1 :
Classical名無しさん:
週刊少年マガジンとマガジンSPECIALで連載中の「スクールランブル」は
毎週12ページの週刊少年漫画です。
物足りない、もっとキャラのサイドストーリー・ショートストーリーが見たい人もいる事でしょう。
また、こんな隠されたストーリーがあっても良いのでは?
有り得そうな展開を考察して、こんな話思いついたんだけど…といった方もいるはずです。
このスレッドは、そんな“スクランSSを書きたい”と、思っている人のためのスレッドです。
【要はスクールランブルSSスレッドです】
SS書き限定の心構えとして「叩かれても泣かない」位の気概で。
的確な感想・アドバイスレスをしてくれた人の意見を取り入れ、更なる作品を目指しましょう。
≪執拗な荒らし行為厳禁です≫≪荒らしはスルーしてください。削除依頼を通しやすくするためです≫
≪他の漫画のキャラを出すSSは認められていません≫≪エロやヤオイなど性描写は禁止です≫
>>1 乙。
作品投下を待つかな。
しかしまぁ、描いてみたくなるけどな、今週の見せられると…
葉子……ちょっといいか?
私は最低かもしれない。塚本姉妹に……沢近愛理君。
三人に私が拳児君のファーストキスの相手であることをバラしたんだ。
目の前で実演もしてやった。皆口をあんぐりと空けていたよ。
相変わらず姉のほうに空回りし、沢近君に張り倒され、そこを妹のほうにお世話になって……
あいつの周りに女の影がちらつくのが許せなかった。
けれど違う……私は知っているんだ。塚本天満、塚本八雲、沢近愛理。
彼女らの存在が拳児君の中でどんどん大きくなっていることを。それは愛じゃないのかもしれない。
しかし好意として確実に存在している。そしてそれは私にとってとても悔しいことなんだ。
今までは私が一番だった。あいつのそばにいた。本当にどうしようもないとき、そっと力を貸してやれればよかった。
家族のようで、恋人ではなくて。そんな完成された関係に満足していたし、それでいいと思っていた。
拳児君が誰を好きになろうがなんてことはないと考えていた。
けれど、いざ彼女らが私より上に来ることを思うと……怖い。
今の生活が手放したくないものになってしまった。それを壊されるのがとても怖いんだ。
馬鹿みたいだろう?いい歳した大人が、子供相手に本気で嫉妬してるんだ。
どうしたらいい?どうすればいいと思う?
もしかしたら問題になるかもしれない。職員会議にかけられるかもしれない。
そうしたら拳児君まで……私は一体なんということを……
中途半端な改変ネタが変なところで終わる
>>4 乙
確かに中途半端っすねw
でもこういう絃子さんや、前みたいな縦笛は二次だからこそ見れる良さだと思う今日この頃
4月中旬くらいまでまとめロックとかその他出来そうにないですが協力してくれてる人ホントd
それまでにスクランが終わってないといいけど
まともにスクラン書いてる人って誰がいる?
S5から作家引っ張ってったサイト以外には、もうここぐらいしかない気がするんだが。
なんでだろうね。沢近にせよ八雲にせよ面白そうなネタはあると思うんだけど。
本編の設定を使ってSSにすると色々矛盾が出てくるから?
旗は最近まで本編で充分だったからじゃね?
おにぎりはわからんが
それよりも久しぶりに鉛筆を読んでみたい
色んなとこ荒らし回ってやがるな鉛筆厨め・・・周防共々氏ねや。
【晶ちゃんの恋愛事情ッ!!!】
―――「ちょッ……高野さん…!」
「何?いいじゃない別に、恋人同士なんだし。それにあなたの方から告白してきたんじゃ?」
「でも学校でイチャつくのはやめろって自分が…」
「乙女の夢を踏みにじる気?学校でイチャつくのは憧れなのよ」
「いや…だから自分がそれをやめろと言ったんじゃ…」
「硬いこと言わない、そんなんじゃモテないよ」
「言ってることとやってる事に矛盾があるような……」
「いいの、こういうのは多少の矛盾があってこそなの」
「はいはい、分かったよ。でも、誰かに見られて俺のせいにするのは無しだよ?」
「分かってる、そんな無責任な女じゃないつもり」
「なら安心。それにしても……高野さんも結構甘えっぽいとこあるんだね」
「可笑しい?私が甘えちゃ」
「いいや、そんな事ないよ。すっげー可愛いと思う」
「そう、ありがとう……」
「高野さん…キス、していい……?」
「……いいよ、しても…」
「――――ていう恋愛を実はしてるかもしれないと思わない?」
「え〜、晶ちゃんもっとクールな恋愛だよ〜。私についてきなさい!的な」
「そうか〜?あたしは沢近の考えに同感かな〜。意外に高野も甘いの好きかもしれねーしな〜」
「……いや、私どっちでもないから」
よく言われます。
なりすまし来たw
>>11 GJ
前スレ984もGJ
しかし、黒八雲ネタはそこまで珍しくもない筈なのに叩かれて作者はかわいそうだな
俺は普通にワロタよw
別に言うほど叩かれてねーじゃん
八雲厨が被害者ぶろうと必死なんだろ。
あれはちょっとタイミングが悪かったんだよ、きっと。
おにぎり消滅!?とか旗消滅!?とかそういうのが話題になっているときに
事前事後いずれにおいても説明無しで、ポンと投下されちゃったからね。
ところで、黒天満物って誰か書かないかな?
あのタイミングでデビュー宣言って、酷ぇ
天満が真の邪悪で沢近や八雲をコケにするのか、
天然の黒で播磨を奪っていくのかどっちなんだw
播磨と付き合い始めるも、後から変態さんやらお嬢やらの事情を知らされ、どんどん黒くなる天満が読みたい
え? おまえが書け?
俺は超姉で忙しいっ
黒ものは、キャラの性格を悪意で解釈し捻じ曲げて貶めるヘイトものではなく、
こんなのありえねーって感じの変更を加えて原作との違いを笑い飛ばすネタだからなあ。
最悪であればあるほどむしろ良いのかもしれんぞ。
すいません、ちょっと教えて欲しいことがあるんですが、
∞モードの生存者の出現場所が纏められてるサイトはあります?
よく、生存者からの食料だけで7日は余裕、というレスを見るが、
肝心の生存者が見当たらないんだよ。
カリート、スナイパー親子は見つけたが、あの人達は強いので体力減ってしまう。
脚を怪我した人や、爺さん婆さん辺りなら簡単にSATUGAIできそうなので、
その人達の隠れている場所を知りたい。
出現条件に時間が関係しているのなら、それを知ることで計画的な行動ができるだろうし。
14時間という長丁場なので、できれば再挑戦などということにはなりたくない。
慎重に事を進める必要があると考え、事前に色々と情報を集めています。
wikiの∞モードのコツは読んでいるので、それより詳しい攻略情報が載っているサイトがあれば、
どうか教えてください。お願いします。
今後はシリアスにせよほのぼのにせよ、長編は出てこないようだな
単発話でマターリ進行って感じか
何かがきっかけでまだ書き手が増えてくれんかなあ 無理か
>>25 終わって1ヶ月位はある程度盛り上がるのでは?
「僕の考えたスクールランブル最終回」でな
今までに各サイトなどに出回っているSSの捜索はどこで聞けばよいのでしょうか。
一度読んだのだけども忘れられないSSがあるんですが…。
30 :
28:07/04/05 12:20 ID:xHAtkWOc
そうですか…。
じゃあ質問させていただきます。下に書いた条件にあるSSを知っている
方がおられたら教えてくださいm(_ _)m
・登場人物は播磨、天満、八雲、幽子
・播磨が死ぬ
・最終的にはおにぎりEND
・播磨が『自分がこの世にいなかったら!!』的な事を言う→幽子が
播磨を播磨がいないパラレル世界に連れて行く→その世界で天満がピンチになる
→播磨が自分の命と引き換えに助ける→最後に八雲が『播磨さん、そこにいるんですよね?』みたいな感じのことを言う
以上です。支離滅裂な文でスイマセンがよろしくお願いします。
あれ?前スレでなかったっけそのSS
32 :
Classical名無しさん:07/04/05 13:00 ID:Dc0/Ia1.
なんか鬱なやつだっけ?
34 :
33:07/04/05 13:28 ID:KNeGOcUo
書き込んでから気付いたが、
播磨が『自分がこの世にいなかったら!!』的な事を言う→幽子が播磨を播磨がいないパラレル世界に連れて行く
と
その世界で天満がピンチになる→播磨が自分の命と引き換えに助ける
→最後に八雲が『播磨さん、そこにいるんですよね?』みたいな感じのことを言う
は別の話だと思う。>33で紹介した方が
・登場人物は播磨、天満、八雲、幽子
・播磨が死ぬ
・最終的にはおにぎりEND
・その世界で天満がピンチになる→播磨が自分の命と引き換えに助ける
→最後に八雲が『播磨さん、そこにいるんですよね?』みたいな感じのことを言う
と合致してる。
ちなみに
播磨が『自分がこの世にいなかったら!!』的な事を言う→幽子が播磨を播磨がいないパラレル世界に連れて行く
というのは、>33で紹介した作品の直前に書かれたものだな。
35 :
28:07/04/05 13:45 ID:xHAtkWOc
>>31-34 あ、これです!!自分でも記憶が曖昧だったので見つかるかどうか不安だった
んですけど、見つかって嬉しいです。
どうやら、2つを続けて読んだからごっちゃになっていたようです。
見つかってよかったです。本当にありがとうございましたm(_ _)m
スレ汚しすいませんでした。
幽子の昔話ってなかったっけ?
あれは面白かったよね
37 :
Classical名無しさん:07/04/05 16:00 ID:qJ0QJBro
播磨と花井の熱い友情モノみたいのないかな
>>37 興奮すると脳みそ爆発する隠し機能がついているんですか
SS書き作家さんはスクランにラブとコメどっちを期待してたんだろう
やっぱラブのほうが多いんだろうか
ラブが期待してる人が多いだろうね
でも中にはコメ書いてる人もいる
42 :
Classical名無しさん:07/04/06 16:11 ID:4GJX4FfE
>>35 どんなんか気になったから読んでみたが・・・そりゃ忘れんわ。
スクランには異色すぎる。重い話は程々で抑止した方がいいな
ああいうSSもアリだろ、面白かったし
俺もあの話はいいと思った
重いからって抑止する意味がわからんなw
出来いいよあのSSは
本編がああだったせいかもしれんけど、旗やおにぎりのシリアスが読みたいなあと
思う今日このごろ
あの2人はもう飽きた。
いつもワンパターンだし。
そういう話は本スレで
50 :
Classical名無しさん:07/04/10 22:52 ID:fZzByR7w
IFまとめスレ更新乙!!
昔、今週の話のようなSSが投下されなかったけ?
最近、新作はどこにもないなあ。
S3の後継サイトもいきなり止まっちゃったし、
たまに気まぐれをおこした書き手さんがIFスレで投下、というのが精一杯かね
気まぐれ言うなよ……
みんな遅筆なだけさ。
ファミレスや喫茶店には神が住んでいる。
そう聞いたときは一笑にふした播磨だが、実際に来てみると、存外的を射ていることに気がついた。
何しろ、数多くの人達が訪れるのだ。人間観察するには打ってつけだ。それが恋話をする女子高生
ともあれば尚更だ。きゃぴきゃぴした空気に時折、いや、終始辟易しながら、しかし、それを自分と
天満に置き換えることで乗り切って、播磨は彼女達の声に耳を傾けることが多かった。
無論、どちらが多くを占めているかは語るまでもない。
難点があるとすれば、コーヒー一杯、ドリンクバーのみで長時間居座る播磨を見つめる店員の冷たい視線と、それすらも
なかなか許してくれない懐の寒さであろうか。
漫画を書き始めて以来少なくなったバイトは収入に直結する。生活費を従姉に納めている彼にと
っては、コーヒー一杯とてある種の贅沢だった。
とはいえ今日はそんな心配は必要なかった。なんの気まぐれか、刑部絃子のおごりってくれるというのだ。
初めは、すわ、今は世紀末か、と狼狽した播磨だが全身を襲うBB弾の痛みと、誘いの理由を聞く
に当たって納得した。
彼女にはゴリ山に一つ借りがあった。以前播磨たちのクラスが学校でサバイバルゲームをした時のものだ。
借りといっても一緒にお茶か外食でも、といった小さ
なもので、さっさと付き合っても良かったのだが、気が乗らずずるずると引き延ばしてた。
しかし、それも流石にそろそろ限界かと思った絃子はようやく借りを返すことにしたのだ。誘われた
先がディナーなどではなく、ただのお茶だったからだ。
ゴリラと一緒に食べるフランス料理が美味しいと思うかね、とは刑部絃子の談。
そんなわけでゴリ山とお茶をすることになった絃子だが、その店の名前を聞いて僅かに考えを直
した。
ゴリ山が口にした喫茶店は葉子から近頃評判だと聞いていた、それもまだ一度も寄ったことがな
い店だった。
なんてことはない。ただお茶を飲むだけなのだが、どうにも気が乗らず、それならばと白羽の矢
にたったのが播磨。
一緒にいて茶が不味くなるような間柄でもなく、せっかくなら美味しくコーヒーを飲もうというの
が絃子の考えだった。
「それにしたって」
不気味だ――とコーヒーで不安を飲み込みながら、胸中で呟いた。
降ってわいたような幸運。それが天満とのものであれば我を忘れて舞い
上がっただろうが、目の前の彼女相手にそれをすればあっという間に奈落の底に叩き落とされ、さらに生き埋めにまでされる。
確かにコーヒーは美味かったが、警戒しながらではそれも半減だった。
だが、そんな播磨の心境とは裏腹に、よほどコーヒーが気に入ったのか、絃子はすこぶる楽しそう
だった。僅かに唇を吊り上げ、結構な頻度でカップを口に運んでいる。
そんなにここのコーヒーは美味いかね――と、やっかみ混じりで播磨が心中でぼやいた時だった。
やおら絃子が立ち上がった。
「い、い、いきなりどうしたんだ?」
まるで自分の心が読まれたかのような気分になって動揺して慌てる播磨。そんな彼を一瞥すると
絃子は軽く肩をすくめて彼に見せつけるように携帯を取り出した。
「少し連絡しなくちゃいけないことを思い出した。少し店の外に出るから、コーヒーのお代わりを
頼んでおいてくれ」
顎でしゃくった先にはいつの間にか空になっていたカップがある。
「なんで俺が。そんなの自分ですればいいじゃねーか」
「ほう、君はここの会計は誰が持つと思ってるんだい」
「う、ぐ。わかった。わかったよ。わかったからさっさと要を済ませてきやがれ」
眉を八の字にして呻く播磨を笑って、絃子はカウベルを鳴らして喫茶店の表へと出ていった。
絃子が戻ってきたのは新しいコーヒーが運ばれてきてからすぐだった。「なんだ、早いじゃねーか」
「言ったろう。本当にちょっとしたことだったんだよ。でなければ後で頼んでる」
「ふうん」
呟く播磨を横目で眺めながら再び席に戻る絃子。湯気を立てているカップを視界にとらえると、
満足そうに頷く。
カップにはフレッシュもなければ、砂糖も備わっていなかった。
「ふふ」
漏れた笑いに、何より絃子は驚いた。
「ん? どうしたんだ、いきなり」
「いや――」
言わずともわかるというのは存外いい気分だな――という言葉は、美味しいコーヒーに流され、
ついぞ口にされることはなかった。
久々の投下。
改行が不自然なのは携帯からなのでご容赦を。
巻き添え規制くらった腹いせに何か軽く書こうとしたら、意外と長くなって我ながらビックリ。
一日で復帰してた罠 OTL
必死こいて携帯で打ってた自分が馬鹿みたい。
まあ気にするな
こういう軽いノリの超姉は大好物さ
>>58 乙です。
まとめWikiのIF15登録完了です。
なんつうかなんの感想も出てこない。
62 :
57:07/04/14 12:43 ID:AHEMeCwU
>>61 そうか。
すまなかった。
いくら携帯からとはいえ、もっと話を練るべきだったな。
>>57 乙っす
結構複雑な所が多いですがなんとなく和みました
>>60 こちらも乙です
複雑、なんだろうか?
どのあたりがわかりにくかったかアドバイスお願い。
>>64 特に気になったのは、絃子の笑顔の理由と電話の内容とかかな
前者は播磨の反応を読めたからで、後者には意味はないんだろうけど
なんか気になった
雰囲気を楽しむ話だったんだろうけど、いつものクセでどんな描写も考察しちゃうからさ
最初、ゴリ山がどうこうの喫茶店に何で播磨と一緒に行ったかが分かりにくかったかな
でも、超姉の雰囲気は十分楽しめたよ
稚拙さ故の複雑さ。
「好きな人がいる」
彼女はそう言った。
「…播磨」
突然声をかけられ、播磨は我に返る。
「おぉ、メガネか」
振り返ると、そこには見慣れた分厚い眼鏡の男が立っている。
「何をしているんだ、卒業式の後だというのにこんなところで」
独り言のように尋ねながら隣にやってくる。
まだ肌寒い初春の風が、屋上に立つ二人の髪を揺らしていた。
「いや…もうここからの景色も見納めかと思ってよ、屋上にはよく来てたからな」
播磨は何となくはぐらかしてしまう。本当の理由は、胸にしまっておきたかった。
「お前はよくサボっていたからな」
「フフ、我ながらよく卒業できたもんだぜ」
「まったくだ」
他愛もないやりとりを交わす。こんな会話も、あるいは今日で最後になるのかもしれない。
「で…お前こそ、こんなとこに何しにきたんだよ?」
播磨は尋ねてみる。花井に何事かがあったであろうことは、鈍いといわれる播磨の目にも見て取れる。
まず覇気がない。いつもの暑苦しい男と同じ人物とは思えないぐらいだ。
眼鏡の奥の瞳からは、物悲しい決意のようなものを感じる。
「ああ…実は…八雲君に、振られてしまってな」
播磨は少し驚いた。だが、花井がここに来た理由は理解できた。それは、自分と同じ理由だったのだ。
「…そうか」
播磨は小さく呟く。
下手な慰めは無意味だ。それは今の播磨にはわかりすぎるほどにわかる。
播磨が押し黙っていると、花井がまたゆっくりと口を開く。
「好きな人がいる…と言われたよ」
それを聞いた播磨は、少し笑った。そして話しだす。
「…俺もさっきそう言われて振られたところだ、もちろん相手は妹さんじゃねえが」
「…塚本君か」
播磨は一瞬怯んだが、すぐに気付く。自分も花井が誰に想いを寄せていたか既に知っていたのだ、逆のことがあっても不自然はない。もっとも、隠し通してきたつもりではあったが。
「ああ…そうだ、あっさり振られちまったよ」
あれほど想ってきた天満に、結局は選ばれなかった。長い長い時間の記憶が、播磨の脳裏に浮かんでは消えていく。
終わるというのはこういうことか。一瞬で失った未来に、播磨はまだ別れを惜しんでいた。
だからここへ来たのだ。まだ冷たさの残る強い風が、いまだ燃え残る情熱をすべて吹き飛ばしてくれるような気がした。
「お前も辛かったようだな」
柔らかい口調で、花井が言う。
「そりゃあ…辛いに決まってるぜ、好きだったからな」
「だが、彼女が幸せになるなら…そう思ったんだろう?」
まるで心を読んだかのような花井の問いかけに、播磨はピクリと反応する。
「よく分かったな、その通りだぜ。天満ちゃんが幸せになるには烏丸の野郎じゃなきゃダメなんだよ…残念だがな」
それを聞いた花井は、満足そうに微笑んでいる。
「わかるぞ、その気持ち。僕も同じことを考えた」
なんだか含みのある言い方だ。不思議に思う播磨をよそに、花井は続ける。
「この三年間、色々あったな」
ぼんやりと空を仰ぎ、何かを思い出すような、懐かしい場所を見つめるような目をして、花井はなおも続ける。
「お前と知り合ったのは二年になってからだったか。もちろんその前から知ってはいた。学校でも有名な不良としてな」
「最初はどうしようもない不良だと思っていた。だが、バイトやキャンプ、体育祭、文化祭…クラスメイトとして共に過ごすうちに、それは誤解だったと思うようになった」
話が見えず、播磨はやや混乱していた。だが、花井の思い出話を聞いていると、大したこととも思っていなかった、既に心の奥底に沈みつつあった様々な記憶が浮かび上がってくるような気がした。
「…今はお前のことを信頼している。大切な友人としてな。出会えてよかったと思っている」
なんとも気恥ずかしい事を平気で口にする男だ。くすぐったさを感じながらも、真剣な眼差しを向けてくる花井を茶化す気にはなれなかった。
「ああ、俺もだ。最初はいけ好かねぇマジメヤローだと思ったもんだ。だが」
自分でも不思議なくらいに、播磨も心の内を曝け出す。
「お前と…お前だけじゃねぇ、お前らと過ごした時間は、今思えばすげぇ楽しかったと思う」
「中坊の頃の俺からしたら考えられねぇぜ。クラスの奴らといて楽しい、なんてよ」
播磨は、この眼鏡の男によって気付かされた自分の変化に驚いていた。
かつて荒んでいた頃の自分、そして天満に惚れ、彼女の為にこの高校に入学した頃の自分を思い出してみる。
あの頃は、自分の事しか見えていなかった。自分の気持ちしか考えられなかった。
我ながら子供だったものだ。そんな自分が、気付かないうちに少しずつ変わっていた。級友達との交流の中で、少しずつ、周りが見えるようになっていた。
そして…彼女の幸せの為に身を引く、という決断ができるようになっていた。
「俺も、お前らと出会えてよかったと思う。この高校に入って、本当によかったと思う」
雨上がりの空のような清々しい気持ちで、播磨は力強く言い切る。それは、この三年間に出会ったすべてのものに対する感謝の印であった。
「うむ!」
花井も力強く頷いた。
爽やかな風が、二人の頬を撫でてゆく。
二人が屋上を後にして中庭へ出ると、途端に叫び声が聞こえた。
「あ!花井!」
振り向くと、少し離れた場所から周防が全力で駆けてくるのが見えた。
目の前まで来ると、息を切らしながら花井に詰め寄る。
「どこ行ってたんだよお前!心配かけんなこのバカ!」
すごい剣幕で怒鳴り散らす周防に、花井だけでなく播磨も気押される。
「ま…まあまあ落ち着け周防、何をそんなに慌てていたんだ?」
慣れた様子でなだめながら、花井は尋ねる。
「何って…お前が八雲ちゃんに振られたって聞いて、しかもそれっきり姿が見えないもんだから…変な気起こしてたらどうしようって…連絡ぐらいしろ!このバカ!」
大声で暴言をまくしたてる周防だが、今にも泣きそうな表情だ。その様子から、本気で心配していたであろうことが播磨にも理解できる。
「…そうか、心配をかけてすまなかった。僕は大丈夫だ」
子供をあやすように、花井は優しい口調で弁明する。
それを聞いて、周防も少しは落ち着いたようだ。
「…そっか、そんならいいんだ。まあ、その…元気、出しなよ」
「ああ、ありがとう」
実に簡単なやりとりの中に、何やら深い絆のようなものを播磨は感じ取る。ここは二人だけにしてあげたほうがよいかも知れない。
そんな事を考えていると、周防がまた口を開く。
「とりあえず、アタシは先に行くよ。ほら、道場で卒業祝いやってくれるって言ってたろ?もうみんな集まってるからさ、アンタも早く来なよ。もしよかったら播磨も一緒に」
sien
「お、おぉ」
突然の申し出に、播磨は生返事で返してしまう。
「よし!んじゃまた後でな!」
威勢よく答えると、周防は足早に去っていく。
それを見送りながら、播磨はからかうように微笑む。
「…ちゃんと心配してくれる奴がいるんじゃねーかよ、ちょっと羨ましいぜ。俺にはそーゆうのねーからな」
それを聞いた花井は、先程屋上で見せたような含みのある口調で告げる。
「ふふ、そんなことはないぞ。見てみろ」
花井の目線を追っていくと、校門に向かう桜並木の陰、目立たないところに誰か女子が立っているのが見える。
「あれは…妹さんか?」
時折キョロキョロと何かを探すような様子からして、誰かを待っているのだろう。姉を待っているのかもしれない。
だが播磨が答えを出す前に、花井が言った。
「八雲君は、お前を待っているんだ」
「…あん?」
思考が付いていかず、つい間抜けな返答をしてしまう。
「八雲君は、お前のことが好きなんだ。…僕はこれでも長い間彼女を見てきたつもりだ。だから分かる。八雲君がずっと見つめていたのは、確かにお前だった」
きっぱりと言い切る花井に、播磨は戸惑う。
「だ…だがよ…お前…」
混乱しながらも何か言おうとする播磨だが、花井に遮られる。
「さっきも言ったろう。彼女が幸せになるなら…僕もそう思ったんだ。お前にならこの意味がわかるだろう」
確かに、今の自分ならば、目の前の男の考えが理解できる。先程からの妙な含みの真意も、今は分かった。
「…馬鹿だな、おめぇって奴はよ」
「フン、お前も同じだろう」
「…ああ…俺も馬鹿だ」
本当に、馬鹿な男だ。この眼鏡の男も。そして、同じ考えに行き着いた自分も。
「だが、それでいい」
自分に言い聞かせるような花井の言葉に、播磨は黙って頷く。
「播磨。お前が最後に彼女を受け入れるかどうか、それはお前の自由だ。だが…今、八雲君はお前のことを待っている。…行ってあげて、くれないか」
そう言った花井の瞳に浮かぶ固い決意に、天満の幸せを願った自分が重なる。ならば、自分の取るべき道は一つしかない。
「…わかったぜ。ここで逃げたら男じゃねぇからな。…任せとけ」
それを聞いて安心したのか、花井の表情が柔らかくなる。
「…頼んだぞ」
二人は、校門へと歩きだす。それぞれの手に、共に過ごした日々の証である卒業証書を握り締めて。少し強い風が、花の蕾を揺らしていた。
八雲は、少し離れた場所にいた。まだこちらに気付いてはいないようだ。
桜並木の途中で立ち止まり、播磨は言う。
「…じゃあ、俺は妹さんと話してくるぜ」
花井も立ち止まり、答える。
「うむ、行ってあげてくれ。僕はこのまま道場へ向かうことにする。今頃大騒ぎだろうがな。よかったらお前も後で顔を出すといい」
「ああ、気が向いたらな」
ニヤリと笑ってそう言うと、播磨は八雲のいる方へと歩きだす。
「播磨」
花井が、播磨の背に呼び掛ける。
振り向くと、眼鏡を外した花井が、陽射しの中で微笑んでいる。
「またな」
播磨は微笑み、サングラスを外した。
そして言った。
「またな、花井」
そして二人は歩きだす。別々の未来に向かって。
播磨は考えていた。いつか、この日々を漫画にしよう。この美しい日々を。馬鹿な俺たちの美しい日々を。
まだこちらに気付かない、そこで自分を待つ彼女にも、手伝ってもらいたい。
より素晴らしい漫画にするために。それには、彼女が必要なのだ。
そして彼女は、彼に気付いた。
糸冬
>>68乙
こういった少ししんみりしつつも穏やかな雰囲気は好きです。
ただ、播磨や花井の笑い声には違和感を感じましたが。
乙です
久々にいい縦笛+おにぎりが読めたよ。
花井と播磨にケジメをつけて終わらせるなら
やっぱり美琴と八雲は深く関わるよなぁ・・・
>>77 GJ
心にしみる話でした
こういう青春羨ましいです
83 :
77:07/04/16 18:10 ID:.bQEUTwI
みんなありがとう
ァ _, ,_ ァ,、
,、'` ( ゚∀゚) ,、'`
'` ( ⊃⊂) '`
85 :
Classical名無しさん:07/04/16 19:37 ID:0q2E9YUk
もっと書き手が戻ってくればいいのにな
最近はおにぎりと縦笛、あとアソサラに関しては
妄想しやすい展開だと思うし
何にしても
>>77さんGJでした
欲を言えば、もう少し読みやすくしてほしい。
横に長すぎる。
俺も思った
携帯からだったから感覚が分からんかったんだ、許してくれ
>>88 文庫とかだと、基本40字ちょいが理想。
とはいえ、パソコンは横に長いから、もう10字から15字くらいプラスしても平気。
携帯のメモ帳4、5行ごとに自力で改行するといいよ。
段落ごとに行頭空けや、空改行を入れるとなおのこといい。
>>89 なるほど、考えてみるよ
わざわざサンクス
>>90 おにぎり+縦笛+真旗面白かったよ
上手くまとまってたと思う
>>91 ありがとう
最初で最後のつもりだったけど書いてみると面白いもんだ
今鳥とかも絡ませてみたくなった
地味にIFスレ更新されてるな。
>>89 書いてもないのに偉そうなこと言うなよ。
そんなに言うなら、自分が携帯で書いてみるといい。
>>90 それほど読みにくくはなかったよ。
まあ、携帯からなら仕方ないしね。
えwこれで読みにくいってどんだけだよwwwww
96 :
89:07/04/18 22:36 ID:AknWH5hA
>>94 >書いてもないのに偉そうなこと言うなよ
一応、IFスレには奈良萌え時代からいるし、ちまちまと投下してる。
携帯でも投下したことある。
というか、
>>54-56がまさにそれだ。
ところどころ改行に失敗してるが OTL
しかし、角が立つ言い方だったのかもしれん。
単純に横に長い文章が「見難かった」だけで、それが気になったんだ。
ただでさえ2chとかだと、行間の指定とかできないから余計に。
97 :
Classical名無しさん:07/04/19 12:09 ID:uH0Cvnek
あの下手くそが他人様に意見してたのかw
書けば何でも偉いっつーもんじゃねーっての。
あれは下手くそっていうよりかは構成の失敗かと。
文章そのものは悪くないが、時系列や説明が入り混じってるから読みにくい。
時系列だけなら、そういう構成ともとれるが、なんで播磨を誘ったのか、
電話の内容は何かって当たりが抜け出て少し腑に落ちない。
一から十まで全て書く必要はないが、もうちょっと別のところが必要。
説明じゃなくて、少しでいいから描写にした方がよかった。
まあ、全体的に見れば罵られるほどのものではない。
97は真性だから放置が一番でしょ
SSスレが過疎化して喜ぶのはレベルが低い作家達。
作品自体が貴重だからと、下手な文章でもチヤホヤしてもらえるからねwww
レベルが低い作家も書き手である以前に読み手の一人なわけで。
喜びゃしないよ。
いくらレベルが高かろうが、書かない書き手など必要ない。
投げないピッチャーと一緒だ
書かなきゃ書き手じゃないからな
1からここまで全部俺の自演。
小ネタ
播磨拳児はよくサボる。不思議と学校には来るのだが、授業そのものはよくサボる。そんな時に
何をしているのかというと、まず眠る。あるいは漫画を描く。大別するとこの二つ。
もちろん学校にそんな場所はほとんどない。ないが、ほとんどということは例外がある。
その数少ない例外が保健室。その主はひょんなきっかけから播磨に好意を抱いており、その縁から、
播磨は授業からの避難場所に使っているのだった。
別段、播磨が好意を利用してるだとか付け込んでいるわけではない。
妙にはきちんとしたリターンがあるのだ。
播磨との一時や眠っている時に密かに見ている素顔などではない。いや、確かにそれもあるが、
それよりももっと大きな狙いが妙にはある。
「おねーさんはやさしー、おねーさんはきれい、おねーさんはすばらしー」
そう、こんな風に播磨の枕元で囁くという目的が。
「ううん、おねーさんは素晴らしい……むにゃむにゃ」
魘されるように、妙の言葉を夢現に繰り返す播磨。それを見て、妙は我知らずほくそ笑んだ。
「ふふ、我ながらこの頭脳が恐ろしいわ。ハリオはここ来るだけで私のことわ……うふふ」
そうして数週間――
「絃子と付き合うことになりました」
「そーくるかーー!!」
策士、策に溺れる。
>>105 乙
妙ちゃんカワイソスw
久々に肉じゃがなSSが読みたくなったよ
>>105 小ネタ乙
妙ちゃん相変わらずかわいすぎる
本誌でも最近書かれないだけに、もっと甘い肉じゃがが読みたい
本誌で萌えが補給されない分だけ、ここに救いを求めて来たんだが、
ここの書き手たち自身からして本誌からの萌えの供給が無いんで、
結局本誌が空気漫画化すると自然とここも一緒に廃れていくもんなんだなorz
おにぎりがクリスマス前までの過去の思い出に逃避したSSを書くのは仕方ないにしても
旗がないのが不思議 本編で充分だったからか?
何こいつ・・・
むー、そろそろキャラ別更新したいな。
お気に入りのカプモノを集中的に読むにはそこそこ便利だからね。
……とはいえ、当面はまとまった時間が取れないので無理だったりするけど。
>>109 昔からSS量はおにぎりが多いからな
キャラを壊さずに妄想しやすいんだと思う
昔から言われてるだろ。
八雲はキモヲタ向け、お嬢は一般向けってな。
SS書くようなのはヲタが多いから必然的ににぎりSSが増える。
どうでもいいがIDがS5だな
115 :
Classical名無しさん:07/04/24 19:54 ID:.d/vpI5c
>>113 沢近スレの惨状を見てもそう言ってられるのか?
気持ち悪いのしかいないぞあそこw
釣られるなよ
保守
なんかスクラン関連のどこのスレも荒れてるな
沈みかけの船ではパニックが起こりやすいもんだ。
保守
三年ぶりに2ちゃん等復帰したオレに
スクランSS界(S3とかこことかとか)がどーなったのかを
簡単且つ限りなく解りやすく説明してくれる人がもしいてくれたら
三年ぶりにオレのスクランへの愛のこもったSSを書くやもしれぬ
よろしく頼む
やだよめんどくせぇ
>>121 色んな書き手が出てきたけどいつのまにやら消えてった
「なあ、絃子…さんよ」
「ほう、珍しくさんをつけたな。なんだい?」
「お嬢にふたりの関係を『俺のイトコ』って言ったらよ、急に怒り出したんだけど、なんでだろな?」
(ふむ、沢近君が誤解したか… !それなら)
「そうだな。君が説明しても、更なる誤解を招きかねないな。高野君に説明してもらえばどうだい?」
(高野? ああ、あいつか) 「おう、そうだな。頼んでみるわ」
後日、絃子の意を察した高野により、更なる誤解をする沢近。
「これで沢近君はよし…と。次は誰を…ふふふ」
不敵な笑いを浮かべる絃子であった。
>>124 乙
ネタにしても短いだろw
ちょっと吹いたのはここだけの秘密だ
>121
週刊連載が修学旅行編前後からしばらく迷走してしまった上に
その頃アニメ版の脚本家が出したスクラン小説がショボかったから
「二次創作のほうが出来がよくね? でもそれって本末転倒じゃね?」
という悩みを抱えてかなりの書き手が去っていった。
ネットラジオで仁丹の性格に呆れたからって人もけっこういると思う
今はS5は廃墟寸前で、このスレは開店休業。
広い市民プールを貸し切り同然で使うような気分で作品ヨロシクだぜ
>>126 作品の迷走はサバゲから始まったことだよ
サバゲとバスケは仁丹が書きたかったことなんだろうなぁと思う
そのせいで作品がgdgdになってしまったわけだが
サバゲ以降の長編は軒並み大外れだったからなあ
というか、当りはあったのだろうか?
修学旅行編は結局何がやりたいんだかわからなかったな。
旗的には描写が多かったけど、人違いネタと勘違いネタばかりで結局意味なかったし。
思い返してみると、メガネの扱いを特殊にしたせいでメガネが無駄にクローズアップされて
余計なグダグダが累積した場面が多かったような気が。
修学旅行のちゃーんとか、ありゃ一体何だよ。
麻生にミコチンをふらせるためだけの仕込みか?
スクランは5巻まで。
話の種を蒔くだけ蒔いて、そこからどう回収するかを妄想するのが正しい楽しみ方。
今は変な種や肥料を加えすぎて、雑草まるけになった畑みたいなもんだ。
132 :
Classical名無しさん:07/05/03 22:31 ID:BsqVSnkQ
キャラ設定はみんないいと思うんだがなぁ・・・
一年近く旗展開やったけど良SSが生まれたかって言うと・・・
妄想させる要素がなくなっちゃったってこと?
>>133 正直
>>130の1-2行目が大きいのでは?
それか、もう作中期間(2年生としては)では3月だけとなり、今から作品を書いて
もし本家が終わった時に、作品の結末があまり異なってると何を言われるか…
とにかく、終わりを待ってるのでは?
>>129 お泊り編
>>131 それはないだろ
8巻くらいのサバゲ始まる前までは評価高かったし、
その頃くらいが一番スクランが盛り上がってた
文化祭の頃はまだ二次が盛んだったけど
バスケで死に絶えていった人が多かったかと
スクラン二次創作の中心だった旗が人気でないと対抗派閥の
おにぎりや王道、マターリの縦笛やアソサラ、ネタの携帯茶道部超姉あたりも盛り上がらない。
昔から二次は旗よりおにぎりのほうが人気だったと何度言えばry
昔から超姉派は一番超然としていたと(ry
なかなかいい趣味をしていらっしゃる
バトロワもgdgd具合が…
>>136 旗でオススメなSS教えて。読み直してみる
スクランのSSは読み尽くしたつもりだが旗で印象に
残ったのがあまりないからなのか思い出せない…
良くも悪くも似たり寄ったりだからな
原作の旗も正直パターン化してるし。ある意味原作準拠ではある
絡まれる→助ける→発展
という昭和の時点で使い古されたであろうネタばかりだった記憶が
おにぎりだって
八雲が手伝う→播磨が感謝→ちょっとだけいい感じに
ばっかりだと思う
ただ八雲は早々に播磨の矢印が天満だけに向いてることを知ったから
悩んだり嫉妬したりする描写ができてSSのバリエーションもある
お嬢がそれを知ったのはオハイオ編の後で、間髪いれずキモイ発言
なんてことだ
>>145 いや、おにぎりは出会いから始めたりとか色々あるような
それこそ
>>144な展開もあったり
旗は旗で色んなのがあると思うけどさ
沢近が野糞してる時に播磨とばったり遭遇。
そこから芽生える恋。
こんな展開はどうだろう?
ちょっと陳腐かな。
斬新すぎて吹いた
「…アンタ…紙、持ってる?」
「…ああ…ほらよ」
ズギュウウウウウウン
沢近が天満に一言も謝ってないところや、
言葉を全く交わしてない沢近八雲の関係とか
原作で不自然な点がある場合、SS描く上でどうやって処理していけばいいんだ?
>>142 ADAM and EVE in the box (ROZEO氏)
旗成分少なめの俺でも楽しく読めたので印象に残ってる。
その分、旗どっぷりの人だと物足りないかも知れないが。
>>151 まさしくスレタイにもある脳内補完で。
その辺が書きたくてSS書く人もいるんじゃないのかな?
天満沢近の仲直り話や、沢近八雲の敵対話or友情話とか。
>>145 とりあえずおまえが旗SSしか読んでない事はわかった
おにぎりのおすすめはあるかね
クズリ氏のはよくわかったからそれ以外
できればまだ読むことが出来る奴で
>>155 宵待草氏か今氏のSSなんかはおすすめ
もちろん今でも読める
ごめん・・・どこで?
>>157 両氏ともHP持ってるから検索とかで行けると思うよ
長さ40cm程の鉄串が100本用意された。
拷問部屋の中央には小手高に吊された沢近愛理がいる。両足を開いた形に固定され、人字型の格好だ。
「今日は、これを全部沢近先輩の身体に差し込んであげます」と八雲が言った。
「やめて。無理よっ。そんな・・・死んじゃうじゃないっ」
愛理は、泣き始めた。
「始める前から泣かないでください。死なないように頑張ってください。今日も、タップリと苦しんでもらいます」
八雲は愛理の二の腕に鉄串を刺し通した。
「痛いっ。がっ」
「まだまだこれからです」
八雲は、さらにもう一本刺し込んだ。
「や、やめて・・・腕が千切れそうなのっ」
八雲は、容赦なく愛理の両腕に鉄串を突き刺していく。
「ぎゃああああーっ!」
「関節は、特にいたいようですね」
腕の関節も刺し貫かれてしまった。
八雲が次々に鉄串を刺すので、愛理の両腕は、5本ずつ貫かれてしまった。
「いたい、いたい。もう無理っ。これ以上・・・・」
愛理は、腕が折られるような痛みに額に脂汗を滲ませ喘いでいる。
「次は足ですね」
「や、やめて、お願いーッ」
体中に100本もの鉄串を突き刺され、動くこともままならない愛理は失神寸前だ。
「まだ寝るには早いですよ沢近先輩」
八雲は電気警棒で脹ら脛に刺さった鉄串に触れた。
電撃が走り、こむら返りをおこす。
歯を食いしばり苦痛に歪む愛理の顔。
「うぐぐぐっ」
半死半生の愛理を電気責めで嘖む。
太股、尻、首、腎臓、肝臓と体中の串に電気が通される。
胃に電流を流された愛理は黄色い胃液を吐き出しながらいった。
「ゲポッ、げっ、あ、あああ〜っ。やめてー。どうしてこんな事をーっ」
地獄の剣の山の様になった乳房にも容赦なく警棒が当てがれた。
>>144 鉛筆でそのタイプのSSが増えた時はさすがに失笑だったな
スクラン二次の全盛期、原作であまり絡みが見られなかった分
一番当たり外れの大きい派閥だった
>>160 そしてさらに大半が介抱してやるよと美琴宅に
162 :
Classical名無しさん:07/05/06 22:39 ID:miv4a.bk
>>159
お前そんなもん書きたいならもっと他のスレいけ!ハゲが!
3人が漫画を始めて、はや数日…今日はそれぞれに1ページずつ、好きに描かせたわけだが。
とりあえず、見てみるか。
Case 1
「愛理、好きだ! 天満じゃなく、お前のことが!」
「本当? 嬉しい…!」
そう言うと、ケンジは愛理を抱き、キスを交わす。
もう、2人の間に言葉はいらなかった。
Case 2
「妹さん…いや、八雲。俺には君が必要なんだ。俺とつきあってくれ!」
「播磨さん…」
彼の心がはっきりと視え、それを最後に彼女の能力が消える。
それは、彼女が普通の女の子になった瞬間だった。
Case 3
「烏丸くん、私とつきあって!」
「いいよ、塚本さん」
2人は末永く幸せに過ごしましたとさ。
かぁーっ、どれもこれも酷いもんだぜ。
まず、最初のだが…登場人物の感情の変化に無理があるな。
この2人がくっつく姿なんざ、想像もつかねえぜ。
2番目のもな…主人公の姉とくっつけて失恋させる方が綺麗だろ。
しかも、能力が消えるとかご都合主義だし。ありえねえ。
そして、最後のだが…こ、これは何か、許せねえ展開だぜ…!
…とりあえず、相手の男をサングラスの不良にしとくか。
やあ。実は私も描いたんだが…見てくれるかい?
ものはついでだ、いいぜ?
Case 4
「拳児君、実は君と私は婚約していることになっているんだ」
「な、なんだとぉ!?」
「同棲生活も長いからな、関係を誤解されても仕方ないだろ」
「…ヒャッホウ!!」
おい。何かミョーに笑えねー話なんだが…
…それが現実だったらどうする?
ま、まさか…!
−終−
>>164 これは一番下ので確定だな
それ以外は考えられない
二次創作を衰退させたのはこういうウザイ超姉だと確信。
超姉陰謀論っちゃ珍しいな
169 :
142:07/05/07 22:02 ID:Q/z6ZxzE
>>153 遅くなったがサンクス
なかなか良かった
>>168 アホの子は相手にしてやる必要はないさ
自分が気に入らない展開だと叩く派閥厨こそが衰退させていると
未だに気づいていないんだからたちが悪い
最近は旗にぎりより超姉のほうが短編とはいえ投下されてるな
もう大手派閥の長編は読めないのかねえ
無理だろうねぇ。
後は、このままジリジリと衰退していくだけだと思う。
自分で作るしかないよ
書き手も原作読者なんだし、
続きがどうなるか気になって妄想どころじゃないんじゃ?
仁丹、このスレで連載開始してくれねーかなーw
悲恋とラブラブと明るい話どれが好き?
せっかくだから俺はこの明るい話を選ぶぜ
しかし悲恋もいいもんだぜ?
179 :
DEF:07/05/13 13:37 ID:mKd3hwQc
(entrance2/1175235995/)からの出張の構え。
※なんだ?あのベストセラーの脳内革命のスレッドか?
IFは言いが、インフィニティ―な、20+…で、今綾は、28位って事か?
綾は、2001年、20代前半だったから、今は、25歳を越えている位だよな?
ま、大体あっているぞ…略y、
確か、1999年渋谷の日拓で、耳にした、カウンターの女店員の、
新世紀連合のメール等の内容を思い出すな。あと、裏Pの少し残った書き込みとかなー…略y、)
送信日時 : 2007年5月13日 11:17:19
件名 : 070513#1117に送信▼▼▼▼発言、▼▼▼▼犯人のみかみ、綾発言、綾ネタ等の一部、
ノートに記録済みでも携帯には入力が無い場合も有り●(060713あややラジオの間分も有り)。
●〜070513#1051迄分〜1115迄分〜の殺人波を受けた記録の一部のみ…略y。)…
(070513#1020〜1035〜1055〜1117#携帯入力時間。布団内、外出中等、テキストメモ等入力済み分含)
070513
-0702[強2]0703[強3]**0717[強3.5]0718**0726--!-寝#L睾丸
-0702[強2]**0726--!-寝#R睾丸
-0702**0718[強3]**0726--!-寝#心臓
-0702[強2]#頭皮
-0702[強2]#0726PN#R腿
-0702[強3]#0718PN0718#L腿
0702PN#R肩
0711PN#R脇
続く
180 :
DEF:07/05/13 13:40 ID:mKd3hwQc
(entrance2/1175235995/)からの出張の構え。
>>179の【続き】
070513#
-ウトウト中も受けていた-1014[強2]1018[強4.5]1020[強5]1023[強5]1051[強3]1115--#L睾丸
1014***1023[強3]1051**1115--#喉
1020[強3]1023[強3]1051[強4]1115--#心臓
1127PNPN1115--#L腿
1127PNPN1115--#R腿
1055[強2]#L中
1055PN[強2]-#L肩
続く(この記録は、殺人波を受けた記録であり、そして、何より、俺は、昔だが、
ジャンプを週刊毎週買って読んでいた時期もあり、そのジャンプは、全盛期であり、
今より、部数だって多かったんだぞ…略y、)信じられるか?
あの頃のチャンピオンは、そんな、少年ジャンプだったんだ)
182 :
DEF:07/05/14 15:47 ID:RxzVoDgU
(entrance2/1175235995/)からの出張の構え。
>>180の【訂正】
この記録に誤りがあった。
1027PNPN1115--#L腿
1027PNPN1115--#R腿
であっているだろうな…略y、)時間が無くて、ノート上では、
きちんと記録されているのだがな…略y、)
携帯で、こういう記録を入力している事を考えれば、多少、こういう入力ミス
等は、起きるし、ふるきーぼーどでも、俺は、よく打ち間違えるからなー…略y、)
続く(牽制の為、一応、訂正しておいた)
いるの
最近妄想も少ないな
184 :
Classical名無しさん:07/05/19 14:35 ID:F0bSsvV2
2ヶ月で180レスしかついてねーしな
どこかのスレみたいにカレー氏の事だけで埋まっていくのもどうかと?
あそこはもういい。何言っても話になる状態じゃないし
カレーとかの時に
スクロワも一時期より落ちてきてる様だね。
こっち書いてた人戻ってこないかな?
カレーってなんのことかと思ったらエロパロか
妄信する信者が「カレー氏のSSがあるから他の書き手は
恐れ多くて投下できないんだろうな」とか言ってた時は身震いした
作者は作者で全レスが荒れる原因になってるのに止めようとしないおかしなスレだ
あそこはもう一年以上前からアソミコ厨が自演で荒らしてて
アソミコが終わっちゃったから荒らす手法を変えただけでしょ
たとえ今居る唯一の書き手が居なくなったとしても
今度は違う方法で荒らすでしょ
さすがに居なくなればやめるだろ。つまるところ反応があればなんでも良いんだし
無視しときゃ良いのに自演かグルになってるのか知らんが延々餌をやるから悪化する
>189
それも含めて荒らしだろ
どう考えても…
まあ人の振り見て我が振り直せと言いますし、こちらはこちらで注意しましょう
スクロワ界のカレー氏と言われた俺が言うのもおかしいが
>>193誰だよw
スクロワのまとめ見たら残り4人になってたけどまさかここまでいくとはなあ・・
殺し合いじゃなくて何か別のテーマでリレー企画すれば
また賑わうんだろうか
>>194 一時プリキュアの人とか呼ばれてた人だったり、違ったり。
おま、カレー氏とは天と地ほどの実力差があるからw
>>195 某所でいわれた通りきっちり半年ROMってて下さいw
本当になんで間違われたのかいまだに分からんしROMるのってやっぱ退屈なんだよ〜
SSの勉強でもと思って立ち寄ったみたけど思わず書き込んでしまった。
もうスクロワにも二度と帰れないしなあ〜
ここで拾ってもらえねえーかな?
なんて言ったらみんな怒るだろうな〜 また放浪しよっと!!
>>198 小説を読むといい
100冊読んだら嫌でも上手くなるから
あんま相手にすんな
しかしこのスレになってから長いのは一つも来てないんじゃないか?
>>190 アソミコ厨ってマジで酷いな・・・あれがガチのアソミコ派なんだからな。
仁丹がアソミコ切ったのも当然だわ・・・
>>196 まったくだわ・・・カレー氏の実力はそこらのSS師と隔絶してるっちゅうのに。
あーあ、変なの呼んじゃった
このスレになってからも超姉はきてるけどな
このスレになって、珍しい真旗も来たしね
読み手としてはそれなりに満足かな
ま、たくさん来るに越したことはないけど
ここでも無理か分かってたけど・・・・
だから100冊読めって
あと空気も読め
>>196 >>203 こういうのが189の言ってる輩ってことか
他所のスレに出張してくるのは流石にうざいな
もうこの話はやめとかねぇ?
過疎も嫌だが荒れるのはもっとヤダ
どうでもいい
これ以上要らんもん涌く前に話題打ち切れ
そんなことより、超姉について語ろうぜ。
超姉SSでも作ればいい
ネタをくれ
話はそれからだ
>>213 ぶっちゃけそこは事実でもあるしなw
一応言っておくとカレー氏が上手いって持ち上げまくってる訳じゃないよ
風の強い午後だった。夏がもうすぐそこまで来ていた。
こんなところで何してるんだと声をかけられ、ここは風が気持ちいいんだと答えた。
「やっぱ変わってるよな烏丸って」
笑いながら言う同級生に、たぶん悪気はないのだろう。そうかなと首をかしげると、
呆れた顔で「自覚ないのか」とつぶやいてから、もう一度笑って教室へ帰っていった。
変わってると言われるのはそれほど珍しいことじゃない。だからそれなりに自覚して
いるつもりなのだが、今の会話に「変わってる」と言われる要素があったかどうか、
そこがどうも呑みこめなかった。
でもまあ、そんなことは大した問題ではないのだ。
読みかけだった文庫本のしおりの位置がいつの間にか変わっていた。記憶にある場所
から数ページ先の、読んだおぼえのないところに、知らないうちに移動している。
そういうことが日常の問題なのだと思う。自分のなかでだけ、妙に気にかかるのだ。
せっかくだから新しいしおりのページから読みはじめてみたけれど、やはりうまく
読み進められなかったので、もとに戻して読み返す。文章を読むのは苦痛ではない。
教室から廊下から、あふれてみちるざわめきが聴覚をくすぐり、文字列が脳内で視覚的に
ささやく―――――以上のように、純然たるイニシエーションとは、象徴的な死、
或いは象徴的な自己の殺害を伴うものであり、そこにはこれまで属していた年齢階層的
帰属社会との決別、すなわち年齢階層的社会における自己の消失が瞭然と見出せるのである。
象徴的な死とはイニシエーション直前までの己の存在の―――――え?じゃあ天満ったら、
まだトイレにいるの?
すぐ隣から聞こえたすっとんきょうな声に水をさされ、書面とのむつみあいがとぎれた。
「だってさっきからずいぶん経ってるわよ?何してるのかしらあの子」
「さあ、まあ別に腹下したってわけでもなさそうだったから、好きにさせといたけど」
「ちょ、ちょっと、腹くだ…お腹壊したなんて、そんなこと大きい声で」
話しながら遠ざかってゆく二人の背中を見るともなく見やり、次いでふたたび書面と
むつむべくこころみたが果たせなかった。会話のなかで呼ばれた名前が気にかかっている。
その名前の彼女を知っていた。
見ていて感心するくらい表情のゆたかな人だった。ありとあらゆる感情を、顔のみならず
全身でおもてに出していた。感情の揺れ幅があまり大きくなく、たとえ心がうごいても
それを表現することの苦手な自分とは、まったく正反対だった。
彼女がどうしたと言うのだろう、トイレがどうとか言っていたようだがと女子トイレに
目をやると、今しも出てきた女生徒と、その連れらしき少女とが話しているのが聞こえた。
「塚本さんが?へえ、どうしたんだろうね」
「どうしたのかなあ、なんかね、こうなったら窓しかないかとか、でもさすがに高すぎる
かもとか、一人でぶつぶつ言ってたけど」
「窓?なんのこと?」
「さあ、わかんない」
まったくもってして、なんのことやら。
窓がなんだというのだろう。中で倒れていないのなら安心だが、それはそれとしてやはり
気がかりだった。窓になにかあるのだろうか。窓と彼女との関係性について考えていると、
今度は中から音がした。がっちゃん、と、内側から押し開くような―――――
―――――窓?
中の様子が気になっても、さすがに女子トイレに入るわけにはいかない。少し考えて、
外から様子をうかがう分には問題ないだろうという結論に達した。校舎裏にまわれば
女子トイレの窓を見ることができる。
昇降口から外に出ると、まだあわあわとした草いきれが鼻先をかすめた。青くささと
土ぼこりのにおいを含んだ風が上空へふきあげてゆく。ばたばたと遠くで音がする。
視界の上方、校舎の高みで制服のスカートがひるがえる音。信じられない光景。
心臓がとまるのではないかと思った。
彼女がロッククライマーだという話はついぞ聞いたことがなかった。トイレ掃除に使う
あのゴム製のかぽかぽいうやつを交互に動かして、彼女はゆっくりと校舎の壁をおりて
くる。いったいなにをしているのだろう。本当に―――――
本当に、彼女はいったい、なんのつもりなのだろう。あんなところから落ちたら死んでしまう。
声をかけようかと思ったが、へたなことをして集中力をそいでしまったら、かえって
危ないのではないかと思い直してやめた。もしかしたら彼女の夢はスタントマンなのかも
しれない。あるいは単独でのエベレスト登頂、もしくはビルの清掃員。
彼女がじりじりと、しかし着実に地面に近づいているのがおどろきだった。あの状態に
なること自体も滅多にはありえないが、この状況で動けるのもすごい。
なぜか笑いたくなった。衝撃からだろうか、緊張からだろうか、彼女への賞賛からだろうか。
自分の見守るなか、手をのばせばとどくところまで彼女は降りてきていた。なまぬるい風が
彼女の長い髪を、梢の青葉を、自分の頬をすべり、遠くへ吹きすぎていった。
軽い着地音をたてて彼女が地面に帰ってくる。おかえりと言うかわりに風が鳴る。けがが
ないのを関節の動きから見てとって胸をなでおろした。
すぐそこにある小柄な背中。小さな肩。今までの光景がうそみたいな、なにもかわらない、
自分の知っている通りの後ろ姿。あんなことをやってのけたあとなのに、声をかければ
いつもの笑顔で振り返りそうですらある。でもあれは、実に、よろしくなかった。
「危ないから気をつけてね」
背中に声をかけたあとで、無事でよかったけど、と、ちいさく付け加えた。
まったくのところ、彼女が無事でよかった。手にしたまま忘れていた本に視線を落として
息をつく。
あんなに驚いたのも、笑いたくなるくらいびっくりさせられたのも、考えてみればしばらく
ぶりのことだった。そういう衝動が自分のなかでたしかに生きていたことが、うれしい
ような気がした。
あの笑顔がみられるかと思って彼女の方を見たけれど、彼女はすこし泣いていたようで、
それはそうだ、怖かったのに違いない。無茶はよくないよ塚本さん。
かなりはじめの方(コミック1巻とかそれくらい?)の、真王道話の補完。のつもり。
トイレから出てくところを見られたくないとか悩む天満が可愛かった。
過疎ったスクランSS界で真王道を書く勇気に乾杯
原作でもこういうふうに烏丸が天満を気にかけてる描写があればなあ
ますます鉄壁すぎてつまらんといわれるだけか・・・
>>223 おま、カレー氏とは天と地ほどの実力差があるからw
煽り乙。 市ね
例のあいつはそうだろうが今回のとは関係あるまい
>>225 いや〜い、間違えてやんの・・・・・・たぶん?
