なんでもない日常、普段どおりの学校生活。申し分ない昨日と同じ一日……特に何か特
別な用事があるというわけでも無し。しかし……。
「……」
授業の要点をノートにまとめながら、わずかに首をひねる。おかしい……何か、何か忘
れている気がする。
キーンコーンカーンコーン
なんとも間延びしたチャイムが思考を中断させる。まぁ、考えても思い出せないモノは思
い出せないもので。ならばたいした事ではないんだろう、と未だ終わらない授業に神経を
集中させる事にした……。
昼休みもそろそろ終わろうかという頃、未だ妙なわだかまりは消えない。気にしないこ
とにはしているが、やはり何か気になる。
「こういうのって、はがゆい」
ついに言葉になって口を出る。途端に、六つの瞳がこちらを向く。
「どうしたのよ、さっきから」
金髪のツインテールを揺らしながら、古株の友人がいぶかしむように眉をひそめる。他の
二人も、同意するように首を細かく縦に振った。
「いや、何がなんだかわからないからなんだかなぁ、という感じ」
出来の悪い早口言葉のような回答に、三人は訳がわからない、と言ったようにお互いの顔
を見合わせた。そんな友人達を見ながら、体重をちゃちな背もたれに押し付ける。
「何か忘れてるような気がするんだけど、何を忘れているか、が思い出せないのよね」
瞼を降ろし、溜息一つ。納得したような相槌が帰ってくる。
「けど、良くわかったね」
表情には、出していないつもりだったのに……。
「まあ、なんとなく、ね」
そう言って、友人達は笑った。良い友達を、持ったと思う。
「まぁ、思い出せないなら、たいした事じゃないよ」