三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:52 ID:KSfTiMFM
「いや、違うね。俺が言っているのはジョセフ・ジョースターの事だ。
俺を助けるために勝手に死にやがったサイテーなヤツさ……」
そう言って三村は力なく、不規則に身体をブラブラと揺らしながら歩く。
既にクレイジーダイヤモンドを戦闘に使いすぎたため、彼が感じている疲労は計り知れない。
だが、そんな身体を引き摺りながらも、三村はアーカードの方へ視線を投げ続ける。
「だが、あの野郎はいつだってクールだった。
俺よりどっしり構えて、冷静にこのプログラムをどうにかしようと考えていた。
正直な話、あいつは賞賛に値する人物だったな……ガラにもねぇけどよ」
一歩一歩アーカードの方へゆっくりと、それでいて確実に接近する。
一方、アーカードはそんな三村の動きには全く関心を見せていない。
二人の距離は数十メートルの距離が開いており、何より未だ全力を出していないアーカードには負ける要素はないからだ。
そう。レミントンの照準を依然三村の方へ向けているアーカードには焦りなどあるハズもない。
「ほう、それは残念な事だ。是非ともジョセフ・ジョースターとは一度闘ってみたかったのだがな」
DIOの記憶に残る、ジョセフ・ジョースターの実力はアーカードにとって興味深いものであったので、
彼女は純粋に感想をこぼす。
しかしDIOの記憶から知り得たジョセフと三村が知っているジョセフには大きな違いがあったが、
その事をアーカードは知る由もない。
「それにジョジョはバカみてぇにお人好しなヤツでな……放っておけばいいのに困ってるヤツに世話を焼いたりした。
だからな……俺は思うんだ……」
「なにがだ? この絶望の中、貴様はどんな夢を見るというのだ?」
アーカードの感想には何も反応を示さず、三村が言葉を続ける。
もう既に溜まりに溜まった疲労も限界のようで、顔色はあまりにも悪い。
そんな三村にアーカードは訝しげな表情で疑問を投げつける。
この状況で三村がやろうとしている事には皆目見当が付かないからだ。
412Classical名無しさん:07/12/26 22:53 ID:BBQvEo9o

413三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:54 ID:KSfTiMFM
「あのジョジョならこの場で、てめぇみてぇなヤツをぜってぇーに見逃すつもりはねぇって事をな!
てめぇをここで野放しにすればどうなるかわかったもんじゃねぇからな!!」
三村がそう吼えた瞬間、疲弊しきっていた身体に相反するかのように、彼の両眼に輝きが蘇る。
そして同時に三村の傍に、再びクレイジーダイヤモンドが発現。
そう。アーカードの圧倒的な力を目の当たりにしても、未だ三村の意志は、クレイジーダイヤモンドは砕けていない。
「そうさ! ここで逃げるなんてサイコーにクールな事なんかじゃねぇ! たとえてめぇみてぇな化け物が相手だろうと!!」
両の拳を握り締め、三村はありったけの咆哮をあげる。
その三村の動作に連動するかのように、クレイジーダイヤモンドも同じように構えを取る。
圧倒的な力を誇るアーカードに対して、こんなほぼ自殺行為に近い事を行おうとしている自分。
そう。三村は完全にはクールに努めきる事は出来なかった。
だが、三村はその事に対して不思議と嫌な感じはしなかった。
何故なら三村は、自分の行動はベストとはいえないかもしれないが、グッドであるという自信は持っていた。
この害を撒き散らす存在でしかないアーカードを殺す。
その決意には一片の悔いもなく、逆に充実感さえ感じていたからだ
「だから俺が今、この場でやる事は……てめぇをブチのめす事だ!
アァァァカァァァドォォォォォーーーーーーーッッッッッ!!」
そう言って三村は駆ける。
他の方向へは一目もくれずに、一直線にアーカードの方向だけに三村の視線が向いている。
クレイジーダイヤモンドの拳を、このアーカードというクソったれに叩き込む。
只、その事だけを考えながら三村は走り続ける。
「そうか。それが貴様の答えか……ならば私も答えてやろう」
一方、アーカードはそんな突進してくる三村にレミントンの銃口を非情にも向け、照準を合わせる。
その狙いには寸分の狂いもない。
そしてアーカードの表情に変化が生じた瞬間。
――BANG!――
一発の鈍い銃声が周囲に反響する。
その銃声が響き、数秒の間、静寂がエリアD-8を支配した。
三村の身体が大地に力なく倒れた瞬間まで。

◇  ◆  ◇

414Classical名無しさん:07/12/26 22:54 ID:BBQvEo9o

415三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:56 ID:KSfTiMFM
(まったく……やる事が増えちまったなぁ……)
大地にうつ伏せの体制になった三村が心の中でそう愚痴る。
三村はレミントンの銃弾に倒れたわけではなく、その銃弾はクレイジーダイヤモンドの手で受け止めていた。
だが、あまりにも不慣れなスタンドをフルパワーで使い過ぎたため、疲労のため倒れこんだ。
そんな三村を見て、アーカードは何故かトドメは刺さずに、常用車に乗り込み北の方へ向い、今この場には三村一人しかいないという事だ。
(かがみの事を伝えるのは忘れちまったが……まぁいいさ。どっちにしろ両方とも俺が殺してやるからな……。
けど、今は休むとするか……)
新たな対象が増えた事に三村は更に意志を固いものにさせる。
だが、どうせ今からアーカードを追っても追いつけるわけもなく、恐らくかがみとも距離が離れすぎているこの現状。
ならばいい機会と思い、三村は疲弊しきった身体を休める事にした。
そう思い三村が両眼を閉じた瞬間、彼の意識は闇に沈む。
それは睡眠によるものではなく、気絶によるものだと気付いたものが一人だけ、いや一羽だけ居た。
三村が倒れこんだ民家の屋根に、両足を下ろし、彼を物珍しそうに眺めていた一羽の梟だけが知っていた。

◇  ◆  ◇

「ふん。まぁそれなりに楽しめた事は事実か。それよりも……」
そう言ってアーカードは三村から拝借した常用車を運転しながら、彼女もまた愚痴る。
別にアーカードが三村を見逃した事に特に意味はない。
只、三村の事よりもアーカードには気になる事があり、一刻も早くそこへ向いたいと思ったからだ。
「なにか気配を感じる……新しいなにかがこの闘争の舞台に降り立ったか?」
アーカードは本能的に感じ取っていた。
全く理論的な要素は何もないが、何か得体の知れない力が増えた事に。
その事の真偽は定かではないが、確かめる価値はある。
そう思い立ち、アーカードは更にアクセルを強く踏み込む。
未だ彼女の飢えは満たされていないから。
416Classical名無しさん:07/12/26 22:56 ID:BBQvEo9o

417Classical名無しさん:07/12/26 22:56 ID:LmBHINgg
しえんだ
418Classical名無しさん:07/12/26 22:57 ID:BBQvEo9o

419Classical名無しさん:07/12/26 22:57 ID:XOWCHRZk
        
420Classical名無しさん:07/12/26 22:58 ID:BBQvEo9o

支援
421三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:58 ID:KSfTiMFM
【D-7とD-8の境目/一日目 夕方】

【アーカード@HELLSING】
[状態]:乗用車で移動中。ロリ状態(外伝および9巻参照)。
全身にダメージ中、特に頭部、胸部、腹部にダメージ有り(吸血鬼による能力で自然治癒中)、

[装備]:フェイファー ツェリザカ(0/5) 、レミントンM31(3/4)
[道具]:支給品一式、スタングレネード×4、
色々と記入された名簿×2、レミントン M31の予備弾22、 お茶葉(残り100g))
[思考]
基本:殺し合いを楽しむ。
1:とにかく北へ向かってみる。
2:満足させてくれる者を探し闘争を楽しむ。
3:DIO、柊かがみ、劉鳳、アミバ、服部とも再度闘争を楽しむ。三村は微妙だが興味はある。
[備考]
・参戦時期は原作5巻開始時です 。
・首輪は外れていますが、心臓部に同様の爆弾あり。本人は気づいてます。
・DIOの記憶を読み取り、ジョセフと承太郎及びスタンドの存在を認識しました。
・柊かがみをスタンド使いと認識しました。
・散、ブラボーの記憶を読み取り、覚悟・マリア・村雨・劉鳳・タバサ・服部・アミバ・斗貴子・パピヨンの情報を得ました。
・首輪そのものがスタンドではないかと推測。
・ジョセフは死んだという事を三村から聞きました

ゴールド・エクスペリエンスのDISC、核鉄(シルバースキン)を持った梟(桐山の首)が会場をさまよっています。
ゴールド・エクスペリエンスは人体を創る事は出来ません。
変電所周辺に桐山の首なし死体が放置されています。
またその傍に名簿を抜いた支給品一式が入ったデイパック×2が放置されています。
422三村信史は砕けない ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 22:59 ID:KSfTiMFM
【D−8 最南端の民家周辺/一日目 夕方】

【三村信史@BATTLE ROYALE】
[状態]:気絶中、精神疲労(大)、鼻の骨を骨折。顎にダメージ有り(大)
[装備]:トランプ銃@名探偵コナン、クレイジーダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:七原秋也のギター@BATTLE ROYALE(紙状態)支給品一式×2
[思考・状況]
基本:老人の野望を打ち砕く。かがみはどんな手段を使ってでも殺す。
1:仲間を探す。
2:再度ハッキングを挑む為、携帯電話を探す。
3:集められた人間の「共通点」を探す。
4:他参加者と接触し、情報を得る。「DIO」は警戒する。
5:『ハッキング』について考える。
6:「柊かがみという女は殺し合いに乗っていて、人を一人殺した」という情報を参加者に
広める
7:アーカードは殺す
[備考]
※本編開始前から連れて来られています。
※クレイジーダイヤモンドは物を直す能力のみ使用可能です。
 復元には復元するものの大きさに比例して体力を消費します。
 戦闘する事も可能ですが、大きく体力を消費します。
※ジョセフは死亡したと思っています。
※マップの外に何かがある、と考えています。
※彼が留守番電話にメッセージを残したのは、以下13ヶ所です。なお、メッセージは全て同一です。
 老人ホーム(A−1)、市役所(D−3)、病院(F−4)、消防署(D−4)、学校(C−4)
 総合体育館(D−5)、ホームセンター事務室(H−5)、総合スーパー事務室(D−6)
 変電所(A−8)、汚水処理場(B−8)、ホテル(D−8)、パブ(F−8)、ボーリング場(G−8)
423Classical名無しさん:07/12/26 23:00 ID:XOWCHRZk
   
424 ◆3OcZUGDYUo :07/12/26 23:02 ID:KSfTiMFM
投下終了です!
支援どうもありがとうございました!
何か誤字などがあればご指摘お願いします。

タイトルを付けるのにいつも苦労してしまうw
425 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:11 ID:XOWCHRZk
GJ!!
三村がCOOLじゃなくてHOTになりやがったw
相変わらず描写が上手く感心しました。
それにしてもロリカード、ノリノリである。
何かを感じたということは、喫茶店へと向かう気ですか! 夢の対決ですか!?

続けて、自分も投下します。
426二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:12 ID:XOWCHRZk
 カズキと一つになった民家を抜け、南下する斗貴子。
 かつて人を守るため、無慈悲なホムンクルスを葬っていた瞳は、己が狂った願いをかなえるために、人を殺すために周囲を見渡す。
 疾走するうちに、風より流れてきた声が聞こえ斗貴子は足を止めた。
『わたしの仲間が危険な目に遭っているの! 誰か! この声が聞こえたのなら助けに来て!! わたしはルイズ・フランソワーズ……』
 機械によって増幅された不快な声が、幸せの中にいる斗貴子の耳に届く。
 斗貴子は心底幸せそうな表情で左胸へと……いや、愛しい核鉄(カズキ)へと手を当てる。
 トクン……トクン……と愛しい人の鼓動を感じ、斗貴子は地面を蹴る。
 ヴィクター化したカズキを抱きしめた時は、鼓動のほかに温もりを感じた。
 鼓動だけでも幸せなら、温もりを加えたとしたらどれほどの絶頂にイけるのだろうか?
 斗貴子に自然と笑みが浮かぶ。優勝してカズキと結ばれる。それが斗貴子の願い、斗貴子の夢。
 たった一つの夢にかけて、斗貴子は進む。
(待っていてくれ、カズキ。すぐに優勝して君を蘇らせる。そうしたら、二人だけで……)
 彼女の瞳は錬金の戦士の使命も、自分のために死んだ花山の姿も映さない。
 彼女の変心のきっかけとなった液体によって、変化した銀の瞳に映るのは、ただの愛しい男のみ。
 その姿はまるで……



 拡声器の呼びかけを終えて、ルイズとコナンは雑居ビルを降りる。
 その途中でルイズはコナンより、拡声器を譲り受けた。病院に着いて、もう一度呼びかけるつもりらしい。
 ここで争う手間も惜しいため、コナンはあっさりと従う。
 そして病院までの道筋を確認して、二人は頷いて一気に駆ける。
 右手側は川、左手側にはビル群が見える。道は開けており、拡声器の呼びかけに応えた仲間が見つかる可能性が高い。
 同時に呼びかけに気づき、自分たちを獲物とする殺人鬼も寄ってくる可能性も高いだろう。
 どちらと早く出会うかが鍵だ。危険だが、二人は賭けに出る。
「早く病院に行って、ギントキたちのところに行かなくちゃ。きっとシンパチやあの生意気女も合流しているはず」
427二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:13 ID:XOWCHRZk
 コナンはそのルイズに同意するように頷く。
 もともと浮き沈みが激しいのだろう。ルイズは先ほどの落ち込みが嘘のように生気溢れる瞳に、この道の先にある病院を映している。
(でも、今襲われたらひとたまりもねえ。さっさとルイズを連れて吉良さんや銀さんと合流しないとな)
 自分たちと同じく、殺し合いに乗らない人と出会わなくていい。無事に病院まで辿り着けば御の字だ。
 その事をコナンは自覚してルイズに引っ張られるまま、周囲への警戒を解かない。
 息も荒く土手を駆ける二人。流れる川は今行われている激戦を無視するようにただ流れるだけだった。


 コナンの手を取り駆け続けるルイズの脳裏に、この殺し合いに巻き込まれて初めて出会った男を思い出す。
 杉村、彼はルイズを逃がすためにたった一人で虎の怪人に挑み、散っていった。
 あの病院に残っている銀時や吉良も同じように自分たちを残し、殺人鬼を相手にしている。
 杉村の時も、覚悟の時も、美形が襲った時も、ラオウが襲った時も、傷を顔に持つ銀髪の女が襲った時も、ルイズは自分が役に立てれなかったことを悔しく思う。
 少なからずルイズは彼らの手助けになっていたこともあるのだが、魔法を満足に使えない劣等感からルイズは自分が役立たずだと思い込んでいるのだ。
 強くキュルケの杖を握り締めるが、自身の手を傷めるだけだった。
(これじゃスギムラに顔向けできないじゃない! それに……サイト……)
 放送で呼ばれた、ルイズの使い魔にして、最愛の少年。
 ルイズは口や表面上の態度では才人のことを何とも思っていない態度を取っていても、その死を知った時の胸の締め付けを一生忘れることはないのだろう。
 ルイズは薄々才人が好きだったことを自覚している。失ってから気づくなど、皮肉もいいところだ。
 あの放送の後、ラオウや顔に傷のある女、戦車のような何かに追われて考える暇もなかったが、病院に向かう僅かな時間は才人のことを思い出すのにちょうどいい時間だった。
 使い魔を呼び出そうとして平民が出てきた時の落胆は忘れない。
 そして、魔法を物ともせずギーシュを颯爽と倒し、ゴーレムに対して破壊の杖を使った姿など、思い出すのは格好よかった姿だ。
428二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:15 ID:XOWCHRZk
 伝説の使い魔、ガンダールヴかどうかはいまだ半信半疑。それでも、才人はルイズにとっては大切な人だった。
 たとえ、平民だったとしても。
 いや、ルイズはここで杉村や覚悟、銀時に吉良といった勇敢な平民ばかりに出会っている。
 ルイズにとって、貴族や平民といった隔たりは意味がないものでは?と、いう疑問を持ち始めていた。
 そう考えてくるうちに、ルイズの頬に一筋の涙が流れる。
 ルイズは慌てて涙を服の裾で拭う。後ろにいるコナンに弱い自分を見せるわけにはいかない。
 彼はまだ子供だ。年上である自分が弱気な姿を見せれば不安になる。
 少なくとも覚悟はそう判断して弱い姿を見せようとしないはずだ。
 だからルイズもコナンに涙など見せない。
(サイト、ごめんね。ギントキやキラに再会して一段落したら、一人になれたら、こっそり泣くから…………今だけは忘れさせて)
 伏せた瞳に力を漲らせ、ルイズは正面を向きなおす。
 切れ目の瞳に今まで出会った人々の決意を受け継ぎ、足に力を込める。
(もう、誰も死なせはしないわ! このわたしの……貴族の誇りに懸けて!!)
 何度したか分からない決意を強め、ルイズはコナンの手を強く握り締める。
 合流するためにもっと早く走ることをコナンに伝えようとしたルイズの瞳に、体当たりをするコナンが眼に入る。

「危ねえ!!」

 コナンの身体が小柄なルイズの身体を吹き飛ばした瞬間、ルイズの隣を暴風が駆け抜ける。
 コナンを抱えたまま転がるルイズに、セーラー服に身を包む、銀髪銀眼、顔に傷を持つ女が視界に入る。
 マリアを殺したその女は、相変わらず冷徹な瞳を向けてくる。
 吉良はこの女に殺されたのだろうか? その疑問をルイズは一旦無視して、コナンの手を掴んで地面を蹴った。



 声の聞こえた方向へと三人は身体を向ける。
 アーカードとの激戦を潜り抜けた、疲労に満ちた身体を持ってしても、なお三人の闘志は衰えない。
 主催者を打倒する。たった一つの信念で結びついた三人だからこそ、危険に身を晒す人を放って置けない。
 それが自らの身を危険に晒す結果になろうとも。
429二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:16 ID:XOWCHRZk
 劉鳳はタバサを埋葬した場所に短く黙祷を捧げる。
 すぐに踵を返した劉鳳は近付いて決意を込めた眼差しで二人を射抜く。
「タバサは死んだ。だが悲しむのは彼女の友人、ルイズを救出してからだ。用意はいいな!」
「当たり前や」
 服部が応え、アミバが無言で頷く。その様子を確認し、劉鳳は二人と共に声の聞こえた場所へと突き進んだ。
「なあ、アミバはん。どうした? 浮かない顔をして」
「ああ……少しな……」
 アミバはどこか躊躇ったような様子を見せて、服部のバイクの後ろにまたがる。
 服部が見つめるアミバは、どこか羨ましそうにタバサと劉鳳を見つめていた。
 エンジンに火を入れ、排気音を轟かせる。その音を耳にしたアミバは、疾走するバイクの後ろで静かに呟いた。
「服部、劉鳳、俺は人を殺したことがある。それも悪人をではないし、やむをえない状況を迫られてでもない。
無実の人間を、楽しげに殺したことがあるのだ。あの赤いコートの吸血鬼、アーカードのように」
 アミバの告白に服部と劉鳳が目を見開く。それも当然だろう。
 彼らが出会ってからのアミバは、カズマから受け継いだ『反逆』を元に戦い続け、あのアーカードを相手に勇敢に立ち向かったのだ。
 そのアミバが快楽殺人者だと告白されても、信じられなかった。
 特に無意識の内にカズマとアミバを重ねている劉鳳には、性質の悪い冗談だと言いたげな表情となっている。
 しかし、相対するアミバはいたって真剣な表情で己の言葉が真実であることを証明し続けた。
「少し……話そう。昔の……いや、今までの俺を。服部、バイクを進めてくれ。
ルイズという少女を探す時間が惜しい」
「あ……ああ」
 服部が驚きながらもバイクを進める。劉鳳は第一形態の絶影の肩を借りながら、バイクと並走する。
 アミバはルイズを探しながら、二人にぽつぽつと自分の過去を話し始めた。

 服部はアミバより、彼の過去を全て聞いた。
 医者として名声が高いトキという人物の顔を利用したことを。
430二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:18 ID:XOWCHRZk
 無垢の人々を、己が拳の実験台としたことを。その中には、タバサよりも幼い子供がいたことさえも。
 一言一言辛そうに搾り出すアミバの姿は、服部の目から見て本当に悔いているように見える。
 前方を行く劉鳳は服部の想像通り不機嫌な表情だ。
「…………これで全部だ。後は好きに判断してくれ」
「一つだけ聞かせろ。何で今更そんなことを話す?」
 劉鳳の瞳が鋭くアミバを貫く。その鋭さに服部は恐怖を抱き、半分劉鳳に同意する。
 今この場で必要なのはルイズというタバサの友達を保護すること。
 正直、アミバの告白は今の時期にするべきではない。するのなら、ルイズという少女を保護してからのほうがマシだった。
 そのときなら、この険悪の雰囲気になったとしても、ある程度服部がフォローに入れる。
 アミバは今が落ち着けるような状況かどうか、判断できない男には見えないのに。
 服部が恨めしそうにアミバに振り返ると、彼はタバサがいた方面に先ほどの羨望の眼差しを向けていた。
「羨ましくなったのだ。劉鳳にタバサ……ブラボーに服部がな……」
「羨ましい?」
「ああ。劉鳳、俺はお前に断罪されても仕方ない存在だ。
ここに来るまで、カズマに出会うまで、俺の殺した人々が『生きている』なんて考えたこともなかった。
お前の言うとおり、ゲスの考えだ。俺はカズマの『反逆』を見るまで、死んだも同然の生き方をしていた。
だが、お前たちはそのことを認識している。失わせないと必死に『反逆』をしている。
当たり前のように出来るお前たちが、羨ましいのだ。今までの自分を隠せないほどにな…………」
 アミバの答えを聞いていくうちに、劉鳳の表情がだんだん険しくなってくる。
 服部はここで暴れられたら困るとアミバにフォローを入るために知恵を働かせる。
 その考えがまとまる前に、アミバが劉鳳にもう一度語りかける。
「劉鳳、頼みがある。この殺し合いを阻止して……いや、その前にお前が俺を断罪すべき存在だと判断したとき、絶影で俺を殺せ」
「な!? 何を言うてんねん! アミバはん!!」
 服部はギョッとした様子でアミバを見るが、アミバはひたすら劉鳳を見つめている。
 対して、劉鳳は不機嫌な表情を浮かべたまま無言で前を進み続けるだけだ。
431二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:20 ID:XOWCHRZk
 沈黙中をバイクの疾走音だけが奏でる。服部には数時間に感じられた、数秒の沈黙の時。
 その沈黙を先に破ったのは劉鳳だった。
「ああ、望み通りに断罪してやる」
「ちょっと、劉鳳はん!!」
「もう一度お前が善良な人々の平和を乱そうとするならな。だから二度と人を殺そうとするんじゃない! いいな!!」
 答えが意外だったのか、アミバが目を見開いて劉鳳を凝視する。
 劉鳳はまた沈黙の態度を取り、服部たちを先導するようにスピードを速める。
 その様子を見ていた服部は、素直じゃないなと苦笑する。
「お前たちは……殺人鬼である俺と共にいてもいいと思っているのか?」
「あかんな〜、アミバはんは」
 服部は前を向きながら後ろにいるアミバに話しかけた。
 いまだウダウダいうアミバに、自分も一言言ってやらないと気がすまないからだ。
「なあ、アミバはん。俺たちの国にな、『罪を憎んで人を憎まず』って言葉があるんや」
「何がいいたい? 服部」
「アミバはんが泣かせた人の数よりも、救った数が多ければ俺はいいと思うんよ。いや、数の問題じゃなくて、心の構えっちゅうことやな。
アミバはんが本気で変わりたいって言うなら、死んで償うより、人を救って償う方が俺の好みや。
俺たちと一緒にいる理由がそれじゃ、駄目かいな?」
 服部の言葉にアミバは口をあんぐりと開いていたが、やがて閉じて服部たちの知るいつものアミバの表情に戻る。
 その様子を確認して服部はバイクを更に加速させた。
 ルイズを助ける。三人は一つの目的へと向かい続けた。



(さあ、カズキ。あの時逃がした連中を殺して君に逢いに行く。だから私に力を貸してくれ)
「臓物を……」
432二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:22 ID:XOWCHRZk
 左腕だけでサンライトハートを構え、先端をルイズとコナンの二人に向ける。
 サンライトハートの刃先が揺れるのは、連戦が身体が堪えている証拠だ。それでも目の前の二人は充分倒せると斗貴子は判断した。
 戦士として鍛えた冷静な思考は、狂ってもなお働く。たとえ狙いが逸れたとしても、何度も打ち込めばいずれは二人は死ぬ。
 ボロボロの状態でホムンクルスと戦ったように、『人間』相手に斗貴子は錬金の戦士としての全てをぶつけるつもりでいる。
「……ぶちまけろぉぉぉぉ!!」
 斗貴子は吠えながらサンライトハートのエネルギーを爆発させる。
 黒い核鉄でその身を変えたサンライトハートは、斗貴子の闘争心に呼応して山吹色のエネルギーを刃に変えて二人に迫る。
 その莫大なエネルギーは凄まじく、片手で制御しきれず軸がぶれる。
 結果、斗貴子の突進は右にずれ、地面を抉るのみだ。
 地面を爆ぜさせながら土砂が舞い上がり、斗貴子は辛うじてサンライトハートを制御する。
 地面を抉った衝撃で吹き飛んだのだろう。地に伏せるルイズとコナンが体制を整え、斗貴子から逃げていく。
 その姿を認め、斗貴子は舌打ちをする。
(クッ! カズキは暴れん坊だな。上手く狙いがつけられないじゃないか。大丈夫、私が鎮めてあげるから……)
 斗貴子が内心呟き、そっとサンライトハートに右腕を添える。
 もし右手が存在していたなら、赤子を扱うかのように優しく槍を撫でていたのだろう。
 その斗貴子のうっとりとした表情と、これから行おうとする行為のギャップにルイズたちが驚愕の表情を浮かべるが、斗貴子の視界には入らない。
 いや、入っても認識しない。サンライトハート(カズキ)と自分だけの世界。
 そこに斗貴子は閉じこもり、戦士の信念も使命も忘れて人を殺す。
 彼女が手にしている武器は、最期まで人を守るために振るった男の信念であるのも構わずに。


 ルイズは衝撃に吹き飛ばされながらも、コナンの身体を庇う。
 叩きつけられた背中が痛むが、構ってはいられない。すぐに立ち上がりコナンを助け起こす。
 ルイズの目には抉られ、大きく裂けた地面が眼に入る。あの槍の突進力は絶大だ。
 吉良との戦闘の後なのだろうか。対峙する傷顔の女は右手がなく、傷だらけだ。
433二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:24 ID:XOWCHRZk
 左手一本で扱うのは難しそうな武器。その隙を突いてどうにか逃げるしかない。
(けど、それじゃ一分も持たない。どうすれば……)
 悔しげに歯を食いしばるルイズの脳裏に、覚悟とラオウの二人と食事を取ったことを思い出す。
 あの時の覚悟が自分の爆発を見て言った言葉を思い出し、ルイズはコナンの手を握って逃げる方向を変える。
「こっちよ!」
「待て! そこは……」
 ルイズはコナンの口調の変化にも構わず、市街地へと駆ける。目指すのは白い屋根の民家。
 後方で不安定な軌道と共に斗貴子が突撃してくる。
 ルイズは右に跳んで狙いのずれたサンライトハートの突撃を回避する。
 コンクリートで舗装された道路にサンライトハートの刃が突き刺さり、電柱が傾くほどの衝撃が伝わってルイズはよろめくが、必死で耐える。
 ここで倒れて時間を消耗してはいけないからだ。
「また外れてしまったよ。カズキ、君は昔から聞かん坊だったな。フフ……」
 幸せそうな声が聞こえるが、振り返る暇も惜しい。
 それに、先ほどルイズたちが目撃した蕩けた表情をしているであろうことは想像に難くない。
 やっと民家へと辿り着いたルイズはドアに手をかけて乱暴に開ける。
「篭城しようというのか? 無駄だ。私とカズキの力なら、そんな壁は紙のような物だ。そうだろう? カズキ」
 地面に深々と突き刺さったサンライトハートを引き抜こうとする斗貴子に、ドアを乱暴に閉じてルイズは答えを返す。
 息も絶え絶えながらも、ここで止まるわけにはいかない。奥へ奥へとルイズは駆け続ける。
「ルイズお姉ちゃん、あいつの言うとおりだ。あいつなら壁を簡単に突き破れるし、屋内なら逃げ場が限定され……」
「逃げなさい!」
 ルイズは見つけた裏口を開け、コナンに背を向けると杖を構え始めた。
「もしかして……あの爆発を使うつもり!?」
「あの女も瓦礫で埋もればさすがに足は止まるでしょ! その間にギントキやカクゴ、キラを探しに行きなさい!」
「無理だ! あんた一人で足止めできるような奴じゃない!!」
 ついコナンはいつもの無邪気な演技を忘れ、素を出す。
 その様子にルイズは一瞬気を取られたが、すぐに微笑んでコナンにデコピンをする。
434Classical名無しさん:07/12/26 23:26 ID:bU/atgNs
支援
435Classical名無しさん:07/12/26 23:26 ID:C2b8IWQY
しししの支援
436Classical名無しさん:07/12/26 23:27 ID:bU/atgNs
支援
437二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:27 ID:XOWCHRZk
 ルイズは怯んだコナンの胸に左手の平をそっと添えた。
「貴族をあんたとかいっちゃ駄目なの……よ!!」
 最後の言葉を強めると同時に、ルイズはコナンを突き飛ばす。
 非力なルイズだが、小学生並みの体格しか持たないコナンを数メートル押し出すのは何とか可能だった。
 そしてすぐに裏口のドアを閉じ、魔法の詠唱を始める。
 もし裏口がなければ爆破で道を開けようと考えていたため、ルイズの準備はできている。
 ルイズはコナンを逃がすために、斗貴子と戦う準備を整えた。

 正面を向くルイズの視界に、けたたましい音と共に吹き飛ぶドアが入る。
 粉塵の中からゆらりと幽鬼のごとく、斗貴子が銀髪銀眼を向けて現れる。
 瞳に宿る冷酷な意思を汲み取ってルイズは背筋を凍らせながらも、詠唱を一旦止め話しかける。時間稼ぎのためだ。
「あんた……なんでこんなことをするのよ!!?」
 ルイズの問いかけに、斗貴子は足を止めて笑いかける。
 ニヤリとドブ川が濁ったような瞳を歪ませ、顔中に闇のような皺を形作った凶悪な笑みのまま、声色は幸せそうに答える。
「カズキと一緒に二人だけで暮らすためだ」
「カズキ……?」
 かすかにルイズの記憶に残っていたその名は、確か放送で呼ばれた名だ。
 才人の死で悲しみに沈んでいたため、ルイズがカズキの名を覚えていたのは偶然だ。
 既に死んだ人間の名を呼ぶことにルイズは怪訝に思う。
「……死んだ人の名を呼ぶって事は、あんたは優勝してカズキを蘇らせようって思っているの?」
「それのどこが悪い」
 悪びれもなく言う斗貴子にルイズは嫌悪感を示す。
 なぜだか気に食わない。倫理観とか誇りとか超えたところの本能で、自分も知らぬ感情を持ってルイズは斗貴子に拒否を示す。
 そのルイズをも斗貴子は見ない。
438Classical名無しさん:07/12/26 23:29 ID:bU/atgNs
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439二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:29 ID:XOWCHRZk
「カズキに私は言ったんだ。君が死ぬ時は、私も死ぬ時だと。
なのにカズキは死んでしまった。私はカズキに嘘をついてしまったんだ。
だが、まだ取り返しはつく。カズキと一緒に死ぬために、お前たちを殺してカズキを蘇らせればいいんだ。
ああ、そうだ。それはいいな。お前たちを殺してカズキと二人っきりになろう。うん、いい考えだ」
 斗貴子は途中からルイズと『会話』をしていない。ただ一人で話し、一人で納得している。
 不気味な様子だが、ルイズは恐怖よりも怒りを抱いた。
「そんなの間違っているわよ……」
 怒りに震える声は小さいが、確実に斗貴子に届いた。
 その証拠に、斗貴子は冷徹な瞳を向けている。
 ルイズは身体が恐怖で押しつぶされそうになるが、それ以上の怒りを持って身体を奮い立たせる。
「間違っている? 君に何が分かる」
「分かるわよ! あんたは間違っている。そのカズキって人が可哀想だわ!」
「カズキが……可哀想……?」
「だって……だって、サイトだったら絶対わたしがそうなる事を望まない!
わたしだってサイトやカクゴにそうなって欲しくないから!
カズキって人がどんな人かわたしは分からないけど……けど、わたしは同情する!
あんたみたいに人を殺す理由に使われたことを!!」
 ルイズは無意識に吠えて斗貴子に突進する。
 斗貴子に対して怒りが溢れるが、ルイズはその理由が分かりかけていた。
 ルイズがラオウを目の前に、才人の死で狂気に呑まれかけた。
 彼女は、斗貴子はルイズにとってもう一人の自分なのだ。
 もしも杉村に出会わなければ。
 もしも覚悟に助けてもらわなければ。
 もしも才人の死を聞いたとき、銀時たちがいなければ。
 ルイズもまた斗貴子のようになっていたかもしれない。
440Classical名無しさん:07/12/26 23:30 ID:bU/atgNs
支援
441Classical名無しさん:07/12/26 23:30 ID:bU/atgNs
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442二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:30 ID:XOWCHRZk
 その事実を認め、ルイズはサンライトハートの穂先を向ける斗貴子を真っ直ぐ見据える。
 斗貴子がサンライトハートを持って突撃するよりも一瞬早く、ルイズの『魔法』が爆発した。