烏丸の天満に対する心理描写がされるときはスクランが終わるときだと思う。
でも妄想するのは自由だし、真王道はマイナーだけど、できればまた投下したいな。
次はもっと頑張る(`・ω・´)
旗の新作がどこでも見かけないのは何でだろ
短編すらないってのはどういうことだ
カレーさんは書いてるやん
>>229 頑張ってくだちい
王道好きとして負けられないねw
>>230 正直、原作で描写が多かったせいか妄想力を働かせる燃料が無い
これからの展開次第で妄想膨らむかもしれないが…
今書くと俺の技量じゃどっかで見たテンプレートな話になっちまうな
「お風呂の釜が?それでうちにいらしたんですか?」
葉子の問いに、と、言うべきか。葉子の確認にひとつうなずいて、絃子は
小さくため息をついた。困惑。動揺。緊張。衝撃。ああも短い時間のなかで、
こうも精神的に疲弊している。
「それはかまいませんけど…。…とりあえず、どうぞ」
うながされ、ありがとうと呟いて歩をすすめる。かぎなれた葉子の部屋の
においに、奇妙なほどの安堵をおぼえた。
「すまないな、突然」
「いいえ?絃子さんなら、いつでも」
セリフが途切れる。やわらかな笑顔。「大歓迎です」と続けるかわりに笑っ
たのだろうと推察して、絃子は寄せていた眉根をゆるめた。
絃子をリビングに通し、自分はキッチンへと入りながら、葉子が言う。
「ビール?ワイン?それともジンライムにします?」
「…はい?」
「あら?日本酒とウイスキーもありますけど」
小首をかしげてきょとんとまばたき。男なら即座に自分の意見をとりさげ
てしまいそうな愛らしいふるまいだったが、絃子はあくまで首を横に振った。
「いや、そうじゃなくて、そこは普通「お茶?コーヒー?」とか言うところ
だろう」
絃子の言葉に葉子はころころと笑い、「だって絃子さん」とさもおかしそう
に言った。
「今日は泊っていくんでしょう?しらふじゃできない話もあるみたいですし」
「…しらふじゃできない話をする予定はないんだが」
「泊っていく予定はあるんですね。お風呂の釜が壊れただけで?」
揶揄するように言われて、絃子は返答に詰まる。もっとましな嘘をつけば
よかった。
「…かさねがさねすまない」
キッチンから聞こえる、グラスのぶつかりあう澄んだ音。収納扉がしまる
音。白ワインとグラスを手にリビングへ戻ってきた葉子は、ごくあたりまえ
のように絃子の隣に腰をおろした。
「言ったじゃないですか。絃子さんなら、いつでも、って」
自分が男だったら、この時点で間違いなく葉子に惚れている。あるいは
もっと前の段階でだろうか。
栓抜きを回しながら葉子が言う。
「絃子さんのハブラシ、まだ洗面台にあるんですよ」
「私の…?」
「買ったじゃないですか。ずっと前に」
ぽんと音を立ててコルクが抜ける。酸味がかったフルーティーな香り。
ラベルに書かれた宣伝文を目で追いつつ、そんなこともあったか、と、絃子
は懐古の念にかられる。
おたがい勤めはじめて今のところに落ち着くまでは、どちらかの家に転
がりこむ夜が多々あった。終電を逃したり、酔って足元があやうくなったり、
単に語り明かすためだったりもした。
はじめのうちは使い捨ての感覚でハブラシや下着を買っていたのだが、
それがけっこうな額になると気がついて、結局はそれぞれの家に専用の
ものを置くことになったのだ。
ショッピングの途中に寄ったボディショップで、絃子は濃い青のしゅっ
としたデザインのを、葉子はシュガーピンクの柄が細いのを買った。
そういえば、そんなこともあった。
「そういえばそうだったか。…懐かしいな」
絃子の答えに葉子はあわく笑う。
「懐かしいですね。大昔のことみたい」
「大昔は言いすぎだろう」
「だって」
すねたように唇をとがらせて、葉子は絃子から視線をそらした。ワイン
をそそぐ手つきがやや乱暴になる。
「だって、絃子さん、私のハブラシなくしちゃったでしょう?」
「それは…」
言われてみればそうだった。でもあれは同居人が増えるにあたって、
部屋をおおがかりに片付けたからなのだ。
昔は可愛がっていた従兄弟―――――しかもいつからかぐれだして、
その上いつの間にか性格が変わっていた―――――が部屋に来るとあって、
それなりにばたばたしていたのである。
「それはその、すまなかった」
言って横顔をうかがうと、そのいつになく殊勝な視線に気付いたのか、
葉子は体ごとこちらを向いた。
「いいですよ。ねえ、飲みましょう?」
困ったような、許すような微笑み。葉子の部屋の匂い。ワインの香り。
絃子専用のハブラシ。
こうしているとあの頃に戻ったようだった。あの頃に戻ったようだという
錯覚は、部屋に残してきた従兄弟と、おそらくは彼に想いをよせているの
だろう受け持ちクラスの少女、そしてその姉である従兄弟の想い人のこと
などを、まるでひどく遠い世界の話のように感じさせる。
「そうだな。飲むか」
グラスが鳴る。ワインがゆれる。
葉子×絃子がもっとメジャーになればいいなという祈りを込めて…
>>238 続けようか迷ったけど、うまくまとまらなかった…
間違えた><
×238 ○239
葉子×絃子でも絃子→播磨が前提なのか?w
>>240 おつおつ
改行をもうちょっと考えてくれたら読みやすいかもだけど、久々のSSでなんか感激したよ
また投下してくださいな
播「ん? めずらしいな、絃子がゲームなんて」
絃「ああ、葉子がお勧めだって貸してくれてね」
播「へー、しかしスーファミなんて古いもんやってんだな。流石――」
絃「何か、言ったか?」
播「メッソウモゴザイマセン」
数日後
播「あれ? あのゲームもうクリアしたのか?」
絃「……てた」
播「あん?」
絃「投げ捨てたと言ってるんだ!!」
播「いい!? いいのかよ。借りモンなんだろ?」
絃「ああ、葉子も織り込み済みだろうからな」
播「??」
絃「まったく、いい性格してるよ」
葉「ふふ、絃子センパイ、楽しんでくれたかなぁ バ ハ ム ー ト ラ グ ー ン」
246 :
244:07/05/31 23:40 ID:BaxAxOOY
注釈
・バハムートラグーンは、キャラの名前を変更できます
247 :
Classical名無しさん:07/05/31 23:46 ID:Th/6G.eo
主人公=絃子
ヒロイン=播磨
敵将軍=天満でFA?
>>246 理解した
葉子さんクロいww
敵将軍を播磨にしてヒロイン絃子さんにしてやり直せばよかったのに
>>248 お前さん、自分が「〜〜(主人公の愛ドラゴン)より早ーい♪」なんて言うビッチになりたいと思うのかw
>>249 その台詞だけなら別にいいだろw
全体ひっくるめると約束を反故にしちゃうしちょっとアレだとは思うけど俺はそんなに嫌いじゃない
全然分からん
バハムートラグーン ヨヨ
でググれ。
暗黒時代の美琴がヨヨに例えられてたな。
254 :
Classical名無しさん:07/06/05 03:39 ID:1s468jis
「帰ぇったぜー」と疲れ果てた顔で帰宅した播磨。
いつもならば、リビングからこぼれるTVの音とともに、「おかえり。君は江戸っ子か」などと絃子の出迎えの声が聞こえてくるはずだったが、今日は珍しく静かだった。
首を傾げつつ、ふと玄関に置かれている縛られた古雑誌の束に目を移せば、飛び込んできたのは『ジンガマ』の表紙で。
静かな家に播磨の叫び声が響いたのだった。
「こりゃあ、俺ことハリマ☆ハリオの記念すべきデビュー号の『ジンガマ』じゃねえか!」
これを捨てるなんてとんでもない!
「ったく絃子のやろ〜、勝手なマネしやがって」
恐らく捨てるはずだったであろう雑誌の束をリビングへと運んできてしまった播磨は、あとで絃子にしこたま怒られるであろうにも関わらず、紐をほどいて大事な『ジンガマ』を手に取った。
居並ぶ大作家達の名前にまじってハリマ☆ハリオの名前が燦然と輝くこの表紙を何度眺めただろうか。自然と口元が緩み、ニヤケてしまう。
そのままリビングに寝っ転がると、「このシーンは熱かったぜ!」などと呟きながら、ジンガマを読み始めてしまった――
――すっかり夜も更け、空腹から盛大に腹の虫が轟いた頃、播磨はようやく我に返る。絃子が帰ってくる前に雑誌を片付けねぇと、また撃たれるからなあ、とため息をつく。
とはいえ、今日は珍しく絃子の帰りが遅い。どうせまた葉子さんと飲んでんだろ、と彼は見当をつけつつ、ばらしてしまった雑誌の束を元に戻そうとしたが、そういえばリビングに珍しく絃子が見ていたであろう雑誌が散らかっているではないか。
ついでに片付けてやろうかと、散らかっていた雑誌の表紙を見て播磨は思わず手を止めた。
「………転職情報誌○ーダ!?」
なんで絃子がこんなもんを?
いぶかしげに手に取ったその転職情報誌をパラパラとめくれば、赤ペンで印をつけたページがいやでも目に留まる。
年収ン百万、外資系、経営コンサルタント………
聞き覚えのない単語が並び、播磨はただひたすら首をかしげるだけだったが、
いくら頭の弱い彼でもこれが何を意味しているのかはすぐに理解できた。
「ちょ………絃子のヤツ、まさか転職すんのかよ!」
一瞬、頭が真っ白になる。転職ってことは、当然、いま勤めている矢神高校の教師を辞めるということで、
クラスの連中、いや学校中が落胆する光景が目に浮かぶぜ、ははは……と努めて冷静を装うが、嫌な汗をかいていることに気づかない。
「ま、まあアイツが学校辞めたって、いまの生活が変わるわけねーしな。
なんだよ、この会社なんて都内じゃねーかよ。都内ならこっからだって通えるぜ」
などと必死に言い聞かせている彼だったが、○ーダの次に置かれていた雑誌を目にして、唖然とした。
「ふふふ不動産情報誌!?」
ちょ、ちょっとまてぇ! マジか! 絃子のヤツ引っ越すのかよ!
播磨は大いに慌てた。無理もない、いくら家賃折半といえど、名義は当然絃子のこのマンション、
彼女の機嫌一つでこの部屋を追い出されてもおかしくない身の上の彼にとって、
絃子本人が引っ越してしまうのであれば、文句一つ言う権利のない彼にはどうしようもできない状況なのだから。
「まてよ? ここのマンションって分譲だよな? 絃子ここ買ったって言ってたし。そんな簡単に引っ越せるわけねえ!」
手にした情報誌を急いでめくれば、大きくつけられた印のページに、
不動産屋の名刺と、この部屋の相場であろう売値が書かれたメモが挟まれていた。
「………なんてこった。しかも日付が昨日かよ………ここ売っ払って引っ越す気満々じゃねえかよ」
力なくうなだれる播磨。
アレか。俺が家賃払わねえから悪いのか。なんだか絃子の本気を突きつけられたようで、放心状態になる。
今の生活が変わるのを恐れている自分をまだ認めることができないでいるのだ。
やべぇ。絃子が引っ越したら俺ァどうすりゃいーんだ? 都内から通うのもめんくせえし………って、オイオイ!
なんで絃子と一緒に暮らすのが前提なんだよ! また中学ん時みてーに一人で暮らしゃいいじゃねえか。
「まったくよォ!」
じゃあなんでこんなにイラついてんだ? そもそも絃子の家に勝手にあがりこんだのは俺だし、
アイツが仕事辞めんのも引っ越すのもアイツが決めることだろ。
頭ではわかってる。こりゃただの駄々だ。今までアイツに甘えきって頼りきってきた俺の駄々だ。
言ってくれなかった。一言も相談してくれなかった。だからなんだ? それこそ関係ねーじゃねえか。
まとまらない、まとまるはずもないものを紛らわせるように雑誌を叩きつけた播磨は今度こそ打ちのめされた。
「………結婚情報誌ってオマエ………ゼ○シィってオマエ………」
震える手でその本を持つ。ウェディングドレス姿のモデルが無邪気な笑顔を向けている表紙だ。
この本が意味することはただ一つ。というよりも、その予定のない人間がわざわざ買ってくる雑誌でもないはずだ。ということはつまりはそういうことで。
「ないない! これはねぇよ! ハッハッハ、絃子が結婚?? ありえねー! へそで茶ァわかすぜまったく」
何故だかみとめようとせずにひたすら強がる播磨だったが、表紙のモデルが一瞬、絃子にすりかわって見えるや、慌ててその雑誌を放り投げる。
確かに美人だしよォ、スタイルもいいし、性格はちょっとアレだが、あと家事もできねえが、実際は引く手数多なんだろうなあ………
リビングで呆然と座りながら播磨は思いめぐらせていた。
んだよ、一緒に暮らすどころの話じゃねえじゃん。どうりでここより高いマンションをチェックしてるわけだ、2人で暮らすにはいいもんなあ………
そんな素振りはみせなかった。この部屋に自分以外の男が来た覚えもない。
確かに漁船に乗ったり放浪してたりして、この家を留守にしたことは多かった。だけど、それにしたって絃子からは何つーか、男の影は一切なかったと断言できる。
その影らしきもんがいざ目の前に現れそうになると、とたんに動揺しちまうのはどういうわけだクソ!
引越しや転職どころじゃねえじゃねえか、完全に。
引越しや転職ですら口を出すわけにもいかねーのに、結婚なんてそれこそ踏み込んじゃいけねえ領域だ。
テーブルに突っ伏していたまま悶々とする播磨。
なんだろうなこの喪失感は。居ても立ってもいられないのに何もできない。ただひたすらに腹が立つ。
何も言ってくれなかった絃子に。俺の前で一切の隙も見せなかった絃子に。
そしてそれに甘えていた自分に。
生まれも育ちも超姉ですお久しぶりです。
というわけで突発的超姉、前編です。
後編は明日(以降)。
あとこれコメディですのであしからず。
>>259 GJ!!
生粋の超姉である俺はwktkが止まらないぜ!
>>259 乙
なんだか寂しくなってきましたが
コメディなようなので少し安心しましたw
262 :
Classical名無しさん:07/06/07 18:48 ID:QCGvHBx6
>>259 旗、おにぎり、そして超姉。
俺があまり好きではないカプのSSだがこれはちょっと面白いw
263 :
Classical名無しさん:07/06/07 21:05 ID:YbCJcWu2
乙
超姉大好きなんで期待してます
>>259乙
_ ∩
( ゚∀゚)彡 超姉!超姉!
( ⊂彡
| |
し ⌒J
「ただいま」
スーツ姿の絃子が帰宅した。イヤリングを外しながらリビングを突っ切ってキッチンへ向かう。
冷蔵庫を開けて、リビングでうなだれる播磨を横目に牛乳パックを取り出すとラッパのみ。
ひとしきり飲み干すと、ようやく彼女は鬱陶しげな同居人へと声をかけた。
「今日はまた何の醜態だね、拳児くん」
「絃子、いいから座りなさい」
紋付袴すがたの播磨、サングラスも外して精一杯の真摯な表情を見せる。
絃子はそのままテーブルを挟んで向かいに座った。
タイトスカートが窮屈この上なく、早くラフな格好に着替えたかったのだが。
そんな絃子に構わず、播磨は懐から封筒を取り出した。
「これを………受け取ってくれ」
それは茶色い封筒で、ずずいと恭しく差し出されては、受け取らないのも角が立つ。
絃子は不審な顔で封筒を手にした。
「今まで滞納してた家賃だ」
「……ホントかい? 一体どういう風の吹きまわ――」
チャリンチャリン……封筒から出てきたのは660円。
「いまの俺の全財さ――ドス! いてえええええ!」
500円玉が播磨の眉間に突き刺さる。
「ふざけてるのかキミは」
「しょーがねえだろ! 今のオレがかき集められる最大限の金なんだよ!」
顔面血まみれで必死に叫ぶ姿とは裏腹に、なんとも情けないセリフ。
絃子は思わずため息をつく。
「まァ、とにかく新居の足しにでもしてくれや」
「新居?………よくわからないが、とりあえず受け取っておくよ。ビール代ぐらいにしかならないが」
「それから、これを見てくれ」
播磨が次に差し出してきたのは、2冊のドリル帳。漢字ドリルと計算ドリルだった。
「今のオレの学力を見てもらおうと思ってな。ほらよ、今まで色々と留年だの赤点だので心配かけちまったからよ。
オレはこのとおり全然へーキだぜ! ヘッチャラなんだぜ! 的な意味を込めてよ、とりあえずドリルを解いてみた」
「どーでもいいが、所々間違ってるぞ」
「な、なにィ!?」
「これ小学生用だぞ。むしろ不安になったんだが」
「グッ! とにかく、勉強の方は心配いらねえからよ! 絃子に頼らねーで卒業してみせっから、安心してガッコ辞めていいぜ」
「………は?」
「それから、これが一番肝心なんだが」
「おい拳児くん、さっきから何を言って――」
たまらず口を挟む絃子に構わず、播磨は一枚の便箋を取り出すと、彼女へ手渡す。
「一応下書きは済んだけどよォ、こういうもんを本番前に読んでもらうのは、さすがにテレくせーけど自信がなくてな」
「一体なんだねこれは」
「決まってんだろ。結婚式のスピーチだよ」
「結婚って、誰の」
「絃子に決まってんだろ。親族を代表して、このオレがスピーチしてやるぜ」
ぶん殴るのは後でもできる。
絃子はとりあえず便箋に書かれたへったくそな文字を読み上げた。
「………『えー本日はお日さまもよく、絃子なんかのために集まっていただいちゃって、俺としても嬉しいッス!
今日は堅苦し……』ビリビリビリ!
「うわー! オメー、人が苦心して書いたもんを破んな!」
慌てて怒鳴り散らす播磨だったが、絃子の凍りつくような視線にハッとなる。
荒ぶる怒気が一気に収縮してしまった。
「いったいこれは何のマネだね」
「だからよ、皆まで言わせんなよ。俺ァ怒ってんだぜ、オメーが一言もいってくれねえからよ! チクショー!」
「どうして私が、引っ越したり教師辞めたり、あまつさえ結婚するんだ」
「だってよォ、見ろよコレを」
そういって播磨は3冊の雑誌をテーブルに広げた。
意を決した彼の胸が何故か締め付けられる。
しかし絃子はあっさりと言ってのけたのだ。
「ああ、捨てようと思って置いといたやつだよ」
「は?」
「なるほど、この雑誌を見て勘違いしてたというわけか。ま、君らしいといえば君らしいがね」
「へ? いやだって………え? ってことは引越しも結婚もしねーの?」
「今のところはね。だいたい、その雑誌の日付を確認したのかい?」
「ああ見たぜ! ○年△月□日号! ほらみろ、昨日の日付………○年? へ?」
「それ、二年前の雑誌だよ」
「なんだよそりゃあ!」
拍子抜けした播磨が座り込んで天を仰ぐ。
ひょっとしてまーた思い込みが窮まってあらぬ方向に暴走しちまったんじゃねーか? とうなだれた。
自分のバカさにはつくづく参ってしまうが、それよりも絃子にからかわれる口実を与えてしまったのが悔やまれる。
「キミは本当に成長しないな」
ほらさっそく来やがった。しかし今回はそれほど自分の落ち度はないはず。
だいたい、絃子がこれ見よがしにリビングに二年前の雑誌なんて置いておくほうが悪くねぇか?
播磨は仏頂面のまま、絃子に反論する。
「で、でもよ、二年前とはいえ、教師辞めようとか引っ越そうとか、け、け、結婚とか真剣に考えてた時期があったんだろ?」
「まあね。これでも絃子おねーさんはモテるんだよ。女としてだけじゃなくて、社会人としてもね」
「だけどそんな素振り、少なくともオレがこの家に上がりこんでから、まったく見せたことねーじゃねえかよ。
それがいきなりこれだろ、勘違いすんのもムリねえぜ」
「そりゃ悪かったね」
「でもそうか………オメーにも、結婚を考えるぐれー真剣に付き合ってた野郎がいたんだな」
口に出してみて、思ったよりもショックを受けている自分に驚く播磨。
もし自分が転がり込んだことによって、結婚まで考えていた男に逃げられたんだとしたら、後味が悪い。
そういうことにしておきたかった。
「いや、いなかったよ」
「は? じゃあなんでこんな雑誌持ってんだよ」
「それはこの間、葉子が(わざと)置いてったんだよ」
「葉子さんが? なんで。あ、ホントだ、ゼ○シィだけ最新号じゃねーか」
「うむ。しびれを切らしたんじゃないか、少しも進展しない私たちを見て」
「へー、オメーを刺激して焦らせようって魂胆か。葉子さんも気ぃまわすぜ……ん?
私“たち”ってこたー、やっぱりオトコがいるんじゃねえか!」
「ああ、いるよ。しかも鈍感で頭が悪いどうしようもないヤツだがね」
「こ、今度連れてこいよ。オレが品定めしてやるぜ」
「………はぁ」
「ため息つくなよ、しつれーなヤツだな」
「ま、私は焦ってないがね。誰かさんが卒業するまでは、のんびり構えるさ」
「そうなのか?」
「その代わり卒業したら、もう遠慮はしないぞ。私から逃げられると思うなよ。ずっと私のターンだ」
「す、すげえ自信だな、ってなんでオレを睨んでんだ」(おわり)
おまけ
「じゃあ話は終わりだな。いいかげんお腹が空いたよ、拳児くんさっさと雑誌を片付けてくれ」
「へーへー、わかりましたよ。大体なんで二年前の雑誌をリビングに置いとくんだっつーの」
「うるさい」
文句を言われつつ雑誌を片付け始めた播磨は、別の雑誌を見て再び凍りついた。
「どうした拳児くん」
「た○ごクラブっておまえ………ひ○こクラブっておまえ………」
「それも葉子の罠だ!」
270 :
259:07/06/09 00:06 ID:5LPBS3o2
というわけで、駄文におつきあいいただきありがとうございました!
改行も乱雑で誤字脱字も多く、読みづらいことをここにお詫びします。
>>260-264 おまいらどうもありがとう
>>270 一番槍で乙!!
>「ずっと私のターンだ」にワロタw
>>270 GJ!
超姉としてとっても和んだ
それにしても葉子さん急かせすぎだwww
>>270 GJ.。面白かったわ。
播磨はやっぱこんなやつなんだな。
こりゃ、絃子さんも大変だ。
しかし、た○・ひ○とは葉子さんも露骨だなぁ。
次回作も期待しとります!
>>270 GJ
ほのぼの和んで面白かったです
意外と播磨は絃子さんに恋してたのかもという妄想が脳内を支配し始めたw
275 :
Classical名無しさん:07/06/10 23:05 ID:tvwNVcfQ
保守
太陽も頂点を過ぎ、気温もこれからだんだんと下がっていく時間帯になって、ようやく
播磨は眼を覚ました。スプリングのきかないベッドから這い出ると、寝ぼけ眼のまま洗面
所へと向かう。鏡に映ったのは、不精ヒゲがだらしなく伸びきった自分の顔。
ヒゲを剃ろうか、とも思ったが、その時間が惜しいと思い、軽く水で顔を洗うと、すぐ
に着替え、薄い財布をズボンに押し込むと、慌ただしく部屋から出て行った。
何しろ、今日はジンマガの発売日なのだ。
終わった。
歩いてすぐのコンビニでジンマガを読み終わると、播磨の胸に達成感のような、虚無感
のような、とにかく例えようのない感情が溢れかえっていた。
手元に視線を戻す。そこには、何度見直しても「完! ハリマ☆ハリオ先生の次回作に
ご期待ください」の文字。
播磨の初連載の最終回だった。
必死で学生とマンガ家の二足のわらじをはいた最初の一年間。連載がある程度軌道に乗
りながらも、打ち切りと必死に闘っていた一人暮らしを始めての二年目。終わりが見えて
きて、でも終わらせたくなくて、必死でどう話を纏めるべきか悩みに悩んだ三年目。
苦労もあれば、とんでもなく嬉しいこともあった。読者のファンレターに心の底から喜
び、編集の意見に押しつぶされそうなこともあった。その全てが、いま目の前にある最終
回のためにあったと思うと、自然と顔がほころんだ。
「なんだ、やっぱり嬉しいんじゃねえか」
呟いて、ようやく播磨は自分の連載の終りを受け入れることができた。
無論、原稿はとうの昔に上がっていた。こうして店頭に並ぶ前に印刷されたものを見た
こともあった。それでも、こうして人が手に取ることができる状態になったジンマガを見
て、ようやく「終わった」と思えたのだ。
手に持つジンマガの会計を済まして、上機嫌のまま播磨はコンビニを後にした。燦々と
光る太陽の光が、目にまぶしい。今まではこんな時間に出歩くことなど稀だった。
「因果な職業だな」
そう言いながらも、播磨の声はどことなく弾んでいた。そう、こんないい天気の日に出
歩けるのだ。恨み事などいっていたらもったいない。
自然と、播磨の足は自宅とは逆の方向へと向かっていた。
そうして小一時間ほど歩き続けた結果――
「……つ、疲れた」
近くの壁にもたれかかりながら、播磨は荒い息を整えた。手に持つジンマガがやたらと
重く感じる。脇に抱え込むと、額ににじむ汗を袖で拭った。
「そうだよな、二年もまともに動いてなけりゃ、体も鈍るわな」
高校生だった頃はなんだかんだ、体育やつるんでいる連中と体を動かす機会はあったし、
何より若さがあった。しかし、卒業してからは漫画漫画漫画、時々取材、漫画と、漫画一
筋の生活。不規則な生活もたたって、かつて無尽蔵とも思えた体力は面影もなく失くなっ
ていた。
「でも、まぁ」
不愉快ではない――そう心の中で呟いた。
かつて自分が通っていた高校を見た。わずかに姿を変えた、しかし昔と変わらない街並
みを見た。歩きなれた道を歩いていると、それだけで頬が緩んでいた。
連載中はかつての知り合いと顔を合わせることもほとんどなかったが、またいつか都合
をつけて酒を飲むのもいいかもしれない。
連載が終わったからか、そんなことを思う余裕すらあった。
しかし、「いつか」は「いつか」だ。いきなり知り合いに顔を見せるような度胸は、卒
業してから月日がたっても、播磨は持ち合わせていなかった。
「よっと」
持たれていた壁から背を離しと、今ある家の方へと足を向ける。と、その背に、昔聞い
た、それこそ彼の中で一番聞きなれた声が掛けられた。
「拳児、くん?」
ぎしり、と播磨が踏み出そうとしていた足が止まる。幻聴だといいな、そして振り向い
てる間に消えてるといいな、なんて思いながら、そのまま、たっぷり10秒以上かけて、播
磨はその首を振りむかせた。
現実は非常である。播磨の思いむなしく、そこには彼の以前の家主が、コンビニの袋を
持ったまま仁王立ちしていた。未だその表情は呆然としているが、そんなものが長く続か
ないことを、彼はよく知っていた。だから、とりあえず挨拶だけでも先に済ませておこう
と、卑屈気に考えながら播磨はその口を開いた。
「お、おひひゃひぶりでしゅ、絃子さん」
舌を噛みまくった挨拶の返事は、とても懐かしい、懐かしすぎて涙が出るくらいの痛み
を伝えるエアガンの銃弾だった。
「来るなら来るで、連絡の一つもよこせないのか。君も社会人なんだろう? 今日日学生
でもそれぐらいできるぞ」
「いや、あの、来るつもりは、あいえ、ゴメンナサイ……」
ぶつくさと言いながら玄関の鍵をあける絃子。彼の記憶にあるよりその所作は荒々しく、
彼女の機嫌の悪さが見え隠れしている。
ああ、と播磨は天を仰いだ。自分の迂闊さが恨めしい。懐かしさに誘われるまま適当に
歩いていたら、絃子のマンションに向っていて、さらにそこで休んでいたなんて。
しかも時間が時間だった。三時は過ぎているが、四時には遠い。普通の教師が帰るには
早すぎる時刻ではあったが、彼の知る絃子はその普通に当てはまらない。生徒より遅く出
勤し、生徒より早く下校する彼女は、矢神校でもある主伝説ですらあったのだ。それを一
番知っているはずの自分が、なぜ今日に限ってそれを忘れていたのか。
連載終了の浮かれていた気分が、一気に吹き飛んだようだった。
そんな落ち込む播磨を尻目に、絃子はドアを開けると声もかけずにそのまま部屋へとは
いって行く。
「ちょ、おい!」
どっちが社会人失格だよ――手を放され、自然と閉じようとする扉を慌てて止める。す
ると、ちょうど向かい合うような形で立っている絃子と目があった。彼女はわずかに目じ
りを下げると、珍しく柔らかい声でこう言った。
「おかえり」
嬉しさと、気恥ずかしさと、何やらよくわからない感情が入り混じって、播磨は
「おう」
としか返すことができなかった。
「しかし君も本当に急だな。来るとわかっていたら、酒の一つでも用意していたんだが」
「あ、いや」
たまたま来たとも、会うつもりもなかったとも、先ほどの言葉を聞いたあとでは言える
はずもなかった。視線をしばし天井のあたりにめぐらせて言葉を探すが、出来の悪い播磨
の頭には何も思い浮かばない。とりあえず、酒はいらないとだけ伝えるのが精一杯だった。
「車で来たのかい、そうは見えなかったが」
「いや、単にあんまり飲めねーだけだ。連載に穴あけちまいそうでな」
言って、それが理由になっていないことに気がついた。もう連載は終わっているのだ。
だが、少し考えれば、それもいいかなと思えてきた。弱い酒に酔って何かを口走るより、
適当な理由をでっちあげていた方がよほどいい。
そんな播磨の言葉に、絃子は表情一つ変えることなく、へえとだけ呟いて冷蔵庫から
ビールを数缶取り出した。銘柄は、彼が知る頃と変わっていない。
ぷしゅ、と音をたててプルタブが開けられる。そのまま口元に運ぶと、絃子はいっきに
缶を傾けた。白い喉が音をたててビールをのみ込んでいく。半分ほど飲み干しただろうか、
驚く播磨を尻目に、絃子は満足げに息を吐いた。
「なら、私だけ飲ましてもらうよ」
「あ、ああ」
播磨の返事に気を良くしたのか、残る半分をさらに一息で飲みきると、絃子は傍らに置
いていたコンビニの袋を漁りだした。
つまみでも探してるのだろう。そう考えていた播磨だが、絃子の瞳に挑むような色が浮
かんだのを見て取って、なぜだか悪寒を感じた。
この悪寒を感じる時、必ずと言っていいほど絃子は播磨をからかった。そして、感じた
時にはもう遅い。
果たして、今回もその悪寒は正しかった。彼女が取り出したのは、彼が持っているのと
おなじ、今週号のジンマガ。
さあっと、血の気が引く音を播磨は確かに聞いた。
「ちょ、おいっ!」
取り上げようと立ち上がろうとした播磨の眼前には、黒光りするエアガン。思わず動き
を止める。それを満足そうに眺めて、絃子は赤い唇と皮肉気にゆがめた。
「嘘をついた罰だ。つまみは、そこにいろ」
「……ハイ」
まるで、死刑宣告をまつ受刑者の気分だった。絃子の細い指がページをめくる度に、播
磨の体がぴくり、ぴくりと動く。いっそ見なければいいとは思うのだが、そのくせ、視線
は絃子から外せないのだ。
ふと、目元を手で覆う。そこにかつて慣れたサングラスの感触はない。
あの卒業の日、塚本天馬に振られて以来つけなくなっていたが、それがいま無性に欲し
くなっていた。
見れば、絃子の表情が俄かに険しくなっていた。漫画が佳境に入った証拠だ。はらり、
はらりとページをめくるスピードが増していく。その度に、絃子の表情はどんどん険しく
なっていく。そうして、指がページをめくるのをやめたとき、絃子の表情は、彼がかつて
見たことがないほど真剣なものになっていた。
「……これは、どういうことだ」
震えているのは怒りのためだろうか。エアガンを突き付けられている以上の迫力が、そ
の声にはあった。黒い瞳にまっすぐ見据えられ、播磨は身動き一つとることができない。
その播磨に、念を押すようにさらに声が掛けられる。
「もう一度言うぞ。これは、どういうことなんだ」
テーブルの上に広げられたのは、最後のページ。
もう、言い逃れはできない。
「この連載、ほとんどは、君の経験に基づくものだな?」
しばらくの沈黙の後、播磨はゆっくりとうなずいた。
「私はずっとこの話を読んできた。主人公がヒロインの行動に一喜一憂するところも、そ
の友人に心が揺れるところも、かつて君が辿ってきた道だとすぐにわかった。
馬鹿馬鹿しいと思ったよ。だってどんな道筋をたどろうと、最後は簡単にわかる。君は
振られたあの過去を、この漫画でやり直すんだ」
そこで絃子を言葉を切ると、その長い髪を振り乱して頭を振った。いつも冷静な彼女に
とは思えない、播磨がはじめて見る姿だった。
「だったらなんで! 最後に出てくるのが私なんだ!!」
バン、と絃子の手がテーブルを強く叩いた。室内に音が響く。答えられずに、播磨は俯
いた。逃げるように家を飛び出した自分が、今更、彼女に何が言える。
沈黙が、長く続いた。
「……初めは」
「え?」
「初めは絃子の言うような最後を描くつもりだった。でも、連載を続けていくうちに、自
分の昔を思い出すうちにこれはなんか違うな、って感じがしたんだ。
だって、そいつは……十分恵まれてた。落ち込んだ時や悩んだ時に、見てくれてる人が
ちゃんといてくれたんだ。だっていうのに、俺はそれに気がつかないで、漫画に逃げ込ん
で、居た堪れないからここから逃げ出して、でもそれも中途半端で、歩いてこれるような
距離にしか引っ越せないで……」
サングラス。サングラスがほしい。
流れる涙をごまかすように、播磨はさらに大きな声をあげた。
「それで漫画の中の俺に良い目だけ見させる? 違うだろう、それは! 自分勝手に逃げ
た俺が、そんなもん描いていいはずがねー!!
俺の連載を、好きだって言ってくれた人が何人もいたんだ。こんな情けないやつを好きだって言ってくれた人が何人もいたんだ。俺のことを認めてくれた人が、確かにあの時い
たんだよ!
そんなんで、漫画の中の自分だけだけ幸せに書いて、読者を! 自分を! ……絃子を
裏切れるかよ」
俯く播磨からこぼれた涙が、最後のページに幾粒も落ちる。それが情けなくて、播磨は
涙を止めることができなかった。
「……馬鹿だな」
声に顔をあげると、涙で滲んだ視界に、黒い髪が広がっているのが見て取れた。ずいぶ
んと、距離が近い。ふと、先ほどの衝撃で落ちたのか、ビールの缶が手に触れるのを感じた。
思えば、ずいぶんと急ピッチで飲んでいたような気がする。鼻に触れるアルコールのま
じりの息だけがどこか遠い。
「本当に馬鹿だな、君は。
――そんなこと言われたら、誤解してしまうじゃないか」
気づけば、涙は引いていた。間近で見る彼女の瞳に射竦められて、まるで身動きが取れ
ない。
いつの間にか頬に添えられた手に力がこもり――唇に柔らか
続きは省略されました。
続きを読むにはわっふるわっふると書き込んで下さい
色々あって、次の日の朝
「それで、これからどうするつもりなんだ?」
気だるげな体を動かす気にもなれず、首だけを動かして播磨は隣にいる絃子へと
顔を向けた。寝起きだからだろうか、若干顔が赤い。
「どうって?」
「いや、その、なんだ。ちょうど一部屋あいていてな。遊ばせておくのももったいないから、
誰かルームシェアでもできないかと思ってるんだが、なかなかそうもいかなくてな」
その言葉に、播磨の顔に苦笑が浮かんだ。
「なんだ、その顔は」
普段ならエアガンが突きつけられてるところなのだろうが、あいにくとこの場に限って、
それは不可能だ。その幸運をかみしめながら、播磨は口を開いた。
「……そう、だな。そういや俺、連載終わって区切りも付いたし、ちょっと引っ越しでもしよ
うと思ってるんだが……」
「なるほど。きまり、だな」
笑う絃子に、播磨は黙って頷いた。
――END――
途中連投規制やフリーズにあったりしながらの投下。
ちなみに、播磨の部屋は出て行った日のままです。
たぶん、埃がすげぇことに。
ワッフルワッフル
わっふるわっふる
>>286 GJ
やっぱ播磨の帰るべき場所は絃子さんのところしかないな
わっふるわっふる
漫画ネタは飽食ぎみ。
まぁ、乙。
やっぱ超姉はいいな、うん。
飽食ニッポン
>>291 世界のどこかには飢餓に苦しむ人がいてだな
hoshu
新たな盗作について詳しく
あのサイトBBS閉めてるから情報がわからん。
なあ?
IFのwikiの編集ってクロスオーバーとかもするべきなのか?
ちょっと更新が滞ってるみたいなんで暇な時とかにやってみようかと思ったんだが
クロスオーバーもしちゃっていいと思うよ
そうか、気になったんで聞いてみた。
dクス
相手にしなきゃいいだろ、そんなの
超姉モノを投下します。
「なんだ、こりゃ……?」
あるうららかな午後。学校での掃除当番をきっちりやり終えた播磨は、
いつの間にか自分の机の上においてあった茶封筒を、いぶかしげに見つめた。
『播磨君へ 家でコッソリ見てね♪ ――from T』
「誰かのいたずらか……って、いや!こっ、こっ、これはああああああああああああああ!!!」
あたりに響き渡る播磨の叫び声。廊下からも、何事かと驚いた下校途中の生徒たちの視線が注がれる。
だが、当の播磨はそんなことにも気づきもしない。濃いサングラスに隠れて見えないその目は、
最後の一文、『from T』に熱く注がれていた。
(このfrom Tの文字……Tと言えば天満ちゃん! そうか……ついにオレの愛に気付いてくれたのか!
となると、この中身はラブレター!?……いや、待て! 家でコッソリ、とある!
ということは、ひょっとしてひょっとすると……………うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
最後のあたりは実際に口にでていたとかなんとか。ともかくその茶封筒を素早く鞄に入れた播磨は、
脱兎の如く教室を飛び出したのだった。
「くう! ついにこの時が来た! さっ、愛しの天満ちゃーん、オレにどんな愛の言葉をおおおおお!!」
疾風怒濤の如く。まさに文字通り風の如き素早さで自分の部屋に帰ってきた播磨は、
高ぶる心を抑えながら、丁寧に封を切っていった。果たして中から出てきたのは……
『夏の特集! 美○女ゲーム大全集!』
そう。中からでてきたのは、非現実的な程の体と大きな目をした、ハダカの女の子が乗っている本
――いわゆる18禁ゲーム関係の雑誌だった。
「ななな、なんじゃあ、これはぁあ!!!」
ここでも響き渡る播磨の叫び声。学校と違うのは、奇声をあげた播磨に注がれる視線がないことか。
ともかく、自分の予想の遙か斜め上をいく本が出てきたことに、播磨はしばし我を忘れて呆然とするしかなかった。
その姿は、さながら悟りを開いた修行僧もかくやとか。
(これは天満ちゃんのいたずらか!? いや、あの天満ちゃんに限ってそんなことをするはずが……
まてよ!ひょっとしてこれには深い理由が!!――そうか! 自分の言葉では恥ずかしくて告白できない!
その代わりに、この本の中にあるゲームに自分の気持ちを語らせようと!
……フッ、その照れ屋なところ、カワイイぜ! 天満ちゃーん!)
なんというポジティブシンキング。
これにはキバ○シもびっくりだ。
播磨は、普段の自分からは、考えつかないほどの集中力を発揮していた。
そう、彼の背後に立つ女性のことなど、全く気付かないほどに……
「――何を見ているんだ? 拳児クン」
『どわあああああああああああああああああああ!!!!』
三度響き渡る播磨の叫び声。近所迷惑もいい加減にしろと言いたい。
いつの間にか背後に立っていた女性の正体に気付や否や、見ていた本を素早く背中側に隠しながら後ろを振り向いた。
果たしてそこに立っていたのは、言うまでもなく、播磨の同居人であり、
この家の家主であり、従姉妹でもある絃子その人だった。
「よ、よう! い、イトコサンジャナイデスカ! キョウモヨイオヒガラデ」
「……途中でカタカナになってるぞ、拳児クン?」
冷や汗だらだら、生きた心地のしない播磨とは対照的に、いつもと同様、沈着冷静にツッコミを入れる絃子さん。
「ききき、気のせいだよ! そ、それより一体なんの用だよ! 大体、ノックもせずに入ってくるなんて
いくらイトコとはいえ、ひでえじゃねえか!」
「私は、何回もノックしたがね? 全く反応がなかったので様子を見に来たんだが。
――で、背中に隠したのは何かな?」
心なしか、からかうような笑みを浮かべながら播磨を見つめる絃子。だが、既に頭の中はごまかすことで
一杯の播磨には気づきもしない。
「なな、何言ってるんだ! オレは何も隠してないぞ!?
――だ、大体! オメーには関係ないだろ!? オレにもプライバシーってものが……ハイ、アリマセン」
いつの間に取り出したのか、鈍い光沢をもつ、絃子特製チューンナップ済みのエアガンを眉間に突きつけられた播磨は、
すごすごと目の前に本を差し出すのだった。
その姿には、学校中でおそれられた姿なぞみじんも感じられない。まさに本能レベルで絃子に服従している姿
そのものであった。
「――やれやれ。まったく私は情けないよ。こんなものにキミが興味があったとはね。
ま、私は人の趣味には口を挟まない主義だが」
パラパラと雑誌をめくりながら、ため息混じりにつぶやく絃子。そしてその前に、言われもしないのに
なぜか正座をして座り込んでいる播磨。その姿は、まさしく刑を言いわたされるのを待つ被告人さながらであった。
「ぐ……! ともかく、もうコレでいいだろ! 返せよ!(それには天満ちゃんからのメッセージが
隠されてるんだよ!)」
そんな播磨の懇願をあっさり無視した絃子は、そのまましばらく雑誌をめくっていたが、
やがてふと何かを思いついたかと思うと、いたずらな視線を播磨に向けた。
「この雑誌を見ていてふと気付いたんだが……この手のゲームに出てくるヒロインは
みな共通点があるとは思わないかい?」
「あん?共通点だと?」
絃子から手渡された雑誌に、ざっと目を通す播磨。勿論、心の中では共通点などどうでもいいことだったのだが
ここで邪険に扱うと、絃子にどんな目に遭わされるか……幼少の頃からの経験で痛いほど分かっていた播磨は
大人しく従うしかなかった。
「そうだ、わかるかい?」
「共通点、共通点ねえ……」
パラパラとページを繰る播磨。そしてふと何かに気付いたかのように、ぴたりと手が止まった。
「――髪が長い」
「他には?」
「そうだな……なんかやたら幼なじみが多いな。一つの信仰か、こりゃ」
「他にあるかい?」
「……たいした共通点じゃないが、いとこ同士ってのも多いな……ハッ!」
恐る恐る本から視線を上げる播磨。ゆっくりと視線を上げた先には、長い脚を組み、豊かな髪をかき上げる
絃子の姿が。心なしか、その目が笑ってるように見えるのは気のせいだろうか?
「では、ここで質問だ、拳児クン。私の髪は?」
「……な、長いです」
「うむ。では私とキミの関係は?」
「ぐ……せ、世間一般的には従姉弟同士かと……」
冷や汗だらだらの播磨。そして、それを楽しむかのような絃子の姿。
まさにヘビににらまれたカエルというところか。はたまたネコにもてあそばれるネズミの姿か。
(ぐぐ、絃子のヤツ! ゼッテー楽しんでやがる!! この状況を突破するには……こ、これだっ!)
「そ、そうだ! もう一つ共通点あったぜ! それは……『同い年が多い』ってことだ!
いやぁ、そういえばオレと絃子は随分年違うよな、いやぁ、残念残念、ハッハッハ……ハハ?」
龍頭蛇尾。まさしく今回の播磨の笑い声を例えるならそのようになるだろうか。
だが、それも仕方ないことなのかもしれない。そう、目の前で赤いオーラを発している絃子の姿を見てしまっては……
「……そうだな。確かに私はキミよりも『随分』年上だな……さしずめ、仲のいいお姉さんといったところか」
「ア、アノ、イトコサン? なんだか顔が笑ってないんですケド……って、なんでボクの服に手をかけるんですか!?」
「――なに、この手のゲームのお姉さんとしての役割を果たそうかと思ってね」
「ちょ、イトコサーン!! こ、こら! ボタンをはず……ムグッ!?」
・・・・・・
――翌日。矢神高校には、なぜかやたらやつれた播磨と、普段より一層肌がツヤツヤとした絃子がいたとか。
矢神高校は今日も平和だ。
以上です。ご静聴ありがとうございました( ´∀`)
微妙に15禁でスマソ(´・ω・`)
乙
もはやスクランSS界は超姉が制圧したな。
Tは誰だろう 妙ちゃんか東郷妹?
乙
潤った
Tは姐さんなのかな?
>>311 乙!
よい超姉をありがとう
Tは恐らく田中だろう
「妙」ちゃんだろ?w
>>311 GJ
絃子さんちょっとエロス
Tさんでこんなことをするのは姐さんしかいないかなw
ちょっと強引な展開だったね。
こういうのは向こうに投下すればいいんじゃないか?
向こうに投下してたら
IFスレに投下すれって言われるぞ
まあ、ほら、向こうは…ねえ?
いややはり超姉はいいものですな遅まきながらGJ!
確かに荒れてるけど向こうでこそ超姉が必要だとも思う。
生粋の超姉です。最近の超姉SS攻勢に嬉しいやら怖いやらでw
もちろん他のも読みたいですよ?
なんだかよくわらないものができたんですけど、投下させていただきます。
若干超姉かな?
それでは御目汚し失礼します。
「結構なお手前で」
「お粗末様でした」
垂れる八雲のこうべにあわせて、晶も返礼。空になったカップを手元に引き寄せると、トレーに載せた。
だが、まだ湯気のぼるカップがテーブルに一つ残されたまま。
作法や形式にこだわらない自由闊達な矢神高校茶道部といえど、マンガに夢中で目前の茶に手をつけようとしないのは、
いくらなんでも不調法というもの。
ここは部長の晶か、顧問の絃子から一言あってしかるべきなのだが、二人とも我関せずといった風だ。
「あの、サラ? お茶冷めちゃうよ」
見かねた八雲が声をかける。
「うむむむ」
「サラ?」
「ふむぅ」
「えっと………」
「にゃんと!」
「………」
しかし、サラはマンガを凝視したまま唸っているだけ。こういう時のサラは視野が爬虫類並みになる。
八雲は声をかけるのを諦め、新たにカモミールティを注いでくれた晶に恐縮した。
晶はサラのために温くなったカップをさげ、新しくカモミールティを淹れなおす。
茶の香気にあてられたのか、サラがようやくマンガから目をはなすと、晶の顔を見上げて言った。
「ありがとう、晶お姉ちゃん!」
「………」
「………」
「………」
八雲と絃子が固まるのはわかる。だが、あの高野晶までも凍りつかせたのだ、サラ・アディエマス恐るべし。
「え、引かないでくださいよー部長」
「ごめんなさい」
取り繕うようにお茶を空いたカップをさげる晶の手が微かに震えていた。
八雲も恐る恐るサラを見つめる。
「えっと………サラ?」
「なあに、八雲お姉ちゃん!」
「お、姉ちゃん………?」
首を傾げる八雲に構わず満面の笑みを浮かべていたサラだったが、さすがに自分以外、置いてけぼりの場の空気が伝わったのか、
自身の手にあったマンガを持ち出して説明し始めた。
「この少女漫画読んでたらね、こんなことが書いてあったの―――
――異性のパートナーを選ぶ際、自分が兄(又は姉)である場合は、相手は妹(又は弟)タイプを、
自分が弟(又は妹)である場合は、相手は兄(又は姉)タイプのパートナーを選べば、相性がよく長続きする――
「そう……なの?」
「そうなのー」
プーッと頬を膨らませるサラに八雲はどうしていいかわからず、とにかく刺激しないよう目を逸らした。
にも関わらずサラは続ける。
「要するに自分が妹だったら、お兄さんタイプの男の人と結ばれると相性がいいんだよ」
「ふーん………」
「あー、八雲信じてなーい」
八雲だって友人達が楽しんでいる血液型や星座占いといった類に異を唱えるほど無粋ではない。
だが心のどこかであくまでも参考程度であって妄信するものでもないと感じている。だから積極的同意には至らなかったわけで。
一人っ子はどうするんだろう、とか3人兄弟の真ん中は? とかの疑問は呈さない方がサラを怒らせないで済むのならしない。
「まあ一理あるかもね」
「そうですよね、部長」
だから驚いた。
冷たく一刀両断してもおかしくない高野晶が肯定的だということに。
「兄や姉は、昔から下の子の面倒を見てきたから、頼られたり甘えられたりすると居心地がいいの。逆に弟や妹は昔から甘え上手で
世話を焼かれるのに慣れてるから、兄や姉タイプの人相手だと安心するんじゃないかな」
「そっかー、そういわれると説得力ありますねー」
妄信してたんだサラ………
八雲の心配をよそに、一人合点がいった体で頷くサラは、きわめて明るい口調で言った。
「でもね? ほら私って孤児だったでしょ?」
(重っ!)×3
「あ、別にそんなに気を遣わないでくださいね。ちっとも寂しくありませんでしたから」
微妙な雰囲気になった部室内が、サラのそんな一言でパッと明るくなった。
「ただ、孤児だったから兄弟がいるって感覚がよくわからないの。だから『妹』の練習してみようかなって」
「れ、練習?」
「そう。妹になってお兄さんに甘えたりしたいなーって」
「ということは、サラはお兄さんタイプの男性にアプローチするの? もうそんな先輩がいたりとか」
「え〜それはまだわかりませんけど〜 とりあえず ですよ〜」
晶の問いにサラは頬を染めて恥ずかしげにモジモジしている。
「でもお兄さんに憧れる気持ちはありますよ。八雲は『妹』だから、その気持ちわかるよね!」
「えっと………そう、なのかな………」
過去にそんなことがあったかなあと、一生懸命思い返す八雲だったが、いまいちピンとこない。
元々、頼りになるとは言いづらいながらも支えとなる姉は初めからいたわけで、憧れるという感情が中々理解できない。
これが『姉』ではなく『兄』だとまた違って感じるのだろうか? 例えば兄のように頼れる男性を無意識に求めて――
「播磨君」
ドキッ!
八雲は晶の呟きにハッと目を見開き、やがて俯いた。動揺する様子は幸い皆に悟られることはなかったようだ。
「播磨先輩がどーしたんですか? 部長」
「播磨君も『兄』だと思ってね」
「あー、そういえば修治君のお兄さんですもんね。そっかー、よかったね八雲」
「な、なにが?………」
俯いてたはずなのに、サラはさらに下方から八雲の顔を覗き込んでくる。八雲は慌てて顔を逸らした。
かわいいなあ八雲は、とサラがニヤニヤ。窓の外を見ていた八雲の頬が染まる。
「でも………」
「?」
「なーんか、播磨先輩ってお兄さんって気がしませんよね」
「そうね。どちらかというと………『弟』?」
サラの疑問に同意した晶は、何故かサラではなく、我関せずを貫き通す茶道部の顧問へと、視線を向ける。
百の意味を込めた視線を。
もちろん、気づかない彼女ではない。わざとらしく咳払いをすると、新聞を広げて晶の視線から身を守る。
「不思議だなぁ。なんか年上のお姉さんがいるって感じ」
「例えるならこんな感じね――美人で引く手数多のくせに結婚もしないで、子供の頃からかわいがってた弟と離れたくなくて
一時期反抗期を経て疎遠になったりもしたけれどいざ頼られると捨てられた子犬を抱きかかえるように思わず向かい入れて
理由をつけてはそばを離れずに一緒に暮らしてる一回り年のはなれたお姉さんが、播磨君にはいるかもしれないわね」
「な、なんだか具体的ですね」
「オホン! 高野君、お茶おかわり」
たしなめるかのような絃子の冷たい口調にも、晶は平然と受け流す。
黙認するのも腹立たしい、こういうときは適当にあしらうに限ると、絃子はわざわざ晶へと話題を振った。
「そういえば高野君は長女だったよな、確か」
「ええ、妹が2人います」
「あー、部長もお姉さんって感じですもんね。なんだかんだで年下の男の子に慕われてますし」
「その“なんだかんだ”が気になるけど、年下の男の子が慕ってくれるのは悪い気はしないわね」
というよりも晶が年上の男に甘える光景が思い浮かばないだけだが。
何しろ同年代どころか年上の男でさえも子供扱いしかねない彼女だ。
そこまで思い至れば、晶と同じタイプの絃子ももしかして姉(長女)なのでは? とサラはさっきから様子のおかしい絃子へ問う。
「刑部先生もお姉さん、って感じですよね」
「あいにくと私は一人っ子だよ」
「えーそうなんですか。てっきり弟がいるものかと」
「例えればそう――幼い頃からあくまでも年下の親戚の子、とおもっていたのがいつの間にか背は追い越され、
生意気な口をきくようになり、ちょっとした仕種や言動に不意をつかれてどぎまぎし、それでも自分ばかりうろたえるのが悔しくて
精神的に優位に立とうと昔の甘酸っぱい思い出(=仮にファーストキスだとして何の問題があろうか)を持ち出しては――」
「もういいんじゃないか、高野君」
そろそろ絃子の堪忍袋の緒が切れそうである。そこらへんの絶妙な見極めは晶はお手の物。
しれっと口にチャックだ。
「でももし播磨先輩にそんなお姉さんがいたら『妹』じゃ太刀打ちできないのかなァ。八雲!」
「は、はい」
「播磨先輩の奥底に眠る『兄』細胞を目覚めさせるにはやっぱり『妹』パワーだよ!」
「え!?」
まだ続いてたの? 今まで彼岸のこと、と傍観していた八雲はサラの爆撃から逃れることなど不可能だと改めて知った。
それでも抵抗する。頼むから抵抗させてください。
「播磨先輩を『お兄ちゃん』って呼ぶの」
「サラ………ぜったい無理」
「練習練習。『播磨先輩、これからお兄ちゃんって呼んでいいですか?』とかを言うべきだよ」
「じゃ、じゃあサラは言える……の?」
「言えるよ! 『お兄ちゃん………サラのこと、好き?』………ほらね、八雲」
照れることなく満面の笑みで言ってのけるサラ。
ああ、そうだサラはこういう子だ。むしろこういうの大好きな子だ。カムヒアな子だ。
それに、そういうのは純粋な『妹』ではないような気もしてきたが、もう何をいっても無駄だろう、八雲は観念した。
むしろこれ以上被害が広がる前にさっさと終わらせるのが賢明だと。
「い、一回だけだから」
「うんうん」
「あと、高野先輩。カメラとめてください」
「………っち」
ビデオカメラをしぶしぶしまう晶。もっともボイスレコーダーは制服のポケットの中で元気よく起動しているだろうが。
この雰囲気では言わなければ収まりがつかないだろう、八雲は目を閉じて唇をきゅっと強く結んだ。
彼女もテンパッていたのだ、珍しく。だから責めることなどできるはずもない。
だがせめて目だけでも開けていれば、また違っていただろうに。
彼女は気づけなかった。茶道部に襲来しようとしていた彼の影に。彼の背負った文字に。
………だ………きだ………好きだ………好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだー! ヤクモーン!! 大好きだー!!
