週刊少年マガジンとマガジンSPECIALで連載中の「スクールランブル」は
毎週12ページの週刊少年漫画です。
物足りない、もっとキャラのサイドストーリー・ショートストーリーが見たい人もいる事でしょう。
また、こんな隠されたストーリーがあっても良いのでは?
有り得そうな展開を考察して、こんな話思いついたんだけど…といった方もいるはずです。
このスレッドは、そんな“スクランSSを書きたい”と、思っている人のためのスレッドです。
【要はスクールランブルSSスレッドです】
SS書き限定の心構えとして「叩かれても泣かない」位の気概で。
的確な感想・アドバイスレスをしてくれた人の意見を取り入れ、更なる作品を目指しましょう。
≪執拗な荒らし行為厳禁です≫≪荒らしはスルーしてください。削除依頼を通しやすくするためです≫
≪他の漫画のキャラを出すSSは認められていません≫≪エロやヤオイなど性描写は禁止です≫
新すれ乙
乙カレリン。
あたくしこそが5へとー
おつかれ
乙〜
にげっと
9 :
Classical名無しさん:05/06/08 21:41 ID:vpBTXJMY
突破万歳!!!!!!!
乙
お?いきなり落ちたのかと思った
GJ!
このスレに長寿と繁栄を!
13 :
Classical名無しさん:05/06/09 17:15 ID:nPQ4KOp.
age保守いきなり
14 :
告白の情景:05/06/09 18:48 ID:WcnrvcVs
わりい、待たせたな。
いや、大丈夫だ。予定は無かったしな。
で、今日はどうしたんだ?
ど、どうしたんだよ、マジな顔して。
わかった、聞くぜ。
……そっか、俺のことをな……
ありがとよ。
でもよ、踏ん切りがついたぜ。
俺も天満ちゃんに告白してくるぜ!
ありがとよ、きっかけ作ってくれて。
それじゃな。
うれしかったぜ。
告られたの、はじめてだったからよ。
でもな…
俺、好きな子がいるんだ。
な? なんでわかったんだ?
そっか、バレバレだったか…
ああ、俺は天満ちゃんが好きなんだ。
だからよ、その気持ちには応えられないんだ。
わりいな。
ここはいやらしいインターネッツですね
ちょうど前スレが500kb到達
屋上へ続く扉を開くと彼が居た。
「…もうここに来る理由も無くなっちまったな・・。」
「もしかして・・・播磨さん・・学校を辞めるつもりですか・・?」
「ああ…今まで世話になったな妹さん。・・この借りはいつか必ず返すからよ・・。」
「そんな・・播磨さん・・・辞めるなんて言わないで下さい。」
「・・・すまねぇ・・・・。」
そういって彼は出口へ向かって歩き出す。
―今にも消え入りそうな後姿で。
八雲はその姿を黙って見ているしかなかった。
自分が何を言っても彼を引き止めることは出来ないだろう。
―いや、そもそも自分が寂しいからといって彼を引き止めるのはエゴではないか。
姉がいるこの学校に彼がいても辛いだけだ。
18 :
Classical名無しさん:05/06/09 23:06 ID:VeeMCkaQ
S3にはいれねぇ・・・
乙
20 :
Classical名無しさん:05/06/10 01:10 ID:u9LVYBnA
屋上へ続く扉を開くと彼が居た。
「…もうここに来る理由も無くなっちまったな・・。」
「もしかして・・・播磨さん・・学校を辞めるつもりですか・・?」
「ああ…今まで世話になったな妹さん。・・この借りはいつか必ず返すからよ・・。
」「そんな・・播磨さん・・・GJなんて言わないで下さい。」
「・・・GJ・・・・。」
22 :
Classical名無しさん:05/06/11 14:42 ID:lme1juwI
保守
23 :
小ネタ:05/06/11 15:15 ID:fbicm3mE
一つ問題
ライバルが兵庫県
山口県と仲がよく
鳥取県に思われている
誰のことでしょう?
24 :
小ネタ:05/06/11 15:20 ID:fbicm3mE
補足
石川県を思っている(病的なほど)
花井。ってか、石川は中の人だろw
26 :
小ネタ:05/06/11 15:43 ID:fbicm3mE
>>25 正解!
一応補足 旧国名で
播磨→兵庫県
周防→山口県
因幡(稲葉)→鳥取県
石川県は能登(八雲)
他所でやれ
スレ違いだって理解できないほど頭弱いのか
29 :
小ネタ:05/06/11 20:52 ID:fbicm3mE
>>27 >>28 無理やり嵯峨野を出してダイイングメッセージを解かせればOK?
(保管庫にそんなSSがあったような)
というわけで超展開(東郷ってロシアいたよね?)
「キャー、東郷君が倒れてる!」
「よかった、まだ息はしている。おい、指で血文字を書いているぞ!」
「これはダイイングメッセージね!」
「嵯峨野、いったいどこから?」
「ミステリーあるところにトンガリ頭あり。えっとメッセージは・・・KARA、
ゆびはRのところでとまっていて、KとAとの間に、何か文字を消した跡が、
ということは犯人は・・・」
ちなみに犯人は2Dか2Cにいます。
適当にレスしてください。
30 :
小ネタ:05/06/11 21:30 ID:fbicm3mE
間を長くあけると迷惑なので、一時間後に後編を
ちなみに消された文字は「H」です
別にクイズじゃないので小ネタを使って推理の過程を、ということです。
KAHRA
ワカンネ。
ヤマカンでララ。
>31
キリル文字、という引っ掛けでは ぬ
33 :
小ネタ:05/06/11 22:55 ID:fbicm3mE
「犯人は・・・「え!烏丸君が犯人なの?」
「つ、塚本さん、邪魔しないでよ」
「だって、だって「KARA」なんて、烏丸君以外にいないよ!」
「落ち着きなさい天満、今日は烏丸君休みよ。」
「え?あーよかった。晶ちゃん、ありがとう、もう少しで烏丸君を疑うとこだったよ!」
(それに東郷君、烏丸を鳥丸と勘違いしていたようだしね)←金田一ネタ
「つまり、これはおそらく烏丸君に罪をなすりつけようとしたということね。つまり、
このダイイングメッセージはKARAではなかった。
ここで問題になるのが指がRで止まっているということ、つまり犯人は、おそらく
Pに一本線をひいたのね。」
「ということはカパ・・・河童!やっぱり烏丸君だよ!えーん」
「塚本さん、落ち着いて・・・つまりこれは」
「これはロシア文字、ということね。ロシア文字でRはPだから、本当はカパではなく、 カラ
・・また戻ったわ、嵯峨野さん」
34 :
小ネタ:05/06/11 22:56 ID:fbicm3mE
「そこで、消された文字が手がかりになるわ。その文字のかわりにKを書き直したのよ。
つまり犯人は、○APA、英語に直すと○ARAとなる人物・・・つまり犯人は」
「わ、わたしじゃありません!」
「サラ、わかってるわよ。犯人は2Cか2Dの中にいるんだから・・・(それよりどこから?)」
「つまり犯人は、ララさん、あなたですね!」
「エ?ナゼワタシガ?」
「東郷君を倒すことができるのはあなたくらいです!」←言いがかり
「チョット待テ、ワタシの名はLala(たぶん)ダガ」
「え?じゃあ犯人は誰?」←探偵役終わり
35 :
小ネタ:05/06/11 22:57 ID:fbicm3mE
「見て、嵯峨野さん、消された文字はHのようよ」←今度は高野が探偵役
「ということは・・・ロシア文字で言うとN!つまり犯人は・・・」
「奈良君」
「え?何で僕が?」
「東郷君は塚本さんに移籍を薦めているから、十分あなたに動機はあるわね」
「ち、違うよ、僕はそんなこと・・・」
「冗談よ。あなたが東郷君を倒せるわけないから、つまり犯人は、東郷君を破る力がある人物、
播磨君、花井君、一条さんくらいね」
「でも、誰もNで始まらないですけど」←嵯峨野、すっかりワトソン役
「答えは単純よ。このメッセージは普通のアルファベット、つまり犯人はHで始まる人物。
しかもRの三画目がわざわざかかれたことからして、AIかAPまでは描かれていたと考え
られるわ」
「つまり犯人は・・・HARやHANで始まる人物・・・てHARIMAでもHANAIでもHARUKI
でもいいんじゃ?そんなこといったら間違えて書いたHを消してKにしたってことで、
KARENでも」
「そうね。私にも、もうわからないわ」
36 :
小ネタ:05/06/11 22:59 ID:fbicm3mE
「あ、東郷君の意識が戻ったみたい!何かしゃっべているわ」
「ハ・リ・マ・ケ・ン・ジ」
「・・・推理の必要はなかったようね。そう、播磨君、つまりあなたは塚本さんをめぐって
東郷君とけんかになり、倒してしまった。そして東郷君がダイイングメッセージHAPと書き
残したのを、烏丸君に罪を着せるためKARAとした・・・つまり、この犯行は東郷君、
烏丸君に恨みがあり、なおかつ東郷君を倒せる力をもつ人物、あなたしかいないわね」
「え?いや、俺は何も・・・」
「ひどいよ!播磨君、東郷君を気絶させた上、烏丸君に罪を着せるなんて!見損なったよ!」
「ヒゲ、見損なったわ」
「最低だぞ、播磨」
「ちょっと待て、今まで全然出てこなかったくせにいきなり・・・大体俺は・・・」
「問答無用!」シャイニングウィザード命中・・・播磨気絶
37 :
小ネタ:05/06/11 23:03 ID:fbicm3mE
「イテテテ・・・」
「東郷君、大丈夫?」
「ああ、お嬢ちゃん、足滑らしてしまって頭打ってしまったぜ。HAPPY BIRTHDAY
てちょっと早いけどお嬢ちゃんにプレゼントあげようと、ハリーにプレゼントをとりに
行かせたんだが」
「え?じゃあこのKARAって?」
「ソレはボクが、東郷に呼ばれて来てみたら東郷が倒れてHAPなんて書いているカラ、
犯人に思われたらまずいと、今日来てないカラスマの名を・・・マサカこんなに大事に
なるとは思ってなかったガ」
「「「・・・」」」
以上、遅くなりましたが完成・・・やっぱりSSはむいてないな
推理モノだと思った人たちすいません
あんまりにも中途半端。
どうせやるんなら最後まで推理でやってくれ。真剣に考えちゃったじゃないか。
39 :
小ネタ:05/06/11 23:19 ID:fbicm3mE
>>38 一応、「ロシア」「H」ってことで・・・奈良までたどれれば十分推理モノ
といえるのではないかと思ったんですが・・・
それに殺人未遂じゃ小ネタですまないと思ったので(言い訳)
41 :
小ネタ:05/06/12 17:00 ID:Dpshd6WU
調子に乗って投下しすぎました、当分差し控えます。
>>40 「hetacuso キエロ ugimusi」→
「キエロ go UUU(three U →through) the SS, amici」(英西伊ごちゃまぜ)か
どっちにしろ反感をもたれているな・・・orz
>17の続きマダー?
もしも想いのすべてを言葉に出来たなら。
――きっと、それを『奇蹟』と呼ぶんだろう。
ちきちきちき、と。
押して歩く自転車がリズムを刻む。
その後を追うように、足音が二つ――そう、二つ。
一つは当然ながら私、結城つむぎのそれ。そして残る一つは、
「こんな時間までつきあわせて、君には悪いことをした」
「……ん、いいよ、別に」
花井君、と。その名を呼んでみる。そうか、と答える彼は、私の言葉を額面通りに受け取ったらしく、
こちらに向けていた視線を元に戻し、まっすぐに前を見据える。
わずかに静寂。
その間隙を埋めるように響く、ちきちきちき、という音を聞きながら、私はなんとはなしにことの
経緯を思いだしていた。
『ごめん、急に用事が入っちゃったの』
そう言って舞ちゃんが頭を下げたのは、放課後すぐのことだった。今日は月一の学級委員の定例会、
加えて普段とは違い、諸々の議案があるとかなんとかで、必ず全員出席するように、というお達しが
下っていたらしい。
『無理に、とは言わないんだけど……代わりに出てくれない?』
本当に申し訳なさそうにしている彼女の様子に、私の中に断るという選択肢はすでにない。そもそも、
舞ちゃんはいまどき珍しいくらいにマジメな性格で――余談ではあるけれど、いつだったか、もうちょっと
力抜いてみたらいいのにね、と嵯峨野に言ってみたところ、アンタがそれを言うか、と呆れられた――
そんな彼女が自分の都合を優先するくらいなのだから、これは相当大事な用事に違いなく、なにより
友人の頼みもきけないような人間は、やっぱりどうしたものか、と私は思う。
とはいえ、ひっかかるというかなんというか、些細な疑問はあったのでとりあえず一つだけ訊いてみた。
『でもさ、花井君が出るんだからそれでいいんじゃないの?』
『……だから心配なの』
『え?』
つまるところ。
彼を一人送り出すことこそが心配の種だったらしい。舞ちゃんをしてマジメに過ぎると言わしめる――
いつでもそうだったらまだマシなんだけど、と溜息なんかもついていた――彼は、ときに議論をあらぬ方向に
まで持っていってしまうらしい。言われてみるとなんとなく想像も出来る。マジメなときの彼は、確かに
とんでもないくらいに一直線だ。いつもそうだったらもうちょっとカッコイイのかな、なんてことをほんの
少しだけ考えながら。
『うん、いいよ』
私は頷いていた。
そこからあとの顛末は、だいたい予想がつく通り、の展開で。舞ちゃんの心配は杞憂でもなんでもなく、
ああこれは確かに、誰かセーブする人間がいないと大変だ、なんて他人事みたいに思いつつ、私は私なりに
そうしてみようとがんばったものの――時計の針はくるくると回り、今に至る、という次第。それでも、
議題は確かにきっちりと解決をみているのだから、決して悪いことではなかったはず。たぶん。
ともあれ、そんなこんなで学校を出る頃にはすっかり黄昏色の空。帰り着くころにはまっくらかな、と
考えていたところに。
「この時分は暗くなるのも早いからな、送っていこう」
――なんて言いやがりだしたのだ、この人は。
「え、あ、いいよそんなの。子供じゃないんだし……」
「なにを言う、高校生などまだ子供同然だろう?」
いやアンタも高校生だろ、と思い切りツッコミたい気分になったのをどうにか押さえる。なんでまた
この人はこうなんだろう、そんないつもながらの疑問を両手いっぱい胸いっぱいに抱えていると。
「いや、実は大塚君に頼まれてな。君になにかあったら承知しないと」
「舞ちゃんが?」
聞き返しつつ、成程、と思う。舞ちゃんにしてみれば、それも一種の保険だったんだろう。つまり、
議題以外になにかしら気にかけることがあれば、その分彼の度を越したマジメさが発揮されることも
ない、という。
それは舞ちゃんらしい心配のしすぎで、彼らしい融通の利かない受け取り方で、そして私にとって。
「分かったよ」
幸運といっていえなくもないような、そんな展開だった。
かくして、私の隣にはちきちきと音を立てる自転車と、並んで歩く彼の姿がある。ちなみに、自転車の
後ろに乗って、というのは私から丁重にお断りした。あのときは押し切られるように、それが当然のように
そうしたけれど、今となってはトンデモないくらいに恥ずかしい。恥ずかしすぎる。絶対出来ない。うん。
そんなわけで、せっかくの文明の利器はちきちきリズムを刻むのみ、道を行くのは私自身の足だ。こちらも
こちらで、自転車とは違うリズムを足音で刻みながら、期待ともなんともいえない想いに少しだけ早い胸の
鼓動を聞いている。
――とはいうものの。口を開けば、交わすのはどうでもいいような世間話。それはもちろん当然のことで、
私にもそれは分かっているけれど。けれど、ほんの少しだけ。胸が、痛い。少しだけ、でも確かに。
まったく、意気地なしだ。
だけどそんな想いは顔には出さず――その程度には私も負けず嫌いで、そしてオンナノコだ――歩みを
進め、だらだらと続く坂道を登り、やがてあの場所に辿り着き、
「……結城君?」
私は、足を止めていた。
黄昏はもう遠く、
宵闇はまだ遠い、
そんなあいまいな時間。
目の前に広がるのはいつもの風景。別に虹が出ているわけでもなんでもない、ごく普通の光景。
でも私には、それが恐ろしく綺麗に見えた。今まで見たことがないくらいに。
「……」
声が出ない。
完全に景色に飲まれてしまい、立ち尽くす。どうしてと理由を探すその視界の中、唐突に立ち止まって
しまった私に不審そうな表情をしながらも引き返してくる彼の姿を捉えて。
一瞬で、理解した。
この見慣れた風景がどうしようもなく特別なのは、一緒に彼がいるからなんだと。
途端、堰を切ったように想いがあふれ出す。
二人で帰る、なんてそんな典型的なことにけっこうドキドキしてしまった自分だとか、あの日のささやかな
出来事が、けれどここまで決定的に私を変えてしまっていただとか、そんな今更の、でも決して言葉にして
口に出したことのない想いが。
――もし。
この想いのすべてを言葉に出来たなら。
きっとそれを『奇蹟』と呼ぶんだろう。
でも、そんなことはちょっとばかり度が過ぎた願いで、だから私は。
「好きなんだ」
どうかしたのか、そう言いながら近づいてくる彼にそれだけを言った。
「ああ、この景色のことか。確か以前もそう言っていたな。うむ、僕も」
「ううん、そうじゃなくて」
もちろん、全然まったく完全にそうじゃない、なんてことはなく、私がこの景色を気に入っているのも
まぎれもない事実だ。だけど、今重要なのはそうじゃなくて。
「あなたのことが、だよ。花井君」
そう言った瞬間の彼の顔は、なにを言われたのかまったく理解出来ないとでもいうか、突然自分の知らない
外国の言葉で話しかけられたとでもいうべきか……まあとにかく、あっけにとられたとしかいいようのないそれ。
だけど。
「じゃあね、また明日」
私は自転車にまたがって、下りの坂道へと走り出す。あ、おい結城君、なんて声も聞こえるけれど、振り向かず
に突き進む。ブレーキもかけず、上がっていく速度とともに身を切る風が心地いい。
「さあ、どうしよう」
呟いた声は置き去りにされ、一瞬にしてはるか後ろ。そちらを見やれば、まだ立ち尽くす彼の姿が見えたかも
しれないけれど――やっぱり私は振り向かない。
ただただ、坂を下る。
後先考えていないような行動は、この坂を下りきってしまえば醒めてしまう、そんな儚い夢のような気もする。
下っている今はいいけれど、やがてそれは終わるし、なにより明日はまたこの坂を登らないといけない。
だとしても。
これはようやく私が歩き出した、私だけの道だ。前途はちょっと考えてみただけでも多難も多難、客観的に
見ればかなりひどい道。
それでも、私はその道を選んだ私自身の選択を評価したい。他の誰でもない、私自身の選択を。
だから。
「負けるもんか」
見据えるべきは後ろじゃなくて真正面。行くべき道はそこにあり、そこにしかない。なければそこに作ればいい。
この坂道が終わったら、夢を現実へと繋いでいく、その道を。
どこまでも。どこまでもどこまでも。
「絶対、負けるもんか」
そう、どこまでも――
"Ready, Stedy, GO Ahead! On my way, only my way." closed.
49 :
小噺:05/06/13 01:37 ID:WfSIoUMM
「退屈ね…ねえヒゲ、何か面白いこと言いなさいよ」
「あ?何で俺がそんなこと…」
「え〜?なになになに?面白いことって播磨君?言ってみてよ!」
「(天満ちゃん♪)おう、聞いてたまげろ!俺の小噺を聞け!」
「『隣の囲いに空き地ができたってねぇ?』……あ(ヤベエ マチガエタ)」
「……それで?」
50 :
小噺:05/06/13 02:00 ID:WfSIoUMM
「な〜にやってんだか播磨は」
「古典的なネタをやろうとしてトチったみたいだね。あれじゃ『囲いができたってね』『へえ(塀)』につながらないね」
「やれやれ」
「古典的といったら、こういうのもあるけど。耳貸して」
「ん?」
「あのね(ゴニョゴニョ)」
「ばばば馬鹿っ!!電子レンジをそんなことに使うんじゃねぇっ!?頭どーかしてるんじゃねーか?!」
「落ち着いて、今のはアメリカの訴訟にまつわるネタよ」
「それにしたってよーあたしが家で飯作ってるの知ってるだろ?あー気分悪」
51 :
小噺:05/06/13 02:17 ID:WfSIoUMM
「え〜?そ〜なんだあ、どおりでこの前お風呂に入れてあげた伊織をかわかしてあげようとしたら
八雲にめちゃくちゃ怒られたわけだよ」
「塚本…おまえ…」
「伊織危機一髪、ナイスフォロー、八雲」
「あ〜〜っもう!なってないわね!ヒゲといい、あんたたちといい!
こうなったら私が本場イギリスのとびきりのジョークをしてあげるわ!」
「何ムキになってんだ?」
「ムキになんてなってないわよ!いい?よく聞いてなさいよ」
「ある雨の日、街を歩いていると、前から頭に植木鉢をかぶっている人が来たの」
52 :
小噺:05/06/13 02:35 ID:WfSIoUMM
「雨が降る中傘もささずに植木鉢をかぶってるなんて不思議でしょ?
だから聞いてみたのよ『どうして貴方はこんな雨の中傘をささずに植木鉢をかぶっているんですか?』って…そうしたらね、その人は何て答えたと思う?」
「ん〜と、わかった!傘を学校に忘れてきたんだ!」
「はずれよ天満、その人はこう言ったのよ……(♪)あ、ごめん携帯が。
ナカムラ?え?お父様が?そう…わかったわ(ピッ)ゴメン、急いで家に帰らないと」
「え〜愛理ちゃん、つづきは〜?」
「しょーがねぇだろ用事があるんだから」
「じゃお開きってことで」
53 :
小噺:05/06/13 02:49 ID:WfSIoUMM
「おい播磨はどうする?さっきから固まってるんだけどさ」
「ほっとけば」
_その後月日は流れ、青春だったり友情だったり怒涛の旗展開だったりしたのだが詳細は省く
テムズ川にかかる橋の上で寄り添う男女。
「来てくれたのね…ヒゲ」
「馬鹿ちげーよ、あの時の植木鉢をかぶった野郎のオチをどーしても聞きたかっただけだ」
「ああ、それね…その人はこう言ったのよ……」
END
え?どういう意味でつか?解説だれかヨロシク…
>>48 乙です。とても素敵な縦笛でした。
花井と周防は一度離れて、互いの存在の意味を考える必要がありますよね。
近過ぎて見えないってことはよくありますし、無くなって初めて気付くってのもありますし。
後悔、立ち直り、告白の一連の流れの中の二人の心理描写はとても丁寧に描かれており、
すんなりと感情移入することができました。流石です。
播磨や天満も名脇役といった感じで良い味を出していました。
読後感が爽やかで、とても面白かったです。GJ
誤爆か?
以上です。携帯からだとちゃんと改行できてるかわからない…
ホントは小ネタを連発し周りがウケてる中、
帰国子女の沢近だけが何が面白いのかわからない。
という話にしたかったのにネタが思いつきませんでしたw
沢近の「植木鉢をかぶった人」のジョークはわりと有名なので気になった方は検索してみてください。
では失礼しました。
縦笛以外書くなって事か?
変な縦笛厨が出没してるからどうもわからん。
「綺麗ね」
「・・・そうだな」
その一言で追憶から覚める。
沈み行く太陽を眺めながら、俺は過去を振り返っていた。
塚本天満。俺にとって最初で最後の恋になるとそう信じて止まなかった素敵な少女だった。
しかし、彼女もまた最初で最後の恋をしていた。
何度も告白らしきものもしたが伝わらず、最後は彼女の告白を後押しして終わった。
俺の初恋。
今でも、あの時あーしていればという風に思う時も有る。
そう思って見た所で、彼女が俺に振り向いてくれたとは思わないが。
「そろそろ帰りましょうか?」
「・・・そうだな」
今でも彼女の事を忘れた訳ではない。
従姉弟あたりに話すと、
「それが初恋と言うものだよ」
なんて言われた。
その言葉のおかげで今、俺はこいつと一緒に居る事が出来る。
少し先を行く彼女を後ろから抱き留め、心からの言葉を送る。
「愛してる」
「私も愛してる」
END
久しぶりに投下されたSSの感想が
>>55だけってのは酷いな。
これが花井効果ってやつなのか…。
えっと、初心者なものでIDが違ってたらすいません。
これは前スレを埋めようと書いたら容量OVERで投稿出来なかった物です。
せっかく書いたのに消すのも勿体無いと思ったので。
感想が有れば書いて貰えると嬉しいです。
>>48 GJ。イイ話だ。
つむぎ×花井だと綺麗な話が多いな。
>>48 つむぎの心理描写がとても丁寧に書かれていて良かったです。
虹は、ほのぼの系が多いので一緒に帰るだけかと思いきや、
つむぎが攻めてくるとはちょっと意外でした。
あぁ、続かないと知っていてもこの後の展開が気になるな。いや、坂道続きなんでしょうけど、
虹派の勝算は絶望的に低いですがつむぎには頑張って欲しいと思います。
ナニハトモアレGJです。
ここって小ネタ禁止なんですか?
ここのところ小ネタが投下されてたので自分もいいかな?と思ったのですが…(私は小ネタ氏と別人)
構わんよ。ただ、SSSでないネタなら自粛してほしいけど。
>>58>>60 なら感想書こうぜ
以前のIFスレの凋落の仕方は知ってるだろ
基本的に妄想空想を物語化して投下するスレなんだから
煽ること言ったり「厨」なんて言葉使ったりしてるとまた廃れるかもしれんぞ
67 :
Classical名無しさん:05/06/13 15:51 ID:vIZYQ4SA
植木鉢をかぶった人のジョーク調べてみたんだけどでてこない・
すげーきになるんだけど>
話しぶった切って悪いけど。
閑さんの「笹倉先生の上手な視覚効果の使い方」って何かの挿絵とかだっけ?
SSにしても大丈夫かな?
お前、あの絵の閑氏のコメントを読んでなかったのか?
元々蓮水氏が書いた作品を閑氏が絵に起こしたんだぞ
確かSSは蓮水さんのSSの挿絵だったと思う
でも、あの絵でも独自のストーリー展開になってる
まあ、俺はおもしろければオーケー
>>69-70 すまん、多分そのときパソコン壊れてたと思う。
過去絵のところで見て掻きたくなった。
前スレ685-687
「天満がもうちょっと賢かったら」の続きです。 5巻25頁から分岐するストーリーです。
天満「愛理ちゃん、それはもう一度播磨くんの話をちゃんと聞いてみるべきだと思うよ」
愛理「そ、そうかな?」
天満「海行ったとき、播磨くん、私相手に告白の練習したときも、態度でずっと示してた
のに、どうしてわかってくれないんだって嘆いてた。そのときは愛理ちゃんのことを言っ
てるって気づかなかったけど、今なら播磨くんの気持ちがよくわかるよ。さっき聞いた話
だと、海に行ってたときでも、播磨くん、態度でいろいろ示しているじゃない。わざと愛
理ちゃんと組むようにするとか、部屋で後ろから迫ってきたりとか……」
愛理「あれがそうなの? 釈然としないというか、到底納得できないというか」
天満「告白しなくっても態度で察してあげるのも大事だよ。それに播磨くんも言っていな
いわけじゃなくて、一度愛理ちゃんに告白してるんでしょ?」
愛理「でもあれは絶対本気じゃなかった。だってあの後のフォローもないし、あのときだ
って、あの、誰だっけ、髪の長い女の人が横からきて……」
天満「たぶんなにか誤解があるんじゃないかな。前にちょっとだけ聞いたことがあるんだ
けど、播磨くん、一人暮らししてるんじゃなくて、親戚の人と一緒に住んでるって言って
たよ。その親戚の人ってよく知らないけれど、もしかしたら、愛理ちゃんがそのとき会っ
た女の人かもしれないよ」
愛理「そうなの? あれは、播磨くんと一緒に住んでる親戚の人……?」
天満「きっとそうだよ、愛理ちゃん、それを早合点して怒ったんじゃない?」
愛理「えっ、えっ?」
天満「愛理ちゃんも意外と独占欲が強いというか焼き餅やきというか」
愛理「そ、そんなことないわよ」
天満「あっ、あそこ」(と指さす)「ちょうど播磨くんだよ、噂をすれば」
愛理「え、ヒゲ?」(播磨の姿を見つけて、少し焦った様子)
天満「いいチャンスだよ。愛理ちゃん、一度ちゃんとそのことを訊いてみれば」
愛理「いまここで?」
天満「話をするならはやい方がいいよ」
愛理「いや、でも、まだ心の整理がついてないし……。天満、あなたの方が、ヒゲと気兼
ねなく話せてるみたいじゃない。私のかわりに聞いてくれればありがたいんだけど……」
天満「なにが私のかわりよ。愛理ちゃんらしくもない。ほら、来た来た。どーんと行って
きて!」(愛理の背中を押す)。
愛理「わっ! とっとっ」(播磨の前に押し出される)
道を歩いている播磨、前方に天満と愛理がいることに気づく。
播磨《何だ、播磨くんとか聞こえてきたぞ。もしかして俺のことを話しているのか?》
天満「私のかわり……行ってきて!」の声が播磨の耳に届く。
播磨《私のかわり? 天満ちゃんが自分のかわりにお嬢に行くように頼んでる? それは、
自分で告白する勇気がないから、かわりに行ってくれってお嬢に頼んでいるのか? つ
まり、お嬢に、オレの気持ちを訊いてくれって頼んでいたわけだな。天満ちゃん、そのお
くゆかしいところもかわいいぜ》
愛理、おずおずと播磨の前に出る。
愛理(上目使いに播磨を見つめて)「ヒゲ……?」
播磨(少しかしこまった様子で)「おう、何だ?」
愛理「この間のことだけど……」
播磨「ああ?」
愛理「この間、あそこの道で、その、私に告白したとき、あとから思い返して、もしかし
て……あのとき誤解があったのかなって……」
播磨「おうよ。あれは誤解があった」
愛理(びくっとして)「じゃあ誤解をとくために聞きたいんだけど……」
播磨「おう」
愛理「あのときから今も気持ちは変わってないの?」
播磨「あのとき? あのときっていつだ?」
愛理「ほら、自分の好きな人はってうちあけたとき」
播磨《……というと、あのキャンプの雨宿りしたときか。そうか、あのとき俺が天満ちゃ
んに気持ちをうちあけようとしたとき、お嬢は、俺が天満ちゃんに告白するのを聞いてい
たんだな。あのときか。あのときのことだな》
播磨「おう、当然さ。俺の気持ちはいつもはまっすぐ、一筋だぜ」
愛理「ちょっと確認のために聞きたいんだけど、ヒゲ、一人暮らしじゃなくて、親戚の人
と一緒に住んでるの?」
播磨「そのとおりだが、それがどうかしたか?」
愛理「その一緒に住んでる人は、女の人?」
播磨「そう、俺の従兄弟だ」
そこへ、絃子と笹倉葉子が並んで歩いてくるのが見える。
播磨「ちょうどあそこにいる──あれが同居しているイトコだ」
愛理、播磨がゆびさした先に、記憶にある葉子があるのを見て、さっと青ざめる。
愛理「もしかして、あのときすごい勘違いしてた? あの道で私が告白されたとき−─」
播磨「そう、いま思い出すと恥ずかしくなるくらいだ」
愛理「あなたが恥ずかしがることじゃないでしょ。それで、あのときの誤解を正した上で
聞きたいんだけど──私がいま(恥ずかしそうにうつむく)なにを聞こうとしているかわ
かる?」
播磨「おう、わかってるつもりだ。俺の気持ちを聞きたいんだろ?」
愛理(ぎくっとして)「そ、そうなんだけど……」
播磨「でも、そういうことってなかなか本人には言いだしづらいものだよな。わかるぜ」
愛理「まあそうだけど、こちらから聞きたいのは、もう一つ進んだ話で……」
播磨「おうよ」
愛理「もしこちらの側の気持ちが、その播磨くんの気持ちと一致しているとして──仮に
そうだとしたらの話よ──もうそうだとしたら、それを信じていいのかな? 相手を拒ま
ず受け止めてくれる用意はあるの?」
播磨「もちろん。それどころか、そのためなら火の中でも水の中でも飛び込む覚悟がある
ぜ。そのために俺は生きているようなものだからな」(ドンと自分の胸を叩く)
愛理「ホントに? 正面から気持ちにこたえる覚悟でいる?」
播磨「この播磨、日本男児、言葉でも態度でも裏切るような男じゃねえ。ドンときてくれ」
愛理(真っ赤になって)「じゃ、じゃ、あたしも……」
天満(かげから小声で)「フレーフレー愛理ちゃん」
絃子、葉子とわかれてから、播磨がいるのに気づいて近づいてくる。
絃子「拳児じゃないか。こんなところでなにをしている?」
播磨「あ、イトコ……」
愛理「もしかして、播磨くんと一緒に住んでいる女の人って、この……?」
播磨「ああ、これがそのイトコだが……」
播磨の顔面に愛理のシャイニングウィザードが炸裂した。
(おわり)
台本だな
78 :
Classical名無しさん:05/06/13 21:46 ID:/OinQhEk
てか姉ヶ崎先生と笹倉先生を勘違いしてないか?
しかも絃子は拳児君とよぶのでは?
植木鉢の話きになる…
>>78 アッという間に植木鉢に早変わり。コイルのような土壌材を入れて、水を注ぐと 植木鉢内に土壌が満たされます。
ノベルティやギフト用品としても最適なアイデアです。 ... あとはかぶるだけで頑固な寝グセも直ります。朝の忙しい時間に、使える一品。
――――――――――――――――
……すごいぜGoogle。
あー。姉ヶ崎先生と笹倉先生をまちがえてました。訂正しなくては。
言うまでもなく、天満が馬鹿だからこそ成り立つスクランってことね
>>78 沢近しかそのオチを知らんのでは?
古典的な言った本人しかオチを知らない、いわゆる「オチなしジョーク」の類だと思う。
わりと海外ドラマや推理小説の類で「オチを聞く前に誰かに呼び出されて結局オチを聞けずじまい」
もしくは「オチを言う前にジョークを言ってる本人が何者かに毒殺されてしまう」
みたいな展開に使われることがある。
日本で有名なのはドラマ「古畑任三郎」で犯人のラジオ番組のパーソナリティが
向こうから水の入った赤い洗面器を頭に乗せて、そーっと歩いてくる爺さんがいたので
思い切って「あなたはどーして赤い洗面器を頭に乗せてるんですか?」とたずねたら、
お爺さんが「それは...」
と言ったところでパーソナリティは逮捕されてしまって、うやむやになり番組終了後問い合わせが殺到した
ことがあった。
その辺の話は 古畑任三郎 赤い洗面器 でググれば出てくるかと。長文スマソ。
細かいところ不正確でした・・・出先で書いたんで手元に本がなかったせいも
あるんですが、ちゃんと記憶してないのは修行不足だ・・・
まあ台本なんで、小説にするには描写を増補せんといかんですね。
というわけで読んでくださった皆様ありがとうございました。
>48
面白かったと思う。
なんか最後の一言に至るまでのつむぎの心の変化が。
最近虹SSが結構投下されるので俺としては嬉しい限り。
>82
「王様のレストラン」でも使ってたな。オチを忘れてしまった、ってオチで使ってた。
86 :
Classical名無しさん:05/06/15 14:24 ID:TQ6iyoFk
分校が見られなくなってるんだけど
落ちない→オチない
ってのが一般的なんだがなんだかなぁ
スレ違いスマソ
分校に行けないんだけど
89 :
パラレル太郎:05/06/16 05:56 ID:vq8eY3rI
※天満ファンにはちょっとショッキングな内容です。あしからず
登場人物 播磨八雲花井周防
播磨は二階の自分の書斎にいた。机に座りながら。
手には高校の時の卒業アルバムを持っていた。彼にとっては
もう10年前の話だった。アルバムの写真を見ながら、小さく笑う。
「ねぇ、パパ!早く!動物園しまっちゃうよ!」
ドアの向こうから幼い女の子の声が聞こえた。播磨は、もう行くから、とだけ答えた。
窓に目を向けた。外は心地良い春の風が吹いていた。
「ちょうど10年前の今日も、こんな快晴だったな」
90 :
パラレル太郎2:05/06/16 05:57 ID:vq8eY3rI
ちょうど10年前の今日 ―3月○○日―
播磨は高校の卒業式を迎えた。
播磨「3年間学んだ学び舎とも今日で最後だな」
勝手に感傷的になっている播磨に花井が声をかけた。
花井「おい播磨!お前この先どうするんだ?」
播磨は視線を合わせず関係ねーだろとだけ答えた。
花井「・・・まぁ、頑張れ」
播磨「あぁ。お前もな」
メガネ、最後までおせっかいな奴だが嫌いじゃなかったぜ。心の中ではそう思っていた。
91 :
パラレル太郎3:05/06/16 05:58 ID:vq8eY3rI
玄関で靴を履き替えようとしたとき、背中から周防が声をかけた。
周防「播磨!これからイギリスに帰る沢近の送別会をかねて、皆で集まるけど、来る?」
播磨「・・・いや、いかねぇ」背を向けて答えた。
周防「じゃあ沢近に伝えておくことは?」
播磨「・・・まぁ、頑張れ」
周防「他には?」
播磨「・・・そんだけだ」
周防「播磨!これからどうするのか知らないけど、元気でな」
播磨は背を向けたまま歩き出し、一言言った。
播磨「あぁ、お前もな」
92 :
パラレル太郎3:05/06/16 06:01 ID:vq8eY3rI
校門を後にして、矢神坂を下り、ある交差点で足を止めた。
脇の電柱に花を添え、手作りの卒業証書を隣に添えた。
心地良い風が吹いた。その瞬間、サングラスの下から涙が出てきた。
その行動を見ていた八雲が播磨に言った。
八雲「やっぱりここだったんですね」
播磨は不意を突かれて振り向いた。
八雲「ここに来たら播磨さんに会える気がして」
播磨は八雲の目を見て言った。
播磨「卒業式で塚本の名前が呼ばれたけど、返事がなかった。
1年たって実感した。葬式にも涙が出なかったけど、
今初めて本当に帰ってこないって気づいたよ」
93 :
パラレル太郎5:05/06/16 06:04 ID:vq8eY3rI
播磨は続けて言った。
播磨「・・・妹さん。君は大切な人を失った。今日でちょうど1年だ。
君のお姉さんが亡くなって。
これからは塚本の分まで妹さんが必死に生きていかなくてはいけない。
俺も、他の連中も卒業だ。君のそばにはもういられない。
妹さんは強くならなければいけないんだ」
八雲は声を絞り出した。
八雲「わかっています。でもお願いです。
もう少し私と一緒に居てください!私の心の支えになって下さい!」
八雲は播磨に抱きついた。
播磨はそんな八雲を強く抱きしめることしか出来なかった。
こんなに不遇な女性を一人にすることは出来なかった。
94 :
パラレル太郎6:05/06/16 06:06 ID:vq8eY3rI
窓の外を眺めながら遠い過去を思っていたら、
幼い女の子が抱きついてきた。
女の子「ねぇ、パパ!ママが待ってるよ!」
播磨はゴメンゴメンと言いながら、アルバムを棚の奥にしまった。
幼い女の子の名前は、播磨天満。
パパとママに愛され育っている。
塚本天満の面影を残しながら。
殺したくなるほど天満が憎いか。
見事な台本ですな。
素直に感動しました
天満が死ぬというイメージがどうしても湧かない。
つ〜か、天満は殺しても死なない究極生物だよ…少なくとも俺の中ではw
天満が死ぬってネタを支援スレに書いたのは俺で、俺は書けないけど
書いてくれるなら読みたいとは言ったが、まあ、これとは無関係だと
思いたい。
なんでよ
なんでと言われても、俺が見たかったのはこんなんじゃないと言いたかっただけ。
どうせやるなら死んだときの播磨や八雲、お嬢たちの悲しみを目いっぱい書き、
なおかつ自分自身との戦いやお嬢との確執を経ながら播磨と結ばれる八雲を
見たかったというか見たい。
まあ、旗派の俺としては逆でも一向に構わんがそれは人としてどうかと思うしな。
考えただけで心が折れた俺に、自分で書けとか言うのはなしの方向で。
書けないくせに見たいとほざくのがみっともないのはわかってるし。
>書けないくせに見たいとほざくのがみっともないのはわかってるし。
ほんとかよw
多分嘘だなw
天満って徹底的に邪魔者なんだね。
殺すとか止めて欲しい。
どうしても天満を殺したいなら八雲や沢近が自身の手を汚すような展開にしてくれよ。
まあ播磨が死ぬ話の方が多いから勘弁してやれ
嫌よ嫌よも好きのうち。ってゆーだろ
108 :
パラレル太郎:05/06/17 04:43 ID:Ctqe6fi.
皆さん貴重なご意見ありがとうございます。
自分的には読みやすさに重点を置いていました。
目を通して頂いた方、ありがとうございます
天満は確かに厄介な問題だと思いますね。なぜかというと、天満を論じる時必ず言われるように、彼女はスクランが途中で
ギャグからシリアス風味ラブコメに路線をシフトさせた時に、キャラとしての立ち位置を変えて、沢近と入れ替わるように
3人娘(周防・高野・+1)の一員になったわけですね。加えて、妹である八雲を沢近のライバルのようなポジションに
置き直して、今日のスクランのバランスが整ったわけです。
ここに、今日の播磨−沢近−八雲の三角形を中心とした新スクラン世界が成立したわけですが、じゃあそれで箱庭世界的な
お約束が繰り返されて、ハッピーエンドになるのかというと、そんな単純な話ではない。
キャラクターのヒエラルキーを考える際、頂点に播磨(主人公)、その少し下に沢近(ツンデレお嬢)と八雲(内向恋愛下手)、
さらにその下に天満(天然)・周防(体育系)・高野(クール)の3人娘がフラットに連なるという、このピラミッドが
最もバランスがよく安定してることは言うまでもないことですが(サラとか一条とかお姉さんズは、ここでは措きます)、
しかし周防・高野と違い天満は、スクラン世界がそうやって形式化され(直し)た時の、本当に厄介な「剰余」として(再び)
見出されることになった。理由は簡単で、播磨が天満に惚れているという、今となっては異常なまでに扱いに困る厄介な設定を、
さすがに烏丸の存在と同じように抹消・初期化することが作者or編集に不可能だったからです。じゃあそれは何故?
何故烏丸は可能で天満は不可能だったのか? と問われたら、それは自分には分かりませんとしか答えようがないのですが…。
それはともかく、大事なことは、ここで天満というキャラの属性が全て、或る意味では沢近以上に激変してしまったという
その事実のみ。で、形式化された理想のスクラン三角形世界は、今やその剰余の抹消処理法に悩んでいるという限界点まで
きてしまっているということではないでしょうか。 要は彼女はピラミッドをぶち壊しかねない実に危険な、ヤバい存在なんです。
云うまでもなく天満はスクラン世界の初期からのレギュラーですが、同時にアンチが最も過激に展開されているのも
天満ですね。最近では天満以上に重要度も出番も何もない周防や高野、体育祭後即消えた一条などには殆どアンチ活動はない。
ということは、皆が言うように、「お子様ランチ(+超姉)」をひとつの到達点として露呈された理想的スクラン世界内の、
形式化されえない「剰余=亡霊」として天満がある、ということではないか。そもそも周防や高野や一条だったらお子様ランチの
スクラン世界を破壊してしまう心配が皆無です。播磨はこの3人を何とも思ってないわけですから。
となると当然、じゃあその剰余=亡霊をどうやって処理・飼い馴らしすればいいのかって問題になります。
一番簡単なのは無論、播磨の天満への想いを全部抹消してしまうことですね。そうすれば天満はピラミッド内の1ピース
としてぴったり収まる。播磨−沢近−八雲のお子様三角関係も何の支障もなく展開できるわけです。
しかし現状どうなのでしょうか。播磨の恋愛感情がこの2人の方に向かっているのかどうか? 確かに最近八雲に
向かいつつあるようですが…。単純に、播磨が天満に告白して、綺麗に振られればいいだけの話なんですがね。
とても簡単な事のはずなんですが。一応振られたと思い込んでる(?)ようですが、何だかんだでまだ告白してないわけですし
結局ループになりそうです。
まあ、漫画描き続ける限り、天満より八雲との絡みの方が多くなるのは必然なわけですが…。
または天満の存在自体を無かったことにしてしまう方法もありますね。烏丸の例を見るに、案外そっちの方が簡単なのかも
しれませんね。いなくなっちゃったけど、周りの誰もそれを疑問にすら思わないというように。つまり八雲は最初から
一人っ子で、沢近の親友は美琴と晶の2人だけで、播磨は現状誰にも恋をしていない、と。他の漫画ならいざ知らず、
スクランなら平気でそれくらいやってしまいうような気もしますしね。
長文マンドクセ
>>109 「109 名前:Classical名無しさん[sage] 投稿日:05/06/17(金) 06:2」
まで読んだ
113 :
Classical名無しさん:05/06/17 14:40 ID:uwcL2tPU
正直長杉
「スクランなら平気でそれくらいやってしまいうような気もしますしね。」
まで読んだ
むしろ「スクランなら平気でそれくらいやってしまいうような気もしますしね。」だけ読んだ。
109
まで読んだ
>>117 沢近ー播磨ー八雲の三角関係マンセー
天満イラネ
仁丹、天満の存在なかったことにしちゃえば?
完璧な要約だなソレ。
そうではない。
そうではなくて、
天満というキャラを、「調和」(=播磨・沢近・八雲の典型的三角関係)に先立って、その三角関係のための
空間を開く存在、として捉えなければならない。
結局の所、天満とは何であるのか。
天満とは、上記3人に付着した「過剰なもの」に対する別名、つまりその3人の通常のラブコメの正常な循環を
脱線させてしまう「モノ」への固着に対する別名なのだ。
言うまでもなく、播磨が天満に惚れてるからである。
天満によって、スクランは典型的なラブコメのリズムから自らを引き剥がす。つまり、天満は、「自然」な
三角関係に対する根源的な転倒を導入するのである。「播磨・沢近・八雲」の可能性の空間は、有機的調和的な
三角関係のパターンを破砕する天満の原選択によって開かれるのである。沢近と八雲のあいだの播磨の選択は、
このように、ある意味では真の根源的な選択ではない。真の意味で第一の選択とは、沢近or八雲に流されっ放しの
自分の性向にしたがうこと(と事後的に認識されること)と、天満を選ぶことのあいだの選択である。すなわち
その選択とは、沢近&八雲との幸福な三角関係を宙吊りにするという純粋に否定的な身振りによって、病理的な
自然な衝動の支配を克服して、その2人のための「場所をつくる」、自殺的利己主義の行為である。
天満は、スクランの調和的循環の根源的な破砕として「生成する」。沢近&八雲と天満のあいだの差異は、
「生成状態」から「存在状態」への、純粋に形式上の転回に関わっている。ところで注意しよう。ここで、
回顧的投影の危険を避けなければならない。ミルトンの『失楽園』のサタンは、いまだ、スクランの天満ではない。
サタンがそのようなものとして現れるのは、ただ、シェリーやブレイクのロマン主義的なまなざしに対してである。
(続き)
サタンが「<悪>よ、わが<善>たれ」と言うとき、これはまだ根源的<悪>(=天満)ではなく、間違ってある
<悪>を<善>の場所に置いたにすぎない。根源的<悪>(=天満)の論理は、むしろ、この反対を言うことにこそ
ある。つまり「<善>よ、わが<悪>たれ」(=言うまでもなくこれは「<沢近&八雲>よ、わが<天満>たれ」
に等しい)――天満の場所を、「モノ」、有機的調和の閉じた循環を逸脱させるトラウマ的要素の場所を、
(二次的な)沢近&八雲で満たすこと。これが、(ワーグナーがパルジファルで言うように)「おまえを傷つけた
その槍だけが、その傷を癒すことができる」ということである。傷は、天満の場所が沢近or八雲によって満たされる
時に癒される。「モノ」の(つまり、天満の)仮面としての沢近or八雲は、このように失われたバランスを再び
確立しようとする、存在論的には二次的で代補的な目論見なのである。派閥上でのその最良の範例は、スクランを
調和的、有機的で、敵対関係のない構造体として(再び)構築しようとするお子様ランチ派(沢近−播磨−八雲)の
試みであるといえよう。
旗派&おにぎり派が沢近/八雲を好きになるように求めて圧力をかけてきたのに対して抵抗した播磨のことを
思い起こせば十分だろう。今日のわれわれにとって、彼のことを「時勢に阿らない人物」として称賛し、厳正さに
対するその不屈の精神と、その代価が自分の失恋であるにもかかわらず自分の信念を守りぬいた態度に感嘆する
ことはたやすい。より困難なのは、彼の頑なな態度が、彼の同時代人の大多数に対して与えたにちがいない衝撃が
どのようなものであったかを想像することである。「調和的三角関係主義」な立場からするならば、彼の厳正さは、
スクランの生地を切り裂き、三角形の安定を、それゆえ、スクラン秩序全体の安定を脅かすという意味で「悪」で
あるような、そんな「不合理」で自己破壊的な身振りだったといえる。したがって、播磨の動機が疑いようもなく
「善」なるものであったにしても、彼の行為の形式的構造そのものは「根源的に悪」だったのである。彼の行為は
スクラン共同体の<善>をないがしろにする、根源的反抗の行為だったのである。
(続き)
このことは天満その人にも、同様に当てはまるのではないだろうか――
彼女の行動は、伝統的な三角関係共同体にとっては、その基礎付け
そのものの破壊と映っていたのだから。
天満が来たのは、「分かつためにであって、統一するためにではない」
のではなかったか。
そしてこうしたこと全てが、私たちをカントに引き戻すのだ。
より正確には、カントとサドを同列に位置づけたラカンに、ということだが。
カントの倫理学に「厳格主義」の相貌を授けているものこそ、形式と内容との逆説的な短絡である。
大文字の善の場が「斜線を引かれ」、どんな「病理的」内容をも抜き取られている以上、我々の活動は
たとえどんなに「高貴」なもの(同情等のような)であるとしても、ひたすら形式によっていずれの
「病理的」な起動力をも排除するよう仕向けられる限りでのみ、真に道徳的なものとみなすことが
できるとするのがカントの倫理学だからである。しかし、「カントとサド」におけるラカンの要諦は、
一切の「病理的対象」のこの拭い去り、この純然たる形式への還元がひとりでに一種の新しい前代未聞の
「対象」を生み出すということなのである。
続きはまた、まとまった時間がとれた時にでも書きます。
>>123 無理にカントとか善と悪の根源とか書かなくていい。哲学なんぞ俺の知った事ではないし
その時の漫画のキャラの心理状態も関係ない。
ただただ面白いSSを欲する。それだけだ。
ブラウザのウィンドウ幅と、書いてる人の勝手改行が合わないと非常に読みづらいと言うことがよく分かった。
あと少なくとも大半はコピペであるとも。
天満死ねですませろよ。
それで十分だろ。
あれも作品のつもりなのかな?別のスレが有る気がするんだけど
議論や雑談が長引きそうなら、支援スレの方に移ってね
,:':´ ̄`ヽ
i: .レリリリリ)
⌒゚i:::リ´ ワ`リ゚⌒ ∫
_⊂[i:/|<ネ>)]つ━・
/_.,l_/~) ━┳━
 ̄ ̄ ̄ ̄ .し'J ̄ ̄┃
何が?
>>131 ただ長文の人が言いたかったことを1行で代弁しただけ、気にするな
長文の人これで分かったかな、ここの住人は人の意見なんてまとも理解しようとしない人が多すぎるんだよ。
長文の人これで分かったかな、ここの住人は人の意見なんてまとも理解しようとしない人が多すぎるんだよ。
そういや、天満が死ぬ話といえば、
どっかの料亭の高尚な料理の説明ならまだしも、
普段の慣れ親しんだ朝食についての長い利己的な話聞かされてもなえるだけ
それだけのとだな。
>>123 取り敢えずSSを書きにくくするような批評(に類するもの)はよそでやれよ
だれもそんな長文ここで見たいと思わない
いくら内容が良かったとしても迷惑
(123の実際の内容については私は何も言うまい)
>>ID:xpS8ekHM
お前の解釈なんてどうでもいいんだよ
そんなの長ったらしく書いてる暇があったらSS書け
>131
高校生喫煙(・A ・)イクナイ! というお話では
今月のマガスペを見たらいろいろ妄想がわいたけど、
それを表現する画力もなければ文章力もない自分…orz
せめて解禁の目安である公式発売日まで待て。
うわあ…ネタばれ踏んじまったよ
>>137 まあ、ここまで旗おにぎり話ばっかが続くと、
じゃあ天満は何のために存在してるんだって疑問は当然出ます。
殺されるため
肉じゃが(?)モノのSSで8に分けました。
もし合わないようでしたら、スルーお願いします。
いままでに感じた事の無い振動が、妙の体を襲っていた。
それは昔に感じた事のある感覚なのかもしれなかったが、今の妙にはまったく初めての気分だった。
細かく振動して、大きく無骨に彼女の腰を押し上げてくる。
妙はぎゅっと彼の体にしがみ付いた。
「大丈夫っすか?」彼の声はからかいの意味を持たず、妙は指に力を入れて「大丈夫だよ」と言った。
声が聞こえたのか妙には分からなかったが、何も言わずに頷いたようにも見える。
続けるからな。彼がそう言った様に思えた。
ぴったりとくっ付けた体は、体温など感じずに振動を与え合うのみ。しかし、彼が照れたように咳き込むので、
妙は可笑しくなりいたずらに体をくっ付けていった。
気付いた時にはもう夜だった。自分と彼の居眠りは、僅かな間に時計の短針を六十度以上も走らせ、
学校の中から生徒も教師も立ち去らせていた。
真っ暗な保健室に、二人。
妙は鼾をかいて眠る彼にそっと近づいた。「ねぇ、ハリオ。帰らなくて、イイの?」すぅ、と吸い込んだ彼の匂いに
忘れかけていた前の彼氏の匂いは感じられない。恐怖よりも思い出すことの切なさ。妙は彼の肩を揺さぶり、目覚めを待った。
強情な彼の眠りを覚まさせるためには、かなりの労力と時間を要したが、それさえも嬉しさと愛おしさに変わっていく。
自分は男に依存するタイプなのだろうか?
「どんな夢を見ているの?」
妙の言葉を遮る様に、彼の体が起き上がっていく。
しばらくぼんやりしていた彼に向かって妙は、その他の生徒達に見せるものと同じように、にっこりと笑った。
彼の肩越しに前を見ると、真っ赤なライトが闇の中で蠢いていた。彼の黒いモノが起こす振動で
自身が揺れているのが原因なのだが、妙の目には真っ赤なライトが連なっているのはあまり気持ちの
良いものではないと感じられる。
彼は几帳面に真っ赤なライトに従い動きを止めている。二人で保健室を抜け出した時に見せた
彼の荒々しさと違う、その慎重さ。
職員室はもちろん、廊下を歩くだけで警報が鳴るに違いなかった。職員の手違いなのだろうが、
保健室に二人が残っている事を見逃していたのだろう。保健室の鍵を返しに行くわけにもいかず、
妙と彼は保健室の窓の鍵を開けて、そこから外へと飛び出したのだ。
依然として信号は赤のままだった。バイザーを上げてヘルメットをしない彼の耳元に近づいた。
「もうちょっと、乗っていたいの。……ダメ?」
彼は少しの間考え、「いいっすよ」顔は見えなかったが、きっと苦笑していたに違いない。
あわせたかの様に遠くの方の信号まで次々に青に変わっていく。順々に遥か彼方の信号まで
青に変わっていく光景は、ある種の爽快感すら与えてくれる。
「Go!」
妙の声に応える様に彼のバイクは発進していった。
バイクは二人の体に同じように振動を与えてくる。妙は、心地の良いと感じられるこの振動に、
まるで彼と一体になったかのような錯覚さえも思い起こさせた。
『今、ハリオと同じ振動を感じているんだ……』
知らず知らずの内に身を摺り寄せていた事に、妙は恥ずかしいとは思わなかった。
このバイクに乗っているのは、自分。そして彼だけなのだ。
びゅうびゅうと音を立てて体を吹き飛ばそうとする風がいけないのだ、と妙はさらに体を押し付ける。
初めは遠慮気味だった密着も、すでに隙間が無いほどになっていた。
「大丈夫っすか!?」彼は爆風の中、大声で言ってくる。ここまで女がしてやっているのに、この男ときたら
怯えてしまって抱きついている、などと思っているのだ。
「大丈夫だよ、ハリオ!!」両手が塞がっている為にバイザーが上げられなくて、妙はあらん限りの大声で叫んだ。
誰も人のいない夜中の道をバイクが走っていく。
いくら夜中の静かな道でも、バイクで走っている二人には轟音が巻き起こる世界でしかない。
遠くから大型のトラックがやってくるのが見える。
妙は、すれ違う一瞬に、トラックの運転手の顔が見えた気がした。こんな夜中に何やってんだ? 中年の
ヒゲも剃っていない男が、恨めしそうに見てきたようにも思えてきた。
「余計なお世話でしょう?」そんな不満は目の前の背中にぶつけてやった。思いっきり胸を押し付けてみる。
しかし、彼はいつもの様に慌てたりせずに前だけを見ている。その姿はまるで、『なにやってんすか、お姉さん』と、
年下のクセにやけに手馴れているようにも、自分の安全の事を考えてくれる頼りになる男のようにも感じられた。
「やばい。やばい…よ、ハリオ」
妙は、訳も分からず温度の上がっていくヘルメットの中、零すように呟いた。
「やべっ。お姉さん、帰らねえと」
「ハリオ、待って。廊下に出たら警報が鳴っちゃう!」
「…っと! どーするんです?」
「窓から出ましょう」
窓の鍵を開けると、夜の闇が保健室のライトに切り裂かれる。彼に先に下りてもらった妙は、
保健室のライトを消して窓枠に足をかけた。彼は早く降りてこないか、と見つめている。
「ハリオっ。そんなに見たいの?」短いスカートはスリットが入っている。
「…えぁ?」彼がうろたえるのが、どうしようもなく可愛らしかった。
「……それっ!」
妙が彼に向かって小さくジャンプすると、慌てて受け止めてしまった。二・三歩後ろへ後ずさって尻餅をつく。
「もう、だらしが無いナー、ハリオは!」
「おっ、お姉さんが急に飛ぶからっ!」
「言い訳しないの。でも、受け止めた事は嬉しかったな」
ぱたぱたと、砂埃を叩いて彼に手を差し出した。ごつごつの手の感触があった。前の彼氏とはまったく違う感触。
そう思ってから、妙は頭を軽く叩いた。
失礼ではないか、彼に。前の彼氏だった男と比べるなんて。
妙の横を通って行く彼の腕に絡み付いていく。
「送ってくれる?」ハリオが断われない事を知っていて、こういう事を言う女なんだよ?
心ではそう思って、表情では気分よく喉を鳴らしている。
「え? ああ、いいっスよ」事無げに応えた彼の素直さが痛くて、前を向くことが出来ない。妙はちょっとだけ後悔して、気分を切り替えた。
「お願いしますね。ハリマ☆ハリオ先生?」
「な、なんっすか。もう…」
そうやって彼のバイクに乗ったのだ。妙は、その様に記憶していた。
彼のバイクはスピードを上げていく。
道に引かれた白のラインが繋がって見えるようだ。
生まれてからここまで、おおよそ体感した事の無いスピード感!
「ハリオー!!」
声は届いていないようで、妙は続けて叫んだ。
「好きな子とは、どーなったのー?」
聞こえていないようだ。自分の世界に入っているのだろうか。
「早くしろよー、ハリオー!! 女は、いつまでも待ってはいないんだゾー!」
妙は、思いっきり体を摺り寄せる。猫が匂いを擦り付けるように。
ぐんぐんスピードを増していく。
車輪が回っているのが分かる。
このまま手を離したらどこまでも飛んでいってしまいそうだと、妙は思った。
恐怖と恍惚の狭間で激しく揺れる針。天秤が壊れてしまいそうだ!