「くそっ! 鍵がかかってる!!」
 コナンは全力でドアに体当たりをするが、非力な身体ではいくら力を込めようともビクともしなかった。
 どうすればいいのかと周囲を見渡すと、コナンの頭ほどの大きさもある瓦礫が転がっている。
「あれを使って破るしかねえか……」
 縮んだ身体にあの大きさの瓦礫は堪えるだろうが、贅沢は言っていられない。
 天才高校生探偵とまで言われた彼にとって、殺人が目の前で起こることを見逃すのは我慢ならない。
(無茶するんじゃねえぞ、ルイズ)
 一人残った彼女を救うために瓦礫に近寄るコナン。
 彼が瓦礫を取るために民家から数メートル離れた時、彼の決意を嘲笑うかのように轟音が轟く。
「なっ!」
 爆発音と共に空気が震えたかと思うと、建物が徐々に崩れていく。
 屋根から崩れていき、半壊した民家を見つめてコナンはぺたんと膝をつく。
「バーロ……間に合わなかったのかよ……」
 後悔と無念に満ちたコナンは呻くように呟く。
 死者は蘇らない。失ったものは取り戻せない。それは死に何度も遭遇したコナンの真実だ。
 半壊した建物は何も言わず、コナンの前にただ存在するだけ……のはずだった。
 突如、稲妻が落ちたような轟音が響き、焦げたDVD−BOXが天から落ちてきて、コナンの前方の瓦礫が吹き飛ぶ。
 運がいい事に、ドアを破るために瓦礫をとりにいったコナンまでは破片は届かなかった。
 爆発が起きた地点の中心に、人影が立ち上がる。
 ブラウスは破れ、顔は煤で汚れているが、桃色の長い髪を揺らして立ち上がる後姿はコナンの知る少女である事を示す。
(無事だったのかよ! 心配させやがって……)
443Classical名無しさん:07/12/26 23:31 ID:bU/atgNs
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444Classical名無しさん:07/12/26 23:31 ID:bU/atgNs
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445二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:32 ID:XOWCHRZk
「ルイズお姉ちゃ…………」
「逃げろっていったでしょ!」
 厳しい声色と共に、ルイズの五メートルほど先の瓦礫の山が吹き飛ぶ。
 瓦礫を跳ね除け、山吹色のエネルギーを刃と変えた大槍が天に上がる。
 その槍を左手に構え、地面に斗貴子がふわりと降り立った。銀眼より金属のごとく冷たい視線を送り、エネルギーを収めて槍がたたまれる。
 ごくりと唾を飲んだコナンへと斗貴子はゆっくり槍の矛先を向けた。
「させるもんですか!!」
 ルイズが全力で駆け、杖を持って斗貴子に迫る。斗貴子はルイズの動きを冷静に追って、槍の横腹でルイズの腹を叩いた。
 呻くルイズに、斗貴子の回し蹴りが鳩尾に決まる。
 壁にあっさりと叩きつけられたルイズは地面で身悶えている。それもそうだろう。
 錬金の戦士として訓練を積んだ斗貴子と、知識はともかくゼロと蔑まれ、貴族としての人生を過ごしてきたルイズでは身体能力に天と地ほどの差もあるのだ。
 斗貴子は地面で悶えるルイズに近付く。近くにいるルイズを先に殺そうと思ったにすぎない。
 コナンなど、いつでも殺せる。斗貴子は言葉でなく態度で語っていた。
「クソッ!」
 コナンは吐き捨て、DVD−BOXを拾いながらルイズに背を向けて走る。
 ルイズはそれでいいと微笑んで、またも爆発を起こす。斗貴子を粉塵に巻き込み、コナンから気を逸らせるためだ。
 コナンは目の前にある雑居ビルを一気に駆け上がった。すぐ傍にある傾いた電柱を視線に収めて。

「ハア、ハア、ハア……」
 一気にビルを駆け上ったコナンは、屋上より下を見回す。
 ルイズはまだ殺されていない。コナンは金網を昇り、デイバックからヌンチャクとDVD−BOXを取り出した。
 目の前には電柱があり、斗貴子のサンライトハートの突進の衝撃で電線が角度を落としている。
(待っていろよ、ルイズ。今助けにいってやるからな)
 コナンは意を決して、地面に置いたDVD−BOXを斗貴子の顔面を狙って蹴る。
 威力には期待していない。だが、狙いのよさは小学生並みの身体能力となった今でも顕在だ。目くらましになればいい。
446Classical名無しさん:07/12/26 23:32 ID:bU/atgNs
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447Classical名無しさん:07/12/26 23:32 ID:bU/atgNs
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448Classical名無しさん:07/12/26 23:33 ID:hG761lSk
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449二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:33 ID:XOWCHRZk
 すぐにコナンは飛び降り、電線にヌンチャクの柄と柄を通し即席のロープウェイを作る。
 身体に落下する感覚を受けながら、コナンは下にいる斗貴子とルイズを見つめる。
 落下の加速を利用して斗貴子を突き飛ばし、ルイズを回収しながら勢いを利用して川へと飛び込みこの場を逃げる。
 それがコナンが考えた脱出策。即席といってもいい策だ。正直穴が多い。怪盗キッドに見られたら、失笑をくらうに違いない。
 それでも、今のコナンにはこの脱出劇に賭けるしかなかった。
 ルイズを死なせない。斗貴子から逃げ延び、殺人を止める。
 両方しなくちゃいけないのが探偵として生きてきた自分の辛いところだ。
 それでも、覚悟は出来ている。なぜなら、自分は江戸川コナン、そして工藤新一、探偵だからだ。
 加速する身体に風を感じながら、DVD−BOXが斗貴子の顔面に命中したことを確認する。

「ルイイイィィィィィィズ!!!」

 コナンは斗貴子に突進しながら、ルイズが自分の思惑に気づいて掴まってくれることを祈った。


 ルイズが引き起こした粉塵を切り裂き、斗貴子がコンパクトにまとめられているサンライトハートを振り下ろす。
 しろがねの回復力を持っても連戦に加え、瓦礫に埋もれた時にできた身体の傷により、振るう速度が僅かに落ちる。
 そのことがルイズに味方した。転がるよう左へと避け、ルイズの後方にあった壁にサンライトハートが深々と突き刺さる。
 動きが止まったのを確認し、ルイズは逃げ――――ずに半ばより折れた軍刀を腰だめに構えて斗貴子に突進する。
 ルイズが現在稼いだ時間程度では、コナンは遠くに逃げれていない。
 その判断から、斗貴子を一秒でもここに引きとめ続ける事を選択する。
 それはいつか、ルイズを逃がすために杉村が決意した正義そのものだった。
 斗貴子は直線的なルイズの動きをあっさり見切り、サンライトハートを手放し、身を捻って紙一重でルイズの軍刀を避ける。
 手刀でルイズの右手首を叩いて軍刀を振り落とさせる。
 斗貴子は密着したまま膝蹴りをルイズの鳩尾にめり込ませた。
450二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:36 ID:XOWCHRZk
「ウプッ、ウゲェェェェッ!」
 ルイズは猛烈な痛みと衝撃で胃の中身を空にし、吐しゃ物を地面にぶちまけ、斗貴子の制服を汚す。
 崩れ落ちようとするルイズの髪を掴み顔を強制的に上げる。
「君はカズキを哀れんだ。それはカズキに対する侮辱だ。
カズキ、君でこいつを殺そう。その方がカズキも嬉しいだろう?」
 無抵抗なままのルイズを斗貴子は壁まで投げ飛ばす。
 利き腕でない左腕で、怪我を負った身体で軽々とやれるのもまた、しろがねの力ゆえだ。
 壁に叩きつけられたルイズは、あまりの痛みで言葉を失う。
 そのままズルズルと壁にもたれながら腰をつき、虚ろな瞳で斗貴子を見る。
 最早抵抗する力も無いのだろうと斗貴子は見て、壁に突き刺さったサンライトハートを抜く作業に取り掛かる。
 斗貴子はルイズに見せ付けるように、サンライトハートをゆっくりとゆっくりと引き抜く。
 その様をルイズは見て、絞るように声を出す。
「やっぱり……わたしは間違っていなかったわ……」
「何を言おうが、無駄だ」
 斗貴子はルイズの言葉を一言で切り捨て、引き抜いたサンライトハートの刃に赤い舌を這わせる。
 サンライトハートの白い刃の表面が、斗貴子の唾液で濡れていき、ンッ……と、いう吐息と共に名残惜しそうに顔を離していく。
 唇と刃の表面に唾液の糸が垂れる。
「少し興奮しすぎたかな。でも、カズキ。君が悪いんだぞ。余りにも暴れん坊で、太くて硬くて、私を困らせるんだから」
 フフフ……と笑う斗貴子を見て、ルイズは虚ろな瞳に意思を取り戻していく。
「悲しいわね……」
「カズキのことか? 問題はない。私がずっとカズキの傍に……」
「あなたの……ことよ……」
 その言葉に斗貴子は呆気にとられる。まさか自分のことを評するとは思ってもいなかったのだ。
 ルイズは壁に身体を預けた態勢のまま、斗貴子に告げる。
451Classical名無しさん:07/12/26 23:36 ID:6BB05ZOs
                    
452Classical名無しさん:07/12/26 23:37 ID:UGnvs6w.
453Classical名無しさん:07/12/26 23:38 ID:GZWmeLZ6
支援
454Classical名無しさん:07/12/26 23:39 ID:UGnvs6w.
455二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:39 ID:XOWCHRZk
「正確に言うと、わたしのことでもあるわ。カズキって人、好き……だったん……でしょ。わたしがサイト……を好きだった……ように。
死んだら……もう逢えない……わよね。
叱ること……も、守って……もらうことも、格好いいところ……を見ることも、格好悪いところを……見ることも、もう全部ないの。
わたしはね、そう思うと胸に……大きな穴が…………開いたような、寂しい……気持ちになったわ……」
 いつの間にか、斗貴子のことではなく、ルイズは自分のことを語り始めた。
 その様子に斗貴子は犬歯を剥き出しにして、不快感を見せる。
 ルイズの語る才人との関係は、偶然にも斗貴子とカズキの関係に似ていた。
 斗貴子はカズキの無茶を叱ったことがある。
 斗貴子はカズキに守ってもらったことがある。
 斗貴子はカズキの格好いいところを見たことがある。
 斗貴子はカズキの格好悪いところを見たことがある。
 斗貴子はカズキを失って、胸に穴が開いたような気持ちを、三度味わったことがある。
 気づいた事実を敢えて無視しながら、斗貴子は吠える。
「だからなんだ!! 私は、優勝してカズキを……」
「本当に、それでサイトに逢えるの?」
 ルイズの問いに、斗貴子は頭を振った。その答えを、誰よりも斗貴子は理解しているから。
「うるさい。もう黙れ」
「友達や……守ってきてくれた人を……殺して、優勝して……サイトに逢えても、それはサイトが……知っている『わたし』なの?
ねえ、『わたし』。教えて……よ。サイトを蘇らせても……サイトの知っている『わたし』じゃない……のに、それは『再会』って言える?」
「黙れッッ!!」
 ルイズの問いかけを拒否するように、斗貴子の闘争心に応じてサンライトハートがエネルギーの刃を展開する。
 太陽の色を持つ刃を見つめて、ルイズは綺麗だと場違いな感想を抱く。
「君はわたしを不快にさせすぎた! 臓物を……」
 いつもの叫びを持って、斗貴子は左腕に力を込めてサンライトハートをルイズに向けて固定させようとする。
456Classical名無しさん:07/12/26 23:40 ID:6BB05ZOs
                    
457Classical名無しさん:07/12/26 23:41 ID:UGnvs6w.
458二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:42 ID:XOWCHRZk
 その叫びは、彼女の顔面に激突したDVD−BOXによって中断された。

「ルイイイィィィィィィズ!!!」

 コナンの叫びを、ルイズは背中から聞く。
 逃げろといったルイズの忠告を無視して、何らかの手段で背中から物凄い速さでコナンが近付いてくる。
 だが、コナンの声を聞いてもルイズは振り向かない。
 目の前の斗貴子が、額に血をにじませながらも、怒りの形相とサンライトハートの矛先をルイズの後方へと向けていた。
 そこにコナンがいるのだと気づくと同時に、ルイズは杖を後ろに向ける。
 神速の行動だった。コモンマジックを唱え、己の爆発を発動させる。
 後方の壁が爆発したことにより、爆風の勢いを借りたルイズは神速の速さと斗貴子を突き飛ばす勢いを得る。
 もうルイズに抵抗する力はないと判断していた斗貴子にとって、いや、ルイズ本人にとっても意外だった。
 コナンが危ない。その認識が、タイガーロイドの鋼鉄の腕を杉村が貫いたように、ルイズに斗貴子を突き飛ばす力を与えたのだ。
「ガァッ!」
 斗貴子の鳩尾にルイズの頭頂部が当たり、その行動を一瞬制限する。
 その一瞬で充分であった。ルイズは両腕で斗貴子を掴み、坂になっている土手へと躍り出る。
「離せ……」
 ルイズの狙いに気づいた斗貴子が叫ぶが、遅い。
 最後にルイズとコナンの視線が合う。ルイズは地面に叩きつけられながらも、自分を掴もうと手を伸ばすコナンに柔らかく微笑んだ。
「あんたを助けたわけじゃないんだからね。この女が許せなかっただけ。だから……気に……」
 そのままルイズは、斗貴子を巻き込んで川へと落ちていった。


 ルイズの言葉をコナンは最後まで聞くことは無かった。
 喋る途中で、ルイズは川へと落ちていったからだ。
459Classical名無しさん:07/12/26 23:43 ID:6BB05ZOs
                      
460二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:44 ID:XOWCHRZk
 斗貴子は今日三度目の、ルイズは初めての川のダイブを決めるのをコナンは見届けて、悔しげに俯く。
 その彼の手を取るうるさい少女はもういない。
 コナンは地面を握った拳で叩いた。
「クソ……クソッ!!」
 何度呟いたか分からないほど、長い間コナンは地面を叩き続けていた。
 拳には血が滲む。左腕が一切動かない。ヌンチャクを手放し、地面に叩きつけられた時に肩が脱臼したらしい。
 痛みが走るが、それ以上に悔しさがコナンの胸を締め付ける。
「何で……俺は…………」
 疑問を呟くが、答えはとっくに出ている。

 ―― 覚悟って言葉は身を奮い立たせる言葉なんだよ。

 かつて、幼馴染である少女、毛利蘭が殺人犯に向かって言った言葉を、あの場の状況に応じて自分流にアレンジした言葉が、コナンの胸を突き刺す。
 覚悟が足りない。コナンの結論は悲しいまでに過去の自分が証明してしまった。
 ルイズのように、非力でも誰かを逃がすために奮闘できることがある。
 それを自分が出来ないのは、あの時の吉良や今のルイズのように覚悟が足りないからだ。
 自虐的になっているコナンは、真実と違う答えを導く。
 本当はただの偶然が重なっただけ。ルイズだからこそ、斗貴子を揺らがせることが出来ただけ。
 それだけしか、違いは無かった。その違いが、天と地ほどもの斗貴子に対してのみ、差が出てしまった。
 彼の瞳に、バラバラになったDVDのジャケットの文字が眼に入る。
『……なんだ!! 私立探偵・涼……』
 探偵。誰も救えない、殺人を止めれない、殺し合いを止める手段を持たない自分には、重い言葉だった。
 コナンが自分を責め続けて、数十分も過ぎた頃、人影が彼を発見する。
 バイクの排気音を耳にしても、コナンは反応を示す気がなかった。
「お、おい! くど……コナン!! 無事やったんか!?」
461Classical名無しさん:07/12/26 23:45 ID:6BB05ZOs
                               
462二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:47 ID:XOWCHRZk
「服部、お前の知り合いか!?」
「ああ、知り合いの子供や。良かったわ。お前と再会でき……どないしたんや? その怪我は?」
「服部…………」
 コナンの覇気のない瞳に、服部はギョッとする。
 服部の知る工藤は、こんな瞳をする男ではなかった。
「怪我をしているところをすまないが、この近くでルイズと名乗っていた少女を知らないか?
服部、アミバ、この少年を頼む。俺はルイズと言う少女を……」
「…………れなかった」
 コナンを服部とアミバに任せようとした劉鳳を遮るように、コナンが小さく呟く。
 その言葉を聞き逃したため、三人が耳を向ける。
「殺人が行われるのを、俺は止めれなかった!!
それどころか、女に守ってもらうなんて……ちくしょう…………ちくしょうぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 夕陽に向かって吠えるコナンの姿は、間に合わなかった三人を象徴しているかのように見えた。
 赤い景色をもたらす夕陽は落ちていき、やがては夜の闇をもたらす。
 それは、これから熱い魂を持つ三人に訪れる暗闇を示しているようだった。
463Classical名無しさん:07/12/26 23:47 ID:tQis72Vo
支援
464二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:49 ID:XOWCHRZk

【F-4 北東土手/一日目 夕方】
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:全身打撲。左肩脱臭。疲労大。無力感。覚悟が足りないことを痛感。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、スーパーエイジャ@ジョジョの奇妙な冒険、鷲巣麻雀セット@アカギ
[思考] 基本:仲間を集める。
1:ルイズを守れなかったことと殺人を止められなかったことに後悔。
2:覚悟さん達と合流
3:ゲームからの脱出
4:ジグマールを警戒
[備考]
※メガネ、蝶ネクタイ、シューズは全て何の効力もない普通のグッズを装備しています。
※自分達の世界以外の人間が連れてこられていると薄々感づきました。これから、証拠を集めて、この仮説を確認しようとしています。
※川田、ヒナギク、つかさの情報を手に入れました。
※ヌンチャク、バラバラになったシャンゼリオンのDVDは近くに放置されています。

465Classical名無しさん:07/12/26 23:49 ID:6BB05ZOs
                      
466二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:50 ID:XOWCHRZk

【劉鳳@スクライド】
[状態]:疲労中、全身に小程度のダメージ、左肩と腹部にダメージ中、右拳骨折(包帯が巻いてある)、核鉄で治癒中
[装備]:ニアデスハピネス@武装錬金(核鉄状態)
[道具]:支給品一式、4色ボールペン、色々と記入された名簿、スタングレネード×2 、タバサの眼鏡
     タバサのデイパック(内容は液体窒素(一瓶、紙状態)、支給品一式 、色々と記入された名簿)
[思考・状況]
1:コナンより真実を尋ねる。
2:コナンの態度よりまたも救えなかったのか?と不安。
3:近くにいるはずのルイズを探し、彼女を保護。平賀才人の伝言を伝える。
4:防人と合流、タバサのことを知らせる。
5:悪(主催者・ジグマール・DIO・アーカード・村雨)は断罪、弱者(シェリス、ルイズ、キュルケ)は保護。
6:シェリス・防人の知り合い・桐山の知り合い・核鉄を探す。
7:シェリスに事の真相を聞きだす。
[備考]
※絶影にかけられた制限に気付きました。
※桐山・防人・服部・タバサと情報交換しました。
※平次の策に乗る気はありません。
※タバサの遺体を抱え、制服の袖の部分がタバサの血で濡れています。
※E−6にタバサを埋葬しました。ネクロノミコンはそこに置いてあります。
467Classical名無しさん:07/12/26 23:50 ID:om6Ya.9I
 
468二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:51 ID:XOWCHRZk

【アミバ@北斗の拳】
[状態]:健康、疲労小、強い決意、今までの自分に強い自己嫌悪(多少軽減)
[装備]:ジャギのショットガン@北斗の拳(弾は装填されていない)、携帯電話 、
[道具]:支給品一式(×3)(一食分消費済み)
     綾崎ハヤテ御用達ママチャリ@ハヤテのごとく、ノートパソコン@BATTLE ROYALE(これら三つは未開封)
     ギーシュの造花@ゼロの使い魔、神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂 、
     スティッキィ・フィンガーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険、空条承太郎の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]
基本:ゲームの破壊、主催者の殺害。
1:コナンから事実の確認。
2:コナンの態度よりまたも救えなかったのか?と不安。
3:病院へ向かい、防人と合流。
4:ゲームに乗っていない人物と協力する。
5:ゲームに乗った人物と遭遇した場合説得を試みて駄目なら殺害する。
6:ケンシロウとラオウには出来れば会いたくないがいざとなったら闘う覚悟はある。
7:服部の策に乗り、脱出をネタに仲間を募る(一時的に保留)。
[備考]
※参戦時期はケンシロウに殺された直後です。
※『スティッキィ・フィンガーズのDISC@ジョジョの奇妙な冒険』の説明書は存在しません。
※服部・タバサと情報交換をしました。
※スティッキィ・フィンガーズのDISC、空条承太郎の記憶DISCに興味を持っています。
469Classical名無しさん:07/12/26 23:51 ID:UGnvs6w.
470Classical名無しさん:07/12/26 23:52 ID:om6Ya.9I
  
471二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:53 ID:XOWCHRZk

【服部平次@名探偵コナン】
[状態]:健康。両頬が腫れている
[装備]:スーパー光線銃@スクライド、ハート様気絶用棍棒@北斗の拳 、バイクCB1000(現地調達品)
[道具]:首輪、「ざわ……ざわ……」とかかれた紙@アカギ(裏面をメモ代わりにしている)、支給品一式 、色々と記入された名簿。ノート数冊
     才人のデイパック(内容は支給品一式、バヨネット×2@HELLSING、
     紫外線照射装置@ジョジョの奇妙な冒険(残り使用回数一回)未確認)
[思考・状況]
基本:江戸川コナンよりも早く首輪のトリックを解除する。
1:コナンから事実の確認。
2:コナンの態度よりまたも救えなかったのか?と不安。
3:近くにいるはずのルイズを探し、彼女を保護。
4:病院へ向かい、防人と合流。
5:シェリスを発見し、真実を明らかにする。
6:自分自身にバトルロワイアル脱出の能力があると偽り、仲間を集める(一時的に保留)
[備考]
※劉鳳と情報交換を行い、シェリスの名前を知りました。
※劉鳳、アミバ、タバサの事は全面的に信用しています。
※自分自身にバトルロワイアル脱出の特殊能力があると偽るつもりです。
※バトルロワイアル脱出の特殊能力は10人集まらないと発動しません。(現時点での服部設定)
※脱出作戦を行うかはどうかは考え中。


[共通備考]
※劉鳳、服部、アーカードの持つ名簿には以下の内容が記載されています。
 名簿に青い丸印が付けられているのは、カズマ・劉鳳・シェリス・桐山・杉村・三村・川田・才人・
 ルイズ・防人・カズキ・斗貴子・タバサ・キュルケ・コナン・服部 ・灰原
 赤い丸印が付けられているのは、ジグマール・DIO・アーカード・散・村雨
 緑色の丸印が付けられているのは、蝶野
472二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:55 ID:XOWCHRZk



 殺し合いが行われる舞台でも、川の流れは依然変わらず。
 破壊が行われようとも、血が流れようとも、その穏やかな流れは変わらない。
 その流れは見た目よりも激しく、下手をすれば沈んだまま戻らぬ者もいる。
 川原の岩に、白い手が伸びる。水を叩く音を立てながら立ち上がる者は桃色の髪を濡らし、咳き込みながら身体を起こす。
 ブラウスが水を吸い込み、重石となってルイズに纏わりつく。斗貴子との戦いと自身の爆発により、フラフラだが二本足でしっかりと立つ。
 土手に上がると同時に、踵を返してふらつく身体で杖を構える。ルイズの視線の先には静かに流れる川が映っているだけだ。
 息を荒げ、倒れそうになりながらもその瞳だけは闘志を失わない。
(スギムラ、わたしの正義を今見せてあげる!!)
 ずぶ濡れのデイバックを足元に落とした刹那、川より水柱が上がり、セーラー服と銀髪を濡らした斗貴子が殺意を持ってルイズを見下す。
 ルイズの十数メートル前方で斗貴子は降り立つが、一瞬覚束ない足取りでバランスを取るのに手間取る。
 さすがの斗貴子も、短い期間で三回川に落ちては体力を大幅に失う。
 吉良や赤木との戦闘も尾を引きずっている。それでも狂気は衰えず、ルイズを見据える。
「決着をつけましょう。『わたし』」
「黙れ! お前と私は違う! カズキを蘇らせることを諦めた、お前などと!!」
 苛烈な殺気を受けても、ルイズは笑みを浮かべていた。
 自分の殺気など、物の数でもない。ルイズは心の中でそう呟いた。
 相対する斗貴子を真っ直ぐ見据え、ルイズは呟き始める。
「トウホウにゲイゲキの用意あり……」
 それは、覚悟がタイガーロイド、三影英介と対峙したときに宣戦した言葉。
 それは、ルイズが初めて聞いた、戦いへと赴く自分を奮い立たせる言葉。

「――覚悟、完了!!」

 ルイズは身体が勇気に満ち溢れ、羽のように身体が軽くなる錯覚を起こす。
473Classical名無しさん:07/12/26 23:55 ID:5t/zTxus
  
474二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:57 ID:XOWCHRZk
 病院でコナンが吉良に向かって叫んだ言葉を思い出す。

 ―― 覚悟って言葉は身を奮い立たせる言葉なんだよ。

(本当にね。あの子供、なかなかいいこと言うじゃない。カクゴ、だからあなたはあの時こう叫んだのね。
スギムラの仇を討つために。自分を奮い立たせるために)
 ルイズの瞳に曇りはない。杉村や覚悟のような信念を持ち、斗貴子に迫る。
 コナンを守った彼女は、常に貴族らしくと心がけた信念を無意識に叶えた姿である。


 直線的なルイズの動きを、斗貴子は見飽きたと言わんばかりに無防備に構える。
 口が開く前に、今度は咽をつく。そしてサンライトハートで止めを刺せば、ルイズはおしまいだと判断した。
(早く終わらせる。でないと、私は……私は!!)
 斗貴子はルイズの唇に集中して構える。
 そして、ルイズの唇がかすかに動いたのを確認、力の限り地面を蹴る。
 その斗貴子の動きを見て、ルイズは笑って急にブレーキをかける。
 疑問符を浮かべる斗貴子の側頭部に衝撃が走った。
 チカチカする視界が晴れた先には、水を吸い込んだデイバックを振るったルイズがいた。
 斗貴子は内心舌打ちをする。水を吸い込んだデイバックは重く、斗貴子にも充分ダメージを与えれる凶器と化す。
 ルイズの唇に集中して、武器の存在を失念した自分の愚かさを呪う。
 結果、ルイズの接近を許してしまい、ついに斗貴子はルイズの爆発に巻き込まれる。
「ガァッ!!!!」
 爆風より飛び出た斗貴子は宙を舞い、錐揉みしながら地面に叩きつけられた。
 爆発の熱に肌は焼け、衝撃は全身の骨をバラバラにせんと軋ませる。
475Classical名無しさん:07/12/26 23:57 ID:Ei1/uh1w
 
476Classical名無しさん:07/12/26 23:58 ID:Ei1/uh1w
  
477二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/26 23:59 ID:XOWCHRZk
 しろがねの回復力で修復が始まるが、この戦いの後はしばらく戦えないだろう。
 斗貴子が振り返ると、自らの爆発でダメージを受けながらも、決して膝をつかないルイズがいる。
「なぜ……そんなに戦える! 私が見たところ、君は戦いの訓練を積んだことが無いはず!」
「わたしを助けてくれた人が言っていたわ。そこに正義があるのかって……。
もともと、友達の言葉だって言っていたけど、スギムラはこの言葉を持ってわたしを守ってくれたわ」
 一歩、ルイズは斗貴子に近寄る。まだ斗貴子は地面に伏している。
「ラオウに襲われたとき、シンパチはわたしに人を殺そうと考えている姿、似合わないっていってくれた。
ギントキも、わたしにそんな顔をさせないために、強い奴に立ち向かったんだって。
キラだって、あんたが殺したマリアさんのこともあるのに、わたしたちを助けるために一人残ってくれたわ。
シンパチだって、弱いくせにわけの分からない物に立ち向かっていったわ。
コナンなんて、子供なのにわたしを助けようと、あんたに立ち向かったわ。
わたしだけッ!」
 ルイズは叫ぶと同時に杖を振るう。その姿が、斗貴子にとって不快極まりない。
 彼女の戦士としての本能がちくりと痛む。
「わたしだけッ! 何もしないわけにはいかない!!」
「だから、私を殺すのか?」
 会話で稼いだ時間で動けるだけの体力を得たことを確かめ、斗貴子は立ち上がる。
 ルイズが止めを刺しにこなかったのは彼女もボロボロだからだ。
 最早気力だけで立っている状態なのだろう。
 そう考えている斗貴子に向かって、ルイズが微笑む。
 その笑顔は夕陽を受けて赤く、それでいて曇りなく、後光を刺したように輝いていた。
 いつか見たカズキの満面の笑顔を思い出すかのような『いい笑顔』だ。
「違うわ。『わたし』を救うの」 
 その言葉に呆気にとられている斗貴子に、ルイズが再び突進してきた。
 何度目か分からない突撃だが、斗貴子の身体は重く避けるための動きが出来ない。
478Classical名無しさん:07/12/26 23:59 ID:Ei1/uh1w
   
479Classical名無しさん:07/12/27 00:00 ID:mcr7LsJE
480二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/27 00:01 ID:yfUClADY
 もう一度、ニアデスハピネスに迫る爆発をくらえば斗貴子でもただではすまない。
 なのに、身体はまだ満足に動けない。
(やら――れる?)
 どうにかサンライトハートを逆袈裟に振るうが、狙いが逸れてルイズの左手首を切り離しただけだ。
 ルイズは痛みで僅かに笑顔を曇らせるが、耐えて斗貴子に接近する。
(マズイ!)
 しかし、斗貴子に対抗できる手段はない。ルイズは爆発を……
「大丈夫。まだ、戻れるから……」
 爆発を、発動させなかった。むしろ、斗貴子を優しく抱きしめる。
 斗貴子の川の冷たさで冷えた身体に、ルイズの温もりが伝わってくる。
「カズキって人……本当に好きだったんでしょう? 悲しいよね。けど、受け入れるしかないの」
「黙れ! 黙れ!!」
「サイトが死んで、わたしも悲しかった。
その気持ち、痛いほど分かるから……お願いだから正気に戻って。カズキって人が悲しむだけだから……」
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
 駄々をこねる子供のように、斗貴子にはルイズを否定する。
 この温もりを受け入れれば、もう二度とカズキに逢えなくなる。
 その恐怖心だけで、ルイズを突き飛ばし、脇腹にサンライトハートを突き刺した。
 俯くルイズの表情は見えない。そのことに斗貴子は安堵のため息を漏らす。
 しかし、ルイズはまだ死んでいなかった。デイバックの中に手を入れ、取った物を己の口元に運ぶ。
『カクゴォォォォ!!』
 取り出したのは、仲間を集う時に使った拡声器。
 これを使って何をするのか、突然のことで斗貴子は頭が回らなかった。
『わたしを殺したのは、銀髪銀眼の、顔に傷がある娘よ!!!』
 斗貴子はルイズが最後に、仲間に警戒を促すために拡声器を使っていると判断した。
481二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/27 00:02 ID:yfUClADY
 多くの人間にこの声が届けば人を殺しにくくなる。深くサンライトハートを突き刺すより早く、ルイズは最期の言葉を告げる。

『だけど彼女を許して、そして救ってあげて!! お願い、カクゴォォォォォォ!! みんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 押し込んだサンライトハートにより、ルイズの血が斗貴子にかかる。
 拡声器を力なく落とし、崩れていくルイズの顔には、先ほどと変わらない笑顔が浮かんでいた。
 凄惨な戦いを感じさせない表情。殺し、勝ったのは斗貴子なのに、敗北感に塗れる。
「私は…………」
 斗貴子は力なく膝をつき、赤く染まる空を見上げる。
 いつの間にか彼女の頬に涙が流れていた。

「――――――――――ッ!!」

 斗貴子は哭いた。ただただ天に向かって、あらん限りの声で哭く。


「フ……フフフ…………フハハハハハ」
 ひとしきり哭いた後、斗貴子は突如笑い出した。しかし、その瞳に狂気の色は薄れ、冷静になっていく。
 やがてゆっくりと立ち上がり、ルイズの死体から離れる。
 身体を休めるところを探さねばならない。そのため、拡声器が使われたこの場は危険だ。
「君はいいことを教えてくれたよ。さすがはもう一人の『私』だ。いいことを言う。
そうだな、このままじゃ私はカズキに嫌われてしまう。今気づけてよかった」
 斗貴子はフラフラと暗くなってくる街を進む。
 その足取りは覚束ないものの、一歩一歩確かに踏み続けた。
482Classical名無しさん:07/12/27 00:03 ID:OzDydSHI
483二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/27 00:04 ID:yfUClADY
「そうだな、優勝したら、私はカズキと二人だけの世界に連れて行ってもらおう。
カズキも、私以外に愛する人さえいなければ、きっと私だけを愛し続けてくれる」
 声はしっかりと発音され、目は正常に前を向き続ける。
 ただ、その考え方だけが、昔の彼女と違っていた。
「カズキ、私は夢を見つけたよ。カズキと一緒に、二人だけで暮らし続ける。
他の何もいらない。それだけが私の望み。カズキ、拒否してもいい。だけど…………」
 斗貴子の顔に影が落ち、皺を強調する。
 ドブ川よりも濁った色を宿す瞳を歪ませ、口角を高く吊り上げる。

「そうなったら、私は君の愛も身体も何もかも奪うよ。
たとえ、世界が私たち二人以外、滅んでも」

 ルイズの笑みとは対を成す、邪悪な笑顔。
 それもまた、『イイ笑顔』だった。


 かつて、白金という男がいた。
 たった一人の女を手に入れるため、世界を滅亡まで追い込むことまでした男だ。
 その男の望み、それはフランシーヌを手に入れること。
 彼が溶け込んだ生命の水(アクア・ウィタエ)を斗貴子は飲んだわけではない。
 しかし、最愛の人を失い、バダンによって歪められた戦士の使命は、白金と同じ精神状態にまで斗貴子を堕とす。
 太陽の輝きを持つサンライトハートは、皮肉にも黒い太陽となった斗貴子の手に握られる。
 サンライトハートの主にして、斗貴子の最愛の人、武藤カズキを殺した男、フェイスレスと化したかのような、斗貴子の手によって振るわれる。
 人を殺すために。彼女の夢のために。
 それは決して、武藤カズキが望んだことではなかった。
484Classical名無しさん:07/12/27 00:05 ID:OHx4xsqk
 
485二人の女、二人の愛 ◆WXWUmT8KJE :07/12/27 00:05 ID:yfUClADY
【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔:死亡確認】
【残り31人】

【F-3 東中央市街北 1日目 夕方】
【津村斗貴子@武装錬金】
[状態]:しろがね化、心臓代わりに核鉄、精神崩壊、判断力低下(本人は正常だと思っている)、あふれる多幸感
    右手消失、全身大火傷、頭部に刺し傷 (核鉄としろがねの力で回復中)。衝撃により、骨にヒビ。
[装備]:核鉄(サンライトハート・待機状態・胸の中)@武装錬金
[道具]:支給品一式×2
[思考・状況]
基本:最後の一人になり、優勝者の褒美としてカズキを蘇らせ、二人きりで暮らす『夢』を叶える。
1:とりあえずもう少し休んで回復を図る。
2:可能ならば、なんらかの手段で戦力の増強を図る。
3:強者との戦闘は極力避け、弱者、自動人形を積極的に殺す
4:アカギ、吉良、勇次郎、軍服の男(暗闇大使)は最終的に必ず殺す。アカギは特に自分の手で必ず殺す。

※全身に酷い火傷を負っており、右手も消失と、かなりの重傷です。
※セーラー服はボロボロに焼け焦げており、所々に穴が空いています。
※軍服の男(暗闇大使)は参加者の一人だと勘違いしています
※斗貴子が飲んだ液体は生命の水(アクア・ウィタエ)です
 また斗貴子は生命の水の事は知らず、只の治療薬の一種と思っています
※しろがねとなったため、身体能力、治癒力が向上しています
 また斗貴子はまだその事に気付いていません
※核鉄の異変に気づきました。
※アカギがカズキを殺した張本人だと、思っています。
※自ら自分の心臓を破壊し、核鉄(サンライトハート)を心臓の代わりとして埋め込みました。
 そのため核鉄やサンライトハートが壊れると確実に死亡します。
 既に「黒い核鉄」に「白い核鉄」を使用した後なので、ヴィクター化する可能性は皆無です。

[共通備考]
※ルイズの最後の訴えは、F-3東中央川沿いの周辺、1km四方に届いた可能性があります。
※折れた軍刀、キュルケの杖、拡声器はルイズの死体周辺に放置されています。
486 ◆WXWUmT8KJE :07/12/27 00:07 ID:yfUClADY
投下終了。支援に感謝します。
◆3OcZUGDYUo氏、投下が被って申し訳ない。

誤字や矛盾の指摘、お待ちしています。
487Classical名無しさん:07/12/27 00:09 ID:mcr7LsJE
投下乙
三村もルイズも熱いぜぇぇ!
特にルイズ、精神的には斗貴子に勝っていたぞ…。
でもルイズの最後の願いには悪いが、斗貴子は楽には死ねんな……。
488Classical名無しさん:07/12/27 00:15 ID:cpY5puRI
乙。
三村もルイズも、強敵相手に逃げずに戦うその熱さ……凄まじいぜ。
ルイズvs斗貴子は、本当魂が震えた。

別ロワとは正反対の最期を遂げたなぁ、ルイズ……かっこよすぎるぞ
489Classical名無しさん:07/12/27 00:18 ID:T0C5elYQ
魂の声よ、とどけぇぇぇ!!!
両氏とも投下乙です
490Classical名無しさん:07/12/27 00:18 ID:OHx4xsqk
お2人とも投下乙。

三村、化けたなー。目が覚めてからは一皮剥けそうだ。
そして気紛れで彼を見逃した旦那は何をしでかしてくれるのか。
どう考えても三村より喰いでのあるモノが沢山いるもんな。

斗貴子さん……途中描写がエロ杉w しかしヤバい方向にますます振り切れてないか?
そしてルイズ、コイツがこんな見事な散り方するなんて……。惚れた。
最期の叫び、誰に届いてどんな結果を齎すか、実に楽しみだ。
491Classical名無しさん:07/12/27 00:19 ID:1ME4K4go
御二人とも乙!
いや〜、冬なのに熱い!
ルイズは最後の一撃を加えなかった所が今まで出会った人達の影響を感じさせて面白かった!
あと三村よ
お前は本気で旦那に勝てる気でいるのかww
492Classical名無しさん:07/12/27 00:19 ID:z0nVSclo
投下乙!
ルイズさん、今までるるる呼ばわりしててスイマセンでしたぁ!!
これが貴族の底力かッ!