ガラガラ! 勢いよく開いた茶道部の扉。
もちろん入ってきたのは彼だった。
「たのもー! ボクの八雲君はここにいるかね!」
「………お、お兄ちゃん、八雲のこと、す、す、好き………?」
「………へ?」
「………え?」
「………」
「………は、花井せんぱっ………」
偶然にも八雲が向いていたのは出入り口の方角で。
花井がドアを開けたのと同時に、彼女の言葉を耳にした花井は立ち尽くした。
凍りついた2人の間の空間に割ってはいる晶。
花井のメガネの前で手をかざしたが、彼がそれに反応する気配がない。
「気絶してる。さすが八雲。『妹』パワー恐るべし」
「そ、それはちがっ………」
「うっひょー。これなら播磨先輩も い・ち・こ・ろ だね八雲!」
「だ、だからそれは………」
ああ、もうダメだ、なにもかも。
ハイタッチをかますサラと晶を見て、八雲は全てを諦めるしかなかった(了)
というわけでありがとうございました。ようわからんもんができた。
茶道部の面子はいいですな、ネタがわいてきます。
それでは
おまけ
絃子「ただいま」
播磨「あ、絃子か? オメー遅えじゃねえかよっ どんだけ待たせんだよ!」
絃子「すまない、ちょっと野暮用でな」
播磨「や、別に怒ってるわけじゃねえよ。ま、いいや。早くメシ作ってくれ。腹減った」
絃子「………」
播磨「絃子? どーしたい、モジモジして」
絃子「………う、うんわかった、今すぐ作るよ………お、お兄……ちゃん(カーッ)」
播磨「………」
絃子「………」
播磨「………」
絃子「………」
播磨「………」
絃子「………なんか言え」
播磨「………」
>>329 GJ
まさかあそこで花井がやってくるとはw
最後のおまけが個人的にめちゃくちゃツボりました
IFスレまとめにカウンターつけました
最近になって何故かスクラン各SSサイトが活発になってきまして、
それに触発されて何かしようと思い取りつけたんですが、
何分単なる思い付きですのでいらないという意見が多いようでしたら外します
>>329氏、報告のタイミング悪くてスミマセン
反対意見のあるかた以外はこの報告はスルーしてください
SSサイト活発になってるの?
全然そんなそぶりは見えないんだが
>>331 以前に比べれば全然活発になってきたろ
>>329 乙っす
期待してたより超姉分が少ないぜw
>>329 乙
妹持ちの俺には超姉分がもっと欲しかったwww
>>329 GJ!
話がきちんと落ちてて久々に笑った。
>>331 ここに投下してるサイト持ちだけと面倒くさくて更新やってね(;´Д`)
>>330 SSサイトってあれかな、SSまとめサイトの様なものかな?
S3’やエロパロのSS保管サイトみたいな
336 :
Classical名無しさん:07/06/25 17:53 ID:DDvHZQM2
>>335 エロパロでもWiki形式のまとめを製作中ぽいよ。
普通の保管だと1人放棄したら終わりだし、いいんじゃね
まぁ、その放棄したやつってのが(ry
善意でやってくれていたエロパロSSの保管の人には同情しか無いわ
去年から悲惨だったからなあそこの流れって
そりゃ見放してもしゃあないわ
あそこはもう一種の宗教スレになってるからな…
>>339 市ねよ、カレーさんに粘着して荒してるキチガイ野郎。
これ以上この話は無しな
蒸し返す奴もスルーで頼む
奇しくも340の疑問を341が解消してしまったようだな
>340
旗SSをずっと投下してるカレーという人がいて
それに粘着してる香具師がいる
その嵐が「カレーさん以外は書き込むな」「ここはカレーさん専用スレだ」
とか言ってほめ殺し荒らしをしてる。
>>339もその嵐なヨカン
まあ一番すげーのはその嵐を完璧にスルーしてるカレー氏だがw
その説明だと341のが嵐に見えるんだが
>>344 あの人のSSは嫌いじゃないけど、スクランSSでは無い気がするw
播磨や沢近って名前の別の人じゃねーの?って読んでるなぁ
遡っていって読んでみて初めのうちはそうでもなかったんだが、連載が続いてるうちに
変わっていっちゃたんだろうねぇ
カレー氏がただ淡々と投下する人ならいいんだろうが、敢えて煽るような書き込みもしてる品w
全レスはうぜぇと思ってるからあの人のはSS以外スルーだが
長期作品においては、キャラが別人格になってしまうのも仕方ないんじゃないか
多分スクランSSの中で最長だろうし
>>346 そこなんだよなぁ
長期SSを発表するなら(続き続きを書いてるうちに自然とそうなったんだろうけどね)
個別に自分のスレをしかるべき板にでも立てて連載すればいいし、
BlogでもHPでも立ち上げればいいじゃんって思うわけよ
あのスレ落ちても構わないだろ
あの雰囲気がダメで投下できない人もいるかもしれないし、いないなら落ちても問題ないしな
スレタイに則してたらそれでいいと思うけどね
ただでさえスクランスレは乱立してたんだし
連載当初はアソミコ使って荒らしてた奴をスルーして
役目を終えかけてたエロパロスレを復活させた人だから
エロパロ=カレー氏のSSと思ってる人も少なくなかったんじゃないかな
んで嵐が、今度はそこに目をつけたと
HP立ち上げてそっちで書けよっていうのなら
エロパロ板の意味がなくなっちまうぞw
>>349 あそこカレー氏の個人スレじゃんw
去年の初夏ごろから保管庫の人が見切りつけちゃったんでいくつSSが投下されてるか知らんけど
(それまではそこそこ色んな人が書いてたみたいだけどさ)
いや落ちても良いってのは、書きたい人がいればもう1回立て直せばいいじゃんって事ね
あの人のファンもアンチもまとめて引き取って欲しいわけよ
今のままのエロパロスレに意味あるのか?gdgdと同じ様なやり取りのレスが並んで、それこそスレの無駄使いだしな
訂正
去年の9月頭で更新停止だったわ
と、カレー氏って05年くらいから書いてんのね
投下したい人はいると思うが、カレーが発端での一連の流れについていけなくてやめた人もいると思う
全レスやめろとか煽るまねするなとか真面目な意見が出てもカレーはスルーしたし
誰かIF23以降の過去ログ持ってない?
つまり、エロパロスレの惨状は全てアソミコが悪いということで。
あそー
なんつって!ダハハハハ!
>>353 俺はないな
にくちゃんねるとか探しても見つからない?
>>357 そういうのじゃなくてもtxt形式、例えばメモ帳なりに保存されたのでいいんじゃないか?
359 :
353:07/07/01 00:00 ID:W/gSt7BY
>>362 貼られたときは見れてたんだが・・・完全に閉鎖したかな
前スレの過去に遡って云々の話見たかったが・・・
無理か。まとめも更新止まってるのかな?
止まってるんじゃない?
ずっと前にうpってた人のデータ持ってる人はいないの?
hoshu
俺もない
ちなみに俺は無い
>>367 多分、誰も持っていないんじゃないのか?
vipろだにうpされたやつだったら持ってる
?
1 名前:Classical名無しさん[sage] 投稿日:05/04/27(水) 23:56 ID:5vCk4kY6
週刊少年マガジンとマガジンSPECIALで連載中の「スクールランブル」は
:
:
957 名前:954[sage] 投稿日:05/06/09(木) 20:52 ID:ohxiULlE
>>956 無念! 裏読みし過ぎちまったようだぜぃ……
1 :Classical名無しさん:05/06/08 14:43 ID:iiNbusbY
週刊少年マガジンとマガジンSPECIALで連載中の「スクールランブル」は
:
:
1000 :Classical名無しさん:05/08/30 00:35 ID:a/SowFl.
1000
wiki更新久しぶりにきたと思ったらなぜ同じやつを・・・
しかもそれ1つだけて・・・
378 :
373:07/07/14 00:39 ID:ayuElwgA
380 :
373:07/07/14 01:34 ID:ayuElwgA
>>379 あり。
44249
3時で消しますのでお早めに。
>>380 乙
播磨のいない世界については知らない
382 :
Classical名無しさん:07/07/14 14:10 ID:Lhi9HADc
もう消えてる.....三時前なのに...
誰か再うpたのむorz
>>382 お前…3時って深夜の3時の事言ってたんだぜ
384 :
Classical名無しさん:07/07/14 14:42 ID:Lhi9HADc
俺惨めwwwwwwww
てかなんですぐ消すのかわからん
消す必要はあったのか?
消す消さないはUPした人しだいだろ
てかなんでそんなに必死なの?
>>386 うん、もちろんこっちはもらう身なんだから
文句言える立場じゃないのはわかってる。
そのうえで、嫌味じゃなくてちょっと気になったのよ。
後々「とれなかった」レスが続くのは目に見えてるのに
わざわざ手間かけて消すメリットてなんだろな、って。
著作権に問題ないzipにパスかけるのと同じような感じ。
388 :
Classical名無しさん:07/07/15 13:19 ID:S0XSV5ac
消す必要はないな
そもそもあげなきゃいいんだろ
保守
ここも廃れたな…。
うん。廃れたね〜
とでも言って欲しいのか?
だって本編がな〜いつからこうなったんだ
終盤だから仕方ないっしょ
ロワ終わったし職人さん戻ってこないかな
播磨「葉子さん、葉子さん」
葉子「拳児君、変な顔してどうしたの?」
播磨「最近絃子がひどくてよ、何とか仕返ししてーんだ。何かいい手はねーかなァ」
葉子「ぎゃふんと言わす作戦は?」
播磨「そいつァいいな。それ頼まあ」
葉子「絃子さんが帰ったら、玄関先でこう言うの――
播磨「帰って来たか、絃子のやろー」
ガチャリ
絃子「ただいまんこ」
播磨「いくらなんでもそりゃねーだろう」
テスト
綺麗なトリップだなw
いやね、昔ここで付けてたトリップを試そうと思ったらもう忘れちゃっててね……
アボガド
バナナと
トリップテスターなるものを使うといいよ
で 結局スクロワはスクラン二次SS界のためになったんだろうか
末期だと公言してるようなもんだろ>ロワ
結局人の作ったキャラでてめぇ勝手に遊ぶのが二次創作だとしても
殺し合いを書き出したら終わりだろ
どのくらいの人間が参加したか知らんがね
ロワ参加してた奴は頭イカレた奴か作品アンチ。これで事足りる
スクロワってナニ?
誰がそんな企画やってたの?
>>407 一時期このifスレでやろうとしてたみたいだけど、専スレ行けって事になった
好き嫌いが顕著に出るし、そもそもスクランでやる必要も無いしな
保守
wikiを4月ごろ編集していた者なんだが、
6月くらいに勝手に美琴と晶にされたことでやる気が…
ここはちょっとただでは譲れないとこだった。
でも、まぁそれはともかく、
もうちょっとみんなも手伝いませんか?IF22くらいまでは、分校にログあるし。
>>410 前の3行は日本語でおk
wikiの編集なんて自己満足で自主的にやるもんでしょw
『みんなで協力してSS保管しませんか』ではなくて『もうちょっとみんなも手伝いませんか?』
は正直無いわー
412 :
Classical名無しさん:07/08/05 14:51 ID:LNjnvzcQ
「少し…眠い…」
今日も屋上でマンガの打ち合わせの為に播磨を待っている八雲
が、待つだけだとどうしても暇だし天気も良好とくると絶好のお昼寝日和である
「少し…目を瞑るくらいなら…」
いくら八雲といえども
いや、八雲だからこそなのか、眠気の誘惑には勝てなかった
それから少しして屋上の扉が開かれ
「くっそぉ〜、お嬢のやつ
また俺をパシらせやがって〜
妹さんワリィ、遅くなっちまったな!」
そう口にしながら八雲へ近づいて行く播磨だが間近まで近づいてようやくある事に気付いた
「?…あっ、妹さん寝てんのか?
何か珍しいっつぅ〜か、以外だなぁ〜」
播磨からしてみれば塚本八雲とは完璧人間なのでこんなことですら“以外”に感じてしまう
だがしかし、こうゆうところで気が効く男(だが裏目にでやすい)播磨拳児
八雲が起きるまで隣でしばらく待つことにした
「しっかし、最近何かと面倒くせぇことばっかでこんなにのんびりした時間なんて久々だぜ」
そんなことをしみじみ考えているとそろそろ日が傾き初め、周りが暗くなり初めたので八雲を起こすことにした播磨が八雲に
「お〜い、妹さん起きてくれ〜」
と、語りがけながら肩に触れようとした瞬間
ブン!ドサ
>>412 何故こんなキリの悪い所でやめてしまうのかw
とりあえず乙
ブンは後方から走ってきたお嬢の膝が空を切る音
ドサはシャイニングウィザードを後頭部に喰らってダウンした播磨の倒れる音
かな?
まあ花井よろしく眠ったまま投げ飛ばされて、播磨が八雲に惚れてしまうってとこか
バイトの谷間――次のバイトが見つかるまでの間手ぶらになる訳にはいかないのだが
なかなか条件に合ったバイトという物は簡単に見つかるはずも無い。
そんな時にクラスメートである高野の奴が「急にバイトが入ったので」と教えてくれたのが
このバイトなわけだ。天使に見えたのはそれまで、今ではどう見ても悪魔です。本当に(ry
ほら、隣で香ばしい匂いをさせている花井の奴も頷いているだろ?
「さ、頼んだよ」
ドン、と背中を押されて店を出ると煩いほどの罵声が飛んできた。
様々な国の方がいらっしゃるようで、大体言いたい事をまとめると、
「ノーモアK〇C! ノーモア〇FC!」つまり、KF〇は出て行けということらしい。
昨今様々な動植物が保護されようとしているが、まさか鶏にまで対象になるとは。
「いくぞ、播磨。気が乗らないがバイト代が代だけにな」
「まったく色んなバイトをやってきたが、こんなのは始めてだぜ」
俺と花井のバイトというのは、店の前に陣取って抗議活動をしている野郎共に
堪忍袋の緒が切れた店長が考えた『嫌がらせには嫌がらせを』というものだ。
で、俺と花井の手の中には6ピース入りの箱が持たされていて、
これを活動家達の目の前で完食してやれというのだ。
おいおい、暴力団の事務所まで行って本物の実弾を試し撃ちするようなもんだろ!?
破格のバイト料に釣られた俺と花井は1週間も飽きもせずに抗議活動してる奴らの
横に立ってむしゃむしゃと食らう。鶏をただひたすら食らう。ハフッハフッ。揚げたてUMEEEEE!
道行く人達もウンザリするいちゃもんより美味そうに食う俺らに感化されたのか
どんどん店の中に入っている。お昼時のお腹は、食欲には勝てないということだ。
「おい、兄ちゃん達。なんや、度胸試しのつもりかいな?」
この後、抗議団体の武闘派が押し寄せてきて俺と花井が勇敢に戦ったのは別の話。
言える事は上手い話には簡単に乗るな。後、活動家なんてゴロには関わるな、という事だ。
誰が一番当たりくじを引いたか、言わなくても分かるだろ? 上手い事難を逃れた奴だよ。
>>416 想像して吹いたw
晶マジ悪魔w
つか播磨たちアホスwww
>>416 カプネタを使わずともSSは書ける好例ですな。お美事。
八雲と沢近と天満と美琴とイチさんと絃子とサラと晶と妙ちゃんと嵯峨野と隣子と冴子と榛名だったら
どの女の子の話が見たい?
とりあえず人気を参考に需要ありそうなキャラをあげてみたけど、名前あげ忘れたキャラもありで
榛名、もしくは稲葉
嵯峨野
>>419 とりあえずあなたが好きなのを書いて投下してよw
別にアンケートなんてせずにガンガン投下して構わないんだからさ
例えば、
>>419で挙げたキャラのSSを全部書いてもいいんだから
「拳児君、今日は私の誕生日なんだが」
「あ、ああ。し、知ってるぜ!?」
「ほーう、知ってるということはプレゼントには期待していいのかな?」
「…任せとけ」
「というわけなんだが、急なことで金もねえ。葉子さん、力を貸してくれ!」
「しょうがないなー、拳児君。じゃあ仕方ないから私のプレゼントを代わりにあげる」
「い、いいのか!?」
「私は今度、別のを渡すから」
「すまねえ、恩にきるぜ!」
「拳児君が渡すんだし、絃子さん喜ぶだろうなー、あの指輪」
>>423 乙
ただ短いし落ちが少しわかりにくいかとw
今日は妹さんに手伝ってもらって新しいキャラのイメージ固めをしているところだ。
妹さんはというと、談講社の担当さんから渡されたアニメや漫画の資料を頭に叩き込んでいる。
俺の漫画を手伝うようになってから結構な数の漫画を読むようになった妹さんはかなりの知識をつけていて、
下手をすると俺よりも詳しいかもしれない。
「んじゃよ、妹さん。まずは資料1から頼むぜ」
資料にはキャラの特徴を現した台詞や表情パターンが載っている。
それを妹さんに演じてもらう事でより簡単に要点を得ようという試みなのだ。
「はい。……い、いっぺん死んでみる?」
ちょっと不安気だが無表情になろうと頑張ってる妹さんをざっくりとデッサンして様子をメモする。
次の分を頼むと言いながらファイルに閉じていると、そのファイルを妹さんに奪われてしまった。
「や、やっぱり恥ずかしいです。その……止めにしませんか?」
「そうか? ま、妹さんがそう言うなら仕方ねぇや。止めるか」
「ありがとうございます」
妹さんはホッとしつつ自分の顔がデッサンされている用紙をファイルから抜いていた。
捨てるのかと思えば大事そうに自分の鞄に入れている。やっぱ妹さんは偉いな。物を大事にしているもんよ。
「で、どうする?」
「2人で資料を読み直していきましょう播磨さん――」
妹さんがそう言っていると俺の腹が鳴った。昼に飯を食ってないんだからしょうがねぇが、
妹さんは笑って「なにか作りましょうか」とか言ってくれる。そんなに笑わないでくれよ妹さん。
台所に立っているのは髪を軽くまとめてエプロン姿の妹さんだ。時折こちらを振り返っては
「もうすぐ出来ますから」と、はにかんでいる。すげぇ可愛い。妹さんを彼女にできる野郎は幸せな奴だよまったく。
妹さんはノリノリなのか「資料2のキャラの台詞を言ってみますね」と提案してきた。
そこらにあった広告の裏にペンを乗せ妹さんに合図を送る。
「おう、頼むぜ!」
「妹さんではなく八雲とお呼び下さい。ご主人様っ」
「ほう。誰がご主人様だって?」
俺の後ろには真冬のアラスカよりも低温なオーラを放っているこの家の家主が立っていた。
突然何を思ったのか妹さんは資料2のキャラの台詞にアレンジを加えてる。
「あの、もうお夕飯できましたから帰りますね。先生、播磨さん失礼しますっ」
妹さんが去ったリビングに絃子と2人、逃げられないようにガッチリと掴まれた肩が痛い。
「あのよ絃子……」
「拳児君の返答しだいでは残念な結末が待ってるよ」
カチャリと背中に当たる銃口が痛い。肩も痛い。何よりもこの部屋の空気が痛い。
俺は妹さんの作ってくれたまだ暖かい夕飯をいかにして暖かいまま胃にぶちこもうか、
ただそれだけを考えるしかなかった。
「ほう、八雲くんの夕飯。私が貰っていいんだよね?」
あーそうです、貰っていいんですよっ家主様っ!
途中までのおにぎりをものともしない超姉だw
>>426 GJ
おにぎりの関係は羨ましいほどいい感じだなw
もういっそくっついちゃえばいいのに
おにぎりには既成事実という最終兵器がある
それを言い出すと超姉成就が確定してしまいかねん
既成事実は最終手段だまずは外からジワジワと・・・
「さーさ、飲んで、飲んで」
たびたびお泊り会をしている私達は今回もいつもの様に集まっている。今回は私の家でお泊り会なの。
用意したカップは四つ。もちろん、私、晶ちゃん、愛理ちゃん、美コちゃんの分ね。
「今日集まってもらったのは他でもない、スタイル向上委員会の発足式の為なのよ!」
「……」
ち、沈黙と視線が痛い。でも、私、負けないっ!
「あのねぇ天満。どうしても今日でないと駄目って言うから泊り込みで集まってるのに、何言ってるのよ」
「あーっ、愛理ちゃんはいいよね。腰細くて、胸も有って。モテる者は持たざる者の気持ちなんて分からないのよ!」
ビシッっと愛理ちゃんの胸を指差すと、愛理ちゃんはキャッと胸を隠した。
私は知っている。愛理ちゃん、さり気なく胸が一センチ育っているのだ。
「で、美コちゃん!」
「あっ、あたしにも何かあるのか!?」
「美コちゃんのお母さんが言ってたけど、最近はちょっと遠くのお店まで行かないとブラが無いんだって?」
愛理ちゃん、晶ちゃんも流石に驚いたのか三人の視線が自然と美コちゃんの胸へと向かう。
たゆんたゆんとふっくらしたお餅みたいのが自己主張していて、美コちゃんが動くたびにちょっと遅れて動いている。
こりゃ男の子達が見入っちゃっても仕方ないですよねー。
「ですよねー」
思わず口に出ていたみたいで二人も同意してくれてた。美コちゃんはというと顔を真っ赤にして涙目である。
「こっ、こういう事だけならあたしは帰るからなっ。帰る、帰ってやる!」
「美琴さん、そう言わず落ち着いて。……で、本題に入りましょう天満」
「オッケー晶ちゃん。つまりね、ここら辺でもう一つ武器が欲しいの! 烏丸君がもっと私に興味を持ってくれるように」
「武器って……ああ、それでスタイル向上なんたらって事なの」
そこっ、脱力しないの! 身長、もちろん平均。顔、これといって特徴の無いくらいの普通顔。胸、腰、お尻、全部貧相。
これじゃ戦えないのよ、常識的に考えて。みんな他のマンガに行ったら主役級なのに、なんで私には特徴が無いのよ!
「とにかく、愛理ちゃんは普段どんな努力をしてるの?」と尋ねると、
「私? 前にも言ったようにカロリー管理にジム行ったり泳いだり。これくらい普通よ」とか言ってるの。
ちょっとそこに正座しなさい、何が普通のなのか説明せんかい。
私が思いっきり突っ込もうかと思ったら美コちゃんが苦笑いで愛理ちゃんを制した。流石美コちゃん。
「沢近の普通って一般人の普通じゃないんだから……」
「そういう美琴はどうなの? 何かやってるのかしら?」
「あたしは道場でトレーニングしてるなぁ。走ったり、準備運動をしっかりやったり、筋トレしたり」
「そうよね、胸の周りの筋トレとかも結構効果があるのよね。美琴はしっかり食べて運動してるから余計に」
「そうかなぁ。沢近も良いもの食べてジムで管理してもらってるんだろ? なるほどなー」
え、晶ちゃんと私は置いてけぼりですか? 晶ちゃんはいつ話題を振られてもいいように
幾つか用意していた話をしようと待っているが、愛理ちゃんと美コちゃんのトレーニング談義は尽きないようで、
それに飽き足らずブラの素材の話にまで話題が移っていった様だ。
胸の大きな女の子は、やれ視線が嫌だの、やれ肩が凝って仕方がないだの、やれキープが難しいだの、
私と晶ちゃんには関係の無い別次元の話をしている。
私は今でもまだ話に割って入っていこうとする晶ちゃんの肩に手を置くと静かに首を振った。
自分にダメージだけ与える委員会なんて無かった。そういうことにしよう。
「もう寝よっか」
私の呼びかけに集まってくれたために傷ついてしまった晶ちゃんの背中を擦ってあげつつ巨乳なんてと
リビングへ退避した私達の前に、風呂上りの八雲が現れる。我が妹ながらなんという美少女――そして豊かな胸。
その夜、私と晶ちゃんは何故か構ってくる巨乳三人を無視して声を殺して泣いた。一晩中泣いた。
だって、私達はこの家では少数派だという事に気が付いてしまったんだもん。
「胸なんて飾りだもん。肩凝らないから健康にいいんだもん」
私の呟きに晶ちゃんは「そうね」と笑ったのを良く覚えている。晶ちゃんと真の友情が生まれた気がした、そんな夜だった。
ワロタww
終わってたのか。でも、晶はスタイルいいよな。天満、姐さんにもいじられてるんじゃね?
天満A高野B沢近C周防Dってとこかな?
超姉軍団はどーなんだろ
>>436 その辺りは小ネタでの誇張みたいなもんだと思っていただけると嬉しいですw
電車内で女子高生が胸の話をしていたのが元ネタなんですが、あれは周りに対するセクハラになんないのかな?
なんか非常に憤りを覚えたのですがw 女性って自分達には凄く甘々だよなーってw
八雲ってスタイルいいのか・・・?
美琴>八雲>沢近
これが公式設定
それ、単純なオッパッピのでかさだろ
スタイルについて作中で言及されたことあったっけ?
刑部センセはモデルの話しのときあったな
そこら辺はキャラの属性に因るから大きく外れなければいいんじゃない?
大きく外れすぎたら今度はギャグにもなるし、小ネタに真剣にならんでも
S5とかにある、出だしだけあって続きがまったくこない作品って何なの?荒らし?
>>444 最近のでいえばどういうの?
よく分からんのだが
最近見てないけど結構書き手集まってる?
S3の話ね
集まるわけないわな
もう本当に一握りの人しかいないし
一応、まだ生きてる書き手ノシ
ここと自HPでしか発表しないけど
ノシ
ぶっちゃけ最近はリアルが忙しい
ノシ
S3で久々に投稿したら感想もらえて感動してるわww
投稿する時はドキドキだけど感想貰えると嬉しいよね
SSなんて脳汁垂れ流しでも良いんだからキャラの個別スレの住人達が
妄想でもなんでも(喧嘩しない程度の常識をもって)投下してくれて構わんのだけれどねw
でも長編ともなるとここに投下する人も多いだろうし
小ネタなんかだとキャラスレに投下してる人も結構いるみたいだけど
長編新作なんてここ数年ロワ以外見たことない
全盛期の作家達の今のスクランの感想を聞きたいな
元々長編なんてどのSSスレでも無いけどなぁ
1〜3レスくらいの長さが1回の投下分で、それが数回程度なら有るかも知れんけど
ハルヒのSS系とか、長門のスレとか賑わってるじゃん
そう思えば、2年前くらいのスクランSSって平気で10レス越えのSSが投下されてたな
連載ものっつーとクズリ氏のSSと分校保管庫にある奴しか知らんな
そして久々に分校に行ってカウント数が1000切ってることに吹いた
>>455 S3には長編が腐るほどあるよ
ただ今では見ることができないのがほとんどだけど
もう今のスクランには完全に失望した
かつてのような妄想がわいてくるようなことはなくなった
そういう元書き手はいないんだろうか
失望するってのはよほどの儲くらいじゃね
大抵の場合は他にもっと興味のあるマンガが出たり、興味が無くなったりって感じだろ
>>457 それこそ生産的な人と非生産的な人の差だろうな
一々文句を言うようになる前に離れるかグダグダするくらいなら書き続けるかってのと
何もしないで何も書かずにただ文句言うだけの人の差
絵板とかで絵を描くのはまぁ記号の配置の問題だから展開云々で離れようが離れまいが
描き慣れでなんとかなるかも知れんけど、SS書こうと思ったら手順が大変なんだよな
情報が多いというか伝えなきゃいけないのを逐一書かないと伝わらないからね
失望ってのは過剰な期待があったか、自分の思い通りの展開にならない苛立ちとか色々あるだろうが
SS書きってのは話し作る苦労がスクラン絵描きよりも分かるわけで、そういう感情を持つ人はいないと思う
単に興味が他に移ったかって話だろうな。読んでくれる人の多い所に投下したいもんよ、やっぱ
そんでも上手い絵を描こうと思ったらそれこそ何百枚も描かないといけないくらい
練習しないといけないが
SSは初挑戦でもそれなりの作品を書ける奴はいる
絵とSSを同列に語ってSSの大変なところだけをここで言うのは愚痴でしかないと思うけど
どっちも好きでなければ書かないし
>>461 そこらはセンスの問題じゃね? 絵も結局は絵心が有るか無いかだし
中学の時に運動部で漫画も読まない子がいたがデッサンも塗りも上手かったしなー
460が言いたいのは絵で表せる情報量と文章で示さないといけない情報量の差を言ってるんじゃ
絵では1カットでも文章に直せばある程度の文量と表現力が必要だしな
そんなのはどうでもいいから、何か書こうぜ
けど実際原作と違う展開って書いてて違和感のほうが大きくなって没にしちゃうんだよね
文化祭の頃は播磨の心変わりがあると思ってる人が多かったしわりと書けたもんだが
未だに揺らいでいないからね
目の前の据え膳を食わないんじゃなくて気づかない奴だからな
播磨も花井も
その辺はどうしても弄らないといけないな
465 :
Classical名無しさん:07/09/10 17:55 ID:On9v0/kA
脳内補完なんだから弄っても何でもいいじゃないか。
というか半年経ってもまだこのスレ残ってたんだな
1年組とか新要素出てきてもSSには反映されないよな
「ねぇ八雲、なにしてるの? クッキーを作ってる――んじゃないよねどう見ても」
「掃除当番お疲れ様、サラ。これは部長に頼まれて……」
親友の八雲は、茶道部の部室にでんと構える大きなテーブルにビニールシートを引いてはその上で麺を打っていた。
なんでも高野部長に言われてうどんを打っている、との事。なぜうどんなんて打ってるのか、と八雲に尋ねても
さぁと首を傾げるばかり。今日はうどんに良く合うお茶でも入手してきたのだろうか。
私はそんな事を思いつつも八雲の手助けをしなくてはと腕まくりをするのだった。
うどんを打っていたテーブルはビニールシートを外され、いつもの落ち着きを取り戻している。
『落ち着きを取り戻す』なんて物言いをしたのは、この部室が全然落ち着いていないからだ。
男子としても背が高くガッチリした体型の二人が細身の女子生徒の前で土下座をしている。
矢神高校は結構変な生徒が集まっている高校だが、長身かつ立派な体格の男子生徒を従えられるのはこの人だけだろう。
それはもちろん、我が部の部長である高野晶先輩だ。
「なにしたの、あの二人」
「姉さんが言っていたのは、部長のお昼をめちゃくちゃにしたって事」
「それは怒られても――」
私と八雲は口を合わせて「仕方ない」と目の前の二人をいないものとして扱う事にしたのだ。
とはいえ、しんとした部室。部長のまるで虫けらでも見るような蔑んだ視線に震え上がる二人をそうそう無視する事も出来ず、
とうとう八雲が口を開いてしまった。アイコンタクトで『触らぬ神に祟り無し』と送ったのだが、
『私の胃が持ちそうに無い』と返ってきてはお手上げするしかない。
「あの、部長……」
「八雲。あなたに頼んであったアレ、出してくれる?」
「アレ?」
「私が頼んだとおりに作ってくれたはずのアレよ」
「……あの、あんなもの誰が――」
八雲はびくびくと怯えつつも『アレ』を持ってくるのを拒もうとして部長の
『そう、あなたも食べてみるのね。私は止めたりしないから、お腹いっぱいどうぞ』
という眉をピクリと吊り上げるサインを受けて観念した。
「分かりました……」
何をされるのかたまったものではないと八雲がアレの準備に奥に消えると、
部長は土下座をしっぱなしだった二人に顔を上げるように靴を鳴らした。
「顔を上げなさい。反省……した?」
冷酷な無表情から一転、血の通った無表情に変わる。
一体どこが変わったのかと問われれば分かりませんとしか答えられないが、まぁその辺は雰囲気って事で一つどうか。
顔を上げた二人は女神でも見るような顔で部長の顔を拝む。これって一種の躾というか、調教というか。
深く突っ込めば宗教でも良くある手法だ。
「高野、僕が悪かった! 弁償させてもらう、いや、させてください!」
メガネ――じゃなかった、花井先輩は普段の部長嫌いもなんのその、
反省しきりといった顔で部長の足にしがみつきそうな勢いだ。
一方、播磨先輩は「すまねぇ、すまねぇ」と心の底から声を絞り出すように反省している。
部長は二人に席につくよう促すと、八雲が消えていった部室の奥へと消えていく。
「一体、何をしたんです? 八雲から大体の話は聞きましたけど……」
「サラ君。昼休みに僕と播磨がちょっと喧嘩というか言い争いをしていてな、その時に僕が高野の鞄に尻餅をついてしまったのだよ。
播磨が机に手を着いた時に落としてしまったのを忘れていてね。それで――」
「私のお昼ご飯が潰れてしまったという訳よ。久々に食べようと思ったメンチカツサンド、ペッタンコになってしまってね」
奥の方から八雲を連れた部長が帰ってきた。部長と八雲の手が持っているお盆には一つずつどんぶりが乗っかっている。
ほんのりと漂うお出汁の香りが食欲をそそるうどんが二つ、テーブルの上にでんと置かれた。
困惑する二人をよそに、部長は上座の椅子に座ると二人に食べるよう促す。
「あなた達二人も愛理や天満や美琴さんに怒られていて、お昼食べていなかったでしょう? 八雲に頼んで打ってもらったのよ」
「やっ、八雲君のお手製うどん!?」
花井先輩が大きく鼻を膨らませて八雲に飛び掛らんばかりに興奮する横で、播磨先輩はうどんを打てる女子高生に感心している。
私も八雲がうどんを打てるなんて思ってもみなかったが、頼めば何でも作ってくれるのだろうか。
今度、教会の子供達のおやつでも作ってもらおう。
「あ、一味唐辛子もあるの。もし良ければ使って」
部長の目がキラリと光る。あれはなにか面白い事が起こっている時の目だ。
お腹が空いているのか一味唐辛子をパッパと振りかけてはうどんを勢い良くかっこんでいく二人。
そして――
「ぐぬぉおおぉおおおおおっ!」
「ぶばっ!」
播磨先輩と花井先輩は鼻からうどんを出し咳き込んだ。ほのかに香る出汁の匂いの中に、ミントの香り。ま、まさかっ。
「……だから止めようとしたのに」
八雲は自嘲気味に笑い、うどん粉の中にフリスクを砕いたものを入れたのよと告白した。いや、告られても……。
「まだまだよ、サラ。その一味は超激辛でお馴染み、ハバネロなのよ!」
「なっ、なんだってー!?」
播磨先輩と花井先輩の顔が見る見るうちに赤くなっていく。
けれど、フリスクの清涼感でお口の中はスースーしているはずだ。
お昼のメンチカツサンドは、きっと部長がルンルン気分で選んだものに違いない。
女の子が食べるにしては可愛げは無いが、部長といえど人の子、秘密のベールに隠された下には
きっと乙女チックな姿が隠されているに違いないのである!
「でも、なんでうどんなんですか?」
率直な疑問。部長なら他にも色々と殺りようがあったはずだ。
それなのに、フリスクの清涼感とハバネロの灼熱地獄のダブルパンチうどんなのは何故なのか、
そんな事を尋ねた私に部長はただ八雲の手を見るばかり。
「もういいわ。サラ、八雲、帰っていいわ。播磨君と花井はそのうどんを食べて帰ってね」
二人のふざけるなという声にならない声など何処吹く風な部長は、私と八雲を部室の外に出すとドアに鍵をかけた。
ガチャリというその音はまるで地獄の門に閂が通されたような、何もかもに諦めのつくような感覚を与えてくれる。
ふと、部長の視線の先にあった八雲の手を見てみてハッと気がついた。
手打ち――そう、あれは手打ちうどんなのだ。
だから近所のスーパーに生麺を買いに行かせずに手で打たせたのだ。
これを八雲に伝えると、八雲も気がついたのか手をポンと合わせて「手打ち? あっ、手打ち」と納得する。
八雲と茶道部の中で手打ちうどんを食べている播磨・花井の両先輩に合掌すると足早に岐路に着いた。
堅気の人間が突っ込んではいけない世界もあるのもだと、
普通の女子高生みたいに八雲と二人甘いものでも食べて行こうと思った。
小ネタにしては長くなってしまった、スマナイorz
>>457 失望してる人はスクラン関係のスレなんて見ないだろうし、その質問自体に意味がないよね
スクラン読者がかなり減っているのは確かだけど、それは流行が過ぎ去って他に行ってるんだろうし
栄枯盛衰、小林センセがここで終わるのかもう一回流行を作るのかどっちなんだろうかね
とりあえず、言い訳じみた断り。
・筆者は10巻前後までしか単行本持ってません。
・最近は本誌でもたまにしか読んでない。
なので、本編と設定がズレていても許してください。orz
では本編。
高野晶は楽しい事が好きである。
かといって自分から何かをする、というスタンスではない。
スタンスを一言で言えば観察者。
起こる事象を全て見据え、それの行く末にちょっと(たまにちょっとではない時もあるが)助言をしたり、
引っ掻き回して展開を楽しむ。
ある意味、一番得なスタンスと言えるだろう。
被害を受けず(まぁたまに親友の暴走・勘違い等で予想外な被害を被る時もあるが)、楽しいドタバタを眺めれる。
例えるならば出来のいいコメディを延々と見続ける…そんなところだろうか。
この特等席を維持するためならば、多少の労力ならば苦労にならない。
この席を結末まで維持し続けようといつの日か固く自分に誓った。
(でも、そうも言ってられなくなってきたわね…。)
ふと放課後の茶道部部室にて読むフリをしている小説から顔を上げて思う。
後輩たちも、顧問も今日はいない一人の、静寂の世界。
これまで様々なドタバタがあり、それに介入したり、眺めるだけであったり。
見続けてきたがそろそろ佳境に入ってきた感がある。
思い起こせばツンデレお嬢様、後輩、同居人でもある従姉妹、元同居人の保険医…。
彼、播磨の素の優しい部分。そして良くも悪しくも真っ直ぐすぎる部分…悪く言えばバカなのだが。
様々な勘違いからにしても芽生えてしまった恋心は彼女達を失踪させた。
(まぁ暴走する時も多々あるけど…それはそれで面白かったし。)
スッと目を細めて回想する。
晶としてはいい思い出だし、楽しかったとやはり再確認。
でもまぁ、彼女たちの気持ちも理解できなくもない。
彼女たちは容姿面で恵まれすぎているほど恵まれている女性たちだ。
多感な高校生なら特にそうだが下心なく近づける男はそうそういるはずもあるまい。
さらに言うならば播磨は優しい。
晶や八雲が知っている動物事件。
必死に動物たちを守ろうと奔走し、動物たちと心通わせ、別れに涙するほど純粋。
どう考えても打算や妥協とは無縁であり、どこにでもいる男ではない。
(そう、例えるなら『旅人』ね。平凡という枠、この世界から零れ落ちそうな異邦人。
だからこそその特異性が眩しい…だけじゃないけど。)
一人ごちながら遠野晶は分析する。
彼女は観察者だからこそ、冷静な分析も可能である。
冷静なのかどうかは彼女にもわからないが。
そして先ほど淹れた紅茶を口に運ぶが、まだ少し熱い。
そうやって放課後のゆったりした時間が進んでゆく。
耳に当てられたイヤホンからどこかで起こっているドタバタが聞こえる。
そう、彼女にとってはこの騒動は極めて楽しいものであり、それを見逃さないためには耳や目を学校等様々な場所に
配置するのも労ではないのである。
彼女を弁護するならば。
たまたま器用な手先で作ってしまった学ランのボタン型の、トランシーバー。
まぁトランシーバーと言ってもスピーカーが着いてないので音を晶側に送ることしかできないのだが、そのトランシーバーが
偶然播磨の学ランのボタンに、あくまでも偶然混ざってしまい、それから出た電波をたまたま受信してしまっただけだ。
まさかこのクールビューティ、高野晶が盗聴などするはずもない。
あくまでも、偶然。言い換えるなら運命の悪戯、である。
「…その…伊織が寂しがってるので…よかったら…」
「お、妹さん。いいぜ、最近アイツとも会ってなかっ」
「待ちなさいっ!ヒゲ、今日こそ買い物に付き合いなさい!」
(愛理、そんな呼び方や言い方じゃ好意に気づいてもらうのは中々難しいわよ?)
どうやら勇気を出して誘った八雲であったが、そこにツンデレ…ならぬ愛理が乱入したようだ。
場所的には…音から判断して下駄箱周辺だろうか。
「ふ、ちょっと待ちたまえ。播磨君、君はただでさえ出席日数が足りないんだ。補講でも受けた方がいいと思うぞ?」
そこに従姉妹の絃子乱入。
続く会話を聞く限りどうやら放課後の二人きりの補講と企んでいるようである。
(先生……。さすがに職権乱用じゃないかな…。)
何故か一瞬腰を浮かしかけてしまうが、ぬるくなってしまった紅茶のカップを手に取りながらふと思う。
何度も読んで内容も覚えてしまった小説を鞄の中にしまいながら晶はただ耳を澄まして座っていた。
彼女たちはヒートアップし、やれいついつに一緒に出かけただのと自分の優位性をアピールし続ける。
それを聞くたびに晶の美しい眉が時々ピクリと動いたり、唇の端が動いたりする…ように見えるのは気のせいだろうか。
ちなみにこれだけのアピールを衆人環視の下でするのだ。
学校内の人間はこの四角…いや、実際はもっと多い多角関係を知らない者はない。
まぁ相関図にした場合、播磨に矢印が向きすぎてる気もしないでもないが。
『知らない者はない』と言ってしまったが例外はある。
一番の当事者。播磨拳児、ただ一人。
それを思うと彼女、晶の唇から複雑な溜息が出る。
ちなみに蛇足ではあるが、数多くの男子生徒の恨みを買ってはいるが様々な面白い状況にはなってはいるが『矢神の魔王』の
名は伊達ではなく、何かをしようという生徒も少ない。
一部の暴走した連中は直接本人に叩きのめされれば幸いであるが、彼に被害に行く前に彼を想う女性陣に死んだ方がマシと
言えるダメージを受けることになる。
肉体的にも、精神的にも。
閑話休題。
(…これだけ鈍感だと…空回りっぷりが面白くはあるのだけど…困ったものね。)
確かに困る。
この騒動の展開が全く読めなくなるのもそうだが…行動が読めなかったりもする。
まぁ彼女にとってはそれだけではないのだが。
ふと彼女が物思いに耽っている間にとうとう三人ともの手持ちのカードは尽きたようだ。
疲労感もあるのか三人とも荒い呼吸をする。
次の瞬間、三人の声がハモる。
「「「どっち!!」」」
「うぇっ!?」
どうやら声からして播磨は逃げようとしてたか、現実逃避をしていたようだ。
この場合の「どっち」とは誰を選ぶのか、ということのようだ。
それを聞いて、しばらくの間が空く。
(八雲か…愛理か…刑部先生か…それともそれ以外の誰かか…。)
その間に晶は歯を食いしばるかのように、きつく口を閉じる。
しかし、何かを期待しているのかうっすらと白磁のような肌に朱が走る。
「あの…その、なんだ…」
「「「どっち!!!!」」」
恐らく播磨が三人に詰め寄られているのだろう、声がやけに大きくなった。
口ごもる中、ほんの少しの時間の間に播磨も様々な思考をしたのだろう。
決意したらしく、やけに生唾を飲み込む音がイヤホンが大きく響く。
「俺は………」
「「「俺は…?」」」
そこにいる三人も期待がこもっているせいか先ほどまでの詰問口調ではなく、期待と不安の色が伺える。
つい、緊張がうつったのか晶の手もきゅっと強く握られる。
(貴方は…誰を選ぶの、播磨君?)
「俺は………………あっち!!!!」
「「「「はいっ!?」」」」
しばらくの間の後。叫ぶように播磨が言ったと同時にバタバタと駆け抜ける音、そして風を切る音がイヤホンから聞こえる。
声が四つだったのは謎だ。
ほんの数秒、そう数秒だが播磨からしたら距離を稼ぐのに十分な時間。
その貴重な数秒をイヤホン先の彼女たちはあまりに予想外な行動・発言に放心してしまったのだ。
「…あ、は、播磨さんっ!」
「あ、あんのヒゲーッ!!」
「に、逃げたね…?この、私から逃げ切れるとでも…?」
別の音源から取り残された三人の声が聞こえる。
そして即座に彼を追いかけて走り出す足音も。
その瞬間。
ふ…ふふふっ。
不意に晶以外誰もいない茶道部部室から笑い声が漏れる。
(まったく…やってくれるわね、播磨君。)
こうやって笑うのを彼女の親友たちが見たらどう思うだろうか。
そんな事は関係ない、彼女にはこの瞬間が、騒動が楽しくてたまらないのだ。
「さて、支度しようかしらね?」
軽く笑いながら立ち上がると耳を澄ませ、騒動の中心が逃げ回っているルートを分析。
そして先回りをして彼にそっと救いの手を差し伸べるのだ。
(あわよくば…。ま、そこまでいかなくても…。)
クールビューティ遠野晶。
彼女の冷静『だった』頭脳は今、ほんのりと微熱を帯びながら高速回転をしている。
理想的な場所だった『特等席』から、『騒動』のど真ん中へ飛び込む。
(けど…悪くない気分ね。)
またクスッと薄く笑いながら一人ごち、ポットの湯を捨てて時間を少しでも確保できるように準備。
イヤホンを耳から外し、適度に播磨が彼女たちから逃げれているのを確認。
「悪いけど…私、かなり負けず嫌いだからね?」
ライバルである親友や後輩、また教師等に聞こえないだろうが呼びかけると茶道部のドアを開ける。
まだ『お祭り』は終わっていない。『ゲーム』セットの笛は鳴ってはいないのだ。
「あら、播磨君。大変ね…逃亡先、欲しくない?」
終われ。
>>470 乙です
姐さんパワーの片鱗を見た気がするw
>>478 乙です
久々にラブコメっぱいドタバタ展開を見たよw
それにしても2連続で姐さんが活躍するとは……日本ハジマタ
最近スクランSSにハマったものの、過疎化しててイラついたので連続投稿してみる。
ついカッとなってやった、後悔はしていない。
ちなみに
>>478の続き。
短いよ、俺…_/ ̄|○
「お、おい…高野…バレねぇか?」
結局逃亡先は茶道部部室だったりする。
芸がないと言うなかれ。
「大丈夫よ…灯台下暗しって言うし。」
(今日はバイトと先生や八雲にも伝えてる…よって彼女たちの認識ではココは鍵が閉まって入れない場所。
間違っても探しに来ることはないわ。)
と、心で思っても口に出さない晶。
播磨は口に出された言葉だけではあまり安心できないのかオドオドといった様子で周囲を気にかける。
「で、でもなぁ…。」
人一倍大きな身体を縮こませながら不安がる様子はアンバランスでどこか愛嬌があり。
それを見て部室のドアの鍵を播磨に気づかれないようにそっと閉めた晶は薄く笑う。
(本当に…面白くて、可愛いヒト。)
ヒトが『人』なのか、『男』なのか、『動物』なのかでまた微妙に異なるがおいておこう。
薄い微笑を浮かべながら晶が部室の奥へと入るとすっと先に入り。
「ゆっくりしていくといいわ…そんな所にいたら外からも見えるわよ?」
「お、おう…お邪魔します。」
播磨は促されるままに部室の奥へと入って腰を落ち着ける。
そのことによって緊張の糸が切れたのか、播磨の口からは大きな溜息が漏れ。
そのまま緩んだ緊張からか笑顔がこぼれる。
播磨を促してからお湯を沸かす準備に向かった晶に話しかける。
「いやー…助かったぜ、サンキュな。」
「いいのよ…楽しませてもらってるもの。」
「ん?何が?…ああ、そりゃお前ら外野からしたらそうかもしれねぇけどよ…こっちは大変なんだぜ?」
(…ああ、何を言ってるかと思えば。ま…今はそれでいいわ、今は。)
晶からしたら今の一番の楽しみは『播磨と過ごす時間』であり、『ドタバタの観察』は二番目でしかない。
どちらも楽しいのは否定しないが。
しかし、播磨からしたら不良の自分なんかと一緒にいて楽しいと思ってもらえるとは思えず。
意外に播磨の内面は繊細であり、劣等感がある。
「わかってるわ…今お茶を準備するからゆっくりしていって?」
「お、ワリィワリィ。丁度喉が渇いてたんだわ。」
まだ校舎のどこかからはバタバタとした足音は聞こえる…というか捜索の足音が増えてる気がしないでもない。
しかし、晶の策略が上手くいってか播磨が足音に怯えるだけで徒労に終わった。
夕暮れによって次第に校舎や部室の中も赤く染まっていく。
その間に静かに湯が沸き、播磨の好みに合わせて緑茶が淹れられる。
「どうぞ。」
「お、サンキュ…あちち…。」
早速飲もうとしてか口をつければ淹れたてだけに熱さに口を離し、静かに息を吹きかけて冷まそうとする。
それを微笑とともに静かに飲む晶。
穏やかな時間が茶道部部室の中に漂うが、不意に播磨が真剣に晶を見つめる。
その視線はいつもの視線と異なり、晶を真っ直ぐ見据える。
(え…なに…。顔が…熱い…嘘、静まってっ…)
真剣な眼差しに射抜かれて心拍数がどうにもおかしい。
内心パニックに陥りつつも視線から目が離せない。
ただ惜しむらくはサングラス越しであったことだろう。
いや、いつもどおりに振舞おうとしている晶からしたら感謝していいのか微妙だろうが。
「高野…」
「ひゃ、ひゃいっ!?」
緊張のあまり晶の背筋がビクンッと伸び、間の抜けた声を出してしまうが鈍感な播磨では『変だな?』程度にしか思えない。
しかし、播磨の視線は真っ直ぐ見据えたままで晶からしたら無意識の期待もあって心臓がどうにかなりそうだ。
乙女は色々と大変。
「高野…マジでありがとな…。」
播磨は不意にそうとだけ言うと窓の外に視線をやる。
その先には赤く染まった校舎がある。
「俺ってよ…こんな不良じゃねぇか?それがこうやって怖がらず、普通に接してくれて…こうやって匿ってくれて。
いや、それだけじゃねぇな。色々サポートみたいなこともしてもらったし…今こうして普通にクラスに受け入れて
もらえたのもお前やてん…塚本、周防、お嬢…色んなヤツらのおかげだと思うんだわ。」
その視線は校舎ではなく、これまでの高校生活を思い起こして見つめているか。
静かな声音のまま言ってしまうと、また視線を晶に戻す。
「だから…サンキュ。」
「…いいのよ。」
(本当に…この『ヒト』は…。)
どこかで残念に思う気持ちはあるものの、播磨の内面の深い場所からの言葉に落ち着きを取り戻す。
照れくさいのか播磨は湯飲みを持ったまま窓の外を見つめる。
(残念といえば残念だけど…こんな事を言ってもらえるってことは、信頼してくれてる証かしら?)
乙女の内面は嬉しさと暖かさで一杯で。
しかし、同時に悪戯心が起きてしまうのが高野晶。
「播磨君」
「ん…ま、待てっ!!」
「そういう事はサングラスを外して言うべきよ?」
慌ててしまうが流石に播磨も恩人に強くは当たれず、機先を制された事もあってサングラスを奪われる。
久々に太陽の光を遮るレンズがないせいか、アップで写る、夕焼けの光に照らされた、晶の笑顔は…。
しかも、サングラスを奪うために多少前のめりになって近づいている晶の微笑は…。
「…綺麗だ…」
「はい!?」
つい口に出してしまう男、播磨拳児。
ある意味やってしまった、ある意味グッジョブ。
(な、な、なっ!?き、綺麗って…わ、わ、わ、わ、あああああ!?)
流石に晶。播磨と違って口に出す事はないが内面はパニック。
出来る事ならば…顔を両手で覆い、ゴロゴロと転げ回りつつ言葉にならない絶叫をしたい…かどうかは定かではない。
とにかく完全に硬直してしまった晶。
そして間近にある、わずかに紅潮した晶の顔に本能からか、吸い寄せられるように顔を近づけてしまう播磨。
しだいに二人の距離は縮まってゆき…重なる事は、運命の女神か男神か知らないがそういう存在は許さなかった。
「先輩…?」
「ほぉ…私たちから逃げて、君は何をしているのかね?」
「あ〜き〜ら〜ぁぁぁ〜〜?」
地の底から響くような、声。
しかし満面の、慈愛すら感じとれそうな気がしないでもないステキな笑顔。
そのギャップに…魂まで凍りつきそうな気がするのはおかしい事だろうか。
「こっち!!」
「何!?」
パニックから早々に復帰した晶。
彼女は謎多き女性ながらも、わかっていること。
騒動に強く、いざという時に頼りになる。
彼女は脳内で不利を把握。
よって戦術的撤退を試みることにした。
一人で逃げるのもアリかもしれないが、つい播磨の手を引いてしまったのは先ほどの時間への未練だろうか。
何はともあれ、彼女は部室から飛び出した。
播磨の手と一緒に自分の鞄を手に取り。
閉まっている茶道部の窓ガラスに体ごとぶつかって、蹴破り。
校舎の外へ。
(まったく…罪作りなヒト。)
今思い起こせばスゴイ事になりかかっていた。
しかし、それはそれで残念だがこの『騒動』の終わりを回避出来たという面ではよかったかもしれない。
色々乙女の逡巡はあったものの、ダッシュで駆け巡る彼女の足は鈍る事はない。
まぁ手を引いている男や、その後ろの女性たちからの叫びも聞こえるが…とりあえず今は問題ない。
(これからも…よろしくね?)
走りだした彼女は止まらない。
暴走なのか、疾走なのかは今の彼女には問題ない。
だって。
(こんなにも楽しいのだから。)
だから終われって。
>>488 超〜〜〜〜GJ!!
こういう感じのSS久し振りだ。楽しかった
まとめWikiのIF23登録完了しました。
>>488 GJ
こういうノリのssはご無沙汰だったんで素直に楽しかった
続きも期待!
神降臨GJ!長編いいね♪
494 :
Classical名無しさん:07/09/16 22:18 ID:R5U6Ww2o
なんとなく、12巻以来買ってなかったスクランの18巻を買ってしまった。
……個人的にえらく面白かった。
そいでもって、懐かしくなって検索かけてみたら、まだIFスレがあって少し吹いた。
一番盛り上がっていた頃に比べちゃいかんと思うものの、これだけまったりしてるなら、
また戻ってくるのもいいかなと思ったりした、そんな日のこと。
っつーか、つむぎとかサラとか、ほのぼのまったりで昔推してたキャラが忘れ去られて
なかったのが素で嬉しかった、とかなんとか。
とりあえず、抜けてる13〜17巻でも買ってくるか……
久々でいきなりsage忘れてどうする俺。
すまん、吊ってくる_| ̄|○
>>494 そういや俺は盛り上がっていた頃から単行本派だったから、派閥争いとかなんのそのだったなぁ
そもそもが話題についていけないので加わりようも無いし理解も出来ないというw
今だって面白くない訳じゃ無いんだが、流行ってた時期を過したファンにとっては面白くは無いんだろうね
>>496 流行ってた時期からずっといるけど今でも十分面白いと思うよ
話が進めば面白さのベクトルが違ってくる以上どちらが面白いかなんて考えるのはそもそも野暮だしね
「今は」面白いかもしれないけど、
バスケやクリスマス、修学旅行でどんどん淘汰されていって
持ち直してくるものの既に意欲はなくなっていた人が多いんじゃないかな
もう書いてないけどスクラン読んでるSS書きはいると思う
>>497 いやそうじゃなくて、放れていった人(マガジンを読んでいてもスクランをスルーする人)の事ね
人間って流行ってるってだけで見てしまうものだし、それこそ最盛期には分校に1万人近く毎日来てたしね
それに、ROMも含めてこういうSSのスレまで来る人はまだまだファンだからどこか面白いと感じてるわけだ
流行ってても面白く感じなかったらスルーすると思う。
人が減ったのは、面白いと感じる人が減ってるからだろうし。
正直、俺もスルーしてる。
ここにはたまに来るんだけどね。
未だに離れてなくて面白いと思ってる人がスクランをここまでグダグダにした元凶かもね
つまらないとばっさり切り捨てておけば引き伸ばされることなく15巻くらいで円満に終わってただろうに
>>498 クリスマスは好きだけどな
後半戦で唯一人気なシナリオでもあるし
503 :
488:07/09/17 15:10 ID:WTa/aefY
結構好評みたいで安堵してるんだが…。
>>492、
>>493は…このドタバタ設定で他キャラでも書けという流れ?
いや、要望があるなら書いてもいいんだが…。
アレじゃ口が裂けても長編なんて言えないし。
書くとしたら超姐、鉛筆、保険医、美術、旗?
…まぁ望まれてないなら上げないので、ROMって様子を見ますー。
ドタバタだとどうしてもキャラが違って見えるから
一〜二つに絞ったほうがいいとおもう
派閥色出すなら一つに絞るべきだな
どっかのスクイズになる可能性がなきにしもあらず
506 :
488:07/09/17 19:43 ID:WTa/aefY
フムフム…ならば前回は姐さんモノだったから、今回は他キャラ物と必然的に…なるのか?