ぐっと彼の体にしがみ付く事でしか、押さえつけられない。
剥がれていってしまいそうになる。心と一緒に、体と命も。
彼の筋肉質の大きな体が、酷く頼もしくなった。自分の命を鷲掴みにして、持ち去っていったのだ。
妙は幸せそうに、その背に抱かれた。
いいよ。ハリオが持っていくのなら。
妙は自分の体が彼と一つになった気がした。
不思議なもので、信号は見える限りの青だった。
ぽつんぽつんと見える青の光が、道のラインを教えてくれる。
余裕の出てきた妙が横を見ると、すさまじいスピードで高速の高架下を走っているのが分かった。
あたりは一面滑走路かと思わせるようなだだっ広い平野。矢神の街中ではなく、妙はここがどこか
分からなかった。夢を見ているのだろうか。彼のおこした魔法だろうか。
スピードはぐんぐん上がっていく。
200キロ? 300キロ? それは分からない。
そこまでスピードが出るとは思っていないが、妙にはそれほどに速く感じられた。目の前すぐのあたりは
轟々と音を立てて地面が捲れ上がるほどなのに、遠くの景色はゆっくりと流れるのみ。そのコントラストに眩暈が起こりそうである。
何とかしがみついている感覚に、気を抜くと魂まで飛んでいってしまいそうだった。
目を閉じてみると、上着がはためくのが分かった。スカートが太ももに張り付いていた。
「……ハリオはこんな中で生きているんだ」
自分が高校の頃はどうだっただろう。
このようにスピードがあって、あっという間に通り過ぎていったのではないか?
今の私は?
「……そう、そうだったわ」
彼のおこしてくれる暴風に、前の彼氏の事などあっという間に吹き飛ばされてしまった。
乾燥した唇を、ちろり、と舐めた。
全身の活力が一緒に吹き飛ばされて、彼のおこす風によって新しい活力が入り込んでくる。
彼の気性そのままにバイクは走っていく。
嫌な思い出を受け止められないなら、吹き飛ばしていけばいいわ。
彼の体にしがみつく様にではなく、支えになってもらうだけでいいもの、と優しく抱きしめた。
妙のマンションの前でバイクは止まった。
降りる際にふらつくのかと思ったが、道路は思いのほかしっかりと妙の足を受け止めてしまう。
ヘルメットを彼に返して、自分の乗っていたシートを指で撫で上げてみると、バイクは驚いたのか
一度大きく車体を震わせた。くすっ。思わず笑ってしまった。
「ハリオは、どうするの?」
妙はダメもとで聞いてみたのだが、やはり彼は首を縦には振らずに「いや、いいっす」そう言ってシートに手をかける。
「塚本さんの妹さんも乗ったの?」
「……?」
「私も乗ってあげるから。……きっとね」
「はぁ……まぁ。いつでもいいっすけど」
彼に近づいてサングラスを取った。雨の中で見たものとは違い、光を湛えた瞳に満足して、
「うんうん」わざわざ声に出して頷く。
「ハリオは素敵になったね」
妙の手が再び彼の顔に伸びて、サングラスをかけてやる。
「私は、どう見える?」
「……え?」
「いい女になれるかな?」
彼は妙の言葉の意味が分からないようで、立ち尽くすのみだった。女にこんな言葉を言われた事が無いのか、
それともいい女ではないのだろうか。妙は考える事も無く、前者だと考える。
「嘘でも良いから『うん』って言わないと、ね? ……ダメだゾ」
彼が何か言おうとしたが、妙が唇で触れてやると何も言わなくなった。子供扱いしたのを怒ったのか、
女にこんな風にされた事が無いのか。妙は考える事も無く、後者だと考えた。彼の足が震えていることに気付いたからだ。
そのまま、彼は帰っていってしまった。
バイクの音も小さくなっていって、聞こえなくなった。
大人の強引さで済ませてしまうことは出来ても、それじゃ前の彼氏と同じだ。妙はシャワーの音に
消されるように小さく叫んだ。
そんな彼だからこそ気に入ってしまったのだ。何も知らなかった頃の自分に返してくれそうで。いや、違う。
真っ直ぐに向かう純真さ、素直さに惹かれたのだ。妙の乾燥した喉はビールを欲しがるが、小さなボックスの中の
豊富なストックに手は伸びない。
シャワーを浴びて、ミネラルウォーターで潤した。そうやって誤魔化しの利く事も覚えてしまった。今の自分は
十分に酔っている。ベッドに腰掛けても、バイクに乗っていた時のスピード感が妙の体にはあった。
酔っていた。そのスピードに。飛んでいってしまいそうな程の、暴風に。
彼によってもたらされた活力が溢れかえりそうだった。このままビール程度の酔いで、上書きしてはもったいないじゃない。
妙は酔った体を楽しむように部屋の明かりを消して、独りベッドに入っていく。
一晩中、バイクの振動による震えが止まる事は無かった。
妙は何年ぶりかに朝日が昇っていくのを、寝転がったまま見るのだった。
他には誰もいない借り物の部屋で。
涙など出るはずも無かった。今の自分にはまったく関係の無かったことだからだ。
いつものように居眠りをしちゃえばいい。
今は矢神高校の保険医なのだから。そして、可愛い生徒達が起こしてくれるから。
顔を拭った腕が濡れていたことなど、誰が知るのだろうか。
妙は、泣いてなどいなかった。
いかがでしたか?
時期としては、バスケ編の裏話的なものを想像して書きました。
疾走感を出そうと四苦八苦してこんな形になりましたが、どうぞ気付かれた事がありましたら
書き込んで教えてください。
最後に、読んで下さってありがとうございました。
投稿順を間違えてないですか?
念のために、タイトルに通し番号を入れておくといいですよ
157 :
156:05/06/18 19:18 ID:YJvYgWz2
と、思ったら問題なかったんですね。
回想の挿入が唐突だったので勘違いしてしまいました。
どうもスミマセン。
>>156 いえいえ、そう思ってもらおうとパートをばらばらに散らしてみました。
唐突に起こった『不思議な一夜』というイメージだったので、ごちゃごちゃの妙の感情を表そうと、
色々試行錯誤したのですよ。
ただ時間軸どおりに並べても、退屈なものになると思いましたから。
一度こういうものを投稿してみて、感想が欲しかったのです。
どうもありがとうございました。
157の言うように、いきなり回想に入るから何がなんだかわかんなくなった。
そういう文章にしたかったのだろうけど、読みにくいという感想しか持てなかったな。
手厳しいかもしんないが、もうちょっといい書き様はなかったのかなーと思う。
でもまあ、文章力は及第点あげられるほどだし、付随するほのかな切なさも味わい深かった。
何より、表現にはそれなりに凝ったと思われる部分も見えてるし。
以上、GJ!
おいおい、実は肉じゃがも好きな俺を殺す気かい?GJ!!
>>159 ありがとうございます。
前スレで幾つか投稿させてもらい、皆平坦なものばかりだなぁと思っていまして、
極端ですがこのような形にしてみました。
実験的な事と、このSSで伝えたい事の両方を出そうとして欲張った感がありましたね。
幾つかのSSを書いていって徐々に崩そうかとも思いましたが、飛び出るくらいにトゲトゲしいモノにしたかったのですよ。
159さんの書き込みを良い栄養としていきたいです。
>>160 そう言って頂けると書いて良かったと思います。貴方にGJ! と言いたいです。
>>前スレの893さん
補足ありがとうございました。
お礼が遅れてすみませんでした。
「俺は塚本、お前に話すことがあるんだ…」
遂に語られる過去
「そうだったんだ、ううん、何と無くそんな気はしてたよ。ゴメン、また私勘違いしてたんだね。」
「いや、俺のほうこそ今まで黙っててすまなかった。それでな塚本、俺はお前のことが…」
明かされる思い…
「ありがとう播磨くん。でも、ごめんなさい私には…「分かるよ、烏丸だろ」えっ!」
「好きな子が誰をみてるか位は俺にも分かるさ」
「なのになんで?」
「ケジメ。そうケジメをつけたかったんだ、この三年間に。」
スクールランブル
「塚本、次はお前の番だ。」
「な、なにを?」
「烏丸にお前の気持をぶつけてこい。大丈夫だ。行ってこい」
「ありがとう 播磨君」
思いは届かず、それでもあの子の幸せを…
「ふっ、幸せそうな顔しやがって。よかったな、天満ちゃん。烏丸、天満ちゃんを泣かせたらただじゃすまねーからな……」
そして男は歩き出す…
「まって下さい!」
「妹さん!?どうしてここに?」
「ここに来れば会えると思ったから……私、播磨さんに言いたかったことがあるんです。」
新しい始まり、
やっぱり思いつきはよくないですね。でも書きたくなっちゃうものですね。人様のSSを読んでると。
叩かれる覚悟はしてます。
>>165 ありきたり。
台詞ばっか。
もう書かなくていいよ。
>>165 少し添削してみる。
-------------------------
「まって下さい!」
「妹さん!?どうしてここに?」
「ここに来れば会えると思ったから……私、播磨さんに言いたかったことがあるんです。」
「おまえじゃない」
きっぱりと言われ、泣きながら去っていく八雲。
彼女の姿を見送ったあと、抑揚のない声で播磨は言った。
「いるんだろ。出てこいよ」
物陰からおずおずと出てきたのは金髪の少女。
「立ち聞きとかそういう気じゃなかったのよ。まあ、元気出しなさいよ」
「ちっ」
言い捨てて踵を返し歩き始める播磨。だが、突然後ろから引っ張られ、彼は立ち止まった。
肩越しに播磨が見たのは、自分の背中に顔をうずめ、震えている金髪の少女だった。
「・・・・・・き」
消え入りそうな声で彼女は言ってきた。その言葉は決して意外ではなかった。いや、心底では
望んでさえいたのだろうと、今の彼にはわかる。
「行こうぜ、お嬢」
そっと肩を抱く。抗いはない。そして播磨にも、もう後悔も、あの少女への未練もなかった。
二人は未来へと歩き出した。
----------------
少し文面いじっただけでこれだけ変わるんだよな。まあ、センスはあると思うので、これからがんばれ。
>>167 キモイSS。負け旗の遠吠えがここにもw
つ「スルー」
中途半端に添削されるとどうもな…っていうか、添削じゃなくて続きじゃん。
添削と言うよりも、本人の希望だな。
沢近が好きだというのは良く分かった。
だから旗SS書いてくれ。
>>171 よし、俺に任せろ
「お嬢、好きだ」
「私もよ」
END
つか「おまえじゃない」あたりでネタだって気づけよ。
俺のお遊びに突っ込んでる暇あったら、一生懸命書いた
>>165に感想のひとつも
くれてやれよ、おまえらと苦言を呈して寝る。
>>167 とりあえず添削してみた。
----------------------
失意のまま去っていく八雲の後姿を、飽きることなく見つめる播磨。やがて遠くの景色に
溶け込んでしまった時、彼は抑揚のない声音で背後へと問いかける。
「いるんだろ。出てこいよ」
指向性を持った言葉は、向けられた人間の意思に関係なく表へと引き摺り出してくれた。
播磨に媚びるようにおずおずと愛理が顔を出す。
「立ち聞きとかそういうつもりじゃなかったのよ……まあ、元気出しなさいよ」
「ちっ」
露骨に悪態をつく播磨だったが、当然のことだった。
それは慰めではない。彼女が口にしたかったことは言い訳の方だ。取って付けたような
励ましには、欠片も心が篭っていなかったのだから。
いや、そもそも慰めを向けられたところで、彼には受け入れるつもりはなかっただろう。
一人の時間が欲しかった。無為の中を過ごすことによって、天満へと向けられた感情を
少しずつ風化させていきたい。
しょせんは無駄な足掻きだ。が、彼も自覚はしている。この想いに決着をつけた今だから
こそ、たとえわずかだろうが抗ってみせたかった。
「じゃあな」
きびすを返しながら言い捨て、播磨がその場を去っていく。
----------------
>>171 よし、任せろ
「早く……私の前から消えてよ!」
「お、お嬢?」
「あの子が、八雲が待っているんでしょ? ……っ!!」
「お嬢、俺は……」
「馬鹿よ。馬鹿なんだから。私もあんたも」
「いいから黙ってろよ、お嬢」
「…………うん」
第一部、完
176 :
アモル:05/06/20 02:14 ID:eERD6tiY
前スレで「masquerade」という作品を書いたものです。
新作書いたので投下します。
少し長くなったので、前、中、後編に分けて。今回は前編です。
S3に同じ題材の作品が先に投下されてますが、出来れば気にしないで下さいorz。
暖かな日差しが大地を照らす。
その麗らかな空気を突き破って、凄まじい速さで自転車を漕いでゆく一人の男がいた。
男の名は播磨拳児。かつて魔王とさえ呼ばれ恐れられた不良。しかし今は愛に生きる男。
彼は普段、バイクに乗って登校している。
その彼が何故自転車を、何故必死に漕いでいるのか?
バイクが事故ってぶっ壊れた、わけではない。
愛しき思い人が自転車通学で、あわよくば一緒に登校しようとしている、わけでもない。
これには幾つかの理由がある。
ある男子生徒が、病気で入院して学校を休んだ。
その彼が日直を割り当てられた日が明日に迫ったある日、担任の谷先生がこう言ったのだ。
「播磨、お前明日日直な。」
「へ?何で俺が。」
「何でって、お前はよく日直をサボってるだろう。」
そう、彼はよく日直をサボる。無断欠席していたり、いても面倒臭がったりで、あまり熱心にはやらない。
当然この日も彼は渋った。
「チッ、何だよ面倒くせーな。他の奴にやらせろよ。」
「えーと女子の方は……」
「聞けよ人の話。」
「女子は塚本か。明日はこの二人でやってくれ。」
「ハーイ!わかりました。明日は一緒に頑張ろうね播磨君!」
「OK、任せてくれ塚本。」
これが昨日あった出来事。
ちなみに、彼の思い人の名は「塚本 天満」と言う。
さて、何故彼が自転車を漕いでいるのか。
その理由も昨日にある。
帰宅後、彼は次の日の天満との日直活動に思いを馳せ、悦に浸っていた。
喜びに気を大きくしていた彼は、彼をおちょくる同居人の従姉妹に対して、
[ 絃子 行き遅れ発言 ]
と言う蜃気楼首相の如き不祥事をやらかしてしまったのだ。
制裁として最近購入したハンドキャノンの異名を持つ新型ガスリボルバー(改造済み)の
試し撃ちの的になるという厳しい罰が下された。
翌日になっても機嫌は治まっていなかったようで、朝起きたときには従姉妹もバイクももぬけの殻になっていた。
歩きでは学校に間に合わないということで、久しく乗っていなかった自転車を引っ張り出した、ということである。
しかし、時間が厳しいわけでもないのに何故彼は急いでいるのか?
これに深い理由はなく、単にはやる気持ちを押さえ切れず、有り余る力がスピードになっているのである。
そういうわけで、冒頭のシーンに戻る。
播磨は相変わらず凄まじい速度で爆走していた。
道行く人々が、一体何なのかと呆気にとられる。
(天満ちゃんと日直!天満ちゃんと日直!!天満ちゃんと日直!!!)
この時彼はその事しか頭になかった。そのため目の前を猫が横切ろうとしているのに
気付くのが遅れてしまった。
悠々と横切ろうとした野良猫は、物凄い勢いで突っ込んでくる播磨に圧倒され、
その身を硬直させてしまった。
ぶつかる直前、ようやく播磨は猫の姿を認識し、
「うおぉっ!?」
と何とかぎりぎりで回避した。
「ふー、危なかったぜ。」
………この時ちゃんと一旦止まっていれば、あんな事は起こらなかっただろう。
あろう事か彼は止まるどころか後ろを見て猫の無事を確認してしまった。
そして前を見た時、すぐ傍の曲がり角から人影が現れた。
「!!」
今度こそ全力で急ブレーキをかけた。
ブレーキの手入れが行き届いていた甲斐あって自転車はぎりぎり止まった。自転車は。
前傾姿勢で自転車を漕いでいた彼の体は、慣性の法則に抵抗できずに見事に前方に
投げ出された。
投げ出された彼の体は、曲がり角から出てきた人影にものの見事に激突し、
そこで播磨の意識は途切れた。
ドガァッ!!!
「うひゃあぁぁっ!」
曲がり角から突然すっ飛んできた何かに激突して八雲とサラは薙ぎ倒された。
そのまま団子になって地面に転がる。
「い、いったー………そしてお、重いぃぃ………。」
八雲と何者かの下敷きになってサラはうめき声を洩らした。
何とか八雲の体の下から這い出して、今の状況を確認する。
八雲の上に圧し掛かっていたのは播磨だった。少し離れたところに自転車が倒れている。
「えーと、播磨先輩が、自転車でスピード出しすぎて、ブレーキが間に合わなくて、
吹っ飛んで、物凄い勢いでぶつかってきた、ということかな?」
冷静に状況を確認する。落ち着くとともに播磨も八雲もピクリとも動かないことに気付いた。
「ちょっと、大丈夫八雲!?播磨先輩、大丈夫ですか!?………だめ、完全に気絶してる。
私の体がクッションになってるから、頭は打ってないと思うんだけど……。」
確かに頭を打ちつけてはいない。そう、地面には。
「あ、こぶできてる。」
八雲の額には、見事にでっかいこぶができていた。うつ伏せの播磨をひっくり返すと、
同じくこぶができていた。相当強くぶつかったらしい。
通りすがった人が、道端に倒れている二人を見て、何事かとサラに訊ねる。
「ぶつかって頭を打ったみたいで。どうしよう、救急車呼んだほうがいいかなあ………?」
八雲は暗闇の中にいた。
見渡す限りの完全な闇。前も後ろもわからない。
「…………ここは何処だろう…確か、今日もサラと一緒に学校へ歩いて……」
そこから先が思い出せない。確かに学校に向かっていたのに。
とそこへ突然、目の前に白い影が現れる。
それは一人の女の子だった。見た目は10歳位のあどけない少女。
「お久しぶり、八雲。」
「あなたは…美術室の……?」
「そう、覚えていてくれたんだ。」
忘れるはずがない。
かつて美術室で出会った、いつまでも子供の姿のまま時を彷徨い続ける少女。
永遠に大人になる事が出来ず、八雲に、「異性を好きになること」の意味を問うた少女。
その答えは、八雲には未だ見つからない。
「ここは、何処なの?」
「ここは、あなたの意識の底。夢の中、とも言えるわね。」
「………何故、私をここに…?」
「私は、ただあなたの中に入り込んだだけ。あなたは頭をぶつけて意識を失って、
ここへ来たの。私がここへ来たのは、とても珍しいものが見られたから…。」
「珍しい……もの?」
状況が飲み込めず、鸚鵡返しに少女に訊ねる。
「人の肉体は魂を注がれた器…。その器から魂が零れるのは死に至るとき。
けれど、あなたとあの男の人は違った。あなた達は普通の人よりも薄皮1枚だけ
魂が外へ近いわ。その互いの魂の近さが、その器が入れ替わるということを
引き起こしたの。」
「……それは……どういう………?」
八雲が聞こうとしたとき、回りが白々と明るくなり始めた。
「そろそろ、肉体が目覚めようとしているわ…。何が起こったのか、その目で確かめなさい。」
そう言って微笑むと、ふわりとその体が宙を舞った。
「待、待って………!」
少女に追いすがろうと手を伸ばした時、八雲の周囲は眩い光に包まれた。
………も、………さ……て、…くも………
………………………?
視界がゆっくりと開けてゆく。
朝の日差しが差し込み眩む目を、数回瞬きをして光に慣れさせる。
「………ねえ八雲、起きて!あーどうしよう、やっぱり救急車呼ぼうかな……。」
サラの心配そうな声が聞こえる。彼女を安心させようと身を起こした。
別な方向を見ていたサラが気配に気付いてこちらに視線を向ける。
「あ、播磨先輩!意識が戻ったんですね!良かったぁ…。」
「え?」
サラ、何を…と続けようとして、自分の声が随分低いことに気付き、喉に手を伸ばした。
喉の真ん中あたりで、何かごつごつしたものが手に触れる。
「播磨先輩。八雲がまだ目を覚まさないんです……どうしよう……。」
サラが顔を下に向けたまま誰かを揺り動かしている。
視線を追ったその先には、眠るように意識を失っている「自分自身」の姿があった。
これはどういう事なのか?
目の前では自分が倒れていて、サラは自分の事を播磨と呼ぶ。
とりあえず自身の体に手をやって確認してみる。
黒いガクラン、筋肉で分厚い胸板、太い腕。そして傍に落ちている見慣れたサングラスに気付く。
それを拾い掛けてみると、吸い付くようにぴったりとフィットした。
どうやら本当に入れ替わってしまったらしい。あの女の子が言っていたのはこの事だったのか。
「播磨先輩も何か考えて下さい!元々は先輩がぶつかってきたんですよ!」
「え?あ、う…うん…ごめん……。」
サラの剣幕に思わず謝ってしまう。八雲(in播磨)のせいではないのだが。
その時、
「う……」
と倒れている八雲の体が身をよじる。
あの女の子の言葉が正しければ、今この体の中に入っているのは……
「い、痛ってー……クソッ、やっちまった…。」
八雲の体が身を起こす。サラはいつもとは違う八雲の言葉に若干違和感を覚えつつも、
「大丈夫?八雲?」
と肩を抱えて声を掛けた。
「ん?…あー…妹さんの友達じゃねーか。…と、待てよ。てことはもしかして妹さんにぶつかったのか!?」
「へ?何言ってるの八雲?」
サラがきょとんとして訊ねる。八雲の体はその言葉に全く意識を向けず、周りをキョロキョロと見回した。
そして、八雲(in播磨)に目が向いた時「…へ?」と間抜けな声を上げて硬直した。
「な、何で俺が目の前にいるんだ?ま、まさか幽体離脱!?」
「あ、あの…播磨さん…」
八雲が声を掛けると、座った体勢のまま播磨(in八雲)はずざざっ、と後退り、
「しゃ、しゃべった!?…って、さっきから声も変だな。」
と喉に手を当ててうつむいた時、自身の体を見て「な、なんじゃこりゃあ!?」と驚愕した。
動揺して両手で全身をペタペタと触り確認する。その手が胸を鷲掴みにして、
「うおっ!」
「あ…」
播磨(in八雲)はあわてて手を離す。八雲は羞恥で耳まで赤く染めた。
「じ、実物か…?これ…?…夢じゃねえのか…?」
播磨はそう言うと八雲に目を向けた。
「…え、えーと…もしかして…妹さん…か…?」
「……は、…はい…………。多分…………。」
八雲も自身なさげに答える。
「…えーと、二人とも何言ってるの?」
一人状況を理解できないサラが、わけがわからずに二人に声を掛けた。
「…つまり二人の話を統合すると、激突した拍子に二人の人格が入れ替わってしまったと、こういうこと?」
「ああ、そういうことだな、多分。」
「…うん。そうだと思う…。」
三人は今、学校に向かって歩いている。あんなところで座りっぱなしで話していても仕様がないからだ。
「…えーと、ドッキリ?」
「んなわきゃねーだろ。冗談でこんな事できるか!ってどこでそんな日本語覚えたんだよ?」
「部長に、ってぶつかったくらいで人格が入れ替わってたらそこら中入れ替わりばっかりじゃない!」
「現に今入れ替わってるんだから仕方ねーだろが。俺だって訳わかんねーんだからよ。」
「もう!駄目だよ八雲、そんな汚い言葉使っちゃ!」
「だから俺は播磨なんだって!」
サラと播磨が言い争っている中、八雲はこの異常事態について考えていた。
幽霊の女の子が言ったことが正しければ、これは自分の「他者の心を視る能力」と、
おそらくは播磨の「動物と心を通わせる能力」が引き起こした事だ。
この2つの能力は両方とも「心」に係るものだ。他者の心に近付く力。
他人より外に向いた心。それが直接ぶつかる事により、本来なら起こり得ない人格の交換を引き起こした………。
「しっかし、何だってこんな事になったんだか…。妹さん、何か心当たりねーか?」
「え?」
心当たりはある。しかし、それは誰にも、大切な姉にさえ言っていない秘密だった。
「…いえ、私にも…わかりません…。」
そう言って、八雲は黙るしかなかった。
とか言っているうちに、三人は校門の前に辿りつく。
「着いちまったか…、仕方ねえ。とりあえず俺は妹さんのクラスに行くから、妹さんは俺のクラスに行ってくれ。」
「あ、はい。でも、授業とかは…?」
「ああ、寝てりゃオッケーだよ。どうせ普段から聞いてねーから。」
そう言ってから播磨は、
「すまねえな妹さん。俺の不注意でこんな事になっちまって…。」
と神妙になって謝った。
「いえ…。」
「あ、妹さん。そうだ、今日は日直だから。お姉さんを手伝ってやってくれ。それじゃあな。」
そう言って、播磨は自転車を引いて駐輪場に向かう。
サラは八雲に向き直り、
「それでは失礼します、えーと、播磨先輩。」
未だに信じていない様子で挨拶をして、播磨の後について行った。
八雲はそれにどう応えるか迷い、結局軽く手を上げるだけで応えた。
そして一人で玄関へと向かっていった。
188 :
アモル:05/06/20 03:01 ID:eERD6tiY
今回はここまで。
近いうちに中編を投下します。
何とか今月中に完成させたい・・・。
190 :
Classical名無しさん:05/06/20 06:02 ID:Jw9bRbsg
読みやすいのでイメージしやすい
中編以降期待してる、ゼ
>>188 気張らずに楽しく書いてくださいな。
楽しみにしています。
9巻買って読むと、播磨に理不尽に迫害される吉田山が不憫でならない。
SSで 播磨を撃破し、沢近のハートを射止める吉田山のサクセスストーリー
を書きたくなった。
ショートなんでまぁ暇つぶしになればなぁと思ってます。
暇つぶし程度に読んでもらえれば幸いです。
___日常生活の一部となった屋上の出来事____
「あの…、播磨さん…」
八雲は、いつものように、播磨の漫画を読み意見を聞かせていた。
「ん?どうだ?妹さん、きたんの無い意見を聞かせてくれ」
「播磨さんは、漫画を描いてきて、とても上手になってきてると思います…でも…」
なにやら、この先の言葉を出すのに困ってる様子である。
「妹さん、遠慮することはねぇよ。妹さんがいてこそ、俺の漫画があるんだ、
どんなことでも、気になったら忠告してくれよ。」
そう、八雲のアドバイスがあったからこそ、彼は入賞できたのだ。
「あの…播磨さんの作品を見てきて、ある男の子と、悪役の男の子、ヒロインの女の子
たちのやりとりがいつも同じ気がして…今回の作品は恋愛物ですから、今度は、人と恋愛の感情を
増やしてみたらどうですか?例えば…この一途な男の子を思う別の女の子があらわれたり………」
なにやら私情(?)が入っていないとも言い切れなく、八雲は少しだけ顔を赤らめた。
「でもよ、こいつは一途な性格だからなぁ…それに、わがままだと言われてるから、現実でもこんな男
を好きになるやつなんかいないんじゃないんか?(想い人の天満ちゃん以外はな。)」
(それに、俺は天満ちゃん一筋だぜ!!他人の好意に揺るぐような、ヘナチョコ精神の漢なんざ漢じゃねぇ)
とまぁ、貴重な意見を渋ってみたりする。こちらも私情あり(?)
八雲も負けずに。
「でも、播磨さんの作品は、もっと多様な設定で成長すると思います。これができれば、
播磨さんの恋愛描写が上手くなると…私は、恋愛とか…よく分かりませんが、やっぱり、
恋愛にもいろんな形があると思います。」
とまぁ頑張って語ったりみたりと…
(今日の妹さん熱がこもってるなぁ…言いたいことは伝わるんだが…)
「でもよ、妹さん。俺は正直、恋愛とかほとんどわからねぇんだ…だから、俺には無理なんじゃないかと…」
「播磨さん…その………好きです…」
いきなり、八雲は播磨に近づき、自分の腕を播磨の背中にまわし、抱きしめた。
そして、上目遣い。
「い、いいい、い、妹さん?」
(いくらなんでも、ヤバイだろ…心臓がヤベェ…妹さん、ちょっと目が潤んでるし、可愛いなぁって、
なに考えてるんだ俺は!抱きしめられて…気がどうにかなっちまいそうだ。天満ちゃん助けて…)
動揺しまくり、だが動くになんだか動けない状況。
「播磨さん…好きです…ずっと…」
顔を近づける…気のせいだろうか、播磨からもちょっと近づいてるよーな感じも。
(どうしよう、播磨さんとキス…やっぱり、播磨さん困るかな…)
背中にまわした腕を放し、一歩、後ろに退く。
「あの…播磨さん、これで、少しは恋愛物も上手く描けますか?」
(なるほど、そうゆうことか。俺の漫画のためにこんな演技まで…流石、天満ちゃんの妹だぜ。
天満ちゃんありがとう!愛してるぜ)
とか心に思いつつ、
「そーゆーことか、妹さん。演技派だからビックリしたぜ!!なんだか少し、上手くかけそうな
気がするな。ありがとうな、妹さん。妹さんの今回のアドバイスを頭に入れて、今日描き直してみる。
また、終わったら見てくれねーか?」
「はい…その…播磨さんの漫画が良くなるために私も頑張って手伝いますから…」
「すまねぇな、妹さん。本当に迷惑かける…それじゃ今日はこれくらいで」
数日後
「どうだ、妹さん?人を増やして、色んな人間関係をつくってみたんだが…」
播磨に渡された漫画に目を通す。恋愛関係のことではないが、八雲似の女の子もいた。
(私も、そのうち、播磨さんの気になる人として描かれる時が来るのかな…
もっと、私も播磨さんに近づいてみよう…)
「あの、播磨さん、このキスシーンの描写が…」
微妙な感じで終わる。
もう飽きたなこのぱたーんは。
何故か花井似のキャラとくっ付けられててプチ切れってのも有りだ。
「天満ちゃん、好きだ」
「ごめんなさい」
END
全英が泣いた
最近のここの住人のやり取りを見ていると、クロ高を連想してしまうのは俺だけか?
俺はここで叩きじみたことはやったことがないと思う。
でも、今日はあえて言う。 tatujiっていうやつ、相当うざくない?
何様のつもりかと問い詰めたい。
>>200 確かに斬新だな、そこまで考えてなかった。
チャレンジしてみる価値はあると思います。
>>205 文句があるなら自分で書けよって言いたくなるよなあの屑。
マジで良作が汚されたよあんなDQNのせいで。
208 :
205:05/06/22 17:07 ID:bLBtjrvo
>>207 ごめん。賛同してくれて嬉しいけど、正直支援スレの方と間違えて誤爆した。
あいつの話するなら、せめて向こうで。
ここのみんなには迷惑かけてごめん。
>>205 詳しく。
一応探してみたけど、ブラックレガシィ氏への感想しか見つからなかった。
他にも誰かにレスしてるの?
>>208 支援スレでもスレ違いだけどな
ああ、あそこヲチスレになったんだっけ?
なあ、分校のフラッシュの「New Day」っていう奴で歌われてるのってんだ。
誰かアーティスト名とか教えて。
213 :
Classical名無しさん:05/06/24 13:44 ID:9lJQ1Z2g
公式でキャラ人気投票ってやったことあったっけ?
主要人物が 全くでないモブオンリー(永山とか)
書いたけど投稿して良いですか。 下手ですけど
全然OK
216 :
それはきっと穏やかな日常 1:05/06/24 22:25 ID:5pFd.2FU
今日は中間の再再試日 何とか再々試無しで乗り切ったアタシは、のんびりとビデオを見ながら
美奈の来るのを待っていた。 9時40分 予定より10分ぐらい遅れて 美奈が 永山さんを連れて遣って来た。
話を聞いてみると、前からこのテスト休みに田中君と遊びに行く計画を立ててたが、田中君が今日の再再試に引っかかり
デート(と言うと そこまででは無いよぉ と真っ赤になって否定された)がオジャンになって繁華街をぶらぶらしている所を
美奈に偶然会ってそのまま付いて来たらしい。偶に委員長とかとお弁当メンバーで一緒しているけど
そこまで会話した事が無かったので 少し緊張してたみたいだが 10分ぐらい話をしてみると緊張もほぐれたらしい
やっぱり 美奈や永山さん(朱鷺で良いよって言ってたが何と無く呼びにくい)みたいな良いとこのお嬢さんタイプは良いなーー
好きで一寸軽く見られる格好をしてるけど、お嬢さんぽいスタイルにも憧れる (まっ 似合わないんだけどね 私には)
ジュースとお茶菓子を持って部屋に戻りながらそんな事を考えた。2人は部屋にあった漫画と小説を熱心に見ていて私に気がつかない。
(美奈好きだね ぁーぁー 永山さん 顔真っ赤にしながら読んでるし)
お待たせ。 声をかけると 永山さんは パタム と 勢い良く本を閉じる。
「気に入ったら貸すよ 永山さん」 ニッコリと少し意地悪そうに言う。
「えぇ ぇっと ぅ うん 帰る時に 借りるかも 」消え入りそうな声が返ってきた。 (ほんと 可愛い)
「でもこう言うのって有るんだねー。 私 花と夢みたいのしか読んだ事無いから吃驚しちゃった かな.」
「冴はねー 今朱鷺が読んでるみたいな書けるんだよ 学園祭の時シナリオ募集に出したの 面白かったし。」本から目を離さず美奈が言う。
「えっ えっ えっーー 凄いね」 (文章を書いてるの事実だけど、美奈 あなた 永山さんが今読んでるのハードなやつなのに
一寸無責任じゃないの)
217 :
それはきっと穏やかな日常2:05/06/24 22:27 ID:5pFd.2FU
仕方なく 学園祭向けに書いた文章等をまとめたファイルを引き出しから出して渡す。登場人物が
クラスメートって事も有るが、どちらかと言うと小ネタをちりばめたとはいえコントに近いものばかり.
一番過激のでも 播磨君と花井君のHッぽいジョーク話 見られて困る物は無いはずだ。
ファイルを渡す時 B4用紙が 4枚ファイルから零れ落ちた。 (あっ あれは 駄目−−) シナリオ書きをした時
はまっていた漫画をベースに 悪乗りをして一番時間をかけて書いたものの、趣味性爆発 とても募集に出せる内容ではなかった だから
無かった事にしようとファイリングせず剥き出しにしていたのだ
「あっ 之読んでない 」 私が回収をしようとするよりも早く 外見からは想像もつかないぐらい俊敏に美奈が
原稿を奪う。 「 駄目っ 美奈 」 必死に 取り返そうとするも
「冴 表現者はね、自分の吐き出した表現に責任を持たなきゃいけないの 他人に見られたく無いって 駄々を捏ねるのは
露出して自慰行為してるのに 見られたく無いって言ってるのと同じよ」っと何処かの編集漫画に出てきそうな凄い
言葉で撒かれそのまま持ってかれた。
218 :
それはきっと穏やかな日常3:05/06/24 22:27 ID:5pFd.2FU
10分後
じゃあ借りるね 貸した大型トートをパンパンにして永山さんは去ってゆく。
一方美奈は と言うと 私にさっきの文章を修正させながら
自分は私のベッドで本の続きを読んでいる。
「リテイク もっと読者が情景を思い浮かべれるように」
「リテイク もっと… …」 「リテイク」
何度書き直したことだろう 時計を見ようとした時
「ただいまー あれー 雪野さん着てたんだ」 追試に行ってた妹が帰って来て嬉しそうに言った。妹は美奈に懐いている。
時計を見た 12時5分 2時間近く休憩無しで書きっぱなし 苛々も溜まってくる。 そんな事をお構い無しに
「お帰りー 再試?」 「はい あたしバカだし そうだ雪野さん、2時半から友達と映画見に行くんですけどそれまで勉強見てもらえません?
月曜の追試やばいんですよー これ落とすとカト-五月蝿いんで お願いします 。 」 「他ならぬ冴の可愛い妹さんのお願いだからいいよ」
「嘘でも私のお願いだから って言いませんそういう場合?」 「そうかもね。」 「ラッキー。」
のんきそうに2人して部屋から出てゆく。 はぁ やっと一息つけそう。 そう思ったその時
引き戸が不意に開けられる。 冴 後でチェックするからサボっちゃ駄目よ。 笑みを受かべた悪魔がそこにはいた。
2時間後
「おね-チャン 行ってきまーす。」 「冴、私も疲れたから帰るねー。書いたの明日読ませてもらうから バイバーイ」
嵐は去っていった。 だけれど 疲れ果てて何もする気が起きず アタシの貴重な休日はそれで終わった。
219 :
オマケ:05/06/24 22:28 ID:5pFd.2FU
おまけ)
「永山 ゴメンな 再試で。 」 「全然気にしてないから 気にしなくて良いよ 」
「(気にして欲しいんだけど)_| ̄|○ あのさ 次いつ 」 「じゃあ 今読書の途中だから またねー」 がちゃ。
再再試の流れで西本 三沢と男3人のカラオケ。 トイレと 抜け出しての電話
「 空回りですか? 俺 」(頑張れ 俺 ) 気合を入れなおし持ち直したと思っていたのだが部屋に戻って直ぐ
「田中 何かしらんが頑張れ 」 「家で良いもの貸すから 気を取り直すダス。」 優しい言葉に泣けてくる。
(おまいら 優しいな 俺一人抜け駆けで彼女作ろうとしてたのに)
「まあ裏切り者になってたら 容赦はしなかったんだけどな」 「ドサクサはいかんダスよ ドサクサは」
(なぁ な なんで 知っ…) 言葉に 詰まる。 「あのサバゲービデオに撮られてたの知らなかったダスか?」
「因みにクラスメートの殆どが知ってるぜ。 だから これからお前は 男子で遊びに行く時 強制で参加な」
くそーーヤッパリお前等 鬼だー 抜け駆けしようとした奴が何言うんだ 卑怯なのはお前ダス
今日の夕食お前の奢りな 茉莉飯店のチャーシュー麺大盛りがいいダス。 フザケンナー
こうして楽しい初デートの予定は 野郎相手のカラオケ代、5杯のラーメン代を浪費しただけに終わった。
今の俺の気持ち→⊂⌒~⊃。Д。)⊃
稲葉冴子でキタか。
滅茶苦茶だな…
何かの暗号か?
これって、雪野と冴は腐女子って事ですか?
後、雪野と冴の仲が良いのが不思議な感じ。
まぁ、実は小学生以来の友人で、冴がギャル系(死語か?)になっちゃったので学校ではあまり話しをしないが、
プライベートでは仲良しという脳内設定で読ませて頂きました。
(;´Д`)田中×永山ハァハァ
>216
改行に気を使え。
読みにくいったら、ありゃしねェ……
改行と句点読点
改行等はともかく、モブの話は珍しいしモブ好きとしては嬉しかった
227 :
アモル:05/06/25 18:36 ID:VM2.pTwc
駐輪場に着いてから、播磨(in八雲)は八雲から鍵をもらい忘れた事に気付いた。
「しまった…。そこまで気が周らなかったぜ。…まあ仕方ねえか、一日くらい大丈夫だろ。」
自転車を固定して、サラと連れ立って玄関に向かう。
歩きながら、播磨は今日有り得るはずだった天満との至福の時間を思い浮かべた(というか妄想)。
以下妄想。
「播磨君、荷物運ぶの手伝って。」
「おう、任せとけ塚本!」
いっぺんに全ての荷物を抱え上げる播磨。
「わあー、播磨君って力強いねー!」
「なぁに、軽い軽い。」
「…私、逞しい男の人って、好き…。」
「塚本、いや天満!俺がこの力でお前を一生守ってやるぜ!」
「播磨君…。素敵…。」
妄想終了。
(天満ちゃんと日直、楽しかっただろうなあ……。)
深い悲しみに沈み、播磨は一筋の涙を零した。それは美しい光景だった、端から見ればだが。
「八雲、八雲ってば!」
「…あ?ああ、俺のことか。」
「俺のことかじゃないよ!どうしたの?考え事してると思ったら急に涙なんて流して…。」
「へっ、何でもねーよ。目にゴミが入っただけさ。」
そう言ってずずっ、と鼻を啜る八雲の姿をした播磨。
「や、やめてよ八雲!いくら真似でも下品すぎるよ!」
「だから、俺は播磨だって!いい加減信じろよ!」
何とかサラを納得させようと説明をしながら歩いてゆき、玄関の前まで辿り着いた。
とその時、
「八雲くーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!」
「あん?」
耳慣れた大声が響き、播磨は眉をひそめた。
校門の方向から爆走してくる一人の男。2-Cが誇る八雲バカ一代、花井春樹である。
それはいつも矢神高の生徒達が見かける朝の風景に思われた。
やたらと押しの強い花井に対して、困惑の表情を浮かべ八雲が応対する。
しかしこの日はいつもと違っていた。八雲が花井に向かって一歩踏み出したのだ。
おおっ、と周りの生徒が目を瞠る。そして花井は、
「や、八雲君……!ついに…ついに僕の思いを受け入れてくれるのかーーーーーっ!!!」
歓喜の雄叫びを上げて八雲に向かって両手を広げて突っ込んだ。
播磨(in八雲)は右手に持った鞄から手を離し、ゆっくりと前に進む。
二人がまさに抱き合おう(としているように周りには見えた)とした時、それは起こった。
播磨(in八雲)が閃光の如き右ストレートをノーモーションから放つ。
その一撃は全くそんな事を予想せずに踏み込んだ花井の顎をカウンターで正確に打ち抜き、
脳を左右に揺らし、脳震盪を引き起こした。
播磨の目前で花井が膝から崩れ落ちる。続けざまに播磨が左のアッパーカットを放ち、花井の顎をかち上げる。
今度は脳を縦に揺らされ、花井の意識はここで完全に消失した。
アッパーで無理矢理立たされた花井に、駄目押しのように播磨が右のハイキックを叩きつけた。
そして花井は、直前の記憶すらも掻き消されて、大の字になって失神した。
その間、僅か2秒。
「や、八雲…?」
一瞬の間に目の前で起きた惨劇に、サラも、周りで見ていたギャラリーも完全に硬直していた。
当の播磨は、倒れている花井に一瞥をくれただけで、
「…チッ、朝っぱらからウゼえメガネだぜ。」
と捨て台詞を吐いて、周りの視線には全く気付きもせずに玄関へ歩き出した。
さて、玄関のドアを開けようとした時、手に走る鈍い痛みに播磨は顔をしかめた。
手を見てみると、花井を殴った部分にアザが出来ていた。それを見て、播磨の顔がサーッと青ざめる。
「し、しまった……!妹さんの…妹さんのカラダをキズモノにっ…!」
播磨はぐるりと振り向くと、未だ伸びている花井に向かって走っていき、
「メェガァネエェーーーッ!テメエのせいでキズモンになっちまったじゃねーかよ!!」
八つ当たり気味にゲシゲシと蹴りつける。
「や、八雲……播磨先輩、もうその位で……!」
サラが必死になって播磨を羽交い絞めにして押し留める。
「はーっ、はーっ…って、何だ、ようやく俺の話を信じてくれたのか?」
「信じますよ、もう…。いくら芝居でも八雲はこんな事するわけない、というか出来るわけありません…。」
「そうか、やっと信じてくれたか。おし、メガネの犠牲も無駄じゃなかったな。」
「自分でやっといて人事みたいに言わないで下さい!もう…八雲の悪い噂が広がったらどうしてくれるんですか!」
「う…た、確かに…。出来るだけ派手に立ち回らねーようにしねーとな。ボロが出ちまう。」
「もう…もう…手遅れです…。」
これからどんな事が起こるかを考えると、サラは涙を押さえることが出来なかった…。
支援。
所変わって、八雲(in播磨)は2-Cの前に来ていた。
以前にも天満の忘れ物を届けるために何度か来た事はあるが、今日はいつもとは違う緊張感がある。
(落ち着いて……不自然に思われないようにしないと……。)
一つ深呼吸をしてから、意を決して教室のドアを開ける。
「あら、おはようヒゲ。」
「オース、播磨。今日は早いな。」
先に教室に来ていた愛理と美琴が八雲に声をかける。
「あ、おはようございます、沢近せ、さん、周防さん。」
八雲は当り障りのない返事をしたつもりだったが、愛理は薄気味悪そうに顔を歪めた。
周防も何か変な物でも見たかのような顔をする。
「な、何だよ、急に敬語なんか使って。」
「気持ち悪いわね、何か悪いものでも食べたの?」
「い、いえ、別に。」
(普通に挨拶しただけなのに…。ええと、普段の播磨さんの喋り方は…。)
そもそも八雲の話し方と播磨の話し方は全然違うのだ。八雲は必死で思い出そうとする。
「え、えーと…な、なんでもねー、よ?」
「何で疑問形なのよ…?…まあいいわ。」
そう言うと愛理は会話を切り上げ、美琴とお喋りに戻った。
(気をつけないと。でも難しそう…。)
取り敢えず敬語を抑えて話そう、そう決めてから授業の準備をする。
1時限目は物理らしい。しかし鞄を探しても教科書は見つからなかった。
机の中を調べてみると、他の教科書やノートと一緒に入りっぱなしになっていた。
だが、教科書を出したはいいが、自分がやっているものより高度なうえ、そもそも今やっている所が分からない。
八雲は予習はあきらめて教科書、ノートの準備だけをした。
そのとき、教室のドアが勢いよく開け放たれ、
「た、大変よみんな!」
嵯峨野が血相を変えて大声で皆に呼びかける。
「ん、どうした嵯峨野?血相変えて。」
「そ、それが、花井君が失神して保健室に運ばれたって…!」
「な、何ィ!?」
今度は美琴が大声を上げる番だった。
「ど、どういうことだ、急病か何かか?昨日道場じゃ元気満々だったぞ!?」
「い、いやーそれがしこたま殴られたらしくて…」
「な、殴られた?ウチの学校で花井を気絶させられる奴なんて何人もいないだろ。」
「えーとそれが、聞いた話によると…」
嵯峨野が説明しようとして、そこで言いよどむ。
「何があったんだ?」
美琴が話の続きを催促する。嵯峨野は少しの間迷っていたが、やがて覚悟を決めて話し始めた。
「それが…、塚本さんの妹の八雲ちゃんにやられたんだって…。」
「………は?」
自信無さげに言う嵯峨野の言葉に、美琴は完全に思考停止した。
そして同じく、それを聞いた八雲も硬直もまた固まった。
「…八雲が?」
何時の間にか教室に来ていた晶が、混乱している美琴の代わりに嵯峨野に訊ねる。
「うん。何かいつも通りに花井君が八雲ちゃんに向かってダッシュしていったら、
八雲ちゃんが物凄い反撃をして花井君がボコボコにされたって…。」
「………にわかには信じがたい話ね。」
流石の晶も半信半疑の様相である。
しかし八雲は、今自分の体の中に入っている人物が、それをすることが出来る人間であることを知っていた。
(ま、まさか…)
確認するために播磨に連絡しようと、携帯電話を取り出そうとした時、
「…磨君。…播磨君?」
晶が自分の事を呼んでいることに気付き、あわてて向き直る。
「は…はい、な…何でしょう?」
「…播磨君、何か心当たりはある?」
「い、いえ、何にも…。」
晶は暫く八雲の目をサングラス越しに覗き込んでいたが、
「……そう。」
それ以上は聞かずに自分の席に戻っていった。
八雲はほっ、と胸を撫で下ろし、あらためて携帯電話を取り出した。
Eメールアドレスを呼び出した時、登録されている「妹さん」の文字に、ふっ、と頬を緩ませる。
しかしすぐにそれを引っ込めると、播磨に確認のメールを送った。
「ん?何だ、「三匹が斬られる」のテーマじゃねーか。」
その音楽が鞄の中から響いてくることに気付き、
「ああ、妹さんの携帯か。渋い着メロだな。」
取り出して内容を確認すると、[FROM : 播磨さん]となっている。
一瞬わけがわからなかったが、「ああ、俺の携帯からか。」と気付き、本文に目を通す。
[花井先輩が保健室に運ばれたそうですが、何があったんですか?]
「ありゃ、もう伝わってるのか。」
「どうしたんですか、はり…八雲?」
教室ということもあって、サラは呼び方をいつも通りに直して訊ねた。
「いや、メガネをぶっ飛ばしたのがもう知られたみたいだ。まあ同じクラスだしな。」
「やっぱり…、玄関前であんな事するから…。」
よく見ると、周りの視線も何か雰囲気がおかしい。
こちらを盗み見て何かヒソヒソと喋っている。何か言ってやりたいが、自分で蒔いた種なので我慢した。
その時、稲葉が八雲に話しかけてきた。
「ねえねえ塚本さん、今朝花井先輩をKOしたって本当?」
「え?あ、いやー、あれは何かその、物のはずみで。オホホホホ。」
一応播磨は播磨なりに言葉に気をつけて喋っているのだが、稲葉は当たり前だが不思議そうな顔をした。
サラが慌てて播磨の肩を掴んで振り向かせ、小声で怒鳴りつけるという器用な真似をする。
『先輩、怪しすぎます!もう少し気をつけて喋ってください!』
『気をつけろったって、俺は女の喋り方なんて出来ねーよ!』
『八雲はホホホなんて笑い方しません!せめておとなしめに、口数も少なく!』
「…二人ともどうしたの?」
「「…な、なんでもない。」」
取り敢えず稲葉を強引に席に戻らせて、播磨は八雲にメールの返信をした。
2-Cにて
携帯が「プロジェクトX」のテーマを奏でる。
八雲は返信のメールに目を通した。そしてその内容にがっくりと肩を落とす。
[スマン。突っ込んできたんではずみで殴り倒しちまった。]
(…播磨さん……。)
どうやらこの話は本当だったようだ。八雲は心の中で花井に陳謝した。
「…あー、あたし保健室行って様子見てくるよ。」
美琴がそう言って教室を出て行った。
(私も、後で見舞いに行こう…。)
そう思った時に、教室に谷先生が入ってきた。
八雲は携帯をマナーモードにして仕舞い、正面に顔を向けた。
波乱に満ちた1日が、始まった。
2-Cの1時間目は刑部先生の物理の授業だった。
問題や説明が高度で理解し難いが、板書だけでもきちんとしようと、八雲は真剣に黒板に向かう。
しかし、授業時間が半分も進まぬうちに、強烈な睡魔が八雲を襲った。
(そんな……起きてないと………いけない…………のに……………)
しかしそれに抗うことは敵わず、八雲は深い眠りへと沈んでいった。
絃子は不機嫌だった。その理由は机に突っ伏している一人の男が原因である。
珍しく播磨が真面目に板書しているのを見て、きちんと反省しているなと半ば感心していたのだ。
それが30分も持たずに撃沈してしまったのだ。
(拳児君…、一瞬でも君に期待した私が馬鹿だったよ。)
家に帰ってからどんな目にあわせてやろうかと思っていたが、眠りこけている播磨(実は八雲)の姿が嫌でも目に入り、だんだん苛立ちが抑えられなくなってくる。
予定変更、今すぐ制裁を実行する。絃子は手ごろなチョークを掴むと、弾丸の如き速度で投げはなった。
それは八雲(in播磨)の頭に直撃し、髪の毛を真っ白に染める、はずだった。
だがそれが命中する寸前、八雲の右手が上がり、人差し指と中指の間で掴み取ったのだ、無論顔は突っ伏したままで。
(な…?)
しかし絃子が驚きの声を洩らす前に、更なる驚愕が絃子を襲った。
八雲が掴み取ったチョークを手首の返しだけで投げ返したのだ。
それは絃子が放ったものに勝るとも劣らぬ速度で絃子の顔めがけて飛来する。
「くっ!」
命中する直前、かろうじて絃子はそれを掴み取った。
一連の出来事に、教室全体からどよめきが起こる。
絃子は呆けた表情を浮かべていたが、すぐに我に返り、未だに顔を伏せている八雲を睨みつけた。
(中々味な真似をしてくれるじゃないか、拳児君。)
「播磨君、起きているのなら顔を上げて授業を受けるんだ。」
そして、感情を殺した声で八雲に呼びかける。
それでもピクリとも動かない八雲に業を煮やし、絃子は八雲の席の前まで歩いていった。
すぐそばに立っていても顔を上げる気配はない。呼吸も安定している。
どう見ても完全に眠っている。しかし今の絃子にはそれも芝居としか思えなかった。
絃子は手に持った物理の教科書を、躊躇い無く角から振り下ろした。
だが、振り下ろされるその腕の手首を、顔を伏せたまま八雲は掴み取り、
「え…?」
その勢いを利用して投げ飛ばした。絃子の視界がぐるりと一回転する。
そして絃子の体は綺麗に机の机の間に転がされた。この狭さで机にぶつけられないのは驚嘆すべきコントロールである。
ざわめいていた生徒達は、この光景に逆に静まり返った。
きーんこーんかーんこーん………
その時、終了を告げるチャイムが鳴った。
絃子は立ち上がると、
「……本日の授業は終了する…。」
そう一言だけ言って教室から出て行った。
(拳児君、覚えておきたまえ……!)
その心の内に烈火の如き怒りを秘めて。
1-Dの授業は現代文だった。播磨もまた、珍しく真剣に黒板へ向かっていた。
(妹さんには迷惑かけたからな、せめてノート位はちゃんと取らねえと。)
しかし結局眠りこけてしまった。もっとも、こちらはただの居眠りだが。
そして、
「はっ!?」
「あ、起きました播磨先輩?」
「あ、あれ、妹さんの友達、授業は?」
「1時間目は終わりましたよ。今は休み時間です。」
「な、何だって!?しまった…。真面目に授業受けるつもりだったのに、このままでは妹さんの評判が…」
「大丈夫ですよ。八雲の居眠りはいつものことですから。」
そう言ってから、サラは小声で注意した。
『それよりも私を呼ぶのに「妹さんの友達」は変ですからやめて下さい。サラでいいです。
第一何でそんな長い呼び方するんですか?』
「いや、すまねえ。最初にそのイメージで覚えちまってな。
しかしこれ以上妹さんに恥はかかせられねえ。サラちゃん、次の授業は?」
今までが何だったかというようにあっさりの呼び方を変える播磨。
「次の時間は体育です。みんなもう移動開始してますよ。」
「体育か。少なくとも居眠りの心配はねえな。よし、行くか!」
気合を入れなおして、サラと二人で更衣室に向かった。
「妹さんは体育は得意なのか?」
「得意も何も学年トップクラスですよ。彼氏ならそれぐらい知っていないと。」
「いや、それはだから違うんだって…。」
話しながら何も考えずに更衣室のドアを開けて入り、中の光景を見て180度ターンして
更衣室を出た。
「はーっ、はーっ……じょ、女子更衣室じゃねーかよ…。」
「どうしたんですか播磨先輩?」
慌てて飛び出した播磨を追って更衣室から出てきたサラが播磨に訊ねた。
しかし、「あ…」とすぐその理由に気がついて、今現在とんでもない状況になっていることを理解した。
男の播磨が、女の八雲の着替えをしなければならないのだ。
「ど、どうすりゃいいんだサラちゃん!?」
「ど、どうしましょう……着替えは女子トイレでするとしても……」
問題は着替える場所ではなく着替えることそのもの。
言ってしまえば播磨が八雲を脱がす、そういうことだ。
「あの、つかぬ事をお伺いしますが……。」
サラが顔を真っ赤にして、それでいて興味有りげに訊ねる。
「な、何だよ?」
「播磨先輩は…八雲の…その……は…裸を見たことありますか?」
「ぶっ!?バッ、バカヤロー!ンなことあるわけねーだろ!」
「な…無いんですか…?」
「ねえよ!だから何遍も言っているけど妹さんとの事は誤解だ!」
しかしサラは播磨の後半の言葉を全く無視して話を続ける。
「なら…勝手に見たら…、八雲怒りますよね…?」
「当たりめーだろ。…クソッ…どうすれば……」
播磨は暫く考え込んでいたが、
「仕方ねえ…、サラちゃん、俺は目ェ瞑ってっから、あんたが着替えさせてくれ。」
「ええぇっ!?」
「他に方法がねーんだ。サボるわけにゃいかねーしそもそも俺一人じゃ制服の脱ぎ方も着方もわからん。」
「そ、そっか…、も、もうそれしか無いですね。」
サラと播磨は覚悟を決めて、更衣室へと向かった。
少し遅れて、サラと播磨は体育の授業に参加した。
結局女子トイレで着替えたのだが、播磨が女子トイレへの一歩を踏み出すのと、
着せ替え人形のような着替えに時間を食ってしまったのだ。
しかし結局播磨は最後まで薄目も開けることはなかった。一途さか、それとも強い克己心の為せるわざか。
「…あー、緊張したぜ。」
「…なんか、いけないことをしているような気分になりました……。」
服を脱がせたサラが頬を薄く染める。
「いけないことだろ。全く、変態だぜこれじゃあ…。(天満ちゃんに合わす顔がねえ…。)」
「ひ、ひどい!手伝ったのに変態呼ばわりなんて…。」
「い、いや、サラちゃんの事じゃなくてだな…」
「おまえら、無駄話してないでさっさと準備しろ!」
「「は、はーーーい。」」
今日の体育は100m走である。
「必ず勝つ、妹さんの名誉のために!ところで前回計った時は何位だったんだ?」
「2位でしたよ。陸上部の期待の星に負けたんです。」
「そうか、じゃあそいつに勝てばいいんだな?」
播磨の順番が回ってきた。タイム別にまとめているため、その陸上部の子と播磨は同じ組だった。
(おあつらえ向きだぜ。やっぱ直接戦りあった方が気合が乗るからな。)
スタート位置につく。他の生徒達も体育教師も固唾を飲んで見守っている。
それもそのはず、これほどまでに気迫を漲らせた八雲(中身は播磨)を見るのは皆初めてだったからだ。
「位置について………用意………」
パァン!
全員一斉にスタートした。
その中から、一気に飛び出して他の選手を置き去りにする二人の選手がいる。八雲と陸上部の子だ。
ふたりのスピードは全くの互角だった。
(クッ…、コイツ…マジで速ェ…ッ…。)
二人は完全に併走したまま、いよいよゴール前まで迫ってきた。
(負けるかっ!神よ、この俺に奇跡をっ!!)
「ウオオオオォォォォーーーーーーーーーー!!!」
そのまま同着かと思われたゴール直前、播磨が限界かと思える速度からさらに加速する。
そして身体1つ分だけ前に出て、播磨が一着でゴールインした。
「す、すごいわ塚本さん!」
「あんなに速く走れるなんて、やっぱり陸上部入った方がいいんじゃない?」
周りの人間が口々に賞賛の声を上げる。
そして陸上部の子は、信じられない物を見るような目で播磨を見つめていた。
本来、八雲は他人を押しのけてまで何かをしようとは思わない人間である。
そのため、この手の勝負事では、せいぜい持てる力の99%しか発揮できない。
しかし、絶対に勝とうとした播磨の凄まじい気迫が、八雲の潜在能力を限界まで引き出したのだ。
「凄いよ八雲!…って今は播磨先輩なんだっけ。」
「おう、勝ったぞ。いやーギリギリだったぜ。」
呼吸を整えながら、笑顔でサラに応える。
「でも本当に凄いですよ、前回は負けたのに。もしかして八雲よりその身体をうまく使えるんじゃあ…?」
「んなことはねーよ。大方妹さんは前回そこまで調子良くなかったんだろ。」
「そうかなぁ…?」
どうにか八雲の面子を保てたことに播磨は安堵していた。
しかしその後、陸上部に必死に勧誘され、断るのに大いに難儀することになった。
きーんこーんかーんこーん………
「ん………。」
八雲は目を覚ました。
あわてて時間を確認する。丁度2時間目の休み時間に入ったところだった。
(身体が変わったのに…。)
いつでも寝てしまう癖は抜けないらしい。
取り敢えず時間割を確認して、次の授業の準備をする。
しかし、どうも周りの自分を見る目がおかしい。
(…?ずっと居眠りしていたからかな…?)
