話があるんだ、と。
そう言われたとき、不思議と播磨は冷静だった。
いつかはそんなことがあるかもしれない、そう思っていたわけではないはずなのに。
――俺は。
何かを言おうとして、けれどそれは言葉にならず。
「いいぜ、聞いてやるよ」
結局それだけを口にして、播磨は彼のあとに続いた。
烏丸大路のあとに。
A Better Tomorrow -男たちの挽歌-
「ここで君と初めて話したんだったね」
烏丸が足を止めたのは、校舎の裏にある水飲み場だった。播磨の中では『どうでも
いいこと』に分類されているそんな出来事も、彼の中では記憶に刻まれているらしい。
「あれからいろんなことがあった」
相変わらずどこを見ているのかよく分からない、そんな眼差しで呟く烏丸に、やっぱり
コイツは分からねぇ、と思う播磨。何を考え、何を思い生きているのか。その欠片さえも
感じ取ることが出来ない。
けれど、それと同時に。
――コイツは俺と違う世界を見てるのかもしれねぇ。
そんなこともまた、ふと思った。