それか姐さんシリーズの続投か…だなぁ。
まぁ軽く構想練っておくんでまだ作家は存命中ということで気長に待っててくれー。
_、_
( ,_ノ` ) n
 ̄ \ ( E)
まあ、この程度しか残っていない、とも言えるが……。
「うーっす」
「あのな拳児君、何度言ったら分かるのかな。帰ってきたらただいまだろう」
「へいへい、ただいま帰りましたよ、っと」
「なあ、君もいい歳なんだから、こういうことはあまり言いたくないんだがね、
せめて帰ってくるかこないかの連絡くらい出来ないのかな」
「あん? あのな絃子、これでも俺はいろいろと忙しいんだ。んなもんどうなる
かなんざ、その時にならなきゃ分かんねぇよ」
「……本気で分かっていないようだね。だから私は連絡の一つも寄越せと言って
るんだ。君は君の都合で好きにしていればいいんだろうが、待っている方の身
にもなってみろ」
「誰も待ってろなんて言ってねぇだろ。鍵でもなんでも勝手にかけちまえよ、
別に閉め出されたからって困りゃしねぇからな」
「フン、それはそうだろうな。一日二日どころか、一月野ざらしにしたところで、
君ならきっと平気だろうさ。だがね、問題はそんなことじゃない」
「じゃあなんなんだよ」
「少しは大人の事情というやつも察して欲しい、ということだよ。これでも私は
君の保護者だ。万に一つも大事になってみろ、ご両親や修治君にどんな顔を
しろというんだ」
「……」
「私は君を心配しているんだよ」
「絃子、俺は……ってテメェ、酔ってるだろ!?」
「うん? 何を言ってるんだね、君は」
「じゃあなんだよこの缶ビールの山は!」
「どこかの誰かさんが散々心労をかけてくれるものでね。だがこれくらいでは
まだまだ」
「いやどう見てもおかしいだろ!? ったく、妙なこと言いやがると思ったら……」
「そもそもだな、昔から君は――」
「そこで昔の話は関係ねぇだろっ!」
「…………」
「……」
もう終わりか
「……さん。絃子さんってば」
――そこで、自分の名を呼ぶ声に絃子は目を覚ました。ぼやけた視界に入って
来るのは、あの日とよく似た光景、そしてあの日とは違う相手――笹倉葉子の顔。
「葉子、か」
「『葉子、か』じゃないですよ、もう。先に一人で潰れちゃうんですから」
はい、と差し出されたコップの水を一口含んでから、たった今見た夢の内容を
思い返す絃子。それは、この部屋にまだ同居人がいた頃の、騒がしく、にぎやか
な日常。珍しく酔いの回った頭で、言わなくてもいいことを口にしてしまった
ことを思い出し、自然やれやれと溜息が出る。
「にしても絃子さん、お酒弱くなりました?」
「かもな。どうも君に言われると、歳だと指摘されている気分だけどね」
「もう、そんな意味じゃありません」
軽口で返した絃子に、くすりと葉子も微笑む。そして、わずかに躊躇ってから、
言葉を続ける。
「なんとなく変わりましたよね、絃子さん。拳児君が出て行ってから」
「そうかな。自分じゃそこまで意識してるつもりも……」
「ホントにそう思ってます?」
誤魔化そうとした台詞を遮られ、やはり彼女には隠し事が出来ないと絃子は
観念する。
「OK。分かった認めよう、確かにそれもあるだろうな。しかし、いつもながら
よく私の思っていることが分かるね」
「伊達に誰よりも長く絃子さんのこと見てたわけじゃないですから。昔からそう
ですよね、思ってることを全部言わないところ」
悪い癖ですよ、と怒ってみせる葉子。絃子はそれに苦笑を返してから、話を元に
戻して口を開いた。
「正直な話、この部屋をこんなに広いと感じるとは思ってなかったよ。以前の様に
一人暮らしに戻るだけ、そう思ってたんだ」
まったくね、そう呟きながら、座った姿勢から後ろに倒れて床に寝転がる。視界
には、見慣れた天井だけ。
「それが蓋を開けてみればこれだからな。バカでがさつで騒々しいやつだったが」
そこで言葉を切る。探すのは、それを表すのに最も相応しい単語。同居人や居候
では味気ない、かといって友人や恋人などではない。それは、何か。
「そう、彼は」
そして見つけた答を、一呼吸置いてから口にする。
「――『家族』だったんだな」
「ですね。二人ともよく似てたから、歳の離れた姉弟みたいでした」
「待て葉子。さすがに一緒にされるのは……」
「そうですか? 最初に会った頃の絃子さんって、あんな感じだったと思いますけど」
「……昔のことを持ち出すのは卑怯だ」
むくれてみせる絃子だが、やがて二人してどちらからともなく笑い出す。
「まあいいさ。昔は昔、今は今、だ。さて」
席を立ち、冷蔵庫から新しい缶ビールを持ってきた絃子が、葉子にそれを差し出す。
「あのろくでなしのために、乾杯の一つでもしようじゃないか」
投げやりで、それでいてどこか親しみのこもった口調に、やっぱり心配なんですね、
と絃子がくすくす笑う。
「それなりに、ね。――それじゃ」
乾杯、と。
今はもうそこにいない彼のために、ささやかな祝杯が捧げられた――
蛇足。
1レス何行までとか、連投の時間間隔とか、何もかもを忘れていることに気づかされた……
とりあえず、昔書いたやつを適当に読み返したり、最新刊までざっくり読んでみたものの、
相変わらずまったり系しか書けない罠。合掌。
……っつか毎回連投規制に引っ掛かるのはなんぞ?
昔は5レスくらいで引っ掛かってた記憶が。
乙です
この後播磨がいなくなってから絃子さんの元気がないと葉子さんから(ry
22時12分 塚本邸にて沢近愛理の話
…これは私が1学期の終わり頃に体験した話なんだけどね。
旧校舎の踊り場にある鏡の事は知ってる?
そう、あの古い大きな姿見よ。
その姿見に向かって、夜中の3時33分33秒ピッタリに自分が普段使っている鏡を向けるの。
そうするとあるモノが映るんですって…。
確か文芸部に置いてあった古い本にそう書いてあったわ。
面白そうだから、城戸さんと一緒にそれを試してみたのよ。
って言うか元々、城戸さんから誘われたんだけどね。
え?城戸さんとそんなに仲良かったっけですって?
まぁ、その時はね…今は滅多に口も聞かないけど。
…あんな事が起きなきゃね。
とにかく私達は夜中の3時頃に校門で待ち合わせをして、旧校舎へ向かったのよ。
夜中の旧校舎は流石に怖かったけどね。
その点、彼女は何処吹く風といった感じで早足で進んでいったわ。
私は怖くて彼女についていくので精一杯だった。
それで件の姿見の前で城戸さんは、普段使ってるコンパクトミラーを出したの。
そして私が時間を見計らって合図して、城戸さんが鏡を向けたわ。
…ねぇみんな、その時姿見に一体何が写ったと思う?
続き
私が見たのは、そりゃあもうおぞましいと言うか…。
これぞ悪魔の見本!みたいな顔の化物が映っていたの!
私もうビックリして、しばらく動けなかったわ…。
でも落ち着いて視ると、城戸さんの動きと姿見に映る化物の動きが全く同じなのよ。
つまり化物は姿見に映った城戸さん自身というわけ。
それからは別に何も起きなかったわ。
私は鏡なんて見たくなかったから帰る事にしたの。
城戸さんにそう言ったら
「私は確かめたい事があるから、もう少し残るね。」
って言うから先に帰ったわ。
何か私の目を見ないで震えてたけど…。
でね、帰る途中ふと思い出した事があるの。
…それは映した者の本性を映し出す鏡。
それもやはり古くて大きい姿見だというから、ひょっとしたらアレがそうかもね…。
…だとしたら、城戸さんの本性は…!?
その後、学校で城戸さんに事後について聞いたわ。
そしたらね…
続き
「あれから私もすぐ帰ったよ、悪魔も消えちゃったしね。あ〜あ、天使が映るって書いてあったんだけどな〜。」
成程ね、だから残ったわけか…。
私だってその事知ってたら、少し位残ってたわよ。
全く、そんな隠し事するから性根が曲がっちゃうのよ。
だからあんな化物が映ったのね。
それであの姿見は例の鏡だと確信したわ。
だとしたら、こんな人と関わってたら身が持たないと思って、それ以来交流を絶ったわ。
向こうからも近寄ってこないしね。
…あれは明らかに怯えた目で私を見てたわ。
…ねぇみんな、城戸さんが言った事覚えてる?
〜悪魔も消えちゃったしね〜
私が帰ってから、悪魔も消えた…。
つまり、悪魔というのは姿見に映った私という事になるわね。
私は幸いにして、角度と姿見の前にいた城戸さんのおかげで姿見に映った私を見ずにすんだけど。
城戸さんは間違いなく姿見に映った私を見たでしょうね…。
夜の旧校舎でも平気だった彼女が怯える程の悪魔…。
…それが私の本性なのね。
一体どんな顔した悪魔が映ってたのかしら…。
ラスト
なあに天満、そんな怯えた顔して…。
…そんなに私が怖いの?
…そう、天満は素直ね。
素直なのは良い事よ、御褒美にあの姿見が見たくなったら付き合ってあげる。
え?見たくないって、そんな遠慮しないで…絶対付き合うから。
でも城戸さんが言っていた天使っていうのはどんな顔をしているのかしら…?
きっと天満や八雲みたいな顔をしているのね。
あ…八雲で思い出したけど、一つだけ注意しなければいけない事があるの。
それはね、姿見に天使が映る事よ。
後でまた例の本を調べたら、それを見た者は必ず死ぬと書いてあったわ。
天使は死を意味するからね。
え?それと八雲と、どういう関係があるかですって?
…気にしないで、唯の偶然だから。
私の話はこれで終わり、次は誰の番?
〜schoolであったDQNな話より抜粋〜
>>511 乙です
和んだw
連投規制は厳しくなったのかな?
最近SSとか投下してないからわからないですけど
>>513 乙〜
こういう物ってありがちだけど、料理しにくいんだよね
良かった
つか、最近賑わってきて嬉しいわー
投下があると他の書き手さんも投下しやすかったりするんだろうかねw
>>519 そうなの?
本スレやバレスレは昔の雰囲気の悪さが印象に残ってて
近寄らない事にしていて分からんかったよ
今でも変わらなく雰囲気悪いよw
まぁどこの二次スレ住人も本スレとか見てない人は結構いるから気にしなくていいかと
まあ何はともあれ職人GJなんだゆ!
ほい
初めて書いたスクランSS、投下させていただきます。
告白前の播磨の心境w
夕暮れの矢神坂に長く伸びた影二つ、仲良く並んで揺れていた。
背高ノッポの影が、幾分小さな――特徴的な頭部の――影を守るように並んでいる。
影の主、それは播磨と天満であった。
補習を終えた二人は、その顔に少々の疲労を湛えつつも乗り切った安堵感でいっぱい
だった。
補習組の常連である播磨と天満は、案の定この日も補講者リストに名を連ねていた。
本日の補習は物理である。
元々文系志望の二人は、課題プリント一枚を終えるまでに計り知れない程の労苦と
忍耐と時間を費やさなければならなかった。
もっとも担当教師曰く
「君たちが苦労しているのは物理(理系)だけではないだろう」
と溜め息混じりである。
結局最後まで残った二人が解放される頃には、高かった陽が傾いていた。
「大分時間がかかってしまったな。
播磨君、塚本君を家まで送っていきたまえ。
女性の一人歩きは何かと物騒だからな」
この言葉に少なからず驚いた播磨は振り向いて従姉妹の物理教師をまじまじ見て
しまった。
いつも色々といいように弄られている播磨なので、何か裏があるのではないかと
疑ってみたが、絃子は珍しく優しげな視線を向けている…ように見えた。
「じゃあ帰ろっか播磨君っ」
「お、おう」
「刑部先生さよーならー」
サッサと教室を出ていく天満に置いていかれまいと、播磨は中身の殆んど入って
いない鞄を引ったくるように掴んだ。
今にも飛び出していきそうな播磨だったが、戸の辺りで一瞬だけ振り返って絃子に
不器用なウインクを送ると、バタバタ足音を鳴らして慌ただしく出ていった。
遠くに響く足音を聞きながら誰もいない教室で一言、絃子はそっと漏らした。
「…気持ち悪いぞ拳児くん」
と。
「一緒に帰ろう」とどう誘うか悩んでいた播磨にとって、絃子のお膳立ては渡りに
船だった。
告白するこの絶好のチャンスを逃す手はない。
だがしかし、同時に播磨は激しい緊張感に苛まれていた。
何だかんだ言ってこれ程の至近距離、しかも久しぶりの接触だ。
加えて隣を歩く天満の夕陽に晒された姿というのは、何とも言えず感動的で神秘的
にさえ見える。
要するにいつも以上に可愛く見えるのだ。
ましてや天満が笑い掛けようものなら、播磨の心臓はもはや爆発寸前である。
今日は美コちゃんがどうだった、そこで愛理ちゃんがああして晶ちゃんがこうした
などと播磨に話して聞かせるが、もはや緊張の頂点に立つ播磨の耳には届いていない。
(うう…緊張するぜ…)
だがここで挫けるわけにはいかない。
いつまたチャンスが巡ってくるか分からないからだ。
握った拳は力の入れすぎで白くなっており、うっすら汗ばんでいた。
「播磨君?」
思考の迷宮に入り込んだ為殆んど反応のない播磨に、天満の顔が心配そうに曇る。
(すまねぇ…君にそんな顔をさせるなんて…!)
播磨は決意した。
「……あ、あのよォ……」
緊張のあまり口はカラカラに渇いて動悸は激しく、目まで霞んできた。
しかし悠長に構え躊躇っている時間がなくなっているのも事実で、もうほんの少しで
見覚えのある曲がり角に差し掛かる。
天満の家までもあと僅かだ。
ここらで潔くビシッと決めるしかない。
あの、あの角を曲がったら…!
「お、俺ッ、…その…つつ、塚本が好」
「見て!すっごいよ!」
「………」
天満のすっかり興奮した声に、播磨の限界まで張り詰められた緊張の糸は見事に
打ち切られてしまった。
あまりのタイミングの悪さにガックリ肩を落としながらも顔を上げてみれば。
「あ、……―――こりゃあすげぇ」
播磨の視界の先には、目映い程の夕陽が辺り一面を自身の色に染め尽くした街並み
があった。
圧巻。まさにその言葉がぴったりだった。
眩しいがどこか柔らかさを感じさせる陽は、近くの雲を黄金色に縁取り、燃やす
ように照り輝かせる。
山吹がかった白色の空は、一切の色を奪う光源から距離を離す毎に色味を取り戻し、
白から朱鷺、朱鷺から薄青へとパステルカラーのグラデーションを奏でている。
夕暮れ時に一瞬だけ放たれる鮮烈な光を受け、街は赤く紅く、輝くように息づいて
いる。
何もかもを優しく飲み込む夕焼けは、天満を、そして播磨をもゆったりと包み込んで
いて。
思いがけなく
「きれいだな」
「きれいだね」
と声が重なってしまった。
お互いに顔を見合わせて、自然と漏れ出す笑い声は、どこか照れ臭さを伴う温かい
慈愛に満ちていた。
「こんなにきれいな夕陽、久しぶりだよー」
「だな」
「でも眩し過ぎて、ずっと見てると目がおかしくなってきちゃった」
天満は目を細めて手を翳すが、それでも尚目の前の光景から目を離さなかった。
(なんか、スッゲェいい雰囲気じゃね?)
ふと我に返った播磨は、今一度己の状況を振り返る。
夕暮れの帰り道。
二人っきりの時間。
穏やかな笑顔。
そこから弾き出されるアンサー、それすなわち『告白ベストシチュエーション』!
(…キタ。運命の女神が俺に微笑んでるぜ!!)
その女神は目の前にいるけどな!と俄に張り切り出す。
播磨は先程よりも一層気合いを入れ、己の思いの丈を存分に告白する事を決意した。
分かってるぜ天満ちゃん!ここでキメなきゃ男じゃねぇ!
播磨拳児、イきます!!
「つつ、塚本ォ!」
播磨は勢い込んで、隣で微笑んでいるだろう天満に向き直った。
想像通り、天満は穏やかに笑っていた。
いや、想像以上だった。
今まで見た中でもとびっきりの表情を浮かべていた。
その横顔に播磨は思わず見入ってしまい、次の言葉を続けられない。
播磨が馬鹿みたいに惚けていたら、どこか遠くを見つめる天満がふっと漏らした。
「…ずっと、一緒にいられたらいいね」
(………あ)
そのまま播磨は歩みを止めた。
「播磨君?」
不意に立ち止まった播磨を訝しみ、天満が小首を傾げて可愛らしく播磨の顔を
覗き込んだ。
「どうしたの?」
「…ッ!!―――あ、いや、すまねぇ。ちっと考え事をな」
播磨にしてみれば突然天満が視界に現れたようなもので、慌てふためいて赤くした
顔を反らした。
反らした後でしまったと後悔する。
「ふふ、変な播磨君」
「…変とか言うな」
「あははゴメンゴメン」
お互い軽口を叩き合っては笑い合う、贅沢な時間だった。
しかしそれも長くは続かなかった。
名残惜しいが、ここが帰り道の分岐点だ。
この角を曲がれば天満の家である。
「播磨君有難う」
「…別に構わねぇよ」
そろそろ本当にお別れだ。
播磨を見送ろうと思い、まだ角を曲がらずにいた天満がふと思い出した。
「ところで播磨君、さっき何か言いかけてなかった?」
「んー…」
播磨は曖昧に唸り、やがて
「また明日晴れるといいなと思ってヨ」
と言った。
その時、天満からは逆光で表情がよく見えなかった。
だが、何故か播磨のそれはたまに見る優しいあの笑顔だと思った。
だから天満も笑って返した。
「多分また晴れるよ」
この日一番の、最高の笑顔で―――。
天満を送り届けた後、播磨は先程までの幸福な時を思い返しながら一人帰り道を
歩いていた。
「天満ちゃん、やっぱ可愛かったよなぁ〜」
特に別れ際に向けられた笑顔など最高だった。
あの笑顔があれば、それだけで生きられるとまで思ってしまった。
何故ならそれは播磨だけに向けられたものだったから。
「それに、スッゲェきれいだった…」
夕陽に染まった横顔に静かな笑み、そこにほんの少し入り交じるもの。
それは「切ない」という感情だ。
『ずっと一緒にいられたら』
その意味を、播磨は知っている。
「はは、そうだよな。俺もずっと一緒にいてぇ」
でも。
その言葉の裏に、想いの片隅に誰がいたかなんて、言われるまでもなく知っている。
そんな表情を引き出す事が出来るヤツなんて、考えなくても分かっている。
あの時、隣にいたのは播磨。
だけど、天満の視線の先に本当にいたのは―――。
それをあの瞬間に理解してしまったので言えなかった。
…ずっと天満を見ていた播磨だったから。
「ホントに今日の夕陽はすげぇな」
目の前の陽は、いつの間にかその姿の半分以上を隠してしまっていた。
夜の気配がそろりそろりと忍び寄ってくる。
それでも今尚播磨には目映くて。
「サングラスしててもちっと眩しすぎんぜ」
独り言を吐きつつ、沈み行く夕陽に背を向けた。
眩しすぎる太陽で、深く隠した目元がひっそりと光っていた。
それは酷く幸せで、とても遠い夕暮れ道。
ここまでで終わりです。
次のはオマケっつーか蛇足なので、このまましんみり終わりたいならなかったことに。
柄にもなく感傷に浸りながら帰宅した播磨君。
それをいかにも楽しそうに待ち受けていたのは勿論この方、絃子さん。
綺麗なオネーサンは好きですか?
「で、拳児君。首尾を聞かせてもらおうか」
「………うるせぇ」
察しろバカ、と続けそうになったが、うっかりそんな事を口にしようものなら
確実に死んでしまうので、辛うじて喉元で留めておいた。
播磨にしては賢明な判断である。
「ふむ。その様子だとどうやらまた失敗だったようだな」
グサリ。
「まったく、あれだけお膳立てしてやったというのに、とんだヘタレだな君は」
グサグサグサッ!
絃子さんの現状把握攻撃によって播磨は死んでしまった。
ああなんと嘆かわしい。
「こら拳児君。こんな所で死んでたら邪魔だぞ」
絃子は容赦無く播磨という名の屍に蹴りを入れた。
横たわった播磨はなされるがままだったが、ただ一言だけ呟いた。
「…いいんだよ」
沈痛に彩られたそれを聞き、絃子は蹴る足を止めて播磨を見下ろした。
「……まったく世話の焼ける従弟だ」
絃子は溜め息を吐くと、待ってろと残して奥に消える。
それからしばらくしてノート1冊とペンを持って戻ってきた。
「傷心の君にこれをやろう」
「なんだこりゃ?」
受け取ってはみたものの、さっぱり趣旨が分からない。
これで勉強でもして気を紛らせよとでも言うのだろうか?
「絃子、悪いがベンキョーなら断るぜ。
ベンキョーなんざカツアゲの次にいらねぇもんだからな」
「君には勉強の方が真に必要だとは思うが、これはそういうつもりじゃない。
まあ願掛け、かな」
「ガンカケ?」
疑問符だらけの播磨に絃子は説明した。
曰く、この願掛けは何時からか口コミで広まったモノである、と。
曰く、やり遂げた暁には願いが成就するが、かなりの忍耐を必要とする、と。
曰く、このペンとノートは願掛けに使う道具である、と。
「私も噂で聞いただけだ。効果の程は期待しない方がいいだろう。
しかしそれでもと言うなら―――」
「構わねぇぜ、絃子」
播磨は真新しいノートとペンを握り締め、絃子に宣言した。
そこには先程までの沈鬱な面影はなかった。
「男なら無駄だと言われてもやらなければならねぇモンがある。
そして例えそれが1%の可能性しかないとしても、そこに賭けるのが真の男だ!
絃子、教えてくれ!そいつのやり方を!」
「…いいだろう」
絃子は耳にしていた願掛けの方法を播磨に伝授した。
「いいか、この緑のボールペンでノートにみっちりこの単語を書きまくるんだ。
心を込めて最初からだぞ。
それを最後のページまで書き上げた時、願いが叶うそうだ」
「へっ楽勝だ!やってやるぜ!」
播磨のラブパワーに火が着いた。もう大丈夫だろう。
「…ところでよ、ちと気になったんだが、この『 超 姉 』ってどういう意味なんだ?」
「ふっ…案ずるな。それは君が幸せになる言葉だ」
「そうか。やってやる。やってやるぜ天満ちゃん、君の為に!!」
播磨は雄叫びを上げて夜空の一等星に誓った。
その時、星がきらりと瞬いた。
絃子は播磨に聞こえない程度にふっと溜め息を吐いた。
「…やれやれ、益々君の将来が心配だ。
おい、拳児君。やる前に私の肩を揉め」
ちなみにこのおまじない、絃子が小学生の時に流行ったものだったりする。
しかも『好きな人の名前を書いて、その人と結ばれる』というおまじないだとも付け加えておこう。
播磨の明日はどっちだ?!
明日が見えないまま終わる。
最近夕日が綺麗だったのでつい。
(烏丸←)天満←播磨が基本。
というか18巻読んで播磨が心底カワイソウだと思ったのでw
>>535 おつ乙
せっかくいい感じにしんみりと終わったのに、
播磨はそんなキャラじゃいられないのねw
珍しい。
それが、部室の戸を開けた刑部絃子の感想だった。その視線の先には、
腕をだらりと伸ばして身体をテーブルにあずけている一人の少女。普段の
彼女の立ち振る舞いを知っている絃子からすると、確かにそれは珍しい
姿と表現しても差し支えのないそれだった。
――さて、どうしたもんかな。
絃子のそんな思考を知ってか知らずか、
「……あ、刑部先生」
そんなどこか気の抜けた返事を返しつつ、少女――サラ・アディエマス
は参ったな、という顔で苦笑した。
「変なとこ見せちゃいましたね」
数分後。
まだほんの少しばつの悪そうな様子を見せているサラをのぞけば、そこ
にあるのはいつもと同じ茶道部の光景だった。活動方針特になし、活動内容
もこれまた同様。来る者拒まず去る者追わず――若干一名、現部長の方針
にて『拒まれた』者もいるが、それは例外――他愛のない話に花を咲かせる
時間を提供する場所。それが即ち、この矢神高校茶道部だ。
「そうだね……うん。正直驚いたよ、君にも何かを思い悩むことがあるんだね」
わざとらしく、意地の悪い笑みに乗せられた言葉に、ひどいなあ、とサラも
苦笑いのままで怒ったポーズをみせる。
「もう、私だって悩みの一つや二つくらいありますよ」
「まあ、それはそうなんだろうけどね。君の場合、それをあまり他人に見せ
ないから、さ」
こちらも苦笑混じりに返しながら、頭の中で彼女のプロフィールを紐解く
絃子。海外からの留学生、というそれは、誰しもがまずメンタルな部分に重き
をおく典型的なものだった。実際、入学当初の彼女は、戸惑いと躊躇いの空気
をその身にまとっていた。
――それが今じゃあ、ね。
彼女は変わった。絃子は自信を持ってそう言える。どこでも誰とでも、常に
積極的に関わろうとする、快活を絵に描いたような、そんな彼女の姿が校内
校外問わず、そこかしこに見られる。
そして、彼女がこうまで変わった――あるいは、それこそが本来の姿だとも
絃子は考えている――きっかけは、ある一人の友人を得てからになる。
「うーん、そうですね。身の回りのことなんかは、ホントみんながよくして
くれてますし、あんまり苦労した覚えがないです」
「そのようだね。となると、だ。君をそこまで悩ませるような事柄といえば」
その友人の名は、塚本八雲。
「塚本君絡み、かな」
そう続いた言葉に、やっぱり先生には分かっちゃいますか、とサラは小さく
肩をすくめた。なかなか上手くいかないんですよね、いろいろと。そんな言葉
が宙に放たれる。
「上手くいかない、か。まあそんなものだよ、世の中なんてね」
わずかな間を置いて、絃子はそれだけを口にした。彼女たちの抱える事情、
それに興味がないわけではない。むしろ、自身の頭痛の種である同居人も、
それに一枚どころかかなり深くなでかんでいる、そんな話も耳に入ってきたり
する都合上、どちらかといえば状況は把握しておきたいのが本音になる。
しかし、絃子はそこには踏み込まない。そうする以外、本当にどうしようも
ないのでもない限りは、自分たちの問題は自分たちで解決すべきだと、そう
思っているからだ。
だから、代わりに別の言葉を選び、再び口を開く。
「しかし、君も相当だね」
「何がですか?」
「ほら、その自分のことより他人のことを優先するところだよ」
「そうですか? でも八雲にはいろいろお世話になってますし」
きょとんとした表情を浮かべるサラに、やはりそうか、と思いつつ、絃子
は続ける。
「いや、別にいいとか悪いとか、そんな話じゃないんだ。ただね……そう、
君がいつも誰かのことを考えているのと同じように、その誰かも君のこと
を考えている場合もある、そういう話さ」
もっとも、今は君自身が特に問題を抱えていないようだけどね、そう結ぶ。
付け加えるなら、彼女なら、たとえ自分の問題があったとしても、双方に
上手く対処出来るようにも思えていたのだが、それは今すぐに言うことでも
ないと、心の内に留めておく。
いずれにせよ、と絃子は思う。他人のことを考えられるのは当然素晴らしい
ことだが、それで自分のことに構えなくなるのは明らかに間違っている。もち
ろん、サラの人柄を鑑みれば、そこまでに至ってしまう可能性はほとんどない。
だからそれは、釘をさすであるとか模範を示すであるとか、そこまで大袈裟な
話では決してない。ただ、ほんの少しだけ頭の片隅に置いて欲しい、そんな
ささやかなアドバイス。それは、教師という職に対する彼女なりの答だ。
「まあ、そんなに真剣に考えてくれなくてもいいよ。いい歳した大人が、余計
なお節介を焼いているとでも思ってくれればいい」
「いえ、そんな……」
根が真面目な彼女らしく、そのまま真剣に考え込んでしまいそうな様子に、
それにしてもさ、と絃子は含みのある口調で話題を変える。
「君のその性格、どうも相当の筋金入りらしいね」
「……? 誰かに聞いてきたみたいな言い方ですね」
読み通りに食いついてきたサラに、実はね、と神妙な表情で告げる。
「実際、いろいろと聞いてきたんだ」
「そんなの誰に……って」
言いかけた言葉が途中で途切れる。その脳裏に浮かぶのは、つい先日、久方
ぶりに対面した懐かしい人物。
「会ったんですか!? メアリ院長に!」
「そういうこと。こちらに来ていらっしゃるという話を聞いてね、折角だから
この間お邪魔させてもらったんだよ」
君のいない間にね、そう告げる絃子の表情は、にやにやと意地の悪い笑み。
「どうして私がいないときなんですか……」
「そりゃ、君がいたら出来ない話、ってやつもあるだろう?」
「なくていいですっ!」
全力で否定してから、はあ、と溜息をつきながらサラは尋ねる。
「……それで、聞いちゃったわけですか、いろいろと」
「ああ、そうだね。君の武勇伝なんかを、いろいろと」
「そうですか……」
「そんなに気にするほどのものでもないと思うけどね」
どこか遠い目をするサラに、遅まきながら絃子のフォローとも言えないよう
なフォローが入るが、当然サラが納得するはずもない。
「気にします。じゃあ先生はどうですか? 昔のこと、気にしません?」
「私は別に」
気にしない、とは言えない絃子だった。彼女も彼女で、それなりにすねに
傷はある身なのだ。
「あ、気にするんですね? そうですね? じゃあ話してください。刑部先生
だけ知ってるなんて不公平ですから」
「……嫌だと言ったら?」
「笹倉先生に聞きにいきます」
「分かった話そう」
即答だった。誰しも、人に尾ヒレをつけて話されては困ること、というの
はあるものだ。
「それじゃ、先生にとっては随分昔のことだから思い出すのも大変でしょう
けど、よろしくお願いしますね」
「君さ、時々しれっとそういうこと言うよな……」
やれやれ、そうぼやきながらも絃子は口を開き、。
――言いそびれたけどね、こんなことも聞いてきたんだよ。
『確かに、いろいろと手のかかる子供だったのは事実です。ですが、あの子は
ちゃんと他人のことを考えられる、優しい子です。そうでしょう?』
そんなことを胸の内で思いつつ、気恥ずかしい、けれど懐かしく、色褪せ
ない日々の記憶を、ゆっくりと語り始めた。
おしまい。
>>537 この文体、久しうお待ちしておりました
ちょっぴりしんみりした雰囲気がGOOD
ありそうで中々なかった絡みを堪能させて抱きました
>>535 GJ
しんみりした王道がかなり良かった
ただ今はノートには超姉と書きなぐっていますが
>>540 GJ
こういう雰囲気の話好きです
過疎スレだったとはいえ、ちょっと間をおいて投下っていうルールとまではいかないけれど
気の利かせ方くらいは知っててほしかったけど、GJですた
時津風部屋、力士への暴行
親方らを立件へ
親方は失踪だと
稲葉とか東郷妹ってつむぎの事なんて呼んでたっけ?
結城つむぎ先輩
フルネームで先輩付けか・・・ありがと。
>>547 サンプル数が少ないから
結城先輩、つむぎ先輩はもちろんフルネームに先輩付けてもいいし単に先輩だけでも良いかも
そこら辺は普通の先輩後輩な感じでいいんじゃまいか
549 :
546:07/09/30 23:01 ID:gViAN4rY
正直大嘘教えたので、マジにとられてもその、困る
つむぎって不細工だよね
容姿がじゃなくて性格が
そういう話は本スレでどうぞ
今週のマガジンを読んで涙目になる絃子さんが見たい
553 :
Classical名無しさん:07/10/17 22:47 ID:vIxtQwoA
IFまとめのサラだけ更新した。
18〜22のまとめが無いが誰かないかね?
すげえなここ。
二週間レスがなくても落ちないのか。
555 :
Classical名無しさん:07/10/18 00:14 ID:LKocnyKM
ギリギリだったんじゃね
>>553 IF22までは一応保管庫があるからな。
ほしゅ
今月はSSがないどころか落ちる寸前か
終わったかもな、このスレ
560 :
Classical名無しさん:07/10/19 01:01 ID:1B/S62.Y
さんざんアソミコ騙り厨に荒らされたからな・・・・
新作ないね
今のスクランの体たらく見て新作書きたいと思う奴が出てくると思うのか?
こっちはせめてSSぐらいは楽しいの読みたいとか思うけどさ。
二行目に同意w
っていうかやはり本編に意欲を刺激されないとダメなんかね
急展開でも一歩引いて見てる人も多いし
空いた時間も無限じゃないから、
スクランSSを書く意欲<その他娯楽に要する時間や意欲
になっちゃうのよねぇ
アイディアを書き溜めてはいるんだけど、それをSSの形に持っていくまでの時間が取れないorz
スクラン自体を嫌いになったわけじゃないけど、
スクランにはまった時の熱や入れ込みようが今もあるか?って問われるとやっぱり冷めた部分も有るよね
連投スマネ
以前同様に楽しめているんだけど、いかんせん本編が終盤だから逆に自由に描きにくいというか
旗にしろおにぎりにしろ王道にしろそれはないだろってツッコミがありそうで怖いし
派閥で好き嫌いあるからな
とあるSSに「こんな展開ありえないでしょ」とかレスがついてたけど
そういう話を見るための二次創作でもあるんじゃないかとも思ったけどね
昔くらい妄想全開の話を見なくなったね
本編がアレだから、妄想展開だとどこか冷めた感じがしてしまうんだろうか
妄想をことごとくぶっこわしていくからなw
播磨(むっ、あれは吉田とお嬢。何やってんだろうか)
吉田山「なぁ沢近サン、俺と付き合わないか?」
播磨(な・・・、確かお嬢、デートは誰でもOKだったよな、クソ・・・って俺は何を考えてるんだ!?)
沢近「嫌よ」
吉田山「な!?アンタ、誰とでもデートしてただろ!?」
沢近「・・・」
播磨(ホッとした俺ガイル。そうか、俺はお嬢のことが・・・)
吉田山「アンタ、好きな奴でもできたのかよ!?」
沢近「好きな人くらい・・・いるわよ」
吉田山「な、なにぃ!?そ、そうか、あのイケメンだな!確かショーンとk」
沢近「違うわよ!」
吉田山「じゃあ播磨か?あいつは不良だし塚本の妹とつきあってるんじゃねぇのか?」
沢近「・・でも・・なの・・・」
吉田山「あぁ?なんだよ!」
沢近「・・・それでも好きなの!」
播磨「俺もさ、お嬢」
沢近「!?・・・聞いてたの?」
播磨「あぁ、すまん。お前が気になってな」
沢近「バカヒゲ・・・」
播磨「付き合ってくれるか、お嬢」
沢近「当たり前じゃないの・・・大好きよ」
吉田山「・・・俺もう氏ぬわ」
…以上、沢近の妄想でしたw
目眩がする
これはひどい
やはりこういうのはシンプルに行かないと。
「お嬢、好きだ」
「私もよ」
END
「お嬢、やらせろ」
「いいわよ」
最初期では、周防も「お嬢」と呼んでいた。
やった後
「でもやっぱ俺、塚本が好きだわ」
「え?」
「もう俺に話しかけないでくれ。じゃあの」
〜鮮血END〜
竹原ww
吹いた
長編は少なくともなくなったよね
短編・中編の新作がたまーに出てくるくらい
>>580 でも元々長編の方がおかしいんだよなw
スクランって1話毎の読みきりギャグ漫画だったわけで、売れてからストーリー性入っちゃったけど
ファーザー「ハリマスキーよ、時代は強い女なのじゃよ!」
愛理「いいから、黙ってカレー食え」
ファーザー「いただきます」
10分後
ファーザー「ハリマスキーよ、時代は強い女なのじゃよ!」
愛理「またなの…」
ファーザー「いいかハリマスキーよ今の時代は強く自立心が強い女がもてるのじゃよ」
愛理 「言ってるのお父様?」
ファーザー「男ってものは95%はマザコン、ならばそこに包容力たっぷりの女性が現れればころりってわけよ」
愛理「まったく下らない」
ファーザー「もちろんあのハリマって男も例外じ「続けなさい」
例えば今回のキスしてませんでしたっていうのは
おにぎりの書き手にはマイナスで旗の書き手にはプラスなんだろうか
おにぎりの書き手だったらあれでキスしてたら、旗の書き手だったら旗でキスしたら
で材料にすればいい
SS書きの人達がどこまでプラス思考なのかは知らないが
てか、原稿破いてたのにフェイクとかキスしてたのによけてたとか、SS書きとしては、
絶対にやってはいけないことだわな。
今度、播磨がただの変態から上級職の変態仮面になるそうだから、
新しく「いなりずし」の派閥でも出来てたらいいな。
原稿破いて播磨が悩んで八雲も悩んでいよいよ締切間に合わないってなったら
実は破いていませんでしたというSSあったら絶対叩かれてそうだなw
589 :
Classical名無しさん:07/10/26 14:43 ID:HNd2Ueso
IF24登録完了です。
ほとんど、俺1人でやってるんですけど…需要はないのかな?
結構時間食うし。そうなら時間が勿体無い。
過去ログ見れないからしない人も居るのかもしれないけど
ttp://www.geocities.jp/mirrorhenkan/ ここにアドレス入れたら大概の過去ログあるし。みんなでやりましようよ。
最後にスミマセンが、昔(一桁台)のは俺多分しないので。
>>587 というか間違いなくあっちのヒロインとの妄想する人はいそうw
>>589 見るには見るんですが編集は参加してないっすね
時間が空いたときに手伝いますよ
やったことなかったけど、一個だけやってみたけど
あんな感じでいいのかな?
あれでいいなら暇な時にやってみるけど
593 :
589:07/10/27 10:34 ID:/amcoQQM
>>592 問題ないですよ。
きちんとキャラ別登録なんかして…俺やってないです。
専門の人がいたはずなんですがね。
ずっと待ってるんですけど、このスレにもいらっしゃいません。
それと、半分くらい無題のやつがあります(特に埋め時)。
その時無題ですが10レスくらい後に題名を言ったりしますので注意を。
また、俺はそれを無題なんとかで登録するとただ機械的になってつまらないので、
その文章内とかから勝手に題名つけてます。
では、こつこつ頑張りましょう!
あれでいいですか。じゃあ、自分は一桁台からやっていきます。
無題のはレス番をつける程度で逃げようかなと思ってますが。
あと、気になったのは
・誤字とかは修正してやっておくべきか
・非常に短いネタ的なものは入れとくべきか
前者は結構気になるんですが(特に伝馬とか弦子とかの名前の間違い)、スピードに関わってくるし…
>>594 上は極力そのままがいいと思うけど気になるなら直してもいいのかも
でも基本的には作者が言わない限り放置がベストだと思う
名前くらいなら直してもいいとして日本語直しは文章にも影響するし
下は短すぎるのは入れなくていいと思う
入れたい人がいつか入れるよ
名前くらいなら修正していいと思う
ただ一行、
*名前誤字修正済み
くらい断りがあるといいかもね
じゃあ、修正は気が向いた時に名前間違いだけって方針で
いちいち細かくチェック入れる手間が省けるし
598 :
589:07/10/27 14:17 ID:/amcoQQM
>>594 そうですね。
名前も文章も一応読んで引っかかったらいじったりしてる。
けど、基本は1・2個だけなら直す、話全部ならスルー。
小ネタですが、1レスに書けるだけ書いてあるようなやつ(20行程度辺り)は入れるけど。
まぁ、邪魔くさくなれば切っても誰も文句なんて言わないし大丈夫でしょ。
逆に長編ですが、結構ページ辺り容量は少ないので気持ち細かめに分けてください。
IF24・Crazy Diamond が容量の目安ですかね。
>>595 君はIF18からね。よろしく。
599 :
589:07/10/27 14:20 ID:/amcoQQM
>>596 おっともう1人!
君はIF4からで。よろしく。
なるほど。小ネタはケースバイケースでやっていこうかなと思ってます
で、長編の容量は入りきらなかったらエラーとか出るんですかね?
出るならダメだった際に分ける感じで極力、一まとめにしたいんですが
続編で2とか付けてるものとの区別がつきにくくなるし…これは(2)とかにすればいいかとは思うけど
601 :
589:07/10/27 14:49 ID:/amcoQQM
>>600 プレビューした時に「本文の文字数が多すぎます」とかでます。
だから、入るかどうか微妙なときはこまめにプレビューした方が良いです。
題名は修正不可なので判断は難しいですけども、分けないといけないけない時は
IF○○・作品名1前編 という感じでいくしかないですね。格好はつかないですが……。
なるほど。じゃあそんな感じでやっていきます
ハリハルって需要ある?
全くない
播磨スレに縮こまっててくれ
俺は是非とも見たいがな
ハリハルSSは見たこと無いし
ハリハルの短編が1本完成した。
まさか初めてのスクランSSがハリハルとは自分でも思わなかった。
つうか、マイナーカップルは制約が少ないから描き易い。
内容は薄味だけど。
ハリハルってなんだ?
ハリー・マッケンジー×花井春樹
どうか投下せず手元に置いておいてくれ
思い出したように「炎の7日間」が読みたくなったんだけど
どっかで読めないですか?
S3の後継の所のリンクの中に作者のサイトが載ってたよ
というか確認なんかとんなよ。荒らしに反応されるだけなんだから
作品を投下するかどうかは書き手の自由だろ
もしここでの投下が気まずくなったんならキャラスレでもS3でもいいから投下してよ
>>607 播磨×榛名
今流行の最先端を行ってるカプ
東郷榛名の憂鬱その1
プロローグ
春休みのはじめ、絃子が珍しく早起きをしたと思ったら、俺に変なことを
言いやがる。
「拳児くんに頼みたいことがあるのだが」
絃子の頼みごとなどロクなものではない、という事は子供の頃から知って
いる。また、彼女が本気ならば頼みごとなどせずにエアーガンを全自動
(フルオート)で乱射してくるだろう。
「実は今度、茶道部のお花見会をやるのだよ。それで、その手伝いをやって欲しいんだ」
どうやら、茶道部のイベントの雑用を俺にやらせたいらしい。
「やなこった。他をあたりな」俺は当然の返答をした。四月からの連載の
ため、ここ数日はネーム描きとペン入れの繰り返し。正直時間がいくらあっ
ても足りない。
「茶道部だけでは人が少ないんでね、他の子たちも呼ぼうと思うんだ」
「ん!」
「ああ、勿論塚本くんも来るよ」
「ん!ん!ん!」
「まあ拳児くんがダメだっていうんなら、他をあたるしかないようだえね」
塚本?て、天満ちゃんが来るのか!?これはチャンスだ。チャンス以外の何者
でもない。桜の木の下での告白なんて、最高のシチュエーションじゃないか!!
「何を言っているんだ“絃子さん”。この俺があなたに協力しなかった事が
ありますか?」
塚本天満。俺、播磨拳児の思いの人だ。
まあ結論から言うとだな、絃子の言葉にウソはなかった。ウソはなかった
のだが、限りなくウソに近い言葉だったことは確かだ。裁判でもすれば確実
に詐欺認定できるようなウソだ。
〜CHERRY BLOSSOM WITH SKETCH BOOK〜
桜は好き。日本に帰ってきてからはじめて満開の桜を見たとき、こんなに
キレイなものがあるのかと、思わずため息をついたことがある。周りの友達
にとっては、子供の頃から見ているので、それほど珍しい光景ではないかもしれないけど、私にはとても神秘的なものに感じた。お兄ちゃんは、桜は日本人の心だ、とかなんとか言っているけど、理屈っぽいのは嫌いだな。ただ、今は桜の美しさを純粋に感じていたい。
今日は天文部の部長、結城つむぎ先輩と一緒にお花見に行くことになった。
お花見というのも、実ははじめて。江戸時代から庶民に広まった行事(?)
みたいだけど、最近は、単に桜のある場所で美味しいものを食べて騒ぐだけ、
というものになっているらしい。茶道部主催のお花見で、女子部員の多い
文化部が招かれている。
結城先輩は、今日は男子生徒はこないから安心してと言っていたけれど、
別に男子生徒がいたからといって心配するほどのことはないと思う。まあ、
男の人が多かったら不安かもしれないけど。
私は今年で高校二年生になるけれど、未だに彼氏とか恋人がいない。
クラスメートや友達の中にはちょくちょく誰かとカップルになったり、
年上の先輩と付き合ったり、付き合ってもいないのに、多くの人から告白
されたりする人も多い。類は友を呼ぶというのか、私の親しい友達の中に
は“そういう関係”になった人がいない。親友の稲葉美樹は、見た目もよく、
性格も明るいのでモテるはずなのに、なぜか今は年上の先輩に夢中だ。
私にはその人の良さがよくわからないけど、きっと美樹にしかわからない
魅力があるのだろう。
クラスメートの塚本八雲は、ちょっとシャイだけどスラッと伸びた背や
スタイルの良さ、それに整った顔立ちなどで、入学以来二桁近い告白を受け
たにも拘らず、未だに誰とも付き合っていない。本人曰く、まだ恋がなんな
のかわかっていないらしい。でもまあ、私も似たようなものかな。恋って
なんなのか、未だによくわからない。ただ、今は異性の恋人よりも同性の
友達と一緒にいるほうが楽しいので、それでいいのかもしれない。
お花見の会場となるのは矢神公園。矢神市の少しはずれにある小高い丘に
ある公園だ。お花見のスポットらしく、毎年沢山の人が訪れる。
今日は春休みとはいえ、平日なので昼間の人は少ない。ただ、夜に備えて
場所取りをしている人や出店の準備をしている人などが見られる。あとは、
散歩に来ている人や、おじいさんやおばあさんの集まりなど。それでも昼間
の公園は静かなものだった。
それにしても、生で見る桜はやっぱりキレイ。所々にゴミが落ちているのは
ちょっと気になるところだけど、暖かい春の日差しの中で見る桜は心を落ち
着かせてくれる。
「あの、手伝います・・・」
「いいのよ、こいつに全部持たせればいいわ」
クラスメートの塚本八雲と茶道部顧問の刑部絃子先生の姿が見えた。そして
そのすぐ後ろにはサングラスにヒゲの男の人。私が入学した頃から既に有名
だった不良の播磨拳児先輩だ。
あれ、結城先輩の話では、男の人はこないはずじゃあ。
「別にコレは参加者にカウントしなくてもいいわ」と刑部先生。
今日は何も持ってこなくても良い、といわれたが、ちゃんと荷物運びの
役がいたのか。でもなんで播磨先輩なんだろう。
「くそ、塚本っていうから俺はてっきり」
「塚本くんは塚本くんだろう。八雲くんだって立派な塚本だ」
「騙しやがって・・・」
「勝手に勘違いしたのはキミじゃないか」
何か二人は変な会話をしている。それにしても、教師の注意に対しても
平気な顔して無視している播磨先輩が気圧されているなんて、やっぱり刑部
先生は凄いんだ。
「やっほー、榛名!先輩!」八雲と同じ茶道部のサラ・アディエマスが敷物
の上で大きく手を振っている。
今回のお花見は茶道部の主宰なのだ。茶道部といえば、茶道部の部長である
あの人の姿が見当たらないけれど…、
「なに?」
「うわ!!!」
桜の木から急に声がしたかと思うと、茶道部部長、高野晶先輩が出てきた。
まるで忍者のように、桜の木の柄と同じ布を使って、木と一体化していたよう
なのだ。この人のやることは、正直よくわからない。でも楽しい人だとは思う。
「高野さん、こんな所で何してるんですか?」と結城先輩。そういえば高野
先輩とは二年生のときに同じクラスだったんだよね。よく話を聞いているの
で覚えていた。運動神経もよく、勉強もよくできる自分のライバルだとも。
「なんとなくよ」高野先輩はあくまでクールに答える。この人の場合、
どこまで本気でどこまで冗談なのか、よくわからない。
「おい高野、そこでふざけてねえでこっちを手伝え!」遠くから播磨先輩の
声が聞こえる。
「ふう、今行くわ。じゃあそういう訳で、ゆっくり楽しんでいってね」そう
言うと高野先輩は声のした方に歩いて行った。たまにしか見ないけど、いつ
も無表情な先輩が一瞬、微笑んだように見えたのは気のせいだろうか。
桜の花びらが舞う中で行われたお花見会には、茶道部のほかに私のいる
天文部、美術部、書道部、文芸部などが呼ばれていた。もちろんみんな女子
生徒ばかり。
「あれー?花井先輩はきてないんですかあ?」稲葉美樹が周りを見渡しながら
言った。
花井春樹。花井先輩は高野先輩や結城先輩と同じクラスだったという。
美樹の意中の相手ではあるのだけど、彼の目には塚本八雲しか入っていない。
そのため、八雲がいるところなら、多少の無理をしても参加するはずなん
だけど。
「彼にはウソの場所を教えといたから」
「高野先輩…、また…」
そう八雲に告げる高野先輩。
「彼がいたらお花見どこじゃないでしょう、特にあなたには」
「いえ…、まあ、その…」
八雲にとっては答えづらい質問だろうな。
「ええー?花井先輩がいないなんてつまんないですぅ」そう言う稲葉の言葉
に一年の女子生徒の数名が眉をしかめた。別にそこまで嫌わなくても。そう
いえば、結城先輩もなんか複雑な表情をしているけど。
「今日は茶道部主宰のお花見会に参加していただいてどうもありがとう。
ささやかながらお茶とお茶菓子を用意したわ。少しの時間だけど、みんな楽
しんでいってね」
高野先輩のその言葉でお花見会がはじまった。
お茶菓子は八雲とサラが用意したものらしく、とても豪華だった。一応、
今日は会費を出しているけれども、それにしても豪華だ。高級そうなケーキ
もあれば、美味しそうなクッキーもある。見た目もキレイだけど、食べてみる
と本当に美味しかった。
「これ美味しい、八雲が作ったの?」稲葉が嬉しそうに言う。
「え、うん」
「八雲っていいお嫁さんになれるよ」
「そんな」赤面する八雲。
「ダメよ、八雲は私のものなんだから」そう言って八雲の肩を抱くサラ。
「八雲って、カレシ作らないの?」
「ええ、それは・・・」ますます赤面する八雲。彼女はこういう話にはとことん
弱い。稲葉本人には悪気があるわけではないことはよくわかっている。
「おい雑用係、こっちのジュースが不足してるぞ」
美術部顧問の笹倉先生と、まるで恋人同士のように寄り添っている刑部先生
がそう言った先には、ジュースやらお菓子やらをせっせと運ぶ播磨先輩の姿
があった。今回唯一の男性という事だが、話の輪に入ることもなく、せっせ
と働いている。しかも硬派なのか知らないけど、参加者に対して全く興味を
示さない。
「あれ?榛名、播磨先輩のこと気になるの?」美樹が悪戯っぽい笑みを浮か
べて言った。もう、普段鈍いくせに、こういう時は鋭いんだから。
「いや、違うよ。ただなんか、ずっと動いてて・・・」
私の言葉に何か思い出したかのように、八雲がすくっと立ち上がった。
「あれ?八雲どうしたの」とサラが聞く。
「いえ、ちょっと」
そう言うと八雲は播磨先輩の元に向かった。やっぱり、八雲、播磨先輩の
ことが…?
「それじゃあ、これからビンゴゲームをはじめたいと思いまーす!」
そう言ってサラが立ち上がって、各人にビンゴ用のカードを配って回って
いた。他にも色々とゲームを用意しているらしい。八雲は、結局お菓子や
ジュースを運んだり、ゴミを片付けたりする雑用をやっていた。彼女は
根っからそういうことが好きみたいだ。やっぱりいいお嫁さんになりそう。
しかし同時に、今まで忙しく駆け回っていた播磨先輩の姿が見えなく
なった。帰っちゃったのかな。
「あれ、榛名。どうしたの、もしかしてトイレ?」稲葉美樹、今度は勘違い。
「いや、そうじゃなくて」と言いかけて、私はすぐに訂正した。「いや、
やっぱり行ってくるね」そう言ってその場を離れた。
別に気になるって訳じゃないけど、私は公園のトイレにある鏡で髪を整え
ながら少し心を落ち着かせた。
播磨先輩がいないからって、私が困るというわけでもないし。
そんなことを思いながら、私は公園の中を少し散歩してみたくなった。
あんな風に、皆で騒ぐのも好きだけど、こうやって落ち着いて桜や周りの
風景を見るのも嫌いじゃない。目の前でヒラヒラと舞い落ちる桜の花びら
を見ながら、私は改めて日本の春を感じた。
しかしその視線の先には、見覚えのある学生服が。
「あ…」思わず声を出してしまった。
先ほどまで忙しく動き回っていた播磨先輩が、座り込んで何かをしている。
近づいてみると、どうもスケッチブックに絵を描いているようなのだ。
正直、意外だった。
サングラスにヒゲ。どこからどう見ても不良の播磨先輩が絵を描いていると
いう光景だけで、十分ミスマッチだと思った。
話しかけてみようか。でも迷惑じゃないかな。聞きたいこともあるし。
心の中で色々と葛藤はあったものの、このまま何もしなければ何も変われ
ない、という気持ちが湧き出てくるのを感じた。
「あの…」
「ん?」鉛筆の手を止めた播磨先輩は、私のほうを見た。
「キミは確か、妹さんの」
「妹さん…?」
「あ、いや、塚本の妹さん」
「八雲のことですか」
「そう」
「はい、クラスメートです」
「そうか」
「あの、ここで何をされているんですか?」
いつも遠くから見るだけだったけど、実際に近くで見るとそんなに威圧的
な雰囲気はない。むしろ、実質初対面にも拘らず、あまりの話し易さに
びっくりした。
「んん、ちょっとな。あんまり桜が綺麗だったもんで、ちょっと練習がてら」
「あ…、桜、綺麗ですよね」
「ああ…。桜は好きか」
「は、はい」
「俺もだ。桜は日本人の心だからな」
なんだか古風なことを言うな、と思った。
「あの、練習って言ってましたね。絵はお好きなんですか?」
「いや、絵が好きって訳じゃないんだが…。いや、まあ好きっちゃあ好きかな」
「先輩、美術部ですか?」
「そういう訳じゃないんだが。まあ、そっち系のバイトをしているし」
「バイト?」
「大したことじゃねえよ。ただ、絵は毎日練習しないと上手くならねえし」
「そうですね。私は、絵、苦手だなあ」
不意に、播磨先輩は立ち上がって、私の前にきた。さすがにお兄ちゃん
くらいの身長(180センチ台)の人が目の前にきたらちょっと怖い。
「そうだ、ちょっと頼みがあるんだが」
「頼み?」
「ちょっと、あの桜の木のところに座ってくれないかな。桜の木の下に
たたずむ少女っていう構図が欲しくて」
「え、それって…」
「モデルですか」
「んん?まあ、そうだな」
「あ、あ、あの、その…」
ああ、急に何を言い出すんだろう、この人。私が?モデル?そんな、
急に言われても、髪形はさっき整えたけど、スタイルとかもそんなに良くない
し、何よりモデルなんてやったことがないし。でも播磨先輩、すごく真剣な
表情。サングラスをかけていてよくわからなかったけど、ちょっと不器用だけど、
とても誠実な人だと思う。
「あ…」
播磨先輩は、何かを思い出したかのように一歩後ろに下がった。
「いやあ、そういえばお花見の最中だったな。悪いな、友達待たせてるだろう
し」
私のこと、気遣ってくれて。どうしよう、そんなの全然気にしてないのに。
少しがっかりしたような様子でもとの場所に戻ろうとする播磨先輩の後ろ姿
を見ながら、私は勇気を振り絞った。
「あの、先輩」
「あん?」
「その、モデル、やらせてください」
「え…、いいのか?」
「はい」
心臓がドキドキする。自分でも信じられない。ここでモデルを断ったとし
ても、播磨先輩は私を悪く思うことはないはず。でも、なんか先輩の後ろ姿
を見てると、何か協力したくなる。
私は先輩から、一人用のゴザを頂いて、その上に座った。私の後ろには小さ
めの桜の木がある。もちろん花は満開。そして目の前にはスケッチブックを
抱えた播磨先輩。なんかすごく真っ直ぐに見つめられてるんだけど。ああ、
どうしよう。こんなに男の人に見つめられるなんてはじめてかも。心臓の鼓動
がさっきから収まらない。赤面してないかな。
「悪いな、すぐ終らせるよ。こう見えて、路上で似顔絵を描いてたこともある
んだぜ」そう言いながら新しいスケッチブックの頁に慣れた手つきで鉛筆を
走らせる播磨先輩の姿は、ちょっとかっこよかった。
黙ってたら余計ドキドキしてしまうような気がして、私は勇気を出して先輩
に話しかけた。
「あの、播磨先輩って」
「ん?」
「沢近先輩と付き合ってるんですか?」
いきなり何を聞いてるんだろうか私はー!口に出して後悔した。もっと
当たり障りのない話をすればいいのに、普段気になっていたからつい。
「別に、付き合ってネエよ。なんか周りの連中がそんな風に噂してるけどよ。
俺とお嬢…、いや、沢近はそんな関係じゃあねえ」
「そう、なんだ」
なんで私、ホッとしてるんだろう。
「じゃあその、付き合ってる人とかいるんですか」
「え…?」ふっと鉛筆を止める。
ちょっと待って、これじゃあ私が先輩にアピールしてるみたいじゃない。
「いねえよ…」
先輩は無表情に答えたけど、どこか寂しそうだった。悪いこと聞いちゃった
かな。
「ごめんなさい」
「え、何が?」
「ああ、いや。気分悪くさせちゃったんじゃないかって」
「別に、そんなことねえよ。むしろ謝んなきゃいけねえのは俺の方だし」
「そ、そんなことないです」
もう、何がなんだかわからない。自分でも自分のことがよくわからなく
なってる。一体なんなんだろう。これって私自身のせいかな。それとも播磨
先輩の…。話をしたら落ち着くかと思ったけど、余計にドキドキしちゃった。
それにしてもすごく真剣な表情。
どうしてそんなに真剣なんだろう。
「あのよ」
「は、はい」
「俺の知り合いが、すごく絵の上手い奴がいるんだけど。そいつに聞いたわけ。
どうしてそんなに絵が上手いのかって。そしたらそいつ、ずっと絵の練習を
してたんだとよ。どれくらいかって聞いたら、起きてから気を失うまでって。
凄いだろ?俺はてっきり、才能とか、もっと楽なやり方があるんじゃないかと
思っていたけど、結局そういうものはないんだよな。結局みんな苦労してるん
だよ。それを表に出さないだけで」
「・・・・・」
「どうした?つまんない話で退屈したか」
「あ、いえ」
それからしばらくの間、播磨先輩は無言で鉛筆を走らせた。静かだけど、
とても穏やかな気持ち。話をしていないと気まずくなるかと思ったけど、
全然そんなことなかった。ずっと前に、八雲のお姉さんが無神経で女の子の
気持ちを全然考えていない、とか言っていたけど、そんなことないと私は思う。
ちょっと不器用で、自分の気持ちを素直に伝えられないだけじゃないかな。
少なくとも私は、彼の優しさや気遣いをほんの少しだけど理解できた。八雲が
憧れるのも、わかる気がする。八雲…?そうだ、お花見。
「榛名!こんな所にいたの?」
稲葉美樹の声で私は我に帰った。
「美樹…」
私もびっくりしたけど、それ以上に慌てていたのは播磨先輩の方だった。
スケッチブックを隠してその場から離れようとする。
「あれ、播磨先輩なんでこんな所にいるんですか?ああ、まさか榛名と?」
「いや、そんなんじゃないのよ美樹」
「あやしいなあ。だっていつの間にか榛名がいなくなったと思ったら」
よりによって見つかってはいけない人物に見つかってしまった。もちろん、
稲葉には悪気はないのだけど、この場面では誤解されるても仕方が…。
「あれ?」そう言って携帯電話を取り出す美樹。
「どうしたの」
「ああ、サラ。どうしたの?ええ!!!花井先輩がきた!?ちょっと待ってすぐ
行くから。わかった!!」そう言うと美樹は高速で、お花見の会場に走って
行った。
気まずい沈黙。さきほどまでの心地良い静かさとは明らかに違う空気がそこ
にあった。
「すまねえ、なんかまた誤解させちまったようで」
「また?」
「ああいや、よくよく考えたら男と女が二人っきりってのは誤解されても
仕方ないよな。だいたいすぐ終らせるとか言っておきながら、こんなに時間
かけちまった俺が悪いんだし」
「ああ、いや、そんなの全然気にしなくていいですから。あのコには、私の方
から言っておきます」
「そうか、すまねえ」
「それより、あの」
「ん?」
「描いた絵、見せてもらえますか?」
「え?ああ。練習用だからそんなに上手くないと思うけど・・・」
私は播磨先輩からスケッチブックを受け取った。
「え?これが…、私…?」
「下手だったかな…」
木の下に座った少女。自然に、とても自然に微笑んでいた。私、こんな顔してたんだ。
「ううん、とても上手です」思わず笑みがこぼれた。
「そ、そうか。正直不安だったんだ。嫌な顔されたらどうしようかって」
「あの、この絵、貰っていいですか?」
「え…?でも練習用に描いたもんだし」
「そんな、とっても上手です」
「そ、そうか」
先輩は、恥ずかしそうにスケッチブックを一枚破って差し出す。そして
恥ずかしそうに受け取る私。なんだか変な二人。
「あの、榛名」
「え?」
「いや、名前。さっきそう呼ばれていたろ?榛名山の榛名でいいんだよな」
「は、はい」
「いや、“さん付け”とか柄じゃなくてよ。嫌ならやめるけど」
「そ、そんなことないです!ありがとうございます」
「へ?」
しまった!「ありがとう」ってなんなんだよ!
