「あら、来てくれたのね」
真夜中の、誰もいない遊園地。煌々と輝く照明は、おとぎの国をなにか
酷薄な情景へと変えていた。流れるネオンの前に、一人の少女の姿。
「私に勝てたら、約束どおり、ブラッディマリーをご馳走してあげるわ」
金色の髪に色とりどりのネオンをまとわせて、少女は高笑いをあげた。
「でも、その前に」
二つの影が、ゆらり、と立ち上がる。
「こちらのご相手をお願いするわね」
銃を持った長身の女性と、道着姿に黒ブチ眼鏡の男。相対するは可憐な少女。
少女は目の前の二人を、障害と認識していないようだ。しかし、
「うりゃああああ!」
「てぇいいいいい!」
急襲する二人!
しかし、少女は既にその場にいない。二人の背後で、まるで何事も
無かったかのように歩き出す。
「臆したかね八雲君」
「観念したまえヤクモ……んんッ!!」
突如二人の身体に電撃に似たものが走る。そして
「ひっ、ひ○ぶー!!」
脳天から血を吹いて倒れた。
少女はわずかに瞠目するが、歩みを止めることは無い。ただ、呟く。
「哀しみが……哀しみが私を変えました」