そう思った時、隣からとても聞きなれた声で呼びかけられた。
「播磨君、起きた?」
「え?う、うん。」
姉の天満だった。天満は難しそうな顔をして話を続ける。
「大変だったんだよー、播磨君が寝てる間。」
「え、えーと、何かあった?」
出来るだけ、言葉使いに気をつけて問い返す。
「それがね、播磨君寝惚けて刑部先生を投げ飛ばしちゃったの。」
「え、えぇっ?」
いきなりとんでもない事実を教えられ、八雲は驚愕した。
詳しく話を聞くと、居眠りを注意しようと刑部先生が投げつけたチョークをキャッチして投げ返し、
さらに叩き起こそうとした刑部先生を床に転がしたというのだ。
八雲は全く記憶に無かったが、羞恥で顔から火が出そうなほど恥ずかしかった。
「おまけに播磨君は今まで寝っぱなしだし。一時間目は私が黒板消したんだから次は播磨君がお願いね!」
「う、うん…、ごめん、姉さん。」
刑部先生の事に気を取られていたため、八雲はついいつも通りに応えてしまった。
「へ…?」
天満はキョトン、とした表情を浮かべたが、すぐににへらーっとした表情を浮かべた。
「やだー播磨君!流石にまだその呼び方は早いよーっ!」
「あ…!」
八雲は今自分の大失言に気付き、慌てて弁明しようとする。
「あ、あの…これは…違…」
「またまた照れちゃってー。もう播磨君の中では私は「お姉さん」なんだね!」
ある意味で核心をついた台詞である。八雲は必死で言い繕うが、今の天満には全く通用するはずがなかった。
結局、「八雲のこと、末永く宜しくねー!」となってしまい、八雲は諦めて黒板を消しに行った。
ふと視線を感じ、そちらの方に目を向けると、愛理が厳しい目でこちらを見ている。
八雲としばし目を合わせていたが、結局愛理の方が目を逸らす。だが、その一瞬、
『やっぱり、ヒゲは八雲のこと…』
心が視えた気がした。それは本当に一瞬で、確証の持てるものではない。
しかし、それは八雲の頭の片隅に引っかかった。
(今の私は「播磨さん」。もし、今のが見間違いじゃなかったとしら、沢近先輩は………)
247 :
アモル:05/06/25 19:24 ID:VM2.pTwc
>>231 支援ありがとうございます。
今回はここまでです。
何か中編が予定の倍くらいに増えてしまいました。
次の投下で完結させようと思います。
しかし途中で改行エラーが出まくってしまいました。
文章の調整は難しいですね。
なかなか面白いんだけどところどころ言い回しが気になるかも
とりあえず1つ
>そのため、この手の勝負事では、せいぜい持てる力の99%しか発揮できない。
充分だろw
よかったです。(´∀`)
こういう、オチじゃなく過程を楽しむ作品もいいね。
ただ、絶対勘違いしてるだろうから言っとくと、
播磨が好きなのはプロジェクトAな。アクション映画。
(゜ロ゜;)
何か下がってるからageておくか
バキネタにワロス
254 :
Classical名無しさん:05/06/25 22:28 ID:p.DjDqXc
GJ
うん、面白い。
まさかバキネタがココで炸裂するとは…花井がやられたシーンを想像して爆笑してしまった。
続きが楽しみだ!!
GJ!
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つまらない。
GJ。
着替えだけで大騒ぎだったらトイレはどうするんだ?それともその辺はうやむや?
面白かったよ
校正ミスの箇所がちらほらとあるので、投稿前に再確認した方がいい
俺もトイレどうするのか気になったw
播磨はまだサラにやってもらうなり目をつぶるなりですむが、八雲は……
後編はエロパロ板に投下決定だな。頑張れ。
小便は播磨(in八雲)に手伝ってもらえばいいじゃん
自分のチンポを持つ播磨、自分の手で弄られて快感を感じてしまう八雲
勃起するチンポ、焦る播磨
焦れば焦るほどその手はチンポを刺激する
押し寄せる快感に絶頂・・・そして八雲、初めての射精
それを顔面で受けてしまう播磨、おもわず体勢が崩れ戸に寄りかかる
その時、うっかり鍵を外してしまいトイレの戸が開いてしまう
中でゴソゴソしているので心配していたギャラリー達は目撃する
顔を精子で汚された八雲と、恍惚とした表情でチンポを晒している播磨を
校内激震、播磨八雲、休み時間にトイレで淫行!!
エロイなぁ〜アモル
>>262 ┌- 、- ───-,. ― ┐
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山中恒の
「小学生男女がいれ代わっちゃう児童文学」
ほどエロくなきゃいいよ。
続きの投下楽しみにしてる。
>>262 むしろ、お前のその想像力でエロSSを書いた方が面白いかも知れん。
>>216 前に八雲似で「美琴」って名前の花井の初恋の相手が出てくる話書いた人?
>216
妙なところにスペースあったりして読みづらい。
内容以前に読む気が起きなかった。
あとスクランSSじゃねぇ。
>>267は読む気もないのにちゃんと読んで批評してくれるいい人
269 :
267:05/06/27 01:30 ID:1sCYfCSI
中身が入れ替わった時ってどうなんだろ。
例えば、播磨の中の八雲が播磨の腕をつねったら、両方痛がるのかな?
それとも、播磨の中の八雲だけか、その逆か……
中身だけ変わってるから別に元の身体に影響は起こらないんじゃないか?
そもそも中身ってなんなんだろうな。
274 :
アモル:05/06/27 21:15 ID:02Fnz4zI
忙しくて来れなかったんですがこんなにレスがつくとは。
こんなに嬉しいことはない…。
>>248 100メートル走なら1%変われば距離にして1メートルは変わるんだ!と苦しい言い訳をかましつつw、
まあトップレベル同士なら最後は気合の勝負だから、ということで。
「限界まで」じゃなく「限界以上に」と表現するほうがよかったかもしれません。
>>250 まーちーがーえーたーーー!!素で勘違いしてた。 ターン
ありがとう、また少し賢くなることが出来た。そしてさようなら。:y=-( ゚д゚)・∵;;
>>253,255,256
(復活)
あのシーン好きなんですよ。
>>258 すいませんOTL
トイレ、話の腰を折ってしまうので書かないつもりだったんですが、
期待してる方が大勢いるので外伝で書きます。もう、みんなえろいなぁ( ´∀`)σ)∀`)。
っても262みたいなのはドウテイの私には無理ッスヨ。
私の設定を使ってエロパロを書いてくれるなら私は一向に構わんっ!
これが播磨さんの・・おちんちん・・
EVAでもあったな…シンジとアスカの中身が変わるって奴。
生理や勃起とかも書いてたな。エロパロじゃなくて。
>>264 女子の体になった男子が「死にたくなった」
男子の体になった女子が「切り落としたくなった」
ってトイレのシーンで言う児童文学だっけ?
そう。
何度もTVドラマ化したり、映画化してるアレ。
入れ替わった時トイレなんぞどうするのかな。
男子トイレで播磨(中は八雲)のティムポを触る八雲(中は播磨)。
それを、高野に盗撮され……
まあ、真面目に考えるといきなり性同一性障害になるわけだから、色々ショックだろう
つか、こんなくだらねぇネタをいつまでも引っ張ってしまうってのが、
スクランSS界の現状を物語ってるな。
SS投下する気が無いなら余所で駄弁ってろよ。
282 :
Classical名無しさん:05/06/29 09:45 ID:9eBJxEUY
スクランSS界(w
何も書く気無いんだったら黙ってろよ
マターリしよう
⊃旦
⊃□
>284
ウギャーーーー
パタ……
続きまだですか?
保守
七月に入ったので、涼やかなものを一つ。
仲良し四人組モノで、10に分けました。
合わないようでしたら、スルーお願いします。
「あっつーい」
暑い訳がない。
生徒達の親御さんから徴収したありがたい寄付金で造られた図書館が、気合の入っていない
生半可な冷房などかけるであろうか。
今日も今日とて太陽は、日本列島をこんがりトーストにしようと頑張っている。図書館の窓の外を
見てみれば分かるであろう。ほーら、10m先が揺らいで見えてきたぞ?
そんな暑さから生徒を守るために図書館の大型クーラーは頑張るのだ!
頑張れクーラー!
冷え性に負けるな、図書委員さん!
さて、遊ぶのもその辺にして本題に入ろうと思う。
仲良しの四人は夏休みの登校日を終え、高校の図書館に来ていた。
「そんなに暑い暑い言うなよ、塚本。こっちまで暑くなってくる」
「そうよ、天満。それに暑いのは外であって、ここは冷房も効いているし」
美琴と晶はぐったりとしている天満にそう言った。天満もなんとか起き上がり、目の前に広げた
ノートに手をやる。図書館から借り出していた参考書を広げた晶に、天満と美琴が英語を教わっていた。
「あぽぉー」
晶がゆっくり口の形を作りながら言うのに続いて二人も、「あぽぉー」と復唱する。周りの学生達はイヤホンを
つけて勉強をしていたり、雑談しながらやっていたりしていて騒がしかったので、この三人の奇妙な自習も
目立つ事はなかった。
「いやー、さっすが晶ちゃん! 発音も良いんだねー」
「いやー、それほどでも」
照れてなどいない晶の頭をこつんと小突く少女がいた。両手に参考書を持った少女は不機嫌そうにしている。
参考書を机に置くとわざとらしく首を鳴らした。
「ごくろーさん。さ・わ・ち・か!」
「お疲れ様、愛理」
「えー、えー、疲れましたとも。か弱い女の子にこんなに重いものを持たして、自分達はお遊びですか。いいですねぇ。あー羨ましい」
「違うよ愛理ちゃん! 晶ちゃんと発音の練習していたんだよ」
「発音?」
「あぽー、ってね! ね、晶ちゃん」
天満の珍しい真剣な顔に「そうなの? 悪かったわね、邪魔して」と言いつつも愛理は、晶の頭を小突くのを止めない。
「……ちょっと、痛いわよ愛理?」
「痛くしてるのよ。それに、ちゃんと勉強してるのかと思ったら間違った事を教えて」
「参考書は沢近が悪いんだろ? ジャンケンに負けたんだから」
「愛理ちゃんにも苦手なものがあるんだねぇ」
「あんた達が一斉にグーを出すからでしょう? 絶っ対、裏で口を合わせてたに違いないわ」
「そんなことしないわよ――――」
三人はハモリながら、「ねー」とのたまった。
「…………」
愛理はじっと三人の顔を見たままである。
じっと。じっと……。じっと―――。
「あーっ、悪かったよ。悪かった! これでいいだろ?」
あっさり折れた美琴に続いて天満や晶も謝り、愛理も「謝るくらいなら始めからやらないのよ!」
と笑いながら言う。悪ふざけにも慣れている友達の気安さで四人はいつも通りにわいわいと勉強をしていた。
といってもそこは女子高生。各々の仕入れてきたネタの披露会になるまでに、三十分とかからない。
天満のノートには、八雲が出してきた綺麗な風鈴の絵が描かれている。美琴と愛理はその絵に黄色の蛍光ペンや
青ペンで色塗りして遊んでいた。晶の話では、バイトをしようかと思っていた古本屋の近くに路商が来たらしいのだ。
その話に、自分のノートに悪戯されているのを楽しんでいた天満も目を輝かせる。
「へぇー、路商さんって見かけないよね? 晶ちゃん、ラッキーだね!」
「そーだな。珍しいな」足元に落ちた消しゴムを拾いながら、美琴も続く。
「シェプトンマルトのトイ・フェアみたいなものかしら」と愛理は、天満の描いた風鈴に水色のペンで塗りながら言う。
晶も手元の参考書を見ながら問題を解いていて、四人が四人とも違う事をやっていた。
それでも一学期間ずっと仲良しグループを作っているもので、美琴のルーズリーフを天満が借り、
愛理が借り、晶がこそっと返し、美琴が気付く前に元の場所に戻っていく。美琴は晶のラクガキが
描かれた紙を取ってしまい、「ぶわーはははっ、なんだこりゃー!」と笑い転げてしまう。美琴が机に
ルーズリーフを置き、それを天満と愛理が見てみると、愛理が播磨に告白されているシーンが
デフォルメされて描かれていた。
愛理が晶の姿を探すと、晶の後姿が大きな本棚の海へ消えていくのが見える。
「晶が泣くまで叩くのを止めない!!」愛理の瞳が、めらめらと燃え上がる。
「愛理ちゃーんガンバレー!」手を振ってやる天満と、ケラケラ笑っている美琴。
冷え性の図書委員さんは姿勢も正しく立ち上がると、遠くで騒ぐピコピコ髪と巨乳と金髪と無表情の
少女を睨みつけた。あの娘達に、こう言ってやるのだ。
「図書館は遊ぶ所ではありません。騒ぐなら、外で騒ぎなさい!」
しんと静まり返った図書館に、四人の「すみません」という声が上がったのはそれからすぐの事だった。
遠く、陽炎がたっている。
辺りの木に止まる蝉の鳴き声が、騒音になっていた。
暑いというより、痛い日差しが四人を襲っていた。
通行人たちもなるべく日陰を通るようにしていて、車も窓を閉め切って冷房をかけている。図書館の外は、
灼熱の世界だった。温い風が、更に不快感を高めていく。
天満はぐったりして歩いていて、体も溶けてしまいそうになっている。他の二人も似たようなもので、
晶でさえも汗をかいていた。うっすらと透けたシャツに、姐さんの細い体が浮かび上がっている。
「あついー」
「暑いー」
「暑いわー」
「暑い…」
四人は遠くの信号が揺らいで見えている事に、更なる暑さを感じてしまう。四人の横を通って行った
男子生徒は制服のカッターシャツを脱いで、下のTシャツだけで自転車を扱いでいた。
「いーなー男の子は。暑かったらすぐに脱げるんだもん」
「天満はまだいいわ。美琴さんなんて……」晶の言葉に、天満も愛理も美琴のある部分を凝視する。
「や、止めねーかっ!」両腕で隠せないくせに隠そうとする健気な姿に、三人は鼻で冷たく笑ってやった。
陽炎のせいでやけに遠くに感じていた信号の所までやってきていた四人は、信号の向こうに建つ
バス停前の屋根付きベンチに屋台が来ている事に気がついた。今時珍しい手押し式の古い屋台で、
のぼりには『氷』の文字がある。
歩道の信号が青になった瞬間、四人は誰とも言わず飛び出していった。
「下さーい! かきごーり下さーい!!」
天満が屋台の前に止まると、屋台の主らしき親父は寝ていたベンチから飛び上がるようにして起き上がった。
日陰で涼もうとベンチに横たわりウトウトしていたら、急に目の前に鬼のような形相の女子高生が四人も現れたのである。
はーっ、はーっ、と不気味な息を吐きながら、まるで痙攣でもしているかのように唇を歪ませる姿に、可愛い
孫達の姿はもう見られないのだなと諦めた事は、親父と読者だけの内緒である。
「な、なんだぁ?」
怯えながらも、女子高生に負けちゃあおしめいよってなもんで、親父はゆっくり立ち上がると
恐る恐るメニューを献上した。
「………」
無言でメニューを見ている姿は可愛らしい女の子達である。いや、騙されるな。親父は生唾を
飲み込み、さぁ来いとシロップを準備した。
「愛理ちゃんはイチゴ? 晶ちゃんがメロン。美コちゃんがブルースカイ。私は――――」
天満だけが決まらないので、シロップを持つ手が震える。早く決めろい! 親父と同じ事を他の三人も
思っているようで、汗が頬を伝って顎から落ちていくのを拭おうともしない。彼女達のいらいらとした雰囲気が、
親父に伝わってきた。
「早くしなさいよ、天満」我慢しきれなくなった愛理が天満に言った。
「んーっと……決めた! 私、練乳とレモン!」
「大丈夫かぁー塚本。この後、メルカドに行くんだろ?」
「大丈夫だって。甘いものは別のお腹が担当してくれるんだモノ。それにみんなで色んな味が楽しめるじゃない!」
「んだぁ、そりゃあ?」
親父は、何やら決まったらしい四人組みの為に台車のクーラーボックスから氷の塊を出すと、「おう、何にするね?」
と聞いてみた。密かに足が震えていた事は、親父と姐さんと読者だけの内緒だぞ?
「あ、はい! 一個ずつ、全種類下さい!」
「あいよ」
親父も自分の分野に入ってしまえば慣れたもので、次々とカップの中にきめ細やかな雪を
降らせていく。四人は涼しげなその様子に目を輝かせていた。へっ、なんでい。可愛らしい
お嬢ちゃん達じゃねえか。
親父はシロップをかけないまま四人の手に渡してやった。
「あの、おじさん。シロップかかってないんだけど……」美琴はあきれた、という顔をしている。
美琴の手に青色の液体で満たされている壜が渡された。見れば、他の三人にも同じように壜を渡している。
「あんた達が、今日最初の客だ。好きなだけかけな!」
親父の声に天満の結った髪もパタパタと揺れている。
「本当ですか? ど、どんなにかけても――」
天満が言い終わらない内に親父の手にシロップの壜が戻った。三人のカップには普通にシロップが
かけられていて、親父も天満もポカンとしている。
「良いのかい? それぐらいで」
「いいです。天満も早く返しなさいよ」
「まー、沢山かけても美味しくないし。あたしも、これくらいで良いよ」
「同じく。バランスが大事ね」
三人がベンチに座ってしまうので、天満も練乳とレモンシロップを普通にかけると、親父に返した。
四人の行動に感心した親父は、自分が寝ていたベンチを取られたことなど気にも留めないで、気分良く
次のバス停へと屋台を押して行くのだった。
しゃりしゃり、と小気味の良い音がベンチの日陰を通る温い風と相まって、さらに涼しい気分にさせてくれる。
ベンチの影から一歩外に出ると灼熱の世界なのだが、日陰の中はかき氷の冷気に守られていた。
口の中の粘々した熱い唾を流してくれる甘い氷。四人とも口数少なく、交換する時は喧しく、かき氷を楽しんでいた。
「メルカドまでどーする?」
美琴は、目の前の灼熱地獄の中に立つバス停に貼られた時刻表を、薄目にして見ている。
「歩くのは……ちょっとね」
「うんうん!」
「このままだと汗で下着が透けるわ。……ほら」
「わー晶ちゃん、セクシィー」
「だいぶ乾いたけどね。暑いから乾くのも早いけれど。どーする……って言わなくてもいいか」
晶の透けたシャツを見て、三人は透けていないかと見せ合っている。美琴の見た時刻表によれば
十分もすれば次のバスが来るという。バスはメルカドまで行きはしないが、かなりの距離を稼ぐ事が出来る、
という事で歩いて行かずにバスを待つことにするのだった。
四人は、残りのかき氷をストロースプーンで食べながら明日からの事を話し始めた。
愛理の家には今度の水曜日に行って、映画に行く日にちを決めて、晶のバイト先に遊びに行く予定を
立てようとしてうやむやになって。
そうこうしていると、カップの中の氷はすぐになくなってしまった。
汗も大分ひいた四人はベンチの背をつけて、相変らずゆらゆらと揺れている眩しい世界を見ていた。
暑いという事を感じるのだが、体を冷やした為に汗をかく事はない。温い風は依然として吹いているが、
それが不快にも感じられない。
天満と美琴は携帯のストラップを見ていて、晶は鞄から取り出した小説を読んでいる。愛理は足を伸ばして
伸びをした後、かき氷を食べ終わったカップを重ねた。晶が何も言わずに取り出したコンビニの袋にカップを
入れると、小説を覗いてみた。びっしりと細かな字が並んでいて、愛理は目が回りそうになる。
程なくしてやって来たバスに乗り込むと、バスの中は冷房が効いていて天満はぶるっと体を震わせた。
誰も乗っていないバスの一番後ろに座るとメルカドの新メニューについて盛り上がる。愛理と
美琴がふと路上を見ると、先程の親父が子供連れの親にかき氷を売っている姿が見えた。
バスは信号待ちで止まり、天満と愛理は親父に向かって手を振ると、子供が手を振った事で
気がついた親父が笑って返してくる。晶も含めて、四人は笑顔になった。バスが発車するまでそうしていた。
バスが街中、繁華街へと入っていくと人の姿も増えてくる。メルカド近くのバス停で降りた四人は
コンビニ前のゴミ箱にカップの入った袋を捨てた。袋の中の隅にはイチゴ味のシロップが垂れている。
天満に「美味しかったね、愛理ちゃん!」と言われ、「そうね」と言ってやり、四人はメルカドへと向かった。
まだまだ日差しも昇る一時前。
夏はまだまだ、これからだった――――。
「ね、姉さん。ちょっ……といい…かな?」
八雲は姉の行動に恐怖していた。
姉が立てこもってしまった部屋のドアの前。八雲は懸命の説得を三分ほど続けていた。もう駄目だ!
何度、八雲はそう思っただろうか。
「ごめんねー、八雲ー!」
泣きそうな姉の声に、それでも八雲は希望を捨てずに説得を繰り返した。
「大丈夫だよ、姉さん。一度出ようよ。私……もう」
八雲の切ない声があがり、ドアノブに手がかかる。ガチャガチャと音をたてはするが、ドアは
開かない。八雲の顔から血の気が失せていった。
お父さん。お母さん。ごめんなさい。私、もう……。
八雲の目から静かに涙が落ちた。
「八雲―! 本当にごめんねー!!」
遠くで姉の声がする。八雲は濁った目で膝をついていた。
あはは……星が見える。バァーっと動いて……こんなに沢山…星が……点いたり、消えたり……。
早く出してくださいよ。ねぇ、早く……出して…。
「もう、いいかなって思ってるんだ、姉さん。もう……いい…んだ」
「ちょっ。い、今出るからね? 八雲、返事して! 八雲ー!!」
播磨の顔が一瞬よぎって、もう会わない方が良いなと八雲は思った。
冷房の効いた居間では、伊織が座布団の上で気持ち良さそうに丸くなっている。台所のテーブルの
上には一つの容器があった。ピンク色の氷は溶けてしまいそうだ。
教育テレビで子供向けの番組の司会が、冷たい物の食べすぎを注意していた。
廊下にはよほど慌てていたのか、これから干す予定の洗濯物が散らかっている。
姉妹はドアを挟んでいた。
妹の慌てた急かす声と、姉のひたすら謝る声。
蝉の鳴く声も聞こえてこない塚本家。
夏、真っ盛りだった。
終わっとく。
八雲スキーな方、すみませんでした。
反省はしている。後悔はしてない。
何かありましたらお知らせ下さい。
笑って頂けたらと思ったけれども、難しいですね。
・訂正
>>298の16行目
× 廊下にはよほど慌てていたのか、これから干す予定の洗濯物が散らかっている。
〇 玄関にはよほど慌てていたのか、天満の靴が散らかっている。八雲はその時、姉さんったら
どうしたのかしら? などと思っていたのだ。
すみません。
訂正した部分を編集し忘れていました。
文章自体が結構上手いな。暑さと涼しさの表現がしっかりしてるのもいいけど、
登場人物のちょっとした行動の記述が丁寧に書かれてのるが何より好印象。
テンポも悪くないし面白かったよ。
強いて言うなら、
>>298の
>播磨の顔が一瞬よぎって、もう会わない方が良いなと八雲は思った。
このくだりは不要かな。
それでも「播磨の顔が一瞬よぎって、」と播磨の名を出すのであれば、
「もう会わない方が〜」は場にそぐわないというか、ラストがコメディチックな分
何か別の文章を用いたほうが適切だったんじゃないだろうか。
例
「〜よぎって、今この状況では忌むべき安心感が八雲を襲った」
「〜よぎって、「ああ、これが走馬灯なんだな」と八雲は悟った」
「〜よぎって、八雲は訳のわからない恥ずかしさに見舞われた」
謎な上着のせいで夏なのに透けブラも拝めない男子生徒はいとあわれ。
八雲が出てきてからの部分がよく分からないんだが、
これはどんな状況?
冷たいモノ食べ過ぎてごろごろぴーな天満が御不浄を占拠して八雲に明け渡そうとしない場面?
>>301 丁寧なご指摘、ありがとうございます!
>「もう会わない方が〜」は場にそぐわないというか、ラストがコメディチックな分
何か別の文章を用いたほうが適切だったんじゃないだろうか。
こういった微妙なさじ加減が駄目ですね。
私もここはどうしようか迷ってしまって、投稿してみて皆さんの反応を見てみたいと思ったのです。
色々な表現やいらない(足りない)文の添削など、やる事が多いですね。
書き込みありがとうございました。
>>303−304
1・八雲は冷房の聞いた部屋でアイスを食べていた。
2・で、天満がお腹を壊してしまい、慌てて帰ってくる。
3・最初は「姉さん、どうしたのかな?」と疑問に思うが、八雲はアイスを食べる。
4・お手洗いが近いかも、と席を立つ。
5・天満が入っていてなかなかでない。
6・だんだん八雲に危機が。
7・「姉さん出てよ」「まだなのご免ね!」←の繰り返し。
8・八雲ピンチ!
9・あ、星が見える。早く、(姉さん)出してくださいよぉ。
という状況ですが、描写不足でしたね。分かりにくくてすみませんでした。
前作でも言われたのですが、こういうところが実力の無い証拠なのでしょうね。
書き込みありがとうございました。
カミーユか
文章が下手、読み辛い。
もう少し自分で見直してから投下して。
終盤の状況がわかりにくいけど、全体的にのほほんとした雰囲気でいい。
GJ!
舞城王太郎
清涼院流水
上遠野浩平
西尾維新
佐藤友哉
滝本竜彦
乙一
奈須きのこ
元長柾木
原田宇蛇児
浦賀和宏
北山猛邦
冲方丁
竜騎士07
その日、刑部弦子は数日振りに自宅マンションに帰ってきた。
「ふ〜、だいぶ家を開けてしまったが、拳児くんはいい子にしてたかな、ふふふ……」
弦子は父親が脳卒中で倒れ生死の境をさまよったため、数日の間実家に帰省していたのだ。
だがしかし、自宅の扉を開け放った時、密かに望んだ愛する従弟の出迎えも労いの言葉もなく、
弦子はまあそんなものだろうと改めて旅の疲れを感じ嘆息した。
「やれやれ…、帰る時間は教えといたはずなのに、出迎えもなしかね?まあ、拳児君らしいと言えばらしいのだが……」
苦笑しながらそう呟いて自分を納得させると、弦子はヒールからむくんだ足を抜き、玄関に上がりこんだ。
「まったく、愛する従姉の私を待たせるなんて……」
弦子はこの怒りを拳児を射殺(!?)することで解消することにした。これからの己の運命も知らず……。
「今帰ったよ……、拳児君いるんだろう!?」
だが、そこで弦子は面食らう。
「あら?刑部先生」
彼女を迎えたのは愛する拳児君ではなく、メイド姿でお茶を運ぶ沢近愛理だった。
「どどどどど、どうして君がここにいるんだね、沢近君!?それにその格好は……!?」
だが次の言葉に弦子は耳を疑う。
「ああ、これですか?これは播磨君の趣味でして…♥」
「け、拳jゲフンゲフン…播磨君の!?そもそも、ここが私の家だと知ってるのかね!?」
「クスクス……。ええ、よ〜く存じ上げていますわ。最初、晶に聞かされた時はさすがにビックリしましたけどね。
それより播磨くんが中で待ってますからどうぞ中へ。
ああ、それとこのマンションのオーナーは既に刑部先生あなたではないんですよ」
そういって嫣然と笑みを浮かべる愛理、絶句する弦子。
*後書き?みたいなもの
さっと書き上げたので、台本形式っぽくなっててすみません。
つづきは反応を見て書かせていただこうかと思います。
たったこれだけで何を判断しろってんだ。
反応見て、ってことは反応悪かったら書かないってことか?
そんなこすっからい真似すんなよ。はっきり言ってせこいわ。
人に媚びて書かないよりは妄想ぶちまけて書いてくれたほうが
まだせいせいする。
俺も同意見
こんな出来損ないの台本の前振りだけ見せられても判断できない
どうせこんなことするならプロット晒せ
そうすれば判断も改善点も指摘可能だ
……絶対書いていないと思うけどな
あと刑部家は母子家庭だぞ、と
>>311 絃子先生、沢近ともにキャラ違いすぎ orz 何か元ネタアリのパロディなのか?
あと、情景描写がちょっと少ないからどんなシーンか少し想像しにくいかな…
ともかく、これだけじゃなんも言えないんで全部うpしてみては?
元ネタもあるんだったら最初に言っとけ
あと、マンセー意見が欲しいだけだったらアッチの方に行くことをお勧めするよ
もし、ココで書きたいというなら多少の覚悟は必要だぞ
>>311 旗書いてりゃなんでもいいだろうなんて甘い考えはお見通しなんだよ。
出直してこい。
播磨「どのコースにするかな。って、天満ちゃんのコースに決まってるぜ!!
妙「悩むとお肌に毒だゾ。私のコースにしなさい。
絃子「異議あり!!私のコースこそ正しい選択だろう。
晶「そうかしら。播磨君の選ぶコースはずばり携帯じゃない?
沢近「だ、ダメよ!私のコースで旗になるのよ!
八雲「私のコースはおにぎりです・・・
沢近「旗!旗!
八雲「おにぎり・・・!おにぎり・・・!おにぎり・・・!
沢近「惑わされないで!
播磨「いや、俺は天満ちゃんのコースを・・・
大谷「アタイのコースもあるわ!
播磨「あるんだ・・・いや、天満ちゃんのコースは!?
オロナミ○C〜♪
思いつきでやった。
大谷さんがでればなんでもよかった。
今では反省している。
「――で、なんで花井君が私の前に座ってるのかしら?」
私はランチボックスを開ける前に、心地よい食事の時間を作ろうと――
して、目の前の障害物に声をかけた。
「ふむ、迷惑かね」
「……まあ、迷惑って言えば迷惑だけど、それほどでもないわ」
誠実そうに答えを返した花井に、とりあえず曖昧に言葉を濁す。
実のところ、別にこの男がいることは問題じゃない。
大好きというわけではないが、嫌いでもないのだ。
それよりも。
「他の三人はどこ?」
「周防は、バスケ部の連中と一緒に相談へ――」
クラスを見回せば、麻生君もいない。
納得した後、では他の二人は?という目線を向ける。
何か、心の琴線に触れるものがあったのだろう。
カエルの人形が、牛の人形を頭から喰らっている姿。
それを思い出しながら、沢近はまた何か変なことが起こらないか。
というより、ワザと起こされないか、そう不安に思った。
「塚本君は、八雲君に用事があるそうで一年の教室に行った」
「花井君は行かなかったの?」
この男なら、一緒に行こうとするのでは?
疑問を投げかけるが、花井は眼鏡を曇らせた後。
「一緒に行こうとしたら、『ウザいよ花井君』と物凄くいい笑顔で言われたので、ここでヘコんでいたのだ」
「……ご愁傷様。悪気は無いのよ、あの子」
下を向いて、僕はそんなにウザいのか?と本人だけが気づいていない事実を花井は悩む。
たまにウザいほどの優しさや真面目さが、自分の長所でもある事にわかっていない。
意外とクラスメイトを見ている沢近が心の中で評した後、花井はまた行動する。
ゴソゴソ、と懐をまさぐって。
――小学生が使うような、リコーダーを取り出した。
文章抜けた。
319-320の間に
「高野君は、パペットマペットになる、と言い残して去っていった」
「……そう」
「笛を吹く」
「……何で?」
私の質問に、花井君は眼鏡を光らせた後。
「Don't think.FEEL(考えるな、感じるんだ)」
「わけのわかんない事、流暢な英語で語るんじゃないわよ」
やっぱウザいわ花井君。
そんな沢近の思考を無視するかのように、花井はただ笛を吹かんとする。
「……ていうか、そのネズミ何なのよ」
「ファミリーだ」
何故か、笛を吹くのを待っているように、花井の後ろにはネズミが50匹ほど控えていた。
殺戮 怠惰 殺戮 怠惰 殺戮 怠惰。
そういう表情をしている。
「一曲……」
巻き込まれたくは無いので、黙って吹かせる。
多分、花井にとってあの笛は常備薬のようなものなのだろう。
リコーダーから流れるゴッドファーザーのテーマを聞きながら――
「奈良君が物凄い勢いで齧られてるわよ」
一斉に宙を舞い、野性の本能で弱いもの目がけて突っ込んでいくネズミ達を見た。
ひい、と情けない声とともに、地面でごろごろ転がる音がする。
ホント弱いわね。
――あれがヒゲなら、睨み一つで服従させたでしょうに。
かなりノロケの混じった判断をしながら、恐慌状態に陥った奈良を評す。
だが――さすがに可哀想になったので
「ていうか、誰も助けないの?」
呟いた。
その言葉に、俺が!とばかりに吉田山が突っ込んでいくが。
死んだ。
一言にすると、そんな感じに犠牲になった。
首領格、と思われるネズミが倒れた吉田山の背中に立ち、勝利の名乗りを上げている。
「……」
静まり返る、教室。
花井は、少しばかりその光景に見入った後。
うむ。
そう満足そうに首肯して。
「まあ、それはそれとして」
「流すの!?」
何事もなかった。
そういった風情で、流そうとした。
……多分、天満にウザいと言われたショックでおかしくなっているのだろう。
純真な分、ストレートにモノを言いすぎよね、あの子。
ちょっと注意したほうがいいのかしらと思い、とりあえず。
「それはそれとして」
私も、物凄い勢いで齧られている物体を無視することにした。
「沢近さーーーーーん!!」
吉田山の悲鳴が聞こえたが、叫べるほどなら問題ない。
ヒゲの舎弟なんて、知ったことじゃないし。
だいたい、男の癖にヒゲにまとわりついてんじゃないわよ。
女はもっとダメだけど。
そんな自己完結。
「で、それで花井君は私に何のようかしら?」
別に、用がなければ話しかけてはいけない、なんて馬鹿な事は言わないけど。
そう言葉尻に付け加え、私は口を閉じた。
花井は少しばかり落ち着いたらしく、仕方ない、と席から立ち上がってネズミ達を追い払った後。
死屍累々として倒れている二人を眺め。
戦利品だ、とばかりにネズミ達がその二人の弁当をかっくらっているのを見届けた後。
うむ。
と首肯し、また席に戻ってきた。
そして――いつもの自信満々といった表情を取り戻した後、叫ぶ。
「うむ。沢近君は寂しがりやさんだから、一人のときは話しかけてやってくれと美コちゃんに頼まれたのでな!」
沢近の右フックは、花井君の顔面に華麗に突き刺さった。
花井と沢近でSS書こうとしたら、こんな事になった。
一応続き物系も考慮したせいかオチが弱いのと、キャラが壊れているのと。
文章描写が足らない(最初の方で沢近とわからない)
単純に技量が足りない、扱いが酷い、など問題点が多数あると思うのですが
どうか意見をいただきたい。
扱いはまあ、そういう風な作品なんだからいいとしても、
やっぱりキャラがキャラでなくなってる観があるな。
特に「ウザイ」の件は晶に言わせたほうがよっぽど自然。
最後の「ミコちゃん」だって普通に「周防」としたほうがいい。
あとパペットマペットは何を意味しているのか、それが捉えづらい。
こういうアップダウンの少ない淡々としたコメディを書くときは、
ひたすらわかりやすく、突っ掛かる点のないようにするか、
もしくは逆に捻りまくるというのもアリ。
これに関しては好みの問題もあるから一概には言えないが。
技量自体はなかなか。ただあくまでも「なかなか」だな。
改善の余地は大いにあるので、特に言葉の重複に注意しながら
書いていくといいと思う。以上。
328 :
327:05/07/03 12:13 ID:Vus/yfwg
二段目訂正。
〜
比喩、あるいはそれに準ずる表現はひたすらわかりやすくするべき。
あえて逆に捻りまくるというのもアリだけど、
これに関しては好みの問題もあるから一概には言えない。
>文章描写が足らない(最初の方で沢近とわからない)
三行目の「私は」を「沢近は」にしてそれなりにちょこちょこいじくったら済むかと。
味が狂う危険はあるが。
>ウザい
このセリフだったら晶のほうがらしいけど、天満に断らせたいのだったら
露骨に不満そうにするとか、播磨君がいるからとか出来るね。
その後も変えないとダメだけど。
後、最後に殴られた理由がよくわからんかった。
それと関係ないけどロマサガの研究所を思い出した。
330 :
Classical名無しさん:05/07/03 14:23 ID:zPyd/rkw
「播磨くん、ちょっといい?」
「ん、何だ?」振り返るとそこには見たことのある女がいた。
(…コイツは確か天満ちゃんの友達の…) 「高……塚本の友達!、何のようだ?」
(…まだ名前を覚えてないようね、別にいいけど。)「ちょっと話があるの、今から私に着いてきてくれる?」
今は昼休み、月末で水で腹を満たすしかない播磨にとって、今は少しでも動かずに過ごしたかった。「ココじゃだめなのか?」
すると晶は播磨の耳元で「塚本さんのことなんだけど。」と囁いた。「!!」(天満ちゃんのこと!!いったい何の話だ!!?)晶は播磨の反応を楽しみながらも無表情で播磨を見ていた。
一方播磨は愛する天満のためなら空腹など何でもないとすぐに席を立ち晶に「いくぞ!」と言い目的地も分からないのに一人で歩きだした。
そんな播磨を面白いと思いながらも全く違う方へ行こうとする播磨に「そっちじゃないよ。」と冷静に播磨を操作していった。
それは、播磨18歳の夏の日の出来事だった……。
その日は朝から茹だる様な暑さだった。
プレデター日和だな、何となくそう思う播磨なのでした。
いや、マジで。
END
332 :
Classical名無しさん:05/07/03 15:32 ID:zPyd/rkw
着いた場所は茶道部の部室だった「そこに座って。」晶は播磨に席に座るよう促しつつお茶の用意をしていた。
「おう」短く返事をして播磨はイスに座った。播磨は期待と不安で頭がイッパイだった。
(天満ちゃんの事っていったい何だ!?…まさか天満ちゃんが俺の事を好きでコイツはその事を俺に伝えようとしているのか!!
…いや天満ちゃんは烏丸の事が好きなハズ……まさかコイツはその事を俺に言い天満ちゃんを諦めろと言う気か!?
いやいや拳児落ち着け、そもそもコイツは俺が天満ちゃんを好きという事を知らないはずだ!じゃあヤッパリ、天満ちゃんは俺の事を好きになったのか!!
ヤッパ烏丸なんかより俺を選んでくれたんだな!!アリガトウ天満ちゃん!!!)
「ちょっと、播磨くん聞いてるの?」
「は?」 播磨は自分の世界に入ってしまい晶の話を聞いていなかった。
気付けば目の前には紅茶とお菓子が置いてあった。
「まあいいわ、それを飲んで少し落ち着いて。」
晶の言われるままに紅茶を飲む播磨。 播磨落ち着いたのをみはからい晶は話だした
「八雲の事なんだけど…」
「図書館、図書館♪本がいっぱい〜〜♪ここにく〜れば勉強もはかどる〜♪」
ご機嫌の天満、鼻歌を歌いつつ図書館に向かうも速攻で爆睡、夢の中へ…
…満ちゃん!天満ちゃん!
天満が目を開けるとそこには沢近が。だけど天満ちゃんって・・・?何か様子がおかしい…
「あーーーーーっ!!」なんと天満がスラリとした美人に。さらに沢近の様子もいつもと違う。
「天満ちゃんにしかできないお願いなの!」
「実は……教科書を無くしちゃって勉強ができないの。買い直そうにもお財布も落としちゃうし……」
「もうすぐテストなのにどうしよう、私ったらドジばっかり……」
落ち込む沢近にやさしく「私の教科書をあげるわ」と声を掛ける天満。でも天満ちゃんの勉強が…
「ううん大丈夫よ。さっき読んでもう全部覚えちゃったから」
女神のような微笑で返す天満に感謝する沢近。
「さすが天満ちゃんありがとう!!」
「いいのよ、困った時は助け合わなきゃね」
そこへ目を(+ +)にした美琴と相変わらず無表情な晶が走って来る。
「天満ちゃ〜ん!!」
「あら晶ちゃんミコちゃん。駄目よ廊下を走っちゃ」
「この問題が難しすぎて困ってるの!!」
「このままじゃ私達留年しちゃう助けて天才!!」
困り顔で懇願する美琴と無表情の晶に縋られ問題を解く天満。
「任せて、この問題ね。なかなかの難問だわ!!」
「ここをこうすれば…できたわ!!」
これはペンです→This is a pen
「すごーい!!私達が一日かけても解らなかったのに!」
「ありがとう。さすが天満ちゃんね一生この恩は忘れないわ」
笑顔で抱き付く美琴と晶ににこやかに返す天満。
「いいのよ、みんなで進級しましょ」
頭がいいので今日は真っ直ぐ家に帰る天満、ボリプロの勧誘も
「すみません…私…まだ学生でいたいんです。」と丁重にお断り。
熱い視線を振り切り帰宅すると八雲があわただしくやって来る。
「あわわ大変、大変!!」あたふたと玄関までやってきて転んでしまう八雲、
何をそんなに慌てているのかと聞かれ
「今日は私の当番なのにまたお夕食忘れちゃったの」と泣き出してしまう。
「でも大丈夫!!」
「えっ?」
「そんなことだろうと思って私が作っておいたわ」
ジャーン、の効果音付きで現れる夕食。
「さすがお姉さま!!」
「あらあら八雲ったらいつまでも子供ね。甘えん坊さんなんだから」
目に涙を浮かべつつ笑顔で抱き付く八雲と抱擁を交わすお姉さん天満。
「おいしい!!また一段と腕を挙げたねお姉さま」
「いっぱいあるから、おかわりしてね」
楽しい夕食も終わり夜が更けていく…
バレにて
tTrH6CUIをNGにすべし
>「一緒に行こうとしたら、『ウザいよ花井君』と物凄くいい笑顔で言われたので、ここでヘコんでいたのだ」
>「……ご愁傷様。悪気は無いのよ、あの子」
>悪気は無い
さすがに工エエェェ(´Д`)ェェエエ工
投稿したSSを修正したいのですが、修正したものはどこに投稿すればいいのですか?
SS投稿避難所には行けないし……。
ウザいよ花井君の場面で声出して笑っちゃったよ俺・・・。
>>337 エロパロの方の保管庫に一応アップローダーなるものを置いてみたけど…。
どうせ、需要もないから使うならどうぞ。
>>339 教えていただき、ありがとうございました。
書き足しするものは何作かあるので、修正したものを書き溜めてから投稿しようと思います。
341 :
Classical名無しさん:05/07/03 20:03 ID:zPyd/rkw
「八雲の事なんだけど…」
「…八雲の事??」
(あれ?天満ちゃんじゃなくて妹さんの事?なんでだ?)
播磨がこの謎を解く前に晶は播磨の謎の答えを言った。
「私は塚本さんの事とは言ったけど天満の事とは言ってないよ。」「な、何だとお前騙したのか!?」
播磨の予想どうりの反応に晶はとても嬉しかったが顔には出さずに何でもないように播磨がただ勘違いしただけだ、と言った。
「そ、そうかスマン、で妹さんの話っていうのは何だ?」
播磨は自分が勘違いをして晶を怒鳴ってしまったので速く話を変えたかった。
晶は紅茶を一口飲み喋りだした。「播磨君は八雲とどうゆう関係なの?」
「え?妹さんとの関係?なんで?」(妹さんは俺の親友で漫画を手伝ってくれる優しい娘だ、でも何でコイツはそんなこと聞くんだ?」
「播磨君と八雲は付き合ってるの?」
342 :
Classical名無しさん:05/07/03 20:07 ID:zPyd/rkw
晶は無表情で聞いてくる
「な、それは違うぞ俺と妹さんはただ…」(はっ!!まて拳児、俺の漫画がコイツに知られると、コイツは漫画の事を天満ちゃんに言うんじゃないか!?
それは駄目だココはどうにか誤魔化さなければ!!)
「…ただ…ただ…!!そうだ!ただの友達だ!!」
「じゃあこれは何をしているの?」晶はそう言うと数枚の写真を出したそこには播磨と八雲が仲良さそうに写っていた
「げぇ!!それは…!!」
播磨は黙ってしまったが晶は喋り続けた「しかも八雲は播磨君の家に泊まったと言っているわ。」
播磨は何も言わない。晶の言葉は核心をついた「播磨君は天満の事が好きなんでしょ、何でこんなことになっているの?」
晶は今日もっとも言いたかった事をいった。
播磨は混乱していた(なぜコイツは俺が天満ちゃんを好きだと知っているんだ!!?)晶を睨んでみるが晶は全く動じない。
晶はもう一度聞いた「播磨君は八雲とどうゆう関係なの?」
播磨はこれ以上は誤魔化せないと思った(こうなったらもう漫画のことを正直に言うしかない!!覚悟は出来た!!言ってヤルゼ!!!)
播磨は目の前の紅茶を一気に飲み干し、晶を見つめそしてゆっくり口を開いた
寸止めですか?
344 :
Classical名無しさん:05/07/04 17:30 ID:CDrdtIoU
播磨は目の前の紅茶を一気に飲み干し、晶を見つめそしてゆっくり口を開いた「俺は漫画を…描いてたんだぁぁぁーーー!!!」
(言った…言ってしまった…さあ笑え、俺みたいな不良が漫画を描いてるんだ、笑いたいだけ笑うがいい…)
播磨は晶が自分を馬鹿にすると思っていた、しかし晶は「で?八雲との関係は?」と聞いてきた
「…え?あ、ああ…妹さんは漫画の手伝いをしてくれたんだ。」
播磨は困惑した(あれ?馬鹿にしないのか?俺が漫画描いてるんだぞ!フツー笑うだろ!?)
だが晶は笑わずに話てきた
「じゃあこれは漫画を見せている所なのね。」晶は写真を見ながら言った
「笑わないの?」播磨が聞く
「笑わないよ、で八雲が播磨君の家に泊まったのも漫画のため?」
播磨は嬉しかった(コイツ案外良い奴だぞ!しかも誤解も解けてるし!このまま行けば天満ちゃんの誤解も解けるんじゃないか!!?)
「播磨くん、聞いてる?」
「あ?…ああ!!聞いてるぞ!そうだ妹さんは俺の漫画の為に泊まっていってくれたんだ!!」
345 :
Classical名無しさん:05/07/04 17:32 ID:CDrdtIoU
「そう、ありがと、これでスッキリしたわ。」晶はそう言うと紅茶を飲んで席を立った
「じゃあ私はもう行くけど、播磨君お腹空いてるならそのお菓子食べていいから、ゆっくりしていって。」晶はそう言って出ていった
播磨は晶の言う通りゆっくりしていた(それにしてもアイツ良い奴だな〜、お菓子までくれたし、お嬢とは大違いだ!
そういや夏休みお嬢を羽交い締めしちゃったときもアイツが冷静に対処してくれたから天満ちゃんに嫌われなくてすんだんだよな。
動物達も助けてくれたし。そう考えると俺、結構アイツに助けられてるんだな。
アレ?そいやあアイツ名前何だっけ?確か高何とかだったような…まあいいや今度聞こ。)
播磨は少しお腹が満たされた事と誤解が解けるかもという安心感から眠ってしまった
投下するなら全部作り終えてからにしておくれ。
あと、sageて。メール欄に半角でsageって書けばいいから
連作という形なら問題ないんだが、最近のIFスレとエロパロは、
両方とも書きかけのままで投稿しているのが多いような。
特にエロパロはずっと一人に私物化されている状態で、
せっかく書いても投下しにくい状況になっている。というか、投下を諦めた。
いつの間にこんなんになったんだろう。
なんでよ、投下してくれよ>エロパロ
流れとか気にせずガンガン投下しちゃって全然OKでしょ。
とぎれとぎれに投下してる人はそのくらい構わないだろうし。
たしかに今のエロパロスレは書き手からすれば投下しにくい雰囲気なのかもしれないな。
いやあの人が悪いとかじゃなくて結果的にって意味で。
完結するまで待ってから――と、投下の期を窺っているうちに嫌気が差して消しちゃったんよ。
30kあったから、今思うとかなり勿体無かった。
あの人のは長期連載になりそうだからなあ、完結まで待ってちゃあ。
それにしても消したのか・・・ちなみにキャラは誰?
おにぎりだった。漫画の打ち合わせで塚本家に泊まり、
色んな経緯を経てテンパった八雲が播磨を押し倒す。
その様子を天満が隠れながらじっくり観察し、自慰をするという話。
初めて匁の人を憎いと思った。
いやあのさ、エロパロはエロパロで別にいいんだけどさ、
……ここで話さないでください
356 :
Classical名無しさん:05/07/04 21:46 ID:/i0.aVz.
なにこのふいんき(←なぜか変換できない)
そんな言葉はないよと釣られてみたり
僕としては時間をかけてもいいから自分が納得出来る物を書いて欲しいと思う。一読者の意見なんで気にしないで
ごめんなさい
>>353 マジで書き直してくれまいか?
パパ裸で待ってるから!
自分で話を振っておいて申し訳ないですが、
>>353の話はここまででお願いします。
クレーム通りスレ違いな上、ここへ投下し辛い状況になったら本末転倒ですし。
肝心の話は、とりあえず連載の長編を完結させた後で書こうかなと思います。
今は大スランプ中で、当分投下は無理そうですが。
ここへ投下しづらいって。あんな書き方したら、今エロパロで投下してるというその人も
投下しづらくなるとか考えねーのか?
まあそれが目的なんだろうが。何を他人の投下を言い訳にしてんだ。揚句の果てに
自分で荒れる話題振って、勝手にここまでですって・・・。よくもそこまで自分本位に
生きられるな。馬鹿じゃねーの?
マターリしようよ
アモルさんそんなにジラさないで下さい
餡氏の新作が見たい。
七夕ssはまだか?
371 :
Classical名無しさん:05/07/07 19:17 ID:2h6jcpSk
アソミコ
372 :
337:05/07/07 19:44 ID:W1RFVu9o
一応テストもかねてうpしてみました。
興味のある方はエロパロ板保管庫のうpろだにあげたので、落としてみてください。
「今帰ったぞ」
「帰ったぞじゃねぇっ! どこほっつき歩いてやがったんだ。おかげでまだ飯も……」
「ふうん、わざわざ絃子さん待ってたんだ」
「……」
「あー、今『なんでコイツまでいるんだ』って顔したでしょ」
「してねぇよ。っつーかそれよりなんなんだよそれ」
「笹」
「見りゃわかるっ!」
「だからみやげだよ、みやげ。喜べ、今日は七夕だぞ」
「……絃子、お前酔ってるだろ」
「そんなわけないだろう?」
「酔ってるヤツほどそう言うんだよ……」
「――そういうことで、あとよろしくね。拳児君」
「ん、悪いね葉子、送ってもらって」
「なっ!? ちょっ、待ってくれ、俺にコイツの面倒みろって」
「それじゃおやすみー」
「……逃げやがった」
「どうした? ぼさっとして」
「誰のせいだと思ってんだよ」
「さあ。さて、それじゃ早速願い事でも書くといい。私が直々に取ってきてやった笹だ。きっと叶うぞ」
「それ以上うさんくせぇもんがどこにあんだよ……」
「なにか言ったか?」
「なんでもねぇ。だいたいな、わざわざするような願い事なんて」
「ない、か。じゃあ塚本君のことは構わないわけか」
「……テメェ」
「そんな怖い顔をするな、冗談だ。君のことだからな、どうせ変に律儀に自分の力だけでどうにか
してやる、とでも思ってるんだろう?」
「……」
「今度は余計なお世話、か。じゃあこれはどうだ、『今すぐここを出ていきたい』。そうすれば
しょっちゅう私と顔をつきあわせなくてもすむし、簡単に叶えられ――」
「……なんだよ」
「――そうか」
「だからなんだよ」
「いや、いつか君もここからいなくなるんだと思ってね」
「そりゃ当たり前だろ、いつまでもいられるかっつーんだ」
「するとまたあの静かな生活に戻るわけか」
「あん?」
「一人じゃね、ほんの少しばかり広いんだよ、この家は」
「……」
「だがまあ、この騒がしい生活とさよなら出来るなら悪くない」
「……おい」
「というわけで、だ。私としてはこの願いを勧めるぞ。今この瞬間にすぐ叶えてやろう」
「うるせぇ。んなことどうでもいいから飯作れ飯。今日の当番は俺じゃねぇんだ」
「私はもう食べてきたから自分でどうにかしろ」
「テメェいい加減に、」
「と、いいたいところだが、まあいい。せっかくの七夕だしな、それを君の願い事として叶えてやろう」
「……嬉しくねぇ」
「代わりに来週は全部君が作ってくれよ、拳児君」
「んなのありかよっ!?」
ぐだぐだにおわる
七夕祭りの喧騒の中。
どういうわけだか二人で祭りを見て回っている播磨と愛理。
「なんでこんなヤツと」という憮然とした表情を浮かべている播磨と
「しょうがないわね」という態度を取りながらも嬉しさを隠し切れていない愛理。
「ヒゲ、あれナニ?」
「綿飴だ。食ったことないのか?」
「ないわ。……買って?」
「なんでオレがオメエに買ってやんなきゃなんねーんだ?!」
「さっき胸触ったじゃない!」
「わざとじゃねえ! 押されてしょうがなかったんだ!」
「…酷い。まだ誰にも触らせたことないのに…
私の身体、汚されちゃった…」
よよよ、と泣き崩れるフリをする愛理。
「わかった! わかったから泣くのやめろって!」
どういうわけだかさっきから愛理に対して平静ではいられない播磨だった。
水色地に蝶の柄の浴衣。いつもと違ってアップにして纏めた金髪。
襟足から覗く後れ毛とあまりに白い首筋が播磨の視界に入るたびに
播磨の心臓は激しく跳ねる。
「うわっ、甘〜い!」
なんだか子供みてえだな。
無邪気に驚きながら喜んでいる愛理を見て播磨はそう思ってしまう。
綿飴を食べる赤い舌。ほのかに艶のある唇。そんなところについ視線が行ってしまい、
愛理に女を感じてどきまぎしている播磨だった。
そういえばさっき触っちまったお嬢の胸、ふわっとしていい感触だったな。
誰にも触らせたことがないとか言ってたか?
けっこうボリュームあったし、じつはけっこう胸あるのか?
「ヒゲも食べたいの?」
気が付くと下からお嬢が自分の顔を覗き込んでいる。
自分がお嬢に見とれていたということを信じられなくて急に視線をそらす。
「い、いや別にイラネエ。おめえが喰えって」
「多いから食べきれないわ。あげる」
半分以上残された綿飴を押し付けられてしまった播磨。
しょうがなく綿飴をちぎって口に運ぶ。
口の中で溶ける甘い綿飴にかすかに香るなにかの匂い。
お嬢の襟元から立ち上ってくるのと同じ香りだ、と播磨は気付いた。
――いい匂いだな。香水か?
ちょっぴりどきどきしている自分に気付いてはっとする播磨。
――何お嬢にときめいてんだ!?俺は天満ちゃん一筋じゃねえか!ごめん!天満ちゃん!
――ダメな俺を許してくれ!
そういえば、と先ほど人ごみではぐれた天満ちゃんはどこかにいないかとあたりを見回す播磨。
播磨はべつにお嬢と二人で祭りを見に来たわけではなく、いつものメンツで七夕祭りに
来たものの、人出の多さではぐれてしまっていただけだったりする。
そんなわけで愛しの天満ちゃんはどこかと人ごみから一個高い頭であたりをきょろきょろ
探す播磨。
・・・そしてそれを邪魔するかのように「あれは?」「ヒゲ、あれ見てアレ!」と
ナニが珍しいのか、日本の祭りを満喫している様子の愛理。
見物客でごった返す参堂を歩く二人。
そんなとき、播磨の掌に滑り込んでくる小さな手。
驚いて目をやると愛理が手を繋いできている。
――うわ。ちいせえ。女の手ってこんなにちっこいのか?
――それにすげーやわらけえ。すべすべだし。
ヘンに感動している播磨に愛理が言う。
照れているのか、視線を逸らしながら。
「……またはぐれたら大変でしょ?」
拒絶されるのを恐れているかのようにおそるおそる。
繋いだ手から流れてくる感覚に播磨は途惑っていた。
骨が痒くなるような、何かが疼くような微妙な感覚だ。
「……ああ。…そうだな」
生まれて始めて感じる、なんとも名状しがたい感覚に播磨は離せとも言えずに
ただ手の中の小さくて柔らかな掌を強く握り過ぎないようにそっと握りつづけるだけだった。
本殿へ登る階段はさらに混んでいる。階段は人で埋まっており、朝のラッシュアワー並だ。
ぐっと播磨の身体に密着する感触。愛理は播磨の腕を抱くようにして、完全に腕を組んで
歩いている状態だ。
播磨のひじあたりにときどき触れる柔らかいふくらみ。
これって胸じゃねえか、と気付き播磨の動悸がさらに激しくなる。
「……」
「足元、気つけろよ」
「…うん」
さっきまで散々話し掛けてきていたのが嘘のように、愛理は黙ったまま階段を登る。
立ち上ってくる愛理のいい匂いが播磨の脳をショートさせる。
――あ、やべえ。なんか、ナニしてんだろ俺。でもお嬢ちっこくてやわらかくてイイけど俺ナニを
すっかり思考がループしている。
「何をお願いすればいいの?」
人波に流されるままに二人は賽銭箱の前まで腕を組んだまま歩いてきてしまった。
「別になんでもいいんじゃねえか」
「ふーん。そうなの」
愛理はそう言うと播磨と組んだ腕を離した。
播磨は開放感と同時になんだか大事なものを喪ったような感覚を覚えてしまう。
――なんだ?なんで残念な感じがするんだ?わかんねえ。
賽銭を放ってなにやらごにょごにょと小さくお願い事を言う愛理。
小さな呟きは喧騒の中、誰にも聞こえない。
「ヒゲは?なんかお願い事あるんじゃないの」
「…俺は別にいいんだ。ほら、行くぞ」
播磨はそういって愛理の手を取って歩き出す。
――そういえば、なんで俺はコイツと手を繋がなきゃいけねえんだ!?
播磨は人込みを避けてそのまま本殿の横の方へと歩き出す。
――ヒゲ、力…すごい強い…
――このままどこかへ…連れてかれちゃうのかな…
愛理は播磨の意外な行動に驚きながらも逆らいもせず。
ただ播磨に引かれるままついていく。
――お嬢の手ってやわらけえ。
――それにしても俺はナニをしてんだ?
――このままだと…
「愛理ちゃーん!」
能天気な友達の声に我に返る二人。
弾かれたように手を離す。
「て、天満? ど、どこ行ってたのよ?」
「いやー、イカ焼き買おうとしてたら愛理ちゃんと播磨君がいなくなってるんだもん、
びっくりしたよー」
「二人でお参りしてたのか? 仲いいじゃん」
と肘で小突きながら美琴がからかう。
「そ、そんなことないわよっ!」
「やけに強く否定するのね」
・・ヒートアップする天満たちをよそ目に、俺はいったいナニをしようとしてたのだろう?
と自分の手をじっと見つめながら呆然とする播磨だった。
――もしあのとき天満ちゃんに見つからなかったら?
――もし天満に声を掛けられなかったら…ヒゲは…どうしてたのかな…
播磨拳児と沢近愛理の二人が同時に同じ疑問を抱えているとはお互いつゆ知らず・・
・・・・落ちのないまま終わる。
七夕祭りの人込みを見て思いついたので思わず書いた。
お嬢の浴衣が書ければそれでよかった。
今は反省している。
反省してるなら
死ね
どういうわけだがとか意味不明。
氏ね。
>>383 ちゃんと後で理由でてるだろ
まぁ確かに「どういうわけだが」は意味不明だな
氏ね
どういうわけだがとか意味不明。
スネ。
>382
わかった。
貴様を頃して俺も氏ヌッ!!
