スクールランブルIF15【脳内補完】

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346Classical名無しさん
「全く……息子一人に押し付けるとは、なんという親だ……」
 何が入っているのかよくわからない、古びたダンボールを両手でしっかりと抱え、石段を一歩
一歩進んでいく。もう秋とはいえ、正午を回ったばかりのこの時間帯は、動けばじっとりと首筋
に汗がにじむ……。神社までは、もう少し。
「私も手伝ってるだろ?」
美琴は、憤慨する花井の少し後から、その背中を笑いながら見上げる。それにつられるように、
木立の葉もざわわ、と風に揺れた。
「むう、そういう問題でもないと思うが……」
納得いかん、という風に苦い顔をするが、不意にその足が止まる。
「ほう……」
「どうした?……へえ……」
何事かと、早足で花井に追いついた美琴も、感嘆の声を上げる。木々の切れた一角から、矢神市
の住宅街、そしてその先には、深みのある青い海の広がりが一望できる。緑の額縁に納められた
その風景を、二人はしばらくぼけっと、眺めていた。緩やかな暖気をふくむ真っ青な空を、ジャ
ンボジェットが悠々と飛んでいく。
「絶景、というやつだな。」
「これはもうけもんだなー。昼飯、ここで食おうぜ」
何やら感慨深げに呟く花井と、うれしそうに顔を輝かせる美琴、しばらくして、どちらからとも
無く再び石段を登り始める。なんとなく、先ほどより足が軽い。