雲行きが怪しくなっていく空の色。
せめて今日の日ぐらいは快晴でいて欲しかったものの、
世の中そう思い通りにはいかないものだ。
午前中は行事にかかりきりだった為に残っていた事務仕事も
漸く一段落つき、紅茶でも淹れようかと棚に向かった折、
姉ヶ崎妙は窓の端から覗いた空を見上げて眉をひそめた。
目線を下げると、泣きながら抱き合う生徒達の姿が散見される。
青春だね、と妙齢の女性相応の感想が浮かんだ。
「さて」
一言呟いて行動を再開する。
ティーサーバーを棚から取り出し、
紅茶葉の入った缶を手に取った瞬間。
「あ、忘れてた」
空っぽの缶を棚に戻し、
買い置きしておいた筈の茶葉の行方に頭を巡らせる。
とその時、扉の向こうの人影に気付いた。
また保健室独特の入りにくさに身構えている生徒がいるのだろうか、
と笑って彼女は自分から扉へと向かい、開け放った。
「だーれ……え?……」