>>381 播磨がエロゲ主人公そのまんまになっててだめだ
>>381 ネタとしては悪くないと思う。文章直して展開もうちょっとひねると良作になったんじゃないかな。
次に期待しておく。
>>381 俺は良かったと思う。展開が少しありきたりだから改良する余地ありです。
氏ね
まんこ
落ち着け
落ち着け
さて、超姉をキボーンしている漏れがいるわけだが。
自分もノシ
>>381 播磨がキモイ。
よくもまぁ、こんな魅力の無い糞キャラに仕立てたもんだ、と感心した。
普通ならつまらない程度で終わるんだが、お前のSSは気色悪いってとこまで逝っちまってる。
書いてすぐ投下するんじゃなく、少し時間を置いて冷静になってから見直すなりした方がいいんじゃないか?
>>396 言いたいことは分かるしかなり同意なんだが、もうちょっと言い方考えたほうが
いいんじゃないかと思ったりするぞ。
おいおい、荒れだしたゆ。
職人叩き荒らしが粘着したか?
>>381 GJ
旗じゃないけど、萌えた
400 :
Classical名無しさん:05/07/08 23:13 ID:wkSOajYw
俺もおにぎりだが萌えた。
叩かれるかフォローされるか…ていうSSなわけね
喰うか喰われるかさ!!
沢近死ね
404 :
アモル:05/07/09 01:49 ID:uIZhvtls
やたらジラしてしまってごめんなさい。
というわけで後編投下します。
昼休みになった。
生徒達は束の間の自由を満喫するため動き出した。ある者は購買のパンを買いに飛び出し、
ある者は気心の知れた友人達と集まって一緒の昼食をとる。
そしてここでもまた、
「八雲―。お昼食べよー。」
サラが播磨(in八雲)を誘っていた(教室内なので普段通りの喋り方)。
「あー…うん。」
少しずつ八雲の真似に慣れてきて、それほどの不自然さも無くサラに返答した。
「あ、そうだ。ごめん、今月金欠なんだ。」
その時財布の中身が厳しいを超えてスカスカなのを思い出し、播磨は断ろうとした。
それを聞いてサラが小声で播磨に教える。
『大丈夫ですよ、八雲は毎日お弁当持って来てますから。』
『…あ、そーか。今は妹さんだった。って、そういえば妹さんはどうすんだ?
俺は弁当なんて持ってきてないし、さっき言った通り金も無いぞ。』
『そうなんですか?うーん…、あ、なら一緒にお弁当を分けて食べましょう。』
『そうだな、俺一人で弁当食って妹さんにひもじい思いをさせるなんざ出来ねえ。
じゃあ連絡入れねえと。今頃財布の中身見てガックリきてる…』
そこまで言ったところで、播磨ははっとあることに気がついた。
(待てよ、財布…?財布の中には…)
「どうしたの?やく…」
「や、やべえ!早く妹さんに知らせないと…!」
その途端、播磨は目を丸くしているサラを尻目に真っ青になって物凄いスピードでメールを打ち込み、送信した。
その頃、2-Cでは、八雲(in播磨)が昼食をどうしようかと思案していた。
いつも通りに鞄から弁当を取り出そうとしたところでこの身体が播磨であることを思い出したのだ。
購買にパンを買いに行こうかとも思ったが、人の財布を勝手に使う事に躊躇いを覚え、
昼食を抜きにしようかと思ったところで他人の身体に食事を与えない事にまた躊躇い、
板挟みの状態になったのだ。
(…播磨さんに相談しよう。)
そう決めて携帯電話を取り出した時、丁度播磨からメールが届いた。
[弁当一緒に食べようぜ、屋上で。]
「あ、そうか…。一人で食べる必要はないんだ…。」
播磨に承諾のメールを送って、携帯電話をしまい屋上に向かう。
教室を出た所で、ややおぼつかない足取りで歩く花井とすれ違った。
「あ…」
花井は八雲に意識を向ける事は無く、そのまま教室に入っていった。
八雲は、手が回らなかったとはいえ花井の見舞いに行かなかった事を申し訳なく思ったが、
屋上で待つ友人達を思い、再び歩き出した。
播磨の持ち物である財布の中には、太陽のように温かい笑みを浮かべた天満が、写真の中に佇んでいた。
ガラリと教室の扉が開き、花井が教室に入ってきた。
「お、目ェ覚ましたのか、大丈夫か寝てなくて?」
「ああ。大丈夫だ。」
美琴が少し心配気な顔で花井に話し掛けた。花井はそれに返事をしてから美琴に、
「しかし、何で僕は保健室で寝ていたんだ?何か顔も頭もズキズキするんだが…」
と不思議そうに問い掛ける。
「覚えてないのか?」
「ああ、校門前まで来たのは覚えているんだが、気がついたらベッドの中だった。」
花井は先程の連続攻撃で脳を縦横に揺さぶられて直前の記憶が飛んでいた。
「うーん、脳震盪起こしたみたいだな。念の為病院で診てもらった方がいいんじゃねーの?。」
「まあ、大丈夫だろう。それより一体何が起きたんだ?脳震盪?頭を打ったのか?」
道場で打たれ慣れた感覚から、大して問題はないだろうと自己診断し、美琴に返答を促す。
「いや、あたしもあまり詳しい事は分からないんだ。今高野が調べに行ってるよ。」
「高野君が?」
「信憑性の低い噂ならあたしも聞いてるけどね…。」
「噂?一体どんな噂なんだ?」
「ああ…何でも八雲ちゃんにボコボコにされたとか…。」
そう美琴が答えた、もっとも言っている本人が信じてはいないが。
そしてそれを聞いた花井も笑って受け答える。
「ハッハッハッ!!そんな訳がないだろう!八雲君が他人に暴力をふるうはずが…」
しかしその時、
「そうでもないみたいよ。」
晶が教室に戻ってきて花井の言葉を途中で遮った。
「そうでもないって…まさかあの話が本当だった、なんて言い出す気じゃないだろうな?」
「そうよ。ヒゲじゃあるまいし、幾らなんでも八雲がそんな事するわけないでしょう?」
当然だが、美琴も愛理も全く信じてない様子で晶を見た。
「…天満は?」
「烏丸君と一緒にお昼してるみたいよ。何?天満に聞かれるとまずいような話なの?」
「ええ。もし聞かれたら私にも何が起こるかは想像がつかないわ…。」
珍しく少し緊張した面持ちで答える。それが伝わったか、美琴も少し声を固くして続きを促した。
「一体何が起こったってんだ?」
「私も俄かには信じられない話なんだけど…」
そう前置きしてから、晶は調べてきた事を話し始めた。
「まず、花井君が玄関にいた八雲を見つけて走って行ったの。ここまではよくあることだわ。」
「まあそうだな、いいか悪いかは別として。思い出せたか花井?」
「いや、全く…。くっ…八雲君との事を、僕が忘れてしまうとは…!」
「それで、続きはどうなるわけ?」
愛理が先を促す。
「それで八雲が突っ込んでくる花井君に一歩踏み出して…」
「な、何っ!八雲君、ついに、ついに僕の想いが君に届いたのか!?」
気絶する前と全く同じような事を言う花井。
しかし晶の続けた台詞は、無情にもそれを切り捨てるものだった。
「花井君に対してカウンターの右ストレートを放ったそうよ。」
「「「…は?」」」
3人の声が、見事にハモった。構わず晶は話を続ける。
「それで、グラリと来た花井君に対してアッパーで顎を跳ね上げて、最後にハイキックでフィニッシュ。」
「………」
「………」
「………」
「晶、ギャグはいいから。…で、何が起きたの?」
「ギャグじゃないわよ。」
「いや、ありえねーだろそれ。」
「八雲君がそんな事をするわけがないだろう!」
「事実よ。玄関の前だから結構な数の目撃者もいたわ。連続技も複数の証言からの再現。」
「「「………」」」
沈黙を最初に破ったのは美琴だった。
「まあ、それが事実だとして、だ。何だってそんな事になる?」
「そうね。あの八雲が苦手な相手だからっていきなり殴るなんて考えられないわ。」
「当然だ!って沢近君、苦手とはどういう意味だ?僕が八雲君に敬遠されているとでも?」
自覚の全く無い花井の発言は全員に無視された。
「どう考えても八雲のキャラには合わないのは確かね。けど、情報を集めていたら更に恐ろしい事が判明したわ。」
「恐ろしい事?」
「そう。実はこれが天満に聞かれたくなかった事なんだけど…。」
「聞かれたくない、って今の話よりも凄い事なの…?」
愛理の言葉に晶は頷き、そして、恐るべき言葉を口にした。
「それで、倒れている花井君を「お前のせいでキズモノになった」と言って蹴りつけて、
それをサラが必死に押し留めていたの。あ、サラは八雲の友達ね。」
「「「な、何ィッ!?」」」
話を聞いた全員が驚愕した。確かに天満にはとてもじゃないが聞かせられない。
「き、キズモノっておまえ…!」
「ち、違う!ぼ、僕が…僕がそんなことをするわけがないだろう!」
「そ、そうだよな…。」
必死に説得しようとする花井。しかし高野がそこに更なる追い討ちをかける。
「残念だわ…、自分に脈が無いからといって手篭めにしてしまうような人だったなんて…。」
「た、高野君!いい加減なことは言わないでくれ給え!僕の気持ちは純粋でプラトニックなものだ。
天地がひっくり返ったってそんなことがありえるものか!!」
「ま、まあ幾らなんでも真面目が服着て歩いているようなお前がそんな事するわきゃないよな。」
「そうね、どう考えても不自然だわ。」
「わ、分かってくれたのか…君達…。」
美琴と愛理が信じてくれた事で、花井は感涙に咽ぶ。
そして晶も、そんな話を鵜呑みにしていた訳ではない。
「まあ花井君をからかうのはこれ位にして…。」
「…おい待て高野。今までのが冗談ならやりすぎじゃねーのか?」
流石に美琴の表情が厳しくなる。
「いえ、こう言う事が噂になっているのは事実よ。それに、キズモノ云々は分からないけど、
八雲が花井君を倒したのはまず間違いないわ。」
そう言って晶は自分の話を締めくくった。
全員が、うーん、と頭を抱える。
「だ、駄目だ。あたしには理解不能だ。一体なんで八雲ちゃんがそんな事を…。」
「私も降参。晶、答え教えて。」
「…愛理、私は何でも知ってるわけじゃないわよ。」
しかしその時花井はある考えに至った。
「そ、そうか!」
「な、何だ花井、何か心当たりでもあったのか?」
突然の花井の叫びに驚いた美琴が花井に訊ねる。
「八雲君が僕を殴った、そしてキズモノにされたという発言、これらから導き出される解答はただ一つ!」
「何なんだそれは?」
「すなわち!八雲君は何者かにキズモノにされ、守ることが出来なかった僕を殴らずにはいられなかったのだ!」
播磨級の変化球解答を導き出した花井。それを聞いてガクッと崩れる美琴と愛理。
「な、何だその無茶な解答は…?」
しかし美琴の突っ込みは花井には届かない。花井は、今自分が言った台詞で怒りを爆発させたのだった。
「おのれ…!八雲君を傷付けるとは…!誰だ、誰がこんな事を!?…播磨…か?
そうか、あの男だな。間違いない…!許さん…絶対に許さんぞーーーーーー!!」
一人で結論を出して教室から飛び出そうとする花井。
しかし走り出そうとした矢先に晶に足を引っ掛けられ、盛大にすっ転んだ。
「な、何をする!?止めてくれるな、僕は八雲君の仇を…!」
「八雲と播磨君は今朝一緒に登校してたそうだからそれはないわね。」
それを聞いた花井はガックリと膝をつき、愛理は「ふーん…。」と面白くなさそうに相槌を打った。
「とにかく、事情がはっきりするまでは天満には内緒にしておいたほうがいいわ。」
高野がそう結論付けた。他の3人も依存は無く、一斉に頷く。
「しかし噂になってるんだろ、どーすんだ天満の耳に入ったら?」
「その時はその時で仕方が無いわ。しかし、今まで知られていないから黙っていれば隠し通せると思う。
でも真相を解明しないと根本的な解決はできない。」
「確かに突然の攻撃といいキズモノ云々といい分からねー事だらけだからな。
高野、そう言えばお前八雲ちゃんに直接聞いてないのか?」
「さっき1-Dに顔を出したんだけど、八雲はいなかったわ。」
言ってから、ふと晶は考えた。
「考えてみれば、播磨君も朝から少し様子がおかしかったわね。」
「そういや変に余所余所しかったな。なあ愛理?」
「そうね、おまけにやけに丁寧だし。」
「…ふむ。一緒に登校してきたようだし、何か知っているのかもね。」
そう言って播磨の席を見たが、そこは既にもぬけの殻だった。
「どこへ行ったのかしら。この時期だと水飲み場…?」
「ヒゲならさっき、メール見てからどこかに行ったわよ。」
愛理がさりげなく言った。しかし晶はそれを見逃さない。
「愛理、よく見てるのね。」
「…たまたま目に入っただけよ。」
「とすると、屋上の確率が高いわね。」
「そうなのか?」
「ええ、播磨君がメールを見てから動く時は、大抵屋上で八雲と会っている時ね。だから二人共いないのね。」
ここは屋上。
八雲が屋上に来ると、既に播磨とサラは弁当を広げて待っていた。
「すいません、お待たせしましたか?」
「いや、別に。それより聞きてーんだが…。」
「……?」
「…えーと、財布の中身、見たか?」
「え?…いえ、見ていません。」
「そ、そーか!い、いや、見てねーなら別にいいんだ。飯にしようぜ。」
量が足りないので3人でサラと八雲の弁当を食べようと決めて、さあ食べよう、という所で3人はあることに気付いた。
「箸が足りない…。」
「そういやそーだな。」
今、サラと播磨の手には箸があるが、八雲の手には無かった。その時サラがぽむっ、と手を叩き、
「そうだ!私と播磨先輩でおかずを取って八雲に食べさせましょう!」
と提案した。
「え?あの…サラ…それは……」
「そだな、それでいーか。いいよな妹さん、それで。」
「あ…あの………ハイ…。」
八雲は恥ずかしいので断ろうとしたのだが、播磨があっさり決めてしまったのでなし崩し的に頷いてしまった。
「はい、あーん。」
サラが自分のおかずを摘み上げて八雲の顔の前に出す。
「…………………………」
どう対応していいか分からず身動きがとれない八雲。
「あーん。」
「…………………………」
天使のような笑顔を浮かべて待つサラに、八雲は暫く迷っていたが、結局、
「…………あ、あーん。」
と顔を真っ赤にして口を開けた。開けた口の中におかずが放り込まれる。
「おいしい?」
「………うん。」
笑顔で訊ねるサラに、八雲は恥ずかしさで味も良く分からないままに答える。
「よし。んじゃ俺も…。」
今度は播磨が八雲の弁当箱から一品摘み上げる。
「ほれ、あーん。」
「………あーん。」
再びおかずが口に入る。八雲は顔を真っ赤にしたままそれを咀嚼した。
そんな光景を、屋上のドアからこっそりと覗き込む人影があった。
晶、美琴、愛理、花井の4人である。
「予想以上の光景が展開されているわね…。」
「…なんつーか、播磨もやるもんだなー。」
「…………………………………………………………」
「…………………………………………………………」
晶は表向きは事の真相を直接聞くために、本心では冷やかしのためにここに来た。
美琴は単純に興味本位で、花井は播磨を問い質すためである。
晶にとって予想外なのは、愛理がここに来た事だ。意地でも来ないと思っていたのだ。
愛理は、付き合ってないという二人が、皆に隠れて一体何をしているのかが知りたかった。
播磨に近付きたいという淡い思い、その自分の気持ちを確認するためでもある。
しかし折角勇気を出してやってきたのに、思いっきり出鼻を挫かれてしまった。
視線の先では、播磨は美人の後輩二人に、交互に弁当を食べさせてもらっていた。
(何よ、デレデレしちゃって………!)
ドアの淵を掴む手に力が篭もる。単に八雲が恥ずかしくて赤面してるだけなのだが、
端から見ていれば愛理が思っている通りにしか見えないだろう。
晶はハンディカメラを取り出して撮影しつつも、花井が暴走して台無しになるのを警戒していたのだが、
どうもショックの方が大きかったようで、
「な、何故だ…八雲君…、何故あんな男と…、おまけに何でサラ君と一緒に………」
ガックリと両手を地面に着き、項垂れていた。
「しかし何を話しているのか聞こえないのが惜しいわね…。」
「どうする、聞きに行くのか?元々それが目的で来たんだろ。」
「いえ、面白そうだからこのまま見てるわ。」
あっさり晶他2名(1名は死亡)は目的変更、システム出歯亀モードに移行した。
|д゚)オニギリ?
「…で、だ。妹さん、どうするよこれから?」
食事も終わり、播磨は本題に入った。この現状は早く打開しなければならないのだ。
「どう、しましょう………?」
「うーん、単純に考えて、ぶつかって入れ替わったのなら、同じ様にぶつかって戻れるんじゃないかな?」
サラが単純明快な解決手段を提案する。
「まあ、普通に考えりゃな。しかし、あれだけ強烈なぶつかり方して戻るのは最後の手段にしてえ。
俺の身体はともかく、この妹さんの身体はそんなに頑丈じゃねえからな。」
「確かに………。」
それなら、と暫く考えて、いい笑顔で別なアプローチを打ち出した。
「じゃあ、昔話にあるように、呪いを解くのはお姫様のkissで。」
「サ…サラ…、私と播磨さんは、その、そういう関係じゃ……」
「八雲、もしかしてまだkissしてないの?」
「だ、だから…それは…違……」
八雲は頬を薄く染めて播磨の方を向き、助けを求めたが、
「くそう…何で…何で誰も信じてくれねえんだ………。」
播磨はいじけていてそれ所ではなく、誤解を解くことは叶わなかった。
結局、妙案は思いつかず、放課後また集まって考えよう、という事にして八雲と播磨達はそれぞれの教室に戻っていった。
それから時間は過ぎていき、放課後になった。
播磨達は特に問題も無く過ごしていたが、八雲の方は、屋上から戻ってからというもの
機嫌を損ねた覚えは無いのに愛理にやけにきつく当たられてしまった。
八雲は理由がわからず戸惑っていたが、愛理の迫力にそれを聞く勇気も持てず黙って従っていた。
ホームルームも終わり、屋上に行こうと席を立とうとしたら、近くに座っていた金髪を逆立てた男が声をかけてきた。
「播磨さん、帰りにゲーセン寄っていきましょうよゲーセン。」
「え…?」
名前はわからないが、この人は播磨の友人らしいとわかった。しかし名前もわからず、約束もあるので、
「ごめん、用事があるから………」
と断ろうとした時、
「おい播磨、ちょっとツラ貸せ!」
一人の男が現れた。花井や播磨よりもさらに背が高く、髪の毛を剃り上げた強面の男だった。
「て、天王寺!」
怯えた様子で金髪の男が後ずさる。この人は天王寺というらしい。
何か播磨さんに用事があるのかな、と八雲は思ったが、ボロを出すわけにもいかないので、
「あの、用事があるからまた今度に………」
と断ろうとした。しかし、
「テメエ、何度言ってもすっぽかしやがって、何様のつもりだ!?」
「え…?」
「今日という今日は相手をしてもらうぜ。」
八雲には待たせている人がいる。しかしどうやら随分前から約束していることがあるようだ。
「あの、すぐに終わるようなことですか…?」
そう訊ねると、天王寺は、
「へっ、何ビビってやがんだ、すぐ終わらせてやるよ。」
笑ってそう答えた。
「………わかりました。少しなら付き合います。」
「…そうか、じゃあ来な。」
「何処へでしょうか?」
「体育館の裏だ。」
そう言って天王寺は歩き出した。八雲もそれについて行く。
歩きながら、八雲は播磨に、待ち合わせに遅れる旨のメールを送った。
播磨の(厳密には八雲の)携帯がメールの着信を知らせる。
既にサラと共に先に屋上へ来ていた播磨は、携帯を取り出して内容を確認した。
[天王寺さんという方が用事があるそうなので少し遅れます。]
「ふーん、天王寺と約束ねぇ、ってちょっと待て!?」
そこに書かれている内容に播磨は驚愕の表情を浮かべた。
天王子が自分に用事など、ありえるのは十中十で果し合いしかない。
「や、やべえ、止めねえと!」
「?どうしたんですか播磨先輩?」
播磨が駆け出す。既にサラの声は聞こえていない。そして全力疾走しながら八雲にメールを返信した。
そして2-Cでは、真っ白に燃え尽きている花井を見て、天満が美琴に声を掛けていた。
「どうして今日は花井君元気ないの?昼まで保健室にいたみたいだし。」
「あ、ああ、八雲ちゃんと播磨が一緒に弁当食ってるの見てさ、ガックリきてるんだよ。」
危険な部分から話を逸らすため、あえて印象に残るような事を言った。
「あ、そうなんだー!うーん、花井君には悪いけど、やっぱり八雲は播磨君と……」
話を逸らす事に成功したと思い、美琴がほっとした瞬間、その思いは打ち砕かれた。
「災難だねー花井君。朝方八雲ちゃんに蹴り倒されたばかりか、そんなラブラブなのを見せ付けられるなんて。」
「へ…?」
横で聞いていたクラスメイトの冴子の全く悪気の無い一言で、美琴は青ざめ、天満は固まった。
私怨?
「どおゆうこと…?」
「い、いやあのこれはな天満……」
必死に誤魔化そうとする美琴の苦労など露ほども知らず、
「へ?知らないの塚本さん?もうみんな知ってるよ?」
あっさりと冴子が肯定する。
「そ、そんな、八雲がそんな事をするわけ………」
「でも、見た人も沢山いるし、間違いないよ。」
「…花井君、本当なの!?八雲が、八雲がそんな事……!」
天満は信じられない面持ちで、未だ机に突っ伏している花井の体を揺さぶって詰問する。
そして、花井から戻ってきた返事は、
「何故…何故だ…八雲君……、何故こんな事を………」
完全に独り言だったのだが、その言葉の断片は天満に信じ込ませるには十分だった。
「…………………………………………………………」
「あ、あのよ天満、これにはきっと事情が………」
「…私、八雲探してくる!」
「お、おい!」
天満は駆け出した。事の真相を八雲に問い質すという使命に燃えて。
「うーん、まあ、あのキズモノ云々の話が聞かれなかったからいいかな…?」
美琴はそう独り言ちた。
二人の男女は、姿の違う一人の女を探し、学校中を駆け回る。
播磨は体育館裏へと向かっていた。敷地内で人目につかず、喧嘩に最適な場所。
学校内でやりあうのはいつもそこだ。
播磨は靴を脱ぐ時間も惜しんで、上履きをはいたまま玄関から飛び出し、そのまま体育館裏へ走っていく。
その僅か十数秒後、天満が玄関に飛び込んできた。教室にいなかったので靴を確認しに来たのだ。
「まだある……。八雲ーーーっ!どこにいるのーーーーー!?」
そして再び天満は校舎内を探しに行った。
メールの着信音が鳴り、八雲は歩きながら内容を確認したが、そこにはたった一言「逃げろ」としか書いていなかった。
意味が解らず考えながら歩いていたが、やがて体育館裏に辿り着いた。
「あの、それで何をすればいいんでしょうか…?」
八雲は用事が何なのかを天王寺に訊ねたが、
「あん?決まってんだろ、対マンだコラァ!」
その天王寺の返答に八雲は言葉の意味が解らず(…怠慢?)などと考えた。
「いくぜ!」
しかし、そんな八雲はお構い無しに、天王寺は突進して一撃を放った。
八雲は何が何だかわからないままに辛うじて天王寺の拳を避ける。
「ど、どうして………?」
「あん?何言ってやがんだ。俺とお前がやることは一つしかねーだろが!」
言いながら天王寺が連続で攻撃を放つ。八雲はそれを避けながら、ようやく先程のメールの意味を理解した。
八雲は何とか逃げようとしたが、喧嘩慣れした天王寺は立て続けに攻撃を放ちそれを許さない。
それどころか逆に八雲を追い込んでゆき、とうとう壁際に追い込んだ。
「何だ、今日はちょこまか逃げ回りやがって…。」
「あ、あの、お願いです………。やめて下さい………。」
八雲は初めて強烈な敵意に曝され、怯えを隠すことも出来ない。
「チッ…、今日のテメエは拍子抜けだ……!だが、容赦なんかしねえぜ。」
「天王寺っ!!」
痛烈な叫び声が響いた。天王寺と八雲が声の方向に振り向くと、こちらへ向かって走ってくる一人の女の姿があった。
(あれは…私…?違う、そうじゃない。播磨さん!)
「あのーお嬢さん?ここは危ないからあっちに行ってて………」
天王寺がにこやかに播磨を追い返そうとした、が、播磨がそんな事に耳を貸すわけがない。
笑顔を張り付かせた天王寺の顔面目掛けて、播磨は電光石火の飛び蹴りを叩き込んだ。
「ぶはぁっ!?」
意表を付かれた天王寺はまともにその一撃を貰い、後ろに仰け反った。
「ウォラァァァァァッ!!」
播磨が怒涛にして緻密な連続攻撃を放つ。天王寺が顔を庇えば肝臓に向かって肘を打ち込み、
下がろうとした所に膝を狙ってローキックを放つ。
「お、おいちょっと待て!?何であんたは俺を殴るんだ!?」
「うるせぇっ!女に手を上げやがってっ!」
「お、俺はそんなことはしないって!何かの勘違いだ!」
天王寺の言葉には構わず、播磨が、
「妹さん!早く逃げろ!」
と視線を天王寺から話さぬままに叫ぶ。
「で、でも………」
「行けって早く!」
八雲は暫く躊躇していたが、自分がいても足を引っ張るだけだと思い、身を翻した。
(助けを呼びに行こう………!)
「チッ、逃がすか!おい、退いてくれ!」
「退くわきゃねーだろ!」
「くっ!」
天王寺は仕方なく、播磨に掴みかかった。播磨はその手を避けて、膝裏を蹴りつける。
しかし天王寺はバランスを崩しながらも強引に播磨の襟首の辺りを掴み、そのまま壁に押し付けた。
強く引っ張ったため、ワイシャツのボタンが幾つか千切れ飛ぶ。
「し、しまった!」
「おい播磨!逃げたらこの女がどうなるかわかんねーぞ!」
天王寺が逃げる八雲の背中にそう呼びかける。その言葉に八雲が振り向いた。
八雲が振り向いたのを確認してから、天王寺が播磨に顔を近づけて小声で、
『あんたには何もしないから安心しな。』
と八雲に見えないようににこやかに笑って言う。
「か、顔を寄せんな気色悪りー!妹さん、構わねーから逃げろ!」
その時天王寺の目線が、播磨(八雲の体)の開いたワイシャツからチラリと覗いた胸の谷間に釘付けになる。
「おぉぉっ?」
八雲には、播磨が壁際に追い詰められ、今にも押しつぶされそうになっている様に見えた。
その瞬間、八雲の心からは怯えも迷いも消えていた。
(播磨さんを助けないと…!)
八雲は未だにこちらから視線を外している天王寺に向かって、形振り構わずに突っ込んでいった。
そして目標もはっきり見ずに、そのまま体当たりでぶつかっていった。
視線もきちんと向けずに突っ込んだ八雲の体は、天王寺と播磨を同時に吹っ飛ばして、そして自身も、
その衝撃で意識を失った。
「痛っててててて……………!」
播磨がぼやける頭を軽く振りながら身を起こす。八雲が突っ込んできたのを播磨は確認していた。
周りを見てみると、二人の人間が転がっている。
一人は起き上がろうとしている天王寺、そしてもう一人は起きる気配の無い先程までの自分の体。
「あれ…?」
もう一度その姿を確認し、そして自身の体を確認する。それは間違いなく自分の、播磨拳児の肉体だった。
「や、やった…!戻ったぞーーーっ!!」
「テ、テメエ…やりやがったな!」
播磨が喜びに打ち震えていると、天王寺がこちらに向かって叫んでいた。播磨は天王寺に視線を向けると、
「天王寺、色々好き勝手やってくれたじゃねえか…!」
再び自身を戦闘モードに切り替えた。
「ケッ、ようやっとやる気になりやがったか。」
天王寺はそう言うと、播磨に向かって踊りかかった。
30秒後、天王寺は完全に沈黙し大地に沈んだ。
「さて、どうすっかな…?」
目の前には八雲が眠るように意識を失って横たわっている。
「こんな所に寝かせたままにするわけにいかねーし、保健室に運ぶか。」
そう独り言ちて八雲を抱え上げようとした。その時下着が見えるまではだけたワイシャツから、
外見の印象よりも豊かな胸が目に入り、
「おっと、こりゃ目の毒だな。」
と、他の人の視線に曝させない事も含めて、ガクランを掛けて隠そうと上を脱ごうとした。
その時、
「あ、播磨君!八雲見なかった?」
「うおっ!つ、塚本!?」
いきなり後ろから天満に声を掛けられ、播磨は脱ごうとした手を止めたまま驚いて振り返る。
「ど、どうしたんだ?」
「うん、八雲を探してるんだけど………あれ、八雲?」
その時、天満の目が横たわっている八雲を見つけた。そして、その乱れた服に気付き、すうっ、と目が細まる。
八雲を探しに来た事は、この瞬間に頭から飛んでいた。
「あ、ああ、妹さん気失っちまってよ…。これから保健室に………」
「播磨君。八雲に何しようとしたの?」
「へ?」
眠る八雲。ボタンが飛んで開けた胸元。そしてガクランを脱ごうとしている播磨。
それらがまとまって、天満の中で一つの答えを導き出す。
そして播磨は、天満の冷たい声に自分の背筋が寒くなるのを感じた。天満の逆鱗に触れた事を感じ取ったのだ。
「ま、待ってくれ塚本!これには深い事情が………」
「ひどいよ……播磨君………。」
しかし播磨の言い分は、既に天満の耳には届かない。
「幾ら付き合ってるからって、寝ている八雲にいやらしい事しようとするなんて…。」
「え゛?」
言われて播磨は状況を確認する。確かにそういう状況に見え、播磨は自分が未曾有の危機に瀕している事を悟った。
「八雲は播磨君の事、ううん、私だって播磨君の事信じてたのに、ひどいよ…。最低だよ!」
その言葉は深く播磨の心を抉る。だが播磨は倒れそうになるのをこらえ、何とか信じてもらおうとする。しかし、
「ご、誤解だ塚本。俺は、俺はそんな事はしない!俺はお猿さんじゃないんだ!」
「………播磨君はお猿さんなんかじゃないよ。」
「わ、わかってくれ………」
「……変態だよ、播磨君。昔私に変な事しようとした変態さんと同じくらいの変態だよ!!」
播磨は石化した。
「播磨君の、変態ーーーーっ!!」
てんまはドロップキックをはなった! まおうはばらばらになった
「ん………」
八雲は目を覚ました。ゆらゆらと体が揺り籠のように心地よく揺らされている。
誰かの背中におぶさっている事に気がつき、今の状況を確認しようとした時、
「起きた、八雲?」
八雲が起きた気配に気付き天満が声を掛けた。八雲をおぶさって運んでいるのは天満だった。
「ね、姉さん………?」
状況が理解できず、気絶する前の事を思い出そうとする。
(播磨さんが天王寺という人に捕まって、それで………)
自分が突っ込んでいった、そこまで思い出した所で、八雲はようやく気が付いた。
姉が自分の名前を呼んでいる。自分の掌を見てみると、先程までの節くれだったものではなく、
白くほっそりとした元の自分の掌だった。
「そうか、元に戻ったんだ………。」
「ん?どうかした八雲?」
「ううん、何でも………。」
そこで、あの後一体どうなったのかが気になった。姉におんぶされている理由もわからない。
姉さんは知っているのかも、と思い、
「姉さん、播磨さんは………」
と聞こうとしたら、
「八雲、もう播磨君に近付いちゃ駄目よ。」
ぴしゃりと天満がそう言った。
「え、どうして………?」
「播磨君はね、寝ている八雲に悪戯しようとしたんだよ。」
「え?」
言われて、自分の体を確認してみると、胸元の辺りのボタンが取れていた。
カァッ、と顔が熱くなる。しかし、播磨が天王寺に捕まっていた時に取れていた事をおぼろげに思い出し、
「姉さん、播磨さんはそんな事する人じゃ………」
「ううん、駄目よ!やっぱり播磨君はお猿さん、いや、変態さんだったのよ!」
説得しようと試みたが、天満が耳を貸すことは無かった。
「でも、久しぶりだなー、八雲をおんぶするの。何年ぶりだろう?」
「あ、姉さん…あたしもう歩ける………」
「いいよ八雲。このまま家まで運んであげる。子供の頃はこうしてたんだから。
今は八雲の方が大きくなっちゃったけどね。」
(…姉さん………)
八雲は、それ以上はもう何も言わず、温かいその背中に寄りかかって、帰途についた。
次の日、天満は全身筋肉痛になってしまったが。
433 :
Classical名無しさん:05/07/09 02:43 ID:rOHPbWVY
私怨?
播磨が家に帰ってきた。絃子はドアを開けてリビングに入ってきた播磨に向かって、
台所に隠してあったM60の銃口を向ける。今日の授業中に受けた屈辱を晴らすためだった。
しかし、入ってきた播磨は既に廃人の様に真っ白に燃え尽きていた。
「…拳児君、一体何があった?」
引き金を引くのをやめ、播磨に尋ねる。しかし播磨は、
「……変態………違うんだ………俺は………あの時だって……………」
そのまま何も見えていない様子で自分の部屋に入っていった。
「…あれはしばらく立ち直れそうにないな………。」
結局、天満の誤解が解けて、不登校になった播磨が学校に来たのは1ヶ月後のことだった。
そしてその間、「花井が八雲をキズモノにした」という噂が広まり、クラスの女子から総スカンされ、
また、八雲(播磨時)の勇気と強さに惚れた天王寺が、八雲に告白して玉砕するという出来事も起きた。
しかしそれはまた、別の話。
<おしまい>
なんだこのオチ? つまんねーぞ、腐れヒッキー!
436 :
アモル:05/07/09 03:00 ID:uIZhvtls
ひとまず本編はこれで終了です。
ここまで付き合っていただいた方も、流し読みの方も、
読んで下さりありがとうございます。
6月中に投下するつもりが私事が忙しくて書く時間がありませんでした。
お待たせしてしまって申し訳ありません。
>>417 おにぎりと見せかけた単なるドタバタですw
>>422,433
私怨ありがとうございます。
番外編のトイレ変は、近いうちに書き上げて投下します。
エロさははそうでもないんですが、下ネタはどの程度まで許容されるのでしょうか?
>>436 お前の力量はよく分かった。
この手のネタではありがちな展開、ありがちなオチ。
便利アイテム「不良」の代わりに天王寺が出てきただけで、
そこら辺に落ちている量産型SSと大差ない凡庸なSS。
番外編を書こうとしているようだが、続きは不要だ。
トイレ云々で騒いでいたのはエロパロへの期待なので、お前には無理。
粘着君が滞留してるようだね
>>436 お疲れ様
中々面白かったけど、今回のは方向性がふらふらしてたな
色々詰め込みすぎて、ネタが作りかけの料理みたいになって威力半減
お弁当ネタは後日談を充実させるとか、天王寺戦や天満の勘違いも
もっと話の膨らませ方は色々あったはずでちと勿体ない感じ
でも、次も期待しています
440 :
Classical名無しさん:05/07/09 08:25 ID:hlvFbv4A
批判でもなんでもない、人を不快にすることに喜びを見出してる奴が粘着してるみたいだな。
>>436 なかなか面白かったっすよ。
ただちーとオチが弱い気も。
もうちょっとラブ要素を多めにするとかして欲しかったかも。
ドタバタだけって感じでちょいグダグダ……かも。
他人の評価を頭から批判して、人を不快にすることに喜びを見出してる奴が粘着してるみたいだな。
>>436 おにぎり展開や旗展開を期待してなかった
自分としては、
SSでも花井はやっぱこんな役どころか (ノ∀`)
って感じで面白かった。
「ミスター・5dカス」か…… さもあらん
『ハリマ大戦4〜恋せよ乙女』
さくら=八雲
すみれ=沢近
マリア=絃子
アイリス=サラ
紅蘭=つむぎ
カンナ=ミコチン
織姫=笹倉先生
レニ=晶
エリカ=おねーさん
グリシーヌ=ララ
コクリコ=天満
花火=一条
大神=播磨
加山=花井
米田=ガンジー
448 :
アモル:05/07/10 00:26 ID:mitG9GO.
>>435 御期待に添えず申し訳ありません。
>>437 実力不足ですが、番外編は書きます。
書かなきゃ上手くなれないですし。
>>440 どうもありがとうございます。
>>441 パロネタは入れすぎると逆に寒くなりそうなので、次から控えめに行きます。
>>439,442,444
ご指摘の通り、途中から方向性が変わっています。
最初は単におにぎりを書いていたのですが、
途中から「入れ替わりが周りに与える影響」を
書いてみたくなり、ストーリーを軌道修正しています。
その結果、何が書きたいのか曖昧になってしまった上、
30レス程度の予定が倍近くまで膨れた割に後半のまとまりがありません。
次からはプロットの段階でもっと練りこんでから書き始めようと思います。
また、花井は弄りやすいので今回酷い役回りでしたが、
彼だけ不幸だと可哀想なので、他の男共も不幸にしました。
それもストーリーが変わった理由の一端です。
>447
ワロス。ソレで何か書けそうだな、誰かかいてくだされ。
447=449
サクラヲタは失せろ
クロスオーバーはちょっとな…
晶「わかったわ」
八雲「なにがですか?」
晶「私が表紙にならない理由が」
サラ「はぁ・・・そうですか」
晶「最後はすべて私が持っていくのよ。そして最終巻に限定版、特装版、ショップ限定版が5種類と通常版の合計8種類の私の輝かしい姿が見られるのよ」
弦子「サラ君おかわりをもらえるかね」
サラ「ダージリンもありますよ」
八雲「サラ、私もいいかな?」
晶「そして後日発売される文庫版、愛蔵版、コンビニ版でもすべて私が表紙になるのよ!!」
姉さん、茶道部は今日も変わらず平和です
弦子かわいいよ弦子。
誤字だと思うけど、いっそ「昌、へ雲、弦子、サウ」とかでやったらおもしれーなーとか思った俺。
絃子だ。
愛理「本当に行ってしまうの?」
播磨「ああ」
美琴「播磨、私達はね、もしも、もしもだよ?
あんたが天満のことが好きだったとしてもちっとも気にしてないぞ」
晶「私の知っている播磨くんは変態さんなんかじゃ無いわ、私達と同じ血が流れている人間よ」
播磨「ありがとう、俺にとってその言葉は一生忘れる事が出来ねえ。やっと今、この街が俺の故郷になった。
だから、青い空と青い海のある故郷をこの目で見て、この手で確かめたい」
妙「必ず帰って来てね」
播磨「じゃ」
愛理「気を付けてね!」
八雲「ハリマさーーん!」
妙「ハリオー!必ず帰って来てねー!ハリオーー!」
播磨「さようならーー!!」
妙(みょう)
>455
元ネタはウルトラマンレオの最終回だな。
>>455 どういう経緯の話かはおいといて、何故よりによってレオなんだ?
ヨット(漁船)で去っていく播磨がやりたかったのか?
80だと天満に変態さんとバレて町から追い出されるな
播磨「西の空に明けの明星が輝く頃、ひとつの光が飛んで行く…
…それが俺なのさ」
天満「播磨くん!」
愛理「ヒゲ………行かないでよっ!」
美琴「播磨…」
晶「……すまないけど播磨君、明けの明星が輝くのは東の空よ」
――ふうん。
と、いうそれが。
彼女がそのことを耳にしたときの感想だった。
なんとなく、そんなこともあるだろうとどこかで思っていたのかもしれないし、もしかすると
それこそありえないと思いこんでいたのかもしれない。
けれどどちらにせよ、それは驚くというよりむしろ拍子抜けしたような、そんな間の抜けた
もので。ついにだとかまさかだとか、朝も早くから足の速い噂にざわめくクラスメイトを眺め
つつ、
「愛理、どうかしたの?」
「別に」
彼女はどこか醒めたような気分だった。
――あのバカ、退学届けなんか出したんだ。
そう、思いながら。
放課後。
冬の日足は恐ろしいほどに短く、彼女がその場所にやってきたころには、授業が終わってすぐ
だというのにも関わらず、茜色が空を染めていた。忍び足で、けれどこれ以上ない正確さで秒刻みに
冷えていく空気が、ちくちくと肌を刺す。
屋上。
何故そこに足を運んだか――は、ある意味とんでもないほどに単純な理由で、だからこそ彼女は
それを考えない。
その代わりに、ただ、いくつかのことを思い返す。
「……」
どれもこれもろくでもない、しゃくに障る、思い出などと呼びたくもないようなものばかり。
今すぐ忘れ去ってしまいたい、どうでもよい過去。
けれど、その中で一つだけ。一番忘れてしまいたいのに忘れられない、ただ一つの思い出がある。
期待と、
絶望と、
耳朶を打つ雨の音と、
黒い傘。
「……嬉しかったのに」
気にくわないことがあまりに多すぎて、とうの昔にそれは帳消しどころか負債の山に埋もれて
見えなくなってしまったけれど。それだけは確かに本当だった、そう呟いた刹那。
きぃ、と背後でドアの軋む金属質の音がした。
「っ……!」
弾かれたように振り向いた、その視線の先に。
「沢近先輩……」
「八雲……」
彼女がいた。
その立ち姿に、安堵と失望と不安と、すべてがないまぜになった想いを抱き、なにを言うべきか、
それともいっそ立ち去るべきかを考えて。
「あなたも来たのね」
およそ自分らしくない、吹っ切れたような言葉を彼女は口にしていた。
「あの、私は……」
「いいわよ、別に隠さなくても。あのバカのことでしょう?」
どうしてだかここなのよね、と。自然と笑みが浮かぶ。
「バカと煙は高いところが好き、だっけ。そのままよね」
ほんとバカみたい、誰に向けてかささやくようにしてから。
「ねえ」
訊いた。
今まで怖くて訊けなかったことを。
「あなたにとって、アイツってなんだったの?」
「……播磨先輩は、」
わずかに沈黙があって。
「播磨先輩だったと思います」
震えのない声で、八雲の返事があった。
「先輩にとってはなんだったんですか?」
さらに、そのまま同じ問が続いた。彼女が知っている、どこか気弱な後輩の姿とは違うまっすぐな
眼差しで。
「そうね」
だから彼女もしっかりと考える。嘘偽りのない自分の答を。
そして。
「私にとって、アイツは」
「なにやってんだ? 妹さん……とお嬢」
は、という音と、え、という音が期せず重なる。奏でられたのは疑問の和音。訝しむ余裕はけれど
一瞬でなくなる。何故もなにもない。
「なんでアンタがこんなとこにいるのよ!?」
視線の先、給水タンクの裏からのそのそと現れたのは、播磨拳児ことバカその人だった。
「あん? いちゃ悪いのかよ」
悪いに決まってるでしょ、そんな売り言葉に買い言葉を投げつけようとしたところを、ダメです
先輩と八雲に制され、しぶしぶ踏みとどまる。
「でも播磨先輩、本当にどうして……」
たいがくとどけ、という言葉が消え去りそうな声で綴られる。
「……なんで妹さんがんなこと知ってんだ?」
「……あのね、そんなの全校生徒誰でも知ってるわよ」
「何!?」
本気で誰にも知られていないと思っていたらしいその態度に、やはりコイツはバカだと改めて思う。
「で、その『退学届』さんがどうしてこんなところにいるわけ?」
「……………………んー、いやー、な」
彼女のじと目に耐えられなかったのか、それともその後ろで思い詰めたような表情の八雲に申し訳
なく思ったのか、ともかくバカこと播磨は回答を提示する。
「『理由がよく分からないから受け取れない』って言われてよ」
「……で?」
「どうやって書いたらいいか考えててな」
「……ああもういいわ、分かった」
「気がついたら」
寝てた、というその最後の言葉は言わせなかった。
ただ。
「このバカヒゲーっ!!」
心の赴くままに叫び、その手にしていた白い封筒を奪い去り。
「あーっ!?」
「先輩!?」
一息に破って千切って微塵にして、空に投げた。
「テメェなにす」
「やかましいっ!」
黙らせる。
「アンタが何考えてどうしたかなんて興味ないわよ! それよりこんなとこでうじうじだらだら
してるなんて信じられない! だいたいね、そんな人に言えないような理由なら」
そう、そんなことなら。
「辞めるなんて言うんじゃないわよ! ……アンタがいなくなってちょっとくらい残念な人も
いるかもしれないでしょう?」
一息に言ってやった。最後の台詞だけはトーンをぐんと下げて、聞こえないくらいの声で、
明後日の方向にだけれど。
「分かった? この根性なし」
「上等だ! お嬢、テメェいつか泣かすからな」
そうすればほら簡単、売り言葉に買い言葉で、どこの幼稚園児の台詞なんだか、という捨て
台詞を残し、とりあえず取り消してくると嵐のようにバカは去っていく。
やっぱり、バカだ。
「……まったく、つきあってられないわよ。じゃあね、あなたも早く帰りなさい」
あっけにとられた様子の八雲にそう言って、あーあと溜息をつきながら屋上を出ようとする、
その背中に。
「先輩!」
かけられる声。続くであろう言葉がなんとなく分かったので、足は止めずに先回りしてそれを
ふさぐ。
「ありがとう、なんて言わないでよ? 私はただ私が思ったことを言っただけなんだから」
じゃあね、と。もう一度そう言って扉を開け――
「ありがとう、ございました」
く、と一瞬息が詰まる。
だってその声が、振り向かずとも分かるくらいに震えていたから。
そして、それを聞いてしまったから。
「バカはやっぱりバカ、よ」
「え……?」
答えていた。
「さっきの質問」
きっとそれが、偽らざる自分の気持ち。どうしようもないほどのあのバカは、でもこの先ずっと
その代わりになる人間には会わないだろうという、予感めいた確信のある、そんなバカ。
「似てるのかもしれないわね、あなたと私」
じゃ、と何度目かの別れを告げて、今度こそ返事の返ってくる前に扉を閉ざし、ゆっくりと階段を
下っていく。
「……何やってるのかしらね、まったく」
言ったところでどうしようもない、そんなことを心の底からぼやきつつ、視線をやった窓の外。
夕陽が赤く赤く、傾いていた。
それがいつもより綺麗に見えたのは――きっと気のせいだと。
うん。そう、思う――
467 :
Classical名無しさん:05/07/13 01:38 ID:7aDWYhaA
うむ、多少読みにくい箇所はあるが良いSSだ。
変にベタベタされるよりも、やはり、このくらいのキャラ間がいいね。
久しぶりに良いSSを読めたよ、GJ。
「金が必要なんだ!頼む高尾、効率のいいバイトを教えてくれ!」
「高野、よ。効率のいいバイトと言われても、今思いつくのは……」
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
「腎臓って二つもあるの、なんか邪魔じゃない?」
「売らんぞォォ!!!、何恐ろしい事考えてんだ!」
ベタベタもいいがこれくらいサラっとしてるのもイイ!
>466GJ!
>>469 ((((((;゚Д゚))))))ガクガクブルブル
いいトコ無しで落ち込んで帰宅した播磨。
時刻は零時をまわり、日付は12月1日になっている。
「お帰り拳児君、一応ケーキ買っといたぞ」
コンビニケーキとビールがテーブルの上に並べられている。
「17才だな。...どうした?浮かない顔して」
「...何でもねーよ」 缶ビールを1つ開けて一気に飲み干す。
「まあいろいろあるものだ」
「......」
「...まあ今夜はもう寝ろ。期末前に体壊しては話にならん」
「ああ」
立ち上がって部屋に戻り、ベッドに倒れこむ。
天井を見上げて今日1日を振り返る。
「...お嬢に借りが出来ちまったな...」
そう呟くと播磨はゆっくりと瞼を閉じた。
時刻は零時をまわり、日付は12月1日になっている。
自室のベッドに腰掛けて金色の髪を乾かしながら、愛理は今日一日のことを思い出していた。
家の付き合いでの会食。
そのあとの友人たちとの楽しいおしゃべり。親友の誕生祝い。
青くなって赤くなったあとで涙を流さんばかりに感謝してきたヒゲの不良。
アイツのあんな顔を見たのは初めて。
「貸しにしとくわ」と言った後の顔ったら。思い出しただけで思わず笑みがこぼれてしまう。
親友のテーブルでデザートを一緒にしてる時、気に入らないことを言う不良のヒザをテーブルの
下で蹴ったあとの絶句した表情。
「しばらくはアイツをいじめるためのネタが増えたわね」
悪戯好きな子供みたいな微笑みを浮かべながら愛理は独り言を呟いた。
……この貸し、どうやって返させようかしらね……
沢近愛理は親友よりも不良のことばかりを思い出していた、ということに全然自覚がないまま
眠りに落ちていった。
続く?
早速キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
主人公の誕生日をたった一周、しかもおいしいところを全て沢近にかっさらわれただけで終わりか・・・orz
主人公は沢近だから。
本当にそうお思いでしたら
私、良い病院を知っておりますので
ご紹介いたしましょうか、旦那様?
>477
主 人 公 だ っ た の か !
俺じゃなかったんだ(´・ω・`)
主役とか主軸とかそういうの無いよねこの漫画
ってここはSSスレだよな?
484 :
Classical名無しさん:05/07/16 01:39 ID:WVqIgAew
まぁ恐らく誕生日会みたいなことは別にやるんだろ
恐らく播磨も含めて合同で
人間は理解できないものを愛する。
人間は愛せないものを理解しない、しようとしない。
S3なんか
タワツウ、ヒシコヌヤ、キ、゙、キ、ソ。」
DB Error: connect failed
こんなんでていけないな。
うっほ
./::::::::::::\ / ,、 \ シィー
. /::::::::::::::::::::;;;:ヽ、 | , \ ヽ静かに!
/::::::::::::「 | | ー ヽ ヽ 〕
|::::::::::::」 ._ノヽ| .| ⌒ / ノ
i:::::::::::| -= = .| ./ /
( 6. ::::::::... ""r'_ ,.|ウップォッ .| ⊂⌒ /
.| :::::::::::`ヽ;;ノ^,^──-彡彡 / , , /ヽ
| ::::::::::::::' ヽ `ー── 彡 //ィ.,ソ l
| : :::::::::;;;;;`~´ (;;(;;;) /
/ ⌒ \ ヽ | |
理解してるから愛せるというのは間違いだ。
EUCってなに
493 :
Classical名無しさん:05/07/16 10:46 ID:L.RfNGTs
s3がおかしくなってる
494 :
小ネタ:05/07/16 16:11 ID:eMMABg9Y
久々にMMRネタ投下します。(AAはめんどくさいので省略)
発売日記念にハリー・ポッターネタ
注:途中からダークな内容になっています。
15禁くらい?(エロパロではありません)
「俺たちはとんでもない勘違いをしていたらしい、これを見ろ」
つ『ハリーポッターと賢者の石』
「これがどうかしたのか?」
「いいか、ハリーが最初に発動させた能力を考えてみろ。
1.髪の毛がいきなり伸びる
2.シャツが縮む
3.蛇(動物)と話す
そしてスクランの播磨の奇妙な言動を見ろ。
1.河童頭が数日でふさふさ、体育祭でハゲなのに漁船編ではふさふさ
2.♯98でシャツの袖の長さが違う
3.動物と話すことができる
つまり!これらはすべて播磨が魔力を発動させ、ハリーマ・ポッターとして、ハーナイオニー・
スプリングウッドとサワチカ・エーズリーとともに、悪の帝王ヴォツカモートを退治するという、
伏線だったんだよ!」
「「「な、なんだってー!!!」」」
495 :
小ネタ:05/07/16 16:14 ID:eMMABg9Y
「・・・と思ったが、既にハリー・ポッターネタの漫画や、それをまたネタにした漫画が
マガジンにはあるな」
どてっ←三人がずっこける音
「待てよ・・・播磨に魔力があるということは・・・俺たちはとんでもない勘違いをしていたらしい、これを見ろ。
1.塚本天満のスプーン曲げ
2.塚本天満のピコピコ動く髪
3.塚本天満のパフェ瞬間移動
この奇妙なことから導き出される唯一の結論・・・つまり、塚本天満はサイコキネシスの
使い手だったんだよ!」
「「「な、なんだってー!!!」
「そして、このような能力の使い手がごろごろいるわけがない、つまり!播磨拳児と塚本姉妹は
兄弟だったんだよ!」
「「「な、なんだって!!!」」」
496 :
小ネタ:05/07/16 16:16 ID:eMMABg9Y
「し、しかし何を根拠にそんなことを」
「ああ、そうだぜ、主人公にありえない能力を発動させるのは、どの漫画でもあることだろ」
「お前らがそう思うのは自由だ、だが、証拠はほかにもあるぞ。
まず、証拠1:塚本天満の行動を播磨拳児の行動に変換しても、全く違和感がない。
(成績がほとんど亀、万石好き、絵はうまい、勘違い王等々・・・)
証拠2:塚本八雲と播磨拳児との読心能力の類似」
「そのくらいみんな思っているから、あまり説得力はないぜ」
「本題はここからだ、お前たち、松果体について聞いたことはあるか?」
「「「松果体?」」」
『松果体:大脳の第三脳室の(中略)・・・メラトニンなどの物質を含む。メラトニンは性腺
刺激ホルモン放出を抑制し、皮膚を白くするという。また、破壊されると性的早熟がおこ
る。暗くなると放出されることで概日リズムにも影響を与えているとされる。
メラトニンは老化の防止にも関係があると思われる』
「・・・というわけだ、おまえら、人類は滅亡する!」
「いや、意味がわからないが?」
497 :
小ネタ:05/07/16 16:16 ID:eMMABg9Y
「では、塚本八雲の眼はなぜ赤いんだ?答えは一つ!目だけアルビノとなっているんだよ!
そしてメラトニンの皮膚を白くするという効果!つまり、塚本八雲はメラトニンを体内で
多量に分泌しているんだよ!」
「と、いわれてもわからないんですが」
「ではメラトニンが多くなるとどうなるか!概日リズムが狂う。つまり、時差ぼけだ!」
「時差ぼけ?つまりそれは」
「そう、塚本八雲がなぜ昼寝を繰り返していた理由、それは概日リズムの狂いだったんだよ!
しかし、姉の塚本天満のほうではメラトニンの大量分泌は起こらなかったようだ。」
「どうしてわかるんだ?」
「二人の身長差だ。おかしいと思ったことはないか?なぜ姉のほうが妹よりはるかに背が低いかを。
低身長の原因の一つに、低年齢時の初潮がある。思春期後一定期間経つと身長は止まるからな。
メラトニンは初潮を遅くする働きがある。八雲が平均年齢で初潮を迎えているのに対し、
天満は初潮をより早い年齢で迎えていたのだろう。」
「ちょ、ちょっとまて。話が下ネタのほうにいっているぞ・・・大体どこに八雲の初潮の時期なんて」
「八雲の能力発動が小6の時だったからだ。あの能力は月の満ち欠けとともに変化する・・・
ほぼ同時に起こったと考えるのが妥当だろう。」
498 :
小ネタ:05/07/16 16:17 ID:eMMABg9Y
「た、たしかに八雲がメラトニンを多量に分泌している可能性はありますが、それと兄弟
説とどのような関係が?」
「おまえらはおかしく思ったことはないか?なぜ播磨拳児は、サングラスをかけていても、
播磨アイを発動できるのか?
つまり!播磨の眼は平均よりもメラニン色素の量が少ないんだよ!八雲と同様に。
そして播磨にも概日リズムの狂いが起こっている!それが遅刻や授業中の昼寝になって表れ
ているんだよ!」
「いや、それはただ単に勉強嫌いなだけだろ」
「そして播磨の場合、一番大きな謎がある。なぜ刑部絃子や姉ヶ崎妙という美女と
同棲していながら、手を出すどころか興味さえ持たなかったのか?いくら天満馬鹿一代とは
いえ、男としては・・・まあ、わかるだろう?」
「「「ああ、たしかに」」」
「そしてこれは播磨の読心能力の発動時期と関係する。もし、八雲の能力発動が初潮と同時期
に起こったのならば、播磨の能力は精通と同時期に起こったと考えるべきだろう」
「ちょ、ちょっと待て、あの能力が発動されたのは家出していた時じゃないか?」
「・・・たしかに遅すぎるな。それもすべてはメラトニンの大量分泌で解決される。
とにかく、なぜ手を出さなかったか?それは手を出せなかった、もしくは播磨の性的欲求が
メラトニンの分泌のせいで弱まっていたからなんだよ!」
499 :
小ネタ:05/07/16 16:18 ID:eMMABg9Y
「そしてもう一つの謎、なぜ播磨は月末昼飯抜き、晩飯はつまみ程度という食事しかとって
いないのに、あれだけの体力を維持できるか?それはこのサイトを見ればわかる!」
つ
http://x51.org/x/03/06/3049.php 「「「こ、これは!!!」」」
「そう、松果体が巨大ならほとんど食事をとらなくても太陽エネルギーだけで生きて
いける可能性があるということだ。つまり!播磨があれっぽちの食事で体力を維持できる理由
も松果体にあったんだよ!」
「「「な、なんだってー!!!」」
500 :
小ネタ:05/07/16 16:20 ID:eMMABg9Y
「・・・ということだ。播磨拳児と塚本姉妹は兄弟だった」
「し、しかしどうして今まで気づかなかったんですか?」
「これから先は、俺の想像にしか過ぎないが・・・
播磨の母親(仮)と塚本姉妹の母親は、同じ日(11月30日)に同じ病院で出産
したのだろう。しかし、播磨の母親は男の子を生んだが、子供は生まれてすぐに死んでしまった。
播磨拳児と刑部絃子の年の差からして、高齢出産だったのだろう。夫婦はもう子供
ができないかもしれないと思った。一方、塚本姉妹の母親は男と女の双子を産んだが、
そのころの塚本家には両方の子を育てる余裕がなかった・・・お互いの境遇を知った二組の
親の間で話がまとまり、双子の男の子の方は播磨家に我が子として引き取られた。
その子が播磨拳児だ。誕生日はその引き取られた12月1日とされた。
しかし、塚本家はそれから半年もしないうちに、家計に余裕ができた。そこで播磨家に引き取られた男の子
のことを思ったが、既に連絡がつかなくなっていた。嘆いた両親は、その子の代わりにもう一人子供を作る
ことを決心した。数ヶ月がたって女の子が生まれた・・・
両親はその子に、もともとあの男の子につける名前を与えた・・・八雲という名前を。
(普通八雲と聞いたら男を連想するだろ?)
501 :
小ネタ:05/07/16 16:21 ID:eMMABg9Y
一方、播磨拳児は、小さいころはかわいがってもらったが、数年たって、弟が生まれた。
ほとんどあきらめていた我が子の誕生に両親は喜んだ。しかもその子、修治の誕生日は、
かつて死んだ子の誕生日と同じだった・・・両親が生まれ変わりだ、と思って余計に大切
にしたのも無理はない。
しかし、拳児にとっては残酷だった。急に両親に冷たくされたんだ。こうして拳児はぐれ始め、
けんかに明け暮れ、とうとう魔王の異名をとるまでになってしまった。
そんな時、播磨拳児は塚本天満と出会う・・・そして恋をした、だが、その恋の原因は投
げ飛ばされたからだけではなく、生まれてすぐに生き別れになってしまった姉を、本能的
に認識したことにもあった・・・
502 :
小ネタ:05/07/16 16:25 ID:eMMABg9Y
また、、塚本八雲は、ほかの男性とは話ができないのに、彼女が「キリンの人」と呼ぶ播磨
拳児とは普通に話ができた・・・それは動物のためだけではなく、血を分けた兄として、何か彼女をひきつけるものがあったのだろう。
・・・どうだ。ことの重大さがわかったか?」
「た、たしかに、漫画でそんな展開になったら大騒ぎになりますね。」
「何を言っている、そんなことを公表してしまえば王道、おにぎり、お子様ランチといった
主要な派閥がいなくなってしまうぞ。問題なのは、もしおにぎり派によっておにぎりEND
となった場合だ。それか王道ENDに
そして万が一結婚までいたったらどうなると思う?」
「え・・・それってつまり近親・・・」
「な、なるほど、そうなったら倫理的に大変なことになりますね。」
503 :
小ネタ:05/07/16 16:26 ID:eMMABg9Y
「いや、俺が恐れているのはその後だ。子供が生まれてみろ。もし、その子が両親の超能力
遺伝子を両方とも持っていたり、メラトニン増大遺伝子を両方持っていたりしたらどうなると思う?
