スクールランブルIF19『脳内捕完』

このエントリーをはてなブックマークに追加
765今更バレンタイン
「先輩――コレ、もらって下さい!」
 目の前に立つ少女は頬を赤く染め、おまけに瞳はうるんでさえいる。ちらとその後ろをうかがえば、手を取り合って
こちらを心配そうに見つめている友人らしき数人の生徒。
 ――断れるわけないじゃないか。
 内心で、今日何度目になるかという溜息をついて。
「ありがとう」
 笑顔でそう言って、『彼女』はそれを受け取った。
 次の瞬間。
「ありがとうございますっ!」
「よかったね」
「おめでとっ」
 一目散に駆けていき、廊下の反対側まで行って感無量といった様子で抱き合う少女たち。
「いよっ! モテるヤツぁつらいねっ!」
「おいおい、今年は記録更新か?」
 そして、彼女の後方ではクラスメイトからのそんなヤジが飛びかう。
「モテないヤツがひがむんじゃないよ、まったく」
 苦笑いのような表情で、『彼女』――刑部絃子はそう言った。


「しっかし、実際どんだけもらってんだよ」
「二桁はカタいよな」
「甘いって。オレの集計によるとだな既に20は軽くオーバーしてるぜ」
「なにぃっ!?」
「しょうがないよ、刑部さんキレイだもん」
「だってお前さ、刑部はオンナだぞ? オレらの立場ってもんがねぇじゃねーか」
「んー、でも私だって誰かにあげるんだったらアンタたちより刑部さんだけど」
「なっ! ちょっ、待て。オレとお前ってつきあってんじゃなかったのかよ!?」
「……あれ? そうだっけ」
「――ちくしょぉぉぉぉぉ」
「あーあ、行っちゃったよ」
「もう、あとでちゃんとフォローしときなよ」
「だーいじょうぶ。ちゃんとアイツの分は特別に用意してあるから、ね」