…えーと、三村。確かにお前の決意はいいんだが、根本が間違ってるんだからなぁ…
493Classical名無しさん:07/12/27 00:26 ID:EEPiro6M
両氏、GJです。

サードマン、生き延びたか……
しかし気絶してたら、放送聞けねえ! ヤベェ!
旦那もより便利な移動手段を手に入れたし……激戦の予感!

そしてルイズもかっこよかった!
『そこに、正義があるから』『覚悟完了』には、痺れたぜ……
TQNがある意味ふっきたので、こちらも期待。
そしてバーローが、男達のチームと合流。
己の無力さを痛感した四人は、どう動くのか。期待しないわけにはいかない!

もう1度、両氏GJ!
494Classical名無しさん:07/12/27 00:28 ID:bT87Ty4Q
しかしあれだな。斗貴子の現在地の近くにはラオウにDIOに吉良に神楽、行く訳はないがジグマールもいるな。
は、はは、ははは、は・・・・・・弱者近くにいねええええええええええええええええええ
495Classical名無しさん:07/12/27 00:29 ID:JtQOdWs6
乙です、でも残念なのはC・Dが劣化版S・Pな使われかたな気がする所ですね
三村程の知性ならじょうすけ並に相手が勝ち誇ったところを「既に直してるぜ」で
逆転が見たいです
496 ◆3OcZUGDYUo :07/12/27 00:40 ID:L9A9s7k2
>>486
投下乙!
ルイズが熱すぎる!しかも凄い良い散り方で参考になりました!
覚悟の当方に迎撃の用意あり!を言わせるとは予想出来なかったなぁ。
コナンも頑張ったのにあと一歩及ばずという無情感……頑張れコナン!
そして斗貴子……取りあえずごめん。まさかここまで君が活躍するとは思いもしなかったぜw


いえいえ、こちらこそ申し訳ないです。
これからも共に頑張りましょう!


それと自分が投下したSSですが間違えて三村を青年と表記してしまった事と、
銀時の原チャリについて言及がなかったのでwikiに収録され次第修正します。
あいつらが中学生って事をウッカリと忘れてた……w

>>495
ご意見乙です!
自分でも思う所はあったので是非参考にさせてもらいます。

最後に皆様感想どうもありがとうございました!
497Classical名無しさん:07/12/27 00:56 ID:ARj1H3QE
ここのルイズは旦那が好みそうな黄金の精神の持主だなあ
対するTQNはまさに吐き気を催す邪悪だな。
しかしフェイスレスと違って「夢」に見合った実力がないのに本家より小物臭がしないのはなんでだろ
498Classical名無しさん:07/12/27 01:32 ID:ekuCKDeE
両者投下乙!
三村…このままジョセフの生存を知らないでどこまで行くつもりだよ
ルイズは某ロワと比較するわけじゃないが、すっかり燃えキャラになって逝ったなぁ…
とりあえずコナンはようやく服部と合流できたけどどうなることやら

んで、気になったとこ
コナン
[状態]:全身打撲。左肩脱臭。← 脱臭(´・ω・`)?
499 ◆WXWUmT8KJE :07/12/27 01:37 ID:yfUClADY
>>498
ごめんなさぁぁぁぁい!!
脱臼ですorz
wikiに掲載した時に修正します。
500Classical名無しさん:07/12/27 01:48 ID:zyUVRZOI
両者とも乙です。

三村も頑張ってるんだけどなぁ。
原作張りの活躍を期待。

ルイズ…正直全く原作を知らないが、このロワを読んですっかり好きになってしまった。
このロワを読んでると今まで知らなかった名作を知れるのが楽しい。
何気にルイズ登場話のタイトルと今回のタイトルがシンクロニティしているのに感動した。
501Classical名無しさん:07/12/27 01:56 ID:y60S9O1Y
>>497
実力はそこそこあるから、弱者相手なら圧倒できるし
夢の為にとらなきゃいけない手段はそんなに難しくない(達成できるかは別として)からじゃね?
しかし、るるるが見事に感染したなぁ……

そして三村はアレだけがんばっても、俺の中でへたれ臭が取れんw
502Classical名無しさん:07/12/27 01:59 ID:hN2rngxU
三村よよくがんばったKOOLだけど
ロリカード戦はHOTだったぞww

うああああくぁああ
ルイズもよくがんばったよ
某ロワとは対極の終わりかたに涙腺が緩みっぱなしだよ
TQNは壊れすぎだろwwかなりエロス
503Classical名無しさん:07/12/27 03:42 ID:d1eFknWU
 ルイズ…。このロワにおける成長の集大成な散り際でした。
うう、これが真の貴族か。かっこよすぎる。あの世でサイトとらぶってくれ。
そして、なんか色んな意味でさらにやばいトキコ。どうなんの?
覚悟ははたしてトキコに輪廻をぶちこめるのか!?
(時間軸的に習得すらしてなそうだが)
とにかくGJ!!あと、がんばれコナン!!
504Classical名無しさん:07/12/27 04:21 ID:wd/ihPdU
両者ともGJ

>>422
三村頑張れ、超頑張れ
まずはクレイジーダイヤモンドの応用を覚えるのだ、そしてジョジョ特有の頭脳戦を見せてくれ!

てか旦那、凄味使っちゃったよw

>>486
のおおおおお今回もも熱い! 熱すぎる!
とくにルイズ、お前は何でそこまで……

>もしも才人の死を聞いたとき、銀時たちがいなければ。
>ルイズもまた斗貴子のようになっていたかもしれない。
そうなんだよなァ……
向こうとは正反対のラストを迎えるのが印象的

>「少し興奮しすぎたかな。でも、カズキ。君が悪いんだぞ。余りにも暴れん坊で、太くて硬くて、私を困らせるんだから」
おいクソ作者……燃える戦闘シーンエロくしてんじゃあねえw

それとバーロ、お前もウザキャラだのネタキャラだの弄られ芸人だの言われながら、
何だかんだで一生懸命なんだよな……がんばれ、本当の意味でよ
505Classical名無しさん:07/12/27 07:15 ID:82tPICXY
パロロワ史上、最強クラスのマーダーが新たな属性を装備して帰って来たッッ!
「あ」とか、萌えちまったじゃねえか、こんちくしょう!幼女!ようじょ!

ルイズのポジションがTQNと対極で、本当にもう一人『わたし』だよなあ。
実際別のロワであれだしw
もうエロ過ぎですよTQNwwマーダー四天王並みにキャラ立ってるじゃんwwwwwwwww
うしおととらのトワコみたいな顔して「諦めなければ夢はきっと叶う!」とか言ってるのを幻視したw
GJ!
506Classical名無しさん:07/12/27 09:57 ID:LRap.MvI
お二方投下乙

サードマンと旦那の激闘は素晴らしかった
三村がやられるんじゃないか心配したが
アーカード相手によく健闘したよ


ルイズの決死の覚悟はホントしびれた
確かにあの斗貴子さんは別のロワでの『わたし』だな
ひぐらしのループ世界を彷彿させた

そして斗貴子さんえろいよ、そして病みっぱなしだよ
四天王マーダーの新たな一角になるかもわかんねぇな
507 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:32 ID:hbUQSpL2
完成したので投下したいのですが……。
誰かいらっしゃいませんか? いたら支援を願います。
508Classical名無しさん:07/12/27 23:33 ID:2lFwAvRI
支援把握しました
つーか、速ッ!? 自分も頑張らねば……
509 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:34 ID:hbUQSpL2
 静寂が支配する町を風が吹き抜け、街路樹の葉がさわさわと揺れる。
 動くもののない町の夕暮れは、どこか異様なものを感じさせていた。
 と、その時、コンクリートの大地に二つの人影が伸びた。
 伸びた影の一つがゆらゆらと左へ右へと揺れ――

「ケン!」

 倒れかかるケンシロウの体をキュルケは慌てて支えた。
 一瞬遅れて、その細い肩にかなりの重量がのしかかる。
「……大、丈、夫?」
 奥歯を噛み、足を踏ん張りながら、キュルケはなんとかその言葉を喉の奥から搾り出した。
「……無論だ」
 肯定の内容とは裏腹に、その声音から、ケンシロウの疲労と肉体的損耗を類推するのは容易だった。
 鋼の体を持つ北斗神拳伝承者とて脳だけは鍛えることができない。
 DIOの放った一撃は、ケンシロウの両目から光りを奪うだけでなく、深刻なダメージを与えていたのである。
「ぐっ……」
 呻き声と共にケンシロウが掌で口を覆ってしゃがみこむ。
 堅く閉じた口元から嫌な色の液体がこぼれ、ケンシロウの掌をすべり落ちていく。
(マズイわね……)
 チラリとキュルケは後方に視線を送った。
 アカギという男に時間を稼いでもらったおかげで逃げ出すことはできたが、あの大男――確かラオウといった――は、
 尋常ではないスピードの持ち主だ。
 一刻も早く遠ざかる必要があるのだが――
(ケンがこの調子じゃ、このまま歩いて移動してちゃ追いつかれちゃうかもしれないわ)
 方法が無いことも無いのだ。
 しかしながら、ケンのダメージは重く、キュルケ自身も本調子とはいえない上に既に魔法を少なからず放っている。
510Classical名無しさん:07/12/27 23:35 ID:2lFwAvRI

511Classical名無しさん:07/12/27 23:35 ID:yfUClADY
          
512Classical名無しさん:07/12/27 23:35 ID:hbUQSpL2
だがしかし。
(やるしかないわ!)
 どこへ行ったか知る手段が無い以上、ラオウが自分達を見失う可能性は低くない。
けれど、あまりにも見つかった時のリスクが大きすぎる。
 今、ラオウに見つかれば間違いなく自分達を待っているのは――

死だ。
 
決断すると後は早かった。
 ケンシロウの腕の下に自分の体を差し込みながら
「ケン、私につかまって」
「しかし――」
「いいから!」
 ケンシロウの反論を一言の下に封殺し、
「ケン、まさかあなた、まだ私を無力な女だとか思ってるんじゃないでしょうね?」
 一瞬の沈黙の後、
「そんなことはない。さっき、俺はお前に命を救われた。
お前の炎がなければ俺はラオウの拳を受け、命を落していた」
「だったら今あなたのすべきことは、黙って私に身を委ねることじゃなくて?」
 不敵さを感じさせるキュルケの声音に、ケンシロウの唇がわずかに綻んだ。
「……分かった。すまないが、頼む」
「任せて!」
 言い終えると同時にキュルケはフライを発動させた。
 二人の体が宙に浮き上がり、それなりの速度で宙を滑空していく。
(……こ、れは……思ったより……きつい、わね……)
 当然ではあるが、一人を飛ばすより二人を飛ばせる方が精神力を使う。
 高く飛び上がれば、ラオウや勝ち残りを狙う者に見つかってしまうから、
 高度を家屋よりも低い高さに調整しなくてはならない。
高い集中力を要する高度の調整に。精神力が思った以上に削られていく。
 加えて、先ほどからたまに襲ってくる頭部の鈍痛。
 気を抜くと精神の糸が切れしまいそうだ。
 キュルケの食いしばった歯から苦しげな息が漏れ、額に脂汗が浮かぶ。
513Classical名無しさん:07/12/27 23:35 ID:2lFwAvRI
 
514 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:36 ID:hbUQSpL2
(負けるもんですか!)
 気力という気力を総動員してキュルケは前方を見据えた。
 
 ――どれくらい飛んだろうか?
 
 それほど時間はすぎていないはずだと、わずかに残った頭の冷静な部分は申告するが、
 キュルケには何十時間にも感じられていた
(こ、これくらい、きょ……り……かせげれ、ば……十分……か、しら?)
 
 ガクンと落下する感覚。
 
 総毛だつ感覚に襲われ、キュルケは慌てて体勢を立て直し、高度を上げた。
 だが、一瞬引き寄せた意識がまたも遠ざかっていく。
 滑りやすい意識の髪の毛をふんづかまえながら、キュルケは狂おしい目で辺りを見渡した。
 
 ――あそこに!

 キュルケの目は巨大な施設に吸い寄せられた。
 あれだけ大きければ、身を隠すこともできるし、どこからでも逃げられる。
 体を休ませるにはうってつけの場所だ。
 最後の力を振り絞って、入り口とおぼしき場所まで辿り着き――。

 地を踏む感覚が脳に伝わった瞬間、キュルケの意識は途切れた。




「……ん」

 ぼやけた視界に飛び込んできたのは、見知らぬ天井だった。
 柔らかい感触と清潔なシーツの臭い。身じろぎすると、体のしたでスプリングが軋んだ。
 (ここは……。ええと……)
515 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:37 ID:hbUQSpL2
 思考が上手く働かない。

「まだ、動かない方がいい」

 聞えてきた低い穏やかな声に、キュルケは小さく笑みを浮かべた。
 自然と体から力が抜けていく。
 ほうっと、キュルケは丸い息を吐いた。

 ――やり遂げた。

 ケンシロウをあの男から逃がすことができた。
 そのことがたまらなく嬉しい。
 首だけを動かして、声のした方を見る
 キュルケの眉が上がった。
「もう一つベットがあるんだから使えば? そんな格好で休めるの?」
 ケンシロウは回復と精神統一のために部屋の隅で座禅を組んでいたのだが、
座禅など見たことの無いキュルケには、ケンシロウの座り方は奇異に映ったのである。
「ああ、大分楽になった……。キュルケ、お前のおかげだ」
 確かにケンシロウの声には張りがあり、覇気が戻りつつあるように感じられる。
 吐き気もおさまっているらしく、その背筋はピンと伸びていた。
「どういたしまして」
 心地よい満足感が込み上げてくるのを感じ、キュルケは小さく微笑んだ。
 だが、すぐにその笑顔は淡雪のごとく消えてしまう。
「ケン……。その眼……」
 出血こそ収まっていたが、ケンシロウの両目は堅く閉ざされており、
 目の周りには生々しい傷がある。
「大丈夫だ」
 ケンシロウは穏やかに答えた。
「眼は見えずとも戦い続けた男がいた。その男が俺の中で生きている」
 どこまでも優しく、死すときも微笑んで死んでいった男、仁星のシュウの笑みがケンシロウの脳裏に浮かぶ。
 シュウ、そしてシュウの息子シバによって永らえたこの命。
516Classical名無しさん:07/12/27 23:37 ID:2lFwAvRI
  
517 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:38 ID:hbUQSpL2
 ここでシュウのように光を失うのは天命だろうと、ケンシロウは思っていた。
 それに、光を失うのは初めてではない。
 ラオウを倒さんとした南斗五車星の一星、海のリハクの仕掛けによって、
 一時的に光を失っていた時期もある。行動に支障は無い。
「目は見えずとも心で気配を感じることができる。心配するな」
 キュルケを安心させるように微笑みながら、
「なんにしても……。お前には借りができてしまったようだな」
 
 返事はなかった。

「……どうした?」
 困惑の成分が微量含有されたケンシロウの問いかけに、
「ごめんなさい……。ちょっと、思い出しちゃって」

 ――1個借り。

はにかんだ調子の呟きが耳の奥で蘇ってくる。
「タバサ……。無事だといいけど……」
 秀麗な顔に苦渋の皺が刻みながら、キュルケは呻いた。
 
 ――甘く見ていた。状況を。敵を。

 油断があった。
 魔法を使う自分達がよもや、魔法の使えぬ「平民」に負けるはずがあるまいと心の何処かで思っていた。
 本当はもっと前に気付かなければならなかったのに。
 神楽にアッサリと昏倒させられた時に、気付かなければならなかったのに。
(タバサ……)
 タバサの強さは知っている。
 彼女は卓越した魔法の使い手であるだけでなく、何度も修羅場をくぐりぬけている歴戦の戦士でもある。
518Classical名無しさん:07/12/27 23:38 ID:40Q0/Hww
支援
519Classical名無しさん:07/12/27 23:38 ID:2lFwAvRI
   
520Classical名無しさん:07/12/27 23:38 ID:yfUClADY
            
521 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:39 ID:hbUQSpL2
 それでもおそらく、あのDIOという怪人、自分の炎を弾き返したラオウという男、
 そしてユウジロウという赤髪の鬼。
 彼らには――

 勝てない。

 キュルケの苦悩の皺が深さを増した。
「タバサというのは――」
「……友達よ。雪風のタバサ。私の大事な……親友なの」
「そうか」
 ケンシロウの深みのある声音が鼓膜を震わせた瞬間、キュルケの感情が迸った。
「あの子は……。ずっと、ずっと一人で戦って――いいえ。戦わされてきたわ。
誰も側にいなくて。一番側にいて欲しい人はもう奪われてて……。
そのせいで雪風なんて二つ名をつけられるくらい心を凍り、つかせて……」
 無表情。無関心。無感動。
 それがトリスティン魔法学院の学友達の、タバサに対するイメージだろう。

 ――でも違う。

 違うことを自分は知っている。
 タバサの凍てついた心の中に熱いものが渦巻いていることを。
 あの日、初めてタバサの領地で真相を聞かされた日。
 寝室でうわ言を繰り返す彼女の声を聞いたあの時。

 この小さな友人の助けになりたいと思った。
 彼女の心に吹く雪風を吹き払ってあげたいと思った。

「――行きましょう、ケン。もう十分すぎるほど休んだんですもの。
ぐずぐずしている時間が惜しいわ。まずは、病院に行って神楽と合流しましょう。それから――」
 胸を焼き焦がす焦燥の炎に追い立てられるまま、キュルケは枕元においてあった杖に手を伸ばし、立ち上がった。
 一刻も早くタバサと合流しなければならない。
522Classical名無しさん:07/12/27 23:40 ID:2lFwAvRI
523 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:39 ID:hbUQSpL2
 ラオウのような、DIOのような、ユージローのような悪魔達と彼女がであってしまう前に、
 会わなければならない。
 タバサには、あの小さな友達には、やらなくてはならないことがあるのだから。
「よせ! まだ早い。お前には休息が必要だ」
「平気よ!」
 言い返しながらケンシロウの側を通り抜けようとして――
 ぐらりと自分の体がかしぐのを、キュルケは感じた。
 床が見る見るうちに視界の中で拡大していく、
 誰かに抱きとめられた。
「……お前に何かあれば、そのタバサというお前の友が、きっと悲しむ」
 耳元で声がする。
「分かってるわ。でも、私は――」
 ケンシロウの言葉に抗うように、キュルケは身を捩った。
「信じることだ。
お前の友がお前を信じているように、お前も友を信じてやれ」
 深く慈しみに満ちた声だった。
 掌からケンシロウの熱が伝わってくる。
(どうしてこんなに、安心できるのかしら)
 ケンシロウといると柔らかなものに包まれている、そんな気がする。
 本当は、このままこの暖かさに身を委ねてしまいたい。
 だがしかし、今はケンシロウに甘えるわけにはいかないのだ
「でも、神楽と合流しないと!」
 自分を包む温もりに負けまいと、キュルケは言った。
「……神楽は無事だ。おそらくな」
 ケンシロウの口から漏れた驚くべき言葉に、マジマジとケンシロウの顔を見つめた。
「まずは休め」
キュルケをベッドに横たえ、ケンシロウは口を開いた。
「お前が眠っている間に、色々と考えた。
まず、ジグマールの言っていたことについてだが……」
「ルイズや神楽の知り合いのギントキって人を含めた5人組と会って情報交換した後、
その5人組に襲われたっていう、あれね?」
524Classical名無しさん:07/12/27 23:40 ID:yfUClADY
    
525Classical名無しさん:07/12/27 23:41 ID:2lFwAvRI
    
526 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:41 ID:hbUQSpL2
「あれは虚言だろう」
 
 ――え!?

「……ちょ、ちょっと待って! ケン!」
 考えるような仕草をしながら、
「ヒコウをついて偽証を不可能にした、ジグマールの言葉に嘘はない。
そう言ったのは、あなたよ?」
「確かに言った。
だが……ジグマールは、DIOやカズマという男のように、
秘孔が効きにくい、もしくは、効かぬ人間であるかもしれない」
「なっ……」
 絶句するキュルケに向かい、ケンシロウは淡々と続けた。
「お前たちと出会う前、俺は、カズマという男と戦い、その男に北斗繰筋自在脚を叩きこんだ。
この技を受けた者は全身の筋肉が30分は弛緩した状態になり、その間は立つこともできなくなる。だが、カズマという男は立ち上がってきた。
そして、あのDIOという男に秘孔は通じなかった……」
DIOだけならば、カズマだけならば、例外もしくは桁外れの精神力による奇跡ということもできようが、
秘孔が効かない人間が二人も存在するとなれば、話は変わってくる。
 もっとも、本来ならばカズマが秘孔を受けて立ち上がってきた時点で考える必要があったのだ。
 秘孔の効かない人間の存在を。
 だが、『秘孔の効かない人間』というものを考えた時、ケンシロウの脳裏に浮かぶのは、
 聖帝サウザーの姿だったのである。

 ここに思考の落とし穴があった。

 サウザーは単に秘孔の位置が常人とは異なっていただけであって、
 秘孔を突いた時の効力は、同じだった。
 ゆえに、通常と同じ場所にある秘孔をついた場合でも同じ効力が発揮されるとは限らない、
 という考えに、今まで辿り着かなかったのである。
527Classical名無しさん:07/12/27 23:42 ID:NJfb8CGA
        
528 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:42 ID:hbUQSpL2
 ――違う
 
 ケンシロウの鉄の如き表情がわずかに歪んだ。
 
 ――認めたくなかっただけだ。

 秘孔が効きにくい、そして通じない人間がいるということを。
 ケンシロウの握り締められた拳がみしみしと音を立てた。
 
 言うまでもなくケンシロウは傲慢さや慢心とは程遠い男である。
 だが、北斗神拳を一子相伝の最強の拳法と信じていたのもまた事実なのである。
 北斗神拳は尊敬する兄達が全てをかけて求めた拳法なのだ。
 北斗神拳が、唯一無二の最強の拳法でないことなど、あってはならない。
 ケンシロウの心にこのような感情があったことを、誰が責められようか?
 
 だが、ケンシロウは憤る。
 ある意味慢心ともいえる思いを、増長ともいえる思いを、抱いていた己の未熟さが許せずに。

「――ケン?」

 キュルケの問いかけに、ケンシロウはようやく怒りの井戸の底から浮上した。
 類稀なる精神力と自制心を発揮して井戸に蓋をし、
「とにかく、違う世界の人間には秘孔が通じぬ場合がある、ということだ」
「じゃあ……」
「ジグマールが5人を襲って返り討ちにあったのか、
それとも彼らと何らかの諍いを起こして追い出されたのかは分からない。
だが、ジグマールが腹いせとして俺達に5人の悪口を吹き込んだけであると考えたほうが辻褄が合う」
 キュルケは大きく首肯した。
「そうよね……。大体にして、まず5人っていうのがおかしいのよ。
他の人間を皆殺しにして勝ち残りを狙う人間が、誰かと組めるわけないじゃない。
信用できない人間と組んでたって、いつ寝首をかかれるか分からないんじゃねえ……」
529Classical名無しさん:07/12/27 23:42 ID:2lFwAvRI
   
530 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:43 ID:hbUQSpL2
「そういうことだ。
それに俺は、神楽の仲間が、友を殺して生き残ろうという人間であるとは、どうしても思えん」
「ケンの心がそう感じた……のよね?」
 ケンシロウが頷くと、

「私もよ」
 キュルケは花が開くように笑った。

 ――まるでダメなオッパイお化け――――略してマダオ!!!!

 確かに神楽は、気が強くて口が悪く、おまけに短気だ。

 けれど、

 ――ごめんなさい。

 素直で子供らしいところもあり、

 ――こんな殺し合いに乗った馬鹿は私がぶん殴ってでも止めてやるネ。

 正義漢も強い。
 そんな神楽と一緒に暮らしていた人間が、他者を殺して生き残るという選択をするとは、
 キュルケにも思えなかった。
「じゃあきっと神楽は今頃、仲間と合流してるわね……」
 ほおっと深い息を吐いて、キュルケは安堵の笑みを浮かべた。
「よかった……。本当に」
 本当に良かった。
 友人同士で相争うことにならくて、本当に――よかった。
 ラオウやユウジロウとて手負いだ神楽も含めて 6人もいる集団に手は出すまい……。
 安堵の息を吐いて、キュルケはベッドに倒れこむ。
 その時、ふっとケンシロウが笑った気配が伝わってきて、キュルケは顔を上げた。
531Classical名無しさん:07/12/27 23:43 ID:NJfb8CGA
しえん
532Classical名無しさん:07/12/27 23:43 ID:Hci2FbMc
支援は消毒だー
533Classical名無しさん:07/12/27 23:44 ID:eM.NeB2Q
しえんしえん
534Classical名無しさん:07/12/27 23:44 ID:yfUClADY
    
535Classical名無しさん:07/12/27 23:44 ID:2lFwAvRI
     
536 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:44 ID:hbUQSpL2
「どうしたの? ケン」
「……シュウが、俺の友が言っていたことを思い出した。目が見えぬ代わりに心が開いた、と」
「開くとどうなるのかしら?」
「前には、見えなかったものが見える」
 きょとんとした表情を浮かべるキュルケを尻目に、ケンシロウはどこか楽しげな笑みを浮かべた。
(俺にははっきりと見える。お前の優しさと、友を思う熱き心がな)
 ケンシロウの笑みにつられるかのように、キュルケも照れたような表情を浮かべて応じる。
 暖かな空気が流れるのを二人は感じた。
 ややあって、ケンシロウは笑みを消し、キュルケの方に向き直った。
「キュルケ……。聞きたいことがある?」
「何かしら? 私に答えられることなら何でも答えちゃうわよ?」

「俺があのDIOという男に、剣のようなもので刺された時、そして目を抉られた時、
お前から見てあの男はどう動いたように見えた?」

 空気が張り詰めたのを二人は感じた。




「まず俺から、ありのままにさっき起こった事を話そう。
DIOは『俺の目の前から消えて側面に移動し、どこからか剣を取り出し、
それを突き刺すという動作を全て同時に行った』
DIOは、『離れた場所から俺の目の前に移動し、目突きを俺の両目に叩きこむという動作を、
同時に行った』
何を言ってるのか分からないかもしれない……。
正直なところ、俺にもいまだに何をされたのか、わからない。
しかしあれは、毒や催眠術で俺の知覚を誤魔化したとかそういうことでは断じて無い。
あれは何か、もっと別のモノだ」
 ケンシロウが口を噤むのをまって、今度はキュルケが口を開いた。
537Classical名無しさん:07/12/27 23:45 ID:2lFwAvRI
538 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:45 ID:hbUQSpL2
「そうね……。ケン、今あなたが言ってくれたことと全く同じよ。
DIOが消えたと思ったら、あなたの体に剣が刺さっていたわ。
そして、DIOが消えたと思ったら、今度はあなたの両眼に指を突き立てていた……。
そりゃあなた達の攻防に全然ついてはいけなかったけど、動作の影ぐらいは追えていたのに、
あの時だけは、本当に何も見えなかったわ」
「……やはりな」
 キュルケの言葉にケンシロウは小さく首肯した。
「DIOはおそらく、『一瞬のみ普段の数百倍もの速さで動くことができる』能力の持ち主だ。
俺はそう考える」
『どこからか剣を取り出す』『移動する』『刺す』という動作を同時に行うことは不可能だが、
 動作と動作の間隔を極限まで縮めれば、限りなく『同時に』行ったことに近づけることができる。
 DIOが『同時にやったと相手に誤認させて』いるのではなく、『実際に同時に行った』とすれば
 それしか考えられない。
 キュルケの言葉を聞いてケンシロウは自分の推論が正しいだろうと考える。
 離れた場所にいたキュルケにまで気を配り、DIOが自分と同時にキュルケにも何らかの術をかけたとは、
 考えにくい。
 目の前にいる敵を相手にしながら、他の人間にも気を配る余裕があるなら、
 何もまわりくどい手段を使う必要は無い。
 その余裕を目の前の敵に向けて、全力で倒してしまえばよいのだ。

「でもそんな技……。どうやって防げば……」
 ごくり、とキュルケは喉を鳴らした。
「心配するな。俺も何らかの手段で、DIOの知覚を妨げるぐらいしか方法は思いつかんが、
俺にはまだ、奥義が残っている」
 
 北斗神拳究極奥義夢想転生。

 己の体を無として敵の攻撃をかわし、そこから転じて敵に攻撃を叩きこんで粉砕し、生を拾う。
 究極奥義と呼ぶにふさわしい、攻防一体の絶技である。
539Classical名無しさん:07/12/27 23:45 ID:Hci2FbMc
ありのまま支援
540Classical名無しさん:07/12/27 23:46 ID:wd/ihPdU
(拡声器)<オレの歴史に新たなる1ページ
541Classical名無しさん:07/12/27 23:46 ID:NJfb8CGA
                
542 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:46 ID:hbUQSpL2
 先ほどの闘いでは、南斗紅鶴拳、伝衝裂波を使っていたため攻撃を受けからの発動になってしまったが、
 初めから使っていればDIOの技量では夢想転生を見切ることはできない――

 はずだ。
 
 キュルケの顔が喜色に輝いた。
「すごい! 本当にすごいわ! ケン」
「だが、この奥義は俺一人の物、誰かを守ることはできん……。
キュルケ、次に俺とDIOが戦う時は、俺から離れていてくれ。
そして俺が倒れなら迷わず逃げろ。お前ではあの男の相手は、はっきりいって荷が重い」
「それは、できないわね!」
 間髪いれずに響いた拒絶の言葉にケンシロウの眉がピクリと動いた。
「ケン、あなたも気付いているはずよ。
DIOはあの技を無制限に使えるわけじゃない。
まあ当然よね。使えるなら、何度も連続で使えばいいんですもの。
そうすれば、あそこにいる人間を皆殺しにすることだってできたはずよ。
それをしなかったってことは、私達メイジの魔法と同じように、使える回数に限度があるってこと……。
もしも仮に……。勿論私はあなたが勝つって信じてるけど、
あなたが負けた時は、私があなたの仇を討つ」
「キュルケ……」
「ケン、私の世界ではね……。魔法を使えるものを貴族というんじゃないわ。
決して敵に後ろを見せないものを貴族というのよ!」
 キュルケの声には確固たる意志の響きがあった。
「まあ、今のは友達の受け売りなんだけど……ね。
でも仲間がやられたのに、そこで尻尾を巻いて逃げることなんて、私にはできないわ。
ましてやそれが……。ましてそれがあなたなら、なおさらだわ!」
 数瞬の沈黙の後、
「……分かった」
 ケンシロウは居住まいをただすとキュルケに向き直った。
543Classical名無しさん:07/12/27 23:47 ID:40Q0/Hww
支援だッ!!
544Classical名無しさん:07/12/27 23:47 ID:yfUClADY
      