もし、理想的な能力を持った子が生まれた時、その子は人間の三大欲求の食欲、性欲を制御
することができ、睡眠欲でさえも、メラトニンを光によって制御することで、コントロール
できるかもしれない・・・しかも、サイコキネシス能力、人間や動物の読心能力を持つ
かもしれないそうなれば・・・新人類の誕生だ!」
「「「な、なんだって!!!」」」
「もし、その子を何かの組織が利用しようと考え、クローンを大量に作ったとする・・・
すると、新人類は現人類に取って代わってしまうだろう。つまり、人類は滅亡する!」
「「「な、なんだってー!!!」」」
「そ、それじゃ俺たちにできることはないのか?」
「俺たちにできること?それは唯一つ!旗を応援し、ヤクモンを播磨に渡さないことだ!」
花井が奇声を上げながら去っていった・・・
504 :
小ネタ:05/07/16 16:27 ID:eMMABg9Y
えー、以上です。オチは・・・実は花井(その他モブたち)の妄想ってことで・・・
クロスオーバーにしないために無理やりですが・・・
もちろん、すべて冗談ですからあまりまじめに取らないでください(一応小ネタのつもり)
505 :
Classical名無しさん:05/07/16 17:21 ID:9nKtaU8w
何かこのorz流れは、かつての四角おにぎり話→下っ端女装話の間のコンボを思わせる。
銭湯から溜めて、さあここからだとお泊りを予想してたスレ住人の期待を軽くスルーして
下っ端が主役だったときのへこみ具合は筆舌に尽くしがたかったからなあ。
天満誕生日やったら次はコンボで播磨誕生日に違いない!というのは王道というか
外せないコンボだと思うのだが・・・。どうもこの作者は盛り上げるだけ盛り上げといて
一気にハズすというファンを萎えさせる達人のような気がする。
「漫画家は読者の予想を半分当ててあげて半分裏切らなきゃならない」というのが、
どっかのギャグ漫画家の名言なんだが、小林先生は予想も期待も延々と裏切りまくってます。
そう、そして此処はその作者の策略から隔絶された最後のユートピア
つうか、こんなところでネタバレやらかす池沼は死ぬべきだと思うのは俺だけか?
とりあえず本スレ住人は505を読まずに
ID:9nKtaU8wをNG登録しましょう。
>>474の後日談キボンヌ
播磨のバイクに乗って一緒にお買い物
そして沢近が播磨にその服ダサいわねとか言って洋服を選んであげる
510 :
Classical名無しさん:05/07/16 19:28 ID:esfkhgWY
>509
ブラックレガシィの作品のシチュエーションじゃねーか(笑
実は晶サンはバイトがあったが、播磨のためにわざわざ休んでくれたのだ。
つまりコレは晶×播磨、携帯への伏線なのだ!!!!!!!
ナ ゝ ナ ゝ / 十_" ー;=‐ |! |!
cト cト /^、_ノ | 、.__ つ (.__  ̄ ̄ ̄ ̄ ・ ・
,. -─- 、._ ,. -─v─- 、._ _
,. ‐'´ `‐、 __, ‐'´ ヽ, ‐''´~ `´ ̄`‐、
/ ヽ、_/)ノ ≦ ヽ‐'´ `‐、
/ / ̄~`'''‐- 、.._ ノ ≦ ≦ ヽ
i. /  ̄l 7 1 イ/l/|ヘ ヽヘ ≦ , ,ヘ 、 i
,!ヘ. / ‐- 、._ u |/ l |/ ! ! | ヾ ヾ ヽ_、l イ/l/|/ヽlヘト、 │
. |〃、!ミ: -─ゝ、 __ .l レ二ヽ、 、__∠´_ |/ | ! | | ヾ ヾヘト、 l
!_ヒ; L(.:)_ `ー'"〈:)_,` / riヽ_(:)_i '_(:)_/ ! ‐;-、 、__,._-─‐ヽ. ,.-'、
/`゙i u ´ ヽ ! !{ ,! ` ( } ' (:)〉 ´(.:)`i |//ニ !
_/:::::::! ,,..ゝ! ゙! ヽ ' .゙! 7  ̄ | トy'/
_,,. -‐ヘ::::::::::::::ヽ、 r'´~`''‐、 / !、 ‐=ニ⊃ /! `ヽ" u ;-‐i´
! \::::::::::::::ヽ `ー─ ' / ヽ ‐- / ヽ ` ̄二) /ヽト、
i、 \:::::::::::::::..、 ~" / ヽ.___,./ //ヽ、 ー
S3ばぐってるんだけど皆見れる?
そろそろ休憩にすっか、という声で八雲はふと我に返る。無心に動かしていた手を止めて
見やれば、時計の針はいつのまにかずいぶんと進んでいた。
「やっぱ妹さんがいてくれるとはかどるぜ」
「そんな……」
うつむき加減に言葉を返しながらも、辺りに広げられた原稿の数に、自分も少しは慣れて
きたのかな、と思う八雲。実際は、マンガを描くのに慣れたところで役に立つことはまず
ないが――妹さんなら俺よりすげぇもんが描けるんじゃねぇのか、などと言われたりもするが、
それでうっかり漫画家になってしまえるほど彼女も単純ではない――八雲としては一生懸命な
人の助けになれる、というのは決して悪い気はしない。
それが、相手が彼だから、というところに起因するのかは定かではないところではあるけれど。
「しっかし腹減ったな……妹さんもなんか食うか?」
「え? あ、私は別に」
「気にすんなって。いろいろ世話になってんだしよ」
そう言って立ち上がり、部屋を出て居間に向かう播磨の後を慌てて追う八雲。姉であるところの
天満に言わせれば、そーゆーときは甘えちゃえばいいんだって、ということなのだが、なかなか
どうして、生来の気質からそうもいかない。どっちがいいんだろう、そんないつもの疑問を胸に
抱きつつ、居間に足を踏み入れると。
「っだよ、なにもねぇじゃねぇか。絃子、なんか買ってきてくれ」
「断る。だいたいな、計画性もなく贖罪を無駄にしているのは君だろう? 自分で行ってこい。
それともなにか、君はわざわざ来てくれた塚本さんに感謝の気持ちはないのか?」
いつものやりとり、である。
当初こそ面食らったものの――それはそうだ、刑部絃子と播磨拳児、この二人が同居している
などと、なんのヒントもなく想像出来る者などまずいない――従姉弟同士、という二人の関係を
理解してからは、一応の納得は出来た。
とはいえ。
「な……」
「ほら、塚本さんも見ているぞ。ここは当然男を見せるところだよな」
「わーったよ。行ってくりゃいいんだろ行ってくりゃ。わりぃな妹さん、ちっと待っててくれよ」
「あ、はい」
「ほらほら、さっさと……っと、ああ、ちょっと待ってくれ拳児君」
「あん?」
ついでだから、と日用雑貨品の名前を並べ立てる絃子。
「買ってきてくれ」
「テメェ、そっちが目的だろ」
「さあな。それよりほら、いつまで塚本君を待たせておくつもりだ?」
「覚えてろよ……」
ふんまんやるかたなしの様相で、どたばたと足音を響かせて出ていく播磨。その背を見送って
から、もうちょっと素直でもいいじゃないか、やれやれと呟き、そして。
「そう思わないか? 塚本君」
ざっくばらんに投げかけられた言葉。どう答えてよいものか、と八雲は曖昧な表情を浮かべて
しまう。
そう、これが慣れないのだ。そこにいるのは、間違っても『教師としての』刑部絃子ではない。
あくまで一個人としての彼女がそこにいる。教師というのは、どんなにフランクに見えるタイプ
でもきっちりと生徒との間に一線を引いているし――事実、学校での絃子自身がいい例だ――
だからこそ教師たり得る。それが、プライベートだという理由はあるにしろ、いつもとは違う
姿で目の前にいる、というのは落ち着かないものだ。おおむね、誰であっても。これもまた、
天満辺りなら気にしないような気がしないでもないのだが、それはそれとして。
そんなわけで、別に不快だというわけではないけれど、どうしたものかと八雲は困っている。
いつもなら、先刻のような二人のやりとりを眺めているだけですんでいたが、さすがに二人きりで
同じ部屋にいるともなれば、ただ黙っているわけにもいかない。さあどうしよう、言葉を探して
視線を中空にさまよわせる。
「しかしさ、君もよく飽きずにアレの面倒をみてくれてるね」
口火を切ったのは絃子――が、やはりそれは八雲にとって答えづらい問。けれど、それを気に
した風もなく、彼女の言葉は続いていく。
「昔からどうにも人に懐かないヤツでね。気難しいというわけじゃないんだが、一匹狼……じゃ
ちょっと格好良すぎるか」
ともかくさ、と。そう語る絃子は八雲が今まで見たこともないような表情で、彼女は小さく
息を呑む。
たとえば。
たとえばそう、誰にも今まで言わなかった秘密を告げるような顔に見えたから。
「刑部、先生」
ふ、とわずかに時間の止まるような一瞬があって。
「今は『先生』の時間じゃないさ」
好きなように呼んでくれていい、小さく肩をすくめて絃子が笑った。なんだか妙な話をしてしまった
みたいだと頬をかく。
「まあ、ともかく、だ」
そして今度は、苦笑いともなんともいえないような顔で。
「よろしく頼むよ、あのバカを」
絃子は頭を下げた。
「あれでもまあ、一応『家族』なんだよ。本人の前では口が裂けても言わないけどね」
以上、と話を打ち切る。
「先生……」
「だから先生じゃないと……まあ、君はそういうタイプ、か。ああいや、悪いことじゃない。
むしろ彼には見習ってほしいくらいだ」
まったく、というその嘆きが心の底からであることがおかしくて、八雲も微笑む。応じる絃子の笑みもまた、
柔らかい。と、玄関の方でがたごとと物音がする。どうやら話題の主が
帰ってきたらしい。
「それじゃ、さっきの話はオフレコで。といっても、話したところで拳児君が信じるとも思えないが」
そんなことを口にする彼女の表情は、けれどやはり柔らかなまま変わらない。その顔に
どこか見覚えがあるような気がして、どこで、と思い返した八雲は、やがて答を見つける。
――姉さんに、似てるんだ。
姉が彼女に向ける、あの眼差し。そこに込められている感情は、今更言葉にするまでもなく八雲の中にある。
「遅かったな」
「ふざけんな! これ以上早くできるわけねぇだろ!」
そして、始まるのはいつもの喧騒。
けれど。
――いつか播磨さんも気がつく日が来るのかな。
そんなことを思いながら見るこの光景は、いつもとは少しだけ違って見えて。
「おかえりなさい、播磨さん」
笑顔で、八雲はそう言った――
不意打ちだったよぅ b
終わり?
なら、そう書いとけ馬鹿
感想:似たようなSSあったなぁ
おにぎりとか旗は作品が多いんだからもっと工夫してくれなきゃねえ。
とりあえず実の姉と戦争でもするぐらいの発想があれば
多少はマシな話になるんじゃないかと思った
>>516 名も無きひとコマ、だからこそ、この雰囲気が相応しいと思う
私は好きだよ、と
まぁ、盗作乙
たしかに割とよくある話だったけど、けっして悪くないと思うがな。
さっき、初めてSS描いてみようとしたが、あえなく挫折した。
SS書く人達は表現方法とかよく思いつくなと感心した。
>516
なんか地味だけど、こういうのも好きだ。
もっと書いてくれ。
S3復活まだかよおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおお
526 :
Classical名無しさん:05/07/17 08:31 ID:phCsLypk
∞
管理人が使えな(ry
んなこと言ってるとそのまま閉鎖するんじゃないか
ただでさえ厨房の面倒やクレーマーが常駐してるんだし
挙句ここで悪口叩かれようものなら管理の仕事を投げても仕方ないと思うぞ
>>514-516 乙。いいしっとり具合だ。
……筆致に見覚えがある気がしてならないけどw
S3はDBの問題のようだからsakura.ne.jpの方に問題がある……にしちゃあお知らせがないなぁ。
まぁまぁ、世の中は連休だから、管理人さんもどこか遠出してるのかもよ。
俺らと違ってね…
サーバー注意→改善の傾向見られず→DBのアクセス禁止
とかじゃないかな
S3らしい閉鎖の仕方だな
管理人は馬鹿でヘタレだったし当然の帰結かも
[SE]ザザザ・・・・[波の音]
八雲▼ハァハァハァ・・・播磨さん!
播磨▼妹さん!大丈夫だったか?
八雲▼はい、何とか撒いてきました。
播磨▼そうか。
八雲▼早く逃げましょう。でないと、あの人が来てしまいます。
播磨▼そうだな。あと少しで船が出る。それに乗って逃げよう。
沢近▼・・・待ちなさい。
播磨▼お嬢!
沢近▼残念だけど、あなたたちの思い通りには行かなくてよ。
播磨▼くそっ!
沢近▼ヒゲ?その女とどこに行くつもりなの?私を置いて。
八雲▼あ、あなたには、関係のないことです!
沢近▼お黙りなさい!この泥棒ネコ!ヒゲ。まさかその女と駆け落ちなんてことしないわよね。さ、早くこっちにいらっしゃい。
播磨▼妹さん・・・ごめん!
沢近▼あら、聞き分けがいいじゃない?さすが私の愛した人。さ、帰りましょう。
播磨▼ああ、お嬢。アア〜〜!
[SE]ポ〜〜
八雲▼播磨さん・・・。ウソでしょ?私を置いて昇天するなんて。
沢近▼うるさいわね、この泥棒ネコ。ヒゲは私を選んだのよ。もし健を返して欲しければ、あの場所に一人で来なさい。
八雲▼あの場所?
沢近▼そうよ。あなたとヒゲがよ〜く抱き合っていた、あの場所よ。
八雲▼もしかして、
沢近▼そうよ。あなたたちが愛し合っていた場所。
こんにちは、笹倉先生の誕生日なのにSSが一本もないのはいやなので萌えスレから出張って来ましたのでSSはかけませんが
小ネタを一つ
絃「葉子おめでとう…」
播「葉子さん誕生日おめでとうございます…」
葉「あ ありがとうございます先輩…拳児君も」
絃「それでこれからご飯でも食べに行かないかい?私とケンジクンのおごりで」
葉「すみません今日は、どうしても都合がつかなくて…」
絃「そうか…ではまた今度するとしようか…そうそうこれが私とケンジクンからのプレゼントだ」
葉「あ ありがとうございます。 …先輩…一つだけいいですか?」
絃「ん なんだ?」
葉「今日私は2×になったんですけど先輩と同じとしになったわけですよね…」
絃「ああ そうだな…一ヶ月だけだが…」
葉「それでお願いなんですけども…」
絃「ん 何だね…出来る範囲ならかまわんよ」
葉「拳児君と同じように… 絃子 って呼んでいいですか?」
終わり
笹倉 葉子先生お誕生日おめでとうございます
どうでもいいんですが刑部先生とは笹倉先生と播磨の名前を足すと絃葉児(糸楊枝)になるんですよね
最後が一番おもろい
「今日は一日、ありがとうございました」
「別に構わないといつも言ってるだろう? それに」
と、そこで一息ついて視線をずらす。その先にはうずたかく積まれた荷物の山。
「君と買物に行くのはなかなかスリリングだからね」
いい加減その癖、どうにかならないのかな――嘆息した絃子に。
「なんのことですか?」
おかしなことはしてませんよ――ふわりとした微笑みで返す葉子。
「……ま、いいけどさ」
そう口にする絃子の顔は、とうの昔に諦めた様子。仕方がないとでもいうように、冗談めかした
言葉が続く。
「しかし、これじゃ君と付き合う男も大変だな」
「大丈夫です、その辺はちゃんと考えてます」
「ふうん。それは結構」
少しだけ驚いた表情の絃子に、買物にはですね、と葉子はびしっと人差し指を立てる。
「絃子さんに付き合ってもらえばいいことですから」
「……いや、そういう問題じゃないだろう」
「そういう問題です」
きっぱりと言い放つ姿は、冗談を言っているようには見えない。苦笑とともに、やれやれという
呟きが絃子の口からもれる。
「でも絃子さんだってそうじゃないですか」
「ん? なにがだ?」
そんな彼女の態度に反抗するように、口をとがらせる葉子。絃子さんと付き合う人だって大変です、
ときっぱり言い切る。
「まずガードが堅いから付き合うまでが大変だし、そこを越えても要求高そうだし……」
「あーいや、ちょっと待て葉子」
「違います?」
まっすぐな眼差し。その射るような視線を浴びながら、ほんの少しだけ考えて。
「違わない、かもな」
「ほら、やっぱり」
してやったりの葉子。が、でもさ、と絃子は言う。
「要求が高いってのはさ、誰に対してもそうだと思うよ、私の場合。きっとね、そういう融通の
利かないところが私らしさなんだよ」
あまり褒められたもんじゃないかな、そんな苦笑いの横顔に、けれど葉子は頷く。
「絃子さんはそれでいいんですよ、きっと……いえ、絶対」
ずっと見てきたから分かるんです、静かな確信に満ちた言葉が続く。
「刑部絃子、っていう人は、他人にも自分にも妥協しない人です。迷うことはあっても、いつだって
まっすぐで、絶対にぶれたりしない、そんな人です。だから私も」
再びまっすぐな視線で絃子を捉える葉子。
「絃子さんが絃子さんであるみたいに、私も私でいたいんです」
「葉子……」
その言葉に息を止める絃子――が。
「あいた」
葉子の頭を軽くはたいた手のひらが、ぺし、という乾いた音を響かせる。
「そんな恰好良いことを言っても、カードで無駄遣いの言い訳にはならないよ」
「ばれましたか」
「そりゃばれるさ」
イタズラを仕掛けた者、それに気づいた者、双方がそれぞれの笑みを浮かべ。
「でもね、葉子。そう言ってくれるのは嬉しいよ。ありがとう」
先の言葉が冗談ではないと、少なくとも、笹倉葉子はその手の冗談を言うタイプではないと知っている絃子は
素直にその言葉を口にする。ありがとう、と。
「ふふ」
「なんだ、まだなにかあるのか?」
「いえ、絃子さんはやっぱり絃子さんだな、って。なかなか素直に言えませんよ、そういうの」
「……褒めたって今日はもうなにも出ないよ」
少しだけ照れくさそうに言って、それじゃいい加減そろそろ乾杯にしようか、とグラスを掲げる。
「ええと……刑部絃子の輝かしい未来に?」
「……あのな。ここで冗談言ってどうする。それともまさか、今日の主旨を忘れたなんて言わせないからな」
「分かってますよ、冗談ですってば、冗談。怒らないで下さい」
「怒ってないよ、まったく……」
それじゃ、と気を取り直し、絃子が告げる。
「笹倉葉子の誕生日を祝して――」
「「乾杯」」
りぃん、とグラスの重ねられた音が小さく響き、そして。
「さ、それじゃじゃんじゃん飲みましょうね」
「……明日は休みじゃないんだから、ほどほどに頼むよ」
その癖もどうにかならないのかな、そんな絃子の今日二回目の呟きも飲み込んで。
ゆっくりと更けていく夜は、まだ長い――
>もし健を返して欲しければ、あの場所に一人で来なさい。
542 :
337:05/07/18 20:52 ID:g/ERyUTg
>>538-540 文の切れ味がいいですね。
こういう文は好きです。
GJでした。
エロパロ板保管庫のアップローダーに、投稿SSの訂正したものをあげてみました。
今回訂正したものは、
IF22の Just Friends
IF23の Blue Sunshine
IF24の Black Devil Tremor
の三つです。よろしければ落としてみて下さい。
分校に繋がらない・・・
おまいら、漏れんちの押し入れの中で
ガースーが膝を抱えて閉じ籠っちゃったじゃないか。
誰か誕生日祝ってやれ。
自分で祝ってやれよw
確かに菅はお気の毒だったが
毎日誰かしらの誕生日だ
明日は僕の誕生日です
おめでとう
手詰まりになった俺は、あいつの言う「親友」とやらに頼ることにした。
菅は女に滅法弱いヤツなので、ついでにその後輩にも同行してくれるよう頼んでくれと言っておいた。
しばらくして、あからさまに不機嫌な麻生と、一点の曇りもない笑顔のサラ・アディエマスが到着した。
二人共さすがに菅の好みをわかっている。プレゼントは二人で腕によりをかけた糠漬けラーメンだ。
「ほれ菅、相方からプレゼントだぞ」
「……」
「糠漬けラーメンだ。凄い匂いがするやつだよ」
「……」
…気のせいか、フスマ一枚越しの負のオーラが濃くなった。
「…アソは?」
「帰ったよ。サラちゃんと用事があるんだとさ」
菅はそれきり喋らなくなった。俺もバイトがあるのでかまってやれず、押し入れの前にラーメンを置いて出掛けた。
帰ってくると、章気はそのままにドンブリは空になっていた。
俺は空のドンブリに帰り道で買ってきた割烹さがののおにぎりを入れておいて、
自分は茶漬けに漬物食べてさっさと寝た。
そんだけ
パクりネタだ。反省はあんましてない。
けど後悔はちょっとしてる。
そんだけ
今日は谷さんの誕生日だとか…そんだけ
皿「八雲〜お姉さんって料理できるの?」
八「うん…最近は」
皿「ふ〜ん そっか…でどんなのができるの?」
八「マグロカレーとか」
皿「ふんふん他には?」
八「……!! …サ○ウのご飯とかボ○カレーとか…?」
皿「…」←それ料理じゃないじゃんといいたいのだが自分も電子レンジを壊したことがあるので言えない
八「あとはおにぎり…こないだ沢近先輩を倒したんだってでもこっちも倒れちゃって引き分けだったとかいってた」
皿「…」(それはすでに食べ物じゃないような…)
八「でも烏丸先輩や播磨さんはいっぱい食べてくれたって喜んでたよ…特に播磨さんは泣きながら食べてたんだって」
皿「八雲… 一つだけいい… 私はエクソシストとはちょっと違うからね♪」
八「はぁ?」
終わり
続き
皿「食べる?」
八「頂きます」
皿「美味しい?」
八「アッタう・・うんホチェう・・旨いホォーよ」
皿「よかった」
八「火傷しちゃった」
皿「ちゃんと、フーフーしなきゃ駄目じゃない」
八「だよね」
終わり
しばらく見なかったら、S3が復旧作業中ってorz
何があったんだろうな。
S3って何?分校のこと?
あー夏だなあ。
蟲が湧くな。
わかんなかったら、まずググルこった
#140 THE BIRTHDAY GIRL
試験も終わり、天満の誕生日を祝うために集う級友たち。その中には、久しぶりに登場した烏丸の姿も。
烏丸と嬉しそうに話す天満、冷やかす東郷、遠くから眺める播磨の傍らにはいつしか沢近が。
こないだは助かった、と礼を言う播磨に、別にいいのよ、と返す沢近。沈黙を破って沢近が問いかける。
もしも、わたしがアンタの漫画を読んだと言ったら?
好きな相手に別の想い人が居たからといって、自分の好きな気持ちに変わりは無い、と告げる播磨
見直したような表情で、たまには良いことを言うのね、と沢近。思い出したように包みを渡す。
渡された袋にはいつか見たウサギの図柄が。首をかしげる播磨に、誕生日祝いよ、と沢近
身を翻して去ってゆく沢近を見送りながら、袋を開けた播磨が見たものは……。
そのころ、天満は烏丸から渡された誕生祝に首をかしげていた。
35号柱
(KCH巻宣伝)/(DVD6巻宣伝)
烏丸大路――塚本天満の想い人、確認
塚本天満――播磨拳児の想い人、確認
播磨拳児――沢近愛理の………?
(スクラン舞台広告)
(スクラン舞台広告)
負け惜しみにしか聞こえない。
思い当たるふしがあったようだ。
播磨は知らないが、実は2回目
(なし)
良かったね。
――烏丸家伝来の秘宝?
35号コメント
高橋さん演じる播磨があまりにそっくりで笑えません。
さっそく蟲が沸いたな。
バレにしちゃ早いが…空襲警報を出すべきか?
漫画ネタは本スレでガイシュツなネタだし、単なる電波だろ。
まあ、ほんとに漫画ネタで来たら仁丹は神であると思うと同時に、2ちゃんねる
見てるんじゃないかという疑惑が改めて湧いてくるわけだが。
てめえらこそ蛆だよw
いっその事あげ。
荒らし甲斐のあるスレッドです。
意味を教えろ
ねーよ
School Rumble #140 ESCAPE TO VICTORY
柱
(DVD/KCH巻・SG増刊宣伝)
播磨、留年先生の影におびえる毎日。
吉田山 次郎、小さすぎるプライド。
留年したら八雲とも同級生。
塚本 天満、ある意味おしい。
一応やる気はあった…。
(スクランKC広告)
塚本 天満、いっぱいいっぱい。
ミコちゃんのテスト講座開講中。
効果は個人差アリ。注意。
天下分け目の決戦(テスト)開始。
――吉田山、うしろうしろ!
コメント
藤沢さん大変そうですが、応援し
てます!
書いたネタ 全没 悲しい
お前、バレスレの620か…
全身から血の気が引くその感覚は経験上わからんでもないが、
ここで言うのはよせ
>>568 別にさあ、IFなんだから気にせず発表すれば?
ここまで言ってからだすとな〜水曜まで待て
スクラン最終展開。突如、学校を辞めた播磨は花井と決闘することに。
花井「播磨…!ならばお前は俺と闘うため、それだけのためにわざと天満くんにフラレたというのか!?」
播磨「俺は…俺は!昔の俺に戻りたかったんだ!!
誰にも縛られない神で魔王な俺に戻って、一度お前と徹底的に戦いたかったんだ!!
気に入らなかった…天満ちゃんを追いかけるためとはいえ、日に日にぬるくなっていく自分が…
不良の癖に夢なんか持っちまって…居心地のいい学校も好きになってきてしまってたんだ!
だ、だから…一度全部にケリをつけて元の一匹狼に戻る必要があったんだ…!
おかげで…今はいい気分だぜ…」
花井「本当にそうか?」
ベジータ?
ベジータだな。
花井の一人称が"俺"かよ
播磨はベジータか。ぬるくなりっぷりはあいつは凄いからな。
あと、何気に花井>天満ですごい真旗展開だな。
天満嫌いなの?
一応俺になるときもあるぞ
579 :
Classical名無しさん:05/07/25 13:10 ID:8kt/rNh2
♭31 BIRTHDAY PRESENT
今日は天満の誕生会。なかなか天満と二人きりになれずやきもきする播磨はひとりで飲んでばかり。
ほろ酔いかげんの播磨に、トイレにたつ天満がメモを渡す。階段を上がったつきあたりの部屋で待ってて欲しいと。
隙を見て座敷を抜け出す播磨。指定された部屋で天満を待つ間に、ついうとうとと。
気がつくと、かたわらには八雲の姿が。 ご丁寧に、誕生日プレゼントと書いた天満の張り紙つきでまどろんでいる。
さしこむ月明かりに照らし出される寝顔に思わず息を飲む播磨。とその時、廊下がきしみ人の気配が。
扉を開けて入ってきたのは、播磨を探す沢近だった。 邪魔したみたいね。踵を返す沢近の手を播磨の手が掴む。
反動で倒れこむ沢近を抱きとめる播磨。そこに様子を覗きに来た天満が遭遇して……。
580 :
Classical名無しさん:05/07/25 13:19 ID:8kt/rNh2
増刊げと。
以下簡易バレ。
小学生の天満と八雲は夏休みの宿題で絵を描きに動物園へ。
一緒にキリンの絵を描いていた二人だがいつのまにかいなくなる姉。
一向に戻ってくる気配はない。次第に不安になるやくも。
天気も突然悪くなり雨も降ってくる、雨に濡れながらもそれでも待っている。
そんな時、傘を差し出す少年が。「お前、迷子か?」
事情を話すやくも。少年と共に売店の傍で雨宿り。
少年は、やくもを元気づけようとキリンについて語り出す。
しばらくすると雨が止み虹がかかる。
少年は雨で濡れていたやくもに風邪ひくからと暖かいレモンティーをわたす
甘酸っぱい味だった。
姉を探しにいく二人、「イトコ姉ちゃんにたのんでやっから心配すんな」
キリンの前にいくとてんまが立っていた「どこいってたの?お姉ちゃん心配したゾ?」
やくもが振り返ると少年はどこかに消えていた。
目を覚ます八雲、茶道部部室だった。
サラが目覚ましにレモンティーを入れてくれるのだった。
581 :
Classical名無しさん:05/07/25 17:08 ID:8iFGRHVA
何がウソやらホントやら
舞台の上では、愛理と八雲の二人がどうしていいものか分からず、お見合いしていた。
つむぎ 「どうしよう高野さん。観客のムードが悪いし、なにより台本に無い展開に出演者達が……」
晶 「我に秘策有り……! みんな、私の言うとおりに準備をしてくれる? まず、幕を一度下ろして」
観客 「おい、幕が下りちまったぞ。……ん、誰か出てきたみたいだ」
晶 「えー、高野です。今日は私が脚本を書いた演劇を見に来て下さり、まことにありがとうございます。
えー、この後のクライマックス? 王子と姫のキス? の前に手違いが起こってしまいまして……」
観客 「ブー ブー」
晶 「 」
観客 「え……。今、何て?」
晶 「…コホン。皆様により楽しんでいただけるよう、少々のお時間を頂きたい。
えー……王子役、愛理! 魔女役、八雲!
どっちつかずのまま、このまま終わっていいのかい? あなた達も女優なら、舞台に命を懸けなさい!
(……まだかかる? ……分かったわ。あと少し引っ張ればいいのね?)
えー、もうしばらくお付き合い下さい。
お姫様のキスが欲しいのなら、この後の? クライマックス? 堂々と闘いなさい!
剣と魔法のファンタジー? 王子と魔女の真剣勝負?
その勝者がこの後のシーンにて、お姫様とキスをする事になります! 」
観客 「おおーー!!」
晶 (準備が整ったみたいね……)
晶 「すぅーーーーーーーー。 女の中の女、出て来いヤァ!!! 」
観客 「わぁーーーー!!!」
美琴 「行け、沢近!」
愛理 「ちょっ、美琴?」
天満 「八雲ならやれるよ!!」
八雲 「は、恥ずかしいよ。姉さん……」
播磨 「zzz……zzz……」
愛理 「…姫を殴るのはいいの? あと、頭髪の処理とか」
晶 「好きにしたら?」
柱
タイトル小さい…。/(KC8巻宣伝)
エリー王子vs.悪い魔法使い・ヤクモ。
観客、ヒートアップ。
播磨姫! 起きてるなら、演技!
高野晶。意外に素直。
高野総統だから言えることもある。
観客は、面白ければいい。
周防美琴、姫になりそびれたが、セコンドで復活。
テンマ王子、魔法使い・ヤクモに肩入れする為に復活。
播磨 拳児、二度寝。
高野 晶、脚本、演出、総統、さらにレフリー…。
――反則裁定はナシの方向で…。
コメント
高田総統ネタのハガキ職人様をはじめ、
このバレネタを見て下さった皆様、ありがとうございました。
おいおい今日は美琴の誕生日だぜ
沢「ミコトってさ〜腕っ節強いよね〜」
周「まあ道場で揉まれたからな」
晶「男性が相手でも引かないし」
周「揉まれてるからね」
天「胸も大きいし」
周「揉まれて…てなに言わすのかな」
天「え胸って揉むと大きくなるの?」
周「違うって…ハイそこメモらない」
晶「やっぱり」
沢「花井君ね…」
周「ち 違〜う」
天「八雲〜胸揉n(ry」
八「ね 姉さん」
585 :
Classical名無しさん:05/07/27 15:16 ID:rc3mcBoo
旗分が足りない
めまいがする
誰か旗分を補給させてくれ…
よし、まかせろ
「お嬢、好きだ」
「わたしもよ」
END
587 :
Classical名無しさん:05/07/27 21:04 ID:PjzcHS5Q
全パも泣いた
全セも。
焼豚はこんなので泣いてる場合じゃないぞw
サラ「はい。ミルクティーとフランボアーズのパイです。」
パァーン!
部室に平手打ちの音が響く。
沢近「…バカにしてるの?」
サラ「!!!???…?????!!???〜!!!!」
沢近「ちょっと”ジュンケツ”だからって…見下さないでよ!」
タタタタタ・・・バタンッ
出ていった。
サラ「…ヤクモ。私、何か悪いこと言った…?」
…フルフル…
八雲「サラ…。悪気はなくても人は傷つく。そんな時も…ある…と思う。」
はっ。
その言葉に、サラは気付いた。
自分はシスターなのだ、と。
シスター。
それは純潔の極み。
一度失ってしまったら二度と戻らない純潔の…。
そのシスターが、コトもあろうに”フランボアーズのパイ”などと…。
これは日本で言う、『警察が犯罪者にカツ丼をおごる』の図と等しい行為ではないのか。
屈辱。
それは、屈辱。
屈辱お嬢様。
サラ「私…。…ワタシぃ…」
なんてヒドイことをしてしまったのだろう。
あまりの失態に嫌悪の念が溢れ出す。
サラ「ヤクモォ…」
八雲はただ、黙って頷いた。
八雲「サラは悪くないよ。誰にでも間違いはあるよ。ホラ、謝っておいで。」
サラは「うん」と頷くと、足早に、つい先ほど部屋を出ていった、自分と同じブロンド髪の先輩を追った。
八雲は思う。
沢近先輩はサラが羨ましかったのだと。
フランボアーズのパイ…。
パイは日本でパン扱い。
そして、パンを彼女達の本国ではこう呼んでいるのだ。
『ブレッド』
そう。
「サラ・ブレッド」
混血である事。
それは恥などではない。
むしろ誇り。
お母様とお父様の。
それを、純白な無知が踏みにじったのだ。
母の血を。
そして、父の故郷を。
一点の濁りもない、白が。
…その後…
パァーン! パァーン!
純潔なシスターの勘違いによる謝罪は、
純血ならぬシスターの往復ビンタによって断罪された。
本日二度目の裁きの杖で。
【完】
可哀想だから感想:訳が分からない。
オチがわからない。
なぜビンタ?
不条理劇?
タイトルにある『i』の意味もよくわからんな。
純潔と純血の引っ掛け?
お嬢が怒ったのは混血である自分をバカにされたからではなくて
処女じゃない自分をバカにされたって意味?
全く意味がわからんな。とりあえず、作者。一読者の振りしてでも
いいから納得の行く説明してみ。作者の脳内ではしっかりしたビ
ジョンがあって、それがわからない読者はアフォだってことなんだ
ろうが。
ちょっと言葉遊びが過ぎて、分かり辛いところがあります。
自分が読んだところでは、沢近が怒った理由はサラの行為を「混血であることを馬鹿にされた」と勘違いしたから。
その際にジュンケツ(純血)という言葉を用いたことから、サラの方は沢近が怒った理由を「自分が『彼女がジュンケツ(純潔)
でないことを責めた』と勘違いされた」と、勘違いしたから(ああややこしいw)
で、その行き違いが2度目のケンカ……ですか?
タイトルの読み方は「『アイリ(愛理)』とキリ『イギリス』の国『キョウカイ(教会)』戦争」でしょうか?
>>597 念のため、自分は作者じゃなくて正真正銘の一読者。
オマイさんの言い方は、ちょいとトゲがありすぎでないか?
「死ね」としか書かれてないレスされるよりマシだと思。
スルーされるよりマシだと思。
602 :
597:05/07/28 22:46 ID:vhZOfZ0s
>>598 説明乙。
一応意図はわかった。俺の解釈の逆だったみたいだな。
しかし、サラの勘違いは少し無理があるかと。シスターが
パイ出しただけで、処女じゃないと思われたと思い込むっ
てちょっとねえ。
まあ、少し言い方が悪かったのは謝るので、これからも
がんがってくれ。
あ、
>>598は作者じゃなかったんだな。ごめん。
603 :
598:05/07/28 22:58 ID:ttrQoaVY
イヤ……、マジで作者じゃないんですけど……
だから作者がホントはどう意図したかは分からないし、自分の見解をそのまま受け取られても困ります。
どっちみち読む価値ねえから、どうでもいいだろ
マターリ行こうぜ。
♯142 息子よ
播磨が家に帰ると絃子から手紙が届いてると一通の封筒を渡された
差出人は 大谷、 あの後漁に戻って先日矢神に帰ってきたので 久々に船の皆とあわないか?という内容だった。
1年はかえらない漁じゃなかったのか? 不思議に思いながらも 播磨は指定された日に居酒屋に 向かった。
其処には船長を除いた全員が黒いスーツを着て居た。ジンマガの播磨の担当だった人と編集長もいた。
「船長は?」と不思議がる播磨に 「船長は 漁の途中 身体を壊して其の侭…… 」と告げる 大谷
「船長から オマエにだよ」 と 古ぼけた大学ノートと 手紙の束が 播磨に渡される
内容は ノートが 昔書いたネタ帳で 手紙は 播磨を励ますものだった
一ばん最後の手紙には 乱れがちな字で 「播磨 漫画描いてるか? 俺みたいに逃げるんじゃないぞ
描いてれば伝わる思いもあるさ。 お前ならできる」 そう書いてあった。
唇を噛み泣くのを耐える播磨。 彼の肩に編集長がポンって手を置いて 「アイツは君の事期待してたよ」
そう言った。 耐え切れず播磨は号泣した。
居酒屋からの帰り 播磨は公園から携帯をかけた 「……妹さん テスト終わってたら …… 漫画 又手伝ってくれないか」
泣きながら言う 播磨に 「……はぃ がんばりましょう 播磨さん 」 八雲はそう言った。
巻末コメント オリジンさん 差し入れありがとうございました。
どうせなら559のようにバレスレの人の書き方まねろ
ただのコピペに何言ってんだ、おまえ。
旗読みたいなあ
誰か書いてくんねえかなあ
「お嬢、好きだ」
「私もよ」
end
それ見たの5度目だw
過程が欲しい。
〜ある晴れた昼下がりの屋上〜
「お嬢、好きだ」
「私もよ」
end
曙が泣いた
どんなに殴られても!
僕は泣くのを!止めない!!
ナンカチガウ orz
君が泣くまで!!!
僕は殴るのを止めない!!
こんな感じ? 元ネタ知らんけど
ある農作業具を見て播磨が一言。
「お嬢、鍬だ」
「私もよ」
FIN
私も何なんだよw
お嬢の勘違いと思った折れは旗な奴さ!
ある農作業具を見て播磨が一言。
「お嬢、鋤(スキ)だ」
「フン。これだからアンタは筋肉バカって言われんのよ。あれは鍬(クワ)よ」
「ハァ? オメーみてえな舶来モンにナニが判る? ありゃこの国では鋤って言うんだよ」
「あら、生まれた時から日本にいるくせにそんなことも判らないの? カワイそうね」
「鋤だ!」
「いいえ、鍬よ」
「間違いねえ、鋤だ」
お嬢の態度が気に触ったのか、いつになく強弁する播磨。
「鍬って言ったら鍬よ」
こっちもムキになる愛理。
ヒートアップする二人。いつものように既に周囲は見えていない。
「だから! ス キ だ っ て 言 っ て ん だ ろ !」
博物館じゅうに響き渡る大声。
シン、と静まり返る室内。
学芸員の咳払いの音におそるおそる後ろを振り向く播磨。
展示室中の人の目が二人に釘付けになっている。
――いや…これは…まるで…俺が?お嬢に?告白してる、みたいな…ていうかそうとしか見えないというか…
ささささー、と音がするように血の気が引く播磨。
――ひょっとして…コイツって…私に…好きだって言いたかった…の?
播磨の言葉が脳裏に染み込んで行くにつれて真っ赤に頬を染める愛理。
愛理は播磨の腕を取って展示順路の廊下へと引っぱっていく。
そして真っ赤な顔のまま、上目遣いで小声で播磨に言った。
「そ、そんなに言うのなら…付き合ってあげないこともない……わよ」
これがのちに世に言う「播磨拳児歴史博物館絶叫告白事件」の顛末である。
とっぺんぱらりのぷう。
いいなw
>622
そうキタか!!w
GJ!!
// // / / ! / i ヽ.
. // , / // // //! /ト-l/_ lj l l
. ,',' / // // // // l l l! `lトli l |
ll l //l/l l Nl__L| ll ! 、.__ j! l l l l
|l l l l l,ム-ifT_l_N| ! l __厂`トl、/l /
{!ヽl l_トl | ! レ',.ニ.ヽ. ィ,.ニヽj/ l/l/i|
|ヽ!メ ヽi/ _ノ:::i .ノ::::i .} /'´}|
l ハヽ( . { トッソリ トッ リ j ,ム /i|
l l lヽ、ヽ. `-‐゙ └-'′ ,.イ リ
ヽN `ヘ. ''''' ' ''''' /////
{Nヽ. ヽ \ っ /////
ヽlヽ. ヽ_〕ヽ、 ,.ィ'´ ///
ヽ/7.| ` ー ' .ト\//
,. -─==--─| |/j ヽ} ヽ、._,. --- 、
/ ヽ l | | | \
/ ヽ j ト、__ ,. - ! ヽ / i
. i ヽ. / ! ヽ / j ヽ / |
. | ヽ / ト、 ,.ィト、_ ヽ / l
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
世の中、どっからどういうきっかけで
何が生まれるかわからんなw
くだらねー。
キエウセロ(・∀・)腐れチンカス
>622
もう最終回コレでいいよ
>>622 くだらねえといえばそうだが、きっちり萌えた。
これで萌えるんだから旗なんてやすいモンだ。
実は俺、
>>622と似たような経験したことがある。
厨房当時好きだった子に、「○○君、スキスキ〜(空き空き)」と大声で言われた。
教室中が凍りついた。
634 :
619:05/08/02 23:47 ID:amXavVBY
つーか鍬はクワでスキは鋤なんだな。
鍬がスキかと思ってた・・・変換したら出てくるし・・・
>>622 GJ
S3管理人交代しろよ。俺は出来ないからやらないけどな。
誰かの幸せの影には誰かの悲しみがある。
そんな当然の事に気付いたのはきっとあの桜の季節だっただろう。
「播磨くん!みんなで写真撮ろうよ!」
三年間を通じて知り合えた大切な友人達。
卒業写真の中でみんなに囲まれて笑っている俺…
カリカリカリ…
「ふ〜、ようやく最終回だ」
THE END
どっからか播磨の書いたマンガに入れ替わっていたパラレルエンド。
だけはやめてほしい。
駄文すみませんでした。
>622
播磨は幸せなのか不幸なのかわからんな(w
てかいつから保管庫とまってるんだ・・・
レストランで沢近が播磨を助けた件をもう忘れたのか?あそこで沢近は確実に
播磨の本心に気がついたと思うんだが。ただ金髪は腹黒だからな。播磨の恋が
実らないということを悟って、播磨が玉砕するまでは播磨の側にいてサポートを
する振りをして、いざ播磨が玉砕して打ちひしがれているところに横からさっと
現れて「ほんと鈍い男ねあんたって。こんな近くにあんたのことを思ってる・・云々」
というストーリーを計画しているはず。これを成功させるためにありとあらゆる芽は
摘んでおかねばならないわけで、一番のライバルになるであろう八雲を早めに
潰しておいたわけだ。
く、黒お嬢…
ごめん。なぜか沢近はそこまで賢くない印象が……
お嬢は不器用に自爆こそ真骨頂
納豆食えない奴にそんな器用なことは無理
643 :
Classical名無しさん:05/08/04 14:00 ID:Owjc0tl.
引き続き旗SSきぼんぬー
S3がにぎわってた頃が懐かしいな……
本当に復旧するんかな。
>>644 読み返したいのがたくさんあるから復旧してほしいですな
播磨が天満に告る前に天烏成立、播磨マジ泣き。
播磨傷心、天満の幸せの為諦めようとするが高野に励まされる。
その後播磨過去編に突入(6巻の高野の写真は昔の播磨)。
播磨、決意を改め天烏応援シフトに移行、播磨ピエロ編突入。
しかし積年の想いだけはどうしても伝えておきたい播磨、
いつものごとくスルーと思いきやガチの告白(八雲との事が誤解とか)、
が、変態さんの伏線により撃沈。
傷心の末、播磨出家編スタート。天満、周囲の人達(八雲とか)に変態さんは
何かの間違いじゃないかと言われ、真相を知るべく寺へ。なんとか誤解が解け、スキン播磨、
ここぞとばかりに想いを伝える。変態さんのリスクなしの勝負。が、
今度こそ本当の撃沈。播磨メサレル。しかし、天満の仲良し友達宣言により学校に復帰。
夢破れた播磨、学校でグラサンはずしイベント発動。播磨の様子が気になった沢近、周防。
天満から色々聞く。そして沢近、播磨を優しく励ます。しかし、播磨はへこんだまま。
女に振られたぐらいで何をこんなにと不振がるお嬢。
そしてとうとう播磨の漫画(播天ラブコメ)が雑誌に載り、クラスメイト達にばれる。
が、P.N執事ナカムラのおかげで回避。が、沢近は(7巻のクダリ)播磨が描いたと気付く。
そして漫画をみた天満、これおもしろいねーと発言。それを聞いた播磨、漫画家の道を決心。
天満にこれ変なのっ、といってもらうために。そして修学旅行編スタート。
播磨抜きのクラスでわいわいと修学旅行中。しかし4人娘達は播磨を心配する。
その頃播磨、漫画取材のため八雲を連れ遠出。
修学旅行先、くしくも矢神高校と同じ宿泊先に泊まる播磨一行。それに気付く播磨。
もはや天満とは運命の赤い糸状態ではないかと結論付ける。一度は振られた播磨。が、
運命を信じ再度アタック開始を決意。が、漫画家の格好を決め込んでいる播磨。
天満に知らない人と断定される。ひくにひけない播磨。別人になりすまし天満に接近。
天満以外にはもろばれ状態。が、播磨は完全否定。P.N執事ナカムラだと偽る。
播天ラブコメ=播磨が描いたと暴露したことに気付かない播磨。が、天満も気付かず。
沢近にどういうつもりと聞かれるが、運命だと一言。天満にどうしてあんな漫画を描いたのかと
聞かれる別人播磨。またもや運命だと一言。その後、修学旅行に来ていた絃子に何をやっているんだと
あきれられる。そしてあまりに哀れな播磨をやさしく諭す。
「もう諦めたまえ。」
「いや、俺には天満ちゃんしかいねえ。それに運命には逆らえねえ。」
「馬鹿か、君は。別人に成りすましたままでどうする気だ。」
「はっ。た、確かに。」
「まったく、仕方がない。私に任せろ。」
(絃子、すまねえ。恩にきるぜ)
播磨暴走編スタート
>>646まではいいと思うが
>>647以降の播磨は、ここまで行くとキモカッコワルイ
既に烏天が成立している上キッパリとフラレているのに、なおも付きまとうのはストーカーちっく
今週の♯のように、天満の幸せのために涙を飲んで身を引く漢気を見せて欲しいモノだ
「なあ、絃子。なんで俺が買い物に付き合わなくちゃなんねーんだよ。」
「まあそういうな、拳児くん。誰にも祝ってもらえなかった君の誕生日を祝ってやったんだ。
「ぐっ……。」
「しかしあれだな。君はもしかして可哀想な人間なんじゃないのか。私以外にプレゼントを
もらえないなんて。」
「いや………、プレゼントはもらったぜ。」
「何を?」
「笑顔とありがとうだ。」
「………、なんだ。それは。」
二人話しながら歩いている。そしてふとある店の前で立ち止まる。
「拳児くん。私はこれがほしい。」
「……自分で買え。」
「君はそんなことだから女にモテないんだ。本当に甲斐性がないな。」
「ぐっ…。ちっ、買えるぜこのくらい。なめんじゃねえ。」
播磨、絃子に挑発され店のショウウィンドウを見つめる。
(つっても天満ちゃんに花贈ってあんま金ねえんだよな。いくらだこれ。)
値札には桁違いの値札が見える
「絃子……。」
「どうした、このくらい買えるんだろう?後、名前の後にはさんをつけろ。」
「買えるかっ。バカヤロウ。」
「まったく、君はほんとうに駄目なやつだ。ああ、これだから塚本君にも……。」
「うるせーーー。ちくしょうっ。」
するとそこに髭を生やした変なおっさんが。
「いやはや、これはこれは。お嬢様のご学友と先生ではありませんか。」
執事の中村だった。
「お二人でお買い物かなにかですか?」
「「いえ、違います。」」
「はっ?まあいいでしょう。私はお嬢様のお買い物にお付き合いしているところ
でして。アッハッハ、お嬢様のお買い物は長くて困ります。」
((聞いてねえよ))
「しかし、お嬢様にはもう帰っていいと言われたのですが、やはり私は執事として……。」
((だから聞いてねえよ))
「……それでですね、遺憾ながらお嬢様の意向を汲み取ってですね、帰るところなんです。」
「そうか、わかったからそこをどけ。」
「いやいや、よかったら私、刑部様を御家までお届け致しますよ。」
「いいからまず人の話を聞け。」
「そういうことですので、あなた様はお嬢様のお買い物にお付き合い為さって下さい。」
「なんで俺がっ。」
「では行きましょうか、刑部様。」
変なおっさんの強引な言動と行動に流される播磨と絃子
リムジンに乗せられる絃子、そして一人残される播磨
(一体……これはどういうこったっーー。)播磨心の叫び。
リムジンはそのまま走り去った。
そして車内の絃子と中村
「申し訳ありません、刑部様。」
「一体これはどういうことだ。」
「………私はお嬢様のことを第一に考えております……。」
「……、なるほど。……まったく、おせっかいな。」
「お嬢様は気難しいところがありますので…。」
その頃、播磨は考えていた。
(面倒なこと頼まれちまったぜ。なんで俺があの金髪と……。でも……借りもあるしな……。)
播磨は原稿を届ける際、ぶつかった後原稿を談講社まで届けてくれた事を思い出していた。
(中村は帰ったかしら、あいつがいると買い物に集中できないのよねー。)
一人店内を見て回る沢近。そこに店内に入ってくる自動ドアの音が響く。
(まったく、中村のやつ、帰ったんじゃなかったの?はあ〜あ〜。)
振り返りざま
「中村っ、帰らないんだったら外で待っててっ。あんたがいると落ち着いて
お買い物できないんだからっ。」
が、振り向くとそこには仁王立ちの播磨が立っていた。
「へっ?な、なんであんたがこんなとこにいんのよっ。」
「…お、俺にもわかんねえ…………。」
「…………。」
二人の間に暫し沈黙が流れる。そして沢近が静かに口を開く。
「私は今ショッピング中よ、髭、アンタこんな店に何の用があんのよ。」
「この店に用はねえ、お前に用がある。」
「な、なによ、用って……。」
「買い物に付き合ってやる。」
「はっ、はあ〜〜〜〜?なんでアンタがそんな事……。」
「…借りが……あるからな。」
(借りって、この前お店で会った時、食事代おごった事かしら……。なんていうか、
律儀なやつね、まったく……。)
二人の間に誤解があるが話の流れに支障はなかった。
「お嬢、おめえが嫌なら帰るけどよ。」
「べ、べべべつにいいわよ。私はっ。」
「そうか……、なら付き合うぜ。」
「そ、そう。わかったわ。」
二人で店内のショウウィンドウを眺めていく。
「ね、ねえ、髭。」
「なんだ。」
「このネックレスなんだけど……。どう?」
「なにがだ。」
「だ、だから、その……私買おうと思うんだけど…。」
「だったら買え。」
「………髭。」
「なんだ。」
「アンタ…買い物に付き合う気……あるの?」
「もちろんだ。」
「…………。」
またもや二人に静寂が訪れる。
「ま、まあいいわ。」
沢近は他の商品を見て回る。そして可愛らしい動物をかたどったペンダント
の前で立ち止まる。そして、
「ねえ、髭。」
「ん?」
「このペンダント、どう?」
「いいんじゃねえか?おめえの好きなの買え。」
「わかったわ。ん〜、どおうしよっかな。」
(なにを悩んでんだ?ん?そんなに高えのか。)
値札を見る播磨、そして
(な、なんじゃこりゃーーーー。ご、五十万っ………。)
唖然とする播磨。
「そうね、これにしようかしら。」
「ま、まて。お嬢。」
「なによ。」
「はやまるな。」
「なにがよ。」
支援ー
>「はやまるな。」
ワロタ
播磨可愛杉
(五十万ていやあ、バイクが買えんじゃねえか。それをこんな小せえ動物形と引き換え…。)
「……お嬢。」
「なによ。」
「おめえ、動物が好きなのか。」
「へっ、ええ。まあね。」
「だったら動物園で我慢しろ。」
「はっ、どういうこと?」
「今から動物園に行くぞ。」
「へっ、ななななんでよ。」
「いまからおめえに思い知らせてやる。」
「な、なにがよっ。」
播磨が沢近を連れ店を出る。
(な、何考えてんのよ、この髭は。まさか、………ねえ、だってこの髭は……)
困惑しながらも播磨についていく。
(この金髪は金銭感覚ってもんがねえ、庶民を思い知らせてやる必要がある。
フ、フハハハハハ。)
播磨先導のもと沢近は戸惑いながらもついていく。
「ねえ。」
「ん?」
「どういうつもりよ………。」
「黙って俺について来い。」
播磨行きつけの動物園に着いた播磨と沢近
「へえ〜〜、こんなとこにもあるんだ、動物園。」
「ああ、なんせ行きつけだからよ。」
播磨はこの言葉が好きらしい。
「お嬢、まずチケットを買うんだ……。そうしないと動物園には入れねえ。」
「……知ってるわよ。」
「………そ、そうか。」
二人で入り口のチケット売り場まで歩く。そして
「わかるか、お嬢。」
「…なにが?」
「大人一枚千円だ。」
「そうね。」
「ふたりで二千円だ。」
「う、うん。」
「わかるか?」
「……わ、わかるわよ。」
「わかったならそれでいい。」
(なんなのよ、一体………。)
そして播磨が二千円を出しチケットを買う。
「自分の分は出すわ。」
沢近が財布に手を伸ばそうとした瞬間、播磨、それを阻止する。
「いいの?」
「ああ、俺にだってこのくらいの甲斐性はあるぜ。」
播磨は絃子を思い出していた。
「あ、あのさ……、髭。」
「なんだ。」
「その、………ありがとう。」
「お、おおう、気ニスンナッ。」
素直なお礼の言葉に少々戸惑う播磨だった。
「久しぶりだわ〜、動物園。アンタよく来るの?」
「ああ、まあな。」
二人して動物園内を見て回る。そして播磨が立ち止まる。
「ピョ〜トル……。会いたかったぜ。」
(ピョートルーゥ!?なに?動物に名前付けてんの?)
「あのさ、ピョートルってなに、名前?」
「ああ、こいつの名前だ。」
(へえ〜、動物好きなんだ。髭……。)
「こいつはな、芸ができるんだぜ。」
「キ、キリンが?」
「ああ、ちょっと待ってろ。」
播磨がどこからかバレーボールを持ってくる。
「ちょっと、何する気?」
すると播磨はキリンにむかってボールをヒョイと投げた。
「ああ、なにしてんのよっ、髭っ。」
沢近が慌てる、がなんとキリンがボールほ跳ね返してきた。そして播磨もボールを
キリンに返す。
「わあ〜、すごいわね〜。」
「まあな、俺とピョートルは心通じ合う仲だからよ。朝飯前だぜ。」
そんな播磨とキリンを見て楽しそうな沢近。そして
「まあこんなもんよ。」
「……なかなかやるわね、髭…。」
「こいつと俺にしかできねえ。熱い友情で結ばれてるわけよ。なあピョートル。」
得意げにキリンの方を振り向く播磨、すると数人の子供達とボールを跳ね返しあう姿が。
「…………ピョートル……ナゼ………。」
「……………。」
沢近はだまったままだった。
そろそろ日が沈みそうな夕暮れ時、
「どうだった?お嬢。動物園は。」
「ええ、楽しかったわ。」
「そうか………、…わかって……くれたか。」
何かが違うことに二人はいまだ気づいていなかった。そして二人は動物園を
後にする。そして、帰り道
(そういや買い物に付き合うっつう約束、まだ果たしてねえ…。)
「おい、お嬢。」
「何?」
「買い物はしなくていいのか。」
「ええ、もういいわよ。」
「それじゃあ困るんだっ。」
播磨が叫んだ。少しあっせた沢近。そして、
「そ、それよりお腹がすいたわ。」
「じゃあ買い物に付き合うのはもういいのか?」
「ええ。…じゃあご飯に付き合って。」
「お、おう。」
(買い物はもういいっつってるし、これでいいよな?約束…)
播磨が考え込む。その様子をみる沢近。
(なんで髭がこんなことしてるのかしらねえ……、……本人に……聞いてみようかしら…。
だってこいつはあの娘が………。)
夕暮れ、二人は一緒に歩いている。
そろそろ眠いんでここまで。続きはまた書きますんで
いっしょうねむってろ
>662に萌えた。
>660
GJ
続きを読むまで寝れない
二人でとあるレストランに入る。播磨は黙っている。
「ねえ、あのさ…。」
「ん?」
「今日は…そうね、退屈せずにすんだわ…。」
素直になれない沢近、播磨はもくもくと食事をしている。
(やっぱり聞いてみるのが一番ね。)
「ちょっとさ、き、聞きたいことがあるんだけど…。」
「なんだ?」
「なんで買い物とかに付き合って…くれたのよ…。」
「あ?人に頼まれてな、付き合ってやってくれってよ。」
「…………そう…、…そっか。」
沢近の表情が硬くなる。
(やっぱりね……、こいつがこんなことするわけないもんね……。)
沢近は意を決し、もう一つ知りたかったことをきいてみる。
「髭…、あんたさ、…その……天満のこと好きなの…?」
ドンガラガッシャーーン…、わなわなと震えだす播磨。
「ナ、ナナナナンノコトヤラ。」
明らかに動揺を隠せない播磨。沢近は続ける。
「この前さ……、天満の誕生日の日、レストランで食事してたじゃない。」
「あ、ああれはよっ、修治のやつがどっかつれてけってうるさいから、し、仕方なくなっ。」
「修治?」
「お、弟だ。誕生日が一緒でよ、たまたまな。」
(な、なんでだ…、なんでなんだ……。やべえ〜〜〜。俺の秘密がばれてしまうっ。
まずい、はっきりいって…こりゃあまずいぜえ……。)
「こ、ここの飯はうまいぜっ。最高だっ、うめえ、うめえよっ。」
話題をそらそうと必死になる播磨。もはや味すらわからないのに。
「…………。」
沢近は播磨を見て黙った。播磨は動揺を隠せないままなおも話す。
「おっ、こりゃまたうめえぜ〜、なんだこりゃ?マグロか?」
「………鮭児よ…。」
「…ケイジ?魚のくせしてえらそうな名前してやがんぜっ、まあうまいから許すがなっ。」
(……やっぱアホだわ…、こいつ…。)
そして、一気に食事を終える播磨。
「そろそろ帰るか。」
一刻も早くこの場を去りたい播磨はそういうとおもむろに席をたった。
「…ええ、そうね。」
会計をすまそうと慌てて席を立つ播磨。そして、
「お会計二万三千円になります。」
(た、高え〜……、しかし、ぎりぎりなんとか……。)
「私が払うわ。」
沢近がカードを取り出す。
「待て、お嬢。」
「なによ。」
「俺が出す。」
「あんたにそこまでしてもらう義理はないわ。」
「いや……。この前よ、金、払ってもらっただろ……、あん時はその……
助かったぜ。サ、サンキューな…。」
「………え…。」
播磨は覚えていた。
そして播磨は財布を取り出し、現在の所持金を確認する。が、
(なんてこったーー。せ、千円足りねえ…。やっべえ…、どうするよ、俺…。)
冷や汗をだらだら流す播磨。その様子を沢近が見ていた。
「…髭。足りないの?」
「あ、ああ。千円足りねえ…。…ドウシヨウ。」
すると沢近が千円取り出し播磨に渡した。
「…お、お嬢。」
「動物園のチケット代よ。アンタに返すわ。別におごってもらう義理ないし。
デートしてたわけじゃあるまいし…。」
「そ、そうか。すまねえ。お嬢、恩に着るぜ。」
「…………。」(……ホント、コイツは…。)
沢近は沈んだ表情をしていた。そんなことには一向に気づかず素直に礼をいう
アホの播磨。
そして二人店をでる。
「じゃあなお嬢。」
「……ええ。」
別れようとしたそのとき、二人に向かって声が響いた。
「あっれえ〜〜〜〜!愛理ちゃ〜ん。それに播磨君もっ。なにやってたの〜〜?
