あれから一日が過ぎた。
今日も文化祭の準備のため、突貫工事で作業が進められている。
私もまたいつものように作業のお手伝い。
喫茶店の看板に色を塗る作業をしている。うーん、結構大変かも。
まぁ、今はほとんどの人が演劇の背景や小物を作るために駆り出されてるから、こっちの方に人員が回せないんで
実質1人で作業してるってことで余計に大変なんだけどね。
それでも下書きはしっかりしてるし、色指定もちゃんとされてるから作業はし易く細かいところは
別の人がやってくれるらしいのでなんとかなると思う。
数時間後、私は作業を終えた。
何のトラブルもなく作業は順調そのものだった。
「次は何を手伝おうかな……」
そう呟いて周囲を見渡していると不意に声をかけられた。
同じクラスの雪野さんだ。
「あっ、永山さん。もう休憩時間だから休んで良いよ」
「え、そう? うん、分かった」
なら休み時間の間どうしようかな。
そう考えを巡らせていると雪野さんはそれでなんだけど、っと前置きをして手を合わせた。
「お願いがあるんだけど演劇の方の人たちにも伝えておいてもらえないかな。私、これから用があって」
「あ、うん、良いよ。伝えておくね」
「ありがとう」
ぺこりと会釈すると雪野さんはその場から出て行った。
「さてと……」
軽く息を吐くと私は演劇の準備をしている教室に向かって歩き出した。
向こうはどのくらい進んでいるのかな。
こっちは料理のメニューなども決まり、終わりが見えている状況だけど向こうは間に合うんだろうか?
そんなことを考えながら私は教室の扉を開けた。
そしてその場で固まってしまった。
(……田中君?)
教室では田中君が1人で作業していた。
今は背景に使うであろう板に金鎚を打ちつけているところのようだ。
黙々と作業していて、どうやら私が入ってきたのに気付いていないようだ。