545Classical名無しさん:07/12/27 23:47 ID:2lFwAvRI
       
546Classical名無しさん:07/12/27 23:47 ID:Hci2FbMc
支援より優れたレスは存在しねぇ!
547Classical名無しさん:07/12/27 23:47 ID:NJfb8CGA
                      
548 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:47 ID:hbUQSpL2
「友情に熱き女、キュルケよ。お前の炎にも似た熱き思い、確かに受け取った。
ならば俺も誓おう。お前が倒れることがあれば、お前の代わりに戦うことを」
 重々しい口調で誓いの言葉を発した後、ケンシロウは表情をわずかに緩め、
「キュルケ、俺はお前と「友」になれたことを、心から嬉しく思う」
 
 返事は返ってこなかった。

「……キュルケ?」
 微量の困惑の粒子を含有させて、ケンシロウは疑問を発した。
 自分なりの最大の賛辞を送ったつもりなのだが、何故かキュルケが頭を抱えている気配が伝わってくる。
「ご、ごめんなさい……。ちょっと、胸が一杯になっちゃって……。
ええ! 私も嬉しいわ、あなたと出会えて!」
「そうか……」
 どこか満足そうな表情を浮かべるケンシロウを見て、キュルケの頭がガクンと下がった、

 ――分かってない。

 おそらくマミヤやバットが入れば、苦笑を浮かべて頭を振った後、
フォローの言葉の一つも発したかもしれないが
 残念なことにそんな人間は、この場にいなかったのであった。



 天井を見上げながら、キュルケはため息をついた。
(だけど、どうしたものかしら?
DIOがあの技を使ってきたら、死んだと気付くのは死んだ後ってことになりそうね……
どう考えても自分が杖を振るよりも、DIOが自分を殺すほうが速い。
 というより、ケンシロウですらまったくもって追いつくことも知覚することもできない相手と、
速さ比べをしても無駄というべきか。
(何度も使えない技なんだから、使わせてしまえば勝機があるんでしょうけど……。難しいわ)
 キュルケは、物憂げに前髪をかきあげた。
549Classical名無しさん:07/12/27 23:48 ID:40Q0/Hww
惜しいなケンシロウ支援
550 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:48 ID:hbUQSpL2
 窓から差し込む光が、キュルケの燃えるような赤髪を煌かせる。
 ふわりと舞った髪があかがね色に輝きながら雪崩落ちるさまは、
 まるで絵画の一枚を切り取ったようであった。
 無論、キュルケは自分のこういう仕草が男達にどういう影響を与えるか、十二分に知っている。
 最早意識せずともやってしまう自分に苦笑しつつ、
キュルケは、部屋の隅で瞑目しながら回復に努めているケンシロウをみやった。
(今のが見えていたとしても、ケンにはまったく通じないでしょうけどね……。
まあ、そこが素敵なんだけど)

 ――いけない。いけない。

 キュルケは軽く額を叩いた。
 今はこんなことを考えている場合では無い。
(『偏在』が使えれば最高なんでしょうけど、ないものねだりね……。
今から夜になるから、『錬金』でゴーレムでも作ればひょっとしたら目くらましになるかもしれないけど、
これも無い物ねだ――)

 ――待てよ。

 キュルケの頭に閃くものがあった。
 DIOの技はあくまで超速度で動くというもの。空間を渡っているのではない。
(『錬金』で周りの床の表面を油に変えておけばどうかしら?)
 ギーシュくらい『地』属性に秀でていれば、大掛かりな落とし穴を掘ることも可能なのだが、
流石にそれは無理だ。
(でも、高速で動けば視野はせばまる。足元だって多少お留守になっているはずだわ。
上手くいけば転ばせることぐらい、できるかもしれないわね。
そうだわ、ケンのさっき使ってた技と組み合わせることだって……)
 ケンシロウの使ったエア・ハンマーに似た技を使い、自分が錬金で周りの床を油に変えておけば……。
 そう。別にダメージを与えなくてもいいのだ。
 DIOにあの技を使わせて、使える回数を減らしてやることさえできれば、御の字だ。
551Classical名無しさん:07/12/27 23:49 ID:Hci2FbMc

552Classical名無しさん:07/12/27 23:49 ID:NJfb8CGA
                        
553Classical名無しさん:07/12/27 23:49 ID:2lFwAvRI
    
554 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:49 ID:hbUQSpL2
 胸が高鳴るのをキュルケは感じた。
「……休んでいろと言ったはずだが」
 キュルケが杖に手を伸ばす気配を感じ取ったケンシロウが、たしなめるように言ってくる。
「大丈夫よ! ちょっとやってみたいことがあるの!」
 快活な声でキュルケは答えた。
 やれることがある、ということは人の心を高揚させる。
 それが、惹かれている相手を強敵から守ることができるかもしれないことなら、なおさらだ。
 キュルケは床に杖を向けた。
 錬金はまごうことなき超初級魔法だが、最近使っていないのも事実。
 闘いにおいては、一瞬の遅れが命取りになる。
 できるだけ早く、大規模に油の砦を築く必要がある。
(そのためには、慣れておかなくちゃ、ね)
 所詮、初歩の魔法であるから精神の消耗度合いも少なく、練習しても問題はない。
 ルーンを呟き、杖を振り上げる。

 ――な!?

 キュルケの顔に驚愕の皺が刻まれた。

 ――もう一度。

 何も起こらない。

 ――魔法が使えなくなった!?

 大慌てで、キュルケは『ファイヤーボール』の呪文を唱えた。
 どくん、と体の中で力が頭をもたげ、そのまま体の中をかけめぐる。
(よかった……)
 呪文を中断し、安堵のあまりキュルケは床にへたりこんでしまう。
「……どうした?」
 我に帰ったキュルケは後ろを振り仰いだ。
555Classical名無しさん:07/12/27 23:49 ID:yfUClADY
     
556Classical名無しさん:07/12/27 23:50 ID:Hci2FbMc
 
557 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:50 ID:hbUQSpL2
 すぐ側に、いつの間にか側にきていたケンシロウの顔がある。
「ええ……ちょっと……」
 安堵する気持ちと困惑をまぜこぜにした感情を胸に、キュルケはケンシロウを見上げた。


 
 キュルケの説明を聞き終えたケンシロウの眉が、大きくその角度を変えた。
 大抵のことには動じないケンシロウの反応に、目を丸くするキュルケに、
「……すまないが、キュルケ。もう一度その錬金を試してみてくれないか?」
 キュルケは首肯した。
 眼を閉じ、精神を統一。
 先ほどとは違い、トライアングルクラスの魔法を使う繊細さと緻密さでルーンを唱え、
 体内の魔力の流れを追う。

 ――ん?

 魔力の流れが悪い。
 キュルケの眉間に皺の断層が現れた。

 ――従いなさい。

 自分の意志に逆らうとする魔力の流れをねじ伏せ、キュルケは気合と共に杖を振った。

 ――成功。

 額に浮かぶ汗の玉を拭いながら、キュルケはほっとしたような笑みを口の端にのぼらせた。
「油、だな」
「ええ、これが『錬金』よ……。
本当はもっと簡単にできるんだけど……。なんだか今日は、調子が悪いみたい」
 ぺロリと舌を出し、キュルケは大息を吐いた。
558Classical名無しさん:07/12/27 23:51 ID:2lFwAvRI

559Classical名無しさん:07/12/27 23:51 ID:NJfb8CGA
                       
560Classical名無しさん:07/12/27 23:52 ID:Hci2FbMc
ケン支援
561Classical名無しさん:07/12/27 23:52 ID:yfUClADY
       
562Classical名無しさん:07/12/27 23:52 ID:2lFwAvRI
          
563 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:52 ID:hbUQSpL2

 ――疲れた。

 たかだか初歩の錬金をつかうために、これほど精神力を削られるとは。
(せっかく回復しかけてたのに……。これじゃいつまでたっても回復しないわ)
 小さく舌打ちしようとして――

「……お前の調子が悪いのではなく、悪くさせられているのだとしたら、どうする?」
 
 キュルケは舌打ちの動作を中断した。
「どういうこと!? ケン」
 詰め寄るキュルケを手で制し、

「あたぁっ!」
 
 ケンシロウは自分の体に指を叩きこんだ。
「ちょ、ちょっと!」
 慌てるキュルケを黙殺し、ケンシロウはありとあらゆる部位に指を叩きこんでいく。
「やめてっ!! どうしたっていうのよ!?」
 裏返った声で叫びながらキュルケはケンシロウに飛びついた。
「……落ち着け。自棄になったわけでも、自殺するつもりもない。
北斗神拳に伝わる秘孔は七百八十。だが、そのどれもが人の命を奪うものではない。
人の体を回復させ、病を治す秘孔もある」
「……そうなの」
 キュルケはほっと胸を撫で下ろし、そんなキュルケを見てケンシロウは優しく笑った。
「すまない、心配させてしまったようだな」
「そんな……。私こそ早合点しちゃって……」
「だがこれではっきりした――」
564Classical名無しさん:07/12/27 23:53 ID:NJfb8CGA
                    
565Classical名無しさん:07/12/27 23:53 ID:2lFwAvRI
  
566 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:54 ID:hbUQSpL2
 驚いて見上げてくるキュルケを見えない瞳で見つめ返し、

「俺の秘孔は何らかの力によって妨害されている。
そしてその妨害の力の源は――ここだ」

 そう言って、ケンシロウは首輪を指差した。
 ケンシロウが秘孔の制限に気付くことができたのは、『秘孔が効かない可能性』に気付いたことが大きい。
 この場所に来るまでのように、秘孔が――否。北斗神拳が絶対のものだと考えていたならば、
秘孔の力が制限される可能性について考えもしなかったであろう。
 仮に秘孔を突いたときの効力が異なると仮定して、だ。
 その理由を、効きにくい人間が存在するからである、と簡単に考えていいのか。
 先ほどからケンシロウはそれをずっと考えていたのである。
 
――何か他に原因があるのではないか?

そんな時、キュルケから『錬金』が、何らかの力で発動できないという話を聞いた。
ケンシロウの頭に閃くものがあった。
念のため、もう一度試してもらったところ、『いつもより調子が悪いが』発動した。
ケンシロウが自分の推論を確信に変えるには十分だった。
そして最後の詰めとして、実際に秘孔の効力を阻害する力が働いているかどうか調べたのである。
今更言うまでも無いが、北斗神拳を極めた者は、体内を巡る気の流れを操作することがを可能である。
当然、体内を気がどのように流れているかは知り尽くしている。
 注意深く妨害する力の源を調べた所、その源流に行き当たり――
 その場所こそ、首輪が嵌っている場所だった、というわけである。

「なんてこと……」
 ケンシロウの話に、キュルケは顔をしかめた。
「お前の『錬金』の力を、あの爺どもが制限しようという理由……。言うまでもないな」
 そケンシロウは首輪を軽く叩いた。。
567Classical名無しさん:07/12/27 23:55 ID:2lFwAvRI
     
568Classical名無しさん:07/12/27 23:55 ID:Hci2FbMc
C・YEN
569Classical名無しさん:07/12/27 23:55 ID:40Q0/Hww
支援だぜ
570Classical名無しさん:07/12/27 23:55 ID:yfUClADY
                               
571Classical名無しさん:07/12/27 23:55 ID:NJfb8CGA
                         
572Classical名無しさん:07/12/27 23:56 ID:HNU.DB6w
当方に支援の用意あり!
573 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:56 ID:hbUQSpL2
 ――首輪の金属を別の金属に変えられ、中身を覗かれることを防ぐため。

 キュルケや、その友人達の能力を知っていれば当然の措置であろう。
「そして俺の、おそらくはラオウやジャギ、アミバの秘孔を制限した理由は――」
「『ハンデ』、でしょうね!」
 
 ――今から諸君には、殺し合いをしてもらう!

 シエスタを殺した老人の顔を思い浮かべながら、嫌悪感を存分に込めてキュルケは吐き捨てた。
「あなたやラオウみたいな強い人間に秘孔まで使わせたら、『殺し合い』にもならずに、
ただの虐殺になってしまうから……。はっ!! お優しいことだわ!! 
私達にも勝てるチャンスがあるから諦めるなとでも言いたいのかしら!?
ご褒美だけでなく、こんな手のこんだことまでするなんてね!あの糞爺……。つくづくいい趣味してるわ!!」
 瞳に憎悪の火を燃やしながら、キュルケは杖を握り締めた。

(ハンデ……か)

 怒りを滾らせるキュルケとは対照的に、ケンシロウは思考の海に沈んでいた。
(あの爺が、俺達の力をできるだけ互角のものにしようとしているのなら、
あのDIOという男もおそらくは……)
 ひょっとすればあの超高速の「技」こそが、DIOの本来の力なのかもしれない。
 そうだとすれば、あのDIOという男の操る人形の攻撃が雑だったことにも説明がつく。
 あれほどの動きができるなら一瞬で相手を屠ってしまえる。
ゆえに技を磨く必要などなかったとのだろう。
(だが、解せん……。互角の戦いを望むなら何故、ラオウから記憶を、夢想転生を奪った?)

 ――北斗神拳究極奥義、無想転生。馬鹿な、ケンシロウが身につけているなど……

 両眼から走る激痛に混じって聞えたラオウの声。
 錯覚かとも思ったが、その後の闘いで、ラオウは夢想転生を使わずにその剛拳を振り回すのみ。
574Classical名無しさん:07/12/27 23:56 ID:2lFwAvRI
   
575Classical名無しさん:07/12/27 23:56 ID:wd/ihPdU
しえn
576Classical名無しさん:07/12/27 23:57 ID:NJfb8CGA
                   
577 ◆wivGPSoRoE :07/12/27 23:57 ID:hbUQSpL2
 いくらユリアを『殺した』ことで哀しみを知ったとはいえ、ラオウと自分はどちらかが生きている限り戦う宿命。
 二人が同時に存在すれば、ラオウか自分のどちらかが倒れる以外に結末は無い。
 ケンシロウとラオウが共闘するはずなどないことを、あの爺どもは知っているであろうから、
 ラオウの記憶を奪うことにその必然性はないはずなのだが……。
(何故だ?)
 ケンシロウは一人、解けない思考の迷宮をさ迷っていた。



「……便利ねえ」
 蛇口を捻って水を止めながら、キュルケは一人ごちた。
 この世界の水道はとても便利だ。
 軽く頭を振って、部屋からもってきたタオルで顔を拭く。
 冷たい水のおかげで、心で荒れ狂っていた激情がなんとかおさまった気がする。
 キュルケは、洗面台からみえる廊下の奥――ケンシロウがいる部屋の方を見やった。
 おそらくケンシロウはまだ、物思いにふけっているだろう。
(ケンにも色々あるみたいね……)
それでなくても色々考えなきゃいけないことはあるし……。困ったものだわ)
 期せずしてため息が漏れた。
 首輪によって、『錬金』が制限されていることは分かった。
(逆に考えれば、錬金で首輪の金属を、錬金でなんとかできるってことなんだけど……)
 そのためには、錬金を妨害する力を発しているという首輪を何とかする必要がある。
(堂々巡りね!)
 小さく舌打ちして、キュルケは歩を進め始めた。
 今でもひょっとすれば何とかできるのかもしれないが、
 錬金魔法を制限する力が首輪に込められていたことを考えると、とても自分の首輪で試してみる気にはなれない。
(爆発でもされたらたまらないわ)
 首輪の表面を撫でながら、キュルケはもう一度ため息をついた。
578Classical名無しさん:07/12/27 23:58 ID:NJfb8CGA
                        
579Classical名無しさん:07/12/27 23:59 ID:yfUClADY
 
580Classical名無しさん:07/12/28 00:00 ID:O5OePAgw
 続いて浮かんでくるのは見慣れた二つの顔。

「信じてるわよ、タバサ……。ルイズもね」
 
 ――二人ともきっと無事のはずだ。
 
祈りにもにた思いを抱えながら、キュルケは一つのドアの前に立った。
ケンシロウのいる部屋は目と鼻の先。最後の寄り道とばかりにドアを開け、中を覗く
「ふぅん?」
 興味を惹かれたキュルケは部屋の中に足を踏み入れた。
 机や椅子の形が、他の教室とは一線を画していた。
 ありていに言えば上等で、それまでの教室よりは遥かに居心地がよさそうである。 

 無論、にこの教室が『職員室』と呼ばれていることを、そして先ほどまでいた部屋が『保健室』と呼ばれていることを
 キュルケが知るわけもない。

 とその時、キュルケの目が、あるものを捕えた。
「宝……石?」
 薄暗い部屋の中で、何かが赤く光っている。
 近寄ってよく見てみると、それは台座らしきものに埋め込まれているようだった。
「調度品にしては、芸術性に乏しいわね?」
 じろじろと宝石らしきものが埋まったそれを見ながら、キュルケは首をかしげた。
 
ちなみに、光っているのが留守番電話の赤ランプであり、
キュルケの見ているそれは、宝石を埋め込んだ調度品ではなく電話機であることを
キュルケが知るわけもない。

何の気なしにキュルケは手を伸ばし、赤い宝石に触れた。
台座から取れないか、試してみる。
意図せずしてキュルケの指がボタンを押し込んだ。
581Classical名無しさん:07/12/28 00:01 ID:LYHRHFNM
                      
582Classical名無しさん:07/12/28 00:01 ID:O5OePAgw
<録音は、一件です>

 不気味な声が静まりかえった教室に響きわたり、キュルケは思わず後ろに跳びすさった。
 驚愕に目を見開くキュルケの目の前で、台座から変な音がし、若い男の声が響き始めた。

<今から話すことを真面目に、かつ冷静に聞いて欲しい。
 俺の名は―――すまない、言うことは出来ない。 だが、信じて欲しい――>

【C-4 学校。一日目 夕方】
【ケンシロウ@北斗の拳】
[状態]:カズマのシェルブリット一発分のダメージ有り(痩せ我慢は必要だが、行動制限は無い)全身各所に打撲傷
    キング・クリムゾンにより肩に裂傷 両目損失。吐き気はほぼ、おさまりました(気合で我慢できる程度)
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム(1〜3、本人確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない。
1:放送まで休んで、その後病院に向かって神楽と合流する。
2:アミバを捜索、事と次第によれば殺害。
3:ジャギ・ラオウ・勇次郎他ゲームに乗った参加者を倒す。
4:助けられる人はできるだけ助ける。
5:乗ってない人間に独歩・ジャギ・アミバ・ラオウ・勇次郎の情報を伝える。
[備考]
※参戦時期はラオウとの最終戦後です。
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました 。
※秘孔の制限に気付きました。
※ラオウが夢想天性を使えないことに気付きました(ラオウの記憶が操作されていると思っています)
583Classical名無しさん:07/12/28 00:01 ID:QmHhjCu2
         
584Classical名無しさん:07/12/28 00:02 ID:O5OePAgw
【キュルケ@ゼロの使い魔】
[状態]後頭部打撲(治療済) 貧血気味 マントが破られている
   魔法に使いすぎによる精神の消耗(回復基調にはある)
[装備]タバサの杖@ゼロの使い魔
[道具]支給品一式
[思考・状況]
基本:学院に三人で帰る、殺し合いには乗ってない人を守る、乗っている人は倒す
1:放送まで休んで、その後病院に向かって神楽と合流する。
2:タバサ、ルイズと合流する。
3:サイトを殺した人物が乗っていた場合容赦はしない。
4:帰る方法を考える。
[備考]
※軽い頭痛。
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました
※ケンシロウに惹かれています。

<二人の首輪についての考察と知識>
※首輪から出ている力によって秘孔や錬金が制限されていることに気付きました。
 ケンシロウは首輪の内部に力を発生させる装置が搭載されていると思っていますが、
 キュルケは、首輪は媒介にすぎない可能性があると思っています。

<二人のDIOの能力について>
※瞬間的に普段の数百倍の速度で動く能力だと思っています(サイボーグ009の加速装置のイメージ)
585Classical名無しさん:07/12/28 00:02 ID:LYHRHFNM
                          
586Classical名無しさん:07/12/28 00:03 ID:STqHdwPc
   
587Classical名無しさん:07/12/28 00:03 ID:STqHdwPc
  
588 ◆wivGPSoRoE :07/12/28 00:04 ID:O5OePAgw
以上です。
皆様、夜分にもかかわらず長の支援、真にありがとうございました。

題名は「気付かないのはお約束」、です。

分量的に上下かもしれませんがその場合、
>>536
>空気が張り詰めたのを二人は感じた。

ここまでを上編、残りを下編でお願いいたします。
589Classical名無しさん:07/12/28 00:08 ID:M4ruthcU
 
590Classical名無しさん:07/12/28 00:14 ID:STqHdwPc
投下乙です。

いつかくると思ってたが、シュウのことを語るケンがいいなァ。
夢想転生を使わなかったラオウに関する考察や首輪の考察も、なんとも彼ららしい。
キュルケって、飛んだり錬金術使ったり出来んのか……スゲェ。
『世界』の真の能力に関する考察もよかったです。
さすがに、『時を止める』なんてわかんねーよな……花京院は凄すぎる。
そして留守電……ついにきたか。
いやっほーぅ、とにかくGJ!
591Classical名無しさん:07/12/28 00:14 ID:LYHRHFNM
投下乙。
こんな夢のような空間なのに、変な気を起こさないのがケンシロウクオリティ。
考察も隙がなくてかなりGJでしょう!
美形がどんどん追い詰められ(ry
592Classical名無しさん:07/12/28 00:19 ID:QmHhjCu2
投下乙!
ケンのニブチン!! まあ、ユリアがいたしなw
何気にラオウの夢想転生について考える細かさがいい。
自分に秘孔をついて制限を確かめるのがケンらしい。
キュルケもいい感じなんだけどなww 頑張れww
GJ!!
593Classical名無しさん:07/12/28 00:21 ID:W94vDCUM
空気だのなんだの言われてたキャラが続々魅力的になっていく、そうだよ、みんな魅力的なやつ等なんだ、いらない子なんて居ないのーさー
考察似合わない二人だけど、めっちゃいい雰囲気だよこれ。キュルケもケンシロウもかっけー、素晴らしい話でした!GJ!
594Classical名無しさん:07/12/28 00:25 ID:psiApIgQ
投下乙

最後の一人になってやっとゼロ魔の魔法が真価を発揮し始めたな。
考えてみりゃ、キュルケ以外は使用可能な状態にすらなってなかったんだが。
専門の火系統以外の初歩的な魔法でも十分に便利な使いどころがあるし、空気脱出なるか?

ケンシロウも微妙に惜しいところもあるが、概ね正しい考察は見事。
まさか時を操る能力なんて考えないよなあ。
鷲巣も持ってたんだが……

二つの作品の世界観を十全に理解した作品、実にお美事でございました。
最後に三村の勘違い罠が発動したが、どうなるんだろうか。
595Classical名無しさん:07/12/28 00:26 ID:deLIxvUo
まさか、この2人で考察が深まるとは思わなかった……しかし読んでしまえばもう納得するしかない。
にしても、ケンの鈍感ぶりがw さりげなくヤバい誓いを交わしてるし!?
GJ!
596Classical名無しさん:07/12/28 00:35 ID:9.9Secf6
投下早ッ!
何てニブチンなんだケンシロウ!

マダ……キュルケのカルチャーショックがよく出ててGJ
さて、三村の留守電がどういう結果を出すか……
597Classical名無しさん:07/12/28 00:42 ID:h1dLAYGg
GJ!
ケンシロウ、ようやく秘孔の謎に気付いた。
これでますます、美形が窮地に……
しかし、美形による誤解フラグが解けたと思ったら、今度は三村の留守電。
さあ、これがどう働くか……


後、一つ指摘をば。
究極奥義は夢想転生ではなく、無想転生です。
そこだけ、修正お願いします
598 ◆wivGPSoRoE :07/12/28 00:50 ID:O5OePAgw
ぬけてた……。>>577の後に↓が入ります。

(それにしても……。ケンのヒコウを制限する力、私の錬金を制限する力……
ひょっとしたら他にも制限されている『力』があるかもしれない。
よくもまあ、こんな小さい首輪にそれだけの力が込められるものね)
 
 ――どうやったら、そんな多種多様の力を首輪に封じ込めることができるのか?
 
(ケンが言ってたことだから間違いないんでしょうけど……)
 キュルケは首を捻った。

 ――万能すぎはしないか?

 キュルケは持った杖に目を落とした。
 メイジは杖を媒介として、魔法を発動させる。

(この首輪ってひょっとして……)

 キュルケの水面を揺らす疑問の波は、なかなか収まる気配を見せなかった。


 窓から差し込む光でオレンジ色に染まった廊下を歩きながら、
 何の気なしに、キュルケは一つのドアを開け放った。
 首を突っ込んで中を覗いてみる。キュルケの顔に笑みが浮かんだ。
(なるほど……。この建物は、この世界の『学校』なのね)
 机や椅子の形は違っていても、黒板と教卓だけは、どこの世界も変わらないとみえる。
(学校の授業なんて退屈なだけだったけど……。
こうなってみると、すごく懐かしく思えてくるるから不思議だわ)
 妙ちきりんなものばかり作るコルベール教師や、『風』の系統の自慢ばかりするギトーの顔すら懐かしく思い出される。
599Classical名無しさん:07/12/28 02:13 ID:v6UVzGEI
投下乙!
ようやく考察しだしたケンシロウだけど微妙にずれてるw
キュルケもようやくロワの自覚持ち始めたみたいだけど三村の電話は…こいつららきすたキャラと面識ないしな

ところで一点
蛇口を捻って水を止めながら、キュルケは一人ごちた。

ごちた…?
600Classical名蕪しさん:07/12/28 02:22 ID:Mcv3wiZ6
>>599
 「独り言を言う」 の古語表現が 「ひとりごつ」。
 現代語の活用で、「ひとりごちる」 。
 過去形になると、「ひとりごちた」 ディス。
601Classical名無しさん:07/12/28 02:22 ID:SPx1SOiA
【独り言つ】ひとり・ご・つ
(「ひとりごと」を活用させた語)独り言を言う。
宇津保物語(俊蔭)「ー・ちてなぐさめける」
602Classical名無しさん:07/12/28 02:50 ID:v6UVzGEI
>>599
そ、そうだったのか…教養不足だったぜ、すまん
603Classical名無しさん:07/12/28 04:56 ID:9FgTtCQs
GJ、ケン冴えてるなぁ、後はもう少し恋心に敏感になれば……ってそれはこのロワの男陣全員に言えるか。

しかしますます首輪の謎が深まるな……GEで変化せず、練金が怖い(まだ可能性だが)
ミニサイズの、強化外骨格?とかいうトンデモアイディアが浮かんじまったぞw
604 ◆hqLsjDR84w :07/12/28 20:08 ID:P1y2TEUI
間に合わなそうなので、予約期間を延長させてください。
605Classical名無しさん:07/12/28 20:09 ID:wjBEJRRg
頑張ってくれ番人氏!俺は応援してるからな!
606Classical名無しさん:07/12/28 20:11 ID:QmHhjCu2
もう、みんな頑張れ
607Classical名無しさん:07/12/28 20:12 ID:W94vDCUM
>>604
マジ頑張れ! 応援してるぜ!
608Classical名無しさん:07/12/28 20:34 ID:wjBEJRRg
リロードするの忘れてたぁーorz
hq氏も勿論応援してるぜ!頑張って!
609Classical名無しさん:07/12/29 00:16 ID:r2BMK0XI
しかし、アーカードはパロロワに登場したら、災厄を撒き散らしてるよなw
610Classical名無しさん:07/12/29 00:35 ID:5J.nJ/uQ
このロワで旦那に「こんなにも美しい日の光」を見せる者はいるのだろうか
611Classical名無しさん:07/12/29 01:22 ID:HiEolf5c
 まあ、でも旦那は弱点はっきりしているし、基本的に絡み手は使わんからな。
だからこそ、おいしんだが。
612Classical名無しさん:07/12/29 02:23 ID:WuV2ZymE
>>609

実際のアーカードって一応社会生活適応してて、アンデルセンとタイマンやるぞって時でも
セラスが老人の集団旅行一行が割って入らせたら、それが去るまで戦闘を中断するぐらいのある程度の常識はあるんだよな。
それがどうしてロワでは目に留まった人物を片っ端からぶち殺そうとする野蛮人に変化するんだろ。

別に批判じゃないんだが、アーカードのキャラ微妙に違う気はするんだよな。
613Classical名無しさん:07/12/29 02:27 ID:GqGxY9Ho
単に最初の説明でそこが戦場だと認識しているだけかと。もし主催者が何も伝えなかったら、流石にどういう事か確認してから動くと思うが
614Classical名無しさん:07/12/29 02:29 ID:zvxNhFS6
ロワ内にはインテグラルいないしな。
615Classical名無しさん:07/12/29 02:38 ID:nh3X.Ees
実は召喚された時期が見的必殺命令の直後だったとかw
616Classical名無しさん:07/12/29 08:48 ID:UqLstPMg
ま、一般人の巻き添え出ても全然気にしないヒトだからな。
……無力な処女に出会ったら、気紛れにセラスみたいに眷属に加えるかもしれないが。
617 ◆hqLsjDR84w :07/12/29 13:23 ID:r2qB7Rkc
一時投下スレに投下してきました。
問題なければ本投下しますので、読んでくださった方はご意見お寄せ下さい。
618Classical名無しさん:07/12/29 13:35 ID:hNWJU4f2
>>617
乙です。
特に問題は見当たらないと思います。
首輪をつけるメリットがあるのはいい発想だと思います。
感想は本投下までとっておきます。
619Classical名無しさん:07/12/29 13:47 ID:v3s3yIjA
>>617
問題ないと思います。
紙や夢、DISC辺りを一気に解決してくるとは…
俺も感想は本投下までとっとこう
620Classical名蕪しさん:07/12/29 15:06 ID:lG.s0FrM
>>617
 ハヤテが暗闇に対して採った戦法の描写が、ちょっと分かりにくいかも。
 内容は、ディ・モールト良しッ!
621Classical名無しさん:07/12/29 19:05 ID:xZsiToIs
>>617
乙!!
私も問題はないと思います
なによりまた内容が濃いのがGJ!!
622Classical名無しさん:07/12/29 21:18 ID:J1mxpUgg
気のせいかも知れんが……◆1qmjaShGfE氏ってもう予約切れてる?
俺の記憶が正しければそろそろ全裸でwkwkタイムだと思ったんだが。
623Classical名無しさん:07/12/29 21:37 ID:m.mvXCbY
>>622を全裸にして俺もwktkしてるぞ
624Classical名無しさん:07/12/29 21:54 ID:7yvsnPg6
やめれwお前らのストリップを見てもwktkできえねぇww
625Classical名無しさん:07/12/29 22:11 ID:GqGxY9Ho
あれ……予約って五日じゃなかったっけ?
626 ◆d4asqdtPw2 :07/12/30 02:53 ID:eql0zkKk
申し訳ないです。延長させてください。
627Classical名無しさん:07/12/30 03:06 ID:OY8bfgek
>>626
頑張れー。俺も頑張るー
628 ◆1qmjaShGfE :07/12/30 16:42 ID:OY8bfgek
パピヨン、こなた、シェリス、村雨、DIO投下します
繁華街に入ると、村雨良は一度クルーザーを止めて街の様子を眺める。
様々な店舗が立ち並ぶこの辺りを見ても、さしたる感慨を村雨は持たなかった。
この戦いに参加している者達ならば、ここで食料や備品の調達を考えるであろう。
しかし、特にそんなものを必要としない村雨は、そこに人が居るか居ないかのみを考えていた。
「零、ここにお前の探し人は居るか?」
『否! しかし、人に在らざる者が居る!』
刃牙以外は見つけても教えないと宣言していた割に、案外協力的な零に村雨はその認識を改める。
「何者だ?」
『わからぬ! だが、すぐ側にある小さな反応は女子供と思われる! 状況次第では直ちに保護する必要がある!』
「保護? 俺がか?」
『他に誰が居るか!?』
それ以上返事をせずにクルーザーに乗る村雨。
「場所は?」
『おお! 行ってくれるか良よ! ここから真南に下った先にその男が居る! 急げ良!』
保護などには欠片も興味が無かったが、その人外の存在とやらにはお目にかかってみたい。
零の指示通りにクルーザーを走らせる村雨。
その黒く濁った瞳は、そこに映る大半の物の価値を知らず、それ故意味の無い物と断じたそれらを記憶に留める事は無かった。


お風呂上り、ほっかほかの体のまま外で勝達を待ち続けるパピヨン、こなた、シェリスの三人。
大きく伸びをするシェリス、火照った体に当たるそよ風が心地よいのか、満足気な顔である。
浴衣の襟から覗くほのかに赤らんだうなじが、浴衣などでは隠しきれないその胸のふくらみが見る人を魅了するのだが、生憎それを楽しむ

べきこの場唯一の男性であるパピヨンは、全くといっていいほどシェリスの肉体に興味が持てなかった。
「遅いな」
パピヨンがそんな事を呟くと、こなたも口をへの字にしながら頷く。
「そうだね。何かあったのかな」
その気配を感じたパピヨンは、楽しそうにそちらを眺める。
「いや、何かあるのはどうやらこちらの方みたいだぞ」
誰よりも先にその音を聞きつけるパピヨン、すぐに残りの二人にもそのバイクの爆音が聞こえてきた。
パピヨン達の数メートル手前にバイクを止めるのは村雨良。
緊張してその動きを見守るこなた、シェリスに何が出てくるか楽しみでしょうがないといったパピヨン。
村雨はクルーザーから降りると、零の鞄を前に置く。
お前が用があるのだから、お前が話をしろという意味らしい。
『そこの男! 貴様人間ではないな! その二人をどうするつもりだ!』
いきなり鞄がしゃべれば誰でも驚く。
が、真面目に驚いてくれたのはシェリスだけであった。
「おー、しゃべるアイテムとは流石に定番は押さえてあるね〜」
驚いているようだが、同時に受け入れてもいるこなた。
「何だ、オレの正体が知りたいのか鞄。ならば教えてやろう」
全く動じていないパピヨン。
左手の指先でマスクをかけなおし、右手を腹に当て、半身になりながら優雅に応える。
「オレの名は パピ! ヨン! 蝶人パピヨンだ!」
とてもエキセントリックな自己紹介に、げんなりするシェリスを他所に、零はとことん真面目に反応する。
『ならば蝶人パピヨンとやら! 貴様の目的を述べよ! 何故女子供を連れ歩くか!?』
「役に立つからさ」
『何の役に立てるつもりだ!』
「もちろん、ここから抜け出す為にだ。この状況で他の目的を持つ奴が居るのなら、そいつはよっぽどの間抜けか狂人だろうよ」
パピヨンの返事に驚く零。
『何と!? ではお前はこの狂気の沙汰に逆らわんとする義勇の徒であったか!』
零は嬉々として村雨に語る。
『聞いたか良よ! このような人に在らざる者や、女子供までも力を合わせようとしているのだ! お前も何時までも愚かな真似をしてい

