(このままでは私の姉さんがあいつに奪われてしまう……)
八雲は、姉の変化を敏感に感じ取っていた。
そして、その変化の原因も既に突き止めていた。
(早く何とかしないと……何か……何か手を考えないと……)
「妹さん、どうかしたのか?」
隣にいた播磨が、心配そうに声を掛けてきた。
「あっ……いや……」
(そうだ、今こそこの男を動かす時ではないか)
「あの……播磨さん、姉さんの事なんですけど……」
「てんっ、いや、塚本がどうかしたのか?」
「はい……実は、最近姉に恋人ができたみたいなんですけど、その人が姉に暴力を振るっているらしくて―――」
あのような事を播磨に伝えた以上、二人の仲が裂かれるのは時間の問題だろう。
(私は、残酷なのだろうか)
話をしていた時の播磨の鬼のような形相を思い出し、八雲は少し考える。
(いや)
そして、その考えをすぐに打ち消した。
(何故なら、姉さんは一生、私のモノでなければならないのだから)
「フフッ」
微笑が漏れる。
八雲は、姉が自分の元へ帰って来るという悦びに満たされていた。