「……いまさら何の用だ?」
「あら せっかくチームメイトが駆け付けてきたのに、つれないわね」
無造作に近づくその姿に、あくまで姿勢を崩さずに問いかける播磨。しかし、晶は普段と変わらない冷静さで答える。
そもそもこの女は、クラス中をけしかけていながら、自分は撮影係だと言ってとっとと姿を眩ましたのだ。
いまさら現れて仲間面されようが、信用できる訳がない。
「てめえはたしか、戦闘には参加しないんじゃなかったのか」
「…そのつもりだったけど、状況が変わったわ」
状況が変わった? 戦闘開始直後から一人4階にいた播磨には、どういう意味か理解できない。
「不参加だったはずのバンド組が参戦したの。演劇軍は彼らの奇襲を受けてほぼ全滅」
烏丸君もその一人ね、と付け加える。播磨もそれで合点がいった。
つまり上階で見た無数の死体。それはバンド軍に陣地を強襲された両軍の成れの果てだったのだ。
そして単身で演劇軍のフラッグを奪取しに来た烏丸が沢近を瞬殺し、天満と相打ち――。
「喫茶店軍もほぼ同じような状況よ。このままだとバンド軍の一人勝ちになりそうなんだけど……」
そこでいったん言葉を切る晶の顔には、実に――愉快そうな微笑が浮かんでいた。
「それじゃ面白くないでしょ?」