ちゃらら〜♪
携帯がメロディを奏でる。
某有名時代劇のテーマ曲だ。
それを着信音に設定するのは、なかなかにしてそこそこに恥ずかしいことのような気もする
のだが、当の持ち主――播磨拳児はそれを一向に気にしない。
ちなみに。
『なんスかそれ』
とのたまった吉田山が即時撃沈されたこともある、と一応付記しておく。
それはさておき。
「……あん?」
画面に表示されたのは見知らぬ番号。取る必要はないと言えばないのだが、先日の受賞の
ようなこともあり、一概に言い切ることは出来ない。
「しょうがねぇ……」
ちっ、と舌打ちしてひとまずは通話という選択肢を選ぶ。どうせ見知らぬ相手、間違いなら
一発がつんと言ってやりゃあいいんだ、そう思って――
「オレだ」
「さっさと出なさいよこのバカ!番号間違ったかと思ったじゃない!」
「……へ?」
――叫んだ向こうから返ってきたのは、負けないくらいの怒鳴り声だった。
しかも、全然まったくこれっぽっちも予想していなかった相手からの――
お嬢様狂想曲 -或いは執事に隙を見せるな-
「なにぼさっとしてるのよ」
「あ、いや、その」
妙に播磨がかしこまっているのも無理はない。
彼がいる場所は、それまで足を踏み入れたことなどあろうはずもない、文字通りの『邸宅』
なのだから。