「いや、なんでもありません」
「おう、そうか。それじゃ榛名、今日はありがとうな」
「は、はい。こちらこそ」
家族以外の異性と、下の名前で呼ばれるなんて、なんか久し振りだな。
その後、しばらくお花見を抜けていたことをどう言い訳しようかと考えて
いたけれども、花井先輩の乱入(?)で混乱した会場はそれどころではなかった
みたい。結城先輩も稲葉も、そっちのほうに気を取られていたらしく、
(少なくともその日は)私の行動にはあまり感心を示していないようだった。
こちらとしては都合がいいけど、またちょっとそれも寂しいかな。
私は、帰りにカフェに寄って行こう、という美樹の誘いを断って、書店に
寄った。そしてお菓子の作り方についての本を一冊買い、それから家路につい
たのだ。播磨先輩から貰ったスケッチブックの紙を時々眺めつつ。
八雲やサラみたいに、美味しいお菓子が作れたら播磨先輩、喜んでくれるかな。
エピローグ
・東郷邸
「何を読んでるんだ榛名」
「お、お兄ちゃん」
居間でくつろぎながらお菓子作りの本を読んでいると、急に兄が話しかけて
きた。しまった、自分の部屋で読むべきだった。兄にこの本を見られたら…。
「何!お菓子作りの本だと?そうか、そういうことか」
「ちょっと、何勝手に想像してるのよ!何が『そういうこと』よ」
「照れるな照れるな。この兄は全てわかっているぞ」
「何をわかってるっていうのよ!」
「ふふふ、妹よ。お前の兄を思うその気持ち、この東郷雅一しかと
受け取った!!」
「ちょっと待ってよ!勝手に受け取らないでよ」
「照れるな照れるな。ハッハッハッハ」
「何笑ってるのよー!!」その後、しばらくお兄ちゃんの笑い声が頭から離れ
なかった。
・矢神公園
「榛名って、変わった苗字だな」
お花見会の片付けをしながら、ふとそう思う播磨なのであった。
「ん?なんか言ったか播磨」片付けを手伝わされる花井。
「うるせえメガネ。黙って働け」
東郷榛名の憂鬱その1・おわり
播磨があっさり名前で呼んだと思ったら、苗字と勘違いとは……
題名は〜CHERRY BLOSSOM WITH SKETCH BOOK〜か最後のハルヒをもじったものかどちらですか?
最近S5ってひさんだな・・いやもともとか?
播磨×榛名ということで正直最初は期待していなかったが、
いざ読んでみるときっちりと上手く纏まっていて面白かった。
超展開などもなく、“切っ掛け”の部分だけで物語を閉じたのは良い判断だったと思う。
あと、同じ台詞なのに兄が言ったら理屈っぽいと嫌がり、
播磨(他の男)が言ったら古風だと感心するというのは、
同じ兄としてリアルに泣けた。
>>636 主題は『東郷榛名の憂鬱』
CHERRY〜は副題。つまりこの話には続きがあるという事です。
ちなみに涼宮ハルヒとは全然関係がない。
榛名の憂鬱の最大の原因は兄…
>>638 悪気はなかったんだ。
>>635>>639 長編乙です
榛名と播磨はやおい回での台詞以来期待してたので見れて良かったですw
続きもあるようなので期待してます
あと行数とレス数が結構多くて大変そうに感じられたのですが
この板だと容量とか改行規制とか大変だと思うんで専用ブラウザ(Janeとかそういうの)を使うと楽ですよ
>>640 ありがとうございます。
スレへの投下は初めてだったので、今後色々と試してみたいと思います。
続編では、エピローグにも登場した“あの人”を中心に書く予定です。
ハリハルで“あの人”を書かなければ、画竜点睛を欠くというものです。
あの人は俺
というか某氏みたいに感想に全レスとかはやめたほうがいいよ
2chにはそういうの嫌いな人が結構いるし
全レスが駄目ってより、まぁマナーの粋だわな
しない方が無難で波風立たないって所か
嬉しいのは分かるけど、はしゃぎまくってるのはどうかと思うぞ?という感じ
>>641 乙
久々の投稿物だったんで嬉しかったw
でも、SS語りはSSの中で完結!って方が良いよ。次回があるなら楽しみにしてますね
何にせよ昨今のスクランSS界でこういう人は貴重
頑張ってくれ
これからまた盛り上がりを見せてくれると嬉しいね
旗おにとかラブ路線が全然なくて、超姉とかほのぼのとかそっち路線が多いよね
何でだろう
もう原作に振り回されるのが嫌になったんだろ
俺もその口
ほのぼのまったり、絶対ありえないカップリングに癒される
ぶっちゃけラブラブにしたところで「こんなの〜〜じゃない、ちゃんと原作読んでるの?」
と言われるのが関の山
そこに至る過程まで書かないと納得してもらえない
天満の物覚えが良すぎるとか、播磨の告白が成功するとか
リセットや記憶障害が起こらないのはスクランじゃないって言われるしな
>>646 播磨→天満が強すぎて難しいんだよ
オリキャラ化しないようにするためにはそれなりの長編か
近未来のストーリーにしなきゃならないしさ
でもやっぱり評価されてる作品は当然出来るだけオリキャラ化を避けてる作品だから
キャラを捉えるのは一番気をつけなきゃいけないとこだし
それに段階をかなり気をつけててもやっぱりラブラブまで行くと文句言う人もいるしね
IF1の頃の作品見ると今ではありえねーって思うけどあれはあれで面白い
ちょっとくらい遠慮ないほうがいいんじゃないかね
IF1登録完了かな。奈良が登録できないっぽいけど
>>651 なにがなんでも表現したい!って力に満ち溢れてるよなw
良くも悪くも初期衝動のごった煮というか、爆発力がスレに合ったなー
ほのぼの、マターリとか恋愛一歩手前の話とか良作あるし
今でもそういうのが読みたいなあ
プロローグ
約一年前
「しかし、今年の一年もレベル高いよな」
「二年だと2−Cだけど、一年だとどこよ」
「やっぱ1−Dだろう」
「お前もそう思うか」
「一押しはもちろん塚本八雲」
「ああ、スタイルもいいし頭も運動神経もいい。おまけに料理が得意ときてる」
「もう女として完璧だな」
「ただガードが固いんだよな。今まで何人もの男が行って玉砕してるし」
「そこだよな、一番の問題は。そういや、同じクラスの東郷榛名ってのもいいよな」
「やめとけアイツは」
「え、なんで?お嬢さまっぽくて、凄くいいじゃん」
「なんだ、アイツの兄貴知らねえの?2−Dの東郷雅一」
「ええ?マジで」
「妹に告白した男を無理やり呼び出して、『妹にふさわしいかどうか俺が試してやる』とか言って、
ボコボコにしちまったんだとよ」
「うわ、最悪だな。ってか、付き合えたとしても、あの兄貴がセットじゃなあ…」
「綺麗なバラにはトゲがあるってやつよ」
「トゲなんてレベルじゃねえよ、アレは」
東郷榛名の憂鬱その2
〜LIKE A BROTHERS〜
新学期となって私も晴れて二年生。不安と期待の入り混じっていたあの頃とはまた違う、
新鮮な気持ちがある。幸い、一年のときに仲のよかった稲葉や八雲、サラたちと同じクラスになれたのも
本当によかった。私だけ違うクラスになったらどうしようかと不安に思ってたから。
それに、今年は去年までとは何か違う気がする。
「ねえ榛名、お花見のとき播磨先輩と何かあったの」
一緒に登校していた稲葉美樹が急にそんな話を振ってくる。このコは漢字や英単語は覚えないのに、
こういう話はよく覚えているのよね。
「何にもない。何も。何言ってるの」
「ほら、榛名ってお嬢様でしょう?お嬢様っていうのは箱入りで大事にされているから、
逆にああいう不良っぽい人に憧れるのかなあって思って」
「違うってば」
箱入りという点では確かにそうかもしれないけど、だからといって不良っぽい人に
憧れるっていうのは違うと思う。確かにあの人は、見た目は不良っぽいけど、
すごく真面目でちょっと単純
だけど、優しい人。不良なんていう言葉一つでは語れない。
って、なんで私があの人に憧れていることになってるんだろう。
「あ、噂をすれば」
「え?」
「播磨センパーイ、おはようございまーす」
稲葉が、頭一つ飛びぬけた長身の男子生徒に大きく手を振りながら声をかけた。
沢山の人がいる中でよくそんな事ができるな、と感心してしまう。
その勇気の十分の一でもいいから欲しい。
稲葉の声にこちらを認識した播磨先輩は、私と稲葉の二人の顔を見て、
少し考えたような顔をした。
「あ、おお。おはよう。塚本の妹さんのお友達の、ええと…」
「稲葉です、稲葉美樹!ひどーい。まだ名前覚えてくれてないんですかー?」
「ああ、ワリィ…」
年下の、しかも女子生徒に謝るという不良男子生徒という構図がちょっとおかしかった。
でも私たちの名前、覚えてなかったんだ…。
そうだよね。お花見のときお話したくらいだし…。
「おう、榛名。この前はありがとうな」
「え…?」
「迷惑じゃなかったか」
「い…、いや全然」
「そうか。よかった。それじゃな」
「あ、はい」
私は歩いて行く播磨先輩の後姿に軽く手を振った。
また、絵を描いていただけますか、とは言えなかったけど、
名前を覚えてくれていただけでも十分嬉しかった。まだ胸がドキドキしてる。
「・・・・・・」
「ハッ!」
稲葉の眼が、点になってる…。
「榛名」
「なに?」
「やっぱり何かあったんじゃない!!」
「いや、これは…、あ、花井先輩」
「え!!どこどこ?あ、見つけた。花井センパーーイ!!!!」
2年D組。私たちは、進路も似ているのでクラスの顔ぶれもあまり変わっていない。
そして昼休みに、一緒にお弁当を食べるという習慣も変わっていない。
女子バスケットボール部の俵屋さつき、茶道部の塚本八雲、同じく茶道部で、イギリスからの留学生、
サラ・アディエマス。そして稲葉と私の五人。
「やーん、今朝ね。アタシ花井先輩に触っちゃった」顔を赤らめながら騒ぐ稲葉。
「相変わらず好きねえ」とさつき。
「もうテレるなあ」
周りはあきれているのだが、本人は冷やかされていると思っているらしい。
そういうプラス思考も稲葉のいい所かもしれない。
ただ、花井先輩の話になるとうつむいてしまう八雲が不憫だった。
と、まあここまではいつもの昼食の風景なのだけど、ここからが違った。
「ああ、それでそれでね。今朝、播磨先輩にも会ったのよ」
ふっと顔を上げる八雲。サラもその言葉に稲葉の方を見た。花井先輩の時とはエライ違いだ。
「なんかアタシの名前は覚えてくれてなかったんだけどさ」
「ち、違うの美樹!」
「え、何が?」
慌てて言葉を挟んだ私に全員の視線が突き刺さる。私、なに言ってるんだろう。
フライングしてしまった。そんな私の言動にも動じず、稲葉は喋りつづけた。
「でもね、榛名の名前だけは覚えていたのよ。しかも先輩、なんて言ったと思う?」
「何々?」
なぜか小声になる稲葉。そして私を除く全員が彼女に顔を近づけた。
「『おう、榛名。この前はありがとうな』って」
「えええええ!!!!」
不意にクラス中の視線がこちらに集まった。私たちはとりあえず周りに謝ってから再び話しに戻った。
「なんかこう、色々聞きたいことがあるんだけど」俵屋さつきが顔を赤らめながら言う。
「まずなんで榛名って、下の名前で呼んでるの?八雲だってまだなのに」
「サラ…」
やや怒り気味のサラと、それをなだめる八雲。ただその怒りの矛先は、私にというよりも、
播磨先輩に向かっているように思えた。
「だって『榛名』って呼ぶなんて、相当親しくなきゃないじゃない。ってことは、
随分前から播磨先輩と交流があったってこと?」とさつき言う。
麻生先輩にも、『さつき』って呼んで欲しかったのかな。
「ないない」私は高速で首と腕を振った。播磨先輩とまともにお話したのは、
あの春休みのお花見会のときだけ。
「あと、『この前はありがとう』って、どういうこと?」
一体、いつからここは取調室になったの。
ここで花井先輩が教室に入ってきて、いくらか混乱させてくれたらどんなにありがたいことだろう、
と思ったけれど、それはなかった。というか、三年生になってから先輩も忙しいらしく、ほとんど
八雲のいるこの教室にくることもなくなった。例え花井先輩がお花見の時みたいにかき回してくれたと
しても、一時的な逃避であって根本的な解決にはならないだろうな。
それはともかく、絵のことを言うのは、なんだか播磨先輩のプライベートな部分をさらすようで気が引けた。
けどこのまま変な誤解を受けたら、もっと迷惑するだろう。私は色々悩んだ末に、結局言うことにした。
播磨先輩ごめんなさい。こんなにすぐに自白するようでは、良いスパイにはなれそうもありません
(まあ絶対なれないけど)。
本音では、この事を先輩と私の二人だけの秘密にしておきたかったんです。
「絵のモデル?」
私たちがお花見をしている間、播磨先輩絵を描く練習をしていた。それで、桜と少女という構図が
欲しかったらしく、そのモデルをしていた、という事を私は手短にはなした。
「そうなんだ…」八雲がホッとした表情で言った。
「でもなんで播磨先輩って、絵の練習なんかしてるんだろうね」と稲葉。
「そっち方面に興味があるんじゃない?」さつきも私と同様、絵にはあまり関心がないようだ。
「それになんでモデルが榛名なんだろう」と稲葉。
「それは偶然。本当に偶然」私はそこを強調する。
「本当に?事前に打ち合わせとかしていたんじゃないの」
「そんな事全然ないから」
私が稲葉の追及を必死でかわしていると、サラが口を開いた。
「榛名って、落ち着いた雰囲気があるし、それが桜の花に合ってたんじゃないかな」
「そ、そうなのかな」
意外な言葉に驚いた。私、落ち着いてる?確かにまっさん(さだまさし)とか好きで、
年寄り臭いとかいわれたことはあるけど、そんなに落ち着いてるかな。
「で、先輩はどんな絵を描いたの?」今度はサラの追及。
「どんなって、桜の木の下で私が微笑んでて、凄く綺麗だった。鉛筆一本で、よくあそこまで描けるなっ
て思えるほど」
「そうなんだ」サラが目を細めた。そして「今度八雲も描いてもらいなよ」と隣にいる八雲に言っていた。
「それはいいから」顔を赤らめて断る八雲が可愛かった。
やっぱりこのことは播磨先輩に報告しておくべきかな。絵を描いていることを皆に話しちゃったこと。
人に知られたらまずいこと、とは思えないけど、もしかしたら知られたくないのかもしれないし。
でも播磨先輩って、どこに行ったら会えるんだろう。
「播磨先輩なら、よく茶道部の部室に出入してるよ」とサラが言っていたのを急に思い出した。
そうなんだ。だからこの前のお花見でも、手伝いをしていたんだね。でもなんでだろう。
放課後、私は自分の所属する天文部の部室に一旦顔を出してから、
サラに用があるという理由で茶道部の部室に向かった。今日は果たしているだろうか。
あ、何を期待してるんだ私は。
そうこうしているうちに、茶道部の部室にたどりついた。
まあ天文部の部室のすぐ近くなんだけどね。
「失礼します」ノックをしてドアを開け、そして中を見ると、誰もいない。
と思ったら一人の女子生徒が立っていた。
「誰?」
茶道部部長、高野晶先輩だった。さすがに今日は普通の格好をしている。
「あの、天文部の東郷榛名です。はり…、いや、サラはいないかと思って」
「あなたは確か」
「はい、茶道部(そちら)の塚本八雲さんやサラと同じクラスの」
「そう…」
よく見ると高野先輩はティーカップを持っていた。そのカップをテーブルに置くと、先輩は言った。
「残念ながら“播磨くん”は来ていないわ」
「あ、そうですか」
「もうすぐしたら来るかもしれないけど、待ってる?」
「いえ、また来ます」
「そう、いつでもいらっしゃい」
「はい。失礼します」
そう言って私はドアを閉めた。
あれ?
あれあれ?
私はサラのことを聞いたのに、なんで高野先輩は播磨先輩のことを答えたのだろうか。
え?え?
確かに私は、播磨先輩のことを知りたかったけど、でも…。
どこまで知ってるんだろう。
私は高野先輩に対して、得体の知れない恐怖をその時はじめて感じた。
花井先輩が苦手とする訳だ。
とりあえず部室に戻って気分を落ち着けようと、早足で部室に行こうとしたら、
急に目の前が真っ暗になった。
「あ痛!」
柔らかい感触だったので、誰かとぶつかったらしい。その瞬間バランスを崩しそうになったけれど、
なぜか倒れることはなかった。
「ごめんなさい」
「おい、大丈夫か」
「へ?」
よく見ると、長身でサングラスの男の人がそこにいた。
「播磨先輩…」
「なんだ、榛名か」
「あ…」
今の状態を冷静に分析してみると、倒れそうになった私の身体を播磨先輩が
両手で抱きかかえているのだ。
これってもしかして、先輩に抱かれてる状態?
「おわ、スマンスマン!倒れそうになってたんで、つい」
「いえ、悪いのはぶつかった私ですから」
私は体勢を立て直し、しっかり播磨先輩と向き合った。
私は恥ずかしさと驚きで、文字通り、顔から火が出そうな感覚に襲われた。
「おい、大丈夫か」
「はいい…」
私は大きく息を吸った。まだ心臓の鼓動は激しいけど、少しは冷静になれたと思う。
「それでお前、ここで何やってるんだ?」
「あの、実は…」
学校の屋上。
「どうして屋上なんですか?」
「いやな、人に見られたらまた色々言われるじゃねえか」
確かにそうかもしれない。私ったら、配慮が足りないな。
「実はこの前の、お花見会の日があったじゃないですか」
「ん?ああ、あれか」
「そこで、先輩が絵を描いていたこと、皆に言ってしまいました」
「ええ?」
「ご、ごめんなさい。あの時二人で何してたのかって聞かれて、私、隠すことができなくて」
「…」
やっぱり、怒っちゃったかな。
「謝るこたあねえよ。だって悪いのは勝手にモデルを頼んだ俺なんだから」
「先輩」
「やっぱ、色々迷惑かけちまったな。そうだ、なんかお礼させてくれよ」
「え?え?え?」
一体何を言い出すんだろう、この人は。
「迷惑かけたままってのも、気が引けるしよ」
「そんな、私そういうつもりじゃあ」
「わかってるよ。だがこれは俺の気持ちの問題だし」
「いえ、本当、そういうの結構なんです。失礼します」
私はそう言うと、播磨先輩を残して逃げるようにその場を離れた。しかし天文部の部室に戻ってから
すぐに後悔した。ああどうしよう。あんな風に別れたら私が先輩のことを嫌ったと思われるんじゃない
かな。全然そんな事ないんだけど、そんなの分かるわけないよね。やっぱりちゃんと謝っておこうか。
いや、謝ったら益々先輩のことを嫌っていると勘違いされそう。
「どうしたの榛名、具合でも悪いの?」
「あ、いえ。大丈夫です」
部長の結城先輩が心配そうにこっちを見ている。やっぱり変だよね、私。
でも翌日、事態は別の意味で悪い方向に向かっていたのです。
*翌日*
何だか変な日だ。朝登校してみると、周りの目がどうもきになる。
また何か、俺の噂をしているのか。単なる自意識過剰かもしれんけど、やはり今日はいつもと違う。
教室に来ても、周りの連中の態度がよそよそしい。
「ようお嬢、なんかあったのか」
俺は近くを歩いていたクラスメートのお嬢こと、沢近愛理に聞いてみることにした。
「さあね、自分の胸に聞いてみれば」
そっけないのはいつもの事だが、今日はいつもより三割り増しぐらい殺気がこもっている
ような気がした。
おいおい、一体何があったんだ。俺が何をしたっていうんだ。寝不足の頭を回転させてみるが、
特に思い当たるフシもなく、俺は混乱した。
「やっぱ播磨は違うよな…」
「また播磨だ…」
「学校の中で…」
「妹キラー」
「浮気か?」
やっぱり俺の噂じゃねえか。今度は聞き間違いなんかじゃねえぞ。だいたいなんだ、
浮気とか妹キラーとか。
「おい周防、ちょっと来てくれ」
「ええ?なんでアタシが」
俺は同じくクラスメートの周防美琴を廊下に呼び出した。お嬢は全然相手してくれないし、
高野は何をたくらんでいるのかわからんし、ましてや天満ちゃんに聞くわけにもいかないので、
消去法で最後まで残った周防を選んだわけだ。
「一体どうしたっていうんだよ、この空気は」
「はあ?アンタが一番よく知ってることだろう?」
「何がだよ」
「惚けるのもいい加減にしろよな。沢近がかわいそうだろうがよ」
「お嬢のことはどうでもいい。とにかく、なんか変な噂が立っていることだけは確かみたいだな。
知ってることを教えろ」
「教えろって播磨、何にも知らないのか?」
「わからねえからこうして聞いてるんじゃねえか」
「アタシの口から言うのか…」なぜか赤面する周防。
おいおい、どうなっちまってるんだ?
どうも昨日の放課後、旧校舎で二年の女子と抱き合っていたという噂が立って
いるらしい。
おいおいどういうことだ。大体なんでそんな噂が立ってるんだ。そりゃあ、
ちょっと倒れそうになった女子生徒を支えたりはしたけれど、抱き合ったとか
そういうレベルじゃねえぞ。それに下心なんてサラサラない。ってか天満ちゃん
が目すら合わせてくれねえ。なんかすげえ怒ってるし。いや誤解だって。といっても
この状態で誤解だ誤解だと言っても、益々事態が悪化してしまうことは目に見えて
いるし。もういっその事早退しちまおうか。いや待て待て播磨拳児。ここで早退し
たら、その噂が真実ですよと言っているようなものじゃないか。ここは何とか誤解を、
少なくとも天満ちゃんだけでも誤解をとかなければなるまい。しかし天満ちゃん
は一度怒ると問答無用状態になっちまうからなあ。どうすりゃいいんだよ。
周防が協力してくれるとは言うけど、コイツも俺が言うのもなんだが、あんまり
頭良くねえから事態の打開できるような決定的な戦力にはなりえないだろう。
だからと言って高野はやばい。やば過ぎる。チンピラのケンカに核兵器を投入
するようなもんだ。仮に高野に頼んだとしても、天満ちゃんは俺と同じくらい
バカだから、高野の論理的な説明に納得するとは思えない。お嬢は論外だ。
午前中の授業が終っても、俺はまともな思考の整理ができていなかった。
授業間の教室移動でも、天満ちゃんは一切俺の方を見ず、一言も口を聞いてくれ
ない。本当だったら、噂をしている連中を全員ボコボコにしてやりたい所だが、
今はそんなことをしている場合ではない。
そうこうしている内に昼休み。俺は決心した。天満ちゃんに話をしよう。
俺にはやましい所なんて一つもないと。そう思った刹那、教室の外から声がした。
「播磨拳児!!この東郷雅一、貴様に一対一の勝負を申し込む!!!」
「はあ?」
一瞬何が何だかわからなくなった。
「何しに来た東郷(マカロニ)。俺はこれから大事な用があるんだ」
天満ちゃんに誤解を解いてもらうという。
「大事な用だと?フッ、俺との対決以上に大事なものがあるとでもいうのか?」
奥に目をやる東郷。その視線の先には…!
塚本天満。
そうか、そういう事か!
前々から思っていたが、やはり東郷は天満ちゃんに惚れてるな。だとすれば
俺たちは相容れない仲だった訳だ。朝から変な噂がたっていたけど、コイツの仕業
じゃないのか?そうだ、きっとそうだ。俺を挑発するためにわざと変な噂を流しや
がった。どこまでも汚い野郎だ。その曲がった根性、叩きなおしてやる。
「上等だマカロニ。ここじゃあ迷惑だから、屋上へ行くぜ」
「ふっ、望むところだ。お前がアイツにふさわしいかどうか、俺が確かめてやるぜ」
この野郎、天満ちゃんを『アイツ』呼ばわりしやがって。許さん、益々許さん。
待っててくれ天満ちゃん。こんな奴は俺が叩きのめしてやるからよ。
*
ああ、嫌な予感がする。
「どうしたの榛名?」稲葉が私の顔を覗き込みながら言った。
「いや、ちょっと気なることがあってね」
「ふーん」
去年のこと。私が一年生だったとき、私に告白してきた二年の先輩がいた。
別に付き合うつもりはなかったのだけど(確か佐野とか言ってたかな)、
どこで話を聞きつけたのか、お兄ちゃんがその人に対して決闘を申し込んで、
殴り倒しちゃった。お兄ちゃん曰く、「愛する人も守れないようで、俺の妹と
付き合う資格などない」とか。私を一生独身にさせとくつもりだろうか。
とにかくお兄ちゃんは体格もいいし、小さい頃から格闘技を習っていたから、
ケンカなら負けない。おかげで変な人から声をかけられるという事はなくなったけど、
普通の男子生徒との交流も制限された。私自身、引っ込み思案なところがある
ことは事実だけど、お兄ちゃんの影響も半分は、いや大部分はあると思う。
「おおい!三年の東郷が決闘するってよ!」
頭が痛くなってきた。
「ねえ榛名、大丈夫?」
心配する稲葉をよそに、私はどこか遠くに逃げ出したい衝動に駆られた。
「相手は誰だよ」
「あの播磨先輩だって」
「播磨?」
私はその言葉を聞いて顔を上げた。
どうしてお兄ちゃんが播磨先輩と決闘を?
あ、昨日のことか。確かに昨日、私は播磨先輩と二人きりで会って話をした。
でもそれだけ。いや、それだけでも噂になれば尾ひれはつくし、何よりあの
お兄ちゃんには十分過ぎる燃料だと思う。生徒会長の選挙にも落ちてたし、
最近何かとエネルギーを持て余しているようなので、暴走をはじめたかもしれない。
「止めなきゃ」
「ちょっと榛名?」
私は立ち上がって近くの男子生徒に、決闘の場所を聞いた。屋上。
その言葉に少しドキリとする。
昨日、播磨先輩と二人きりになった場所だ。でも今はそんな事を考えている暇はない。
私が昼食を片付けて教室を出ると、稲葉や八雲たちがついてきてくれた。
できれば“アレ”が暴れている姿は、あまり友達には見せたくないのだけど、
一人では不安であることも事実。
私は友達が見ているのもかまわず、一段飛ばしで階段を駆け上り、屋上に出た。
そこには二人の長身の男子生徒と、数十人の見物人がいた。
ただし、私が覚えているのはここまで。
あまりに必死になりすぎたためか、そこから先の記憶がないのです。
「いやあ、しかし凄い蹴りだったな」
「あの東郷(マカロニ)が崩れ落ちるんだから、そうとうなもんだぜ」
「ってかあの上段回し蹴りをくらって立っていられる奴なんていないよ絶対。
K−1の選手でも無理」
「確かにそうかもしれん」
「やっぱ血筋かねえ」
気がつくと私は保健室のベッドの上で寝ていた。ベッドのすぐ側には、稲葉、
さつき、それに八雲とサラがいた。
「皆、どうしたの?」
「どうしたの、じゃないわよ。大丈夫なの?」
「え、何が?」
私がそう言うと、稲葉たちはお互いの顔を見合わせた。
「何も覚えてないの?」信じられないというような口調で話しかけるさつき。
「だから何を?」
稲葉やさつきは、私が屋上でやったことを事細かに説明してくれた。屋上に
上がった私は、お兄ちゃんの元に駆け寄って、脚に一発と、頭部に一発の計二発
の蹴り技をやってしまったらしい。そして倒れたお兄ちゃんと一緒に、自分も
倒れそうになった所を、播磨先輩に抱きかかえられたと。そして、播磨先輩が
私を抱えてこの保健室に…。
話を聞くだけで赤面してしまった。なんて勿体無い…、じゃなくてなんて恥ず
かしいことをしてしまったんだろう私は。
お兄ちゃんは、家の車が迎えに来て病院に行ったらしい。実の兄を病院送り
にしてしまった…。
それより、播磨先輩はどうなったんだろう。私は今すぐにでも稲葉をゆすって
聞きたいと思ったけれど、理性がそれにブレーキをかけた。
「それでその…、播磨先輩は」
消え入りそうな小さな声で聞いてみると、サラが答えた。
「播磨先輩は、お仕事があるからもう帰られましたよ」
「お仕事…。そうなんだ」
高校生なのに、お仕事ってなんだろう。
というか、播磨先輩は目の前で飛び蹴りをするような女は嫌いだろうな。
いや、そんな女が好きな男は多分、いないだろう。ああ、昨日の態度といい、
今日の失敗といい、完全に嫌われた。
翌日、私は重い足取りで学校へ向かった。学校では案の定、“キックの女王”
みたいな噂が流れていた。ああ、やってしまった。学校来るんじゃなかった。
こういうの、お兄ちゃんは好きかもしれないけど、私にとっては拷問以外の
何者でもない。
あと、お兄ちゃんの方は、なんとか入院にはならずに済んだよう。
身体だけは丈夫でよかった(自分で蹴っといてなんだけど)。
私はその日一日、恥ずかしさに耐えながら授業を受けた。
そして放課後。天文部の部室に行くと、遅れてきた結城先輩が私を見て、
高野先輩からと言い、一つの茶色い封筒を手渡した。中を開けてみると、
「屋上へ」と綺麗な文字で書かれていた。なんでこんなことを。まあこういう
手の込んだことをする辺りは高野先輩らしい。それにしても結城先輩は、私に
関する変な噂が立っているにも拘らず、いつものように接してくれた。優しい。
でもその優しさが今は痛い。
いつもより数段重い足取りで階段を上り、屋上に出てみると低気圧が接近して
いるせいか、風が強かった。
「よう、榛名」
そこにいたのは高野先輩ではなく、サングラスをした播磨先輩だった。
「あの…、その…、昨日は…」
言い訳やごまかしをしようにも、記憶がないので何も言う事ができない。
どうすればいいのだろう。誰か教えて。
「いや、昨日は悪かったな。事情がよく飲み込めなくてさ。お前が起きてから
話を聞こうと思ったんだが、急に用事ができてしまって学校を早退したんだ。
そんで、高野に頼んで今日お前を呼び出してもらったわけ」
「はあ…」
播磨先輩、平静を装ってるのかな?だって目の前で回し蹴りをするような
女子生徒相手に普通に接することなんかできないよ。
「大体なんで、お前が東郷を…」
「え、それはその…」
「もしかして」
はい、そうです。私の実の兄で…。
「知り合い?」
「え?」
「東郷だよ。アイツのこと知ってるのか」
「え、まあ」
恐らく、この学校の中では一番よく知ってると思う。
「仲いいの?」
「いや、あんまり」事実だけどちょっと胸が痛んだ。
「そうか…」
「え?」
「わかったぞ」
「何がですか?」
「東郷(アイツ)が俺に喧嘩ふっかけてきた理由だ」
「理由?」
ああ、やっぱり兄妹ってバレちゃうか。いや、別に隠すつもりはなかったん
だけど。普通はわかるよね、同じ苗字だし。でも知り合いの妹だってわかったら、
やっぱり気まずくなるかなあ。
「アイツ、お前のことが好きだったんだろうな」
「はい?」
「アイツがお前のことを好きで、俺と榛名の間で変な噂が立っちまったから、
勘違いしたんだよ。それで俺に決闘を申し込んできた。そうだろう?」
「はあ…」
間違いではない。間違いではないけれど、何か重要な事柄が抜けているよう
な気がする。
でも。
「そうだよな、若い頃はそういう勘違いもあるよなあ。うんうん」
なんか納得しているようなので、そのままにしておくことにしよう。
お兄ちゃんのことは、また説明するとして…。
「あの、播磨先輩」
「ん?なんだ」
「その、目の前で回し蹴りをするような女って、やっぱりダメですか」
「え…?」
ほんの少しの間、時間が止まった。
風が、強い。
「いいんじゃねえの。元気があっていいよ」驚くほどあっさりと、播磨先輩は
答えた。
「え、でも…」
「世の中暴力的な女はいくらでもいるわ。金髪とか物理教師とか…」
「はあ…」
少なくとも播磨先輩は、私がやった行為を何ら気にしていない様子だった。
やっぱりちょっと変かな。でもそういう所が魅力的なのかもしれない。
「そうそう、高野から頼まれてよ、これを渡してくれって」
「え、何ですか?」
播磨先輩は、ポケットから茶色の封筒を取り出して私にくれた。あ、これは
さっき結城先輩から貰った封筒と同じやつ。
封を開けて中を見てみると写真が入っており、そこには、播磨先輩にお姫様抱っこ
をされている私の姿があった。その足元には長髪の男子生徒が横たわっている。
これは、昨日の屋上の…。
「きぃゃあああああ!!!!」
「おい!どうした榛名」
私の叫び声は、強い風の中にかき消されて行った。
エピローグ
まったく訳のわからん一日だった。いきなり変な噂が流れていると思ったら、
昼には東郷(マカロニ)と決闘。しかもその結果は、女子生徒の乱入による中止。
昼からはジンマガの担当者と急な打ち合わせが入ったので、学校を早退して
しまい状況がよくわからなかった。
そして次の日、屋上で榛名に事情を聞いてから帰ろうとすると、廊下で東郷に
会った。首のコルセットが痛々しい。
「おい東郷(マカロニ)…、首、大丈夫か」
「ふっ、女って生き物は手加減が出来ないみたいで、俺も命懸けだぜ」
「それは大変だな」俺は絃子や金髪の顔を思い出しながらちょっと同情した。
「ところでブラザー」
「何がブラザーだ」
「照れるなよ、俺たちはもうブラザーだろ?」
「いつから兄弟になったんだよ!」
「この東郷を倒したからには、お前を認めざるを得ないじゃないか」
「おい、大丈夫か?お前を倒したのは俺じゃなくて…」
「愛の力って、やつだな」
頭を蹴られておかしくなっちまったんだろう。ダメだこいつ、早くなんとか
しないと…。ってか天満ちゃんの誤解はまだ解けてなかったんじゃないか?
くそ、こんな変態に構ってる暇はない。そっちの方を早くなんとかしないと。
ちくしょおおお!!!
つづく
次回予告
稲葉が播磨に急接近!?
緊迫の第三話!
来週日曜日(このスレが残っていれば)投下予定
>>678 GJ
勘違いが面白いです
というか女の子な榛名がかなりかわいいw
にしてもやっぱスクランはいいキャラが多いなぁ
八雲のヤンデレ化希望
>>678 乙です。
やっぱ播磨は誤解される運命なのね。
それにしても播磨と東郷の絡み楽しいなぁ。
過疎ってんな
久しぶりに来て見ればなんとGJな作品が…日曜までは定期的に保守ることにしよう
685 :
小ネタ:07/11/08 00:50 ID:bYTM97LM
暗い廊下を抜け明るいリビングへ入るドアを開けると、目の前にはべろんべろんに酔った絃子達の姿があった。
絃子が言うには同年代の女で気が合った、らしい。
バイト帰りの疲れた体に悪いその光景にため息を一つ、俺は何も見なかったものとして
とっとと自分の部屋へと帰ろうとすると、一緒に飲んでいる葉子さんや妙さんに呼び止められた。
「ねぇ拳児君。君の部屋からこぉんなの見つけたんだけど」
葉子さんの手にはラノベと呼ばれる物やギャルゲとかいう恋愛のゲームがある。
もちろん俺が買ったわけではなくて、編集さんから渡されたものだ。編集さん曰く、俺の漫画には可愛げが無いそうだ。
妹さんと二人でギャルゲをやっている時には、これなんていう罰ゲームだよと泣きそうになったが、今も十分に罰ゲームに近い。
「ハリオが望むのなら私と本物の恋愛とかしても良いんだよ?」
妙さんは悩ましげな視線を送ってくるが、とりあえず二人の手の中にある物を取り返そうと近づいていく。
ああ、酒の臭いで酔いそうだ――
酒の臭い、キツイぜ……。
あれ? 良い気分になってきた?
頭がぼんやりして宙に浮いてる気分だ……。
かゆ……い……うま……。
「はっ、イカンイカン。妙さん葉子さん、返して下さい。それは編集さんからの借り物で、
今日中に目を通しておかないと駄目なんッスから」
本当は妹さんにアドバイスを聞きつつやる予定だったのだが、居た堪れない様子の妹さんに中断してしまったのだ。
「またまたそんな事言ってぇ、ホントは拳児くんの物なんでしょ?」
葉子さんは、俺の肩に腕を回そうとして回しきれないでしな垂れかかった体勢を器用に保ちつつ、
『分かってる。お姉さんは分かってるから心配しないで』という、なんとも迷惑な誤解をしているらしい。
生暖かい目が痛いのでやめてください。
絃子はただ黙って妙さんに酌をさせていたが、テーブルをバンと叩くとこう叫んだ。
「なら、ここでやればいい。どうせ、拳児君に女の気持ちなんて分かる訳ないし、私達三人がついているよ!」
めったに酔わない人間が酔うと厄介なもので、葉子さんも妙さんも絃子の意見に賛同しつつ、
これもまた担当さんから借りたゲーム機のセッティングを始めてしまった。
686 :
小ネタ:07/11/08 00:51 ID:bYTM97LM
「さぁ拳児君! 大船に乗ったつもりで任せてくれたまへー!」
「オトナの恋愛を知ってる私達なら、こんな子供だましのゲームなんて簡単なものだわ!」
「ハリオっ、私達に任せといて!」
酒に絶望的なほど弱い俺がここまで良く頑張ったものだと感心しつつ、
どうせゲームをやらなければならないものだし、この際、場の流れに乗っかってみるのも悪くは無い。
と、部屋に充満するアルコールの香りに身を任せていった――
「あの……先生方。大丈夫でしょうか」
バイトもない休日にわざわざ来てくれてる妹さんは、部屋の隅で体操座りしている三人の女教師を心配そうに見ている。
ちょっと近づきがたいオーラに遠めに見ることしか出来ないが、結局の所、主役のオーソドックスな女の子を
なんとかクリアした程度で朝を迎えた事に軽いショックを受けているらしい。
軽く捻ってやんよ。と意気込んではみたものの悉く選択肢をミスしてしまう姿が痛々しく、
俺はとっとと寝てしまったのだ。俺と妹さんがほんの数時間でクリアした子に丸一晩かけたのだから、
そのショックは大きいのだろう。
「私達、恋愛下手なんですかね……絃子さん、姉ヶ崎先生」
顔を上げない絃子と妙さんにかける葉子さんの言葉に、俺と妹さんもちょっぴり目尻が熱くなりそっと部屋を出ていった。
俺と妹さんはこれを漫画にしようと下書きまでしたのだが、それは漫画のファイルの中にそっとしまっておいてある。
編集さんに見せた所、ペンを入れてくれればすぐにでも掲載できるよ!と興奮気味に言われたのだが、
俺と妹さんは首を横に振って持ち帰ったのだ。
部屋の隅で落ち込んでいる三人の女性の姿は、若い俺と妹さんの心に今も強く残っている……。
>>686 >俺と妹さんもちょっぴり目尻が熱くなり
俺と妹さんもちょっぴり目頭が熱くなり、です
すみません
乙。
でもちょっと意味がわからんかったので解説希望
>>688 いい歳した大人が酔いにまかせてはっちゃけると、
素に戻った時の引き戻し具合は半端じゃないって感じなのですが
まさしく、今の自分と同じ感じだというorz
>>686 乙です
ニヤニヤが止まらない展開で面白かったです
ギャルゲで落ち込む3人かわいすぎw
今週のマガジン読んだけど、スクランはああいうギャグの方が面白いなw
3年編まであるんだろうし、さっさと3年編に入ったほうが良いのになぁ
ギャグは難しい
>>692 自分のSSがって事なのか、スクランとかのギャグ漫画が難しいという事なのか良く分からんよ
芸人だって作家ついてて複数人で作業してるし、ギャグが一番難しいべ
確かにギャグ書く時が一番辛そうではある
独りよがりで寒いだけってのはいたいし
IF1を終えてIF2を進めているんだが、はないたちの夜〜みたいにオチが選択肢で分かれているようなのは
オチ部分を個別に分けて文章中にリンク入れてそれぞれ移動するとかがいいのかな?
それとも気にせず丸々コピペで構わないのか
【前回までのあらすじ】
「小僧、SSは好きか」
俺は小さく頷いた。
次の瞬間もの凄い衝撃とともに、俺は床に叩きつけられた。五島玄界の拳に
対して腕を十字にして守りを固めてみたが無駄だった。
「イ…イキナリ何するんだ!!」
「ではこの稲葉は何だ?ここで登場させる必要はねぇじゃねえか…」
「そ…、それは…。最近稲葉が人気だから、描いとけばウケがいいかなと思って…」
一瞬の殺気。
「ぐほ!!」再び圧倒的な右ストレートで俺は吹き飛ばされた。
やばい、次くらったら死ぬかもしれん。いや、マジで。
「…この主人公の娘は…」
「そ…、それは…」
殺される!好きな娘(東郷榛名)がモデルなんて言ったら殺される!!
「…コイツはいい!下手クソだが魂を感じる!!」
「・・・・・・!!」
「だが小僧…、お前は勘違いをしている…」
「な…!?」
「SSは逃げ場じゃねえぞ!!」
図星だった。そして殴られた時以上の衝撃が俺を襲った。
「船首回頭!!!野郎共!陸へ戻るぞ!!」
「な!?今から…!?」驚く船員たち。
「な…、なぜ…?」
「わからねえか……」
「お前の夢はここにはねえ!!行け!!陸へ!!」
数日後。
「すいません、俺のために…」
「陸も海も厳しさはおなじだ!やるだけやってみな!!」
そういい残して、船は港を出た。
師匠…、俺は…やるぜ!
しかし一つ気になることがある。
「シェイシェイ」
「ニーハオ」
ここどこだ?
プロローグ
朝の矢神坂を登りながら、私は見覚えのある二人を見つけた。
「おはよう」
私が後ろから声をかけると、二人は私の方を見て笑顔で答えた。
「あ、榛名。おはよう」
「おはよう」
クラスメートのサラ・アディエマスと塚本八雲の二人だ。
「あれ?今日は稲葉と一緒じゃないの」私の顔を見てサラが言った。確かに
私たちは、いつも一緒に登校しているのだけど、今日彼女は、花井先輩と一緒
に登校するとか言って、早めに家を出たそうな。果たして成功したのだろうか。
「そうなんだ。ハハハ…」サラの笑いは、明らかに苦笑だった。
稲葉がいない以外は、ごく普通の登校風景だったのだけど、ここからが
ちょっと違った。
「あれ?播磨さんじゃない」そう言ってサラが立ち止まり、後ろに向かって
手を振った。そこには、サングラスをかけた背の高い生徒が歩いている。
「よう、妹さん…、と、その友達…」
相変わらず人の名前を覚えない播磨拳児先輩だった。
「あの猫みたいな娘は休みか?」
一応、稲葉の存在は認識しているようだ。
「何か用があるみたいで、早めに登校しているみたいですよ」私の代わりにサラ
が答えた。
「ふーん」播磨先輩は、いかにも関心なさげな返事をした。
私の前には、八雲とサラが二人並んで歩いている。そして私の隣には…。
「ん、どうした?」
「いや、何も」
思わず横顔を見つめてしまった。何やってるんだろう、私。
「あの、播磨さん」不意に、八雲が後ろの播磨先輩に対して声をかけた。
「どうした、妹さん」
「身体、大丈夫ですか」
「え?」
「寝不足じゃないですか?」
「あ、いや。ここん所忙しくてさ」
「ちゃんと食べてます?」
「まあボチボチ」
「体調には気をつけてくださいね」
「う…、ああ。すまねえ」
播磨先輩、体調あんまり良くなかったんだ。全然気がつかなかった。
「八雲は播磨さんのことならなーんでも知ってるんだもんね」嬉しそうに言う
サラ。
「サラ、そんな事ないから…」赤面して顔を伏せる八雲。
播磨先輩は、ちょっと困ったような顔をして歩いていた。
八雲は播磨先輩のことなら、何でもわかるのか。私は全然わからなかった
のに。
その日の夜、東郷邸にて。
「ん、どうした榛名」
「お兄ちゃん、何か良い事あったの?」
「わかるか妹よ。フッフッフ。実はこの前の模試でな…」
お兄ちゃんの考えてることなら、よくわかるんだけどなあ…
(別に知りたくもないんだけど)。
東郷榛名の憂鬱その3
〜MY FAVORITE PLACE〜
動物園?
ゴールデンウィークも終った五月の中旬。初夏を思わせるような強い日差し
を感じる昼休み。私は友人の塚本八雲から、動物園に行かないかと誘われたのだ。
「でもなんで動物園なの?」
「まだ決まったわけじゃないんだけど」
「へへへ、じゃあ私から説明しようか」悪戯っぽい笑みを浮かべたサラが言った。
「いいよサラ。私が説明するから」
八雲の説明によれば、播磨先輩が色々とお世話になった八雲に対してお礼が
したいという事で、どこかに連れて行ってくれることになったそうな。でも二人
きりだと関係を疑われるので、誰か友達と一緒に行ける所がいいのではないか、
という話になったらしい。
「それで、動物園?」
「私、遊園地とか苦手だし」
そもそも八雲は、人が多い所はあまり好きではない。
「でもそれって、デートの誘いだよね」稲葉が目を輝かせた。こういう話題は
本当に好きだよね。
「そう思われないように、こうして友達を誘ってるんでしょう、播磨さんは。
ね、八雲」とサラ。
「ああ、でも動物園なんてここ何年も行ってないなあ。久しぶりに行きたく
なっちゃった。ねえ八雲、いつ行くの?」なんか稲葉が一人で盛り上がり
はじめてきた。
「それは、来週の日曜日という話で」
「ああゴメン。その日はバスケの試合があるの」とバスケ部の俵屋さつきが言った。
もうすぐ高校総体の予選とかもあるし、週末は何かと忙しいらしい。
という事で、八雲、サラ、稲葉、そして私の四人と播磨さんを含めた五人で
動物園に行くことになったのです。
稲葉たちと一緒とはいえ、男の人と遊びに行くなんて久し振り。一体どんな
服を着ていけばいいのかな。クラスの男子生徒と一緒にカラオケに行ったとき
は、そんなこと全然考えていなかったのに、なんで播磨先輩のことになると
こんなに悩んでいるんだろう。十代向けのファッション雑誌を眺めながら私は
色々と迷っていた。もっと他に考えなきゃいけないことがあるような気もするん
だけど、今は目の前のことで頭が一杯だ。
そうこうしているうちに約束の日がやってきた。早く来て欲しいという思いと、
まだ心の準備ができていない、という気持ちが交錯してる。思えば、二人きり
ではないけれど、播磨先輩と休日に遊びに行くというのはこれがはじめてだ。
一体どんな一日になるんだろう。
当日、時間前に待ち合わせの場所の駅前広場に行くと、サラと八雲が待って
いた。稲葉はまだのようだ。
「あれ?稲葉は」なんかどこかで聞いたことのあるような台詞をサラが言う。
「もうすぐ来ると思うんだけど…」
「あ、もう皆きてる、ホラ、こっちこっち」
遠くの方から稲葉の声がしたので、振り向くと思わず声を失ってしまった。
「ホラ先輩。急いで急いで」
「こら、手を引っ張るな!まだ時間はあるじゃねえか」
なぜか稲葉が播磨先輩の手を引っ張ってこっちに来ている。これは予想外。
「なんで稲葉が播磨さんと一緒にいるの?」サラが私(と恐らく八雲)の思い
を代弁してくれた。
「いや、行くときたまたま会ってな。こいつが急げ急げって言うもんだから」
「女の子を待たすなんて許されないよ、ねえサラ」
「まあ、そうだけど…」
どうでもいいけど、稲葉はいつまで播磨先輩の手を引っ張っているんだろうか。
「ねえ榛名、アタシ動物園なんて久し振り。榛名は行ったことある?」まるで子供
のようにはしゃぐ稲葉。
「私は、日本の動物園ははじめてかな」
「そっか、榛名は帰国子女だったもんね。そうなんだ」
「播磨さんと一緒に動物園に行くと面白いんだよ」サラがまた笑みを浮かべながら
言った。
「え?先輩と一緒に動物園に行ったことがるの?」
「う、うん。何回かね」
八雲とは仲がいいとは聞いていたけれど、サラとも仲が良かったんだ。いや、
茶道部によく出入しているというから、茶道部のサラと仲が良くても別に不思議
ではないか。
「…合併号は良かったですね」
「ああ、お陰で助かったよ」
八雲と播磨先輩が前のほうで何か話している。一体何の話をしているのだろう
か。興味はあったけど、プライベートな部分に踏み込むようで恐かった。
動物園にはバスですぐについた。私にとってははじめての訪問だったので、
要領がよくわからなかったけど、サラや八雲がチケットの買い方や入門の場所
などを教えてくれた。
でも私たちがチケットを買おうとすると、播磨先輩はそれをとめた。
「いや、皆の分は俺が出すから」
「いえ、それは悪いです…」八雲が遠慮がちに言う。
「いいんだ。誘ったのは俺の方だし。これくらい俺に奢らしてくれ」
「わー、先輩カッコイイー!」播磨の言葉に稲葉がまたはしゃいだ。
別に播磨先輩は、カッコいい所を見せようとしたわけでもなく、自然に
振舞っているのだろう。ちょっと照れた顔をしながら、先輩は五人分のチケット
を買い、私たちに手渡してくれた。
「動物園とか久し振り。ねえ先輩、私ライオンが見たい!」
「猫娘。お前は猫だから、同じ猫科のライオンが好きなのか」
「もー!アタシは猫じゃないニャー!」
「やっぱり猫じぇねえか」
「ニャー!引掻いちゃうぞ!」
「わ、よせ!痛い痛い」
いつの間にか播磨先輩にとっての稲葉のあだ名が猫娘になっていた。
それにしても…。
「あの二人、あんなに仲良かったかなあ?」サラが播磨先輩と稲葉の二人の姿
を見ながら言った。
「元々相性は良かったんじゃないかな」八雲が複雑そうな表情で答える。
そういえば、沢近先輩や周防先輩と一緒にカラオケに行ったとき、稲葉は
播磨先輩のこと狙うとか言っていたような。
「おい絡みつくな!」播磨先輩の腕に絡みつく稲葉。その様子は、猫という
よりも蛇のようだった。
「本当は嬉しいくせにいー」
「嬉しくねえよ」
見かねたサラが先輩と稲葉の間に入って、稲葉を引き離してこっちに連れてきた。
「どうしたの?サラ。何怒ってるの」当の本人はなぜサラが怒っているのか理解
できていないらしい。
「どうもこうもないよ。稲葉、アナタ花井先輩が好きなんじゃないの?」
「そうだよ。そんなにはっきり言わなくても」顔を赤らめる稲葉。
「じゃあなんで播磨さんにあんな風に絡みついたりするのよ」
私は心のなかで「うんうん」と頷いていたけれど、それは外から悟られない
ようにした。
「ええ?播磨先輩はなんか違うっていうか」
「何が違うのよ」サラも段々イライラしてきたようだ。こんなキャラだったっけ?
