自分の予測通りに物事が動くのは快感である。正しそれは良い方向のみで悪い方に
事態が動くのは好ましくない。ただ、先のことが予測できれば将来のマイナスを減ら
すことはできる。
「拳児君、君は私の予想通り帰ってこなかったね」
刑部絃子は同居人に顔を合わせた早々に強烈な嫌味をかましてやる。今回の件で同
僚に貸しを作ってしまった。元はと言えばこの男が勝手に出ていったのが悪い。後で
この仮を返してもらおうと思っている。
「君の出席状態はチョッとした細工しておいた。ただし今回だけだぞ」
播磨は留年の危機に晒されていて、授業を欠席するのは許されなかった。絃子は
本来なら欠席のところを出席と書いておいた。同僚の笹倉にも頼み込んで欠席を出
席と記入するように差し向けておいた。
絃子があれこれ言っても暖簾に腕押しで何の反応も無い。当人の播磨は壊れた人形
の様に「天満ちゃんが…天満ちゃんがよぉ…」と力なく呟くだけ。
こんな播磨は何度も何度も見たことがある。想いの人天満にアプローチを果敢にか
けるも見事に失敗、そしてしばらく落ち込み翌日には何事も無かったかのように復活
する。が、今回は違うようだった。