ないで彼等に力を貸すのだ!』
つまらなそうに話を聞いていた村雨は、感情の篭らない声で答えた。
「知らん。それでお前の話は終わりか? なら今度は俺の番だ」
村雨の姿が、改造人間ゼクロスのそれへと変化していく。
「お前達は、俺に何を見せてくれる?」
呆れ顔のパピヨン。
「同行するのなら最低限、意思の統一ぐらいは図っておけ」
『よせ良! 彼等と協力して……』
空中高く飛び上がるゼクロス。
そこからパピヨン達目掛けて跳び蹴りを放つ。
その一撃はアスファルトを大きく穿ち、道路に無数の亀裂が走る。
しかし、既に三人はその場から姿を消していた。

両脇にこなたとシェリスを抱えたまま、パピヨンはビルの壁面を文字通り駆け上がる。
「ぎゃーーーー!! な、何してんのよ! 落ちたらどうすんのよこれ!!」
「ありがとパピヨン」
屋上まで辿り着くと、二人をその場に降ろす。
「ここで高みの見物でもしてろ。それとシェリス、泉に何かあったら全てお前のせいにする。そのつもりでしっかり守れ」
「な! なんで私が……」
それ以上文句を言う前に地上から屋上までゼクロスが飛び上がって来る。
その反応の良さと、動きの早さにパピヨンは感嘆の息を漏らす。
「へえ、案外やるなお前」
そう呟きながら、パピヨンが後ろ手に指差した先には下へと降りる階段があった。
パピヨンの意図を了解したシェリスは、こなたの手を引いて一目散にそちらへ駆け込む。
階段はどうやら一番下の階まで続いている模様。
ただ、ここが地上十階だというのが問題だ。
少しでも早く地上に降りたいのなら、エレベーターを使う方が良い。
不安はあるが、二人はエレベーターを使う事にした。

パピヨンはこの企みを潰すと決めた。
それは、危機に陥る武藤の手助けでもない、先祖の隙を窺い力を横取りするのとも違う。
全てを自分で決め、あらゆる困難を自分の責任に於いて処理しなければならない。
命を賭けて。
思い出すのは、初めてあの蔵でホムンクルスの研究日誌を見つけた時の興奮、高揚、歓喜。
全てが手探りの中、絶望的な環境の中でも決してその意思を折らず、遂に成果を得られた時の感動。
一番気にかけている人間の死、未だかつて出会った事の無い逃亡困難なこの状況、そして未知の技術によってこれを為しえた正体不明の敵。
体が震える。ホムンクルスとなった無敵のパピヨンに、まだ運命とやらは挑んでくるらしい。
面白いじゃないか、ホムンクルスとなるずっと以前から逆境には慣れている。
この逆境を、自らの知恵と力でひっくり返すからこそ、あの時の歓喜が蘇るのだ。
必要なのは目的完遂の為の鋼の意思、全てを客観的に判断し、常に最善の選択を選び続ける事。
それは人間には難しい事だろう。例えば武藤やあの鳴海と言う男には確実に無理だ。
だが蝶人へと進化したパピヨンならば可能なはず。
手段は選ばない、その為に常に脳を回転させ、最適解を求め続ける。
パピヨンはその姿勢を全てにおいて適用するつもりであった。


この男の動きは早いし、そのパワーは目を見張る物がある。
身の軽さも大したものだ。その基本能力において、もしかしたらパピヨン自身を上回るかもしれない。
だとすれば、何が飛び出してくるかわからない現状で、下手にこちらから仕掛けるのは不利。
じっとその動きを見つめ、次にどう動くかを観察するパピヨン。
ゼクロスはパピヨンがどう考えているかなど意に介さないかのごとく、まっすぐにパピヨンへと向かってくる。
パピヨンは、真下の床を強く踏んだ後、大きく後ろに跳ぶ。
逃がさんとばかりに追いすがるゼクロスだったが、飛んだ先の床が崩れ、足を取られてバランスを崩す。
パピヨンは床を踏んでそこを脆くさせておいたのだ。
なので、当然そこでゼクロスの動きが止まる事も予想済み。
すぐに距離を詰め、正面からヤクザキックを胸板に叩き込む。
ホムンクルスの怪力を持ってそれをされては、ゼクロスとてその場に留まる事適わず、後ろに蹴り飛ばされてしまう。
パピヨンは先ほどのゼクロスのように、大きく上に跳びあがる。
「大技は、きっちり相手を崩してからだろう。お前戦闘した事あるのか?」
侮蔑の言葉を吐きながら、吹っ飛ばされたゼクロスに更なる飛び蹴りを見舞わせる。
真上から、床と挟む事でその衝撃が逃げないように、効率的にゼクロスに痛撃を与えるパピヨン。
そして、その攻撃にはもう一つの意図があった。
床の耐久力がパピヨンの蹴りに耐え切れなくなったのだ。
ゼクロスごと床が抜け、その下へと落下する。
そこはエレベーター孔の真上。パピヨンはビルの構造を外から見ただけで、その位置を特定していたのだ。
「二手、三手先ぐらい読め、間抜けが」
エレベーター孔を真っ逆さまに落ちていくゼクロスは、五階付近まで来ていたエレベーターの天井に叩きつけられる。
パピヨンは当然、それをそのままにしておく気などない。
エレベーターを支えるワイヤーの束を掴み、腕力だけで引き千切る。
がくんと大きく揺れるエレベーター。斜めに傾いたエレベーターの端に手を伸ばし、辛うじて落下を防ぐゼクロス。
「無駄な努力だ」
もう一本のワイヤーも同様に引き千切る。
エレベーターはゼクロスを乗せたまま落下していった。
足場が安定しないせいで、ゼクロスは一々打つ手が遅れる。
狭い空間である為、とんでもない音量で響く轟音と共に一番下に叩きつけられ、大きくひしゃげるエレベーター。
その上で衝撃に耐えるゼクロスは、更なる危険に気付いた。
パピヨンは、四階の所で止まっていたもう一台ある隣のエレベーターをワイヤーごと持ち上げ、何度も振って境にある鉄柱をへし折ると、下のゼクロス目掛けて放り投げてきたのだ。
「念には念をっと」
鉄柱が邪魔で隣のエレベーター孔に飛んで逃げる暇は無い、両手を上に上げてそれを支えんとするゼクロス。
その全身に衝撃が走る。
エレベーターのような鉄の塊を四階分の高さから投げつけられたのだ。その衝撃たるや推して知るべし。
足場にしていたひしゃげたエレベーターが更に潰れてゼクロスを支えられなくなり、降ってきたエレベーターと一緒に落下する。
ゼクロスは完全にエレベーターに潰される形になってしまった。
人差し指で自分の頭をつつくパピヨン。
「力任せが全てでは無いとい……」
思わず言葉が止まってしまう。
パピヨンが放り投げたエレベーターから異音が響き、更なる変形を見せている。
「何で出来てるんだあいつは」
遂にエレベーターの天井部を引き千切ってゼクロスがその姿を現す。
その瞬間、ゼクロスの頭上二メートルの高さから声が聞こえた。
「蝶ダメ押しキック!」
今度は自らエレベーター孔に身を投げ、ゼクロスの頭部に十階の高さからの飛び蹴りを食らわしたのだ。
再びエレベーターの残骸に埋め込まれるゼクロス。
パピヨンはすぐに飛びあがって、エレベーター孔を上へと昇っていく。
適当に五階辺りのドアの前まで行くと、その閉まった扉をこじ開ける。
五階のフロアに立つと、ちらっと下を見る。
そこには残骸の中に立つゼクロスの姿があった。
「これは、少し工夫が必要みたいだな」
これだけやっても倒れないゼクロス相手に、しかしパピヨンは愉快そうにそんな事を呟いた。


扉の前でエレベーターを待つこなた、シェリスの二人。
1……2……3……4……5……
ランプが徐々に上へと上がって来る。
「ねえシェリスさん」
「ん?」
「普通さ、災害時ってエレベーター使ったらダメなんじゃなかったっけ?」
「別に災害ってわけでもないでしょ。そんなエレベーターが壊れる程の戦いなんて、劉鳳じゃあるまいし……」
エレベーターのランプが5で止まる。
……4…3…2・1どっかーん
ビル全体がエレベーター落下の振動に揺れる。
どちらからともなく顔を見合わせる。
「こなた、階段使おっか」
「そだね」
銭湯でこなたの年齢を聞いてから、シェリスはこなたにちゃん付けする事を止めた。
それはそれはとてもショッキングな出来事であった。
再び響く派手な振動音を他所に、二人は階段へと駆けていった。


パピヨンの入っていった五階のフロアに立つゼクロス。
そこは、ワンフロア全てが飲食店になっている階のようで、入り口の側に『焼肉食べ放題』の看板が立てかけられていた。
この敵は小賢しい真似ばかりしてくる。
注意深く周囲を確認しながら、店の中へと入っていく。
ゼクロスが店内に入った途端、店の中にBGMが流れ始めた。
その音楽が何なのかゼクロスにはわからないが、とにかくジャカジャカとやかましいそれを無視して店内を見回す。
広い店内に誰かが居る気配は無い。
焼肉プレートのついたテーブルが十数個と、それに椅子が四つづつ並べられており、特に代わり映えはしない景色。
ただ、店中に何処から持ってきたものか、大量の生肉がぶちまけられている。
生肉独特の強烈な匂いが鼻を付くが、ゼクロスにはそれに何の意図があるのかわからない。
ゼクロスは人の通れそうな場所を探す。
奥の厨房、そしてトイレに続く扉。他にこの部屋から出る場所は無い。
やはり本命は厨房であろう。
ゼクロスはそこへと歩を進めようとするが、騒々しい店内BGMの中に、あの男の声を聞いた事でその歩みを止めた。
『やあ、怪獣君。君の名前は聞いてなかったからね、そう呼ばせてもらうよ』
やはり周囲に人影は無い。声の出所を探すと、それはどうやらスピーカーからBGMと共に漏れ聞こえているらしかった。
『色々と聞きたい話もあったんだが、残念な事に君ともここでお別れだ。残り数秒の命をせいぜい楽しんでくれ』

厨房の奥、冷凍庫になっている部屋で、パピヨンはコードごと引っ張ってきたマイクを床に置く。
贅沢を言わせてもらえるのなら、もう少し時間が欲しかったが、これ以上の足止めは不可能だろう。
店内にがなるように鳴るBGMは、漏れるガスの音を誤魔化す為。
そこら中にぶちまけられた生肉は、その独特の匂いをかき消す為。
パピヨンは各テーブルに引かれたガスホースを全て切断していたのだ。
重厚な冷凍庫の扉を僅かに開き、扉を盾にするように厨房に置いてあったチャッカマンに火を付ける。
厨房の半ばから垂らされた油を伝って、その火は店内へと流れ込むようになっている。
「次はもっと美しい姿に生まれ変われよ」
油に火を付けると、どうやら予想以上にガスの回りが速かったらしく、さして油を伝う間も無く、ガスに引火した。
一瞬でガスを伝って膨れ上がる炎、その速度が限界を超えた所で、それは爆発となって焼肉店を吹き飛ばした。
ギリギリで扉を閉めたパピヨンであったが、その背を扉に付けていた事が災いし、扉に叩きつけられた衝撃をモロに背中にもらってしまう。
大きく前方へと吹き飛ばされ、頭上までの高さがある棚に顔から突っ込む。
崩れ落ちる棚の下敷きになり、そこから毀れたプラスチックトレーまみれになるパピヨン。
「……た、たまにはこういう事もある」
華麗に決めるつもりだったのが、ちょっと失敗して恥ずかしいらしく、誰が見てるでもないのに、そんな言い訳がましい事を言いながら立ち上がる。
扉を開けると、冷凍室の冷気をも吹き飛ばさん勢いで熱気が吹き込んでくる。
そこら中に火の手があがり、そこかしこに砕け散った調理器具が転がっている。
死体の確認と、首輪の回収の為店内へと向かうパピヨン。
しかし、それ以上にこの怪獣もどきがまだ生存している可能性が気にかかる。
油断無く気を配りながら厨房を出る。
店内は、砕け、跳ね飛ばされたテーブルや椅子が散乱し、壁も床もほとんどの場所が黒ずんでいる。
所々からちろちろと火の手が上がっており、割れ散った窓から吹き込んでくる空気がそれらを大きく揺らしている。
しかし、何処にもゼクロスの姿は見えない。
一つの可能性に思い至ったパピヨンは吹っ飛んでサッシだけになった窓から下を覗き込む。
居た。
アスファルトの道路に、最初にゼクロスが跳び蹴りかました時並のへこみとヒビ割れがある。
そして、そのど真ん中にゼクロスがぶっ倒れていた。
爆風に吹っ飛ばされ、窓から外に放り出されて下まで落下した模様。
「アイツ実は相当運悪いんじゃないのか?」
そんな運の悪さも何のその。ゼクロスは這いずるようにその身を起こすと、止めてあったバイクに乗り込む。
一瞬上のパピヨンに視線を向けた後、爆音と共にビル内にバイクで突貫するゼクロス。
「……不死身か奴は?」
ダメージは負っているようだが、あの男を行動不能にするまでにかかる労苦を考えると、流石のパピヨンもため息を禁じえなかった。
奴はすぐにバイクで駆け上がって来るだろう。
それまでに、また新たな仕掛けを用意しなければならない。
ぐるっと視線を一回りさせただけで次なる策を考え付いたパピヨンは、自分の余りの天才さに眩暈を覚え、万感の想いを込めて叫んだ。
「パピ! ヨン!」

怒りに燃えて階段を走り昇るゼクロス。
本来クルーザーには、飛行機能や、超高度へのジャンプ能力が付属されているのだが、ゼクロスはそれを知らなかったのだ。
だが、現在のこの能力にゼクロスは満足している。
通常のバイクではありえない馬力、走破性能、そしてそのボディの異常なまでの頑丈さ。
一気に五階まで辿り着くと、パピヨンの居る店内へと飛び込む。
パピヨンは柱に寄りかかり目を閉じている。
「貴様は殺す!」
ゼクロスの雄叫びと共にクルーザーがパピヨンに襲い掛かる。
クルーザーアタックと呼ばれるクルーザーでの体当たり技なのだが、その名をゼクロスが知っているはずもない。
店内は障害物が多い、それを踏みしだきながら走るクルーザーのタイヤが僅かに浮いた瞬間を狙って真横に跳んでこれをかわすパピヨン。
ホムンクルスの脚力のおかげか、店内とは思えない速度で突っ込んでくるクルーザーをもかわしきる。
クルーザーはそのまま柱に激突するが、その勢いは衰えず、まるで発泡スチロールか何かのようにぶち抜いてしまう。
このクルーザーのパワーと硬度は流石に想定外だ。
その先でクルーザーを反転させ、再度パピヨンを狙うゼクロス。
余裕の笑みで迎え撃つパピヨンだったが、実はそれほど余裕がある訳ではない。
大型バイクとは思えないクルーザーの旋回性能、ガソリンではなくジェット燃料でも使っているのではと思える加速度、それらを苦も無く操るゼクロスの技量。
これら全てが合わさって、パピヨンの能力ぎりぎりの回避運動を要求してくるのだ。
一回一回が全て綱渡り、途中でゼクロスが腕からワイヤーを伸ばして来た時は肝を冷やしたが、そんな戦いをパピヨンは一度たりとも余裕の表情を崩さずにやりきってみせた。
最後、この一撃が全てを決める。
今までは全て横に跳ぶ事で回避してきた。しかし今度は真正面から突っ込まなくてはならない。
こちらに向かって加速するクルーザー。
パピヨンの頬に冷汗が一筋、コイツの直撃を食らった日にはホムンクルスといえど、一撃でバラバラになる。
パピヨンはそんな一撃に、こちらから向かって行かなければならない。
今までと違うパピヨンの動きにも、ゼクロスはまるで動じずアクセルを握る。
ゼクロスに向けて大きく一歩を踏み込むパピヨン。
それを助走と読んだゼクロスは、前輪を高々と掲げ、ウイリー走行でその有効打撃面積を高める。
これならば下手なジャンプでは飛び越えられない。
天井ぎりぎりをかすめるようなジャンプのみそれを可能とするが、その時パピヨンはゼクロスの頭上にその無防備の腹を晒す事になる。
アクセルとは逆の腕で拳を握り、飛び越えるパピヨンを待ち受ける。
しかし、パピヨンは地を這うような低い姿勢でその横をすり抜けて行ったのだ。
上へのフェイントでそちらに意識を振らなければ、ゼクロスの真横をすり抜ける事は不可能。
たちまち捕捉され、蹴りなりパンチなりをクルーザーで加速された勢いを持って叩き込まれる。
ゼクロスはウィリーを維持する為に足を外す事が出来ない。
完全に虚を突かれたせいで、既にパピヨンはゼクロスの真横。これに跳びかかってもこちらも勢いがついている以上効果的な打撃を加えられる自信は無い。
パピヨンのすり抜けを許したゼクロスはクルーザーに乗ったまま勢い余ってその先にあった柱を砕く。
パピヨンはゼクロスとは反対側に滑り込みながら振り返る。
これで、全ての準備は整った。
最後の一本、危ういバランスで天井を一本のみで支えていた柱が砕かれた事で、六階の床、五階の天井がそのまま二人の頭上へと振ってきた。
パピヨンは計算通りの位置でそれを待ち構える。
通気孔が通っているその位置ならば、天井は薄いはず。そこを両手で支えて天井をぶち抜いてこちらは損害を減らす。
対するゼクロスはまともに天井の壮大な平手打ちをもらう予定だ。
しかし、予定は未定。
パピヨンの計算が僅かにずれ、パピヨンの頭上の天井は崩れなかったのだ。
ゼクロスの頭上は完全に崩れ落ちたのだが、パピヨンの頭上を支点にその天井が一枚の板のように斜めになりながら降ってくる。
片側が完全に五階の床に落下した衝撃で、パピヨン頭上の天井部分も落ちるかと思ったが、辛うじてそこは堪えていたらしく、天井は斜めのままだ。
いつまで経っても落ちてこない天井にひやひやしながらパピヨンは呟く。
「……蝶ラッキー」
自分の計算ミスは見なかった事にする模様。
何せゼクロスは斜めに落ちてきた天井の下敷きになっているので、当初予定していたダメージ以上の物を与えられたのだ。
そしてパピヨンはノーダメージ。これで文句など言ったらそれこそバチが当たる。
瓦礫が舞い上がって良く見えないが、その奥にゼクロスはクルーザーごと挟まっているはず。
こいつがこれだけタフな理由に幾つか思い当たるフシがある。
出来ればそれを確認したいのだが、その余裕があるかどうか。
そろそろ舞い上がった瓦礫のカスや埃が晴れてきた。
その奥へと目を凝らすパピヨン。
ゼクロスは、クルーザーごと瓦礫の下敷きになっていた。それは良い。
だが、それでも彼は行動出来るのか、その状態から無理矢理体を起こそうとしている。
「うおおおおおおお!!」
トン単位の重量を、ゼクロスは気合の声と共に一息で持ち上げる。
本気でコイツの相手をするのが嫌になってきたパピヨン。
これ以上ここで戦うと、逃げているこなた達にまで影響が及びかねない。
パピヨンは一旦上階へと戦闘の場を移すべく、身を翻したのだった。


エレベーターの方から不穏な轟音が聞こえる。
それを意識的に無視して、階段へと向かうこなたとシェリス。
うんざりするような長い階段であるが、これしか道は無いのだ。仕方が無い。
並んで階段を駆け下りる。
二人共無言だ、こなたはパピヨンが心配だからであり、シェリスはどうパピヨンとこなたを始末するか悩んでいたせいである。
640Classical名無しさん:07/12/30 17:05 ID:aaNdiLPk
十階、九階、八階、七階、六階と順調に降りてきた所で、こなたはその足を止める。
つられて足を止めたシェリスが訊ねる。
「どうしたのよ?」
こなたは眉をひそめている。
「何か、変な臭いしない?」
足を止めると、下の方から騒がしい音楽の音が聞こえてきているのがわかる。
言われてシェリスも鼻を利かせると、微かにだが変な臭いがする。
「別に気にするような事じゃないでしょ」
確かにその通りでもあるので、再び二人で階段を降りていく。
音楽の出所はどうやら五階らしい。五階フロアに近づくにつれて大きくなるその音でそうとわかる。
二人共走り降りながら、ちらと横目に五階フロアを見る。
その瞬間、凄まじい轟音が二人の耳に届く。
「嘘……」
「まさか……」
その音に再び足を止めた後、自らに迫る危機に気付いた二人は同時に回れ右をし、猛然と階段を駆け上がった。

『ふぁいあああああああああああ!!』

悲鳴をあげて逃げ出す二人を追うように、五階の部屋から噴き出した炎が嵐となって階段へと吹き込んで来るのだ。
「いやあああああ! 死ぬっ! 燃えるぅぅぅっ!!」
「ビルのパニック物にありがちー」
余裕のある発言をかますこなたも、もちろん必ず死ぬと書いて必死の形相で走っている。
六階まで辿り着くと、そのままフロア内部へと駆け込み、事務所になっているらしいそのフロアのドアを開いて大急ぎで閉める。
そのドアの窓から、真っ赤に燃え上がる炎の柱が見えた。
「あ、危なかったわ……何事よ、これ」
「いや〜、テレビで見ると笑ってられるけど、実際喰らうとまるっきり笑ってる余裕無いもんだね〜」
一息ついた後、窓から外を見るとすぐに火は引いていったようだ。
642Classical名無しさん:07/12/30 17:06 ID:aaNdiLPk
恐る恐る扉を開くと、確かに温度は上がっているが、通れない程ではない。
それを確認したシェリスはこなたに頷いて見せる。
二人は部屋を出て、再度階段へと向かう。
こんな目に遭うのは二度と御免である。なので二人はさっきよりも早足で階段を駆け下りる。
五階までの階段を半分降り、踊り場まで出た所で二人はバイクの爆音を聞く。
「……こなた、もしかしてこれ……」
階段の隙間から下を覗き込む。
音の元が下の方で見ずらいので、二人は並んで階段から大きく身を乗り出す。
赤い頭部、白いボディ、特徴的な頭の触覚。

奴が、バイクに乗って階段を駆け上ってくる。

『ぎゃああああああああああああ!!』

またも全速力で六階に戻ると、部屋に駆け込みドアを閉める。
二人はまるで事前に申し合わせていたかのように、息ぴったりにドアの前にバリケードを築く。
一通りの作業が終わると、疲れてその場に座り込んだ。
「……ねえこなた、私達何か悪い事した?」
「違うよシェリスさん。こういう時は『私、これが終わったら結婚するんだ』って話すのがトレンドだよ」
頭に手をやって髪を掻き上げるシェリス。
「それいいわねー。問題は相方に全くその気が無い事よね……」
「わっ、ダメだよ本気にしちゃ。それ物凄い死亡フラグ」
「……フラグって何よ」
「ギャルゲ……ああ、可愛い女の子がいっぱい出てきてモテモテで嬉しいなーってゲームの用語」
「殺意沸くわねそのゲーム」
不快感をあらわにするシェリスにこなたはしたり顔だ。
「男の子はみんな一度は通る道なんだよ」
何やら考え込んだ後、本気で頭を抱えるシェリス。
「……うっわ、劉鳳やカズマがやってる所想像したら、気分悪くなってきたわ」
そんな事を話しながら時が過ぎるのを待つ二人。
バイクの音は未だ聞こえてくるし、振動やら破壊音やらも響いてくるが、どうやら上の階に昇ってきているという事ではないらしい。
とすれば、抜け出すのなら今の内である。
「それじゃそろそろ移動し……」
シェリスはそれ以上言葉を発する事が出来なかった。
轟音が轟いたかと思うと、突然床が斜めに傾いたのだ。
「何よ! 何よ! 何なのよおおおおおおおお!!」
大慌てで手近にあった机に掴まるシェリス。
「おおおおお〜」
尻餅ついた状態で地面に両手の平と両足の裏を付け、踏ん張るこなた。
床が大きく振動し、手足尻の五点で踏ん張るこなたも机に掴まるシェリスもずりずりと斜め下へと滑っていく。
「じょ! 冗談じゃないわよ! こんな間抜けな死に方真っ平御免よ!」
「あ、あはは、これ、ちょっと、本気で、マズッ、滑っ、止まらなっ」
全力で地面に手足を押し付け、その摩擦力で何とか二人共その場に止まれた。
勢いがついてしまった机やら椅子やらは一気に坂道を駆け下り、床が傾いた事で崩れた壁のその先へと消えて行く。
景気良く飛び出して行った彼等が落ちた音すら聞こえて来ない。
「こ、こなた。動ける?」
両手両足がぴくぴく震える中、こなたは僅かでも体を動かすまいとしながら答える。
「絶対無理、逃げ道も見えないよ。これ、本気でマズイかも……シェリスさん。一つだけ確認してもらっていい?」
「何よ?」
「ドアの前に積み上げたアレ……どうなった?」
言われて思いだす。ドアの前に机やら椅子やらを山と積み上げてあったのだ。
位置はちょうど、斜めになる床の頂点に位置している。
バランスを崩さないようにゆっくりと振り返るシェリス。
そこには、今にも崩れ落ちてきそうな、というか、少しづつこちらにズレて来ているバリケードが見えた。
当然、あれが崩れたら今踏ん張っている二人も巻き込まれて一緒に奈落の底となる。
「……カウントダウン開始って所。数えようか?」
「ごめん、私諦める」
バリケードを作ったおかげで、机やら椅子やらは近くに無く、一気に壁まで駆け寄るには、その部屋は大きすぎる。
そして背後に迫るアレがこちらに落ちてきたら、間違いなく一緒に巻き込まれて落下する。
こなたは自分でも顔が引きつっているのがわかった。
「逝ってきます。うまくいったら拍手喝采。シェリスさんも続いてね」
シェリスにはこなたが何を言っているのかわからない。
深呼吸をするこなた。
他に何か手があるんじゃないのか? こんな無茶しなきゃならない状況なんて普通は無いぞ?
そもそも絶対に無理な試みなんじゃないのか? もうちょっと頑張ればパピヨンが助けに来てくれるのでは?
(でももう無理。やるしか無いし)
そう決めても、すぐに行動には移せない。
恐いなんてもんじゃない。でも、ここで腕を跳ね上げれば、もうやるしかなくなる。
(くぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!)

「おりゃあ!!」

こなたは腕で反動をつけてその場に立ち上がる。
シェリスが驚きのあまり大口を開けるが、こなたはそのまま斜面に沿って真下へと向かって走り出す。

「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃあああああああああああ!!」

床が切れる直前、こなたはあらん限りの力を足に込め、大きく空中へと飛び出した。
飛び行く先は、隣のマンション。
そのベランダがこちら側に向いていたのだ。
こんなに長い滞空時間など経験した事が無い。空中でバランスを取るなんて不可能だ。
とにかく顔だけを両手で覆っておくと、とんでもない衝撃がこなたを襲う。
こなたは、見事サッシ窓を突き破ってマンションの一室へと飛び込んだ。
そして残されたシェリス。
洒落にならない選択を迫られている。
あんな真似、成功例を見せられたからっておいそれと出来るものか。
背後にはぐらぐらと揺れるバリケード。
本気で涙が出てきた。なんでこんな事になっているんだろう。
(……あーもう! やればいいんでしょやれば!)
「こんな格好で何て事させるのよ! こなた! 死んだら化けて出てやるから!」
机から手を離して全速力で助走をつける。下からの風で浴衣が捲くれるが、そんな事気にしていられない。
シェリスの居た位置はこなたより高い位置だ。それゆえシェリスの方がより勢いがつく。
また、シェリスも一応ホーリーとして戦闘訓練は受けている。その身体能力が女子高生より下回る事は無いだろう。
シェリスも同じく床が切れる直前に飛び出そうと最後の一歩を踏み込む。
そのタイミングで、シェリスの真下の床が持ち上がった。
(げっ!?)
下からゼクロスが持ち上げたのだが、そんな事はどうでもいい。
踏み出すべく踏ん張った右足、そこに込めた力が抜けそうになる。
こちとら全力疾走してきたのだ、今更止まるなんて絶対無理だ。
(んぎいいいいいいいいい!!)
膝がそれ以上曲がらないように、腿と脛に全身の力全てを込めんばかりの勢いで気合を入れる。
「このおっ!!」
叫び声と共に飛び上がるシェリス。
全力での踏み切りは失敗に終わったが、最後の瞬間に持ち上げられた床の力を利用する事は出来た。
今空中に浮いている自分がさっきのこなた以上に飛べているかはわからない。
だが、この勢いなら届く。
ガラスはこなたが突き破っている、後はそこにうまく飛び込めるか否か。
さっきのこなた同様両手で顔を庇うように覆い、ついでに足から飛び込めるように気持ち後ろに上体を倒す。
(完璧! これなら何とか……ごっ!!)
シェリスそれ以上物を考える事が出来なかった。
実はこなたよりも跳ぶ勢いは良かったのだ。そのせいで、僅かにこなたよりも高い位置からベランダに飛び込み、サッシ窓の上端にかすめるように頭をぶつけてしまった。
ぶつけた額の上を中心に全身が下周りに半回転、そのまま後頭部から部屋へと飛び込んで行った。

体中が痛む中、こなたはガラスの破片が撒き散らされたそこでその身を起こす。
「痛っ〜〜〜。私この手のアクションより萌え系が好きなんだけどな〜。何処で間違えたんだろ」
何処が痛いとか特定出来ないぐらいそこら中痛いが、特に動かない部位は無い模様。
すぐにきょろきょろと首を回してシェリスを探す。
「脳おおおおおおおおおおおお!!」
絶叫と共に頭を抑えながら右に左にごろごろ転がって居た。
すぐには落ち着きそうにないので、しばらく待ってから声をかける。
「えっと、大丈夫?」
蹲っているシェリスは目からぼろぼろ涙が零れている。
「……痛い〜」
ハタ目に見てわかるぐらいデカイコブになってる。
こなたは苦笑いしながらフォローする。
「コブになってるって事は、頭に異常とか無い証拠だって誰かが言ってたよ」
「それ聞いても喜ぶ気になんてなれないわよ」
それでもピンチは脱した。建物も移った事だし、これ以上戦闘に巻き込まれる事も無いだろう。
こなたはベランダに出て隣のビルを眺める。
「よくもまあ、あんな所から跳べたもんだよね〜」
シェリスも頭を抱えたままベランダへと出る。
「こなたはこういう経験あるの?」
ぶんぶんと首を横に振る。
「いんや。初めてだよ」
真顔になってこなたの横顔を見るシェリス。
648Classical名無しさん:07/12/30 17:09 ID:aaNdiLPk
649Classical名無しさん:07/12/30 17:10 ID:aaNdiLPk
なるほど、確かにパピヨンの言う通り只者ではないのかもしれない。普通の神経じゃあんな判断出来っこない。
「あ」
こなたが上を見ながらそんな声をあげる。
シェリスも上を見上げてみた。
屋上の高さ、そこをバイクに乗った影がこちらのビルへと飛び移ってきていた。
「…………」
「…………」

『逃げろおおおおおおおおお!!』

部屋を抜け、マンションのドアを蹴り開け、階段へと一目散。
先を争って一気に一階へと駆け下りる。
入り口のガラスドアの前で足踏みし、自動ドアが開くのを待つ。
二人が通れる隙間も無い段階で同時に駆け込み、体をくっつけながらドアを抜けると、茜空が二人を迎えてくれる。
それを見て少し安心出来たのか、シェリスは大きく息を吐いた。
「もう建物の中は懲り懲りよ」
「私も」
そんな二人の眼前に、突然パピヨンが降ってきた。
「……お前等、こんな所で何やってんだ?」
こなたが頭をかく。
「いや〜、とても一言じゃ説明出来ないかな〜」
パピヨンは道路を挟んだ向い側のビルの上を見据える。
そこには、こちらのビルの屋上から向いのビルに跳び移り、バイクに乗ったままそのビルの壁面を斜めに走り降りてくるゼクロスの姿があった。
シェリスの悲鳴が木霊する。
「せめて物理法則ぐらい守りなさいよおおおおお!!」
パピヨンは真剣な顔のままこなたに言う。
「核金を貸せ泉」
こなたはすぐにパピヨンに核金を渡すと、パピヨンはそれを手に、いつものあの言葉を口にした。
「武装錬金!」
パピヨンの左手に弓が、そしてその肩にエンゼル御前が現れる。
「ようパッピー、出番かい?」
「ああ、あの変態コスプレ怪人を蜂の巣にしろ」
「……パッピー自殺?」
「俺じゃない! あいつを狙え!」
すっとぼけてはいるが、エンゼル御前の精密射撃は正確だ。
パピヨンの左手で構えた弓の弦を引き、矢を生成、そして放つ。
ここまでの動作を澱みなくかつ連続して行える。
バイクで壁面を走るゼクロスはその位置ゆえ、細かい制動が難しい。
パピヨンの指示通り、一発、二発とクルーザーではなくゼクロスに矢が突き刺さっていく。
この攻撃は予測していなかった為、こうして広い場所に姿を晒したのだがそれが致命的であった。
遂にバランスを崩してクルーザーから手を離して落下するゼクロス。
クルーザーはそのまま地面まで走りぬけ、横倒しに倒れる。
エンゼル御前はこれで終わりかと思い、矢を放つのを止めようとするが、パピヨンは引き続き連射を命じる。
パピヨンの目は、その矢がゼクロスの体内深くまで突き刺さらず、表面の皮膚、いや装甲で止まっている事を見抜いていた。
それでも矢がぶち当たる衝撃までは消せまい。
それに、その自慢の装甲も度重なる攻撃に、いつまでも耐えられる程万能でも無いだろう。
少し気が引けるエンゼル御前であったが、素直に言われる通り矢を放ち続ける。
パピヨンがエンゼル御前に静止を命じたのは、その表面が見えなくなるぐらいゼクロスに矢が突き立ってからだった。
まだ装甲は抜けきっていない。
だが、身動きも取れないだろう。ここで最後のトドメである。
「蝶ハイジャンプ!! トゥ!!」
宙を舞うパピヨン、胸を大きく開いて両手を後ろに伸ばし、片足は曲げた状態で膝を突き出し、残る足を真後ろにまっすぐ伸ばす。
優雅に、華麗に空に放物線を描くパピヨン。彼の飛んだ軌跡に光の粒子が零れ落ちているような錯覚に捉われる程、その姿は美しかった。
ジャンプの最高点に達すると、パピヨンは全身のバネを使いながら両手を大きく真横に振るう。
「硬い装甲相手でも、その衝撃を一点に集中させれば、孔を穿つように回転を加えれば」
パピヨンに、見ていて顔の向きがわからなくなるぐらいの回転が加えられる。
「物の数ではない! パピヨン蝶ドリルキック!!」
パピヨンの突き出した右足がゼクロスに突き刺さり、胴体を完全にぶちぬく。
ゼクロスの絶叫が通りに響く、それが戦闘終了の合図となった。