「その、お父さんみたいな感じ。甘え易いっていうか」
お父さん?稲葉は播磨先輩のことをそんな風に見ていたのか。
「だから安心して八雲」そう言って八雲の肩を軽く叩く稲葉。
「え、なんで私に」
「おおい、お前らそこで何やってるんだ」一人取り残された播磨先輩が呼ん
でいる。
「はーい、今行きまーす」
さっきサラに注意されたにも拘らず、再び播磨の側に行く稲葉。本当に
わかっているのかしら。
私たちは播磨先輩と一緒に動物園を回った。熊や鹿、ゴリラ、マントヒヒ、
猿山の猿、孔雀など色々な動物がいる。不思議なことに、播磨先輩が動物の
前にやってくると、動物たちが彼の近くに寄ってくるのだ。先輩が一言二言
言うと、彼ら(動物たち)は色々な反応を見せる。
「どう?播磨さんは動物たちと意思の疎通ができるの」サラが嬉しそうに
語った。
俄かに信じられないけど、播磨さんならできそうな気がした。
中には積極的に芸を見せてくれたり、餌をくれたりする動物もいる。
「やあ、久し振りだねえ」五十代くらいの飼育員の人が先輩に声をかけてきた。
「あ、どうもっす。ちょっと仕事が忙しくて」
「でもきてくれて嬉しいよ。あ、そうそう。最近キリンのピョートルが元気な
くてね」
「それじゃあ行って、話聞いてみますよ」
「そうかい。助かるよ」
「園長は元気っすか」
「ああ。最近は他の動物園の視察とか言って出張も多いけど」
「競争厳しいですもんね」
「昔ほど子供も多くないからね。景気は良くなっても、こればっかりは」
飼育員とも顔なじみということは、相当よく来ているということがわかる。
話している内容は不思議な部分もあるけど、大人っぽい部分もある。私と一年
しか違わないのに、随分大人だな、先輩は。
「ねえねえ、先輩って凄いよね。よく『動物に餌を与えないでください』って
書いてあるけど、動物から餌を貰ってるんだからね。この場合どうしたらいい
んだろうね」稲葉は相変わらず楽しそう。
その後、八雲が用意してくれたお弁当を動物園の広場に設置してあるテーブル
で食べた。とてもおいしそうなお弁当。お昼の弁当も自分で作っているっていうし、
とにかく八雲は凄い。
「相変わらず妹さんのメシは美味いな」八雲の握ったおにぎりを本当においしそう
に食べる播磨先輩。こんな風に食べてもらえれば、作った方も嬉しいだろうな。
「播磨さんも八雲のお弁当が食べられて幸せ者ですね。ウフフ」
「もう、サラったら」
悪戯っぽく言うサラと恥ずかしがる八雲。これはもうお馴染みの光景だ。
「ああ、先輩。ほっぺにごはん粒がついてますよ」そう言って播磨先輩の頬に
ついたご飯粒をつまんで自分の口に入れる稲葉。
これはあまりお馴染みではない。しかしなんと大胆なことを…。
「こら稲葉、その役は八雲がやるのよ!」怒るサラ。
「サラ、その役ってどういう意味」赤面しながらサラをたしなめる八雲。
稲葉の方は、特に気にする様子もなくアハハと笑っていた。
午後からふれあい動物コーナーなどを回っていたが、ここでも播磨先輩は動物
たちと子供たちに大人気だったようだ。彼の周りには、餌も持っていないのに
ウサギやリスザルなどが集まるので、子供たちも(あと稲葉も)大喜び。普段は
警戒心が強くて、なかなか人に近寄らないというワラビー(カンガルーの小さい
やつ)も近づいてくる。
でも、よく考えたら今日はほとんど播磨先輩とお話をしていない。サラや八雲
と話をしているのは見たけど、それ以外は動物たちや稲葉と遊んだりしている。
やっぱり私はくるべきじゃあなかったのかな。私はサラや八雲ほど先輩のこと
を知っているわけじゃないし、八雲みたいに美味しいお弁当も作れない。それに、
稲葉みたいに素直に甘えることもできない。私だけ先輩からは遠い気がする。
多分、本当に遠いんだろう。
私があの三人より近い部分があるとすれば、「榛名」と名前で呼んでもらえる
くらいかな。
「どうした、榛名」
そう、そんな感じ。
「おい榛名」
「へ?」
気がつくと私の目の前に先輩が立っていた。
「気分でも悪いのか?」
「いえ、別に…」
「ほれ、これでも飲め」そう言って先輩は缶入りのお茶を手渡してくれた。
ひんやりとした感触が気持ちいい。
「隣、座ってもいいか」
「あ、はい」
今、私は播磨先輩と同じベンチで座っている。
「あの、稲葉たちは」
「ああ、猫娘は妹さんとその友達にしばらく任せたよ。こう言っちゃなんだが、
アイツと一緒にいたら身体がいくつあっても足りねえ。榛名は猫娘と仲がいいん
だろう。よく疲れないな」
「もう慣れました。それに―」
「それに?」
「ああいう元気で素直な所は、私にはない所ですから。ある意味羨ましく思っ
てます」
「そうかな。榛名も十分元気だと思うけど」
「そうですか?」
播磨先輩の眼にはそんな風に映っていたんだ。ちょっと新鮮。
「それにしても疲れたな。ニッポンのお父さんの気持ちがよくわかったぜ」そう
言った播磨先輩の目線の先には、小さな子供を肩車するお父さんらしき男性の
姿があった。
「あの、私…、父がいつも海外にいるので…、そういうお父さんとの思い出とか
あんまりなくて」
「おっと、こりゃ悪いこと言っちまったかな」
「いや、そんな事全然ありません。でもなんか、今日の播磨さんを見ていると
お父さんみたいで、もし一緒に動物園とかに来たら、こんな感じかなって、
思いました」
「俺がお父さん?勘弁してくれよ。まだまだ親父と呼ばれるには頼りないし」
「いえ、そんなことありませんよ」
「そうか?じゃあ老けてるってこと?」
「いいえ、違います。ごめんなさい、なんか暗い話しちゃって」
「いやあ、そんなことないって。あ、そうだ。榛名のお父さんは、日本に
帰ってくることもあるんだろう?」
「え、はい。時々帰ってきます。その時は家族みんなで過ごそうって決めて
るんです」
「そりゃあいいな。しっかり孝行してやんな」
「あ、でも親孝行って、どうしたらいいんでしょうか」
「ん、そうだな…」
播磨先輩、考えてる。
「ごめんなさい、変なこと聞いちゃって」
「俺は子供とかいないからよくわからんけど、自分の好きな人が笑顔でいる
ことはもの凄く嬉しいことじゃないかと思うんだ。だから、もし親父さんに
会うときは、最高の笑顔を見せてやれりゃあいいんじゃないかな」
「笑顔、ですか?」
「寂しげな顔を見るのはあまりいい気分にはなれないな。さっきのお前みたいに」
「私の顔…」私はそう言われて思わず自分の顔を撫でた。
播磨さん、私のことも気遣ってくれてたんだ。あ、だからこんな風に話す機会を。
「おおい榛名ー!こっちおいでよー」少し離れたところで稲葉が手を振っている。
その後ろには八雲とサラもいる。
「行ってやんな」
「“播磨さん”も行きましょ」そう言うと、私は先輩の手を取って軽く引っ張
った。その後すぐに手を離してしまったけど、彼の手が凄く大きくて温かかった
ことだけはよくわかった。
その日の帰り、稲葉とサラは八雲の家で夕食を食べると言った。でも私は家で
親戚の人たちと食事をする予定があったので、八雲の家に行くことはできなかった。
「それじゃ、俺が送って行くよ。暑くなってくると、変な奴が出てくるからな」
本当は一人で帰るつもりだったけど、播磨先輩も仕事があるから早く帰ると言い、
私を家まで送ってくれることになった。ああ、二人きりだ。どうしよう、何を話せ
ばいいんだろう。夕焼けに染まる道を歩きながら、私は今日の動物園の感想など
を喋った。なんだかとても安心する。どうして先輩と一緒にいると落ち着くんだろう。
「おお、そうだ。これ」何かを思い出したように、播磨先輩はビニールに入った物を
取り出して私に差し出した。
「これ、私にですか?」
それは携帯電話につけるストラップだった。よく見ると小さなキリンがくっつい
ている。
「ああ、いつだったか、モデルをしてもらっただろう。その時のお礼。色々誤解も
されちまったみたいだから、その慰謝料も込みで」
「そんな、私そういうつもりじゃあ…」
「ああ、嫌だったか。俺、あんまり女にモノとか送ったことなくて、それで何を
選べばいいのかわかんなくて」
「ごめんなさい。そうじゃなくて、これ、とっても嬉しいです」そう言って私は
ストラップを見た。
「ああ、そりゃ良かった」
「でもそんな気を使わなくても」
「いいんだよ、俺が好きでやってることだから」
「あの…」
「ん?」
「ありがとうございます」
「ああ、いや。そんな風にあらたまって言われても…」
不意に私と播磨先輩のすぐ近くに自動車が止まった。見覚えのある車だな、
と思ったら後部座席の窓が開いた。
「よう、榛名。今帰りか」
やっぱりお兄ちゃんだった。というか、今の状態で一番会いたくない人だ。
「お、東郷(マカロニ)。やっぱりお前ら知り合いだったんだな」
「ああ、いや、それは」私はなんとかフォローしようと思ったけれど、上手く
言葉が出てこない。
「おいおい、何を言ってるんだブラザー。この榛名は俺のたった一人の妹だぜ」
「へ?」文字通りキツネにつままれたような顔をする播磨先輩。
「兄?」そう言ってお兄ちゃんの方を見て、
「妹?」と言って今度は私の方を見て言った。
「なんだってええええええ!!!!???」
「ごめんなさい。隠すつもりはなかったんですけど」
お兄ちゃんが乗った車が行った後、私は歩きながら播磨先輩に謝った。
「いやあ別に、俺が勝手に勘違いしただけだし。でも驚いたな、マカロニに妹
がいたとはな」
「本当にごめんなさい」
「謝るなって」
「でも…」
「東郷(マカロニ)もそんなに悪い奴じゃないし、いいじゃないか」
「はあ」
「ところで、榛名って下の名前だったんだよな。俺はてっきり苗字だと思って
たよ。いやあ、悪いことしたなあ」
「いえ、それは…」
「やっぱり苗字で呼んだほうがいいかな。でも東郷だと兄貴のイメージがある
けど」
「は、榛名でいいです」
「え?」
「榛名って呼んでください、これからも。皆そう呼んでるし」
「いいのか?」
「はい。よろしくお願いします」
「…よろしくな、榛名」
“播磨先輩ならいい”とは言えなかった。
エピローグ
昨日は疲れた。せっかくの週末というのに、妹さんたちと動物園に行って
しまった。まあそれはいいのだが、あの猫みたいな娘が引っ張りまわすから
本当に疲れた。あいつは何者だ。
そんなことを考えながら、いつものように教室に向かうと、俺の席にお嬢が
座っている。
「おいお嬢、何やってんだ」
「あらヒゲ。月曜日からなんか疲れた顔してるわね」
「何言ってんだお前は。どけよ、そこは俺の席だ」
「ふーん、昨日は楽しかった?動物園」
「え…?」
何でお嬢が知ってるんだ?
「私たちが必死に勉強してたときに、アンタは二年の女の子たちと遊びに行った
なんて、いいご身分ね」
「おい、なんでお前が」
「まったくだ、沢近が可哀想だろう」後ろから周防の声が聞こえる。黙れ周防。
「誰から聞いたんだ。お前ら昨日は模試を受けに行ってたんじゃないのか」
「昨日は模試が終ってから、みんなで天満の家に行ったのよ」
ああそうか、それで妹さんたちから話を聞いたのか。
「でもよ、お嬢。こっちにも色々と事情というものが…」
「これが事情?」そう言うとお嬢は一枚の写真を取り出した。
ああ…、これは。
それは動物園で撮った記念撮影だった。俺の右腕には、あの猫娘がしっかりと
絡みついていた…。
「こら播磨ぁ!!俺が将来のモテモテライフを夢見て受験勉強に勤しんでいるというのに!」
猿みたいな顔をしたバスケ部のアホが叫ぶ。
「播磨!!八雲くんだけでなくその友達にも手を出したか!!! 」花井(メガネ)、
なんてことを言う。だいたい手なんか出してねえ!また誤解されるじゃねえか。
「ヘイ!ブラザー。浮気はいけないぜ!!」東郷(マカロニ)まで入ってくんな!!
どうしてこんな、訳分からんオチになるんだ!!
つ づ く
次回予告
榛名、ついに告白か!?
東郷榛名シリーズ、なんとなく最終回。
榛名の可愛さに全俺が強震した。
目福やー目福やー
>>718 いやーおもろかったw
乙乙
稲葉とかサブキャラの使い方上手いな〜。見習わんと駄目だな俺
専ブラで投稿画面を見ながら編集すればもっと見やすいだろうし、レスも短縮できるよ
レスが多いと投稿の管理も難しいだろうし、一考してみては?
あえて稲葉Love
いいねー、一年生達がみんな可愛い。
乙です。
>>695 丸まるコピペでいいと思うよ
>>718 乙です
どんな最後になるのか読めませんが最終回期待してます
>>724 俺もそういうのがあって迷ってんけどコピペにした。
落ちるなよ
誰か旗SS書いてよ
そんなどこにでもありそうなもんより虹とか携帯とかのSSの方がいい
You達、自炊という言葉を知ってるかい?
書いてみたらどうだい
ハリハルとか、今までなかったことの方が不思議だぜ
ハリハルは播磨サラや播磨稲葉より可能性無いからなw
>>730 最近たくさん出てきたキャラだからな
播磨って言葉を発したの自体ごく最近だし
もっと前からあれば確実にあったとは思うよ
播磨×ハルヒ?
異色の組み合わせだけどカチューシャつながりだわw
ちなみに本当は播磨×榛名ね
あれリボンじゃなかったっけ?
まあ、それはともかく明日の最終回を前に、番外編のショートを投下してみる。
即席なのでクオリティを期待してはいけない。
東郷榛名の憂鬱・番外編
東郷雅一の日常
街の喧騒も嫌いではないけど、その街の中にあるこの大型書店は別の雰囲気を私に感じさて
くれる。インクと紙のにおいのするこの建屋の中はなぜか落ち着く。梅雨の時期の排ガスと蒸し
暑さの外に比べたらまったくの別世界だ。ああ、こういうところが好きだから、いつまでも地味な
文系女のままなのかな。でも好きなものは好きなのだから仕方がない。今日は予備校の帰りに
最近あまり立ち寄らなかったこの書店に立ち寄った。表向きは参考書や問題集を見るためだけ
ど、なんだか久し振りの書店なので、自分の好きな本も見ようかな、と学習書コーナーから、宇
宙・天文コーナーに足を向けた。受験勉強に集中するため、所属する天文部はほぼ後輩の東
郷榛名に任せて、私は引退することにした。できれば文化祭まで活動を継続したかったけど、受
験という現実の前にはいかんともし難い。
地元の書店とは違い、ここには天体や宇宙の本が充実している。子供の頃にお父さんに買っ
てもらった星の本が、その後の私の興味を決定付けたのかもしれない。実物の星には敵わない
けど、写真の星たちを見るだけでも癒されるものがある。それにしても毎度のことながら、高いと
ころにある場所の本は取り辛い…。ちょっと背伸びをして手を伸ばしたら、隣にいた男子学生と手
が触れ合ってしまった。ちょうど、同じ本をとろうとしたらしい。
「ご、ごめんなさい」思わず手を引っ込める。
「ん?」
そこには背の高い長髪の男が立っていた。
「東郷くん…?」
東郷雅一。天文部の後輩、東郷榛名の兄であり、また二年生の頃はなぜか色々と挑戦状をた
たきつけてきたりしたこともあった。色々と芝居がかった言葉遣いが特徴だったけど、今日の彼は
なんか学校で見るのとは少し違う。
「結城です、結城つむぎ。ほら、隣のクラスの」
「ああ、私服なんでよくわからなかった。なかなか可愛いじゃないか」
「え?」
可愛い?何を言っているんだろうこの人。なに、こんな事言うキャラだっけ?東郷くんって。確かに今日は
休日で制服ではないけど。あ、そういえばなんで東郷くんは制服を着ているんだろう。
「ところで、東郷くんって、星が好きなの?」
「ん、まあな…。星というより、宇宙が好きなんだが」
あれ?なんかちょっと照れてるな。なんでだろう。この人にも恥ずかしがるという感情があったんだ。
「今日は買い物か何か?」
「いえ、予備校の帰り。ちょっと参考書でも見ようと思ったんだけど」
「そうか、実は俺も今日模擬試験を受けに行っててな」
「そうなんだ」
「それよりこの本」
「え?」
東郷くんの手には、さっき私が手を伸ばしかけた本があった。
「欲しかったのか?」
「いや、いいよ。私はちょっと受験勉強の合い間に読める本はないかな、なんて考えてただけだから。受験に
は全然関係ないしね」
「俺も一応受験生なんだがね」
「あ、そうでした」
結局、私は何も買わずにその書店を出ることにした。書店の自動ドアを抜けると、空から何かが降ってくる。
「あ、雨…」昼間の熱で温まったアスファルトが、雨の香りを運んでくる。
しまった。今日は天気予報を見てなかった。天文部にいた頃は、しょっちゅう天気予報を見てチェックしていた
のに。ここ最近勉強ばかりで天気を気にする余裕もなくなっていたのか。普段ならこの時期、折り畳み傘を持っ
ているのに、今日に限って忘れた。もう少し書店で待っていようか。でも時間も気になるし。だったら走って駅ま
で行こうかな。あそこの学生さんみたいに。ふと前を見ると、雨にも拘らず合羽も着ずにずぶ濡れになりながら
自転車をこいでいる高校生らしき男子生徒が目に入った。
「なあ」
「え?」
背後から声がしたので、振り返ると東郷くんがいた。手には、書店の紙袋。さっきの本、買ったんだろう。
「駅まで行くのか?」
「え、ええ」
「だったら送っていこう」そう言うと東郷くんは左手に持った傘を私に見せた。
「そんな、悪いよ」
「なに、気にすることはない」
普段の、ちょっと強引な東郷くんに戻った感じで、私は彼の傘に入って歩いていた。男の人とこんな風に歩く
のって、はじめてかもしれない。ああ、でも学校の近くとかじゃなくてよかった。これが同級生に見られたらな
んていわれることか。でも、そんな心配など、東郷くんは微塵にも感じていないらしい。
「榛名…、いや、妹さんは元気?」
「あ、そういえば榛名と同じ部活だったな」
「もうあまり顔を出していないから、最近は会う機会もなくて」
「寂しがっていたぞ」
「本当?」
「星の話をする相手がなかなかいないって言ってたか」
「そうなんだ。でも東郷くんも星が好きなんだよね」
「ああ、というかうちの家族はみんな宇宙好きなんでな」
「榛名と一緒に話とかしないの?」
「妹はあまり俺とは話をしないな。あれで照れ屋なもんで」
あ、そういえばこの人は自信過剰なんだよね。まあ年頃の娘は男の兄弟や父親とは距離を取るというし。
「そういえば、東郷くんは理系クラスなんだよね」
「ああ、そうだ。大学では宇宙工学を専攻しようと考えてる」
「やっぱり」
「宇宙飛行士になろうと思っているからな」
「東郷くんは英語もできるし、体力もあるからバッチリだよ」
「ふっ、そんなに甘いものでもない。競争は厳しい」
「でも立派だよ。そんな風に将来の目標を持って頑張ってるんだから」
「キミはそういうのはないのかい?」
「私は…」
好きな人と同じ大学に行きたかった。ただそれだけ。ああ、バカだな。他人に流されて
自分の進路を決めてしまうなんて。それに比べたら東郷くんは立派だよね。妄想ばっか
り言って芝居がかっている人、なんて思ってたけど。
「全然わからない。ダメだよね。こんなんじゃ」
「ふっ、宇宙にはまだまだわからないことが沢山あるんだぜ。量子重力理論とかな。自分
の人生にわからないことがあったって何ら不思議でもない。そうだろう?」
「うん。でも宇宙は大きい。私の悩みなんてそれに比べたら小さい。そんな小さいことで悩ん
でる私はもっと小さい…」
「天文部の部長が何を言っているんだ。大きいとか小さいなんて概念は宇宙の中では無意味
だ。どんな大きな物体も小さな素粒子から成り立ってるんだから」
「ふふ」
「ん?」
「東郷くんって、やっぱり理屈っぽいのね」
「そうか」
「それじゃあ女の子にモテないよ」
「妹にもよく言われる」
駅に着いた頃には、雨はすっかりやんでいた。
「東郷くんは電車に乗らないの?」
「ああ、迎えに来てもらうことになってるからな」
「そうなんだ。あ、今日はありがとう」
「どうということはない」
「もしよかったら…」
「ん?」
「その本、読み終わったら貸してくれないかな」
「ああ、いつでもいいぞ」
「ありがとう。勉強がんばってね」
「キミもな」
「なれるといいね、宇宙飛行士」
「必ずなるさ」
その自信はいったいどこから生み出されているんだろう。ちょっとうらやましい。
東郷くんと別れた私は、切符を買って電車に乗った。この分ならお夕飯までには間に
合いそうだ。電車の窓から外を見ていると、雲の切れ間から太陽の光が差し込んでい
る。そして、雨の季節の終わりを告げるように大きな虹がかかっていた。
了
元になったハルヒみたいな字の文だなw
乙〜
プロローグ
夏というにはまだ弱いけれど、春というにはもう強すぎる初夏の日差しが差し込む教室。
そこで朝のホームルームがはじまるまでの少しの間、私は漫画雑誌を読んでいた。
「おはよう榛名」
「あ、おはよう。今日も朝練?」
「うん、大会が近いしね」
クラスメートの俵屋さつきがそう言ってカバンを机の上に置いた。彼女はバスケットボール
部に所属しており、今日も朝から練習をしてきたようだ。
「珍しいね」
「え?」
「榛名が漫画読むなんて。それも少年誌」
「うん。最近ちょっと気になる漫画があって」
「ジンマガか。そういえば二条丈の連載が終ってから読んでないなあ」さつきはカバンから教
科書やノートを取り出しながら言った「それで、榛名が気になる漫画って何よ」
「いや、それは…」
「教えてよ」私の持っているジンマガを覗き込む。
「この春から始まった漫画なんだけど」
なんだか自分の家族を見られるような気恥ずかしさを感じた。
「ハリマ☆ハリオ?変な名前。新人?」
「そうみたい。私も詳しくは知らないんだけど」
「あら、榛名もハリマ☆ハリオ好きなの?」サラ・アディエマスが溢れんばかりの笑顔で言った。
「サラも漫画読むの?」
「うん、最近はね。でもハリマ☆ハリオの一番のファンは八雲なんだよ」
「え、八雲?」意外な名前。
「え、その…」急に名前を呼ばれたからか、戸惑う八雲。
「ねー、八雲」
「……」
なんで赤面してるんだろう。
東郷榛名の憂鬱その4
〜WHEN YOU WISH UPON A STAR〜
雨の季節が終ればもうすぐ夏。日本の夏は湿度が高くてあまり好きではないけれども、
やっぱり暑くなってくると心も開放的になるものだろう。去年は友達を海に行ったり、キャ
ンプに行ったりと、それなりに楽しい夏を過ごした。来年は受験のこととか色々あるから、
高校生として夏を楽しめるのも今年で最後かもしれない。
ただ夏休みの前には期末テストもあるし、何より梅雨といわれる雨の多い時期があるから
嫌いだ。雨が降れば当然星が見えない。それも楽しみの前の苦しみと思えば割り切れる
ものだろうか。
日本では七月七日に七夕というお祭りがある。
七夕とは、天の川を挟んで暮らしている彦星と織姫が、年に一度だけ会えるという中国
から来た伝説。ただ、お兄ちゃんの話だと、旧暦の七月は今の八月だから、本来の七夕
ではないらしい。確かに梅雨の真っ只中に星が見えるわけでもないしね。でも、一年で一
度だけしか会えないなんて、ちょっと、いや凄く悲しいかもしれない。
私はこういう星に関する神話や伝説が結構好きだった。星に興味を持ったのも、そんな
話を子供の頃に聞いていたからだと思う。
六月の終わり。期末テストの前に私たち天文部は観測会を行うことになっていた。といっ
てもこの時期は雨が多いので、中止になることの方が多い。目的はポン−ウィンネケ流星
群、別名六月牛かい座流星群を観測するためだ。そういえば七夕伝説の彦星は、牽牛
(けんぎゅう・牛飼いの漢語的表現)、とも呼ばれており、七夕とちょっと関係がある、と思っ
たらロマンチックだけど、彦星はアルタイルという星でわし座の中の一つ、つまり牛飼い座
とは全く関係ありません。
それはともかく、放課後に私は天文部の部室で天文部の部長、結城つむぎ先輩と世間
話をしていた。結城先輩も夏からは受験の関係で忙しくなるので、こうしてゆっくり話をする
機会もなくなってくると思う。だったら今のうちに聞けることを聞いておこう。
「あの、先輩」
「なあに」
「好きな人っていますか?」
「ブホッ!!」
「大丈夫ですか!? 」
「ゴホッ、ゴホッ…。なんなのよいきなり」
「ごめんなさい。急に聞きたくなって」
「まったく、一年生の部員がいなくて助かったわ。こんなみっともない姿見せられないもん」
予想外の質問だったのか、ペットボトル入りの十七茶のふたを閉めながらむせる結城先輩。
しかしすぐにいつもの冷静な表情を取り戻して言った。
「あのねえ、そういうのは他の人に聞きなさい。なんたって私みたいな地味な文系女に」
「人を好きになったことはないんですか?」
「そりゃあ、アタシだってあるけど…」顔を赤らめる結城先輩。年上だけどなんだか可愛い。
「最近ですか?」
「まあ、最近といえば最近ね」
正直な人。わざわざ追求してくださいと言っているようにしか思えない。
「でもなんで急にそんなこと聞くのよ。さては!」
「え、いや、違います。私、まだ男の人と付き合ったこともないから、参考にしようと思って」
「だから私じゃ参考にならないわよ。地味だし、モテないし、それに榛名みたいに可愛くない
から」
「そんなことないですよ。結城先輩は十分可愛いと思います」
「え?え?何言ってるの、もう。とにかく、私は恋愛経験とか豊富じゃないから、あなたを満足
させるような答えはしてあげられないから」
「それでも聞いていいですか?」
「何を?」
「好きな人がいたら、やっぱり先輩もその人のことを知りたいと思いますか?」
「知りたいかって?そりゃあ、そうでしょうね」
「全部知りたいと思いませんか?それこそ、言葉がなくても通じ合えるくらいに」
「言葉がなくても、か…」そう独り言のようにつぶやいた結城先輩は、少しうつむいて何か考え
ているようだった。
ほんの少しの間の沈黙。
「全部は、知らない方がいいかもしれないかな」
「どうしてですか?」
「だって、その人のことを何でも知ってるって言ったら、家族みたいなものでしょう?
それは恋愛とはまた違うように思うの」
その言葉を聞いて、私の頭の中にお兄ちゃんの顔が浮かんできた。ああ、いかん
いかん。
「それに…」
「それに?」
「好きな人のことでも、知りたくないことはあるし」
「知りたくないことですか?」
「例えば、“その人の好きな人”とか」そう言うと、結城先輩は少し寂しそうな表情を見
せた。
不意にドアを軽く叩く音がしたと思ったら、茶道部の高野先輩が尋ねてきた。何の
用だろう。
「結城さん、橋本先生が呼んでるわよ。すぐに職員室に来て欲しいって」
「あ、はい。ありがとう。何の用だろう」
橋本先生は、我が天文部の顧問の先生だ。結城先輩は、その先生のもとに行った
ため、私は天文部の部室に一人取り残される形となった。
「それから東郷さん」不意に高野先輩が声をかけてきた。まだいたんだ。
「はい、なんでしょう」
「少し時間があるなら、ちょっと茶道部の部室に来て欲しいんだけど」
「え、何かあるんですか?」
「大した用じゃないの。ただ、少しお話をね」そう言って高野先輩は天文部の部室を後に
した。
私は先輩の言われるがままに、茶道部の部室にお邪魔することにした。茶道部には同じ
クラスのサラ・アディエマスや塚本八雲がいるはずなのだけど、中には誰もいない。そう言
えば、以前部室に行ったときも、高野先輩一人しかいなかったと思う。あの時は確か、先輩
は紅茶を飲んでいたような。
「紅茶でもいかが?サラに用意してもらってたの」
「あ、はい」
私は図々しくも椅子に座り、茶道部の紅茶を頂くことにした。それにしても、話ってなんだろう。
「結城さんもすぐ戻ってくると思うから、手短に話すわ」
「はあ…」
「アナタ、播磨くんが好きなの?」
「え?」
ストレート過ぎる。一体何を言ってるんだろう。私と播磨先輩は別に、ただ同じ高校に通う
先輩と後輩…、のはず。
嫌い、ではない。これだけは確実に言える。でも…。
「ごめんなさい、急にこんなこと聞いたりして。やっぱり答え辛いわよね」
「はあ…」
「最近あなた達が播磨くんと仲が良さそうだったから、ちょっと気になっただけよ」
「確かに、最近話をする事もありますけど、特別な仲というわけじゃあ…」
「そう…」気のせいか、高野先輩も少し寂しそうに見える。
「あの、先輩」
「なに」
「屋上で、私の写真を撮ったのって、高野先輩ですよね」
「そうよ。ちょっと悪乗りしちゃったけど」
屋上で、気を失った私が播磨先輩に抱えられている写真。見るたびに顔から火が出そうに
なるくらい恥ずかしい写真。でもそれを撮った高野先輩自信は涼しそうな顔をしている。
「その、あの写真、他の人に」
「見せていないわ。安心して。これからも見せるつもりはないし」
「はあ…」
「話は少し変るけど東郷さん、アナタ、播磨くんの好きな人って知ってるの?」
「ええ?」いきなり何を言い出すんだろう、この人は。
私は少し考えてから、正直に言った。
「知りません…」
「知りたいとは思わない?」
「いえ…」
本当は知りたい、でも…。あ、そうか。これが結城先輩の言ってた、知りたくない
ことなのかな。播磨先輩の好きな人が私じゃないことくらいは分かる。多分別に好
きな人がいる。でも…。
「じゃあ“播磨くんのことを好きな人”はわかる?」
「播磨先輩のことを好きな人ですか?」
「そうよ、あれで結構モテるの、彼」
「はあ…」
意外?
いや、見た目は大きくて近づき難いけど、実際に話をしてみれば、彼の優しさや筋
を通す性格がわかるだろう。それに、よく見たら顔立ちもカッコイイし。それに惚れる
人がいてもおかしくはない。全然意外じゃない。
「例えば…」
「…」
「あなたの今目の前にいる女も」そう言うと高野先輩はまっすぐ私を見つめた。
もしかして、高野先輩も播磨先輩のことを…。
先輩の視線が、ちょっと怖い。
「冗談よ」
不意に部屋の空気が軽くなったような気がした。
高野先輩はほんの少し笑い、紅茶を一口飲んだ。
「あなたが可愛いから、ちょっとからかってみたかっただけ。写真の件はごめん
なさい。でもいい絵だったと思わない?」
「え?あの」私は高野先輩の言動に少々混乱した。この人は、相変わらずどこ
まで本気でどこまで冗談なのかよくわからない。
「噂をすれば…」
「ういっす、高野いるか」サングラスにヒゲ、そして長身の男子生徒がノックもせ
ずにいきなり入って来た。
「播磨先輩!」
「お、榛名。なんでお前がこんな所にいんだよ」
「この子は私が呼んだの。ちょっと話があって」サラリという高野先輩。
「そうか」
「でもなんで、播磨先輩が」
「もうすぐ期末試験が近いから、勉強を教えてくれと頼まれたの」と高野先輩。
「おい、余計な事言うなよ」
「隠しても仕方ないでしょう?卒業できないとカッコワルイって言ってたのは播磨くん
なんだから」
「ん、まあな」
「あ、すいません。私もう失礼します。お邪魔しました。あと、紅茶ご馳走さまでした!」
自分でもはっきりとわかるくらい高鳴っている心臓の音を感じつつ、私は茶道部の
部室を飛び出した。
早く天文部に戻らなければ…、っと思っていた矢先、目の前に誰かがいる
ことに気がついて急停止した。
「わ、ビックリした。あら、あなた、確か」
「沢近先輩?」
私の目の前にいたのは、綺麗な金色の髪に整った目鼻立ち、そしてバランス
のいい体型。何もかもが完璧に見え、そして多くの生徒の間で人気の高い沢近
愛理先輩だった。なんだかいい香りもする。
「東郷榛名です」
「ああ、東郷くんの妹さんね」
「え、まあ…」そこには触れて欲しくなかった。
「所で、茶道部になにか用があったの?」
「あ、いや。高野先輩と少しお話を」
「へえ、晶とねえ。どんな話をしてたの?」
「あの…、私、部室に戻らないといけないので」
「そうね、ごめんなさい」
なぜか私はこの場にはいてはいけないような気がした。沢近先輩は嫌いじゃな
いけど、なぜか早くこの場を離れなければ、と思った。あの人の前で、播磨先輩
の名前を出す事を心のどこかで拒否していたのかもしれない。でもなんで沢近
先輩はあそこにいたんだろう。高野先輩に用でもあったのかな。
天文部の部室に戻ると、結城先輩と二人の一年生が浮かない顔をしていた。
「どこへ行ってたのよ榛名」
「すいません、ちょっと高野先輩にお話があって」
「そう…」
「何かあったんですか?」
「それが、今度の観測会が中止になるそうなの」
「中止?」
「実はさっき高野さんに言われて橋本先生のところへ行ったんだけど、先生、
急な出張が入って観測会にはいかれないそうなの。観測会は当然夜やるから、
顧問の先生なしには部室も屋上も使えないし」
「じゃあ今年は中止ですか?せっかく天気予報では晴れるって言っていたのに」
「先生がいないとね。私たちだけじゃあ」
一年生部員のため息も聞こえた。彼女たちも楽しみにしていたのだろう。
「あの、結城先輩」
「なあに」
「他の先生に頼めばいいんじゃないですか?」
「他の先生って言っても…」
「私、頼んでみます」
*
「観測会?今週末に」
職員室で橋本先生の代役を頼んだのは、私の担任の刑部絃子先生だった。
全然関係ないけど、先生はいつ見ても綺麗だ。長い髪にすらっと伸びた脚。
私にはないものばかり。
「すいません、テスト前にどうしてもやっておきたいんです。毎年この時期は天候
の関係で中止になることも多いし、それに結城先輩も受験勉強で部の活動に参加
できなくなるし」
私は結城先輩と一緒に刑部先生に頼みにきたのだ。一年も楽しみにしていると
いうので、簡単に中止にするわけにはいかない。
「そうだなあ…。ん、そういえば遅くまで残っている奴がいたな…」
「え?」
「いや、こっちの話。まあ星の観察も面白そうだし、私でよければ協力しよう」
「本当ですか?」
「やった」
私は結城先輩と手を取り合って喜んだ。刑部先生に頼んで本当に良かった。
「ありがとう、榛名」
「いいえ。結城先輩と活動できるのも、そんなにないですし」
「そうね…。ねえ榛名、さっきの話なんだけど」
「観測会のことですか?」
「いや、好きな人の話」
「え?それは」なんでここで急にそんなことを言い出すんだろう。
あ、そうか。部室に戻れば他の部員もいるし。
「あなた、自分の気持を言った?」
「自分の気持ち?」
「相手はどう思っているのかはわからなくても、いや、たとえわかったと
しても、自分の気持ちは言っておいた方がいいわよ。伝わると思ってい
ても、伝わらないことだってあるんだから。あなたが誰を好きなのかは
知らないけど」
「伝わると思っていても伝わらないこと」
「はあ、もう高校生活も終わりか。まだそんな実感全然ないけど」
「先輩…」
「あなたは、後悔だけはしないでね」
「……」
なんで結城先輩はあんなことを言ったんだろう。先輩は後悔をしている
んだろうか。
その夜、独りきりになった部屋の中で私は以前先輩から貰ったキリンの
携帯ストラップを眺めていた。確かに言葉に出さなければ伝わらないの
かもしれない。
今日の昼休みの教室。
「あれ、榛名。そのキリンのストラップどうしたの?」稲葉が私の
携帯電話を見て言った。
「これはちょっと、人から貰ったから…」
「へえ誰から?」
「ええと…」ここで播磨先輩の名前を出すべきなのだろうか。
でもそんなことをしたらまた色々勘ぐられちゃうし。
「あ、播磨先輩でしょう」
え、なんで分かるんだろう…。もしかして稲葉って超能力者?
「私も貰ったから。ほら、象さんだよ」そう言って稲葉は象の携帯
ストラップを見せた。
「じゃあサラや八雲も?」
「私はパンダだよ」そう言って嬉しそうにわざわざ取り出して見せるサラ。
「私のは、ライオン…」恥ずかしそうに見せる八雲。
「そうなんだ」
「ええー、いいなあ。私も動物園行きたかったのにい」さつきが残念そう
に言っていた。
「また連れてってもらえばいいわ」嬉しそうに言う稲葉。
「ってかなんで皆、播磨先輩から貰ったストラップつけてるのよお」
私だけじゃなかった…。それはそうだよね。別に私たちは付き合ってる
わけでもないし。
何勘違いしてるんだろう、
バカみたい。
観測会の日は、天気予報の通り晴れた。昨日までの曇り空がうそみたい。この時期に
こんな日は滅多にないよ、と結城先輩は言っていた。夏の星空は好きだけど、日本では
湿度が高くてあまりよく見えない。でもこれだけいい天気なら、きっといい星も見られると
思う。
私たちは一旦家に帰ってから学校に再集合した。参加者は天文部の部長、結城先輩と
私、それに一年生部員の二人。先生は前に頼んだ刑部先生と、なぜか笹倉葉子先生も
いた。
「たまには星を見るのも悪くないかな。少し雲が出ているが」そう言って空を見上げる刑部
先生。
「こういうのって、本当いいですね。絵の参考になるかも」とても嬉しそうな笹倉先生。星が
見られるというより、刑部先生と一緒にいられることの方が目的なのかもしれないけど。
今回の観測会の目的の一つであるポン−ウィンネケ流星群は、二十世紀のはじめ頃に
突発的に大発生した流星群だ。その後ほとんど観測されることはなくなったけれども、
二十世紀の終わりごろに突如として出現した。その後も2004年に出現したという記録が
あり、ここ数年天文部でもこの流星群の観測を年間計画の中に入れている。でも残念な
がら、この時期は天候が安定しておらず、観測そのものが実施されていない。だからこそ、
観測ができることはとても嬉しかった。
夏になればペルセウス座流星群など有名な流星群も見られるし、その時は他の学校の
天文部の人たちと合同で山へキャンプに行く。普段都会の光で見ることができない小さな
星たちが見えて、本当に綺麗だ。これが同じ空なのか、と思えるほど。冬は冬でちょっと寒
いけど空気が澄んでいて星がよく見える。
だから、今のこの時期にこの状態でこの場所での観測は決して良くはないのだけど、
それでも私にとっては楽しかった。
数時間後、流星が見つからないまま雲が出てきてしまった。時計を見ると、
午後十一時。普段ならもうとっくに寝ている時間帯だ。夜更かしは苦手。
早起きもあんまり得意じゃないけど。ここらが潮時と見た結城先輩が片付け
を指示し、私たちも機材やお菓子などを片付け始めた。
ふと、屋上から部室のある旧校舎のほうを見ると、まだ電気のついている
部屋がある。おかしいな、部室の部屋の蛍光灯は消したはずなのに。ちょっ
と待って、あの部屋は天文部じゃない。確か茶道部の…。
「やれやれ、まだいたみたいだね」刑部先生が明かりを見ながらそう言った。
何か知っているのだろうか。
屋上の機材を大方片付け終わった頃、刑部先生が私に言った。
「東郷さん。ちょっと茶道部の部室に行ってきてくれないかな。まだ残ってい
るようだし。『もう施錠するから早く帰れ』と言っておいてくれればいい」
「あ、はい」
こんな遅くに、誰が残っているんだろう。高野先輩かな。それともサラや
八雲?サラはともかく八雲がこんな時間に学校に残っているなんて思えないし。
薄暗い旧校舎の廊下は何だか恐かったけど、茶道部の部室だけは明るい
光をはなっていた。ドアをノックして開けてみる。
「あ…」
「お…」
そこにはテーブルの上に沢山の紙を散乱させた播磨先輩の姿があった。
「いや、これはその…」
一瞬、その紙が何だかわからなかったけれども、部屋の明るさに目が慣れ
てくると、それが漫画の原稿であることがわかった。
「漫画、描いてたんですか」
「あ、ああ」動揺してる。
だから先輩は絵の練習とかしていたんだ。私が部屋の中に入ると、インクの
においがした。別に悪いにおいじゃない。香水や石鹸のにおいでもなく、まして
や人間の持つにおいでもない、播磨さんのにおいはインクのにおいだったんだ。
漫画を描いているから。
「あの、先輩。刑部先生からもう施錠するって」
「ああすまねえ、もうこんな時間か」先輩は携帯電話を取り出して時間を見ていた。
「あ…」播磨先輩の携帯を見て、一瞬私は声を出してしまった。
「どうした?」
「あの、いえ」
キリンのストラップ。私のと同じだった。なんでだろう。
「すぐ片付けるから、ちょっと待っててくれ」
私は彼が片付けている原稿の絵を見た。どこかで見たことがある絵だった。
「この原稿…」
「ああいや、気にしないでいいぜ。下手糞だろう、まだ下書きの段階だし」
「播磨先輩って、もしかして」
「遅いよキミたち。早くしないか」開けっ放しのドアから急に声がした。
「刑部先生」
「絃子!」
「イトコ?」
「いや、先生」
原稿や道具を片付けた播磨先輩は、なぜか刑部先生と一緒にいた。
「結城君と一年生の女子二人は家が遠いから、私と葉子…、いや
笹倉先生が車で送るから、君は東郷さんを家まで送りなさい」といって
播磨先輩を見る刑部先生。
「んだよ、なんで俺がそんなこと」
「定員オーバーだから仕方ないだろう。ところで、この時間まで学校で
仕事させてもらえたのは誰のお陰かな?」
「はい、わかりましたオサカベ先生…」
あの播磨さんがいう事聞くなんて、やっぱり刑部先生は凄い。
あ、でもちょっと待って?播磨先輩が私を送る?ってことは二人きりで
夜の街を歩くってこと?
「彼女にもし何かしたら…」刑部先生の鋭い視線が播磨先輩に向けられる。
「しねえよ!」
マズイ。ドキドキしてきた。
「どうしたの榛名。体調悪いの?代わろうか」結城先輩が心配そうに声をか
けてくれた。
「あの、いえ。大丈夫です」
こんなチャンスは滅多にない。いや、これからあるかどうかもわからないし。
さっきは先生に邪魔されちゃったけど(刑部先生ごめんなさい。でもその代わ
り、もの凄いプレゼントをいただいてしまった)、今度こそ色々聞こう。特に
漫画のこととか。
私以外の部員と刑部先生を乗せた笹倉先生の自動車を見送った私たちも
帰路つくことにした。
「あの、播磨先輩」
「なんだ?別に変なことはしねえぞ。なんなら一メートル離れて歩いてもいい」
「そうじゃなくて」
「ん?」
「漫画、描いてらっしゃったんですね」
「あ、うん。内緒にしていたんだが」照れくさそうに笑う播磨先輩。可愛い…。
「播磨先輩の漫画、見覚えがあるんですけど」
「見覚え?」
「播磨先輩って、ハリマ☆ハリオですか?」
「え…?」
一瞬の沈黙。何か考えているようだ。
「…そうだ」
「やっぱり。あの原稿を見たときわかったんです」
「知ってるのか、ハリマ☆ハリオ」
「はい、私、ファンなんです」
「ファン?」はとが豆鉄砲をくらったような顔をする先輩。でもすぐに元に戻った。
「ファンレターとかはもらったことがあるけど、こうやって面と向かって言われる
のは初めてだな。まあ顔をさらしてるわけじゃないから、わかんねえけど」
「漫画って、大変じゃないですか?それも毎週やって」
「確かにな。最近はあんまり寝てねえし。バイクも止められてんだよ、寝不足の
身体で事故したら危ないって、アシスタントに」
「それでバイク通学しなくなったんですか。でもそしたら、アシスタントもいるんですね」
「いや、まあ時々手伝ってもらってるだけだがよ。常に雇えるほど金ねえし、それに」
「それに?」
「いつ連載が終るかもわかんねえしな…」
ちょっと寂しそうな表情。そうだよね、プロの世界って厳しいもんね。
「あと高校も卒業しなきゃならねえからさ。留年とかカッコワルイ」
「いいじゃないですか、もう一年やりませんか?私と同級生」
「勘弁してくれ」
「冗談ですよ」
「悪い冗談だ」
「うふふ」
「あのさ、花見のときも思ってたんだけど」
「え?」
「お前は笑顔が似合ってるよな。なんつうか、優しい笑顔っていうのかな」
「あ、あの…、その…」
ヤバイ。一体なにを言ってるんだろうこの人は。クラッときそう。
「おい、どうした。大丈夫か?」
「大丈夫です。大丈夫」
「そうか…」
そして再び歩き出す二人。このまま町内一周したかったけど、さすがに
それだと先輩に迷惑がかかるなあ。
「あのよ、榛名」
「はい」
「俺の漫画って、どこら辺が好きなわけ?」
「え?どこがって言われても…」
「あ、悪い。こんなこと聞いて。ちょっと気になったもんでよ」
「いえ…」
私はほんの少し考えた。いや、答えはもう出ているのだけど、それを
言うべきかどうか考えていたのだ。
「主人公の、男の子が好きなんです」
「へ?」
「面白いじゃないですか」
「そうか?自分勝手で乱暴で、その上バカで単純」
「でも優しくて純粋で、あったかい」
「……」
「私…、好きです」
ほんの少しの沈黙。
「そうか、ありがとう。そんな風に思ってくれて。作家冥利に尽きるぜ」
「そんな…」
漫画の話をしていたはずなのに、なぜか胸が熱い。
それから私たちは、星の話をしながら歩いていた。星の話をするくらい
だから、当然足元ではなく空を見ながら歩いていた。
「天の川は星の集まりなんです。たくさん星が集まって、乳白色の川の
ような形を作っているんですよ」
「ふーん、そんなのか。星なんてあんまり見ないからな」
「天の川が星の集まりである、と最初に発見した人はガリレオなんです」
「ああ、あの『地球は青かった』って言った人だろう?」
「先輩、それはガガーリンですよ。ガリレオはイタリアの科学者でもあり芸
術家でもあった人です。あの、モナリザの微笑みを描いた人ですよ」
「あ、そうだったか。なんか名前の感じが似てたもんでよ」
「ちなみにガガーリンはロシア(当時はソ連)の宇宙飛行士です。人類で
はじめて宇宙に行った人ですね。私が生まれる前の話ですけど」
「そういや、宇宙飛行士っていったら、榛名の兄貴もなりたがってたな」
「え、先輩にもそんな事言ってたんですか?」
「家でも言ってたか」
「え、はい。なんか宇宙で結婚式をするとか」
「アイツらしい」
「はあ…」
「でもお前ら、兄妹そろって宇宙が好きなんだな」
「ウチの家族は皆好きだと思います」
「いいじゃないか」
「そうですか?」
「榛名も宇宙飛行士になりたいか?」
「いえ、私は別に…」
「まあ今のうちに色々考えとくんだな」
将来、なんてあんまりよく考えていなかった。まだずっと先の事と思ってた。
でも、考えなくちゃならないよね。先輩は、漫画家として一本立ちすることが
目標と言っていた。とても大変なことだけども、ある意味うらやましい。
「榛名たちは今日、流星を見にきていたんだよな」
「ええ、でも雲が出ちゃって見れなくなりました」
「流星って、流れ星と違うのか?」
「いえ、同じです。流れ星がいくつも出ることを『流星群』といいます。観測する
ときは、一晩中やるんですよ。ずっと空を眺めて」
「そりゃ大変だな」
「もちろん交替で観測するんですけど、私途中で寝ちゃった事があって。皆に
怒られました。夜更かしが苦手で」
「流星を見たら、願い事とかするかな」
「え?」
「ほら、昔から言うじゃねえか。流れ星を見たら三回願い事を言うとか」
「やったことあるんですか?」
「いや、ないけど。そもそも流れ星すら見る機会がないからな」
「見に行きませんか?」
「ああ。仕事に余裕ができたらな」
星にお願いなんて、やっぱり播磨先輩はロマンチックだな。もし願いがかなう
なら、先輩はどんな願い事をするのだろう。
エピローグ
期末テストがはじまる頃には、もう空は夏の表情を見せ始める。深緑の季節、
と言うみたいだけど、確かに山の緑はたしかに濃くなっているように感じる。汗ば
む陽気の中、私はいつものように矢神坂を登り学校へ行く。
「おはよう榛名」友人の稲葉が声をかけてきた。
「おはよう稲葉。テスト勉強ははかどってる?」
「それがね、勉強しようと思って机にむかってたんだけど、いつの間にかベッドの
中にいたの」
「それって…」
「まあ何とかなるでしょう」
「ならないよ。あなた受験とかは大丈夫なの?」
「うーん、どうかな。アタシお嫁さんになりたいから」
「そ…、そうなんだ」
「あ、播磨先輩だ」
「え?」
相変わらず稲葉は人を探すのが上手い。私は辺りを見回すと、確かに背の高い
男子生徒がいた。間違いない。
私は稲葉より一歩さきに駆け出して、播磨先輩の元に行った。
「先輩」
「お、榛名か」
「おはようございます」
「おはよ」
「榛名、なんで急に先に行くのよ」稲葉がちょっと怒り気味においかけてきた。
「猫娘もいたのか」
「猫じゃないもん!」
私のほうから、挨拶をする。全然特別なことじゃないけど、私にとっては特別。
人類にとっては小さな一歩でも、私にとっては大きな飛躍なのだ。
東郷榛名の憂鬱
おわり
東郷榛名の憂鬱(全四話)
第1話:CHERRY BLOSSOM WITH SKETCH BOOK
『桜の花とスケッチブック』
第2話:LIKE A BROTHERS
『兄弟のように』
第3話:MY FAVORITE PLACE
『私の一番好きな場所』
第4話:WHEN YOU WISH UPON A STAR
『星に願いを』
番外編:東郷雅一の日常
※
オリジナルキャラの登場は原則禁止ですが、最終回では物語
の進行上、天文部顧問の橋本先生と、新入部員の一年生二人
という、本遍にいないキャラを登場させたことをご了承ください。
オリキャラは作中に必要なものは登場させて良かったはず
作者投影キャラとかそういうSS自体が2次創作になりえなくなるオリキャラが駄目なだけで
とりあえず連作が終わってよかったよ
乙〜
大作おつかれさまでした〜。
話の流れも強引なところが少なくておもしろかったです。
なにより榛名が可愛いくてよかった。
スクランSS界が斜陽に入って長いので、もう安心して読める新作には
出会えないとばかり思ってました・・・・・・しかしそんな中で、久々に心地良いSS。
和みました、ありがとう。本当に乙でした〜!榛名かわいいよ榛名。
937OxU5ygs氏、GJ!
>>666 >天満ちゃんは俺と同じくらいバカだから、高野の論理的な説明に納得するとは思えない。
クソワロタwwwwwww
播磨自分のことも、天魔のこともホントよく分かってんなあw
確か、原作でも同趣旨で何気に酷いこと言ってたような気がするんだが、何だったかな…?
>>762 長編(?)お疲れさまでした
ただ榛名、モナリザはダヴィンチだよw
>>767 色々とネタを仕込んでいたのだが、そこは素で間違いました。
>>762 ごちそうさまでした
播磨好きなので他の女の子とのSSも書いてくれたら嬉しいです
むかしだらんぶるとか、げんしらんぶるみたいに、キャラだけを
そのままに、違う世界の物語をやってみたいんだがね。
やればいいじゃないか
でも、クロスは勘弁な。
作者がやる分には良いんだろうけど、作者以外がやったらオリキャラだらけになるんじゃね?
完結してたか!GJ!
今更だが、IF25登録完了です。
短いアソサラものです
もし、このカップリングが駄目な方がいらっしゃいましたらスルーお願いします
781 :
帰り道:07/11/24 13:07 ID:mdFqD6tU
最近、以前に比べちょっぴりだけど暖かい日が続くようになった。
とはいえ三月の半ば。
まだまだ春の気配は無く、凍えるような寒さが和らいだと言った方が正しい。
私は、八雲と二人で帰り道を歩いている。
春はあけぼのと清少納言が枕草子で言ったそうだが、冬はつとめてとも言っている。
勤めて、努めて、務めて、勉めて。日本人にはどの「つとめて」も似合うと私は思う。
隣を歩くクラスメートで親友の八雲は、その全てに当てはまるものだと、
そんな事を思いながら古文の授業を受けていたのだ。
――まぁ、そんな事をつらつらと考えるだけの時間があったくらい暇だったわけだ。
「ねぇ、八雲。今日はどうする?」
「どうする……って?」
「どこかに寄って行くかなぁって」
「今日は……その、ゴメン」
八雲には立派な彼氏様がいる。播磨拳児という一つ上の先輩なのだが、不良である。
品行方正の見本のような八雲が、不良である播磨先輩となんで付き合っているのか
未だに理解できないのだけれど、彼の事を話す時の顔は信頼が浮かんでいて何も言う気になれない。
人の恋路を邪魔する奴は――というものだ。
播磨先輩はちょくちょく茶道部に顔を出しては部長や絃子先生に玩具にされていたりするし、
私や八雲には優しかったりする。
花井先輩に尋ねたことがあったけど、播磨先輩は女子には決して手を上げないから安心して良い、
とまで言っていたのを思い出した。二人は八雲を巡って喧嘩をしたりするライバルなのだが、
その相手を褒めるのだから相当な確信があってのものなのだろう。
「今日も播磨先輩の所に?」
「ん……え、何?」
「あー、今、播磨さんに作ってあげる夕飯の献立とか考えてたでしょ。もうっ、この新婚さんめ」
「え!? 播磨さんじゃなくて、姉さんの事で」
「塚本先輩の事?」
「最近、烏丸先輩の家まで遊びに行くようになって、帰りも遅いから」
782 :
帰り道:07/11/24 13:07 ID:mdFqD6tU
「へぇー。ようやく思いを伝えたわけなんだ」
「告白はまだみたいだけど、随分仲が良くなったって言ってる」
そうかー、ついに塚本先輩にも春が来たのかぁ。
妹に先を越されること半年、ようやく実った訳ですね。
そんな事を言ってみると「私と播磨さんはそんな……」と俯いて恥ずかしそうにしてる。
八雲にこんな顔をさせる男なんだから彼氏って言うしかないでしょうに。
「私なんてまだまだ一人身なんだけどなー」
八雲の腕に自分の腕を回しながらじゃれ付くと、八雲も「もうっ」とか言いつつもじゃれ付かせてくれる。
妙に可笑しくなって笑いあうとポカポカと暖かい気持ちが胸に広がっていく。
心の栄養はこういう所でちゃんと摂取しておかないとね。
信号待ちは幾数度、帰り道を制覇しつつもそれは今日の別れが近づいているという事で。
私はもう一度だけ問いかけてみた。
「どこか寄っていかない?」
「ゴメン、サラ。私は行かなくちゃ」
八雲は困ったような眉をそのままに私をまっすぐ見てきては断った。
出会った頃の八雲には無かった意志の強さにちょっぴり嫉妬しつつ、
「ううん、言ってみただけ。気にしないで」なんて言って、早く彼の所に行ってあげなさいなと促した。
「……今度、必ず行こうねサラ」
「うん。楽しみにしてる」
去っていく八雲の後姿が夕日に重なって輝いて見える。きっと頭の中には播磨先輩しかないんだろうな、
と思うには十分な八雲の歩みに妙に感心した。あんなに人を好きになるってどういうものなのだろう。
私は自分がそうなった時の事を考えてみるけれど、それはどこかの小説や漫画やドラマなんかで
聞きかじったものでしかないものだと思ってしまう。
――心から人を好きになるってどういう事なのだろう。
ふと、同じバイト先で働いている無愛想なのに腕の立つ先輩の顔が思い浮かんだのが、
あの人はただの同僚なんだとガッカリしてしまった。
もしこの先、あの先輩が恋人になったらどうしよう――などと甘い未来予想図は思い浮かばず、
相変わらず仏頂面の先輩の傍で仕方のない人だと笑ってる自分の姿が滲み出てきて噴出してしまったもの。
「なに笑ってるんだ?」
「えぁっ! あ、麻生先輩!?」
「何がえぁっだよ。……どーした?」
783 :
帰り道:07/11/24 13:08 ID:mdFqD6tU
「あーもうっ。人がせっかく良い感じに仕立ててあげてたのに。何を邪魔するんですか」
「なにが仕立ててあげてるだよ。分かったよ、じゃあな」
心底呆れ果てたといった風の溜息と肩の落とし方に、私は無意識のうちに先輩の袖を掴んでしまって。
そこからどうしていいか分からずに考え込んでいると、先輩はまた溜息を吐いた。
「あのなぁ。どうしたんだ? 今日は変だぞ」
「八雲が遊びに付き合ってくれなかったんです。だから」
「遊びって……ガキかよ」
「先輩より一つ下のガキです」
ムキになって言い返してみるけど、それはどうしようもなくガキな行為な訳で。先輩も呆れ顔で腕を組んでいた。
「もういいです。なんか調子が出ないので、帰ります」
どうした事だろう、今日の私は。妙な焦燥感があったりなかったり。
気難しい顔をしていたのだろう、先輩は驚いたような顔をしていた。
「ハァ。分かったよ。今日は俺もバイトないし、付き合ってやるから。塚本の妹とどこに行く予定だったんだ?」
「本当ですか? えと、特にどこに行くってのは無かったですけど……スミマセン」
「なんだよそれ。……ゲーセンくらいしか知らないぞ」
先輩はようやく捻り出したような行き先を言ってくる。この人、周防先輩とデートしたんじゃなかったっけ?
