「メシ出来たぞ、絃子」
「……メシ、ね。あまりインスタントのできあいをそう呼びたくはないものだね」
「るせぇ、これしかねぇんだから仕方ねぇだろ」
「あのさ、拳児君。いい加減君も料理の一つも覚えようという気にならないのかな?」
「……その言葉、そのまま返してやるよ」
「は? 何を言ってるんだ、料理くらい出来るに決まっているだろう」
「ちょっと待て。じゃ何でテメェで作らねぇんだよ!」
「面倒だからに決まってるじゃないか。あれで結構大変なんだよ、料理というのは」
「なっ……」
「それにね、君はウチの居候なんだからそれくらいして当然だろう? 私が君の面倒を
みるのにどれだけ苦労してるのか知ってるのかな?」
「ぐ……」
「なにかというと問題事に巻き込まれてばかり、フォローする方の身にもなってくれよ。
まったく、本当はこっちが面倒みてもらいたいところだ」
「わーったよ! んじゃ絃子の面倒は俺が一生みてやる! これでいいだろ!」
「……」
「……なんだよ、その顔」
「……拳児君。自分が言った言葉の意味が分かっているのかな」
「あん? だから一生面倒みてやるって……あ」
「それはつまり……」
「待て待て待て! 今のはナシだ! すぐ忘れろ即忘れろ二度と思い出すな!」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……食べるか、せっかくの夕食だし」
「……おう」
なしくずしにおわる。