『Have a date with....』
その日、今鳥恭介は公園のベンチに座って、空を見上げていた。
空は青く澄み渡り、白い雲がゆっくりと流れている。外にいるだけで気持ちよくなるような天気。まさに絶好のデート日和と言えるだろう。
しかし今鳥は、半ばやけくそ気味に空に向けて愚痴をこぼした。
「ったく、なんでこうなんだよ〜」
公園は日曜日ということもあり、暖かな家族や熱々のカップルなどがちらほら見受けられる。みんなとても幸せそうだ。
だがそれらとは対称的に、今鳥の心は地の底よりも深く沈んでいる。
今鳥はがっくりとうなだれて、こんなはずじゃなかったのにと、いまさらながら自分の迂闊さにため息をついた。
彼は今、待ち合わせをしている。つまり今日はデートだ。
相手の女の子を、彼は自分から誘った。……たしかに自分から誘ったのだが、結論から言えば相手を間違えたのだ。
もう一度ため息をついてから今鳥が顔を上げると、少し先できょろきょろしている女の子が目についた。
白のロングスカートに、ピンクのシャツ。おとなしめの服装は彼女に良く似合っている。
彼女はベンチに座っている今鳥に気づいたようで、彼のもとへと慌てて走りだした。
今鳥は幾分緊張しながら、腰を上げた。ただし、彼の緊張というのはデートすることによる緊張ではない。
それは、今日一日無事でいられるだろうかなどという、相手に対して失礼極まりない心配によるものだった。
走ってきた彼女は今鳥の前で足を止めると、少し息を切らしながら頭を下げ、言った。
「す、すいません! あの……待ちました?」
「いやっ! オ、オレも今来たとこだから!」
下手なことを言うと殺されると思い、今鳥が必死にフォローする。
そんな彼の心中も知らずに、恋人のような会話をした嬉しさで一条かれんは頬を染めるのであった。