二人して?」
それにピクリと瞬時に反応する播磨
(て、てててて天満ちゃん!一体どうしてここに…、まさか………俺を探して…。)
アホだった。
「あら、天満。奇遇ね。」
「本当だよねえ〜〜〜。私は夕食のお買い物の帰りなの〜。二人はなにしてたの?」
天満はいつものようににっこり笑顔だった。
「て……塚本。これはその違うんだ。」
「へっ?何が?」
あたふたする播磨を見た沢近
「天満、たまたまこの髭とこの店のまえで会ったのよ。」
「ふ〜ん。そうなんだ。それより愛理ちゃん。見て。今日は私が夕食つくるんだよっ。
なんと!フフフ。つくるのはマグロカレーだよ〜う!もっと上手に作れるように
しなきゃね!」
それを聞いた播磨。
(な、なんだってーーー。天満ちゃんが俺の好きなカレーを……。がんばって練習…、
可愛いぜ〜〜〜、天満っ!)
まだアホだった。
「あら、天満。練習するなんてえらいじゃない。」
すると今まで笑顔だった天満の顔が少し曇った。
「う、うん…。その…私の誕生日会に来てくれなかったから…。ほら、だから…。
みんなでおいしいものいっぱい食たりはしゃいだりして楽しかったじゃん?だから、
おいしいもの…たべてもらいたくって…。なんて、ハハハ。」
ぎこちない笑顔でかえす天満
(烏丸君のことね…、天満…。)
沢近がそう思ったそのとき、播磨がおもむろに口を開いた。
「て……塚本。」
「どうしたの?播磨君。」
(ちょっと、何言う気よ、この髭。…まさか。)
「がんばれよ…塚本。」
「えっ?」
天満がはっとする。
(!??この髭、がんばれって…、自分で何いってんのかわかってんの?)
播磨は続ける。
「頑張ればよ…、カレー……、きっと上手く作れるようになるぜ…。そしたら…、
喜ぶとおもうぜ、男ならな。」
「そ、そうかな?」
「ああ、間違いねえ。この俺が言うんだからな。」
「ほ、ホント?そっか、よ〜〜〜し、がんばってつくっちゃうもんね!マグロカレーっ!」
天満の表情が満面の笑顔に戻った。そして、
「あ〜〜〜〜!もうこんな時間!早く帰らなくちゃ、八雲心配しちゃうしねっ。
じゃあね〜!愛理ちゃん!播磨君!」
天満が帰り、また二人になった播磨と沢近。
「ねえ、髭。」
「なんだ。」
「アンタさ……、知ってたの?」
「…………。」
「がんばれって……、何言ってんのかわかってんの…。応援してどうすんのよ…。」
「…………。」
播磨は無言のままだった。
もうっ、わかったわ。じゃあ仮の話ね。」
「……?」
「もしね、自分に好きな人がいたとするわよね。」
「……。」
「その好きな人は他の違う誰かのことがすきなの。」
「……。」
「あんたはどうすんの?」
「……。」
「普通あきらめるわよ、可能性がほとんどないんだからね…。だからまた違う誰かを
好きになれば…。」
「…あきらめられるのか、おめえは。」
ドクン………
「え……。」
「俺はあきらめねえ……。それに…好きな女にはいつも笑顔でいてほしい…。
悲しそうな顔なんかもう…。」
播磨は天満と初めてであったあの頃を思い出していた。
播磨の表情を見る沢近。そして、
「…そうね、あんたは諦めないんだ。なら私も……。」
「は?何言ってんだオメーー、仮の話だろーが。」
播磨はいつもの播磨に戻っていた。
その後少しの間ふたりは黙ったまま。すると
「ねえ?髭」
「なんだ。」
「さっきの千円、やっぱ返して。」
「な…、返すっていったじゃねーか。」
「気が変わったわ、だから返して。」
(こんの金髪〜〜〜〜。)
「残念だったな。もう今の俺は一文無しだ。諦めろ。」
「……そうね、千円は諦めるわ。」
「よし、わかったなら帰るぞ。」
「……だったらさ……その…、ま、また動物園…連れて行きなさいよねっ!」
播磨が真剣な顔で沢近をみる。
「………お嬢。」
「ななななによっ!べべべつに深い意味はないわっ!ただねっ、まあ、行ってあげても
構わないって言ってるだけよっ!」
「お嬢。」
「なによっ!」
「……おめー、そんなに動物が好きだったのか…。」
「…………。」
沢近がうつむいてふるふると体を揺らしている。
「髭。」
「なんだ。」
物凄い眼光で播磨を睨み付け、
「いいから連れて行きなさい、これは命令よ。」
怖い沢近に身じろぎする播磨。
「エー…、…ワカリマシタ。」
(こんのやろう〜、女だからって…、ちくしょう。)
そしてその場を別れた二人。
家に着いた沢近。
「中村っ!」
「はっ、お嬢様。」
「どういうつもりよ。」
「はっ、私はお嬢様の幸せを第一に考えております。」
「……まったく、もう。」
「申し訳ありません、ご気分を害されたのなら、この執事中村。どんな罰をも。」
「いいわ、気にせず休みなさい。」
「………はっ。」
そして播磨も家に着く。
「おう。拳児君。遅かったな。」
「……おう。」
「どうだった?」
「絃子……。」
「何だ?あと名前の後にはさんをつけろと…。」
「金、貸してくれ。」
「………。」
「頼む。一文無しなんだ。」
「………ところで今日はどうだったんだ。」
「金がなくなっただけだ。」
「それ…だけか……?。」
「ああ…明日からどうすれば…。」
「君は本当に馬鹿だな。」
「うるせー。」
終劇
長くなりました。一人でも楽しんでくれれば幸いっす。今回は一応旗ってことで。
今度はまた違うのを。ではまた。
GJ。
いいIFだったぜ…けど播磨もお嬢も切ねえな‥
>>673 ここら辺は結構よく見るパターンだな。
まあ悪いとは言わないけど。
天満なら、播磨が八雲以外の女と二人きりで食事してたらだ、そこら辺についてもっと突っ込む様な気もする。
まあこの作品には不要などうでもいい描写だけど。
おやすみ。
GJGJ
いいね、この二人はじれったくて。
おかげでやっと寝れるぜー。いい話をありがd
「『3匹が斬られる』の時間だよ八雲!」
「……ごめん姉さん、今日は宿題があるから遠慮しとくね……」
そそくさと自室に去っていく八雲。
「『3匹が斬られる』見ないなんてめずらしいな〜。あっ万石だ!」
―――今日も……がんばろう。
正直『3匹が斬られる』は見たかった。しかし、今はそれより優先すべき事がある。机の上には編み棒と毛糸。
八雲がここ最近時間を作っては一生懸命編んでいる物。それは……マフラー。
ただのマフラーではなく、誕生日プレゼントとしてのマフラー。
事の始まりは11月の中頃。茶道部の部室での事だった。
その日、茶道部の部室には八雲、サラ、晶。いつものメンバーがいた。
「時に八雲。天満の誕生日がそろそろよね。プレゼントは決まった?」
「まだ……決まってないですね。先輩達は誕生日会するんです?」
「ええ。天満にはまだ秘密だけどテストが終わったらする予定よ。八雲もサラも呼ぶから」
「塚本先輩の誕生日会ですか!いいですね〜!」
―――姉さんはみんなに好かれてるんだな。
自分の姉である天満の誕生日をみんなが祝ってくれる事が自分の事の様に嬉しかった。
「そういえば天満の誕生日と播磨君の誕生日って一日違いなのよね。八雲はどうするの?」
晶が意味ありげに八雲を見た。
「え……、いや、その、播磨さんの誕生日今知りましたし……」
意外な事実に素直に驚く八雲。
「八雲も知らなかったんだ。奥手な八雲に自分から誕生日を言わないなんて播磨先輩も野暮だね〜」
「え……、私と播磨さんはそんな……」
狼狽する八雲にニヤニヤするサラ。もはや定番となった光景。
しかし八雲はふと思う。
――何故部長は播磨さんの誕生日を知っているのだろう?
播磨が自分から人に誕生日を言うとは思えない。かといって晶が播磨に誕生日を聞くのも想像できない。
クラスで何かあったのだろうか?
八雲は素直に聞いてみる事にした。
「部長は何で播磨さんの誕生日を知ったんですか?」
「八雲、秘密は女の財産よ……」
高野晶。何かと謎が多い。
その日の帰り道。
(誕生日プレゼントかぁ……)
あんな事を言われた後では意識するなと言う方が無理な話である。
もしかしたら高野は意識させるためにわざとこの話題を振ったのかもしれないとすら思えてきた。
(うん……。何かとお世話になったし……いいよね)
八雲の律義な性格も手伝って純粋に感謝の気持ちで誕生日プレゼントをあげる事にした。
(でも何をあげたらいいんだろう……。男の人に誕生日プレゼントなんて渡した事なんて……あっ……)
ふと男性に誕生日プレゼントを渡すのが初めてだと気付いて気恥ずかしさを覚えた。
(考え過ぎだよね……)
自重気味に笑って空を見上げる。冬本番前とはいえ11月の夜は寒い。澄んだ夜空を見てこれからの寒さを予感した。
(あっ……マフラー……)
直感的に冬でもタンクトップの播磨の姿が浮かんだ。
いくら野性児の播磨とはいえ実際冬にそんな格好をしている訳はないのだが。
イメージの問題である。
(マフラー……、編んでみようかな……)
その日から八雲の健気な努力の日々は始まった。
その頃播磨は………、11月のスチュアート大佐ごっこに挑戦していた。
支援?
オチが弱い。
それで出来上がったのがストレイツォのマフラーな訳ですね?
ところで何で保管庫は更新されてないんだ?
どーでもいいけど、派閥ある人とない人じゃ温度差はげしいよね
俺は基本的に面白ければイイナリ
>>680を書いた物です。稚拙な文で申し訳ありません。
一応話は続くんですが投下しても大丈夫ですか?
私は一向に構わんッッ
>691
GO!待ってたぜ
>676
ネタは良いと思うんだが、会話主体のせいか性急な印象があるような。
展開にも(特に中村回り)やや無理がある。もうちょい地の文を増やしてバランスを取ると
良いかも知れない。
絃子さんの中では「中村=サバイバルで女装してた変態」の印象が残ったままだろうから、
その辺を絡めて>651辺りから
「恐れ入りますが、お嬢様の学校の先生とご学友では御座いませんか。」
掛けられた声に二人が振り向くと、播磨には見覚えのあるやけに長い車が道端に
停まっていた。声を掛けたのは車と同様に長身で――隻眼の男性。
「あなたは…。」
「あ、どもッス。」
「知っているのか拳児君。」
夜の校舎で女装して大暴れしてた変態とこんな所で出会ったと思ったら、彼女の同居人は
この変態が何者か知っているという。ちなみに中村の「民明書房ですな」という呟きだか
なんだかは意図的にスルーした。いつ男塾の解説役になったというのか。
「ああ、お嬢――沢近んとこの執事さんだよ。あの時は世話に。」
「いえいえ、そちらこそご入選おめでとうございます。」
「――で、何か御用ですか?」
『沢近』の単語で再び脳裏に浮かんでしまったゴツいツインテール姿に気分を悪くしながら、
絃子が尋ねる。それが表情に出ているのは自分でも分かっているが、それは「デートの邪魔
しやがってこの野郎」という気持ちで出ている訳ではないのだ、と自分に言い訳をするため。
かどうかは、心が視えるエスパーでもいないと分からないのかも知れなかった。
もうちょっと続けてもいいがこんな感じでいくといいんじゃなかろうか。
超姉成分が追加されたのは俺の趣味だけど。(えー)
妄想丸出しで気持ち悪りーっす
>>695 いいけどソレならおまいが別に書くほうがいいと思う。そりゃもちろん超姉は好きだよ!?
角田に負けたな。
机の電気スタンドの慎ましい明かりが包む部屋の中。八雲は黙々と編み棒を動かしていた。
階下から姉が階段を登る音が聞こえる。八雲は慌てて編みかけのマフラーを隠した。
コンコンッ。
ノックに続いて扉が開く。
「八雲〜、私はもう寝るね〜。勉強も程々にしときなよ!」
「あ、うん。私もそろそろ寝ようと思ってたから……」
「よしよし。それじゃあおやすみ〜」
「おやすみ、姉さん……」
時計の針はそろそろ深夜の一時を指そうとしている。
(やっぱりもうちょっとがんばろ……)
天満が去っていったのを確認して隠したマフラーを取り出す。やっと7割ほどできてきただろうか。
(もうテストも始まっちゃうし……間に合うかな……?)
マフラーを作る事自体は全くやましい事ではないのだがやはり姉に見つかれば確実に播磨との仲を冷やかされる。
そんな少女の気恥ずかしさがマフラーを『秘密のプレゼント』にしてしまっていた。
(……やっぱ意識しすぎかな……)
マフラーを隠した時にずれたカーディガンを直しながら深い溜め息をついた。
思い付きから編み出したマフラーだが予想以上にその道程は険しかった。
家事なら何でもこなす八雲も編み物となると素人。
サラに相談してみたもののやはりサラも経験がないと言う。
「とりあえず道具を揃えにいこう!」
積極的なサラに後押しされ二人で買い物に行くことに。
「どんなデザインにするの?」
「まだ決めてないんだ……。播磨さん……どんなのが似合うかな……」
毛糸コーナーを前にして悩む八雲。
ふと顔をあげるとサラがニヤニヤしていた。
「やっぱり恋してる女の子は違うね〜!播磨先輩は幸せ者だよ!」
「えっ!?違うよサラ、そんなんじゃないって……」
顔を赤らめる八雲を見てサラは「またまた〜」とからかった。
悩んだ結果播磨に似合いそうなシンプルなデザインにする事にした。
サラはしきりに「二人で巻ける長さのラブラブマフラー案」を押してきたが却下された。
それからというもの、時間を見つけてはマフラーを編んでいるがやはり根気のいる作業。
一筋縄ではいかない。
夜遅くまで作業をしている為最近寝不足でもある。
(ちょっと眠いけど……うん……)
元々八雲に夜更かしをする習慣はない。
朝早くから朝食と二人分の弁当の準備をしなくてはならないしテストも近い。
更には部活とバイトもある。
部活の方は元々そんなに活動する部ではないので大丈夫なのだがやはり時間がない事に変わりはない。
しかし生来の真面目さを持つ彼女にはその全てに手を抜く事はできなかった。
忙しい。が、充実している気がした。
マフラーを編んでいる時は必然的に播磨の事を考えてしまう。
マフラーを巻いて喜ぶ播磨の姿を考えると頑張るのも苦ではなかった。
>695
GJ
だがあんたが書いた超姉が読んでみたい
しかしその一方でプレゼントを拒否された時の事を考えると胸の奥が冷えるような感覚を覚えた。
そして、やはりふと思う。
(何で私は播磨さんにこんな事を……)
友人、知り合い、恩人……。
自分と播磨との関係を表わす言葉が思い付かない。
とりあえず男性で一番親しい仲と言う事は確かだろう。
(誕生日プレゼントに手編みのマフラー……どうなんだろう……)
冷静にその意味を考えるととても恥ずかしくなり一人顔を真っ赤にした。
もし誕生日プレゼントを渡す相手が花井だったらけしてこんな発想はしなかっただろう。
けして花井が嫌いという訳ではないが播磨に対するほどの好意を抱く事はできない。
(特別な……人?)
少し前の幽霊の少女とのやり取りを思い出す。
(でも、やっぱり……、恋としての好きとはちがう気がする……)
恋という感情を今だに明確に抱いたことのない八雲はただ悩むしかなかった。
(感謝の気持ちをプレゼントにするのは……きっと普通の事だよね……)
感謝。八雲は自分が播磨に対して抱いてる感情を感謝だと思った。
彼との出会い以来男性に対する印象が柔らかくなったのは事実だ。
(播磨さんともう少し知り合えれば男の人の事も……)
そう思うとやはり自分の恋愛感情を認めている気がして胸が落ち着かなくなった。
漫画という繋がりがなくなった今、播磨と接触する機会は確実に減った。二人きりとなると皆無に等しい。
一緒に漫画を書いていた時間の事を思い出すとその記憶がいかに自分の中で特別な記憶であるかがわかる。
「会いたいな…………あっ…………」
知らず知らずに自分の口からこぼれた一言に自分で驚いた。
自然と顔が赤くなるのがわかる。
(私は何を言ってるんだだろう……)
邪念を吹き飛ばすように頭を激しく振った。
(疲れてるんだ……。今日は寝よう……)
もう少しで完成を迎えるマフラーを大切にしまうと布団に潜り込んだ。一日の疲れが体の奥から湧き、抜けていく。
深い眠りに落ちる瞬間、頭に浮かんだのは播磨の顔だった。
月日はあっという間に流れる。
学生生活の難関、期末テストも終わり天満の誕生日会前日の晩となっていた。
先程塚本家の食卓のではこんなやり取りがあった
。誕生日会前日という事で子供のようにはしゃいでいる天満。
「明日はエルカドだからね!サラちゃんと来てね!
プレゼント楽しみにしてるね!播磨君も来るからね!」
「あっ、うん。大丈夫だよ……でも播磨さんとは……」
「何ならいつの間にか『二人でパーティー抜け出さない?』
ってなってても大丈夫だからね!いや、むしろ頑張って!」
「だから姉さん違うって……」
少し頬赤らめつつも反論しようとしたが姉の中で播磨と自分が付き合っている事は既に確定事項になっている為あきらめた。
(姉さんの誤解もいつか解かなきゃ……)
この前やっと完成したマフラーをラッピングしつつ八雲は溜め息をついた。
(でも播磨さん、……私の作ったマフラーなんかで喜んでくれるかな……?)
本当はもっと早く播磨に誕生日プレゼントを渡す予定だったのだが『渡したい物があります。屋上に来てください』というメールを八雲は送れなかった。
仕方なく明日の姉の誕生日会の時にサッと渡す事になっとしまった。
(姉さんへのプレゼントも、播磨さんへのプレゼントも用意したし……きっと大丈夫……)
八雲は何か決意を固めた様にうなずいた。
そしてふと男性に対してこんなに積極的になっている自分が不思議だとも思った。
(明日はどうなるかわからないけど……、姉さん、お誕生日おめでとう)
その晩八雲は興奮と不安でなかなか寝付く事ができなかった。
支援?
天満を
面白いし、今は過疎ってるから別に良いんだろうけど
書きためてから投下してくれ
他に投下したい人がいたら邪魔だろ
(受け取ってもらえなかったな……)
月明りの差し込む部屋の中、机の上には渡せなかったマフラー。
ベッドに体を横たえ八雲は深い溜め息をついた。
今日、エルカドでは天満の誕生日会がつつがなく進行していた。みんな笑顔で姉の誕生日を祝ってくれている。
いつもなら苦手なはずの花井も今日の八雲には気にならなかった。
緊張していたというのもあるかもしれない。昨日の夜からプレゼントの事が気になって回りが見えなくなっていた。
そして誕生日会の中盤。
天満達が王様ゲームで盛り上がっている中、
その輪に入らずぼんやりとグラスを傾けているる播磨がいた。
「八雲、今なら播磨先輩…」
「うっ、うん…」
笑顔で背中を押してくれるサラが恥ずかしくもあり嬉しかった。
「あ、あの播磨さん…」
「おお、妹さん」
久しぶりの播磨との会話に緊張しつつもプレゼントを取り出す。
八雲は精一杯の勇気をふり絞った。
「…播磨さんの誕生日って…たしか姉さんと一日違いですよね
…これ…よかったら…」
「いーわよ、そんな奴にプレゼントなんて」
突如として会話に入ってきたのは沢近だった。
「別に邪魔するつもりはないけれど、もう十分に祝ったわよねヒゲ」
予期せぬ一言。露骨な邪魔とも取れる沢近の行動。
しかし八雲はその沢近の瞳からそれがただの邪魔ではない事を瞬間的に悟った。
しかしその真意を読み取る事はできない。
「いいんだ妹さん…俺はもう十分にもらったよ」
播磨の視線の先には天満がいた。
――播磨さん、やっぱり姉さんの事が……。あっ……。
ふと冷静になった目で天満を見て八雲は気付いた。
「今日の姉さん…少しだけ…さびしそう」
―――きっと烏丸さんがいないから……
播磨も天満の様子に気付いたのだろう。
「すまねぇ。俺にはやらなきゃいけねぇ事がある」
そう言って播磨は去っていってしまった。
―――マフラー……渡せなかった……。
ただぼんやりと八雲は思った。
誕生日会は気付けば終わっていた。
八雲は自分の中に生まれた感情の正体がわからず心ここにあらずといった様子だった。
家に着いたのは時計の針が10時を過ぎた頃だった。
「今日は疲れたからもう寝るね。おやすみ、八雲。今日はありがとう」
天満はシャワーを浴びるとそう言って自室に下がってしまった。
帰り道、天満から播磨の話を聞いた。
彼が自分に烏丸の振りをして花束をくれた事。
その嘘を自分が見破ってしまった事。
そして最後に「播磨君て本当いい人だよね〜。八雲はいい彼氏を持ったよ!」としみじみ言った。
八雲は曖昧な返事しかできなかった。
見慣れた天井を見上げ今日一日あった事を整理していく。
(播磨さんは姉さんの事……やっぱり好きみたいだ……
沢近先輩も何か知っていそうだったし……)
播磨にプレゼントを断られた時何故かあっさり「……そうか」と思えた。
しかし時間が経つに連れ胸に空いた小さな穴は広がっていく。空っぽで、寒い。
気付けば一筋の涙が頬を伝っていた。
(私は……播磨さんの事が……)
言葉にはならない思いが胸を締め付ける。 播磨とはこれからも平行線の関係を続けていければいいと思っていた。
しかし、今日プレゼントを拒否された事でやっと気付いた。『妹さん』ではなく『塚本八雲』として見てもらいたい事を。
「私は……播磨さんが……好き……」
認めてしまえば至極簡単な事だった。しかし、もう取り替えしはつかない。
播磨が好きなのは自分ではなく自分の姉、天満なのだ。沢近の事だって意識せざるをえなくなるだろう。
きっとその事が今まで心のどこかで播磨への思いを拒んでいたのだろう。
しかし、今。播磨に自分だけを見て欲しいと思っている自分がいる。
(私も……自分なりがんばってみよう……だから、マフラーは……)
八雲はマフラーをまた播磨に渡す決心をした。
(播磨さん……あなたの心が……見たいです……)
月明かりに照らされて八雲は決心した。
おしまい
>>712 迷惑おかけしました。
初投稿だったので至らぬ所(呼び名のミス)ばかりでした。申し訳ございません。
718 :
Classical名無しさん:05/08/08 03:11 ID:SFfDmi8Y
「なんだこりゃ」
播磨君は森を歩いていると王冠を手にいれました
しばらく歩くと綺麗な泉を見つけました
「あっ!」
播磨君はうっかり王冠を泉に落としてしまいました
するとどうでしょう
泉の中から女神さまが現われたのです
女神さまは播磨君に問い掛けます
「あなたがおとしたのはこの旗ですか?それともこのおにぎりですか?」
「え?俺が落としたのは王冠っす」
播磨君は正直に答えました
「あなたはとても正直ですね。ご褒美にどちらも差し上げましょう。」
播磨君はお子様ランチを貰いました
「いや、いらねぇっす」
「まぁなんて欲のない。ご褒美にこれもあげましょう」
播磨君は鉛筆と携帯を貰いました
「あの・・・王冠っす」
「まぁなんて欲の(ry」
こんなやりとりを数回繰り返し、そのたびに肉じゃがやらモデルガンやら絵筆やら十字架やらレスラーマスクやらドジビロンやらバスケットボールやら漬物やらさくらんぼやら眼鏡の破片やらハート型のネームプレートやら、いろいろ貰いました。
けど王冠だけは帰ってきませんでした。
「落ち」は王道だな
>720
吹いた。いろんなもん貰いすぎだ播磨w
>>720 王冠=王道とかけてるのか。
王道を手にできない播磨。センス良し!
「妹さん…、どうだ?こことか。」
「は、はい…、すごく…いいです……。」
「そ、そうか?じゃあよ、ここはどうだ?」
「えっ?はい…ここも…すごく……いいです…。」
「おう、そうか?いや、なんか照れるぜ。」
「播磨さんは……その…すごく上手だと思います…。」
「……ありがとうよ。」
「いえ…、頑張っているのが、よく…わかります…。」
「じゃ…じゃあよ、ここなんかどうだ?」
「あっ……、そこは……ちょっと…。」
「う〜ん、そうか。難しいもんだな…。」
「あ、あの…、そんなに気を落とさないで下さい…。私は…こういうの…
好きですから…。」
「無理しなくてもいいんだぜ?駄目なら駄目って言ってくれたほうが、
今後のためにもなるからよ。」
「は、はい……。あ、あの播磨さん……。」
「どうした?妹さん。」
「い、いえ…、あの、そろそろ…いかないと…。」
「そうだな、すまねえな。いつも。」
「いえ、そんなことは…全然…。」
「そうか?」
「は、はい……。私も播磨さんの…漫画が読めて…その……、嬉しいです…。」
昼休み、学校の屋上。播磨は持ってきた漫画のネームを見せ、八雲から感想を聞いていた。
少し前までは描いていなかった播磨だったが、最近また描いていた。
そしてもうすぐ昼休みが終わる頃だった。
バレンタイン前日
播磨(明日はバレンタイン!俺は天満ちゃんからチョコを貰えるだろうか!?)
天満「あ〜!ハリマく〜ん!」
播磨「そ・その声は天・・つ・塚本!?」
天満「エヘヘ〜!明日はバレンタインだね。」
播磨「お・おう。そ・そうだな」
天満「へへ〜楽しみにしててね!ビシッ!」
播磨「!!」
――播磨アイ120%稼動中――
播磨(とうとう俺の時代が来たーーーーーーーー!)
播磨(くーー!かわいいぜ天満ちゃん!明日が待ちきれなかったんだな!)
播磨(ふ・・・明日は俺と天満ちゃんが結ばれる記念日!俺からも気持ちを伝えるぜ!)
播磨「ヒャホォォォォォォーーーーーーーーー!!」
そして放課後、帰宅途中商店街を歩くいつもの4人。
天満「街はすっかりバレンタイン一色だね〜!」
周防「天満はどうするんだよ?やっぱり烏丸に渡すんだろー?手作り?」
天満「へっへ〜!もう材料は買ってあるんだ〜!バッチリ!」
沢近「でも、天満、あんた大丈夫なの?料理できないわよね。」
――塚本天満、料理は下手。確認。――
あ、もろかぶりですね。お先にどうぞ
天満「ふふ〜ん、なんたってうちには八雲がいるからね〜!エッヘン!」
天満「今晩一緒にチョコレート作るんだ〜!」
周防「そうか、八雲ちゃん料理上手だもんなー。上手くいくといいな!」
沢近「美琴、そういうアンタはどうするのよ?」
周防「え!?あたし!?」
沢近「幼馴染の彼にあげなくていいの〜?フッフ」
周防「な!」
天満「そうそう!きっと今鳥君も期待してまってるよ〜!エヘヘ」
周防「は!?な・なんであたしが!・・・ま・まあ義理チョコぐらいならあげてもいいけどさ!」
沢近「ふーん、そんなこと言って密かに本命だったりして?」
周防「!か・からかうのもいい加減にしろよなー!キー!」
高野「モテる女はツライわね」
周防「そ・そういう沢近こそどうなんだよー?やっぱりアイツに渡すのか?」
沢近「だ・誰のことよ?」
天満・周防・高野「播磨君(播磨)」
沢近「な・なんで、わ・わたしがヒゲに渡さないといけないのよ!」
周防「まだあのときのこと謝ってないんだろー?ヒゲと髪の毛の件・・・」
天満「そうだよ〜!この機会にチョコ渡して仲直りしちゃいなよ〜!」
沢近「ぜ・絶っっ対イヤ!!」
周防「っか〜!、アッタマかてーヤツだな!こういうときでもないと謝るチャンスめったないんだぜー」
高野「カワイイ女は素直なものよ」
沢近「く・・・」
天満「あっ!愛理ちゃんあれみて〜!すごいかわいいチョコレート〜!」
天満「これならきっと播磨君も喜んでくれるよ〜!」
沢近「だ・だから!な・なんでわたしがー!」
周防「いいから、いいから」
なんだかんだでチュコを買わされた沢近
沢近「ふぅー、と・ところで晶は誰かにあげたりしないわけ?」
周防「それ気になるなー!」
高野「・・・・」
高野「ヒミツ」
その夜、沢近邸
買わされたチョコレートを前にアレコレ考える沢近
沢近(さりげなく渡せば変に思われないかしら・・・べ・別にこんなの義理チョコだしどぉってことないわよね)
沢近(でもアイツだけに渡すのもなんか変よね・・・だいたい、なんでわたしがアイツに・・・)
沢近(ヒゲ、甘いものとか好きなのかしら・・・)
沢近(そういえば天満、あの娘(八雲)と一緒に作るって言ってたけど、あの娘もヒゲに渡したりするのかしら・・・)
沢近(アイツ、わたしがチョコ渡したらどんな顔するかしら・・・少しはうれしそうな顔するのかしら・・・)
――沢近 愛理、悶々。――
沢近(ま・まあたしかにアイツにはちょっと悪いことしたかもしれないし・・・)
沢近「深く考えるのはやめ!なるようになるわ!」
一方、塚本邸では
天満「ダ〜メだ〜〜〜!また失敗〜!グスン」
八雲「姉さんがんばって・・・」
天満「・・・そうだね!明日は年に1度のバレンタイン!女の子から思いを伝えるには絶好の告白日和!」
天満「さ〜〜さ〜〜!やる気出てきたぞ〜〜〜〜!」
八雲(・・烏丸さん喜んでくれるといいね。姉さん)
天満「ルンルン〜!あ!ところで八雲は自分の分はもう出来たの〜?」
八雲「え・・う・うん。これがサラの分でこれが高野先輩・・あ・あとこれが刑部先生の分・・・」
天満(ニタ〜)
天満「八雲、一人大事な人の分忘れてるんじゃないの〜〜?ニヤ」
八雲「え・・・!あのっ・・・」
天満「ハ〜リマ君!」
八雲「え・・・!いやっ・・わ・わたしと播磨さんはそういう仲じゃ・・・!」
天満「このこのぉ!照れちゃってもぉ〜!」
八雲「・・・だから・・・ち・違うの・・・」
天満「何が!?」
八雲「そ・・・・それは・・・」
八雲「・・・・・・・・」
天満「ほら〜もう!言えないじゃ〜ん!」
天満「それにもう今日播磨君には明日、八雲からプレゼントがあるって伝えちゃったもん〜!」
八雲「え・・・・!姉さん・・・そ・そんな勝手に・・・」
天満「だぁ〜いじょうぶ!きっと播磨君は喜んでくれるよ!お姉ちゃんが太鼓判を押すよ〜!」
八雲「・・・そ・そうかな・・・」
天満「お姉ちゃんの眼に間違いはないよ!播磨君もすごく喜んでたし!」
八雲「・・・・・」
――塚本 天満、何もかもがカン違い。――
あ、ありがとうございます。では。
「よし、じゃあ行くか。」
「あ、はい…。」
播磨がその場を去る。そして、後に続き八雲も歩く。――その背中を見つめながら。
そして二人は階段を降り、それぞれの教室に向かうために別れた。
教室にもどった八雲。すると
「八雲〜、お弁当食べた後、急いでどこいってたの?」
「サ、サラ…。あの…、播磨先輩に呼ばれて…、それで…。」
「播磨先輩に?ふ〜〜〜ん……。」
「あ、あの…だから……。」
「二人でなにしてたの〜?いいなあ。八雲は……。播磨先輩と……ウフッ。」
「ち、違う……、サラ…何か勘違いしてる……。」
ニヤニヤ顔のサラに困惑し、赤くなって慌てる八雲。
「あ、そうだ。八雲。」
「どうしたの?サラ……?」
「今日の放課後、茶道部で集まってお茶会するんだって。」
「う、うん…。」
「そうだっ!この際播磨先輩も呼んじゃおう!」
「え……、どうして?」
「八雲もその方がいいでしょ?」
「だ、だからその……。」
「いいからいいから。高野先輩に頼んでこよっと。」
「あ、ちょっと…、サラ……。」
「大丈夫、チャイムが鳴るまでには戻ってくるから。」
「そういうことじゃなくて……。」
足早に教室を後にするサラ。――そしてまもなくして
「あ、サラ……。」
「八雲、高野先輩が我に秘策ありだって、よかったね。」
「だ、だから私は…その…。」
キーンコーンカーン……、昼休みが終わるチャイムが鳴った。
……そして放課後。2−Cにて――、
高野が小声で播磨に話しかける。
(播磨君。)
「ん?おめーは、確か…。」
(高野。)
「お、おう。なんだ?」
(これから茶道部で集まりがあるの。)
「そうか。」
(で、播磨君も来ない?)
「……いや、俺は。」
(そう。)
高野が播磨をお茶会に誘うも、播磨、あっけなく断る。それを受け入れる高野。
(さ、家帰って漫画の続きを……。)と、
「みんな。ちょっといい?」
高野は振り向くとそういった。
「どうしたの?晶。」
「これから茶道部でお茶会があるんだけど、来ない?」
高野の提案にいつもの娘たちは、
「今日は用事もないし、別にいいわよ。」
「アタシもいいぜ。たまにはメルカド以外で集まんのもいいね。」
「いくいう〜!私もお茶会いきた〜い!」
天満の声が響くと同時に、近くでガタガタッと音がする。すると晶、
「先に茶道部の部室に行ってて。」
「おっけ〜!じゃっ、みんないこっか。後でね、晶ちゃんっ!」
高野を一人残し、沢近、周防、天満の三人は茶道部に向かう。
そして播磨がおもむろに立ち上がる。
「おい。」
「何?播磨君。」
「俺も行っ……。」
と、言いかけた瞬間。
「高野君っ!聞いたぞ!茶道部でお茶会があると!この花井春樹っ!
茶道部の一員として、いかねばなるまいっ!」
花井がものすごい勢いで高野に迫ってきた――。
その頃茶道部では――、
「高野先輩、うまくいったかな?」
「え……。」
「ほら、播磨先輩よんでくれたかなって。」
「わ、私は…その……。」
「もう、八雲は奥手なんだから、そんなことしてたら播磨先輩に逃げられちゃうぞっ。」
「そ、それは…だから…。」
茶道部の部室ではサラと、そしてサラと話をしてあたふたする八雲がいた。そして、
ガラガラッ……、――――茶道部の部室の扉が開く音がした。
八雲はその扉を…何かを…期待するような目でじっと、見つめていた――。
すると、
「あ、八雲〜、サラちゃん、今日はみんなでお茶会、楽しみだねーっ!。」
部室に入ってきた天満が元気な声で二人に話しかけた。
「ね、姉さん…。どうしてここに…。」
「あのね、晶ちゃんに呼ばれてねー、お茶会あるから来ないかって。」
「そ、そうなんだ…。」
そして天満の後に続き周防と沢近も入って来た。そしてテーブルを囲んで
みな席についた。するとサラが、
「あの、高野先輩は?」
「晶なら後でくるわよ、先に行っててだって。」
沢近が答える。
「じゃああの…播磨先輩は?」
サラが尋ねる。
「髭?なんであいつがここに来るのよ。美琴、何か聞いてる?」
「いや、アタシは聞いてないけど。」
「天満は?」
「う〜〜ん、わかんないっ。」
「…じゃあ来ないんですか?」
「わからないわ。来ないんじゃないかしら。」
話のやりとりを聞いていた八雲。―――ふと、少し表情がかげった。すると、
「八雲〜〜、何、何?そんな顔して〜。播磨君が来なくてさびしいの?」
「えっ…、いや、そんなこと……。」
「もうもうっ!八雲ったら〜。この〜〜〜〜さびしがり屋さんっ!」
「ね、姉さんっ…、ち、ちがっ………。」
「このっ、このっ。」
にやにやと八雲に話す天満、顔を赤くしてあたふたする八雲。
そんな様子を真摯な表情で見つめる―――沢近が、いた。すると、
ガラガラッ……、――――また茶道部の部室の扉が開く音がした。
「ごめん、みんな、遅くなって。」
「あ、晶ちゃ〜ん。待ってたよ〜!早くお茶会はじめよっ!」
「おっ、来たか。」
「遅かったわね、じゃあそろそろはじめましょうか。」
天満、美琴、沢近が晶を迎える。
その脇でサラが八雲にこそっと話しかける。
(播磨先輩…、来ないのかな。)
(え……そう…みたい……。)
(ごめんね、八雲。)
(………サラ。)
―――すると、
「みんな、もう一人お茶会に参加することになったから。」
高野の後ろから、ヌッと現れるグラサンの大男。播磨だった。
「…髭っ!?」
「は、播磨!?」
「播磨君っ!」
「播磨先輩っ。」
「は、播磨さん……。」
五人、みな一様に驚いた様子で声を上げた。八雲は少し、嬉しそうだった――
すると沢近が、
「ア、アンタがなんでいんのよっ。」
「…………。」
播磨にそう問いかける。
「晶っ、どういうこと?」
「それは…。」
高野が何かいいかけたその時、播磨が口を開く。
「…俺は……――――――時は少し戻り、2−C教室―――。
私怨?
>>727 GJ!
やっぱ麻生が関わらないと良いわミコちん。
真摯の使い方おかしくね?
自分もお茶会に参加すると言い出した花井。が――、
「……花井君、ちょっとこっちへ。」
「……?」
高野が花井を教室の隅に連れ、なにかを話し始めた。
(ひそひそ…。)
高野が小声でなにかを花井に話している。
(な、何!?本当かっ!?それは…。)
(…ええ、だから……ひそひそ。)
(わかった。ではなるべく早く……。)
(…お願いね。)
するとその場をダッシュで去る花井。そして高野が何かをやり遂げた様子で
播磨のもとに戻ってきた。
「じゃあ行きましょうか、播磨君。」
「……お、おう。」
よく状況をつかめていない播磨は首をかしげていた。
そして茶道部に向かう途中、
「播磨君。」
「ん?」
「どうしてお茶会に参加しようと思ったの?」
高野が少しイジワルな質問をしてみる。すると、
「…俺は……好き…なんだ………。」
「…………。」
真剣な播磨の表情――、高野は黙って播磨を見る。そして、播磨が口を開いた…。
「……………………茶が………。」
「…………………。」
空気が静まり返る。
「…すごく…な…。」
「…………そう。」
そして時は戻り―――茶道部にて――
「…俺は……茶が好きでな。」
「「「………。」」」
みな、なんともいえない表情を浮かべていた。すると沢近、
「髭…、ホントなの?」
「あ、あたりめーだ。」
と―――、
「播磨君、そういえば紅茶すきなんだよね〜!」
「て……塚本。お、おう。まあなっ。」
(うおーーー、天満ちゃん!さすがだぜ!俺のこの、天満ちゃんと同じ時間を過ごすため
の熱い気持ちをわかってくれるなんて…。……天満、かわいいぜ。)
病院でのお見舞いの時、緊張のあまり自分の言ったこと(絃子指示のものだったこともあり)すっかり忘れていたアホの播磨。
そんなささいなやりとりを覚えていた――天満だった。
(播磨がお茶すきなんて……い、意外だな。)
(そ、そうね…。)
周防と沢近は少し驚いていた様子だった。そして、
「じゃあみんな、始めましょうか。播磨君、そこの席に座って。」
「お…おう。」
テーブルを囲むようにみな席に着く。時計回りに高野、天満、周防、沢近、播磨、
八雲、サラと並んでいる。
(八雲、よかったね。)
(えっ…サラ…、そんな…。)
小声で話すサラと八雲。そして、
「こんなにいっぱい集まるなんて!なんかパーティみたいだねっ!」
天満が元気に声を上げる。さらに続ける。
「あ、私、あっま〜〜いのが飲みたいなっ!」
「天満、ふとるわよ。」
「愛理ちゃん!だ、大丈夫だよっ!」
「あらあら。」
「も〜〜う、愛理ちゃん。」
「そうね、じゃあ天満はミルクティーなんかいいんじゃないかしら。
晶、ウバある?」
「あるよ。」
「ミルクティーにはウバがとてもあうのよ。」
すると周防、
「アタシはすっきりしたのがいいかな。」
「じゃあダージリンね。晶ある?」
「あるよ。」
そして、
「さ、沢近先輩……、その…お詳しいですね…。」
「ホントっ!愛理ちゃんものしり〜〜!」。
「まあね、少しは。」
そんな談話に耳を傾けていた播磨。
(ウバ?た、タージン?何だ?な、なんかの呪文か?つーか食えるのか…?)
一人、何のことだかわからない播磨は、妙な名前を頭の中で口走っているとは、
夢にも思っていなかった。真剣に悩む播磨。そして、
「播磨君はどんなのが好きなの?」
ビクッ!!天満に話かけられて意表をつかれる播磨。
「そ、そうだな。」
「何、何?」
「俺は…。」
「うん、うん。」
「…………………宇治緑茶だ。」
会話の流れを無視した播磨の一言で、茶道部が静まり返る――。
(に、日本茶かよ!?紅茶の話じゃねーのかよっ!)
一人、心中でつっこむ周防。
(お、おい、沢近。なんかおかしくねーか?)
(そう?)
(そ、そうって、いや…別にいいんだけどさ…。)
沢近は播磨に宇治緑茶を買いに行かされそうになったことを思い出していた。
(ヒゲ…………、本当に、宇治緑茶のこと、好きだったんだ…………。)
一人納得する沢近だった―――。そして、
「晶、宇治緑茶、ある?」
「………あるよ。」
「あるのかよっ!!!」
思わず声に出してつっこんでしまった周防がいた。
「茶道部だからね。」
やはり姐さんはすごかった。そして――
コポコポッと、湯をわかす音が部室に響く。美しい斑模様をあしらった色彩の、
風情漂うティーカップに紅茶が注がれ、みなの前に差し出していく高野、サラ、八雲。
「あの………、これ…どうぞ…。」
八雲が播磨の前に差し出す。
「すまねえな、妹さん。」
「い、いえ…。」
みなの前に、爽やかな香りのする紅茶が注がれた、綺麗なティーカップが置かれていく。
一人、宇治緑茶の注がれた湯呑みを前にする、アホを除いて――。
すると突然、天満が、
「ねえ、みんなで何かゲームしょうよっ!」
そんなことを言い出した。
「ね、姉さん…。」
「パーティみたいできっと楽しいよっ!」
すると高野が目をキラッと光らせた。
「塚本さん、待っていたわ、その言葉。」
そしていつの間に用意したのか――箱を三つ取り出しテーブルの上に置いた。
「おいおい、ホントにやるのかっ?」
「美琴さんは反対?」
「い、いや、そういうわけじゃないけどさ…。おい、沢近。」
「な、何よ、私は別に構わないわよ。たかがゲームでしょ?」
「まあそうなんだけどさ……、晶がやると…何か怖いんだよ…。」
「も〜う、ミコちゃん。大丈夫だよ〜!八雲とサラちゃんもいいよねっ!
やろうよ、ゲームッ!」
「はい、私は構いませんよ。」
「…サラ……。」
「よ〜し、おっけ〜だねっ!」
すると周防が播磨に話しかける。
「お、おい。播磨〜。いいのか?ゲームなんてするのか?」
沈黙を守っていた播磨。が、
「やるに決まってるだろーがっ。」
勢いよく発言する播磨。少し驚く周防。
(や、やる気満々じゃねーか…、アタシがおかしいのか?)
てっきり反対すると思っていた周防はそんな事を思っていた。
「播磨君っ!やる気十分だね!」
「お、おうよ!」
天満の提案に賛成しないわけがない播磨だった。そして、
「じゃあ今からゲームの説明を始めるわ。」
高野がそう言うと、テーブルに置いてある三つの箱、その内の一つを指差す。
「まずこの中には、この部室にいるメンバー全員のネームプレートが入っているわ。
そう、7人分のね。」
そしてもう一つの真ん中の箱を指差す。
「ここにもまったく同じものが入っているわ。」
すると何も書かれていない、空白のプレート7枚分を取り出し、マジックペンと共に
一つずつ全員に配りだす高野。
「なんだよ、これ?」
周防が高野に聞く。
「この何も書かれていないプレートに、何か行動を示す内容を書いて。」
「何を書くんだよ。」
「そうね…、例えば…裸おどりを見せる…とか。」
「できるかっ!!罰ゲームじゃねーか!」
「例えばの話だから。別になんでもいいから。さあ、みんな書いて。」
何か書くようにみなを促す高野。そして
(う〜ん、よくわからねえぜえ…、何を書きゃいいんだ?)
播磨がううむと思案する中――すると高野が播磨の傍までいき、小声で耳打ちする。
(播磨君。)
「なんだ。」
(これはチャンスよ。)
「なっ!なんだとっ!?」
(しっ、声が大きい。)
(ああ、すまねえ。)
(ここに好きなことを書けるのよ、よく考えてみて。)
(でもよ、何を……。)
(…………ここにいる人たちを…よく見ることね…。)
すると高野はその場を離れた。そして高野に言われたことを考える播磨
そして―――ふと、視線の先に――――天満がいた。
(天満ちゃん………、そうか、簡単じゃねーか。)
何かを思いついた播磨、そして空白のプレートに書き綴る。
―――――――とびきりの笑顔を見せて、と――――
どこまでも不器用な、漢だった―――
そして、
「みんな書き終わった?それじゃあ…。」
高野が最後、三つ目の箱を指差し
「ここに入れて。」
高野に言われるがまま、みなはその箱にプレートを入れていく。
その後、またガヤガヤとせわしくなる茶道部の部室。
「みんな〜〜〜〜!何て書いたの〜〜〜?」
天満が元気よく話し出す。
「ねえ、ねえ?」
ニヤニヤ顔の天満がいた。
「ミコちゃんは何てかいたのかな〜?」
「いや〜、それは言えねえよ。」
「え〜〜〜〜?」
「黙っといたほうが面白そうだろ?」
「う〜ん、じゃあ愛理ちゃんは?」
「へっ!?わ、私?私は別に、な、何でもないわよっ!そっ、そう。ゲームよっ!」
「ど、どうしたの?愛理ちゃん?」
なぜかあたふたする沢近に、?顔の天満だった。そして、
「八雲は何て書いたの?」
サラが八雲に話しかける。
「わ、私は…………。」
「…あー、何てかいたのかな〜?………ウフッ。」
「サ、サラ………、……どうしたの?」
「大丈夫、まかせて八雲。私がちゃんと書いといたから。ね?」
「え………、な、何を………?」
そして――パンパンと手を叩く高野。
「いい?じゃあ始めるわ。」
「ねえ〜晶ちゃん。」
「何?」
「結局どういうゲームなの?」
いまいち分かっていない天満だった。すると高野、
「誰かが誰かに何かをするってこと。」
「なるほどっ。」
そして――
「じゃあまず…。」
一つ目の箱からプレートを取り出す高野。静かに口を開く。
「播磨拳児が…。」
そして二つ目の箱、
「サラアディエマス……。」
ごくり、静かにカップを口に運ぶ一同。
「……に裸おどりをする。」
「「「ブッッ。」」」
飲んでいたものを吹く周防、沢近、そして播磨。
「だ、誰がかいたんだよっ!コンナコト!さては、晶だなっ!!」
「………。」
周防が問い詰めるも、高野は無言のままだった。そして
「さあ、播磨君。早く。」
「なっ!?」
「あっちに部屋があるからそこでね。」
「で、できるわけねーだろっ!!!」
「下は脱がなくていいから。」
「あたりめーだろーがっ!!つーか無理だっ!」
高野に催促されるが、断固拒否し、暴れる播磨。すると
「播磨君っ!」
天満が播磨を呼び止める。
「て………塚本…。」
悲しそうな顔する天満。播磨アイ稼働中。
(天満ちゃん……、ああ、俺は君を悲しませるつもりは……。)
「ほら〜〜、はやくっ!頑張ってね!」
満面の笑顔の天満が、そこにいた。
「へっっ!?」
「ゲ〜ムだよう〜〜、播磨君!ほらほらっ!」
(ちょっ……ウッソオオオオオオオオオオオオオオオオオ!)
何がなんだかわからない播磨、促されるままに隣の部屋へ。
「おっ、おいっ、塚本!だ、大丈夫なのか?」
慌てる周防。が、天満
「え?だって裸おどりじゃん?海行った時とか裸だったよね〜。後は踊るだけじゃん。」
「いや、そ、そうだけどよ。何か違うっつーか…。さ、沢近…?。」
「わ、わわわ私は、ほら、その……一回…み、見てるし…!」
「な、何言ってんだ?沢近。」
動揺しまくる周防と沢近。そして天満、
「ほらっ!サラちゃんもっ!」
「あ、はい…。」
サラが立ち上がり隣の部屋に行こうとする。
(八雲。)
(な………なに?)
(じゃあちょっと行って見てくるね。ごめんね、八雲。)
(サッ…サラ!わ、私は……そんな…!)
頬を真っ赤にしながらわたわたする八雲。―――そして
サラと播磨が隣の部屋で話している声がかすかに聞こえてくる。
(ほらっ、播磨先輩、早く脱いでください。)
(………。)
(もう、ただのゲームなんですからっ。)
(…………。)
「おいおい、やっぱ播磨はやらないんじゃないか?」
周防がつぶやく。すると、
「がんばれ〜〜〜〜!!播磨く〜〜〜ん!!!」
天満の声が大きく響いた。
(グッ………。やるしか、ねえのか…。)
何かもう、諦めた様子の播磨だった。そして――
(わっ、播磨先輩。すごいですねっ!!)
またもやサラの声が
(な、…何がだ?)
真っ赤になる周防、八雲、沢近。
「なんかおもしろそうだね〜〜!」
「そうね。」
天満、高野は普通に話していた。
(じゃあ播磨先輩、踊ってください。)
(…………。)
(ハハハ。面白いですよ。先輩)
(…………ぜえぜえ、もう…いいか?)
(ハハ、はい。もういいですよ。アハハ。)
「播磨の奴……不憫すぎる…。」
同情する周防だった。そして―――
サラと播磨が戻ってきた。
「お、おい…播磨…。」
周防が播磨に話しかける。
「…………ぜえぜえ…、なんだ…?」
「…いや…なんでもないよ。」
「………?」
何も励ましの言葉が思い浮かばない周防だった。
「じゃあ、そろそろ次、行きましょうか。」
「まだやんのっ!!」
周防がつっこんだ。
一つ目の箱からプレートを取り出す高野。
「播磨拳児が…。」
そして二つ目の箱、
「沢近愛理……。」
「………とにらめっこする…。」
(今回は、さっきのに比べたら、まともだな。)
周防が思う。
「あ〜〜〜〜!それ書いたの私だ〜〜〜!よくわかんなかったから、にらめっこ!
面白そうだと思って!」
天満が元気よく返事をする。
(な、なにっ!?天満ちゃんが書いたのか…。仕方ねえ、やるか…。)
「じゃあまたとなりの部屋で。」
「ああ。」
やる気満々の播磨だった。
「おい、なにしてんだ、早くいくぞ。」
「わ、わかってるわよっ。」
二人して隣の部屋に入る。
(おい、はじめるぞ。)
(ちょっと待って。アンタ、そのグラサン。はずしなさいよ。)
(なんでだ?)
(…笑ったか分からないじゃない。)
(ちっ、わかったぜ。)
(……………。)
(おい、どこむいてんだ。)
(もへっ!?な、なななにがよっ!)
(おい、にらめっこになんねーだろーが。)
(べ、べつに、い、いいじゃない!)
(なにいってんだ?お嬢。)
(と、とにかく早くグラサン、かけなさいよっ!)
(オメーがはずせっていったんじゃねーか。)
(もうっ、わかったよ。わ、私の負けよっ!)
(は?わけわかんねえやつだな。)
そして―――二人が戻ってきた。
「おい、沢近〜。どうした?顔真っ赤だぞ?」
「どこがよっ!どーてっことないわっ!あんなヒゲっ!」
「…………どうしたんだ?」
沢近のあせる様子に、不思議そうにする周防。
「じゃあ次いくわ。」
一つ目の箱からプレートを取り出す高野。
「周防美琴が…。」
そして二つ目の箱、
「播磨拳児……。」
「…………とポッキーゲームに挑戦する。」
「ちょっと待てーーーーーーー!!」
周防が叫ぶ。
連投用援護
「やらんやらんっ!!絶対おかしいって!!播磨ばっかじゃねーーかっ!」
「たまたまよ。」
「うそつけーーーーー!」
周防が暴れ、高野がどうどうとなだめる。一方播磨は、
(ポッキーゲームってなんだ?そういや天満ちゃんの誕生日会でそんなこと
言ってたような……、どんなゲームなんだ…。ポッキー?……早く天満ちゃんの
とびきりの笑顔……見てえ。)
「じゃあまたとなりの部屋で。」
「お、おう。」
先に行く播磨。もはや天満のことしか頭になかった。
「ミコちゃ〜〜〜ん、やっぱオ・ト・ナ。」
「だあーーーーー!!もうっ!」
(八雲、あれ書いたの私。)
(えっ……サラ?)
(あ〜あ、八雲喜ばしてあげようと思ったんだけどな〜。)
(サッ…サラ?私は…そんなこと…)
(残念だな〜。)
すると
(八雲〜)
(姉さん…。)
(ほら…ゲームだから、あんまり気にしないでっ!)
(だ、だから…私は…その別に…。)
天満がやさしく八雲を励ます。勘違いのまま。
「ほら、播磨君は裸おどりまでしたのよ。」
「うっ。」
「そーだよ、ミコちゃん!ほらっ!」
「わかったよっ!もうっ!やればいいんだろ、やれば!」
「…………。」
沢近がジト目で周防を見ていた。
「沢近?なにムスッとしてんだ?」
「……別にしてないわ。」
そしてなぜか用意されたポッキーを高野に渡され隣の部屋に向かう周防。
(わ、わりーな、遅くなって。)
(おう。)
(は、播磨…。)
(なんだ。)
(いーのか?その……)
(ああ、早くポッキーゲームとやらを始めようぜ。)
(う…うん。じゃあ、そのさ…とりあえず、目つむっててよ…)
(目を閉じりゃあいいんだな。)
(え…うん。…播磨…背高いな……。)
(そうか?)
(その…すこしかがんでくれないかな…、や、やりにくいから…。)
(おう。)
(じゃあ、このポッキー、口にくわえててよ。)
(何も見えねえ。)
(あ、そっか…。ご、ごめん。じゃあ、これ。)
(………ん。)
(じゃあ…いくよ?)
(…………。)
(腕………少し掴む…な…。)
(…………。)
パリッパリッ…パリパリ………ポキン
(………はあ、はあ。)
(………ん?)
(………お、終わったよ。)
(………ん。)
(その…口にあるポッキー……た、食べていいよ…。)
(パリポリ……、ん。もう終わったのか、ポッキーゲームは。)
(え……う、うん。まあ……。)
(そうか、じゃあもう目開けてもいいか?)
(う、うん…。)
(どうした?周防。大丈夫か?顔が赤いぜ。)
(だ、大丈夫だよっ。)
そして部室に戻る二人。天満が大きな声で迎える。
「どうだった〜〜〜?ミコちゃ〜〜ん!」
「えっ、いや、どうって。」
慌てる周防。
「播磨君は?」
「……、ああ、うまかったぜ。」
「えーーーーー!?ど、どういうことー?なにがっ!?なにがっ!?」
「美琴、アンタまさか……。」
「違うっ!!!は、播磨!なにいってんだよっ!」
「は?なにがってポッキーだろ。」
相変わらず播磨はどうしようもなかった。
「じゃあ次ね。」
「わーーーー、次はなんだろう!」
天満だけが元気なままだった。
一つ目の箱からプレートを取り出す高野。
「播磨拳児が…。」
「また播磨かよっ!!」
周防がつっこむ。
「播磨君、くじ運強いわ。」
「…………。」
高野の言葉に、無言のままの播磨だった。
そして二つ目の箱、
「塚本八雲……。」
「………と下の名前で呼び合う。」
「………なんだ、それ?」
思わず口に出す周防。
「………妙な事書くやつもいるもんだな、なあ?沢近。」
「………。」
周防の言葉に、不自然に黙り込む沢近。
「ま、まさか、アンタが書いたの?」
「違います。」
即答する沢近だった。
(八雲〜〜)
ニヤニヤするサラ
(よかったね。)
(え…、そ、そんな……。)
あたふたする八雲。
「じゃあまたとなりの部屋で。」
(…行く必要、あるのか?)
周防がひとり思っていた。そして播磨がふと天満を見る。すると、
グッと、親指を立てる天満の姿が。
(て、天満ちゃん。どういうこったー!天満ちゃんが、この俺を……
よし、わかったぜ、このゲーム。頑張るしかねえ!)
そして天満に、グッと、親指を立てる播磨。
そして隣の部屋に向かう―
(ほら、八雲。)
(う、うん…。)
サラが八雲を促す。そして――――
(い、妹さん。)
(あ、播磨さん……。)
かすかに声が聞こえる。それに聞き耳を立てるサラと天満。
(その……下の名前で呼び合う………だそうです…。)
(お、おう。そうな。)
(じゃあ………その……い、いきます……。)
二人にしばし沈黙が流れる。そして――
(あの……け、拳児…さん……。)
(お、お、おう。)
少し動揺する播磨。
(その……け、拳児さんも……その……。)
(おう、わかったぜ。)
(………。)
(塚本…。)
(え………、あ、あの……下の名前……だそうですから…。)
(わ、わりい。)
(い、いえ……。)
(じゃあ、ん。や、八雲。)
(は、はい………。け、拳児さん…。)
(……八雲。)
(拳児…さん…。)
下を向いて恥ずかしそうにする八雲、そして照れ隠しなのか―――
播磨は頭をぼりぼりと掻いていた。
再び援護
そんな様子をこっそりとドアの隙間から覗くサラと天満
(わあ、いい雰囲気ですね。)
(うんうん、八雲、がんばってるねっ!)
「覗きなんてあんまよくねーぞー。」
周防が二人に近づく。
(しっ、ミコちゃん。声が大きいよっ!)
