その日沢近愛理の機嫌はすこぶる悪かった。
2月28日。この日17回目の誕生日を迎える彼女は本当なら今頃両親と外食でもしているはずだった。
だが今日になって突如入った父親の仕事でその計画はお流れになってしまったのだ。
彼女ももう子供ではない。両親の仕事の忙しさも、またその重要性も理解していた。
だが年頃の女の子には誕生日に一人で町をうろつくというのはあまりにも悲しく、寂しいものだった。
「こんな事なら天満たちの誘いに乗れば良かった・・・。」
彼女の友人達は彼女のためにバースデーパーティーを計画していてくれたが、彼女は両親との外食があるからと断ったのだ。
「はぁ、空しい。もう帰りましょう・・・。」
「お嬢?」
ため息を一つついて使用人以外誰もいない寂しい家に帰るためその場を離れようとした所、後ろから声をかけられた。
「どうしたんだおめえ、今日はて・・塚本達とパーティじゃねえのかよ?」
どうやら教室で天満達の話を聞いてたらしい。
「あんたには関係無いでしょ!」
いつも以上に気が立っている愛理はつい怒鳴ってしまう。
「うっ・・・確かにそうだけどよ。」
「だったらとっととうせて。あんたなんかに用は無いわ。」