少女は部屋の中、椅子に腰掛けていた。
一人にして欲しい、そう言って周りにいた人達を遠ざけた彼女は、瞳を閉じてうつむいている。まるで、眠っているかのようなその顔を、薄く彩る化粧。
その胸の内で、彼女は何を思っているのか。穏やかな笑みを浮かべた顔、睫毛がわずかに震えている。
ゆっくりと、瞼を開けて彼女は、目の前の姿身に映る自分を見つめた。
そこにいるのは、幸せそうに笑う少女であり。
これからの未来に、胸弾ませる一人の女性であった。
本当にそれが、自分だと俄かに信じられなくて。
もう一度、彼女は瞳を閉じる。
そして振り返る。これまでにたどってきた道を。
積み重ねてきた時間を。迷いを。悲しみを。
何よりも、幸福を。
If...pearl white
「ごめん、お待たせ、八雲」
「ううん……ちょっとだけだから」
五分の遅れに、申し訳なさそうに頭を下げる親友に、八雲は笑って首を振る。金髪の少女はそれを見て、ほっと胸を撫で下ろした。
「それじゃ、行こうか」
「うん……」
並んで歩く二人の少女の、美しい容姿が男達の視線を惹き付けるが彼女達は意に介さない。それぞれが、強い想いを胸に抱いているから。
「でさ、最近は、どうなの?播磨先輩と」
お昼前ということで、喫茶店に入り、ランチセットを注文して早々に、サラは八雲に問いかける。
「うん……上手く、やってるよ」
答えて、八雲は小さく、笑った。