(そうですよ。二人の邪魔になりますよ。)
(うっ、ご、ごめん。)
真剣に二人おこられる周防だった。
そしてまた播磨と八雲の声が聞こえてくる。
(……八雲。)
(拳児…さん…。)
(……八雲。)
(拳児…さん…。)
――――まだ呼び合っていた。
(お、おい。いいのか。そろそろ止めねーと。なんかずっと呼び合ってそうな気が…。)
(そうね。)
ヌッと高野が現れた。そして―――ガチャ――
「もういいかしら、八雲、播磨君。」
「あ、高野先輩。」
「そろそろ最後のゲームにするから。」
「あ……は、はい…す、すみません…。」
みな、もとの位置に戻り、席についた――
「では、みなさん。最後のくじを引きます。」
一つ目の箱からプレートを取り出す高野。
「塚本天満が…。」
その瞬間、ビクンとする播磨。
そして二つ目の箱、
「播磨拳児……。」
もう、周防は何も言えなかった。
(来た…………、ようやく…………、この時が……!!。おれの想いを書いた
プレート……、カモン!!)
カチャリと――サングラスを中指で押しあげる。そして――
「…………のやっている腕立て伏せを見る。」
「えっ?」
播磨が素っ頓狂な声を上げた。
「いやー、それ書いたのアタシだ!何か罰ゲームっぽいものをと思って。」
周防がハハハと笑いながら話す。
「…………。」
ぽかんとする播磨。
「播磨く〜〜〜ん、頑張って!見てるよ!」
「おおよっ!!」
すぐさま席を立ち、その場で腕立て伏せを始める播磨。そして――五分が経過―
「ま、まだやってるわよ、このヒゲ!」
「そうね。」
「も、もういいんじゃねーか?」
沢近、高野、周防が話す。すると天満、
「そうだよねっ、も、もういいよ!播磨君!」
「て……塚本。そう、いわれちゃあ男はひけねえよ。……ぜえぜえ。」
「でも…。」
(ま、待っててくれ。天満ちゃん。…はあはあ。まだ…や、やれるぜ…。)
そして……
「あっ……。」
八雲が声をあげたその瞬間、播磨はそのまま床に倒れこんだ。
「はっ、播磨君。大丈夫っ!?」
天満が声かけるもうつぶせのまま動かない播磨。
「とにかく隣の部屋で寝かせましょう。」
高野がそう言うと、みんなは播磨を隣の部屋に運んだ。そして―――
「少しや休めば大丈夫だと思うわ。」
高野が皆にそう説明した。
「まさか気を失うまで腕立て伏せ…やるとは思わなかったよ。」
周防がそう言った。皆一様に不安な面持ちだった。すると―――
ガラガラッ―――部室の開く音がした。
「いや〜〜〜〜!おまたせっ!八雲く〜ん!」
花井だった。
「は、花井先輩……。」
「頼まれていたものっ!やっと買ってきてね!遅くなってすまない!」
「な…何ですか?これ…」
「ハハハハハっ!すぐに必要だと聞いてね!いや〜、探すのに少々骨をおったよ。」
木彫りの熊だった。そして困惑する八雲。
「あ、あの……花井先輩…。」
「いやいやいいんだ。受け取ってくれたまえ!」
「いや…あの…。」
「さてっ!お茶会を始めようかっ!」
無駄に元気な花井に、困惑する一同。高野が口を開く、
「花井君、残念だけどもう終わりよ。」
「何〜〜〜!!それは本当か!?」
そして周防が
「ああ。今までゲームをしてたんだけどな。もう終わりだよ。」
「ううっ、何ということだ…、僕としたことが…。」
落ち込む花井、すると高野が
「じゃあもう一回だけしましょうか。」
「本当か!高野君!それはかたじけない!」
「じゃあ花井君を参加させるということで、最初の人は花井君にしておくわ。」
「…一体どんなゲームなんだ?それは。」
花井がそういうと、周防が簡単に説明する。そして、
「よしっ!わかった!!それでは始めてくれ!!」
「それじゃいくわ。」
高野はそう言うとゲームを始める。
「花井春樹が。」
うんうんとうなずく花井。
そして二つ目の箱、
「播磨拳児……。」
そして最後の箱に手をのばす高野。
「…………にとびきりの笑顔をみせて。」
しんとする茶道部の部室。すると花井、
「うむ、……承知した。」
花井以外、誰も口を開こうとしなかった。その頃―――播磨は―
(ん?ここは…、そうか…気を失っちまったんだな……、へへ…、
天満ちゃんにカッコわりいとこ見られちまったぜ…。)
哀愁を漂わせながら起き上がる播磨。すると――
ギィ……扉の開く音がする。
(ああ、天満ちゃん…、君になんていえば…。すまねえ…、でも、俺は君の
笑顔が……見たかっただけなんだ……。)
振り向く播磨、そこには――――とびきりの笑顔をしている――花井がいた―
「おい。」
「………。」
「メガネ…、何がそんなにおかしい………。」
「…………。」
「喧嘩売ってんだな、そうなんだな。」
「……………。」
ゴッ
「は、播磨!何をする!」
「………。」
「さ、そろそろ帰りましょうか。」
高野がそういうと、播磨、花井を残し、皆、茶道部を後にした―――
その後――――
サラと八雲が話をしている。
「ねえ、八雲。」
「何…サラ?」
「八雲はあのプレートになんて書いたの?」
「え…………。」
「八雲のは読まれてないんじゃない?それとも読まれてた?」
「……そ、それは……ひ、秘密…。」
「え〜〜?八雲、教えて〜」
「………ダメ…。」
楽しそうに話すサラ、そして八雲―――
ふと―――空を見上げる―そして――読まれなかったプレートを――心の中で―
――――お昼休み―屋上で―――また――――――――
終劇(おしまい)
今回は一応おにぎりです。ええ、誰が何と言おうと。
今度は、シリアスにするかコメディにするか…また違うのを。
最後に、花井、ごめん。
>>772 乙でした。
てっきり、読んでる間はお猿さんかと思いましたよ(w
最後は、おにぎりにしなくても良かった気がします。
でも面白かった。GJ!
おもしろいんじゃなく、楽しかった。
なんか参加してるみたいだった。
GJ!
あと、播磨が沢近を下の名で呼んだら、3日は顔が赤いだろうと予想。
なんだか、俺は鉛筆含有のおにぎりに萌えるらしい。
キモいうえにすべりまくり
まさに便所の落書き
IFでもエロパロでも尻軽ミコチンのキャラが定着したな。
内容が糞な上に無駄に長い
新手の荒しか?
↑お前がな
乙でした
次回作もがんばれよ
あー、キャラの絡みかたは良い方だと思うが、
「」ばかりで誰の台詞か分からないのが難点。
台詞の間にもっとキャラ描写を入れるべき。
こんな糞つまらんSS書くな
書き手さんは↑みたいな粘着基☆はスルーして頑張ってください
高野晶。趣味はガンプラ作り。
ハリー・マッケンジーとの初対面での一コマ。
「ハリー君、あなたご家族にクリスチーナさんはいない?」
お粗末
787 :
Classical名無しさん:05/08/11 12:49 ID:.fgEbGqo
市ね
788 :
Classical名無しさん:05/08/11 14:28 ID:220dQbfI
♭31 THE GIRL NEXT DOOR
真面目人間の花井春樹は中学三年生
高校進学を控え、将来は政治家になろうという夢の持ち主の堅物の学生である。
そこへ、近所に引っ越してきた19歳のうら若い女性は超美人で、すぐに花井は虜になる。
越してきた女の子も花井の生真面目さが気に入り、二人はあっという間に恋に落ちた。
ところが、彼女が元AV女優だったと、判明して、二人の仲は試練にさらされる。
幼馴染の美琴は自分の恋と受験勉強に忙しく花井には構ってくれない。
二人の愛の力は、周囲の無理解を克服できるのだろうか、それとも……。
789 :
Classical名無しさん:05/08/11 16:57 ID:mHwHKA0Q
オルタナのIP
169 :オルタナ ◆JeG9Gdz3ss :2005/08/10(水) 11:47:05 HOST:07032450507486_vm wbcc5s04.ezweb.ne.jp 504:オルタナ◆JeG9Gdz3ss 08/11 15:20 LHojY6AQ
さっきミュウモでday after tomorrowのベストに入る未発表曲の『Pride』ダウンロードしたよ☆*≧∀≦*☆らっきぃ(*≧ωб*)もう何回も聞いてる(*≧∀≦)ノようやく3回目で糞曲って分かったのは秘密ね
嘉門
勃つ男
スクランとマリみてのクロス書いて
残念ながらテンプレで言われているように、ここではクロスオーバーは禁止されています。
≪他の漫画のキャラを出すSSは認められていません≫
漫画じゃないからいいんじゃないの?
そんな揚げ足取りされても。
憲法だって揚げ足とって自衛隊作ってるんだ、
このくらい常識だよ。
マリみては一応マンガもあっただろ
一応、だけどな
マリみてが漫画であるかどうかはこの際問題ではありません。
クロスオーバー物は相手作品を知らない者にとっては全く面白味のないシロモノであり、
そうやって読み手を限定するようなSSは好ましくないといって禁止されています。
されてないじゃん。
何を勝手に脳内ルールを展開してるの?
≪他の漫画のキャラを出すSSは認められていません≫
これに抵触しなければ問題ないはず。
少なくともこのスレではね。
揉めてる間に800げと。
そして俺は801ゲット。
じゃ次のテンプレでは
≪他の作品のキャラを出すSSは認められていません≫
に変更しとこうぜ
ということで、このスレに限り、漫画以外のクロスはOKということになりました。
スレの残りは少ないので、悔いの無いように有効に活用してください。
どうせ雑談で埋まるんだろうけどな。
クロスだろうがなんだろうがいいものは面白いからどうでもいいのだが、
正直794からの理論展開は小学生並だと思った。
つまり、国のやってることも小学生並みなんだよ。
それでも社会は受け入れているってことが重要。
小学生の屁理屈はどうでもいい。
萌える旗かおにぎりが読みたい。
自分で書けば?
>>807 よし、俺に任せろ!
「お嬢、好きだ」
「私もよ」
END
全兵庫県民が泣いた。
>>809 よくやった。あとはおにぎりだな。
「妹、好きだ」
「私もよ」
END
キャラが違う。
こうか?
「妹さん、好きだ」
「…私も好きです」
END
>>813 こうだろ
「八雲君、好きだ!!」
「ば、馬鹿っ。寝ぼけてんじゃねぇ!」
END
真旗はエロパロじゃ不味いだろ。
>814
全旧与野市民が泣いた
マリみてとのクロスを投下します。
初めてということもあり、短編にしました。
クロス反対の人には不愉快なこととは思いますが、どうかご勘弁ください。
苦情が多いようでしたら2度としませんので。
それでは、投下します。
「ごきげんよう、お姉様」
「……どうしたの八雲?」
END
>818
ゴミ
いつぞやと流れが同じだな。
ある農作業具を見て播磨が一言。
「お嬢、鋤(スキ)だ」
「フン。これだからアンタは筋肉バカって言われんのよ。あれは鍬(クワ)よ」
「ハァ? オメーみてえな舶来モンにナニが判る? ありゃこの国では鋤って言うんだよ」
「あら、生まれた時から日本にいるくせにそんなことも判らないの? カワイそうね」
「鋤だ!」
「いいえ、鍬よ」
「間違いねえ、鋤だ」
お嬢の態度が気に触ったのか、いつになく強弁する播磨。
「鍬って言ったら鍬よ」
こっちもムキになる愛理。
ヒートアップする二人。いつものように既に周囲は見えていない。
「だから! ス キ だ っ て 言 っ て ん だ ろ !」
博物館じゅうに響き渡る大声。
シン、と静まり返る室内。
学芸員の咳払いの音におそるおそる後ろを振り向く播磨。
展示室中の人の目が二人に釘付けになっている。
――いや…これは…まるで…俺が?お嬢に?告白してる、みたいな…ていうかそうとしか見えないというか…
ささささー、と音がするように血の気が引く播磨。
――ひょっとして…コイツって…私に…好きだって言いたかった…の?
播磨の言葉が脳裏に染み込んで行くにつれて真っ赤に頬を染める愛理。
愛理は播磨の腕を取って展示順路の廊下へと引っぱっていく。
そして真っ赤な顔のまま、上目遣いで小声で播磨に言った。
「そ、そんなに言うのなら…付き合ってあげないこともない……わよ」
これがのちに世に言う「播磨拳児歴史博物館絶叫告白事件」の顛末である。
とっぺんぱらりのぷう。
つか、何でコピペするの?
アンカーだけで十分では?
「天満ちゃん、好きだ!」
「ごめんなさい」
END
>>822 一人の漢が泣いた。
グラサンの漢だった。
・・・漢泣きだった。
「烏丸くん…あのね、私、烏丸くんのことが好き!」
「ごめん」
END
「ヤクモン、好きだ!」
「…私もです…ハナイッチ…」
END
>822
ごめん。それ「とっぴんぱらりのぷう」だった。勘違い。
|д゚)
|д゚)誰もいないし、閑散としているから投下するなら今のウチ。
|д゚)内容は縦笛っぽい感じで。ちょっと長くなってしまったのでそこら辺はご容赦を。
「今日は実にいい天気だな周防」
「……はぁ?」
いい天気かどうかは一般的に晴れているかどうかということであって、しかし農家の人にとっては
雨天の方が良い天気といえる場合も当然ある。この場合はもちろん前者だ。なぜなら……。
そこまで考えて頭を振った。
つい目の前で片手拳立てをすいすいとこなしている――なんでそんなに簡単にできるのか不思議で
たまらない――男みたいに理屈っぽく考えてしまったが、今の時間が夜半と言っても差し支えのない
時間帯で、夕食という概ねタイムテーブルが決まっている食事の後だという事実が彼女の頭を
クリアーにした。そして広がった空間を敷き詰めるように疑問詞が埋まっていく。
「いや、いま夜だし」
「はっはっは、確かに夜だな」
拳立ては止まらない。額に汗することもなく同じテンポで体を上下させている目の前の幼馴染み、
花井春樹を本日道場で見かけたときから様子の違いに気が付いた。
道場ではいつも、冷静で沈着。子供達への指導から道場の管理まで、トレーニングも試合も
淡々と着実にこなすここでの春樹ではなく、かといって学校や平時に見られる暑苦しいほどど真ん中
一本勝負の、一言でいえば熱血馬鹿な春樹でもない。
なんというか、心ここにあらずと言った様子なのだ。
「何かあったのか?」
ぴたりと中途半端に曲げた腕の状態で春樹の体が静止した。身につけている胴着の帯が床に
半分ほど付く状態で器用にも彫像と化している。この時点でストレッチを行っていた女の子、
ポニーテールに豊満な肉体を胴着に包み込んだ周防美琴は一つ思い当たる節があった。
アレは体育祭前の頃だ。競技種目の選抜会議に出席していなかった播磨拳児を探して教室を
出た彼が、その日の夜、怨嗟とも怒気とも言えない空気をまとい家を飛び出していった事がある。
師範は大して気にしていなかったようだが、花井のおばさんの慌てぶりは母をつてに伝わってきた
様子だけでも想像に難くない。おかげで親公認の自主早退までして行方を捜し回ったものだ。
「…………」
「……言いたくないってんなら、まぁいいけどさ」
加えてもう一つ。文化祭前のあの落ち込みようも酷かった。数回ほど春樹の失恋を目撃したことが
あるが、今までの中ではトップクラスのへこたれぶりは見るのも忍びない程だ。何がそこまで
この男を駆り立てているのか異性の自分ではよくわからないが、少なくとも友人の妹である
塚本八雲と播磨拳児とのうわさ話は寝耳に水どころか氷柱でも突っ込まれた衝撃を彼に与えた
ようだった。
「…………」
「……よっと」
十二分に筋肉をほぐした美琴はいつも通り、ゆっくりと型の反復練習を行う。
フルコンタクトスタイル、それも顔面ありのこの拳法道場は良くも悪くもいい加減で、実のところ
定まった稽古練習と言うものがない。さすがに低年齢の門下生には師範および師範代の指導があるが
既に師範代の肩書きを持つ二人には特に稽古内容の指示が与えられない。
よって二人っきりになる夜の道場ではそれぞれ異なった稽古を積むこととなる。春樹は柔軟から
筋力のトレーニング、日によってはランニングや器具運動などの基礎身体能力の向上をメインとし、
型や組み手はその総まとめと言う位置づけに置いている。逆に美琴は入念なストレッチから型や
姿勢の確認と矯正、受け身などの基礎事項の反復を好んで行う。特に最近は筋力が余分に付く負荷は
できるだけ控えるようにしている傾向が強い。
外観と体脂肪の変化というものは筋肉という繊維の束に実に良く反応するためだ。
「……ふっ、……ふっ」
ゆっくりと、ゆっくりと、思い描いたイメージの通りに体を動かす。無駄な映像は全てカット、
当然動かしている体からもカット。ゆっくりとぶれることなく足を広げ、腰を落とし、拳を握り込み
腕を引く。力を溜め込む動作も緩慢ならば解き放つ動作も然り。足、膝、腰、肩、肘、手首に至り
拳へと伝導。
夜の冷気も額に汗が浮かびつつある彼女には関係ない。静かに静かに想像、実行、反復。
呼気を挟み再びイメージ、緩やかにアクション。板張りの道場に響く踏み込みの足音と衣擦れの音、
加えて整った呼吸と心音が静謐な夜に脈々と律動を刻みつける。
そうやって淡々と日課の半分ほどこなしたところで、突如聞き慣れた声の、しかし聞き慣れない
奇声が上がった。
「……花井?」
「周防! ……僕は明日、死ぬかもしれん!」
「はあっ?」
先程からの姿勢から一転、だんっと床を叩いたかと思うと何事もなかったかのように直立した
春樹は、誰もいない明後日の方向へ感慨深く話し始めた。
「明日は日曜だな」
「ああ」
「日曜と言えば想いを寄せ合う男女が、仲睦まじく逢瀬を重ねている光景などが見られるな」
「まぁ、平日でもやってるヤツはやってるけどな」
「…………」
「…………」
そこまで話し終えると春樹は黙々とスクワットをこなし始めた。美琴と違い春樹の動きは速い。
見る見るうちに十、二十と屈伸回数が増えていく。そして数が百となった瞬間――
「――ぐぁ!」
――美琴は蹴った。それも割と容赦なく。
垂直に上がった右足が自由落下+αの勢いで、せり上がってくる頭にジャストミートしては
さすがに師範代といわれる男も、もんどり打つほかない。
「かぁー! もう、何ぐずぐずやってんだっ! 話すならちゃっちゃと話しやがれ!」
「じ、軸足の重心がぶれでっ――」
したり顔で動きの不備を指摘する目の前の男を殴り倒し、美琴は再び稽古に没入していった。
「はぁー!? デートだって!?」
「うむ」
大きなこぶと痣をこさえた春樹は大仰に頷く。
今日の稽古は残すところ組み手のみとなったところで、漸く復活した本日限定口べた男相手に
休憩がてら根気強く話を聞いてみたところの結果がこれだった。
「……えっ? なんだそりゃ、冗談?」
「僕がこんな面白くない冗談を言ったことがあるか?」
「いや、お前の冗談は全部面白くないけどな」
「ぐっ!」
傷付いたというジェスチャーなのか胸を押さえ膝を突く幼馴染みを放っておき、美琴はたった今
与えられたキーワードを元に極めてロジカルに推測してみる。
明日、日曜、八雲君、買い物、二人、デート……。
「こりゃ、MとかRのなんとかミステリー調査班にでも依頼するしかねーな」
「僕と八雲君のデートは超常現象扱いか」
思考の結果、専門家へ委ねる採択は春樹に一蹴される。
だが、未だもってこのような怪奇現象が彼女の日常に顔を出したことはない。ともすれば
暴走してしまいそうになる頭を落ち着かせるよう、美琴はその場で数度深呼吸をした。
「ふぅ……。いや、だって、お前と八雲ちゃんがデートだぞ?」
「ああ。僕と八雲君が明日日曜昼に、二人っきりで、矢神駅で待ち合わせて、ウィンドウ
ショッピング中心のデートを行う。論理的にも倫理的にも道徳的にも時間的にも物理的にも何ら
問題はなかろう」
「…………」
「…………」
今度は美琴が黙る番となった。
なるほど、春樹のいうことは正しい。実に良く最もらしく聞こえる。年頃の男女が日曜祝日に
デートでショッピング。フィクションからノンフィクションまで幅広く定番な休日の過ごし方だ。
その点は確かに疑問を挟む余地はない、一欠片の問題もない。
だがしかし、花井春樹と塚本八雲という人物の組み合わせに対しては例外だ。
彼らを知る人間にとってのこのカップリングは、石器時代からアニメーションが存在していた
などと嘯く考古学者以上に信憑性が存在しない。それほどまでに彼らのツーショットは想像しがたく
あり得ない現象だ。
「…………」
「……何をしている」
「もしかして健康優良児のお前でも風邪を引くのかなぁと」
憮然とした表情の春樹の額に手を添えていた美琴だったが、その手も目の前の男によって静かに
下ろされる。何となく釈然としないので一応念のために自分の額も触ってみるものの、確かめる
べくもなく平熱。手の平で感じた温もりに大差なし。
「……えと、まぁよかったじゃねーか。ついに念願叶ったりってヤツだろ?」
「そこまでいわれると素直に喜べない」
「う……。で、でもよ。よくOKしてくれたな八雲ちゃん」
「……それだ」
目を離せば道場の隅で体育座りなどを行いそうな雰囲気が一転、いつもの二人っきりの道場での
それに変わる。冷静さを取り戻した表情には理性の光を灯す瞳と引き締まった口元、美琴の
よく知る道場での春樹の顔がそこにあった。
「自分でいうのもなんだが、八雲君へのアプローチには今鳥のような直接的なものはない。常に
彼女の気持ちを最優先にした、節度ある範囲に留めている」
「アレでか……」
「しかぁし、今回のこのデート。実は僕が誘ったわけではなく……八雲君から誘われたのだ」
「あー」
今日の自分の体調はおかしいのかもしれない。先程からあり得ないことばかりが、立て続けに
起きているように感じる。特に夜になってからが酷い。これが現実なのか夢なのか判断できない。
ノイズを聞き取ってしまった頭を労るように、こめかみを指でマッサージしてみるが目の前で
真剣そのものの表情を崩さない男は、残像でも幻でもなく依然視覚野が捉え続けている。
美琴は天井を仰ぎながら大きく息を吐き、黙って春樹から一歩間合いを広げた。
「花井ー。深呼吸だ」
「む。なんだ唐突に」
「いいからやれって」
訝しみながらも素直に深い呼吸を行う春樹へ、そこで息を止める、という声が飛ぶ。
吸気途中の横隔膜が声に従い動きを静止させるや否や、だんっと床を踏みしめる音が鳴った。
それと同時に春樹の視界から消える美琴。探すまでもなく、気が付けば彼女の拳が鋭く腹に
突き刺さっていた。
「――! ごはっ! ぉ、お前なぁ……。いきなり崩拳を撃つヤツがあるかっ!」
「……この感触、夢じゃないのか」
正中線からも水月からもずらした箇所に撃ち込んだだけあって、すぐさま悪態を付いてくる春樹
――頑丈なヤツだ――を宥めすかし、改めて誰かの夢というオチじゃないことを確認した二人の
デートを考えてみる。
何より驚くべきは、あの塚本八雲ちゃん自らがこの真面目馬鹿を誘ったことだ。単純に考えても
きっと何か理由が存在するんだろうとは思うが、その理由が思い浮かばない。普段からあれだけ
執拗に付きまとってくる暑苦しい男をどうして彼女はデートの相手として選んだのだろうか。
余程、春樹でなければならないような状況なのだろうか。疑問は尽きない。
一通りの抗議が終わり、ブツブツと呟きながら少し距離を取る幼馴染みの背中を見つめながら
もしかして、と発想を少し変えてみる。
デートという先入観にとらわれていたが、彼女の目的は別れ話の類ということなのかもしれない。
正確には付き合ってもいないので別れ話も何もないわけだが、控えめで大人しい彼女がついに我慢
できずに、春樹にはっきりと拒絶の意志を伝えるという可能性はないわけでもない。
でも、仮にそうだとするとやけに具体的なデートの予定に違和感が伴う。
まさか一日中行動した後にそんなことを言うはずないだろうし、わざわざ嘘のデートで口実を作る
ような娘でもない。
ぐるぐると回る思考は光の射さない迷宮へと潜り込み、それでも当てもなく考えてみるが
持ち合わせている情報と彼女の処理能力ではここまでが限界だった。
ちらりと春樹を見てみるが、先程の痛がりようはどこ吹く風。既に中断していた鍛錬を再開して
いる。
「うーん……」
「なんでお前がそこまで悩むんだ。僕のことだろ?」
「そりゃそうだけどさぁ、こう、解けない問題の答えだけ与えられたような感じが気持ち悪くて」
「やり方まで教えたら怒るじゃないか」
「いや、そうじゃなくて……って、あー、もういい! 馬鹿らしくなってきた!」
ブンブンと勢いよく頭を振り、疑問の霧がかかった頭の中を真っ新にする。
例え彼女が春樹の熱意に折れたとしても、そうでなくても極論をいってしまえば他人事。
この二人がデートするなんてどこの誰であっても考えつきはしまいが、恋愛沙汰なんて何が起こって
どうなるかなんて全く分からないものだ。そう、今でも思い出すと少し心が軋む自分のような事
だってあり得る。
「よしっ! 花井、組み手するぞ!」
「まだこっちは基礎が済んでいないが……いいだろう」
「へぇ、珍しくやる気だな」
「先程の返礼をせねばならんからな」
「……何かあったっけ?」
「…………」
「――隙ありっ!」
あきれ顔の幼馴染みに躊躇なく間合いを詰める。しかし相手も慣れたもの。刹那の遅れはある
ものの直ぐさま彼女の奇襲に対応した。放たれた拳を捌き、いなし、受け止める。
その瞬間、生まれた僅かな隙に形勢は逆転。留まることを知らないとばかりに春樹に放った
攻手がそっくりそのまま、まるで鏡写しのように美琴に穿たれる。もちろんそのような攻撃では
相手を打倒すること叶わないのは両者とも理解している。自身が行った動きを10年以上の巧夫を
積んだ武道家である彼女が看過できないはずがない。
そう、これはあくまでも組み手。相手の動きを見切り、自分の動きも見切る。そのためにあえて
春樹は美琴の連撃をトレースしている。どの動きの完成度が低かったのか、どうすればより相手の
嫌がる動きとなるか。受け手にも攻め手にも鍛錬となる修練法、それは武道への理解のない人間が
見ればまるで輪舞を踊るデュエット。目まぐるしく変わる攻守だが全てが予定調和のように有効打
の一つも存在しない。ただただそこにあるものは躍動のリズムのみ。打突の音、軋む床、踏み
ならされる足音、凛とした混声。そしてBGMに行き遅れのコオロギが音色を添える。
花井道場の夜はこうしていつも通りに更けていった。
デートの時に注意することといえば、これはもう男女の性差を越えてまず身だしなみだ。
明らかさまに不潔と評される格好の人物と、小綺麗な格好で纏まった人物、どちらと行動を共に
したいかは聞かれるまでもない。時には極々稀に特殊なフェチズムを有する人物もいるがそのような
例外を除けば、特別なおしゃれなどせずともありきたりの服装できちんと着こなしてさえすれば
とりあえず外見上の問題は解決できる。
別に人生初のデートというわけではないのだが、そんなことをブツブツと呟きながらもう何度目に
なるかわからない身だしなみのチェックをショーウィンドウを姿見にして行う不審人物、花井春樹は
道行く人達の目から見ても明らかに緊張していた。
約束の時間は午前11時、飲食店から量販店まで遍く店々が殆ど開店している時間帯を選んだのは
もちろん春樹だ。中途半端な時間帯故に朝食は摂っていても昼食はまだのはず、さすれば自然と
まずは腹ごしらえ、という選択肢が自動浮上してくる算段になる。仮に相手の満腹度が予想よりも
下がっていなければ、それはそれで買い物を先にすればいいだけの話。ともかく昼食の時間帯を
挟むこの予定だと二人っきりで飲食というデートの王道コースが確定していることになる。
「万事抜かりはなし!」
鼻息荒く拳を握り込む春樹の出で立ちは実にシンプルだ。スニーカーにジーンズ、暗色系の
シャツの上に秋物の暖色ジャケット。休日の駅前で石を放り投げれば見事に命中してしまうぐらい
当たり障りのない身なり格好だ。もちろん財布に携帯電話、家の鍵、ハンカチにティッシュと
外出する際の基本装備も怠っていない。このあたりの想定は昨夜眠気が訪れるまでずっと反復して
考えていたことだ。今更どのような問題が現れようか。
中学の頃の経験が生かされたこの男のシミュレートは、当然周囲の地理状況にも至っている。
約束の時間より早く到着したことは言わずもがなだが、その数時間にも及ぶ待ち時間は約束場所で
ある矢神駅から半径1kmをくまなく歩き回り、見知らぬ店舗や普段歩かない道、有り体に言えば
デートスポットなるものを探し回って費やしている。百聞は一見に如かずを地で行った結果は良好で
収穫はまずまずのものがあった。直ぐさまプランの練り直しに入る。
そうこうやって4時間、言い換えると約束の時間5分前となって駅前に変化が起こった。同じように
待ち人の到来に備えている男性陣の視線がある一点に向かっていく。好奇の視線というよりも好色の
視線と言った方が正しいのか、視線を送るものの中には、だらしなく鼻の下を伸ばしている人物も
ちらほら。全身これ感覚器官となっている春樹はその周囲の変化にいち早く気が付いた。
「八雲君!」
「あ、花井先輩……」
キョロキョロと人を捜す素振りを行っていた可憐な少女、塚本八雲は来て早々だというのに早くも
疲れた表情をしていた。波打ったような模様の白のブラウスにデニムパンツの明るめの橙色が映える
秋らしい格好も相まって、冴えない表情でも十分に周囲の男達を沸かせることとなっているようだが
もちろん本日の相方である春樹にはそんなことは全く関係ない。彼女の名を呼んだことによる敵意の
視線も全く気にしない。
「あの、お待たせしました」
「いやなに、ぼ、僕も今来たところだ。……しかし、今日はいつも以上に人が多いな」
「……そう、ですね」
秋晴れの柔らかな空気が人々を行動的にさせているのか、この街の喧噪地帯である駅前は普段より
数割り増しで人に溢れかえっていた。その人々も見るからに年齢層が若者と呼ばれる世代である
ことは明らかであり、行動を観察していれば目的別にそれぞれカテゴライズできる。春樹達はその
分類別で判断するところのカップルとして周囲には認知されていた。
「……移動しませんか? 人が多いところはちょっと……」
「む。ああ、すまない。キミの私服姿に見とれてしまっていた。そうだな、ではあそこに見える
喫茶店へ行こう」
承諾を示す八雲をエスコートする春樹は、一見冷静のように見えて実のところ、かなりいっぱい
いっぱいだった。
まずデートのお相手、八雲の服装。求愛行動を行い始めて早半年、しかし彼女の私服姿を見かけた
ことはさほど多くない。情けないと思われるかもしれないが、休日を家事、アルバイト、部活に
ボランティアと多方面で過ごす八雲と偶然外で出会うことは殆どあり得ない。これは彼女が意図的に
行っている面もあるが、そんなことを知る由もない春樹にとっては彼女の私服姿という光景だけで
ご飯を丼で三杯は軽く収めてしまうほど眼福だった。
しかも今日はデート。つまり彼女の服装は、デートを、春樹を意識して選んだものであり
どんな豪奢なドレスよりもそれは価値のある格好だ。全体的に明るさを印象づける装いは楚々たる
彼女には少しインパクトが強すぎるが、ボディラインがはっきりとわかるパンツスタイルは存外に
アクティブな彼女の意外性を上手に表現していると思う。
「感無量だ……」
「先輩?」
自動ドアをくぐり、店員が促す窓際の席に着席してからも迸る春樹の幸福感は衰えを見せない。
いやむしろ、周囲の状況が変わり落ち着ける空間となったことで、よいよ感情に拍車がかかる。
「八雲君! いきなりこんな事を言うのもなんだが……」
「はい」
「いやいやいや、やっぱりなんでもない。気にしないでくれたまえ」
「……はぁ」
カメラ付き携帯のメモリが許す限り撮影させて欲しいと言いかける口を寸前で押しとどめる。
そう、今日の目的は撮影会ではない。これから更なる桃源郷が待ち受けているのだ。こんなところで
有限たるメモリとバッテリーを使い切るわけにはいかない。
運ばれてきたお冷やを一気に飲み干し、沸き上がる熱い奔流を肉体的にも冷却させる。
ウェイトレスの女性と対面に座る八雲を少々驚かせる結果となったが、こうでもしなければ何を
言い出すか彼自身でも予想が付かない。4時間という待機時間はこの男にとって過剰な暖機運転
として働いていた。
「ご注文が決まりましたら、お呼びください」
一瞬にして空になった一つのグラスへ冷水を注ぎ終わり、定型文の文句を残して店員はテーブル
から離れていった。動きの淀みなさに感心しているのか視線でウェイトレスを追う一つ年下の
女の子の表情からは尊敬の念が垣間見える。同業の女性として何か感じるものがあったのだろう。
「さぁて、何を注文しようか」
「私はセイロンティーを」
「セイロン……確かスリランカの紅茶だったか」
「はいそうです。花井先輩……詳しいんですね」
「文化祭で得た知識の賜物に過ぎない。茶道部期待のホープである八雲君ほどではないよ」
「あ、そうか。姉さん達のクラスは確か演劇と……」
「喫茶店の二本柱だ。少々骨が折れたが、なにこの花井春樹がいればどんな無理難題であろうとも
瞬く間に解決! 僕たちの文化祭はまさに有終の美を飾る結果となったわけだ」
先日の文化祭を思い出してか、春樹の口調はいつも以上に熱い。矢神学院高等学校創設以来、初の
快挙は出し物を決める段階から既に暴挙と呼べるものだった。紆余曲折の結果、こうして大成功を
収めたわけだが、その支柱として学級委員である春樹の活躍が必要不可欠だったのは確かなことだ。
「でも、あの、演劇は……本当にすみませんでした」
「キミが気に病むことではない。元はと言えば播磨のせいでもあるし、あの状況で八雲君はベストを
尽くしたと僕は思う。沢近君や周防には少々残念なことをさせてしまったが、その事については
もう話が付いている。寧ろ急なアドリブをさせてしまったこちらに謝らせてくれ」
躊躇なく頭を下げる春樹に八雲は恐縮するばかり。事実としては確かに彼の説明で間違いないの
かもしれないが、感情的に納得できるかは別だ。現に彼女と沢近愛理の間には一時的とはいえ
不和が生じたわけなのだから。
話題を変えるためにも春樹に注文を促し、早速ウェイトレスの女の人に内容を伝える。彼の注文は
アイスコーヒー。無難と言えば無難の喫茶店必須メニューだ。
「それでこれからどうしようか」
注文を終え手持ちぶさたになるかと思いきや、春樹は間髪入れずに本日の予定へと議題を移した。
事前の情報ではこれからはウィンドウショッピングとのことだが、具体的に何を買うか、どこへ
買いに行くかは決まっていない。
「花井先輩はその、親しい人への贈り物をどうやって選びますか?」
「ふむ。それは例えば八雲君からサラ君へといった場合かな」
「少し違いますけど……大体そんな感じです」
親しい人と言われて春樹の脳裏に浮かんだ人物は一人。されども親しすぎるためか改めて何かを
贈ったことはこれといってない。彼女のための行動もその範疇にはいると言われれば、それこそ
誇張でもなく星の数ほど色々とやっているだろうし、逆に彼女から様々な恩恵を授かってもいる。
だがプレゼントの贈呈と限定されれば、ここ数年の記憶を遡っても全くヒットしない。幼い頃には
なんだかんだと物品が動いた記憶もあるが、返事を待つ目の前の女の子が期待しているような
内容ではない。
「……すまない。選ぶ以前にそんなプレゼントをした記憶が殆どない」
「いえ、謝らないでください。変な質問をしたのはこっちですから」
「いや全く変な質問ではないぞ。むしろプレゼントの一つもしたことがない僕たちの関係性の方が
おかしいと言える。とはいえ贈り物かぁ、アイツは好みが五月蠅いから僕が何を買おうとも……」
「……そんなことはないと、思います」
後半は殆ど春樹の独語となっていたところへ遮るような否定の一言が彼女からこぼれ落ちた。
控えめな性格の彼女にしては珍しく語気が強い。これまで彼女のあらゆる表情を見てきたつもりの
春樹にも、このように強く主張する八雲は初見だった。伏し目がちなその顔には怒りや悲しみ
などではなく、毅然とした雰囲気が漂っている。
「きっと、花井先輩達には……形に残る贈り物が必要ないだけだと思います。共有している時間が
お互いにとってかけがえのないものだから。当たり前の時間になっているから」
「……八雲君」
「私にはあまりそういったことがありませんから、少しだけ……羨ましいです」
途切れた会話を縫うように注文していた飲み物が運ばれてくる。耳障りな音を立てることもなく
食器類をテーブルに置いていく様はさすがに手慣れたもの。小さく会釈する八雲に微笑を浮かべ、
ごゆっくりどうぞと言い残すと来たとき同様、静かにウェイトレスはカウンターへと戻っていった。
「…………」
「あ、なんか出過ぎたことを言ってすいません」
「八雲君……」
鏡面反射する眼鏡で表情の読めない春樹に八雲は思わずびくりと体を揺らす。ふるふると
小刻みに体が震えている男の様子は彼女でなくても動揺すること間違いなし。その光景が数秒、いや
数十秒ほど続いたと思えば、やおら春樹は彼女の手を取った。
「キミはやはり素晴らしい女性だ」
「えっ……?」
「塚本君から少しばかり、ご両親のことを聞いている。なんでも仕事の都合上小さい頃から家を
空けがちだとか」
「えぇ、まぁ」
「だがそんなご両親を恨むこともなく、労うためにプレゼントを贈ろうなんて……。心が洗われる
とはまさにこの事だ!」
「えっ!? 違っ、あの……」
「隠す必要はない、八雲君。みなまで言わずとも承知した。今日の目的はズバリご両親のための
プレゼント選びだな! 不肖、人生の先輩のこの僕が全力で助言に当たろう!」
接吻でも行うのかと他人が見まごうぐらいに顔を近づければ、間をおかず拳を握り込み滝のような
涙を流す。止める間もなく分厚い胸板を叩き、頼れと顔に書いてあるような笑顔を放つ春樹の挙動を
八雲は流されるまま見届けてしまった。いつもそうだがこのような状態の彼をコントロールする術を
彼女は持ち合わせていない。友人の留学生や部活動の先輩、そして姉の友人である先輩のような
けれん手管はどうすれば身に付くものだろうか。
「うーむ、となればやはり身近な物が妥当な線か。あまり実用的な物だと気負わせてしまうが
こちらの想いを伝えつつ、相手を気遣えるようなものといえば……」
「えっと……花井先輩?」
「ところでご両親と言うことはお義父さんとお義母さんのそれぞれに渡す物ということで考えて
構わないのかな?」
「どちらかと言えば、その……男物なんですけど」
「男物……、そうか義父上殿へか。なるほど、それで男性である僕の意見が欲しいと言うことか」
「そうなんですけど、ちょっと違うというか……」
落ち着いた受け答えは彼女の案件を真剣に考えていてくれている証拠であるが、いかんせん
その割には微妙に話が食い違う。原因は二つ。一つは春樹の思考と解釈に飛躍が多いこと。
感情豊かで義に厚いこの男が、想い人が見せる憂いの表情にヒートアップしないはずがない。
効率よく回転する思考もまた曲者だ。都合のいい解釈と言ってしまえばそうなのだが、常人なら
シナプスが繋がらない諸処の事柄を器用にたぐり寄せ関連づけていく手並みは、もう誉めるしか
評価のしようがない。
もう一つは八雲自身の受け答えにある。彼女の姉や、彼女が心を許す男性にも見られる論理の
飛躍は、もちろん彼女たちの性格と行動原理によるものが大きいが八雲との間に生じる場合は
別の要素も含まれることとなる。言葉ではなく表情と雰囲気で物事を伝えがちな悪癖ともいえる
彼女の言外は、時には言葉以上の想いを伝え、時には思わぬ誤解を相手に与えてしまう。
この相乗効果が件の会話という結果に繋がることとなった。
「ふむ、体格は僕とあまり変わらないのか。お義父さんは何か体を動かすような趣味、例えば武道の
類なんかをやっていたりするのでは?」
「よくわかりませんが、運動神経は凄くいいです。バスケットでダンクシュートができたり……」
「それは……益々もって興味深い御仁だ。一度お会いしてみたいものだな」
「……花井先輩はもう何度も――」
「――い、いや、違うぞ八雲君! 決して紹介して欲しいとかそう言うわけではなくてだね、お嬢
さんを僕にくださいとかそう言うことが言いたいわけではなく……ってわあぁー! 僕は何を言って
いるんだ! すまない、今の言葉忘れてくれたまえ」
「……はぁ」
つぎはぎな会話は何故か不思議と収束を帯びていく。聞く人が聞けばそれが細いタイトロープを
命綱なしで歩くような絶妙な会話だったが、よいよ手元の飲み物もなくなり今後の方針も決まりつつ
あった。
そんな中、八雲から聞き出していった父親像に春樹は既知の感覚を感じていた。やや破天荒な
振る舞いも好んで身に付ける装飾品も体格や身長も、どうしてもあの男にイメージが重なる。
彼女がプレゼントを贈る理由など全く存在しようもないはずであるから、ただの勘ぐりでしかないが
あらゆる可能性は零に限りなく近づけども、0にはならない。もしかしてという思いは残る。
「……つかぬ事を聞くが、八雲君は、その播磨の誕生日なんかを知っていたりするのかな?」
「播磨、先輩ですか?」
「そう播磨拳――はうわぁ!!」
だしぬけに言葉をうち切り興奮して立ち上がった春樹はしたたかに足をテーブルにぶつけていた。
その拍子で揺れるテーブルと奇声に驚きを隠せない目の前の女性をよそに、紫電の走った大脳
新皮質が非の打ち所のない解答をたたき出す。
見ざる聞かざるを通していても彼の想い人と彼の宿敵のうわさ話は飛び込んでくる。それら全てが
誤解であることは本人から直接聞いた事実であるので、これ以上の追求は必要ないが何故このような
状況に陥ったかは知っておくべき事だ。
そもそも清楚で愛らしく魅力的な彼女が、粗野で愚直なあの男に惹かれる理屈が今の今まで
ブラックボックス化していた。そのため結果的に常に行動が後手に回っていたと春樹は考える。
だが、先程の天啓ともいえる閃きがその根元たる疑問を氷解させてくれた。
彼女が播磨に対してある程度心を許しているのは、認めたくないが事実だろう。しかしそれは恋人
や想い人に対するものではなく、兄弟や家族に対するようなものに極めて近い感情に違いない。
滅多に会えない彼女の父親が偶然播磨と似通っていたため、か弱い彼女の心が宿り木として一時的に
羽を休めているに過ぎない。
そう、彼女が示す父親像がまさにその答えだ。播磨が似ているわけではない、彼女のお義父さんが
播磨に似ているだけなのだ。
「だ、だいじょうぶ……ですか?」
「そうか、そうだったのか……。僕はなんて醜い誤解をしていたんだ」
かけられる心配をよそに、憑き物が落ちたような顔をした春樹はゆっくりと見上げていた天井から
視線を下ろしていき、見上げる形となった想い人をまじまじと見つめる。形容しがたい色をした瞳に
吸い込まれる錯覚に頭を振った。
「ありがとう八雲君。ようやく長い悪夢から目が覚めた気分だよ」
「え……、はい、どういたしまして」
「さぁ迷いごとは雲散霧消した。そろそろ……」
行こうではないか、といいかけて伝票片手に差し伸べていた手をポケットに突っ込んだ。店を
出てからの予定は既に決まっているし、痼りのように凝り固まっていた疑問は見事に根治した。
しかし、どうしても一つだけここでやり残したことがある。
「や、やはり、一枚だけ。一枚だけ撮らせて欲しい。お願いだ八雲君!」
「えっと、じゃあ一枚だけ」
多くを語るまでもなく春樹の言わん事を察していた八雲は、不承不承と居住まいを正した。
桜が咲けばやれ花見、花火が上がればやれ花見、雪が降ればやれ雪見。春夏秋冬、四季豊かな
矢神市は季節の風物詩に事欠かさないことが自慢の一つではあるが、それが時にいらぬ負担となる
ことは住民の悩みの種でもある。
「よし、じゃ次は前回り受け身10本、始め!」
威勢よく門下生の小学生に檄を飛ばす美琴もその犠牲者の一人だ。土日が完全に休日になった
ため――昔は第二土曜だけ休みだったりしたもんだ――門下生の子供達が道場に顔を出す頻度も当然
上がったわけだが、そんな事は関係ないといわんばかりに師範を含む大人達は、紅葉だけはここで見
られないってのが残念だよなぁ、という台詞と共に本日は矢神神社へこぞって紅葉狩りと来ている。
つまるところ花井家、周防家の敷地内で最も年長の人間が彼女という状況。いい大人が昼間から
酒というのもいかがなものかと思うが、明るいウチは未成年禁酒という変な家訓もどうにかして
欲しい。決して昼間から飲んだくれたいわけではないが。
「んじゃ次は二人一組で組み手! 顔面なし、約束組み手だぞ」
はい、という威勢のよい返事がそこここから返ってくる。その声に満足げな笑みを返す美琴は
対戦相手や攻防の先手順を巡って道場に子供達の声が響き渡る昼下がりの道場で、昨夜のことを
思い出していた。
結局、春樹が言いたかったことは明日の稽古を任せるという至極単純な内容だった。律儀な
あの男はその理由を懇切丁寧に話すものだから、聞き手としてはいちいち突っ込まずに話を促す
だけでも――少し手と足が出たが――気力を消耗したが、その甲斐あって夜の組み手は大変密度の
濃い時間となった。もちろん稽古内容が、だ。
週末の子供達の稽古は春樹と美琴の二人が師範代として責任者になることが多く、どちらかの
都合が悪いときは相手に予めその旨を伝える習慣となっている。子供達の相手は嫌いではないし、
以前春樹に任せっきりにした日もあったため、本日の指導を美琴は快く引き受けた。引き受けた
わけだがまさかその日の朝になって、関係者各位が揃いも揃って外出するとは夢にも思って
いなかった。
「ったく、いきなりだもんな。なーにが『ちょっくら紅葉狩りに行ってくらぁ』だっつーの。そう
いうことはもっと事前に話しておいてくれないと、こっちにも都合ってもんが……」
知らず唇から囁かれる愚痴は組み手を始めた子供達の掛け声の中に消えていく。今日という日を
限定すれば特に都合が悪いわけではなかったが、それでもファジーな両親とそれに意気投合する
師範達にはやはり一言物言いたい。些細なことでも何かあってからでは遅いのだから。
「先生!」
「ん?」
子供達の動きを見ながらぼんやりと過ごしていた彼女の元に、元気に満ちあふれた子供が二人
挑戦的な眼差しで言い寄ってきた。血色のいい額に軽く滲む汗と若干上がった呼吸から見て、体調
如何の申し出ではないようだ。
「約束組み手終わりました!」
「三本2セット、ばっちり!」
「おー、早い早い。んでどっちが勝ち越した?」
俺、と主張する綺麗なハーモニーはその後の有効打判定への議論というお約束コースも同時に
生み出している。わいわいと言い合う二人はやはり武道をやっている男の子、双方共に引く気配は
見受けられない。
そう言えばと、美琴は本日留守中の師範代を思い出した。あの堅物がこうやって勝敗の意地を張る
姿は道場で見たことがない。相手が自分であろうとも他の誰であろうとも、直ぐさま折れて和を保ち
自らを律していたように思える。彼と対立する人間と言えばあの播磨拳児かD組の東郷雅一ぐらい。
その彼らをも認めている節がある春樹は案外大物なのかもしれない。
「よーし、じゃあ先生、勝負しようぜ!」
「これでどっちが勝ったか決まるな」
「あー、待て待て。なんの話だ。なんで私が出てくるんだ?」
「なんかどっちが勝ったかわかんなくなったから――」
「――先生とやって一本先に取った方の勝ちってことに」
「なんだそりゃ……」
幼い彼らの話の飛躍はある友人を彷彿とさせるが、それはさておき、すっかりやる気になっている
目の前の男の子達にどう対応すればいいか思案する。一人ずつ相手をして倒しても構わないが、
彼らの問題が解決するワケじゃないし自尊心を傷つける結果となるかもしれない。まぁ、そんな
小さいプライドにしがみついている間は強くなれないものだが、それを壊す役目は春樹が率先して
やっているため自分でやるとなるとどうしても二の足を踏んでしまう。師範代としてわざと負ける
わけにもいかないし、彼らだけに自由組み手をさせるわけにもいかない。
そんな数秒の思索を行う美琴に目を輝かせていた子供達は、彼女からの一言に目を丸くした。
「はぁ……やれやれ、もう面倒だから二人いっぺんに相手してやるよ」
肩を、首をゆっくりと動かし胴着の帯を締め直した美琴は不敵な笑みを浮かべた。
「これなんてどうですか?」
「うーん、僕個人としては構わないと思うが、もう少し柔らかい素材の方がポケットに入れやすいと
思う。デザインは流石八雲君、いい審美眼だ」
「あ、ありがとうございます」
照れる表情もやはりいい、とさすがにこれは口に出さないが至福の極みを春樹は味わっていた。
店を雑貨屋に変えたこの一時は入店から既に小一時間ほど経過している。客層の世代を絞りきって
いないためか老若男女、様々な人間が店内ではちらほらと見受けられる。春樹が選んだこの店は
陳列してある商品の善し悪しも価格も種類もてんでバラバラで、統一感という物に欠けているが
逆に漠然としたイメージしか持ち合わせていない彼らのような客にとっては、それは豊富な選択肢
として捉えられていた。現に他の客も何らかの商品を目指しての一直線な行動をとっておらず、歩み
を止め飾り付けてある商品を手に取り、じっくりと吟味している人ばかりである。
「でも、面白いお店ですね。ここ」
「この前偶然見つけてね、一度入ってみたいと常々考えていたのだが、まさか同伴相手がキミになる
とは……僕は実に幸運な男だ」
「そんな……恐縮です」
言葉通りに恐悚し身を縮める彼女を思わず抱きしめたくなる衝動に駆られるが、ありとあらゆる
理性を総動員してこれを抑え込む。彼女と時を同じくすればするほど春樹は自分の中に沸き上がって
くるこのような未知の感情と衝動を発見していた。今までの交際や恋心でもそのたびに新発見を
繰り返していたが、それら全てが彼女の前ではリセットされる。確かに感じたことのある喜びや
悲しみでも、それが彼女に関すると言うだけでまるで違う言語のような違和感さえ伴う。
自問する。この気持ちはなんなのか。間断なく自答する。これが恋だ。
支援
「あっ」
「おっ」
緩やかな時間の流れを壊すように単調な電子音と高振動のバイブレーターがポケットの中で騒ぎ
出す。若干周囲の視線を集めながら春樹は携帯電話を取り出した。マナーモードに設定しておくべき
だったと後悔するが、後の祭り。着信している電話を無視するわけにもいかないので、折り畳まれた
電話機を広げてみるとそこに表記された名前は見慣れたものだった。
「花井先輩?」
「すまない。少しばかり電話をしてくるので八雲君はここで待っていてくれたまえ」
「えっ、はい……」
デッサンが狂ったように顔を緩めていた春樹の表情が、携帯電話を見た瞬間からみるみるうちに
真剣なものへと変わっていく。一瞬沸き起こった怒りがたちまち怪訝な顔で覆い隠され、その表情の
変化を不思議そうに見ていた八雲へ背筋を伸ばして頭を下げた。他の客や店員には目もくれず
すぐさま春樹は店を出た。
キョロキョロと辺りを窺い、目標の設置物を往来から探し当てると早足でそこに向かう。携帯電話
の普及と共にすっかり役目を失いつつある公衆電話だが、メモを取るための紙は存在する上に
そこでの通話は通行者の邪魔にはならないという打ってつけの場所であることは今でも変わらない。
春樹は通話ボタンを押した。
「もしもし? 周防か」
『…………』
「……何かあったのか?」
液晶表示がおかしくなければ間違いなく通話相手は美琴の携帯電話のはずだが、こちらからの
呼びかけに答える声はない。名前を見て一瞬悪戯かと考えたが今までの長い付き合いで、彼女が
こういった類の悪ふざけを行った試しはない。自分が今どのような状況なのか察せないほど意志の
疎通は浅くないはずだ。ということはそれを理解してなお電話をかける必要性があると言うこと
になる。
注意深く聞いてみるがスピーカーから聞こえる音はざわめきと多種多様な子供達の声。その声の
どれもが動揺と恐慌の波に揺さぶられていることだけがわかる。
「返事をしろ周防!」
『…………』
依然沈黙を守る向こうの通話口に苛立ちと焦りが募っていく。怒声や泣き声、暴れるような音
ばかりが輪郭を伴いはっきりと伝わってくるため、イヤな想像ばかりが頭をかすめる。事故か事件か
それ以外の何かか。彼女の身に何かあったのだろうか。
電話繋がってるって、という声が聞こえたのは忍耐の限界一歩手前だった。
「もしもし、聞こえるか!」
『あ……あぁ。ああー、ハナイ、ハナイセンセー!』
予想外の声はある意味予想通りだった。聞こえる範囲での状況と無言状態を維持する携帯電話から
の推理は電話の持ち主に何かがあったという論理的帰着に行き着いていたが、感情がそれを否定して
いただけだ。春樹は意識的に深呼吸を行った。
「いいか、ゆっくりと状況を説明してくれ。周防はどうした、何かあったのか?」
『せ、先生が……先生っが。僕、僕をかばって、それで、それで……』
「出血はあるか? 意識は?」
『……っく、わかん。ない。先生す、すごく痛がって……テツが電話しろって』
「わかった、そのままの状態を維持していろ。今すぐ戻る」
終了ボタンを押し、携帯電話をポケットに仕舞い込むとびっしりとかいた手の平の汗をジーンズに
こすりつけ、再び深呼吸。よし、と自らを鼓舞して踏み出した一歩はその場に縫いつけられた。
「八雲君……どうして」
「お店を出ていくときの先輩の顔が少し気になって……それで」
「そうか、電話の内容は聞こえたかな?」
「いえ、でも……」
時として驚くほど察しのよい彼女相手には愚問だったかもしれない。数分前のだらしない顔は
見る影もなく、強い意志と無言の圧力が春樹の双眸に煌めく。そしてアスファルトに頭突きでも
するような勢いで道路にひれ伏し、頭を下げた。
「すまない、八雲君!」
「せ、先輩!?」
「任せてくれたまえ、と大見得を切ったあげくにこの体たらく。本当に申し訳ない!」
頭を上げてくださいと寄り添ってくる彼女の行動が胸を締め上げる。これから自分が彼女に
行う非道を理解していないはずはない。それだというのに彼女は責めるわけでもなければ呆れる
わけでもなく気遣ってくれる。
ああ、だから彼女に好意を抱くんだと冷めた自分が冷静に再認識させてくれた。
「僕はこれから大至急、道場に戻らなくてはならない。その後も戻ってこれるとは思えない。事態は
緊迫している」
「はい……」
「くっ、だから、故にっ、今日のデートはこれで終わりと言うことになる」
「…………」
幅にゆとりがあるとはいえ、歩行者道路で正座する春樹に目をとめない通行人はいない。好奇心が
刺激され彼らを見つめる目は徐々に増えていくが、当事者、特に春樹の方は全く気にしていない。
というよりも情報として彼ら野次馬を認識していなかった。
逆にデートという単語に不可思議な顔をしていた八雲は集まり出す人の垣根に、抵抗感を感じては
いたが真剣な様子の彼に対してどのような言葉を投げかければいいか、そればかりを考えていた。
「また今度……」
「えっ?」
「また今度にでも、お願いしていいですか。花井先輩?」
「……八雲君」
感極まった気持ちは涙として表れ、足を止めて見守っていた人たちの間からも暖かい雰囲気が
漂い始める。一も二もなく頷く春樹に拍手でも起きそうな空気は、しかし教室で聞き覚えのある男の
声が吹き飛ばした。
「お、花井何やってんだよ」
「……菅か」
「うぉ、八雲ちゃんまで! えっ、えっ、何? なんで俺睨まれてんの?」
周囲から重みすら感じる視線をぶつけられ、たじろぐ短髪の男は菅柳平。配達の帰りに通り
かかった道路に人集りができていたため、興味本位で覗いてみれば中心にはマリア像に祈りを捧げる
信者の図。塚本八雲と花井春樹の異色カップルがあった。
「いいところに来たな、菅。配達かその自転車は?」
「はっ!? いやチョイ待ち。全然状況がわからねーんだけど。何、何が起こってんだよ?」
「説明は後だ。今は帰りか?」
「えっ? ああ、そうだけど。なんだよこれ、撮影かなんかか?」
穏やかざる雰囲気と物珍しい組み合わせに小規模なパニックを起こしている柳平へ、立ち上がった
春樹は着ていた上着を放り投げた。真っ直ぐ最短距離を移動してくるジャケットを思わず柳平も
受け止める。
「おい! なんだよこりゃ!?」
「預かっておいてくれ。これを返すときに貰い受ける」
これと言いながら春樹がまたがった物は菅家御用達の配達用の運送車兼ママチャリだった。未だに
事態を把握できていない柳平をよそに、大きく深呼吸を行いペダルに足をかける。
「……じゃあ、行ってくる」
「気をつけて……ください」
「行ってくるじゃねーよ! 待てよ花井!」
八雲の一言に力強く春樹は頷いた。両脇を捕まれ遠ざけられていく柳平が視界から途切れ、渾身の
力を込めた一蹴りがペダルから後輪へと伝導した。
痛がると言うことは意識があり、出血がわからないということは少なくとも体外へ血液は流出して
いないと言うことだ。
脈打つ血流のリズムに乗ってペダルを踏み込む春樹は、同時に与えられた情報から考えられる
美琴の容態について思索していた。現在地点から道場まで歩いて凡そ30分、走って15分の距離は
性能の限界まで速度を引き出されている自転車をもってすれば5分も切れる。頼もしく路面に
トルクを伝えるママチャリとそれをもたらしてくれた柳平に、春樹は心の底から感謝しつつ
思考は容態の考察へと費やす。
つまりこの時点で開放性の骨折や脳震盪の可能性を削除しても構わないだろう。擦過傷や
打撲程度で騒ぐほどヤワではないだろうから、おそらく骨折か脱臼、靱帯損傷じゃないかとあたりを
つける。どれも放置していれば治るというものではない。処置が必要だ。
減速せずにハングしてコーナーを曲がる暴走自転車にクラクションが鳴り響く。しかし全く気に
することもなく自転車はグングンと突き進んでいく。速度を最重視するために既に歩道を走っては
いない。すれ違い、あわや擦られるような距離の対向車も気にとめず持てる力の全てを使う。
走り始めてから4分と35秒、漸く春樹は目的地へとたどり着いた。
「ハ、ハナイ、ハナイー!」
「……先生を、つけんか」
外での物音に気が付いた男の子が泣きそうになりながら玄関口に駆けつけてくる。その子を
皮切りに口々に不安と動揺を募らせた子供達がやってきては助けを求め、断片的な状況を報告して
いく。疲れた表情を見せずそれらに一言ずつ声をかけ、疲労がたまった肉体を堂々とした足取りで
奥へと運んでいく。そこで目にした物は心配だがどうすればいいのか途方に暮れている少年たちと
苦痛に顔を歪ませて仰向けになっている幼馴染みの姿だった。
「あ、れ……なんで花井、お前が」
「大丈夫と、いうわけではなさそうだな」
「お、おまえ……デートは」
「いいから、ほれ見せてみろ」
「…………外れて、る?」
外国の聖人のように春樹が近づくことで人垣が割れていく。しゃがみ込み横たわる美琴が押さえる
右手をそっと引きはがし、患部であろう左肩を見た。見る人が見ればそれは一目瞭然だった。
不自然なほどに伸びきっている左腕は例え同じ姿勢を取ったとしても僅かだが右腕と明らかに長さが
異なっている。
視覚的にも物理的にも美琴の左腕が筋肉と皮のみで肩に繋がっていることが容易に見て取れた。
「…………」
「やっぱさ、これ……外れてるよな?」
「……ああ、見事にな」
「っちゃあー、ついてないなぁ」
我が身に起きた怪我に落ち着かなかったのだろうか、発汗と荒い呼吸を落ち着かせながら黙して
患部を観察していた春樹に幼馴染みの舌は普段よりもなめらかになる。
未体験の怪我や病気にはどんな気丈な人物でも精神的なダメージは大きい。狼狽する美琴は
気丈とはいえ女の子。怪我による不安と恐怖が彼女から笑顔を奪い、心理的圧迫感を与えているのは
指に伝わってくる脈拍と普段以上の口数が明らかにしている。せめてもの救いは囁くように声量を
抑えている点か。喚いたり叫ぶことの不都合さ、彼女自身のプライドを考えることができる程度には
冷静さを保っていることを示している。
道場主の息子として数多くの怪我を見てきた経験から、このような場合の対応として春樹の脳裏に
二つの候補が挙がった。
軽口を叩きながら相手を励ます、もしくは静かに怪我の状態を観察、逐次報告する、の二者択一。
彼の選択肢は最初から決まっていた。何も語らずただ彼女の肩と関節、その周辺を視診。そして
触診へと移っていく。
「他に痛むところはないか?」
「……特にないかな。落ちたときもぶつけた箇所は左肩だけだったし」
彼女の落ちたという一言にびくりと身を震わせる子供が一人。伏し目がちにこちらの様子を
窺っている。手に握っている携帯電話と今にも泣きそうな表情に合点がいく。
大丈夫、気にすんなってと笑顔を見せて起きあがろうとする美琴を、春樹は静かに押さえつけた。
一通りの診察の結果、彼女の自己申告通り左肩の脱臼以外は打ち身の一つもないことが
判明した。もっとも医者や整骨医というわけではないので絶対というわけではないが、ほぼ
間違いないだろう。
さて、問題はこれからの対処だ。
「……なぁ、こんな時になんだが」
「ん? なんだ、急に改まって」
事後承諾と事前承諾を天秤に乗せてみるも、全く持って拮抗。針が止まったわけではなく、均等な
揺れ幅で秤が動き続けているイメージが浮かび上がる。どちらかと言えば事前承諾の方が
穏便に事が進みそうだが、かばってもらった本人の前ではあまりそういう話もよくないだろう。
救急車でもなく師範達でもなく自分を呼びだしたのだ。彼の心は察してやるべきだ。
大きく深呼吸をする。
不思議そうな顔でこちらを見つめる続ける本日の師範代の腕をとり、春樹はゆっくりとしかし
迷いのない口調で言い切った。
「周防、……結婚してくれ」
「…………はあぁ?」
驚愕、というよりいぶかしむような、心底脱力しているようなその表情に呼吸を合わせ
「ふんっ!」
「――!!」
春樹は掴んでいた腕を引っ張り、そしてねじ込んだ。
ごりっと不快な音が肩から腕、そして掴んでいた腕から耳朶に響く。聞くだけでおぞましい
その音を体内で鳴らした美琴は歯を食いしばって悲鳴を上げなかった。これ以上痛がるわけには
いかないことを諭すまでもなくわかっているようだ。
「……どうだ?」
「――っ。こりゃ、もう二度と体験したくないね」
「僕もだ」
左手の感触を確かめるように拳を作り広げては肘や肩を微妙に動かすが、返ってきた激痛に
美琴は顔をしかめた。彼女の行動はわからんでもないが、外れた箇所は動かさず固定するのが
脱臼処置の前提だ。腕の異常を確認する行為を窘め、春樹は子供達の一人に予め言って用意させて
いた救急箱から冷湿布と三角巾を取り出した。
「よし、上着を脱げ周防」
「う、うん……ってチョット待て! 何言ってんだお前!?」
「患部を冷却する。軟部組織の損傷があるだろうからな、冷やさないと後が酷いぞ」
「そりゃわかるけど、そんなもん後で自分でやるから!」
「一人では難しかろう。それにシップは少しでも早めに貼った方がいい」
春樹の意見は正論だ。処置の方法としても正しい。しかし、正しいという事実を納得できても
脱げと言われて簡単に肌を晒せる程、彼女の女性としての経験値は豊富ではない。
一向に首を縦に振らない美琴に、漸く春樹も彼女の言わんとすることが理解できた。
「僕は気にしないが」
「私が気にするんだよっ! ――っつぅ!」
「ほれみろ。恥ずかしがっている場合か、さっさと胴着を脱いでだな」
シップと三角巾片手ににじり寄る春樹の視界が突然ぶれる。驚いた彼が振り向いた先には、先程の
心配げな表情など露にも感じさせない、怒りの形相でにらみを利かせる女の子達がいた。
「……痛いぞ、何をする」
「いくら花井先生でもこういうことには順序があると思う!」
「順序? 何を言っている」
「婚約相手でもやっていいことと悪いことがあると思います!」
「はっ? 婚約?」
「ちょっ、お前ら違うぞ、違うからな!」
助け船に安堵しかけた美琴だが、彼女たちの出してきた船がブーケ満載だと知るや否や顔を真っ赤
にさせて乗船拒否を連呼し始めた。そのやりとりが張りつめていた道場の空気を緩和する。緊張して
いた子供達も、不安がっていた子供達も大きく息を吐き、道場はいつもの雰囲気になりつつあった。
「ところで周防」
「なんだバカヤロウ!」
「シップの役目は彼女たちに任せた。僕は男子達に軽く稽古をつけて今日は解散させようと思う」
「えっ……ああ、うん、そうしてやってくれ。あと貼り終わったらこいつらも連れて行け」
きゃっきゃと騒ぎ続ける女の子のグループを指さし、別の疲労感を感じながらため息混じりに
美琴は言い放った。
この手の話題に弱い事は彼女を知る門下生の女性陣には常識であり、男子と異なり早熟な女子は
こぞって先程の結婚発言をからかい、真偽のほどを確かめようとしている。とはいえそこは女の子、
はやし立てたり馬鹿にするワケじゃなく、微笑み祝福し、やっとかぁ、とか、気を抜いちゃダメだよ
先生、とかアドバイスとも感想とも言えない祝辞ばっかりだったのは言うまでもない。
「よし、元気になった周防は放って置いて皆でランニングだ! 僕に続け」
一斉に上がる男子の不満の声に意も介さず、春樹はリラックスしてきた子供達を引き連れ玄関口へ
と歩き出した。
「なぁ、花井」
「……なんだ」
あれから数時間後、日はすっかり落ちてしまい紅葉狩りの二次会場である周防家の方角からは
相変わらず野太い声が聞こえてくるが、子供達のいなくなった道場は静謐さと一人の男だけが存在を
占めていた。流れるように一人、型をこなす春樹の背後から私服のワンピースに着替え終わった
美琴が現れ静かに問いかけた。
「なんで、デートほっぽり出して……戻ってきたんだ?」
「言わなかったか? お前の携帯から連絡が来て――」
「――そうじゃなくてさ。だって、その、今日は八雲ちゃんと二人っきりだったんだろ?」
「…………」
人工的な明かりの中、玉のように浮かぶ汗を拭うこともせず春樹は暫く沈黙を保つ。
返事を待つ美琴も壁を背にしてもたれかかり、発せられる衣擦れの音がこの空間の全てといえる
状態であった。
「友人と恋人、どちらかしか助けられないならどちらを助ける?」
「……?」
「という問いが一時期男子の間で流行ってな。僕はその時迷わずこう答えた」
「”そういう状況に直面してみなければ答えは出せない”」
春樹の声帯模写なのか、できる限り低い声を出して調子を合わせた美琴に驚き、出題者の男は
動きを止めて彼女に向き直った。
「……どうしてわかった?」
「ま、長い付き合いだからね。そんなことをいうんじゃないかなーと」
ちったーその場の空気読めよな、と笑顔で答える美琴の左肩には痛々しく包帯と三角巾が巻かれて
いる。春樹の処置は殆ど完璧だったらしく、帰ってきた師範達の中の整骨に通じている人も驚いて
いたが、念のためにその人にもう一度看てもらい、包帯を締め直して貰っていた。
「それでだ、今日その答えが出た」
「…………」
春樹が送る視線に美琴も気づく。仮にあのまま春樹が帰ってこなかったとしても、携帯電話には
彼女の母親の番号や工務店の人間、友人達の番号も記録されている。電話をかけた子が偶然なのか
春樹の番号で通話してこういう結果になっただけで、繋がらなければ、春樹が行動しなければ
それはそれで何とかなっていただろうと思う。
「損な性格だよなぁ、お前ってさー」
「そんなことはない。これが僕のアイデンティティだ」
「ったく、昔はもっとひ弱なヤツだったのに、いつの間にか……」
頼もしくなったという言葉は言いかけてやめた。型を再開させた春樹にいらだったワケじゃなく
調子づかせるのが少し癪だからだ。誉めると調子に乗る癖は小さい頃から変わっていない。おだて
れば木に登るどころか熊すら倒すだろうこの男は。
「じゃあ、お前だったらどうする」
「そりゃあ……」
言われて考えてみる。もし逆の立場だったら自分はどうしていただろう。かかってきた電話を
無視するだろうか、通話した後も自ら動こうとしないだろうか、どれもその光景が想像できない。
「そういうことだ」
「…………」
「気にするな、今度はこちらからまた誘えばいいだけのこと。一応約束も取り付けてきたからな」
「そっか」
そこで会話が途切れた。言いたいことは言ったし、納得もできた。左肩がこんな状態ではろくに
動けるはずもないから今日は安静にして休養を取った方がいいのだろうけど、なんとなくこのまま
別れるのが惜しい気がする。
だから美琴はキレの鋭い春樹の動きをぼんやりと眺めていた。昔のナヨナヨした春樹は今ではもう
全く見受けられない。決断力も行動力も目を見張るほど成長したと思う。加えて武道の腕前も。
「結婚ねぇ……」
「ぐっ!」
何気ない呟きがノイズとなり、流麗な春樹の動きを阻害した。油の切れたブリキ人形のように
ぎこちなく向き直り、口をぱくぱくと開けている。その様子から子供達のいる前で彼が何を言ったか
漸く理解したようだった。
「どーすんだよ、絶対しばらくは言われ続けるぞ?」
「むむむ、やっぱり言われる……かな?」
「間違いないな、あー、面倒なことに……」
「だがあの時はこの台詞しか思い浮かばなくてだな、筋肉を弛緩させた方が痛みも少ないだろうし
なにより僕が入れやすい。だから……」
続く弁解の言葉には耳を貸さなかった。
そのような言い訳を自分に言っても仕方ないことをわかってないのだろうか。そう言う噂は他人が
流して喜ぶんだから、火消し活動は火の元でしなければ意味はない。この男は頭がいいようで
馬鹿だから本当にこういうときは困る。幾度目になるかわからないほど困る。
「説明は来週末の時にでもやれってば。私に言っても意味ないだろ」
「いや、一応な。まずは身近な掘りから埋めていくのは兵法の基礎。わかってはいると思うが僕が
好きな女性は塚本八雲君のみ。お前とそんな噂が流れるのは互いに不本意だからな」
かちんと来た。今回も全面的に被害者は自分なのにいけしゃあしゃあと被害者面する真面目馬鹿
には一度灸を据えねばならない。じゃなければコイツは何度でも同じ事を繰り返すだろう。
「最悪のときは責任取れよ」
「…………は?」
「もし万が一、あり得ないだろうけどこの話を修正できなかったら」
「できなかったら?」
「……責任取れって言ってんだよ」
「それは……その、つまり結――」
「――いいな! 約束したからな! 何が何でもなかったことにしろよ!」
「ま、まかせてくれ! この花井春樹、全身全霊をもって事に当たる!」
売り言葉を言った本人も安請け合いした本人も顔を真っ赤にして怒鳴り合う。相手のことは手に
取るようにわかるし、気の置けない間柄は10年近く続いているがこういう時の会話は何故か二人とも
10年経とうが慣れる物ではなかった。
彼女からの一方的な約束は、されど律儀な男が必ず守ることになるだろう。これまでの二人の
間での約束が常に成り立っていたように。
花井道場の夜はこうしていつも通りに更けていった。
読んでくださった方々、お疲れさまです。
本当は誕生日に投下したかったんですが、この有様です。
それではIFスレに再び活気が戻ってくることを祈って。
>>867 GJ、久々縦笛SSが読めて良かった。
最初の花井と美琴の掛け合いが笑えた。
あと、IFスレ史上最も花井と八雲の絡みが多いSSじゃなかろうか。
>>867 まさか花井の気を引く為に脱臼までするとは驚いた。
こんな無茶なことをする周防ってのは珍しいな。感動した。
花井の好意を知りつつ利用する八雲の腹黒さも流石だ。
黒ヤクモン好きにはたまらないSSでした。
不覚にも袴も良いと思ったおにぎりが居る。
やっぱ周防は花井にのみツンデレなのか。
最初の袴っぽいのも、後半の縦笛っぽいのもよいね!
