スクールランブルIF16【脳内補完】

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149Hot Coffee 1/3
 部屋に差し込む陽光と肌を刺す早朝の空気に目が覚めた。

「…うう…寝ちまってたのか」

 机に突っ伏していたせいか体のアチコチが痛い、だが壁を突き破り一仕事成し遂げた今の俺にはその痛みすらも心地良い。
 今回の原稿はコレまで書いてきた中で一番の自信作だと胸を張って言える。
 一昨日までのスランプが嘘のように筆が進んだ。
 …そう、スランプだ。
 天満ちゃんに妹さんとの関係を誤解され、あまつさえ応援までされてしまったあの日から…
 俺は漫画に情熱をぶつける事さえできなくなってしまっていた。

 絵は描けた、天満ちゃんの顔なら例え目をつぶっていたって完璧に描くことができる自信がある。
 だが、ストーリーが思い浮かばなくなってしまった…
 コレまでは二条が俺と天満ちゃんの仲を妨げる唯一の障害であり、それを取り除くにはシンプルにぶちのめせば良かったんだが…
 今の俺と天満ちゃんの間の最大の障害が…よりによって世話になっている妹さんだなんてな…
 漫画とはいえ女を殴るわけにはいかないし、なにより妹さんには大いに世話になっている。
 悪役をさせるなんて不義理をするわけにはいかねえ。
 まあ…なんだ天満ちゃんの妹さんだから、ってこともあるしな。

 そんなわけで、談講社の編集さんに出された読みきりの締め切り直前になってもまだ妹さんに相談することもできずに居たんだが…
 土曜の放課後、妹さんの友達さんが変な気を使って俺と妹さんが一緒に帰ることになって、
 一緒に歩いてるうちに言いづらかったはずの漫画のストーリーが浮かばないなんて泣き言をもらしちまってた。

「優しい娘だよな、妹さんは…」

 俺みたいな不良の言うことでも真面目に聞いてくれるし、理解(わか)ってくれる。
 メガネが入れ込んでるのも分からないでもないぜ、さすがは天満ちゃんの妹さんってとこか。