身動きする力も残っていないゼクロスを見下ろすパピヨンは、彼の持つ機械の体にその知的好奇心を大いに刺激されていた。
この装甲、ここまでゼクロスを弱らせて尚、再生を果たそうと蠢いている。
内部構造の頑強さも折り紙付きであろう。でなくばあそこまでの衝撃に耐えられるはずもない。
こいつもまた、パピヨンの見知らぬ技術で作られたのであろう。
もしかしたら敵の持つ技術に通じる物があるかもしれない。
「泉、シェリスと二人で戻っていろ。これだけ大騒ぎしても誰も戻って来ないという事は、何か不測の事態が起こったのかもしれん」
「パピヨンは?」
「俺はこいつに聞きたい事がある。それが終わったらすぐ後を追うから心配するな」
そう言いながら核金に戻したエンゼル御前をこなたへと放る。
こなたは横目にちらっとゼクロスを見る。
とても何かを話せる状態には見えない。
幸いな事に、その変身した姿と大きく開いた傷口から見える機械部品がそれを人ではないと教えてくれていたので、さほどの衝撃は無かったが。
「わかった。じゃあ先に行ってるね」
特に反論もせずに承諾し、シェリスと共にこの場を去る。
残されたのはパピヨンとゼクロスのみ。
二人が視界から消えたのを確認すると、パピヨンはゼクロスの前にしゃがみこむ。
そこでゼクロスの変身が解け、人間の姿に変わる。
まだ意識はあるのか苦しそうにゼクロスは言う。
「俺に聞きたい事? 素直に答えると思うのか?」
パピヨンは大層愉快そうに笑った。
「お前の口から聞きたい事なんて無い」
動けない村雨の、腹にある傷口に両手を突っ込むパピヨン。
「直接体に聞くのが早そうだからな」
村雨の皮膚の下にある全身を覆っている装甲を、パピヨンは力づくで引っぺがすべく、その腕に力を込めた。

「ぐがあああああああああああああああああ!!」

生きたまま体を引き裂かれる痛みに、見も世もない悲鳴をあげる村雨。
「なるほど、痛覚はあるようだな。それで良くあの攻撃に耐え切れたものだ、褒めてやる」
腕に込めた力は抜かない、腹部から上に向かって手を引き上げる。

べりっ、びちっ、みききしっ

そんな音を立てながら少しづつ装甲が剥がされていく。
胸部装甲を真ん中から二つに千切り、それを左右に引き上げる。

「がっ! あがっ! ぐあがああああああああああああ!!」

そんな無残な様を、見過ごせぬ者がこの場には居た。

『貴様! 何をしているか!』

強化外骨格「零」である。
村雨の行為が非道であった事は認めている。
だが、それでもなおこのような行為は見過ごす訳にはいかないのだ。
パピヨンは、無視しようと思ったが、騒々しくされるのも鬱陶しいので村雨の側を離れ、零の元へ向かう。
『そのような非道は許されぬぞ! お主も正義を志すのならばこんな真似をするな!』
654Classical名無しさん:07/12/30 17:12 ID:Lb4.HfOA
s
655Classical名無しさん:07/12/30 17:12 ID:aaNdiLPk
「やかましい。正義だと? 俺の大嫌いな言葉を平然と口にするな」
『何だと!? では先ほどの言葉は偽りだと……』
皆まで言わせず零を手に持つと、さっきのビルの前に立ち自動ドアを開ける。
『おのれ卑怯者め! あの婦女子を誑かし何を企むか!?』
そのままビルの奥の方に放り込み、外に出ると自動ドアが閉まる。
これならば、奴がいくら騒いでも聞こえてはこないだろう。
気を取り直して村雨の解体作業へと戻る。
真ん中から左右に裂けた胸部装甲を再度その手に取り大きく開くと、体内の主要回路が良く見えるようになった。
興味深げにそれを覗き込む。
生体工学はホムンクルス研究者であるパピヨンにとっては得意分野である。
白目を剥いているゼクロスを他所に、真剣な顔でその中身を見つめる。
そのまま身じろぎもせず、じっと睨み続けるパピヨン。
時が止まったかのように静止しているその体とは裏腹に、頭の中はこれの構造を理解する為に高速で動き続けている。
時々、気になった部位に手を伸ばし、そこを引っ張ったり押したりしてゼクロスの反応を見る。
その度にゼクロスが絶叫を上げるが、やはりパピヨンは気にもかけない。
身体内部、人間で言う内蔵に当たる部位すら、再生が行われている。
強度を確認する為、指で各部位を弾き、それでも飽き足らずに一部を自分の手で引き千切る。
パピヨンはゼクロスとの戦闘で、その高い能力を警戒して出来るだけ近接を避けるようにしてきたが、どうやら正解だったようだ。
この男はまるで体を使いこなせていない。この体の持つ本来のスペックと可能性があんな程度で済むはずがないのだ。
そしてもう一つ気にかかる事がある。
この体は外部装甲に比して内部の強度が高すぎる。この分を装甲に回せば、もっと効率的に重量配分を行えるはずなのに。
それは、内部にてこれだけの強度を必要とする何かがあるという事に他ならない。
ゼクロスの戦闘を振り返るパピヨン。
確かにこの強度を活かしたパワーやそこから生み出されるスピードは凄まじい物だった。
だが全身にこれだけの強度があるのなら、もっと大きなエネルギーを用いても構わないはずだ。
単にそれだけのエネルギー源を確保出来なかっただけなのかもしれないが、だとしたらそれでも尚この強度にする理由がわからない。
その分を武器なりに回した方が良いとパピヨンならば考える。
開発者のミス。そう言ってしまうのは簡単だ。
だが、この内部構造自体は芸術的と言っていい程の完成度を誇ると思われる。
サイボーグなぞ作った事もないが、それでも設計や構造に関してより適切な状態を、そしてそのバランスを判断するぐらいは出来るとパピヨンは自負している。
「何か、もっと大きなエネルギー……それを受け入れる用意があるという事か?」
変な事は他にもある。
外部入力端子が、何故か胴体下部のベルトに付いている。
ここは何かを収める空間を空けたまま空になっていた。
パピヨンはこれらの事から、この男は未完成である、と結論付けた。
そこまで考えてから、ふっと立ち上がるパピヨン。
「本格的に調べたくなってきたな。病院にでも行けば設備も整っているだろう」
何を思ったかゼクロスの前を離れるパピヨン。
鉄製の外灯の前に立つと、それを手刀で斬って落とす。
長大なそれを抱えてゼクロスの前に戻り、感情の篭らない目でゼクロスを見下ろす。
「用を済ませたら戻る。しばらくはここに居ろ」
それだけ言うと、倒れるゼクロスの胴体に外灯を突き刺した。

「いぃぎいい! ぐおあああああああああああああああ!!」

ずぶずぶとそれをアスファルトに埋めていき、半ばまで埋まった所でその手を止める。
その様を見て、何かを思い出したのか、パピヨンはぽんと手を叩く。
「ああ、そうか。色は違うがお前バッタに似てるんだな」
それだけ言い残し、パピヨンは彼を置いてこなた達の後を追った。

通りの角を曲がってすぐの所で、パピヨンは目の前が斜めになる錯覚に襲われた。
いや、錯覚ではない。何故なら同時に胸の辺りからこみ上げてきた吐き気に負け、口から血を吐き出していたから。
どうやらあの男との戦闘は随分とパピヨンには堪えたようだ。
(これは倒れるな。少し……無理をしすぎたか)
それが何かに遮られる。
横に何かパピヨンを支える物がある。
「大丈夫パピヨン?」
「泉?」
その声ですぐに意識がはっきりする。
喫茶店に行ったはずのこなたは角に居て、こうしてパピヨンの体を支えている。
「お前……もしかして、見ていたのか?」
「うん」
喫茶店に着く前に何処かで洗おうと思っていた手も血塗れのままだ。
それでも、こなたは恐れる気もなくパピヨンの側に居る。
パピヨンが責めるような視線をシェリスに送ると、シェリスはパピヨンから目を逸らす。
「しょうがないじゃない、こなたが残りたいって聞かないんだから」
こなたがそう言ったというのが意外で、改めてこなたの顔を見るパピヨン。
こなたはにぱーっと笑っていた。
「一緒に行こうよパピヨン」
こなたの顔を見て、その言葉を聞いて、一瞬、パピヨンの中の全ての時間が止まってしまった。
すぐに我に返ると、ふんと鼻を鳴らして自分の足で立つパピヨン。
「好きにしろ」
どうやら残酷な物を見せまいとしたパピヨンの目論見は、こなたに見抜かれていたらしい。
その上で残ってああ言うという事は、つまりは、荒事の経験も無い彼女は、それでもパピヨンと同じ物を見て、物を考えられるようにありたいという事だ。
距離を置かれる事には慣れていた。だが、こうしてパピヨンに踏み込んで来る人間というのは、武藤以外に居なかった。
目的完遂の為の鋼の意思、全てを客観的に判断し、常に最善の選択を選び続ける事。
この思考にノイズが走るのを自覚するパピヨン。
何が厄介かといえば、それを不快と思えない事が一番厄介なのだ。

659Classical名無しさん:07/12/30 17:15 ID:aaNdiLPk
660Classical名無しさん:07/12/30 17:16 ID:Lb4.HfOA
s
疲れ切った顔の村雨。
腹を貫く外灯は、まだ今の力で引き抜く事は出来そうにない。
回復を待つしかない。
気分が落ち着かない、さっきの戦闘を思い出すだけですぐに興奮してしまう。
以前にそんな状態の人間を見た事を思い出す。
「そうか、これが怒りか」
そう認めると、ふっと肩の力が抜けた。
完敗であった。終始パピヨンのペースで、自分の戦いを一切させてもらえなかった。
奴がどう戦ったのか、何故あのような結果になったのか。
考えてもわからない。だが、それでも村雨は決意と共に言葉を吐く。
「次は、絶対に負けん」
奴が戻ってくるまでに出来るだけ回復していなければならない。
ここに来てから回復速度が落ちてきているのが、これほど疎ましいと思えた時は無かった。


S3駅に辿り着いたDIOは、そこでゆっくりと休みを取るべく駅長室に入る。
そこは既に誰かが入った形跡があった。
だが今は無人であるようなので、さして気にせずその奥にあった仮眠用ベッドに横になる。
今度は夢を見る事も無いだろう。夜までは後少しだ、それまでは充分休養を取ってその後の戦いの時に備えるとする。
DIOがその意識を手放しかけた時、爆発音のようなものが聞こえた。
不愉快そうに身を起こす。どうやら近くであるようだ。
殺しに行ってやろうかとも考えたが、わざわざそこに行くのも面倒なので、無視する事に決めた。
再度寝転がり、枕の上に頭をおく。
すぐに眠りの衝動がDIOを包み込む。
そこで、二度目の音。今度は何かが崩れるような音に聞こえた。
流石に不快感を隠せず、室内にあった時計を確認する。
まだ日没までは間がある。音の原因は外であろう。やり方は色々あるにせよ、そこに行くのには危険が伴う。
少し考えた後、DIOは備え付けの布団を頭から被ってやはり寝る事に決めた。
【D-2 駅前 一日目 夕方】

【パピヨン@武装錬金】
[状態]:動きすぎで疲れて吐血
[装備]:猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:支給品一式 地下鉄管理センターの位置がわかる地図 地下鉄システム仕様書
[思考・状況]
基本:首輪を外し『元の世界の武藤カズキ』と決着をつける。
1:喫茶店に戻る。
2:シェリスの殺人は一般人に限り黙認する。殺し合いに乗っていたことも他言しない。
3:エレオノールを警戒しておく。
4:核鉄の謎を解く。
5:二アデスハピネスを手に入れる。
6:首輪の解体にマジックハンドを使用出来る工場等の施設を探す。
7:喫茶店まで二人を送った後、駅前に居るゼクロスを連れ、病院に行ってゼクロスを調べる
[備考]
※参戦時期はヴィクター戦、カズキに白い核鉄を渡した直後です
※スタンド、矢の存在に興味を持っています。
※猫草の『ストレイ・キャット』は、他の参加者のスタンドと同様に制限を受けているものと思われます
※エレオノール、鳴海に不信感(度合いはエレオノール>鳴海)
※独歩・シェリスと情報交換をしました。


【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:軽い打撲
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、フレイム・ボール@ゼロの使い魔(紙状態)んまい棒@銀魂、エンゼル御前@武装錬金
663Classical名無しさん:07/12/30 17:18 ID:aaNdiLPk
664Classical名無しさん:07/12/30 17:18 ID:Lb4.HfOA
s
綾崎ハヤテの女装時の服@ハヤテのごとく
[思考・状況]
基本:みんなで力を合わせ首輪を外し脱出 。
1:喫茶店に戻る。
2:かがみ、つかさを探して携帯を借りて家に電話。
[備考]
※エンゼル御前は、使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると、自動的に核鉄に戻ります。
※独歩・シェリスと情報交換をしました。
※みゆきの死をいまいち実感していません


【シェリス・アジャーニ@スクライド】
[状態]:軽い打撲 でかいタンコブ
[装備]:光の剣(ただのナイフ)@BATTLE ROYALE、銭湯にあった女物の浴衣(ピンク地でハートの柄入り)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:劉鳳に会って脱出。
1:喫茶店に戻る。
2:劉鳳を探す。
3:足手まといだと判断した一般人は誰にも気づかれないように殺す。(こなたは殺さない)
4:平次、タバサ(両方とも名前は知らない)は殺人鬼という情報を流す。
[参戦時期]
劉鳳と同時期
[備考]
※タバサのマント@ゼロの使い魔 はホテルの脱衣所に放置、内側は血だらけです。
※ホテル従業員の制服は銭湯に放置、外側にガムやらゴミ汁やらがこびりついてます。
※アプライド=サック=アップについて。
触れた相手のアルターを吸収する能力。シェリス単独で使用可能とします。
アルター以外の特殊能力(スタンド、魔法など)にも吸収の効果は及びますが、能力などの制限は不明とします。
※パピヨン・勝・こなたと情報交換をしました。


【D-2 駅前 一日目 夕方】

【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:全身に無数の刺し傷、打撲傷 同中央に大きな風穴(今はそこに外灯を突き刺され身動きが取れません) 疲労(大)
[装備]:クルーザー(全体に焦げ有り)、十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (1/2) 、マイクロチェーン(2/2)
[道具]:地図、時計、コンパス 、強化外骨格「零」(カバン状態)@覚悟のススメ
[思考]
基本:殺し合いに乗る。
1:繁華街で刃牙を捜索し、戦闘。
2:エリアE〜H全域を探索し、ついでに施設の有無の確認。
3:劉鳳、ジョセフと次に会ったら決着を着ける
4:十二時間後(約零時)に消防署の前で散と落ち合う。
5:散の愚弟覚悟、波紋に興味あり。
6:DIOと戦う気はない。
7:パピヨンに恨み
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です
※参戦時期は原作4巻からです。
※村雨静(幽体)はいません。
※連続でシンクロができない状態です。
※再生時間はいつも(原作4巻)の倍程度時間がかかります。
※衝撃集中爆弾、マイクロチェーンの威力は制限で弱められています。
 制限の程度は後の書き手さんにお任せします
※施設の確認はあくまでも『ついで』なのでそれほど優先度は高くありません。
 またどのような経路を辿ってゆくかも後の書き手さんにお任せします。
※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。
※零は戦闘力のない『明らかに刃牙でない人物』を察知しても村雨には知らせません。
※また、零の探知範囲は制限により数百メートルです。
※現在零はすぐ側のビルの中に放り込まれています
※零はパピヨンを危険人物と認識しました


【D-2 S3駅駅長室仮眠ベッド/1日目 夕方】

【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:エネルギー枯渇(ザ・ワールドで時を止められる時間が1秒になる程)
[装備]:スタンド『世界』、
[道具]:ダーツ(残弾数1)、デルフリンガー@ゼロの使い魔
    参加者顔写真&詳細プロフィール付き名簿。ルイズの杖。
    イングラムM10サブマシンガンの予備マガジン9。ライドル。
    スタングレネード×2。時計型麻酔銃(1/1)。麻酔銃の予備針8本。
    デイバック×4(DIO、桂、灰原、みゆき)
[思考]
基本:帝王に負けはない。参加者を殺し、ゲームに優勝する 。アーカードのボディを乗っ取り、太陽を克服する
1:夜になるまで地下で英気を養う。及び、地下鉄に乗りにやって来た参加者を各個撃破し体力を回復
2:デルフリンガーから平賀才人他の情報収集・デルフリンガーを用済み、又は障害と判断した場合破壊する。
3:どんな手を使ってでもアーカードを打倒し、ジョースター家を根絶やしにする
4:魔法使い・しろがね等の血に興味
5:ゲームを仕組んだ輩を断罪する
[備考]
※ジャギの腕はほぼ馴染みました
※時を止められる時間は約3秒間です
※首輪の他に、脳内に同様の爆弾が埋め込まれています
※S5駅方面の列車は途中で地上に出ることを確認しました
※デルフリンガーはコミックス2巻のフリッグの舞踏会の最中から召還されたようです。
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました
669 ◆1qmjaShGfE :07/12/30 17:24 ID:OY8bfgek
以上です。支援ありがとうございました
又、1レス目と2レス目で改行ミスっている場所があります。申し訳ありませんでした
670Classical名無しさん:07/12/30 17:28 ID:Lb4.HfOA
投下乙!
何という村雨フルボッコ。そしてシェリスとこなたの脱出劇に笑わせてもらいました。
しかしこの三人は見てて和むな
671Classical名無しさん:07/12/30 17:32 ID:rWrMJuX6
投下乙
知的なパピヨンにしびれた
だが村雨もこのままで終わらないだろうな
そしてシェリスとこなたのダイ的なハードはよかった
ハッスルぶりに笑った
672Classical名無しさん:07/12/30 17:34 ID:aaNdiLPk
投下乙!
村雨哀れw 相手がパッピーじゃしょうがないw
何気にパピヨンの零に対するツッコミが笑った。意思の統一なんて、無理w
こなたも何気にフラグ使ってんじゃねー!
GJ!した!
673Classical名無しさん:07/12/30 17:55 ID:K8grXyNA
投下乙!!
パピヨンの頭脳を使った戦い方がGJ!!

そして頭から布団被ってるDIO様想像してワロタw
674Classical名無しさん:07/12/30 17:58 ID:4RpSW7C2
投下乙!
パピヨンちょっとは仲間に気を使えw
でもパピヨンが下手に気を使って戦闘したら逆に死にそうな気もするな

駅長室〜DIOは動かない〜
675Classical名無しさん:07/12/30 19:48 ID:w7QRs6uc
さすが漫画ロワだ!ビルの一つや二つ壊れても何ともないぜ!
っていうか、こなたとシェリスがダイハードやらかすあたり、もうここには一般人なんていないんじゃないかと思えてくるw
そしてパピ☆すたパーティの三者三様の心理描写が細かく、それぞれの微妙な思惑が面白い。
そして布団をかぶるDIO様にワロタwwwwwwwGJ!
676Classical名無しさん:07/12/30 20:50 ID:OfY7UiRg
う〜ん、村雨の株を下げ過ぎって感想は俺だけ?
話としては問題無いと思うんだが、殆ど良い所無しにやられたのはひっかかる。
677Classical名無しさん:07/12/30 20:53 ID:aaNdiLPk
>>676
そうなんだが、それがバトロワというものさ。
てか、村雨はやられて、やられて復活するのが非常に原作ライクw
678Classical名無しさん:07/12/30 21:10 ID:qIFyvn8c
>>675
緊迫感の有る良いバトルだったじゃ無いかw
一見圧勝だが、いっぱっでも当たっていたら……って言う状況を上手く演出してたと思うぜ
679678:07/12/30 21:11 ID:qIFyvn8c
アンカーミス
>>676だなw
680Classical名無しさん:07/12/30 21:26 ID:zJMRB2iA
GJ
テラダイハードww一人から回る零ワロスwwあとDIO様寝るだけかよ!
そしてこなたとパピヨンのフラグが成就寸前のレベルに……なんてカオスなコンビだw
681Classical名無しさん:07/12/30 22:45 ID:AFwgv8Fs
これは酷すぎる、以前から蝶贔屓の傾向はあったけど、記憶喪失とはいえなんで
以前は病弱の小僧に「戦ったことがるのか?」なんて諭されるのよ?更にレスが
絶賛ばかりおかしいだろうよ、スペックだけでストロンガーを圧倒できるんだぜ?
規制ありとはいえ、これがただの鈍重な牛じゃねえの、こんなの破棄だろう普通に
682Classical名無しさん:07/12/30 22:48 ID:KPJ1PG0c
零やパッピーチームが某ロワのデバイスや金蜘蛛コンビを彷彿とさせるテンションだなw
…どこにでも似たような連中はいるもんだ
683Classical名無しさん:07/12/30 22:50 ID:aaNdiLPk
>>681
つ漫画キャラバトルロワイアル毒吐きスレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1183133225/
684Classical名無しさん:07/12/30 23:03 ID:CISv0976
>>681
確かに戦車の主砲を正面からパンチで受け止めて無傷の2号と、それと同レベル1号の二人を四巻の時点で
圧倒したんだから、既に身体能力じゃ最強だよな

まぁ2ちゃん内でもマイナーな漫画だし仕方ないんでない?

若しくは主催者のバダン辺りの作戦とか
685 ◆hqLsjDR84w :07/12/30 23:58 ID:/PCj9OC6
>>669
パピヨン強いなあ
スペックだけなら村雨に劣るのを、頭で圧倒するなんて……
クルーザーを使っての戦いが、なんていうか読んでてワクワクしました。
それにしても、村雨の耐久力もやっぱスゲェなあ……
GJです。



仮投下した「ホワイトスネイク−介入者」の修正案を議論スレに書き込んできました。
686 ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:18 ID:.HrUQ4Vc
>>669
パッピー強えー! 頭脳で勝つってのはいいですね。
だけどパピヨン、周りのことも考えろw

>>685
乙です。ついにアイツも出てきて重要な話ですから期待してますよ。
頑張ってください。

さて、それでは投下します。
687Classical名無しさん:07/12/31 00:19 ID:R/YEIPOA
   
688スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:20 ID:.HrUQ4Vc
「ハァァァッ!」
桂ヒナギクの叫び声と共に、4本の刃が空を駆ける。
蜘蛛の足にも似たそれらはバラバラに孤を描きながらも、統率の取れた動きで空気をかき回す。
その滑らかな動作は蜘蛛というよりも、イカの足と言った方が近いのかもしれない。
それらの刃根元に存在する少女、桂ヒナギクが地面を疾走する。倒すべき目標に向かって。
しかしその対象物の放つ威圧感がそうさせるのか、一直線に進むことはしない。
彼女は対象の周りを回りながら渦巻を描くように徐々に近づいていく。
例えるならば蚊取り線香の炎が彼女で、その終端が目標物である。

そのままクルクルと3回転、そして4回転目にさしかかろうというところで彼女は動いた。
正確に言うと、動きを止めた。一瞬だけ。
踏み出した足で地面を抉り、自らの回転運動を止める。
同じ足にさらに負担をかけながらも彼女は、回転の中央に向かって跳躍した。
「ヴ……ヴァアアアアルキリィイイッッ……」
顔を赤らめながらも必死に叫ぶ。何故か喉を太くしてアンデルセンの声に似せようと頑張っている。
彼女がこの武器の本来の扱い方を知らない以上、あの忌々しい神父を手本にするしかない。声を真似する必要があったかは疑問が残るが。
あの男の顔を思い出すたびに恐怖が蘇ってくる。毛利小五郎を切り裂いた刃の軌跡と共に。

その恐怖に彼女が躊躇したのはたったの一瞬。
すぐに迷いはかき消され、2本の刃を走らせる。
あの怪人がやったように。
あの探偵を切り裂いたように。
「……スゥカアア゛ア゛トォッッッ!」
全ては自分の思い描いたままの軌跡で動いた。
彼女は宙を駆け、刃は左右に孤を描いて振り下ろされる。

目標は、葉隠覚悟。

迎え撃つ少年は後ろからの奇襲にも動じることはない。
彼は振り返ることはしなかった。襲い来る双撃を目で確認することをしなかった。
それどころか動くことすらしなかった。まさか、奇襲に驚くあまりに動けなかったのだろうか。
いや、ただ一瞬、2つの斬撃が彼の頭部で交差するその一瞬だけ僅かに前に傾いた。
689 ◆hqLsjDR84w :07/12/31 00:21 ID:F7bbFTrA
690スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:21 ID:.HrUQ4Vc

ヒナギクの目から見ればバルキリースカートが覚悟の頭部をすり抜けたように見えただろう。
それほど速く、最小の動作で彼は避けたのだから。
しかしヒナギクは、突然の事態にも呆けることなく対処する。
相手があの覚悟ならば初撃が当たらない可能性など予測している。

外した2本の鎌の片方をそのまま振り下ろして地面に突き刺した。
そのまま重力に逆らって彼女の体が棒高跳びの要領で空を舞う。
「……ッく!」
全力での跳躍の着地を両の足でなく腿から伸びる細い金属で行うのだから、彼女の腿にはかなりの負担がかかったはずだ。
高さに対する恐怖も未だ克服できてはいないが、そんなことを言っている場合ではない。
その痛みと恐怖に必死に耐えながらも体を反って、正に棒高跳びのバーを越える瞬間の体勢になった彼女だが、まだ飛翔は止まらない。
地面と彼女を繋ぐ1本の『く』の字型の棒。彼女を大地へと括りつける鎖のようなそれが一瞬にしてピンと伸びる。
高飛びの棒、鎖と変化し、終にはバネと化したその鎌の動きに従ってさらに高く彼女は飛翔する。
それに加えてバレリーナのように、横向きではあるが、高速で回転を始めた。
あとは重力に支配されるまま回転しながら落下するのみ。
地面から抜けた鎌を加えた4本と共に、少女は回転ノコギリとなった。

横薙ぎが通用しないのならば縦の動き。
真上から落ちてくる4つの回転攻撃。
本来ならばこの武器ではあり得ないはずの純粋な縦方向の攻撃。

「ハァァァラワタをォォォォォォッッッッ!」
彼女はこの台詞をアンデルセンから聞いたことはないはずなのだが、自然と口からこぼれ出てきた。

このとき初めて覚悟が上を向き、その目で敵を見据えた。
しかし余りにも遅い。ヒナギクは確信していた。この刃が覚悟を完全に捉えた事を。
「ブチ撒けろォォォォォォォッッッッッッッッ!」
ドォン、と彼女の体重からは想像もつかないような爆音と土煙が落下点に撒き散らされた。
正確には地面に落下したのは刃の部分で、彼女は未だ宙に浮いていた。
敵を両断したのだろう4本の鎌を地面から引き抜いて、自らも着地しようとするが……。
「なんで…………動か……ない」
691スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:22 ID:.HrUQ4Vc
バルキリースカートが動かない。ほんの1ミリも。

「重力を利用した一撃必殺技……見事であった」
土煙が晴れた後に姿を現したのは、4つの鎌を片手で鷲掴みにした覚悟であった。
この男はバルキリースカート単独で出せる最高レベルの威力を、片手で封じていた。

そこからは早かった。
そのまま、ぐい、と引き寄せるとヒナギクを地面に仰向けに押さえつけ
「…………あ……」
覚悟の拳が振り下ろされた。ヒナギクの頭を粉々に砕くべく。


「うむ、間合いの取り方、斬撃の太刀筋、実に見事であった」
ヒナギクの眼前で拳を停止させた状態で覚悟が告げた。
拳をどけて一礼すると、彼女の手をとって起こしてやる。
「ありがと。でも全然ダメね。覚悟くん、あの場所から一歩も動いてなかったし」
服についた砂を手でパンパンと払いながらヒナギクが起き上がる。
言動とは逆に、その顔つきは晴れやかなものであった。

「そんなことないよ。ヒナちゃんカッコよかったもん」
トコトコと柊つかさが駆け寄ってきた。
彼女が抱えているのは布に包まれた4枚の刃。バルキリースカートの本来の刃である。
先ほどまでは安全のために、そこらへんで調達した手ごろな木片を刃の代わりに取り付けていた。
それらはさっきの一撃で全て破壊されてしまったが。

「お疲れさん。さっすがは剣道部部長ってところか」
川田章吾が笑いながら2人にペットボトルを投げ渡す。
もちろんこれもホームセンターで調達したものだ。
川田の言うとおり、彼女の剣道の経験はバルキリースカートの扱いに大いに役立っていた。
覚悟も褒めた間合いを見極める目、有効な太刀筋の判断などはその賜物であろう。
尤も、ラオウのような化物に通用するレベルだとは誰も思ってはいないが。
それでもある程度の敵ならば渡り合える域には達しているはずだ。
692Classical名無しさん:07/12/31 00:22 ID:Ng07fghA
    
693 ◆hqLsjDR84w :07/12/31 00:22 ID:F7bbFTrA
  
694Classical名無しさん:07/12/31 00:22 ID:Ng07fghA
 
695スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:23 ID:.HrUQ4Vc

「そうかしら、ありがとう。そろそろ休憩しようか」
4枚の刃を取り付け直し、武装解除するとヒナギクたちは民家内へと戻って行った。



今から2時間前のことである。ホームセンターを出てしばらく歩いた覚悟たち4人は、民家で休憩をしていた。
そこで今後の方針について確認しあっていた。
一刻も早く、総合スーパーへ向かうべきだと川田は考えていた。
しかし動き出すのは放送で死者を確認してからの方が賢明だ、という覚悟の意見を聞いてここに留まることにした。
そこで支給品を見せ合うのを忘れていたことに川田が気づく。
その中にあったのがバルキリースカートの核鉄。
川田、ヒナギク、つかさの3人は誰も使い方が分からなかったこの支給品。
しかし覚悟は病院で坂田銀時から核鉄の使い方を聞いていた。
言われるがままにヒナギクが武装錬金と呟くと、アンデルセンや本郷が装着していた武器へとその姿を変えた。
そこからはヒナギクが一番詳しかった。その特性や威力、間合いに至るまで彼女は知っていた。
実際にこの武器を持った人物に襲われ、目の前で切られた人物がいるのだから。
あとは剣道の経験や、川田には銃があることからヒナギクがこの武器の新たな持ち主に決定した。

その後しばらくは1人で練習をしていたが、彼女は覚悟に実戦形式で特訓して欲しいと懇願してきた。
覚悟はあまり乗り気ではなかったのだが、少しでも役に立ちたいという彼女の願いに押され、特訓を了承することになる。
それから今まで長時間に渡って戦っていたことになる。


「最後のは凄かったよ、ヒナちゃん! くるって回ってドッカンだもん!」
2人の戦いをずっと見ていたつかさが興奮気味にまくし立てる。
ペットボトルのお茶を片手に、足をバタバタさせながら話すつかさ。興奮からだろうか、かなり擬音が多い。

「そうね、あの武器で威力を出そうと思ったらああするくらいしかないのよ」
バルキリースカートは4本の鎌で相手を撹乱し、切り刻む武装錬金。
破壊力はそれほど高いわけでなく、本来の使い手である津村斗貴子も手数での戦いを主としていた。
この殺し合いの中でも毛利小五郎を殺すことはできたが、ラオウには全く通用しなかった。
696Classical名無しさん:07/12/31 00:24 ID:F7bbFTrA

697Classical名無しさん:07/12/31 00:24 ID:Ng07fghA
  
698スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:24 ID:.HrUQ4Vc
本郷はその威力の低さを早急に理解し、単なる高速移動のための手段に切り替えていた。
効かない敵には全く効果がない。それがこの武器の最大の弱点であった。

加えて、ヒナギクは津村斗貴子のようにバルキリースカートを自在に操る技術は持たない。
4本の鎌を己の一部のように扱うには明らかに鍛錬が足りない。
よって本来この武器のあるべき姿、手数での戦いもヒナギクは出来なかった。
それを補うための苦肉の策が先ほどの回転攻撃。
全力の斬撃に、自らにかかる回転のトルクと重力を上乗せして相手に振り落とす。
他の技に比べれば出は遅いものの、それを補って余りある威力が出せる。

「確かにあれは命中すれば強力な相手でも両断することが可能かもしれない」
目を閉じたままの覚悟が口を開いた。
それを聞いてヒナギク以上につかさが嬉しそうに目を輝かせる。
「だが、ラオウのようなものにはまず当たらないであろう。拘束でもしない限りは。
 しかも、先ほどのように命中しなければ致命的な隙が出来る。
 それともう一つ……」
あの一撃で技の特性から弱点まで全て見抜いたのは流石である。
覚悟が目を開いてヒナギクの足を一瞥する。
彼が事実を告げる前にヒナギクが口を開いた。
「分かってる。足に負担がかかり過ぎるってことね」
「え……」とつかさの溜め息にも似た声声が響いた。その表情は笑顔のまま固まっている。
なんとなく気づいていたのだろう、川田は何も言わずにじっと見守る。

