保健室の前でサングラスと髭を蓄えた長身の男がウロウロしている。
男の名前は播磨拳児、失神高校史上で最強最悪の不良であり回りの生徒
からは恐怖と畏怖の念を持って恐れられている。
「入るべきか、入らずべきか・・・天満ちゃん」
極悪な不良とは思えない情けないことを口にする。心配で心配でオロオ
ロする。体調を崩して保健室に運ばれていった天満の様子を見に来たのだ
が、入り口の前で躊躇してしまって入ることができない。不良の溜まり場
に殴り込みに行くより、こっちの方がずっと怖い。
深く深く溜息をつく、手が震えて戸を開ける事ができない
「くそ・・・天満ちゃんの様子がみてぇ・・・だが、しかし・・・」
腕を組みあれこれ悩んでいた播磨の視界が突然消える。目の前が真っ暗に
なる自らの現状を表すようだった。
「ハーリーオー、何してるの?」
聞きなれた女性の声がする、声の主は最近学校に編入されてきた保険医の
お姉さんだ。播磨とは少なからず縁があり親しい関係だった。
彼女は保健室の前でウロウロしている播磨の姿を見つけて後ろから抱き着
いてきたのだった。手で目を覆い隠したのはちょっとした悪気の無いスキン
シップなのだが、播磨にはそうは思えなかった。
「だ・・抱きつかんでください!姉ヶ崎先生!」
振り払うわけにもいかず、播磨は姉ヶ崎が自分から離れるまで待った。
姉ヶ崎は「冗談冗談」と言って播磨から離れる。正直、播磨にとってこの女性は
心臓に悪かった。