その時もゲームセンターにしか連れて行ってなかったりするのかしら。
それじゃあ振られても仕方ないというか、なんというか。
「なんだよ。言いたい事があるならハッキリと言えよ」
「いえ、ゲームセンターで良いです。あまり寄らない所ですし、興味あったりしますから」
先行する先輩に連れられてゲームセンターへと向かう私。
それは確かに帰り道の途中に過ぎないのだけれど、また違った道も同時に歩いていたりする。
それは八雲に感じていたものと同じものではないのかもしれない。私はそれに近しいものを得る事が出来るのだろうか。
ときおり先輩が後ろをちらりと見る。私がどうしましたと尋ねると、ぶっきらぼうに
「着いて来てるか確認しただけだ」とか言ってる。「そんなに心配なら手でも繋いでいますか」とからかってあげたら、
案の定照れて怒ってしまった。
私は、そんな先輩をなだめつつ帰り道の途中に現れた新しい道を歩いている。
おわり
以上です
読んでくださった方、スルーしてくださった方に感謝を
さっそく訂正なんですが、
>>782の25行目
× ふと、同じバイト先で働いている無愛想なのに腕の立つ先輩の顔が思い浮かんだのが、
○ ふと、同じバイト先で働いている無愛想なのに腕の立つ先輩の顔が思い浮かんだのだが、
乙かれ
なんか本誌の方では縦笛が成立したっぽいし、アソサラになっちゃうのかねぇ
こっから麻生の逆襲が始まるんだろ。
でも大丈夫。ミコちゃんなら3Pでも問題なし。
そういうレスは本スレでやっとくれ
旗おにのSSってすっかりなくなったね
妄想と現実のギャップが大きすぎた?
旗おにって何よ
旗は元から少ない。おにぎりは長期放置されてからめちゃくちゃ減った
叩きあいになりそうだから怖くて作れない
前スレの最後の方におにぎり話書いたが、なぜかおにぎりの人には評判が悪かった気がする。
あれは好き嫌いあって仕方ない
まあ縦笛でさえ叩かれるスレだし
旗おになんて書けるわけないわな
ぶっちゃけ縦笛のSSはもう記憶に残ってないほど昔のことな気がする
ログで確認したが前スレに二つ三つあったぞ
時系列的には半年以上前になるから仕方ないがw
「原作の二人はこんなにべたべたしないよ」
とかそんな感じの感想がちらほらついてた
そのためのIfじゃないかと思うんだがね
時系列の意味間違ってるよ
>>797 人それぞれだな
IFでやってほしいのはあくまでシチュで性格とか中身は原作とあまり変えないのがいいって人もいるだろうし
原作より後の話とかにすれば割と大胆に変えてもいいんだろうが
そのキャラが取り得ない行動をしたり、持ち得ない知識を持ってたり、違和感があったりすると駄目って人もいるしなぁ
>原作の二人はこんなにべたべたしないよ
というような感想がついているなら、その2人はどんな言動を取ったのかが問題になるんじゃね?
SSの作者がそのように書いてるなら、原作からSSに至った説明がされてるかどうか、って風に
でも、難しい事じゃなくて無意識のうちに取り入れてるもんだと思うけど
昔は播磨が比較的あっさり天満以外になびいても歓迎されてたけど
今だと「播磨は心変わりしない」って反論が来そうなのはなんでだろ
昔もあっさりは駄目だろ。
昔は沢近や八雲がアプローチをかけたらあるいはと思った人間もいたが
今は本編で完全に否定されたからな
播磨ハーレムが一杯になって
ここや批評スレで批判意見がでてきたとたん
急に二次創作が止まった覚えがある
>>801 昔から批判されてたぞ
クズリさんほど丁寧に書いてても
しっくりくるように丁寧に播磨の心変わりを描いてるのはほとんどないな
>>804 というか花井厨がおにぎりで花井の扱いが悪いと暴れてから荒れて過疎った
ログも軽く見てきたから間違いない
バスケ編あたりからだっけ過疎ったの。
そもそも原作の魅力が一時期ガタ落ちしたのが…それで一度離れた人たちが戻ってこなかったん
だろうね…。
>>805 俺も大概鉛筆スキーだが、一言言わせてもらおう。
グズリ氏の場合はどう贔屓目に見たってプロレスSSを書くためにスクランを出汁にしているだけだろw
「いくら何でもこの展開はねーよwww」とモニターの前でリアルに茶噴いたぞww
原作の魅力がガタ落ちした時期っていつごろ?
漫画編あたりからあやしくなって文化祭のオチで現実的になりバスケ編で決定的
お見合いや修学旅行で盛り返すもとき既に遅しって感じかな
サバゲバスケ修学旅行22Pとかな
>>811 思いっきり旗視点だなw
修学旅行を絶賛するとは
単行本で読んだ印象ではバスケ編以外はそこそこから普通に楽しめた
本スレとかバレスレで煽りあいしすぎて逆に盛り下がったんじゃないかと
>>810 普通はアニメ一期までの範囲が一番面白かったころって言われてる。原作だと銀河鉄道までね
んでクリスマス編以降が更にgdgdになったっていう人が多い
というかサバゲ以降はお泊り編、クリスマス編以外評価悪い
それが普通だとする根拠は?
しかし、このスレに投下されてるSSには感想レスつけないで、こういう雑談ばっかでレス進めてるんだな
面白くなくても面白くても感想を欲しいもんだろSS書いて投下してるんだから
こういう雑談や内容はSS書きの支援スレみたいな所でやるべきなんだが、いつの間にか落ちちゃってるな
>>816 人気投票の結果的に大多数はそう思ってるみたいだぞ
>>809 お前が言ってるSSと805が言ってるSSは多分別物
>>818 人気投票ってあの公式でやった胡散臭いヤツか?
正直、あれは信頼に値しないと思うが。
バスケ編からのSSのなさは異常
旗で1年やってる間にスクロワが出てきたしちょっとは盛り返した感じだが
>>820 講談社の人気投票は正確なことで有名でしょ
一人が○○票投票したとかばらしちゃう会社だし
というかPF2持ってないの?
持ってれば内輪だけでの発表するかどうかすらわからなかった企画とはいえ
票数とか各部門の人気なものとかでマジ投票だとわかると思う
>>822 7の倍数の件や締め切り前にバレスレで投票結果が流れてた件とか知らない人?
>>823 それは誰でも知ってるでしょ。公式でも正式に発表してたし
でも順位とか票数はかなり正確だと思うよ
人気投票もだけどPF2で発表された奴は特に
○○編が人気ないって言うか、尽の手口が大体読めてきてみんなどうでも良くなったんじゃないかね?
引き伸ばし、リセットの繰り返しでまともにくっつける気が無いでしょ。
王道を除いて進展してるとも言えないし、アソミコとかそんなの混ぜないで播磨や花井の話を進めればいいのに。
さつきとかなんのために出てきたのやら…。
>>824 締め切り前に結果が出る投票結果が正確なんすか?
そりゃ凄いっすね。これからも頑張って下さい。応援してます。
まぁ順位や結果は正確だろ
PF2のに関しては票数も信用できそう
日曜日だな…。
投下予告ならしなくてよろし
独り言なら他でやればよろし
830 :
Classical名無しさん:07/11/29 22:42 ID:75Y7UbYw
意外と活気づいていてちょっと驚いた
元書き手の意見が知りたいが、いるんだろうか
何でSS書かなくなったのか
>>831 時間がなくなった。結構マジで
ずっと趣味に専念できる暮らしの人が羨ましい
>>831 書き始めた理由はスクラン。
書くのやめた理由もスクラン。
>>833 俺と同じだw
でも書きたい気持ちは枯れないままで他の漫画もそんな惹かれなかったから、
エロパロ板でオリSS書いてるけど
面白かったのがつまらなくなったからか
やはり本編の内容が影響してるんだな
ここの雰囲気のせいとか終盤になったからって人もいるようだ
花井厨のせいだな。少数派の癖して迷惑千万
そうやって他のせいにして楽しいかおにぎり
>>831 元書き手のままでも良かったけど、半年前くらいから復帰したボンクラの意見ですが
マガジン本誌を毎週見て追っかけている人はしんどいだろうなぁと思う。私は単行本派だからか結構楽しめてるよ
毎週毎週、本誌を待ち遠しく正座して待ってるのに〜って気合に対して出てきたものが期待外れなのが問題かと
この場合の期待外れってのは、待ってる方が期待しすぎって事なんだけどさ
スクランってそんなに気合いれて見る物じゃなくて、気を抜いて楽しむギャグ漫画なんだしね
ちょっとした事でもネタにしてSSにしてるけど、一昨年くらいは
「SSが書きあがったんですけど、前のSSからどれくらい間を空ければいいですか?」なんて質問もあったんだよなぁ
と回顧できるくらいIFスレも長く続いているよね
つまらんつまらん言われてるのに、次が楽しみと期待されるロジックがわからない
一ヶ月も退屈な話が続けてどうして期待できるんだろう
>>832 お金の節約と同じで、時間も切り詰められる部分って結構あるもんだよ
学生の頃は暇を持て余してたから分からなかったけど、働いていると余計にそう感じるようになったわ
他人がつまらないと言ってるからつまらないのか
自分がつまらないと思っていて他人も同じように感じているのか
自分は退屈でも他人は退屈ではないかもしれない
そして、ロジックって美味いの?
単行本派かぁ。
俺はどっちもだなー
毎週チェックしたいし、後は最後まで付き合ってやるって感じでコミック買ってるな
おはようございます。
本日は読みきりを1本投下してみます。
かなりマニアックな内容もあるので、バスケ編やサバゲ編だと思って
あきらめてください。
SKYLUNBLE(スカイランブル)
空が、青い。当たり前のことだがその青さが空と一体化しているようで播磨には気持ち
が良かった。
「野郎ども、訓練だからって気を抜くなよ。むしろガンガンやって行け」不意にそんな言葉
が口をついて出てきた。
《野郎どもってなによ。野蛮な言葉》
《もう少し具体的に指導してもらいたいわね》
《飛行隊長がいないからって、調子に乗りすぎじゃない?》
航空無線からはいつもの聞きなれた声が聞こえる。無口な奴は潜水艦乗りになり、
お喋りな奴がパイロットになるといわれるが、必ずしも正しくはない。
「麻生、調子はどうだ」
《スター、こちらドライブ。普通です》生真面目にTACネームを口にする麻生は、わりと無口
な方だが腕は確かだ。
この日は播磨の指揮する三小隊と二小隊との合同訓練だった。戦闘機部隊は通常、二機
編隊をエレメントと呼び、二個のエレメント、つまり合計四機が戦闘における最小単位となる。
播磨の僚機は沢近愛理。技術はまだまだ未熟だが天才肌で飲み込みが早い。気が強すぎ
るのが玉にキズ。女なのにTACネームのブレイド(刃)は伊達じゃない。
《うるさいわね!》
小隊の副隊長はわりと無口な麻生広義。僚機の高野晶も決してお喋りな方ではないので、
大人しいコンビではあるけれども相性はいいようだ。もちろん二人とも腕は確かだし、他には
ない熱い心を内に秘めている。ちなみに麻生のTACネームはドライブ、高野はウィザード
(魔法使い)。麻生はともかく、高野はその雰囲気が実に合っているような気がする。
「お嬢!食われるぞ!旋回時にスピードを出しすぎだ。大きく膨らんでるじゃねえか」
《はい!すいません》
勝気な沢近も、時には素直なこともある。ってかここの連中は上官に対する口の聞き方が
なってない。とかなんとか考えている播磨自身が、上官を上官と思わない態度なので無理も
ない。
《スター、こちらクロウ。調子は良さそうだね》
「烏丸か。相変わらずいい腕をしてやがるな」
二小隊の隊長にして、播磨の同期の烏丸大路はここの飛行隊でも一番の戦闘機乗り
といっても過言ではない。常に冷静沈着な操縦は、熱くなりやすい播磨とは対照的な
飛行スタイルである。
《クロウ、スター、こちら本部(センター)。応答せよ》
基地からの無線だ。無駄話がバレたか(筒抜けだけど)、などと思いつつ応答する播磨。
「本部こちらスター、オーバー(どうぞ)」
《本部こちらクロウ、オーバー》烏丸も応答した。
《三機の国籍不明機がわが国の防空識別圏内を突破した模様。訓練空域より南西に100
キロ。応答なし。基地飛行隊がスクランブルで発進した》
車ならともかく、戦闘機にとっての100キロなどすぐそこだ。
「機種は」
《不明だがかなりの高速であり、戦闘機と思われる。訓練は中止。総員警戒態勢に入れ》
「了解」
播磨たちはすぐに訓練をやめ、編隊を組んだ。
《こっちは訓練中だし、大した装備もないわ》沢近のいう事ももっともだが、領空侵犯をする
かもしてない国籍不明機をこのまま放っておくわけにもいかない。
沢近の声を無視した播磨は、手元のレーダーに目をやった。
「機影が薄い。低空飛行か」
《ステルス仕様ではなさそうね》と高野。
「真昼間からステルスもねえだろう。むしろ俺たちに自分の姿を曝しているようにも思えるぜ」
播磨は自分の口の中が乾いているのを感じた。
「高野。相手との予想接触時間は」
《およそ一分》
「お嬢、ションベンちびってねえか」
《何言ってるのよこんなときに!! 》
「麻生、機体の調子はどうだ」
《概ね順調です》
「オーケイ。烏丸、聞こえるか」
《スター、こちらクロウ。オーバー》
「俺たちが前方に出る。お前らの部隊は後ろからくる。それでいいか?」
《異存はない》
「ようし、決まりだ。おし、三小隊行くぞ。お嬢、俺のケツをしっかり見とけ」
《今のセクハラで訴えとくから》
「冗談は地上だけにしてくれ」
グダグダ言っている間にレーダーにはっきりと反応が出た。確かに三機。編隊を組んで
飛んでいる。肉眼で見えるか。播磨は目を凝らす。もっと低空のはずだ。機首を下げ高度
を下げると、黒い点が海上を進んでいるのが見えた。
と思った瞬間に、その黒い点は急に角度を上げて上昇してきた。
「Down nose!!(機首を下げろ)」播磨はとっさに指示を出し、一気に機首を下げた。先ほど
まで小さな黒い点だった機体が一瞬ではあるがはっきりとその形を見せた。そして次の瞬間、
その姿は機体の後方と飛び去っていった。播磨たちは一旦、機体の高度を下げてから体勢
を立て直し、再び高度を上げた。もしあのとき、相手の動きに合わせて高度を上げていたら、
機体の腹をやられるか後ろにつかれていたかもしれない。
「麻生、機体は」
《フランカーです》
「高野もそうか」
《certain(間違いない)》
「国旗は見えなかったな」
《まさに国籍不明機ですね》麻生が珍しく軽口をたたいた。不安や恐怖は人を饒舌にさせると
いうが、麻生も本能的に相手が普通じゃないことに気がついたようだ。
「麻生」
《オーバー》
「高野とお嬢をつれて基地に戻れ」
《え?》
「二度は言わん。早くしろ」
《しかし、なんでいきなり》
「やつらは普通じゃない。とにかくこの場を離れろ。これは命令だ」
《隊長は?》
「俺はここに残る」
《そんな…》
「ぐずぐずするな!」
《了解》
麻生はまだ納得していない状態だったが、その後指示に従った。戦闘では一瞬の
判断ミスが命取りになりかねないと何度も言っているけれども、いざ不可解な状況
に直面した場合、やはり躊躇するものである。
播磨は対空ミサイルの安全装置を確認した。まさか今日、これを解除することに
なるかもしれない、などとは思っていなかった。レーダーで機影を確認した後、更に
高度を上げる。
「烏丸、お前らも戻れ」
《スター、ぼくは残るよ》
「お前…」
黒い機体が再び肉眼で見えた。今日は晴れているから相手の姿がよく見える。
もちろん、相手からもこちらの機体は丸見えなのだろう。
「スクランブルした機体がくるまでの時間稼ぎだ。まあお前なら大丈夫だろう」
《スター、こちら本部。何をやっている。勝手な行動は許さんぞ》
「訓練用の装備しか持ってない連中を危険にさらすわけにはかねえんだよ」
播磨はレーダーで部下たちが順調に空域か離脱しているのを確認すると、国籍不明
の三機に神経を集中した。離脱していく機体を追うようなそぶりは今の所見せていない。
(だったら奴らは何が目的だ)
播磨は黒いSu-27、通称フランカーを追うためにスピードを上げた。
(誘っているのか)
雲の切れ間から見えるフランカーが二機。もう一機はいつの間にか低空で飛行している。
(いずれにせよ、狙いを定めなければならんな)
播磨は低空の一機に狙いを絞ると、烏丸に援護を要請した。
「こうやってバディを組むのも何年ぶりかな、烏丸」
《教育隊以来かな》
「お前はあの頃から優秀なパイロットだったよ」
《播磨くんも》
「俺も?」
《優秀な片鱗は見せていたよ》
「へ、どうせ俺は劣等生だよ」
軽口をたたきつつも、後方を狙う播磨。
「出力はさすがに凄いな、フランカー…」
播磨の乗っているF−15も高出力だが、東側の戦闘機のエンジン出力の強さの
ほうが若干高いようである。
「だが旋回なら負けん」
後ろにつこうとすると、急に高度を上げるフランカーの一機。
やはり囮か、そう思いつつも合わせて高度を上げる播磨。急降下と急上昇で、身体
にかかるGの負担は桁違いだ。しかし、今は興奮状態なので、それほど辛さは感じ
ていない。
《国籍不明機に告ぐ、今すぐ所属を明らかにし、我々の指示に従え。繰返す、今すぐ
所属を明らかにして、我々の指示に従え》
従えと言って従うくらいなら、最初からこんな挑発めいた侵入はしないだろう、と思い
つつ播磨はレーダーと目の前の機影を確認した。高出力の東側兵器は、そのパワー
の強さから大雑把な動きになりやすいのだが、黒いフランカーはかなり繊細な動きを
していた。さすが、西側の戦闘機を意識して作っただけのことはあるな、などと思いつつ、
ミサイルの射程圏内まで接近を試みた。と、次の瞬間前方の機体は一気に急上昇し、
視界から消えた。
「曲芸飛行とは恐れ入るね」播磨は減速し、急旋回をすると再び機影を追った。気がつく
と目の前の機体は二機になっていた。まるでマジックショーのようだ、と思いながら
播磨は、先ほどのフランカーを再び追った。
「もう一機は…」
《スター!後ろ!》
不意に、視界の端に光る帯が見えた。
曳航弾!?
「やろう、撃ってきやがった」
しかもいつの間に後ろにいたのか。
《焦らないで、狙いは定めていない》
相手の発砲を堺に、今まで遊んでいるようにも見えたフランカーの動きが明らかに
変ってきた。
「烏丸、奴らは本気かもしれんな」
《うん、なんだかヤバイ雰囲気をびしびし感じるよ》
「本部、こちらスター。発砲された。交戦許可を求める」
《スター、こちら本部。状況がよくわからん。相手が発砲したのか》
「バルカン砲を少し。狙いは大きく外れたがきわめて危険」
《スター、こちら本部。発砲は許可しない》
「なんだと?」
《誤射の可能性もある。引き続き指示に従うよう勧告しろ。危険な場合は同空域
から離脱せよ》
(話せばわかる、とでも言いたいのか?)播磨は心の中でそう毒づいてみたが、
それで何かが解決するというわけでもない。
警告のアラームが鳴り響く。
「ロックオンされた!」
播磨は急旋回をして相手の機体を振り切ろうとする。が、相手も同じように急旋回
してくる。
鬼ごっこも本気モード突入かよ、などと思いながら、右旋回から左旋回へと切り替える
播磨。急な変化に、機体だけでなく身体も悲鳴をあげそうになる。息が詰まりそうだ。
ボンベの酸素が薄いのではないか、と思うほど息苦しい。しかし、相手を一機でも落と
さないことには、死ぬわけにはいかない、という気持ちが播磨には強かった。地上の
喧嘩なら負けないが、空の喧嘩だって負けるわけにはいかない。ただ、上には上が
いるもので、機体の性能もさることながら、相手搭乗員の腕もかなりのもの。
気力、体力ともに充実しているのだろうか。
「スクランブル機はまだか!」
《あと二分》
非情な時間。一分一秒がこれほど惜しいと思ったことはない。応援が来る前に、自分
だけで片付けてしまいたい、などと少しでも思った自分をひどくみじめに感じた。
(何を考えている、俺…)
《スター、こちらクロウ》
「烏丸…」
《諦めないで。諦めたらそこで終わりだよ》
「……!」
まるで自分の心の中を見透かされたかのような烏丸の言葉に、播磨は驚愕した。
(俺が、諦める?)
播磨は操縦桿を引いて急速に高度を上げた。そして自機を太陽に重ねた後、
機体をわざと失速させるようにして高度を落とすと、再び体勢を立て直した。
警告音はならなくなった。なんとか振り切ったらしい。
機体を水平に戻すと、はるか前方に二機のフランカーに追われる烏丸の機体
が見えた。播磨は自分が敵を振り切るのに必死になっている間、烏丸もまた
敵に捉えられていたのだと思うと酷く悔しく感じた。
「烏丸!!」
速度を上げて烏丸機の援護に向かおうとしたが、不意に曳航弾が目の前を
かすめる。まるで子バエのごとくまとわりつく残りの一機にてこずりながら、
播磨は必死で烏丸の機影を追った。
《スター、こちら本部。何があった。状況を説明しろ》
「うるさい!」胃の中身が全て出てしまいそうなGも、今の播磨には気にはならな
かった。
《播磨くん…》烏丸の声だ。
「大丈夫か、烏丸!」
《キミに伝えて欲しい事がある》
「こんな時になんだ!」
《塚本さんに…》
「塚本がなんだ!?」
《『約束を守れなくて、ごめん』と言っておいて欲しい》
「え…?」
白い煙の放物線を描いて飛ぶ光。その光は烏丸の乗るイーグルにぶつかり、
大きな光となって、爆発した。
降り注ぐ雨。まるで何かを覆い隠すかのような分厚い雲を窓越しに眺めながら、沢近愛理
はコーヒーの中のミルクをかき混ぜていた。これで何杯目になるだろうか、自分でもわから
なくなっているようにも思える。顔はすましているけれども、彼女の心の中のイラつきが高野
晶には手に取るようにわかった。
「落ち着きなさい、愛理」
「落ち着いてるって…」沢近はそう言ってプラスチック製のコーヒーカップに口をつけた。
ほとんど飲んでいるようには思えない。というか、もう飲む気にもなれないのだろう。
「やっぱり、心配?播磨一尉のこと」高野はハードカバーに目をやったまま言った。
「はあ?なんでアタシが」
「図星」
「違うわよ」そう言うと沢近はカップをテーブルの上に置いた。「そりゃあ、一応アタシたちの
リーダーなんだから、しっかりしてもらわないと困るけど…。でもそんなことより、訓練から
戻っていきなり司令部の会議室に連れて行かれて、いきなり誓約書を書かされるなんて、
おかしいわ」
「この訓練において見聞したことは、一切口外しないことを誓います、って奴?」
「結局、烏丸一尉は戻ってこないし。これって、やっぱり」
「滅多なことは口にするもんじゃないわよ」
「でも…」
「あの空域は、“あの国”との海洋資源の絡みで色々あるから、軍部の中の強硬派が行動に
出たのかもしれないわね」
「それって、どういうこと?」
「私たちの国の飛行機を入れなくすることによって、その海域の海洋資源を独占しようとしている
とか。これはあくまで推測よ。こんなこと、他で言っちゃダメよ」
「言わないわよ。ってか、いまどきそんな方法で」
「戦争は異なる手段で行う政治の延長」
「時代遅れよ」
「すべての人間があなたと同じ考えで行動するわけでもないの」
「わかってるけど…。でも人が一人死んでるのに」
「行方不明よ、烏丸一尉は」
「仮に生きていたとしても、それでも…、許せない」
「悔しいけど、私たち下っ端がどうこうできる状態でもないわ。見た?今朝の新聞」
「訓練中、事故で墜落。パイロットが一人行方不明。あれが事故だったいうの?笑わせるわね。
だったらあたしたちが見たあの黒い機体はなんだったの?幻?」
「司令部よりも、もっと上の思惑があるのかも」
「政治ってこと?」
「そこまではわからないけど。ただ、上はあまり大事にはしたくないみたいね」
「あたしたちは平和のために犠牲になりなさいってことかしらね。まったく、カミカゼの時代と
全然変らないじゃない」
「神風か…。そう都合よく風は吹かないわ。特に私たちにはね」
*
静かだ。
とても静かな時間。こんな時間と空間を過ごしたのは播磨にとって久し振りだった。しかし
その静けさは安らぎというよりも、真綿で首をじわじわと絞められるような苦しみを彼に与えて
いた。ほんの数日前まで彼の周りには音が溢れていた。人の話し声、無線からの交信、
そして、飛行機の爆音。やかましい環境ではあったが、彼にとっては落ち着ける環境でもあった。
薄暗い部屋の中でベッドの上にころがり天井を見つめる。何もない白い天井。静かな夜。
そう、烏丸大路も静かな男だった。
「ぼく、烏丸といいます。よろしく」
航空学校で見た烏丸は風変わりな男だった。いつも空ばかり見ていた。
そのくせペーパーテストの点数はずば抜けていて、実技でもトップクラスの実力だった。
「烏丸、お前はやっぱり戦闘機を希望するのか?」
「うん、播磨君。キミもやりなよ」
「いや、俺は…。成績とかもあるし」
「キミならできるよ」
「首席のお前が言うんだったら間違いないかな」
烏丸は常にトップで、播磨は次点以下に甘んじていた。しかし逆に言えば、烏丸という
目標があったからこそ、播磨も頑張ってこれたのかもしれない。
卒業、別れ、そして再会。播磨は烏丸に負けないよう研鑽してきたつもりだった。いつも
烏丸が前にいた。
《烏丸が邪魔だったんじゃないのか?》
「違う!俺は…」
《烏丸がいなければお前がトップだ》
「そんな甘いもんじゃねえ」
《“あの娘”のこともか》
「俺は…」
再び目をつぶる。好きだった女性。いや、今もその気持ちは続いているのかもしれない。
「播磨くん」
塚本天満。烏丸大路の婚約者。
「結婚するのか、おめでとう烏丸」
「播磨くんも早くいい人見つけなさいよ」
「まあ、そのうちな。幸せになれよ、塚本」
「ありがとう」
幸せに…。
あの時の笑顔は、俺が今まで見た中で最高の笑顔だった。
播磨は記憶を反芻しながらそう思った。
悔しかった。
自分ではあの笑顔を作り出すことはできない。
でも、それを見ることができたことは、それはそれで嬉しかった。
《播磨くん…》
《キミに伝えて欲しい事がある…》
《塚本さんに》
《『約束を守れなくてごめん』と言っておいて欲しい》
時計の音。
あの時から播磨の中の音は消えたままだった。
>>855 終わりかな?
GJ
こういうのも大好きです
かなり面白かった
飛行隊、搭乗員待機室。
「戦技競技会?やっぱりやるのか」麻生広義は飲みかけのコーヒーをテーブル
の上に置いた。
「上からの命令。飛行教導隊をこちらによこすみたい」憮然とした表情で言う沢近。
「こんなときにな」
「こんなときだからこそ、じゃないの?麻生ニ尉」紅茶のカップを片手に言う高野。
彼女はいつもの紅茶を飲んでいる。
「うちの防空識別圏内で好き勝手やられて、やられっぱなしって訳にはいかないっ
てこと?」不機嫌な声で言う沢近。
「沢近、滅多なことは言うな。一応事故ってことになってるんだ」麻生は沢近を睨み
つけて言った。しかしその視線を沢近は無視して続ける。
「人が一人、死…、いや、行方不明になって、それで競技会をやるなんて、マスコミ
のいい攻撃対象よ。うちのリーダーはあんなんだし」
「上もバカじゃないんだ。やられっぱなしでいいと思うわけはないさ。だからあえて
この時期に…」
「このまま訓練を自粛すれば、相手の思う壺、ってところかしら」最後の紅茶を飲み
干した高野は静かにカップをテーブルの上に置いた。
「あら、全員お揃いのようね。一人を除いて」
「刑部隊長」
第211飛行隊隊長、刑部絃子二等空佐が入ってきた。女性とは思えない大胆な操縦で、
空軍ナンバーワンとも言われるその技術は同盟国軍からの評価も高い。
「今度の競技会の要綱よ。三小隊からも二人ほど選抜するわ」そう言って書類を各人に
配る刑部。
「ちょっと待ってください刑部二佐、うちは播磨一尉と高野三尉ですか?」沢近の声からは、
なんで自分ではないのか、という感情も少しこもっていた。もちろん、そう言うつもりではなく。
「晶はともかく、播磨一尉は」
「これは上からの直々の指名なの。ここをいじるわけにはいかないわ」
「はあ…」
納得できない、というような顔をしている沢近を尻目に、刑部は会議があるからと言って
待機室を後にした。
「こんなときになんであのヒゲなのよ」
「試してるんじゃないかしら?」高野は言った。
「何を?」
「彼はあの“事件”の唯一の目撃者なの。あんな事態に直面してパイロットとしてダメになって
しまっているかもしれないわ。だから、そうなっていないかどうか、試しているの。上の人たちは」
*
薄暗い店の中。ようやく外出規制が解除されたかと思ったが、播磨にとっては、
すぐ太陽の下に出るには、まだ早すぎた。
「すまねえな、こんな所によびだしちまって」
「いえ、基地では落ち着いてお話もできませんし」
「何か頼むか。食事、まだだろう」
「ええ」
少しの沈黙。店の客はまばらで、そして静かだった。
「あの、播磨一尉」
「ここではその呼び方はやめようぜ、塚本三曹…、いや、妹さん」
「何か、昔に戻ったみたいですね。播磨さん」
「あの頃はキミも高校生だったな。まさかキミも防衛隊に入るとは思わなかったけど、それも空軍に」
「変ですか?」
「いや、とても。衛生隊に入ったのが救いかもしれないが」
「救い…」
「妹さんに戦闘は似合わない」
「疲れてます?」
「え?」
「播磨さん、とても疲れているように見えます」
「俺が、か」
「心が、疲れています」
「ごめんな」
「なんで謝るんですか?私のほうこそ、こんなこと言って…」
「あ、いや…」
播磨が言葉につまると、それを見計らったかのように前菜が運ばれてきた。
「姉さんのことですね」
塚本八雲の姉、塚本天満。烏丸大路の婚約者だ。
「ああ。すまない、わざわざこんな所で」
「いえ、いいんです」
「お姉さん、どうだろう。やっぱりショックを受けてるかな」
「あの日…。烏丸さんが帰ってこなかった日です」
烏丸があの黒いフランカーに“撃墜”された日だ。播磨は口の中が乾いているように
感じた。あの時のように。それを誤魔化すために水を飲む播磨。
「姉さんは、烏丸さんと食事をする約束をしていたみたいで、仕事が終った後、繁華街
のいつもの待ち合わせ場所で待っていたそうです」
しかし烏丸はこなかった。いや、行けなかったというほうが正しい。訓練が長引いてい
たら悪いと思ったのか、携帯電話から連絡をするのをためらっていた天満だが、二時間
経ってもこないため、仕方なく携帯電話に連絡を入れた。しかし連絡は取れず。それで
基地にも連絡をしてみたものの、要領を得ない答えしかなく、その場で待ち続けているうちに、
雨が降って…。
「雨の中、姉さんは烏丸さんがくることをずっと待って…」
「すまない」
「播磨さん…」
「本当にすまない」
「顔を上げてください」
「本当はお姉さんに直接会って話をするのが筋なんだろうけど、今の俺には…」
「播磨さん」
「お姉さんに合わせる顔がねえ……」
「無理、しないでください。姉さんは大丈夫です」
「しかし」
「それより播磨さんの方が、私は心配です」
「え?俺は…。俺はどうなっても…」
戦技競技会当日。
油や煙の臭い。そしてやかましいエンジン音。何年かぶりに感じるような懐かしさ。
実際播磨は、数日前も訓練飛行をしている。しかしそれも、ただ飛んで帰ってきただけ
のこと。実質的に彼はぶっつけ本番に近い形で戦技競技会にのぞむ格好になっていた。
「本当に出るの?」沢近は播磨の顔を覗き込むように聞く。
「あ?出るに決まってんだろう。何言ってんだよ」
「愛理は播磨一尉のことが心配なのよ」高野は小さくつぶやく。
「ちょっと晶、何いってるの!」
そんな話をしていると、飛行隊長の刑部絃子が誰かを連れてやってきた。
「諸君、こちらが今回の飛行教導隊(訓練などで仮想敵をする部隊)のパイロットだよ」
「ええ?」
「外国人?」
「ハリー・マッケンジー少佐だ」
「彼はA合衆国空軍のパイロットで、人事交流で飛行教導隊に来ているの。腕は確かみたいよ」
「日本語は、できるのか」播磨が言った。
「少しは話せますよ」片言ではない、わりと流暢な言葉でマッケンジーは答えた。
「さて、時間ね」
そう言って刑部とハリー・マッケンジーはそれぞれの持ち場に戻って行った。
「おーっす、小隊長」また聞き覚えのある声がした。
「周防か」
整備班の周防美琴二等空曹が声をかけてきたようだ。
「機体の準備は万端っすよ」
「ああ、ありがとう。整備記録は」
「ここに」
「おう」
周防の姿を見て、沢近と高野が歩み寄る。
「美琴さんも大変ね」飛行服姿の高野が言う。
「おっす」
「どうにかならない?その挨拶」困ったような顔で沢近が言った。
「悪い、くせでさあ」
「まあ、そこが美琴らしいんだけど」
「あれ?沢近三尉、今日は飛ばないの?」
「今日は補欠、飛ぶのは晶のほうよ」
「そうなんだ。しかしこんな時期によく上層部は競技会をやろうなんて考えたよなあ」
「そ…、そうね」
「本当、パイロットも大変だろうけど、整備するうちらも忙しくてかキツイよ」
「ん、まあね…。いつもありがとう」沢近が少し言葉を詰まらせつつ答える。
「周防。チェック終ったぞ」
「早いなあ、ちゃんと見てるのか?」
「お前を信頼してんだよ」
「そりゃ嬉しいけど、烏丸一尉の二の舞はごめんだよ」
「あ…、ああ」
「機体点検するから、すぐ来てくれよな」
「ああ、わかった」
そう言うと、周防は格納庫の方へ早足で駆けて行った。
「知らないってのも、幸せかもしれないわね」沢近が、高野と一緒に周防の後姿を眺め
ながらつぶやいた。
規制がキツイので、一旦休憩します。
作者
支援
>>863 頑張って下さい!
それと、播磨誕生日おめでとう
もう落ちないと
次の投下楽しみにしてます
そういえば今日は誕生日か、おめでと
スクランでなくても良いなぁとは思うけど、まぁおつ
SKYLUNBLEで良いの?
SKYRUMBLEじぁないの?
何か意図してるならスマネ
思ったんだが、ACのユーザーぽいなw
*
「まったく参ったね、播磨には」
「あの教導隊の外人パイロットに勝っちゃうんだからな」
「いやあ、播磨一尉」基地司令が播磨に声をかけてきた。
「は、はい」
「色々あって心配していたんだが、これなら安心だな」
「はあ…」
訓練後の反省会。播磨はその日、模擬戦闘訓練で教導隊の戦闘機を「撃墜」した。
教導隊は全国の一流のパイロットを集めて編成されており、それを撃墜するということ
は、それだけで凄いことと見なされる。しかし播磨の表情は暗かった。
反省会が終了すると、全員散会したものの、播磨とその部下三人だけは残っていた。
「どうしたお前ら、帰らないのか?なんだ、今日は奢ってもらえると思ったのか。ラーメン
くらいだったら、奢ってやるぜ」
「ごまかさないで」沢近が声を出した。
「何をだよ…」
「隊長、今日のフライト、納得できていないでしょう?」高野もそれに続いた。
「え…」
「いつもの飛び方じゃなかったもんな。まるで別人のような」麻生も言った。
「おいお前ら、一体何を言ってるんだ。勝ったんだぞ俺は、あのハリーとかいう外国人
パイロットに」
「勝つには勝ったわね。でも、隊長の飛び方はいつもの飛び方とは全然違うわ。
一緒に飛んでてよくわかるの。隊長、恐がっているでしょう?だから勝てたの。
私にはそう見えたわ」
「おい、高野…」
「隊長、恐れてるのか?」麻生が言う。
「お前ら、何が言いたいのかわかんねえよ」
「アンタ挑戦し続けることが大事だって、いつも言ってるじゃないの。なのになん
で…」沢近が言おうとして、言葉を切った。
「なかなかいい目をしているじゃないか、キミの部下たちは」
「刑部隊長」全員の目が入り口付近に立つ刑部絃子に注目した。
「拳児くん。今日のフライトに納得できていないことは、キミ自身がよくわかってる
んじゃないのかな?」
少しの沈黙の後、播磨は口を開いた。
「…わかってるよ、あとその呼び方はやめろ」
*
隊舎屋上。外はもうすっかり日が暮れて暗くなっていたけれども、基地の照明で
屋上の上も明るく照らされている。格納庫の方では、他の部隊が緊急発進用の
戦闘機の整備をしている。
「悪いな、妹さん。ところで、今日はなんで残ってるんだ?」
「今週は当直なんです」
基地衛生隊の塚本八雲三曹と播磨がいた。
「それはすまなかったな」
「いえ、少しくらいなら。それに…」
「それに?」
「播磨さんのこと、心配でしたから」
「まいったな」
「あの…、今日の戦技競技会、おめでとうございます」
「あ、いや」
「嬉しくないみたいですね」
「ああ、うん…。言われちまってな。あいつらに」
「あいつらって?」
「ほら、お嬢とか麻生とか。一応、俺の部下だよ」
「ああ、麻生先輩とか高野先輩ですか」
「麻生の野郎、俺がビビってるとか言いやがって」
「あの…」
「俺は…」
「……」
ほんの少しの間の沈黙。しかし播磨には数時間続いたようにも感じた。目の前に
いる八雲は、そんな播磨の横顔をじっと見つめていた。
「恐かった…」
「……」
「すごく、恐かったんだ…。撃墜されるかもしれない、死ぬかもしれないって思ったら」
「播磨さん…」
「烏丸がやられそうになった時、俺は何もしてやることができなかった。ただ、自分が
逃げることが精一杯で、あいつには助けられたのに、俺は助けてやれなかった。俺は、
恐かったんだよ。死ぬのが。怖いから、俺は生き残った。あいつは死んだ。俺は、
卑怯で、臆病で、小さい人間で…、もう空を飛ぶ事が嫌になって…、それでも俺には
飛ぶしかなくて」
「播磨さん!」
堰を切ったようにあふれ出る播磨の言葉を断ち切るように八雲は播磨の肩をつかみ
声を出した。
「皆さんにも、そう言ってあげたらいいと思うんです。もしかして自分一人だけで抱え
込んでるから、フライトにも影響したのかもしれません」
「妹さん…」
「ご、ごめんなさい。素人がこんなこと言って」
「あ、いや…」
「それから、あんまり自分を責めないでください。私は、詳しくは知りませんけども、
播磨さんは悪くないと思います」
「いや、でもそれは…。キミの姉さんにも、悪いことを…」
「播磨さん、やっぱり姉さんのこと…」
「え?」
「いえ…、なんでもないです」
「…そうか。…ありがとうな、妹さん」
*
「あのバカ、世話が焼けるわ」
ドアの影から二人の様子を伺う沢近と高野。
「やっぱり心配なんじゃない」沢近の様子を見ながら、ほんの少し微笑みながら
高野が言った。
「別にちが…。そりゃあ、あんなんでも一応私たちのリーダーなんだから。こっち
の命にかかわるのよ」
「そう、そういう事にしておくわ」
「何よ」
「お前ら、こんな所で何やっている」
(あ、花井だ)
司令部の花井春樹三佐が懐中電灯の光を二人に当てていった。
(まずいわね、こいつにあの二人を見られたら、何を言い出すやら)
(愛理、私に任せて)
「なんだ、高野くんと沢近くんじゃないか。何をヒソヒソはなしている」
「花井三佐、ちょっとお話があります」急に立ち上がった高野が花井に歩み寄った。
「ん、なんだ」
「冬木一曹から塚本三曹の写真を買った件について」
「え、なんでそんなことを知っているんだ」
「まあまあ、こちらでその話を」
そう言って、高野は花井を下の階に誘導した。
*
数日後、播磨は警戒待機(アラート)にも復帰した。久し振りに播磨、麻生、
高野、沢近の三小隊メンバーが搭乗員待機室に集結したことになる。
「こうやって四人が集まってアラートにつくのも久し振りね」ファッション雑誌
のページをめくりながら沢近が言う
「播磨一尉がいなくて寂しかったわ」コーヒーを配りながら高野が言った。
「何だよ高野。お前がそんなこと言うなんて珍しいな、お、ありがとう」コーヒー
を受け取りながら播磨は言う。
「そう、愛理が言ってたのよ」
「お嬢がか?」
「バカ言わないでよ、なんでアタシがそんなこと言わなきゃならないのよ!」
思わず立ち上がる沢近。
「冗談よ」
「もう」
「まったく、拘束時間は長いっていうのに、騒がしいなお前らは」麻生が高野
から貰ったコーヒーに口をつけながら言う。
「そういや麻生のところは子供ができたんだってな」
「二人目です」
「男か、女か?」
「まだ腹の中でわかりません」
「お、そうなんだ。あの金髪の奥さんは元気か」
「まあ、だいぶ落ち着いてきましたよ。少し前までつわりが酷くて、かなりイライラ
してたみたいですけど」
「怒りっぽくなるのか?」
「まあ、そんなところです」
「じゃあお嬢はいつも妊娠してんのか」
「それセクハラよ!」
「うるせえなあ」
「まあまあ、喧嘩するほど仲がいいというし」高野は自分の紅茶を持ってソファに座った。
「ちょっと晶、変なこと言わないでよ」
「ん、誰か来たみたいよ」
「話を逸らさ…」
気づくと出入口のところに若い隊員が立っていた。
「あの、播磨一尉」
「あん?」
*
基地内、面会室。
「ご、ごめんなさい。お仕事中に」
「いや、大丈夫。気にしないでいいぞ」
面会室には、両側で縛った髪型が特徴の塚本天満がいた。
「久し振りだな」
「そうね」
播磨はそう言いながら天満の向かい側に座る。
「大丈夫、なのか」
「え?」
「その…」
播磨は次の言葉がなかなか出てこなかった。一体どういう顔をして彼女に喋りかければいい
のか、何を聞けばいいのか、とにかくわけがわからなくなっていたのだ。それでも、話をしない
わけにはいかない。ここから逃げるわけにはいかない。
「か、烏丸のこと…」
「播磨くん…」
「本当にすまなかった」
「播磨くんあのね」
「いや、謝っても足りないことはわかっている。詳しくは言えねえが、俺は何にもすることができ
なかった。俺がもっとしっかりしていれば、あいつに迷惑かけるようなことがなければ」
「播磨くん」
「…」
「聞いて」
「あ…、ああ」
「八雲からも話は聞いたの。あんまり自分を責めないで」
「しかし…」
「私も空に生きる人を好きになったんだから、それくらいの覚悟はできている…、つもり
だったんだけど。実際、こういうことになると…、その…」
「…塚本」
「なあに」
「烏丸からの伝言、キミに伝えておきたいと思う」
「え?」
「あの日、無線であいつは言ったんだ。『約束を守れなくて、ごめん』と」
「…」
沈黙。部屋の中がこんなにも静かだとは思わなかった。何か言わなければいけないのか
と思ったけれど、やはり播磨には言葉が思いつかなかった。もう一度謝るべきか、でもそんな
ことをしたらまた…。播磨の頭の中で同じ思考が何度もぐるぐると回る。
「播磨くん」
「ん?」
「あの日、約束の日に、烏丸くんは来なかった。でもね、それから数日して、夢に出てきたんだ。
それで言ったの」
「夢に…?」
「『キミは一人じゃないから、これからも頑張って生きてください』って。だから私、寂しくないよ。
悲しいけど、絶対乗り越えてやるんだから。あの人は絶対播磨くんを恨んでなんかいないと
思うし、私もそうだよ。だから自分を責めないで」
「強いな…、塚本」
「播磨くんも生きて…」
「塚本、俺は…」
播磨が何かを言おうとした瞬間、彼の声を遮るようにスピーカーから警報音が鳴り響いた。
「スクランブルだ。すまん、塚本」
「うん、頑張ってね」
勢いよく立ち上がった播磨は、面会室のドアを開けた。
「おまえら!?」
部屋を出ると、そこには麻生、高野、沢近の三人が立っていた。
「盗み聞きかよ」
「呼びに来たのよ、アンタを」腕を組んで沢近が答える。
「ふざけやがって、行くぞ!」
四人は駆け足で飛行場に向かった。
「国籍不明機三機。まもなくわが国の防空識別圏内を突破します」
「あいつらか…」
管制塔からの報告をうけつつ、待機しているF-15に向かった。
「遅いぞ播磨一尉」周防が播磨の姿を見て叫ぶ。
「すぐ取り返してやるさ」そう言って播磨はコックピットに乗り込んだ。急いではいても、
計器類は入念にチェックする。調子は悪くない。
播磨は遠くから見守る周防や整備隊長に親指を立てて合図した。そしてゆっくりと
滑走路に向かう。
「麻生」
《オーバー》
「怖いか…」
《え?》
「おそらく相手は、この前見たフランカーだ。下手をすれば交戦にもなりかねん」
《そうですね》
「恐くないのか」
《そりゃあ、怖いですよ》
「そうか」
《隊長はどうなんですか》
「俺か、俺は…」
播磨はゆっくりと息を吸い込んで答えた。
「もちろん怖いさ」
《最初からそう言っておけばいいのよ》沢近の声が聞こえる。
《もっと私たちを信用してくれてもいいんじゃない?》高野の声もする。
「ああ、頼りにしてる。しっかり聞こえてるぞ、お前たちの声は」
《こちら飛行隊長。キミたち、無線での私語は慎みたまえ》
「はいはい、わかりましたよ刑部隊長」
《拳児く…、いや、播磨一尉》
「どうした」
《昔、キミが言ったわね。“空で失ったものは空でしか取り返すことができない”って》
「わかってる。それが空で生きる者の運命だからな」
《そう、それならいいわ》
四機のイーグルはゆっくりと滑走路に出た。
「ようし行こうぜ野郎ども。なくしたものを取り返しに行くんだ」
《だから野郎じゃないって》
「気にするな。スター、テイクオフ!!」
待ってろ烏丸。お前のところに行くつもりはないが、お前のなくしたものは探して
おいてやるよ。離陸の振動の中で播磨はそんなことを考えていた。
おわり
※注意
本作品には、階級の呼称など、航空自衛隊に類似した組織が登場しますが、
作中の名称は「航空防衛隊」であり、自衛隊とは何の関係もありません。
似ているところがあったとしても、それは気のせいです。
また、特定の国を敵視したり、ナショナリズムを煽ることを目的としている訳でもありません。
その後
播磨達の姿を見たものは
誰も いなかった
読む気にならんな。
やはり設定改変モノは駄目だな。
スクランキャラを借りて自分の好きな話を書いたって感じだな
クズリ氏のプロレス話みたいなもんか
んー、原作でこういう戦闘機ものをやってたなら全然おkなんだけどな
原作でやってるのって、古代・中世欧州・時代劇とかだし、そういうのをやってみれば良かったのにな
VIPでやれ。じゃないけど、スクランでやる意味無いし
>>880 俺は面白いと思った
スクランキャラが別の世界観にいる話は嫌じゃない
スクロワも似たようなものだったし。
これからも頑張って欲しい
スクロワはスクラン2次創作ではないぞ
好き嫌い激しいから別スレ立ててもらって出て行ってもらったくらいだからな
なんで、スクロワと似たようなものって書いちゃったらスクロワ程度の面白さだったって事に
褒めてない
R15指定
変態仮面リメイク記念
※ご注意
この作品には過激なシモネタが含まれています。シモネタが嫌いな人、
中学生以下は見ないようにしましょう。
究極!!スクールランブル
第一話 復活
退屈な日常の中にも心躍る出来事がある。そういう小さな幸せを積み重ねていくことが
生きる事ではないか、などと最近彼は思うようになっていた。
「期末テストも終ったし、バーベキューパーティーをやろうよ」
彼のクラスメートの塚本天満が言い出したこのイベントに、当然彼も参加した。なぜなら、
彼も塚本天満に思いを寄せる者の一人だからである。
「おいメガネ、もうちょっと強く扇げよ」
「こうか」
「ブホッ!扇ぎすぎだバカ!灰が飛んだじゃねえか」
「うるさいな、だったら播磨、お前がやれよ」
近くのホームセンターから買ってきた木炭に火をつけている播磨拳児と花井春樹。
あまりチームワークは良くないようにも見える。
「はいはい、ケンカしてねえで早く網も用意しろよ」それを横目で見ながらテーブルや食器など
を用意している周防美琴が言った。
「ああそうだった、播磨。取ってきてくれ」
「ケッ、偉そうに」文句を言いつつも素直に網を取りに行く播磨。
「ヒゲ、ついでにこのテーブルもあっちに持って行ってよ」金髪を両側に縛った髪型の沢近愛理
が播磨を見て言った。
「なんだよ、お前が持っていけばいいだろう」
「やあね、か弱い乙女に重い物を持たせるもんじゃないわよ」
「何がか弱いだ」
「なんか言うた?」
「いえ、何でもありません」播磨は野外用のテーブルの上に、網を乗せて運んだ。
「播磨くん、飲み物の入ったクーラーボックスがあるんだけど、ちょっと重くて」家の奥から
元気のいい女の子の声が聞こえた。
「おお塚本、ちょっと待ってろ」テーブルを置くと、播磨はすぐに声の主の方に向かった。
「おい播磨、こっちはどうするんだ。網は」背後から花井の声がしたけれど、播磨はそんな
ことで動じない。
「うるせえ、周防と二人で仲良くやってろ!」
「播磨くん、一緒に運ぼう」このイベントの提案者であり、バーベキューをする場所を提供して
くれた家の住人でもある塚本天満は嬉しそうに言った。今回は、彼女の家の庭でやっている
のである。
「いや、塚本。こういう重いものを持つのは男の仕事だぜ」そう言って一人でクーラーボックスを
持ち上げる播磨。
「わあ、カッコイイ」
「何よ、さっきのアタシとはエライ違いじゃない」縁側のすぐ近くで沢近が言った。
「おいお嬢、邪魔するな」播磨は沢近のことをお嬢と呼ぶ。家が金持ちでお嬢様だから、ただ
それだけのことだ。
「やっぱり夏といえばバーベキューだよね。今日は食べるよ」飲み物や割り箸などを並べながら
天満は嬉しそうに言った。
「あれ、高野はどうした」そう言って周りを見回す播磨。
「何?」
「うおっ、びっくりした」
高野晶は播磨のすぐ後ろで、綺麗に切られた野菜を持っていた。
「播磨くん、あなたは野菜も食べなきゃだめよ。この時期は特に体調を崩し易いからね」
そう言ってテーブルの上に野菜を置く高野。
「わーってるよ、全く」
「ねえねえ皆、今回のお肉は愛理ちゃんが持ってきてくれたんだよ。最高級の牛肉よ」塚本天満
が両側に縛った髪をピョコピョコ揺らしながら鮮やかな色の肉を見せた。
「ほお、こりゃあいい肉だな。さすが沢近だな」天満の持った肉を覗き込んだ周防が言った。
(いい肉なのか?確かに美味そうだが…)
播磨には、肉や魚の良し悪しはよくわからなかった。ただ一つ言えることは、昼飯をまともに食べて
いないので、自分ひどく空腹であるということだった。
「さて、炭火もいい具合に燃えてきたことだし、焼こうぜ」そう言って播磨が肉を手に
取ったとき、
「待て待て播磨。まだ八雲くんが来ていないじゃないか」と花井が止めた。
『八雲くん』とは、塚本天満の妹のことであり、花井春樹のかつての思いの人でもある。
まだ未練は少しあるらしい。
「八雲なら今おにぎり持ってきてるよ」天満が花井に言う。彼女も、早く食べたくて
仕方がないという顔をしている。少なくとも播磨にはそう感じられた。
「あの、みなさん。もう焼いていただいて結構ですよ」おにぎりが載った皿を持った塚本
八雲が庭用のサンダルに履き替えて出てきた。
「そういう訳にはイカン。みんなでそろって乾杯をしなければな」
「誰だよこんな奴連れてきたのは」小声で愚痴る播磨。
「ごめんな播磨。どうしても連れて行けって煩くて」周防が軽く頭を下げる。
「そこ!何をブツブツ言ってる。さあ、紙コップを配って」
「へいへい」
花井の仕切りに全員うんざりした様子ではあったが、天満だけは違っていた。
「じゃあ、期末テストお疲れ様。カンパーイ!」
「カンパーイ」
あくまでもハイテンションでジュースを飲み、そして肉を焼いた。
網から滴り落ちる肉汁が炭火を更に強くさせている。
「おお、これが八雲クンの握ってくれたおにぎりか。感動だ!」そう言っておにぎりに
かぶりつく花井。
「おいしい?」と高野。
「美味しいに決まってるじゃないか!」
「それアタシが握ったやつだから」
「ブー!」
そんな花井を無視して各々が肉を焼く。
「塚本、これどうだ?」そういって菜箸で肉をつかむ播磨。
「わあ、ありがとう。播磨くんはやさしいね」
「いや、どうってことねえぜ」
播磨が心の中でガッツポーズをしたことは言うまでもない。
「ねえヒゲ、アタシにも取ってよ」向かい側にいた沢近が言った。
「んだよ、自分で取れよ」ぶっきらぼうに答える播磨。
「何よ、アンタ長い箸持ってるんでしょう?それくらいやってくれたっていいじゃない」
「播磨くん。愛理ちゃんのも取ってあげて」そう言って天満が微笑むと、播磨はすぐに
行動を起こした。
「ほらよ、これでいいか」
「これ嫌い」
「このアマ…!」
播磨が心の中でサンドバッグを殴っていたことは言うまでもない。
「新しいお肉持ってきました」台所からせっせと材料を運ぶ八雲。
「八雲くん、悪いなあ。そんなに仕事をさせちゃって。何ならボクが代わろうか」嬉しそう
に言う花井。
「いいえ、結構です。お構いなく」
「そうかい」
すぐに花井から視線をはずした八雲は、播磨の元に歩み寄った。
「播磨さん」
「なんだい妹さん」
「口に、ついてますよ」そう言って八雲はハンカチを取り出し、播磨の口元を拭いた。
「あ、ああ。ありがとう」
「なんかあの二人、夫婦みたいだなあ」周防のその言葉に、隣にいた花井は我慢がならなかった。
「八雲くーん!ぼくの口の周りも拭いてくれないか」
「みっともないことをするな」すかさず手刀をくらわせる周防。
「あの二人も夫婦みたいよね、愛理ちゃん」
「夫婦漫才ってところかしら」沢近と天満がそんな二人の光景を見て笑っていた。
*
播磨はしばらく食べていると、ジュースを飲みすぎたのか急に尿意が襲ってきた。
「妹さん」
「はい」
「ちょっとお手洗借りてもいいかな」
「はい、どうぞ」
「悪い」
そう言って家の中に入る播磨。この家ははじめてではないので、中のことはよく知っている。
二階には愛しの人の部屋がある、などと考えつつトイレに向かう播磨。そして、用を済ませて
洗面所で手と顔を洗っていると、足元に何かを発見した。
ハンカチか?でもなんでこんな所に…。そう思って、足元の布を手に取ってみると、
それは女物のパンティだった。
(うお!これはまさか、天満ちゃんのパンツ!?)なぜか播磨は直感的にそう思った。
しかしなんでこんな所に…、彼の頭脳は期末テストの時の数百倍のスピードで回転し始めた。
だからといって、それで疑問が解決するわけでもない。いかんな、このままこのパンティを持ち
続けていたらまた変態さんと思われてしまう。
過去、何度も天満から誤解されてきた播磨にとって、この状況が誤解を生むことくらい考える
までもなく当然のことである。しかし天満ちゃんの下着を見る機会など、滅多にないことなの
だから。頭の中の悪魔、というより変態の神がささやく。おお、やめてくれ…!播磨の心の叫び
でその誘惑を打ち消そうと必死に格闘した。好きな女の子のパンティをじっくり観察するとか、
もはや正常の領域を大きく逸脱する変態の領域だ。そんな領域に足を踏み入れた者がまともな
恋愛など望むべくもない。
いや、その壁を乗り越えてこそ真の愛が生まれるのではないか!さすが変態の神、理屈もなんか
それっぽい…、訳がない!一体何を考えているのだ播磨拳児!播磨は自分で自分を叱り付けた。
んだよ!自分の気持ちに正直になって何が悪いんだよ!