「鎌を軸にして立ち上がるとき、鎌をバネにして飛翔するときに足へとかかる負担は大きい。
 そしてそれ以上に鎌を全力で大地に叩きつけたときの衝撃はあまりに大きい」
ヒナギクは一切反論しない。事実、彼女の太もものは骨から肉まで未だに悲鳴を上げていた。
先ほど覚悟が避けなかったのは、避けることが出来なかったわけではない。
バルキリースカートを掴んで衝撃を吸収してやるために、わざと避けなかったのだ。
それでもこの反動。敵や地面に直撃したならばその衝撃は計り知れないものとなる。
699スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:24 ID:.HrUQ4Vc

この武装錬金は津村斗貴子の闘争本能で発現した武器であり、その形状も彼女の本能を元に構成されている。
彼女の頭にはホムンクルスをバラバラに切り刻むイメージしかなかった。
つまりヒナギクの行った『叩きつける』戦い方は本来想定されていないのものだ。

「それでも……この武器を使わなければならないときがくるわ。必ずね」
いままで何をしたわけでもない。誰かに守られ、そのたびに誰かが死ぬ。
自分は不幸を振りまいていただけだ。
自分の目の前で死んだ2人の痛みに比べたらこんなものはなんてことない。
そう言いたかったのに……覚悟に反論できない自分がいた。

「次にああいった無茶な戦い方をすれば、桂さんの足は……二度と動かなくなるであろう。
 そのうえ、骨に対する衝撃も大きい。ああいった内部に響く衝撃は容易に全身に伝わる。
 運が悪ければ、全身が二度と動かなくなることも。骨が砕ける場所によっては、最悪死ぬことだってあり得る」
死、という言葉に全員が動きを止める。中でもつかさは俯いて小刻みに震えていた。

それでもヒナギクは恐怖をかき消して覚悟を睨む。
「……足がなくなるくらいなによ。敵にやられたらみんな死んじゃうのよ!」
自ら死に立ち向かうのがこんなにも勇気の要ることなんて始めて知った。
自分を救って死んでいった人たちはこんな恐怖を味わっていたのか。
それなのに、救われた自分が足の1本で怯えてなんていたら、あまりにも惨めすぎる。
死んでいった人たちに申し訳が立たない。

「だめだよ……」
響いたのは、すでにヒナギクには聞きなれてしまった声。
つかさは小さな両手でペットボトルを握り締めながら……。
「死んだらダメだけど、ヒナちゃんが動けなくなるのもダメだよ!
 それで誰かが助かることになっても、喜ぶことなんてできないよ……」
震えてはいるが、つかさは全く涙を流さない。
必死でヒナギクを見つめて、本気で心配していて。
700スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:26 ID:.HrUQ4Vc

彼女は本当に強くなったな、とヒナギクは感じていた。

「えぇ……そうね」
だからこんなにもつらいのだろう。彼女を騙すのが。
ヒナギクは納得した振りをした。つかさの説得に陥落するのが怖かったから。
覚悟したはずの心が折れるのが何より怖かったから。

「え……ヒナちゃん」
「絶対に無茶はしないわ。約束する」
つかさの目をちゃんと見ようとして、すぐ止めた。
彼女の瞳には勝てない。嘘が剥がされてしまう。
この瞳の輝きに耐えるのが強さなんだ、とヒナギクは必死に思い込んでいた。

笑顔の少女たちを黙って見ていた川田が、小さく舌打ちをした。
誰にも聞こえることはなかったのだが。


「そういえばヒナちゃん」
先ほどまでとは一転して軽やかな声。
川田も覚悟も肩の力が抜けたように見える。
「なに? つかさ」

「さっき叫んでたあれ、何?」
さっき叫んでいた……あぁ、あれのことか。
ハラワタをブチ撒けろ。
「あれは……なんかこの武器使ったら自然と浮かんできたのよ」
武器の形状がそうさせるのか、元来の使い手の怨念でも込められているのか。
彼女にブチ撒ける気はなくても、興奮するとついつい口から漏れ出てしまった。
701Classical名無しさん:07/12/31 00:26 ID:fYsce1GY
 
702Classical名無しさん:07/12/31 00:26 ID:OyCF5s4c
ちょっと支援しますよ…

※チラ裏
(ここって何も書き込まずに支援したほうがいいのかな?)
703スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:26 ID:.HrUQ4Vc

「桂さんの優しさの表れだろう」
背筋を伸ばし、至極真面目な顔でとてつもない事を覚悟が言い出した。
口には出さないが、『何を言ってるんだこいつは』と言わんばかりに全員目を丸くしている。
「倒すべき敵を前にしても臓物をぶちまけろ、つまり切腹してよいと言う。
 どんな悪鬼にも名誉ある死を。その慈悲の心、賞賛に値する」
覚悟の顔はとても真剣だ。
ヒナギクと川田が苦笑いをする中、つかさだけがほぉー、とえらく感心している。
余談だが、それは津村斗貴子が武藤カズキと1つになったのと、ちょうど同じ時刻であった。

「あ、の、ね! 覚悟くん、この現代でだぁれが切腹なんてするのよ!」
ヒナギクのいた世界で切腹なんてする人間がいようものなら、世間でのいい笑いものだ。
覚悟のいた世界でも一般人で切腹などする人間は殆どいないのだけど。

「私は一度……」
(あるんかい!)
覚悟のまさかの独白に心の中でツッコミを入れながらもヒナギクは、この少年の異様さを改めて思い知った。
それでも彼に対するその絶大な信頼には微塵も影響はなかったのだが。

「……強化外骨格、『零』の痛みを知るために」
彼が切腹を行ったのは実際は精神世界での話。
しかしその痛みと苦しみは、現実で行うのと全く変わらない。
それに加えて首まで切り落としているのだから痛いどころの騒ぎではない。

以前覚悟から聞いた話では、生体実験で殺された3千人もの魂が込められているとか。
その痛みとはどれほどの苦しみを伴って理解できるものなのだろうか。
覚悟は零と出会ったときのことを語り始めた。
薄暗い地下室での出来事。
そして彼らの苦しみ。痛み。
それらは言葉に変えると遥かに陳腐なものとなってしまう。
自分が腹を割き、臓物をブチ撒けてもまだ足りない。彼らの苦しみの足元にも及ばない。
なんと形容しようか、と考えたがやはりその痛みに代わる言葉は存在してはいなかった。
704Classical名無しさん:07/12/31 00:27 ID:Ng07fghA
   
705スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:27 ID:.HrUQ4Vc
それでもヒナギクとつかさは覚悟の体験を真っ青な顔をして聞いていた。

「……強化外骨格ってのには意思があるのか?」
一通り伝えると、長いこと黙っていた川田の低い声が響いた。
そういえば言っていなかったと、覚悟が静かに頷く。
「鎧に込められた怨念は強い力となり、その苦しみを理解することで私に力を貸してくれる」

「怨念が力になるってことは前に聞いたな。……ってちょっと待て。苦しみを理解ってのは」
覚悟の目が大きく開かれる。
川田はそれ以上言わなかったが、覚悟は彼の言いたいことを悟ったようだ。
同じような痛みを味わい、苦しみを理解しなければならないならば……。
主催者がこの『プログラム』の死亡者を強化外骨格にしたところで……。

その強化外骨格を使うことは出来ないのではないか?

主催者にその苦しみを理解できるとはとても思えない。

すぐに覚悟は紙とペンを取り出した。
会話の内容を主催者に気づかれないように筆談をする。
それはつまり覚悟が重要なことに気づいた証であった。
『私が零の心を理解したのはただのひとつの手段に過ぎない。
 強化外骨格を扱うことが出来るようになる方法はそれだけではない』
覚悟はそうすることが正解だ、と聞かされて彼らの苦しみを理解したのではない。
強化外骨格自体が珍しいものなのでなんとも言えないが、他に方法があってもおかしくはない。

それを聞いても川田は覚悟の指先から目を離さない。
覚悟がこんなことを言うために筆談に切り替えたとは思えない。
覚悟が本当に言いたいことはこの後だ。

『問題はそれ以前の話であった』

紙の中心に力強い文字で、ゆっくりと書き示した。
706Classical名無しさん:07/12/31 00:27 ID:F7bbFTrA
  
707Classical名無しさん:07/12/31 00:28 ID:Ng07fghA
     
708スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:28 ID:.HrUQ4Vc
浮かんできた答えを頭の中で整理しながら。

『一つ一つの怨念の種類が異なりすぎる』

こんなことになぜもっと速く気づくことが出来なかったのか。
覚悟は自分の迷い、未熟さを噛み締めながら続ける。

『怨念の種類だと?』
川田も筆談で応答する。
『生体実験では殺されたのは全て異国の兵士であり、殺害方法も同じ。
 だから彼らは同じ無念を抱え、3千もの怨念が零の中でひとつの力となった。
 だが今回は違う。殺害方法はおろか、殺されたものたちの感情、職業、果ては住んでいる世界まで異なる。
 それらの怨念を強化外骨格の抜け殻に込めたところで、怨念が力と変じるとは私には思えない』
いくら生贄とされた人物が強力でも、
いくらその怨念が強くても、
その恨みのベクトルが異なるなら互いの力を邪魔するだけではないか?

その上ここに集められた人間はあまりにも常識が違いすぎる。
先ほどの切腹に対する意識の違いを始め、文明の進み方も大きく違う。
死と隣り合わせで生きる者たちもいれば、何気ない日常をただなんとなく過ごしてきた者もいる。
果ては祈る神すらも違う。そのせいで殺人に走る者すらいるほどに。
それらの魂が重なり合ったところで、なんの力が発揮できるだろうか。

そんな強化外骨格などなんの役にも立たないのではないか、と覚悟は考える。

『この殺し合いで我々がとる行動など誰にも予測することはできない。
 このプログラムという方法は、強化外骨格を造るのに最も適さない方法だろう』
そこまで書いて覚悟はペンを置いた。
ではなぜプログラムが開催されたか、ということに覚悟が答える術を持っていないからだ。
709Classical名無しさん:07/12/31 00:28 ID:OyCF5s4c
   
710スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:28 ID:.HrUQ4Vc
しかし、あの老人の『英霊』発言。そして老人の横に鎮座していた鎧の輝き。
これらが単なるブラフとは思えない。
先ほど覚悟も言っていた。見せ掛けにしては手間がかかり過ぎだと。

『最も強い人を決めるってのだけが理由ってことはあり得ない?』
ヒナギクの問いを覚悟は首を横に振って否定した。
数時間前での考察では「強化外骨格への生贄」と「最も強い者を決める」の両方が目的だと考えていた。
生贄にできないとされた今、主催者の目的として考えられるのは「最強を決めるための手段」のみ。
だがそれはそのときの議論で否定されている。
つかさやヒナギクのような一般人が集められた理由が説明できない。
それに強いものを決めるだけならば、リングの上ででも戦わせればよい。

この方法でなければならない理由。それだけが分からない。
単なる気まぐれか? こんな回りくどい真似をしておいて?

どうしても納得いく理由が見当たらない。
それはここにいる全員が感じていることだ。
数分の間、紙の上に放置されたペンを握るものはいなかった。

『なんであのおじいさんは、そんなに強化外骨格に拘るのかな?』

行き詰まりかけていた議論に、つかさが意外な疑問を投げかけた。
あの徳川という老人の横に強化外骨格があったのだから、あの老人は強化外骨格を必要としている。
あれが明らかにニセモノの強化外骨格でない以上、それは大前提のはず。
なぜ老人が強化外骨格に拘るのかなど、覚悟を始め、この中の誰も考えたことすら無かった。

しかし考えてみると、その理由が見当たらない。
『確かに、あのラオウみたいなのですら拉致してこれるなら、強化外骨格なんか必要ないんじゃねぇか?』
『それは分からん。拉致するだけなら奇襲で事足りる。
 ラオウを拉致してきたからと言ってラオウ以上の戦闘力があるとは言えん。
 だがそれよりも気になるのはなぜ強化外骨格なのかという事。
 装着に想像を絶する痛みを伴う強化外骨格を、なぜ選択したのか』
711スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:29 ID:.HrUQ4Vc
覚悟の知っているだけでも魔法や核鉄など、奇跡を起こせる能力は存在している。
あの老人は、それらを差し置いて強化外骨格を選択した。
こんな大掛かりな殺し合いを開催してまで得る価値のある力なのか?

「ねぇ……待って」
口元に手を当てながら考えていたヒナギク。
彼女の弾き出した答えは今までの考察を根底から覆すものだった。
『もしかして、あの強化外骨格は戦うのとは別の使われ方をされるんじゃないかしら?』
ペンを握ったヒナギクがスラスラと書き下した一文。
乱雑に文字が散布している紙面上で、その一文だけが、別の高みにいるように淡い輝きを呈しているように見えた。

『そうは言うが、強化外骨格に戦うこと以外の性能は無いに等しい。
 先ほども述べたが、込められた魂はその怨念を……』
『その魂に用があるとしたら?』
覚悟の筆談を遮ってヒナギクが文字を紡ぐ。
今までの議論が正しいならば、あの強化外骨格は戦いには使えない。
それ以外の使われ方をされるのならば、それは……。

『あの老人、強化外骨格を魂の保存場所なぞに使う気か』

覚悟の目が鋭く尖る。
強化外骨格は覚悟が長年共に戦ってきた相棒であり、悪鬼に蝕まれる世界を救う牙であった。
それをそんな下らないことに使うなど、覚悟には許せなかった。
しかし今までの議論を纏めてみると、その答えが最も自然なもの。

『魂って、何に使うんだそんなの?』
『恐らく老人が求めているのは、魂そのものよりも経験。
 我々がこの殺し合いで得た何らかの経験だろう』
川田の疑問に即座に反応したのは、怒りに打ち震えていたはずの覚悟。
老人の行いが彼にとって許せないことだったとしても、一時の感情に流されるままになっている覚悟ではない。
自らの感情を殺す術なら誰よりも秀でている。
712スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:30 ID:.HrUQ4Vc
今は怒りのままに暴れまわるときではない。
真実へと足を進めるときだ。緩やかでもいい。ただ確実に進むときだ。

『だとすると、私達が集められたのは?』
漠然としてはいるが、答えに近づいている感触がある。
やっと掴んだ真実の切れ端を離さぬように、ヒナギクが慎重に問いかけた。

『それも何かを経験させるためってことか。
 それが弱者を嬲る強者の経験か、強者に怯える弱者の経験かは分からねえが』
川田が答えを手繰り寄せた。
まだその先にある真相は、その姿を隠したまま。
だが何かが伝わってくる。まるで「この先には何かがある」と誰かが囁くかのように。

「……ん?」
川田がふと横を見ると、つかさが小刻みに震えているのが見えた。
「つかささん、大丈夫か?」
よく見ると今までの震えとは違う。
拳を握り締め、歯を食いしばって、まるで込み上げる怒りに震えているような。

「そんなことで、そんなことの為にゆきちゃんは……」
いや、彼女は実際に怒っていた。
高良みゆきが「高良みゆき」としてではなく「単なる弱者」として殺された。
彼女にしかない夢も思考も表情も全て無視して、ただの弱者として殺された。
あの老人は、高良みゆきを高良みゆき足らしめる全てを奪った。
許せない。
「そんなの絶対に許せない……!」

(彼女もこんなに怒ることがあるのか……)
川田がかけるべき言葉に迷っていると、覚悟が紙面をコンコンをペンで叩いた。
713Classical名無しさん:07/12/31 00:30 ID:OyCF5s4c
  
714Classical名無しさん:07/12/31 00:30 ID:F7bbFTrA
   
715スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:30 ID:.HrUQ4Vc
『先ほど川田が一般人が集められた理由は強者の経験のためか、弱者の経験のためかと言ったな。
 私は後者、つまり弱者の恐怖、絶望の経験のためだと思っている。
 なぜなら先ほども述べたように、人々がここで感じる恐怖はバラバラだ。
 つまりこの殺し合いはありとあらゆる絶望に満ちている』
「ちょっと覚悟くん! つかさの気持ちも……」
つかさを無視して一人で考察を進める覚悟にヒナギクが怒りを露わにした。

しかし覚悟は全く動じる素振りも見せないで川田を見やる。
それと同時に、覚悟の持つペンが文章の後ろの空白を動いた。
まるでアンダーラインを引くように、まだ書かれていない文字の下を行ったり来たりしている。
川田がその意味を悟るのに数秒の時間を要した。
彼は『ここから先はお前の口で言え』と示しているのだ。

『つまり、あのジイさんが望んでいるのは俺たちの恐怖だ。
 俺たちが弱い感情に支配されるのを待ち望んでいるんだ』
覚悟からペンと受け取る。文章は自然と浮かんできた。
踊るように文字を生み出していたペンの動きが、いつしか力強いものに変わっていた。
「だから……!」
ついに彼は文字を捨てた。自分の声で彼女に伝えるべく。

「だから希望が、強い心がやつらを打ち破る鍵になる。
 そして、俺に『こころ』を教えてくれたのは君なんだ、つかささん」
え?、と呟いてつかさが顔を上げると、川田が真剣にこちらを見つめている。

この人は自分のことを希望と呼んでいるのか。
本当に誰かの希望になれたのだろうか。

だとしたら。本当に彼の言うことが真実ならば……。
「じゃあ川田くんは私の希望だね」
つかさの笑顔は本当に希望に満ちていて、
絡み合った視線は心と心を繋ぐ糸のようだった。
716Classical名無しさん:07/12/31 00:30 ID:Ng07fghA
           
717Classical名無しさん:07/12/31 00:31 ID:OyCF5s4c
    
718スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:31 ID:.HrUQ4Vc

ふぅ、とヒナギクが腕組をして溜め息を吐き出した。
額に手を当てつつも、その顔はかなりニヤけていたのだが。

「恐らく……」
覚悟がペンを取り、文字を書きながら同時に呟いた。
『死者の魂はあの強化外骨格に幽閉されている。
 ならば私達の目的はその強化外骨格を破壊し、魂を解放すること』
高良みゆきを生き返らせる術など存在しないだろう。
だが、ただの弱者として、全てを奪われ死んだ彼女を取り返すことは不可能じゃない。

「行こう。死した人々を取り戻すために」
4つの視線が紙面の上で交差し、
4人の思いが、覚悟の声と同じ波長で重なった。


「さて、現状で考えられるのはここまでってところか」
川田の間の抜けた声で全員の肩の力が抜ける。
魂を具体的に何に使うか、その答えを導き出すにはヒントが少なすぎる。
「そうね。あとは各自、放送まで待ちましょうか」
放送で主催者が尻尾を出してくれればよいのだが。

「みんな無事かなぁ……」
つかさが足をプラプラさせながら天井を見上げた。
かがみとこなたなら大丈夫だろうと自分に思い聞かせながら。
「ふむ、大丈夫だ。ルイズさんも無事であると信じている」
「帰りを待つ人がいるなんて、覚悟くんは幸せものねぇ」
真っ直ぐ前を見据えて真剣に言い放ったはずの覚悟。
そんな彼をニヤニヤ笑いながらヒナギクがからかう。
719Classical名無しさん:07/12/31 00:31 ID:OyCF5s4c
   
720スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:31 ID:.HrUQ4Vc

「な……別にそんな関係では断じてないぞ」
「はいはい……私は放送まで練習してるから」
必死に弁解する覚悟をよそに、核鉄をヒラヒラ掲げながらヒナギクが外へと向かう。
川田はそれを見送るなりどこかへ行ってしまった。

後に残ったのはつかさと覚悟としばしの沈黙。
その中でつかさは友人のことを考えていたのだが、ヒナギクが言った言葉が頭のどこかに引っかかっていた。

「覚悟は幸せ」という言葉が。


◆     ◆     ◆


つかさと覚悟が2人で放置されてから、しばらくの時間が過ぎていた。
とはいっても特に会話はない。
と言うより、つかさは眠りこけていた。
いろいろなことがあったのだ、無理もないだろう。
彼女の上には覚悟が民家内で調達してきた毛布がかけられていた。

葉隠覚悟に久しぶりに訪れた静寂。
少女の寝息などはするものの、今までに比べたら遥かに静かだ。
今の川田たちに出会う前も、ルイズや志村などの心強い仲間と共にいた。
その声が妙に懐かしい。
この心地よい静寂よりも仲間たちの声がすることを望んでいる自分がいた。
騒がしいのが好きだったのか、と新たな自分の発見に少し驚く。

今までは一人で戦い、それが当然のことだと思っていた。
己を殺して。誰かの為に全力で。
それが葉隠覚悟の生き方のはずであった。
721スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:32 ID:.HrUQ4Vc
だが……
(心が揺れるのも、悪くないな)
そんな自分の変化にも驚くことは無かった。
揺らいだ不退転を笑顔で受け入れる覚悟であった。

(……な!?)
ガタ! ガタガタ!
敵襲でもあったかのように覚悟が突然立ち上がった。
「か……覚悟くんどうしたの!?」
机やら椅子やらを大きく鳴らして立ち上がったせいで、つかさが起きてしまった。
驚くつかさを無視して外へと駆ける。
空から降り注いだ夕日が覚悟の顔を薄紅色に染め上げる。
ドアの外から周りを見渡すが、先ほどと全く変わりのない静寂が覚悟を包んでいた。

「何かあったの?」
家の中に戻ると、つかさが寝ぼけ眼で毛布に包まっていた。
「いや、誰かに呼ばれた気がした。起こしてすまない」
実際に彼が立ち上がる瞬間まで周囲に一切の声は存在していなかった。
全ては覚悟の思い違い。
そうとしか言えない状況である。

だが、彼が立ち上がったその瞬間に彼を呼んだ人物は確かに存在していた。
遠く離れた場所で彼に願いを託して散った少女がいた。

彼女の願いは覚悟には届かなかったのだろう。
彼女が死んだ場所より近い位置で起こっていた、ビルの崩落すら聞こえなかったのだから。
722Classical名無しさん:07/12/31 00:32 ID:OyCF5s4c
 
723Classical名無しさん:07/12/31 00:33 ID:Ng07fghA
               
724スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:33 ID:.HrUQ4Vc

だが、少女が命と引き換えに叫んだ声が、その僅かなかけらが彼の元に届いたのなら……

彼の耳を震わせたのが少女の発した振動の屑であるならば……

それはこの殺し合いの中で誰にも気づかれることのない、小さな、だが確かな奇跡なのだろう。

「毛布、ありがとね」


◆     ◆     ◆


桂ヒナギクは空を飛んでいた。

恐怖を振りはらって、高くジャンプした。
3,4メートルの木の上からの落下。これは高所恐怖症の彼女にとっては、とても出来ることではないはずだ。
それでも彼女は飛んだ、死に立ち向かう恐怖に比べたらまだマシだと言い聞かせて。
この高さから落ちたら人は死ぬのだろうか。
さすがに死にはしないだろうが、無傷と言う訳にはいかない。

さっきとは違い、彼女は回転はしていない。
4枚の刃を出来る限り大きく広げる。
下から彼女を見上げるものがいるとすれば、夕日に照らされた赤いX字が見えただろう。
そのまま風を受け、彼女は地面に近づいていく。
風になびいた長い髪は、夕日に照らされてもなおその桃色を失ってはいなかった。
同じように彼女の顔も恐怖に染められることなく、その闘志を両の眼に宿していた。

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」
725スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:33 ID:.HrUQ4Vc
叫び声を上げて己を鼓舞する。落下の恐怖は多少和らいだようだ。
地面に激突する直前、腰を後ろに思いっきり引いて、代わりに4枚の刃を切り株に叩きつけた。
巨大な切り株を爆音を立てて粉々に砕き、それでも刃は止まらない。
ガリガリと切り株を砕いた刃の束は、地面に大きな穴を開け、やっと停止した。
その穴の中心に本来あるべき切り株は、見るも無残な形となってそこらじゅうに散布している。

破壊と落下の衝撃は刃の先で一緒になり、刃を破壊した後、そのまま細い金属を伝っていく。
着地から1秒ほど遅れて、その衝撃はヒナギクの足で爆発した。
「ぐ……あぁあ! がああああぁぁぁぁ!」
太腿が千切れるのではないかと言うほどの痛み。
骨を軋ませ、肉を千切る衝撃はこの破壊力の代償としては余りにも大きい。

「ぁぁぁ……ぐ! もう……一度」
それでも彼女は立ち上がった。今の一撃でバルキリースカートの刃が破壊されていることにも気づかずに。
フラフラと、さっき飛び降りた木を再び向かう。
だが足のダメージは大きく、上手く前へ進めない。
ある程度力をセーブしたのにこのダメージだ。
全力で撃ったなら、覚悟の言うように足が完全に破壊されてしまう。
それを知ってヒナギクはこんな無茶をしている。
ラオウのような化け物を倒すには、このやり方しかないのだから。

「ぐっ……あ……」
ついに彼女の体が傾いた。疲労した両足が彼女の体重すら支えられなくなったのだ。
膝をつく事すら出来ずに地面へと倒れこんだ彼女を抱きかかえたのは、太い腕。
「知ってるか?」
その腕の持ち主、川田章吾が問いかけた。
「仲間に嘘をつくと、強烈なアッパーを食らうらしいぜ?」
川田の言うとおり、ヒナギクはつかさに嘘をついた。
もう無茶な戦いはしない、と。
ヒナギクが彼女に黙ってこんな真似をしていたとバレたら、彼女はとても悲しむだろう。
726スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:33 ID:.HrUQ4Vc

だが川田はそれ以上はなにも言わなかった。
嘘をついたヒナギクに笑顔を見せた。
「……もうしないわ。予想以上に痛いのよコレ。
 それに、高いところはやっぱり怖いもの」
ヒナギクも川田の背中に背負われながら笑顔でそう答えた。

「一度死んだ人間としてアドバイスさせてもらうが……」
背中のヒナギクが「なに?」と、か細い声で一言呟いた。
「誰かを助けて死んだ人間の中に、死にたいと思って死んだやつなんか1人もいないぞ」
おそらく川田は全てを見透かしているのだろう。
ヒナギクが、誰かの死と引き換えに生き延びた自分の価値に疑問を抱いていることも。
全てを投げ打って戦うことが、自分の存在価値だと思い込んでしまったことも。

それを理解しているから、アッパーではなくこの一言を食らわせたのだろう。
「分かってるわよ……そんなこと」
「そうか。……疲れただろ。運んでってやるから寝ちまいな」
それから覚悟たちの元に帰るまで、川田が口を開くことは無かった。
ここから先は彼がどうこうできる問題ではない。
ヒナギクが自分で答えを見つけなければならない。
川田に出来るのはヒナギクを信じてやることだけだ。

だが、ヒナギクの頭に広がっていたのは、空を飛ぶイメージ。
恐怖を振り払って大空を飛ぶ確かなイメージが、彼女の脳を支配していた。
仲間に嘘をつくことの罪悪感は、以前よりほんの少しだけ減っていた。

つかさの瞳にも、今なら耐えられる気がした。
727Classical名無しさん:07/12/31 00:34 ID:OyCF5s4c
  
728Classical名無しさん:07/12/31 00:34 ID:F7bbFTrA
   
729Classical名無しさん:07/12/31 00:34 ID:OyCF5s4c
 
730スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:34 ID:.HrUQ4Vc
【E-5 中央部 1日目 夕方】

【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に火傷(治療済み) 胴体部分に銃撃によるダメージ(治療済み) 頭部にダメージ、両腕の骨にひびあり、 強い決意
[装備]:滝のライダースーツ@仮面ライダーSPRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)
[道具]:ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾5発、劣化ウラン弾、残弾6発)@HELLSING 大阪名物ハリセンちょっぷ
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者を必ず倒し、彼らの持つ強化外骨格を破壊する。
1:川田、ヒナギク、つかさと行動を共にし、その後病院に戻る。
2:病院に残った人々が気になる。
3:杉村を弔う。
4:再びラオウと会い、自分の決意を伝えたい。
5:怪我が治ったらルイズとゲームセンターに行く
[備考]原作一巻第一話、逆十時学園入学初日より参戦
※決意が強まりました、殺し合いに乗った者が戦士であるならば容赦はしません。
※戦士でないと判断した者(一般人の女性や子供など)に対しては決して抵抗せず、 説得を試みます。
※戦士であるかどうかの判断は次の書き手さんにお任せします。
731Classical名無しさん:07/12/31 00:35 ID:F7bbFTrA
  
732スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:35 ID:.HrUQ4Vc
【川田章吾@BATTLE ROYALE】
[状態] 健康
[装備] マイクロウージー(9ミリパラベラム弾16/32)、予備マガジン5、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
[道具] 支給品一式×2、チョココロネ(残り5つ)@らき☆すた
    文化包丁、救急箱、ZXのメモリーキューブ@仮面ライダーSPIRITS、裁縫道具(針や糸など)
    ツールセット、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、缶詰やレトルトといった食料品。
    薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(二本消費) ツールナイフ
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗っていない参加者を一人でも多く救出し、最後は主催者にカウンターパンチ
1:仲間と一緒にPCと村雨を探す。PCが見つかったら、ハッキングを試みる。
2:つかさの姉や友人、ヒナギクの友人を探すのに協力する。
3:ゲームに乗っている参加者と遭遇した場合は容赦なく殺す
4:ヒナギクのことが心配
参戦時期:原作で死亡した直後
[備考]
※桐山や杉村たちも自分と同じく原作世界死後からの参戦だと思っています
※首輪は川田が以前解除したものとは別のものです
733Classical名無しさん:07/12/31 00:35 ID:OyCF5s4c
 
734スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:35 ID:.HrUQ4Vc
【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 両足に痛み(核鉄で治療中)
[装備] ボウガン@北斗の拳
[道具] 支給品一式。ボウガンの矢18@北斗の拳 、核鉄(バルキリースカート)@武装錬金
[思考・状況]
基本:ハヤテ達との合流
1:放送まで寝る。
2:仲間と一緒にPCと村雨を探す。。
3:やれることを探してやる。だが無理はしない。
4:敵を倒す為なら死んでもいい。
[備考]
※ ヒナギクが聞いた轟音の正体は、三影の大砲の音です
※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです
※桂ヒナギクのデイパック(不明支給品1〜3品)は【H-4 林】のどこかに落ちています
※ロードローラー@ジョジョの奇妙な冒険と捕獲網@グラップラー刃牙は【H-4 林】に落ちています
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました
※バルキリースカートが扱えるようになりました。しかし精密かつ高速な動きは出来ません。
 空中から地上に叩きつける戦い方をするつもりですが、足にかなりの負担がかかります。


【柊つかさ@らき☆すた】
[状態] 健康
[装備] なし
[道具] 支給品一式、ホーリーの制服@スクライド、ターボエンジン付きスケボー @名探偵コナン 、ツールナイフ
[思考・状況]
基本:ゲームには絶対に乗らない
1:放送まで寝る。
2:仲間と一緒にPCと村雨を探す。
3:お姉ちゃんやこなちゃんたちと合流したい
4:みんなの力になりたい。でも無理はしない
[備考]
※川田、ヒナギク、覚悟、新八を完全に信用しています
735スカイハイ ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:36 ID:.HrUQ4Vc



【備考】
※4人は、総合スーパーで捜索を行い、 その後病院に戻る予定ですが、
放送で呼ばれた死者によって行き先が変化する場合もあります。


※4人の主催者の目的に関する考察

主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。


※4人の首輪に関する考察及び知識

首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首輪には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている。
736Classical名無しさん:07/12/31 00:36 ID:F7bbFTrA
              
737 ◆d4asqdtPw2 :07/12/31 00:36 ID:.HrUQ4Vc
以上です。支援ありがとうございました。
738Classical名無しさん:07/12/31 00:36 ID:OyCF5s4c


739Classical名無しさん:07/12/31 00:44 ID:OyCF5s4c
ちょwww俺トイレ行って帰ってきたのに誰も感想かいてないって…

ならば俺が最初のほうにこの言葉を言ってやる

乙!

川田かっこいい!
覚悟カッコいい!
ヒナギクカッコいい!
つかさもかっこいい!

いやー全員がかっこよく見えました本当に乙です
740Classical名無しさん:07/12/31 00:50 ID:CzVnrqBE
>>739
単に気づかなかっただけだから気にしないでおくれw

>>735
グッジョォォブ!!
4人の心情が手に取るように伝わってきましたぜ。
今までの過程を含めた会話や思考とかがイイ! これぞリレーって感じですな。
ヒナギクも川田もつかさも覚悟もみんな好きだあああああああ。
ヒナギクがアンデルセンとTQNを真似してるところで吹いて、
覚悟がルイズの死を感じ取るところで涙がでそうになりましたよ・・・。

マジでGJ!!
741Classical名無しさん:07/12/31 00:50 ID:Ng07fghA
しゃあ、じっくり読み終わった。

投下乙!
考察が前に進んできました。
魂を補完する、原作の大首領の状態をかがみ見ると……と思わず想像してしまいました。
ひなぎくの訓練シーンも、次回以降に違和感なくバルキリースカートを使わせることに無理を出させない配慮としていい!
何気に武器の訓練っていうロワでは貴重な話ですし。
ルイズの願い……欠片でも覚悟に届いたのか。
彼女の願いを覚悟が知るのはいつか……。

GJ!
742Classical名無しさん:07/12/31 01:03 ID:F7bbFTrA
投下GJです。

ヒナギクも何だかんだ強いなぁ。
川田やつかさもですが、強者に立ち向かおうとする一般人っていいですよねぇ。
このチームはみんな活き活きしてて、好きです。
そして「覚悟が幸せ」
ここ読んだとき、何だかゾクリとしましたよ……
743Classical名無しさん:07/12/31 01:11 ID:gi5SaQmc
GJ! 個人的に一番好きなチームだけに、正直に待ちかねたぜ。
川田も覚悟もつかさもヒナギクもかっこよすぎッス。


……でも、「覚悟は幸せ」ってところに異常な興奮と神(ryを感じたオレは負組。
744Classical名無しさん:07/12/31 09:05 ID:N/DXDg.U
乙!
覚悟が痺れますね!
考察も前に進んで来ましたし、もう物語も中盤にきたと感じですね〜。
GJ!です!
あと、ルイズの声聞いた可能性がある人って何人ぐらいいるんだっけ?
745Classical名無しさん:07/12/31 09:44 ID:1jKRzs4Y
本当良いパーティーだよな。弱い奴程一生懸命なのが、涙ぐましいよホント
必死こいて練習するヒナギクがすごいヒナギクらしくて、とても良い話でした。GJ!
746Classical名無しさん:07/12/31 10:40 ID:NmlFGaeA
投下乙!!
川田が渋くてかっこいい!!