花井はこの二面性が好きだ。どっちか一方じゃちょっと格が下がるけど。
菅と八雲のその後が気になる。
>>857 蝶GJ!
ひさびさに続きが気になる読み物ですた
菅を放って帰る八雲じゃないだろうし、
なんかいい思いしたんだろうか
まぁ、菅だからな。無理か
なんだよ、結局縦笛とおにぎりかよ・・・袴にしろよな・・・。
それにしても、縦笛成就のためなら周防にすら怪我をさせるのか・・・まあ恐ろしい・・・。
長いばかりでダレてるよ正直。
描写がしっかりしてるから読み応えのあるSSだな。
本編でもこれくらい花井と八雲が会話できれば良いんだが・・・
兎に角、GJ。
ちょっとつかれた
やっと半分(;´Д`)
ちくしょう、続きが気になる
珍しいね。タイトルだけかと思ってたら「一瞬で治す」あたりまで盛り込むなんて。
わしは縦笛の絆に黄金の精神を見た気がするよー!
小便のことを黄金水と呼ぶ人達がいるらしい。
いや、別に深い意味はないのだが・・・。
二次作品から生まれる三次作品、菅×八雲を誰か…!!
よし、試しにやってみるか・・・
「八雲ちゃん、ラーメン好き」
「……いえ、余り……」
END
やべっ、?入れ忘れた…orz
今週の話は2学期の期末テスト後
なので、次はこのままクリスマス編か?
次回でおにぎりが多少進展したら、
クリスマス編はこんな感じ希望
・・・
クリスマスは、天満は烏丸とデート、
八雲及び茶道部一同はサラの教会でクリスマス会
雪降る中、一人 町をさ迷う播磨と
父親にパーティをすっぽかされ暇にしていた沢近が出会う。
(旗も進展)
そして正月、播磨を巡る三角関係本格化。
今日はドコも超姉祭だよな?そうだよな?
筋肉を弛緩させた方が痛みも少ないだろうし
なにより僕が入れやすい。
ここで邪な想像をめぐらせてしまった。
888 :
Classical名無しさん:05/08/18 18:05 ID:X1bQ9rHg
超姉ないかな
おにぎり読みてぇ
おにぎり食いてぇ
叱咤、感想他多くのレスを返していただきありがとう御座います。
長いという指摘は全くもってその通りだと思いますが、いかんせん自分は話を短くする能力に
欠けていますのでご容赦願いたいです。できうる限りの善処はしますが。
あと一部誤解させてしまったようですが、この物語は一応ここで終わりです。
続きを書けと言われれば書けますが、この分量でも長いと感じられる方がおられるようなので
ここで終わらせるのが華かなと思っています。他の作者さんにもご迷惑でしょうし。
では引き続きIFスレをお楽しみください。
他の書き手かぁ…今どこに居るんだろうorz
ここで大人しくROMってる。
良質なツンデレツインテールを探し求めて。
俺は今回のSSに袴の希望の光を見た。
袴SSが何時か投下されることに期待。
>>828-866 花井が滅茶苦茶格好良い。
そのまま本編に出て来ても違和感ないほど“らしい”し。
文章もしっかりしてて読み易い上に、量も丁度良いくらいに長くて、久々に大満足と言えるスクランSSを読みました。
ぶっちゃけ本編よりおもし(ry
本編より正直おもしろいよ。
原作はキャラ崩壊著しくてもうどうしようもない。
麻生死ねよ。
いつもの人乙
他人に死ねとかいうなよデブオタ。
他人って・・・
頭弱い子に関わっちゃ駄目。
902 :
Classical名無しさん:05/08/19 20:33 ID:ajDRaQx6
荒れ杉
荒れ杉・ω・
まあ、このAAでも見て和んでくれ。
∧_∧_ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(@∀@ )∩ < はぁ?聞こえんなぁ
(. ノ \_____
/ ./
し ⌒J
>880
てめーアバ茶飲ます!
>904
何やってんだ船長(オヤジ)!
...ピチャ ...ポタ...ポタ...
(んん...)
ぴしゃん!
(っ?!冷てっ!)
上から滴り落ちた水滴を受けて播磨拳児は目を覚ました
...状況がつかめない 辺りは闇につつまれている つい鼻の先も見えないような“闇”
「ここは?」
声を出してみる。だがその声は自分の声とは思えない程くぐもり、闇の帳の中に吸収されていく
頭と背中、そして横たえた腕と手のひらの先からゴツゴツした感触が感じられるので
どこかの岩場に横たわっているのだろうが、辺りが暗すぎて自分がどこにいるのか見当もつかない
カリ...
指先を動かしてみる ...感覚はある
手を顔の前まで持ってきてみる...しかし己の手は輪郭すら見えない
...と、播磨はここで自嘲的な笑みを浮かべた
サングラスだ、と
(こんな暗闇の中でサングラスをかけていたら見えるモノも見えやしねぇ)
顔に手をあてる...が...(?!)
とがっているのは鼻であろう。フワリとしたのは眉。そして指に感じるこの二つのふくらみは...まぶた?
播磨は目をパチパチとしばたかせた。
闇になれたのだろうか?視界の隅にうすぼんやりと何かが見える 淡い燐光を放っている 苔類か何かのようだ。
苔ということは洞窟かどこかだろうか?しかし、ならば何故そんなところに寝ていたのだろう?
そしてサングラス。いつなくした?
播磨は混乱した頭で、だが細かい糸をたぐりよせるように思い出そうとした。
マダ?・ω・
さ
ぁ
、
盛
り
あ
が
っ
て
ま
い
り
ま
す
た
!
「伊織―ッ!」
(...あれは...天満ちゃんの飼い猫...!?流されてるのか?!)
「お願い...!誰か誰かあの子を助けて―!!」
(そうだ俺はあのとき反射的に飛び込んで天満ちゃんの猫を...)
「...えっと か...っぱ さん...?」「三平です」
(そうだあの時俺はとにかく、それ以上天満ちゃんの顔を見ることができずに逃げ出したんだっけ)
すべてを振り払うように無我夢中で川を泳ぐ播磨。そんな播磨の前に...!
(あ、あれはタグ・ボート?!やべえっ!!)
播磨の進行方向に一隻のタグ・ボートがせまってきていた。
播磨をみつけた船員が泡をくって、あわてて舵をきってるのが見えた
(あれに巻き込まれたらスクリューにズタズタにされちまうっ!!)
方向転換をしなければ...播磨は体をひねり腕に力をこめ必死に水をかく。
両足をフルにバタつかせボートを振り切ろうとする!...が!!
グキッ
(あ、足が?!足がつりやがった!!!ま、間に合わねぇっ!!!
うわあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!
(そうだ確かに俺はあの時ボートのおこす水流で水中にひきこまれて、スクリューでズタズタになぜ無事なんだ?なんで俺、生きてんだ??)
わからなかった。確かに致命傷を負ったはず。それなのになぜ???...その時、混乱する播磨の耳が何かを感じ取った。
「....ぃ」「...ん...ぃ」
ずるり...べちゃ...
...ぼたり...びちゃ...
「...んぺ...ぃ」
(これは...?誰かこっちに来る?...俺を呼んでる??)
じゅるじゅる...びしゃ...
「...さ...んぺ....ぃ」
...どこからか生臭い臭いがする。腐った魚のような臭い。何百年も水につかっていたような泥の臭い
それが、はいずるように 老人のつぶやき声のような不明瞭な音をたてて横たわる播磨の元へにじり寄ってきた。
911 :
Classical名無しさん:05/08/20 05:17 ID:c6l0xECk
支援?
去年は絃子先生の誕生日にはたくさんのSSが投下されたものだが・・・。
今年は寂しいな・・・。
今やある程度固定されつつあるからな。
マイナー派閥は淘汰されてしまった感はある。
200X年。
麻生広義は非難の炎に包まれた。
しかし麻生はまだ生き絶えてはいなかった。
今や不良債権となり果てた麻生に対する人格改変が行われたのだ。
その後、麻生株は急上昇。
それに連動するかのごとく、暴落を続けていた周防株も反発。
腐敗し、権力を欲しいままにしていた麻生ヘイターの最後である。
過剰な麻生ヘイトに苦しみ続けた民衆は、親しみを込めて、
この奇跡のような出来事をこう呼んだ。
『 麻 生 改 革 』
と。
legend of Aso 〜 Dの彼方に 〜
【fin】
915 :
914:05/08/20 19:43 ID:A/FRYxAI
う〜ん。
「革命」のほうが急進的で激動のイメージが出せたかな。ちょっと後悔。
それでは〜。
惑星ホス
, .;;::''"´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;''::::''"ノ;;;;
,.;:'"´;;;/ ノ丿 _,.ィ-て 彡;;;;
_,.;''"/''"'/ ノ '"ノ/;;:::!!l;;;;;;;彡 彡;;;
,.;'"//// ,,/;;::=‐''''"´ |;;;;;;;;;;;;;;;;三;;;;;;
,!';;;i'//イ;;;;;;;;:::: '" :::::::t;;;;;;;;;;;;;;三=;;
,i´;;;;;;;;;;;;;;;;;::=''/ ::::::i f::::`ー-=、;;;;;ミ=
入;;;;;;;_.ィ´ / :::::::| |::::::::::::::::::`ヾ、;;
l `ー'"::::::: ノ :::::U::::::::::::::::::::::::::::`|
.l :::::し:::::::::::../ l::::::::::::::::::::::::::::::::|
j iヽ ,,/ ,,ィ~``'''ー-=、_:::::::::::::::::::::|
人ヽ、 l l / _,,.ィ"´,.,=‐''''"""`ー゛ゝ、:::::: |
.ノ;;;;\j l l f,.,イ´ ,,.::''" __,,,...、,,,,、 .| 本誌が妄想を超えた!?
.ヽ.`ヽ;;ゝtt (;;;;;;/ ,...r=''" ``ーヲ~` .|
`ゝj-ヲi、 )/´ f f´ ○ ,,,...=イ´__( |
`)、○) ~`ヽ-''",,,.=''""´ ( |
.j^`'フ' ::::::: ニ=、 ー'´ ii . |
,i / :::::::::::: `i`t ー---‐' U |
t ,i;; ::::::::::::::::: ヽ ヽ、、 、___ ,,ノ|
〉'::::::::::::::::::::::::. f `~ヽ ー‐ `) / |
,i´__ノ:::::`ヽ:::::::: U、 ノ ) ノ j |
ヽ、__.ィニノ:::::::: ヽ、 / V/ ノ .|
l ::::::::: `' / / |
|,.、:::,.-、、 ,,..-‐''"~ヽ.|
t 、、,,..=ミミー、、 |
`ヽi ``ー+、, U |
l ゝ--―― イ i ゝ、 _.ィ´.|
ゝ-----‐'"::: J ノ ヽ, _.ィ´_.ィ´|
`ヽ::::::::::::::::::::: / l _.ィ´ ..|
待て待て。
捕手
淡い燐光をはなち、水を滴らせながら、それは播磨のそばに近寄ってきた。
(おいおいおい?!これって、まさか?…マジかよ?!)
播磨の目の前に姿を現した、それは
子供くらいの背丈しかなく全身をヌルヌルした鱗で被い、
手足に水かき背中に甲羅、
らんらんとした目玉を光らせ耳まで裂けた口、
そして頭頂部はまるで禿上がったように見える…つまり
(か、か、か、河童あぁっ?!!)
播磨は信じられなかった。そんなものが現実にいるわけはないと、
だがそれでも目の前のそれから目を離すことができない。
(おお落ち着け播磨拳児!そうだ無だ!
無の境地になるんだ!そうすれば目の前の幻覚なんてすぐ…)
「三平」
(そう三平、って、え?)
「目が覚めたか三平よ」
(げえぇっ!!河童が口を聞きやがったっっ!!)
「ワシはこの矢神の地に古より住まう水神じゃ。数百年ぶりに同族にまみえ嬉しく思う」
(同族?!俺が?って、まてまてまて!ちょーっとまて!)
(これは円形脱毛症であって皿じゃねーぞ!!しかも俺は三平なんて名前じゃねぇ!)
「ん?どうした三平よ」
「いや俺は河童じゃなく人間…」
反論しかける播磨、が…
(あの河童の足元に転がってるのって…)
(さっきは真っ暗で見えなかったけど…骨?)
よく見るとあちらこちらに同じようなものが転がっている。
(やべえ!人間だってわかったら俺も喰われちまう!ここは河童のフリをするしかねえ!)
「どうした三平?」
「え、あ、いや何でもねぇっす。…でも何で俺が三平だと?」
「異なことを…おぬしが人間の娘にそう名乗っていたではないか」
(人間の娘って……天満ちゃんのことか!?
…そういえば天満ちゃんは今頃何をしてるんだろう?)
「あ、あのその人間の娘はどーしましたか?」
続くのか?
age
s3の管理人5日からずっと管理すらしてないだろ。
誰か糞スレ立ててみろよ。多分ずっと消えないぞ。
俺は月1月くらい前に管理してねえな、って思ったから糞スレ立てたら
次の日くらいに消されてスレ立てれなくなったから誰か頼むwwww
つ「ネットカフェ」
927 :
きすらん:05/08/24 11:52 ID:RTsMmnTU
一緒に寝てた部屋から姉さんが居なくなって、もう一ヶ月が経っていた。
たった一人同じ部屋から居なくなるだけで、こんなに部屋が寂しくなるなんて思ってもなかった。
布団に吸い寄せられそうな気持ちを抑えて、顔を洗いに洗面台へ行く。
何時もは誰も居ないのに、今日は先着の人が居た。
私も良く知る背の高いオールバックの男の人。
我が家にすんでいるたった一人の男の人。
「おはようございます、播磨さん」
今年三年生になったばかりの、播磨拳児さん。
「あ、ああ、おはよう」
でも、珍しい。何時もは遅刻ぎりぎりの時間に起きてくるのに、なんでだろう。
朝食の用意をしている間、
播磨さんは居間で寝転がりながら、珍しく新聞を読んでいる。
「うーん、セイジノコトモイロイロカンガエナキャナア…ハハハ」
朝の打ち合わせをしてからずっとあんな感じ。
私も同じ。でも、きっとずっと緊張してる。
だって作りなれてる朝食なのに、もう包丁を持つ手が震えてる。
ドキドキ ドキドキ
心臓の鼓動がますます強くなってく。
928 :
きすらん:05/08/24 11:56 ID:RTsMmnTU
「わ、わッわっ」
――――――――――来たッ!
二階からばたばたと足音を立てて姉さんが降りてきた!
「やくもー今日のご飯はなーにー?」
私たちは互いにうなずき合うと、
駆け足で姉さんのそばに行く。
着替えも途中、まだブラウスのボタンも締め切らないその内に
二人で姉さんを挟み込み、
チュッ
二人でホッぺにキスをした。
「おはよう、天満ちゃん」
「おはよう、姉さん」
たぶん三人とも頭真っ白。私も心臓がどきどきしてたまらない。
姉さんと播磨さんは、互いの顔を見つめたっきり動かない。
しばらくして、姉さんはボンって音を立てて顔を真っ赤にしたまま、
魚のように口をパクパクさせているし、
播磨さんも姉さんに負けないくらい顔を真っ赤にして、
いや、ほら、いつもは天満ちゃんからしてくれるからとかなんとか言っている。
恋愛にうぶな可愛い二人。そんな二人を見ていて、私も胸が温かくなってくる。
深呼吸して、姉さんは、まだちょっと照れた顔のままにっこりと笑った。
「うん、おはよう!」
(おわり)
ごがつさんとこのトップ絵か(w
これは正しいSSだ。
悶えました
age
姉妹丼?
ヂリリリリリリリ!
けたたましく鳴る目覚ましが朝の訪れを告げた。播磨拳児は俊敏な動作で目覚ましのスイッチを押した。
「朝、か・・・」
トントントントン。
台所から包丁がまな板の上を踊る音が聞こえてくる。味噌汁のいい匂いが鼻をくすぐった。
拳児は男特有の事情で多少ぎこちなくも朝の準備を終えると朝食を取るべく台所に降りて行っていった。
「あっ、おはよう拳兄。起こしにいかなくても起きるなんて珍しいわね」
「おはよう。たまには俺もな」
「おはよう兄さん。今日は兄さんの好きな卵入りのお味噌汁だよ」
「おう、朝から腹ぺこだわ!」
播磨拳児には双子の妹がいる。髪を両脇で結わえ活発そうな印象を人に与える姉の播磨愛理。
美しい黒髪を持ち姉とは対象的に落ち着いた雰囲気を持つ播磨八雲。
口には出さないが兄の拳児でさえ美少女と言って差し支えないと思っている自慢の妹達だ。
彼女達はこの春晴れて兄と同じ矢神高校に進学を決め、今では兄弟三人仲良く学校に通っている。
不良の兄に二人のよくできた妹。近所でも何かと有名な兄弟だ。
「それで拳兄は今日こそ天満さんにアタックするの?」
天満は拳児のクラスメイトにして想い人。拳児は彼女に対し尋常ではない想いを抱いているがその想いが届いた事はまだない。
「当たり前だ愛理!今日こそ愛しの天満ちゃんを振り向かせてみるぜ!八雲、おかわりね!」
「はい。頑張ってね、兄さん」
「でも拳兄そう言ってもう六月だよ。そろそろ夏休みだし本気出したら?つっても拳兄の本気なんてたかが知れてるけど」
「うっせーぞ愛理!まだ六月だ!これからのめくるめく夏のイベントに向けて二人の愛は燃えていくんだよ!」
「うわー、変態さんみたい……」
「んだと!この……ってもしかして本当に変態さんっぽいのか俺って?」
券児は慈悲を求め八雲に視線を向けた。
「そんな事……ないと思うよ……?」
「かーー!なんだその微妙な反応は!」
朝からからかい甲斐のある兄、拳児だった。
いつもと変わらぬ播磨家の朝が過ぎていく。
ちょっと気紛れで書いてみました「播磨家の朝」です。
内容が内容だけに叩かれる事は覚悟してます。スレ汚し申し訳ございませんでした。
内容が無いよう
これ、絃子さんと修治もしくは葉子たんを使えば
何の問題もなかったのではないのですか?
こんな感じ? 勝手にいじってごめんなさいね
ヂリリリリリリリ!
けたたましく鳴る目覚ましが朝の訪れを告げた。播磨拳児は俊敏な動作で目覚ましのスイッチを押した。
「朝、か……」
トントントントン。
台所から包丁がまな板の上を踊る音が聞こえてくる。味噌汁のいい匂いが鼻をくすぐった。
拳児は男特有の事情で多少ぎこちなくも朝の準備を終えると朝食を取るべく台所に降りて行った。
「やあ、おはよう拳児君。起こしにいかなくても起きるなんて珍しいね」
「ああ。たまには俺もな」
「おはよう拳児くん。今日は拳児くんの好きな卵入りのお味噌汁よ」
「おう、朝から腹ぺこだわ! ……って、何やってんだ? 葉子さん?」
播磨拳児には同居している年の離れた従姉がいる。長い黒髪が年齢以上に落ち着いた印象を人に与える刑部絃子。
口には出さないが従弟の拳児でさえ美女と言って差し支えないと思っている自慢の従姉だ。
彼女は拳児と同じ矢神高校で教鞭を振るっており、今では従姉弟同士仲良く学校に通っている。
不良高校生の拳児と美人教師の絃子。近所でも何かと有名な二人だ。
そしてもう一人、本日の刑部家には特別ゲストがやってきていた。
客人であるにもかかわらず、何故か台所に立って三人分の朝食を作っているのは絃子の同僚の美術教師。
美しい亜麻色の髪を持ち、絃子とは対象的に子供っぽい可愛らしさを持った笹倉葉子である。
「それで拳児君は今日こそ塚本君にアタックするのかね?」
塚本天満は拳児のクラスメイトにして想い人。拳児は彼女に対し尋常ではない恋心を抱いているがその想いが届いた事はまだない。
「当たり前だぜ絃子! 今日こそ愛しの天満ちゃんを振り向かせてみせるぜ! 葉子さん、おかわりね!」
「はい。頑張ってね、拳児くん」
「……何故私には『さん』をつけない? しかし拳児君、そう言い続けてもう六月だぞ。そろそろ夏休みも近いことだし本気を出してはどうかね?
……といっても君の本気なんてたかが知れているがね」
「うっせーぞ絃子! まだ六月だ! これからのめくるめく夏のイベントに向けて二人の愛は燃えていくんだよ!」
「ふむ……変態さんはほどほどにしたまえよ?」
「んだと! この……ってもしかして本当に変態さんっぽいのか俺って?」
券児は救いを求めるように葉子に視線を向けた。
「そんな事ないと思うよ。男の子は元気が一番! ……人は失恋を乗り越えて大人になっていくものだし(ボソッ)」
「待て! なんか聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ!」
朝からからかい甲斐のある拳児だった。
「気にしない気にしない。お祝いと残念会の用意して待ってるから二人とも早く帰ってきてねー!」
「待て待て! 君は今日もウチに泊まるつもりかね!?」
「残念会は必要ねえ!」
いつもと変わらぬ?刑部家の朝が過ぎていく。
941 :
Classical名無しさん:05/08/26 01:08 ID:U6mkaHkY
>葉子さん、おかわりね
播磨って葉子姉ちゃんって呼ぶんじゃなかったっけ?
接触機会があるのは確実だけど、会話シーンが無いからどうにも。
そもそも葉子と繋がりがあるのは予想できたけど、繋がりあるあるってスレで言ってるから
単行本の1ページ漫画で保管しただけだからな。
当初はそんなこと考えてなかっただろう。
>>944 > 繋がりあるあるってスレで言ってるから
おいおい
元々は絃子さんにも播磨アイが発動してるのと修治があんなだからというので
「ちっちゃい頃ケンジ君はイトコお姉ちゃんのことが大好きだったのです」説が生まれ
そこからもしそうだとしたら葉子さんとも旧知の間柄であってもおかしくないとか
ならひょっとして播磨が絵を描けるのは葉子さんの薫陶によるものなのかもとか
妄想がどんどん広がっていって、そうだと考えた方が話が膨らみやすいから
SSで絃子さんや葉子さん関係の話を書く時にはそういう設定で書くのが
なんとなくお約束みたくなってきてるというだけの話(「葉子姉ちゃん」もその一環)
本編ではそもそも絃子さんと播磨の間に同居以前どれだけ親しい付き合いがあったのか自体が不明
葉子さんと播磨も単行本のおまけ漫画で一教師と一生徒以上の個人的な面識が現時点ではあるということしか確認されてない
SS保管庫でいくつか読み漁ってきたんだが、途中で放置されてる作品の続きって他のどっかにないのか?
>>942 二次創作に汚染されてるな。
お前らも原作設定と二次創作設定の区別はきちんとつけるようにな。
949 :
Classical名無しさん:05/08/26 18:37 ID:G3vBYveg
今だ!950ゲット!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ (´´
∧∧ ) (´⌒(´
⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
 ̄ ̄ (´⌒(´⌒;;
ズザーーーーーッ
PFによると入学妨害とか扱いがペットみたいなもんらしいので
そんなに仲がいいわけじゃないだろう。
笹倉先生との仲も顔と名前を知っている程度のものとしか考えられん
ツンデレですから、と答える俺は超姉派
姐さん姉さん蘭ねーちゃん姉ちゃん
書きたかっただけ。後悔も反省もしない
>947
おまいさんが書くって手もあるぞい
957 :
947:05/08/28 00:36 ID:O.rrWpvU
漏れも続き読みたいのあるんだがこればっかりはどうしようもないな。
s3の方だと書き込みできないだけで創作意欲はあるって言う人もいるから一部はサイト探して見られるが・・・
>954
ガッ(aa略
厚着の上にマフラーをしていても、冷たい十二月の風は目聡く隙間を見つけては体を冷やそうとしてくる。
矢神の駅から出てくる仕事帰りのサラリーマンやOLも、年末の忙しさからか無言で家路についていた。
「はぁ……」
携帯にかかってきた電話からは、今回の電車に乗っているはずだったのに。そう思ってみても現に
播磨の姿は見つからなかったのだから、乗っていなかったという事だろう。打ち合わせが長引いているのか、
それとも良くない話だったのか。そんな事よりも事故か何かに巻き込まれたんじゃないだろうか。二度目になる
思考のローテーションが終わると、深くため息をついた。
空からはチラチラと雪が降り落ちてきていて、それが一層の不安と孤独を感じさせた。駅から出てくる
人の波に逆らうように立った彼女に誰も興味を持たない。高校では好奇の目にさらされる彼女であっても、
それはあくまで高校の中での話である。八時前の帰宅ラッシュの中にいる余裕の無い大人から見れば、
その辺にいる女の子――年頃の少年少女は同じに見えてしまうものだ。
駅からの明かりがワインレッドの瞳を黄色く照らしている。今頃家にいる姉は、作っておいた夕飯を
食べている頃だろうか。家を出る際に「今日は遅くなっちゃうのぉ?」などとからかわれたのをはっきりと覚えていた。
適当な返事をして、とにかく遅れないようにと急いでやって来たのに、どうして播磨は現われないのだろうか。
塚本八雲は、矢神駅の前で三十分以上も待たされていた。
次の電車は――十三分後。
八雲の指が電車の時刻表のプラスチックカバーをなぞり、自分が来た時に丁度出て行った電車の時間へと
伸びていく。彼に対してささやかな抗議。次の電車の到着時間を声に出さずに呟くと、今度こそ彼が帰ってくるように
思えた。
――八時三十六分。これで帰ってこなかったら、一度携帯にかけてみよう。
八雲は打ち合わせの邪魔にならないのかと思い、携帯にメールすらも送っていなかった。彼からの電話では、
打ち合わせの途中に担当の人が休憩を入れてくれたらしいと理解できた。嬉しそうな声。播磨のその声に
八雲の頬も暖まる。今、こうして矢神の駅前で思い出している時ですら温もる事ができた。
「はぁ……」
手袋の中の手も冷たくなり、八雲は息を吐いて暖をとる。冷気が目にも凍みて染み出した涙が暖かくすら感じられた。
こうして駅前に立つ事になって何分になるだろう。腕時計を、携帯の液晶を見れば時間が分かるのだろうが、
心まで冷気に襲われそうで見る気になれなかった。靴下の下の足も、手袋の中の手も、コートを羽織った体も、
とにかく寒い。
冬休みという事で播磨の漫画に付き合う回数も普段に比べて増えはしたが、それが互いの気持ちの距離を
近づけるというわけではない。八雲にしても初めての感情を持て余していたのだ。
漫画の中に出てくるのは姉によく似た女の子。播磨は、間違いなく自分の姉である天満に何かしらの感情を
持っていると分かった。それは八雲が播磨に対して持っているものと同じもの。八雲は姉によく似た女の子のキャラの
髪を黒く塗りつぶしながら、そんな風に分析した事がある。
サングラス越しにも分かる優しい目つき。漫画を描く事は、姉に対する気持ちを代弁する代償行為である事は
間違いないだろう。倫理の授業で習った単語が、八雲の頭にふと浮かんだ。
「姉さんは……」
次に思いついたのは姉の顔だった。
想い人である烏丸が尋ねてきてくれた誕生日の夜の、あの喜ぶ様。ああいうものが正しい喜び方なのだろうか。
正しい恋のあり方なのだろうか。八雲には分からないし、心の中を覗けても分からない。八雲自身が、分からない、
そう思っているからだ。
――私にもそんな日が来るのかな。
地味な女だと思う事は往々にしてあった。矢神高校で騒がれる事はあっても、大人の世界に入りその他大勢の
女性の一人となったならば、それほど目立たないのである。明るい性格でない事も分かっていた。
太陽をかたどったような姉や、太陽そのものの色をした髪を持つサラといった明るい女の子。憧れはあるが、
なりたくは無いとも思う。自身の生い立ちを否定する程悲観もしていなかったからだ。
腕時計は次の電車の到着を教えてくる。改札からずいぶん離れた所に立って待っていた八雲は、一歩二歩と
前に出ようとした。
「おい、聞いたかよ」
「また事故があったみたいだって」
――え?
「どこで? うぜぇよなぁー」
「まったく――」
部活帰りの高校生が重たそうな鞄を軽々と肩にかけて歩いている。彼らの会話は八雲の胸を強く打った。
思わず歩みを止めてしまったほどだ。
――もしかして……播磨さんが?
八雲は声をかけようと、改札へと入っていく彼らの後を追った。
「……あ、あの――」
「あの路線ってよく自殺するんだよな。どっか人のいないとこでしろっての」
「こっちの迷惑を考えろって。死んだ奴に言っても仕方ねーけどさ」
定期を出そうとする高校生の一人が八雲に気付いたが、他の友達が改札に入っていくので声をかけることは
無かった。電車の到着を告げるアナウンスが聞こえてくると、高校生達は鍛えられた足で飛ぶ様に走っていった。
――この駅の路線と違う……播磨さんは、無事?
その後すぐに矢神の駅には人が溢れた。改札から出てくる、人、人、人。人の波は背の高い人、低い人、若者、
中年、男と女。八雲はこの中を播磨が泳いでくるものだと信じていた。播磨の高い背丈ならばこの波の中でも
目立つだろう。きっと、きっと自分は見つけ出す事ができる。じっと、逃さないように見つめていた。
「妹さん!」
八雲が目を凝らして見ていた人の波の脇から急に現れた声。
はっと振り返ると、見慣れた形のサングラスをかけた長身の男が立っていた。
「播磨さん……」
「どーした、妹さん。誰か待ってんのか?」
あまり上等でないスーツにコートを着込んだ播磨は、冬の寒さなど微塵も感じさせずに笑いかけてくる。八雲は
温かみのある気配に何も言わず目元を緩めた。そうする事で自分の言いたい事を伝えられると思ったからだ。
お帰りなさい、と視線に籠めて。
「……俺を待ってたのか?」
播磨は頬をかきながら「しまったなー」と言った。播磨の手には何も無い。打ち合わせには漫画の下書きの入った
封筒を持っていったはずだ。打ち合わせをしていると言った電話の中で原稿を見せていると言っていたのに、
どこかで無くしてしまったのか。八雲は頭半分程上に向かって顔を上げた。
「打ち合わせ、ダメだったんですか?」
「いや、それな何とかなった――つーか。それより、俺が電話をかけてから、ずっとここで待っててくれたのかよ」
「あの、一つ前の……電車からですけど。そんなに待ってませんから。それに夕飯の材料が
足らなくなってしまって。だから……」
おかしな話だと八雲は自分でも思った。いつ帰ってくるのか分からない播磨を勝手に待っていて。
ちょっと――いや、かなり迷惑な女なのではないだろうか。
「すみません……」
「いや、な。担当さんと打ち合わせした後によ、色々話をさせてもらってたんだよ。他の漫画家さんの事とかさ」
「……そうだったんですか」
自分はなんて身勝手なんだろう。播磨は気を悪くしたに違いない。八雲は播磨の顔を見ながらも見ていなかった。
「妹さんが待ってるって分かったんならよ、さっさと帰ってきたのに。メールとかしてくれても良かったのに」
「打ち合わせの迷惑になると思って」
「ならねーよ。妹さんの方が大事だからな」
播磨の声が脳天に突き刺さった気がした。足がよろめきそうになるのを何とか必死に堪える。この姿を見られたいような、
見られたくないような。曖昧な八雲の姿は、矢神駅前に晒されていた。
「塚本に心配かけちまうからなぁ、ははっ」
その声に、八雲は心が落ち着いていった。ざわめきたっていたものが、大人しくなったのだ。播磨が乗ってきたらしい
電車に乗り合わせた人の姿は、すでに無かった。その人達の信号待ちをしている姿に惹かれはしないのだが、
播磨の方を向く勇気など無かった。
「あの……帰りましょうか」
自分はなんて身勝手な女なのだろうか。播磨は気を悪くしただろう。八雲は播磨の顔を見ずに見ていた。
二人は並んで歩いているが、言葉は交わさなかった。雪は降ったり止んだりしていたが、八雲の気を向ける事はできずに、
播磨の気を引いていた。自分は雪にも負けるのか。そんな思いが八雲の気をさらに重くする。
「あのよ、妹さん」
「……はい」
「漫画の事……ありがとな。ちょっと先まで予定が埋まってるらしくて、俺が呼ばれたのはその事なんだ」
「予定……ですか?」
「なんでもよ、俺以外にもたくさん似たような奴がいてよ、掲載待ちの列が出来ているってさ。漫画の出来ではいつでも
繰り上がるって言ってたけどよ、雑誌に載らない新人は腐るほどいるって。そう言われたんだ」
播磨の声は口から出てくる内容に反して明るかった。なぜそんなの明るくいられるのだろう。
八雲はちょっとだけ播磨の顔を盗み見てみようと考えた。
「他の奴らに負けちゃいねぇ。そうは思うんだけどよ……」
「けど……なんです?」
「雑誌に載っているヤツを見た時には、何だよこれ、俺にも描けるんじゃねぇかって思っていたけど、
俺が描いた奴がもし雑誌に載っちまったら……そんな事すらも思ってくれね―んじゃ無いかって。
たくさんの人に読まれるんだもんな、俺の漫画が」
八雲の家へと向かう路地。人の気配など無く、所々家から光を洩らしているカーテンの向こうでは、
暖を取りながらTVでも見ているのだろう。街灯が照らす道には一切の優しさすらない。
播磨の顔つきは同学年や姉のクラスメート達に比べて引き締まって見えた。少なくとも八雲の目には
そう見える。この人はこれから生きていく道を選んでいるんだ。八雲は、少しだけ距離を縮めた。
「怖いんですか? あんなに一生懸命にやったじゃないですか」
「怖いっつーか……怖いのかもな。喧嘩の時には殴って気がすめばいいって思ってたんだけど、
漫画はそれを許してくれねぇ。妹さんにもよく言われてんだけどよ、独りよがりなトコがあって、
そんな時に読み返してみると面白くねーんだ。こんなもんが雑誌に載ってても、きっと誰も読まねーだろーな、
って――」
播磨が立ち止まり、八雲はそれに倣った。チラチラと降っていた雪は空を白く埋めていくようで、八雲の頭も
播磨の頭も白く染めようとする。真っ暗だった空に雪。街灯に照らされて白く発光している雪は足元を道を照らした。
それは夜光塗料を塗りたくったようにぼんやりと辺りの景色を浮かび上がらせていた。
「本格的に降ってきちまったなぁ」
「あの……傘……」
八雲は折りたたみの傘をコートから出そうとして、止めた。播磨は困っているのではなく、嬉しそうに手を合わせ
お椀の様にして雪を集めているからだ。先ほどまでの引き締まった表情はどこか遠くに行ってしまって、
ここには子供のような男の子しかいない。クラスメートよりも子供っぽくて、八雲は思わず笑った。
播磨は「へへっ」と品の無い笑い方をする。
――播磨さんの笑い方だ。
二人のやりとりは、ものの数分の事だったが、その間に辺りにはうっすらと雪が積もっていた。冬の寒さの中で
八雲は播磨の笑い方を真似しようとしたが、上手くいかない。それでも心と頬の筋肉はほぐれて、暖まる事ができた。
塚本家へと続く道のりはさほど険しくは無い。機械的に歩みを進めるならば何の障害すらない。八雲は生まれて初めて
その道のりにけちをつけたかった。もっと遠くに私の家があればいいのに。
そう思う度に姉の顔が浮かんではきては優しく笑っていた。
「今年も、もうすぐ終わりだなぁ」
「はい。お掃除は終わりましたか?」
「んーと……してねぇ」
「原稿に汚れがついたらいけませんから、ちゃんと片付けてくださいね」
「……努力は、する。それより、妹さんのほーは終わったのかよ」
「もちろんです。後は庭の雑草を片付けて、カーテンを替えて、それから――」
「わーった、わーったから。がんばって片付けとくよ」
「そうして下さい。あ、あの……」
「ん、どーした?」
「手伝いに行きましょうか。播磨さんの部屋」
「かまわねぇよ。自分でやるさ。それとさ、ちょっといーか?」
「はい?」
播磨は遠くを見ている。八雲はこの道の先、自分の家にいる姉を見ているように感じた。
「今年はどーだった?」
「……はい?」
「なんとなく、な。担当さんに言われたんだ。君はずいぶん変わったねって」
「それは……何となく分かります」
「ずげー変わったって、俺は思わねーんだが。けどよ、少しは変わったかなって。うまく言えねーけど、
そう思うんだよ。変か?」
「いえ、変じゃないと……思います」
「だから妹さんにも聞きたくてよ。妹さんは変わったところがあるか?」
「私は……」
八雲は真っ白な、家への道のりがぐんと遠くなった気がした。歩いているスピードが落ちたわけではなく、錯覚でもなく。
それは播磨と歩いていく道のりへと変化していく。
――私の、道?
家に待っている姉の姿が、いつの間にか播磨に変わっていった。とまどい、それは理解に。
八雲は少しだけ、もう少しだけと播磨に近づいた。
「はい……」
「へぇー。どんなふーに?」
「それは――」
八雲は冷たい空気を吸い込んで目を覚まそうとした。
誰の足跡もついていない道へと、これから踏み出していく気分はいいものだ。それは播磨が共に
歩いてくれているからだと、そう思う。このままでは何事も無く家に着いてしまうだろう。八雲は
予定された以外の未来を思い浮かべた。
播磨にもっとくっ付いてみる。離れてみる。話してみる。手をつないでみる。姉の話をして見る。
沢近の事を話してみる。これ以上は何も言わずに黙っている。様々な選択肢が並んで絡み合い、
整然と交錯していた。その意思があればどの道にも行ける。けれども、行かない。
真っ白の道は播磨と描く漫画の原稿用紙のようで。八雲は大事に育てなければならないものだと思った。
だからもう少しだけ近づいてみる。手が思いもよらずに触れ合ってしまうほど、近くまで。心の中で、
これは勇気ではないと感じる。
――精一杯の想い。
はっきりと自覚してしまえばそれほど怖くは無かった。ただ、播磨と歩いていたかった。だから駅前で
待っていたのだ。播磨が来なかったら終電まで待っていただろう。
「私は、変わりました」
――貴方のおかげで。そして、色々な人からも影響を受けて。でも……でも、ね。
「播磨さんと同じように、自覚はありませんけど……そう、思うんです」
八雲は、敢えてそう口にした。
支援
播磨の負担になるのではないのか。そんな思いは半分。大事に自分の中で育んでいきたい、と思うのが
残りの半分だった。八雲は振り返って自分が歩いてきた道を見てみた。四つの足跡は降り積もる雪に
消えかけていたが、確かに残っていた。播磨はそんな八雲を黙って見ている。コートの中から
折りたたみの傘を出して、そっと播磨の手に渡した。開いた傘の中で肩を寄せ合い、共に歩く。
様々な道のりから選んだ道。どの道も真っ白でいて、八雲の目はそれを捉えて離さない。八雲は播磨の目に
どう映っているのか分からなかったが、自分とは違うのだろうと思う。だからこそ同じ光景を見て欲しいと思う。
しかし、今はただ、ただ、家まで肩を寄せ合い歩いていきたい。そう思うだけで満足だった。
END
初めての埋めSSでした。少し長かったでしょうか?
IF25でも色々なSSが読めたらいいですね。これを読んで下さった皆さん、ありがとうございました。
このスレにて色々とアドバイスをくれた方々に最大の感謝を。感想を下さった方にも同じく感謝を。
次のスレでも、またよろしくお願いしますね。
八雲的な一定感がよく出てたと思います。
情景描写にも力が注がれていて見習いたいですな。
埋めSSにはもったいない力作ですね。
次スレでもがんばってくださいな。
良い仕事!
>>971 GJ
今週のバレがおにぎりじゃなかったのでいい補充になりますた
埋め乙。
>>970 GJ!
丁寧な心理描写で好感がもてた。
また何時かSSを投下して下さい。
あと、揚げ足取りになるけど
>>968の「沢近の事」は「沢近先輩の事」と
直したほうが良いと思う。
んじゃそろそろ恒例の超姉埋めいきますか?
977 :
Classical名無しさん:05/08/28 22:01 ID:MCsP19CY
先に新スレだ、ヴォケ。
さっさとしろや、カスが。
播磨「絃子好きだ」
バキューン
播磨死亡End
播「寝み〜ぜ」
昇「男同士の一対一の決闘を寝不足で来るとはなめてんのか」
播「授業中は(天満を見てるため)寝れねーし、夜はマン…いややる事があって寝れねーし、
朝は早くに絃子の奴が起きないとキスするぞって言って起こしてくるし、休み時間は、金髪がうるせーし
放課後は妹さんに相談事があるから寝れねーし、保健室で寝よーにも乗っかってくる人がいるから寝れねーんだよ
分かるか?俺の苦労が…」
昇「…し…しね〜〜〜〜〜」
播「ま それでもお前ごときには負けないんだがな…って聞こえてねーか」
↑ゴミ
勇気を出して初めて書いたSSなのに、馬鹿にされて不愉快です。
ここは陰湿なインターネットですね。
じゃあ、お前が書いてみろよ引篭もりが。
何もできないくせに粋がってんじゃねえぞゴルァ!
俺は空手の黒帯なんだぞ、おい。
テメエの住所教えろや、殴りにいってやるからよ。
友達の兄貴はハッカーで飯食ってるからすぐにバレんぞ。
いいか、二日以内にお前の家に行ってやるからな、覚悟しておけよ。
縦読みしても無駄だ。
なんか雰囲気悪くなったか?スマンね。今度はもっと頑張ります
本人が登場したら俺の立場が無いんだが…
いや、注釈入れたら痛い子にならないし。
じゃあとりあえず自作自演って事で
以降ウメネタキボンヌ
「お嬢……」
「ヒゲ……」
「鋤だ……」
「……ちょっとそれ、何処から盗んできたのよ…」
「……んだよ」
「いや、別に?」
「じゃああっちいってろ。気が散るんだよ」
「だがね、いい歳して八月最後の日に残りの宿題を全部片付けよう、なんてバカは滅多に見られないよ?」
「るせぇっ!」
「というかさ、どうせやるんならもっと計画的にだな……」
「俺にんなこと出来ると思う……っ! やめっ! 撃つなっ!」
「まったく……だいたい振り返ってみろ。この夏君は一体何を――」
「……?」
「――ああ、そうか。君にしては珍しく感心なこともあったんだったな」
「何がだよ」
「動物たちの件だよ。あれはまあ、それなりに立派だった」
「……別に当然だろ、そんなの」
「ほう。そういう素直な部分をもっと別なところでも発揮すればいいのにな、と」
「おい、なんだよ。あっちいけっつっただろうが」
「ちょっと気が変わった。少しくらいは面倒見てやる。まずは、と……ん?」
「今度はなん……あ」
「――拳児君」
「ハイ」
「これは何かな?」
「……あー、物理の宿題、か?」
「か?、じゃないだろう! どこからどう見てもそれそのものだ! 私が直々に出したヤツじゃないか!
それを白紙のまま残しておくとは――なかなかいい度胸だな」
「えーと、あの、イトコさん?」
「もう完全に気が変わった。君が『自力で』解けるようになるまで、じっくり教えてやろう」
「いや、そういうのは遠慮しとく……っつーか他のはどうすんだよ!?」
「知るか。やっていない気味が悪い」
「んなっ!?」
「ほら、そうとなったらさっさと始めるぞ。朝まででも付き合ってやる、今夜は寝かせないからな」
「んなことテメェに言われても嬉しく……だから撃つな! っ……!」
「ふん、夜は長い。お楽しみはこれからだ――」
「いやだーっ!」
適当に終われ
絃子 「近頃どうも拳児君と疎遠なようだ……。肌と肌のふれあいが無いというか、肩たたきとかさぁ」
拳児 「あ〜〜絃子。これやるよ、肩叩き券。それと、これからバイトだから」
絃子 (表面上は無関心を装っていても、さすがは私の従姉弟!! 電気マッサージ機とか無機質なものでなく、肩叩き券をくれるとは!!)
絃子 「じゃあ、さっそく使おうか。……ん、裏に電話番号?」
ピポパ。RiRiRi……。
??? 「はい……」
絃子 (ずいぶんと声が高いな)「君は誰だい?」
??? 「あの……ご指名ありがとうございます」
絃子 「……ん?」
絃子 (そうか、照れくさいからってアルバイトなどと言い訳をして肩叩きをしようと……。いじらしいなぁ。別に照れる事なんて無いのに)
ピンポーン!
絃子 「はいはいアリガトアリガト。拳児君、君にそういった芝居じみた事が出来るなんて思ってもみなかっt――」
八雲 「……が、頑張ります。絃子先生」
絃子 「……」
八雲 「……」
拳児 「あれでよかったのか?」
晶 「いつかは乗り越えないといけない壁なのよ、嫁姑問題は。あなたも八雲を幸せにすると決めたのなら、もっと努力しないとね」
拳児 「……そうだよな」
晶 「巷に雨の降るごとく、か」
拳児 「んだよ、それ」
晶 「ヴェルレーヌの詩よ。恋の終わり、そして始まりの予感。私にも来るのかしら、そんな時が」
拳児 「……ポッキー食う?」
晶 「ふふっ、ちょっと動かないでくれるかしら?」
絃子 「ったくよぉ、女なんぞ連れ込みやがって……」
葉子 「あらあら。それでお酒ですか」
絃子 「奢りだからいいだろう?」
葉子 「はいはい、お付き合い致しますよ」
絃子 「……ふん」
葉子 「荒れてますねぇ……そうだ、ゲームをしましょう絃子さん」
絃子 「ゲェムゥ?」
葉子 「そーです。男です、男をチャチャっと作っちゃいましょう!」
絃子 「いーよ、寂しく酒を呷っているのが性に合っているんだ」
葉子 「ほらほらそんなこと言わないで、ポッキーゲームをしましょう。次に入ってきた人と」
絃子 「あ…よく分からないけど、面白そうだな」
葉子 (絃子さんったら、ずいぶんと酔ってますねぇ)「あっ、さっそく人が入ってきましたよ。はい、ポッキーです、絃子さん」
絃子・葉子 「ゴクリ……」
拳児 「絃子、帰るぞ!」(高野の奴、一発でつきとめやがった! でも、ぼこぼこに殴ってくる事はねぇと思うんだが)
絃子 「け、拳児君」
拳児 「どした、絃子」
葉子 「……あ」
拳児・絃子 「…あ?」
葉子 「あなたも私もポッキー。あなたも私もポッキー!」
拳児・絃子 「え!?」
バーにいた皆さん 「あなたも私もポッキー!」
葉子 「あなたも私もポッキー。あなたも私もポッキー!」
絃子 「拳児君……」
拳児 「絃子……」
拳児・絃子・葉子 「あなたも私もポッキー、あなたも私もポッキー!!」
終わっとく
↑神
999
1000
1001 :
1001:
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