「さすが播磨拳児、逆切れとはやるぜ…」
播磨は心のざわめきを抑えようと一度深呼吸をした。
「播磨さん、どうされました?」
「うわ!」
塚本八雲が心配になって播磨の様子を見に来たようだった。
播磨は心臓が口から飛び出してしまうんじゃないかというくらい驚いた。
「大丈夫だよ妹さん。ちょっと食べすぎたみたいで」
「そうですか?胃薬でもお出ししましょうか?」
「いや、いいんだ。ありがとう。ささ、戻ろう」
そう言って播磨と八雲は庭に戻った。播磨は八雲に見つからないよう、持っていた
パンティはズボンのポケットの中に隠していた。
庭に戻ると、赤い顔をした花井が笑っていた。
「おい、花井(メガネ)はどうしちまったんだ!」
「いや、悪い。あたしが持ってきたチューハイをジュースと間違えて飲んじまったんだよ。
こいつとことん酒に弱いから」片目をつぶって周防が言った。彼女もほんのり赤い顔をしている。
「ヤクモン!播磨と一緒に何をしていたんら!明るいうちから破廉恥な事は許さないのら」
花井の言葉遣いが明らかにおかしい。
「まあこれはこれでいいんじゃない?面白いし」いつもの無表情で高野が言う。
「高野、お前も飲んでるのか?」
「いや、私は下戸だから」
「そうか」
「でもあのコたちは飲んでるみたいよ」そう言った高野の視線の先には、金髪を両側で縛った少女と、
黒髪を両側で縛った少女の二人がいた。
「やっほー播磨くーん。ラブラブだねえ〜。ラブラブ〜」何を言っているのか意味がわからない天満。
塚本天満もとことん酒に弱いようだ。
「ねえ、ヒゲ」
「お、お嬢か。塚本をなんとかして…」
「あたしって、魅力ないかな」
「何を…、言ってるの?」
どうも沢近も酔っているようだ。播磨にはすぐわかった。
「ねえヒゲ。答えてよ。アタシって魅力ないの?」
播磨に顔を近づける沢近。酒臭い。
「いや、魅力的だとは思うぜ」
「本当に?」
「ああ」播磨は段々面倒になってきた。
「じゃあさ、じゃあさ」
「ん?」
「キスしてよ」
「はあ?」
「ねえってば」
「おい、お嬢」
「何よ、アタシじゃダメだっていうの?」
「いや、そういう問題じゃなくて」
「どういう問題よ」
「皆見てるし」
「関係ないわ」
「キスくらいいいでしょう?」
「おい高野、酒に何か変な薬とか入れなかったか?」播磨は高野の方をむいて言う。
「知らないわ」高野はそう言って顔を背けた。
「おいこっち向けよ。ってか、お前はお嬢がこんなになるの狙ってたんじゃねえのか?」
「偶然よ」
「だったら右手に持ってるそのデジカメは何だ」
「皆で集まった記念よ。当たり前じゃない」高野は播磨の方を見ずに言った。
「こらヒゲ、こっち向きなさい」そう言って播磨の顔を両手で自分の方に向かせる沢近。
「あの、沢近先輩」不意に八雲が声をかけてきた。
「妹さん…?」ゆっくりと沢近の手をどかせる播磨。
「これ、飲んでください」そう言って八雲は、沢近に氷と水の入ったガラスコップを差し出した。
「なによそれ」
「お嬢、いいから飲め」播磨は、沢近の代わりに八雲からガラスコップを受け取って無理やり沢近に飲ませた。
「冷た!」沢近がそう言うと、水が気管に入ったのか、彼女は激しくむせた。
「ああー、あれ?何してたんだろう私」沢近は、水を飲み干すと火が消えたように素に戻っていた。
「あれ?どうしたのアンタたち」
「いや、別に…。なあ妹さん」
「は、はい…」
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をする沢近。そして、
「ちっ」密かに舌打ちをする高野であった。
「おーい播磨ぁー。花井運ぶの手伝ってくれえ」
「キャハハハ、花井君タコさんみたいーい」
薄暮の中で騒ぐ面々を見ながら、完全に乗り遅れた播磨と八雲は立ち尽くすだけであった。
「妹さん…」
「はい」
「そろそ片付けようか」
*
その日の夜、播磨は寝室の中で一人悩んでいた。
「どうしよう…、もって帰ってきちゃった」
播磨の目の前には、塚本家で拾って、思わずポケットの中に入れてしまった女物のパンティがあった。
そしてなぜかその前に正座をしている播磨。
「いかん、これじゃあ下着泥棒みたいじゃないか」
みたいなも何も、下着泥棒以外の何者でもない。
(天満ちゃんのパンツ…)思わず唾を飲み込む播磨。
「拳児くん、まだ起きてるのかい?」部屋の外から、同居人の刑部絃子の声がした。
「うわわわ」
その声を聞いて慌ててパンティを座布団の下に隠す播磨。
「ん…、ああ。もう寝るよ」
「早くねてしまいなよ。キミは補習があるんだろう?」
「まあな」
考えても仕方がない。とりあえず寝よう。寝てから考えよう。そう思って播磨は電気を消し、
ベッドの上に横になった。
暗い部屋の中に鳴り響く時計の針の音。
「くそ、やっぱり気になって眠れねえ」タオルケットを跳ね除けてベッドの上に座る播磨。
そして闇の中、おもむろに天満(のものと思われる)パンティを取り出した。
やはり返すべきだろう、しかしどうすればいいのか。播磨の頭の中で思考が巡る。
「ダメだ、いい考えが浮かばねえ」
女性モノの下着を手に持っているという時点で、既にまともな思考は期待できないのかも
しれない。
それにしても、これは本当に天満ちゃんのものなのだろうか。そう思い、播磨は手に取った
パンティを窓の外から差し込む微かな光にかざしてみた。
「やはり白だな…」
百人が見たら九十九人が変態と認定するであろう言葉を吐きつつ、播磨はゆっくりとパンティ
を顔に近づけた。
「うお!いかんいかん。何を考えているんだ俺は」
正気に戻った播磨は、下着を顔から離し、首を左右に激しく振った。
冷静になれ播磨拳児、お前は今何をしようとした。自分で自分に問いかける播磨。
「これは天満ちゃんのパンティであって天満ちゃんではない」
最早まともな思考回路は維持できないようだ。
「それでも…」
一瞬で、彼の目の前は真っ白になった。
「拳児くん、さっきから騒がしいな。一体何をやっているんだ」絃子が思い瞼をこすりながら、
播磨の部屋のドアを開けた。
しかし、部屋の中には誰もおらず、開け放たれた窓辺でレースのカーテンが揺れていた。
*
深夜、塚本邸。その日、塚本八雲は怪しい物音に目を覚ました。眠い目をこすりつつ耳を
すます。一つ、二つ、床が軋む音が聞こえる。
誰?
しばらくして姉の天満が部屋に入って来た。手にはなぜかバトミントンのラケットを持っている。
「なあに、姉さん」
「しっ、静かに。下に誰かいるみたいなの」
「ええ?戸締りはちゃんとしたはずだよ」
「わからない、今から確かめてみようと思うの」
「そんな、危ないよ」
「大丈夫、お姉ちゃんに任せんしゃい」
ベッドの下では、猫の伊織が既に起きており、じっと床の下を見つめていた。
「伊織、お前も何か感じるの?」八雲が不思議そうに伊織に話しかけた。
暗い階段を天満を先頭にゆっくり下りる。気のせいであって欲しい、と八雲は密かに心の中で
願った。洗面所、トイレ、居間と天満の背中越しに確認する。人の姿はない。
「よかった。誰もいな…」
と次の瞬間、天満の身体は何者かによって羽交い絞めにされ、口をおさえられた。
「んー!んー!」天満は持っていたラケットで反撃を試みるも、すぐにもぎ取られた。
「誰!?」
一瞬目の前で起こった事態が理解できなかった八雲も、すぐに気がついて声を出した。
「動くな…」低い男の声と当時に、大きなサバイバルナイフの刃が夜の光の中に怪しく浮かび上がった。
「警察呼びますよ…」
「この娘がどうなってもいいのか」そう言うと暗闇の中で男は天満の喉下に大きなナイフをつきつけた。
「姉さん」
「この家にお前ら二人しか住んでいないことは確認済みだ。さあ、痛い目にあいたくなければ
金目の物を出せ」
男は黒い帽子を目深に被り、白いマスクをしており顔はよくわからない。しかしこの男の持つ
雰囲気は、かなり邪悪なものであることを八雲は肌で感じていた。
怖い…。八雲は全身が震えるのを感じた。大好きな姉を守れない。しかも自分自身も
危機に直面している。どうしたらいいのか。
「少女に刃物をつきつけるなど、許せん」不意にまた別の男の声がした。
「誰だ!」
帽子の男は周りを見回す。天満と八雲以外の人影は見えない。
「あ」
八雲の目線の先、そこには天井に張り付いている一人の男の姿があった。暗くて
よくわからなかったけれども、確実にそこにいた。
「ふん!」天井に張り付いていた男は、天満にナイフを突きつける男の背後に降り立ち、
ナイフを持った手をねじり挙げた。
「いててて!!」たまらずナイフを離す男。ナイフは足元の床に落ちて、縦に突き刺さった。
帽子の男はねじられた腕を抱えて居間の方に逃げ込む。しかし、先ほどの男もそれを
察知し、すぐに居間に行くと、一瞬のスピードで男を背負い投げた。ちゃぶ台の上に投げ
飛ばされた黒い帽子の男は受身が取れず、咳き込んでいたところに、どこから用意した
のか知らない荒縄でぐるぐる巻きにされ、制圧された。
「成敗!」
八雲と天満は、その様子を呆然と見ていた。
「あの、ありがとうご…」天満がそう言おうとした瞬間、月明かりで彼女を助けた男の姿が
はっきりと見えた。
「きゃああああああああああああああ変態だああああああ!!!!!」
男は筋骨隆々で、しかもブリーフのパンツ一丁に網タイツ、そして顔には女性物のパンティ
を装着していたのだ。その姿を見て天満は発狂した。
「あの、お名前は…」そんな中、八雲はなぜか冷静だった。
「変態仮面!」そう言い残すと、変態仮面と名乗るどこからどう見ても変態の男は居間の
サッシを開け、そこから庭に出て行き、どこかに消えていった。
「変態仮面さん…」
静かに男の名乗った名前をつぶやく八雲。大丈夫か?
*
黒い帽子を被ってマスクをしていた男は、余罪のかなりある泥棒らしく、その日は
裏口のカギを壊して侵入したという。警察が到着した時には、なぜか亀甲縛りにされ
ており、そのまま警察署まで運ばれた。
「昨日は大変だったんだよう」事の成り行きを友人の周防や沢近に説明する天満。
この日は補習で学校に集まっていた。天満は、一旦警察署に寄ってから遅れて学校に
来たようだった。
「恐かったんじゃない?」沢近が心配そうに言う。
「うん、ナイフを首のこの辺に当てられちゃって、生きた心地がしなかったよ」
「うわあ、ひでえなあ。この辺も物騒になってきたもんだ」周防も眉をしかめた。
「でもね、それ以上に恐かったのが、その後なの」
「その後?」
それまで文庫本を読んでいた高野晶が反応した。
「助けてくれた人がいたんだ。どこから入ったのか知らないけど、急にその強盗を投げ
飛ばして、紐で縛って捕まえてくれたの」
「うお、凄いなあ」周防が関心する。
「でもその人…」天満は赤面して言葉を濁した。
「どうしたの?何があったの天満」
天満は昨日月明かりの下で見た、その男の姿を説明した。
「えええええええ!?」
驚愕する一同。それはそうだろう。
「なんでそいつも逮捕されなかったんだ?」
周防のその一言に、天満を含む全員がうなづいた。
つづく…
支援?
ハイペースで投下できるのは立派
>>880 GJ
俺はこういうの大好き
スクランでもよく時代背景が飛ぶことあるし
SS自体もなんかドラマっぽくてよかった
出来ればその後もみたいくらいに
どこの作品のSSでもこういう世界観を変えるSSはあるでしょ
IFスレもしもを書くんだからこういうのは全然ありだと思うよ
クロスしてない限り、お江戸だランブルとかと同じ扱いだと思うけど
>どこの作品のSSでもこういう世界観を変えるSSはあるでしょ
例えばどんな作品?
別にSSを叩いてるわけじゃないんだけどなw スクランでなくてもよくね?ってだけで、SSは良いって言ってるし
そもそも作者本人がやる分には構わんでしょ。原作者がやるかSS書きがやるかの違いなんだし
ハイペースで投稿してるのは凄いなとは思う
昨日の題名ってのは結局合ってたの?スペルミスだったような書き込みあったけど
>>899 前のSS読んでたので更新してなかった
こっちもGJ
播磨バカスww
テンポが良くて見やすかったです
>>902 ハルヒで設定変えたり世界観違ったりはそれこそ良くある
あとFate、東鳩2なんかも
あんまよそ行かないから知らないけどそういうのは昔からよくあるんじゃないの?
葉鍵板でも良く見るし
>>903 ハルヒに月厨ものとかwあれは厨展開で荒れまくってるじゃん(東鳩ってのは知らないけど)
スクランはそういうの無くて良いよね。ってのがちょっと前までの主流だったように覚えてるけど
例として挙げるには酷すぎないかい? エバの設定改変並に酷い事で有名じゃん
全盛期ならともかくここまで衰退したスクランSSだし
今までなかったジャンルに手を出すのも悪くないと思うがなあ
変態播磨に違和感がないのはなぜだろう…
>>904 あなたのレスはちょっと事実と違うような気がするけどまぁそこは置いといてルール上はありでしょ
あんまり各地を周らないから知らないけど
世界観変えるのって二次創作でしか出来ない二次創作では王道なことの気がする
俺が知る限りSSが盛んな鰤やひぐらしのSSサイト見てきたけど
やっぱり世界観変えたのが合ったよ
あとFateやハルヒ、東鳩シリーズはSSが盛んだし見てたから例としてあげたんだけど
あそこが荒れるのは色んな意味で人が多すぎるからだと思う。もちろんエヴァも
エヴァは公式ですら設定変えまくるし
人の紹介で全自動月姫リンクとか見てたけど、月系の物は酷かったし、エバは言わずもがな
そういう例じゃなくてさ、普通の漫画SSでの例が挙がると思ってたのよ
それで期待してたら月とかエバとか、最近じゃ良い噂を聞かないハルヒとかが挙がっててズッコケタのね
事実と違うと言われても……まぁ受け止め方ってのは違うしね
世界観を変える=設定改変、では2次創作とは言えないよーな
原作を活かしつつ自分の趣味をブレンドして自分だけのものを作る、ってのが2次創作の王道だと思うのだけどね
先の戦闘機物のようなSSを王道と言われると語弊が出てくるよ
もちろん、戦闘機物は読めて面白かったし不満なんて無いけど、スクランでなくても良いと思う、と言ってるのね
とりあえず合わないと思ったSSはスルーってことでいいんじゃないか
よかった人だけが感想書いて誤解でも何でもすればよろしい
まぁ実際、製作の趣味なのか原作から大幅に設定改変して、
結果視聴者からボロクソに叩かれてるアニメが最近だけでも少なからずあるし、そこだけは同意ではあるかな
ただ、商業レベルならどうでもいいけど、
こんな規模の次元で排斥しだすと衰退するだけだからあまりとやかく言うつもりも無いけど
俺は良かったって思ってると書いてr(ry
まぁわーわー言ってる方が去ればいいのか
排斥ってwそんなレベルの話までしてたっけw
なんか極端な人がいるのね
まぁ、事を両極端に捉えるつもりもないけど、それなら何を目的に反応し続けてるのか理解できない
抽象的に「面白かった」ではフォローにならないから単なる否定にしか見えないんだけど
んー、始めに言ったけど、スクランでやる必要なくね?ってだけなんだがw
ぶっちゃげたらキャラ名が入ってるだけじゃんってね
否定とかじゃなくて、ここではなくそういう趣味のスレで投下したら出来が良いだけにウケイイだろーな、と
結局は排斥じゃないの、それって
此処盛り下げて他所が盛り上がっても此処の住人にはメリット無いんだからさ
>>910に全面的に同意
ただ一つだけ言わせてもらえば、設定を変えるには読み手に対してそれなりの説得力が必要であって
いきなり「俺はエースパイロットだ」なんていうU−1作品は評価以前の問題なのではなかろうか?
それこそ単なる感想だからね。
設定可変が合わなかった、というのを書いても問題ないでしょ。
マンセー以外禁止とか感想に制限付けるのは勘弁して欲しいね。
そういうレスが嫌なら自サイトに引篭もっていれば良い。
>>915 キャラもちゃんと立ってると思うよ
どんな形のIFがあってもいいと思うんだけどな
こんだけ衰退したはずのスクランSS界で
まだこれだけ人がいるのは嬉しいものがあるな
>>916 だから排斥じゃないってw
その後のSSには(短時間で書き上げれて)凄いねって書いてるっしょ
どっちが極端な意見を述べてるんだよw
良い所悪い所の両方を書いてるのが排斥って言われたら、全部マンセーじゃないと駄目って事?
ここで空気を読まずに流れをぶった切ってみる。
――たいしたやつだよ、本当に。
声には出さず、ただ口の端に他人はそれと気がつかないほどの小さな
笑みを乗せて、麻生は溜息をつく。視線の先には、一発で決めちゃって
下さいね、と大きく手を振る見慣れた後輩――サラの姿。
「まったく、よく言う」
聞こえないとは分かっていても、思わずもれる呟き。それもそのはず、
バスケットボールを手に構える彼の正面には、あるべきゴールの姿は影も
形もない。ただ、遠く広がる秋の晴天が広がっているのみだ。
馬鹿馬鹿しいとさえ言える状況は、
「にーちゃん早く見せてくれよ」
「そうだー」
「サラねーちゃんがプロ級だって言ってたもんなー」
けれど、そんな子供たちの声で彼をその気にさせる。もちろん、総じて
何事に対しても控えめである、と自身を認識している麻生にとっては、
間違っても『プロ級』の腕前が自分にないことなど百も承知だ。
それでも。
「悪い気分じゃない、か」
試合の張り詰めた空気にも似た、どこか心地良い緊張感。
間違ってもみっともない恰好は見せられない、そんな思いだけが静かに
心の中を埋めていく。気がつけば、それ以外のことをまったく考えていない、
そんなありのままの自分がいることに、たいしたやつだよ、もう一度胸の
中だけで呟く。いつの間にやら、すっかり乗せられている、と。
――ここまで乗せてもらった以上、きっちり決めてやらないとな。
そして、その手から放たれたボールが宙に弧を描いた。
しん、と。
ほんの一呼吸の間だけ、静寂が辺りを支配し。
ぱさり、という聞こえるはずもないネットの音が、麻生には聞こえた
ような気がした。
ぽん、と。
不意打ちで後頭部をはたかれ、麻生はわずかに顔をしかめた。とは
言っても、それは痛みを伴うほどの衝撃でもなく、また当の相手も別段
どうこうしてやろうという意図があったわけでもなかったようで、ただ
それに重ねるように、
「またぼーっとしてましたね、先輩」
呆れの響きを帯びたサラの声が投げかけられただけだった。
それは、ここのところどこか日常とさえ化してしまった光景。理由は
言わずもがな、すべては彼自身の問題であり、そしてその内容が内容な
だけに、他者からすればいかんともしがたい、そんな状況だ。
「……ワリィ」
「うーん、先輩にもうちょっとしゃきっとしてもらわないと、私も調子
出ないんですけど……」
こういった場合、人の取る行動はは往々にして二つに分けられる。即ち、
そっとしておくか、あるいは、ちょっとしたお節介を焼いてみるか。
「あ、そうだ」
「……なんだよ」
「先輩、今度の日曜日、ウチに来ませんか?」
そしてサラ・アディエマスという少女は、当然のようにその後者に
該当するタイプの人間、なのだった。
「あのときの先輩の顔、面白かったですよ」
「……お前がいきなり妙なこと言うからだろ」
そうですか、と小首を傾げてみせるサラは、すぐにまたそのときの
様子を思い出したらしく、笑いを噛み殺すような表情を見せる。対する
麻生は、いささか投げやり気味に溜息をつく他にない。
もちろん、サラとしては『修道院に来ないか』という以外の意図は
欠片もなかったのだが、唐突に問われた麻生の方はそうもいかない。
彼女の言う『ウチ』がどこなのか、という程度のことは知ってはいた
ものの、とっさのことで余計な考えが頭をよぎったのは責められる類の
ことではない、と麻生は思う。
思うのだが、そこは相手がサラである以上、彼に勝ち目は万の一つも
ない。散々にからかわれ、それでも悪意があって言っているのではない
と分かる以上強くも出られず、そして今、わざわざ途中まで迎えに来て
くれた彼女とともに、修道院への道を歩いている。
我ながらたいしたお人好しだと、さすがに自分でも思っている。ただ、
仮にそうだとしても、結局のところそれが自分だと、麻生はそうも考えて
いる。ふと、かつて友人に似たようなことを言われたのを思い出し、そう
いうものなんだろうなと、心の中だけで小さく苦笑いをしているところに、
着きました、というサラの声がかけられる。その声が、やけに楽しそうな
色をしているのに首を傾げる暇もなく、
「サラねーちゃんおかえりー!」
「今日はこのにーちゃんが遊んでくれるのか?」
わらわらと駆け寄ってきた子供たちに、あっという間に取り囲まれる。
「おい、まさか……」
「分かりました?」
興味津々、といった様子で目を輝かせる子供たち。気の早い者は、既に
彼の手を引いて駆け出そうとしている。その中心で、戸惑い三割諦め七割、
といった様子の麻生に対し、
「今日一日、この子たちのこと、よろしくお願いしますね」
これ以上ないくらいの晴れやかな笑顔でサラは言うと、ちょっと待て、
そう言いかけた彼の機先を制するように続ける。
「あ、こういうの苦手だ、って言うんですか?」
ですよね、先輩ってなんだかそんな感じですもんね、と一人呟き頷いて、
「でも残念でした。今日に限ってそれは通じません」
ふっふっふ、と何故か得意気に笑うサラ。
「なんと今日は八雲も呼んでないので、私と先輩の二人しかいないのです」
意味もなく胸を張ったそのポーズに、頭痛にも似たものを覚える麻生。
そんな彼の様子に、あれあれ、と肩をすくめるサラ。
「播磨先輩も花井先輩もみんなと遊んでくれたこと、あるんですけど」
どこまでもわざとらしい口調に、さすがに麻生も苦笑混じりで受けるより
他の選択肢はない。
「分かったよ……まったく」
「先輩ならそう言ってくれると思ってました。それじゃ、あとはよろしく
お願いしますね」
悪びれた様子など少しも見せず、しれっとそう言い残して礼拝堂に向けて
歩み去ろうとするサラ。
「ちょっと待て」
「はい?」
「お前はどこに行くんだ?」
「私ですか? みんなのおやつとか、いろいろ準備があるんですよ」
というわけで。修道女は天使の笑みで残酷に告げた。
「あとはよろしくお願いしますね、先輩」
「はい、お疲れさまでした」
「……ああ」
数時間後。
鬼ごっこにかくれんぼ、その他諸々のフルコースに付き合わされて疲労
困憊、といった様相の彼の元に、ようやくサラが現れた。どうでしたか、
という彼女の問にも、無言で首を振るのが精々の麻生。
「これで私もいろいろ苦労してる、って分かってもらえました?」
「そうだな……」
「ふふ、それはよかったです」
それじゃあ、と。後ろ手に持って背中に隠していた物を差し出すサラ。
「最後にこれ、お願いします」
それは、麻生にとってはよく見慣れた代物――バスケットボール。
「これってな、お前、ここにはゴールも何もないぞ」
「そうなんです。だからみんなあんまりやったことないんです、バスケ」
だから、そう言ってサラは微笑んだ。
「別に特別じゃなくていいんです。先輩の思うやり方でいいですから、
みんなに見せてあげて下さい。これは先輩にしか出来ませんから」
目の前に差し出されたボールと、その向こうのサラの笑顔。ここに至って、
ようやく麻生は彼女の目論見に気がついた。
「要は、これが目的だったってことか」
「まあ、そういうことです。道に迷ったときは最初から、です」
でしょう、と笑う彼女の笑顔は、まさしく迷える者を導く聖職者のそれ
だった……とまで言っては言い過ぎになるかもしれない。ただ、少々大袈裟
に過ぎるとしても、そのときの麻生にはそう見えた、それだけの話だ。
「分かったよ」
「素直でよろしい。それじゃ、お願いします」
――そして、その手から放たれたボールが宙に弧を描いた。
しん、と。
ほんの一呼吸の間だけ、静寂が辺りを支配し。
ぱさり、という聞こえるはずもないネットの音が、麻生には聞こえた
ような気がした。
次の瞬間、
「すっげーなにーちゃん!」
端から見ていれば、ただボールを放っただけにもかかわらず、彼の周囲
には、あっという間に子供たちの輪ができる。そこにあるのは、純粋で
晴れやかな笑顔。自分が、自分のやり方で他人に何かを伝えられたことに、
普段はあまり変わらないその表情がわずかに緩む。
「練習すれば出来るようになるさ」
自然と口をついたのは、そんな言葉。どこにでもありふれているような、
しかし今まで積み上げてきたものがあるからこその言葉。それもまた、自分
らしさだろうと麻生は思う。
そして。
「さすが先輩。私が見込んだだけのことはあります!」
ぱたぱたと駆け寄ってきてサラの軽口に。
「言ってろ」
久しぶりに――本当に久しぶりに、麻生は声を出して笑った。
おしまい。
パイロットと変態仮面、まとめに保管した方がいい?
おおーいい感じのアソサラだったww
資格試験等などの勉強に残業、行きたくなくても行かなきゃ行けない飲み、考えなきゃいけないこと多数
休養も欲しいし、遊びにも行きたいし、映画だって見たいし、小説や漫画も読みたい
社会に出ればやっぱりどうしても自由な時間を作るのが難しい時期はあると思う
誤爆か?
オラオラオラ
次スレは980くらい?
>>929 いや、別にパイロットとかを否定したいのではなくて、
IF28のページが無いから保管できない。
普通に作ればいいのかな?
>>934 IF28作っときました
本当はもっと手伝いたいんですけどスミマセン
少なくとも俺は連載終わっても誰かがまとめサイトを見続けてる限り
いつか必ずちゃんとした形になるまでまとめをやり遂げます
保管してくれる人、乙です
もっと気軽にやっても良いよ。気張らないで無理しないでね
今、何人ぐらい保管作業してるの?
まとめを見てこのスレに来る人もいるからねえ…
IF10-15あたりとIF23-26は俺がやった。
IF1から始めてくれてる人が1人。
あと
>>935くらいでないかな?
なぜ、IF23から始めたかは
>>2の保管庫があることに気付いたからと、
過去ログを扱っていたにくちゃんがなくなり緊急性があるかと思ったから。
IF4-22の過去ログは分校にあるはずだからいいけど、それ以降はなくなるんではないかと思って。
しかし、普通にmimizunにあったからよかったわ。
色んな人がちょくちょく手伝ってくれてるような気がする
真王道王道旗おに縦笛
このあたりのSSは全然書かれなくなったな
今からすると、過去の作品にはねーよwwっていう展開ばかりだし
妄想と現実が合わなくなったためか
縦笛は前スレにもこのスレにも投下されとるがな
随分前だけど
SS投下します。
少しダークになるかもしれないんで、そういうのが苦手な人は読まないほうがいいです。
校内放送が校舎中に鳴り響くとすぐ、毎夕流れている音楽が今日も学校中に流れ始める。この音
楽の正式名称は知らない。でも日本では下校時に定番の曲として使われている、はずだ。
俺は聞きなれた音楽を背に、綺麗とは言いがたい校舎の廊下を進んでいた。校内放送でも一般生
徒の下校時間を告げていたし、もう帰ることにしたのだ。
本当はもうちょっと残って作業をしていてもいいのだけれど、なんだかお腹も空いてやる気がう
せてしまったし、なんとなくだるい。実に中途半端だが、きっとこういう日もたまにはある。
今日もいつものように、旧校舎にある茶道部の部室を使って仕事をしていた。ほとんど毎日やっ
ていることだ。いつからこんなにマジになったのか覚えていない。いつになったらこの仕事をやめ
るのかも定かじゃない。一生続けているのかもしれない。
自分に少し嘘を吐きながら、サングラス越しにもわかる夕陽をなるべく見ないように旧校舎の外
へと急いだ。
いつまで続くんだ。
学年も変わる寸前のこの頃、いつまでこの状況は続くのかと良く考えるようになった。
漫画を描く仕事のことだけじゃない。今の状態や、関係。それら全て。何もかもがいつまで続く
のか、それすらわからないことは不安でもあり、救いでもある。
勘違いだってそうだ。いつまで続くのかよくわからない。
自分は勘違いをされやすい。それはもう本当にされやすい。
最近はそれがもう本当に大変で、なるべく関わりたくもないような高慢お嬢様と付き合っている
と噂になっていたり、挙句の果てにその噂を一番知られたくない自分の好きな子に勘違いされたり
と、正直本気で参ることばかりだ。
そのお嬢様との関係を完全に終わりにしようとしてみたら、そのときも色々あった。言いたくな
いけど実に虚しく切ない自体になってしまった。結果的にこのまま中途半端にはならなくて良かっ
たものの、その代償に俺の誇りとかそのようなものをとても傷つけられることとなった。
しかし未だに俺の好きな子は俺とお嬢様の関係を勘違いしているようだ。何を言ってもわかって
くれないし、納得しようとしない。そういう純粋無垢で真っ直ぐなところもかわいいのだけれど、
時にバカかお前と言ってやりたくなることもある。
相手が好きな子じゃなきゃ、天満ちゃんじゃなきゃどうでもいい。それ以外の奴に何を言われよ
うとどうでもいいのだが、天満ちゃんには勘違いされたくない。
俺の気持ちを天満ちゃんだけには知っていて欲しい。
靴箱を横目に、旧校舎の扉を押し開く。気温の変化は僅かほどで春の到来を肌で感じることも出
来た。
中庭に数人の女子生徒がいるのが見えた。見たこともない奴だったので全く気にせず校門へと歩
を進める。
女子生徒の一人、背は低めで肩ほどまでの黒髪にちょっと癖毛が混じった女がこちらに気づく。
その目線で誰かが来たと気づいたのか、よく見れば5人いた女子生徒が5人ともこちらを品定めす
るように見てくるのがわかった。ある程度見るだけ見ると、また女子生徒だけの輪を作り、会話を
始めていた。品定めもグループで毎日たまるのもうるさい女の習性なのだろう。昔から不良をやっ
ている身としては、視線が集まるのもこれといって気にはならなかった。
女子生徒の集団で一番背の高いちょっと長めのサラサラ髪を栗色にした女が、またこちらをチラ
チラ伺ったかと思うと、何かを思い出したかのように唇の端にしわを寄せた。
「ねぇ、あの人知ってる?」
聞き耳を立てるつもりもなかったが、視界の端にいた栗色の髪をした女の声は嫌でもこちらまで
聞こえてきた。
「知らないはずないじゃん」
「有名な不良の人でしょ」
声の主を確認するのも億劫なので、もはや視界からは消え去った女子生徒を背にし、気にするこ
となく歩みを進めた。
「あの人って沢近さんと付き合ってたんだよね?」
「らしいねぇ」
聞きなれた名前に振り返ってしまいそうになった。
ここでもまたあのお嬢との勘違いを聞くことになるとは、と一層気分が悪くなったが、天満ちゃ
ん以外の誰が間違った噂を信じていようと問題ないと思いなおす。
「でもアイツ、一年の女の子に寝取られたんでしょ?」
「そうそう! マジ受けるよね」
女の声は嬉々としていて、俺との距離が開いてきたからか声のボリュームは徐々に大きくなって
いた。
ずいぶんと嬉しそうに話しているのが気になるが、どんな噂だろうと俺にはどうでもいいことだ
し、事実とも一切違っているので気にしない。
「というか沢近さんには元から本気じゃなかったとか何とかって話だよ」
「保健の先生のついでとかって聞いたことある」
「あぁ、私もその噂知ってる!」
俺が好きなのは天満ちゃんだけだっつーの。
こういう噂話はいつも左耳から右耳に抜けるようにして聞いていないことが多いのだが、今日は
なぜか耳に入ってきて離れない。どこか言葉の端はしに棘があるのが気になるのかもしれない。
それにしても酷い噂だと思う。どうやったらこんな噂が出来るのか、と自分の胸に聞いてみたら、
案外簡単に答えが返ってきた。どうやら俺は勘違いされやすい人種らしい。
「にしてもざまぁみろ、だよね」
「うんうん言えてる。アイツちょっとかわいくて派手だからって調子乗ってたし」
あいつっていうのはお嬢のことだよな。だとしたら何がなんだか意味がわからからねぇ。
話の調子が変わっていくことに違和感を覚えた。出来ることなら走って中庭を通り過ぎ、今すぐ
この話を耳に入れたくないという気持ちに駆られたが、いきなり走りだすのは滑稽だろう。それに、
少しだけ話が気になるような気もする。
「これでちょっとは痛い目見たかな?」
「それがまだお高くとまってるみたいだよ」
「えーマジで? 振られたくせに? 出たよ、勘違い女」
「痛い痛い。あの態度もそれはそれでかっこいいとか思った時もあったけど、勘違いでダサいだけ
だったのかぁーショック」
「よく言うわ。いっつもバカにしてたのに、いつかっこいいなんて思ったのよ?」
女達が楽しそうに笑う。会話の内容もそういうことかと飲み込めてきた。
「ダメだぁ。このままアイツに会って、あの態度のままなら絶対笑っちゃいそう」
「あるある。私もきっと無理」
「いっそあんな態度取れないようにしてみる?」
「してみたいけど、どうすんの?」
「私らで痛い目見せてやるとか――」
最後に聞き取れた淀んだ声は半ば歓声のようで、A棟が間近に迫ってきても耳にこびりついて離
れなかった。
女達の言葉の棘の正体には気づいた。別にお嬢は好きでもなんでもないし、どちらかというと苦
手だ。それでも少しだけ胸が痛んだ。
たぶんこの痛みはクラスメイトとしての痛みで。絶対にそれ以上の関係としてではない、のだと
思う。
不良をやっていれば悪口は言われ慣れるし、クラスメイトなんて気にしない。播磨軍団などとい
うものはあったが、そこに生ぬるい付き合いはなく、少なくともこんな気持ちになるようなことは
なかった。
なんとなく思う。
俺が天満ちゃんを好きになったのは、きっと彼女が誰からも好かれそうな子だったからだ。会っ
て話しているうちに昔より好きになっていったのは、彼女がとても優しい子だったからだ。
天満ちゃんならきっと悪口なんてそれほど聞かなくて済むし、絶対に言わない。
そう思ったが、ひどいこじつけのような気もする。
というかお嬢のことを考えることからの逃避のようにも思える。
別にお嬢がどんな目に合おうがどうでもいいはずだ。だからこのことはすぐに忘れていい。あい
つのことはどうでもいい、よな。
お嬢のことを考えるのを逃げなかったところで、結論を出すのはたやすい。少し痛む胸も時間が
忘れさせてくれるだろう。俺にとっては、きっとなんでもない奴だから。
中庭を離れる時、女子生徒の集団をさりげなく眺めた。
旧校舎の陰は彼女達を包むようにどんよりと伸び、夕暮れの中庭は、いつもより赤く染まってい
た。
――続く
乙です
もっと明るめで気持ちのいいSSも見たかったですがたまにはこういうのもいいかも
ほのぼの好きとしては続きが見たいような見るのが恐いような気もしますが続きに期待してます
久々の旗
ここから播磨がどう本当の気持ちに気付くのか期待
乙です。
こういう作品はさじ加減が難しいでしょうけど期待してます。
旗ってやり方があざといんだよなあ・・・
昔よくあった、貧乏家族ドラマにありがちなあざとさ。
本当の気持ちw
何じゃそりゃ
※注意:この作品には多数のシモネタが含まれております。ご了承ください。
前回までのあらすじ
播磨拳児は矢神市内の高校に通う高校生。彼は同級生の塚本天満の家で偶然
にも彼女のパンティを拾ってしまった。
そしてそのパンティを被った播磨は、究極の戦士、変態仮面へと変身したのである。
変態仮面となった播磨は、塚本家に侵入した強盗を捕まえるものの、その姿を見た
天満は、そのあまりの変態ぶりに発狂してしまった。
もちろん彼女は、変態仮面の正体が播磨拳児であるという事実は知らない。
究極!!スクールランブル
第二話 濡れ衣
セミの鳴き声が響く七月。すでに梅雨も明け、アスファルトからはいやが上にも暑さを
感じさせる“もや”がたっている。そんな道を歩く二人の少女。
鮮やかな金色の髪を二つに縛った沢近愛理は、木漏れ日を見ながら夏の日差しを
感じ、目を細めた。
「愛理ちゃん、暑いネエ」一緒に歩く塚本天満がそう言って犬のように舌を出しながら言う。
「天満、そんなことをしたって涼しくはならないわよ」
「海とか行きたいようねえ」
「今年は我慢なさい。受験生なんだから」
「愛理ちゃんも行きたいでしょう?」
「そりゃあ、ね」
「去年の海、楽しかったね」
「去年か…」
沢近は去年、海に行った時のことを思い出した。あのときは確か、友人の周防や高野、
天満だけでなくクラスの男子生徒とも一緒に行ったのだ。その時彼女は、一人の男の
ことを思い出して少し心拍数が上がった。
「あんまりいい思い出じゃないわね」
「なんで?楽しかったじゃん。海でバーベキューとかしたり」
「いや、それは楽しかったんだけど…」
同級生のサングラスにヒゲの男と、あのときはちょっとしたトラブルがあった。
今となってはいい思い出、と割り切ってもいいんだけど…。
「それにしても今日は楽しみだね。ミコちゃんの家、広いし」
「遊びに行くわけじゃないんだからね」
この日、沢近と天満の二人は、友人の周防美琴の家で泊りがけの勉強会を
するため、周防の家に向かっていた。高野晶は所用があるので、少し遅くなって
から参加すると言っていた。
「ミコちゃん家って、愛理ちゃんとこほどじゃないけど、大きいよねえ」
「そりゃあ周防工務店のご令嬢ですからね、美琴は」
「花井くんの家も隣にあるんだよね」
「そうね」沢近は興味なさげに答えた。
「そういえば、私ミコちゃん家に泊まったことなかったんだよね。遊びに行った事は
あるんだけど。愛理ちゃんはあるの?」
「あたし?あたしはあるわよ。美琴の家…」
「いつ?」
「去年の冬…」そう言いかけて言葉を止めた。確かあのときも、例のサングラスと
ヒゲの男(あの当時はヒゲを剃っていたけれども)と接触したんだった。
「どうしたの?」
「なんでもない。またちょっと嫌なことを思い出しただけ」
「嫌な事って?」
「思い出したくないから嫌なことなの」
「そうか、ごめんよ」
「いや、別にいいけど」
「でも楽しみだなあ」
「ところで天満、妹の八雲は大丈夫なの?家で一人きりになるんじゃないの?」
「ん?大丈夫だよ」
「何が大丈夫なのよ。この前強盗が入ったって言ってたわよね。女一人で
危ないんじゃない?」
「今日は八雲も別の家に泊まるから」
「そうなんだ。どこ?」
「播磨くんの家」
「・・・!」
「どうしたの愛理ちゃん」
「いえ、思い出したくないことをまた思い出してしまっただけ」
「どういうこと?」
「なんでもない。でも危なくないの?(色んな意味で)」
「大丈夫だよ。刑部先生も一緒だから」
「そういえば、あのヒゲは絃子先生と一緒に暮らしているんだったわね」
「播磨くんって、家であんまり料理をしないって言ってたから、八雲も何を作っ
たらいいのか、色々考えて張り切っていたよ」
「そ、そうなんだ…。あの子あんまり表情に出さないから、よくわからないけど」
「私はお姉ちゃんだからよくわかるよ」
「そう…」
「あれ?愛理ちゃんどうしたの」
「別に…」
そんな会話をしつつ二人が歩いていると、背後から猛スピードでワゴン車が
走ってきた。車の音に驚いた二人は、道の隅の方によけると、二人の目の前で
車が急停車して、中から人が出てきた。
「な、何よ!」
一瞬の出来事で何がなんだかよくわからないうちに、沢近と天満の二人は
羽交い絞めにされ、車に乗せられてしまった。その祭、沢近は持っていたバッグ
を思わず手放してしまい、バッグはそのまま道に落ちた。しかし彼女を押さえ込
んでいる者はそれにかまわず車の後部座席のドアを閉め、出発させた。沢近は
必死で抵抗を試みるものの、もの凄い力で抑えられている上に、クロロフォルム
をかがされてそのまま気を失ってしまった。
*
サングラスにヒゲがトレードマークの播磨拳児は、その日夏休みにも関わらずバイクで
学校に向かっていた。補習があるからである。高校生でありながらプロの漫画家として
多忙な日々を送る彼の成績は頗る悪く、そのため卒業すら危い状態になっていたため、
夏休みの補習を余儀なくされていた。ただし、この日はなぜか同級生で成績優秀な高野
晶が教えてくれることになっていた。
播磨は昨夜も深夜までペン入れを行っており、眠い目をこすりながらバイクに乗っていた。
本当はアシスタントや編集からバイクを使うのをやめるように言われていたのだけれども、
この日は寝過ごしてしまったので仕方なく乗っていた。
途中、猛スピードのワゴン車とすれ違った。
「危ねえなあ、事故にあったらどうすんだよ」そう独り言を言いながら、住宅街の道をバイク
で走っていると、道端にわりと大きめのカバンが落ちているのに気がついた。
落し物か?それにしては大きい。そう思いながらバイクを止めた播磨は、そのカバンを
じっと見つめてみた。
「はて、どこかで見た覚えがあるような…」彼は記憶の糸を手繰り寄せてみた。しかし思い
出されるのは愛しの女性、塚本天満の顔ばかり。
不自然に道端に放置されたカバン。もしかして爆弾かもしれないのだが、落し物だったら
困るだろう、などと思い播磨はそのカバンを拾い上げた。
と、急に携帯電話の鳴る音がする。カバンについている小さなポケットの中に携帯電話が
入っているようだ。
播磨はカバンから勝手に携帯電話を取り出し、その電話のディスプレイに表示された名前
を見た(良い子は真似しないように)。
「周防美琴…?」
どこかで見たことのあるようなその名前は、彼の同級生の名前だった。
「もしもし」播磨は、ためらいつつも携帯電話の通話ボタンを押した。
《あれ?男の声。沢近じゃねえのか》
「俺だよ」
電話越しではあるけれども、男っぽい口調や声から周防美琴であることがしっかりと播磨
にも確認できた。
《もしかして播磨?》
「ああ」
《なんでお前が沢近の携帯に出てるんだよ。沢近と一緒にいるのか》
「いや、そうじゃないんだが」
《じゃあ沢近の家にいるのか》
「だから違うって」
《近くに沢近はいるんだろう?》
「お嬢はいねえよ。道に落ちてたんだ。このケータイが入ってたカバンが」
《はあ?》周防は、何が起きているのかよくわからないという声をしていた。
《なんで沢近のカバンが道端に落ちてるんだよ》
「こっちが聞きたいわ」
《つーかさあ、沢近と塚本の二人が約束の時間になってもウチに来てないんだよね》
「塚本!?」沢近愛理の名前には反応しない播磨も、塚本天満の名前には鋭く反応した。
《塚本と沢近の二人でウチに来るって言ってたんだけど》
沢近愛理と塚本天満が一緒に。そしてお嬢のカバンがここに落ちている、ということは。
播磨の寝不足の頭でも異常事態であることは容易に想像できた。
「これは不味いことになったかもしれん…」
《おい、どうした播磨。なんかあったか》
播磨は周防からの電話を切ると、携帯電話をカバンの中に戻した。
「とりあえず何か手がかりが欲しいな」そう思ったものの、手がかりらしきものは辺りには
ない。
そうだ、お嬢のカバンの中に何か手がかりになるような物がはいっているかもしれない。
なぜ播磨がそのような結論に至ったのかはよくわからないけれど、彼は近くの人目のない
路地裏にバイクごと移動させると、沢近のカバンを開けてみた(良い子は絶対にこんなこと
をしないでね!)。
「石川さゆり?なんで演歌のCDが入ってるんだ」沢近の意外な趣味に少し驚きつつ、播磨
はカバンの中の探検を続けた。
高そうな化粧品やシャンプー、歯ブラシなどお泊りセットが見られる他、教科書や問題集、
参考書なども入っていた。
「やっぱり、こんなの調べていても何もわからん」
播磨が当たり前過ぎる結論に達したその時、彼は“あるもの”を発見した。
「こ…、これは…!!」
沢近の下着。
それも下の方…。
泊まりのための着替えが入っているのだから、当然入っているものである。
わりと普通だな…。天満のものよりは若干大人っぽいとはいえ、わりとスタン
ダードなデザインに感心しつつ、播磨は“それ”をしまおうとした。しかし手が
動かない。
どうなってるんだ!天満ちゃん(好きな人)のものならまだしも、これはお嬢の
ものだぞ!
好きな人のものでも…、いや、むしろ好きな人のものだからこそダメだろう、
などというツッコミは、今の彼には通用しない。
血が騒ぐ。あの日と同じように血が騒ぐ。高鳴る心臓の鼓動を抑えようと息を
吸おうとするが、なぜか胸が苦しく上手く呼吸できない。一体どうなっているん
だ、俺の体はどうなってしまうんだ。播磨は薄れ行く意識の中で、必死に自己
の理性を保とうとした(そんなものがあったかどうかは定かではない)。
しかし、
「気分はエクスタシー!!」
*
八神市郊外、某廃工場内。ホコリまみれの広い建物の中で、沢近愛理と
塚本天満の二人は縄で縛られていた。
「アンタたち、こんな事をしてただで済むと思ってるの!?」相変わらず気の強そう
な声で誘拐犯たちに言う沢近。
「…」塚本天満はまだ眠っていた。
二人の前には、五人の人影があった。その中の一人、リーダー格らしい男が前
に出る。
「わかっておりますよ、沢近愛理さん」年の頃は三十から四十代くらいか。声はわり
と高めの男声。サングラスをしているので、本当の年齢はよくわからない。
「なんでアタシの名前を…」
「我々の上の方が色々調べていたみたいでね」
「上の方?」
「あなたの家のことも」
「家は関係ないでしょう?これからアタシたちをどうするつもりよ。殺すの?言っとく
けど、日本の誘拐犯の成功率なんて一パーセントもないのよ」沢近の心の中にも
恐怖があった、しかし、それ以上になぜか怒りがこみ上げてきていた。
「自分の痛みなら我慢すればいいか。だが、お友達の痛みなら…」
そう言って男は大きなナイフを取り出した。
「ちょっと、何やってるの!?」
男の目標は、明らかに隣で眠っている天満の方だった。
「やめなさい!目的はアタシでしょう?」
「少しは楽しめそうだな…。とりあえず腹が減った。おっと、もうこんな時間か」
あれから計算すると、午後二時くらいだろうか。
「とりあえず、コンビニで買った昼飯を。お、今日は稲荷寿司か」
「アニキ、稲荷寿司なんて買ってないですよ」別の、ちょっと太った男が言う。
「なんだって?でもここにちゃんと…」
「それは、私の“おいなりさん”だ」
「ん?」
男の目の前には、自らのブリーフの両端を引き伸ばして肩にかけ、股間の辺りが
稲荷寿司のようになった男の姿があった。顔には女物のパンツ、そして両脚には網
タイツ。それ以外は素っ裸である。
「ぎゃあああああ!!!変態!!」
「そう、私は変態仮面!」
変態仮面はそう名乗ると、卑猥なポーズを決めて見せた。
「貴様ら!か弱い少女を誘拐するなど、言語道断。この変態仮面がお仕置きしてやる!」
誘拐の実行犯である五人組に向かって強い口調で言う変態仮面。しかしその変態的な
外見で、台詞のカッコよさ(?)も半減である。
「あ、あれが天満の言っていた変態仮面?」
「ふわ?どうしたの愛理ちゃん。あれ、なんで私縛られてるの?」天満がやっと目を覚ました
ようだ。しかし今の状況を上手く飲み込めないでいる。
「おのれ、邪魔をする気か…。お前ら!やってしまえ」リーダー格の男は気を取り直して部下
に命令した。
五人組のうち、二人が変態仮面の前に出てきた。一人は背が高く痩せており、
もう一人は背が低く太っていた。二人とも手には柳葉刀と呼ばれる中国の幅の
広い刀を持っている。
「気をつけて!その剣の切れ味は鋭いから」なぜか刀剣類に詳しい沢近が叫んだ。
「む!」変態仮面は近くにあった鉄パイプのようなものを拾い上げて二人に対峙した。
「フッフッフ、我ら二人に敵うと思うなよ」そう言って襲い掛かるデブと痩せの二人。
紙一重のところでかわした変態仮面も、鉄パイプで反撃した。しかし一人を攻撃
していると、もう一人が攻撃してくる。滅茶苦茶に振り回しているように見えて、その
狙いは正確だった。
変態仮面が近くに落ちていた垂木を放り投げてみると、その垂木は空中で真っ二つ
に切られた。
あの二人、多分残りの三人も単なる素人じゃない。沢近は誘拐犯の動きを見てそう
確信した。
「終わりだ変態野郎め。死ね」
そう言って二人が構えたとき、
「変態仮面!これを使いなさい」
工場の上の方にある窓から人影が見え、“わっか”のようなものを変態仮面に投げて
よこした。
それをしっかりと受け取る変態仮面。
「こ、これは…!」
それは環状にまるめてある“鞭”であった。変態仮面は、それをおもむろにほどき、
伸ばす。
「うむ、はじめてなのに懐かしい」などと訳のわからん台詞を吐きながら何かを納得した
様子であった。
「何をブツブツ言っているんだ!」
「死ネエ!!」
再び襲い掛かる刀使いの二人組み。しかし変態仮面はその二人組をはるかに超える
高さで飛び、背後に着地すると、背中に鞭を浴びせかけた。
「ああん!」
一瞬で破れる服、そして迫り来る激痛、のはずなのだがなぜか男たちの声はそんな風
には聞こえなかった。
「ふんっ!」
体勢を立て直して反撃を試みる男の手首に鞭を当て、刀を落とす。形勢は一気に逆転
した。楽勝と思っていたのか、静観していた残りの三人の誘拐犯も、“サイ”や鉄扇、
ヌンチャクなどを持って攻撃に参加する。しかし、まるで生き物のように動き回る鞭に対し
てなすすべもないまま、制圧されてしまった。そして全員が、どこから持ってきたのかよく
わからない荒縄で亀甲縛りにされ、工場内に吊るされた。
もちろん、それで話が終るわけもない。
「乙女を恐がらせた罪は重いぞ…」
変態仮面の手には、鞭だけでなくローソクや猿轡(さるぐつわ)、鼻フックなど、色々なSM
グッズがそろえられていた。
《ここから先はお見せできません》
「へ、変態だあああああ!!!」二度目の対面にして、再び発狂する天満。
「あ、あの。ありがとうございます」そしてなぜか冷静な沢近。
しかし二人が縛られた縄をほどくと、そんな沢近に対して背を向ける
変態仮面。
「べ、別にアンタのためにやったんじゃないんだからね!」
そういい残して、変態仮面はどこかに去って行った。そして、タイミング
を合わせたかのように聞こえるパトロールカーのサイレンの音。
その後、沢近と天満は警察の事情聴取を終えて、周防美琴の家に着いた。
「はあ、今日は色々あって疲れたわ」ため息をつきながら沢近は言った。
「そりゃあ大変だったなあ。飯でも食うか」迎え入れる周防。
「うん、お腹ぺこぺこ」
「あれ?晶ちゃんまだきてないの?」と天満。
「もうすぐ来ると思うけど」
「今晩は」いつものような無表情で入ってくる高野晶。
「あ、来た」
「ねえ聞いて聞いて晶ちゃん。今日ね、またあの変態さんに会ったんだよ」
「それは大変だったわね」
「そうなんだよ、恐かった」
「そういえば、沢近。お前のバッグ」そう言って周防は沢近のカバンを差し出した。
「え、なんで美琴が持ってるの」
「道に落ちてたのを播磨が拾ったんだよ。それで届けてきた」
「そうなんだ。あのヒゲにもお礼を言っておかないとね」
「そんなことより、あの変態なんだけどね」再び天満の声が響く。
四人の変態仮面話は、受験勉強そっちのけで深夜まで続いた。
翌日、沢近邸。
「工場で私を助けた変態って、アンタでしょう。ナカムラ」
「はて、私はご主人様の所に行っていたので」
「嘘おっしゃい。アンタしかいないのよ。あんな格好するの」
「いや、ですからお嬢様。私はあの日…」
「返しなさい、私のパンツ」
「だから何のことやら…」
つづく
>>964 乙です
変態シリーズ和みました
ツンデレな変態仮面オチとか面白かったです
乙!次は周防かな絃子さんかな
週一の楽しみにしてます。頑張ってください
乙です!
とにかく絃子さんの大人のパンツが楽しみだ。
絃子、人気だな。
投下乙です。
ナwwwカwwwムwwwラwwww
ミコチンと絃子のパンツなら俺も余裕で変態仮面になれるなw
>>970 お前の場合はただの変態だろ。
踏み逃げしてんじゃねえよボケ。
974 :
970:07/12/11 21:38 ID:MgMWmWzg
こういう話が読みたいというリクはここにはないよね
時々バレスレやキャラスレで要望だしてるのがいるけど、
ここは見ないのかね。
バレスレやキャラスレでもネタがほとんどとはいえ、たまにSS投下されてたりしたことがあったが
たまによさげなのがあっても、すぐ消えてしまうのが難点
>>974 反応するなよあんたも
傍から見たら同類だわな
>>978 というかこのスレバカにしてる分煽ったやつよりたち悪い
まぁな
横レスすまんが、「過疎スレ」ってのが「バカにしている」ことに当たると言ってるの?
だとしたら過疎ってるのは今さらな事実だし、表現的にも普通に中立的な言葉じゃないか。
それすら侮蔑的表現に感じると言うのは流石に被害妄想がすぎると思うぞ。
中立とは思えんが
10日以上は来ないとか棘ありすぎだし
ニートの方はともかく、過疎り気味のSSスレなら10日は普通にアリだろ 俺もレスがある程度溜ってから来るようにしてるから一週間以上は空けるしなあ ここ一週刊の新着レス見たって約50レス、一日あたり7レスだぜ?
スルーしといたがよさげな物言いだとは思う
>>981 SSが定期的にくるスレでそれはあんまりな言葉だ
>>981 過疎スレとか言ったその口ですぐさま、
>スレ立て指摘した翌日に気が付いてもらい、スレを立ててもらえたただけでも有難いと思えカス。
が後につくから、全体として侮蔑的になるってこった
思ってるだけなら構わないんだよ、口に出したり書き込んだりしない限り意思表示にはならないからね
そもそもの元凶が明らかに
>>972の煽りにあるのに、誰もそのことに突っ込まないあたり(しかも次スレへ手際良く
>>970のレスが晒してあるあたり)、明らかに自演による釣り工作だろ。いい加減スルーしる。
>>987 自演とかじゃなくて、過疎スレが馬鹿にしてるのか中立に立っているのかって話なんだし
そもそも始めの阿呆なやり取りはもう過ぎてるだろ、よく読めよw
>>987はその問題になっている侮蔑的表現の前提としてまず
>>972があって、
>>974の『ニート』・『カス』も
>>972の『変態』・『ボケ』に対応したものに過ぎないと指摘してるんだろ。
その上で、煽る方も、煽られて応じる方も両方NG。
次スレを見る限り最低1人は紛れ込んでる荒らしを喜ばせるだけだしもう止めようってことじゃねーの。
>>987 まぁそう思いたければそう思えば
俺は個人的に972より974のほうがムカついたし感じ悪いと思ったけど
実は元々このスレには970と972の2人しかいなかった
SSを挙げるのも感想を述べるのもまとめサイトの更新をするのも実は全て2人でしていたのだ
しかし、ある日。衝撃の事実が2人を襲う
そう、この2人もまた1人だったのだ
ちょっと違うがまあ概ね
>>989の言う通り。 侮蔑に侮蔑で返してる時点でどっちもアウト。 その上で、こうしたやり取り自体が恐らくの意図する所であって、奴がニヤニヤ見てると思うとムカつくから止めないかってことです。
訂正:恐らく荒らし(
>>972?)の意図する所であって
せっかくだから俺は991の説に同意しよう
お前らみんな俺だ
>>991 マジレスするとまとめの更新は別人だろ。
マジレスすると溜まってた仕事もメドがついてきたし、IF2からまた進めていこうと思う
1000なら王道
1001 :
1001:
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。