「へえー……これがお前のバイクか」
駐車場の端に置いてあった彼のバイクに近寄ると、しげしげと見つめた。
今までこういったものにあまり触れてみたことがないからか、物珍しそうな色がその瞳に浮かんでいる。
「まあな」
自慢の愛車に関心を持たれて悪い気はしない。
やや上機嫌になりながら、左手で遊ばせていたバイクのキーを鍵口に差し込み捻る。
シートに座ると、自分の後ろに乗るよう背中で語りかけた。
「ヘルメットは被らないのか?」
「いらねぇよ。邪魔なだけだ」
背後から投げかけられる、心配げな色のこもる言葉を軽くいなす。
備え付けてあったヘルメットを乱雑に掴むと、それを軽く放り投げた。
ドルンドルンドルンッ
彼女が宙に舞ったそれを両手で受け取ったと同時にエンジンを吹かし始める。
「早く乗れよ」
エンジン音にかき消されないよう、幾分大きく声を張り上げた。
しかし、彼女はいつまで経っても後ろに腰を下ろそうとはしない。