人間、年がら年中忙しいわけでもない。
特に高校生など部活をやらなければ、一番暇を持て余している人種で、その高校生がよ
く行くのが、コンビニではなかろうか。
そのコンビニで、漫画を立ち読みしている1人の男。サングラスを掛けたその男が何気
なく外を見ると、そこには彼にとっては疫病神で天敵でもある沢近愛理嬢の姿が。
播磨はすぐさま雑誌で顔を隠し、静かに通り過ぎるのを待つこと数秒、ゆっくり雑誌を
下ろすとそこに彼女の姿は無かった。
ホッとした表情で先程の漫画の続きを読んでいると、しばらくしてうしろから何処か聞
き覚えのある声がし、播磨の背中を叩く。
その声に播磨はしばらく固まり、まるで油の切れたロボットのように首を少しずつ左に
回転させ、その姿に顔を引きつかせた。
「なによ、その顔は」
「おっ、おめーさっき、向こう歩いていったんじゃなかったのかよ」
「なに、見ていたの? だったら声掛けなさいよ」
相も変わらず、お嬢様のわがままと理不尽が炸裂する。
なぜ沢近がここにいるのか? それは、沢近がリップクリームを切らしてしまった事を
思い出したが、帰り道に薬局が無いため、コンビニに買いに戻って来たとの事。
本来、いつもなら天満達と遊んでいるが今日に限って皆用事があり、1人寂しく帰路につ
くところであった。そこで暇そうにしている播磨に、これからどっか遊びに行かないかと誘う。