ルイズの死が覚悟にどんな影響を与えることやら・・・
747Classical名無しさん:07/12/31 11:40 ID:ZDCw4So2
今さらかも知れんが、どう見てもテニスじゃないな。
オーラ出したり、英語モードになったり……
748Classical名無しさん:07/12/31 11:58 ID:8Wjvo3HU
>>747
誤爆か?
マジレスすると真に恐ろしいのは、「すごいクールドライブだ!!」のおどろきの一言だ
クールドライブには驚くくせに、「全身の気を右手一本に集める・・・」って状況はあっさり受け入れるからな
よってあの世界は 通常テニスの技術>オーラ操作
つまり俺が言いたいことはだ………………スレ違い…ここは漫画ロワだ


さて、渋くてかっこいい川田を読んでくるかw
749Classical名無しさん:07/12/31 15:28 ID:NZONcpjA
つまり桐山が無我の境地をかましたり、KOOLが「まだまだだね」とか言ったり
川田が「俺の波動球は(ry」とか言ったりして青学テニヌ部で大活躍するんですね!
750747:07/12/31 15:47 ID:yzhrz10c
誤爆か……
俺の百八式もまだまだだな。
だが、謝らない
751 ◆NIooiMe9JM :07/12/31 16:04 ID:OyCF5s4c
一応投下準備完了…贔屓してる可能性があるけど(その分変なことさせたけど)

でも今人いないかな?なら夜まで待つかな
752Classical名無しさん:07/12/31 16:11 ID:yzhrz10c
>>751
投下してOKだっておじいちゃんが言ってた。
753 ◆NIooiMe9JM :07/12/31 16:13 ID:OyCF5s4c
あ、また怒られたらへこんでしまうので訂正

贔屓している可能性っていうのは自分自身は贔屓をしていないつもりだけど
他の人から見たらそう見える可能性があるかも知れませんって意味です
754 ◆NIooiMe9JM :07/12/31 16:23 ID:OyCF5s4c
本当に人がいないんだな…

>>752の敬意の気持ちを込めて投下したいしたいと思います
やっぱりジグマールは焦っていた。
このままこの場所に待機していれば必ずあのピンクの髪のバカ娘がここに現れる。
そんなことが今ワープも出来るかどうかわからない状態で起こったら、
150%の確率でとてもお子様には見せられない展開になってしまう。
そうなる前に、できるだけ後の展開がよくなるようなこと、
つまり弱っている奴を隙を見て殺すことをしたかった、だが…
「なぜ出て来ない…あの二人が出てきたっという事は、かなりの可能性で
殺し合いにが終わっていると思っているのに…」
数十分その場で待機していても誰も出てこなかった。

「はっ!!しまった…!まさか三人とも私という存在に気づいて
地下鉄で移動したか…!」
そんなことはありえない。
しかしいつも冷静沈着(ジグマール自称)な彼がこれほどの事を言ってしまう程、
彼は焦っているのだ。
(どうしたらいいのだ…?今ここであのバカ娘が来たら…う〜考えたくも無い…)
だったら早く彼女が来る前にその場所から離れればいいのではないか。
だが彼は今それを考えようとしなかった。
なぜなら馬鹿…いや…彼は焦っているからである。

「しかしこのまま待ったいたらジリ貧なことは間違いなし…だったらいっそ…
いっそ突入だ…
虎穴に入らんば…虎児を得ずということばもある…!ええーい!突入!」
(まっててねギャラン=ドゥ…ぼくは少しだけ…大人になって君にあえる気がするよ!!)
それは大きな勘違いだ。どこか一つではなく全体的に。
やはりマーティン・ジグマールは焦って…いや馬鹿だった。
体が痛い…まったく情けない…ま…しょうがねえか、
連続で良い事が続くって事もあれば…その逆もあるさ…
「しかし…結構な激痛だな…かすり傷も…これを一人で手当てするとなると…
けっこうな時間が掛かっちまう…それに…手の届かないところにも…」
不幸中の幸いとはこの事だな…傷薬や包帯、その他諸々治療道具を、
学校やあの鬼女の所で入手しておいて助かった…
これなら十分な手当てが出来る…
「今は…もう放送まで近いな…乗り物を失い、且つこの負傷じゃ、
8時に着くことなんて到底不可能…失敗したな…8時は8時でも、午前8時だよ…
そんな風に考える奴なんていねえよな…」
まあでも鳴海のことだ…多分エレオノールにいい所を見せようとして、
あのもう片方の奴に喧嘩を売ってそうだな…
それに少しエレオノールを女として誘うかも知れねえな…
ついでに言うと…あのエレオノールが探していた、才賀勝って奴も見つけたかも…
「まあ俺がこんな目にあったんだ…
今頃は…え〜と…鳴海、パピ♪ヨン、あの執事、そしてナギって言うお嬢様
エレオノール、隣にいた小僧、空条、奥にいた眠り姫、そして才賀勝…であと南側にいた連中
二人ぐらいと合流して…今は…11人くらいで、
仲良くしてそうだな…くく…特にエレオノールメロメロになっているとか…ありそうだ…」
さて…俺もうかうかしちゃいけねえ…さっさと自分の手が届くところ範囲の手当てを…
ん…?なんだあれは…?あれは………!!

「び……美形だ…!」

何が何だかわからねえ…でも言わなきゃならねえような気がした…
でもあんな所で何してんだ…もしかして…俺の見えない位置にいるつもりで、
俺を監視しているのか…?そうするとだ…必然的に…
757Classical名無しさん:07/12/31 16:27 ID:1jKRzs4Y
しーえん
ジグマールは嬉しかった。
人がいた、しかもその人とは彼がもっとも願っていた体制…
つまり負傷者であったのだ。
「やったよ…やったよギャラン=ドゥ…ついに…ついに僕にも幸せなときが来たよ…
では早速…いや、まてよ…」
ここでジグマールあることに気づく。
(どうしてあの銀髪は軽傷しているだけなんだ?
あの銀髪は、最初入っていったときはほぼ無傷に近い状態だった、
でも今は傷を負っているとしても、一番深い負傷で打撲や切り傷どまり、なんで?)
ジグマール混乱する…のち氷解。
(そうか…あいつは僕と同じ…口八丁な奴なんだ、
だから軽傷どまりだったんだ。
何を言ったかは知らないけど、とにかく…これは使える!
あいつを手下にして、僕の潔白を認めればいいんだ。
そうすれば、もうあんなことは起こらずにすむ!
でもあいつは手下になるか?いや…でもならなかったらさっさと殺せばいいさ!
僕!あったまいー!)
これはまさに逆転の発想。
この行為はどちらに転んでもジグマールが不利となる展開は無いといってもいいだろう。
が、しかしマーティン・ジグマールは赤木しげるを舐めていた。
赤木しげるの口八丁が、彼の数段階上にあるという事を。
(それでは…接触開始!いつもなら接触した瞬間名を名乗るが…
奴の命は私の手の中にある…そんな奴に名を名乗る必要ナッシング!)
759Classical名無しさん:07/12/31 16:28 ID:yzhrz10c
    
「おいそこのお前!」
先程までの小心者のジグマールと打って変わって、
マーティン・ジグマールは威圧的にこう言い放つ。
その姿はまさにホーリー隊長のときそのままと言っていいほどだ。
「ん…何ですか…?こんなか弱い青年の前に急に出てきて…?」
(キ…気持ち悪ぅううううう)
一瞬ジグマールは赤木に変な感じを覚えたがそれを知らない振りをして、
言葉をたたみ掛ける。
「そんなことはどうだっていい…
それよりも私の手下にならないか?ならなければ…「わかりました…」
「そうかやはりそうか…やっぱり誰もイエスといわないか…なら死ね…!ってあれ?」
これはマーティン・ジグマールにとって、まったく予想していなかった展開であった。

「で、何でそんな意図も簡単に、この私と組むことを認めたのだ?」
ジグマールは威厳たっぷりに赤木に話しかける。
「くく…そりゃ簡単なことですよ…だってあんた…俺を見つけたあと…
すぐに話しかけずに、少し考えてから俺に話しかけてきたでしょ…?」
「へ?」
(私があそこにいたこと知ってるううううう!?!?!?!?!)
「そ…そんなはずは無い!私は…今始めたお前に会った」
アカギの発言を否定する、しかし誰がどう見ても驚いているように見える。
「さらに言いますと…あのおっぱいのでっかい姉ちゃんと、
あの筋肉と知り合いでしょ…?」
(な…なぜそこまでっ知ってる!?!?!)
「くく…だってあのあのおっぱいのでっかい姉ちゃん、俺の前から去るときに
ほんの一瞬だけ誰かを探してるように見えたさ…
それに第一あんたこの殺し合いに乗ってるでしょ…?」
761Classical名無しさん:07/12/31 16:30 ID:1jKRzs4Y
 
(ゲェー!そこまで…なんで…?)
「あんたは恐らくこの駅の出口の前でずっと待ち伏せしてた…
負傷したほかの参加者を上手くいけば殺せるからな…
それにあのおっぱいのでっかい姉ちゃんと組んでた理由は、
恐らくあんたが…まあ多分午前中に病院辺りで、4人から5人を殺そうとして失敗し、
そして、その腹いせにそいつらの悪評をばら撒こうとしたら、
実はあのおっぱいのでっかい姉ちゃんの知り合いが病院にいて、
それであんたの悪評が正しいかどうか調べに行くために、
病院に向かって行ったところ色々な奴が現れてきた…
で、なんであんたが南に逃げなかった理由は、恐らく
あのおっぱいのでっかい姉ちゃんと筋肉以外に、
あのおっぱいのでっかい姉ちゃんと筋肉との間で
親しい関係を持った奴がいて、そいつも病院に仲間がいたのだろう…
でもそいつは走って行ってしまったので、しかたなく電車を使った…
ま、こんなところだろ…」

(ぜ…全部ばれてるーーー何こいつ…超能力者…?
いや…実こいつずっと私の後についてきたんじゃないか…
そしてこいつ『あのおっぱいのでっかい姉ちゃん』って何回言った?)
ジグマール唖然、そして愕然。全部あっているので困惑。
(どうする…このままこいつと組んでいたら色々な意味で大変なことになりそうだ…なら…)
763Classical名無しさん:07/12/31 16:31 ID:yzhrz10c
                
「ま、俺はこんなことどうでもいいと思っているけどな…」
ジグマールがアカギの今後を考えているとき、アカギが口を開く。
「あんたさ…あの筋肉のやばい4人を1人で倒せないだろ…?」
「いや…そんなことは…」
「無理だろ…?」
「はい無理です」
アカギの言うとおりであった。
「さらにだ…この殺し合いにはあいつらにはもっとやばい奴は何人もいるんだぜ…?
もっと言えば、殺し合いに乗ってる奴を殺す輩だっている…そんな奴らを一人一人…
いや下手すると一対複数なんて事もありえる…」
アカギは間髪いれずに話しを続ける。
「だから、今だけ…本当に今だけでいい…
最終的なんて関係ない…今だけ積極的に殺し合いを乗っている奴らをさ…
いろんな奴と手を組んで殺していくべき…そうすればあんたは
本気にをださずに化け物を倒せる…
そして化け物が全員いなくなったら…今度はあんたがゆっくり…
化け物を倒して疲れている奴らを殺せばいい。
どうだ…俺のいってることは間違いだと思うか…?」
赤木の言っていることにジグマールは損は無い。
確かに今アカギを殺したところで、ジグマールはあまり意味が無い。
下手するともっと敵を作る可能性すらある。
がしかしこの男…アカギは自分の全容を知っている、
もし裏切られたら大変なことになる。
765Classical名無しさん:07/12/31 16:32 ID:yzhrz10c
               
(どうする…ギャラン=ドゥ…君ならどうする…?君なら…でもここは僕が決めなきゃ
駄目なんだ僕一人で…僕一人で…僕一人で…僕一人で…僕一人で…僕一人で…)
マーティン・ジグマール、深く長く考えるが…解らない…どちらが正しいのが…解らない…
気味が悪くなるほどの長い沈黙が流れる。

「はぁ〜…」
その長い沈黙打ち破ったのは、アカギだった。
「下手だな…本当に…こういう時は
『私もいいと思っている』とか『I need you』とかいって一応肯定しておくべきなんですよ…」
「英語ですか…」
アカギの思わぬ発言に一気に拍子抜けするジグマール。
「そうですよ…どんな言葉でもいいから肯定しておくべきなんですよ…
いざとなったら、俺を盾にして逃げることもできますしね…」
「はあ…」
ジグマール一応納得。
「で…俺と組んでくれますか…?」
「ああ…わかった組もう、組ませてもらうよ」
マーティン・ジグマールと赤木しげる、今ここに、一時的であるが同盟関係を結んだ。

「じゃあ交渉成立って事で…それじゃあまず初めに自己紹介でもしましょうか…?
あんたやお前の会話じゃわかりにくいですからね…」
(ん?あれ?上手いようにこいつに操られていないか?)
ジグマールが一瞬疑問に思うが、それは気のせいでありたいと思う気から、
そのことを考えるのを止めた。
「ああ、その通りだな…なら私から…
マーティン=ジグマール、設定年齢19歳 蟹座のB型ッ!!!だ」
「くく…ジグマールさんね…俺は赤木しげる…あんたと同じ19歳だ…」
このときジグマールは顔には出さなかったが内心もの凄く驚いていた。
(え、こいつ私と同い年?!嘘だあ…だって白髪だよ?こいつ本当は
33歳ぐらいなんじゃないの?それともこいつ流のギャグって奴ですか?)
残念ながらジグマールのこの考えは間違っている。
赤木しげるは本当に19歳である。
767Classical名無しさん:07/12/31 16:33 ID:yzhrz10c
                     
「さて…これから情報交換と…これからの話しをする前に…っと…!」
「な…何をしている…アカギ?」
ジグマールとアカギがこれからの話しをするとき、
何とアカギは服を脱ぎだした。
「なにって…結構痛かったんですよ…特に背中がね…
簡単に言うとあんたに治療を手伝って欲しい…情報交換することくらいなら、
それくらいのことをしててもできる…それに俺の治療がすんだら、
あんたも自分の怪我の治療をしても構わない、もちろん情報交換しながらね…」
「はあ…イマイチ納得できないが…まあ私も治療をしたかった所だ、
やってあげますよ…どうせこれも友好関係を深めるとかそんな感じだろ?」
「くく…わかってるじゃないですか…ではよろしくお願いしますよ…!」
(あれ?アカギと対等な関係になって無いか?私の手下のはずだったような…)
そのはずだった。しかしその簡単なことも不可能にしてしまうのが、
アカギの口八丁である。
こうしてアカギとジグマールの男同士のスキンシップという名の治療が始まった。

くく…単純すぎる…この男は単純だ…!
おそらく俺と戦ったら、おそらくこのジグマールという男は、
赤子の手を捻るように俺を負かすことが出来る…
しかしそれをしなかった…理由は簡単…
お前は死ぬことを恐れている…もっと強く激しく…高圧的にいけば、
俺なんかと組まずにらくらくと人を騙せるはず…
だけどもし…もし俺が他の誰かと深い友情や愛情を持っていたら…
自分は復習され殺される…現に今あのおっぱいのでっかい姉ちゃんと
筋肉を裏切ってここにいる…その前には病院の奴らの機嫌を損ねている可能性がある…
だから迂闊に俺を殺せなかった…これ以上敵を増やしては自分は生き残れない…
だから俺と組むことにした…奴は戦いを…自分が完全に安全なときしかしない…
その実力を持てば…多少不安があっても貫けるはずなのに…まさに才能の無駄遣い…
この男は…いつか現れた俺の偽者に似ている…が決定的に違うことが一つある…
こいつは強い…もしこいつが俺の仲間になったらどれだけ楽か…
ちゃんとまともに説得しておくか…?いや…考えておくだけにしよう…
まだこいつのそこが知れない…それを実行するのはこいつの全ての能力を確かめてからだ…
「さて治療も終わったことだ…じゃあ本題のこれからのことを話す。」
アカギ、ジグマール両者のスキンシップという名の治療タイムは終了した。
そしてこれから真剣な話しが始まる。
「これからどこに行くべきか…これは単純且つ大事なことですからね…
まず西側。西側はあのおっぱいのでっかい姉ちゃんと筋肉が向かった、
さらにさっき言ったように俺の午前中知りあった奴らがいる。
北側はラオウという筋肉野郎と、おそらく勇次郎という筋肉野郎が向かっていたはず。
そして東側、この場所には斗貴子という銀髪の化け物がいてだ…
さっきの情報交換したとおりだと
あんたのあいたくない知り合いもたくさんいることがわかっている…
さて…どこにする…?」
(どこにするって…どこもいきたくねーーーーーーーよ!!!!)
ジグマールは思わず驚愕した。
(え?なに?所謂一つの四面楚歌ですか?そんなの聞いて無いよ…)
ジグマールは最悪の気分であった。

「あれ?そういえば南は?」
ここでジグマール一つの希望が生まれる。
「南ですか?おそらくですが誰もいない可能性が高い…
それに南にいくには対面の電車ですしね…」
「アカギ…」
「はい…?」
「対面へ走れええええ!!!」

「よし思ったとおりだ!すぐに電車が来る!」
ジグマール、まさに地獄からの生還である。
「まったく〜アカギは一番安全なルートを隠しておくなんて…」
「別に貴方を喜ばすために隠しておいたわけじゃないですが…
なんせ人と合流しておくべきかと思いまして…」
アカギが南を言わなかった理由、それは人がいない可能性が多かったからである。
「いや…でも地図に書いてある場所…つまりボーリング場か
ガソリンスタンド付近ならいてもおかしくありませんね…
だったら南に行く価値は無いともいえませんが…」
「だったらなお良い事じゃないか!まったくアカギ君は
ツ ン デ レ だな〜」
このときアカギの時間が一瞬止まった。
「…そういうことは自分で言うことではありませんね…」
「ああ、たしかにそうだな。っと電車が来たぞアカギ、
さっさと乗るぞ。ああ、最初に行くのはボーリング場な。
なんたって広くて安全そうだから。」
「最初に行くところはボーリング場…その後にガソリンスタンドですね…
わかりました…」

こうして二人は行く場所を決めた、行く場所はボーリング場。
ここでマーティン・ジグマールは新たな一歩を踏み出す。
ギャラン=ドゥのために。そして自分自身のために。
(ギャラン=ドゥ…始めて君が言うとおりのことが出来たよ…でもやっぱり僕さびしいよ…
だから…はやくもどってきて…」
ツ…ツンデレってなんだ………?さ…さっきはとっさの判断で、
ツンドラにかけたもの…つまり冷たい奴と判断しちまったけど…
あっているのか…?いや、せっかくいざこざがなく上手くいっているんだ…
いまさら意味がわからないから教えてなんていえない…
しかし南にいくとなると本当に八時の約束に間にあわなくなる…
まあボーリング場に学校へ連絡できるものはあるだろう…
いやそのなことよりなんだ…ツンデレって…?
外国語か…?いやそうしたらもうちょっと発音がおかしくなっているはず…
だから方言にも聞こえなかった…じゃあ…あれか…?宗教的な言葉か…?
いやでも宗教を表すものは服装くらいだ…それに初対面の相手に、
いきなり宗教の言葉を使うか…?いやありえない…それなら最後に、
意味を教えてくれるはずだ…なんだ…なんだツンデレって…?
もしかしてもの凄くこれは重要なことではないか…?
こいつの本性を表すものかもしれない…
じゃあ誰が知ってそうな奴はいるか…?
おそらく筋肉達は知らないだろう…いや根拠は無いが…
鳴海も…知らないかも…
でも意外とあの眠り姫とかが知ってそうだな…
あ〜…なんだツンデレって…悔しいが全くわからねえ…
まあいい…とりあえずボーリング場に誰かいることを信じて、
そいつらに聞いてみるとするか…

赤木しげるは知らない、ツンデレの意味を。
実はアカギの言う通り筋肉はこの意味を知らないことを。
それ以外の結構な数の参加者がその意味を知っていることを。
そして、彼が全く心配していない喫茶店にいたメンバーが
ほぼ壊滅状態だということを。
【F-4とF-5の境界線付近 列車内/1日目 夕方】
【赤木しげる@アカギ】
[状態]:脇腹に裂傷、全身打撲(両方とも治療済み)
[装備]:基本支給品、 ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス (残り9本)
[道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)
始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます) キック力増強シューズ@名探偵コナン
水のルビー@ゼロの使い魔、工具一式、医療具一式
[思考]
基本:対主催・ゲーム転覆を成功させることを最優先
1:ツンデレの意味を知りたい。
2:マーティン・ジグマールと仲良くしていく。そして最大限利用する。
説得も一応考えておく。
3:ボーリング場へ行く。そして学校に電話。
4:対主催を全員説得できるような、脱出や主催者、首輪について考察する
5:強敵を打ち破る策を考えておく
6:このバトルロワイアルに関する情報を把握する
(各施設の意味、首輪の機能、支給品の技術 や種類など。)
※ツンデレの意味を色々間違った意味で捉えています。
※マーティン・ジグマールと情報交換しました
※光成を、自分達同様に呼び出されたものであると認識しています。
※参加者をここに集めた方法に、
スタンド・核鉄・人形のいずれかが関係していると思っています。
※参加者の中に、主催者の天敵たる存在がいると思っています
(その天敵が死亡している可能性も、考慮しています)
※斗貴子は、主催者側の用意したジョーカーであると認識しています。
【マーティン・ジグマール@スクライド】
[状態]:全身に負傷中(治療済み) 美形
[装備]:本部の鎖鎌@グラップラー刃牙
アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙(未開封)
法儀礼済みボールベアリングのクレイモア地雷(リモコン付き)@HELLSING(未開封)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:生き延びて全宇宙の支配者になる
1:アカギと組んでボーリング場へ行く。
2:ギャラン=ドゥの言うとおりに行動する
3:ギャラン=ドゥが活動できるまで戦闘は避ける
4;アカギを最大限に利用する。
[備考]
※アカギと情報交換しました
※人間ワープにけっこうな制限(半径1〜2mほどしか動けない)が掛かっています
連続ワープは可能ですが、疲労はどんどんと累乗されていきます
(例、二連続ワープをすれば四回分の疲労、参連続は九回分の疲労)
※ルイズと吉良良和と覚悟はアルター使いと認識しました
※アカギと情報交換しました
774Classical名無しさん:07/12/31 16:39 ID:1jKRzs4Y
 
【ギャラン=ドゥ@スクライド】
[状態]:ジグマールに潜伏状態 全身に負傷小(自己治癒中) 小程度の疲労
[思考・状況]
1:成り行きを観察中
[備考]
※ギャラン=ドゥは制限によりジグマールと命運を共にしています
 そのため、ジグマールを生かしています
※ギャラン=ドゥは制限により、30分前後しか表に出られません
(それ以降は体力を大幅に消費してしまいます)
※表に出られる時間はギャラン=ドゥ本人の体力と精神力に依存しています
※一度引っ込んだら2、3時間ほど間を置かないと、表に出られません
(無理をすれば出られますが、体力を大幅に消費してしまいます)
※人間ワープにジグマールほどではないが、けっこうな制限
(半径3〜4mほどしか動けない)が掛かっています
連続ワープは可能ですが、疲労はどんどんと累乗されていきます
(例、二連続ワープをすれば四回分の疲労、参連続は九回分の疲労)
776Classical名無しさん:07/12/31 16:42 ID:1jKRzs4Y
   
777 ◆NIooiMe9JM :07/12/31 16:42 ID:OyCF5s4c
投下完了しました。
誤字脱字、表現がおかしいところ、アカギや美形の性格がおかしい、
ところなどがあったら報告等お願いします
778Classical名無しさん:07/12/31 19:07 ID:N/DXDg.U
乙!
この二人のコンビはなんか好きだわ〜、
美形とアカギ……アンバランスのようでバランスがとれていていい感じ、自分的には贔屓している感じは受けなかったです。
GJ!
779 ◆NIooiMe9JM :07/12/31 20:21 ID:OyCF5s4c
アカギの性格が結構違うということを指摘されましたので、
修正したいと思います。

修正はアカギの口調や性格などアカギを重点的に修正したいと思います。
780Classical名無しさん:07/12/31 20:25 ID:1jKRzs4Y
アカギさん、あんたそれ銀髪繋がりで銀さんの霊が乗り移ってるよwwwwwwwwwwwwwwww
全く、死んでまで大人しくしてらんねえ奴だなwwwwwwwwwwwwwww
つかタイトルでまで笑ってんじゃねーぞアカギwwwwwwwwwwwwwwww 乙!
781Classical名無しさん:07/12/31 20:27 ID:fo4DOSwk
投下乙
ツンデレを知らないアカギやその他の細かいネタに笑いました
アカギは敵をも利用できるか!?
782Classical名無しさん:07/12/31 21:58 ID:Ng07fghA
投下乙!
そりゃ赤木はツンデレしらねえよw
美形が調子に乗っているのを見るのは楽しいw
珍しいチームだw こいつらの今後に期待w
GJ!
783Classical名無しさん:07/12/31 21:58 ID:Jb.GKA1U
もうだいたいのキャラが夕方まで進んる。
来年の三〜六日くらいで放送きけそうでだな。
784Classical名無しさん:08/01/01 03:59 ID:i1W.fUE.
年始早々矛盾を発見したんだが…それもだいぶ昔ので
「全滅エンド直行フラグ立ちまくり」でジョセフが1938年から来たと行ってるんだが、
ジョセフがカーズを倒した&結婚したのは1939年

これは矛盾なのか、それともカーズを倒したはずなのに義手じゃない矛盾と合わせて解決できる問題と、
どっちと取ったらいいんだ?
785Classical名無しさん:08/01/01 10:56 ID:GILV65AI
単純に作者のミスでいいんじゃねぇの?
手の損失は怪我として治されたっていう感じで
786Classical名無しさん:08/01/01 10:58 ID:.xv5s37Y
あけおめ
そろそろ次スレを
787Classical名無しさん:08/01/01 11:35 ID:MK6dBgyM
次スレ立てるけどいいかな?
788Classical名無しさん:08/01/01 11:55 ID:ncPAY6iQ
勿論OK!どうかお願いします!
789Classical名無しさん:08/01/01 11:56 ID:MK6dBgyM
漫画キャラバトルロワイアルPart10
ttp://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1199155761/
スレを立てたのはいいけど連投に引っかかってしまった。テンプレの続きヨロ。
790Classical名無しさん:08/01/01 12:08 ID:ncPAY6iQ
引継ぎ完了!
さてこのスレはどうしようか?
第二回放送から今までの中で特に印象に残ったSSでも挙げていくかい?

791Classical名無しさん:08/01/01 13:11 ID:rUveZeo2
一つに絞るの無理wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
「地獄の季節」「一瞬のからくりサーカス」「二人の女、二人の愛」とかどーしろと。これ全部夕方だけだぜwwwwwwwwwwwww
おかしいだろ、なんで今回はこんなにクソ熱いんだとwwwwwwwwwwwwww
792Classical名無しさん:08/01/01 13:19 ID:bpWvwjXk
>>791
なら全部を語ればいいじゃないww
793Classical名無しさん:08/01/01 14:34 ID:iI4OIAbg
>>790
テンプレの引き継ぎ乙!
果たしてかがみがまともな服を着る事はあるのだろうかw
794Classical名無しさん:08/01/01 14:50 ID:i1W.fUE.
>>793
むしろジョセフにさらなる鬼畜行動をさせる準備がある
795Classical名無しさん:08/01/01 15:10 ID:CfFmAX7c
確かに今回は特に熱かった……作品投票とかしたら大接戦だろうなw
796Classical名無しさん:08/01/01 15:11 ID:rUveZeo2
そこを敢えて逆らって一つに絞ってみよう
俺的に一番印象が強かったのがこれ「一瞬のからくりサーカス」
◆05fuEvC33. 氏のイメージが一変したっつーぐらい良かった。登場人物全員がオーラ放ってたよ
独歩空気脱出フラグを立てたのも、この話だし。エレオノールも良い役どころだった
何より、悪鬼勇次郎に対する勝、鳴海の戦いがすげーらしく、かつ原作じゃ無かった鳴海が勝を思い出すなんてスペシャル演出まであった
書き手の気合と情熱が伝わってくる、本当良い作品だったよ
797Classical名無しさん:08/01/01 16:40 ID:zDVkRSsI
私は万屋銀ちゃんの店仕舞いに一票。
原作の星海坊主編のエピソードまできっちり織り込んでくれたのには感心した。
銀魂ヲタだし鬱な話が好きなもんでw

ところでZXの手裏剣て、弾切れになったら自動的に補充されるの?
798Classical名無しさん:08/01/01 16:46 ID:1PLxiQzQ
>797
wikipediってみたところ、特撮版では発射後に体内で即自動生成されるという設定みたい。
ライスピ設定は知らない。
799Classical名無しさん:08/01/01 17:44 ID:zDVkRSsI
漫画で発射した後で膝とかに普通についてるし……まあそれでいいのかな?
800Classical名無しさん:08/01/02 12:17 ID:.UZ1IHX2
ところで>>773を見ていておもったんだが、
>※ルイズと吉良良和と覚悟はアルター使いと認識しました

吉良良和って誰だ?
801Classical名無しさん:08/01/02 15:43 ID:ICBTr/q.
まあ、そこは修正していただくとして、だ。
埋めついでに禁止エリアを決めないか?
802Classical名無しさん:08/01/02 15:51 ID:nrCb/tlY
B-3,C-3,C-1
希望
803Classical名無しさん:08/01/02 16:48 ID:R3eO9KiY
E-8,F-3,D-6
804Classical名無しさん:08/01/02 17:23 ID:DxIV2WFk
B-1、E-8、H-3希望
805Classical名無しさん:08/01/02 17:31 ID:tpPGagAo
>>797
即、使用後生成される(膝の衝撃集中爆弾も)
だから、流石に衝撃を集中させて使えるリスク0メリット極大の爆発物と手裏剣は補充利かないようにしようって話になったんじゃなかったっけ?
ただでさえ、
視界封鎖チャフ
電流付きのマイクロチェーン
大腿部の大型電磁ナイフ
十字手裏剣
ホログラフィック発生装置
超再生能力
そして衝撃集中爆弾

とアホみたいな武器やら能力の固まりだし
806Classical名無しさん:08/01/02 22:03 ID:rm5zGQRk
B-4,G-6,C-6
希望
807Classical名無しさん:08/01/02 22:19 ID:lnzyswaA
B-1、E-8、H-6希望
808Classical名無しさん:08/01/03 00:10 ID:vb9F10jE
B-3、D-4、G-2を希望します
809Classical名無しさん:08/01/03 22:19 ID:zjEC/8pg
A-5、E-8、G-4を希望。
810Classical名無しさん:08/01/04 00:02 ID:PsnPPLBI
禁止エリアの投票途中経過でーす。

E-8 4票
B-3 3票
B-1 2票

以下1票のエリア
C-3、C-1、A-5、G-4、G-2、C-6、G-6、B-4、F-3、D-6、H-3、H-6、D-4


手集計なので間違ってるかも。確認誰か頼む。
811Classical名無しさん:08/01/04 00:35 ID:PsnPPLBI
なお、禁止エリアは投票制ではありません。
決定権は今回の放送を書く書き手さんの手にあります。
あくまでこれは書き手さんの参考にする為のものですので、そこを禁止エリアにしたい理由などを添えて下さるといいかもしれません。
812Classical名無しさん:08/01/04 00:40 ID:oCE6OWtw
流れ見ないで、さっさと埋めるか?
『○○をルイズが召還しました』系のSSを三日間で豪読…
修正が…修正が全く…進まない…だが解っていても…見てしまう…それを…
SSを…期限が…ほぼ無いに等しいのに…豪読…
もしこのことを誰かに見られていたら…かならず言われる…「早く書け」…
「そんな子といってないで早くやれ」…「うざい」…などのことを…
だけど…進まない…全く進まない…『ゼロの使い摩』は全く知らないのに…
でも…読みたい…この素晴らしい…熱血な…漫画ロワ…それとは全く違う…
クロスオーバーSS…読みたい…戦いじゃなく…ほのぼの系…でも…
俺は書く…漫画本編を…死者スレを…時間が…時間が足りない…
814Classical名無しさん:08/01/04 01:41 ID:/Ev1GMw.
早く書けよww

俺のお気に入りは『使い魔!俺!?』だったりする。
スレチだな。
815Classical名無しさん:08/01/04 01:41 ID:oCE6OWtw
>>813
んなことだから、誤字ばっかって言われるんだよ。
816Classical名無しさん:08/01/04 01:49 ID:qibdRHAs
>>814-815
あんたらどっからわいてきた!?
約一時間書き込みがなかったから書き込んだのに!!
817Classical名無しさん:08/01/04 12:34 ID:jb1VCUAA
>>816
僕達名無しは何処にでもいて何処にもいない、まるでヘルシングの猫耳少年のように…ww
818Classical名無しさん:08/01/04 19:05 ID:dXvbZLhw
名無しは…バラバラにしてやっても、まとめから…ミミズのように這い出てくる
819Classical名無しさん:08/01/04 20:29 ID:oCE6OWtw
さっさと梅ね?
820Classical名無しさん:08/01/04 21:40 ID:5MN48IYQ
竹る俺の血が埋めろと叫ぶ
821Classical名無しさん:08/01/04 22:06 ID:G6fJj4KQ
でぃあぼろ?W
822Classical名無しさん:08/01/04 22:48 ID:oCE6OWtw
◆NIooiMe9JM氏へ。
現在、修正状況はどうなってるでしょうか。
既に、修正期限の三日を過ぎているのでご連絡ください。
823Classical名無しさん
バーロー復活。
やっぱり、服部は熱い………んだが、コナンキャラの温度差が激しいなぁ。


と言う事で、ひそかに感想含めて梅田。